カテゴリーアーカイブ: 海外スタートアップ

DXの波に乗れ!注目のファッションテックスタートアップ5選

デジタル化で遅れをとるファッション業界にもDXの波が到来 Stitch Fix: サブスク縛りなしのオンラインスタイリングサービス Poshmark: 巨大ユーザーコミュニティを持つ「海外版メルカリ」 Betabrand: ユーザーはデザイナー  共創型ファッションプラットフォーム Bolt Threads: 菌類に蜘蛛の糸  次世代素材を提供するバイオ系スタートアップ Provenance: 商品の旅路を見える化 消費者に安心を与えるサプライチェーン管理ツール DXの流れを受け、「XaaS」と呼ばれるモノのサービス化や、デジタルシフトも同様に注目されていることは誰の目にも明らかだろう。 様々な業界がその波に乗ろうと奮闘する中で、今回はファッション業界に焦点を当ててみたい。 ファッションは経済の動きそのものを表しているように思う。衣食住というように、ファッションは人間の生活の基本であり、密接に絡んでいるからこそ、産業の変化が起こるとその影響も受けやすいと考えている。 それと同時に、デジタル化が遅れている業界だとも言われてきた。しかし、今年のコロナショックを受けてDXにまつわる動きが多く聞かれるようになった状況で、ファッション業界もDXの観点を取り入れていくことがより一層求められている。 この記事では、そんなファッションに関連して、テクノロジーをうまく掛け合わせて新たな価値を提供しているサービスを紹介していきたい。 1. Stitch Fix Stitch Fixは、オンラインのスタイリングサービスだ。AIとプロのスタイリストによってパーソナライズされたコーディネートを提案してもらえる。 コストは、1回につき20ドル。まず最初にユーザーは希望する価格帯とサイズ、体型の他、普段のライフスタイルやファッションに関する姿勢に関する質問にクイズ形式で回答していく。 簡単なクイズ形式でユーザーの体型や嗜好を絞っていく そして、その後、ユーザー1人1人のために組まれたコーディネートが自宅に届き、気に入ったものはそのままキープして購入可能、買い取らないものは送り返すという仕組みだ。 このサービスの特徴的なところは、サブスクリプションモデルではないところ。この手のサービスは、サブスク型であることがもはや前提のルールのようになっている印象があるが、1回のみの利用が可能で、サービスを試すハードルが低い。 サブスクにありがちな、うっかりステータスの更新を忘れてずるずるとサービスを継続してしまうというミスの心配もない。 プロのスタイリストによるコーディネートの提案とその他のオペレーションにおいて、人間が担うべき領域と、テクノロジーに任せて効率化を図るべきポイントをうまく両立しているところがStitch Fixの強みであり特徴だ。 同社は、今年の発表で、アクティブユーザー数が350万人、前年度比17%増、純収益に関しては、4億5,510万ドル、前年比22%増と報告している。 同社のCEOは、コロナ禍の外出制限を受けて、オフィス向けの商品よりも、アスレジャー(アスレチックとレジャーを合わせた造語)に焦点を当てたことがこの伸びの1つの要因と考えている。 出社の機会が減った代わりに、家で過ごす時間が増え、ヨガウェアやスポーツウェアをはじめとするカジュアルな商品のニーズが高まったのだ。(参考) 2. Poshmark Poshmarkは、CtoC型ソーシャルコマースサービスだ。北米に6,000万人のコミュニティメンバーを持ち、1億点ものアイテムを取り扱う巨大なプラットフォームである。 その仕組みは「海外版メルカリ」とでも言えるだろうか。売り手は、商品をプラットフォーム上にアップロードして販売する。 そして買い手は、通常のECサイトのように買い物を楽しみ、場合によっては出品者と値段を交渉したり、コメント欄にてサイズやカラーバリエーションの質問などのやりとりを行ったりできる。 また、Instagramの使い方も秀逸だ。サービスに対するユーザーの口コミや写真を中心に、イベント情報まで、様々なコンテンツを投稿している。ユーザー同士の繋がりでサービスが成立しているからこそ、彼らにフォーカスした内容が多い。 View this post on Instagram #MeetthePosher – @connors.closet_ AKA Connor! 👋 “Hey! My name’s Connor and I’m a 14 year old entrepreneur with a love for thrifting clothing and flipping them for profit on Poshmark.🙌🏼 • I joined Poshmark back in April of 2018, but I didn’t really start taking it *seriously* until the beginning of 2019. Since then, I have sold over 750 items and my business […]

ニューノーマル時代に注目の海外スタートアップサービス25選

新型コロナウィルス の拡大が世界的に叫ばれ始めてから半年以上たった今、新しい生活スタイル = ニューノーマルの浸透がどんどん進んでいる。 パンデミックが収束しても、それまでの生活スタイルには戻らないという専門家もいる。そうなってくると、これまでとは大幅に異なるニーズが世の中に溢れ、それに対するソリューションサービスが多く求められてくるだろう。 具体的には下記のような領域でのサービスが注目されている。(詳細は後半部に記載) DX系サービス 非接触系サービス 心と体のケア系サービス リモート教育系サービス リモートワーク系サービス シリコンバレーを中心に、海外ではすでに多くのスタートアップが新規課題を解決するべくサービスをリリースしている。そんなニューノーマルに対応しているサービスの中でもbtraxが特に注目しているスタートアップを25選んでみた。 ニューノーマル時代にbtraxが注目する25のスタートアップ それでは具体的なスタートアップを見ていこう。 Lattice: 人材管理プラットフォーム Lemonade: P2P型デジタル保険 Alto Pharmacy: オンライン薬局 Mindstrong: メンタルウェルネス Outreach: 営業系SaaS Curastive: 医療テクノロジー MasterClass: オンライン習い事 Loom: 遠隔コミュニケーション Capsule: 処方箋薬のデリバリー Upkey: 企業と大学をつなぐプラットフォーム Zipline: ドローンによる宅配サービス Verkada: 企業向けセキュリティシステム Drift: 営業/マーケティングプラットフォーム Modern Health: 従業員のメンタルケア Tula Skincare: クリーンビューティー系スキンケア Cameo: 動画マーケットプラットフォーム Wealthfront: ロボアドバイザー型投資サービス Spatial: AR/VR型オンラインコミュニケーションツール Bungalow: シェアハウスプラットフォーム Guild Education: 教育福利厚生オンラインプラットフォーム P.volve: 家庭用フィットネスプラットフォーム Samsara: テレマティックソリューション Nuro: 非接触型マイクロデリバリー Chief: 女性向けコーチングプラットフォーム Carbon Health: 医療プラットフォーム スタートアップ名: Lattice 領域: 人材管理プラットフォーム 概要: 組織マネージメントツールであるLatticeは、企業が目標を設定し、従業員のゴール達成度合いをトラックし、その達成状況に合わせリワードを提供する。それにより、スタッフのパフォーマンスを効率的に管理することを可能にする。 多くの企業がリモートワークへのシフトが進む中で需要が高まっており、今年10月から今年の7月の間に約500社の新規顧客を獲得している。また、4500万ドルの追加資金調達を行い、その評価額は約4億ドルに達している。 注目の理由: 実際に顔を合わせる頻度が減った業務スタイルにおける新しいニーズに対応しているため。 https://lattice.com/ スタートアップ名: Lemonade 領域: P2P型デジタル保険 概要: Lemonadeは月額5ドルからの手頃な保険を提供するスタートアップ。 世界初のP2P保険サービスとして2015年にローンチた。 P2P型保険というコンセプトは、ユーザーとユーザーをつなげることで、それまで中間に存在していた保険会社の概念を廃止することで、よりユーザーにとって魅力の高い保険を提供することをゴールとしている。 スマホ一つあれば、面倒な手続きをしなくても簡単に保険に入会、利用することが可能。保険金の申請、支払いも数分間で行われる。そして費用の支払いも月々のサプスクリプションなので、若者を中心に手軽に利用できるようになっている。 注目の理由: そのスムーズな体験を通じて保険のDXを実現しているため、新しい顧客層の獲得が期待できるため。 https://www.lemonade.com/ スタートアップ名: Alto Pharmacy 領域: オンライン薬局 概要: 元Facebookの従業員によって始められたオンライン薬局であるAlto Pharmacyは、薬剤師へのリモートアクセス、薬の無料配達、価格の透明性の実現をゴールとしている。 パンデミックが発生してからは、医師やクリニックのスタッフの遠隔医療への移行を支援し、サプライチェーンを潜在的な不足から守るための新しい仕組みの提供と、非接触型デリバリーシステムを導入している。 1月に2億5000万ドルを調達し、全米での事業拡大を進めている。 注目の理由: 遠隔医療へのニーズが急激に高まっているため。 https://alto.com/ スタートアップ名: Mindstrong 領域: メンタルウェルネス 概要: Mindstrongは、重度の精神疾患(統合失調症、大うつ病性障害、強迫性障害)を持つ患者とセラピストを結び、ビデオや電話、テキストでコミュニケーションを取ることができるメンタルヘルスケアプラットフォームを提供してる。 […]

コロナ疲れを克服!心身共にケアするウェルビーイング系サービス5選

コロナの影響で心身ともに疲れが。今こそ「ウェルビーイング」について考える必要あり!注目のウェルビーイング系サービス5選 Moon Juice: 美容だけでなくストレス軽減等にも効く、植物由来のクリーンビューティープロダクト WellSet: WellTechの先駆者。ウェルビーイング系サービスの総合プラットフォーム hims/hers: 驚異の成長でユニコーン企業入り。男女のデリケートな悩みに寄り添うD2Cブランド Oura: 睡眠時のコンディショニングもサポート。指輪型の超スマートIoTデバイス Blueboard: リワードの送り合いで体験を提供。従業員体験の向上を図るToB向けプラットフォーム 長期的に見て、心身両者に対してポジティブに働くウェルビーイングサービスであるかがポイントに サービス提供者が向き合うべきは、サービスを通じたユーザーの課題解決 リモートワークが新たな働き方として普及し、ニューノーマルが浸透し始めている段階にある。その一方で、「ニューノーマルが生み出す4つの意外な社会課題」にあるように、思いがけない課題も出てきている。 上述の記事で挙げられている課題のひとつに「働きすぎてしまう」というものがある。リモートワークで、家にいる時間が長く、通勤時間も仕事に充てられる状況になったことが原因だ。 実際、Human Resources Exectiveによると、7割の人がこれまでのキャリア全体を通じても、最も大きなストレスを感じているとの調査結果が出ているほか、抗うつ剤や抗不安剤などの処方も増えているという。また、6割以上の人が、このコロナ禍で仕事における生産性の低下を感じているとのデータも出ている。 朝起きて、仕事をして、寝るという淡々としたタイムラインで毎日が進んでいく。ほとんどの時間を仕事に費やしていて、気がつくともうこんな時間。あっという間に一日が終わると感じている方も多いことだろう。 いつ収束するのかも見通しも立っておらず、家にいることを余儀なくされ、自由がない。ただでさえ塞ぎ込みそうな、あるいは、爆発しそうな精神状態になりかねないのに、なんだかんだで仕事をしすぎてしまうという不本意さ。心身共に疲弊していないだろうか。 こういった、身体の不具合を治すだけでなく、心も整え、改善していくためには、「ウェルビーイング」という言葉が重要になる。ここ数年でよく聞かれるようになった言葉だが、その一般的な意味は、身体的、精神的、社会的に満たされている状態のこと。 特に、身体的な充足以上に、精神的にも満たされていることがウェルビーイングの定義の中核にある。健康よりも、ウェルビーイングなのか。たとえ健康的に役立つサービスだとしても、長期的に見て精神的、社会的に自分が満たされているのか、といった点に着目しているのがポイントだ。 今回は、ウェルビーイングやウェルネスをテーマにしたサービスや取り組みについてご紹介していきたい。新たな環境に順応せざるを得ない状況において、これまでの生活との摩擦やギャップで精神的にも疲弊してきていると感じるという方の一助になったら幸いだ。 Moon Juice Moon Juiceは、LA発のウェルビーイングブランドだ。アダプトゲンという成分に着目したサプリメントや、スキンケアグッズを扱う。アダプトゲンは、ハーブや漢方由来の成分で、ストレスの軽減や美肌効果などが期待できる。 View this post on Instagram BUILD RESILIENCE//⁣⁣ Cortisol out of balance can weaken your immune system. SuperYou contains four potent adaptogens that work to regulate cortisol and address the effects of stress on the mind and body. ⁣ ⁣ Get it @sephora.⁣ ⁣⁣ #SuperYou #moonjuice #sephora⁣ A post shared by MOON JUICE (@moonjuice) on Apr 12, 2020 at 8:26am PDT 脳の活性化を助けるもの、肌の調子を整えるもの、コラーゲンを補給できるものなど、効能も様々。また、サプリメントといっても、錠剤のものだけでなく、ドリンクに溶かして摂取できる『Moon Dust』という粉末状のものもある。 Moon Juiceは元々、創業者であるアマンダ自身のが患っていた慢性的な免疫疾患を、アーユルヴェーダ療法(インド古来の伝統医学)で寛解した経験に基づいている。この経験から自身でも学びを深め、植物の力を活かしたクリーンなプロダクトを作ることに至ったという。 Moon Juiceのプロダクトは、その成分の純度や効力、微生物含有量、農薬の量などを専門家と共に検証した、高品質さを徹底したもの。自分たちが摂りたいと思う、高品質なものしか作らないという強い信念に基づいている。 また、カリフォルニアを中心にオフラインの店舗も持っており、そこでは、プロダクトの販売はもちろん、ジュースやミルク、スナック類などの提供も行っている。 WellSet WellTech(Well-being/Wellness × Technology)という言葉や、WaaS(Well-being/Wellness as a Service)という言葉も出てきている。数兆円の市場規模というポテンシャルを秘めたウェルビーイング業界において、WellSetは先駆的なサービスだ。 WellSetは、ウェルビーイングやウェルネスにまつわるサービスの予約ができるプラットフォームだ。セラピストや鍼灸師、アーユルヴェーダのインストラクターなど、様々なカテゴリーのプロを検索で見つけ、施術の予約までを一気通貫で行うことができる。 また、『Virtual Wellness Studio』という、メディテーションやエクササイズを対面で行うイベントにも参加することができる。コロナ禍ではオンラインで行われているが、オフラインのイベントも含め、お試し感覚で、より気軽にサービスを利用することができる仕組みも設けている。 WellSetの強みは、網羅性の高さにあると筆者は考えている。ただでさえ類似した言葉が多く、混乱するウェルビーイングやウェルネスの概念。それを逆手に取ったかのようなサービスに思える。 症状や希望するインストラクターカテゴリー、価格など細かく条件を絞って検索が可能(公式HPより) サービスの検索画面では、症状やどどのようなカテゴリーの施術を希望しているかによって細かく条件検索が可能。詳細なニーズも汲むことができるようになっている。 多岐にわたるカテゴリーを網羅しているということは、当然対応できるニーズも広い。「こんなものもあるだろうか?ひとまずWellSetを見てみよう」とサービスを利用する人が多いのではないかと予想できる。 […]

パンデミックによる肉不足も解消!プラントベース食品最前線

コロナで肉品切れ&プラントベース肉は価格を落としての拡大中 プラントベース(乳製品・肉代替)市場は約5,000億円拡大。チェーン店でも買えるまでに浸透中! 拡大の理由はアメリカの消費者の食スタイルの変化、植物性への移行の重要性、そして味! 注目ブランド紹介:gardein、Forager Project、Miyoko’s Creamery トイレットペーパーの次は肉が無い!? コロナウイルス感染拡大を受け、アメリカでは牛肉、豚肉の供給にも影響が出始めた。 屠殺場や食肉パッキング工場でも従業員の集団感染が発生し、4月末までに、カナダおよび国内有数の工場が閉鎖に追い込まれた。 これにより、大手ハンバーガーチェーンのWendy’sでは原料の精肉が手に入らず、全体の約20%の店舗(1,043店舗)でハンバーガーが品切れとなった他、コストコなどでは、一家庭当たりの精肉の購入制限が設けられた。 今後もウイルスの拡大が続けば、洗浄作業のために工場の閉鎖は長引き、冷凍肉の貯蔵も底を尽きて、さらに肉不足が深刻化することが懸念されている。 この肉不足の問題を受けてクローズアップされているのがプラントベース(植物由来)食品だ。嗜好の変化やその健康面から度々注目されてきたが、新型コロナウイルスの影響を受け、さらなる広がりを見せている。 そこで本記事では、最新のプラントベース食品市場について紹介する。ポイントとしては以下。 新型コロナウイルス感染拡大によるアメリカでのプラントベース食品市場の急成長 アメリカのプラントベース市場規模とその浸透度 そもそもなぜプラントベース食品が消費者に受け入れられているのか 注目されているプラントベース食品ブランド紹介 Twitterで拡散されたビーフ切れを訴える貼紙 Big Rapid Newsより 新型コロナウイルス感染拡大によるプラントベース食品市場の急成長 前述の通り、パンデミックにより肉不足となり、食肉の流通価格は上昇した。一方で、プラントベース食品への需要は高まり、各社がそれに応え供給を強化していることで、プラントベース食品市場は盛り上がりを見せている。 代替肉の製造を行うImpossible Foodsは、小売店での販売を拡張した他、レストランへの卸値を15%下げることも発表した。 同じく代替肉スタートアップのBeyond Meatも、2020年第一四半期の売上が前期比141%増の100億円越えと堅調に推移しており、夏には価格を下げることを発表して株価も上昇している。 家族4人分のハンバーガーを作ろうとした場合、精肉を使うとパテの価格は全員分で5ドル程度で済む。一方、Beyond Meatのハンバーガー用パテは1枚が約3ドルで12ドルと、2倍以上の価格差があった。 Impossible FoodsもBeyond Meatも、精肉が不足・高値となっている今が、精肉との価格差を縮め、新規顧客を得るチャンスと見ていることが分かる。 乳由来に限らず、多くの種類が並ぶアメリカの日配品売り場 Dine Magazineより アメリカのプラントベース食品市場の規模とその浸透度 ではプラントベース食品の市場規模はどのくらいなのか。また、一般消費者にとってどのくらい身近なものになっているのだろうか。 2020年3月に発表された最新のSPINS小売売上データを元に、The Good Food InstituteがまとめたPlant-based Food Market Overview(プラントベース食品市場概要)によると、プラントベース食品の売上は過去2年間で29%増加し、2019年に50億ドルに達した。 その主な内訳は、植物性ミルクが20億ドル、次いでヨーグルトやバター、アイスクリームなどの代替となる植物性乳製品が14億ドル、そしてプラントベースミートが10億ドルとなっている。 日本では、フードテック発の代替肉に関するニュースを目にすることが多いと思うが、実際には植物性乳製品も市場を大きく占めていることが分かる。 また食材としてスーパーでプラントベース食品が購入できるだけでなく、カフェ、レストランでもプラントベース食品をオーダーできる機会も多い。 日本でもスターバックスで豆乳・アーモンドミルクに加え、オーツ麦由来のオートミルクが期間限定で選択できたようだが、カリフォルニア州発祥のブルーボトルコーヒーでも、アーモンドミルク、またはオートミルクが選択でき、ナッツアレルギーを持つ人でも植物性ミルクが選択できる。 さらにファストフードチェーンでもプランドベース食品が食べられるようになっている。Impossible Foodsのパテを使用したハンバーガーは、バーガーキングをはじめとする多くのハンバーガーチェーンで食べられるということはかなり浸透してきた。 これに加え、Impossible Foodsの代替肉は、アメリカ全土に200店舗以上を展開するCheesecake Factoryというレストランのボロネーゼにも使用されている。 筆者も実際に食べてみたが、トマトソースの味もあり、見た目、食感ともにひき肉との差は全く感じなかった。 Veg Newsより このように、プラントベース食品はかなり身近なものになってきている。スーパーや馴染みのレストランで見つけることことができるため、日本と比べてもプラントベース食品に挑戦するハードルが低いのだ。 関連記事:ビヨンドミートだけじゃない。食品産業に革命を起こす次世代フードを実食。 人々の意識:アメリカでなぜプラントベース食品が求められているのか 冒頭で述べたように、昨今の肉不足もあり、プラントベース食品の需要は高まっている。一方で、アメリカのユーザーの食の嗜好の変化にも需要拡大の理由があるという点も理解しておく必要がある。それが『フレキシタリアン』という食スタイルの台頭だ。 フレキシタリアンという言葉は「基本的にはベジタリアンだが、たまに肉を含めた動物食性食品を食べる人」と定義されている。2003年のワード・オブ・ザイヤー(アメリカ版新語・流行語大賞のような賞)で『最も便利な言葉部門』に選出されるなど、知名度もさらに高まっている。 プラントベース食品の認証組織であるPlant Based Foods Associationがまとめた2017年のレポートによると、アメリカ人の約3分の1がフレキシタリアンとのこと。  Plant Based Food Associationより 厳格なベジタリアンまたはヴィーガンがいまだ少数派であるのに対し、こうした「ゆるく楽しむ層」が徐々にメインストリームになりつつあるのだ。 なぜフレキシタリアンが増えてるのか 以下2つの理由がある。 もともとは、自分の健康や地球環境のため(コロナ拡大でこの意識は加速) 今では、プラントベース食品の味も進化していて、味も選ばれる理由になっているため 中高年を中心に、動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸のさらなる摂取を控え、より繊維質の多いプラントベース食品を取り入れる人が増えている。また、ミレニアル世代(25-39歳)やGenZ世代(8-24歳)では、社会的問題への危機意識から、ライフスタイルを選択する人も多い。 関連記事:ミレニアル世代のマインドセットを捉えて成功したスタートアップ事例 地球全体の人口増加に対して、動物性たんぱく質の供給が追い付かなくなると予想されていることや、食品の生産過程について描いた「Food Inc.」というドキュメンタリー映画が議論を巻き起こしたように、あらゆる情報にアクセスしやすくなった現代において、動物性食品の生産過程に対する消費者の嫌悪感は一層高まっている。 こうした中、生きた動物を販売する中国の市場で人間に感染したのが最初と言われている新型コロナウイルスが蔓延したことで、人間が食物として動物に依存することを問題視する風潮は強まっている。 動物愛護的な観点だけではなく、その加工過程で働く人々の健康リスクの管理といった公衆衛生的な問題意識の高まりも、人々がプラントベース食品を選ぶことの追い風となっているのだ。 プラントベース食品は「味」でも選ばれている こうした理由に加え、今では52%もの人が、プラントベース食品を選ぶ理由に「味」も挙げたと報告されている。 筆者もそうであったが、「代替食品って確かに動物性原料を使っていないが、その分味は動物性食品より劣るのでは?」というイメージを持ってしまう方も多いだろう。しかし、最新の プラントベース食品の味は、ここまで進化しているのだ。 注目のプラントベース食品ブランド3選 現在、Plant Based Foods Associationには、170社のプラントベース食品関連企業が登録されており、「むしろ動物性食品よりこのプラントベース食品が食べたい!」と思う魅力的な商品が日々開発されている。その中でも特に注目なのが以下の通りだ。 gardein: ミートレス・ミートシリーズ 公式Instagramより こうした新しいタイプの商品はスタートアップ企業発のイメージが強いかもしれないが、こちらは米大手食品メーカーのコナグラ・ブランズ傘下にあるgardeinが作るプラントベース食品だ。肉に限らず、魚の代替食品もラインナップしている。 食品や日配品を注文できるAmazonフレッシュでもその知名度や人気は高く、Beyondブランドにも引けを取らない商品だ。 こちらのシリーズの売り上げは、2020年3月13日から4月19日に前年同期比で65%増加したと報告されており、その需要が高まっていることが分かる。 ところで皆さんは『ミートレス・マンデー』という言葉をご存じだろうか?自分自身と地球の健康のために、読んで字の如く、月曜日は肉を食べないようにしよう、というプロジェクトである。 2003年にジョンズ・ホプキンス大学などが主導して発足したプロジェクトであるが、gardeinのホームページでも詳しく発信されている。 gardein公式HPより 例えば、肉を食べないことで制限できるエネルギーをインフォグラフィックで見せている。(真偽は置いておくとしても、)「1週間に食べるハンバーガーを1つ減らすと、車の使用を500km強(320マイル)控えたことになる」など、生じるインパクトは思った以上に大きく、それならもっと肉を控えようかな、という前向きな気持ちにならないだろうか。 このように、味や食感を動物性の食品に近づける努力だけではなく、一個人の行動にも大きな意味がある、ということをしっかりと啓蒙していることも、この商品が選ばれている理由なのかもしれない。 2. Forager Project : カシューナッツのミルク由来の乳製品代替食品 2013年創業のカリフォルニア発ブランド、Forger Projectが手掛ける、カシューナッツ由来のミルクから作られる商品だ。 Forager Project公式HPより 主力商品である『カシューグルト』は、ヨーグルトに代わり最近の筆者の定番にもなっているのだが、味種も6種類以上と豊富で、購入頻度が高くてもマンネリ化しない。 カシューナッツ由来のクリーミーで滑らかな口当たりが特徴であり、酸味は控えめでヨーグルトとムースの中間のような印象を受ける。ヨーグルトとはまた違った風味であるが、むしろこの味が気に入った。 […]

コロナ禍に負けない!アメリカの宇宙ビジネス企業を紹介

イーロン・マスクのSpaceXはコロナ流行後でも、宇宙事業を継続 Amazon設立者の宇宙ビジネス企業Bleu OriginはNASAの月面着陸計画に参加 サンフランシスコの注目宇宙ビジネス企業Planet Labsは衛星画像技術でコロナ禍でも一躍発揮 Rocket Labの小型ロケット打上げサービスが宇宙ビジネスの未来を切り開く はじめに 近年、アメリカでは宇宙ビジネスのスタートアップ企業の成長が注目されている。年始にはk、2040年までに宇宙事業は1兆ドル以上の市場規模に成長するとの見通しも、米商務長官ウィルバー・ロスによって発表された。 その背景には、NASAの積極的な宇宙事業の民間委託がある。NASAの宇宙開発の顔だったスペースシャトル計画は、コストが高過ぎるとして2011年の飛行を最後に終了した。 そこでNASAは宇宙事業を民間委託し、企業間の価格競争を起こすことでコストを抑えるという試みを始めた。つまり宇宙ビジネス関連企業が成長する大きなチャンスとなっているのだ。 そして、そこから生まれる新しいサービスにも期待が寄せられている。例えば、Orbital Insightは人工衛星で撮影した石油タンクの画像を、AIを用いて分析することで石油貯蔵量を推定し、石油投資に利用するサービスなど。 日本でも、ホリエモンこと堀江貴文氏の出資で有名なインターステラテクノロジズをはじめとした宇宙ビジネス関連のベンチャー企業のニュースを聞くことが増えてきており、宇宙ビジネスはより身近になりつつある。 一方で、残念なことにコロナウイルスのパンデミックは宇宙ビジネスにも大きな影を落としている。いくつかのロケット打上げが延期され、企業の資金繰りも困難になっている現状だ。 しかし、この状況に負けずに、宇宙という大きな目標に向けて事業を継続する企業も多い。本記事ではこれらの企業とその現状を紹介する。 また、そのサービスを知る上で、重要なキーワードの簡単な解説も入れているので参考にしていただきたい。今後の宇宙ビジネスを知る上で重要なトレンドになるだろう。 テスラのイーロン・マスクが設立したSpace X イーロン・マスク氏がCEOを務めることで知られるSpaceXは、今最も勢いのある宇宙ビジネス企業の1つだろう。SpaceXのサービスはロケットの開発・打上げ、有人宇宙船の開発と、それを利用した宇宙旅行の提供、衛星インターネットの提供など多岐にわたる。 SpaceXはコロナウィルスの流行以降も積極的に事業を続けている。ここ最近の大きな動きを紹介しよう。 衛星インターネットサービス『Starlink』の人工衛星打上げ SpaceXは、4月22日に『Starlink』人工衛星の打上げに成功した。 Starlinkとは、衛星コンステレーションによって衛星インターネットを提供するサービスだ。衛星コンステレーションとは、多数の人工衛星を連携させて構成するシステムのこと。近年、小型衛星による衛星コンステレーションを用いたサービスで宇宙ビジネスに参入する企業が増えてきているのだ。 その中でも、SpaceXは12,000基以上の小型人工衛星による大規模な数の衛星コンステレーションを構築し、衛星インターネットサービスの提供を構想している。 これは主に北米・カナダを対象としたサービスを想定しており、将来的には40,000基以上の人工衛星を用いて世界全体にそのサービスを拡大する構想だ。 地上から見ることができるStarlink衛星 コロナウィルスの影響で打上げ延期があったものの、4月22日の打上げでは60基以上のStarlink人工衛星を軌道上に投入することに成功した。この打上げでStarlinkを構成する人工衛星は420基が軌道投入されたことになる。 イーロン・マスク氏は2020年中に北米・カナダで試験的にサービスを開始する計画を語っており、今後も順次衛星を打上げていく予定だ。 また、この打上げに使用されたロケット『Falcon 9』は人工衛星を切り離した後に、大西洋上の無人ドローン船への着艦にも成功し、再利用可能ロケットの実現を確かなものにしつつある。 4月22日に実施されたロケット打上げと回収 SpaceXとNASAの有人宇宙飛行プロジェクト SpaceXは、NASAから委託された有人宇宙飛行プロジェクトのために、宇宙船『クルードラゴン』の開発を進めている。そして、NASAは5月27日に『クルードラゴン 』の有人宇宙飛行テストのために打上げを行うと発表した。 これはSpaceXにとっては初の有人宇宙飛行ミッションであり、NASAにとっても9年ぶりとなる有人宇宙飛行となる。この打上げの前段階として、2019年に実施されたテストでは無人宇宙船の打上げと国際宇宙ステーションへの往復を達成している。 このテストが成功すれば、その次の有人宇宙飛行も実行される予定となっており、その搭乗者には日本人宇宙飛行士の野口聡一氏も候補に挙がっている。 宇宙船『クルードラゴン』 Amazon設立者による宇宙ベンチャーBlue Origin Blue OriginはAmazonの設立者であるジェフ・ベゾス氏が設立した宇宙ビジネスのベンチャー企業だ。主にロケット開発・運用、宇宙船の開発などを行っている。Blue Originはコロナ禍の中でも従業員の感染リスクを考慮せずに、打上げ計画を進めていると批判的に注目も浴びてしまっているが、その研究開発に大きな注目が集まっているのは間違いない。 有人宇宙飛行サービスの構想 Blue Originの事業で注目を浴びているのが『ニュー・シェパード』ロケットによる有人宇宙飛行計画だ。この構想は、最大6人が搭乗可能なカプセル型の宇宙船を高度およそ100kmの宇宙空間まで打上げて、約10分前後の宇宙旅行を体験できるというもの。 この宇宙旅行の価格はおよそ20万ドルになると言われている。また、この宇宙船とロケットは再利用が可能。宇宙船はパラシュートで落下し、ロケットはブースターによる垂直着陸が可能なので、次の飛行でも利用することができる。 早速2019年の12月11日に12回目の打上げテストに成功しており、近い未来に宇宙旅行が実現すると期待されている。 『ニュー・シェパード』の宇宙飛行プロセス 月面着陸計画『アルテミス計画』への参加 Blue Originは、NASAの月面着陸計画の『アルテミス計画』のために月面着陸船の開発を進めている。 アルテミス計画では、2024年までに有人月面着陸を目指し、さらに2028年までに月面基地の建設が予定されている。人類を再び月に送り込もうという壮大な計画なのだ。2024年の有人月面着陸では、男女それぞれの宇宙飛行士が参加する予定になっており、実現すれば女性として初めて月面着陸した宇宙飛行士が誕生することになる。 この計画は、アメリカの官民協力体制で進められているが、各国の宇宙機関とも協力しており、宇宙航空研究開発機構(JAXA)も協力を表明している。 さらに、月までの宇宙飛行だけでなく、月面基地や宇宙ステーションの建設資材の運搬や補給などで、多くのロケット打上げが必要とされており、計画には数十社が参加する予定になっている。 NASAは5月15日に、各国の宇宙機関及び民間企業と協調して計画を進めていくためのガイドラインとして『アルテミス協定』を発表し、その実現に向けて準備を進めている。 NASAの月面着陸のロードマップ このアルテミス計画の開発・実行部隊として、Blue Originの他に、SpaceX、Dyneticsの2社もNASAによって選定された。NASAは今回選定された3社の計画に9億6700万ドルの資金を用意しており、そのうちBlue Originの開発計画には5億7,900万ドルを提供するとしている。 Blue Originは他2社よりも大規模な月面着陸船を開発を計画しているため、最も高額な資金提供となった。この高額投資からはNASAのBlue Originへの期待の高さがうかがえる。 実際に、今回の選定の中で、Blue OriginはSpace Xより高評価を得ていた話もある。そして、Blue Originはこれを実現するため、軍事企業のロッキード・マーティンをはじめとして、ノースロップ・グラマン、Draperと協力して統合型月着陸船(Integrated Lander Vehicle, ILV)の開発を進める予定だ。 Blue Originの月面着陸計画の紹介動画 また、余談にはなるがAmazon自体もKuiperという衛星インターネットサービスの提供を計画している。これはSpaceXのStarlinkの強力な競合相手になるだろうと言われている。 サンフランシスコの衛星画像スタートアップPlanet Labs Planet Labsは元NASAの開発者であるWill Marshall氏らによって設立されたサンフランシスコのスタートアップ企業だ。人工衛星の開発とその人工衛星で撮影した衛星画像を取り扱うサービスを提供している。 高品質な衛星画像サービスを開発、提供 現在、軌道上にはPlanet Labsの所有する小型人工衛星およそ150基が打ち上げられており、それらで構成される衛星コンステレーションにより、地球上のあらゆる場所の衛星画像を撮影している。 そのうちの120基以上を占める人工衛星『Dove』は、CubeSatと呼ばれる超小型衛星に分類され、高品質の画像を撮影できる。また多数の人工衛星により、地球全体をカバーする衛星画像を毎日リアルタイムで撮影可能だ。 さらに、超小型でありながら分解能は3〜5mで高解像度。また、Planet Labsは別の人工衛星による衛星画像サービスも提供している。例えば、彼らの人工衛星『SkySat』は72cmの分解能をもち、より高解像度の画像を提供できる。 今、DoveのようなCubeSatと呼ばれる超小型衛星が注目されている CubeSatは、前述の通り、超小型の人工衛星だ。1999年にカリフォルニア・ポリテクニック州立大学とスタンフォード大学によって仕様が策定され、民間企業だけでなく、大学などの研究機関でも教育・研究のために開発されている。 大学での開発が想定されているため、CubeSatは従来の人工衛星に比べて安く容易に開発できるのが特徴だ。 さらに、小型・軽量なため他の打上げ計画に相乗りして打ち上げることが可能となり、そのコストを大きく抑えられるメリットがある。大きさは1ユニット(1U)10cm x 10cm x 10cmを基本として、1U、2U、3Uといったようにサイズが規定されていてる。 また、1ユニットの重量は数kg。Planet LabsのDoveはCubeSatの規格で3Uサイズ(30cm x 10cm x 10cm)に分類される大きさで、非常にコンパクトであることがわかるだろう。 近年では、集積回路やソフトウェアなどの技術向上によりDoveのように小型でも高性能なCubeSatの開発が可能となっており、CubeSatを用いた宇宙ビジネスに参入する企業が増えてきている。 CEOのWill Marshall 氏と人工衛星『Dove』 Planet Labsの衛星画像は、グーグルマップをはじめとする地図の作成や自然環境の変化の研究、物流・交通や災害発生時の状況確認、また北朝鮮のミサイル監視などの軍事的な用途も含めて、多くの分野で使用されている。 また、コロナウィルスの影響の分析にも使用されており、物流・交通状況変化の分析に役立っている。 例えば、次の画像では中国、武漢市の交通状況を確認できる。都市封鎖前の2020年の1月12日と封鎖後の1月28日で、交通状況が大きく変化していることを見ることができる。 Planet Labsの衛星画像。武漢市の様子(1月12日) Planet Labsの衛星画像。武漢市の様子(1月28日)  […]

スタートアップのレイオフ – 明暗を分けたAirbnbとBirdの事例

新型コロナウィルスの影響で、多くのスタートアップにてレイオフ (一時解雇) が進んでる。具体的な状況は「コロナの影響でアメリカのスタートアップではどのくらいレイオフが進んでいるのか」にて説明されているが、現在まで400社以上がレイオフを行っている。
中でも最も多くのスタッフをレイオフした1社がAirbnbであるが、その進め方やCEOからのメッセージ内容の素晴らしさは注目を集めた。プロセス・内容共に、企業として、リーダーとして模範となるだろう。その一方で、同じくレイオフを行ったシェアリングスクーターの…

急成長するXR市場の展望と活用サービス事例7選

リモートワークルールやオンラインコミュニケーションツールの台頭の裏にXR市場興隆の兆しアリ 【VR】人材育成や新しい働き方の提案、さらにはエンタメ要素まで網羅 【AR】ファッションやリテール を中心に、商業利用でユーザーの課題を解決 【MR】専門性の高い人材研修や製造サポートも。「並行した現実」だからこそ叶う業務効率化 既に周知の沙汰だが、昨今のこの非常事態で、リモートワーク関連サービスの需要に火がついている。リモートワークを円滑にしてくれる、SlackやZoomなどのコミュニケーションツールは今では必須となり、現実世界のアクティビティをオンラインで拡張させるツールたちが急成長を遂げている。 その裏で、これらのツールに需要が高まったからこそ、今までよりもさらに期待を寄せられている業界がいくつか存在する。その中の1つがXR市場である。 ゆくゆくはXRツールこそがリモートワークの未来を作ると考えられており、オンラインでも現実と同等か、それ以上の生産性を担保できるようになると言われている。MicrosoftがHoloLensで、FacebookがFacebook Horizonで描く未来がこういったものだ。 そういった意味で、XRリモートワークツールのかなり前段階であるオンラインコミュニケーションツールの台頭が、XR産業への期待も高めているということが言えそうだ。 そもそもXRとは? XRとは、何かと話題に上るAR (Augmented Reality、拡張現実)、VR (Virtual Reality、仮想現実)、そしてMR (Mixed Reality、複合現実)などを総称する言葉である。 XR市場は新興成長市場で、その将来性は計り知れない。XRが我々の生活に与えてくれる恩恵は今後さらに増幅するだろうと期待が高まっており、それはXR市場への産業支出予測にも出ている。 (コロナの影響を受ける前ではあるが、今年を皮切りに、産業用XRへの支出は右肩上がりになると予測されている。画像転載元: businesswire)  本記事ではそのXR業界の中でVR、VR、MR分野それぞれのトレンドをご紹介したい。 VR編 VRを活かした人材育成 – Talespin Talespinは2015年に設立されたVR/AR・AIスタートアップである。Telespinが提供しているサービスはとても興味深く、新しい形のVR/AR事業に取り組むスタートアップとしても有名だ。 Talespinが提供するサービスは大きく分けると3つ。1つ目はVRを使ったオブジェクトベースの知識トレーニング。2つ目がAIを駆使したVR人材研修。そして3つ目が、ARを使った職場でのツール等の研修である(現在開発途中)。 この中で個人的にとても興味深いと思ったのが、彼らが提唱しているVR人材研修である。 TalespinのVR研修で注力しているのが、EQの訓練だ。EQとはEmotional Quotientの略で、心の知能指数と訳すことができる。EQで測定されるのは、コミュニケーション能力や職場での人間関係構築、さらにプレゼン能力など、ビジネスを成功に導く多くの要素、ソフトスキルと言われるものだ。 TelaspinのVR研修では、EQを効率的に鍛えることで、未来の職場をより良いものへ変えていくことをミッションとしている。セールスや顧客対応、さらにリーダーシップなどもこのVR研修から学ぶことができ、今後の人材研修の形を変えると言われている。 (研修の状況をなるべく現実に近づけることにより、従来の研修よりも柔軟な対応力が磨ける研修を行えるのだとか。転載元: 公式サイト) さらに、Talespinは企業向けXRソリューションプラットフォームのRunwayの開発も行っており、この分野ではかなり先鋭的な会社としても知られている。 このプラットフォームを活用することで、企業の人材育成から専門的な知識に関する教育の全てをVRやAR化させ、社内外に提供することができるのだ。 導入企業はプラットフォームを提供することで、全ての記録を一括管理することができる。さらに企業のエンタープライズ用教育VR研修ツールをTalespinと共同開発することも可能になる。実際にXRソリューションを教育に使うことへのROIは実証されているという。 世界中に2万4千人の従業員を抱えるバーチャルオフィス – eXp Realty 最近では在宅勤務や遠距離からのリモートワークを従業員にオプションとして提供している会社は少なくない。更にはバーチャルオフィス内での出勤を許可している企業もあり、世界中のどこにいてもインターネット環境さえあれば出社可能になってきた。 そんなバーチャルオフィスをメインのオフィスとする会社の1つとして有名なのがeXp Realtyという2009年創業のアメリカの不動産会社だ。実際に存在しているいくつかの本社やオフィスを除き(これは法律上の制約などにより、やむなくオフィスを構えているという理由らしい)、多くの従業員たちがバーチャルプラットフォーム上に出勤する。 ほとんどの会議や打ち合わせがVR世界のアバターを通じて行われるため、社員同士が実際にオフラインで会うことはほとんどないそう。ちなみに、このバーチャルオフィスはカリフォルニア出身のソフトウェア会社、VirBELAによって開発・運営されている。 (バーチャルの世界はかなり広い。従業員1人1人の情報がひと目でわかるのも面白い。画像転載元: Business Insider) そんなeXp Realtyの業績は、2009年の創業以来、右肩上がりに成長しており、現在の企業価値は580億円を超えている。更に驚くべきことは、従業員たちからの満足度も高いということだ。 職場格付けサイトで知られるGlassdoorでの従業員レビューは非常に高い。(星4.3)また別のサイトでは94%の従業員レビューがポジティブなものであるという報告も上がっている。 もしかすると、これは現在日本企業の多くが頭を抱えている働き方改革のソリューションの1つなのかもしれない。この一連のコロナウイルスの煽りを受けて、営業売り上げなどは多少落ち込んでいるだろうが、通常の営業をすることに関しては、そこまで大きな影響を受けることなく機能しているだろう。 最先端のアーケード、VRゲーム – THE VOID 最近流行り始めてきたのが、アーケード型のVRゲームである。ディズニーランドなどのテーマパークではいち早くVR技術がアトラクションに応用されているが、手軽なVR体験を提供し始めた民間企業がいくつかある。 今回紹介するのは、その中の1つであるTHE VOIDというアーケード型VRゲームセンターだ。このコロナ禍では営業していないが、平常時なら予約で埋まっている時間帯がとても多く、週末の予約はすぐに埋まる人気ぶりだ。 (スタイリッシュな空間が人々を惹きつける。筆者撮影) The VOIDが提供しているVR体験は、人気映画とタイアップしていることが魅力的だ。VR世界の中で、自分自身がその映画の中の1人としてプレイすることができるため、ファンにはたまらない体験ができる。 タイアップに名を連ねている作品は、アベンジャーズやジュマンジ、スターウォーズ、ゴーストバスターズなど、有名どころが多く、大人から子どもまで楽しめるVRゲームとなっている。 (このベストはVRゴーグル、ヘッドセット、VRコンピューター、振動ベストが一体化されており、これを装着するだけで準備は完了だ。筆者撮影) 今後The VOIDのようなVR体験マーケットは更に成長していくと考えられる。実際、サンフランシスコでもVOID以外のアーケード型VRゲームセンターや、VRジムなどのサービスが既に普及し始めている。 AR編 ファッション業界、リテール業界を牽引するARミラー – Sephora & AMAZON  ここ数年、この分野で注目を浴びているのが、ARの商業活用だ。店頭でARを使い、顧客を楽しませ、消費者の購買意欲を煽ることはもちろん、実用面からも、リテール業界から期待を寄せられている。 人気化粧品リテールのSephoraや一部のアパレルリテールで導入されているバーチャルミラーでは、鏡を通して化粧品や衣服を”試着”することができる。 サイズはもちろん、別の色のものを一気に試したりすることも可能で、煩わしい試着のプロセスが簡素化される。このようなARツールが今後一層B2C事業で導入されていくことは間違いないだろう。 (画像転載元: Hackernoon) これらのツールは、オンラインショッピングの一番の難点である「サイズ感が掴めない」というユーザーの課題を解決するとも考えられている。現に、2018年1月2日にAmazonが『ARミラー』の特許を取得しており、一時期話題になったりもしている。 今はまだ開発途中だろうが、このようなARミラーが一家に1台置かれ、オンラインショッピングがそのミラーから行えるような時代へと突入することも考えられる。このような構想は、これから普及していくと考えられている5G通信が火付け役ともなっている。 なぜなら、ARミラーを安価で大量に提供するためには1台1台がハードウェアになるよりも、IoTデバイスとソフトウェアを提供し、そのソフトウェアをアップデートし続けていく方が現実的であり、5Gの特徴である大容量・高速で超低遅延、多数同時接続可能、といった機能が活かされるからだ。 関連記事:5G元年!これから急成長するテクノロジー AR定規 – Target & Apple Quick Look またアパレル以外に、家具などの比較的大きな物をオンラインで購入する時にも、実際の寸法をクリアにイメージできないということは消費者にとって難点になる。 そんな課題を解決するために、大手ショッピングセンターのTargetなどでは、スマホ上で家具の寸法などをシュミレーションするARアプリを提供していたりしている。 (かなりリアルに椅子の寸法を自室で見ることができる。画像転載元: Target Official Website) またアップルでは、2018年からiOSとiPadOSにApple QuickLookというブラウザ上からARでオブジェクトの閲覧を可能にする機能を導入。アップルはこの機能をここ最近拡張し、デベロッパーがカスタマイズ可能なボタンをQuickLookに搭載できるようにした。 2018年の導入当初は、Safariやメッセージの中からでも簡単にARが使用できるので一時期話題に上がった機能であったが、以前まではARでものを見るだけのものだった。 しかし、昨年のアップデートによりさらにできることが増えた。例えばQuickLookに商品購入ボタンを載せてAR上から直接商品を購入する導線が作れるようになったり、その商品の在庫を抱えている実店舗の情報を提示したり。今回の機能の拡張で、何倍も商業価値のあるものへとなったと言える。 これを機に、アメリカ大手小売店のHome DepotやWayfairなどがこぞってこの機能を彼らのオンラインストアに実装すると発表した。今後も、ECサイトにARでの商品確認が用意されていることが当たり前となってくることが予想される。 MR編 CES2020でも話題になったパラレルリアリティ パラレルリアリティとは、2020年1月初旬に行われた世界最大級のエレクトロニクス見本市、CES 2020にて、デルタ航空から発表されたテクノロジー・サービスコンセプトの1つである。 「パラレルリアリティ」を直訳すると、「並行した現実」という意味で、スクリーンを見る人によって、画面に表示させる内容を変えるというテクノロジーである。 加えて、同じスクリーン上で異なる内容を並行して別のユーザーに見せることができる。将来的には空港にあるスクリーンをこれに変えることにより、1人1人が個人の情報を見やすくなる、というのがこのアイデアのコンセプトだ。 自分のフライトの情報を探すために全てのフライト情報を目で追い、その場に立ち尽くす、というような無駄な時間がなくなる日は近いかもしれない。 (同じディスプレイ上だが、角度によって別の内容を見せている様子。転載元: Fast Company) […]

コロナの影響でアメリカのスタートアップではどのくらいレイオフが進んでいるのか

前回の「コロナショックがこれからスタートアップに与える影響」でも触れたが、新型コロナウィルス の経済に与える影響が少しずつ具体化される中で、スタートアップも少なからず影響を受け始めている。 アメリカでは、企業の業績が下がる際に人件費を抑制するために一時的に従業員を解雇する「レイオフ」という仕組みがある。これは、経済や会社の都合で行われるため、一般的な「解雇」とは異なり、対象となる従業員には失業保険が一定期間支払われる。 スタートアップで進むレイオフ Layoffs.fyiによると、この仕組みを利用して、多くのスタートアップでレイオフが進んでいる。3月11日から現在までの統計では、290社が約3万人をレイオフしている。業界として目立つのは、リテール、フード、フィットネス、モビリティ、不動産など、人が動くことで生まれるリアルサービスを提供する企業だ。 著名なスタートアップの例としては: Groupon: 2,800人 – 全体の44% Magic Leap: 1,000人 – 全体の50% Yelp: 1,000人 – 全体の17% Eventbrite: 500人 – 全体の45% Lending Club: 460人 – 全体の30% B8ta: 250人 – 全体の50% Everlane: 227人 WeWork: 250人 Thumbtack: 250人 – 全体の30% GoPro: 200人 – 全体の20% Getaround: 100人 – 全体の25% Casper: 78人 – 全体の21% ユニコーンの”ツノ”が折れ始めている 上記の中には評価額が10億ドル以上のユニコーン企業も6社含まれており、全体の46%である8,416人をレイオフしている。これは、一社につき平均で26%の従業員をレイオフしていることになる。その中でも、85%をレイオフし破産したOneWeb、67%をレイオフしたZume、50%をレイオフしたToastなどもある。 実は仕事を失っても生活できる制度 これだけを見ると、かなり多くの人々が露頭に迷うことになりそうな気がするが、アメリカではレイオフが頻繁に行われるため、それに対する失業保険の制度がある。 加えて、今回の米政府の緊急特別予算で、通常の金額 (カリフォルニア州だと最大$450/週) プラス、週$600の失業保険がもらえるようになった。これにより、万が一無職になっても週$1,000以上、月で$4,000以上受け取ることができるので、しばらくは生活に困窮することはなさそうだ。 また、下手に無給休暇を出すよりも、レイオフになった方がありがたい。企業としても、レイオフを進めることでコスト削減になるので、Win-Winの結果になることもある。 そして、また事態が収束したら採用し直すこともあると考えられる。そういった意味では、日本的なリストラとは少しニュアンスが異なる。 Twitter上で再就職活動 レイオフされたスタッフが、Twitterを活用して、自身及び同僚の再就職を進めているケースもある。本日1,000人のレイオフを行ったMagic LeapのスタッフであるAlexandria Hestonもその一人で、彼女のツイートに対して採用に関するレスも見られる。 Hi All! In terms of #magicleap layoffs – please feel free to thread below of open positions you feel would help individuals who were let go and I can share in groups. These are people looking into AR/VR industry, but also general engineering, design, games […]

デザインから環境問題を考える。エコ・サステナブル系サービス5選

自分たちの生活と環境の結びつきを再確認するタイミング。 ROTHY’S:一気通貫のサステナビリティー意識。サンフランシスコ発女性用シューズのD2Cブランド BIOSSANCE:バイオテクノロジーが実現する、環境への高レベルの配慮と高い安全性を誇るコスメブランド Veles:サプライチェーンから環境に配慮。資源の循環を目指した、廃棄食材生まれの家庭用洗剤 Capsulier Lite:気軽に楽しめるカフェタイムをさらにエコフレンドリーに。高いユーザビリティー提供するプロダクト Bird:より一層求められる環境への配慮。サンフランシスコではお馴染みの電動スクーター 優れたデザインを通じて問題へのアプローチを体現。「モノの使用」に留まらない「コトの提供」が重要 これまで環境問題へのアプローチは壮大な話のように感じられて、イマイチ危機感や実感を持つことが難しいと思っている方も、今回のコロナウイルスの一件で、生活と環境は強く結びついていると感じているのではないだろか。 コロナウイルスが我々の生活に多大な影響を与えていることは言うまでもないが、こうした人間の生活スタイルの変化も、環境に影響を及ぼしているのだ。 具体的には、全世界的な移動の自粛により、ガスの排出量が減少しているというデータが出てきている一方、衛生面を考慮して使い捨てのものを利用するシーンが増えたことでゴミの量が増加している、など。 世界中で品薄状態が続くマスクも、やはり使い捨てのものが多く使用されており、そのゴミ問題が深刻視されて始めている。 環境問題は自分たちの生活に強い結びつきがあるからこそ、身近な取り組みから向き合っていくことが大切だと改めて認識すべきだろう。 そこで今回は、我々の生活に溶け込み、身近な部分から環境への配慮をするプロダクト・ブランドをご紹介する。環境問題へのアプローチだけでなく、優れたデザインによってより良いユーザー体験を提供しているところもポイントだ。 ROTHY’S 2020年始、原宿駅前にサンフランシスコ発サステナブルなメリノウール製シューズブランドAllbirdsが日本初上陸を果たしたのが記憶に新しいが、同じくシューズ系列では、ROTHY’S(ローシーズ)も、サステナビリティーを掲げるレディースシューズとバッグのD2Cブランドだ。 著名人にもファンが多く、ナタリー・ポートマンやイギリスのメーガン妃も愛用。これまでには累計100万足、1億4000万ドル以上の売り上げを出している。 ROTHY’Sのプロダクトには、海洋ゴミになっているペットボトルをリサイクルした繊維素材が使われており、シューズのソール部分もカーボンフリーの素材でできている。 View this post on Instagram Our current spring favorites. Which styles are in your wardrobe rotation? 💭 A post shared by Rothy’s (@rothys) on Feb 25, 2020 at 8:11am PST 無駄ゼロを掲げ、中国の自社工場で生産されるプロセスでは、独自の3Dニット加工で編み上げるため、裁断のゴミも出ない。 さらには靴やバッグを入れて配送する際のボックスも丈夫で、梱包材を必要とせず、ここでもゴミを出さないようにしている。 製造前の素材の段階から発送に至るまで環境に配慮をしているだけでなく、プロダクト自体も優秀。軽量で、シューズは足によく馴染み、履きやすさもピカイチとのこと。 ニット生地であるため、専用の袋に入れて洗濯することもできる。シンプルなデザインで女性のライフスタイルに寄り添うプロダクトと言えるだろう。 関連記事:D2Cブランドに学ぶ!カスタマーと繋がる開封体験デザイン BIOSSANCE BIOSSANCE(バイオッサンス)は、環境への配慮と高い安全性を実現するクリーンビューティコスメブランドだ。 元々BIOSSANCEは、マラリア治療のためのテクノロジーで特許を取得したローレンス・バークレー研究所の研究者たちが立ち上げた。バイオテクノロジーのバックグラウンドが高い品質を支えている。 コスメやスキンケアに関して、アメリカ国内で使用が禁止されている成分はわずか12種類。しかもこれは1938年からアップデートされていないという。ヨーロッパが1,376種類であるのに対して驚きの数値だ。 これが意味するところは、それだけ肌にも環境にも悪影響を及ぼしかねない成分が含まれてしまうリスクがあるということ。 一方、BIOSSANCEが自社製品に対して独自に定めている使用禁止成分はなんと2000種類。非常に厳しい品質基準を設けることで、人間を含め環境に配慮をしたプロダクトを開発している。 BIOSSANCE公式HPより そのうちの1つが、サトウキビ由来成分100%のスクワランオイル。元々スクワランは、サメの肝油から抽出されるのが一般的だ。 しかし、美容効果の高いスクワランを求めてサメの乱獲が行われたり、絶滅が叫ばれたりと、生態系に悪影響を及ぼす事例も存在する。 そこでBIOSSANCEは、強みであるバイオテクノロジーの知見を生かし、バイオマス資源としても注目されるサトウキビからスクワランを生成することに成功した。 また、製品自体だけでなく、ロジスティックスやコミュニティレベルで環境対策を徹底している。 例えば、配送ではカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出と吸収がプラスマイナスゼロの状態)を徹底したり、森林再生プロジェクトへのサポートをしていたり。 その他、WEBサイト上で『THE CLNAN ACADEMY』というオンラインレッスンを配信し、多方面からクリーンな成分の重要性に関する啓蒙を行うなど、多岐に及ぶ活動をしている。 Veles およそ97%が廃棄食材でできている家庭用洗剤Veles(ヴェレス)。石油化学成分など、環境にマイナスな影響を及ぼす成分は一切含まれておらず、水やアルコール、酢酸などの成分を抽出して作られている。 一般的に売られている家庭用洗剤の90%は水でできているという。これほど大部分を占めているのだから、環境に配慮した洗剤には水の使用も当然大きく関係してきそうだが、Velesは、廃棄食材から抽出した水を再活用している。そのため、水の使用も大幅にカットできているプロダクトなのだ。 Veles公式HPより また、詰め替え(近日発売予定)を購入し中身を詰め替えて使っていくため、容器のゴミも出さずに済む(アメリカは日本ほど詰め替えパックが主流ではない)。 また、この容器自体も環境に配慮されたもので、リサイクル可能なアルミニウム製だ。 原材料となる廃棄食材を調達する際には、大手廃棄物運搬業者と提携し、埋め立てられる予定の廃棄食材を彼らから直接受け取り、加工に回すことでサプライチェーンを簡素化。運搬の際のガスの排出も抑えることに成功している。 Velesが掲げる「Cleaning is closing the loop」というステートメントは、「掃除をすることは、(自分たちの環境にあるものを)循環させること」といった翻訳になる。 これは廃棄食材から成分を取り出し、洗剤として新たなプロダクトを生み出し、それもまた再生可能な有機物でできているという、資源の循環を意味している。 Capsulier Lite 手軽に本格的なコーヒーを楽しむことができると、日本でもネスプレッソのような自宅エスプレッソマシンが人気を博した。 専用のマシンに好みのカプセルをセットし、ボタンを押すだけでドリンクが出来上がる仕組みだが、通常このカプセルは使い捨てで、プラスチックゴミが出てしまう。 このゴミ問題を解決しているのが、 Capsulier Lite(キャプシラーライト)。洗って何度でも使用可能なカプセルを作ることができるプロダクトだ。最新のIoTガジェットのキュレーションストアb8taにも取り上げられており、CES2019への出展実績もある。 毎回のカプセルのゴミが出ないだけでなく、自分で好きなコーヒー豆を選んでオリジナルのカプセルを作って楽しめるため、それだけでも価値を感じることができる。 既製品がカバーしきれていないところに目をつけ、ピンポイントで訴求していく面白い例だと思う。また、特定の機能に特化しており、用途は1つという、いわば「n=1」なプロダクトであるため、使うときの紛らわしさや迷いもなく、ユーザビリティーも高いと言える。 Bird サンフランシスコには、車や自転車だけでなく電動スクーターのライドシェアも浸透している。LimeやSPiNなど複数のメーカーが展開しているが、その中の1つであるBirdは、個人向けに電動スクーターの販売も行っている。 車を使用しなくとも行ける範囲であれば電動スクーターを利用することは、エコフレンドリーな姿勢だと言えるだろう。 Bird公式HPより ただ、電動スクーターは自動車のような排気ガスの排出がないだけで、その製造過程や充電のため、回収する際には温室効果ガスを排出しているのが現状だ。一概に環境に優しいとは言い難いかもしれないことをここで断っておきたい。 電動スクーターそのものをリサイクル素材で製造することや、回収車としてEV自動車を利用するなど、より細かな環境への配慮が求められている。 関連記事:シェアサイクル事業問題から見るサンフランシスコ市の意思決定の速さ 最後に サステナブル、エコフレンドリーなど、環境問題に対して警鐘を鳴らすサービスやプロダクトは多く存在する。しかし、それらを使うことのメリットや価値、影響力の大きさは、たとえ多大なゴミの削減に繋がっているなどと具体的な数字が提示されたとしても、なかなか実感が湧きにくい。 それは、自分のすぐ目の前で問題が起きているのではないからだ。問題自体がいつ始まったかもわからない上に、地球規模という非常に大きな問題であるため、自分ごととして捉えにくい。 しかし、そのプロダクトやサービスには環境に配慮していることがより身近に感じられるストーリーで伝えられたら、あるいは、仮に環境に配慮しているものと知らなくとも使いたくなるような優れたデザインだとしたらどうだろうか。 「環境に配慮されていさえすれば、デザインの良し悪しは気にしない」というブランドはおそらく選ばれなくなってくる。 むしろ、「イケてる上に、環境にも配慮している」「わかりやすくて、使い勝手が良い」といったように、優れたデザインに加えて環境問題に取り組む姿勢が付加価値として上乗せされる構造がこれから主流になってくるだろう。 そうなると、問題意識をいかにしてプロダクトやサービスといった形あるものにしていくか、どのようにストーリーを組み込み、デザインに反映させていくかが重要になってくる。 そして、この考え方はもはや環境問題だけに限らずともサービスデザインの際の肝だ。利用するだけの「モノ」で留まってしまうのではなく、その先の「コト」を提供できるサービスづくりが求められる。 我々btraxも、問題起点でイノベーティブなサービス開発ができるよう日々クライアントの方々と取り組んでいる。ご興味のある方はぜひこちらからお問い合わせいただきたい。 参考記事:Why Fashion Customers Can’t […]

環境保護とUXデザインの両立!3つの例に学ぶ優れたサービスとは

環境問題への配慮と、ユーザー体験の良さは両立しうるのか。 環境◎ × UX△:紙製ストローに学ぶ、ユーザーを置いてけぼりにしないプロダクトとは 環境◎ × UX◎:Square社の決済端末と、Nimble社のポータブル充電器が持つユーザー体験の質の高さ ユーザーにとっての課題を問い、問題起点での発想が重要 地球環境問題を解決する方法はどれも辛く、不便なものなのだろうか。真夏の冷房・真冬の暖房を気合で我慢したり、複雑すぎるまでのゴミの分別など日常生活で求められることは多く、環境対策のために工夫が必要な時代となった。 そうした中、環境対策とユーザー体験満足度が両立された製品・サービスは世の中にいったいいくつ存在するだろうか。 環境対策と良いユーザー体験の両立はやはり実現が難しい問いなのだろうか。ロサンゼルスとサンフランシスコで暮らし始めて6年余り、そんな問いが筆者に芽生え始めた。 人口約4,000万人を誇るカリフォルニア州では、2045年までに州内で使用される電力の100%を再生可能エネルギーで賄うという強気な法案を可決するなど、環境対策に関して世界を牽引している州として有名である。 ユーザー体験面に関しても、イノベーションの街、サンフランシスコ・シリコンバレーを中心に環境対策とユーザー体験満足度の両立を目指す製品・サービスが日常的にも体験できるようになってきた。 今回は、その中でも実際の体験を通して気づいた事例を3つ紹介すると共に、果たして環境対策とユーザ体験満足度は両立するのか、もしくは本当に両立させるべき問いなのかを考えてみたい。 この機会に新しい分野の動向をチェックしつつ、自社の次なる新規事業開拓のヒントに繋げて頂けたら幸いだ。 環境に良い × UXに課題ありの例:紙製ストロー カリフォルニア州では、2019年1月から、同州に店舗を構えるフルサービス型レストラン(店員がお客の注文を取り、席まで料理を運ぶ形式)でのプラスチック製ストローの提供を原則禁止する法律が施工された。 この政策をきっかけに、フルサービス型レストランだけではなく、スターバックス社やマクドナルド社などの大手企業でも、自主的にプラスチック製ストローの提供を取り止めると発表し話題となった。 プラスチック製ストローの代替案として現在市場に出ているのが、紙製ストローである。紙で作られたストローは、ゴミの分別が簡単でリサイクルにも繋がり環境に良く、企業としての導入コストも安いため、多くのレストランや飲料店で提供され始めている。 環境には配慮されている一方で、ユーザーの体験満足度はどうか。正直、それほど素晴らしいものとは言えない。「紙ストローは飲み物を飲んでいる最中に、ふやけて型崩れするから最後まで飲めない」など否定的な声が多く聞かれる。 そしてそれを見越してか、最初からストローを2つ貰う人もしばしば目にする。これでは結果的にゴミの量が増え、環境対策という点においても問題解決に繋がらず、支離滅裂である。 もちろん、上記のような懸念から、より丈夫で環境にも考慮された竹製ストローやシリコン製ストローなど代替品は出てきてはいるものの、紙ストローに比べて導入コストが高く、採用に足踏みをしている店舗が多い印象だ。 試行錯誤は繰り返される一方で、なぜ環境面もユーザー体験満足度も確保された解決策が生み出せないのか。この問題で重要なポイントは、「プラスチックストローの代替案になるのは何か?」という解決策視点ではなく、「そもそもユーザーにとってストローとは何か?」という問題起点で物事を考える視点が必要である。 ユーザーにとってストローは、飲み物を飲むためのただの道具であり、最終的なゴールは飲み物をストレスなく飲むことである。つまり、ストローがなくても、飲み物を飲めさえすればユーザーはHappyなのではないだろうか。 スターバックスのストロー不要のフタ プラスチックストローの代替案ばかりに気を取られ、ユーザー体験を置いてけぼりにしてしまっては使われない製品となり、絶対に問題解決に繋がらないのである。 環境に良い × UXも良い例:Square社の決済端末 アメリカでレストランに行くと、いつもお会計にひどく時間が掛かる。チップ制度があるアメリカでは、各テーブルに1人店員がついてくれるのが通常だが、これがピーク時ともなると、その店員の手が空くまで座席で待つことになり、この時間が本当にとてつもなく長い。 そこから、会計表を貰って、クレジットカードを渡して、チップを計算して、レシートにサインをしてとなると、それだけで最低15分は必要になる(おしゃべり好きなアメリカ人なら尚更時間がかかるだろう)。 また、顧客によっては、レシートのハードコピーを希望する人がまだまだ多く、ペーパーレス化という環境面においても課題が残っているのが現状で、環境とユーザー体験満足度に関して課題を抱えている場面であった。 そうした中、2009年にサンフランシスコで創業された、新しい形の決済サービスを提供しているSquare社がSquare Terminalという新しいサービスを開始した。 Square Terminal Square Terminalの最大の特徴は、Wi-Fi接続ができ、デバイスの充電は1日持続するため、店員が常にこれを持ち歩いて仕事できるところにある。これにより客は卓上で支払いを済ませることができるようになる。会計表を待ったり、店員がレジまでクレジットカードを切りに行ったりするのを待つという、ムダな時間を過ごさなくて済む。 レシートに関してもデジタルでの送付が可能なため、紙の削減に繋がり、環境にも十分考慮されている。一見、レシートを削減したところで大した環境対策効果はないのではと思われがちだ。 しかし、米国での1年間のレシートの消費量は相当なもので、Green Americaが行った調査によると、年間300万本の木と90億ガロンの水を消費しているとの報告もあるほど深刻な問題なのだ。 こうした環境とユーザー体験満足度が両立された製品が生まれるポイントとして、ユーザー体験に着目し、問題起点で考えられた製品開発を行ったからだと考えている。 今までのクレジットカード決済端末では、持ち運びができず待ち時間が重なり、レシートもハードコピーだけで、ユーザーにとっても環境保護にとっても特別良い体験とは言い難かった。 Square社は、「お店での会計体験がストレス」というユーザーが抱える課題に着目し、どうすればそれを変えることができるかという視点で取り組んだからこそ、多くの店舗にも採用され、レシート紙の削減という環境対策にも繋がっているのだ。 環境に良い × UXも良い例:Nimble社のポータブル充電器 様々な業界が環境対策に動く中、家電・電化製品分野は特に対応が遅れていると言われている。それはなぜか。多くの家電製品は使い古した後ゴミになり、土に還ることができず、リサイクルするにしても引き取りなどには費用が掛かるため、身動きが取れず放っておかれる、もしくは間違った方法で破棄される状況に陥ることが多いからである。あなたの自宅にも使い古しのスマートフォンや電化製品がいくつかないだろうか。 カリフォルニア州に拠点を構えるNimble(ニンブル)社は環境に優しいリサイクル可能なポータブル充電器を製造・販売しているスタートアップ企業だ。 同社の最大の強みはそのポータブル充電器だけではなく、上記のようなユーザーが持つ「使い古しの電化製品の処理方法に困る」という課題を解決しているところにある。 まず製品面。Nimble社では、製造している充電器の素材はもちろん、付属ケーブルや製品をユーザーへ発送する際の梱包もリサイクル可能な材質を採用しており、製品そのものが既に環境に配慮されている。 Nimble社のポータブル充電器 環境に配慮された充電器と聞くと、製品の性能や価格面でネガティブに捉えられがちだが、しかし、使ってみての印象は市販のポータブル充電器よりも長持ちし、充電速度も速く、デザインも素晴らしい。 価格設定も手頃で、ワイヤレス充電器は40ドルからと大手ブランドと比べても同等か安い印象があり、ユーザー体験満足度は高い。 ユーザーとしてはそれだけでも満足なのだが、この企業の素晴らしい点は他にもある。最大の特徴は、製品を使い古した後の処理に掛かるカスタマーサポート面だ。Nimble社の製品を購入すると、電子機器のリサイクルに利用できるグレーの袋が付属品として付いてくる。 付属リサイクル袋 この袋には、最大1ポンド(450g)までの重さであれば、どんな電化製品でも入れることができ、無料でリサイクル業者への配送に対応してくれる。 自宅に転がっている使い古したスマートフォンやカメラなどのリサイクルにも対応することで、電化製品の処理に困っているユーザーの課題を解決し、環境対策にも適用しているのだ。 この例もSquare社同様、ユーザーが抱えている問題は何なのかという問題視点でサービスを作った事が最大のポイントだと言える。ただ単に環境に良いポータブル充電器を作り、販売しているだけではおそらくユーザーには届かず、問題解決には繋がっていなかっただろう。 ユーザーが抱える問題をしっかりと考えた上で作られた製品・サービスだからこそ、多くの人に受け入れられより強い形で環境対策にも貢献できていると考える。 まとめ 今回は、環境対策とユーザー体験満足度が本当に両立するのか、そしてそれは達成されるべき問いなのかを考えるために、事例を用いながら紹介をした。 環境問題は世界が抱える課題の1つで、一刻も早く対策が必要の分野であるが、そこでユーザー体験を置き去りにしてしまっては、せっかくのソリューションも使用されず意味がなくなってしまう。 ここで最も難しい問題は、ユーザーがそのサービスや製品を利用することによって、どれだけ環境保護の役に立っているのか見えづらく、継続に繋がりづらいところにある。真夏の冷房・真冬の暖房を気合いで我慢をする行為は、正直バカらしく続けられない人が多いだろう。 環境もユーザー体験も両立された製品やサービス開拓は難しい問いであるが不可能ではない。それを達成するには、ユーザーへの共感、そして問題起点で考え、ユーザーに継続して利用してもらう必要がある。紙ストローの例のような環境対策だけに目を向けた解決策では、その場凌ぎにしかならず、長期的な展望は見込めない。 Square社やNimble社の例のように、ユーザーが抱える課題を起点に考えられたソリューションであれば、短期的な効果は望めなくても、長期的に利用者数が増えることで、それが結果的に環境対策にも繋がり両立が達成されるのではないだろうか。 btraxでは、ユーザーへの共感を通して課題を解決するためのワークショップ、「Innovation Booster」を提供している。ユーザーのニーズや課題にフォーカスした新規事業開発プロセスに興味のある方は、ぜひこちらまで問い合わせ頂きたい。 関連記事:「誰にも使われない機能を持つ製品」が生まれてしまう2つの理由

シリコンバレーのトラベルテックADARAの日本進出に学ぶローカライゼーション【インタビュー】

シリコンバレー生まれのトラベルテック企業ADARAの日本進出ローカライゼーションの秘訣を探る 専門用語x英語は日本に持ち込む際に難関。でも英語圏では共通言語 言語だけではない、進出先のビジネス・非ビジネス文化、マナー、働き方など人を意識した違いを考慮する必要あり 米国ではプレゼンで話していることを見る。日本では文字情報、書類を見る傾向あり 日米、お互いの「物差し」を理解すべし 2019年日本を沸かせたラグビーW杯や2020年夏のオリンピックなど、世界的なスポーツイベントによる日本へのインバウンド需要が高まっている。これを見越した企業・政府の動きが見られるようになってきた。 また、こういった需要・取り組みに対して興味を持ち、日本市場への参入を考える海外企業も多くなってきている。そして、こういった海外企業が日本市場に参入してくる際の戦略や自国との違いを知ることは、日本企業にとって非常に貴重な情報だ。グローバル市場を見据えたサービスや事業の展開に必要な知見を養うことができる。 ADARAもその1つだ。海外から日本に渡ってきた旅行者の動向をデータ分析し、旅行関連企業、サービスの支援を行っている。 今回、ADARAのコマーシャルディレクターである森下順子氏(June)を訪ね、日本でビジネスをしてきた4年間についてインタビューを実施した。 ADARAの事業拡大、ローカライズ、企業の文化、顧客との関係について伺った内容をまとめている。そしてそこから、日本から海外、海外から日本という両方向のベクトルに目を向け、ローカライズの際の視点や、マーケットインのポイントを解説していく。 日本へのビジネスの拡大 Q. btraxは2017年のADARAの日本へのサービスローンチイベントに携わらせていただきました。どうしてADARAは、当時日本市場への進出を決めたのですか? A: 本社は、米国カリフォルニアのパロアルトにあります。200名のスタッフと、世界に20ものオフィスを構えています。2016年には、アジア市場への参入のため、シンガポールにオフィスをオープンしました。 その後日本、香港、シドニーとアジア環太平洋エリアへのサービスの拡大をしていきました。10年間でADARAは急成長をしてきたと思います。 2017年日本でのローンチイベントの様子 日米間の言語の壁。特に専門用語は最難関! Q: ADARAは既に世界中にオフィスがありますが、日本市場への進出はスムーズでしたか? A: 最初はやはり苦労がありました。時に言語の壁です。ADARAは米国に拠点を置き、ヨーロッパ圏やアジア環太平洋圏にオフィスがあるので、共通語は英語です。ですので、日本に対しては、あらゆるものを日本語に翻訳する必要がありました。 例えば、セールスレポートや、マーケティング関連の資料、さらにwebサイトです。この困難を乗り越えるために、日本と本社両方でバイリンガルのスタッフの採用も行いました。 日本国内でのサービス展開を通じ、日本政府や地方自治体、あるいはそういったところの観光局など、公的機関とも近い距離で仕事をする機会もあります。彼らは日本語を話しますが、デジタル専門用語や、旅行関連の専門用語がわからないということもしばしばあります。 ですので私は、専門的な英語を日本語に翻訳し、専門的領域を知らない彼らでも理解できるような形にしなければなりませんでした。これは本当にチャレンジングなことでした。 小手先のローカライズでは機能しない Q: ARADAの本社は米国にあり、日本とは大きく異なるカルチャーを持っていると思います。日本市場への参入に際し、戦略面でも米国のものと変える必要はありましたか? A: 米国本社の戦略にならって日本でも展開をしようと考えていました。しかし、日本の慣習やトーン、マナー、ビジネスルールに合わせてローカライズを行いました。顧客基盤を成長させ、新たなビジネス領域へと拡大させようと考えていますので、日本の顧客が求めているものを尊重しなければいけないと思います。 日本でのビジネスが成長するにつれ、チームを拡充させ、とりわけ政府機関のようなローカルビジネスのニーズに合致するように戦略を変えていこうと考えています。日本は、特に旅行業界において、最も注力すべき市場の1つなのです。 ローカライズの鍵は、やはり参入先の市場動向や言語だけでなく、根付いたものにフィットする形で提供をすることにあると言えるだろう。また、施策レベルではなく、その大本にある戦略レベルでローカライズをしていく必要もある。 Q: ADARAが日本に進出した当初、初期顧客にはどのようにしてアプローチをしたのですか? A: まずは前職で元々持っていたネットワークを活かしました。私は長年広告、マーケティング業界にいたので、旅行関係やデジタル関係のマーケティングエージェンシーに声をかけ、プレスレビューもいただきました。 リードを生むところから始めましたね。その次に、この業界や公的機関などの他の業界にもサービス拡大の機会を獲得できる人材の採用をしていきました。 事業を広げるのは人の力。築いてきたネットワークは活かすべきだ。特に新たな市場に参入していく際や新規事業などは、ゼロから基盤を築いていかなければらず、コストがかかる。それまでのネットワークを生かすことができないかと考えてみることも重要だろう。 また、海外市場への参入を考える場合、こういったネットワークを活かした事業の拡大は、現地に根付いた人、現地の知見を持っている人を中心に行っていくことが効果的かもしれない。現地の感覚を理解している人を使うことで、より確度高くローカライズに取り組むことができる。 事業をローカライズする Q: ADARAを日本の人に説明する時に感じた難しさは何でしたか? A: テクノロジーを紹介したり、専門的な用語を使うと、他の星から来たエイリアンのように見られることがあります。しかし皆さん、いつも新たな学びに対して熱心でいらっしゃいます。そうした時に、皆さんが理解できるよう、「インプレッション」や「クリック」などのカタカナ語を使わないようにしています。 先日のADARAセミナーでは、デジタルマーケティングと測定ソリューションについてお話しました。すると、「ピクセルって何ですか?」や「トラッキングって何ですか?」といった質問を受けました。 オンラインとオフライン、双方の視点からの理解の必要性 これは、「釣り」に似たようなものなのですが、こちらから用語や概念をたくさん伝えれば、向こうが何を聞いてくるのか(何について知らないのか)知ることができます。こうして私は情報を収集していますが、そのためには、エサをまくことから始めなければならないのです。 また、どんな人がWebサイトを訪問しているか、誰が広告を見ているのか、必ず始めに理解する必要があります。デジタル面においてはこのようなことからはじめました。 セミナーなどのオフラインで話す機会と、Webサイトなどを通じたオンライン上での顧客の行動データという、両方の視点からローカルを理解することがポイントだ。 Q: ADARAはしばしば地方自治体と連携しているとおっしゃいましたね。彼らは自分たちで顧客データを所有していないため、ADARAのサービスは非常に魅力的であるように思います。彼らにサービスを売り込むのはスムーズでしたか? A: 4年前にADARAに入社したとき、電話をかけたり、メールを送ったりして観光局に連絡しなければなりませんでした。しかし、2年前、私たちの最大のパートナーの1社である日本政府観光局がADARAにサインアップし、インパクト測定ツールを導入してくださいました。それ以来、ADARAに業界の注目が集まるようになったのです。 現在では、(こちらから行かずとも)連絡をいただけるようにまでなりました。近隣住民の方と行政間での話し合いや意見交換もなされるようになったのです。 例えば九州に行った際は、現地でのセミナーで人に会い、ネットワーキングをしました。そしてその翌日、近隣の行政で観光部門のマーケティングを行っている方から、ADARAについてもっと知りたいとの電話をいただいたのです。 組織に所属するメンバーがそれぞれ築いてきたネットワークを生かすことは重要だ。しかし、よりインパクトがあるのは影響力のある企業や人に認知してもらい、その価値を広めてもらうというPR的な第三者からの視点を持つことだろう。 ADARAの場合、公的機関に導入されたことによってサービスの信頼度を高めた。現地でネームバリューを持つ企業や人物の目に留まり、採用されることは、サービスを拡大させるための大きなステップになる。 とりわけ日本では、公的機関や大企業など、ネームバリューを持った組織がそのサービスの価値を左右したり、大きな影響を及ぼしたりするケースも多い。また、日本企業は米国よりも、サービスやプロダクト以前に、その企業の過去実績を重視する傾向にある。 一方、米国は日本と比べ、公的機関や大企業とのタイアップが拡大のための必要条件ではないような印象を受ける。また、CMなどで芸能人を使うケースも少ない。日米で、どのような訴求の違いが効果があるのかは異なるようだ。 鳥の目、虫の目、そして魚の目を持つ Q: 観光局、旅行代理店などとの仕事の中で、日本の顧客について学んだ一番の教訓は何ですか? A: 旅行者はインターネットを使用して次の目的地を検索したり、どれほどコストがかかるかを確認したりします。また、旅行中もFacebookを使ったり、写真をInstagramに投稿したりすることで、友人と体験を共有します。 つまり、デジタル空間には非常に多くの接点があるということです。しかし、太平洋諸国や米国などの先進市場と比較すると、日本の旅行業界は少し遅れている状況です。 2019年のラグビーW杯や今年のオリンピックを迎え、この市場で多くのインバウンド旅行者が見られることもあり、この業界の人は、既に今までやってきたことよりもさらに旅行者を魅了し、誘致する方法を模索している状況です。 駅に置かれているパンフレットやガイドブックはもはや意味を為しません。マーケターの観点から、適切なタイミングで適切な人にリーチする方法を考える必要があります。 旅行者の行動の変化から、従来の旅行体験そのものを見直し、デジタルシフトを視野に入れたマーケティングを行っていく必要がありそうだ。 また、ローカライズには、「鳥の目」で市場を把握したり、「虫の目」を持って現地にフィットする形を模索したりすることが重要である以前に、時代という大きな流れの変化にも確実に対応していく「魚の目」を持つことが求められる。 Q: 日本市場に参入していくに際し、最も重要なことは何ですか? A: 最も重要なのは、現地の人の声を聞き、尊重の意を見せることです。これは、日本文化に限ったことではなく、日本のビジネス文化に対してもです。クリエイティブであり、なおかつ現地に存在するニーズに合わせることに努めています。 日本で”信頼”を築くということ Q: ADARAはどのようにして顧客からの信頼を築いたのですか? A: まず、データを提供してくれるパートナーに対し、透明性を示しました。彼らが私たちにデータを提供する際、こちらは、そのデータをどう使うのかを伝え、なおかつ先方にデータの扱い手の決定権を委ねています。 また、パートナーから頂いたデータは全て別々に分けて安全に保管しています。航空会社やホテルチェーンとお仕事ができたのもこれが理由だと思います。信頼を築いています。 海外進出した企業はほとんどの場合、その国ではゼロの状態からのスタートとなる。そのため企業側からの積極的な信頼構築のためのアクションが重要になる。クリアなコミュニケーションや姿勢を示すことは、その状況の打破に繋がる。相手が抱くモヤモヤを自ら晴らす行動が重要だ。 世界的なスポーツイベントの連続開催に際して Q: ラグビーW杯や、東京オリンピックについて触れていらっしゃいました。180万枚ものラグビーW杯のチケットのうち、33%が外国人(日本人以外)によって購入され、また、日本は、2020年の東京オリンピックまでに2000万人もの観光客を誘致するとの予測もあります。 旅行関連企業にとって非常に大きなビジネスチャンスが巡ってくるわけですが、こういったイベントが差し迫ってくることでADARAに関心を持つ顧客の数の増加はありましたか? A: そうですね。ADARAは、世界中200以上もの航空会社やホテルチェーン、オンラインのトラベルエージェンシー等とパートナーシップを結び、旅行データベースを構築しています。 彼らは、我々のトラベルデータコープに参画し、データの共有を行います。データに基づいて、日本に来る人や、来日した際に行こうと考えている場所などを特定することができます。また、何人で旅行をするのか、いくらお金を使うのか、などをWebサイトのデータから知ることも可能です。 特に日本のマーケターは、自分たちのサービスをプロモーションしたいと思うはずです。ラグビーW杯で人々が日本に来ると分かっていれば、旅行客にもっと自分たちのサービスの魅力に触れてみて欲しいと思うのです。 日本チームと社内文化 Q: ADARAの日本オフィスの雰囲気はどのような感じなのでしょうか?米国の本社と似ているのか、あるいは、日本の伝統的なビジネススタイルを踏襲しているのでしょうか? A: その中間でしょうか。日本オフィスにいるスタッフのほとんどは米国企業での勤務経験があります。ですので、米国の環境ややり方には慣れていますね。コミュニケーションに関しては非常にスムーズです。 また、旅行関連ビジネスだからだと思いますが、ADARAで働いている人は旅行に情熱を傾けています。常に「次はどこに旅行するの?」「バケットリスト(死ぬまでにしたい100のことをまとめたリスト)にはどこが書かれているの?」などといった質問が飛び交っています。これは電話でも。 自分の人生や経験をスタッフ同士でお互いにシェアしています。これは決して他の会社にないこと、というわけではありませんが、とてもADARAらしいことです。 Q: 会社のカルチャーが日本オフィスでのコミュニケーションの円滑化に役立っているとお考えですか? A: はい、そう思います。他の日本の企業のように、ADARAにもよりフレキシブルにしていこうという動きがあります。ADARAには日数無制限の有給取得制度があり、リモート勤務が可能になっています。 実際、お子さんがいる女性社員が2人います。彼女たちはお子さんのお世話もしなくてはなりませんよね。彼女たちには、時々学校関連のことで対応しなくてはいけないことがあり、そういった時は家から勤務することもあります。 こういった職場環境を大切にしています。ちなみに私は旅行が好きで、休暇を取る予定なのですが、現地のカフェでオンラインに入り、リモートで仕事することはよくあります。 一見、社内カルチャーはローカライズや市場参入には直接的には関係のないことに思える。しかし、社内カルチャーを参入先の風土や雰囲気に合わせていくことは、その場所でビジネスを展開させていくことに効果的のようだ。 活字至上主義の日本と、イメージドリブンの米国 Q: 日本オフィスと米国の本社との関係はどうですか?また日米でコラボレーションする際はどういった雰囲気ですか? A: 日本オフィスは、基本的に米国本社のガイドラインに沿っています。ですが、言語や適用している戦略は区別させていこうと思っています。例えば、米国はプレゼンテーションは画像が多く、文章は少ないのが典型です。 しかし日本では、プレゼンターが話をしている間でさえも、聴く側はスライド上に書かれている文章に意識を向けていることが多いです。 これは、日本のビジネスシーン、特に保守的な業界では一般的に見られます。米国本社も次第に私たちの意見に耳を傾け、日本で成功を収めるために、日本で重んじられていることを大切にすることの必要性を理解し始めています。 米国ではプレゼンで話されていることを重視する一方、日本では文字情報に重きが置かれ、紙の書類を使用するシーンも多い。そのためADARAは、日本企業に対しては、事前にプレゼン資料をシェアし、スムーズな理解とディスカッションができるよう工夫をしているのだ。 […]

VCに関してもっと早く知っておきたかったリアルな実態

スターツアップエコシステムを語る上で、絶対に外すことにできない存在。それがVCだろう。VCとは、ベンチャーキャピタリストの略で、資金を集め、ファンドを作り、スタートアップに投資を行い、そこからリターンを獲得するのが主な仕事。どうしても、このVCという人たちの本来の役割が意外と知られていないことが多い。 起業家や起業家に憧れる人たちがVCに対して抱くキラキラなイメージと、実際の現場には大きなギャップがあると感じられる。 参考: なぜVCはいつも偉そうなのか 下記は、アメリカで連続起業家として活動しているAaron Dininによるポスト”What I Wish Someone Had Told Me About Venture Capitalists”を日本語にしたもの。彼の起業家としての学びの一つとして、VCとは、投資のゴール、そして彼らとの関わり方などがわかりやすく説明されている。 アメリカの起業家が学んだVCの実態 私はシリアルアントレプレナーであることもあり、起業してから最初の10年ぐらいはVCに対して大きな憧れを持っていた。まるで有名人に対してのように彼らのTwitterをフォローし、著名なVCが登壇するイベントに出席し、Andreesen、Sequoia、Benchmarkなどの著名VCとのミーティングを他の起業家に自慢したりした。 もちろん投資はしてくれなかったが、上記のようなVCとのミーティングに漕ぎ着けられただけで、自分の会社の存在価値が証明された気になっていた。 しかし、後に私はVCの目的を完全に勘違いしていたことに気づく。そしてそれが、長い間資金調達がうまくいかなかった原因ともなっていた。 VCはロックスターだと思っていたという勘違い おそらくスタートアップとVCとの関係性について誤解している人は私だけではないと思う。ある意味、若い起業家は取り巻く環境で、VCをちゃんと理解するよりも、崇拝するように仕掛けられている。 テクノロジー系のメディアには資金調達に関する見出しが踊り、成功者として称える。そして、スタートアップの価値を、世の中に対するインパクト (例: 1万人の子供の命を救った) よりも、評価額 (例: 巨大なユニコーン誕生) で測る。カンファレンスやイベントでは、VCや資金調達に成功した起業家達がステージを飾る。 そんな環境の中で、スタートアップの創業者達は、いつの間にかユーザーの課題解決よりも、投資家が求めることを中心に戦略を立てるようになっていく。 VCをもっとちゃんと理解してほしい この記事を通じて私は、自分がVCから投資を受ける側であるスタートアップの起業家になりたての頃に教えて欲しかった、VCの真の目的とその実態について説明できればと思っている。 それにより、これから起業家になる人たちに対して、1. VCとの正しい関わり方、2. そもそもVCから投資を受けるべきか、を理解してもらえればと思う。 なぜVCが存在しているのか? 起業家目線からは、どうしてもVCは「スタートアップを支援する存在」だと思いがちである。究極的には、VCはスタートアップに投資し、その成長を助ける。それにより、彼らは「創業者達の成功を支援するのが最終目的」のように見えてしまう。 しかし、VCの最終目的がスタートアップの成功と考えること自体が、VCの本当の目的を理解しにくくさせているのも事実だ。 VCは投資機関として、投資家や組織のお金をより幅広く投資することを担っている。したがって、VCの最終ゴールは起業家の夢を実現することではない。彼らの最終目標は投資家に対してより多くのリターンを還元することだ。 上記のポイントはは、起業家がVCに対して持つイメージと、VCの実態とのギャップを埋めるためにも、しっかりと理解しておくの事がかなり重要。 VCが成功するために、投資ターゲットとなるスタートアップは、下記に対して大きなポテンシャルを持っている必要がある。 投資額よりも何倍も大きな評価額を生み出す 他の会社に買収されるか上場するといったエクジットを通じて、投資ファンドに対してリターンを提供する ベンチャーファンドの仕組み これから紹介するのは、VCのビジネスモデルの基本を理解してもらうために、自分の生徒に説明する際にも利用する、極端にシンプル化にしたアナロジーである。完璧ではないが、基本的な理解を得るためには十分だと思う。 例えば10億円のベンチャーファンド (投資向けのお金) があったとする。そのお金を株式市場に投資すると、おそらく10%ぐらいのリターンは得られる。VCはそれよりも多いリターンを目指すのが仕事。 VCはその10億円のファンドを活用し、スタートアップに投資することで、”市場に勝つ”ことを目指す。今回の例では、シンプルにその10億円を10分割し、一口1億円で10社への投資を行うことにする。 一般的にアメリカのVC界では、投資した会社の50%からはリターンを期待できない。投資したお金は紙切れになってしまう。残りの5社のうち4社からは投資した額と同等のリターンを期待する。今回の例だと、この時点でリターンは4億となる。 ということは、現時点で9社からのリターンは4億で、全体投資額の40%しか戻ってきていない。全然ダメだ。しかし、まだ1社残っている。その10番目の会社が”ホームラン”を打つ。大成功したことで、投資額に対して10倍のリターンを出す。すなわち1億が10億に化ける。 これらを合算すると、当初の10億の投資は、合計14億のリターンを生み出した。40%のリターンをファンドにお金を入れてくれた人たちに分配することが可能になる。なかなかおいしい仕組みと思うだろうか?でも、現実はもうちょい複雑である。 持ち株率、希薄化、追加出資 上記の例では、投資した1億の資金がいとも簡単に10億のリターンを出したと仮定している。文字で書くと簡単そうに思えるかもしれないが、実際のにそれを実現しようとすると、なかなか難しい。どうやったら1,000円が10,000円に化けるかを想像してみると、その難しさが実感できるかもしれない。「ユニコーン」と呼ばれるスタートアップが、実存しない動物に例えられる理由も理解できる。 では、どのようなプロセスで1億が10億のリターンを出すに至るかをもう少し説明してみたい。 話を単純にするために、最初に投資した時点で、他にそのスタートアップには投資家がいないと仮定する。そして、1億を投資する代わりに会社の25%の株式を取得したとする。(念のために説明すると、この投資を受けた場合、その会社は、プレで3億、ポストで4億の評価額となる。) この時点で10倍のリターンを生み出すためには、その会社が40億で買収される必要がある。(40億で買収されれば、その25%が10億になるので。) 残念ながら、現実はのVCやスタートアップの世界では、ほぼそうならない。当初4億の評価額を受けた会社が40億で売却されるまで、全く追加出資を受けずに済むことは、まれであるからだ。 多くの場合は、それまでに何度か追加出資を受けることになる。おそらく12ヶ月以内に (願わくば) 当初よりも高い評価額で。追加で出資を受ける場合、既存の株主は、新規の投資家のために自身の持ち株を目減りさせる必要がある。これを希薄化と呼ぶ。 今回のケースでは、当初投資側が4億の評価額の会社の25%を所有していたが、その会社に追加出資を獲得する新規投資家の取り分を与えるために、その25%の持ち株率が下がってしまう。 例えば、この会社が評価額8億 (プレ) で2億の追加出資を受けた場合は、ポストの評価額が10億になる。その場合の創業者、既存投資家、新規投資家の持ち株率は下記のように変化する。 創業者: 60% (75%からダウン) 既存投資家: 20% (25%からダウン) 新規投資家: 20% 追加出資をした新規投資家に20%を渡すために、創業者と既存投資家の持ち株率が下がってしまった。しかし、評価額が10億になったため、その20%の価値は2億になり、当初の4億の25%である、1億の倍の価値になったことになる。これをわかりやすくリスト化すると: 創業時: 評価額4億 創業者: 75%: 3億 投資家: 25%: 1億 追加出資獲得時: 評価額10億 創業者: 60%: 6億 既存投資家: 20%: 2億 新規投資家: 20%: 2億 なかなかイケてるだろう? VCが元々3億の評価額の会社に1億を出資したことで、追加出資を受けた時点で、その評価額は10億にまで膨れ上がった。実に6億も増えたことになる。VCの投資分も1億から2億へと、倍になった。 ここで、当初のゴールである1億の投資を10億にまで増やすことを考えてみよう。持ち株率が20%になったので、そも目標を達成するには、当初の40億より10億多い、50億で会社が買収される必要が出てきた。 念のため、この追加出資の概念について補足する。今回の仮想VCのモデルでは、10億のファンドを10社に投資しただけであったが、現実のVCは、投資した会社の中で優良だと思われるところに、その後も追加で出資することが珍しくない。そうすることで、持ち株比率の希薄化を避けるのだ。 ややこしい追加出資やリターンの細かな説明や計算ロジックはここまでにする。基本的な計算式は変わらない。追加出資が行われた場合は、売却額を上げる必要があるということ。 VCが投資したくなる会社の特徴 ここまでじっくり読んでくれたか、軽く飛ばし読みしたかはわからないが、その仕組みがわかれば、おそらくVCが投資するスタートアップには一定の特徴があることに気づいただろう。VCが投資対象として評価するのは、おのずと急激に大幅成長が見込める会社になってくる。 一方で、そのような急成長を期待できる会社は限られてくる。起業家としてVCからの投資を求める前に、そもそも彼らが求めるタイプの会社であるかどうか、そして創業者としてそれを達成する能力があるかをを自問して欲しい。 1億円は大きなお金のように感じるかもしれないが、VCにおけるリターンのロジックは変わらない。受け取る金額に限らず、スタートアップは何倍ものリターンを出すことが求められる。 今回の例では、1億を投資し、その会社に対してプラス6億の”価値”を生み出した。言い換えると、600%のROIを達成したことになる。株式市場への投資が平均10%程度のROIである事と、それ世界のトップ企業からのリターンの平均である事を理解していただきたい。 それを踏まえると、VCがスタートアップに求めるリターンの大きさが理解できると思う。トップクラスの大企業でも毎年10%の成長を達成する程度であるのに対し、スタートアップは何百倍ものリターンを求められるのだ。まさにハイリスクハイリターン。多くのスタートアップが失敗に終わるのも理解できる。同時にスタートアップを成功させる難易度の高さもわかっただろう。 VC自身も起業家である 投資を受けたスタートアップに求められるリターンの高さはハンパないが、VCが背負うプレッシャーも尋常ではない。なんせ、預かったお金を使って株式投資よりも大きなリターンを生み出す事を期待されているのだから。 そのゴールを実現するために、VCの人たちはリスクの高いスタートアップ投資を通じて、最終的にポジティブなROIを生み出さなければならない。ほぼ不可能に近いぐらいの難易度である。VCの約半数は失敗し、45%はトントンのリターンで終わるのもうなずける。 自分もスタートアップを始めた頃は、VCの仕事がこんなにも大変だとは全く知らなかった。てっきり、VCは業界におけるロックスターであり、気に入ったスタートアップにさくっと何億も投資する。まるで、アッシャーがジャステ・ビーバーを”発掘”したように、起業家を一晩にして成功に導いてくれる存在だと思っていた。 そんな夢を見てた頃の自分は、起業家と言うよりも、VCの前でピッチをしまくるパフォーマーだった。彼らの投資対象になるようなビジネスモデルを理解してもらうよりも、自分のピッチスキルとプロダクトがクールであることばかりをアピールしていた。 今から考えると、VCに対してピッチのスキルを認めてもらったり、プロダクトを好きになってもらう事は、投資をしてもらう事とは全く別の軸であった。彼らは、ピッチの素晴らしさを期待しているわけではなく、自分たちの投資モデルに最も適した会社を探していたのだ。なぜなら、彼らも自分たちのプロダクトをピッチをしなければならないから。 VCもピッチをする責任がある […]

大企業xスタートアップのオープンイノベーションをガンガン実現するDelta航空【CES 2020】

大企業がスタートアップとコラボし、新しい価値を生み出す。これは、多くの企業が目標に取り組んでおり、シリコンバレーに拠点を構える日本企業の最も重要なゴールの一つともなっている。
その一方で、実際の成功例は驚くほどに少ない。そもそも、多くのスタートアップは大企業との取り組みに興味がない。むしろ、めんどくさいとすら思われている。これは日本でもアメリカでも、ほぼ同じような状況である。
スタートアップが大企業に持つイメージ

スピードが遅い
偉そう
プロセスがめんどくさい
社員がポンコツ
できない理由を並べる…

最近のロゴが似通ってきている問題 – 第2弾

最近になってYahoo本社のロゴがまたアップデートされた。Yahoo! Japanのロゴはかなり長い間変更されていないのに。これはいかにも、変化スピードの速いシリコンバレーを象徴するようだ。なるべくゆっくり進むことが多い日本文化と比べてみても、企業の平均生存率が15%であるアメリカでは、”変化しない=死”を意味することもあり、ロゴのアップデートもかなり頻繁に行われる。

↑ 最近アップデートされたYahooのロゴ
時代の変化に合わせてロゴもアップデート
ではなぜロゴを変える必…

米国最新フィットネススタートアップ3選。キーワードは「自宅」

近年日本でもRIZAPのような期間集中型の肉体改造プログラムが注目を集めたり、ゴールドジムのようなフィットネスクラブが人気を呼んだりしているが、ここアメリカでもブティックジムや空中ヨガなどなど、新しいフィットネストレンドの入れ替わりは日本以上に目紛しい。 さらにサンフランシスコやシリコンバレー、ニューヨークといった大都市では、従来の健康関連サービスにテクノロジーを掛け合わせ、イノベーティブなヘルシーライフスタイルに貢献しようという動きが盛んになっている。 そこで今回は、健康 × テクノロジーの中でも、最近アメリカ市場を賑わせている「自宅エクササイズを可能にするスタートアップサービス」をご紹介したい。 関連記事:【医療テック×UX】スタートアップが変えた私達のヘルスケア体験 注目を集める「自宅エクササイズ × テクノロジー」分野 自宅用のエクササイズマシンが今、注目されている理由としては、エクササイズマシンがIoT商品へと姿を変えてきたということが挙げられる。それに伴い、AIを使った画期的な新機能なども加わり、業界に革新をもたらし始めたのだ。 IoTエクササイズマシンの市場規模は順調に成長しており、下の図からもその期待値の大きさを読み取ることが出来る。 Allied Market Researchの数値を元に図を作成 実に、2016年からの次の7年間で、市場成長率は5.7倍になると予想されている。2023年の市場規模は1.5兆円に到達する見込みだ。 昨年2018年には、ベンチャーキャピタリスト達が1年間で合計約2.4兆円もの額をフィットネス系のスタートアップに投資したことも明らかになり、過去最大のフィットネススタートアップブームが起こっているのだ。 自宅エクササイズスタートアップ3選 1. Peloton:登録者数既に50万人超え。フィットネス業界のネットフリックス 自宅用のエクササイズマシンといえば、フィットネスバイクが思い浮かぶ人も多いのではないだろうか。Pelotonは、フィットネスバイクやランニングマシン、そして登録型のレッスン動画ストリーミングサービスを展開しているスタートアップである。 2012年にニューヨークで設立された。その後も順調に資金を調達し続け、今年2019年には遂にIPOも果たす予定だ。 Pelotonのフィットネスバイクとランニングマシーンには、大型のHDウォータープルーフタッチスクリーン(バイクは22インチ、ランニングマシーンは32インチ)が付いている。ユーザーは、このスクリーン上で提供されるPelotonのエクササイズプラットフォームから好きな動画を選択し、エクササイズを行う。 関連記事:「フェムテック」現代女性の健康を支える海外注目スタートアップ事例 充実したエクササイズコンテンツと徹底した管理機能が強み Pelotonが提供するストリーミングのコンテンツはとても豊富かつクオリティが高いもので、自社で抱えるトレーナーにより、フィットネスバイクやランニングマシーン用のものだけではなく、ヨガや重量を使った筋力トレーニングまで用意されている。その豊富なコンテンツ量から、「フィットネス界のネットフリックス」と呼ばれているのだ。 生放送のクラスに参加することもできるし、オンデマンドクラスもある。ユーザーはエクササイズの種類からクラスを選べることはもちろん、好きな音楽のジャンルから選択も可能。 インストラクターがその音楽に合わせて、トレーニングを支持してくれる。時にはインストラクターからの熱いメッセージでエクササイズのモチベーションを上げてくれるのだ。 Pelotonのオフィシャルサイトから転載 またこのタッチスクリーンからPelotonのアプリ上でエクササイズの管理をすることなども可能だ。心拍計も搭載されており、シンクすることも出来る。専用のアプリを使うことあらゆるデバイスからの確認も可能。 Pelotonのエクササイズ管理アプリ。オフィシャルサイトから転載 決して低価格ではないが、人気を呼び、さらなる注目が集まる 値段としては、フィットネスバイクが約24万円、ランニングマシーンが約46万円、そしてストリーミングサービスが月額約4000円と、決して安い値段ではない。(ちなみにPelotonのマシンなしで、エクササイズ動画の会員登録のみなら約2,000円で可能である。) しかし、Pelotonは2012年の設立から現在まで、40万台以上のフィットネスバイクを売り上げ、ストリーミングサービスの登録者はなんと50万人以上を達成している。ランニングマシーンの発売は去年の12月に開始したばかりで、販売台数は公開されていないが、好調を見込めると言う声が多い。 というのも、ランニングマシーン販売の数ヶ月前に、FacebookやNetflixなどの有名テック企業に投資を行ってきたTVCファンドから600億円の資金を獲得し、去年の第2四半期で推定企業価値が4.3兆円に膨れ上がったからである。潤沢な資金力とTVCファンドが見込んだ企業戦略で、Pelotonがいずれ市場を席巻するであろうと期待されている。 実は分割払いという購入方法もあり、頭金ゼロの年利率0%で、月額約6000円から自宅で始められる。まだ日本市場には上陸していないが、自宅でのフィットネスバイクの本格的なトレーニングが次のフィットネストレンドとなる日はすぐそこかもしれない。 2. Mirror:自宅フィットネスの常識を覆す、デザインも優れた鏡によるエクササイズ Mirrorはその名の通りミラー(鏡)を使った自宅フィットネを提供するニューヨーク出身のスタートアップである。昨年のクリスマスに、アメリカの著名な歌手であるアリシア・キーズが、息子からMirrorをプレゼントして貰った動画がソーシャルメディアにアップされたことを皮切りに、売り上げと注目度を一気に加速させた。 鏡とディスプレイが1つになっているというメリット 今では人気タレントのエレン・デジェネレスや女優のアリソン・ウィリアムズのようなセレブにまで愛用されるようになったりと、インフルエンサーの獲得にも成功している。 Mirroの光沢のある52インチの鏡は、内部にモニターが格納されており、フィットネスクラスを受講できるプラットフォームが見られるようになっている。 つまり、Mirrorの鏡自体がディスプレイとなり、フィットネスクラス動画を見ながらエクササイズができるということだ。さらにディスプレイは鏡でもあるため、自分のフォームを確認しながら運動できる。 また、カメラも設置されているため、遠隔にいるインストラクターが個人のフォームを確認し、アドバイスしたりすることも可能だ。 副社長のカイリー・コムスがニューヨークのショールームで見せたデモ。New York Timesから転載 上記の写真からも鏡の機能とスクリーンの機能が上手く両立されているのがよく分かる。ジムでもインストラクターの動きをみて、向かいの鏡で自分のフォームをみて、ということがあると思うが、それを自宅でそのままできるといったサービスだ。 なお、専用のアプリから操作が可能なので、鏡に指紋等が付着する心配もない。 もはや自宅におきたくなるデザイン Mirror最大の特徴の1つに、自宅におくエクササイズマシンとして、家のインテリアを全く邪魔しないデザインであるという点もあげられる。もはや鏡であり、見た目、スペースのどちらをとっても今までのエクササイズマシンの常識を覆していると言える。 普通の姿見鏡としてもスタイリッシュで、自宅のどこに置いても景観をそこねるものではない。Mirrorのオフィシャルサイトから転載 壁に掛けられるようにもなっており、スペースを取ることもない。Mirrorのオフィシャルサイトから転載 Mirrorのこのスタイリッシュなデザインは、ホテル業界からも受け入れられているほどだ。超一流のホテルで名高いThe Markは、一泊800万円以上もする最上階のスイートルームにMirrorを設置した。そのデザインや機能性は、ラグジュアリー家具としても注目が集まりつつある。 とはいえ、昨年9月から市場販売を開始したばかりのMirror。価格は日本円にして約16万円と、決して気軽に購入できるわけではないが、着実に市場シェアを拡大させている。 数ヶ月前には350億円を上回る推定企業価値をつけられたこともあり、業界内の知名度も急上昇。今後も目が離せないスタートアップだ。 3. Pivot:人工知能でフォーム矯正。次世代フィットネス Pivotは元々B2B向けにジムマシンを販売していたSmartSpotから派生したスタートアップである。商品の正式な販売はまだ始まっていないが、AIを駆使してトレーニングのフォームまで指導してくれるフィットネスマシンの開発は注目を集め、既に多額の出資金を獲得している。 TechCrunchより転載。実際にSmartspotを使っている様子。腕の角度や膝の角度が表示されている。 3Dセンサーとビッグデータに基づいたパーソナライズトレーニング Pivotの特徴の1つとなっているのが、前身のSmartSpotから得た100万回以上のエクササイズデータだ。SmartSpotは上の写真のように、3Dセンサーを搭載したフィットネスモニターで、重量等を使ったフリートレーニングのフォームの確認と矯正するためのデータを提示してくれるものだった。 この情報をマシンラーニングで分析し、BtoC向けへ精密度を格段に向上させたものがPivotである。この膨大なデータと優れた3Dセンサー技術から、エクササイズ中の姿勢や腕の角度まで、あらゆる部分を徹底的に分析し、リアルタイムで補正してくれる。 そして、心拍数や身長・体重などの情報と共に、Pivotに搭載されたAIが一人一人に最適化されたトレーニングを割り出すのだ。 Pivotのオフィシャルサイトから転載。 さらに、実際のクラスにオンラインで参加することも可能になるので、フォームのずれはインストラクターにも通知が直接送られる。それをもとに、インストラクターからの指導も自宅で受けられるようになるのだ。 そして、筋力トレーニングだけではなく、上記の写真のように激しい有酸素運動のようなレッスンもコンテンツの中に含まれる予定である。 Pivot一台で筋力増強プログラムからエクササイズ、そしてヨガなどのフィットネスまでカバーできるのだ。 AIを搭載させたフィットネスマシンは瞬く間に投資家達の間でも人気を博した。その中でもPivotは、Y-Combinatorを含む投資ファンドから18.5億円もの資金(経営初期の投資期間であるシリーズA投資ラウンド)を、2019年7月に調達したばかりだ。これからのPivotの成長から目が離せない。 関連記事:ナイキ・パタゴニア等に学ぶ、セルフマネジメントを促す組織体制 まとめ 今回紹介した自宅エクササイズマシンのIoT化は、自宅エクササイズの限界やエクササイズマシンのあり方を、テクノロジーの力を用いてディスラプトしつつある、格好の例ではないだろうか。 今までのエクササイズ事情と言えば、アメリカの都市部を中心に、フィットネスジムなど会員制ジムに登録しても、多忙ゆえ定期的にジムやレッスンに通えないことから、続かない、結局退会するということがとどのつまりだった。 しかしながら、エクササイズマシンのIoT化はそれを解消しつつある。インターネットの普及により、衣食住にまつわるあらゆるサービスのアクセスも非常に便利になった今、健康でさえも便利に手に入ることが消費者の需要となっているのだ。 この記事で紹介したように、フィットネスマシンもインターネットに繋がり、どこでも簡単に、自分の空いた時間でサービスを消費することが出来る時代がすぐそこまでやって来ているのである。 さらに、不便さを解消しただけでなく、モチベーションを上げてくれるようなコンテンツ・エクササイズプラットフォームや邪魔をしないデザインなど、利用者のか感情や体験に対しても工夫を凝らしていることがわかる。 時代の流れに合わせたビジネスの展開をすることは容易ではないが、それが出来るものが生き残れる厳しい世界でもある。我々btraxは市場調査、マーケティング、海外進出などを通して日本企業がトレンドの波に乗り、さらなる成長を遂げるための飛び石の役割を務めることをミッションとして掲げている。詳しくは公式サイトの問い合わせページよりお問い合わせいただきたい。   参考: Peloton exercise bikes became a $4 billion fitness start-up Peloton, the connected fitness company, has filed to go public 8 Things You Should Know Before Buying A Peloton Bike Cycling Startup […]

LINEはガラパゴス?世界のSNSデータからみる日本依存のリスク

日本で最もよく使われるSNSとして知られるLINEだが、実はここアメリカでは全くと言って良いほど使われていないということをご存知だろうか。 LINEの日本国内の月間アクティブユーザー(以下MAU: Monthly Active Usersの略)は約8,000万人なのに対し、アメリカ国内のMAUはなんとたったの357万人ほどである。これは人口割合でいうと、わずか1.1%程度に留まっている。 日本のスマートフォンユーザーは現在約7,722万人(2017年の日本総人口 x 2017年個人におけるスマートフォンの保有率より計算)。LINEのMAU8,000万人という数は、国内における全スマートフォンユーザー数よりも多い数字である。これは、ガラパゴスケータイやPCからLINEを使っている人もいるのが理由。とにかく国内では、LINEは驚異の普及率であることがわかるだろう。 一方で、アメリカのスマートフォンユーザーに対する普及率はたったの約1.34%という圧倒的な浸透率の差がある。 関連記事:「【アメリカでは誰もLINEを使わない?】国別にみる若者が使うアプリの違い5選」 ↑ SNSごとの日本国内とグローバルでのユーザー数と人口に対しての利用シェアの差 (参照: 日本からグローバルなプロダクトが生まれにくい5つの理由) ちなみに筆者もアメリカ留学時代に、ヨーロッパ、中東、南米、アフリカなど、世界各地の学生たちとLINEを交換しようと試みたことはあるが、大半の学生がLINEの存在自体すら知らなかった。代わりに使っていたのはFacebook MessengerやSnapchatだ。 日本では普及率が高く、世界では広まっていない。これは言い換えてみると、LINEは日本に依存するところが大きいということだ。 そこで今回は、LINEがいかに日本で普及しているのか、そして他の競合SNSと比べ、どの程度一国への依存度が高いのかということを紹介したい。ひいては、日本市場の今後を考えると、LINEの今の状態は、成長の限界とリスクが見えてくる。 ↑ 世界市場におけるSNS別アクティブユーザー数 日本で圧倒的な普及率・利用率を誇るLINE みなさんもご存知だとは思うが、LINEは日本国内で一番使われているSNSだ。 下記のグラフの通り、日本でのMAUを世界の競合SNSと比較しても、その違いは明らかである。MAU2位であるTwitterと大きく差が開いており、LINE一強という印象を受ける。 参照:「TechCrunch」、「Facebook News」、「MarkeZine」 LINE PayやLINE BRAINなど、日本におけるサービス拡大の様子からも、いかに日本を重要なマーケットとしているかが伺える。 事実、LINEにとって日本は売上的にもメインのマーケットだ。企業全体として、売上高は順調に伸びているのだが、その売上の内訳は日本国内からが75%を占めるまでになっている。 「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」から転載 言い換えれば、この状態は日本市場に依存しすぎているということ。そしてその日本市場というのは、今後少子高齢化・人口減少が進み、2050年にはGDP7位にまで下がると言われており、このマーケット1つに依存することはすなわち、成長の限界とリスクを示しているのである。 ちなみに日本国外のLINEユーザーとしては、タイ、台湾、インドネシアに多い。LINEユーザーの4割強は日本からではあるものの、これら3ヶ国だけでも同じくらいの割合でユーザーが根付いている。世界展開ができているようにも思えるが、どの国もFacebookに苦戦しており、日本市場ほど優位に立ててないのが実情だ。インドネシアに至っては、ここ2年の間にMAUが半減している。 ↑ 主要4ヶ国=日本、タイ、台湾、インドネシアがしめるLINEのMAU割合 参照:「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「uniad」のデータを元に図を作成 ↑ 主要3ヶ国の中でも、日本市場のみが、Facebookと圧倒的に差をつけて浸透していることがわかる 参照:「Digital 2019 Thailand (January 2019)」、「statista」、「Digital 2019 Taiwan」、「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「Digital 2019 Indonesia」のデータを元に図を作成 世界市場でみるとほとんど使われていないLINE では、世界規模でみたときに、どのようなソーシャルメディアが多く使われているのだろうか。世界のSNSユーザー統計データから、グローバル市場を見てみよう。 参照: 「Most famous social network sites worldwide as of April 2019, ranked by number of active users (in millions)」*Facebook Messenger除く ご覧いただいてわかる通り、ここにLINEの名前はなく、世界20位となっている。個人情報の取り扱いで多くの問題を起こしてきたFacebookだが、その人気を落とす事はなく未だに世界最大のSNSとして市場に君臨している。Facebookは23億2000万人という圧倒的なMAU数を誇っており、群を抜いた使用率でもあるのだ。 次にアメリカ国内でのSNS利用率をみる。 こちらにもトップ5位以内にLINEの名前はなく、11位となっている。 ちなみに日本ではFacebookの若者離れが囁かれているが、アメリカでは18歳から24歳のユーザーが全体の17%、25歳から34歳のユーザーが25%、そして35歳から44歳のユーザーが18%となっており、彼らが全体の56%を占めている。世界的に見ても、18歳から34歳の男女がMAUの約6割を占めており、Facebookのオーディエンスは若年層という傾向だ。 FacebookやInstagram、Twitterなど多くのSNSはアメリカの企業であるため、自国でのプレゼンスが高くなることはあるのかもしれない。それでも世界的に浸透しており、自国から遠く離れた、文化も全く異なる日本でも頭角を現しはじめているといったことは、LINEがまだできていない、「世界進出の成功例」ではないだろうか。。 さらに世界・アメリカ・日本の人口におけるSNS普及率をSNS別でみてみると、LINEがいかに日本依存しているかがより明確にお分かりいただけると思う。 補足:実際には、全世界の約66%しかスマートフォンを持っておらず、コンピューター普及率は約45%ほどだと言われているので、母数を全世界でにしたときに各SNSの普及率は基本的に低くなる。 やはり、LINEは日本国内で圧倒的な普及率を誇っている。ここまで市場ごとに差が開いているSNSは他にない。 一方で、LINE以外のSNSは1国のみに頼ることなく、日本や世界でも健闘をしている。特にTwitterは日本での浸透率も高い。実はカリフォルニア発祥のTwitterは、出身国であるアメリカ以上に、日本で絶大な人気を獲得している。また、Twitterはアメリカからの売上は約54%にとどまっており、残りは海外から獲得している。 Facebookも母国であるアメリカでの利用率が1番多いものの、LINEほどの差はない。彼らの収益率もアメリカ・カナダエリアからの収益は全体の半分以下となっている。どちらもLINEのように、売上の75%が1ヶ国からというようなことにはなっていない。 (Twitterの売上元割合 – 参照:2019 Q1 Selected Company Metrics) (Facebookの売上元割合 – 参照:Facebook Q4 2018 Report) 一国集中のLINEと世界に向かう競合SNS。成長率の差は明らかに 日本で圧倒的な利用率を誇るLINEと、自国を抜け出し、世界でも普及されてきている他の競合SNS。それぞれのマーケットの大きさから、当たり前の結果ではあるかもしれないが、それぞれ、MAUの伸び率には差が出てきている。上のグラフは、各SNSのリリースから毎年の月間アクティブユーザー数で表したものである。 LINEは他SNSより比較的若い方ではあるが、7年目の他のSNSをみてもその差は歴然。WhatsAppに関しては爆発的な成長が伺える。また、FacebookとInstagramの継続的な成長も見て取れる。 日本人気はレバレッジにならず、出遅れたLINEのアメリカ進出 とはいえ、LINEは世界市場に対して何もしていなかった訳ではない。2016年にはアメリカ市場にも進出をした。その際、アメリカ市場のニーズを正確に把握していなかったことや、広報体制もままなっていなかったことなどはIPOを行う前から批評の対象となっていた。 日本の「かわいい」を全面に押し出したメッセージアプリが現地の文化を超えてアメリカの消費者たちに浸透するのは難しいだろうといった予想が多かったのも事実である。 それに加え、LINEが最初に上場計画を出した2014年と、実際に上場を果たした2016年とでは市場の状況が一変してしまったというのも大きな要因の一つだったであろう。その2年の間にSNSは発展の一途を辿り、全世界のSNS市場が一斉に開拓されていったのだ。 例えば アメリカ国内で約6500万人しかいなかったFacebookユーザーが1億人を突破 全世界のFacebook messengerのMAUが2000万人から1億人へと激増 4300万人しかいなかったWhatsAppのMAUが1億人へと倍増 などの変化が顕著で、その後のLINEの成長に大きな足枷となったということは想像に易い。IPOこそ成功を収めたものの、サービスを現地に対応しきれず、既に市場を独占していた競合から上手く差別化できなかったといったところではないだろうか。 まとめ 日本では圧倒的存在感を見せるLINE。だが、経済が縮小傾向にある日本市場に依存するということは、その成長にも少なからず悪影響を受けることは当然だろう。 そしてLINEのように「日本だけで調子がよく、日本におけるサービス展開に注力し、さらに日本への依存度が増す」といった状況が当てはまる企業・サービスも多いのではないだろうか。 それに対して、世界市場では苦戦を強いられている。世界戦で勝ち抜くのは容易なことではないが、上記の点からすると、むしろこちらの方が企業成長・存続における重要課題のように思える。 そうなってくると、なぜ最初から世界をマーケットにしたサービス開発・改善をしないのか。たとえ日本を狙って日本で勝てても、成長の限界が見えている。LINEがたった2年の間もたついていたら、世界はあっという間に変わっていて、より厳しい状況となった。 関連記事:どんなに頑張ってもお前がカバー出来るのは世界の2% […]

LINEはガラパゴス?世界のSNSデータからみる日本依存のリスク

日本で最もよく使われるSNSとして知られるLINEだが、実はここアメリカでは全くと言って良いほど使われていないということをご存知だろうか。 LINEの日本国内の月間アクティブユーザー(以下MAU: Monthly Active Usersの略)は約8,000万人なのに対し、アメリカ国内のMAUはなんとたったの357万人ほどである。これは人口割合でいうと、わずか1.1%程度に留まっている。 日本のスマートフォンユーザーは現在約7,722万人(2017年の日本総人口 x 2017年個人におけるスマートフォンの保有率より計算)。LINEのMAU8,000万人という数は、国内における全スマートフォンユーザー数よりも多い数字である。これは、ガラパゴスケータイやPCからLINEを使っている人もいるのが理由。とにかく国内では、LINEは驚異の普及率であることがわかるだろう。 一方で、アメリカのスマートフォンユーザーに対する普及率はたったの約1.34%という圧倒的な浸透率の差がある。 関連記事:「【アメリカでは誰もLINEを使わない?】国別にみる若者が使うアプリの違い5選」 ↑ SNSごとの日本国内とグローバルでのユーザー数と人口に対しての利用シェアの差 (参照: 日本からグローバルなプロダクトが生まれにくい5つの理由) ちなみに筆者もアメリカ留学時代に、ヨーロッパ、中東、南米、アフリカなど、世界各地の学生たちとLINEを交換しようと試みたことはあるが、大半の学生がLINEの存在自体すら知らなかった。代わりに使っていたのはFacebook MessengerやSnapchatだ。 日本では普及率が高く、世界では広まっていない。これは言い換えてみると、LINEは日本に依存するところが大きいということだ。 そこで今回は、LINEがいかに日本で普及しているのか、そして他の競合SNSと比べ、どの程度一国への依存度が高いのかということを紹介したい。ひいては、日本市場の今後を考えると、LINEの今の状態は、成長の限界とリスクが見えてくる。 ↑ 世界市場におけるSNS別アクティブユーザー数 日本で圧倒的な普及率・利用率を誇るLINE みなさんもご存知だとは思うが、LINEは日本国内で一番使われているSNSだ。 下記のグラフの通り、日本でのMAUを世界の競合SNSと比較しても、その違いは明らかである。MAU2位であるTwitterと大きく差が開いており、LINE一強という印象を受ける。 参照:「TechCrunch」、「Facebook News」、「MarkeZine」 LINE PayやLINE BRAINなど、日本におけるサービス拡大の様子からも、いかに日本を重要なマーケットとしているかが伺える。 事実、LINEにとって日本は売上的にもメインのマーケットだ。企業全体として、売上高は順調に伸びているのだが、その売上の内訳は日本国内からが75%を占めるまでになっている。 「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」から転載 言い換えれば、この状態は日本市場に依存しすぎているということ。そしてその日本市場というのは、今後少子高齢化・人口減少が進み、2050年にはGDP7位にまで下がると言われており、このマーケット1つに依存することはすなわち、成長の限界とリスクを示しているのである。 ちなみに日本国外のLINEユーザーとしては、タイ、台湾、インドネシアに多い。LINEユーザーの4割強は日本からではあるものの、これら3ヶ国だけでも同じくらいの割合でユーザーが根付いている。世界展開ができているようにも思えるが、どの国もFacebookに苦戦しており、日本市場ほど優位に立ててないのが実情だ。インドネシアに至っては、ここ2年の間にMAUが半減している。 ↑ 主要4ヶ国=日本、タイ、台湾、インドネシアがしめるLINEのMAU割合 参照:「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「uniad」のデータを元に図を作成 ↑ 主要3ヶ国の中でも、日本市場のみが、Facebookと圧倒的に差をつけて浸透していることがわかる 参照:「Digital 2019 Thailand (January 2019)」、「statista」、「Digital 2019 Taiwan」、「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「Digital 2019 Indonesia」のデータを元に図を作成 世界市場でみるとほとんど使われていないLINE では、世界規模でみたときに、どのようなソーシャルメディアが多く使われているのだろうか。世界のSNSユーザー統計データから、グローバル市場を見てみよう。 参照: 「Most famous social network sites worldwide as of April 2019, ranked by number of active users (in millions)」*Facebook Messenger除く ご覧いただいてわかる通り、ここにLINEの名前はなく、世界20位となっている。個人情報の取り扱いで多くの問題を起こしてきたFacebookだが、その人気を落とす事はなく未だに世界最大のSNSとして市場に君臨している。Facebookは23億2000万人という圧倒的なMAU数を誇っており、群を抜いた使用率でもあるのだ。 次にアメリカ国内でのSNS利用率をみる。 こちらにもトップ5位以内にLINEの名前はなく、11位となっている。 ちなみに日本ではFacebookの若者離れが囁かれているが、アメリカでは18歳から24歳のユーザーが全体の17%、25歳から34歳のユーザーが25%、そして35歳から44歳のユーザーが18%となっており、彼らが全体の56%を占めている。世界的に見ても、18歳から34歳の男女がMAUの約6割を占めており、Facebookのオーディエンスは若年層という傾向だ。 FacebookやInstagram、Twitterなど多くのSNSはアメリカの企業であるため、自国でのプレゼンスが高くなることはあるのかもしれない。それでも世界的に浸透しており、自国から遠く離れた、文化も全く異なる日本でも頭角を現しはじめているといったことは、LINEがまだできていない、「世界進出の成功例」ではないだろうか。。 さらに世界・アメリカ・日本の人口におけるSNS普及率をSNS別でみてみると、LINEがいかに日本依存しているかがより明確にお分かりいただけると思う。 補足:実際には、全世界の約66%しかスマートフォンを持っておらず、コンピューター普及率は約45%ほどだと言われているので、母数を全世界でにしたときに各SNSの普及率は基本的に低くなる。 やはり、LINEは日本国内で圧倒的な普及率を誇っている。ここまで市場ごとに差が開いているSNSは他にない。 一方で、LINE以外のSNSは1国のみに頼ることなく、日本や世界でも健闘をしている。特にTwitterは日本での浸透率も高い。実はカリフォルニア発祥のTwitterは、出身国であるアメリカ以上に、日本で絶大な人気を獲得している。また、Twitterはアメリカからの売上は約54%にとどまっており、残りは海外から獲得している。 Facebookも母国であるアメリカでの利用率が1番多いものの、LINEほどの差はない。彼らの収益率もアメリカ・カナダエリアからの収益は全体の半分以下となっている。どちらもLINEのように、売上の75%が1ヶ国からというようなことにはなっていない。 (Twitterの売上元割合 – 参照:2019 Q1 Selected Company Metrics) (Facebookの売上元割合 – 参照:Facebook Q4 2018 Report) 一国集中のLINEと世界に向かう競合SNS。成長率の差は明らかに 日本で圧倒的な利用率を誇るLINEと、自国を抜け出し、世界でも普及されてきている他の競合SNS。それぞれのマーケットの大きさから、当たり前の結果ではあるかもしれないが、それぞれ、MAUの伸び率には差が出てきている。上のグラフは、各SNSのリリースから毎年の月間アクティブユーザー数で表したものである。 LINEは他SNSより比較的若い方ではあるが、7年目の他のSNSをみてもその差は歴然。WhatsAppに関しては爆発的な成長が伺える。また、FacebookとInstagramの継続的な成長も見て取れる。 日本人気はレバレッジにならず、出遅れたLINEのアメリカ進出 とはいえ、LINEは世界市場に対して何もしていなかった訳ではない。2016年にはアメリカ市場にも進出をした。その際、アメリカ市場のニーズを正確に把握していなかったことや、広報体制もままなっていなかったことなどはIPOを行う前から批評の対象となっていた。 日本の「かわいい」を全面に押し出したメッセージアプリが現地の文化を超えてアメリカの消費者たちに浸透するのは難しいだろうといった予想が多かったのも事実である。 それに加え、LINEが最初に上場計画を出した2014年と、実際に上場を果たした2016年とでは市場の状況が一変してしまったというのも大きな要因の一つだったであろう。その2年の間にSNSは発展の一途を辿り、全世界のSNS市場が一斉に開拓されていったのだ。 例えば アメリカ国内で約6500万人しかいなかったFacebookユーザーが1億人を突破 全世界のFacebook messengerのMAUが2000万人から1億人へと激増 4300万人しかいなかったWhatsAppのMAUが1億人へと倍増 などの変化が顕著で、その後のLINEの成長に大きな足枷となったということは想像に易い。IPOこそ成功を収めたものの、サービスを現地に対応しきれず、既に市場を独占していた競合から上手く差別化できなかったといったところではないだろうか。 まとめ 日本では圧倒的存在感を見せるLINE。だが、経済が縮小傾向にある日本市場に依存するということは、その成長にも少なからず悪影響を受けることは当然だろう。 そしてLINEのように「日本だけで調子がよく、日本におけるサービス展開に注力し、さらに日本への依存度が増す」といった状況が当てはまる企業・サービスも多いのではないだろうか。 それに対して、世界市場では苦戦を強いられている。世界戦で勝ち抜くのは容易なことではないが、上記の点からすると、むしろこちらの方が企業成長・存続における重要課題のように思える。 そうなってくると、なぜ最初から世界をマーケットにしたサービス開発・改善をしないのか。たとえ日本を狙って日本で勝てても、成長の限界が見えている。LINEがたった2年の間もたついていたら、世界はあっという間に変わっていて、より厳しい状況となった。 関連記事:どんなに頑張ってもお前がカバー出来るのは世界の2% […]

「日本式」ピッチあるある5つ:グローバルに通用するためのコツとは

イノベーションの支援をしているbtraxでは、日本企業のエースまたは起業家たちのスタートアップピッチ(主にスタートアップが投資家に向けて自分たちのビジネスアイデアを発表し、投資にこぎつけるためのプレゼンスタイルの売り込みを指す)を指導することが多々ある。
筆者もその指導者の一人であり、イノベーションブースターと言うプログラムを通じて、日本企業のエースたちにデザイン思考やリーンスタートアップの考え方を叩きこみ、短い時は2週間、長ければ8週間かけてスタートアップ風のビジネスプレゼン、ピッチを作らせ、指導…

シリコンバレーの次はシリコンアレー!NYの特徴と注目の理由

アメリカのスタートアップメッカはシリコンバレーだけではない。アメリカ東海岸はニューヨークを中心に広がる、シリコンアレーエリアにも注目してほしい。そこにはシリコンバレーとは異なる特徴と独自の成長がある。
シリコンアレーとは
シリコンアレー(以下SA)は、ニューヨークのスタートアップが盛況なエリアを表すニックネームである。西海岸の北カリフォルニアを中心に広がるシリコンバレー(半導体の素材、シリコンと谷・盆地のバレー)に対して、東海岸ではシリコン「アレー(路地・小道)」でスタートアップやテクノロジーの広が…

保険業界の常識を変える最新インシュアテックスタートアップ3選

生命保険や自動車保険など、保険は我々にとってとても身近なものであると同時に、検討から実際に使うまでのプロセスは複雑で、頭を抱えさせるものでもある。
保険はお金がかかるものだからこそ慎重に選びたいが、複雑であり、選んだ後もプランや支払いについて理解しきれず、損をした気分になる読者の方も多いのではないだろうか。
そんな悩みを解決するのが、インシュアテックのスタートアップだ。インシュアテックとはInsurance(保険)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語で、現在テクノロジーを活用した保険事業…

現代のスタートアップチーム構成における6つの役割とは

現代のスタートアップにおいて、どのようなチーム編成を行うのが良いのだろうか?組織と業務プロセスがしっかりと形成されている大企業と比べて、スタートアップのチームはかなり特殊である。
全員が攻めに徹する完全ぶっこみ型カミカゼチーム
そもそも、スタートアップとは「新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長とエクジットを狙う事で一獲千金を狙う人々の一時的な集合体」である。急成長を達成するには、じっくりと組織を醸成する余裕はない。
特に立ち上げ時からしばらくは、いわゆる「仕組み」というものはほ…

ブランド拡大に役立つシェアリング小売スペースという新しい選択肢

昨今、AmazonやShopify、ソーシャルメディアなどオンラインで商品を売るビジネスのためのツールが充実し、D2C(Direct to Consumer)をはじめ多くのデジタルネイティブブランドが勢いを増している。
そしてこれらのデジタルブランドはオンラインでのビジネスがある程度軌道に乗り始めると、オフライン・実店舗にも進出をする。実際、AWAY、Everlane、Warby Parkerなど多くのD2Cブランドが店舗拡大をしている。
こういったスタートアップD2Cは何百万ドルもの資金調達に成功…

食の多様性を支えるフードテック・スタートアップ3選

ヴィーガン、オーガニック、グルテンフリー等、食生活の多様性を表す言葉をここ数年でずいぶん見かけるようになった。btraxが本社を構えるサンフランシスコでもこれらの多様性に対応したスーパーやレストランは日常的に目にすることが多い。
そしてそれらの食生活を支える食品を供給する企業も数多く出てきた。今回は日本ではまだ馴染みの少ないこの「食の多様性」を支えるスタートアップについてご紹介したい。
ミレニアル世代による「健康」の新たな定義
ワシントンポスト紙の記事「我々の食生活に変化を及ぼすミレニアル世代の9つ…

【2019年】btraxが注目する8のスタートアップ

freshtraxでは毎年初めにbtraxが注目するスタートアップを紹介している。昨年は金融、医療、アグリカルチャー、小売がホットな分野とされ、【2018年】注目を浴びた4つのテック分野とスタートアップまとめで各分野のスタートアップを取り上げた。 2019年も引き続き同様の分野で多くのスタートアップが出てくると思われるが、今回は保険テック(インシュラテック)やフェムテック、D2Cといったbtraxが今最も注目している領域にもフォーカスを当て、急成長を遂げているアメリカのスタートアップを8つ紹介していきたい。 Shippo:Eコマースの中小企業向け、配送支援プラットフォーム Lia:世界初”トイレに流せる”妊娠検査薬 Care/of:自分に合ったサプリメントを購入できるサブスクリプションサービス Zesty.ai:自然災害のリスクや被害状況をリアルタイムで映し出す Billie:女性の権利を尊重する女性用カミソリのD2Cブランド MealPal:外食コストを抑えるサブスクリプションサービス The Wing:女性起業家を支援するコワーキングスペース Wonolo:地元密着型の雇用支援プラットフォーム 1. Shippo:Eコマースの中小企業向け、配送支援プラットフォーム Shippoのダッシュボード(Shippoの公式サイトより引用) Shippo(シッポ)はEコマース企業の配送業務を支援するスタートアップだ。彼らはその中でもビジネスの規模がまだ小さいEコマースの中小企業または個人事業主をターゲットに配送コストを抑えるためのサービスを提供している。 通常配送ボリュームが少ない企業は送料が高くついてしまうが、ShippoはFedExやUPS、DHLなど50以上もの配送業者とパートナーシップを結んでいるため、中小企業や個人事業主でも送料のディスカウントを受けることができる。 Eコマース企業はShopifyやMagentoなどのプラットフォームにShippoを連動させるだけで、配送に関わるすべての作業を自動化することが可能。 Shippoを利用すると配送プロセスや送料の比較、ラベルの作成、配送、トラッキング、配送通知、返品作業などを全て一括で行うことができる。そのためEコマース企業はオーダーが入った後手間をかけずに素早く商品を発送することが可能だ。 【注目する理由】 ここ数年で、店舗を持たず自社運営のECサイトで製品を販売するモデルD2C(Direct to Consumer)の流れが一気に加速している。今後はShippoのようなD2Cブランドを支えるスタートアップの存在がますます大きくなると予想される。 Shippoは2017年にシリーズBで2,000万ドルを調達し、現時点ではShippoを利用するEコマース企業は35,000社あり、毎月15,000もの配送が行われている。現在サンフランシスコを拠点に、アメリカ、カナダ、イギリスに展開しているが、今後は他のヨーロッパ諸国にも展開していく予定だ。 2. Lia:世界初”トイレに流せる”妊娠検査薬 Liaの妊娠検査薬(画像はLiaの公式Facebookページより引用) Lia(リア)は世界で初めて生み出されたトイレにも流せる妊娠検査薬。通常、妊娠検査薬はプラスチックで作られ、年間およそ2,000万個も廃棄処分されているが、Liaは100%紙製なのでエコフレンドリーな製品だ。 しかしLiaを開発した理由は地球に優しい妊娠テストツールを作るためだけではない。多くの女性がテスト結果を見た後、妊娠検査薬をトイレットペーパーに包んだ状態でトイレを出て、そのままゴミ箱に捨てる傾向がある。 これは家族や家事ヘルパー、同居人や家を訪問した友人に知られたくないという心理から出る行動であり、Liaはサステイナブルな妊娠検査薬で廃棄物を出さないこと、そして女性が妊娠に対してフラストレーションを持たないようにしてあげること、を目的に開発されたのだ。 【注目する理由】 Liaはオーガニック素材でできているが、テスト結果の正確性は99%と従来の妊娠検査薬と変わらない。 過去30年間自宅での妊娠検査においてイノベーションが起きていないという事実から、昨年はFast Company’s 2018 World Changing Ideas Awardsのヘルス部門で優勝し、現在多くのVCが破壊的イノベーションを生み出したLiaに注目している。 3. Care/of:自分に合ったサプリメントを購入できるパーソナライズ型サブスクリプションサービス Care/ofのアプリ画面(画像はApple storeより引用) 自分の健康状態に合わせてカスタマイズしたサプリメントを購入できるサプリメント専用のサブスクリプションサービス。ユーザーはCare/of(ケア・オブ)に登録する際に表示される質問に答えるだけで自分に最適なサプリメントを調合してもらうことができ、毎月購入することが可能。 通常サプリメントと聞くと自らリサーチして薬局やコンビニで購入する、または薬局に行き薬剤師と相談して購入するケースが多いと思うが、Care/ofはサプリメントの購入プロセス自体をオンラインでシンプルかつ楽しくするUX設計を実現した。 筆者も実際にCare/ofの質問に答えてみたが、まるで人間と話しているかのようなインタラクションと可愛らしいビジュアルで、従来感じやすい「質問に答えないといけない義務感や退屈さ」ではなく「自ら質問に答えたくなる気持ち、ワクワク感」を感じた。 質問の仕方がとても可愛らしく、答えていて楽しくなるインタラクション また、ただのサブスクリプションサービスではなくアプリを通してサプリメントを毎日ちゃんと摂取しているかどうかがビジュアルで分かるトラッキング機能やポイント機能がついているので、サプリメントを摂取する体験自体も楽しくなるような設計がされている。 【注目する理由】 注目するポイントは、Care/ofが設計したUXが従来のサプリメントの購入体験を覆し、楽しく快適な体験を生み出したことだろう。 もちろん購入体験だけではなく、様々なユーザーのニーズが配慮されている点も特徴的だ。例えば、女性ユーザーの場合だと「妊娠を検討中」「妊娠中」「授乳中」などの女性ならではのフェーズも事前に選択できる。 生活スタイルが多様化しているからこそ、このようなパーソナライズ型サービスがユーザーから指示されているのだと思う。 4. Zesty.ai:自然災害のリスクや被害状況をリアルタイムで映し出す Zesty.aiが提供するソフトウェアのイメージ画像(画像は公式ブログより引用) Zesty.aiは、昨年のPlug and Play’s Summer Summitで「2018年でもっともイノベーティブな保険テックのスタートアップ」と表彰され、最近シリーズAで1,300万ドルを調達したばかりの注目の保険テックスタートアップだ。 彼らは損害被害をより正確に査定するためにAIを活用した独自のAPIを開発。通常、火災や地震、洪水などの自然災害のリスクを見積もる際、データが正確である確率は50%と言われている。しかしZesty.aiはAIを導入することで、正確なデータに基づいた自然災害のリスク測定を行うことができる。 【注目する理由】 注目する理由にZesty.ai特有のリアルタイム予測が挙げられる。 ドローンや人工衛星から撮影した映像で自宅の周りに火事の原因になるような植林がどのくらいあるのか、洪水が起きたらどのくらいの水量になるのかなどの予測をリアルタイムでチェックすることができる。 また、自然災害が起きた後に災害が起きた場所や自宅の被害状況も確認することができるので、保険会社にとってはインスペクションにかける人件費をカットできるだけではなく、ユーザーに対して適切な損害保険費用を支払うことができる。 5. Billie:女性の権利を尊重する女性用カミソリのD2Cブランド Billieのスターターキット(画像は公式ウェブサイトより引用) Billie(ビリー)は女性ユーザーをターゲットにしたカミソリのサブスクリプションサービスを提供。女性版Dollar Shave Clubといったところ。 アメリカでは女性用カミソリの価格は$20前後と男性用カミソリよりも比較的高めの値段設定だ。そこに目をつけたBillieは低価格、高品質、そしてスタイリッシュなカミソリを開発し、$9という良心的な価格で販売している。 カミソリ以外にもボディークリームやボディーローションも販売しており、全てパラベン、トキシン、硫酸、グルテンが含まれていない製品なので、健康志向の女性ユーザーに注目されている。 2017年にローンチした際最初の11ヶ月間だけで65,000人のオーガニックフォロワー数を獲得。セリーナ・ウィリアムズをはじめセレブリティーからも大きな支持を得ているが、その理由の一つに「Building a future. For women」というソーシャルミッションが挙げられる。 【注目する理由】 Billieに注目した理由は、女性ユーザーが抱えているセンシティブな悩みをしっかりキャッチして、それをブランドストーリーに取り入れているところだ。 カミソリのブランドではあるが「女性だからといって体毛を剃る必要は一切ない。カミソリが必要だと感じた時だけBillieを使ってほしい」というメッセージを発信しているのだ。これまで社会的に女性は体毛を剃るべきという風潮があったが、Billieはその固定概念に疑問を感じて女性の権利を尊重する必要性があることを訴えかけている。 そのため、彼らのプロモーションビデオには女性が脇毛やすね毛といった体毛を恥じることなく露出している映像が映し出されている。このオーセンティックなビジュアルとメッセージに共感し勇気づけられるユーザーがBillieの支持者となっているようだ。 6. MealPal:外食コストを抑えるサブスクリプションサービス MealPalのアプリ画面(画像はApple storeより引用) MealPalはランチ(またはディナー)のメニューをサブスクリプション式で事前に購入できるサービスだ。 イノベーションが生まれ続けるサンフランシスコの生活とはでも少し紹介しているが、サンフランシスコのレストランでは通常ランチ代が$10〜$15かかるが、MealPalを使うとランチ1回あたりにつき約$6と安く済ませることが可能。 サンフランシスコでは、飲食店が忙しくなるランチタイムはどこも行列ができてしまう。しかしMealPalで事前にアプリで”ランチメニューを購入”しておけば、あとは当日にお店でピックアップするだけ。 メニューの種類や量を選択できるのはもちろんのこと、ベジタリアンやヴィーガンなど食事制限があるユーザーにも対応している。 【注目する理由】 MealPalユーザーの80%が友人または会社の同僚からの口コミでサービスを利用しており、btraxのスタッフも何名かMealPalを愛用している。 アメリカではミレニアル世代を中心に健康志向な人たちが増えているそうだ。よって「外食コストを抑えつつも、ジャンクフードなどではなく健康的なものを食べたい」というユーザーのニーズをMealPalは見事に実現しているのだ。 MealPalは現在アメリカ、ヨーロッパ、アジアで4,000の飲食店と提携しており、今後も提携先の飲食店を増やしていく予定だ。 7. The Wing:女性起業家を支援するコワーキングスペース The Wingの室内 The Wing(ザ・ウィング)は、19世紀に起きた女性解放運動にインスパイアされた2人の女性起業家によって生み出された女性専用のコワーキングスペース。 ピンクなどの鮮やかな色、おしゃれな家具やミーティングルームといった内装が特徴的なThe Wingだが、この内装を手掛けているのも女性建築家だ。会議室の名前は女性の権利を訴えた誇るべき女性リーダー達の名前からとっているなど、女性起業家たちをインスパイアする要素がたくさん詰め込まれている。 アメリカではWeWorkをはじめ様々なコワーキングスペースが存在しているが、The Wingでは従来設置されているカフェやキッチンスペース、ミーティングルームの他に化粧室やシャワールーム、授乳室、そして子供を預けることのできるスペースまで完備されている。これが女性起業家たちから強く支持されている理由のひとつでもある。 【注目する理由】 The Wingに注目した理由の一つに独自のコミュニティ形成が挙げられる。1つはゲストを招いたイベントを定期的に開催していること。過去にはヒラリー・クリントンやジェニファー・ローレンスなど著名人たちが女性の活躍に対する思いを語っている。 もう1つは、オリジナルのアイテムをオンラインストアで販売し、The Wingのコアファンを生み出していること。販売されているTシャツやキーチェーン、マグカップにはどれも「Girls Doing […]

【2018年】注目を浴びた4つのテック分野とスタートアップまとめ

2018年も多くの方にfreshtraxの記事を読んでいただいた。これまでは様々な業界に関するスタートアップやUX、デザイン、マーケティングのトレンドを紹介してきたが、その中でも特に多く読まれた記事や話題になった記事など、注目を集めた分野があった。 それがフィンテック、小売テック、医療テック、アグリテックの4つで、これらの分野が日本でも徐々に浸透してきたことの表れではないだろうか。 そこで今回は2018年記事総集編として、2018年に多く読まれた記事の分野と、その中で注目されたスタートアップを改めて紹介する。 関連記事:【2018年】btraxが注目する10のスタートアップ 注目分野① フィンテック フィンテックは金融(ファイナンス)とテクノロジーの領域のことである。大手銀行や政府の金融機関など、長く存在してきた企業や組織、規制など、かなり複雑性と困難が強いられる分野とも言われる。 しかしながらユーザーが抱えている問題の多くは共通しており、サービスがスタートすると爆発的に広がっていく例も多い。 iPhoneやiPadにレジ機能を持たせるデバイス(ソフトウェア)であるSquareや個人間送金サービスのVenmoなどが代表例ではないだろうか。 freshtraxで今年取り上げた記事では新たな個人間送金サービスが注目を浴びた。2017年6月にスタートしたばかりのZelleというスタートアップである。 セキュリティ面が安心の個人送金アプリZelle Zelleはサービス開始当初から30以上のアメリカ国内金融機関とパートナーを結んだことで話題を呼んだ。世界的に広がりつつあるキャッシュレス決済の中、それをさらに後押しする勢いだ。 また、Zelle独自のアプリからだけではなく、各銀行が運営する口座管理アプリやWebサービスを通してアカウントの設定と送金サービスの利用ができる。 筆者も使ったことがあるが、新たにアプリのダウンロードをする必要はなく、あくまでも既に持っている自分の銀行のアプリの延長でZelleに登録して使用するといった流れであった。 たとえばアメリカの大手銀行であるバンク・オブ・アメリカの利用者のうち、すでに300万人がZelleを利用しており、未だに利用者は増え続けている。 既存の個人間送金サービスであるVenmoやCash Appなどとの違いは2つある。1つは送金処理が即座にされること、もう1つは大手銀行ともパートナーシップを結んでいるというセキュリティー面での安心感だ。 (ZelleのUI。公式サイトより転載) 特に後者に関しては今までのサービスに関するトラブルなどからユーザーが敏感になっている点だ。日本も金銭に関わるセキュリティーへの関心は特に高い。こういった理由からもこの記事に注目が集まったのではないだろうか。 サンフランシスコで生活しているとVenmoは欠かせないアプリの一つになっており、「I’ll Venmo you(Venmoするね=Venmoで送金するね)」といったようにVenmoが動詞化しているほどだが、近いうちにZelleも同じように使われるかもしれない。 取り上げた記事:アメリカで話題の個人間送金サービス Zelle(ゼル)とは 注目分野② 小売テック サンフランシスコにもとうとうAmazon Goがオープンしたように、2018年はAI導入のレジレスストアなど小売テックが盛り上がった1年だったと言える。 freshtraxでも、AmazonといったEコマース小売からウォルマートやクローガーといった大手小売など小売業界の変革について紹介した「小売業界の敵はAmazonではない? これからの小売が知っておくべき課題」記事が多く読まれたが、その中でも注目されたのはリアルタイム商品棚管理のtraxだ。 リアルタイム在庫管理や商品分析を行うtrax traxはAI技術とカメラを駆使して、陳列した商品の状態や商品ブランドシェア率、品切れ、一度手に取ったが戻した商品のデータなどの情報を把握して分析する技術を扱う。 これにより在庫管理プロセスの改善だけでなく、分析の結果を効果的な商品陳列や商品のパッケージデザインの改善に役立てることができるのだ。 実際に同社のツールを導入したCoca-Cola Hellenic社では在庫を63%削減することに成功。他にも、P&Gやネスレなどの大手商品ブランド会社を顧客にしている。 お店の商品陳列用の棚をスマートフォンやタブレット端末で写真を取るだけで、そのデータをクラウドからレポートとして小売業者やメーカーにリアルタイム配信することができる。 Eコマースでの買い物が広がる一方で、新しい技術を取り入れた実店舗を拡大する小売ブランドが増えてきた。このようなユーザーにとって必要なテクノロジーを駆使した新しい買い物体験で勝負する動きは今後も注目である。 注目分野③ 医療テック 今年はユーザーの医療体験を変える様々なスタートアップや、フェムテックと呼ばれる女性に特化したヘルスケアテックを紹介した。その中でも話題になったのは唾液からDNA検査をし、自分の先祖やルーツを調べることができるサービスだ。 戸籍制度がなく、移民も多いアメリカにおいて、ニーズの多いサービスなのだ。入国記録や移民記録、婚姻記録に兵役記録に至るまで様々なデータを活用し、家系を辿っていく。 自分の先祖やルーツを調べてくれる23andMeとAncestory 23andMeも同様のサービスで、btraxスタッフや筆者の知人も試したくらい身近なサービスだ。アメリカには移民や混血の人が多いため、自分が一体どこの国にルーツがありそれがどのくらい割合を占めているのか気になることはよくあるようだ。 また、健康面や体の特徴などの情報もわかるので医者に見せて健康管理に役立てることもできるのだ。 (サンプルレポートより転載) Ancestryも同様のサービスを行っている。彼らは会社として「自分たちのルーツなどを知ることが人とのつながりを大切にすることにつながる」ということを謳っている。 彼らのこのような思いはオフィスにも反映されていて、オフィスの壁にはAncestryの検査によって判明した先祖の写真と社員の写真が飾られているという。 取り上げた記事:ブランド戦略 × オフィスデザイン ー 成功事例に見る企業ブランド構築手法 注目分野④ アグリテック 世界的な人口増加に伴い、今後より多くの食料が必要になると言われている中、農業とテクノロジーの分野であるアグリテックへの注目が高まっている。 アグリテックには作物や酪農の管理システムや農業の自動化、アーバンファーミングなど多岐に渡ったサービスが存在する。 その中でもインドア・ファーミングとして過去最大の投資額を調達し、ソフトバンクの孫正義会長も2億ドルの投資をしたことでも知られるPlentyはアグリテック業界内でもすでに有名だ。 健康的で十分な食の供給実現を目指すPlenty Plentyは生産性の高い水耕栽培を実現させたバーティカル・ファーミングを行うスタートアップ。多くのバーティカル・ファーミングの取り組みでは、水平に設置されたトレーを使用して栽培を行うが、Plentyでは独自に設計されたポール状のタワーで栽培を行う。 (こちらのウェブサイトより転載) このタワーが壁のように並べられ、今までの農業のやり方と比較すると同じ面積で350倍の生産ができるようになったのだ。 ちなみにPlentyの技術で作られた野菜はサンフランシスコにオープンしたばかりのロボットハンバーガーレストランであるCreatorで販売されている。 アグリテックと食品ロボットという業界の異なるスタートアップがコラボレーションして食体験を豊かにしていくというのはシリコンバレーのマインドセットと通じるものがあるように思う。 番外編:ペットテック!? まだ馴染みは少ないもの注目されつつある分野 番外編では先に紹介したテック業界ほど浸透はまだしてないもの、注目を集めつつあるペットテックを勝手に取り上げる。 付け加えておくと 2018年のCESでも紹介され、freshtraxの「2018年のIT動向を読み解く7つのキーワード」記事でも注目された分野である。 アメリカのペット市場は大きい。2017年、ペット関連商品市場はアメリカだけで690億ドルの支出があったという(世界全体で約1090億ドル)。 ペットテック分野だけでみても、2017年には約3億ドルの投資があり、5年前よりも3倍以増えている。 ペット用の肥満問題に挑むPetrics 米国では自宅で飼われている犬や猫の数は8,000万匹ほどいるとされているが、犬においては約6割が肥満というデータがある。肥満の問題は人間だけではなかったのだ。 この事態の解決に挑むのがペット用スマートベッド・ウェアラブルデバイスのスタートアップ、Petricsだ。Petricsのスマートベッドは、ペットがベッドの上に乗ると運動量や体重といった健康状態を把握することができる。 また、ウェアラブルデバイスもペットの首輪などにつけてそれぞれアプリと連動して使用すると健康状態に合った食事量や運動量を知ることができる。効果的なダイエットが可能になるというわけだ。 (Petricsのベッドとウェアラブルデバイス。こちらのウェブサイトより転載。) このサービスはペットテックとくくってみたが、飼い主にとってはペットの医療テックと思えるくらい重要なのではないだろうか。 ちなみにミレニアル世代はペットを所有する割合が一番多い世代だ。実際サンフランシスコでは20-30代とみられる人がペットを連れている姿をよく見かけるし、ペットOKのオフィスも少なくない。スタートアップが生み出すペットテックを必要としている人、犬、猫は確かに多そうである。 まとめ 様々な業界がテクノロジーと掛け合わされて〇〇テックと呼ばれるようになって久しい。バスワードになって有名になり、最新鋭のテクノロジーが注目されることも多いが、それを使うユーザーがいてここで紹介したスタートアップのように広まっていくことを忘れないでほしい。 どのスタートアップもただ技術を作って売り出した訳ではない。ユーザーの問題があったからそこに最新テクノロジーを使って解決策、より良い体験を提供していったのだ。 2019年はどのような〇〇テックが出てくるか、今から楽しみである。ユーザーの抱えている問題をみていくとその予測のヒントが隠されているかもしれない。 参考: Should You Use Venmo, Zelle or Cash App? Everything You Need to Know About the Hottest Mobile Payment Apps Trax raises $125 million to bring computer vision insights to retailers’ shelves Billionaires make […]

2018年に消滅したメガスタートアップ25社

今年も多くのスタートアップが生まれ消えていった。倒産した企業の中でも企業の評価額 (バリュエーション)と資金の調達学が大きい25社をPitchBook提供のデータをもとにリストアップしてみた。 その中の3社は創立から20年以上も経っている企業や、一時は優良スタートアップとしてかなりの注目を集めたサービスもある。 特に今年は、ハッタリ系スタートアップとして有名になったセラノスをはじめに、ヘルスケア系が目立っており、リスト内では実に7社を数える。 それでは、評価額と調達額の規模をベースに、2018に消滅したスタートアップ25社をカウントダウン形式でお届けする。 25. SDCmaterials 業種: 自動車産業向けナノテクノロジー 設立年: 2004 評価額 (max時): 4800万ドル 合計調達額: 2600万ドル 24. Senzari 業種: 音楽/エンタメ系データテクノロジー 設立年: 2010 評価額 (max時): 5200万ドル 合計調達額: 1300万ドル 23. Industrial Origami 業種: 産業用マテリアル製造 設立年: 2003 評価額 (max時): 5800万ドル 合計調達額: 4100万ドル 22. Claritas Genomics 業種: 遺伝子テスト 設立年: 2013 評価額 (max時): 6000万ドル 合計調達額: 3900万ドル 21. Apprenda 業種: クラウド型ディベロッパー向けソフトウェア 設立年: 2007 評価額 (max時): 9000万ドル 合計調達額: 5600万ドル 20. Innovari 業種: エネルギープラットフォーム 設立年: 2011 評価額 (max時): 9400万ドル 合計調達額: 1200万ドル 19. DataTorrent 業種: ストリーミング用データフォーム 設立年: 2012 評価額 (max時): 9600万ドル 合計調達額: 2400万ドル 18. Rennovia 業種: バイオテクノロジー/化学 設立年: 2009 評価額 (max時): 9900万ドル 合計調達額: 6900万ドル 17. Navdy 業種: 自動車向けヘッドアップディスプレイ 設立年: 2012 評価額 (max時): 1億ドル 合計調達額: 8000万ドル 16. EZhome 業種: サブスクリプション型雑草処理サービス […]

Amazon Go型の無人レジ店舗の普及を目指す2つのスタートアップ企業

以前の記事「AmazonGoの仕組みは脅威となるか?サンフランシスコ店へ行ってみた」で紹介したように、実はAmazon Goストアがサンフランシスコに展開する以前に、2社のスタートアップがすでにレジレス店舗の試験的なデモ店舗をサンフランシスコ市内で展開していた。
サンフランシスコに突如現れたレジレス店舗
Amazonが3年という短い期間で3000店舗ほどまでに拡大を計画しているレジレス店舗であるが、その台頭により、レジレス店舗ひいてはその技術やIot、AIを活用し、小売業界の革新を目指しているスター…

freshtraxがレポートに!シリコンバレー / サンフランシスコのトレンドレポートサービス開始

サンフランシスコ・シリコンバレーの様々な業界における最新トレンドをリサーチしてお届けしているfreshtrax。他のメディアと違う大きな特徴は、常に「ユーザー体験」に注目している点で、様々な業界において新たなテクノロジーやサービスが「ユーザーの生活や体験をどう変えたか」をお伝えしてきました。こうした通常のテクノロジー紹介に留まらない点がご好評をいただき、「業界ごとに内容をまとめて欲しい」「社内外向けのプレゼン資料に活用したい」という声をいただくようになりました。 そこで、btraxではサンフランシスコ・シリコンバレーのトレンド情報をレポート形式で毎月お届けするサービスを始めました。年間契約いただくと、毎月異なる業界のトレンドをパワーポイントあるいはPDF形式でお届けします。 テーマ一覧 D2C(Direct to Consumer) 医療テック フェムテック 食品・アグリテック フィンテック ロジテック シェアリングエコノミー アパレル 自動車 保険 広告 組織イノベーション 1.D2C(Direct to Consumer) ブランドがユーザーに自社サイトでのみ商品を販売するDirect to Consumer。日本でも最近アパレル業界を中心に注目を集めていますが、いち早くD2Cに注目しトレンド情報を発信してきたbtraxが、業界図と注目ポイントをわかりやすく解説します。 2.医療テック 「医療テック」というと、主に病院で医師に使われるテクノロジーを想像しがちですが、サンフランシスコでは患者の医療体験を上げるようなテクノロジーが一般人の生活にも浸透しつつあります。この回ではそんな体験向上を実現する注目スタートアップを紹介します。 3.フェムテック 今後500億ドル市場にまで拡大すると予想されている、女性の健康管理に特化したフェムテック。女性が社会の半分を支えている今、その女性をサポートする分野として大注目されています。 4.食品・アグリテック 日本でも多くの人が関心を寄せる「食」。肥満、食品廃棄、遺伝子組み換え、農薬問題等、アメリカの食にまつわる問題が数えきれない中、それらを解決しようとするスタートアップもまた多く出てきています。 5.フィンテック ともすればテクノロジーばかりが注目されがちなフィンテック。btraxでは「ユーザーの体験」にフォーカスし、いかにユーザーのお金を管理する体験が変わったかをご紹介します。 6.ロジテック 在庫管理、POS、配送、カスタマー対応等、小売業界でもAI・ロボットの活用が進んでいます。この回ではそんなテクノロジーが実現するスムーズな買い物体験をご紹介します。 7.シェアリングエコノミー シェアオフィス、シェアカー、シェアサイクル等、今やサンフランシスコ市民の生活を支えていると言っても過言ではないシェアリングエコノミー。スタートアップの紹介だけでなく、この新しい形態が根付いた背景についても解説します。 8.アパレル アパレル業界でも大きな変革が起こっています。ミレニアル世代を中心に製品のファッション性自体に加え、サステナビリティや透明性等も求められ始めているなか、新しい価値を提案するブランドをご紹介します。 9.自動車 自動運転、ドライブレコーダー、シェアカー、空飛ぶタクシー、自動車メーカー以外の参入等、変化のスピードが速い自動車業界。この回ではそんな業界を支えるスタートアップや新たな取り組みをする大企業を取り上げます。 10.保険 日本同様、アメリカでも保険業界は長らく保守的でしたが、その業界の常識を破るさまざまなスタートアップが台頭しています。この回ではそんな保険業界とスタートアップをご紹介します。 11.広告 すでに従来型のマス広告が昔ほどの効果をもたらさないことは知られていますが、サンフランシスコではどのような広告で人が動くのでしょうか?現代消費者の特徴とそれをうまくとらえた広告事例をお伝えします。 12.組織イノベーション チーフ・イノベーション・オフィサーやイノベーション・ラボ等、イノベーションを生むための組織変革が世界中で起こっています。この回では日本企業のヒントになりそうな事例を中心に、イノベーションを生む組織とは何か解説します。 サンプルは無料! 気になった方にはまず無料でサンプルをお届けします。下記のフォームからお気軽にお問合せを。 ※テーマ・内容は予告なしに変更になる可能性があります。

フェムテックが取り組むセクシャルウェルネス改善と女性社会進出

フェムテックと聞いて、女性だけの関心ごとだと捉える方は多いかもしれない。 しかし女性の社会進出が当たり前になっている現在、女性特有の問題を解決するテクノロジーにはもはや社会全体にとってプラスになるものであり、男性だからと […]

イノベーションが生まれ続けるサンフランシスコの生活とは

皆さんはサンフランシスコに住む人々の生活を明確に描けるだろうか?どのように生活し、どのように仕事しているか、想像できるだろうか。今回は、我々サンフランシスコで働く人の生活の中に浸透しているテクノロジーを、衣食住(仕事)という切り口で紹介し、サンフランシスコがイノベーションを生み出し続ける街である所以をお伝えしたいと思う。

衣:便利なだけではないオンラインファッションブランドの魅力
食:オンラインサービスを使った方がより便利でお得という価値が確実に広まりつつある
住(働く):サンフラン…

イノベーションの力でアメリカを健康に!フード系スタートアップの活躍

「スタートアップ」という言葉がだいぶ浸透し、日本でもアントレプレナー向けのミートアップや起業家を育成するようなプログラムや施設が増えてきた。そんな今だからこそ改めて触れておきたい点がある。

それは成功している多くのスタートアップは問題を解決するために生まれてきたということだ。ユーザーの理解から始まり、問題を特定をし、新しい価値のあるソリューションを提供し続けることで急成長を成し遂げてきたのである。

関連記事:今さら聞けないリーンスタートアップの基本

こういったスタートアップのなか…

ミレニアル世代のマインドセットを捉えて成功したスタートアップ事例

資産運用会社であるAlliance Bernsteinのアナリストによると、2018年の今年にミレニアル世代(1980-2004年ごろ生まれ)の購買力は、ベビーブーマー世代を超えると見られている。

そのため、ミレニアル世代のマインドセットを理解することが世の中のマインドセットの変化を捉えるために重要だと言える。

特に食習慣は顕著にマインドセットの変化が現れやすく、他の世代とも比較しやすい。現にミレニアル世代の食習慣に関するマインドセットは今のフード業界のトレンドの要因となっている。

小売業界の敵はAmazonではない? これからの小売が知っておくべき課題

小売業は現在、変革期に差し掛かっている。おそらくここ数年で大きな変化が訪れる産業の一つである。

その証拠として、実店舗型の小売業者の経営破綻、店舗閉鎖が相次いている。それらはEコマースやデジタルの普及が影響を与えていることは明らかだが、消費者が実店舗よりもAmazonなどのEコマースを選んだとは単純に言い切れないのである。
Eコマースは小売業界の売上高のほんの一部でしかない
実際に、NRF(全米小売協会)が毎年出している全米の小売業界の売上高ランキング2017年版によると、上位10社が

時代の岐路に立つ自動車業界を大きく変革させる9つのスタートアップ

ここ数年で最も大きな変化が訪れる産業の一つが自動車業界だろう。btraxでも複数の自動車ブランドに対して次世代のユーザー体験の設計や、新たな事業づくりに関する取り組みを提供させていただいているが、今後数年は自動車産業にとって、今までにない規模でのパラダイムシフトが起こることに確信を得ている。
業界を取り巻く3つの大きな変化
20世紀の代表的な産業とも言える自動車はしばらくリニアな成長が続いていたが、ここにきて下記の3つのファクターにより、かなり大きな変革が訪れようとしている。

自動運転テ…