清水草一が最新フェラーリの魅力を語る! 「美しさ」と「エンジン」、重視されるのはどちら?

誰もが知っているスーパーカーの代名詞、フェラーリ。しかし、その魅力や特徴を実は細かく知らなかったという人も多いのではないでしょうか。ここでは、モータージャーナリストの清水草一さんがフェラーリの魅力を徹底的に語り尽くします。

 

【解説&採点】

モータージャーナリスト 清水草一さん

「サーキットの狼」作者の池沢早人師先生から直接薫陶を受けた唯一の自動車評論家。これまで11台のフェラーリを乗り継いでいます。GetNaviの連載「クルマの神は細部に宿る」をまとめた「清水草一の超偏愛クルマ語り」も先日発売に。

 

【そもそもフェラーリとは?】

レース参戦のために存続する世界でただひとつのメーカー

創始者のエンツォ・フェラーリはレーシングチームを経営し、生涯をレース活動に捧げました。その資金稼ぎのために、レーシングカーを乗りやすく改良して販売したのが、同社の市販車部門の始まり。1988年のエンツォが亡くなって以降もF1参戦は継続し、世界中のクルマ好きの憧れとなっています。

 

フェラーリの長い歴史のなかで最もパワフルなV型12気筒エンジン

フェラーリ

812スーパーファスト

3910万円

名の「812」は「800馬力の12気筒」を表し、FRのロードカーとしてはフェラーリ史上最強と称されるほどのハイパフォーマンスを誇ります。電子制御デバイスが多数盛り込まれ、超弩級の能力を危なげなく体感させてくれます。

SPEC●全長×全幅×全高: 4657×1971×1276㎜●パワーユニット: 6.5ℓV型12気筒エンジン●最高出力: 800PS(588kW)/8500rpm●最大トルク: 73.2㎏-m(718Nm)/7000rpm●トランスミッション: 7速AT●駆動方式: FR

 

【ココがスーパー】

F1をイメージさせるスポーティなインテリア

非日常性を感じさせるF1のようなコックピット。カラーも自由に選択できる。F1システムと呼ばれる独自のトランスミッション形式は、パドルシフト式セミATの先駆的存在です。

 

最新技術が盛り込まれた大柄ながら美しいボディ

ボディは先代のF12ベルリネッタとほぼ同サイズで、前後ともに20インチの大径ホイールが装着されます。ボディ下部にはディフューザーを採用し、高速走行時の空気の流れを調節。

 

最高馬力のエンジンは印象的な赤塗装が特徴

V型12気筒エンジンのヘッド部には赤い結晶塗装が施されています。6.5ℓの大排気量で、フェラーリの自然吸気式エンジンを積む市販車では史上最高となる800馬力を発揮します。

 

旗艦モデルのエンジンは12気筒でなくてはならない

フェラーリは、誰もが認める自動車の頂点、太陽神的存在。その立脚点は、F1グランプリにおける輝かしい戦績にあります。日本でフェラーリといえば市販のスーパーカーですが、海外では第一にレーシングチーム。その栄光を市販車に投影しているという文脈が、他社とは決定的に異なります。

 

すなわち、フェラーリにおけるスーパーカーの出発点は、レーシングカーをちょっと乗りやすくして一般販売したところ。そのため、同社が何よりも重視しているのは、常にエンジン。フェラーリのフラッグシップモデルは、最もパワフルで、最もエレガントな12気筒エンジンを積んでいなければなりません。現在のフラッグシップである812スーパーファストは、その12気筒エンジンをフロントに搭載し、後輪を駆動するFR方式。一般的にスーパーカーと言えば、エンジンをキャビン後方に置くミッドシップがイメージされます。しかし、フェラーリは元々FRからスタートしており、812スーパーファストは原点に回帰したモデルといえます。

 

フェラーリの名声はあまりにも高く、もはや性能は二の次と見る向きもあります。しかし、フェラーリの魂は常にエンジンであり、続いて重視されるのが美しさ。そのプライオリティは不変なのです。

 

【清水草一の目】

ほかでは味わえない官能的なV12エンジン

スーパーカーとしては車高が高く、FRなのでパワーを路面に伝えきれない面がありますが、V12の官能フィールは唯一無二。地上最高のブランド力を満喫できます!

 

【OTHER SUPER CAR】

ツーリングにも最適なハードトップオープン

ポルトフィーノ

2530万円

車体に収納できるリトラクタブルハードトップを備えたオープンモデルで、優雅な佇まいと優れた多用途性や快適性が特徴。スーパーカーの快楽を満喫できるうえに、日常使いでのストレスが皆無というのは大きな魅力です。

SPEC●全長×全幅×全高:4586×1938×1318㎜●パワーユニット:3.9ℓV型8気筒ターボエンジン●最高出力/最大トルク:600PS(441kW)/77.5㎏-m(760Nm)

 

 

コンパクトなボディにターボエンジンを搭載

488GTB/488スパイダー

3070万円〜3450万円

458イタリアの後継モデルとして登場し、2015年に日本へ導入されました。V8エンジンの排気量はそれまでの4.5ℓから3.9ℓへとダウンサイズされていますが、ターボの採用によって出力、トルクともに大幅な向上が図られています。

SPEC【488GTB】●全長×全幅×全高:4568×1952×1213㎜●パワーユニット:3.9ℓV型8気筒ターボエンジン●最高出力/最大トルク:670PS(492kW)/77.5㎏-m(760Nm)

 

【連載をまとめたムックが好評発売中】

タイトル:清水草一の超偏愛クルマ語り

価格:926円+税

【中年スーパーカー図鑑】“跳ね馬”はないが、フェラーリ伝説の1モデルであることに間違いはない──

いわゆる“スーパーカー”と呼ばれるクルマにはロマンあふれるエピソードがついてまわるものだが、車名からして逸話となっているモデルがある。今回は「12気筒以外はフェラーリを名乗れない」「早逝した愛息の名を残したかった」「スモール・フェラーリの新ブランドとして確立したかった」などの説から“跳ね馬”のエンブレムを付けずに市場に放たれたディーノ206GT(1967年~)/246GT(1969年~)の話題で一席。

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【Vol.13 ディーノ206GT/246GT】

 

1965年開催のパリ・サロンにおいて、カロッツェリア・ピニンファリーナのブースに1台のGTカーが展示される。車名は「ディーノ206GTスペチアーレ」。スポーツプロトタイプのディーノ206SのシャシーにV型6気筒エンジンを縦置きでミッドシップ搭載し、ノーズ先端に並ぶ4灯のヘッドランプや大きな弧を描くフロントフェンダー、カムテールにとけ込む、流れるようなリアクォーターパネルなどをスタイリングの特徴としたデザインスタディは、実はフェラーリ社が画策した新ジャンルのロードカーだった。そして、1966年開催のトリノ・ショーではより進化したプロトタイプ版が登場。1967年開催の同ショーになると、エンジンを横置きのミッドシップ搭載に変更した最終プロトタイプの「ディーノ206GT」が披露された。

 

■フェラーリ製ロードカー初のV6ミッドシップ車の登場

20180302_suzuki_01 (12)ディーノ206GT。アルミ合金の2座クーペボディに1987cc・V型6気筒DOHCユニットを組み合わせる

 

フェラーリの創業者であるエンツォの愛息で、1956年に他界したアルフレード・フェラーリの愛称“ディーノ(Dino)”をブランド名に冠したディーノ206GTは、1968年より販売を開始する。基本骨格は楕円チューブと角型鋼管で構成したスチール製チューブラーフレームをメインに前後サブフレームとクロスメンバーをセットし、ホイールベースは2280mmに設定。組み合わせる2座クーペボディはアルミ合金で仕立てる。懸架機構には前後ダブルウィッシュボーン/コイル+アンチロールバーを、操舵機構にはラック&ピニオンを、制動機構にはサーボアシスト付き4輪ディスクブレーキを採用した。横置きでミッドシップ搭載するエンジンはバンク角を65度としたアルミ製シリンダーブロック&ヘッドの“ティーポ135B”1987cc・V型6気筒DOHCユニットで、ウェバー40DCNF/1キャブレター×3との組み合わせによって最高出力180hp/8000rpmを発生。エンジン下にはオールシンクロ5速MTのギアボックスおよびファイナルユニットをレイアウトする。エンジンとトランスミッションをいわゆる2階建てとしたため、パワーユニット後方には有効なトランクルームが設置できた。

 

ピニンファリーナがデザインしたエクステリアは、曲面構成の滑らかなボディ形状を基本に、低くスラントしたノーズセクションや丸みを帯びたフェンダー造形、リアフェンダーのカーブに連なるカムテール、リアエンドへときれいに流れるルーフラインなどによって精悍かつ流麗なスタイリングを構築する。ドアパネルからリアフェンダーにかけてのレリーフは、キャブレターへの空気取り入れ口。フロントラゲッジ(スペアタイヤや工具などが収まる)/エンジンルーム/リアトランクルームのリッドはすべて前ヒンジで仕立てられた。ボディサイズは全長4150×全幅1700×全高1115mmで、車重は乾燥重量で900kg(燃料などを入れた状態で約1100kg)。最高速度は235km/hとアナウンスされた。内包するインテリアは当時のフェラーリ製GTの典型といえるデザインで、計器類をアルミパネル付きの楕円形フェイシア内にまとめたインパネに3本スポークのステアリングホイール、ゲートできちっと仕切ったMTの操作レバー、バケット形状のシートなどで構成する。スペース自体はミッドシップスポーツカーとしてはルーミーな部類で、足もとも広め。ドライバーから見える前方の左右フェンダーの峰は、ボディ幅や前輪位置を把握するのに大いに役立った。

 

■より実用に適したスポーツカーへと進化

20180302_suzuki_01 (8)低くスラントしたノーズセクションや丸みを帯びたフェンダー造形、リアフェンダーのカーブに連なるカムテール、リアエンドへと流れるルーフラインが美しい。写真は排気量をアップしたディーノ246GT

 

フェラーリは1969年よりフィアットの傘下に入り(フィアットがフェラーリの株式の50%を取得)、市販車部門をフィアットの管理下に置く一方でレース部門であるスクーデリア・フェラーリの運営を強化および安定化させる。それとほぼ時を同じくして、ディーノはエンジン排気量の拡大を実施。同年11月開催のトリノ・ショーにおいて、「ディーノ246GT」を発表した。

20180302_suzuki_01 (9)アルミパネル付きの楕円形フェイシア内にまとめたインパネに3本スポークのステアリングホイールを組み合わせたインテリアは、当時のフェラーリ製GTの文脈に則ったもの

 

レースシーンにおけるディーノF2ユニットのホモロゲート取得という要件から外れたため、ディーノ246GTの搭載エンジンは生産効率が重視され、ブロックには鋳鉄製が採用される(ヘッドはアルミ製を継続)。V型6気筒DOHCユニットの排気量は2418㏄にまでアップ(エンジン呼称は“ティーポ135CS”)。ウェバー40DCNF/7キャブレター×3との組み合わせによって最高出力195hp/7600rpmを発揮した。また、挙動の安定性を高める目的でホイールベースを60mmほど延長(2340mm)。ボディ材質はスチール材に変更した。

 

■タルガトップの「246GTS」をラインアップ

20180302_suzuki_01 (10)1972年にタルガトップのディーノ246GTSが登場。脱着が可能な樹脂製のルーフパネルを採用する

 

ディーノ246GTは1969年から1974年まで生産されるが、細部の変更によって3シリーズに大別できた。1969年から1970年を通して製造された“Tipo L”、1971年の初めに短期間造られた“Tipo M”、1971年の途中から1974年まで生産された“Tipo E”だ。

 

Tipo Mではリアのトレッドを30mmほど拡大してコーナリング時のスタビリティを向上。また、エンジンとギアボックスの細部もリファインする。さらに、トランクリッド用レリーズキャッチの車内への移設やヘッドレストのシートマウント化など、内外装の一部見直しも図った。Tipo Eになると、エンジンとギアボックスにさらなる改良を加えて完成度をアップ。エアインテークや照明類、ワイパー支点など、外装のアレンジも一部変更する。また、このモデルから北米仕様を設定。現地の法規に合わせたマーカーや排出ガス対策を施したエンジン(最高出力は175hp)などが組み込まれた。

 

Tipo Eの生産期間内の1972年には、タルガトップのディーノ246GTSが新規に設定される。脱着が可能なルーフパネルは樹脂製で、前方2カ所の取り付け穴にボスを差し込んだのち、後方2カ所のロックで固定する方式を採用。クーペボディと比べると、リアクォーターウィンドウがなく、その位置には換気用の3本のスロットルを組み込んだスチール製のクォーターパネルが配されていた。

 

カタログでは「とても小さく(tiny)、光り輝き(brilliant)、安全(safe)――それはスモール・フェラーリカーの絶え間ない開発の証」と称された、紛うことなきフェラーリ伝説の1モデルであるディーノ206/246GTシリーズ。生産台数は206GTが152台、246GTが2487台、246GTSが1274台だった。

 

【著者プロフィール】

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。

これが最後になるか、ガソリン「だけ」のフェラーリが発表間近?

フェラーリは2019年以降、すべての市販モデルにハイブリッドモデルをラインナップすると発表しているが、このほど、フェラーリ最後のガソリン「のみ」となるモデルが「488GTB(グランツーリスモ・ベルリネッタ)」に新設定される情報が入った。

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情報の流出元はアメリカ・カリフォルニア州の車排出ガス規制に関する認証手続きなどをしている州政府機関である、カリフォルニア州大気資源局(CARB=California Air Resources Board)。その情報によればフェラーリ「488GTB(グランツーリスモ・ベルリネッタ)」に新たに設定されるとみられるハードコアのモデルは「488スペシャルシリーズ」と記されていて、3.9リッターV8ツインターボエンジンが搭載されるといい、「ハイブリッド」を示唆する記載は見当たらないという。

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また、「458イタリア」のテストミュールがそのスペシャルシリーズの開発車両である可能性が高いことも判明。「488GTB」から30psアップの700psを発揮し、0-100km/h加速は2.7秒という。

 

最後のガソリンのみのモデルとなるこのフェラーリのワールドプレミアは、2018年3月のジュネーブモーターショーが有力だ。

XXプログラムの最新版、フェラーリFXX-K Evoが公開!

フェラーリは10月29日、同社が毎年開催するレースシーズンの最後を飾る恒例のイベント「フィナーリ・モンディアーリ」において、サーキット専用車であるXXプログラム車両の最新モデルとなる「フェラーリFXX-K Evo」を発表した。

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フェラーリのXXプログラムとは、フェラーリでレースを行うための部門「コルセ・クリエンティ」によるサーキット専用車の開発プログラム。フェラーリのカスタマーがサーキットをドライブすることで得るデータを将来の市販車開発に活用するのが主目的で、これまでにFXXや599XX、FXX-Kといったモデルが発表されてきた。

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FXX-K EvoにはFXXおよび599XXのEvo仕様と同様に、フォーミュラ1をはじめ、GT3、GTE、そしてワンメイク選手権専用のChallengeなど、フェラーリがさまざまなサーキットレースで培ってきた革新的なコンセプトが惜しみなく注がれている。フェラーリのフォーミュラ 1での経験をベースとした革新的なカーボンファイバーコンポーネントの製造技術を導入することで、固定式リアウイングをはじめとした新デバイスを装備したにもかかわらず、現行FXX-Kよりもさらなる軽量化に成功している。

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ダウンフォース係数は従来比で23%向上。これは、ベースとなるロードゴーイングカー比で75%増に匹敵するもの。速度200km/hで発生するダウンフォースは 640kg、最高速度域では830kgを超えるに至っている。ダウンフォースの向上は、リアに装備したツインプロファイル(2枚翼)の固定ウイングが大きく貢献。この新デバイスは、アクティブ・リアスポイラーとシームレスに効果を発揮するよう開発されている。

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一方、リアバンパーのデザインも、新しい気流構造に合わせて改良された。リア・ホイールアーチ後方のバイパス・エアベントは拡大され、ホイールからの後流を確実に引き抜くことで、このエリアの乱流を効果的に処理する。さらに、パフォーマンスの向上に伴い、FXX-K Evo には新型フロントブレーキ・エアインテークが装備された。ただし、ドラッグの増加を避けるため、開口部の幅を広げることなく効率的になるよう吸気系全体の見直しが図られている。

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パワートレインは、6.2リッターV12エンジンとモーターを組み合わせるHY-KERSシステムで、システムトータルで1050ps/900Nmを発揮する。

 

5000kmにおよぶ開発テスト、そして1万5000kmの信頼性テストを経て、FXX-K Evoは2018/2019シーズンのXXプログラムでの主力となる。このシーズンは、3月から10月までの間に、サーキット走行が9回予定されている。

 

 

 

【中年スーパーカー図鑑】40年ぶりに日本の納屋で発見され2億円超で落札! 今なお根強い人気を誇る「デイトナ」

今年の9月になって、1台のスーパーカーの車名が自動車界およびマスコミ界を賑わわせた。フェラーリが1968年に発表した365GTB/4だ。このクルマのプロトタイプスポーツで、レース参戦用にアルミ合金製ボディを纏ったモデルが5台製作されたのだが、このうちの1台は公道走行が可能だった。長年、希少なアルミボディのロードバージョンはその行方が不明だったが、何と日本の納屋で眠っていたことが発覚。これがサザビーズのオークションに掛けられ、180万7000ユーロ(約2億3000万円)で落札されたのである。今回はいまなお高い人気を誇り、折に触れて話題を提供する“デイトナ”こと365GTB/4で一席。

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【Vol.6 フェラーリ365GTB/4】

1968年開催のパリ・サロンにおいて、フェラーリは新世代のスーパースポーツを発表する。それまでの275GTB/4の実質的な後継を担う「365GTB/4」が雛壇に上がったのだ。車名は従来のフェラーリ車の慣例に則り、365が12気筒エンジンの単室容量(cc)、GTがグランツーリスモ、Bがベルリネッタ(クーペ)、4がカムシャフト本数(V12の片側バンクに2本ずつ、計4本でDOHCヘッドを構成)を意味していた。

 

365GTB/4の基本骨格は、楕円チューブをメインとした鋼管スペースフレームに、カロッツェリア・ピニンファリーナのレオナルド・フィオラヴァンティがデザイン、スカリエッティが製作したスチールと一部アルミによるボディを組み合わせる。ホイールベースは275GTB/4と同寸の2400mmに設定。懸架機構は前後ともにダブルウィッシュボーン/コイル+スタビライザーで構成する。制動機構にはボナルディ製サーボの4輪ベンチレーテッドディスクブレーキを組み込み、タイヤ&ホイールには200×15G70または215/70VR15+センターロック軽合金製ホイールを装着した。

 

■究極のフェラーリ製FRベルリネッタの登場

FRらしいロングノーズに短めのテールセクション。4灯式のヘッドランプが特徴的だったFRらしいロングノーズに短めのテールセクション。4灯式のヘッドランプが特徴的だった

 

フロントに搭載するエンジンはボア×ストロークを81.0×71.0mmとした4390cc・V型12気筒DOHCユニットで、燃料供給装置にはウェバー40DCN20キャブレターを6連装。圧縮比は8.8:1に設定し、352hp/7500rpmの最高出力と44.0kg・m/5500rpmの最大トルクを発生した。オイル供給の安定化を狙って、潤滑方式にはドライサンプを採用する。組み合わせるトランスミッションには、フルシンクロの5速MTをセット。前部のエンジン/クラッチと後部のギアボックス/ファイナルは太いトルクチューブで結ばれ、シングルユニットとして4カ所でマウントする、いわゆるトランスアクスルに仕立てる。公表された性能は最高速度が280km/h、0→1000m加速が24秒と、超一級のパフォーマンスを誇った。

 

エクステリアに関しては、FRレイアウトらしいロングノーズに流れるようなルーフライン、短めのテールセクションで基本プロポーションを構成。4灯式のヘッドランプは初期型がアクリル樹脂のプレクシグラスで覆った固定タイプで、1970年より米国の安全基準に合致したリトラクタブル式に順次切り替わった。ボディサイズは全長4425×全幅1760×全高1245mm、トレッド前1440×後1425mmと、従来の275GTB/4よりひと回り大きくなる。車重も同車より重い1280kgとなった。2座レイアウトのインテリアについては、大小のVEGLIA製メーターをすべてナセル内にまとめたシンプルかつスポーティなインパネに、ゲートできちっと仕切った変速レバー基部、3本スポークのステアリングホイール、ハンモック構造で良好な座り心地を実現したバケットシートなどを装備。トランスアクスルを採用する割にはセンタートンネルが幅広かったことも、365GTB/4の特徴だった。

ハンモック構造のバケットシートは座り心地良好だったハンモック構造のバケットシートは座り心地良好だった

 

1969年開催のフランクフルト・ショーでは、365GTB/4のスパイダーボディ(365GTS/4)が発表される。ソフトトップが収まるトランクリッド部を改良し、Aピラーやコクピット周囲を補強したスパイダーは、とくにアメリカ市場で高い人気を獲得した。また、同年開催のパリ・サロンではカロッツェリア・ピニンファリーナが新しい365GTB/4のスタイルを提案する。ボディと別色のAピラーおよびルーフにロールバー風のステンレスの飾り帯を組み合わせ、ファスナーで開閉できるビニール製リアウィンドウを備えた365GTB/4クーペ・スペチアーレ(Coupe Speciale)だ。スーパースポーツのエクステリアに新たな方向性を示した力作は、残念ながら市販化には至らなかったものの、プロトタイプに続いてカロッツェリア・ピニンファリーナ自らがボディをたたき出した稀有な365GTB/4として、今なおファンが語り継ぐスペシャルモデルに昇華している。

 

■レースでも輝かしい戦績を残す

公表された最高速度は280km/h、0→1000m加速が24秒。超一級のパフォーマンスを誇った公表された最高速度は280km/h、0→1000m加速が24秒。超一級のパフォーマンスを誇った

 

レース部門と市販車部門が並列していた時代のフェラーリが開発した最後の12気筒グランツーリスモである365GTB/4“デイトナ”。1968年から1973年にかけての生産台数は、ベルリネッタとスパイダー合わせて1406台だった。

 

【著者プロフィール】

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。