こんにちは、マスターブラックベルトの津吉です。
先週末、久しぶりに日曜大工をしました。植木鉢を載せるテーブルを作るために木材を切り揃え、組み立て、さらにニスを塗って仕上げました。使った電動工具は丸ノコ盤、卓上丸ノコ、電動ドリル、そしてサンダーの4種類。電動工具を使わなければ、とても一日では終わらなかったことでしょう。ツールの威力は生産性が劇的に高まることだけではありません。ツールを使うことで素人でもそれなりの物に仕上げることができます。それは大工仕事だけに限ったことではなく、普段の仕事でも同じことが言えます。
そこで今回は普段の仕事で気軽に使える便利なツール「最適化のための進化的調整方法」をご紹介したいと思います。
陸王の「こはぜ屋」でも使えるツール
足袋工場「こはぜ屋」が陸王というランニングシューズを作るテレビドラマを皆さんもご覧になったことと思います。
あのドラマの中で、「シルクレイ製造装置を再稼働させて最初のサンプルが作れるようになるまで数か月は必要だ」と飯山専務は言い、事実、飯山専務と一緒に仕事をしていた大地の二人は、2週間以上も深夜まで毎日働き、試行錯誤を繰り返しながら設備の再調整をしていました。
もし彼らが「最適化のための進化的調整方法」を使っていたら、恐らく3日もあれば再調整は終わっていたでしょう。
陸王 (引用 TBS)
「最適化のための進化的調整方法」ってナニ?
最適化と聞くと、数学や統計学の知識が必要な難しいものと思われがちですが、この最適化手法は数学も統計学も全く必要ありません。足し算と割り算ができれば十分です。
下の図は「最適化のための進化的調整方法」のイメージを表しています。
- 最初に3つの調整点(三角形の頂点1、頂点2、頂点3)を任意に決めて、それぞれの調整点から結果を取得します
- それぞれの結果と目標値を比較して次の調整点(頂点4)を計算し、頂点4の調整値から結果を取得します
- 新しい三角形(頂点2、頂点3、頂点4)の結果と目標値を比較して次の調整点(頂点5)を計算し、頂点5の調整値から結果を取得します
- 新しい三角形(頂点2、頂点4、頂点5)の結果と目標値を比較して次の調整点(頂点6)を計算し、頂点6の調整値から結果を取得します
- 新しい三角形(頂点4、頂点5、頂点6)の結果と目標値を比較して次の調整点(頂点7)を計算し、頂点7の調整値から結果を取得します
この手順を何度か繰り返しているうちに、結果が目標値に次第に近づいていき、最終的には最適値が得られる調整値に収束していきます。試行錯誤を繰り返しながら闇雲に調整するよりも、はるかに早く生産的で確実な調整ができます。
次の調整点(頂点)の計算方法はとても簡単ですが、ここでは十分に説明しきれないので、ご興味のある方はぜひ私のブログを参照して下さい。
最適化のための進化的調整方法
どんな仕事に使えるのか
調整パラメータの数が2つ以上であれば「最適化のための進化的調整方法」が使えます。例えば、
- 生産システムのパラメータ調整
- 在庫量の調整
- プロセスラインの調整
- 製造装置の調整
- サプライチェーンの調整
など。調整パラメータの数が4つ以上になるとグラフでは表現できなくなりますが(4次元グラフになってしまうため)、最適化のための手順はまったく同じです。
進化的調整方法の応用範囲
「最適化のための進化的調整方法」のメリット
最後に「最適化のための進化的調整方法」を使う利点をいくつか挙げておきます。
- 通常業務中に仕事(生産)を継続しながら調整ができます。
- 一般的な最適化手法のように特別な準備や環境を用意したり、通常業務を停止して試験を行う必要がありません。
- 難しい数学や統計の知識はまったく必要ありません。足し算と割り算だけで計算ができます。またエクセルを使える知識があれば十分です。
- 一般的な最適化手法に比べて調整回数が少なくて済み、その分早く調整作業が終わります。
- 完全な最適値ではないかもしれませんが、十分満足できる最適値を得ることができます。
- 通常業務を継続しながら調整(最適化)できるので、調整中に作った製品も販売することができます。
計算方法など更に詳細な内容についてご興味のある方は、ぜひ私のブログを参照してください。