製造業における成功事例から学ぶ、効果的なビジネスモデル8選

テクノポートの渡部です。中小の製造業の事業形態として「下請けからの脱却」ということが騒がれ始めてかなりの年月が経ちますが、今までのやり方で進めていても進展は少ないと感じている経営者も少なくないと思います。また、現状の人材難ではうまくやらないと人材も採れなくなってきています。これからの時代を生き残っていくために、これからの製造業のビジネスモデルについて、成功事例を交えながら考えてみたいと思います。

ビジネスモデルを明確にしておくこと

会社のビジネスモデルを明確にしておくことは、成長し続けるために戦略的な方向性を確保するための重要なステップです。なんとなくの経営を続けていても先のステップにはなかなか進めません。

先のステップは企業規模を拡大させるだけではありません。今の従業員の生活を守っていくために、安定した経営で会社を長く継続させていくことを目指すというのも、立派な経営方針です。

どちらにしても、会社が向かっていく方向性を決めておくことは、これからの経営を考える上でも、社員のモチベーションを保つという点においても重要な意味を持ちます。

成功しているビジネスモデル8選

いきなり今後の自社のビジネスモデルを考えるのも難しいと思います。そこで、成功していると有名な会社や、弊社でお付き合いのある会社の成功事例をもとに、参考になるビジネスモデルを紹介します。

1:自社の技術と向き合い、既存市場を拡大させる

自社の強みやコア技術を活用して、既存の市場を拡大したり、新たなニッチな市場を開拓したりするビジネスモデルは、最もスタンダードかもしれません。これには、自社の技術を何か発展させるという考えではなくて、その技術の根本の部分を見つめ直し、どのように市場に周知させるかについての戦略が必要です。

ビジネスモデル成功事例:井山工作所有限会社

井山工作所有限会社は静岡県で複雑形状の鋳物加工をしている会社です。機械加工の中でも「複雑形状の鋳物」、しかも素材も主に「FC系」と絞ってWebマーケティングをすることで既存市場での売り上げを拡大させています。

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2:ターゲットを広げて、顧客を増やす

ビジネスモデルの改革として、新しい市場や顧客層に製品やサービスを提供する方法です。新たな市場への展開には、自社の技術、製品やサービスを適応させる必要があります。これには、新しいターゲットに対して市場調査や競合分析などのマーケティング戦略の立案が不可欠となります。

ビジネスモデル成功事例:株式会社富士産業

株式会社富士産業は、自社の主業務である鋼材販売のPRも残しつつ、新たに事業展開していた製作金物をWebサイト上では全面的にPRしました。狙っていた設計事務所やデザイン会社などから引き合いを獲得しており、製作金物の事業部がうまくいくことで主業務である材料販売の事業も伸びています。

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3:自社製品の開発でメーカーへの道を開拓する

企業が自社の製品を開発し、メーカーとしての第一歩を踏み出すことも、新たなビジネスモデルの一つです。製品開発には市場調査、製品設計、製造、マーケティングなどの各ステップを計画的に進める必要があります。

ビジネスモデル成功事例:株式会社日翔工業

株式会社日翔工業は、自社のスパッタリング技術を応用し、チタンをナノ単位でコーティングすることによって唯一無二の光沢を放つグラスを制作しています。クラウドファンディングを何度も成功させ、さまざまなメディアにも取り上げられています。

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4:デジタルを積極的に取り入れて経営革新を進める

デジタル化は現代のビジネスモデルに不可欠な要素であり、製造業でも例外ではありません。デジタル化を推進するDXの動きは以前からありましたが、コロナ禍以降その動きはさらに加速しています。デジタル技術を活用して業務プロセスを効率化したり、顧客体験を向上したり、新しいビジネスモデルを生み出す一つのきっかけになります。中には自社の業務効率改善のために始めたデジタル化のシステムをパッケージ化して販売することで、新たなビジネスモデルを形成した会社もあります。

ビジネスモデル成功事例:旭鉄工株式会社

旭鉄工株式会社はIoTを積極的に活用することで生産性を大幅に改善し、労務費を年間4億円節減することに成功しました。そのノウハウをそのまま詰め込んだシステムをパッケージ化し、200社以上の会社に導入されています。

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5:他社と協業することで事業の幅を広げる

1社だけで今後のビジネスモデルを構築することが難しい場合、他の企業や組織との連携を深めることで、新たな市場へのアクセスや共同開発、コスト削減などを模索するビジネスモデルを目指すこともあります。近年ではSNS等の発達により、他社とつながりやすくなっており、自社だけではできないことも、他社と協業することで新たな事業を生み出すことができます。

ビジネスモデル成功事例:京都試作ネット

京都試作ネットは2001年の設立された、合計で30社以上からなる「試作に特化したソリューション提供サービス」を専門とするサイトです。「試作に特化したソリューション提供サービス」を専門として、クライアントからの課題解決に取り組んでおり、今では「ものづくり」だけでなく、その先の活動に向けていろいろと事業展開をしています。

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6:異業種とのコラボレーションで新たな事業をスタートさせる

京都試作ネットのように製造業との協業ではなく、異業種と組むことによって、共同で新しい製品やサービスを開発するアプローチもあります。たとえば、製造業がIT企業と協力することで、スマートファクトリーやIoT(モノのインターネット)を活用した製品開発などが可能になります。異業種とのパートナーシップは、既存の事業領域を超えて新たな市場を開拓するのに有用な手段であり、新たなビジネスモデルが生まれるきっかけにもなります。

ビジネスモデル成功事例:株式会社中村製作所

株式会社中村製作所は、リーマンショックで売り上げが大幅に落ちてしまう中、自動車メーカーや大学、飲食業など多様な業界・業種が集う展示会に出展しました。そこからつながった外部のプロダクトデザイナーと手を組むことで、新たなブランドを生み出し、今では自社ブランドとしてさまざまな自社製品を生み出しています。

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7:M&Aによる事業拡大と事業譲渡

M&A(合併・買収)は、企業が新しい市場に参入したり、新たな技術や資源を獲得したり、競争力を強化したりできるビジネスモデルです。これにより、ものづくりの枠にとらわれず、新しいビジネス領域へ進出できます。しかし、M&Aは大きな投資を伴うため、適切な計画と実施が必要です。また、逆に後継者問題で悩んでいる場合は、M&Aを受けて事業そのものを譲渡し、自社技術を後世に残していくという方法もあります。

ビジネスモデル成功事例:株式会社セイワホールディングス

株式会社セイワホールディングスは、事業承継を通じて後継者不足の課題を解決し、製造業のネットワークを作ることで、顧客に対しての幅広い提案と新しい価値提供に挑戦しています。すでにグループ会社に10社あり、世界で一番働きやすい町工場ネットワークの形成を目指しています。

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8:海外展開しグローバル企業を目指す

海外に進出することで、新たな市場や顧客へのアクセスが可能になり、ビジネスが拡大するビジネスモデルです。海外市場にビジネスのチャンスを広げる場合、異なる文化やニーズを持つ消費者からフィードバックを得ることができ、それにより製品やサービスを改善するチャンスにもなることがあります。ただし、海外進出にはつきものである言語や文化、法制度の違いなどの困難を乗り越えるためには、十分な準備とリソースが必要です。

ビジネスモデル成功事例:東京鋲螺工機株式会社

東京鋲螺工機株式会社は、微細なタップタイトねじの金型を手がける企業です。Webサイトは日本語以外に英語や中国語にも対応しており、さまざまなサイトから被リンクを獲得することで、日本語だけでなく英語でも検索上位にランキングされるようになっています。また、展示会など自社を海外に向けて露出する機会を増やし、中国、アメリカ、台湾など、どんどん海外の企業との取引を増やしています。

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まとめ

いかがだったしょうか。将来のためにビジネスモデルを確立させると一口に言っても、そのモデルは無数にあります。今回紹介した成功しているビジネスモデルはあくまでも一例ですが、自社の今後のビジネスモデルの参考になるものがあれば、幸いです。

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コスパのよい特許出願 その2

弁理士の亀山夏樹です。小職は、中小企業200社以上の相談実績があります。今回はコストパフォーマンスのよい特許出願について、これまでのお客様の相談内容を振り返りながら考えていきたいと思います。

1.とある日の特許相談

大昔に、別の弁理士さんに依頼して特許出願を出したことのあるお客様(その1の記事とは別のお客様です)。第1回目の面談では、特許取得がテーマでした。面談では、発明の概要を伺うのですが、弊所では、それ以外のことも把握します。その理由は、無駄な特許をなくすためです。言い換えれば、特許のコストパフォーマンスを向上させるためです。

そこで、弊所の面談では、発明に至った背景はもちろんのこと、これまでのマーケティング活動についてもヒアリングします。そのお客様は、マーケティング活動をしっかりとされている方でしたので、お客様のお話を聞いているかぎり、その発明は市場に受け入れられる可能性が十分にありそうだ、と思いました。さらに、そのお客様の規模からすると、大化けする可能性もあるようです。

2.ところで、ビジネスモデルは?

お客様:だから、このアイデアを特許で防衛したいのです!

かめやま:ところで、このアイデアを使って、どのようなビジネスモデルを考えていますか?

お客様:え・・・!?

かめやま:「誰にどのような形でアイデアを提供し、誰から売り上げを立てるか?といった仕組み」です。一緒に検討しましょうか?

お客様: お願いします。

(数10分後)

かめやま:考えられるパターンは、A~Bの2つの案。ビジネスモデルAであれば、アイデアの要素アが肝になります。ビジネスモデルBであれば、要素イが肝になります。2つをミックスすると、最初にモデルAで回した後、モデルBで回す・・・ということも可能です。

お客様: 驚きました。モデルAのようなものは、取引先からもチラっと言われましたが、モデルBや、2つのモデルのミックスもありえるのですね。

かめやま:そうなんです。大切なことは、ビジネスモデルの肝となる要素を特許でガードするということです。ビジネスモデルAでいくなら、アの特許権をとることが必要なりますし、ビジネスモデルBでいくなら、イの特許権をとることが必要になります。さらに、両にらみで行くのであれば、ア・イの両方を抑える必要があります。逆に言えば、ビジネスモデルAでいくなら、イの特許権をとる必要はありませんよね。

お客様:確かにこれなら、無駄な特許権は減らすことをできますね。

かめやま:特許は投資です。ビジネスモデルを考えながら、肝となる部分(ガードすべき優先度の高い部分)から特許で抑えていく、という観点が重要です。

お客様:これなら無駄な特許は減りますね。

その後・・・

結果的に、ビジネスモデルA・Bの統合案でいくことになったため、それぞれビジネスモデルの肝となる発明ア・イについて特許出願を済ませました。そのお客様は、いくつもの商談が前に進むこととなりましたが、その1つの商談相手は、お客様よりも大きな規模の企業。ですが、先方が欲しがっている商品は、要素アのアイデア。こちらは、すでに特許出願済です。特許出願済の交渉力により、お客様の立場を維持したまま商談に臨めそうです。

3.まとめ

1、特許権や商標権で抑えたいところはどこ?

特許権や商標権で抑えたいところの1つは、ビジネスモデルの収益源。

2、収益源はどこ?

収益源が何になるかはビジネスモデルによっても変わる。

市場浸透の速度もビジネスモデルによっても変わる。

3、自社にとって実現可能なモデルは?

営業活動を通して、どのビジネスモデルが自社にとって望ましいかを検討する。

4、当初の目論見は外れた場合の準備をする

営業活動を通して、出願前の目論見が外れる場合もある。このため、弁理士と適宜情報交換が必要。

5、必要に応じて次の手を打つ。

当てが外れれば、補強のための追加出願をすることも・・・。そうでなくとも、次の一手(アライアンスなど)のための契約やその交渉準備・・・。場合によっては、こちらの交渉力を上げるために別の出願を行うことも。

何かの参考になれば幸いです。