製造業が効果的な営業活動を行うためにできること(事例付き)

テクノポートの井上です。今回は製造業者が営業活動を効果的に行うためにできることを紹介します。営業活動とHPは、今では切っても切れない関係となっており、HPをどう営業に活用するかがメインのお話となります。もちろんHP以外にも多くの営業手段はあるので、HPでなければいけないということではありません。ただ、HPは製造業にとって「非常に効率が良い営業手段」であるため、掘り下げて紹介しています。

HPを活用した営業活動の成功事例を紹介

最初にいくつかHPを活用した営業活動の事例を紹介します。

有限会社ユニバーサル(制作日:2021/6)

目的が明確な問い合わせが増加。契約までの話が早く、お互い無駄な時間やエネルギーを使わずに済み、名刺代わりだったWebサイトが強力な営業ツールに急変。

営業 成功事例 ユニバーサル

(参照:有限会社ユニバーサル

株式会社モリセ精工(制作日:2018/12)

全く来なかったHPからの問い合わせが、リニューアル後は週2~3件ほどのペース。受注率は3割程度と以前に比べ大幅に上がり、狙っていた秘匿性の高い大手研究開発部門からの問い合わせも呼び込むことに成功。

営業成功事例 製造業 モリセ精工

(参照:株式会社モリセ精工

株式会社サイトウ工機(制作日:2016/11)

HPからの新規の問い合わせがほとんどない状態から、月5~10件ぐらいの新規案件をコンスタントに呼び込むことに成功。待っていても仕事の相談が入ってくる営業スタイルが完成。

営業成功事例 製造業 サイトウ工機

(参照:株式会社サイトウ工機

共通して言えることは、そこでしかできない特殊な技術を持っている会社はないということです。どのようなユーザーをターゲットにし、何を得意領域とし付加価値を提供するかを定義した結果、新規の問い合わせを呼び込むことに成功しています。

HPを使った営業が製造業と相性が良い理由

製造業とHPの相性が良いと言える根拠を説明します。

仕事が忙しいときにも営業ができる

「忙しいときにこそ種まきを」と言われるように、忙しいときでもHPは営業PRをしてくれます。

呼び込む型の営業スタイルが業界に合っている

自社製品を持たない受注生産がメインの場合、プッシュ型の営業は不向きです。既に頼んでいる業者がいるため、また、タイミングがとりづらいためです。HPならニーズのあるタイミングで向こうから問い合わせをしてくれるため、営業のハードルが格段に下がります。

異業種からの問い合わせも期待できる

HPを活用し、技術をPRすることで、自社の想定しなかった業界や用途で仕事が決まることもあります。

HPを営業として有効活用するための質問集

具体的にHPをどのように活用すればいいか、現状がわからない方も多いかと思います。

これからいくつかのHPに関する、いくつかのYES・NOの質問を投げかけます。NOとなった部分の理由を追及することで、自社のHPをよりよくするための糸口が見つかるはずです。

HPに関する質問

  • HPはありますか?
  • 自社の現在の事業内容に合っていますか?
  • HPからの問い合わせはありますか?
  • 検索キーワードで見られるように対策をしていますか?
  • アクセス状況を閲覧することはできますか?
  • どのようなキーワードで見られているか知ることはできますか?
  • 想定したキーワードの順位は10位以内にきていますか?
  • 他に想定していなかった期待できるキーワードがそこには含まれていますか?
  • 想定したキーワードで10位以内の場合、そこから問い合わせにつながっていますか?
  • 該当するページのコンテンツはユーザーの求める内容に応えられていますか?
  • 問い合わせがどのページから来ているかわかりますか?

問い合わせ対応に関する質問

  • 問い合わせの内容は自社が呼び込みたいこととマッチしていますか?
  • 問い合わせに対し、いつまでに、だれが対応するか決まっていますか?
  • 見積もり提出の前に受信した旨、製作対応可否や、見積もりをいつまでに提出することの連絡ができていますか?
  • 問い合わせ内容の顧客情報、問い合わせ内容の情報の管理はできていますか?
  • 見積もり回答した案件について、可否を最後まで追えていますか?
  • 見積もりNGだった場合にその理由までヒアリングできていますか?
  • 顧客情報を蓄積し、再度アプローチできる仕組みは作れていますか?

いかがでしたでしょうか?できていない部分を知ることができれば、なぜできていないかを考え、次に進めることができます。参考にしていただければ幸いです。どうすればいいかわからない場合には、弊社テクノポートにご相談いただければ、状況に合わせた助言ができます。

これ以降は製造業における現状と営業の必要性についてまとめております。ご存じの方も多い内容かと思いますので、その場合は読み飛ばしてください。

製造業の置かれている現状

  • 新型コロナウイルスの影響による業績低迷
  • 少子高齢化による人手不足による人件費の高騰
  • 加速するデジタルシフト
  • 安い労働力を求めたアジアへの生産拠点シフト
  • 世界情勢の不安定化によるサプライチェーンの寸断

何を機会、脅威と捉えるかは会社次第ではありますが、全体として日本の製造業の置かれている状況にはさまざまな課題があると言えます。

製造業の営業活動の必要性

受託加工という業態の特性(タイミング)

製造業界では、従来から依頼している発注先が存在します。より安価な発注先を探す場合もありますが、通常は特別な理由がない限り、新しい発注先を検討することはありません。新しい発注先を検討するタイミングや理由としては、従来の加工業者が遅れている場合や品質に問題がある場合、ボリュームを対応できない場合、後継者不足、発注リスクの分散などがあります。現在の発注先との関係が常に良好であるわけではないため、そのようなタイミングを見極めることは非常に難しいです。ほとんどの場合、「機会があれば」新しい発注先を検討することになります。

自社製品と比べてPRしづらい

自社製品の場合は、製品の特徴、メリット、デメリット、価格、他社製品との比較など、さまざまな情報を提示することができます。一方でサプライヤーの場合は、お客様から提供された図面に対して、製作可否、納期、コストを提示することが求められます。サプライヤー側から、それらが他社と比較して優位であるかどうかを判断することはできません。そのため、通常の製品販売営業よりも営業活動は困難です。

営業+技術ができる人が少ない

中小製造業の営業活動においては、営業力だけでなく、自社技術の理解も求められます。お客様から提供された図面などを見て、内容や状況を理解し、ある程度の可否判断を下せることは営業のスキルの一つであり、商談時にお客様の信頼を得るうえで重要です。

中小製造業では、こうした技術的な営業は経営者が担当することが多いため、営業という仕事に就いてもすぐに即戦力になることはまずないでしょう。時間をかけて、営業と技術の両方ができる人材を育てる必要がありますが、それには相応の労力とコストがかかります。

設備稼働力というキャパがある

製造業の場合は、保有する設備によって、稼働できる限界があります。そのため、需要があっても必ずしも受注できない場合があります。繁忙期に営業を行い、案件を獲得しても、そもそも製造ができない場合も少なくありません。営業側は、売上や顧客からの信頼などを考慮して、できる限り多くの案件を獲得したいと思っていますが、現場がそうした案件を受け入れない場合もあります。

閑散期に営業を行っても案件を獲得できない場合もある製造業は、仕事の波をコントロールすることが非常に難しい業界です。

営業活動の目的って?

営業活動の目的は、もちろん売上や利益の増加です。しかし、これは短期的な目的であり、あくまで数値化された目標と言えます。会社としての目的はその先にあり、例えば以下のようなことが挙げられます。

リスクの分散

取引がこの先も長く続く保証はないため、業界問わず取引先を増やし、取引先のバラつきを減らすことが重要です。

仕事の波の低減

繁忙期、閑散期に左右されず営業活動ができる仕組みをつくり、仕事の波を抑えることが欠かせません。

利益率の向上

顧客候補を増やし、不当なコスト協力を回避すれば、利益率の高い仕事を追求することができるようになります。

新しいビジネスのきっかけをつかむ

積極的に新しい案件に取り組み、自社事業の可能性を常に模索し、新しいビジネスのきっかけをつくることが重要です。

以上、製造業が営業活動を効果的に行うためにできることについて紹介しました。参考にしていただければ幸いです。

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自社分析のための事業細分化方法(サプライヤー企業向け)

テクノポートの井上です。コロナ禍の影響により、製造業界の営業手法として、Webサイトの活用に注力する企業が非常に増えてきました。しかし、サプライヤー企業の中には、今まで営業に力を入れておらず、いざWebマーケティングに取り組もうとしても自社の強みや打ち出し方がわからないというお話しもよく聞きます。

今回は、自社の特徴を理解し、対策キーワードの選定にも役立つ事業内容の細分化方法について切削加工業者を例に紹介します。

自社の事業内容を細分化する

自社分析を行うためには、いきなり強みや弱みがどこなのかを探すのではなく、自社が持っている経営資源の整理が必要です。整理した内容をもとに、市場や競合と照らし合わせて初めて自社の強みが見えてきます。

まずは「うちの会社ってこんな会社だよね」という現状を理解することが最初のステップです。そのために事業を細分化していきます。下記で考察すべき項目を紹介します。

自社分析 加工業者

加工方法

フライス・旋盤・ワイヤーカット・研削など自社で対応している加工方法を記載します。具体的に、5軸加工機、複合旋盤などをより詳細な情報を記載したほうがよいです。

対応サイズ

マシニングの最大テーブルサイズや高さ、旋盤の最大径・長さなどを挙げます。径によって長さも変わるため、いくつか例をあげるとよいです。

微細加工が得意な会社もありますので、最小径、微細穴寸法などもここに含まれます。例えば、微細穴は細さと深さの比率が重要なので、アスペクト比がどれぐらいかもわかるとよいでしょう。

加工材質

加工材質はとても重要です。探し手が「材質名+加工」というキーワードでよく検索されています。

そのため、対応できる材質を列挙し、特殊な材質での実績がないかも確認するとよいでしょう。普段削っている材質が他社ではあまり取り扱っていないということも稀にあります。

加工製品

完成品を作っているわけではないので、部材名を挙げていきます。例えば、シャフト、フランジ、チャンバー、マニホールドブロックなどの切削で作っているであろうものです。

何に使われているかわからなくても、図面などを見れば部品名は確認できます。自社がどのような製品をよく作っているのかも記載するとよいでしょう。

業界

どのような業界に携わっているかを掲載します。携わっている業界によっても、作る加工製品の傾向や会社の特徴があります。

生産体制

小ロットや試作が得意なのか、それとも量産なのか、量産ならば定義がどれぐらいなのかも記載します。コストメリットが出しやすいボリュームがどれぐらいなのかも具体的にわかるのが望ましいです。

他にも、一貫体制などの切削+表面処理+組み立て等のユニット対応や、切削+溶接などの複合提供などの可否を記載します。

Q・C・D

意外と比較しづらく、PRがしにくいのがQ・C・Dです。高品質・低コスト・短納期対応を掲げている会社は非常に多く、言葉が当たり前になってしまっています。

数値で表すことも難しく、キーワードの選定候補として使いづらいです。ただ、特徴を考えることは大事なので、「高品質」「低コスト」「短納期」の3つで優先順位をつけてもよいでしょう。

地域

取引商圏としてどこを見ているかを記載します。例えば、重量物の場合、近場での取引がメインとなるため、地域を絞ることがあります。

細分化した表をもとに特徴を見出す

事業細分化

以上のような項目で表を作成したら、この表は、自社にどのような特徴があるのかを見つけていきます。

特徴を見出すということは、事業内容を他と比較して違いを見つけることです。そのためには、ユーザーからの視点で意見をもらうことがおすすめです。社内で議論しても比較するための競合他社の情報が少なく、他社との違いを見出だすことはなかなか難しいでしょう。その細かな違いの組み合わせがどのような市場に対して強みとなるか、第3者に意見をもらいながら、PRする方向性を模索する必要があります。

表を見せることによって、「A社さんはこういう加工得意だよね」「この設備持ってる所少ないから助かってるよ」など意見がもらえたり、中には「A社さんこの加工やってたんだ」と気付いてもらえることもあります。

また、弊社のようなものづくり専門でWebマーケティングを行っている会社も、何千社と製造業者を見てきたため、違いを見つけ出すことが得意です。

Web上での市場調査、競合分析

ある程度自社の特徴がわかってきたら、次はWeb上でのキーワード調査から市場分析、競合分析を行い、戦略を組み立て、対策キーワードの選定を行います。

その方法についてこちらで詳しく説明しています。

「製造業WebサイトのSEO 〜対策キーワード選定3つのポイント〜」

サプライヤー企業がWebマーケティングで最初にするべき取り組みについて紹介しました。参考にしていただければ幸いです。

オンライン商談は中小製造業の強力な武器になる

テクノポートの井上です。

ZOOMをはじめとしたオンライン商談はコロナの影響もあり、ここ数ヶ月でスタンダードになりつつありますが、お話を伺う限り、まだ積極的に活用している中小製造業の会社は少ないようです。正直わたしもIT業界に身を置いておきながら、対面が良いと思っていて、このような状況になるまで、必要性を感じていないアナログな人間でした。急に背中を押されたような状態です。

ただ利用してみると、思ったより良いと感じる点、やりづらいと感じる点が見えてきて、工夫次第で活用できると思っています。そのオンライン商談ですが、中小製造業の営業の強力な武器になると考えており、今回はその理由について対面型の商談と比較しつつ説明します。

対面型商談について

対面型商談のメリット

  • お客様の課題をより深く知ることができる
  • 製品サンプル等の実物を見て具体的な検討ができる
  • 要件以外の雑談などから他の有益な情報の収集ができる
  • 直接会うことでお互い信頼関係が生まれる

対面型商談のデメリット

  • 商談の場をセッティングするのに時間がかかる
  • 移動に時間がかかる
  • 遠方だと気軽に訪問できない
  • 技術的な検討は社内に一度持ち帰ることが多い

オンライン商談について

オンライン商談のメリット

  • 商談までのリードタイムの短縮ができる
  • 移動時間の有効活用ができる
  • 遠方の顧客と接点を持てる
  • 商談が訪問型より気軽にできる
  • なかなか現場を離れられない工場長などの技術者も商談に参加できる

オンライン商談のデメリット

  • 双方でオンライン利用環境の準備が必要
  • 表情や感情が読み取りづらい
  • 議題以外の話はあまりできず、情報収集しづらい
  • 会うことに比べ気軽な分、関係を築きづらい
  • 用がなければ商談はできない

オンラインだからこそ提供できる価値を考える

上記のようにオンラインのメリットを見て頂くと、とても便利そうに見えます。実際利用してみるとたしかに便利です。ただ、やっぱり対面での商談の方が良いなと思う方も多いはずです。便利というだけでは利用する動機づけは弱いと感じます。

オンラインをうまく活用するためには、対面営業が出来ないから、しょうがなくオンラインを行う、というスタンスではなく、オンラインだからこそお客様に提供できる価値を見出すことが重要だと思います。その具体的な例をいくつか挙げます。

お客様が発注依頼をするまでの時間短縮に貢献

お客様が図面の製作可否を打ち合わせしたい時など、訪問の前にオンラインで簡単な打ち合わせを行うことで、お客様は早い段階で「この会社に依頼できそうか」を考えることができ、頼めそうと判断できれば何社も声をかける必要もなくなります。また、合わないようであれば、すぐに他を探すことができ、時間の無駄を省けます。

訪問のように、お互いの時間をセッティングする必要が無いため、時間が空いていれば、当日すぐにでも打ち合わせすることが可能になります。中小製造業はスピード感、対応力を売りにしている会社も多いため、その強みに磨きがかかるはずです。

より気軽な双方コミュニケーションを可能にする

オンラインをうまく活用することで、メーカーの研究開発部門や、製品開発をしたいベンチャー系企業などの技術的な相談に気軽に乗れるようになります。アイディアベースのものを一度製造側に問いかけることで、アイディアをブラッシュアップしていくケースはよくあります。

社内であれば気軽に話ができますが、社外の人間に相談するのは、ある程度仕様が固まった状態でないと、問い合わせをするハードルが高いです。

オンラインであれば、訪問と違い、相談レベルからの打ち合わせが気軽にできるようになり、問い合わせのハードルを下げられます。また、メール、電話では伝えきれないものがカバーできます。

他にも、商談では無いですが、毎日何度もコンタクトを取るような関係の深いお客様や、自社の複数拠点をオンラインで常に繋くこともできると思います。それにより、まるで同じ社内にいるように複数人、複数回のコンタクトが可能になり、劇的なコミュニケーションの変化が生まれるかも知れません。

営業の「技術に相談する」という宿題を無くす

訪問し商談をする際に、技術者も同行できれば良いですが、なかなか予定が合わず、要件を伺うためにまずは営業だけで訪問するケースも多いと思います。ただ、深い技術の話になると「一度社内に持ち帰って検討します」という場面は少なからずあるのではないでしょうか。オンラインであれば、なかなか現場を離れられない工場長などの技術者を商談の場に参加させることができます。

オンラインでお客様と商談するやり方もありますが、対面商談とオンラインを組み合わせるやり方も考えられます。例えば、営業マンがお客様先に訪問し、対面での商談を行い、技術者はオンラインでつなぐという方法です。これにより、対面商談の良いところに加え、問題解決のスピードが早くなり、また、技術者の移動時間も削れます。

訪問の難しい遠方のお客様との距離を縮める

「オンライン商談のメリット」にも記載はありますが、遠方でなかなか打ち合わせができないお客様とも容易に打ち合わせができるようになります。もしかしたら海外とのやり取りも増えるかもしれません。また、地方で製造業を営む企業にとっては、不利と見なされていたその距離感をぐっと縮めることができるようになります。オンラインで工場見学ができるようにすれば、より自社の理解を深められるようになると思います。

オンライン商談で気をつける点

オンラインと対面の商談の違い

オンラインと対面での商談では、求められるスキルが違うように感じています。どちらの商談でも、必要なスキルとしてコミュニケーション能力がありますが、対面型商談では相手の懐に入るのがうまくお客様に好かれる人が向いている気がします。つまり、雰囲気作りの上手い人です。しかし、オンラインでは議題が決まっており必要なことしか話さないため、目的や論点を明確にして商談を進める能力が重要です。

また、オンラインだとコミュニケーションの伝達力が落ちるので、そのデメリットを払拭する手段としてプレゼンツールを洗練させる(画面共有で見せる資料)などの必要性も出てくると思います。他にもオンライン特有の間(ま)であったり、相槌など、普段より大きめのリアクションを取る必要があったり、対面型と同じとは考えず、オンライン独自のノウハウを構築する必要があると思います。

最後に

コロナ禍によりオンラインを利用せざるを得ない世の中になりました。オンラインツールが昔から無かったわけではありませんが、コロナ以前なら「オンラインでやりましょう」と言っても難色を示すお客様は多かったはずです。それが双方理解される世の中になったため、オンラインが急激に浸透しました。

今後、コロナが収まっても、以前の営業スタイルに戻ることは出来ないかも知れません。対面型商談の劣化版として無理やり取り入れるのではなく、お客様とのやり取りをより円滑かつスピーディに解決できる自社の営業ツールとしてオンラインを取り込んでいく必要があるのではないでしょうか?

営業活動のコツはアフターフォロー、顧客数を3割アップさせた白根電機産業

ものづくり経革広場の井上です。今回は長年、積極的に営業活動に取り組んでいる白根電機産業に訪問し、どのような営業活動をしているのか、新規開拓のコツなど普段あまり聞けないことを取材してきました。同社はマーケティング大全という本に成功事例としても掲載されている会社です。新規営業の窓口の杉末さんと萩谷さんにお話を伺いました。

会社紹介 白根電機産業株式会社

白根電機産業は東京都品川区にて樹脂切削業を営む会社です。以前にHP制作事例で紹介させて頂いているのでこちらもご参照ください。

積極的に営業活動を始めたきっかけは?

杉末:リストラが世間で多かった十数年前になるのですが、仕事が無くなってからでは遅いと当時の代表が考え、「会社全体として営業活動に取り組もう」と号令をかけたのがきっかけです。号令だけだったので具体策は無く、手探りだったので、既存のお客様からの紹介、電話帳からのアポ電話、飛び込み営業などが主でした。

営業手法はそれから変わりましたか?

杉末:さすがに電話営業等に限界を感じ、2010年ごろから展示会に出るようになりました。最初は信用金庫さんの展示会に無料で出れるからということで出展しました。コンセプトもブレブレで、あるものを何でも展示していたので、自社でできない加工の相談が多かったです。まずは試しにという気持ちだったので失敗しても良かったんですが色々勉強になりました。それから機械要素展や産業交流展に出展しました。

ーその後の展示会でなにか工夫した点はありましたか?

杉末:展示サンプルを絞ったことと、全面に出すサンプルは何が良いか考えました。弊社の場合はアクリル製品が見栄えも良く、光っていたのでそれを全面に出したら結構お客さん来てくれましたね。その時の目線を観察していたんですが、まず製品を見て、そこから一歩下がって上の看板を見るんですね。「なるほどまずはサンプルを見て、それから会社を見るんだとな」と思いました。ちなみにその後の展示会で前面に出すものを塩ビに変えてみたんですが、まったくお客さん来なくなりました(笑い)展示の仕方って大事ですね。

ー展示方法でそんなに反応変わるんですね。その他に取り組んだことはありますか?

杉末:ちょうど展示会で永井さん(テクノポート名古屋営業所長)と出会って、その後にHPのリニューアルをお願いしたのも営業として取り組んだことの一つです。何をしている会社かしっかり明示することで新規の問い合わせが増えました。また、展示会に来る方は図面を持って具体的に頼みたい人と、情報収集している人がいるので、その時は決まらなくても、展示会が終わって何ヶ月後かにHPを見て問い合わせ入れてくるケースがあります。

ずばり!営業活動の成果は?

杉末:営業活動を始める前は継続でお仕事頂けるお客様が20~30社ほどだったのですが、プラスで10社ほど増えました。単発での受注を含めると数えきれないほどですけどね。また、ある一定の新規開拓数を超えると対応力が落ちてしまうため、既存のお客様と新規のお客様のどちらも大事にできるように、出展する展示会も年1件ほどに絞っています。さすがに電話営業や飛び込み営業をしなくてもよい営業スタイルが確立できました。

営業活動のコツって何かありますか?

杉末:展示会でのアフターフォローを徹底しています。あまり言いたくないですが、頂いた名刺にお礼メールを会期中に送ります。それも定形メールではなくその時に話した内容を個別に入れます。展示会が終わってからは電話で後追いを行い、面談します。

ーそこまでするから受注率が違うんですね。会期中にメールって大変ではないですか?

杉末:展示会場にいる自分では無理ですので、社内に連絡し、社長に送ってもらってます。

ー全社的な取り組みなんですね。

杉末:はい、現社長も商社出身ですので、営業手法にこだわっています。また、展示会には営業も製造現場の者も含めて参加するようにしています。なぜ現場の者も必要かというと、お客様は技術の人と話したがっているケースが多いんです。どうしても営業側の説明だと嘘臭く感じてしまうケースもあるので、技術側の者にその場で話してもらうことで信用の度合いが変わってきます。ちなみに製造側は作ってなんぼなので、忙しい時に現場を離れる必要があるのか?という製造側の意見もあるのですが、そこは社長に号令をかけてもらっているのでやりやすいですね。

ーもう一つ気になるのが、見積もりの問い合わせが入った際の対応方法について聞いて良いでしょうか?

杉末:対応可否はできる限りすぐします、電話かメールですね。外注も利用しますが、自分である程度の対応可否の判断はできるので当日には行います。見積もりは翌日までがほとんどです。2日後に返事すると遅いと言うメーカーさんもいらっしゃいます。

ー対応可否の連絡を入れてくれるのはありがたいですね。

杉末:はい、レスポンスが早いと他社検討せずにそのまま決まるケースもあります。逆に時間が経ってしまうと他社検討も入り受注する確率が低下します。

ーレスポンスは受注率にも影響するんですね。ありがとうございます。最後になにか営業のアドバイスあればぜひ!

杉末:そんなに大それたことは言えないですが、めんどくさいと思ったらその仕事はやったほうが良いと考えています。普段のルーチンの仕事は慣れているため楽ですが、新規は大変です。特に立ち上げ当初はお客さん側でも仕様が決まっていないこともあり、ヒアリングを慎重に行い要件を固めていく必要があります。他社では躊躇するような、そのめんどくさいの先に受注が待っていると思っています。どこにでもできそうな相談であれば、他に流れる可能性もありますからね。

ー大事にしたい考えですね。どうしても慣れた方を選んでしまいがちなので、私も胸に刻みたいと思います。

普段はあまり伺うことができない営業活動について詳しく教えて頂き本当にありがとうございました。

その他プチ情報

おすすめの展示会は産業交流展だそうです。機械要素は集客率は高いが最先端を求められることが多いためマッチするものが少ない。産業交流展は差し迫った案件が多いため決まりやすい。また、来客は少ないのでゆっくり話ができる。

今後の営業活動の参考にしていただけたら幸いです。

製造業が忙しさから開放されるために取り組めること

こんにちは、ものづくり経革広場の井上です。

最近どこの企業も忙しそうですね。訪問先の9割以上が忙しいと仰っているぐらいの印象があります。そのため、採用を強化したいというお話をよく聞きます。しかし、数年前から採用難ということもあり、人材採用も簡単ではありません。そこで、今回は採用以外でこの忙しさから脱却するためにできることについて、切削加工系が主になってしまいますが、参考になりそうな事例やシステムを紹介します。

忙しさを解消するために出来ること

利益率を上げる

忙しいけれども思っているより利益が上がっていなかった、ということはよくあると思います。逆に考えると利益さえしっかり出せるならば必要以上に仕事を受け、稼働率を上げ、残業をする必要もないはずです。仕事の中には手間がかかったり材料費が高かったりと利益の薄い仕事もあれば、高利益の仕事もあります。需要過多になりつつある現状ならば、今後付き合っていくべき会社がどこなのかを見直すチャンスがあるのかも知れません。

利益率を高めた取り組みとして、選択と集中を行うことで利益率を向上させた吉原精工様の事例が挙げられます。外注を一切使わずに、自社の設備でできる仕事だけに集中することで余計な業務を減らし、徹底して無駄を省くことで利益を上げています。

詳細はこちら

 

生産効率を上げる

例えば切削加工の仕事を行う場合、同じ時間でも切削の条件や、段取りのスピードなど様々な要因で、一つの製品に対して完成するスピードは異なります。いかに早く正確にものづくりをするにはどうしたらよいか?どの会社でも常にこのテーマを掲げ取り組んでいることと思います。加工効率をアップさせる具体的な手法として、最適な切削条件を理論的に導きだすシミュレーションソフト「切削キャッチャー」を紹介します。

切削加工時の切削条件はメーカーの提示する切削条件と自社の切削ノウハウからある程度のあたりを付けて条件設定をすることがほとんどです。しかし、最初に割り出した条件で加工が問題なくできた場合に、それが本当に最適な条件なのか、より良い条件があるのかを判断する方法がありません。そのため切削条件を割り出す方法は大手メーカーでも中小企業でも同じく経験と勘に頼る暗黙知の領域です。

また、削れた実績ができればあえて新しい条件で挑戦しようとしないのは「サンプルロスをしたくない」という現場の心情があります。その最適な切削条件を理論的に算出し、最大限の加工効率を実現させようとするソフトが「切削キャッチャー」です。もちろん微調整は必要になりますが、根拠あるアタリをつけるところからスタートしますので、最適な条件をいち早く導き出すことができます。テストしたほとんどの企業様で切削条件の見直しと大幅な効率アップに成功しています。

切削キャッチャーの詳細はこちら 

営業効率を上げる

「提案から受注までのスピードを上げる」「見積もりスピードを上げる」「受注率を上げる」など、今まで営業をしてこなかったという企業様も多いため、営業活動の効率化は改善の余地は多分にある領域だと思います。

その際におすすめしたいのが今回ご紹介するクラウド見積もりソフト「TERMINAL-Q」です。会社ごとに独自の敷居値を設定することでクラウド上で簡易見積りの依頼ができるサービスです。

多くの中小製造業では経営者が見積もりを行っています。何十何百という図面の見積もり依頼が来て、辟易している社長さんも多いのではないでしょうか。「TERMINAL-Q」では、その見積もりを外部委託することで出てきた見積もりを微調整、承認、見積もり作成まで一気に仕上げることができるようになります。

このシステムを開発制作した会社は切削加工業を営む会社で、自社の見積もり業務をすべてそのシステムを利用することで、一切ご自身で見積もりを行わなくても済むようになったそうです。また、見積もりの基準ができれば社内の他の人に任せることも出来るようになり経営者の負担を軽減することができるメリットもあります。他にも今までの受注履歴を蓄積することで、前述の利益率を上げるための指標としても活用できるなど様々なメリットが出てきているようです。

TEMINAL-Qの詳細はこちら

今後の業界予測から忙しさからの脱却を考える

  • IoTやロボットを活用する流れ(効率化の追求)
  • 生産人口減少による人手不足
  • 今後の国内生産の減少(特にオリンピック以降の生産需要の減少)

今後の製造業の大きな課題として上記の3つが挙げられると思います。ここからはあくまで個人的な意見ですが、現状のように仕事が多くある状態がずっと続く見込みは少ないため、採用により売上の上限を伸ばすのではなく、内部強化を行うことで利益率の高さを追求することが重要だと考えています。もちろん必要最低限の採用は必要だと思いますし、事業承継も考えなければなりませんので、採用自体が悪いわけではありません。ただ、メーカーに要望され設備や人を拡充したとしても、仕事がなくなった場合の保障をメーカーはしてくれません。仕事が減った時でも耐えられる経営体質を今のうちに作り、起こり得るであろうリスクに備えることが必要な時期だと思っています。そのためには、IoTやロボットを自社でも取り入れ、共存できる形を作ることが必要だと考えています。

どうやって自動化するか?少量生産では不向きでは?といったご意見もあるかと思いますが、どの会社でも考える必要が出てきているのではないでしょうか。先日訪問した会社は1個でも溶接をロボットにて行っていました。手の方が早い気もしましたが、あえて自動化に取り組んでいました。単純作業に落とせるようなものはロボットに移行させ、それを操る管理職的な立場に人材を引き上げていくことが必要です。ロボットが人の仕事を奪うと世間では噂されていますが、うまくロボットを教育・管理する立場を新しく作ることができれば一気に作業効率は上がり、人もロボットも活躍できる職場になるはずです。そのうち作業は人ではなくロボットに教えるのが主業務の仕事が生まれるかも知れません。

今後の予測を元にあくまで理想的なあり方を述べさせていただきました。しかし、記述したような対策を行なっていかなければ「忙しさからの脱却」はなかなかできない時期にきているのではないでしょうか。