2019年6月19日(水)から6月22日(土)の4日間、愛知県名古屋市にあるポートメッセなごやで開催されたINTERMOLD 名古屋。今回は、元エンジニアのライター石川がINTERMOLD 名古屋で見つけた、少し面白い展示をご紹介します。
金属製3Dプリンターで金型の入子を作る
メリットとデメリットの両方が聞かれる3Dプリンターですが、やはり治工具の分野では実用事例が増えていると感じています。INTERMOLD 名古屋でも、金属製3Dプリンターを使用して製作した金型の入子が展示されていました。
1例目は七宝金型工業株式会社様の3D冷却管が内臓されたダイキャスト金型用の入子です。3Dプリンターの特長の1つとして、従来の除去加工では不可能だった中空構造が作れることが上げられますが、七宝金型工業株式会社ではその特性を生かし、凸形状の先端近くまで冷却管を通すことを可能にしました。3Dプリンターで成形後、切削にて仕上げを行っています。
2例目は(株)ケイプラスモールドジャパン様によるプラスチック射出成形用金型のガス抜き入れ子です。ケイプラスモールドジャパンでは、金属製3Dプリンタ-を使用し、入子の表面を微細なメッシュ構造にしました。これにより従来のベントに比べて広い範囲で効率的なガス抜きを可能にしています。このようなガス抜き入子を使用することで、従来ではガスの発生が懸念された成形条件での成形も可能になるかもしれませんね。
特殊なプレス技術が面白い
INTERMOLD 名古屋では目を引く製品も見つかりました。例えば三和パッキング工業(株)様では、自動車のエンジンルームなどで放熱や遮熱に使うNimbus GⅡを展示していました。これは特殊な技術でアルミ主体の金属プレートを立体的な蛇腹構造に加工し、それをさらにプレスで成形したものです。蛇腹構造になっているため占有体積に対する素材の面積が広くなり、高い放熱、遮熱効果を期待することができます。また、見た目も美しく、細部まで品位を要求される高級車などからの需要が高いとの話でした。
金属のプレス技術で一際複雑な形状の製品を展示していたのが、ダイワ精密プレス(株)様でした。看板展示品である大仏プレスに代表されるように、一般的な技術ではアンダー形状などになって加工が難しい形状を数多く加工されています。
昔ながらの工場で使える技術
金型製作が行われているのは、町工場のような中小企業が多数です。そのような昔ながらの工場で生産性を向上させるために使える技術の展示もありました。例えば(株)三雲製作所でプレス加工品を自動でピックアップし、ストックする機械を展示していました。従来のように担当者がプレス機の前に立って材料を送っていく方法に比べ、人件費を半分に押さえることができるといいます。また別のいくつかの企業では既存の金型にセンサーを取り付け、IoTの導入が可能になるシステムの紹介などもありました。
日本では少子化にともない労働人口が現象し、人材の確保が今後の大きな課題になるといわれています。既存の設備やシステムを活かして、工数を削減することができる機械やシステムは、今後さらに需要を伸ばしていくでしょう。
技術と需要のマッチングという課題
このような展示会に足を運ぶと、よく見かけるケースとして「こんなすごいものを作ってみました。でもこの技術を欲しがる企業が見つかりません」というのがあります。大きな視点で見れば、そのような「使い道はわからないがすごい技術」というのは、科学における基礎研究にも似て、技術の裾野を広げ、思わぬ躍進につながる可能性を秘めているとは思います。とはいえ、企業にとってはできるだけ早く実用化へと繋げていきたいものでもあります。技術のみを展示するのではなく、それを使って何ができるか、そんな提案も添えてみるとこで、より多くの企業の目に止まるのではないかと感じました。