完成品メーカーのコンテンツマーケティング活用事例

製造業のエンジニアで、製造業系ライターとして活動している一之瀬です。完成品メーカーで、「コンテンツマーケティング」を行う事例が増えてきています。コンテンツマーケティングとは、ユーザにとって価値のあるコンテンツを提供することにより、自社に興味を持ってもらうマーケティング手法です。今回の記事では、完成品メーカーのコンテンツマーケティング活用事例をご紹介します。

完成品メーカーのコンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングでは、ユーザにとって有益なコンテンツを制作し、コーポレートサイトやコンテンツマーケティング専用のサイト(オウンドメディア)で発信します。サイトを訪れたユーザの課題を解決することによって自社の存在を知ってもらい、最終的には製品の購入を目指します。

完成品メーカーの場合、リードの獲得を目的としてコンテンツマーケティングを行う場合が大半です。自社の製品に関連するコンテンツを発信することで、自社のブランドを知らなかったユーザからの認知度を高められるからです。また、自社の製品を広く知ってもらうことにより、販売数の増加などにつながります。

メーカーの活用事例

ここでは、完成品メーカー5社のコンテンツマーケティング活用事例をご紹介します。

株式会社キーエンス

株式会社キーエンスは、センサや画像処理機器、解析機器など幅広い製品を扱っています。コンテンツマーケティングを活用している完成品メーカーとして、真っ先に挙げられるのがキーエンスです。

センサとは.com」「安全知識.com」「ココが知りたい!形状測定」など、数多くのオウンドメディアを運用しています。サイト数や記事の本数はコンテンツマーケティングを行っている完成品メーカーのなかでも、桁違いに多いです。また、自社の技術説明に加えて、どの製品を選べばよいか分からないユーザの悩みを解決できるようなコンテンツが豊富に掲載されています。

新たにコンテンツマーケティングを始めたい完成品メーカーから、参考にされることも多くなっています。

日本キャタピラーグループ

日本キャタピラーグループは、建設機械メーカーとして油圧ショベルやブルドーザーを扱っています。

Cat建機研究所」というオウンドメディアをコーポレートサイト内で運営しており、建設機械に関するお役立ち情報を発信しています。具体的なコンテンツとしては、建設機械の選び方や正しい使い方、建設機械に関する用語の説明などです。各記事の後半は、自社への問い合わせにつなげられるような流れで構成されているため、リードの獲得に効果的です。

IMV株式会社

IMV株式会社は、振動試験装置や計測装置を扱っている完成品メーカーです。

自社のコーポレートサイト内に、「なるほど!地震計」や「なるほど!振動計」などのコンテンツを掲載しています。主なコンテンツは、自社の製品を使用する目的や製品が活躍する場面、どのような原理で構築されているかの紹介などです。地震計や振動計に関して、基本的な知識や選び方を紹介することで、自社製品のマーケティングを実践しています。

シーシーエス株式会社

シーシーエス株式会社は、画像処理用の照明装置など、照明関係の製品を幅広く取り扱っています。

自社サイト内で「課題解決!徒然日記」として、一話完結型の会話形式で、画像処理に関する悩みを解決できるコンテンツを掲載しています。実際にユーザが直面するような課題を題材にすることで、課題解決のイメージがしやすく、自社への問い合わせへとつなげられる構成になっています。

松定プレシジョン株式会社

松定プレシジョン株式会社は、電源設備やX線発生装置、各種分析機器などさまざまな製品を扱っています。

自社サイト内の「技術コラム」に掲載されているコンテンツは、自社製品に関係する用語の解説に加えて、製品に使われている技術の解説記事がメインです。電源やX線、分析装置などは目に見えないものを扱うことが多いため、解説記事を通して自社製品の特徴や対応範囲をユーザに伝わりやすくしています。

まとめ

完成品メーカーのコンテンツマーケティングでは、リードの獲得を目的としてコンテンツを掲載しています。具体的には、自社製品の技術に関する基礎知識の解説や製品の選び方に加えて、ユーザの悩みを解決できるコンテンツを充実させることが重要です。

テクノポートでは、完成品メーカーのコンテンツマーケティングを支援しています。今後、コンテンツマーケティングを始めたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

課題別IoTツール・サービス事例集3:IoT導入にかかるコストを抑えたい

こんにちは、製造業のDXに注目する岩手在住IT系ライターの宮田文机です。

IoT導入にあたって気になるのがどのくらいの導入コストがかかるのか。平成28年に行われた総務省の調査によると従業員100名以上の製造業に従事する企業がIoTに支出したコストは前年度売上高比で3%未満がもっとも多く、3%~5%未満がその後に続きます。

自社のIoT化に当たってコストを抑えるために意識すべきこと、そしてそのために役立つかもしれない4つのツール・サービスをご紹介します。

IoT導入にかかるコストとは? 抑える手段は?

IoTの導入・運用で必要となるコストとしては以下のようなものが挙げられます。

  • センサー・アクチュエータといった機器の購入コスト
  • 通信回線にかかるコスト
  • クラウド・サーバーにかかるコスト
  • 開発・運用にかかる人的コスト
  • システムの構築・運用・保守などにかかる外注コスト

デバイスや通信料金の発達・低価格化により徐々に導入のハードルは下がってきていますが、それでも数百~数億円の費用が提示されることは珍しくありません。中小規模の工場ではとても負担しきれないことも少なくないでしょう。

そこでIoT化に取り組むために覚えておいていただきたいのが「助成金・補助金の活用」と「身の丈IoT」です。まずはIT導入補助金など国、自治体、非営利法人が運用する助成金・補助金の中で利用できるものはないか探しましょう。実際の導入の段階で知っておくべきなのが「身の丈に合った範囲でも十分IoT化は始められる」ということ。ITや通信の知識がなくても今は情報が充実していますし、ベンダーに相談するだけなら多くの場合費用はかかりません。

ここからは低コストで身の丈IoTを実現するために役立つかもしれないツールをご紹介していきます。

事例1:IoT自作の基本ツール、Raspberry Pi・Arduino

IoTをDIYで実現する事例で最もポピュラーなのが、イギリスのラズベリー財団がコンピューター教育用に販売した小型コンピューターRaspberry Pi(ラズパイ)やイタリアで開発されたマイコンボードArduinoを活用したものです。いずれも数千円代と安価ながらセンサーとの接続や機器の制御などIoTで実現したいことが一通り実現可能。プログラミングの知識は必要になりますが、書籍やWeb記事、動画など資料が充実してきているためゼロからでも始められる環境は整っています。

【活用事例】

自動車部品における製造ラインの稼働状況をスマートフォンやPCから確認できるシステムを市販のセンサーとRaspberry Piで確立。生産性の向上や発展させた同システムの事業化に成功した。

事例2:IoT導入の基本システムが一気に手に入る、10万円IoTキット

ものづくりとIoTの融合を目指すIVI(Industrial Value Chain Initiative))が提案するIoTの実験用デモ機が「10万円IoTキット」です。前述のRaspberry PiやmicroSDカード、ICカードリーダ、ICカード、電流センサー、環境&モーションセンサーなどがまとめて提供され、その名の通り10万円弱でIoTシステムを構築することができます。IVIのサイトでその構成は公開されているため確認しつつ自分で取り揃えることも可能ですし、地域セミナーなどでデモを見たうえで提供を受けることもできます。

【活用事例】

交代制による24時間稼働を強みとするプラスチック製品工場の夜間の稼働状況を可視化。稼働率が低くなる原因特定に貢献し、結果として生産性向上を実現した。

事例3:初期費用0円、現場の声が反映されたIoT GO

自社工場のIoT化に成功した久野金属工業株式会社(詳しくは「IoT導入事例ファイル1: 中小企業5社のスマホを使ったIoT」)が株式会社マイクロリンクと開発したIoTクラウドサービス「IoT GO」です。初期費用0円、月額料金も1設備一日300円程度(工事費別)と安価に設定されているのがポイント。現場への浸透がIoT化の成功のカギといっても過言ではないため、自社工場で実際に導入した経験が反映されているというのは信頼のおけるポイントです。

【活用事例】

自動車のプレス加工部品を主力製品とする久野金属工業の装置のオン・オフ/サイクルタイムを計測。最大52%の生産性向上と売上に対する使用電力量の14.5%削減に貢献した。

事例4:IoT導入~クラウドとの連携までがまとめられたDegu IoTエントリーパック

誰でも簡単に簡単にIoTセンシングを行いクラウドと連携させられる世界の実現を目指すオープンソースプロジェクトDegu(デグー)の初心者向けパッケージです。

その内容はセンシングデータを送信するためのマイコンボード、データ通信を中継するゲートウェイ、照度センサー・加速度センサー・温湿度センサーなど6種類のセンサーセットの3つ。定価41,500円(税別)で、データのセンシング~クラウドへの集積までを簡単にスタートできるパッケージとなっています。ある程度道具が用意された状態から自作IoTに着手したい方には非常に魅力的に映るでしょう。

【活用事例】

果物を栽培するビニルハウスの湿度・温度・土壌の水分状況などをセンシング。機械学習でベストな水分量を把握し、適切な散水を行える状況を整えた。

まとめ

IoTの導入コストを抑えたいという方に向けて4種類のツールをご紹介しました。

前述の通り、まずは身の丈から始めることで安価にIoTを始めることは可能です。そこで理解を深めたうえで工場全体のDXに着手すれば、結果として目標達成につなげられる可能性も高まるはず。「ITは苦手だから……」と尻込みせず、まずはできそうなことから着手してみてください。