世界の製造業⑬「アメリカ」

テクノポートの稲垣です。今回は「アメリカの製造業」を紹介します。

2020年11月3日から投票が行われたアメリカ大統領選挙は、民主党のジョー・バイデン候補が当選確実となりました。

今回は、バイデン大統領がアメリカの製造業にどのような影響を与えるのかを含めて、アメリカに進出する日本企業の目線からアメリカ製造業を掘り下げていきたいと思います。

基本情報

  • 正式名称:アメリカ合衆国(United States of America)
  • 首都:ワシントンD.C.(Washington, D.C.)
  • 大統領:ドナルド・J・トランプ(2017年1月~)
  • 通貨:アメリカ合衆国ドル(1ドル=104.66円 ※2020年10月31日時点)
  • 人口:約3億2775万人
  • 面積:約962.8万km2
  • 公用語:英語
  • 宗教:信教の自由を憲法で保障,主にキリスト教
  • 平均寿命:男76.1歳、女81.1歳

経済の特徴

強み

  1. 米ドル:世界の貨幣の中でも中心的な存在(準備通貨の約6割を占める)
  2. 市場:世界最大の市場規模を誇る(GDPで約20兆ドル)
  3. 研究開発:世界の研究開発費の20%を占めるイノベーションの拠点

弱み

  1. 政治の二極化:アメリカ国内での政治の分断(共和党支持者と民主党支持者、沿岸部と内陸部、都市部と地方)
  2. 格差社会:先進国の中でもトップクラスの経済格差(上位1%の持つ資産が下位90%の持つ資産を上回る)
  3. 労働市場参加率:2019年の労働市場参加率は78.4%と先進国の中では低い数字(OECDの調査)

産業構造

まずはアメリカの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はアメリカの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:USA: Sectoral composition of the economy of USA| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業の割合は年々の減少傾向(サービス業の割合は増加傾向)
  • 2019年のGDPは約18.3兆米ドルで世界第1位(2位の中国は約11.5兆米ドル)

現状

  • 2020年7月から9月までのGDPの伸び率は前3ヶ月に対しプラス33.1%を記録(ビジネスの再開、個人消費の増加、輸出の増加などが要因)
  • ヘルスケア産業がアメリカ経済の中で存在感を高めている(2006年から2016年までの間で7倍の規模に成長)

今後

  • 専門家の予想によると、2020年のアメリカのGDPは前年比5.3%の減少
  • 専門家の予想によると、2021年のアメリカのGDPは前年比4.0%の増加

製造業全体

次にアメリカの製造業の調査結果を紹介します。下の図はアメリカの製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:USA: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2009年以降、増加傾向が続く(2016年を除き)
  • 2017年の製造業が生み出す付加価値額は20億ドルで世界第2位

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に36.1を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年10月に53.3を記録
  • 非耐久消費財(使用寿命が3年以下の製品)がGDPの4.8%を占めておりアメリカの経済の大黒柱的な存在

今後

  • 人材不足により、GDPに対する製造業の割合は今後も縮小が続く見通し(熟練技術者の流失、他業界へ吸収されるため)
  • 生産効率の向上、天然ガス、原油の生産、新興市場の賃金の高騰などの要因でアメリカ製造業は市場規模が増加するという見通しもある

バイデン大統領がアメリカ製造業に与える影響

  1. 需要拡大:アメリカ製の製品、材料、サービスに対して4000億ドルの投資を行いアメリカ製造業に対する新たな需要を喚起
  2. 再教育:小規模な事業者、女性、有色人種が所有する製造業事業者に再教育を行い、製造業を活性化
  3. イノベーション産業:研究開発と最先端技術産業に3000億ドルの投資を行い、付加価値の高い分野の活性化、雇用の創出
  4. 投資拡大:都市部と農村部を含むすべての州に公共投資を行い、製造業の生産性の底上げ
  5. サプライチェーンの見直し:重要な商品の生産を中国をはじめとする他国に過度に依存することをやめ、アメリカ国内でサプライチェーンを構築

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からアメリカの製造業市場を調査した結果です。下の図はアメリカに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 進出日本企業数は統計開始の2008年から一貫して増加傾向
  • 州別の日系企業拠点数ではカリフォルニア州が516社で1位(2位はイリノイ州、3位はテキサス州)

現在

  • 2018年のJETROの調査によると、アメリカにおける日系企業の雇用者数は88万5200人で英国に続く世界第2位
  • 2018年のJETROの調査によると、在米日系企業の雇用者の41万8700人が製造業に従事

今後

  • インディアナ州(118件)を始めとする自動車工場のある州への投資が顕著であり、今後もその傾向が続く見通し
  • 日本企業によるアメリカへの投資はG7加盟国の中で最大であり、先進国の中でも安定的に成長を続けるアメリカに今後も投資が拡大する見通し

アメリカに進出した日本企業

株式会社バイタル

▶基本情報

  • 本社:長野県佐久市
  • 従業員数:37人
  • 事業内容:自動水栓の製造・販売

▶概要

近赤外線センサ内蔵の非接触式手洗い蛇口の製造・販売を行う企業。軽量かつ低価格な自動水栓の開発に成功し、1999年に米ボーイングのB777型機のビジネスクラス用に供給を開始。現在では、B787型機全機で同社の自動水栓が採用されている。同社は、部品製造を外注し、自動水栓の開発・製造のみに注力することで競争力を保っている。

山陽精機株式会社

▶基本情報

  • 本社:岡山県真庭市開
  • 従業員数:53人
  • 事業内容:金型の開発・製造

▶概要

金属製や樹脂製の工業製品部品用の金型を製造する企業。1995年にシカゴ州に同社初の海外事務所を設立。シカゴ事務所では北米での射出成形金型の販売に加え、同社の製品の修理・メンテナンス業務を行う。現在では、韓国、中国に生産拠点を構えており、積極的に海外展開を進めている。

株式会社ワールドケミカル

▶基本情報

  • 本社:東京都台東区台東
  • 従業員数:70人
  • 事業内容:耐食性ケミカルポンプ、ろ過機、浮上油(物)回収機器の製造・販売

▶概要

水処理場向けのケミカルポンプ、浮遊物回収機の製造・販売を行う企業。1998年1月に米国の代理店契約が失効したことをきっかけに、自ら自社製品を販売するために米国に事業所を設置。米国進出後、最初の2年間は利益が出ない状態が続いたが、3年目以降アメリカ流の販売開拓方法を導入し、現在に至るまで徐々に利益を伸ばしている。

まとめ

今回はアメリカの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、他産業の急成長に伴いアメリカにおける製造業の市場規模は縮小傾向であるものの、製造業の生み出す付加価値額は増加傾向であり、依然として国の主柱的な産業であることが分かります。

進出する日本企業の傾向としては、自動車産業を中心に投資が活発であることが分かります。今回紹介した3社はそれぞれ自社独自の技術を生かした製品を駆使し、アメリカ市場に販路を拡大させています。今回の内容がアメリカ進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑫「ロシア」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第五弾として「ロシアの製造業」を紹介します。

世界最大の国土を有するロシアですが、東南アジアに比べ日本製造業企業の進出先として候補に挙がることは多くないと思います。しかし、2020年1月の調査によると、在ロシア日系企業の68%が2019年の営業利益見通しを黒字と回答しています。同データからも分かるように、ロシア市場は日本企業にとって利益の見込める市場であると言えます。

今回は、そんなロシア製造業を日本企業の視点から掘り下げていきたいと思います。

基本情報

  • 正式名称:ロシア連邦(Russian Federation)
  • 首都:モスクワ(Moscow)
  • 大統領:ウラジーミル・プーチン(2000年5月~2008年5月、2012年5月~)
  • 首相:ミハイル・ミシュスティン(2020年1月~)
  • 通貨:ロシア・ルーブル(1ロシア・ルーブル=1.37円 ※2020年10月2日時点)
  • 人口:約1億4680万人
  • 面積:約1710万km2
  • 公用語:ロシア語
  • 宗教:ロシア正教、イスラム教、仏教、ユダヤ教
  • 平均寿命:男67.5歳、女77.6歳

経済の特徴

強み

  1. 天然資源:世界銀行の推定によると、ロシアが有する天然資源の価値は75兆USドル(天然ガス、木材、鉱物等)
  2. 経済安定性:公口座(政府の資金)と外部口座が強固であるため、外部からの障害による影響を受けにくい
  3. 市場規模:ロシアの名目GDPは1.64兆円(世界で11番目に大きい市場規模)
  4. 変動相場性:ロシア・ルーブルの為替レートが固定されていないため、外部環境に柔軟に対応することができる

弱み

  1. 人口変動:人口は1993年まで単調増加していたがその後は増加、減少を繰り返す
  2. インフラ未整備:2018年の調査によるとインフラ整備度ランキング世界61位(投資の不足が主な原因)
  3. 技術力:外国の技術への依存度が高い(アメリカとヨーロッパ諸国によりオフショア開発を阻害されているため)

産業構造

まずはロシアの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はロシアの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:Russia : Sectoral composition of the economy of Russia| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業と農業が減少傾向、サービス業が増加傾向
  • 世界のGDPの1.96%を占める(世界第12位)

現状

  • 製造業のGDPは前年比10%マイナス成長見通し(新型コロナウイルスの影響により、鉱業と輸送車両分野で深刻な打撃を受けたため)
  • 天然ガスによる収益はGDPの3.7%、天然資源による収入がGDPの15.5%を占める

今後

  • 2021年のGDPは2.7%の上昇、2022年のGDPは3.1%の上昇見通し(2022年に新型コロナウイルスの影響から完全に回復する予想)
  • 2020年から2022年にかけて、原油価格の下落により政府の予算が赤字に転じる見通し

製造業全体

次にロシアの製造業の調査結果を紹介します。下の図はロシアの製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:Russia : Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2016年以降、製造業が生み出す付加価値は増加が続く
  • 2019年の製造業が生み出す付加価値額は2兆225億ドル(世界第8位)

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に31.3を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年8月に51.1を記録
  • 2020年の製造業の生産高は現在も減少傾向が続く(2020年8月の生産高は前月比-8.0%

今後

  • 2020年のGDPは前年比-4.5%が達成可能である見通し(消費者主導型分野の回復、国家主導型製造業の落ち込み等が要因)
  • 専門家によると、2020年の製造業の生産高は4.7%の減少見通し(2021年は3.4%の増加見通し)

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からロシアの製造業市場を調査した結果です。下の図はロシアに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

現状

  • 2016年の調査によると、製造業は進出企業の43.0%を占める
  • 2016年の調査によると、進出企業の64.7%がモスクワ州に拠点を設けている

今後

  • 2020年6月の調査によると、2021年以降もロシア市場で事業を継続する在ロシア日系企業は約8割
  • 2020年6月の調査によると、事業の拡大を図る在ロシア日系企業の数は約半減

ロシアに進出した日本製造業企業

フラット合成株式会社

▶基本情報

  • 本社:北海道札幌市
  • 従業員数:20人(海外駐在1名含む)
  • 事業内容:プラスチック素材の製造・販売

▶概要

プラスチック製品の製造、プラスチック素材の販売を行う企業。1989年にロシアにサケ・マス人工増殖孵化機器の輸出を開始し、2012年に同地域に事務所を設立。同社は、人工孵化機器のプラスチック製容器の製造に加え、養殖の成功率を高める技術の提供も行う。現在は、ロシア政府の方針によりサケマスの孵化施設の建設が盛んであるサハリン州で販路を拡大。

株式会社ニッコー

▶基本情報

  • 本社:北海道釧路市
  • 従業員数:96人
  • 事業内容:食品加工機械設備の製造・販売

▶概要

食品加工ロボットシステムの企画から製造・販売まで手掛ける企業。ホタテ貝加工機をはじめとする水産加工機械を主軸商品に、2009年ロシア企業との販売代理店契約を締結。「顧客ニーズに対応したものづくり」を基本軸に装置改良を行い、海外パートナー企業との信頼関係を構築。

和同産業株式会社

▶基本情報

  • 本社:岩手県花巻市
  • 従業員数:256人
  • 事業内容:草刈り機、除雪機器、農業機械の製造・販売

▶概要

中・大型除雪機器の国内生産台数トップ企業。2017年秋にジェトロが主催する日露中小企業交流会への参加を機に、2018年に同社初の国際展示会への出展。同年にロシア現地企業とのパートナー契約を締結。現在は、製品購入後のサポート体制構築と海外各地で部品供給先の確保に力を入れている。

まとめ

今回はロシアの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、国家主導型製造業は新型コロナウイルスの影響により大きな落ち込みを記録し、回復に時間を要している印象を受けます。

今回紹介したロシアに進出した日本製造業企業はいずれも、ロシアの地理的特徴を上手く利用し自社の製品を販売していることが分かります。今回の内容がロシア進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑪「イギリス」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第四弾として「イギリスの製造業」を紹介します。

かつては「世界の工場」と呼ばれたイギリスですが、1979年のサッチャー政権以降、製造業からサービス業、金融・保険業へのシフトが続いています。また2020年2月1日のEU離脱により、イギリス進出を考えなおしている日本の製造業事業者の方も多いと思います。今回は、上述したトピックを今後のイギリス製造業と合わせて掘り下げていきます。

基本情報

  • 正式名称:グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain & Northern Ireland)
  • 首都:ロンドン(London)
  • 首相:ボリス・ジョンソン(2019年7月から)
  • 通貨:ポンド(1ポンド=133.89円 ※2020年9月21日時点)
  • 人口:約6602万人
  • 面積:約24.9万km2
  • 公用語:英語(ウェールズ語、ゲール語等含む)
  • 宗教:キリスト教(約72%)、無信仰(約15%)、ムスリム教(約3%)
  • 平均寿命:男78.6歳、女83.1歳

経済の特徴

強み

  1. 石油・ガス:石油とガスがイギリスの総一次エネルギー需要の3/4以上を占める
  2. 先端産業:航空宇宙産業、医薬品産業、自動車産業で最先端技術を有する企業が複数
  3. 税制:2015年の国際企業に対する法人税は20%でG20諸国の中で最も低い数字

弱み

  1. EUとの関係:EU離脱によるEU各国との貿易の不安定性
  2. 労働生産性:労働生産性の低下が続く(資本投資の低下、熟練労働者の減少、高雇用率・低金利による非効率な会社の存続が理由)
  3. 地域格差:ロンドンを中心とする南東イングランド地方とそのほかの地域での輸送、エネルギーインフラの格差

産業構造

まずはイギリスの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はイギリスの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:United Kingdom: Sectoral composition of the economy of the United Kingdom| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業と農業はGDPに占める割合が減少傾向が続く
  • 世界のGDPの3.36%を占める(世界第5位)

現状

  • 製造業がGDPに占める割合は2010年から2014年の間に回復傾向を示したが、その後は減少が続く
  • サービス業がGDPに占める割合は71.26%と高い(世界第9位)

今後

  • 2020年のGDPは前年比-10.1%と大きく減少し、2021年に6.5%の増加予想(新型コロナウイルスの影響)
  • 2020年の失業率は8.3%と大きく増加し、2021年に6.6%に減少する予想(新型コロナウイルスの影響)

製造業

次にイギリスの製造業の調査結果を紹介します。下の図はイギリスの製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:United Kingdom: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業の生み出す付加価値は約8年の周期で上下を繰り返す
  • イギリスの製造業が生み出す付加価値は2兆431億ドル(世界第7位)

現在

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に13.8を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年8月に59.1を記録(世界第1位)
  • 国内の需要は回復傾向を示しているが、輸出は過去3年の中で最も低い数字を記録

今後

  • 熟練技術者不足の課題を解決すべく、行政と企業が若手技術者の育成に力を入れる方針
  • EUを脱退したため、製造業の輸出先としていたEU諸国との貿易が従来よりも難航する予想

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からイギリスの製造業市場を調査した結果です。下の図はイギリスに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

・2014年の1084社以降は単調減少傾向
・在英日本商工会議所の会員数は現在371社

現在

  • 進出日本企業の業種は、製造業39.3%)、サービス業(17.4%)、卸売業(17.2%)、金融・保険業(13.6%)
  • 進出日本企業の年商規模は、100億~1000億円未満が32.3%、1000億円以上が26.5%、10億~100億円未満21.5%、都道府県別では東京都が56.5%で最多

今後

  • イギリスのEU離脱に伴い、イギリスを経由して欧州とのやり取りが発生する場合関税が往復で2度発生するため、サプライチェーンの再構築に取り組む企業が増加する予想
  • 在英日系製造業企業の内、EU離脱によってマイナスの影響を受けたと回答した企業の割合は70.8%(通関・物流の混乱、関税コスト、通関手続きの発生が主な理由)

イギリスに進出した日本製造業企業

株式会社ネリキ

▶基本情報

  • 本社:兵庫県尼崎市
  • 従業員数:190人
  • 事業内容:高圧ガス容器用バルブの製造・販売

▶概要

1930年創業の高圧ガス容器用のバルブ製造販売メーカー。1995年にアイルランドに現地法人「NERIKI EUROPE LTD.」を設立。「商品ではなく、品質を売る」をモットーにISO9001(製品・サービスの品質マネジメントシステムの国際規格)を取得。現在では、イギリスを含めた世界7カ国の工業規格に合わせた製品を販売し、高圧ガス容器用バルブの分野で世界的なシェアを拡大している。

巴バルブ株式会社

▶基本情報

  • 本社:大阪市西区
  • 従業員数:210人
  • 事業内容:流体制御機器及び周辺機器の製造・販売

▶概要

国内シェア1位を誇るバタフライバルブメーカー。1986年に海外進出の拠点として現地のサンダースバルブ社と折半出資で同社初の海外製造・販売拠点「トモエサンダース」をウェールズに設置。現在ではイギリスをはじめ、台湾、シンガポール、フィリピン、タイ、中国、インドネシア、アメリカに工場および製造・販売拠点を有する。

東洋シール工業

▶基本情報

  • 本社:奈良県生駒郡
  • 従業員数:535人
  • 事業内容:工業用/自動車用ゴム製品の製造・販売

▶概要

転がり軸受用ゴムシールの開発から製造・販売までを行う。1997年にイギリス工場で生産を開始(2006年に生産を終了し、現在は営業所として機能)。現在は、インドネシア、ポーランド、中国に工場を有しており、それぞれの向上でISOを取得済み。

まとめ

今回はイギリスの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果,イギリス製造業はGDPに対する割合は年々減少しているものの、生み出す付加価値自体は近年増加傾向であると分かります。またイギリス製造業のPMIは2020年8月時点で世界トップの数字であり、新型コロナウイルスの影響からの急速な回復が期待されます。

進出する日本企業の視点から考えると、EU離脱によって関税、通関、物流の問題が浮上し、日本製造業企業の多くがサプライチェーンの見直し、もしくはイギリスからの撤退を検討していることが分かりました。ただ、世界5位のGDPに代表されるように、市場規模は大きく進出先の一つの選択肢として考慮するべき国であることは変わりないと思います。今回の内容がイギリス進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑪「イギリス」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第四弾として「イギリスの製造業」を紹介します。

かつては「世界の工場」と呼ばれたイギリスですが、1979年のサッチャー政権以降、製造業からサービス業、金融・保険業へのシフトが続いています。また2020年2月1日のEU離脱により、イギリス進出を考えなおしている日本の製造業事業者の方も多いと思います。今回は、上述したトピックを今後のイギリス製造業と合わせて掘り下げていきます。

基本情報

  • 正式名称:グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain & Northern Ireland)
  • 首都:ロンドン(London)
  • 首相:ボリス・ジョンソン(2019年7月から)
  • 通貨:ポンド(1ポンド=133.89円 ※2020年9月21日時点)
  • 人口:約6602万人
  • 面積:約24.9万km2
  • 公用語:英語(ウェールズ語、ゲール語等含む)
  • 宗教:キリスト教(約72%)、無信仰(約15%)、ムスリム教(約3%)
  • 平均寿命:男78.6歳、女83.1歳

経済の特徴

強み

  1. 石油・ガス:石油とガスがイギリスの総一次エネルギー需要の3/4以上を占める
  2. 先端産業:航空宇宙産業、医薬品産業、自動車産業で最先端技術を有する企業が複数
  3. 税制:2015年の国際企業に対する法人税は20%でG20諸国の中で最も低い数字

弱み

  1. EUとの関係:EU離脱によるEU各国との貿易の不安定性
  2. 労働生産性:労働生産性の低下が続く(資本投資の低下、熟練労働者の減少、高雇用率・低金利による非効率な会社の存続が理由)
  3. 地域格差:ロンドンを中心とする南東イングランド地方とそのほかの地域での輸送、エネルギーインフラの格差

産業構造

まずはイギリスの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はイギリスの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:United Kingdom: Sectoral composition of the economy of the United Kingdom| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業と農業はGDPに占める割合が減少傾向が続く
  • 世界のGDPの3.36%を占める(世界第5位)

現状

  • 製造業がGDPに占める割合は2010年から2014年の間に回復傾向を示したが、その後は減少が続く
  • サービス業がGDPに占める割合は71.26%と高い(世界第9位)

今後

  • 2020年のGDPは前年比-10.1%と大きく減少し、2021年に6.5%の増加予想(新型コロナウイルスの影響)
  • 2020年の失業率は8.3%と大きく増加し、2021年に6.6%に減少する予想(新型コロナウイルスの影響)

製造業

次にイギリスの製造業の調査結果を紹介します。下の図はイギリスの製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:United Kingdom: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業の生み出す付加価値は約8年の周期で上下を繰り返す
  • イギリスの製造業が生み出す付加価値は2兆431億ドル(世界第7位)

現在

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に13.8を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年8月に59.1を記録(世界第1位)
  • 国内の需要は回復傾向を示しているが、輸出は過去3年の中で最も低い数字を記録

今後

  • 熟練技術者不足の課題を解決すべく、行政と企業が若手技術者の育成に力を入れる方針
  • EUを脱退したため、製造業の輸出先としていたEU諸国との貿易が従来よりも難航する予想

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からイギリスの製造業市場を調査した結果です。下の図はイギリスに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

・2014年の1084社以降は単調減少傾向
・在英日本商工会議所の会員数は現在371社

現在

  • 進出日本企業の業種は、製造業39.3%)、サービス業(17.4%)、卸売業(17.2%)、金融・保険業(13.6%)
  • 進出日本企業の年商規模は、100億~1000億円未満が32.3%、1000億円以上が26.5%、10億~100億円未満21.5%、都道府県別では東京都が56.5%で最多

今後

  • イギリスのEU離脱に伴い、イギリスを経由して欧州とのやり取りが発生する場合関税が往復で2度発生するため、サプライチェーンの再構築に取り組む企業が増加する予想
  • 在英日系製造業企業の内、EU離脱によってマイナスの影響を受けたと回答した企業の割合は70.8%(通関・物流の混乱、関税コスト、通関手続きの発生が主な理由)

イギリスに進出した日本製造業企業

株式会社ネリキ

▶基本情報

  • 本社:兵庫県尼崎市
  • 従業員数:190人
  • 事業内容:高圧ガス容器用バルブの製造・販売

▶概要

1930年創業の高圧ガス容器用のバルブ製造販売メーカー。1995年にアイルランドに現地法人「NERIKI EUROPE LTD.」を設立。「商品ではなく、品質を売る」をモットーにISO9001(製品・サービスの品質マネジメントシステムの国際規格)を取得。現在では、イギリスを含めた世界7カ国の工業規格に合わせた製品を販売し、高圧ガス容器用バルブの分野で世界的なシェアを拡大している。

巴バルブ株式会社

▶基本情報

  • 本社:大阪市西区
  • 従業員数:210人
  • 事業内容:流体制御機器及び周辺機器の製造・販売

▶概要

国内シェア1位を誇るバタフライバルブメーカー。1986年に海外進出の拠点として現地のサンダースバルブ社と折半出資で同社初の海外製造・販売拠点「トモエサンダース」をウェールズに設置。現在ではイギリスをはじめ、台湾、シンガポール、フィリピン、タイ、中国、インドネシア、アメリカに工場および製造・販売拠点を有する。

東洋シール工業

▶基本情報

  • 本社:奈良県生駒郡
  • 従業員数:535人
  • 事業内容:工業用/自動車用ゴム製品の製造・販売

▶概要

転がり軸受用ゴムシールの開発から製造・販売までを行う。1997年にイギリス工場で生産を開始(2006年に生産を終了し、現在は営業所として機能)。現在は、インドネシア、ポーランド、中国に工場を有しており、それぞれの向上でISOを取得済み。

まとめ

今回はイギリスの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果,イギリス製造業はGDPに対する割合は年々減少しているものの、生み出す付加価値自体は近年増加傾向であると分かります。またイギリス製造業のPMIは2020年8月時点で世界トップの数字であり、新型コロナウイルスの影響からの急速な回復が期待されます。

進出する日本企業の視点から考えると、EU離脱によって関税、通関、物流の問題が浮上し、日本製造業企業の多くがサプライチェーンの見直し、もしくはイギリスからの撤退を検討していることが分かりました。ただ、世界5位のGDPに代表されるように、市場規模は大きく進出先の一つの選択肢として考慮するべき国であることは変わりないと思います。今回の内容がイギリス進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑩「イタリア」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第三弾として「イタリアの製造業」を紹介します。

イタリア産業は新型コロナウイルスの影響により大きな打撃を受けました。しかし2020年5月以降、製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は急速に回復しており、従来の数値を超えるほどにまで力を取り戻しています。今回は2020年9月現在、急速に回復しているイタリア製造業を日本企業の視点から掘り下げていきたいと思います。

イタリアの基本情報

  • 正式名称:イタリア共和国(Repubblica Italiana)
  • 首都:ローマ(Roma)
  • 首相:ジュゼッペ・コンテ(2018年6月から)
  • 通貨:ユーロ(1ユーロ=125.88円 ※2020年9月7日時点)
  • 人口:約6,060万人
  • 面積:約30万1328km2
  • 公用語:イタリア語
  • 宗教:カトリック(約80%)イスラム教、プロテスタント、ユダヤ教、仏教
  • 平均寿命:男79.6歳、女85.1歳

イタリア経済の特徴

強み

  1. 製造業:自動車産業、医薬品産業、繊維産業が盛ん
  2. 輸出:製造業関連の輸出(高級車、自動車部品、金属)に加え、衣料品(服、靴)の輸出が盛ん
  3. 観光業:2018年の統計によると、イタリアには6,160万人の観光客が訪れた(世界第5位)

弱み

  1. 失業率:2014年に過去最高の失業率12.7%を記録、若者の失業率が高く頭脳流出(優秀な人材の流出)が深刻化
  2. 企業競争力:国内の90%以上の企業が従業員10人以下の小企業、競争力の低下が進む
  3. 地域格差:治安の良い北部地方(殺人発生率の低さOECD加盟国の中でトップ1%圏内)に対し、治安の悪い南部(殺人発生率の低さOECD加盟国の中で下位10%圏内)

イタリアの産業構造

まずはイタリアの産業構造の調査結果を紹介します。下の図は2017年のイタリアの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合を示したグラフです。


データ引用元:Italy GDP – composition by sector – Economy – IndexMundi

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業と農業の占める割合は全体の約1/4
  • GDPの総額は約21.47億ドルで世界第9位(2019年)

現状

  • GDPにおける製造業が占める割合は2013年に13.85%を記録して以来緩やかに上昇を続ける
  • サービス関連業は増加傾向が続いていたが2014年以降、減少が続く

今後

・イタリアのGDP増加率が近年減少傾向(不安定な政治情勢、ユーロエリアでの不景気などの理由)
・新型コロナウイルスにより2020年のGDP増加率は-9.1%を記録する予想(2021年は4.8%の増加予想)

イタリアの製造業

次にイタリアの製造業の調査結果を紹介します。下の図はイタリアの製造業が国内総生産(GDP)に占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:Italy : Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業生み出す付加価値は2015年から上昇傾向
  • 製造業が生み出す付加価値は世界5位(2019年)

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に31.1を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年8月に53.1を記録
  • 製造業がGDPに占める割合は14.91%で世界41位(2019年)

今後

  • イタリアの製造業は2019年から2023年までCAGR(年平均成長率)1.6%で成長する見通し
  • イタリアの製造業がPLC(Programmable Logic Controller)市場で80%以上、低電圧ACモータードライブ市場で70%以上のシェアを獲得する見通し

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からイタリアの製造業市場を調査した結果です。下の図はイタリアに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 進出日本企業数は2015年をピークに減少傾向が続く
  • 在イタリア日本商工業会議所の会員数は199社(内135社が普通会員、64社が賛助会員)

現状

  • 電機、自動車部品、化学・素材、エネルギー分野の日本企業の進出が多い
  • 近年、日本企業が現地イタリア企業を買収する形で進出するケースが増えている(毎年10~20件程度

今後

  • 2020年3月にイタリア政府はEUガイダンスを公表し外資規制を強化する姿勢を示した
  • 新型コロナウイルスの影響により多くの企業が経営難に陥り、企業価値が下がっている中で自国の戦略的資産を保護する動きが散見される

イタリアに進出した日本企業

株式会社ダイドーリミテッド

▶基本情報

  • 本社:東京都千代田区
  • 従業員数:42人(単体)
  • 事業内容:衣料品の製造・販売

▶概要

2016年イタリアのPontetorto S.p.a(ファッションウェア向け生地の製造・販売業者)を子会社化する形で欧州に進出。Pontetorto S.p.aが有する欧州での強固な販売基盤と婦人服向け衣料素材、スポーツ向け衣料素材を取り込むことで顧客の拡大を狙う。同社は中国にも製造拠点を有しており海外への事業展開に積極的。

石川ガスケット株式会社

▶基本情報

  • 本社:東京都港区
  • 従業員数:137人
  • 事業内容:ガスケットの製造・販売

▶概要

自動車エンジン部品の一つであるガスケット(液体の漏れを防止するための部品)を自社独自の技術で製造・販売する企業。2000年にイタリアのトリノにヨーロッパ初の支店を設立。現在は現地企業SPESSO GASKETS, SRLに生産委託で業務提携をしており、欧州のみならずアジア、北米地域への販路開拓にも積極的に取り組んでいる。

滲透工業株式会社

▶基本情報

  • 本社:長崎県西彼杵郡
  • 従業員数:187人 ※国内グループ全体
  • 事業内容:金属表面改質処理、ランスパイプの製造

▶概要

金属材料に所望の特性を付与させる金属表面改質技術を強みにする企業。1984年に同社初の海外子会社となるSHINTO ITALIA S.p.Aを設立。1996年に同子会社でISO9001(製品・サービスの品質マネジメントシステムの国際規格)を取得。現在は本社と同じ事業を扱っており、欧州の市場開拓の拠点として重要な役割を担う。

まとめ

今回はイタリアの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、前回紹介したフランスの製造業同様に欧州の製造業は急速な回復傾向を示していることが分かりました。

進出日本企業数は増加傾向とは言えないものの、イタリア製造業がGDPに占める割合は近年増加傾向にあるため、魅力的な市場であることに変わりはないと言えます。今回紹介したデータを含めて考えると、ヨーロッパの拠点としてイタリアも有力な候補になると思います。今回の内容がイタリア進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「フランス」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第二弾として「フランスの製造業」を紹介します。

2017年の国別日系企業数の調査によると、フランスには719の日系企業が進出しており、ヨーロッパではドイツ、イギリスに次ぐ日本企業が拠点を構えています。イギリスのEU離脱(2020年1月)を皮切りに、ドイツに次ぐ日系製造業企業の進出ターゲット国として注目を集めるフランスを日本企業の視点から掘り下げていきたいと思います。

フランスの基本情報

正式名称:フランス共和国(République Française)
首都:パリ(Paris)
元首:エマニュエル・マクロン大統領(2017年5月から)
首相:ジャン・カステックス(2020年7月から)
通貨:ユーロ(1ユーロ=125.43円 ※2020年8月21日時点)
人口:約6,699万人
面積:約55万km2
公用語:フランス語
宗教:カトリック(約65%)イスラム教、プロテスタント、ユダヤ教
平均寿命:男78.8歳、女85.2歳

フランス経済の特徴

強み

1. インフラ:世界トップクラスの速さでインフラ整備が進む(フランス政府が力を入れて投資をしていることが要因)
2. 観光業:2017年の調査によると、フランスに訪れる外国人観光客は8,690万人で世界1位
3. 農業:EUの農業生産の約1/5を占める(植物油、穀物、ワインはEUの約1/3の生産高を占める)
4. 国際企業:各種産業で高い競争力を誇る企業を有する(航空宇宙、エネルギー、環境、医薬品、高級品、食品、流通)

弱み

1. 税金:給与税40%は世界で最も高い(政府がインフラ整備に投資する財源を確保するため)
2. 失業率:失業率8.1%はEUで4位(2019年第四四半期の調査)特に若者と高齢者の失業率が高い
3. 競争力:熟練労働者が不足しているため製造業の競争力は停滞傾向

フランスの産業構造

まずはフランスの産業構造の調査結果を紹介します。下の図は1970年から2019年までのドイツの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:France: sectoral composition of the economy| TheGlobalEconomy.com

グラフから以下のことが分かります。

  • サービス関連業は増加傾向を維持しており、全体の78%を占める
  • 製造業と農業は減少傾向にあり、合わせてGDP全体の22%を占める

現状

  • 2020年のGDP成長率は-7.2%になる見通し(新型コロナウイルスの影響)
  • 2019年の財政赤字はGDPの3.1%を記録し、過去9年間で最も高い数字となった

今後

  • 2021年にGDPは4.5%の回復が見込まれている(新型コロナウイルスの影響が弱まると予想されるため)
  • 失業率(特に若者)は近年増加傾向であり、2020年、2021年ともに10.4%となる見通し(新型コロナウイルスの影響)

フランスの製造業全体

次にフランスの製造業全体の調査結果を紹介します。下の図はフランスの製造業が国内総生産(GDP)に占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:France : Share of manufacturing | TheGolobalEconomy.com

グラフから以下のことが分かります。

  • 統計開始を開始した1960年から減少傾向が続く
  • 製造業が生み出す付加価値は増加傾向が続く(世界第6位の額)

現状

  • 新型コロナウイルスによる不況により製造業労働者の失業数が増加
  • 2020年4月に31.5%まで落ちたPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年7月に55%近くまで回復

今後

  • 新型コロナウイルスによるロックダウンを機に生産性改善に取り組む企業が増加
  • 医薬品の輸出が急速なスピードで増加(2019年に前年比+4.9%の増加を記録)

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からフランスの製造業市場を調査した結果です。下の図はフランスに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフから以下のことが分かります。

  • 2016年を除いて、統計を開始した2012年から増加傾向が続く
  • 在仏日本商工会議所の正会員数は2000年から210社辺りで横ばいが続く

現状

  • フランスに拠点を持つ日系企業の中で約29%が自動車関連企業電子工学が19%農業・食品関連が11%機械・機械設備が9%
  • フランス進出した日系企業の46%が生産・製造関連のビジネスを行っている

今後

  • 在仏日系企業の内2020年の営業利益見込みが改善すると回答した割合は41.3%(有効回答数80社)
  • 在仏日系企業の内25.0%の企業が景気が回復していると回答、11.9%の企業が景気が悪化していると回答(有効回答数80社)

フランスに進出した日本企業

次に実際にフランスに進出した日本の製造業企業3社を紹介します。

株式会社ダイショウ

▶基本情報

  • 本社:神奈川県茅ケ崎市
  • 従業員数:3人
  • 事業内容:受託加工業(切削部品)

▶概要

日仏を技術で繋ぐ「町工場」の名の下に、2015年よりフランス・サンテティエンヌ近郊で事業を展開。試作、中小ロットを対象とした切削部品の受託加工業で欧州進出を果たす。フランスでは現地パートナー企業と連携して加工生産、現地サプライチェーンの構築を行い日本品質の技術を駆使し現地での生産を行う。※詳しくは下記の過去のインタビュー記事を参照。

▶インタビュー記事(株式会社ダイショウの石塚社長)


(フランス進出の経緯、フランスでのビジネス、フランスでの加工業について)


(フランス進出、フランスの日本企業、フランスのネット事情、フランスの現状について)

株式会社由紀精密

▶基本情報

  • 本社:神奈川県茅ケ崎市
  • 従業員数:42名(パートタイマー7名含む)
  • 事業内容:精密部品製造(航空・宇宙・医療・電気電子・機械式時計)

▶概要

2015年5月に航空宇宙関連事業の拡大を目的にフランス子会社「YUKI Précision SAS」を設立。精密切削加工分野の日本企業として初のフランス進出を果たす。2016年5月に日仏の中小製造業4社が共同で精密加工部品の製造を請け負う組織「ACT」を創設。現在では本業の精密切削加工に加えて欧州に進出する日本企業のサポート事業も行っている。

松本機械工業株式会社

▶基本情報

  • 本社:石川県金沢市
  • 従業員数:94名
  • 事業内容:工作周辺機器の製造販売

▶概要

高性能のパワーチャック・シリンダー・NCロータリーテーブルの製造・販売を行う。フランス・リヨンに販売子会社を有しており航空機エンジン関連の市場開拓に力を入れている。フランスのみならずASEAN各国、台湾・韓国・アメリカを中心に各国のニーズに合わせた販路開拓を展開している。

まとめ

今回はフランスの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、フランス製造業PMIが示すようにフランス製造業は新型コロナウイルの影響から回復傾向にあり、生産効率改善への取り組みを始め次のステージへ移行しています。

進出日系企業に着目すると、今回紹介した企業はいずれもフランスの航空宇宙産業関連の市場に自社の製品・技術を展開していることが分かります。このことからもヨーロッパ進出には世界に通用する高い技術力と品質がカギであると分かります。今回の内容がフランス進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー④「巨大な先進国アメリカ」前編

テクノポート稲垣です。第4回目前半の今回は、アメリカのロックウェルオートメーション株式会社で品質管理のコンサルタントとして働く津吉政広さんにインタビューを行いました。津吉さんはこのモノカクでも記事を執筆頂いています。津吉さんのプロフィールはこちら。前編の今回は、

  • 「アメリカ企業のWebサイトを見る時に注意してみる内容は?」
  • 「日本企業の英語Webサイトとアメリカ企業のWebサイトの違いは?」
  • 「機械翻訳と人間の翻訳はすぐに分かるか?」
  • 「翻訳はネイティブに依頼するべきか?」

などの質問に対し、現地企業でコンサルタントとして働く方ならではの意見をお届けします。

津吉さんについて

津吉さんの経歴は?

アメリカに来てロックウェルオートメーション(産業用オートメーション事業に特化した世界最大規模の企業)にジョインしたのが2000年なので、もう20年くらいになります。

その前は日本のリライアンスという会社に4年ほどいました。ただ、ロックウェルオートメーションがリライアンスを買収したという経緯も考えると計24年今の会社で働いていることになります。

現在の業務内容は?

現在の業務内容は、ロックウェルオートメーションでリーンシックスシグマの導入を行っています。リーンシックスシグマ※とは品質管理をターゲットにしたもので、統計などを使って品質を高めることがメインの目的になります。

※リーンシックスシグマについて詳細は以下の記事を参考にしてご確認ください。
海外のものづくりの現場で使われているリーンシックスシグマとは?

私の立場は開発部隊に属しているわけではなく、開発部を助ける立場です。先ほど述べたリーンシックスシグマには組織があり、私はマスターブラックベルトという立場で全体の総括みたいなことを行っています。

渡米前から英語は話せたのか?

渡米前は英語は全然話せませんでしたよ。ですが、エンジニアとしてコードが書けたので英語がそこまで流暢ではなくても意思の疎通は十分にできました。

アメリカのWebサイト事情について

アメリカ企業のWebサイトを見る時に特に注意して見る内容は?

製造業に関する英語Webサイトに関して、注意して見る内容は4つあります。

1つ目は、自分の地域にコンタクト先があるかどうかです。アメリカと言っても広いので、例えばアメリカでもウィスコンシン州に支店があるかどうか、などです。

2つ目は、導入実績例、3つ目は、データシート(※1)等の詳細な情報が入手可能かどうかです。

※1 データシートとは製品の仕様が書かれたドキュメントのことです。製造業では一般にデータシートのようなドキュメントを基に設計を行うため、英語で書かれたデータシートの情報が手に入るかは重要になるそうです。(Datasheetの画像検索結果

4つ目は、Secureサイト(※2)かどうかです。アメリカではほとんどがSecureサイトなので、逆にSecureでないと気になります。

※2 Secureサイト、SSLについての詳しい内容は以下の記事を参考にしてください。
「保護されていない通信?」「http://」と「https://」の違いについて

補足情報

日本の大手企業でサイト全体をSSL(通信データを暗号化し保護する仕組みのこと)を導入しているところが増えてきているが、中小企業になると全体の約3割程度しか導入していない。

アメリカで日本企業の英語Webサイトを見る時に注意して見る内容は?

製造業に関する日本企業の英語Webサイトに関して言えば、大きく3つあります。

1つ目は、商習慣があっているかどうかです。具体的には、クレジットカードが使えるかどうかをはじめとする決済方法の問題、為替の問題などが挙げられます。アメリカではビジネスの取引でもクレジットカード決済が主流です。もちろんすごく大きな金額の取引になると話は変わってきますが、エンジニアが製品を購入するレベルの話だと会社のクレジットカードを使って購入するケースが多いです。

2つ目は、返品可能かどうかということです。アメリカでは返品が自由な企業がほとんどなので、日本企業から商品を購入する時は特に確認します。

3つ目は、支店のサポートが受けられるかどうかです。これはアメリカ国内に支店があった方が直接やり取りできて、より有利になります。

日本企業のサイトがアメリカのGoogle検索でヒットすることはあるか?

あります。例えば、”Industrial robots”で検索すれば、FANUCがでてきます。アメリカのロボット業界でもFANUCは有名で強いですね。他にも、業界のリーディング企業であるオムロン、川崎重工、安川電機などは数ページ後ろの方に出てきます。

日本企業の英語Webサイトが改善すべきことは?

製造業のサイトではありませんが、楽天グローバルマーケットのサイトは、海外に住む日本人の間では、日本企業の英語Webサイトの良くない例として有名です。例えば、下記のページの”Oneでゆるwinding”って何のことでしょうね。(笑)

https://global.rakuten.com/en/store/sacom/item/ehhv24p/

楽天グローバルマーケットのサイトを見てもらえば分かりますが、商品名に日本語が混じっていたり、日本語の写真サンプルをそのまま使っていたり、英語の文章が読めなかったりと、ある意味結構笑えます。(笑)あと、これはWebサイトの内容とは直接関係ないかもしれないですが、楽天グローバルマーケットが対象とする顧客が不明です。

なぜかと言うと、アメリカ人が楽天グローバルマーケットで商品を買うことは少ないと思いますし、アメリカに住む日本人がターゲットなら英語に自動翻訳する必要もないですよね。

日本企業の英語Webサイトとアメリカ企業のWebサイトとの違いは?

端的に言うと、アメリカ企業は製品中心、対して日本企業は会社中心、という印象を受けます。例えば、アメリカ企業のWebサイトでは、トップページに新製品を出していることが多く、会社のイメージは後ろのページに隠れているイメージがあります。

一方で、日本企業の英語Webサイトは社長メッセージだとか会社の事業方針などが目につきやすい箇所に配置されているイメージがあります。具体的な例としては、都ローラー工業の英語Webサイトを見ると、社長のメッセージが顔写真と一緒に最初の方のページに出てくるところが、日本的で微笑ましいですよね。

出典:Miyako Roller Industry

翻訳について

Google翻訳でも十分意味は通じるか?

結論、通じないことが多いと思います。Google翻訳でも無いよりはましかもしれませんが、意味が通じない可能性もあると思います。製造業に関して言うと、技術的な内容は言い回しが違ったり、単語が違ったりすると通じなくなってしまうことがあると思います。

また、意味が通じないのであればまだ良いですが、文章が誤解されたときは大きな問題に発展するかもしれないですよね。最悪の場合、Google翻訳がもとで誤解が生じ、法的な問題に発展することがあるかもしれません。

機械翻訳と人間の翻訳はすぐ分かるか?

すぐに分かります。特に言い回しが違うと感じることが多いです。例えば、自動翻訳された文章は、文章表現の方法や使用する構文の選択が不自然なことが多いです。個人的には受け身の文章が多用されていたりすると、自動翻訳を疑ってしまいますね。

翻訳はネイティブに依頼すべきか?

お願いするべきだと思います。特に製造業をはじめとする技術系の企業が、自社の技術や製品をWebサイトを通して伝えたい場合には、適切な言い回しを選択できるネイティブに依頼するのが無難だと思います。

専門用語の選択など、自社でできる翻訳は事前に行い、分からない文章だけを依頼する形が良いと思います。

まとめ

いかがでしょうか?冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「アメリカ企業のWebサイトを見る時に注意してみる内容は?」
→ 1. コンタクト先があるか、2. 導入実績例、3. データシート等の詳細情報、4. Secureサイトかどうか

「日本企業の英語Webサイトとアメリカ企業のWebサイトの違いは?」
→ アメリカ企業は「製品中心」、日本企業は「会社中心」

「機械翻訳と人間の翻訳はすぐに分かるか?」
→ すぐに分かる。言い回しが適切ではないことが原因

「翻訳はネイティブに依頼するべきか?」
→ 依頼するべき。文章表現はネイティブに任せた方が無難。

となります。後編の次回は、日本企業のイメージ、アメリカの商習慣、コロナウイルスの影響について掘り下げていきます。具体的には、

  • 「日本企業に対するイメージは?」
  • 「アメリカと日本の商習慣の違いは?」
  • 「日本企業とアメリカ企業のメールのやり取りの違いは?」
  • 「コロナウイルスで会社にどのような変化があったか?」

などの質問に答えて頂きました!後編を読んで頂くと、日本企業とアメリカ企業のビジネスに対する考え方、文化の違いなどを感じて頂けると思います。今回の内容がアメリカへの事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー③「日系メーカーの海外展開(ベトナム)」後編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第3回目後編の今回は前回の記事に引き続き、メーカー勤務時代にベトナムに赴任し自社製品を現地に売り込む仕事をされていたブルーイノベーション株式会社経営戦略室の田中さんにインタビューを行いました。後編の今回は

  • 「駐在所に現地で雇ったスタッフは必要か?」
  • 「商社を介して製品を売るメリットは?」
  • 「販売代理店の探し方は?」
  • 「海外で商品を売る際に重要な考え方は?」

などの質問に対し、現地で営業を行っていた方ならではの意見をお届けします!

海外でのビジネスについて

駐在所に現地で雇ったスタッフは必要か?

もちろん必要だと思います。

結局、日本人が駐在所にいても現地のお客さんに対してできることってすごく少ないんですね。なので、現地に駐在する日本人とお客さんとの間をつないでくれる優秀な現地人スタッフがカギになります。加えて、問い合わせの対応などを通してお客さんに良い印象を与えるという意味でも重要です。

あとは、現地で雇ったスタッフは現地の商習慣を理解しているということが大きいです。ベトナム語が話せる日本人がいたとしても、現地の商習慣を理解して現地ならではのビジネスの取引ができる人は少ないですよね。

現地でカタログ作成を任せる時の注意点は?

ブランドイメージを守ることです。

と言うのは、日本企業が現地で製品を売る時は比較的ハイエンドなイメージで売っていく企業が多いと思います。しかし、現地の会社が作るカタログはいかにも現地の企業が作りました、みたいなチープな見た目になることが多いんです。

この問題に対処する方法として、グローバル向けの英語カタログをあらかじめ作ってしまうという方法があります。つまり、英語の総合カタログを作っておき、現地の営業マンにそれを使って営業してもらうという方法です。この方法なら日本企業のブランドイメージを守りながら現地での営業活動も行えます。

特にB2Bでは専門用語は英語でも分かってもらえることが多いですし、かつグローバル企業としてのイメージも持ってもらえます。また、他の国にグローバル展開する際にも同じカタログが使えると思うので、工数や費用の面でも効率的だと思います。

商社を介して商品を販売したことはある?

私自身はないですけど、身近なケースで、以前ベトナムの外資規制で外資100%の販売機能だけの会社が許可されない時代に商社を使って販売していたということがありました。

実際にはその外資規制が撤廃されることが分かっていたので、本格参入する前のマーケティングという目的です。その後は現地に拠点を作り、自ら販路を開拓して販売するようになりました。

商社を介して製品を売るメリットは?

広く浅く商品を売れるということですね。具体的に言うと、現地でマーケテイング兼販売実績を作っていくという足掛かり的な意味で商社を利用することは有用だと思います。その国で製品が売れるかどうかを探るという意味合いですね。なので、本格的に投資をして事業を大きくしようと考えているのなら商社経由ではなく、自社の拠点を作ったほうが良いと思います。

また、色々な国に事業を展開したい企業にとっては商社は価値があると思います。複数の国に拠点を作るのは投資も膨らみますし、販売代理店を使うにしても数が多いと管理するのは大変ですからね。そういった場合は、既に世界各国に拠点のある商社を利用するのが効率的だと思います。

商社を介して製品を売ることのデメリットは?

お客さんの生の声が届きにくいということですね。なので、お客さんのニーズに合わせて事業を拡大していくなら自社で拠点を設けたほうが良いと思います。

料金の回収方法の決め方は?

理想は全額前払いですが、業界に自社が後から参入する場合は業界のスタンダードに従うのが現実的です。ただ日本企業としてハイエンドなポジションで取引したい場合は、業界より厳しめの料金回収方法を要求した方が良いと思います。というのは、最終的にこちら側の要求を下げるか、料金の支払い方法で妥協することになるからです。

また、近い業界に日本企業の先人がいるなら情報を共有してもらうなり教えを乞うなりする。もしくは、業界に詳しい現地人を採用して、その人から情報を聞き出す。あとは、コンサルティング会社に調査を依頼するパターンもあります。もし、コンサルティング会社に依頼するなら現地の商流やお客さんのニーズなども含めて調査を依頼することをおすすめします。

販売代理店について

販売代理店の探し方は?

大きく2種類あります。1つ目の方法は、ジェトロ在日本の各国大使館日本人商工会に相談にいく方法です。比較的規模が小さい会社の場合は、こういった機関に、「今どういうことをしていて、海外でこういうことをやっていきたい、ついては現地の会社を紹介してもらえませんか?」と言う感じで相談してみると良いと思います。お金もかからないので。

2つ目の方法は、コンサルティング会社を利用する方法です。もしもお金があるならば海外進出のコンサル会社があるので、販売代理店の候補となる企業をリストアップしてもらうという方法もあります。

上記のような方法で候補となる企業を探したら、実際に面談をして信用調査をしていく感じです。

展示会を利用して販売代理店を探すのは良い方法か?

結論から言うと、闇雲に展示会に出て販売代理店候補を0から探すのは効率的ではないと思います。結局、展示会に来る人の目的は商品を購入することが多いので、御社の製品をいくつか買いたいという人には会えるかも知れませんが、販売代理店として御社の製品を担ぎたいですという企業にはなかなか出会えないと思います。

もしも展示会で販売代理店を探すなら予め先に挙げたような機関に相談して代理店候補見つけて展示会に来てもらい、自社の製品を見せながら「販売代理店になりませんか?」という話をする方が効率的だと思います。

海外の展示会に出て現物を見せるというのは費用もかかるし手続きも複雑ですごく大変なことです。なので、もし海外の展示会に出展するとなったら、その効果を最大化すべく事前に代理店候補となる企業を見つけておいた方が良いと思います。

1つの国に複数の代理店を持つことはあるか?

基本的には、1つの国には1つの代理店と言うケースが多いと思います。なので、もうその国の販売はその1つの代理店に任せる状態です。つまり、その代理店の売り上げは、その国における自社の売上の全てになります。そうなると、売ってくれそうな代理店、自社に的確な代理店を探すことが重要だと思います。

先の質問の回答ともつながりますが、闇雲に展示会に出て代理店探しをしても効率的ではないというのは、こういった事情も関係しています。

現地で販売支援の営業をする業者を利用したことは?

検討したことはありますが、実際に利用したことはありません。検討した理由は、現地の販売代理店は新規の顧客開拓がそれほど得意ではなかったからです。つまりは売上が伸びなかったからです。よって、その時は販売代理店をサポートして営業活動を行ってくれる人材、企業を調査しましたね。実現しなかった大きな理由は、適格な人材が見つからなかったからです。適格な人材とは自社の売る製品の業界に詳しく、かつその業界で人脈がある人です。そういった人でないと効果は出ないんですが、結局は見つかりませんでした。

あとは、費用対効果が読みにくかったからという理由ですね。海外で製品を売る日本企業にとって、販売代理店を現地に作るのは広く普及していますが、営業による販売支援のサービスはまだそれほど普及していないということも背景としてあると思います。

現地で販売代理店を持つ理由は?

大きく2つの理由があります。

1つ目は現地で在庫を抱えられるということです。以前、私自身もお客さんの納期の要望に応えるために現地で在庫を用意しておく必要があったので、在庫を抱えてくれる販売代理店は必要でした。

2つ目は、現地で必要なバリューチェーンを請け負ってくれるということです。私の場合、販売、施工から保守まで現地の対応が必要でしたので、そういったサービスをちゃんと対応してくれるという面も大きかったです。

3つ目は料金の回収をしてくれるということです。やはり回収の話になると、現地人同士のやり方があったりするので販売代理店に任せた方が良いと思います。

海外で商品を売る際に重要な考え方は?

個人的な意見としては、自ら現地に足を運び、現地の市場と顧客を理解することです。なぜかと言うと、現地の販売代理店に任せても上手くいかないケースが多いからです。日本から距離的にも離れているので、そもそも販売代理店を管理するのが難しいんですね。管理しようとしても現地の事情が分からないので都合の良いことばかり言い返されてしまう。

なので、自分自身が何度も足を運んで、お客さんのニーズを聞いてコミュニケーションをすることが重要だと思います。市場と顧客を理解できていないと販売代理店と深い議論はできないし、売る為のアイデアも出てこないのではないでしょうか。

最後に

海外進出を考える中小企業事業者の方にアドバイスは?

2つあります。1つ目は、本当に海外で事業を伸ばそうと思ったら、日本でやっている事業を海外で0からつくる、というくらいの気概、覚悟が必要だいうことです。日本で売っている製品は日本のお客さん向けに作っているから売れるのであって、海外の市場でも同じです。自社の強みを活かすのはもちろんですが、現地に合わせないといけない。そのためには先も言ったように、自分自身で現地に足を運び、お客さんのニーズ、市場、現地の商流、商習慣がどうなっているかを理解することが必要です。そして、現地の市場と自社の製品・技術を掛け合わせてこれならいける!という事業を0から作っていくという気概、覚悟が必要です。

2つ目は、海外には国内の何倍ものチャンスがあるということです。これから海外に事業展開を考える方には、成熟した日本市場に留まるのか、新たな市場に挑戦するのか、ということを今回のインタビューを通して感じていただけたらと思います!コロナウイルスの影響で現在海外との行き来がストップしていますが、長い目で見ればグローバル化が止まることはありません。コロナ後を見据えて海外展開を考えてみませんか?

まとめ

いかがでしょうか。冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「駐在所に現地で雇ったスタッフは必要か?」

→ 必要、問い合わせの対応や現地の商習慣を任せられる

「商社を介して製品を売るメリットは?」

→ 広く浅くマーケテイングを兼ねて商品を売れること

「販売代理店の探し方は?」

→ ジェトロ、在日各国大使館、現地の日本人商工会、コンサル会社に相談

「海外で商品を売る際に重要な考え方は?」

→ 自分自身で現地に足を運び、現地の市場と顧客を理解した上で製品を売る

のようになります。今回のインタビューを通して強く感じたメッセージは、現地に足を運び自分自身で商流を理解することの重要性です。また、展示会を利用して販売代理店を探す際の方法など実際に現地でビジネスをされた田中さんならでは回答が得られた貴重な回だったと思います。今回の内容がベトナムはじめ海外への事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー③「日系メーカーの海外展開(ベトナム)」前編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第3回目前半の今回は、メーカー勤務時代にベトナムに赴任し自社製品を現地に売り込む仕事をされていたブルーイノベーション株式会社経営戦略室の田中さんにインタビューを行いました。前編の今回は、

  • 「ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?」
  • 「現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?」
  • 「日本企業に対するイメージは?」
  • 「日本企業に対するネガティブなイメージは?」

などの質問に対し、現地で営業を行っていた方ならではの意見をお届けします!

田中さんの経歴

ベトナムに駐在していたのは、2010年から2013年までの3年半です。その時は、シャープの現地法人で家電製品の営業企画をしていました。その後、東京に戻り機械系のメーカーであるナブテスコに転職し、出張ベースでベトナム、インドネシア、フィリピン、韓国、インドなどに営業に行ってました。

現在は、これまでの経験を活かし、ドローンのリーディングカンパニーであるブルーイノベーションで経営戦略や海外展開の指揮を執っています。日本のテクノロジーを海外に展開するという大変やりがいある仕事です。

ベトナム企業との関係構築について

ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?

2つあります。1つ目は内容の誇張があることですね。

例えば、建築業界の企業のWebサイトを見た時に何か実績集みたいなページがあったとします。そのページにはベトナムのランドマーク的な建物が実績でという記載があるんですが、その情報が真実かどうかというのは疑わしいところがあります。

2つ目は日本企業のWebサイトに比べて、企業の情報自体が少ない事ですね。

日本の会社のWebサイトは凄く丁寧に資本金、株主構成や会社の沿革情報を記載している企業が多いと思います。一方で、ベトナム企業のWebサイトはそういった情報の記載が少ないので日本企業ほどの深さの情報は取れないですね。加えて、ベトナム企業のWebサイトに用意してある英語ページはベトナム語のそれよりも情報量が少ないことが多いので、企業情報収集がWebサイトだけでは満足にできないということがあります。

Webサイトの情報以外に現地企業に足を運ぶのは必要か?

必要ですね。現地のWebサイトだけを見て判断するのは難しいと思います。なので当然、Webサイトから取れる情報を取った後に、実際に企業に訪問して話を聞いてというステップが必要です。私の経験から言うと、東南アジアにおいてはよほど知名度のある大きい企業でないと、Webページの情報だけで会社自体を信用することはできないと思います。小さい会社だとそもそもWebページがあっても実際に存在するのかどうかも分からなかったりします。

なので、気になった企業があればメールや電話でコンタクトをとって、事務所や工場があれば見に行きます。

現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?

間に誰か信頼できる人企業の紹介を挟んだ方が良いと思います。理由は、取引する相手が大手でこちらの知名度がない場合は、初めの交渉から不利になってしまう可能性が高いからです。なので、相手企業と既に取引のある会社や現地の日本企業なりに紹介してもらう方がその後の物事もスムーズに進むと思います。

現地の日本企業とコンタクトを取る方法は?

結論から言うと、現地の日本の商工会議所日本人会もしくはジェトロなりに紹介してもらうと効率的だと思います。

なぜかと言うと、Webで闇雲に検索しても効率的ではないと思うからです。ベトナムに進出している日本企業は確か1800社ほどだったと思うんですけど、その内の多くの企業が先に挙げたコミュニティのいずれかに属していると思います。なので、そういったルートを使って探した方が良いと思います。

ベトナム語検索した時に日本企業は検索結果に表示される?

表示される確率はすごく低いと思います。どうしてかと言うと、日本企業のWebサイトは基本的に日本語メインで作っていますよね。だから当然、ベトナム語で検索しても日本語のキーワードは引っかからないので出てこないことになります。

ベトナムで英語で検索した時に日本企業の英語版Webサイトが表示されることはあると思います。その時は、おそらく日本本社の英語版Webサイトが表示されるので、日本企業のベトナム法人のページがピンポイントに表示されるケースは少ないと思います。

ベトナム語Webサイトを作る際、ネイティブによる翻訳は必要か?

結論から言うと、ネイティブによる翻訳は必要でしょうね。Google翻訳だけでは不十分というより凄くおかしいことになると思います。例えば、ベトナム語のWebサイトを日本語にGoogle翻訳してみれば分かると思いますが、すごくおかしな日本語になってしまうんですね。なので、日本語をベトナム語にGoogle翻訳したら逆のことが起こると思います。

それと会社のWebサイトはその会社のブランドもしくはコーポレートイメージになるので、かっこいい表現が必要ですよね。仮に日本語でかっこいいプロダクト名をつけたとしてもその表現は機械的に翻訳されないはずです。

ベトナムから見た日本企業について

日本企業に対するイメージは?

やっぱり品質ですね。ベトナム人は非常に親日でアジアの中で日本が一番品質が良いという認識を持っています。日本の次に韓国、その後は台湾、タイ、マレーシア、現地(ベトナム)、中国という順で続くと思います。

品質とは具体的にどのような品質?

一番は耐久性ですね。使って長持ちするということです。故障や不良品が少ないという点の評価も高いです。あとは、生産工程やプロセスがしっかりしているという印象があると思います。私も現地で営業をしていた時に、日本の品質管理基準に基づいて生産しているという証明書類だったりを求められたことはあります。

日本企業に対するネガティブなイメージは?

日本製品は価格が高いという認識は多くの現地の方が持っています。距離的にも離れているので納期が遅いというイメージもあると思います。なので、日本企業がベトナムで商品を売っていこうと思ったらその辺のターゲットを明確に設定する必要があると思います。実際に、日本で良い商品だからベトナムで売ろうとしたけど思ったように売れなかったということはよくあります。日本と同じ価格設定では高いと思われてしまう。だから、しっかりと製品の価値をお客様に伝えることがカギになります。

まとめ

いかがでしょうか?冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?」

→ 2つの特徴(1.内容の誇張、2.企業自体の情報が少ない)

「現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?」

→ 信頼できる人、企業の紹介を挟んでコンタクトを取る

「日本企業に対するイメージは?」

→ アジアの中でトップの品質、信頼性が高い

「日本企業に対するネガティブなイメージは?」

→ 価格が高く、距離的に離れているので納期が遅い

となります。後編の次回は、海外でのビジネスと販売代理店との関係構築方法などのトピックを掘り下げていきます。具体的には、

  • 「駐在所に現地で雇ったスタッフは必要か?」
  • 「商社を介して製品を売るメリットは?」
  • 「販売代理店の探し方は?」
  • 「海外で商品を売る際に重要な考え方は?」

などの質問に答えて頂きました!後編では、海外で販売代理店を探す方法、料金の回収方法など現地での営業活動なしでは語れない内容になっています。今回の内容がベトナムへの事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー③「日系メーカーの海外展開(ベトナム)」前編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第3回目前半の今回は、メーカー勤務時代にベトナムに赴任し自社製品を現地に売り込む仕事をされていたブルーイノベーション株式会社経営戦略室の田中さんにインタビューを行いました。前編の今回は、

  • 「ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?」
  • 「現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?」
  • 「日本企業に対するイメージは?」
  • 「日本企業に対するネガティブなイメージは?」

などの質問に対し、現地で営業を行っていた方ならではの意見をお届けします!

田中さんの経歴

ベトナムに駐在していたのは、2010年から2013年までの3年半です。その時は、シャープの現地法人で家電製品の営業企画をしていました。その後、東京に戻り機械系のメーカーであるナブテスコに転職し、出張ベースでベトナム、インドネシア、フィリピン、韓国、インドなどに営業に行ってました。

現在は、これまでの経験を活かし、ドローンのリーディングカンパニーであるブルーイノベーションで経営戦略や海外展開の指揮を執っています。日本のテクノロジーを海外に展開するという大変やりがいある仕事です。

ベトナム企業との関係構築について

ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?

2つあります。1つ目は内容の誇張があることですね。

例えば、建築業界の企業のWebサイトを見た時に何か実績集みたいなページがあったとします。そのページにはベトナムのランドマーク的な建物が実績でという記載があるんですが、その情報が真実かどうかというのは疑わしいところがあります。

2つ目は日本企業のWebサイトに比べて、企業の情報自体が少ない事ですね。

日本の会社のWebサイトは凄く丁寧に資本金、株主構成や会社の沿革情報を記載している企業が多いと思います。一方で、ベトナム企業のWebサイトはそういった情報の記載が少ないので日本企業ほどの深さの情報は取れないですね。加えて、ベトナム企業のWebサイトに用意してある英語ページはベトナム語のそれよりも情報量が少ないことが多いので、企業情報収集がWebサイトだけでは満足にできないということがあります。

Webサイトの情報以外に現地企業に足を運ぶのは必要か?

必要ですね。現地のWebサイトだけを見て判断するのは難しいと思います。なので当然、Webサイトから取れる情報を取った後に、実際に企業に訪問して話を聞いてというステップが必要です。私の経験から言うと、東南アジアにおいてはよほど知名度のある大きい企業でないと、Webページの情報だけで会社自体を信用することはできないと思います。小さい会社だとそもそもWebページがあっても実際に存在するのかどうかも分からなかったりします。

なので、気になった企業があればメールや電話でコンタクトをとって、事務所や工場があれば見に行きます。

現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?

間に誰か信頼できる人企業の紹介を挟んだ方が良いと思います。理由は、取引する相手が大手でこちらの知名度がない場合は、初めの交渉から不利になってしまう可能性が高いからです。なので、相手企業と既に取引のある会社や現地の日本企業なりに紹介してもらう方がその後の物事もスムーズに進むと思います。

現地の日本企業とコンタクトを取る方法は?

結論から言うと、現地の日本の商工会議所日本人会もしくはジェトロなりに紹介してもらうと効率的だと思います。

なぜかと言うと、Webで闇雲に検索しても効率的ではないと思うからです。ベトナムに進出している日本企業は確か1800社ほどだったと思うんですけど、その内の多くの企業が先に挙げたコミュニティのいずれかに属していると思います。なので、そういったルートを使って探した方が良いと思います。

ベトナム語検索した時に日本企業は検索結果に表示される?

表示される確率はすごく低いと思います。どうしてかと言うと、日本企業のWebサイトは基本的に日本語メインで作っていますよね。だから当然、ベトナム語で検索しても日本語のキーワードは引っかからないので出てこないことになります。

ベトナムで英語で検索した時に日本企業の英語版Webサイトが表示されることはあると思います。その時は、おそらく日本本社の英語版Webサイトが表示されるので、日本企業のベトナム法人のページがピンポイントに表示されるケースは少ないと思います。

ベトナム語Webサイトを作る際、ネイティブによる翻訳は必要か?

結論から言うと、ネイティブによる翻訳は必要でしょうね。Google翻訳だけでは不十分というより凄くおかしいことになると思います。例えば、ベトナム語のWebサイトを日本語にGoogle翻訳してみれば分かると思いますが、すごくおかしな日本語になってしまうんですね。なので、日本語をベトナム語にGoogle翻訳したら逆のことが起こると思います。

それと会社のWebサイトはその会社のブランドもしくはコーポレートイメージになるので、かっこいい表現が必要ですよね。仮に日本語でかっこいいプロダクト名をつけたとしてもその表現は機械的に翻訳されないはずです。

ベトナムから見た日本企業について

日本企業に対するイメージは?

やっぱり品質ですね。ベトナム人は非常に親日でアジアの中で日本が一番品質が良いという認識を持っています。日本の次に韓国、その後は台湾、タイ、マレーシア、現地(ベトナム)、中国という順で続くと思います。

品質とは具体的にどのような品質?

一番は耐久性ですね。使って長持ちするということです。故障や不良品が少ないという点の評価も高いです。あとは、生産工程やプロセスがしっかりしているという印象があると思います。私も現地で営業をしていた時に、日本の品質管理基準に基づいて生産しているという証明書類だったりを求められたことはあります。

日本企業に対するネガティブなイメージは?

日本製品は価格が高いという認識は多くの現地の方が持っています。距離的にも離れているので納期が遅いというイメージもあると思います。なので、日本企業がベトナムで商品を売っていこうと思ったらその辺のターゲットを明確に設定する必要があると思います。実際に、日本で良い商品だからベトナムで売ろうとしたけど思ったように売れなかったということはよくあります。日本と同じ価格設定では高いと思われてしまう。だから、しっかりと製品の価値をお客様に伝えることがカギになります。

まとめ

いかがでしょうか?冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?」

→ 2つの特徴(1.内容の誇張、2.企業自体の情報が少ない)

「現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?」

→ 信頼できる人、企業の紹介を挟んでコンタクトを取る

「日本企業に対するイメージは?」

→ アジアの中でトップの品質、信頼性が高い

「日本企業に対するネガティブなイメージは?」

→ 価格が高く、距離的に離れているので納期が遅い

となります。後編の次回は、海外でのビジネスと販売代理店との関係構築方法などのトピックを掘り下げていきます。具体的には、

  • 「駐在所に現地で雇ったスタッフは必要か?」
  • 「商社を介して製品を売るメリットは?」
  • 「販売代理店の探し方は?」
  • 「海外で商品を売る際に重要な考え方は?」

などの質問に答えて頂きました!後編では、海外で販売代理店を探す方法、料金の回収方法など現地での営業活動なしでは語れない内容になっています。今回の内容がベトナムへの事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「フィリピン」

テクノポートの稲垣です。前回の記事では製造業のGDPの60%以上を縫製業が占める「カンボジアの製造業」について紹介しました。今回は日本と同じアジアの島国である南国のフィリピンの製造業について紹介します。

フィリピンの人口は2014年に1億人を突破し2023年には日本の人口を上回る予想です。また、アジア2位の経済成長率と豊富な若者人口で注目を集めるフィリピンの製造業を日本企業目線から掘り下げていきます。

フィリピンの概要

  • 正式名称:フィリピン共和国(Republic of the Philippines)
  • 首都:メトロ・マニラ(Metro Manila)
  • 大統領:ロドリゴ・ドゥテルテ(2016年6月から)
  • 通貨:ペソ(Peso)(1ペソ=2.07円 ※2020年3月17日時点)
  • 人口:約1億98万人
  • 面積:30万km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:フィリピン語、英語
  • 宗教:カトリック(82.9%)その他キリスト教(9.6%)イスラム教(5%)その他(2.5%)
  • 平均寿命:男 65.9歳、女 73.1歳(日本:男 81.2歳、女 87.3歳)

フィリピン経済の特徴

強み

  1. 若年者人口:1億人を超える人口の約50%を25歳以下が占める
  2. 出稼ぎ労働者:海外の出稼ぎ労働者からの仕送りがGDPの約10%を占める
  3. 貧困層の減少:フィリピン政府は0~14歳の健康と教育に投資することで極度の貧困の根絶を目指している
  4. 英語:人口の多くが英語を話せるため、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)分野でアジアのリーダー的な立ち位置

弱み

  1. インフラ未整備:交通渋滞の蔓延やスラム街など、インフラ未整備の地域が多い
  2. 所得格差:富裕層が全体の約1%であるのに対し、貧困層が全体の約60%を占める
  3. マネーロンダリング:銀行やカジノによる資金洗浄(マネーロンダリング)が横行

フィリピンの産業構造

フィリピンの産業構造を調べます。下の図は2018年におけるフィリピンのGDPにおけるサービス業、製造業、農業の割合を示したグラフです。


データ引用元:ASEAN Key Figures 2019

グラフから以下のことが読み取れます。

  • 製造業の割合は34.1%でASEAN諸国の平均36.6%をわずかに下回る
  • GDPに占めるサービス業の割合は57.8%でASEAN諸国の中で3番目に大きい

▶現状

  • サービス産業が増加傾向で製造業は緩やかに増加傾向
  • 農業はGDP全体の8%だが、労働力の約30%が農業に従事している
  • 1980年から2017年までの経済成長率は3.7%と緩やかだが、2012年から2017年の経済成長は6.1%と急速な成長を記録

▶今後

  • フィリピン政府は製造業とサービス業に投資をシフトしており、農業は衰退傾向
  • ドゥテルテ大統領は2014年から2033年の20年間で年平均4.8%のGDPの成長を目指すと宣言

フィリピンの製造業全体

次にフィリピンの製造業全体について調べます。下の図は2019年におけるフィリピン製造業GDPにおける各セクターの割合を示したグラフです。


データ引用元:NATIONAL ACCOUNTS OF PHILIPPINES

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 食品製造業が製造業全体の47.8%を占め、ここ数年増加傾向が続く
  • 化学および化学関連製品の割合はGDP全体の11.2%と2番目に大きい
  • ラジオ、テレビ、通信機器および家電分野は10.3%で3番目に大きい

▶現状

  • 製造業はGDP全体の34%を占めるが、従事している労働力は全体の16%で労働賃金も低い
  • 鉱業、鉱物処理産業、医薬品、造船、電子部品・半導体産業は近年政府が力を入れている

▶今後

  • 短期的な目標として、1. 優位性のある産業の保護、2. 新興企業の強化、3. 現存企業の強化を挙げている
  • 中期的な目標として、1. 高付加価値産業へのシフト、2. 業績が上向いている分野への投資、3. 製造業を農業、サービス業と融合、4. イノベーション産業の推進を挙げている
  • 長期的な目標として、1. 世界的な競争力の強化、2. 革新的な製造技術の強化を挙げている

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からフィリピンの製造業市場を調査した結果です。下の図は2008年から2017年までのフィリピンに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。

データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 統計を開始した2008年から2017年の間に日系企業数は1.76倍に増加
  • 2017年におけるフィリピンの進出日系企業数は1502で8位

▶現状

  • 進出日系企業は経営上の問題点として原材料・部品調達の難しさ、調達コストの上昇、従業員の賃金上昇、品質管理の難しさ、税務の負担などを挙げている。(出典:ジェトロ『2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査』2018年12月)
  • 2020年2月のフィリピンの※製造業購買担当指数(PMI)は、新型コロナウイルスの影響を受けながらも0.2ポイントの増加を記録しASEAN首位。※製造業の購買責任者を対象に、生産高や新規受注、在庫レベル、雇用状況、価格などの指数に一定のウエイトを掛けて算出する指数。0から100の間で変動し、50.0は「前月から横ばい」、50.0を超えると「前月比で改善や増加」を意味して景気拡大を示し、50.0未満は「前月比で悪化や減少」として景気減速を表す。

▶今後

  • 2023年のフィリピンの人口は1億2300万人と日本を追い抜くと予想されており、ASEANの経済大国としての地位を確立する見込み
  • 首都マニラでの月額法定最低賃金の上昇率は2019年で4.9%と上昇傾向だが、他のASEAN諸国(インドネシア:8.0%、マレーシア:10%、ベトナム:5.0%)と比較すると上昇率は小さい

フィリピンに進出した日本企業

次に実際にフィリピンに進出した日本企業3者を紹介します。

株式会社ティアンドエス

▶基本情報

  • 本社:埼玉県草加氏
  • 従業員数:64名
  • 事業内容:レーザ加工・曲げ加工・溶接加工・組立加工、その他板金加工全般

▶概要

2004年にフィリピンマカティシティに現地法人を設立。フィリピン国内および、アジア域内に進出済みの日系企業への部品の供給元としてレーザー加工、切削加工を行う。日本本社でトレーニングを受けたスタッフが様々な加工依頼に24時間体制で対応。

群馬合金株式会社

▶基本情報

  • 本社:群馬県伊勢崎市
  • 従業員数:99名
  • 事業内容:非鉄金属ダイカスト製造業

▶概要

1996年にフィリピン現地法人を設立。創業以来、自動車部品などに使用される軽量でリサイクル性に優れるアルミニウムダイカストのパイオニアとして事業を展開。フィリピン法人ではダイカストから切削加工まで一貫生産を手掛ける。現地では国内同様の生産体制を整え、現地日本企業の海外工場への供給基地として需要に応えている。

伊藤製作所

▶基本情報

  • 本社:三重県四日市市
  • 従業員数:120名
  • 事業内容:順送り金型設計製作、プレス部品加工、部品組立

▶概要

1995年に設立した合弁会社を2003年に100%独資にし現地法人を設立。輸出加工区である工業団地に拠点を設け、現地日本企業を対象とした高度な順送り金型の制作とプレス部品加工を行っている。英語力に優れた現地スタッフの教育と日本からの設備投資により生産体制を確立。

まとめ

今回はフィリピンの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。個人的には、豊富な若年層の労働人口と安価な労働賃金が企業の関心を集めている要因であると再認識しました。ただ、フィリピン国内ではインフラ未整備地域も多く、所得格差による貧困層と富裕層の壁が依然として残っていると感じました。

進出する日本企業の目線に立って考えると、今回紹介した3社のように現地のスタッフを雇い、日本企業の向けの部品加工や製品の供給をメイン事業にしていくスタイルが一般的だと思いました。今回の内容がフィリピン進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「フィリピン」

テクノポートの稲垣です。前回の記事では製造業のGDPの60%以上を縫製業が占める「カンボジアの製造業」について紹介しました。今回は日本と同じアジアの島国である南国のフィリピンの製造業について紹介します。

フィリピンの人口は2014年に1億人を突破し2023年には日本の人口を上回る予想です。また、アジア2位の経済成長率と豊富な若者人口で注目を集めるフィリピンの製造業を日本企業目線から掘り下げていきます。

フィリピンの概要

  • 正式名称:フィリピン共和国(Republic of the Philippines)
  • 首都:メトロ・マニラ(Metro Manila)
  • 大統領:ロドリゴ・ドゥテルテ(2016年6月から)
  • 通貨:ペソ(Peso)(1ペソ=2.07円 ※2020年3月17日時点)
  • 人口:約1億98万人
  • 面積:30万km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:フィリピン語、英語
  • 宗教:カトリック(82.9%)その他キリスト教(9.6%)イスラム教(5%)その他(2.5%)
  • 平均寿命:男 65.9歳、女 73.1歳(日本:男 81.2歳、女 87.3歳)

フィリピン経済の特徴

強み

  1. 若年者人口:1億人を超える人口の約50%を25歳以下が占める
  2. 出稼ぎ労働者:海外の出稼ぎ労働者からの仕送りがGDPの約10%を占める
  3. 貧困層の減少:フィリピン政府は0~14歳の健康と教育に投資することで極度の貧困の根絶を目指している
  4. 英語:人口の多くが英語を話せるため、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)分野でアジアのリーダー的な立ち位置

弱み

  1. インフラ未整備:交通渋滞の蔓延やスラム街など、インフラ未整備の地域が多い
  2. 所得格差:富裕層が全体の約1%であるのに対し、貧困層が全体の約60%を占める
  3. マネーロンダリング:銀行やカジノによる資金洗浄(マネーロンダリング)が横行

フィリピンの産業構造

フィリピンの産業構造を調べます。下の図は2018年におけるフィリピンのGDPにおけるサービス業、製造業、農業の割合を示したグラフです。


データ引用元:ASEAN Key Figures 2019

グラフから以下のことが読み取れます。

  • 製造業の割合は34.1%でASEAN諸国の平均36.6%をわずかに下回る
  • GDPに占めるサービス業の割合は57.8%でASEAN諸国の中で3番目に大きい

▶現状

  • サービス産業が増加傾向で製造業は緩やかに増加傾向
  • 農業はGDP全体の8%だが、労働力の約30%が農業に従事している
  • 1980年から2017年までの経済成長率は3.7%と緩やかだが、2012年から2017年の経済成長は6.1%と急速な成長を記録

▶今後

  • フィリピン政府は製造業とサービス業に投資をシフトしており、農業は衰退傾向
  • ドゥテルテ大統領は2014年から2033年の20年間で年平均4.8%のGDPの成長を目指すと宣言

フィリピンの製造業全体

次にフィリピンの製造業全体について調べます。下の図は2019年におけるフィリピン製造業GDPにおける各セクターの割合を示したグラフです。


データ引用元:NATIONAL ACCOUNTS OF PHILIPPINES

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 食品製造業が製造業全体の47.8%を占め、ここ数年増加傾向が続く
  • 化学および化学関連製品の割合はGDP全体の11.2%と2番目に大きい
  • ラジオ、テレビ、通信機器および家電分野は10.3%で3番目に大きい

▶現状

  • 製造業はGDP全体の34%を占めるが、従事している労働力は全体の16%で労働賃金も低い
  • 鉱業、鉱物処理産業、医薬品、造船、電子部品・半導体産業は近年政府が力を入れている

▶今後

  • 短期的な目標として、1. 優位性のある産業の保護、2. 新興企業の強化、3. 現存企業の強化を挙げている
  • 中期的な目標として、1. 高付加価値産業へのシフト、2. 業績が上向いている分野への投資、3. 製造業を農業、サービス業と融合、4. イノベーション産業の推進を挙げている
  • 長期的な目標として、1. 世界的な競争力の強化、2. 革新的な製造技術の強化を挙げている

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からフィリピンの製造業市場を調査した結果です。下の図は2008年から2017年までのフィリピンに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。

データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 統計を開始した2008年から2017年の間に日系企業数は1.76倍に増加
  • 2017年におけるフィリピンの進出日系企業数は1502で8位

▶現状

  • 進出日系企業は経営上の問題点として原材料・部品調達の難しさ、調達コストの上昇、従業員の賃金上昇、品質管理の難しさ、税務の負担などを挙げている。(出典:ジェトロ『2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査』2018年12月)
  • 2020年2月のフィリピンの※製造業購買担当指数(PMI)は、新型コロナウイルスの影響を受けながらも0.2ポイントの増加を記録しASEAN首位。※製造業の購買責任者を対象に、生産高や新規受注、在庫レベル、雇用状況、価格などの指数に一定のウエイトを掛けて算出する指数。0から100の間で変動し、50.0は「前月から横ばい」、50.0を超えると「前月比で改善や増加」を意味して景気拡大を示し、50.0未満は「前月比で悪化や減少」として景気減速を表す。

▶今後

  • 2023年のフィリピンの人口は1億2300万人と日本を追い抜くと予想されており、ASEANの経済大国としての地位を確立する見込み
  • 首都マニラでの月額法定最低賃金の上昇率は2019年で4.9%と上昇傾向だが、他のASEAN諸国(インドネシア:8.0%、マレーシア:10%、ベトナム:5.0%)と比較すると上昇率は小さい

フィリピンに進出した日本企業

次に実際にフィリピンに進出した日本企業3者を紹介します。

株式会社ティアンドエス

▶基本情報

  • 本社:埼玉県草加氏
  • 従業員数:64名
  • 事業内容:レーザ加工・曲げ加工・溶接加工・組立加工、その他板金加工全般

▶概要

2004年にフィリピンマカティシティに現地法人を設立。フィリピン国内および、アジア域内に進出済みの日系企業への部品の供給元としてレーザー加工、切削加工を行う。日本本社でトレーニングを受けたスタッフが様々な加工依頼に24時間体制で対応。

群馬合金株式会社

▶基本情報

  • 本社:群馬県伊勢崎市
  • 従業員数:99名
  • 事業内容:非鉄金属ダイカスト製造業

▶概要

1996年にフィリピン現地法人を設立。創業以来、自動車部品などに使用される軽量でリサイクル性に優れるアルミニウムダイカストのパイオニアとして事業を展開。フィリピン法人ではダイカストから切削加工まで一貫生産を手掛ける。現地では国内同様の生産体制を整え、現地日本企業の海外工場への供給基地として需要に応えている。

伊藤製作所

▶基本情報

  • 本社:三重県四日市市
  • 従業員数:120名
  • 事業内容:順送り金型設計製作、プレス部品加工、部品組立

▶概要

1995年に設立した合弁会社を2003年に100%独資にし現地法人を設立。輸出加工区である工業団地に拠点を設け、現地日本企業を対象とした高度な順送り金型の制作とプレス部品加工を行っている。英語力に優れた現地スタッフの教育と日本からの設備投資により生産体制を確立。

まとめ

今回はフィリピンの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。個人的には、豊富な若年層の労働人口と安価な労働賃金が企業の関心を集めている要因であると再認識しました。ただ、フィリピン国内ではインフラ未整備地域も多く、所得格差による貧困層と富裕層の壁が依然として残っていると感じました。

進出する日本企業の目線に立って考えると、今回紹介した3社のように現地のスタッフを雇い、日本企業の向けの部品加工や製品の供給をメイン事業にしていくスタイルが一般的だと思いました。今回の内容がフィリピン進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー企画②「先進国フランスの試作市場へ」後編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第2回目後編の今回は前回の記事に引き続き、切削部品加工受託業でフランスに事業展開を果たした、株式会社ダイショウの石塚社長へのインタビューをお届けします。後編の今回は、

  • 「フランスに事業展開を考える企業にアドバイスは?」
  • 「フランス企業と比較した時の日本企業の特徴は?」
  • 「日本の製造業企業がフランス語Webサイトを作る際に注意すべきことは?」
  • 「アジア系の人、企業に対して差別はある?」

などの質問に対し、現地で会社を運営する方の生の声をお届けします!

フランス進出について

ドイツ進出とフランス進出の違いは?

私個人としては、ドイツに進出する方が楽だと思います。なぜかと言うと、ドイツは今までの進出してきた日本企業とのつながりが多いからです。要は、歴史や経験値がフランスよりも深いということです。今私が言ったことは、実際に展示会に行ってみるとよく分かると思います。ドイツの展示会に出展している日本企業の数は、フランスのそれと比較すると断然多いです。なので、一般にフランスに進出しようとする日本企業の数は、ドイツに進出しようとする企業に比べて格段に少ないように感じます。

ですが、フランスに進出のチャンスがないわけではない思います。自分の仲間内ではフランスは日本人が想像するより工業国だよ、進出のチャンスはあるよ、という話をよくしますからね。

フランスに事業展開を考える企業にアドバイスは?

一つ確実に言えることは、ヨーロッパに支社を設けた方が良いということです。なぜかと言うと、例えば何かトラブルがあったときに、対応してくれる営業窓口や支店があるのと、ないのでは受注の幅が大きく変わるからです。

自分の経験から言うと、展示会に出展してお客さんが興味を持ってくれて「すごく良い品質だね!一回買ってみようかな。」と言ってくれることはよくあります。その後にお客さんが「ところでおたくはヨーロッパに支社はあるの?」と訊かれて、「ちょっとまだないんですよね。」と言うと、途端に「残念だなぁ」というリアクションが返ってくるんですよね。こういった考えの根底には、やはりヨーロッパから見ると日本は遠いアジアの国の一つ、という認識があると思います。

お客さんからしたら、ただでさえ輸送費の影響で高い買い物になるのに、サポートがヨーロッパで受けられないとなると、さらに不安ですよね。つまり、ヨーロッパに支店を持つということは、お客さんの不安を減らすと言う意味で価値があるんです。

支店はヨーロッパにあればいい?

ヨーロッパにあればいいと思いますよ。というのは、ヨーロッパにおいて国境はさほど関係ないですから。逆に、ヨーロッパに支店がないとなると、ちょっと遠いなぁという印象を持たれちゃいますね。また、既にヨーロッパのどこかに支店があるなら、どんどんほかの国にも進出した方が良いと思いますよ。

フランス進出に英語は必要?

やはり英語は必要ですね。それは、欧州展示会は国際即が豊かだからです。出展した中小企業の展示会MIDESTの場合、ヨーロッパの国はもちろん多いですけれど、北アフリカのモロッコ、中東の国を始め、中国、台湾企業も出展しています。先ほど紹介した、我々より前にフランスに進出した由紀精密さんは、我々と同じくフランスに支社があります。その支社に勤める従業員の方の一人に日本人なんですけど、英語とフランス語をしっかり話す女性の方がいるので、その違いは大きいですね。

理想的には、事務所には英語を話せる現地の人が常駐してすぐに電話が取れる、という状況ですね。例えば、ドイツに進出するなら英語が話せるドイツ人が常駐しているようなイメージです。

フランス語ができなくてもビジネスはできる?

私のフランス語もまだまだなんですが、ヨーロッパはそういう人達でも対等にビジネスをやっていけるような受け入れ態勢があると感じます。それは、ヨーロッパの中でもフランスは移民の多い国で、移民の中には読み書きが十分にできないという方も多いんですよね。そうした理由もあって、ヨーロッパは言葉が流暢ではない人を受け入れる態勢が日本よりあると思います。

加えて、ビジネスにおいて重要なのは品物です。品物が評価対象なので、そこがしっかりしていれば問題ないと思います。

フランスの日本企業ついて

フランス企業と比較した時の日本企業の特徴は?

良い質問ですね。よく言われるのは、「質」と「繰り返し精度の高さ」ですね。後者の繰り返し精度の高さと言うのは、繰り返し同じ品質の製品を作り続け、安定供給ができる技術力のことです。このおかげで、お客様から重要部品を依頼されることもあります。こういった細部までこだわって作るという力に関しては、日本企業はすごいと思います。おそらく、より良いものを作ろうという意識や気質の違いがそうさせていると思います。

対して、こちらの企業は最低基準さえ満たしていればOKという考えが普通です。わかりやすく言うと製品の裏面に傷があったとしても、その部分が機能的に問題なければOKという感覚です。

フランスで成功している日本企業の特徴は?

製造業に限って言うと、技術が優れている企業です。よく言われる海外に進出する企業が直面する課題として、値段と技術のバランスがあります。海外で商品を売るには当然、輸送費や関税といったコストがかかりますからね。その中でも成功している企業は、値段が持つ以上の技術的な価値を提供できる企業だと思います。要は、替えがきかないような製品を持っているような企業は、我々の周りでも成功している印象がありますね。

加えて、高い技術力はお客さんとの信頼関係に直接的につながります。信頼関係の構築に必要な継続的な仕事の受注という面でも、技術力は必要ですよね。

日本製品に対するリスペクトはあるか?

結論から言うと、日本人が思っているほど「ジャパンクオリティ」みたいな感覚はこっちにはありませんね。全体的にリスペクトしている感じは受けます。ですが、やはり会社対会社が基本です。日本企業といってもピンからキリまでありますからね。

日本企業に対するイメージは?

一般的に言うと、遠いなぁという印象ですね。なので、ただでさえ距離が遠くて輸送費もかかるので、その中でお客さんと関係を構築するのは難しいと思います。ただ、お客さんが一度日本企業と取引して良い品物をもらっているとか、試しに一回注文を受けてそれがすごく良い経験になった、などの経験値があると日本企業に対する印象は大きく変わると思います。

フランスのネット事情について

フランスのWebサイトを見る時に特に注意してみる内容は?

日本と同じですけど、更新頻度ですね。要は、情報が新鮮かどうかです。あとこれはWebサイトの見方の話ですが、Webサイトを見る時はあくまでも参考程度に見ています。というのは、Webサイトというのは実際の内容よりも良く見せるようにできているからです。なので、情報をうのみにせず、大事なことは実際に会って確認することを心がけています。

日本企業とヨーロッパのWebサイトの違いは?

製造業に限って言うと、ヨーロッパのWebサイトの方が洗練されている感じがしますね。そうなる理由の一つは、業界以外の人にも分かりやすいデザインにする必要があるからだと思います。フランスは地元の行政が製造業を支援していて、製造業のWebサイトにも県のロゴやリンクが貼ってある場合が多いです。すなわち、地域のリンクを通して業界以外の人が見に来るケースも多いので、直観的に分かりやすいデザインにしているんだと思います。

フランス語Webサイトを作るにあたって、Google翻訳でも十分意味は通じるか?

ある程度は通じると思います。しかし、ネイティブの翻訳は必ず必要だと思います。例えば、私たち日本企業が中国企業からダイレクトメールをもらった時に、中国企業(外国企業)の日本語はすぐ分かりますよね。特に、日本企業は外向企業からの拙い日本語メールに対する免疫が少ないと思います。

先ほども言った通り、ヨーロッパには現地語に不慣れな外国人が比較的多く、受け入れ態勢もあります。なので、Webサイトの出来が外国語チックでも日本より受け入れてくれる可能性はあると思います。ただし、業界の専門用語、専門的な話をするにはGoogle翻訳だと不十分です。

これは参考の話ですが、私の前の会社のパートナー(フランス企業)の中で日本語Webサイトを作ろうという話がありました。その際に私は翻訳担当として参画しました。これがそのWebサイトです。当時はフランス語も不慣れでしたが、加工現場の経験のおかげで専門用語に関しては苦労しませんでした。なので、外国語HPを作る際の理想としては、専門用語を知る翻訳家に翻訳してもらうことだと思います。

フランスのネットで日本企業のサイトがヒットしたことはあるか?

ないですね。グローバルに事業展開している大手を除くと、日本企業のHPが引っかかったことはないです。

これは余談ですが、フランスを含めたヨーロッパで検索を行う方法は2種類あります。1つ目は、現地の言葉で検索する方法。2つ目は、英語で検索する方法です。後者の英語で検索する方法はグローバルな検索結果が表示されるので、もしかしたら英語で検索すると日本企業HPが引っかかる可能性はあるかもしれないです。ただ、私個人としてはフランス語検索することがほとんどなので、分からないですね。

日本の製造業企業がフランス語Webサイトを作る際に注意すべきことは?

専門用語の翻訳精度です。これは良くある話なんですが、エンジニアが現地の中小企業町工場に行って英語で話しても通じない、専門用語も英語だと通じないというケースです。

私事ですが、ブログで日仏の専門用語辞典を作っています。

先ほど言った経験をする方がいれば、自分のブログページを見て写真を見せながら説明すれば伝わると思います。英語とフランス語に対応していて、発音もついているので役に立ててもらえれば幸いです。

フランスの現状について

フランス生活で日本ギャップを感じる?

ギャップはすごいありますね。日本は色々なものが綺麗に整っていて、人もインフラもしっかり整っていると思います。一方で、日本にいると自分もしっかりしなければ、と堅苦しくなってしまう面もありますよね。なので、フランスの価値観になれてしまうと、もう日本には戻れない気がします。(笑)こういったギャップは、日本とフランスの違いというより、日本と外国の違いだと思います。

海外に住んでみて初めて日本という国の特殊性、優れている部分を感じましたね。加えて、現地の人の考え方の違い、文化の違いなんかも分かります。その辺は、海外旅行では感じられない貴重な経験だと思っています。

アジア系の人、企業に対する差別はある?

私自身あまり感じたことはないです。これは先ほども言った理由で、特にビジネス上では差別はないです。国ではなく会社対会社で取引しますからね。

一つ意識して欲しいことは、日本人はアジア人の一員であるという認識が必要だということです。フランスの人からしてみれば、中国も日本も遠いアジアの国の一部ですからね。その中でもう一歩関係性を進めて、日本の文化の違いなどについて話せるような仲になれば良いですよね。

フランスの治安は?

治安が悪いと感じたことはないですね。例外的に、特に都市部では文化も価値観も違う色々な人種の人がいるので、ある程度のトラブル、治安の悪さみたいなものはあります。テロもあります。

ただ、一つフランスに来て分かったことを伝えさせてください。

例えば、フランスでテロが起こったとなると「フランスってあぶねぇ」って日本から見ると思いますよね。ところが、実際は特定の地域に住む特定の人が犯した事件なので、フランスの国全体が危ないことはないんです。フランスで何か事件が起こると、日本から「大丈夫なの?」って心配されることもあるんですが、現場から場所が違えばほとんど関係なかったりするんですね。なので、今回のコロナウイルスの件でフランス国内のアジア系の飲食店が襲撃されたり、人種差別を受けた、みたいなニュースが日本ではクローズアップされますが、その外から見た報道の仕方と受け取り方に必ずギャップが存在するので、現地の人間はそこに違和感を感じてしまいます。

実際に事件を起こしているのは、全体数の内のほんのわずかな人達ですよね。報道や記事はメディアが売るために作るわけなので、必ず情報の受けて側が責任を持って取捨選択する必要があると思います。ブログでもそういう話を挙げているので、フランスに実際住んでみて感じた価値観の違い、文化の違いなんかを感じていただけたら嬉しく思います。

コロナウイルスの影響は?

日本の人からすると、フランスに住んでいるからコロナウイルスは関係ないと思われがちですが、実際そうではないんです。ヨーロッパは地続きなので、私の住んでいる地域だとイタリアやスイスの国境が近いんですね。なので、イタリアの北部でコロナウイルスが拡大しているニュースの方にむしろ注意しています。(2月23日インタビュー時)

最後に

最後に、少しだけ自分の話をさせてください。私がフランスに来た当初は、工場も何から何まで売って来ました。つまり、ずっこけたらそれでおしまいという訳です。誰からの保証もありませんでした。つまり、ビジネスをしに来ていると同時に、生き方を選択しに来たんです。中小企業って日本国内でもそうですが、仕事と家庭が表裏一体なんですよね。会社の売り上げが上がれば家族も円満で、会社の売り上げが落ちれば家庭内にも不和が生じる、みたいな。(笑)

そういうバックグラウンド中で、こっちに来てたくさん苦労をしてきました。なので、今回のインタビューを通して、メディアの情報だけからは分からない、現場の生の声と言うものを感じてもらえれば嬉しく思います。あと今後、この世界の製造業インタビュー企画を通して、世界中で働く日本の製造業事業者の座談会みたいなものが開けると面白いと思います。裏話とかも聞けそうですよね。(笑)

まとめ

いかがでしょうか。冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

  • 「フランスに事業展開を考える企業にアドバイスは?」

→ ヨーロッパに支社を設けた方が良い

  • 「フランス企業と日本企業を比較した時の特徴は?」

→ 日本の中小企業は「質」と「繰り返し安定供給する力」が高い

  • 「日本の製造業企業がフランス語Webサイトを作る際に注意すべきことは?」

→ 専門用語の翻訳精度を保つこと

  • 「アジア系の人、企業に対して差別はある?」

→ 差別はなく、ビジネス上問題になることもない

のようになります。現代ではメディアやインタ―ネットを通して、誰もが簡単にオンライン上のデータにアクセスできます。しかし今回のインタビューを通して、石塚さんのような現場で働く生の方の声ほど説得力のある情報はないと改めて実感しました。今回の内容がフランスへの事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー企画②「先進国フランスの試作市場へ」前編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第1回目の前回は、中国の工場運営者の方にインタビューを行いました。第2回目の今回は、切削部品加工受託業でフランスに事業展開を果たした、株式会社ダイショウの石塚社長にインタビューを行いました。前編の今回は

  • 「なぜフランスを選んだ?」
  • 「フランス企業のメールのやり取りの特徴は?」
  • 「フランスでの協力企業(パートナー企業)の探し方は?」
  • 「加工する時の材料の仕入れ先は?」

などの質問に対し、現地で会社を運営する方の生の声をお届けします!

フランスに進出の経緯について

フランスに進出した経緯は?

きっかけは、元々の本社があった神奈川県の茅ケ崎市の企業ネットワークでフランスに事業展開しようという話が挙がったことですね。加えて、我々の会社は試作をメインとして生業を立てているので、試作の市場は発展途上国ではなく、アメリカやヨーロッパ諸国などの先進国がターゲットになることも理由の一つですね。

なぜフランスを選んだ?

理由は大きく3つあります。

1つ目は、フランスは先進国の中でも航空機市場が大きいことです。我々の会社はもともと航空系、宇宙系に関する試作部品などを作っていました。なので、有名なエアバス社や軍事関連の企業も多いフランスに進出すれば、航空系、宇宙系の仕事に当たる確率が高いと思ったからです。

2つ目は、由紀精密さんがヨーロッパ市場を既に開拓していたことです。先ほど言った茅ケ崎の企業ネットワークの中に、精密加工業を専門とする由紀精密さんがいて、彼らが既にヨーロッパでの取引実績を持っていたことがもう一つの理由ですね。

3つ目は、家族の同意が得やすかったからですね。これは、半分冗談で半分真面目なんですけど、海外に家族を連れてくるとなったときに、奥さんに「うん」と言ってもらう必要があるんです(笑)。そうなったときに、ヨーロッパの中でもフランスは食文化や文化的な側面で日本人が持つ印象が良いんですよね。加えて、実際に現地で生活するとなったときに、美味しい食事が食べられないとなればストレスにもつながってしまうので、住むのが辛くなってしまいますよね。

現在の業務内容は?

現在は、アドバイザー的な立場の仕事が多いですね。具体的に言うと、(仕事を受けている)パートナ―企業の現場に行って、生産効率の改善、職場環境の改善などに貢献することがメインです。要するに、今までの経験を活かしてアドバイスや意見交換をしています。

なので、以前は一日中現場に立って機械を触っていることが多かったですが、現在では事務所にこもって仕事をする時間の方が長いです。

フランスでのビジネスについて

何語でコミュニケーションをしている?

90%はフランス語です。まず、フランス全体の話をすると、若い人ほど英語が話せる割合が高い印象を受けます。それは、フランスの多くの大学生が、半年から一年ほど外国に留学し語学を習得しよう、という姿勢を持っているからだと思います。

一方で、我々が取引している中小企業では、現場にいる職人さんを始め、フランス語しか話せない人が多いですね。大企業になると話は別で、英語が話せる人の割合は高くなると思います。

フランス企業はメールを使う?

使いますね。中国では、企業間でもSNSでやりとりすると聞きましたが、我々が仕事でSNSを使ったことはありません。SNSは信頼性のバックグラウンドが弱いので、図面などの重要書はメールで送るのが主流ですね。

これは直接的に関係ない話ですが、フランスではLinkedInというSNSの普及率が高いです。フランスでは、日本と違って終身雇用という文化はないので、次の会社に転職する時などにLinkedInが使われる印象がありますね。

フランス企業のメールのやり取りの特徴は?

特有の特徴というのはあまりないですね。敢えて言うならば、フランスの方が端的に用件を伝えて回答も端的な感じがします。日本は文化的に遠回しな表現だったり濁したりする印象はあるけど、フランスは簡潔明瞭な文章が多いです。

フランスでの協力企業(パートナー企業)の探し方は?

現在のパートナー企業と出会ったきっかけは展示会です。フランスでは地元の行政が経済活性にしっかり機能していています。なので、我々の会社は地域の経済開発公社的なところと接触し、展示会を通して色々な会社を訪問させて頂き、結果的に現在のパートナー企業と巡り合うことができました。現在のパートナー企業以外にも、数地域からオファーを受けました。中には、日本にも支社がある企業があったり、なかなかグローバルです。

フランスでの営業の方法は?

展示会が多かったです。展示会では新規顧客を開拓するために、地元企業の展示ブースを探して訪問しました。ある日のパリで行われた「MIDEST」という下請け企業の展示会に参加した時の話ですが、その中で感じたことは、日本の技術は世界に太刀打ちできるということです。

MIDESTではフランス国内はもちろん世界各国の企業ブースを見て回りましたが、技術的に我々のレベルは見劣りしない、むしろ上位に食い込んでいけると感じました。それは我々の技術が特別であるというよりも、日本の技術力水準が高いことに起因していると思います。

加えて、パートナー企業の既存顧客にも営業に行ったりしました。この営業方法のメリットは、やはりパートナー企業が一緒にいると、顧客との距離が縮まりやすい事ですね。加えて、パートナー企業からしても、我々の技術を使って顧客に新しい価値を提供できるので相乗効果が生まれますよね。

一つ伝えておきたいことは、良い関係のパートナーに巡り合うことが大きなチャンスにつながるということです。製造は1社だけで完結できません。仕入れメーカーから仕上げメーカーまで必要です。その中で、良いパートナーに巡り合うということは、そのネットワークをすぐに使えて他企業とつながるチャンスをもたらします。一般に日本企業は技術力に優れているので、あとはどうやって営業につなげるか、注文につなげるか、といった部分が課題になると思います。

フランスでの加工業について

加工する時の材料の仕入先は?

大きく2つのパターンに分かれます。1つ目は、フランスを含めたヨーロッパの材料を使う場合です。我々が取引するお客さんの中でも軍事や航空関連事業の方は材料にうるさい場合が多いんです。具体的には、材料の原産地や規格をきっちり指定してきます。そうした場合は、ヨーロッパで材料を買って日本に輸送します。その後、日本で加工し、再びフランスに輸送します。

2つ目は、日本の材料を使う場合です。1つ目のパターンのような縛りがない場合は、JISにおけるISO相当品を使い日本で加工し、輸送してもらいます。この場合はもちろん日本で事前にお客さんに確認をとってから作ります。なので、加工材料はヨーロッパ材料か日本材料、加工は主に日本で行っています。

1つ例外として、ヨーロッパで加工を行う場合があります。それは、仕上げのメッキ加工です。日本のメッキ屋さんは基本的に海外材料の相当品で合っても、若干の成分違いがあれば品質保証ができない場合はが多いので、メッキ加工だけヨーロッパで行うことがあります。これ以外にも例外はあって、材料の違いによって工程が違ったり、受け入れ態勢が違ったりということはよくあります。面白いですよね。(笑)

材料の品質は同じ型番でも原産地によって違う?

日本材料とヨーロッパ材料の品質はそんなに感じないですね。なので、日本材料の品質は高いと思いますよ。それ以外は我々の感覚から言うと、中国材料に若干むらがあって使いづらいという印象です。同じ型番でも日本材料とヨーロッパ材料の品質の違いは切削加工上は感じません。ただし厳密に言うと配合などの違いがあります。材料の品質に関してはアジアメーカーなどと比べると品質の安全性が優れていると思います。

まとめ

いかがだったでしょうか?冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

  • 「なぜフランスを選んだ?」

→ 3つの理由(1. 航空機市場の規模、2. 由紀精密さんの実績、3. 家族の同意)

  • 「フランス企業のメールのやり取りの特徴は?」

→ 端的に用件を伝えて、端的に回答

  • 「フランスでの協力企業(パートナー企業)の探し方は?」

→ 地元の行政を通した展示会

  • 「加工する時の材料の仕入れ先は?」

→ 2つのパターン(1. ヨーロッパの材料、2. 日本の材料)

となります。後編の次回は、フランスへの事業展開を日本企業の目線から掘り下げていきます。具体的には、

  • 「フランスに事業展開を考える企業にアドバイスは?」
  • 「フランス企業と日本企業を比較した時の特徴は?」
  • 「日本の製造業企業がフランス語Webサイトを作る際に注意すべきことは?」
  • 「アジア系の人、企業に対して差別はある?」

などの質問に答えていただきました!後編も、実際にフランス進出を果たした石塚さんならではの興味深い内容になっています。今回の内容がフランスへの事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー①「コロナウイルスの影響は?中国進出企業の今」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。本企画の目的は、実際に海外に事業展開している製造業事業者の方にインタビューを行い、日本の中小製造業の世界進出に役立つ情報をお届けすることです。第1回目の今回は、中国の広東省で絞り加工、精密プレス品の製品生産を行う岐阜精器工業の波多野さんにインタビューを行いました。

  • 「中国の人件費は昔と比べてどうか?」
  • 「中国で工場を作るのは、現状良いアイデアか?」
  • 「中国ではいまだに ”Made in Japan” は顧客に響くか?」
  • 「現状コロナウイルスが中国の工場運営に与えている影響は?」

などの質問に対し、現地で働く人の生の声をお届けします!

中国の人件費について

中国の人件費は昔と比べてどうか?

我々が進出した2002年と比べると、約3倍ですね。もちろん中国と言っても土地が広く、最低賃金も場所によって違います。

中国の人件費の上がり方は?

鈍化していると思いますね。東南アジア諸国と比べても、人件費の上がり方にそれほど差はないように感じます。

我々が今工場を経営している地域(広東省)だと、大体ベトナムの人件費と同じくらいだと思います。

中国進出にあたって人件費以外のメリットは?

従業員が確保しやすい事ですね。就職したい若い人間がたくさんいるので、工場の掲示板に張り出せば自然と人が集まりやすいです。

中国人労働者について

何語で中国人労働者とのコミュニケーションをしている?

全て中国語です。英語のコミュニケーションはありませんね。なので、中国国内でビジネスを行うとなると中国語は必須と考えた方が良いと思います。

何割くらいの中国人労働者が英語を話せる?

一人もいませんね。我々の工場には120人前後の中国国籍の人が働いていますが、英語が話せるという人は一人もいません。

経営層レベルでちらほら要る程度で、中間管理職を務める30歳から50歳あたりで英語を話せるのは人はとても少ない印象ですね。

性格的な面で中国人労働者の特徴は?

良い面として「稼ぎたい」という意欲が日本人労働者よりも高いと思います。現在、日本で進められている働き方改革のような気運は中国にはありませんから、どんどん残業してどんどん稼ごうというタイプの労働者が多いです。

一方で、「離職率」が高いという面もあります。忙しく働くことができない会社からは、人が離れていってしまうということもよく起こります。また、自分の望む給料がもらえなかったら、すぐに次の職場に移る人が日本よりも多いですね。上の話と関連したもので言うと、給料によって態度ががらりと変わってしまうということもあります。

労働者間でも、誰がどれだけの給料をもらっているかの情報はなぜかすぐに広まるので、例えば「彼が昇給できて、私が昇給できないのはなぜだ?」みたいな申し出もしょっちゅうありますね。(笑)

中国でのビジネスについて

日本品質を中国工場で実現するための工夫は?

進出した当時は、日本人技術者が中国に行って設計から組み立てまで、手取り足取り教えました。我々は物を作るうえで金型の設計、開発とかが大事になってくるので、技術者の育成に力を入れましたね。

中国国内での協力企業の探し方は?

受け身的な方法としては、「営業メール」をもらうパターンですね。日本では中国企業から来る営業メールはスパム扱いになっているところが多いと思いますけど、我々は、そういったメールに対して従業員にコンタクトを取らせます。その後、実際に工場に行ってもらい、作っているもの、工場の様子などを監査させます。監査の結果、良いものが作れそうだと判断した場合には協力工場の候補として考えるようにしています。

自分たちから探しに行く方法としては、中国国内で開かれる「展示会」が主ですね。

Webから探す時は、「地域名」+「加工方法」という形でHPを見ていく感じです。「地域名」を入力しないと、膨大な量の情報が出てきてしまうんです。先ほども言いましたが、中国と言っても広いので、広東省から北京は海外と同じくらいの感覚なんですよね(笑)

中国で工場を作るのは、まだ間に合うか?

間に合うとは思います。ただし「場所」が重要になりますね。と言うのは、場所によって人件費の上がり方が全然違うからです。例えば、我々が進出している場所は広東省の田舎で日系企業はほとんどいません。よって、人件費の上がり方も遅く、上海のような大都市のそれと比較すると全然安いです。

なので、これから中国への進出を考えるなら人件費の上がらなそうな場所に拠点を設けることが重要だと思います。とは言うものの、中国の田舎でも20年ほど前に比べると3倍くらい人件費は上がっていますが、日本に比べると全然安いですよ。我々の場所で月の最低賃金は4万円/月程度ですから。

中国企業のメールのやり取りの特徴は?

中国の場合、全体的にカジュアルな印象を受けますね。

日本企業はきっちり文章を作るイメージですが、中国企業とのやり取りは一文でOKだったり、「!」を入れてたりします。そういう対応をしても失礼には当たらないんですよね。

もう一つの大きな違いは、中国ではメールを使わないことですね。

日本で言うLINEのようなSNSプラットフォームを企業間のやり取りでも使用します。中国ではWechatというSNSで図面を送って、見積もりをもらうのが当たり前になっています。FAXなんかもってのほかですね。(笑)

日本ブランドについて

日本企業のイメージは?

お客様によく言われるのは、品質と納期についてですね。

我々は生産は中国でやっていますが、あくまでも日系企業の品質を教え込まれた工場なので大丈夫だろう、という感覚で見てもらっていますね。要するに、中国の企業に出すより我々に出した方が安全だろうという感覚だと思います。

中国ではいまだに ”Made in Japan” クオリティーは顧客に響くか?

最近あまりないですね。中国の技術は日本が思っている以上に進展していますからね。なので一昔前の様に、日本企業の家電を使っているからすごい、みたいなことは全くありませんね。

結局、スマートフォン市場も日本の製品はありませんし、家電もサムスンやLGの方が売れているんですよね。強いて言えば、自動車はいまだにトヨタを始めとする日本のブランドが好んで使用されているぐらいですかね。

中国のネット事情について

中国のWebサイトを見る時に特に注意してみる内容は?

中国の工場関係のWebサイトが中心になりますけど、一番見るのは製品の形状、工場内部の様子などの視覚的なイメージが主ですね。言葉が分からないこともあるので。

中国で日本企業のWebサイトを見る際に特に注意してみる内容は?

工場関係を見る時は、どんな加工をしているか写真で判断しています。加えて、その会社が得意としている点をアピールする文面があればそこも読むようにしてます。

中国語HPを作るにあたって、Google翻訳でも十分意味は通じるか?

結論から言うと、ネイティブなり流暢な人が翻訳する必要があると思います。

よく中国企業が片言の日本語でHPを作っているのを見かけますよね。あれと同じような感じになってしまうんですよね。加えて、自分が翻訳した文章とGoogle翻訳で訳したものを比較すると、やはり前者の方が正確だと感じるのも理由の一つですね。

中国のネットで日本企業のサイトがヒットしたことはあるか?

あまりないですね。

中国国内で中国語で検索すると日本語サイトはほぼ引っかからないです。たまに引っかかる海外のWebサイトは、台湾や香港のものくらいですね。

これは直接関係ない話なんですが、お客様とか協力企業とかに我々のHP(日本国内にサーバーがある)を見てもらうと、「なんでこんなに動作が遅いの?」と言われるんですよね。おそらく、中国政府がネット検閲に力を入れている影響もあると思います。

中国のネットを使う上で不自由することは?

Googleが使えたり使えなかったりすることですね。

Googleを使っていて検索できる時もあれば、次のページに行こうとすると急に動けなくなってしまうこともあります。加えて、我々のHPに載せているYoutubeの動画なんかは、全く見れなくなっていますね。

コロナウイルスについて

現状コロナウイルスが中国の工場運営に与えている影響は?

工場の運営にあたっては、政府から大きく2回の指示がありましたね。

1回目は、1月31日から出勤して工場を稼働させる予定が、2月3日まで完全休業してください、と言われたものですね。中国では、1月17日から旧正月(春節)が始まって、それと同時にコロナウイルスが拡大していった影響ですね。

2回目は、先ほどの2月3日から一週間の休業延長命令でしたね。また、一週間後の2月10日から全ての工場が稼働できるわけではなく、中国政府の監査をパスした工場から順に稼働許可が下りるシステムです。監査は主に、工場労働者の体温管理、アルコール消毒の管理度合いなどがチェックされました。我々の工場はOKがもらえて2月10日から工場が稼働しています。

政府の監査に通過する企業の割合は?

実を言うと、我々の工場は運が良かっただけで、まだ工場の運営許可出ていない会社は山ほどあるんですよね。

許可が下りていない割合は地域ごとによって違いますね。それは、大手から順に稼働許可が下りるようになっているからです。我々の工場は田舎町で他の工場が少ないからすんなりOKが出ましたが、例えば、大手企業が集まった深圳などは、中小企業の多くがいまだに稼働許可が下りていないと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

  • 「中国の人件費は、20程前に比べると約3倍に上昇したが日本に比べるとまだまだ安い。
  • 「中国に工場を作るのは、間に合うが人件費が上がらない場所を選ぶことが重要。
  • Made in Japan が顧客に響くことは、ほとんどない。
  • 「コロナウイルスの影響で、政府からの監査が入り多くの中小企業が稼働休止中。

のようになります。個人的には、日本ブランドが響かなくなっていたり、SNSで企業間のやり取りが行われていたり、中国の技術の発展を感じるインタビューになりました。今回の内容が中国への事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

次回は、日本の切削部品受託加工技術でフランス進出を果たしたあの方のインタビューをお届けする予定です!

2020年の製造業「カンボジア」

テクノポートの稲垣です。前回の記事では東南アジア最後のフロンティアとして日本企業の注目を集める「ミャンマーの製造業」について紹介しました。今回はそのミャンマーと同じく縫製業が盛んで、2020年のGDP成長率がASEAN最上位と予想されるカンボジアの製造業ついて紹介します。

カンボジアの製造業の最大の特徴は何といっても縫製業(繊維・衣類・履物)です。調査によると製造業のGDP全体の60%以上を縫製業が占めています。今回はカンボジアの製造業を、実際に同国に事業展開を果たした日本企業の紹介を交えて、日本企業の視点から調査しました。

カンボジアの概要

  • 正式名称:カンボジア王国(Kingdom of Cambodia)
  • 首都:プノンペン(Phnom Penh)
  • 首相:フン・セン(1998年11月から)
  • 通貨:リエル(Riel)(1リエル=0.027円 ※2020年2月20日時点)
  • 人口:約1630万人
  • 面積:18万km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:クメール語(カンボジア語)
  • 宗教:仏教(96.4%)イスラム教(2.1%)キリスト教(1.3%)その他(0.3%)
  • 平均寿命:男 62.4歳、女 67.5歳(日本:男 81.2歳、女 87.3歳)

カンボジア経済の特徴

強み

  1. 縫製業:製造業全体の約60%を占める
  2. 炭化水素鉱床:カンボジア領海内に石油・天然ガスを所有(現在調査段階)
  3. 観光業:GDPの約16%を占め、年成長率7%で増加傾向
  4. 若年層人口:国民の50%以上が22歳以下

弱み

  1. インフラ整備不足:電気設備、交通ネットワーク基盤の未整備
  2. 熟練技術者不足:職業訓練不足、高い給与を求める転職などが原因
  3. 貧困:都市部と農村部での格差拡大、人口の35%は1日1ドル以下での生活

カンボジアの産業構造

カンボジアの産業構造を調査します。下の図は2017年のカンボジアのGDPにおけるサービス業(政府の活動、通信、輸送、財政、民間サービス業)、工業(鉱業、製造業、エネルギー産業、建設業)、農業(農業、 漁業、林業)における各部門の割合をしめしたグラフです。


データ引用元:Cambodia GDP – composition by sector | index mundi

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 産業(鉱業、製造業、エネルギー産業、建築業)の割合は32.8%で近年増加傾向
  • 農業の割合が25.3%でASEANの中ではミャンマーに次いで大きい

▶現状

  • 1998年から2018年までGDPの年成長率約8%の増加を続け、急速に成長している
  • 主要産業として、縫製、軽工業、食料加工、不動産建設、観光業が成長を支えており、産業の多様化が課題

▶今後

  • 2020年現在、低所得国に分類されているが政府は2030年までに中所得国、2050年までに高所得国を目指している
  • インフラ不足や貧困問題による競争力不足に対処するために、IT産業に投資をシフトする見通し

カンボジア製造業全体

次に、カンボジアの製造業全体についてです。下の図は2018年のカンボジアの輸出品目の付加価値額を示したグラフです。


出典:IS CAMBODIA POISED TO BECOME A MAJOR MANUFACTURING HUB? | intouch

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

▶現状

  • 2018年のカンボジアの労働人口割合は84.3%でASEAN諸国で最も高く、製造業従事者の割合は20%(サービス関連業48.2%、農業54.9%)
  • 製造業におけるテクノロジー導入が遅れており、生産効率の低さが原因で世界的な競争力は低い

▶今後

  • アジア開発銀行によると、縫製業の規模は緩やかに縮小し、新興産業として電子部品、自動車部品、自転車、精米、ゴムなどの規模が増加する見通し
  • カンボジア政府は税制優遇など、外資系の投資を積極的に受け入れており縫製業工場のほとんどは外資系企業(台湾28%、中国本土19%、香港17%、韓国13%)

日本企業の進出状況

ここからは、日本企業の視点からカンボジア製造業市場を調査結果です。下の図は1992年から2028年までのカンボジア日本人商工会登録企業数の遷移を示したグラフです。カンボジア日本人商工会(JBAC)とは、日本とカンボジア両国の商工業および経済全般の発展に寄与することで社会貢献を果たすことを目的に設立された組織です。


出典:カンボジア日本人商工会議所2018

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 2018年の会員数は過去最多の261社, 3団体で発足当初の10社から20倍以上に成長
  • 製造業部会の会員数は64社・団体でJBACの7つの業種別部会(製造業、建築不動産、貿易、運輸、金融保険、商業、サービス)の中で最多

▶現状

  • カンボジア商工業会議所に登録されている日系企業の数も2010年から5年余りの間に10倍以上に増加
  • JETROの調査によると、カンボジアに興味を示す日本企業のパターンは2つあり、1つは新規市場開拓や生産拠点としての検討、2つ目は既にタイ、ベトナム、ミャンマーなどに進出済み企業の2次投資

▶今後

  • カンボジア政府は2025年までの産業開発政策で高度な産業を誘致し、産業構造の転換を図っている
  • 近年は労働賃金の上昇により採算が合わなくなり、同国から撤退する企業も目立つ(2017年時点で20社)

カンボジアに進出した日本企業

次に、実際にカンボジアに進出した日本企業を3社紹介します。

マサカツ鋼材

▶基本情報

  • 本社:大阪府枚方市
  • 従業員数:50名
  • 事業内容:鋼材販売、鋼材加工

▶概要

カンボジアの首都プノンペンにて2017年6月からカンボジア向上を本格稼働。すでにベトナムで実績を上げている鋼材加工をカンボジアでも開始。日本の高い加工技術によって付加価値を高め、競争力を上げるという日本企業の強みを活かした方法で事業を展開。材料の仕入れから製品までの仕事をすべて受けることで競合他社との差別化を実現。

株式会社 スワニー

▶基本情報

  • 本社:香川県東かがわ市
  • 従業員数:104名
  • 事業内容:手袋・鞄の製造販売

▶概要

2012年にカンボジアの経済特区にてカジュアル手袋を生産する新工場を建設。進出の主な理由に、カンボジアは縫製業が盛んであるため、安価な労働力の確保が容易であることを挙げている。加えて近年、中国国内の人件費の高騰が進み人材確保が厳しくなってきたため分散生産を可能にするという狙いもある。

日光金属株式会社

▶基本情報

  • 本社:栃木県矢板市
  • 従業員数:110名
  • 事業内容:自動車用耐熱・耐摩耗鋳造部品製造

▶概要

2013年5月に同社初の海外生産拠点としてカンボジアの首都プノンペンに工場を設立。主な目的は自動車メーカーの海外生産拡大への対応。カンボジアに進出を決めた理由は人件費の安さ首都の発展度合い、まじめで親日的なカンボジア国民の国民性などを挙げている。また、工業団地内は日系企業が多く情報交換ができる過ごしやすい環境が整備されていることなども理由の一つ。

まとめ

今回はカンボジアの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。個人的な見解としては、カンボジアでは縫製業をはじめとする労働集約型産業に頼っており、テクノロジーの導入による生産効率の向上には時間がかかると思われます。加えて、熟練技術者の不足が製造業の成長を鈍化させている原因の一つとして考えられます。

日本企業の視点から考えると、近年カンボジアの労働賃金水準は増加傾向にあり、労働賃金のみ削減を目的としたカンボジア進出は以前ほど魅力的ではなくなってきています。しかし、今回紹介した3社の様に明確な戦略と自社独自の強みを持った企業にとっては魅力的な市場であることに変わりわないと言えます。今回の内容がカンボジア進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「ミャンマー」

テクノポートの稲垣です。前回の記事では世界の貿易拠点として近年注目を集める「タイの製造業」について紹介しました。今回はそのタイに隣接し親日国としても知られるミャンマーの製造業ついて紹介します。

ミャンマーの製造業の最大の特徴は、他のASEAN諸国とは異なり、GDPにおける製造業の割合は増加しており、政府もその流れを後押ししていることです。今回はミャンマーの製造業を、実際に同国に事業展開を果たした日本企業の紹介を交えて、日本企業の視点から調査しました。

ミャンマーの概要

  • 正式名称:ミャンマー連邦共和国(Republic of the Union of Myanmar)
  • 首都:ネーピードー(Nay Pyi Taw)
  • 大統領:ウィン・ミン(2018年3月から)
  • 通貨:チャット(Kyat)(1チャット=0.076円 ※2020年2月12日時点)
  • 人口:約5283万人
  • 面積:67万8500km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:ミャンマー(ビルマ)語
  • 宗教:仏教(85%)キリスト教(4.9%)イスラム教(4%)その他(6.1%)
  • 平均寿命:男 66.6歳、女 69.6歳(日本:男 81.2歳、女 87.3歳)

ミャンマー経済の特徴

強み

  1. 豊富な原材料:鉱物(翡翠、銅、金)、天然ガス、石油
  2. 立地:中国、インド、タイなどの急成長国に近い
  3. 若年人口:国民の27%が14歳以下
  4. 産業ポテンシャル:観光産業と農業の成長可能性

弱み

  1. 宗教問題:多数を占める仏教徒による少数派イスラム教徒の迫害
  2. インフラ整備不足:電気、衛生環境、教育格差など
  3. 自然災害:自然災害が発生する確率が高い(地震、サイクロン、洪水など)

ミャンマーの産業構造

ミャンマーの産業構造を調査します。下の図は2017年から2018年までのミャンマーへのFDI(直接対外投資)における各部門の割合をしめしたグラフです。


出典:Myanmar – What to Watch 2019 | AEC

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • FDIの製造業の占める割合は31%で最も高くミャンマーの経済の主要産業と言える
  • FDIのサービス関連業への割合は低く農業と共に縮小傾向

▶現状

  • 製造業への投資が最も多く、製造業はミャンマー経済をけん引する期待が高い
  • 中国はミャンマー経済に最も多く投資しており、アメリカや日本はミャンマー経済の将来性に期待し投資を増加させている

▶今後

  • 「衣料品産業」と「食品加工産業」が好調で、投資の増加と共に生産を拡大する見通し
  • ミャンマーの「豊富な農産物資源」を効率よく活かすためにテクノロジーの導入が急務の課題となっている

ミャンマー製造業全体

次に、ミャンマーの製造業全体を調査します。下の図は2015年のタイの製造業のGDPにおける各部門の割合を示したグラフです。


出典:Manufacturing Guide 2019 | EUROCHAM MYANMAR

グラフから以下のことが分かります。

  • 産業(製造業含む)のみのGDPは統計開始の2013年から2018年にかけて1.58倍に増加
  • 2017年から2018年において産業(製造業含む)はGDP全体の31.6%を占める(サービス関連業42.2%、農業26.2%)
  • 他のASEAN諸国のGDPにおける製造業の割合は減少する中、ミャンマーではGDPにおける製造業の割合がほぼ一定のまま遷移している

▶現状

  • 「食品加工産業」と「衣料品」の対外需要に支えられ、製造業は2017年から2018年にかけて11%成長
  • 「安価な労働力」と「戦略的な立地」がミャンマー製造業を支えていると言える

▶今後

  • ミャンマー政府はGDPにおける製造業の割合を2013年から2014年の33%から、2030年から2031年にかけて37%に増加させる予定
  • 短期的に重点を置く3つの産業として、1. 労働集約型産業(例:機業、衣料品産業)、2. 一次産品(例:食料品)、3. 従来の製造業(例:繊維産業、縫製業、エレクトロニクス産業)を挙げている
  • 中長期的に重点を置く3つの産業として、1. 自動車部品組み立て産業、2. 先進技術産業(例:先進技術を応用した化学産業)、3. インフラ整備事業(例:道路建設産業)

日本企業の進出状況

ここでは、日本企業の視点からミャンマー製造業市場を調査結果です。下の図は2008年から2020年1月までのミャンマー日本商工業会議所登録企業数の遷移を示したグラフです。ミャンマー日本商工業会議所とは、日本とミャンマー間での商工業及び経済全般の促進及び関係強化を目的に設立された組織です。


データ引用元:ミャンマー日本商工業会議所

グラフから以下の特徴が挙げられます。

  • 2012年から急激に増加し、2020年1月末までで2008年の5倍以上の会員数
  • 工業部会(製造業関連)の会員数は2020年1月までで93社で全体の22.5%を占める

▶現状

  • ミャンマー日本商工会議所によると2019年9月時点で会議所の会員数は401社(うち製造業関連は89社)
  • 2017年時点でミャンマーに進出している日本企業数は438社で第21位

▶今後

  • 自動車部品の手作業を必要とする組み立て作業をミャンマーで行う企業が増加する見込み
  • 縫製業などの労働集約型の産業がミャンマーで工場を建設し生産を行うケースが増加する見通し

ミャンマーに進出した日本企業

次に、実際にミャンマーに進出した日本企業を3社紹介します。

株式会社トーノ精密

▶基本情報

  • 本社:岩手県遠野市
  • 従業員数:68名
  • 事業内容:プラスチック製品、MIM製品、TRI製品

▶概要

2019年12月ミャンマー最大都市のヤンゴン近郊のティラワ経済特区に工場を竣工。樹脂成型部品メーカーとしては初めてティラワに生産拠点を構え、海外調達に頼らざるを得なかった現地日系企業をターゲットとして、ティラワ工業団地内の日系企業向けに部品を供給している。

旭日電気工業

▶基本情報

  • 本社:東京都世田谷区
  • 従業員数:205人
  • 事業内容:電気工事、電気通信工事

▶概要

2019年9月ミャンマー最大都市ヤンゴンに支店を開設し、不動産賃貸業を開始。旭日電気工業は経済成長が進むミャンマーへの進出を考え、2017年から駐在員を派遣し調査を行ってきた。短期的には同国の日本人駐在員に対する賃貸を主事業とし、中長期的には内装や設備工事などの事業を開始する予定。

不二熱学工業株式会社

▶基本情報

  • 本社:大阪府中央区南船場
  • 従業員数:236人
  • 事業内容:空調・給排水衛生・低温設備などの設計・保守管理

▶概要

2013年身近な東南アジア諸国の中でも親日的なミャンマーに進出。同国において日系企業を対象に、空調、衛生、冷凍冷蔵や関連付帯業務などに係る技術を提供。また現地の企業に対し、技術を提供し環境保全に貢献。事業展開以外にも社会貢献の一環として、2014年アジアカップに参加するミャンマー女子サッカーチームに寄付。

まとめ

今回はミャンマー製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。個人的な見解としては、ミャンマーの製造業は現在成長の過程にあり、今後は他のASEAN諸国と同様にハイテク産業への転換が進んでいくと思います。同時に農業や縫製業などの労働集約型の産業もGDPの大きな割合を占めていることもミャンマー経済の大きな特徴の一つと言えます。

また、ミャンマーに進出を考える日本企業の数は増加しており、今回紹介した3社の様に高い技術力と現地日本企業のネットワークを利用すれば進出のチャンスはあると言えます。

今回の内容がミャンマーに進出に関心のある方の参考になれば幸いです。次回はASEAN製造業シリーズ第6回目としてカンボジアの製造業について紹介する予定です。

2020年の製造業「ミャンマー」

テクノポートの稲垣です。前回の記事では世界の貿易拠点として近年注目を集める「タイの製造業」について紹介しました。今回はそのタイに隣接し親日国としても知られるミャンマーの製造業ついて紹介します。

ミャンマーの製造業の最大の特徴は、他のASEAN諸国とは異なり、GDPにおける製造業の割合は増加しており、政府もその流れを後押ししていることです。今回はミャンマーの製造業を、実際に同国に事業展開を果たした日本企業の紹介を交えて、日本企業の視点から調査しました。

ミャンマーの概要

  • 正式名称:ミャンマー連邦共和国(Republic of the Union of Myanmar)
  • 首都:ネーピードー(Nay Pyi Taw)
  • 大統領:ウィン・ミン(2018年3月から)
  • 通貨:チャット(Kyat)(1チャット=0.076円 ※2020年2月12日時点)
  • 人口:約5283万人
  • 面積:67万8500km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:ミャンマー(ビルマ)語
  • 宗教:仏教(85%)キリスト教(4.9%)イスラム教(4%)その他(6.1%)
  • 平均寿命:男 66.6歳、女 69.6歳(日本:男 81.2歳、女 87.3歳)

ミャンマー経済の特徴

強み

  1. 豊富な原材料:鉱物(翡翠、銅、金)、天然ガス、石油
  2. 立地:中国、インド、タイなどの急成長国に近い
  3. 若年人口:国民の27%が14歳以下
  4. 産業ポテンシャル:観光産業と農業の成長可能性

弱み

  1. 宗教問題:多数を占める仏教徒による少数派イスラム教徒の迫害
  2. インフラ整備不足:電気、衛生環境、教育格差など
  3. 自然災害:自然災害が発生する確率が高い(地震、サイクロン、洪水など)

ミャンマーの産業構造

ミャンマーの産業構造を調査します。下の図は2017年から2018年までのミャンマーへのFDI(直接対外投資)における各部門の割合をしめしたグラフです。


出典:Myanmar – What to Watch 2019 | AEC

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • FDIの製造業の占める割合は31%で最も高くミャンマーの経済の主要産業と言える
  • FDIのサービス関連業への割合は低く農業と共に縮小傾向

▶現状

  • 製造業への投資が最も多く、製造業はミャンマー経済をけん引する期待が高い
  • 中国はミャンマー経済に最も多く投資しており、アメリカや日本はミャンマー経済の将来性に期待し投資を増加させている

▶今後

  • 「衣料品産業」と「食品加工産業」が好調で、投資の増加と共に生産を拡大する見通し
  • ミャンマーの「豊富な農産物資源」を効率よく活かすためにテクノロジーの導入が急務の課題となっている

ミャンマー製造業全体

次に、ミャンマーの製造業全体を調査します。下の図は2015年のタイの製造業のGDPにおける各部門の割合を示したグラフです。


出典:Manufacturing Guide 2019 | EUROCHAM MYANMAR

グラフから以下のことが分かります。

  • 産業(製造業含む)のみのGDPは統計開始の2013年から2018年にかけて1.58倍に増加
  • 2017年から2018年において産業(製造業含む)はGDP全体の31.6%を占める(サービス関連業42.2%、農業26.2%)
  • 他のASEAN諸国のGDPにおける製造業の割合は減少する中、ミャンマーではGDPにおける製造業の割合がほぼ一定のまま遷移している

▶現状

  • 「食品加工産業」と「衣料品」の対外需要に支えられ、製造業は2017年から2018年にかけて11%成長
  • 「安価な労働力」と「戦略的な立地」がミャンマー製造業を支えていると言える

▶今後

  • ミャンマー政府はGDPにおける製造業の割合を2013年から2014年の33%から、2030年から2031年にかけて37%に増加させる予定
  • 短期的に重点を置く3つの産業として、1. 労働集約型産業(例:機業、衣料品産業)、2. 一次産品(例:食料品)、3. 従来の製造業(例:繊維産業、縫製業、エレクトロニクス産業)を挙げている
  • 中長期的に重点を置く3つの産業として、1. 自動車部品組み立て産業、2. 先進技術産業(例:先進技術を応用した化学産業)、3. インフラ整備事業(例:道路建設産業)

日本企業の進出状況

ここでは、日本企業の視点からミャンマー製造業市場を調査結果です。下の図は2008年から2020年1月までのミャンマー日本商工業会議所登録企業数の遷移を示したグラフです。ミャンマー日本商工業会議所とは、日本とミャンマー間での商工業及び経済全般の促進及び関係強化を目的に設立された組織です。


データ引用元:ミャンマー日本商工業会議所

グラフから以下の特徴が挙げられます。

  • 2012年から急激に増加し、2020年1月末までで2008年の5倍以上の会員数
  • 工業部会(製造業関連)の会員数は2020年1月までで93社で全体の22.5%を占める

▶現状

  • ミャンマー日本商工会議所によると2019年9月時点で会議所の会員数は401社(うち製造業関連は89社)
  • 2017年時点でミャンマーに進出している日本企業数は438社で第21位

▶今後

  • 自動車部品の手作業を必要とする組み立て作業をミャンマーで行う企業が増加する見込み
  • 縫製業などの労働集約型の産業がミャンマーで工場を建設し生産を行うケースが増加する見通し

ミャンマーに進出した日本企業

次に、実際にミャンマーに進出した日本企業を3社紹介します。

株式会社トーノ精密

▶基本情報

  • 本社:岩手県遠野市
  • 従業員数:68名
  • 事業内容:プラスチック製品、MIM製品、TRI製品

▶概要

2019年12月ミャンマー最大都市のヤンゴン近郊のティラワ経済特区に工場を竣工。樹脂成型部品メーカーとしては初めてティラワに生産拠点を構え、海外調達に頼らざるを得なかった現地日系企業をターゲットとして、ティラワ工業団地内の日系企業向けに部品を供給している。

旭日電気工業

▶基本情報

  • 本社:東京都世田谷区
  • 従業員数:205人
  • 事業内容:電気工事、電気通信工事

▶概要

2019年9月ミャンマー最大都市ヤンゴンに支店を開設し、不動産賃貸業を開始。旭日電気工業は経済成長が進むミャンマーへの進出を考え、2017年から駐在員を派遣し調査を行ってきた。短期的には同国の日本人駐在員に対する賃貸を主事業とし、中長期的には内装や設備工事などの事業を開始する予定。

不二熱学工業株式会社

▶基本情報

  • 本社:大阪府中央区南船場
  • 従業員数:236人
  • 事業内容:空調・給排水衛生・低温設備などの設計・保守管理

▶概要

2013年身近な東南アジア諸国の中でも親日的なミャンマーに進出。同国において日系企業を対象に、空調、衛生、冷凍冷蔵や関連付帯業務などに係る技術を提供。また現地の企業に対し、技術を提供し環境保全に貢献。事業展開以外にも社会貢献の一環として、2014年アジアカップに参加するミャンマー女子サッカーチームに寄付。

まとめ

今回はミャンマー製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。個人的な見解としては、ミャンマーの製造業は現在成長の過程にあり、今後は他のASEAN諸国と同様にハイテク産業への転換が進んでいくと思います。同時に農業や縫製業などの労働集約型の産業もGDPの大きな割合を占めていることもミャンマー経済の大きな特徴の一つと言えます。

また、ミャンマーに進出を考える日本企業の数は増加しており、今回紹介した3社の様に高い技術力と現地日本企業のネットワークを利用すれば進出のチャンスはあると言えます。

今回の内容がミャンマーに進出に関心のある方の参考になれば幸いです。次回はASEAN製造業シリーズ第6回目としてカンボジアの製造業について紹介する予定です。

2020年の製造業「タイ」

テクノポートの稲垣です。前回の記事ではASEANのハイテク産業の拠点である「マレーシアの製造業」について紹介しました。今回はASEAN諸国の中でもマレーシアに次ぐGDP増加率(4.1%)で成長するタイの製造業について紹介します。(出典:ASEAN Key Figures 2019

タイの製造業はシンガポールやマレーシアとは異なり、組み立て・製造業務が中心で、近年は研究・技術開発を推進する風潮があります。今回はタイの製造業の主要産業である自動車産業エレクトロニクス産業バイオプラスチック産業の現状と今後について掘り下げていきます。

基本情報

タイの概要

  • 正式名称:タイ王国(KIngdom of Thailand)
  • 首都:バンコク(Bangkok)
  • 首相:プラユット・ジャンオーチャー(2014年8月から)
  • 通貨:バーツ(1バーツ=3.50円 ※2020年2月3日時点)
  • 人口:約6828万人
  • 面積:51万km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:タイ語
  • 宗教:仏教(95%)イスラム教(3.8%)キリスト教(0.5%)ヒンドゥー教(0.1%)その他(0.6%)
  • 平均寿命:男 71.7歳、女 78.3歳

タイ経済の特徴

強み

  1. 地域経済の拠点:東南アジアをはじめ、グローバルな貿易な拠点としての地位
  2. 輸出産業:好調な貿易関連業と豊富な外貨準備高(直ちに利用可能な対外資産のこと)
  3. 豊富な原材料:天然ゴム、米、サトウキビをはじめとする豊富な原材料

弱み

  1. インフラ整備不足:都市部は開発が進んでいるが、農村部ではインフラ整備が進んでいない
  2. 政治的不安定性:低所得者層の支持の支持を集める親軍派と、中間層・上位層支持を集める反軍派の対立による政治的混乱

タイのGDPの変化

タイの製造業の変化をGDPのデータを用いて調査します。GDPとは国内総生産(Gross Domestic Production)の略で一定期間に国内で生み出された付加価値の総額を指します。

まず、タイ全体のGDPの変化を確認します。下の図は1960年から2018年までのタイのGDPと年成長率を示したグラフになります。


データ引用元:GDP growth (annual %) – Thailand | Data – World Bank Data

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 1998年以降GDPは右肩上がりに増加を続ける
  • GDPの年成長率は1997年~1998年でマイナスに落ちこむが、その後は回復しプラスを維持している
  • GDPの年成長率は、ここ4年では2.5%~5%の範囲で安定している

タイのGDPの現状

  • タイのGDPは世界26位(対象国196カ国)
  • タイ国民一人当たりのGDPは世界84位(対象国196カ国)
  • タイは東南アジアでインドネシアに次ぐ2番目の経済大国

タイのGDPの今後

  • 2019年~2020年のGDPの年成長率は2.8%という予想
  • 米中の貿易摩擦により輸出をはじめとする対外部門に悪影響が生じる可能性が高い
  • 民間消費の増加と公共インフラ整備の実施が2020年のタイ経済に好影響を与える予想

タイの産業構造

次に、タイの産業構造を調査します。下の図は2011年から2017年までのタイの総GDPにおける各部門(上からサービスサービス業、製造業、農業)の割合をしめしたグラフです。


出典:International Monetary Fund

グラフからタイの産業構造について次のような特徴が挙げられます。

  • 製造業と農業の割合が減少傾向で、それぞれ2011年から2017年にかけて3%ほど減少
  • サービス業は統計開始の2011年から上昇傾向で、2011年から2017年にかけて5%ほど増加

タイの産業構造の現状

  • 2016年にタイ政府はタイランド4.0(Thailand 4.0)政策を宣言し、ハイテク産業やサービスに投資を集中させる意向
  • 製造業と(サービス業の中でも)観光業がタイのGDPの増加に大きく貢献している
  • 観光業はタイのGDPの約10%を占め、観光業による収益はタイの輸出利益総額の50%とほぼ等しい計算

タイの産業構造の今後

  • 国の公式計画(2017年~2036年)によると、タイ政府はビジネス環境を改善し、鉄道、空港、道路、インフラ整備を通して長期的な経済の繁栄を目標にしている
  • タイの主要産業であった食品・飲料の生産は減少し、代わりに製造業の拠点として外貨を稼ぐ方針

タイの製造業

タイの製造業全体

ここでは、タイの製造業全体における変化をデータを通して調査します。下の図は2015年のタイの製造業のGDPにおける各部門の割合を示したグラフです。


出典:HONG KONG MEANS BUSINESS

グラフから以下のことが分かります。

  • GDPを占める割合が多い順に、 食品・飲料産業(23%)エレクトロニクス産業(13%)化学産業(9%)自動車産業(7%)ゴム・プラスティック産業(7%)加工・機械設備産業(6%)石油関連産業(6%)繊維・衣服産業(5%)家具産業(5%)その他(19%)

続いて、下の図は2018年のタイの輸出上位10品目を整理した表です。


出典:THAILAND INVESTMENT REVIEW Vol. 29 | No.2 | February 2019

表から以下のことが分かります。

  • 車部品関係の輸出が最も多く、成長率も最大
  • 輸出品目に大きな偏りがなく、多様な分野に渡って輸出が活発

タイの製造業全体の現状

  • 東南アジアの自動車組み立て拠点の中心的存在
  • 鉄鋼業の生産も盛ん(タングステンの生産量世界2位、錫(すず)の生産量世界3位)
  • 世界2番目のコンピューターパーツの輸出額

タイの製造業の今後

  • 専門家の予想によると製造業全体の出荷額は2.0%増加する見通し(2021年は3.4%の増加予想)
  • タイランド4.0(Thailand 4.0)計画をはじめとするハイテク産業、製造業の自動化に向かう動きが活発

自動車産業

タイの主要産業の一つである自動車産業の現状と今後をデータを用いて掘り下げていきます。下の図は2009年から2016年におけるタイの自動車生産台数の遷移を示したグラフです。


出典:THAILAND’S AUTOMOTIVE INDUSTRY THE NEXT-GENERATION | Thailand Board of Investment

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 2009年から2016年にかけて年平均9.93%成長率で増加
  • 2012年、2013年が製造のピークで近年は緩やかに回復傾向

次に下の図は2009年から2016年におけるタイの自動車生産台数と付加価値額の推移を示したグラフです。


出典:THAILAND’S AUTOMOTIVE INDUSTRY THE NEXT-GENERATION | Thailand Board of Investment

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 2016年の自動車生産台数の57%は1トントラックが占める
  • タイの自動車輸出台数は2009年から2016年にかけ2.2倍に成長
  • タイの自動車輸出でもたらされる付加価値の総額は2009年から2016年にかけ2.5倍に成長

自動車産業の現状

  • タイの自動車関連産業は東南アジアで最大、世界第12位の規模(2017年)
  • タイで製造される自動車のほとんどは外国企業、特に日本、アメリカ、中国の多種多様なブランドが混在

自動車産業の今後

  • 自動車の生産台数は2019年で2~4%減少し、2020年から2022年にかけて同じようなペースで減少する見通し
  • 自動車関連の輸出は2019年で5~7%減少するが、2020年から2022年にかけて国内の需要と新型モデルの発売に後押しされ回復する見通し
  • 電気自動車の生産台数は2018年(9000台)と比較し、2028年では45倍、2036年には133倍になる予想

エレクトロニクス産業

以前に紹介したシンガポール、マレーシア同様にタイにおいてもエレクトロニクス産業は盛んです。それでは、タイのエレクトロニクス産業の特徴を調べていきましょう。下の図は1989年から2015年にかけてのタイのエレクトロニクス産業関連製品の輸入額と輸出額の遷移を示したグラフです。(縦軸はUS$ billion)


出典:Electrical and electronics manufacturing in Thailand | International Labour Organization

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 輸入額は1989年から2015年にかけて約12倍に増加し、年平均27.5億US$のペースで増加傾向
  • 輸出額は1989年から2015年にかけて約17倍に増加し、年平均31.2億US$のペースで増加傾向

続いて下の図は2013年から2016年にかけてタイのHDDディスクドライバーの輸出量の変化を示したグラフです。


出典:THAILAND’S SMART ELECTRONICS | Thailand Board of Investment

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 2013年から2016年にかけて2.17倍に増加(年平均31.5%の成長率で増加)
  • 付加価値に換算すると2013年から2016年にかけて2.27倍に増加

エレクトロニクス産業の現状

  • 近隣諸国(マレーシア、シンガポール、ベトナムなど)が価格競争に参入し、熟練した技術を持つ労働力の不足、労働環境の悪化、労働者の発言力の低下が問題になっている
  • タイのエレクトロニクス産業の中心は組立てと製造業務で、付加価値の高い分野は少ない

エレクトロニクス産業の今後

  • エレクトロニクス産業が生み出す利益は2020年から2024年にかけて年平均成長率2.7%の割合で増加する見通し
  • 国内のエレクトロニクス産業市場は2018年に減少したが、2019年から2020年にかけてタイ経済の回復と同時に緩やかに増加する見通し

バイオプラスチック産業

最後に近年タイで急速な成長を遂げているバイオプラスチック産業について調査していきます。バイオプラスチックとは原料として植物などの再生可能な有機資源を使用することにより、枯渇が危惧され地球温暖化の一因ともされている石油にできるだけ頼らずに持続的に作ることができることから近年注目されている新しいプラスチック素材です。(出典:日本バイオプラスチック協会)下の図は2016年から2019年にかけてのタイにおけるバイオプラスチックレジンの生産量を示したグラフです。


出典:BIOPLASTICS | Thailand Board of Investment

グラフと参考資料より以下のようなことが挙げられます。

  • 輸出量は2016年から2019年にかけて107倍に増加
  • タイのバイオプラスチックレジンの輸出量は2007年には圏外だったが、2019年に世界第3位まで急成長

バイオプラスチック産業の現状

  • タイ政府はバイオプラスチックの研究開発を行うタイ国内と外国企業に対し支援を行い、生産を強化している
  • タイはバイオ関連産業に必要な原材料が豊富なうえ、製品を輸出するための地理的な優位性がある

バイオプラスチック産業の今後

  • タイ政府はバイオプラスチックを使用した梱包を推進するため、2019年から2021年にかけ免税政策を実施
  • タイのプラスチック廃棄管理規定のロードマップ(2018年から2030年)によると2020年までに再利用不可能またはポリスチレンを使用したプラスチックは梱包としての使用が禁止される見通し

まとめ

今回はタイの製造業の現状と今後について主要産業を中心に紹介しました。タイの製造業は他のASEAN諸国と同じようにGDPにおける製造業の割合は減少しているもののハイテク化、自動化の動きが盛んであることが分かります。

また多様な輸出品目をバランスよく有しているため、タイの製造業は今後も世界の貿易拠点の中心的な存在として活躍することが予想できます。今回の内容がタイの進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「マレーシア」

テクノポートの稲垣です。前回の記事ではASEAN地域の中でいち早く先進国の仲間入りを果たした「シンガポールの製造業」について紹介しました。今回はそのシンガポールとほぼ同じGDPの成長率(2000年から2018年)で急速に発展を遂げているマレーシアの製造業について紹介します。(出典:ASEAN Key FIgures 2019

マレーシアのGDPの37.5%は製造業関連で、製造業は主要産業として経済成長に大きな役割を果たしています。今回はマレーシアの製造業の主要産業であるエレクトロニクス産業石油化学産業家具産業について掘り下げていきます。

基本情報

マレーシアの概要

  • 正式名称:マレーシア
  • 首都:クアラルンプール(Kuala Lumpur)
  • 首相:マハティール・ビン・モハマッド(2018年5月から)
  • 通貨:リンギット(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)
  • 人口:約3200万人
  • 面積:33万km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:マレー語、中国語、タミル語、英語
  • 公式宗教:イスラム教(61%)仏教(20%)キリスト教(9%)ヒンドゥー教(6.0%)儒教・道教(1.0%)
  • 平均寿命:男 72.7歳、女 77.6歳

マレーシアのGDPの変化

基本的な情報としてマレーシア経済をGDPの変化を通して調査します。GDPとは国内総生産(Gross Domestic Production)の略で一定期間に国内で生み出された付加価値の総額を指します。

まず、マレーシア全体のGDPの変化を確認します。下の図は2010年から2017年までのマレーシアの総GDPとGDPの年平均率を示したグラフになります。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)

データ引用元:eDataBank – Department of Statistics Malaysia Official Portal

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 基準年の2010年から一貫して増加傾向が続く
  • 成長率は4%から10%の辺りを上下している

マレーシアのGDPの現状

  • 2018年のGDPは世界37位(196カ国中)を記録
  • 2018年の一人当たりのGDPは66位(196カ国中)を記録

マレーシアのGDPの今後

  • 経済の専門家によると、2020年のマレーシアの経済成長は4.3%になる見通し
  • 2020年の経済成長は停滞する見通し(米中貿易摩擦が対外部門に影響)
  • 民間消費は輸出部門の衰弱によって減速する見通し

マレーシアの産業構造

次に、マレーシアの産業構造を調査します。下の図は2018年のマレーシアの総GDPにおける各部門(上からサービス関連産業、製造業、建設産業、鉱業・採石業、農業)の割合をしめした円グラフです。

出典:Malaysia Economic Performance Second Quarter 2018

グラフからマレーシアの産業構造について次のような特徴が挙げられます。

  • 製造業はGDPの23.6%を占め、4.9%の増加率を記録
  • サービス関連業がGDPの55.3%を占め、マレーシアの主要産業と言える
  • 鉱業・採石業と農業はGDPの10%以下で減少傾向

マレーシアの産業構造の現状

  • 消費者の高所得化により卸売業・小売業部門の成長が進んでいる
  • サービス関連業のビジネスサービスは専門サービスによって大きく成長している
  • 製造業は電気機器・光学製品部門に支えられ緩やかに成長している

マレーシアの産業構造の今後

  • 2020年には5466の開発プロジェクトが企画されており、5億6000万リンギット(約150億円)がマレーシアの経済成長と長期的な発展のために投資される予定
  • 今後10年間において、政府は新しい経済領域を開拓し高給な職を創出するとともにマレーシア経済を加速させる予定

マレーシアの製造業

マレーシアの製造業全体

ここでは、マレーシアの製造業全体における変化をデータを通して調査します。下の図は2010年から2017年までのマレーシア製造業のGDPとGDPの年成長率を示したグラフです。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)


データ引用元:eDataBank – Department of Statistics Malaysia Official Portal

グラフから読み取れることとして以下のようなことが挙げられます。

  • 製造業のGDPは基準年の2010年から一貫して増加傾向が続く
  • 成長率は年によって約4%から11%の間で大きく変動

次に、下に示す図は2010年から2017年までにおけるマレーシアの総GDPにおける製造業の割合を示したグラフです。


データ引用元:eDataBank – Department of Statistics Malaysia Official Portal

グラフから以下のようなことが挙げられます。

  • 総GDPにおける製造業が占める割合は年々減少
  • 基準年の2010年から2017年で約1.2%減少

マレーシア製造業全体の現状

  • 2017年6月時点のマレーシア製造業の主要分野はエレクトロニクス産業(27.6%)、石油・科学・ゴム・プラスティック産業(24.0%)、木材・家具・紙製品・印刷産業(22.4%)
  • マレーシア製造業が直面している問題として、研究・開発のための資金不足が挙げられる

マレーシア製造業全体の今後

  • 製造業分野においては製造効率化、製品の多様化・複雑化に焦点が当てられる予想
  • 今後成長が期待される航空・宇宙産業、医療機器、エレクトロニクス産業、機械加工・機械装置、化学産業の強化が見込まれる

エレクトロニクス産業

前回シンガポールの主要産業の一つとして紹介したエレクトロニクス産業は、マレーシア製造業においても主要産業の役割を果たしています。下の図は2016年と2017年のマレーシアのエレクトロニクス産業の指標(上から輸出額、輸入額、純輸出、付加価値(基準価格)、労働生産性(製造業全体)、労働生産性(エレクトロニクス産業)、労働者数)を示した表です。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)

出典:A Study on Productivity and Contribution of the … – WayUp.my

表から読み取れることとして以下のようなことが挙げられます。

  • 総貿易額は統計開始の2012年から2020年(予想)までほぼ一定の傾きで増加
  • 輸出は年を重ねるごとに傾きが増加するのに対して、輸入は減少傾向に転じる見通しが立てられている(国内製造設備の強化により)

エレクトロニクス産業の現状

  • マレーシアは現在、世界14位の天然ガス埋蔵量、世界23位の原油を有している
  • マレーシアは一つの区域内で2300万メートルトンの製造設備を有しており、世界で最も大きな液化天然ガスの製造設備と言われている
  • 日本の大手石油化学企業の一つである出光興産は環境にやさしいシンダイオタクティックポリスチレン(SPS)の製造に4億リンギットを投資した

エレクトロニクス産業の今後

  • マレーシアは現在東南アジアで石油化学産業が盛んなインドネシア、タイに代わって2020までに生産設備容量の面で主導的な立ち位置になる見通し
  • マレーシア政府は統合型石油化学産業区域を作り、生産から貿易までを限られた区域で効率的に計画を立てている

石油化学産業

次にマレーシア製造業のGDPの24.0%を占める石油化学産業の現状と今後について調査します。下の図は2012年から2020年(予想)までのマレーシア石油化学製品の貿易収支を示したグラフです。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)

出典:malaysia petrochemical country report 2018 – Malaysian …

グラフから以下のようなことが挙げられます。

  • 総貿易額は統計開始の2012年から2020年(予想)までほぼ一定の傾きで増加
  • 輸出は念を重ねるごとに傾きが増加するのに対して、輸入は減少傾向に転じる見通しが立てられている(国内製造設備の強化により)

石油化学産業の現状

  • マレーシアは現在、世界14位の天然ガス埋蔵量、世界23位の原油を有している
  • マレーシアは一つの区域内で2300万メートルトンの製造設備を有しており、世界で最も大きな液化天然ガスの製造設備と言われている
  • 日本の大手石油化学企業の一つである出光興産は環境にやさしいシンダイオタクティックポリスチレン(SPS)の製造に4億リンギットを投資した

石油化学産業の今後

  • マレーシアは現在東南アジアで石油化学産業が盛んなインドネシア、タイに代わって2020までに生産設備容量の面で主導的な立ち位置になる見通し
  • マレーシア政府は統合型石油化学産業区域を作り、生産から貿易までを限られた区域で効率的に計画を立てている

家具産業

マレーシアは豊富な森林資源を活かした木材関連産業が盛んです。先ほども紹介したようにマレーシア製造業の22.4%は木材・家具・紙製品・印刷産業が占めています。その中でも家具産業の現状と今後について調査します。下の図は1986年から2015年までの家具の輸出額と年成長率を示したグラフになります。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)


データ引用元:the malaysian furniture industry – Universiti Putra Malaysia

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 輸出額は統計開始の1986年から2008年にかけて増加傾向
  • 年成長率は2009年以降0%付近で上下し停滞傾向

また、下の図は1989年から2015年までの家具の輸入額と年成長率を示したグラフになります。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)

データ引用元:the malaysian furniture industry – Universiti Putra Malaysia

こちらもグラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 輸出額は2000年から2005年辺りにかけて急激に増加、その後は2010年以降でも増加傾向
  • 年成長率は2009年で大きく減少したが、その後は増加傾向に転じる

マレーシア家具産業の現状

  • マレーシアは世界で南洋材と木材製品の輸出を行っている国の上位10位以内に入る
  • マレーシア国内で生産する(家具を含めた)木材製品の80%以上を輸出している

マレーシア家具産業の今後

  • 国が定める木材産業規定によると、家具産業は2020年に120億リンギット(約3200億円)の輸出額を達成する目標を掲げている
  • マレーシア政府は単純な汎用製品の製造に加えて、デザイン性を兼ね備えたクリエィティブな製品設計に力を入れている

まとめ

今回はマレーシアの製造業の現状と今後について主要産業を中心に紹介しました。マレーシアをはじめ東南アジア各国はGDPにおける製造業の割合は年々減少しています。しかし、マレーシアの製造業自体のGDPは増加を続けています。

そしてマレーシアが保有する天然資源の埋蔵量、製造拠点の立地、豊富な労働資源などを考慮すると、今後もその傾向は続くと予想されます。今回の内容がマレーシアへの進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「シンガポール」

テクノポートの稲垣です。前回の記事では製造業の拠点候補として近年注目を集める「ASEAN(東南アジア諸国連合)」について紹介しました。今回はそのASEAN地域の中でいち早く先進国の仲間入りを果たしたシンガポールについて紹介します。

結論から申し上げますと、シンガポールのGDPにおける製造業の割合は縮小傾向にあり、主要産業はサービス関連業にシフトしています。(出典:ASEAN Key FIgures 2019

しかし、製造業は依然としてGDPの22%を占め、中でもエレクトロニクス産業、精密工業産業、医療・バイオテクノロジー産業、航空・宇宙産業は世界でもリーダー的なポジションにあります。それではシンガポールの製造業についての現状と今後を掘り下げていきます。

シンガポールの概要

  • 正式名称:シンガポール共和国(Republic of Singapore)
  • 首都:シンガポール
  • 首相:リー・シェンロン(2004年8月から)
  • 大統領:ハリマ・ヤコブ(2017年9月から)
  • 通貨:シンガポールドル(1シンガポールドル=81.76円 ※2020年1月20日時点)
  • 人口:約570万人 面積:724.2km2(参考:東京23区 619km2)
  • 公用語:中国語、マレー語、タミル語、英語
  • 公式宗教:なし(仏教・道教 43.2%、キリスト教 18.8%、イスラム教 14.0%、ヒンドゥー教 5.0%、無宗教 18.5%)
  • 平均寿命:男 80.7歳、女 85.2歳

参照

  1. STATISTICS SINGAPORE
  2. シンガポール基礎データ|外務省
  3. Singapore | Facts, Geography, History, & Points of … – Britannica

シンガポールのGDPの変化

シンガポールの製造業の変化をGDPのデータを用いて調査します。GDPとは国内総生産(Gross Domestic Production)の略で一定期間に国内で生み出された付加価値の総額を指します。

まず、シンガポール全体のGDPの変化を確認します。下の図は2010年から2018年までのシンガポールのGDPを示したグラフになります。

出典:Gross Domestic Product Dashboard – Statistics Singapore

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • シンガポールのGDPは右肩上がりに増加しており、今後も上昇傾向が予想される
  • 2018年のGDPは前年のそれに比較して3.1%増加している

シンガポールのGDPに関する補足情報(出典:What makes the Singapore economy tick?)として以下のような数字が挙げられます。

  • シンガポールのGDPは現在の市場価値で4兆912億ドルで世界35位
  • 2018年の一人当たりのGDPは6万4579ドルで世界9位

シンガポールの産業構造

次にシンガポールの現在の産業構造を調査します。下の円グラフは2018年のシンガポールにおける各部門の名目付加価値額の割合を示したグラフです。名目付加価値額(Nominal Value Added)とは対象年度内において生産された付加価値の大きさを示す指標です。

出典:Gross Domestic Product Dashboard – Statistics Singapore

グラフから以下のことが読み取れます。

  • 約25%を製造業関連(製造業、建設業、電気・ガス・水道サービス)
  • 70%近くがサービス関連業からなる(卸売り・小売業、輸送・保管、宿泊・飲食サービス、情報・コミュニケーション、金融・保険、ビジネス関連サービス、その他サービス関連)

補足情報して(出典:What makes the Singapore economy tick?)として、シンガポールの産業構造は以下のような特徴が挙げられます。

  • 金融関連業GDPは安定して増加している(企業優先の環境と政治的な安定が理由)
  • 近年特に成長しているのは、医療技術、航空・宇宙産業、クリーンエネルギー、ヘルスケア産業

シンガポールの製造業

シンガポールの製造業全体

ここでは、シンガポールの製造業全体における変化をデータを通して調査します。下の図は1983年から2018年までのシンガポールの製造業における工業生産指数(基準年:2015年)の変化を示したグラフです。工業生産指数とは国内での製造業関連の生産量を基準念を100として指標化したものを指します。

データ引用元: Singapore Department of Statistics

グラフから読み取れることとして以下のような事が挙げられます。

  • 統計を開始した1983年から2007年頃までは右肩上がりに上昇
  • 2007年頃から2009年にかけて一時的に下降
  • 2011年から2018年に至るまでは上昇傾向が継続

以上のようなデータに加え、シンガポールの製造業は、インダストリー4.0を軸に国際的な製造業の拠点として地位を確立しつつあります。下の図はシンガポール政府が推進するスマートインダストリー準備指標の概念図になります。スマートインダストリー準備指標とは工業の自動化・デジタル化の準備の完成度合いを評価する指標です。

出典:Economic Development Board

スマートインダストリー準備指標は工程(Process)、Technology(技術)、Organization(組織)の3本の基本構成要素の下に、8つの柱があります。そして8つの柱が16の区分によって評価される仕組みになります。シンガポール政府は上記のスマートインダストリー準備指標を用いて、インダストリー4.0を実行する準備を国を挙げて包括的に行っています。

また、補足情報(出典:Singapore Top Industry Sectors & Key Activities | EDB)としてシンガポールの製造業全体にいて以下のような特徴が挙げられます。

  • 世界で製造される医薬品トップ10の内5つはシンガポールで生産されている
  • シンガポールのエネルギーと化学の複合集積地帯(ジュロング島:Jurong Island)では世界で5番目に大きな精油の製造をおこなっており、化学工業関連の輸出量は世界トップ10

エレクトロニクス産業

シンガポールの主要産業の一つであるエレクトロニクス産業の現状と今後について見ていきます。下の図は1983年から2018年までのシンガポール国内におけるエレクトロニクス産業の工業生産指数を示したグラフです。

データ引用元: Singapore Department of Statistics

グラフから読み取れることとして以下のようなことが挙げられます。

  • 1998年から2005年までの間、停滞が続くがその後は安定して上昇
  • 2018年では過去最高の工業生産指数125.282を記録

シンガポールのエレクトロニクス産業の現状について、以下のような特徴が挙げられます。

  • 主要な分野は半導体、商用電気機器、情報技術など
  • 2900以上の会社がエレクトロニクス産業に関わっている
  • 幅広いエレクトロニクス産業のバリューチェーンを有しており、研究、開発、設計、製造、流通までサービスを提供している
  • シンガポールのエレクトロニクス産業は900億シンガポールドルのGDPを記録し、製造業全体の1/4以上を占める(2017年)
  • シンガポールは1兆80億シンガポールドル以上の半導体、電気集積回路の輸出を行っており、世界全体の10%を占めている

シンガポールのエレクトロニクス産業の今後について以下のような見通しがされています。

  • シンガポール政府はエレクトロニクス分野のGDPを220億シンガポールドル成長させることを目的として、2020年までに2000以上の新しい職を提供する予定

参照

  1. Electronics Industry in Singapore | EDB
  2. Electronics | Industry Profile | Enterprise Singapore

精密工学産業

次にシンガポールの精密工業産業の現状と今後について調査します。下の図は1996年から2018年までのシンガポール国内における精密工業産業の工業生産指数を示したグラフです。

データ引用元: Singapore Department of Statistics

グラフから読み取れることとして以下のようなことが挙げられます。

  • 2011年から2016年まで停滞が続いたが、2017年で大きく上昇
  • 2018年では過去最高の工業生産指数164.146を記録

シンガポールの精密工業産業の現状について、以下のような特徴が挙げられます。

  • 世界の半導体産業で使用されるワイヤボンダの70%をシンガポールで生産
  • 世界中の冷凍コンプレッサーの10%はシンガポールで生産
  • 世界中の補聴器の30%はシンガポールで生産

そしてシンガポールの精密工業産業の今後について以下のような見通しがされています。

  • ここ数年で自動化による生産効率の改善が盛んになっている
  • 2020年までに140億シンガポールドルの経済的な付加価値と3,000以上の新たな職を作り出すとされている
  • 半導体装置(年平均成長率:7%)、試験測定装置(年平均成長率:9%)、3D造形(年平均成長率:30%)、ロボティクス(年平均成長率:11%)、センサー(年平均成長率:10%)、レーザー・光学機器(年平均成長率:8%)、先進材料(年平均成長率:4.9%)で成長が期待される

参照

  1. Precision Engineering | Industry Profile | Enterprise Singapore
  2. Precision Engineering | EDB
  3. Update on the Precision Engineering Industry Transformation Map (PE ITM)

医薬品・バイオテクノロジー産業

最後にシンガポールで現在急成長産業の一つである医薬品・バイオテクノロジー産業の現状と今後について調査します。下の図は1992年から2018年までのシンガポール国内における医薬品・バイオテクノロジー産業の工業生産指数を示したグラフです。

データ引用元: Singapore Department of Statistics

シンガポールの医薬品・バイオテクノロジー産業の現状について、以下のような特徴が挙げられます。

  • GDP全体の約3%を占める
  • 医薬品製造で160億シンガポールドルの利益を上げ、2000年のそれから3倍以上に成長(2017年)
  • 30を超える医薬品関連のトップ企業が新しい研究開発・製造の拠点としてシンガポールを選んでいる
  • シンガポール政府は医薬品関連企業を援助するための土地開発、インフラ整備にも力を入れている
  • 大学から有望な人材を雇用するために、実地訓練と学問を同時進行で推進する教育システムがある

そしてシンガポールの医薬品・バイオテクノロジー産業の今後について以下のような見通しと計画がされています。

  • 国内の医薬品関連の市場規模は2020年に16億シンガポールドル規模になる見通し(2017年:12.8億シンガポールドル)
  • 研究開発施設に加え商品管理・運用までをシンガポール国内で行える施設を増やす運動が加速する見込み
  • 2020年の研究イノベーション事業計画(出典:RIE2020 Plan)によると190億シンガポールドルが国内のイノベーション産業の強化のために投資される

参照

  1. Overview of the Singapore PharmBio Sector
  2. Singapore – A Strong & Growing Healthcare Industry
  3. RIE2020 Plan – National Research Foundation

まとめ

今回はシンガポールの製造業の現状と今後について主要産業を中心に紹介しました。全体を通して言えることは、シンガポールの製造業は自動化による生産効率改善の動きが盛んであることです。それを可能にしているのは、国を挙げたイノベーション産業への投資と、教育機関と連携して優秀な人材を輩出する努力の賜物であると感じました。

個人的には、今後シンガポールの製造業は付加価値の高い産業だけが残り、単純な部品製造拠点は減少していくと思います。今回の内容が、シンガポールへの進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「ASEAN」

テクノポートの稲垣です。現在、多くの日本企業が東南アジアへ進出しています。東南アジアの中でもとりわけ注目されているのがASEAN(東南アジア諸国連合)地域です。

2016年の調査によるとASEAN地域に進出している日本企業の数は11,328社(出典:帝国データバンク)であるとされています。この数字からも分かるように、ASEANは日本と同じアジア地域として注目度を高めており、今後もこの傾向は続くことが予想されます。そこで、今回はASEANの製造業をテーマに現状と今後を掘り下げてみたいと思います。

ASEANの基本情報

ASEAN設立の歴史

現在、世界には多くの地域統合組織があります。その中でも、比較的長い歴史を有しているのが今回紹介する「ASEAN(Association of South-East Asian Nations)」です。

1960年代初めに、ASEANの前身となる「東南アジア連合」がマレーシア、タイ、フィリピンによって設立されました。東南アジア連合設立の背景には、当時の東南アジア諸国のほとんどが独立したての新しい国であったことが影響しています。

東南アジア連合の設立に次いで、1963年にマラヤ(Malaya)、フィリピン(Philippins)、インドネシア(Indonesia)の頭文字を組み合わせた「マフィリンド(Maphilindo)」が設立されました。

そして、現在のASEANは1967年8月の「ASEAN設立宣言」に基づき設立されました。ASEAN設立の目的は大きく以下の7つに集約されます。(出典:About ASEAN

  1. 経済成長、社会的・文化的発展の加速
  2. 平和、安定の促進
  3. 協力、相互支援の促進
  4. 貿易、研究機関の相互補助
  5. 農業、貿易効率化のための支援
  6. 東南アジアの研究の促進
  7. 緊密かつ有益な協力関係の維持

ASEAN加盟国

現在の加盟国は10カ国(タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジア)です。

出典:ASEAN情報マップ

ASEANの製造業

製造業全体のGDPの変化

ここでは、ASEANの製造業全体の変化をGDPのデータを用いて調査します。GDPとは国内総生産(Gross Domestic Production)の略で一定期間に国内で生み出された付加価値の総額を指します。まず、ASEAN全体のGDPの遷移を確認します。下の図は2000年から2018年までのASEANのGDPと一人当たりのGDPを示したグラフになります。

出典:ASEAN Key FIgures 2019

グラフから分かるように、ASEANのGDPは年々増加しており上昇傾向であることが読み取れます。具体的には、2018年のGDPは2000年のそれと比較すると5倍以上に成長しています。加えて、一人当たりのGDPは2000年の1195ドルから4倍近くの4601ドルまで成長していることが分かります。次に下の図は、ASEANの総GDPにおける3つの主要産業(農業、製造業、サービス関連業)が占める割合の遷移を示したグラフです。

出典:ASEAN Key FIgures 2019

棒グラフの中層にある製造業の割合に注目すると、年々製造業が占める割合は減少していることが分かります。具体的には、2018年の製造業(製造、電気、ガス、水道、鉱業、採掘業)が占める割合は2005年から3.1%減少しています。一方で、サービス関連業(貿易、政治関連事業、通信、情報、交通、金融、経済活動)は年々拡大していることが分かります。以上2つのデータより、ASEANにおける製造業のGDPの遷移を表したものが下のグラフになります。

データ引用元:ASEANStatsDataPortal

先にも述べたように、GDPにおける製造業の割合は年々減少していますが製造業自体のGDPは年々増加していることがこのグラフから読み取れます。

製造業のGDPが増加している2つの要因

ASEANにおける製造業のGDPが増加している要因は大きく2つ考えられます。1つ目はASEAN域内で6億4千万にのぼる消費者の存在です。下の図は1990年から2018年までのASEANの人口と人口増加率を示したグラフです。

出典:ASEAN Key FIgures 2019

ASEAN域内での人口増加率は減少傾向にあるものの、人口は増え続けていることが分かります。また、消費者の数が増加するに従い高所得者の数も増加し、より高価な商品・サービスを求める傾向が増加していることも製造業の発展に貢献していると言えます。2つ目はASEANの安価な労働力が世界中から注目を集めていることです。

世界の製造業の生産拠点として飛躍的な発展を遂げた中国はここ最近、労働賃金の値上げに加え、規制を強化し始めています。よって各国の製造業企業は中国の代替となる生産拠点を探しています。生産拠点の候補としてASEANは低賃金かつグローバルなネットワークを有しているための世界各国の製造業を地域に引き付けています。

業種別の動向

自動車産業

ASEANでは急速な経済発展に伴い、自動車に対する需要も増加しています。下の図は2005年、2010年、2018年におけるASEAN各国内で登録された自動車台数を示したグラフです。

出典:ASEAN Key FIgures 2019

グラフからASEAN各国において自動車の登録台数が年々増加していることが読み取れます。ASEAN全体の登録自動車台数で整理したものが下のグラフになります。

データ引用元:ASEANStatsDataPortal

これらのデータよりASEANの自動車登録台数は年々増加しており、先にも述べた製造業の発展と同じ理由により、これからも上昇傾向が続くことが予想されます。下の図は、2005年から2016年におけるASEAN主要5カ国(インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム)の自動車生産台数を示したグラフです。

出典:ASEAN情報マップ

2016年におけるASEAN主要5カ国の自動車生産台数は、統計を開始した2005年と比較し2倍近く増加していることが分かります。これらのデータより、ASEAN域内では自動車に対する需要が高まっており、それに従い自動車の生産台数も年々増加していることが分かります。

補足情報(出典:Electrifying times for automotive industry)として、ある調査によると東南アジア地域において

  • 2018年の自動車売上は、2016年から3年連続で6%上昇
  • 2019年の自動車売上台数は、2018年の357万台から427万台に増加

のような予想がされています。また、一部の専門家は中国とアメリカの貿易戦争の影響により、シンガポール、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシアでの販売台数は停滞する見通しであると主張しています。

化学産業

現在、世界の大きな化学工業企業は製造・研究開発の拠点を東南アジアで行っています。World of Chemicals(出典:Rise of the chemical sector)のレポートによると、ASEAN全体の化学工業には以下のような特徴があります。

  • 東南アジアの多くの化学工業工場では自動化とデジタル化が進められ、生産効率の向上が図られている
  • ASEAN諸国の化学工業による環境汚染対策として、先進技術の開発と規制の強化進んでいる

また、それぞれの国別で見ていくと、ASEANの中でも最も成長が著しいシンガポールの化学産業では以下のような特徴が挙げられます。

  • シンガポールはASEANの化学工業の拠点であり、石油化学、特殊化学工業で強みを持つ
  • シンガポールは100を超える先端化学工業企業を有しており、様々な企業が新しい実践的な化学技術の開発に力を入れている

そして、インドネシア、タイ、マレーシアといったASEAN主要国の化学産業には以下のような特徴が挙げられます。

  • インドネシア、マレーシア、タイは安定した市場として化学工業の発展に貢献している
  • マレーシアは世界第2位のパーム油の生産国であり、新しい油脂化学技術の開発に力を入れている
  • タイではバイオプラスティックの開発に注力している
  • インドネシアでは政府の援助不足と産業基盤の未発達により、バイオ化学工業の発達が遅れている

建設用機械産業

ASEAN地域での建設用機械の需要は年々増加しており、世界中の国と地域から企業が参入し競争が激化しています。(出典:ASEAN CONSTRUCTION MACHINERY MARKET

現在、世界中の製造業企業が東南アジアでの操業を考えています。それは先にも述べた、安価な労働力と地域内での需要の増加が主な理由になります。その中でも建設用機械産業は、東南アジア各国でインフラ整備への需要が増加しているため、東南アジアで最も盛んな産業の一つと言えます。

加えて、2019年6月にASEAN内での人、モノ、エネルギーの輸送を強化するためのパイプライン建設プロジェクトを発表し、2019年11月に正式にプロジェクトの合意を発表しました。19のプロジェクトにかかる総額は19億ドルと見積もられており、今後より多くの投資が集まることが予想されます。(出典:Coneecting the region through intitiall pipline of ASEAN infrastructure projects

また、東南アジアでは道路建設用設備の市場がここ数年で大幅に増大しています。その背景には地域内での道路建設の需要が高まっていること、道路建設による物流の改善が求められていることなどが主な理由になります。例えば、ベトナムでは建設業による国の利益が12億ドル(2007年)が128億ドル(2017年)に増加しています。背景には、ベトナムではビルの建設許可が増加したこと、経済の回復、政府の商業・民間建設業に対する援助などの要因が挙げられます。

まとめ

今回は、多くの日本企業が進出し注目度を高めているASEAN地域について紹介しました。ASEANの製造業市場は拡大傾向にあり、個人的な見解として、中国に続く国際的な製造業の拠点として、これから存在感を高めていくだろうと考えています。しかし、ASEAN地域内における製造業のGDP割合は縮小傾向にあり、市場はサービス関連業にシフトしています。

次回はそのシフトを牽引し、ASEAN諸国の中でいち早く先進国となった「シンガポール」について紹介します。今後、ASEAN各国についての詳細記事を随時投稿していく予定ですので、ASEAN地域への進出に少しでも関心のある読者の方に読んでいただければ嬉しく思います。