世界の製造業「ベトナム」

テクノポートの稲垣です。若い年齢の人口が豊富なベトナムは、労働力に長けており、製造業の進出を考えている企業も多いのではないでしょうか。

今回は「ベトナムの製造業」の実態について紹介します。ベトナムへの進出を検討している方や、ベトナムの製造業の現状を知ることができますので、ぜひ参考にしてみてください。

まずはこちらの表をご覧下さい。


出典:2020年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(ジェトロ海外ビジネス調査)

上記の表は、JETROが行った日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査から引用したものです。左の列に記載されている国名は日本企業が次の事業拡大先として選んだ地域が順に並んでおり、ベトナムは中国に次いで第2位にランクインしています。

日本総研の調査によると、ベトナムが日本企業からの注目を集める理由として、中国の輸出管理規制強化を考慮したチャイナプラスワン(中国以外の国へ拠点を設けリスクを分散させる経営戦略)が盛んになってきたことが挙げられます。

今回は以上で紹介したように、中国に次ぐ日本企業の進出先として大きな注目を集めるベトナムの製造業を日本企業の視点から掘り下げていきます。

参考資料

[1] 2020年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(ジェトロ海外ビジネス調査) | 2021年 – 記者発表 – お知らせ・記者発表 – ジェトロ
[2] チャイナ・プラスワンで優位に立つベトナム|日本総研

基本情報

  • 正式名称:ベトナム社会主義共和国(Socialist Republic of Viet Nam)
  • 首都:ハノイ(Hanoi)
  • 元首:グエン・スアン・フック(2021年4月~)
  • 首相:ファム・ミン・チン(2021年4月~)
  • 通貨:ドン(1ドン=0.0047 円 ※2021年4月27日時点)
  • 人口:約9759万人
  • 面積:約33万km2
  • 公用語:ベトナム語
  • 宗教:仏教(80%)、キリスト教(9%)、イスラム教、カオダイ教、ホアハオ教、ヒンドゥー教
  • 平均寿命:男 70.9歳、女 76.2歳

参考資料

[3] ベトナム基礎データ|外務省
[4] ベトナムの基本情報|地球の歩き方
[5] Vietnam | History, Population, Map, Flag, Government, & Facts | Britannica
[6] ベトナム社会主義共和国主席 – Wikipedia
[7] ベトナムの首相 – Wikipedia

産業構造

まずはベトナムの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はベトナムの国内総生産(GDP)の内訳の推移を示したグラフです。

データ引用元:Vietnam: sectoral composition of the economy | TheGlobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • GDPに占める製造業の割合は近年は横ばい傾向
  • 他のASEAN近隣諸国と同様に、サービス産業が拡大する一方で、農業の割合が減少傾向

現状

  • 製造業のPMIは、2021年3月に53.6を記録し、新型コロナウイルス発生以降、最高を記録
  • 2020年のGDPは前年比2.9%の増加を記録(中国の増加率2.3%を上回りアジアでトップ)

今後

  • 2021年のGDPは前年比6.6%の増加を記録する見通し(輸出主導型の製造業、国内の需要回復が主な理由)
  • Fitch Solutionsの調査によると、ベトナムは今後、中国に代わる製造業の拠点として世界中の企業からより一層の注目を集める予想

参考資料

[8] Vietnam: sectoral composition of the economy | TheGlobalEconomy.com
[9] Manufacturing value added by country, around the world | TheGlobalEconomy.com
[10] Vietnam Purchasing Managers Index (PMI), manufacturing, March, 2021 – data, chart | TheGlobalEconomy.com
[11] Vietnam Overview
[12] Vietnam is Asia’s top-performing economy in 2020 amid Covid pandemic

製造業全体

次に、ベトナムの製造業の調査結果を紹介します。下の図は、ベトナムの製造業が生み出した付加価値額の推移を示すグラフです。(縦軸は10億USドル)


データ引用元:Vietnam Manufacturing value added – data, chart | TheGlobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2011年以降、増加が続く
  • ベトナムの製造業のGDPは2019年時点で約432億USドルで世界第35位

現在

  • 製造業用の土地の使用率がここ2018年から急速に増加し、2020年3月時点で74%が使用されている(中国への過度な依存を避ける企業が増加していることが主な要因)
  • ベトナムの人件費は中国の1/3〜1/2程度であり、海外企業の製造拠点として注目を集めている

今後

  • Navigos Groupの調査によると、製造業の急拡大に伴い、熟練労働者の不足と労働者の賃金上昇が現在より一層深刻化する見通し
  • ベトナム国内のサプライヤーが不足しており、今後いかに中国からの輸入に対する依存を減らすかがベトナム製造業成長の鍵になる予想

参考資料

[13] Vietnam Manufacturing value added – data, chart | TheGlobalEconomy.com
[14] Manufacturing value added by country, around the world | TheGlobalEconomy.com
[15] Global manufacturers are flocking to Vietnam. Is it ready? – Nikkei Asia
[16] Growing industries in Vietnam – Google SearchTop 5 promising industries for international businesses in Vietnam

製造業の内訳

次に、ベトナム製造業の内訳を紹介します。下の図は、ベトナム製造業の各分野が生み出した付加価値額を示すグラフです。グラフの色は青色:2006年、橙色:2011年、灰色:2016年を表しています。


データ引用元:VIET NAM INDUSTRY WHITE PAPER 2019 (SUMMARY).pdf

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2016年における付加価値額トップ3の産業

1位:エレクトロニクス産業(約127億U.Sドル)
2位:食品産業(約105億U.Sドル)
3位:衣料品産業(約68.3億U.Sドル)

  • 2016年における輸出額トップ3の産業

1位:エレクトロニクス産業(約592億U.Sドル)
2位:衣料品産業(約292億U.Sドル)
3位:畜産・水産業(約169億U.Sドル)

現在

  • 国内の電気需要の拡大に伴い、エネルギー産業の成長が続いており、歴史は浅いものの東南アジアにおいてトップ3の生産国になっている
  • ベトナム製造業への投資は主にエレクトロニクス関連産業(例:Appleのイアフォン製造、SHARPの液晶ディスプレイ製造)

今後

  • 今後、鉄鋼の輸出がベトナム製造業の主要な成長要因として機能する見通し
  • エレクトロニクス産業の輸出額は全体の40%を占めており、半導体産業の成長に伴い今後も拡大を続ける見通し

参考資料

[15] VIET NAM INDUSTRY WHITE PAPER 2019 (SUMMARY).pdf
[16] Which economic sectors are predicted to grow in Vietnam next year? | Vietnam Times
[17] Rags to Riches: Vietnam’s Growing Electronics Industry | SEMI

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点から、ベトナムの製造業市場を調査した結果です。下の図は、ベトナムに進出した日本企業数の推移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計(平成30年要約版)

また下の図は、ベトナムに進出している日本企業の業種を調査した結果です。


データ引用元:海外進出日系企業拠点数調査|外務省

これらのグラフと関連データから以下のことが分かります。

  • ベトナムに進出する日本企業の数は統計開始から一貫して増加傾向
  • 2019年12月時点における日本企業数は1,943社(JETROの調査)

現状

  • 進出日本企業の業種は製造業が最も多く、全体の約49.4%を占める(2019年のJETROの調査)
  • 進出日本企業のうち約52.4%が中小企業(2019年のJETROの調査)

今後

  • 進出企業の今後1〜2年の事業方針の調査では、63.9%の企業が拡大と回答しASEANではトップの数字(2019年のJETROの調査)
  • ベトナムの投資環境リスクの調査では、61.1%の企業が人件費の拡大と回答しており、今後も人件費の高騰は避けられない予想

参考資料

[18] 概況・基本統計 | ベトナム – アジア – 国・地域別に見る – ジェトロ
[19] 20200024.pdf
[20] ベトナム進出日系企業、事業拡大意欲はASEANで最大 | 現地発!アジア・オセアニア進出日系企業の今-2020 – 特集 – 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ

ベトナムに進出した日本企業

ここからは、実際にベトナムに進出した日本の製造業企業3社を紹介します。

株式会社 橋本クロス

▶基本情報

  • 本社:滋賀県長浜市
  • 従業員数:45人
  • 事業内容:工業用ワイピングクロス製造販売

▶概要

工業用の不織布製品の製造・販売を行う企業。2018年にベトナムにおける製造拠点として橋本クロスベトナム(HCVN)を設立。製造拠点設立の背景には、日本国内の需要の縮小への対応、人件費の削減、東南アジアでの需要拡大、現地日本企業への製品提供などが挙げられる。同社は2019年に新工場を設立し、将来的には日本企業に加え外国企業からの需要に応える狙い。

参考資料

[21] ベトナム社会主義共和国において日本企業が実施する不織布製品の製造・販売事業に対する融資 | JBIC 国際協力銀行

増田ビニール株式会社

▶基本情報

  • 本社:愛知県名古屋市
  • 従業員数:50人
  • 事業内容:樹脂・ゴム製品の押出成形加工による製造・販売

▶概要

プラスチック押出成形事業を主に行う企業。2015年に同社初となる海外子会社、MASUDA VINYL VIETNAM CO.,LTDを設立。設立の主な目的は、ベトナムを始めとする東南アジアに拠点を置く日系企業への製品の供給。また、東南アジアでの需要の拡大が続く建材部品、オフィス関係の部品にも力を入れて生産体制を強化している。

五光発條株式会社

▶基本情報

  • 本社:神奈川県横浜市
  • 従業員数:50人
  • 事業内容:精密バネの製造・販売

▶概要

OA機器、カメラ、自動車部品などに使用される精密バネの製造を行う企業。2004年にベトナムでGOKO SPRING VIETNAMを設立。同社は、ベトナム工場を含めてタイ、インドネシアにも拠点を有しており、海外での製造拠点の開拓を積極的に行っている。

まとめ

今回はベトナムの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査結果を以下にまとめます。

  • 産業構造:GDPに占める製造業の割合は近年は横ばい傾向、2020年のGDPは前年比2.9%の増加を記録(中国の増加率2.3%を上回りアジアでトップ)
  • 製造業全体:ベトナムの人件費は中国の約1/3〜1/2程度、今後は「熟練労働者の不足」と「労働者の賃金上昇」が深刻化する見通し
  • 日本企業の進出状況:2019年12月時点における日本企業数は1,943社(JETROの調査)進出日本企業の約49.4%が製造業
  • ベトナムに進出した日本企業:進出の主な目的は、現地日本企業への部品供給、人件費の削減、東南アジアの需要拡大に対応

今回の内容が、ベトナム進出を視野に入れている方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑰「インド」

テクノポートの稲垣です。今回は「インドの製造業」を紹介します。

「Make in India」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?これはインド政府が、インドを世界の製造業の中心拠点にするために掲げている政策です。この政策の中には、インドのGDPに占める製造業の割合の増加、製造業分野における1億人の新規雇用の創出(今後5年間)、先端産業に対する積極的な投資活動などが含まれています。

以上のことからも分かるように、インドは今、国を挙げて製造業の強化に取り組んでおり、世界中の企業からも中国に次ぐ世界の工場になり得る存在として注目を集めています。今回はそのインドの製造業を日本企業の目線から掘り下げていきます。

基本情報

  • 正式名称:インド共和国(Republic of India)
  • 首都:ニューデリー(New Delhi)
  • 大統領:ラーム・ナート・コーヴィンド(2017年7月~)
  • 首相:ナレンドラ・ダモダルダス・モディ(2014年5月~)
  • 通貨:インド・ルピー(1インド・ルピー=1.44 円 ※2021年2月28日時点)
  • 人口:約13億6,641万人
  • 面積:約329万km2
  • 公用語:ヒンディー語(他に憲法で公認されている州の言語が21ある)
  • 宗教:ヒンドゥー教徒79.8%、イスラム教徒14.2%、キリスト教徒2.3%、シク教徒1.7%、仏教徒0.7%、ジャイナ教徒0.4%
  • 平均寿命:男 67.6歳、女 70.1歳

参考資料

[1] インド基礎データ|外務省
[2] インドの基本情報|地球の歩き方
[3] India | History, Map, Population, Economy, & Facts | Britannica

産業構造

まずはインドの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はインドの国内総生産(GDP)の内訳の推移を示したグラフです。


データ引用元:India: sectoral composition of the economy | TheGlobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • GDPに占める製造業の割合は2008年頃まで緩やかに増加を続けるが、以降は減少傾向
  • インドのGDPは2019年時点で約2兆9,400億USドル世界第7位

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は、2020年10月以降55を上回る高水準を維持(2021年1月時点で57.7で世界第8位)
  • 2020年のインドのGDPは、新型コロナウイルスによる影響で前年比8.0%のマイナスを記録

今後

  • IMFの調査によると、2022年度のインド経済の成長は11.5%になる見通し(ワクチンの普及による感染拡大の防止効果、死亡率の低下による)
  • インド政府は医療システムとインフラにGDPの5%(2020年ー2021年は3.5%)を投資し、10年後に世界平均である10%にまで増加させる見通し

参考資料

[4] India: sectoral composition of the economy | TheGlobalEconomy.com
[5] GDP, constant dollars by country, around the world | TheGlobalEconomy.com
[6] India Purchasing Managers Index (PMI), manufacturing, January 2021 – data, chart | TheGlobalEconomy.com
[7] Beyond the pandemic: India’s economic outlook – The Economic Times
[8] India Economic Outlook | Deloitte Insights

製造業全体

次に、インドの製造業の調査結果を紹介します。下の図は、インドの製造業のGDPの推移を示すグラフです。(縦軸は10億USドル)


データ引用元:India Manufacturing value added – data, chart | TheGlobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2013年以降増加傾向であったが、2017年から横ばいの状態が続く
  • 2018年の製造業が生み出す付加価値額は、3,957億USドルで世界第6位

現状

  • 自動車関連会社の多くは、サービスのデジタル化、部品輸入ルートの拡大(中国への過度な依存から脱却するため)、中古車販売業への参入など、自社の利益を確保のためにさまざまな工夫をしている
  • 新型コロナウイルスによるロックダウンの影響により、テレコミュニケーション産業が急速な成長を遂げている(例:インターネットインフラ事業、AI関連事業)

今後

  • 「Make in India」のスローガンのもと、インドを世界の製造業の中心拠点にするための政策が増加する見通し(例:インド政府は2022年までに1億人の製造業関連の雇用を生み出す予定)
  • インドの製造業GDPは、2025年までに1兆USドルに到達する見通し

参考資料

[9] India Manufacturing value added – data, chart | TheGlobalEconomy.com
[10] Manufacturing value added by country, around the world | TheGlobalEconomy.com
[11] India Economic Outlook | Deloitte Insights
[12] Manufacturing Sector in India: Market Size, FDI, Govt Initiatives | IBEF

製造業の内訳

次に、インド製造業の内訳を紹介します。下の図は、インド製造業の各分野の成熟度を示すグラフです。カラーバーの色は黒色:成熟産業、水色:未発展産業、青色:成長産業を表しています。

データ引用元:A new growth formula for manufacturing in India | McKinsey

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業の3つの分類は次の通り。
  1. 成熟産業(自動車、自動車部品、 資本財・工作機械、医薬品)
  2. 未発展産業(化学、農業・食品、金属・材料、衣料品、家具、革製品、樹脂)
  3. 成長産業(電子部品・半導体、航空、国防、再生可能エネルギー)
  • 2020年から2027年の間に、製造業の生み出す付加価値額は約3,200億ドル増加する見込みであり、増加額の80%は以下の6つの産業が貢献する見通し(1. 化学品・石油化学、2. 農業・食品加工、3. 電子・半導体、4. 資本財・工作機械、5. 鉄鉱石・鉄鋼、6. 自動車部品・車両)

現在

  • インド製造業が現在直面している課題は大きく以下の3つに集約される
    1. 生産性:インドの労働生産性はインドネシアの1/2倍、韓国・中国の1/4以下(特にエレクトロニクス産業分野では、韓国と比較すると1/18倍
    2. 技術力:産業として成熟しきっていない分野では先進国と比較し技術力不足が課題
    3. 資本金の調達:インドの製造業が 今後7年間でGDPを2倍にするためには、合計1.0兆ドル~1.5兆ドルの投資が必要

今後

  • ICEAは、2025年までにノートPCとタブレットの生産能力が1,000億USドルにまで拡大できる可能性があると予測
  • 2019年のインドの自動車産業の市場規模は世界第4位であり、2021年には日本を抜いて世界第3位になる見通し(若者世代への2輪車と小型車に対する需要が主な要因)

参考資料

[13] IBEF Presentation
[14] Manufacturing Sector in India: Market Size, FDI, Govt Initiatives | IBEF
[15] Automobile Industry in India, Indian Automobile Industry, Sector, Trends, Statistics
[16] A new growth formula for manufacturing in India | McKinsey

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点から、インドの製造業市場を調査した結果です。下の図は、インドに進出した日本企業数の推移を示したグラフです。


データ引用元:インド進出日系企業リスト – Embassy of Japan in India

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • インドにおける日本企業の数は年々増加傾向(ただし年成長率は低下)
  • 2019年における進出企業数は増加したが、拠点数は減少した(要因として合併統廃合により拠点が整備されたことが考えられる)

現状

  • 2019年における拠点数が多い上位5州は以下の通り(1位 ハリヤナ州:406社、2位 マハーラーシュトラ州:247社、3位 カルナータカ州:217社、4位 タミル・ナドゥ州:203社、5位 デリー準州:157社)
  • 業種別では製造業が全体の49%を占め、その中でも輸送用機械器具(10.3%)、化学工業(5.9%)、電気機械器具(5.2%)、金属製品(4.7%)の4業種が製造業企業の約半数を占める

今後

  • これまでは日系自動車関連企業の進出が主であったが、インドのインフラ整備に伴い情報通信業や各種サービス関連業企業の進出が増加傾向にある
  • インドでビジネスを行う日本企業が直面しており、今後解決すべき課題として、以下の3つが挙げられる
    1. 人件費の高騰:インド人従業員の人件費はASEAN諸国と比べて低くはなく、昇給率も10%を超えている
    2. 認知度不足:ASEAN諸国ほど日本ブランドへの認知はない(例:家電量販店の商品の8割は韓国製、1割がインド製、1割が日本製)
    3. 税制:インドに拠点を置く企業が輸入する材料に対しても関税負担が重くかかるため、材料の調達先をインド国外に持つ企業はビジネスモデルの見直しが必要

参考資料

[18] インド進出日系企業リスト – Embassy of Japan in India
[19] 2019年のインド進出日系企業数は前年比微増の1,454社(インド) | ビジネス短信 – ジェトロ
[20] インドに進出した日本企業が苦戦しているワケ 数字を狂わせる「2つのからくり」 WEDGE Infinity(ウェッジ)

インドに進出した日本企業

ここからは、実際にインドに進出した日本の製造業企業3社を紹介します。

株式会社電溶工業

▶基本情報

  • 本社:山梨県中巨摩郡
  • 従業員数:105人
  • 事業内容:抵抗溶接機(スポット溶接ロボット)の製造・販売

▶概要

自動車製造のための抵抗溶接機の開発・生産・販売を行う。2015年にインドの製造工場用グループ会社Denyo Manufacturing India Pvt. Ltd.を設立。自動車メーカー各社の製造拠点のグローバル化に伴い、同社はインドの他にも中国・アメリカ・タイに製造拠点を有しており、海外進出を積極的に展開している。

株式会社 コイワイ

▶基本情報

  • 本社:神奈川県小田原市
  • 従業員数:150人 ※関係会社含め
  • 事業内容:鋳物の製造・販売、機械加工

▶概要

3Dプリンター砂型積層装置を用いた鋳物造りを行う。2011年にインド・カルナータカ州バンガロールに現地法人KOIWAI INDIA PRIVATE LIMITEDを設立。2016年には、ラジャスタン州ニムラナ工業団地に工場建設用の土地を確保し、現地での金型鋳造、熱処理加工、機械加工を行うためのインド工場の開設に力を入れている。

シグマ株式会社

▶基本情報

  • 本社:広島県呉市
  • 従業員数:180人
  • 事業内容:輸送機器精密部品、セキュリティー機器の製造・販売

▶概要

高品質の成形技術を生かした自動車部品の製造を行う。同社は海外展開を行う上で、自動車生産台数1位の中国、3位のインド市場で現地生産を行うことを目的に、2007年に中国現地法人を設立し、2013年にインド現地法人を設立。2017年にインドにおいて工場を立ち上げ、2018年から創業を開始。現在では積極的にインド人従業員を採用し、現地の日系企業および現地企業への部品の供給に力を入れている。

参考資料

[21] シグマ株式会社:ゼロからでもリスクがあっても海外に向かうのは、そこに「未来」があるからです | ジェトロ活用事例 – ジェトロ

まとめ

今回はインドの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査結果を以下にまとめます。

  • 産業構造:製造業がGDPに占める割合は2008年以降減少傾向、2022年のインドの経済成長は11.5%になる見通し
  • 製造業全体:「Make in India」のスローガンのもと、インドを世界の製造業の中心拠点にするための動きが加速すると考えられる、インドの製造業GDPは2025年までに1兆USドルに到達する見通し
  • 製造業の内訳:インド製造業の主力産業は自動車自動車部品資本財・工作機械医薬品の4分野、2027年までに以下の6分野(1. 化学品・石油化学、2. 農業・食品加工、3. 電子・半導体、4. 資本財・工作機械、5. 鉄鉱石・鉄鋼、6. 自動車部品・車両)がインド製造業の成長において大きな影響を与えると考えられる
  • 日本企業の進出状況:インドにおける日本企業の企業数は年々増加傾向(ただし年成長率は低下)、業種別では製造業が全体の49%を占め、その中でも輸送用機械器具(10.3%)、化学工業(5.9%)、電気機械器具(5.2%)、金属製品(4.7%)の4業種が製造業企業の約半数を占める

今回の内容が、インド進出を視野に入れている方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑯「台湾」

テクノポートの稲垣です。今回は「台湾の製造業」を紹介します。

台湾は、新型コロナウイルスへの対応で世界的に注目を集めました。その成果の一つとして、台湾中央銀行は2020年の経済成長率を前年比2.58%と発表し、新型コロナウイルスによるマイナス成長に苦しむ諸外国とは対照的な結果を示しました。

2020年の台湾の経済成長を支えた要因として、台湾が誇るIT産業の成長が挙げられます。今回はそのIT産業を筆頭に、世界の最先端産業の中心的存在になりつつある台湾の製造業を日本企業の目線から掘り下げていきます。

基本情報

  • 正式名称:中華民国・台湾(Republic of China, Taiwan)
  • 首都:台北(Taipei)
  • 元首:蔡英文 総統(2016年5月~)
  • 通貨:ニュー台湾ドル(1ニュー台湾ドル= 3.75円 ※2021年2月14日時点)
  • 人口:約2,357万人
  • 面積:約3.6万km2
  • 公用語:北京語、台湾語
  • 宗教:仏教、道教、キリスト教、その他
  • 平均寿命:男 77.7歳、女 84.2歳

参考資料

[1] 台湾の基本情報|地球の歩き方
[2] 基本情報|台湾観光ガイド|阪神交通社
[3] 台湾人の平均寿命 昨年は男性77.7歳、女性84.2歳 | 社会 | 中央社フォーカス台湾

産業構造

まずは台湾の産業構造の調査結果を紹介します。下の図は台湾の国内総生産(GDP)における製造業の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:Economic Indicators – Department of Statistics

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2016年まで製造業がGDPに占める割合は増加傾向であったが、その後は減少が続く(サービス関連業の急成長が要因)
  • 2019年の調査では、サービス関連業はGDPの約62.7%を占める

現状

  • 製造業に従事する労働者の割合は約35%(サービス関連業は全体の59.8%の労働力を占める)
  • 2019年の外国から台湾への観光者数は過去最高の1,184万人を記録し台湾経済の根幹になっている

今後

  • 台湾社会の今後予測される課題として、高齢化社会や少子化、中国本土との再統合問題などが挙げられる
  • 新型コロナウイルスによる経済への影響が弱まると同時に、諸外国への輸出と国内消費が増加し、経済の回復が加速する見通し

参考資料

[4] Taiwan Economy – GDP Inflation CPI and Interest Rate
[5] Economic and Political Overview – Nordea Trade Portal
[6] Taiwanese Market : Main sectorsECONOMY
[7] Taiwan.gov.twThe economic context of Taiwan

製造業全体

次に、台湾の製造業の調査結果を紹介します。下の図は、台湾の製造業のGDPの年成長率の遷移を示すグラフです。


データ引用元:Economic Indicators – Department of Statistics

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2012年から製造業の市場規模は成長が続く
  • 鉄鋼業、化学工業、機械加工が製造業全体のGDPの約半分を占める

現状

  • 情報電子産業の2020年の成長率は9.90%
  • 半導体、コンピューター、スマートフォン産業では世界トップクラスの製造力を有する

今後

  • 2021年の台湾製造業の成長率は4.75%になる見通し
  • 情報電子産業は2021年から年成長率3.55%のスピードで成長する見通し(5G技術、AI関連産業、コンピューター産業の成長が主な要因)

参考資料

[8] Taiwan’s manufacturing sector forecast to grow 4.75% in 2021
[9] Focus TaiwanThe economic context of Taiwan – Economic and Political Overview – Nordea Trade Portal

製造業の主要産業

次に、台湾製造業の主要産業とそれぞれの分野における代表企業を紹介します。

※企業のリンクは日本法人がある企業は日本法人のものを使用しています。

①半導体産業

台湾セミコンダクター(TSMC)

  • 本社:新竹市
  • 事業内容:半導体素子の製造・販売
  • 企業概要:世界最大の半導体受託生産企業として知られる。Apple社製品に搭載するチップの製造元であることでも知られており、5Gスマートフォンは高性能コンピューターの需要拡大に伴い事業規模を拡大している。

実績

  • 半導体の受託生産:2020年第4四半期の世界シェアは55.6%で世界第1位
  • 時価総額:2020年の時価総額は5,807億米ドルで世界第10位

参考資料

[9] TSMC – Wikipedia
[10] 台湾TSMC株が連日高値 時価総額は世界トップ10: 日本経済新聞
[11] 台湾TSMCが過去最高売上、5Gとリモートワーク拡大が追い風に | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

②エレクトロニクス産業

▶鴻海精密工業(Hon Hai Precision Industry Co., Ltd.,)

  • 本社:新北市
  • 事業内容:電子機器の受託製造
  • 企業概要:EMS(Electronics Manufacturing Service)の代表企業の一つ。Apple社製品の製造元であることでも知られており、品質の高い製品の製造技術に定評がある。Appleの他にSonyのPlayStation、任天堂のWii U、AmazonのXbox、AmazonのKindleの製造も請け負う。

実績

  • 売上高:2019年の売上高は1,785億米ドルで世界第1位(EMS企業ランキング)
  • 企業ランキング:2019年のForbsが選ぶ世界のトップ100デジタル企業ランキングで世界第25位

参考資料

[12] 今さら聞けない!シャープを買収するホンハイ(鴻海精密工業)がスゴい理由 ビジネスモデル解説:EMS(電子機器受託製造サービス)|ビジネス+IT
[13] 鴻海精密工業 – Wikipedia
[14] 世界EMS企業売上げランキング、台湾ホンハイがトップ 2位に大きく差 | 電波新聞デジタル
[15] Top 100 Digital Companies List

③プラスチック産業

▶台湾プラスチックグループ(Formosa Plastics Group)

  • 本社:台北市
  • 事業内容:石油化学製品の製造・販売
  • 企業概要:台湾を代表する企業グループ4社(台塑石油化学、台湾化学繊維、南亜プラスチック、台湾プラスチック)を含めた複数の企業から成る。

実績

  • ガラス繊維:2011年の世界生産能力は世界第1位
  • テレフタル酸:2011年の生産量は世界第1位

参考資料

[16] 台湾プラスチックグループ – Wikipedia
[17] 交流_915号_02.indd

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点から、台湾の製造業市場を調査した結果です。下の図は、台湾に進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 台湾に進出する日本企業の数は2008年から2012年の間に急速に増加し、以後は横ばい傾向
  • 進出日本企業の業種は卸売・小売業が最も多く全体の約半数、次いで製造業関連業、その他サービス関連業の順

現状

  • 進出日本製造業の目的は大きく以下の3つに集約される。1. 輸出のための生産拠点、2. 台湾市場向けの生産拠点、3. 現地企業への部品供給
  • テレワークや5G技術の需要が増加したことによる、現地エレクトロニクス企業への部品および材料の供給を行っている企業の業績は好調

今後

  • 台湾政府の意向により、情報通信・デジタル産業は今後も拡大傾向が続くと予想されるため、高い技術力を持つ日系サプライヤー企業の需要は増加する見通し
  • 台湾と日本の外交関係は良好であり、日本ブランドが受け入れやすい環境にあるため、今後も日系企業の進出候補として有力である見通し

参考資料

[18] 2009_02kihara.pdf
[19] 台湾への主な日系企業の進出状況を教えてください。 | 台湾に関する Q&A / コラム | 台湾の市場調査ならヤッパン号

台湾に進出した日本企業

有限会社 サンヨー精工

▶基本情報

  • 本社:東京都大田区
  • 従業員数:20人
  • 事業内容:精密樹脂成形金型の設計・制作

▶概要

プラスチック射出成形およびプラスチック精密金型の制作・生産を行う企業。研究開発にも力を入れており、2色樹脂成形(色違いの2色の樹脂を成形する技術)など、自社独自の技術を多く保有する。台湾の樹脂成形および金型の生産工場と提携しており、現地で量産品を安価に生産できる体制を構築。台湾での生産は日本人従業員1人で行っている。

株式会社 関プレス

▶基本情報

  • 本社:茨城県日立市
  • 従業員数:85人
  • 事業内容:金型プレス加工

▶概要

金型の設計および制作を行う企業。取引先は自動車関連業をはじめ多岐にわたる。グローバル展開する日本企業の部品供給需要に対応するために台湾(桃園)、ベトナム(ハノイ)に事務所を構え、海外での部品調達ネットワークを構築している。上記の国の他に香港・中国の企業と業務提携を行っており、アジア圏における事業拡大を積極的に行っている。

株式会社 英田エンジニアリング

▶基本情報

  • 本社:岡山県美作市
  • 従業員数:135人
  • 事業内容:冷間ロール成形・造管機、無人駐車場・駐車管理システムの開発・製造・販売

▶概要

フォーミングロール(金型)の生産をはじめ、冷間ロール成形機・造管機、およびIT技術を駆使したコインパーキングシステムの開発・製造を行う。中国に現地法人を持っており、中国で製造した商品の輸入を行っていたが、為替の変動により利益を圧迫したため、台湾での現地販売を決断する。現地での販売はパートナー企業を通じて行っている。

参考資料

[20] 株式会社英田エンジニアリング:ジェトロの支援を受け、少ない手間と短い時間で、海外に進出できました | ジェトロ活用事例 – ジェトロ

まとめ

今回は台湾の製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。結果を以下にまとめます。

  • 産業構造を調査した結果:造業がGDPに占める割合は近年減少傾向、観光業をはじめとするサービス関連業の成長が著しい
  • 製造業全体を調査した結果:製造業の規模自体は拡大傾向(特に情報電子産業は5G技術、コンピューター産業の需要拡大を受け、安定した成長を続けている)
  • 日本企業の進出状況を調査した結果:台湾に進出する日本企業の数は近年ほぼ同じ数で推移
  • 台湾に進出した日本企業を調査した結果:今回紹介した企業は現地企業とパートナー関係を築き、現地での生産・販売、または現地日本企業への部品の調達を行なっている

今回の内容が、台湾進出を視野に入れている方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑮「韓国」

テクノポートの稲垣です。今回は「韓国の製造業」を紹介します。

新型コロナウイルスにより世界中の経済が落ち込んだ2020年において、韓国経済の成長率は前年比マイナス1.1%と大きな打撃を受けませんでした。その大きな理由のひとつとして製造業を代表とする輸出産業の成長が挙げられます。このことからも韓国の製造業が韓国経済にいかに大きな影響を与えているかが分かるでしょう。

今回は、世界のハイテク産業の中心的存在である、韓国の製造業を日本企業の目線から掘り下げていきます。

基本情報

  • 正式名称:大韓民国(Republic of Korea)
  • 首都:ソウル(Seoul)
  • 元首:文在寅(ムン・ジェイン)大統領(2017年5月~)
  • 通貨:大韓民国ウォン(1大韓民国ウォン=0.095円 ※2020年12月13日時点)
  • 人口:約5,178万人
  • 面積:約10万km2
  • 公用語:韓国語
  • 宗教:仏教(約762万人)、プロテスタント(約968万人)、カトリック(約389万人)等(出典:2015年、韓国統計庁)
  • 平均寿命:男79.3歳、女85.8歳

産業構造

まずは韓国の産業構造の調査結果を紹介します。下の図は韓国の国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:South Korea: Sectoral composition of the economy of South Korea| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • GDPに占める製造業の割合は1988年以降40%前後を維持
  • 2019年のGDPは1.6兆ドル世界第13位(日本:5.1兆ドルで世界3位)

現状

  • 新型コロナウイルスの影響により、一般消費は落ち込んだが、投資・輸出は好調(テレワークの普及による半導体需要の増加などが要因)
  • 新型コロナウイルスによる韓国経済への打撃は他国に比べ小さく、2020年のGDPは世界第10位まで回復する見通し

今後

  • 2021年度の経済成長率は3.2%の予想(米中両国の景気の回復にともなう自動車の輸出が鍵を握る予想)
  • 文大統領によると2021年は雇用回復に向けた取り組みに加え、国内消費を促すインセンティブの強化、投資と輸出の支援に力を入れる方針

経済の特徴

強み

  1. ハイテク産業:家電、携帯電話、半導体、自動車分野で世界市場を席捲
  2. 研究開発:2019年の韓国の研究開発費は89兆ウォンを超えOECD(経済開発機構)加盟国の中で5番目
  3. 教育制度:OECDの調査によると、OECD加盟国の中で韓国の15歳は読解力5位、数学的リテラシー2位、科学的リテラシー4位といずれも上位

弱み

  1. 高齢化社会:韓国統計庁の調査によると、韓国の人口は2019年をピークに減少を開始し、2065年に人口に対する65歳以上の割合が先進国でトップになる見通し
  2. 財閥の存在感:韓国4大財閥(サムスン(半導体・家電)、LG(家電)、現代(自動車)、SK(エネルギー)が韓国の全上場企業の総売り上げの約50%、総純利益の約60%を占める
  3. 若者の失業率:OECD加盟国のうち、韓国の若者失業率は2009年から2019年までの10年間で0.9%増加し、5位から20位まで順位が下落

製造業全体

次に韓国の製造業の調査結果を紹介します。下の図は韓国の製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:South Korea: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 統計開始から増加傾向が続く
  • 2019年の製造業が生み出す付加価値は4,169億ドル世界第3位

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年6月に41.3を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年12月に52.9を記録
  • 新型コロナウイルスによる韓国製造業の国内回帰が予想されたが、90%以上の韓国企業が国内回帰を検討していない(国内の高い生産コスト、現地需要へのアクセスなどが要因)

今後

  • 中国などの先端技術産業の新興国による追い上げにより、技術開発競争が激化する見通し
  • 新型コロナウイルスの感染拡大が収束した後、製造業とハイテク技術産業が韓国経済回復の中心的な役割を果たす見通し

製造業の主要産業

次に、韓国製造業の主要産業とそれぞれの分野における代表企業を紹介します。

①エレクトロニクス産業

サムスン電子

  • スマートフォン:2020年の世界のシェア率22%は世界第1位
  • テレビ:2020年7~9月期のテレビ出荷額で世界シェアは33.1%で過去最高
  • 家電製品全般:2019年の世界シェアは12.5%で世界第1位

LG電子

  • 液晶テレビ:2019年第3四半期までのOLEDテレビ市場でシェア世界第1位
  • 液晶モニター:2019年第3四半期までのLCDテレビパネルのシェアは14.3%で世界第4位
  • 洗濯機:2017年の世界シェアは14.8%で世界第2位

SKハイニックス

  • メモリー半導体:2020年におけるNAND型フラッシュメモリー市場で世界第2位シェア ※インテル合併によるシェア含めた場合
  • ソリッドステートドライブ(SSD):2020年における世界第1位のシェア ※インテル合併によるシェアを含めた場合

②造船産業

韓国造船海洋(現代重工業、大宇造船海洋)

  • 世界売上高:2020年の造船会社の世界売上高で20%世界第2位
  • 造船受注量:2020年11月に世界で発注された船舶のうち約6割を受注し5ヶ月連続で世界第1位
  • LNGタンカー:2019年におけるLNGタンカー(液化天然ガスの輸送に用いられる)のシェアは60%で世界第1位

サムスン重工

  • 世界売上高:2020年の造船会社の世界売上高6%で世界第4位

③自動車産業

現代自動車

  • 自動車販売台数:2019年における自動車シェア世界第5位は販売台数719万台の現代自動車

起亜自動車

  • 水素自動車:2020年1月~7月までのFCV車(水素で走る燃料電池車)の販売台数は2,879台で世界第1位 ※現代自動車を含める
  • 電気自動車:2020年1月~7月までの電気自動車の販売台数は6万707台で世界第4位

日本企業の進出状況

ここからは、日本企業の視点から韓国の製造業市場を調査した結果です。下の図は韓国に進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 韓国に進出する日本企業は2017年に大きく増加
  • 進出企業の35.4%が製造業企業(28.7%がサービス関連業)

現在

  • 進出製造業企業の中でも「電気機械器具」「一般機械器具」「化学及び関連品」を主事業にする企業の進出が多い
  • JETROの調査によると、2018年の韓国進出日系企業のうち、84.9%の企業が営業利益ベースで黒字と回答 (アジア地域の中でトップの数字)

今後

  • 韓国に進出している日経製造業企業の黒字割合は2014年以降増加を継続中、今後も同じ傾向が続く見通し
  • 韓国労働者の賃金は年々増加傾向にあり、進出日本企業の71.7%が同問題に直面中、今後も賃金の増加は避けられない見通し

韓国に進出した日本企業

進桜電機株式会社

▶基本情報

  • 本社:静岡県駿東郡
  • 従業員数:40人
  • 事業内容:交流モーターの設計・製造・販売

▶概要

1968年に誘導電動機(特殊型インダクションモーター)の製造会社として設立。創業時より交流電動機の設計、製造を得意とする。2018年10月に同社の子会社となる工場MOSTEC KOREAを韓国忠清南道牙山市に設立。同工場では現地における同社製品の修理、メンテナンスに加え、研削加工を中心とした精密部品加工の製造を行い、現地での品質管理体制を強化することに成功。

金子産業株式会社

▶基本情報

  • 本社:東京都港区
  • 従業員数:93人
  • 事業内容:電磁弁、液面計、通気装置の設計・製造・販売

▶概要

1919年の創業以来、一貫して流体制御用バルブの製造を行う。同社の主要顧客は発電所、石油関連企業、プラント企業であり、多品種少量生産を軸に顧客を拡大。2010年1月にソウル近郊に現地法人「韓国金子」を設立。同法人の設立により、韓国内の顧客に迅速に対応可能となったことに加え、現地での新たな顧客開拓を実現。

ポバール興業株式会社

▶基本情報

  • 本社:愛知県名古屋市中村区
  • 従業員数:109人(連結:203人)
  • 事業内容:産業用ベルトの製造・販売

▶概要

1957年創業。創業当時は無段変速機用特殊ベルトの製造及び販売を行っており、現在は工業用樹脂ベルトを根幹事業に据える。2006年4月に韓国における事業展開を目的として、現地、韓国慶尚北道にPOBAL DEVICE KOREA CO.,LTD.設立。現在では韓国の他にタイ、中国にも現地法人および工場を有しており、今後はアジア地域における自動車産業向けベルト及び研磨関連部材の販売拡大に取り組む方針。

まとめ

今回は韓国の製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、韓国製造業は新型コロナウイルスによる経済への影響が小さく、その要因として半導体を始めとするエレクトロニクス産業の輸出が好調であることが分かりました。

今後は、中国を始めとする先端技術新興国との技術競争が加速し、韓国のハイテク産業の今後がより一層注目されます。

進出する日本企業の目線から考えると、2018年時点において進出日本企業の84.9%が黒字を記録していることが分かりました。今回紹介した日本企業はいずれも自社製品の販売拡大と韓国での新規顧客開拓を目的とした進出を果たしていることが分かります。今回の内容が、韓国進出を視野に入れている方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑭「中国」

テクノポートの稲垣です。今回は「中国の製造業」を紹介します。

新型コロナウイルスによるパンデミックの発信地となってしまった中国ですが、現在は世界の中でもトップクラスの速度で経済の回復を記録しています。また、次期アメリカ大統領のバイデン氏が米中貿易戦争にどのような対処をするのか世界中から注目を集めています。今回は、その中国の製造業の現状と今後を進出する日本企業の視点から掘り下げていきます。

基本情報

  • 正式名称:中華人民共和国(People’s Republic of China)
  • 首都:北京(Beijing)
  • 元首:習近平(2016年4月~)
  • 通貨:中国人民元(1中国人民元=15.95円 ※2020年12月5日時点)
  • 人口:約14億3565万人
  • 面積:約960万km2
  • 公用語:中国語
  • 宗教:イスラム教、仏教、キリスト教
  • 平均寿命:男73.6歳、女79.4歳

経済の特徴

強み

  1. 国内需要:14億人を超える巨大な国内市場と国内E-Commerceの普及
  2. 都市化:大規模なインフラ投資による都市部の拡大
  3. 生活水準:人口のわずか3.3%が貧困層以下の生活(2020年10月の調査)
  4. 技術力:5G技術の先駆けとなったHuaweiを始め、特にテレコミュニケーション分野で著しい成長

弱み

  1. 少子高齢化:生産年齢人口(15~64歳)の人口減少が進行し経済成長の鈍化につながる可能性
  2. 賃金上昇:経済発展と共に賃金・製造コストが上昇傾向
  3. 人口集中:都市部への人口流入が加速により、住宅価格の高騰、公害、貧富の差の拡大等の問題が発生

産業構造

まずは中国の産業構造の調査結果を紹介します。下の図は中国の国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:China: Sectoral composition of the economy of China| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • GDPに占める製造業の割合は年々減少傾向
  • 2019年のGDPは11.5兆ドルで世界第2位(世界第1位はアメリカの18.3兆ドル)

現状

  • 2020年第3クォーター(7月~9月)のGDPの伸び率は5.2%を記録する見込みで、第2クォーターと比較し2.0%の増加(国外からの医薬品需要の増加などが主な要因)
  • 2020年の経済活動レベルが前年と同水準にまで回復する見込み(現在、約80%まで回復)

今後

  • バイデン大統領が米中間貿易の関税への対処が中国の経済成長が大きく左右される見込み
  • 経済の専門家の予想では、2021年のGDPは前年比7.8%の上昇、2022年は前年比5.4%の上昇見込み

製造業全体

次に中国の製造業の調査結果を紹介します。下の図は中国の製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:China: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 統計を開始した2004年から増加傾向が続く
  • 2019年の製造業が生み出す付加価値は3.9兆ドルで世界第1位(世界第2位はドイツ:0.7兆ドル)

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年3月に40.3を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年11月に54.9を記録
  • 米中の貿易摩擦により、中国国内での研究開発に力を入れ、国内でのイノベーションに注力する動きが広がっている

今後

  • 中国製造2025(2025年までに世界の製造強国の仲間入りを目指すために策定された基本方針)を推し進めるために以下の10分野の産業に注力する見込み


出典:中国製造2025重点領域技術創新路線図

  • 2050年までの中国製造業の今後の方針は以下の通り
    ー2020~2035年:製造強国の中堅ポジションを目指す、イノベーション先進国を目指す(経済力、技術力の向上)、貧富の格差を是正
    ー2035~2050年:製造強国のトップグループ入りを目指す、社会主義現代化強国を目指す、国力と国際影響力で世界をリードする国家

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点から中国の製造業市場を調査した結果です。下の図は中国に進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 進出日本企業数は2011年に大きく増加したものの、その後は32000社付近で推移
  • 進出日本企業の約4割が製造業関連の企業が占める(卸売業が約3割)

現状

  • 進出地域で最も多いのが中国東部の華東地域で全体の約67%を占める(中でも上海市は全体の約46%を占める)
  • 進出企業の年売上高は、「1~10億円未満の企業」が全体の約31%、「10~100億円未満の企業」が約39%となり年商100億円未満の企業が全体の約7割を占める
  • 進出した製造業の中でも「金属加工、加工機械製造(切削、旋盤、研削盤による加工、加工機械の製造)」関連の企業が最多

今後

  • チャイナリスク(人件費の高騰、中国人民元安、政府からの環境規制強化指導などのリスク)を危惧した企業がチャイナプラスワン(東南アジアへ拠点を分散させる動き)を考える企業が増える見通し
  • 2019年の調査によると、中国進出日本企業の8割以上が中国市場での現状維持・拡大を望んでおり、今後も中国ビジネスに対する日本企業の見方は大きく変わらない予想

中国に進出した日本企業

岐阜精機工業

▶基本情報

  • 本社:東京都大田区
  • 従業員数:5人(中国工場170人)
  • 事業内容:プレス加工試作・量産、プレス金型製作

▶概要

自社独自開発のプレス金型を使用し、精密プレス部品・深絞り加工品の製造を行う企業。2002年より中国広東省の工場に生産拠点をすべて移動し現地での製品生産を行う。中国工場では日本スタッフが駐在し品質管理を行う体制をとる。同工場では生産に加えて、近隣の協力工場で製作した金型加工品の検査を行っており、品質管理に注力している。

岐阜精機工業の中国工場に駐在し品質管理を行う波多野さんへのインタビューはこちらです。(2020年2月実施)

株式会社武蔵テクノケミカル

▶基本情報

  • 本社:東京都台東区
  • 従業員数:10人(役員3人除く)
  • 事業内容:工業用洗浄剤の製造・販売

▶概要

工業製品向けの洗浄剤、洗浄システム(洗浄剤+洗浄機)の製造・販売を行う企業。2005年に上海、2009年に深圳に営業拠点を設立。その後2014年に、大連に洗浄剤の工場を設立。工場には日本人スタッフが常駐していないため、品質管理は現地従業員が行う。大連工場では現地日系企業との取引に加え、日本本社への輸出を目的とした製品を製造している。

株式会社大栄製作所

▶基本情報

  • 本社:京都府京都市
  • 従業員数:60人(グループ計150人)
  • 事業内容:精密板金加工品の製作、販売

▶概要

産業用板金製品加工、加工品の販売を行う企業。2003年に同社初の海外工場を上海に設立。同工場では現地の日系企業向けの板金部品の供給を行っており、同工場の顧客の99%を現地日系企業が占める。現地の製造で用いる材料は日系資本の入った現地企業からの調達を行っており、多品種小ロットの部品から大型組み立て部品まで幅広い要求に対応している。

まとめ

今回は中国の製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、中国製造業は新型コロナウイルスの影響から急速な回復傾向を示しており、2020年の最終的な経済活動レベルは前年とほぼ同水準まで回復する見込みであることが分かりました。

また「中国製造2025」に代表されるように、中国政府は先進技術分野を始めとする製造業全般の強化を全面的に推し進めていくことが分かります。

進出する日本企業側の視点から分析すると、年商100億円未満の企業が進出日本企業の約7割を占めており、欧米諸国に比べ進出に対するハードルが高くないことが予想されます。また、今回紹介した日本企業は現地日系企業への部品調達と日本への輸出を目的とした工場を所有していることが分かります。今回の内容が中国進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

【2022年版】アメリカの製造業(主要産業・進出している日本企業も調査)

テクノポートの稲垣です。今回は「アメリカの製造業」を紹介します。

2021年1月20日からアメリカ大統領に就任したジョー・バイデン氏の政権がスタートしてから1年以上が経過しました。

今回は、バイデン大統領がアメリカの製造業に今後どのような影響を与えるのかを含めて、アメリカに進出する日本企業の目線からアメリカ製造業を掘り下げていきたいと思います。

製造業のための新時代「海外販路開拓」overseas-web-marketing

基本情報

  • 正式名称:アメリカ合衆国(United States of America)
  • 首都:ワシントンD.C.(Washington, D.C.)
  • 大統領:ジョー・バイデン(2021年1月~)
  • 通貨:アメリカ合衆国ドル(1ドル=114.37円 ※2022年2月3日時点)
  • 人口:約3億2775万人
  • 面積:約962.8万km2
  • 公用語:英語
  • 宗教:信教の自由を憲法で保障,主にキリスト教
  • 平均寿命:男76.1歳、女81.1歳

産業構造

まずはアメリカの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はアメリカの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:USA: Sectoral composition of the economy of USA| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業の割合は年々の減少傾向(サービス業の割合は増加傾向)
  • 2019年のGDPは約18.3兆米ドルで世界第1位(2位の中国は約11.5兆米ドル)

現状

  • 2020年7月から9月までのGDPの伸び率は前3ヶ月に対しプラス33.1%を記録(ビジネスの再開、個人消費の増加、輸出の増加などが要因)
  • ヘルスケア産業がアメリカ経済の中で存在感を高めている(2006年から2016年までの間で7倍の規模に成長)

今後

    • 専門家の予想によると、2020年のアメリカのGDPは前年比5.3%の減少
    • 専門家の予想によると、2021年のアメリカのGDPは前年比4.0%の増加

経済の特徴

強み

  1. 米ドル:世界の貨幣の中でも中心的な存在(準備通貨の約6割を占める)
  2. 市場:世界最大の市場規模を誇る(GDPで約20兆ドル)
  3. 研究開発:世界の研究開発費の20%を占めるイノベーションの拠点

弱み

  1. 政治の二極化:アメリカ国内での政治の分断(共和党支持者と民主党支持者、沿岸部と内陸部、都市部と地方)
  2. 格差社会:先進国の中でもトップクラスの経済格差(上位1%の持つ資産が下位90%の持つ資産を上回る)
  3. 労働市場参加率:2019年の労働市場参加率は78.4%と先進国の中では低い数字(OECDの調査)

製造業のための新時代「海外販路開拓」overseas-web-marketing

製造業全体

次にアメリカの製造業の調査結果を紹介します。下の図はアメリカの製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:USA: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2009年以降、増加傾向が続く(2016年を除き)
  • 2017年の製造業が生み出す付加価値額は20億ドルで世界第2位

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に36.1を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年10月に53.3を記録
  • 非耐久消費財(使用寿命が3年以下の製品)がGDPの4.8%を占めておりアメリカの経済の大黒柱的な存在

今後

  • 人材不足により、GDPに対する製造業の割合は今後も縮小が続く見通し(熟練技術者の流失、他業界へ吸収されるため)
  • 生産効率の向上、天然ガス、原油の生産、新興市場の賃金の高騰などの要因でアメリカ製造業は市場規模が増加するという見通しもある

バイデン大統領がアメリカ製造業に与える影響

  1. 需要拡大:アメリカ製の製品、材料、サービスに対して4000億ドルの投資を行いアメリカ製造業に対する新たな需要を喚起
  2. 再教育:小規模な事業者、女性、有色人種が所有する製造業事業者に再教育を行い、製造業を活性化
  3. イノベーション産業:研究開発と最先端技術産業に3000億ドルの投資を行い、付加価値の高い分野の活性化、雇用の創出
  4. 投資拡大:都市部と農村部を含むすべての州に公共投資を行い、製造業の生産性の底上げ
  5. サプライチェーンの見直し:重要な商品の生産を中国をはじめとする他国に過度に依存することをやめ、アメリカ国内でサプライチェーンを構築

製造業の主要産業

次にアメリカの製造業の調査結果を紹介します。下の図は2017年のアメリカ製造業における市場規模トップ10を占める分野をまとめたグラフです。
データ引用元:2019 United States Manufacturing Facts | NAM

加えて、下の図は2018年のアメリカ製造業における雇用拡大率トップ10の分野をまとめたグラフです。
データ引用元:2019 United States Manufacturing Facts | NAM

それぞれのグラフから以下のことが分かります。

  • 1位化学製品(354m$)、2位エレクトロニクス製品(281m$)、3位食料品・タバコ(270m$)が上位3品目
  • 医薬品分野は市場規模、雇用の拡大率ともに最上位
  • 航空宇宙分野の市場規模は全体の7位だが、雇用の拡大率は9.67%と急成長
  • 自動車分野は市場規模は4位、雇用の拡大率は5位

製造業の代表企業

次に、アメリカ製造業の主要産業とそれぞれの分野における代表企業を紹介します。 ※企業のリンクは日本法人がある企業は日本法人のものを使用しています。

①医薬品関連産業

▶ファイザー(Pfizer)

  • 本社:ニューヨーク州
  • 事業内容:医療用医薬品の製造・販売・輸出入
特徴
  • 医薬品:2020年の売上高は517億ドルで世界第2位
  • 研究開発:2020年の研究開発費は86.5億ドルで世界第6位

▶ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)

  • 本社:ニュージャージー州
  • 事業内容:製薬、医療機器その他のヘルスケア関連製品の開発・製造・販売
特徴
  • 医薬品:2020年の売上高は422億ドルで世界第6位
  • 研究開発:2020年の研究開発費は88.3億ドルで世界第5位

②航空宇宙産業

▶ボーイング(Boeing)

  • 本社:イリノイ州
  • 事業内容:民間・軍用機器、宇宙空間用機器の製造・販売
特徴
  • 売上高:2019年の売上高は766億ドルで世界第2位
  • ジェット機:2018年のジェット機の納入数は806機で7年連続世界第1位

▶ユナイテッド・テクノロジーズ(United Technologies)

  • 本社:コネチカット州
  • 事業内容:航空機のエンジン、宇宙産業、防火・消火製品およびセキュリティサービス、その他工業製品の研究開発・製造
特徴
  • 売上高:2019年の売上高は469億ドルで世界第4位
  • 航空機部品:2019年の市場シェアは5.2%で世界第1位 ※レイセオンと合併して計算した場合

③エレクトロニクス産業

▶ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard)

  • 本社:カリフォルニア州
  • 事業内容:パーソナル・コンピューティングその他のアクセス・デバイス、イメージングおよびプリンティング関連製品の開発、製造、販売
特徴
  • PC:2019年のPC出荷台数は約5,800万台で世界第2位(世界シェアは22.2%で世界第2位
  • PCサーバー:2019年第4四半期のPCサーバーの市場シェアは14.9%で世界第2位

▶デル(DELL)

  • 本社:テキサス州
  • 事業内容:デスクトップ・コンピューター・システム、コンピューター周辺機器、モビリティ製品、ソフトウェア及び周辺機器の開発・製造・販売
特徴
  • PC:2019年のPC出荷台数は約4,400万台で世界第3位(世界シェアは16.8%で世界第3位
  • PCサーバー:2019年第4四半期のPCサーバーの市場シェアは16.1%で世界第1位

製造業のための新時代「海外販路開拓」overseas-web-marketing

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からアメリカの製造業市場を調査した結果です。下の図はアメリカに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 進出日本企業数は統計開始の2008年から一貫して増加傾向
  • 州別の日系企業拠点数ではカリフォルニア州が516社で1位(2位はイリノイ州、3位はテキサス州)

現在

  • 2018年のJETROの調査によると、アメリカにおける日系企業の雇用者数は88万5200人で英国に続く世界第2位
  • 2018年のJETROの調査によると、在米日系企業の雇用者の41万8700人が製造業に従事

今後

  • インディアナ州(118件)を始めとする自動車工場のある州への投資が顕著であり、今後もその傾向が続く見通し
  • 日本企業によるアメリカへの投資はG7加盟国の中で最大であり、先進国の中でも安定的に成長を続けるアメリカに今後も投資が拡大する見通し

アメリカに進出した日本企業

株式会社バイタル

▶基本情報

  • 本社:長野県佐久市
  • 従業員数:37人
  • 事業内容:自動水栓の製造・販売

▶概要

近赤外線センサ内蔵の非接触式手洗い蛇口の製造・販売を行う企業。軽量かつ低価格な自動水栓の開発に成功し、1999年に米ボーイングのB777型機のビジネスクラス用に供給を開始。現在では、B787型機全機で同社の自動水栓が採用されている。同社は、部品製造を外注し、自動水栓の開発・製造のみに注力することで競争力を保っている。

山陽精機株式会社

▶基本情報

  • 本社:岡山県真庭市
  • 従業員数:53人
  • 事業内容:金型の開発・製造

▶概要

金属製や樹脂製の工業製品部品用の金型を製造する企業。1995年にシカゴ州に同社初の海外事務所を設立。シカゴ事務所では北米での射出成形金型の販売に加え、同社の製品の修理・メンテナンス業務を行う。現在では、韓国、中国に生産拠点を構えており、積極的に海外展開を進めている。

株式会社ワールドケミカル

▶基本情報

  • 本社:東京都台東区
  • 従業員数:70人
  • 事業内容:耐食性ケミカルポンプ、ろ過機、浮上油(物)回収機器の製造・販売

▶概要

水処理場向けのケミカルポンプ、浮遊物回収機の製造・販売を行う企業。1998年1月に米国の代理店契約が失効したことをきっかけに、自ら自社製品を販売するために米国に事業所を設置。米国進出後、最初の2年間は利益が出ない状態が続いたが、3年目以降アメリカ流の販売開拓方法を導入し、現在に至るまで徐々に利益を伸ばしている。

まとめ

今回はアメリカの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、他産業の急成長に伴いアメリカにおける製造業の市場規模は縮小傾向であるものの、製造業の生み出す付加価値額は増加傾向であり、依然として国の主柱的な産業であることが分かります。

進出する日本企業の傾向としては、自動車産業を中心に投資が活発であることが分かります。今回紹介した3社はそれぞれ自社独自の技術を生かした製品を駆使し、アメリカ市場に販路を拡大させています。今回の内容がアメリカ進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

The post 【2022年版】アメリカの製造業(主要産業・進出している日本企業も調査) first appeared on モノカク.