営業活動のコツはアフターフォロー、顧客数を3割アップさせた白根電機産業

ものづくり経革広場の井上です。今回は長年、積極的に営業活動に取り組んでいる白根電機産業に訪問し、どのような営業活動をしているのか、新規開拓のコツなど普段あまり聞けないことを取材してきました。同社はマーケティング大全という本に成功事例としても掲載されている会社です。新規営業の窓口の杉末さんと萩谷さんにお話を伺いました。

会社紹介 白根電機産業株式会社

白根電機産業は東京都品川区にて樹脂切削業を営む会社です。以前にHP制作事例で紹介させて頂いているのでこちらもご参照ください。

積極的に営業活動を始めたきっかけは?

杉末:リストラが世間で多かった十数年前になるのですが、仕事が無くなってからでは遅いと当時の代表が考え、「会社全体として営業活動に取り組もう」と号令をかけたのがきっかけです。号令だけだったので具体策は無く、手探りだったので、既存のお客様からの紹介、電話帳からのアポ電話、飛び込み営業などが主でした。

営業手法はそれから変わりましたか?

杉末:さすがに電話営業等に限界を感じ、2010年ごろから展示会に出るようになりました。最初は信用金庫さんの展示会に無料で出れるからということで出展しました。コンセプトもブレブレで、あるものを何でも展示していたので、自社でできない加工の相談が多かったです。まずは試しにという気持ちだったので失敗しても良かったんですが色々勉強になりました。それから機械要素展や産業交流展に出展しました。

ーその後の展示会でなにか工夫した点はありましたか?

杉末:展示サンプルを絞ったことと、全面に出すサンプルは何が良いか考えました。弊社の場合はアクリル製品が見栄えも良く、光っていたのでそれを全面に出したら結構お客さん来てくれましたね。その時の目線を観察していたんですが、まず製品を見て、そこから一歩下がって上の看板を見るんですね。「なるほどまずはサンプルを見て、それから会社を見るんだとな」と思いました。ちなみにその後の展示会で前面に出すものを塩ビに変えてみたんですが、まったくお客さん来なくなりました(笑い)展示の仕方って大事ですね。

ー展示方法でそんなに反応変わるんですね。その他に取り組んだことはありますか?

杉末:ちょうど展示会で永井さん(テクノポート名古屋営業所長)と出会って、その後にHPのリニューアルをお願いしたのも営業として取り組んだことの一つです。何をしている会社かしっかり明示することで新規の問い合わせが増えました。また、展示会に来る方は図面を持って具体的に頼みたい人と、情報収集している人がいるので、その時は決まらなくても、展示会が終わって何ヶ月後かにHPを見て問い合わせ入れてくるケースがあります。

ずばり!営業活動の成果は?

杉末:営業活動を始める前は継続でお仕事頂けるお客様が20~30社ほどだったのですが、プラスで10社ほど増えました。単発での受注を含めると数えきれないほどですけどね。また、ある一定の新規開拓数を超えると対応力が落ちてしまうため、既存のお客様と新規のお客様のどちらも大事にできるように、出展する展示会も年1件ほどに絞っています。さすがに電話営業や飛び込み営業をしなくてもよい営業スタイルが確立できました。

営業活動のコツって何かありますか?

杉末:展示会でのアフターフォローを徹底しています。あまり言いたくないですが、頂いた名刺にお礼メールを会期中に送ります。それも定形メールではなくその時に話した内容を個別に入れます。展示会が終わってからは電話で後追いを行い、面談します。

ーそこまでするから受注率が違うんですね。会期中にメールって大変ではないですか?

杉末:展示会場にいる自分では無理ですので、社内に連絡し、社長に送ってもらってます。

ー全社的な取り組みなんですね。

杉末:はい、現社長も商社出身ですので、営業手法にこだわっています。また、展示会には営業も製造現場の者も含めて参加するようにしています。なぜ現場の者も必要かというと、お客様は技術の人と話したがっているケースが多いんです。どうしても営業側の説明だと嘘臭く感じてしまうケースもあるので、技術側の者にその場で話してもらうことで信用の度合いが変わってきます。ちなみに製造側は作ってなんぼなので、忙しい時に現場を離れる必要があるのか?という製造側の意見もあるのですが、そこは社長に号令をかけてもらっているのでやりやすいですね。

ーもう一つ気になるのが、見積もりの問い合わせが入った際の対応方法について聞いて良いでしょうか?

杉末:対応可否はできる限りすぐします、電話かメールですね。外注も利用しますが、自分である程度の対応可否の判断はできるので当日には行います。見積もりは翌日までがほとんどです。2日後に返事すると遅いと言うメーカーさんもいらっしゃいます。

ー対応可否の連絡を入れてくれるのはありがたいですね。

杉末:はい、レスポンスが早いと他社検討せずにそのまま決まるケースもあります。逆に時間が経ってしまうと他社検討も入り受注する確率が低下します。

ーレスポンスは受注率にも影響するんですね。ありがとうございます。最後になにか営業のアドバイスあればぜひ!

杉末:そんなに大それたことは言えないですが、めんどくさいと思ったらその仕事はやったほうが良いと考えています。普段のルーチンの仕事は慣れているため楽ですが、新規は大変です。特に立ち上げ当初はお客さん側でも仕様が決まっていないこともあり、ヒアリングを慎重に行い要件を固めていく必要があります。他社では躊躇するような、そのめんどくさいの先に受注が待っていると思っています。どこにでもできそうな相談であれば、他に流れる可能性もありますからね。

ー大事にしたい考えですね。どうしても慣れた方を選んでしまいがちなので、私も胸に刻みたいと思います。

普段はあまり伺うことができない営業活動について詳しく教えて頂き本当にありがとうございました。

その他プチ情報

おすすめの展示会は産業交流展だそうです。機械要素は集客率は高いが最先端を求められることが多いためマッチするものが少ない。産業交流展は差し迫った案件が多いため決まりやすい。また、来客は少ないのでゆっくり話ができる。

今後の営業活動の参考にしていただけたら幸いです。

製造業が忙しさから開放されるために取り組めること

こんにちは、ものづくり経革広場の井上です。

最近どこの企業も忙しそうですね。訪問先の9割以上が忙しいと仰っているぐらいの印象があります。そのため、採用を強化したいというお話をよく聞きます。しかし、数年前から採用難ということもあり、人材採用も簡単ではありません。そこで、今回は採用以外でこの忙しさから脱却するためにできることについて、切削加工系が主になってしまいますが、参考になりそうな事例やシステムを紹介します。

忙しさを解消するために出来ること

利益率を上げる

忙しいけれども思っているより利益が上がっていなかった、ということはよくあると思います。逆に考えると利益さえしっかり出せるならば必要以上に仕事を受け、稼働率を上げ、残業をする必要もないはずです。仕事の中には手間がかかったり材料費が高かったりと利益の薄い仕事もあれば、高利益の仕事もあります。需要過多になりつつある現状ならば、今後付き合っていくべき会社がどこなのかを見直すチャンスがあるのかも知れません。

利益率を高めた取り組みとして、選択と集中を行うことで利益率を向上させた吉原精工様の事例が挙げられます。外注を一切使わずに、自社の設備でできる仕事だけに集中することで余計な業務を減らし、徹底して無駄を省くことで利益を上げています。

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生産効率を上げる

例えば切削加工の仕事を行う場合、同じ時間でも切削の条件や、段取りのスピードなど様々な要因で、一つの製品に対して完成するスピードは異なります。いかに早く正確にものづくりをするにはどうしたらよいか?どの会社でも常にこのテーマを掲げ取り組んでいることと思います。加工効率をアップさせる具体的な手法として、最適な切削条件を理論的に導きだすシミュレーションソフト「切削キャッチャー」を紹介します。

切削加工時の切削条件はメーカーの提示する切削条件と自社の切削ノウハウからある程度のあたりを付けて条件設定をすることがほとんどです。しかし、最初に割り出した条件で加工が問題なくできた場合に、それが本当に最適な条件なのか、より良い条件があるのかを判断する方法がありません。そのため切削条件を割り出す方法は大手メーカーでも中小企業でも同じく経験と勘に頼る暗黙知の領域です。

また、削れた実績ができればあえて新しい条件で挑戦しようとしないのは「サンプルロスをしたくない」という現場の心情があります。その最適な切削条件を理論的に算出し、最大限の加工効率を実現させようとするソフトが「切削キャッチャー」です。もちろん微調整は必要になりますが、根拠あるアタリをつけるところからスタートしますので、最適な条件をいち早く導き出すことができます。テストしたほとんどの企業様で切削条件の見直しと大幅な効率アップに成功しています。

切削キャッチャーの詳細はこちら 

営業効率を上げる

「提案から受注までのスピードを上げる」「見積もりスピードを上げる」「受注率を上げる」など、今まで営業をしてこなかったという企業様も多いため、営業活動の効率化は改善の余地は多分にある領域だと思います。

その際におすすめしたいのが今回ご紹介するクラウド見積もりソフト「TERMINAL-Q」です。会社ごとに独自の敷居値を設定することでクラウド上で簡易見積りの依頼ができるサービスです。

多くの中小製造業では経営者が見積もりを行っています。何十何百という図面の見積もり依頼が来て、辟易している社長さんも多いのではないでしょうか。「TERMINAL-Q」では、その見積もりを外部委託することで出てきた見積もりを微調整、承認、見積もり作成まで一気に仕上げることができるようになります。

このシステムを開発制作した会社は切削加工業を営む会社で、自社の見積もり業務をすべてそのシステムを利用することで、一切ご自身で見積もりを行わなくても済むようになったそうです。また、見積もりの基準ができれば社内の他の人に任せることも出来るようになり経営者の負担を軽減することができるメリットもあります。他にも今までの受注履歴を蓄積することで、前述の利益率を上げるための指標としても活用できるなど様々なメリットが出てきているようです。

TEMINAL-Qの詳細はこちら

今後の業界予測から忙しさからの脱却を考える

  • IoTやロボットを活用する流れ(効率化の追求)
  • 生産人口減少による人手不足
  • 今後の国内生産の減少(特にオリンピック以降の生産需要の減少)

今後の製造業の大きな課題として上記の3つが挙げられると思います。ここからはあくまで個人的な意見ですが、現状のように仕事が多くある状態がずっと続く見込みは少ないため、採用により売上の上限を伸ばすのではなく、内部強化を行うことで利益率の高さを追求することが重要だと考えています。もちろん必要最低限の採用は必要だと思いますし、事業承継も考えなければなりませんので、採用自体が悪いわけではありません。ただ、メーカーに要望され設備や人を拡充したとしても、仕事がなくなった場合の保障をメーカーはしてくれません。仕事が減った時でも耐えられる経営体質を今のうちに作り、起こり得るであろうリスクに備えることが必要な時期だと思っています。そのためには、IoTやロボットを自社でも取り入れ、共存できる形を作ることが必要だと考えています。

どうやって自動化するか?少量生産では不向きでは?といったご意見もあるかと思いますが、どの会社でも考える必要が出てきているのではないでしょうか。先日訪問した会社は1個でも溶接をロボットにて行っていました。手の方が早い気もしましたが、あえて自動化に取り組んでいました。単純作業に落とせるようなものはロボットに移行させ、それを操る管理職的な立場に人材を引き上げていくことが必要です。ロボットが人の仕事を奪うと世間では噂されていますが、うまくロボットを教育・管理する立場を新しく作ることができれば一気に作業効率は上がり、人もロボットも活躍できる職場になるはずです。そのうち作業は人ではなくロボットに教えるのが主業務の仕事が生まれるかも知れません。

今後の予測を元にあくまで理想的なあり方を述べさせていただきました。しかし、記述したような対策を行なっていかなければ「忙しさからの脱却」はなかなかできない時期にきているのではないでしょうか。