仏版「HEMS」が誕生! スタートアップが盛り上げるフランスの「環境プロダクト」

今年の夏は北半球の多くの国で猛暑を記録しました。この高温は気候変動(温暖化)の影響とされていますが、二酸化炭素の排出量の削減に向けて、フランスではスタートアップが様々なグリーンプロダクツを作っています。そこで本稿では、同国のクラウドファンディングで最近大きな注目を集めたテクノロジーをご紹介。フランス人の環境に対する意識や同国のエネルギー政策などの背景にも迫ります。

 

フランス人の環境意識

2017年にパリのマーケティングリサーチ会社オピニオンウェイが行った調査によると、72%の調査対象者が「大統領候補のエネルギー公約を投票時の考慮にする」と答えました。また「エネルギー問題を考慮しない」と回答したのは27%で、そのうち「まったく考慮しない」と答えたのは全体の6%だったとのことです。

 

エネルギー問題に関心を寄せる傾向は富裕層ほど高い傾向がありますが、フランスでは庶民層でも半数以上69%の回答者が、この問題について意識をしているということもわかっています。

 

また、関連して、毎年7月に開催されるツール・ド・フランスは、フランス人たちの環境に対する意識の高さ(と誇り)が表れていることが分かりました。フランス人は、レースだけでなく、自国の景観の美しさも大いに楽しんでいるのです(詳しくは「【ツール・ド・フランス】フランス人視聴者の半分はレースではなく、違うものも見ていた」)。

 

クラウドファンディングで目標金額の661%を集めたテクノロジー

そこで、いま注目を浴びている製品があります。その名も「エコジョコ」。これはフランス版「HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」ともいうべきテクノロジーです。

 

エコジョコは、家庭の電気メーターに専用機器を取り付けるだけで、何にどれだけ電力を消費しているかを分析してくれます。これだけで25%の電力カットができると言われており、今後フランス人の生活に欠かせないアイテムとなるかもしれません。クラウドファンディングでは、10日足らずで600万円を超える支援を集めました(キャンペーンは目標金額の661%を獲得して終了)。

 

エコジョコの操作は非常に簡単。まず、家庭にあるブレーカーにセンサーを設置。この設置には特別な電気工事もいらず、購入者自身で簡単に取り付けられます。

 

そしてリビングなどに機器を置いておくと、消費電力量をワット数とユーロ(電気代)でリアルタイムに表示。このデータはスマホのアプリで細かく視覚化、各家庭における消費電力の改善点など、具体的なヒントもアドバイスしてくれます。このアドバイスをもとに、エネルギー消費の仕組みを理解し、節電への行動も可能になってくるのです。

フランスCNRS(国立科学センター)の研究によると、家庭の電力消費量は25%削減することが可能であるとのこと。 しかし、そのためにはエネルギー支出をリアルタイムで観察し、それに応じた節電行動を行わなくてはなりません。

 

25%削減すると、年間で約500ユーロ相当の電気代節約につながると言われています。この節電は10年や20年という長いスパンで考えると、壁の断熱やサーモスタット、または換気扇の取り付けなど、エネルギー対策工事から得られる結果と同じ。エコジョコなら簡単に始められて、そのうえ25%の節電も可能になります。

環境・エネルギー分野でイノベーションをリード?

エコジョコ誕生の大きな背景の1つは、フランスのエネルギー政策の変化。温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出量を削減するために、同国は「Energy Transition(エネルギー供給体制の移行)」に取り組んでいます。かつて同国の電力は原子力に頼っていました。しかし、2011年の福島第一原子力発電所事故で原発を取り巻く環境が変わり、フランスも脱原子力にゆっくりシフト。原子力発電への依存を下げながら、風力や太陽、水力、地熱といった再生可能エネルギーの割合を増やそうと官民一体で取り組んでいます(最近では環境相が突然辞任し、温暖化政策への影響が懸念されますが)。2016年の電力の供給量割合は、原子力が72%、風力が4%と太陽光が2%ですが、フランス政府は2030年までに再生可能エネルギーの割合を30%にまで増やすことを目標に掲げています。

 

それと同時に、エネルギー業界ではデジタル革命も起きています。民間の大企業やスタートアップは、電気をよりスマートに使うことで節電するためのテクノロジーを次々に開発。政府も再生可能エネルギーに関するプロジェクトを積極的に生み出すために、クラウドファンディングを奨励したり、開発者に助成金を与えたり、R&Dに年間10億ユーロを投資したりするなどしています。このような背景のなかで、本製品も誕生したと言えるでしょう。

エコジョコ以外にも、フランスのスタートアップは様々な環境プロダクトを作っています。今年のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)では、スタートアップ向けのエリアのEureka Parkでアメリカに次ぎ最も多くの企業が出展して注目を集めましたが(アメリカは280社でフランスは274社)、そのなかの一社である「Lancey Energy Storage」はスマートな電気ヒーターを開発してイノベーションアワードを受賞しています。エコジョコをはじめ、フランス製の環境プロダクトが日本だけでなく、世界に広まるかもしれません。

究極のエコ容器!! インドネシア発、パッケージも丸ごと食べられる「Edible Packaging」

テイクアウトフードやコーヒー、スープのパックなど、プラスチックパッケージに入って売られているものは数知れず。これらは、開けてしまえばすべてゴミとなってしまいます。でも、もしこのパッケージまで食べてしまうことができたらゴミも減らせるので、最高のエコになると思いませんか? そんなことをやってしまったのがインドネシアのEvowareが開発した「Edible Packaging (食べられるパッケージ)」。このパッケージはお湯に触れると溶けてなくなるのです。

 

「リサイクルではなく、ゴミを出さない」――。そんな不思議なパッケージがエコ革命を起こすかもしれません。

 

プラスチックのリサイクルの悲しい現状

筆者がアメリカで生活していて驚いたことの一つに、ゴミの分別に対しての低い意識です。日本人は比較的にリサイクル意識が強く、ゴミは分別して捨てるのが当たり前になっていますよね。対照的に、現在、私の住んでいる地域では、ビン、缶、ペットボトル、燃えるゴミ、燃えないゴミは分別せずに、みんな一つの袋に入れて捨ててしまいます。

 

アメリカでは昨年、約500億本のプラスチックボトルが消費されました。しかし、リサイクル率はたった23%で、年間で38億本の飲料水ペットボトル(10億ドル以上のプラスチック)が浪費されています。

 

プラスチック廃棄物の問題はアメリカに限らず、アフリカやアジアの発展途上国で最も多く、特にインドネシアは世界第2位のプラスチック排出国です。これらの70%は食品と飲料のパッケージゴミから出ているそう。そんなインドネシアで誕生したのがEvowareのEdible Packagingです。

 

海藻に着目したEvowareの深い洞察力

Evowareはインドネシアのスタートアップ企業で、プラスチック廃棄物を抑制するために食べられるパッケージを開発しました。プラスチック廃棄物によるインドの深刻な海洋汚染を深く憂慮し、このアイディアを生み出したそう。そして原材料に選んだのが「海藻」でした。インドネシアにいる海藻農家の生計を向上させつつ、海藻からプラスチックの問題を解決するという新しい試みを持った企業なのです。

 

同社のEdible Packagingは、プラスチック廃棄物増加の主な原因である食品包装用プラスチックに代わるものとして活用されています。例えば、砂糖やコーヒーの袋、インスタント食品の調味料袋、ハンバーガーの包装、ストロー、シャンプーなど。

 

本製品は無味無臭、かつお湯に溶けるので、食品の味を邪魔することはありません。日本の食品でイメージするとすれば、「オブラート」のようなものでしょうか。さらに色や形、ロゴをプリントしたり、味をつけたりすることも可能なので、コップなどにはあえてフルーツ味をつけて、硬めのグミのような食感にし、飲んだ後にコップまで食べられるように工夫をしています。これは普段の生活以外にも、BBQなどのアウトドアでも活躍しそうですよね。

上述した通り、本製品の原材料は海藻です。当然、食べても身体に害はなく、それどころか、海藻の食物繊維やミネラル、ビタミンなどを摂取することができます。

また、Evowareのパッケージは「ハラルフード(イスラム教の戒律によって食べることが許された食べ物)」なので、インドネシア人口の過半数を占めるイスラム教徒にとっては重要かつ魅力的でもあります。いつか宗教の垣根を超えて、世界的に利用される日も遠くないかもしれません。

 

本製品は環境に優しいだけではありません。インドネシアの海藻農家たちは、子どもたちがきちんと教育を受けられないほど貧困化していたそうですが、このパッケージが開発されたおかげで、新たな産業ができ、収入や雇用が生み出されました。そのような活動と社会的影響が評価され、Evowareは2010年の開発開始から現在に至るまで、世界中の様々な環境団体から25を超える賞を受賞しています。

エコやリサイクルに関して数あるスタートアップ企業のなかでも、Edible Packagingは斬新さという点で突出しているように見えます。地球や動物、ヒトにやさしい本製品は、まだ生産量やコスト面での問題がクリアされておらず未だ普及には至っていませんが、これらの問題が解決すれば、日本だけでなく世界中に普及する日も近いかもしれません。

キレイな水の基準は「魚が生きられるか?」。飲み残した牛乳や味噌汁なども「汚水」だった!

お宅の水道料金はいくらですか?
ひとり暮らしの我が家は、1ヶ月あたり約2,400円です。料金明細を見ると「水道」「下水道」という項目がありました。

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下水道のひみつ』(ひろゆうこ・漫画、YHB編集企画・著 構成/学研プラス・刊)によれば、汚水処理だけではなく、道路や家屋が浸水しないための「雨水のはけ口」としての役割も果たしているそうです。

 

下水道といえば「悪臭」や「不潔」というイメージがありますが、臭くて汚いのは、わたしたちの排泄物や生活排水です。見て見ぬふりをせずに、もっと下水道について考えてみませんか?

 

 

トイレよりもキッチン排水のほうが多い

生活で使ってよごれた水の割合
台所  約40%
トイレ 約30%
ふろ  約20%
その他 約10%

「ひろげようきれいな水のある暮らし」環境省

(『下水道のひみつ』から引用)

 

環境省によれば、トイレ汚水よりもキッチン汚水のほうが多いという調査結果があります。

 

皿を洗えば、よごれた水がたくさん発生します。洗剤を含む排水だけではなく、飲み残した牛乳や味噌汁なども「汚水」に含まれます。キレイな水の基準は「魚が生きられるか?」です。

 

天ぷら油を排水口から流してはいけない。誰でも理解できます。しかし、飲み残した「お茶」や「コーヒー」、お刺身を食べたときに使い切れなかった「小皿の醤油」、残ってしまった「煮物の汁」や「おでんのカラシ」など、わたしたちは悪気のない「汚水」を垂れ流している、という現実があります。

 

牛乳やお茶の飲み残しなんて、簡単に浄化できるだろう……という認識はまちがいです。

 

たとえば、賞味期限が過ぎてしまった牛乳200mlを排水口に捨てたとしたら、そのよごれてしまった水を「魚が生きられる」水準にするためには約3トンのキレイな水が必要になります。ほかにも、炊飯1回あたりの「米のとぎ汁」ですら、浄化のために約1.2トンの水を必要とします。

 

 

下水道は「雨」を排水するためにある

下水道管は少しずつ下に向かっておる。水は上から下へ流れるからのう。下水道管にはかたむきが必要なんじゃ。
(中略)
下水は下水道管を下ってはポンプでおし上げられ、また下ってはおし上げられ、下水処理場に運ばれているんじゃ。

(『下水道のひみつ』から引用)

 

下水道の流れは「時速2~5km」に抑えられています。人が歩く速さと同じくらいです。流れが遅すぎると「詰まり」の原因に。流れが早すぎると「破損」の原因になるからです。

 

下水道は、汚水だけでなく「雨水」の通りみちでもあります。下水道が整備されていなければ、大雨が降ったときには家屋や道路が水びたしになるからです。

 

雨そのものは汚くありませんが、空から降ったあとには道路の汚れやゴミ(タバコの吸い殻など)を巻き込んで「汚水」になります。そのまま川や海に流してしまうと汚染されてしまうため、下水処理施設が必要というわけです。

 

 

知っておきたい下水道処理の仕組み

家庭や工場で使われてよごれた水は、下水道管を通って下水処理場に入ってくる。これを流入水という。

流入水は、沈砂池、最初沈殿池を通り、活性汚泥の入った反応タンクでよごれが取りのぞかれて、最終沈殿池で処理水として生まれ変わる。

(『下水道のひみつ』から引用)

沈砂池(ちんさち)は、その名のとおり「砂」や「小石」などの大きなゴミを取りのぞくための水槽です。そして、最初沈殿池(さいしょちんでんち)では、さらに小さなゴミを取り除くことができます。

 

つぎの処理は「反応タンク」です。活性汚泥(かっせいおでい)と呼ばれる各種微生物をつかいます。クマムシやヴォルティセラなどの微生物は、汚水に含まれるゴミを食べるのが好きです。微生物の生態をうまく利用して6時間~8時間かけて浄化します。

 

最終沈殿池(さいしゅうちんでんち)では、お腹いっぱいになった微生物たちを3時間~4時間かけて沈めます。ここまでくれば濁っていた水がキレイになっています。塩素・紫外線・オゾンなどをつかって消毒したあとに、川や海へと還します。

 

学習まんが『下水道のひみつ』は、人類7000年の水道の歴史、マンホールにまつわる楽しい知識なども解説しています。たかが下水道だと思っていましたが、一般に知られていないことが多くて、とても好奇心をくすぐられました。

 

 

【著書紹介】

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下水道のひみつ

著者:ひろゆうこ(漫画)、YHB編集企画(構成)
出版社:学研プラス

下水道はみんなの生活を支え、地球の環境を守る大切なものだよ。例えば、トイレやお風呂で使った水、道路にふった雨はみんな下水道に流れていくんだ。いったい下水道はどんなことをしているのだろう?この本を読めば、下水道のひみつがよくわかるよ。

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