海外向けWebサイト制作・リニューアルの流れ|BtoB企業向け

テクノポート株式会社の稲垣です。
製造業企業様向けの「海外Webマーケティング」サービスの責任者を務めています。

この記事では、海外向けWebサイト制作・リニューアルの流れを、5つのフェーズに分けて解説します。(以降「Webサイト制作」=「Webサイトリニューアル」という前提で記載します)

 

全体の流れ

全体の流れは、以下の5つに分かれます。

  1. 企画・調査
  2. サイト・コンテンツ制作
  3. デザイン制作
  4. コーディング・開発
  5. テスト・公開

順に解説します。

1. 企画・調査

目的設定

まずは、海外向けWebサイトを制作する目的を整理します。海外向けのWebサイト制作の目的には、主に以下のようなものがあります。

目的 詳細
新市場進出 海外のBtoB市場にアクセスし、新しいビジネスチャンスを探る
国際的な認知度・ブランドイメージ向上 世界中のBtoB企業に対して、自社のブランドやサービスを知ってもらう
多言語対応 異なる言語を話すビジネスパートナーに対応する
グローバルなカスタマーサポート 海外のビジネスパートナーからの問い合わせやサポートを提供する
パートナーシップの強化 海外のビジネスパートナーとの関係を強化し、
共同事業や提携の機会を増やすための情報共有やコミュニケーションを行う

上記の目的設定に従い、必要な調査作業の内容も変わるため、プロジェクトチーム内で明確に認識を共有しておく必要があります。

3C分析

上記の目的の中でも特に製品・技術の販路開拓が目的である場合、3C分析というフレームワークを使えば、サイト制作の方向性がより具体的になります。3C分析とは、企業(Company)、顧客(Customer)、競合(Competitor)の3つの要素を分析するフレームワークです。

以下に、精密機械加工および部品製造を行う架空の国内中堅企業が、海外向けのWebサイトを制作する場合の3C分析を行ったと仮定した際に、調査内容と調査結果の例を示します。

3Cの要素 調査内容 具体的な調査項目の例 調査結果の例
Company
(企業)
企業の強み、弱み、
資源、能力などを分析
・企業の技術力や特許情報
・生産能力や設備の状況
・既存の海外取引先や経験
・国内での特許を10件所持
・月産10万個の生産能力
・アジア圏の2カ国に取引先あり
Customer
(顧客)
ターゲットとする顧客のニーズ、
行動、価値観などを分析
・顧客の購買動機やニーズ
・顧客の評価基準
・顧客からのフィードバックや要望
・品質と納期の信頼性を重視
・ISO認証や環境対応が評価基準
・短納期の要望が多い
Competitor
(競合)
競合企業の戦略、強み、弱み、
市場の位置付けなどを分析
・競合企業の製品ラインナップ
・競合企業の市場シェア
・競合企業のマーケティング戦略
・5社の主要競合が存在
・最大の競合は市場シェア30%を占有
・競合はローカルイベントでの展示が活発

上記の表は、調査結果の例を端的にまとめたものになりますが、実際の調査を行う際は、各項目について詳細な調査項目を設け、次のように情報を整理します。以下は、競合調査における主な調査項目をまとめた表です。

項目 調査内容
競合企業の基本情報 ・企業名、所在地、設立年数
・主要な製品・サービスラインナップ
競合企業のWebサイトの特徴 ・デザインやUIの特徴
・サイトの言語対応数や多言語対応の方法
製品・サービスの強み ・製品やサービスの独自性や差別化ポイント
・顧客からの評価やフィードバック
・製品の品質や性能、特許情報
マーケティング戦略 ・Webサイトへの主な集客方法
・SEO対策の状況やランキング
・広告活動やキャンペーンの実施状況

3C分析の具体的な進め方や流れについては、以下の記事で解説しています。

方向性の決定

上記の調査が一通り完了した時点で、海外向けWebサイトの方向性を決定します。3C分析により、競合と比較したときの自社の強み、Webサイトで訴求するべき自社の製品などを議論するための材料がそろうため、その材料をもとに、以下のような項目を明確にします。

決定項目 決定内容の例
製品・技術、および訴求軸 ・独自の加工技術を応用した高品質の精密機械部品製造
・独自の製造工程や特許を活用した耐久性の高い製品
・高い技術力を応用した顧客のニーズに合わせたカスタマイズ製品
Webサイトデザインの方向性 ・日本企業の技術力や品質を前面に打ち出すプロフェッショナルなデザイン
・製品の詳細や技術情報を中心とした定量的な訴求が中心のデザイン
・現地企業のような洗練された雰囲気のあるシンプルでダイナミックなデザイン
集客方法 ・海外SEO対策を強化し、検索エンジンからの流入を中心に集客
・リスティング広告を使用し、特定の市場からの検索エンジン経由の流入で集客
・お役立ち情報や加工事例を活用したコンテンツマーケティングで集客
サイトの種類・制作方法 ・コーポレートサイトを中心に、製品紹介ページや技術情報ページを設ける
・特定の製品群のみを扱う、業界に特化した特設サイトを制作する
・ランディングページにより、特定の製品向けの特設ページを設ける

Webサイト制作のプロセスにおいて、プロジェクトチーム内で意見が割れた場合や、デザインについてなかなか最終判断ができない場合は、このステップで策定した方向性に立ち返り、議論を進めることを推奨します。

Webサイトのデザインについても「海外向けサイトだから外国人に受け入れられやすい現地企業のようなデザイン」が必ずしも正解になるわけではありません。あくまで必要な調査の結果、そのようなデザインがサイト制作の目的の達成には現地企業が適切であると判断した場合、そののようなサイトデザインを採用するイメージです。

また上記に合わせて、必要な調査作業(例:キーワード調査、ドメイン・サーバーの選択)も行います。各作業の詳しい内容については、以下の詳細記事をご参照ください。

2. サイト・コンテンツ制作

次にWebサイトに必要な中身の情報を作成するフェーズです。

サイトマップの作成

サイトマップとは、以下のようなサイトの構造をツリー状に表した図です。ウェブサイト内の全ページの関係や階層を視覚的に理解するために使用されます。

サイトマップを作る際のポイントは、各ページの役割を明確にすることです。上記のサイトマップでは、ページの目的に合わせて以下の4つの分類分けを行っています。

ページの種類 説明
集客用ページ 新しい訪問者をサイトに引き付けることを目的として制作するページです。
SEO対策を行う場合は、検索エンジンからの流入を増加させるために作成し、検索ボリュームが大きめのキーワードで検索結果の上位表示を獲得することを目的にコンテンツを作成します。
また集客したユーザーを、サイト内の他のページに誘導するためのCTA(コール・トゥ・アクション)の設置も行います。
訴求用ページ Webサイトの訪問者に特定のアクション(例:問い合わせ、カタログダウンロード)を取らせることを目的として作成するページです。
製品やサービスの特徴、利点、顧客の声など、訪問者の購買意欲を高める詳細情報を中心にコンテンツを作成します。
集客&訴求用ページ 新しい訪問者を引き付けると同時に、彼らに特定のアクションを取らせることを目的として作成するページです。
SEO対策による集客の要素と、コンバージョン獲得のための要素が組み合わされ、検索ボリュームが中程度のキーワードで集客をしつつ、ページ内でコンバージョンまで完結させるイメージでコンテンツを作成します。
その他のページ 会社の概要、利用規約、プライバシーポリシー、FAQ、お知らせなど、特定の集客や訴求の目的を持たない補足的なページです。

Webサイトの制作の目的に合わせて、上記のようなページの集合体としてサイトマップを作成し、各ページの役割とコンテンツ作成の意図を明確にした状態で、次のワイヤーフレーム、およびコンテンツ作成に移ります。

サイトマップの具体的な作り方については、以下の記事で詳しく解説しています。

ワイヤーフレームの作成

次にWebサイトの各ページの構成(ワイヤーフレーム)を決めます。ワイヤーフレームとは、以下のような各ページのコンテンツの配置を視覚的に整理するための図です。

wireframe

このワイヤーフレームは、各ページカテゴリ(例:Products)に対して1つずつ作成し、中身の文章や画像は同一カテゴリ内で細かく調整するイメージです。

各ページのワイヤーフレームを決定するときには、先のサイトマップで決定した各ページの役割をもとに、目的を達成するために適した構成を作成します。基本的にページの役割、カテゴリごとで一定の型のようなものを基準に、企業の特徴や製品・サービスの強みを考慮し、アレンジを加えた上で、作成します。

文章作成

各ページのワイヤーフレームが作成できたら、ワイヤーフレームに記載する文章を準備します。BtoB企業の海外向けWebサイト制作時に作成する文章の種類と、文章を作る際のポイントは以下の通りです。なお文章作成は、日本語で作成したものを翻訳する流れを想定しています。

文章の種類 文章を作る際のポイント
(サイト全体の)キャッチコピー ・競合企業と比較して自社の独自の価値や強みを強調する
・顧客にとって最も価値のあるポイントを軸に考える
・ターゲットとなる国や市場に特有のニーズがあれば考慮する
(各ページ内の)見出し ・クリアで具体的なメッセージを伝える
・顧客にとって理解しやすく直感的に意味が理解できる内容にする
・SEO対策を考慮し、キーワードが組み込まれているか確認する
説明文章 ・詳細で具体的な情報を簡潔に伝える
・SEO対策を考慮し、キーワードが適切な形で使用されているかを確認する
・専門的な内容やデータを適切に使用して、信頼性を高める
CTA(コール・トゥ・アクション) ・Webサイトの目的に合わせたアクションを促す
・アクションを起こした後の状況が明確に伝わる表現を使用する
・アクションの利点や価値を明確に伝える

これらの文章作成時には、サイト制作側の企業が伝えたいことではなく、顧客が知りたいこと、顧客にとってわかりやすい内容であるかを常に意識し、作成および校閲を行うことが重要です。

Webサイトのコンテンツ作成の方法、事例については以下の記事で詳しく解説しています。

翻訳

次に作成した文章を翻訳します。作成する文章ごとに翻訳時のポイントを以下の表にまとめました。

文章の種類 翻訳時の注意ポイント
(サイト全体の)キャッチコピー ・文化的・言語的な違いを考慮し、メッセージが変わらないようにする
・簡潔さを保ちつつ、意味が正確に伝わるようにする
・専門用語や業界用語の翻訳には特に注意する
(各ページ内の)見出し ・SEO対策的に適切なキーワードが使用されているか確認する
・言語的に適切なフォーマットを採用する(例:大文字、小文字の使い分け)
・簡潔でパッと見て意味が理解できる表現を採用する
説明文章 ・SEO対策的に適切なキーワードが使用されているか確認する
・専門的なキーワードや、解釈が難しい表現の翻訳には特に注意する
・文章の流れや構造が、母語話者にとって自然であることを確認する
CTA(コール・トゥ・アクション) ・アクションの意味やニュアンスが変わらないように注意する
・競合のWebサイトを参照し、よく用いられている表現を洗い出す
・直訳ではなく、母語話者にとって自然かつ効果的な表現を選ぶ

この辺りは、翻訳家、校閲担当の方と意見を交換しながら、言語としての自然さに加えて、マーケティング面(例:SEO対策)でも品質を担保する必要があります。

Webサイトの翻訳における注意点は、以下の記事で詳しく解説しています。

画像素材の準備

画像を準備する際は、以下のようなものを準備する必要があります。

  • 製品写真:製品の特徴や使用イメージがわかるような写真
  • 企業ロゴ:カラーバージョンやモノクロ、異なるサイズのロゴ
  • スタッフの写真:ポートレートや仕事中のスタッフの写真
  • インフォグラフィック:製品の機能説明や統計を示す図
  • イメージ画像:ヘッダーやセクションの背景、特定の用途に使用するためのイメージ画像
  • アイコン:ソーシャルリンクやサービス機能を示すアイコン

必要に応じて、専門カメラマンや著作権フリーのイラスト画像を利用することができます。デザインが必要な素材については、別途この後のデザイン工程でまとめて依頼することをおすすめします。

Webサイト用の写真素材の準備については、以下の記事で詳しく解説しています。

 

3. デザイン制作

サイト制作に必要な全体像の設計と、各ページに使用するコンテンツの準備ができ次第、デザイン制作を行います。(この辺りの順番は多少前後する場合もあります)

TOPページのデザイン作成

まずサイトの顔とも言えるTOPページのデザイン作成を行います。基本的には、企画・調査段階で策定した方向性をもとに、以下の2つのステップでデザインを作成します。

方向性の共有

どのような方向性でデザインを作成するかを担当のデザイナーと制作チーム間で共有します。この際、共有するべき情報として、以下のようなものが挙げられます。

  • Webサイト制作の目的
  • ターゲットユーザーのイメージ、心理状況
  • 競合企業と比較したときの優位性、訴求ポイント
  • 中心に据える製品、サービスとその特徴
  • 「2. サイト・コンテンツ制作」フェーズで作成した情報一式

この場面でも企画・調査段階で整理しておいた情報を活用できます。またデザイナー側もイメージがしやすいように、言語化できる部分は可能な限り言語化し、制作チーム側の意図を具体的に伝える努力も惜しまないようにします。

デザイン提案・フィードバック

上記の情報をもとにデザイナーからデザイン提案が行われます。

基本的には複数のデザインパターンから1案を採用する形を取ります。デザインの初稿が完成し次第、制作チーム側で修正点を具体化し、デザイナーにフィードバックを行います。フィードバックのポイントは、デザインの作り直しや大幅の方向修正のリスクを減らすためにも、部分的にこまめに挟むことが重要です。

上記のやり取りを複数回繰り返し、最終的なデザインが完成します。デザインの細かな修正を重ねることも重要ですが、大局的には企画・調査フェーズで策定した「Webサイトの目的」に対して、その目的を実現させるために適したデザインであるか、という視点も重要です。

下層ページデザイン作成

TOPページのデザインが完成し次第、下層ページのデザイン作成に移ります。下層ページについては、個別のページごとにオリジナルのデザインを作るのではなく、各ページグループごと(例:Products)において、共通のデザインテンプレートを作成します。基本的な作成の流れは、先に説明した通りです。

またこの段階で、サイト内の共通要素(例:見出し、ボタン、表)のデザインも作成します。この辺りの要素のデザインを決める上でも、企業としてのブランドイメージだけではなく、Webサイトを使用する顧客目線から、わかりやすさ、視認性、操作性を考慮して適した形を実現することが重要です。

海外のWebサイトデザインの特徴やWebデザイン制作時のポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。

4. コーディング・開発

サイト制作環境の構築

Webサイトの規模や確定したデザインの内容に応じて、適した手法で制作を行います。Webサイトの制作手法は、大別するとCMS(Content Management System)を使用する方法とスクラッチで制作する方法の2種類があります。

CMSを利用する方法

既存のコンテンツ管理システムを使用してWebサイトを構築する方法です。代表的なものとしてはWordPress、Joomla!、Drupalなどのプラットフォームがあります。

この方法の最大の利点は、プログラミング言語の知識がない方でもコンテンツの追加や更新が容易であること、さらにプラグインやテーマを利用して迅速に機能やデザインを追加・変更できる点です。また、多くのCMSは大きなコミュニティを持っており、サポートや情報共有が活発です。一方で、既存のフレームワーク内での作業となるため、特定のカスタマイズが難しい場合があります。

スクラッチで制作する方法

既存のフレームワークやテンプレートを使用せず、ゼロからWebサイトを構築する方法です。

この方法の最大の利点は、任意の機能やデザインを自由に実装できる柔軟性を持つことです。また、必要な機能のみを構築するため、パフォーマンスの最適化が容易で、他のサイトとは異なるオリジナルのデザインや機能を持つサイトを作成できます。しかし、全てをゼロから作成するため、開発に時間がかかることや、長い開発時間や専門的なスキルが必要となるため、コストが高くなる可能性があります。さらに、独自のシステムのため、更新や機能追加に専門的な知識が必要となることも考慮する必要があります。

サイトの規模やセキュリティのレベル、システム開発を伴う場合、要件を満たせるかどうかなどを考慮の上、決定することが必要です。

コーディング実装・システム開発

各ページのデザインカンプを元にコーディングを進めます。

基本的には、まずサイト全体で共通する要素、例えばヘッダーやフッター、ナビゲーションメニューなどのベースとなるテンプレートを作成します。その後、デザインカンプやワイヤーフレームを基に、具体的なページのコーディングを進めていきます。

またシステム開発が伴うコーディングを実装する場合は、制作チーム側でシステムの要件を定義し、システム開発前にエンジニア側と認識を合わせておく必要があります。またこの工程においても、進捗管理用のスプレッドシートなどを活用し、細かく確認のタイミングを設けておくことで、大幅な軌道修正が発生するリスクを回避できます。

その他の必要な設定

上述したコーディング作業と並行して、サイト制作に必要な設定作業を行います。設定作業には、以下のようなものがあります。

セキュリティ対策

SSL証明書の導入やサイトのセキュリティ設定、プラグインの導入を行います。また、データベースのセキュリティ対策もこの段階で行います。セキュリティ対策においては、定期的なセキュリティアップデートを行うこと、パスワードの強度を確保すること、不要なプラグインやモジュールは削除することが重要です。

リダイレクト設定の準備

旧サイトからのリダイレクト設定や、404エラーページの設定を行うための準備作業を行います。多言語サイトのリダイレクト設定準備もこの工程で行います。注意点として、SEOを考慮し、301リダイレクトを使用すること、404ページにはユーザーがサイト内で迷わないナビゲーションを提供することが挙げられます。

アクセス解析環境の準備

Webサイトの訪問者の行動やサイトの利用状況を正確に把握するために、アクセス解析ツールの設置作業を行います。基本的には「Google Analytics」および「Google Search Console」の活用は必須であり、より詳細な分析を行うために、追加の解析ツール(例:ヒートマップ分析ツール)を使用します。

Google Analyticsでは、特定の目標(例:問い合わせフォームの送信)を達成した際のユーザーの行動を追跡するための「コンバージョン設定」も行う必要があります。また海外向けのWebサイトの場合、個人情報保護の観点から各国のデータ保護法規に準拠した対応が必要です。必要に応じて、法律の専門家のアドバイスをもらってプライバシーポリシーの見直しも行います。

 

5. テスト・公開

公開前の確認作業

全てのコーディングが終了したら、改めてサイト全体の動作確認や誤字脱字、レイアウトの崩れ、リンク切れ、フォームの送信確認などのチェックを行います。この工程では、ユーザーにとっての使い勝手や見え方の確認を重点的に行います。

基本的には、制作チーム内で準備されたチェック項目を一つずつ確認する形で進めます。代表的な確認項目と確認内容の例は以下のとおりです。

確認項目 確認内容
レスポンシブデザイン ・各デバイス(スマートフォン、タブレット、PC)での表示確認
・画面サイズを変更した際のレイアウトの崩れ確認
ブラウザの互換性 ・主要ブラウザ(Chrome, Firefox, Safari, Edgeなど)での表示確認
・ブラウザの最新バージョンでの動作確認
言語・翻訳 ・翻訳の正確性や自然さの確認
・文字化けやレイアウト崩れの確認
リンクの動作 ・内部・外部リンクの動作確認
・リンク切れやリダイレクトの確認
フォームの動作 ・必須、任意項目の動作確認
・エラーメッセージの表示確認
・送信後の動作(例:メール送信、完了ページ表示)
ページの読み込み速度 ・各ページの読み込み速度確認(国別のページの読み込み速度確認にはこちらのツールが使えます)
・画像やスクリプトの最適化確認
SEO対策 ・メタタグやalt属性の確認
・サイトマップの存在確認
・構造化マークアップの確認
セキュリティ ・SSLの導入確認
・セキュリティ対策系プラグインの実装確認(例:SiteGuard WP Plugin)
・外部からのフォームのスパム投稿対策
Cookie対応 ・Cookieの使用目的や期間の明示
・ユーザーの同意取得の実装
・海外向けのデータ保護法規(例:GDPR)への対応、プライバシーポリシーの内容確認

サイト公開

上記の確認項目がクリアできた段階で、サイトの公開を行います。サイトの公開方法には、大きく分けて以下の2つがあります。

CMSを使って公開する方法

CMS(Content Management System)を使用してWebサイトを制作した場合の公開方法です。この場合、CMS上で公開設定を行い、Webサイトをインターネット上で公開します。WordPressを用いて制作したWebサイトの詳細な公開方法については、以下の記事で解説しています。

Webサーバーにファイルを配置して公開する方法

直接Webサーバー上にWebサイトのファイルをアップロードすることでサイトを公開する方法です。具体的には、ホスティングサービスを利用してサーバーを準備し、FTPクライアントソフトウェアを使用してローカルのPCからサーバーへWebサイトのファイルをアップロードします。アップロードが完了したら、ブラウザを使用してサイトのURLにアクセスすることで、Webサイトが正しく公開されているかを確認できます。

公開後テスト

基本的には、サイトの公開作業はエンジニアが担当し、公開後のテスト作業は制作チームが担当します。サイト公開時に必要な作業を以下に記載します。

作業項目 作業内容
各種動作確認 ・全ページの表示確認
・リンクやボタンの動作テスト
・フォームの送信テスト
リダイレクト設定 ・旧サイトや旧ページからのリダイレクト設定および動作確認
・404エラーページの表示確認
アクセス解析状況の確認 ・アクセス解析ツールのデータ収集確認
・コンバージョン計測の動作確認
お知らせ ・新サイト公開のお知らせページの公開
・SNSやメールマーケティングでの告知
SEO対策 ・サイトマップの作成と検索エンジン(Google Search Console)への登録
・WordPressの場合 「検索エンジンがサイトをインデックスしないようにする」のチェックが入っていないか確認
・特定のページにおいてnoindexタグの設置がされていないか確認

Webサイト公開後の運営については、以下の記事で解説しています。

 

まとめ

海外向けWebサイト制作・リニューアルの流れを、5つのフェーズに分けて解説しました。

弊社(テクノポート株式会社)は、英語サイトの制作・運用を通して、日本企業の海外販路開拓のサポートを行っています。私たちのサービス内容にご興味のある方は、まずは一度、弊社サービスサイトに目を通していただけると嬉しく思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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英語SEO対策の基礎|クリック率(CTR)の上げ方

テクノポート株式会社の稲垣です。
海外Webマーケティング」サービスの責任者を務めています。

この記事では、英語でSEO対策における「クリック率(CTR)の上げ方」を解説します。

 

クリック率(CTR)とは?

SEO対策におけるクリック率(CTR: Click-Through Rate)とは「検索結果ページに表示されるWebサイトのリンクが、ユーザーによってどれだけクリックされているか」を示す指標です。(「検索結果ページ」とは、こちらのページです)

具体的には「CTR(%)=(クリック数 / 表示回数)× 100」で計算されます。例えば、あるウェブページのリンクが100回検索結果に表示され、そのうち5回クリックされた場合、CTRは5%になります。

クリック率(CTR)の決定要因

クリック率は以下の2つの要因により決定します。

  1. ページの検索順位
  2. ページのタイトル、ディスクリプション

1. ページの検索順位

以下のグラフは、横軸にCTR、縦軸に検索順位をとり、検索順位における平均のCTRを示したものです。(灰色の棒グラフが通常の場合、青色の折れ線グラフは「強調スニペット」ありの場合のCTRです)

Featured snippets CTR

出典:SEO CTR stats to inform your 2023 SEO strategy [SERP trends]

上記のグラフが示す通り、検索順位が高いほど、CTRも高くなることがわかります。原理は単純で、検索結果の上の方に表示されるページほど、ユーザーの目に留まりやすくクリックされやすいためです。

2. ページのタイトル、ディスクリプション

ページのタイトル、ディスクリプションとは、検索結果に表示される以下の表示です。

title, description

タイトルは、基本的に「title(タイトル)タグ」を設定することで、意図的に決定できます。一方、ディスクリプションは「description(ディスクリプション)タグ」の設定がそのまま採用されることもあれば、Googleが検索キーワードによって意図的に表示を変えることもあります。

 

クリック率(CTR)を上げるメリット

Webサイトへのアクセス数が上がる

クリック率が上がる一番大きなメリットは、Webサイトへのアクセスが多く集まることです。ただ一概にクリック率が高ければ高いほど良い、と言い切れないことに注意が必要です。

例えば、”industrial equipments“というキーワードでの検索行動を考えます。このキーワードで検索を行うユーザーの検索意図(検索者が検索によって解決したい課題)は、以下の2つに大別できます。

  1. “industrial equipments”について知りたい
  2. “industrial equipments”が欲しい(”industrial equipments”を扱っている会社を探している)

この場合、前者のユーザーは情報収集が目的であり、貴社のサイトに訪れたとしても、購買行動に結びつく可能性は低いと言えます。一方、後者のユーザーは購買を目的とした検索を行っているため、購買に結びつく可能性が高いユーザーであると言えます。

もし”industrial equipments”の購買を目的としている人にWebサイトを訪れてほしい場合、注力するべきことは、後者のユーザーからのクリック率を上げることです。たとえクリック率が低くとも、後者のユーザーからのクリックが集まっていればOKというイメージです。

そのため、やみくもにクリック率を上げようとするのではなく、ターゲットとするユーザーが抱えている課題を推測し、彼らがクリックしたくなるタイトルを考えることが重要です。

検索順位が上がる

これはあくまで私の予想です。Googleは、クリック率が高い記事ほど検索結果の上位に表示していると考えられます。

なぜなら「クリック率が高いページ=検索者が求めるページ」と解釈できるためです。検索者が求めるページを優先的に上位に表示することで、検索者が満足し、またGoogleを使いたいと思ってもらえる可能性があります。

したがって、このようなアルゴリズムを採用することは、検索者にもGoogle側にもメリットがあります。ただし、タイトルだけが魅力的で、中身に内容がない(検索者を満足させることができない)ページは、一時的に順位は上がっても、すぐに他のページに抜かされると思います。

クリック率(CTR)改善の進め方

私は、以下の5つのステップでクリック率の改善を行います。

  1. ページの選定
  2. キーワードの洗い出し
  3. 原因の仮説を立てる
  4. ページタイトルを変更
  5. 効果検証

STEP 1. ページの選定

まず、クリック率を改善するべきページを選定します。クリック率を改善するべきページとは、以下の3つの条件を満たすページであると考えます。

  1. 対策キーワードでの検索結果が10位以内である(すでに検索結果の1ページ目に表示されている)
  2. 対策キーワードでのクリック率が、その順位における平均のクリック率より低い
  3. クリック率の改善が見込める(指名検索に使用されるキーワードではない)

3の条件については、会社紹介ページ、TOPページなど、ユーザーが貴社を名指しで指名し検索しているキーワードを除くという意味です。これらのページは、タイトルを変えることによるクリック率の向上が見込めないページであるためです。

1と2の条件を満たしているかどうかは、Googleサーチコンソールを使って確認します。Googleサーチコンソールの「検索パフォーマンス」メニューを選択し、任意の期間を選びデータをエクスポート(出力)します。すると以下のような表がダウンロードできます。(キーワードは仮の値を入力しています)

上位のクエリ クリック数 表示回数 CTR 掲載順位
keyword 1 72 7,410 0.97% 6.14
keyword 2 36 130 27.69% 1.25
keyword 3 30 418 7.18% 2.44
keyword 4 20 1,346 1.49% 7.97
keyword 5 18 128 14.06% 1.94
keyword 6 18 94 19.15% 1.68
keyword 7 14 113 12.39% 2.86
keyword 8 12 1,073 1.12% 5.19
keyword 9 11 2,239 0.49% 8.22

この表におけるそれぞれの指標は以下を意味しています。

  • 上位のクエリ:ユーザーが検索に使用したキーワード
  • クリック数:クエリ(1列目)のキーワードが検索された際に、Webサイト内のページがクリックされた回数
  • 表示回数:クエリ(1列目)のキーワードが検索された際に、Webサイト内のページが検索結果に表示された回数
  • CTR:クエリ(1列目)のキーワードが検索された際に、Webサイト内のページがクリックされた確率(クリック数/表示回数×100%)
  • 掲載順位:クエリ(1列目)のキーワードが検索された際の、Webサイト内のページの平均検索順位

この表の中で特に注目すべき数字は、4列目の「CTR」と5列目の「掲載順位」です。ここで先に述べた3つの条件の1と2を確認します。

例えば、2行目の”keyword 1″の4列目の「CTR」と5列目の「掲載順位」を見てみます。このキーワードは、平均検索順位が6.14位であるため、CTRは4%程度が見込める位置にランクインしていると言えます。(先に紹介した検索順位とCTRの相関を示したグラフをご覧ください)

したがって、現在のCTR、0.97%は検索順位から考えると低い数字であると言えます。つまりこのキーワードは、先に紹介した条件1と2を満たすキーワードであると言えます。また、このキーワードが貴社の社名や製品名などの固有名詞ではない場合、3つの条件をすべて満たしたページであると言えます。

この手順で、CTRを改善するべきページを選定します。またこのページの中でも、特に改善の優先度が高いキーワードを「メインキーワード」とします。今回の場合、表示回数が最も多い “keyword 1″をメインキーワードとして設定することが妥当であると言えます。(基本的に表示回数が多いキーワードほど、CTR改善の影響が大きいため、メインキーワードにふさわしいと言えます)

STEP 2. キーワードの洗い出し

次に、1で選定したページにおいて、現在当該のページで検索結果に表示されている他のキーワードを確認します。その際、掲載順位が10以内のキーワードを以下の2種類に大別します。

  1. (検索順位に対して)CTRが低いキーワード
  2. (検索順位に対して)CTRが高いキーワード

具体的には、1のステップで選定したページにフィルターをかけ、もう一度Googleサーチコンソールで上記の表をエクスポート(出力)します。(手順は先ほどと同様で、Googleサーチコンソール内で、ページのフィルターをかけて先ほどと同じ表を出力してください)

すると、先ほどと同じように以下の表が出力されます(キーワードは仮の値を入力しています)。

上位のクエリ クリック数 表示回数 CTR 掲載順位
keyword 1 72 7,410 0.97% 6.14
keyword 1.1 18 281 6.41% 2.8
keyword 1.2 14 280 5% 2.96
keyword 1.3 12 2,573 0.47% 7.48
keyword 1.4 11 2,239 0.49% 8.22
keyword 1.5 6 391 1.53% 3.3
keyword 1.6 6 101 5.94% 2.9
keyword 1.7 5 187 2.67% 6.7
keyword 1.8 5 71 7.04% 5.9

この表における2行目は、先ほどの表と同じキーワードです。この表を見ながら先ほどの分類にしたがってキーワードを大別し、それぞれの分類のキーワードに対して次のような対策を取ります。

  1. (検索順位に対して)CTRが低いキーワード:CTRの改善を行うメインキーワード “keyword 1″と合わせて、対策できる余地がないか検討する
  2. (検索順位に対して)CTRが高いキーワード:CTRの改善を行うメインキーワード “keyword 1″によって、CTRが下がる可能性がないか検討する

前者は、具体的には、3行目の”keyword 1.1″、4行目の”keyword 1.2″、などの(検索順位に対して)CTRが低いキーワードについて、メインキーワード “keyword 1″の対策と合わせてCTRの改善できる余地があるか考慮するという意味です。

後者は、具体的には、最後の行の”keyword 1.8″など、(検索順位に対して)CTRが高いキーワードにについて、メインキーワード “keyword 1″の対策によってCTRが落ちる可能性があるか考慮するという意味です。

このような確認を行う理由は、一つのキーワードだけを意識してCTRの改善を行うと、他のキーワードでCTRが悪化し、ページ全体としてCTRが悪化してしまう可能性があるためです。したがって、CTRの改善を行う際は、上記のようなキーワードも複合的に考慮し、ページ全体としてCTRを上げるためのページタイトルをつけることが重要です。

STEP 3. 原因の仮説を立てる

次に、(検索順位に対して)CTRが低いキーワードについて、現在CTRが低くなっている原因を考えます。この工程では、まず優先的にCTR改善を行うメインキーワードで検索し、検索結果に表示されるページを確認します。

検索結果を見るとよくわかりますが、CTRは他社サイトとの比較によって決定します。

例えば、自社のページに魅力的なタイトルをつけていると思っていても、自社と同じようなタイトルの他社サイトが上位に表示されている場合、そのページはクリックされづらいと言えます。なぜなら、同じようなタイトルのページが2つある場合、単純に検索順位が高いページがクリックされやすいためです。

したがって、自社のページを以下のような観点から確認し、現在のページタイトルの問題点を洗い出します。

  • 独自性のあるタイトルになっているか(上位表示されている他社のページとタイトルが被っていないか?)
  • サイトに訪れてほしいユーザーが求める情報がページ内に含まれていることを暗示できているか?
  • 簡潔でパッと見て意味が理解できるか?

STEP 4. ページタイトルを変更

次に上記で洗い出した課題を元に、改善策を考えます。改善策を考える際の具体的なテクニックは、記事の後半で説明します。

ここで注意するべきことは、タイトルの変更によって、STEP 2で分類分けした2つのキーワードに与える影響です。つまりメインキーワードでは、CTRが改善しそうだが、その他のキーワードでは、CTRが下がってしまいそうな場合、その改善案は優れたものではないと言えます。

同様に、メインキーワードでも、その他のキーワードでもCTRの改善が見込めそうな改善案は、優れたものであると言えます。もちろん、タイトルの変更により全てのキーワードに対するCTRが上がることは考えにくいため、メインキーワードを中心に、特に注力したいキーワードを軸にタイトル改善案を考えます。

ここで考えた改善案を当該のページに設定します。合わせて、Googleサーチコンソールでインデックス登録のリクエストも行いましょう。変更したページタイトルが、早く検索結果に反映させるためです。

STEP 5. 効果検証

変更したページタイトルによって、CTRが上がったのか検証します。

検証のために必要な期間は、約1ヶ月〜3ヶ月程度です。これは検索ボリュームに応じて、データの蓄積速度が変わるため、それまでのデータと比較するために十分なデータが取れるだけの期間が必要になります。

ここで、意図通りCTRが改善しなかった場合、再度STEP 3で洗い出した課題を見直し、別の改善策を実行します。このステップを繰り返すことで、CTRを改善します。

 

英語ページのクリック率(CTR)を上げるタイトル付け方

最後に、英語ページのクリック率を上げるタイトルの付け方を4つ紹介します。

テクニック1. タイトルは検索キーワードから始める

基本的に、ページのタイトルはユーザーの検索キーワードを含めることはもちろんですが、そのキーワードから始まるものをつけたほうがクリック率は上がりやすい傾向があります。

例えば、貴社が精密切削加工(precision cutting)を提供する会社で、精密切削加工のサービス紹介ページにつけるタイトルとして、以下の2つを考えました。

  • Precision Cutting: Upgrade your Products with Our Service
  • Upgrade Your Products with Our Precision Cutting Service

上記の2つのタイトルは、同じようなメッセージを伝えていますが、私の経験則では、前者のタイトルの方がクリック率が高いと言えます。なぜならユーザーは、”precision cutting”という検索キーワードを使用しているため、当該のキーワードがパッと見て入っているページをクリックする可能性が高いと考えられるからです。

実際にこのタイトル変更を行うだけでも、CTRが5%以上改善した事例もあり、再現性が高い改善方法だと思います。

テクニック2. 短縮表現を活用する

ページのタイトルを、簡潔で直感的にわかりやすくするために、短縮表現を使う方法があります。

短縮表現とは、以下のような表現方法です。

種類 方法 具体例
頭文字 各単語の最初の文字だけで表す方法 HVAC: Heating, Ventilation, and Air Conditioning
略語 一部の文字を省略する手法 Information: Info.
Number: No.
記号・数字 文字の代わりに記号や数字を使用する方法 and: &
B to B: B2B
シンプルな表現 シンプルでわかりやすい表現を使う Understanding the Basics of ~: ~ 101, The ABCs of ~
Difference between A and B: A vs. B

このテクニックを使う際に注意することは、対策する検索キーワードに対して省略表現を使用しないことです。Googleにきちんと対策キーワードを伝えるためにも、対策する検索キーワードは正確な表現でタイトルに含めることをおすすめします。

あくまで、これらの表現は、対策する検索キーワード以外の場所で使い、タイトルを簡潔にするためのテクニックとして使う方が安全だと思います。

テクニック3. 主題+副題方式を使う

英語では「:(コロン)」を使うことで、タイトルを主題と副題に分けることができます。

例えば、先ほどの例同様に貴社が精密切削加工(precision cutting)を提供する会社で、精密切削加工のサービス紹介ページにつけるタイトルとして、以下の2つを考えました。

  • Precision Cutting: Upgrade your Products with Our Service
  • Precision Cutting Service for Next-level Quality Products

前者と後者でメッセージは同じですが、前者の方が主題と副題を使用することで、タイトルにメリハリが出ます。(少なくとも私はそう感じます)このようなタイトルとつけることで、ユーザーが直感的にページの意味を理解できると思います。(実際このようなタイトルの付け方はよく見かけます)

テクニック4. 疑問文を使う

特にブログ系のページで有効なテクニックとして、疑問文を使う方法があります。

ここでも、先ほどの例と同様に貴社が精密切削加工(precision cutting)を提供する会社で、今回は、精密切削加工に関する基礎知識をまとめたブログページにつけるタイトルとして、以下の2つを考えました。

  • “What is Precision Cutting? A Beginner’s Guide to the Fundamentals
  • A Beginner’s Guide to Precision Cutting Techniques

こちらも両者のメッセージは同じですが、前者のタイトルはまさに読者の頭の中の疑問がそのままタイトルとして現れているため、ドンピシャな疑問を持つユーザーからのクリック率が上がりやすいと考えられます。実際に、海外のブログ系の記事では上記のような疑問文形式のタイトルのページをよく見かけます。

まとめ

英語SEO対策におけるクリック率の上げ方について解説しました。CTRは一気に全てのページを改善するのではなく、まずは1つのページで取り組んでみることで、感覚がつかめると思います。

SEO対策においては、検索順位に加えてCTRも改善することで、検索からの流入も増え、検索順位の向上も見込めます。時間と労力をかけて作ったページを無駄にしないためにも、CTRも重要な指標の一つとして認識いただければと思います。

弊社(テクノポート株式会社)では、製造業向けの「海外SEO対策コンサルティング」サービスを提供しています。
無料相談」も実施していますので、お気軽ににお声がけいただければ嬉しく思います。

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海外向けWebサイトの分析・改善の進め方【回遊率の改善編】

テクノポート株式会社の稲垣です。
海外Webマーケティング」サービスの責任者を務めています。

この記事では、海外向けWebサイトの「回遊率」の改善手法について、解説します。

 

「回遊率」とは?

「回遊率」とは、Webサイトやアプリ上でユーザーが複数のページまたはスクリーンを訪れる割合を指す指標です。一般的には、1回のセッション(訪問)中にユーザーが2ページ以上を訪れる割合を表します。

回遊率の計算方法は以下の通りです。

回遊率(%) = (2ページ以上を訪れたセッション数 / 全セッション数) × 100

回遊率が高いことは、ユーザーが興味を持って複数ページを見てくれたと解釈できるため、一般的には回遊率は高い方が望ましいと言えます。(1ページ完結型のランディングページや、問い合わせフォームのページは例外です。)

回遊率の逆数として「直帰率」という概念があります。直帰率の定義は、以下の通りです。

直帰率(%) = (1ページのみ訪れたセッション数 / 全セッション数) × 100 (= 100 – 回遊率)

なぜ「回遊率」が重要なのか?

結論、回遊率を改善することが、コンバージョン数(例:問い合わせ数)の改善につながるからです。

一般的に、Webサイトからの獲得できるコンバージョン数は以下の計算式で試算できます。

コンバージョン数 = インプレッション数 × クリック率 × コンバージョン率

回遊率の改善は、この中でもコンバージョン率の改善に影響する指標であるため、回遊率の改善は、コンバージョン数の改善につながります。

Webサイト改善の詳しい考え方は、こちらの記事を参照ください。

改善の進め方

具体的な改善の進め方を解説します。基本的な流れは以下の通りです。

  1. 回遊率を改善するべきページを決める
  2. 回遊先のページを決める
  3. 現状の回遊率を調べる
  4. 離脱の原因を考える(仮説を立てる)
  5. 改善施策を実行する(仮説を検証する)
  6. 施策の効果を検証する

1. 回遊率を改善するべきページを決める

まず、回遊率を改善するべきページを決めます。この工程を行うべき理由は、ページによって回遊してほしい場合とそうでない場合があるためです。

例えば、回遊率を低くするべきページとして、以下のようなものがあります。

  • ランディングページ(流入口と問合せフォームが一体となったページ)
  • お問い合わせフォーム

これらのページにおいては、ページ内でユーザーの行動を完結させることが目的であるため、以下にユーザーを離脱させないか、という視点でページの改善を行います。

回遊率を改善するべきページを見極めるための方法として、以下のような「バブルチャート」を使う方法があります。

このバブルチャートは、横軸にページの視聴回数(=ページビュー数)、縦軸にコンバージョン数(ページを経由して発生したコンバージョンの回数)をとり、サイト内の各ページをプロットしたグラフです。(バブルの大きさは、ページに訪れたアクティブユーザーの数を示します)

このグラフの赤い線の下側に位置するページは、「視聴回数は多いが、コンバージョン率は低いページ」であり、その逆の赤い線の上側に位置するページは「視聴回数は少ないが、コンバージョン率は高いページ」です。

ここで、回遊率を改善するべきページは、前者のページであると言えます。なぜなら前者のページから後者のページへの回遊を強化することで、獲得した視聴回数をより効率的にコンバージョンへつなげることができるためです。

上記のようなグラフを活用し、回遊率を改善するべきページの優先順位を決定し、次項以降の改善施策を実行します。

2. 回遊先のページを決める

1のステップで選定したページに対して、回遊先のページ(当該のページに訪れたユーザーに対して、回遊を促したいページ)を決めます。

回遊先のページを決める上で重要なことは、ページに訪れたユーザーの興味関心に沿ったゴール(回遊先)を設定することです。

例えば「“Rapid Prototyping”について解説するページ」に訪れるユーザーは、次のような興味関心を持っていると想像できます。

  • Rapid Prototypingについて知りたい(=情報収集)
  • Rapid Prototypingができる会社が知りたい(=会社探索)

上記のような興味関心のあるユーザーが、次に興味を持ちそうなページの例としては以下のようなものがあります。

  • Rapid Prototypingサービスのページ(イメージ
  • Rapid Prototypingのホワイトペーパー(お役立ち資料)ダウンロードページ(イメージ
  • Rapid Prototypingと類似の工業技術の解説ページ(イメージ

もしくは先ほどのバブルチャートにおける「視聴回数は少ないが、コンバージョン率は高いページ」の中から、ユーザーの興味関心に近いものを選定する方法もあります。

このように、ページに訪れるユーザー心理状況を先読みし、彼らが次に興味を持つであろうことの中から自社にとって回遊を強化したいページを回遊先に設定します。

3. 現在の回遊率を調べる

1と2のステップで、回遊の経路(起点となるページとゴールとなるページ)が決定します。次に行うことは、この経路における現在の回遊率を調べることです。

具体的には、Google Analytics 4の「探索」という機能を活用します。(詳しい設定方法は割愛します)

こちらの機能を使用しレポートを作成すると、上記のような表を作成できます。

この表は、起点となるページからゴールとなるページへの回遊率(ここでは完了率)を示しており、起点に訪れたユーザーの中で、何人のユーザーがゴールまでたどり着いたかを把握できます。

上記の例では、流入ユーザーの内訳として「デバイスカテゴリ」を設定することで、流入したユーザーが使用するデバイスごとに数字を把握することができます。(これはこの後解説する離脱の原因を考える際にヒントになります)

4. 離脱の原因を考える(仮説を立てる)

次に、定めた経路において離脱が発生する原因を考えます。

原因を考えるために最初にするべきことは、当該のページに訪れたユーザーの気持ちになって、実際にページを操作してみることです。ここで感じたちょっとした違和感、操作性の悪さをもとに、ユーザーの離脱が発生する原因仮説を立てます。

例えば、以下のようなイメージです。

  • リンクの設置場所が不明瞭で気づきにくい
  • 関連製品、情報に関するリンクが設置されていない
  • 欲しい情報にたどり着くまでのスクロール距離が長すぎる

上記のような仮説を立てた次に、仮説の確からしさを「ヒートマップ」を使って検証します。ヒートマップを使用することで、上記の仮説で想定したような行動をユーザーが実際に取っているかを確かめます。(検証項目の名称はツールによって異なります)

原因仮説 ヒートマップにおける検証項目
リンクの設置場所が不明瞭で気づきにくい ・クリックマップ(当該リンク箇所のクリック回数の確認)
・レコーディング(当該リンク周辺におけるユーザーの動きを観察)
関連製品、情報に関するリンクが設置されていない ・熟読マップ(当該箇所を熟読はしたが何もアクションを起こさず離脱しているユーザーがいないか確認)
欲しい情報にたどり着くまでのスクロール距離が長すぎる ・スクロールマップ(当該箇所までたどり着かずに離脱したセッションの割合を確認)

上記のような検証を加えることで、実際に自分が感じた違和感を他のユーザーも同じように感じていないかを確かめることができます。(ただしヒートマップを見ても、実際のユーザーの心理状況まではわからないため、最終的には感覚と経験を元に判断します)

なお各種検証項目については、GA4にて設定を行うことで、同様のデータが取得できます。(以下の例は、GA4にて作成したスクロール率レポートの例です)


これらのレポートは、原因の仮説を持たないまま見始めるとどれだけ時間があっても分析しきれません。そのため、ある程度仮説に目星をつけた状態で、その仮説を検証する目的で使用することをおすすめします。

5. 改善施策を実行する

4で立てた原因仮説を改善するための施策を考えます。

施策は、以下のような情報をある程度収集した状態で考えることをおすすめします。

  • 競合他社のWebサイトの仕様
  • Webマーケティング関連の書籍で紹介された手法
  • 他のページで実施し、効果のあった施策

例えば、4で出てきたような仮説を改善するための施策の例を紹介します。

原因仮説 ヒートマップにおける検証項目
リンクの設置場所が不明瞭で気づきにくい ・クリックできることがわかるような装飾を行う(例:マウスホバーをした際の動きを加える)
関連製品、情報に関するリンクが設置されていない ・当該のページを訪れたユーザーの興味関心に沿ったページのリンクを設置する
・関連製品ページへのリンクを設置する
欲しい情報にたどり着くまでのスクロール距離が長すぎる ・ユーザーが興味を持って読んでくれる情報、ユーザーに優先的に見せたい情報をページの上部に配置させる

上記のような改善施策の中でも実行が容易であり、かつ効果のありそうなものから順に実行していくことをおすすめします。

6. 施策の効果を検証する

最後に、5の施策を実行後に一定期間を置き、効果を検証します。

検証方法は、3のステップで紹介した通りです。加えて、ヒートマップでも検証後のページにおけるユーザーの動きを調査し、こちら側が意図したような動きをするユーザーが増えたか確認します。

この時点で改善が確認できない場合、まず以下の2つの可能性が考えられます。

  1. 原因仮説が間違っていた
  2. 原因仮説は合っていたが、改善施策が間違っていた

1、2の可能性が考えられる場合、再度4または5のステップに戻り、やり直します。

また上記2つ以外の可能性として、そもそもの経路設定(起点とゴールとなるページの設定)に無理がある場合もあります。例えば、リンクを踏んでもらうことをゴールにしていたが、やはりそのページ内で直接コンバージョンしてもらう方が、コンバージョン率の向上が見込めるケースもあります。

上記のような可能性も考え、次の方針を決定し、必要に応じて見切りをつける姿勢も大切だと思います。

海外向けWebサイトの離脱発生要因

最後に、海外向けWebサイトならではの離脱の発生要因を2つ紹介します。

1. 言語による離脱

1つ目は、言語による違和感で離脱が発生するケースです。具体的に以下の2つのパターンに分類できます。説明をわかりやすくするために、英語を例に説明します。

  1. 英語ネイティブが非ネイティブが作った英語サイトを訪れる場合
  2. 英語非ネイティブが英語ネイティブが作った英語サイトを訪れる場合

上記の場合、非ネイティブが作った英語文章に違和感を抱き、コミュニケーションの壁を感じ離脱してしまうパターンです。(日本人が外国企業が作った日本語Webサイトを見たときに抱く違和感と近いです)

後者の場合は、非ネイティブにとってもわかりやすいWebサイトを作ることが必要です。特にグローバルサイト(特定の国に対象を絞らないサイト)において重要です。

上記2つに共通する解決策としては、視覚的、客観的な情報を中心にページを構築することです。製品の写真や仕様を表す数値は、誰が見ても同じように解釈できるため、積極的に活用した方が良いです。

2. アクセス速度による離脱

海外向けのWebサイトでは、サーバーの設置位置によりアクセス速度に差が生じます。

つまり、サーバーの設置位置が遠い地域に住んでいるユーザーがWebサイトにアクセスした場合、近い地域に住むユーザーよりも表示速度が遅れる場合があります。

海外Webサイトのサーバーの選び方、速度が与える影響は、以下の記事で解説していますので興味のある方はご参照ください。

まとめ

今回の記事では、海外向けWebサイトの回遊率の改善の進め方を解説しました。

この記事を含めて、私の執筆する記事ではノウハウの更新に応じて、随時内容を更新するので、定期的に見に来ていただけると幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

弊社では、BtoB企業様向けに「海外向けWebサイトの改善支援」サービスを提供しております。
無料相談」も実施していますので、ご興味のある方はからお気軽にご連絡いただければと思います。

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【地域別】海外のBtoB企業のランディングページ(LP)15選

テクノポートの稲垣です。現在「海外Webマーケティング事業」の責任者を務めています。

この記事では、世界3地域(ヨーロッパ、北米、アジア)の海外企業のランディングページの特徴を洗い出し、両者の違いを紹介します。

なお当記事におけるランディングページとは、広告出稿による集客を想定した縦に長い1ページから構成されるWebページを指します。

oveseas-landingpage

調査の観点

今回は主に以下の7つの観点からWebサイトの違いを調査します。

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス ランディングページで訴求している製品・サービスの種類
配色 ランディングページの配色
テキストの量 ランディングページ内に使用されている説明テキストの量
レイアウトの特徴 ページレイアウトの特徴
縦の長さ(px) ランディングページの縦方向の長さ(横幅は1,628pxで固定)
CTAの種類 CTA(Call To Action)の種類(例:問い合わせ、見積もり、カタログダウンロード)
その他の特徴 ランディングページのその他の目立った特徴

北米企業のランディングページ

Tourmaline(アメリカ)

出典:Landing page | Tourmaline Enterprises

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス 産業用印刷機器の製造・販売
配色 白が基調、黄緑がアクセントカラー
テキストの量 かなり少ない(説明に必要最小限の量)
レイアウトの特徴 スペースにゆとりがあり余裕がある
縦の長さ(px) 4,973
CTAの種類 問い合わせフォーム(埋め込み)
その他の特徴 ・Facebook Messangerによる自動チャット応答サービスあり

CREAFORM(カナダ)


出典:HandyPROBE Next | Portable CMM

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス 3次元測定用プローブ装置の製造・販売
配色 黒が基調、黄色がアクセントカラー
テキストの量 少ない、見出しだけ読めば大枠が把握できる
レイアウトの特徴 画像、動画、ロゴが使用されており直感的にわかりやすい
縦の長さ(px) 6,248
CTAの種類 問い合わせフォーム(別ページに遷移)
その他の特徴 ・問い合わせフォームがステップ式の入力

AXTONNE


出典:Urethane Casting

 

 

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス ウレタン樹脂の成形
配色 白が基調、水色がアクセントカラー
テキストの量 普通、異なる大きさのテキストがバランスよく使用されている
レイアウトの特徴 画像、動画、テキストの配置に無駄がなくバランスが良い
縦の長さ(px) 5,687
CTAの種類 見積もりを依頼する
その他の特徴 ・見積もりフォームの下に、主な納入先企業のロゴ、受賞歴を掲載(信頼性をアピール)
・チャットによる自動応答サービスあり

PROTOLABS

出典:Injection Molding at Protolabs

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス 射出成形の受託サービス
配色 白と紺が基調、オレンジ色がアクセントカラー
テキストの量 少ない、箇条書きが基本
レイアウトの特徴 テキストが箇条書きで簡潔にまとめられておりわかりやすい
縦の長さ(px) 2,433
CTAの種類 見積もりを依頼する、特定の製品の見積もりを依頼する
その他の特徴 ・見積もり依頼フォームに主な納入企業のロゴを掲載(有名企業が中心)

Fellowes

出典:Aeramax PRO – Cleaner air technology

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス オフィス向け空気清浄機の製造・販売
配色 白が基調、紺色がアクセントカラー
テキストの量 少ない
レイアウトの特徴 動画、画像が大胆に配置されており視覚的にわかりやすい
縦の長さ(px) 4,236
CTAの種類 問い合わせフォーム(埋め込み)
その他の特徴 ・テキストに余分な装飾がなく読みやすい

oveseas-landingpage

ヨーロッパ企業のランディングページ

SCHOTT(ドイツ)

出典:Finding the Perfect Solution | SCHOTT

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス ガラス素材を使った製品開発サービス
配色 白が基調、紺・青色がアクセントカラー
テキストの量 かなり少ない
レイアウトの特徴 動画、画像がページの中心に大胆に配置されている
縦の長さ(px) 6,561
CTAの種類 問い合わせフォーム(埋め込み)
その他の特徴 ・ページ内の各リンクから本体サイトの詳細ページに遷移

BTC Chemical Distribution(ドイツ)

出典:Accelothene / BTC

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス 射出成形用添加物の製造・販売
配色 白が基調、緑色がアクセントカラー
テキストの量 普通
レイアウトの特徴 画像とテキストがバランスよく大胆に配置されている
縦の長さ(px) 3,339
CTAの種類 担当者にメールを送信
その他の特徴 ・問い合わせフォームの代わりに担当者にメールが届く(担当者の名前にリンクが設置されている)

micrometal(ドイツ)

出典:High Volume Photo Chemical Etching – micrometal

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス エッチング加工の受託サービス
配色 白が基調、緑色がアクセントカラー
テキストの量 普通
レイアウトの特徴 画像とテキストがバランスよく大胆に配置されている
縦の長さ(px) 1,628
CTAの種類 なし
その他の特徴 ・セミナー参加を促すポップアップバナーが現れる
・問い合わせボタンがなく、本体サイトへの遷移リンクのみが設置されている

HAVER & BOECKER(ドイツ)

出典:Wire mesh patterns | Haver & Boecker: HAVER & BOECKER OHG: Haver & Boecker

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス 工業用金網の製造・販売
配色 白が基調、紺色がアクセントカラー
テキストの量 普通
レイアウトの特徴 画像とテキストをバランスよく配置、文字が細かい
縦の長さ(px) 3,808
CTAの種類 無料サンプル請求(埋め込み)
その他の特徴 ・ページの中身がコンパクトにまとまっており、問い合わせフォームまでのスクロール距離が短い

ELPRO(スイス)


出典:One-Site Monitoring

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス 工場、倉庫、クリーンルーム用環境測定システム
配色 白が基調、赤色がアクセントカラー
テキストの量 普通
レイアウトの特徴 画像とテキストがバランスよく配置されている
縦の長さ(px) 3,191
CTAの種類 デモを予約する(カレンダーから予約)
問い合わせフォーム(埋め込み)
その他の特徴 ・ページの中身がコンパクトにまとまっており、問い合わせフォームまでのスクロール距離が短い

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アジア企業のランディングページ

FASIVE(中国)


出典:Vacuum Casting – FASIVE

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス 真空注型の受託サービス
配色 白が基調、紺色がアクセントカラー
テキストの量 少ない
レイアウトの特徴 画像、動画がゆとりを持って配置されている
縦の長さ(px) 8,259
CTAの種類 問い合わせフォーム(埋め込み)
その他の特徴 ・ページの中身、デザイン、レイアウトまで北米やヨーロッパ企業のデザインに近い

Creating Rapid(中国)


出典:Low Volume Rapid Prototyping Manufacturer – Creating Rapid

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス 試作品制作の受託サービス
配色 白が基調、オレンジ色がアクセントカラー
テキストの量 少ない
レイアウトの特徴 画像、動画がゆとりを持って配置されている
縦の長さ(px) 7,971
CTAの種類 問い合わせフォーム(埋め込み)
問い合わせフォーム(ポップアップ)
その他の特徴 ・ページの中身、デザイン、レイアウトまで北米やヨーロッパ企業のデザインに近い
・ファーストビュー部分に問い合わせフォーム(埋め込み)が設置されている

ALUPHANT(中国)

出典:CNC Machining Aluminum Parts Manufacturer | Aluphant

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス アルミニウムの機械加工サービス
配色 白が基調、紺色がアクセントカラー
テキストの量 普通
レイアウトの特徴 画像、動画がゆとりを持って配置されている
縦の長さ(px) 16,655
CTAの種類 問い合わせフォーム(ポップアップ)
その他の特徴 ・ページの中身、デザイン、レイアウトまで北米やヨーロッパ企業のデザインに近い
・ページの長さは今回調査したランディングページの中で最長

Trumonytechs(中国)

出典:Liquid Cooling Plates – Trumonytechs

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス 水冷プレートの製造・販売
配色 白が基調、オレンジ色がアクセントカラー
テキストの量 普通
レイアウトの特徴 画像、動画がゆとりを持って配置されている
縦の長さ(px) 5,691
CTAの種類 問い合わせフォーム(埋め込み)
カタログダウンロード(埋め込み)
その他の特徴 ・チャットに自動応答サービスあり

Fine Aluminum(中国)

出典:Aluminum Heat Sink Manufacturer-Fine Aluminum

調査項目 具体的な調査内容
製品・サービス アルミニウム製ヒートシンクの製造・販売
配色 白が基調、紫色がアクセントカラー
テキストの量 普通
レイアウトの特徴 画像、テキストをゆとりを持って配置(空白部分が多い)
縦の長さ(px) 9,158
CTAの種類 問い合わせフォーム(埋め込み)
問い合わせフォーム(ポップアップ)
その他の特徴 ・ページの中身、デザイン、レイアウトまで北米やヨーロッパ企業のデザインに近い
・問い合わせフォームの入力項目がかなり少ない

各地域のランディングページの特徴

デザイン

デザインの印象は、どの国と地域においても大きな違いはないと感じました。

個人的に驚いたのは、中国企業のランディングページが、北米・ヨーロッパ企業のランディングページのデザインに近いデザインを採用している点です。

ほとんどのランディングページはデザインを見ただけでは、中国企業のランディングページとは全くわからない仕上がりです。おそらく北米・ヨーロッパ地域の顧客に向けて制作されているため、顧客がパッと見た時に違和感を抱かないよう(離脱されないよう)に工夫した結果だと予想されます。

縦の長さ

北米・ヨーロッパ企業のランディングページは、情報が最小限に絞り込まれており、縦のスクロール量を極限まで少なくしようという工夫が見られます。(問い合わせフォームまでのスクロール量をなるべく短くするという意図と予想される)

一方、中国企業のランディングページは、ユーザーが知りたい(欲しい)と予想される情報は、ページ内で全て丁寧に解説されており、縦のスクロール量が長い印象があります。

後者のランディングページにおいても、サイドにフローティングメニューとして問い合わせボタンが設置してあったり、ファーストビュー部分、もしくはページの途中に埋め込みフォームがあったりという工夫が見られます。

その他の特徴

国と地域に関わらずAIを利用したチャットサービスを導入しているランディングページが複数確認できました。

またアメリカ企業のランディングページにおいては、見積もり依頼フォームページに納入実績のロゴ、受賞歴が表示されているパターンも発見しました。(フォームの離脱率を減らす対策だと考えます)

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まとめ

今回は、世界各地域のランディングページの違いを調査し、その結果を比較しました。個人的な感覚ではデザインに違いが現れるかと思いましたが、予想していたほどの違いはありませんでした。

特に中国企業のランディングページが北米・ヨーロッパ企業のデザインに近づいている印象があります。調査の結果から得られた知見を、海外向けランディングページ制作時に役立てていただければ幸いです。

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【BtoB企業】アメリカと日本のWebサイトの比較5選(デザイン・仕様の違い)

テクノポートの稲垣です。
現在「海外Webマーケティング事業」の責任者を務めています。

この記事では、アメリカ企業と日本企業のWebサイトの違いを、5つの実例を用いて紹介します。

BtoB企業の海外マーケティングならお任せください

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調査の観点

今回は主に以下の5つの観点からWebサイトの違いを調査します。

調査項目 具体的な調査内容
訴求方法 ・Webサイトがアピールする重点はどこに置かれているか?(例:製品、サービス、顧客)
・Webサイトにおける製品のアピール方法に違いはあるか?
配色 ・Webサイトのメインカラー、差し色はどうなっているか?
レイアウト・情報量 ・Webサイトに掲載されている情報量、情報のレイアウトの特徴は?
その他 ・上記以外での特徴は?

Webサイトの日米比較5選

今回はBtoB企業のWebサイトを日米の順に、業界別で紹介します。それぞれのWebサイトの特徴を上述した4つの調査項目で評価しました。

1. 半導体企業

1-1. キオクシア(日本)

参照:キオクシア株式会社 ホーム | KIOXIA – Japan (日本語)

調査項目 具体的な調査内容
訴求方法 ・シンプルで無駄のないデザイン
・テキストベースの説明(画像は必要に応じて適宜使用)
配色 ・白を基調
・メリハリのある色使い
レイアウト・情報量 ・情報が見やすくきれいに整理
・図解も使用し丁寧で分かりやすい
その他 ・法人向けと個人向けの製品でグローバルメニューを区分

1-2. intel(アメリカ)

intel

参照:Intel | Data Center Solutions, IoT, and PC Innovation

調査項目 具体的な調査内容
訴求方法 ・クールで洗練されたイメージ
・製品の高性能、高速、といった機能を数値で訴求
配色 ・青、グレー、紫、黒系の落ち着いた色
レイアウト・情報量 ・テキストは多いが長文は少なく、シンプルで読みやすい
・各製品の仕様に関する必要なデータがWeb上で可能(カタログダウンロードの必要なし)
その他 ・Webサイトを閲覧開始して数分後にWebサイト評価への協力を求めるポップアップが出現する
・製品同士の比較機能あり

2. 建設機器

2-1. 小松製作所(日本)

参照:小松製作所 – 建設機械のコマツ

調査項目 具体的な調査内容
訴求方法 ・会社のビジョン(環境保護、教育への貢献)が全面に押し出されている
配色 ・白が基調
・清潔感のある印象
レイアウト・情報量 ・字が大きくシンプルで分かりやすい
・画像も大きさに余裕を持って配置されゆとりがある
その他 ・事業内容のページ構成が全て統一されており非常に見やすい
・製品の詳細情報をクリックすると、カスタマーサポートサイトへ飛ぶ

2-2. CATERPILLAR(アメリカ)

参照:Caterpillar | Caterpillar

調査項目 具体的な調査内容
訴求方法 ・ダイナミックで力強いイメージ
・製品と同じくらい働く社員の姿が出てくる
配色 ・白が基調
・コーポレートカラーの黄色が差し色
レイアウト・情報量 ・文字は小さく画像が主体
・文字を読まなくても直感的に分かりやすいレイアウト
その他 ・製品の詳細情報をクリックすると、製品情報サイトへ飛ぶ

3. 工作機械

3-1. DMG森精機(日本)

参照:DMG MORI

調査項目 具体的な調査内容
訴求方法 ・シンプルかつ近未来的な印象
・高性能かつ最先端、というイメージが強く伝わる
配色 ・白と黒が基調
レイアウト・情報量 ・文字は小さく画像が主体
・シンプルで無駄がない
・文字を読まなくても直感的に分かりやすいレイアウト
その他 ・各製品のページ閲覧回数とお気に入り登録数が確認可能
・加工ノウハウ/ナレッジがグローバルメニューの左端に配置されている

3-2. HURCO(アメリカ)

参照:CNC Machines | Machines Tools | Hurco CNC

調査項目 具体的な調査内容
訴求方法 ・クールで重厚感のあるイメージ
配色 ・黒と水色が基調
・製品情報ページは白が基調
レイアウト・情報量 ・文字は小さく文章による説明が主体
その他 ・ページによって基調となる色が分けられている

4. 産業用ロボット

4-1. ファナック(日本)

参照:ファナック株式会社 (FANUC CORPORATION)

調査項目 具体的な調査内容
訴求方法 ・分かりやすく柔らかいイメージ
・丸みを帯びたフォント、アイコン図も使用
配色 ・黄色と白が基調
レイアウト・情報量 ・文字による説明は最小限に抑えられている
・どのページも情報が整理されており見やすく分かりやすい
その他 ・画像と同じくらい動画による説明が豊富

4-2. ABB Robotics(アメリカ)

参照:Industrial Robot Supplier and Manufacturer | ABB Robotics

調査項目 具体的な調査内容
訴求方法 ・全体にスペースにゆとりがあり優雅なイメージ
・アイコン画像が多数使用され、柔らかい印象
配色 ・白が基調
レイアウト・情報量 ・文字による説明が中心
・全体にゆとりがあるため圧迫感は感じない
その他 ・ロボットの製品情報はWebShopにて掲載

5. 医療機器

5-1. オリンパス(日本)

参照:オリンパスグループ企業情報サイト

調査項目 具体的な調査内容
訴求方法 ・清潔感がありきれいに整理されたイメージ
・安心感を与えるイメージ
配色 ・白と紫が基調
レイアウト・情報量 ・各ページがコンパクトに情報が整理されており見やすい
・文字は少なく説明がシンプルで分かりやすい
その他 ・製品情報は医療従事者向けサイトにて掲載

5-2. Johnson & Johnson(アメリカ)

参照:Homepage | Johnson & Johnson

調査項目 具体的な調査内容
訴求方法 ・情報提供がメイン(製品、サービスが全面に押し出されていない)
・顧客との関係性を大事にしているイメージが伝わる
配色 ・白が基調
レイアウト・情報量 ・情報コラムが圧倒的に多い
その他 ・一般の消費者にも役に立つ情報が豊富

番外編

今回調べた日本企業の中でも、アメリカ法人と日本法人のWebサイトに別々のデザインを導入している企業を2社紹介します。

DMG MORI(アメリカ)

参照:DMG MORI USA – CNC machine tools for all cutting machining applications

日本法人Webサイトとの違い

  • 画像が大胆に配置され、躍動感があるイメージ
  • 情報コラムがアクセスしやすい位置に配置され、一般の消費者も意識したレイアウトを採用
  • 各ページの情報はきれいに整理され、非常に分かりやすい

OLYMPUS America(アメリカ)

参照:Olympus Corporation of the Americas | Olympus

日本法人Webサイトとの違い

  • 画像が大胆に配置され、ダイナミックなイメージ
  • 製品よりも働く人、顧客に焦点が当たっている
  • 文字が大きくシンプルで分かりやすい

調査結果

今回の日米Webサイト比較で得られた知見をまとめます。

日本 アメリカ
訴求方法 ・清潔感がありシンプル
・情報がきれいに整理されており分かりやすい
・製品・企業が中心で、人が登場するシーンはアメリカのWebサイトに比べると少ない
・業界によって訴求の方法に特徴が出る(力強いイメージ、クールで洗練されたイメージ)
・製品に加えて、働く人、顧客の顔写真を使用するサイトが多い
配色 ・白が基調
・コーポレートカラーを差し色として使用
・白が基調
・コーポレートカラーをメインカラーとして大胆に使用するサイトもあり
レイアウト・情報量 ・文字による説明はシンプルに必要最小限に抑えられている ・直感的に分かりやすい説明と、文字による詳細な説明部分が分かれている

まとめ

今回は、アメリカのWebサイトと日本語Webサイトの違いを調査し、その結果を比較しました。個人的な感覚ではもっと違いがあるのかと思いましたが、予想していたほどの明確な特徴の違いはありませんでした。

どちらかというと、日本企業のWebサイトがアメリカのそれに近づいてきている印象があります。調査の結果から得られた知見を、外国語Webサイト制作時に役立てていただければ幸いです。

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英語SEO対策の基礎(リライトの進め方)

テクノポートの稲垣です。現在「海外Webマーケティング事業」の責任者を務めています。この記事では、英語でSEO対策を行う際の「リライト(=公開済みの記事の加筆修正)の進め方」を解説します。

全体像

目的

リライトの主な目的は「既に公開されているページの検索順位を改善する」ことです。したがって、公開したものの「思ったように順位が上がってこないページ」に対して行う施策になります。

なぜ重要か?

一般的に、公開された記事のリライトはあまり重要視されないですが、私は新規のページを公開することと同じくらい価値のある作業だと考えます。

理由は、新規のページを作成するよりも少ない手間で大きな効果が見込めるためです。言い換えると、新規ページを作成し今まで全く対策してこなかったキーワードで上位表示を狙うより、現在ある程度の検索順位に表示されているページに加筆修正を加える方が、手間が少なく、成果が出やすいということです。これは日本語、英語変わらずです。

リライトするかどうかの判断

リライトをするかしないかの判断基準としては、以下のような状況が挙がられます。

  • 検索順位が10位以下が1ヶ月以上続いている
  • ページを公開(=インデックス登録)してから3ヶ月が経過している
  • (検索順位の下降により)オーガニック検索による流入が前月比で1,000件以上減少している
  • キーワードの月平均検索ボリュームが100以上(複数キーワードからリライトするページを選定する場合)

このような基準を設けることで、リライトをするかどうかの判断を迷わず行うことができます。

検索順位が上がらない要因

先にも述べた通り、リライトの主な目的は「検索順位の改善」です。(CTR(=ページのクリック率改善)、CVR(=問い合わせ率)の改善を目的にリライトを行う場合もありますが、この記事での説明は行いません)

すなわち、リライトとは検索順位が上がらない原因を特定し、必要な改善を加えること、とも言えます。したがって、適切なリライトを行うためには、検索順位が上がらない要因を知っておく必要があります。

結論、検索順位が上がらない要因は大きく以下の2つです。

  1. 検索需要に応えていない
  2. 発信者の権威性が足りない

順番に解説します。また最後には、英語サイト特有の検索順位が上がらない要因も解説しています。

1. 検索需要に応えていない

真っ先に考えられる原因はこれです。「検索需要」とは、キーワードを検索するユーザーが「検索結果に求める情報」のことを指します。

例えば「沖縄 4月」と検索するユーザーの検索需要は、以下のようなものが予想されます。

  • 4月の沖縄の気温が知りたい
  • 4月に沖縄を旅行するので、適切な服装が知りたい
  • 4月に沖縄を旅行するので、季節ならではの楽しみ方を知りたい
  • 4月に沖縄を旅行するので、飛行機のチケットを取りたい

実際に検索すると、上記のような検索需要を満たすためのページが検索結果の1ページに表示されています。(検索結果はこちら

「検索需要に応えていない」という言葉には、以下のようなパターンがあります。

1-1. そもそも言及がない

検索需要が予想できたとして、その検索需要に応えるための情報がそもそも記載されていないパターンです。

この場合の改善方法はシンプルで、検索需要に応えるための情報を載せましょう。基本的には、ページの構成を作成する際に、検索需要を列挙しておき、ページ公開時に言及しきれていない情報があれば載せる、という流れで進めましょう。

1-2. 既に言及されている

検索需要に応えるための情報は載せてあるが、既に検索結果の上位サイトで同じような言及がされている場合です。

この場合、既に検索結果の上位サイトが検索需要を満たしている状態です。すなわち、Googleからすると、上位サイトと同じ情報のみが掲載されている貴社のページを検索上位に表示させる理由がない、といった状態です。

この場合の解決策は、上位表示のサイトが満たしていない検索需要を満たしにいくことです。端的に言うと、貴社のページ独自の価値をユーザーに提供することです。

独自の価値と言っても、検索ユーザーが望んでいない情報を追加しても効果はありません。そのため、検索ユーザーの心理状況に対する仮説を立てて検証する、といった地道な改善活動が必要です。

1-3. 言及はあるが価値がない

検索需要に応えるための情報自体は記載されているが、需要に応えるために十分な情報がないパターンです。

例えば、1つの疑問に対して、数行のみの説明をしているページと、具体例、図解、ステップ毎の解説、など工夫を凝らして説明をしているページとでは、後者の方がより検索者の需要が満たされやすいと言えます。

また、定期的にデータを更新する必要があるページに関しては、「情報が古い」と言った要因も当てはまります。

この場合の解決策は、既にある情報を更新することです。例えば、説明に図解を加える、最新情報に更新する、が改善手法として考えられます。

2. 発信者の権威性が足りない

検索順位が上がらないもう一つの大きな要因として、情報発信者の権威性(信頼性)が挙げられます。

ここでいう「権威性」とは、ページに記載されている情報の確実性、発信内容が信頼できるかどうか、を表す指標とも言えます。

近年Googleをはじめとする検索エンジンでは、この「権威性」を検索順位を決定する要因として重要視する傾向が強まっています。(以下は、Googleのページ品質評価者が「権威性」を重視している、と明文化されている箇所です)

品質評価者は、Google が E-A-T と呼ぶ基準をコンテンツが満たしているかを判断するために特別な訓練を受けています。この基準は「Expertise(専門性)」「Authoritativeness(権威性)」「Trustworthiness(信頼性)」を意味します。ガイドラインを確認することで、E-A-T の観点からコンテンツを評価して、検討すべき改善点を見つけられるかもしれません。

出典
Google のコア アップデートについてサイト所有者が知っておくべきこと  |  Google 検索セントラル ブログ  |  Google Developers

権威性には、以下の2種類があります。

  • 2-1. サイト単位の権威性
  • 2-2. ページ単位の権威性

順に解説します。

2-1. サイト単位の権威性

サイト単位の権威性とは、ページを公開しているサイトの権威性のことです。

例えば、全く同じ内容を記載しているページが2種類あり、1つは一般の方が運営するブログサイト、もう1つは、政府機関のWebサイトで公開されているとします。その場合、圧倒的に後者の方が検索結果の上位に表示されやすいと言えます。

なぜなら、政府機関のWebサイトはサイト自体の権威性が高く、サイト内に記載されている情報は信頼できる可能性が高いためです。すなわち、どれだけ検索需要を満たす記事を書いても、サイトの信頼性がない状態では、検索結果の上位に表示される難度は上がります。

サイトの権威性は、私の知る限り以下のような要因によって決定されます。

  • 被リンクの質(権威性の高いサイトから被リンクを受けているか)
  • 被リンクの関連性(同じ専門領域の他社サイトから被リンクを受けているか)
  • 被リンクの数(他社サイトから十分な数の被リンクを受けているか)
  • ドメインの種類(信頼できるドメインが使用されているか)

2-2. ページ単位の権威性

ページ自体の権威性のことです。

例えば、全く同じ内容を記載しているページが2種類あり、1つは一般の方が書くブログページ、もう1つは、法律の専門家が執筆、監修を行ったページだとします。その場合、やはり後者の方が検索結果の上位に表示されやすいと言えます。

理由は先ほどと同じく、後者のページの方が、ページ内に記載されている情報の正確性が担保されていると言えるためです。

これらの改善方法は、後半で解説します。

サイトの権威性、ページの権威性は、以下のようなサイトにて数値化することができます。
Free Domain Analysis SEO Tool | Domain Authority Checker – Moz

3. 英語サイト特有の要因

英語サイト特有の検索順位が上がらない要因を2つ紹介します。

3-1. ドメインの種類

英語サイトを作成し、海外向けにSEO対策を行う場合には、サイトのドメインの種類が検索結果に影響を与えます。例えば、日本企業のWebサイトで一般的に使用されている「.co.jp」ドメインは、日本国内の検索結果では上位に表示されやすいですが、国外では上位に表示されにくい特徴があります。海外SEO対策を行う場合は、ターゲットとする国と地域の種類に従って、適切なドメインを選定することが必要です。

詳しくは以下の記事で解説しています。

3-2. 表示速度

英語サイトを制作し、海外向けにサイトを公開する場合、海外からアクセスされた際の表示速度を考慮する必要があります。これは国内も同様ですが、海外の場合、地域によってサイトの表示速度が変わる可能性もあります。したがって、先のドメイン同様に対象とする地域に合わせて適切なサーバーを選択し、表示速度を改善することが求められます。

詳しくは以下の記事で解説しています。

英語ページのリライトの進め方

それでは、本題の英語SEO対策におけるリライトの進め方を解説します。

大きく以下の4つのステップで行います。

  1. 検索順位を確認
  2. 検索順位が上がらない原因を推測
  3. 解決施策を立案・実行
  4. 再び検索順位を計測

順番に解説します。英語SEO対策を行う上で注意するべきことを、重点的に解説しています。

1. 検索順位を確認

まず、現在SEO対策を行っているキーワードにおける、自社サイトの検索順位を確認します。英語サイトを使用した海外SEO対策の場合、海外の検索順位を取得する必要があるため、国ごとの検索順位が取れるツールを使用します。私はUbersuggestというツールを使用し、国ごとの検索順位を追跡しています。

Google公式の「Google Search Console」というツールも、対象の国でフィルターをかけることで、国別の検索順位を把握することができます。

まずこの工程で、対象のページにリライトを行う必要があるのかを判断します。仮に検索順位が上がっていない場合、次のステップに進みます。

2. 検索順位が上がらない原因を推測

検索順位を確認した結果、検索順位が上がっていない場合、原因を推測します。この記事の前半部分の解説した要因の中から、特に検索順位に与える影響が大きく、かつ改善活動が実行しやすい原因を優先的に改善します。英語SEO対策においては、国内以上に原因の候補が増えるため、検索順位の改善活動は難しいです。したがって根気強く、一つ一つ原因に対処していく姿勢が求められます。

また、狙っているキーワード自体が英語SEO対策に適していない可能性もあります。例えば、先ほど紹介した「E-A-T」が重視される分野においては、信頼のおける期間が運営するWebサイトではないと、そもそも上位表示が難しい可能性もあります。

したがって、英語SEO対策を行うキーワードで、自社のサイトで上位に表示される可能性があるのかを見極め、可能性が低いと判断した場合は、キーワードを変えるという施策も必要です。

3. 解決策を立案・実行

先のステップで推測した、検索順位が上がらない要因を改善するための解決策を考えます。

要因の種類 要因 考えられる解決策
検索需要 言及がない ・検索需要を洗い出し、ページに足りない情報を追記する
・足りない内容を補足するための記事リンクを設置する
他社サイトで言及済み ・ページ独自の価値になる情報を追記する
・他社サイトで言及のある内容に、新しい知見、データを追記する
言及はあるが価値がない ・既存ページのコンテンツの説明を工夫する
・ページ内の情報を最新のものに更新する
権威性 サイト単位の権威性 ・サイト全体に対する被リンクを増やすための活動を行う
ページ単位の権威性 ・ページに対する被リンクを増やすための活動を行う
・ページ内に監修者が分かるような記載を加える
英語サイト特有 ドメインの種類 ・国内企業ドメイン「.co.jp」からグローバルドメイン(例:.com)、現地企業ドメイン(例:.co.us)に切り替える
表示速度(国別) ・対象地域に設置されているレンタルサーバーを使用する
・クラウドサーバーを使用し、地域設定を変更する

補足

  • 被リンクの獲得方法については、後日詳細を別記事で解説予定です。
  • 表示速度については、サーバーだけの問題ではなく、サイト内のコーディングにも影響を受けます。各国からの表示速度を測定し、特定の国からの表示速度のみ遅い場合は、上記の改善施策が有効です。

4. 再び検索順位を計測

施策の実行まで行った後は、再度検索順位を測定します。

通常、1ヶ月もあればリライトの結果が検索順位に反映され、再び順位が動かなくなります。ここで検索順位の改善が見られない場合、再び1のステップに立ち返り、改善施策を実行する、という形で一つ一つ原因を潰していきます。

まとめ

英語SEO対策における、リライトの進め方を解説しました。英語SEO対策における特有の原因として、ドメインの種類、国別のサイトの表示速度を紹介しました。

今後の記事でも、海外SEO対策に役立つ情報を発信する予定です。海外SEO対策を任せられる業者をお探しでしたら、お気軽にテクノポート株式会社にお声がけいただければ嬉しく思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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英語SEO対策の基礎(英語キーワード選定方法・注意点)

テクノポートの稲垣です。現在「海外Webマーケティング事業」の責任者を務めています。

この記事では、英語でSEO対策を行う際の「キーワード選定の方法」を解説します。

全体像

基本的に、キーワード選定の流れは日本語も英語も同じです。ただ、海外SEO対策を行う場合、国内の日本語SEO対策とは異なる点が出てきます。

今回は、海外SEO対策を行う上で必要な作業の部分を中心に、4つのステップに分けて、キーワード選定の方法を解説します。

英語キーワード選定の進め方

STEP 1 目的を整理する

まず、SEO対策を行う目的を整理しましょう。ここで言う「目的」とは、SEO対策を行うこと自体の目的(=Webサイトへの集客)ではなく「マーケティング施策全体の中でのSEO対策が担う役割を整理する」というイメージです。

ここで設定した目的、およびSEO対策が担う役割が後々のキーワード選定の方向性を決定するため、重要な作業になります。SEO対策が担う役割を決める際は、以下の質問に答える形で設定するとよいと思います。

  • What:どんな製品・サービスを
  • Where:どの地域の
  • Who:どの顧客に
  • What Goal:どうしたいのか(拡販 or 認知拡大)

数あるマーケティング施策の中で、SEO対策という手法が選べている時点で「Why:なぜSEO対策か?」「How:どのような手法を選ぶか?」に対する疑問は整理されているため、ここでは上記の項目のみを明確にします。

例えば、以下のようなイメージです。

  • What:三次元測定機
  • Where:北米
  • Who:複雑形状の部品の検査を行う技術者
  • What Goal:製品の拡販

STEP 2 検索ユーザーの興味・関心を洗い出す

次に、キーワードを抜け漏れなく洗い出すための「切り口」を決定します。

ポイントは「抜け漏れなく」という部分です。キーワードを洗い出す際は、思いつくキーワードを片っ端からメモする、という方法もあります。この方法は手軽に始めることができる上に、それなりにキーワードが洗い出せるため悪くない方法だと言えます。ただ、本当に抜け漏れなくキーワードを洗い出せたのか、確認することができません。

そのため、キーワードを洗い出す際は、フレームワークを使うことをおすすめします。「フレームワーク」というのは、キーワードを洗い出す際に使用する「型」のようなものです。この「型」を使用することで、洗い出したキーワードに抜け漏れがないか、確認することができます。

ここでは例として、「ユーザーが製品を購入するに至るまでの流れ」という切り口からキーワードを洗い出します。例えば、部品の検査に用いられる「三次元測定機」と呼ばれる自動検査装置の導入を考えているユーザーの場合、以下の1〜3の購買の流れをたどることが予想されます。

No. 段階 興味・関心の例
1 技術課題の解決方法調査 ・複雑な形状の部品を高精度に自動で測れる機械はないのか?
・真円度を精度良く自動測定できる機械はないのか?
2 技術課題を解決できる製品の調査 ・三次元測定機はどのような機械?
・導入においてどんなメリット、デメリットがあるのか?
3 製品の比較検討 ・三次元測定機を扱っているメーカーは?
・それぞれの製品の特徴・違いは?

このように、検索ユーザーが抱える課題、興味・関心をフレームワークを使って洗い出します。

「製品」に関わるキーワードを洗い出す際のフレームワークは、以下の記事で詳しく解説されています。

「技術」に関わるキーワードを洗い出す際のフレームワークは、以下の記事で詳しく解説されています。

STEP 3 キーワードを洗い出す

次に、先のステップで洗い出したユーザーの興味・関心をもとに、彼らが検索時に使用するであろう検索キーワードを洗い出します。先と同じ例を使うと、以下のようになります。(「三次元測定機」は英語で”CMM(=Coordinate Measuring Machines)”と呼ばれます)

No. 興味・関心の例 検索キーワード
1 ・複雑な形状の部品を高精度に自動で測れる機械はないのか?
・真円度を精度良く自動測定できる機械はないのか?
・measure of shape, high precision measurement
・measure circularity
2 ・三次元測定機はどのような機械?
・導入においてどんなメリット、デメリットがあるのか?
・what is cmm
・advantages of cmm
3 ・三次元測定機を扱っているメーカーは?
・それぞれの製品の特徴・違いは?
・cmm manufacturers
・types of cmm, cmm price

この時「月平均検索ボリューム(当該のキーワードが月平均検索されている回数)」の大きさもメモしておきましょう。

月平均検索ボリュームは、以下の記事で紹介しているツールを使用することで、対象の地域を絞り込んだ結果も表示できます。

そのため、対象の地域が明確な場合は、その地域における英語キーワードの月平均検索ボリュームを調べましょう。

英語ならではの注意点

英語キーワードの洗い出しでは「海外で実際にどのようなキーワードが使用されているのか」を探し当てることが重要です。すなわち、日本語キーワードをそのまま英語訳したキーワードが、海外で一般的に用いられている表現だとは限らない、ということです。

そのため、英語キーワードの洗い出し作業を行う際は、日本語キーワードよりも「類語、言い換え、関連語、別の呼び方」を入念に調べる必要があります。

例えば、先の例で挙げた「三次元測定機」の英語圏での一般的な名称を調査する場合を考えます。私の場合、まずシンプルに「三次元測定機」の訳になりそうな英語を考えます。三次元=3d、測定機=measuring machines、なので「3d measuring machines」というキーワードが思いつきます。この段階では、機械翻訳を使用しても構いません。

次に、思いついた(or 機械翻訳した)キーワードを、キーワード調査ツール(例:Googleキーワードプランナー)に入力し、月平均検索ボリュームを調べます。この際、地域設定は指定なしで構いません。結果が出てきたら、キーワードと検索ボリュームをメモします。

次にメモをしたキーワードに、別の表現がないかを調査します。私の場合、まず自分で思いついたキーワードをアメリカのGoogleで検索します。(アメリカのGoogleはこちらのサイトからアクセスできます)

その際、検索キーワードが大きく間違っていなければ、イメージに近いサイトが複数見つかると思います。(実際の検索結果が以下になります)

検索結果を眺めてみると、どうやら”CMM(=Coordinate Measuring Machines)”という名称が一般的に使用されていそうだ、ということがわかります。試しに、1位のサイトを「Ubersuggest」というキーワード調査ツールを使って調査します。このツールを使うことで、当該のサイト(ページ)が上位にランクインしているキーワード一覧を調査することができます。

結果がこちらです。(アメリカの検索順位、検索ボリュームを検索ボリュームが多い順に表示、簡略化のため上位20位までを表示)

No キーワード 検索ボリューム 検索順位
1 cmm 27,100 2
2 cmm machine 3,600 1
3 coordinate measuring machine 1,000 2
4 cmm measurement 480 2
5 cmm m 480 15
6 cmm inspection 480 21
7 what is cmm 390 15
8 mitutoyo cmm 320 1
9 what is a cmm 260 68
10 measuring machine 210 1
11 portable cmm 210 53
12 what is a cmm machine 170 8
13 cmm measuring machine 110 1
14 cmm coordinate measuring machine 110 3
15 cmm for sale 110 20
16 cmm machine price 110 16
17 cmm manufacturers 110 21
18 portable cmm machines 110 24
19 cmm industries 110 56
20 cmm tool 90 1

この表を見ると「三次元測定機」は、”Coordinate Measuring Machines”(月平均検索ボリューム:1,000)というキーワードが、”3D Measuring Machines”(月平均検索ボリューム:20)よりも一般的に使用されているキーワードである、ということが定量的にわかります。この例は、検索ボリュームも大きくかなりわかりやすいですが、検索ボリュームが小さいニッチな製品に関しても、同様の手順が使えます。

英語は、日本語に比べて話者が多く、同じラテン語起源の言語(例:フランス語、スペイン語、イタリア語)由来の類語もたくさん存在するため、一般的に特定の製品の呼び方は日本語のそれよりも多くあります。また地域(例:アメリカとイギリス)によって呼び方が異なるキーワードも存在するため、上記のような調査作業が重要です。

STEP 4 キーワードを選定する

最後に、洗い出したキーワードからSEO対策を行うキーワードを選定します。

選定は以下の流れで行います。

  1. 「選定基準」を設ける
  2. キーワードを絞り込む

順に解説します。

1.「選定基準」を設ける

まず洗い出したキーワードを選ぶための選定基準を設定します。ここで、STEP1で策定したSEO対策の目的を使用します。

例えば、三次元測定機の例を使用すると、以下のような選定基準が考えられます。

  1. 対象の地域(北米)の検索ボリュームは十分存在するか?(需要はあるか?)
  2. 部品の検査を行う技術者が使うキーワードか?(ターゲットは的確か?、BtoC向けの検索結果ばかり表示されないか?)
  3. 製品の導入に関心のあるユーザーが使うキーワードか?(SEO対策の目的とユーザーの興味・関心は関連性が高いか?)

2. キーワードを絞り込む

最後に、選定基準をもとに洗い出したキーワードを絞り込みます。

上記の例の場合、まず1の選定基準でキーワードを絞り込みます。例えば、対象地域からの検索ボリュームの合計が50以上、というイメージです。この選定基準は、明確かつ絞り込みが容易であるため、最初に行います。

次に、2と3の選定基準でさらにキーワードを絞り込みます。この工程は、最も手間がかかる上に明確な選定基準がないため、選定作業に経験とセンスが求められます。

以上がキーワード選定の流れです。この後、SEO対策の方向性を決めて実際にページの作成に移ります。詳細は別記事で解説予定です。

まとめ

英語SEO対策における、キーワード選定の流れを解説しました。国内のSEO対策時との大きな違いは、ターゲット地域を定める必要があること、海外で実際に使われている表現を調べる必要があることだと思います。

今後の記事でも、海外SEO対策に役立つ情報を発信する予定です。海外SEO対策を任せられる業者をお探しでしたら、お気軽にテクノポート株式会社にお声がけいただければ嬉しく思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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【実験】サーバーの設置場所・種類がWebサイトの表示速度に与える影響

テクノポートの稲垣です。現在「海外Webマーケティング事業」の責任者を務めています。

英語サイトのサーバー選定を行う上で、個人的に気になっていることを調査しました。

背景

英語サイトを活用して、本格的に海外Webマーケティングを進める際「どのサーバーを選べばいいのかわからない」という疑問が生じると思います。

今回はその疑問に答えを導き出すための実験を行いました。

実験の目的

実験の目的は以下の2つです。

  1. 「サーバーの設置場所」がWebサイトの表示速度に与える影響を調査する
  2. 「サーバーの種類・性能」がWebサイトの表示速度に与える影響を調査する

仮説

今回の記事で検証する仮説は以下の2つです。

  1. サーバーの設置場所とWebサイトの表示場所までの直線距離が近ければ近いほど、Webサイトの表示速度は速くなる(逆も然り)
  2. 国内の共有サーバーに比べて、海外企業が運営するクラウドサーバーのほうが、海外からのWebサイトの表示が早い

実験条件

実験条件を以下にまとめます。

表示速度測定に使用するWebサイト

サイト名 使用しているサーバー プラン サーバー設置場所(インスタンスの位置)
サイトA(日本語サイト) エックスサーバー スタンダード Tokyo, Japan
サイトA(英語サイト) AWS Amazon Lightsail Tokyo, Japan
サイトB(日本語サイト) シン・レンタルサーバー ベーシック Tokyo, Japan
サイトB(英語サイト) AWS Amazon Lightsail Ohaio, USA

補足

  • AWS(Amazon Web Servervices)とは、Amazonが運営するクラウドサーバーサービス
  • 「サーバーの設置場所(インスタンスの位置)」とは、共有サーバー(エックスサーバー、シン・レンタルサーバー)の場合、サーバーのデータセンターが設置されていると思われる場所(国内であることは確かだが、正確な位置は不明)
  • 「サーバーの設置場所(インスタンスの位置)」とは、AWSの場合、インスタンスを起動する「リージョン」のこと(共有サーバーのデータセンターの設置場所と同じような概念)
  • サーバーの契約プランは、それぞれのWebサーバーの最安のもの

表示速度測定ツール、測定項目

表示速度測定ツールには、世界各国からのWebサイトの表示速度を測定できる「WebPageTest」というサイトを使用しました。測定項目は以下の通りです。

項目名 説明
First Byte 表示リクエストの送信後、サーバーから最初の1ビットのデータを送り返すのにかかる時間
Start Render 空白ページから、コンテンツが初めて表示されるまでの時間
FCP(First Contentful Paint) ページの読み込みが開始されてからページ内のコンテンツのいずれかの部分が画面上にレンダリングされるまでの時間
Speed Index ページのファーストビューが見えるまでにかかった時間
LCP(Largest Content Paint) ページの重要なコンテンツが表示されるまでにかかった時間
CLS(Cumulative Layout Shift) 表示されるページコンテンツにおける予期しないレイアウトのずれの量
TBT(Total Blocking Time) タスクの処理時間が50ミリ秒を上回った場合の、コンテンツの初回描画から操作可能になるまでの合計時間
Total Bytes ページの表示に要したデータ量

参照

実験方法

サイトAおよびサイトBを以下の2つの条件で測定し、結果を比較します。

実験1:「サーバーの設置場所」が表示速度に与える影響

サイトA(英語サイト、AWSのインスタンス:Tokyo)および、サイトB(英語サイト、AWSのインスタンス:Ohaio)を、世界6都市から測定する。

実験2:「サーバーの種類」がWebサイトの表示速度に与える影響

サイトA(日本語サイト、エックスサーバー)および、サイトA(英語サイト、AWSのインスタンス:Tokyo)を、世界6都市から測定し比較する。

結果

実験1:「サーバーの設置場所」が表示速度に与える影響

実験1の結果は以下の通りです。

測定に使用したWebサイト1

サイトA(日本語サイト、エックスサーバー:Tokyo)

測定結果

測定場所 直線距離, km First Byte Start Render FCP Speed Index LCP CLS TBT Total Bytes
Tokyo 0.00 0.386 1.6 1.385 5.969 2.047 0.002 0.023 5,819
Sydney 7,881.56 0.892 2.2 2.136 7.155 2.299 0.002 0.009 5,819
London 9,569.05 1.502 2.9 2.746 7.489 3.005 0.001 0.025 5,819
Virginia 10,985.66 1.502 2.9 2.746 7.489 3.005 0.001 0.025 5,819
Cape Town 14,726.41 1.732 3.4 3.22 8.245 3.484 0.002 0.024 5,819
Sao Paulo 18,490.40 1.593 3.2 2.986 7.657 3.255 0.001 0 5,819
直線距離との相関係数 0.90 0.92 0.92 0.88 0.89 -0.47 -0.45

測定に使用したWebサイト2

サイトA(英語サイト、AWSのインスタンス:Tokyo)

測定結果

測定場所 直線距離, km First Byte Start Render FCP Speed Index LCP CLS TBT Total Bytes
Tokyo 0.00 0.295 1.4 1.28 6.59 2.038 0.003 ≥ .017 5,398KB
Sydney 7,881.56 0.773 1.9 1.816 5.283 2.1 0.003 0 5,398KB
London 9,569.05 1.081 2.6 2.487 6.206 2.627 0.119 0.032 5,398KB
Virginia 10,985.66 0.926 2.1 2.04 5.679 2.341 0.109 ≥ .003 5,445KB
Cape Town 14,726.41 1.321 3.2 3.109 6.682 3.169 0.028 0 5,398KB
Sao Paulo 18,490.40 1.299 3 2.874 6.197 2.971 0.078 ≥ .030 5,398KB
直線距離との相関係数 0.95 0.90 0.91 0.00 0.84 0.44 -0.28 0.06

測定に使用したWebサイト3

サイトB(日本語サイト、シン・レンタルサーバー:Tokyo)

測定結果

測定場所 直線距離, km First Byte Start Render FCP Speed Index LCP CLS TBT Total Bytes
Tokyo 0.00 0.22 1.1 0.927 6.297 9.644 0.778 0.196 5,118
Sydney 7,881.56 0.982 1.8 1.7 7.809 10.602 0.778 0.136 5,148
London 9,569.05 1.785 2.9 2.805 8.551 11.832 0.778 0.098 5,141
Virginia 10,985.66 1.21 2 1.944 7.76 11.218 0.003 0.163 5,224
Cape Town 14,726.41 3.217 4.7 4.652 11.459 14.323 0.775 0.107 5,145
Sao Paulo 18,490.40 1.597 2.8 2.725 9.416 12.178 0.778 0.374 5,148
直線距離との相関係数 0.71 0.70 0.71 0.80 0.77 -0.06 0.39 0.31

測定に使用したWebサイト4

サイトB(英語サイト、AWSのインスタンス:Ohaio)

測定結果

測定場所 直線距離, km First Byte Start Render FCP Speed Index LCP CLS TBT Total Bytes
Virginia 419.52 0.589 1.3 1.229 6.407 10.465 0.782 0.139 6,580
London 6,140.33 0.788 1.7 1.667 7.151 11.771 0.782 0.169 6,483
Sao Paulo 8,074.70 0.996 2.2 2.101 7.534 11.49 0.776 0.401 6,481
Tokyo 10,481.26 0.643 1.7 1.629 7.139 11.407 0.782 0.156 6,481
Cape Town 13,259.58 0.963 2.2 2.21 8.343 12.833 0.779 0.118 6,525
Sydney 15,187.03 1.078 2.2 2.201 8.245 12.296 0.779 0.128 6,481
直線距離との相関係数 0.73 0.83 0.86 0.92 0.87 -0.41 -0.15 -0.61

実験2:「サーバーの種類」がWebサイトの表示速度に与える影響

測定に使用したWebサイト

  • サイトA(日本語サイト、エックスサーバー:Tokyo)
  • サイトA(英語サイト、AWSのインスタンス:Tokyo)

測定結果(英語サイトの表示時間 – 日本語サイトの表示時間)

測定場所 直線距離, km First Byte Start Render FCP Speed Index LCP CLS TBT Total Bytes
Tokyo 0.00 -0.091 -0.2 -0.105 0.621 -0.009 0.001 -421
Sydney 7,881.56 -0.119 -0.3 -0.32 -1.872 -0.199 0.001 -0.009 -421
London 9,569.05 -0.421 -0.3 -0.259 -1.283 -0.378 0.118 0.007 -421
Virginia 10,985.66 -0.576 -0.8 -0.706 -1.81 -0.664 0.108 -374
Cape Town 14,726.41 -0.411 -0.2 -0.111 -1.563 -0.315 0.026 -0.024 -421
Sao Paulo 18,490.40 -0.294 -0.2 -0.112 -1.46 -0.284 0.077 -421
平均値 -0.319 -0.333 -0.269 -1.228 -0.308 0.055 -413.167
直線距離との相関係数 -0.53 -0.02 0.02 -0.72 -0.49 0.44 0.06

数字が負の値になっている場合、英語サイト(AWS)の表示速度が、日本語サイト(エックスサーバー)の表示速度より早いことを意味します。

考察

実験1:「サーバーの設置場所」が表示速度に与える影響

サーバーの設置場所と表示速度には、それぞれ以下の関係があると思われます。

項目名 サーバーの設置場所がWebページの表示速度に与える影響
First Byte サーバーの設置場所に大きく依存する(直線距離が近ければ表示速度が早くなる)
Start Render サーバーの設置場所に大きく依存する(直線距離が近ければ表示速度が早くなる)
FCP(First Contentful Paint) サーバーの設置場所に大きく依存する(直線距離が近ければ表示速度が早くなる)
Speed Index サーバーの設置場所に大きく依存する(※AWSのインスタンスがTokyoであるサイトに関しては相関関係が見られない)
LCP(Largest Content Paint) サーバーの設置場所に大きく依存する(直線距離が近ければ表示速度が早くなる)
CLS(Cumulative Layout Shift) サーバーの設置場所に依存しない(直線距離と表示速度に相関は見られない)
TBT(Total Blocking Time) サーバーの設置場所に依存しない(直線距離と表示速度に相関は見られない)
Total Bytes サーバーの設置場所に依存しない(直線距離と表示速度に相関は見られない)

Speed Indexの秒数を除いて、ページの表示速度はWebサーバーの設置場所との直線距離に相関があることがわかります。

実験2:「サーバーの種類」が表示速度に与える影響

サーバーの種類と表示速度には、以下の関係があると思われます。

  • AWSのインスタンスをTokyoに設置した場合、エックスサーバー(Tokyo)よりもWebサイトの表示速度は速くなる(特にSpeedIndexは直線距離が長くなるほど、表示速度の差が大きくなる)
  • 全世界向け英語サイトのサーバーには、国内の共有サーバーよりクラウドサーバーのほうが表示速度が早い可能性が高い(最安プランで比較した場合)

まとめ

英語サイトのサーバーを選定する際に考慮するべき、サーバーの設置場所と種類が、Webサイトの表示速度に与える影響を調査しました。結果を以下にまとめます。

  • Webサイトの表示速度は、サーバーの設置場所からの直線距離に大きく依存する(First Byte、Start Render、FCP(First Contentful Paint)、Speed Index、LCP(Largest Content Paint)は特に大きな影響を受ける)
  • 同じ場所にサーバーが設置されている国内の共有サーバーとAWSクラウドサーバーの最安プランでの表示速度を比較した場合、クラウドサーバーのほうが全ての地域においてWebサイトの表示速度が早い

以上、英語サイトのサーバー選定の参考になれば幸いです。まだまだ調査するべき項目(例:クラウドサーバー vs 海外現地サーバー、クラウドサーバーのインスタンス設置場所による表示速度の違い)はありますので、引き続き調査を行います。

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海外の検索エンジン(世界シェア、国内シェア、地域別、国別)

テクノポートの稲垣です。今回は、世界の検索エンジンを、世界シェア、国内シェア、地域別シェア、国別シェアの4つの切り口で紹介します。

世界シェア

世界全体の検索エンジンシェアTOP10を紹介します。

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

 

順位, 位 検索エンジン シェア, %
1 Google 91.95
2 bing 2.83
3 Yahoo! 1.46
4 Baidu 1.35
5 YANDEX 1.09
6 DuckDuckGo 0.64
7 Sogou 0.12
8 Naver 0.12
9 Ecosia 0.12
10 CocCoc 0.06

1位 Google(シェア91.76% )

基本情報

運営会社 Google LLC(グーグル)
本社 アメリカ(カリフォルニア州)
シェアが高い国(90%以上) ドイツ、イギリス、インド、フランス、イタリア、カナダ、オーストラリア、ブラジル、スペイン、メキシコ、インドネシア
特徴
  • シンプルな検索画面に使いやすさ
  • 独自開発した検索アルゴリズムにより、検索キーワードからユーザーが求める情報を分析し、高精度に検索結果に表示
  • 検索結果にはWebサイトだけではなく、動画(YouTube)、画像、広告などが表示

2位 Bing(シェア2.83% )

基本情報

運営会社 Microsoft(マイクロソフト)
本社 アメリカ(ワシントン州)
シェアが高い国 アメリカ(6.3%)
特徴
  • Microsoft Edgeのデフォルトの検索エンジン
  • 独自の検索アルゴリズムを採用(アメリカのYahoo!は、Bing検索アルゴリズムを使用)
  • Webサイトだけではなく、動画やショッピングなどに特化した検索が可能

参照

3位 Yahoo!(シェア1.46% )

基本情報

運営会社 Yahoo(ヤフー)
本社 アメリカ(ワシントン州)
シェアの高い国 日本(18.29%)
特徴
  • Yahoo!JapanはGoogleの検索アルゴリズムを採用
  • 国内では55歳以上の層を中心に、PCでの検索エンジンとしてのシェアが高い
  • WebサービスのほかにAOLやTechCrunchなどのメディアブランドも運営
  • トップページにさまざまなニュース速報を掲載

参照

4位 Baidu(シェア1.35% )

基本情報

運営会社 百度公司(Baidu, Inc.)
本社 中国(北京市)
シェアの高い国 中国(81.48%)
特徴
  • 中国で最大の検索エンジン
  • 検索結果に表示されるためには所定の条件を満たす必要がある(中国国内のサーバーを利用、中国語のコンテンツを実装)
  • 広告は大きく4種類存在(リスティング広告、アドネットワーク広告、インフィード広告、ブランドリンク広告)

参照

5位 Yandex(シェア1.09% )

基本情報

運営会社 Yandex(ヤンデックス)
本社 ロシア(モスクワ)
シェアの高い国 ロシア(42.67%)
特徴
  • ロシアで最大の検索エンジン
  • MatrixNet」という独自のデータ解析技術を使用した検索アルゴリズムを採用
  • ロシア語の検索に対して精度がよくロシア人ユーザーに使いやすい
  • フリーメールやオンラインストレージ、タクシー配車などさまざまなサービスを提供

参照

6位 DuckDuckGo(シェア0.64% )

基本情報

運営会社 DuckDuckGo(ダックダックゴー)
本社 アメリカ(ペンシルベニア州)
シェアの高い国 アメリカ(2.45%)
特徴 ・利用者のプライバシー保護を重要視した検索エンジン(個人情報や履歴を保存しない)
・検索エンジンに個人のデータが蓄積されないため、検索結果に過去の検索情報は影響を与えない
・検索結果画面は無限スクロール(「結果をさらに表示」をクリックすると下に伸びる仕様)

参照

7位 Sogou(シェア0.12% )

基本情報

運営会社 捜狗(Sogou Inc.)
本社 中国(北京)
シェアの高い国 中国(7.5%)
特徴
  • 中国でBaidu(シェア81.48%)の次に使われている検索エンジン
  • 検索ホーム画面から、中国で一番人気があるSNSアプリ「WeChat / 微信」の中のニュース、コンテンツ、公衆号なども検索できる
  • 「微信」をクリックしてWeChatのニュースなどを検索可能
  • 音声認識によって検索語を入力できる

参照

中国検索シェア2位の「Sogou(捜狗)」とは?~最新の中国検索エンジン市場をご紹介

8位 NAVER(シェア0.12% )

基本情報

運営会社 NAVER(ネイバー)
本社 韓国(京畿道)
シェアの高い国 韓国(17.27%)
特徴
  • 韓国で最も有名な検索エンジン
  • 掲載されているコンテンツは50近くのカテゴリーのいずれかに分類される(例:ブログ、画像)
  • 検索結果は、カテゴリーごとに3〜5個のグループ別に表示される(表示されるカテゴリーは検索者の意図を反映)
  • トップページはニュースや広告などが多く表示される

参照

韓国の検索エンジン”NAVER”徹底解説!韓国の王道WEBマーケティング|ferret

9位 Ecosia(シェア0.12% )

基本情報

運営会社 Ecosia(エコシア)
本社 ドイツ(ベルリン)
シェアの高い国 ドイツ(1.04%)
特徴
  • 広告収益の約80%を植林、森林再生活動に寄付(およそ50回の検索で1本の植林)
  • これまでに「Ecosia」経由で1億本以上の樹木が植樹された
  • 2014年にドイツ初の「Bコーポレーション」に認定(アメリカの非営利団体B Labが運営する認証制度、Bコーポレーションは、企業の透明性や環境へのインパクト等厳しい基準をクリアした企業のみ認定されるもの)

参照

10位 CocCoc(シェア0.09% )

基本情報

運営会社 Cốc Cốc(コック コック)
本社 ベトナム(ハノイ)
シェアの高い国 ベトナム(3.24%)
特徴
  • ベトナム語ユーザー向けの検索エンジン
  • 2013年にベトナム人とロシア人のエンジニアが共同でサービスを立ち上げた
  • ベトナム語の予測変換の精度が高く、ベトナム語特有の文字形式への対応能力が高い

参照

国内シェア

国内の検索エンジンシェアTOP10を紹介します。

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 76.22
2 Yahoo! 18.29
3 bing 4.99
4 DuckDuckGo 0.24
5 Baidu 0.12
6 YANDEX 0.05
7 Ecosia 0.03
8 CocCoc 0.03
9 Naver 0.01
10 Other 0.02

国内シェアの特徴

  • 世界シェアと同じくGoogleが1位(Googleのシェアはヨーロッパ諸国と比べると低い)
  • Yahoo!がシニア層を中心に高いシェアを獲得している(特に50代以上の男性の使用割合が高い)
  • 若い世代はGoogleを使用する割合が高く、今後Googleのシェアが拡大することが予想される

参照

ネット検索で Google を使う人、Yahoo! を使う人の特徴を分析してみた

地域別シェア

世界各地域の検索エンジンシェアTOP5を紹介します。

アジア

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 91.76
2 Baidu 2.94
3 YANDEX 1.59
4 Yahoo! 1.39
5 bing 1.33

特徴

  • Googleが圧倒的なシェアを獲得(人口の多いインドのシェアが高い影響が大きい)
  • 全地域の中でYANDEXのシェアが最も高い
  • 中国はアジアの人口の約34%を占めるが、Baiduが検索エンジンに占める割合はわずか3%程度

ヨーロッパ

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 92.57
2 bing 3.49
3 YANDEX 1.49
4 Yahoo! 0.95
5 DuckDuckGo 0.58

特徴

  • Googleが圧倒的なシェアを獲得
  • アジアについでYANDEXのシェアが高い

北アメリカ

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 89.07
2 bing 5.8
3 Yahoo! 2.69
4 DuckDuckGo 2.04
5 Ecosia 0.11

特徴

  • Googleが圧倒的なシェアを獲得
  • bingのシェアは全地域で最も高い
  • アメリカの企業が提供している検索エンジンが多くランクイン

南アメリカ

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 97.08
2 bing 1.82
3 Yahoo! 0.81
4 DuckDuckGo 0.12
5 Ecosia 0.07

特徴

  • 1~5位は北アメリカと同じ順位
  • Googleのシェアが全地域の中で最高

オセアニア

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 93.88
2 bing 4.05
3 DuckDuckGo 0.9
4 Yahoo! 0.84
5 Ecosia 0.18

特徴

  • Googleが圧倒的なシェアを獲得
  • bingのシェアが北アメリカに次いで2番目に高い

アフリカ

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 96.6
2 bing 2.39
3 Yahoo! 0.45
4 Petal Search 0.25
5 DuckDuckGo 0.11

特徴

  • Googleが阿藤的なシェアを獲得
  • 中国企業のHuawayが運営しているPetal Searchがランクイン

国別シェア(GDPの大きさ順)

GDPが大きい国から順に、各国の検索エンジンシェアTOP5を紹介します。(GDPは、2021年にIMF(国際通貨基金)が発表したものを参照)なお、日本はすでに紹介済みであるため、割愛しています。

アメリカ

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 87.69
2 bing 6.3
3 Yahoo! 3.14
4 DuckDuckGo 2.45
5 Ecosia 0.1

特徴

  • Googleが90%近いシェアを占める
  • 日本と比較すると、bingの使用率が6.3%と高い(日本はbingのシェアが4.99%)
  • アメリカ企業が提供する検索エンジンがTOP4を占める

中国

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Baidu 81.48
2 Sogou 7.5
3 bing 5.02
4 Google 2.47
5 Haosou 1.69

特徴

  • Baiduが圧倒的なシェアを獲得
  • TOP2は中国企業が運営の検索エンジン
  • 先進国の中でGoogleのシェアが圧倒的に低い

ドイツ

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 90.81
2 bing 5.37
3 Ecosia 1.04
4 DuckDuckGo 0.99
5 Yahoo! 0.69

特徴

  • ドイツ本社のEcosiaが3位にランクイン
  • Googleのシェアが90%以上
  • bingのシェアも他の先進国と比較すると高い

イギリス

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 92.81
2 bing 4.33
3 Yahoo! 1.51
4 DuckDuckGo 0.83
5 Ecosia 0.32

特徴

  • Googleが圧倒的なシェアを獲得
  • アメリカ企業が提供する検索エンジンがTOP4を占める

インド

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 98.75
2 bing 0.91
3 Yahoo! 0.26
4 DuckDuckGo 0.05
5 Ecosia 0.01

特徴

  • Googleが圧倒的なシェアを獲得
  • アメリカ企業が提供する検索エンジンがTOP4を占める
  • TOP5の検索エンジンはイギリスと同じ

フランス

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 91.16
2 bing 4.5
3 Yahoo! 1.25
4 Ecosia 1.06
5 Qwant 0.98

特徴

  • Googleが圧倒的なシェアを獲得
  • フランス本社のQwantがランクイン(政府機関の公式検索エンジンとして採用されている)

イタリア

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 94.97
2 bing 3.12
3 Yahoo! 1.14
4 DuckDuckGo 0.37
5 Ecosia 0.21

特徴

  • Googleが圧倒的なシェアを獲得
  • アメリカ企業が提供する検索エンジンがTOP4を占める
  • TOP5の検索エンジンはイギリス、インドと同じ

カナダ

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 91.46
2 bing 5.15
3 Yahoo! 1.7
4 DuckDuckGo 1.37
5 Ecosia 0.11

特徴

  • Googleが圧倒的なシェアを獲得
  • アメリカ企業が提供する検索エンジンがTOP4を占める
  • TOP5の検索エンジンはイギリス、インド、イタリアと同じ

韓国

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 77.52
2 Naver 17.27
3 bing 2.25
4 Daum 1.87
5 Yahoo! 0.43

特徴

  • Googleがシェア1位(ヨーロッパ諸国と比べるとシェアは低め)
  • Naverのシェアが高い(GoogleからNaverへ移行するユーザーは増加傾向)
  • 韓国の「株式会社カカオ」が運営する「Daum」がランクイン(Yahoo!と同じポータルサイト型)

ロシア

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 52.15
2 YANDEX 42.67
3 YANDEX RU 2.76
4 Mail.ru 1.17
5 bing 0.54

特徴

  • YANDEXのシェアは世界最高
  • GoogleからYANDEXへ移行するユーザーが増加傾向
  • ロシアの無料の電子メールサービスを提供するMail.ruグループが運営する検索エンジン「Mail.ru」がランクイン

オーストラリア

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 93.9
2 bing 4.07
3 DuckDuckGo 0.91
4 Yahoo! 0.8
5 Ecosia 0.19

特徴

  • Googleが圧倒的なシェアを獲得
  • アメリカ企業が提供する検索エンジンがTOP4を占める

ブラジル

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 97.17
2 bing 1.77
3 Yahoo! 0.84
4 DuckDuckGo 0.12
5 Ecosia 0.04

特徴

  • Googleが圧倒的なシェアを獲得
  • アメリカ企業が提供する検索エンジンがTOP4を占める
  • TOP5の検索エンジンはイギリス、インド、イタリア、カナダと同じ

スペイン

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 97.72
2 bing 1.4
3 Yahoo! 0.37
4 DuckDuckGo 0.36
5 Ecosia 0.08

特徴

  • Googleが圧倒的なシェアを獲得
  • アメリカ企業が提供する検索エンジンがTOP4を占める
  • TOP5の検索エンジンはイギリス、インド、イタリア、カナダ、ブラジルと同じ

メキシコ

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 94.44
2 bing 4.41
3 Yahoo! 0.66
4 DuckDuckGo 0.36
5 Ecosia 0.06

特徴

  • Googleが圧倒的なシェアを獲得
  • アメリカ企業が提供する検索エンジンがTOP4を占める
  • TOP5の検索エンジンはイギリス、インド、イタリア、カナダ、ブラジル、スペインと同じ

インドネシア

Source: StatCounter Global Stats – Search Engine Market Share

順位 検索エンジン シェア, %
1 Google 98.16
2 YANDEX 0.79
3 DuckDuckGo 0.36
4 Yahoo! 0.35
5 bing 0.24

特徴

  • Googleが圧倒的なシェアを獲得
  • アメリカ企業が提供する検索エンジンがTOP5のうち4つを占める
  • 他の先進国と比較するとYANDEXのシェアが高い

まとめ

以下に所感をまとめます。

  • 国内のシェアは、意外にもGoogleが独占している訳ではない(Yahoo!、bingの使用率が他の先進国に比べると高い)
  • Googleは、英語およびスペイン語が母国語の国おいて特にシェアが高い(例:イギリス、インド、カナダ、オーストラリア、スペイン、メキシコ)
  • 独自の検索エンジンを有しており、かつそれらの検索エンジンのシェアが高い国はアジアに多い(例:中国、韓国、ロシア、ベトナム)
  • 新時代の検索エンジンとして、プライバシー保護や環境保存といった独自の価値を提供する検索エンジンが増えてきている(Googleが苦手とする領域で攻める狙いがあるかもしれない)
  • 独自の検索エンジンがシェアを獲得する理由として、その国の言語への対応能力の高さが理由になる場合がある(例:ロシアのYANDEX、ベトナムのCocCoc)

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海外Webマーケティングの本質|基礎・進め方・成功ポイント・事例

テクノポートの稲垣です。
現在「海外Webマーケティング事業」の責任者を務めています。

この記事を一読すると「海外Webマーケティング」に必要な情報が、一通り把握できるように執筆しました。

海外Webマーケティングの基礎

「海外Webマーケティング」とは?

私は外国語W​ebサイトを活用した一連のマーケティング活動」と定義します。国内のWebマーケティングとの違いは「外国語サイトを使用する」という点です。(細かな違いは「国内のWebマーケティングとの違い」で説明しています)

そもそもの「マーケティング」「Webマーケティング」という言葉の定義については、以下の記事をご参照ください。

統計情報

海外Webマーケティングは、中小企業の販路開拓の方法として注目を集めています。

出典:2021年度|ジェトロ海外ビジネス調査 日本企業の海外事業展開に関する アンケート調査

こちらのグラフは、企業の今後3年程度の海外輸出方針に関する意識調査の結果です。2021年度の輸出方針を見ると、75.2%の企業が「さらに拡大を図る」と回答しており、過去最高の数字を記録しています。

出典:2021年度|ジェトロ海外ビジネス調査 日本企業の海外事業展開に関する アンケート調査

こちらは企業の規模別の今後3年程度の海外輸出方針の調査結果です。上のグラフが大企業、下のグラフが中小企業の輸出方針の調査結果です。ここから分かるように、中小企業で特に輸出拡大の傾向が高まっています。(2021年度で75.7%)

このような結果になった要因として、海外進出におけるデジタルの活用が挙げられています。(参照:海外事業拡大意欲は過去最低も、新規進出意欲は衰えず(世界、日本))具体的には以下のような海外販路開拓の方法です。

  • 越境ECを活用したビジネスモデルの構築
  • Zoomなどオンライン会議を活用した商談
  • リモートによる代理店の育成と販売網の強化

海外Webマーケティングもこれらの活動に密接に関わっており、中小企業の海外販路開拓の手法として注目を集めています。

国内のWebマーケティングとの違い

国内のWebマーケティングとの違いを5つ説明します。

1. 市場規模

海外Webマーケティングの最大の特徴は、ターゲットとする市場が大きいことです。例えば、英語サイトを使って全世界向けにWebマーケティングを行う場合、英語話者は日本語話者の10倍以上存在するため、単純計算で国内の10倍以上の潜在顧客を発掘できる可能性があります。

これは言い換えると、海外の競合も多く競争が激しいということでもあります。つまり対象とするターゲット市場の大きさに比例して、競争に勝ち抜く難度も高いと言えます。

2. 言語

海外Webマーケティングは外国語でWebサイトを活用するマーケティング活動であるため、言語が違います。これはWebサイトの表記そのものはもちろん、競合企業の調査時に使用する言語、問い合わせをもらって顧客とやり取りする言語、貿易の実務で使用する言語、全てが外国語になります。

特に3つ目の「海外企業とのやり取り」は、中小企業の輸出ビジネスにおける課題として挙げられることが多いです。実際に、中小企業基盤整備機構が行った調査によると「外国語や貿易実務ができる人材の確保」が輸出における課題として最も多く挙げられています。(参照:平成 28 年度中小企業海外事業 活動実態調査報告書

3. 文化

海外Webマーケティングでは、対象となる地域の文化的な違いが影響することもあります。例えば、外国語サイトのデザインは、日本企業のそれとは異なる特徴があります。一般的に外国、特に欧米企業のWebサイトのデザインは「配色」「画像と文章の配置」「顧客への訴求方法」で日本企業のそれとは異なる特徴を有していることが多いです。

詳しくは以下の記事で解説しています。

他にも宗教的な観点の違いで、問題が発生するおそれもあります。ターゲット地域が明確な場合は、十分に調査を行うことが必要です。

4. 手法

国内と海外では、使われているツールが異なることがあります。検索エンジンを例にとって考えると、2022年5月時点で国内で最も使われている検索エンジンは「Google(シェア76.39%)」です。一方で、世界最多の人口を有する中国ではGoogleではなく「Baidu(シェア84.27%)」が最も使われています。

一般的に、国内でWebマーケティングを行う場合はGoogleを中心に施策を実行することが有効です。一方で、海外Webマーケティングを行う際は、地域によってとるべき手法が異なることを考慮する必要があります。

参照

5. インターネット規制

国によってはインターネットへの接続に規制が設けられていることがあります。

代表的な例を挙げると、中国国内のサーバーを利用して情報発信を行う場合は「ICP(インターネット・コンテンツ・プロバイダー)」と呼ばれるライセンスを取得する必要があります。

これは中国政府がインターネット上での情報検閲を行っていることが関わっており、中国国外にサーバーを設置すると、中国国内ではサイトが表示されない、表示されても表示速度が非常に遅くなる、という問題が発生するおそれがあります。かなり技術的な内容ですが、国によってはこのような規制が設けられていることがあるので、注意が必要です。

海外Webマーケティングにおける課題と対策

中小企業が海外Webマーケティングに取り組む際に、直面することが予想される課題と解決策を3つ紹介します。これらの課題は、中小企業基盤整備機構の調査、および弊社のお客さまの声をもとに選定しました。

1 引き合いの獲得

海外Webマーケティングの目的である「海外のお客さまからの引き合いを獲得する」ことは、思っているより難しいです。特に、中小企業が外国語Webサイトから引き合い獲得を狙う場合は、海外の競合と比較した際の自社の製品・サービスの優位性を明確にしておく必要があります。なぜなら外国企業の立場から考えると、なるべく日本企業には仕事を依頼したくはないはずだからです。

例を用いて説明します。あるフランスの企業が仕事の発注先を探している場合を想定します。彼らの要求を満たすサービスを提供する企業が2つあり、1つはフランス国内、もう1つは遠国の日本にあると仮定します。

仮に2つの企業が全く同じ品質のサービスを同程度の価格で提供しているとします。その場合、おそらくほとんどの企業は発注先として前者のフランスの企業(同じ国内の企業)を選ぶはずです。なぜなら、遠国の日本企業に仕事を依頼するのは、貿易のやり取り、商習慣の違いの壁を乗り越える必要があり、かつ輸送中の事故のリスクをともなうためです。簡潔に言うと、デメリットが大きいです。

解決策「競争優勢性を全面的に訴求する」

したがって、海外の顧客から選ばれるためには、自社を選んでもらう理由が必要になります。言い換えると、海外のお客様が遠国の日本企業である自社に頼まなければいけない理由が必要です。わかりやすい例で言うと、海外の競合企業が解決できない課題に対して、自社の製品・サービスが解決策になる場合です。このような場合は、外国語Webサイトを活用して集客を行い、自社独自の強み、解決できる課題を全面的に訴求することで、引き合いの獲得が見込めます。

したがって、上記の競争優位性が明確でないまま、海外Webマーケティングを行っても、集客はできるが引き合いが来ない、引き合いはくるが受注に繋がらない、という課題に直面する確率が高いと言えます。マーケティングを始めるまでの戦略的な部分の話ですが、とても重要な内容なので最初に書かせていただきました。

2 貿易実務

海外企業との貿易実務を行うための「社内体制が整っていない」「詳しい人材がいない」という課題も発生します。特に中小企業の場合は、社内に貿易業務を行うための専門部署がない場合も多いため、社内の誰かを担当者として任せる必要が生じます。

また、貿易によって発生する料金を負担することが課題になる場合もあります。例えば、国内では輸送費を含めて十分利益が見込める製品が、海外への輸送になると採算が合わなくなってしまいほとんど利益が出ないことも考えられます。価格設定の工夫で解決できる場合は問題ありませんが、輸送コストが課題になり、海外からの取引獲得を諦めなければならない場合もあります。

解決策「外部の支援機関を活用する」

貿易の問題を一番手っ取り早く解決する方法は、外部の支援機関を活用する方法です。海外の貿易実務であれば、ジェトロをはじめ多数の企業が中小企業向けに支援を行っています。これらの企業を活用し専門家から助言をもらいながら、進めていく方法が確実かつ手間のかからない方法だと思います。

コスト面で上記の方法が難しい場合は、自社で全て行うことも方法の一つです。貿易実務を学習する手間と人件費はかかりますが、その分自社にノウハウが蓄積するというプラスの側面もあります。

3 現地の顧客対応

引き合いを獲得し、無事に貿易実務まで終えた後に発生する最後の課題が「現地の顧客対応」です。例えば、海外の企業に製品・部品を納品する場合、現地の顧客から以下のような注文を受ける可能性があります。

  • 製品が故障したため直してほしい
  • 不良品が混じっていたため交換してほしい
  • 製品の使い方がわからないためデモを行ってほしい

全て国内の顧客であればそれほど大きな問題にならないことがほとんどですが、言語も違えば国も違う海外のお客様となると話は別です。中小企業で現地法人があり、そこで対処できる場合は問題ありません。しかし、現地に拠点がない場合はこれらの問題の解決が難しい場合もあります。

解決策「オンライン会議を活用する」

現地法人も海外の代理店もない地域のお客様対応の方法として「オンライン会議を活用する」方法があります。例えば、先の課題の中でも3つ目の「製品の使い方を説明する」ような場合は、日本と海外でオンライン会議を行い、実際に製品を見せながら顧客側で操作を行なってもらうことで、使い方の伝達が可能な場合もあります。

もちろんこの方法が全ての顧客対応で有効とは限らないため、どうしても現地での対応が必要な場合は、現地に代理店、パートナー企業に対応を依頼することが必要になります。

海外Webマーケティングの進め方

海外Webマーケティングの進め方を5つのステップで解説します。国内のWebマーケティングとは別で考える必要がある内容を厚めに解説しています。

STEP-1 目的設定

海外Webマーケティングに取り組む目的を整理します。海外Webマーケティングの目的として考えられるものを列挙します。

  • 海外の顧客を開拓する(全世界 or 特定の地域)
  • 海外の販売代理店を開拓する(全世界 or 特定の地域)
  • 複数地域の中でどの地域から反響が来るのか調査する

これらの目的もさらに細分化すると以下のような要素を考慮する必要があります。

  • 短期的に結果が欲しいのか、中長期的に問い合わせがくる仕組みを構築したいのか(もしくは両方)
  • 製品・サービスの新しい用途を開発したいのか、既存の市場でシェアを取りに行くのか(もしくは両方)
  • 特定の国に注力したいのか、全世界から広く問い合わせが欲しいのか

これらの目的設定によってとるべき手法を選択するため、明確に設定しておくことが必要です。

例えば「アメリカ市場において、現地の競合企業と比較された際に自社の製品・サービスが選ばれ、中長期的に問い合わせがくる仕組みを確立したい」のようなイメージです。

STEP 2 現状分析

1で設定した目的を軸に、現状分析および戦略立案を行います。現状分析で調べることは簡単に言うと「現状なぜ目的が達成されていないのか?」です。外国語サイトをすでに持っている場合は、主に以下の3つの成果が出ない原因を調べます。

  • 認知されていない
  • 認知されているが集客ができていない
  • 集客ができているが問い合わせがこない

成果が出ない原因の分析方法および解決方法は以下の記事で説明しています。

また外国語サイトを現状持っていない場合でも、海外の競合をこの時点でリストアップしておく必要があります。ここでリストアップした競合は次のステップの戦略立案の際に活用します。私が競合をリストアップする際は、海外の検索エンジンで自社の製品・サービスに関連するキーワードを片っ端から検索していく、地道ですが確実な方法を取ります。

STEP-3 戦略立案

2で行った分析により、現状成果が出ていない原因に仮説が立っているはずです。この仮説を検証するため(原因となっている問題を解決するため)の施策を考えます。まず、数ある海外Webマーケティングの手法の中から、自社の目的にあった方法で有効だと思われる手法を選択する必要があります。

例えば、全世界向けに顧客の開拓(新市場の発掘)を行う場合、一般的に外国語Webサイトを活用した「海外SEO対策」との相性が良いです。詳しくは以下の記事で解説しています。

目的を達成できる手法であることはもちろん、自社の許容範囲(例:予算、対応可能な人員)を考慮して、実現可能な選択が必要です。

この段階で、間違っていてもいいので海外の顧客が自社を選ぶ理由を明確にします。この要素がはっきりしていれば、外国語サイトでアピールするポイントも明確になるため、仮説の検証がしやすく、仮説が間違っていた場合でも修正の必要性の判断が容易にできます。

STEP-4 施策の実行

戦略がきちんとまとまり、検証すべき仮説が明確になった次のステップとして施策を実行します。

この段階では特に頭を使う必要はないため、段取りを設定し淡々と工程を進めていきます。また、施策の実行段階になって初めて生じた疑問、思慮を要する事項が発生した場合は、STEP 1で立てた目的に立ち返って判断をすれば大きな問題にならないことがほとんです。

STEP-5 仮説検証・改善

施策の実行が一通り完了した時点から仮説の検証が始まります。要するに、現状分析の際に予想した「成果が出ない原因」と戦略立案の際に立てた「解決するための施策」は想定通りだったのか、という検証が始まります。

私の感覚ですが、多くの場合は仮説が思い通りに立証されることはありません。すなわち、考えてもいなかった原因が存在した、もしくは解決策が問題を解決するために不十分だった、という場合がほとんどです。

そのような場合、継続的な改善活動を行う必要があります。すなわち、成果が出ない原因の仮説とその解決策を見直し、成果が出るまで改善を繰り返すイメージです。言葉にするのは簡単ですが、これが最も難しくかつ担当者の思考能力が求められる作業だと思います。

海外Webマーケティングを成功させるポイント

次に海外Webマーケティングを成功させるポイントを3つ紹介します。国内のWebマーケティングに当てはまるポイントは割愛します。

ポイント1 妥協しない姿勢

個人的に、海外Webマーケティングを進める上で最も重要だと思う工程は「事前準備」です。具体的には以下のような作業です。

  • 仮説の立案:現状の外国語サイトで反響が出ていない原因を洗い出す
  • 解決策の立案:反響を出すための解決策を洗い出す
  • キーワード調査:自社の製品・サービスを表す外国語キーワードの調査、海外の競合サイトが使用しているキーワードの調査

海外Webマーケティングを進める場合、慣れない外国語でこれらの作業をやらなければいけない上に、言語によっては国内より競合が多く準備作業の負荷が大きくなります。必然的にどこかで妥協したくなります。

ただ私は海外Webマーケティングにおいて、これらの作業の質が成功するかどうかを分けると考えます。なぜなら、海外の現地企業との競争に勝つためには、それ相応の戦略と徹底的な準備が必要だからです。

国内のWebマーケティングの場合は、地理的に不利な立場になることは少ないです。一方、海外Webマーケティングの場合、遠国の日本企業というだけで、不利な状況からスタートする場合もあります。したがって、海外の顧客から選ばれる理由を作るためにも、明確な戦略を持って海外Webマーケティングに取り組む姿勢、すなわち「準備を妥協しない」という姿勢が大切です。

ポイント2 粘り強い姿勢

海外Webマーケティングを始めるにあたって、現状成果が出ていない原因は無数に出てきます。例えば以下のようなものです。

  • Webサイトのデザインが外国風じゃないから問い合わせが来ないのじゃないか?
  • 翻訳がぎこちないから問い合わせが来ないのじゃないか?
  • 海外の競合みたいにSNSを使って集客した方が良いんじゃないのか?

これらの要因ももちろん間違いではない場合が多いですが、盲目的にこれらの予想に頼らない方が良いと思います。海外Webマーケティングで成果が出ない原因は、ある程度体系的に整理できるため、まずは構造的に原因を把握することが大切です。

するとほとんどの場合、これらの原因よりももっと本質的な原因が見つかります。例えば、キーワード選定が間違っていた、あるキーワードの検索順位が落ちていた、など集客に直結する原因です。

一見するとこれらの原因の解決の方が、先に挙げたような原因の解決よりも難しいため、後回しになりがちです。ただ成果を出すためには、まず本質的な原因を根気強く解決していく姿勢、すなわち「粘り強い姿勢」が大切です。

ポイント3 思考し続ける姿勢

海外Webマーケティングに本格的に取り組み始めると、ある程度成果が出るタイミングがやってきます。ただ、一度成功した状態を作ったのにもかかわらず、ある時点から急に成果が出なくなることがあります。この一見すると原因不明の不調は、むしろチャンスととらえるべきだと私は思います。

なぜなら、問い合わせがこない原因を突き止め改善することで、現状よりさらに良い状態に改善できる可能性があるからです。当たり前と言えば当たり前ですが、多くの場合、調子が悪くなっても「とりあえず様子を見る」という選択をしてしまいがちであるため、あえて記載しました。

例えば、調子が悪くなった原因として「海外の競合サイトがページを更新し検索順位が落ちてしまった」と判明したとします。これは一見悪いことのように思えますが、同時に以下のような気づきを得るチャンスでもあります。

  • 競合は何を意図してページを更新したのか?(競合の施策の方向性)
  • 競合はどんなキーワードで集客を強化したいのか?(キーワード選定の方向性)
  • 競合はその他に何を改善したのか?(Webサイト全体の方向性)

これらの中で自社でも参考にできるものがあれば、積極的に取り入れていくことで施策を強化できます。したがって、どんな些細な変化にもアンテナを張っておき、何か変化があれば原因をつきとめ改善しようとする姿勢、すなわち「思考し続ける姿勢」が大切です。

海外Webマーケティングを行う上での注意点

海外Webマーケティングを行う上で、頭に入れておくべき注意点を3つ紹介します。私の独断と偏見で選びました。

注意点1 海外の検索エンジン

特に広告を出稿する場合や、中国、ロシアなどの独自の検索エンジンが広く使われている地域向けに海外Webマーケティングを行う場合は、検索エンジンの使用率を必ず確認しましょう。

例えば、以下のグラフが示すように、中国では検索エンジンとしてBaiduが最も多く使われています。(2022年5月時点のデータ)

出展:Search Engine Market Share China | Statcounter Global Stats

したがって、中国市場向けに広告出稿を行う場合は、GoogleではなくBiaiduを使用することで、より多くの潜在顧客に情報発信できることがわかります。国別の検索エンジンの使用率はこちらのサイトで確認できます。

注意点2 翻訳は簡潔に

海外Webマーケティングにおける翻訳を自社で行う場合は、簡潔にわかりやすい翻訳を重視することが大切です。

この主張を説明する前に、ネイティブの翻訳と機械翻訳の違いを考えます。例えば日本語を英語に翻訳する場合、ネイティブが書く英語と我々の書く英語(もしくは機械翻訳の英語)の最大の違いは何かと言うと「文章の読みやすさ」だと考えます。

なぜなら、どちらの翻訳方法も基本的に意味は通じるからです。現に多少ネイティブにとって文章が読みにくい場合でも、彼らが求める情報(製品・サービス)が記載されており、文章の意味が十分伝わる場合は彼らは問い合わせをしてくるからです。(現に弊社のお客さまでも問い合わせは来ています)

だからと言って、ネイティブ翻訳は必要ないかと言われるとそうでもないと思います。なぜならネイティブの書く文章の方が、自然な文法・表現が使われており、ネイティブにとって読みやすいからです。すなわち、ネイティブ翻訳を導入することで「文章が読みにくいから」という理由で、本来くるはずだった問い合わせを失う可能性がなくなるイメージです。

ここで最初の主張に戻ります。我々非ネイティブが翻訳をするときに意識することは「文章が読みにくい」と感じさせないことです。すなわち、できるだけ簡潔にわかりやすい文章を書き「文章が読みにくい」という減点を減らすことです。簡単にできる工夫としては、以下のようものが挙げられます。

  • 箇条書きを使用する
  • 表を使う
  • 長文は短く区切る
  • シンプルな文法・単語を使う

我々日本人も、外国人が書く日本語の文章が読みにくいと感じることがあると思います。逆の立場になったときにも、あの減点をなるべく減らしましょう、という意味です。

注意点3 時間がかかる

海外Webマーケティングで効果が出るまでには、国内よりも時間がかかる場合が多いです。

1つ目の理由は、シンプルに難度が高いからです。一般的に海外Webマーケティングでは、国内よりも競合が多いです。(もちろん市場や言語によって変わります)その分、競争が激しいため、勝ち抜くためにはそれなりの試行錯誤が必要になるためです。

もう1つの理由は、国内のWebマーケティングでは思いもよらない原因で成果が出ない、という現象が起こり得るからです。例えば、以下のような原因です。

  • 外国語キーワードの選定が間違っていた
  • 翻訳が冗長でわかりにくい
  • 海外の顧客が求める情報が載っていない(例:返品対応の方法、取引・配送の流れ、海外拠点情報)

これらの成果が出ない原因は、国内のWebマーケティングでは起きる可能性が低いため、海外Webマーケティングならではの改善ポイントになります。すなわち、これらの改善活動が必要になる場合は、時間がかかる傾向があります。

海外Webマーケティングの成功事例

ここでは弊社が実際に海外Webマーケティングを支援した実例を紹介します。

株式会社メルテック

本社 千葉県流山市
社員数 100名
事業内容 フォトエッチング加工、エンコーダ用スケールの設計、製造、販売
取材記事 英語サイトで「海外の新規顧客開拓」と「製品の需要調査」を実現

株式会社メルテックは、エッチング加工を主事業とする金属薄板加工を行っています。このエッチング加工の技術を用いて製造することができる製品の一つに「エンコーダー用スケール」と呼ばれる部品があります。これに関するキーワードを中心に、海外Webマーケティング支援を行いました。

詳しい施策の内容は割愛しますが、海外SEO対策のみにより、現在では北米、ヨーロッパを中心に世界各国から引き合いが来ています。

詳しくはこちら

まとめ

本記事では「海外Webマーケティングの本質」と題して、私が考える海外SEO対策に関する見解、ノウハウを説明しました。

海外Webマーケティングを任せられる業者をお探しでしたら、お気軽にテクノポート株式会社にお声がけいただければ嬉しく思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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海外SEO対策の本質|基礎から具体的な進め方

テクノポートの稲垣です。
現在「海外Webマーケティング事業」の責任者を務めています。

この記事では「海外SEO」について、私が持てるノウハウを余すことなく公開しています。

海外SEOの基礎

「海外SEO」とは?

この記事では「海外SEO」を「外国語サイトに施すSEO対策」であると定義して話を進めます。

丁寧に言い換えると「海外で検索が行われた際、自社のWebサイトを検索結果の上位に表示させるための施策」と言えます。なおこの記事では2022年4月現在、世界の検索エンジンのシェア約92%のGoogleでの英語のSEO対策を解説しています。

参照

Search Engine Market Share Worldwide | Statcounter Global Stats

国内SEOとは何が違う?

結論から言うと、国内であっても海外であっても同じ検索エンジンを使用する場合、本質的な違いはないと考えます。国内でも海外でもSEO対策の本質は「検索者の意図(需要)を満たす情報を提供する」ことだからです。

ただ、検索エンジンのアルゴリズム自体は同じでも、言語や環境の違いによって、サイトを検索結果の上位に表示させるポイントは変わります。今回は私が考える6つの違いを紹介します。

1. 競合サイト

まず競合サイトの数、質が変わります。

例えば、海外のGoogle向けにSEO対策を行う場合、(その言葉の話者の数に比例し)競合サイトの数が増えます。単純計算で、英語話者は世界に約15億人いるため、日本語話者より10倍以上多い、すなわち競合サイトも10倍以上多いと言えます。

これは後ほど説明しますが、良い意味でも悪い意味でも海外SEO対策の重要な観点の一つになります。

参照

Most spoken languages in the world | Statista

2. キーワード選定

言語が変わればキーワード選定のコツも変わります。

特に英語は、日本語では一つの呼び方である言葉に対して、複数の呼び方がつけられることも多々あります。すなわち、盲目的に日本語から機械翻訳を使って翻訳したキーワードでSEO対策をしても、英語話者からすると見当違いなキーワードを選定してしまっている場合があります。

これは海外SEO対策をする上で最も難いため、丁寧かつ根気強い調査が求められます。

3. 検索エンジン

国によって、独自の検索エンジンが使われていることがあります。

有名な例は、中国のBaidu(シェア84.27%)、ロシアのYANDEX(シェア50.4%)韓国のNAVER(シェア17.49%)が挙げられます。これらの検索エンジンでSEO対策を行う場合は、Googleのアルゴリズムが適用されない可能性もあります。(私は詳しくありませんので、これ以上のことは言えません)

参照

4. 表示速度

これはややテクニカルな違いですが、Webサイトの表示速度が国内と海外で変わる可能性があります。

例えば、国内で速い速度で表示されていたWebサイトが、海外からアクセスされると表示速度が落ちることがあります。これは、Webサイトが使用するサーバーの位置によって回線の速度が変わるためです。(国内のサーバーを使っている場合、海外からのアクセスには時間がかかる傾向があります)

Webサイトの表示速度はGoogleが「検索順位を決定する上で重要視する項目の一つである」と公式に発表しているため、海外SEOを進めるにおいて、こちらも考慮する必要があります。

ページの読み込み時間を最適化します。表示の速いサイトはユーザーの満足度を高め、ウェブ全体の質を向上させます(特にインターネット接続速度が遅い場合)。PageSpeed InsightsWebpagetest.org などのツールを使用してページの読み込み速度をテストすることをおすすめします。

(引用:ウェブマスター向けガイドライン(品質に関するガイドライン) | Google 検索セントラル  |  ドキュメント  |  Google Developers

具体的な対策は、記事の後半で詳しく解説します。

5. 対象地域

対象とする国によって、SEO対策の施策も変わります。

具体的には、Webサイトのドメインの選び方、および「ターゲティング設定」と呼ばれるWebサイトの対象地域設定が変わります。これは後半で詳しく解説しますが、海外SEOを進める上でとても重要な視点になりますので、必ず考慮する必要があります。

6. 検索エンジンのバージョン

これは頭の片隅入れておく程度で大丈夫ですが、国内と海外の検索エンジンのバージョンが異なる場合があります。

特にGoogleは研究開発を行う本社がアメリカに位置するため、最新のアップデート、実験的なアップデートはアメリカの英語検索が初めに行われるためです。(例:Googleレンズとテキスト検索を組み合わせたmultisearchをGoogleが導入 – 海外SEO情報ブログ

特に大きな問題にならないことがほとんどなので、個人的にはあまり気にしなくてもいいと思います。

海外SEOのメリット

次に海外SEOを行うことのメリットを解説します。国内のSEOとも重複する内容は割愛しています。

1. 市場が大きい

海外SEOを行う最大のメリットは、ターゲットとする市場の大きさです。

先にも述べましたが、英語話者は日本語話者の10倍以上存在します。それは競合が多くなるという負の側面ももたらしますが、一方で国内とは比べ物にならない数の潜在顧客がいることも意味します。

すでに国内に需要が存在する製品・サービスはもちろんですが、国内では需要がないようなニッチな製品・サービスでも、海外に市場を広げることで顧客を獲得できます。海外SEOに本格的に取り組むことにより、(広告を使うより低予算で)この大きな市場に対して自社の製品・サービスをアピールできます。

2. 新市場の発掘が可能

Google広告をはじめとするリスティング広告を外国語サイトに使用する場合、ある程度需要が見込める地域を絞って掲載することが現実的です。そのため、ある地域における需要調査には向いていますが、全くの新規の市場を発掘することには不向きと言えます。

一方、海外SEOはSEOという手法の特性上、対象地域は国外全域になります。例えば、英語サイトでSEO対策を行った場合、世界中に存在する潜在顧客がその英語サイトにアクセスする可能性があります。

すなわち英語サイトにSEO対策を行うことで、世界中の新規顧客の開拓が可能になります。これはSEOという手法ならではのメリットと言えます。

海外SEOのデメリット

次に海外SEOのデメリットを解説します。こちらも国内のSEOとも重複する内容は割愛しています。

1. 競合が多い(難度が高い)

先ほどメリットで「市場が大きい」と説明しましたが、同時に海外SEOは競合が多くSEO対策の難度が高くなります。(※日本語より話者が少ない言語でSEO対策をする場合は当てはまりません)

検索順位は、他の競合サイトと自社サイトの相対評価によって決定されます。したがって、あるキーワードで国内のGoogleで検索結果1位のページをそのまま翻訳し外国語サイトに公開しても、対象の英語キーワードで検索結果1位を取れる可能性は低いです。(国内で一定の反響があるサイトをそのまま英訳しても、国内ほど反響が出ないのはこれが一つの原因です)

すなわち英語サイトでSEO対策を行う場合は、日本国内の検索順位は全て忘れ、一から海外の競合サイトを調査し「上位表示させるためにはどのようなコンテンツが必要なのか」を別途調査する必要があります。そして調査の結果、ほとんどの場合、日本語ページよりもより質の高いコンテンツ(検索者の意図を多く満たすページ)が求められます。

2. コストがかかる

英語サイトの専用のドメイン・サーバーを用意するためのコストがかかります。(現在、日本語サイトのみ持っている場合、もしくは日本語サイトのドメイン配下に英語サイトが格納されている場合)

これは海外SEO対策を本格的に進めるにあたって、ドメイン・サーバーを国内とは別に用意することが有効であるためです。特に国内企業向けドメイン(.co.jp)に英語サイトが格納されている場合、海外からの検索結果に表示される可能性が低くなるため、.comをはじめとするgTLD(Global Top Level Domain)に切り替えることをおすすめします。(詳しくは記事の後半で解説します)

ドメインとサーバーの費用は一般的には、ドメイン費(年額 約1,500円)、サーバー料金(安いもので月額 2,000〜5,000円、高いもので月額 10,000円〜)となります。サイトに予想されるアクセス数、サイトの用途・目的を複合的に考慮して選定することをおすすめします。

海外SEO対策のポイント

それではここから本題の「海外SEO対策のポイント」を4つ解説します。

キーワードの選び方

外国語のキーワード選定の方法は、基本的には言語の違い以外に日本語のそれと大きな違いはありません。ただ外国語のキーワードは日本語話者にとってはなじみのないことが多いため、海外のユーザー、競合他社がどんなキーワードを使っているのかを徹底的に調査する必要があります。

私が普段、英語のSEO対策においてキーワード選定を行う際に意識していることをまとめます。

1. 海外の英語圏の同業他社が使用しているキーワードを調査する

英語圏の企業が使っている製品・サービスの呼び名は正しいであろう、という仮定のもと海外企業のWebサイト(特に英語圏の企業)を重点的に調べ、彼らがサイト上で使用しているキーワードをリストアップします。

リストアップしたキーワードの中から「月間平均検索ボリュームが大きい」かつ「自社の製品・サービスを正確に表すもの」をSEO対策するキーワードとして選定します。特に英語は類語が多いため、日本語では一つの呼び名しかないものに、複数の呼び名が当てられていることもあるので、注意が必要です。

細かな外国語キーワードのニュアンスがわからない場合は、Googleの画像検索をすることで、キーワードがイメージ通りのニュアンスを持っているかを確認できる場合もあります。

2. 問合せに使用されているキーワードを使用する

外国語サイトに問合せが既に来ている場合、問合せの文章に使用されているキーワードをSEO対策のキーワード候補として検討することも重要です。

特に、こちらが意図したキーワードとは別のキーワードを使用したお問合せが来た場合は、両方のキーワードの月間平均検索ボリューム、海外のGoogleでの検索結果をよく調べ、お客さまが使用しているキーワードに合わせた方が良いのかを検討する必要があります。

実際に弊社が海外Webマーケティングを支援させていただいている企業様でも、同様の状況になったことがあります。

3. 海外の競合サイトは専用のツールを使用して調べる

キーワード選定を行う際に海外の競合サイトが使用しているキーワードを調べる必要があります。海外の競合サイトを探す際に一つ注意することは、検索結果の表示の仕方です。というのは、Googleは検索者が使用するGoogleの言語と位置情報によって検索結果の表示を変えるためです。

例えば、同じアメリカのGoogleを使用して検索を行ったとしても、日本から検索を行った場合とアメリカで検索を行った場合では、検索結果が変わります。そのためアメリカの検索結果を調べるためには、専用のツールを用いて仮想的にアメリカから検索を行う必要が生じます。(詳しくは記事の後半「海外SEO対策に使えるツール」で紹介しています)

これは細かいテクニック的な話ですが、キーワード選定の精度を上げるためにも意識しておくべきことだと思います。

コンテンツの作り方

外国語コンテンツ(記事の中身)を作る上で最も重要なのは、文章の質です。まず、外国語話者が読んで誤解を与えない文章(意味が一意に取れる文章)を掲載することが最低限必要です。これができていない場合、誤解を与え、トラブルに発展するおそれがあるためです。

そのほかで私が普段意識していることを以下にまとめます。

1. まずは不自然でなければOK

よく海外SEOの記事で「翻訳は必ず業界に詳しいネイティブに校正してもらいましょう」という記述を見かけます。ただ個人的には、最初の段階でそこまで丁寧にお金をかけて文章を作りこむ必要はないと考えています。

大きな理由は、製品・サービスに価値を感じてもらえれば、細かない言い回しがネイティブのようにできていなくても外国語話者の方は理解し、お問合せをしてくるからです。(より自然な言い回しの方がお問合せが増えるかもしれませんが)

特に国際色豊かな欧米の企業では、普段から英語を母国語としない企業とのやりとりにも慣れており、多少文章がネイティブよりぎこちなかったとしても、問題なくコミュニケーションができます。

またSEO対策に取り組む以上、検索順位が低い場合、一度書いた記事を加筆・修正する可能性が大いにあります。そのためネイティブの校正が必要とした場合、加筆修正が発生するたびに時間とお金がかかってしまうことも考慮する必要があります。

もちろん社内でネイティブ、もしくは母語並みに外国語に堪能な方がいる場合は、チェックしてもらいましょう。

2. 自社で文章作成が難しい場合は外注する

外国語で文章を作成する場合、「翻訳」という工程が加わる分、日本語記事を書くよりも手間がかかります。

そのような場合には、海外のライティングサービスを利用するのもおすすめです。弊社ではWriting Studioのコンテンツ制作サービスを利用し、英語記事の執筆代行を依頼することもあります。

こちらで記事の見出しを作成し、あとはお願いします、という感じです。レスポンスも早く記事の品質も良いため優れたサービスだと思います。

サーバーの選び方

海外SEOを行う場合、サーバーの選び方も上位表示を狙うために重要な項目の一つになります。

特に重要なことは「特定の国と地域で速い速度で表示させたいのか?」それとも「世界中どこからアクセスされても速い速度で表示させたいのか?」ということです。

前者の場合は、対象の国、地域からアクセスされた際に早く表示されるサーバー(例:現地にサーバーを有する会社)と契約することが効果的な対策になります。

一方、後者の場合は、弊社ではクラウドサーバーの一つである「AWS(Amazon Web Services)」使用を推奨しています。AWSとは、ショッピングサイトで有名なAmazonが提供しているクラウド型のWebサービスです。

このサーバーを使用するメリットは「CDN(Content Delivery Network)」と呼ばれる世界中に張り巡らされたネットワーク回線を利用して、世界中のどの地域からアクセスされても高速でWebサイトを表示できる点です。(詳しくはこちら

またAmazonが管理していることもあり、セキュリティのレベルも担保されているため安心して利用できます。

ドメインの選び方

外国語サイトでSEO対策を行う場合、ドメインは大きな意味を持ちます。

まず大前提として、国内企業向けドメイン.co.jp」の配下に外国語サイトを格納している場合、海外SEO対策ではかなり不利になります。これは海外のGoogleで検索が行われた際「.co.jp」ドメインのサイトは検索結果に表示されづらくなることが大きな理由です。詳しくは以下の記事で解説しています。

では「.co.jp」以外のドメインを使用するとして、考えられるのは以下の4パターンです。

1. 全世界用ドメイン

全世界向けドメインを日本語サイトとは別に取得する方法です。

例えば、日本語サイトが国内企業向けドメイン「.co.jp」を使用している場合、外国語サイトでは地域性を持たないジェネリックトップレベルドメイン(gTLD)である「.com」や「.net」を使用するという方法です。

こちらの方法を採用することで、世界中のどの国と地域から検索された場合でも、検索結果の上位に表示される可能性を高めることができます。(検索者が使用している言語がWebサイトの言語と一致していることが前提です)

一方で、日本語サイトとは別でドメインを取得するための費用が発生します。(年額 1,000〜1,500円程度)

※Googleサーチコンソールの「インターナショナルターゲティング」という機能を使うと、サイトがジェネリックトップレベルドメイン(.com や .org など)を使用している場合でも、どの国を重要視しているかの判断材料となる情報をGoogleに提供することができます。

2. 国別専用ドメイン

特定の国と地域で上位表示を狙う場合に有効な手法です。

例えば、韓国語のWebサイトを作成し、ccTLD(国別コードトップレベルドメイン)と呼ばれる韓国企業が使用できるドメイン「.co.kr」を利用するというイメージです。こうすることで、韓国で検索が行われた際に検索結果の上位に表示されやすくなります。(国別コードトップレベルドメイン一覧はこちら

こちらも先のジェネリックトップレベルドメイン(gTLD)を取得する場合と同様に、ドメインの取得費用が日本語サイトとは別に発生します。また、こちらのccTLDは現地に法人がないと取得できない場合もあるため、取得自体が難しいケースもあります。

3. サブドメイン

同じ内容のWebサイトを多言語で運営する場合に適した方法です。

例えば、「en.xxxx.com」は英語サイト、「cn.xxxx.com」は中国語サイト、「de.xxxx.com」はドイツ語サイトのように、一つのジェネリックトップレベルドメイン(gTLD)に対して、複数のサブドメインを作成する方法です。

サブドメインを使用するメリットは、作成したサブドメインごとに最適なサーバーを使い分けることができる点です。例えば、「cn.xxxx.com」というサブドメインで作成した中国語サイトは、中国本土のサーバーを使い、「de.xxxx.com」はドイツ本土のサーバーを使う、といったイメージです。

このように国別にサーバーを契約することで、地域毎にWebサイトの高速化を実現できます。また日本国内のサーバーを使用し中国語のWebサイトを作成した場合、中国政府の検閲によりサイトが表示されなくなったり、表示されたとしても表示速度が極端に遅くなったりする場合があります。そのような国別の規制の影響を受けないようにするためにも、地域ごとにサーバーを契約するのは有効な手段になります。

ただこちらの方法も、サーバーの契約毎に料金が発生する、契約情報の管理が煩雑になるというデメリットはあります。

4. サブディレクトリ

こちらも3のサブドメインと同様に、同じ内容のWebサイトを多言語で運営する場合に適した方法です。

例えば、一つのgTLD「xxxx.com」に対して、英語サイトは「xxxx.com/en」、中国語サイト「xxxx.com/cn」、ドイツ語サイト「xxxx.com/de」といった感じです。

③サブドメインで管理する方法との違いは、すべてのドメインが一つのサーバーに集約される点です。これはすべての多言語サイトが一つのgTLD「xxxx.com」の配下に属しているためです。

この方法のメリットは、複数のサーバーを契約しない分、サーバーの管理費が安く済むことです。一方で、3のサブドメインで国別にサーバーを契約する場合と比較すると、世界各国からアクセスされた際に当該のWebサイトの表示速度が遅くなる可能性が高いです。

海外SEO対策の具体的な進め方

次に海外SEO対策の具体的な進め方を6つのステップに分けて解説します。国内のSEO対策と違いがある部分を中心に解説しています。

1. キーワード候補の洗い出し

まずSEO対策をするキーワード候補を洗い出しスプレッドシートにまとめます。特に英語でSEO対策を行う場合、製品名に複数の名称がないか入念に確認しましょう。

ここでは私がキーワード候補の洗い出しを行う際に、実際に使用しているツールを紹介します。なお主に以下のツールではキーワード候補の「月間平均検索ボリューム」と「関連キーワード」を調査します。

Google広告|キーワードプランナー

Google公式のキーワード調査ツールです。外国語キーワードを調査する場合は「言語」と「地域設定」を対象の言語、地域に合わせて設定するようにしましょう。(画像赤枠部を参照)

また「地域設定」は複数の地域を選択することができるため、例えば以下のようにASEAN地域に絞ってキーワードの「月間平均検索ボリューム」を調べることもできます。(※「キーワード候補」を調べる際は最大10ヶ所指定可能です)

これは例えば東南アジア向けにリスティング広告を出す際に、キーワードの「月間平均検索ボリューム」を調べる時に非常に役に立ちます。

上記の違いを除けば、基本的な使い方は日本語キーワードを調査するときと変わりません。

UberSuggest

こちらのツールも外国語キーワード調査をする際に便利です。

サイドメニューの「キーワード候補」からこちらの画面に入り、「言語」と「ロケーション」を設定することで、対象の言語、地域におけるキーワード調査が可能です。(画像赤枠部を参照)

これらのツールを用いてキーワード候補を洗い出すことに加えて、必ず実際の検索結果を確認しましょう。そうすることで、キーワードが意図した製品・サービスを的確に表しているか?、競合他社は違うキーワードを使っていないか?、の2点を確認することができます。

またUbersuggestには「トラフィック」というメニューがあり、特定のWebサイトのURLを入力することで、そのWebサイトが国別でどのようなキーワードで流入を獲得しているかを調査できます。この機能もキーワード候補を洗い出す上でも、見当違いなキーワードを選ばないためにも役に立つ機能です。

これら2点を確認し、ツールを用いた調査で洗い出せていなかったキーワードがあった場合は、それらのキーワードを再度ツールを使って「月間平均検索ボリューム」と「関連キーワード」を調査しましょう。

2. 対策キーワードの選定

次に「1. キーワード候補の洗い出し」で洗い出したキーワードの中から海外SEO対策を進めるキーワードを選定します。選定基準の例は以下のとおりです。

  • キーワードを使用するユーザーは自社の製品・サービスの顧客を含んでいるか
  • キーワードと自社の製品・サービスは十分に関連性が高いか
  • キーワードを使用するユーザーの検索需要を満たすコンテンツが自社で用意できそうか
  • キーワードの「月平均検索ボリューム」は十分大きいか
  • キーワードはSEO対策で十分に上位表示できる可能性があるか

これらを判断するためには、海外SEO対策を試行錯誤してきた経験による直感と丁寧な調査が必要です。しかもこれらの判断と判断に必要な調査を外国語で行う必要があるため、必然的に難度は高くなります。

よくある失敗パターンとして、「月平均検索ボリューム」が大きいという理由だけでキーワードを選定し海外SEO対策を行った結果、自社の製品・サービスには関心度の薄いユーザーから大量のアクセスが来たが、お問合せの件数は変化しなかった、というケースがあります。

このような失敗を防ぐためには、海外SEO対策を行う目的をキーワード選定の段階から明確にしておくことが必要です。そうすることで、判断軸も明確になり作業自体もスムーズに進みます。

3. 記事の見出しを作る

このステップは海外SEO対策の中でも最もセンスが求められる部分です。基本的な作業は国内SEO対策と同じですが、外国語になる分難度は高くなります。

②までのステップで対策するキーワードが決定しています。次に「キーワードを検索するユーザーがどのような情報、コンテンツを求めているのか?」、仮説を立てます。この仮説をもとに見出しを決定します。

例えば「cmm machines(三次元測定機)」という英語キーワードを使って検索を行うユーザーは、大きく以下のような情報を求めていることが予想されます。

  • 三次元測定機が欲しい(どんな製品があるのか知りたい)
  • 三次元測定機について知りたい(情報収集がしたい)

この中でも前者「どんな製品があるのか知りたい」という検索需要に対しては「三次元測定機の製品一覧」のような製品紹介ページが上位に表示されます。一方、後者の「情報収集がしたい」という検索需要に対しては「三次元測定機についての一般知識」のようなコラム記事が上位に表示されます。

英語キーワードの検索結果を確認する際は、英語の記事が世界で最も多く集まっているアメリカの検索結果を参照することをおすすめします。世界で最も競争が盛んなアメリカの検索結果で上位表示できれば、他の国でも上位表示できるであろう、という判断です。(ただしアメリカ英語とイギリス英語でキーワードが異なる場合は別で調査する必要があります)

次にこれら大きな分類分けをした「検索需要のどれを満たすのか?」を決めます。今回は、後者の「情報収集がしたい」を満たす記事を作成する場合を考えます。この時やるべきことは、キーワードを実際に検索した際に現在上位表示されている記事のコンテンツ(記事の見出し)を全て洗い出し、ユーザーが具体的にどのような情報を求めているのかについて仮説を立てることです。

今回の「三次元測定機」というキーワードの例では、以下のような情報をユーザーが求めているだろうと仮説を立てました。

  • 三次元測定機とは
  • 三次元測定機の特徴
  • 三次元測定機の種類
  • 三次元測定機を使うメリット
  • 三次元測定機を使うデメリット
  • 三次元測定機の機器構成
  • 三次元測定機の測定方法
  • 三次元測定機の選び方
  • 三次元測定機の製造メーカー

最後にこれらの情報の中でどの需要を満たすのか?を決めます。これがそのまま記事の見出しになります。この工程で決定した見出しによって検索順位が決まると言っても過言ではないほど重要な工程です。

もし記事の検索順位が上がってこない場合は、上記で決定した仮説が間違っている、もしくは仮説はあっているが記事に含んでいない、のどちらかになります。まずは仮説で洗い出した見出しを全て含める形に記事を加筆・修正し、それでも検索順位が上がってこない場合は、上記の仮説自体を再度考え直す必要があります。

4. 記事を執筆する

記事の見出しが決まったら執筆に移ります。執筆は自社で行う場合は誤解を招くような表現がないかのチェックだけは必ず行いましょう。可能であればネイティブ、もしくはネイティブ並みに外国語が堪能な方に表現のチェックをしてもらえればより良いと思います。

記事を自社で用意することが難しい場合は、Writing Studioのようなライティング代行サービスを利用することも検討しましょう。実際に頼むときは、「SEO対策で〜というキーワードで上位表示させることを目的とした記事を書きたいです。つきましては構成を作りましたので執筆をお願いします」とだけ伝えて、構成を別ファイルで添付してさえおけば快く引き受けてくれます。

文章が揃い次第、Webサイトへの反映、その他の必要な設定も国内SEO同様に行いましょう。

5. 効果測定

記事をWebサイトで公開後に効果測定を行います。効果測定では主に対策しているキーワードでの検索順位を調査します。

海外SEO対策の場合は、どの国における検索順位を調査するのかを決める必要があります。ターゲット地域が明確に決まっている場合は、その国における検索順位、特にターゲット地域がない場合はアメリカの検索順位を調べておくことをおすすめします。(理由は先ほどと同様です)

検索順位の追跡には、先ほど紹介したUberSuggestが使えます。

6. 加筆・修正

記事の検索順位が上がってこない場合は、加筆・修正を行いましょう。目安としては、3ヶ月経っても低い順位で変動しないようであれば加筆・修正が必要と考えて間違いないと思います。

加筆・修正の手順は「③記事の見出しを作る」を参照してください。

海外SEOの対策の実例

ここでは弊社が実際に海外SEO対策を支援した実例を紹介します。

株式会社メルテック

本社 千葉県流山市
社員数 100名
事業内容 フォトエッチング加工、エンコーダ用スケールの設計、製造、販売
取材記事 英語サイトで「海外の新規顧客開拓」と「製品の需要調査」を実現

株式会社メルテックは、エッチング加工を主事業とする金属薄板加工を行っています。このエッチング加工の技術を用いて製造することができる製品の一つに「エンコーダー用スケール」と呼ばれる部品に関するキーワードを中心にSEO対策を行いました。

以前は広告を使っていましたが、現在ではSEO対策のみで東南アジア、ヨーロッパ、北米の企業を中心に世界各国から問い合わせが来ています。

詳しくはこちら

海外SEO対策に使えるツール

最後に私が普段使用している海外SEO対策に使えるツールを紹介します。

1. Google広告|キーワードプランナー

キーワード調査を行う際に使用します。

海外SEO対策時にキーワードプランナーでは、主に世界全域における月間平均検索ボリューム、関連キーワードを調査するために使用しています。特定の国における場合でも使えるため非常に便利です。

またキーワードプランナーは「WebサイトのURL」を入力するだけで、該当のWebサイトの関連性が高いキーワードを一覧で表示することができます。これは特に競合のWebサイトがどのようなキーワードで流入を獲得しているかを調べる際に役に立つので、積極的に活用されることをおすすめします。

先ほど紹介した「言語」と「地域」の設定を組み合わせることで、かなりの情報を取得することができます。

2. Ubersuggest

こちらのツールはSEO対策全般に非常に役立つツールです。

私が主に使っている機能は以下の3つです。

項目名 用途
ランク追跡 国別にキーワードの検索順位を測定
キーワード候補 キーワードの月間平均検索ボリューム、関連キーワードの調査
海外の検索結果の調査
トラフィック概要 競合他社サイトが獲得している流入時に使用されているキーワードの調査

キーワードプランナーだけでも十分ではありますが、さらに深く抜け漏れがないように調べる意味で使用しています。また海外のGoogleの検索結果が手軽に調べられる点でもとても便利です。

3. Windscribe

このツールは海外のGoogleの検索結果を表示する際に非常に役に立ちます。

このツールはVPN接続と呼ばれる方法で、仮想的に海外からの位置情報を利用してインターネットに接続できます。要は海外の位置情報を利用して検索できるということです。

これは海外の競合サイトを調べる際に使えるため、海外SEO対策では役に立ちます。(もしくは2.Ubersuggestで検索結果を調べる方法でも全く問題ありません)

4. WebPageTest

こちらのサイトはWebサイトの表示速度を測る際に使用できます。

こちらのツールではWebサイトが世界の指定の地域からアクセスされた時の表示速度を計測できます。したがって、アメリカのGoogleでSEO対策をしたいという場合には、アメリカでの表示速度を測定し改善するべきかどうかを判断することができます。

ちなみにGoogle公式の計測ツール「PageSpeed Insights」は世界の4ヶ所(アメリカ:オレゴン、南カリフォルニア、オランダ、台湾)の一番近いロケーションから測定されているそうです。

参照

How does Calibre differ from Google PageSpeed?

まとめ

本記事では「海外SEO対策の本質」と題して、私が考える海外SEO対策に関する見解、ノウハウを説明しました。

まとめると、国内SEO対策と海外SEO対策は本質的には同じですが、言語と環境が変わる分、難度は上がる上に必要なテクニックも変わります。そのため、やるからにはしっかりと時間を投資して取り組むことをおすすめします。

海外SEO対策を任せられる業者をお探しでしたら、お気軽にテクノポート株式会社にお声がけいただければと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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【実例あり】海外市場調査の5つの調査項目と具体的な調査方法を解説

テクノポートの稲垣です。この記事は、以下のような課題を抱えている方に読んでいただきたい内容になります。

▶︎「海外市場調査」とは何?
▶︎海外市場調査の必要性はある?
▶︎海外市場調査の具体的な方法は?
▶︎実際に海外市場調査を行なった例は?

そこで、この記事では以下の内容について解説します。

・海外市場調査について(定義、目的、必要性)
・海外市場調査の具体的な方法(調査項目、情報の収集方法)
・海外市場調査を行なっている企業の実例

テクノポート株式会社は、製造業の「海外販路開拓」を支援しています。

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海外市場調査の必要性

ここでは、海外市場調査の定義と、海外市場調査を行う目的を説明します。

「海外市場調査」とは?

海外市場調査とは「海外の進出候補国の市場を調査し、自社がその市場に参入できる余地があるかを確認すること」を言います。

海外市場調査の必要性(目的)

海外市場調査を行う最大の目的は「自社の海外進出の失敗確率を下げる」ことです。具体的には「自社の進出目的やビジネスモデルに適切な進出国を見極める」ことが目的です。
一般に海外進出には、以下の2種類の費用がかかります。(詳しくはこちらの記事を参照ください)

①準備費用
・情報収集コスト(例:市場調査費、現地調査のための渡航費、人件費)
・Webサイト関連コスト(例:海外販路開拓用のWebサイトの構築、運用費用、現地語への翻訳コスト)

②現地で事業を開始するための費用
・海外法人設立費用(例:事務所を作成し登記するための事務費用)
・ビザ発行費・ライセンス費(例:現地での労働ビザ発行費用、業種によってはライセンス費)
・事務所家賃(例:事務所を賃貸で借りる場合に発生)

仮に海外進出に失敗(撤退)してしまった場合、これらの費用が意味をなさない可能性があります。したがって、海外市場調査を入念に行うことで、海外に進出してから失敗(撤退)する確率を、可能な限り下げておく必要があると言えます。

また、調査の目的は「適切な進出国を見極める」ことであるため、調査結果によっては候補国に進出しないほうが良い、という結論が導かれる可能性も十分にあると言えます。

海外市場調査の5つの調査項目

次に海外市場調査で調べるべき5つの調査項目を紹介します。

①市場規模・成長率

自社製品(もしくは類似する他社製品)の「現地における市場規模」と「現在までの成長率」を調べます。

市場規模の大きさと成長率は、特にアジアの市場は変化が早く、先進国で数年かかった技術革新が1年ほどで完了することもあるため、最新の情報を収集する必要があります。

メーカーの場合

メーカーが市場規模を調査する場合、「製品の価格帯別の市場規模」「現地顧客の所得水準」「自社製品と同じ価格帯の他社製品の売れ行き」は最低限必ず調査しておく必要があります。

加工業の場合

加工業が市場規模を調査する場合、「納入先が販売する最終材が現地市場で今後も順調に伸びていく見込みがあるのか」を調査する必要があります。具体的には、納入先の移転の可能性、工場停止の可能性を調査します。

②潜在顧客

具体的に自社の製品・技術を購入してくれる「取引先候補のリスト」を作成します。

この潜在顧客のリストは、進出後数年の売上計画を立てる上でも、営業候補先も決める上でも重要な役割を果たします。

製造業の場合

製造業が潜在顧客リストを作成するときには「日系の潜在取引先」に加えて「他国からの外資企業」「地場企業」を確認しておく必要があります。加えて、現地の同業他社の流通経路(例:どのように部品、原材料を調達しているのか)も併せて確認しておくと、競合のビジネスモデルを理解するときに役立ちます。

③同業・競合他社

進出候補国の同業他社、競合他社の調査を行います。具体的には、以下のような点を調べる必要があります。

情報収集項目
現地業界の地場有力企業 提供する付加価値、収益を得る仕組み
以前から進出している外資企業、日系企業の現地法人 提供する付加価値、収益を得る仕組み
現地で成功している企業 品質、価格、納期
現地企業、現地外資企業 製品の品質、価格、納期
現地業界の特徴 生産規模が最低どのくらい必要か、自社が他社に対して保持する優位性は何か
業界組合 業界組合があるか、ある場合はどのような活動を行なっているか
地場企業と外資企業の関係性 対立構造があるか、ある場合の要因は何か、宗教的な製品に関する基準や観点は関係するか

④仕入れ先

進出候補国内において自社製品製造のための原材料や部品の供給元があるかを調べます。

特に注意して調べることとして、以下のような項目が挙げられます。

原料に天然資源が含まれる場合

供給業者が公社など政府機関や国営企業であったり、国の規制や慣行から取り扱いができる業者が限られていないか(外資企業が直接調達できるかどうかも調べる)

原材料の供給が進出先以外の国からの輸入になる場合

直接費用(例:関税、輸送代金)と間接費用(例:材料や製品の在庫維持費)を考慮し、コストが合うかどうか

現地の日本企業から新規に部品を調達する場合

安定的に部品を調達してくれるのか

⑤新規参入障壁

進出先の市場に自社が新たに参入する場合の参入障壁の高さを調べます。

参入障壁は低ければ低いほど良いわけではありません。なぜなら参入障壁が高いことは、自社の競合先が追いかけて参入してくる際の障壁も高いことを意味するためです。

参入障壁の例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 進出先の国内の業界規制(例:会社設立は可能でも、現地での営業権が与えられない場合)
  • 一定の設備投資が進出の条件となる場合
  • 販売ルートの確立に費用と労力がかかる場合
  • 現地の有力企業がすでに競合と提携を結んでいる場合(例:現地の有力企業と提携を結ぶことを考慮している場合)

この中でも、1つ目の「進出先の国内の業界規制」は国内での調査が困難であるため、現地の同業者へのヒアリング、もしくは専門家への調査依頼が必要になります。

また、2つ目の「一定の設備投資が進出の条件となる場合」は、進出の際だけではなく、撤退の際も障壁になることを念頭に置く必要があります。

具体的な情報収集方法5選

次に具体的な情報収集の方法を5つ紹介します。

①公開情報

1つ目の方法は、公開情報を利用することです。特に信頼できる機関が発信している情報を優先的に使用することをおすすめします。

信頼できる機関が発信している情報の例として、以下のようなものが挙げられます。

情報の種類 代表的な情報源
進出候補国の基礎的な情報 JETROやアセアンセンターのWebサイトに掲載されている情報
会計・税務情報、現地の法律に関する情報 会計事務所、法律事務所のWebサイトに掲載されている情報
海外進出全般に関わる情報 公的機関および海外進出支援機関が行うセミナー、およびセミナーで配布される資料
外資規制に関する情報 進出先候補国の政府の外資誘致担当部署のWebサイトに掲載されている情報

②専門家

①公開情報だけでは収集しきれない、進出候補国の業界情報、現地の有力企業に関する情報は、専門のコンサルタントに調査を委託する方法があります。

専門家に頼るのではなく、自社の社員による出張調査という手段もありますが、時間とコストがかかる上に、経験不足により思ったような情報が得られない可能性があります。

中小企業が注意すること

中小企業が専門家に委託調査をお願いする場合、大手日系コンサルティング企業へ調査を委託することはやめた方が良いと言えます。理由は、費用が高い上に、現地からの生の声が聞けなくなるため、費用に見合った成果が得られないケースがあるためです。(詳しくはこちらの記事を参照ください)

したがって、中小企業がなるべく費用をかけずに調査を行う場合、現地の調査会社に直接依頼する方法が無難と言えます。現地の調査会社を選定する際は、調査会社ができるだけユーザーに近い場所に所在しており、十分な調査実績がある会社を探して調査を依頼するほうが良いと言えます。

調査会社の探す方法として、信頼できる経営者仲間に紹介してもらう方法も有効であると言えます。以上のような方法がいずれも現実的ではない場合、進出候補国に自社より先んじて進出している同業の企業、もしくは競合しない企業の日本本社に赴いて情報収集を行うことも視野に入れましょう。

③本邦事務所

進出先の政府機関などの本邦事務所(各国の政府機関の事務所)が日本にある場合、訪問して情報収集を行う方法があります。

本邦事務所には、投資認可に関する最新の情報が揃っており、自社の投資計画に関する意見をもらえる可能性があります。また本邦事務所のスタッフは、日本企業の進出を支援することが仕事であるため、出張に先立ち現地本庁への確認や自社のPRポイントも考えてくれることがあります。

本邦事務所の例としては、以下のような機関が挙げられます。(リンクは別タブで開きます)

本邦事務所
韓国 大韓貿易投資振興公社(KOTRA)
マレーシア マレーシア工業開発庁(MIDA)
インドネシア インドネシア投資調整庁(BKPM)
タイ タイ投資委員会(BOI)
インド インド商工省産業政策振興庁(DIPP)
フィリピン フィリピン投資委員会(BOI)

④自社Webサイト

外国語でWebサイトを制作し、現地取引候補企業からの反応を調査する方法です。(外国語で各国の需要調査を行う具体的な方法は、後日別記事で解説予定です)

自社Webサイトを制作し、運用することで海外の顧客からの反響度合い、顧客の属性、海外の企業が抱えている課題を直接情報収集できます。

外国語Webサイトを作るにあたり、進出候補先の候補が絞りきれていない場合、英語サイトを作り全世界向けに情報発信を行い、反響が大きかった国に焦点を絞って候補先を選定する方法が一般的です。(英語サイトで反響を出すまでの流れはこちらの記事を参照ください)

一方、進出候補国が数カ国に絞れている場合、進出候補先の言語でWebサイトを制作し、現地企業からの問い合わせ獲得を狙う方法が効果的です。

⑤現地出張

国内での情報収集を一通り終え、進出候補国が絞り込めた場合、現地出張を行う方法があります。(現地出張の情報収集の具体的な方法は別記事で解説予定です)

現地出張では、以下のようなポイントに気をつけて情報収集を行いましょう。

現地でしか得られない情報を収集する

現地では、アポイント先からのヒアリングを中心に、現地でしか得られない情報を収集します。事前に用意した質問に対する回答を集める方法が効果的です。

アポイント候補先の例として、以下のような訪問先が挙げられます。

訪問先 収集する情報の例
現地政府機関 外資誘致の条件
現地の公的機関、金融機関、すでに進出している会社 自社が現地で予定している事業内容に関する意見

国内で収集した情報の確認

国内で収集した情報の確認を行います。現地で新しい情報を獲得することと同じくらい、国内で得た情報が正しいのかを現地で確認する作業も重要であると言えます。

海外市場調査の実例紹介

最後に海外市場調査を行い、世界中の企業から問い合わせを獲得している企業の例を紹介します。今回の例は、先ほどの海外市場調査の情報収集方法の中でも「④自社Webサイト」を使った事例になります。

株式会社メルテック

本社 千葉県流山市
社員数 100名
事業内容 フォトエッチング加工、エンコーダ用スケールの設計、製造、販売
取材記事 英語サイトで「海外の新規顧客開拓」と「製品の需要調査」を実現

こちらの企業は、英語サイトの制作・運用を通して、取引を拡大させたいヨーロッパの企業を中心に、世界中の企業から自社製品に対してどのような反応が得られるのか、を調べることを目的に海外市場調査を実施しました。

現在では、ヨーロッパ(フランス、イギリス)、アメリカ、カナダの企業からの問い合わせが来ているため、進出候補先を絞るための貴重な情報源として活用しています。

まとめ

本記事では、以下の内容を解説しました。

  • 海外市場調査の必要性(目的):自社の進出目的やビジネスモデルに適切な進出国を見極める
  • 海外市場調査の5つの調査項目:①市場規模・成長率、②潜在顧客、③同業・競合他社、④仕入れ先、⑤新規参入障壁
  • 具体的な情報収集の方法5選:①公開情報、②専門家、③本邦事務所、④自社Webサイト、⑤現地出張

海外市場調査を行う上で、本記事の内容が参考になれば幸いです。

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【2021年版】中小製造業が海外進出で失敗する3つの理由と対策

テクノポートの稲垣です。この記事は、以下のような課題を抱えている方に読んでいただきたい内容になります。

▶︎中小企業の海外進出が失敗する主な原因は?
▶︎海外進出の失敗の影響を抑えるために必要な準備は?
▶︎海外進出で失敗しないための戦略は?

そこで、この記事では以下の内容について解説します。

・中小企業が海外進出に失敗する3つの理由
・中小企業が海外から撤退できた要因3選
・中小企業が海外進出で失敗しないための戦略

なお本記事で使用するデータは、すべて参考文献へのリンクを記載しています。ご自身でデータの内容を確認したい方は、ご参照ください。

この記事を執筆しているテクノポート株式会社は「外国語サイトの制作・運用のサポート」を通して、企業様の海外販路開拓を支援しています。(サービスの実績はこちらからご覧いただけます)

「海外進出支援サービス」の詳細はこちら

中小企業が海外進出する割合

失敗する理由に入る前に、まずどれくらいの中小企業が海外展開しているのかを確認します。

こちらの図は、中小企業庁が1997年から2018年における「中小企業の海外展開比率」を表したグラフです。


参考資料:中小企業庁:2021年版「中小企業白書」 第3節 グローバル型・サプライチェーン型企業の目指す方向性と支援の在り方

グラフが示す通り、中小企業の海外展開の動き(直接輸出と直接投資)はともに増加傾向が続いており、統計が開始された1997年の時に比べ、どちらも約5%の増加が確認できます。

日本企業の海外拠点数を調べたこちらの記事でも解説しているように、ASEANを中心しとたアジア諸国への進出が特に目立ちます。

参考記事


海外進出に失敗する3つの理由

「海外進出の失敗」とは?

本題に入る前に、この記事における「海外進出の失敗」という言葉の定義を明確にしておきます。

この記事では海外進出の失敗とは、撤退という意味と同義になります。厳密には「本国の親企業が在外子会社の企業活動に対する支配を放棄すること」と定義します。(参考文献:日本企業の海外進出と撤退についての一考察

結論

それでは、本題の海外進出に失敗する3つの理由を紹介します。

結論からまとめると、海外進出で失敗する3つの理由は「①現地市場での売上の減少」「②輸出の低迷」「③コストの増加」です。これらの理由は、2020年12月の日本貿易振興機構の「2020年度 海外進出日系企業実態調査」のデータを参照しています。

以下では順にそれぞれの要因について解説します。

①現地市場での売上の減少

回答グループ 「事業縮小もしくは移転・撤退の理由」として回答した割合, %
製造業全体 46.0
中小企業(非製造業含む) 50.9

最も大きな理由とも言えるのが「現地市場での売上の減少」です。

こちらの理由が原因で事業縮小もしくは移転・撤退をした回答した企業は、大企業、中小企業関わらず最も高い比率となっています。

製造業の場合、東南アジアにおいて現地の日本企業から獲得していた案件が急になくなる(もしくは規模が縮小する)ことによって利益の確保が難しくなることが典型的なケースとして挙げられます。

タイのバンコクに拠点を構えて、現地の日本企業向けに部品調達を行っていた会社が、急に仕事がなくなり現地企業から新規の仕事を獲得するか、撤退するかの選択を迫られるケースもあると言われています。

②輸出の低迷

回答グループ 「事業縮小もしくは移転・撤退の理由」として回答した割合, %
製造業全体 51.2
中小企業(非製造業含む) 36.6

製造業全体で見ると、先ほどの「現地市場での売上の減少」より高い比率であったのが「輸出の低迷」です。

輸出が低迷する原因として、物流コストが上昇傾向にあることが挙げられます。物流コストの上昇にともない、海外に拠点を持つ日本企業が生産部品供給を現地で完結させたいという需要が強まり、結果として輸出に対する需要が低迷していると考えられます。

例えば、以前は中国から部品を輸入していたベトナムの日本企業メーカーが、物流コストを抑えるために現地の部品供給先に切り替えます。この動きによって、中国からの部品供給が低迷するといった流れです。

③コストの増加

回答グループ 「事業縮小もしくは移転・撤退の理由」として回答した割合, %
製造業全体 37.0
中小企業(非製造業含む) 30.8

こちらの「コスト」とは、主に原材料・部品の「調達コスト」「人件費」のことを指します。

調達コストの上昇は、物流コストの上昇の影響を受けていることが主な原因であると考えられます。調達コストが増加した結果、利益の確保が難しくなり、撤退の選択を迫られる企業が多いと言えます。

人件費の問題については、近年では中国を含めたアジア諸国の人件費の高騰が続いていることが関わっていると言えます。アジア諸国の人件費が高騰している主な理由として、現地の低賃金労働者が収入の増加を目的に海外へ出稼ぎに行くことが増えていることが挙げられます。

海外から撤退できた要因3選

次に海外からの撤退経験を有する日本企業が、撤退できた要因として挙げた3つの取り組みを紹介します。なおこれらのデータは、「中小企業による海外撤退の実態 −戦略的撤退と撤退経験の活用−」のデータを参考にしています。

それでは要因として挙げた企業の比率が高いものから順に紹介します。

①独資での進出(回答企業の比率:37.0%)

撤退できた要因として最も挙げられたのが、「独資での進出」です。一般に独資で法人を設立するメリットとして「製品や技術情報の流出リスクが少ない」ことや「経営の自由度が高い」が挙げられますが、撤退の際にも、特に後者の「経営の自由度が高い」ことが有利に働くと言えます。(一方で、独資での法人設立のデメリットは、投資資金が高く、現地での販路開拓が難しいことが挙げられます。詳しくはこちらの記事を参照してください)

一方で、合弁で法人を現地に設立する場合は、進出前の段階であらかじめ撤退の基準を明確に決めて、進出前にパートナー企業と合意形成をしておく必要があると言えます。

②撤退の決断の早さ(回答企業の比率:33.3%)

撤退できた要因として次に多かった回答項目が、「撤退の決断の早さ」です。こちらの行動は単に撤退を迫られた状況下での決断の早さだけではなく、進出時に撤退の条件を具体化しておくことが重要であると言えます。

撤退の条件の策定に加えて、以下のような事前準備も必要になると考えられます。

・税理士・会計士への相談
・パートナー企業との事前交渉
・現地従業員、現地日本人スタッフの処遇の決定
・撤退資金の調達
・現地政府、自治体との交渉

③現地パートナーの協力(回答企業の比率:30.9%)

「撤退の決断の早さ」の次に多くの回答を集めたのが、「現地パートナーの協力」です。現地パートナーとビジネス上で良好な関係を築くことは、現地で仕事の受発注を円滑に行うことに加え、撤退する上でも重要だと言えます。

現地パートナー企業との関係性の重要さを示すデータとして、2012年の中小基盤整備機構の調査によると、「現地パートナー企業とのトラブル」を撤退理由として挙げた企業は全体の23.6%にのぼり、3番目に大きな理由として挙げられています。(1位は受注先、販売先の開拓・確保の困難性(27.6%)、2位は生産・品質管理の困難性(23.6%))

海外進出で失敗しないための戦略

最後に、海外進出の撤退の要因を考慮した上で、中小製造業が海外進出で失敗しないための戦略をご紹介します。今回は、弊社が主に海外進出をサポートさせていただいている「中小製造業の海外進出」に焦点を絞って戦略を説明します。

中小製造業全体の海外進出戦略

まず製造業の業種に関わらず、全体として共通の戦略を説明します。

国内の戦略を応用する

海外進出で失敗しない企業の特徴として、国内のニッチな分野で戦略を立てて成功している企業は、海外でも成功しやすいということが言えます。なぜなら、国内でも海外でも利益を上げる構造の根幹となる考え方に大きな違いはないからです。

海外進出という言葉を聞くと、世界の競合と戦うために何か特別な戦略が必要ではないか、と考えられる方が多いと思います。しかし実際は、国内の市場で生き抜くために考え抜かれた戦略が海外の市場開拓においても通じることが多いと感じます。加えてほとんどの中小製造業の場合、市場開拓にかけられる予算を考慮すると、世界的なシェアを取りに行くことは難しいため、国内で強みが活きるマーケットをそのまま海外に拡張する形が最も安全な方法であると言えます。

また、進出する上での最低条件として、質の高い製品・サービスが提供できることに加えて、独資での進出が望ましいと言えます。(理由は海外から撤退できた要因の①独資での進出を参照してください)

メーカーの海外進出戦略

次に中小製造業の中でも、メーカーの海外進出戦略を説明します。

現地語でWebサイト構築する

中小完成品メーカーが海外で自社製品を販売する場合、海外の「販売代理店」を通して自社製品を販売する方法が一般的です。

しかし、大企業に比べ、中小企業が優秀な販売店を捕まえるこは難しい現実があります。理由として、優秀な販売代理店は有名企業がコンタクトをとっている可能性が高く、代理店側も売上が見込める製品、すなわち大企業の有名な製品を販売したい傾向があることが挙げられます。

この問題を解決する一つの方法として、中小完成品メーカーは、外国語(少なくとも英語と現地語)で自社製品について理解してもらえるサイトを構築することをおすすめします。外国語のWebサイトは、見込み顧客への自社および自社製品の紹介の役割もありますが、自社の製品を売ってくれる販売店の獲得を狙う意味もあります。

加えて、外国語Webサイトから候補となる販売代理店が見つかると、展示会に参加する必要性も抑えられるという副次的なメリットもあります。

営業活動に積極的に関わる

2つ目の戦略は、メーカー自身が現地での顧客開拓、クロージングに積極的に関わることです。先ほども説明したように、優秀な販売代理店は大手企業、有名企業に持っていかれてしまう可能性が高いです。したがって、販売代理店に現地での顧客の発掘からクロージングまで全て任せてしまうと、成果に結びつかないケースが多いです。

したがって、現地での新規顧客開拓で失敗しないためには、少なくとも販売店が独り立ちするまでは、中小企業自らが営業活動に積極的に関わる必要があると言えます。また現地の販売代理店は、製品のメンテナンスや現地の顧客対応、現金やり取りが必要な場合に使われることが多いため、そもそも営業活動に十分な時間を確保できないケースも考えられます。

加工業の海外進出戦略

最後に加工屋の海外進出戦略を説明します。

現地の異業種と積極的に関わりを持つ

日本の加工屋が海外進出する際の主な理由の一つとして、「現地の日本企業向けの部品供給」が挙げられます。この目的での海外進出自体は問題ありませんが、現地の日本企業からの仕事が減った時のためにリスクを分散させる仕組みを作っておくことはとても重要です。(中小企業が海外進出に失敗する3つの理由で説明したように「現地市場での売上の減少」が中小企業全体で最も大きな原因となっています)

このリスク分散の方法として、現地の異業種の企業を含めたさまざまな業界と繋がりを築いておくことが挙げられます。具体的な手法には、海外の現地企業から見つけてもらえるようなサイトを作ることが考えらえれます。こうすることで、現地の日本企業からもらえる仕事が減った時に、困らなくなる仕組みを作ることができます。

したがって、加工業が海外に拠点を作る場合、現地の日本企業からの仕事を受けつつ、現地の企業からも仕事を受注できるようなマーケティング活動を同時並行で行う方法が安全であると言えます。

まとめ

本記事では、以下の内容を解説しました。

  • 中小企業が海外進出する割合:年々増加傾向
  • 海外進出に失敗する3つの理由:①現地での売上の減少、②輸出の低迷、③コストの増加
  • 海外から撤退することができた要因3選:①独資での進出、②撤退の決断の早さ、③現地パートナー企業との協力
  • 海外進出で失敗しないための戦略:中小製造業全体(国内の戦略を応用)、メーカー(現地語Webサイトの構築、営業活動への参加)、加工業(異業種との関わりを持つ)

海外進出を成功につなげるために、本記事の内容が少しでも役に立てば幸いです。

この記事を執筆しているテクノポート株式会社は「外国語サイトの制作・運用のサポート」を通して、企業様の海外販路開拓を支援しています。(サービスの実績はこちらからご覧いただけます)

「海外進出支援サービス」の詳細はこちら

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【解決事例あり】日本企業が海外進出時に直面する3つの課題と解決策

テクノポートの稲垣です。この記事は、以下のような課題を抱えている方に読んでいただきたい内容になります。

▶︎海外進出する日本企業の数はどのように変化しているのか?
▶︎日本企業が海外進出時に直面する課題は?
▶︎それらの課題の解決策は?

そこで、この記事では以下の内容について解説します。

・海外進出する日本企業の数の推移
・海外進出する日本企業が直面する課題
・課題を解決するための解決策と解決した事例

この記事を執筆している弊社(テクノポート株式会社)は「英語サイトの制作・運用のサポート」を通して、企業様の海外販路開拓を支援してきた実績があります。

この記事では、実際に弊社が海外進出の支援をさせていただいているお客様からのご意見を参考に執筆しています。(弊社の詳しいサービスの内容はこちらからご覧いただけます)

統計情報

まず、海外進出する日本企業の数の推移を調査した結果を紹介します。

海外進出の日本企業拠点数の推移

下のグラフは、外務省の「海外在留邦人数統計」のデータを用いて、海外の日本企業の拠点数を地域別にまとめたグラフです。

データ引用元:統計表一覧(令和2年(2020年)以前)|外務省

こちらのグラフを見ると、どの地域においても(多少の増減はあるものの)日本企業の拠点数は増え続けていることが確認できます。この結果から、日本企業の海外進出への機運は年々高まっていることが予想されます。

海外の日本企業拠点数の年成長率の推移

下の図は、それぞれの地域の拠点数の年成長率の推移を表すグラフです。

データ引用元:統計表一覧(令和2年(2020年)以前)|外務省

こちらのグラフを見ると、中南米に進出する企業の成長率が、大きく伸びていることが確認できます。この要因として、中南米の自動車市場向けの工場建設や、生産設備の拡大が考えられます。(参考:「2019年度 中南米進出日系企業実態調査」の結果について | 2020年 – 記者発表 – お知らせ・記者発表 – ジェトロ

地域別の日本企業の拠点数の割合

また、下の図は、2020年10月時点の地域別の日本企業の拠点数の割合を示したグラフです。


データ引用元:統計表一覧(令和2年(2020年)以前)|外務省

こちらのグラフを見ると、海外の日本企業の拠点の約7割がアジアに位置していることがわかります。これは、中国をはじめとする新興国市場の急成長が関係していると考えられます。

参考記事

日本企業が海外進出において抱える3つの課題

次に、日本企業が海外進出の際に直面する3つの課題を説明します。これらの課題は、弊社のお客様にインタビューをさせていただいた内容を参考にしています。

①社内体制の整備

「社内体制」とは、具体的には以下のような業務を行える体制のことを指します。

・貿易の実務作業を行える人材の確保、貿易実務の実行
・料金回収の実務(例:信用状の作り方)
・取引相手の与信管理
・外国企業との取引におけるリスクマネジメント(例:法律リスクの管理、契約書の作成方法)
・外国企業からの問い合わせ対応できる人材の確保
・自社製品・サービスが海外で問題を起こしたときの顧客対応

これらの業務は社内に「外国企業との取引に関する専門知識を有する人材」と「語学力を有する人材」を確保していないと、実現が難しいため、国内の企業とのみ取引を行なってきた企業の多くが直面する課題であると言えます。

また、これらの取引体制の整備に加えて、外国企業との取引には法律上のリスク(例:法の未整備、外資規制)、カントリーリスク(例:進出先の経済状況の悪化、テロ、内乱)がともなうため、これらの問題に対する対処方法も考えておく必要があります。

②取引拡大の方法

「外国企業とどうやって取引を拡大させたらいいのかわからない」という課題です。具体的には、以下のような課題が当てはまります。

・自社の製品、サービスの販売を代行してくれる代理店の見つけ方がわからない
・海外展示会に参加を考えているが、どうやって取引企業・販売代理店を見つけるのかわからない
・外国企業との取引拡大をする方法は知っているが、どの方法が自社に適しているのかわからない
・外国語のWebサイトは持っているが、海外の企業からお問い合わせが来ることはほとんどなく、どうやって反響を出せば良いのかわからない

海外に自社の製品・サービスを売るためには、貿易を通した取引を行う場合は「取引を行なってくれる外国企業」、現地で製品を売る場合は「販売代理店」を見つける必要があります。

また、これらの方法で取引を行うにしても、複数ある手法の中からどの方法を採用するのかを検討する必要があります。(海外進出の方法については、こちらの記事を参照してください)

③市場の選定

世界中の国と地域の中から「自社の製品・サービスの需要が見込める市場を絞り込む方法がわからない」という課題です。具体的には、以下のような課題が当てはまります。

・自社の製品、サービスが海外で需要があるのかどうかがわからない
・自社の競合・顧客となる企業が多く集まる地域がわからない
・自社と同じ業種、業界でオンライン上で競合となり得る企業がわからない
・海外の競合他社と比較したときに、自社製品の強みが何かわからない
・世界中の企業と取引を拡大するべきか、ある程度ターゲットを絞った方が良いのかわからない

海外の市場の選定方法は、次で解説する「課題の解決策」を参照してください。

課題の解決策

次に先に挙げた3つの課題の解決方法を3つ紹介します。

①海外進出支援サービスの活用

これは、先に挙げた課題の中でも「①社内体制の整備」と「③市場の選定」の解決策となり得る方法です。例えば、以下のような利用法が考えられます。

・海外企業との取引業務、リスクマネジメント業務を代行してくれる社外の専門業者(副業人材)に外注する
・海外進出先の選定、拠点設立に関して専門家から助言をもらう
・進出先で販売ネットワークを持っている販売代理店に製品の販売、顧客対応、料金の回収を依頼する
・国際展示会の出展支援サービスを活用する

これらの方法の共通のメリットは、海外進出に必要な自社の人材・労力の使用を最小限に抑え、外部のプロフェッショナルのノウハウ、労力を活用できることです。

したがって、前者のメリットは社内の人件費の節約、後者のメリットは海外進出を成功する確率を高めることにつながると言えます。

一方で、これらの方法の共通のデメリットとして、外注するための費用がかかることが挙げられます。そのほかに外注先の候補となる企業の選定、そもそもの外注するべきサービスの選定にも、時間と労力をかける必要があります。

②国際展示会への出展

これは、先に挙げた課題のうち「①社内体制の整備」、②取引拡大の方法」の解決策となり得る方法です。例えば、以下のような利用法が考えられます。

・自社の製品、サービスに興味を持ってくれるお客様を発掘する
・自社の製品、サービスの販売代理店の候補を発掘する
・自社と海外で協業、パートナー関係を結ぶ候補となる企業を発掘する

国際展示会へ出展する最大のメリットは、海外の顧客開拓と同時に、販売代理店の候補を発掘できる点です。

というのも、国際展示会には新しい商材を探している小規模な商社や販売代理業者も数多く来場しているため、それらの業者に向けて発信をすれば、彼らの興味を引くことができます。

したがって、展示会に出展する際は必ず目的を明確に設定し「どのターゲットに向けて情報発信をするのか」をあらかじめ設定しておく必要があります。ターゲットが決まったら、そのターゲットに向けた文章(例:〜の地域における販売代理店募集)を掲載する必要があります。(海外展示会で代理店開発をする詳しい方法は、こちらの記事をご参照ください)

一方で、国際展示会へ出典するデメリットは、出展のための費用と労力がかかることです。

国内で開催される展示会と比べても、外国語での資料の準備、外国への渡航費・機材の輸送費(外国で開催する場合)、外国語対応できる人材の準備を行う必要があります。

③外国語Webサイトの制作・運用

これは、先に挙げたすべての課題(「①社内体制の整備」、「②取引拡大の方法」、「③市場の選定」)の解決策となり得る方法です。例えば、以下のような利用法が考えられれます。

・外国企業からの直接の問い合わせを獲得する
・世界中に情報発信を行うことで、自社の製品・サービスに興味を示してくれる企業が多い場所、需要が見込める地域を発見する
・進出先の言語でWebサイトを制作し、信頼の構築、現地企業との取引獲得の確率を高める
・外国人の採用力を強化し、社内で外国企業への対応を完結させる

外国語Webサイトの制作・運用を行う最大のメリットは、比較的に低予算で新規顧客の開拓、進出先の候補となる市場の発掘を行えることです。加えて、外国語Webサイトを外国人労働者の求人用に活用することもできるため、社内で外国語に対応できる人材を揃える上でも役に立ちます。

一方で、外国語Webサイトの制作・運用を行うデメリットは、制作・運用にある程度の知識とノウハウがある人材を揃える必要があることです。これは、そもそもWebサイト制作のノウハウに加えて、外国語への翻訳作業が発生することが大きな理由です。

また、制作だけは自社で行うことができても、実際に成果を上げるための作業にも専門的な知識が必要になるため、自社でWebサイトの運用に詳しい人材がいない場合は、業者に外注する必要があると言えます。

加えて、お問い合わせに外国語で対応する人材、貿易実務の対応は社内で行う必要が生じます。これらの業務に対しての社内体制の準備が揃っていない場合は、自社で完結することができない業務のみを「①海外進出支援サービスの活用」で補う必要があります。

海外進出における課題を解決した事例

次に、海外進出における課題を解決した事例を紹介します。今回は先に挙げた解決方法の中でも「③外国語Webサイトの制作・運用」により、海外の新規顧客開拓と、市場の発掘を行っている「株式会社メルテック」の事例を紹介します。(詳しい内容はこちらの記事からご覧ください)

株式会社メルテック

本社 千葉県流山市
社員数 100名
事業内容 フォトエッチング加工、エンコーダ用スケールの設計、製造、販売
取材記事 英語サイトで「海外の新規顧客開拓」と「製品の需要調査」を実現

同社は、海外との貿易業務、外国語対応できる人材は有していましたが、海外の新規顧客の開拓に課題を抱えていました。

そこで、英語サイトの制作・運用に本格的に取り組んだ結果、現在では安定して月に4,5件のお問い合わせを獲得できています。

また、英語Webサイトを経由したお問い合わせを通して、自社の製品・サービスに対する海外の顧客の需要を把握することにも役立てています。

まとめ

本記事では、以下の内容を解説しました。

  • 海外進出する日本企業の数:どの地域においても、日本企業の拠点数は増加傾向、2020年10月時点ではアジアが全体の7割
  • 日本企業が海外進出において抱える課題:①社内体制の整備、②取引拡大の方法、③市場の選定
  • 課題の解決策:①海外進出支援サービスの活用、②国際展示会への参加、③外国語Webサイトの制作・運用

海外進出における課題解決に、本記事の内容が参考になれば幸いです。

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【担当者向け】英語サイトの制作から問合せ獲得までの流れ

テクノポートの稲垣です。

▶︎ 英語サイトを作ろうか検討しているが、本当に海外から問合せが来るのか疑問に感じている
▶︎ 日本語サイトを翻訳して英語サイトを作ったが、反響を出すまでのイメージが湧かない
▶︎ 今の英語サイトを活用したいとは思っているが、まず何から始めて良いかわからない

この記事では、上記のような課題・疑問を持っている企業の経営層、Web担当者の方に読んでいただきたい内容になっています。

具体的には以下の内容を解説します。

・英語サイトで「問合せ」を獲得するまでの流れ
・英語サイトで反響を出すためにするべきこと(パターン別に解説)

本記事を執筆している弊社(テクノポート株式会社)は「英語サイトの制作・運用のサポート」を通して、企業様の海外販路開拓を支援している実績があります。

実際に弊社がサポートしている企業様は、これから説明する方法で英語サイトを改善し、問合せ数が継続的に伸びています。

この記事では、実際にサポートをして得られた知見、ノウハウを余すことなく解説しています。最後まで読んでいただけると、「英語サイトを活用して、世界中の顧客から引き合いを獲得するまでのイメージ」を掴んでいただけると思います。

英語サイトで「問合せ」を獲得するまでの流れ

ここでは、英語サイトで問合せを獲得するまでの流れを「3つのステップ」に分けて解説します。

結論

まず結論としては、英語サイトも日本語サイトも、問合せを獲得するまでに大きな違いはありません。違いを挙げるとすると、対象とする顧客(企業)が位置する「地域」、使用する「言語」が違うことです。

「英語サイトを活用して海外から引き合いを獲得する」と聞くと、何か特別なことをしなければならない、と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、取るべき施策の内容はとてもシンプルです。

ただ、それぞれの施策において、英語サイトならではの注意するべきポイントがあるので、それらのポイントをしっかりと押さえていれば、日本語サイトと同じように問合せは自然と増えていきます。

それではまず、日本語サイトと英語サイトに共通する「問合せを獲得するまでの流れ」を3つのステップに分けて解説します。後半の「反響を出すためにするべきこと」では、英語サイトに特有の注意するべきポイントを考慮した上で、取るべき施策を解説します。

【STEP 1】認知される (インプレッションを獲得する)

英語サイトを作って、まずするべきことは、そのサイトが海外の顧客に「認知」されるようにすることです。(認知してもらうことをWebマーケティング業界では「インプレッションを獲得する」と言います)

一般に、英語サイトが認知されるとは、対象とする顧客に次のような行動をしてもらうことを意味します。

・検索結果に(御社の)英語サイトが表示されているのを目にする
・検索結果に(御社の)英語サイトのリスティング広告(検索結果の最上部に表示される広告)が表示されているのを目にする
・他社のWebサイトを閲覧しているときに、(御社の)英語サイトのバナー広告(Webサイトに設置されている宣伝用の画像広告)を見かける

このような行動を起こしてもらうことで、まず御社の英語サイトの存在を、顧客に知ってもらうことが最初のステップになります。

【STEP 2】興味を持ってもらう (流入を獲得する)

認知を獲得した後は、対象とする顧客に「興味を持ってもらう」必要があります。つまり、数ある競合サイトの中から、御社の英語サイトへ入ってもらう必要があります。(サイトに入ってもらうことを、Webマーケティング業界では「流入を獲得する」と言います)

英語サイトが流入を獲得するとは、対象とする顧客に次のような行動をしてもらうことを意味します。

・検索結果に表示されている(御社の)英語サイトが気になりクリックする
・検索結果に表示されている(御社の)英語サイトのリスティング広告を見て、サービスの内容に興味が湧きクリックする
・(御社が)SNSで発信している内容が興味深かっため、より深い内容が知りたいと思い、(御社の)英語サイトをクリックする

【STEP 3】問合せをしてもらう(問合せを獲得する)

最後のステップは、流入してもらった顧客に「問合せをしてもらう」ことです。顧客が問合せをしてくれる具体的な例としては、以下のような状況が考えられます。

・(顧客が)抱えていた課題を解決してくれそうな会社だと判断し、相談する
・(顧客が)必要な製品・部品を作ってくれそうだと判断し、製作の可否について相談する
・(顧客が)欲しい製品・部品のカタログをダウンロードする

以上の「認知される」→「興味を持ってもらう」→「問い合わせをしてもらう」の3ステップが、問合わせを獲得するまでの流れになります。

これは言い換えると、「問合せがこない」=「3ステップのどこかに問題がある」ということです。

その前提を踏まえた上で、具体的に「それぞれのステップで問題がどうかあるか確かめる方法」と「取るべき対策」について解説します。本記事では、詳細には踏み込まず、まずは対策のイメージを掴んでいただくために、対策の概要をわかりやすく解説しています。

反響を出すためにするべきこと

①インプレッションが少ない場合

ユーザーに御社の英語サイトが認知がされていない場合です。英語サイトを作ったが、特に力を入れて運用しているわけではない、という場合の典型的なパターンとも言えます。

【インプレッション数を確認する方法】

御社の英語サイトのインプレッション数を確認するには、Google Search Consoleの「合計表示回数」という数字を確認しましょう。

上の画像は、今ご覧になっている「モノカク」というメディアの、過去28日間の合計表示回数(=インプレッション数)を集計したものです。

Google Search Consoleで集計しているインプレッション数は、ユーザーがGoogleで検索を行ったときに、御社の英語サイトがユーザーの検索結果画面に表示された回数を集計したものです。(Googleで広告を出稿した場合のインプレッション数を確認したい場合は、Google広告の「表示回数」を確認しましょう)

注意すべき点は、ユーザーが御社の英語サイトを検索結果画面で直接見ていなくても、インプレッション数にはカウントされてしまう、ということです。

例えば、ユーザーが何か特定のキーワードで検索した際に、御社の英語サイトが検索結果の10位(検索結果画面の下部)に表示されていたとします。仮に、ユーザーが検索結果の1位のWebサイトをクリックした場合、ユーザーは御社の英語サイトが検索結果に表示されているのを直接見たわけではありません。しかし、この場合においてもインプレッションは1つカウントされます。

つまり、検索結果の見えやすい位置(上位位置)にサイトを表示させることがインプレッションを増やすために必要だと言えます。(詳しくは後述の「対策」をご覧ください)

【インプレッション状況の良し悪しを判断する方法】

インプレッション状況の良し悪し(インプレッション数が多いか少ないか)を判断する方法として、目標とする「問合せの数」から逆算する方法があります。

例えば、1ヶ月に問合せを10件を目標に掲げているとします。

この時、クリック率(ユーザーが検索結果に表示されている御社の英語サイトをクリックする確率)が2%問合せ率(御社の英語サイトに流入したユーザーが問合せする確率)が1%の場合である仮定します。

その場合、問合せを月に10件獲得するためには、単純計算で、10件×100/1×100/2=50,000となり、1ヶ月で50,000回インプレッションが必要であることがわかります。この数字を基準に現在のインプレッション数が多いか少ないかを判断します。

【インプレッション数の改善方法】

インプレッション数が少ないと判断された場合に、取るべき対策は大きく下記の3つです。

①広告出稿(難度:低い)

予算を投下して、短期的にインプレッション数を増やしたい場合に有効な施策です。

インプレッション数を継続的に獲得したい、というよりも、海外の企業にまずは自社の名前とサービスを知ってもらう、という目的で使われる場合が多いです。広告に掲載する文章は、英語サイトの場合英語になるため、言葉選びはしっかり調査した上で行いましょう。(言葉を選定する詳しい方法は別記事で解説予定です)

②SEO対策(難度:やや高い)

SEO対策とは、検索結果画面で自社のサイトを上位に表示させるための対策のことを意味します。

英語サイト上に質の良いコンテンツを作り、中長期的にインプレッションを獲得したい場合に取るべき施策であると言えます。

英語サイトでSEO対策を行う場合、戦う市場の大きさによっては、世界中の英語サイトが競合になるため、日本語以上に上位表示を狙うことが難しい場合もあります。逆に言えば、日本では市場が小さすぎるニッチなキーワードでも、世界で見れば需要がある場合もあるため、戦略次第では日本語サイト以上の効果が出る可能性も十分にあります。(英語サイトのSEO対策は別記事で詳しく解説する予定です)

③SNS運用(難度:高い)

自社のSNSアカウントを運用することで、中長期的に認知を広め、インプレッションを獲得したい場合に有効な施策です。

ただ、外国語でのSNS運用は困難であることが予想されるため、日本語のSNSアカウントですでに実績があり、それを外国語版に横展開するパターンが現実的であると思います。

また、国によってSNSの使用率に特徴があるので、特定の国にアプローチしたい場合は、その国のSNSの使用率を考慮して発信プラットフォームを選ぶことをおすすめします。

②流入が少ない場合

インプレッション数は十分な数を獲得しているが、英語サイトへの流入が少ない場合です。

【流入状況を確認する方法】

まず、SEO対策を行っている場合の流入状況の確認方法は、Google Search Consoleの「合計クリック数」もしくは「平均CTR(平均クリック率)」と呼ばれる数字を確認しましょう。(Googleで広告出稿をしている場合は、Google広告の「クリック数」を確認します)

ここで「平均CTR(クリック率)」とはインプレッションを獲得したうちのクリックされた確率(パーセンテージ)を表す指標です。

【流入状況の良し悪しを判断する方法】

SEO対策を行っている場合、流入状況の良し悪しを判断する際は、英語サイトの特定のページにおける「平均クリック率」を確認しましょう。そして、特定のページの平均クリック率が、平均的な「平均クリック率」を比較して、高いか低いかでそのページの流入状況の良し悪しを判断します。

具体的に説明します。次のグラフをご覧ください。


こちらの図は、Googleにおける「検索順位」とその順位における「平均クリック率, %」の関係を表したグラフです。

ここで仮に、御社の英語サイトの特定のページを選択し、あるキーワードで検索された際の現在の「平均掲載順位」が3位、「平均クリック率」が20%であるとします。(これらの数字は、Google Search Consoleを使って確認できます)その場合、上のグラフから検索順位が3位のページは、「平均クリック率」がおよそ11%であることがわかります。

つまり、通常「平均クリック率」が11%しか獲得できない検索順位において、「平均クリック率」20%を獲得している御社の英語サイトは優れていてる、ということがわかります。このようにして、平均クリック率の大小から、流入状況の良し悪しを判断します。

また、Google広告を出稿している場合の流入状況の良し悪しは、Google広告の「クリック率」を確認し、リスティング広告の場合は5%よりも高いか低いかで判断すると良いそうです。(詳しくはこちらの記事をご参照ください)

【流入数の改善方法】

平均クリック率が低い場合の、改善方法は下記の3つです。

①タイトル、ディスクリプションの改善

検索結果に表示される「タイトル」と「ディスクリプション」を修正しましょう。(下記の画像を参照)


これは、リスティング広告を出稿している場合にも、同じように改善する必要があります。

英語サイトにおける、「タイトル」と「ディスクリプション」の具体的な修正方法は、別の記事で解説する予定です。

②検索順位の改善

検索順位の改善も「平均クリック率」を高めるために必要です。

なぜなら、先ほどの【インプレッション数を確認する方法】で説明したように、ユーザーに御社の英語サイトの検索結果が直接見られていなくても、インプレッション数は増えるため、結果的に平均クリック率が低下するからです。

検索順位を高めるためには、SEO対策をする必要があります。(英語サイトのSEO対策の方法は別記事で解説予定です)

③バナー画像の改善(バナー広告を出稿している場合)

バナー広告(ディスプレイ広告)を出稿しており、インプレッション数は十分に獲得しているが、クリック率が低い場合は、バナー画像のデザインを見直した方が良いと言えます。

③問合せが少ない場合

「インプレッション数」と「流入数」は十分だが、「問合せ」の数が伸びないというパターンです。

【問合せ状況を確認する方法】

自然検索の場合も、広告を出稿している場合も、問合せ数はGoogle Analyticsで確認できます。

【問合せ状況の良し悪しを判断する方法】

まずSEO対策を行っている場合では、Google Analyticsの「コンバージョン率」という数字を確認します。(コンバージョン率とは、簡単に説明すると、御社の英語Webサイトが獲得した流入のうち、どれくらいの確率で問合せが獲得できたか、を表す確率を表す指標です)

英語サイトの「コンバージョン率」が高いか低いかを判断する方法として「自社の日本語サイトのコンバージョン率」と比較する、という方法があります。

例えば、御社の日本語サイトのコンバージョン率が2%で、御社の英語サイトのコンバージョン率が1%の場合だったとします。この場合、英語サイトのコンバージョン率が日本語サイトのそれより低いとわかるため、コンバージョン率が低いとわかります。

ただし、一般的に英語サイトのコンバージョン率は、日本語サイトよりも低くなる傾向があります。

なぜなら、御社の英語サイトの顧客となる外国企業にとって、現地の企業を差し置いて、日本企業にわざわざ問合せをする確率は、低くなる傾向があるからです。(輸送費がかかりコストが高くつく可能性があることや、言語が違うためコミュニケーション上の問題が発生する可能性もあるため)

ただし、アジアに所在する企業の場合は、日本製品の高品質イメージが優位に働く場合もあるため、むしろ英語サイトのコンバージョン率が高くなる場合もあります。

一方で、広告を出稿している場合、コンバージョン率が高いか低いかを判断することは難しいです。

広告のコンバージョン率は、業種、製品・サービスの単価で大きく変わるため、とにかく改善できるところはすべて改善することをおすすめします。(改善方法は別記事で解説予定です)

【問合せ数の改善方法】

問合せ数を改善する方法は、以下の2つがあります。

①サイト全体の改善

これは、サイトに存在するページ間の導線設計(リンクのつなぎ方)がうまくいっていない場合に有効な方法です。

具体的な改善方法は別記事で解説予定ですが、大まかには「ユーザーにとってほしい理想の行動の流れ」を決定し、「その行動を後押ししてあげる形でページ間のリンクを設置する」という流れで行います。

②個別ページの改善

サイトに掲載している個別のページを改善する方法です。

改善するべき箇所の例としては、ページ内の説明がわかりにくい、英語が読みにくい、お問い合わせフォームの入力項目が多すぎる、が当てはまるページが存在する場合は、そのページは改善が必要であると言えます。

また、問合せ率を向上させる方法として「カタログ・ホワイトペーパーを設置する」という方法があります。これは、問合せの前段階として顧客に資料をダウンロードさせ、信頼感を獲得することで、問合せに対するハードルを下げる目的で行われる施策です。

まとめ

本記事では、英語サイトを活用し「海外から問合せ」を獲得する方法について解説しました。

結論としては、反響を出すための方法は、日本語サイトのそれと大きな違いはありません。そのため、日本語サイト同様、「反響が出ない原因を特定し、改善する」というシンプルかつ王道な方法で英語サイトの改善を行うことが有効です。

弊社(テクノポート株式会社)は、英語サイトの制作・運用を通して、日本企業の海外販路開拓のサポートを行っています。私たちのサービス内容にご興味のある方は、まずは一度、弊社サービスサイトに目を通していただけると幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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【製造業】海外進出する5つの方法・進出方法の選び方(メリット・デメリットも解説)

テクノポートの稲垣です。本記事は、下記のような疑問をお持ちの方に読んでいただきたい内容です。

・海外進出するための方法の種類が知りたい
・それぞれの方法のメリット・デメリットが知りたい
・自社にあった海外進出の手法が知りたい

そこで本記事では、以下の内容を解説します。

▶︎海外進出する5つの方法
▶︎それぞれの方法のメリット・デメリット
▶︎自社にあった海外進出方法の選び方

なお本サイトを運営する弊社テクノポートは、Webサイトの制作・運用を通して製造業の海外進出のサポートをしています。本記事には、海外進出サポートを通して得られた知見を生かした内容も含まれています。

海外進出する5つの方法

日本企業が海外進出する5つの代表的な方法と、それぞれの方法のメリット・デメリットを紹介します。

①現地生産法人

進出先の国において工場を設立、または既存の工場を買収し自社製品の生産拠点を設ける方法です。

この方法は「現状の生産設備では供給が間に合わない」または「新しい生産拠点を設けることに明確なメリットがある」場合に取るべき方法であると言えます。

現地生産法人には、現地で部品製造をするパターンの他に、自社製品の組み立てに必要な部品を特定の国に輸出し、現地の自社工場で組み立てて販売するというパターンもあります。(例:東南アジアで日本車メーカーのエンジンを組み立てる)

現地生産法人の設立方法は、次の2つのパターンに分かれます。

①独資
自社の出資のみで生産拠点法人を設立

②合弁
現地や他国のパートナー企業との共同出資により生産拠点法人を設立

以下の記事では、フランスで受託加工業の会社を経営する方に「現地パートナー企業の見つけ方とビジネスの進め方」を伺った内容を掲載しています。現地パートナー企業の探し方を詳しく知りたい方は、参考にしてください。

メリット・デメリット

メリット デメリット
独資
  • 自社の裁量で会社経営が可能
  • 利益配分の必要がない
  • 海外企業に技術・ノウハウの流出抑止
  • 出資の負担が大きい
  • 販売を伴う場合、販売網の構築を自社で行う必要がある
  • 国や事業内容によって禁止される可能性がある
合弁
  • 投資額とリスクを軽減可能(パートナー企業と分担できるため)
  • パートナー企業のノウハウを利用可能(例:政治力、販売力、設備)
  • パートナー企業の選定に手間がかかる
  • パートナー企業と経営方針、配当方針に関して衝突する可能性がある

②現地委託生産

進出先で自社製品の製造に協力してくれる工場を探し出し、製品の製造を委託する方法です。必要に応じて、製品の製造に必要な原材料の現地供給、部品調達先の確保、技術者の派遣を行う必要があります。

この方法は「海外に生産拠点を持ちたいが、自社だけで生産拠点を出資することが難しい」場合に取るべき方法であると言えます。

委託生産方式には次の2つのパターンが存在します。

①OEM(Original Equipment Manufacturer)
委託側が企画、設計を行った製品を受託側が製造し、委託側が販売(例:iPhone)
②ODM(Original Equipment Manufacturer)
委託側が企画を行なった製品を、受託側が設計から製造まで行い、委託側のブランドを利用して販売(例:Xiomi)

メリット・デメリット

メリット(委託側) デメリット(委託側)
  • 受託側の製造能力を利用し、製造力不足を補うことが可能
  • 製造にかかる設備投資・人件費を削減可能
  • 製造工程を委託することで設計開発に人的資本を投入可能
  • 増産や製造ラインの変更に時間がかかる(例:新製品製造用のラインを作る際にかかる時間)
  • 製品の品質が受託側の技術力に依存する
  • 製造ノウハウが自社に蓄積されない

③代理店・販売店取引

進出先の国に拠点を有する販売代理店と契約し、その国における販売を委託する方法です。販売代理店との契約形態は、以下の2つのパターンに分かれます。

①独占販売契約
特定の代理店に自社の製品を販売する権利を独占的に付与する契約(販売地域、販売期間を設定することが一般的)

②非独占販売契約
代理店が自社の製品を含めて複数社の製品を販売しても良い権利を与える契約

また販売代理店には「代理店(エージェント)」と「販売店(ディストリビューター)」の2種類が存在します。

代理店(エージェント)
製品の販売代行を行い、売り上げ金額に応じて成果報酬を与える契約形態を取る

販売店(ディストリビューター)
製品を販売店側で購入し、現地で売る際に発生する差額を与える契約形態を取る

以下の記事では、ベトナムで販売店(ディストリビューター)を活用し、製品を販売した経験のある方にインタビューした内容をまとめています。販売店(ディストリビューター)の探し方から具体的な販売のコツに関心のある方は、参考にしてください。

メリット・デメリット

メリット デメリット
  • 販売ネットワークを活用可能(例:現地の得意先、料金の回収、保守点検、メンテナンス)
  • 人件費を削減(自社の営業用人材を用意する必要がないため)
  • 品質管理、価格管理が困難(価格や販売方法が代理店・販売店任せになるため)
  • 信頼できるパートナー探しの手間がかかる
  • 自社に販売ノウハウが蓄積されない

④商社・輸出業者

自社製品を国内の商社または輸出業者を通して代理販売してもらう方法です。「貿易の実務から現地での販売までを全て任せたい」という企業が取るべき方法であると言えます。

メリット・デメリット

メリット デメリット
  • 商社のノウハウを活用可能(例:販売網、人脈、海外市場情報)
  • 貿易の実務経験がなくても海外に製品を販売可能
  • 海外顧客との取引業務における自社の負担を抑えられる(例:与信管理、代金処理、顧客対応)
  • 手数料がかかる(例:商社に仲介費用を支払う)
  • ノウハウが蓄積されない(貿易業務を外部委託するため)
  • 顧客の声が届きにくい(例:市場、顧客のニーズが把握しにくい)

⑤直接販売

自社の製品を海外の顧客に直接販売する方法です。外国語Webサイトを運用し外国企業と取引を行うパターン、越境ECサイトを構築し自社製品を海外顧客に販売するパターンも直接貿易に分類されます。

「貿易の実務から現地での顧客対応までを全て自社で完結させたい」場合に取るべき方法だと言えます。

メリット・デメリット

メリット デメリット
  • 費用の削減(例:商社にかかる手数料、現地に人を送り込む費用)
  • 海外市場調査が可能(Webサイト運用を通して各国の市場ニーズを把握できるため)
  • 貿易に関するノウハウの蓄積、社員の育成
  • 貿易取引リスクを自社で負担(例:法律知識、貿易実務を行う人材の育成、物流業者の選定)
  • ノウハウが必要(例:Webサイトの制作・運用、翻訳)

自社にあった海外進出方法の選び方

以上5つの方法を踏まえた上で、自社にあった海外進出方法の選び方を見ていきましょう。今回は、製品の「製造」が目的である場合と製品の「販売」が目的である場合の2つの場合に分けて解説します。

以下の表に、企業が抱えている課題とその企業が取るべき進出方法をまとめています。

「製造」が目的の場合

取るべき方法 課題
①現地生産法人(独資)
  • 出資額はかかっても良いので、自社の裁量で製造したい
  • 製造で発生した利益は全て自社で獲得したい
  • 製造に関する技術情報を他社に公開したくない
①現地生産法人(共同出資)
  • 現地法人を独資で設立するまでの資金を捻出するのは難しい
  • 現地法人への共同出資に協力してくれるパートナー企業の候補がある
  • パートナー企業との共同経営をうまく進める自信がある
②現地委託生産
  • 現地製造にかかるコスト(設備投資、人件費)をできる限り抑えたい
  • 人的資本を可能な限り設計開発に投資したい
  • 現地での原材料調達、部品調達の経路が明確にイメージできる

「販売」が目的の場合

取るべき方法 課題
③代理店・販売店取引
  • 海外で製品を販売したいが、現地で営業拠点を作るまでの投資はしたくない
  • 現地での販売を請け負ってくれる代理店の候補がある
  • 海外での販売に不安があるので代理店に販売業務を任せたい
④商社・輸出業者
  • 海外に製品を販売したいが貿易実務の経験がない
  • 利益が少なくなってもいいので、外部委託して貿易リスクを軽減したい
  • 自社製品を海外で販売するためのネットワークを有する商社の候補がある
⑤直接貿易
  • 海外で製品を販売するためのコストをできる限り抑えたい
  • 外国語Webサイトを有している、もしくはこれから作成し運用していく予定がある
  • 海外企業との取引を通して貿易ノウハウの蓄積、社員の育成を実現したい

まとめ

本記事では、以下の5つの海外進出方法を解説しました。

  1. 現地生産法人:進出先の国で工場を設立、買収し生産拠点を設ける方法
  2. 現地委託生産:進出先の国で他社の製造設備を利用し製品を製造(OEM)もしくは設計・製造(ODM)を行う方法
  3. 代理店・販売店取引:自社製品を海外に拠点を有する代理店・販売店に販売代行してもらう方法
  4. 商社・輸出代行:自社製品の輸出・販売業務を委託する方法
  5. 直接貿易:海外企業と直接やりとりを行い、自社製品を販売する方法

自社の海外進出の方法を決める上で、本記事の内容を参考にしていただければ幸いです。

製造業が海外進出するべき3つの理由【メリット・デメリットも解説】

テクノポートの稲垣です。

本記事は、下記のような疑問をお持ちの方に読んでいただきたい内容です。

  • 「日本の製造業が海外進出するべき理由は?」
  • 「日本の製造業が海外進出した場合のメリット、デメリットは?」
  • 「現状、日本の製造業はどの国に進出しているの?」

そこでこの記事では、下記の内容を解説します。

▶︎ 製造業が海外進出するべき3つの理由
▶︎ 海外進出のメリット、デメリット
▶︎ 日本企業の海外進出国

なお本記事で使用するデータは、すべて参考文献へのリンクを記載しています。ご自身でデータの内容を確認したい方は、ご参照ください。

製造業が海外進出するべき3つの理由

まず、製造業が海外進出するべき3つの理由から解説します。

①日本市場の縮小

日本経済は縮小傾向にあり、日本企業への海外進出の必要性は年々高まっています。国際貿易投資研究所の資料(※1)によると、日本の実質GDP成長率が2021年以降マイナスに転じる予想がされています。

少子高齢化の影響により労働人口は減少が続いており、将来若い労働力不足に直面する企業が増加すると予想されています。(現在一人当たりの労働生産性が向上しているため、大きな問題になっていない)

統計局の調査(産業別就業者数の推移(※2))によると、製造業の労働人口も減少傾向が続いており、海外に労働力を求めて進出するケースも増加すると予想されます。

参考資料

※1 2035 年に向かって縮小する日本経済
※2 労働力調査 (基本集計)

②新興国の急成長

新興国の企業が急成長しており、世界中のあらゆる産業で競争が激化しています。それに伴い、世界中の企業が国内のみではなく、世界のシェアを獲得する必要性が高まっています。

競争が激化している産業の代表的な例として、スマートフォン分野(※3)が挙げられます。特に中国の低価格かつ高品質なスマートフォンブランド(例:ファーウェイ(Huawei)、シャオミ(Xiaomi)、オッポ(OPPO))は、新興国を中心に世界中でシェアを拡大しています。

この急成長の背景として、政府主導の研究開発への投資、インフラの発達による生活水準の向上(消費者の購買意欲の増加)が挙げられます。特に、後者がテクノロジー企業へ与える影響力は大きく、新興国においても高品質・高単価製品への需要が高まっています。

したがって、海外進出を通して日本企業の高品質製品・技術を新興国市場に供給する機会は増加すると考えられます。

参考資料

※3   世界の製造業「中国」

③日本企業の技術力

競争が激しい日本市場で生き残っている日本企業は、世界に通用する技術力を持っている可能性が高いと言えます。その要因として、日本企業の品質に対する意識の高さが挙げられます。

弊社では、過去に世界各国で製造業に従事する日本人の方に、日本の製造業の品質について海外企業側の見解をインタビューしました。記事へのリンクは下記をご参照ください。

海外進出のメリット

次に、海外進出の4つのメリットを解説します。

①販路拡大

海外進出により、国内の既存の顧客に加えて、海外の新規顧客や取引先を増やすことができるというメリットがあります。先にも述べたアジアをはじめとする新興国市場の急成長を考慮すると、販路開拓のメリットは今後さらに大きくなると予想されます。

また、複数の国に顧客、取引先を持つことで、一つの供給先に依存しなければならないリスクを軽減させることにもつながります。

②コスト削減

海外に工場を設置し、現地の労働力を利用することでコスト削減を達成することができます。加えて、製品の製造、加工に必要な原材料を現地で調達することで輸送コストを削減することも可能です。

また、外国企業向けに税制優遇をしている国に進出することで、日本よりも安い税率を利用してコストを削減することも一つの方法です。

③製品・サービスの専業化

一般に市場規模の大きさと専門性をもったサービスに対する需要の大きさは比例します。つまり、日本国内では専門的すぎるため需要が見込めなかった製品・技術も、商圏を広げることで十分な需要が見込める可能性があります。

日本企業の専門性の高い技術力は、世界市場の中でこそ真の力を発揮するとも言えます。

④人材育成

海外進出という事業を通して、自社の人材を育成できるというメリットもあります。海外とのコミュニケーションや書類作成、交渉の経験を重ね、グローバルに通用するビジネススキルの向上、自社独自のノウハウの蓄積が可能です。

社員の語学力向上、モチベーションの向上といった副次的なメリットも期待できます。

海外進出のデメリット

次に、海外進出の4つのデメリットを解説します。

①金銭コスト

1つ目は、海外進出のための準備コストです。

  • 情報収集コスト(例:市場調査費、現地調査のための渡航費、人件費)
  • Webサイト関連コスト(例:海外販路開拓用のWebサイトの構築、運用費用、現地語への翻訳コスト)

が挙げられます。

2つ目は、現地で事業を開始するためのコストです。

  • 海外法人設立費用(例:事務所を作成し登記するための事務費用)
  • ビザ発行費・ライセンス費(例:現地での労働ビザ発行費用、業種によってはライセンス費)
  • 事務所家賃(例:事務所を賃貸で借りる場合に発生)

が挙げられます。

②政治的不安定さ

進出先の国における政治的不安定さにより企業がマイナスの影響を受ける場合があります。例えば、政治的不安定さを引き起こす要因として、以下のようなものが挙げられます

  • 政権交代による進出企業に対する扱いの変化
  • 戦争や内乱に伴う政治の不安定化
  • 日本との外交上のトラブル
  • 反日感情による製品・サービスへの影響

③為替変動

外貨を円貨に換算する為替レートによって受取円貨額、支払円貨額が変動することで企業が損失を被る場合があります。

例えば、2016年にイギリスの国民投票でEU離脱派が勝利を収めました。当時の世界の投資家はユーロやポンドへの信用を疑い、極東のお金持ちの国である日本(2015年末で日本の対外純資産は25年連続世界トップ)へと投資先をシフトしました。

結果、日本の輸出産業は急激な円高により大きな打撃を受けました。このように、海外に進出し日本国外と取引を行う際は、世界規模の経済の動向により、損失が生じる場合があります。

ただし、為替変動はメリットにもなり得ることも留意してください。(先の例では、日本の輸入産業は円高の恩恵を受け、好調に転じたことも事実です)

④文化・宗教上の問題

対象国の人々の文化や宗教が持つ違いによって発生する諸問題もデメリットの一つとして挙げられます。消費者の好みやニーズは国や地域によって異なるため、海外向けの商品マーケティングを行う際は、対象国の人々の文化や宗教に対する配慮も欠かせない要素になります。

日本企業の海外進出国

続いて現在、日本企業が進出先に選んでいる企業を紹介します。下の図は、日本企業が今後事業拡大を図る地域をアンケート調査した結果です。


出典:2020年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(ジェトロ海外ビジネス調査)

上の結果から、多くの日本企業がアジア地域の国に進出を考えていることが分かります。また、上位5カ国の地域に進出する理由として下記が挙げられます。(弊社で行った調査の結果を参照しています)

順位
進出の目的
1中国取引の拡大、製造拠点の設立、労働力の確保、人件費の削減、現地企業との業務提携
2ベトナム現地日系企業への部品供給、人件費の削減、現地企業への部品供給、供給先の分散
3アメリカ取引の拡大、現地企業への部品供給、現地企業との業務提携
4タイ現地日系企業への部品供給、人件費の削減、現地企業への部品供給、供給先の分散
5台湾現地日系企業への部品供給、現地企業への部品供給、供給先の分散、現地企業との業務提携

詳しくは、下記の記事をご参照ください。

1位 中国

2位 ベトナム

3位 アメリカ

4位 タイ

5位 台湾

まとめ

本記事では、以下の内容を解説しました。

  • 製造業が海外進出するべき3つの理由:①日本市場の縮小、②新興国の急成長、③日本企業の技術力
  • 海外進出のメリット:①販路拡大、②コスト削減、③製品・サービスの専業化、④人材育成
  • 海外進出のデメリット:①金銭コスト、②政治的不安定さ、③為替変動、④文化・宗教上の問題
  • 日本企業の海外進出国:1位 中国、2位 ベトナム、3位 アメリカ、4位 タイ、5位 台湾

自社の海外進出の判断を決める上で、本記事の内容を参考にしていただければ幸いです。

【BtoB製造業】海外のWebサイトデザインの特徴

テクノポートの稲垣です。

今回は、海外(欧米)Webサイトのデザインと日本企業の日本語Webサイトデザインそれぞれの特徴を洗い出し、両者の違いを紹介します。Webサイトデザイン調査では、BtoB製造業の外国企業、日本企業3社ずつのWebサイトデザインを調査しそれぞれの特徴を比較した結果をまとめています。

海外向けWebサイトのデザインを検討中の方は、本記事で紹介する内容をご参考にしていただければ幸いです。

Webサイトデザインの違い

一般的に、海外(欧米)Webサイトと日本企業の日本語Webサイトのデザインの違いとして、以下のような特徴が挙げられると言われています。(あくまで一般的な傾向であることをご理解ください。)

海外(欧米) 日本
重点 ・製品中心(製品を全面に押し出す) ・会社中心(会社の事業方針、社長のメッセージが主張)
情報量 ・文字が少ない
・画像、動画が多い
・視覚的
・文字が多い
・丁寧に説明する
・説明的
見た目 ・シンプルで洗練されたデザイン
・重要な情報を目立つように配置
・スタイリッシュ、クールな印象
・カタログのようなデザイン
・細かな情報を整理して配置
・清潔感、安心感を与える印象

Webサイトデザイン調査

それでは、上記の傾向が実際のWebサイトでどのように反映されているのか見ていきましょう。今回は、産業用ロボット業界、工作機械業界、表面処理加工業界で大手の企業のWebサイトデザインを比較しました。

産業用ロボット業界

Righthand Robotics(アメリカ)


参照:Righthand Robotics | RightPick™ System

特徴
  • シンプルでスタイリッシュなデザイン
  • 画像を大胆に配置し、余白が広くとることで製品の優雅なイメージを演出している
  • 画像が製品のイメージ、説明文が詳細な技術の内容を伝える役割として分担されている

オムロン(日本)


参照:産業用ロボット | ロボティクス | オムロン制御機器

特徴
  • シンプルで清潔感のあるデザイン
  • ページ内に画像と必要最小限の説明がコンパクトに整理されている
  • 画像が見出し的な役割を果たしており、スクロールするだけでおおよそのページの内容が把握できる構成になっている

工作機械業界

Doosan Machine Tools(アメリカ)

 


参照:DNM Series | Vertical Machining |… | Doosan Machine Tools America

特徴
  • 躍動感があり力強いデザイン
  • 製品の色とWebサイトデザインの配色が揃えてあり、Webサイトと製品が一体となってユーザーに訴求する構成になっている
  • 製品の力強さを強調するために、力強い印象を与えるフォントが使用されている

オークマ(日本)


参照:5面加工門形マシニングセンタ MCR-BⅤ | 製品情報 | オークマ株式会社

特徴
  • シンプルで清潔感のあるデザイン
  • 文章による説明がメインで画像は補足的な役割
  • 余白が少なくページ内に製品の詳細な情報が丁寧に説明されている

表面処理加工業界

Precision Micro(ドイツ)


参照:Stainless Steel Etching | Fast, Reliable Etching Service | Precision Micro

特徴
  • クールで洗練された印象
  • 文章、箇条書き、画像がバランス良く配置されており、ニーズの異なるユーザーにも対応できる構成になっている
  • 1ページの内でユーザーが必要な情報の大枠が分かるように構成されている

(株)日本エッチング(日本)


参照:事業案内/シボ加工

特徴
  • シンプルで清潔感のある印象
  • 必要最小限の文章と画像が綺麗に配置されている
  • ユーザーに分かりやすいように、短いページに伝えたい情報がコンパクトにまとめられている

調査結果

今回の海外Webサイトデザインの調査で得られた知見をまとめます。

海外(欧米) 日本
配色
  • 黒、紺、紫を背景色に設定し、クールでプロフェショナルな印象を演出
  • 製品の色と似た色をメインカラーに使用し、Webサイトと製品が一体となって訴求する構成になっている
  • 白を背景色に設定し、シンプルで清潔感のある印象を演出
  • コーポレートカラーをWebサイトのメインカラーに設定し、Webサイトの配色と製品の色に明確な相関関係がない場合が多い
画像と文章の配置
  • 画像はイメージを訴求用、文章は詳細な説明用、と明確に役割分担がされており、視覚的にも論理的にも分かりやすい構成になっている
  • 画像と説明用の文章が近い位置に配置されており、視覚と論理の両方を組み合わせてユーザーに製品・技術を説明している
ユーザーへの訴求方法
  • アメリカのWebサイトは、製品の特徴をWebサイトのデザインを利用してアピールする傾向がある(例:余白を大きく設定→優雅さをアピール、力強いフォント→製品の力強さをアピール)
  • お問い合わせフォームがほぼ全てのページの最下部に設置してある
  • Webサイトで積極的に製品を売り込む印象は欧米のWebサイトに比べて少なく、製品・技術の特徴を丁寧に語ることでユーザーに信頼感と安心感をアピールする傾向がある
  • お問い合わせの前段階として「資料ダウンロード」を設置する場合が多い

日本企業が英語Webサイトを制作時に記載すべき情報

日本企業が英語Webサイトを制作する時に記載すべき情報をまとめます。

  • 決済方法の記載:アメリカではクレジットカードを利用した決済がビジネスでも主流であるため、決済方法の記載は必要
  • 返品の可否:アメリカでは返品自由な企業がほとんどであるため、返品が不可であることが不利に働く場合が多い
  • サポートの有無:外国企業の場合、不具合があったときに支店と直接やり取りできるか、どのようにサポートするのかに関する情報は製品購入者に信頼感を与える上で重要

まとめ

今回は、海外(欧米)Webサイトと日本語Webサイトのデザインの違いを実際に調査し、その結果を比較しました。調査の結果から得られた知見を御社の外国語Webサイト制作時に役立てていただければ幸いです。

世界の製造業「ベトナム」

テクノポートの稲垣です。若い年齢の人口が豊富なベトナムは、労働力に長けており、製造業の進出を考えている企業も多いのではないでしょうか。

今回は「ベトナムの製造業」の実態について紹介します。ベトナムへの進出を検討している方や、ベトナムの製造業の現状を知ることができますので、ぜひ参考にしてみてください。

まずはこちらの表をご覧下さい。


出典:2020年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(ジェトロ海外ビジネス調査)

上記の表は、JETROが行った日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査から引用したものです。左の列に記載されている国名は日本企業が次の事業拡大先として選んだ地域が順に並んでおり、ベトナムは中国に次いで第2位にランクインしています。

日本総研の調査によると、ベトナムが日本企業からの注目を集める理由として、中国の輸出管理規制強化を考慮したチャイナプラスワン(中国以外の国へ拠点を設けリスクを分散させる経営戦略)が盛んになってきたことが挙げられます。

今回は以上で紹介したように、中国に次ぐ日本企業の進出先として大きな注目を集めるベトナムの製造業を日本企業の視点から掘り下げていきます。

参考資料

[1] 2020年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(ジェトロ海外ビジネス調査) | 2021年 – 記者発表 – お知らせ・記者発表 – ジェトロ
[2] チャイナ・プラスワンで優位に立つベトナム|日本総研

基本情報

  • 正式名称:ベトナム社会主義共和国(Socialist Republic of Viet Nam)
  • 首都:ハノイ(Hanoi)
  • 元首:グエン・スアン・フック(2021年4月~)
  • 首相:ファム・ミン・チン(2021年4月~)
  • 通貨:ドン(1ドン=0.0047 円 ※2021年4月27日時点)
  • 人口:約9759万人
  • 面積:約33万km2
  • 公用語:ベトナム語
  • 宗教:仏教(80%)、キリスト教(9%)、イスラム教、カオダイ教、ホアハオ教、ヒンドゥー教
  • 平均寿命:男 70.9歳、女 76.2歳

参考資料

[3] ベトナム基礎データ|外務省
[4] ベトナムの基本情報|地球の歩き方
[5] Vietnam | History, Population, Map, Flag, Government, & Facts | Britannica
[6] ベトナム社会主義共和国主席 – Wikipedia
[7] ベトナムの首相 – Wikipedia

産業構造

まずはベトナムの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はベトナムの国内総生産(GDP)の内訳の推移を示したグラフです。

データ引用元:Vietnam: sectoral composition of the economy | TheGlobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • GDPに占める製造業の割合は近年は横ばい傾向
  • 他のASEAN近隣諸国と同様に、サービス産業が拡大する一方で、農業の割合が減少傾向

現状

  • 製造業のPMIは、2021年3月に53.6を記録し、新型コロナウイルス発生以降、最高を記録
  • 2020年のGDPは前年比2.9%の増加を記録(中国の増加率2.3%を上回りアジアでトップ)

今後

  • 2021年のGDPは前年比6.6%の増加を記録する見通し(輸出主導型の製造業、国内の需要回復が主な理由)
  • Fitch Solutionsの調査によると、ベトナムは今後、中国に代わる製造業の拠点として世界中の企業からより一層の注目を集める予想

参考資料

[8] Vietnam: sectoral composition of the economy | TheGlobalEconomy.com
[9] Manufacturing value added by country, around the world | TheGlobalEconomy.com
[10] Vietnam Purchasing Managers Index (PMI), manufacturing, March, 2021 – data, chart | TheGlobalEconomy.com
[11] Vietnam Overview
[12] Vietnam is Asia’s top-performing economy in 2020 amid Covid pandemic

製造業全体

次に、ベトナムの製造業の調査結果を紹介します。下の図は、ベトナムの製造業が生み出した付加価値額の推移を示すグラフです。(縦軸は10億USドル)


データ引用元:Vietnam Manufacturing value added – data, chart | TheGlobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2011年以降、増加が続く
  • ベトナムの製造業のGDPは2019年時点で約432億USドルで世界第35位

現在

  • 製造業用の土地の使用率がここ2018年から急速に増加し、2020年3月時点で74%が使用されている(中国への過度な依存を避ける企業が増加していることが主な要因)
  • ベトナムの人件費は中国の1/3〜1/2程度であり、海外企業の製造拠点として注目を集めている

今後

  • Navigos Groupの調査によると、製造業の急拡大に伴い、熟練労働者の不足と労働者の賃金上昇が現在より一層深刻化する見通し
  • ベトナム国内のサプライヤーが不足しており、今後いかに中国からの輸入に対する依存を減らすかがベトナム製造業成長の鍵になる予想

参考資料

[13] Vietnam Manufacturing value added – data, chart | TheGlobalEconomy.com
[14] Manufacturing value added by country, around the world | TheGlobalEconomy.com
[15] Global manufacturers are flocking to Vietnam. Is it ready? – Nikkei Asia
[16] Growing industries in Vietnam – Google SearchTop 5 promising industries for international businesses in Vietnam

製造業の内訳

次に、ベトナム製造業の内訳を紹介します。下の図は、ベトナム製造業の各分野が生み出した付加価値額を示すグラフです。グラフの色は青色:2006年、橙色:2011年、灰色:2016年を表しています。


データ引用元:VIET NAM INDUSTRY WHITE PAPER 2019 (SUMMARY).pdf

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2016年における付加価値額トップ3の産業

1位:エレクトロニクス産業(約127億U.Sドル)
2位:食品産業(約105億U.Sドル)
3位:衣料品産業(約68.3億U.Sドル)

  • 2016年における輸出額トップ3の産業

1位:エレクトロニクス産業(約592億U.Sドル)
2位:衣料品産業(約292億U.Sドル)
3位:畜産・水産業(約169億U.Sドル)

現在

  • 国内の電気需要の拡大に伴い、エネルギー産業の成長が続いており、歴史は浅いものの東南アジアにおいてトップ3の生産国になっている
  • ベトナム製造業への投資は主にエレクトロニクス関連産業(例:Appleのイアフォン製造、SHARPの液晶ディスプレイ製造)

今後

  • 今後、鉄鋼の輸出がベトナム製造業の主要な成長要因として機能する見通し
  • エレクトロニクス産業の輸出額は全体の40%を占めており、半導体産業の成長に伴い今後も拡大を続ける見通し

参考資料

[15] VIET NAM INDUSTRY WHITE PAPER 2019 (SUMMARY).pdf
[16] Which economic sectors are predicted to grow in Vietnam next year? | Vietnam Times
[17] Rags to Riches: Vietnam’s Growing Electronics Industry | SEMI

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点から、ベトナムの製造業市場を調査した結果です。下の図は、ベトナムに進出した日本企業数の推移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計(平成30年要約版)

また下の図は、ベトナムに進出している日本企業の業種を調査した結果です。


データ引用元:海外進出日系企業拠点数調査|外務省

これらのグラフと関連データから以下のことが分かります。

  • ベトナムに進出する日本企業の数は統計開始から一貫して増加傾向
  • 2019年12月時点における日本企業数は1,943社(JETROの調査)

現状

  • 進出日本企業の業種は製造業が最も多く、全体の約49.4%を占める(2019年のJETROの調査)
  • 進出日本企業のうち約52.4%が中小企業(2019年のJETROの調査)

今後

  • 進出企業の今後1〜2年の事業方針の調査では、63.9%の企業が拡大と回答しASEANではトップの数字(2019年のJETROの調査)
  • ベトナムの投資環境リスクの調査では、61.1%の企業が人件費の拡大と回答しており、今後も人件費の高騰は避けられない予想

参考資料

[18] 概況・基本統計 | ベトナム – アジア – 国・地域別に見る – ジェトロ
[19] 20200024.pdf
[20] ベトナム進出日系企業、事業拡大意欲はASEANで最大 | 現地発!アジア・オセアニア進出日系企業の今-2020 – 特集 – 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ

ベトナムに進出した日本企業

ここからは、実際にベトナムに進出した日本の製造業企業3社を紹介します。

株式会社 橋本クロス

▶基本情報

  • 本社:滋賀県長浜市
  • 従業員数:45人
  • 事業内容:工業用ワイピングクロス製造販売

▶概要

工業用の不織布製品の製造・販売を行う企業。2018年にベトナムにおける製造拠点として橋本クロスベトナム(HCVN)を設立。製造拠点設立の背景には、日本国内の需要の縮小への対応、人件費の削減、東南アジアでの需要拡大、現地日本企業への製品提供などが挙げられる。同社は2019年に新工場を設立し、将来的には日本企業に加え外国企業からの需要に応える狙い。

参考資料

[21] ベトナム社会主義共和国において日本企業が実施する不織布製品の製造・販売事業に対する融資 | JBIC 国際協力銀行

増田ビニール株式会社

▶基本情報

  • 本社:愛知県名古屋市
  • 従業員数:50人
  • 事業内容:樹脂・ゴム製品の押出成形加工による製造・販売

▶概要

プラスチック押出成形事業を主に行う企業。2015年に同社初となる海外子会社、MASUDA VINYL VIETNAM CO.,LTDを設立。設立の主な目的は、ベトナムを始めとする東南アジアに拠点を置く日系企業への製品の供給。また、東南アジアでの需要の拡大が続く建材部品、オフィス関係の部品にも力を入れて生産体制を強化している。

五光発條株式会社

▶基本情報

  • 本社:神奈川県横浜市
  • 従業員数:50人
  • 事業内容:精密バネの製造・販売

▶概要

OA機器、カメラ、自動車部品などに使用される精密バネの製造を行う企業。2004年にベトナムでGOKO SPRING VIETNAMを設立。同社は、ベトナム工場を含めてタイ、インドネシアにも拠点を有しており、海外での製造拠点の開拓を積極的に行っている。

まとめ

今回はベトナムの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査結果を以下にまとめます。

  • 産業構造:GDPに占める製造業の割合は近年は横ばい傾向、2020年のGDPは前年比2.9%の増加を記録(中国の増加率2.3%を上回りアジアでトップ)
  • 製造業全体:ベトナムの人件費は中国の約1/3〜1/2程度、今後は「熟練労働者の不足」と「労働者の賃金上昇」が深刻化する見通し
  • 日本企業の進出状況:2019年12月時点における日本企業数は1,943社(JETROの調査)進出日本企業の約49.4%が製造業
  • ベトナムに進出した日本企業:進出の主な目的は、現地日本企業への部品供給、人件費の削減、東南アジアの需要拡大に対応

今回の内容が、ベトナム進出を視野に入れている方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑰「インド」

テクノポートの稲垣です。今回は「インドの製造業」を紹介します。

「Make in India」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?これはインド政府が、インドを世界の製造業の中心拠点にするために掲げている政策です。この政策の中には、インドのGDPに占める製造業の割合の増加、製造業分野における1億人の新規雇用の創出(今後5年間)、先端産業に対する積極的な投資活動などが含まれています。

以上のことからも分かるように、インドは今、国を挙げて製造業の強化に取り組んでおり、世界中の企業からも中国に次ぐ世界の工場になり得る存在として注目を集めています。今回はそのインドの製造業を日本企業の目線から掘り下げていきます。

基本情報

  • 正式名称:インド共和国(Republic of India)
  • 首都:ニューデリー(New Delhi)
  • 大統領:ラーム・ナート・コーヴィンド(2017年7月~)
  • 首相:ナレンドラ・ダモダルダス・モディ(2014年5月~)
  • 通貨:インド・ルピー(1インド・ルピー=1.44 円 ※2021年2月28日時点)
  • 人口:約13億6,641万人
  • 面積:約329万km2
  • 公用語:ヒンディー語(他に憲法で公認されている州の言語が21ある)
  • 宗教:ヒンドゥー教徒79.8%、イスラム教徒14.2%、キリスト教徒2.3%、シク教徒1.7%、仏教徒0.7%、ジャイナ教徒0.4%
  • 平均寿命:男 67.6歳、女 70.1歳

参考資料

[1] インド基礎データ|外務省
[2] インドの基本情報|地球の歩き方
[3] India | History, Map, Population, Economy, & Facts | Britannica

産業構造

まずはインドの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はインドの国内総生産(GDP)の内訳の推移を示したグラフです。


データ引用元:India: sectoral composition of the economy | TheGlobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • GDPに占める製造業の割合は2008年頃まで緩やかに増加を続けるが、以降は減少傾向
  • インドのGDPは2019年時点で約2兆9,400億USドル世界第7位

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は、2020年10月以降55を上回る高水準を維持(2021年1月時点で57.7で世界第8位)
  • 2020年のインドのGDPは、新型コロナウイルスによる影響で前年比8.0%のマイナスを記録

今後

  • IMFの調査によると、2022年度のインド経済の成長は11.5%になる見通し(ワクチンの普及による感染拡大の防止効果、死亡率の低下による)
  • インド政府は医療システムとインフラにGDPの5%(2020年ー2021年は3.5%)を投資し、10年後に世界平均である10%にまで増加させる見通し

参考資料

[4] India: sectoral composition of the economy | TheGlobalEconomy.com
[5] GDP, constant dollars by country, around the world | TheGlobalEconomy.com
[6] India Purchasing Managers Index (PMI), manufacturing, January 2021 – data, chart | TheGlobalEconomy.com
[7] Beyond the pandemic: India’s economic outlook – The Economic Times
[8] India Economic Outlook | Deloitte Insights

製造業全体

次に、インドの製造業の調査結果を紹介します。下の図は、インドの製造業のGDPの推移を示すグラフです。(縦軸は10億USドル)


データ引用元:India Manufacturing value added – data, chart | TheGlobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2013年以降増加傾向であったが、2017年から横ばいの状態が続く
  • 2018年の製造業が生み出す付加価値額は、3,957億USドルで世界第6位

現状

  • 自動車関連会社の多くは、サービスのデジタル化、部品輸入ルートの拡大(中国への過度な依存から脱却するため)、中古車販売業への参入など、自社の利益を確保のためにさまざまな工夫をしている
  • 新型コロナウイルスによるロックダウンの影響により、テレコミュニケーション産業が急速な成長を遂げている(例:インターネットインフラ事業、AI関連事業)

今後

  • 「Make in India」のスローガンのもと、インドを世界の製造業の中心拠点にするための政策が増加する見通し(例:インド政府は2022年までに1億人の製造業関連の雇用を生み出す予定)
  • インドの製造業GDPは、2025年までに1兆USドルに到達する見通し

参考資料

[9] India Manufacturing value added – data, chart | TheGlobalEconomy.com
[10] Manufacturing value added by country, around the world | TheGlobalEconomy.com
[11] India Economic Outlook | Deloitte Insights
[12] Manufacturing Sector in India: Market Size, FDI, Govt Initiatives | IBEF

製造業の内訳

次に、インド製造業の内訳を紹介します。下の図は、インド製造業の各分野の成熟度を示すグラフです。カラーバーの色は黒色:成熟産業、水色:未発展産業、青色:成長産業を表しています。

データ引用元:A new growth formula for manufacturing in India | McKinsey

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業の3つの分類は次の通り。
  1. 成熟産業(自動車、自動車部品、 資本財・工作機械、医薬品)
  2. 未発展産業(化学、農業・食品、金属・材料、衣料品、家具、革製品、樹脂)
  3. 成長産業(電子部品・半導体、航空、国防、再生可能エネルギー)
  • 2020年から2027年の間に、製造業の生み出す付加価値額は約3,200億ドル増加する見込みであり、増加額の80%は以下の6つの産業が貢献する見通し(1. 化学品・石油化学、2. 農業・食品加工、3. 電子・半導体、4. 資本財・工作機械、5. 鉄鉱石・鉄鋼、6. 自動車部品・車両)

現在

  • インド製造業が現在直面している課題は大きく以下の3つに集約される
    1. 生産性:インドの労働生産性はインドネシアの1/2倍、韓国・中国の1/4以下(特にエレクトロニクス産業分野では、韓国と比較すると1/18倍
    2. 技術力:産業として成熟しきっていない分野では先進国と比較し技術力不足が課題
    3. 資本金の調達:インドの製造業が 今後7年間でGDPを2倍にするためには、合計1.0兆ドル~1.5兆ドルの投資が必要

今後

  • ICEAは、2025年までにノートPCとタブレットの生産能力が1,000億USドルにまで拡大できる可能性があると予測
  • 2019年のインドの自動車産業の市場規模は世界第4位であり、2021年には日本を抜いて世界第3位になる見通し(若者世代への2輪車と小型車に対する需要が主な要因)

参考資料

[13] IBEF Presentation
[14] Manufacturing Sector in India: Market Size, FDI, Govt Initiatives | IBEF
[15] Automobile Industry in India, Indian Automobile Industry, Sector, Trends, Statistics
[16] A new growth formula for manufacturing in India | McKinsey

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点から、インドの製造業市場を調査した結果です。下の図は、インドに進出した日本企業数の推移を示したグラフです。


データ引用元:インド進出日系企業リスト – Embassy of Japan in India

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • インドにおける日本企業の数は年々増加傾向(ただし年成長率は低下)
  • 2019年における進出企業数は増加したが、拠点数は減少した(要因として合併統廃合により拠点が整備されたことが考えられる)

現状

  • 2019年における拠点数が多い上位5州は以下の通り(1位 ハリヤナ州:406社、2位 マハーラーシュトラ州:247社、3位 カルナータカ州:217社、4位 タミル・ナドゥ州:203社、5位 デリー準州:157社)
  • 業種別では製造業が全体の49%を占め、その中でも輸送用機械器具(10.3%)、化学工業(5.9%)、電気機械器具(5.2%)、金属製品(4.7%)の4業種が製造業企業の約半数を占める

今後

  • これまでは日系自動車関連企業の進出が主であったが、インドのインフラ整備に伴い情報通信業や各種サービス関連業企業の進出が増加傾向にある
  • インドでビジネスを行う日本企業が直面しており、今後解決すべき課題として、以下の3つが挙げられる
    1. 人件費の高騰:インド人従業員の人件費はASEAN諸国と比べて低くはなく、昇給率も10%を超えている
    2. 認知度不足:ASEAN諸国ほど日本ブランドへの認知はない(例:家電量販店の商品の8割は韓国製、1割がインド製、1割が日本製)
    3. 税制:インドに拠点を置く企業が輸入する材料に対しても関税負担が重くかかるため、材料の調達先をインド国外に持つ企業はビジネスモデルの見直しが必要

参考資料

[18] インド進出日系企業リスト – Embassy of Japan in India
[19] 2019年のインド進出日系企業数は前年比微増の1,454社(インド) | ビジネス短信 – ジェトロ
[20] インドに進出した日本企業が苦戦しているワケ 数字を狂わせる「2つのからくり」 WEDGE Infinity(ウェッジ)

インドに進出した日本企業

ここからは、実際にインドに進出した日本の製造業企業3社を紹介します。

株式会社電溶工業

▶基本情報

  • 本社:山梨県中巨摩郡
  • 従業員数:105人
  • 事業内容:抵抗溶接機(スポット溶接ロボット)の製造・販売

▶概要

自動車製造のための抵抗溶接機の開発・生産・販売を行う。2015年にインドの製造工場用グループ会社Denyo Manufacturing India Pvt. Ltd.を設立。自動車メーカー各社の製造拠点のグローバル化に伴い、同社はインドの他にも中国・アメリカ・タイに製造拠点を有しており、海外進出を積極的に展開している。

株式会社 コイワイ

▶基本情報

  • 本社:神奈川県小田原市
  • 従業員数:150人 ※関係会社含め
  • 事業内容:鋳物の製造・販売、機械加工

▶概要

3Dプリンター砂型積層装置を用いた鋳物造りを行う。2011年にインド・カルナータカ州バンガロールに現地法人KOIWAI INDIA PRIVATE LIMITEDを設立。2016年には、ラジャスタン州ニムラナ工業団地に工場建設用の土地を確保し、現地での金型鋳造、熱処理加工、機械加工を行うためのインド工場の開設に力を入れている。

シグマ株式会社

▶基本情報

  • 本社:広島県呉市
  • 従業員数:180人
  • 事業内容:輸送機器精密部品、セキュリティー機器の製造・販売

▶概要

高品質の成形技術を生かした自動車部品の製造を行う。同社は海外展開を行う上で、自動車生産台数1位の中国、3位のインド市場で現地生産を行うことを目的に、2007年に中国現地法人を設立し、2013年にインド現地法人を設立。2017年にインドにおいて工場を立ち上げ、2018年から創業を開始。現在では積極的にインド人従業員を採用し、現地の日系企業および現地企業への部品の供給に力を入れている。

参考資料

[21] シグマ株式会社:ゼロからでもリスクがあっても海外に向かうのは、そこに「未来」があるからです | ジェトロ活用事例 – ジェトロ

まとめ

今回はインドの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査結果を以下にまとめます。

  • 産業構造:製造業がGDPに占める割合は2008年以降減少傾向、2022年のインドの経済成長は11.5%になる見通し
  • 製造業全体:「Make in India」のスローガンのもと、インドを世界の製造業の中心拠点にするための動きが加速すると考えられる、インドの製造業GDPは2025年までに1兆USドルに到達する見通し
  • 製造業の内訳:インド製造業の主力産業は自動車自動車部品資本財・工作機械医薬品の4分野、2027年までに以下の6分野(1. 化学品・石油化学、2. 農業・食品加工、3. 電子・半導体、4. 資本財・工作機械、5. 鉄鉱石・鉄鋼、6. 自動車部品・車両)がインド製造業の成長において大きな影響を与えると考えられる
  • 日本企業の進出状況:インドにおける日本企業の企業数は年々増加傾向(ただし年成長率は低下)、業種別では製造業が全体の49%を占め、その中でも輸送用機械器具(10.3%)、化学工業(5.9%)、電気機械器具(5.2%)、金属製品(4.7%)の4業種が製造業企業の約半数を占める

今回の内容が、インド進出を視野に入れている方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑯「台湾」

テクノポートの稲垣です。今回は「台湾の製造業」を紹介します。

台湾は、新型コロナウイルスへの対応で世界的に注目を集めました。その成果の一つとして、台湾中央銀行は2020年の経済成長率を前年比2.58%と発表し、新型コロナウイルスによるマイナス成長に苦しむ諸外国とは対照的な結果を示しました。

2020年の台湾の経済成長を支えた要因として、台湾が誇るIT産業の成長が挙げられます。今回はそのIT産業を筆頭に、世界の最先端産業の中心的存在になりつつある台湾の製造業を日本企業の目線から掘り下げていきます。

基本情報

  • 正式名称:中華民国・台湾(Republic of China, Taiwan)
  • 首都:台北(Taipei)
  • 元首:蔡英文 総統(2016年5月~)
  • 通貨:ニュー台湾ドル(1ニュー台湾ドル= 3.75円 ※2021年2月14日時点)
  • 人口:約2,357万人
  • 面積:約3.6万km2
  • 公用語:北京語、台湾語
  • 宗教:仏教、道教、キリスト教、その他
  • 平均寿命:男 77.7歳、女 84.2歳

参考資料

[1] 台湾の基本情報|地球の歩き方
[2] 基本情報|台湾観光ガイド|阪神交通社
[3] 台湾人の平均寿命 昨年は男性77.7歳、女性84.2歳 | 社会 | 中央社フォーカス台湾

産業構造

まずは台湾の産業構造の調査結果を紹介します。下の図は台湾の国内総生産(GDP)における製造業の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:Economic Indicators – Department of Statistics

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2016年まで製造業がGDPに占める割合は増加傾向であったが、その後は減少が続く(サービス関連業の急成長が要因)
  • 2019年の調査では、サービス関連業はGDPの約62.7%を占める

現状

  • 製造業に従事する労働者の割合は約35%(サービス関連業は全体の59.8%の労働力を占める)
  • 2019年の外国から台湾への観光者数は過去最高の1,184万人を記録し台湾経済の根幹になっている

今後

  • 台湾社会の今後予測される課題として、高齢化社会や少子化、中国本土との再統合問題などが挙げられる
  • 新型コロナウイルスによる経済への影響が弱まると同時に、諸外国への輸出と国内消費が増加し、経済の回復が加速する見通し

参考資料

[4] Taiwan Economy – GDP Inflation CPI and Interest Rate
[5] Economic and Political Overview – Nordea Trade Portal
[6] Taiwanese Market : Main sectorsECONOMY
[7] Taiwan.gov.twThe economic context of Taiwan

製造業全体

次に、台湾の製造業の調査結果を紹介します。下の図は、台湾の製造業のGDPの年成長率の遷移を示すグラフです。


データ引用元:Economic Indicators – Department of Statistics

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2012年から製造業の市場規模は成長が続く
  • 鉄鋼業、化学工業、機械加工が製造業全体のGDPの約半分を占める

現状

  • 情報電子産業の2020年の成長率は9.90%
  • 半導体、コンピューター、スマートフォン産業では世界トップクラスの製造力を有する

今後

  • 2021年の台湾製造業の成長率は4.75%になる見通し
  • 情報電子産業は2021年から年成長率3.55%のスピードで成長する見通し(5G技術、AI関連産業、コンピューター産業の成長が主な要因)

参考資料

[8] Taiwan’s manufacturing sector forecast to grow 4.75% in 2021
[9] Focus TaiwanThe economic context of Taiwan – Economic and Political Overview – Nordea Trade Portal

製造業の主要産業

次に、台湾製造業の主要産業とそれぞれの分野における代表企業を紹介します。

※企業のリンクは日本法人がある企業は日本法人のものを使用しています。

①半導体産業

台湾セミコンダクター(TSMC)

  • 本社:新竹市
  • 事業内容:半導体素子の製造・販売
  • 企業概要:世界最大の半導体受託生産企業として知られる。Apple社製品に搭載するチップの製造元であることでも知られており、5Gスマートフォンは高性能コンピューターの需要拡大に伴い事業規模を拡大している。

実績

  • 半導体の受託生産:2020年第4四半期の世界シェアは55.6%で世界第1位
  • 時価総額:2020年の時価総額は5,807億米ドルで世界第10位

参考資料

[9] TSMC – Wikipedia
[10] 台湾TSMC株が連日高値 時価総額は世界トップ10: 日本経済新聞
[11] 台湾TSMCが過去最高売上、5Gとリモートワーク拡大が追い風に | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

②エレクトロニクス産業

▶鴻海精密工業(Hon Hai Precision Industry Co., Ltd.,)

  • 本社:新北市
  • 事業内容:電子機器の受託製造
  • 企業概要:EMS(Electronics Manufacturing Service)の代表企業の一つ。Apple社製品の製造元であることでも知られており、品質の高い製品の製造技術に定評がある。Appleの他にSonyのPlayStation、任天堂のWii U、AmazonのXbox、AmazonのKindleの製造も請け負う。

実績

  • 売上高:2019年の売上高は1,785億米ドルで世界第1位(EMS企業ランキング)
  • 企業ランキング:2019年のForbsが選ぶ世界のトップ100デジタル企業ランキングで世界第25位

参考資料

[12] 今さら聞けない!シャープを買収するホンハイ(鴻海精密工業)がスゴい理由 ビジネスモデル解説:EMS(電子機器受託製造サービス)|ビジネス+IT
[13] 鴻海精密工業 – Wikipedia
[14] 世界EMS企業売上げランキング、台湾ホンハイがトップ 2位に大きく差 | 電波新聞デジタル
[15] Top 100 Digital Companies List

③プラスチック産業

▶台湾プラスチックグループ(Formosa Plastics Group)

  • 本社:台北市
  • 事業内容:石油化学製品の製造・販売
  • 企業概要:台湾を代表する企業グループ4社(台塑石油化学、台湾化学繊維、南亜プラスチック、台湾プラスチック)を含めた複数の企業から成る。

実績

  • ガラス繊維:2011年の世界生産能力は世界第1位
  • テレフタル酸:2011年の生産量は世界第1位

参考資料

[16] 台湾プラスチックグループ – Wikipedia
[17] 交流_915号_02.indd

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点から、台湾の製造業市場を調査した結果です。下の図は、台湾に進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 台湾に進出する日本企業の数は2008年から2012年の間に急速に増加し、以後は横ばい傾向
  • 進出日本企業の業種は卸売・小売業が最も多く全体の約半数、次いで製造業関連業、その他サービス関連業の順

現状

  • 進出日本製造業の目的は大きく以下の3つに集約される。1. 輸出のための生産拠点、2. 台湾市場向けの生産拠点、3. 現地企業への部品供給
  • テレワークや5G技術の需要が増加したことによる、現地エレクトロニクス企業への部品および材料の供給を行っている企業の業績は好調

今後

  • 台湾政府の意向により、情報通信・デジタル産業は今後も拡大傾向が続くと予想されるため、高い技術力を持つ日系サプライヤー企業の需要は増加する見通し
  • 台湾と日本の外交関係は良好であり、日本ブランドが受け入れやすい環境にあるため、今後も日系企業の進出候補として有力である見通し

参考資料

[18] 2009_02kihara.pdf
[19] 台湾への主な日系企業の進出状況を教えてください。 | 台湾に関する Q&A / コラム | 台湾の市場調査ならヤッパン号

台湾に進出した日本企業

有限会社 サンヨー精工

▶基本情報

  • 本社:東京都大田区
  • 従業員数:20人
  • 事業内容:精密樹脂成形金型の設計・制作

▶概要

プラスチック射出成形およびプラスチック精密金型の制作・生産を行う企業。研究開発にも力を入れており、2色樹脂成形(色違いの2色の樹脂を成形する技術)など、自社独自の技術を多く保有する。台湾の樹脂成形および金型の生産工場と提携しており、現地で量産品を安価に生産できる体制を構築。台湾での生産は日本人従業員1人で行っている。

株式会社 関プレス

▶基本情報

  • 本社:茨城県日立市
  • 従業員数:85人
  • 事業内容:金型プレス加工

▶概要

金型の設計および制作を行う企業。取引先は自動車関連業をはじめ多岐にわたる。グローバル展開する日本企業の部品供給需要に対応するために台湾(桃園)、ベトナム(ハノイ)に事務所を構え、海外での部品調達ネットワークを構築している。上記の国の他に香港・中国の企業と業務提携を行っており、アジア圏における事業拡大を積極的に行っている。

株式会社 英田エンジニアリング

▶基本情報

  • 本社:岡山県美作市
  • 従業員数:135人
  • 事業内容:冷間ロール成形・造管機、無人駐車場・駐車管理システムの開発・製造・販売

▶概要

フォーミングロール(金型)の生産をはじめ、冷間ロール成形機・造管機、およびIT技術を駆使したコインパーキングシステムの開発・製造を行う。中国に現地法人を持っており、中国で製造した商品の輸入を行っていたが、為替の変動により利益を圧迫したため、台湾での現地販売を決断する。現地での販売はパートナー企業を通じて行っている。

参考資料

[20] 株式会社英田エンジニアリング:ジェトロの支援を受け、少ない手間と短い時間で、海外に進出できました | ジェトロ活用事例 – ジェトロ

まとめ

今回は台湾の製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。結果を以下にまとめます。

  • 産業構造を調査した結果:造業がGDPに占める割合は近年減少傾向、観光業をはじめとするサービス関連業の成長が著しい
  • 製造業全体を調査した結果:製造業の規模自体は拡大傾向(特に情報電子産業は5G技術、コンピューター産業の需要拡大を受け、安定した成長を続けている)
  • 日本企業の進出状況を調査した結果:台湾に進出する日本企業の数は近年ほぼ同じ数で推移
  • 台湾に進出した日本企業を調査した結果:今回紹介した企業は現地企業とパートナー関係を築き、現地での生産・販売、または現地日本企業への部品の調達を行なっている

今回の内容が、台湾進出を視野に入れている方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑮「韓国」

テクノポートの稲垣です。今回は「韓国の製造業」を紹介します。

新型コロナウイルスにより世界中の経済が落ち込んだ2020年において、韓国経済の成長率は前年比マイナス1.1%と大きな打撃を受けませんでした。その大きな理由のひとつとして製造業を代表とする輸出産業の成長が挙げられます。このことからも韓国の製造業が韓国経済にいかに大きな影響を与えているかが分かるでしょう。

今回は、世界のハイテク産業の中心的存在である、韓国の製造業を日本企業の目線から掘り下げていきます。

基本情報

  • 正式名称:大韓民国(Republic of Korea)
  • 首都:ソウル(Seoul)
  • 元首:文在寅(ムン・ジェイン)大統領(2017年5月~)
  • 通貨:大韓民国ウォン(1大韓民国ウォン=0.095円 ※2020年12月13日時点)
  • 人口:約5,178万人
  • 面積:約10万km2
  • 公用語:韓国語
  • 宗教:仏教(約762万人)、プロテスタント(約968万人)、カトリック(約389万人)等(出典:2015年、韓国統計庁)
  • 平均寿命:男79.3歳、女85.8歳

産業構造

まずは韓国の産業構造の調査結果を紹介します。下の図は韓国の国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:South Korea: Sectoral composition of the economy of South Korea| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • GDPに占める製造業の割合は1988年以降40%前後を維持
  • 2019年のGDPは1.6兆ドル世界第13位(日本:5.1兆ドルで世界3位)

現状

  • 新型コロナウイルスの影響により、一般消費は落ち込んだが、投資・輸出は好調(テレワークの普及による半導体需要の増加などが要因)
  • 新型コロナウイルスによる韓国経済への打撃は他国に比べ小さく、2020年のGDPは世界第10位まで回復する見通し

今後

  • 2021年度の経済成長率は3.2%の予想(米中両国の景気の回復にともなう自動車の輸出が鍵を握る予想)
  • 文大統領によると2021年は雇用回復に向けた取り組みに加え、国内消費を促すインセンティブの強化、投資と輸出の支援に力を入れる方針

経済の特徴

強み

  1. ハイテク産業:家電、携帯電話、半導体、自動車分野で世界市場を席捲
  2. 研究開発:2019年の韓国の研究開発費は89兆ウォンを超えOECD(経済開発機構)加盟国の中で5番目
  3. 教育制度:OECDの調査によると、OECD加盟国の中で韓国の15歳は読解力5位、数学的リテラシー2位、科学的リテラシー4位といずれも上位

弱み

  1. 高齢化社会:韓国統計庁の調査によると、韓国の人口は2019年をピークに減少を開始し、2065年に人口に対する65歳以上の割合が先進国でトップになる見通し
  2. 財閥の存在感:韓国4大財閥(サムスン(半導体・家電)、LG(家電)、現代(自動車)、SK(エネルギー)が韓国の全上場企業の総売り上げの約50%、総純利益の約60%を占める
  3. 若者の失業率:OECD加盟国のうち、韓国の若者失業率は2009年から2019年までの10年間で0.9%増加し、5位から20位まで順位が下落

製造業全体

次に韓国の製造業の調査結果を紹介します。下の図は韓国の製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:South Korea: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 統計開始から増加傾向が続く
  • 2019年の製造業が生み出す付加価値は4,169億ドル世界第3位

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年6月に41.3を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年12月に52.9を記録
  • 新型コロナウイルスによる韓国製造業の国内回帰が予想されたが、90%以上の韓国企業が国内回帰を検討していない(国内の高い生産コスト、現地需要へのアクセスなどが要因)

今後

  • 中国などの先端技術産業の新興国による追い上げにより、技術開発競争が激化する見通し
  • 新型コロナウイルスの感染拡大が収束した後、製造業とハイテク技術産業が韓国経済回復の中心的な役割を果たす見通し

製造業の主要産業

次に、韓国製造業の主要産業とそれぞれの分野における代表企業を紹介します。

①エレクトロニクス産業

サムスン電子

  • スマートフォン:2020年の世界のシェア率22%は世界第1位
  • テレビ:2020年7~9月期のテレビ出荷額で世界シェアは33.1%で過去最高
  • 家電製品全般:2019年の世界シェアは12.5%で世界第1位

LG電子

  • 液晶テレビ:2019年第3四半期までのOLEDテレビ市場でシェア世界第1位
  • 液晶モニター:2019年第3四半期までのLCDテレビパネルのシェアは14.3%で世界第4位
  • 洗濯機:2017年の世界シェアは14.8%で世界第2位

SKハイニックス

  • メモリー半導体:2020年におけるNAND型フラッシュメモリー市場で世界第2位シェア ※インテル合併によるシェア含めた場合
  • ソリッドステートドライブ(SSD):2020年における世界第1位のシェア ※インテル合併によるシェアを含めた場合

②造船産業

韓国造船海洋(現代重工業、大宇造船海洋)

  • 世界売上高:2020年の造船会社の世界売上高で20%世界第2位
  • 造船受注量:2020年11月に世界で発注された船舶のうち約6割を受注し5ヶ月連続で世界第1位
  • LNGタンカー:2019年におけるLNGタンカー(液化天然ガスの輸送に用いられる)のシェアは60%で世界第1位

サムスン重工

  • 世界売上高:2020年の造船会社の世界売上高6%で世界第4位

③自動車産業

現代自動車

  • 自動車販売台数:2019年における自動車シェア世界第5位は販売台数719万台の現代自動車

起亜自動車

  • 水素自動車:2020年1月~7月までのFCV車(水素で走る燃料電池車)の販売台数は2,879台で世界第1位 ※現代自動車を含める
  • 電気自動車:2020年1月~7月までの電気自動車の販売台数は6万707台で世界第4位

日本企業の進出状況

ここからは、日本企業の視点から韓国の製造業市場を調査した結果です。下の図は韓国に進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 韓国に進出する日本企業は2017年に大きく増加
  • 進出企業の35.4%が製造業企業(28.7%がサービス関連業)

現在

  • 進出製造業企業の中でも「電気機械器具」「一般機械器具」「化学及び関連品」を主事業にする企業の進出が多い
  • JETROの調査によると、2018年の韓国進出日系企業のうち、84.9%の企業が営業利益ベースで黒字と回答 (アジア地域の中でトップの数字)

今後

  • 韓国に進出している日経製造業企業の黒字割合は2014年以降増加を継続中、今後も同じ傾向が続く見通し
  • 韓国労働者の賃金は年々増加傾向にあり、進出日本企業の71.7%が同問題に直面中、今後も賃金の増加は避けられない見通し

韓国に進出した日本企業

進桜電機株式会社

▶基本情報

  • 本社:静岡県駿東郡
  • 従業員数:40人
  • 事業内容:交流モーターの設計・製造・販売

▶概要

1968年に誘導電動機(特殊型インダクションモーター)の製造会社として設立。創業時より交流電動機の設計、製造を得意とする。2018年10月に同社の子会社となる工場MOSTEC KOREAを韓国忠清南道牙山市に設立。同工場では現地における同社製品の修理、メンテナンスに加え、研削加工を中心とした精密部品加工の製造を行い、現地での品質管理体制を強化することに成功。

金子産業株式会社

▶基本情報

  • 本社:東京都港区
  • 従業員数:93人
  • 事業内容:電磁弁、液面計、通気装置の設計・製造・販売

▶概要

1919年の創業以来、一貫して流体制御用バルブの製造を行う。同社の主要顧客は発電所、石油関連企業、プラント企業であり、多品種少量生産を軸に顧客を拡大。2010年1月にソウル近郊に現地法人「韓国金子」を設立。同法人の設立により、韓国内の顧客に迅速に対応可能となったことに加え、現地での新たな顧客開拓を実現。

ポバール興業株式会社

▶基本情報

  • 本社:愛知県名古屋市中村区
  • 従業員数:109人(連結:203人)
  • 事業内容:産業用ベルトの製造・販売

▶概要

1957年創業。創業当時は無段変速機用特殊ベルトの製造及び販売を行っており、現在は工業用樹脂ベルトを根幹事業に据える。2006年4月に韓国における事業展開を目的として、現地、韓国慶尚北道にPOBAL DEVICE KOREA CO.,LTD.設立。現在では韓国の他にタイ、中国にも現地法人および工場を有しており、今後はアジア地域における自動車産業向けベルト及び研磨関連部材の販売拡大に取り組む方針。

まとめ

今回は韓国の製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、韓国製造業は新型コロナウイルスによる経済への影響が小さく、その要因として半導体を始めとするエレクトロニクス産業の輸出が好調であることが分かりました。

今後は、中国を始めとする先端技術新興国との技術競争が加速し、韓国のハイテク産業の今後がより一層注目されます。

進出する日本企業の目線から考えると、2018年時点において進出日本企業の84.9%が黒字を記録していることが分かりました。今回紹介した日本企業はいずれも自社製品の販売拡大と韓国での新規顧客開拓を目的とした進出を果たしていることが分かります。今回の内容が、韓国進出を視野に入れている方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑭「中国」

テクノポートの稲垣です。今回は「中国の製造業」を紹介します。

新型コロナウイルスによるパンデミックの発信地となってしまった中国ですが、現在は世界の中でもトップクラスの速度で経済の回復を記録しています。また、次期アメリカ大統領のバイデン氏が米中貿易戦争にどのような対処をするのか世界中から注目を集めています。今回は、その中国の製造業の現状と今後を進出する日本企業の視点から掘り下げていきます。

基本情報

  • 正式名称:中華人民共和国(People’s Republic of China)
  • 首都:北京(Beijing)
  • 元首:習近平(2016年4月~)
  • 通貨:中国人民元(1中国人民元=15.95円 ※2020年12月5日時点)
  • 人口:約14億3565万人
  • 面積:約960万km2
  • 公用語:中国語
  • 宗教:イスラム教、仏教、キリスト教
  • 平均寿命:男73.6歳、女79.4歳

経済の特徴

強み

  1. 国内需要:14億人を超える巨大な国内市場と国内E-Commerceの普及
  2. 都市化:大規模なインフラ投資による都市部の拡大
  3. 生活水準:人口のわずか3.3%が貧困層以下の生活(2020年10月の調査)
  4. 技術力:5G技術の先駆けとなったHuaweiを始め、特にテレコミュニケーション分野で著しい成長

弱み

  1. 少子高齢化:生産年齢人口(15~64歳)の人口減少が進行し経済成長の鈍化につながる可能性
  2. 賃金上昇:経済発展と共に賃金・製造コストが上昇傾向
  3. 人口集中:都市部への人口流入が加速により、住宅価格の高騰、公害、貧富の差の拡大等の問題が発生

産業構造

まずは中国の産業構造の調査結果を紹介します。下の図は中国の国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:China: Sectoral composition of the economy of China| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • GDPに占める製造業の割合は年々減少傾向
  • 2019年のGDPは11.5兆ドルで世界第2位(世界第1位はアメリカの18.3兆ドル)

現状

  • 2020年第3クォーター(7月~9月)のGDPの伸び率は5.2%を記録する見込みで、第2クォーターと比較し2.0%の増加(国外からの医薬品需要の増加などが主な要因)
  • 2020年の経済活動レベルが前年と同水準にまで回復する見込み(現在、約80%まで回復)

今後

  • バイデン大統領が米中間貿易の関税への対処が中国の経済成長が大きく左右される見込み
  • 経済の専門家の予想では、2021年のGDPは前年比7.8%の上昇、2022年は前年比5.4%の上昇見込み

製造業全体

次に中国の製造業の調査結果を紹介します。下の図は中国の製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:China: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 統計を開始した2004年から増加傾向が続く
  • 2019年の製造業が生み出す付加価値は3.9兆ドルで世界第1位(世界第2位はドイツ:0.7兆ドル)

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年3月に40.3を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年11月に54.9を記録
  • 米中の貿易摩擦により、中国国内での研究開発に力を入れ、国内でのイノベーションに注力する動きが広がっている

今後

  • 中国製造2025(2025年までに世界の製造強国の仲間入りを目指すために策定された基本方針)を推し進めるために以下の10分野の産業に注力する見込み


出典:中国製造2025重点領域技術創新路線図

  • 2050年までの中国製造業の今後の方針は以下の通り
    ー2020~2035年:製造強国の中堅ポジションを目指す、イノベーション先進国を目指す(経済力、技術力の向上)、貧富の格差を是正
    ー2035~2050年:製造強国のトップグループ入りを目指す、社会主義現代化強国を目指す、国力と国際影響力で世界をリードする国家

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点から中国の製造業市場を調査した結果です。下の図は中国に進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 進出日本企業数は2011年に大きく増加したものの、その後は32000社付近で推移
  • 進出日本企業の約4割が製造業関連の企業が占める(卸売業が約3割)

現状

  • 進出地域で最も多いのが中国東部の華東地域で全体の約67%を占める(中でも上海市は全体の約46%を占める)
  • 進出企業の年売上高は、「1~10億円未満の企業」が全体の約31%、「10~100億円未満の企業」が約39%となり年商100億円未満の企業が全体の約7割を占める
  • 進出した製造業の中でも「金属加工、加工機械製造(切削、旋盤、研削盤による加工、加工機械の製造)」関連の企業が最多

今後

  • チャイナリスク(人件費の高騰、中国人民元安、政府からの環境規制強化指導などのリスク)を危惧した企業がチャイナプラスワン(東南アジアへ拠点を分散させる動き)を考える企業が増える見通し
  • 2019年の調査によると、中国進出日本企業の8割以上が中国市場での現状維持・拡大を望んでおり、今後も中国ビジネスに対する日本企業の見方は大きく変わらない予想

中国に進出した日本企業

岐阜精機工業

▶基本情報

  • 本社:東京都大田区
  • 従業員数:5人(中国工場170人)
  • 事業内容:プレス加工試作・量産、プレス金型製作

▶概要

自社独自開発のプレス金型を使用し、精密プレス部品・深絞り加工品の製造を行う企業。2002年より中国広東省の工場に生産拠点をすべて移動し現地での製品生産を行う。中国工場では日本スタッフが駐在し品質管理を行う体制をとる。同工場では生産に加えて、近隣の協力工場で製作した金型加工品の検査を行っており、品質管理に注力している。

岐阜精機工業の中国工場に駐在し品質管理を行う波多野さんへのインタビューはこちらです。(2020年2月実施)

株式会社武蔵テクノケミカル

▶基本情報

  • 本社:東京都台東区
  • 従業員数:10人(役員3人除く)
  • 事業内容:工業用洗浄剤の製造・販売

▶概要

工業製品向けの洗浄剤、洗浄システム(洗浄剤+洗浄機)の製造・販売を行う企業。2005年に上海、2009年に深圳に営業拠点を設立。その後2014年に、大連に洗浄剤の工場を設立。工場には日本人スタッフが常駐していないため、品質管理は現地従業員が行う。大連工場では現地日系企業との取引に加え、日本本社への輸出を目的とした製品を製造している。

株式会社大栄製作所

▶基本情報

  • 本社:京都府京都市
  • 従業員数:60人(グループ計150人)
  • 事業内容:精密板金加工品の製作、販売

▶概要

産業用板金製品加工、加工品の販売を行う企業。2003年に同社初の海外工場を上海に設立。同工場では現地の日系企業向けの板金部品の供給を行っており、同工場の顧客の99%を現地日系企業が占める。現地の製造で用いる材料は日系資本の入った現地企業からの調達を行っており、多品種小ロットの部品から大型組み立て部品まで幅広い要求に対応している。

まとめ

今回は中国の製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、中国製造業は新型コロナウイルスの影響から急速な回復傾向を示しており、2020年の最終的な経済活動レベルは前年とほぼ同水準まで回復する見込みであることが分かりました。

また「中国製造2025」に代表されるように、中国政府は先進技術分野を始めとする製造業全般の強化を全面的に推し進めていくことが分かります。

進出する日本企業側の視点から分析すると、年商100億円未満の企業が進出日本企業の約7割を占めており、欧米諸国に比べ進出に対するハードルが高くないことが予想されます。また、今回紹介した日本企業は現地日系企業への部品調達と日本への輸出を目的とした工場を所有していることが分かります。今回の内容が中国進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑬「アメリカ」

テクノポートの稲垣です。今回は「アメリカの製造業」を紹介します。

2020年11月3日から投票が行われたアメリカ大統領選挙は、民主党のジョー・バイデン候補が当選確実となりました。

今回は、バイデン大統領がアメリカの製造業にどのような影響を与えるのかを含めて、アメリカに進出する日本企業の目線からアメリカ製造業を掘り下げていきたいと思います。

基本情報

  • 正式名称:アメリカ合衆国(United States of America)
  • 首都:ワシントンD.C.(Washington, D.C.)
  • 大統領:ドナルド・J・トランプ(2017年1月~)
  • 通貨:アメリカ合衆国ドル(1ドル=104.66円 ※2020年10月31日時点)
  • 人口:約3億2775万人
  • 面積:約962.8万km2
  • 公用語:英語
  • 宗教:信教の自由を憲法で保障,主にキリスト教
  • 平均寿命:男76.1歳、女81.1歳

経済の特徴

強み

  1. 米ドル:世界の貨幣の中でも中心的な存在(準備通貨の約6割を占める)
  2. 市場:世界最大の市場規模を誇る(GDPで約20兆ドル)
  3. 研究開発:世界の研究開発費の20%を占めるイノベーションの拠点

弱み

  1. 政治の二極化:アメリカ国内での政治の分断(共和党支持者と民主党支持者、沿岸部と内陸部、都市部と地方)
  2. 格差社会:先進国の中でもトップクラスの経済格差(上位1%の持つ資産が下位90%の持つ資産を上回る)
  3. 労働市場参加率:2019年の労働市場参加率は78.4%と先進国の中では低い数字(OECDの調査)

産業構造

まずはアメリカの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はアメリカの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:USA: Sectoral composition of the economy of USA| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業の割合は年々の減少傾向(サービス業の割合は増加傾向)
  • 2019年のGDPは約18.3兆米ドルで世界第1位(2位の中国は約11.5兆米ドル)

現状

  • 2020年7月から9月までのGDPの伸び率は前3ヶ月に対しプラス33.1%を記録(ビジネスの再開、個人消費の増加、輸出の増加などが要因)
  • ヘルスケア産業がアメリカ経済の中で存在感を高めている(2006年から2016年までの間で7倍の規模に成長)

今後

  • 専門家の予想によると、2020年のアメリカのGDPは前年比5.3%の減少
  • 専門家の予想によると、2021年のアメリカのGDPは前年比4.0%の増加

製造業全体

次にアメリカの製造業の調査結果を紹介します。下の図はアメリカの製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:USA: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2009年以降、増加傾向が続く(2016年を除き)
  • 2017年の製造業が生み出す付加価値額は20億ドルで世界第2位

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に36.1を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年10月に53.3を記録
  • 非耐久消費財(使用寿命が3年以下の製品)がGDPの4.8%を占めておりアメリカの経済の大黒柱的な存在

今後

  • 人材不足により、GDPに対する製造業の割合は今後も縮小が続く見通し(熟練技術者の流失、他業界へ吸収されるため)
  • 生産効率の向上、天然ガス、原油の生産、新興市場の賃金の高騰などの要因でアメリカ製造業は市場規模が増加するという見通しもある

バイデン大統領がアメリカ製造業に与える影響

  1. 需要拡大:アメリカ製の製品、材料、サービスに対して4000億ドルの投資を行いアメリカ製造業に対する新たな需要を喚起
  2. 再教育:小規模な事業者、女性、有色人種が所有する製造業事業者に再教育を行い、製造業を活性化
  3. イノベーション産業:研究開発と最先端技術産業に3000億ドルの投資を行い、付加価値の高い分野の活性化、雇用の創出
  4. 投資拡大:都市部と農村部を含むすべての州に公共投資を行い、製造業の生産性の底上げ
  5. サプライチェーンの見直し:重要な商品の生産を中国をはじめとする他国に過度に依存することをやめ、アメリカ国内でサプライチェーンを構築

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からアメリカの製造業市場を調査した結果です。下の図はアメリカに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 進出日本企業数は統計開始の2008年から一貫して増加傾向
  • 州別の日系企業拠点数ではカリフォルニア州が516社で1位(2位はイリノイ州、3位はテキサス州)

現在

  • 2018年のJETROの調査によると、アメリカにおける日系企業の雇用者数は88万5200人で英国に続く世界第2位
  • 2018年のJETROの調査によると、在米日系企業の雇用者の41万8700人が製造業に従事

今後

  • インディアナ州(118件)を始めとする自動車工場のある州への投資が顕著であり、今後もその傾向が続く見通し
  • 日本企業によるアメリカへの投資はG7加盟国の中で最大であり、先進国の中でも安定的に成長を続けるアメリカに今後も投資が拡大する見通し

アメリカに進出した日本企業

株式会社バイタル

▶基本情報

  • 本社:長野県佐久市
  • 従業員数:37人
  • 事業内容:自動水栓の製造・販売

▶概要

近赤外線センサ内蔵の非接触式手洗い蛇口の製造・販売を行う企業。軽量かつ低価格な自動水栓の開発に成功し、1999年に米ボーイングのB777型機のビジネスクラス用に供給を開始。現在では、B787型機全機で同社の自動水栓が採用されている。同社は、部品製造を外注し、自動水栓の開発・製造のみに注力することで競争力を保っている。

山陽精機株式会社

▶基本情報

  • 本社:岡山県真庭市開
  • 従業員数:53人
  • 事業内容:金型の開発・製造

▶概要

金属製や樹脂製の工業製品部品用の金型を製造する企業。1995年にシカゴ州に同社初の海外事務所を設立。シカゴ事務所では北米での射出成形金型の販売に加え、同社の製品の修理・メンテナンス業務を行う。現在では、韓国、中国に生産拠点を構えており、積極的に海外展開を進めている。

株式会社ワールドケミカル

▶基本情報

  • 本社:東京都台東区台東
  • 従業員数:70人
  • 事業内容:耐食性ケミカルポンプ、ろ過機、浮上油(物)回収機器の製造・販売

▶概要

水処理場向けのケミカルポンプ、浮遊物回収機の製造・販売を行う企業。1998年1月に米国の代理店契約が失効したことをきっかけに、自ら自社製品を販売するために米国に事業所を設置。米国進出後、最初の2年間は利益が出ない状態が続いたが、3年目以降アメリカ流の販売開拓方法を導入し、現在に至るまで徐々に利益を伸ばしている。

まとめ

今回はアメリカの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、他産業の急成長に伴いアメリカにおける製造業の市場規模は縮小傾向であるものの、製造業の生み出す付加価値額は増加傾向であり、依然として国の主柱的な産業であることが分かります。

進出する日本企業の傾向としては、自動車産業を中心に投資が活発であることが分かります。今回紹介した3社はそれぞれ自社独自の技術を生かした製品を駆使し、アメリカ市場に販路を拡大させています。今回の内容がアメリカ進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

【2022年版】アメリカの製造業(主要産業・進出している日本企業も調査)

テクノポートの稲垣です。今回は「アメリカの製造業」を紹介します。

2021年1月20日からアメリカ大統領に就任したジョー・バイデン氏の政権がスタートしてから1年以上が経過しました。

今回は、バイデン大統領がアメリカの製造業に今後どのような影響を与えるのかを含めて、アメリカに進出する日本企業の目線からアメリカ製造業を掘り下げていきたいと思います。

製造業のための新時代「海外販路開拓」overseas-web-marketing

基本情報

  • 正式名称:アメリカ合衆国(United States of America)
  • 首都:ワシントンD.C.(Washington, D.C.)
  • 大統領:ジョー・バイデン(2021年1月~)
  • 通貨:アメリカ合衆国ドル(1ドル=114.37円 ※2022年2月3日時点)
  • 人口:約3億2775万人
  • 面積:約962.8万km2
  • 公用語:英語
  • 宗教:信教の自由を憲法で保障,主にキリスト教
  • 平均寿命:男76.1歳、女81.1歳

産業構造

まずはアメリカの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はアメリカの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:USA: Sectoral composition of the economy of USA| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業の割合は年々の減少傾向(サービス業の割合は増加傾向)
  • 2019年のGDPは約18.3兆米ドルで世界第1位(2位の中国は約11.5兆米ドル)

現状

  • 2020年7月から9月までのGDPの伸び率は前3ヶ月に対しプラス33.1%を記録(ビジネスの再開、個人消費の増加、輸出の増加などが要因)
  • ヘルスケア産業がアメリカ経済の中で存在感を高めている(2006年から2016年までの間で7倍の規模に成長)

今後

    • 専門家の予想によると、2020年のアメリカのGDPは前年比5.3%の減少
    • 専門家の予想によると、2021年のアメリカのGDPは前年比4.0%の増加

経済の特徴

強み

  1. 米ドル:世界の貨幣の中でも中心的な存在(準備通貨の約6割を占める)
  2. 市場:世界最大の市場規模を誇る(GDPで約20兆ドル)
  3. 研究開発:世界の研究開発費の20%を占めるイノベーションの拠点

弱み

  1. 政治の二極化:アメリカ国内での政治の分断(共和党支持者と民主党支持者、沿岸部と内陸部、都市部と地方)
  2. 格差社会:先進国の中でもトップクラスの経済格差(上位1%の持つ資産が下位90%の持つ資産を上回る)
  3. 労働市場参加率:2019年の労働市場参加率は78.4%と先進国の中では低い数字(OECDの調査)

製造業のための新時代「海外販路開拓」overseas-web-marketing

製造業全体

次にアメリカの製造業の調査結果を紹介します。下の図はアメリカの製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:USA: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2009年以降、増加傾向が続く(2016年を除き)
  • 2017年の製造業が生み出す付加価値額は20億ドルで世界第2位

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に36.1を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年10月に53.3を記録
  • 非耐久消費財(使用寿命が3年以下の製品)がGDPの4.8%を占めておりアメリカの経済の大黒柱的な存在

今後

  • 人材不足により、GDPに対する製造業の割合は今後も縮小が続く見通し(熟練技術者の流失、他業界へ吸収されるため)
  • 生産効率の向上、天然ガス、原油の生産、新興市場の賃金の高騰などの要因でアメリカ製造業は市場規模が増加するという見通しもある

バイデン大統領がアメリカ製造業に与える影響

  1. 需要拡大:アメリカ製の製品、材料、サービスに対して4000億ドルの投資を行いアメリカ製造業に対する新たな需要を喚起
  2. 再教育:小規模な事業者、女性、有色人種が所有する製造業事業者に再教育を行い、製造業を活性化
  3. イノベーション産業:研究開発と最先端技術産業に3000億ドルの投資を行い、付加価値の高い分野の活性化、雇用の創出
  4. 投資拡大:都市部と農村部を含むすべての州に公共投資を行い、製造業の生産性の底上げ
  5. サプライチェーンの見直し:重要な商品の生産を中国をはじめとする他国に過度に依存することをやめ、アメリカ国内でサプライチェーンを構築

製造業の主要産業

次にアメリカの製造業の調査結果を紹介します。下の図は2017年のアメリカ製造業における市場規模トップ10を占める分野をまとめたグラフです。
データ引用元:2019 United States Manufacturing Facts | NAM

加えて、下の図は2018年のアメリカ製造業における雇用拡大率トップ10の分野をまとめたグラフです。
データ引用元:2019 United States Manufacturing Facts | NAM

それぞれのグラフから以下のことが分かります。

  • 1位化学製品(354m$)、2位エレクトロニクス製品(281m$)、3位食料品・タバコ(270m$)が上位3品目
  • 医薬品分野は市場規模、雇用の拡大率ともに最上位
  • 航空宇宙分野の市場規模は全体の7位だが、雇用の拡大率は9.67%と急成長
  • 自動車分野は市場規模は4位、雇用の拡大率は5位

製造業の代表企業

次に、アメリカ製造業の主要産業とそれぞれの分野における代表企業を紹介します。 ※企業のリンクは日本法人がある企業は日本法人のものを使用しています。

①医薬品関連産業

▶ファイザー(Pfizer)

  • 本社:ニューヨーク州
  • 事業内容:医療用医薬品の製造・販売・輸出入
特徴
  • 医薬品:2020年の売上高は517億ドルで世界第2位
  • 研究開発:2020年の研究開発費は86.5億ドルで世界第6位

▶ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)

  • 本社:ニュージャージー州
  • 事業内容:製薬、医療機器その他のヘルスケア関連製品の開発・製造・販売
特徴
  • 医薬品:2020年の売上高は422億ドルで世界第6位
  • 研究開発:2020年の研究開発費は88.3億ドルで世界第5位

②航空宇宙産業

▶ボーイング(Boeing)

  • 本社:イリノイ州
  • 事業内容:民間・軍用機器、宇宙空間用機器の製造・販売
特徴
  • 売上高:2019年の売上高は766億ドルで世界第2位
  • ジェット機:2018年のジェット機の納入数は806機で7年連続世界第1位

▶ユナイテッド・テクノロジーズ(United Technologies)

  • 本社:コネチカット州
  • 事業内容:航空機のエンジン、宇宙産業、防火・消火製品およびセキュリティサービス、その他工業製品の研究開発・製造
特徴
  • 売上高:2019年の売上高は469億ドルで世界第4位
  • 航空機部品:2019年の市場シェアは5.2%で世界第1位 ※レイセオンと合併して計算した場合

③エレクトロニクス産業

▶ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard)

  • 本社:カリフォルニア州
  • 事業内容:パーソナル・コンピューティングその他のアクセス・デバイス、イメージングおよびプリンティング関連製品の開発、製造、販売
特徴
  • PC:2019年のPC出荷台数は約5,800万台で世界第2位(世界シェアは22.2%で世界第2位
  • PCサーバー:2019年第4四半期のPCサーバーの市場シェアは14.9%で世界第2位

▶デル(DELL)

  • 本社:テキサス州
  • 事業内容:デスクトップ・コンピューター・システム、コンピューター周辺機器、モビリティ製品、ソフトウェア及び周辺機器の開発・製造・販売
特徴
  • PC:2019年のPC出荷台数は約4,400万台で世界第3位(世界シェアは16.8%で世界第3位
  • PCサーバー:2019年第4四半期のPCサーバーの市場シェアは16.1%で世界第1位

製造業のための新時代「海外販路開拓」overseas-web-marketing

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からアメリカの製造業市場を調査した結果です。下の図はアメリカに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 進出日本企業数は統計開始の2008年から一貫して増加傾向
  • 州別の日系企業拠点数ではカリフォルニア州が516社で1位(2位はイリノイ州、3位はテキサス州)

現在

  • 2018年のJETROの調査によると、アメリカにおける日系企業の雇用者数は88万5200人で英国に続く世界第2位
  • 2018年のJETROの調査によると、在米日系企業の雇用者の41万8700人が製造業に従事

今後

  • インディアナ州(118件)を始めとする自動車工場のある州への投資が顕著であり、今後もその傾向が続く見通し
  • 日本企業によるアメリカへの投資はG7加盟国の中で最大であり、先進国の中でも安定的に成長を続けるアメリカに今後も投資が拡大する見通し

アメリカに進出した日本企業

株式会社バイタル

▶基本情報

  • 本社:長野県佐久市
  • 従業員数:37人
  • 事業内容:自動水栓の製造・販売

▶概要

近赤外線センサ内蔵の非接触式手洗い蛇口の製造・販売を行う企業。軽量かつ低価格な自動水栓の開発に成功し、1999年に米ボーイングのB777型機のビジネスクラス用に供給を開始。現在では、B787型機全機で同社の自動水栓が採用されている。同社は、部品製造を外注し、自動水栓の開発・製造のみに注力することで競争力を保っている。

山陽精機株式会社

▶基本情報

  • 本社:岡山県真庭市
  • 従業員数:53人
  • 事業内容:金型の開発・製造

▶概要

金属製や樹脂製の工業製品部品用の金型を製造する企業。1995年にシカゴ州に同社初の海外事務所を設立。シカゴ事務所では北米での射出成形金型の販売に加え、同社の製品の修理・メンテナンス業務を行う。現在では、韓国、中国に生産拠点を構えており、積極的に海外展開を進めている。

株式会社ワールドケミカル

▶基本情報

  • 本社:東京都台東区
  • 従業員数:70人
  • 事業内容:耐食性ケミカルポンプ、ろ過機、浮上油(物)回収機器の製造・販売

▶概要

水処理場向けのケミカルポンプ、浮遊物回収機の製造・販売を行う企業。1998年1月に米国の代理店契約が失効したことをきっかけに、自ら自社製品を販売するために米国に事業所を設置。米国進出後、最初の2年間は利益が出ない状態が続いたが、3年目以降アメリカ流の販売開拓方法を導入し、現在に至るまで徐々に利益を伸ばしている。

まとめ

今回はアメリカの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、他産業の急成長に伴いアメリカにおける製造業の市場規模は縮小傾向であるものの、製造業の生み出す付加価値額は増加傾向であり、依然として国の主柱的な産業であることが分かります。

進出する日本企業の傾向としては、自動車産業を中心に投資が活発であることが分かります。今回紹介した3社はそれぞれ自社独自の技術を生かした製品を駆使し、アメリカ市場に販路を拡大させています。今回の内容がアメリカ進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

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世界の製造業⑫「ロシア」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第五弾として「ロシアの製造業」を紹介します。

世界最大の国土を有するロシアですが、東南アジアに比べ日本製造業企業の進出先として候補に挙がることは多くないと思います。しかし、2020年1月の調査によると、在ロシア日系企業の68%が2019年の営業利益見通しを黒字と回答しています。同データからも分かるように、ロシア市場は日本企業にとって利益の見込める市場であると言えます。

今回は、そんなロシア製造業を日本企業の視点から掘り下げていきたいと思います。

基本情報

  • 正式名称:ロシア連邦(Russian Federation)
  • 首都:モスクワ(Moscow)
  • 大統領:ウラジーミル・プーチン(2000年5月~2008年5月、2012年5月~)
  • 首相:ミハイル・ミシュスティン(2020年1月~)
  • 通貨:ロシア・ルーブル(1ロシア・ルーブル=1.37円 ※2020年10月2日時点)
  • 人口:約1億4680万人
  • 面積:約1710万km2
  • 公用語:ロシア語
  • 宗教:ロシア正教、イスラム教、仏教、ユダヤ教
  • 平均寿命:男67.5歳、女77.6歳

経済の特徴

強み

  1. 天然資源:世界銀行の推定によると、ロシアが有する天然資源の価値は75兆USドル(天然ガス、木材、鉱物等)
  2. 経済安定性:公口座(政府の資金)と外部口座が強固であるため、外部からの障害による影響を受けにくい
  3. 市場規模:ロシアの名目GDPは1.64兆円(世界で11番目に大きい市場規模)
  4. 変動相場性:ロシア・ルーブルの為替レートが固定されていないため、外部環境に柔軟に対応することができる

弱み

  1. 人口変動:人口は1993年まで単調増加していたがその後は増加、減少を繰り返す
  2. インフラ未整備:2018年の調査によるとインフラ整備度ランキング世界61位(投資の不足が主な原因)
  3. 技術力:外国の技術への依存度が高い(アメリカとヨーロッパ諸国によりオフショア開発を阻害されているため)

産業構造

まずはロシアの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はロシアの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:Russia : Sectoral composition of the economy of Russia| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業と農業が減少傾向、サービス業が増加傾向
  • 世界のGDPの1.96%を占める(世界第12位)

現状

  • 製造業のGDPは前年比10%マイナス成長見通し(新型コロナウイルスの影響により、鉱業と輸送車両分野で深刻な打撃を受けたため)
  • 天然ガスによる収益はGDPの3.7%、天然資源による収入がGDPの15.5%を占める

今後

  • 2021年のGDPは2.7%の上昇、2022年のGDPは3.1%の上昇見通し(2022年に新型コロナウイルスの影響から完全に回復する予想)
  • 2020年から2022年にかけて、原油価格の下落により政府の予算が赤字に転じる見通し

製造業全体

次にロシアの製造業の調査結果を紹介します。下の図はロシアの製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:Russia : Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 2016年以降、製造業が生み出す付加価値は増加が続く
  • 2019年の製造業が生み出す付加価値額は2兆225億ドル(世界第8位)

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に31.3を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年8月に51.1を記録
  • 2020年の製造業の生産高は現在も減少傾向が続く(2020年8月の生産高は前月比-8.0%

今後

  • 2020年のGDPは前年比-4.5%が達成可能である見通し(消費者主導型分野の回復、国家主導型製造業の落ち込み等が要因)
  • 専門家によると、2020年の製造業の生産高は4.7%の減少見通し(2021年は3.4%の増加見通し)

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からロシアの製造業市場を調査した結果です。下の図はロシアに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

現状

  • 2016年の調査によると、製造業は進出企業の43.0%を占める
  • 2016年の調査によると、進出企業の64.7%がモスクワ州に拠点を設けている

今後

  • 2020年6月の調査によると、2021年以降もロシア市場で事業を継続する在ロシア日系企業は約8割
  • 2020年6月の調査によると、事業の拡大を図る在ロシア日系企業の数は約半減

ロシアに進出した日本製造業企業

フラット合成株式会社

▶基本情報

  • 本社:北海道札幌市
  • 従業員数:20人(海外駐在1名含む)
  • 事業内容:プラスチック素材の製造・販売

▶概要

プラスチック製品の製造、プラスチック素材の販売を行う企業。1989年にロシアにサケ・マス人工増殖孵化機器の輸出を開始し、2012年に同地域に事務所を設立。同社は、人工孵化機器のプラスチック製容器の製造に加え、養殖の成功率を高める技術の提供も行う。現在は、ロシア政府の方針によりサケマスの孵化施設の建設が盛んであるサハリン州で販路を拡大。

株式会社ニッコー

▶基本情報

  • 本社:北海道釧路市
  • 従業員数:96人
  • 事業内容:食品加工機械設備の製造・販売

▶概要

食品加工ロボットシステムの企画から製造・販売まで手掛ける企業。ホタテ貝加工機をはじめとする水産加工機械を主軸商品に、2009年ロシア企業との販売代理店契約を締結。「顧客ニーズに対応したものづくり」を基本軸に装置改良を行い、海外パートナー企業との信頼関係を構築。

和同産業株式会社

▶基本情報

  • 本社:岩手県花巻市
  • 従業員数:256人
  • 事業内容:草刈り機、除雪機器、農業機械の製造・販売

▶概要

中・大型除雪機器の国内生産台数トップ企業。2017年秋にジェトロが主催する日露中小企業交流会への参加を機に、2018年に同社初の国際展示会への出展。同年にロシア現地企業とのパートナー契約を締結。現在は、製品購入後のサポート体制構築と海外各地で部品供給先の確保に力を入れている。

まとめ

今回はロシアの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、国家主導型製造業は新型コロナウイルスの影響により大きな落ち込みを記録し、回復に時間を要している印象を受けます。

今回紹介したロシアに進出した日本製造業企業はいずれも、ロシアの地理的特徴を上手く利用し自社の製品を販売していることが分かります。今回の内容がロシア進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑪「イギリス」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第四弾として「イギリスの製造業」を紹介します。

かつては「世界の工場」と呼ばれたイギリスですが、1979年のサッチャー政権以降、製造業からサービス業、金融・保険業へのシフトが続いています。また2020年2月1日のEU離脱により、イギリス進出を考えなおしている日本の製造業事業者の方も多いと思います。今回は、上述したトピックを今後のイギリス製造業と合わせて掘り下げていきます。

基本情報

  • 正式名称:グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain & Northern Ireland)
  • 首都:ロンドン(London)
  • 首相:ボリス・ジョンソン(2019年7月から)
  • 通貨:ポンド(1ポンド=133.89円 ※2020年9月21日時点)
  • 人口:約6602万人
  • 面積:約24.9万km2
  • 公用語:英語(ウェールズ語、ゲール語等含む)
  • 宗教:キリスト教(約72%)、無信仰(約15%)、ムスリム教(約3%)
  • 平均寿命:男78.6歳、女83.1歳

経済の特徴

強み

  1. 石油・ガス:石油とガスがイギリスの総一次エネルギー需要の3/4以上を占める
  2. 先端産業:航空宇宙産業、医薬品産業、自動車産業で最先端技術を有する企業が複数
  3. 税制:2015年の国際企業に対する法人税は20%でG20諸国の中で最も低い数字

弱み

  1. EUとの関係:EU離脱によるEU各国との貿易の不安定性
  2. 労働生産性:労働生産性の低下が続く(資本投資の低下、熟練労働者の減少、高雇用率・低金利による非効率な会社の存続が理由)
  3. 地域格差:ロンドンを中心とする南東イングランド地方とそのほかの地域での輸送、エネルギーインフラの格差

産業構造

まずはイギリスの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はイギリスの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:United Kingdom: Sectoral composition of the economy of the United Kingdom| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業と農業はGDPに占める割合が減少傾向が続く
  • 世界のGDPの3.36%を占める(世界第5位)

現状

  • 製造業がGDPに占める割合は2010年から2014年の間に回復傾向を示したが、その後は減少が続く
  • サービス業がGDPに占める割合は71.26%と高い(世界第9位)

今後

  • 2020年のGDPは前年比-10.1%と大きく減少し、2021年に6.5%の増加予想(新型コロナウイルスの影響)
  • 2020年の失業率は8.3%と大きく増加し、2021年に6.6%に減少する予想(新型コロナウイルスの影響)

製造業

次にイギリスの製造業の調査結果を紹介します。下の図はイギリスの製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:United Kingdom: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業の生み出す付加価値は約8年の周期で上下を繰り返す
  • イギリスの製造業が生み出す付加価値は2兆431億ドル(世界第7位)

現在

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に13.8を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年8月に59.1を記録(世界第1位)
  • 国内の需要は回復傾向を示しているが、輸出は過去3年の中で最も低い数字を記録

今後

  • 熟練技術者不足の課題を解決すべく、行政と企業が若手技術者の育成に力を入れる方針
  • EUを脱退したため、製造業の輸出先としていたEU諸国との貿易が従来よりも難航する予想

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からイギリスの製造業市場を調査した結果です。下の図はイギリスに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

・2014年の1084社以降は単調減少傾向
・在英日本商工会議所の会員数は現在371社

現在

  • 進出日本企業の業種は、製造業39.3%)、サービス業(17.4%)、卸売業(17.2%)、金融・保険業(13.6%)
  • 進出日本企業の年商規模は、100億~1000億円未満が32.3%、1000億円以上が26.5%、10億~100億円未満21.5%、都道府県別では東京都が56.5%で最多

今後

  • イギリスのEU離脱に伴い、イギリスを経由して欧州とのやり取りが発生する場合関税が往復で2度発生するため、サプライチェーンの再構築に取り組む企業が増加する予想
  • 在英日系製造業企業の内、EU離脱によってマイナスの影響を受けたと回答した企業の割合は70.8%(通関・物流の混乱、関税コスト、通関手続きの発生が主な理由)

イギリスに進出した日本製造業企業

株式会社ネリキ

▶基本情報

  • 本社:兵庫県尼崎市
  • 従業員数:190人
  • 事業内容:高圧ガス容器用バルブの製造・販売

▶概要

1930年創業の高圧ガス容器用のバルブ製造販売メーカー。1995年にアイルランドに現地法人「NERIKI EUROPE LTD.」を設立。「商品ではなく、品質を売る」をモットーにISO9001(製品・サービスの品質マネジメントシステムの国際規格)を取得。現在では、イギリスを含めた世界7カ国の工業規格に合わせた製品を販売し、高圧ガス容器用バルブの分野で世界的なシェアを拡大している。

巴バルブ株式会社

▶基本情報

  • 本社:大阪市西区
  • 従業員数:210人
  • 事業内容:流体制御機器及び周辺機器の製造・販売

▶概要

国内シェア1位を誇るバタフライバルブメーカー。1986年に海外進出の拠点として現地のサンダースバルブ社と折半出資で同社初の海外製造・販売拠点「トモエサンダース」をウェールズに設置。現在ではイギリスをはじめ、台湾、シンガポール、フィリピン、タイ、中国、インドネシア、アメリカに工場および製造・販売拠点を有する。

東洋シール工業

▶基本情報

  • 本社:奈良県生駒郡
  • 従業員数:535人
  • 事業内容:工業用/自動車用ゴム製品の製造・販売

▶概要

転がり軸受用ゴムシールの開発から製造・販売までを行う。1997年にイギリス工場で生産を開始(2006年に生産を終了し、現在は営業所として機能)。現在は、インドネシア、ポーランド、中国に工場を有しており、それぞれの向上でISOを取得済み。

まとめ

今回はイギリスの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果,イギリス製造業はGDPに対する割合は年々減少しているものの、生み出す付加価値自体は近年増加傾向であると分かります。またイギリス製造業のPMIは2020年8月時点で世界トップの数字であり、新型コロナウイルスの影響からの急速な回復が期待されます。

進出する日本企業の視点から考えると、EU離脱によって関税、通関、物流の問題が浮上し、日本製造業企業の多くがサプライチェーンの見直し、もしくはイギリスからの撤退を検討していることが分かりました。ただ、世界5位のGDPに代表されるように、市場規模は大きく進出先の一つの選択肢として考慮するべき国であることは変わりないと思います。今回の内容がイギリス進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑪「イギリス」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第四弾として「イギリスの製造業」を紹介します。

かつては「世界の工場」と呼ばれたイギリスですが、1979年のサッチャー政権以降、製造業からサービス業、金融・保険業へのシフトが続いています。また2020年2月1日のEU離脱により、イギリス進出を考えなおしている日本の製造業事業者の方も多いと思います。今回は、上述したトピックを今後のイギリス製造業と合わせて掘り下げていきます。

基本情報

  • 正式名称:グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain & Northern Ireland)
  • 首都:ロンドン(London)
  • 首相:ボリス・ジョンソン(2019年7月から)
  • 通貨:ポンド(1ポンド=133.89円 ※2020年9月21日時点)
  • 人口:約6602万人
  • 面積:約24.9万km2
  • 公用語:英語(ウェールズ語、ゲール語等含む)
  • 宗教:キリスト教(約72%)、無信仰(約15%)、ムスリム教(約3%)
  • 平均寿命:男78.6歳、女83.1歳

経済の特徴

強み

  1. 石油・ガス:石油とガスがイギリスの総一次エネルギー需要の3/4以上を占める
  2. 先端産業:航空宇宙産業、医薬品産業、自動車産業で最先端技術を有する企業が複数
  3. 税制:2015年の国際企業に対する法人税は20%でG20諸国の中で最も低い数字

弱み

  1. EUとの関係:EU離脱によるEU各国との貿易の不安定性
  2. 労働生産性:労働生産性の低下が続く(資本投資の低下、熟練労働者の減少、高雇用率・低金利による非効率な会社の存続が理由)
  3. 地域格差:ロンドンを中心とする南東イングランド地方とそのほかの地域での輸送、エネルギーインフラの格差

産業構造

まずはイギリスの産業構造の調査結果を紹介します。下の図はイギリスの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:United Kingdom: Sectoral composition of the economy of the United Kingdom| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業と農業はGDPに占める割合が減少傾向が続く
  • 世界のGDPの3.36%を占める(世界第5位)

現状

  • 製造業がGDPに占める割合は2010年から2014年の間に回復傾向を示したが、その後は減少が続く
  • サービス業がGDPに占める割合は71.26%と高い(世界第9位)

今後

  • 2020年のGDPは前年比-10.1%と大きく減少し、2021年に6.5%の増加予想(新型コロナウイルスの影響)
  • 2020年の失業率は8.3%と大きく増加し、2021年に6.6%に減少する予想(新型コロナウイルスの影響)

製造業

次にイギリスの製造業の調査結果を紹介します。下の図はイギリスの製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)


データ引用元:United Kingdom: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業の生み出す付加価値は約8年の周期で上下を繰り返す
  • イギリスの製造業が生み出す付加価値は2兆431億ドル(世界第7位)

現在

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に13.8を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年8月に59.1を記録(世界第1位)
  • 国内の需要は回復傾向を示しているが、輸出は過去3年の中で最も低い数字を記録

今後

  • 熟練技術者不足の課題を解決すべく、行政と企業が若手技術者の育成に力を入れる方針
  • EUを脱退したため、製造業の輸出先としていたEU諸国との貿易が従来よりも難航する予想

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からイギリスの製造業市場を調査した結果です。下の図はイギリスに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

・2014年の1084社以降は単調減少傾向
・在英日本商工会議所の会員数は現在371社

現在

  • 進出日本企業の業種は、製造業39.3%)、サービス業(17.4%)、卸売業(17.2%)、金融・保険業(13.6%)
  • 進出日本企業の年商規模は、100億~1000億円未満が32.3%、1000億円以上が26.5%、10億~100億円未満21.5%、都道府県別では東京都が56.5%で最多

今後

  • イギリスのEU離脱に伴い、イギリスを経由して欧州とのやり取りが発生する場合関税が往復で2度発生するため、サプライチェーンの再構築に取り組む企業が増加する予想
  • 在英日系製造業企業の内、EU離脱によってマイナスの影響を受けたと回答した企業の割合は70.8%(通関・物流の混乱、関税コスト、通関手続きの発生が主な理由)

イギリスに進出した日本製造業企業

株式会社ネリキ

▶基本情報

  • 本社:兵庫県尼崎市
  • 従業員数:190人
  • 事業内容:高圧ガス容器用バルブの製造・販売

▶概要

1930年創業の高圧ガス容器用のバルブ製造販売メーカー。1995年にアイルランドに現地法人「NERIKI EUROPE LTD.」を設立。「商品ではなく、品質を売る」をモットーにISO9001(製品・サービスの品質マネジメントシステムの国際規格)を取得。現在では、イギリスを含めた世界7カ国の工業規格に合わせた製品を販売し、高圧ガス容器用バルブの分野で世界的なシェアを拡大している。

巴バルブ株式会社

▶基本情報

  • 本社:大阪市西区
  • 従業員数:210人
  • 事業内容:流体制御機器及び周辺機器の製造・販売

▶概要

国内シェア1位を誇るバタフライバルブメーカー。1986年に海外進出の拠点として現地のサンダースバルブ社と折半出資で同社初の海外製造・販売拠点「トモエサンダース」をウェールズに設置。現在ではイギリスをはじめ、台湾、シンガポール、フィリピン、タイ、中国、インドネシア、アメリカに工場および製造・販売拠点を有する。

東洋シール工業

▶基本情報

  • 本社:奈良県生駒郡
  • 従業員数:535人
  • 事業内容:工業用/自動車用ゴム製品の製造・販売

▶概要

転がり軸受用ゴムシールの開発から製造・販売までを行う。1997年にイギリス工場で生産を開始(2006年に生産を終了し、現在は営業所として機能)。現在は、インドネシア、ポーランド、中国に工場を有しており、それぞれの向上でISOを取得済み。

まとめ

今回はイギリスの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果,イギリス製造業はGDPに対する割合は年々減少しているものの、生み出す付加価値自体は近年増加傾向であると分かります。またイギリス製造業のPMIは2020年8月時点で世界トップの数字であり、新型コロナウイルスの影響からの急速な回復が期待されます。

進出する日本企業の視点から考えると、EU離脱によって関税、通関、物流の問題が浮上し、日本製造業企業の多くがサプライチェーンの見直し、もしくはイギリスからの撤退を検討していることが分かりました。ただ、世界5位のGDPに代表されるように、市場規模は大きく進出先の一つの選択肢として考慮するべき国であることは変わりないと思います。今回の内容がイギリス進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業⑩「イタリア」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第三弾として「イタリアの製造業」を紹介します。

イタリア産業は新型コロナウイルスの影響により大きな打撃を受けました。しかし2020年5月以降、製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は急速に回復しており、従来の数値を超えるほどにまで力を取り戻しています。今回は2020年9月現在、急速に回復しているイタリア製造業を日本企業の視点から掘り下げていきたいと思います。

イタリアの基本情報

  • 正式名称:イタリア共和国(Repubblica Italiana)
  • 首都:ローマ(Roma)
  • 首相:ジュゼッペ・コンテ(2018年6月から)
  • 通貨:ユーロ(1ユーロ=125.88円 ※2020年9月7日時点)
  • 人口:約6,060万人
  • 面積:約30万1328km2
  • 公用語:イタリア語
  • 宗教:カトリック(約80%)イスラム教、プロテスタント、ユダヤ教、仏教
  • 平均寿命:男79.6歳、女85.1歳

イタリア経済の特徴

強み

  1. 製造業:自動車産業、医薬品産業、繊維産業が盛ん
  2. 輸出:製造業関連の輸出(高級車、自動車部品、金属)に加え、衣料品(服、靴)の輸出が盛ん
  3. 観光業:2018年の統計によると、イタリアには6,160万人の観光客が訪れた(世界第5位)

弱み

  1. 失業率:2014年に過去最高の失業率12.7%を記録、若者の失業率が高く頭脳流出(優秀な人材の流出)が深刻化
  2. 企業競争力:国内の90%以上の企業が従業員10人以下の小企業、競争力の低下が進む
  3. 地域格差:治安の良い北部地方(殺人発生率の低さOECD加盟国の中でトップ1%圏内)に対し、治安の悪い南部(殺人発生率の低さOECD加盟国の中で下位10%圏内)

イタリアの産業構造

まずはイタリアの産業構造の調査結果を紹介します。下の図は2017年のイタリアの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合を示したグラフです。


データ引用元:Italy GDP – composition by sector – Economy – IndexMundi

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業と農業の占める割合は全体の約1/4
  • GDPの総額は約21.47億ドルで世界第9位(2019年)

現状

  • GDPにおける製造業が占める割合は2013年に13.85%を記録して以来緩やかに上昇を続ける
  • サービス関連業は増加傾向が続いていたが2014年以降、減少が続く

今後

・イタリアのGDP増加率が近年減少傾向(不安定な政治情勢、ユーロエリアでの不景気などの理由)
・新型コロナウイルスにより2020年のGDP増加率は-9.1%を記録する予想(2021年は4.8%の増加予想)

イタリアの製造業

次にイタリアの製造業の調査結果を紹介します。下の図はイタリアの製造業が国内総生産(GDP)に占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:Italy : Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 製造業生み出す付加価値は2015年から上昇傾向
  • 製造業が生み出す付加価値は世界5位(2019年)

現状

  • 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年5月に31.1を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年8月に53.1を記録
  • 製造業がGDPに占める割合は14.91%で世界41位(2019年)

今後

  • イタリアの製造業は2019年から2023年までCAGR(年平均成長率)1.6%で成長する見通し
  • イタリアの製造業がPLC(Programmable Logic Controller)市場で80%以上、低電圧ACモータードライブ市場で70%以上のシェアを獲得する見通し

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からイタリアの製造業市場を調査した結果です。下の図はイタリアに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフと関連データから以下のことが分かります。

  • 進出日本企業数は2015年をピークに減少傾向が続く
  • 在イタリア日本商工業会議所の会員数は199社(内135社が普通会員、64社が賛助会員)

現状

  • 電機、自動車部品、化学・素材、エネルギー分野の日本企業の進出が多い
  • 近年、日本企業が現地イタリア企業を買収する形で進出するケースが増えている(毎年10~20件程度

今後

  • 2020年3月にイタリア政府はEUガイダンスを公表し外資規制を強化する姿勢を示した
  • 新型コロナウイルスの影響により多くの企業が経営難に陥り、企業価値が下がっている中で自国の戦略的資産を保護する動きが散見される

イタリアに進出した日本企業

株式会社ダイドーリミテッド

▶基本情報

  • 本社:東京都千代田区
  • 従業員数:42人(単体)
  • 事業内容:衣料品の製造・販売

▶概要

2016年イタリアのPontetorto S.p.a(ファッションウェア向け生地の製造・販売業者)を子会社化する形で欧州に進出。Pontetorto S.p.aが有する欧州での強固な販売基盤と婦人服向け衣料素材、スポーツ向け衣料素材を取り込むことで顧客の拡大を狙う。同社は中国にも製造拠点を有しており海外への事業展開に積極的。

石川ガスケット株式会社

▶基本情報

  • 本社:東京都港区
  • 従業員数:137人
  • 事業内容:ガスケットの製造・販売

▶概要

自動車エンジン部品の一つであるガスケット(液体の漏れを防止するための部品)を自社独自の技術で製造・販売する企業。2000年にイタリアのトリノにヨーロッパ初の支店を設立。現在は現地企業SPESSO GASKETS, SRLに生産委託で業務提携をしており、欧州のみならずアジア、北米地域への販路開拓にも積極的に取り組んでいる。

滲透工業株式会社

▶基本情報

  • 本社:長崎県西彼杵郡
  • 従業員数:187人 ※国内グループ全体
  • 事業内容:金属表面改質処理、ランスパイプの製造

▶概要

金属材料に所望の特性を付与させる金属表面改質技術を強みにする企業。1984年に同社初の海外子会社となるSHINTO ITALIA S.p.Aを設立。1996年に同子会社でISO9001(製品・サービスの品質マネジメントシステムの国際規格)を取得。現在は本社と同じ事業を扱っており、欧州の市場開拓の拠点として重要な役割を担う。

まとめ

今回はイタリアの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、前回紹介したフランスの製造業同様に欧州の製造業は急速な回復傾向を示していることが分かりました。

進出日本企業数は増加傾向とは言えないものの、イタリア製造業がGDPに占める割合は近年増加傾向にあるため、魅力的な市場であることに変わりはないと言えます。今回紹介したデータを含めて考えると、ヨーロッパの拠点としてイタリアも有力な候補になると思います。今回の内容がイタリア進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「フランス」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第二弾として「フランスの製造業」を紹介します。

2017年の国別日系企業数の調査によると、フランスには719の日系企業が進出しており、ヨーロッパではドイツ、イギリスに次ぐ日本企業が拠点を構えています。イギリスのEU離脱(2020年1月)を皮切りに、ドイツに次ぐ日系製造業企業の進出ターゲット国として注目を集めるフランスを日本企業の視点から掘り下げていきたいと思います。

フランスの基本情報

正式名称:フランス共和国(République Française)
首都:パリ(Paris)
元首:エマニュエル・マクロン大統領(2017年5月から)
首相:ジャン・カステックス(2020年7月から)
通貨:ユーロ(1ユーロ=125.43円 ※2020年8月21日時点)
人口:約6,699万人
面積:約55万km2
公用語:フランス語
宗教:カトリック(約65%)イスラム教、プロテスタント、ユダヤ教
平均寿命:男78.8歳、女85.2歳

フランス経済の特徴

強み

1. インフラ:世界トップクラスの速さでインフラ整備が進む(フランス政府が力を入れて投資をしていることが要因)
2. 観光業:2017年の調査によると、フランスに訪れる外国人観光客は8,690万人で世界1位
3. 農業:EUの農業生産の約1/5を占める(植物油、穀物、ワインはEUの約1/3の生産高を占める)
4. 国際企業:各種産業で高い競争力を誇る企業を有する(航空宇宙、エネルギー、環境、医薬品、高級品、食品、流通)

弱み

1. 税金:給与税40%は世界で最も高い(政府がインフラ整備に投資する財源を確保するため)
2. 失業率:失業率8.1%はEUで4位(2019年第四四半期の調査)特に若者と高齢者の失業率が高い
3. 競争力:熟練労働者が不足しているため製造業の競争力は停滞傾向

フランスの産業構造

まずはフランスの産業構造の調査結果を紹介します。下の図は1970年から2019年までのドイツの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:France: sectoral composition of the economy| TheGlobalEconomy.com

グラフから以下のことが分かります。

  • サービス関連業は増加傾向を維持しており、全体の78%を占める
  • 製造業と農業は減少傾向にあり、合わせてGDP全体の22%を占める

現状

  • 2020年のGDP成長率は-7.2%になる見通し(新型コロナウイルスの影響)
  • 2019年の財政赤字はGDPの3.1%を記録し、過去9年間で最も高い数字となった

今後

  • 2021年にGDPは4.5%の回復が見込まれている(新型コロナウイルスの影響が弱まると予想されるため)
  • 失業率(特に若者)は近年増加傾向であり、2020年、2021年ともに10.4%となる見通し(新型コロナウイルスの影響)

フランスの製造業全体

次にフランスの製造業全体の調査結果を紹介します。下の図はフランスの製造業が国内総生産(GDP)に占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:France : Share of manufacturing | TheGolobalEconomy.com

グラフから以下のことが分かります。

  • 統計開始を開始した1960年から減少傾向が続く
  • 製造業が生み出す付加価値は増加傾向が続く(世界第6位の額)

現状

  • 新型コロナウイルスによる不況により製造業労働者の失業数が増加
  • 2020年4月に31.5%まで落ちたPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年7月に55%近くまで回復

今後

  • 新型コロナウイルスによるロックダウンを機に生産性改善に取り組む企業が増加
  • 医薬品の輸出が急速なスピードで増加(2019年に前年比+4.9%の増加を記録)

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からフランスの製造業市場を調査した結果です。下の図はフランスに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフから以下のことが分かります。

  • 2016年を除いて、統計を開始した2012年から増加傾向が続く
  • 在仏日本商工会議所の正会員数は2000年から210社辺りで横ばいが続く

現状

  • フランスに拠点を持つ日系企業の中で約29%が自動車関連企業電子工学が19%農業・食品関連が11%機械・機械設備が9%
  • フランス進出した日系企業の46%が生産・製造関連のビジネスを行っている

今後

  • 在仏日系企業の内2020年の営業利益見込みが改善すると回答した割合は41.3%(有効回答数80社)
  • 在仏日系企業の内25.0%の企業が景気が回復していると回答、11.9%の企業が景気が悪化していると回答(有効回答数80社)

フランスに進出した日本企業

次に実際にフランスに進出した日本の製造業企業3社を紹介します。

株式会社ダイショウ

▶基本情報

  • 本社:神奈川県茅ケ崎市
  • 従業員数:3人
  • 事業内容:受託加工業(切削部品)

▶概要

日仏を技術で繋ぐ「町工場」の名の下に、2015年よりフランス・サンテティエンヌ近郊で事業を展開。試作、中小ロットを対象とした切削部品の受託加工業で欧州進出を果たす。フランスでは現地パートナー企業と連携して加工生産、現地サプライチェーンの構築を行い日本品質の技術を駆使し現地での生産を行う。※詳しくは下記の過去のインタビュー記事を参照。

▶インタビュー記事(株式会社ダイショウの石塚社長)


(フランス進出の経緯、フランスでのビジネス、フランスでの加工業について)


(フランス進出、フランスの日本企業、フランスのネット事情、フランスの現状について)

株式会社由紀精密

▶基本情報

  • 本社:神奈川県茅ケ崎市
  • 従業員数:42名(パートタイマー7名含む)
  • 事業内容:精密部品製造(航空・宇宙・医療・電気電子・機械式時計)

▶概要

2015年5月に航空宇宙関連事業の拡大を目的にフランス子会社「YUKI Précision SAS」を設立。精密切削加工分野の日本企業として初のフランス進出を果たす。2016年5月に日仏の中小製造業4社が共同で精密加工部品の製造を請け負う組織「ACT」を創設。現在では本業の精密切削加工に加えて欧州に進出する日本企業のサポート事業も行っている。

松本機械工業株式会社

▶基本情報

  • 本社:石川県金沢市
  • 従業員数:94名
  • 事業内容:工作周辺機器の製造販売

▶概要

高性能のパワーチャック・シリンダー・NCロータリーテーブルの製造・販売を行う。フランス・リヨンに販売子会社を有しており航空機エンジン関連の市場開拓に力を入れている。フランスのみならずASEAN各国、台湾・韓国・アメリカを中心に各国のニーズに合わせた販路開拓を展開している。

まとめ

今回はフランスの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、フランス製造業PMIが示すようにフランス製造業は新型コロナウイルの影響から回復傾向にあり、生産効率改善への取り組みを始め次のステージへ移行しています。

進出日系企業に着目すると、今回紹介した企業はいずれもフランスの航空宇宙産業関連の市場に自社の製品・技術を展開していることが分かります。このことからもヨーロッパ進出には世界に通用する高い技術力と品質がカギであると分かります。今回の内容がフランス進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「ドイツ」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第一弾として「ドイツの製造業」を紹介します。

2017年の国別日系企業数の調査によると、ドイツには1814の日系企業が進出しておりヨーロッパのなかで最も多くの日本企業が拠点を構えています。同データからも分かるように、日本企業から多くの注目を集めるドイツの製造業を掘り下げていきたいと思います。

ドイツの概要

  • 正式名称:ドイツ連邦共和国(Bundesrepublik Deutschland)
  • 首都:ベルリン(Berlin)
  • 元首:フランク=ヴァルター・シュタインマイアー(2017年3月から)
  • 首相:アンゲラ・メルケル(205年11月から)
  • 通貨:ユーロ(1ユーロ=125.57円 ※2020年8月12日時点)
  • 人口:約8046万人
  • 面積:約36万km2
  • 公用語:ドイツ語
  • 宗教:カトリック(29.9%)、プロテスタント(28.9%)、イスラム教(2.6%)、ユダヤ教(0.1%)
  • 平均寿命:男78.5歳、女83.3歳

ドイツ経済の特徴

強み

  1. 工業基盤:2018年のGDPの約25%を工業が占める
  2. 輸出:ハンブルク、ブレーマーハーフェン、キールといった世界的な貿易港を有する
  3. 職業訓練制度:毎年約500,000人の生徒が職業訓練を受ける、訓練後のフルタイム勤務を支援
  4. 中小企業:年間売上高5000万ユーロ以下、従業員500人以下の企業が国の経済の屋台骨を支えるという意味を込めて「ミッテルシュタント(Mittelstand)」と呼ばれている

弱み

  1. 労働人口:医者と看護師を始めとする技能労働者不足が深刻化する予想
  2. 自動車産業:自動車に対する需要の低下などの要因により、400万人分の雇用が2030年までに消失する予想
  3. 政党分裂:支持者の高齢化、会員数の減少、投票基盤の縮小、意思決定プロセスの複雑化等の問題が浮上

ドイツの産業構造

ドイツの産業構造を調べます。下の図は2019年のドイツの国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合を示したグラフです。


データ引用元:Germany – Share of economic sectors in gross domestic product (GDP) in 2019 | statista

グラフから以下のことが分かります。

  • サービス関連業がGDP全体の2/3以上を占める
  • サービス関連業は2007年からドイツのGDPの60%以上を安定的に占める

現状

  • 新型コロナウイルスの影響により2020年の製造業の生産高は約10%から15%減少する見通し
  • 2020年現在、ドイツ国内における製造業の生産高は5月から徐々に回復しており、同傾向が続く予想

今後

  • ドイツは世界の産業拠点として以前ほど魅力的ではなくなる予想(賃金、実効平均法人税率、電気代が他国と比較して高いことが理由)
  • 輸出産業が盛んなドイツにとってコロナウイルスの収束による輸出産業の回復が経済のカギを握る

ドイツの製造業全体

次にドイツの製造業全体について調べます。下の図はドイツの製造業が国内総生産(GDP)に占める割合の遷移を示したグラフです。


データ引用元:Germany : Share of manufacturing | the Global Economy.com

グラフから以下のことが分かります。

  • ・2009年の17.68%を除いて安定してGDPの20%前後を占める
  • ・2016年以降、サービス関連業の拡大により減少傾向が続く

現状

  • 新型コロナウイルスの影響により、機械工学産業、自動車産業、金属産業において顕著な生産高の減少が発生する見通し(工場の生産効率低下などが理由)
  • 2020年3, 4, 5月の製造業の生産高は大幅に下落、第三四半期から回復の兆しを見せる予想だが回復のスピードは遅く、前年の水準には及ばない予想

今後

  • 2021年の製造業の生産高は10%以上増加する見通し
  • 2021年に回復傾向に転じることが予想されるが、過去最高を記録した2018年の水準には達しない予想

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からドイツの製造業市場を調査した結果です。下の図はドイツに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフから以下のことが分かります。

  • 統計を開始した2007年以降、ドイツに進出する日系企業数は増加傾向が続く
  • 2014年から2017年まで成長率は減少傾向

現状

  • 2017年において、欧州に進出した日本企業の約24%がドイツに進出(欧州内でトップの割合)
  • 進出している分野は卸・小売業が約31%製造業が約28%サービス業が約11%宿泊・飲食業が約7.2%情報通信業が約5.5%運輸業が約4.2%教育・医療・福祉業が約2.0%金融・保険業が約1.7%不動産業が約0.7%その他が約8.5%

今後

  • ここ数年日本の中小企業がドイツに進出する件数が増加傾向
  • 2020年6月の調査によると、在独日系企業のうちドイツにおけるビジネス展開の縮小・撤退を検討している企業は約5%であり、ほとんどの企業がこれまで同様にドイツでビジネスを続ける方針

ドイツに進出した日本企業

次に実際にドイツに進出した日本の製造業企業3社を紹介します。

株式会社五鈴精工硝子

▶基本情報

  • 本社:大阪府泉佐野市
  • 従業員数:78人
  • 事業内容:光学フィルターの製造・販売(OA機器、写真機器、照明器具、医療機器用)

▶概要

オリジナルの組成素材を用いた光学フィルターを試作から量産まで自社で一貫生産を行う。ヨーロッパへの事業拡大拠点として、ドイツ(フランクラフルト)とに事業所を構える。世界でも有数なラインナップ数を誇る機能性ガラスや世界トップクラスの特殊形状レンズの量産化技術を活かし海外企業と取引を行う。

向陽技研株式会社

▶基本情報

  • 本社:大阪府堺市
  • 従業員数:80名(中国工場70名、ベトナム工場200名、ドイツ販社4名)
  • 事業内容:ラチェットギアの製造・販売(ソファ用ギア、座椅子用ギア、テーブル脚用昇降パーツ)

▶概要

家具製品用の角度調節金具の製造販売を行う。2年に1度ドイツ(ケルン)にて開催される家具部品の展示会に新製品を出展し続けソファーメーカーを始めとするヨーロッパでの顧客を獲得。現在ではドイツ(ディッセルドルフ)に販売拠点を構える。

三星ダイヤモンド工業

▶基本情報

  • 本社:大阪府摂津市
  • 従業員数:698名(連結)
  • 事業内容:電子部品の分断加工、パターニング工程向け装置・加工工具(刃先等)・レーザー光源・光学系の開発、製造、販売

▶概要

電子部品の加工装置メーカー。オリジナルの刃先やレーザー発振器を利用し生産性を高めた加工装置を製造、販売する。2005年にSchott AG(ドイツ・マインツに本社を置く産業用ガラスメーカー)のレーザー分断事業を買収しドイツに子会社を設立。現在では、中国、韓国、台湾においても事業を展開している。

まとめ

今回はドイツの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。今回の調査の結果、ドイツの製造業はコロナウイルスの影響で2020年の上半期に大きな影響を受けたものの、下半期から徐々に回復するであろう見方が強いことが分かりました。

以前紹介したアジアに進出している日系企業は、現地の労働者雇用や現地の日本企業への部品供給を主な目的として挙げられました。一方で、ドイツに拠点を構える日本企業は、ヨーロッパへの販路開拓の拠点としてドイツを選んでいるケースが多いと感じました。今回の内容がドイツ進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

「DeepL翻訳 vs. Google翻訳」プロの翻訳家が徹底評価!

テクノポートの稲垣です。現在、日本人ユーザーが驚異的な勢いで増加している機械翻訳「DeepL翻訳」をご存知でしょうか?DeepL翻訳とはドイツの人工知能システム開発を行うDeepL社が提供する機械翻訳システムです。

本記事では、DeepL翻訳とGoogle翻訳の翻訳精度(日本語→英語)の評価をプロの翻訳家の方に行って頂きました!翻訳評価をして頂いたプロの翻訳家の方の詳細については、過去の記事「フリーランス翻訳家にインタビュー①「カナダ在住のM.H.さん」前編」/「後編」をご参照ください。

DeepL翻訳とは?

概要

  • 人工知能システム開発を行うDeepL社(ドイツ)が提供する機械翻訳システム
  • 2020年3月に日本語対応して以降、日本人ユーザーが急増中
  • Google翻訳より自然な翻訳ができると話題 ※下記の参考記事を参照してください

参考記事
1. 「「DeepL翻訳」が日本語対応、「自然な訳文」と話題に 独ベンチャーが開発」、ITmeia
2. 「ドイツの機械翻訳「DeepL」がすごい。ついに日本語対応も。」Forbes Japan
3. 「Googleより自然な翻訳「DeepL」が日本語有料版を展開 月額1200円から」HUFFPOST

基本仕様

  • 使用料金:無料 ※有料版DeepL Proを使う場合、月額750円~5000円の使用料金
  • 対応言語:11言語(英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、オランダ語、イタリア語、ポーランド語、ロシア語、日本語、中国語)
  • 対応可能ファイル形式:Microsoft Word(.docs)、Power Point(.pptx)、テキストファイル形式(.txt)※テキストファイル形式はDeepL Proへの登録が必要

無料版と有料版の違い

無料版を用いても基本的な翻訳機能は無制限で利用可能です。以下に有料版でのみ利用可能なサービスを列挙します。

  • 文字制限なし:1度に翻訳するテキストの文字制限がなくなる
  • 文書ファイル翻訳:プランによって毎月5~100の文書ファイルを翻訳可能
  • 用語集の上限なし:用語集(特定の単語やフレーズの訳し方を定義できるシステム)に登録できる単語の上限がなくなる ※日本語は未対応
  • データの機密性確保:DeepL翻訳を用いて入出力されたテキストは、ユーザーに訳文が届けられた後すぐに削除

特徴

DeepL翻訳の最大の特徴は、自然な訳文を作成する能力です。この能力を検証するために、DeepL社が行ったブラインドテストの結果を紹介します。下のグラフは、オンラインで使える3つの大手翻訳システム(Google、Amazon、Microsoft)で訳した文章とDeepL翻訳で訳した文章を並べ、翻訳システムの名前を伏せた状態で翻訳者に示し、評価をさせた結果を示しています。なお、翻訳に使用する文章は様々な分野のテキストから119段落を抽出したものを使用しています。


出典:DeepL翻訳が日本語と中国語を習得、DeepLブログ、DeepL

グラフの縦軸は各翻訳システムの訳文が、他より高い評価を得た確率を示しています。ただし、複数の翻訳システムが同時に最高評価を得た場合はカウントしていません。グラフから以下のことが分かります。

  • 英語→日本語:DeepL翻訳はGoogle翻訳に対して約3.7倍の確率でプロの翻訳者から高い評価を得た
  • 日本語→英語:DeepL翻訳はGoogle翻訳に対してい約2.8倍の確率でプロの翻訳者から高い評価を得た

以上の結果から、DeepL翻訳がプロの翻訳者から高い確率で高評価を得ていることが分かります。

翻訳精度評価

本記事では、プロの翻訳家の方にDeepL翻訳の精度評価(日本語→英語)を行っていただきました。詳細は下記に示します。

評価試験の条件

▶使用する機械翻訳:DeepL翻訳、Google翻訳

▶翻訳評価の方法:2種類の機械翻訳ツールを用いて翻訳した文章を1センテンスずつ下記の5段階評価を行う。

「5段階評価」
5 : 意味が分かる・自然
4 : 意味が分かる・やや不自然
3 : 意味が分かる・不自然
2 : 意味がやや分かる・不自然
1 : 意味が分からない・不自然

▶翻訳に使用する文章(日本語ビジネスメール)

①件名:【ABC株式会社】お問い合わせありがとうございます

②※このメールはシステムからの自動返信です

③ジョー・スミス様

④お世話になっております。
⑤ABC株式会社へのお問い合わせありがとうございました。

⑥以下の内容でお問い合わせを受け付けいたしました。
⑦3営業日以内に、担当者 田中よりご連絡いたしますので 今しばらくお待ちくださいませ。

結果

それでは、順に結果を見ていきましょう!

原文①

件名:【ABC株式会社】お問い合わせありがとうございます

訳文
DeepL翻訳 : Subject: [ABC Corporation] Thank you for your inquiry!
Google翻訳:Subject: [ABC Corporation] Thank you for your inquiry

評価
DeepL翻訳:5
Google翻訳:5

プロ翻訳家のコメント
DeepL翻訳:問題ありません。!はあってもなくても問題ありません。
Google翻訳:問題ありません。

原文②

※このメールはシステムからの自動返信です

訳文
DeepL翻訳 : This email is an automatic response from the system.
Google翻訳 : *This email is an automatic reply from the system

評価
DeepL翻訳:5
Google翻訳:5

プロ翻訳家のコメント
DeepL翻訳:※の部分は訳されていませんが内容は問題ありません。
Google翻訳:問題ありません。

原文③

ジョー・スミス様

訳文
DeepL翻訳 : Mr. Joe Smith.
Google翻訳 : Joe Smith

評価
DeepL翻訳:5
Google翻訳:5

プロ翻訳家のコメント
DeepL翻訳:基本的には問題ありませんが、Mr, Mrs, Miss, Ms, (他に Dr)などは会社側が把握していれば問題ないですが、女性か男性か分からない(または既婚、未婚か分からない)場合は、気を付けなくてはいけません。
Google翻訳:基本的には問題ありません。会社によっては最初に Hi XXX、や Dear XXX をつけることもあります。

原文④

お世話になっております。

訳文
DeepL翻訳 : Thank you for your help.
Google翻訳 : We become indebted to.

評価
DeepL翻訳:1
Google翻訳:1

プロ翻訳家のコメント
DeepL翻訳:”Thank you for your help” = 「助けてくれてありがとうございました。」というのはここでは必要ありません。メールの最初にもってくるのも不自然だと思います。
Google翻訳:文法的にも間違っていますし、不自然です。メールの最初にもってくる必要もないと思います。文法的には “We are indebted to you” ですが、普段あまり使用しません。使う場面としては、命を救われた時など、危機的状況を救われた時などに使います。

原文⑤

ABC株式会社へのお問い合わせありがとうございました。

訳文
DeepL翻訳 : Thank you for your interest in ABC Corporation.
Google翻訳 : Thank you for your inquiry to ABC Corporation.

評価
DeepL翻訳:5
Google翻訳:5

プロ翻訳家のコメント
DeepL翻訳:問題ありません。
Google翻訳:問題ありません。

原文⑥

以下の内容でお問い合わせを受け付けいたしました。

訳文
DeepL翻訳 : We are pleased to hear from you as follows.
Google翻訳 : We have accepted inquiries with the following contents.

評価
DeepL翻訳:2
Google翻訳:2

プロ翻訳家のコメント
DeepL翻訳:”hear form you as follows”というのは不自然です。例えば “We are pleased to accept your inquiry with the following contents.”、または “Below is a summary of the inquiry that we have received.” の方が自然です。
Google翻訳:文章として不自然ですし、1 inquiryもしくはmulitiple “inquiries” なのかによって文章は変わると思います。なので、先に挙げた例のような文章の方が適切だと思います。

原文⑦

3営業日以内に、担当者 田中よりご連絡いたしますので 今しばらくお待ちくださいませ。

訳文
DeepL翻訳 : Our representative, Tanaka, will contact you within 3 business days. Please be patient for a while.
Google翻訳 : Within 3 business days, Tanaka will contact you. Please wait for a while.

評価
DeepL翻訳:3
Google翻訳:3

プロ翻訳家のコメント
DeepL翻訳:最初の文章は問題ありませんが、2番目の文章が不自然なので削除した方が良いと思います。何か付け加えたい場合は “Thank you for your patience.” と付け加えても良いと思います。
Google翻訳:意味は分かりますが、Tanakaさんが”担当者”である。という部分が訳から抜けています。こちらも2番目の文章はなくても良いと思います。

総評

基本的には、内容が分かれば機械翻訳を利用してメールのやり取りをしても問題ないと思います。というのは、英語に不慣れな人たちもビジネスで英語の文章を書くことも多いからです。

一方で、”お世話になっております”の英訳は相手を混乱させてしまうかもしれません。また”Mr”なども、性別が前もってわかっていれば問題ないありませんが、名前から推測すると間違っている場合もあるので注意が必要です。

まとめ

結果からまとめると、DeepL翻訳、Google翻訳共に26/35点と同じ点数になりました。今回の検証結果から言えることは、現時点ではDeepL翻訳とGoogle翻訳のどちらが圧倒的に優れているということはないということです。

個人的な意見として、どちらの機械翻訳も意味が一意的に決まる文章の翻訳は高評価を得ていたと思います。対して、日本語独特の表現(例、お世話になっております。)や主語、単数・複数の概念が欠如した意味が曖昧な文章の翻訳に苦戦している印象を受けました。つまり、機械翻訳を使ってビジネスメールのやり取りをする場合は、原文の日本語は極力、日本語独特の定型表現を排除し、具体的な文章に置き換える必要があると感じました。(例、いつもお世話になっております。→ いつもご支援いただきありがとうございます。)

今回の記事で紹介した内容を参考に機械翻訳を上手にビジネスに役立てて頂ければ幸いです。

フリーランス翻訳家にインタビュー①「カナダ在住のM.H.さん」後編

テクノポートの稲垣です。今回も前回の記事に引き続きインタビュー企画として、カナダで病院関係のお勤めの傍らでフリーランス翻訳家として活躍するM.H.さんに行ったインタビューの内容についてお伝えします。後編の今回は、

  • 「日本人労働者のポジティブなイメージは?」
  • 「日本人労働者のネガティブなイメージは?」
  • 「日本人が英語話者と正しく意思疎通をするためにすべきことは?」
  • 「新型コロナウイルスが日常生活に与えている影響は?(2020年5月27日インタビュー実施)」

などの質問に対し、カナダで働くフリーランス翻訳家の方ならではの意見をお届けします!

カナダから見た日本企業について

日本企業のポジティブなイメージは?

日本製品は昔ほどではないですが、高品質のイメージがあると思います。

大型医療機器で言うと、近年中国や韓国のメーカーも積極的に参入してきていますが、いまだにシーメンス(ドイツ)、フィリップス(オランダ)、GE(アメリカ)、Canon(旧TOSHIBA、日本)のような欧米や日本企業が強い印象があります。

家電製品については、少し前までは日本製品がよく売れていたんですが、昔ほどのブランド力はないと思います。加えて、最近はTOSHIBAやSHARPが大きな痛手を受けたこともあって不振気味な印象を受けます。

日本企業のネガティブなイメージは?

個人的な体験談になりますが、日本企業からカナダ現地企業に訪れる上の立場の人達の訪問の目的が不明瞭なことが多いと感じます。

私の働く職場にも日本から偉い立場の人が来ることがありますが、来たとしても英語でコミュニケーションをとることが苦手なことが多いため、何のために来たのかが分からないまま訪問を終えることが多いと感じます。迎え入れる企業の立場からしても、時間を割いて対応しているので何のために来て、何を成し遂げたいのかを明確に決めてきた方が良いと感じます。

日本人労働者のポジティブなイメージは?

まじめに一生懸命働くことだと思います。

これは、カナダにある日本企業に関してカナダ人が思うことですが、日本人労働者の特徴と聞いてまず思い浮かぶのがまじめに一生懸命働くことだそうです。しかし実際は、一生懸命という言葉はネガティブなニュアンスも含んでいて、カナダ人でも「過労死」という言葉を知っているくらい、たくさん働きすぎているというイメージが強いと思います。

日本人労働者のネガティブなイメージは?

質問をしない事だと思います。

日本人の方は外国人の方に比べてあまり質問をしない傾向があると思います。例えば、日本人労働者の方が何か仕事を依頼された際に、詳細を詰めずに仕事を進めた結果、できあがった成果物が期待していたものと違ったということが多いように思います。特に外国人と英語のコミュニケーションになると、日本人の方は詳細を詰めずに推し量って仕事を進めるイメージがあります。

カナダ現地企業と日本企業の違いは?

大きな違いは3つあると思います。

1つ目は、カナダ企業は分からないところをはっきりさせる傾向が強いです。例えば、カナダの現地企業で仕事を進める際には、条件をきっちり決めて、これをやるからこういう結果が欲しい、というギブアンドテイクを明確にしてから進めます。一方で、先ほども言いましたが、日本企業はこういうことが不明確なまま仕事を進める傾向があると思います。

2つ目は、カナダ企業は年功序列の傾向が日本より少ないと感じます。私の個人的なイメージですが、日本企業はその人の実力に加えて社内での人間関係が昇進に関わってくると思います。対して、カナダの企業は本人の能力やプレゼンテーション能力といった面が重要視される傾向が強いと感じます。

3つ目は、社員を解雇する方法が違います。カナダ企業は社員を解雇する時は多くの場合当日に伝えられます。なので、前任者の引継ぎという概念がないこともあるので、前の担当者と次の担当者で同じ話ができるかどうか保証されていません。日本だと解雇通知は1カ月、2カ月前など前もって通達されるので、日本企業が海外の企業とやり取りする際には注意した方が良いと思います。

日本人の英語について

日本人が海外で英語に難しさを感じる理由は?

現地の英語話者が話す英語を理解することが難しいからだと思います。

日本で英語教室に通っている方、社内で英語を勉強する時間をとっている企業は多いと思いますが、日本に来て教えてくれる外国人の方は日本人のレベルに合わせて話してくれていることがほとんどです。それは、話すスピードであったり、使う言葉の選択に現れてくると思います。なので、日本で英語話者とコミュニケーションができても、いざ現地の人となると全然ついていけないということがよくあります。

日本人が英語話者と正しく意思疎通をするためにすべきことは?

会議の終了間際に、会議の決定事項と要約を全員に共有し確認をとるべきだと思います。

ビデオ会議などで海外の方とお話をする機会があれば、会議の内容がきちんと伝わっているか確認するためにも、会議の最後にまとめと言う形で今日決めたこと、次にすること、などを明確にした方が良いと思います。特に海外の方とやり取りする場合は、日本から直接会えないことに加えて、時差の関係で気軽に連絡をとることもできないので、書面またはメールできちんと確認しておくのが良いと思います。

新型コロナウイルスが日常生活に与えている影響は?

※2020年5月27日インタビュー実施

カナダは日本より厳しい対策をとっていると思います。

日本では、1月2月辺りから対策を始めていたと思いますが、こちらは3月中旬くらいに学校が閉鎖し、レストラン、美容院、ネイルサロン等のほぼ全てのサービス業が閉鎖されました。また、密な集まり、公園での遊具使用などに罰金が科されていますし、ソーシャルディスタンスを守ることはもちろん、他の市に行くことも基本的には禁じられています。

現在もレストランはテイクアウトのみで、洋服屋さんなどはちょっとずつ開店し始めていると思います。ショッピングモール内にある店舗は外からの入り口がないためいまだに閉店中のところが多いです。

まとめ

いかがでしょうか?冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「日本人労働者のポジティブなイメージは?」
→ まじめで一生懸命働く

「日本人労働者のネガティブなイメージは?」
→ 詳細を詰めずに仕事を推し量って進めること

「日本人が英語話者と正しく意思疎通をするためにすべきことは?」
→ 会議の最後にまとめとして決定事項、要約、次回すべきことを共有する

「新型コロナウイルスが日常生活に与えている影響は?(2020年5月27日インタビュー実施)」
→ 日本より厳しい対策が取られている

となります。今回のインタビューを通して、カナダ人が日本人労働者に対して持つイメージ、カナダ企業と日本企業との働き方の違いを感じ取って頂けたと思います。また、コロナウイルスで海外への渡航が難しくなっている中、海外の人と正しく意思疎通をする方法は有用かつすぐにでも活用できるため多くの方に有益な内容になっていると思います。

フリーランス翻訳家にインタビュー①「カナダ在住のM.H.さん」前編

テクノポートの稲垣です。今回はインタビュー企画として、カナダで病院関係のお勤めの傍らでフリーランス翻訳家として活躍するM.H.さんにインタビューを行いました。本企画の目的は、海外進出に欠かせないホームページを英語翻訳しようと考えている製造業事業者の方に有益な情報をお届けすることです。前編の今回は、

  • 「日本語から英語への翻訳で難しいことは?」
  • 「英語に訳しにくい日本語の文章は?」
  • 「非ネイティブが翻訳の品質を判断する方法はあるか?」
  • 「機械翻訳と翻訳家による翻訳の違いは?」

などの質問に対し、カナダ現地企業で働きつつプロの翻訳家として活躍する方の意見をお届けします!

M.H.さんについて

M.H.さんの経歴は?

学士は日本で工学部の機械工学科でとりました。その後、日本の外資系の医療機器メーカーに就職し、医療機器の営業をしました。3年半ほどその会社で勤めた後、カナダの大学院に留学して修士課程を血流工学というテーマでとりました。その後、カナダにある日本の医療機器メーカーに就職し、多くのカナダ人の方と働かせていただきました。1年ほどその会社で勤めた後、同じくカナダにあるトロント大学で生体工学を専攻し博士課程をとって、現在、現地で病院関係の仕事をしています。

カナダの大学院に留学した理由は?

理由は大きく2つあります。

1つ目は、学部時代に3カ月ほど研究室留学をしたカナダで修士課程をとってみたいと思ったからです。

2つ目は、奨学金がもらえるからです。理工系に限って言うと、カナダの大学は世界中の国から優秀な学生を集めるために、大学院生には返済不要の奨学金を提供していることが多いので、カナダの大学院に応募しました。あとは、学部時代の教授に知り合いの先生を紹介してもらったということも影響しています(笑)。

博士課程に進学した理由は?

研究者として働くうえで、修士号では不十分だと思ったからです。医療機器メーカーでお医者さんと共に働いていると、やっぱり修士課程卒の人よりも博士課程卒の人の方が対等に議論に参加できると感じました。

あとは、アメリカやカナダでは日本に比べて修士から博士に進学する人の割合が多いので、周りに研究者の方も多かったということも影響しています。

翻訳作業について

翻訳作業の流れは?

題名や、まとめが最初にある場合を除き、基本的には頭から一文ずつ順番に訳していきます。その際は、常に前後の文の内容を考えながら訳すように心掛けています。

注意することとしては、スタイルガイド(固有名詞の翻訳ルールなどを取りまとめたもの)があればそれを参照にしながら翻訳します。スタイルガイドには、「この単語にはこの訳をつけてください」というルールが記載されているので、それに従って訳すことが必要になります。特に、人の名前、製品名に関する間違いは細かくチェックするようにしています。

日本語から英語への翻訳で難しいことは?

日本語の文章には「~など(等)」が多くて訳しにくいことですね。

例えば日本語の文章だと、「医療機器など(等)」という表記がタイトルにも使われますが、英語でタイトルに「~など(等)」とつけることは少ないです。もし、英語の文章で「~など(等)」を使うなら、「これ」と「これ」というように具体的な対象を指定して書くのが普通です。なので、日本語の文章の「~など(等)。」を見ると、「など(等)。」って結局なんなの?って思ってしまいます(笑)。

英語に訳しにくい日本語の文章は?

曖昧で推測しないと読めない文章が訳しにくいです。

具体的には、文章の主語が抜けていたり、省略が多かったり、「~など(等)。」が多用されている文章です。あとは、文章中に使われている「それ」や「これ」などの代名詞が具体的に何を指しているのかが不明確な文章です。

逆に言えば、日本語の文章の翻訳を依頼する方は、これらのことに気を付けて日本語の文章を用意していただけると翻訳者も訳しやすいと思います。

HPの文章翻訳と技術的文章の翻訳の違いは?

大きな違いは2つあります。

1つ目は、翻訳に使われる語彙が違います。具体的には、HPの文章翻訳のターゲットは一般の消費者であることが多いため、難しい表現を使わない傾向があります。一方で、技術的文章のターゲットは技術者なので、専門用語が多く使われています。

2つ目は、文章の表現方法が違います。具体的には、HPの文章翻訳は意訳が多く使用され、分かりやすく印象に残りやすい文章表現を使用する傾向があります。一方で、技術的文章の翻訳は意訳が少なく、元の文章に忠実に翻訳するという違いがあります。

翻訳の品質について

誤訳やその他のミスを防ぐために行っていることは?

ミスを防ぐために行っていることは大きく2つあります。

1つ目は、固有名詞の間違いに注意することです。先ほども言ったように、人の名前、製品名を間違えて翻訳されている文章が多いです。人の名前や製品名は国によって呼び方が変わってくるからだと思います。なのでそれらのミスを防ぐために、私の場合はスタイルガイドがあればそれを参照にして翻訳しています。もし、スタイルガイドがなければインターネットで一つ一つの固有名詞を検索して、あっているかどうかを確かめるようにしています。

2つ目は、翻訳した文章を次の日にもう一度読み返すようにしています。急いで翻訳した文章を次の日にもう一度読んでみると、正しく翻訳されていない箇所に気づく、ということはよくあります。

非ネイティブが翻訳の品質を判断する方法はあるか?

大きく3つあると思います。

1つ目は、翻訳者とは別のチェッカーにチェックを依頼することです。これは日本語の文章でも同じだと思いますが、自分では気づかないような間違いを他の人に指摘してもらえる、という点で有効だと思います。

2つ目は、固有名詞が正しく使われているか確認することです。確認する方法は先ほども言ったように、一つ一つインターネットで調べる方法が良いと思います。例えば、会社のHPを見れば、正しい表記の製品名、社長の名前などが見つかると思います。

3つ目は、文章の抜けがないかチェックすることです。これは、日本語の原稿が翻訳されずに飛ばされる、というミスが起こることもあるからです。

適切な翻訳者の選び方は?

翻訳する文章に関する知識がある翻訳者に依頼するのが良いと思います。

専門的な言葉を理解できるか、企業から提示された内容を正しく理解できるか、といったことが分かりやすい翻訳につながるからです。例えば、翻訳とは別の話ですが、英語の長い文章を短く要約する際にも、内容が理解できていないと重要な部分が分からないので上手な要約ができないことと近いと思います。あとは、背景知識があれば原本に間違いがあるケースにも気づくことができるというメリットがあります。

翻訳された文章のチェックに関して言えば、日本語と英語の両言語に精通したチェッカーに依頼するのが良いと思います。なぜかと言うと、両言語理解していないと気づけないような間違いを見逃してしまうことがあるからです。

翻訳した文章をチェックするチェッカーは必要?

必要だと思います。先ほども言いましたが、自分では完璧な文章だと思っていても、他の人から見たら間違いを含んでいるということがあるからです。なので、チェッカーは翻訳者とは別の方に依頼すると良いと思います。

機械翻訳について

機械翻訳と翻訳家による翻訳の違いは?

最大の違いは文脈まで考慮して訳せるかどうかです。

機械翻訳は一文ずつ別の文章として翻訳するため、翻訳された文章には前後のつながりがありません。例えば、文章の主語がなかったり、次の文章で主語が初めて出てくるような文章を機械翻訳で翻訳すると分かると思います。なので、小説のように前後のつながりを考えて翻訳する必要がある場合、機械翻訳のみだと不十分だと思います。

ただ、近年機械翻訳の翻訳精度はすごく良くなっているので、一文ずつ内容が完結している文章を訳す場合には機械翻訳のみで良いかもしれません。

まとめ

いかがでしょうか?冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「日本語から英語への翻訳で難しいことは?」
→ 「~など(等)。」が指すものが不明確で訳しにくい

「英語に訳しにくい日本語の文章は?」
→ 曖昧で翻訳する際に意味を推測する必要がある文章

「非ネイティブが翻訳の品質を判断する方法はあるか?」
→ 1. 翻訳者とは別のチェッカーに依頼する、2. 固有名詞が正しく使われているかをチェックする、3. 文章の抜けがないかチェックする

「機械翻訳と翻訳家による翻訳の違いは?」
→ 文脈まで考慮して訳すことができるかどうか

となります。後編は、カナダから見た日本企業日本人の英語新型コロナウイルス(2020年5月27日インタビュー実施)というテーマを掘り下げていきます。具体的には、

  • 「日本人労働者のポジティブなイメージは?」
  • 「日本人労働者のネガティブなイメージは?」
  • 「日本人が英語話者と正しく意思疎通をするためにすべきことは?」
  • 「新型コロナウイルスが日常生活に与えている影響は?」

などの質問に答えて頂きました!後編を読んでいただたくことで、カナダ企業と日本企業の働き方に関する考え方の違い、非ネイティブがネイティブと効果的に意見交換する方法がお分かりいただけると思います。

世界の製造業インタビュー④「巨大な先進国アメリカ」後編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第4回目後半の今回は前回の記事に引き続き、アメリカのロックウェルオートメーション株式会社で品質管理のコンサルタントとして働く津吉政広さんにインタビューを行いました。津吉さんはこのモノカクでも記事を執筆頂いています。津吉さんのプロフィールはこちら。後編の今回は、

  • 「アメリカ企業の品質に関する考え方の違いは?」
  • 「アメリカと日本の商習慣の違いは?」
  • 「コロナウイルスで会社にどのような変化があったか?」
  • 「英語Webサイトを作ってアメリカに販路開拓したい企業にアドバイスは?」

などの質問に対し、現地企業でコンサルタントとして働く方ならでは意見をお届けします。

日本企業について

日本企業のイメージは?

Made in Japanの品質神話は昔ほどではありませんが、今でも活きていると感じます。なので、良い品質のイメージがあります。

日本企業が強い分野は?

自動車、自動車部品産業、機械、製造ロボット産業、電気製品(Panasonic、Sonyなど)だと思います。

アメリカ企業の品質に関する考え方は?

アメリカ企業は数字明確なデータを欲しがる傾向が強いと思います。例えば、不良品の割合などを数字ではっきりと示すこと、データで提出することが交渉事でも必要不可欠になります。

アメリカの商習慣について

アメリカと日本企業の商習慣の違いは?

アメリカでは基本返品が可能です。一度使ったものも返品されることがあるとも聞きます。それは、返品可能かどうかが会社の評判に影響することも関係していると思います。

製造業だと契約があるので、そこまでひどいケースはないと思いますが、製品を買ってもらってすぐに壊れているとクレームを言ってくるケースはよくあります。

日本企業とアメリカ企業のメールのやり取りに違いはある?

大きく違いは4つあると思います。

1つ目は、日本企業はアメリカ企業に比べて返信が遅い事です。アメリカ企業は少なくとも翌営業日には返信のメールがくることを期待しています。なので、メールの内容に対する返信はしなくてもいいので、「メールを受け取って検討に入った」、という趣旨のメールが欲しいですね。アメリカではこのスタイルが普通です。

2つ目は、日本企業のメールの文面は過剰なほど丁寧と言う印象を受けます。アメリカ企業は内容に対してストレートに返信している印象があります。

3つ目は、日本企業が使う専門用語がアメリカ企業が使うそれとは違うことが多い事です。端的に言うと、品質用語等の専門用語のチョイスを間違えている日本企業が多いので気を付けて欲しいということです。

4つ目は、CCが多くついていることと、責任者が誰なのかよく分からないことが多い事です。

アメリカ企業同士でのやり取りはどうやって行う?

社内でのやり取りはメールがほとんどです。注文などを含めて、私の産業ではお金に関することはメールでやり取りすることが多いです。

日本企業とのやり取りは、(日本企業は)英語が苦手なことが多いのでメールでのやり取りがほとんどです。電話対応があればもちろん良いと思いますが、アドバンテージになるかと言われるとはっきりとしたことは言えません。

ビジネスでよく用いられるSNSは?

LinkedInを使っている人が多いです。ただ、LinkedInは商売で使われることは少ないイメージで、転職や求人に関するやり取りをするイメージです。また、LinkedInは企業が求人広告を上げる最も大きなプラットフォームの一つでもあると思います。

アジア系労働者に対する差別はある?

ありません。会社のルールとして禁止されているため差別を受けたことは全くありません。ただ絶対数の問題もあると思いますが、アジア系の人が上級管理職につく割合は少ないと思います。

支店はアメリカ国内に設置した方が良いか?

そうだと思います。同じアメリカ国内の方が連絡が取りやすいですよね。あと、海外のやり取りになると商習慣の問題とかが複雑なので、アメリカ国内で直接やり取りできた方が何かと都合が良いと思います。

コロナウイルスについて(インタビュー実施日2020年5月2日)

コロナウイルスで会社にどのような変化があったか?

大きな変化は3つあります。

1つ目は、会社の出入りが厳しくなったことです。例えば、会社の入り口で検査をやって体温を測ったりですね。

2つ目は、家で働ける人は家で働くようになりましたね。現在、会社内で働いている人よりも家で働いている人の方が多いくらいだと思います。ただ、製品の実験だとか組み立てだとかは会社でしかできないので、そういう仕事をしている人は通常通り会社勤務しています。

3つ目は、アメリカ企業全体に言えることですが、オンラインできるものはオンラインでやろう、という風潮が強まりましたね。コロナウイルスが流行する以前からこういう企業は多かったですが、今回のパンデミックをきっかけに、さらに増えた印象があります。

コロナウイルスで私生活にどんな変化があったか?

お店が休業したり、学校が休校になったり、行くところが限定されとにかく不便になりましたね。特に、病院などの出入りはチェックが厳しくなり、病院内の食事などもすべて個室で済ませているところがほとんどです。

最後に

英語Webサイトを作ってアメリカに販路開拓したい企業にアドバイスは?

注意して欲しいことは3つあります。

1つ目は、言葉よりも写真デザインを重視した方が良いと思います。なぜかと言うと、あるWebサイトを初めて見て、そのWebサイトに留まろう、読もうと思うのは写真やデザインが目に留まるからだと思います。要は、第一印象が最も重要で具体的な内容は次に来ます。その意味において、言葉よりも写真やデザインを優先することが英語Webサイトを作るうえで重要だと考えました。

2つ目は、日本独特な言い回しをアメリカ英語的なストレートな表現に上手に翻訳することも重要だと思います。

3つ目は、図面データ実績を目につきやすい場所に配置する方が良いと思います。数字ではっきりと分かる情報を重要視するアメリカ企業が多いため、Webサイトを作る際には、そのような部分にも気を配る必要があると思います。

まとめ

いかがでしょうか。冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「アメリカ企業の品質に関する考え方の違いは?」

アメリカ企業は明確な数字やデータを求める傾向が強い

「アメリカと日本の商習慣の違いは?」

アメリカでは基本返品可能

「コロナウイルスで会社にどのような変化があったか?」

  1. 会社の出入りが厳しくなる
  2. 在宅ワークの推奨
  3. 事業のオンライン化

「英語Webサイトを作ってアメリカに販路開拓したい企業にアドバイスは?」

  1. 言葉よりもデザイン
  2. アメリカ英語的な表現
  3. 数字ではっきりと分かる情報の配置

のようになります。今回のインタビューを通して、アメリカ企業がWebサイトに求める情報の違い、メール対応の違い、返品ポリシーの違いなど、アメリカ企業と日本企業のビジネス上での様々違いを感じ取って頂けたと思います。今回のインタビューで得られた知見を、アメリカへの販路開拓に少しでも役に立てていただければ幸いです。

世界の製造業インタビュー④「巨大な先進国アメリカ」前編

テクノポート稲垣です。第4回目前半の今回は、アメリカのロックウェルオートメーション株式会社で品質管理のコンサルタントとして働く津吉政広さんにインタビューを行いました。津吉さんはこのモノカクでも記事を執筆頂いています。津吉さんのプロフィールはこちら。前編の今回は、

  • 「アメリカ企業のWebサイトを見る時に注意してみる内容は?」
  • 「日本企業の英語Webサイトとアメリカ企業のWebサイトの違いは?」
  • 「機械翻訳と人間の翻訳はすぐに分かるか?」
  • 「翻訳はネイティブに依頼するべきか?」

などの質問に対し、現地企業でコンサルタントとして働く方ならではの意見をお届けします。

津吉さんについて

津吉さんの経歴は?

アメリカに来てロックウェルオートメーション(産業用オートメーション事業に特化した世界最大規模の企業)にジョインしたのが2000年なので、もう20年くらいになります。

その前は日本のリライアンスという会社に4年ほどいました。ただ、ロックウェルオートメーションがリライアンスを買収したという経緯も考えると計24年今の会社で働いていることになります。

現在の業務内容は?

現在の業務内容は、ロックウェルオートメーションでリーンシックスシグマの導入を行っています。リーンシックスシグマ※とは品質管理をターゲットにしたもので、統計などを使って品質を高めることがメインの目的になります。

※リーンシックスシグマについて詳細は以下の記事を参考にしてご確認ください。
海外のものづくりの現場で使われているリーンシックスシグマとは?

私の立場は開発部隊に属しているわけではなく、開発部を助ける立場です。先ほど述べたリーンシックスシグマには組織があり、私はマスターブラックベルトという立場で全体の総括みたいなことを行っています。

渡米前から英語は話せたのか?

渡米前は英語は全然話せませんでしたよ。ですが、エンジニアとしてコードが書けたので英語がそこまで流暢ではなくても意思の疎通は十分にできました。

アメリカのWebサイト事情について

アメリカ企業のWebサイトを見る時に特に注意して見る内容は?

製造業に関する英語Webサイトに関して、注意して見る内容は4つあります。

1つ目は、自分の地域にコンタクト先があるかどうかです。アメリカと言っても広いので、例えばアメリカでもウィスコンシン州に支店があるかどうか、などです。

2つ目は、導入実績例、3つ目は、データシート(※1)等の詳細な情報が入手可能かどうかです。

※1 データシートとは製品の仕様が書かれたドキュメントのことです。製造業では一般にデータシートのようなドキュメントを基に設計を行うため、英語で書かれたデータシートの情報が手に入るかは重要になるそうです。(Datasheetの画像検索結果

4つ目は、Secureサイト(※2)かどうかです。アメリカではほとんどがSecureサイトなので、逆にSecureでないと気になります。

※2 Secureサイト、SSLについての詳しい内容は以下の記事を参考にしてください。
「保護されていない通信?」「http://」と「https://」の違いについて

補足情報

日本の大手企業でサイト全体をSSL(通信データを暗号化し保護する仕組みのこと)を導入しているところが増えてきているが、中小企業になると全体の約3割程度しか導入していない。

アメリカで日本企業の英語Webサイトを見る時に注意して見る内容は?

製造業に関する日本企業の英語Webサイトに関して言えば、大きく3つあります。

1つ目は、商習慣があっているかどうかです。具体的には、クレジットカードが使えるかどうかをはじめとする決済方法の問題、為替の問題などが挙げられます。アメリカではビジネスの取引でもクレジットカード決済が主流です。もちろんすごく大きな金額の取引になると話は変わってきますが、エンジニアが製品を購入するレベルの話だと会社のクレジットカードを使って購入するケースが多いです。

2つ目は、返品可能かどうかということです。アメリカでは返品が自由な企業がほとんどなので、日本企業から商品を購入する時は特に確認します。

3つ目は、支店のサポートが受けられるかどうかです。これはアメリカ国内に支店があった方が直接やり取りできて、より有利になります。

日本企業のサイトがアメリカのGoogle検索でヒットすることはあるか?

あります。例えば、”Industrial robots”で検索すれば、FANUCがでてきます。アメリカのロボット業界でもFANUCは有名で強いですね。他にも、業界のリーディング企業であるオムロン、川崎重工、安川電機などは数ページ後ろの方に出てきます。

日本企業の英語Webサイトが改善すべきことは?

製造業のサイトではありませんが、楽天グローバルマーケットのサイトは、海外に住む日本人の間では、日本企業の英語Webサイトの良くない例として有名です。例えば、下記のページの”Oneでゆるwinding”って何のことでしょうね。(笑)

https://global.rakuten.com/en/store/sacom/item/ehhv24p/

楽天グローバルマーケットのサイトを見てもらえば分かりますが、商品名に日本語が混じっていたり、日本語の写真サンプルをそのまま使っていたり、英語の文章が読めなかったりと、ある意味結構笑えます。(笑)あと、これはWebサイトの内容とは直接関係ないかもしれないですが、楽天グローバルマーケットが対象とする顧客が不明です。

なぜかと言うと、アメリカ人が楽天グローバルマーケットで商品を買うことは少ないと思いますし、アメリカに住む日本人がターゲットなら英語に自動翻訳する必要もないですよね。

日本企業の英語Webサイトとアメリカ企業のWebサイトとの違いは?

端的に言うと、アメリカ企業は製品中心、対して日本企業は会社中心、という印象を受けます。例えば、アメリカ企業のWebサイトでは、トップページに新製品を出していることが多く、会社のイメージは後ろのページに隠れているイメージがあります。

一方で、日本企業の英語Webサイトは社長メッセージだとか会社の事業方針などが目につきやすい箇所に配置されているイメージがあります。具体的な例としては、都ローラー工業の英語Webサイトを見ると、社長のメッセージが顔写真と一緒に最初の方のページに出てくるところが、日本的で微笑ましいですよね。

出典:Miyako Roller Industry

翻訳について

Google翻訳でも十分意味は通じるか?

結論、通じないことが多いと思います。Google翻訳でも無いよりはましかもしれませんが、意味が通じない可能性もあると思います。製造業に関して言うと、技術的な内容は言い回しが違ったり、単語が違ったりすると通じなくなってしまうことがあると思います。

また、意味が通じないのであればまだ良いですが、文章が誤解されたときは大きな問題に発展するかもしれないですよね。最悪の場合、Google翻訳がもとで誤解が生じ、法的な問題に発展することがあるかもしれません。

機械翻訳と人間の翻訳はすぐ分かるか?

すぐに分かります。特に言い回しが違うと感じることが多いです。例えば、自動翻訳された文章は、文章表現の方法や使用する構文の選択が不自然なことが多いです。個人的には受け身の文章が多用されていたりすると、自動翻訳を疑ってしまいますね。

翻訳はネイティブに依頼すべきか?

お願いするべきだと思います。特に製造業をはじめとする技術系の企業が、自社の技術や製品をWebサイトを通して伝えたい場合には、適切な言い回しを選択できるネイティブに依頼するのが無難だと思います。

専門用語の選択など、自社でできる翻訳は事前に行い、分からない文章だけを依頼する形が良いと思います。

まとめ

いかがでしょうか?冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「アメリカ企業のWebサイトを見る時に注意してみる内容は?」
→ 1. コンタクト先があるか、2. 導入実績例、3. データシート等の詳細情報、4. Secureサイトかどうか

「日本企業の英語Webサイトとアメリカ企業のWebサイトの違いは?」
→ アメリカ企業は「製品中心」、日本企業は「会社中心」

「機械翻訳と人間の翻訳はすぐに分かるか?」
→ すぐに分かる。言い回しが適切ではないことが原因

「翻訳はネイティブに依頼するべきか?」
→ 依頼するべき。文章表現はネイティブに任せた方が無難。

となります。後編の次回は、日本企業のイメージ、アメリカの商習慣、コロナウイルスの影響について掘り下げていきます。具体的には、

  • 「日本企業に対するイメージは?」
  • 「アメリカと日本の商習慣の違いは?」
  • 「日本企業とアメリカ企業のメールのやり取りの違いは?」
  • 「コロナウイルスで会社にどのような変化があったか?」

などの質問に答えて頂きました!後編を読んで頂くと、日本企業とアメリカ企業のビジネスに対する考え方、文化の違いなどを感じて頂けると思います。今回の内容がアメリカへの事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

【5社を調査】Webページ翻訳の料金相場を比較!

テクノポートの稲垣です。今回は海外Webマーケテイング事業の中でも最も重要な作業の一つであるWebページの翻訳に着目し、Webページの翻訳にかかる料金の相場について調査しました。

今回の記事ではWebページの翻訳サービスを行っている5社の料金体系を紹介します。紹介する内容をご覧いただければ、Webページの翻訳にかかる料金相場を感じて頂けると思います。

Webページ翻訳の注意点

Webページ翻訳の料金相場を比較する前に、Webページ翻訳をする上で注意すべき点を3つ紹介します。業者に翻訳を依頼する前にこれらの点がサービスとして担保されているか、などを判断材料の一つに入れて頂ければと思います。

  1. 「誤字脱字」:スペルミスはないか?誤訳はないか?
  2. 「専門用語」:適切な専門用語が選択されているか?Webページ内で専門用語が統一できているか?
  3. 「分かりやすい文章」:ネイティブにとって読みやすい文章表現になっているか?訴求したいメッセージが伝わる文章になっているか?

料金相場比較で使用する条件

各社で提供する料金相場を分かりやすくするために、下記3つの条件を設定し価格を比較しました。

  1. 翻訳言語:日本語→英語
  2. 翻訳文字数:3000文字(本記事の文字数:2312)
  3. 文章の種類:工業技術

Webページ翻訳の料金比較(5社)

①INETERBOOKS

出典:INTERBOOKS株式会社ホームページ

翻訳料金

  • スタンダードコース 54000円~(1文字あたり18円~、納期:A4用紙1~5ページを3~4日)
  • スピードコース 72000円~(1文字あたり24円~、納期:A4用紙1~5ページを1~2日)

※価格は税別、料金は文章の難易度、レイアウト作業によって変動

特徴

  • 分野ごとに適任の翻訳スタッフが翻訳作業を行う
  • 翻訳した文章に対して、ネイティブと日本人によるクロスチェックを実施

②翻訳会社ブリッジリンク

出典:翻訳会社ブリッジリンクホームページ

翻訳料金

  •  39000円~75000円(1文字あたり13円~25円)

※翻訳料金は、原文のボリューム(文字数、単語数)、納期、分野、仕上げレベル、レイアウト等をベースに計算

特徴

  • 翻訳の使用目的に合った料金設定で依頼可能
  • 専門分野に通じた翻訳エキスパートが翻訳作業を行い、日本人とネイティブスタッフによるチェックと編集を通して品質管理を実施

③ティーベスト

出典:翻訳会社ティーベストホームページ

 翻訳料金

  • 激安スタンダード 30000円~55000円(1文字あたり10円~18.3円、翻訳者:ネイティブ翻訳者1人、納期:約3日)
  • スタンダード 51000円~75000円(1文字あたり17円~25円翻訳者:ネイティブ翻訳者1人+日本人翻訳者1人、納期:約5日)
  • ハイクオリティ 66000円~100000円(1文字あたり22円~33.3円、翻訳者:ネイティブ翻訳者1人+日本人翻訳者2人、納期:約7日)

※上記プランに急ぎで翻訳が必要な場合はスピード翻訳が可能、スピード翻訳には追加料金が発生する場合がある

特徴

  • 提供するプラン全てにネイティブ翻訳者が入る
  • すでに原稿が出来上がっている文章をネイティブチェッカーが修正を行うサービスがある

④Conyac


出典:Conyacホームページ

翻訳料金

  • A. 翻訳 12000円(1文字4円×3000文字、納期:2営業日)
  • B. 翻訳+ダブルチェック 24000円(1文字8円×3000文字、納期:3営業日)
  • C. 翻訳+翻訳指名 18000円(1文字6円×3000文字、納期:2営業日)
  • D. 翻訳+翻訳指名+翻訳手配 24000円(1文字8円×3000文字、納期:2営業日)

※料金支払い体系が「都度払い」と「月額払い」の2種類ある

特徴

  • Conyacのに登録する世界中のフリーランス翻訳者に365日24時間翻訳依頼可能
  • 他の翻訳会社より低価格な料金設定(日本語1文字6円)

⑤エバーグリーントランスレーション株式会社


出典:エバーグリーントランスレーション株式会社ホームページ

翻訳料金

  • 30000円(1文字あたり10円、翻訳のみの場合)

※Webサイトのローカリゼーションを含める場合:トップページ1枚×6000円、コンテンツページ1枚×3000円

特徴

  • 通常の翻訳に加えてSEO対策(検索結果で上位表示するための対策)を含めた調整も依頼可能
  • 翻訳者/翻訳チェッカー、ウェブデザイナー/コーダー、SEOスペシャリストの3チームが協働して翻訳

まとめ

いかがでしたでしょうか。日本語→英語、3000字の工業技術系の翻訳であれば、今回紹介した5社で10,000円~100,000円とかなり料金に差があることが分かると思います。

過去に行った海外の製造業従事者の方へのインタビューでは、専門用語の翻訳精度、コーポレートイメージなどを意識し、業界に通じたネイティブに翻訳を依頼したいと思っていることが多いと分かりました。一方で、自社独自の専門用語は自社で訳して、それ以外の一般的な文章は専門外のネイティブの依頼したいという事業者の方もいるかと思います。

よって、自社のニーズに合致したサービスを提供する翻訳会社を見つけることが重要であると思います。今回紹介した内容が翻訳会社選定の一つの目安として使っていただければ幸いです。

海外市場調査方法:調査結果の評価、まとめ

テクノポートの稲垣です。今回は前々回「海外市場調査方法:検索需要調査、競合調査」と前回「海外市場調査方法:ドメインとサーバー」の記事で得られた調査結果を基に分かったことをまとめます。

今回のまとめで述べる結論は普遍的なものではなく、あくまでも今回の調査結果の範囲から演繹される結論です。ですので、自社で調査を行った際に結果を評価する一つの見方として参考にしていただければ幸いです。

前回までの記事で紹介した調査結果をまとめた表を下に示します。詳しい調査の方法、内容は前回、前々回の記事を参照してください。

I列目から右側にまとめた競合企業の情報は、ドイツのGoogleで英語キーワードで検索を行った際に検索結果1位に表示される企業の情報を記録したものです。

検索需要調査

  • 目的:有効なSEO対策キーワードを模索
  • 調査対象:海外でのキーワード検索需要

結果

  1. 第一言語の月間検索数は同じキーワードの場合、英語の3倍から50倍
  2. 第一言語で検索した際、検索結果1ページ目に表示されるっ競合サイトの数は1~2企業多い(例外有り)

まとめ

  1. 第一言語での検索は検索需要、競合サイト数ともに多い
  2. 英語での検索は検索需要、競合サイト数ともに少ない

ドメイン調査

  • 目的:ドメインの優越調査(検索順位とドメインの設置場所に相関関係はあるのか?)
  • 調査内容:海外の競合企業のドメインと所在地(MYIP.MSを用いて海外の競合企業のドメインとドメイン設置場所を調査)

結果

  1. 検索順位1位に表示された全ての企業の一般トップレベルドメインは会社を表す「.com」が使用されている
  2. 検索順位1位に表示された企業全てがドイツ以外に所在する企業

補足情報(一般トップレベルドメインとは?)

  • 一般トップレベルドメイン(=gTLD(generic Top Level Domain))は「.com」「.net」「.org」などの、全世界の方が登録・取得できるドメインのことを指します。

まとめ

  1. 検索順位に表示される企業にターゲット国の国別トップレベルドメイン(ドイツの場合「http://www.〇〇〇.de」)を使用している企業はない
  2. 英語キーワードで検索を行った場合、ターゲット国以外に所在する企業が検索順位に表示されやすい

補足情報(国別トップレベルドメインとは?)

  • 国別トップレベルドメイン(=ccTLD(country code Top Level Domain)」は、国や地域ごとに割り当てられたドメインのことを指します。例えば、日本の国別トップレベルドメインは「.jp」、アメリカの場合「.us」になります。

サーバー調査

  • 目的:サーバーの優越調査(海外で検索する時に、検索順位とサーバーの設置場所に相関関係はあるのか?)
  • 調査内容:海外の競合企業のサーバー設置場所の把握(MYIP.MSを用いて海外の競合企業のサーバーとサーバー設置場所を調査)

結果

  1. 検索順位1位に表示された企業のサーバーの所在地は全てドイツ以外の国
  2. サーバーのトップレベルドメインには、「.com(会社)」、「.net(ネットワークに関する企業)」「.nl(オランダの国別トップレベルドメイン)」が使われている

まとめ

・検索順位上位に表示される企業にターゲット国のサーバーを使用している企業はない

補足情報(サーバー設置場所と検索順位の関係)

今回の調査結果では、サーバー設置場所と検索順位の結果に相関関係はありませんでした。しかし、一般にWebサイトが自国のサーバーを使用することで検索エンジンの評価が上がり、検索結果上位に表示されやすいと言われています。

理由は、サイトの表示速度にあります。自国のサーバーを使用しているWebサイトは外国のサーバーを使用しているWebサイトより表示速度が速いため、検索エンジンからの評価が上がります。加えて、表示速度が早いと読み手の離脱も減少することも検索結果に良い影響を与えます。

そのため、海外SEOをする場合にはAWS(Amazon Web Services:Amazon.comが提供するクラウドコンピューティングサービス)のようなクラウドサービスの活用が推奨されています。なぜなら、クラウドサービスは世界中いずれの国にも対応でき、国ごとにサーバー契約をする必要がないので、検索エンジンの評価を保ちつつ、海外Webサイトを運営できるためです。

まとめ

今回の記事では、Googleキーワードプランナーを用いて行った検索需要調査の結果、MYIP.MSを用いて行ったドメイン調査、サーバー調査の結果をまとめました。

細かい結果については過去の記事を参照してください。

海外の市場調査と聞くと難しそうな印象を受けますが、今回紹介した方法を用いることで簡単にかつ無料で海外の競合企業、ドメイン、サーバーの調査を行うことが可能です。今回の内容が海外進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

海外市場調査の方法:ドメインとサーバー

テクノポートの稲垣です。今回は前回の記事で紹介した海外の競合調査の方法の続きを説明します。具体的には、MYIP.MSというフリーサイトを利用して海外の競合企業の所在地とサーバー設置位置を把握する方法を紹介します。

前回の記事同様、今回の記事で紹介する方法は全て無料でできる方法なので、海外進出に関心のある方は一度自身でお試しください。

ドメイン調査の概要

ドメインとは、ホームページのアドレス「http://www.〇〇〇.com」の「〇〇〇.com」の文字列のことを指します。 ドメインとはインターネットの住所のようなもので、現実の住所に重複したものが存在しないように、ドメインにも重複したものは存在しません。

【目的】ドメインの優越調査

  • 海外で検索する時に、検索順位とドメインの設置場所に相関関係はあるのか?

【調査内容】海外の競合企業のドメインと所在地

  • MYIP.MSを用いて海外の競合企業のドメインとドメイン設置場所を調査

Step 5 ドメイン調査

このステップでは、海外の競合企業のURLを利用して同企業のドメインとドメインの設置場所を調査します。今回も前回の記事同様に例を用いて説明します。前回の記事で競合調査まで終えた時点で、下図に示すような表が完成していると思います。

今回は例として、キーワード “Blechverarbeitung”(日本語:板金加工)を例に使用します。まず、ドイツのGoogle検索で”Blechverarbeitung”を検索し、検索結果一ページ目に表示される競合企業のWebサイトのURLをコピーします。(今回の例では、広告に表示される企業は除外しています。)

次にMYIP.MSを開き、コピーしたURLを検索欄にペーストし、Whois Lookupをクリックします。クリックするとした図のような画面が表示されます。

ドメインは1行目の”Hosting Info For Website”に、ドメインの設置場所11行目の”Hosting Country”にそれぞれ表示されます。この2つの情報を表に記録します。

サーバー調査の概要

サーバーとはWebサイトのデータをオンライン上に置くためのコンピュータのことを指します。

【目的】サーバーの優越調査

  • 海外で検索する時に、検索順位とサーバーの設置場所に相関関係はあるのか?

【調査内容】海外の競合企業のサーバー設置場所の把握

  • MYIP.MSを用いて海外の競合企業のサーバーとサーバー設置場所を調査

Step 6 ドメイン調査

このステップでは、海外の競合企業のURLを利用して同企業のサーバー名とサーバーの設置場所を調査します。

先ほど同様にMYIP.MSを開き、コピーしたURLを検索欄にペーストし、Whois Lookupをクリックし先ほどと同様の画面を表示させます。

まず、最下行の”Website Nameservers”の欄に表示されるサーバー名を表にコピー&ペーストします。次に、サーバー名をクリックするとした図のような画面が表示されます。

左の列3行目の”Country”欄に表示される国名がサーバー設置場所を示しているので、この部分を表に記録して終了です。

まとめ

今回紹介した方法を用いることで、専門業者に依頼することなく自社で海外の競合企業の所在地とサーバー設置場所を把握することができます。次回は、海外の競合企業の所在国、サーバー設置場所の調査方法について説明します。次回は前回と今回の記事の内容のまとめとして、得られたデータの見方、分かることなどを説明します。

海外の市場調査方法:検索需要調査、競合調査①

テクノポートの稲垣です。今回から3回にわたって、Googleを利用した海外の競合企業を調査する方法を説明します。第1回目の今回は、Google広告を使った検索需要調査の方法、世界各国のGoogleを利用した競合調査の方法を紹介します。今回紹介する方法は無料でできる方法なので、海外進出に少しでも関心のある方は一度自身でお試しください。

検索需要調査の概要

  • 調査対象:海外でのキーワード検索需要
  • 目的:自社にとって有効なSEO対策キーワードを模索

Step 1 キーワード選定

このステップでは、SEO対策として使用する日本語キーワードを選定します。キーワード選定の詳しい方法は「製造業ホームページのSEO ~対策キーワード選定3つのポイント~」を参照して下さい。

Step 2 キーワード翻訳

このステップでは、選定したキーワードを翻訳し表に配置します。今回の例では、

  1. 板金加工
  2. 精密板金
  3. レーザー加工
  4. 曲げ加工
  5. 溶接加工

の5つのキーワードについて調査を行います。

まず、選定した日本語キーワードと調査する国名を下図のように表に配置します。今回は例としてドイツを対象国に設定します。

次に、調査対象キーワードを調査対象国の第一言語(例の場合ドイツ語)と英語に翻訳し表に配置します。今回の例ではDeepL翻訳を用いて翻訳しました。

翻訳を第一言語と英語の2種類行う理由は、第一言語で国内の検索需要、英語で国外の検索需要を調べるためです。

Step 3 検索需要調査

このステップでは、Google広告のキーワードプランナーというツールを用いてキーワードの検索需要を調べます。キーワードプランナーとはキーワードの検索ボリューム、競合の多さなどを調べることができるツールです。今回の例では、それぞれのキーワードの月間検索ボリューム(1カ月あたりでキーワードが検索された回数)を調べます。

それでは具体的な方法を説明します。まず、Google広告の「ツールと設定」からキーワードプランナーを検索します。

次に、「新しいキーワードを見つける」を選択します。選択するとした図のような画面が表示されます。

この画面が表示されたら、Step 2で翻訳したキーワードをコピーし、検索スペースにペーストします。次に、検索スペース右下に表示されているロケーションマーク(上図では日本と表示)をクリックするとした図のような画面が表示されます。今回の例ではドイツを調査対象国として選択し、保存ボタンをクリックします。

これで準備は完了です。ここまで完了すれば、下図のような画面になると思います。

最後に、左下の結果を表示をクリックします。すると結果画面の下部に次のような表示がでます。

今回の例で取得すべきデータである2列目の月間平均検索ボリュームを表に記録します。

今回の例では、Google広告を出しているアカウントを使用したため、月間平均検索ボリュームが数値(最大有効数字3桁)まで表示されます。Google広告を出していないアカウントの場合は、数値ではなく範囲(10~100、100~1000、1000~1万、1万~10万)で表示されるという違いがあります。

競合調査の概要

  • 調査対象:狙ったキーワードに対して検索で上位に出てくる競合企業
  • 目的:競合企業に勝るためには、どのような対策が必要になるかを探る

Step 4 競合調査

競合調査では、選定したキーワードそれぞれの検索結果に表示される競合企業の数を把握するプロセスです。このプロセスで重要になるのは、調査対象国のGoogleを利用して検索するということです。

例えば、日本の大手自動車メーカーの一つであるTOYOTAを日本のGoogleで検索すると、下図のような検索結果が表示されます。

一方で、ドイツのGoogleを使って同じくTOYOTAを検索すると、下図のような検索結果が表示されます。

検索結果から分かるように、日本のGoogleではTOYOTAの日本法人、ドイツのGoogleではTOYOTAのドイツ法人が検索トップに表示されます。つまり、ドイツで国内の競合企業を調査したければ、ドイツのGoogleを使用して競合調査をする必要があると分かります。

それでは具体的な方法を説明します。上の例で説明したように対象国における競合企業の数を調査するためには、対象国のGoogleを使用する必要があるため「世界各国のGoogle検索ページ」から対象国のGoogleを開きます。

次に、調査するキーワードを一つ選択し対象国のGoogleで検索します。今回の例では、Blechverarbeitung(日本語:板金加工)を例に使用します。

あとは、検索結果1ページ目に表示されるサイトをすべて開き、企業のサイトでないものは除外し、競合企業の数を数えます。すべてのキーワードについて競合企業の数を下図のように表にまとめれば終了です。

まとめ

今回紹介したように「Google広告」や「世界各国のGoogle検索」を利用することで、誰でも海外の競合企業調査を行うことができます。加えて、今回紹介した方法を用いることで、専門業者に依頼する前に調べられる情報はご自身で調査し、不足する情報を業者に補ってもらうということもできます。次回は、海外の競合企業の所在国、サーバー設置場所の調査方法について説明します。

世界の製造業インタビュー③「日系メーカーの海外展開(ベトナム)」後編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第3回目後編の今回は前回の記事に引き続き、メーカー勤務時代にベトナムに赴任し自社製品を現地に売り込む仕事をされていたブルーイノベーション株式会社経営戦略室の田中さんにインタビューを行いました。後編の今回は

  • 「駐在所に現地で雇ったスタッフは必要か?」
  • 「商社を介して製品を売るメリットは?」
  • 「販売代理店の探し方は?」
  • 「海外で商品を売る際に重要な考え方は?」

などの質問に対し、現地で営業を行っていた方ならではの意見をお届けします!

海外でのビジネスについて

駐在所に現地で雇ったスタッフは必要か?

もちろん必要だと思います。

結局、日本人が駐在所にいても現地のお客さんに対してできることってすごく少ないんですね。なので、現地に駐在する日本人とお客さんとの間をつないでくれる優秀な現地人スタッフがカギになります。加えて、問い合わせの対応などを通してお客さんに良い印象を与えるという意味でも重要です。

あとは、現地で雇ったスタッフは現地の商習慣を理解しているということが大きいです。ベトナム語が話せる日本人がいたとしても、現地の商習慣を理解して現地ならではのビジネスの取引ができる人は少ないですよね。

現地でカタログ作成を任せる時の注意点は?

ブランドイメージを守ることです。

と言うのは、日本企業が現地で製品を売る時は比較的ハイエンドなイメージで売っていく企業が多いと思います。しかし、現地の会社が作るカタログはいかにも現地の企業が作りました、みたいなチープな見た目になることが多いんです。

この問題に対処する方法として、グローバル向けの英語カタログをあらかじめ作ってしまうという方法があります。つまり、英語の総合カタログを作っておき、現地の営業マンにそれを使って営業してもらうという方法です。この方法なら日本企業のブランドイメージを守りながら現地での営業活動も行えます。

特にB2Bでは専門用語は英語でも分かってもらえることが多いですし、かつグローバル企業としてのイメージも持ってもらえます。また、他の国にグローバル展開する際にも同じカタログが使えると思うので、工数や費用の面でも効率的だと思います。

商社を介して商品を販売したことはある?

私自身はないですけど、身近なケースで、以前ベトナムの外資規制で外資100%の販売機能だけの会社が許可されない時代に商社を使って販売していたということがありました。

実際にはその外資規制が撤廃されることが分かっていたので、本格参入する前のマーケティングという目的です。その後は現地に拠点を作り、自ら販路を開拓して販売するようになりました。

商社を介して製品を売るメリットは?

広く浅く商品を売れるということですね。具体的に言うと、現地でマーケテイング兼販売実績を作っていくという足掛かり的な意味で商社を利用することは有用だと思います。その国で製品が売れるかどうかを探るという意味合いですね。なので、本格的に投資をして事業を大きくしようと考えているのなら商社経由ではなく、自社の拠点を作ったほうが良いと思います。

また、色々な国に事業を展開したい企業にとっては商社は価値があると思います。複数の国に拠点を作るのは投資も膨らみますし、販売代理店を使うにしても数が多いと管理するのは大変ですからね。そういった場合は、既に世界各国に拠点のある商社を利用するのが効率的だと思います。

商社を介して製品を売ることのデメリットは?

お客さんの生の声が届きにくいということですね。なので、お客さんのニーズに合わせて事業を拡大していくなら自社で拠点を設けたほうが良いと思います。

料金の回収方法の決め方は?

理想は全額前払いですが、業界に自社が後から参入する場合は業界のスタンダードに従うのが現実的です。ただ日本企業としてハイエンドなポジションで取引したい場合は、業界より厳しめの料金回収方法を要求した方が良いと思います。というのは、最終的にこちら側の要求を下げるか、料金の支払い方法で妥協することになるからです。

また、近い業界に日本企業の先人がいるなら情報を共有してもらうなり教えを乞うなりする。もしくは、業界に詳しい現地人を採用して、その人から情報を聞き出す。あとは、コンサルティング会社に調査を依頼するパターンもあります。もし、コンサルティング会社に依頼するなら現地の商流やお客さんのニーズなども含めて調査を依頼することをおすすめします。

販売代理店について

販売代理店の探し方は?

大きく2種類あります。1つ目の方法は、ジェトロ在日本の各国大使館日本人商工会に相談にいく方法です。比較的規模が小さい会社の場合は、こういった機関に、「今どういうことをしていて、海外でこういうことをやっていきたい、ついては現地の会社を紹介してもらえませんか?」と言う感じで相談してみると良いと思います。お金もかからないので。

2つ目の方法は、コンサルティング会社を利用する方法です。もしもお金があるならば海外進出のコンサル会社があるので、販売代理店の候補となる企業をリストアップしてもらうという方法もあります。

上記のような方法で候補となる企業を探したら、実際に面談をして信用調査をしていく感じです。

展示会を利用して販売代理店を探すのは良い方法か?

結論から言うと、闇雲に展示会に出て販売代理店候補を0から探すのは効率的ではないと思います。結局、展示会に来る人の目的は商品を購入することが多いので、御社の製品をいくつか買いたいという人には会えるかも知れませんが、販売代理店として御社の製品を担ぎたいですという企業にはなかなか出会えないと思います。

もしも展示会で販売代理店を探すなら予め先に挙げたような機関に相談して代理店候補見つけて展示会に来てもらい、自社の製品を見せながら「販売代理店になりませんか?」という話をする方が効率的だと思います。

海外の展示会に出て現物を見せるというのは費用もかかるし手続きも複雑ですごく大変なことです。なので、もし海外の展示会に出展するとなったら、その効果を最大化すべく事前に代理店候補となる企業を見つけておいた方が良いと思います。

1つの国に複数の代理店を持つことはあるか?

基本的には、1つの国には1つの代理店と言うケースが多いと思います。なので、もうその国の販売はその1つの代理店に任せる状態です。つまり、その代理店の売り上げは、その国における自社の売上の全てになります。そうなると、売ってくれそうな代理店、自社に的確な代理店を探すことが重要だと思います。

先の質問の回答ともつながりますが、闇雲に展示会に出て代理店探しをしても効率的ではないというのは、こういった事情も関係しています。

現地で販売支援の営業をする業者を利用したことは?

検討したことはありますが、実際に利用したことはありません。検討した理由は、現地の販売代理店は新規の顧客開拓がそれほど得意ではなかったからです。つまりは売上が伸びなかったからです。よって、その時は販売代理店をサポートして営業活動を行ってくれる人材、企業を調査しましたね。実現しなかった大きな理由は、適格な人材が見つからなかったからです。適格な人材とは自社の売る製品の業界に詳しく、かつその業界で人脈がある人です。そういった人でないと効果は出ないんですが、結局は見つかりませんでした。

あとは、費用対効果が読みにくかったからという理由ですね。海外で製品を売る日本企業にとって、販売代理店を現地に作るのは広く普及していますが、営業による販売支援のサービスはまだそれほど普及していないということも背景としてあると思います。

現地で販売代理店を持つ理由は?

大きく2つの理由があります。

1つ目は現地で在庫を抱えられるということです。以前、私自身もお客さんの納期の要望に応えるために現地で在庫を用意しておく必要があったので、在庫を抱えてくれる販売代理店は必要でした。

2つ目は、現地で必要なバリューチェーンを請け負ってくれるということです。私の場合、販売、施工から保守まで現地の対応が必要でしたので、そういったサービスをちゃんと対応してくれるという面も大きかったです。

3つ目は料金の回収をしてくれるということです。やはり回収の話になると、現地人同士のやり方があったりするので販売代理店に任せた方が良いと思います。

海外で商品を売る際に重要な考え方は?

個人的な意見としては、自ら現地に足を運び、現地の市場と顧客を理解することです。なぜかと言うと、現地の販売代理店に任せても上手くいかないケースが多いからです。日本から距離的にも離れているので、そもそも販売代理店を管理するのが難しいんですね。管理しようとしても現地の事情が分からないので都合の良いことばかり言い返されてしまう。

なので、自分自身が何度も足を運んで、お客さんのニーズを聞いてコミュニケーションをすることが重要だと思います。市場と顧客を理解できていないと販売代理店と深い議論はできないし、売る為のアイデアも出てこないのではないでしょうか。

最後に

海外進出を考える中小企業事業者の方にアドバイスは?

2つあります。1つ目は、本当に海外で事業を伸ばそうと思ったら、日本でやっている事業を海外で0からつくる、というくらいの気概、覚悟が必要だいうことです。日本で売っている製品は日本のお客さん向けに作っているから売れるのであって、海外の市場でも同じです。自社の強みを活かすのはもちろんですが、現地に合わせないといけない。そのためには先も言ったように、自分自身で現地に足を運び、お客さんのニーズ、市場、現地の商流、商習慣がどうなっているかを理解することが必要です。そして、現地の市場と自社の製品・技術を掛け合わせてこれならいける!という事業を0から作っていくという気概、覚悟が必要です。

2つ目は、海外には国内の何倍ものチャンスがあるということです。これから海外に事業展開を考える方には、成熟した日本市場に留まるのか、新たな市場に挑戦するのか、ということを今回のインタビューを通して感じていただけたらと思います!コロナウイルスの影響で現在海外との行き来がストップしていますが、長い目で見ればグローバル化が止まることはありません。コロナ後を見据えて海外展開を考えてみませんか?

まとめ

いかがでしょうか。冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「駐在所に現地で雇ったスタッフは必要か?」

→ 必要、問い合わせの対応や現地の商習慣を任せられる

「商社を介して製品を売るメリットは?」

→ 広く浅くマーケテイングを兼ねて商品を売れること

「販売代理店の探し方は?」

→ ジェトロ、在日各国大使館、現地の日本人商工会、コンサル会社に相談

「海外で商品を売る際に重要な考え方は?」

→ 自分自身で現地に足を運び、現地の市場と顧客を理解した上で製品を売る

のようになります。今回のインタビューを通して強く感じたメッセージは、現地に足を運び自分自身で商流を理解することの重要性です。また、展示会を利用して販売代理店を探す際の方法など実際に現地でビジネスをされた田中さんならでは回答が得られた貴重な回だったと思います。今回の内容がベトナムはじめ海外への事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー③「日系メーカーの海外展開(ベトナム)」前編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第3回目前半の今回は、メーカー勤務時代にベトナムに赴任し自社製品を現地に売り込む仕事をされていたブルーイノベーション株式会社経営戦略室の田中さんにインタビューを行いました。前編の今回は、

  • 「ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?」
  • 「現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?」
  • 「日本企業に対するイメージは?」
  • 「日本企業に対するネガティブなイメージは?」

などの質問に対し、現地で営業を行っていた方ならではの意見をお届けします!

田中さんの経歴

ベトナムに駐在していたのは、2010年から2013年までの3年半です。その時は、シャープの現地法人で家電製品の営業企画をしていました。その後、東京に戻り機械系のメーカーであるナブテスコに転職し、出張ベースでベトナム、インドネシア、フィリピン、韓国、インドなどに営業に行ってました。

現在は、これまでの経験を活かし、ドローンのリーディングカンパニーであるブルーイノベーションで経営戦略や海外展開の指揮を執っています。日本のテクノロジーを海外に展開するという大変やりがいある仕事です。

ベトナム企業との関係構築について

ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?

2つあります。1つ目は内容の誇張があることですね。

例えば、建築業界の企業のWebサイトを見た時に何か実績集みたいなページがあったとします。そのページにはベトナムのランドマーク的な建物が実績でという記載があるんですが、その情報が真実かどうかというのは疑わしいところがあります。

2つ目は日本企業のWebサイトに比べて、企業の情報自体が少ない事ですね。

日本の会社のWebサイトは凄く丁寧に資本金、株主構成や会社の沿革情報を記載している企業が多いと思います。一方で、ベトナム企業のWebサイトはそういった情報の記載が少ないので日本企業ほどの深さの情報は取れないですね。加えて、ベトナム企業のWebサイトに用意してある英語ページはベトナム語のそれよりも情報量が少ないことが多いので、企業情報収集がWebサイトだけでは満足にできないということがあります。

Webサイトの情報以外に現地企業に足を運ぶのは必要か?

必要ですね。現地のWebサイトだけを見て判断するのは難しいと思います。なので当然、Webサイトから取れる情報を取った後に、実際に企業に訪問して話を聞いてというステップが必要です。私の経験から言うと、東南アジアにおいてはよほど知名度のある大きい企業でないと、Webページの情報だけで会社自体を信用することはできないと思います。小さい会社だとそもそもWebページがあっても実際に存在するのかどうかも分からなかったりします。

なので、気になった企業があればメールや電話でコンタクトをとって、事務所や工場があれば見に行きます。

現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?

間に誰か信頼できる人企業の紹介を挟んだ方が良いと思います。理由は、取引する相手が大手でこちらの知名度がない場合は、初めの交渉から不利になってしまう可能性が高いからです。なので、相手企業と既に取引のある会社や現地の日本企業なりに紹介してもらう方がその後の物事もスムーズに進むと思います。

現地の日本企業とコンタクトを取る方法は?

結論から言うと、現地の日本の商工会議所日本人会もしくはジェトロなりに紹介してもらうと効率的だと思います。

なぜかと言うと、Webで闇雲に検索しても効率的ではないと思うからです。ベトナムに進出している日本企業は確か1800社ほどだったと思うんですけど、その内の多くの企業が先に挙げたコミュニティのいずれかに属していると思います。なので、そういったルートを使って探した方が良いと思います。

ベトナム語検索した時に日本企業は検索結果に表示される?

表示される確率はすごく低いと思います。どうしてかと言うと、日本企業のWebサイトは基本的に日本語メインで作っていますよね。だから当然、ベトナム語で検索しても日本語のキーワードは引っかからないので出てこないことになります。

ベトナムで英語で検索した時に日本企業の英語版Webサイトが表示されることはあると思います。その時は、おそらく日本本社の英語版Webサイトが表示されるので、日本企業のベトナム法人のページがピンポイントに表示されるケースは少ないと思います。

ベトナム語Webサイトを作る際、ネイティブによる翻訳は必要か?

結論から言うと、ネイティブによる翻訳は必要でしょうね。Google翻訳だけでは不十分というより凄くおかしいことになると思います。例えば、ベトナム語のWebサイトを日本語にGoogle翻訳してみれば分かると思いますが、すごくおかしな日本語になってしまうんですね。なので、日本語をベトナム語にGoogle翻訳したら逆のことが起こると思います。

それと会社のWebサイトはその会社のブランドもしくはコーポレートイメージになるので、かっこいい表現が必要ですよね。仮に日本語でかっこいいプロダクト名をつけたとしてもその表現は機械的に翻訳されないはずです。

ベトナムから見た日本企業について

日本企業に対するイメージは?

やっぱり品質ですね。ベトナム人は非常に親日でアジアの中で日本が一番品質が良いという認識を持っています。日本の次に韓国、その後は台湾、タイ、マレーシア、現地(ベトナム)、中国という順で続くと思います。

品質とは具体的にどのような品質?

一番は耐久性ですね。使って長持ちするということです。故障や不良品が少ないという点の評価も高いです。あとは、生産工程やプロセスがしっかりしているという印象があると思います。私も現地で営業をしていた時に、日本の品質管理基準に基づいて生産しているという証明書類だったりを求められたことはあります。

日本企業に対するネガティブなイメージは?

日本製品は価格が高いという認識は多くの現地の方が持っています。距離的にも離れているので納期が遅いというイメージもあると思います。なので、日本企業がベトナムで商品を売っていこうと思ったらその辺のターゲットを明確に設定する必要があると思います。実際に、日本で良い商品だからベトナムで売ろうとしたけど思ったように売れなかったということはよくあります。日本と同じ価格設定では高いと思われてしまう。だから、しっかりと製品の価値をお客様に伝えることがカギになります。

まとめ

いかがでしょうか?冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?」

→ 2つの特徴(1.内容の誇張、2.企業自体の情報が少ない)

「現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?」

→ 信頼できる人、企業の紹介を挟んでコンタクトを取る

「日本企業に対するイメージは?」

→ アジアの中でトップの品質、信頼性が高い

「日本企業に対するネガティブなイメージは?」

→ 価格が高く、距離的に離れているので納期が遅い

となります。後編の次回は、海外でのビジネスと販売代理店との関係構築方法などのトピックを掘り下げていきます。具体的には、

  • 「駐在所に現地で雇ったスタッフは必要か?」
  • 「商社を介して製品を売るメリットは?」
  • 「販売代理店の探し方は?」
  • 「海外で商品を売る際に重要な考え方は?」

などの質問に答えて頂きました!後編では、海外で販売代理店を探す方法、料金の回収方法など現地での営業活動なしでは語れない内容になっています。今回の内容がベトナムへの事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー③「日系メーカーの海外展開(ベトナム)」前編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第3回目前半の今回は、メーカー勤務時代にベトナムに赴任し自社製品を現地に売り込む仕事をされていたブルーイノベーション株式会社経営戦略室の田中さんにインタビューを行いました。前編の今回は、

  • 「ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?」
  • 「現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?」
  • 「日本企業に対するイメージは?」
  • 「日本企業に対するネガティブなイメージは?」

などの質問に対し、現地で営業を行っていた方ならではの意見をお届けします!

田中さんの経歴

ベトナムに駐在していたのは、2010年から2013年までの3年半です。その時は、シャープの現地法人で家電製品の営業企画をしていました。その後、東京に戻り機械系のメーカーであるナブテスコに転職し、出張ベースでベトナム、インドネシア、フィリピン、韓国、インドなどに営業に行ってました。

現在は、これまでの経験を活かし、ドローンのリーディングカンパニーであるブルーイノベーションで経営戦略や海外展開の指揮を執っています。日本のテクノロジーを海外に展開するという大変やりがいある仕事です。

ベトナム企業との関係構築について

ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?

2つあります。1つ目は内容の誇張があることですね。

例えば、建築業界の企業のWebサイトを見た時に何か実績集みたいなページがあったとします。そのページにはベトナムのランドマーク的な建物が実績でという記載があるんですが、その情報が真実かどうかというのは疑わしいところがあります。

2つ目は日本企業のWebサイトに比べて、企業の情報自体が少ない事ですね。

日本の会社のWebサイトは凄く丁寧に資本金、株主構成や会社の沿革情報を記載している企業が多いと思います。一方で、ベトナム企業のWebサイトはそういった情報の記載が少ないので日本企業ほどの深さの情報は取れないですね。加えて、ベトナム企業のWebサイトに用意してある英語ページはベトナム語のそれよりも情報量が少ないことが多いので、企業情報収集がWebサイトだけでは満足にできないということがあります。

Webサイトの情報以外に現地企業に足を運ぶのは必要か?

必要ですね。現地のWebサイトだけを見て判断するのは難しいと思います。なので当然、Webサイトから取れる情報を取った後に、実際に企業に訪問して話を聞いてというステップが必要です。私の経験から言うと、東南アジアにおいてはよほど知名度のある大きい企業でないと、Webページの情報だけで会社自体を信用することはできないと思います。小さい会社だとそもそもWebページがあっても実際に存在するのかどうかも分からなかったりします。

なので、気になった企業があればメールや電話でコンタクトをとって、事務所や工場があれば見に行きます。

現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?

間に誰か信頼できる人企業の紹介を挟んだ方が良いと思います。理由は、取引する相手が大手でこちらの知名度がない場合は、初めの交渉から不利になってしまう可能性が高いからです。なので、相手企業と既に取引のある会社や現地の日本企業なりに紹介してもらう方がその後の物事もスムーズに進むと思います。

現地の日本企業とコンタクトを取る方法は?

結論から言うと、現地の日本の商工会議所日本人会もしくはジェトロなりに紹介してもらうと効率的だと思います。

なぜかと言うと、Webで闇雲に検索しても効率的ではないと思うからです。ベトナムに進出している日本企業は確か1800社ほどだったと思うんですけど、その内の多くの企業が先に挙げたコミュニティのいずれかに属していると思います。なので、そういったルートを使って探した方が良いと思います。

ベトナム語検索した時に日本企業は検索結果に表示される?

表示される確率はすごく低いと思います。どうしてかと言うと、日本企業のWebサイトは基本的に日本語メインで作っていますよね。だから当然、ベトナム語で検索しても日本語のキーワードは引っかからないので出てこないことになります。

ベトナムで英語で検索した時に日本企業の英語版Webサイトが表示されることはあると思います。その時は、おそらく日本本社の英語版Webサイトが表示されるので、日本企業のベトナム法人のページがピンポイントに表示されるケースは少ないと思います。

ベトナム語Webサイトを作る際、ネイティブによる翻訳は必要か?

結論から言うと、ネイティブによる翻訳は必要でしょうね。Google翻訳だけでは不十分というより凄くおかしいことになると思います。例えば、ベトナム語のWebサイトを日本語にGoogle翻訳してみれば分かると思いますが、すごくおかしな日本語になってしまうんですね。なので、日本語をベトナム語にGoogle翻訳したら逆のことが起こると思います。

それと会社のWebサイトはその会社のブランドもしくはコーポレートイメージになるので、かっこいい表現が必要ですよね。仮に日本語でかっこいいプロダクト名をつけたとしてもその表現は機械的に翻訳されないはずです。

ベトナムから見た日本企業について

日本企業に対するイメージは?

やっぱり品質ですね。ベトナム人は非常に親日でアジアの中で日本が一番品質が良いという認識を持っています。日本の次に韓国、その後は台湾、タイ、マレーシア、現地(ベトナム)、中国という順で続くと思います。

品質とは具体的にどのような品質?

一番は耐久性ですね。使って長持ちするということです。故障や不良品が少ないという点の評価も高いです。あとは、生産工程やプロセスがしっかりしているという印象があると思います。私も現地で営業をしていた時に、日本の品質管理基準に基づいて生産しているという証明書類だったりを求められたことはあります。

日本企業に対するネガティブなイメージは?

日本製品は価格が高いという認識は多くの現地の方が持っています。距離的にも離れているので納期が遅いというイメージもあると思います。なので、日本企業がベトナムで商品を売っていこうと思ったらその辺のターゲットを明確に設定する必要があると思います。実際に、日本で良い商品だからベトナムで売ろうとしたけど思ったように売れなかったということはよくあります。日本と同じ価格設定では高いと思われてしまう。だから、しっかりと製品の価値をお客様に伝えることがカギになります。

まとめ

いかがでしょうか?冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

「ベトナム現地企業のWebサイトの特徴は?」

→ 2つの特徴(1.内容の誇張、2.企業自体の情報が少ない)

「現地の大手企業とコンタクトを取る方法は?」

→ 信頼できる人、企業の紹介を挟んでコンタクトを取る

「日本企業に対するイメージは?」

→ アジアの中でトップの品質、信頼性が高い

「日本企業に対するネガティブなイメージは?」

→ 価格が高く、距離的に離れているので納期が遅い

となります。後編の次回は、海外でのビジネスと販売代理店との関係構築方法などのトピックを掘り下げていきます。具体的には、

  • 「駐在所に現地で雇ったスタッフは必要か?」
  • 「商社を介して製品を売るメリットは?」
  • 「販売代理店の探し方は?」
  • 「海外で商品を売る際に重要な考え方は?」

などの質問に答えて頂きました!後編では、海外で販売代理店を探す方法、料金の回収方法など現地での営業活動なしでは語れない内容になっています。今回の内容がベトナムへの事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「フィリピン」

テクノポートの稲垣です。前回の記事では製造業のGDPの60%以上を縫製業が占める「カンボジアの製造業」について紹介しました。今回は日本と同じアジアの島国である南国のフィリピンの製造業について紹介します。

フィリピンの人口は2014年に1億人を突破し2023年には日本の人口を上回る予想です。また、アジア2位の経済成長率と豊富な若者人口で注目を集めるフィリピンの製造業を日本企業目線から掘り下げていきます。

フィリピンの概要

  • 正式名称:フィリピン共和国(Republic of the Philippines)
  • 首都:メトロ・マニラ(Metro Manila)
  • 大統領:ロドリゴ・ドゥテルテ(2016年6月から)
  • 通貨:ペソ(Peso)(1ペソ=2.07円 ※2020年3月17日時点)
  • 人口:約1億98万人
  • 面積:30万km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:フィリピン語、英語
  • 宗教:カトリック(82.9%)その他キリスト教(9.6%)イスラム教(5%)その他(2.5%)
  • 平均寿命:男 65.9歳、女 73.1歳(日本:男 81.2歳、女 87.3歳)

フィリピン経済の特徴

強み

  1. 若年者人口:1億人を超える人口の約50%を25歳以下が占める
  2. 出稼ぎ労働者:海外の出稼ぎ労働者からの仕送りがGDPの約10%を占める
  3. 貧困層の減少:フィリピン政府は0~14歳の健康と教育に投資することで極度の貧困の根絶を目指している
  4. 英語:人口の多くが英語を話せるため、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)分野でアジアのリーダー的な立ち位置

弱み

  1. インフラ未整備:交通渋滞の蔓延やスラム街など、インフラ未整備の地域が多い
  2. 所得格差:富裕層が全体の約1%であるのに対し、貧困層が全体の約60%を占める
  3. マネーロンダリング:銀行やカジノによる資金洗浄(マネーロンダリング)が横行

フィリピンの産業構造

フィリピンの産業構造を調べます。下の図は2018年におけるフィリピンのGDPにおけるサービス業、製造業、農業の割合を示したグラフです。


データ引用元:ASEAN Key Figures 2019

グラフから以下のことが読み取れます。

  • 製造業の割合は34.1%でASEAN諸国の平均36.6%をわずかに下回る
  • GDPに占めるサービス業の割合は57.8%でASEAN諸国の中で3番目に大きい

▶現状

  • サービス産業が増加傾向で製造業は緩やかに増加傾向
  • 農業はGDP全体の8%だが、労働力の約30%が農業に従事している
  • 1980年から2017年までの経済成長率は3.7%と緩やかだが、2012年から2017年の経済成長は6.1%と急速な成長を記録

▶今後

  • フィリピン政府は製造業とサービス業に投資をシフトしており、農業は衰退傾向
  • ドゥテルテ大統領は2014年から2033年の20年間で年平均4.8%のGDPの成長を目指すと宣言

フィリピンの製造業全体

次にフィリピンの製造業全体について調べます。下の図は2019年におけるフィリピン製造業GDPにおける各セクターの割合を示したグラフです。


データ引用元:NATIONAL ACCOUNTS OF PHILIPPINES

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 食品製造業が製造業全体の47.8%を占め、ここ数年増加傾向が続く
  • 化学および化学関連製品の割合はGDP全体の11.2%と2番目に大きい
  • ラジオ、テレビ、通信機器および家電分野は10.3%で3番目に大きい

▶現状

  • 製造業はGDP全体の34%を占めるが、従事している労働力は全体の16%で労働賃金も低い
  • 鉱業、鉱物処理産業、医薬品、造船、電子部品・半導体産業は近年政府が力を入れている

▶今後

  • 短期的な目標として、1. 優位性のある産業の保護、2. 新興企業の強化、3. 現存企業の強化を挙げている
  • 中期的な目標として、1. 高付加価値産業へのシフト、2. 業績が上向いている分野への投資、3. 製造業を農業、サービス業と融合、4. イノベーション産業の推進を挙げている
  • 長期的な目標として、1. 世界的な競争力の強化、2. 革新的な製造技術の強化を挙げている

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からフィリピンの製造業市場を調査した結果です。下の図は2008年から2017年までのフィリピンに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。

データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 統計を開始した2008年から2017年の間に日系企業数は1.76倍に増加
  • 2017年におけるフィリピンの進出日系企業数は1502で8位

▶現状

  • 進出日系企業は経営上の問題点として原材料・部品調達の難しさ、調達コストの上昇、従業員の賃金上昇、品質管理の難しさ、税務の負担などを挙げている。(出典:ジェトロ『2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査』2018年12月)
  • 2020年2月のフィリピンの※製造業購買担当指数(PMI)は、新型コロナウイルスの影響を受けながらも0.2ポイントの増加を記録しASEAN首位。※製造業の購買責任者を対象に、生産高や新規受注、在庫レベル、雇用状況、価格などの指数に一定のウエイトを掛けて算出する指数。0から100の間で変動し、50.0は「前月から横ばい」、50.0を超えると「前月比で改善や増加」を意味して景気拡大を示し、50.0未満は「前月比で悪化や減少」として景気減速を表す。

▶今後

  • 2023年のフィリピンの人口は1億2300万人と日本を追い抜くと予想されており、ASEANの経済大国としての地位を確立する見込み
  • 首都マニラでの月額法定最低賃金の上昇率は2019年で4.9%と上昇傾向だが、他のASEAN諸国(インドネシア:8.0%、マレーシア:10%、ベトナム:5.0%)と比較すると上昇率は小さい

フィリピンに進出した日本企業

次に実際にフィリピンに進出した日本企業3者を紹介します。

株式会社ティアンドエス

▶基本情報

  • 本社:埼玉県草加氏
  • 従業員数:64名
  • 事業内容:レーザ加工・曲げ加工・溶接加工・組立加工、その他板金加工全般

▶概要

2004年にフィリピンマカティシティに現地法人を設立。フィリピン国内および、アジア域内に進出済みの日系企業への部品の供給元としてレーザー加工、切削加工を行う。日本本社でトレーニングを受けたスタッフが様々な加工依頼に24時間体制で対応。

群馬合金株式会社

▶基本情報

  • 本社:群馬県伊勢崎市
  • 従業員数:99名
  • 事業内容:非鉄金属ダイカスト製造業

▶概要

1996年にフィリピン現地法人を設立。創業以来、自動車部品などに使用される軽量でリサイクル性に優れるアルミニウムダイカストのパイオニアとして事業を展開。フィリピン法人ではダイカストから切削加工まで一貫生産を手掛ける。現地では国内同様の生産体制を整え、現地日本企業の海外工場への供給基地として需要に応えている。

伊藤製作所

▶基本情報

  • 本社:三重県四日市市
  • 従業員数:120名
  • 事業内容:順送り金型設計製作、プレス部品加工、部品組立

▶概要

1995年に設立した合弁会社を2003年に100%独資にし現地法人を設立。輸出加工区である工業団地に拠点を設け、現地日本企業を対象とした高度な順送り金型の制作とプレス部品加工を行っている。英語力に優れた現地スタッフの教育と日本からの設備投資により生産体制を確立。

まとめ

今回はフィリピンの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。個人的には、豊富な若年層の労働人口と安価な労働賃金が企業の関心を集めている要因であると再認識しました。ただ、フィリピン国内ではインフラ未整備地域も多く、所得格差による貧困層と富裕層の壁が依然として残っていると感じました。

進出する日本企業の目線に立って考えると、今回紹介した3社のように現地のスタッフを雇い、日本企業の向けの部品加工や製品の供給をメイン事業にしていくスタイルが一般的だと思いました。今回の内容がフィリピン進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「フィリピン」

テクノポートの稲垣です。前回の記事では製造業のGDPの60%以上を縫製業が占める「カンボジアの製造業」について紹介しました。今回は日本と同じアジアの島国である南国のフィリピンの製造業について紹介します。

フィリピンの人口は2014年に1億人を突破し2023年には日本の人口を上回る予想です。また、アジア2位の経済成長率と豊富な若者人口で注目を集めるフィリピンの製造業を日本企業目線から掘り下げていきます。

フィリピンの概要

  • 正式名称:フィリピン共和国(Republic of the Philippines)
  • 首都:メトロ・マニラ(Metro Manila)
  • 大統領:ロドリゴ・ドゥテルテ(2016年6月から)
  • 通貨:ペソ(Peso)(1ペソ=2.07円 ※2020年3月17日時点)
  • 人口:約1億98万人
  • 面積:30万km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:フィリピン語、英語
  • 宗教:カトリック(82.9%)その他キリスト教(9.6%)イスラム教(5%)その他(2.5%)
  • 平均寿命:男 65.9歳、女 73.1歳(日本:男 81.2歳、女 87.3歳)

フィリピン経済の特徴

強み

  1. 若年者人口:1億人を超える人口の約50%を25歳以下が占める
  2. 出稼ぎ労働者:海外の出稼ぎ労働者からの仕送りがGDPの約10%を占める
  3. 貧困層の減少:フィリピン政府は0~14歳の健康と教育に投資することで極度の貧困の根絶を目指している
  4. 英語:人口の多くが英語を話せるため、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)分野でアジアのリーダー的な立ち位置

弱み

  1. インフラ未整備:交通渋滞の蔓延やスラム街など、インフラ未整備の地域が多い
  2. 所得格差:富裕層が全体の約1%であるのに対し、貧困層が全体の約60%を占める
  3. マネーロンダリング:銀行やカジノによる資金洗浄(マネーロンダリング)が横行

フィリピンの産業構造

フィリピンの産業構造を調べます。下の図は2018年におけるフィリピンのGDPにおけるサービス業、製造業、農業の割合を示したグラフです。


データ引用元:ASEAN Key Figures 2019

グラフから以下のことが読み取れます。

  • 製造業の割合は34.1%でASEAN諸国の平均36.6%をわずかに下回る
  • GDPに占めるサービス業の割合は57.8%でASEAN諸国の中で3番目に大きい

▶現状

  • サービス産業が増加傾向で製造業は緩やかに増加傾向
  • 農業はGDP全体の8%だが、労働力の約30%が農業に従事している
  • 1980年から2017年までの経済成長率は3.7%と緩やかだが、2012年から2017年の経済成長は6.1%と急速な成長を記録

▶今後

  • フィリピン政府は製造業とサービス業に投資をシフトしており、農業は衰退傾向
  • ドゥテルテ大統領は2014年から2033年の20年間で年平均4.8%のGDPの成長を目指すと宣言

フィリピンの製造業全体

次にフィリピンの製造業全体について調べます。下の図は2019年におけるフィリピン製造業GDPにおける各セクターの割合を示したグラフです。


データ引用元:NATIONAL ACCOUNTS OF PHILIPPINES

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 食品製造業が製造業全体の47.8%を占め、ここ数年増加傾向が続く
  • 化学および化学関連製品の割合はGDP全体の11.2%と2番目に大きい
  • ラジオ、テレビ、通信機器および家電分野は10.3%で3番目に大きい

▶現状

  • 製造業はGDP全体の34%を占めるが、従事している労働力は全体の16%で労働賃金も低い
  • 鉱業、鉱物処理産業、医薬品、造船、電子部品・半導体産業は近年政府が力を入れている

▶今後

  • 短期的な目標として、1. 優位性のある産業の保護、2. 新興企業の強化、3. 現存企業の強化を挙げている
  • 中期的な目標として、1. 高付加価値産業へのシフト、2. 業績が上向いている分野への投資、3. 製造業を農業、サービス業と融合、4. イノベーション産業の推進を挙げている
  • 長期的な目標として、1. 世界的な競争力の強化、2. 革新的な製造技術の強化を挙げている

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からフィリピンの製造業市場を調査した結果です。下の図は2008年から2017年までのフィリピンに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。

データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 統計を開始した2008年から2017年の間に日系企業数は1.76倍に増加
  • 2017年におけるフィリピンの進出日系企業数は1502で8位

▶現状

  • 進出日系企業は経営上の問題点として原材料・部品調達の難しさ、調達コストの上昇、従業員の賃金上昇、品質管理の難しさ、税務の負担などを挙げている。(出典:ジェトロ『2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査』2018年12月)
  • 2020年2月のフィリピンの※製造業購買担当指数(PMI)は、新型コロナウイルスの影響を受けながらも0.2ポイントの増加を記録しASEAN首位。※製造業の購買責任者を対象に、生産高や新規受注、在庫レベル、雇用状況、価格などの指数に一定のウエイトを掛けて算出する指数。0から100の間で変動し、50.0は「前月から横ばい」、50.0を超えると「前月比で改善や増加」を意味して景気拡大を示し、50.0未満は「前月比で悪化や減少」として景気減速を表す。

▶今後

  • 2023年のフィリピンの人口は1億2300万人と日本を追い抜くと予想されており、ASEANの経済大国としての地位を確立する見込み
  • 首都マニラでの月額法定最低賃金の上昇率は2019年で4.9%と上昇傾向だが、他のASEAN諸国(インドネシア:8.0%、マレーシア:10%、ベトナム:5.0%)と比較すると上昇率は小さい

フィリピンに進出した日本企業

次に実際にフィリピンに進出した日本企業3者を紹介します。

株式会社ティアンドエス

▶基本情報

  • 本社:埼玉県草加氏
  • 従業員数:64名
  • 事業内容:レーザ加工・曲げ加工・溶接加工・組立加工、その他板金加工全般

▶概要

2004年にフィリピンマカティシティに現地法人を設立。フィリピン国内および、アジア域内に進出済みの日系企業への部品の供給元としてレーザー加工、切削加工を行う。日本本社でトレーニングを受けたスタッフが様々な加工依頼に24時間体制で対応。

群馬合金株式会社

▶基本情報

  • 本社:群馬県伊勢崎市
  • 従業員数:99名
  • 事業内容:非鉄金属ダイカスト製造業

▶概要

1996年にフィリピン現地法人を設立。創業以来、自動車部品などに使用される軽量でリサイクル性に優れるアルミニウムダイカストのパイオニアとして事業を展開。フィリピン法人ではダイカストから切削加工まで一貫生産を手掛ける。現地では国内同様の生産体制を整え、現地日本企業の海外工場への供給基地として需要に応えている。

伊藤製作所

▶基本情報

  • 本社:三重県四日市市
  • 従業員数:120名
  • 事業内容:順送り金型設計製作、プレス部品加工、部品組立

▶概要

1995年に設立した合弁会社を2003年に100%独資にし現地法人を設立。輸出加工区である工業団地に拠点を設け、現地日本企業を対象とした高度な順送り金型の制作とプレス部品加工を行っている。英語力に優れた現地スタッフの教育と日本からの設備投資により生産体制を確立。

まとめ

今回はフィリピンの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。個人的には、豊富な若年層の労働人口と安価な労働賃金が企業の関心を集めている要因であると再認識しました。ただ、フィリピン国内ではインフラ未整備地域も多く、所得格差による貧困層と富裕層の壁が依然として残っていると感じました。

進出する日本企業の目線に立って考えると、今回紹介した3社のように現地のスタッフを雇い、日本企業の向けの部品加工や製品の供給をメイン事業にしていくスタイルが一般的だと思いました。今回の内容がフィリピン進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー企画②「先進国フランスの試作市場へ」後編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第2回目後編の今回は前回の記事に引き続き、切削部品加工受託業でフランスに事業展開を果たした、株式会社ダイショウの石塚社長へのインタビューをお届けします。後編の今回は、

  • 「フランスに事業展開を考える企業にアドバイスは?」
  • 「フランス企業と比較した時の日本企業の特徴は?」
  • 「日本の製造業企業がフランス語Webサイトを作る際に注意すべきことは?」
  • 「アジア系の人、企業に対して差別はある?」

などの質問に対し、現地で会社を運営する方の生の声をお届けします!

フランス進出について

ドイツ進出とフランス進出の違いは?

私個人としては、ドイツに進出する方が楽だと思います。なぜかと言うと、ドイツは今までの進出してきた日本企業とのつながりが多いからです。要は、歴史や経験値がフランスよりも深いということです。今私が言ったことは、実際に展示会に行ってみるとよく分かると思います。ドイツの展示会に出展している日本企業の数は、フランスのそれと比較すると断然多いです。なので、一般にフランスに進出しようとする日本企業の数は、ドイツに進出しようとする企業に比べて格段に少ないように感じます。

ですが、フランスに進出のチャンスがないわけではない思います。自分の仲間内ではフランスは日本人が想像するより工業国だよ、進出のチャンスはあるよ、という話をよくしますからね。

フランスに事業展開を考える企業にアドバイスは?

一つ確実に言えることは、ヨーロッパに支社を設けた方が良いということです。なぜかと言うと、例えば何かトラブルがあったときに、対応してくれる営業窓口や支店があるのと、ないのでは受注の幅が大きく変わるからです。

自分の経験から言うと、展示会に出展してお客さんが興味を持ってくれて「すごく良い品質だね!一回買ってみようかな。」と言ってくれることはよくあります。その後にお客さんが「ところでおたくはヨーロッパに支社はあるの?」と訊かれて、「ちょっとまだないんですよね。」と言うと、途端に「残念だなぁ」というリアクションが返ってくるんですよね。こういった考えの根底には、やはりヨーロッパから見ると日本は遠いアジアの国の一つ、という認識があると思います。

お客さんからしたら、ただでさえ輸送費の影響で高い買い物になるのに、サポートがヨーロッパで受けられないとなると、さらに不安ですよね。つまり、ヨーロッパに支店を持つということは、お客さんの不安を減らすと言う意味で価値があるんです。

支店はヨーロッパにあればいい?

ヨーロッパにあればいいと思いますよ。というのは、ヨーロッパにおいて国境はさほど関係ないですから。逆に、ヨーロッパに支店がないとなると、ちょっと遠いなぁという印象を持たれちゃいますね。また、既にヨーロッパのどこかに支店があるなら、どんどんほかの国にも進出した方が良いと思いますよ。

フランス進出に英語は必要?

やはり英語は必要ですね。それは、欧州展示会は国際即が豊かだからです。出展した中小企業の展示会MIDESTの場合、ヨーロッパの国はもちろん多いですけれど、北アフリカのモロッコ、中東の国を始め、中国、台湾企業も出展しています。先ほど紹介した、我々より前にフランスに進出した由紀精密さんは、我々と同じくフランスに支社があります。その支社に勤める従業員の方の一人に日本人なんですけど、英語とフランス語をしっかり話す女性の方がいるので、その違いは大きいですね。

理想的には、事務所には英語を話せる現地の人が常駐してすぐに電話が取れる、という状況ですね。例えば、ドイツに進出するなら英語が話せるドイツ人が常駐しているようなイメージです。

フランス語ができなくてもビジネスはできる?

私のフランス語もまだまだなんですが、ヨーロッパはそういう人達でも対等にビジネスをやっていけるような受け入れ態勢があると感じます。それは、ヨーロッパの中でもフランスは移民の多い国で、移民の中には読み書きが十分にできないという方も多いんですよね。そうした理由もあって、ヨーロッパは言葉が流暢ではない人を受け入れる態勢が日本よりあると思います。

加えて、ビジネスにおいて重要なのは品物です。品物が評価対象なので、そこがしっかりしていれば問題ないと思います。

フランスの日本企業ついて

フランス企業と比較した時の日本企業の特徴は?

良い質問ですね。よく言われるのは、「質」と「繰り返し精度の高さ」ですね。後者の繰り返し精度の高さと言うのは、繰り返し同じ品質の製品を作り続け、安定供給ができる技術力のことです。このおかげで、お客様から重要部品を依頼されることもあります。こういった細部までこだわって作るという力に関しては、日本企業はすごいと思います。おそらく、より良いものを作ろうという意識や気質の違いがそうさせていると思います。

対して、こちらの企業は最低基準さえ満たしていればOKという考えが普通です。わかりやすく言うと製品の裏面に傷があったとしても、その部分が機能的に問題なければOKという感覚です。

フランスで成功している日本企業の特徴は?

製造業に限って言うと、技術が優れている企業です。よく言われる海外に進出する企業が直面する課題として、値段と技術のバランスがあります。海外で商品を売るには当然、輸送費や関税といったコストがかかりますからね。その中でも成功している企業は、値段が持つ以上の技術的な価値を提供できる企業だと思います。要は、替えがきかないような製品を持っているような企業は、我々の周りでも成功している印象がありますね。

加えて、高い技術力はお客さんとの信頼関係に直接的につながります。信頼関係の構築に必要な継続的な仕事の受注という面でも、技術力は必要ですよね。

日本製品に対するリスペクトはあるか?

結論から言うと、日本人が思っているほど「ジャパンクオリティ」みたいな感覚はこっちにはありませんね。全体的にリスペクトしている感じは受けます。ですが、やはり会社対会社が基本です。日本企業といってもピンからキリまでありますからね。

日本企業に対するイメージは?

一般的に言うと、遠いなぁという印象ですね。なので、ただでさえ距離が遠くて輸送費もかかるので、その中でお客さんと関係を構築するのは難しいと思います。ただ、お客さんが一度日本企業と取引して良い品物をもらっているとか、試しに一回注文を受けてそれがすごく良い経験になった、などの経験値があると日本企業に対する印象は大きく変わると思います。

フランスのネット事情について

フランスのWebサイトを見る時に特に注意してみる内容は?

日本と同じですけど、更新頻度ですね。要は、情報が新鮮かどうかです。あとこれはWebサイトの見方の話ですが、Webサイトを見る時はあくまでも参考程度に見ています。というのは、Webサイトというのは実際の内容よりも良く見せるようにできているからです。なので、情報をうのみにせず、大事なことは実際に会って確認することを心がけています。

日本企業とヨーロッパのWebサイトの違いは?

製造業に限って言うと、ヨーロッパのWebサイトの方が洗練されている感じがしますね。そうなる理由の一つは、業界以外の人にも分かりやすいデザインにする必要があるからだと思います。フランスは地元の行政が製造業を支援していて、製造業のWebサイトにも県のロゴやリンクが貼ってある場合が多いです。すなわち、地域のリンクを通して業界以外の人が見に来るケースも多いので、直観的に分かりやすいデザインにしているんだと思います。

フランス語Webサイトを作るにあたって、Google翻訳でも十分意味は通じるか?

ある程度は通じると思います。しかし、ネイティブの翻訳は必ず必要だと思います。例えば、私たち日本企業が中国企業からダイレクトメールをもらった時に、中国企業(外国企業)の日本語はすぐ分かりますよね。特に、日本企業は外向企業からの拙い日本語メールに対する免疫が少ないと思います。

先ほども言った通り、ヨーロッパには現地語に不慣れな外国人が比較的多く、受け入れ態勢もあります。なので、Webサイトの出来が外国語チックでも日本より受け入れてくれる可能性はあると思います。ただし、業界の専門用語、専門的な話をするにはGoogle翻訳だと不十分です。

これは参考の話ですが、私の前の会社のパートナー(フランス企業)の中で日本語Webサイトを作ろうという話がありました。その際に私は翻訳担当として参画しました。これがそのWebサイトです。当時はフランス語も不慣れでしたが、加工現場の経験のおかげで専門用語に関しては苦労しませんでした。なので、外国語HPを作る際の理想としては、専門用語を知る翻訳家に翻訳してもらうことだと思います。

フランスのネットで日本企業のサイトがヒットしたことはあるか?

ないですね。グローバルに事業展開している大手を除くと、日本企業のHPが引っかかったことはないです。

これは余談ですが、フランスを含めたヨーロッパで検索を行う方法は2種類あります。1つ目は、現地の言葉で検索する方法。2つ目は、英語で検索する方法です。後者の英語で検索する方法はグローバルな検索結果が表示されるので、もしかしたら英語で検索すると日本企業HPが引っかかる可能性はあるかもしれないです。ただ、私個人としてはフランス語検索することがほとんどなので、分からないですね。

日本の製造業企業がフランス語Webサイトを作る際に注意すべきことは?

専門用語の翻訳精度です。これは良くある話なんですが、エンジニアが現地の中小企業町工場に行って英語で話しても通じない、専門用語も英語だと通じないというケースです。

私事ですが、ブログで日仏の専門用語辞典を作っています。

先ほど言った経験をする方がいれば、自分のブログページを見て写真を見せながら説明すれば伝わると思います。英語とフランス語に対応していて、発音もついているので役に立ててもらえれば幸いです。

フランスの現状について

フランス生活で日本ギャップを感じる?

ギャップはすごいありますね。日本は色々なものが綺麗に整っていて、人もインフラもしっかり整っていると思います。一方で、日本にいると自分もしっかりしなければ、と堅苦しくなってしまう面もありますよね。なので、フランスの価値観になれてしまうと、もう日本には戻れない気がします。(笑)こういったギャップは、日本とフランスの違いというより、日本と外国の違いだと思います。

海外に住んでみて初めて日本という国の特殊性、優れている部分を感じましたね。加えて、現地の人の考え方の違い、文化の違いなんかも分かります。その辺は、海外旅行では感じられない貴重な経験だと思っています。

アジア系の人、企業に対する差別はある?

私自身あまり感じたことはないです。これは先ほども言った理由で、特にビジネス上では差別はないです。国ではなく会社対会社で取引しますからね。

一つ意識して欲しいことは、日本人はアジア人の一員であるという認識が必要だということです。フランスの人からしてみれば、中国も日本も遠いアジアの国の一部ですからね。その中でもう一歩関係性を進めて、日本の文化の違いなどについて話せるような仲になれば良いですよね。

フランスの治安は?

治安が悪いと感じたことはないですね。例外的に、特に都市部では文化も価値観も違う色々な人種の人がいるので、ある程度のトラブル、治安の悪さみたいなものはあります。テロもあります。

ただ、一つフランスに来て分かったことを伝えさせてください。

例えば、フランスでテロが起こったとなると「フランスってあぶねぇ」って日本から見ると思いますよね。ところが、実際は特定の地域に住む特定の人が犯した事件なので、フランスの国全体が危ないことはないんです。フランスで何か事件が起こると、日本から「大丈夫なの?」って心配されることもあるんですが、現場から場所が違えばほとんど関係なかったりするんですね。なので、今回のコロナウイルスの件でフランス国内のアジア系の飲食店が襲撃されたり、人種差別を受けた、みたいなニュースが日本ではクローズアップされますが、その外から見た報道の仕方と受け取り方に必ずギャップが存在するので、現地の人間はそこに違和感を感じてしまいます。

実際に事件を起こしているのは、全体数の内のほんのわずかな人達ですよね。報道や記事はメディアが売るために作るわけなので、必ず情報の受けて側が責任を持って取捨選択する必要があると思います。ブログでもそういう話を挙げているので、フランスに実際住んでみて感じた価値観の違い、文化の違いなんかを感じていただけたら嬉しく思います。

コロナウイルスの影響は?

日本の人からすると、フランスに住んでいるからコロナウイルスは関係ないと思われがちですが、実際そうではないんです。ヨーロッパは地続きなので、私の住んでいる地域だとイタリアやスイスの国境が近いんですね。なので、イタリアの北部でコロナウイルスが拡大しているニュースの方にむしろ注意しています。(2月23日インタビュー時)

最後に

最後に、少しだけ自分の話をさせてください。私がフランスに来た当初は、工場も何から何まで売って来ました。つまり、ずっこけたらそれでおしまいという訳です。誰からの保証もありませんでした。つまり、ビジネスをしに来ていると同時に、生き方を選択しに来たんです。中小企業って日本国内でもそうですが、仕事と家庭が表裏一体なんですよね。会社の売り上げが上がれば家族も円満で、会社の売り上げが落ちれば家庭内にも不和が生じる、みたいな。(笑)

そういうバックグラウンド中で、こっちに来てたくさん苦労をしてきました。なので、今回のインタビューを通して、メディアの情報だけからは分からない、現場の生の声と言うものを感じてもらえれば嬉しく思います。あと今後、この世界の製造業インタビュー企画を通して、世界中で働く日本の製造業事業者の座談会みたいなものが開けると面白いと思います。裏話とかも聞けそうですよね。(笑)

まとめ

いかがでしょうか。冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

  • 「フランスに事業展開を考える企業にアドバイスは?」

→ ヨーロッパに支社を設けた方が良い

  • 「フランス企業と日本企業を比較した時の特徴は?」

→ 日本の中小企業は「質」と「繰り返し安定供給する力」が高い

  • 「日本の製造業企業がフランス語Webサイトを作る際に注意すべきことは?」

→ 専門用語の翻訳精度を保つこと

  • 「アジア系の人、企業に対して差別はある?」

→ 差別はなく、ビジネス上問題になることもない

のようになります。現代ではメディアやインタ―ネットを通して、誰もが簡単にオンライン上のデータにアクセスできます。しかし今回のインタビューを通して、石塚さんのような現場で働く生の方の声ほど説得力のある情報はないと改めて実感しました。今回の内容がフランスへの事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー企画②「先進国フランスの試作市場へ」前編

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。第1回目の前回は、中国の工場運営者の方にインタビューを行いました。第2回目の今回は、切削部品加工受託業でフランスに事業展開を果たした、株式会社ダイショウの石塚社長にインタビューを行いました。前編の今回は

  • 「なぜフランスを選んだ?」
  • 「フランス企業のメールのやり取りの特徴は?」
  • 「フランスでの協力企業(パートナー企業)の探し方は?」
  • 「加工する時の材料の仕入れ先は?」

などの質問に対し、現地で会社を運営する方の生の声をお届けします!

フランスに進出の経緯について

フランスに進出した経緯は?

きっかけは、元々の本社があった神奈川県の茅ケ崎市の企業ネットワークでフランスに事業展開しようという話が挙がったことですね。加えて、我々の会社は試作をメインとして生業を立てているので、試作の市場は発展途上国ではなく、アメリカやヨーロッパ諸国などの先進国がターゲットになることも理由の一つですね。

なぜフランスを選んだ?

理由は大きく3つあります。

1つ目は、フランスは先進国の中でも航空機市場が大きいことです。我々の会社はもともと航空系、宇宙系に関する試作部品などを作っていました。なので、有名なエアバス社や軍事関連の企業も多いフランスに進出すれば、航空系、宇宙系の仕事に当たる確率が高いと思ったからです。

2つ目は、由紀精密さんがヨーロッパ市場を既に開拓していたことです。先ほど言った茅ケ崎の企業ネットワークの中に、精密加工業を専門とする由紀精密さんがいて、彼らが既にヨーロッパでの取引実績を持っていたことがもう一つの理由ですね。

3つ目は、家族の同意が得やすかったからですね。これは、半分冗談で半分真面目なんですけど、海外に家族を連れてくるとなったときに、奥さんに「うん」と言ってもらう必要があるんです(笑)。そうなったときに、ヨーロッパの中でもフランスは食文化や文化的な側面で日本人が持つ印象が良いんですよね。加えて、実際に現地で生活するとなったときに、美味しい食事が食べられないとなればストレスにもつながってしまうので、住むのが辛くなってしまいますよね。

現在の業務内容は?

現在は、アドバイザー的な立場の仕事が多いですね。具体的に言うと、(仕事を受けている)パートナ―企業の現場に行って、生産効率の改善、職場環境の改善などに貢献することがメインです。要するに、今までの経験を活かしてアドバイスや意見交換をしています。

なので、以前は一日中現場に立って機械を触っていることが多かったですが、現在では事務所にこもって仕事をする時間の方が長いです。

フランスでのビジネスについて

何語でコミュニケーションをしている?

90%はフランス語です。まず、フランス全体の話をすると、若い人ほど英語が話せる割合が高い印象を受けます。それは、フランスの多くの大学生が、半年から一年ほど外国に留学し語学を習得しよう、という姿勢を持っているからだと思います。

一方で、我々が取引している中小企業では、現場にいる職人さんを始め、フランス語しか話せない人が多いですね。大企業になると話は別で、英語が話せる人の割合は高くなると思います。

フランス企業はメールを使う?

使いますね。中国では、企業間でもSNSでやりとりすると聞きましたが、我々が仕事でSNSを使ったことはありません。SNSは信頼性のバックグラウンドが弱いので、図面などの重要書はメールで送るのが主流ですね。

これは直接的に関係ない話ですが、フランスではLinkedInというSNSの普及率が高いです。フランスでは、日本と違って終身雇用という文化はないので、次の会社に転職する時などにLinkedInが使われる印象がありますね。

フランス企業のメールのやり取りの特徴は?

特有の特徴というのはあまりないですね。敢えて言うならば、フランスの方が端的に用件を伝えて回答も端的な感じがします。日本は文化的に遠回しな表現だったり濁したりする印象はあるけど、フランスは簡潔明瞭な文章が多いです。

フランスでの協力企業(パートナー企業)の探し方は?

現在のパートナー企業と出会ったきっかけは展示会です。フランスでは地元の行政が経済活性にしっかり機能していています。なので、我々の会社は地域の経済開発公社的なところと接触し、展示会を通して色々な会社を訪問させて頂き、結果的に現在のパートナー企業と巡り合うことができました。現在のパートナー企業以外にも、数地域からオファーを受けました。中には、日本にも支社がある企業があったり、なかなかグローバルです。

フランスでの営業の方法は?

展示会が多かったです。展示会では新規顧客を開拓するために、地元企業の展示ブースを探して訪問しました。ある日のパリで行われた「MIDEST」という下請け企業の展示会に参加した時の話ですが、その中で感じたことは、日本の技術は世界に太刀打ちできるということです。

MIDESTではフランス国内はもちろん世界各国の企業ブースを見て回りましたが、技術的に我々のレベルは見劣りしない、むしろ上位に食い込んでいけると感じました。それは我々の技術が特別であるというよりも、日本の技術力水準が高いことに起因していると思います。

加えて、パートナー企業の既存顧客にも営業に行ったりしました。この営業方法のメリットは、やはりパートナー企業が一緒にいると、顧客との距離が縮まりやすい事ですね。加えて、パートナー企業からしても、我々の技術を使って顧客に新しい価値を提供できるので相乗効果が生まれますよね。

一つ伝えておきたいことは、良い関係のパートナーに巡り合うことが大きなチャンスにつながるということです。製造は1社だけで完結できません。仕入れメーカーから仕上げメーカーまで必要です。その中で、良いパートナーに巡り合うということは、そのネットワークをすぐに使えて他企業とつながるチャンスをもたらします。一般に日本企業は技術力に優れているので、あとはどうやって営業につなげるか、注文につなげるか、といった部分が課題になると思います。

フランスでの加工業について

加工する時の材料の仕入先は?

大きく2つのパターンに分かれます。1つ目は、フランスを含めたヨーロッパの材料を使う場合です。我々が取引するお客さんの中でも軍事や航空関連事業の方は材料にうるさい場合が多いんです。具体的には、材料の原産地や規格をきっちり指定してきます。そうした場合は、ヨーロッパで材料を買って日本に輸送します。その後、日本で加工し、再びフランスに輸送します。

2つ目は、日本の材料を使う場合です。1つ目のパターンのような縛りがない場合は、JISにおけるISO相当品を使い日本で加工し、輸送してもらいます。この場合はもちろん日本で事前にお客さんに確認をとってから作ります。なので、加工材料はヨーロッパ材料か日本材料、加工は主に日本で行っています。

1つ例外として、ヨーロッパで加工を行う場合があります。それは、仕上げのメッキ加工です。日本のメッキ屋さんは基本的に海外材料の相当品で合っても、若干の成分違いがあれば品質保証ができない場合はが多いので、メッキ加工だけヨーロッパで行うことがあります。これ以外にも例外はあって、材料の違いによって工程が違ったり、受け入れ態勢が違ったりということはよくあります。面白いですよね。(笑)

材料の品質は同じ型番でも原産地によって違う?

日本材料とヨーロッパ材料の品質はそんなに感じないですね。なので、日本材料の品質は高いと思いますよ。それ以外は我々の感覚から言うと、中国材料に若干むらがあって使いづらいという印象です。同じ型番でも日本材料とヨーロッパ材料の品質の違いは切削加工上は感じません。ただし厳密に言うと配合などの違いがあります。材料の品質に関してはアジアメーカーなどと比べると品質の安全性が優れていると思います。

まとめ

いかがだったでしょうか?冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

  • 「なぜフランスを選んだ?」

→ 3つの理由(1. 航空機市場の規模、2. 由紀精密さんの実績、3. 家族の同意)

  • 「フランス企業のメールのやり取りの特徴は?」

→ 端的に用件を伝えて、端的に回答

  • 「フランスでの協力企業(パートナー企業)の探し方は?」

→ 地元の行政を通した展示会

  • 「加工する時の材料の仕入れ先は?」

→ 2つのパターン(1. ヨーロッパの材料、2. 日本の材料)

となります。後編の次回は、フランスへの事業展開を日本企業の目線から掘り下げていきます。具体的には、

  • 「フランスに事業展開を考える企業にアドバイスは?」
  • 「フランス企業と日本企業を比較した時の特徴は?」
  • 「日本の製造業企業がフランス語Webサイトを作る際に注意すべきことは?」
  • 「アジア系の人、企業に対して差別はある?」

などの質問に答えていただきました!後編も、実際にフランス進出を果たした石塚さんならではの興味深い内容になっています。今回の内容がフランスへの事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

世界の製造業インタビュー①「コロナウイルスの影響は?中国進出企業の今」

テクノポートの稲垣です。今回は世界の製造業インタビュー企画です。本企画の目的は、実際に海外に事業展開している製造業事業者の方にインタビューを行い、日本の中小製造業の世界進出に役立つ情報をお届けすることです。第1回目の今回は、中国の広東省で絞り加工、精密プレス品の製品生産を行う岐阜精器工業の波多野さんにインタビューを行いました。

  • 「中国の人件費は昔と比べてどうか?」
  • 「中国で工場を作るのは、現状良いアイデアか?」
  • 「中国ではいまだに ”Made in Japan” は顧客に響くか?」
  • 「現状コロナウイルスが中国の工場運営に与えている影響は?」

などの質問に対し、現地で働く人の生の声をお届けします!

中国の人件費について

中国の人件費は昔と比べてどうか?

我々が進出した2002年と比べると、約3倍ですね。もちろん中国と言っても土地が広く、最低賃金も場所によって違います。

中国の人件費の上がり方は?

鈍化していると思いますね。東南アジア諸国と比べても、人件費の上がり方にそれほど差はないように感じます。

我々が今工場を経営している地域(広東省)だと、大体ベトナムの人件費と同じくらいだと思います。

中国進出にあたって人件費以外のメリットは?

従業員が確保しやすい事ですね。就職したい若い人間がたくさんいるので、工場の掲示板に張り出せば自然と人が集まりやすいです。

中国人労働者について

何語で中国人労働者とのコミュニケーションをしている?

全て中国語です。英語のコミュニケーションはありませんね。なので、中国国内でビジネスを行うとなると中国語は必須と考えた方が良いと思います。

何割くらいの中国人労働者が英語を話せる?

一人もいませんね。我々の工場には120人前後の中国国籍の人が働いていますが、英語が話せるという人は一人もいません。

経営層レベルでちらほら要る程度で、中間管理職を務める30歳から50歳あたりで英語を話せるのは人はとても少ない印象ですね。

性格的な面で中国人労働者の特徴は?

良い面として「稼ぎたい」という意欲が日本人労働者よりも高いと思います。現在、日本で進められている働き方改革のような気運は中国にはありませんから、どんどん残業してどんどん稼ごうというタイプの労働者が多いです。

一方で、「離職率」が高いという面もあります。忙しく働くことができない会社からは、人が離れていってしまうということもよく起こります。また、自分の望む給料がもらえなかったら、すぐに次の職場に移る人が日本よりも多いですね。上の話と関連したもので言うと、給料によって態度ががらりと変わってしまうということもあります。

労働者間でも、誰がどれだけの給料をもらっているかの情報はなぜかすぐに広まるので、例えば「彼が昇給できて、私が昇給できないのはなぜだ?」みたいな申し出もしょっちゅうありますね。(笑)

中国でのビジネスについて

日本品質を中国工場で実現するための工夫は?

進出した当時は、日本人技術者が中国に行って設計から組み立てまで、手取り足取り教えました。我々は物を作るうえで金型の設計、開発とかが大事になってくるので、技術者の育成に力を入れましたね。

中国国内での協力企業の探し方は?

受け身的な方法としては、「営業メール」をもらうパターンですね。日本では中国企業から来る営業メールはスパム扱いになっているところが多いと思いますけど、我々は、そういったメールに対して従業員にコンタクトを取らせます。その後、実際に工場に行ってもらい、作っているもの、工場の様子などを監査させます。監査の結果、良いものが作れそうだと判断した場合には協力工場の候補として考えるようにしています。

自分たちから探しに行く方法としては、中国国内で開かれる「展示会」が主ですね。

Webから探す時は、「地域名」+「加工方法」という形でHPを見ていく感じです。「地域名」を入力しないと、膨大な量の情報が出てきてしまうんです。先ほども言いましたが、中国と言っても広いので、広東省から北京は海外と同じくらいの感覚なんですよね(笑)

中国で工場を作るのは、まだ間に合うか?

間に合うとは思います。ただし「場所」が重要になりますね。と言うのは、場所によって人件費の上がり方が全然違うからです。例えば、我々が進出している場所は広東省の田舎で日系企業はほとんどいません。よって、人件費の上がり方も遅く、上海のような大都市のそれと比較すると全然安いです。

なので、これから中国への進出を考えるなら人件費の上がらなそうな場所に拠点を設けることが重要だと思います。とは言うものの、中国の田舎でも20年ほど前に比べると3倍くらい人件費は上がっていますが、日本に比べると全然安いですよ。我々の場所で月の最低賃金は4万円/月程度ですから。

中国企業のメールのやり取りの特徴は?

中国の場合、全体的にカジュアルな印象を受けますね。

日本企業はきっちり文章を作るイメージですが、中国企業とのやり取りは一文でOKだったり、「!」を入れてたりします。そういう対応をしても失礼には当たらないんですよね。

もう一つの大きな違いは、中国ではメールを使わないことですね。

日本で言うLINEのようなSNSプラットフォームを企業間のやり取りでも使用します。中国ではWechatというSNSで図面を送って、見積もりをもらうのが当たり前になっています。FAXなんかもってのほかですね。(笑)

日本ブランドについて

日本企業のイメージは?

お客様によく言われるのは、品質と納期についてですね。

我々は生産は中国でやっていますが、あくまでも日系企業の品質を教え込まれた工場なので大丈夫だろう、という感覚で見てもらっていますね。要するに、中国の企業に出すより我々に出した方が安全だろうという感覚だと思います。

中国ではいまだに ”Made in Japan” クオリティーは顧客に響くか?

最近あまりないですね。中国の技術は日本が思っている以上に進展していますからね。なので一昔前の様に、日本企業の家電を使っているからすごい、みたいなことは全くありませんね。

結局、スマートフォン市場も日本の製品はありませんし、家電もサムスンやLGの方が売れているんですよね。強いて言えば、自動車はいまだにトヨタを始めとする日本のブランドが好んで使用されているぐらいですかね。

中国のネット事情について

中国のWebサイトを見る時に特に注意してみる内容は?

中国の工場関係のWebサイトが中心になりますけど、一番見るのは製品の形状、工場内部の様子などの視覚的なイメージが主ですね。言葉が分からないこともあるので。

中国で日本企業のWebサイトを見る際に特に注意してみる内容は?

工場関係を見る時は、どんな加工をしているか写真で判断しています。加えて、その会社が得意としている点をアピールする文面があればそこも読むようにしてます。

中国語HPを作るにあたって、Google翻訳でも十分意味は通じるか?

結論から言うと、ネイティブなり流暢な人が翻訳する必要があると思います。

よく中国企業が片言の日本語でHPを作っているのを見かけますよね。あれと同じような感じになってしまうんですよね。加えて、自分が翻訳した文章とGoogle翻訳で訳したものを比較すると、やはり前者の方が正確だと感じるのも理由の一つですね。

中国のネットで日本企業のサイトがヒットしたことはあるか?

あまりないですね。

中国国内で中国語で検索すると日本語サイトはほぼ引っかからないです。たまに引っかかる海外のWebサイトは、台湾や香港のものくらいですね。

これは直接関係ない話なんですが、お客様とか協力企業とかに我々のHP(日本国内にサーバーがある)を見てもらうと、「なんでこんなに動作が遅いの?」と言われるんですよね。おそらく、中国政府がネット検閲に力を入れている影響もあると思います。

中国のネットを使う上で不自由することは?

Googleが使えたり使えなかったりすることですね。

Googleを使っていて検索できる時もあれば、次のページに行こうとすると急に動けなくなってしまうこともあります。加えて、我々のHPに載せているYoutubeの動画なんかは、全く見れなくなっていますね。

コロナウイルスについて

現状コロナウイルスが中国の工場運営に与えている影響は?

工場の運営にあたっては、政府から大きく2回の指示がありましたね。

1回目は、1月31日から出勤して工場を稼働させる予定が、2月3日まで完全休業してください、と言われたものですね。中国では、1月17日から旧正月(春節)が始まって、それと同時にコロナウイルスが拡大していった影響ですね。

2回目は、先ほどの2月3日から一週間の休業延長命令でしたね。また、一週間後の2月10日から全ての工場が稼働できるわけではなく、中国政府の監査をパスした工場から順に稼働許可が下りるシステムです。監査は主に、工場労働者の体温管理、アルコール消毒の管理度合いなどがチェックされました。我々の工場はOKがもらえて2月10日から工場が稼働しています。

政府の監査に通過する企業の割合は?

実を言うと、我々の工場は運が良かっただけで、まだ工場の運営許可出ていない会社は山ほどあるんですよね。

許可が下りていない割合は地域ごとによって違いますね。それは、大手から順に稼働許可が下りるようになっているからです。我々の工場は田舎町で他の工場が少ないからすんなりOKが出ましたが、例えば、大手企業が集まった深圳などは、中小企業の多くがいまだに稼働許可が下りていないと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。冒頭の4つの質問に対する答えをまとめると、

  • 「中国の人件費は、20程前に比べると約3倍に上昇したが日本に比べるとまだまだ安い。
  • 「中国に工場を作るのは、間に合うが人件費が上がらない場所を選ぶことが重要。
  • Made in Japan が顧客に響くことは、ほとんどない。
  • 「コロナウイルスの影響で、政府からの監査が入り多くの中小企業が稼働休止中。

のようになります。個人的には、日本ブランドが響かなくなっていたり、SNSで企業間のやり取りが行われていたり、中国の技術の発展を感じるインタビューになりました。今回の内容が中国への事業展開に関心のある方の参考になれば幸いです。

次回は、日本の切削部品受託加工技術でフランス進出を果たしたあの方のインタビューをお届けする予定です!

2020年の製造業「カンボジア」

テクノポートの稲垣です。前回の記事では東南アジア最後のフロンティアとして日本企業の注目を集める「ミャンマーの製造業」について紹介しました。今回はそのミャンマーと同じく縫製業が盛んで、2020年のGDP成長率がASEAN最上位と予想されるカンボジアの製造業ついて紹介します。

カンボジアの製造業の最大の特徴は何といっても縫製業(繊維・衣類・履物)です。調査によると製造業のGDP全体の60%以上を縫製業が占めています。今回はカンボジアの製造業を、実際に同国に事業展開を果たした日本企業の紹介を交えて、日本企業の視点から調査しました。

カンボジアの概要

  • 正式名称:カンボジア王国(Kingdom of Cambodia)
  • 首都:プノンペン(Phnom Penh)
  • 首相:フン・セン(1998年11月から)
  • 通貨:リエル(Riel)(1リエル=0.027円 ※2020年2月20日時点)
  • 人口:約1630万人
  • 面積:18万km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:クメール語(カンボジア語)
  • 宗教:仏教(96.4%)イスラム教(2.1%)キリスト教(1.3%)その他(0.3%)
  • 平均寿命:男 62.4歳、女 67.5歳(日本:男 81.2歳、女 87.3歳)

カンボジア経済の特徴

強み

  1. 縫製業:製造業全体の約60%を占める
  2. 炭化水素鉱床:カンボジア領海内に石油・天然ガスを所有(現在調査段階)
  3. 観光業:GDPの約16%を占め、年成長率7%で増加傾向
  4. 若年層人口:国民の50%以上が22歳以下

弱み

  1. インフラ整備不足:電気設備、交通ネットワーク基盤の未整備
  2. 熟練技術者不足:職業訓練不足、高い給与を求める転職などが原因
  3. 貧困:都市部と農村部での格差拡大、人口の35%は1日1ドル以下での生活

カンボジアの産業構造

カンボジアの産業構造を調査します。下の図は2017年のカンボジアのGDPにおけるサービス業(政府の活動、通信、輸送、財政、民間サービス業)、工業(鉱業、製造業、エネルギー産業、建設業)、農業(農業、 漁業、林業)における各部門の割合をしめしたグラフです。


データ引用元:Cambodia GDP – composition by sector | index mundi

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 産業(鉱業、製造業、エネルギー産業、建築業)の割合は32.8%で近年増加傾向
  • 農業の割合が25.3%でASEANの中ではミャンマーに次いで大きい

▶現状

  • 1998年から2018年までGDPの年成長率約8%の増加を続け、急速に成長している
  • 主要産業として、縫製、軽工業、食料加工、不動産建設、観光業が成長を支えており、産業の多様化が課題

▶今後

  • 2020年現在、低所得国に分類されているが政府は2030年までに中所得国、2050年までに高所得国を目指している
  • インフラ不足や貧困問題による競争力不足に対処するために、IT産業に投資をシフトする見通し

カンボジア製造業全体

次に、カンボジアの製造業全体についてです。下の図は2018年のカンボジアの輸出品目の付加価値額を示したグラフです。


出典:IS CAMBODIA POISED TO BECOME A MAJOR MANUFACTURING HUB? | intouch

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

▶現状

  • 2018年のカンボジアの労働人口割合は84.3%でASEAN諸国で最も高く、製造業従事者の割合は20%(サービス関連業48.2%、農業54.9%)
  • 製造業におけるテクノロジー導入が遅れており、生産効率の低さが原因で世界的な競争力は低い

▶今後

  • アジア開発銀行によると、縫製業の規模は緩やかに縮小し、新興産業として電子部品、自動車部品、自転車、精米、ゴムなどの規模が増加する見通し
  • カンボジア政府は税制優遇など、外資系の投資を積極的に受け入れており縫製業工場のほとんどは外資系企業(台湾28%、中国本土19%、香港17%、韓国13%)

日本企業の進出状況

ここからは、日本企業の視点からカンボジア製造業市場を調査結果です。下の図は1992年から2028年までのカンボジア日本人商工会登録企業数の遷移を示したグラフです。カンボジア日本人商工会(JBAC)とは、日本とカンボジア両国の商工業および経済全般の発展に寄与することで社会貢献を果たすことを目的に設立された組織です。


出典:カンボジア日本人商工会議所2018

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 2018年の会員数は過去最多の261社, 3団体で発足当初の10社から20倍以上に成長
  • 製造業部会の会員数は64社・団体でJBACの7つの業種別部会(製造業、建築不動産、貿易、運輸、金融保険、商業、サービス)の中で最多

▶現状

  • カンボジア商工業会議所に登録されている日系企業の数も2010年から5年余りの間に10倍以上に増加
  • JETROの調査によると、カンボジアに興味を示す日本企業のパターンは2つあり、1つは新規市場開拓や生産拠点としての検討、2つ目は既にタイ、ベトナム、ミャンマーなどに進出済み企業の2次投資

▶今後

  • カンボジア政府は2025年までの産業開発政策で高度な産業を誘致し、産業構造の転換を図っている
  • 近年は労働賃金の上昇により採算が合わなくなり、同国から撤退する企業も目立つ(2017年時点で20社)

カンボジアに進出した日本企業

次に、実際にカンボジアに進出した日本企業を3社紹介します。

マサカツ鋼材

▶基本情報

  • 本社:大阪府枚方市
  • 従業員数:50名
  • 事業内容:鋼材販売、鋼材加工

▶概要

カンボジアの首都プノンペンにて2017年6月からカンボジア向上を本格稼働。すでにベトナムで実績を上げている鋼材加工をカンボジアでも開始。日本の高い加工技術によって付加価値を高め、競争力を上げるという日本企業の強みを活かした方法で事業を展開。材料の仕入れから製品までの仕事をすべて受けることで競合他社との差別化を実現。

株式会社 スワニー

▶基本情報

  • 本社:香川県東かがわ市
  • 従業員数:104名
  • 事業内容:手袋・鞄の製造販売

▶概要

2012年にカンボジアの経済特区にてカジュアル手袋を生産する新工場を建設。進出の主な理由に、カンボジアは縫製業が盛んであるため、安価な労働力の確保が容易であることを挙げている。加えて近年、中国国内の人件費の高騰が進み人材確保が厳しくなってきたため分散生産を可能にするという狙いもある。

日光金属株式会社

▶基本情報

  • 本社:栃木県矢板市
  • 従業員数:110名
  • 事業内容:自動車用耐熱・耐摩耗鋳造部品製造

▶概要

2013年5月に同社初の海外生産拠点としてカンボジアの首都プノンペンに工場を設立。主な目的は自動車メーカーの海外生産拡大への対応。カンボジアに進出を決めた理由は人件費の安さ首都の発展度合い、まじめで親日的なカンボジア国民の国民性などを挙げている。また、工業団地内は日系企業が多く情報交換ができる過ごしやすい環境が整備されていることなども理由の一つ。

まとめ

今回はカンボジアの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。個人的な見解としては、カンボジアでは縫製業をはじめとする労働集約型産業に頼っており、テクノロジーの導入による生産効率の向上には時間がかかると思われます。加えて、熟練技術者の不足が製造業の成長を鈍化させている原因の一つとして考えられます。

日本企業の視点から考えると、近年カンボジアの労働賃金水準は増加傾向にあり、労働賃金のみ削減を目的としたカンボジア進出は以前ほど魅力的ではなくなってきています。しかし、今回紹介した3社の様に明確な戦略と自社独自の強みを持った企業にとっては魅力的な市場であることに変わりわないと言えます。今回の内容がカンボジア進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「ミャンマー」

テクノポートの稲垣です。前回の記事では世界の貿易拠点として近年注目を集める「タイの製造業」について紹介しました。今回はそのタイに隣接し親日国としても知られるミャンマーの製造業ついて紹介します。

ミャンマーの製造業の最大の特徴は、他のASEAN諸国とは異なり、GDPにおける製造業の割合は増加しており、政府もその流れを後押ししていることです。今回はミャンマーの製造業を、実際に同国に事業展開を果たした日本企業の紹介を交えて、日本企業の視点から調査しました。

ミャンマーの概要

  • 正式名称:ミャンマー連邦共和国(Republic of the Union of Myanmar)
  • 首都:ネーピードー(Nay Pyi Taw)
  • 大統領:ウィン・ミン(2018年3月から)
  • 通貨:チャット(Kyat)(1チャット=0.076円 ※2020年2月12日時点)
  • 人口:約5283万人
  • 面積:67万8500km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:ミャンマー(ビルマ)語
  • 宗教:仏教(85%)キリスト教(4.9%)イスラム教(4%)その他(6.1%)
  • 平均寿命:男 66.6歳、女 69.6歳(日本:男 81.2歳、女 87.3歳)

ミャンマー経済の特徴

強み

  1. 豊富な原材料:鉱物(翡翠、銅、金)、天然ガス、石油
  2. 立地:中国、インド、タイなどの急成長国に近い
  3. 若年人口:国民の27%が14歳以下
  4. 産業ポテンシャル:観光産業と農業の成長可能性

弱み

  1. 宗教問題:多数を占める仏教徒による少数派イスラム教徒の迫害
  2. インフラ整備不足:電気、衛生環境、教育格差など
  3. 自然災害:自然災害が発生する確率が高い(地震、サイクロン、洪水など)

ミャンマーの産業構造

ミャンマーの産業構造を調査します。下の図は2017年から2018年までのミャンマーへのFDI(直接対外投資)における各部門の割合をしめしたグラフです。


出典:Myanmar – What to Watch 2019 | AEC

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • FDIの製造業の占める割合は31%で最も高くミャンマーの経済の主要産業と言える
  • FDIのサービス関連業への割合は低く農業と共に縮小傾向

▶現状

  • 製造業への投資が最も多く、製造業はミャンマー経済をけん引する期待が高い
  • 中国はミャンマー経済に最も多く投資しており、アメリカや日本はミャンマー経済の将来性に期待し投資を増加させている

▶今後

  • 「衣料品産業」と「食品加工産業」が好調で、投資の増加と共に生産を拡大する見通し
  • ミャンマーの「豊富な農産物資源」を効率よく活かすためにテクノロジーの導入が急務の課題となっている

ミャンマー製造業全体

次に、ミャンマーの製造業全体を調査します。下の図は2015年のタイの製造業のGDPにおける各部門の割合を示したグラフです。


出典:Manufacturing Guide 2019 | EUROCHAM MYANMAR

グラフから以下のことが分かります。

  • 産業(製造業含む)のみのGDPは統計開始の2013年から2018年にかけて1.58倍に増加
  • 2017年から2018年において産業(製造業含む)はGDP全体の31.6%を占める(サービス関連業42.2%、農業26.2%)
  • 他のASEAN諸国のGDPにおける製造業の割合は減少する中、ミャンマーではGDPにおける製造業の割合がほぼ一定のまま遷移している

▶現状

  • 「食品加工産業」と「衣料品」の対外需要に支えられ、製造業は2017年から2018年にかけて11%成長
  • 「安価な労働力」と「戦略的な立地」がミャンマー製造業を支えていると言える

▶今後

  • ミャンマー政府はGDPにおける製造業の割合を2013年から2014年の33%から、2030年から2031年にかけて37%に増加させる予定
  • 短期的に重点を置く3つの産業として、1. 労働集約型産業(例:機業、衣料品産業)、2. 一次産品(例:食料品)、3. 従来の製造業(例:繊維産業、縫製業、エレクトロニクス産業)を挙げている
  • 中長期的に重点を置く3つの産業として、1. 自動車部品組み立て産業、2. 先進技術産業(例:先進技術を応用した化学産業)、3. インフラ整備事業(例:道路建設産業)

日本企業の進出状況

ここでは、日本企業の視点からミャンマー製造業市場を調査結果です。下の図は2008年から2020年1月までのミャンマー日本商工業会議所登録企業数の遷移を示したグラフです。ミャンマー日本商工業会議所とは、日本とミャンマー間での商工業及び経済全般の促進及び関係強化を目的に設立された組織です。


データ引用元:ミャンマー日本商工業会議所

グラフから以下の特徴が挙げられます。

  • 2012年から急激に増加し、2020年1月末までで2008年の5倍以上の会員数
  • 工業部会(製造業関連)の会員数は2020年1月までで93社で全体の22.5%を占める

▶現状

  • ミャンマー日本商工会議所によると2019年9月時点で会議所の会員数は401社(うち製造業関連は89社)
  • 2017年時点でミャンマーに進出している日本企業数は438社で第21位

▶今後

  • 自動車部品の手作業を必要とする組み立て作業をミャンマーで行う企業が増加する見込み
  • 縫製業などの労働集約型の産業がミャンマーで工場を建設し生産を行うケースが増加する見通し

ミャンマーに進出した日本企業

次に、実際にミャンマーに進出した日本企業を3社紹介します。

株式会社トーノ精密

▶基本情報

  • 本社:岩手県遠野市
  • 従業員数:68名
  • 事業内容:プラスチック製品、MIM製品、TRI製品

▶概要

2019年12月ミャンマー最大都市のヤンゴン近郊のティラワ経済特区に工場を竣工。樹脂成型部品メーカーとしては初めてティラワに生産拠点を構え、海外調達に頼らざるを得なかった現地日系企業をターゲットとして、ティラワ工業団地内の日系企業向けに部品を供給している。

旭日電気工業

▶基本情報

  • 本社:東京都世田谷区
  • 従業員数:205人
  • 事業内容:電気工事、電気通信工事

▶概要

2019年9月ミャンマー最大都市ヤンゴンに支店を開設し、不動産賃貸業を開始。旭日電気工業は経済成長が進むミャンマーへの進出を考え、2017年から駐在員を派遣し調査を行ってきた。短期的には同国の日本人駐在員に対する賃貸を主事業とし、中長期的には内装や設備工事などの事業を開始する予定。

不二熱学工業株式会社

▶基本情報

  • 本社:大阪府中央区南船場
  • 従業員数:236人
  • 事業内容:空調・給排水衛生・低温設備などの設計・保守管理

▶概要

2013年身近な東南アジア諸国の中でも親日的なミャンマーに進出。同国において日系企業を対象に、空調、衛生、冷凍冷蔵や関連付帯業務などに係る技術を提供。また現地の企業に対し、技術を提供し環境保全に貢献。事業展開以外にも社会貢献の一環として、2014年アジアカップに参加するミャンマー女子サッカーチームに寄付。

まとめ

今回はミャンマー製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。個人的な見解としては、ミャンマーの製造業は現在成長の過程にあり、今後は他のASEAN諸国と同様にハイテク産業への転換が進んでいくと思います。同時に農業や縫製業などの労働集約型の産業もGDPの大きな割合を占めていることもミャンマー経済の大きな特徴の一つと言えます。

また、ミャンマーに進出を考える日本企業の数は増加しており、今回紹介した3社の様に高い技術力と現地日本企業のネットワークを利用すれば進出のチャンスはあると言えます。

今回の内容がミャンマーに進出に関心のある方の参考になれば幸いです。次回はASEAN製造業シリーズ第6回目としてカンボジアの製造業について紹介する予定です。

2020年の製造業「ミャンマー」

テクノポートの稲垣です。前回の記事では世界の貿易拠点として近年注目を集める「タイの製造業」について紹介しました。今回はそのタイに隣接し親日国としても知られるミャンマーの製造業ついて紹介します。

ミャンマーの製造業の最大の特徴は、他のASEAN諸国とは異なり、GDPにおける製造業の割合は増加しており、政府もその流れを後押ししていることです。今回はミャンマーの製造業を、実際に同国に事業展開を果たした日本企業の紹介を交えて、日本企業の視点から調査しました。

ミャンマーの概要

  • 正式名称:ミャンマー連邦共和国(Republic of the Union of Myanmar)
  • 首都:ネーピードー(Nay Pyi Taw)
  • 大統領:ウィン・ミン(2018年3月から)
  • 通貨:チャット(Kyat)(1チャット=0.076円 ※2020年2月12日時点)
  • 人口:約5283万人
  • 面積:67万8500km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:ミャンマー(ビルマ)語
  • 宗教:仏教(85%)キリスト教(4.9%)イスラム教(4%)その他(6.1%)
  • 平均寿命:男 66.6歳、女 69.6歳(日本:男 81.2歳、女 87.3歳)

ミャンマー経済の特徴

強み

  1. 豊富な原材料:鉱物(翡翠、銅、金)、天然ガス、石油
  2. 立地:中国、インド、タイなどの急成長国に近い
  3. 若年人口:国民の27%が14歳以下
  4. 産業ポテンシャル:観光産業と農業の成長可能性

弱み

  1. 宗教問題:多数を占める仏教徒による少数派イスラム教徒の迫害
  2. インフラ整備不足:電気、衛生環境、教育格差など
  3. 自然災害:自然災害が発生する確率が高い(地震、サイクロン、洪水など)

ミャンマーの産業構造

ミャンマーの産業構造を調査します。下の図は2017年から2018年までのミャンマーへのFDI(直接対外投資)における各部門の割合をしめしたグラフです。


出典:Myanmar – What to Watch 2019 | AEC

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • FDIの製造業の占める割合は31%で最も高くミャンマーの経済の主要産業と言える
  • FDIのサービス関連業への割合は低く農業と共に縮小傾向

▶現状

  • 製造業への投資が最も多く、製造業はミャンマー経済をけん引する期待が高い
  • 中国はミャンマー経済に最も多く投資しており、アメリカや日本はミャンマー経済の将来性に期待し投資を増加させている

▶今後

  • 「衣料品産業」と「食品加工産業」が好調で、投資の増加と共に生産を拡大する見通し
  • ミャンマーの「豊富な農産物資源」を効率よく活かすためにテクノロジーの導入が急務の課題となっている

ミャンマー製造業全体

次に、ミャンマーの製造業全体を調査します。下の図は2015年のタイの製造業のGDPにおける各部門の割合を示したグラフです。


出典:Manufacturing Guide 2019 | EUROCHAM MYANMAR

グラフから以下のことが分かります。

  • 産業(製造業含む)のみのGDPは統計開始の2013年から2018年にかけて1.58倍に増加
  • 2017年から2018年において産業(製造業含む)はGDP全体の31.6%を占める(サービス関連業42.2%、農業26.2%)
  • 他のASEAN諸国のGDPにおける製造業の割合は減少する中、ミャンマーではGDPにおける製造業の割合がほぼ一定のまま遷移している

▶現状

  • 「食品加工産業」と「衣料品」の対外需要に支えられ、製造業は2017年から2018年にかけて11%成長
  • 「安価な労働力」と「戦略的な立地」がミャンマー製造業を支えていると言える

▶今後

  • ミャンマー政府はGDPにおける製造業の割合を2013年から2014年の33%から、2030年から2031年にかけて37%に増加させる予定
  • 短期的に重点を置く3つの産業として、1. 労働集約型産業(例:機業、衣料品産業)、2. 一次産品(例:食料品)、3. 従来の製造業(例:繊維産業、縫製業、エレクトロニクス産業)を挙げている
  • 中長期的に重点を置く3つの産業として、1. 自動車部品組み立て産業、2. 先進技術産業(例:先進技術を応用した化学産業)、3. インフラ整備事業(例:道路建設産業)

日本企業の進出状況

ここでは、日本企業の視点からミャンマー製造業市場を調査結果です。下の図は2008年から2020年1月までのミャンマー日本商工業会議所登録企業数の遷移を示したグラフです。ミャンマー日本商工業会議所とは、日本とミャンマー間での商工業及び経済全般の促進及び関係強化を目的に設立された組織です。


データ引用元:ミャンマー日本商工業会議所

グラフから以下の特徴が挙げられます。

  • 2012年から急激に増加し、2020年1月末までで2008年の5倍以上の会員数
  • 工業部会(製造業関連)の会員数は2020年1月までで93社で全体の22.5%を占める

▶現状

  • ミャンマー日本商工会議所によると2019年9月時点で会議所の会員数は401社(うち製造業関連は89社)
  • 2017年時点でミャンマーに進出している日本企業数は438社で第21位

▶今後

  • 自動車部品の手作業を必要とする組み立て作業をミャンマーで行う企業が増加する見込み
  • 縫製業などの労働集約型の産業がミャンマーで工場を建設し生産を行うケースが増加する見通し

ミャンマーに進出した日本企業

次に、実際にミャンマーに進出した日本企業を3社紹介します。

株式会社トーノ精密

▶基本情報

  • 本社:岩手県遠野市
  • 従業員数:68名
  • 事業内容:プラスチック製品、MIM製品、TRI製品

▶概要

2019年12月ミャンマー最大都市のヤンゴン近郊のティラワ経済特区に工場を竣工。樹脂成型部品メーカーとしては初めてティラワに生産拠点を構え、海外調達に頼らざるを得なかった現地日系企業をターゲットとして、ティラワ工業団地内の日系企業向けに部品を供給している。

旭日電気工業

▶基本情報

  • 本社:東京都世田谷区
  • 従業員数:205人
  • 事業内容:電気工事、電気通信工事

▶概要

2019年9月ミャンマー最大都市ヤンゴンに支店を開設し、不動産賃貸業を開始。旭日電気工業は経済成長が進むミャンマーへの進出を考え、2017年から駐在員を派遣し調査を行ってきた。短期的には同国の日本人駐在員に対する賃貸を主事業とし、中長期的には内装や設備工事などの事業を開始する予定。

不二熱学工業株式会社

▶基本情報

  • 本社:大阪府中央区南船場
  • 従業員数:236人
  • 事業内容:空調・給排水衛生・低温設備などの設計・保守管理

▶概要

2013年身近な東南アジア諸国の中でも親日的なミャンマーに進出。同国において日系企業を対象に、空調、衛生、冷凍冷蔵や関連付帯業務などに係る技術を提供。また現地の企業に対し、技術を提供し環境保全に貢献。事業展開以外にも社会貢献の一環として、2014年アジアカップに参加するミャンマー女子サッカーチームに寄付。

まとめ

今回はミャンマー製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。個人的な見解としては、ミャンマーの製造業は現在成長の過程にあり、今後は他のASEAN諸国と同様にハイテク産業への転換が進んでいくと思います。同時に農業や縫製業などの労働集約型の産業もGDPの大きな割合を占めていることもミャンマー経済の大きな特徴の一つと言えます。

また、ミャンマーに進出を考える日本企業の数は増加しており、今回紹介した3社の様に高い技術力と現地日本企業のネットワークを利用すれば進出のチャンスはあると言えます。

今回の内容がミャンマーに進出に関心のある方の参考になれば幸いです。次回はASEAN製造業シリーズ第6回目としてカンボジアの製造業について紹介する予定です。

2020年の製造業「タイ」

テクノポートの稲垣です。前回の記事ではASEANのハイテク産業の拠点である「マレーシアの製造業」について紹介しました。今回はASEAN諸国の中でもマレーシアに次ぐGDP増加率(4.1%)で成長するタイの製造業について紹介します。(出典:ASEAN Key Figures 2019

タイの製造業はシンガポールやマレーシアとは異なり、組み立て・製造業務が中心で、近年は研究・技術開発を推進する風潮があります。今回はタイの製造業の主要産業である自動車産業エレクトロニクス産業バイオプラスチック産業の現状と今後について掘り下げていきます。

基本情報

タイの概要

  • 正式名称:タイ王国(KIngdom of Thailand)
  • 首都:バンコク(Bangkok)
  • 首相:プラユット・ジャンオーチャー(2014年8月から)
  • 通貨:バーツ(1バーツ=3.50円 ※2020年2月3日時点)
  • 人口:約6828万人
  • 面積:51万km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:タイ語
  • 宗教:仏教(95%)イスラム教(3.8%)キリスト教(0.5%)ヒンドゥー教(0.1%)その他(0.6%)
  • 平均寿命:男 71.7歳、女 78.3歳

タイ経済の特徴

強み

  1. 地域経済の拠点:東南アジアをはじめ、グローバルな貿易な拠点としての地位
  2. 輸出産業:好調な貿易関連業と豊富な外貨準備高(直ちに利用可能な対外資産のこと)
  3. 豊富な原材料:天然ゴム、米、サトウキビをはじめとする豊富な原材料

弱み

  1. インフラ整備不足:都市部は開発が進んでいるが、農村部ではインフラ整備が進んでいない
  2. 政治的不安定性:低所得者層の支持の支持を集める親軍派と、中間層・上位層支持を集める反軍派の対立による政治的混乱

タイのGDPの変化

タイの製造業の変化をGDPのデータを用いて調査します。GDPとは国内総生産(Gross Domestic Production)の略で一定期間に国内で生み出された付加価値の総額を指します。

まず、タイ全体のGDPの変化を確認します。下の図は1960年から2018年までのタイのGDPと年成長率を示したグラフになります。


データ引用元:GDP growth (annual %) – Thailand | Data – World Bank Data

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 1998年以降GDPは右肩上がりに増加を続ける
  • GDPの年成長率は1997年~1998年でマイナスに落ちこむが、その後は回復しプラスを維持している
  • GDPの年成長率は、ここ4年では2.5%~5%の範囲で安定している

タイのGDPの現状

  • タイのGDPは世界26位(対象国196カ国)
  • タイ国民一人当たりのGDPは世界84位(対象国196カ国)
  • タイは東南アジアでインドネシアに次ぐ2番目の経済大国

タイのGDPの今後

  • 2019年~2020年のGDPの年成長率は2.8%という予想
  • 米中の貿易摩擦により輸出をはじめとする対外部門に悪影響が生じる可能性が高い
  • 民間消費の増加と公共インフラ整備の実施が2020年のタイ経済に好影響を与える予想

タイの産業構造

次に、タイの産業構造を調査します。下の図は2011年から2017年までのタイの総GDPにおける各部門(上からサービスサービス業、製造業、農業)の割合をしめしたグラフです。


出典:International Monetary Fund

グラフからタイの産業構造について次のような特徴が挙げられます。

  • 製造業と農業の割合が減少傾向で、それぞれ2011年から2017年にかけて3%ほど減少
  • サービス業は統計開始の2011年から上昇傾向で、2011年から2017年にかけて5%ほど増加

タイの産業構造の現状

  • 2016年にタイ政府はタイランド4.0(Thailand 4.0)政策を宣言し、ハイテク産業やサービスに投資を集中させる意向
  • 製造業と(サービス業の中でも)観光業がタイのGDPの増加に大きく貢献している
  • 観光業はタイのGDPの約10%を占め、観光業による収益はタイの輸出利益総額の50%とほぼ等しい計算

タイの産業構造の今後

  • 国の公式計画(2017年~2036年)によると、タイ政府はビジネス環境を改善し、鉄道、空港、道路、インフラ整備を通して長期的な経済の繁栄を目標にしている
  • タイの主要産業であった食品・飲料の生産は減少し、代わりに製造業の拠点として外貨を稼ぐ方針

タイの製造業

タイの製造業全体

ここでは、タイの製造業全体における変化をデータを通して調査します。下の図は2015年のタイの製造業のGDPにおける各部門の割合を示したグラフです。


出典:HONG KONG MEANS BUSINESS

グラフから以下のことが分かります。

  • GDPを占める割合が多い順に、 食品・飲料産業(23%)エレクトロニクス産業(13%)化学産業(9%)自動車産業(7%)ゴム・プラスティック産業(7%)加工・機械設備産業(6%)石油関連産業(6%)繊維・衣服産業(5%)家具産業(5%)その他(19%)

続いて、下の図は2018年のタイの輸出上位10品目を整理した表です。


出典:THAILAND INVESTMENT REVIEW Vol. 29 | No.2 | February 2019

表から以下のことが分かります。

  • 車部品関係の輸出が最も多く、成長率も最大
  • 輸出品目に大きな偏りがなく、多様な分野に渡って輸出が活発

タイの製造業全体の現状

  • 東南アジアの自動車組み立て拠点の中心的存在
  • 鉄鋼業の生産も盛ん(タングステンの生産量世界2位、錫(すず)の生産量世界3位)
  • 世界2番目のコンピューターパーツの輸出額

タイの製造業の今後

  • 専門家の予想によると製造業全体の出荷額は2.0%増加する見通し(2021年は3.4%の増加予想)
  • タイランド4.0(Thailand 4.0)計画をはじめとするハイテク産業、製造業の自動化に向かう動きが活発

自動車産業

タイの主要産業の一つである自動車産業の現状と今後をデータを用いて掘り下げていきます。下の図は2009年から2016年におけるタイの自動車生産台数の遷移を示したグラフです。


出典:THAILAND’S AUTOMOTIVE INDUSTRY THE NEXT-GENERATION | Thailand Board of Investment

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 2009年から2016年にかけて年平均9.93%成長率で増加
  • 2012年、2013年が製造のピークで近年は緩やかに回復傾向

次に下の図は2009年から2016年におけるタイの自動車生産台数と付加価値額の推移を示したグラフです。


出典:THAILAND’S AUTOMOTIVE INDUSTRY THE NEXT-GENERATION | Thailand Board of Investment

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 2016年の自動車生産台数の57%は1トントラックが占める
  • タイの自動車輸出台数は2009年から2016年にかけ2.2倍に成長
  • タイの自動車輸出でもたらされる付加価値の総額は2009年から2016年にかけ2.5倍に成長

自動車産業の現状

  • タイの自動車関連産業は東南アジアで最大、世界第12位の規模(2017年)
  • タイで製造される自動車のほとんどは外国企業、特に日本、アメリカ、中国の多種多様なブランドが混在

自動車産業の今後

  • 自動車の生産台数は2019年で2~4%減少し、2020年から2022年にかけて同じようなペースで減少する見通し
  • 自動車関連の輸出は2019年で5~7%減少するが、2020年から2022年にかけて国内の需要と新型モデルの発売に後押しされ回復する見通し
  • 電気自動車の生産台数は2018年(9000台)と比較し、2028年では45倍、2036年には133倍になる予想

エレクトロニクス産業

以前に紹介したシンガポール、マレーシア同様にタイにおいてもエレクトロニクス産業は盛んです。それでは、タイのエレクトロニクス産業の特徴を調べていきましょう。下の図は1989年から2015年にかけてのタイのエレクトロニクス産業関連製品の輸入額と輸出額の遷移を示したグラフです。(縦軸はUS$ billion)


出典:Electrical and electronics manufacturing in Thailand | International Labour Organization

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 輸入額は1989年から2015年にかけて約12倍に増加し、年平均27.5億US$のペースで増加傾向
  • 輸出額は1989年から2015年にかけて約17倍に増加し、年平均31.2億US$のペースで増加傾向

続いて下の図は2013年から2016年にかけてタイのHDDディスクドライバーの輸出量の変化を示したグラフです。


出典:THAILAND’S SMART ELECTRONICS | Thailand Board of Investment

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 2013年から2016年にかけて2.17倍に増加(年平均31.5%の成長率で増加)
  • 付加価値に換算すると2013年から2016年にかけて2.27倍に増加

エレクトロニクス産業の現状

  • 近隣諸国(マレーシア、シンガポール、ベトナムなど)が価格競争に参入し、熟練した技術を持つ労働力の不足、労働環境の悪化、労働者の発言力の低下が問題になっている
  • タイのエレクトロニクス産業の中心は組立てと製造業務で、付加価値の高い分野は少ない

エレクトロニクス産業の今後

  • エレクトロニクス産業が生み出す利益は2020年から2024年にかけて年平均成長率2.7%の割合で増加する見通し
  • 国内のエレクトロニクス産業市場は2018年に減少したが、2019年から2020年にかけてタイ経済の回復と同時に緩やかに増加する見通し

バイオプラスチック産業

最後に近年タイで急速な成長を遂げているバイオプラスチック産業について調査していきます。バイオプラスチックとは原料として植物などの再生可能な有機資源を使用することにより、枯渇が危惧され地球温暖化の一因ともされている石油にできるだけ頼らずに持続的に作ることができることから近年注目されている新しいプラスチック素材です。(出典:日本バイオプラスチック協会)下の図は2016年から2019年にかけてのタイにおけるバイオプラスチックレジンの生産量を示したグラフです。


出典:BIOPLASTICS | Thailand Board of Investment

グラフと参考資料より以下のようなことが挙げられます。

  • 輸出量は2016年から2019年にかけて107倍に増加
  • タイのバイオプラスチックレジンの輸出量は2007年には圏外だったが、2019年に世界第3位まで急成長

バイオプラスチック産業の現状

  • タイ政府はバイオプラスチックの研究開発を行うタイ国内と外国企業に対し支援を行い、生産を強化している
  • タイはバイオ関連産業に必要な原材料が豊富なうえ、製品を輸出するための地理的な優位性がある

バイオプラスチック産業の今後

  • タイ政府はバイオプラスチックを使用した梱包を推進するため、2019年から2021年にかけ免税政策を実施
  • タイのプラスチック廃棄管理規定のロードマップ(2018年から2030年)によると2020年までに再利用不可能またはポリスチレンを使用したプラスチックは梱包としての使用が禁止される見通し

まとめ

今回はタイの製造業の現状と今後について主要産業を中心に紹介しました。タイの製造業は他のASEAN諸国と同じようにGDPにおける製造業の割合は減少しているもののハイテク化、自動化の動きが盛んであることが分かります。

また多様な輸出品目をバランスよく有しているため、タイの製造業は今後も世界の貿易拠点の中心的な存在として活躍することが予想できます。今回の内容がタイの進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「マレーシア」

テクノポートの稲垣です。前回の記事ではASEAN地域の中でいち早く先進国の仲間入りを果たした「シンガポールの製造業」について紹介しました。今回はそのシンガポールとほぼ同じGDPの成長率(2000年から2018年)で急速に発展を遂げているマレーシアの製造業について紹介します。(出典:ASEAN Key FIgures 2019

マレーシアのGDPの37.5%は製造業関連で、製造業は主要産業として経済成長に大きな役割を果たしています。今回はマレーシアの製造業の主要産業であるエレクトロニクス産業石油化学産業家具産業について掘り下げていきます。

基本情報

マレーシアの概要

  • 正式名称:マレーシア
  • 首都:クアラルンプール(Kuala Lumpur)
  • 首相:マハティール・ビン・モハマッド(2018年5月から)
  • 通貨:リンギット(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)
  • 人口:約3200万人
  • 面積:33万km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:マレー語、中国語、タミル語、英語
  • 公式宗教:イスラム教(61%)仏教(20%)キリスト教(9%)ヒンドゥー教(6.0%)儒教・道教(1.0%)
  • 平均寿命:男 72.7歳、女 77.6歳

マレーシアのGDPの変化

基本的な情報としてマレーシア経済をGDPの変化を通して調査します。GDPとは国内総生産(Gross Domestic Production)の略で一定期間に国内で生み出された付加価値の総額を指します。

まず、マレーシア全体のGDPの変化を確認します。下の図は2010年から2017年までのマレーシアの総GDPとGDPの年平均率を示したグラフになります。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)

データ引用元:eDataBank – Department of Statistics Malaysia Official Portal

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 基準年の2010年から一貫して増加傾向が続く
  • 成長率は4%から10%の辺りを上下している

マレーシアのGDPの現状

  • 2018年のGDPは世界37位(196カ国中)を記録
  • 2018年の一人当たりのGDPは66位(196カ国中)を記録

マレーシアのGDPの今後

  • 経済の専門家によると、2020年のマレーシアの経済成長は4.3%になる見通し
  • 2020年の経済成長は停滞する見通し(米中貿易摩擦が対外部門に影響)
  • 民間消費は輸出部門の衰弱によって減速する見通し

マレーシアの産業構造

次に、マレーシアの産業構造を調査します。下の図は2018年のマレーシアの総GDPにおける各部門(上からサービス関連産業、製造業、建設産業、鉱業・採石業、農業)の割合をしめした円グラフです。

出典:Malaysia Economic Performance Second Quarter 2018

グラフからマレーシアの産業構造について次のような特徴が挙げられます。

  • 製造業はGDPの23.6%を占め、4.9%の増加率を記録
  • サービス関連業がGDPの55.3%を占め、マレーシアの主要産業と言える
  • 鉱業・採石業と農業はGDPの10%以下で減少傾向

マレーシアの産業構造の現状

  • 消費者の高所得化により卸売業・小売業部門の成長が進んでいる
  • サービス関連業のビジネスサービスは専門サービスによって大きく成長している
  • 製造業は電気機器・光学製品部門に支えられ緩やかに成長している

マレーシアの産業構造の今後

  • 2020年には5466の開発プロジェクトが企画されており、5億6000万リンギット(約150億円)がマレーシアの経済成長と長期的な発展のために投資される予定
  • 今後10年間において、政府は新しい経済領域を開拓し高給な職を創出するとともにマレーシア経済を加速させる予定

マレーシアの製造業

マレーシアの製造業全体

ここでは、マレーシアの製造業全体における変化をデータを通して調査します。下の図は2010年から2017年までのマレーシア製造業のGDPとGDPの年成長率を示したグラフです。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)


データ引用元:eDataBank – Department of Statistics Malaysia Official Portal

グラフから読み取れることとして以下のようなことが挙げられます。

  • 製造業のGDPは基準年の2010年から一貫して増加傾向が続く
  • 成長率は年によって約4%から11%の間で大きく変動

次に、下に示す図は2010年から2017年までにおけるマレーシアの総GDPにおける製造業の割合を示したグラフです。


データ引用元:eDataBank – Department of Statistics Malaysia Official Portal

グラフから以下のようなことが挙げられます。

  • 総GDPにおける製造業が占める割合は年々減少
  • 基準年の2010年から2017年で約1.2%減少

マレーシア製造業全体の現状

  • 2017年6月時点のマレーシア製造業の主要分野はエレクトロニクス産業(27.6%)、石油・科学・ゴム・プラスティック産業(24.0%)、木材・家具・紙製品・印刷産業(22.4%)
  • マレーシア製造業が直面している問題として、研究・開発のための資金不足が挙げられる

マレーシア製造業全体の今後

  • 製造業分野においては製造効率化、製品の多様化・複雑化に焦点が当てられる予想
  • 今後成長が期待される航空・宇宙産業、医療機器、エレクトロニクス産業、機械加工・機械装置、化学産業の強化が見込まれる

エレクトロニクス産業

前回シンガポールの主要産業の一つとして紹介したエレクトロニクス産業は、マレーシア製造業においても主要産業の役割を果たしています。下の図は2016年と2017年のマレーシアのエレクトロニクス産業の指標(上から輸出額、輸入額、純輸出、付加価値(基準価格)、労働生産性(製造業全体)、労働生産性(エレクトロニクス産業)、労働者数)を示した表です。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)

出典:A Study on Productivity and Contribution of the … – WayUp.my

表から読み取れることとして以下のようなことが挙げられます。

  • 総貿易額は統計開始の2012年から2020年(予想)までほぼ一定の傾きで増加
  • 輸出は年を重ねるごとに傾きが増加するのに対して、輸入は減少傾向に転じる見通しが立てられている(国内製造設備の強化により)

エレクトロニクス産業の現状

  • マレーシアは現在、世界14位の天然ガス埋蔵量、世界23位の原油を有している
  • マレーシアは一つの区域内で2300万メートルトンの製造設備を有しており、世界で最も大きな液化天然ガスの製造設備と言われている
  • 日本の大手石油化学企業の一つである出光興産は環境にやさしいシンダイオタクティックポリスチレン(SPS)の製造に4億リンギットを投資した

エレクトロニクス産業の今後

  • マレーシアは現在東南アジアで石油化学産業が盛んなインドネシア、タイに代わって2020までに生産設備容量の面で主導的な立ち位置になる見通し
  • マレーシア政府は統合型石油化学産業区域を作り、生産から貿易までを限られた区域で効率的に計画を立てている

石油化学産業

次にマレーシア製造業のGDPの24.0%を占める石油化学産業の現状と今後について調査します。下の図は2012年から2020年(予想)までのマレーシア石油化学製品の貿易収支を示したグラフです。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)

出典:malaysia petrochemical country report 2018 – Malaysian …

グラフから以下のようなことが挙げられます。

  • 総貿易額は統計開始の2012年から2020年(予想)までほぼ一定の傾きで増加
  • 輸出は念を重ねるごとに傾きが増加するのに対して、輸入は減少傾向に転じる見通しが立てられている(国内製造設備の強化により)

石油化学産業の現状

  • マレーシアは現在、世界14位の天然ガス埋蔵量、世界23位の原油を有している
  • マレーシアは一つの区域内で2300万メートルトンの製造設備を有しており、世界で最も大きな液化天然ガスの製造設備と言われている
  • 日本の大手石油化学企業の一つである出光興産は環境にやさしいシンダイオタクティックポリスチレン(SPS)の製造に4億リンギットを投資した

石油化学産業の今後

  • マレーシアは現在東南アジアで石油化学産業が盛んなインドネシア、タイに代わって2020までに生産設備容量の面で主導的な立ち位置になる見通し
  • マレーシア政府は統合型石油化学産業区域を作り、生産から貿易までを限られた区域で効率的に計画を立てている

家具産業

マレーシアは豊富な森林資源を活かした木材関連産業が盛んです。先ほども紹介したようにマレーシア製造業の22.4%は木材・家具・紙製品・印刷産業が占めています。その中でも家具産業の現状と今後について調査します。下の図は1986年から2015年までの家具の輸出額と年成長率を示したグラフになります。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)


データ引用元:the malaysian furniture industry – Universiti Putra Malaysia

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 輸出額は統計開始の1986年から2008年にかけて増加傾向
  • 年成長率は2009年以降0%付近で上下し停滞傾向

また、下の図は1989年から2015年までの家具の輸入額と年成長率を示したグラフになります。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)

データ引用元:the malaysian furniture industry – Universiti Putra Malaysia

こちらもグラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 輸出額は2000年から2005年辺りにかけて急激に増加、その後は2010年以降でも増加傾向
  • 年成長率は2009年で大きく減少したが、その後は増加傾向に転じる

マレーシア家具産業の現状

  • マレーシアは世界で南洋材と木材製品の輸出を行っている国の上位10位以内に入る
  • マレーシア国内で生産する(家具を含めた)木材製品の80%以上を輸出している

マレーシア家具産業の今後

  • 国が定める木材産業規定によると、家具産業は2020年に120億リンギット(約3200億円)の輸出額を達成する目標を掲げている
  • マレーシア政府は単純な汎用製品の製造に加えて、デザイン性を兼ね備えたクリエィティブな製品設計に力を入れている

まとめ

今回はマレーシアの製造業の現状と今後について主要産業を中心に紹介しました。マレーシアをはじめ東南アジア各国はGDPにおける製造業の割合は年々減少しています。しかし、マレーシアの製造業自体のGDPは増加を続けています。

そしてマレーシアが保有する天然資源の埋蔵量、製造拠点の立地、豊富な労働資源などを考慮すると、今後もその傾向は続くと予想されます。今回の内容がマレーシアへの進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「シンガポール」

テクノポートの稲垣です。前回の記事では製造業の拠点候補として近年注目を集める「ASEAN(東南アジア諸国連合)」について紹介しました。今回はそのASEAN地域の中でいち早く先進国の仲間入りを果たしたシンガポールについて紹介します。

結論から申し上げますと、シンガポールのGDPにおける製造業の割合は縮小傾向にあり、主要産業はサービス関連業にシフトしています。(出典:ASEAN Key FIgures 2019

しかし、製造業は依然としてGDPの22%を占め、中でもエレクトロニクス産業、精密工業産業、医療・バイオテクノロジー産業、航空・宇宙産業は世界でもリーダー的なポジションにあります。それではシンガポールの製造業についての現状と今後を掘り下げていきます。

シンガポールの概要

  • 正式名称:シンガポール共和国(Republic of Singapore)
  • 首都:シンガポール
  • 首相:リー・シェンロン(2004年8月から)
  • 大統領:ハリマ・ヤコブ(2017年9月から)
  • 通貨:シンガポールドル(1シンガポールドル=81.76円 ※2020年1月20日時点)
  • 人口:約570万人 面積:724.2km2(参考:東京23区 619km2)
  • 公用語:中国語、マレー語、タミル語、英語
  • 公式宗教:なし(仏教・道教 43.2%、キリスト教 18.8%、イスラム教 14.0%、ヒンドゥー教 5.0%、無宗教 18.5%)
  • 平均寿命:男 80.7歳、女 85.2歳

参照

  1. STATISTICS SINGAPORE
  2. シンガポール基礎データ|外務省
  3. Singapore | Facts, Geography, History, & Points of … – Britannica

シンガポールのGDPの変化

シンガポールの製造業の変化をGDPのデータを用いて調査します。GDPとは国内総生産(Gross Domestic Production)の略で一定期間に国内で生み出された付加価値の総額を指します。

まず、シンガポール全体のGDPの変化を確認します。下の図は2010年から2018年までのシンガポールのGDPを示したグラフになります。

出典:Gross Domestic Product Dashboard – Statistics Singapore

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • シンガポールのGDPは右肩上がりに増加しており、今後も上昇傾向が予想される
  • 2018年のGDPは前年のそれに比較して3.1%増加している

シンガポールのGDPに関する補足情報(出典:What makes the Singapore economy tick?)として以下のような数字が挙げられます。

  • シンガポールのGDPは現在の市場価値で4兆912億ドルで世界35位
  • 2018年の一人当たりのGDPは6万4579ドルで世界9位

シンガポールの産業構造

次にシンガポールの現在の産業構造を調査します。下の円グラフは2018年のシンガポールにおける各部門の名目付加価値額の割合を示したグラフです。名目付加価値額(Nominal Value Added)とは対象年度内において生産された付加価値の大きさを示す指標です。

出典:Gross Domestic Product Dashboard – Statistics Singapore

グラフから以下のことが読み取れます。

  • 約25%を製造業関連(製造業、建設業、電気・ガス・水道サービス)
  • 70%近くがサービス関連業からなる(卸売り・小売業、輸送・保管、宿泊・飲食サービス、情報・コミュニケーション、金融・保険、ビジネス関連サービス、その他サービス関連)

補足情報して(出典:What makes the Singapore economy tick?)として、シンガポールの産業構造は以下のような特徴が挙げられます。

  • 金融関連業GDPは安定して増加している(企業優先の環境と政治的な安定が理由)
  • 近年特に成長しているのは、医療技術、航空・宇宙産業、クリーンエネルギー、ヘルスケア産業

シンガポールの製造業

シンガポールの製造業全体

ここでは、シンガポールの製造業全体における変化をデータを通して調査します。下の図は1983年から2018年までのシンガポールの製造業における工業生産指数(基準年:2015年)の変化を示したグラフです。工業生産指数とは国内での製造業関連の生産量を基準念を100として指標化したものを指します。

データ引用元: Singapore Department of Statistics

グラフから読み取れることとして以下のような事が挙げられます。

  • 統計を開始した1983年から2007年頃までは右肩上がりに上昇
  • 2007年頃から2009年にかけて一時的に下降
  • 2011年から2018年に至るまでは上昇傾向が継続

以上のようなデータに加え、シンガポールの製造業は、インダストリー4.0を軸に国際的な製造業の拠点として地位を確立しつつあります。下の図はシンガポール政府が推進するスマートインダストリー準備指標の概念図になります。スマートインダストリー準備指標とは工業の自動化・デジタル化の準備の完成度合いを評価する指標です。

出典:Economic Development Board

スマートインダストリー準備指標は工程(Process)、Technology(技術)、Organization(組織)の3本の基本構成要素の下に、8つの柱があります。そして8つの柱が16の区分によって評価される仕組みになります。シンガポール政府は上記のスマートインダストリー準備指標を用いて、インダストリー4.0を実行する準備を国を挙げて包括的に行っています。

また、補足情報(出典:Singapore Top Industry Sectors & Key Activities | EDB)としてシンガポールの製造業全体にいて以下のような特徴が挙げられます。

  • 世界で製造される医薬品トップ10の内5つはシンガポールで生産されている
  • シンガポールのエネルギーと化学の複合集積地帯(ジュロング島:Jurong Island)では世界で5番目に大きな精油の製造をおこなっており、化学工業関連の輸出量は世界トップ10

エレクトロニクス産業

シンガポールの主要産業の一つであるエレクトロニクス産業の現状と今後について見ていきます。下の図は1983年から2018年までのシンガポール国内におけるエレクトロニクス産業の工業生産指数を示したグラフです。

データ引用元: Singapore Department of Statistics

グラフから読み取れることとして以下のようなことが挙げられます。

  • 1998年から2005年までの間、停滞が続くがその後は安定して上昇
  • 2018年では過去最高の工業生産指数125.282を記録

シンガポールのエレクトロニクス産業の現状について、以下のような特徴が挙げられます。

  • 主要な分野は半導体、商用電気機器、情報技術など
  • 2900以上の会社がエレクトロニクス産業に関わっている
  • 幅広いエレクトロニクス産業のバリューチェーンを有しており、研究、開発、設計、製造、流通までサービスを提供している
  • シンガポールのエレクトロニクス産業は900億シンガポールドルのGDPを記録し、製造業全体の1/4以上を占める(2017年)
  • シンガポールは1兆80億シンガポールドル以上の半導体、電気集積回路の輸出を行っており、世界全体の10%を占めている

シンガポールのエレクトロニクス産業の今後について以下のような見通しがされています。

  • シンガポール政府はエレクトロニクス分野のGDPを220億シンガポールドル成長させることを目的として、2020年までに2000以上の新しい職を提供する予定

参照

  1. Electronics Industry in Singapore | EDB
  2. Electronics | Industry Profile | Enterprise Singapore

精密工学産業

次にシンガポールの精密工業産業の現状と今後について調査します。下の図は1996年から2018年までのシンガポール国内における精密工業産業の工業生産指数を示したグラフです。

データ引用元: Singapore Department of Statistics

グラフから読み取れることとして以下のようなことが挙げられます。

  • 2011年から2016年まで停滞が続いたが、2017年で大きく上昇
  • 2018年では過去最高の工業生産指数164.146を記録

シンガポールの精密工業産業の現状について、以下のような特徴が挙げられます。

  • 世界の半導体産業で使用されるワイヤボンダの70%をシンガポールで生産
  • 世界中の冷凍コンプレッサーの10%はシンガポールで生産
  • 世界中の補聴器の30%はシンガポールで生産

そしてシンガポールの精密工業産業の今後について以下のような見通しがされています。

  • ここ数年で自動化による生産効率の改善が盛んになっている
  • 2020年までに140億シンガポールドルの経済的な付加価値と3,000以上の新たな職を作り出すとされている
  • 半導体装置(年平均成長率:7%)、試験測定装置(年平均成長率:9%)、3D造形(年平均成長率:30%)、ロボティクス(年平均成長率:11%)、センサー(年平均成長率:10%)、レーザー・光学機器(年平均成長率:8%)、先進材料(年平均成長率:4.9%)で成長が期待される

参照

  1. Precision Engineering | Industry Profile | Enterprise Singapore
  2. Precision Engineering | EDB
  3. Update on the Precision Engineering Industry Transformation Map (PE ITM)

医薬品・バイオテクノロジー産業

最後にシンガポールで現在急成長産業の一つである医薬品・バイオテクノロジー産業の現状と今後について調査します。下の図は1992年から2018年までのシンガポール国内における医薬品・バイオテクノロジー産業の工業生産指数を示したグラフです。

データ引用元: Singapore Department of Statistics

シンガポールの医薬品・バイオテクノロジー産業の現状について、以下のような特徴が挙げられます。

  • GDP全体の約3%を占める
  • 医薬品製造で160億シンガポールドルの利益を上げ、2000年のそれから3倍以上に成長(2017年)
  • 30を超える医薬品関連のトップ企業が新しい研究開発・製造の拠点としてシンガポールを選んでいる
  • シンガポール政府は医薬品関連企業を援助するための土地開発、インフラ整備にも力を入れている
  • 大学から有望な人材を雇用するために、実地訓練と学問を同時進行で推進する教育システムがある

そしてシンガポールの医薬品・バイオテクノロジー産業の今後について以下のような見通しと計画がされています。

  • 国内の医薬品関連の市場規模は2020年に16億シンガポールドル規模になる見通し(2017年:12.8億シンガポールドル)
  • 研究開発施設に加え商品管理・運用までをシンガポール国内で行える施設を増やす運動が加速する見込み
  • 2020年の研究イノベーション事業計画(出典:RIE2020 Plan)によると190億シンガポールドルが国内のイノベーション産業の強化のために投資される

参照

  1. Overview of the Singapore PharmBio Sector
  2. Singapore – A Strong & Growing Healthcare Industry
  3. RIE2020 Plan – National Research Foundation

まとめ

今回はシンガポールの製造業の現状と今後について主要産業を中心に紹介しました。全体を通して言えることは、シンガポールの製造業は自動化による生産効率改善の動きが盛んであることです。それを可能にしているのは、国を挙げたイノベーション産業への投資と、教育機関と連携して優秀な人材を輩出する努力の賜物であると感じました。

個人的には、今後シンガポールの製造業は付加価値の高い産業だけが残り、単純な部品製造拠点は減少していくと思います。今回の内容が、シンガポールへの進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

2020年の製造業「ASEAN」

テクノポートの稲垣です。現在、多くの日本企業が東南アジアへ進出しています。東南アジアの中でもとりわけ注目されているのがASEAN(東南アジア諸国連合)地域です。

2016年の調査によるとASEAN地域に進出している日本企業の数は11,328社(出典:帝国データバンク)であるとされています。この数字からも分かるように、ASEANは日本と同じアジア地域として注目度を高めており、今後もこの傾向は続くことが予想されます。そこで、今回はASEANの製造業をテーマに現状と今後を掘り下げてみたいと思います。

ASEANの基本情報

ASEAN設立の歴史

現在、世界には多くの地域統合組織があります。その中でも、比較的長い歴史を有しているのが今回紹介する「ASEAN(Association of South-East Asian Nations)」です。

1960年代初めに、ASEANの前身となる「東南アジア連合」がマレーシア、タイ、フィリピンによって設立されました。東南アジア連合設立の背景には、当時の東南アジア諸国のほとんどが独立したての新しい国であったことが影響しています。

東南アジア連合の設立に次いで、1963年にマラヤ(Malaya)、フィリピン(Philippins)、インドネシア(Indonesia)の頭文字を組み合わせた「マフィリンド(Maphilindo)」が設立されました。

そして、現在のASEANは1967年8月の「ASEAN設立宣言」に基づき設立されました。ASEAN設立の目的は大きく以下の7つに集約されます。(出典:About ASEAN

  1. 経済成長、社会的・文化的発展の加速
  2. 平和、安定の促進
  3. 協力、相互支援の促進
  4. 貿易、研究機関の相互補助
  5. 農業、貿易効率化のための支援
  6. 東南アジアの研究の促進
  7. 緊密かつ有益な協力関係の維持

ASEAN加盟国

現在の加盟国は10カ国(タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジア)です。

出典:ASEAN情報マップ

ASEANの製造業

製造業全体のGDPの変化

ここでは、ASEANの製造業全体の変化をGDPのデータを用いて調査します。GDPとは国内総生産(Gross Domestic Production)の略で一定期間に国内で生み出された付加価値の総額を指します。まず、ASEAN全体のGDPの遷移を確認します。下の図は2000年から2018年までのASEANのGDPと一人当たりのGDPを示したグラフになります。

出典:ASEAN Key FIgures 2019

グラフから分かるように、ASEANのGDPは年々増加しており上昇傾向であることが読み取れます。具体的には、2018年のGDPは2000年のそれと比較すると5倍以上に成長しています。加えて、一人当たりのGDPは2000年の1195ドルから4倍近くの4601ドルまで成長していることが分かります。次に下の図は、ASEANの総GDPにおける3つの主要産業(農業、製造業、サービス関連業)が占める割合の遷移を示したグラフです。

出典:ASEAN Key FIgures 2019

棒グラフの中層にある製造業の割合に注目すると、年々製造業が占める割合は減少していることが分かります。具体的には、2018年の製造業(製造、電気、ガス、水道、鉱業、採掘業)が占める割合は2005年から3.1%減少しています。一方で、サービス関連業(貿易、政治関連事業、通信、情報、交通、金融、経済活動)は年々拡大していることが分かります。以上2つのデータより、ASEANにおける製造業のGDPの遷移を表したものが下のグラフになります。

データ引用元:ASEANStatsDataPortal

先にも述べたように、GDPにおける製造業の割合は年々減少していますが製造業自体のGDPは年々増加していることがこのグラフから読み取れます。

製造業のGDPが増加している2つの要因

ASEANにおける製造業のGDPが増加している要因は大きく2つ考えられます。1つ目はASEAN域内で6億4千万にのぼる消費者の存在です。下の図は1990年から2018年までのASEANの人口と人口増加率を示したグラフです。

出典:ASEAN Key FIgures 2019

ASEAN域内での人口増加率は減少傾向にあるものの、人口は増え続けていることが分かります。また、消費者の数が増加するに従い高所得者の数も増加し、より高価な商品・サービスを求める傾向が増加していることも製造業の発展に貢献していると言えます。2つ目はASEANの安価な労働力が世界中から注目を集めていることです。

世界の製造業の生産拠点として飛躍的な発展を遂げた中国はここ最近、労働賃金の値上げに加え、規制を強化し始めています。よって各国の製造業企業は中国の代替となる生産拠点を探しています。生産拠点の候補としてASEANは低賃金かつグローバルなネットワークを有しているための世界各国の製造業を地域に引き付けています。

業種別の動向

自動車産業

ASEANでは急速な経済発展に伴い、自動車に対する需要も増加しています。下の図は2005年、2010年、2018年におけるASEAN各国内で登録された自動車台数を示したグラフです。

出典:ASEAN Key FIgures 2019

グラフからASEAN各国において自動車の登録台数が年々増加していることが読み取れます。ASEAN全体の登録自動車台数で整理したものが下のグラフになります。

データ引用元:ASEANStatsDataPortal

これらのデータよりASEANの自動車登録台数は年々増加しており、先にも述べた製造業の発展と同じ理由により、これからも上昇傾向が続くことが予想されます。下の図は、2005年から2016年におけるASEAN主要5カ国(インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム)の自動車生産台数を示したグラフです。

出典:ASEAN情報マップ

2016年におけるASEAN主要5カ国の自動車生産台数は、統計を開始した2005年と比較し2倍近く増加していることが分かります。これらのデータより、ASEAN域内では自動車に対する需要が高まっており、それに従い自動車の生産台数も年々増加していることが分かります。

補足情報(出典:Electrifying times for automotive industry)として、ある調査によると東南アジア地域において

  • 2018年の自動車売上は、2016年から3年連続で6%上昇
  • 2019年の自動車売上台数は、2018年の357万台から427万台に増加

のような予想がされています。また、一部の専門家は中国とアメリカの貿易戦争の影響により、シンガポール、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシアでの販売台数は停滞する見通しであると主張しています。

化学産業

現在、世界の大きな化学工業企業は製造・研究開発の拠点を東南アジアで行っています。World of Chemicals(出典:Rise of the chemical sector)のレポートによると、ASEAN全体の化学工業には以下のような特徴があります。

  • 東南アジアの多くの化学工業工場では自動化とデジタル化が進められ、生産効率の向上が図られている
  • ASEAN諸国の化学工業による環境汚染対策として、先進技術の開発と規制の強化進んでいる

また、それぞれの国別で見ていくと、ASEANの中でも最も成長が著しいシンガポールの化学産業では以下のような特徴が挙げられます。

  • シンガポールはASEANの化学工業の拠点であり、石油化学、特殊化学工業で強みを持つ
  • シンガポールは100を超える先端化学工業企業を有しており、様々な企業が新しい実践的な化学技術の開発に力を入れている

そして、インドネシア、タイ、マレーシアといったASEAN主要国の化学産業には以下のような特徴が挙げられます。

  • インドネシア、マレーシア、タイは安定した市場として化学工業の発展に貢献している
  • マレーシアは世界第2位のパーム油の生産国であり、新しい油脂化学技術の開発に力を入れている
  • タイではバイオプラスティックの開発に注力している
  • インドネシアでは政府の援助不足と産業基盤の未発達により、バイオ化学工業の発達が遅れている

建設用機械産業

ASEAN地域での建設用機械の需要は年々増加しており、世界中の国と地域から企業が参入し競争が激化しています。(出典:ASEAN CONSTRUCTION MACHINERY MARKET

現在、世界中の製造業企業が東南アジアでの操業を考えています。それは先にも述べた、安価な労働力と地域内での需要の増加が主な理由になります。その中でも建設用機械産業は、東南アジア各国でインフラ整備への需要が増加しているため、東南アジアで最も盛んな産業の一つと言えます。

加えて、2019年6月にASEAN内での人、モノ、エネルギーの輸送を強化するためのパイプライン建設プロジェクトを発表し、2019年11月に正式にプロジェクトの合意を発表しました。19のプロジェクトにかかる総額は19億ドルと見積もられており、今後より多くの投資が集まることが予想されます。(出典:Coneecting the region through intitiall pipline of ASEAN infrastructure projects

また、東南アジアでは道路建設用設備の市場がここ数年で大幅に増大しています。その背景には地域内での道路建設の需要が高まっていること、道路建設による物流の改善が求められていることなどが主な理由になります。例えば、ベトナムでは建設業による国の利益が12億ドル(2007年)が128億ドル(2017年)に増加しています。背景には、ベトナムではビルの建設許可が増加したこと、経済の回復、政府の商業・民間建設業に対する援助などの要因が挙げられます。

まとめ

今回は、多くの日本企業が進出し注目度を高めているASEAN地域について紹介しました。ASEANの製造業市場は拡大傾向にあり、個人的な見解として、中国に続く国際的な製造業の拠点として、これから存在感を高めていくだろうと考えています。しかし、ASEAN地域内における製造業のGDP割合は縮小傾向にあり、市場はサービス関連業にシフトしています。

次回はそのシフトを牽引し、ASEAN諸国の中でいち早く先進国となった「シンガポール」について紹介します。今後、ASEAN各国についての詳細記事を随時投稿していく予定ですので、ASEAN地域への進出に少しでも関心のある読者の方に読んでいただければ嬉しく思います。

海外市場調査の方法と5つの分析リスト

テクノポートの稲垣です。海外でビジネスを行う際に必要な行程の一つに、海外市場調査があります。海外市場調査の方法は大きく、国内での情報収集と海外現地への出張調査の2つに分けられます。

今回は海外市場調査の意義からそれぞれの方法のメリット・デメリットと具体的な5つの分析リストを紹介します。

海外市場調査の意義

日本企業が海外進出を行う最大の目的は販路拡大です。そして、販路の拡大を実現するためには、国内同様に市場調査が必要です。海外において市場調査を行う意義は、大きく以下の3つ理由に帰着します。

  • 各国の規格、規制に準じたサービスを提供するため
  • 各国の方針、法規制の変化に迅速に対応するため
  • 事前に損益の度合いをシミュレーションすることで損失リスクを低減させるため

海外市場調査の方法

海外市場調査の方法は大きく以下の2つの方法に分類されます。

  1. 国内での情報収集
  2. 海外現地への出張調査

流れは、1.国内での情報収集を行った上で、2.海外現地への出張調査となります。

国内での情報収集

国内での情報収集はオーソドックスなルートと情報源を使うことが重要になります。以下に国内で取得すべき情報と情報源を表にまとめました。

取得すべき情報 情報源
進出国の基本情報
会計・税務・現地法律問題
  • 会計事務所、法律事務所のHP
  • セミナーに参加
外資規制
進出国マーケット情報
  • 専門家に調査を委託(次項で解説)

国内で情報収集を行う上で重要となるのは、自社でやるべきことと、外部のネットワークを活用するべきことを明確に分けることです。特に自社でやるべきことが明確に決まれば、重点的かつ効率的に調査を進めることができます。

海外現地への出張調査

進出国候補を特定の1国に絞り込んだら、次に現地出張を行います。現地で情報を集める最大の目的は、国内で収集した情報の確認作業となります。つまり、国内での調査がとても重要であることを意味します。現地では現地でしか得られない情報、アポイント先からのヒアリングが中心となります。以下に現地で訪問すべき場所、収集すべき情報を表にまとめました。

訪問すべき場所 収集すべき情報
  • JETRO
  • 最近の日系企業の進出の増加度や業種の傾向
  • 失敗例や撤退
  • 最近の現地政府機関の対応状況
  • 日本企業の進出ロケーション
  • 交通渋滞の状況
  • 日本人居住区とその理由
  • 日本人商工会や日本人会で最近問題になっていること
会計事務所
  • 現地の外資規制、一般的な規則
  • 現地法人設立手続きの概略
  • 関税支払、法人税申告での問題点
  • 移転価格税制の摘発例
  • 個人所得税の申告方法
現地の日本商工会議所
  • 日本企業の意見や改善要望点
  • 日本企業が現地政府に要望している改善事項
  • 現地日本企業の賃上げ交渉状況
工業団地(管理事務所や工場訪問)
  • 電気と水の供給状況
  • 水の供給源(井戸か河川か)
  • 一般工の供給状況
  • 一般工の通勤手段や寮の必要性
  • 諸労務問題(組合の有無、労働争議の実態、当局の対応の様子)
  • 付近の交通渋滞の有無
  • 通関作業の迅速性

進出国の5つの分析リスト

本項では、前項の国内で取得すべき情報(2.1 国内での情報収集)に挙げた進出国マーケット情報について、調査すべき情報を具体的に解説します。進出国マーケット調査で調査すべき項目は以下の5つです。

  • マーケットの規模と成長率
  • 潜在顧客リスト
  • 同業者・競合者調査
  • 仕入先・サプライヤー調査
  • 新規参入障壁

具体的に見ていきましょう。

マーケットの規模と成長率

マーケットの規模と成長率の調査で具体的に取得すべき情報を列挙します。

  • 自社製品が属するマーケットの成長率
  • 自社製品が属するマーケットの現状の市場規模
  • 同じ様な製品の価格帯と売れ行き

マーケット関連の情報は最新の情報を取得することが重要です。なぜなら、マーケットは短期間で大きく変化する可能性があるからです。例えば、アジアのマーケットの変化は思いのほか早く、日本で数年かかった高品質化などが1年ちょっとで進むことも珍しくありません。

潜在顧客リスト

B to Bビジネスの場合は特に、自社の製品を購入してくれる取引先候補のリストを作成しておくことが重要です。日系企業の取引先はもちろん、他国の外資企業や地場企業などもリストアップする必要があります。付加的な情報として、各社が現在どこから部品を調達しているのか、自社部品への切り替えに伴うコストはどうかについてもチェックを行うことが大切です。

同業者・競合者調査

進出先の国の同業者・競合者について具体的に取得すべき情報を列挙します。

  • 自社が進出したい業界の地場有力企業のビジネスの内容
  • 自社が進出したい業界の外資企業や日系企業のビジネスの内容
  • 自社が進出したい業界の特徴
  • 自社が他社に差別化できる要因

個人向け最終財を販売するB to Cビジネスの場合は、現地業界組合について調査しておくことが重要です。なぜなら、自社製品に対するその国特有の基準や観点がある可能性があるためです。例えば、イスラム国におけるハラルなどの宗教的な価値観に起因する禁止事項に触れる可能性があるためです。

仕入先・サプライヤー調査

進出先の国内に自社製品製造のための原材料や部品メーカーの供給があるかどうかは、最も重要な要素の一つです。例えば、原料の供給業者が公社などの政府機関や国営企業である場合には、国の規制や慣行により取り扱いのできる業者が限られる場合があります。

一方で、原材料供給が進出先の国にはなく、輸入となる場合、関税を含めてコストが採算に乗るのかどうかを考慮する必要があります。例えば、賃金が安く、インフラが整い、日本人駐在員の居住環境が良くても、原材料の関税や輸送代金がかさみ、商売が成立しないケースも考えられます。

新規参入障壁

進出先のマーケットに自社が新たに参入する場合、参入障壁は大きく以下の2つが考えられます。

1つ目は、進出先の国内の業界規制です。例えば、外資規制上は会社設立登記が可能でも、業界規制により営業ライセンスが与えられないケースも存在します。この点は専門家等へ調査依頼をする方法もあります。

2つ目は、設備投資に関する条件です。例えば、一定以上の設備投資が必須になるような場合は、進出する際だけではなく、撤退する際の障壁にもなり得ます。

上記2つ以外にも、現地での販売ルートの確立が難しいケースも存在します。解決方法として、既に現地である程度の工場設備と販売ルートを持った現地有力企業との連携や合弁事業が考えられます。しかし、アジアのマーケットで外資企業とタイアップ可能な現地企業の数はそれほど多くありません。したがって、現地の有力企業がすでにタイアップを完了しているような地域では、先発企業がより小さな参入障壁で進出することが予想されます。

まとめ

今回は海外進出に必要となる海外市場調査について解説しました。重要なことは自社で行えることと、外部に任せるべきことを明確にすることです。上記の内容を踏まえたうえで、自社にとって最適な選択を考えていただければ幸いです。

海外進出のメリット・デメリット

テクノポートの稲垣です。ここ数年、自社の専門分野に特化し、世界規模でビジネスを展開する会社が増えています。次のグラフは、日本国外に進出している日系企業の総数(拠点数)を表したものになります。

出典:外務省ホームページ 「海外在留邦人数調査統計」 平成30年要約版

注目すべきポイントは、海外進出する日系企業の数は統計を開始した平成17年度から平成29年度(2017年10月1日)まで右肩上がりであることです。つまり、日本企業の海外進出に対する機運は高まっており、今後もその傾向は続くであろうことが予測できます。そこで今回は、海外進出のメリット・デメリットについて解説します。

自社の海外進出を考えており、海外進出の方法、実現可能性を知りたい、とお考えの読者の方に是非読んで頂きたい内容になります。

メリット

販路拡大

日本企業が海外進出をする最も大きなメリットは販路拡大です。2018年のGDP(国内総生産)を見てみると、世界のGDP(85兆79427万米ドル)における日本のGDP割合は5.8%です。

日本経済は人口減少により、縮小傾向にあります。同時に、日本企業の海外進出による販路拡大のメリットは、重要度を増していきます。

コスト削減

新興国は日本に対し人件費が安価です。新興国に海外進出をすれば、最大で人件費を80%削減できます。原材料を現地で調達する場合は、安価な上に、輸送コストを削減できるためメリットがあります。

他の方法では、日本よりも税率の低い国進出することで、コスト削減が可能です。外国企業からの進出を促進するために、外国企業向けに税制の優遇をする国も存在します。

製品・サービスの専業化

一般に、「商圏の大きさ」と個々の企業が有する「専門特化の傾向」は比例します。言い換えれば、商圏が大きければ大きいほど、自社の製品や技術を専門特化できるということです。例えば、人口が少ない土地で食堂をやろうとすると、うどんもあればラーメンもかつ丼もあります、という品揃えになりがちです。これは、地元の顧客の多岐に渡るニーズを数少ない食堂で満たす必要性が生じるからです。一方で、都市圏では専門店が成り立ちます。これは、無数の店が乱立する都市圏では平均的なサービスに需要が少ないためです。

要約すると、大きな市場規模でビジネスを行うことができれば、専門特化が可能になり、世界規模の競争の中でも勝ち残りやすくなります。世界市場のような大きな市場で勝ち残る為には、日本の中小企業が有する狭く深い技術力が必要不可欠であることが分かります。

人材育成

海外進出という事業を通して、自社の人材を育成できるというメリットもあります。海外とのコミュニケーションや書類作成、交渉の経験を重ね、グローバルに通用するビジネススキルの向上、自社独自のノウハウの蓄積が可能です。

社員の語学力向上、モチベーションの向上といった副次的なメリットも期待できます。

2 デメリット

金銭コスト

海外進出において、大きく以下の2種類のコストがかかります。1つ目は、海外進出のための準備コストです。

  • 情報収集コスト(市場調査費、現地調査のための渡航費、人件費)
  • Webサイト関連コスト(海外販路開拓用のWebサイトの構築、運用費用、現地語への翻訳コスト)

が挙げられます。

2つ目は、現地で事業を開始するためのコストです。

  • 海外法人設立費用(事務所を作成し登記するための事務費用)
  • ビザ発行費・ライセンス費(現地での労働ビザ発行費用、業種によってはライセンス費)
  • 事務所家賃(事務所を賃貸で借りる場合に発生)

が挙げられます。

カントリーリスク

進出先の国や地域の情勢が変化することによって企業が受けるリスクのことをカントリーリスクと呼びます。カントリーリスクは大きく以下の2種類に分けられます。

1つ目は、政治リスクです。

  • 政権交代による進出企業に対する扱いの変化
  • 戦争や内乱に伴う政治の不安定化
  • 日本との外交上のトラブル
  • 反日感情による製品・サービスへの影響

が挙げられます。

2つ目は、経済リスクです。

  • 国債の債務不履行(元利金の支払ができなくなること)
  • バブル崩壊のような国家レベルの経済問題
  • インフラの未整備
  • 法制や税制の相違

が挙げられます。

為替リスク

外貨を円貨に換算する為替レートによって受取円貨額、支払円貨額が変動するリスクのことを為替リスクと呼びます。例えば、2016年にイギリスの国民投票でEU離脱派が勝利を収めました。当時の世界の投資家はユーロやポンドへの信用を疑い、極東のお金持ちの国である日本(2015年末で日本の対外純資産は25年連続世界トップ)へと投資先をシフトしました。結果、日本の輸出産業は急激な円高により大きな打撃を受けました。一方で、日本の輸入産業は円高の恩恵を受け、好調に転じたことも事実です。

このように、海外に進出し日本国外と取引を行う際は、世界規模の経済の動向により、損失や利益が生じるリスクがあります。

文化・宗教上のリスク

対象国の人々の文化や宗教が持つ違いによって発生する諸問題もデメリットの一つとして挙げられます。文化的な問題では、消費者の好みやニーズが国や地域によって異なることがあります。例えば、インドネシアの歯ブラシは、ヘッド部分が日本製の倍ぐらいのものが主流です。海外進出する企業は、商品の市場を事前にリサーチすることが求められます。

宗教的な問題では、宗教的な禁止事項を製品・サービスに含むことがあります。例えば、日本の某大手タイヤメーカーが製造し、日本車に搭載されていたタイヤの溝の模様が、アラビア文字でイスラムの神アッラーと読めたことが問題となり、全品回収に至ったという事件があります。海外向けの商品マーケティングを行う際は、対象国の人々の文化や宗教に対する配慮も欠かせない要素になります。

まとめ

以上、海外進出のメリット・デメリットを紹介しました。メリットとしては、販路拡大やコスト削減が見込まれます。一方、政治、経済、宗教、文化などの諸問題によるデメリットも考えられます。次回以降では、具体的な海外進出の方法を解説する予定です。

海外進出時の顧客開拓5つの方法

テクノポートの稲垣です。現在、工学系の大学院修士1年です。インターン生としてテクノポート株式会社に参加しています。海外進出分野の記事を担当しますので、よろしくお願い致します。

海外に販路を拡大するためには、顧客開拓が必要です。そこで今回は顧客開拓の5つの方法を紹介します。それでは順に見ていきましょう。

国際見本市、展示会への出展

顧客を開拓する上で最も有効な方法の一つに、見本市や展示会への出展が挙げられます。最大の特徴は、見本市や展示会には当該商品に興味のある顧客が多く集まるため、一度に多くのバイヤーに自社製品を紹介することができるという点です。加えて、同業他社も多く出展しているため、マーケットの傾向やライバル企業の動きを探ることができます。

一方で、出展にはお金がかかり、限られた期間で効果的な演出を行う必要があります。そのため、事前に周到な準備を行う必要があると言えます。

公的機関の活用

最も代表的な方法として、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO、ジェトロ)の利用が挙げられます。ジェトロのホームページの「取引先を探す」ページでは、海外展示会への出展サポートを受けることができます。また、同ホームページでは自社製品を案件データベースに登録することで、外国企業と国際ビジネスマッチングを行うことも可能です。

上述した方法以外に、海外各国が日本からの投資や貿易促進のために専門部門を日本国内に設けていることがあります。それらの部門は、貿易や当該国の投資実務面などの有益な情報を提供してくれるため、活用することができます。進出先候補の国名と関連用語で検索すれば、部門の所在地、電話番号等が入手可能です。

また、各国が投資誘致のために開催するセミナーに参加するという方法もあります。これらのセミナーは、投資誘致サービス機関や日本の出先機関が主催しているケースが多いため、情報資料収集や支援を受ける為の人脈を広げることができます。

自社のホームページの活用

外国語版の自社のホームページを構築・運用することで、世界中の潜在的な取引先からの問い合わせを獲得できる可能性があります。

2019年現在、世界のインターネット接続可能な人々は全体の56%(※)であり、ほとんどの企業は自社の情報発信拠点であるホームページ持っています。

(※) https://wearesocial.com/blog/2019/01/digital-2019-global-internet-use-accelerates

海外の販路拡大のためには日本語のサイトだけでなく外国語のサイトを構築する必要があります。外国語サイトを構築する際に何よりも重要なことは、どうしたら自社の製品やサービスを潜在的な取引先に見つけてもらえるかということです。

潜在的な取引先に訪問してもらいたい場合は、狙っているキーワードで少なくとも上位10位以内に表示される必要があります。そのために、検索エンジン最適化(SEO)と言われるテクニックが重要視されています。現在、Googleの検索アルゴリズムは進化を続けており、ホームページに記載されている内容そのものが重要視されるようになりました。これらの具体的な方法は、次回以降に説明する予定です。

コンサルタントの活用

海外進出を専門とするコンサルティング会社を利用して、海外進出の基本方針の策定から販売パートナーの選定までを任せる方法も考えられます。豊富な実績・経験のあるコンサルティング会社に依頼することで、スムーズに顧客開拓を進めることができます。

一方で、金銭的な負担がかかることに加え、自社にノウハウが蓄積しないといったデメリットも考えられます。コストを抑えるためには、自社で行えることは自社で行い、どうしても必要な場合のみコンサルティング会社に依頼するという方法が現実的であると言えます。

商社や取引先からの紹介

商社をはじめとする国内の輸出会社や、既存の取引先からの紹介で顧客開拓を行うという方法があります。輸出会社を利用する方法は、国外に間接的に輸出することになるため、販路開拓の手間を省くことができるというメリットがあります。一方で、輸出会社を通すため、貿易による利益が小さくなる、自社に貿易に関するノウハウが蓄積しない、などのデメリットも考えられます。

既存の取引先からの紹介は、貿易に関わる人脈を有している場合などが当てはまります。例えば、日本国内の銀行は融資につながりそうな案件であれば取引先を紹介してくれる可能性があります。紹介する企業と海外の取引相手先との関係は色々なケースがあり、失敗するケースも多数存在します。そのため、信頼できる取引先からの紹介であっても、自社で十分な調査を行うことが必要であると言えます。

まとめ

以上、海外進出時の顧客開拓の5つの方法について解説しました。自社のホームページを用いる方法の詳細については、次回以降の記事で紹介する予定です。