【人手不足?採用の前に小規模企業にできること】イベントレポート

テクノポートの菊地です。2020年6月4日に小規模企業向けのバックオフィス(経理、会計、総務、庶務など)業務の改善支援を行う「Reboot」が「人手不足?採用の前に小規模企業にできること」と題しオンラインイベントを開催しました。小規模企業特有の悩みや問題。これからの生き残りをかけた企業戦線の中でどのような経営選択が正しいのかという問題について、COSMO ALPHA株式会社 野崎綾二社長に伺いましたので、その中からいくつかのお話を抜粋してご紹介します。

【ゲスト】

COSMO ALPHA株式会社 代表取締役 野崎綾二
ものづくり業界で15年。サラリーマンとして営業技術や製造オペレーターを経験し、生産管理、品質管理とさまざまな業務を経て現在に至る。2019年8月にCOSMO ALPHA株式会社を設立し、加工業者の業務改善+受注拡大サポートを現在行う。

まずは経営者の業務を減らす

―これまで数多くの製造業を見てこられたと思いますが、その経験を踏まえて、町工場の人手不足について一緒にお話できればと思います。人手不足が叫ばれており、解決策として採用やクラウドソーシングによる業務の外出しなどが挙げられますが、製造業の特性なども踏まえた上で、何から始めていくのが良いと思いますか?

野崎社長:まずは経営者の業務を減らすことです。業務負担が軽減されれば、経営者自身が会社全体を把握することができるようになり、社内の問題点がどこにあるかをピンポイントで見つけることが可能になります。その結果、常に方向修正を行えるようになるので、会社にとって大きなメリットとなります。問題提起と数字を管理する時間を設けることで先を見越した質の高い経営に繋がっていきます。

町工場の経営者が仕事を抱えてしまう原因は、自分も職人であり、責任感から来るものが多いです。製造が中枢にある為、従業員に現場を任せるという他の業界では当たり前の業務分担ができていないことがしばしばあります。他社の成功事例や勉強会で知識があっても自分の会社に落とし込むことが難しく、問題解決には整理をする時間が必要です。その時間が設けられていない状態では、問題解決をするにも予定なしに工事を進めるようなものです。極論で言えば、社長がいない状態でも会社が運営できるシステムを構築すれば、利益が生まれる可能性が確実に向上するということです。

野崎社長の経験では、一見複雑に思える社内の課題も紐解いていけば、整理整頓、材料が納品された際、バラバラに置かれていた物を、誰が見てもわかるようにストックすることなどから始まったこともあるそうです。1人しか把握できていないストックを複数人で把握することでイレギュラーな対応も円滑に処理することが可能となります。

バックオフィス業務を縮小する前に

―ペーパーレス、書類の電子化も社会的にはどんどん推進されていますね。紙で管理するものを極力なくすことで、スペースの確保やデータ管理が円滑になります。

野崎社長:新しいシステムや仕組みを導入すると、馴染むまで不具合や不満が生じますが、数ヶ月後確実に変化を見ることができます。コストカットを考える時に人件費など大きな経費に目が向きがちですが、あまり考えずにただバックオフィスの人手を減らしてしまうと、かえって社内業務が回らなくなります。材料比率や、経費など細かな部分にも目を向け、社内実態を把握したうえで判断すること必要です。

社内の体制

―日本の製造業は優秀なイメージがありますが、先ほどのお話だと管理が苦手な印象を受けました。

野崎社長:管理部門などがなく原価管理、納期管理、生産工程管理、品質管理、梱包、受入れ出荷業務管理等が曖昧になっている企業は散見されます。小さな会社でありながら、社員の連携がとれていない場合も多く、個人商店のような集まりになってしまっているケースです。会社として大切なのはエラーを見つける体制を用意すること。技術面でのミスは必ず発生するので、ミスの回数や内容を把握し、同じミスが何回か発生する場合は対策を考えることも必要です。社内の経理を全てデータ化する、利益を上げるために在庫表を作成する、社員に賞与を出す等、明確な目標を立てると事業に取り組みやすくなります。

会社に働く魅力がない

―先ほど賞与についての話が少し出ましたが、人件費を上げる事に対しての問題はどうでしょうか?

野崎社長:収入と支出のバランスが重要です。売上げに目が向きますが、原価などと合わせて考えて、利益がしっかりと出ているのか見極める必要があります。収入を得る為には、支出は必須です。どこで赤字になっているのか、黒字になっているのかを部品1点ずつ把握したいところです。赤字になる場合は取引先に価格の交渉をすることも必要です。しかし、会社としての付加価値を知ることができず、価格競争の流れにのってしまう現実もあるので交渉力も問われます。

―人材育成・雇用に関しても、賃金によって縛られてしまうことは非常に悩ましいことだと思います。

野崎社長:会社の利益を把握できないことによって、十分な人件費を割くことが難しくなり、離職率の高さや、優秀な人材が集まりにくいことに繋がります。大学卒業者でも物づくりが好きな人も多いのですが、賃金がネックとなり違う道を選ぶという話も耳にします。適切な人件費を企業で確保することや、幅広いキャリア選択ができるように環境を整えることが働く魅力や、採用した人材の定着に直結するのではないでしょうか。時代や環境に応じて変化していくことができれば、会社、従業員共に新たなチャレンジにつながっていきます。また、古い考えで「いいものを作っていれば仕事が増える」という考えは大きな間違いです。情報発信をしなければ認知されない、つまりは仕事がこない時代になってきています。

長年続けた体制に新たな流れを作り出すには

―では最後に、企業改善をしていく中で、滞った状態ではなく、新たな流れを作り出す為には何が必要でしょうか?

野崎社長:固執化された企業に変化を加えることは大変です。そのような意味でも違う視点を持ったパートナーが今後、必ず必要になってきます。時代に沿った柔軟な考えを取り入れることや、業務改善に踏み切る為には社長の決断が必須です。今の状態で切り盛りしたり、多額な費用をかけたりする改善ではなく、企業規模や実態にあった細かな改善が求められます。その中でも、まずは業務の洗い出しや在庫管理など、1つひとつ丁寧に解決させることで企業は劇的に変化すると私は考えています。

ーありがとうございました。

レポートは以上です。

新しいシステムの導入よりも、今ある業務の円滑化を図り、社内でのコミュニケーションや管理業務の改善に注力する必要があります。そして、共に働いていく仲間に視線を向けることで互いの絆が強まり、この時代を強く生き抜いていけるのかもしれません。(詳細なレポートはReboot サービスサイトに掲載しています

テクノポートでは、小規模企業のための副業人材活用サービスRebootを始めました。経営者1人で着手するには大変な、業務の洗い出しや、バックオフィス業務の整理・改善を中心にサポートすることが可能です。本レポートを読んで企業内に思い当たることがありましたら、ぜひ気兼ねなくご相談ください。

With/Afterコロナ時代|中小製造業は副業人材活用を進めるべき

テクノポートの徳山です。コロナウィルスの影響で自粛ムード一色ですが、経営者は立ち止まっている暇はありません。With/Afterコロナの世界ではどのような変化が起き、その変化をどうチャンスに変えていけばよいか、次の一手を考えていかなければなりません。

そこで今回は、With/Afterコロナの世界で最も大きな変化が起こると言われている労働環境の変化と人材活用に焦点を当てて考えてみます。

労働者側に起こる変化

具体的にどのような変化が起こる可能性があるのか、まずは労働者側に起こる変化から考えていきます。

リモートワークが定着

緊急事態宣言が発令され、労働環境で起こった最も大きな変化はオンラインによるリモートワークを導入した企業が急増したことではないでしょうか。これまで働き方改革という旗を掲げるなど、リモートワークを推奨してきた日本ですが、その導入率は僅かなものです。総務省が公表した「平成30年通信利用動向調査の結果」によると、平成30年のテレワーク導入率は導入予定企業も含めると19.1%となり、2012年の14.4%から僅か4.7%しか増加していません。導入率が上がらない理由として、自社の業務はリモートワークで進行するのは不可能だと頭から決め込んでいる企業が多かったからではないでしょうか。

そんな中で無理にでもリモートワークを導入せざるを得ない状況に直面し、多くの企業が無理だと思いながら半ば強制的にはじめたリモートワークでしたが、思いの外すんなりと導入できてしまった企業が多かったのではないでしょうか。

むしろ業務上の無駄(出勤時間、業務中の雑談、意味のない会議など)や固定費の無駄(オフィス家賃、通勤交通費など)徹底的に排除され、効率的とさえ考える企業も多いと思います。最近では不動産会社へオフィスをダウンサイズしたいという要望が増えてきているそうです。

Afterコロナの世界でも、ほぼ間違いなくリモートワークの定着率は維持されたままそのまま残り(都内が中心かとは思いますが)、リモートワークを前提に置いた労働環境整備や人事制度構築といった議論がこれから増えていくと考えられます。

副業者やパラレルワーカーが増加する

リモートワークが定着すると労働者に起こる変化はどのようなものがあるでしょうか。会社からの監視下を離れ、任された仕事さえこなしていれば、何も文句を言われない環境となります。これにより仕事のできる人ほど時間に余裕が生まれます。この時間をどのように過ごすかは人それぞれかとは思いますが、副業を始めるのに良い機会だと考えるようになる人もかなり増えるのではないでしょうか。自由な時間が増えたことに加え、上司や同僚の目も気にすることがなく、物理的にも心理的にも副業をしやすい環境となり、世間に副業者が増加することが考えられます。

また、コロナウィルスの影響による業績不振により、一時的に多くの企業で解雇や組織の再編がされると予想されています。先行き不安を感じる労働者が増加し、現職場に依存しない働き方を求めるようになることも、副業者増加の後押しになると考えられます。

都心から地方への移住者が増加する

リモートワークが定着すると、毎日会社へ出勤する必要がなくなるので、会社への通勤利便性を考える必要がなくなります。これにより労働者は居住地の選択が幅広くなります。おそらく生活コストの高い都心に住むメリットが薄れ、地方へ人材が多く流動すると思われます。

生活スペースの狭い都心よりも生活スペースが広く仕事部屋なども確保できる地方のほうが、むしろリモートワークに適しているとも言えますし、都会の喧騒から離れて人間らしい暮らしを望む人も多いと思いますので、相当数の移住者が出てくるのではないでしょうか。

雇用する企業側に起こる変化

次に、労働者を雇用する企業側にどのような変化が起こるかを考えていきます。

予期せぬ事態に備え外部リソースの活用へ舵切り

今回のコロナウィルスのような予期せぬ事態に備えたいという考えから、固定費となってしまう正社員よりも、変動費として扱える外部リソースや、いざという時に切り捨てやすい派遣社員や副業社員に置き換えたいというニーズが増加すると考えられます。

その動きは前述した労働者の副業ニーズ増加と需給マッチングし、副業として働くことができる企業の選択肢が増え、労働者としては魅力的になった副業市場へ参加する動機が増えてさらに副業希望者が増える、といった感じで相乗的に市場が拡大していくと思われます。

メンバーシップ型からジョブ型の雇用形態へ

リモートワークを導入すると労働時間で人事評価をしづらくなり、成果によって評価する傾向が強まり、雇用形態がメンバーシップ型からジョブ型へ変わっていくと言われています。

注)ジョブ型とメンバーシップ型の違い

欧米で主流のジョブ型雇用。一言で表すと“仕事に人をつける働き方”です。求人の時点で職務内容や勤務地、給与などがジョブ・ディスクリプション(職務記述書)によって明確に定められており、労働者はその内容に自分の希望・スキルが合っていれば応募します。ジョブ・ディスクリプションが更新されない限り、配置転換や昇給、キャリアアップは生じません。

一方、メンバーシップ型雇用は“人に仕事をつける働き方”。仕事内容や勤務地などを限定せず、候補者はポテンシャルや人柄を考慮に入れて採用されます。そのため、メンバーシップ型での採用は“就職”というより“就社”に近いといわれることも。昇給・スキルアップ・配置転換・勤務地の変更など勤務環境が大きく変わる制度となっている・可能性があるのが特徴です。日本企業の多くは終身雇用・年功序列とともにメンバーシップ型雇用を採用しつづけてきました。
引用:データの時間

前述したように、優秀な人材ほど短時間で一定の成果を出せるので、時間が余ります。よってジョブ型雇用を導入する会社において、余った時間を活用しようと副業を行う優秀な社員が増えると思われます。

また、そのような成果を出せる優秀な社員を離職させないために副業解禁を行う企業がさらに増え、副業者とその副業者を受け入れる企業の増加につながっていく要因となる可能性があります。

中小製造業はこの変化をどう活かすか

ここからは完全に私見となりますが、上述した労働者と企業の変化を中小製造業がどのようなチャンスに変えていけるのか、について考察していきます。

製造業の現場が魅力的に映る可能性

これから大手製造業を中心に、リモートワークの定着に加え、現場に人が居なくても工場が稼働する環境構築(スマート工場化)が進んでいきます。しかし、オンラインで済んでしまう仕事が主流になっていくと、返ってアナログな現場に魅力を見出す人が出てくるのではないでしょうか。

ものづくりが好きな人にとって、目の前で機械が動き、金属がゴリゴリと削られていくような環境(現場)を好む人は少なからずいるはずです。そのような人たちにとっては、モノが目の前でリアルに生産されていく現場が魅力的に映る可能性は高いのではないでしょうか。大手製造業勤務の方で副業を始める方や、地方へ移住する方が増えると思われるので、中小製造業特有の現場の魅力を伝えることで、優秀な人材獲得につながるかも知れません。

そのためには門戸を広げ現場の魅力を発信し続ける姿勢も大事になってきます。工場見学を常時開放したり、オープンファクトリーに参加することで、住民との接点が生まれる機会を積極的に創ることでこのチャンスを手中にできるかもしれません。

中小企業で働くことに意義を見出す人材が増える

何名かの副業経験者と会話をしたことがありますが、多くの副業者が本業で勤める会社と副業先とで求めるものの優先順位が違うことが分かりました。本業では収入面など生活基盤の安定が優先順位として高いので、大手企業に勤めているケースが多いのですが、副業の場合は、収入面だけでなく働きがいや社会貢献を求める傾向があるようです。

そのため大企業に勤める副業者にとって、大企業よりも中小企業で働くことが魅力的に映るケースが十分に考えられます。中小企業のほうが自身が発揮したパフォーマンスがダイレクトに企業経営の変化に直結するので、大企業では味わえない達成感があるからです。よって、中小企業としては正社員で採用する人材よりも、副業者として採用する人材のほうが優秀な人材を確保しやすくなる可能性が出てくるかも知れません。

副業人材を迎えるための備え

上述した労働環境の変化により、With/Afterコロナに世界では、副業人材活用が長く続いた人材不足解消につながる一手になり得るかも知れない、ということはご理解いただけたと思います。それでは、副業人材を活用するために、受入企業側は事前にどのような備えを行っていけばよいのでしょうか。

副業者に何を期待するのかを明確化しておく

地方の中小企業への副業経験が豊富な知人から話を聞くと、受入企業側で副業者へ依頼したい業務内容が定まっていないケースが非常に多いそうです。そのような企業は「まずはわが社の雰囲気を見てもらって悪いとこがあれば指摘してほしい」「あなたが持っているスキルを活かして何か提案してほしい」などと言った議論からスタートします。

現状業務のワークフローがあり、どこにボトルネックになっていて、どれをどう解消したいのか、もしくは新たな仕組みとして導入することで問題を解決してほしいのか、など説明できる資料はポンチ絵でもいいから用意しておきましょう。そのほうが、これから採用するであろう副業人材との認識の齟齬や、コミュニケーションの行き違いはなくなると思います。

副業者が働きやすい環境を構築する

副業者のために必ず整えていただきたい環境は「オンラインで仕事ができる環境」です。副業者の中には遠方からわざわざ足を運ぶ方もいるため、毎回足を運ぶのは難しい場合があります。副業者の負担を考えても、仕事を効率的に進行するという観点からもオンラインで仕事を進めることが望ましいです。「うちはそういうの慣れてないから」などと言わず、必ずオンラインで仕事を遂行できる環境を整えてください。

また、副業者を雇入れることに関しての現場の理解を得ることも重要です。よそ者をすぐに受け入れられない会社もいるかも知れませんが、現場の説得するのは副業者の仕事ではありません。副業者が提案した内容をスムーズに進行できるよう、事前に雇入れに対する理解を得て、受け入れ体制を作ることが重要です。

変化をチャンスに転換しましょう

With/Afterコロナの世界では今までの常識が覆り、様々な変化が起こると思われます。その変化に対し、何もしなければ今よりも苦しい未来が待っているでしょう。変化の時代にこそ多くのビジネスチャンスが眠っています。この変化をチャンスと捉え、非常識な発想で乗り越えてみてはいかがでしょうか。

最後に少しだけ告知をさせてください。弊社でも「Reboot」という副業人材と中小企業をマッチングする事業を開始しました。世間に溢れる多くの副業斡旋サービスが中小企業向けでないと感じるのは、上述した「備え」を行うことが難しいと感じている中小企業が多くいるのが現状だからです。Rebootでは、そのような中小企業の痒いところに手が届くようなサービスに設計していきたいと考えています。ご興味のある方はWebサイトをご覧の上、お気軽にご連絡ください。をご覧の上、お気軽にご連絡ください。をご覧の上、お気軽にご連絡ください。