2代目「スズキ・ハスラー」濃厚インプレ! 初代を超える出来栄えか?

2014年の発売以来、6年間で約48万台を販売する大ヒット作となった「スズキ・ハスラー」が2代目へと進化しました。ライバルのダイハツが今年に入り「タフト」を投入。SUV+軽ワゴンのクロスオーバークラスは、今後覇権争いが激化しそうな風向きですがタフトを迎え撃つ「2代目ハスラー」の出来映えはいかに?

 

[今回紹介するクルマ]

スズキ/ハスラー

128万400円~179万800円

※試乗車:ハイブリッドX(2WD、2トーンカラー仕様車)156万2000円

※試乗車:ハイブリッドXターボ(4WD、2トーンカラー仕様車)179万800円

↑丸型2灯の特徴的なヘッドライトを筆頭とするディテールを先代から継承しつつ、外観は一層SUVらしさが強調される造形になりました

 

先代を受け継ぎつつ新鮮味もプラス!

ワゴンR級のユーティリティを実現しながらSUVらしい走破性を両立。それらをアイコニックなスタイリングでまとめた初代「ハスラー」は、軽自動車のクロスオーバー市場を活性化させる大ヒットとなりました。その現役時代における月販台数は、平均で6700~6800台。モデル末期ですら5000台水準をキープしていたと聞けば、軽ユーザーの支持がいかに絶大であったかが分かろうというもの。

 

実際、初代ハスラーがデビューした当時、すでに長野(の田舎)に居を移していた筆者も道行くハスラーの増殖ぶりに驚かされた記憶があります。また、先代ユーザーは女性が6割を占めていたそうですが、乗っている人の年齢層を幅広く感じたことも印象的。高齢とおぼしきご夫婦が、鮮やかなボディカラーの初代で颯爽と出かける姿をしばしば見かけたことは新鮮でもありました。

 

そんな人気作の後を受けて登場した2代目は、当然ながら初代のデザイン要素が色濃く引き継がれた外観に仕上げられています。軽規格、ということで3395mmの全長と1475mmの全幅は変わりませんが、ホイールベースは先代比で35mmプラスの2460mm。全高は15mm高い1680mmとなりましたが、丸目2灯のヘッドライトを筆頭に全体のイメージは先代そのまま。

 

とはいえ、決して変わり映えしないわけではありません。ルーフを後端まで延長し、ボンネットフードを高く持ち上げたシルエットはスクエアなイメージを強調。バンパーやフェンダー回りも良い意味でラギッドな造形とすることで、SUVらしさと新しさが巧みに演出されています。

 

リアピラーにクォーターウインドーを新設。2トーンカラー仕様では、ルーフだけでなくこの部分とリアウインドー下端までをボディ色と塗り分けている点も先代と大きく違うポイントです。この塗り分けは、リアクォーターやルーフなどがボディ本体と別パーツになる「ジープ・ラングラー」などに見られる手法ですが、タフなイメージの演出という点では確かに効果的です。

↑写真のボディカラーはデニムブルー×ガンメタリック。バリエーションはモノトーン5色、2トーン6色の合計11色。2トーンのルーフは、ボディカラーに応じてホワイトの組み合わせもあります

 

初代ハスラーが成功した要因として、その個性的な外観の貢献度が大であることは誰もが認めるところ。となれば、後を受ける2代目が初代のイメージを受け継ぐことは“商品”として必然でもあるわけですが、新鮮味の演出も必須。ヒット作の後継はこのあたりのさじ加減が難題で、クルマに限っても失敗例は数知れず。

 

その点、2代目ハスラーの外観は上出来といえるのでは? という印象でした。ちなみにSUVとしての機能も着実に進化していて、走破性に影響するフロントのアプローチアングル、リアのディパーチャーアングルは先代比でそれぞれ1度と4度向上した29度と50度となっています。

↑タイヤサイズは、全グレード共通で165/60R15。ホイールは「X」グレードが写真のアルミとなり、「G」グレードはスチールが標準となります

 

室内はSUVらしい力強さと華やかさを演出! 装備も充実ぶり

そんな外観と比較すると、室内はSUVらしさを強調するべく一層“攻めた”デザインになりました。インパネはメーター、オーディオ、助手席上部の収納部(アッパーボックス)にシンメトリーを意識させるカラーガーニッシュを組み合わせてタフな世界観を表現。ガーニッシュはボディカラーに応じて3色が用意され、華やかさを演出するのも容易です。シートカラーもブラックを基調としつつ、ガーニッシュと同じ3色のアクセントを揃えて遊び心がアピールされています。

↑インパネは、シンメトリーなイメージの3連カラーガーニッシュが印象的。カラーは写真のグレーイッシュホワイトのほかにバーミリオンオレンジ、デニムブルーとボディカラーに応じて組み合わせられます。収納スペースが豊富に設けられていることも魅力のひとつ

 

↑スピードメーターと組み合わせる4.2インチのディスプレイには、スズキ車初のカラー液晶を採用。走行データをはじめ、多彩な表示コンテンツが用意されています

 

↑フロントシートは、インパネのガーニッシュと同じく3色のアクセントカラーを用意。シートヒーターが標準で装備されることも嬉しいポイントです

 

元々広かった室内空間も、新世代骨格の採用やホイールベースの延長などで拡大されています。後席は着座位置が高くなったにもかかわらず頭上空間が拡大、前席も左右乗員間の距離が広くなりました。また、フロントガラス幅の拡大やリアクォーターウインドーの追加などで視界が良くなっていることも、ユーザー層が幅広い軽ワゴンとしては魅力的ポイントといえるでしょう。

↑後席は座る人の体格や荷物に応じたアレンジが可能なスライド機構付き。一番後方にセットすれば、余裕の足元スペースが捻出できます

 

↑シートバック背面には操作用ストラップが設けられ、後席のスライドが荷室側からでも可能です。荷室の床面と後席背面は汚れや水分を拭き取りやすい素材を採用。荷室左右には販売店アクセサリー用のユーティリティナット(合計6か所)に加え、電源ソケットも装備されています

 

↑後席を完全に畳めば、最大1140㎜の床面長となるスクエアな荷室が出現。床下には小物の収納に便利なラゲッジアンダーボックスも装備されています

 

最新モデルらしく、運転支援システムも充実しています。衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能などがセットになった、「スズキ セーフティ サポート」は全車標準(ベースグレードのみ非装着車を設定)。新型ハスラーのパワーユニットは先代と同じく自然吸気とターボの2本立てですが、後者では全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロール(ACC)と車線逸脱抑制機能がスズキの軽自動車で初採用されました。

 

また、対応するナビゲーションシステムと組み合わせればクルマを真上から俯瞰したような画像を映し出せる全方位モニターの装備も可能です(オプション)。

↑ターボ車には、スズキの軽自動車で初めて全車速追従機能付きのACC(アダプティブクルーズコントロール)が装備。同じくターボ車では運転支援機能のひとつとして車線逸脱抑制機能も標準で備わります(自然吸気は警報のみ)

 

このほか、SUVとしては先代から引き続いて4WD仕様に滑りやすい下り坂などで威力を発揮するヒルディセントコントロールを搭載。新型では、さらに雪道やアイスバーン路面での発進をサポートするスノーモードも新採用されました。新型ハスラーのボディは前述の通り秀逸な対地アングルを実現。最低地上高も180mmが確保されていますから、ジムニーが本領を発揮するような場所に踏み入れるのでもなければ悪路の走破性も十二分といえるでしょう。

↑4WDに装備されるヒルディセントコントロールやグリップコントロール、新機能となったスノーモードの操作はインパネ中央のスイッチを押すだけ

 

新開発の自然吸気エンジン採用。走りのパフォーマンスも進化!

新型ハスラーが搭載するパワーユニットは、前述の通り自然吸気とターボの2種。前者は、燃焼室形状をロングストローク化して燃料噴射インジェクターも気筒当たりでデュアル化。さらにクールドEGRを組み合わせるなどして、全方位的に高効率化された新開発ユニットが奢られました。

 

組み合わせるトランスミッションはどちらもCVTですが、こちらも先代より軽量化や高効率化を実現した新開発品となります。また、近年のスズキ車は電気モーター(ISG)が発進や低速時に駆動をサポートするマイルドHVがデフォになっていますが、新型ハスラーでは先代よりISGの出力が向上。容量こそ変わりませんが、リチウムイオンバッテリーの充放電効率を向上させたことでHV車としての機能が向上しています。

↑自然吸気エンジンはロングストローク化や燃焼室形状のコンパクト化、スズキの軽では初採用となるデュアルインジェクター(気筒当たり)やクールドEGRなどで一層の高効率化を実現。燃費は先代比で約7~8%向上したとのこと

 

↑ターボ仕様のエンジンは、新開発CVTなどとの組み合わせによって燃費性能が先代より約3~5%向上。ロングドライブを筆頭に、幅広い用途に使いたいユーザーにオススメ

 

その走りは、新型車らしく着実な進化を実感できる出来栄えでした。先代も軽ワゴンとしてはなんら不満のないパフォーマンスでしたが、新型ではアクセル操作に対する反応が一層リニアになり静粛性も向上。絶対的な動力性能で選ぶならターボ仕様ですが、日常的な使用環境なら自然吸気でも必要にして十分な動力性能です。

 

新世代プラットフォームのハーテクトや環状骨格構造のボディ、スズキ車で初となった構造用接着剤の採用などの効果か、走りの質感が向上していることも新型の魅力。フロントがストラット、リアはトーションビーム(4WDはI.T.L.=アイソレーテッド・トレーリング・リンク)というサスペションも、先代よりオンロード志向のセッティングとしたことで特に日常域では自然な身のこなしを実現しています。SUVとのクロスオーバーとはいえ、ハスラーは日常のアシという用途が主体の軽ワゴンのニーズに応えるクルマですから、新型の味付けは理にかなったものといえるでしょう。

↑写真は4WDのターボ仕様。絶対的な動力性能は自然吸気でも必要にして十分ですが、ターボなら余裕をもってSUVらしく使うことが可能です。ボディの剛性感や静粛性など、新型は走りの質感が向上していることも魅力的です

 

このように、先代が築いたキャラクターを継承しつつ軽クロスオーバー資質が着実に底上げされた新型ハスラー。とりあえず、ダイハツ・タフトを迎撃する備えは万全といえるのではないでしょうか。

 

SPEC【ハスラー・ハイブリッドX(2WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1680㎜●車両重量:820㎏●パワーユニット:657㏄直列3気筒DOHC●最高出力:49[2.6]PS/6500[1500]rpm●最大トルク:58[40]Nm/5000[100] rpm●WLTCモード燃費:25㎞/L

 

SPEC【ハスラー・ハイブリッドXターボ(4WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1680㎜●車両重量:880㎏●パワーユニット:658㏄直列3気筒DOHC+ターボ●最高出力:64[3.1]PS/6000[1000]rpm●最大トルク:98[50]Nm/3000[100]rpm●WLTCモード燃費:20.8㎞/L

 

撮影/宮越孝政

 

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ホンダNボックスシリーズが販売で2冠!

ホンダは4月5日、軽自動車「N-BOX」シリーズが2017年度(2017年4月〜2018年3月)における販売台数が22万3449台を記録し、軽四輪車新車販売台数において3年連続となる第1位を、さらに登録車を含む新車販売台数においても第1位を獲得したと発表した。ホンダが新車販売台数において、同年の暦年・年度ともに首位を獲得したのは2002年度に「フィット」が達成して以来、15年ぶりになる。

 

 

 

 

N-BOX/N-BOXカスタム(2017年9月フルモデルチェンジ)

 

N-BOXシリーズは「N-BOX」、「N-BOX +(エヌボックス プラス)」、「N-BOX SLASH(エヌボックス スラッシュ)」をラインアップし、幅広い層から支持を獲得。2017年9月にフルモデルチェンジされた新型N-BOXは、軽乗用車最大級の室内空間や存在感あるデザインに加えて、先進の安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダ センシング)」の採用や、優れた走行性能・燃費性能の面でも好評を得ている。なお、4月19日には、新たにスロープ仕様の追加が発表される予定だ。

 

 

 

N-BOX+(2017年8月終了)

 

 

 

N-BOX SLASH(2018年1月マイナーチェンジ)

 

●N-BOXシリーズ発売以来の歩み
2011年12月 N-BOX発売
2012年 6月 累計販売台数10万台達成
2012年 7月 N-BOX+発売
2012年11月 累計販売台数20万台達成
2013年 3月 年度軽四輪車販売台数第1位獲得
2013年 5月 累計販売台数30万台達成
2013年10月 累計販売台数40万台達成
2013年12月 年間軽四輪車販売台数第1位獲得
2014年 3月 年度軽四輪車販売台数第1位獲得
累計販売台数50万台達成
2014年10月 累計販売台数60万台達成
2014年12月 N-BOX SLASH発売
2015年 3月 最高月間販売台数3万633台を記録
2015年 4月 累計販売台数70万台達成
2015年11月 累計販売台数80万台達成
2015年12月 年間軽四輪車販売台数第1位獲得
2016年 3月 年度軽四輪車販売台数第1位獲得
2016年 6月 累計販売台数90万台達成
2016年12月 年間軽四輪車販売台数第1位獲得
累計販売台数100万台達成
2017年 3月 年度軽四輪車販売台数第1位獲得
2017年 6月 累計販売台数110万台達成
2017年11月 累計販売台数120万台達成
2017年12月 年間四輪車販売台数第1位獲得
2018年 3月 年度四輪車販売台数第1位獲得

 

 

 

【中年名車図鑑】80年代の軽自動車市場にさまざまな刺激を与えた“羨望”の一台

商用車の“軽ボンバン”が隆盛を誇っていた1980年代中盤の 軽自動車市場。ここにダイハツ工業は第2世代となるL70型系のミラを送り込む。1.3BOXと称する高効率のパッケージングを採用した新型は、ベーシックモデルのほかに高性能バージョンの「TR-XX」や多用途車の「ウォークスルーバン」を設定した。今回は豊富なラインアップで歴代屈指の人気を獲得した2代目(1985~1990年)の“羨望=MIRA”で一席。

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【Vol.45 2代目 ダイハツ・ミラ】

国内販売で32カ月連続して前年同月実績を上回るなど、大成功作に昇華したL55型系の初代ミラ。イタリア語で“羨望”を意味する車名を冠した軽ボンネットバンは、1985年8月になると第2世代のL70型系に移行した。

 

■1.3BOXの新パッケージを採用した第2世代

2代目ミラの最大の特長は、1.3BOXと称する高効率のパッケージングにあった。プラットフォームは新設計で、ホイールベースは従来比で100mm延長(2250mm)。パワーユニットが収まるフロントセクションを可能な限りコンパクトにまとめ、同時にボディ高を高めに設定してクラストップレベルの広さを誇るキャビンスペースを創出する。懸架機構には前マクファーソンストラット/後セミトレーリングアームの4輪独立懸架を採用(FFモデル。4WDモデルは5リンク)。ボディタイプは当初が3ドアハッチバックのみの設定で、1986年1月に5ドアハッチバックを追加した。

 

搭載エンジンは吸排気効率の向上や圧縮比のアップ、機械損失の低減などを図った新開発のEB型547cc直列3気筒OHCユニットで、自然吸気(34ps)と空冷式インタークーラー付きターボ(52ps)の2機種を設定する。組み合わせるトランスミッションにはフロアタイプの4速MT/5速MTのほか、フロアおよびコラムタイプの2速ATを用意。駆動機構はFFと4WDの選択が可能だった。

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クラス初の4面フルフラットシートやダブルハッチバックドアを装備。広くて快適な室内空間が話題にクラス初の4面フルフラットシートやダブルハッチバックドアを装備。広くて快適な室内空間が話題に

 

エクステリアについては、1.3BOXスペーシィシェイプデザインと称する新スタイルを採用したことが訴求点。具体的には、フラッシュサーフェス化した直線基調のボディやスラントした短めのノーズ、ルーフ後端を伸ばしてほぼ直立させたリアセクション、四隅に配したタイヤ、広めにとったグラスエリアなどによって実用的かつスタイリッシュなフォルムを実現した。一方で内包するインテリアは、リビング感覚を謳う広くて快適な室内空間に、低めに設定して有効な前方視界と開放感を演出したインパネを配して、明るく運転のしやすい居住スペースを構築する。また、クラス初の装備として4面フルフラットシートやダブルハッチバックドア(ガラスハッチのみとゲート全体での開閉が可能)、助手席クッショントレイ付きシート、クォーターボックス、ラゲッジボード、テンションレデューサー付ELRシートベルト、グラフィックモニターなどを設定していた。

 

■イメージリーダーは最強版のターボTR-XX

スポーツバージョンの「TR-XX」。フルエアロの外観にスポーティなインテリアを組み合わせるスポーツバージョンの「TR-XX」。フルエアロの外観にスポーティなインテリアを組み合わせる

 

1985年10月になると、スポーツバージョンの「TR-XX」が追加される。搭載エンジンは空冷式インタークーラー付きターボ(グロス52ps。後にネットで50psとなる)で、外装は専用バンパーやサイドステップ、リアハッチスポイラーといったフルエアロパーツで武装。内装には専用の3本スポークステアリングやガングリップタイプのシフトレバー、大型の速度&回転メーターとグラフィックタイプのターボインジケーター、固めのクッションを持つバケットシートなどを装備した。

 

2代目ミラのイメージリーダーに位置づけられたTR-XXは、後にデビューする鈴木自動車工業のアルト・ワークスや三菱自動車工業のミニカ・ターボおよびダンガンZZ、富士重工業のスバル・レックス・コンビVXスーパーチャージャーなどとともに“軽自動車第2次パワー競争”(第1次は1960年代終盤から1970年代初頭)を展開していく。TR-XXに関しては、1987年8月にインタークーラーの水冷化やAT車の追加などを実施。同年10月には燃料供給装置をEFI化したEB25型エンジン(58ps)搭載車を設定する。また、同エンジンを積むフルタイム4WD仕様も追加した。さらに1988年10月になると、最高出力を64psとしたEB26型エンジン搭載車が登場。内外装もよりスタイリッシュに刷新された。

アルト・ワークスやミニカ・ターボ、スバル・レックス・コンビVXスーパーチャージャーなどとともに“軽自動車第2次パワー競争”を展開していくアルト・ワークスやミニカ・ターボ、スバル・レックス・コンビVXスーパーチャージャーなどとともに“軽自動車第2次パワー競争”を展開していく

 

毎年のように進化を図っていった2代目ミラのターボモデル。一方で、燃料供給装置にキャブレターを組み込んだターボ付きEBエンジン搭載車も継続して設定される。スペック上ではEFIを採用する58ps仕様や64ps仕様に劣った50ps仕様。しかし、アクセルレスポンスのよさや吹き上がりの俊敏さなどは、50ps仕様が上回った。当時のECU技術では、このあたりにまだまだ壁があったのだ。絶対的なパワーよりもスポーツミニらしい軽快な特性を重視する走り好きは、あえて50ps仕様を選択する。こうした傾向をメーカー側も把握していたのだろう。地道な人気を誇るキャブターボは、2代目のモデル末期まで新車カタログに掲載された。

 

■隠れた名車「ウォークスルーバン」

L70型系の2代目ミラにはもう1台、隠れた名車が存在した。フロントセクション以降をパネルバンボディに変更した「ウォークスルーバン」だ。運転席から荷室へと歩いて移動できるウォークスルーバンがミラに最初に設定されたのは初代(L55型)のモデル末期の1984年5月で、2代目でも引き続きウォークスルーバンがラインアップされる。製造は優れた車体製造技術を持つ荒川車体工業(1988年よりアラコに変更)が担当。最大の室内容積と軽量化を両立させるために、乗降用ドアは左側のみの折戸式で、リアゲートには上下開き式と3枚折戸式を用意した。乗車定員は1名乗りが基本で、助手席はオプションで用意する。また、フロントガラスおよびAピラーは直立に近い位置にまで立て、サイドミラーには通常のフェンダータイプのほかに縦長タイプを設定。荷台部にはプレスラインやサイドガラスなどを組み込んだ。

 

軽自動車の規格内で成立させた稀有なウォークスルーバンは、そのユニークなルックスや使い勝手の良さから、デリバリーなどの商用としてだけではなく、バイク等のトランスポーターとして個人ユーザーからも高い人気を獲得する。また、ラウンディッシュなフロントガラスおよびAピラーに、上ヒンジ式ウィングドアを荷台部に配した移動販売車の「ミチート」も設定され、市場から好評を博した。

 

ミラ・ウォークスルーバンの人気に刺激を受け、鈴木自動車工業はアルトに、三菱自動車工業はミニカに、ウォークスルーバンを設定する。しかし、ボディ全体の造り込みや機能性の面でミラにはかなわず、販売台数は伸び悩んだ。結果として、1990年の軽自動車規格改定以降でウォークスルーバンをラインアップしたのはミラだけとなり、そのミラも次の規格改定である1998年に生産を中止した。ここで人気が衰えるかに見えたミラ・ウォークスルーバン。だが、コアなファンがその唯一無二のキャラクターを見逃さなかった。ユーズドカー市場では21世紀に入っても活発な取引が展開され、660ccエンジン搭載車のみならず2代目の550ccエンジン搭載車も長く生き残ったのである。

 

【著者プロフィール】

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。

【中年名車図鑑】フランス某ベストセラーカーも真似た!? マンガにもなった絵心を誘う軽自動車

ホンダは1974年のライフを最後に、軽乗用車の生産を取りやめていた。しかし、1980年代前半には軽ボンバン(ボンネットバン)を中心に市場での軽自動車の人気が復活。ホンダも再度このカテゴリーへの参入を画策し、1985年に新世代の軽自動車を発売した――。今回は革新的なパッケージングとスタイリングで脚光を浴びた初代トゥデイ(1985~1998年)で一席。

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【Vol.43 初代ホンダ・トゥデイ】

1985年8月、本田技研工業の新しい本社社屋“ホンダ青山ビル”が東京都港区南青山に竣工した。新時代を迎えた同社は、さっそく翌9月に新型車を発表する。約11年ぶりのHONDAブランドの軽乗用車となる「トゥデイ」(JW1)のデビューだ。

 

■軽自動車の人気が高まった背景

ホンダのエントリーカーは1970年代後半がシビック、1980年代前半はシティがその役割を担っていた。一方、80年代初頭から中盤にかけて、日本の自動車市場では軽ボンバンを中心とする軽自動車の販売台数が飛躍的に伸びていく。1980年には100万台を突破して約106万台を記録し、1984年には約149万台にまで達していた。第2次オイルショックに端を発する軽自動車の見直し風潮、そしてセカンドカー需要の伸長などが、販売台数増加の主要因である。この傾向をコンパクトカー造りに長けたホンダが見逃すはずがない。シティのデビューが一段落したころから、軽乗用車の本格的な開発に着手しはじめた。

 

■異例のロングホイールベースで広い室内空間を実現

当時は、第二次オイルショックのなか軽自動車が見直されはじめた時期。トゥデイはその軽自動車需要を見越して開発された当時は、第二次オイルショックのなか軽自動車が見直されはじめた時期。トゥデイはその軽自動車需要を見越して開発された

 

デビューしたトゥデイを見て、業界関係者は驚いた。AA型シティのトールボーイスタイルとは正反対、さらに既存の軽乗用車よりもずっと低い全高(1315mm)を採用してきたのである。しかも、ホイールベースが2330mmと軽自動車としては非常に長かった。これらのプロポーションが実現できた要因は、新開発のシャシーやメカニズムにあった。フロアパン前部はサイドシル一体成形の“バスタブ型”を採用。さらにEH型545cc直列2気筒OHCエンジン(31ps/4.4kg・m)と組み合わせるギアボックスをクランク軸と一直線上に置き、そのうえでデフを真下に配置した。集積型のシャシーとコンパクトな動力源――これらを具現化したからこそ、フロントタイヤを目一杯前方に配置することができ、最大限の室内前後スペースを構築できたのである。

 

室内に入ると、その独特の雰囲気に引きつけられる。低いノーズのラインとほぼ一直線上につながる大きく傾斜したAピラー、そのAピラーに沿う広大な面積のフロントガラス、レーシングカーのような大きな1本アームのワイパーなど、すべてがオリジナリティにあふれていた。ステアリングやインパネ、シートのデザイン、インテリアカラーも非常に凝っており、全体的にカジュアルでお洒落なムードが漂っていた。

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インテリアは傾斜したAピラー、大きなフロントガラスによって個性的な雰囲気を演出。シートデザイン、カラーリングも凝っていたインテリアは傾斜したAピラー、大きなフロントガラスによって個性的な雰囲気を演出。シートデザイン、カラーリングも凝っていた

 

セカンドカー・ユーザーが多いことも想定して、トゥデイは維持費の安い4ナンバーの軽ボンバン(フロントにボンネットを配した商用登録のハッチバックスタイル軽自動車)として設定される。5ナンバー仕様が登場したのは、1988年2月発表のマイナーチェンジ時だった(発売は同年3月)。このときはE05A型547cc直列3気筒OHC12Vエンジン(PGM-FI 仕様のMTが42ps/4.6kg・m、同ATが42ps/4.7kg・m)の採用、5速MTと3速ATの設定(従来バンは4速MTと2速AT)、角目ヘッドランプの装着、電動サンルーフの装備などもニュースとなった。

 

ホンダ独自のコンセプトを満載した初代トゥデイだったが、一部のファンからは熱烈な支持を集めたものの、販売成績は大成功とまでは至らなかった。室内高の低さや可愛すぎるルックス、スポーツ仕様の未設定などが、当時のユーザーの購入欲をあまりそそらなかった要因だ。最終的に乗用モデルは新規格への移行(1990年2月。搭載エンジンはE07A型656 cc直列3気筒OHC12V)を経て、1993年1月に第2世代へとモデルチェンジ。商用モデルはトゥデイPROとして継続販売され、また1994年9月には快適装備を組み込んだトゥデイ・ハミングを設定して、1998年10月に軽自動車の規格改定が行われる直前まで販売を続けたのである。

 

一方、この初代トゥデイの概念構成に非常に近いコンパクトカーが1992年にフランスでデビューする。車名は「ルノー・トゥインゴ」。ルノーの開発陣がトゥデイを参考にしたかどうかは明言されていないが、車両コンセプトやデザインアプローチが近いことは確かだった。トゥインゴはその後10年以上、ルノー車のボトムラインを支える重要なモデルとして位置づけられる。もし初代トゥデイの輸出仕様があったなら……本田技研工業の世界戦略車として予想以上の大ヒットを記録していたかもしれない。

 

■イメージキャラクターには当時の人気女性タレントを起用

ところで、初代トゥデイはクルマ自体のインパクトも強かったが、イメージキャラクターでも大注目を浴びた。起用されたのは当時売り出し中だった今井美樹さん。同時期に出演した味噌汁のCMを覚えている人も多いだろう。トゥデイではCMやポスターのほかに、カタログでもキュートなルックスを披露した。ちなみに、2代目トゥデイでは当時“3M”と呼ばれたアイドルの一角、牧瀬里穂さんがイメージキャラクターに起用される。一方、3Mのうちの宮沢りえさんはダイハツ・オプティ、観月ありささんは三菱パジェロ・ミニのイメージキャラクターを務めた。

 

トピックをもうひとつ。初代トゥデイはコミックの世界でも引っ張りだこで、藤島康介さん作の『逮捕しちゃうぞ』やヘッドギア企画(コミック版の作者はゆうきまさみさん)の『機動警察パトレイバー』でのミニパト仕様を筆頭に、多くの漫画に起用される。それだけ初代トゥデイのスタイリングが魅力的で、絵心を誘ったのだ。

 

【著者プロフィール】

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。