海外Webマーケティングの本質|基礎・進め方・成功ポイント・事例

テクノポートの稲垣です。
現在「海外Webマーケティング事業」の責任者を務めています。

この記事を一読すると「海外Webマーケティング」に必要な情報が、一通り把握できるように執筆しました。

海外Webマーケティングの基礎

「海外Webマーケティング」とは?

私は外国語W​ebサイトを活用した一連のマーケティング活動」と定義します。国内のWebマーケティングとの違いは「外国語サイトを使用する」という点です。(細かな違いは「国内のWebマーケティングとの違い」で説明しています)

そもそもの「マーケティング」「Webマーケティング」という言葉の定義については、以下の記事をご参照ください。

統計情報

海外Webマーケティングは、中小企業の販路開拓の方法として注目を集めています。

出典:2021年度|ジェトロ海外ビジネス調査 日本企業の海外事業展開に関する アンケート調査

こちらのグラフは、企業の今後3年程度の海外輸出方針に関する意識調査の結果です。2021年度の輸出方針を見ると、75.2%の企業が「さらに拡大を図る」と回答しており、過去最高の数字を記録しています。

出典:2021年度|ジェトロ海外ビジネス調査 日本企業の海外事業展開に関する アンケート調査

こちらは企業の規模別の今後3年程度の海外輸出方針の調査結果です。上のグラフが大企業、下のグラフが中小企業の輸出方針の調査結果です。ここから分かるように、中小企業で特に輸出拡大の傾向が高まっています。(2021年度で75.7%)

このような結果になった要因として、海外進出におけるデジタルの活用が挙げられています。(参照:海外事業拡大意欲は過去最低も、新規進出意欲は衰えず(世界、日本))具体的には以下のような海外販路開拓の方法です。

  • 越境ECを活用したビジネスモデルの構築
  • Zoomなどオンライン会議を活用した商談
  • リモートによる代理店の育成と販売網の強化

海外Webマーケティングもこれらの活動に密接に関わっており、中小企業の海外販路開拓の手法として注目を集めています。

国内のWebマーケティングとの違い

国内のWebマーケティングとの違いを5つ説明します。

1. 市場規模

海外Webマーケティングの最大の特徴は、ターゲットとする市場が大きいことです。例えば、英語サイトを使って全世界向けにWebマーケティングを行う場合、英語話者は日本語話者の10倍以上存在するため、単純計算で国内の10倍以上の潜在顧客を発掘できる可能性があります。

これは言い換えると、海外の競合も多く競争が激しいということでもあります。つまり対象とするターゲット市場の大きさに比例して、競争に勝ち抜く難度も高いと言えます。

2. 言語

海外Webマーケティングは外国語でWebサイトを活用するマーケティング活動であるため、言語が違います。これはWebサイトの表記そのものはもちろん、競合企業の調査時に使用する言語、問い合わせをもらって顧客とやり取りする言語、貿易の実務で使用する言語、全てが外国語になります。

特に3つ目の「海外企業とのやり取り」は、中小企業の輸出ビジネスにおける課題として挙げられることが多いです。実際に、中小企業基盤整備機構が行った調査によると「外国語や貿易実務ができる人材の確保」が輸出における課題として最も多く挙げられています。(参照:平成 28 年度中小企業海外事業 活動実態調査報告書

3. 文化

海外Webマーケティングでは、対象となる地域の文化的な違いが影響することもあります。例えば、外国語サイトのデザインは、日本企業のそれとは異なる特徴があります。一般的に外国、特に欧米企業のWebサイトのデザインは「配色」「画像と文章の配置」「顧客への訴求方法」で日本企業のそれとは異なる特徴を有していることが多いです。

詳しくは以下の記事で解説しています。

他にも宗教的な観点の違いで、問題が発生するおそれもあります。ターゲット地域が明確な場合は、十分に調査を行うことが必要です。

4. 手法

国内と海外では、使われているツールが異なることがあります。検索エンジンを例にとって考えると、2022年5月時点で国内で最も使われている検索エンジンは「Google(シェア76.39%)」です。一方で、世界最多の人口を有する中国ではGoogleではなく「Baidu(シェア84.27%)」が最も使われています。

一般的に、国内でWebマーケティングを行う場合はGoogleを中心に施策を実行することが有効です。一方で、海外Webマーケティングを行う際は、地域によってとるべき手法が異なることを考慮する必要があります。

参照

5. インターネット規制

国によってはインターネットへの接続に規制が設けられていることがあります。

代表的な例を挙げると、中国国内のサーバーを利用して情報発信を行う場合は「ICP(インターネット・コンテンツ・プロバイダー)」と呼ばれるライセンスを取得する必要があります。

これは中国政府がインターネット上での情報検閲を行っていることが関わっており、中国国外にサーバーを設置すると、中国国内ではサイトが表示されない、表示されても表示速度が非常に遅くなる、という問題が発生するおそれがあります。かなり技術的な内容ですが、国によってはこのような規制が設けられていることがあるので、注意が必要です。

海外Webマーケティングにおける課題と対策

中小企業が海外Webマーケティングに取り組む際に、直面することが予想される課題と解決策を3つ紹介します。これらの課題は、中小企業基盤整備機構の調査、および弊社のお客さまの声をもとに選定しました。

1 引き合いの獲得

海外Webマーケティングの目的である「海外のお客さまからの引き合いを獲得する」ことは、思っているより難しいです。特に、中小企業が外国語Webサイトから引き合い獲得を狙う場合は、海外の競合と比較した際の自社の製品・サービスの優位性を明確にしておく必要があります。なぜなら外国企業の立場から考えると、なるべく日本企業には仕事を依頼したくはないはずだからです。

例を用いて説明します。あるフランスの企業が仕事の発注先を探している場合を想定します。彼らの要求を満たすサービスを提供する企業が2つあり、1つはフランス国内、もう1つは遠国の日本にあると仮定します。

仮に2つの企業が全く同じ品質のサービスを同程度の価格で提供しているとします。その場合、おそらくほとんどの企業は発注先として前者のフランスの企業(同じ国内の企業)を選ぶはずです。なぜなら、遠国の日本企業に仕事を依頼するのは、貿易のやり取り、商習慣の違いの壁を乗り越える必要があり、かつ輸送中の事故のリスクをともなうためです。簡潔に言うと、デメリットが大きいです。

解決策「競争優勢性を全面的に訴求する」

したがって、海外の顧客から選ばれるためには、自社を選んでもらう理由が必要になります。言い換えると、海外のお客様が遠国の日本企業である自社に頼まなければいけない理由が必要です。わかりやすい例で言うと、海外の競合企業が解決できない課題に対して、自社の製品・サービスが解決策になる場合です。このような場合は、外国語Webサイトを活用して集客を行い、自社独自の強み、解決できる課題を全面的に訴求することで、引き合いの獲得が見込めます。

したがって、上記の競争優位性が明確でないまま、海外Webマーケティングを行っても、集客はできるが引き合いが来ない、引き合いはくるが受注に繋がらない、という課題に直面する確率が高いと言えます。マーケティングを始めるまでの戦略的な部分の話ですが、とても重要な内容なので最初に書かせていただきました。

2 貿易実務

海外企業との貿易実務を行うための「社内体制が整っていない」「詳しい人材がいない」という課題も発生します。特に中小企業の場合は、社内に貿易業務を行うための専門部署がない場合も多いため、社内の誰かを担当者として任せる必要が生じます。

また、貿易によって発生する料金を負担することが課題になる場合もあります。例えば、国内では輸送費を含めて十分利益が見込める製品が、海外への輸送になると採算が合わなくなってしまいほとんど利益が出ないことも考えられます。価格設定の工夫で解決できる場合は問題ありませんが、輸送コストが課題になり、海外からの取引獲得を諦めなければならない場合もあります。

解決策「外部の支援機関を活用する」

貿易の問題を一番手っ取り早く解決する方法は、外部の支援機関を活用する方法です。海外の貿易実務であれば、ジェトロをはじめ多数の企業が中小企業向けに支援を行っています。これらの企業を活用し専門家から助言をもらいながら、進めていく方法が確実かつ手間のかからない方法だと思います。

コスト面で上記の方法が難しい場合は、自社で全て行うことも方法の一つです。貿易実務を学習する手間と人件費はかかりますが、その分自社にノウハウが蓄積するというプラスの側面もあります。

3 現地の顧客対応

引き合いを獲得し、無事に貿易実務まで終えた後に発生する最後の課題が「現地の顧客対応」です。例えば、海外の企業に製品・部品を納品する場合、現地の顧客から以下のような注文を受ける可能性があります。

  • 製品が故障したため直してほしい
  • 不良品が混じっていたため交換してほしい
  • 製品の使い方がわからないためデモを行ってほしい

全て国内の顧客であればそれほど大きな問題にならないことがほとんどですが、言語も違えば国も違う海外のお客様となると話は別です。中小企業で現地法人があり、そこで対処できる場合は問題ありません。しかし、現地に拠点がない場合はこれらの問題の解決が難しい場合もあります。

解決策「オンライン会議を活用する」

現地法人も海外の代理店もない地域のお客様対応の方法として「オンライン会議を活用する」方法があります。例えば、先の課題の中でも3つ目の「製品の使い方を説明する」ような場合は、日本と海外でオンライン会議を行い、実際に製品を見せながら顧客側で操作を行なってもらうことで、使い方の伝達が可能な場合もあります。

もちろんこの方法が全ての顧客対応で有効とは限らないため、どうしても現地での対応が必要な場合は、現地に代理店、パートナー企業に対応を依頼することが必要になります。

海外Webマーケティングの進め方

海外Webマーケティングの進め方を5つのステップで解説します。国内のWebマーケティングとは別で考える必要がある内容を厚めに解説しています。

STEP-1 目的設定

海外Webマーケティングに取り組む目的を整理します。海外Webマーケティングの目的として考えられるものを列挙します。

  • 海外の顧客を開拓する(全世界 or 特定の地域)
  • 海外の販売代理店を開拓する(全世界 or 特定の地域)
  • 複数地域の中でどの地域から反響が来るのか調査する

これらの目的もさらに細分化すると以下のような要素を考慮する必要があります。

  • 短期的に結果が欲しいのか、中長期的に問い合わせがくる仕組みを構築したいのか(もしくは両方)
  • 製品・サービスの新しい用途を開発したいのか、既存の市場でシェアを取りに行くのか(もしくは両方)
  • 特定の国に注力したいのか、全世界から広く問い合わせが欲しいのか

これらの目的設定によってとるべき手法を選択するため、明確に設定しておくことが必要です。

例えば「アメリカ市場において、現地の競合企業と比較された際に自社の製品・サービスが選ばれ、中長期的に問い合わせがくる仕組みを確立したい」のようなイメージです。

STEP 2 現状分析

1で設定した目的を軸に、現状分析および戦略立案を行います。現状分析で調べることは簡単に言うと「現状なぜ目的が達成されていないのか?」です。外国語サイトをすでに持っている場合は、主に以下の3つの成果が出ない原因を調べます。

  • 認知されていない
  • 認知されているが集客ができていない
  • 集客ができているが問い合わせがこない

成果が出ない原因の分析方法および解決方法は以下の記事で説明しています。

また外国語サイトを現状持っていない場合でも、海外の競合をこの時点でリストアップしておく必要があります。ここでリストアップした競合は次のステップの戦略立案の際に活用します。私が競合をリストアップする際は、海外の検索エンジンで自社の製品・サービスに関連するキーワードを片っ端から検索していく、地道ですが確実な方法を取ります。

STEP-3 戦略立案

2で行った分析により、現状成果が出ていない原因に仮説が立っているはずです。この仮説を検証するため(原因となっている問題を解決するため)の施策を考えます。まず、数ある海外Webマーケティングの手法の中から、自社の目的にあった方法で有効だと思われる手法を選択する必要があります。

例えば、全世界向けに顧客の開拓(新市場の発掘)を行う場合、一般的に外国語Webサイトを活用した「海外SEO対策」との相性が良いです。詳しくは以下の記事で解説しています。

目的を達成できる手法であることはもちろん、自社の許容範囲(例:予算、対応可能な人員)を考慮して、実現可能な選択が必要です。

この段階で、間違っていてもいいので海外の顧客が自社を選ぶ理由を明確にします。この要素がはっきりしていれば、外国語サイトでアピールするポイントも明確になるため、仮説の検証がしやすく、仮説が間違っていた場合でも修正の必要性の判断が容易にできます。

STEP-4 施策の実行

戦略がきちんとまとまり、検証すべき仮説が明確になった次のステップとして施策を実行します。

この段階では特に頭を使う必要はないため、段取りを設定し淡々と工程を進めていきます。また、施策の実行段階になって初めて生じた疑問、思慮を要する事項が発生した場合は、STEP 1で立てた目的に立ち返って判断をすれば大きな問題にならないことがほとんです。

STEP-5 仮説検証・改善

施策の実行が一通り完了した時点から仮説の検証が始まります。要するに、現状分析の際に予想した「成果が出ない原因」と戦略立案の際に立てた「解決するための施策」は想定通りだったのか、という検証が始まります。

私の感覚ですが、多くの場合は仮説が思い通りに立証されることはありません。すなわち、考えてもいなかった原因が存在した、もしくは解決策が問題を解決するために不十分だった、という場合がほとんどです。

そのような場合、継続的な改善活動を行う必要があります。すなわち、成果が出ない原因の仮説とその解決策を見直し、成果が出るまで改善を繰り返すイメージです。言葉にするのは簡単ですが、これが最も難しくかつ担当者の思考能力が求められる作業だと思います。

海外Webマーケティングを成功させるポイント

次に海外Webマーケティングを成功させるポイントを3つ紹介します。国内のWebマーケティングに当てはまるポイントは割愛します。

ポイント1 妥協しない姿勢

個人的に、海外Webマーケティングを進める上で最も重要だと思う工程は「事前準備」です。具体的には以下のような作業です。

  • 仮説の立案:現状の外国語サイトで反響が出ていない原因を洗い出す
  • 解決策の立案:反響を出すための解決策を洗い出す
  • キーワード調査:自社の製品・サービスを表す外国語キーワードの調査、海外の競合サイトが使用しているキーワードの調査

海外Webマーケティングを進める場合、慣れない外国語でこれらの作業をやらなければいけない上に、言語によっては国内より競合が多く準備作業の負荷が大きくなります。必然的にどこかで妥協したくなります。

ただ私は海外Webマーケティングにおいて、これらの作業の質が成功するかどうかを分けると考えます。なぜなら、海外の現地企業との競争に勝つためには、それ相応の戦略と徹底的な準備が必要だからです。

国内のWebマーケティングの場合は、地理的に不利な立場になることは少ないです。一方、海外Webマーケティングの場合、遠国の日本企業というだけで、不利な状況からスタートする場合もあります。したがって、海外の顧客から選ばれる理由を作るためにも、明確な戦略を持って海外Webマーケティングに取り組む姿勢、すなわち「準備を妥協しない」という姿勢が大切です。

ポイント2 粘り強い姿勢

海外Webマーケティングを始めるにあたって、現状成果が出ていない原因は無数に出てきます。例えば以下のようなものです。

  • Webサイトのデザインが外国風じゃないから問い合わせが来ないのじゃないか?
  • 翻訳がぎこちないから問い合わせが来ないのじゃないか?
  • 海外の競合みたいにSNSを使って集客した方が良いんじゃないのか?

これらの要因ももちろん間違いではない場合が多いですが、盲目的にこれらの予想に頼らない方が良いと思います。海外Webマーケティングで成果が出ない原因は、ある程度体系的に整理できるため、まずは構造的に原因を把握することが大切です。

するとほとんどの場合、これらの原因よりももっと本質的な原因が見つかります。例えば、キーワード選定が間違っていた、あるキーワードの検索順位が落ちていた、など集客に直結する原因です。

一見するとこれらの原因の解決の方が、先に挙げたような原因の解決よりも難しいため、後回しになりがちです。ただ成果を出すためには、まず本質的な原因を根気強く解決していく姿勢、すなわち「粘り強い姿勢」が大切です。

ポイント3 思考し続ける姿勢

海外Webマーケティングに本格的に取り組み始めると、ある程度成果が出るタイミングがやってきます。ただ、一度成功した状態を作ったのにもかかわらず、ある時点から急に成果が出なくなることがあります。この一見すると原因不明の不調は、むしろチャンスととらえるべきだと私は思います。

なぜなら、問い合わせがこない原因を突き止め改善することで、現状よりさらに良い状態に改善できる可能性があるからです。当たり前と言えば当たり前ですが、多くの場合、調子が悪くなっても「とりあえず様子を見る」という選択をしてしまいがちであるため、あえて記載しました。

例えば、調子が悪くなった原因として「海外の競合サイトがページを更新し検索順位が落ちてしまった」と判明したとします。これは一見悪いことのように思えますが、同時に以下のような気づきを得るチャンスでもあります。

  • 競合は何を意図してページを更新したのか?(競合の施策の方向性)
  • 競合はどんなキーワードで集客を強化したいのか?(キーワード選定の方向性)
  • 競合はその他に何を改善したのか?(Webサイト全体の方向性)

これらの中で自社でも参考にできるものがあれば、積極的に取り入れていくことで施策を強化できます。したがって、どんな些細な変化にもアンテナを張っておき、何か変化があれば原因をつきとめ改善しようとする姿勢、すなわち「思考し続ける姿勢」が大切です。

海外Webマーケティングを行う上での注意点

海外Webマーケティングを行う上で、頭に入れておくべき注意点を3つ紹介します。私の独断と偏見で選びました。

注意点1 海外の検索エンジン

特に広告を出稿する場合や、中国、ロシアなどの独自の検索エンジンが広く使われている地域向けに海外Webマーケティングを行う場合は、検索エンジンの使用率を必ず確認しましょう。

例えば、以下のグラフが示すように、中国では検索エンジンとしてBaiduが最も多く使われています。(2022年5月時点のデータ)

出展:Search Engine Market Share China | Statcounter Global Stats

したがって、中国市場向けに広告出稿を行う場合は、GoogleではなくBiaiduを使用することで、より多くの潜在顧客に情報発信できることがわかります。国別の検索エンジンの使用率はこちらのサイトで確認できます。

注意点2 翻訳は簡潔に

海外Webマーケティングにおける翻訳を自社で行う場合は、簡潔にわかりやすい翻訳を重視することが大切です。

この主張を説明する前に、ネイティブの翻訳と機械翻訳の違いを考えます。例えば日本語を英語に翻訳する場合、ネイティブが書く英語と我々の書く英語(もしくは機械翻訳の英語)の最大の違いは何かと言うと「文章の読みやすさ」だと考えます。

なぜなら、どちらの翻訳方法も基本的に意味は通じるからです。現に多少ネイティブにとって文章が読みにくい場合でも、彼らが求める情報(製品・サービス)が記載されており、文章の意味が十分伝わる場合は彼らは問い合わせをしてくるからです。(現に弊社のお客さまでも問い合わせは来ています)

だからと言って、ネイティブ翻訳は必要ないかと言われるとそうでもないと思います。なぜならネイティブの書く文章の方が、自然な文法・表現が使われており、ネイティブにとって読みやすいからです。すなわち、ネイティブ翻訳を導入することで「文章が読みにくいから」という理由で、本来くるはずだった問い合わせを失う可能性がなくなるイメージです。

ここで最初の主張に戻ります。我々非ネイティブが翻訳をするときに意識することは「文章が読みにくい」と感じさせないことです。すなわち、できるだけ簡潔にわかりやすい文章を書き「文章が読みにくい」という減点を減らすことです。簡単にできる工夫としては、以下のようものが挙げられます。

  • 箇条書きを使用する
  • 表を使う
  • 長文は短く区切る
  • シンプルな文法・単語を使う

我々日本人も、外国人が書く日本語の文章が読みにくいと感じることがあると思います。逆の立場になったときにも、あの減点をなるべく減らしましょう、という意味です。

注意点3 時間がかかる

海外Webマーケティングで効果が出るまでには、国内よりも時間がかかる場合が多いです。

1つ目の理由は、シンプルに難度が高いからです。一般的に海外Webマーケティングでは、国内よりも競合が多いです。(もちろん市場や言語によって変わります)その分、競争が激しいため、勝ち抜くためにはそれなりの試行錯誤が必要になるためです。

もう1つの理由は、国内のWebマーケティングでは思いもよらない原因で成果が出ない、という現象が起こり得るからです。例えば、以下のような原因です。

  • 外国語キーワードの選定が間違っていた
  • 翻訳が冗長でわかりにくい
  • 海外の顧客が求める情報が載っていない(例:返品対応の方法、取引・配送の流れ、海外拠点情報)

これらの成果が出ない原因は、国内のWebマーケティングでは起きる可能性が低いため、海外Webマーケティングならではの改善ポイントになります。すなわち、これらの改善活動が必要になる場合は、時間がかかる傾向があります。

海外Webマーケティングの成功事例

ここでは弊社が実際に海外Webマーケティングを支援した実例を紹介します。

株式会社メルテック

本社 千葉県流山市
社員数 100名
事業内容 フォトエッチング加工、エンコーダ用スケールの設計、製造、販売
取材記事 英語サイトで「海外の新規顧客開拓」と「製品の需要調査」を実現

株式会社メルテックは、エッチング加工を主事業とする金属薄板加工を行っています。このエッチング加工の技術を用いて製造することができる製品の一つに「エンコーダー用スケール」と呼ばれる部品があります。これに関するキーワードを中心に、海外Webマーケティング支援を行いました。

詳しい施策の内容は割愛しますが、海外SEO対策のみにより、現在では北米、ヨーロッパを中心に世界各国から引き合いが来ています。

詳しくはこちら

まとめ

本記事では「海外Webマーケティングの本質」と題して、私が考える海外SEO対策に関する見解、ノウハウを説明しました。

海外Webマーケティングを任せられる業者をお探しでしたら、お気軽にテクノポート株式会社にお声がけいただければ嬉しく思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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【オンライン商談攻略法】海外販路開拓の方法とは?

こんにちは、製造業系ライターのよどはらです。今回は動画のまとめ記事になります。テーマは「海外販路を開拓するためのオンライン商談攻略法」です。コロナ過になってオンライン商談の機会が増えているようです。本記事では、オンライン商談のメリットや具体的な方法について解説します。

今回は、特に食品を取り扱っている中小企業向けの内容になっています。オンライン商談を使った海外販路開拓に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

【講師】
中 正宏 様
株式会社 KM International 代表取締役

2003~2005年:ワーキングホリデイビザでオーストラリア・パースへ
2005〜2007年:シンガポール駐在。国際物流企業でのキャリアをスタート
2008~2014年:ベトナム駐在
2015年:インドネシア駐在
2016年:KM International Trading & Consultingを設立
地元東北で独立起業家としての活動を開始
2016年~2021年:農林水畜産・食品輸出分野のエキスパートとして、日本全国の中小企業の海外輸出支援を担当

動画はこちらから

中小企業におけるオンライン商談のメリット

なぜ、オンライン商談が中小企業にとって重要なのか、具体的にどういったメリットがあるのかを解説します。

オンライン商談のメリット1:移動時間がなくなる

1つ目のメリットは、移動時間がなくなることです。

たとえば、海外での商談のためにベトナムのホーチミンへ行くとします。その場合、家を10時に出発したとすると22時くらいに現地へ到着するため、移動だけでトータル12時間もかかってしまいます。

こうした移動時間がなくなることは、オンライン商談の大きなメリットの一つです。

オンライン商談のメリット2:商品を高く売れる可能性がある

2つ目のメリットは、商談のオンライン化によりプレゼンテーションの仕方が変わったため、商品を高く売れる可能性があることです。

たとえば、食品の商談を対面で行う場合、サンプルを持って行き試食してもらうパターンが多いです。試食後、バイヤーさんから食品の値段を聞かれますが、他にも競合品があるため、それらと比べて「なぜ高いのか」と質問されることがあります。そこで初めて、商品のこだわりや差別化ポイントなどを説明するわけですが、高い理由を後から説明するので、どうしても言い訳のようになってしまうのです。

一方オンライン商談の場合、この順番が逆になります。つまり、最初に商品のプレゼンをしてから、試食してもらうという流れです。先に商品の特徴やベネフィットを説明することが、値段の高さに対する説得材料になります。その結果、高い商品でも売れやすくなったわけです。

中小企業におけるオンライン商談の進め方

ここからは、オンライン商談の具体的な進め方について解説します。海外販路を開拓するには、まずオンライン商談の機会を得ることから始まります。そのためには、JETRO(日本貿易振興機構)などが開催する商談会に参加するのがいいでしょう。

ジェトロ以外であれば中小機構や商工会議所、産業振興機構などが主催して商談会を開くこともあります。まずは、こうした公的機関を入口として利用するのがおすすめです。

特にジェトロは、食品に関しては一番多くの商談会を開催しています。食品分野でオンライン商談会を探している場合は、ジェトロのホームページを確認してみてください。

中小企業におけるオンライン商談に向けた準備

オンライン商談の機会を得られた後は、どのような準備をすればいいのでしょうか。オンライン商談に向けた準備としては、大きく2つに分けられます。

オンライン商談に向けた準備1:相手企業について理解する

1つ目は、相手企業について理解しておくことです。オンラインの商談の場合、相手企業の情報が載っている「バイヤーシート」という資料が主催者から送られてくるので、それをしっかり読み込んでおくといいでしょう。得られた情報を元に、相手企業へどのようなプレゼンや提案をしたらいいかを考えながら資料を作っていきます。

なお、バイヤーシートがない場合というのは少ないですが、もしない場合は主催者に確認してみてください。

オンライン商談に向けた準備2:視覚・聴覚に訴えられるプレゼン資料を作成する

2つ目は、視覚・聴覚に訴えられるプレゼン資料を作ることです。オンライン商談の場合、基本的に食品の試食などはできないため、視覚や聴覚に訴えかける資料作りがポイントになります。そのため、文字だけでなく、写真や動画を資料に盛り込むのがおすすめです。

たとえば、日本の伝統的な食品の製法を動画で見せると、海外の方からは良い反応を得られることがあります。他には、食品の食べ方などを動画で見せることで、「おいしそう」とか「食べてみたい」と思ってもらえることもあります。

「動画の用意にはお金がかかるのでは?」と心配な方もいるかもしれません。しかし、質にこだわりすぎなければ、スマートフォンにより自前で撮影・編集を行うことは十分可能です。

オンライン商談時のプレゼンテーションのコツ

次に、オンライン商談本番におけるプレゼンテーションのコツや注意点を解説します。まずプレゼンテーションのコツを4つ紹介します。

プレゼンテーションのコツ1:時間の使い方を事前に決めておく

1つ目は、時間の使い方を事前に決めておくことです。通常、オンライン商談は30~40分くらいの時間になりますが、この時間の使い方を前もって決めておくのが重要です。

特に商品が多い企業の場合、すべての商品を紹介してかなりの時間が経過していた、といったこともあります。このような事態は避けなければいけません。

事前に相手企業に適した商品を分析しておき、商品を2、3個に絞った上で提案してみてください。その後は、次項で説明するヒアリングを行うといいでしょう。

プレゼンテーションのコツ2:一方通行ではなく双方向のコミュニケーションを意識する

2つ目は、一方通行ではなく双方向のコミュニケーションを意識することです。商品説明を一方的に行うだけだと、プレゼンが終わった後に「どれもいまいちだな」という反応だった場合、成約につながらないからです。

これを防ぐため、プレゼンの早い段階からヒアリングを行い、要望に合った商品を提案するといいでしょう。たとえば、プレゼンの5~8分くらいの段階で、一旦、商品の説明を打ち切ってみてください。そして「今の段階で何か気になったものありますか」とか「どういったものが御社の国では求められていますか」といったことをヒアリングします。

相手の反応を確認したら、プレゼン資料を変えて「それでは、この商品はいかがですか」と提案してみましょう。相手の要望に対応できるよう、いくつかのプレゼン資料を事前に用意しておくのがおすすめです。

プレゼンテーションのコツ3:商談時に顧客と次のステップを共有しておく

3つ目は、商談時に顧客と次のステップを共有しておくことです。これによって、返事が来ないといった状況を避けられます。

たとえば、見積もりやサンプルを送った後に「今週中くらいに返事をいただけませんか」と伝えておくといいでしょう。相手から承諾を得られたり、来週でもいいかと提案されたりなど、次の約束事を決められます。

プレゼンテーションのコツ4:SNSなど、メールアドレス以外の顧客との連絡手段を確保する

4つ目は、メールアドレス以外の顧客との連絡手段を確保することです。LINEやWhatsAppといったSNSのほうが、相手との連絡がスムーズになります。

実際、メールでは1週間返信がないこともあるのに対して、LINEなら送信して3秒で返事が来ることもあります。なぜなら、営業が中心のバイヤーさんなどは、普段オフィスにいないためパソコンを開けず、基本的にスマホでやり取りをしているからです。

オンライン商談後のフォローアップマネジメント

次に、オンライン商談後の成約率を高めるためのフォローアップマネジメントについて解説します。ポイントは2つあります。

フォローアップマネジメントのポイント1:さまざまなツールを活用する

ポイントの1つ目は、さまざまなツールを活用することです。前述の内容とも関連しますが、フォローアップをしっかり行うには、LINEやWhatsAppといったSNSツールや、ZoomによるWeb会議などを使いこなすことが重要です。

フォローアップマネジメントのポイント2:文字ベースのやり取りであることを有効活用する

ポイントの2つ目は、文字ベースのやり取りであるのを、有効活用することです。商談の際は通訳を介してやり取りしますが、商談後に電話で話すことはほとんどなく、基本的に文字ベースでやり取りが進みます。

そのため、たとえ英語が得意でなくてもGoogleなどの翻訳機を活用すれば、しっかりとフォローアップしていくことが可能です。実際、もともと英語が得意でない方でも、翻訳機を使うことで、ほとんど問題なくやり取りを行えています。

Googleで英語以外を翻訳する際のポイント

Googleの翻訳機を使う際のポイントは、英語以外の言語の翻訳時に、英語を中心にして訳すことです。基本的にGoogle翻訳は英語が軸になっているので、中国語やベトナム語などを日本語に変換すると違和感のある文章になりやすいためです。

英語を読むのに問題がなければ、中国語やベトナム語などを英語に変換してから、その英語を訳すのをおすすめします。そのほうが正しい翻訳になり、メッセージの内容を理解しやすくなります。

逆に文章を作るときも、英語で案文を作成してから、必要な言語へ翻訳するといいでしょう。

商談を進める際は各国の法規制にも注意

特に食品に関しての注意点として、国によって使用できる成分や材料が異なることが挙げられます。国によって「この成分が入るとダメ」とか「こうした前準備が必要」といったケースがあるため、せっかく商談がうまくいってもストップしたり延びたりする恐れがあります。

とはいえ、どこの国と取引につながるか分からないので、事前の法規制調査は困難です。そのため、商談の時点で相手に確認しておくといいでしょう。

これから海外販路開拓に取り組みたいと考えている企業の方へ

海外販路開拓に取り組みたいと考えていても、輸出に取り組んだ経験がなく足踏みしてしまう方もいるかもしれません。しかし全く分からない状態でも、セミナーや模擬商談といった専門家のサポートを受けることで、見違えるほどプレゼンが上達した方もいます。

現時点で不安を感じている方も、まずは一歩踏み出して、アクションを起こしてみてはいかがでしょうか。

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海外進出の支援をしている組織や企業

今の日本経済の状況を見ると、各企業の海外進出という選択は決して大げさなことではありません。海外進出を狙っているのは大手企業だけにとどまらず、コアな技術を持っている中小企業にも十分チャンスはあります。

たくさんのメリットがある海外進出ですが、その反面、課題やリスクもあります。デメリットとなる部分も考慮して、国内には海外進出を支援する機関がたくさんあります。それぞれの機関は特徴や得意な支援サービスなど、いろいろな観点から比べることができます。今回の記事では、海外進出の支援をしている機関について紹介をします。

それぞれの機関の違いや、自社にあった支援機関の選び方なども細かく紹介します。

海外進出の支援をしている組織や企業

行政法人

ここでは行政法人の中から3機関を紹介します。

JETRO

名称 独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)
代表者 理事長:佐々木 伸彦
住所 〒107-6006 東京都港区赤坂1-12-32 アーク森ビル(総合案内6階)
電話番号 03-3582-5511(総合案内)

・特徴
ジェトロは経済産業省所管の独立行政法人です。70ヶ所を超える海外事務所を持ち、日本の輸出入の振興を目的として設立された組織です。海外市場の調査や研究に加え、日本企業の海外進出や、スタートアップ企業海外事業のサポートを行っています。

日系企業の海外進出支援においては、日本の農林水産物や食品の企業の海外進出支援、化粧品や日用雑貨の海外EC販売プロジェクトがあります。また、国外企業への日系企業投資サポートも行っており、広く国内・国外の貿易振興に取り組んでいます。

・受けられるサービスの種類
<輸出・海外進出支援>
計画段階から契約交渉まで、各フェーズに応じてのサービスがあります。ジェトロ独自の調査資料から進出するマーケット計画を行い、展示会や見本市にて具体的な輸出先(取引先)の決定もサポートしています。

<展示会やウェビナーの企画開催>
海外にて開催される見本市・展示会にジェトロジャパンブース(ジャパン・パビリオン)を確保し、そこへの出展をサポートしています。

また、海外マーケットの情報発信にも力を入れており、海外進出を考えている日系企業向けにオンライン説明会(ウェビナー)も頻繁に開催しています。

<サービス対象外の内容について>
貿易手続きなどの代行や、翻訳・通訳、契約書の内容判断など個別の実務代行は行っていないのでご注意ください。実務代行は民間企業へ有償で依頼する形になります。

・向いている企業
商社
製造業
建設業・土木各工事業・農業・林業・漁業・鉱業
マスコミ(新聞・雑誌・放送)・広告業・出版・印刷業
運輸・倉庫業・電気・ガス・熱供給・水道業・電話通信・不動産業
卸売・小売業・百貨店・スーパー
金融業・証券・保険業
コンピューター関連情報処理業・ソフトウェア業・情報提供サービス業
大学・研究機関・教育
コンサルタント(エンジニアリング・法律事務所・会計事務所)
その他のサービス業
非営利団体ほか各種組合・団体
その他(個人を含む)

上記は、独立行政法人日本貿易振興機構の公式HP(https://www.jetro.go.jp/)からの情報を元に記載しております。

中小企業庁

名称 中小企業庁
代表者 長官:角野 然生
住所 〒100-8912 東京都千代田区霞が関1-3-1 経済産業省別館
電話番号 03-3501-1511(代表)

・特徴
中小企業庁は中小企業の育成や発展、経営向上を目的としている行政機関です。中小企業をあらゆる方面から支援しており、その内容は経営サポート、金融サポート、財務サポートに渡ります。

中小企業支援の一環として海外展開の情報も扱っていますのでその内容をご紹介します。

中小企業庁は行政機関のため、海外展開を目指す中小企業・小規模事業者向けに各種支援施策や制度情報等を紹介するのみで、実際の業務サポートは行っておりません。

・受けられるサービスの種類
<セミナーの開催>
海外進出に関する情報共有の場としてオンラインセミナーを開催しております。過去のテーマとしては「中小企業による海外ECサイト活用促進セミナー」(令和2年5月29日)、「取引価値向上セミナー」(令和元年10月7日)などが開催されています。

<APEC中小企業大臣会合>
アジア太平洋経済協力域内での中小企業のデジタル化、グローバル・バリュー・チェーンの強化、起業家精神の醸成等に関する意見交換を行っています。

APECには民間企業は原則参加できませんが、その他にもワークショップやイベントが開催されているため、参加することで自社の取り組みの発表や意見交換を行うことができます。

・向いている企業
スタートアップ、ベンチャー支援を受けたい企業
再生支援を受けたい企業
海外展開支援を受けたい企業
小規模企業支援を受けたい企業
ものづくり(サービス含む)中小企業

上記は、中小企業庁の公式HP(https://www.chusho.meti.go.jp/index.html)からの情報を元に記載しております。

東京都産業労働局

名称 東京都産業労働局
代表者 局長:坂本 雅彦
住所 〒163-8001 東京都新宿区西新宿2-8-1
電話番号 03-5321-1111(代表)

・特徴
東京都産業労働局は、産業や雇用に関係する課題に対して様々な取り組みを行っています。対象の分野は、商工、金融、観光、農林水産、雇用就業の5分野です。

その中で海外展開支援は、主に「金融」分野との連携の中で資金支援をベースに海外進出サポートを行っています。

・受けられるサービスの種類
<東京都中小企業制度融資>
東京都中小企業制度融資では中小企業の幅広い資金需要に応じた支援を行っていますが、海外販路開拓のための資金融資も行っています。

特に東京都と連携している支援機関である、日本貿易振興機構(ジェトロ)、中小企業基盤整備機構、東京都中小企業振興公社が事業計画や施策を支援しますが、その施策に必要な資金を融資する形となっています。

なお、東京都中小企業制度融資の利用者が、特定の金融機関を経由してジェトロへの支援を申し込む場合、ジェトロに支払う金額の累計が1企業当たり50万円となるまで無料で支援を受けることができます。

・向いている企業
成長発展を目指すための資金を調達したい企業

上記は、東京都産業労働局の公式HP(https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/index.html)からの情報を元に記載しております。

一般社団法人・財団法人

次に、一般社団法人、財団法人の中から3機関を紹介します。

日本商工会議所

名称 日本商工会議所
代表者 会頭:三村 明夫
住所 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-2-2 丸の内二重橋ビル
電話番号 03-3283-7823

・特徴
日本商工会議所は商工業の振興を目的とした機関で、各商工会議所の調整や国内外の経済団体との円滑な連携を図り、様々な取り組みを行っています。

政策提言から、日商簿記検定試験などの各試験の実施、創業塾やものづくりに関する情報発信も行っています。

海外情報においては、「海外展開イニシアティブ」という枠組みで国際ビジネス情報の集約と発信を行っています。こちらも実務サポートではなく、情報発信のみになります。

・受けられるサービスの種類
<海外展開イニシアティブ>
商工会議所間での国際ビジネスに関する情報を吸い上げ、支援情報を会員企業に提供します。具体的にはセミナーの開催や商工会議所での好事例の共有で、ECを活用した販路開拓支援も行っています。

<国内海外展開支援施策情報の整理>
国内には様々な海外進出支援の政策や施策がありますが、それらをワンストップで情報収集し、会員企業への効率的な情報共有を行っています。

・向いている企業
海外展開フェーズを細かく把握しながら進めたい企業

上記は日本商工会議所の公式HP(https://www.jcci.or.jp/)の情報を元に記載しています。

日本代理店協会

名称 一般社団法人日本代理店協会
代表者 理事長:佐藤 康人
住所 〒154-0024 東京都世田谷区三軒茶屋1-32-3-1F
電話番号 03-3248-1500

・特徴
様々な業界の代理店が加盟する日本代理店協会は、代理店運営のマネジメントに対するコンサルティングや、メーカーに対する代理店指導や戦略のアドバイスを行っています。

代理店のコーチングプログラムや、業務アウトソーシング、市場調査など幅広いサービスを提供していますが、その一つとして海外進出支援も行っています。

・受けられるサービスの種類
<海外進出支援>
国内外で開催される展示会への出展支援や、事業展開対象国のマーケット調査、現地企業のマッチング支援を行っています。

海外展開している代理店企業の情報も広く有しており、特定の国や業界に強い代理店の紹介やマッチングに強みがあります。

・向いている企業
代理店や加盟店として活動しているが次の展開が分からない企業
自社に合った代理店やフランチャイズの探し方が分からない企業

上記は日本代理店協会の公式HP(https://j-dma.org/)の情報を元に記載しています。

Glocal Solutions Japan

名称 一般社団法人Glocal Solutions Japan
代表者 代表理事:深野 裕之
住所 〒102-0073 東京都千代田区九段北1-12-4 徳海屋ビル2階3号室
電話番号 03-4595-0127

・特徴
Glocal Solutions Japanは、海外進出支援に特化した一般社団法人です。日本から海外、海外から日本の両方向でビジネスのグローバル展開を支援しています。

海外の市場調査から、営業代行、マーケティング支援、業務効率化など一歩踏み込んだ実務サービスを提供しています。

また各民間企業の専門家が多数在籍し、会社設立手続きから製品企画、知財戦略に至るまで具体的なサポートを受けられます。

・受けられるサービスの種類
<調査関連>
実際に販売をする予定の商品やサンプルを用い、海外販売店へのヒアリングを行います。机上の市場調査だけでなく、実際の商品を実際の顧客に見せ意見を聞くことにより、精度の高いマーケティング調査ができます。

<営業支援>
プレゼンテーション資料の作成から、商談時における通訳まで実際の業務にまで踏み込んだソリューションを提供しています。また、販売代理店のマッチングも行っており、実際の商談サポートと顧客開拓の両面からサポートする体制があります。

<DX支援>
受発注管理システムの構築などのシステム・ソリューションやWebマーケティングを用いた集客施策など業務のデジタル化に対する支援も行っています。

海外へのEC販売や、問い合わせ創出の仕組みを作ることもでき、オンライン対策にも力を入れています。

・向いている企業
実際の業務のアウトソースなど、実務レベルで海外進出のサポートを求めている企業
法務、IT、翻訳、会計など様々な専門家のアドバイスを受けたい企業

上記は一般社団法人Glocal Solutions Japanの公式HP(https://glocal-solutions.org/)の情報を元に記載しています。

営利法人(海外進出支援)

次は、営利法人(海外進出支援)の中から3企業を紹介していきます。

株式会社HIS

名称 株式会社エイチ・アイ・エス
代表者 代表取締役会長:澤田 秀雄
住所 〒105-6905 東京都港区虎ノ門4-1-1 神谷町トラストタワー5階
電話番号 03-5205-1515(グローバルビジネスアドバンス)

・特徴
旅行代理店で有名なHISですが、各国の拠点を通じた情報収集や現地コーディネーション力を活かし、法人向けに海外進出支援サービスを提供しています。

海外企業とのコミュニケーションが得意で、商談アポの取得や現地車両の手配などのコーディネートをすることができます。

・受けられるサービスの種類
<視察>
特定の製品や食材などテーマを決めて、その分野の第一線の国での視察旅行を計画します。旅行業で培った現地の情報網を通じて、効率的な訪問工程を組むことができます。

<中国越境ECサービス>
Tmall国際、京東、RED、VIP、Kaola、PINDUODUO、SUNINGなど、中国の連携先のECプラットフォームによる製品販売のサポートをします。オンラインモールへの出店だけでなく、プロモーション全体の提案も行うことができます。

<ビジネスマッチング事業>
海外での販売店や顧客の企業リストを作成し、マッチング候補対象を提案します。商談が決まった企業へのアポイントメント調整や、実際の現地訪問の際には現地拠点スタッフが同行し、商談時の専門通訳の手配なども行うことができます。

・向いている企業
現地のアポイントや車両手配などのコーディネートも求めている企業
通訳や企業アポなど現地企業とのコミュニケーションに不安がある企業

上記は株式会社エイチ・アイ・エスの公式HP(https://www.his-j.com/corp/)の情報を元に記載しています。

INTLOOP株式会社

名称 INTLOOP株式会社
代表者 代表取締役:林 博文
住所 〒107-0052 東京都港区赤坂2-9-11 オリックス赤坂2丁目ビル6F
電話番号 03-5544-8040

・特徴
INTLOOPはコンサルティング企業で海外進出支援も行っています。「TENKAI」という中国・香港・東南アジアへの海外進出に特化した情報サイトも運営し、特にアジア・東南アジアへの進出を得意としています。

・受けられるサービスの種類
<展示会出展支援業務>
展示会や会場選定、ブースレイアウトの設計、施工人員の手配など、出店に必要な業務を代行します。

<販路開拓支援>
現地の数百社にのぼる弊社の取引先に対して、継続的な営業支援活動を行っています。

<SNSマーケティング・ECサイトの立ち上げ>
著名人やインフルエンサーを起用し、SNSでの商品プロモーションを行うことができます。また、ECサイトの立ち上げでは、オンラインモールの出店だけではなくブランド単独でのサイト立ち上げも行うことができます。

・向いている企業
販売戦略から実行支援までコンサルタントと並走して業務を進めていきたい企業

上記はINTLOOP株式会社の公式HP(https://www.intloop.com/)の情報を元に記載しています。

株式会社Resorz

名称 株式会社Resorz(リソーズ)
代表者 代表取締役:兒嶋 裕貴
住所 〒162-0844 東京都新宿区市谷八幡町2-1 DS市ヶ谷ビル3階
電話番号 03-6228-1801

・特徴
Resorzは日系企業の海外進出支援に特化したサービスを展開しています。海外求人・メディアの運営、海外への業務委託支援サービスなどを通じて、海外ビジネスに関する支援事業を行っています。

・受けられるサービスの種類
<海外ビジネス支援サービス>
海外の代理店探しや、海外視察のコーディネート、通訳や車両手配、海外ビジネス展開研修サービス、会員制コミュニティをサービスとして提供しています。

<海外ビジネスメディア>
Digima News(https://www.digima-news.com/)、Digima Juarnal オンライン(https://www.digima-japan.com/knowhow/)の2つのメディアを運営しています。

海外現地のローカルメディアと連携し、各地のビジネスニュースを配信したり、海外ビジネス専門家からの寄稿記事も提供しています。

<海外ビジネスイベント>
海外ビジネスのイベントである「海外ビジネスEXPO」「海外ビジネスサミット」を開催しています。海外ビジネスに関するあらゆる情報やサービスが集まる総合展示会です。

・向いている企業
オンラインで販路開拓したい企業
有効なプロモーション方法を探している企業

上記は株式会社Resorzの公式HP(http://www.resorz.co.jp/)の情報を元に記載しています。

営利法人(海外Webマーケティング)

最後に、営利法人(海外Webマーケティング)の中から3企業を紹介していきます。

BEENOS株式会社

名称 BEENOS株式会社
代表者 代表取締役 執行役員社長兼 グループCEO:直井聖太
住所 〒140-0001 東京都品川区北品川4-7-35 御殿山トラストタワー7F
電話番号 03-5739-3350

・特徴
BEENOSはEコマース事業とビジネス支援事業を手掛ける企業です。海外への販売も可能なグローバルコマースを運営し、EC販売に関連する様々なサービスを提供しています。

・受けられるサービスの種類
<グローバルコマース>
「Buyee」「セカイモン」「転送コム」「FASBEE」などの海外向けECプラットフォームを開発・運営しています。自社の製品にあったサイトを選び、効率的に海外販売を実現することができます。

・向いている企業
ECサイトをベースに海外への販売を行いたい企業

上記はBEENOS株式会社の公式HP(https://beenos.com/)の情報を元に記載しています。

世界ヘボカン株式会社

名称 世界へボカン株式会社
代表者 代表取締役:徳田 祐希
住所 〒170-0013 東京都豊島区東池袋4-39-1 ナルハマビル3F
電話番号 03-5207-2780

・特徴
海外向けのWeマーケティングに特化した企業です。インターネットマーケティングによる市場調査、リスティング広告、SEO対策などを実行支援しています。

・受けられるサービスの種類
Webマーケティングの戦略立案、Webサイト改善コンサルティング、Shopify越境EC構築、製造業・メーカー向け海外ウェブサイト制作、英語リスティング広告、英語コンテンツマーケティングなど、海外向けのWebマーケティングを包括的に提供しています。

・向いている企業
Webマーケティングによってリードの獲得や製品販売を行いたい企業
海外向けの英語版のコーポレートサイトなどを制作したい企業

上記は世界へボカン株式会社の公式HP(https://www.s-bokan.com/)の情報を元に記載しています。

テクノポート株式会社

名称 テクノポート株式会社
代表者 代表取締役:徳山 正康
住所 〒135-0064 東京都江東区青海2丁目7-4 theSOHO-710
電話番号 03-5579-6528

・特徴
製造業に特化したWebマーケティングを行う会社です。高度な技術を持つ製造業のサイト制作や技術ライティングを得意としており、日本の製造業の海外進出支援にも力を入れています。

また「モノマド」というサプライヤーや共同開発のパートナーマッチングサービスも行っており、製造業の業績向上をWebマーケティングから支援しています。

・受けられるサービスの種類
<サイト制作>
BtoB製造業に特化したWebサイトの制作やリニューアルを行っています。BtoBの購買決定においてもオンラインでの情報収集が主となっているため、競合や市場を見据えたコンテンツ設計を行い、オンラインからの新規顧客創出を効率的に実現します。

<技術ライティング>
高度な技術力も持つ製造業がオウンドメディアやコーポレートサイトにコンテンツを投稿する場合は、通常のWeb制作会社はその専門性の高さゆえに対応が難しいケースが多々あります。

その中で製造業に精通したコンサルタントがコンテンツ設計を行い、実際に製造業の第一線で働いている技術系ライターが高品質な記事を作成します。

・向いている企業
BtoB製造業の企業
技術系マーケティングで課題を解決したい企業

上記はテクノポート株式会社の公式HP(https://techport.co.jp/)の情報を元に記載しています。

自社にあった支援機関の選び方

ここまでにたくさんの機関や企業を紹介してきましたが、自社にあった支援機関をどのように選べばよいかを各法人別に紹介していきます。

行政法人

海外進出にコストをかけられない企業におすすめです。

無料相談で幅広い情報収集から、低コストで準備を進めることが可能です。

また資金調達ができる可能性もあるので、すすんで相談をすることをおすすめします。

一般社団法人・財団法人

行政では発信されないような、一歩踏み込んだ情報がほしい企業におすすめです。

ツールに関してもメルマガや動画コンテンツなどがあり、着手しやすくハードルを低くしてくれるのもメリットです。

営利法人(海外進出支援)

有料ではありますが、踏み込んだ形で具体的に実務としてサポートしてもらえます。

自社にマンパワーやリソースが足りないなどの課題がある場合でも、一部の業務をアウトソースすることができます。

細かく手の届いたサポートを受けたい企業におすすめです。

営利法人(海外Webマーケティング)

Webマーケティングを効率よく集客したい、コンテンツを上手に活用したい、外国語でネット売り込みするのが難しいなどの企業におすすめです。

Webマーケティングは自社のみだと、どうしても技術的にもリソース的にも難しいというケースがあるのではないでしょうか。

まとめ

海外進出をサポートしてくれる組織やサービスは、日本国内にも豊富にあります。

それぞれの組織の特性を理解し、まずは一歩踏み出し相談してみることで知見を広められるでしょう。

ぜひ様々なサービスを利用して、事業の成功に近づいていきましょう。

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中小企業のための海外販路開拓の進め方

製造業のエンジニア兼、Webライターの大城です。

今回は動画のまとめ記事です。テーマは中小企業のための海外販路開拓の進め方について。

コロナ禍で海外展開がうまくいかず困っている方や、これから海外展開を検討している方に、製造業が海外販路開拓を進める方法について紹介します。

【講師】
深野裕之
一般社団法人「グローカルソリューションジャパン」代表理事・認定専門家
NPBトレーディング株式会社 代表取締役

これまでに47ヵ国に新規の販路開拓をしてきた経験と人脈を活かし、これから海外事業を始めたい企業、なかなか海外事業の成果が出ずに悩んでいる企業をサポートしている。

動画はこちらから

海外販路開拓の方法6選

海外販路開拓には次の方法があります。

1.展示会への出展

海外の展示会に出展してみることが王道のパターンです。しかし、コロナ禍の影響で一般の展示会が相次いで中止になり、オンラインで開催される機会が増えてきました。対面では、偶然に商品を見つけ、そこから話が広がる場合がありますが、オンライン展示会は事前に検索されて興味がある企業しか見てくれない分、自社の製品が認知されにくくなってきています。これからはオンライン展示会への出展を意識して、以下を実施しましょう。

  • 自社のマーケットに合致した展示会を選ぶ
  • 直接会うことのできない海外の取引先に直接問い合わせる
  • 商談の準備をする

2.越境ECを使う

越境ECとは、インターネットを活用して日本国内から海外へ向けて商品を販売するEC(電子商取引)のことです。例えば、健康食品を輸出する場合にはいろいろな許認可が必要になるのですが、越境ECではこれらをスキップできるので、海外に自社製品を販売するまでのプロセスが早く済みます。

3.公的機関の活用(オンライン商談会)

JETRO※では、「オンライン商談会」という会が行われており、オンラインで自社に合った商談相手をマッチングする機会を設けています。

※JETRO(日本貿易振興機構)とは、対日投資の促進や中小企業の海外展開の支援を行う独立行政法人です。

4.クラウドファンディング

クラウドファンディングで海外からの出資を募ることで、問い合わせを得る企業が増えています。

5.販路開拓の会社を活用

グローカルソリューションのような販路開拓の会社を活用することで効率的に販路開拓を進めることができます。

6.現地のネットワークの活用

既に販路を持っている会社や、現地で販路開拓会社とパートナーになっている会社から紹介してもらう方法です。

海外販路開拓の具体的な進め方

ここからは海外販路開拓の具体的な方法を紹介します。

まず、「周りの同業者が海外販路開拓をしているから」という理由で直感的に販路開拓を決めてしまうのはおすすめしません。事前に十分な情報収集が必要です。

海外の情報がない中で海外展開を進めていく場合は、国内の実績をもとに「仮説」を立てていくことが重要です。まず、「国内のお客様が自社の何を評価しているのか」を事前に理解し、海外で自社が優位性に立てる部分は何なのか、仮説を立てておきます。

次に、販売店から情報を収集します。販売店は、自社の強みが一番生きる販路を持っていそうな販売店を探します。販売店と商談がうまく話がまとまらなかったときは、「なぜ販売店が自社の商品を売っていこうとしなかったのか」をしっかりヒヤリングすることで、営業しながらリサーチしていくことができます。調査に資本をかける余裕のない中小企業には効率的な調査方法です。

販売店の他にも、自社と競合せず、同じお客様を共有できそうな日本メーカーから情報を得る方法もあります。その企業が取引しているお客様を紹介してもらうことで空振りが少なくなります。

また、思わぬところで、自社の製品が海外で使われる例もあります。
例えば、自社の製品が日本経由で購入されて、中国の工場に行き、現地のどこかの会社がメンテナンスで使用する、というケースです。そのメンテンナンスを行っている会社が分かれば、現地のお客様を紹介してもらうのも有効な手段です。

メーカー・サプライヤーの海外進出戦略

海外販路の進め方や注意するポイントは、メーカーとサプライヤーで異なります。

メーカーの場合、自社を評価してくれるお客様と同じような海外の企業を販売先として持っている販売点を探すことが大事です。

サプライヤーの場合、自社の商品を調達しそうな会社から情報収集をします。調達部に直接「どんなことに困っているのか」をヒヤリングします。

JETROでは、現地にどんな日系企業が進出していて、現地にどんなサプライヤーがいるのかを調べることができます。そこから自社のお客様になり得る会社や、自分たちの業界が飽和しているか、もしくは足りていないのかを調べます。

現地への供給方法としては日本から供給する場合と現地で供給する場合が考えられますが、輸送コストの面から現地での供給を考えたほうがいいでしょう。

現地での供給方法は次の選択肢があります。

  • 自社で工場を出す
  • 委託先を探す
  • 合弁会社を探す

お客様にメリットが出るような技術や加工製品があれば、日本からの供給でもうまく行く可能性がありますが、よりニッチなマーケットに入っていくことが重要です。

日本でできる海外進出情報の集め方

先にお伝えした通り、海外進出において事前の情報収集は欠かせないのですが、どのような情報収集の方法があるのでしょうか。

JETROの短信ニュース

日経新聞や日刊工業新聞にJETROの短信ニュースが掲載されることがありますが、現地の情報が要約されていて読みやすくなっています。

現地のビジネス情報メディア

今はWebの翻訳機能が優秀になっているので、現地の言語を知らなくても違和感なく読めます。できればニュースで言っていることが本当なのかどうか、現地の経営者に聞くことが望ましいのですが、ここまでやるにはある程度人脈を築くことが大事です。

「LinkedIn」の活用

LinkedInはビジネスをする目的でできており、世界で6億人以上のユーザーが使用しているSNSです。使われる頻度の多い英語で情報発信をすることが重要です。LinkedInで海外の経営者や取引先と繋がることができれば、その人が転職したとしてもすぐ連絡が取れます。

これから海外進出をお考えの製造業の方へ

まず、海外展開する前に「日本と海外ではニーズもライバルも全然違う」ことを受け入れる必要があります。
一方で、日本で評価されている技術や製品というのは海外でも十分通じる可能性があるという自信を持ちましょう。

大切なのは、自社の強みをしっかりと把握することです。
そしてニッチで尖ったところだけで勝負する、絶対勝てる自信があるところだけで勝負する、という考え方が大切です。
そのために、Webでの発信を強化して、自分たちが勝てるところはどこなのかを特定しましょう。

「何となく海外に出ていって、メイドインジャパンだから人気が出る」という時代は残念ながらだいぶ前に終わっています。

いかにピンポイントで自分たちが勝てるところで勝負するか、ということが大切です。

販路開拓会社の「グローカルソリューションジャパン」は【的確な戦略】と【販路開拓のアドバイザリ】をできる専門家が揃っています。

海外販路の開拓を自分たちでやるには難しいと感じている方は、お気軽にご相談ください。

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【実例あり】海外市場調査の5つの調査項目と具体的な調査方法を解説

テクノポートの稲垣です。この記事は、以下のような課題を抱えている方に読んでいただきたい内容になります。

▶︎「海外市場調査」とは何?
▶︎海外市場調査の必要性はある?
▶︎海外市場調査の具体的な方法は?
▶︎実際に海外市場調査を行なった例は?

そこで、この記事では以下の内容について解説します。

・海外市場調査について(定義、目的、必要性)
・海外市場調査の具体的な方法(調査項目、情報の収集方法)
・海外市場調査を行なっている企業の実例

テクノポート株式会社は、製造業の「海外販路開拓」を支援しています。

無料で資料をダウンロードする

海外市場調査の必要性

ここでは、海外市場調査の定義と、海外市場調査を行う目的を説明します。

「海外市場調査」とは?

海外市場調査とは「海外の進出候補国の市場を調査し、自社がその市場に参入できる余地があるかを確認すること」を言います。

海外市場調査の必要性(目的)

海外市場調査を行う最大の目的は「自社の海外進出の失敗確率を下げる」ことです。具体的には「自社の進出目的やビジネスモデルに適切な進出国を見極める」ことが目的です。
一般に海外進出には、以下の2種類の費用がかかります。(詳しくはこちらの記事を参照ください)

①準備費用
・情報収集コスト(例:市場調査費、現地調査のための渡航費、人件費)
・Webサイト関連コスト(例:海外販路開拓用のWebサイトの構築、運用費用、現地語への翻訳コスト)

②現地で事業を開始するための費用
・海外法人設立費用(例:事務所を作成し登記するための事務費用)
・ビザ発行費・ライセンス費(例:現地での労働ビザ発行費用、業種によってはライセンス費)
・事務所家賃(例:事務所を賃貸で借りる場合に発生)

仮に海外進出に失敗(撤退)してしまった場合、これらの費用が意味をなさない可能性があります。したがって、海外市場調査を入念に行うことで、海外に進出してから失敗(撤退)する確率を、可能な限り下げておく必要があると言えます。

また、調査の目的は「適切な進出国を見極める」ことであるため、調査結果によっては候補国に進出しないほうが良い、という結論が導かれる可能性も十分にあると言えます。

海外市場調査の5つの調査項目

次に海外市場調査で調べるべき5つの調査項目を紹介します。

①市場規模・成長率

自社製品(もしくは類似する他社製品)の「現地における市場規模」と「現在までの成長率」を調べます。

市場規模の大きさと成長率は、特にアジアの市場は変化が早く、先進国で数年かかった技術革新が1年ほどで完了することもあるため、最新の情報を収集する必要があります。

メーカーの場合

メーカーが市場規模を調査する場合、「製品の価格帯別の市場規模」「現地顧客の所得水準」「自社製品と同じ価格帯の他社製品の売れ行き」は最低限必ず調査しておく必要があります。

加工業の場合

加工業が市場規模を調査する場合、「納入先が販売する最終材が現地市場で今後も順調に伸びていく見込みがあるのか」を調査する必要があります。具体的には、納入先の移転の可能性、工場停止の可能性を調査します。

②潜在顧客

具体的に自社の製品・技術を購入してくれる「取引先候補のリスト」を作成します。

この潜在顧客のリストは、進出後数年の売上計画を立てる上でも、営業候補先も決める上でも重要な役割を果たします。

製造業の場合

製造業が潜在顧客リストを作成するときには「日系の潜在取引先」に加えて「他国からの外資企業」「地場企業」を確認しておく必要があります。加えて、現地の同業他社の流通経路(例:どのように部品、原材料を調達しているのか)も併せて確認しておくと、競合のビジネスモデルを理解するときに役立ちます。

③同業・競合他社

進出候補国の同業他社、競合他社の調査を行います。具体的には、以下のような点を調べる必要があります。

情報収集項目
現地業界の地場有力企業 提供する付加価値、収益を得る仕組み
以前から進出している外資企業、日系企業の現地法人 提供する付加価値、収益を得る仕組み
現地で成功している企業 品質、価格、納期
現地企業、現地外資企業 製品の品質、価格、納期
現地業界の特徴 生産規模が最低どのくらい必要か、自社が他社に対して保持する優位性は何か
業界組合 業界組合があるか、ある場合はどのような活動を行なっているか
地場企業と外資企業の関係性 対立構造があるか、ある場合の要因は何か、宗教的な製品に関する基準や観点は関係するか

④仕入れ先

進出候補国内において自社製品製造のための原材料や部品の供給元があるかを調べます。

特に注意して調べることとして、以下のような項目が挙げられます。

原料に天然資源が含まれる場合

供給業者が公社など政府機関や国営企業であったり、国の規制や慣行から取り扱いができる業者が限られていないか(外資企業が直接調達できるかどうかも調べる)

原材料の供給が進出先以外の国からの輸入になる場合

直接費用(例:関税、輸送代金)と間接費用(例:材料や製品の在庫維持費)を考慮し、コストが合うかどうか

現地の日本企業から新規に部品を調達する場合

安定的に部品を調達してくれるのか

⑤新規参入障壁

進出先の市場に自社が新たに参入する場合の参入障壁の高さを調べます。

参入障壁は低ければ低いほど良いわけではありません。なぜなら参入障壁が高いことは、自社の競合先が追いかけて参入してくる際の障壁も高いことを意味するためです。

参入障壁の例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 進出先の国内の業界規制(例:会社設立は可能でも、現地での営業権が与えられない場合)
  • 一定の設備投資が進出の条件となる場合
  • 販売ルートの確立に費用と労力がかかる場合
  • 現地の有力企業がすでに競合と提携を結んでいる場合(例:現地の有力企業と提携を結ぶことを考慮している場合)

この中でも、1つ目の「進出先の国内の業界規制」は国内での調査が困難であるため、現地の同業者へのヒアリング、もしくは専門家への調査依頼が必要になります。

また、2つ目の「一定の設備投資が進出の条件となる場合」は、進出の際だけではなく、撤退の際も障壁になることを念頭に置く必要があります。

具体的な情報収集方法5選

次に具体的な情報収集の方法を5つ紹介します。

①公開情報

1つ目の方法は、公開情報を利用することです。特に信頼できる機関が発信している情報を優先的に使用することをおすすめします。

信頼できる機関が発信している情報の例として、以下のようなものが挙げられます。

情報の種類 代表的な情報源
進出候補国の基礎的な情報 JETROやアセアンセンターのWebサイトに掲載されている情報
会計・税務情報、現地の法律に関する情報 会計事務所、法律事務所のWebサイトに掲載されている情報
海外進出全般に関わる情報 公的機関および海外進出支援機関が行うセミナー、およびセミナーで配布される資料
外資規制に関する情報 進出先候補国の政府の外資誘致担当部署のWebサイトに掲載されている情報

②専門家

①公開情報だけでは収集しきれない、進出候補国の業界情報、現地の有力企業に関する情報は、専門のコンサルタントに調査を委託する方法があります。

専門家に頼るのではなく、自社の社員による出張調査という手段もありますが、時間とコストがかかる上に、経験不足により思ったような情報が得られない可能性があります。

中小企業が注意すること

中小企業が専門家に委託調査をお願いする場合、大手日系コンサルティング企業へ調査を委託することはやめた方が良いと言えます。理由は、費用が高い上に、現地からの生の声が聞けなくなるため、費用に見合った成果が得られないケースがあるためです。(詳しくはこちらの記事を参照ください)

したがって、中小企業がなるべく費用をかけずに調査を行う場合、現地の調査会社に直接依頼する方法が無難と言えます。現地の調査会社を選定する際は、調査会社ができるだけユーザーに近い場所に所在しており、十分な調査実績がある会社を探して調査を依頼するほうが良いと言えます。

調査会社の探す方法として、信頼できる経営者仲間に紹介してもらう方法も有効であると言えます。以上のような方法がいずれも現実的ではない場合、進出候補国に自社より先んじて進出している同業の企業、もしくは競合しない企業の日本本社に赴いて情報収集を行うことも視野に入れましょう。

③本邦事務所

進出先の政府機関などの本邦事務所(各国の政府機関の事務所)が日本にある場合、訪問して情報収集を行う方法があります。

本邦事務所には、投資認可に関する最新の情報が揃っており、自社の投資計画に関する意見をもらえる可能性があります。また本邦事務所のスタッフは、日本企業の進出を支援することが仕事であるため、出張に先立ち現地本庁への確認や自社のPRポイントも考えてくれることがあります。

本邦事務所の例としては、以下のような機関が挙げられます。(リンクは別タブで開きます)

本邦事務所
韓国 大韓貿易投資振興公社(KOTRA)
マレーシア マレーシア工業開発庁(MIDA)
インドネシア インドネシア投資調整庁(BKPM)
タイ タイ投資委員会(BOI)
インド インド商工省産業政策振興庁(DIPP)
フィリピン フィリピン投資委員会(BOI)

④自社Webサイト

外国語でWebサイトを制作し、現地取引候補企業からの反応を調査する方法です。(外国語で各国の需要調査を行う具体的な方法は、後日別記事で解説予定です)

自社Webサイトを制作し、運用することで海外の顧客からの反響度合い、顧客の属性、海外の企業が抱えている課題を直接情報収集できます。

外国語Webサイトを作るにあたり、進出候補先の候補が絞りきれていない場合、英語サイトを作り全世界向けに情報発信を行い、反響が大きかった国に焦点を絞って候補先を選定する方法が一般的です。(英語サイトで反響を出すまでの流れはこちらの記事を参照ください)

一方、進出候補国が数カ国に絞れている場合、進出候補先の言語でWebサイトを制作し、現地企業からの問い合わせ獲得を狙う方法が効果的です。

⑤現地出張

国内での情報収集を一通り終え、進出候補国が絞り込めた場合、現地出張を行う方法があります。(現地出張の情報収集の具体的な方法は別記事で解説予定です)

現地出張では、以下のようなポイントに気をつけて情報収集を行いましょう。

現地でしか得られない情報を収集する

現地では、アポイント先からのヒアリングを中心に、現地でしか得られない情報を収集します。事前に用意した質問に対する回答を集める方法が効果的です。

アポイント候補先の例として、以下のような訪問先が挙げられます。

訪問先 収集する情報の例
現地政府機関 外資誘致の条件
現地の公的機関、金融機関、すでに進出している会社 自社が現地で予定している事業内容に関する意見

国内で収集した情報の確認

国内で収集した情報の確認を行います。現地で新しい情報を獲得することと同じくらい、国内で得た情報が正しいのかを現地で確認する作業も重要であると言えます。

海外市場調査の実例紹介

最後に海外市場調査を行い、世界中の企業から問い合わせを獲得している企業の例を紹介します。今回の例は、先ほどの海外市場調査の情報収集方法の中でも「④自社Webサイト」を使った事例になります。

株式会社メルテック

本社 千葉県流山市
社員数 100名
事業内容 フォトエッチング加工、エンコーダ用スケールの設計、製造、販売
取材記事 英語サイトで「海外の新規顧客開拓」と「製品の需要調査」を実現

こちらの企業は、英語サイトの制作・運用を通して、取引を拡大させたいヨーロッパの企業を中心に、世界中の企業から自社製品に対してどのような反応が得られるのか、を調べることを目的に海外市場調査を実施しました。

現在では、ヨーロッパ(フランス、イギリス)、アメリカ、カナダの企業からの問い合わせが来ているため、進出候補先を絞るための貴重な情報源として活用しています。

まとめ

本記事では、以下の内容を解説しました。

  • 海外市場調査の必要性(目的):自社の進出目的やビジネスモデルに適切な進出国を見極める
  • 海外市場調査の5つの調査項目:①市場規模・成長率、②潜在顧客、③同業・競合他社、④仕入れ先、⑤新規参入障壁
  • 具体的な情報収集の方法5選:①公開情報、②専門家、③本邦事務所、④自社Webサイト、⑤現地出張

海外市場調査を行う上で、本記事の内容が参考になれば幸いです。

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【2021年版】中小製造業が海外進出で失敗する3つの理由と対策

テクノポートの稲垣です。この記事は、以下のような課題を抱えている方に読んでいただきたい内容になります。

▶︎中小企業の海外進出が失敗する主な原因は?
▶︎海外進出の失敗の影響を抑えるために必要な準備は?
▶︎海外進出で失敗しないための戦略は?

そこで、この記事では以下の内容について解説します。

・中小企業が海外進出に失敗する3つの理由
・中小企業が海外から撤退できた要因3選
・中小企業が海外進出で失敗しないための戦略

なお本記事で使用するデータは、すべて参考文献へのリンクを記載しています。ご自身でデータの内容を確認したい方は、ご参照ください。

この記事を執筆しているテクノポート株式会社は「外国語サイトの制作・運用のサポート」を通して、企業様の海外販路開拓を支援しています。(サービスの実績はこちらからご覧いただけます)

「海外進出支援サービス」の詳細はこちら

中小企業が海外進出する割合

失敗する理由に入る前に、まずどれくらいの中小企業が海外展開しているのかを確認します。

こちらの図は、中小企業庁が1997年から2018年における「中小企業の海外展開比率」を表したグラフです。


参考資料:中小企業庁:2021年版「中小企業白書」 第3節 グローバル型・サプライチェーン型企業の目指す方向性と支援の在り方

グラフが示す通り、中小企業の海外展開の動き(直接輸出と直接投資)はともに増加傾向が続いており、統計が開始された1997年の時に比べ、どちらも約5%の増加が確認できます。

日本企業の海外拠点数を調べたこちらの記事でも解説しているように、ASEANを中心しとたアジア諸国への進出が特に目立ちます。

参考記事


海外進出に失敗する3つの理由

「海外進出の失敗」とは?

本題に入る前に、この記事における「海外進出の失敗」という言葉の定義を明確にしておきます。

この記事では海外進出の失敗とは、撤退という意味と同義になります。厳密には「本国の親企業が在外子会社の企業活動に対する支配を放棄すること」と定義します。(参考文献:日本企業の海外進出と撤退についての一考察

結論

それでは、本題の海外進出に失敗する3つの理由を紹介します。

結論からまとめると、海外進出で失敗する3つの理由は「①現地市場での売上の減少」「②輸出の低迷」「③コストの増加」です。これらの理由は、2020年12月の日本貿易振興機構の「2020年度 海外進出日系企業実態調査」のデータを参照しています。

以下では順にそれぞれの要因について解説します。

①現地市場での売上の減少

回答グループ 「事業縮小もしくは移転・撤退の理由」として回答した割合, %
製造業全体 46.0
中小企業(非製造業含む) 50.9

最も大きな理由とも言えるのが「現地市場での売上の減少」です。

こちらの理由が原因で事業縮小もしくは移転・撤退をした回答した企業は、大企業、中小企業関わらず最も高い比率となっています。

製造業の場合、東南アジアにおいて現地の日本企業から獲得していた案件が急になくなる(もしくは規模が縮小する)ことによって利益の確保が難しくなることが典型的なケースとして挙げられます。

タイのバンコクに拠点を構えて、現地の日本企業向けに部品調達を行っていた会社が、急に仕事がなくなり現地企業から新規の仕事を獲得するか、撤退するかの選択を迫られるケースもあると言われています。

②輸出の低迷

回答グループ 「事業縮小もしくは移転・撤退の理由」として回答した割合, %
製造業全体 51.2
中小企業(非製造業含む) 36.6

製造業全体で見ると、先ほどの「現地市場での売上の減少」より高い比率であったのが「輸出の低迷」です。

輸出が低迷する原因として、物流コストが上昇傾向にあることが挙げられます。物流コストの上昇にともない、海外に拠点を持つ日本企業が生産部品供給を現地で完結させたいという需要が強まり、結果として輸出に対する需要が低迷していると考えられます。

例えば、以前は中国から部品を輸入していたベトナムの日本企業メーカーが、物流コストを抑えるために現地の部品供給先に切り替えます。この動きによって、中国からの部品供給が低迷するといった流れです。

③コストの増加

回答グループ 「事業縮小もしくは移転・撤退の理由」として回答した割合, %
製造業全体 37.0
中小企業(非製造業含む) 30.8

こちらの「コスト」とは、主に原材料・部品の「調達コスト」「人件費」のことを指します。

調達コストの上昇は、物流コストの上昇の影響を受けていることが主な原因であると考えられます。調達コストが増加した結果、利益の確保が難しくなり、撤退の選択を迫られる企業が多いと言えます。

人件費の問題については、近年では中国を含めたアジア諸国の人件費の高騰が続いていることが関わっていると言えます。アジア諸国の人件費が高騰している主な理由として、現地の低賃金労働者が収入の増加を目的に海外へ出稼ぎに行くことが増えていることが挙げられます。

海外から撤退できた要因3選

次に海外からの撤退経験を有する日本企業が、撤退できた要因として挙げた3つの取り組みを紹介します。なおこれらのデータは、「中小企業による海外撤退の実態 −戦略的撤退と撤退経験の活用−」のデータを参考にしています。

それでは要因として挙げた企業の比率が高いものから順に紹介します。

①独資での進出(回答企業の比率:37.0%)

撤退できた要因として最も挙げられたのが、「独資での進出」です。一般に独資で法人を設立するメリットとして「製品や技術情報の流出リスクが少ない」ことや「経営の自由度が高い」が挙げられますが、撤退の際にも、特に後者の「経営の自由度が高い」ことが有利に働くと言えます。(一方で、独資での法人設立のデメリットは、投資資金が高く、現地での販路開拓が難しいことが挙げられます。詳しくはこちらの記事を参照してください)

一方で、合弁で法人を現地に設立する場合は、進出前の段階であらかじめ撤退の基準を明確に決めて、進出前にパートナー企業と合意形成をしておく必要があると言えます。

②撤退の決断の早さ(回答企業の比率:33.3%)

撤退できた要因として次に多かった回答項目が、「撤退の決断の早さ」です。こちらの行動は単に撤退を迫られた状況下での決断の早さだけではなく、進出時に撤退の条件を具体化しておくことが重要であると言えます。

撤退の条件の策定に加えて、以下のような事前準備も必要になると考えられます。

・税理士・会計士への相談
・パートナー企業との事前交渉
・現地従業員、現地日本人スタッフの処遇の決定
・撤退資金の調達
・現地政府、自治体との交渉

③現地パートナーの協力(回答企業の比率:30.9%)

「撤退の決断の早さ」の次に多くの回答を集めたのが、「現地パートナーの協力」です。現地パートナーとビジネス上で良好な関係を築くことは、現地で仕事の受発注を円滑に行うことに加え、撤退する上でも重要だと言えます。

現地パートナー企業との関係性の重要さを示すデータとして、2012年の中小基盤整備機構の調査によると、「現地パートナー企業とのトラブル」を撤退理由として挙げた企業は全体の23.6%にのぼり、3番目に大きな理由として挙げられています。(1位は受注先、販売先の開拓・確保の困難性(27.6%)、2位は生産・品質管理の困難性(23.6%))

海外進出で失敗しないための戦略

最後に、海外進出の撤退の要因を考慮した上で、中小製造業が海外進出で失敗しないための戦略をご紹介します。今回は、弊社が主に海外進出をサポートさせていただいている「中小製造業の海外進出」に焦点を絞って戦略を説明します。

中小製造業全体の海外進出戦略

まず製造業の業種に関わらず、全体として共通の戦略を説明します。

国内の戦略を応用する

海外進出で失敗しない企業の特徴として、国内のニッチな分野で戦略を立てて成功している企業は、海外でも成功しやすいということが言えます。なぜなら、国内でも海外でも利益を上げる構造の根幹となる考え方に大きな違いはないからです。

海外進出という言葉を聞くと、世界の競合と戦うために何か特別な戦略が必要ではないか、と考えられる方が多いと思います。しかし実際は、国内の市場で生き抜くために考え抜かれた戦略が海外の市場開拓においても通じることが多いと感じます。加えてほとんどの中小製造業の場合、市場開拓にかけられる予算を考慮すると、世界的なシェアを取りに行くことは難しいため、国内で強みが活きるマーケットをそのまま海外に拡張する形が最も安全な方法であると言えます。

また、進出する上での最低条件として、質の高い製品・サービスが提供できることに加えて、独資での進出が望ましいと言えます。(理由は海外から撤退できた要因の①独資での進出を参照してください)

メーカーの海外進出戦略

次に中小製造業の中でも、メーカーの海外進出戦略を説明します。

現地語でWebサイト構築する

中小完成品メーカーが海外で自社製品を販売する場合、海外の「販売代理店」を通して自社製品を販売する方法が一般的です。

しかし、大企業に比べ、中小企業が優秀な販売店を捕まえるこは難しい現実があります。理由として、優秀な販売代理店は有名企業がコンタクトをとっている可能性が高く、代理店側も売上が見込める製品、すなわち大企業の有名な製品を販売したい傾向があることが挙げられます。

この問題を解決する一つの方法として、中小完成品メーカーは、外国語(少なくとも英語と現地語)で自社製品について理解してもらえるサイトを構築することをおすすめします。外国語のWebサイトは、見込み顧客への自社および自社製品の紹介の役割もありますが、自社の製品を売ってくれる販売店の獲得を狙う意味もあります。

加えて、外国語Webサイトから候補となる販売代理店が見つかると、展示会に参加する必要性も抑えられるという副次的なメリットもあります。

営業活動に積極的に関わる

2つ目の戦略は、メーカー自身が現地での顧客開拓、クロージングに積極的に関わることです。先ほども説明したように、優秀な販売代理店は大手企業、有名企業に持っていかれてしまう可能性が高いです。したがって、販売代理店に現地での顧客の発掘からクロージングまで全て任せてしまうと、成果に結びつかないケースが多いです。

したがって、現地での新規顧客開拓で失敗しないためには、少なくとも販売店が独り立ちするまでは、中小企業自らが営業活動に積極的に関わる必要があると言えます。また現地の販売代理店は、製品のメンテナンスや現地の顧客対応、現金やり取りが必要な場合に使われることが多いため、そもそも営業活動に十分な時間を確保できないケースも考えられます。

加工業の海外進出戦略

最後に加工屋の海外進出戦略を説明します。

現地の異業種と積極的に関わりを持つ

日本の加工屋が海外進出する際の主な理由の一つとして、「現地の日本企業向けの部品供給」が挙げられます。この目的での海外進出自体は問題ありませんが、現地の日本企業からの仕事が減った時のためにリスクを分散させる仕組みを作っておくことはとても重要です。(中小企業が海外進出に失敗する3つの理由で説明したように「現地市場での売上の減少」が中小企業全体で最も大きな原因となっています)

このリスク分散の方法として、現地の異業種の企業を含めたさまざまな業界と繋がりを築いておくことが挙げられます。具体的な手法には、海外の現地企業から見つけてもらえるようなサイトを作ることが考えらえれます。こうすることで、現地の日本企業からもらえる仕事が減った時に、困らなくなる仕組みを作ることができます。

したがって、加工業が海外に拠点を作る場合、現地の日本企業からの仕事を受けつつ、現地の企業からも仕事を受注できるようなマーケティング活動を同時並行で行う方法が安全であると言えます。

まとめ

本記事では、以下の内容を解説しました。

  • 中小企業が海外進出する割合:年々増加傾向
  • 海外進出に失敗する3つの理由:①現地での売上の減少、②輸出の低迷、③コストの増加
  • 海外から撤退することができた要因3選:①独資での進出、②撤退の決断の早さ、③現地パートナー企業との協力
  • 海外進出で失敗しないための戦略:中小製造業全体(国内の戦略を応用)、メーカー(現地語Webサイトの構築、営業活動への参加)、加工業(異業種との関わりを持つ)

海外進出を成功につなげるために、本記事の内容が少しでも役に立てば幸いです。

この記事を執筆しているテクノポート株式会社は「外国語サイトの制作・運用のサポート」を通して、企業様の海外販路開拓を支援しています。(サービスの実績はこちらからご覧いただけます)

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【解決事例あり】日本企業が海外進出時に直面する3つの課題と解決策

テクノポートの稲垣です。この記事は、以下のような課題を抱えている方に読んでいただきたい内容になります。

▶︎海外進出する日本企業の数はどのように変化しているのか?
▶︎日本企業が海外進出時に直面する課題は?
▶︎それらの課題の解決策は?

そこで、この記事では以下の内容について解説します。

・海外進出する日本企業の数の推移
・海外進出する日本企業が直面する課題
・課題を解決するための解決策と解決した事例

この記事を執筆している弊社(テクノポート株式会社)は「英語サイトの制作・運用のサポート」を通して、企業様の海外販路開拓を支援してきた実績があります。

この記事では、実際に弊社が海外進出の支援をさせていただいているお客様からのご意見を参考に執筆しています。(弊社の詳しいサービスの内容はこちらからご覧いただけます)

統計情報

まず、海外進出する日本企業の数の推移を調査した結果を紹介します。

海外進出の日本企業拠点数の推移

下のグラフは、外務省の「海外在留邦人数統計」のデータを用いて、海外の日本企業の拠点数を地域別にまとめたグラフです。

データ引用元:統計表一覧(令和2年(2020年)以前)|外務省

こちらのグラフを見ると、どの地域においても(多少の増減はあるものの)日本企業の拠点数は増え続けていることが確認できます。この結果から、日本企業の海外進出への機運は年々高まっていることが予想されます。

海外の日本企業拠点数の年成長率の推移

下の図は、それぞれの地域の拠点数の年成長率の推移を表すグラフです。

データ引用元:統計表一覧(令和2年(2020年)以前)|外務省

こちらのグラフを見ると、中南米に進出する企業の成長率が、大きく伸びていることが確認できます。この要因として、中南米の自動車市場向けの工場建設や、生産設備の拡大が考えられます。(参考:「2019年度 中南米進出日系企業実態調査」の結果について | 2020年 – 記者発表 – お知らせ・記者発表 – ジェトロ

地域別の日本企業の拠点数の割合

また、下の図は、2020年10月時点の地域別の日本企業の拠点数の割合を示したグラフです。


データ引用元:統計表一覧(令和2年(2020年)以前)|外務省

こちらのグラフを見ると、海外の日本企業の拠点の約7割がアジアに位置していることがわかります。これは、中国をはじめとする新興国市場の急成長が関係していると考えられます。

参考記事

日本企業が海外進出において抱える3つの課題

次に、日本企業が海外進出の際に直面する3つの課題を説明します。これらの課題は、弊社のお客様にインタビューをさせていただいた内容を参考にしています。

①社内体制の整備

「社内体制」とは、具体的には以下のような業務を行える体制のことを指します。

・貿易の実務作業を行える人材の確保、貿易実務の実行
・料金回収の実務(例:信用状の作り方)
・取引相手の与信管理
・外国企業との取引におけるリスクマネジメント(例:法律リスクの管理、契約書の作成方法)
・外国企業からの問い合わせ対応できる人材の確保
・自社製品・サービスが海外で問題を起こしたときの顧客対応

これらの業務は社内に「外国企業との取引に関する専門知識を有する人材」と「語学力を有する人材」を確保していないと、実現が難しいため、国内の企業とのみ取引を行なってきた企業の多くが直面する課題であると言えます。

また、これらの取引体制の整備に加えて、外国企業との取引には法律上のリスク(例:法の未整備、外資規制)、カントリーリスク(例:進出先の経済状況の悪化、テロ、内乱)がともなうため、これらの問題に対する対処方法も考えておく必要があります。

②取引拡大の方法

「外国企業とどうやって取引を拡大させたらいいのかわからない」という課題です。具体的には、以下のような課題が当てはまります。

・自社の製品、サービスの販売を代行してくれる代理店の見つけ方がわからない
・海外展示会に参加を考えているが、どうやって取引企業・販売代理店を見つけるのかわからない
・外国企業との取引拡大をする方法は知っているが、どの方法が自社に適しているのかわからない
・外国語のWebサイトは持っているが、海外の企業からお問い合わせが来ることはほとんどなく、どうやって反響を出せば良いのかわからない

海外に自社の製品・サービスを売るためには、貿易を通した取引を行う場合は「取引を行なってくれる外国企業」、現地で製品を売る場合は「販売代理店」を見つける必要があります。

また、これらの方法で取引を行うにしても、複数ある手法の中からどの方法を採用するのかを検討する必要があります。(海外進出の方法については、こちらの記事を参照してください)

③市場の選定

世界中の国と地域の中から「自社の製品・サービスの需要が見込める市場を絞り込む方法がわからない」という課題です。具体的には、以下のような課題が当てはまります。

・自社の製品、サービスが海外で需要があるのかどうかがわからない
・自社の競合・顧客となる企業が多く集まる地域がわからない
・自社と同じ業種、業界でオンライン上で競合となり得る企業がわからない
・海外の競合他社と比較したときに、自社製品の強みが何かわからない
・世界中の企業と取引を拡大するべきか、ある程度ターゲットを絞った方が良いのかわからない

海外の市場の選定方法は、次で解説する「課題の解決策」を参照してください。

課題の解決策

次に先に挙げた3つの課題の解決方法を3つ紹介します。

①海外進出支援サービスの活用

これは、先に挙げた課題の中でも「①社内体制の整備」と「③市場の選定」の解決策となり得る方法です。例えば、以下のような利用法が考えられます。

・海外企業との取引業務、リスクマネジメント業務を代行してくれる社外の専門業者(副業人材)に外注する
・海外進出先の選定、拠点設立に関して専門家から助言をもらう
・進出先で販売ネットワークを持っている販売代理店に製品の販売、顧客対応、料金の回収を依頼する
・国際展示会の出展支援サービスを活用する

これらの方法の共通のメリットは、海外進出に必要な自社の人材・労力の使用を最小限に抑え、外部のプロフェッショナルのノウハウ、労力を活用できることです。

したがって、前者のメリットは社内の人件費の節約、後者のメリットは海外進出を成功する確率を高めることにつながると言えます。

一方で、これらの方法の共通のデメリットとして、外注するための費用がかかることが挙げられます。そのほかに外注先の候補となる企業の選定、そもそもの外注するべきサービスの選定にも、時間と労力をかける必要があります。

②国際展示会への出展

これは、先に挙げた課題のうち「①社内体制の整備」、②取引拡大の方法」の解決策となり得る方法です。例えば、以下のような利用法が考えられます。

・自社の製品、サービスに興味を持ってくれるお客様を発掘する
・自社の製品、サービスの販売代理店の候補を発掘する
・自社と海外で協業、パートナー関係を結ぶ候補となる企業を発掘する

国際展示会へ出展する最大のメリットは、海外の顧客開拓と同時に、販売代理店の候補を発掘できる点です。

というのも、国際展示会には新しい商材を探している小規模な商社や販売代理業者も数多く来場しているため、それらの業者に向けて発信をすれば、彼らの興味を引くことができます。

したがって、展示会に出展する際は必ず目的を明確に設定し「どのターゲットに向けて情報発信をするのか」をあらかじめ設定しておく必要があります。ターゲットが決まったら、そのターゲットに向けた文章(例:〜の地域における販売代理店募集)を掲載する必要があります。(海外展示会で代理店開発をする詳しい方法は、こちらの記事をご参照ください)

一方で、国際展示会へ出典するデメリットは、出展のための費用と労力がかかることです。

国内で開催される展示会と比べても、外国語での資料の準備、外国への渡航費・機材の輸送費(外国で開催する場合)、外国語対応できる人材の準備を行う必要があります。

③外国語Webサイトの制作・運用

これは、先に挙げたすべての課題(「①社内体制の整備」、「②取引拡大の方法」、「③市場の選定」)の解決策となり得る方法です。例えば、以下のような利用法が考えられれます。

・外国企業からの直接の問い合わせを獲得する
・世界中に情報発信を行うことで、自社の製品・サービスに興味を示してくれる企業が多い場所、需要が見込める地域を発見する
・進出先の言語でWebサイトを制作し、信頼の構築、現地企業との取引獲得の確率を高める
・外国人の採用力を強化し、社内で外国企業への対応を完結させる

外国語Webサイトの制作・運用を行う最大のメリットは、比較的に低予算で新規顧客の開拓、進出先の候補となる市場の発掘を行えることです。加えて、外国語Webサイトを外国人労働者の求人用に活用することもできるため、社内で外国語に対応できる人材を揃える上でも役に立ちます。

一方で、外国語Webサイトの制作・運用を行うデメリットは、制作・運用にある程度の知識とノウハウがある人材を揃える必要があることです。これは、そもそもWebサイト制作のノウハウに加えて、外国語への翻訳作業が発生することが大きな理由です。

また、制作だけは自社で行うことができても、実際に成果を上げるための作業にも専門的な知識が必要になるため、自社でWebサイトの運用に詳しい人材がいない場合は、業者に外注する必要があると言えます。

加えて、お問い合わせに外国語で対応する人材、貿易実務の対応は社内で行う必要が生じます。これらの業務に対しての社内体制の準備が揃っていない場合は、自社で完結することができない業務のみを「①海外進出支援サービスの活用」で補う必要があります。

海外進出における課題を解決した事例

次に、海外進出における課題を解決した事例を紹介します。今回は先に挙げた解決方法の中でも「③外国語Webサイトの制作・運用」により、海外の新規顧客開拓と、市場の発掘を行っている「株式会社メルテック」の事例を紹介します。(詳しい内容はこちらの記事からご覧ください)

株式会社メルテック

本社 千葉県流山市
社員数 100名
事業内容 フォトエッチング加工、エンコーダ用スケールの設計、製造、販売
取材記事 英語サイトで「海外の新規顧客開拓」と「製品の需要調査」を実現

同社は、海外との貿易業務、外国語対応できる人材は有していましたが、海外の新規顧客の開拓に課題を抱えていました。

そこで、英語サイトの制作・運用に本格的に取り組んだ結果、現在では安定して月に4,5件のお問い合わせを獲得できています。

また、英語Webサイトを経由したお問い合わせを通して、自社の製品・サービスに対する海外の顧客の需要を把握することにも役立てています。

まとめ

本記事では、以下の内容を解説しました。

  • 海外進出する日本企業の数:どの地域においても、日本企業の拠点数は増加傾向、2020年10月時点ではアジアが全体の7割
  • 日本企業が海外進出において抱える課題:①社内体制の整備、②取引拡大の方法、③市場の選定
  • 課題の解決策:①海外進出支援サービスの活用、②国際展示会への参加、③外国語Webサイトの制作・運用

海外進出における課題解決に、本記事の内容が参考になれば幸いです。

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【担当者向け】英語サイトの制作から問合せ獲得までの流れ

テクノポートの稲垣です。

▶︎ 英語サイトを作ろうか検討しているが、本当に海外から問合せが来るのか疑問に感じている
▶︎ 日本語サイトを翻訳して英語サイトを作ったが、反響を出すまでのイメージが湧かない
▶︎ 今の英語サイトを活用したいとは思っているが、まず何から始めて良いかわからない

この記事では、上記のような課題・疑問を持っている企業の経営層、Web担当者の方に読んでいただきたい内容になっています。

具体的には以下の内容を解説します。

・英語サイトで「問合せ」を獲得するまでの流れ
・英語サイトで反響を出すためにするべきこと(パターン別に解説)

本記事を執筆している弊社(テクノポート株式会社)は「英語サイトの制作・運用のサポート」を通して、企業様の海外販路開拓を支援している実績があります。

実際に弊社がサポートしている企業様は、これから説明する方法で英語サイトを改善し、問合せ数が継続的に伸びています。

この記事では、実際にサポートをして得られた知見、ノウハウを余すことなく解説しています。最後まで読んでいただけると、「英語サイトを活用して、世界中の顧客から引き合いを獲得するまでのイメージ」を掴んでいただけると思います。

英語サイトで「問合せ」を獲得するまでの流れ

ここでは、英語サイトで問合せを獲得するまでの流れを「3つのステップ」に分けて解説します。

結論

まず結論としては、英語サイトも日本語サイトも、問合せを獲得するまでに大きな違いはありません。違いを挙げるとすると、対象とする顧客(企業)が位置する「地域」、使用する「言語」が違うことです。

「英語サイトを活用して海外から引き合いを獲得する」と聞くと、何か特別なことをしなければならない、と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、取るべき施策の内容はとてもシンプルです。

ただ、それぞれの施策において、英語サイトならではの注意するべきポイントがあるので、それらのポイントをしっかりと押さえていれば、日本語サイトと同じように問合せは自然と増えていきます。

それではまず、日本語サイトと英語サイトに共通する「問合せを獲得するまでの流れ」を3つのステップに分けて解説します。後半の「反響を出すためにするべきこと」では、英語サイトに特有の注意するべきポイントを考慮した上で、取るべき施策を解説します。

【STEP 1】認知される (インプレッションを獲得する)

英語サイトを作って、まずするべきことは、そのサイトが海外の顧客に「認知」されるようにすることです。(認知してもらうことをWebマーケティング業界では「インプレッションを獲得する」と言います)

一般に、英語サイトが認知されるとは、対象とする顧客に次のような行動をしてもらうことを意味します。

・検索結果に(御社の)英語サイトが表示されているのを目にする
・検索結果に(御社の)英語サイトのリスティング広告(検索結果の最上部に表示される広告)が表示されているのを目にする
・他社のWebサイトを閲覧しているときに、(御社の)英語サイトのバナー広告(Webサイトに設置されている宣伝用の画像広告)を見かける

このような行動を起こしてもらうことで、まず御社の英語サイトの存在を、顧客に知ってもらうことが最初のステップになります。

【STEP 2】興味を持ってもらう (流入を獲得する)

認知を獲得した後は、対象とする顧客に「興味を持ってもらう」必要があります。つまり、数ある競合サイトの中から、御社の英語サイトへ入ってもらう必要があります。(サイトに入ってもらうことを、Webマーケティング業界では「流入を獲得する」と言います)

英語サイトが流入を獲得するとは、対象とする顧客に次のような行動をしてもらうことを意味します。

・検索結果に表示されている(御社の)英語サイトが気になりクリックする
・検索結果に表示されている(御社の)英語サイトのリスティング広告を見て、サービスの内容に興味が湧きクリックする
・(御社が)SNSで発信している内容が興味深かっため、より深い内容が知りたいと思い、(御社の)英語サイトをクリックする

【STEP 3】問合せをしてもらう(問合せを獲得する)

最後のステップは、流入してもらった顧客に「問合せをしてもらう」ことです。顧客が問合せをしてくれる具体的な例としては、以下のような状況が考えられます。

・(顧客が)抱えていた課題を解決してくれそうな会社だと判断し、相談する
・(顧客が)必要な製品・部品を作ってくれそうだと判断し、製作の可否について相談する
・(顧客が)欲しい製品・部品のカタログをダウンロードする

以上の「認知される」→「興味を持ってもらう」→「問い合わせをしてもらう」の3ステップが、問合わせを獲得するまでの流れになります。

これは言い換えると、「問合せがこない」=「3ステップのどこかに問題がある」ということです。

その前提を踏まえた上で、具体的に「それぞれのステップで問題がどうかあるか確かめる方法」と「取るべき対策」について解説します。本記事では、詳細には踏み込まず、まずは対策のイメージを掴んでいただくために、対策の概要をわかりやすく解説しています。

反響を出すためにするべきこと

①インプレッションが少ない場合

ユーザーに御社の英語サイトが認知がされていない場合です。英語サイトを作ったが、特に力を入れて運用しているわけではない、という場合の典型的なパターンとも言えます。

【インプレッション数を確認する方法】

御社の英語サイトのインプレッション数を確認するには、Google Search Consoleの「合計表示回数」という数字を確認しましょう。

上の画像は、今ご覧になっている「モノカク」というメディアの、過去28日間の合計表示回数(=インプレッション数)を集計したものです。

Google Search Consoleで集計しているインプレッション数は、ユーザーがGoogleで検索を行ったときに、御社の英語サイトがユーザーの検索結果画面に表示された回数を集計したものです。(Googleで広告を出稿した場合のインプレッション数を確認したい場合は、Google広告の「表示回数」を確認しましょう)

注意すべき点は、ユーザーが御社の英語サイトを検索結果画面で直接見ていなくても、インプレッション数にはカウントされてしまう、ということです。

例えば、ユーザーが何か特定のキーワードで検索した際に、御社の英語サイトが検索結果の10位(検索結果画面の下部)に表示されていたとします。仮に、ユーザーが検索結果の1位のWebサイトをクリックした場合、ユーザーは御社の英語サイトが検索結果に表示されているのを直接見たわけではありません。しかし、この場合においてもインプレッションは1つカウントされます。

つまり、検索結果の見えやすい位置(上位位置)にサイトを表示させることがインプレッションを増やすために必要だと言えます。(詳しくは後述の「対策」をご覧ください)

【インプレッション状況の良し悪しを判断する方法】

インプレッション状況の良し悪し(インプレッション数が多いか少ないか)を判断する方法として、目標とする「問合せの数」から逆算する方法があります。

例えば、1ヶ月に問合せを10件を目標に掲げているとします。

この時、クリック率(ユーザーが検索結果に表示されている御社の英語サイトをクリックする確率)が2%問合せ率(御社の英語サイトに流入したユーザーが問合せする確率)が1%の場合である仮定します。

その場合、問合せを月に10件獲得するためには、単純計算で、10件×100/1×100/2=50,000となり、1ヶ月で50,000回インプレッションが必要であることがわかります。この数字を基準に現在のインプレッション数が多いか少ないかを判断します。

【インプレッション数の改善方法】

インプレッション数が少ないと判断された場合に、取るべき対策は大きく下記の3つです。

①広告出稿(難度:低い)

予算を投下して、短期的にインプレッション数を増やしたい場合に有効な施策です。

インプレッション数を継続的に獲得したい、というよりも、海外の企業にまずは自社の名前とサービスを知ってもらう、という目的で使われる場合が多いです。広告に掲載する文章は、英語サイトの場合英語になるため、言葉選びはしっかり調査した上で行いましょう。(言葉を選定する詳しい方法は別記事で解説予定です)

②SEO対策(難度:やや高い)

SEO対策とは、検索結果画面で自社のサイトを上位に表示させるための対策のことを意味します。

英語サイト上に質の良いコンテンツを作り、中長期的にインプレッションを獲得したい場合に取るべき施策であると言えます。

英語サイトでSEO対策を行う場合、戦う市場の大きさによっては、世界中の英語サイトが競合になるため、日本語以上に上位表示を狙うことが難しい場合もあります。逆に言えば、日本では市場が小さすぎるニッチなキーワードでも、世界で見れば需要がある場合もあるため、戦略次第では日本語サイト以上の効果が出る可能性も十分にあります。(英語サイトのSEO対策は別記事で詳しく解説する予定です)

③SNS運用(難度:高い)

自社のSNSアカウントを運用することで、中長期的に認知を広め、インプレッションを獲得したい場合に有効な施策です。

ただ、外国語でのSNS運用は困難であることが予想されるため、日本語のSNSアカウントですでに実績があり、それを外国語版に横展開するパターンが現実的であると思います。

また、国によってSNSの使用率に特徴があるので、特定の国にアプローチしたい場合は、その国のSNSの使用率を考慮して発信プラットフォームを選ぶことをおすすめします。

②流入が少ない場合

インプレッション数は十分な数を獲得しているが、英語サイトへの流入が少ない場合です。

【流入状況を確認する方法】

まず、SEO対策を行っている場合の流入状況の確認方法は、Google Search Consoleの「合計クリック数」もしくは「平均CTR(平均クリック率)」と呼ばれる数字を確認しましょう。(Googleで広告出稿をしている場合は、Google広告の「クリック数」を確認します)

ここで「平均CTR(クリック率)」とはインプレッションを獲得したうちのクリックされた確率(パーセンテージ)を表す指標です。

【流入状況の良し悪しを判断する方法】

SEO対策を行っている場合、流入状況の良し悪しを判断する際は、英語サイトの特定のページにおける「平均クリック率」を確認しましょう。そして、特定のページの平均クリック率が、平均的な「平均クリック率」を比較して、高いか低いかでそのページの流入状況の良し悪しを判断します。

具体的に説明します。次のグラフをご覧ください。


こちらの図は、Googleにおける「検索順位」とその順位における「平均クリック率, %」の関係を表したグラフです。

ここで仮に、御社の英語サイトの特定のページを選択し、あるキーワードで検索された際の現在の「平均掲載順位」が3位、「平均クリック率」が20%であるとします。(これらの数字は、Google Search Consoleを使って確認できます)その場合、上のグラフから検索順位が3位のページは、「平均クリック率」がおよそ11%であることがわかります。

つまり、通常「平均クリック率」が11%しか獲得できない検索順位において、「平均クリック率」20%を獲得している御社の英語サイトは優れていてる、ということがわかります。このようにして、平均クリック率の大小から、流入状況の良し悪しを判断します。

また、Google広告を出稿している場合の流入状況の良し悪しは、Google広告の「クリック率」を確認し、リスティング広告の場合は5%よりも高いか低いかで判断すると良いそうです。(詳しくはこちらの記事をご参照ください)

【流入数の改善方法】

平均クリック率が低い場合の、改善方法は下記の3つです。

①タイトル、ディスクリプションの改善

検索結果に表示される「タイトル」と「ディスクリプション」を修正しましょう。(下記の画像を参照)


これは、リスティング広告を出稿している場合にも、同じように改善する必要があります。

英語サイトにおける、「タイトル」と「ディスクリプション」の具体的な修正方法は、別の記事で解説する予定です。

②検索順位の改善

検索順位の改善も「平均クリック率」を高めるために必要です。

なぜなら、先ほどの【インプレッション数を確認する方法】で説明したように、ユーザーに御社の英語サイトの検索結果が直接見られていなくても、インプレッション数は増えるため、結果的に平均クリック率が低下するからです。

検索順位を高めるためには、SEO対策をする必要があります。(英語サイトのSEO対策の方法は別記事で解説予定です)

③バナー画像の改善(バナー広告を出稿している場合)

バナー広告(ディスプレイ広告)を出稿しており、インプレッション数は十分に獲得しているが、クリック率が低い場合は、バナー画像のデザインを見直した方が良いと言えます。

③問合せが少ない場合

「インプレッション数」と「流入数」は十分だが、「問合せ」の数が伸びないというパターンです。

【問合せ状況を確認する方法】

自然検索の場合も、広告を出稿している場合も、問合せ数はGoogle Analyticsで確認できます。

【問合せ状況の良し悪しを判断する方法】

まずSEO対策を行っている場合では、Google Analyticsの「コンバージョン率」という数字を確認します。(コンバージョン率とは、簡単に説明すると、御社の英語Webサイトが獲得した流入のうち、どれくらいの確率で問合せが獲得できたか、を表す確率を表す指標です)

英語サイトの「コンバージョン率」が高いか低いかを判断する方法として「自社の日本語サイトのコンバージョン率」と比較する、という方法があります。

例えば、御社の日本語サイトのコンバージョン率が2%で、御社の英語サイトのコンバージョン率が1%の場合だったとします。この場合、英語サイトのコンバージョン率が日本語サイトのそれより低いとわかるため、コンバージョン率が低いとわかります。

ただし、一般的に英語サイトのコンバージョン率は、日本語サイトよりも低くなる傾向があります。

なぜなら、御社の英語サイトの顧客となる外国企業にとって、現地の企業を差し置いて、日本企業にわざわざ問合せをする確率は、低くなる傾向があるからです。(輸送費がかかりコストが高くつく可能性があることや、言語が違うためコミュニケーション上の問題が発生する可能性もあるため)

ただし、アジアに所在する企業の場合は、日本製品の高品質イメージが優位に働く場合もあるため、むしろ英語サイトのコンバージョン率が高くなる場合もあります。

一方で、広告を出稿している場合、コンバージョン率が高いか低いかを判断することは難しいです。

広告のコンバージョン率は、業種、製品・サービスの単価で大きく変わるため、とにかく改善できるところはすべて改善することをおすすめします。(改善方法は別記事で解説予定です)

【問合せ数の改善方法】

問合せ数を改善する方法は、以下の2つがあります。

①サイト全体の改善

これは、サイトに存在するページ間の導線設計(リンクのつなぎ方)がうまくいっていない場合に有効な方法です。

具体的な改善方法は別記事で解説予定ですが、大まかには「ユーザーにとってほしい理想の行動の流れ」を決定し、「その行動を後押ししてあげる形でページ間のリンクを設置する」という流れで行います。

②個別ページの改善

サイトに掲載している個別のページを改善する方法です。

改善するべき箇所の例としては、ページ内の説明がわかりにくい、英語が読みにくい、お問い合わせフォームの入力項目が多すぎる、が当てはまるページが存在する場合は、そのページは改善が必要であると言えます。

また、問合せ率を向上させる方法として「カタログ・ホワイトペーパーを設置する」という方法があります。これは、問合せの前段階として顧客に資料をダウンロードさせ、信頼感を獲得することで、問合せに対するハードルを下げる目的で行われる施策です。

まとめ

本記事では、英語サイトを活用し「海外から問合せ」を獲得する方法について解説しました。

結論としては、反響を出すための方法は、日本語サイトのそれと大きな違いはありません。そのため、日本語サイト同様、「反響が出ない原因を特定し、改善する」というシンプルかつ王道な方法で英語サイトの改善を行うことが有効です。

弊社(テクノポート株式会社)は、英語サイトの制作・運用を通して、日本企業の海外販路開拓のサポートを行っています。私たちのサービス内容にご興味のある方は、まずは一度、弊社サービスサイトに目を通していただけると幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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【製造業】海外進出する5つの方法・進出方法の選び方(メリット・デメリットも解説)

テクノポートの稲垣です。本記事は、下記のような疑問をお持ちの方に読んでいただきたい内容です。

・海外進出するための方法の種類が知りたい
・それぞれの方法のメリット・デメリットが知りたい
・自社にあった海外進出の手法が知りたい

そこで本記事では、以下の内容を解説します。

▶︎海外進出する5つの方法
▶︎それぞれの方法のメリット・デメリット
▶︎自社にあった海外進出方法の選び方

なお本サイトを運営する弊社テクノポートは、Webサイトの制作・運用を通して製造業の海外進出のサポートをしています。本記事には、海外進出サポートを通して得られた知見を生かした内容も含まれています。

海外進出する5つの方法

日本企業が海外進出する5つの代表的な方法と、それぞれの方法のメリット・デメリットを紹介します。

①現地生産法人

進出先の国において工場を設立、または既存の工場を買収し自社製品の生産拠点を設ける方法です。

この方法は「現状の生産設備では供給が間に合わない」または「新しい生産拠点を設けることに明確なメリットがある」場合に取るべき方法であると言えます。

現地生産法人には、現地で部品製造をするパターンの他に、自社製品の組み立てに必要な部品を特定の国に輸出し、現地の自社工場で組み立てて販売するというパターンもあります。(例:東南アジアで日本車メーカーのエンジンを組み立てる)

現地生産法人の設立方法は、次の2つのパターンに分かれます。

①独資
自社の出資のみで生産拠点法人を設立

②合弁
現地や他国のパートナー企業との共同出資により生産拠点法人を設立

以下の記事では、フランスで受託加工業の会社を経営する方に「現地パートナー企業の見つけ方とビジネスの進め方」を伺った内容を掲載しています。現地パートナー企業の探し方を詳しく知りたい方は、参考にしてください。

メリット・デメリット

メリット デメリット
独資
  • 自社の裁量で会社経営が可能
  • 利益配分の必要がない
  • 海外企業に技術・ノウハウの流出抑止
  • 出資の負担が大きい
  • 販売を伴う場合、販売網の構築を自社で行う必要がある
  • 国や事業内容によって禁止される可能性がある
合弁
  • 投資額とリスクを軽減可能(パートナー企業と分担できるため)
  • パートナー企業のノウハウを利用可能(例:政治力、販売力、設備)
  • パートナー企業の選定に手間がかかる
  • パートナー企業と経営方針、配当方針に関して衝突する可能性がある

②現地委託生産

進出先で自社製品の製造に協力してくれる工場を探し出し、製品の製造を委託する方法です。必要に応じて、製品の製造に必要な原材料の現地供給、部品調達先の確保、技術者の派遣を行う必要があります。

この方法は「海外に生産拠点を持ちたいが、自社だけで生産拠点を出資することが難しい」場合に取るべき方法であると言えます。

委託生産方式には次の2つのパターンが存在します。

①OEM(Original Equipment Manufacturer)
委託側が企画、設計を行った製品を受託側が製造し、委託側が販売(例:iPhone)
②ODM(Original Equipment Manufacturer)
委託側が企画を行なった製品を、受託側が設計から製造まで行い、委託側のブランドを利用して販売(例:Xiomi)

メリット・デメリット

メリット(委託側) デメリット(委託側)
  • 受託側の製造能力を利用し、製造力不足を補うことが可能
  • 製造にかかる設備投資・人件費を削減可能
  • 製造工程を委託することで設計開発に人的資本を投入可能
  • 増産や製造ラインの変更に時間がかかる(例:新製品製造用のラインを作る際にかかる時間)
  • 製品の品質が受託側の技術力に依存する
  • 製造ノウハウが自社に蓄積されない

③代理店・販売店取引

進出先の国に拠点を有する販売代理店と契約し、その国における販売を委託する方法です。販売代理店との契約形態は、以下の2つのパターンに分かれます。

①独占販売契約
特定の代理店に自社の製品を販売する権利を独占的に付与する契約(販売地域、販売期間を設定することが一般的)

②非独占販売契約
代理店が自社の製品を含めて複数社の製品を販売しても良い権利を与える契約

また販売代理店には「代理店(エージェント)」と「販売店(ディストリビューター)」の2種類が存在します。

代理店(エージェント)
製品の販売代行を行い、売り上げ金額に応じて成果報酬を与える契約形態を取る

販売店(ディストリビューター)
製品を販売店側で購入し、現地で売る際に発生する差額を与える契約形態を取る

以下の記事では、ベトナムで販売店(ディストリビューター)を活用し、製品を販売した経験のある方にインタビューした内容をまとめています。販売店(ディストリビューター)の探し方から具体的な販売のコツに関心のある方は、参考にしてください。

メリット・デメリット

メリット デメリット
  • 販売ネットワークを活用可能(例:現地の得意先、料金の回収、保守点検、メンテナンス)
  • 人件費を削減(自社の営業用人材を用意する必要がないため)
  • 品質管理、価格管理が困難(価格や販売方法が代理店・販売店任せになるため)
  • 信頼できるパートナー探しの手間がかかる
  • 自社に販売ノウハウが蓄積されない

④商社・輸出業者

自社製品を国内の商社または輸出業者を通して代理販売してもらう方法です。「貿易の実務から現地での販売までを全て任せたい」という企業が取るべき方法であると言えます。

メリット・デメリット

メリット デメリット
  • 商社のノウハウを活用可能(例:販売網、人脈、海外市場情報)
  • 貿易の実務経験がなくても海外に製品を販売可能
  • 海外顧客との取引業務における自社の負担を抑えられる(例:与信管理、代金処理、顧客対応)
  • 手数料がかかる(例:商社に仲介費用を支払う)
  • ノウハウが蓄積されない(貿易業務を外部委託するため)
  • 顧客の声が届きにくい(例:市場、顧客のニーズが把握しにくい)

⑤直接販売

自社の製品を海外の顧客に直接販売する方法です。外国語Webサイトを運用し外国企業と取引を行うパターン、越境ECサイトを構築し自社製品を海外顧客に販売するパターンも直接貿易に分類されます。

「貿易の実務から現地での顧客対応までを全て自社で完結させたい」場合に取るべき方法だと言えます。

メリット・デメリット

メリット デメリット
  • 費用の削減(例:商社にかかる手数料、現地に人を送り込む費用)
  • 海外市場調査が可能(Webサイト運用を通して各国の市場ニーズを把握できるため)
  • 貿易に関するノウハウの蓄積、社員の育成
  • 貿易取引リスクを自社で負担(例:法律知識、貿易実務を行う人材の育成、物流業者の選定)
  • ノウハウが必要(例:Webサイトの制作・運用、翻訳)

自社にあった海外進出方法の選び方

以上5つの方法を踏まえた上で、自社にあった海外進出方法の選び方を見ていきましょう。今回は、製品の「製造」が目的である場合と製品の「販売」が目的である場合の2つの場合に分けて解説します。

以下の表に、企業が抱えている課題とその企業が取るべき進出方法をまとめています。

「製造」が目的の場合

取るべき方法 課題
①現地生産法人(独資)
  • 出資額はかかっても良いので、自社の裁量で製造したい
  • 製造で発生した利益は全て自社で獲得したい
  • 製造に関する技術情報を他社に公開したくない
①現地生産法人(共同出資)
  • 現地法人を独資で設立するまでの資金を捻出するのは難しい
  • 現地法人への共同出資に協力してくれるパートナー企業の候補がある
  • パートナー企業との共同経営をうまく進める自信がある
②現地委託生産
  • 現地製造にかかるコスト(設備投資、人件費)をできる限り抑えたい
  • 人的資本を可能な限り設計開発に投資したい
  • 現地での原材料調達、部品調達の経路が明確にイメージできる

「販売」が目的の場合

取るべき方法 課題
③代理店・販売店取引
  • 海外で製品を販売したいが、現地で営業拠点を作るまでの投資はしたくない
  • 現地での販売を請け負ってくれる代理店の候補がある
  • 海外での販売に不安があるので代理店に販売業務を任せたい
④商社・輸出業者
  • 海外に製品を販売したいが貿易実務の経験がない
  • 利益が少なくなってもいいので、外部委託して貿易リスクを軽減したい
  • 自社製品を海外で販売するためのネットワークを有する商社の候補がある
⑤直接貿易
  • 海外で製品を販売するためのコストをできる限り抑えたい
  • 外国語Webサイトを有している、もしくはこれから作成し運用していく予定がある
  • 海外企業との取引を通して貿易ノウハウの蓄積、社員の育成を実現したい

まとめ

本記事では、以下の5つの海外進出方法を解説しました。

  1. 現地生産法人:進出先の国で工場を設立、買収し生産拠点を設ける方法
  2. 現地委託生産:進出先の国で他社の製造設備を利用し製品を製造(OEM)もしくは設計・製造(ODM)を行う方法
  3. 代理店・販売店取引:自社製品を海外に拠点を有する代理店・販売店に販売代行してもらう方法
  4. 商社・輸出代行:自社製品の輸出・販売業務を委託する方法
  5. 直接貿易:海外企業と直接やりとりを行い、自社製品を販売する方法

自社の海外進出の方法を決める上で、本記事の内容を参考にしていただければ幸いです。

製造業が海外進出するべき3つの理由【メリット・デメリットも解説】

テクノポートの稲垣です。

本記事は、下記のような疑問をお持ちの方に読んでいただきたい内容です。

  • 「日本の製造業が海外進出するべき理由は?」
  • 「日本の製造業が海外進出した場合のメリット、デメリットは?」
  • 「現状、日本の製造業はどの国に進出しているの?」

そこでこの記事では、下記の内容を解説します。

▶︎ 製造業が海外進出するべき3つの理由
▶︎ 海外進出のメリット、デメリット
▶︎ 日本企業の海外進出国

なお本記事で使用するデータは、すべて参考文献へのリンクを記載しています。ご自身でデータの内容を確認したい方は、ご参照ください。

製造業が海外進出するべき3つの理由

まず、製造業が海外進出するべき3つの理由から解説します。

①日本市場の縮小

日本経済は縮小傾向にあり、日本企業への海外進出の必要性は年々高まっています。国際貿易投資研究所の資料(※1)によると、日本の実質GDP成長率が2021年以降マイナスに転じる予想がされています。

少子高齢化の影響により労働人口は減少が続いており、将来若い労働力不足に直面する企業が増加すると予想されています。(現在一人当たりの労働生産性が向上しているため、大きな問題になっていない)

統計局の調査(産業別就業者数の推移(※2))によると、製造業の労働人口も減少傾向が続いており、海外に労働力を求めて進出するケースも増加すると予想されます。

参考資料

※1 2035 年に向かって縮小する日本経済
※2 労働力調査 (基本集計)

②新興国の急成長

新興国の企業が急成長しており、世界中のあらゆる産業で競争が激化しています。それに伴い、世界中の企業が国内のみではなく、世界のシェアを獲得する必要性が高まっています。

競争が激化している産業の代表的な例として、スマートフォン分野(※3)が挙げられます。特に中国の低価格かつ高品質なスマートフォンブランド(例:ファーウェイ(Huawei)、シャオミ(Xiaomi)、オッポ(OPPO))は、新興国を中心に世界中でシェアを拡大しています。

この急成長の背景として、政府主導の研究開発への投資、インフラの発達による生活水準の向上(消費者の購買意欲の増加)が挙げられます。特に、後者がテクノロジー企業へ与える影響力は大きく、新興国においても高品質・高単価製品への需要が高まっています。

したがって、海外進出を通して日本企業の高品質製品・技術を新興国市場に供給する機会は増加すると考えられます。

参考資料

※3   世界の製造業「中国」

③日本企業の技術力

競争が激しい日本市場で生き残っている日本企業は、世界に通用する技術力を持っている可能性が高いと言えます。その要因として、日本企業の品質に対する意識の高さが挙げられます。

弊社では、過去に世界各国で製造業に従事する日本人の方に、日本の製造業の品質について海外企業側の見解をインタビューしました。記事へのリンクは下記をご参照ください。

海外進出のメリット

次に、海外進出の4つのメリットを解説します。

①販路拡大

海外進出により、国内の既存の顧客に加えて、海外の新規顧客や取引先を増やすことができるというメリットがあります。先にも述べたアジアをはじめとする新興国市場の急成長を考慮すると、販路開拓のメリットは今後さらに大きくなると予想されます。

また、複数の国に顧客、取引先を持つことで、一つの供給先に依存しなければならないリスクを軽減させることにもつながります。

②コスト削減

海外に工場を設置し、現地の労働力を利用することでコスト削減を達成することができます。加えて、製品の製造、加工に必要な原材料を現地で調達することで輸送コストを削減することも可能です。

また、外国企業向けに税制優遇をしている国に進出することで、日本よりも安い税率を利用してコストを削減することも一つの方法です。

③製品・サービスの専業化

一般に市場規模の大きさと専門性をもったサービスに対する需要の大きさは比例します。つまり、日本国内では専門的すぎるため需要が見込めなかった製品・技術も、商圏を広げることで十分な需要が見込める可能性があります。

日本企業の専門性の高い技術力は、世界市場の中でこそ真の力を発揮するとも言えます。

④人材育成

海外進出という事業を通して、自社の人材を育成できるというメリットもあります。海外とのコミュニケーションや書類作成、交渉の経験を重ね、グローバルに通用するビジネススキルの向上、自社独自のノウハウの蓄積が可能です。

社員の語学力向上、モチベーションの向上といった副次的なメリットも期待できます。

海外進出のデメリット

次に、海外進出の4つのデメリットを解説します。

①金銭コスト

1つ目は、海外進出のための準備コストです。

  • 情報収集コスト(例:市場調査費、現地調査のための渡航費、人件費)
  • Webサイト関連コスト(例:海外販路開拓用のWebサイトの構築、運用費用、現地語への翻訳コスト)

が挙げられます。

2つ目は、現地で事業を開始するためのコストです。

  • 海外法人設立費用(例:事務所を作成し登記するための事務費用)
  • ビザ発行費・ライセンス費(例:現地での労働ビザ発行費用、業種によってはライセンス費)
  • 事務所家賃(例:事務所を賃貸で借りる場合に発生)

が挙げられます。

②政治的不安定さ

進出先の国における政治的不安定さにより企業がマイナスの影響を受ける場合があります。例えば、政治的不安定さを引き起こす要因として、以下のようなものが挙げられます

  • 政権交代による進出企業に対する扱いの変化
  • 戦争や内乱に伴う政治の不安定化
  • 日本との外交上のトラブル
  • 反日感情による製品・サービスへの影響

③為替変動

外貨を円貨に換算する為替レートによって受取円貨額、支払円貨額が変動することで企業が損失を被る場合があります。

例えば、2016年にイギリスの国民投票でEU離脱派が勝利を収めました。当時の世界の投資家はユーロやポンドへの信用を疑い、極東のお金持ちの国である日本(2015年末で日本の対外純資産は25年連続世界トップ)へと投資先をシフトしました。

結果、日本の輸出産業は急激な円高により大きな打撃を受けました。このように、海外に進出し日本国外と取引を行う際は、世界規模の経済の動向により、損失が生じる場合があります。

ただし、為替変動はメリットにもなり得ることも留意してください。(先の例では、日本の輸入産業は円高の恩恵を受け、好調に転じたことも事実です)

④文化・宗教上の問題

対象国の人々の文化や宗教が持つ違いによって発生する諸問題もデメリットの一つとして挙げられます。消費者の好みやニーズは国や地域によって異なるため、海外向けの商品マーケティングを行う際は、対象国の人々の文化や宗教に対する配慮も欠かせない要素になります。

日本企業の海外進出国

続いて現在、日本企業が進出先に選んでいる企業を紹介します。下の図は、日本企業が今後事業拡大を図る地域をアンケート調査した結果です。


出典:2020年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(ジェトロ海外ビジネス調査)

上の結果から、多くの日本企業がアジア地域の国に進出を考えていることが分かります。また、上位5カ国の地域に進出する理由として下記が挙げられます。(弊社で行った調査の結果を参照しています)

順位
進出の目的
1中国取引の拡大、製造拠点の設立、労働力の確保、人件費の削減、現地企業との業務提携
2ベトナム現地日系企業への部品供給、人件費の削減、現地企業への部品供給、供給先の分散
3アメリカ取引の拡大、現地企業への部品供給、現地企業との業務提携
4タイ現地日系企業への部品供給、人件費の削減、現地企業への部品供給、供給先の分散
5台湾現地日系企業への部品供給、現地企業への部品供給、供給先の分散、現地企業との業務提携

詳しくは、下記の記事をご参照ください。

1位 中国

2位 ベトナム

3位 アメリカ

4位 タイ

5位 台湾

まとめ

本記事では、以下の内容を解説しました。

  • 製造業が海外進出するべき3つの理由:①日本市場の縮小、②新興国の急成長、③日本企業の技術力
  • 海外進出のメリット:①販路拡大、②コスト削減、③製品・サービスの専業化、④人材育成
  • 海外進出のデメリット:①金銭コスト、②政治的不安定さ、③為替変動、④文化・宗教上の問題
  • 日本企業の海外進出国:1位 中国、2位 ベトナム、3位 アメリカ、4位 タイ、5位 台湾

自社の海外進出の判断を決める上で、本記事の内容を参考にしていただければ幸いです。

世界の製造業⑫「ロシア」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第五弾として「ロシアの製造業」を紹介します。

世界最大の国土を有するロシアですが、東南アジアに比べ日本製造業企業の進出先として候補に挙がることは多くないと思います。しかし、2020年1月の調査によると、在ロシア日系企業の68%が2019年の営業利益見通しを黒字と回答しています。同データからも分かるように、ロシア市場は日本企業にとって利益の見込める市場であると言えます。

今回は、そんなロシア製造業を日本企業の視点から掘り下げていきたいと思います。

基本情報

  • 正式名称:ロシア連邦(Russian Federation)
  • 首都:モスクワ(Moscow)
  • 大統領:ウラジーミル・プーチン(2000年5月~2008年5月、2012年5月~)
  • 首相:ミハイル・ミシュスティン(2020年1月~)
  • 通貨:ロシア・ルーブル(1ロシア・ルーブル=1.37円 ※2020年10月2日時点)
  • 人口:約1億4680万人
  • 面積:約1710万km2
  • 公用語:ロシア語
  • 宗教:ロシア正教、イスラム教、仏教、ユダヤ教
  • 平均寿命:男67.5歳、女77.6歳

経済の特徴

強み

  1. 天然資源:世界銀行の推定によると、ロシアが有する天然資源の価値は75兆USドル(天然ガス、木材、鉱物等)
  2. 経済安定性:公口座(政府の資金)と外部口座が強固であるため、外部からの障害による影響を受けにくい
  3. 市場規模:ロシアの名目GDPは1.64兆円(世界で11番目に大きい市場規模)
  4. 変動相場性:ロシア・ルーブルの為替レートが固定されていないため、外部環境に柔軟に対応することができる

弱み

  1. 人口変動:人口は1993年まで単調増加していたがその後は増加、減少を繰り返す
  2. インフラ未整備:2018年の調査によるとインフラ整備度ランキング世界61位(投資の不足が主な原因)
  3. 技術力:外国の技術への依存度が高い(アメリカとヨーロッパ諸国によりオフショア開発を阻害されているため)

産業構造

まずはロシアの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はロシアの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:Russia : Sectoral composition of the economy of Russia| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業と農業が減少傾向、サービス業が増加傾向
  • 世界のGDPの1.96%を占める(世界第12位)

現状

  • 製造業のGDPは前年比10%マイナス成長見通し(新型コロナウイルスの影響により、鉱業と輸送車両分野で深刻な打撃を受けたため)
  • 天然ガスによる収益はGDPの3.7%、天然資源による収入がGDPの15.5%を占める

今後

  • 2021年のGDPは2.7%の上昇、2022年のGDPは3.1%の上昇見通し(2022年に新型コロナウイルスの影響から完全に回復する予想)
  • 2020年から2022年にかけて、原油価格の下落により政府の予算が赤字に転じる見通し

製造業全体

次にロシアの製造業の調査結果を紹介します。下の図はロシアの製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:Russia : Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2016年以降、製造業が生み出す付加価値は増加が続く
  • 2019年の製造業が生み出す付加価値額は2兆225億ドル(世界第8位)

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に31.3を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年8月に51.1を記録
  • 2020年の製造業の生産高は現在も減少傾向が続く(2020年8月の生産高は前月比-8.0%

今後

  • 2020年のGDPは前年比-4.5%が達成可能である見通し(消費者主導型分野の回復、国家主導型製造業の落ち込み等が要因)
  • 専門家によると、2020年の製造業の生産高は4.7%の減少見通し(2021年は3.4%の増加見通し)

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からロシアの製造業市場を調査した結果です。下の図はロシアに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

現状

  • 2016年の調査によると、製造業は進出企業の43.0%を占める
  • 2016年の調査によると、進出企業の64.7%がモスクワ州に拠点を設けている

今後

  • 2020年6月の調査によると、2021年以降もロシア市場で事業を継続する在ロシア日系企業は約8割
  • 2020年6月の調査によると、事業の拡大を図る在ロシア日系企業の数は約半減

ロシアに進出した日本製造業企業

フラット合成株式会社

▶基本情報

  • 本社:北海道札幌市
  • 従業員数:20人(海外駐在1名含む)
  • 事業内容:プラスチック素材の製造・販売

▶概要

プラスチック製品の製造、プラスチック素材の販売を行う企業。1989年にロシアにサケ・マス人工増殖孵化機器の輸出を開始し、2012年に同地域に事務所を設立。同社は、人工孵化機器のプラスチック製容器の製造に加え、養殖の成功率を高める技術の提供も行う。現在は、ロシア政府の方針によりサケマスの孵化施設の建設が盛んであるサハリン州で販路を拡大。

株式会社ニッコー

▶基本情報

  • 本社:北海道釧路市
  • 従業員数:96人
  • 事業内容:食品加工機械設備の製造・販売

▶概要

食品加工ロボットシステムの企画から製造・販売まで手掛ける企業。ホタテ貝加工機をはじめとする水産加工機械を主軸商品に、2009年ロシア企業との販売代理店契約を締結。「顧客ニーズに対応したものづくり」を基本軸に装置改良を行い、海外パートナー企業との信頼関係を構築。

和同産業株式会社

▶基本情報

  • 本社:岩手県花巻市
  • 従業員数:256人
  • 事業内容:草刈り機、除雪機器、農業機械の製造・販売

▶概要

中・大型除雪機器の国内生産台数トップ企業。2017年秋にジェトロが主催する日露中小企業交流会への参加を機に、2018年に同社初の国際展示会への出展。同年にロシア現地企業とのパートナー契約を締結。現在は、製品購入後のサポート体制構築と海外各地で部品供給先の確保に力を入れている。

まとめ

今回はロシアの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、国家主導型製造業は新型コロナウイルスの影響により大きな落ち込みを記録し、回復に時間を要している印象を受けます。

今回紹介したロシアに進出した日本製造業企業はいずれも、ロシアの地理的特徴を上手く利用し自社の製品を販売していることが分かります。今回の内容がロシア進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑪「イギリス」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第四弾として「イギリスの製造業」を紹介します。

かつては「世界の工場」と呼ばれたイギリスですが、1979年のサッチャー政権以降、製造業からサービス業、金融・保険業へのシフトが続いています。また2020年2月1日のEU離脱により、イギリス進出を考えなおしている日本の製造業事業者の方も多いと思います。今回は、上述したトピックを今後のイギリス製造業と合わせて掘り下げていきます。

基本情報

  • 正式名称:グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain & Northern Ireland)
  • 首都:ロンドン(London)
  • 首相:ボリス・ジョンソン(2019年7月から)
  • 通貨:ポンド(1ポンド=133.89円 ※2020年9月21日時点)
  • 人口:約6602万人
  • 面積:約24.9万km2
  • 公用語:英語(ウェールズ語、ゲール語等含む)
  • 宗教:キリスト教(約72%)、無信仰(約15%)、ムスリム教(約3%)
  • 平均寿命:男78.6歳、女83.1歳

経済の特徴

強み

  1. 石油・ガス:石油とガスがイギリスの総一次エネルギー需要の3/4以上を占める
  2. 先端産業:航空宇宙産業、医薬品産業、自動車産業で最先端技術を有する企業が複数
  3. 税制:2015年の国際企業に対する法人税は20%でG20諸国の中で最も低い数字

弱み

  1. EUとの関係:EU離脱によるEU各国との貿易の不安定性
  2. 労働生産性:労働生産性の低下が続く(資本投資の低下、熟練労働者の減少、高雇用率・低金利による非効率な会社の存続が理由)
  3. 地域格差:ロンドンを中心とする南東イングランド地方とそのほかの地域での輸送、エネルギーインフラの格差

産業構造

まずはイギリスの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はイギリスの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:United Kingdom: Sectoral composition of the economy of the United Kingdom| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業と農業はGDPに占める割合が減少傾向が続く
  • 世界のGDPの3.36%を占める(世界第5位)

現状

  • 製造業がGDPに占める割合は2010年から2014年の間に回復傾向を示したが、その後は減少が続く
  • サービス業がGDPに占める割合は71.26%と高い(世界第9位)

今後

  • 2020年のGDPは前年比-10.1%と大きく減少し、2021年に6.5%の増加予想(新型コロナウイルスの影響)
  • 2020年の失業率は8.3%と大きく増加し、2021年に6.6%に減少する予想(新型コロナウイルスの影響)

製造業

次にイギリスの製造業の調査結果を紹介します。下の図はイギリスの製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:United Kingdom: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業の生み出す付加価値は約8年の周期で上下を繰り返す
  • イギリスの製造業が生み出す付加価値は2兆431億ドル(世界第7位)

現在

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に13.8を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年8月に59.1を記録(世界第1位)
  • 国内の需要は回復傾向を示しているが、輸出は過去3年の中で最も低い数字を記録

今後

  • 熟練技術者不足の課題を解決すべく、行政と企業が若手技術者の育成に力を入れる方針
  • EUを脱退したため、製造業の輸出先としていたEU諸国との貿易が従来よりも難航する予想

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からイギリスの製造業市場を調査した結果です。下の図はイギリスに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

・2014年の1084社以降は単調減少傾向
・在英日本商工会議所の会員数は現在371社

現在

  • 進出日本企業の業種は、製造業39.3%)、サービス業(17.4%)、卸売業(17.2%)、金融・保険業(13.6%)
  • 進出日本企業の年商規模は、100億~1000億円未満が32.3%、1000億円以上が26.5%、10億~100億円未満21.5%、都道府県別では東京都が56.5%で最多

今後

  • イギリスのEU離脱に伴い、イギリスを経由して欧州とのやり取りが発生する場合関税が往復で2度発生するため、サプライチェーンの再構築に取り組む企業が増加する予想
  • 在英日系製造業企業の内、EU離脱によってマイナスの影響を受けたと回答した企業の割合は70.8%(通関・物流の混乱、関税コスト、通関手続きの発生が主な理由)

イギリスに進出した日本製造業企業

株式会社ネリキ

▶基本情報

  • 本社:兵庫県尼崎市
  • 従業員数:190人
  • 事業内容:高圧ガス容器用バルブの製造・販売

▶概要

1930年創業の高圧ガス容器用のバルブ製造販売メーカー。1995年にアイルランドに現地法人「NERIKI EUROPE LTD.」を設立。「商品ではなく、品質を売る」をモットーにISO9001(製品・サービスの品質マネジメントシステムの国際規格)を取得。現在では、イギリスを含めた世界7カ国の工業規格に合わせた製品を販売し、高圧ガス容器用バルブの分野で世界的なシェアを拡大している。

巴バルブ株式会社

▶基本情報

  • 本社:大阪市西区
  • 従業員数:210人
  • 事業内容:流体制御機器及び周辺機器の製造・販売

▶概要

国内シェア1位を誇るバタフライバルブメーカー。1986年に海外進出の拠点として現地のサンダースバルブ社と折半出資で同社初の海外製造・販売拠点「トモエサンダース」をウェールズに設置。現在ではイギリスをはじめ、台湾、シンガポール、フィリピン、タイ、中国、インドネシア、アメリカに工場および製造・販売拠点を有する。

東洋シール工業

▶基本情報

  • 本社:奈良県生駒郡
  • 従業員数:535人
  • 事業内容:工業用/自動車用ゴム製品の製造・販売

▶概要

転がり軸受用ゴムシールの開発から製造・販売までを行う。1997年にイギリス工場で生産を開始(2006年に生産を終了し、現在は営業所として機能)。現在は、インドネシア、ポーランド、中国に工場を有しており、それぞれの向上でISOを取得済み。

まとめ

今回はイギリスの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果,イギリス製造業はGDPに対する割合は年々減少しているものの、生み出す付加価値自体は近年増加傾向であると分かります。またイギリス製造業のPMIは2020年8月時点で世界トップの数字であり、新型コロナウイルスの影響からの急速な回復が期待されます。

進出する日本企業の視点から考えると、EU離脱によって関税、通関、物流の問題が浮上し、日本製造業企業の多くがサプライチェーンの見直し、もしくはイギリスからの撤退を検討していることが分かりました。ただ、世界5位のGDPに代表されるように、市場規模は大きく進出先の一つの選択肢として考慮するべき国であることは変わりないと思います。今回の内容がイギリス進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑪「イギリス」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第四弾として「イギリスの製造業」を紹介します。

かつては「世界の工場」と呼ばれたイギリスですが、1979年のサッチャー政権以降、製造業からサービス業、金融・保険業へのシフトが続いています。また2020年2月1日のEU離脱により、イギリス進出を考えなおしている日本の製造業事業者の方も多いと思います。今回は、上述したトピックを今後のイギリス製造業と合わせて掘り下げていきます。

基本情報

  • 正式名称:グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain & Northern Ireland)
  • 首都:ロンドン(London)
  • 首相:ボリス・ジョンソン(2019年7月から)
  • 通貨:ポンド(1ポンド=133.89円 ※2020年9月21日時点)
  • 人口:約6602万人
  • 面積:約24.9万km2
  • 公用語:英語(ウェールズ語、ゲール語等含む)
  • 宗教:キリスト教(約72%)、無信仰(約15%)、ムスリム教(約3%)
  • 平均寿命:男78.6歳、女83.1歳

経済の特徴

強み

  1. 石油・ガス:石油とガスがイギリスの総一次エネルギー需要の3/4以上を占める
  2. 先端産業:航空宇宙産業、医薬品産業、自動車産業で最先端技術を有する企業が複数
  3. 税制:2015年の国際企業に対する法人税は20%でG20諸国の中で最も低い数字

弱み

  1. EUとの関係:EU離脱によるEU各国との貿易の不安定性
  2. 労働生産性:労働生産性の低下が続く(資本投資の低下、熟練労働者の減少、高雇用率・低金利による非効率な会社の存続が理由)
  3. 地域格差:ロンドンを中心とする南東イングランド地方とそのほかの地域での輸送、エネルギーインフラの格差

産業構造

まずはイギリスの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はイギリスの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:United Kingdom: Sectoral composition of the economy of the United Kingdom| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業と農業はGDPに占める割合が減少傾向が続く
  • 世界のGDPの3.36%を占める(世界第5位)

現状

  • 製造業がGDPに占める割合は2010年から2014年の間に回復傾向を示したが、その後は減少が続く
  • サービス業がGDPに占める割合は71.26%と高い(世界第9位)

今後

  • 2020年のGDPは前年比-10.1%と大きく減少し、2021年に6.5%の増加予想(新型コロナウイルスの影響)
  • 2020年の失業率は8.3%と大きく増加し、2021年に6.6%に減少する予想(新型コロナウイルスの影響)

製造業

次にイギリスの製造業の調査結果を紹介します。下の図はイギリスの製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:United Kingdom: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業の生み出す付加価値は約8年の周期で上下を繰り返す
  • イギリスの製造業が生み出す付加価値は2兆431億ドル(世界第7位)

現在

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に13.8を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年8月に59.1を記録(世界第1位)
  • 国内の需要は回復傾向を示しているが、輸出は過去3年の中で最も低い数字を記録

今後

  • 熟練技術者不足の課題を解決すべく、行政と企業が若手技術者の育成に力を入れる方針
  • EUを脱退したため、製造業の輸出先としていたEU諸国との貿易が従来よりも難航する予想

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からイギリスの製造業市場を調査した結果です。下の図はイギリスに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

・2014年の1084社以降は単調減少傾向
・在英日本商工会議所の会員数は現在371社

現在

  • 進出日本企業の業種は、製造業39.3%)、サービス業(17.4%)、卸売業(17.2%)、金融・保険業(13.6%)
  • 進出日本企業の年商規模は、100億~1000億円未満が32.3%、1000億円以上が26.5%、10億~100億円未満21.5%、都道府県別では東京都が56.5%で最多

今後

  • イギリスのEU離脱に伴い、イギリスを経由して欧州とのやり取りが発生する場合関税が往復で2度発生するため、サプライチェーンの再構築に取り組む企業が増加する予想
  • 在英日系製造業企業の内、EU離脱によってマイナスの影響を受けたと回答した企業の割合は70.8%(通関・物流の混乱、関税コスト、通関手続きの発生が主な理由)

イギリスに進出した日本製造業企業

株式会社ネリキ

▶基本情報

  • 本社:兵庫県尼崎市
  • 従業員数:190人
  • 事業内容:高圧ガス容器用バルブの製造・販売

▶概要

1930年創業の高圧ガス容器用のバルブ製造販売メーカー。1995年にアイルランドに現地法人「NERIKI EUROPE LTD.」を設立。「商品ではなく、品質を売る」をモットーにISO9001(製品・サービスの品質マネジメントシステムの国際規格)を取得。現在では、イギリスを含めた世界7カ国の工業規格に合わせた製品を販売し、高圧ガス容器用バルブの分野で世界的なシェアを拡大している。

巴バルブ株式会社

▶基本情報

  • 本社:大阪市西区
  • 従業員数:210人
  • 事業内容:流体制御機器及び周辺機器の製造・販売

▶概要

国内シェア1位を誇るバタフライバルブメーカー。1986年に海外進出の拠点として現地のサンダースバルブ社と折半出資で同社初の海外製造・販売拠点「トモエサンダース」をウェールズに設置。現在ではイギリスをはじめ、台湾、シンガポール、フィリピン、タイ、中国、インドネシア、アメリカに工場および製造・販売拠点を有する。

東洋シール工業

▶基本情報

  • 本社:奈良県生駒郡
  • 従業員数:535人
  • 事業内容:工業用/自動車用ゴム製品の製造・販売

▶概要

転がり軸受用ゴムシールの開発から製造・販売までを行う。1997年にイギリス工場で生産を開始(2006年に生産を終了し、現在は営業所として機能)。現在は、インドネシア、ポーランド、中国に工場を有しており、それぞれの向上でISOを取得済み。

まとめ

今回はイギリスの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果,イギリス製造業はGDPに対する割合は年々減少しているものの、生み出す付加価値自体は近年増加傾向であると分かります。またイギリス製造業のPMIは2020年8月時点で世界トップの数字であり、新型コロナウイルスの影響からの急速な回復が期待されます。

進出する日本企業の視点から考えると、EU離脱によって関税、通関、物流の問題が浮上し、日本製造業企業の多くがサプライチェーンの見直し、もしくはイギリスからの撤退を検討していることが分かりました。ただ、世界5位のGDPに代表されるように、市場規模は大きく進出先の一つの選択肢として考慮するべき国であることは変わりないと思います。今回の内容がイギリス進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑩「イタリア」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第三弾として「イタリアの製造業」を紹介します。

イタリア産業は新型コロナウイルスの影響により大きな打撃を受けました。しかし2020年5月以降、製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は急速に回復しており、従来の数値を超えるほどにまで力を取り戻しています。今回は2020年9月現在、急速に回復しているイタリア製造業を日本企業の視点から掘り下げていきたいと思います。

イタリアの基本情報

  • 正式名称:イタリア共和国(Repubblica Italiana)
  • 首都:ローマ(Roma)
  • 首相:ジュゼッペ・コンテ(2018年6月から)
  • 通貨:ユーロ(1ユーロ=125.88円 ※2020年9月7日時点)
  • 人口:約6,060万人
  • 面積:約30万1328km2
  • 公用語:イタリア語
  • 宗教:カトリック(約80%)イスラム教、プロテスタント、ユダヤ教、仏教
  • 平均寿命:男79.6歳、女85.1歳

イタリア経済の特徴

強み

  1. 製造業:自動車産業、医薬品産業、繊維産業が盛ん
  2. 輸出:製造業関連の輸出(高級車、自動車部品、金属)に加え、衣料品(服、靴)の輸出が盛ん
  3. 観光業:2018年の統計によると、イタリアには6,160万人の観光客が訪れた(世界第5位)

弱み

  1. 失業率:2014年に過去最高の失業率12.7%を記録、若者の失業率が高く頭脳流出(優秀な人材の流出)が深刻化
  2. 企業競争力:国内の90%以上の企業が従業員10人以下の小企業、競争力の低下が進む
  3. 地域格差:治安の良い北部地方(殺人発生率の低さOECD加盟国の中でトップ1%圏内)に対し、治安の悪い南部(殺人発生率の低さOECD加盟国の中で下位10%圏内)

イタリアの産業構造

まずはイタリアの産業構造の調査結果を紹介します。下の図は2017年のイタリアの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合を示したグラフです。


データ引用元:Italy GDP – composition by sector – Economy – IndexMundi

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業と農業の占める割合は全体の約1/4
  • GDPの総額は約21.47億ドルで世界第9位(2019年)

現状

  • GDPにおける製造業が占める割合は2013年に13.85%を記録して以来緩やかに上昇を続ける
  • サービス関連業は増加傾向が続いていたが2014年以降、減少が続く

今後

・イタリアのGDP増加率が近年減少傾向(不安定な政治情勢、ユーロエリアでの不景気などの理由)
・新型コロナウイルスにより2020年のGDP増加率は-9.1%を記録する予想(2021年は4.8%の増加予想)

イタリアの製造業

次にイタリアの製造業の調査結果を紹介します。下の図はイタリアの製造業が国内総生産(GDP)に占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:Italy : Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業生み出す付加価値は2015年から上昇傾向
  • 製造業が生み出す付加価値は世界5位(2019年)

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に31.1を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年8月に53.1を記録
  • 製造業がGDPに占める割合は14.91%で世界41位(2019年)

今後

  • イタリアの製造業は2019年から2023年までCAGR(年平均成長率)1.6%で成長する見通し
  • イタリアの製造業がPLC(Programmable Logic Controller)市場で80%以上、低電圧ACモータードライブ市場で70%以上のシェアを獲得する見通し

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からイタリアの製造業市場を調査した結果です。下の図はイタリアに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 進出日本企業数は2015年をピークに減少傾向が続く
  • 在イタリア日本商工業会議所の会員数は199社(内135社が普通会員、64社が賛助会員)

現状

  • 電機、自動車部品、化学・素材、エネルギー分野の日本企業の進出が多い
  • 近年、日本企業が現地イタリア企業を買収する形で進出するケースが増えている(毎年10~20件程度

今後

  • 2020年3月にイタリア政府はEUガイダンスを公表し外資規制を強化する姿勢を示した
  • 新型コロナウイルスの影響により多くの企業が経営難に陥り、企業価値が下がっている中で自国の戦略的資産を保護する動きが散見される

イタリアに進出した日本企業

株式会社ダイドーリミテッド

▶基本情報

  • 本社:東京都千代田区
  • 従業員数:42人(単体)
  • 事業内容:衣料品の製造・販売

▶概要

2016年イタリアのPontetorto S.p.a(ファッションウェア向け生地の製造・販売業者)を子会社化する形で欧州に進出。Pontetorto S.p.aが有する欧州での強固な販売基盤と婦人服向け衣料素材、スポーツ向け衣料素材を取り込むことで顧客の拡大を狙う。同社は中国にも製造拠点を有しており海外への事業展開に積極的。

石川ガスケット株式会社

▶基本情報

  • 本社:東京都港区
  • 従業員数:137人
  • 事業内容:ガスケットの製造・販売

▶概要

自動車エンジン部品の一つであるガスケット(液体の漏れを防止するための部品)を自社独自の技術で製造・販売する企業。2000年にイタリアのトリノにヨーロッパ初の支店を設立。現在は現地企業SPESSO GASKETS, SRLに生産委託で業務提携をしており、欧州のみならずアジア、北米地域への販路開拓にも積極的に取り組んでいる。

滲透工業株式会社

▶基本情報

  • 本社:長崎県西彼杵郡
  • 従業員数:187人 ※国内グループ全体
  • 事業内容:金属表面改質処理、ランスパイプの製造

▶概要

金属材料に所望の特性を付与させる金属表面改質技術を強みにする企業。1984年に同社初の海外子会社となるSHINTO ITALIA S.p.Aを設立。1996年に同子会社でISO9001(製品・サービスの品質マネジメントシステムの国際規格)を取得。現在は本社と同じ事業を扱っており、欧州の市場開拓の拠点として重要な役割を担う。

まとめ

今回はイタリアの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、前回紹介したフランスの製造業同様に欧州の製造業は急速な回復傾向を示していることが分かりました。

進出日本企業数は増加傾向とは言えないものの、イタリア製造業がGDPに占める割合は近年増加傾向にあるため、魅力的な市場であることに変わりはないと言えます。今回紹介したデータを含めて考えると、ヨーロッパの拠点としてイタリアも有力な候補になると思います。今回の内容がイタリア進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「フランス」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第二弾として「フランスの製造業」を紹介します。

2017年の国別日系企業数の調査によると、フランスには719の日系企業が進出しており、ヨーロッパではドイツ、イギリスに次ぐ日本企業が拠点を構えています。イギリスのEU離脱(2020年1月)を皮切りに、ドイツに次ぐ日系製造業企業の進出ターゲット国として注目を集めるフランスを日本企業の視点から掘り下げていきたいと思います。

フランスの基本情報

正式名称:フランス共和国(République Française)
首都:パリ(Paris)
元首:エマニュエル・マクロン大統領(2017年5月から)
首相:ジャン・カステックス(2020年7月から)
通貨:ユーロ(1ユーロ=125.43円 ※2020年8月21日時点)
人口:約6,699万人
面積:約55万km2
公用語:フランス語
宗教:カトリック(約65%)イスラム教、プロテスタント、ユダヤ教
平均寿命:男78.8歳、女85.2歳

フランス経済の特徴

強み

1. インフラ:世界トップクラスの速さでインフラ整備が進む(フランス政府が力を入れて投資をしていることが要因)
2. 観光業:2017年の調査によると、フランスに訪れる外国人観光客は8,690万人で世界1位
3. 農業:EUの農業生産の約1/5を占める(植物油、穀物、ワインはEUの約1/3の生産高を占める)
4. 国際企業:各種産業で高い競争力を誇る企業を有する(航空宇宙、エネルギー、環境、医薬品、高級品、食品、流通)

弱み

1. 税金:給与税40%は世界で最も高い(政府がインフラ整備に投資する財源を確保するため)
2. 失業率:失業率8.1%はEUで4位(2019年第四四半期の調査)特に若者と高齢者の失業率が高い
3. 競争力:熟練労働者が不足しているため製造業の競争力は停滞傾向

フランスの産業構造

まずはフランスの産業構造の調査結果を紹介します。下の図は1970年から2019年までのドイツの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:France: sectoral composition of the economy| TheGlobalEconomy.com

グラフから以下のことが分かります。

  • サービス関連業は増加傾向を維持しており、全体の78%を占める
  • 製造業と農業は減少傾向にあり、合わせてGDP全体の22%を占める

現状

  • 2020年のGDP成長率は-7.2%になる見通し(新型コロナウイルスの影響)
  • 2019年の財政赤字はGDPの3.1%を記録し、過去9年間で最も高い数字となった

今後

  • 2021年にGDPは4.5%の回復が見込まれている(新型コロナウイルスの影響が弱まると予想されるため)
  • 失業率(特に若者)は近年増加傾向であり、2020年、2021年ともに10.4%となる見通し(新型コロナウイルスの影響)

フランスの製造業全体

次にフランスの製造業全体の調査結果を紹介します。下の図はフランスの製造業が国内総生産(GDP)に占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:France : Share of manufacturing | TheGolobalEconomy.com

グラフから以下のことが分かります。

  • 統計開始を開始した1960年から減少傾向が続く
  • 製造業が生み出す付加価値は増加傾向が続く(世界第6位の額)

現状

  • 新型コロナウイルスによる不況により製造業労働者の失業数が増加
  • 2020年4月に31.5%まで落ちたPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年7月に55%近くまで回復

今後

  • 新型コロナウイルスによるロックダウンを機に生産性改善に取り組む企業が増加
  • 医薬品の輸出が急速なスピードで増加(2019年に前年比+4.9%の増加を記録)

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からフランスの製造業市場を調査した結果です。下の図はフランスに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフから以下のことが分かります。

  • 2016年を除いて、統計を開始した2012年から増加傾向が続く
  • 在仏日本商工会議所の正会員数は2000年から210社辺りで横ばいが続く

現状

  • フランスに拠点を持つ日系企業の中で約29%が自動車関連企業電子工学が19%農業・食品関連が11%機械・機械設備が9%
  • フランス進出した日系企業の46%が生産・製造関連のビジネスを行っている

今後

  • 在仏日系企業の内2020年の営業利益見込みが改善すると回答した割合は41.3%(有効回答数80社)
  • 在仏日系企業の内25.0%の企業が景気が回復していると回答、11.9%の企業が景気が悪化していると回答(有効回答数80社)

フランスに進出した日本企業

次に実際にフランスに進出した日本の製造業企業3社を紹介します。

株式会社ダイショウ

▶基本情報

  • 本社:神奈川県茅ケ崎市
  • 従業員数:3人
  • 事業内容:受託加工業(切削部品)

▶概要

日仏を技術で繋ぐ「町工場」の名の下に、2015年よりフランス・サンテティエンヌ近郊で事業を展開。試作、中小ロットを対象とした切削部品の受託加工業で欧州進出を果たす。フランスでは現地パートナー企業と連携して加工生産、現地サプライチェーンの構築を行い日本品質の技術を駆使し現地での生産を行う。※詳しくは下記の過去のインタビュー記事を参照。

▶インタビュー記事(株式会社ダイショウの石塚社長)


(フランス進出の経緯、フランスでのビジネス、フランスでの加工業について)


(フランス進出、フランスの日本企業、フランスのネット事情、フランスの現状について)

株式会社由紀精密

▶基本情報

  • 本社:神奈川県茅ケ崎市
  • 従業員数:42名(パートタイマー7名含む)
  • 事業内容:精密部品製造(航空・宇宙・医療・電気電子・機械式時計)

▶概要

2015年5月に航空宇宙関連事業の拡大を目的にフランス子会社「YUKI Précision SAS」を設立。精密切削加工分野の日本企業として初のフランス進出を果たす。2016年5月に日仏の中小製造業4社が共同で精密加工部品の製造を請け負う組織「ACT」を創設。現在では本業の精密切削加工に加えて欧州に進出する日本企業のサポート事業も行っている。

松本機械工業株式会社

▶基本情報

  • 本社:石川県金沢市
  • 従業員数:94名
  • 事業内容:工作周辺機器の製造販売

▶概要

高性能のパワーチャック・シリンダー・NCロータリーテーブルの製造・販売を行う。フランス・リヨンに販売子会社を有しており航空機エンジン関連の市場開拓に力を入れている。フランスのみならずASEAN各国、台湾・韓国・アメリカを中心に各国のニーズに合わせた販路開拓を展開している。

まとめ

今回はフランスの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、フランス製造業PMIが示すようにフランス製造業は新型コロナウイルの影響から回復傾向にあり、生産効率改善への取り組みを始め次のステージへ移行しています。

進出日系企業に着目すると、今回紹介した企業はいずれもフランスの航空宇宙産業関連の市場に自社の製品・技術を展開していることが分かります。このことからもヨーロッパ進出には世界に通用する高い技術力と品質がカギであると分かります。今回の内容がフランス進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「ドイツ」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第一弾として「ドイツの製造業」を紹介します。

2017年の国別日系企業数の調査によると、ドイツには1814の日系企業が進出しておりヨーロッパのなかで最も多くの日本企業が拠点を構えています。同データからも分かるように、日本企業から多くの注目を集めるドイツの製造業を掘り下げていきたいと思います。

ドイツの概要

  • 正式名称:ドイツ連邦共和国(Bundesrepublik Deutschland)
  • 首都:ベルリン(Berlin)
  • 元首:フランク=ヴァルター・シュタインマイアー(2017年3月から)
  • 首相:アンゲラ・メルケル(205年11月から)
  • 通貨:ユーロ(1ユーロ=125.57円 ※2020年8月12日時点)
  • 人口:約8046万人
  • 面積:約36万km2
  • 公用語:ドイツ語
  • 宗教:カトリック(29.9%)、プロテスタント(28.9%)、イスラム教(2.6%)、ユダヤ教(0.1%)
  • 平均寿命:男78.5歳、女83.3歳

ドイツ経済の特徴

強み

  1. 工業基盤:2018年のGDPの約25%を工業が占める
  2. 輸出:ハンブルク、ブレーマーハーフェン、キールといった世界的な貿易港を有する
  3. 職業訓練制度:毎年約500,000人の生徒が職業訓練を受ける、訓練後のフルタイム勤務を支援
  4. 中小企業:年間売上高5000万ユーロ以下、従業員500人以下の企業が国の経済の屋台骨を支えるという意味を込めて「ミッテルシュタント(Mittelstand)」と呼ばれている

弱み

  1. 労働人口:医者と看護師を始めとする技能労働者不足が深刻化する予想
  2. 自動車産業:自動車に対する需要の低下などの要因により、400万人分の雇用が2030年までに消失する予想
  3. 政党分裂:支持者の高齢化、会員数の減少、投票基盤の縮小、意思決定プロセスの複雑化等の問題が浮上

ドイツの産業構造

ドイツの産業構造を調べます。下の図は2019年のドイツの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合を示したグラフです。


データ引用元:Germany – Share of economic sectors in gross domestic product (GDP) in 2019 | statista

グラフから以下のことが分かります。

  • サービス関連業がGDP全体の2/3以上を占める
  • サービス関連業は2007年からドイツのGDPの60%以上を安定的に占める

現状

  • 新型コロナウイルスの影響により2020年の製造業の生産高は約10%から15%減少する見通し
  • 2020年現在、ドイツ国内における製造業の生産高は5月から徐々に回復しており、同傾向が続く予想

今後

  • ドイツは世界の産業拠点として以前ほど魅力的ではなくなる予想(賃金、実効平均法人税率、電気代が他国と比較して高いことが理由)
  • 輸出産業が盛んなドイツにとってコロナウイルスの収束による輸出産業の回復が経済のカギを握る

ドイツの製造業全体

次にドイツの製造業全体について調べます。下の図はドイツの製造業が国内総生産(GDP)に占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:Germany : Share of manufacturing | the Global Economy.com

グラフから以下のことが分かります。

  • ・2009年の17.68%を除いて安定してGDPの20%前後を占める
  • ・2016年以降、サービス関連業の拡大により減少傾向が続く

現状

  • 新型コロナウイルスの影響により、機械工学産業、自動車産業、金属産業において顕著な生産高の減少が発生する見通し(工場の生産効率低下などが理由)
  • 2020年3, 4, 5月の製造業の生産高は大幅に下落、第三四半期から回復の兆しを見せる予想だが回復のスピードは遅く、前年の水準には及ばない予想

今後

  • 2021年の製造業の生産高は10%以上増加する見通し
  • 2021年に回復傾向に転じることが予想されるが、過去最高を記録した2018年の水準には達しない予想

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からドイツの製造業市場を調査した結果です。下の図はドイツに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフから以下のことが分かります。

  • 統計を開始した2007年以降、ドイツに進出する日系企業数は増加傾向が続く
  • 2014年から2017年まで成長率は減少傾向

現状

  • 2017年において、欧州に進出した日本企業の約24%がドイツに進出(欧州内でトップの割合)
  • 進出している分野は卸・小売業が約31%製造業が約28%サービス業が約11%宿泊・飲食業が約7.2%情報通信業が約5.5%運輸業が約4.2%教育・医療・福祉業が約2.0%金融・保険業が約1.7%不動産業が約0.7%その他が約8.5%

今後

  • ここ数年日本の中小企業がドイツに進出する件数が増加傾向
  • 2020年6月の調査によると、在独日系企業のうちドイツにおけるビジネス展開の縮小・撤退を検討している企業は約5%であり、ほとんどの企業がこれまで同様にドイツでビジネスを続ける方針

ドイツに進出した日本企業

次に実際にドイツに進出した日本の製造業企業3社を紹介します。

株式会社五鈴精工硝子

▶基本情報

  • 本社:大阪府泉佐野市
  • 従業員数:78人
  • 事業内容:光学フィルターの製造・販売(OA機器、写真機器、照明器具、医療機器用)

▶概要

オリジナルの組成素材を用いた光学フィルターを試作から量産まで自社で一貫生産を行う。ヨーロッパへの事業拡大拠点として、ドイツ(フランクラフルト)とに事業所を構える。世界でも有数なラインナップ数を誇る機能性ガラスや世界トップクラスの特殊形状レンズの量産化技術を活かし海外企業と取引を行う。

向陽技研株式会社

▶基本情報

  • 本社:大阪府堺市
  • 従業員数:80名(中国工場70名、ベトナム工場200名、ドイツ販社4名)
  • 事業内容:ラチェットギアの製造・販売(ソファ用ギア、座椅子用ギア、テーブル脚用昇降パーツ)

▶概要

家具製品用の角度調節金具の製造販売を行う。2年に1度ドイツ(ケルン)にて開催される家具部品の展示会に新製品を出展し続けソファーメーカーを始めとするヨーロッパでの顧客を獲得。現在ではドイツ(ディッセルドルフ)に販売拠点を構える。

三星ダイヤモンド工業

▶基本情報

  • 本社:大阪府摂津市
  • 従業員数:698名(連結)
  • 事業内容:電子部品の分断加工、パターニング工程向け装置・加工工具(刃先等)・レーザー光源・光学系の開発、製造、販売

▶概要

電子部品の加工装置メーカー。オリジナルの刃先やレーザー発振器を利用し生産性を高めた加工装置を製造、販売する。2005年にSchott AG(ドイツ・マインツに本社を置く産業用ガラスメーカー)のレーザー分断事業を買収しドイツに子会社を設立。現在では、中国、韓国、台湾においても事業を展開している。

まとめ

今回はドイツの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。今回の調査の結果、ドイツの製造業はコロナウイルスの影響で2020年の上半期に大きな影響を受けたものの、下半期から徐々に回復するであろう見方が強いことが分かりました。

以前紹介したアジアに進出している日系企業は、現地の労働者雇用や現地の日本企業への部品供給を主な目的として挙げられました。一方で、ドイツに拠点を構える日本企業は、ヨーロッパへの販路開拓の拠点としてドイツを選んでいるケースが多いと感じました。今回の内容がドイツ進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー④「巨大な先進国アメリカ」後編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第4回目後半の今回は前回の記事に引き続き、アメリカのロックウェルオートメーション株式会社で品質管理のコンサルタントとして働く津吉政広さんにインタビューを行いました。津吉さんはこのモノカクでも記事を執筆頂いています。津吉さんのプロフィールはこちら。後編の今回は、

  • 「アメリカ企業の品質に関する考え方の違いは?」
  • 「アメリカと日本の商習慣の違いは?」
  • 「コロナウイルスで会社にどのような変化があったか?」
  • 「英語Webサイトを作ってアメリカに販路開拓したい企業にアドバイスは?」

などの質問に対し、現地企業でコンサルタントとして働く方ならでは意見をお届けします。

日本企業について

日本企業のイメージは?

Made in Japanの品質神話は昔ほどではありませんが、今でも活きていると感じます。なので、良い品質のイメージがあります。

日本企業が強い分野は?

自動車、自動車部品産業、機械、製造ロボット産業、電気製品(Panasonic、Sonyなど)だと思います。

アメリカ企業の品質に関する考え方は?

アメリカ企業は数字明確なデータを欲しがる傾向が強いと思います。例えば、不良品の割合などを数字ではっきりと示すこと、データで提出することが交渉事でも必要不可欠になります。

アメリカの商習慣について

アメリカと日本企業の商習慣の違いは?

アメリカでは基本返品が可能です。一度使ったものも返品されることがあるとも聞きます。それは、返品可能かどうかが会社の評判に影響することも関係していると思います。

製造業だと契約があるので、そこまでひどいケースはないと思いますが、製品を買ってもらってすぐに壊れているとクレームを言ってくるケースはよくあります。

日本企業とアメリカ企業のメールのやり取りに違いはある?

大きく違いは4つあると思います。

1つ目は、日本企業はアメリカ企業に比べて返信が遅い事です。アメリカ企業は少なくとも翌営業日には返信のメールがくることを期待しています。なので、メールの内容に対する返信はしなくてもいいので、「メールを受け取って検討に入った」、という趣旨のメールが欲しいですね。アメリカではこのスタイルが普通です。

2つ目は、日本企業のメールの文面は過剰なほど丁寧と言う印象を受けます。アメリカ企業は内容に対してストレートに返信している印象があります。

3つ目は、日本企業が使う専門用語がアメリカ企業が使うそれとは違うことが多い事です。端的に言うと、品質用語等の専門用語のチョイスを間違えている日本企業が多いので気を付けて欲しいということです。

4つ目は、CCが多くついていることと、責任者が誰なのかよく分からないことが多い事です。

アメリカ企業同士でのやり取りはどうやって行う?

社内でのやり取りはメールがほとんどです。注文などを含めて、私の産業ではお金に関することはメールでやり取りすることが多いです。

日本企業とのやり取りは、(日本企業は)英語が苦手なことが多いのでメールでのやり取りがほとんどです。電話対応があればもちろん良いと思いますが、アドバンテージになるかと言われるとはっきりとしたことは言えません。

ビジネスでよく用いられるSNSは?

LinkedInを使っている人が多いです。ただ、LinkedInは商売で使われることは少ないイメージで、転職や求人に関するやり取りをするイメージです。また、LinkedInは企業が求人広告を上げる最も大きなプラットフォームの一つでもあると思います。

アジア系労働者に対する差別はある?

ありません。会社のルールとして禁止されているため差別を受けたことは全くありません。ただ絶対数の問題もあると思いますが、アジア系の人が上級管理職につく割合は少ないと思います。

支店はアメリカ国内に設置した方が良いか?

そうだと思います。同じアメリカ国内の方が連絡が取りやすいですよね。あと、海外のやり取りになると商習慣の問題とかが複雑なので、アメリカ国内で直接やり取りできた方が何かと都合が良いと思います。

コロナウイルスについて(インタビュー実施日2020年5月2日)

コロナウイルスで会社にどのような変化があったか?

大きな変化は3つあります。

1つ目は、会社の出入りが厳しくなったことです。例えば、会社の入り口で検査をやって体温を測ったりですね。

2つ目は、家で働ける人は家で働くようになりましたね。現在、会社内で働いている人よりも家で働いている人の方が多いくらいだと思います。ただ、製品の実験だとか組み立てだとかは会社でしかできないので、そういう仕事をしている人は通常通り会社勤務しています。

3つ目は、アメリカ企業全体に言えることですが、オンラインできるものはオンラインでやろう、という風潮が強まりましたね。コロナウイルスが流行する以前からこういう企業は多かったですが、今回のパンデミックをきっかけに、さらに増えた印象があります。

コロナウイルスで私生活にどんな変化があったか?

お店が休業したり、学校が休校になったり、行くところが限定されとにかく不便になりましたね。特に、病院などの出入りはチェックが厳しくなり、病院内の食事などもすべて個室で済ませているところがほとんどです。

最後に

英語Webサイトを作ってアメリカに販路開拓したい企業にアドバイスは?

注意して欲しいことは3つあります。

1つ目は、言葉よりも写真デザインを重視した方が良いと思います。なぜかと言うと、あるWebサイトを初めて見て、そのWebサイトに留まろう、読もうと思うのは写真やデザインが目に留まるからだと思います。要は、第一印象が最も重要で具体的な内容は次に来ます。その意味において、言葉よりも写真やデザインを優先することが英語Webサイトを作るうえで重要だと考えました。

2つ目は、日本独特な言い回しをアメリカ英語的なストレートな表現に上手に翻訳することも重要だと思います。

3つ目は、図面データ実績を目につきやすい場所に配置する方が良いと思います。数字ではっきりと分かる情報を重要視するアメリカ企業が多いため、Webサイトを作る際には、そのような部分にも気を配る必要があると思います。

まとめ

いかがでしょうか。冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「アメリカ企業の品質に関する考え方の違いは?」

アメリカ企業は明確な数字やデータを求める傾向が強い

「アメリカと日本の商習慣の違いは?」

アメリカでは基本返品可能

「コロナウイルスで会社にどのような変化があったか?」

  1. 会社の出入りが厳しくなる
  2. 在宅ワークの推奨
  3. 事業のオンライン化

「英語Webサイトを作ってアメリカに販路開拓したい企業にアドバイスは?」

  1. 言葉よりもデザイン
  2. アメリカ英語的な表現
  3. 数字ではっきりと分かる情報の配置

のようになります。今回のインタビューを通して、アメリカ企業がWebサイトに求める情報の違い、メール対応の違い、返品ポリシーの違いなど、アメリカ企業と日本企業のビジネス上での様々違いを感じ取って頂けたと思います。今回のインタビューで得られた知見を、アメリカへの販路開拓に少しでも役に立てていただければ幸いです。

世界の製造業インタビュー④「巨大な先進国アメリカ」前編

テクノポート稲垣です。第4回目前半の今回は、アメリカのロックウェルオートメーション株式会社で品質管理のコンサルタントとして働く津吉政広さんにインタビューを行いました。津吉さんはこのモノカクでも記事を執筆頂いています。津吉さんのプロフィールはこちら。前編の今回は、

  • 「アメリカ企業のWebサイトを見る時に注意してみる内容は?」
  • 「日本企業の英語Webサイトとアメリカ企業のWebサイトの違いは?」
  • 「機械翻訳と人間の翻訳はすぐに分かるか?」
  • 「翻訳はネイティブに依頼するべきか?」

などの質問に対し、現地企業でコンサルタントとして働く方ならではの意見をお届けします。

津吉さんについて

津吉さんの経歴は?

アメリカに来てロックウェルオートメーション(産業用オートメーション事業に特化した世界最大規模の企業)にジョインしたのが2000年なので、もう20年くらいになります。

その前は日本のリライアンスという会社に4年ほどいました。ただ、ロックウェルオートメーションがリライアンスを買収したという経緯も考えると計24年今の会社で働いていることになります。

現在の業務内容は?

現在の業務内容は、ロックウェルオートメーションでリーンシックスシグマの導入を行っています。リーンシックスシグマ※とは品質管理をターゲットにしたもので、統計などを使って品質を高めることがメインの目的になります。

※リーンシックスシグマについて詳細は以下の記事を参考にしてご確認ください。
海外のものづくりの現場で使われているリーンシックスシグマとは?

私の立場は開発部隊に属しているわけではなく、開発部を助ける立場です。先ほど述べたリーンシックスシグマには組織があり、私はマスターブラックベルトという立場で全体の総括みたいなことを行っています。

渡米前から英語は話せたのか?

渡米前は英語は全然話せませんでしたよ。ですが、エンジニアとしてコードが書けたので英語がそこまで流暢ではなくても意思の疎通は十分にできました。

アメリカのWebサイト事情について

アメリカ企業のWebサイトを見る時に特に注意して見る内容は?

製造業に関する英語Webサイトに関して、注意して見る内容は4つあります。

1つ目は、自分の地域にコンタクト先があるかどうかです。アメリカと言っても広いので、例えばアメリカでもウィスコンシン州に支店があるかどうか、などです。

2つ目は、導入実績例、3つ目は、データシート(※1)等の詳細な情報が入手可能かどうかです。

※1 データシートとは製品の仕様が書かれたドキュメントのことです。製造業では一般にデータシートのようなドキュメントを基に設計を行うため、英語で書かれたデータシートの情報が手に入るかは重要になるそうです。(Datasheetの画像検索結果

4つ目は、Secureサイト(※2)かどうかです。アメリカではほとんどがSecureサイトなので、逆にSecureでないと気になります。

※2 Secureサイト、SSLについての詳しい内容は以下の記事を参考にしてください。
「保護されていない通信?」「http://」と「https://」の違いについて

補足情報

日本の大手企業でサイト全体をSSL(通信データを暗号化し保護する仕組みのこと)を導入しているところが増えてきているが、中小企業になると全体の約3割程度しか導入していない。

アメリカで日本企業の英語Webサイトを見る時に注意して見る内容は?

製造業に関する日本企業の英語Webサイトに関して言えば、大きく3つあります。

1つ目は、商習慣があっているかどうかです。具体的には、クレジットカードが使えるかどうかをはじめとする決済方法の問題、為替の問題などが挙げられます。アメリカではビジネスの取引でもクレジットカード決済が主流です。もちろんすごく大きな金額の取引になると話は変わってきますが、エンジニアが製品を購入するレベルの話だと会社のクレジットカードを使って購入するケースが多いです。

2つ目は、返品可能かどうかということです。アメリカでは返品が自由な企業がほとんどなので、日本企業から商品を購入する時は特に確認します。

3つ目は、支店のサポートが受けられるかどうかです。これはアメリカ国内に支店があった方が直接やり取りできて、より有利になります。

日本企業のサイトがアメリカのGoogle検索でヒットすることはあるか?

あります。例えば、”Industrial robots”で検索すれば、FANUCがでてきます。アメリカのロボット業界でもFANUCは有名で強いですね。他にも、業界のリーディング企業であるオムロン、川崎重工、安川電機などは数ページ後ろの方に出てきます。

日本企業の英語Webサイトが改善すべきことは?

製造業のサイトではありませんが、楽天グローバルマーケットのサイトは、海外に住む日本人の間では、日本企業の英語Webサイトの良くない例として有名です。例えば、下記のページの”Oneでゆるwinding”って何のことでしょうね。(笑)

https://global.rakuten.com/en/store/sacom/item/ehhv24p/

楽天グローバルマーケットのサイトを見てもらえば分かりますが、商品名に日本語が混じっていたり、日本語の写真サンプルをそのまま使っていたり、英語の文章が読めなかったりと、ある意味結構笑えます。(笑)あと、これはWebサイトの内容とは直接関係ないかもしれないですが、楽天グローバルマーケットが対象とする顧客が不明です。

なぜかと言うと、アメリカ人が楽天グローバルマーケットで商品を買うことは少ないと思いますし、アメリカに住む日本人がターゲットなら英語に自動翻訳する必要もないですよね。

日本企業の英語Webサイトとアメリカ企業のWebサイトとの違いは?

端的に言うと、アメリカ企業は製品中心、対して日本企業は会社中心、という印象を受けます。例えば、アメリカ企業のWebサイトでは、トップページに新製品を出していることが多く、会社のイメージは後ろのページに隠れているイメージがあります。

一方で、日本企業の英語Webサイトは社長メッセージだとか会社の事業方針などが目につきやすい箇所に配置されているイメージがあります。具体的な例としては、都ローラー工業の英語Webサイトを見ると、社長のメッセージが顔写真と一緒に最初の方のページに出てくるところが、日本的で微笑ましいですよね。

出典:Miyako Roller Industry

翻訳について

Google翻訳でも十分意味は通じるか?

結論、通じないことが多いと思います。Google翻訳でも無いよりはましかもしれませんが、意味が通じない可能性もあると思います。製造業に関して言うと、技術的な内容は言い回しが違ったり、単語が違ったりすると通じなくなってしまうことがあると思います。

また、意味が通じないのであればまだ良いですが、文章が誤解されたときは大きな問題に発展するかもしれないですよね。最悪の場合、Google翻訳がもとで誤解が生じ、法的な問題に発展することがあるかもしれません。

機械翻訳と人間の翻訳はすぐ分かるか?

すぐに分かります。特に言い回しが違うと感じることが多いです。例えば、自動翻訳された文章は、文章表現の方法や使用する構文の選択が不自然なことが多いです。個人的には受け身の文章が多用されていたりすると、自動翻訳を疑ってしまいますね。

翻訳はネイティブに依頼すべきか?

お願いするべきだと思います。特に製造業をはじめとする技術系の企業が、自社の技術や製品をWebサイトを通して伝えたい場合には、適切な言い回しを選択できるネイティブに依頼するのが無難だと思います。

専門用語の選択など、自社でできる翻訳は事前に行い、分からない文章だけを依頼する形が良いと思います。

まとめ

いかがでしょうか?冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「アメリカ企業のWebサイトを見る時に注意してみる内容は?」
→ 1. コンタクト先があるか、2. 導入実績例、3. データシート等の詳細情報、4. Secureサイトかどうか

「日本企業の英語Webサイトとアメリカ企業のWebサイトの違いは?」
→ アメリカ企業は「製品中心」、日本企業は「会社中心」

「機械翻訳と人間の翻訳はすぐに分かるか?」
→ すぐに分かる。言い回しが適切ではないことが原因

「翻訳はネイティブに依頼するべきか?」
→ 依頼するべき。文章表現はネイティブに任せた方が無難。

となります。後編の次回は、日本企業のイメージ、アメリカの商習慣、コロナウイルスの影響について掘り下げていきます。具体的には、

  • 「日本企業に対するイメージは?」
  • 「アメリカと日本の商習慣の違いは?」
  • 「日本企業とアメリカ企業のメールのやり取りの違いは?」
  • 「コロナウイルスで会社にどのような変化があったか?」

などの質問に答えて頂きました!後編を読んで頂くと、日本企業とアメリカ企業のビジネスに対する考え方、文化の違いなどを感じて頂けると思います。今回の内容がアメリカへの事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー③「日系メーカーの海外展開(ベトナム)」後編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第3回目後編の今回は前回の記事に引き続き、メーカー勤務時代にベトナムに赴任し自社製品を現地に売り込む仕事をされていたブルーイノベーション株式会社経営戦略室の田中さんにインタビューを行いました。後編の今回は

  • 「駐在所に現地で雇ったスタッフは必要か?」
  • 「商社を介して製品を売るメリットは?」
  • 「販売代理店の探し方は?」
  • 「海外で商品を売る際に重要な考え方は?」

などの質問に対し、現地で営業を行っていた方ならではの意見をお届けします!

海外でのビジネスについて

駐在所に現地で雇ったスタッフは必要か?

もちろん必要だと思います。

結局、日本人が駐在所にいても現地のお客さんに対してできることってすごく少ないんですね。なので、現地に駐在する日本人とお客さんとの間をつないでくれる優秀な現地人スタッフがカギになります。加えて、問い合わせの対応などを通してお客さんに良い印象を与えるという意味でも重要です。

あとは、現地で雇ったスタッフは現地の商習慣を理解しているということが大きいです。ベトナム語が話せる日本人がいたとしても、現地の商習慣を理解して現地ならではのビジネスの取引ができる人は少ないですよね。

現地でカタログ作成を任せる時の注意点は?

ブランドイメージを守ることです。

と言うのは、日本企業が現地で製品を売る時は比較的ハイエンドなイメージで売っていく企業が多いと思います。しかし、現地の会社が作るカタログはいかにも現地の企業が作りました、みたいなチープな見た目になることが多いんです。

この問題に対処する方法として、グローバル向けの英語カタログをあらかじめ作ってしまうという方法があります。つまり、英語の総合カタログを作っておき、現地の営業マンにそれを使って営業してもらうという方法です。この方法なら日本企業のブランドイメージを守りながら現地での営業活動も行えます。

特にB2Bでは専門用語は英語でも分かってもらえることが多いですし、かつグローバル企業としてのイメージも持ってもらえます。また、他の国にグローバル展開する際にも同じカタログが使えると思うので、工数や費用の面でも効率的だと思います。

商社を介して商品を販売したことはある?

私自身はないですけど、身近なケースで、以前ベトナムの外資規制で外資100%の販売機能だけの会社が許可されない時代に商社を使って販売していたということがありました。

実際にはその外資規制が撤廃されることが分かっていたので、本格参入する前のマーケティングという目的です。その後は現地に拠点を作り、自ら販路を開拓して販売するようになりました。

商社を介して製品を売るメリットは?

広く浅く商品を売れるということですね。具体的に言うと、現地でマーケテイング兼販売実績を作っていくという足掛かり的な意味で商社を利用することは有用だと思います。その国で製品が売れるかどうかを探るという意味合いですね。なので、本格的に投資をして事業を大きくしようと考えているのなら商社経由ではなく、自社の拠点を作ったほうが良いと思います。

また、色々な国に事業を展開したい企業にとっては商社は価値があると思います。複数の国に拠点を作るのは投資も膨らみますし、販売代理店を使うにしても数が多いと管理するのは大変ですからね。そういった場合は、既に世界各国に拠点のある商社を利用するのが効率的だと思います。

商社を介して製品を売ることのデメリットは?

お客さんの生の声が届きにくいということですね。なので、お客さんのニーズに合わせて事業を拡大していくなら自社で拠点を設けたほうが良いと思います。

料金の回収方法の決め方は?

理想は全額前払いですが、業界に自社が後から参入する場合は業界のスタンダードに従うのが現実的です。ただ日本企業としてハイエンドなポジションで取引したい場合は、業界より厳しめの料金回収方法を要求した方が良いと思います。というのは、最終的にこちら側の要求を下げるか、料金の支払い方法で妥協することになるからです。

また、近い業界に日本企業の先人がいるなら情報を共有してもらうなり教えを乞うなりする。もしくは、業界に詳しい現地人を採用して、その人から情報を聞き出す。あとは、コンサルティング会社に調査を依頼するパターンもあります。もし、コンサルティング会社に依頼するなら現地の商流やお客さんのニーズなども含めて調査を依頼することをおすすめします。

販売代理店について

販売代理店の探し方は?

大きく2種類あります。1つ目の方法は、ジェトロ在日本の各国大使館日本人商工会に相談にいく方法です。比較的規模が小さい会社の場合は、こういった機関に、「今どういうことをしていて、海外でこういうことをやっていきたい、ついては現地の会社を紹介してもらえませんか?」と言う感じで相談してみると良いと思います。お金もかからないので。

2つ目の方法は、コンサルティング会社を利用する方法です。もしもお金があるならば海外進出のコンサル会社があるので、販売代理店の候補となる企業をリストアップしてもらうという方法もあります。

上記のような方法で候補となる企業を探したら、実際に面談をして信用調査をしていく感じです。

展示会を利用して販売代理店を探すのは良い方法か?

結論から言うと、闇雲に展示会に出て販売代理店候補を0から探すのは効率的ではないと思います。結局、展示会に来る人の目的は商品を購入することが多いので、御社の製品をいくつか買いたいという人には会えるかも知れませんが、販売代理店として御社の製品を担ぎたいですという企業にはなかなか出会えないと思います。

もしも展示会で販売代理店を探すなら予め先に挙げたような機関に相談して代理店候補見つけて展示会に来てもらい、自社の製品を見せながら「販売代理店になりませんか?」という話をする方が効率的だと思います。

海外の展示会に出て現物を見せるというのは費用もかかるし手続きも複雑ですごく大変なことです。なので、もし海外の展示会に出展するとなったら、その効果を最大化すべく事前に代理店候補となる企業を見つけておいた方が良いと思います。

1つの国に複数の代理店を持つことはあるか?

基本的には、1つの国には1つの代理店と言うケースが多いと思います。なので、もうその国の販売はその1つの代理店に任せる状態です。つまり、その代理店の売り上げは、その国における自社の売上の全てになります。そうなると、売ってくれそうな代理店、自社に的確な代理店を探すことが重要だと思います。

先の質問の回答ともつながりますが、闇雲に展示会に出て代理店探しをしても効率的ではないというのは、こういった事情も関係しています。

現地で販売支援の営業をする業者を利用したことは?

検討したことはありますが、実際に利用したことはありません。検討した理由は、現地の販売代理店は新規の顧客開拓がそれほど得意ではなかったからです。つまりは売上が伸びなかったからです。よって、その時は販売代理店をサポートして営業活動を行ってくれる人材、企業を調査しましたね。実現しなかった大きな理由は、適格な人材が見つからなかったからです。適格な人材とは自社の売る製品の業界に詳しく、かつその業界で人脈がある人です。そういった人でないと効果は出ないんですが、結局は見つかりませんでした。

あとは、費用対効果が読みにくかったからという理由ですね。海外で製品を売る日本企業にとって、販売代理店を現地に作るのは広く普及していますが、営業による販売支援のサービスはまだそれほど普及していないということも背景としてあると思います。

現地で販売代理店を持つ理由は?

大きく2つの理由があります。

1つ目は現地で在庫を抱えられるということです。以前、私自身もお客さんの納期の要望に応えるために現地で在庫を用意しておく必要があったので、在庫を抱えてくれる販売代理店は必要でした。

2つ目は、現地で必要なバリューチェーンを請け負ってくれるということです。私の場合、販売、施工から保守まで現地の対応が必要でしたので、そういったサービスをちゃんと対応してくれるという面も大きかったです。

3つ目は料金の回収をしてくれるということです。やはり回収の話になると、現地人同士のやり方があったりするので販売代理店に任せた方が良いと思います。

海外で商品を売る際に重要な考え方は?

個人的な意見としては、自ら現地に足を運び、現地の市場と顧客を理解することです。なぜかと言うと、現地の販売代理店に任せても上手くいかないケースが多いからです。日本から距離的にも離れているので、そもそも販売代理店を管理するのが難しいんですね。管理しようとしても現地の事情が分からないので都合の良いことばかり言い返されてしまう。

なので、自分自身が何度も足を運んで、お客さんのニーズを聞いてコミュニケーションをすることが重要だと思います。市場と顧客を理解できていないと販売代理店と深い議論はできないし、売る為のアイデアも出てこないのではないでしょうか。

最後に

海外進出を考える中小企業事業者の方にアドバイスは?

2つあります。1つ目は、本当に海外で事業を伸ばそうと思ったら、日本でやっている事業を海外で0からつくる、というくらいの気概、覚悟が必要だいうことです。日本で売っている製品は日本のお客さん向けに作っているから売れるのであって、海外の市場でも同じです。自社の強みを活かすのはもちろんですが、現地に合わせないといけない。そのためには先も言ったように、自分自身で現地に足を運び、お客さんのニーズ、市場、現地の商流、商習慣がどうなっているかを理解することが必要です。そして、現地の市場と自社の製品・技術を掛け合わせてこれならいける!という事業を0から作っていくという気概、覚悟が必要です。

2つ目は、海外には国内の何倍ものチャンスがあるということです。これから海外に事業展開を考える方には、成熟した日本市場に留まるのか、新たな市場に挑戦するのか、ということを今回のインタビューを通して感じていただけたらと思います!コロナウイルスの影響で現在海外との行き来がストップしていますが、長い目で見ればグローバル化が止まることはありません。コロナ後を見据えて海外展開を考えてみませんか?

まとめ

いかがでしょうか。冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「駐在所に現地で雇ったスタッフは必要か?」

→ 必要、問い合わせの対応や現地の商習慣を任せられる

「商社を介して製品を売るメリットは?」

→ 広く浅くマーケテイングを兼ねて商品を売れること

「販売代理店の探し方は?」

→ ジェトロ、在日各国大使館、現地の日本人商工会、コンサル会社に相談

「海外で商品を売る際に重要な考え方は?」

→ 自分自身で現地に足を運び、現地の市場と顧客を理解した上で製品を売る

のようになります。今回のインタビューを通して強く感じたメッセージは、現地に足を運び自分自身で商流を理解することの重要性です。また、展示会を利用して販売代理店を探す際の方法など実際に現地でビジネスをされた田中さんならでは回答が得られた貴重な回だったと思います。今回の内容がベトナムはじめ海外への事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー③「日系メーカーの海外展開(ベトナム)」前編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第3回目前半の今回は、メーカー勤務時代にベトナムに赴任し自社製品を現地に売り込む仕事をされていたブルーイノベーション株式会社経営戦略室の田中さんにインタビューを行いました。前編の今回は、

  • 「ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?」
  • 「現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?」
  • 「日本企業に対するイメージは?」
  • 「日本企業に対するネガティブなイメージは?」

などの質問に対し、現地で営業を行っていた方ならではの意見をお届けします!

田中さんの経歴

ベトナムに駐在していたのは、2010年から2013年までの3年半です。その時は、シャープの現地法人で家電製品の営業企画をしていました。その後、東京に戻り機械系のメーカーであるナブテスコに転職し、出張ベースでベトナム、インドネシア、フィリピン、韓国、インドなどに営業に行ってました。

現在は、これまでの経験を活かし、ドローンのリーディングカンパニーであるブルーイノベーションで経営戦略や海外展開の指揮を執っています。日本のテクノロジーを海外に展開するという大変やりがいある仕事です。

ベトナム企業との関係構築について

ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?

2つあります。1つ目は内容の誇張があることですね。

例えば、建築業界の企業のWebサイトを見た時に何か実績集みたいなページがあったとします。そのページにはベトナムのランドマーク的な建物が実績でという記載があるんですが、その情報が真実かどうかというのは疑わしいところがあります。

2つ目は日本企業のWebサイトに比べて、企業の情報自体が少ない事ですね。

日本の会社のWebサイトは凄く丁寧に資本金、株主構成や会社の沿革情報を記載している企業が多いと思います。一方で、ベトナム企業のWebサイトはそういった情報の記載が少ないので日本企業ほどの深さの情報は取れないですね。加えて、ベトナム企業のWebサイトに用意してある英語ページはベトナム語のそれよりも情報量が少ないことが多いので、企業情報収集がWebサイトだけでは満足にできないということがあります。

Webサイトの情報以外に現地企業に足を運ぶのは必要か?

必要ですね。現地のWebサイトだけを見て判断するのは難しいと思います。なので当然、Webサイトから取れる情報を取った後に、実際に企業に訪問して話を聞いてというステップが必要です。私の経験から言うと、東南アジアにおいてはよほど知名度のある大きい企業でないと、Webページの情報だけで会社自体を信用することはできないと思います。小さい会社だとそもそもWebページがあっても実際に存在するのかどうかも分からなかったりします。

なので、気になった企業があればメールや電話でコンタクトをとって、事務所や工場があれば見に行きます。

現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?

間に誰か信頼できる人企業の紹介を挟んだ方が良いと思います。理由は、取引する相手が大手でこちらの知名度がない場合は、初めの交渉から不利になってしまう可能性が高いからです。なので、相手企業と既に取引のある会社や現地の日本企業なりに紹介してもらう方がその後の物事もスムーズに進むと思います。

現地の日本企業とコンタクトを取る方法は?

結論から言うと、現地の日本の商工会議所日本人会もしくはジェトロなりに紹介してもらうと効率的だと思います。

なぜかと言うと、Webで闇雲に検索しても効率的ではないと思うからです。ベトナムに進出している日本企業は確か1800社ほどだったと思うんですけど、その内の多くの企業が先に挙げたコミュニティのいずれかに属していると思います。なので、そういったルートを使って探した方が良いと思います。

ベトナム語検索した時に日本企業は検索結果に表示される?

表示される確率はすごく低いと思います。どうしてかと言うと、日本企業のWebサイトは基本的に日本語メインで作っていますよね。だから当然、ベトナム語で検索しても日本語のキーワードは引っかからないので出てこないことになります。

ベトナムで英語で検索した時に日本企業の英語版Webサイトが表示されることはあると思います。その時は、おそらく日本本社の英語版Webサイトが表示されるので、日本企業のベトナム法人のページがピンポイントに表示されるケースは少ないと思います。

ベトナム語Webサイトを作る際、ネイティブによる翻訳は必要か?

結論から言うと、ネイティブによる翻訳は必要でしょうね。Google翻訳だけでは不十分というより凄くおかしいことになると思います。例えば、ベトナム語のWebサイトを日本語にGoogle翻訳してみれば分かると思いますが、すごくおかしな日本語になってしまうんですね。なので、日本語をベトナム語にGoogle翻訳したら逆のことが起こると思います。

それと会社のWebサイトはその会社のブランドもしくはコーポレートイメージになるので、かっこいい表現が必要ですよね。仮に日本語でかっこいいプロダクト名をつけたとしてもその表現は機械的に翻訳されないはずです。

ベトナムから見た日本企業について

日本企業に対するイメージは?

やっぱり品質ですね。ベトナム人は非常に親日でアジアの中で日本が一番品質が良いという認識を持っています。日本の次に韓国、その後は台湾、タイ、マレーシア、現地(ベトナム)、中国という順で続くと思います。

品質とは具体的にどのような品質?

一番は耐久性ですね。使って長持ちするということです。故障や不良品が少ないという点の評価も高いです。あとは、生産工程やプロセスがしっかりしているという印象があると思います。私も現地で営業をしていた時に、日本の品質管理基準に基づいて生産しているという証明書類だったりを求められたことはあります。

日本企業に対するネガティブなイメージは?

日本製品は価格が高いという認識は多くの現地の方が持っています。距離的にも離れているので納期が遅いというイメージもあると思います。なので、日本企業がベトナムで商品を売っていこうと思ったらその辺のターゲットを明確に設定する必要があると思います。実際に、日本で良い商品だからベトナムで売ろうとしたけど思ったように売れなかったということはよくあります。日本と同じ価格設定では高いと思われてしまう。だから、しっかりと製品の価値をお客様に伝えることがカギになります。

まとめ

いかがでしょうか?冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?」

→ 2つの特徴(1.内容の誇張、2.企業自体の情報が少ない)

「現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?」

→ 信頼できる人、企業の紹介を挟んでコンタクトを取る

「日本企業に対するイメージは?」

→ アジアの中でトップの品質、信頼性が高い

「日本企業に対するネガティブなイメージは?」

→ 価格が高く、距離的に離れているので納期が遅い

となります。後編の次回は、海外でのビジネスと販売代理店との関係構築方法などのトピックを掘り下げていきます。具体的には、

  • 「駐在所に現地で雇ったスタッフは必要か?」
  • 「商社を介して製品を売るメリットは?」
  • 「販売代理店の探し方は?」
  • 「海外で商品を売る際に重要な考え方は?」

などの質問に答えて頂きました!後編では、海外で販売代理店を探す方法、料金の回収方法など現地での営業活動なしでは語れない内容になっています。今回の内容がベトナムへの事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー③「日系メーカーの海外展開(ベトナム)」前編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第3回目前半の今回は、メーカー勤務時代にベトナムに赴任し自社製品を現地に売り込む仕事をされていたブルーイノベーション株式会社経営戦略室の田中さんにインタビューを行いました。前編の今回は、

  • 「ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?」
  • 「現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?」
  • 「日本企業に対するイメージは?」
  • 「日本企業に対するネガティブなイメージは?」

などの質問に対し、現地で営業を行っていた方ならではの意見をお届けします!

田中さんの経歴

ベトナムに駐在していたのは、2010年から2013年までの3年半です。その時は、シャープの現地法人で家電製品の営業企画をしていました。その後、東京に戻り機械系のメーカーであるナブテスコに転職し、出張ベースでベトナム、インドネシア、フィリピン、韓国、インドなどに営業に行ってました。

現在は、これまでの経験を活かし、ドローンのリーディングカンパニーであるブルーイノベーションで経営戦略や海外展開の指揮を執っています。日本のテクノロジーを海外に展開するという大変やりがいある仕事です。

ベトナム企業との関係構築について

ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?

2つあります。1つ目は内容の誇張があることですね。

例えば、建築業界の企業のWebサイトを見た時に何か実績集みたいなページがあったとします。そのページにはベトナムのランドマーク的な建物が実績でという記載があるんですが、その情報が真実かどうかというのは疑わしいところがあります。

2つ目は日本企業のWebサイトに比べて、企業の情報自体が少ない事ですね。

日本の会社のWebサイトは凄く丁寧に資本金、株主構成や会社の沿革情報を記載している企業が多いと思います。一方で、ベトナム企業のWebサイトはそういった情報の記載が少ないので日本企業ほどの深さの情報は取れないですね。加えて、ベトナム企業のWebサイトに用意してある英語ページはベトナム語のそれよりも情報量が少ないことが多いので、企業情報収集がWebサイトだけでは満足にできないということがあります。

Webサイトの情報以外に現地企業に足を運ぶのは必要か?

必要ですね。現地のWebサイトだけを見て判断するのは難しいと思います。なので当然、Webサイトから取れる情報を取った後に、実際に企業に訪問して話を聞いてというステップが必要です。私の経験から言うと、東南アジアにおいてはよほど知名度のある大きい企業でないと、Webページの情報だけで会社自体を信用することはできないと思います。小さい会社だとそもそもWebページがあっても実際に存在するのかどうかも分からなかったりします。

なので、気になった企業があればメールや電話でコンタクトをとって、事務所や工場があれば見に行きます。

現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?

間に誰か信頼できる人企業の紹介を挟んだ方が良いと思います。理由は、取引する相手が大手でこちらの知名度がない場合は、初めの交渉から不利になってしまう可能性が高いからです。なので、相手企業と既に取引のある会社や現地の日本企業なりに紹介してもらう方がその後の物事もスムーズに進むと思います。

現地の日本企業とコンタクトを取る方法は?

結論から言うと、現地の日本の商工会議所日本人会もしくはジェトロなりに紹介してもらうと効率的だと思います。

なぜかと言うと、Webで闇雲に検索しても効率的ではないと思うからです。ベトナムに進出している日本企業は確か1800社ほどだったと思うんですけど、その内の多くの企業が先に挙げたコミュニティのいずれかに属していると思います。なので、そういったルートを使って探した方が良いと思います。

ベトナム語検索した時に日本企業は検索結果に表示される?

表示される確率はすごく低いと思います。どうしてかと言うと、日本企業のWebサイトは基本的に日本語メインで作っていますよね。だから当然、ベトナム語で検索しても日本語のキーワードは引っかからないので出てこないことになります。

ベトナムで英語で検索した時に日本企業の英語版Webサイトが表示されることはあると思います。その時は、おそらく日本本社の英語版Webサイトが表示されるので、日本企業のベトナム法人のページがピンポイントに表示されるケースは少ないと思います。

ベトナム語Webサイトを作る際、ネイティブによる翻訳は必要か?

結論から言うと、ネイティブによる翻訳は必要でしょうね。Google翻訳だけでは不十分というより凄くおかしいことになると思います。例えば、ベトナム語のWebサイトを日本語にGoogle翻訳してみれば分かると思いますが、すごくおかしな日本語になってしまうんですね。なので、日本語をベトナム語にGoogle翻訳したら逆のことが起こると思います。

それと会社のWebサイトはその会社のブランドもしくはコーポレートイメージになるので、かっこいい表現が必要ですよね。仮に日本語でかっこいいプロダクト名をつけたとしてもその表現は機械的に翻訳されないはずです。

ベトナムから見た日本企業について

日本企業に対するイメージは?

やっぱり品質ですね。ベトナム人は非常に親日でアジアの中で日本が一番品質が良いという認識を持っています。日本の次に韓国、その後は台湾、タイ、マレーシア、現地(ベトナム)、中国という順で続くと思います。

品質とは具体的にどのような品質?

一番は耐久性ですね。使って長持ちするということです。故障や不良品が少ないという点の評価も高いです。あとは、生産工程やプロセスがしっかりしているという印象があると思います。私も現地で営業をしていた時に、日本の品質管理基準に基づいて生産しているという証明書類だったりを求められたことはあります。

日本企業に対するネガティブなイメージは?

日本製品は価格が高いという認識は多くの現地の方が持っています。距離的にも離れているので納期が遅いというイメージもあると思います。なので、日本企業がベトナムで商品を売っていこうと思ったらその辺のターゲットを明確に設定する必要があると思います。実際に、日本で良い商品だからベトナムで売ろうとしたけど思ったように売れなかったということはよくあります。日本と同じ価格設定では高いと思われてしまう。だから、しっかりと製品の価値をお客様に伝えることがカギになります。

まとめ

いかがでしょうか?冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?」

→ 2つの特徴(1.内容の誇張、2.企業自体の情報が少ない)

「現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?」

→ 信頼できる人、企業の紹介を挟んでコンタクトを取る

「日本企業に対するイメージは?」

→ アジアの中でトップの品質、信頼性が高い

「日本企業に対するネガティブなイメージは?」

→ 価格が高く、距離的に離れているので納期が遅い

となります。後編の次回は、海外でのビジネスと販売代理店との関係構築方法などのトピックを掘り下げていきます。具体的には、

  • 「駐在所に現地で雇ったスタッフは必要か?」
  • 「商社を介して製品を売るメリットは?」
  • 「販売代理店の探し方は?」
  • 「海外で商品を売る際に重要な考え方は?」

などの質問に答えて頂きました!後編では、海外で販売代理店を探す方法、料金の回収方法など現地での営業活動なしでは語れない内容になっています。今回の内容がベトナムへの事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「フィリピン」

テクノポートの稲垣です。前回の記事では製造業のGDPの60%以上を縫製業が占める「カンボジアの製造業」について紹介しました。今回は日本と同じアジアの島国である南国のフィリピンの製造業について紹介します。

フィリピンの人口は2014年に1億人を突破し2023年には日本の人口を上回る予想です。また、アジア2位の経済成長率と豊富な若者人口で注目を集めるフィリピンの製造業を日本企業目線から掘り下げていきます。

フィリピンの概要

  • 正式名称:フィリピン共和国(Republic of the Philippines)
  • 首都:メトロ・マニラ(Metro Manila)
  • 大統領:ロドリゴ・ドゥテルテ(2016年6月から)
  • 通貨:ペソ(Peso)(1ペソ=2.07円 ※2020年3月17日時点)
  • 人口:約1億98万人
  • 面積:30万km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:フィリピン語、英語
  • 宗教:カトリック(82.9%)その他キリスト教(9.6%)イスラム教(5%)その他(2.5%)
  • 平均寿命:男 65.9歳、女 73.1歳(日本:男 81.2歳、女 87.3歳)

フィリピン経済の特徴

強み

  1. 若年者人口:1億人を超える人口の約50%を25歳以下が占める
  2. 出稼ぎ労働者:海外の出稼ぎ労働者からの仕送りがGDPの約10%を占める
  3. 貧困層の減少:フィリピン政府は0~14歳の健康と教育に投資することで極度の貧困の根絶を目指している
  4. 英語:人口の多くが英語を話せるため、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)分野でアジアのリーダー的な立ち位置

弱み

  1. インフラ未整備:交通渋滞の蔓延やスラム街など、インフラ未整備の地域が多い
  2. 所得格差:富裕層が全体の約1%であるのに対し、貧困層が全体の約60%を占める
  3. マネーロンダリング:銀行やカジノによる資金洗浄(マネーロンダリング)が横行

フィリピンの産業構造

フィリピンの産業構造を調べます。下の図は2018年におけるフィリピンのGDPにおけるサービス業、製造業、農業の割合を示したグラフです。


データ引用元:ASEAN Key Figures 2019

グラフから以下のことが読み取れます。

  • 製造業の割合は34.1%でASEAN諸国の平均36.6%をわずかに下回る
  • GDPに占めるサービス業の割合は57.8%でASEAN諸国の中で3番目に大きい

▶現状

  • サービス産業が増加傾向で製造業は緩やかに増加傾向
  • 農業はGDP全体の8%だが、労働力の約30%が農業に従事している
  • 1980年から2017年までの経済成長率は3.7%と緩やかだが、2012年から2017年の経済成長は6.1%と急速な成長を記録

▶今後

  • フィリピン政府は製造業とサービス業に投資をシフトしており、農業は衰退傾向
  • ドゥテルテ大統領は2014年から2033年の20年間で年平均4.8%のGDPの成長を目指すと宣言

フィリピンの製造業全体

次にフィリピンの製造業全体について調べます。下の図は2019年におけるフィリピン製造業GDPにおける各セクターの割合を示したグラフです。


データ引用元:NATIONAL ACCOUNTS OF PHILIPPINES

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 食品製造業が製造業全体の47.8%を占め、ここ数年増加傾向が続く
  • 化学および化学関連製品の割合はGDP全体の11.2%と2番目に大きい
  • ラジオ、テレビ、通信機器および家電分野は10.3%で3番目に大きい

▶現状

  • 製造業はGDP全体の34%を占めるが、従事している労働力は全体の16%で労働賃金も低い
  • 鉱業、鉱物処理産業、医薬品、造船、電子部品・半導体産業は近年政府が力を入れている

▶今後

  • 短期的な目標として、1. 優位性のある産業の保護、2. 新興企業の強化、3. 現存企業の強化を挙げている
  • 中期的な目標として、1. 高付加価値産業へのシフト、2. 業績が上向いている分野への投資、3. 製造業を農業、サービス業と融合、4. イノベーション産業の推進を挙げている
  • 長期的な目標として、1. 世界的な競争力の強化、2. 革新的な製造技術の強化を挙げている

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からフィリピンの製造業市場を調査した結果です。下の図は2008年から2017年までのフィリピンに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。

データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 統計を開始した2008年から2017年の間に日系企業数は1.76倍に増加
  • 2017年におけるフィリピンの進出日系企業数は1502で8位

▶現状

  • 進出日系企業は経営上の問題点として原材料・部品調達の難しさ、調達コストの上昇、従業員の賃金上昇、品質管理の難しさ、税務の負担などを挙げている。(出典:ジェトロ『2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査』2018年12月)
  • 2020年2月のフィリピンの※製造業購買担当指数(PMI)は、新型コロナウイルスの影響を受けながらも0.2ポイントの増加を記録しASEAN首位。※製造業の購買責任者を対象に、生産高や新規受注、在庫レベル、雇用状況、価格などの指数に一定のウエイトを掛けて算出する指数。0から100の間で変動し、50.0は「前月から横ばい」、50.0を超えると「前月比で改善や増加」を意味して景気拡大を示し、50.0未満は「前月比で悪化や減少」として景気減速を表す。

▶今後

  • 2023年のフィリピンの人口は1億2300万人と日本を追い抜くと予想されており、ASEANの経済大国としての地位を確立する見込み
  • 首都マニラでの月額法定最低賃金の上昇率は2019年で4.9%と上昇傾向だが、他のASEAN諸国(インドネシア:8.0%、マレーシア:10%、ベトナム:5.0%)と比較すると上昇率は小さい

フィリピンに進出した日本企業

次に実際にフィリピンに進出した日本企業3者を紹介します。

株式会社ティアンドエス

▶基本情報

  • 本社:埼玉県草加氏
  • 従業員数:64名
  • 事業内容:レーザ加工・曲げ加工・溶接加工・組立加工、その他板金加工全般

▶概要

2004年にフィリピンマカティシティに現地法人を設立。フィリピン国内および、アジア域内に進出済みの日系企業への部品の供給元としてレーザー加工、切削加工を行う。日本本社でトレーニングを受けたスタッフが様々な加工依頼に24時間体制で対応。

群馬合金株式会社

▶基本情報

  • 本社:群馬県伊勢崎市
  • 従業員数:99名
  • 事業内容:非鉄金属ダイカスト製造業

▶概要

1996年にフィリピン現地法人を設立。創業以来、自動車部品などに使用される軽量でリサイクル性に優れるアルミニウムダイカストのパイオニアとして事業を展開。フィリピン法人ではダイカストから切削加工まで一貫生産を手掛ける。現地では国内同様の生産体制を整え、現地日本企業の海外工場への供給基地として需要に応えている。

伊藤製作所

▶基本情報

  • 本社:三重県四日市市
  • 従業員数:120名
  • 事業内容:順送り金型設計製作、プレス部品加工、部品組立

▶概要

1995年に設立した合弁会社を2003年に100%独資にし現地法人を設立。輸出加工区である工業団地に拠点を設け、現地日本企業を対象とした高度な順送り金型の制作とプレス部品加工を行っている。英語力に優れた現地スタッフの教育と日本からの設備投資により生産体制を確立。

まとめ

今回はフィリピンの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。個人的には、豊富な若年層の労働人口と安価な労働賃金が企業の関心を集めている要因であると再認識しました。ただ、フィリピン国内ではインフラ未整備地域も多く、所得格差による貧困層と富裕層の壁が依然として残っていると感じました。

進出する日本企業の目線に立って考えると、今回紹介した3社のように現地のスタッフを雇い、日本企業の向けの部品加工や製品の供給をメイン事業にしていくスタイルが一般的だと思いました。今回の内容がフィリピン進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「フィリピン」

テクノポートの稲垣です。前回の記事では製造業のGDPの60%以上を縫製業が占める「カンボジアの製造業」について紹介しました。今回は日本と同じアジアの島国である南国のフィリピンの製造業について紹介します。

フィリピンの人口は2014年に1億人を突破し2023年には日本の人口を上回る予想です。また、アジア2位の経済成長率と豊富な若者人口で注目を集めるフィリピンの製造業を日本企業目線から掘り下げていきます。

フィリピンの概要

  • 正式名称:フィリピン共和国(Republic of the Philippines)
  • 首都:メトロ・マニラ(Metro Manila)
  • 大統領:ロドリゴ・ドゥテルテ(2016年6月から)
  • 通貨:ペソ(Peso)(1ペソ=2.07円 ※2020年3月17日時点)
  • 人口:約1億98万人
  • 面積:30万km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:フィリピン語、英語
  • 宗教:カトリック(82.9%)その他キリスト教(9.6%)イスラム教(5%)その他(2.5%)
  • 平均寿命:男 65.9歳、女 73.1歳(日本:男 81.2歳、女 87.3歳)

フィリピン経済の特徴

強み

  1. 若年者人口:1億人を超える人口の約50%を25歳以下が占める
  2. 出稼ぎ労働者:海外の出稼ぎ労働者からの仕送りがGDPの約10%を占める
  3. 貧困層の減少:フィリピン政府は0~14歳の健康と教育に投資することで極度の貧困の根絶を目指している
  4. 英語:人口の多くが英語を話せるため、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)分野でアジアのリーダー的な立ち位置

弱み

  1. インフラ未整備:交通渋滞の蔓延やスラム街など、インフラ未整備の地域が多い
  2. 所得格差:富裕層が全体の約1%であるのに対し、貧困層が全体の約60%を占める
  3. マネーロンダリング:銀行やカジノによる資金洗浄(マネーロンダリング)が横行

フィリピンの産業構造

フィリピンの産業構造を調べます。下の図は2018年におけるフィリピンのGDPにおけるサービス業、製造業、農業の割合を示したグラフです。


データ引用元:ASEAN Key Figures 2019

グラフから以下のことが読み取れます。

  • 製造業の割合は34.1%でASEAN諸国の平均36.6%をわずかに下回る
  • GDPに占めるサービス業の割合は57.8%でASEAN諸国の中で3番目に大きい

▶現状

  • サービス産業が増加傾向で製造業は緩やかに増加傾向
  • 農業はGDP全体の8%だが、労働力の約30%が農業に従事している
  • 1980年から2017年までの経済成長率は3.7%と緩やかだが、2012年から2017年の経済成長は6.1%と急速な成長を記録

▶今後

  • フィリピン政府は製造業とサービス業に投資をシフトしており、農業は衰退傾向
  • ドゥテルテ大統領は2014年から2033年の20年間で年平均4.8%のGDPの成長を目指すと宣言

フィリピンの製造業全体

次にフィリピンの製造業全体について調べます。下の図は2019年におけるフィリピン製造業GDPにおける各セクターの割合を示したグラフです。


データ引用元:NATIONAL ACCOUNTS OF PHILIPPINES

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 食品製造業が製造業全体の47.8%を占め、ここ数年増加傾向が続く
  • 化学および化学関連製品の割合はGDP全体の11.2%と2番目に大きい
  • ラジオ、テレビ、通信機器および家電分野は10.3%で3番目に大きい

▶現状

  • 製造業はGDP全体の34%を占めるが、従事している労働力は全体の16%で労働賃金も低い
  • 鉱業、鉱物処理産業、医薬品、造船、電子部品・半導体産業は近年政府が力を入れている

▶今後

  • 短期的な目標として、1. 優位性のある産業の保護、2. 新興企業の強化、3. 現存企業の強化を挙げている
  • 中期的な目標として、1. 高付加価値産業へのシフト、2. 業績が上向いている分野への投資、3. 製造業を農業、サービス業と融合、4. イノベーション産業の推進を挙げている
  • 長期的な目標として、1. 世界的な競争力の強化、2. 革新的な製造技術の強化を挙げている

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からフィリピンの製造業市場を調査した結果です。下の図は2008年から2017年までのフィリピンに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。

データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 統計を開始した2008年から2017年の間に日系企業数は1.76倍に増加
  • 2017年におけるフィリピンの進出日系企業数は1502で8位

▶現状

  • 進出日系企業は経営上の問題点として原材料・部品調達の難しさ、調達コストの上昇、従業員の賃金上昇、品質管理の難しさ、税務の負担などを挙げている。(出典:ジェトロ『2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査』2018年12月)
  • 2020年2月のフィリピンの※製造業購買担当指数(PMI)は、新型コロナウイルスの影響を受けながらも0.2ポイントの増加を記録しASEAN首位。※製造業の購買責任者を対象に、生産高や新規受注、在庫レベル、雇用状況、価格などの指数に一定のウエイトを掛けて算出する指数。0から100の間で変動し、50.0は「前月から横ばい」、50.0を超えると「前月比で改善や増加」を意味して景気拡大を示し、50.0未満は「前月比で悪化や減少」として景気減速を表す。

▶今後

  • 2023年のフィリピンの人口は1億2300万人と日本を追い抜くと予想されており、ASEANの経済大国としての地位を確立する見込み
  • 首都マニラでの月額法定最低賃金の上昇率は2019年で4.9%と上昇傾向だが、他のASEAN諸国(インドネシア:8.0%、マレーシア:10%、ベトナム:5.0%)と比較すると上昇率は小さい

フィリピンに進出した日本企業

次に実際にフィリピンに進出した日本企業3者を紹介します。

株式会社ティアンドエス

▶基本情報

  • 本社:埼玉県草加氏
  • 従業員数:64名
  • 事業内容:レーザ加工・曲げ加工・溶接加工・組立加工、その他板金加工全般

▶概要

2004年にフィリピンマカティシティに現地法人を設立。フィリピン国内および、アジア域内に進出済みの日系企業への部品の供給元としてレーザー加工、切削加工を行う。日本本社でトレーニングを受けたスタッフが様々な加工依頼に24時間体制で対応。

群馬合金株式会社

▶基本情報

  • 本社:群馬県伊勢崎市
  • 従業員数:99名
  • 事業内容:非鉄金属ダイカスト製造業

▶概要

1996年にフィリピン現地法人を設立。創業以来、自動車部品などに使用される軽量でリサイクル性に優れるアルミニウムダイカストのパイオニアとして事業を展開。フィリピン法人ではダイカストから切削加工まで一貫生産を手掛ける。現地では国内同様の生産体制を整え、現地日本企業の海外工場への供給基地として需要に応えている。

伊藤製作所

▶基本情報

  • 本社:三重県四日市市
  • 従業員数:120名
  • 事業内容:順送り金型設計製作、プレス部品加工、部品組立

▶概要

1995年に設立した合弁会社を2003年に100%独資にし現地法人を設立。輸出加工区である工業団地に拠点を設け、現地日本企業を対象とした高度な順送り金型の制作とプレス部品加工を行っている。英語力に優れた現地スタッフの教育と日本からの設備投資により生産体制を確立。

まとめ

今回はフィリピンの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。個人的には、豊富な若年層の労働人口と安価な労働賃金が企業の関心を集めている要因であると再認識しました。ただ、フィリピン国内ではインフラ未整備地域も多く、所得格差による貧困層と富裕層の壁が依然として残っていると感じました。

進出する日本企業の目線に立って考えると、今回紹介した3社のように現地のスタッフを雇い、日本企業の向けの部品加工や製品の供給をメイン事業にしていくスタイルが一般的だと思いました。今回の内容がフィリピン進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー企画②「先進国フランスの試作市場へ」後編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第2回目後編の今回は前回の記事に引き続き、切削部品加工受託業でフランスに事業展開を果たした、株式会社ダイショウの石塚社長へのインタビューをお届けします。後編の今回は、

  • 「フランスに事業展開を考える企業にアドバイスは?」
  • 「フランス企業と比較した時の日本企業の特徴は?」
  • 「日本の製造業企業がフランス語Webサイトを作る際に注意すべきことは?」
  • 「アジア系の人、企業に対して差別はある?」

などの質問に対し、現地で会社を運営する方の生の声をお届けします!

フランス進出について

ドイツ進出とフランス進出の違いは?

私個人としては、ドイツに進出する方が楽だと思います。なぜかと言うと、ドイツは今までの進出してきた日本企業とのつながりが多いからです。要は、歴史や経験値がフランスよりも深いということです。今私が言ったことは、実際に展示会に行ってみるとよく分かると思います。ドイツの展示会に出展している日本企業の数は、フランスのそれと比較すると断然多いです。なので、一般にフランスに進出しようとする日本企業の数は、ドイツに進出しようとする企業に比べて格段に少ないように感じます。

ですが、フランスに進出のチャンスがないわけではない思います。自分の仲間内ではフランスは日本人が想像するより工業国だよ、進出のチャンスはあるよ、という話をよくしますからね。

フランスに事業展開を考える企業にアドバイスは?

一つ確実に言えることは、ヨーロッパに支社を設けた方が良いということです。なぜかと言うと、例えば何かトラブルがあったときに、対応してくれる営業窓口や支店があるのと、ないのでは受注の幅が大きく変わるからです。

自分の経験から言うと、展示会に出展してお客さんが興味を持ってくれて「すごく良い品質だね!一回買ってみようかな。」と言ってくれることはよくあります。その後にお客さんが「ところでおたくはヨーロッパに支社はあるの?」と訊かれて、「ちょっとまだないんですよね。」と言うと、途端に「残念だなぁ」というリアクションが返ってくるんですよね。こういった考えの根底には、やはりヨーロッパから見ると日本は遠いアジアの国の一つ、という認識があると思います。

お客さんからしたら、ただでさえ輸送費の影響で高い買い物になるのに、サポートがヨーロッパで受けられないとなると、さらに不安ですよね。つまり、ヨーロッパに支店を持つということは、お客さんの不安を減らすと言う意味で価値があるんです。

支店はヨーロッパにあればいい?

ヨーロッパにあればいいと思いますよ。というのは、ヨーロッパにおいて国境はさほど関係ないですから。逆に、ヨーロッパに支店がないとなると、ちょっと遠いなぁという印象を持たれちゃいますね。また、既にヨーロッパのどこかに支店があるなら、どんどんほかの国にも進出した方が良いと思いますよ。

フランス進出に英語は必要?

やはり英語は必要ですね。それは、欧州展示会は国際即が豊かだからです。出展した中小企業の展示会MIDESTの場合、ヨーロッパの国はもちろん多いですけれど、北アフリカのモロッコ、中東の国を始め、中国、台湾企業も出展しています。先ほど紹介した、我々より前にフランスに進出した由紀精密さんは、我々と同じくフランスに支社があります。その支社に勤める従業員の方の一人に日本人なんですけど、英語とフランス語をしっかり話す女性の方がいるので、その違いは大きいですね。

理想的には、事務所には英語を話せる現地の人が常駐してすぐに電話が取れる、という状況ですね。例えば、ドイツに進出するなら英語が話せるドイツ人が常駐しているようなイメージです。

フランス語ができなくてもビジネスはできる?

私のフランス語もまだまだなんですが、ヨーロッパはそういう人達でも対等にビジネスをやっていけるような受け入れ態勢があると感じます。それは、ヨーロッパの中でもフランスは移民の多い国で、移民の中には読み書きが十分にできないという方も多いんですよね。そうした理由もあって、ヨーロッパは言葉が流暢ではない人を受け入れる態勢が日本よりあると思います。

加えて、ビジネスにおいて重要なのは品物です。品物が評価対象なので、そこがしっかりしていれば問題ないと思います。

フランスの日本企業ついて

フランス企業と比較した時の日本企業の特徴は?

良い質問ですね。よく言われるのは、「質」と「繰り返し精度の高さ」ですね。後者の繰り返し精度の高さと言うのは、繰り返し同じ品質の製品を作り続け、安定供給ができる技術力のことです。このおかげで、お客様から重要部品を依頼されることもあります。こういった細部までこだわって作るという力に関しては、日本企業はすごいと思います。おそらく、より良いものを作ろうという意識や気質の違いがそうさせていると思います。

対して、こちらの企業は最低基準さえ満たしていればOKという考えが普通です。わかりやすく言うと製品の裏面に傷があったとしても、その部分が機能的に問題なければOKという感覚です。

フランスで成功している日本企業の特徴は?

製造業に限って言うと、技術が優れている企業です。よく言われる海外に進出する企業が直面する課題として、値段と技術のバランスがあります。海外で商品を売るには当然、輸送費や関税といったコストがかかりますからね。その中でも成功している企業は、値段が持つ以上の技術的な価値を提供できる企業だと思います。要は、替えがきかないような製品を持っているような企業は、我々の周りでも成功している印象がありますね。

加えて、高い技術力はお客さんとの信頼関係に直接的につながります。信頼関係の構築に必要な継続的な仕事の受注という面でも、技術力は必要ですよね。

日本製品に対するリスペクトはあるか?

結論から言うと、日本人が思っているほど「ジャパンクオリティ」みたいな感覚はこっちにはありませんね。全体的にリスペクトしている感じは受けます。ですが、やはり会社対会社が基本です。日本企業といってもピンからキリまでありますからね。

日本企業に対するイメージは?

一般的に言うと、遠いなぁという印象ですね。なので、ただでさえ距離が遠くて輸送費もかかるので、その中でお客さんと関係を構築するのは難しいと思います。ただ、お客さんが一度日本企業と取引して良い品物をもらっているとか、試しに一回注文を受けてそれがすごく良い経験になった、などの経験値があると日本企業に対する印象は大きく変わると思います。

フランスのネット事情について

フランスのWebサイトを見る時に特に注意してみる内容は?

日本と同じですけど、更新頻度ですね。要は、情報が新鮮かどうかです。あとこれはWebサイトの見方の話ですが、Webサイトを見る時はあくまでも参考程度に見ています。というのは、Webサイトというのは実際の内容よりも良く見せるようにできているからです。なので、情報をうのみにせず、大事なことは実際に会って確認することを心がけています。

日本企業とヨーロッパのWebサイトの違いは?

製造業に限って言うと、ヨーロッパのWebサイトの方が洗練されている感じがしますね。そうなる理由の一つは、業界以外の人にも分かりやすいデザインにする必要があるからだと思います。フランスは地元の行政が製造業を支援していて、製造業のWebサイトにも県のロゴやリンクが貼ってある場合が多いです。すなわち、地域のリンクを通して業界以外の人が見に来るケースも多いので、直観的に分かりやすいデザインにしているんだと思います。

フランス語Webサイトを作るにあたって、Google翻訳でも十分意味は通じるか?

ある程度は通じると思います。しかし、ネイティブの翻訳は必ず必要だと思います。例えば、私たち日本企業が中国企業からダイレクトメールをもらった時に、中国企業(外国企業)の日本語はすぐ分かりますよね。特に、日本企業は外向企業からの拙い日本語メールに対する免疫が少ないと思います。

先ほども言った通り、ヨーロッパには現地語に不慣れな外国人が比較的多く、受け入れ態勢もあります。なので、Webサイトの出来が外国語チックでも日本より受け入れてくれる可能性はあると思います。ただし、業界の専門用語、専門的な話をするにはGoogle翻訳だと不十分です。

これは参考の話ですが、私の前の会社のパートナー(フランス企業)の中で日本語Webサイトを作ろうという話がありました。その際に私は翻訳担当として参画しました。これがそのWebサイトです。当時はフランス語も不慣れでしたが、加工現場の経験のおかげで専門用語に関しては苦労しませんでした。なので、外国語HPを作る際の理想としては、専門用語を知る翻訳家に翻訳してもらうことだと思います。

フランスのネットで日本企業のサイトがヒットしたことはあるか?

ないですね。グローバルに事業展開している大手を除くと、日本企業のHPが引っかかったことはないです。

これは余談ですが、フランスを含めたヨーロッパで検索を行う方法は2種類あります。1つ目は、現地の言葉で検索する方法。2つ目は、英語で検索する方法です。後者の英語で検索する方法はグローバルな検索結果が表示されるので、もしかしたら英語で検索すると日本企業HPが引っかかる可能性はあるかもしれないです。ただ、私個人としてはフランス語検索することがほとんどなので、分からないですね。

日本の製造業企業がフランス語Webサイトを作る際に注意すべきことは?

専門用語の翻訳精度です。これは良くある話なんですが、エンジニアが現地の中小企業町工場に行って英語で話しても通じない、専門用語も英語だと通じないというケースです。

私事ですが、ブログで日仏の専門用語辞典を作っています。

先ほど言った経験をする方がいれば、自分のブログページを見て写真を見せながら説明すれば伝わると思います。英語とフランス語に対応していて、発音もついているので役に立ててもらえれば幸いです。

フランスの現状について

フランス生活で日本ギャップを感じる?

ギャップはすごいありますね。日本は色々なものが綺麗に整っていて、人もインフラもしっかり整っていると思います。一方で、日本にいると自分もしっかりしなければ、と堅苦しくなってしまう面もありますよね。なので、フランスの価値観になれてしまうと、もう日本には戻れない気がします。(笑)こういったギャップは、日本とフランスの違いというより、日本と外国の違いだと思います。

海外に住んでみて初めて日本という国の特殊性、優れている部分を感じましたね。加えて、現地の人の考え方の違い、文化の違いなんかも分かります。その辺は、海外旅行では感じられない貴重な経験だと思っています。

アジア系の人、企業に対する差別はある?

私自身あまり感じたことはないです。これは先ほども言った理由で、特にビジネス上では差別はないです。国ではなく会社対会社で取引しますからね。

一つ意識して欲しいことは、日本人はアジア人の一員であるという認識が必要だということです。フランスの人からしてみれば、中国も日本も遠いアジアの国の一部ですからね。その中でもう一歩関係性を進めて、日本の文化の違いなどについて話せるような仲になれば良いですよね。

フランスの治安は?

治安が悪いと感じたことはないですね。例外的に、特に都市部では文化も価値観も違う色々な人種の人がいるので、ある程度のトラブル、治安の悪さみたいなものはあります。テロもあります。

ただ、一つフランスに来て分かったことを伝えさせてください。

例えば、フランスでテロが起こったとなると「フランスってあぶねぇ」って日本から見ると思いますよね。ところが、実際は特定の地域に住む特定の人が犯した事件なので、フランスの国全体が危ないことはないんです。フランスで何か事件が起こると、日本から「大丈夫なの?」って心配されることもあるんですが、現場から場所が違えばほとんど関係なかったりするんですね。なので、今回のコロナウイルスの件でフランス国内のアジア系の飲食店が襲撃されたり、人種差別を受けた、みたいなニュースが日本ではクローズアップされますが、その外から見た報道の仕方と受け取り方に必ずギャップが存在するので、現地の人間はそこに違和感を感じてしまいます。

実際に事件を起こしているのは、全体数の内のほんのわずかな人達ですよね。報道や記事はメディアが売るために作るわけなので、必ず情報の受けて側が責任を持って取捨選択する必要があると思います。ブログでもそういう話を挙げているので、フランスに実際住んでみて感じた価値観の違い、文化の違いなんかを感じていただけたら嬉しく思います。

コロナウイルスの影響は?

日本の人からすると、フランスに住んでいるからコロナウイルスは関係ないと思われがちですが、実際そうではないんです。ヨーロッパは地続きなので、私の住んでいる地域だとイタリアやスイスの国境が近いんですね。なので、イタリアの北部でコロナウイルスが拡大しているニュースの方にむしろ注意しています。(2月23日インタビュー時)

最後に

最後に、少しだけ自分の話をさせてください。私がフランスに来た当初は、工場も何から何まで売って来ました。つまり、ずっこけたらそれでおしまいという訳です。誰からの保証もありませんでした。つまり、ビジネスをしに来ていると同時に、生き方を選択しに来たんです。中小企業って日本国内でもそうですが、仕事と家庭が表裏一体なんですよね。会社の売り上げが上がれば家族も円満で、会社の売り上げが落ちれば家庭内にも不和が生じる、みたいな。(笑)

そういうバックグラウンド中で、こっちに来てたくさん苦労をしてきました。なので、今回のインタビューを通して、メディアの情報だけからは分からない、現場の生の声と言うものを感じてもらえれば嬉しく思います。あと今後、この世界の製造業インタビュー企画を通して、世界中で働く日本の製造業事業者の座談会みたいなものが開けると面白いと思います。裏話とかも聞けそうですよね。(笑)

まとめ

いかがでしょうか。冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

  • 「フランスに事業展開を考える企業にアドバイスは?」

→ ヨーロッパに支社を設けた方が良い

  • 「フランス企業と日本企業を比較した時の特徴は?」

→ 日本の中小企業は「質」と「繰り返し安定供給する力」が高い

  • 「日本の製造業企業がフランス語Webサイトを作る際に注意すべきことは?」

→ 専門用語の翻訳精度を保つこと

  • 「アジア系の人、企業に対して差別はある?」

→ 差別はなく、ビジネス上問題になることもない

のようになります。現代ではメディアやインタ―ネットを通して、誰もが簡単にオンライン上のデータにアクセスできます。しかし今回のインタビューを通して、石塚さんのような現場で働く生の方の声ほど説得力のある情報はないと改めて実感しました。今回の内容がフランスへの事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー企画②「先進国フランスの試作市場へ」前編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第1回目の前回は、中国の工場運営者の方にインタビューを行いました。第2回目の今回は、切削部品加工受託業でフランスに事業展開を果たした、株式会社ダイショウの石塚社長にインタビューを行いました。前編の今回は

  • 「なぜフランスを選んだ?」
  • 「フランス企業のメールのやり取りの特徴は?」
  • 「フランスでの協力企業(パートナー企業)の探し方は?」
  • 「加工する時の材料の仕入れ先は?」

などの質問に対し、現地で会社を運営する方の生の声をお届けします!

フランスに進出の経緯について

フランスに進出した経緯は?

きっかけは、元々の本社があった神奈川県の茅ケ崎市の企業ネットワークでフランスに事業展開しようという話が挙がったことですね。加えて、我々の会社は試作をメインとして生業を立てているので、試作の市場は発展途上国ではなく、アメリカやヨーロッパ諸国などの先進国がターゲットになることも理由の一つですね。

なぜフランスを選んだ?

理由は大きく3つあります。

1つ目は、フランスは先進国の中でも航空機市場が大きいことです。我々の会社はもともと航空系、宇宙系に関する試作部品などを作っていました。なので、有名なエアバス社や軍事関連の企業も多いフランスに進出すれば、航空系、宇宙系の仕事に当たる確率が高いと思ったからです。

2つ目は、由紀精密さんがヨーロッパ市場を既に開拓していたことです。先ほど言った茅ケ崎の企業ネットワークの中に、精密加工業を専門とする由紀精密さんがいて、彼らが既にヨーロッパでの取引実績を持っていたことがもう一つの理由ですね。

3つ目は、家族の同意が得やすかったからですね。これは、半分冗談で半分真面目なんですけど、海外に家族を連れてくるとなったときに、奥さんに「うん」と言ってもらう必要があるんです(笑)。そうなったときに、ヨーロッパの中でもフランスは食文化や文化的な側面で日本人が持つ印象が良いんですよね。加えて、実際に現地で生活するとなったときに、美味しい食事が食べられないとなればストレスにもつながってしまうので、住むのが辛くなってしまいますよね。

現在の業務内容は?

現在は、アドバイザー的な立場の仕事が多いですね。具体的に言うと、(仕事を受けている)パートナ―企業の現場に行って、生産効率の改善、職場環境の改善などに貢献することがメインです。要するに、今までの経験を活かしてアドバイスや意見交換をしています。

なので、以前は一日中現場に立って機械を触っていることが多かったですが、現在では事務所にこもって仕事をする時間の方が長いです。

フランスでのビジネスについて

何語でコミュニケーションをしている?

90%はフランス語です。まず、フランス全体の話をすると、若い人ほど英語が話せる割合が高い印象を受けます。それは、フランスの多くの大学生が、半年から一年ほど外国に留学し語学を習得しよう、という姿勢を持っているからだと思います。

一方で、我々が取引している中小企業では、現場にいる職人さんを始め、フランス語しか話せない人が多いですね。大企業になると話は別で、英語が話せる人の割合は高くなると思います。

フランス企業はメールを使う?

使いますね。中国では、企業間でもSNSでやりとりすると聞きましたが、我々が仕事でSNSを使ったことはありません。SNSは信頼性のバックグラウンドが弱いので、図面などの重要書はメールで送るのが主流ですね。

これは直接的に関係ない話ですが、フランスではLinkedInというSNSの普及率が高いです。フランスでは、日本と違って終身雇用という文化はないので、次の会社に転職する時などにLinkedInが使われる印象がありますね。

フランス企業のメールのやり取りの特徴は?

特有の特徴というのはあまりないですね。敢えて言うならば、フランスの方が端的に用件を伝えて回答も端的な感じがします。日本は文化的に遠回しな表現だったり濁したりする印象はあるけど、フランスは簡潔明瞭な文章が多いです。

フランスでの協力企業(パートナー企業)の探し方は?

現在のパートナー企業と出会ったきっかけは展示会です。フランスでは地元の行政が経済活性にしっかり機能していています。なので、我々の会社は地域の経済開発公社的なところと接触し、展示会を通して色々な会社を訪問させて頂き、結果的に現在のパートナー企業と巡り合うことができました。現在のパートナー企業以外にも、数地域からオファーを受けました。中には、日本にも支社がある企業があったり、なかなかグローバルです。

フランスでの営業の方法は?

展示会が多かったです。展示会では新規顧客を開拓するために、地元企業の展示ブースを探して訪問しました。ある日のパリで行われた「MIDEST」という下請け企業の展示会に参加した時の話ですが、その中で感じたことは、日本の技術は世界に太刀打ちできるということです。

MIDESTではフランス国内はもちろん世界各国の企業ブースを見て回りましたが、技術的に我々のレベルは見劣りしない、むしろ上位に食い込んでいけると感じました。それは我々の技術が特別であるというよりも、日本の技術力水準が高いことに起因していると思います。

加えて、パートナー企業の既存顧客にも営業に行ったりしました。この営業方法のメリットは、やはりパートナー企業が一緒にいると、顧客との距離が縮まりやすい事ですね。加えて、パートナー企業からしても、我々の技術を使って顧客に新しい価値を提供できるので相乗効果が生まれますよね。

一つ伝えておきたいことは、良い関係のパートナーに巡り合うことが大きなチャンスにつながるということです。製造は1社だけで完結できません。仕入れメーカーから仕上げメーカーまで必要です。その中で、良いパートナーに巡り合うということは、そのネットワークをすぐに使えて他企業とつながるチャンスをもたらします。一般に日本企業は技術力に優れているので、あとはどうやって営業につなげるか、注文につなげるか、といった部分が課題になると思います。

フランスでの加工業について

加工する時の材料の仕入先は?

大きく2つのパターンに分かれます。1つ目は、フランスを含めたヨーロッパの材料を使う場合です。我々が取引するお客さんの中でも軍事や航空関連事業の方は材料にうるさい場合が多いんです。具体的には、材料の原産地や規格をきっちり指定してきます。そうした場合は、ヨーロッパで材料を買って日本に輸送します。その後、日本で加工し、再びフランスに輸送します。

2つ目は、日本の材料を使う場合です。1つ目のパターンのような縛りがない場合は、JISにおけるISO相当品を使い日本で加工し、輸送してもらいます。この場合はもちろん日本で事前にお客さんに確認をとってから作ります。なので、加工材料はヨーロッパ材料か日本材料、加工は主に日本で行っています。

1つ例外として、ヨーロッパで加工を行う場合があります。それは、仕上げのメッキ加工です。日本のメッキ屋さんは基本的に海外材料の相当品で合っても、若干の成分違いがあれば品質保証ができない場合はが多いので、メッキ加工だけヨーロッパで行うことがあります。これ以外にも例外はあって、材料の違いによって工程が違ったり、受け入れ態勢が違ったりということはよくあります。面白いですよね。(笑)

材料の品質は同じ型番でも原産地によって違う?

日本材料とヨーロッパ材料の品質はそんなに感じないですね。なので、日本材料の品質は高いと思いますよ。それ以外は我々の感覚から言うと、中国材料に若干むらがあって使いづらいという印象です。同じ型番でも日本材料とヨーロッパ材料の品質の違いは切削加工上は感じません。ただし厳密に言うと配合などの違いがあります。材料の品質に関してはアジアメーカーなどと比べると品質の安全性が優れていると思います。

まとめ

いかがだったでしょうか?冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

  • 「なぜフランスを選んだ?」

→ 3つの理由(1. 航空機市場の規模、2. 由紀精密さんの実績、3. 家族の同意)

  • 「フランス企業のメールのやり取りの特徴は?」

→ 端的に用件を伝えて、端的に回答

  • 「フランスでの協力企業(パートナー企業)の探し方は?」

→ 地元の行政を通した展示会

  • 「加工する時の材料の仕入れ先は?」

→ 2つのパターン(1. ヨーロッパの材料、2. 日本の材料)

となります。後編の次回は、フランスへの事業展開を日本企業の目線から掘り下げていきます。具体的には、

  • 「フランスに事業展開を考える企業にアドバイスは?」
  • 「フランス企業と日本企業を比較した時の特徴は?」
  • 「日本の製造業企業がフランス語Webサイトを作る際に注意すべきことは?」
  • 「アジア系の人、企業に対して差別はある?」

などの質問に答えていただきました!後編も、実際にフランス進出を果たした石塚さんならではの興味深い内容になっています。今回の内容がフランスへの事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。