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シリコンバレーのトラベルテックADARAの日本進出に学ぶローカライゼーション【インタビュー】

シリコンバレー生まれのトラベルテック企業ADARAの日本進出ローカライゼーションの秘訣を探る 専門用語x英語は日本に持ち込む際に難関。でも英語圏では共通言語 言語だけではない、進出先のビジネス・非ビジネス文化、マナー、働き方など人を意識した違いを考慮する必要あり 米国ではプレゼンで話していることを見る。日本では文字情報、書類を見る傾向あり 日米、お互いの「物差し」を理解すべし 2019年日本を沸かせたラグビーW杯や2020年夏のオリンピックなど、世界的なスポーツイベントによる日本へのインバウンド需要が高まっている。これを見越した企業・政府の動きが見られるようになってきた。 また、こういった需要・取り組みに対して興味を持ち、日本市場への参入を考える海外企業も多くなってきている。そして、こういった海外企業が日本市場に参入してくる際の戦略や自国との違いを知ることは、日本企業にとって非常に貴重な情報だ。グローバル市場を見据えたサービスや事業の展開に必要な知見を養うことができる。 ADARAもその1つだ。海外から日本に渡ってきた旅行者の動向をデータ分析し、旅行関連企業、サービスの支援を行っている。 今回、ADARAのコマーシャルディレクターである森下順子氏(June)を訪ね、日本でビジネスをしてきた4年間についてインタビューを実施した。 ADARAの事業拡大、ローカライズ、企業の文化、顧客との関係について伺った内容をまとめている。そしてそこから、日本から海外、海外から日本という両方向のベクトルに目を向け、ローカライズの際の視点や、マーケットインのポイントを解説していく。 日本へのビジネスの拡大 Q. btraxは2017年のADARAの日本へのサービスローンチイベントに携わらせていただきました。どうしてADARAは、当時日本市場への進出を決めたのですか? A: 本社は、米国カリフォルニアのパロアルトにあります。200名のスタッフと、世界に20ものオフィスを構えています。2016年には、アジア市場への参入のため、シンガポールにオフィスをオープンしました。 その後日本、香港、シドニーとアジア環太平洋エリアへのサービスの拡大をしていきました。10年間でADARAは急成長をしてきたと思います。 2017年日本でのローンチイベントの様子 日米間の言語の壁。特に専門用語は最難関! Q: ADARAは既に世界中にオフィスがありますが、日本市場への進出はスムーズでしたか? A: 最初はやはり苦労がありました。時に言語の壁です。ADARAは米国に拠点を置き、ヨーロッパ圏やアジア環太平洋圏にオフィスがあるので、共通語は英語です。ですので、日本に対しては、あらゆるものを日本語に翻訳する必要がありました。 例えば、セールスレポートや、マーケティング関連の資料、さらにwebサイトです。この困難を乗り越えるために、日本と本社両方でバイリンガルのスタッフの採用も行いました。 日本国内でのサービス展開を通じ、日本政府や地方自治体、あるいはそういったところの観光局など、公的機関とも近い距離で仕事をする機会もあります。彼らは日本語を話しますが、デジタル専門用語や、旅行関連の専門用語がわからないということもしばしばあります。 ですので私は、専門的な英語を日本語に翻訳し、専門的領域を知らない彼らでも理解できるような形にしなければなりませんでした。これは本当にチャレンジングなことでした。 小手先のローカライズでは機能しない Q: ARADAの本社は米国にあり、日本とは大きく異なるカルチャーを持っていると思います。日本市場への参入に際し、戦略面でも米国のものと変える必要はありましたか? A: 米国本社の戦略にならって日本でも展開をしようと考えていました。しかし、日本の慣習やトーン、マナー、ビジネスルールに合わせてローカライズを行いました。顧客基盤を成長させ、新たなビジネス領域へと拡大させようと考えていますので、日本の顧客が求めているものを尊重しなければいけないと思います。 日本でのビジネスが成長するにつれ、チームを拡充させ、とりわけ政府機関のようなローカルビジネスのニーズに合致するように戦略を変えていこうと考えています。日本は、特に旅行業界において、最も注力すべき市場の1つなのです。 ローカライズの鍵は、やはり参入先の市場動向や言語だけでなく、根付いたものにフィットする形で提供をすることにあると言えるだろう。また、施策レベルではなく、その大本にある戦略レベルでローカライズをしていく必要もある。 Q: ADARAが日本に進出した当初、初期顧客にはどのようにしてアプローチをしたのですか? A: まずは前職で元々持っていたネットワークを活かしました。私は長年広告、マーケティング業界にいたので、旅行関係やデジタル関係のマーケティングエージェンシーに声をかけ、プレスレビューもいただきました。 リードを生むところから始めましたね。その次に、この業界や公的機関などの他の業界にもサービス拡大の機会を獲得できる人材の採用をしていきました。 事業を広げるのは人の力。築いてきたネットワークは活かすべきだ。特に新たな市場に参入していく際や新規事業などは、ゼロから基盤を築いていかなければらず、コストがかかる。それまでのネットワークを生かすことができないかと考えてみることも重要だろう。 また、海外市場への参入を考える場合、こういったネットワークを活かした事業の拡大は、現地に根付いた人、現地の知見を持っている人を中心に行っていくことが効果的かもしれない。現地の感覚を理解している人を使うことで、より確度高くローカライズに取り組むことができる。 事業をローカライズする Q: ADARAを日本の人に説明する時に感じた難しさは何でしたか? A: テクノロジーを紹介したり、専門的な用語を使うと、他の星から来たエイリアンのように見られることがあります。しかし皆さん、いつも新たな学びに対して熱心でいらっしゃいます。そうした時に、皆さんが理解できるよう、「インプレッション」や「クリック」などのカタカナ語を使わないようにしています。 先日のADARAセミナーでは、デジタルマーケティングと測定ソリューションについてお話しました。すると、「ピクセルって何ですか?」や「トラッキングって何ですか?」といった質問を受けました。 オンラインとオフライン、双方の視点からの理解の必要性 これは、「釣り」に似たようなものなのですが、こちらから用語や概念をたくさん伝えれば、向こうが何を聞いてくるのか(何について知らないのか)知ることができます。こうして私は情報を収集していますが、そのためには、エサをまくことから始めなければならないのです。 また、どんな人がWebサイトを訪問しているか、誰が広告を見ているのか、必ず始めに理解する必要があります。デジタル面においてはこのようなことからはじめました。 セミナーなどのオフラインで話す機会と、Webサイトなどを通じたオンライン上での顧客の行動データという、両方の視点からローカルを理解することがポイントだ。 Q: ADARAはしばしば地方自治体と連携しているとおっしゃいましたね。彼らは自分たちで顧客データを所有していないため、ADARAのサービスは非常に魅力的であるように思います。彼らにサービスを売り込むのはスムーズでしたか? A: 4年前にADARAに入社したとき、電話をかけたり、メールを送ったりして観光局に連絡しなければなりませんでした。しかし、2年前、私たちの最大のパートナーの1社である日本政府観光局がADARAにサインアップし、インパクト測定ツールを導入してくださいました。それ以来、ADARAに業界の注目が集まるようになったのです。 現在では、(こちらから行かずとも)連絡をいただけるようにまでなりました。近隣住民の方と行政間での話し合いや意見交換もなされるようになったのです。 例えば九州に行った際は、現地でのセミナーで人に会い、ネットワーキングをしました。そしてその翌日、近隣の行政で観光部門のマーケティングを行っている方から、ADARAについてもっと知りたいとの電話をいただいたのです。 組織に所属するメンバーがそれぞれ築いてきたネットワークを生かすことは重要だ。しかし、よりインパクトがあるのは影響力のある企業や人に認知してもらい、その価値を広めてもらうというPR的な第三者からの視点を持つことだろう。 ADARAの場合、公的機関に導入されたことによってサービスの信頼度を高めた。現地でネームバリューを持つ企業や人物の目に留まり、採用されることは、サービスを拡大させるための大きなステップになる。 とりわけ日本では、公的機関や大企業など、ネームバリューを持った組織がそのサービスの価値を左右したり、大きな影響を及ぼしたりするケースも多い。また、日本企業は米国よりも、サービスやプロダクト以前に、その企業の過去実績を重視する傾向にある。 一方、米国は日本と比べ、公的機関や大企業とのタイアップが拡大のための必要条件ではないような印象を受ける。また、CMなどで芸能人を使うケースも少ない。日米で、どのような訴求の違いが効果があるのかは異なるようだ。 鳥の目、虫の目、そして魚の目を持つ Q: 観光局、旅行代理店などとの仕事の中で、日本の顧客について学んだ一番の教訓は何ですか? A: 旅行者はインターネットを使用して次の目的地を検索したり、どれほどコストがかかるかを確認したりします。また、旅行中もFacebookを使ったり、写真をInstagramに投稿したりすることで、友人と体験を共有します。 つまり、デジタル空間には非常に多くの接点があるということです。しかし、太平洋諸国や米国などの先進市場と比較すると、日本の旅行業界は少し遅れている状況です。 2019年のラグビーW杯や今年のオリンピックを迎え、この市場で多くのインバウンド旅行者が見られることもあり、この業界の人は、既に今までやってきたことよりもさらに旅行者を魅了し、誘致する方法を模索している状況です。 駅に置かれているパンフレットやガイドブックはもはや意味を為しません。マーケターの観点から、適切なタイミングで適切な人にリーチする方法を考える必要があります。 旅行者の行動の変化から、従来の旅行体験そのものを見直し、デジタルシフトを視野に入れたマーケティングを行っていく必要がありそうだ。 また、ローカライズには、「鳥の目」で市場を把握したり、「虫の目」を持って現地にフィットする形を模索したりすることが重要である以前に、時代という大きな流れの変化にも確実に対応していく「魚の目」を持つことが求められる。 Q: 日本市場に参入していくに際し、最も重要なことは何ですか? A: 最も重要なのは、現地の人の声を聞き、尊重の意を見せることです。これは、日本文化に限ったことではなく、日本のビジネス文化に対してもです。クリエイティブであり、なおかつ現地に存在するニーズに合わせることに努めています。 日本で”信頼”を築くということ Q: ADARAはどのようにして顧客からの信頼を築いたのですか? A: まず、データを提供してくれるパートナーに対し、透明性を示しました。彼らが私たちにデータを提供する際、こちらは、そのデータをどう使うのかを伝え、なおかつ先方にデータの扱い手の決定権を委ねています。 また、パートナーから頂いたデータは全て別々に分けて安全に保管しています。航空会社やホテルチェーンとお仕事ができたのもこれが理由だと思います。信頼を築いています。 海外進出した企業はほとんどの場合、その国ではゼロの状態からのスタートとなる。そのため企業側からの積極的な信頼構築のためのアクションが重要になる。クリアなコミュニケーションや姿勢を示すことは、その状況の打破に繋がる。相手が抱くモヤモヤを自ら晴らす行動が重要だ。 世界的なスポーツイベントの連続開催に際して Q: ラグビーW杯や、東京オリンピックについて触れていらっしゃいました。180万枚ものラグビーW杯のチケットのうち、33%が外国人(日本人以外)によって購入され、また、日本は、2020年の東京オリンピックまでに2000万人もの観光客を誘致するとの予測もあります。 旅行関連企業にとって非常に大きなビジネスチャンスが巡ってくるわけですが、こういったイベントが差し迫ってくることでADARAに関心を持つ顧客の数の増加はありましたか? A: そうですね。ADARAは、世界中200以上もの航空会社やホテルチェーン、オンラインのトラベルエージェンシー等とパートナーシップを結び、旅行データベースを構築しています。 彼らは、我々のトラベルデータコープに参画し、データの共有を行います。データに基づいて、日本に来る人や、来日した際に行こうと考えている場所などを特定することができます。また、何人で旅行をするのか、いくらお金を使うのか、などをWebサイトのデータから知ることも可能です。 特に日本のマーケターは、自分たちのサービスをプロモーションしたいと思うはずです。ラグビーW杯で人々が日本に来ると分かっていれば、旅行客にもっと自分たちのサービスの魅力に触れてみて欲しいと思うのです。 日本チームと社内文化 Q: ADARAの日本オフィスの雰囲気はどのような感じなのでしょうか?米国の本社と似ているのか、あるいは、日本の伝統的なビジネススタイルを踏襲しているのでしょうか? A: その中間でしょうか。日本オフィスにいるスタッフのほとんどは米国企業での勤務経験があります。ですので、米国の環境ややり方には慣れていますね。コミュニケーションに関しては非常にスムーズです。 また、旅行関連ビジネスだからだと思いますが、ADARAで働いている人は旅行に情熱を傾けています。常に「次はどこに旅行するの?」「バケットリスト(死ぬまでにしたい100のことをまとめたリスト)にはどこが書かれているの?」などといった質問が飛び交っています。これは電話でも。 自分の人生や経験をスタッフ同士でお互いにシェアしています。これは決して他の会社にないこと、というわけではありませんが、とてもADARAらしいことです。 Q: 会社のカルチャーが日本オフィスでのコミュニケーションの円滑化に役立っているとお考えですか? A: はい、そう思います。他の日本の企業のように、ADARAにもよりフレキシブルにしていこうという動きがあります。ADARAには日数無制限の有給取得制度があり、リモート勤務が可能になっています。 実際、お子さんがいる女性社員が2人います。彼女たちはお子さんのお世話もしなくてはなりませんよね。彼女たちには、時々学校関連のことで対応しなくてはいけないことがあり、そういった時は家から勤務することもあります。 こういった職場環境を大切にしています。ちなみに私は旅行が好きで、休暇を取る予定なのですが、現地のカフェでオンラインに入り、リモートで仕事することはよくあります。 一見、社内カルチャーはローカライズや市場参入には直接的には関係のないことに思える。しかし、社内カルチャーを参入先の風土や雰囲気に合わせていくことは、その場所でビジネスを展開させていくことに効果的のようだ。 活字至上主義の日本と、イメージドリブンの米国 Q: 日本オフィスと米国の本社との関係はどうですか?また日米でコラボレーションする際はどういった雰囲気ですか? A: 日本オフィスは、基本的に米国本社のガイドラインに沿っています。ですが、言語や適用している戦略は区別させていこうと思っています。例えば、米国はプレゼンテーションは画像が多く、文章は少ないのが典型です。 しかし日本では、プレゼンターが話をしている間でさえも、聴く側はスライド上に書かれている文章に意識を向けていることが多いです。 これは、日本のビジネスシーン、特に保守的な業界では一般的に見られます。米国本社も次第に私たちの意見に耳を傾け、日本で成功を収めるために、日本で重んじられていることを大切にすることの必要性を理解し始めています。 米国ではプレゼンで話されていることを重視する一方、日本では文字情報に重きが置かれ、紙の書類を使用するシーンも多い。そのためADARAは、日本企業に対しては、事前にプレゼン資料をシェアし、スムーズな理解とディスカッションができるよう工夫をしているのだ。 […]

さよなら表敬訪問!米国でのネットワーキングを成功させるには

 

そもそも日本とアメリカではネットワーキングに対するスタンスが異なる
ネットワーキングとは出会った人と相互に有益な情報を共有し、長期的な関係を確立していくための手段。テイクだけでは成り立たない
企業にとってネットワーキングはサービス開発などビジネス拡大の上で欠かせない
ネットワーキングは閉ざされがちな情報への扉を広げ、個人としての可能性も高める
ネットワーキングの目的を明確にし、アメリカのネットワーキングツールを知るべし

あなたはテクノロジーの聖地、シリコンバレーに飛び立ち、現地でス…

VCに関してもっと早く知っておきたかったリアルな実態

スターツアップエコシステムを語る上で、絶対に外すことにできない存在。それがVCだろう。VCとは、ベンチャーキャピタリストの略で、資金を集め、ファンドを作り、スタートアップに投資を行い、そこからリターンを獲得するのが主な仕事。どうしても、このVCという人たちの本来の役割が意外と知られていないことが多い。 起業家や起業家に憧れる人たちがVCに対して抱くキラキラなイメージと、実際の現場には大きなギャップがあると感じられる。 参考: なぜVCはいつも偉そうなのか 下記は、アメリカで連続起業家として活動しているAaron Dininによるポスト”What I Wish Someone Had Told Me About Venture Capitalists”を日本語にしたもの。彼の起業家としての学びの一つとして、VCとは、投資のゴール、そして彼らとの関わり方などがわかりやすく説明されている。 アメリカの起業家が学んだVCの実態 私はシリアルアントレプレナーであることもあり、起業してから最初の10年ぐらいはVCに対して大きな憧れを持っていた。まるで有名人に対してのように彼らのTwitterをフォローし、著名なVCが登壇するイベントに出席し、Andreesen、Sequoia、Benchmarkなどの著名VCとのミーティングを他の起業家に自慢したりした。 もちろん投資はしてくれなかったが、上記のようなVCとのミーティングに漕ぎ着けられただけで、自分の会社の存在価値が証明された気になっていた。 しかし、後に私はVCの目的を完全に勘違いしていたことに気づく。そしてそれが、長い間資金調達がうまくいかなかった原因ともなっていた。 VCはロックスターだと思っていたという勘違い おそらくスタートアップとVCとの関係性について誤解している人は私だけではないと思う。ある意味、若い起業家は取り巻く環境で、VCをちゃんと理解するよりも、崇拝するように仕掛けられている。 テクノロジー系のメディアには資金調達に関する見出しが踊り、成功者として称える。そして、スタートアップの価値を、世の中に対するインパクト (例: 1万人の子供の命を救った) よりも、評価額 (例: 巨大なユニコーン誕生) で測る。カンファレンスやイベントでは、VCや資金調達に成功した起業家達がステージを飾る。 そんな環境の中で、スタートアップの創業者達は、いつの間にかユーザーの課題解決よりも、投資家が求めることを中心に戦略を立てるようになっていく。 VCをもっとちゃんと理解してほしい この記事を通じて私は、自分がVCから投資を受ける側であるスタートアップの起業家になりたての頃に教えて欲しかった、VCの真の目的とその実態について説明できればと思っている。 それにより、これから起業家になる人たちに対して、1. VCとの正しい関わり方、2. そもそもVCから投資を受けるべきか、を理解してもらえればと思う。 なぜVCが存在しているのか? 起業家目線からは、どうしてもVCは「スタートアップを支援する存在」だと思いがちである。究極的には、VCはスタートアップに投資し、その成長を助ける。それにより、彼らは「創業者達の成功を支援するのが最終目的」のように見えてしまう。 しかし、VCの最終目的がスタートアップの成功と考えること自体が、VCの本当の目的を理解しにくくさせているのも事実だ。 VCは投資機関として、投資家や組織のお金をより幅広く投資することを担っている。したがって、VCの最終ゴールは起業家の夢を実現することではない。彼らの最終目標は投資家に対してより多くのリターンを還元することだ。 上記のポイントはは、起業家がVCに対して持つイメージと、VCの実態とのギャップを埋めるためにも、しっかりと理解しておくの事がかなり重要。 VCが成功するために、投資ターゲットとなるスタートアップは、下記に対して大きなポテンシャルを持っている必要がある。 投資額よりも何倍も大きな評価額を生み出す 他の会社に買収されるか上場するといったエクジットを通じて、投資ファンドに対してリターンを提供する ベンチャーファンドの仕組み これから紹介するのは、VCのビジネスモデルの基本を理解してもらうために、自分の生徒に説明する際にも利用する、極端にシンプル化にしたアナロジーである。完璧ではないが、基本的な理解を得るためには十分だと思う。 例えば10億円のベンチャーファンド (投資向けのお金) があったとする。そのお金を株式市場に投資すると、おそらく10%ぐらいのリターンは得られる。VCはそれよりも多いリターンを目指すのが仕事。 VCはその10億円のファンドを活用し、スタートアップに投資することで、”市場に勝つ”ことを目指す。今回の例では、シンプルにその10億円を10分割し、一口1億円で10社への投資を行うことにする。 一般的にアメリカのVC界では、投資した会社の50%からはリターンを期待できない。投資したお金は紙切れになってしまう。残りの5社のうち4社からは投資した額と同等のリターンを期待する。今回の例だと、この時点でリターンは4億となる。 ということは、現時点で9社からのリターンは4億で、全体投資額の40%しか戻ってきていない。全然ダメだ。しかし、まだ1社残っている。その10番目の会社が”ホームラン”を打つ。大成功したことで、投資額に対して10倍のリターンを出す。すなわち1億が10億に化ける。 これらを合算すると、当初の10億の投資は、合計14億のリターンを生み出した。40%のリターンをファンドにお金を入れてくれた人たちに分配することが可能になる。なかなかおいしい仕組みと思うだろうか?でも、現実はもうちょい複雑である。 持ち株率、希薄化、追加出資 上記の例では、投資した1億の資金がいとも簡単に10億のリターンを出したと仮定している。文字で書くと簡単そうに思えるかもしれないが、実際のにそれを実現しようとすると、なかなか難しい。どうやったら1,000円が10,000円に化けるかを想像してみると、その難しさが実感できるかもしれない。「ユニコーン」と呼ばれるスタートアップが、実存しない動物に例えられる理由も理解できる。 では、どのようなプロセスで1億が10億のリターンを出すに至るかをもう少し説明してみたい。 話を単純にするために、最初に投資した時点で、他にそのスタートアップには投資家がいないと仮定する。そして、1億を投資する代わりに会社の25%の株式を取得したとする。(念のために説明すると、この投資を受けた場合、その会社は、プレで3億、ポストで4億の評価額となる。) この時点で10倍のリターンを生み出すためには、その会社が40億で買収される必要がある。(40億で買収されれば、その25%が10億になるので。) 残念ながら、現実はのVCやスタートアップの世界では、ほぼそうならない。当初4億の評価額を受けた会社が40億で売却されるまで、全く追加出資を受けずに済むことは、まれであるからだ。 多くの場合は、それまでに何度か追加出資を受けることになる。おそらく12ヶ月以内に (願わくば) 当初よりも高い評価額で。追加で出資を受ける場合、既存の株主は、新規の投資家のために自身の持ち株を目減りさせる必要がある。これを希薄化と呼ぶ。 今回のケースでは、当初投資側が4億の評価額の会社の25%を所有していたが、その会社に追加出資を獲得する新規投資家の取り分を与えるために、その25%の持ち株率が下がってしまう。 例えば、この会社が評価額8億 (プレ) で2億の追加出資を受けた場合は、ポストの評価額が10億になる。その場合の創業者、既存投資家、新規投資家の持ち株率は下記のように変化する。 創業者: 60% (75%からダウン) 既存投資家: 20% (25%からダウン) 新規投資家: 20% 追加出資をした新規投資家に20%を渡すために、創業者と既存投資家の持ち株率が下がってしまった。しかし、評価額が10億になったため、その20%の価値は2億になり、当初の4億の25%である、1億の倍の価値になったことになる。これをわかりやすくリスト化すると: 創業時: 評価額4億 創業者: 75%: 3億 投資家: 25%: 1億 追加出資獲得時: 評価額10億 創業者: 60%: 6億 既存投資家: 20%: 2億 新規投資家: 20%: 2億 なかなかイケてるだろう? VCが元々3億の評価額の会社に1億を出資したことで、追加出資を受けた時点で、その評価額は10億にまで膨れ上がった。実に6億も増えたことになる。VCの投資分も1億から2億へと、倍になった。 ここで、当初のゴールである1億の投資を10億にまで増やすことを考えてみよう。持ち株率が20%になったので、そも目標を達成するには、当初の40億より10億多い、50億で会社が買収される必要が出てきた。 念のため、この追加出資の概念について補足する。今回の仮想VCのモデルでは、10億のファンドを10社に投資しただけであったが、現実のVCは、投資した会社の中で優良だと思われるところに、その後も追加で出資することが珍しくない。そうすることで、持ち株比率の希薄化を避けるのだ。 ややこしい追加出資やリターンの細かな説明や計算ロジックはここまでにする。基本的な計算式は変わらない。追加出資が行われた場合は、売却額を上げる必要があるということ。 VCが投資したくなる会社の特徴 ここまでじっくり読んでくれたか、軽く飛ばし読みしたかはわからないが、その仕組みがわかれば、おそらくVCが投資するスタートアップには一定の特徴があることに気づいただろう。VCが投資対象として評価するのは、おのずと急激に大幅成長が見込める会社になってくる。 一方で、そのような急成長を期待できる会社は限られてくる。起業家としてVCからの投資を求める前に、そもそも彼らが求めるタイプの会社であるかどうか、そして創業者としてそれを達成する能力があるかをを自問して欲しい。 1億円は大きなお金のように感じるかもしれないが、VCにおけるリターンのロジックは変わらない。受け取る金額に限らず、スタートアップは何倍ものリターンを出すことが求められる。 今回の例では、1億を投資し、その会社に対してプラス6億の”価値”を生み出した。言い換えると、600%のROIを達成したことになる。株式市場への投資が平均10%程度のROIである事と、それ世界のトップ企業からのリターンの平均である事を理解していただきたい。 それを踏まえると、VCがスタートアップに求めるリターンの大きさが理解できると思う。トップクラスの大企業でも毎年10%の成長を達成する程度であるのに対し、スタートアップは何百倍ものリターンを求められるのだ。まさにハイリスクハイリターン。多くのスタートアップが失敗に終わるのも理解できる。同時にスタートアップを成功させる難易度の高さもわかっただろう。 VC自身も起業家である 投資を受けたスタートアップに求められるリターンの高さはハンパないが、VCが背負うプレッシャーも尋常ではない。なんせ、預かったお金を使って株式投資よりも大きなリターンを生み出す事を期待されているのだから。 そのゴールを実現するために、VCの人たちはリスクの高いスタートアップ投資を通じて、最終的にポジティブなROIを生み出さなければならない。ほぼ不可能に近いぐらいの難易度である。VCの約半数は失敗し、45%はトントンのリターンで終わるのもうなずける。 自分もスタートアップを始めた頃は、VCの仕事がこんなにも大変だとは全く知らなかった。てっきり、VCは業界におけるロックスターであり、気に入ったスタートアップにさくっと何億も投資する。まるで、アッシャーがジャステ・ビーバーを”発掘”したように、起業家を一晩にして成功に導いてくれる存在だと思っていた。 そんな夢を見てた頃の自分は、起業家と言うよりも、VCの前でピッチをしまくるパフォーマーだった。彼らの投資対象になるようなビジネスモデルを理解してもらうよりも、自分のピッチスキルとプロダクトがクールであることばかりをアピールしていた。 今から考えると、VCに対してピッチのスキルを認めてもらったり、プロダクトを好きになってもらう事は、投資をしてもらう事とは全く別の軸であった。彼らは、ピッチの素晴らしさを期待しているわけではなく、自分たちの投資モデルに最も適した会社を探していたのだ。なぜなら、彼らも自分たちのプロダクトをピッチをしなければならないから。 VCもピッチをする責任がある […]

NRIとNTTの若手エースが語る、大企業でイノベーションに挑戦できる環境作りとは【DFI2019】

企業として:「大企業としての戦い方」を知り、評価制度等の改革を含めてイノベーションにコミットすることが大切。 一社員として:「うまく会社を使う」ことが大切。 マネージャーとして:「イノベーションの性質を理解し、邪魔をしない」ことが大切。 btraxが毎年開催しているデザインと経営の融合をテーマにしたカンファレンス、DESIGN for Innovationも2019年で4年目になる。この記事では、当日行われた6つのセッションの中で「若手エースたちが語る大企業でイノベーションにチャレンジできる場づくりとは」について、モデレーターである筆者自らがご紹介したい。 このセッションは、こんな課題感から実施が決まった。『ほぼ全てのイノベーションは若者によって生み出されてきた。しかし大企業特有の仕組みの中では、そんな若者の力が十分に発揮できないことが少なくない。』具体的なシーンを想像出来る方も少なくないのではないだろうか。 これは筆者本人の課題感でもある。ここ数年ファシリテーターとして大企業の新規事業部の方々と協業させていただく中で、彼らの優秀さに驚くと同時にその能力が活かしきれない環境を悔しく思うことが多々ある。 本セッションでは若くして活躍するエースたちに話を聞くことで、大企業の中で若きイノベーターを活かしていく際のヒントを探ることができた。 スピーカー紹介 林田敦 NRIデジタル株式会社 ビジネスデザイナー 2012年野村総合研究所入社、SE/PMとして活動。2015年サンフランシスコでのbtrax社研修受講をきっかけに野村HDへ出向、グループ全体のイノベーションマネジメントに携わる。2017年からイノベーション戦略子会社N-Village出向、CTOとして新規事業のPO/PMを担当。2019年NRIデジタル出向、顧客への新規事業提案や社内新規事業のアドバイザリーを行っている。JAPAN MENSA会員。   岩田裕平 NTTコミュニケーションズ株式会社 SpoLive事業グループCo-Founder / プロダクト責任者 2013年NTTコミュニケーションズへ入社後、R&Dや新事業開発におけるUXデザイン・ブランド戦略に従事。2017年よりデザイン経営を推進するプロジェクトにジョインし、社内外へのデザイン普及を行う。 2018年より新事業を立ち上げプロダクト/事業責任者に。同時にスタートアップ協業プログラムを立ち上げ、運営も行う。経産省主催「始動Next Innovator」3期生選抜メンバー。HCD-Net認定 人間中心設計専門家。 僕らがあえて大企業でイノベーションに取り組む理由 Q.イノベーションや新規事業と聞くと、どうしてもメガベンチャーやスタートアップ、起業を想像します。お2人があえて大企業でイノベーションに取り組む理由を教えて頂けますか? 林田氏(以下、敬称略): やっぱり大企業はアセットをたくさん持っているので、それが魅力的です。例えば、野村ホールディングス出向中にアクセラレータープログラムをやったのですが、営業店やセールスパーソンといった募集テーマに紐づく拠出アセットを明確にした結果、多くのベンチャー企業からご応募いただくことができました。また、知名度、野村の看板もアセットの一つとして魅力的であると思います。 岩田氏(以下、敬称略): 僕も全く同じですね。特にチャネルと技術アセットです。若い企業やスタートアップでは持ち得ないような様々な企業や団体との繋がりや、特にNTTグループは技術系のアセットをたくさん持っています。R&Dの部隊もいたり、基礎研究にリソースを割けたりするのも大企業ならではのアセットかなと。実際に現在の会社への就職を決めた際も、元々の研究領域に近い基礎研究を事業にできていることが魅力的でした。 林田: あとは、野村と繋がりのあるお客様をPoCに巻き込んでいけるのも大きなメリット。金融庁ともしっかりとしたリレーションがあるので、ちゃんと話を聞いてくれます。設立したばかりのスタートアップだと、そういったこともなかなか難しいかもしれません。 1on1MTGで社内に生息する”隠れイノベーター”を探せ 林田:ところで…社内に「隠れイノベーター」っていません? 岩田:いますね。 林田: 大企業にいる人は、上手い隠れ方を知ってるんですよね。目立たないように動いたり、実は業務時間外でいろいろなことをやっていたり、みたいな。でも、1on1など、上司と部下でちゃんとコミュニケーションする時間を取って、普段何を考えながら仕事してるのかをちゃんと掘り下げると、隠れイノベーターは発掘できるのではないかと。 NRIデジタルでは1週間に1回、30分の枠で1on1ミーティングを行っています。アジェンダは一切無し。ざっくばらんに話します。例えば、仕事で今悩んでいることや、プライベートであったことなど、何でも話せます。まずは開示するということをちゃんとやると、隠れイノベーターは見つかると思います。 そういう意味で大企業は、人材というアセットも豊富ですよね。スタートアップでは人材獲得が問題になりがちですが、大企業だと最適な人材を内部で発掘してアサインすることができます。例えば、NRIのオープンソース部隊で働いていた時は、後ろを振り向いたら世界に数えるほどしか居ない著名なオープンソースのコミッターとかもいて。すごい環境で仕事できていたと思いますね。 多産多死の世界における事業の評価軸とは Q. 次に事業の評価についてお伺いしたいと思います。事業評価のルールが変わってきているのは間違いない。とはいえ大企業の中でいきなり変えると社内に混乱が起こるでしょう。そんな中でお2人はサービスオーナーとして、どのように事業を進められてきましたか? 林田: 大企業は、いきなり大きな事業投資の判断をするのが苦手です。それに対する解決策として導入されたのが、ステージゲート方式ですね。新規事業の「確からしさ」を確認するため、NRIではまずは小さく始めて徐々に大きくしていく、といった方針をとっています。 それでも直面する課題は、どうしても既存の評価軸で判断してしまいがちだということ。イノベーションに関しては、定量的な評価ってすごく難しいですよね。本来であれば定性的な評価が必要。とはいえ既存の評価軸を踏襲してしまうと、どうしても定量的にならざるを得ない。 そこで、野村グループでは意思決定の主体を分けました。具体的には、別途子会社を作って、そこで新規事業を推進する、という形。その子会社は、新規事業についての意思決定を自ら行うことができる。 それがN-Village(エヌビレッジ)ですね。ある意味守られた空間を作ることによって、そういった評価ができるような制度をつくりました。いわゆる出島ですね。 岩田: うちも同様です。社内スタートアップ制度は出来たばかりでこれからが正念場ですが、経営企画部の中に出島のような一部署があり、ステージゲート方式にしています。スタートアップと同様にプレシード、シード、シリーズAに類似する評価をしており、ゲートに「PMFしているか」といった条件が敷かれています。 とはいえ、スタートアップのそれと比べるとやはり事業評価をし、継続可否の意思決定をできる人がいないという難しさはあって。本当は組織も分かつべきだとは思いますが、まだ分かれていません。 事業評価のKGIは売上になりますが、KPIはビジネスモデル次第なので自分たちで設定しています。特にアプリケーション系のビジネスですと顧客数で測ることが多いと思います。投資先行であることに対して、特に組織構造によって生じる問題は多いので、そこはこれから改善する必要があると感じています。 意思決定の鍵は未来と過去を紡いだビジョン Q. スタートアップが定量だけに囚われないに意思決定ができる1つの理由として、軸を「ビジョンに沿っているか」に設けていることがあると思います。大企業の新規事業においてビジョンはどのように機能しているのでしょうか? 林田: N-Villageは、設立時に自分たちのビジョンを定義しました。「挑戦者を支援する」というものです。色々な新規事業案が出てきますが、その中でもどの新規事業をやるかという意思決定は、この「挑戦者を支援する」にちゃんと繋がってるかどうかが軸になります。 もちろん儲かりそうだ、という軸もありますが、まずはビジョンに引っかかってるかどうかが1つの判断基準です。 岩田: 「挑戦者を支援する」程度の粒度は丁度良いですよね。意思決定ができる粒度であるということは、良いビジョンであるための1つの要素だと思います。 林田:そうですね。大企業だと、分かりづらいミッションやビジョンがありがちなので。やっぱり機能や産業が多岐にわたるので、どうしてもそうならざるを得ないと思いますが、そうなると、なかなかそのビジョンに基づいて意思決定するのは難しくなりますよね。 岩田: ボトムアップで作ってしまうとみんなの意見が集約されてしまうので、結局、「確かになんでもやれる」というようなミッション・ビジョンに落ち着くことが多いですね。 僕も過去にグループ会社のブランディングのプロセスに関わったことがあって。企業が創設された当初から遡って、歴代の経営者がどういう想いで経営してきたかを見るべきかなと思っています。この意味では、創業者がいらっしゃる会社だと分かりやすいです。 林田: 抽象的にならざるを得ないところをいかに自分たちの部署に落としていくのか。「未来をつくる」だったら「自分たちの部署が描く未来って何だっけ?」みたいところを部署として考えていくことが重要です。 そのために、「自分たちが今まで提供してきた社会価値の本質ってなんだっけ?」と自らを再定義することが必要になります。ファクトとして存在する過去をもとに意思決定ができるビジョンを作っていくことが、KPIを設定できないというところに対しての枠組みとしてワークするのではないかと思います。 Q.「既存事業と被るのでやめてくれ」という声ってなかったですか?大企業で新規事業をやろうとするとぶつかりがちな壁の1つだと思います。 林田: ありますね。でも、何もしなかったら結局はスタートアップに食われるんですよ。だったら子会社に食われた方が全然マシです。だから、「スタートアップに食われるのと、子会社に食われるのだったらどっちが良いですか?」と問いますね。 定性の世界で絶対評価を下す Q. 事業の次は人材の評価ついてお伺いしたいです。お二人はイノベーションに挑戦する人材をどのように評価していくべきだとと考えていますか? 岩田: やはり人材評価であれば定量だけではなく定性も考慮するべきかと考えています。例えば、同じ部署に売上げが1000億円のサービスがあったとして、それと初期の100万円しか稼げないサービスを比較して評価してしまうと全然及ばないのは当然です。 定量的に測ってしまうと、通常の大企業のロジックではどうしても相対評価になってしまうので、定性の世界に持っていくことで絶対評価するとも言いかえられます。事業によってフェーズが異なるのは当たり前なので、そもそも小さな事業同士でも比較すべきではないのですが。 じゃあ定性の世界で何を見るかというと、それはプロセスの部分。特にどのような仮説検証プロセスを踏んできたのかで評価すると良いと思います。 林田: 完全にアグリーですね。大事なのは「仮説検証の量と質」です。そして、評価をする上司がそれを理解することが必要です。 多産多死の世界であることはもちろん知らないといけないですし、仮説検証をどうすれば効率的にうまく回せるのかということを上司が知らないと、その部下の仮説検証の評価をするのはなかなか難しい気がします。 現場=起業家、管理職=投資家の関係性 Q. そうなるとマネージャーに求められることが変わるのは明白です。イノベーションに挑戦する部下を持つマネージャーのあるべき姿とは? 岩田: 確立されたやり方に沿って、ベルトコンベアで何か物を大量生産する形式だとしたら、マネージャーは「何をすべきか」をきっちりと管理すべきだと思うんですよ。ただ、新たな価値を探索をしなきゃいけない部署であれば、そういった管理はできないはず、少なくとも、日本の大企業で行われてきた従来の「管理」という考え方ではない方が良いと思います。 林田: 先程もお話した通り、イノベーションは多産多死の世界。しかし従来の管理のマインドだと、部下が失敗しそうな状況を見ると助けたくなるため、やめておいたほうがいいと言ってしまう。そのため、必要な失敗でさえもさせてもらえない状況に陥ってしまう。 イノベーションの性質やプロセスを正しく学び、「指導者」としてというよりは、「一緒に並走する観察者」として、成功確率を高めるアドバイスができれば最高だなと思います。「善意で邪魔をするべきでない」ですね。 岩田: 最近こういうアナロジーがいいかなって感じるのは、投資家とスタートアップの関係ですね。マネージャーはスタートアップに投資している投資家で、実際に現場で動く人は、スタートアップ、というような関係性の方が上手くいくと思います。 ですので、イノベーション組織のマネージャーは、意思決定をしたり管理をしたりするのではなく、「自分が投資をしている」という感覚でいた方が良いと思います。自走できそうなら見守るし、フラフラしていたらメンタリングや足りない知識を補完してサポートしてあげるというのが理想的なのではないかと。実際のVCと同様ですね。 林田: となると、経験が必要ですよね。 自分の成功体験や失敗体験に基づいてアドバイスをしてあげることが必要です。机の上に色々な意見を乗せてあげる。でも、過去の経験が今回も活きるとは限りません。最終的に選ぶのはプレーヤーであり現場。これがベストですね。 解釈を捉え直す“攻めのリーガル” 岩田: あとは大企業ならではですが、バックオフィスの自由度とサポートは、成否を分けるポイントになるのではないかと思います。例えば既存のルールに縛られてしまうと活動スピードにも影響が出てしまう一方で、スタートアップでも同様かと思いますが、リーガルや知財等、現場の人だけで賄いきれない裏側の部分に社内のリソースを使えると強い。 チームは新しい仮説を検証したり、プロダクト開発をしたり、前向きな方向にパワーをかけなければならないので、後ろからのサポートは非常に助かります。 林田: 特に、リーガルのサポートは恩恵を感じることが多いですね。UberやAirbnbもそうですが、新しいものを作る時って法律的にもグレーゾーンを攻めることが多い。 しかし、今までの意思決定の基準で判断してしまうとどうしても守りに入ってしまいがちです。そこで僕らは、リーガルの中でもイノベーションに精通しているリーガルを置いて、「こう考えれば法律に触れないんじゃないか?」と解釈を作っていくようにしています。攻めのリーガルをチームに加えられると、イノベーションの実現可能性がグッと高まると思います。 若手は会社をうまく“使う”こと Q. 最後にマインドセットについて。特に大企業でイノベーションに挑戦している若手はどのようなマインドセットを持つべきでしょうか? 林田: 現場の人はうまく会社を使い倒すべきだと思います。 その為には会社がやりたい方向と自分のやりたい方向をうまく合わせることが大切ですね。この方向性が異なると、会社のアセットを生かせない上に、評価もされないので。 一方で会社に働きかけることも大切です。例えば、僕が野村ホールディングスにいた時、グループCEOとランチセッションのような形でインプット会をしていました。 そこで僕は、個人的に新しい技術とかすごい好きなので、「こういう技術が最近出てきてるんですよ」というインプットをして、会社としてこういう技術にも投資をしないといけないよねという方向性を作って、会社側をむしろこっち側に寄せてくる、といった逆の動きもやっていました。 自分が会社に合わせることと会社を自分に合わせることと、両方の動きが出来ると良いと思います。 […]

大企業xスタートアップのオープンイノベーションをガンガン実現するDelta航空【CES 2020】

大企業がスタートアップとコラボし、新しい価値を生み出す。これは、多くの企業が目標に取り組んでおり、シリコンバレーに拠点を構える日本企業の最も重要なゴールの一つともなっている。
その一方で、実際の成功例は驚くほどに少ない。そもそも、多くのスタートアップは大企業との取り組みに興味がない。むしろ、めんどくさいとすら思われている。これは日本でもアメリカでも、ほぼ同じような状況である。
スタートアップが大企業に持つイメージ

スピードが遅い
偉そう
プロセスがめんどくさい
社員がポンコツ
できない理由を並べる…

2020年に予想される10のスタートアップトレンドと注目サービス15選

2019年はシリコンバレーを中心に、グローバル規模でスタートアップに関する多くの変化があった。代表的なのが、ユニコーン至上主義から、社会利益追求型へのシフト。 それまでは、評価額をどれだけ高くできるかをゴールにしていたのが、どれだけ世の中に対してポジティブな影響を与えられるかにフォーカスが移り始めている。これはスタートアップ市場の寡占化 & 熟成化が進んだことが1つの理由だと考えられる。 参考: 日本からユニコーン企業を生み出すために必要な5つのポイント 2020年に予想される主なスタートアップトレンド 他にも予想されるスタートアップを取り巻くトレンドに関する主なキーワードをまずは紹介する。 エクジット至上主義から継続性 ユニコーンブームがひと段落 IoT系に再び注目が集まる 経済的価値に加えて社会的価値の重要性 B2B向けサービスの躍進 テクノロジーよりもユーザー体験 正しいチームカルチャーの重要性 金融業界の大きな改革が進む 心を豊かにするウェルネス系サービス ノンデジタルでのブランド構築 1. エクジット至上主義から継続性 スタートアップのゴールの1つが、短時間でIPOやバイアウトなどのエクジットを達成し、一攫千金を得ること。日本国内の感覚だと、なるべく早い段階の上場を、アメリカだと、なるべく高い金額での売却を狙うことが多い。そのために、赤字での上場や、手段を選ばないユーザー獲得方法などの裏技を駆使することも多い。 その一方で、昨今のWeWorkでの一件などから、早急なエクジットよりも、継続性の高いビジネスモデルが求められるようになってきている。 参考: ベンチャー企業とスタートアップの違い 2. ユニコーンブームがひと段落 上記に関連し、末上場で評価額10億ドルを超える、ユニコーン企業ブームもひと段落する感じがする。上場前のUberに見られるように、グロース重視で、評価額を上げるだけ上げたは良いものの、その後の展開に苦しむケースも増え始めたことにより「ユニコーンを目指そう!」という目標自体がダサい感じになり始めている。もちろん、日本からユニコーンを出そう、という日本政府の方針も時代遅れな感じがする。 参考: ユニコーンの次はデカコーン 3. IoT系に再び注目が集まる 一時期は「モノのインターネット」とも呼ばれ、注目を集めていたIoT系のプロダクトであるが、ビジネスとしては、うまくいかないケースが多く、ここ数年で縮小気味であった。しかし、今年からはB2B系のIoTソリューションや、スマートホームやリテール、エンタメ系など、よりユーザーの日常生活に密着した、新しい形のIoT系プロダクトやサービスがリリースされたことで、再燃してきている感じがする。一時期は下火になったIoT系のスタートアップに再び注目が集まり始めている。 参考: 2020年知らないと恥ずかしい!?米国で注目のIoTサービス5選 4. 経済的価値に加えて社会的価値の重要性 お金儲けだけではなく、社会に対するポジティブな影響を与えられるサービスや企業に人気が集まる。ここ数年で話題になってきているD2C系のブランドや、代用肉のスタートアップも、社会貢献のストーリーを前面に出すことで、注目が集まっている。「ユニコーンとシマウマの違いを知っていますか?」でも語られている通り、大規模、急成長が特徴であったユニコーンに対するアンチテーゼとしても興味深い。 参考: イノベーションの効果測定方法 5. B2B向けサービスの躍進 スタートアップサービスと聞くと、どうしてもアプリやWeb系を想像しがちであるが、実は、業務効率化、顧客獲得、バックオフィス運営などのB2B系のソリューションもかなり注目されている。代表的なものだと、日本でも導入が増えてきているSlackや、Smart HRに代表される、既存の面倒な仕組みをクラウド化して改善する、実務系サービスが挙げられるだろう。 6. テクノロジーよりもユーザー体験 これまでは主に消費者向けのサービスが中心に、優れたユーザー体験を提供することが、そのサービスの大きな価値になってきている。それに加え、今後はB2Bを含め、あらゆるサービスにその重要性は高まっている。例えばMealPalの様に、既存のサービスと同じ内容であったとしても、UX部分を大幅に改善するだけでも、新しい価値提供に繋がるケースも少なくはない。 参考: 【今さら聞けない】デザインがビジネスにこれほど重要な理由 7. 正しいチームカルチャーの重要性 スタートアップは多くの場合、急成長を達成するために全てが流動的に変化する一時的な集合体である事が一般的であった。しかし、より継続的な存在になるためには、社内カルチャーの醸成の重要性が高まってきている。これも、WeWorkの一件で明るみに出た部分でもある。 参考: イノベーションを生み出す海外企業カルチャー10事例 8. 金融業界の大きな改革が進む 2019年は日本でもモバイルペイメントに代表されるようなキャッシュレス系サービスが話題になっていたが、今年はそれらを含む各種フィンテック系ソリューションの知名度がより高まってくるだろう。それと同時に、既存の金融業界は今まで以上にユーザーに喜ばれる体験の提供が求められる。もしかしたらスタートアップサービスの影響で、大手の金融機関の経営に大きな影響が現れ始めるかもしれない。 参考: 銀行はなぜ滅びるのか – それを阻止する方法は? (金融革命 Part 1) 9. 心を豊かにするウェルネス系サービス 世の中にデバイスとデジタルサービスが普及するに合わせ、ユーザーの心の豊かさを危惧する声が上がり始めている。実際、平均的なユーザーは、人と接する時間よりも、デバイスを触っている時間の方が多い。そんな時代の変化に合わせ、人々の心を豊かにする、ウェルネス系のサービスに注目が集まる。 参考: テクノロジー中毒の危険性? 人間よりもデバイスと過ごす時間が多い時代に 10. ノンデジタルでのブランド構築 インターネットを通じて情報にアクセスしやすくなったことで、ユーザーは商品やサービスに関する情報に対して敏感になっている。そのため、最近の傾向としてユーザーはブランドに対して透明性や信頼性を求めるようになった。そこに対していかにリアルなストーリーや、イベントなどを通じた「人間味」出せるかが、スタートアップにおけるブランド構築のポイントになり始めている。 参考: D2Cブランドに学ぶブランド認知向上に効果的なキャンペーン事例4選 2020年にbtraxが注目するスタートアップ 上記のトレンドを踏まえ、クライアント企業とスタートアップとのコラボを提供している我々btraxも注目している15のスタートアップを下記に紹介する。 Spatial ARを活用したコラボサービス 注目ポイント: リモートワークが進む中で、ホワイトボードや付箋を利用したコラボやディスカッション、ワークショップの必要性も高まっている。その二つの相反するニーズをARと3Dテクノロジーを活用して実現するサービス。 本社: ニューヨーク 領域: AR、業務改善、3D https://spatial.is/ Impossible Foods 植物性タンパク質で作った代替肉 注目ポイント: アメリカで現在大きな社会問題の1つにもなっている家畜と食用肉の関係を解決するために、動物の命を奪わずに美味しい肉を提供することをゴールとしている。実際に食べてみても、実際の肉と遜色のないクオリティーで、現在では大手ハンバーガーチェーンのBurger Kingにも採用されている。 本社: シリコンバレー 領域: フードテック、食品 https://impossiblefoods.com/ 関連記事: ビヨンドミートだけじゃない。食品産業に革命を起こす次世代フードを実食。 Nova Credit 移民の人たち向けクレジット金融サービス 注目ポイント: 移民の多いアメリカであるが、国外から移住してきた人にとってすぐにクレジットカードを獲得するのは非常に難易度が高い。そんな社会的問題に対して、テクノロジーを活用し、それぞれの母国でのクレジットヒストリーを活用することで解決するサービス。 本社: サンフランシスコ 領域: フィンテック、金融 https://www.novacredit.com/ AirGarage 利用していないスペースを駐車場として貸し借りするプラットフォーム […]

2019年に消滅したスタートアップとその理由

毎年恒例、その年に無くなってしまったスタートアップ特集。その失敗理由などから学ぶことで、今後の役に立てようというのが目的。こちらアメリカでは失敗することが必ずしも悪いことではなく、そこから得るものがあれば成功へのプロセスの1つとして捉えることも可能になる。 特に新陳代謝の激しいスタートアップ業界では、派手な成功ストーリーの裏では、連日新しい企業が生まれては消えている。IBM Institute for Business Value and Oxford Economicsの調査によると、実にその90%は5年以内に無くなると言われている。その失敗理由やサービス内容を知るだけでも今後の大きな学びになる。 惜しくも2019年に無くなってしまったスタートアップ達 2019年12月25日現在までで、確認されているだけで553のスタートアップが消滅し、その合計資金調達金額は$19億ドルにのぼる。そんな中でも、今回はその資金調達額と、期待値の規模ベースにいくつかをピックアップしてみた。 Layer カスタマーサービス向けのチャットボットシステムを提供し、インドのフードデリバリー大手のSwiggyなどにも採用されたが、競合の存在や、成長速度の鈍化などが理由で、2019年10月末にサービスを停止した。なお、現在Layer.comは25万ドルで売り出し中。 事業エリア: チャットボット 資金調達額合計: 4400万ドル 失敗理由: 投資家からのプレッシャー 主な原因: 会社の成長スピードに対しての投資家からのプレッシャーに対し、Intercomなどの競合の存在もあり、より大きなマーケット獲得をすることができなかった。 Stimwave 神経系の症状に対して、ワイヤレステクノロジーを活用した医療デバイスを開発するStimwaveは、これまで入院を余儀なくされていた患者に対して、より自由なライフスタイルを送れるようなソリューションを提供していた。 事業エリア: ヘルスケア 資金調達額合計: 5470万ドル 失敗理由: 市場ニーズに合っていなかった 主な原因: 同社のソリューションの効果に相反するような裁判所による判例もあり、当初想定している効果が得られにくいと考えられた。 Anki カーネギーメロン大学の卒業生によって2010年に創立されたAnkiは、2016年にAIを実装した家庭用ロボット、Cozmoをリリース。その後、2018年には最新モデルであるCozmoをグラウドファンディングでリリースし、190万ドルを集めた。Fast Companyが選ぶ、2018年度の”The Word’s Most Innovative Companies” のロボティックスカテゴリーで1位を獲得するなど、絶好調に見えたが、あえなく終了してしまった。 事業エリア: ロボティクス 資金調達額合計: 1.82億ドル 失敗理由: 資金が尽きた 主な原因: 150万ユニットのプロダクトを販売したものの、ハードウェアビジネスにおけるコストは非常に高く、利益を出すのが難しいと判断した。 Laurel & Wolf 2014年より、インテリアデザイナーと顧客をマッチングさせるプラットフォームを提供していたLaurel & Wolf。その期待値の高さから、eBay、Dropbox、 Twitter、 Uberなどにも投資を行ったVCであるBenchmarkからの投資も獲得。2017年にはHome Depotとのパートナーシップも発表し、順風満帆のように見えていたが、2019年の初頭にサービス停止に追い込まれた。 事業エリア: インテリアマーケットプレイス 資金調達額合計: 3580万ドル 失敗理由: 運営コストとサービスの質の低さ 主な原因: それまでは比較的好評だったサービスが、2018年の夏頃からネガティブな口コミが書かれ始めた。ユーザーとサービス提供側とのトラブルが続出していた。 Call9 高齢者をターゲットに、老人ホームや介護施設と医師をつなげることで、緊急時に必要とされるオンデマンド型救急医師派遣プラットフォームを提供していた。 事業エリア: ヘルスケア 資金調達額合計: 3400万ドル 失敗理由: 市場ニーズが追いついていない 主な原因: 加えて、投資家との折り合いがつかず、サービス終了に追い込まれた。 Aria Insights 石油採掘場、軍用、警備用などのシーンにて、ドローンを活用することで、人間では危険だと思われる場所からデータを集めるソリューションンを提供していたが、既存のニーズに合っていなかったという理由で終了した。 事業エリア: ドローン 資金調達額合計: 3900万ドル 失敗理由: プロダクトが時代よりも先進的すぎた 主な原因: 将来起こるであろう課題にフォーカスしすぎたため、現代ではまだ必要とされていないプロダクトを作ってしまった。 Arivale ユーザーの遺伝子、血液、そしてマイクロバイオームデータから、それぞれに最適な情報を提供することで、ウェルネスの達成と病気予防と提供したが、2019年の5月にサービスをクローズした。 事業エリア: ヘルスケア 資金調達額合計: 5260万ドル 失敗理由: サービスのコスト高 主な原因: 医療データにおけるテスト、分析にかかるコストが高く、ユーザーへのチャージ金額との折り合いがつかなかった。 Kahuna 最新の機械学習テクノロジーを活用し、よりパーソナライズな体験を提供するマーケティングオートメーションサービスの提供を目指していたが、2019年の前半にサービスを停止し、5月にはサイトも消滅した。 事業エリア: マーケティングオートメーション 資金調達額合計: 5800万ドル 失敗理由: 未発表 主な原因: いきなりサービスが停止され、具体的な説明も無い。 Nomiku 元々ニューヨークに住んでいたカップルがサンフランシスコに引っ越し、ハードウェアアクセレレーターに参加。その後Samsungからの投資も獲得し、真空調理法を実現するスマートデバイスを開発した。2017年には、真空調理法で作られた料理のサブスクリプション型デリバリーサービスにピボットした。ちなみに社名は日本語の”飲み食い”が由来。 事業エリア: スマート調理デバイス 資金調達額合計: […]

【Mobility as a Service】人々の“移動“を変革する最新MaaS スタートアップまとめ5選

MaaS とは「様々な種類の交通システムを、効率よく統合し1つのプラットフォームを介して利用できるようになる」こと どこまでがMaaSに当てはまるのかは曖昧で、①情報の統合、②予約・決済の統合、③サービス提供の統合というレベル別で理解されることが多々ある MaaSのグローバル市場規模は2017年に約4兆円。2025年にはおよそ10倍の40兆円になる予想 注目MaaSスタートアップ5選を紹介:DUFL、Zeva、Geosure、moovel、Bestmile 移動は我々の生活の軸であると同時に、マイカーによる排気ガスの問題や、車などを所有することの不便さや複数のアプリを使った複雑な移動など、移動に関する課題は数えきれないほどある。 そのような課題を解決すべく出てきた概念がMaaS(Mobility as a Service)である。 本記事では、そもそもMaaSとは何かをおさらいし、MaaSが注目される理由についても言及する。そしてこのMaaS市場で、今後大きな活躍をする可能性に満ちたスタートアップをあらゆる視点から紹介したい。 そもそもMaaSとは 「【2018年】モビリティ業界で注目され始めたMaaSとは?」の記事でも述べている通り、MaaS とは「様々な種類の交通システムを、効率よく統合し1つのプラットフォームを介して利用できるようになる」ことである。 MaaSは1つの概念であり、どこまでがMaaSなのかということに関しては曖昧である。 ここでは、MaaS業界で良く用いられるレベル間に基づき、サービスへの統合の程度に応じて以下のようなレベルに分けられると、定義する。 (図はこちらの情報に基づき筆者が作成) レベル1:情報の統合 渋滞情報や建物の情報などのリアルタイムデータを分析し、車・電車・徒歩など複数のモードで移動ルートをユーザーに提案するレベルのこと。目的の場所までのルートを提案するGoogle Maps や乗り換え案内アプリのNAVITIMEなどがそうである。 レベル2:予約・決済の統合 レベル1の機能に加えて、予約・決済システムが付け加えられたレベルのこと。移動ルートの提案後、予約・決済ができるアプリPikaway(Skipr, Inc)や、ライドシェアリングサービスUberなどがそうである。 レベル3:サービス提供の統合 公共交通機関をはじめ、レンタカーなどの複数の事業者間で連携したサービスや料金体系の統合がなされるレベルのこと。電車やレンタカー、タクシー、ライドシェアなどのサービスを決められた範囲内で自由に月額制で使えるUbigoなどがそうである。 また、こういったアプリやサービスだけでなく、それらを取り巻く環境もMaaSと言われることがある。例えば、自動運転のタクシーなど移動手段そのものがそうだ。 MaaSが注目される理由 人々の軸となる移動を便利にしてくれる事に加え、MaaSが注目される理由の1つとして、MaaSがもたらす環境へのインパクトや日々の移動手段に関する悩みを解消してくれる点がある。 プライベートでどこにでも移動できるマイカーであるが、交通渋滞や駐車による土地の無駄遣い、環境負荷など、マイカーが引き起こす問題は多い。 国土交通省によれば、マイカーによる単位輸送量当たりのCO2排出量は鉄道の7倍、バスの2倍以上であるといわれている。 移動の効率化を図るMaaSがそれらマイカーの問題を解決してくれる期待はかなりあるのだ。 事実、MaaSの世界の市場規模は2017年で約4兆円だったものが、2025年にはおよそ10倍の40兆円になると言われている。 日本でも、そのMaaSブームは健全しており、三井不動産と、フィンランドにあるMaaSプラットフォーム「Whim」を提供するMaasGlobal社が協定を締結したのも最近の話題である。 今回紹介するMaaSスタートアップは日本以外の国が発祥の注目企業である。ぜひ視野を広げるため、ヒントを得るためにも注目していただきたい。 MaaSスタートアップ5選 1.DUFL「手ぶらで出張」の時代を作るパイオニア レベル: 2(予約・決済の統合) サービス概要 : 2014年にロサンゼルスで始まった、旅先や出張先での服の管理をスマートにし、人々の移動をより楽にしてくれるスタートアップ。 ユーザーは、自身の衣類などをDUFLが所有するクローゼットにあらかじめ宅配便で預けておく。 そして、アプリ上で、そのクローゼットから自分がピックアップしたい衣類とや旅や出張の行き先を選択し、ユーザーは目的先で洗濯済みの衣服を受けとれるというサービスである。 DUFLを使うことで、旅・出張中の洗濯・乾燥・スーツケースから服を引き出す・服を持ち歩くという行動が必要でなくなるのだ。同社は1回の旅行で3~5時間節約できると提言している。 他にも、服だけでなくスポーツ用品をドアtoドアで目的地まで届けてくれるサービスDUFL Sportsなども提供している。 注目の理由: 彼らの注目すべき点は、ユーザーの継続率だ。出張に出向く多種多様なビジネスマン含め、利用者の満足度はかなり高く、その継続率は驚異の99%だという。 また、ロサンゼルスから始まったDUFLだが、同社は300万人以上のゴルファーのユーザーがいるGolf Digest Online(GDO)Japanと提携し、ゴルフ分野で日本にも勢いを伸ばしている。 ちなみに、創業者であるBill Rinehartは、15年間で5社を起業し、全てを成功に導いた凄腕のシリアルアントレプレナーである。 共同創業者であるAbdrea Grazuabu、AJ McGowanは、共に以前Bill が創業した会社でも活躍していた逸材である。 2. Zeva 都会内の少しの移動でも、スマートに、安全に使える電気航空機を作るスタートアップ レベル: なし(次世代モビリティ) サービス概要: 2017年、ボーイング社が主催するGoFlyというエアモビリティ開発コンテスト参加と同時に創業した、次世代エアモビリティのスタートアップ。 同社は、ドアtoドアで人を運ぶ、1人用航空機『eVTOL』を開発しているのだが、その特徴が驚くべきものである。 まず1つ目が、機体の供給源が燃料ではなく、100%電気だということだ。電気であるがゆえに、排気ガスは一切出ないのも特徴である。 次に2つ目が、ほぼどこでも離着陸できるということだ。ヘリコプターなどは専用の着陸地点が必要である一方、eVTOLでは決められた着陸地点はない。 最後の特徴が、1回の充電で最大50マイル(80km)を時速250kmで移動できることだ。これは東京駅から群馬県までの距離を約20分で移動するのに値する。 彼らは、実動する状態のeVTOLを2020年に世界に発表し、エアタクシーなどのサービスを経て、2040年には私たち1人1人がeVTOLを使っているような世界を目指している。 注目の理由: 注目すべきは、eVTOLの実現性である。 モビリティ産業で問題になるのがパーキングスペースであるが、同社は、ビルや家の開閉可能な窓・壁にeVTOL専用のドッキングシステムを取り付ける事でその問題を解決している。 加えて、そのドッキングシステムは、eVTOLの充電できる仕組みならびに操縦者が乗り物から直接ビルに安全に入れる仕組みになっているので、乗り物と目的地の距離が遠いという課題をも解決する。 都会の中で移動できる航空機、Urban Air Mobility(UAM)は、私たちの生活を一変させるかもしれない。 3. Geosure 安全な旅を女性・LGBTQ含む全ての人に提供 レベル: 1(情報の統合) サービス概要: 2013年にカリフォルニアで始まった、各都市・地域の安全度がすぐに分かるアプリを提供するスタートアップ。 ユーザーは、アプリを通して、各都市・地域の以下7つのカテゴリの評価値を1~100のレンジで見る事ができ、自分がいるところ、もしくはこれから行くところの安全度をわかるようになっている。 全体的な安全度 外的負傷をする可能性 法律的な自由度 スリの頻度 清潔さと病院へのアクセス 女性に対する危険度 LGBTQの許容度 アメリカ政府や国際連合などが同社の評価に協力しているのに加え、現地にいる人、もしくはすでにそこへ行った事がある旅行者も評価をしているので、評価の信頼度はかなり高い。 また、従業員数は10人以下と小規模なスタートアップではあるものの、すでに4万以上の地域が登録されており、ユーザー数も右肩上がりである。 注目の理由: 彼らの注目すべき点は、何といっても女性やLGBTQのユーザーに対して重きを置いているところである。 アプリの評価軸である7つのカテゴリの内の2つが女性やLGBTQの方のための評価軸である事が主張している通り、同社は旅行でより治安や安全面を気にする女性やLGBTQの方をもターゲットに置いている。 それは、彼らの旅行のハードルを下げると同時に今後のMaaS業界の幅を広げるかもしれない。 また、コアメンバーの中に女性エンパワーメント担当の方がいたり、LGBTQの許容がある街ランキングなどのコンテンツも提供しているのも、注目すべきポイントだ。 4.moovel「街をよりスマートに」、交通機関に革命を起こす巨大プラットフォーム レベル: 3(サービス提供の統合) サービス概要: 2013年ドイツで始まった、街をよりスマートにする巨大マルチモデルプラットフォームを作るスタートアップ。 誰しもが、どこかに移動する上で面倒くさいと感じていた、検索、予約、決済の手順を、アプリ1つでスムーズに完了できるサービスを提供している。 ユーザーは、カーシェアなどを含めた全ての交通機関を検索対象した目的地までの最短ルート、所要時間の確認、さらには、チケット予約に加えApple payなどを用いた決済を、手軽にこのサービス1つで使う事ができる。 同社は他にも、通勤にかかる費用や割引運賃などを管理するアプリをも提供するなど、アプローチしている分野は多種多様である。 注目の理由: 彼らの注目すべき点は、その規模の大きさにある。 […]

2020年知らないと恥ずかしい!?米国で注目のIoTサービス5選

IoTは人の生活に密着しているもの。2019年に話題となった注目されているIoTを知ることで人の価値観の変化を探れる PUMAのスマートスニーカー、PUMA Fi:快適・便利なデジタル靴紐 Oculus Quest、Oculus Go:VRはここまで身近なものになってきている CasperのThe Glow Light:良い睡眠のための光を提供 Flic:様々な操作をボタン1個でシンプルに NorthのFocals:おしゃれが当たり前のスマートグラス 2020年を迎えるにあたり、ぜひ最新IoT情報をアップデートしていただきたい。IoTは人の生活により密着しており、ライフスタイルや嗜好、価値観がどのように変わっているかを垣間見ることができる。 さらに、ここ、サンフランシスコ・シリコンバレーにはb8taやTarget Open Houseといった、最新IoTガジェットをキューレートしてショールーム的な展示や販売をしているお店があり、最新IoTと触れ合う機会が多い。 アーリーアダプターも多いので、IoTに限らず常に最新テック系サービスを生み出し、育てていくエコシステムがあるのだ。 関連記事:世界が憧れるサンフランシスコ・シリコンバレーの3つの魅力 そこで今回は、IoTやテック系サービスに関して日本より数年先を行くサンフランシスコ・シリコンバレーを中心に、2019年に話題となったIoTガジェットを紹介する。 PUMAのスマートスニーカー、PUMA Fi PUMA Fiはドイツの大手スポーツメーカー、PUMAが開発したスマートスニーカーだ。独自のFit Intelligence(Fi)技術を活かして、靴紐のない、『デジタル靴紐』なるものを生み出した。 下の動画を見ていただければわかる通り、コードのようなものはあるが、結ぶ必要のある靴紐はない。靴の甲の部分にあるセンサー部分を上下にスワイプすることで、『デジタル靴紐』のきつさを何段階かで調整できる。 また、スマートフォンやスマートウォッチからの調整も可能で、色々なシーンでの活用を想定したデザインになっている。例えば、旅行の際、飛行機に乗っている時は足の浮腫が気になった時、あるいはリラックスしたい時には靴紐は緩め、歩いて移動中の時は靴紐を絞める、といった調整が簡単にできるのだ。 実はPUMAは1986年にもコンピューターを搭載したスニーカーを開発していた。それ以来、テクノロジーを駆使したスマートスニーカーを追求してきた。今回のFit Intelligence技術は、よりスマートで、軽く、もっと一般に向けたものになっているという。 実際に、2019年4月から、応募によるベータ版の販売が地域限定でされており、すでに30,000人の登録があった。販売は2020年の春を予定しており、値段は330ドルとなっている。 こういったスマートスニーカーが出ると、映画バック・トゥー・ザ・フューチャーの世界が現実になっている!と騒がれる。このプロダクトは、映画が公開された1989年に、人々が想像していたということだ。 新しいトレンドの創出は人間の想像があってのことであり、この想像が現実となり、もう数万円でも手に入るような時代になっているということがPUMA Fiの例からもお分かりいただけるだろう。 VRゲームを格段に身近なものにしたOculus Quest、Oculus Go OculusはVRヘッドセットとそのソフトウェアの開発・販売を行うスタートアップだ。 2012年にカリフォルニア州アーバインで創業すると、ゲームコンソール用VRのメジャープレイヤーとして成長を続け、2014年には20億ドルでFacebookの傘下となった。 買収後3年ほどは売上増加に繋がらず、Oculus買収はFacebookの目の上のたんこぶか、とも思われたが、2019年、Oculusが起死回生の一打として貢献することとなる。 2019年第三四半期、Facebookの広告以外による売上が2億6900万ドル(約269億万円)に達し、前年比43%の増加となった。その主な要因がまさに、Oculus Questなのだという。 Oculus Questは、より気軽で、使いやすいVR体験を提供している。今までの本格的なVRゲームは、パソコンやケーブルの接続が必要だったが、Oculus Questはパソコンも、ケーブルも不要になった。しかも価格は399ドル〜。これは、今までのゲームコンソールと比べて大きく変わらないどころか、むしろその技術力の高さを考えると、リーズナブルなのではと思ってしまう。また、スターウォーズシリーズのゲームも人気の理由だ。 さらにQuestは2019年だけで、130万台売り上げるのではないかという予測も出ている。 また、Oculusはゲームだけでなく、映画や動画を楽しむためのVRヘッドセットも開発している。Oculus Goは、映画や動画などの視聴に特化した、より持ち運びがしやすいモデルだ。別のユーザーと同時に、バーチャルでVR視聴することもできるようになっている。価格は199ドル〜なので、VR初心者でも、より手を出しやすくなってきている。 2018年5月に発売してから販売出荷数が約100万を目前にしているという情報まである。 ちなみにOculusは、ソーシャルグッドのためのVR開発にも力を入れていて、車椅子の人がいろんなところに旅行できるようなVRや、アメリカの黒人に関する歴史についてよりリアリティを持って学べるようなVRコンテンツがある。Oculusの活躍の幅はゲームに留まらないようだ。 ところで、VRヘッドセットはIoTという認識はあまりされないのかもしれないが、インターネットに繋がっているもの(ゴークル)と考えれば含まれる、という解釈で追加した。2019年を通して注目のガジェットだったことは間違いない。 睡眠を考え抜いたCasperがデザインしたライト、The Glow Light CasperはマットレスのD2C(Direct-to-Consumer)ブランドのパイオニア的スタートアップだ。年に創業し、累計約3億3970万ドルの資金調達をしてきた。2019年にはユニコーン企業の仲間入りし、IPOも噂されている。 Casperは主力製品であるマットレス以外にも、枕、ベットフレーム、シーツなど商品ラインナップを拡大してきた。そして2019年に、The Glow Lightというポータブルスマートライトをローンチした。価格は129ドル。 The Glow Lightはベッドサイドテーブルなどにも置ける、小型のポータブルLEDライトだ。人の睡眠より快適にするための様々な特徴がある。まず、点灯・消灯はライトを上下にひっくり返すことで可能だ。ライトは眠い時でも簡単にひっくり返せるくらい軽いので、従来のボタンを押したり引いたりする動作よりも簡単だ。 また、リラックスして睡眠に入れるように、The Glow Lightの光は温かみのあるものになっている。光は徐々に弱くなり、眠りに誘ってくれる。 さらに、起床の時間を設定しておけば、その時間に優しい光によるアラーム機能も果たしてくれる。時間の設定は専用アプリからカスタマイズできるようになっており、就寝の時間も入れておけば、睡眠リズムに沿って光によるサポートをしてくれるのだ。 The Glow Lightのデザインも人の睡眠を徹底的に考え抜いたものになっている。どんなインテリアにも馴染むデザインでありながら、Casperの心地よさも感じるフォルム。子供でも持ち運べるサイズ感。 光の強さは、ライトを回して調整できるのがわかりやすく便利。夜中にちょっと起きて何かするときも、ライトを軽く振れば豆電球程度の光がつく。これは、ユーザー観察やプロトタイプを重ねて開発されたようだ。 Casperはただのマットレスブランドではなく、人の睡眠をデザインするブランドだ。また、D2Cビジネスの根幹には、ユーザーとより近い距離で、彼らのフィードバックを得られるというメリットがある。 ユーザー中心でプロダクトをつくってきたCasperだからこそマットレスという主力製品に留まることなく、ここまで考え抜かれたThe Glow Lightが生まれたのではないだろうか。 ボタン1個というデジタルデバイス、Flic Flicはスウェーデン、ストックホルム生まれのスタートアップ。2013年に創業した。累計調達金額は約110万ドル。従業員も100人にも満たない規模ではあるが、今までに20万個のFlicを110以上の国で販売してきた。スマートフォンアプリや家電用のスマートボタンというシンプルなデバイスなのに、ここまで拡大している。 FlicはBluetoothでスマートフォンと連動させて使う。Flicの専用アプリから、ワンクリック、ダブルクリック、長押しといったボタンを押す動作をトリガーに、どのアクションを起こすかのカスタマイズをする。例えば、かかってきた電話をとったり、音楽を再生したりと、設定次第で使い方の幅は様々だ。 Flicは複数個、いろんなところに設置するような使い方も想定されている。つまり部屋の中だけでなく、自転車や車のハンドルなど色々な場所にFlicをつけておけば、ボタンひとつでコントロールできるもの、シーンが増える。 現在は、スマートフォンのコントロールだけでなく、家にあるスマート家電などの操作もできるようになっている。スピーカーや照明、テレビなど、異なるメーカーのデバイスであっても、Flicをリモコンに、操作できるようになるのだ。 実は2019年のCES(Consumer Electronics Show)で、GoogleがスマートボタンによるGoogleアシスタントのデモがお披露目されていた。ボタンによるスマートライフの構想が徐々に拡大・浸透してきているのだ。 関連記事:主要メディアが伝えないCES 2019で感じた5つのポイント Flicにはワンクリック、ダブルクリック、長押しの3つの操作しかない。それをスマートフォンや、スマート家電と接続することで、シンプルでシームレスなスマート体験が生まれる。 ボタンが1つしかないと聞くと、不便さや不十分さを感じるかもしれないが、ユーザーがよく使う操作に絞ることで、リモコンより格段に便利に感じるのだろう。しかもFlicは色々なところに設置できる(設置しても気にならないデザイン)。 これは少し筆者の感覚の話になるが、Flicのボタンは、「今までのボタン」っぽい感じが残っている。押した時の「クリッ」という音と感覚は、どこか無限プチプチのような、「なくても問題はないが、なぜか押したくなる感じ」がある。このような定性的な要素も、昨今のIoTガジェット激戦の中で差別化を図るための特徴となってくれていることだろう。 おしゃれスマートグラス、NorthのFocals ウェアラブルデバイスとして、スマートグラスも開発が進められてきたが、そのほとんどが「技術的にはすごいけど、なんかダサい、サイボーグ感」がなかっただろうか。 NorthのFocalsは、スマートグラスのグラス(メガネ)の部分のデザインにこだわったウェアラブルデバイスである。ぱっと見た感じは、おしゃれなメガネという印象だ。Focalはホログラム技術により、スマートフォンと連動した通知や情報をメガネのガラス部分に映し出してくれる。メガネの度あり度なし、どちらでも可能だ。 Northは2012年にカナダで生まれたスタートアップ。2019年2月には150人の従業員を解雇したり、カナダ政府からの投資が中止となるなどのニュースがあったが、同年5月には4000万ドルの資金調達へと持ち直した。現在はAmazonやIntelからの資金調達を含め、累計額は1億1960万ドルとなっている。 Northのミッションの1つは、テクノロジーやデジタルコンテンツと現実世界の境目を無くすということだ。インターネットを使っていると、現実世界から遮断される。また逆も然り。このような状況に、なるべくグラデーションをもたらそうとしている。Focalはそのためのツールだ。 (ここサンフランシスコでもNorthのショールームトラックが来ていたので筆者も試してみた) 使い方も複雑なものではない。Northのスマートリングと専用アプリと連動させれば、細かい操作や設定も可能となる。スマートリングはコントローラーになり、アプリを開かなくても、レンズに表示された項目の選択が可能になる。 Google Mapのナビ機能、Uberの配車リクエスト、カレンダーやメッセージなどの通知、音声認識によってメッセージへの返信もできるようになっている。 もちろん、耐水性もあり、UV効果やサングラスに切り替えることもできるので、普段使いが前提にデザインされていると言える。 価格は599ドル〜(2019年12月現在生産がストップしている様子)。まだ身近で使っている人を見かけたことはないが(もしかすると普通のメガネっぽすぎて気づいていないだけかもしれない)、Apple Watchのメガネ版と言われているあたり、徐々に浸透してくることが期待されている。 まとめ:IoTを考え、人の価値観を考え、サービスを作ること IoTは私たちの生活に確実に入り込んできていて、IoTに人々の新しい価値観が詰まっている 『IoT』が2017年、2018年ごろ、多用されていたが、2019年は前ほど聞かなくなった。一方でApple Watchやスマートスピーカーなど、多くの商品が世に出て、使っている人も増えてきたと感じていないだろうか。 以下、Google Trendsを見ていただいてもわかる通り、IoTは2017-2018年あたりをピークに、2019年は減少傾向にある。一方で、Apple WatchはAppleの新製品発表会のたびに増加し、通年通しても徐々に増えてきていることがわかる。 つまり、IoTというより、Apple WatchやGoogle Homeといった、より具体的な製品としてIoTが生活に浸透してきていると考えられる。 IoTを考えることは人の価値観を考えること 多くのIoTガジェットは、エンドユーザーに直接接触するものであり、彼らの生活に密着している。スマートスピーカーなどは、声で指示を受けて家事をこなし、生活を豊かにしてきた。IoTは新たな価値観を作り出してきたものだ。それと同時に、注目されているIoTを知ることは、人の価値観がどう変わってきたかを知れるきっかけでもある。 そして、価値の創造や提供に欠かせないのが「体験」だ。今回紹介したブランドはどれもものに留まらないサービス・体験の提供をしている。 ただハイテクな靴を追い求めた訳ではない、ただ機能が優れたライトを作った訳ではない。そのベースに人を考えた考察があるから、人に深く刺さり、イノベーションの創造へと繋がっているのだ。 人を中心にサービスを考える、というのは頭でわかっていても、今まで培ってきた技術力や社内の組織的な課題、時に無意識的な価値観が邪魔して上手く実行できないことも多い。btraxではそのような目的を持ちつつも、自社だけでは解決しづらいという方々を多くサポートしてきた。 […]

JR東日本/AIきき酒・パスタロボット・ウルトラ自販機「体験イベント」

JR東日本スタートアップは12月4日~9日、JR大宮駅西口イベントスペースで、スタートアップ企業が作り上げた新たなサービスを体験できるイベント「STARTUP_STATION」を開催する。開催時間は11時~18時。 JR […]…

優れたB2Bスタートアップを支援するSAP.iO Foundry Tokyoが示す新たなビジネスの可能性~第1回コホートプログラムDemoDayレポート~

2019年10月30日、スタートアップ向けの支援を行うプログラム「SAP.iO Foundry Tokyo」における「第1回コホートプログラム」のDemoDay(成果発表会)を大手町のSAP Leonard Experi ...

ビヨンドミートだけじゃない。食品産業に革命を起こす次世代フードを実食。

食品産業にも「破壊」が起きようとしている。大手の食品産業が市場シェアを奪われる時代が訪れようとしているのかもしれない。
代替肉食品に代表される代替食品産業は今までにない盛り上がりを見せている。植物ベースの代替肉食品だけではなく、代替卵食品のJUSTや、まだ試験段階ではあるが、動物の細胞から生体触媒にて鶏肉や鴨肉を研究室で育て上げるSuperMeatやMemphis Meats など、次世代フードの開発を行っている会社を数えるとキリがない。
代替肉の開発販売を行うフードテックスタートアップたちは現在急…

【インスタ、エアビー、Slack等】人気サービスの初期ユーザー獲得方法

現在では世界中で数100万人以上のユーザーから絶大なる人気を誇っているサービスにも、必ず初期ユーザーがいたはず。多くのサービスがユーザー獲得に苦しむ中で、人気サービスはどのようにして無名の頃にユーザーを集めていったのだろうか? それぞれのサービス内容や時代背景によって、そのユーザー獲得方法は異なるが、全てに共通しているのは、かなりユニークな方法を取っているという事。今回は現在人気になっている下記の32サービス企業のユーザー獲得方法を紹介する。 Airbnb Alibaba Amazon Apple DoorDash Dropbox Facebook Firefox GitHub Groupon Gumroad Hotmail Instagram Intercom Microsoft Mixpanel Paypal Pinterest ProductHunt Reddit Salesforce Skype Slack Stripe Tinder Trello Twitch Twitter Whatsapp WordPress Zapier Zoom Airbnb 初期ユーザー獲得方法: ブロガーへのコンタクト サンフランシスコ市内でデザインカンファレンスが開催された際に、市内のホテルがソールドアウト状態に目をつけたファウンダーの3人が、一緒に住んでいたアパートの家賃を稼ぐために3つのエアベッドを貸し出したのがきっかけ。 そのデザインカンファレンスの来場者に知ってもらうために、デザイン関連のブログにかたっぱしからメールを出し、記事にしてもらった。直後に最初の宿泊者を獲得。まだ具体的なサービスができていない状態であったが、その時のアイディアをその後AirbedandBreakfastというサービスに進化させ、カンファレンス参加者たちをターゲットとして広がっていった。 ちなみに、初期の段階はではホスト側のユーザーが実際にエアベッドを設置することが義務付けられていたという。 参考: デザイン最優先のAirbnbがユーザー獲得のために行う3つのマインドセットと4つのコアプロセス Alibaba 初期ユーザー獲得方法: 電話営業&対人での対応 ネットがビジネスに使われ始め、Eコマース黎明期の時代に、ジャック・マーが大学の友人と共にオンラインマーケットプレイスを作るべく始めたのが、Alibabaである。彼らは片っ端から店舗ユーザーに電話営業を行った。初期の頃は、店舗側が直接メーカーに訪問をしてからアカウント作成をしていた。その際には、Alibabaのスタッフがプラットフォーム上に商品の掲載する方法を教えていた。 こうすることで、初期ユーザーからのフィードバックを得たり、システムの不具合や使いにくい点を目の当たりにすることができたことで、サービスの改善につながっていった。 参考: アリババ創業者 ジャック・マー 成功への10の秘訣 Amazon 初期ユーザー獲得方法: 口コミ オンラインで書籍を売るモデルでスタートしたAmazon.comであるが、その頃にはすでに世の中にはいくつかの類似サービスが存在していた。開発に関わった人々全員が、サイトのURLを家族や友人に送ることで、その存在を知らせた。それが、初期の売り上げにつながった。 Amazonで一番最初に買い物をしたのは、John Wainwrightという名前の男性。実は当時のスタッフの元同僚であるJohnにAmazonを紹介したことで、1995年の4月3日に科学系の本を購入。最初の顧客ということで、現在でもシアトルのAmazon本社には彼の名前のついたビルが存在している。 参考: Amazonを成功に導いたユーザーを夢中にさせる4つのUXデザイン要素 Apple 初期ユーザー獲得方法: 地元の展示会で発表 ファウンダーのジョブズとヴォズニアックがDIYで作成したサーキットボードをHomebrew Computer Clubと呼ばれる地元の展示会で発表したことで、パソコン販売店を営んでいたPaul Tellerと出会う。そこで、単価$500×50ユニットの受注を受ける。 当時パーツを仕入れるお金が無かった二人は、大手製造業者に納品30日後の支払い条件での部品提供契約を取り付ける。それにより、30日以内に50台のサーキットボードを作り上げ、納品時に売り上げを受け取ることで資金を繋いだ。 参考: Apple, Google, ディズニーも最初はこんな小さなガレージからスタートした DoorDash 初期ユーザー獲得方法: ローカルSEO 出前代行サービスとして急成長を続けるDoorDashは当初小さなデリバリー会社だった。しかし、アメリカではレストランが出前をすることが一般的では無かったことに目をつけたファウンダーが、シンプルなLPを作成し、そこに地元 (Palo Alto) のレストランのメニューに彼らの電話番後を記載したPDFをアップした。 同じ地域のユーザーがレストラン名で検索すると、彼らのサイトがヒットすることが増え、ユーザーが集まった。また、当時はデリバリーも自社スタッフが行っており、直接ユーザーと対話することで、サービス改善につなげた。 Dropbox 初期ユーザー獲得方法: 動画マーケティング+ウェイティングリスト 初期のベータユーザー向けに、ウェイティングリストを掲載したLPを作成。そこにユーザーを集めるために、Dropboxのサービスコンセプト動画を作成し、多くのスタートアップ関係者やエンジニアがチェックするHackerNewsに動画リンクを貼ることで、5,000ユーザーがリストに申し込んだ。 その後、動画+ウェイティングリストの戦略を繰り返すことで、より多くのユーザーを獲得した。 Facebook 初期ユーザー獲得方法: 個人的な招待+口コミ 有名な話であるが、初期のFacebookはザッカーバーグの通っていたスタンフォード大学の学生向けのサービスとして開始した。初期の頃はThe Phoenixと呼ばれるサークル内を中心に、ファウンダー達のクラスメイトや友人がユーザーとなり広がっていった。 2004年の2月のリリースから1ヶ月以内で、ハーバード学生の約半分が利用を開始し、その後スタンフォードやコロンビア、イェールといった大学にも広がっていった。 参考: 小さく始める事の重要さ【Amazon, Facebook, YouTube等】大人気サービスの初期バージョンとは Firefox 初期ユーザー獲得方法: 既存のコミュニティーへのシェア Firefoxがリリースされた当初は、Mozillaプロジェクトの1つのサービス的位置付けだった。彼らは、ブラウザーのダウンローダブルリンクをFTPサイトに掲載した。当時、FTPサイトは、ファイルをダウンロードするためのディレクトリ的役割を果たしており、既存のユーザーに対していち早くプロダクトの存在を知らせることができた。 その後、多くのブログやニュースに取り上げてもらうことで、一気にユーザー数を増やした。 GitHub 初期ユーザー獲得方法: 口コミ+公開プロフィール GitHubが2008年にリリースされる頃には、すでに6,000人ほどのベータユーザーを獲得してた。デベロッパー向けのオープンプラットフォームであるGitHubは、その性質上、デベロッパー同士で、コードの共有リンクをシェアし合うようになり、リンクを受け取ったユーザーがベータユーザーとして登録し始め、募集開始から約二ヶ月あまりで、6,000人のベータユーザーを獲得した。 参考: CEOが自ら語った「イノベーションを起こすためのGithubの哲学」 Groupon 初期ユーザー獲得方法: フライヤー ファウンダーのAndrew Masonは、元々政治関係のプラットフォームを作成していたが。投資家の一人がAndrewにお金を設ける方法を学ぶ必要があると考えた。Andrewは入居者向けに、同じオフィスビルのピザ屋さんの半額フライヤーを配ったところ、フライヤーに掲載していたLPのアドレスから複数のユーザーがサインアップしたことで、Grouponの原型となるサービスの初期ユーザーを獲得した、 […]

デザイン思考のプロセスだけでは革新的な製品が生まれない?説

デザイン思考は基本的なマインドセットであり、イノベーション創出のための万能な方法論ではない デザイン思考を学んで終わりにしない。「当たり前」にし、そのあとの行動に移してやっと価値が出てくる デザイン思考に倣うだけでは心に響くプロダクトは生まれない イノベーションに必要な要素 = (マインドセット+カルチャー+パッション) x アクション みんな頑張ってデザイン思考を会得しようとしている デザイン思考の重要性が一般的に浸透し、多くの企業が何らかの方法でその手法を社内に取り入れようとしている。有望な若手を1日のデザイン思考ワークショップに参加させたり、経営陣自らがデザインの重要性を学ぶためのセミナーを受けたりなど、それなりの活動を進めていることが多い。 やってみたけど結果が出ない? しかしここに来て、多くの企業の方々から聞こえてくるのは、「それなりにやってはみたものの、イマイチ結果につながっていない」と言う課題。そもそも、ここでの”結果”とは何を意味するのか? よくよく聞いてみるとそれは、「デザイン思考を活用した画期的な事業の創出」だと言う。おそらく彼らは、デザイン思考を取得すれば、今まで不可能だったようなアイディアや、ビジネスモデルが生まれると考えているのだろう。 実はそれは大きな間違いなのかもしれない。「ここがちゃうねんデザイン思考。5つの違いを理解してモヤモヤを解決」でも説明されている通り、そもそもデザイン思考は基本的なマインドセットであり、万能なメソッドではない。と言うことは、デザイン思考自体は、あくまでイノベーションを生み出すための”下地”であり、方法論ではない。 言い換えると、デザイン思考を学んだだけでは期待する結果を得るのは難しい。実際に活用しながら試行錯誤していく必要がある。我々が提供しているデザイン思考をベースとしたワークショップでも、数ヶ月にわたり実際にスタートアップサービスを作りながら、やっとヒットするサービスの糸口を掴みかけるような状態なのである。 グローバル的には多くの成功事例が生まれている その一方で、「統計データで見るデザインの経営に対するインパクトの大きさ」を見てもわかる通り、デザインを経営に導入することのメリットがあるのは明白なのである。 具体的な経営的な数字でデザインの重要性が明確になればなるほど、世の中の多くの企業たちが、ビジネスにおけるデザインの重要性に着目し、自分たちも乗り遅れないように何らかの試作をしなければ、と考え始めるのは当然の流れだろう。 そもそも何がデザイン思考なのかがわかりにくい そんな世の中の流れもあり、最近の日本では、猫も杓子もデザイン思考を叫び、本屋さんには関連した本が平積みされている。コンビニでも思わず「デザイン思考ください」と言ってしまいそうになる。 その一方で、何がデザイン思考なのか?それはどのようなメリットがあるのか、に関しては明確かつ統一した理解がない。そもそも、その概念自体が広すぎて、人によって解釈が違うし、利用方法も違う。そして、デザイン思考という概念自体が本来そうあるべきである。 なぜなら、デザイン思考は厳密なプロセスやルールなのではなく、参考程度に活用するべき考え方であるから。なので、「デザイン思考とは?」と聞くこと自体が愚問である。 ↑ 数多く出版されているデザイン思考関連の書籍 実は一番困惑しているのは現場のデザイナー達 デザイン思考って何?と言う質問に一番困惑するのは、もしかしたらデザイナー達だろう。そもそも、自分たちが今まで情熱を持って、長い年月を費やしてやってきた事が1つのブームになり、デザインの”デ”の字もわからないお偉いさんが、知ったかぶりで「やっぱデザイン思考だよねー」って擦り寄ってきても、「は?」と思ってしまうこともある。 それだけデザインは奥が深く、一朝一夕で身につくものでもない。それを、昨今のトレンドにより、誰でも簡単に学ぶことができ、ビジネスに即効性があると思われると、かなりしんどい。そして、昨今の社内デザイナー達は、他のスタッフにデザイン思考を教えることに毎日奔走し始めている。そうなってくると、本来やりたかったデザインの仕事がなかなかできなくなり、モチベーション低下にも繋がりかねない。 また、経営の現場に単純にデザイナーを突っ込めば全てが解決するわけではない。なのに、成功している会社の多くはデザインを経営に活用している、と言う理由だけで、なぜかデザインは万能な魔法のような捉え方をしているケースも見受けられる。 社内にしっかりとデザインを浸透させたければ、まずはスタッフのマインドセット、次にカルチャー変革が求められる。 そもそも、デザイン思考を社内に浸透させたければ、デザイナーよりもファシリテーター的な役割の人が行う方がよっぽど効果が高い。我々、btraxでも、デザイン思考ワークショップを提供する際には、ファシリテーターがメインで進めていくようにしている。 ↑ ファシリテーターがリードするbtraxでのデザイン思考ワークショップの様子 スタートアップ業界ではすでに”母国語”化している ちなみに、サンフランシスコやシリコンバレーのスタートアップ界隈では、今更デザイン思考を学んだりはしない。自分を含め、ここに長く住んでいる人たちにとってみると、デザイン思考的な流れでサービスを作るのがあまりにも当たり前のやり方すぎて、いまさら体系立てて学ぶことはあまりしない。 サービスを考えるときに、特定のユーザーのニーズにフォーカスを当てるのは当たり前だし、短いスパンでプロトタイプを作成し、ユーザーテストをするのも当たり前。アイディア段階でカフェに行って横に座ってる人からフィードバックをもらいながら改善したい、よりふさわしいユーザーを紹介してもらったりするのも日常茶飯事である。 それはまるでデザイン思考がすでに我々にとっては”母国語”になっており、努力して会得するものでない感じなのだ。例えると、英語を学んでいる人は、その文法から発音までを論理的に身につけようとするが、生まれつき喋れる人は、逆にそんなややこしい部分は気にも止めない。 海で生まれた魚は、泳ぐことを一から学ばないのに似ている。「Fishes can swim」ではなく、「Fishes swim」となる。同様に、スティーブ・ジョブズが一からデザイン思考を学んだとは想像しづらい。 デザイン思考を会得してやっとスタートラインに立てるレベル ここで気付いた方もいるかもしれないが、「英語が喋れる = グローバル」ではない。それは単純に海外の人とのやりとりをしやすくなっただけであり、そのスキル自体はコミュニケーションの第一歩でしかない。これは、「デザイン思考 = イノベーション」ではないのに似ている。 イノベーションを生み出している企業がデザイン思考を活用してるのは間違いない。しかし、それはあくまで基本中の基本ができているだけであり、万能ではない。デザイン思考プラス何かがなければ、求める結果を得ることは非常に難しい。 デザイン思考は”思考”ではなく、”行動”であるべき これはその呼び方が大きな問題がるのかもしれないが、デザイン”思考”を通じて結果を出したければ、早い段階で、考えることよりも、行動に移す必要がある。下記のダイアグラムを見てもわかる通り、デザイン思考のプロセスにおいては、多くの箇所で行動が求められる。そして、それを短いサイクルとして、グルグル回す必要がある。ちなみに、デザイナーに求められる能力の1つが、短時間でどれだけ多くの量のアウトプットを出せるかである。 以前にアメリカで被験者を2つのグループに分け、一定時間内に陶芸を作る実験を行った。Aのグループには、「最も優れた作品を作ってください」と伝え、Bのグループには、「作品の質ではなく、使った粘土の量が多さで評価します」と伝えた。すると、Bグループの方が最終的には、より優れた作品を作った結果となった。トライアルアンドエラーを多く繰り返した方が良いものが出来上がりやすかった。 デザイン思考でも、どれだけの量の失敗を繰り返せるかが重要で、座学よりもアウトプット重視するべきである。 しかし、デザイン思考を”思考”のままで終わらせているケースが後を絶たない。優れたプロダクトを生み出したければ、頭で考えるより、まず行動。習うより慣れよ、が求められる。なのに、デザイン”思考”と名付けてしまったのが誤解を生み出す1つの原因になってると思われる。 ↑ 思考よりも行動が重視されるデザイン思考のプロセス 実際の現場はかなりカオス 実際のところ、デザイン思考を活用しても、その成功率は必ずしも高くは無い。しかし、プロダクトが生み出されるのに要するコストと時間が短縮されるので、長期的にみると良い結果につながる。 そして、議論よりも行動重視でプロダクト作りを進めている現場は、想像ができないぐらいに、はちゃめちゃであり、またそうあるべきである。プロセスの行ったり来たり、コンセプトの練り直し、ニーズの再認識は日常茶飯事で、チーム内のいざこざや、感情のぶつかり合い、仲間割れも珍しく無い。 それが本当に良いものを生み出すためのクリエイティブなプロセスなのであるが、和を大切にする日本の文化や、大企業のエリート経営陣にはなかなか理解のしづらい部分でもある。 会社がカオスな状況を許容してくれない限り、良いものは生まれづらい。 デザイン思考プロセスを丁寧になぞってできたプロダクトは面白味がない これはとても主観的な感想になるが、デザイン思考の教科書に従って、お勉強した内容を元に、そのプロセスを丁寧になぞって作り上げらたプロダクトは、妙に”のっぺり”としている。そして世の中にある他のサービスにかなり類似したものが出来上がる。何か一味足りない。スパイスが効いていない感じがする。 なぜか?多くの場合、作っている人たちが本当に作りたいものを作っていない場合があるから。教科書に書いてあるやり方をしっかりと踏まえ、間違えの無いように1つ1つしっかりと検証して作ったとしても、そこに強い情熱や想いが無ければ、なんかつまらない物が出来上がる。 作る側に強い愛情が無いと、ユーザーにとっても魅力的なプロダクトにはならない。ユーザー検証を通じて、”つじつまのあう”プロダクトは作れるかもしれないが、なぜか心に響かないものになりがち。単純にデザイン思考のプロセスを踏まえ、ユーザーが欲しいと言ったものを作ったところで、それは単なる御用聞きプロダクトになってしまいがちである。 参考: お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い デザイン思考は音楽におけるカノン進行みたいなもの この感覚、何かに似ているなー?と思って考えてみた。そうそう、それはまるでカノン進行を活用したヒットソングっぽい。カノン進行とは、パフェルベルのカノンと言うクラシックの名曲に利用されているコード進行。それが、日本人の耳に妙に心地よく聞こえることから、そのコード進行をベースに作曲するとヒットソングを生み出しやすいと言うことで、多用されている。 ミュージシャンの間でも、「ヒットを生み出したければ、カノン進行を使えばなんとかなる」とされるが、同時にそれは禁断の果実でもあり、妙にどっかで聞いたことのあるJ-Popソングになりがちで、イマイチ面白味がない作品になってしまう。 うまくいかないケースに欠如しているのは何か? では、本題に戻って、なぜデザイン思考のプロセスだけでは革新的な製品が生まれないのか?おそらく、ここで重要なのが、そこに強い情熱があるか無いか。企業の新規サービスを作る際には、もちろん最終的な売り上げが重要になってくるのだから、ヒットを狙って物づくりをする必要が出てくる。それにデザイン思考が用いられる。 その一方で、本能的にデザイン思考を取り入れているスタートアップの多くは、初めから売り上げを意識しない。むしろ特定のユーザーや社会、そして作っている人たち自身が強烈に感じている課題を解決するための手段として、プロダクト作りをする。そこには、他の人ではなかなか持つことのできないレベルのパッションがあり、それが大きな原動力となる。 強いパッションがあれば、物凄い勢いでニーズの深掘りを行い、素早く試作品を作り上げ、テストを繰り返す。そして、その結果に合わせて、どんどん改善やピボットを行う。それはまるでアーティストの自己表現にも通じるものがあり、ヒットソングを狙った理詰な作業とは異なる。 イノベーションに必要な要素とは デザイン思考だけではイノベーションが生み出されないとしたら、他にどんな要素が必要になってくるのだろうか?おそらく、それには、下記の要素が求められると思われる。 マインドセット: デザイン思考自体がそもそもプロセスというよりは、基本的に理解しておくべきマインドセットである。それぞれのメンバーが、ユーザー視点の考え方をしっかりと理解し、会社の利益の前に課題解決のためのマインドセットをしっかりと共有しておく必要がある。 カルチャー: 次に、チームや組織におけるカルチャー的要素。自由に発言しやすい心理的安全性と、失敗を許容する考え方。そして、机上の空論よりも、速いスピードでアウトプットを評価するカルチャーが求められる。 パッション: 最も重要な要素になってくるのが、プロダクトやサービスに対する情熱。自分たちが本当に解決したい課題に対してのソリューションの具現化としてのプロダクトであること。そして、そこに他の人たちよりも強い情熱を注ぐ必要がある。 アクション: そして、上記の3つの要素をしっかりとアクションに移すこと。アクションの部分が無ければ、全てがゼロになってしまう。どれだけ強い情熱を持っていても、検討の結果、見送ることにした場合、アウトプットはゼロである。 結論として、イノベーションを生み出すためには、下記の方程式が必要になってくるのでは無いかと思う。 イノベーション = (マインドセット+カルチャー+パッション) x アクション デザイン思考を上手に活用している秘訣を学ぶイベント もちろん、実際にうまくいっているケースも多数ある。その1つを紹介するのが、11月5日に東京で開催されるDESIGN for Innovationでの下記のセッション。詳細は公式サイトにて紹介されている。 『デザイン思考を利用したグローバルイノベーション創出方法』 日本が世界に誇るモビリティー企業であるHONDA、YAMAHAの2社が急激に変化をしている市場にて、どのような方法で生き残り、成長を続けるのか。デザイン思考的アプローチや、社外のスタートアップとのコラボレーションなど、最先端の取り組みを紹介。 日本国外のユーザーの心を掴むプロダクトの秘訣とは。それぞれの企業にて、従来とは異なるアプローチからイノベーションに取り組んでいる2名が、どのようにこれからのユーザーに受け入れられるプロダクト作りをしていくのかを語る。 杉本 直樹氏 / CEO、 本田R&Dイノベーションズ / 執行役員 統括機能本部 オープンイノベーション戦略担当、 株式会社 本田技術研究所 長屋 明浩氏 / 執行役員デザイン本部長、ヤマハ発動機株式会社 […]

注目のスタートアップだった WeWork の評価はどこで反転したのか?

コワーキングスペースを提供するベンチャー企業 WeWork の騒動  9月の下旬から10月の初旬に掛けて、ベンチャー企業 WeWork の名前を多く見るようになった。WeWork はアメリカに本社を置く、コワーキングスペ […]…

PPIH/「SNS・AI・10代・ベンチャー」活用で4つのプロジェクト

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は10月17日、従来からのマーケティング手法に留まらない革新的な取り組みを行うため、「マシュマロ構想」を開始すると発表した。 <マシュマロ構想のロゴ> 小 […]…

シリコンバレー発、人の課題を解決する未来のロボットたち

サンフランシスコでは、「人の生活にある課題を解決するための手段」としてテクノロジーロボットが生活に密着し始めている
デリバリーロボットはEコマースやオンラインオーダーの普及による人手不足・コスト・エネルギー・交通などの問題に一役買っている
移動手段にもロボット技術が使われている。InMotionは小回りもきく、電動一輪車としてサンフランシスコ民からも利用されている

近年、日本でも商業施設や宿泊施設などで案内ロボットを見かけるようになりましたが、果たしてロボットが我々の生活に密着していると言えるで…

日本発・完全栄養麺のベースフードがアメリカに進出!グローバル展開について【COOマイケル氏インタビュー】

健康をあたりまえにする   2016年に日本から始まったベースフードが、その思いをアメリカへと広げようとしている。 ベースフードは1食で1日に必要な栄養素の3分の1が全て取れるという、”完全栄養食”ヌードルとパンを開発、販売している日本のスタートアップだ。元DeNA出身のCEO橋下舜氏が、会社員時代に「忙しくでも栄養バランスを満たせる美味しい食事が欲しい」と言う実体験からベースフードが誕生した。 創業以来、Amazonの食品人気度ランキングでも1位を獲得し、すでに累計50万食以上売り上げてきた。さらに2019年5月にはシリーズAラウンドで、総額約4億円を調達するなど、超注目のフードテックスタートアップなのだ。 そんな彼らが、創業当初から視野に入れていたグローバル展開が、ここサンフランシスコ・シリコンバレーからついに始まる。オンラインをベースとした販売をするD2Cモデルを採用する彼らは、まずはウェブサイトからの販売がメインとなるようだ。 (パロアルトにあるラーメン凪にて関係者向けにプレオープンパーティーを開催。ベースフードとのコラボラーメン、The Base Veggie King Bowlは店頭で期間限定販売中) 今回は、ベースフードUSのCOOである、Michael Rosenzweig氏(以下マイケル氏)にアメリカ進出における戦略や思いをインタビューする機会をいただいた。なぜアメリカなのか、どのような展望をお持ちか、ローカライズした点などを聞いた。 マイケル・ロセンズワグ (Michael Rosenzweig) – COO of BASE FOOD U.S., Inc. 日本で6年間コンサルタントとして働いた後、University of Pennsylvania、Wharton校でMBAを取得。卒業後にベースフードCEOや社員と知り合い、BASE FOOD USに入社。日本に関係のあることや起業家精神のある環境を求めていたので、ベースフードとの出会いはパーフェクトマッチだったと言う。 決して夢物語ではない初海外となるアメリカ進出 ベースフードのアメリカ(グローバル)進出は、創業当時から代表の橋本氏が構想していたことだ。 最初の海外進出国をアメリカにした理由を伺うと、その市場規模の大きさや、健康について改善を求める消費者が多いことも理由の一つだという。 さらに、2019年2月に行われたイベントでは、橋本氏が、アメリカ市場においては追い風を期待することを言及していた。というのも、Soylentといった「完全栄養食」や、「D2C(Direct to Consumer)」に対する親和性の高さ、空前のラーメンブームなど、日本にはないニーズがすでに存在しているからだ。 イノベーションxフードのハブ、サンフランシスコから拡大を狙う また、アメリカの中でもサンフランシスコにオフィスを構えたのは、ここがイノベーションのハブスポットであるからだとマイケル氏はいう。まさに、「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」をミッションにしているベースフードには欠かせない要素がここ、サンフランシスコにありそうである。 サンフランシスコの食に関する考え方が多様であることもベースフードにとっては勝機となりそうだ。ここでは、動物性食材を一切食べないビーガンや完全菜食主義のベジタリアンに加え、フレキシタリアン(基本的には菜食主義だが、たまに肉や魚も食べる人のこと)と呼ばれる、普段はお肉・お魚を食べないけど、たまには食べるというスタンスの人も多い。 ビーガンの人はもちろん、フレキシタリアンたちは、実際の動物の肉を食べなくても肉を楽しめる代用肉など新しいものを積極的に探している人たちでもある。このような人たちにもベースフードは受け入れられるのでは、とマイケル氏はいう。 「ラーメンブーム」については、人は美味しくて、遊び心があって、楽しいと思える食べ物と触れ合う傾向があるとみる。例えばベースフードがコラボレーションしているラーメン凪にもそのようなカスタマーが多い。そしてベースフードもまた、美味しくて、楽しい食事体験を提供することを目指している。 そして、サンフランシスコには様々なスキルや知識を持った優秀な人材が多く、採用面でも有利な点があるとマイケル氏はいう。 アメリカにおいても「主食のイノベーション」を目指しているベースフード。まずはここカリフォルニアを中心とした認知、人気を狙い、ベースヌードルという麺の商品で勝負する意気込みだ。 美味しい、ヘルシー、手軽なベースフードを全ての人に アメリカではドリンクタイプの完全栄養食が広がりつつあるが、ベースフードはあくまでも食事(飲み物ではなく、食べるもの)であり、調理によってアレンジができるため、よりサステイナブルな方法で健康に貢献できるのだ。また、素材には自然のものを使っている。 また、一流のシェフからお墨付きをもらっているというのもベースフードの特徴だ。シェフに認められるくらい良いものをカスタマーに届けたいという想いがあるそう。 今回のアメリカ展開でも、日本で以前からパートナーとしてコラボをしているラーメン凪のパロアルト、サンタクララ店にて、プレローンチパーティやベースヌードルの期間限定販売をしている。 シェフによって品質を保ちながらも、D2Cの「ブランドがカスタマーと直接話せる」というメリットを活かし、フィードバックを商品開発に役立てていく方向性のようだ。 (Ramen Nagiは地元でも大人気。待つこと45分、筆者もパロアルトにあるラーメン凪にてThe Base Veggie King Bowlを実食。) あくまで全ての人に届けるという想いが商品に込められている 日本ではベースヌードルに加え、ベースブレッドという完全栄養食のパンも販売しているが、アメリカではまずベースヌードルの展開となる。 (左:ベースブレッド、中心:ベースヌードル。ベースフードのウェブサイトより転載 麺商品は創業当時からベースフードが開発をしてきた商品だ。アメリカでも麺は色々な食べ方で人気のある食べ物であり、麺好きの人たちも多く、ベースフードも受け入れてもらいやすいのではとマイケル氏は期待。 ゆえに、届けたいカスタマーは全ての人となる。日本のマーケットをみたときも、アスリートから、IT系のワーカー、料理好きの食通の人など様々だ。 (特にサンフランシスコ、ベイエリアではラーメンだけでなく、アジア系の麺料理やイタリアンパスタなどが点在し、受け入れられている) アメリカも同様で、全ての人に届けたい、美味しさと栄養は両立しないと考えている人に届けたいという思いから、カスタマーを絞ることで潜在的なターゲットを排除してしまうことがないようにしているようだ。 国が違っても、美味しい食べ物が好きであるという根本はどの国の人でも変わらないと考える。 グローバルメンバーで、ローカライズを目指す もちろん、日本での成果をそのままアメリカで再現できることもあろうが、考慮しなくてはいけない日米間の違いに関しては、ローカライズなしで成功はないとマイケル氏はいう。 言わずもがな、アメリカは市場規模も文化も日本とは大きく異なる。ベースフードUSのメンバーは、アメリカ出身であっても、全員日英バイリンガルで、日本に住んだ経験があることなどからも文化的違いを理解しているため、表面的な情報からだけではわからない背景や人の特徴、文化、トレンドを考慮してビジネス展開に取り組んでいく必要があると話す。 もちろん会社全体でみても、男女比もほぼ均等、グローバルな経験が豊富で、お互いの文化や違いをリスペクトする社内カルチャーがある。 さらに、日米オフィス間で密にコミュニケーションを図ることで、それぞれの知識・スキルを共有をする。これが会社全体の拡大にテコ入れしており、ベースフードがグローバルスタートアップとして成長していく重要な鍵を握っているようだ。 コミュニティーとカスタマーと一緒にベースフードを作っていく ベースフードはラーメン凪やハンバーガーレストランとコラボレーションしてきた。アメリカでもラーメン凪から始まり、今後も積極的にコラボレーションをしていきたいと、マイケル氏は述べる。 また、上記でも述べたとおり、D2Cモデルの利点を活かし、カスタマーから直接フィードバックをもらい、コミュニケーションし、もっとカスタマーについて理解を深めてプロダクト・サービスの質を高めていく予定だ。 最後にマイケル氏より、メッセージをいただいた。 「アメリカ進出を非常に楽しみにしていました。ベースフードは品質の高い、栄養バランスの取れた自信作ですので、ぜひお試しください」。 ※英語版インタビュー記事も近日公開予定! ユーザー中心のサービスは全世界へ広まるべき 代表である橋本氏の好奇心や健康への探究心から始まり、開発が進められたベースフード。この度、創業当時意識していたというグローバルへの挑戦が始まる。 最近では3ヶ月に1回は、カスタマーのフィードバックに基づく商品改善や新商品が出ているという超・ユーザー中心のサービスだ。世界に目を向け、直向きにカスタマーと向き合う。そんなスタイルが根付いている彼らなら、アメリカでの今後の活躍にも期待大である。 btraxも、このようにグローバルを視野に、サービス開発、ビジネス展開をしてきたいというみなさんの支援をしていきたい。デザイン思考をベースとしたマインドセットの研修や、サービスを生み出す・育てるためのワークショップ、さらにサービスを展開するためのマーケティングコンサルティングを行っている。疑問、ご興味をお持ちの方はぜひお問い合わせください。

米国最新フィットネススタートアップ3選。キーワードは「自宅」

近年日本でもRIZAPのような期間集中型の肉体改造プログラムが注目を集めたり、ゴールドジムのようなフィットネスクラブが人気を呼んだりしているが、ここアメリカでもブティックジムや空中ヨガなどなど、新しいフィットネストレンドの入れ替わりは日本以上に目紛しい。 さらにサンフランシスコやシリコンバレー、ニューヨークといった大都市では、従来の健康関連サービスにテクノロジーを掛け合わせ、イノベーティブなヘルシーライフスタイルに貢献しようという動きが盛んになっている。 そこで今回は、健康 × テクノロジーの中でも、最近アメリカ市場を賑わせている「自宅エクササイズを可能にするスタートアップサービス」をご紹介したい。 関連記事:【医療テック×UX】スタートアップが変えた私達のヘルスケア体験 注目を集める「自宅エクササイズ × テクノロジー」分野 自宅用のエクササイズマシンが今、注目されている理由としては、エクササイズマシンがIoT商品へと姿を変えてきたということが挙げられる。それに伴い、AIを使った画期的な新機能なども加わり、業界に革新をもたらし始めたのだ。 IoTエクササイズマシンの市場規模は順調に成長しており、下の図からもその期待値の大きさを読み取ることが出来る。 Allied Market Researchの数値を元に図を作成 実に、2016年からの次の7年間で、市場成長率は5.7倍になると予想されている。2023年の市場規模は1.5兆円に到達する見込みだ。 昨年2018年には、ベンチャーキャピタリスト達が1年間で合計約2.4兆円もの額をフィットネス系のスタートアップに投資したことも明らかになり、過去最大のフィットネススタートアップブームが起こっているのだ。 自宅エクササイズスタートアップ3選 1. Peloton:登録者数既に50万人超え。フィットネス業界のネットフリックス 自宅用のエクササイズマシンといえば、フィットネスバイクが思い浮かぶ人も多いのではないだろうか。Pelotonは、フィットネスバイクやランニングマシン、そして登録型のレッスン動画ストリーミングサービスを展開しているスタートアップである。 2012年にニューヨークで設立された。その後も順調に資金を調達し続け、今年2019年には遂にIPOも果たす予定だ。 Pelotonのフィットネスバイクとランニングマシーンには、大型のHDウォータープルーフタッチスクリーン(バイクは22インチ、ランニングマシーンは32インチ)が付いている。ユーザーは、このスクリーン上で提供されるPelotonのエクササイズプラットフォームから好きな動画を選択し、エクササイズを行う。 関連記事:「フェムテック」現代女性の健康を支える海外注目スタートアップ事例 充実したエクササイズコンテンツと徹底した管理機能が強み Pelotonが提供するストリーミングのコンテンツはとても豊富かつクオリティが高いもので、自社で抱えるトレーナーにより、フィットネスバイクやランニングマシーン用のものだけではなく、ヨガや重量を使った筋力トレーニングまで用意されている。その豊富なコンテンツ量から、「フィットネス界のネットフリックス」と呼ばれているのだ。 生放送のクラスに参加することもできるし、オンデマンドクラスもある。ユーザーはエクササイズの種類からクラスを選べることはもちろん、好きな音楽のジャンルから選択も可能。 インストラクターがその音楽に合わせて、トレーニングを支持してくれる。時にはインストラクターからの熱いメッセージでエクササイズのモチベーションを上げてくれるのだ。 Pelotonのオフィシャルサイトから転載 またこのタッチスクリーンからPelotonのアプリ上でエクササイズの管理をすることなども可能だ。心拍計も搭載されており、シンクすることも出来る。専用のアプリを使うことあらゆるデバイスからの確認も可能。 Pelotonのエクササイズ管理アプリ。オフィシャルサイトから転載 決して低価格ではないが、人気を呼び、さらなる注目が集まる 値段としては、フィットネスバイクが約24万円、ランニングマシーンが約46万円、そしてストリーミングサービスが月額約4000円と、決して安い値段ではない。(ちなみにPelotonのマシンなしで、エクササイズ動画の会員登録のみなら約2,000円で可能である。) しかし、Pelotonは2012年の設立から現在まで、40万台以上のフィットネスバイクを売り上げ、ストリーミングサービスの登録者はなんと50万人以上を達成している。ランニングマシーンの発売は去年の12月に開始したばかりで、販売台数は公開されていないが、好調を見込めると言う声が多い。 というのも、ランニングマシーン販売の数ヶ月前に、FacebookやNetflixなどの有名テック企業に投資を行ってきたTVCファンドから600億円の資金を獲得し、去年の第2四半期で推定企業価値が4.3兆円に膨れ上がったからである。潤沢な資金力とTVCファンドが見込んだ企業戦略で、Pelotonがいずれ市場を席巻するであろうと期待されている。 実は分割払いという購入方法もあり、頭金ゼロの年利率0%で、月額約6000円から自宅で始められる。まだ日本市場には上陸していないが、自宅でのフィットネスバイクの本格的なトレーニングが次のフィットネストレンドとなる日はすぐそこかもしれない。 2. Mirror:自宅フィットネスの常識を覆す、デザインも優れた鏡によるエクササイズ Mirrorはその名の通りミラー(鏡)を使った自宅フィットネを提供するニューヨーク出身のスタートアップである。昨年のクリスマスに、アメリカの著名な歌手であるアリシア・キーズが、息子からMirrorをプレゼントして貰った動画がソーシャルメディアにアップされたことを皮切りに、売り上げと注目度を一気に加速させた。 鏡とディスプレイが1つになっているというメリット 今では人気タレントのエレン・デジェネレスや女優のアリソン・ウィリアムズのようなセレブにまで愛用されるようになったりと、インフルエンサーの獲得にも成功している。 Mirroの光沢のある52インチの鏡は、内部にモニターが格納されており、フィットネスクラスを受講できるプラットフォームが見られるようになっている。 つまり、Mirrorの鏡自体がディスプレイとなり、フィットネスクラス動画を見ながらエクササイズができるということだ。さらにディスプレイは鏡でもあるため、自分のフォームを確認しながら運動できる。 また、カメラも設置されているため、遠隔にいるインストラクターが個人のフォームを確認し、アドバイスしたりすることも可能だ。 副社長のカイリー・コムスがニューヨークのショールームで見せたデモ。New York Timesから転載 上記の写真からも鏡の機能とスクリーンの機能が上手く両立されているのがよく分かる。ジムでもインストラクターの動きをみて、向かいの鏡で自分のフォームをみて、ということがあると思うが、それを自宅でそのままできるといったサービスだ。 なお、専用のアプリから操作が可能なので、鏡に指紋等が付着する心配もない。 もはや自宅におきたくなるデザイン Mirror最大の特徴の1つに、自宅におくエクササイズマシンとして、家のインテリアを全く邪魔しないデザインであるという点もあげられる。もはや鏡であり、見た目、スペースのどちらをとっても今までのエクササイズマシンの常識を覆していると言える。 普通の姿見鏡としてもスタイリッシュで、自宅のどこに置いても景観をそこねるものではない。Mirrorのオフィシャルサイトから転載 壁に掛けられるようにもなっており、スペースを取ることもない。Mirrorのオフィシャルサイトから転載 Mirrorのこのスタイリッシュなデザインは、ホテル業界からも受け入れられているほどだ。超一流のホテルで名高いThe Markは、一泊800万円以上もする最上階のスイートルームにMirrorを設置した。そのデザインや機能性は、ラグジュアリー家具としても注目が集まりつつある。 とはいえ、昨年9月から市場販売を開始したばかりのMirror。価格は日本円にして約16万円と、決して気軽に購入できるわけではないが、着実に市場シェアを拡大させている。 数ヶ月前には350億円を上回る推定企業価値をつけられたこともあり、業界内の知名度も急上昇。今後も目が離せないスタートアップだ。 3. Pivot:人工知能でフォーム矯正。次世代フィットネス Pivotは元々B2B向けにジムマシンを販売していたSmartSpotから派生したスタートアップである。商品の正式な販売はまだ始まっていないが、AIを駆使してトレーニングのフォームまで指導してくれるフィットネスマシンの開発は注目を集め、既に多額の出資金を獲得している。 TechCrunchより転載。実際にSmartspotを使っている様子。腕の角度や膝の角度が表示されている。 3Dセンサーとビッグデータに基づいたパーソナライズトレーニング Pivotの特徴の1つとなっているのが、前身のSmartSpotから得た100万回以上のエクササイズデータだ。SmartSpotは上の写真のように、3Dセンサーを搭載したフィットネスモニターで、重量等を使ったフリートレーニングのフォームの確認と矯正するためのデータを提示してくれるものだった。 この情報をマシンラーニングで分析し、BtoC向けへ精密度を格段に向上させたものがPivotである。この膨大なデータと優れた3Dセンサー技術から、エクササイズ中の姿勢や腕の角度まで、あらゆる部分を徹底的に分析し、リアルタイムで補正してくれる。 そして、心拍数や身長・体重などの情報と共に、Pivotに搭載されたAIが一人一人に最適化されたトレーニングを割り出すのだ。 Pivotのオフィシャルサイトから転載。 さらに、実際のクラスにオンラインで参加することも可能になるので、フォームのずれはインストラクターにも通知が直接送られる。それをもとに、インストラクターからの指導も自宅で受けられるようになるのだ。 そして、筋力トレーニングだけではなく、上記の写真のように激しい有酸素運動のようなレッスンもコンテンツの中に含まれる予定である。 Pivot一台で筋力増強プログラムからエクササイズ、そしてヨガなどのフィットネスまでカバーできるのだ。 AIを搭載させたフィットネスマシンは瞬く間に投資家達の間でも人気を博した。その中でもPivotは、Y-Combinatorを含む投資ファンドから18.5億円もの資金(経営初期の投資期間であるシリーズA投資ラウンド)を、2019年7月に調達したばかりだ。これからのPivotの成長から目が離せない。 関連記事:ナイキ・パタゴニア等に学ぶ、セルフマネジメントを促す組織体制 まとめ 今回紹介した自宅エクササイズマシンのIoT化は、自宅エクササイズの限界やエクササイズマシンのあり方を、テクノロジーの力を用いてディスラプトしつつある、格好の例ではないだろうか。 今までのエクササイズ事情と言えば、アメリカの都市部を中心に、フィットネスジムなど会員制ジムに登録しても、多忙ゆえ定期的にジムやレッスンに通えないことから、続かない、結局退会するということがとどのつまりだった。 しかしながら、エクササイズマシンのIoT化はそれを解消しつつある。インターネットの普及により、衣食住にまつわるあらゆるサービスのアクセスも非常に便利になった今、健康でさえも便利に手に入ることが消費者の需要となっているのだ。 この記事で紹介したように、フィットネスマシンもインターネットに繋がり、どこでも簡単に、自分の空いた時間でサービスを消費することが出来る時代がすぐそこまでやって来ているのである。 さらに、不便さを解消しただけでなく、モチベーションを上げてくれるようなコンテンツ・エクササイズプラットフォームや邪魔をしないデザインなど、利用者のか感情や体験に対しても工夫を凝らしていることがわかる。 時代の流れに合わせたビジネスの展開をすることは容易ではないが、それが出来るものが生き残れる厳しい世界でもある。我々btraxは市場調査、マーケティング、海外進出などを通して日本企業がトレンドの波に乗り、さらなる成長を遂げるための飛び石の役割を務めることをミッションとして掲げている。詳しくは公式サイトの問い合わせページよりお問い合わせいただきたい。   参考: Peloton exercise bikes became a $4 billion fitness start-up Peloton, the connected fitness company, has filed to go public 8 Things You Should Know Before Buying A Peloton Bike Cycling Startup […]

世界一競争が激しいシリコンバレーで15年生き残れた最大の秘訣とは

2019年8月9日、btraxは創立15周年を迎えた。 アメリカでは新しい企業が10年以上生き残れる確率は5%に満たないと言われる。おそらく、これが15年ともなるとその生存率は数パーセントに満たないだろう。 例えそれがトップの大企業でも、その半分以上が15年以内にその姿を消す。そもそも、アメリカの企業全体の平均寿命が15年なのである。そして、その場所がシリコンバレーになってくると、スタートアップ企業をはじめ、短いスパンで結果を求められるので、よりその生存率は下がる。 参考: 現代における大企業の平均寿命は15年 – 生き残り戦略としてのイノベーション 難易度Maxの状態からの船出 そして、もしそれが世界有数の激戦区にて、ビジネスを全く勉強した事のない人が、僅かな資本金で始めたとしたらどうなるだろうか? この会社の創設者にはビジネスのバックグラウンドがほとんど無く、サンフランシスコという強烈な街で大学卒業直後に$5,000の資金だけを頼りに会社をスタートした。 そう、これが僕がこの会社、btraxを始めた時の状況である。その後、外部からの投資を受けた事はない。ちなみに、The Ultimate Startup Failure Rate Reportによると、毎日123,300のビジネスがその姿を消しているという。 海が荒れているのに出航するのは単なるアホと言われたのに… 会社を始めようと思っていた頃にシリコンバレーで投資家をしている友人に相談した事があった。彼からのアドバイスは ”最高のコンディションだと思って船を出しても途中で遭難するのがビジネス。まして、海が荒れている状態なのに出航するのは単なるアホだよ” と。 至極当然なアドバイスだろう。シリコンバレーという地域では、世界有数の天才たちが多くの資金を元にしのぎを削っている。そんな場所で経営の事を全く知らず、僅かな資金だけでビジネスを始めれば99.9%の確率で秒殺される。 それでも初めて、続けてしまった。今振り返ってみても、なぜそんな事が出来たのか。大きな謎である。良いタイミングなので、その秘訣を自問自答してみたところ、生き残るために重要な1つのポイントが見えてきた。 自分たちにしかできない”ズルい”アドバンテージに着目 それは、会社を初めて数年後に、他の会社が簡単真似のしにくいユニークさ、言い換えると、ズルいアドベンテージに焦点を当てた事だと思っている。 恐らく日本の社会で生活していると意外と気付きにくい事なのであるが、実はビジネスの世界においては、どれだけユニークな存在になれるか、もっと言うと、”ズルい” やり方ができるかが、その会社の大きな武器となる。 ちなみに、英語ではこの武器の事を”アンフェア・アドバンテージ (Unfair Advantage) “と呼ぶ。 では、どのようなきっかけでそのズルさにたどり着いたかを振り返ってみたい。 当初はデザイン力だけで勝ち残るつもりだった 元々大学でデザインしか勉強してこなかった自分としては、せっかくデザイン会社を始めるのだから、デザイン力だけで世界と勝負したかった。 言い換えると、それ以外の部分を”売り”にするのは、いささか邪道な気がしていて、デザイン以外のバックグラウンドを活用する気は全くなかった。振り返ってみると、実はこの”こだわり”は非常に危険で、恐らくそのまま進んでいたら今頃会社は存在していないと思う。 参考: アメリカでWeb制作会社が存在出来ない5つの理由 先輩起業家の一言が視野を広げた 会社を始めてからしばらくした頃、漠然とした行き詰まりを感じ始めていた。優秀なデザイナーも揃い、ちゃんとしたオフィスも構えた。しかし、なかなか大きな規模の仕事を見つける事が出来ない。 その一方で、サンフランシスコにはIDEO、frogをはじめとした世界有数のデザイン会社がいくつかあり、彼らの存在がロールモデルとなっていた。 自分たちもどうにか一流のデザイン会社の仲間入りが出来ないか。そんな想いを先輩に話した。 それに対して彼は一言、”自分だったら競合が上がれない土俵で戦うけどな” と答えた。 そう、同じデザインという漠然としたフィールドで戦うと競争が激しすぎて、経営者としては賢くない。自分が最も優位に立てるフィールドを見つけるべきという事である。 デザイナーとしてのこだわりがデザイン会社を潰してしまう 世界最高のデザイン力でトップを目指す こんなビジョンを掲げるデザイン会社は少なくない。しかし、これは多くのデザイナーやデザイン会社が陥りやすいトラップでもある事に気付く事は難しい。 何を言いたいかというと、デザイン会社を経営するにあたり、デザインのクオリティー “だけ” で生き残るのは、無駄に難易度が高くなり、生存率が急激に下がってしまうという事。 自分たちのユニークさを見つける大切さ 質の高いデザインをする事に加えて、果たしてどんな事がbtraxにとってユニークな価値となるのだろうか?この問いを始めた時から「他にマネのしにくい事をする」という経営における1つの重要な指針が決まった。 ビジネスにおいて競合は少なければ少ないほど良いし、そもそも、ほぼいない状態を見つける事が出来れば、他と争う必要もなくなる。 結果的に、サンフランシスコという場所、日本のバックグラウンド、スタートアップのカルチャーや手法をデザインに掛け合わせる事で、現在のbtraxのユニークな遺伝子が定まっていった。そしてそれがのちに自分たちが持つズルさ=アンフェアアドバンテージになっていった。 ビジネスではズルさが最大の武器になる ズルいという言葉自体は、ネガティブな響きがあるかもしれない。しかし、それをビジネスで上手に活用すればユニークな長所にもなり得る。 もちろん法を犯したりすることや、人を傷つける事は許されないが、それ以外の部分では、自分たちが持つユニークなアドバンテージを最大限活用する事で、競合にはマネができにくい価値が提供できるようになる。 アメリカでは美徳とされるアンフェア・アドバンテージ こちらアメリカでは、通常何かを決める際にはそれが”フェア”であるかが重要視される。一方で、これが経営のフィールドになると、逆の論理が良しとされる事が多い。 例えばスタートアップのピッチにおける質疑の際に「君たちのアンフェア・アドバンテージは?」と聞かれているシーンをよく見かける。これは、そのチームが、自分たちにしか出来ないような”ずるい優位性”や”裏技”を持っているのか?という意味。 どれだけ素晴らしいサービスを作ったとしても、簡単に真似されたりする場合、その会社の競争優位性が下がってしまうため、何かしらマネのできないようなズルいアドバンテージを持ち合わせている必要がある。 シリコンバレーが評価するのは優秀よりユニークな人 なぜシリコンバレーの地域がここまで長い期間で世界から注目されているのか?恐らくその1つの理由は、この地域にしかいないようなユニークな人材が世界中から集まってくるからだろう。 世の中には、いわゆる優秀な人はいくらでもいるが、ユニークな人は少ない。そもそも少ないからユニークと定義されている。こと、会社の経営者となると、ジョブス然り、ザッカーバーグ然り、イーロン・マスク然り、彼らの武器はそのユニークさにある。 彼らは、他の人には持ち合わせていない視点や、強烈なファンベース、PayPalマフィアに代表される独自のネットワークを上手に活用する事で、マネのしづらいユニーク性を確保した。 そして、そのユニークさを活用して優秀なスタッフを束ねる事で、自分たちにしか持てないアンフェア・アドバンテージを作り出している。 ズルい作戦でのし上がった織田信長 実は日本でもこのズルい戦略で運命を切り開いた人がいる。織田信長はまだ弱小大名だった頃、拡大勢力の今川義元を奇襲攻撃で討ち取った。総勢2万5千の今川軍に対して織田軍は数千の規模。誰の目から見てもどちらが勝つかは明白だった。そんな完全状況でも織田信長が勝った。 どのようにして?今川の兵を散らせて、義元を横から奇襲するという、ズルい作戦を取ったらからである。でも、戦いの場ではそれもアリな戦略。その後信長は一気にその勢力を全国へと広げていった。これはビジネスという戦場でも同じ事が言える。 意外なところに転がっているアンフェア・アドバンテージ ちなみにこのアンフェア・アドバンテージは、決して難しい事である必要はなかったりもする。例えば、重要な人物へのコネを持っていたり、すでに多くのファンを抱えていたり、父親が大統領だったり、ルックスの良い社員を入れて営業成績を上げたり、などの方法がある。 また、シリコンバレーの多くのスタートアップはかなりの赤字を出しながらも成長を続ける。Uberだって、WeWorkだって、年間数千億円規模の赤字だったりする。これは、大規模な投資を受けているので、無理に日銭稼ぎに走る必要がない。そうなってくると、赤字でもなんでも、思いっきりユーザー獲得にぶっこむ事が可能になる。これもかなりのズルいアドバンテージである。 重要なのは、コネでも家柄でも、バックグラウンドでも、資金力でも、特殊能力でも、戦わなくてもすむこと。もしくは、”こいつにとは戦ってもしかたがない”と思わせる事。言い換えると、どれだけ”不戦勝”で勝っていけるかが生き残りのポイントとなってくる。 ズルいと言われる回数がバロメーターになる もしかしたら、このアンフェア = “ズルい”アドバンテージをどれだけ持てるかが、その会社の寿命や成長に深く関わってくるのではないかと思う。特に差別化が難しくなってきている現代においては、常にユニークであり続ける事が大きなアドバンテージになってくる。 そのためには、定期的に “これを他の人がやったらどうなるか?” や、 ”今やっていることは他の会社でも出来てしまうだろうか?” を考える。そして、もし少しでも戦いになりそうであれば、やり方やサービス自体をアップデートしていく。それも、自身が持つアンフェア・アドバンテージを最大活用して。 ビジネスや仕事ではどれだけ”アンフェア”なアドバンテージを見つけ、それを活用出来るかが勝負になる。そのバロメーターの1つが、周りの人たちにどれだけ「それ、ズルいよ」と言われるかだと思っている。 横並び主義の日本だと気付きづらい自分のアドバンテージ ここアメリカでは当たり前のズルさの活用が、日本の社会だと意外と気づきづらい。もしくはあまり良いとされてない事が多い。 人と違う事をする人をあまり評価しない風潮の日本の中では、無意識のうちに”フェア”な戦い方をしようとし、なぜか同じ領域でビジネスを展開しようとする会社が後を絶たない。 例えば、ガラケーが一般的だった時代は、日本の各メーカー、キャリアが似たり寄ったりの商品とサービスを提供していた。そんな頃、Appleは全く異なるタイプの携帯電話の開発に注力していた。自分たちのアンフェア・アドバンテージである、iTunesのインフラを最大活用して。 これもまた優れたものを作る前に、まずユニークな視点を重要視するシリコンバレー的な発想だと感じる。 逆にアンフェア・アドバンテージを見つけるないと、企業は競合他社との激しい競争に巻き込まれる。その結果として、長時間重労働を強いられる事になってしまう。 日本のバックグラウンドをアンフェア・アドバンテージにしたショー・コスギ 「君もPerfect Body」でお馴染みのケイン・コスギの父親であり、ハリウッドスターのショー・コスギは、生まれ育った日本で会得した空手の経験を活かした事で、他の俳優にはマネのできない忍者という役柄で大人気を集めた。 これが日本国内であれば、空手ができる人は多くいるし、忍者の役もそこまで特別ではない。しかし、その当時、ハリウッドで空手の動きを使って忍者役ができる人はわずかで、ショー・コスギは自身のアンフェア・アドバンテージを最大限活用したと言えるだろう。 それまでの彼は他の俳優と同じオーディションを受け、英語のハンデもあり、ことごとく落ちていたという。一時は生活にも困窮していたが、自分しかできない忍者というキャラクターを確立した事で大成功を収めた。 優秀である必要は無いが、ユニークである必要はある ダーウィンの進化論によると、最も強いものが生き残るのではなく、最も環境に順応した種族が生き残る。言い換えると「強い者」が残るのではなく、「適した者」が残るという事。 これは、ビジネスの世界でも同じで、モノが溢れ、テクノロジーが発達した現代においては、よりユニークな価値が出せる企業や人材が生き残るのではないかと感じてる。 そういった意味だと、平均値の中にいるよりも、アウトライヤー=ハズレ値である方が、よりサバイバル能力が高いのかもしれない。この概念は、以前の「世界を変えているのは頭の良い不良たちだ」で紹介されている概念にも通じるところがある気がする。 信頼できるスタッフを揃えてユニークなビジョンを語れ こうなってくると、起業家にとって重要な役割は、自分たちのアンフェア・アドバンテージを定め、優秀なスタッフを集め、ビジョンを語ることになってくる。 以前、長年経営コンサルティングを提供している、とあるメンターの方から下記のようなアドバイスを頂いた。 “私には君の会社の社長はできない。なぜなら私は優秀かもしれないが、君は唯一無二の存在であり、ビジョナリーであるからだ。お金儲けの事は信頼出来るスタッフに任せて、自分自身はひたすら自分たちが実現したいビジョンを叫び続けろ。” ちなみに、自分はまだまだこれが出来ていないので、今後の大きな課題でもある。 自己分析: btraxのアンフェア・アドバンテージ では、サンフランシスコという、世界でトップレベルにコストと競争が激しい街で生き残るためのbtraxのアンフェア・アドバンテージは何であるのか? これを機会に少し冷静に自己分析してみた。 1. ロケーション まずは、ロケーション的なアドバンテージ。もともとサンフランシスコでスタートした会社であり、その当時は現在ほど地価が高騰していなかったこともあり、2006年の時点より現在のオフィスビルに入居している。 ここはSOMAと呼ばれるスタートアップの中心地であり、これ以上ないぐらいの立地。もし今から借りようとしてもなかなか物件が見つかりにくいのではないかと思う。 […]

LINEはガラパゴス?世界のSNSデータからみる日本依存のリスク

日本で最もよく使われるSNSとして知られるLINEだが、実はここアメリカでは全くと言って良いほど使われていないということをご存知だろうか。 LINEの日本国内の月間アクティブユーザー(以下MAU: Monthly Active Usersの略)は約8,000万人なのに対し、アメリカ国内のMAUはなんとたったの357万人ほどである。これは人口割合でいうと、わずか1.1%程度に留まっている。 日本のスマートフォンユーザーは現在約7,722万人(2017年の日本総人口 x 2017年個人におけるスマートフォンの保有率より計算)。LINEのMAU8,000万人という数は、国内における全スマートフォンユーザー数よりも多い数字である。これは、ガラパゴスケータイやPCからLINEを使っている人もいるのが理由。とにかく国内では、LINEは驚異の普及率であることがわかるだろう。 一方で、アメリカのスマートフォンユーザーに対する普及率はたったの約1.34%という圧倒的な浸透率の差がある。 関連記事:「【アメリカでは誰もLINEを使わない?】国別にみる若者が使うアプリの違い5選」 ↑ SNSごとの日本国内とグローバルでのユーザー数と人口に対しての利用シェアの差 (参照: 日本からグローバルなプロダクトが生まれにくい5つの理由) ちなみに筆者もアメリカ留学時代に、ヨーロッパ、中東、南米、アフリカなど、世界各地の学生たちとLINEを交換しようと試みたことはあるが、大半の学生がLINEの存在自体すら知らなかった。代わりに使っていたのはFacebook MessengerやSnapchatだ。 日本では普及率が高く、世界では広まっていない。これは言い換えてみると、LINEは日本に依存するところが大きいということだ。 そこで今回は、LINEがいかに日本で普及しているのか、そして他の競合SNSと比べ、どの程度一国への依存度が高いのかということを紹介したい。ひいては、日本市場の今後を考えると、LINEの今の状態は、成長の限界とリスクが見えてくる。 ↑ 世界市場におけるSNS別アクティブユーザー数 日本で圧倒的な普及率・利用率を誇るLINE みなさんもご存知だとは思うが、LINEは日本国内で一番使われているSNSだ。 下記のグラフの通り、日本でのMAUを世界の競合SNSと比較しても、その違いは明らかである。MAU2位であるTwitterと大きく差が開いており、LINE一強という印象を受ける。 参照:「TechCrunch」、「Facebook News」、「MarkeZine」 LINE PayやLINE BRAINなど、日本におけるサービス拡大の様子からも、いかに日本を重要なマーケットとしているかが伺える。 事実、LINEにとって日本は売上的にもメインのマーケットだ。企業全体として、売上高は順調に伸びているのだが、その売上の内訳は日本国内からが75%を占めるまでになっている。 「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」から転載 言い換えれば、この状態は日本市場に依存しすぎているということ。そしてその日本市場というのは、今後少子高齢化・人口減少が進み、2050年にはGDP7位にまで下がると言われており、このマーケット1つに依存することはすなわち、成長の限界とリスクを示しているのである。 ちなみに日本国外のLINEユーザーとしては、タイ、台湾、インドネシアに多い。LINEユーザーの4割強は日本からではあるものの、これら3ヶ国だけでも同じくらいの割合でユーザーが根付いている。世界展開ができているようにも思えるが、どの国もFacebookに苦戦しており、日本市場ほど優位に立ててないのが実情だ。インドネシアに至っては、ここ2年の間にMAUが半減している。 ↑ 主要4ヶ国=日本、タイ、台湾、インドネシアがしめるLINEのMAU割合 参照:「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「uniad」のデータを元に図を作成 ↑ 主要3ヶ国の中でも、日本市場のみが、Facebookと圧倒的に差をつけて浸透していることがわかる 参照:「Digital 2019 Thailand (January 2019)」、「statista」、「Digital 2019 Taiwan」、「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「Digital 2019 Indonesia」のデータを元に図を作成 世界市場でみるとほとんど使われていないLINE では、世界規模でみたときに、どのようなソーシャルメディアが多く使われているのだろうか。世界のSNSユーザー統計データから、グローバル市場を見てみよう。 参照: 「Most famous social network sites worldwide as of April 2019, ranked by number of active users (in millions)」*Facebook Messenger除く ご覧いただいてわかる通り、ここにLINEの名前はなく、世界20位となっている。個人情報の取り扱いで多くの問題を起こしてきたFacebookだが、その人気を落とす事はなく未だに世界最大のSNSとして市場に君臨している。Facebookは23億2000万人という圧倒的なMAU数を誇っており、群を抜いた使用率でもあるのだ。 次にアメリカ国内でのSNS利用率をみる。 こちらにもトップ5位以内にLINEの名前はなく、11位となっている。 ちなみに日本ではFacebookの若者離れが囁かれているが、アメリカでは18歳から24歳のユーザーが全体の17%、25歳から34歳のユーザーが25%、そして35歳から44歳のユーザーが18%となっており、彼らが全体の56%を占めている。世界的に見ても、18歳から34歳の男女がMAUの約6割を占めており、Facebookのオーディエンスは若年層という傾向だ。 FacebookやInstagram、Twitterなど多くのSNSはアメリカの企業であるため、自国でのプレゼンスが高くなることはあるのかもしれない。それでも世界的に浸透しており、自国から遠く離れた、文化も全く異なる日本でも頭角を現しはじめているといったことは、LINEがまだできていない、「世界進出の成功例」ではないだろうか。。 さらに世界・アメリカ・日本の人口におけるSNS普及率をSNS別でみてみると、LINEがいかに日本依存しているかがより明確にお分かりいただけると思う。 補足:実際には、全世界の約66%しかスマートフォンを持っておらず、コンピューター普及率は約45%ほどだと言われているので、母数を全世界でにしたときに各SNSの普及率は基本的に低くなる。 やはり、LINEは日本国内で圧倒的な普及率を誇っている。ここまで市場ごとに差が開いているSNSは他にない。 一方で、LINE以外のSNSは1国のみに頼ることなく、日本や世界でも健闘をしている。特にTwitterは日本での浸透率も高い。実はカリフォルニア発祥のTwitterは、出身国であるアメリカ以上に、日本で絶大な人気を獲得している。また、Twitterはアメリカからの売上は約54%にとどまっており、残りは海外から獲得している。 Facebookも母国であるアメリカでの利用率が1番多いものの、LINEほどの差はない。彼らの収益率もアメリカ・カナダエリアからの収益は全体の半分以下となっている。どちらもLINEのように、売上の75%が1ヶ国からというようなことにはなっていない。 (Twitterの売上元割合 – 参照:2019 Q1 Selected Company Metrics) (Facebookの売上元割合 – 参照:Facebook Q4 2018 Report) 一国集中のLINEと世界に向かう競合SNS。成長率の差は明らかに 日本で圧倒的な利用率を誇るLINEと、自国を抜け出し、世界でも普及されてきている他の競合SNS。それぞれのマーケットの大きさから、当たり前の結果ではあるかもしれないが、それぞれ、MAUの伸び率には差が出てきている。上のグラフは、各SNSのリリースから毎年の月間アクティブユーザー数で表したものである。 LINEは他SNSより比較的若い方ではあるが、7年目の他のSNSをみてもその差は歴然。WhatsAppに関しては爆発的な成長が伺える。また、FacebookとInstagramの継続的な成長も見て取れる。 日本人気はレバレッジにならず、出遅れたLINEのアメリカ進出 とはいえ、LINEは世界市場に対して何もしていなかった訳ではない。2016年にはアメリカ市場にも進出をした。その際、アメリカ市場のニーズを正確に把握していなかったことや、広報体制もままなっていなかったことなどはIPOを行う前から批評の対象となっていた。 日本の「かわいい」を全面に押し出したメッセージアプリが現地の文化を超えてアメリカの消費者たちに浸透するのは難しいだろうといった予想が多かったのも事実である。 それに加え、LINEが最初に上場計画を出した2014年と、実際に上場を果たした2016年とでは市場の状況が一変してしまったというのも大きな要因の一つだったであろう。その2年の間にSNSは発展の一途を辿り、全世界のSNS市場が一斉に開拓されていったのだ。 例えば アメリカ国内で約6500万人しかいなかったFacebookユーザーが1億人を突破 全世界のFacebook messengerのMAUが2000万人から1億人へと激増 4300万人しかいなかったWhatsAppのMAUが1億人へと倍増 などの変化が顕著で、その後のLINEの成長に大きな足枷となったということは想像に易い。IPOこそ成功を収めたものの、サービスを現地に対応しきれず、既に市場を独占していた競合から上手く差別化できなかったといったところではないだろうか。 まとめ 日本では圧倒的存在感を見せるLINE。だが、経済が縮小傾向にある日本市場に依存するということは、その成長にも少なからず悪影響を受けることは当然だろう。 そしてLINEのように「日本だけで調子がよく、日本におけるサービス展開に注力し、さらに日本への依存度が増す」といった状況が当てはまる企業・サービスも多いのではないだろうか。 それに対して、世界市場では苦戦を強いられている。世界戦で勝ち抜くのは容易なことではないが、上記の点からすると、むしろこちらの方が企業成長・存続における重要課題のように思える。 そうなってくると、なぜ最初から世界をマーケットにしたサービス開発・改善をしないのか。たとえ日本を狙って日本で勝てても、成長の限界が見えている。LINEがたった2年の間もたついていたら、世界はあっという間に変わっていて、より厳しい状況となった。 関連記事:どんなに頑張ってもお前がカバー出来るのは世界の2% […]

LINEはガラパゴス?世界のSNSデータからみる日本依存のリスク

日本で最もよく使われるSNSとして知られるLINEだが、実はここアメリカでは全くと言って良いほど使われていないということをご存知だろうか。 LINEの日本国内の月間アクティブユーザー(以下MAU: Monthly Active Usersの略)は約8,000万人なのに対し、アメリカ国内のMAUはなんとたったの357万人ほどである。これは人口割合でいうと、わずか1.1%程度に留まっている。 日本のスマートフォンユーザーは現在約7,722万人(2017年の日本総人口 x 2017年個人におけるスマートフォンの保有率より計算)。LINEのMAU8,000万人という数は、国内における全スマートフォンユーザー数よりも多い数字である。これは、ガラパゴスケータイやPCからLINEを使っている人もいるのが理由。とにかく国内では、LINEは驚異の普及率であることがわかるだろう。 一方で、アメリカのスマートフォンユーザーに対する普及率はたったの約1.34%という圧倒的な浸透率の差がある。 関連記事:「【アメリカでは誰もLINEを使わない?】国別にみる若者が使うアプリの違い5選」 ↑ SNSごとの日本国内とグローバルでのユーザー数と人口に対しての利用シェアの差 (参照: 日本からグローバルなプロダクトが生まれにくい5つの理由) ちなみに筆者もアメリカ留学時代に、ヨーロッパ、中東、南米、アフリカなど、世界各地の学生たちとLINEを交換しようと試みたことはあるが、大半の学生がLINEの存在自体すら知らなかった。代わりに使っていたのはFacebook MessengerやSnapchatだ。 日本では普及率が高く、世界では広まっていない。これは言い換えてみると、LINEは日本に依存するところが大きいということだ。 そこで今回は、LINEがいかに日本で普及しているのか、そして他の競合SNSと比べ、どの程度一国への依存度が高いのかということを紹介したい。ひいては、日本市場の今後を考えると、LINEの今の状態は、成長の限界とリスクが見えてくる。 ↑ 世界市場におけるSNS別アクティブユーザー数 日本で圧倒的な普及率・利用率を誇るLINE みなさんもご存知だとは思うが、LINEは日本国内で一番使われているSNSだ。 下記のグラフの通り、日本でのMAUを世界の競合SNSと比較しても、その違いは明らかである。MAU2位であるTwitterと大きく差が開いており、LINE一強という印象を受ける。 参照:「TechCrunch」、「Facebook News」、「MarkeZine」 LINE PayやLINE BRAINなど、日本におけるサービス拡大の様子からも、いかに日本を重要なマーケットとしているかが伺える。 事実、LINEにとって日本は売上的にもメインのマーケットだ。企業全体として、売上高は順調に伸びているのだが、その売上の内訳は日本国内からが75%を占めるまでになっている。 「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」から転載 言い換えれば、この状態は日本市場に依存しすぎているということ。そしてその日本市場というのは、今後少子高齢化・人口減少が進み、2050年にはGDP7位にまで下がると言われており、このマーケット1つに依存することはすなわち、成長の限界とリスクを示しているのである。 ちなみに日本国外のLINEユーザーとしては、タイ、台湾、インドネシアに多い。LINEユーザーの4割強は日本からではあるものの、これら3ヶ国だけでも同じくらいの割合でユーザーが根付いている。世界展開ができているようにも思えるが、どの国もFacebookに苦戦しており、日本市場ほど優位に立ててないのが実情だ。インドネシアに至っては、ここ2年の間にMAUが半減している。 ↑ 主要4ヶ国=日本、タイ、台湾、インドネシアがしめるLINEのMAU割合 参照:「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「uniad」のデータを元に図を作成 ↑ 主要3ヶ国の中でも、日本市場のみが、Facebookと圧倒的に差をつけて浸透していることがわかる 参照:「Digital 2019 Thailand (January 2019)」、「statista」、「Digital 2019 Taiwan」、「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「Digital 2019 Indonesia」のデータを元に図を作成 世界市場でみるとほとんど使われていないLINE では、世界規模でみたときに、どのようなソーシャルメディアが多く使われているのだろうか。世界のSNSユーザー統計データから、グローバル市場を見てみよう。 参照: 「Most famous social network sites worldwide as of April 2019, ranked by number of active users (in millions)」*Facebook Messenger除く ご覧いただいてわかる通り、ここにLINEの名前はなく、世界20位となっている。個人情報の取り扱いで多くの問題を起こしてきたFacebookだが、その人気を落とす事はなく未だに世界最大のSNSとして市場に君臨している。Facebookは23億2000万人という圧倒的なMAU数を誇っており、群を抜いた使用率でもあるのだ。 次にアメリカ国内でのSNS利用率をみる。 こちらにもトップ5位以内にLINEの名前はなく、11位となっている。 ちなみに日本ではFacebookの若者離れが囁かれているが、アメリカでは18歳から24歳のユーザーが全体の17%、25歳から34歳のユーザーが25%、そして35歳から44歳のユーザーが18%となっており、彼らが全体の56%を占めている。世界的に見ても、18歳から34歳の男女がMAUの約6割を占めており、Facebookのオーディエンスは若年層という傾向だ。 FacebookやInstagram、Twitterなど多くのSNSはアメリカの企業であるため、自国でのプレゼンスが高くなることはあるのかもしれない。それでも世界的に浸透しており、自国から遠く離れた、文化も全く異なる日本でも頭角を現しはじめているといったことは、LINEがまだできていない、「世界進出の成功例」ではないだろうか。。 さらに世界・アメリカ・日本の人口におけるSNS普及率をSNS別でみてみると、LINEがいかに日本依存しているかがより明確にお分かりいただけると思う。 補足:実際には、全世界の約66%しかスマートフォンを持っておらず、コンピューター普及率は約45%ほどだと言われているので、母数を全世界でにしたときに各SNSの普及率は基本的に低くなる。 やはり、LINEは日本国内で圧倒的な普及率を誇っている。ここまで市場ごとに差が開いているSNSは他にない。 一方で、LINE以外のSNSは1国のみに頼ることなく、日本や世界でも健闘をしている。特にTwitterは日本での浸透率も高い。実はカリフォルニア発祥のTwitterは、出身国であるアメリカ以上に、日本で絶大な人気を獲得している。また、Twitterはアメリカからの売上は約54%にとどまっており、残りは海外から獲得している。 Facebookも母国であるアメリカでの利用率が1番多いものの、LINEほどの差はない。彼らの収益率もアメリカ・カナダエリアからの収益は全体の半分以下となっている。どちらもLINEのように、売上の75%が1ヶ国からというようなことにはなっていない。 (Twitterの売上元割合 – 参照:2019 Q1 Selected Company Metrics) (Facebookの売上元割合 – 参照:Facebook Q4 2018 Report) 一国集中のLINEと世界に向かう競合SNS。成長率の差は明らかに 日本で圧倒的な利用率を誇るLINEと、自国を抜け出し、世界でも普及されてきている他の競合SNS。それぞれのマーケットの大きさから、当たり前の結果ではあるかもしれないが、それぞれ、MAUの伸び率には差が出てきている。上のグラフは、各SNSのリリースから毎年の月間アクティブユーザー数で表したものである。 LINEは他SNSより比較的若い方ではあるが、7年目の他のSNSをみてもその差は歴然。WhatsAppに関しては爆発的な成長が伺える。また、FacebookとInstagramの継続的な成長も見て取れる。 日本人気はレバレッジにならず、出遅れたLINEのアメリカ進出 とはいえ、LINEは世界市場に対して何もしていなかった訳ではない。2016年にはアメリカ市場にも進出をした。その際、アメリカ市場のニーズを正確に把握していなかったことや、広報体制もままなっていなかったことなどはIPOを行う前から批評の対象となっていた。 日本の「かわいい」を全面に押し出したメッセージアプリが現地の文化を超えてアメリカの消費者たちに浸透するのは難しいだろうといった予想が多かったのも事実である。 それに加え、LINEが最初に上場計画を出した2014年と、実際に上場を果たした2016年とでは市場の状況が一変してしまったというのも大きな要因の一つだったであろう。その2年の間にSNSは発展の一途を辿り、全世界のSNS市場が一斉に開拓されていったのだ。 例えば アメリカ国内で約6500万人しかいなかったFacebookユーザーが1億人を突破 全世界のFacebook messengerのMAUが2000万人から1億人へと激増 4300万人しかいなかったWhatsAppのMAUが1億人へと倍増 などの変化が顕著で、その後のLINEの成長に大きな足枷となったということは想像に易い。IPOこそ成功を収めたものの、サービスを現地に対応しきれず、既に市場を独占していた競合から上手く差別化できなかったといったところではないだろうか。 まとめ 日本では圧倒的存在感を見せるLINE。だが、経済が縮小傾向にある日本市場に依存するということは、その成長にも少なからず悪影響を受けることは当然だろう。 そしてLINEのように「日本だけで調子がよく、日本におけるサービス展開に注力し、さらに日本への依存度が増す」といった状況が当てはまる企業・サービスも多いのではないだろうか。 それに対して、世界市場では苦戦を強いられている。世界戦で勝ち抜くのは容易なことではないが、上記の点からすると、むしろこちらの方が企業成長・存続における重要課題のように思える。 そうなってくると、なぜ最初から世界をマーケットにしたサービス開発・改善をしないのか。たとえ日本を狙って日本で勝てても、成長の限界が見えている。LINEがたった2年の間もたついていたら、世界はあっという間に変わっていて、より厳しい状況となった。 関連記事:どんなに頑張ってもお前がカバー出来るのは世界の2% […]

【図解】バリュープロポジションの定義とキャンバスの使い方を解説!

皆さんが販売・開発されているサービス・商品について、顧客がなぜ、購入するのか、しっかりと答えられますか?その理由について、顧客の視点にたち、深掘りできているでしょうか。
サービス開発をする上で欠かせないのが、あなたの提供する価値、バリュープロポジションです。バリュープロポジションが、顧客の本質的なニーズを捉えていると、彼らに深く刺さるサービスが生まれるということになります。
一方で、バリュープロポジションという言葉を知ったばかり、重要性は認識しているけど、使い方などもう少し理解を深めたいという方も多…

「日本式」ピッチあるある5つ:グローバルに通用するためのコツとは

イノベーションの支援をしているbtraxでは、日本企業のエースまたは起業家たちのスタートアップピッチ(主にスタートアップが投資家に向けて自分たちのビジネスアイデアを発表し、投資にこぎつけるためのプレゼンスタイルの売り込みを指す)を指導することが多々ある。
筆者もその指導者の一人であり、イノベーションブースターと言うプログラムを通じて、日本企業のエースたちにデザイン思考やリーンスタートアップの考え方を叩きこみ、短い時は2週間、長ければ8週間かけてスタートアップ風のビジネスプレゼン、ピッチを作らせ、指導…

Youはなぜ面倒な起業家なんかに?

とある時にオフィスで学生バイトのエンジニアの男の子から聞かれた質問。
なぜわざわざ面倒な起業家になったんですか?
そう、今の時代、就職や起業なんてしなくても、フリーランスや、副業、パラレルキャリア、アフィリエイト、インフルエンサー、YouTuber、そしてUberドライバーまで、生きてく方法はいくらでもある。
主に個人で複数のプロジェクトを請け負っている彼からしてみると、毎日のように人やお金をはじめ、多くの課題に直面し、対応していかなければならない経営者という仕事は割りに合わないように感じたらしい。…

日本からユニコーン企業を生み出すために必要な5つのポイント

先日、日経新聞オンライン版にて「スタートアップ倍増へ 政府、拠点都市で規制緩和」という記事を読んだ。こちらによると、日本政府は
企業価値が10億ドルを超える未上場企業「ユニコーン」を各拠点都市に5社以上つくる目標も掲げる。
という。
これには漠然とした違和感を感じた。というのも、多くのユニコーンがひしめき合うサンフランシスコやシリコンバレーの感覚だと、ユニコーンは産もうと思って産まれるものではない、からである。
それはまるで、最初は馬だったと思って頑張ってたら、いつの間にかツノが生えてきた感覚に近い…

シリコンバレーの次はシリコンアレー!NYの特徴と注目の理由

アメリカのスタートアップメッカはシリコンバレーだけではない。アメリカ東海岸はニューヨークを中心に広がる、シリコンアレーエリアにも注目してほしい。そこにはシリコンバレーとは異なる特徴と独自の成長がある。
シリコンアレーとは
シリコンアレー(以下SA)は、ニューヨークのスタートアップが盛況なエリアを表すニックネームである。西海岸の北カリフォルニアを中心に広がるシリコンバレー(半導体の素材、シリコンと谷・盆地のバレー)に対して、東海岸ではシリコン「アレー(路地・小道)」でスタートアップやテクノロジーの広が…

日本からグローバルなプロダクトが生まれにくい5つの理由

Webやモバイルアプリを中心に、現在世界で利用されてるサービスの中に”日本製”のものはほとんどない。GAFAを中心とした、アメリカ西海岸発のものや、BeautyPlusやTikTokなどの中国系のプロダクトが多い。
そして実は日本国内で多く使われているプロダクトも、世界的に見るとほとんど使われていないケースも少なくはないのである。
SNSを例にとってみよう。下記の表は、人気のSNSのリストであるが、日本国内シェア60%を超えているLINEでも、実は世界的に見るとそのシェアは2.8%にしか及ばず、他の…

【インスタ, ツイッター, エアビー等】サイドプロジェクトから生まれたプロダクトたち

今では誰もが知る有名なサービスであっても、本来作ろうとしていたものではなく、空いた時間に趣味の延長線上、いわゆる”課外活動”で生み出されたケースが意外と多いことがある。 特にスタートアップ企業などは、最初はなにをやるかがはっきり決まっていない事も多く、途中で方向転換 (ピボット) する事も珍しくない。その結果、当初予定していたプロダクトとは全く別のものが大ヒットを生み出した事例も多々存在する。 参考: 小さく始める事の重要さ【Amazon, Facebook, YouTube等】大人気サービスの初期バージョンとは メインよりヒット率の高い!? サイドプロジェクト そんな事もあり、シリコンバレーのアクセレレーターの代表的存在の、Y Combinatorでは、応募チームに対して、メインのプロダクトに加え、サイドプロジェクトの内容も聞くようにしている。実際にサイドプロジェクトが評価され、合格したスタートアップもあるという。 我々が日本企業向けに提供しているプログラムでも、メインの事業プランとは別に参加者の一人が”勝手に”作っていたサービスが注目を集め、新規事業に結びついたケースも存在する。 今回は、実際の事例を交えながらそのプロダクトが生み出された経緯や、なぜサイドプロジェクトの方が上手く行く可能性が高いかなどを説明する。今回紹介するサイドプロジェクトから生み出されたプロダクトは下記の通り。 Twitter Airbnb Instagram Slack GitHub Groupon Twitch WeWork Unsplash Fond Basecamp Lamborghini Miura 任天堂ゲームボーイ 元々はサイドプロジェクトから始まった著名サービス では、実際にどのようなサービスやプロダクトが課外活動から生み出されたのかを紹介する。 twitter 今では誰もが知っている存在になったtwitterは、ポッドキャスティング系のサービスを提供していたOdeoというスタートアップの社内スタッフ向けプラットフォームとして始まった。 Odeoの創立時に入社したJack Dorsey (現Twitter CEO) が社内ハッカソンで生み出したアイディアを、CEOであるEvan WilliamsとCo-FounderのBiz Stoneが気に入り正式にプロジェクトを進め、リリース。従業員同士のつぶやきを中心に利用され始めた。 記念すべき初のツイートは2006年3月21日にJack自身による”setting up a twttr.”というもの。その当時はtwttrと呼ばれてた。彼はその日の午後に”Inviting coworkers”とツイートし、従業員への利用を促した。 ↑ Jack Dorseyによる記念すべき初ツイート しかし、肝心のOdeoの人気が伸びない状況下でのサイドプロジェクトリリースに対し、当時のTechCrunchには下記 (和訳) のように書いている。 ”メインのプロダクトであるOdeoはデザインが良い事以外は魅力が全くない。それなのにそれを改善もせずに、サイドでtwttrなるサービスを作るなんて、この会社の株主はどう感じているのだろうか?” その後、2007年のSXSWでの紹介がきっかけでtwitterの人気に火が付き、最終的にはOdeoを捨て、twitterをメインのサービスにし、上場までたどり着いた。 参考:【インタビュー】Biz Stone – Twitter, Co-founder Airbnb 2007年、サンフランシスコのアパートに住む2人の若者が、スタートアップとして何をやってもうまくいかないので、家賃が払えない状態におちいっていた。Joeが、当時ルームメイトであったBrianに送った一通のメールがAirbnbを生み出すきっかけとなった。 その内容は、近いうちに大きな規模のデザインカンファレンスが市内で開催される。それを狙って、家賃を稼ぐためにそれに参加するデザイナーを安い値段で下宿させてあげたらどうだろうか、というもの。それもアパート内の空いているスペースにエアマットレスを置くだけというカジュアルさ。 結果、2名を一人$80づつで滞在させた。他のサービスを作りながら、家賃を捻出するための苦肉の索であったが、その際の体験がきっかけで、これをサービスにすることにしたのがAirbnbの原型。その後、SXSW向けにサービスをリリースするがユーザーはわずか2名、その一人はBrian自身であった。 そんな事もあり、数々の投資家に投資を断られ、収益もない中、大統領選挙に合わせた候補者のイラスト入りのシリアルを販売。そっちの方が売れてしまい、迷走が続く。 しかし、その後根気よくユーザーと対話をし、サイトとコンテンツの改善を続け、現在では世界トップレベルのユニコーン企業までに成長した。 参考: シリコンバレーのキーパーソン3人が語る、次世代イノベーションとは Instagram インスタは元々Burbn (バーボン) というHTML5をベースにしたチェックイン型ソーシャルアプリとしてリリースされた。その当時はチェックインアプリとしてFour squareが人気を集めており、人気を集めるのに苦戦をしていた。 同社のファウンダーでもあり、元Odeoでインターンをした事もあるKevin Systromは、ユーザーのアプリの利用方法に1つの特殊な点があることに気がついた。それは、チェックインアプリにも関わらず、チェックインもせずに写真だけアップしているユーザーが多いということ。 それも、どうやら写真をアップする際のフィルターに人気の秘密があると突き止め、勇気を持ってBurbnを終了させ、Instagramとして作り変えた。当時は写真を保管するアプリとソーシャルアプリは多く存在していたが、その2つを上手に掛け合わせ、それもユーザーがフィルターを選んでいる最中にアップを行うことで、スムーズな利用体験を提供した。 それにより、多くのユーザーからの支持を集め、最終的にスタッフがまだ12人、収益がほとんど上がっていない状態にも関わらず、Facebookによって$10億ドルで買収されることとなった。 ちなみに、その当時のInstagramが入っていたオフィスは、元twitterのオフィス。そこに引っ越す前、はDogpatch labsというサンフランシスコ湾に面したコワーキングスペースだった。このコワーキングスペースに当時のbtraxインターンである土屋尚史と一緒に訪問したことがきっかけとなり、彼はのちにGoodpatchを創業した。 参考:「サンフランシスコへの出発が1日おくれていたら、Goodpatchはなかった。」【インタビュー】Goodpatch Inc. CEO 土屋尚史氏 ↑ 初期の頃のInstagramチーム Slack 写真共有サービスのFlickrのファウンダーでもあるStewart Butterfieldが、その後オンラインゲームのスタートアップを立ち上げた。数年たっても45人程度のユーザーにしか利用してもらえず、失敗。しかし、その当時社内のチーム向けに自社開発したコミュニケーションツールを正式プロダクトとしてリリースしたのが、現在のSlackにつながる。 2013年8月に招待制プレビュー版をリリースし、初日だけで8,000の招待リクエストを獲得。2週間でその数は15,000まで膨れ上がった。その後、プレビュー版に登録したユーザーを順次サービスに招待し、行動を観察してサービスを改善した。それを何度も繰り返すことで、多くのユーザーに愛されるプロダクトに成長した。 参考: Slack成長物語 〜世界のユーザーに愛されるプロダクト舞台裏〜 GitHub エンジニア向けソフトウェア開発のプラットフォームであるGitHubも、元々はサイドプロジェクトとしてスタートした。ファウンダーであるChris WanstrathとPJ Hyettはその当時、テクノロジー系プロダクトのレビューサイト、CNET向けのページ作成をメインの仕事としていた。 その際、オープンソースのコードアップデートのしにくさに大きな不便を感じ、仕事の後や週末を利用して自分たちの使いやすいリポジトリを開発。のちに一般公開することで、GitHubが生まれた。 その後GitHubはエンジニアを中心に人気を集め、2017年の6月にMicrosoftによって20億ドルで買収されることとなった。 参考: CEOが自ら語った「イノベーションを起こすためのGithubの哲学」 Groupon ファウンダーのAndrew Masonが、携帯電話の通話プランの解約に手こずっていた事をヒントに、同じ目的のユーザーを集め、目標達成のために一緒に活動を行うためのソーシャルプラットフォーム, “The Point”を立ち上げた。 複数のユーザーが集まれば一人ではできないことが達成できるのではないかというのがコンセプトであったが、とあるユーザーグループが、集団で商品のバルク購入をすることで割引を受ける活動をしているのに気づく。 そこから、共同購入クーポンサイトを作り、地元のシカゴを中心にリリース。2008年のリーマンショックの影響で、多くの消費者が節約傾向にあったタイミングも手伝い、大きな成功を成し遂げた。 Twitch ゲーム実況プラットフォームのTwitchは、元々Justin.tvというスタートアップのサイドプロジェクトとして始まった。Justin.tvは、ユーザー同士がストリーミング動画をアップするプラットフォームで、YouTubeとUstreamを掛け合わせたようなサービスであった。 当時はWebで動画を見ることがまだまだ一般的ではなかったため、配信側のユーザーがなかなか集まらなかった。そこで、ファウンダーのJustin自身が私生活の様子や、体を張った突撃取材動画を流したりしていた。 そんな中で、オンラインゲーム好きのJustin.tvのスタッフは課外活動として、週末にオフィスでスタートアップ対抗World of Warcraftを定期的に開催していた。そして、その様子をストリーム中継したところ一気にアクセスが集まり、それをヒントにユーザーがゲーム中継をストリームすることに特化したTwitchを考案した。 […]

保険業界の常識を変える最新インシュアテックスタートアップ3選

生命保険や自動車保険など、保険は我々にとってとても身近なものであると同時に、検討から実際に使うまでのプロセスは複雑で、頭を抱えさせるものでもある。
保険はお金がかかるものだからこそ慎重に選びたいが、複雑であり、選んだ後もプランや支払いについて理解しきれず、損をした気分になる読者の方も多いのではないだろうか。
そんな悩みを解決するのが、インシュアテックのスタートアップだ。インシュアテックとはInsurance(保険)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語で、現在テクノロジーを活用した保険事業…

現代のスタートアップチーム構成における6つの役割とは

現代のスタートアップにおいて、どのようなチーム編成を行うのが良いのだろうか?組織と業務プロセスがしっかりと形成されている大企業と比べて、スタートアップのチームはかなり特殊である。
全員が攻めに徹する完全ぶっこみ型カミカゼチーム
そもそも、スタートアップとは「新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長とエクジットを狙う事で一獲千金を狙う人々の一時的な集合体」である。急成長を達成するには、じっくりと組織を醸成する余裕はない。
特に立ち上げ時からしばらくは、いわゆる「仕組み」というものはほ…

AI x 保険でユーザー体験を変えるフィンテックスタートアップ4選

AI(人工知能)の実用化が様々な分野で進められています。その中でも保険業界は特にAIとの相性が良く、AI導入に対する期待が大きくなっています。その理由の1つに、保険会社が抱える個人の体調情報や医事統計のデータをはじめとした、契約リスクを判断するための膨大な顧客情報データが関係しています。
AIは大量のデータを分析し、そこからデータに共通するパターンや傾向を導き出すことを得意としています。これにより、保険業界で扱われる大量のデータを人が管理して人が判断するという業務そのものが自動化されていくと考えられ…

なぜ日本の大企業にイノベーションチームが必要なのか?

最近では多くの日本企業が「イノベーション」を取り入れようとあれやこれやと試しているのが見られる。一方で言うは易し行うは難しと感じ始めている企業も多いのではないだろうか。今までの長い歴史や風習がある中で、自分たちだけで変わろうとするのはなかなか難しいことである。
btraxは今年で創業15年を迎える比較的若い会社だが、イノベーション創出のためにデザインを活用することを様々な業界のプロジェクトで行ってきた。しかも日本国内にとどまらず、サンフランシスコを中心としたアメリカでもサービスの提供をしている。
前…

ブランド拡大に役立つシェアリング小売スペースという新しい選択肢

昨今、AmazonやShopify、ソーシャルメディアなどオンラインで商品を売るビジネスのためのツールが充実し、D2C(Direct to Consumer)をはじめ多くのデジタルネイティブブランドが勢いを増している。
そしてこれらのデジタルブランドはオンラインでのビジネスがある程度軌道に乗り始めると、オフライン・実店舗にも進出をする。実際、AWAY、Everlane、Warby Parkerなど多くのD2Cブランドが店舗拡大をしている。
こういったスタートアップD2Cは何百万ドルもの資金調達に成功…

ミレニアル世代の飲みスタイルを捉えたスタートアップ3選

お酒を飲むこと自体もう時代遅れなのだろうか?皆さんは、周りで若い人がお酒を飲まなくなったと感じることはないだろうか。
日本は「飲みニケーション」と言われるほど、昔からお酒を介したコミュニケーションや人脈形成の機会が多い。しかし、昔と違って最近の若者は飲み会に積極的に参加することがなくなったと感じている人も多いはずだ。
世界的に見ても、ミレニアル世代の飲酒量は他の世代と比べてかなり少ない。オーストラリアで行われた調査によると、ベビーブーム世代(55歳以上)の72%、X世代(35歳から54歳)の65%が…

ミッションを売れ! 薄利多売から抜け出すためのD2C戦略とは

D2C(Direct to Consumer。直販型)ブランドは小売業界からだけでなく、スタートアップ界隈からも注目を集め続けてきた。彼らは独自のビジネスモデルを採用しているという点だけでなく、その商品やブランディングについても注目されており、freshtraxでも幾度となく紹介してきた。
このような注目を集める一方で、D2Cブランドは既存のマーケットから集客獲得と増え続ける振興D2Cブランドとの競争も激化している為、D2Cとして成功し続けることは簡単な道のりではない。商品の改善、ブランディングの確…

2019年 注目の海外テック系イベント17選

2019年が始まり早くも1ヶ月が過ぎようとしている。例年、ビジネスやテクノロジーに関するカンファレンスイベントが世界各地で開催されるが、参加するイベントの計画を年始のこの時期に立てる読者も多いのではないだろうか。 各種イベントに参加することは、最新テクノロジーや各業界の動向に関する情報を得られるだけではなく、新たなネットワーク構築のきっかけ作りとしても非常に有効だ。 昨今、アメリカを中心に、ヨーロッパ、アジアでも見逃せないテック系の大型カンファレンスが数多く開催されることが決まっているので、今回はbtrax一押しのイベントをご紹介したい。(上から日付順に紹介) 1. SaaStr 日程: 2/5-7 ロケーション San Jose, California (Silicon Valley) 最も直近に開催が予定されているのが、SaaS (Software-as-a-Service) に焦点を当てたカンファレンスのSaaStrだ。このカンファレンスは例年1万人以上が参加し、今年はStripeやDropbox、Invisionなどの世界的に有名なSaaS企業のリーダー達が登壇を予定。SaaSの分野に限らずソフトウェア開発や組織経営に関わる人であれば、有益な情報、ネットワークを得られる機会なので、ぜひ参加をお勧めしたいカンファレンスだ。 2. Startup Grind Global Conference 日程: 2/12-13 ロケーション: Redwood City, California (Silicon Valley) 比較的見落とされがちだが見逃してほしくないのが世界の起業家コミュニティ形成を目的に開催されているStartup Grind Global Conferenceだ。2日間に亘り、投資家やテックコミュニティのリーダーと呼ばれる人々によるトークセッションやネットワーキングパーティが行われる。シリコンバレーや世界で成功するスタートアップやVC、投資家達との関係構築が期待できる場だ。 3. Funnel Hacking Live 日程: 2/19-23 ロケーション: Nashville, Tennessee オンラインマーケティングへの注目は年々高まっているが、より良いファネルを持つことは効果的なEコマース戦略を行う上で極めて重要だ。Funnel Hacking Live はその名の通り、良いファネルの作り方とその効果的な活用方法について焦点を当てたカンファレンス。オンラインマーケティングのエキスパート達による実践的なセミナーセッションが行われる。最新のオンラインマーケティング事情をグローバルな視点で学びたいマーケッターにとってはかなり有益なイベントとなるだろう。 4. Mobile World Congress 日程: 2/25-28 ロケーション: Barcelona, Spain スペイン・バルセロナで毎年開催されるMobile World Congressは、モバイルテクノロジーを中心に破壊的イノベーション、AI、コネクティビティ、デジタルウェルネス、デジタルトラストなどのテーマで各種トークセッションや製品体験会などが行われる。例年Cレベルの参加者が多く、昨年は7700人以上のCEOがイベントに参加した。今年はMicrosoftやVimeoのCEOをはじめ、世界でイノベーション創出に挑むリーダー達が登壇を予定。スペイン語圏での開催のため、参加企業やスピーカーも北米とは少し異なる傾向にある。これまで北米のカンファレンスにばかり参加してきた人にとっては新たな気づきを期待できるだろう。 5. Wisdom 2.0 日程: 3/1-3 ロケーション: San Francisco, California Wisdom 2.0はここまで紹介してきたような一般的なテック系カンファレンスでは忘れられがちな、人々の繋がりやウェルネスの分野に着目している。ビジネスにおける利益や成功を追求することに伴い、“人々の精神的な充足感や生活の質をどのように向上していくか”をテーマに置く。マインドフルネス講師やTwitterとMediumの創設者Ev WilliamsやGoogleのバイスプレシデントKaren Mayといったビジネス界のリーダーたちが一緒に議論する、世界的にもユニークなカンファレンスだ。 6. SXSW (South by Southwest) 日程: 3/8-17 ロケーション Texas 以前【SXSW2017レポート】キーワードは「社会問題解決型」注目の最新テクノロジー5選でも紹介しているが、SXSW (South by Southwest)は、例年アメリカのテキサス州オースティンで行われるテクノロジー、音楽、映像、ヒューマニティをテーマにした大規模イベントだ。80年代に音楽の祭典として始まった同イベントだが、VR/AR、ブロックチェーン、フードテック、医療テック、AIといったテクノロジーによるあらゆる分野での未来のあり方を探索するような内容になっている。 ビジネスやテクノロジー業界のみならず、政治やエンターテインメントなど各界の著名人たちもスピーカーとして参加するSXSWは新たなインスピレーションの習得やネットワークの構築に最適な場となるだろう。 7. Social Media Marketing World 日程: 3/20-22 ロケーション: San Diego, California Social Media Marketing Worldは、ソーシャルメディア戦略を実際に行う担当者にとってはまたとないネットワーキングと学びの場だ。Instagram、Youtube、Facebookなど、各プラットフォームに特化したエキスパートが詳細な活用方法を語るトークセッションや彼らと1対1で対話できる機会も用意されている。数あるマーケティング施策の中で特にソーシャルメディアに注力したいと考えている人にとっては見逃せないカンファレンスだ。 8. Crypto Invest Summit 日程: 4/9-10 ロケーション: Los Angeles, California […]

2019年 注目の海外テック系イベント17選

2019年が始まり早くも1ヶ月が過ぎようとしている。例年、ビジネスやテクノロジーに関するカンファレンスイベントが世界各地で開催されるが、参加するイベントの計画を年始のこの時期に立てる読者も多いのではないだろうか。 各種イベントに参加することは、最新テクノロジーや各業界の動向に関する情報を得られるだけではなく、新たなネットワーク構築のきっかけ作りとしても非常に有効だ。 昨今、アメリカを中心に、ヨーロッパ、アジアでも見逃せないテック系の大型カンファレンスが数多く開催されることが決まっているので、今回はbtrax一押しのイベントをご紹介したい。(上から日付順に紹介) 1. SaaStr 日程: 2/5-7 ロケーション San Jose, California (Silicon Valley) 最も直近に開催が予定されているのが、SaaS (Software-as-a-Service) に焦点を当てたカンファレンスのSaaStrだ。このカンファレンスは例年1万人以上が参加し、今年はStripeやDropbox、Invisionなどの世界的に有名なSaaS企業のリーダー達が登壇を予定。SaaSの分野に限らずソフトウェア開発や組織経営に関わる人であれば、有益な情報、ネットワークを得られる機会なので、ぜひ参加をお勧めしたいカンファレンスだ。 2. Startup Grind Global Conference 日程: 2/12-13 ロケーション: Redwood City, California (Silicon Valley) 比較的見落とされがちだが見逃してほしくないのが世界の起業家コミュニティ形成を目的に開催されているStartup Grind Global Conferenceだ。2日間に亘り、投資家やテックコミュニティのリーダーと呼ばれる人々によるトークセッションやネットワーキングパーティが行われる。シリコンバレーや世界で成功するスタートアップやVC、投資家達との関係構築が期待できる場だ。 3. Funnel Hacking Live 日程: 2/19-23 ロケーション: Nashville, Tennessee オンラインマーケティングへの注目は年々高まっているが、より良いファネルを持つことは効果的なEコマース戦略を行う上で極めて重要だ。Funnel Hacking Live はその名の通り、良いファネルの作り方とその効果的な活用方法について焦点を当てたカンファレンス。オンラインマーケティングのエキスパート達による実践的なセミナーセッションが行われる。最新のオンラインマーケティング事情をグローバルな視点で学びたいマーケッターにとってはかなり有益なイベントとなるだろう。 4. Mobile World Congress 日程: 2/25-28 ロケーション: Barcelona, Spain スペイン・バルセロナで毎年開催されるMobile World Congressは、モバイルテクノロジーを中心に破壊的イノベーション、AI、コネクティビティ、デジタルウェルネス、デジタルトラストなどのテーマで各種トークセッションや製品体験会などが行われる。例年Cレベルの参加者が多く、昨年は7700人以上のCEOがイベントに参加した。今年はMicrosoftやVimeoのCEOをはじめ、世界でイノベーション創出に挑むリーダー達が登壇を予定。スペイン語圏での開催のため、参加企業やスピーカーも北米とは少し異なる傾向にある。これまで北米のカンファレンスにばかり参加してきた人にとっては新たな気づきを期待できるだろう。 5. Wisdom 2.0 日程: 3/1-3 ロケーション: San Francisco, California Wisdom 2.0はここまで紹介してきたような一般的なテック系カンファレンスでは忘れられがちな、人々の繋がりやウェルネスの分野に着目している。ビジネスにおける利益や成功を追求することに伴い、“人々の精神的な充足感や生活の質をどのように向上していくか”をテーマに置く。マインドフルネス講師やTwitterとMediumの創設者Ev WilliamsやGoogleのバイスプレシデントKaren Mayといったビジネス界のリーダーたちが一緒に議論する、世界的にもユニークなカンファレンスだ。 6. SXSW (South by Southwest) 日程: 3/8-17 ロケーション Texas 以前【SXSW2017レポート】キーワードは「社会問題解決型」注目の最新テクノロジー5選でも紹介しているが、SXSW (South by Southwest)は、例年アメリカのテキサス州オースティンで行われるテクノロジー、音楽、映像、ヒューマニティをテーマにした大規模イベントだ。80年代に音楽の祭典として始まった同イベントだが、VR/AR、ブロックチェーン、フードテック、医療テック、AIといったテクノロジーによるあらゆる分野での未来のあり方を探索するような内容になっている。 ビジネスやテクノロジー業界のみならず、政治やエンターテインメントなど各界の著名人たちもスピーカーとして参加するSXSWは新たなインスピレーションの習得やネットワークの構築に最適な場となるだろう。 7. Social Media Marketing World 日程: 3/20-22 ロケーション: San Diego, California Social Media Marketing Worldは、ソーシャルメディア戦略を実際に行う担当者にとってはまたとないネットワーキングと学びの場だ。Instagram、Youtube、Facebookなど、各プラットフォームに特化したエキスパートが詳細な活用方法を語るトークセッションや彼らと1対1で対話できる機会も用意されている。数あるマーケティング施策の中で特にソーシャルメディアに注力したいと考えている人にとっては見逃せないカンファレンスだ。 8. Crypto Invest Summit 日程: 4/9-10 ロケーション: Los Angeles, California […]

食の多様性を支えるフードテック・スタートアップ3選

ヴィーガン、オーガニック、グルテンフリー等、食生活の多様性を表す言葉をここ数年でずいぶん見かけるようになった。btraxが本社を構えるサンフランシスコでもこれらの多様性に対応したスーパーやレストランは日常的に目にすることが多い。
そしてそれらの食生活を支える食品を供給する企業も数多く出てきた。今回は日本ではまだ馴染みの少ないこの「食の多様性」を支えるスタートアップについてご紹介したい。
ミレニアル世代による「健康」の新たな定義
ワシントンポスト紙の記事「我々の食生活に変化を及ぼすミレニアル世代の9つ…

ユニコーンとシマウマの違いを知っていますか?【スタートアップ】

最近になって日本でも随分と「ユニコーン」という言葉がと聞かれるようになってきた。ユニコーンとは、スタートアップ界隈で用いられる表現で、俗に未上場で企業評価額が10億ドル以上の会社を示す。(参考: 未上場で評価額10億ドル以上のユニコーンTop10)
そもそも上場していないので、企業の価値が10億ドル以上に評価されること自体が、通常珍しい事、そしてそのビジネスモデルのユニークさから「実存しないぐらいユニークな存在」という意味で架空の動物であるユニコーンを名称として採用されている。
代表的な例には、Ub…

【2019年】btraxが注目する8のスタートアップ

freshtraxでは毎年初めにbtraxが注目するスタートアップを紹介している。昨年は金融、医療、アグリカルチャー、小売がホットな分野とされ、【2018年】注目を浴びた4つのテック分野とスタートアップまとめで各分野のスタートアップを取り上げた。 2019年も引き続き同様の分野で多くのスタートアップが出てくると思われるが、今回は保険テック(インシュラテック)やフェムテック、D2Cといったbtraxが今最も注目している領域にもフォーカスを当て、急成長を遂げているアメリカのスタートアップを8つ紹介していきたい。 Shippo:Eコマースの中小企業向け、配送支援プラットフォーム Lia:世界初”トイレに流せる”妊娠検査薬 Care/of:自分に合ったサプリメントを購入できるサブスクリプションサービス Zesty.ai:自然災害のリスクや被害状況をリアルタイムで映し出す Billie:女性の権利を尊重する女性用カミソリのD2Cブランド MealPal:外食コストを抑えるサブスクリプションサービス The Wing:女性起業家を支援するコワーキングスペース Wonolo:地元密着型の雇用支援プラットフォーム 1. Shippo:Eコマースの中小企業向け、配送支援プラットフォーム Shippoのダッシュボード(Shippoの公式サイトより引用) Shippo(シッポ)はEコマース企業の配送業務を支援するスタートアップだ。彼らはその中でもビジネスの規模がまだ小さいEコマースの中小企業または個人事業主をターゲットに配送コストを抑えるためのサービスを提供している。 通常配送ボリュームが少ない企業は送料が高くついてしまうが、ShippoはFedExやUPS、DHLなど50以上もの配送業者とパートナーシップを結んでいるため、中小企業や個人事業主でも送料のディスカウントを受けることができる。 Eコマース企業はShopifyやMagentoなどのプラットフォームにShippoを連動させるだけで、配送に関わるすべての作業を自動化することが可能。 Shippoを利用すると配送プロセスや送料の比較、ラベルの作成、配送、トラッキング、配送通知、返品作業などを全て一括で行うことができる。そのためEコマース企業はオーダーが入った後手間をかけずに素早く商品を発送することが可能だ。 【注目する理由】 ここ数年で、店舗を持たず自社運営のECサイトで製品を販売するモデルD2C(Direct to Consumer)の流れが一気に加速している。今後はShippoのようなD2Cブランドを支えるスタートアップの存在がますます大きくなると予想される。 Shippoは2017年にシリーズBで2,000万ドルを調達し、現時点ではShippoを利用するEコマース企業は35,000社あり、毎月15,000もの配送が行われている。現在サンフランシスコを拠点に、アメリカ、カナダ、イギリスに展開しているが、今後は他のヨーロッパ諸国にも展開していく予定だ。 2. Lia:世界初”トイレに流せる”妊娠検査薬 Liaの妊娠検査薬(画像はLiaの公式Facebookページより引用) Lia(リア)は世界で初めて生み出されたトイレにも流せる妊娠検査薬。通常、妊娠検査薬はプラスチックで作られ、年間およそ2,000万個も廃棄処分されているが、Liaは100%紙製なのでエコフレンドリーな製品だ。 しかしLiaを開発した理由は地球に優しい妊娠テストツールを作るためだけではない。多くの女性がテスト結果を見た後、妊娠検査薬をトイレットペーパーに包んだ状態でトイレを出て、そのままゴミ箱に捨てる傾向がある。 これは家族や家事ヘルパー、同居人や家を訪問した友人に知られたくないという心理から出る行動であり、Liaはサステイナブルな妊娠検査薬で廃棄物を出さないこと、そして女性が妊娠に対してフラストレーションを持たないようにしてあげること、を目的に開発されたのだ。 【注目する理由】 Liaはオーガニック素材でできているが、テスト結果の正確性は99%と従来の妊娠検査薬と変わらない。 過去30年間自宅での妊娠検査においてイノベーションが起きていないという事実から、昨年はFast Company’s 2018 World Changing Ideas Awardsのヘルス部門で優勝し、現在多くのVCが破壊的イノベーションを生み出したLiaに注目している。 3. Care/of:自分に合ったサプリメントを購入できるパーソナライズ型サブスクリプションサービス Care/ofのアプリ画面(画像はApple storeより引用) 自分の健康状態に合わせてカスタマイズしたサプリメントを購入できるサプリメント専用のサブスクリプションサービス。ユーザーはCare/of(ケア・オブ)に登録する際に表示される質問に答えるだけで自分に最適なサプリメントを調合してもらうことができ、毎月購入することが可能。 通常サプリメントと聞くと自らリサーチして薬局やコンビニで購入する、または薬局に行き薬剤師と相談して購入するケースが多いと思うが、Care/ofはサプリメントの購入プロセス自体をオンラインでシンプルかつ楽しくするUX設計を実現した。 筆者も実際にCare/ofの質問に答えてみたが、まるで人間と話しているかのようなインタラクションと可愛らしいビジュアルで、従来感じやすい「質問に答えないといけない義務感や退屈さ」ではなく「自ら質問に答えたくなる気持ち、ワクワク感」を感じた。 質問の仕方がとても可愛らしく、答えていて楽しくなるインタラクション また、ただのサブスクリプションサービスではなくアプリを通してサプリメントを毎日ちゃんと摂取しているかどうかがビジュアルで分かるトラッキング機能やポイント機能がついているので、サプリメントを摂取する体験自体も楽しくなるような設計がされている。 【注目する理由】 注目するポイントは、Care/ofが設計したUXが従来のサプリメントの購入体験を覆し、楽しく快適な体験を生み出したことだろう。 もちろん購入体験だけではなく、様々なユーザーのニーズが配慮されている点も特徴的だ。例えば、女性ユーザーの場合だと「妊娠を検討中」「妊娠中」「授乳中」などの女性ならではのフェーズも事前に選択できる。 生活スタイルが多様化しているからこそ、このようなパーソナライズ型サービスがユーザーから指示されているのだと思う。 4. Zesty.ai:自然災害のリスクや被害状況をリアルタイムで映し出す Zesty.aiが提供するソフトウェアのイメージ画像(画像は公式ブログより引用) Zesty.aiは、昨年のPlug and Play’s Summer Summitで「2018年でもっともイノベーティブな保険テックのスタートアップ」と表彰され、最近シリーズAで1,300万ドルを調達したばかりの注目の保険テックスタートアップだ。 彼らは損害被害をより正確に査定するためにAIを活用した独自のAPIを開発。通常、火災や地震、洪水などの自然災害のリスクを見積もる際、データが正確である確率は50%と言われている。しかしZesty.aiはAIを導入することで、正確なデータに基づいた自然災害のリスク測定を行うことができる。 【注目する理由】 注目する理由にZesty.ai特有のリアルタイム予測が挙げられる。 ドローンや人工衛星から撮影した映像で自宅の周りに火事の原因になるような植林がどのくらいあるのか、洪水が起きたらどのくらいの水量になるのかなどの予測をリアルタイムでチェックすることができる。 また、自然災害が起きた後に災害が起きた場所や自宅の被害状況も確認することができるので、保険会社にとってはインスペクションにかける人件費をカットできるだけではなく、ユーザーに対して適切な損害保険費用を支払うことができる。 5. Billie:女性の権利を尊重する女性用カミソリのD2Cブランド Billieのスターターキット(画像は公式ウェブサイトより引用) Billie(ビリー)は女性ユーザーをターゲットにしたカミソリのサブスクリプションサービスを提供。女性版Dollar Shave Clubといったところ。 アメリカでは女性用カミソリの価格は$20前後と男性用カミソリよりも比較的高めの値段設定だ。そこに目をつけたBillieは低価格、高品質、そしてスタイリッシュなカミソリを開発し、$9という良心的な価格で販売している。 カミソリ以外にもボディークリームやボディーローションも販売しており、全てパラベン、トキシン、硫酸、グルテンが含まれていない製品なので、健康志向の女性ユーザーに注目されている。 2017年にローンチした際最初の11ヶ月間だけで65,000人のオーガニックフォロワー数を獲得。セリーナ・ウィリアムズをはじめセレブリティーからも大きな支持を得ているが、その理由の一つに「Building a future. For women」というソーシャルミッションが挙げられる。 【注目する理由】 Billieに注目した理由は、女性ユーザーが抱えているセンシティブな悩みをしっかりキャッチして、それをブランドストーリーに取り入れているところだ。 カミソリのブランドではあるが「女性だからといって体毛を剃る必要は一切ない。カミソリが必要だと感じた時だけBillieを使ってほしい」というメッセージを発信しているのだ。これまで社会的に女性は体毛を剃るべきという風潮があったが、Billieはその固定概念に疑問を感じて女性の権利を尊重する必要性があることを訴えかけている。 そのため、彼らのプロモーションビデオには女性が脇毛やすね毛といった体毛を恥じることなく露出している映像が映し出されている。このオーセンティックなビジュアルとメッセージに共感し勇気づけられるユーザーがBillieの支持者となっているようだ。 6. MealPal:外食コストを抑えるサブスクリプションサービス MealPalのアプリ画面(画像はApple storeより引用) MealPalはランチ(またはディナー)のメニューをサブスクリプション式で事前に購入できるサービスだ。 イノベーションが生まれ続けるサンフランシスコの生活とはでも少し紹介しているが、サンフランシスコのレストランでは通常ランチ代が$10〜$15かかるが、MealPalを使うとランチ1回あたりにつき約$6と安く済ませることが可能。 サンフランシスコでは、飲食店が忙しくなるランチタイムはどこも行列ができてしまう。しかしMealPalで事前にアプリで”ランチメニューを購入”しておけば、あとは当日にお店でピックアップするだけ。 メニューの種類や量を選択できるのはもちろんのこと、ベジタリアンやヴィーガンなど食事制限があるユーザーにも対応している。 【注目する理由】 MealPalユーザーの80%が友人または会社の同僚からの口コミでサービスを利用しており、btraxのスタッフも何名かMealPalを愛用している。 アメリカではミレニアル世代を中心に健康志向な人たちが増えているそうだ。よって「外食コストを抑えつつも、ジャンクフードなどではなく健康的なものを食べたい」というユーザーのニーズをMealPalは見事に実現しているのだ。 MealPalは現在アメリカ、ヨーロッパ、アジアで4,000の飲食店と提携しており、今後も提携先の飲食店を増やしていく予定だ。 7. The Wing:女性起業家を支援するコワーキングスペース The Wingの室内 The Wing(ザ・ウィング)は、19世紀に起きた女性解放運動にインスパイアされた2人の女性起業家によって生み出された女性専用のコワーキングスペース。 ピンクなどの鮮やかな色、おしゃれな家具やミーティングルームといった内装が特徴的なThe Wingだが、この内装を手掛けているのも女性建築家だ。会議室の名前は女性の権利を訴えた誇るべき女性リーダー達の名前からとっているなど、女性起業家たちをインスパイアする要素がたくさん詰め込まれている。 アメリカではWeWorkをはじめ様々なコワーキングスペースが存在しているが、The Wingでは従来設置されているカフェやキッチンスペース、ミーティングルームの他に化粧室やシャワールーム、授乳室、そして子供を預けることのできるスペースまで完備されている。これが女性起業家たちから強く支持されている理由のひとつでもある。 【注目する理由】 The Wingに注目した理由の一つに独自のコミュニティ形成が挙げられる。1つはゲストを招いたイベントを定期的に開催していること。過去にはヒラリー・クリントンやジェニファー・ローレンスなど著名人たちが女性の活躍に対する思いを語っている。 もう1つは、オリジナルのアイテムをオンラインストアで販売し、The Wingのコアファンを生み出していること。販売されているTシャツやキーチェーン、マグカップにはどれも「Girls Doing […]

2018年に終了したスタートアップサービスとその失敗理由

その9割以上が失敗するとされるスタートアップ企業であるが、今年も多くのサービスが終了した。その中から、40のスタートアップをピックアップし、その失敗理由を探ってみる。 先日の「2018年に消滅したメガスタートアップ25社」を見てもわかる通り、たとえ大きな資金を調達したとしても、成功が保証されているわけではない。 そもそも、スタートアップの定義を、”新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長とエクジットを通じ一獲千金を狙う人々の一時的な集合体“ とするのであれば、まさにハイリスクハイリターン。(参照: ベンチャー企業とスタートアップの違い) スタートアップは、ある意味新しいビジネスモデルの実験室でもあるのだ。そうなってくると、成功した理由よりも失敗の理由を知ることから学べることは多い。 では、2018年に終了したスタートアップとそこから学べる教訓を紹介する。 Airware 業種: ドローン向け飛行データプラットフォーム 合計調達額: 1.180億ドル 失敗の理由: ドローンに関する市場の成長スピードが意外と遅く、大きなニーズが生まれる前に資金が尽きた Alta Motors 業種: 電動バイク 合計調達額: 4380万ドル 失敗の理由: ハードウェアの製作のコストがかさみ、資金繰りやパートナーシップがうまくいかず、資金が尽きた Apprenda 業種: エンタープライズ向けPaaS型ソフトウェアプラットフォーム 合計調達額: 5600万ドル 失敗の理由: 競合サービスとの差別化に失敗 Baroo 業種: ハイエンド顧客向けオンデマンド型ペットケアサービス 合計調達額: 360万ドル 失敗の理由: 巨額の資金調達を成功させた競合に対抗できなくなった Bluesmart 業種: スマートスーツケース 合計調達額: 2560万ドル 失敗の理由: 航空法の更新によりバッテリーを内包するスマートスーツケースの利用が禁止になった Cambridge Analytica 業種: 政治活動向けデータ解析プラットフォーム 合計調達額: 1500万ドル 失敗の理由: Facebook経由の個人情報をユーザーの許可なしにビジネスに利用していた CanadaDrugs.com 業種: 医薬品のオンライン販売 合計調達額: 不明 失敗の理由: 15年以上にわたり米国政府の認可を得ずに非正規の薬をオンラインで販売していたことが発覚した CareSync 業種: 医療患者向けソフトウェアプラットフォーム 合計調達額: 4900万ドル 失敗の理由: 売却戦略に失敗した Chef’d 業種: 自炊むけミールキットサービス 合計調達額: 4050万ドル 失敗の理由: 資金調達に失敗した Chorus 業種: フィットネスアプリ 合計調達額: 不明 失敗の理由: ユーザーがエクササイズをサボり出し、それを隠そうとするためにアクティブ率が下がった Coinprism 業種: 色付け可能なビットコインワレット 合計調達額: 不明 失敗の理由: 仮想通貨に関する法規制の急激な変化によりビジネスとして成り立たないと判断した CloudMine 業種: ヘルスケア向けデータプラットフォーム 合計調達額: 1650万ドル 失敗の理由: 600万ドルほどの負債に対しての資金調達に苦しみ、破産した DASH Stores 業種: アクセサリー販売ブティック 合計調達額: 不明 失敗の理由: セレブ創設者であるカーダシアンの興味が他に移ったため DaWanda 業種: ハンドメイドのクラフトを売買するオンラインプラットフォーム 合計調達額: 1030万ドル 失敗の理由: 会社の規模の成長に対して売り上げの伸びが鈍化したため Defy Media […]

【2018年】注目を浴びた4つのテック分野とスタートアップまとめ

2018年も多くの方にfreshtraxの記事を読んでいただいた。これまでは様々な業界に関するスタートアップやUX、デザイン、マーケティングのトレンドを紹介してきたが、その中でも特に多く読まれた記事や話題になった記事など、注目を集めた分野があった。 それがフィンテック、小売テック、医療テック、アグリテックの4つで、これらの分野が日本でも徐々に浸透してきたことの表れではないだろうか。 そこで今回は2018年記事総集編として、2018年に多く読まれた記事の分野と、その中で注目されたスタートアップを改めて紹介する。 関連記事:【2018年】btraxが注目する10のスタートアップ 注目分野① フィンテック フィンテックは金融(ファイナンス)とテクノロジーの領域のことである。大手銀行や政府の金融機関など、長く存在してきた企業や組織、規制など、かなり複雑性と困難が強いられる分野とも言われる。 しかしながらユーザーが抱えている問題の多くは共通しており、サービスがスタートすると爆発的に広がっていく例も多い。 iPhoneやiPadにレジ機能を持たせるデバイス(ソフトウェア)であるSquareや個人間送金サービスのVenmoなどが代表例ではないだろうか。 freshtraxで今年取り上げた記事では新たな個人間送金サービスが注目を浴びた。2017年6月にスタートしたばかりのZelleというスタートアップである。 セキュリティ面が安心の個人送金アプリZelle Zelleはサービス開始当初から30以上のアメリカ国内金融機関とパートナーを結んだことで話題を呼んだ。世界的に広がりつつあるキャッシュレス決済の中、それをさらに後押しする勢いだ。 また、Zelle独自のアプリからだけではなく、各銀行が運営する口座管理アプリやWebサービスを通してアカウントの設定と送金サービスの利用ができる。 筆者も使ったことがあるが、新たにアプリのダウンロードをする必要はなく、あくまでも既に持っている自分の銀行のアプリの延長でZelleに登録して使用するといった流れであった。 たとえばアメリカの大手銀行であるバンク・オブ・アメリカの利用者のうち、すでに300万人がZelleを利用しており、未だに利用者は増え続けている。 既存の個人間送金サービスであるVenmoやCash Appなどとの違いは2つある。1つは送金処理が即座にされること、もう1つは大手銀行ともパートナーシップを結んでいるというセキュリティー面での安心感だ。 (ZelleのUI。公式サイトより転載) 特に後者に関しては今までのサービスに関するトラブルなどからユーザーが敏感になっている点だ。日本も金銭に関わるセキュリティーへの関心は特に高い。こういった理由からもこの記事に注目が集まったのではないだろうか。 サンフランシスコで生活しているとVenmoは欠かせないアプリの一つになっており、「I’ll Venmo you(Venmoするね=Venmoで送金するね)」といったようにVenmoが動詞化しているほどだが、近いうちにZelleも同じように使われるかもしれない。 取り上げた記事:アメリカで話題の個人間送金サービス Zelle(ゼル)とは 注目分野② 小売テック サンフランシスコにもとうとうAmazon Goがオープンしたように、2018年はAI導入のレジレスストアなど小売テックが盛り上がった1年だったと言える。 freshtraxでも、AmazonといったEコマース小売からウォルマートやクローガーといった大手小売など小売業界の変革について紹介した「小売業界の敵はAmazonではない? これからの小売が知っておくべき課題」記事が多く読まれたが、その中でも注目されたのはリアルタイム商品棚管理のtraxだ。 リアルタイム在庫管理や商品分析を行うtrax traxはAI技術とカメラを駆使して、陳列した商品の状態や商品ブランドシェア率、品切れ、一度手に取ったが戻した商品のデータなどの情報を把握して分析する技術を扱う。 これにより在庫管理プロセスの改善だけでなく、分析の結果を効果的な商品陳列や商品のパッケージデザインの改善に役立てることができるのだ。 実際に同社のツールを導入したCoca-Cola Hellenic社では在庫を63%削減することに成功。他にも、P&Gやネスレなどの大手商品ブランド会社を顧客にしている。 お店の商品陳列用の棚をスマートフォンやタブレット端末で写真を取るだけで、そのデータをクラウドからレポートとして小売業者やメーカーにリアルタイム配信することができる。 Eコマースでの買い物が広がる一方で、新しい技術を取り入れた実店舗を拡大する小売ブランドが増えてきた。このようなユーザーにとって必要なテクノロジーを駆使した新しい買い物体験で勝負する動きは今後も注目である。 注目分野③ 医療テック 今年はユーザーの医療体験を変える様々なスタートアップや、フェムテックと呼ばれる女性に特化したヘルスケアテックを紹介した。その中でも話題になったのは唾液からDNA検査をし、自分の先祖やルーツを調べることができるサービスだ。 戸籍制度がなく、移民も多いアメリカにおいて、ニーズの多いサービスなのだ。入国記録や移民記録、婚姻記録に兵役記録に至るまで様々なデータを活用し、家系を辿っていく。 自分の先祖やルーツを調べてくれる23andMeとAncestory 23andMeも同様のサービスで、btraxスタッフや筆者の知人も試したくらい身近なサービスだ。アメリカには移民や混血の人が多いため、自分が一体どこの国にルーツがありそれがどのくらい割合を占めているのか気になることはよくあるようだ。 また、健康面や体の特徴などの情報もわかるので医者に見せて健康管理に役立てることもできるのだ。 (サンプルレポートより転載) Ancestryも同様のサービスを行っている。彼らは会社として「自分たちのルーツなどを知ることが人とのつながりを大切にすることにつながる」ということを謳っている。 彼らのこのような思いはオフィスにも反映されていて、オフィスの壁にはAncestryの検査によって判明した先祖の写真と社員の写真が飾られているという。 取り上げた記事:ブランド戦略 × オフィスデザイン ー 成功事例に見る企業ブランド構築手法 注目分野④ アグリテック 世界的な人口増加に伴い、今後より多くの食料が必要になると言われている中、農業とテクノロジーの分野であるアグリテックへの注目が高まっている。 アグリテックには作物や酪農の管理システムや農業の自動化、アーバンファーミングなど多岐に渡ったサービスが存在する。 その中でもインドア・ファーミングとして過去最大の投資額を調達し、ソフトバンクの孫正義会長も2億ドルの投資をしたことでも知られるPlentyはアグリテック業界内でもすでに有名だ。 健康的で十分な食の供給実現を目指すPlenty Plentyは生産性の高い水耕栽培を実現させたバーティカル・ファーミングを行うスタートアップ。多くのバーティカル・ファーミングの取り組みでは、水平に設置されたトレーを使用して栽培を行うが、Plentyでは独自に設計されたポール状のタワーで栽培を行う。 (こちらのウェブサイトより転載) このタワーが壁のように並べられ、今までの農業のやり方と比較すると同じ面積で350倍の生産ができるようになったのだ。 ちなみにPlentyの技術で作られた野菜はサンフランシスコにオープンしたばかりのロボットハンバーガーレストランであるCreatorで販売されている。 アグリテックと食品ロボットという業界の異なるスタートアップがコラボレーションして食体験を豊かにしていくというのはシリコンバレーのマインドセットと通じるものがあるように思う。 番外編:ペットテック!? まだ馴染みは少ないもの注目されつつある分野 番外編では先に紹介したテック業界ほど浸透はまだしてないもの、注目を集めつつあるペットテックを勝手に取り上げる。 付け加えておくと 2018年のCESでも紹介され、freshtraxの「2018年のIT動向を読み解く7つのキーワード」記事でも注目された分野である。 アメリカのペット市場は大きい。2017年、ペット関連商品市場はアメリカだけで690億ドルの支出があったという(世界全体で約1090億ドル)。 ペットテック分野だけでみても、2017年には約3億ドルの投資があり、5年前よりも3倍以増えている。 ペット用の肥満問題に挑むPetrics 米国では自宅で飼われている犬や猫の数は8,000万匹ほどいるとされているが、犬においては約6割が肥満というデータがある。肥満の問題は人間だけではなかったのだ。 この事態の解決に挑むのがペット用スマートベッド・ウェアラブルデバイスのスタートアップ、Petricsだ。Petricsのスマートベッドは、ペットがベッドの上に乗ると運動量や体重といった健康状態を把握することができる。 また、ウェアラブルデバイスもペットの首輪などにつけてそれぞれアプリと連動して使用すると健康状態に合った食事量や運動量を知ることができる。効果的なダイエットが可能になるというわけだ。 (Petricsのベッドとウェアラブルデバイス。こちらのウェブサイトより転載。) このサービスはペットテックとくくってみたが、飼い主にとってはペットの医療テックと思えるくらい重要なのではないだろうか。 ちなみにミレニアル世代はペットを所有する割合が一番多い世代だ。実際サンフランシスコでは20-30代とみられる人がペットを連れている姿をよく見かけるし、ペットOKのオフィスも少なくない。スタートアップが生み出すペットテックを必要としている人、犬、猫は確かに多そうである。 まとめ 様々な業界がテクノロジーと掛け合わされて〇〇テックと呼ばれるようになって久しい。バスワードになって有名になり、最新鋭のテクノロジーが注目されることも多いが、それを使うユーザーがいてここで紹介したスタートアップのように広まっていくことを忘れないでほしい。 どのスタートアップもただ技術を作って売り出した訳ではない。ユーザーの問題があったからそこに最新テクノロジーを使って解決策、より良い体験を提供していったのだ。 2019年はどのような〇〇テックが出てくるか、今から楽しみである。ユーザーの抱えている問題をみていくとその予測のヒントが隠されているかもしれない。 参考: Should You Use Venmo, Zelle or Cash App? Everything You Need to Know About the Hottest Mobile Payment Apps Trax raises $125 million to bring computer vision insights to retailers’ shelves Billionaires make […]

2018年に消滅したメガスタートアップ25社

今年も多くのスタートアップが生まれ消えていった。倒産した企業の中でも企業の評価額 (バリュエーション)と資金の調達学が大きい25社をPitchBook提供のデータをもとにリストアップしてみた。 その中の3社は創立から20年以上も経っている企業や、一時は優良スタートアップとしてかなりの注目を集めたサービスもある。 特に今年は、ハッタリ系スタートアップとして有名になったセラノスをはじめに、ヘルスケア系が目立っており、リスト内では実に7社を数える。 それでは、評価額と調達額の規模をベースに、2018に消滅したスタートアップ25社をカウントダウン形式でお届けする。 25. SDCmaterials 業種: 自動車産業向けナノテクノロジー 設立年: 2004 評価額 (max時): 4800万ドル 合計調達額: 2600万ドル 24. Senzari 業種: 音楽/エンタメ系データテクノロジー 設立年: 2010 評価額 (max時): 5200万ドル 合計調達額: 1300万ドル 23. Industrial Origami 業種: 産業用マテリアル製造 設立年: 2003 評価額 (max時): 5800万ドル 合計調達額: 4100万ドル 22. Claritas Genomics 業種: 遺伝子テスト 設立年: 2013 評価額 (max時): 6000万ドル 合計調達額: 3900万ドル 21. Apprenda 業種: クラウド型ディベロッパー向けソフトウェア 設立年: 2007 評価額 (max時): 9000万ドル 合計調達額: 5600万ドル 20. Innovari 業種: エネルギープラットフォーム 設立年: 2011 評価額 (max時): 9400万ドル 合計調達額: 1200万ドル 19. DataTorrent 業種: ストリーミング用データフォーム 設立年: 2012 評価額 (max時): 9600万ドル 合計調達額: 2400万ドル 18. Rennovia 業種: バイオテクノロジー/化学 設立年: 2009 評価額 (max時): 9900万ドル 合計調達額: 6900万ドル 17. Navdy 業種: 自動車向けヘッドアップディスプレイ 設立年: 2012 評価額 (max時): 1億ドル 合計調達額: 8000万ドル 16. EZhome 業種: サブスクリプション型雑草処理サービス […]

Amazon Go型の無人レジ店舗の普及を目指す2つのスタートアップ企業

以前の記事「AmazonGoの仕組みは脅威となるか?サンフランシスコ店へ行ってみた」で紹介したように、実はAmazon Goストアがサンフランシスコに展開する以前に、2社のスタートアップがすでにレジレス店舗の試験的なデモ店舗をサンフランシスコ市内で展開していた。
サンフランシスコに突如現れたレジレス店舗
Amazonが3年という短い期間で3000店舗ほどまでに拡大を計画しているレジレス店舗であるが、その台頭により、レジレス店舗ひいてはその技術やIot、AIを活用し、小売業界の革新を目指しているスター…

freshtraxがレポートに!シリコンバレー / サンフランシスコのトレンドレポートサービス開始

サンフランシスコ・シリコンバレーの様々な業界における最新トレンドをリサーチしてお届けしているfreshtrax。他のメディアと違う大きな特徴は、常に「ユーザー体験」に注目している点で、様々な業界において新たなテクノロジーやサービスが「ユーザーの生活や体験をどう変えたか」をお伝えしてきました。こうした通常のテクノロジー紹介に留まらない点がご好評をいただき、「業界ごとに内容をまとめて欲しい」「社内外向けのプレゼン資料に活用したい」という声をいただくようになりました。 そこで、btraxではサンフランシスコ・シリコンバレーのトレンド情報をレポート形式で毎月お届けするサービスを始めました。年間契約いただくと、毎月異なる業界のトレンドをパワーポイントあるいはPDF形式でお届けします。 テーマ一覧 D2C(Direct to Consumer) 医療テック フェムテック 食品・アグリテック フィンテック ロジテック シェアリングエコノミー アパレル 自動車 保険 広告 組織イノベーション 1.D2C(Direct to Consumer) ブランドがユーザーに自社サイトでのみ商品を販売するDirect to Consumer。日本でも最近アパレル業界を中心に注目を集めていますが、いち早くD2Cに注目しトレンド情報を発信してきたbtraxが、業界図と注目ポイントをわかりやすく解説します。 2.医療テック 「医療テック」というと、主に病院で医師に使われるテクノロジーを想像しがちですが、サンフランシスコでは患者の医療体験を上げるようなテクノロジーが一般人の生活にも浸透しつつあります。この回ではそんな体験向上を実現する注目スタートアップを紹介します。 3.フェムテック 今後500億ドル市場にまで拡大すると予想されている、女性の健康管理に特化したフェムテック。女性が社会の半分を支えている今、その女性をサポートする分野として大注目されています。 4.食品・アグリテック 日本でも多くの人が関心を寄せる「食」。肥満、食品廃棄、遺伝子組み換え、農薬問題等、アメリカの食にまつわる問題が数えきれない中、それらを解決しようとするスタートアップもまた多く出てきています。 5.フィンテック ともすればテクノロジーばかりが注目されがちなフィンテック。btraxでは「ユーザーの体験」にフォーカスし、いかにユーザーのお金を管理する体験が変わったかをご紹介します。 6.ロジテック 在庫管理、POS、配送、カスタマー対応等、小売業界でもAI・ロボットの活用が進んでいます。この回ではそんなテクノロジーが実現するスムーズな買い物体験をご紹介します。 7.シェアリングエコノミー シェアオフィス、シェアカー、シェアサイクル等、今やサンフランシスコ市民の生活を支えていると言っても過言ではないシェアリングエコノミー。スタートアップの紹介だけでなく、この新しい形態が根付いた背景についても解説します。 8.アパレル アパレル業界でも大きな変革が起こっています。ミレニアル世代を中心に製品のファッション性自体に加え、サステナビリティや透明性等も求められ始めているなか、新しい価値を提案するブランドをご紹介します。 9.自動車 自動運転、ドライブレコーダー、シェアカー、空飛ぶタクシー、自動車メーカー以外の参入等、変化のスピードが速い自動車業界。この回ではそんな業界を支えるスタートアップや新たな取り組みをする大企業を取り上げます。 10.保険 日本同様、アメリカでも保険業界は長らく保守的でしたが、その業界の常識を破るさまざまなスタートアップが台頭しています。この回ではそんな保険業界とスタートアップをご紹介します。 11.広告 すでに従来型のマス広告が昔ほどの効果をもたらさないことは知られていますが、サンフランシスコではどのような広告で人が動くのでしょうか?現代消費者の特徴とそれをうまくとらえた広告事例をお伝えします。 12.組織イノベーション チーフ・イノベーション・オフィサーやイノベーション・ラボ等、イノベーションを生むための組織変革が世界中で起こっています。この回では日本企業のヒントになりそうな事例を中心に、イノベーションを生む組織とは何か解説します。 サンプルは無料! 気になった方にはまず無料でサンプルをお届けします。下記のフォームからお気軽にお問合せを。 ※テーマ・内容は予告なしに変更になる可能性があります。

フェムテックが取り組むセクシャルウェルネス改善と女性社会進出

フェムテックと聞いて、女性だけの関心ごとだと捉える方は多いかもしれない。 しかし女性の社会進出が当たり前になっている現在、女性特有の問題を解決するテクノロジーにはもはや社会全体にとってプラスになるものであり、男性だからと […]

【医療テック×UX】スタートアップが変えた私達のヘルスケア体験

近年、医療技術は発達し続けているが、実際の生活で使う医療サービスのUXは同じくらい優れているだろうか。 予約がなかなか取れなかったり、病院でも待たされたり、同じ薬を処方してもらうためにまた予約して病院に行く必要があったり […]

D2Cブランドに学ぶウェブサイトに必要な3つのUX要素とは

今やあらゆるビジネスにとってオンラインストアは欠かせない販売チャネルとなった。むしろオンラインストアはもはや実店舗をもつブラントがサブ的に持ち始める販売チャネルではなく、主流の販売チャネルになりつつあると言える。 このよ […]

日本企業がシリコンバレー的スピードを身につける方法

先日福岡にて開催されたグローバルスタートアップイベント、Waraku SummitにてWiLのパートナーである琴 章憲氏との対談をする機会をいただいた。スタートアップをはじめとして、日本企業のグローバル展開に関するトピックにてのディスカッションを行った。 そこで、彼が日本企業がシリコンバレーの企業に勝てない一つの大きな理由として挙げていたのが、決断と実行スピードの違いだ。例えば彼が前職で出向していたTwitter社でのエピソード。 それまではプログラミング言語としてRubyを利用していたが、ユーザー数の増加と今後のスケールを念頭に、ある日突然エンジニアリングトップよりScalaに切り替えることが決定された。これでTwitterのエンジニアは問答無用で翌日からScalaを利用しなければならない。さもなければ会社に残れないからだ。 これがもし日本企業で似たような事があったとしたら、内部調整とエンジニアたちのスキル獲得期間などを考慮し、最低でも数ヶ月は猶予期間を設けるだろう。シリコンバレーではそんなゆっくりはしてられない。即決定、即実行が基本である。 ↑上記のセッション動画 シリコンバレーの企業と日本企業の決断スピードの差は100倍 以前にも紹介したが、シリコンバレーの企業が世界的に凄いとされている理由の一つがそのスピードの速さであろう。特にデジタルが主流になってきている現代では、これがかなり強力な武器となる。 日本企業が完璧なプロダクトを1つ出す間に、シリコンバレーの競合は20%の完成度のものを5つ出し、ヒットしたものだけを残し改善すると言われるほど、決断、実行、リリースのスピードが速い。 一説によると、日本企業とシリコンバレーの企業を比較すると、その決断スピードには100倍の差があると言う。これは、例えると時速3kmで進むカメと、時速300kmのF1カーぐらい異なると言う事だ。ある意味、全くカテゴリーが異なる。 参考: 日本がシリコンバレーに100倍の差を付けられている1つの事 スピードが大きな競争優位性となる3つの理由 現代のビジネスにおいては、時間をかけるのが一番のリスクとなりえるだろう。スピードが遅いのは命取りにもなりえる。 特に急激な成長を一つのゴールとしているスタートアップにおいては、”速すぎる” と言うことはほとんどない。「今さら聞けないリーンスタートアップの基本」でも紹介されている通り、できるだけ早い段階でリリースをし、改善するのがシリコンバレーのスタンダードにもなりつつある。 急いで決断、行動することのリスクよりも、得られるメリットの方が大きい。もしそれが原因で失敗したとしても、取り返しのつかないことは少なくなってきていると感じる。スピードが速いことで得られるメリットを3つ紹介したい。 1. チャンスは長居してくれない 時代が激しく変化する現代において、ビジネスチャンスを掴みたければ、タイミングが重要になる。例えば、スマホ普及に合わせたLINE, FacebookによるInstagramの買収、リーマンショック後の不況で大人気になったシェアリングエコノミー系サービス、ブロードバンドの普及が整った時期に一気に普及したYouTubeなど、上手にチャンスを掴み取ったサービスは少なくない。 また、「世界を変えられなかった12のサービス ~第一次ドットコム時代のアイディア~」で紹介されているように、タイミングがずれているとどんな良いサービスでもヒットしないケースもある。 2. 顧客ニーズの高速化 スピードが求められるのはビジネス機会のタイミングだけではない。顧客やニーズへの対応スピードも、その企業の価値を左右する大きなファクターとなってくる。ユーザーニーズに合わせ、プロダクトをどれだけの頻度でアップデートできるか、顧客の問い合わせにリアルタイムに対応できるかも顧客満足度を大きく左右するだろう。 3. 競合に対する防御策 決断と行動のスピードが速ければ、競合の動きにもうまく対応する事ができる。逆にその対応が遅れると致命的な結果にもなり得る。例えば、Netflixに駆逐されたビデオレンタルのBlockbusterや、Amazon対応が遅れたBordersなど、動きが遅すぎて、新規参入のライバルに対し完全に後手にまわってしまって滅んだ企業も多い。 参考: 近い将来テクノロジーが葬る10の産業 実例: GAFAのスピードに対しての意識の高さ 冒頭のTwitter社でのエピソードに加え、世界のトップを牽引するテクノロジー企業であるGAFA (Google, Apple, Facebook, Amazon) におけるスピードに関しての実例も紹介したい。 失敗の数だけ評価の対象になるGoogle X 前回の「日本がシリコンバレーに100倍の差を付けられている1つの事」にて、平均で約10日間の間に1つの会社を買収することからも、その動きの速さが理解できたGoogle. その新規事業を生み出すためのラボ的組織のGoogle Xでは、失敗を恐れずに、新しいことにどんどんチャレンジできるように、ユニークな人事評価規準を設けている。 失敗の数の多さが、評価の対象になると言うのだ。イノベーションに失敗はつきもので、恐る恐る一つのことをじっくりやるよりも、速いスピードでガンガン進め、その中のわずかでも大ヒットを出す事が出来れば大成功である。 それを実現するために、Google Xでは、一つのプロジェクトを成功させたスタッフよりも、100の失敗を経験したスタッフの方が高い評価を得られるような仕組みを導入している。 Appleでの象徴的な出来事 現時点で世界一の時価総額を誇るAppleもスピードを重要視していることがわかるエピソードを紹介したい。2008年にプロダクトマネージャーの一人がミーティングにて、CEOのTim Cookに対して中国の工場での生産に大きな問題が発生している事を伝えた。するとCookは「それはまずい。誰か出向いてどうにかしなければ」と言った。 そのミーティングは継続し、30分ほどが経った時点でそのプロダクトマネージャーに対しCookが「あれ、なんで君はまだここにいるんだ?」と言うと、彼は急いでサンフランシスコ空港に直行し、服も着替えずにその足で中国行きの便に飛び乗った。 Amazonは平均で11.6秒に一回の頻度でデプロイしている Appleに迫る勢いで時価総額記録を更新し続けているAmazonも、スピードに関しての意識はかなり高い。その一例として、彼らは実に平均で11.6秒に一回ソフトウェアの更新を行なっているとい言うだ。 もちろんこれは平日だけでのケースではあるが、常に最善の体験をユーザーに届けるため、そして競合に勝つために、新しい仕様リリースしまくっていると言うことになる。 スピード優先を社訓にしているFacebook シリコンバレーの企業の中でも、の動きの速さを武器にしていることで有名な企業がFacebookだろう。オフィスのいたるところに社訓である”Move fast, and break things. “ や “Done is better than perfect.”と書かれた表札が飾られていることからもわかる通り、彼らのモットーはとりあえず作り、リリースし、そこから改善をしよう、と言うもの。 ソフトウェア、特にWebやアプリなどのプロダクトの場合、リリースしてからいくらでも変更が効くので、完璧を目指す必要はない。ある程度の精度が得られた時点でとりあえずリリース。ユーザーの反応を見ながら改善をすることができる。それも、特定のユーザーだけを対象にすることも可能なので、速く動く事のメリットは大きい。 ↑Facebook社の壁に飾られた社訓 日本企業は「礼儀正しく時間を奪う」 それではなぜ日本企業はスピードが遅いのだろうか?その理由は実はその「礼儀正しさ」に隠されている。これは、企業のワークスタイルの改善を進めている日本マイクロソフト株式会社 テクノロジーセンター センター長の澤 円氏による分析で、彼によると日本企業は「礼儀正しく時間を奪う」事で、生産性を極端に下げていると言う。 これは言い換えると、多くの時間を費やしている割りには、アプトプット量が極端に少ない。時間をかけるべきところと、そうで無いところの分類がズレているとも考えられるだろう。 例えば、見るだけで済む結果のレポートに関しては、わざわざ会議をしなくても、メールやチャットで送っておき、各々が空いた時間に確認すれば良いはず。なのに、日本企業は「礼儀正しく」するために、わざわざ忙しい人たちの時間を割いて「報告会議を」行う。 加えて下記のような点も日本企業のスピードを遅くしている要因であると思われる。 スタート時間にシビアで終わり時間には無頓着 日本企業は、出勤時間や会議の開始時間には神経質であるが、なぜか終わり時間には全く無頓着である事が多い気がする。スタートには少しでも遅れれば警告されるが、仕事も会議もなぜか終わり時間をシビアに管理しているケースはまだまだ少ないように感じられる。 何も決まらない会議が多い そして、1日の仕事時間の大部分を割かれる肝心の会議でも、報告と議論はされども、何一つ決定しない、もしくは決定できる人がそもそも最初から参加してない事で「前向きに検討」することしかできないケースが後を絶たない。こんな単純な決定をするだけなのに何時間かけてんだ?と思うこともしばしばある。 決断を先送りしてもペナルティー無し そもそも決定がされない理由の一つとして、決裁権のある役職の人が決断を先送りしても、何のペナルティーも受けない事が理由だろう。これがアメリカの企業の場合、会議で発言しない人や決断をできないマネージャーは会社にとって必要のない人材だとみなされ、最悪首になるケースだってある。 参考: 海外から見た日本式ミーティングの謎 ちなみに、上記で紹介した澤 円氏は、10月11日に東京で開催されるDESIGN for innovation 2018にも下記のトピックで登壇していただく予定。 『イノベーションを生み出すために日本企業が変えるべき習慣』 DESIGN for innovation 2018 開催日程: 2018年10月11日(木)13:30〜20:00 (懇親会含) 会場名: FiNC有楽町 >> イベント詳細はこちらから << シリコンバレーではどのように企業スピードを上げているのか? では、シリコンバレーの企業はいかなる方法でスピードアップを図っているのだろうか?”Move fast or die”と言われるほど、スピードが遅い事が命取りになるこの地域では、徹底的な効率化が進められ、急成長のための素早い行動が推奨されている。 アメリカではメールは短いほど良い […]

新サービスの初期ユーザー獲得に意外と有効なオフライン施策

freshtrax読者の方ならご存知の通り、ここ10年程でサンフランシスコではサービス開発の手法が大きく変化した。ユーザーを中心に捉え、デザインのプロセスを通して課題解決を図るそのプロセスは数多くのサービス・プロダクトを生み出してきた。

そうして生まれた新たなサービス・プロダクトが必ず通るのが「初期ユーザー獲得」のフェーズだ。いくら問題を解決する革新的なソリューションを生み出したとしても、それを使ってくれる人がいなければ何の意味もない。しかしこうしたスタートアップは資金が潤沢にあるわけではない…

銀行はなぜ滅びるのか – それを阻止する方法は? (金融革命 Part 1)

銀行での楽しい体験をしたことのある人は一体どのくらいいるであろうか? 様々なビジネスにおけるユーザー体験が改善される現代において、おそらく銀行は最も質の低い体験を提供していると言わざるを得ないだろう。

確かに、入り口にいる紳士が整理券を丁寧に手渡ししてくれるところまでは良い。しかし、そのあとの待ち時間、面倒な書類、短い営業時間、いちいち発生する手数料、融通の利かない担当者など、顧客がそこで体験する時間のクオリティーは非常に低いと感じる人も多いはず。

そして、その訪問が融資目的だったとした…

イノベーションが生まれ続けるサンフランシスコの生活とは

皆さんはサンフランシスコに住む人々の生活を明確に描けるだろうか?どのように生活し、どのように仕事しているか、想像できるだろうか。今回は、我々サンフランシスコで働く人の生活の中に浸透しているテクノロジーを、衣食住(仕事)という切り口で紹介し、サンフランシスコがイノベーションを生み出し続ける街である所以をお伝えしたいと思う。

衣:便利なだけではないオンラインファッションブランドの魅力
食:オンラインサービスを使った方がより便利でお得という価値が確実に広まりつつある
住(働く):サンフラン…

やりたい事が見つからない本当の理由 – そして見つけるための4つの方法

どうしたら好きなことが見つかりますか?
これまでの経験上、起業を目指している人や、これからの進路を考えている学生に聞かれる質問で一番多いのがおそらくこれだろう。自分自身の場合、子供の頃からの物作りに対する興味と、大学生時代に強烈に好きになった「デザイン」という世界を知ることができたため、そこまで悩む必要がなかった。

それもそのはずで、高校生になる頃には自分が興味のない事を学ぶことに対してエネルギーを注ぐ事を諦めてしまったから。それ故日本の大学に入ることは出来なかったが…。

関連: 文系…

いかにして Google は検索エンジンの覇者となったのか?

 Google は初めての検索エンジンでしょうか……? 違います。では、Googleは最後の検索エンジンでしょうか……?もしかすると。  この数年ほど、検索エンジンを作ろうという野心的な試みは、西海岸のスタートアップの間 […]…

イノベーションの力でアメリカを健康に!フード系スタートアップの活躍

「スタートアップ」という言葉がだいぶ浸透し、日本でもアントレプレナー向けのミートアップや起業家を育成するようなプログラムや施設が増えてきた。そんな今だからこそ改めて触れておきたい点がある。

それは成功している多くのスタートアップは問題を解決するために生まれてきたということだ。ユーザーの理解から始まり、問題を特定をし、新しい価値のあるソリューションを提供し続けることで急成長を成し遂げてきたのである。

関連記事:今さら聞けないリーンスタートアップの基本

こういったスタートアップのなか…