「オンライン展示会で確実に成果を上げる3つの鉄則セミナー」開催レポート

テクノポートの徳山です。2020年9月29日(火)に、弊社主催のオンラインセミナー「オンライン展示会で確実に成果を上げる3つの鉄則セミナー」が開催されました。

コロナ禍となり、多くの展示会がオンライン化する中で、出展者はその変化にどのように対応していけばいいのか?そんな問いに答えていただくために展示会出展支援のスペシャリストである、株式会社展示会営業マーケティングの清永代表を講師としてお招きし、セミナーを開催いたしました。今回はそのセミナーの内容を掻い摘んでご紹介いたします。

講師:清永健一氏の紹介

清永健一氏

展示会営業®コンサルタント。中小企業診断士。 株式会社展示会営業マーケティングの代表取締役。奈良生まれ、東京在住。 神戸大学経営学部卒業後、メガバンク系コンサルティング会社など複数の企業で 手腕を発揮し、2015年に独立、株式会社展示会営業マーケティングを創業する。 展示会のプロフェッショナルとして、展示会主催者や出展企業などに そのノウハウを伝えている。

自前オンライン展示会開催のススメ

セミナーで清永氏が強く勧めていたのが「自前オンライン展示会」の開催です。大手企業であればプライベート展示会は馴染みのある施策かも知れませんが、中小企業にとってはかなりハードルが高く感じてしまいます。特に「どのように来場者を確保すればよいのか」といったところで思考が停止してしまいがちです。

しかし、中小企業であれば大手企業ほどたくさんの来場者数を確保しなくても良いわけですし、オンラインでの開催であればコストもほとんど掛かりません。まずは失敗してもいいから行動してみましょう、と清永氏は言います。

自前オンライン展示会開催の手順

自前オンライン展示会開催の手順上記スライドは、自前オンライン展示会開催のための具体的な手順です。集客のために、2のプレスリリースを行う場合は、PR TIMESやアットプレスなどのプレスリリース配信サービスを利用することになるので、多少の費用はかかります。

過去に展示会出展した際に獲得した名刺など、一定数のリードを自社で保有している会社であれば、リードへオンライン展示会開催のお知らせを一斉告知するだけでそれなりに参加者が集まる場合があります。その場合は集客コストはゼロという形になります。

機能的ドメインで自社の魅力を伝える

次に清永氏が話していたのが、自社の魅力を物理的ドメインではなく機能的ドメインで伝える、ということです。合同オンライン展示会では、リアルの展示会とは違い、自社ブースへの呼び込みが行えないため、来場者が展示パネルの情報を見てアクセスしてくれるのを待つしかありません。

しかし、中小企業の場合、ネームバリューがないため、展示パネルに会社名を記載しても興味を持ってもらえる可能性が低いです。そこで、機能的ドメインを軸に自社の魅力を明文化し、展示パネルに記載することで興味を持ってもらえる可能性が高まる、ということです。

上記スライドは、物理的ドメインを機能的ドメインに転換した例です。個人的には「ネジ製造業」を「緩み撲滅業」と表現していたことに一笑いしてしまいました。ここでは多少ユニークな要素を入れるセンスの必要性も感じました。

1分紹介動画を作ってみる

オンライン展示会への出展機会が増えると、短い時間で自社の魅力を伝えなければならない場面が増えます。そのために「1分紹介動画」というものを作ってみることを清永氏は勧めています。

その際に、機能的ドメインによる自社の魅力を考える際に使用するコンセプトシートをもとに作ると効率的、ということでした。

出展コンセプトシートこちらが出展コンセプトシートです。赤字で記載されているのは清永氏の会社の例です。

1分紹介動画次に、自社の1分紹介動画を作ってみます。この際に、先ほど作成した出展コンセプトシートの順に従ってストーリーを考えると効率的とのことです。

さらに詳しく学びたい方は清永氏のYouTubeチャンネルへ!

オンライン展示会について、さらに詳しく学びたいという方は、清永氏のYouTubeチャンネルを是非ご覧ください。上述したようなオンライン展示会出展のノウハウをはじめとした動画が多数アップされています。

展示会営業ちゃんねる_清永健一公式

以上、2020年9月29日(火)に開催した「オンライン展示会で確実に成果を上げる3つの鉄則セミナー」のご紹介でした。

これを機に合同オンライン展示会だけでなく、自前オンライン展示会の開催も検討してみてはいかがでしょうか。展示会出展支援のご要望があれば、是非清永氏へご相談ください。

「ものづくりビジネスセミナー 製造業のためのライティング 」開催レポート

テクノポートの廣常です。2020年9月3日に、大阪産業創造館にて弊社「技術ライティング事業」による「ものづくりビジネスセミナー 製造業のためのライティング 自社の製品・技術を文章でわかりやすく伝えよう」が開催されました。

昨今では新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、Webでの情報収集がさらに活発化しています。膨大な情報が溢れているWeb上において自社の製品・技術を効果的にアピールするために、今こそ問われているのが文章を書く(ライティング)能力です。

そこで、製造業に特化したライティングのコツをお伝えする場として当セミナーが開催されました。ライティングを課題とされている企業など多くの方が参加され、ありがたいことに会場は満席となりました。今回はその様子をレポートとしてお送りします。

技術ライティング事業とは

弊社テクノポートでは、2020年4月より新サービス「技術ライティング事業」を展開しています。技術ライティング事業とは、製造業の現場経験や工業に関する知見を持つライターによる、技術系企業のためのコンテンツ制作サービスです。過去のモノカクの記事でも紹介されていますので、こちらもご参照ください。

発注者向けの専門的な内容から、学生向けの採用コンテンツまで、用途とターゲットに応じて正しくわかりやすく書きあげられるのが、技術系ライターの強みです。テクノポートがもつ、製造業専門のデジタルマーケティングのノウハウと掛け合わせることで、マーケティング戦略からコンテンツ制作まで一気通貫での支援が可能となりました。

講師紹介

石川玲子


工学部機械工学科を卒業後、自動車業界や家電業界で機構設計系のエンジニアとして勤務。第二子出産を機にフリーライターとして独立し、工業系に特化したライターとして活動中。

執筆実績:リコー(展示会出展記事)、協和電装(採用ページ)、ミスミグループ、他
書籍執筆実績:図解 ヤバすぎるほど面白い物理の話(宝島社)

セミナーの様子

14時から約2時間にわたり、石川さんによる技術ライティングセミナーが行われました。セミナーの内容は大きく「書く前に意識すべきこと」「書くための準備」「実際に書く際のポイント」と段階的な構造になっており、合間には新製品のPR文章を作成するなどの実践的なワークも行われました。

書く前に意識すべきこと

まず、文章を書く上で最も大切なことは「他者目線」に立つこと、つまり他者(世間一般)に理解してもらえるような文章を書くという意識をもつことが重要だと石川さんは述べます。

以下に、「他者目線」に立って修正した文章の例を挙げます。

ここから分かるように、「専門用語や仲間内しか通じない言葉、省略された語を避けること」「伝えたいこと(製品の強み・どんな価値が提供できるか 等)を整理し、具体的に記載すること」が他者に理解してもらう上で重要となってきます。

書くための準備

上記のことを意識した上で、文章を書く準備に入ります。

まずはじめに、

  • 誰にどんな目的で読んでもらうのか(企業か個人か、発注先の探索か求人応募なのか 等)
  • 書く内容(製品紹介、サービス紹介、研究開発史 等)

を決めます。そうすることで、「文章の型」と「文章中に盛り込むべき情報」が自ずと決まる、と石川さんは述べます。セミナーでは型と情報の組み合わせがいくつか紹介されましたが、以下にその一例を挙げます。

例) 書く内容が「製品紹介」の場合

このように情報を型に沿って並べていくことで、誰でも分かりやすい文章を書くことができます。
また、伝わりやすい文構成として「3分割」という考え方も紹介されました。興味のある方はこちらをご覧ください。

実際に書く際のポイント

準備段階を経て、ようやく書く作業へと入っていきます。

文章を整える基礎として、以下の6つのポイントが挙げられました。

1.短く言い切る(一文を長くせず「。」で区切る)
2.語尾をそろえる(「だ、である」または「です、ます」)
3.主語は文章のはじめに出す
4.修飾語と被修飾語はくっつける
5.同じ単語を連用しない
6.箇条書きや表も活用し、シンプルに表現する

これらの項目を全て同時に意識しながら文章を書こうとすると難しいかもしれません。文章を書き始める際、2〜5までの項目は一度置いておき、書き終えて読み返す時に確認されることをおすすめします。

また、公開前に今一度確認すべき項目として文章のマナーや法律に関しても触れられていました。学んだその瞬間から活用できる実践的なテクニックが多く、参加者の方も頷きながら積極的にメモを取られている様子が見受けられました。

セミナー終盤、石川さんはライティング能力を鍛える手段として「他人の文章を批判的に見て、文章の粗さや分かりにくい部分を探す。そしてなぜそう感じたのか、自身で言語化すると良い」と述べられました。 当セミナーで挙げられていたポイントを一つの指標として、他人の文章の良い点・改善点を探してみたり、試しに短い文章を書いてみたりすることから始められてはいかがでしょうか。

Q&A

セミナー中には参加者の方からの具体的な質問も多く寄せられました。以下にいくつかの質問と石川さんの回答を掲載いたします。

文章量について

Q. ブログ記事などを書く際、文字数のボリュームはどれくらいが良いか。

A.1000文字〜3000文字の間に収めるのがベスト。

  • 1000文字程度:読者にさらっと読んでほしい場合
  • 3000文字程度:読者に深く読んでほしい場合 (電車での一駅分、とイメージ)

これ以上はなかなか読まれず、重たい印象を与えてしまう。また、1000文字が厳しい場合は最低限500文字は超えないと軽い印象となる。

Q. 記事の文章量が多くなり過ぎてしまう場合どうすればいいか。

A.文章量が多くなる要因と対策方法として以下を薦める。

要因1:書きたい内容に関して熱が入りすぎてしまい、余計な文章・表現が多い。
対策:一通り記事を書いたのち、一晩置いてから推敲する。これが難しい場合はせめて一度別の作業をした後に取り組むなど頭を冷やしてから行う。 重複している表現がないかどうか等の見直しを。

要因2:1つの記事にテーマを複数盛り込んでいる。
対策:1記事1テーマが基本。別記事に分けるなどの対策を。

Q. 逆に文章が思いつかない場合は?

A.文章は自分の中に素材が集まっていないと書けない。業界や製品知識、自分の考えなど情報量不足を疑い、そこを増やしてみることから始めてはどうか。

キャッチコピーについて

Q. キャッチコピーはどのように考えたら良いか。

A.以下の方法を紹介する。

  • 文章の見出しとしてつける場合
    先に本文を書き、その後に全体の内容を鑑みて、「文章の要約」となる見出しを考える。
  • 製品につける場合
    単語(その製品の特徴を表す言葉、売りにしていきたい部分等)を思いつく限り単語カードに書き、机に全て並べる。そこからピンとくる組み合わせを探す。あまりにも曖昧な表現は製品の魅力が通じなくなるため、実態が伝わるような具体的な表現を。

ライティングについてさらに興味を持たれた方は、石川さんの記事もお読みいただけたらと思います。

以上、2020年9月3日に開催した「ものづくりビジネスセミナー 製造業のためのライティング 自社の製品・技術を文章でわかりやすく伝えよう」のご紹介でした。技術ライティング事業では、今後も継続してセミナーを開催する予定です。当事業やセミナー開催については、Webページ並びにご登録(ライター希望の方はこちら)いただければメールにて、随時お知らせ致します。
ご質問等ありましたらお気軽にお問い合わせください。

「製造業・エンジニアのための技術ライティングセミナー」開催レポート

テクノポートの菊地です。2020年4月28日に、「技術ライティング事業」のライター陣による「製造業・エンジニアのための技術ライティングセミナー」を開催しました。

技術ライティングを導入したいという企業の方から、技術ライターとして活躍していきたいという個人の方まで、本当にたくさんのご参加を賜りました。日程が合わず…という方もいらしたので、今回は簡単にはなりますが、セミナーレポートをお送りします。

技術ライティング事業紹介

技術ライティング事業とは、製造業の現場経験や工業に関しての知見を持つライターによる技術系企業のためのコンテンツ制作サービスです。過去のモノカクの記事でも紹介されていますので、こちらもご参照ください。

発注者向けの専門的な内容から、学生向けの採用コンテンツまで、用途とターゲットに応じて正しくわかりやすく書きあげられるのが、技術系ライターの強みです。テクノポートがもつ製造業におけるデジタルマーケティングのノウハウと掛け合わせることで、マーケティング戦略からコンテンツ制作まで一気通貫での支援が可能となりました。

講師紹介

馬場吉成

機械設計技術者と特許技術者を合計で16年経験。東京都在住。ライター歴約10年。製造業向け記事、テクノロジー全般を執筆。工業、製造業、最新のテクノロジーについて、元エンジニアで製造の現場を直接知るライターとして、正しい知識と情報で、専門の方から一般の人まで分かりやすく執筆することが得意。

メディア執筆実績:fabcross for エンジニア、リコー 3Dプリンタージャーナル、デイリーポータルZ、他

石川玲子

工学部機械工学科を卒業後、自動車業界や家電業界で機構設計系のエンジニアとして勤務。第二子出産を機にフリーライターとして独立し、工業系に特化したライターとして活動中。

執筆実績:リコー(展示会出展記事)、協和電装(採用ページ)、ミスミグループ、他

書籍執筆実績:図解 ヤバすぎるほど面白い物理の話(宝島社)

第1部 技術ライティングとは

第1部は馬場さんによる「技術ライティング」の説明と必要性についてです。「技術ライティングで製造業を盛り上げます」という熱い想いのもと、国内の(特に中小規模の)製造業が、いかに自社のアピールができていないか、どうしてアピールをする必要があるのか、製造業のアピールの難しさなどについて馬場さんの経験も踏まえて説明がありました。

技術ライティングは、感動を生むような文章ではなく、技術者や就職活動中の学生といったそのコンテンツの読み手のレベルに合わせて専門的な文章を書く技術です。そのためには、基本的な工業的な知識や技術への理解が不可欠です。世に数多くいるライターでは対応ができないからこそ、「技術系ライター」の需要は高まっています。

セミナーに参加できなかった方は、こちらで馬場さんの熱い想いを語っていますので、ご一読頂けたらと思います。

第2部 製造業エンジニアのためのライティング講座

続いて第2部。石川さんによる具体的なライティングのノウハウについてです。講座の内容は大きく分けると、文章を書く上で必要な「目線」「準備」「ルール」の3点です。

文章を書く上で必要な「目線」

文章は「目の前にいない」「知らない人」に「理解してもらう」ためのものだと、石川さんは話し始めます。つまり、「察してもらうことが前提」であったり、「仲間内だけに通じる言い回し」であったり、「意味がない言葉」は文章として通用しないということです。

《例》

  • 情報を省略して表記する
    「港区のショールーム」→「東京都港区〇〇にあるショールーム」
  • 仲間内だけに通じる言い回し
    「リャンテ」→「両面テープ」
  • 意味がない言葉
    「地域と未来に貢献する」→「利益のうち〇%を地元で青少年の育成を行う団体に寄付する」

書き手である自分がわかることは当たり前ですが、「他者目線」をもって書くことが必要です。

文章を書く上で必要な「準備」

「文章を書くのは料理に似ている」と準備の話が始まります。

《文章を書く》ー《料理をする》

  • 対象を確認する:家族4人に
  • 何を書くか決める:カレーを作る
  • 材料をそろえる:カレーの食材を揃える
  • 作業を行う(文章を書く):調理する
  • 提供する(公開するためにチェックを行う):異物の混入がないかを確認し、皿に盛る

特に技術ライティングの場合は、「誰」がターゲットになるのかを抑えることが重要です。同じテーマ(材料)であってもターゲットによって事業や技術に対しての理解度が大きく異なり、理解してもらうための書き方が変わってくるからです。また、何を書くかを明確にして絞ることも準備に欠かせません。あれもこれもと一つの記事に詰め込むんでしまうと、話題が広がりすぎてしまい、伝えたいことが曖昧になってしまいます。

そして、書く内容を決めたら、必要な材料(情報)を揃えます。この準備ができて、やっと「書く」というステップへ進むことができます。

文章を書く上で必要な「ルール」

3分割

文章を書くときの構成やつくりには、様々なものがありますが今回は「3分割」という考え方が紹介されました。

《例》

文章を書くことが苦手な人に多いのが「解釈」だけを取り上げてしまうケースなのだそうです。

これでは、そもそも何の話なのか、だからどうなのか、など話の前後が見えず伝えたいことがわかりません。書き手の意見である「解釈」が突然現れている為です。では、この解釈に至った「事実」と、解釈を受けての「行動(判断)」はなんだったのでしょうか。

3点が揃うことで伝えたいことが、理路整然となり、わかりやすく書き表すことができるようになります。

文章を整える基礎

  1. 短く言い切る(一文を長くせず「。」で区切る)
  2. 語尾をそろえる(「だ、である」または「です、ます」)
  3. 主語は文章のはじめに出す
  4. 修飾語と被修飾語はくっつける
  5. 同じ単語を連用しない
  6. 箇条書きや表も活用し、シンプルに表現する

小学校の時に習ったような覚えがある6つのポイント。この6つを満たすだけでもかなり読みやすく、読み違いの少ない文章になるのではないでしょうか。

各種法令・モラル

公に出す文章なので、各種法令に抵触しないことや社会性をもつことも欠かせません。

《例》

  • 薬事法(NG例:医薬品ではないのに「血圧が下がる」)
  • 景品表示法(NG例:通常価格なのに「特価」)
  • 特定商取引法(NG例:ステルスマーケティング)
  • 著作権法(NG例:コピペ、写真流用、他社ロゴの使用)
  • 雇用機会均等法(NG例:18歳~25歳の男性募集)

法に触れていなくても、差別的な表現やモラル・社会性に欠ける表現は、炎上リスクや企業イメージの低下に繋がります。読み手の主観による部分もありますが、世の中の価値観は急速に変化し、多様化しているので細心の注意を払うとともにアンテナを高く張っていく必要があります。

もっと詳しく知りたいという方は、石川さんの記事をお読みいただけたらと思います。

簡単にはなりますが、2020年4月28日に開催した「製造業・エンジニアのための技術ライティングセミナー」についてご紹介をしました。ありがたいことにご好評を頂けたので、今後も内容を変えつつ、継続してセミナーを開催する予定です。当事業やセミナー開催については、Webページ並びにご登録(ライター希望の方はこちら)いただければメールマガジンにて、随時お知らせ致します。

ご質問等ありましたらお気軽にお問い合わせください。

【セミナーレポート】由紀ホールディングス 大坪社長の講演

こんにちは、テクノポートの永井です。2019年10月24日(木)に「第6回 TECHNO-PORT TALK NIGHT」を開催しました。

今回は由紀ホールディングス株式会社の大坪社長にご講演いただきました。由紀ホールディングス株式会社:http://yuki-holdings.jp/

大坪社長は由紀精密の三代目として事業を継承し、どん底を経験した後に企業を急成長させています。現在は由紀ホールディングスを立ち上げ、技術ベースのM&Aを行いながら、さらなる成長を目指しています。2018年にはForbes主催のスモールジャイアンツアワード7社にも選定され、大坪社長の経営姿勢は各業界から注目を浴びています。

そんな大坪社長に

  1. 事業継承の話
  2. ホールディングスの話

をしていただきました。講演の後半では3代目若手後継者3名から様々な質問も行っていただき、学びのある講演になったと思います。

1、どん底から這い上がるために、技術の見せ方を工夫した

由紀精密の創業は家族経営のネジ屋さんでした。テレホンカードのカードリーダ用のシャフトで売上を拡大するも、時代とともに受注数は減り続けました。

別の企業で働いていた大坪社長も実家の危機ということで、由紀精密に入社し家業を手伝うことに。製造の受注が少ないなか、大坪社長が前職で行っていた設計技術を生かした開発部を立ち上げました。開発部は設計から加工、検査まで一貫して製造できる体制とし、仕事の幅を広げることで生産効率が上がりました。

さらに、体制を整えだけではなく「自社の強みを生かす」ために、お客様にアンケートをとったそうです。お客様からは「由紀精密の精度は良い」という意見を多くいただいき、その強みを生かすために航空産業への参入に挑戦します。展示会で人に見てもらうためにはインパクトが必要になります。大坪社長は社員と一緒に3DCADを使いながら「技術にインパンクを出すためにはどうすればよいか」を検討し続けました。その中から画像にあるように、直径12mmのインコネルに複雑な加工を行った製品が生まれました。

展示会場の配置は偶然にも後ろが三菱重工で、MRJ(現:スペースジェット)の展示を行っていたため、由紀精密も航空機の部品を作っていると勘違いされるという幸運も味方し、展示した製品が宇宙機関のエンジニアの目に留まることに。それが問い合わせに繋がり、見事航空機産業への参入を成功させました。今でははやぶさ2の部品や、こうのとりの小型回収カプセルの共同開発をJAXAと行えるレベルまで成長を遂げています。

自社の強みを知り、その強みを生かせる業界を見つけ、そして強みを視覚的に伝えられるように工夫した結果、成功に至った素晴らしい例だと思います。

由紀精密は2017年には宇宙産業を支える町工場として、皇太子殿下(現・天皇陛下)が視察に来られました。また、2018年にはForbes主催のスモールジャイアンツアワード7社に選出されるほど素晴らしい企業に成長しています。

由紀精密のニュースページ:http://www.yukiseimitsu.co.jp/170308/

2、ものづくりで世界を幸せに。大坪社長がホールディングスを作る理由

日本には世界に通用する素晴らしい技術があります。そんな日本の技術を融合させることで、温暖化や水不足、科学の実験装置など世界の大きな問題を解決できる可能性は十分にありますが、人口が減少する国内環境の中でそれは難しい状況です。

技術の融合を促していくには「技術を発展させてながら継承する」ことが必要になりますが、そのためには、研究開発や海外進出における様々なノウハウが必要不可欠です。そのノウハウを持っていた由紀精密は、技術のある企業と共有するためにホールディングスを立ち上げ、1社では難しかった「技術を発展させてながら継承する」ことを可能にしました。

大坪社長がM&Aのときに考えるのは「技術のみ」です。企業が保有している技術を見て、その技術を使った未来が想像できるか否かがM&Aをする基準の一つとしているそうです。例えば、ワイヤー技術なら超電導ワイヤーや宇宙用ハーネスなど、超精密加工なら超小型スラスタや世界最速ピストンの開発などの応用技術が見えてきます。

大坪社長はそういった未来を想像するために、様々な学会に所属し、論文ベースで新しい技術情報を仕入れることに余念がありません。だからこそ、数十年先をみた技術を軸としたM&Aができているのです。

由紀ホールディングはあくまでグループ企業の足りないところを補填するためのブランドで、光ってほしいのは所属企業、ものづくり業界のLVMH(ルイヴィトンモエヘネシー)モデルを目指しています。例えば、LVMHグループの中には、ブルガリやタグホイヤー、ドンペリなど様々なブランドがありますが、ブルガリと聞いてLVMHを想像する人がいないように、あくまでも所属企業が光ってくれることが大切だと大坪社長はおっしゃっていました。由紀ホールディングスは2017年に設立し、技術をベースにM&Aを行う珍しい企業です。技術を基準に選んだM&Aが成功するかどうか、今後の由紀ホールディングスの行方が楽しみです!

3、3代目若手後継者3名からの質問と回答

3代目若手後継者である

  • 株式会社栗原精機 栗原 匠さん(機械加工)
  • 株式会社石井精工 石井 洋平さん(ゴムの金型)
  • 株式会社佐藤製作所 佐藤 修哉さん(ロウ付け)

に質問を頂きました。

株式会社栗原精機 栗原 匠さん

Q:1社依存の量産体制から開発へのシフトはどのように切り替えを行ったんでしょうか?弊社も開発を行いたいけれど、なかなかできない状況です。

A:由紀精密の試作開発は実は仕事の一部なので、社内製品を自社のコストとしてやっているのではなく、お金を頂いての開発を行っています。というのも切削加工だけではぜんぜん売上が伸ばせなかったんですね。私は機械設計を自分でもやっていたので、機械設計の力でなんとか売上を立てるために「設計を仕事として」受注し、開発の営業を伸ばしていきました。設計したもので、切削加工が必要なものもあるので、切削加工の分野も合わせて伸びていった形です。なので、順調にシフトさせていったと言うよりは、やらざるを得ない環境だったということです(笑)。

株式会社石井精工 石井 洋平さん

Q:これまで社長のトップダウンで行ってきたのですが、人数が増えると社内の把握が難しくトップダウンではうまく回らなくなってきました。今後はみんなで考えられる企業にして行きたいと思いっています。
どのようにしたらうまくいくでしょうか。

A:私の場合は権限を渡しています。事業ごとに部長がいて、ほぼ全て任せています。私は機械に向かっている方が好きなので。
実際には私も試行錯誤中です。人事(HR)担当を入れたり、1on1を取り入れたりと試行錯誤しながら、考えられる社員を育てて行きたいと思っています。

株式会社佐藤製作所 佐藤 修哉さん

Q:いろいろなことをやっていますが、そのエネルギーや情熱どこからくるのでしょうか?

A:私の場合は、何もしないと本当に潰れる環境だったのが大きいです。せざるを得なかったという言い方が正しいですね。
ただ、私自身もの作りが好きで、おもしろい技術をもっている人はリスペクトしていますし、そういう人に出会うとエネルギーが湧いてきます。

Q:ビジョンが明確になっている企業はすごくいいと思いますが、やはり従業員との温度差はあると思っています。そこのギャップはどのように埋めていますか?

A:それは私も聞きたいですね(笑)。私は 完全に従業員とのギャップを埋めることは目指さなくて良いと思っています。休みや収入、仕事内容などいろいろなモチベーションで仕事をする人がいるので、その人たちを肯定しながらも、伝える努力は怠らないようにしています。できるだけ時間を使って自分の思いを伝えいます。そうするとだんだんベクトルが合ってくると思います。

まとめ

技術力の高い企業を集めた由紀ホールディングスが成長していくことで、近い未来、世界の大きな問題を解決するための糸口が見えてくるかも知れません。由紀ホールディングスはLVMHグループをモデルとしていますが、今後は由紀ホールディングスをモデルとした様々企業がでてくるでしょう。

技術ベースの大坪社長の考え方は日本の製造業の支えになると思います!

過去の講演者
第1回:株式会社吉原精工 吉原博会長
第2回:株式会社レボコミュニティ 千野社長
第3回:HILLTOP株式会社 山本副社長
第4回:株式会社浜野製作所 浜野社長
第5回:株式会社キャステム 戸田社長