ものづくり補助金対象経費10項目

ものづくり系取材ライターの羽田野です。

前回は「ものづくり補助金の採択されやすい申請書の書き方ポイント3選」について紹介させていただきました。ものづくり補助金の理解を深めると、挑戦してみようという気持ちになりますが「どのような項目が対象経費に当たるのか」ということが疑問に上がります。今回はその「ものづくり補助金」がどのような企業に当てはまり、どのような項目が補助金対象であるかを紹介したいと思います。

ものづくり補助金の対象となる事業者

「ものづくり補助金」を受けるためにまずは自分の企業が対象であるかを把握する必要があります。ものづくり補助金の対象は、以下の2つの条件を満たしている事業者です。

①日本国内に本社、事業所がある会社

「ものづくり補助金」の補助対象者は、日本国内に本社、事業所がある会社が対象です。

②中小企業(小規模事業者)

業種によって、中小企業か小規模事業者なのかという定義は異なりますが、業種、資本金、常勤する従業員数、製造業、建設業、運輸業等の決まりが存在します。

業種 資本金 従業員数(常勤)
製造業、建設業、運輸業 3億円 300人
卸売業 1億円 100人
サービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)
5000万 100人
小売業 5000万 50人
ゴム製品製造業
(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く
3億円 900人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 3億円 300人
旅館業 5000万 200人
その他の業種(上記以外) 3億円 300人

ものづくり補助事業公式ホームページ参照

 

「ものづくり補助金」の対象経費とは?

実は、「モノづくり補助金対象経費」は10項目に分かれています。代表的な例を挙げると「機械装置の導入」により生産性を上げるという方法。これは、誰しもが知っている補助金対象経費ですが、他にはどのような方法があるのか紹介したいと思います。

1.機械装置・システム構築費

ものづくり補助金に応募する企業のほとんどが「機械装置の購入」「システム導入」を目的としています。補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具(測定工具・検査工具、電子計算機、デジタル複合機等)の購入、製作、借用に概要する経費が対象となります。

システム構築費に関しては、補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費が対象となります。また、両内容同時に進めていく場合も対象です。よく問題に上がるのが、自社で機械装置を製作する場合や中古設備を購入する場合です。こちらも対象にはなりますが、中古品の場合は3社以上の相見積もりが必要になるなどの条件も存在します。機械装置・システム構築費以外の経費の補助上限額は500万円です。

2.技術導入費

知的財産権の導入に要する経費です。補助対象経費の3分の1が上限となり、技術導入費を支出した相手方に、「専門家経費」「外注費」を支払うことはできないので注意が必要です。

3.専門家経費

事業を行うために依頼した専⾨家に⽀払われる経費が補助されます。謝金単価や旅費については金額ルールがあり、大学教授、弁護士、弁理士、公認会計士、医師の場合は1日5万円以下。大学准教授、技術士、中小企業診断士、ITコーディネーターは1日4万円以下。価格の妥当性を示すため複数の見積書を取り、上限額が1日5万円となっています。旅費のルールとしては、全国中小企業団体中央会が定める「旅費支給に関する基準」に従う必要があります。対象経費総額の2分の1が補助対象となります。

4.運搬費

運搬料、宅配、郵送料等に関する経費です。

5.クラウドサービス利用費

クラウドサービス利用に関する経費が対象となります。補助対象期間中のクラウドサービス利用に関係する、月額利用料、ルータ使用料、プロバイダ契約料、通信料は補助対象となりますが、ホームページ制作費、サーバー購入費・サーバー自体のレンタル費や、パソコン、タブレット端末、スマートフォンなどの本体費用は対象外です。

6.原材料費

試作品の開発に必要な原材料や資材の購⼊経費が対象となります。基本的に補助事業終了までに使い切るのが原則となり、購入は必要最小限のみです。補助事業終了時点で使用できていないものは補助対象外となります。受払い簿での管理が必須であり、原材料の受払いを明確にしておきます。加工に失敗したものは保管することが決まりとなっており、保管が困難な物については写真撮影による代用も可能です。

7.外注費

新製品・サービスの開発に必要な加⼯やデザイン、検査等の⼀部を外注(請負、委託等)する場合の経費が対象です。しかし、外注先が機械装置を購入する場合はや、外注先との書面契約が必要となります。外注費を計上した相手方に「技術導入費・専門家経費」を支払うことはできないなど、細かなルールがありますので注意が必要です。対象経費総額の2分の1が補助対象となります。

8.知的財産権等関連経費

特許権等の知的財産権等の取得に必要な弁理⼠の⼿続代⾏費⽤等、特許出願に係る費用が補助対象になります。補助対象経費総額の3分の1が上限です。

9.広告宣伝・販売促進費

コロナ対応の特別枠でのみ使用できる経費になります。補助事業で開発する製品・サービスにかかる広告経費です。主な内容としてはパンフレットの作成や媒体への掲載、展示会出展、セミナー開催などです。補助事業期間内に広告が使用、掲載され、展示会が開催されることが条件です。また、出張旅費、交際費は対象外となります。

10.感染防止対策費

補助事業実施のために必要な業種別ガイドラインに基づいた感染拡大予防のための経費です。上限は50万円で消毒液、マスク、フェースシールドといった物が対象となります。

以上がものづくり補助金の対象経費です。

この中でも、「機械装置・システム構築費」で申請する企業は多いですが、あまり活用されていない対象経費も存在します。どの項目で申請を掛けるか決定する前に、どの項目でよく申請され、事例が多く存在しているかを把握しておくと参考にしやすいと思います。

モノづくり補助金総合サイト

注意が必要な「ものづくり補助金対象外経費」4選

対象になる経費を把握すると同時に、対象にならない経費があることを知る必要があります。「項目以外のこと」という認識でも間違いではありませんが、申請後に対象外だと気づき予算オーバーという問題になるケースも考えられるので注意が必要です。その中でも対象外経費として必ず理解しておく4つを紹介します。

「消費税や地方消費税」

消費税や地方消費税額は補助対象外となります。高額な設備を投資することで税金もかかります。

【例】¥10,000,000×税=¥11,000,000 税分¥1,000,000

補助率とは別に税金がかかりますので税分の¥1,000,000はそのまま上乗せされます。その為、¥5,000,000の補助が出た場合自社負担¥5,000,000+¥1,000,000(税分)=¥6,000,000が自社負担になります。

「設備設置に対する整備工事、基礎工事」

設備を設置する為に、設置場所の基礎工事が必要になる場合があると思います。また、設備を設置する為に、場所を広げたり、屋根を設置したり、整備する為の工事費用は補助の対象外となります。

「パソコン、スマートフォン、タブレットなど」

パソコンやスマートフォン、タブレットは原則補助の対象外となります。汎用性が高く補助事業以外にも使用できるという点が補助対象外の理由となります。しかし、設置した設備の管理や、運転に使用するだけのものや、設備と組み合わさっている物の場合は補助対象となる可能性があるので「原則対象外」となっています。

「自動車や不動産」

不動産の購入費は対象外です。また自動車も基本的に対象外になりますが、公道を走ることを目的としていないものであれば対象になることもあります。使用する為の修理費や車検費用は補助対象外となります。

ものづくり補助金は、原則「後払い」になります。対象経費に目が行きがちですが、規模の大きい設備を導入する際は、それに伴うランニングコストや税金が大きく発生しますので、対象外経費をしっかり把握し申請することが必要です。

以上が「ものづくり補助金」の対象事業者、対象経費と対象外経費の紹介です。新しい設備やサービス、販売方法を取り入れることで会社が大きく飛躍することが想像できます。しかし、補助金を申請する労力含め、補助金対象外経費にも目を向ける大切さがあります。審査は原則として書面のみで行われます。ちょっとした漏れが不採択や企業を苦しめてしまう原因にも繋がりますので、公募要領をしっかり読み込み、補助金を有効に活用することをおすすめします。

ものづくり補助金の採択されやすい申請書の書き方ポイント3選

ものづくり系取材ライターの羽田野です。

コロナ禍による被害拡大を防止するために、さまざまな経済対策が打ち出されました。助成金や補助金もその経済対策の1つとして行われています。資金に余裕のない中小企業にとっては非常にありがたい存在の補助金や助成金ですが、積極的に活用しようとする企業はまだまだ少ないようです。

なぜ、活用しないのか?

理由として上げられるのが

  • 「申請書類の手続きが複雑なイメージ」
  • 「返済義務があると聞いたことがある」
  • 「どんな項目に当てはまるのかが分からない」

といった反応を返す方が多くいるようです。それらのことを踏まえ、今回は「ものづくり補助金の採択されやすい申請書の書き方」について解説したいと思います。

申請書類記載の3つのポイント

① 審査項目の内容を盛り込む

審査項目は補助金、助成金ごとに記載項目が指定されています。企業としてふさわしい行いをしているか、その課題は実現可能なのか、数年後には売上が上昇するのか。それらの内容を確認し、点数を付けていきます。いくらよい内容で記載されていても、審査項目に対し回答できていなければ点数が付かないことを把握する必要があります。

② 内容の実現を客観的に見ることができているのか。

この設備の投資に意味があるのか、数年後には売上が上昇する理由などを確認します。実行したい内容に対し、理論付けし、信用性を高めます。

③ 審査員に分かりすいように記載する必要がある。

審査員は中小企業診断士、税理士、企業コンサルに携わる経営を中心とした考えを持つ人物であると予測されます。自社の技術的な専門用語は基本的にNG。審査員はその分野の専門家ではありません。審査員に理解できる内容、言葉に言い換えて記載することが重要です。また、審査員は多くの企業の申請書類に目を通しています。心理的に、文字よりも図、表、グラフ、写真を多く使用する事で分かりやすさを心がける必要があります。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

2009年にスタートした制度で、生産性向上を目的とした革新的な取り組みに対し、最高1億円の補助金が交付される項目もあります。以下、中小企業において有効的に活用できる補助金ということもあり、申請書作成ポイントを押さえつつ紹介したいと思います。

「ものづくり補助金とは」

経営革新と生産性向上がテーマとなっている補助金です。経営革新とは新商品や新サービスの開発、生産プロセスの開発がメインとなり、生産性の大幅向上に対する取り組みに支援するものです。補助上限額は最大1億円となっており、公募要項が3つに分かれています。

① 「一般型」ものづくり補助金

新しい製品・サービスの開発など、生産方法やサービス提供方法の改善につながる設備・システム導入が補助対象とされます。
補助金額上限1,000万円

② 「グローバル展開型」ものづくり補助金

海外事業の拡大・強化のための設備導入が補助の対象となります。
補助金額上限3,000万円

③ 「ビジネスモデル構築型」ものづくり補助金

中小企業を支援する、大企業対象ものづくり補助金。
補助金額上限1億円

補助率は原則1/2。補助対象経費の1/2が補助され、一般型・グローバル展開型応募の小規模事業者は2/3になっています。「ものづくり補助金」の対象経費は決まっており、基本的に設備投資(機械装置費用)費用です。人件費や販促費などは対象にならないので注意が必要です。「ものづくり補助金」は、純粋な製造業だけでなく、「革新的なサービス開発」も補助対象として含まれています。新規事業(WEBシステム開発)についての申し込みなど幅広く対応しており、多くの企業にチャンスがある補助金と言えます。

詳しくは「ものづくり補助金総合サイト」を参照ください。

「ものづくり補助金」の注意点、採択される申請書の記載方法

ものづくり補助金は電子申請になります。Webフォームに事業計画書を入力し、需要部分(審査対象となる事業計画書)はPDF添付が必須です。採択されるポイントは電子申請のWebフォームに、必要事項を確実に記載することです。審査項目を読み込み、審査員に納得感を持たせる必要があります。また、公募要領を読むと、ルール(10枚まで等)が記載されているのでミス・記載漏れがないように書くことが採択への条件となります。

「ものづくり補助金」審査のポイント

技術面、事業化面、政策面の3項目に分かれています。

  • 「技術面」  取り組んでいる内容の技術的な課題や解決方法を説明します。
  • 「事業化面」 どのように販売促進の方向性を説明します。
  • 「政策面」  申請企業の取り組みが、国の政策と合致していることを説明します。

この項目が大枠となり各項目から枝分かれし、計12点(1点はコロナウィルス特別枠)の審査ポイントがあります。

審査項目で重要な「革新性」

その中でも技術面の中にある審査項目「革新性」が重要視されています。革新性とは「自社になく、他社でも一般的ではないもの」という点。(参考:ミラサポPlus

他社でも、一般的ではないものと聞くとハードルが上がりますが、最先端技術や、日本初といった内容である必要はありません。既存の技術を活用しつつ、製品や生産プロセスに変化を求めています。中小企業庁の目的として掲げられていることは「経営革新支援」です。「ものづくり補助金」という制度を利用し、「中小企業の経営革新を促進したい」という思いが、行政の意図であることを組み取る必要があります。「売上が低いため設備を新しく」という内容では採択される可能性は限りなく低くなるでしょう。

「ものづくり補助金」加点項目・減点項目

「ものづくり補助金」では、審査項目(基礎項目)以外にも「加点項目」というものが存在します。ものづくり補助金のように、全員が受け取ることができない補助金は競争に勝ち抜き、他社よりよい評価を得る必要があるため、基礎項目だけでなく加点項目に注目することで採択率を高めることができます。

「ものづくり補助金」の加点項目

成長性加点

成長性として、経営革新計画の承認(申請中を含む)を得ていると加点されます。経営革新計画は、中小企業が「新事業活動」に取り組み、「経営の相当程度の向上」を図ることを目的に策定する中期的な経営計画書のこといい、国や都道府県に計画が承認されると様々な支援策の対象となります。ものづくり補助金でも中期的な経営計画を作成するので、経営革新計画の承認を得ていない事業者は、経営革新計画の申請を同時に行うことをおすすめします。

政策加点

小規模事業者や創業・第二創業後間もない企業(5年以内)は加点されます。中小企業という括りで、会社の規模は様々です。大手の中小企業だけでなく、小規模事業者や事業を行って期間の短い企業にも「ものづくり補助金」を活用してもらえるよう、政策加点として加えられている項目です。

災害加点

新型コロナウィルスや台風等で各地は大きな被害受けました。そうした被害を受けた企業が「ものづくり補助金」を活用して、事業を立て直し発展させていくために、

  • 「新型コロナウイルスの影響を受けて、サプライチェーンの毀損等に対応するための設備投資等に取り組む事業者」
  • 「令和元年度房総半島台風(台風15号)等及び令和 元年度東日本台風(台風19号)の被災事業者(激甚災害指定地域に所在する者に限る)
  • 「有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した(取得予定の)事業者」

のいずれかが適用されることを証明すれば加点されます。また、今後起こりうる大規模災害が発生した際に、事業を継続し地域経済への影響を最小限に食い止め、事業継続力強化計画の認定(申請中を含む)を取得した企業へも加点があります。事業継続力強化計画とは、中小企業が自社のリスクを認識し災害発生時の防災・減災についてあらかじめ策定した計画です。

賃上げ加点等

企業の利益が増えていくだけではなく、従業員の給料が増え、消費が増加していくことを国は重要視しています。加点対象となる賃上げとは、事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%、又は3%以上増加させる計画があることを、従業員に表明していることが必要条件となります。また、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円、又は+90円以上の水準にする計画があり、こちらも従業員に表明していることで加点となります。賃金の引上げ幅に応じて段階的に加点され、大きく賃上げを計画した方が加点も大きくなります。

「ものづくり補助金」の減点項目

公募要領には、「過去3年間に、類似の補助金の交付決定を受けていた場合、交付決定の回数に応じて減点」と記載されています。この減点措置が、採択結果に大きな影響を与えてはいないようです。あくまでも減点であり、採択される申請書の内容が重要であるようです。

国が見据える「製造業への期待度」

2020年実施の「ものづくり補助金」では、例年と異なり、通年で公募が行われ、5次締切(令和3年2月頃)まで行われることが決定しています。その点を踏まえると、国から製造業への期待度が感じ取れます。多くの企業が当てはまる項目となる一般型は、最高1000万円の補助金が交付される魅力的な補助金です。しかし、機械装置などの設備投資には費用やリスクが発生します。そんな事業者にとっては、補助金をうまく活用すれば大きなメリットが生み出しますが、投資リスクをゼロにすることはできません。リスクを認識し、ものづくり補助金を得るメリットと申込書類準備にかかる負担や採択後の事務負担を考え判断し、申請することをおすすめします。

いかがでしょうか。

ものづくり補助金というものが、どのようなものであるかをご理解いただけましたでしょうか。今回はものづくり補助金にフォーカスし紹介しましたが、国、都道府県、市町村、さまざまなところで補助金の情報が発信されています。まずはウェブサイトでキーワード検索を繰り返し、情報収集することで自分に適したものを選び出すことから始まります。また、補助金を利用したことのある人に相談し、自分にあった補助金を見つける方法もおすすめです。地道な作業にはありますが、補助金を活用することで、自社の経営をより円滑に行うことができるようお役立ていただければ幸いです。