製造業のエンジニアがライターを副業にする3つのメリット

元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場です。製造業に関連する気になるニュース、製品、技術などの他、技術ライティングについて取り上げていきます。

今回は「製造業のエンジニアがライターを副業にする3つのメリット」です。

製造業のエンジニアはライターを副業にするといい

在宅勤務が推奨され、製造業においても対応が求められています。実際、加工を行う現場では、機械を動かさなければ製造はできないので、在宅勤務はほぼ不可能と言わざるを得ない状況です。しかし、設計などのデジタル化が進んだ部署では、在宅、リモートワークは徐々に進みつつあります。

それに伴い、技術部門の副業解禁もニュースを賑わせています。日本の企業は、明確には禁止としていませんでしたが、長年副業を認めていませんでした。近年、働き方の多様化や、様々な事情により、それが大きく変わりました。製造業においても、事務系の仕事から、最近では技術系の仕事を行う人まで、副業として別の仕事を持つことが珍しいことではなくなりました。

製造業系のエンジニアにオススメできる副業として、ライター業があります。ライターとして自分の持てる知識や、技術、経験を文書化するということには、様々なメリットがあります。

製造業のエンジニアがライターを副業にする3つのメリット

製造業のエンジニアがライターを副業とする3つのメリットを挙げます。

副業として収入が得られる

当たり前ですが、副業としてのライターなので、個人ブログで情報発信するのとは異なり、原稿料が発生して収入が得られます。自らの知識や技術、経験は、製品として世に出す以外にも、文書として目に見えるものにすることで価値が生まれます。ブログでは価値を利益に換えることは難しいですが、ライターとして依頼を受けて書くものには対価が発生します。もちろん、依頼されて書く文書なので、掲載されるメディアの求める内容や、その文章を利用する会社の希望に合った文書でなければいけません。クオリティも相応のものを求められます。そもそも、ライティングを依頼してくれる顧客を探す必要があります。簡単に即収入になるというわけにはいきません。

しかし、ライター業は場所を選びません。外に出ての取材を行うようなライターは別ですが、書くこと自体は在宅でもできます。ライティングを行う時間もある程度融通が利きます。最近はインタビュー取材でもリモートで行うものが増えました。

昨今の状況もあり、製造業もデジタルマーケティングの活用が急速に進んでいます。そのため、製造業からのライティングの依頼は増加傾向にあります。増加はしていますが、対応できる製造業の知見のあるライターはあまり多くありません。また、製造業の経験者でライターという人はまだ非常に少なく、その知識、技術、経験を文書化する技術は大変貴重です。非常に有望な市場といえます。

自分の技術に対する理解が深まる、知識の幅が広がる

人に勉強を教えたら、自分の頭の中にある内容がより明確になり理解が深まった。誰かに勉強を教えたことがある人は、こんなことを経験したことがないでしょうか? 読んで理解しやすい文書を書くことは、自分の頭の中で綺麗に整理できていなければできません。理解していると思っていたが、いざ書き始めると何が言いたいのかわからない文章になる。それは、整理が出来ていない状態で外に出しているので、繋がり、流れがなくバラバラになっているからです。それを文字としてもう一度頭にとりこみ、繋げていくことで整理されていきます。書くことを重ねることで、感覚的に身についていたものが整理され、自分の技術に対する理解が深まっていきます。

また、自分の技術範囲以外の分野のことを書いていけば、色々調べながら書くことになるので、その技術に対しての知識が増えます。全く部門外でも、製造業のエンジニアであれば、物理、化学、力学などの基本的な知識は持っているものです。ベースがあるので、新しい技術的知識に関しても比較的早く理解できます。

文書化の技術を身に着けることで顧客からの信頼が高まる

自分の知識や技術を文書化することは通常の業務でも行う機会はあります。仕様書や説明書を書く。製品説明用の資料を作成する。論文や学会発表資料を作成するというのもあるかもしれません。エンジニアでも文書を書く機会はそれなりにあります。

それらの業務で書く文書は、顧客や社外に向けてのものがかなりあります。それが読みづらく、難解で理解できないような文書だったら、あなたはその会社と取引したいと思うでしょうか?エンジニアは図面だけ書いていればいいなんてことはありません。文書作成も重要な業務です。そのスキルアップの為にも、文書を書く技術を持ち、ライターを副業としていくことは多くのメリットがあります。

技術系ライティングサービスをはじめました

モノカクを運営するテクノポート株式会社では、デジタルマーケティングを推進する技術系企業に特化した「技術系ライティングサービス」を開始しました。デジタルマーケティングの成果はコンテンツのクオリティによって大きく変わります。

テクノポートでは製造業を中心とした技術系企業専門のコンテンツ制作により、技術の可能性を無限に広げます。

今こそネットを使ってアピールを行うとき

元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場です。製造業に関連する気になるニュース、製品、技術などの他、技術ライティングについて取り上げていきます。

今回は「今こそネットを使ってアピールを行うとき」です。

製造業はネットを使ったアピールが必要

「どんなに良いものでも、アピールしなければ選ばれることはなく、存在すら気づかれない」と、以前「製造業における文書化によるアピールの大切さ」という記事内で書きました。「良いものならいつかは売れる」ということはなく、良い点を知ってもらわなければ、いつまでたっても売れることはありません。自身の持つ技術、製品、サービスなどについて、相手に届くように自らアピールする必要があります。

展示会に出展する、業界紙に広告を出す、営業の方が見込みのありそうなところを回って説明するといった、自社のアピール方法は従来からあります。ただし、これには人手、時間、手間などがかかり、中小の企業が継続的にやるのは大変です。また、コロナ禍の現在、展示会は開催されず、対面での営業も難しくなっています。新たな顧客を探して難局を乗り越えていかなければならない状況でありながら、自社でのアピールが苦手という企業が多い製造業においては、非常に厳しい状況といえます。

今こそネットを使ってのアピールを積極的に行うべきです。この記事を読んでいる読者の方は、もちろんネットは何らかの形で使われているはずです。もしあなたが、どこに売っているかよくわからないようなものを買いたいと思った時、最初にすることは何でしょうか?近くにいる詳しそうな人に聞くというのもあるかもしれませんが、今どき多くの人はネットで検索をして探します。

自社の素晴らしい製品も、高度な技術も、文字や画像や動画などの検索できるコンテンツにして紹介していなければ、知られる機会が限られます。いつでも、世界中のどこからでも見つけてもらえる可能性のあるネットでのアピール、デジタルマーケティングはこれからの製造業にとっては非常に重要になります。特に、人手や費用を多くかけられない中小の製造業にとって、強い味方となります。

どのような文書にすればよいか

ネットでのアピールのために必要なのは「技術や製品の文書化」です。技術や製品をアピールするためには、それを説明、紹介するためのコンテンツに使われる文書が必要となります。ネットに限らず、パンフレットでも、展示会で配布されるチラシでも、もちろん技術や製品の文書化は必要になります。ただ、同じ文書化でも、ネットの場合と、展示会などで使われる文書では、書く内容が変わってきます。

例えば、パンフレットやチラシなどでは、入れられる文字に限りがあり、写真や図などを入れる幅にも制限があります。そのため、製品概要や性能数値などの情報、製品をイメージするキャッチコピー的な短い文、写真、図表などが主になります。

ネットの場合、基本的に文字は制限なく入れられます。図や動画も各種入れられます。そのため、製品概要や性能数値も細かく記載できます。開発までのストーリーや、実際に利用した人の感想なども入れて、読者に対し、魅力的な情報を多く届けることが可能です。ただし、ネットの場合、あまり長い文章では、読むのを途中で止めてしまい、逆に何も伝わらなくなることもあります。その情報にあった適度な長さや内容で書くことや、文章の構成、ページデザインなども重要になってきます。

また、文書は読ませたい相手によって内容の深さが異なってきます。製造業における技術や製品の文書化においては、読ませたい相手が本職のエンジニア、決定権者層、学生の他、子供向けまで幅広くあります。その技術を正しく理解したうえで、相手に合わせて変えていくことが必要です。

伝えたいことを理解し、知りたいことを考えて書く重要性

元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場です。製造業に関連する気になるニュース、製品、技術などの他、技術ライティングについて取り上げていきます。

今回は伝えたいことを理解し、知りたいことを考えて書く重要性についてです。

伝えたいことを理解する

何かについて文章を書こうと思ったとき、忘れられやすい2つの点があります。それが、伝えたいとしていることをよく理解すること。そして、伝えたい相手が知りたいことをよく考えて書くことです。自分の日々を記録する日記のようなものであれば、この点はあまり考えず好きに書けば済みます。しかし、何かを伝えるためであって、それを伝えたい誰かが明確にいるのであれば、この2つは非常に重要になります。

まず、伝えたいことを理解するという点。例えば、自社のホームページに載せる製品紹介の文章を書くとします。その製品は新発売のもので、以前よりも様々な性能がアップしています。そうなると、どの性能が、どのぐらいアップしたのか伝えたいと考えるかもしれません。また、性能アップにより、今まで使えなかった別の分野にも使えるようになったことが、伝えたいことになっているかもしれません。

伝えたい点が何であるのか明確にして、その点をしっかり、明確にわかるように文章内に盛り込みます。伝えたいことが明確になっていないと、その製品の全体的な説明だけに終わり、何がよくなったかわからない文章になってしまいます。遠足の感想文で、何が楽しかったのか書くべきところを、電車に乗ってどこにいって何をした、おしまい。そんな文章になってしまう感じです。伝えたいことを、箇条書きでもいいので書き出すなど、明確にしておくことが必要です。

特に、技術系ライティングサービスといった、クライアントがいるライティングではこの点が重要になります。クライアントとのヒアリングや、提供された資料から、クライアントがどの点を特に伝えたいのか理解しなければなりません。クライアントから更に深く伝えたい点を引き出すことも必要です。

伝えたい相手が知りたいことを考えて書く

伝えたいことを理解したら、次は伝えたい相手が何を知りたいのか考えます。こちらが一方的に伝えたいことを書き並べても、伝えたい相手が知りたいことでなければ最初の数行で読み飛ばされます。伝えたい相手はどのような人で、そういう人は何を知りたがっているかを考え、必要な情報を過不足ない量で、伝えたいことを元に書いていきます。

例えば、伝えたい相手が機械のエンジニアであれば、「輝くステンレス筐体が・・」とか「高速に移動する力強いアームが・・」と言われても、だからどうしたという話になります。それよりも、「ステンレス製の筐体により耐塩性、耐酸性が高まり・・」とか「従来のXXより、20%剛性を上げたアームにより、移動速度がおよそ10%向上し・・」のように、エンジニアの知りたい情報が、具体的に数値も使って書かれている。このように、伝えたい相手に合わせて、伝えたいことを表現して書くことが何よりも重要です。製造業向けの技術ライティングでは、クライアントがいて、売りたい相手が明確に決まっている場合がほとんどなので、この点は特に強くなります。

広く一般に向け、誰でもわかる文章を書くのは非常に難しい作業です。人それぞれ考えることも、感じ方も違い、経験や知識の量も違います。それらすべてに当てはまる文章を書くのは至難の業です。伝えたい相手を明確にすることで、その人が何を知りたいのか考えやすくなり、文章は書きやすくなります。文章を書くことは、設計やプログラミングのような、論理的な作業に似ています。伝えたいことを理解し、伝えたい相手が知りたい内容に合わせ、論理的な流れを考えて組み立てていけば、相手に届きやすい文章になります。

エンジニアも持つべき書く技術

元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場です。製造業に関連する気になるニュース、製品、技術などを取り上げていきます。今回はエンジニアも持つべき書く技術についてです。

エンジニアにも必要な書く技術

エンジニアは、設計図を書いたり、試作品のテストをしたりするなど、いわゆるエンジニアという言葉から想像される業務以外にも様々な業務があります。その中には、仕様書の作成、製品テストのレポート作成、お客様からの技術的な質問への回答といった、文章を書かなければならないものも多くあります。しかし、こういった業務を苦手とするエンジニアは多くいます。

もともと、国語の授業が嫌い。「この部分で筆者はどのように感じたでしょうか?」って、なんだその問題、そんなもの知るか!とか。数字は嘘をつかない、ちゃんと手をかけてやれば、機械は人を選ばず間違いない返事を返してくれるものだとか言い出す。子供の頃は、算数や理科が大好き。機械を見たら分解したくなる。家にある調味料を全て混ぜ合わせて電子レンジに入れて大変なことになった。隙あらば、近くにあるものを組み合わせて工作していた。エンジニアには、そんな感じの人が多いはずです。私もそうでした。

ところが、リモートワークが推奨され、働き方改革が進む昨今。エンジニアにも文章によるコミュニケーション能力が求められる機会が増えてきました。また、中小製造業では、1社依存や下請け体質脱却のため、新規顧客開拓を模索している企業は多くあります。新規顧客開拓には、以前「製造業における文書化によるアピールの大切さ」という記事でも書いた通り、ネットを使った宣伝は欠かせず、技術や製品の文書化が必要です。技術や製品の文書化は、それを知る者でなければ難しいので、エンジニアにも書く技術が求められることになります。

エンジニアが持つべき重要なスキルの1つとして、書く技術の需要が高まることが今後予想されます。

技術系ライティング講座もあります

エンジニアの書く文章については「わかる人にしかわからないような文章を書く」とよく言われます。確かに、広く一般の人に伝えるような文章を書く場合には、誰にでも理解してもらえるような文章を書く必要があります。しかし、技術系ライティングでは、「わかる人に一番届く文章」「わかる人に最も納得してもらえる文章」を書く必要があります。

製品を探しているエンジニア向けならば、その必要性はより高くなります。専門性の高い文章にしなければなりません。これが就職希望の学生向けならば同じ製品の説明でも書く内容は変わります。この件については、以前「技術系ライターが行う書き分け」という記事でも触れました。読んでもらいたい人に合わせて文章を書き分けることが必要です。

製造業向けのライティングを専門に受ける窓口「技術系ライティングサービス」の事業では、製造業の現場経験を持つライターや、工業的知識を十分に持つライターが、製造業における様々なコンテンツのライティングを行います。また、「書く技術」を身に着けるための、エンジニアや製造業の広報に向けたライティング講座の開催も予定しています。開催については順次発表します。是非ご利用ください。

テクノポートの技術系ライティングサービス

技術系ライティングサービスの価格感

元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場です。製造業に関連する気になるニュース、製品、技術などを取り上げていきます。今回は技術系ライティングサービスの価格感についてです。

技術系ライティングサービスをリリース

製造業向けのライティングを専門に受ける窓口「技術系ライティングサービス」が正式にリリースされました。

テクノポートの技術系ライティングサービス

例えば、自社のホームページに載せる製品紹介や技術紹介用の文書。展示会で配布するチラシ、掲示するパネルに載せる文書。リクルートパンフレット向けの文書。メルマガ用コンテンツの執筆。専門誌への寄稿する記事の執筆。こういった、製造業における様々なライティング事案を自社内でやるには、人も時間も足りません。外部に頼んだとしても、技術的なことや、現場の事情をよく理解しているライターでなければ、ライティングは困難です。

このサービスでは、製造業の現場経験者や工業の知識を持つライターが、製造業向けのコンテンツを作成します。専門としていた分野外であっても、基礎的な工業の知識を持っているので、素早く内容を理解し、ライティングまで行うことができます。現場を経験している者ならば、製品を選ぶエンジニアが、どのような情報が欲しいのか、注目するポイントはどこであるのかがわかるので、その点を中心にライティングが行えます。

製造業は素晴らしい技術や良い製品を持っていても、それをアピールすることが苦手です。アピールするためには、相手に伝わりやすく技術や製品を文書化する必要があります。技術系ライティングサービスでは、このような貴社のライティングの困り事を解決していきます。

技術系ライティングサービスの価格感

実際に技術系ライティングサービスを利用するにあたって、一番気になるところは「どのぐらいの料金で書いてもらえるのか」という点だと思います。工数や材料によって価格が変わるように、ライティングサービスも作業量や内容の深さで変わってきます。そのため、案件ごとに見積もる形になりますが、おおよその目安的なものは出せるので、以下に幾つか例を挙げておきます。

〇広告、パンフレット、メルマガコンテンツなどの短いライトな案件

月に数回送るメルマガや展示会向けのチラシなど、文字数にして700~1,000字程度の短いコンテンツの作成の場合の料金例です。

例えば、展示会の際に配布するチラシへ掲載する製品の解説文を1,000字程度にまとめるとします。取材、撮影はなく、資料の提供と共に、特にアピールしたい点を幾つか挙げていただく。それを元に文書の作成のみを行い、レイアウトなどは自社で行う場合。この条件ならば1件20,000円でお引き受けできます。

同様に、企画案を元に、700~1,000字程度のメルマガコンテンツを作成する場合も20,000円でお引き受けできます。企画案を提出するところからの場合は、別途企画料が追加されます。取材がある場合も同様に追加料金が発生します。

〇自社技術や製品紹介などのWeb向けのコンテンツ、リクルート向けコンテンツなど通常のボリュームの案件

自社技術や製品紹介などのWeb向けのコンテンツ、オウンドメディアコンテンツ、リクルート向けコンテンツ、専門誌への寄稿など。文字ボリュームにして2,000字から3,000字前後の通常コンテンツの場合の料金例です。

取材が無く、資料を受け取り3,000字程度のコンテンツにまとめる。このような執筆のみの案件ならば40,000円でお引き受けできます。現場担当者にヒアリングをして3,000字程度のコンテンツにまとめる場合ならば、ヒアリング取材の追加料金として20,000円がかかり、合計60,000円となります。これにライターがコンパクトカメラ程度の機材を使い、Web向けの簡単な写真を撮影して記事に使用する場合は、撮影費20,000円が追加されて80,000円からお引き受けできます。

専門誌へ寄稿する原稿のように専門性、技術的に高度なものの場合は、原稿料があがります。3,000字程度のボリュームのものならば50,000円からお引き受けできます。

〇長いコンテンツの作成、多くの資料を必要とする案件

4,000字を越えてくるような特に長い記事の作成の場合は、60,000円からお引き受けできます。また、コンテンツ作成のために調査が必要な場合は、別途調査費がかかります。調査費は調査にかかる時間や量により変わりますが、追加料金として10,000円からで対応します。

技術系ライティングサービスの料金は各案件ごとに見積もりますので、お気軽にお問い合わせください。

技術系ライターが行う書き分け

元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場です。製造業に関連する気になるニュース、製品、技術などを取り上げていきます。今回は技術系ライターが行う書き分けについてです。

技術系ライターだからできること

前回の記事で技術系ライターが受けるライティング案件の例を幾つか挙げました。

前回の記事はこちら:「製造業における文書化によるアピールの大切さ

この記事の中で「ターゲットとなる層がその製品を実際に使う技術者なのか、技術はそれほど詳しくはないが購入を決める決定権者層なのか、または全くの一般の人かなどにより、書く技術の深さや表現を変えて書く」と説明しました。製造業における技術や製品の文書化において、技術系ライターの必要性はこの部分にあります。

技術を説明するには、その技術を理解している必要があります。工業の基本的な知識、製造業における経験がなければ、その技術を理解するのに多くの時間が必要になります。技術系ライターは、もともとその技術や製品を利用していたり、知っていたりする場合が多く、速やかに理解できます。また、専門外であっても、基本的な工業的な知識を持っているので、理解に時間がかかりません。問題なく説明がおこなえます。

技術をかみ砕いて伝える

技術や製品を伝えたい相手は様々です。技術者なのか、技術はそれほど詳しくない決定権者なのか。技術的なことがわからない文系の学生かもしれません。また、子供向けのコンテンツという場合もあります。技術系ライターは、技術を理解した上で、それぞれの人に合わせて説明する深さを変えて書き分けることができます。

例えば、金属加工をおこなっている会社があったとします。技術者にアピールするために書くのならば、加工できる素材やサイズ。対応できる表面処理や加工方法の他、加工実績や価格感、納期など。具体的に技術者が欲しいと思う情報を書きます。専門用語もそのまま使い、必要な情報を過不足なく入れていきます。

これが、技術がわからない就職活動中の文系の学生だと大きく変わります。企業情報を研究しているはずなので、金属を加工して何らかの部品や装置を作っている会社ということは理解しています。しかし、どのように加工しているのか。どのぐらい精密な加工ができて、それがどれほど凄いことなのかを理解しているかとなると難しくなります。専門用語を書いても全く伝わらないので、簡単に説明する必要があります。

例えば、「プレス金型」といえば、技術者ならそれで何をするのか、どのように使われて、どうやって作られているか、説明しなくても理解できます。これが学生向きならば「つくりたい形に金属を曲げたり、打ち抜いたりする道具」のように別の言葉で書き換えます。さらに子供向きならば「金属は強い力をかけると曲がって元にもどらなくなる」という、金属の特性あたりから説明することになります。金属加工を理解した上で、金属加工について対象にあわせて深さを変えて書き分ける。製造業向けのコンテンツにおいて、これが速やかにできるのが技術系ライターと通常のライターの違う点です。

製造業の現場経験を持つライターや、工業的知識を十分に持つライターは、自社の技術や製品をアピールするために大いに役立ちます。近く、製造業向けのライティングを専門に受ける窓口ができる予定です。

書くことによって製造業を盛り上げていきますので、詳細が決まりましたら、またご連絡させて頂きます。

製造業に特化した技術系ライターが依頼される仕事

元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場です。製造業に関連する気になるニュース、製品、技術などを取り上げていきます。今回は文書化による技術系ライターが受けるライティング案件についてです。

工業製造業系ライターとは

前回の記事で「どんなに良いものでも、アピールしなければ選ばれることはなく、存在すら気づかれない。」ということで、製造業では技術や製品の文書化が必要であることを書きました。

製造業における文書化によるアピールの大切さ

私はかつて光ファイバーや半導体関係の装置の設計、機械系の特許に関わる仕事をやっていました。その時の知識と経験を活かし、工業製造業系ライターを名乗ってライター活動をしています。

技術や製品の文書化が必要とわかっていても、やはり実際に書くとなると簡単にはいきません。時間もかかるし、それを行う人もいない。小さな会社になればその傾向は強まります。そんな訳で、私のところには大小様々な製造業の会社からライティングの依頼が入ります。その内容も多岐に渡ります。幾つか紹介していきます。

書くことで製造業を盛り上げる

自社の特徴、自社製品、技術の紹介、解説

この依頼は一番多いかもしれません。自社の強みや歴史、持っている技術、他社との違いなどを特設ページで紹介したい。製品の開発経緯や技術的に困難だった点、他との優位性を紹介する、またはそれをエンジニアが語るような記事を作りたい。客先導入事例をインタビュー形式で紹介したい。製品の特長や性能を紹介するホワイトペーパーを作りたい。展示会で配布するパンフレット、掲示するパネル用の文章。そんな感じのコンテンツのライティングです。

ターゲットとなる層がその製品を実際に使う技術者なのか、技術はそれほど詳しくはないが購入を決める決定権者層なのか、または全くの一般の人かなどにより、書く技術の深さや表現を変えて書くことになります。技術全体を理解して書くことはもちろん、それをより簡潔にわかりやすく書くことも求められます。

就職活動の学生に向けた自社紹介

最近結構多いのがこの依頼。学生に向けた自社の製品や技術、取り組みなどを紹介するコンテンツです。ネットだけでなく、会社説明会の際に配布するパンフレット用というのもあります。理系の学生ならば専門的な用語も大丈夫なのですが、技術系の業務以外の採用では文系の学生に自社を説明する必要があります。BtoBの会社だと、就職活動をするまで名前すら知らなかったなんてこともあり、多くの場合、業務内容を広く、文系の学生でもわかるように書くことが求められます。

専門誌への寄稿文

各業界には専門誌があります。その編集部から、自社の製品、技術の特長を紹介する記事の執筆依頼が入ることがあります。担当技術者は忙しいし、記事を書いたこともないのでできない。広報もニュースリリースならいいが、雑誌に載る記事となると難しい。では外注でとなるのですが、通常のライターだと技術的なところが全く分からないし、理解するのにも時間がかかる。技術系の記事を書いているライターに依頼がきます。

オウンドメディアに掲載する記事の執筆

自社の業界動向の紹介や、基礎的な技術解説などの記事の執筆依頼です。エンジニア向けの専門的なものから、学生や子供向けまで内容は様々です。最近はやや減少傾向にあります。

その他

この他、社長挨拶の代筆、助成金の申請書用に使う自社製品の説明文執筆なんて依頼もあります。製造業に関わる様々なライティング案件の依頼がきます。もちろん、工業やテクノロジー系のメディアに掲載される、ライター名が記載される記事も定期的に書いています。しかし、上記のような、企業から発信されるライター名の出ない記事の数が圧倒的に多いです。

製造業は書くことに困っています。そんなライティングの困りごとを、製造業の現場経験を持つライターや、工業的知識を十分に持つライターが、まとめて引き受ける窓口を近いうちに作れればと考えています。書くことによって製造業を盛り上げていきます。

製造業に特化した技術系ライターが依頼される仕事

元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場です。製造業に関連する気になるニュース、製品、技術などを取り上げていきます。今回は文書化による技術系ライターが受けるライティング案件についてです。

工業製造業系ライターとは

前回の記事で「どんなに良いものでも、アピールしなければ選ばれることはなく、存在すら気づかれない。」ということで、製造業では技術や製品の文書化が必要であることを書きました。

製造業における文書化によるアピールの大切さ

私はかつて光ファイバーや半導体関係の装置の設計、機械系の特許に関わる仕事をやっていました。その時の知識と経験を活かし、工業製造業系ライターを名乗ってライター活動をしています。

技術や製品の文書化が必要とわかっていても、やはり実際に書くとなると簡単にはいきません。時間もかかるし、それを行う人もいない。小さな会社になればその傾向は強まります。そんな訳で、私のところには大小様々な製造業の会社からライティングの依頼が入ります。その内容も多岐に渡ります。幾つか紹介していきます。

書くことで製造業を盛り上げる

自社の特徴、自社製品、技術の紹介、解説

この依頼は一番多いかもしれません。自社の強みや歴史、持っている技術、他社との違いなどを特設ページで紹介したい。製品の開発経緯や技術的に困難だった点、他との優位性を紹介する、またはそれをエンジニアが語るような記事を作りたい。客先導入事例をインタビュー形式で紹介したい。製品の特長や性能を紹介するホワイトペーパーを作りたい。展示会で配布するパンフレット、掲示するパネル用の文章。そんな感じのコンテンツのライティングです。

ターゲットとなる層がその製品を実際に使う技術者なのか、技術はそれほど詳しくはないが購入を決める決定権者層なのか、または全くの一般の人かなどにより、書く技術の深さや表現を変えて書くことになります。技術全体を理解して書くことはもちろん、それをより簡潔にわかりやすく書くことも求められます。

就職活動の学生に向けた自社紹介

最近結構多いのがこの依頼。学生に向けた自社の製品や技術、取り組みなどを紹介するコンテンツです。ネットだけでなく、会社説明会の際に配布するパンフレット用というのもあります。理系の学生ならば専門的な用語も大丈夫なのですが、技術系の業務以外の採用では文系の学生に自社を説明する必要があります。BtoBの会社だと、就職活動をするまで名前すら知らなかったなんてこともあり、多くの場合、業務内容を広く、文系の学生でもわかるように書くことが求められます。

専門誌への寄稿文

各業界には専門誌があります。その編集部から、自社の製品、技術の特長を紹介する記事の執筆依頼が入ることがあります。担当技術者は忙しいし、記事を書いたこともないのでできない。広報もニュースリリースならいいが、雑誌に載る記事となると難しい。では外注でとなるのですが、通常のライターだと技術的なところが全く分からないし、理解するのにも時間がかかる。技術系の記事を書いているライターに依頼がきます。

オウンドメディアに掲載する記事の執筆

自社の業界動向の紹介や、基礎的な技術解説などの記事の執筆依頼です。エンジニア向けの専門的なものから、学生や子供向けまで内容は様々です。最近はやや減少傾向にあります。

その他

この他、社長挨拶の代筆、助成金の申請書用に使う自社製品の説明文執筆なんて依頼もあります。製造業に関わる様々なライティング案件の依頼がきます。もちろん、工業やテクノロジー系のメディアに掲載される、ライター名が記載される記事も定期的に書いています。しかし、上記のような、企業から発信されるライター名の出ない記事の数が圧倒的に多いです。

製造業は書くことに困っています。そんなライティングの困りごとを、製造業の現場経験を持つライターや、工業的知識を十分に持つライターが、まとめて引き受ける窓口を近いうちに作れればと考えています。書くことによって製造業を盛り上げていきます。

製造業における文書化によるアピールの大切さ

元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場です。製造業に関連する気になるニュース、製品、技術などを取り上げていきます。今回は製造業における文書化によるアピールの大切さについてです。

アピールしなければ誰からも選ばれない

「どんなに良いものでも、アピールしなければ選ばれることはなく、存在すら気づかれない。」製造業に限らず、どの業界でも言える話ですが、自身の持つ技術、製品、サービスなどについて、自らアピールすることは意外と行われていません。製造業は、特にアピールが弱い、自社でアピールすることが苦手という企業が多い業界と言えます。

「良いものならいつかは売れる」と言われることもあります。それは、偶然にも良いところに気づいてくれた人が、別の人に良いところをアピールしてくれたお陰と言えるでしょう。何もアピールしていないのに製品を選んでもらえるなんて、町一番の不良が雨に濡れながら捨てられた子犬を拾っているところを、たまたま見られて恋に落ちるようなもの。そんな都合のいい話は、平成を飛び越して昭和のマンガかドラマの世界です。ハッキリと、分かりやすく、良いところをお客様に伝えなければ、その製品を選んでもらえる可能性は非常に低くなります。

では、製造業においては、どのようにアピールしたらいいのか。昔からよく行われているものには、展示会に出展する、業界紙に広告を出すなどがあります。どれもそれなりに効果はありますが、費用や人手、時間、手間などがかなりかかり、小さな企業が大掛かりに、なおかつ継続的にやるのは難しい方法です。また、かなりの費用をかけてやったものの、あまり効果が得られない場合もあります。他にも、営業の方が見込みのありそうなところを回って説明する方法もありますが、既存のお客様ではなく新規顧客開拓となると簡単にはいきません。

ネットを使ったアピール

今の時代はネットを使ったアピールが効果的です。かつては、何か必要な部品を探したいと思った時は、部屋の奥にある書棚に行って、分厚いカタログをめくって調べることがありました。ちょっと変わった加工を行いたいと思った時は、出入りの営業の人や、協力工場の社長に電話して、こんな加工ができる工場を知らないか聞いたものです。しかし、今はまずネットで検索をかけるエンジニアがほとんどです。ネットで探して、希望のものと同じ物があればそれを選択。近い物があれば、こういうのは無いか、こういう事は出来ないかと、メールか問い合わせフォームから質問。それでも見つからなければSNSで知っていそうな知り合いに質問。そんな感じで、万事ネットで事が進んでいきます。

ネットでのアピールは、特設サイトをつくってプロモーションを打つなんてことをすればもちろん凄い費用がかかります。しかし、製品の特長や性能、詳細仕様、使用例、価格など、エンジニアの知りたい最小限の情報がしっかり記載されている程度であれば、費用も更新の手間もそこまではかかりません。特殊な技術や製品であるほど、検索で探される機会が多くなります。広告を出すとしても、ターゲット層に対してピンポイントに広告を出すことも可能です。小さな企業ほど、ネットを活用したアピールが使いやすく、費用も抑えられて効果的です。

技術、製品を文書化して説明する

今の世の中、ネットでのアピールが使いやすく効果的ではあるのですが、そのためには1つやらなくてはならないことがあります。それが技術や製品の文書化です。

ネットのコンテンツには文字、写真、動画などがあります。技術や製品をアピールするためには、それを説明、紹介するためのコンテンツに使われる文書が必要となります。そのための技術や製品の文書化が必要なのです。写真や動画なら文字はいらないのでは?と思われるかもしれませんが、そうでもありません。写真や動画さえ見れば、その性能やサイズ、他との相違点などまでわかれば文字は必要ないでしょう。そのあたりは文字や数字で表さなければ伝わりません。写真につくキャプションも、動画のなかのナレーションも、元々は文字です。文字では伝わりきらないものもあり、コンテンツにおいて写真や動画も重要ですが、技術や製品の文書化はコンテンツ作りの第一歩です。

では、技術や製品の文書化ですが、どのように書いたらいいのか。いままで当サイトでは製造業向けの文章の書き方や、Web記事の完読率を上げるテクニックなど、書く方法について取り上げてきました。

製造業向け「伝わる文章の書き方講座(1/4)」

紙媒体とは違うWeb記事の完読率を上げる3つのテクニック

書くことも一つの技術なので、これを読めばただちに技術や製品の文書化ができるかというと、そうではありません。これらの情報を元に何度も書いて、トレーニングする必要があります。製品を作る方に忙しくて手が回らないし、それをやれる人もいないというのももちろん分かります。しかし、新規顧客や新たな販路の開拓には、技術や製品の文書化は欠かせません。今後検討すべき課題の一つです。

電子化による効率化以外の効果

元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場です。製造業に関連する気になるニュース、製品、技術などを取り上げていきます。今回は手続きの電子化と事業継続計画についてです。

電子化の大きな波

ここ数年で色々なものの電子化が進んでいます。身近なところだと、2019年10月1日からの消費税増税におけるキャッシュレス消費者還元事業。開始直後は、駆け込み登録申請で手続きが遅れ、開始までに機械が届かないとか、登録が間に合わないなんて事が多発していました。最近は、小さい店でも対象店舗であるポスターを店頭に貼っているところが増えてきて、ようやく広まってきたと言う感じがします。

店側が負担するカードなどのキャッシュレス決済手数料は海外と比べるとかなり割高なので、こんな少額で使うのはお店に悪いかなと思いつつも、やはり釣銭のやりとりなどなく便利。しかも、もともとのカード支払い時のポイントの他に、さらに5%返ってくるとなると結構大きい。最近は、外出しても現金を出すことが週に1回あるかないかという状況です。他にも、身近なところの話として、「デジタル手続き法案」が令和元年5月31日公布されています。

デジタル手続法

正式名称は「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律」と、やたらに長い名前のこの法律。

いずれは、役所にマイナンバーカードなどを持って行けば、あっちの窓口に行ってこの書類をもらってきて、向こうの窓口でこの書類を提出してといった、よくある手続きの煩雑さが無くなるとか。色々書いて提出したのにもかかわらず、しばらく経ったらまた同じことを書いた書類を出すことになるといった事も無くなります。そして、いずれかは、引っ越しの時などに役所で住民票を変更したら、電気やガス、電話、ネットといったインフラ関係の手続きも全部行われているようになるかもしれないというものです。

日本は遅れていると言われていますが、徐々に電子化、デジタル化が進んでいるようです。

企業に求められる電子化

先の2つの話は個人に係る話ですが、法人でも電子化の波がかなり大きくきています。例えば、2020年4月から一定の法人が行う法人税などの申告の電子申告が義務化されます。社会保険、労働保険関係も4月から電子申請が義務化されます。

大法人の電子申告の義務化の概要について – e-Tax – 国税庁

厚生労働省 2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます

制度の詳細は国税庁、厚生労働省のサイトに掲載されてますのでそちらをご覧ください。一定の法人とは、資本金額が1億円を超えるとありますが、いずれかは全ての法人にまで広がる事も無いとは言い切れません。

パソコン導入によるペーパーレス化の弊害

製造業に限った話ではないですが、事務処理の電子化は早急に進めるべき案件といえます。ただ、一昔前、OA化によるペーパーレスといってパソコン導入を進めた時代がありました。結果、ペーパーレスどころか、逆に必要のない書類までプリントアウトして紙の書類を増やし、保管に困るという事態が起きています。もちろん、帳簿の情報など、法令上紙で残さないといけないものもあります。しかし、事務処理の電子化と共に、その書類は本当に紙として出力する必要があるのか、その書類自体を作成する必要があるのか考えることも重要になっています。

帳簿の電子化

ちなみに、申請や所定のソフトを使う事などで帳簿も電子化できます。保管場所に困るとか、そういった経費を削減したいという製造業の方は、電子帳簿化が有効だと思います。法令ができても、まだ申請する会社は多くないようです。

電子帳簿保存法関係|国税庁

近年自然災害が増えているので、紙情報の電子化はBCP(事業継続計画)的にも考えた方がいいかもしれません。帳簿、図面、技術データ類が電子化してあれば、何かあった時も復旧が早くなります。また、電子化の際にはバックアップも忘れずに。できればクラウドにもバックアップするといいです。災害とハードディスクのクラッシュは忘れた頃にやってくる。対策大事です。

今すぐやれる製造業の小さなデジタル化

元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場です。製造業に関連する気になるニュース、製品、技術などを取り上げていきます。今回は製造業のデジタル化についてです。

製造業のデジタル化への動き

人手不足、働き方改革といった問題の解決策として、各業界でデジタル技術の活用が注目されています。もちろん製造業においても、デジタル改革というのは近年大きな話題となっています。

  • IoTで見えていなかったものを見える化する。
  • AIを使ってより最適な加工条件を導き出したり、熟練技術者の技術を学習させたりする。
  • 3D CADと3Dプリンターで試作や解析まで容易におこなえるようになり、製品の質をあげていく。
  • PLMを導入して、各個人が持つ技術情報が部門を超えて一元管理される。
  • 協働ロボットを導入して作業効率のアップする。

など。人手不足、働き方改革にとどまらず、技術継承やコストダウン、安全対策など、製造業ではデジタル化により解決できる問題が数多くあります。

製造業のデジタル化に関しては、国も様々な取り組みを行っています。経済産業省が毎年発行している「ものづくり白書」では、第4次産業革命がここ数年の大きなテーマです。2019年度版では、我が国の製造業が世界に対して競争力を強化する4つの方策を上げています。

  1. データの活用による新たなビジネスモデルの構築
  2. 強みを活かした世界市場の開拓
  3. 製造×AI・IoTスキル人材の育成と活躍できる現場作り
  4. 技能のデジタル化と徹底的な省力化

2011年にドイツから始まった、製造業のデジタル技術を中心とした革新、「インダストリー4.0(第4次産業革命)」の波は、確実に日本にも影響を与えています。革新が進みつつあるものの、それを進めていく人材不足も問題となっていることが白書からわかります。

2019年版ものづくり白書

もう少し具体的な例として、国と民間が協力して行っているこんな研究もあります。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)と産業技術総合研究所、大阪大学、中部大学が共同して、製造現場で自律的な作業を実現するロボットのAI技術の開発です。

製造現場でのロボットの自律的な作業を実現するAI技術を開発

製造、組み立てラインでのロボットの使用は以前から行われていました。単一作業を行うには、人間より高速かつ正確。長時間の作業でも問題ない点は、今まで製造業で大いに役に立ってきました。しかし、多品種少量生産となると、変更の度に動作を新たに教えるか、ロボットそのものを変えないといけません。このロボットAI技術によって多品種少量生産でもロボットが使えるようになります。こういう形でも製造業のデジタル化は進みつつあるのです。

小さな町工場でもできるデジタル化

製造業のデジタル化は、今後もさらに加速して進んでいくのは確実と思われます。避けて通れない事案であり、やらなければ取り残されて、やがて消えていくことになるかもしれません。

とはいえ、総務省・経済産業省の経済センサス―活動調査によれば、日本には約22万もの工場があり、その99%以上が従業員数300人以下の中小企業。IoT、AIだなどと言われても、費用もなければ、それをやれる人もいない。納期の管理なんて、今どきのAIなんかより遥かに優秀な社長の頭で、柔軟にサバをよみつつ管理ができるよ。機械の不調なんて音を聞いていればわかるさ。情報共有なんてパソコンでしなくても、話していれば勝手に共有できている。別にデジタル化なんて必要ない。なんて思うところも多いのではないでしょうか。確かに、人数が10人もいないような小さな工場で、これからはデジタル化だ!と言われても、何のことだかわからないというのも当然あると思います。

IoTでスマートファクトリーとか、設計情報をシステムで一元管理とか、協働ロボット入れて省力化とか。何もそんな大がかりなところからデジタル化をしなくても、現状の製造業ではかなり効果があると思われる、ほんのわずかなデジタル化があります。その1つが、受発注でFAXをやめることです。

私が以前、ある小さな工場の社長から聞いた話です。その工場は、何台もの機械を社長一人で操作して部品をつくる加工工場。材料の調達も、加工も、発送も全て社長1人でおこなっています。以前はFAXを使って図面、発注書などを受け、見積もり書の送付も行っていました。パソコンで作った書類をプリンターで打ち出し、それをまた送る。送られてきた書類が山積みになっていく。事務作業が増えるばかりで、一番重要な加工作業にあてられる時間を圧迫していました。

では、事務作業を減らすにはどうしたらいいか。その結果おこなったのがFAXの廃止です。

注文などは全てメールで行うようにしました。その結果、事務作業は大幅に減り、管理も楽になる。作業効率が大幅に上がったそうです。最初は、それでは注文ができないと苦情を言う業者もあったそうですが、廃止は特に問題はありませんでした。今ではインターネット経由の注文も増えているそうです。

今もFAXでやり取りしている製造業の方は結構いるのではないでしょうか?電話しか連絡手段のない時代には大変便利なものでした。しかし、今はもっと便利なメールがあります。導入には、それほど手間も時間もお金もかかりません。そのぐらいのところからまず、デジタル化してはどうでしょうか。今ではメールも煩わしいということで、ビジネス向けのチャットツールも活躍するようになりました。それも比較的簡単に導入ができます。日本の製造業のデジタル化は、全体で見るとまだかなり遅れているといえます。変えられるところから小さくデジタル化していく。小さなところからコツコツと。日本の製造業が得意とするところです。

エヌプラス ~新たな価値をプラスする素材・技術の展示会~レポート(後編)

2019年9月11日(水)から9月13日(金)の日程で、東京国際展示場にて「エヌプラス ~新たな価値をプラスする素材・技術の展示会~」が開催されました。エヌプラスは、プラスチックや金属材料などの素材系を中心に、多岐にわたる技術、製品が展示されています。元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場が、展示会の様子や気になる製品などをレポートします。後編では、気になった製品や技術を紹介していきます。

消防士のヘルメットにも使われる難燃性の発泡スチロール

最初の製品は、こちらの消防士のヘルメット内部の衝撃吸収ライナに使われている発泡スチロール素材。

愛媛県に本社があるウシオマテックス株式会社の「カルック」という素材です。通常の発泡スチロールと同じ軽さと遮熱性を持ちながら、難燃性という特徴を持っています。発泡スチレン樹脂に特殊なコーティングを行うことで難燃性を実現。通常の発泡スチロールと同じように自由な形に成形できます。

軽く、断熱性があり、丈夫で燃えないので、消防士のヘルメット以外にも、天井や畳床などの建材にも利用されています。シックハウス対策が施され、ダイオキシンの発生もなく環境にも配慮。EVとか航空宇宙関係など、軽くてある強度は欲しいが、燃えては困るというような物なら色々使えそうです。

樹脂と金属を接合

続いては、大阪の中西金属工業株式会社のブースに展示されていたこちら。金属とPP、CFRTP、POMなどの樹脂との接合です。

金属と樹脂素材をつなげる場合、通常は接着材を使うか、穴を開けてボルトなどで固定します。これは、表面処理した金属に樹脂を浸透、凝固させて強固に接合しています。

金属の表面処理には、愛知県の輝創株式会社のPMS処理(Prominent Micro Structure)が使われています。金属表面に微細構造を隆起させてプラスチックとの接合層とする技術で、少ない加圧力で成形済のプラスチックと強力に接合することが可能となります。軽量化を行うため、一部樹脂素材を使いたいような時に使えそうです。

射出成型でつくられた板材

次は、射出成型により作られたブロック状の板材。東京の旭モールディング株式会社の製品。

樹脂を使った切削試作用の厚い板材を、接着ではなく独自の金型を使い射出成型で成形しています。汎用の樹脂素材からスーパーエンプラまで幅広い樹脂素材に対応。顧客から支給される材料にも対応してくれるそうです。

顧客は板材料を自分でつくらなくても済み、そのまま切削加工ができます。既に幅広い業界の開発部門での利用実績があります。

低価格の小型CTスキャン

最後の製品がこちら。長野県の株式会社アールエフの小型CTスキャン装置です。価格は驚異の280万円。

幅650mm、奥行と高さはそれぞれ300mmほどの机におけるサイズながら、医療用のCTスキャンと同じように断層画像を見ることができます。これがあれば、鋳物や樹脂成型品内部の空洞を非破壊で確認したり、組み立てられたままで機械内部の干渉を確認したりすることができます。

ちなみに、画面に映っているのは箱に入ったタケノコの里。食品業界でも使えます。

そして、同じく株式会社アールエフのモニター付き360度先端稼働内視鏡。先端径が6.9mmでケーブル長さ1.5m、モニターサイズ2.4インチのものなら27万円とかなりリーズナブル。客先修理で、装置を移動させたり分解したりするのが難しいところで、見えないとこと確認するような時には活躍しそうです。

どちらの製品も、なんとなく個人的に欲しいと思う品。直ぐに使う用途はないので、もちろん買いませんが、個人でも手の届きそうな価格感が心に響いてきます。

小さいが盛り沢山な展示会

エヌプラスは、展示会としてはかなり小規模ですが、内容は広く、かなり特色のある物が多く並んでいました。大きな工作機械が難題も動いているような派手さはないももの、気になって近づき説明を聞いてみると、そんな凄い物だったのかと驚くこともよくありました。見どころの多い展示会でした。

エヌプラス ~新たな価値をプラスする素材・技術の展示会~レポート(前編)

2019年9月11日(水)から9月13日(金)の日程で、東京国際展示場にて「エヌプラス ~新たな価値をプラスする素材・技術の展示会~」が開催されました。元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場が、展示会の様子や気になる製品などをレポートします。前編では展示会の概要を紹介していきます。

素材を中心とした各種技術を展示

エヌプラスは、プラスチックや金属材料などの素材系を中心に、多岐にわたる技術、製品が展示されています。以下の展示会が同時開催され、全体でエヌプラスとなっています。

  • セルロースナノファイバーEXPO(CNFEX)
  • マイクロプラスチック対策展(MI-CONEX)
  • プラスチック高機能化展(N-PLEX)
  • 軽量化・高強度化展(MALSEC)
  • コーティング・表面処理展(COAT-TEC)
  • 接着・接合・ファスニング展(JOINTEC)
  • 耐熱・放熱・断熱展(HEAT-TEC)
  • 受託・加工技術展

来場者としては、自動車、電機・電子、化学・金属、機械、航空・宇宙などの製造業の現場に関わる人をメインターゲットとしています。

会場は、東京ビッグサイト青海展示棟Aホールの3分の1ほどの広さ。隣のBホールと、Aホールの残りのスペースで開催されている、食品製造機械や飲食サービスなどに関する展示会と会場がつながっているため、金属や樹脂の展示を見て歩いていたら、突然肉を焼いているというような、ちょっと変わった展示会場でした。

環境問題に対応した製品展示

展示内容はかなり幅広い分野に分かれていました。樹脂系の素材や、それに関わる製造装置に関する展示が比較的多いものの、精密プレスやめっき加工といった金属関係の展示も各種でていました。

近年、プラスチックストローやビニール袋などによる海洋ごみ問題が注目されており、生分解性プラスチックやセルロースナノファイバーなど、環境負荷に配慮した製品の展示コーナーには多くの人が集まっていました。技術的な向上はもちろん、普及に向けた取り組みも重要になっています。

他にも、環境問題対策ということでは、溶剤の処理装置、冷却効率を上げるための遮熱塗料、環境負荷の少ない金属面の腐食防止剤など、各種展示が見られました。環境問題に対する技術は、今後さらに大きな市場になっていきます。

電鋳、研磨、表面処理、塗装、受託など幅広い展示

エヌプラスは割とコンパクトな展示会でしたが、かなり幅広い分野の展示が行われていました。例えばこちら。

日本電鍍工業株式会社で展示されていた、めっき済みのサックス。形状は通常のサックスと変わらないと思うのですが、なんともメカメカしい色合い。無駄に欲しくなります。吹けないですが。

ちなみに、こちらの拳は、ボクシングチャンピョンのマニー・パッキャオのものだそうです。なぜ、ここに。

こちらはバレル研磨専門の会社、東商技研工業株式会社の展示スペースにあったバレル研磨用の研磨石とその研磨サンプル。こうやって並んでいると、雑貨屋で売っているパワーストーンのように見えなくもない。東商技研工業株式会社は、新潟の燕市にあるので、燕市の金属製品のバリ取り、光沢出しはこの石で行われているというわけです。

そして、エヌプラスの会場の一角では、同時開催でEV・PHV普及活用技術展(EVEX)、衛星測位・位置情報展(EVEX・SATEX)も開催されていました。

こちらは、その中の展示でMIRAI-LABO株式会社の太陽光発電舗装パネル「Solar Mobiway」。道に設置する高耐久性の太陽光パネル。車が上を走っても大丈夫です。従来の太陽光パネルよりも軽く滑らないので、屋上や駐車場などの既存のスペースに設置が可能。これなら人が出入りするデパートの屋上とかにも設置できます。

今回は「モノカク」を運営するテクノポート株式会社も、協力工場5社とともにエヌプラスに出展していました。最適な製造業者を無料で探索・紹介するものづくりの窓口「モノマド」を紹介しています。

(キャプション:株式会社栗原精機)

(キャプション:大東電気株式会社)

(キャプション:株式会社ダイイチ・ファブ・テック)

(キャプション:アツミ工業株式会社)

(キャプション:株式会社モリセ精工)

後編では、エヌプラスで展示されていた、気になった製品、技術を紹介していきます。

MF-TOKYO 2019(第6回プレス・板金・フォーミング展)レポート(後編)

2019年7月31日(水)から8月3日(土)の日程で、東京国際展示場にてMF-TOKYO 2019が開催されました。元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場が、展示会の様子や気になる製品などをレポートします。鍛圧塑性加工技術の専門展示会であるMF-TOKYO(METAL FORMING FAIR TOKYO)。プレスや板金装置、ネジやバネの製造装置はもちろん、その周辺機器、サービス、加工技術なども各種展示されています。後編では、プレスや板金機械に欠かせない周辺技術を中心に、気になった製品を紹介していきます。

振動問題を解決

最初の製品は、プレスや板金の装置から発生する振動を抑える防振装置です。

ドイツで100年以上の歴史がある防振・除振・制振・免震装置のメーカー、ゲルブ社の日本法人の出展ブースに展示されていた製品。回転運動やピストン運動など、各種駆動部分を持つ製造装置からは、様々な振動が発生します。プレスや板金の機械からも、単発の強い大きな振動や、連続する小さい振動、高周波の小刻みな振動など各種発生します。振動は、地面を伝わって感じられたり、空気中を伝わって音として感じられたりします。騒音、振動公害として工場周辺の住民からの苦情がきたり、振動で周囲の装置に悪影響を及ぼしたり、振動対策は製造現場にとって避けては通れない問題です。

写真のゲルブ社のダイレクトスプリングサポートは、スプリングと粘性ダンパの組み合わせからなる防振装置。プレス装置などを直接支持し、周囲に伝わる振動を大幅に低減します。既存の防振システムからの入れ替えも容易におこなえます。展示デモでは、小さなモデルに鉄球を落としてその性能をアピールしていました。

静電塗油で油量を大幅削減

プレスや板金製品の製造時はもちろん、機械そのものにも潤滑や冷却など様々な目的で油が使われます。油を効率よく使用できれば、完成品の品質を向上させたり、機械や金型の寿命を延ばしたり、油の使用量を抑えてコストダウンできたりと、多くのメリットがあります。

こちらは東京都世田谷区にあるルブテック社の静電塗油装置です。油に高電圧をかけてマイナスイオン化。ターゲットとなる金属へ接地することで、ノズルから噴霧される油が電気の力で引き寄せられ、均一な油の塗布が可能となります。

塗油膜の厚みコントロールが自由自在にできるだけでなく、上下、斜めなど塗油方向も自在。狙った場所に飛び散ることなく均一に塗油できるので、油消費量も大幅に削減できます。プレスや板金に限らず、切削などあらゆる機械加工で使える技術だと思います。油の飛散を嫌がる食品の加工装置などでも有効なのではないでしょうか。

板金屋の作るバリ取り機

板にパンチやレーザーで穴を開ける際には、穴の周囲に打ち抜く際に伸びてできたバリや、溶けで飛び出したドロスが発生します。加工条件などで抑えることはできますが、完ぺきにゼロにするのはなかなか難しい。そこでバリ取り機の登場です。

写真はバリ取り機に使用される各種ブラシ。新潟県燕市のエステーリンクの製品です。エステーリンクのバリ取り装置では、このブラシが回転しながら旋回運動することで、多方向からワークを研磨。満遍なくブラシが当たり、バリを綺麗に取り除いていました。金属加工が盛んな新潟の燕市と三条市界隈。装置の宣伝文句が「板金屋が追求した板金屋のためのバリ取り機」。なんだか力強い。

プレス油は塩素フリー

もう一つは、プレス加工の際に使用されるプレス油です。

以前のプレス油では、加工性能を上げるために添加剤として塩素化パラフィンを多量に含んだものが多くありました。欧米では規制が進み、作業環境改善や地球環境保全の観点からも非塩素系の物が今は望まれています。こちらは大阪府和泉市のアクア化学の製品。洗浄不要な高性能乾燥性プレス油の展示もありました。

小さな技術も見て回る

こういった大きな展示会。しかも、プレスや板金といった大型の工作機械が並ぶ展示会では、どうしても大きく動き回る大手メーカーの大型装置に目が行ってしまいます。もちろん、そのような機械を見て最新動向を知ることも大切なのですが、展示会場の外周部にあるような小さな会社をじっくり回ってみると、意外な技術に出会うことがあります。解決できないでいた技術的な困りごとが、それで解決できるかもしれません。会場の外周部は、実は見どころ満載です。

MF-TOKYO 2019(第6回プレス・板金・フォーミング展)レポート(前編)

2019年7月31日(水)から8月3日(土)の日程で、東京国際展示場にてMF-TOKYO 2019が開催されました。元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場が、展示会の様子や気になる製品などをレポートします。前編ではイベント全体の様子をお伝えします。

鍛圧塑性加工技術の専門展示会

MF-TOKYO(METAL FORMING FAIR TOKYO)は鍛圧塑性加工技術の専門展示会です。プレスや板金装置、ネジやバネの製造装置といった、鍛圧機械とその周辺機器、サービス、加工技術などが一堂に会します。初開催は2009年。2年に一度、JIMTOF(日本国際工作機械見本市)が開催されない奇数年に開催され、今年で6回目。今回の開催では、国内外の254社が出展。1,717小間と、小間数では過去最大規模の開催となり、4日間の開催で、来場者数は3万人を超えています。

プレス機械、板金機械、フォーミングマシンの3つのエリア

会場内は大きく3つのエリアに分かれていました。西1ホールから西2ホールの一部に広がるプレス機械関連のエリア。南1、2ホールの板金機械のエリア。西2ホールに広がる、ネジやバネ、パイプなどを扱うフォーミングマシンエリア。

プレス機械関連のエリアでは、大手から中小のメーカーまで、各社大小のプレス機械が並び、デモ動作が行われていました。その中でも、主要な顧客となる自動車産業に向けてアピールした製品が多くみられます。サーボプレスによる高度な制御により、ハイテン(高張力鋼)やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の成形にも対応したものが各社から出品されていたのが特徴的でした。燃費の向上やEV化に向けた自動車の軽量化への対応が急がれています。

板金機械のエリアでは、大手メーカーの大型の装置が数多く並び、動きのある展示が多くみられます。特にレーザーを使った大型の装置が目立ち、少量多品種生産対応や、パンチングプレスから金型不要のレーザーへのシフトを提案する製品も見られました。その他、中国を中心に、海外のメーカーの出展で、精密板金の技術をアピールする会社も各社見られ、日本市場への更なる売込みに力を入れているようでした。

フォーミングマシンエリアでは、ネジの圧造・転造機、スプリングマシン、パイプベンダー、製缶装置など、金属を曲げたり、伸ばしたり、形をつけたりする装置が並びます。全体的に自動化、省スペース、高速化、省力化をうたうものが多くみられました。労働者不足の現状が感じられます。

進む自動省力化とIoT化

サーボプレスやレーザーなど、加工技術についてアピールする企業が多い中、人手不足や技術継承に対応するための自動省力化、スマート工場を目指したIoT化などをアピールする企業も多くみられました。

複数台のサーボプレス機と搬送装置を高度に連携制御させ、材料搬入から成形までを効率よく行うタンデムプレスライン。板金装置とロボットアームを連動させたベンディングロボットシステム。パンチング装置とレーザー加工機が搭載された複合加工機。途中、人の手を介すこと無く最終製品まで製造できる製造装置や、熟練の技術者の動作を覚えるロボットなど、大量生産だけでなく、今後製造業が直面する問題を見越した技術開発が進んでいました。現場の者と共に作業を行う協働ロボットの展示もみられ、この流れは今後どの展示会でも見られるようになると思われます。

また、人手不足や作業効率の向上のための策として、各種装置へのIoT技術導入も進んでいました。装置の稼働状況を一括で見られるだけでなく、油や空気の消費量の変化、金型の温度状況など、装置内の様々な部分を見える化。効率のよい稼働や、金型の寿命なども含めたランニングコストの低減など、IoT技術でより効率的で高度な加工が行えるようになります。また、IoT技術により得られたデータを蓄積することで、熟練技術者の技術をデータとして残すことも考えられます。IoT、AI技術の導入は、今後の製造業にとって重要な課題です。

後編では、プレスや板金機械に欠かせない周辺技術を中心に、気になった製品を紹介していきます。

120kg運送可能、IoTでネットに接続。ハードもソフトも進化する自転車事情

元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場です。製造業に関連する気になるニュース、製品、技術などを取り上げていきます。

今回は進化する最近の自転車事情についてです。

120kgの荷物が運べて小回りも効く電動アシストサイクル

佐川急便が、3輪電動アシスト自転車の開発製造販売を行う豊田TRIKEと、業務用電動アシスト自転車「TRIKE CARGO」を共同開発しました。

豊田TRIKEと佐川急便が共同で業務用電動アシスト自転車「TRIKE CARGO」を開発

TRIKE CARGOは荷台を牽引する構造になっていて、最大で従来の4倍となる120kgまで荷物を搭載することが可能です。2つの前輪が傾きに合わせて上下に連動して動く「シンクロシステム」は、11か国で特許取得済み。このシステムにより、段差や傾斜でも車体が垂直に保たれ、安定した走行ができます。ペダルは電動アシスト式で、サドルよりもペダルがやや前方に取り付けられたセミリカンベント型。快適な走行が可能です。荷台部分に荷物を載せた台車を直接積載し、ワンタッチでロックおよび解除が可能で積み替え作業の軽減もされているそうです。

2006年の道交法改正で、民間委託による駐車違反取り締まりが開始されて以降、一時駐車する宅配業者の車両の取り締まりが厳しくなりました。そのころから、リヤカーを付けた自転車で荷物を運ぶ宅配業者をよく見かけるようになった気がします。初めてリヤカー付き自転車で配送しているのを見たときは、電動アシストではない自転車で配送していたと思います。荷物も相当重いだろうし、配達員の人はかなりの脚力と持久力のある人じゃないと務まらないなと見ていた記憶があります。近年では業務用のリヤカー付電動アシスト自転車が各種販売されています。2017年には荷物運搬用のリヤカーをつけた専用の三輪電動アシスト自転車は、補助比率が通常の電動アシスト自転車より大きくすることが可能になり、いわゆる物流のラストマイルといわれる部分は自転車の比率が上がってくると予想されています。

豊田TRIKEのホームページを見ると、荷物の運搬や配送に限らず、病院や介護施設の送迎用車両として、ゴルフ場のカート、観光地でのサイクリング、災害時の物資の運搬など様々な利用シーンを想定しています。

豊田TRIKE

最近、高齢者の運転する自動車による事故が問題となっていますが、生活インフラとして自動車がなくてはならない地域もあり、簡単には解決できないところがあります。それほど遠くない未来には自動運転が実用化され、問題が解決されるかもしれません。しかし、それまでの間は、こういった自転車が、多少なりとも問題解決の助けになると思います。電動アシストで坂の上り下りも楽。三輪なので乗り降りの際も安定しています。かなりの量の荷物の運搬もできるので、短い距離での買い物や移動手段としては最適ではないでしょうか。あとは、屋根がついているとありがたい。傘を持って片手で自転車に乗ってはいけないし、雨合羽は暑がりの私にはサウナスーツ着ているようなもの。着ていても着ていなくても服がビショビショになります。暑がりは、自転車に乗ったら風を感じたい生き物なのです。

自転車もIoT、シェアの時代

自転車は電動アシストや車輪の運動機構などの機械的な性能向上だけでなく、デジタル技術を活用したソフト面での発展も進んでいます。パナソニックでは、スマートロックを搭載したIoT電動アシスト自転車を開発しています。

IoT電動アシスト自転車を開発、実証実験開始

開発された自転車は、通信機能を備え、インターネットに接続することでスマートフォンから電子錠を開錠したり、利用料の決済ができます。GPSにより距離やルートなどの走行データを取得。追尾もできるので防犯性も高まります。電池残量などの自転車のメンテナンスにかかわる情報も取得可能です。

最近は、都内だとコンビニ前や駐車場、ちょっとした空きスペースにシェア自転車置き場があって、スマホで簡単に利用できます。中国ではシェアサイクル事業が爆発的に普及し、放置や廃棄された自転車が問題になっているなんてニュースが少し前に出ていました。日本もようやくシェア自転車が普及してきた感じがします。都内で利用している人を見かけることも多くなりました。観光地でレンタルサイクル屋があれば利用するので、都内だけでなく全国的に普及してくれるとありがたいです。

ところで、自転車の性能向上の話とは違うのですが、自転車というと、同じく都内でUber Eatsの配達をしている人を見かける機会が増えました。蛍光の緑や黒い四角い専用のザックを背負って自転車で走っています。配達先までのルートはスマホで確認できるので、道に不慣れな人でも配達員ができます。

1999年に公開された草彅剛、飯島直子などが出演する「メッセンジャー」という映画の中で、こんなシーンがありました。草彅剛が演じる鈴木宏法が経営する自転車便の会社が、色々あって今までにない大量の配達を請け負うことになります。社員総動員で何度も行き来して配達を行うが手が回らない。そこで、加山雄三が演じる元警察官の島野真が司令塔となり、無線で各自の現在位置を確認しながら最適ルートや、仕事の配分を指示。最高の業績を叩き出します。20年の時を経て、それがスマホとAIで誰でも簡単に利用できるようになりました。便利な時代になったものです。

実際に動くガンダムを作ろうという注目のプロジェクト

元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場です。製造業に関連する気になるニュース、製品、技術などを取り上げていきます。今回は実際に動くガンダムを作ろうという注目のプロジェクトと、ロボット技術の発展についてです。

こいつ、動くぞ!子供の頃の夢が実現に近づく。

TVアニメ「機動戦士ガンダム」の最初のシリーズが放送されたのが1979年。40周年を迎える今年は、コラボ企画など、様々な記念イベントが行われています。その様な中、気になるプロジェクトがありました。実物大のガンダムを作って動かしてみようというものです。

ガンダム GLOBAL CHALLENGE。究極の夢、18mの実物大ガンダムを、動かすことに挑戦!

今さら説明するまでもないとは思いますが、機動戦士ガンダムは宇宙を舞台にしたロボットアニメ。モビルスーツと呼ばれるロボット兵器に人が乗り込み、宇宙や地球を舞台に戦います。それまでのロボットアニメでは、正義のヒーローロボットが、悪の侵略者のロボットや怪獣と戦い倒していくというのが当たり前でした。ガンダムでは、どちらが悪とも言えない戦争が軸になっています。兵器であって、量産の消耗品として扱われるロボットや、巻き込まれて戦争に参加しなくてはならなくなった少年、少女の心の葛藤や成長も描き、後に「リアルロボットもの」と呼ばれるようになった作品です。

最初の放送ではあまり人気が出なかったものの、放送終了後に発売されたプラモデルが爆発的に人気となり、何度も再放送され、映画化もされています。1972年生まれの私は正にそのブームに乗っかった世代。子供の頃、模型屋に並んで「ガンプラ」を買い、専用の塗料で色を塗って遊んだものです。10年前の2009年、お台場に実物大の高さ18mの立像が出来た時は、アニメ第1話のタイトル「ガンダム大地に立つ!」が実現したかと感慨深いものがありました。それがいよいよ実際に動く形になるとは。

現在は、夢を実現させるためにプロジェクトチームを結成し、世界中から幅広くアイデアやプランを募集しています。2020年夏には横浜で実際に動く実物大のガンダムが披露される予定だそうです。実現が楽しみです。恐らく、動いた姿を見たガンダムファンは、「こいつ、動くぞ!」と第1話で主人公のアムロ・レイが初めてガンダムのコクピットに入った時に言ったセリフを言うのでしょう。多分、私も言います。

当時のスーパーコンピューターも、今やスマートフォンサイズ

さて、私の年代ぐらいだと、子供の頃に見たガンダムに憧れ、「あんなロボットを自分で作りたい!」なんて思って工学部に進んだ学生はそれなりにいました。そして学んでいくにつれ、あのサイズのロボットは、90年代前半頃の技術では、人のように歩くことは無理。自分で立ち上がる事さえ困難。今は実現不可能ということを知ることになります。

しかし、ホンダが人の形をした自立型の二足歩行ロボットP2を1996年に発表します。歩行速度は時速2km程度でしたが、人のように足を動かして歩く姿に驚愕しました。その後、2000年代に入りASIMOが出てくると、中に人が入っているのかと言われるほど滑らかに歩くようになります。最近では、アメリカのBoston Dynamics社のロボット「Atlas」が歩くだけに留まらず、走ったり、バク転をしたり、障害物を軽々と飛び越えていく映像が公開されています。

Boston Dynamics「Atlas」

蓄電池、関節を動かすサーボ、物を立体的に撮影するステレオカメラ、画像解析、軽く強固な新しい素材、高精度のセンサー。様々な技術が90年と比べ飛躍的に向上しました。なによりも、ロボット全体を制御するコンピューターの性能は当時とは比べ物になりません。スマートフォンの計算能力は、部屋を埋め尽くすような大きさの、当時のスーパーコンピューターの計算能力と同じぐらいあります。リアルなガンダムは、まだかなり遠い先の話かとは思いますが、災害救助や危険な場所での作業を行う2足、4足歩行のロボットというのは、実用化が進みつつあります。

人手不足、技術継承が問題となっている製造業でも、ロボットは救世主になるでしょう。製造業においては、組み立てや溶接、ピッキングを行うアーム型ロボットが数多く導入されています。もう何年かしたら、AIにより自律的に動く2足歩行ロボットが、人間と同じように工場内を歩きまわり、作業をするようになっているかもしれません。そのうち、メモリーに図面を入れておけば、加工機を自分で操作して削り、組み立て、検査までやってくれる。しかも、IoT技術などを使ってデジタル化された熟練工の技術がそのロボットに入力されていて、全く同じように加工が行えるなんてことも、できるようになるかもしれません。

そうなれば、人手不足から人要らずになることも考えられます。ロボットやAIの技術が進歩すれば、消えていく仕事というのは当然出てくると思います。産業革命、IT革命など、テクノロジーが進化すると必ず何らかの仕事が消えます。逆に新しい仕事も発生します。人間もテクノロジーに合わせて仕事の内容や、やり方など、進化・改革していかないといけないでしょう。ガンダムの最初のアニメで、次回予告の最後に言われていたセリフです。君は生き延びることができるか?

進化していくインクジェット技術。布、食品、電池も印刷可能に。

元メカエンジニアの工業製造業系ライターの馬場です。製造業に関連する気になるニュース、製品、技術などを取り上げていきます。

今回は進化していくインクジェット技術についてです。

好きな形に充電池が作れるようになるインクジェット技術

イタリア人のボルタが、銅と亜鉛を電解液に浸けて電気を発生させる「ボルタ電池」を発明したのが1800年。フランス人のプランテにより鉛蓄電池が発明されたのが1859年。それから160年ほど経った現代では、インクジェット方式により、印刷するような感覚で自由な形に蓄電池が製造できるようになってきました。

株式会社リコー ニュースリリース
世界初、インクジェット技術による二次電池の新たな製造技術を開発
~IoTデバイスやウェアラブルデバイス向けに、自由な形状で電池を製造することが可能に~

この技術では、リチウムイオン二次電池を構成する電極、セパレーターの材料となる、カーボン、セラミック、絶縁材などをインク化。これをインクジェットヘッドから吐出することで、紙に印刷するように自由な形でリチュウムイオン電池が製造できます。

電気で動く物には、当然何らかの電力供給源が必要となります。電池を使う場合、既製品ではサイズや容量も決まっているので、製品もそれに合わせて設計することになります。より小型化、薄型化したいとなると、電池も専用の物を設計しなくてはなりません。例えば、最近ではスマートフォンで写真を撮影するようになったので、小型のデジタルカメラが減ってきましたが、以前はカメラを買い替える度にバッテリーも専用の物に買い替えなくてはいけないということがよくありました。その結果、新しい機種では使うことができない、似たような形の専用バッテリーが増えていくということが起こります。小型、薄型装置の設計において、電源は大きな問題の1つです。

IoTやウェアラブルデバイスが増えている今、このインクジェット方式による二次電池の製造技術があれば、電池に装置を合わせるのではなく、装置に電池を合わせて作る事がより簡単になります。しかも、デジタル印刷なので、何か小さな変更があっても直ぐに対応可能。複雑な形状も容易にできるので、設計の自由度が上がります。実用化については、配線なども含めた全体を印刷できるようにするなど、課題がまだあるようですが、今後注目の技術といえます。

この技術が実用化され、いつの日か個人でも使えるレベルまでになったとしたら、3Dプリンターと合わせて使うことで、バッテリー内蔵型の小型デバイスが家庭でも1個から作れるようになります。家庭でとまでいかなくても、プリントサービスで利用可能になれば、中小製造業、ハードウェアのスタートアップ企業にとっては、チャレンジできる領域が広がるのは間違いありません。早い実用化と普及が望まれます。

布や食品にもインクジェットでプリントができるように

インクジェット方式のプリンターは、オフセット印刷のような版下を使わずに印刷ができて、レーザープリンターなどと比べて構造が単純です。90年代頃から安価な普及タイプのインクジェットプリンターが多く出回り、今ではコピー機能も搭載したインクジェットプリンターが一般家庭でも使用されています。

紙に印刷するだけだったインクジェット印刷も、インクやヘッドが年々改良され、今では色々な方面で使用されています。例えばこちらのTシャツなどの衣類に直接印刷できるプリンター。

株式会社リコー ガーメントプリンター

布へ何かを印刷すると言う場合、印刷したい形状に穴が開けられた版を布に当ててインクをつけるといった方法が、従来は行われていました。年配の方なら、年賀状を家庭で大量に印刷する時に使っていたプリント機をご存じかと思いますが、あれと同じ方法です。版を作る必要があるので、一文字変えるだけでも新しく版を作りなおす必要があり、フルカラーでの印刷というのもできませんでした。このプリンターがあれば、絵でも写真でも簡単に布へ印刷ができます。少量多品種への対応も簡単です。 近年では、粘性の高いUVインクを用いた製品ラベルの印刷にも、インクジェット方式のプリンターが使用されるようになってきました。オリジナルTシャツ、オリジナルラベルといった需要に、即座に対応できるようになっています。

さらに、最近では可食インクを使う事で、食べ物に直接プリントすることもできます。

株式会社サンリュウ フードプリンタ

食べ物にプリントする場合は、単純にインクを食べられる物に変えるだけでなく、インクジェットヘッドも食品に使用できるものに変える必要があります。医薬品にも使用できるレベルのものも出てきているので、錠剤やカプセルに直接識別用のナンバーなどを印刷することもできます。

インクジェット方式は3Dプリンターにも活用されています。マテリアルジェッティング、バインダージェッティングといった3Dプリント技術で、フルカラーの造形も可能です。インクジェット方式は、数ピコリットルといった非常に高い精度で吐出量の制御が可能です。人間の骨や臓器といったもののプリントも研究が進んでいるそうです。いずれは、色々なものが印刷するように自由に作れるようになるかもしれません。

個人的には、食べ物に絵を書くだけでなく、色々な調味料を吹き付けて絵を書いてくれるようなフードプリンタがあったら面白いのではと思っています。絵かと思って食べると味がある。そして場所によって絶妙に味が違う。とりあえず、ケチャップで絵がかけるインクジェットプリンターが実用化されたら、オムライスにケチャップで絵を書くような特別なカフェで需要があるかもしれません。でも、あれは手で書くからいいのか。