カテゴリーアーカイブ: マネジメント

スタートアップのレイオフ – 明暗を分けたAirbnbとBirdの事例

新型コロナウィルスの影響で、多くのスタートアップにてレイオフ (一時解雇) が進んでる。具体的な状況は「コロナの影響でアメリカのスタートアップではどのくらいレイオフが進んでいるのか」にて説明されているが、現在まで400社以上がレイオフを行っている。
中でも最も多くのスタッフをレイオフした1社がAirbnbであるが、その進め方やCEOからのメッセージ内容の素晴らしさは注目を集めた。プロセス・内容共に、企業として、リーダーとして模範となるだろう。その一方で、同じくレイオフを行ったシェアリングスクーターの…

NRIとNTTの若手エースが語る、大企業でイノベーションに挑戦できる環境作りとは【DFI2019】

企業として:「大企業としての戦い方」を知り、評価制度等の改革を含めてイノベーションにコミットすることが大切。 一社員として:「うまく会社を使う」ことが大切。 マネージャーとして:「イノベーションの性質を理解し、邪魔をしない」ことが大切。 btraxが毎年開催しているデザインと経営の融合をテーマにしたカンファレンス、DESIGN for Innovationも2019年で4年目になる。この記事では、当日行われた6つのセッションの中で「若手エースたちが語る大企業でイノベーションにチャレンジできる場づくりとは」について、モデレーターである筆者自らがご紹介したい。 このセッションは、こんな課題感から実施が決まった。『ほぼ全てのイノベーションは若者によって生み出されてきた。しかし大企業特有の仕組みの中では、そんな若者の力が十分に発揮できないことが少なくない。』具体的なシーンを想像出来る方も少なくないのではないだろうか。 これは筆者本人の課題感でもある。ここ数年ファシリテーターとして大企業の新規事業部の方々と協業させていただく中で、彼らの優秀さに驚くと同時にその能力が活かしきれない環境を悔しく思うことが多々ある。 本セッションでは若くして活躍するエースたちに話を聞くことで、大企業の中で若きイノベーターを活かしていく際のヒントを探ることができた。 スピーカー紹介 林田敦 NRIデジタル株式会社 ビジネスデザイナー 2012年野村総合研究所入社、SE/PMとして活動。2015年サンフランシスコでのbtrax社研修受講をきっかけに野村HDへ出向、グループ全体のイノベーションマネジメントに携わる。2017年からイノベーション戦略子会社N-Village出向、CTOとして新規事業のPO/PMを担当。2019年NRIデジタル出向、顧客への新規事業提案や社内新規事業のアドバイザリーを行っている。JAPAN MENSA会員。   岩田裕平 NTTコミュニケーションズ株式会社 SpoLive事業グループCo-Founder / プロダクト責任者 2013年NTTコミュニケーションズへ入社後、R&Dや新事業開発におけるUXデザイン・ブランド戦略に従事。2017年よりデザイン経営を推進するプロジェクトにジョインし、社内外へのデザイン普及を行う。 2018年より新事業を立ち上げプロダクト/事業責任者に。同時にスタートアップ協業プログラムを立ち上げ、運営も行う。経産省主催「始動Next Innovator」3期生選抜メンバー。HCD-Net認定 人間中心設計専門家。 僕らがあえて大企業でイノベーションに取り組む理由 Q.イノベーションや新規事業と聞くと、どうしてもメガベンチャーやスタートアップ、起業を想像します。お2人があえて大企業でイノベーションに取り組む理由を教えて頂けますか? 林田氏(以下、敬称略): やっぱり大企業はアセットをたくさん持っているので、それが魅力的です。例えば、野村ホールディングス出向中にアクセラレータープログラムをやったのですが、営業店やセールスパーソンといった募集テーマに紐づく拠出アセットを明確にした結果、多くのベンチャー企業からご応募いただくことができました。また、知名度、野村の看板もアセットの一つとして魅力的であると思います。 岩田氏(以下、敬称略): 僕も全く同じですね。特にチャネルと技術アセットです。若い企業やスタートアップでは持ち得ないような様々な企業や団体との繋がりや、特にNTTグループは技術系のアセットをたくさん持っています。R&Dの部隊もいたり、基礎研究にリソースを割けたりするのも大企業ならではのアセットかなと。実際に現在の会社への就職を決めた際も、元々の研究領域に近い基礎研究を事業にできていることが魅力的でした。 林田: あとは、野村と繋がりのあるお客様をPoCに巻き込んでいけるのも大きなメリット。金融庁ともしっかりとしたリレーションがあるので、ちゃんと話を聞いてくれます。設立したばかりのスタートアップだと、そういったこともなかなか難しいかもしれません。 1on1MTGで社内に生息する”隠れイノベーター”を探せ 林田:ところで…社内に「隠れイノベーター」っていません? 岩田:いますね。 林田: 大企業にいる人は、上手い隠れ方を知ってるんですよね。目立たないように動いたり、実は業務時間外でいろいろなことをやっていたり、みたいな。でも、1on1など、上司と部下でちゃんとコミュニケーションする時間を取って、普段何を考えながら仕事してるのかをちゃんと掘り下げると、隠れイノベーターは発掘できるのではないかと。 NRIデジタルでは1週間に1回、30分の枠で1on1ミーティングを行っています。アジェンダは一切無し。ざっくばらんに話します。例えば、仕事で今悩んでいることや、プライベートであったことなど、何でも話せます。まずは開示するということをちゃんとやると、隠れイノベーターは見つかると思います。 そういう意味で大企業は、人材というアセットも豊富ですよね。スタートアップでは人材獲得が問題になりがちですが、大企業だと最適な人材を内部で発掘してアサインすることができます。例えば、NRIのオープンソース部隊で働いていた時は、後ろを振り向いたら世界に数えるほどしか居ない著名なオープンソースのコミッターとかもいて。すごい環境で仕事できていたと思いますね。 多産多死の世界における事業の評価軸とは Q. 次に事業の評価についてお伺いしたいと思います。事業評価のルールが変わってきているのは間違いない。とはいえ大企業の中でいきなり変えると社内に混乱が起こるでしょう。そんな中でお2人はサービスオーナーとして、どのように事業を進められてきましたか? 林田: 大企業は、いきなり大きな事業投資の判断をするのが苦手です。それに対する解決策として導入されたのが、ステージゲート方式ですね。新規事業の「確からしさ」を確認するため、NRIではまずは小さく始めて徐々に大きくしていく、といった方針をとっています。 それでも直面する課題は、どうしても既存の評価軸で判断してしまいがちだということ。イノベーションに関しては、定量的な評価ってすごく難しいですよね。本来であれば定性的な評価が必要。とはいえ既存の評価軸を踏襲してしまうと、どうしても定量的にならざるを得ない。 そこで、野村グループでは意思決定の主体を分けました。具体的には、別途子会社を作って、そこで新規事業を推進する、という形。その子会社は、新規事業についての意思決定を自ら行うことができる。 それがN-Village(エヌビレッジ)ですね。ある意味守られた空間を作ることによって、そういった評価ができるような制度をつくりました。いわゆる出島ですね。 岩田: うちも同様です。社内スタートアップ制度は出来たばかりでこれからが正念場ですが、経営企画部の中に出島のような一部署があり、ステージゲート方式にしています。スタートアップと同様にプレシード、シード、シリーズAに類似する評価をしており、ゲートに「PMFしているか」といった条件が敷かれています。 とはいえ、スタートアップのそれと比べるとやはり事業評価をし、継続可否の意思決定をできる人がいないという難しさはあって。本当は組織も分かつべきだとは思いますが、まだ分かれていません。 事業評価のKGIは売上になりますが、KPIはビジネスモデル次第なので自分たちで設定しています。特にアプリケーション系のビジネスですと顧客数で測ることが多いと思います。投資先行であることに対して、特に組織構造によって生じる問題は多いので、そこはこれから改善する必要があると感じています。 意思決定の鍵は未来と過去を紡いだビジョン Q. スタートアップが定量だけに囚われないに意思決定ができる1つの理由として、軸を「ビジョンに沿っているか」に設けていることがあると思います。大企業の新規事業においてビジョンはどのように機能しているのでしょうか? 林田: N-Villageは、設立時に自分たちのビジョンを定義しました。「挑戦者を支援する」というものです。色々な新規事業案が出てきますが、その中でもどの新規事業をやるかという意思決定は、この「挑戦者を支援する」にちゃんと繋がってるかどうかが軸になります。 もちろん儲かりそうだ、という軸もありますが、まずはビジョンに引っかかってるかどうかが1つの判断基準です。 岩田: 「挑戦者を支援する」程度の粒度は丁度良いですよね。意思決定ができる粒度であるということは、良いビジョンであるための1つの要素だと思います。 林田:そうですね。大企業だと、分かりづらいミッションやビジョンがありがちなので。やっぱり機能や産業が多岐にわたるので、どうしてもそうならざるを得ないと思いますが、そうなると、なかなかそのビジョンに基づいて意思決定するのは難しくなりますよね。 岩田: ボトムアップで作ってしまうとみんなの意見が集約されてしまうので、結局、「確かになんでもやれる」というようなミッション・ビジョンに落ち着くことが多いですね。 僕も過去にグループ会社のブランディングのプロセスに関わったことがあって。企業が創設された当初から遡って、歴代の経営者がどういう想いで経営してきたかを見るべきかなと思っています。この意味では、創業者がいらっしゃる会社だと分かりやすいです。 林田: 抽象的にならざるを得ないところをいかに自分たちの部署に落としていくのか。「未来をつくる」だったら「自分たちの部署が描く未来って何だっけ?」みたいところを部署として考えていくことが重要です。 そのために、「自分たちが今まで提供してきた社会価値の本質ってなんだっけ?」と自らを再定義することが必要になります。ファクトとして存在する過去をもとに意思決定ができるビジョンを作っていくことが、KPIを設定できないというところに対しての枠組みとしてワークするのではないかと思います。 Q.「既存事業と被るのでやめてくれ」という声ってなかったですか?大企業で新規事業をやろうとするとぶつかりがちな壁の1つだと思います。 林田: ありますね。でも、何もしなかったら結局はスタートアップに食われるんですよ。だったら子会社に食われた方が全然マシです。だから、「スタートアップに食われるのと、子会社に食われるのだったらどっちが良いですか?」と問いますね。 定性の世界で絶対評価を下す Q. 事業の次は人材の評価ついてお伺いしたいです。お二人はイノベーションに挑戦する人材をどのように評価していくべきだとと考えていますか? 岩田: やはり人材評価であれば定量だけではなく定性も考慮するべきかと考えています。例えば、同じ部署に売上げが1000億円のサービスがあったとして、それと初期の100万円しか稼げないサービスを比較して評価してしまうと全然及ばないのは当然です。 定量的に測ってしまうと、通常の大企業のロジックではどうしても相対評価になってしまうので、定性の世界に持っていくことで絶対評価するとも言いかえられます。事業によってフェーズが異なるのは当たり前なので、そもそも小さな事業同士でも比較すべきではないのですが。 じゃあ定性の世界で何を見るかというと、それはプロセスの部分。特にどのような仮説検証プロセスを踏んできたのかで評価すると良いと思います。 林田: 完全にアグリーですね。大事なのは「仮説検証の量と質」です。そして、評価をする上司がそれを理解することが必要です。 多産多死の世界であることはもちろん知らないといけないですし、仮説検証をどうすれば効率的にうまく回せるのかということを上司が知らないと、その部下の仮説検証の評価をするのはなかなか難しい気がします。 現場=起業家、管理職=投資家の関係性 Q. そうなるとマネージャーに求められることが変わるのは明白です。イノベーションに挑戦する部下を持つマネージャーのあるべき姿とは? 岩田: 確立されたやり方に沿って、ベルトコンベアで何か物を大量生産する形式だとしたら、マネージャーは「何をすべきか」をきっちりと管理すべきだと思うんですよ。ただ、新たな価値を探索をしなきゃいけない部署であれば、そういった管理はできないはず、少なくとも、日本の大企業で行われてきた従来の「管理」という考え方ではない方が良いと思います。 林田: 先程もお話した通り、イノベーションは多産多死の世界。しかし従来の管理のマインドだと、部下が失敗しそうな状況を見ると助けたくなるため、やめておいたほうがいいと言ってしまう。そのため、必要な失敗でさえもさせてもらえない状況に陥ってしまう。 イノベーションの性質やプロセスを正しく学び、「指導者」としてというよりは、「一緒に並走する観察者」として、成功確率を高めるアドバイスができれば最高だなと思います。「善意で邪魔をするべきでない」ですね。 岩田: 最近こういうアナロジーがいいかなって感じるのは、投資家とスタートアップの関係ですね。マネージャーはスタートアップに投資している投資家で、実際に現場で動く人は、スタートアップ、というような関係性の方が上手くいくと思います。 ですので、イノベーション組織のマネージャーは、意思決定をしたり管理をしたりするのではなく、「自分が投資をしている」という感覚でいた方が良いと思います。自走できそうなら見守るし、フラフラしていたらメンタリングや足りない知識を補完してサポートしてあげるというのが理想的なのではないかと。実際のVCと同様ですね。 林田: となると、経験が必要ですよね。 自分の成功体験や失敗体験に基づいてアドバイスをしてあげることが必要です。机の上に色々な意見を乗せてあげる。でも、過去の経験が今回も活きるとは限りません。最終的に選ぶのはプレーヤーであり現場。これがベストですね。 解釈を捉え直す“攻めのリーガル” 岩田: あとは大企業ならではですが、バックオフィスの自由度とサポートは、成否を分けるポイントになるのではないかと思います。例えば既存のルールに縛られてしまうと活動スピードにも影響が出てしまう一方で、スタートアップでも同様かと思いますが、リーガルや知財等、現場の人だけで賄いきれない裏側の部分に社内のリソースを使えると強い。 チームは新しい仮説を検証したり、プロダクト開発をしたり、前向きな方向にパワーをかけなければならないので、後ろからのサポートは非常に助かります。 林田: 特に、リーガルのサポートは恩恵を感じることが多いですね。UberやAirbnbもそうですが、新しいものを作る時って法律的にもグレーゾーンを攻めることが多い。 しかし、今までの意思決定の基準で判断してしまうとどうしても守りに入ってしまいがちです。そこで僕らは、リーガルの中でもイノベーションに精通しているリーガルを置いて、「こう考えれば法律に触れないんじゃないか?」と解釈を作っていくようにしています。攻めのリーガルをチームに加えられると、イノベーションの実現可能性がグッと高まると思います。 若手は会社をうまく“使う”こと Q. 最後にマインドセットについて。特に大企業でイノベーションに挑戦している若手はどのようなマインドセットを持つべきでしょうか? 林田: 現場の人はうまく会社を使い倒すべきだと思います。 その為には会社がやりたい方向と自分のやりたい方向をうまく合わせることが大切ですね。この方向性が異なると、会社のアセットを生かせない上に、評価もされないので。 一方で会社に働きかけることも大切です。例えば、僕が野村ホールディングスにいた時、グループCEOとランチセッションのような形でインプット会をしていました。 そこで僕は、個人的に新しい技術とかすごい好きなので、「こういう技術が最近出てきてるんですよ」というインプットをして、会社としてこういう技術にも投資をしないといけないよねという方向性を作って、会社側をむしろこっち側に寄せてくる、といった逆の動きもやっていました。 自分が会社に合わせることと会社を自分に合わせることと、両方の動きが出来ると良いと思います。 […]

大企業におけるイノベーションラボのリアル −パナソニックとライオンの事例より−【DFI 2019】

大企業ならではのアントレプレナーシップの育て方、評価の視点がある 「共感」は、新規事業や新しい価値を生み出し広げていく際にもキーワードとなる スタートアップ的マインドセットと、大企業という大きな組織内でのバランス感覚が重要 btraxでは、毎年デザインと経営の融合をテーマにしたカンファレンス「DESIGN for Innovation」を開催し、今年で4年目を迎えた。本記事は、当日のセッションのうち、パナソニックの深田昌則氏とライオンの宇野大介氏をゲストスピーカーとしてお招きしたセッションを基にしている。 実際に社内でどのようにイノベーション組織を立ち上げプロダクト・サービス開発作りに取り組まれているのかお話を伺った。 お二人とも大企業の中で独自のイノベーション組織を構築し、日本の大企業のイノベーション構築の最前線で活躍されている注目すべき存在であり、この記事でもセッションの内容を抜粋して紹介したい。 関連記事:上司が若手を育むための5つのマインドセット【DFI 2019】 ゲストスピーカーのご紹介 深田 昌則 パナソニック株式会社 / アプライアンス社 Game Changer Catapult 代表 パナソニック株式会社にてAV機器のグローバル・マーケティング、オリンピックプロジェクト・リーダーを担当後、パナソニック・カナダにて市販部門ディレクターを担当。帰国後、2015年よりアプライアンス社にて海外マーケティング本部新規事業開発室長。2016年に新規事業開発アクセラレーター「ゲームチェンジャー・カタパルト」を創設し現職。2018年米系ベンチャーキャピタル、㈱INCJと合弁で事業開発支援会社㈱BeeEdgeを設立し取締役を兼務。神戸大学経営学研究科 2017年修了(MBA)。   宇野 大介 ライオン株式会社 / 研究開発本部 イノベーションラボ 所長 1990年ライオン株式会社入社。歯磨剤の開発、クリニカブランド ブランドマネージャー、オーラルケア製品の生産技術開発を担当。2018年より、イノベーションラボ所長。ライオンが掲げる「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニー」を目指し、新規事業の創出をミッションとする新組織を率いる。現在、未経験の領域に挑戦する試行錯誤、一喜一憂の日々を送る。   成果を生み出すためにどのような組織で活動に取り組んでいるか? 金子(btrax,Inc. モデレーター):両社とも大企業でありながら独自のイノベーション組織を構築して様々なプロトタイプを発表されており非常に進んでいる印象がありますが、どのような組織を構築して活動されているのか、また活動を推進していく上で心がけていることはありますか? 深田(以下敬称略):私が始めたのは、2016年に「Game Changer Catapult」という新規事業を生み出すプラットホーム活動です。企業内アクセラレーターとして新しい価値事業を生み出す、加速する実行型イノベーションアクセラレーターとしてこのような活動を始めました。 我々のミッションは「未来のカデンをつくる」。このカデンというのは、我々が従来行ってきた家電製品だけではなく、暮らしの様々な悩み事や困りごとを解決していくサービスやコンテンツ、体験作りも含めた事業です。これを実現するために、社内外の多くの方々との共創の場を作り、さらに新しい製造業の形の模索ということをやっております。 今まで3年間やってきた中で、本当に事業になりそうなものは実証実験を行い、同時に会社組織のようにして実際に2社立ち上げた実績もあります。まだ実証実験中のものだと、例えば先日おにぎりロボット「OniRobot」は、バンコクと渋谷で実証実験を行い、新橋では実際におにぎりのお店を開き検証を行いました。 社内起業家育成プログラム、新規事業開発プログラムと位置付けており、新しいアイデアをどんどん世の中に出していき、本当の事業に仕上げていくことをやりたいと思っています。しかし、これを実際に社内で事業化しようと思うと、なかなか社内のマネージメント層が決心できないケースが多い。 そこで、「株式会社BeeEdge」という合弁会社を外に作り、パナソニックがマイノリティー出資する仕組みにし、さらに、社長に元 DeNA の会長の春田さんをお迎えし、社外から攻めるというやり方をしています。また、利益を上げている事業部からお金を借りるのではなく、自分たちで VC にお金を出資して頂く仕組みを導入しました。 我々の活動は、20世紀型の仕組みから21世紀型の仕組みに変えていくことですね。業績評価や目標管理による成果というよりも、パッションやモチベーションによる成果作りにトライしていきたいと考えています。 宇野(以下敬称略):私は1990年にライオンに入社し、ほとんどのキャリアで歯磨き剤の開発をやってました。去年の1月に「イノベーションラボができて、それからその組織の立ち上げをやってきました。 会社全体も、次世代のヘルスケアのリーディングカンパニーという目標を立て、お客様の習慣をリデザインしていこうという想いでやっています。 その中の1つ、象徴的な部門としてこのイノベーションラボが生まれました。ビジョンは、変わり続けていくこと。驚きをお届けして笑顔の輪を広げていく。そのために次世代ヘルスケアのソリューションを作っていくこと。 この実現のために大切にしているのは、失敗を新たな学びを得る機会として尊重すること。そして、色んな人と繋がって成功していくことです。 実際に取り組んでいる例として口臭を測定するアプリを挙げます。ガイドに合わせて舌の写真を撮影すると、口臭のリスクを教えてくれる。このアプリを使ったサービスを展開してビジネスができないかと考え、色々なところと組んで実証実験をやっています。 もう1つは京セラとライオンでソニーのアクセラレーションプログラムを使って作った「Possi」です。子供の仕上げ磨きをする歯ブラシですが、骨伝導の技術を使って歯が磨いている時だけお子さんの脳内に音楽が流れる仕組みです。先々月までクラウドファンディングを行い目標額を達成しました。 また、新価値創造プログラムNOILという社内のビジネスコンテストを展開しています。こちらも今月ようやくファイナリストが決まり、来年から本格的な事業化に向けて検討していく予定です。 それ以外に、他社と共同で「point 0 marunouchi」というシェアオフィスを作っています。ただのシェアオフィスではなく、各社がソリューションを持ち込んで実証実験ができる場所にしていくことが目標です。 イノベーションに挑戦する人材をどのように育成しているか? 金子:人材育成の面について伺います。先ほど深田さんからパッションというお話がありましたが、若い人材をどう育成していくことについてお考えはありますか? 深田:起業家・アントレプレナーを育成できるのかという議論は常にありますが、素晴らしいアントレプレナーが社内にいるかといえば、現実問題難しいかもしれないですよね。しかしだからといって、社内の人たちが全員ダメかというとそうではない。実際にやってみたい人は沢山いるんですよね。やりたい人が自らそのパッションを持って集まってもらうことが大事かなと。 一般的な知性を持ち、やる気さえあれば、スタートアップのアントレプレナーは生まれてきます。そこを丁寧に掬っていきながらやる。 徐々にアントレプレナーシップを育てていく あとは、元々サラリーマンとして入った人たちなのでどうしてもいきなりアントレプレナー的な意識を求められるとメンタル的に辛い時もあります。そこは卒業生も含めた「カタパリスト」のようなネットワークを作って、成功例も失敗例も見せる形でやっています。 金子:他の企業の方から、若手でイノベーション活動に取り組んでいても現業があってなかなか他に集中できない、あるいは途中で燃え尽きてしまうという話を聞きますが、仕組みとして工夫されていることはありますか? 深田:本業の時間の25%をカタパルトの活動に充ててもいいというルールはありますが、そのような時間の考え方というよりも普段から新しい活動に参加する意識を持つことが大事です。 このようなイベントに集まることもそうですし、そこで得たものを社外に発信していけば、アントレプレナー的な気質が自らの中に生まれ、その中で気が合う人たちが集まって新しいことをする動きが必ず生まれてくると思います。そのタイミングで躊躇せずに、言い訳をせずにやることが大事だと思います。 金子:評価制度として工夫されている点はありますか? 深田:評価があるからやるとか、ないからやらないとか言っている時点でダメですね。25%の活動を評価してもいいのですが、どうしても評価されやすいチャレンジをしてしまう傾向があります。 そこで、日々の評価は減らして事業を続けるか続けないかの評価にすることで、目標管理では評価されないようなことにもチャレンジができる仕組みにしています。 何を評価するか、そして、評価軸の透明性をいかに担保するか 宇野:私たちの場合は専任組織ですので、100%イノベーションラボにつぎ込むことを前提にしています。評価は私がしていくことになりますが、メンバーには社内ベンチャーである以上メンバーの起業家たる能力を評価すると伝えています。 とりあえずどれだけ難しいことにチャレンジしたかを評価しようと。そして、それを知らせるためにアピールしていくことは一番大事だと伝えています。 このスタンスで皆が納得してるかどうか分からないし、それで適当な評価が付けられているのかも分からないですが、まずはこれでやってみて何かあったらすぐに直していこうと伝えています。 金子:新規事業の立ち上げ経験がない方々でもチャレンジできるようにするために、どのように育成をされていますか? 宇野:私から何かを伝えることはほぼありません。何かやりたいと言ってきたら「いいじゃん、やりなよ」と背中を押しています。自分たちの興味や好奇心、意欲に従ってもらうようにしています。 あとは、私が見つけたものを皆にシェアしています。また、一番勉強になるのは色々な企業の皆さんと一緒に仕事をしていくこと。これにより鍛えられている部分がとても大きいと思います。 社内や経営層に対してどのように活動をアピールしていくか? 金子:活動を続けていく上で一番苦労されている点は何ですか? 宇野:色々な人に活動を理解してもらうことです。私は面倒くさがり屋で説明するのが苦手ですが、それを常に行っているので大変です。 活動を理解してもらうための工夫として、ラボ専用のデニム地の制服を作りました。我々のラボはライオンの研究拠点の中にあって、周りは全員白衣なんですよ。 そんな環境の中に出来上がったイノベーションラボのメンバーが、「僕たちは何でもありなんだよ」「自由な発想こそが必要で、今までの働き方とは全然違うことやるんだ」という意識を浸透させるためにこの制服を作ることにしました。 活動の理解を得ることは大企業ならではの骨が折れる仕事 深田:大企業の中でイノベーションを起こしていくのは本当に大変な活動です。若い人が活動するために守らないといけない部分もあったり、逆に自ら守らないといけない局面もあったりします。 20世紀と21世紀の間くらい、大企業とスタートアップの間にいるので、両方の面を理解しつつ、一方で大企業の理屈には与しないというアイデンティティを持つことが大切。 過去に軸足を置いてしまうと絶対に前に進めないので、未来に軸足を置いてることを明確にしながら、それに対して躊躇しないというマインドセットを持つべきと思います。 金子:その中でも、マネージメント層向けにこういう点を一番アピールしている、こういうところを理解してもらうのが難しいというポイントはありますか? 深田:役員たちも本当は新しいことをやりたいと考えていると思います。ただ彼らのポジション上そればかりやっているわけにいかない。なので、彼らの状況を理解した上で代わりにやっていくという感じですかね。 宇野:「こういうことやりたかったよね?」という全体像を見せるようにしています。あとはそれほど進んでるわけではなくてもきちんと前進していることを見せています。マネジメント層に常に注目してもらえるようにしていくということです。 途中で事業として成立させていく上でより困難な要求をされることもありますが、そのハードルを如何に乗り越えていくかが重要です。 サービス開発においてデザインをどのように取り入れているか? 金子:今回のイベントではデザインという考え方にフォーカスしていますが、デザインをチームに取り入れていく上で何か意識している点はありますか? 深田:デザインという言葉は少し曖昧ですが、「意味のデザイン」というのはとても重要ですね。つまり、「あなたがここ(場所)でやること、これ(内容)をやることにどのような意味があるのですか?」という話です。 社会貢献や社会課題の解決、「自分がやらないと誰がやるんだ」というレベルで話ができるかどうか。「意味のイノベーション」を起こしていくことが我々パナソニックでカタパルトをやっている本当の意味です。 パナソニックの存在意義に対して、大企業で量販店で電化製品を売るだけという話ではないということに我々自身が気づいて行動できるかが大事です。 その実績を生み出すという意味では、デザイン思考は大切。デザイン思考は無いものを生み出す活動ですよね。実際に Vision 化し、モノとして形を作って、世の中に広めていくという発想ですので。意味のデザインを社内にどう浸透させていくかは大切ですね。 活動に意味と使命感、そしてパッションを持つ 宇野:ずっと大事にしていることはオーナーシップです。自分でこれをやりたいと強く思えている人だけが成功できると思います。やりたいという意志をしっかり持てる人であってほしいし、そんなテーマを見つけ出してほしいと思っています。 一番強いのは、「この人がこれだけ困っているからこの人を何とかしたい」という想いだと思います。ですので、それを見つけてもらう、そしてそれを解決するために自分がどうしていくのかが重要だと思います。 金子:「共感」というキーワードについてはいかがですか? 深田:新規事業、価値づくりには共感というキーワードがあって、世の中から共感を得るということがとても大事です。オープンイノベーションも全て共感ベースで広がっていきます。 実践してみて感じましたが、我々がやっていることが世の中に共感として広がっていくということが大事で、結果としてそれが利益や販売量に繋がっていきます。 共感がないビジネスはやはり大きくはならないですし、そもそも自分事としてやっていっても心が折れてしまう。共感されることで、応援してくれる人が増えたり、一緒にやりましょうという輪が広がります。それが最終的に社会課題の解決に繋がることがすごく大事だと思います。 大企業がイノベーションに取り組む意義とは? 金子:大企業の中で新規サービス開発にチャレンジするのは本当に難しいことだと思います。お二人はどのような点に意義を感じて大企業におけるイノベーション活動に携わられているのでしょうか? 深田:20世紀大企業に就職して定年まで安泰という時代はもう終わり、サラリーマンであっても自ら個人のブランドで個人で活動ができて、社外の人と繋がりながら新しいものを生み出す時代になったと思います。 これがこれからの仕事の働き方になりますし、そのためには新しいキャリア作りという意味でも「営業は営業」「技術は技術」ではなくて、新しい価値を生み出す活動ができる人にならないといけないと思います。 しかもそれをチームで実践していく必要がある。そのチームというのは必ずしも社内で閉じる必要はなく社外や色々な形が混じる方が良い、そういう思いでやっています。 […]

澤円x越川慎司激論!日本企業がイノベーションを生み出す組織になるには【DFI2019】

イノベーターとは要素の組み合わせができる人や、足し引き掛け算ができる人。イノベーターになる可能性は十分にある
芽を育てるマインドセットと前進がみられる失敗には評価する制度を
イノベーションできないことの言い訳をするのではなく、「当たり前を疑う」こと。お互いに不得意なことを補い合える人を見つける

「イノベーション」や「グローバルマインドセット」。口で言うことは簡単だが、依然として横並び意識が色濃い日本の企業で実行に移すハードルは高い。
なかなか躍動できない若手や、そんな若手たちをどう扱うべきかわか…

グローバルにイノベーションを起こす人の7つの特徴

経済産業省が「デザイン経営宣言」を発表したのが2018年のこと。経営にデザインを取り入れることで、組織のイノベーションの創出力を高めようとする試みだ。
実際、日本の多くの企業でも、デザインを取り入れる動きが見られるようになり、その効果も少しずつ現れ始めている。
関連記事:統計データで見るデザインの経営に対するインパクトの大きさ
イノベーション、説明できますか?
では、そもそも「イノベーション」とは何だろうか?ふわっとした「なんとなく」のイメージに留まり、その定義ができていないのではないだろうか?
バ…

成果が出ないのを部下のせいだけにするのは「無能」。トップダウンのマネジメントに固執するな

 リーダーシップスキルを向上させる演習プログラムを実施していて、相談を受けることが増えている内容に、「部下や後輩が言うことを聞かない」というものがある。 根強い、部下や後輩に問題があるという考え 「指示や命令をしても動い […]…

店舗スタッフの生かし方/育成・定着の新しいマネジメント方法

マーケティング研究協会は3月7日、「店舗スタッフの活かし方・動かし方セミナー~育成・定着・動機づけを実現する新しいマネジメント方法~」を開催する。 消費が成熟化している国内市場では、インターネットも含めた買物環境は増え続 […]…