
日: 2023年7月31日
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製造業の新規市場開拓を進めるための手順と事例を解説
テクノポートの徳山です。当記事では、製造業が自社の既存技術・製品を新規市場へ展開していくための具体的な方法と事例をご紹介します。
製造業の新規市場開拓の進め方
製造業における新規市場開拓は、自社の既存技術・製品の新たな用途を見出すことで、これまでに開拓してこなかった分野へ商圏を広げることを目指します。以下より、新規市場開拓を進めるための具体的な手順を紹介します。
新市場へ展開する技術・製品を選定する
既存市場は十分に市場開拓ができているが、他の有望市場(用途)への展開が期待できそうな技術・製品を選定します。
MFTフレームワークを使い用途仮説を考える
選定した技術・製品をMFTフレームワークを活用し、用途仮説を考えていきます。MFTとは、Market(市場)、Function(機能)、Technology(技術)の略で、市場と技術の間にある機能に着目することで、技術の活用が可能な市場を幅広く検討できるフレームワークのことを示します。
MFTフレームワークの詳細について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
なお最近では、ChatGPTで壁打ちしながら進めることをおすすめします。
- 〇〇技術の活用が期待できる用途にどのようなものがあるか?
- 〇〇技術の競合技術にはどのようなものがあるか?
- 〇〇技術が持つ機能にはどのようなものがあるか?
などといった質問を投げかけながらMFTフレームワークを埋めると効率的です。
用途仮説を評価する
MFTフレームワークにより導き出した用途仮説を以下の評価軸で評価していきます。
市場性の評価
用途仮説における市場がどれぐらいの規模かを評価します。市場規模は大きいに越したことはありませんが、それ以上に重要なのは、自社が狙う市場として規模感が適正かどうかを見極めることです。中小企業の場合、大きい市場だと大手企業の参入リスクが高まるため、ニッチな市場を選択することをおすすめします。
競合性の調査
狙う市場の競合性(競争相手の多さと強さ)を評価します。なるべく競合性の低い市場を狙うことが望ましいです。地域性(物理的な距離がビジネスの勝敗に影響する場合)が求められる場合は、自社が属するエリアに競合がどれくらいいるかにも留意するとよいでしょう。
独自性の評価
最後に自社技術・製品が、競合他社と比べて独自性を有しているかを評価します。独自性とは、他社が真似できない自社独自の強みのことを指します。分かりやすいのが特許技術などを持っている場合などです。
テストマーケティングの実施
テストマーケティングを実施し、見込顧客を捕まえて商談を行います。BtoB製造業の場合、インタビューやアンケートといった手法でニーズ調査を行うことが難しいため、少額の予算でも構わないので、まずは見込顧客との接点を作り会話の機会を作ることが大切です。
Webマーケティングであれば、簡易的なLP作ったうえでリスティング広告を打ってみる方法なら50万円ほどの予算で実行可能です。
新市場へ受け入れられるよう技術・製品を改良
商談した見込顧客の声を聞きながら、市場に受け入れられるよう技術・製品を改良していきます。目指すのは「顧客が満足する技術・製品を、最適な市場で提供できている状態」です。
市場に受け入れられていない状態でマーケティング予算を投じても、商談獲得コストが高くなったり、いくら商談しても受注に至らなかったり、広告対効果が合わないため注意が必要です。
本格なマーケティングの実施
技術・製品を、ターゲットとする市場で受け入れられ、顧客の高い満足度を確保できる状態に到達したら、新市場に対し予算を投じて一気に攻めます。
新規市場開拓を実現した製造業の事例
次に、自社技術を使い新規市場開拓に成功した3社の中小製造業の事例をご紹介します。
株式会社星製作所(精密板金加工業)
出典:株式会社星製作所
精密板金加工業を営んでいる株式会社星製作所は、もともとは社会インフラ関連機器に使用される板金加工を生業としていましたが、リーマンショックを機に仕事量が激減してしまいました。
当時、社長に就任したばかりだった星社長は、状況を打破すべく新規事業として、セミオーダーで板金ケースを発注できる事業を開始し、「板金ケース.com」を立ち上げました。
板金加工技術をIT業界の市場向けに展開
板金ケース.comは、立ち上げてから大きな広告予算を投じることもなく、板金ケースを必要としていたサーバ製造メーカー、SIer、ITベンチャー企業などに支持されるようになりました。
多くの板金加工企業は、図面がないと仕事を受けないケースが多かったり、オンラインでのコミュニケーションに慣れていなかったりすることもあり、普段製造業と仕事をする機会の少ないIT企業にとって、仕事を依頼するハードルが高いものがありました。
そこで、板金ケース.comでは、図面がなくても発注ができるようセミオーダー化、リアルコミュニケーション不要のオンライン完結する仕組みを作ることで、顧客のニーズに強くフィットしました。
川上展開により競争優位性をさらに高める
事業を進める中で、顧客の要望としてフルオーダーの板金ケースを求める声が増えていきます。顧客の多くが設計部門を持たないIT企業だったため、筐体の設計ができず困っていることが分かりました。そこで星社長は、設計機能を内製化することを決断します。数名の町工場が設計部門を持つことは大きなリスクを伴うことでしたが、川上展開することで競争優位性をさらに高めることができると考えたのです。
結果、この施策も多くの顧客に受け入れられ、事業拡大に貢献しました。また、筐体設計だけアウトソーシングしたいというニーズに着目し「筐体設計.com」という新サービスの立ち上げにもつながりました。
株式会社富士産業(金属金物製作事業)
出典:株式会社富士産業
株式会社富士産業は、主力としていた鋼材販売業の先行きを危惧し、新規事業として金属加工業へ進出を考えていました。しかし、工業部品の金属加工の分野では本業の顧客とバッティングしてしまう懸念があったため、工業分野以外で自社が進出できそうな分野を模索しました。
その中で、新規事業を推進していた杉本常務が目を付けたのが、他社が仕事を受けたがらない、一般消費者やデザイナーからの仕事です。
金属加工技術を個人・デザイナー向けに展開
Webマーケティングの実施により多くの見込顧客を開拓した杉本常務でしたが、顧客から寄せられる要望は、「図面なしで加工対応してほしい」「金属と皮革を組み合わせた品物を作ってほしい」など、自社だけでは対応できないものばかりでした。
そこで、顧客の要望に何でも応えられるよう、葛飾区という立地をうまく活用し、異業種の町工場ネットワークを構築しました。見込顧客のニーズに提供サービスをフィットさせることで、多くの顧客開拓に成功しました。
当初想定していなかった分野へも市場が広がる
当初ターゲットとしていたのは、一般消費者やデザイナーでした。しかしマーケティングを続けた結果、ホテル、ブティック、お寺、設計事務所、デザイン事務所、大手メーカーといった、さまざまな業種の顧客を獲得することができました。
共通するニーズは、「図面がなくても加工を請け負ってほしい」「異素材でも一社ですべて対応してほしい」「気軽にものづくりを頼める工場を探していた」というものでした。サービスを市場にフィットするよう磨き込んだ結果、共通するニーズを持つ異分野の顧客にまで自然と広がっていったのです。
株式会社アデムカ(発泡スチロール加工業)
出典:株式会社アデムカ
発泡スチロール加工業を営む株式会社アデムカは、鮮魚を運ぶために使われるトロ箱の製造を生業としていました。しかし、時代の流れとともに市場は縮小傾向となり、それに危機感を抱いた澁谷社長は発泡スチロール加工を他の用途へ展開できないかと考えました。
自らの足を使い、用途を探し回った末にたどり着いたのが、企業がイベントや展示会の時に使うオブジェやパネルといった販促品市場への展開でした。
加工機を独自開発するなど優位性を構築
新規参入した市場で発泡スチロール造形を行っている競合他社の多くが、手仕事で造形を行っていました。しかし、見込顧客は発泡スチロールに対し安価に製造ができるイメージを持っていたため、機械化を行いコストを抑える必要がありました。
顧客の要望に応えるために、澁谷社長は3Dの造形物を加工できる機械を独自で開発するとともに、機械を動かすための3Dデータ作成の業務を内製化することで顧客のニーズにフィットさせていきました。当事業は多くの顧客に支持され、今では会社の売上のほとんどを新規事業が稼ぎ出しています。
コロナ禍では工業向け市場にも展開
事業を順調に拡大させていた当社でしたが、コロナ禍に入り状況は一変します。主力としていた販促品の需要が激減したのです。販促品の多くがイベントや展示会で使われるものでしたが、コロナ禍の影響でそのほとんどが自粛となってしまったためです。
危機を脱するために、外部環境に影響を受けづらい工業向けの市場へとターゲットを広げました。具体的には、緩衝材やモックアップ(デザインモデル)、検査治具などといった工業製品です。機転の利いた取組が功を奏し、激減した問い合わせを工業系の問い合わせで埋めることでコロナ禍の危機を乗り越えることができました。
以上、製造業が新規市場開拓を進めるための手順と事例をご紹介しました。テクノポートでは、製造業の新規市場開拓をデジタルマーケティングにより支援しています。新規市場開拓に課題を抱えている方はお気軽にご相談ください。
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