メカトロテックジャパン2019レポート【後編】

メカトロテックジャパン2019は10月23日(水)~10月26日(土)の4日間、ポートメッセ名古屋で行われました。元エンジニアの工業ライターが見たメカトロテックジャパンをご紹介します。後編となる今回は、人と共に働き、作業を助けてくれるロボットや作業環境のクリーン化、その他個人的に面白いと感じた展示についてレポートします。

人と一緒に働くロボット

センシング技術や制御技術の発達により、ロボットはより人間に近い場所で働くものへと進化しています。従来であれば、ロボットが動く場所は人が働く場所とは柵などで隔てられていましたが、メカトロテックジャパンでは、人のそばで、人と一緒に働くロボットが特集されていました。

FANUCの協働ロボット

FANUCの協働ロボットは、組み立て加工などに含まれていた重筋作業を肩代わりしてくれるロボットです。台車の上からワークを作業台へと移したり、作業が終わったワークの向きを変えて治具の上に置き直すような作業を行います。また、ハンドガイドを使用し、軽い力で重量物を移動させるような作業も可能です。いわゆる危険、キツイ作業から作業者を解放してくれるため、人材の定着にも期待ができます。本体が柔らかいカバーで覆われていることや、人とぶつかったときには安全に停止する機構などが組み込まれているため、安全柵は必要ありません。さらに内臓カメラによる画像解析により、ネジの本数の確認やベルトの装着確認のような、作業確認も可能。まさに人のそばで、人を助け、人と共に働くためのロボットになっています。

DENSOのCOBOTTA

FANUCの協働ロボットは比較的大きかったのに対し、DENSOのCOBOTTAは小さなロボットです。約4kgという小型軽量で、デスク上などに簡単に設置することが可能です。アームを手で直接動かすことでティーチングができるため、ボトルへのシール張りや、装飾のビーズを並べるといったような、従来は機械をセットするよりも人の手でやった方が早いと思われていた軽作業を行うことができるようになりました。

作業環境のクリーン化

近年では作業環境の改善なども注目されるようになりました。また人材難から、従来の製造業として強かった3Kのイメージを払拭するために、きれいな工場を目指す企業も増えています。

エバーケミカル工業の手荒れ防止切削油

切削油のような油は、皮膚の油分を溶かして奪っていくため、手荒れの原因になります。エバーケミカル工業の切削油は、従来の切削性は損なわず、手荒れを防止することに成功しました。たかが手荒れと考える人もいるかもしれませんが、手の皮膚の状態は作業者の生活の質そのものに大きく関わります。そのため作業者の定着などにも効果が期待できます。

ホーコス株式会社のミストイーターZ

フィルターレスで 工作機械から発生するオイルミストなどを吸引する装置です。有名な掃除機と同じ、サイクロンテクノロジーによってミストと空気を分離。

フィルター式と異なり、吸引力が下がっていかないのが特長です。オイルミストは、作業環境を悪化させる他、建屋の汚れの原因になったり、スリップ事故の原因にもなります。フィルター交換の要らないミストイーターならば、高い吸引効果を期待することが可能です。

ライターのイチオシ

個人的にとても興味を引かれたのは、インターナショナルダイヤモンド株式会社の超極細ダイヤモンドヤスリです。すき間や細密部の仕上げに使う細長いダイヤモンドヤスリを展示していたのですが、驚いたのはシャープペンシルにも取り付けられる種類があることです。

ピンバイスにも取り付けても使えるそうですが、シャープペンシルに取り付けるという発想がユニークで面白いと感じました。ペンケースからスッと取り出したら、少しかっこいいですね。

筋力的、肉体的に厳しい作業を減らしたり、工場の環境をよくすることは、求職者の裾野を広げ、労働者の定着につながります。労働人口の減少を見据え、新しい技術をどのように活かしていくかも、大切な戦略になっていくでしょう。

メカトロテックジャパン2019レポート【後編】

メカトロテックジャパン2019は10月23日(水)~10月26日(土)の4日間、ポートメッセ名古屋で行われました。元エンジニアの工業ライターが見たメカトロテックジャパンをご紹介します。後編となる今回は、人と共に働き、作業を助けてくれるロボットや作業環境のクリーン化、その他個人的に面白いと感じた展示についてレポートします。

人と一緒に働くロボット

センシング技術や制御技術の発達により、ロボットはより人間に近い場所で働くものへと進化しています。従来であれば、ロボットが動く場所は人が働く場所とは柵などで隔てられていましたが、メカトロテックジャパンでは、人のそばで、人と一緒に働くロボットが特集されていました。

FANUCの協働ロボット

FANUCの協働ロボットは、組み立て加工などに含まれていた重筋作業を肩代わりしてくれるロボットです。台車の上からワークを作業台へと移したり、作業が終わったワークの向きを変えて治具の上に置き直すような作業を行います。また、ハンドガイドを使用し、軽い力で重量物を移動させるような作業も可能です。いわゆる危険、キツイ作業から作業者を解放してくれるため、人材の定着にも期待ができます。本体が柔らかいカバーで覆われていることや、人とぶつかったときには安全に停止する機構などが組み込まれているため、安全柵は必要ありません。さらに内臓カメラによる画像解析により、ネジの本数の確認やベルトの装着確認のような、作業確認も可能。まさに人のそばで、人を助け、人と共に働くためのロボットになっています。

DENSOのCOBOTTA

FANUCの協働ロボットは比較的大きかったのに対し、DENSOのCOBOTTAは小さなロボットです。約4kgという小型軽量で、デスク上などに簡単に設置することが可能です。アームを手で直接動かすことでティーチングができるため、ボトルへのシール張りや、装飾のビーズを並べるといったような、従来は機械をセットするよりも人の手でやった方が早いと思われていた軽作業を行うことができるようになりました。

作業環境のクリーン化

近年では作業環境の改善なども注目されるようになりました。また人材難から、従来の製造業として強かった3Kのイメージを払拭するために、きれいな工場を目指す企業も増えています。

エバーケミカル工業の手荒れ防止切削油

切削油のような油は、皮膚の油分を溶かして奪っていくため、手荒れの原因になります。エバーケミカル工業の切削油は、従来の切削性は損なわず、手荒れを防止することに成功しました。たかが手荒れと考える人もいるかもしれませんが、手の皮膚の状態は作業者の生活の質そのものに大きく関わります。そのため作業者の定着などにも効果が期待できます。

ホーコス株式会社のミストイーターZ

フィルターレスで 工作機械から発生するオイルミストなどを吸引する装置です。有名な掃除機と同じ、サイクロンテクノロジーによってミストと空気を分離。

フィルター式と異なり、吸引力が下がっていかないのが特長です。オイルミストは、作業環境を悪化させる他、建屋の汚れの原因になったり、スリップ事故の原因にもなります。フィルター交換の要らないミストイーターならば、高い吸引効果を期待することが可能です。

ライターのイチオシ

個人的にとても興味を引かれたのは、インターナショナルダイヤモンド株式会社の超極細ダイヤモンドヤスリです。すき間や細密部の仕上げに使う細長いダイヤモンドヤスリを展示していたのですが、驚いたのはシャープペンシルにも取り付けられる種類があることです。

ピンバイスにも取り付けても使えるそうですが、シャープペンシルに取り付けるという発想がユニークで面白いと感じました。ペンケースからスッと取り出したら、少しかっこいいですね。

筋力的、肉体的に厳しい作業を減らしたり、工場の環境をよくすることは、求職者の裾野を広げ、労働者の定着につながります。労働人口の減少を見据え、新しい技術をどのように活かしていくかも、大切な戦略になっていくでしょう。

メカトロテックジャパン2019レポート【前編】

メカトロテックジャパン2019は10月23日(水)~10月26日(土)の4日間、ポートメッセ名古屋で行われました。元エンジニアの工業ライターが見たメカトロテックジャパンを前編・後編に分けてご紹介します。

メカトロテックジャパンとは

メカトロテックジャパンとは、2年に1度、秋の名古屋で行われる国内最大級規模の工作機械見本市です。第17回目を迎えた今回は国内外から477もの企業や団体が出展。およそ9万人が来場する、非常に大きな展示会となりました。展示内容も幅広く、中小企業向けのソリューションから、大きな工場向けの巨大な工作機械まで、数多くの出展がありました。前編では、中小企業からも関心の高い、作業の一般化や省力化についてのソリューション。後編では人と共に働くロボットや作業環境のクリーン化、目を引いた展示についてお送りします。

作業一般化へのソリューション

近年、これまで工場を担ってきた団塊の世代の定年退職や、人材の不足、従業員の定着の困難などに悩む企業は少なくありません。それにともない、従来は熟練工に任せていた作業を誰にでもできるように「一般化」しようという動きが浸透しています。メカトロテックジャパンでも、難しかった作業を簡単にするソリューションが数多く展示されていました。

日研工作所のツールプリセッタ

加工機にツールをプリセットする作業を自動化する装置です。刃先の測定はとても難しく、さらにその精度が加工の精度に反映されるため、熟練の技を必要とします。しかし日研工作所のツールプリセッタは、光学測定を行いますので、ツールを置いてボタンを押すだけで誰でも誤差のない測定が可能です。

さらにツールに取り付けたQRコードをハンディスキャナで読み込むことで、刃先データをサーバーに登録。加工機にセットする際には、QRコードを読み取るだけで、刃先データが自動で入力されます。これによりツールのプリセットが誰にでもできるようになる他、プリセットにかかる時間も短縮することが可能になりました。

GFマシニングソリューションズの超精密加工向けチャック

ワークを固定する治具のチャックです。独自の機構により0.6μmという超高精度のチャックを可能にしました。これにより、ワークのセットアップを誰でも同じ精度で行うことが可能になります。またセットアップにかかる時間も短くなるため、加工効率の向上にも貢献します。

SAIDA・UMSのVERSEC

従来のリアルな加工感覚と、未来的でバーチャルな加工感覚を融合する、新型旋盤です。基本的な形状は従来の普通旋盤と同じですがが、主軸の回転はインバーター制御による無段階制御になり、送り機構にはサーボドライブが採用されています。またネジ切り加工などはプログラム化もされており、半自動で加工を行うことができます。そのため、従来の旋盤のようなギアの調整などの必要がなくなり、より早く、より簡単に加工を行うことができるようになりました。

省力化へのソリューション

人材確保が困難になることにより、従来は人の手で行っていた作業を機械に肩代わりさせようという動きも強まっています。特にワークを加工機から取り出したり並べたりというような単純な作業は、できるだけ簡単な装置で代用しようという提案も増えています。

伊藤精密製作所のダコンアンシン

加工機から排出されてきたワークをパレットの中にストックする際、ダコンを避けるために人の手でワークを並べていたものを自動化する提案です。ダコンアンシンでは、機構を工夫することで、人の手のように「そっと」ワークを下ろすことを実現しました。

100V電源とエアーのみで動き、周囲の装置や求められる動きに合わせてオーダーメイドの装置を提案します。

一般化、省力化へのソリューションは、ここで取り上げたもののように、工場の既存のシステムに追加することで機能するものも数多く展示されていました。次回は人を助け、工場環境や労働環境を改善してくれる展示をご紹介します。