製造業のクラウドファンディング活用事例15選

製造業とクラウドファンディングは非常に相性が良く、受注生産や下請けに頼ってきた中小製造業においても、自社開発の新製品に挑戦する動きが活発化しています。

今回は、資金調達やプロモーションなど、様々なメリットが期待できる製造業のクラウドファンディングについて、活用事例を15選ご紹介します。

クラウドファンディングとは

クラウドファンディングとは、Crowd(群衆)とFunding(資金調達)を組み合わせた造語で、インターネット上で個人や法人が製品・サービスなどのプロジェクトを公開し、不特定多数の支援者から資金を調達することです。

クラウドファンディングは資金調達以外にも新製品の市場調査やプロモーションなど様々な目的で利用される手法であり、その市場は年々拡大しています。

クラウドファンディングの種類

クラウドファンディングの形式としては、支援者に対してモノや体験といったリターンをお返しする「購入型」がよく知られますが、他にもいくつかの種類が存在します。

購入型

法人・個人を問わずにすべての人が支援可能であり、リターンとして商品やサービスなどが贈られます。起案者が提供するリターンを購入する感覚で支援することが可能であり、最もポピュラーなクラウドファンディングの形式といえます。

寄付型

プロジェクトに対して支援者が資金を寄付する仕組みで、基本的にリターンは発生しません。環境保全や被災地支援など、社会貢献性の高いプロジェクトが多く、支援者は寄付金控除などの税制優遇が受けられます。

融資型

融資型は金融機関からの借入と同様に、複数の支援者から集めた資金を起案者に対して融資する仕組みです。購入型や寄付型と違い、支援者は金利という形で金銭によるリターンを受け取ります。

株式投資型

個人ではなく、株式会社が資金調達の一環として行う手法。支援者は資金を投資する見返りとして、起案企業の非公開株式を得ることができます。投資における金額制限があり、借り手企業側は年間1億円未満、支援者側は1社につき50万円までとなっています。

クラウドファンディングを行うメリット

企業がクラウドファンディングを利用するメリットは、資金調達だけではなく、製品に関する市場調査とプロモーションを同時に行うことができる点です。ここでは、それぞれについて簡単に解説します。

市場調査

社内でどんなに期待された製品であっても、市場ではまったく販売が伸びないケースもあります。中小製造業のように販売規模が小さい中で市場ニーズを正確に把握することは難しく、限られたノウハウ・リソースでヒット商品を創り出すのは至難の業です。

しかし、クラウドファンディングでは、開発段階のプロジェクトに対して、支援者から様々な意見が得られるため、直ちに製品開発に反映していくことができます。従って、事業としての方針変更を常に視野に入れつつ、リスクを抑えた製品開発を行うことが可能です。

プロモーション

プロジェクト進行中は、クラウドファンディング事業者が積極的にプロモーション活動を行うため、企業(起案者)もSNSなどを通じて製品情報を発信することで大きく認知を広げることができます。

また、このようなプロモーションを開発段階から継続的に行うことで、製品リリース時に多くの顧客(支援者)を獲得できている点もクラウドファンディングの大きなメリットです。

中小製造業とクラウドファンディングは相性が良い

クラウドファンディングと中小製造業は相性が良いと言えます。なぜなら、クラウドファンディングは共感を呼ぶことが重要な成功要因だからです。「町工場が作る、匠の技の〇〇製品」「メイドインジャパンの品質にこだわった〇〇製品」など、「町工場」や「メイドインジャパン」などのキーワードは好かれやすいキーワードです。

クラウドファンディング取り組み事例15選

ここからは、実際に成果をあげた製造業のクラウドファンディング取り組み事例15選をご紹介します。

1.株式会社シマワ

東京都千代田区にて機械部品の加工・製造を行っているシマワでは、ジュラルミン削り出しによるスマートフォン用スピーカー「oto」をクラウドファンディングにて販売しました。

ジュラルミンは軽量で丈夫、腐食しにくいといった優れた性質を持ち、航空機部品に使用されている素材です。削り出しによる洗練されたデザインと美しいフォルムが特徴で、自宅はもちろん、キャンプ・アウトドアシーンなどに最適な1台です。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/oto/

企業公式サイト

https://shimawa.co.jp

2.株式会社石井精工

東京都墨田区、葛飾区でゴム用金型の設計・製造を行っている石井精工では、アルミニウム削り出しのボタン型ピンズ「ALMA(アルーマ)」をクラウドファンディングにてリリースしました。

熟練工の手作業により、細部に至るまで一つ一つをアルミニウムの塊から削り出しており、ピンズに香りを付加するという新たなアプローチにも挑戦しています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/alma/

企業公式サイト

http://ishiiseikou.com

3.株式会社小沢製作所

東京都青梅市にて高精度な組立て板金加工を行っている小沢製作所では、ステンレス鋼焚き火台「MOSS(燃す)」を販売しました。

パズルのように変形可能な本製品は、独自のスリット穴設計や設置柔軟性など、どんなアウトドアシーンにも対応可能。ピラミッド型やフラワー型といった形状を採用することで、足元まで美しい炎を演出しています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/moss/

企業公式サイト

http://www.kk-ozawa.co.jp

4.株式会社武杉製作所

横浜市鶴見区にて精密鋳造をはじめとする各種金属加工を行っている武杉製作所では、チタン製タンブラーをクラウドファンディングにて開発・販売しました。

軽い、強い、錆びにくい、人体に優しいといった特徴を持つチタンは、真空二層構造によって高い保温性も実現。また、チタン表面の酸化被膜をナノレベルに調整することで鮮やかな色彩を表現しています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/takesugi-titantumbler/

企業公式サイト

https://www.takesugi.co.jp

5.Knot

カスタマイズウォッチのパイオニアとして知られるKnotでは、時計の修理製造技術の専門学校「ヒコ・みづのジュエリーカレッジ」と共同で文字盤意匠コンテストを開催し、優秀作品をクラウドファンディング限定商品としてリリースしました。

本プロジェクトでは、関わる運営費や開発費、製造原価、手数料などを差し引いた支援額の全額を、日本の未来の時計製造業への投資として寄付しています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/knot03/

企業公式サイト

https://knot-designs.com

6.株式会社ニットー

ニットーは、横浜市金沢区にてプレス金型を中心とした下請け製品の製作を行っている会社です。同社では、新たな試みとしてヌンチャク系 iPhoneケース「iPhone Trick Cover」を自社開発しクラウドファンディングにて販売しました。

下請けに頼る経営方針からの脱却という、中小製造業全体の課題に対して、町工場が新たな一歩を踏み出した事例です。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/view/309

企業公式サイト

http://nitto-i.com

7.株式会社田中金属製作所

田中金属製作所は真鍮部品加工に特化しながらも、オリジナル商品の自社開発を積極的に行っており、キャンプやアウトドアシーンに最適な真鍮削り出し火吹き棒「火樂〜KAGURA〜」をクラウドファンディングにてリリースしました。

高精度・高強度な真鍮削り出しや、熱気の逆流を防ぎ周囲の空気を引き込むことで燃焼を促進する画期的な構造など、金属加工業ならではの卓越した技術が詰まっています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/bonfire_stick_kagura/

企業公式サイト

https://www.tanakakinzoku.com

8.KOTOBUKI Medical株式会社

KOTOBUKI Medicalは町工場から生まれた医療系ベンチャー企業で、医療スキル向上に貢献する手術トレーニング用模擬臓器「VTT(Versatile Training Tissue)」をクラウドファンディングにてリリースしました。

食品を原材料とすることで、衛生面や倫理面、コスト面など様々な課題をクリアできる新素材として注目が集まっています。

クラウドファンディングページ

https://fundinno.com/projects/70

企業公式サイト

https://kotobukimedical.com

9.株式会社日翔工業

日翔工業はメッキ加工で知られる静岡県島田市の町工場です。近年ではブランド「PROGRESS」を立ち上げ、グラス内面にナノレベルのチタンメッキを施したジュエリーグラスなど、独創的な自社製品をリリースしています。

クラウドファンディングではブランド直営店に挑戦するためのオープン資金を募集、270%の達成率を記録しており、支援金額に応じて限定のジュエリーグラスなど様々なリターンが用意されています。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/238603/activities/217908

企業公式サイト

http://nissho-kogyo.jp/wordpress/

10.株式会社エムアイモルデ

エムアイモルデは静岡県富士市にある金型設計・製造メーカーで、3Dデジタルデータや3Dプリンタを活用したホビー業界への参入にも注力しています。

同社は、オリジナル作品をプラキットとして商品化する新ブランド「cavico」を立ち上げ、完全オリジナルのインジェクションプラキットを製品化するプロジェクトをクラウドファンディングにて公開しました。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/52915/activities/54087

企業公式サイト

https://mimolde.mystrikingly.com

11.株式会社キャステム

キャステムは広島県福山市にて医療機器や航空産業、宇宙産業など、あらゆる分野に使用される精密金属部品の製造・販売を行っています。

金属加工をはじめとした精密技術を新たな商品展開に活かすべく発足した新事業部「アイアンファクトリー」では、クラウドファンディングにて「アタッシュケース型コインケース」を公開・販売しました。

アルミにシルバーのアルマイトを施し、軽量で洗練されたデザインが特徴の本製品は、映画やドラマのアタッシュケースのイメージそのままに、ミニチュア化したポケットサイズを実現しています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/castem-01/

企業公式サイト

https://www.castem.co.jp

12.株式会社山崎製作所

静岡県清水市にて精密板金加工全般を営む山崎製作所では、ファミリーキャンプブランド「shiromani」が手がけるステンレス製のオリジナルドリップバッグスタンド「ポタリス」の製造を担当しました。

クラウドファンディングにて目標達成率760%という驚異的な数字を記録している本製品は、ステンレス製のため丈夫で軽量、さらに一瞬で厚さ7mmに折り畳むことができるため、気軽に持ち運べてアウトドアシーンにも最適です。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/view/535293

企業公式サイト

https://www.yamazaki-metal.co.jp/

13.株式会社極東窒化研究所

神奈川県秦野市にて金属表面硬化・熱処理を行う極東窒化研究所では、クラウドファンディングにて一生使える焼き網「chicca mesh(チッカ メッシュ)」を公開・販売しました。

スチール製の焼き網に「窒化処理」といわれる表面処理を施すことで、錆びや歪みといった弱点を解消し、手入れも非常に容易です。キャンプやバーベキューはもちろん、自宅のオーブントースターや魚焼きグリルで使用することもできます。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/chikka_mesh/

企業公式サイト

https://kyokutou-tikka.com

14.株式会社タシロ

神奈川県平塚市にて精密板金加工、精密機械加工を行うタシロでは、ピザ窯、燻製機、焚火台と3つの機能が備わった「3WAYコンパクトピザ窯」をクラウドファンディングにて公開しました。

創業50年を超える金属加工技術が凝縮された本製品は、組み立てや手入れも容易であり、自宅での使用はもちろん、キャンプやアウトドアなどあらゆるレジャーシーンに最適です。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/view/447026

企業公式サイト

http://www.tasiro.co.jp

15.株式会社増田

東京都台東区にてハンドバッグなど革製品の製造・販売を行う増田では、2022年よりアウトドア部門を設立し、革製品とアウトドアの融合を追求しています。

クラウドファンディングでは、ハイクオリティな牛革を贅沢に使用した究極のレザーチェアーを販売し、大きな注目を集めています。創業100年を誇る職人の技術によって丁寧に縫い上げられたレザーチェアーは、あらゆるアウトドアシーンに最適です。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/view/591686

企業公式サイト

https://www.masuda-c.co.jp

以上、製造業のクラウドファンディングについて事例を紹介しました。

参考にしていただければ幸いです。

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製造業のクラウドファンディング活用事例15選

製造業とクラウドファンディングは非常に相性が良く、受注生産や下請けに頼ってきた中小製造業においても、自社開発の新製品に挑戦する動きが活発化しています。

今回は、資金調達やプロモーションなど、様々なメリットが期待できる製造業のクラウドファンディングについて、活用事例を15選ご紹介します。

クラウドファンディングとは

クラウドファンディングとは、Crowd(群衆)とFunding(資金調達)を組み合わせた造語で、インターネット上で個人や法人が製品・サービスなどのプロジェクトを公開し、不特定多数の支援者から資金を調達することです。

クラウドファンディングは資金調達以外にも新製品の市場調査やプロモーションなど様々な目的で利用される手法であり、その市場は年々拡大しています。

クラウドファンディングの種類

クラウドファンディングの形式としては、支援者に対してモノや体験といったリターンをお返しする「購入型」がよく知られますが、他にもいくつかの種類が存在します。

購入型

法人・個人を問わずにすべての人が支援可能であり、リターンとして商品やサービスなどが贈られます。起案者が提供するリターンを購入する感覚で支援することが可能であり、最もポピュラーなクラウドファンディングの形式といえます。

寄付型

プロジェクトに対して支援者が資金を寄付する仕組みで、基本的にリターンは発生しません。環境保全や被災地支援など、社会貢献性の高いプロジェクトが多く、支援者は寄付金控除などの税制優遇が受けられます。

融資型

融資型は金融機関からの借入と同様に、複数の支援者から集めた資金を起案者に対して融資する仕組みです。購入型や寄付型と違い、支援者は金利という形で金銭によるリターンを受け取ります。

株式投資型

個人ではなく、株式会社が資金調達の一環として行う手法。支援者は資金を投資する見返りとして、起案企業の非公開株式を得ることができます。投資における金額制限があり、借り手企業側は年間1億円未満、支援者側は1社につき50万円までとなっています。

クラウドファンディングを行うメリット

企業がクラウドファンディングを利用するメリットは、資金調達だけではなく、製品に関する市場調査とプロモーションを同時に行うことができる点です。ここでは、それぞれについて簡単に解説します。

市場調査

社内でどんなに期待された製品であっても、市場ではまったく販売が伸びないケースもあります。中小製造業のように販売規模が小さい中で市場ニーズを正確に把握することは難しく、限られたノウハウ・リソースでヒット商品を創り出すのは至難の業です。

しかし、クラウドファンディングでは、開発段階のプロジェクトに対して、支援者から様々な意見が得られるため、直ちに製品開発に反映していくことができます。従って、事業としての方針変更を常に視野に入れつつ、リスクを抑えた製品開発を行うことが可能です。

プロモーション

プロジェクト進行中は、クラウドファンディング事業者が積極的にプロモーション活動を行うため、企業(起案者)もSNSなどを通じて製品情報を発信することで大きく認知を広げることができます。

また、このようなプロモーションを開発段階から継続的に行うことで、製品リリース時に多くの顧客(支援者)を獲得できている点もクラウドファンディングの大きなメリットです。

中小製造業とクラウドファンディングは相性が良い

クラウドファンディングと中小製造業は相性が良いと言えます。なぜなら、クラウドファンディングは共感を呼ぶことが重要な成功要因だからです。「町工場が作る、匠の技の〇〇製品」「メイドインジャパンの品質にこだわった〇〇製品」など、「町工場」や「メイドインジャパン」などのキーワードは好かれやすいキーワードです。

クラウドファンディング取り組み事例15選

ここからは、実際に成果をあげた製造業のクラウドファンディング取り組み事例15選をご紹介します。

1.株式会社シマワ

東京都千代田区にて機械部品の加工・製造を行っているシマワでは、ジュラルミン削り出しによるスマートフォン用スピーカー「oto」をクラウドファンディングにて販売しました。

ジュラルミンは軽量で丈夫、腐食しにくいといった優れた性質を持ち、航空機部品に使用されている素材です。削り出しによる洗練されたデザインと美しいフォルムが特徴で、自宅はもちろん、キャンプ・アウトドアシーンなどに最適な1台です。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/oto/

企業公式サイト

https://shimawa.co.jp

2.株式会社石井精工

東京都墨田区、葛飾区でゴム用金型の設計・製造を行っている石井精工では、アルミニウム削り出しのボタン型ピンズ「ALMA(アルーマ)」をクラウドファンディングにてリリースしました。

熟練工の手作業により、細部に至るまで一つ一つをアルミニウムの塊から削り出しており、ピンズに香りを付加するという新たなアプローチにも挑戦しています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/alma/

企業公式サイト

http://ishiiseikou.com

3.株式会社小沢製作所

東京都青梅市にて高精度な組立て板金加工を行っている小沢製作所では、ステンレス鋼焚き火台「MOSS(燃す)」を販売しました。

パズルのように変形可能な本製品は、独自のスリット穴設計や設置柔軟性など、どんなアウトドアシーンにも対応可能。ピラミッド型やフラワー型といった形状を採用することで、足元まで美しい炎を演出しています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/moss/

企業公式サイト

http://www.kk-ozawa.co.jp

4.株式会社武杉製作所

横浜市鶴見区にて精密鋳造をはじめとする各種金属加工を行っている武杉製作所では、チタン製タンブラーをクラウドファンディングにて開発・販売しました。

軽い、強い、錆びにくい、人体に優しいといった特徴を持つチタンは、真空二層構造によって高い保温性も実現。また、チタン表面の酸化被膜をナノレベルに調整することで鮮やかな色彩を表現しています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/takesugi-titantumbler/

企業公式サイト

https://www.takesugi.co.jp

5.Knot

カスタマイズウォッチのパイオニアとして知られるKnotでは、時計の修理製造技術の専門学校「ヒコ・みづのジュエリーカレッジ」と共同で文字盤意匠コンテストを開催し、優秀作品をクラウドファンディング限定商品としてリリースしました。

本プロジェクトでは、関わる運営費や開発費、製造原価、手数料などを差し引いた支援額の全額を、日本の未来の時計製造業への投資として寄付しています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/knot03/

企業公式サイト

https://knot-designs.com

6.株式会社ニットー

ニットーは、横浜市金沢区にてプレス金型を中心とした下請け製品の製作を行っている会社です。同社では、新たな試みとしてヌンチャク系 iPhoneケース「iPhone Trick Cover」を自社開発しクラウドファンディングにて販売しました。

下請けに頼る経営方針からの脱却という、中小製造業全体の課題に対して、町工場が新たな一歩を踏み出した事例です。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/view/309

企業公式サイト

http://nitto-i.com

7.株式会社田中金属製作所

田中金属製作所は真鍮部品加工に特化しながらも、オリジナル商品の自社開発を積極的に行っており、キャンプやアウトドアシーンに最適な真鍮削り出し火吹き棒「火樂〜KAGURA〜」をクラウドファンディングにてリリースしました。

高精度・高強度な真鍮削り出しや、熱気の逆流を防ぎ周囲の空気を引き込むことで燃焼を促進する画期的な構造など、金属加工業ならではの卓越した技術が詰まっています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/bonfire_stick_kagura/

企業公式サイト

https://www.tanakakinzoku.com

8.KOTOBUKI Medical株式会社

KOTOBUKI Medicalは町工場から生まれた医療系ベンチャー企業で、医療スキル向上に貢献する手術トレーニング用模擬臓器「VTT(Versatile Training Tissue)」をクラウドファンディングにてリリースしました。

食品を原材料とすることで、衛生面や倫理面、コスト面など様々な課題をクリアできる新素材として注目が集まっています。

クラウドファンディングページ

https://fundinno.com/projects/70

企業公式サイト

https://kotobukimedical.com

9.株式会社日翔工業

日翔工業はメッキ加工で知られる静岡県島田市の町工場です。近年ではブランド「PROGRESS」を立ち上げ、グラス内面にナノレベルのチタンメッキを施したジュエリーグラスなど、独創的な自社製品をリリースしています。

クラウドファンディングではブランド直営店に挑戦するためのオープン資金を募集、270%の達成率を記録しており、支援金額に応じて限定のジュエリーグラスなど様々なリターンが用意されています。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/238603/activities/217908

企業公式サイト

http://nissho-kogyo.jp/wordpress/

10.株式会社エムアイモルデ

エムアイモルデは静岡県富士市にある金型設計・製造メーカーで、3Dデジタルデータや3Dプリンタを活用したホビー業界への参入にも注力しています。

同社は、オリジナル作品をプラキットとして商品化する新ブランド「cavico」を立ち上げ、完全オリジナルのインジェクションプラキットを製品化するプロジェクトをクラウドファンディングにて公開しました。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/52915/activities/54087

企業公式サイト

https://mimolde.mystrikingly.com

11.株式会社キャステム

キャステムは広島県福山市にて医療機器や航空産業、宇宙産業など、あらゆる分野に使用される精密金属部品の製造・販売を行っています。

金属加工をはじめとした精密技術を新たな商品展開に活かすべく発足した新事業部「アイアンファクトリー」では、クラウドファンディングにて「アタッシュケース型コインケース」を公開・販売しました。

アルミにシルバーのアルマイトを施し、軽量で洗練されたデザインが特徴の本製品は、映画やドラマのアタッシュケースのイメージそのままに、ミニチュア化したポケットサイズを実現しています。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/castem-01/

企業公式サイト

https://www.castem.co.jp

12.株式会社山崎製作所

静岡県清水市にて精密板金加工全般を営む山崎製作所では、ファミリーキャンプブランド「shiromani」が手がけるステンレス製のオリジナルドリップバッグスタンド「ポタリス」の製造を担当しました。

クラウドファンディングにて目標達成率760%という驚異的な数字を記録している本製品は、ステンレス製のため丈夫で軽量、さらに一瞬で厚さ7mmに折り畳むことができるため、気軽に持ち運べてアウトドアシーンにも最適です。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/view/535293

企業公式サイト

https://www.yamazaki-metal.co.jp/

13.株式会社極東窒化研究所

神奈川県秦野市にて金属表面硬化・熱処理を行う極東窒化研究所では、クラウドファンディングにて一生使える焼き網「chicca mesh(チッカ メッシュ)」を公開・販売しました。

スチール製の焼き網に「窒化処理」といわれる表面処理を施すことで、錆びや歪みといった弱点を解消し、手入れも非常に容易です。キャンプやバーベキューはもちろん、自宅のオーブントースターや魚焼きグリルで使用することもできます。

クラウドファンディングページ

https://www.makuake.com/project/chikka_mesh/

企業公式サイト

https://kyokutou-tikka.com

14.株式会社タシロ

神奈川県平塚市にて精密板金加工、精密機械加工を行うタシロでは、ピザ窯、燻製機、焚火台と3つの機能が備わった「3WAYコンパクトピザ窯」をクラウドファンディングにて公開しました。

創業50年を超える金属加工技術が凝縮された本製品は、組み立てや手入れも容易であり、自宅での使用はもちろん、キャンプやアウトドアなどあらゆるレジャーシーンに最適です。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/view/447026

企業公式サイト

http://www.tasiro.co.jp

15.株式会社増田

東京都台東区にてハンドバッグなど革製品の製造・販売を行う増田では、2022年よりアウトドア部門を設立し、革製品とアウトドアの融合を追求しています。

クラウドファンディングでは、ハイクオリティな牛革を贅沢に使用した究極のレザーチェアーを販売し、大きな注目を集めています。創業100年を誇る職人の技術によって丁寧に縫い上げられたレザーチェアーは、あらゆるアウトドアシーンに最適です。

クラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/view/591686

企業公式サイト

https://www.masuda-c.co.jp

以上、製造業のクラウドファンディングについて事例を紹介しました。

参考にしていただければ幸いです。

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リーンスタートアップから考える、中小製造業の製品開発

テクノポートの井上です。最近は受託加工を主とする製造業の会社が製品開発を行い、自社製品を販売することも増えてきました。製品開発はしたいけどなかなか良いアイディアが浮かばない、アイディアはあるけどどう製品開発を進めればよいかわからない等、途中で止まってしまうケースも多いのではないでしょうか。今回は製品開発の手法として「リーンスタートアップ」について、製造業の具体的な製品開発の方向性も踏まえ紹介いたします。

リーンスタートアップとは

リーンスタートアップとは、コストをかけずに最低限のサービス・機能を持った試作品を短期間で作成し、顧客の反応を製品開発の中に取り入れ、顧客がより満足できる製品・サービスを開発していくマネジメント手法です。リーンスタートアップは、通常の仮説検証型やPDCAサイクルと同じように見えますが、他との違いは、顧客の声を早い段階で製品開発に反映させることで「顧客不在」のリスクを防ぐことに重視しているという点です。必要最低限のものでまずは市場に投入し、その反応から正確な顧客のニーズを確認、そこから製品開発につなげるという考え方です。じっくり時間をかけて市場調査を行い、満を持してローンチをするよりも、短期間で検証することでコストと顧客不在のリスクを抑えた、スタートアップ向けの手法と言えます。

おおまかな流れは以下のとおりです。

構築

顧客が欲しいものの仮説を立て、製品やサービスのアイデアを形にします。「MVP(minimum viable product)」と呼ばれる必要最低限の機能やデザインを備えた試作品を作成します。

計測

開発した試作品を実際のユーザー、特に新たな製品やサービスを早い段階で受け入れ、他の消費層へ影響を与える「アーリーアダプター」と呼ばれる層へ提供します。

計測ポイント

  • 「ユーザーの抱える課題を解決できているか」
  • 「提供すべき機能が実現できているのか」
  • 「本当にほしいと思える製品か」
  • 「いくらなら欲しいと思うか」

などを検証していきます。

学習

計測されたデータやユーザーの反応から、

  • 「改良すべき点は何か?」
  • 「このまま開発を続けるべきか?」
  • 「方向転換を行うべきか?」

を見極め、顧客に受け入れられるものにしていきます。

この3つを短期間で繰り返し、ユーザーに受け入れられる製品・サービスへと展開させていきます。

リーンスタートアップのメリット

  • MVPにより、余分なコストを削減できる
  • リリースまでの期間を短縮できる
  • フィードバックを早く次に繋げられる(需要次第で市場の変更や撤退も含め検討できる)

リーンスタートアップのデメリット

情報拡散のスピードが近年圧倒的に早まっていることがデメリットになりえます。

例えば、一般消費者の関心が強い商品やサービスの場合、初期段階で消費者の評判が一気に拡散してしまい、その不評を引き継いだままのイメージが確立され、その後の改良した製品においても悪いイメージを払拭できない場合があります。

リーンスタートアップをもとに製品開発の相性を考える

リーンスタートアップは製品開発のプロセスの中に顧客のニーズを組み込むことで、早い段階で需要を見定め生かすことに重きを置いています。昨今では、SNSの台頭や、クラウドファンディングなど、より早くユーザーのニーズをキャッチできる世の中になりました。ものづくり企業が積極的にユーザーの声を聞き、迅速に製品開発を行うチャンスがあるのではと考えています。製品開発ができそうないくつかの可能性について紹介します。

規格製品からのカスタムオーダー化(ニーズの多様化に応えるサービス化)

市場のニーズが多様化する中で、そのニーズを正確に捉えることは困難な時代です。そのため大量生産された既製品では、満足できないケースが増加、セミオーダーでの自分に合った化粧品製作や、テーラーメイド医療と呼ばれるような個人個人に合わせた医療も間近と言われています。オーダーメイドと言っても「金属の金物をオーダーでなんでも作ります」ではなく、より具体的な製品まで照準を絞った形でのオーダー対応が考えられます。

  1. 自分の手の形状に完全に合ったボールペン。
    (金型保管により、何個でも追加オーダー可能なサービス)
  2. 無くしても大丈夫。結婚指輪の型取り保管サービス など

産業用分野のオーダー製品からの規格化(自分がユーザー系1)

製造業では工場の生産効率を上げるために、自動機、専用機、治具等を、内製もしくは外注にて製造することが多いと思います。最終ユーザーが、自社やそれに近い業種のため、ユーザーのニーズを汲み取りやすい領域と言えます。需要の増えそうなものや、良く出る系統を分析し、ニーズの高いものを規格化することで製品化へつなげられる可能性があると考えられます。需要は少ないかも知れませんが、他の業種から参入されるケースは少ないため、競合が少ないのも良い点です。わざわざ大手が入るほどではない市場が眠っているかも知れません。

趣味業界での製品化(自分がユーザー系2)

趣味はオススメです。欲しい人はいくら高くても欲しい、強烈なニーズがあります。個人的な意見ですが、出来れば避けたいのは生活必需品、日用品系です。競合が非常に多く、製品化しても売れる製品はすぐに類似品が出てきます。皆さん使うので、アイディアは集まりますが、製品化となると厳しいのではと思います。

製品開発のきっかけについてですが、社員の皆さんに趣味を深堀りするのはいかがでしょうか?趣味への愛情の深い人がいれば、その人が抱えている困り事やあったらいいなに耳を傾けてみると良いと思います。ユーザーの意見を反映させやすくなります。

  1. 間接キスは過去のモノ!だれが吹いても安心のチタン製抗菌ホイッスル
  2. 金属アレルギーを克服!金管楽器のチタンマウスピース

いかがでしたか?今回はリーンスタートアップと、その考えをもとに製品開発ができそうな方向性について紹介しました。この業界に携わっている人なら一度は自社製品を作りたいと考えている人は多いはずです。参考になれば幸いです。

社長の想いの伝え方 社員と”チーム”になる会社づくり

こんにちは。

企業の「技術」と「想い」を伝えるブランディングC-OILING代表の大後 裕子(だいご ひろこ)です。

今回は経営者が会社のブランド力を高めたい時に必ず行うべき、社長の思いの伝え方についてお話ししたいと思います。

経営のシフトチェンジ

ポストコロナの大きな時代の変革を迎えた今、社長にとって取引先の見直しや新規事業への取り組みなどの経営のシフトチェンジが急務となっています。従来の一社依存ではなく、収益源の多様化に向けて社内外へのアクションが目前の課題と言えるでしょう。

実際にものづくり企業の社長からは、自分の会社を自分で守るための施策として下記のような悩みを多く聞きます。

  • 新しい取引先を見つけたい
  • 新しい事業にチャレンジしたい
  • BtoBだけでなくBtoCにもチャレンジしたい
  • 会社のブランド力を上げたい

多くの経営者が企業の従来の強みを生かし、新しいビジネスモデルを構築するイノベーションが必要であることを身をもって感じています。しかしその反面、イノベーションを起こすにあたって、実務を行う社員たちへこのような悩みを抱えています。

  • 社員のモチベーションを保ちたい
  • 社員に自主的に動いてほしい
  • 社員に嫌われたくない
  • 社員に会社を好きになってほしい

このように多くの経営者が現場社員から「社長がなんか言ってら」と言われてしまうことが頭をよぎってしまい、社員との距離が生まれてしまう状況になることを恐れてシフトチェンジが起こせずにいます。ではどうすればイノベーションを起こしやすい社内環境を、ブランディングできるかお話しします。

自分たちの強みを共有する

今までの自社の仕事を客観的に数値化して、強みを明文化していますか?日々仕事をしていると、自分たちの知識や技術が”当たり前”のものとして認識してしまいがちです。そのせいで自らの仕事に新しさを見出すことができずにモチベーションが上げる音ができない組織が多く存在します。同じ業務でも社員一人一人が自分たちの実績を理解した上で行うことで仕事がただの作業ではなく、自分たちだからこそできる自らモチベーションを持つことができるようになります。

自分たちの顧客を共有する

経営者がこれから取引をしたいと思っている企業のタイプを明確にして社員に共有することです。業種・企業規模・企業ビジョンを明文化し、営業担当だけではなく現場の製造社員にも同じく共有します。それによって自分たちがどのような顧客に対してどのようなレベルの仕事をするべきかを自ら考える文化を築くことができます。

自分たちの仕事がどんな影響を与えているか共有する

自分たちの顧客を共有しその顧客のための仕事レベルを自ら改善する企業文化を作るができたなら、次はその顧客の事業や生活に自分たちの仕事がどのような影響を与えているかを想像する企業文化を作りましょう。社員がそれぞれ自分たちの仕事が社会に対してどのような影響を与えているのかを想像することができれば、自社そして自分たちの存在価値と使命を考えることができるようになります。

社長がビジョンを明確に伝えることで企業はブランド化する

これからの経営者が社員とともに成長する企業文化を作るためには、ポストコロナ時代に自社が向かう方向性を指し示し、従来の”トップダウン経営”から”ビジョン×ボトムアップ経営”にいこうしていくことです。

企業のブランド化は一朝一夕でできるものではありません。上記で挙げた共有すべき3つの項目は、経営者が企業のこれからの方向性を示す企業の”ビジョン”として、会社全体の行動指針の元となります。企業の文化として考え方から実際の商品づくりまで技術と想いを浸透させていくことで、社内・社外への企業のブランド力を同時に高めていくことができるのです。

企業の技術と想いを伝えるブランディング C-OILING 大後 裕子

新商品リリース時における「落とし穴」

弁理士の亀山夏樹です。今回は、中小企業200社以上の相談実績を通し、新商品リリース時における「ありがちな落とし穴」についてお話したいと思います。

1.ある日の特許相談

相談者は、とあるアイデアを思いついた中小企業の社長。このアイデアをベースにした新商品の工具を試作してみたところ、社内の反応では、どうやら売れそうだとの感触を得ました。そこで、新商品について特許をとれるかどうか、弊所へ相談に来られました。

2.特許取得も大事ですけども・・・

かめやま:なるほど、この工具のグリップが三角形になっているところがポイントなんですね。

お客様:そうなんです。特許は取れそうでしょうか?

かめやま:類似品は他社から販売されてないのですか?

お客様:どこからも販売されていません。もちろん、ウチもまだ販売していないですよ。特許を出してから販売ですよね?

かめやま:公開前・販売前の特許出願、良い習慣ですね。しかし、製品が出ていなくとも、特許出願だけ出されているケースもありますし・・・そこは特許文献の調査をしてみましょう。

お客様:お願いします。

かめやま:ところで、この商品は、どのように販売するのですか?自社販売ですか?それとも、営業代行会社を使いますか?それとも、Amazonのようなネットショップでの販売になりますか?

お客様:HP(ホームページ)を使った販売になりますが、自社でやろうか、他社に頼むかは検討中です。

かめやま HP上の販売なのですね。ところで、商品名はどうされますか?

お客様:この「三角形」をイメージした「おにぎり君」でいいかな?と思っています。

3.たかが商品名。されど商品名

かめやま:「おにぎり君」、可愛い名前ですね。ところで、この「おにぎり君」は、商品名として使えるのですか?

お客様:え?どういう意味です?

かめやま:工具の商品名「おにぎり君」について他人の商標権が存在した場合、お客様は、工具について、商品名「おにぎり君」を使えなくなります。正確に言うと、工具の商品名「おにぎり君」を使用することによって、その他人の商標権侵害となってしまいます。

お客様:商標権侵害になるとどうなるのですか?

かめやま名称使用の差し止め(名称の使用停止)と、損害賠償請求の対象になります。また、悪質な行為は、刑事罰にもなります。

お客様:犯罪にもなるんですね。

かめやま:そうです。現実的によく発生するペナルティは、名称使用の差し止め(名称の使用停止)、そして、これに伴う副作用です。

お客様:副作用というと?

かめやま:まず、商品の出荷停止・在庫処分が余儀なくされます。次に、HPの変更作業が発生します。そして、古い商品名のパッケージの廃棄と、新しい商品名のパッケージの制作も必要になります。そして、新しい商品名でのPRのやりなおし・・・このように、金銭的な損失だけでなく、時間的なロス(機会損失)にもつながります。

お客様:たかが名前なのに、そんなに重いのですか?

かめやま:たかが名前・・・ではないですよ。特に、ネット販売の場合、調べ物をするとき、キーワード検索をしますよね。調べものと同じように、話題となっている商品名や、気になる商品名もまた、キーワード検索をする人が多いと思います。キーワード検索するためには、どんな名前が良いでしょう?

お客様:えぇ。どんな名前???

かめやま:覚えやすい名前です。覚えてもらわなければ、検索してもらえませんよね。

お客様:確かにそうですね。

かめやま:さらに、検索結果では、自社が先頭(少なくとも1ページ目)に出てこないとなりません。したがって、ネット販売する場合の商品名としては、「記憶しやすい名前」、「検索のしやすい名前」、「検索結果で一番前に出てくる名前」がよいですね。

お客様:なるほど。「検索結果で一番前に出てくる名前」というのは、SEOみたいなことをするのですか?

かめやま:それもありますが、それだけではありません。自社商品と同じ同じ商品名を、多数の同業他社が使用していたら、お客様は、同業他社のHPに流れてしまう。

お客様:それは困りますね。自社商品と同じ同じ商品名を、多数の同業他社に使用させては・・・あ!ここで商標権を使うのですね。そうすると、ウチの商品名(登録商標)を同業他社が使用できなくなる。その結果、商品名を記憶したお客様を確実に自社HPへ集まることとなる。

かめやま:PRを一生懸命し、お客様に商品名を記憶してもらっても、同業他社に流れてしまう。これでは、穴の開いたバケツみたいなものですよね。そうならないためにも、自社の商品名を覚えてくださったお客様を、自社HPへ確実に誘導する仕組みをつくる。この仕組みづくりのために、商標権を利用するケースも多いです。特に、ネット販売系では、そのような目的で商標権を取得される企業様は多いです。しかも、キーワード検索によって商標権侵害を見つけやすい。

お客様:使用する側から見れば、商標権者から侵害行為が見つかりやすい。

かめやま:なので、他人の商標権の侵害行為となるような名称使用は避けたほうが良いです。

お客様:そして、集めた見込み客を漏らさず自社HPへ誘導するためにも、自社の商標登録は確保したほうがよい、というですね。

かめやま:そうです。しかし、まずは、他人の商標権に抵触するか否かの調査を行い、その後に、商標登録の手続きを進めることが良いと思います。

お客様:特許だけではなく、登録商標(商品名)の活用も大切なんですね。

4.まとめ

(1)商品名は、大切な集客ツール

(2)良い商品名

  • A 記憶しやすさ
  • B 検索のしやすさ
  • C 合法的に使用できる名前(他人の商標権侵害にならない名前)
  • D 合法的に独占できる名前(商標登録のしやすい名前)

何かの参考になれば幸いです。

コスパのよい特許出願 その2

弁理士の亀山夏樹です。小職は、中小企業200社以上の相談実績があります。今回はコストパフォーマンスのよい特許出願について、これまでのお客様の相談内容を振り返りながら考えていきたいと思います。

1.とある日の特許相談

大昔に、別の弁理士さんに依頼して特許出願を出したことのあるお客様(その1の記事とは別のお客様です)。第1回目の面談では、特許取得がテーマでした。面談では、発明の概要を伺うのですが、弊所では、それ以外のことも把握します。その理由は、無駄な特許をなくすためです。言い換えれば、特許のコストパフォーマンスを向上させるためです。

そこで、弊所の面談では、発明に至った背景はもちろんのこと、これまでのマーケティング活動についてもヒアリングします。そのお客様は、マーケティング活動をしっかりとされている方でしたので、お客様のお話を聞いているかぎり、その発明は市場に受け入れられる可能性が十分にありそうだ、と思いました。さらに、そのお客様の規模からすると、大化けする可能性もあるようです。

2.ところで、ビジネスモデルは?

お客様:だから、このアイデアを特許で防衛したいのです!

かめやま:ところで、このアイデアを使って、どのようなビジネスモデルを考えていますか?

お客様:え・・・!?

かめやま:「誰にどのような形でアイデアを提供し、誰から売り上げを立てるか?といった仕組み」です。一緒に検討しましょうか?

お客様: お願いします。

(数10分後)

かめやま:考えられるパターンは、A~Bの2つの案。ビジネスモデルAであれば、アイデアの要素アが肝になります。ビジネスモデルBであれば、要素イが肝になります。2つをミックスすると、最初にモデルAで回した後、モデルBで回す・・・ということも可能です。

お客様: 驚きました。モデルAのようなものは、取引先からもチラっと言われましたが、モデルBや、2つのモデルのミックスもありえるのですね。

かめやま:そうなんです。大切なことは、ビジネスモデルの肝となる要素を特許でガードするということです。ビジネスモデルAでいくなら、アの特許権をとることが必要なりますし、ビジネスモデルBでいくなら、イの特許権をとることが必要になります。さらに、両にらみで行くのであれば、ア・イの両方を抑える必要があります。逆に言えば、ビジネスモデルAでいくなら、イの特許権をとる必要はありませんよね。

お客様:確かにこれなら、無駄な特許権は減らすことをできますね。

かめやま:特許は投資です。ビジネスモデルを考えながら、肝となる部分(ガードすべき優先度の高い部分)から特許で抑えていく、という観点が重要です。

お客様:これなら無駄な特許は減りますね。

その後・・・

結果的に、ビジネスモデルA・Bの統合案でいくことになったため、それぞれビジネスモデルの肝となる発明ア・イについて特許出願を済ませました。そのお客様は、いくつもの商談が前に進むこととなりましたが、その1つの商談相手は、お客様よりも大きな規模の企業。ですが、先方が欲しがっている商品は、要素アのアイデア。こちらは、すでに特許出願済です。特許出願済の交渉力により、お客様の立場を維持したまま商談に臨めそうです。

3.まとめ

1、特許権や商標権で抑えたいところはどこ?

特許権や商標権で抑えたいところの1つは、ビジネスモデルの収益源。

2、収益源はどこ?

収益源が何になるかはビジネスモデルによっても変わる。

市場浸透の速度もビジネスモデルによっても変わる。

3、自社にとって実現可能なモデルは?

営業活動を通して、どのビジネスモデルが自社にとって望ましいかを検討する。

4、当初の目論見は外れた場合の準備をする

営業活動を通して、出願前の目論見が外れる場合もある。このため、弁理士と適宜情報交換が必要。

5、必要に応じて次の手を打つ。

当てが外れれば、補強のための追加出願をすることも・・・。そうでなくとも、次の一手(アライアンスなど)のための契約やその交渉準備・・・。場合によっては、こちらの交渉力を上げるために別の出願を行うことも。

何かの参考になれば幸いです。