お家での日常をおしゃれに撮るコツは? 人気インスタグラマーに聞いてみた

若者を中心に人気の写真投稿SNS「Instagram(インスタグラム)」。お部屋や日常の風景をアップしている人も多いけれど、上手に撮影するのは難しそう。そこで、人気インスタグラマーであるSakieさんとkyoooko.aさんに、暮らしをすてきに見せる撮影術を聞きました。
特別「カメラ女子」というわけではなかった

Sakieさんはフォロワー数6905人。札幌の「大きなワンルームのような一軒家」に夫と高校2年生と中学3年生の2人の娘さん、そして3歳のトイプードルという4人と1匹で暮らしています。時々顔を出すトイプードルの写真がキュートなアカウントです。

【画像1】明るく優しく、光にあふれる暮らしぶりがまぶしいSakieさんのInstagram(画像提供/Sakieさん)

【画像1】明るく優しく、光にあふれる暮らしぶりがまぶしいSakieさんのInstagram(画像提供/Sakieさん)

kyoooko.aさんはフォロワー数約1万8000人。東京都内の1Kの部屋に一人で暮らしています。一度一人暮らしをしたあと実家に戻り、二度目の一人暮らしをはじめてちょうど1年が経過したところ。家具などは以前実家に帰るときほとんど捨てて、いまは物をほとんど持っていないというミニマリスト。大好きな本は近所の図書館で借りることが多いそうです。

【画像2】ナチュラルなテイストのお部屋を撮影しているkyoooko.aさんのInstagram(画像提供/kyoooko.aさん)

【画像2】ナチュラルなテイストのお部屋を撮影しているkyoooko.aさんのInstagram(画像提供/kyoooko.aさん)

お二人にいつからInstagramを利用しているかをうかがってみると、Sakieさんは2年半前から、kyoooko.aさんは1年前からと、案外インスタ歴が長くないことが判明。そのわりにはお二人とも「インスタ映え」する写真を多く投稿されていて、コメントも上手です。

そこで、Instagramを始める以前にも写真を撮っていたり、何かに投稿したりしていたのかを聞いてみました。Sakieさんは「『365日1日1枚』というアプリと『Facebook』に投稿していました」とのこと。「写真撮影は好きでしたが、高いカメラは買えないのでトイカメラを使っていたこともあります」と、以前から興味をお持ちだったようです。

一方、kyoooko.aさんは「普段はまったく写真を撮りません。SNSによくある食事風景や、料理の写真も撮らないくらいなんですよ」と教えてくださいました。

日光の出ている時間がシャッターチャンス!?

Instagramを利用していて気になるのは、どんな写真をアップすれば「いいね」をもらえるのかということ。お二人は、どんなとき、どんなシーンを投稿しようと思うのでしょうか。

「暮らしのヒントを見つけたときや暮らしのこと、季節の変わり目、北海道らしさ、すてきなお店、トイプードルとの暮らし」など、Sakieさんは生活の折々に写真を撮ってみようと思うそうです。

「写真を撮ろう!と思っていると、Instagramに追いかけられる生活になってしまって大変なので、特に決めてはいません。なんとなく撮りたくなったときに撮ります」(kyoooko.aさん)

写真撮影時に気をつけていることやこだわりについては、二人とも一致しており、「なるべく日光の出ている時間帯に撮影します」と教えてくれました。スマホにつける小さな照明などのグッズもありますが、お部屋を自然に明るくきれいに写してくれるのは、やはり明るいお日さまだと分かります。

また、お二人は特別なカメラや、カメラのスペックが高いスマホを使っているわけではありません。Sakieさんは2015年冬に発売された「Xperia Z5」、kyoooko.aさんは「『iPhoneX』のカメラがすごいという話も聞きますが、まだ『iPhone5s』なんです。でもこれで十分きれいに撮れますよ」と笑って話します。

これだけでも驚きですが、お二人とも特別なアプリなども使わないというのです。加工はするとしても、インスタに最初から備わっているものを使う程度。Sakieさんはフィルターなしで、明るさは70から80にして、いつもトーンがおなじくらいの数値になるようにしているそうです。「そういえば、正面から取るのが好きなので、ななめからの写真がほとんどない気がします」(Sakieさん)。

kyoooko.aさんは「こまごまとした作業が面倒で、いやになってしまうので加工はしないことにしています。明るさも日光しだい」といいます。

【画像3】Sakieさんお気に入りの1枚(その1)、2017年10月19日撮影されたもので、札幌で初雪が降った翌日のお部屋の様子だそう(画像提供/Sakieさん)

【画像3】Sakieさんお気に入りの1枚(その1)、2017年10月19日撮影されたもので、札幌で初雪が降った翌日のお部屋の様子だそう(画像提供/Sakieさん)

【画像4】kyoooko.aさんお気に入りの1枚(その1)愛読している西加奈子さんの本が置かれた場所で、プロフィール画像にも使っている(画像提供/kyoooko.aさん)

【画像4】kyoooko.aさんお気に入りの1枚(その1)愛読している西加奈子さんの本が置かれた場所で、プロフィール画像にも使っている(画像提供/kyoooko.aさん)

大切なのは技術より心。思いがあれば上手に撮れる!?

最後に、上手に撮りたいと思っているかたへのメッセージを伺いました。

「上手に撮りたいという気持ちが大切です。日常の見え方が変わってきて、日が当たってすてきだなとか、窓の向こうの景色や、部屋を整えたくなる気持ちが生まれますし、撮って載せることから始まる想像力や緊張感、自分への厳しさも芽生えてくるでしょう。自分らしさも見つかると思います」(Sakieさん)

「いつも定位置から、定点観測的に撮影しています。最初はバリエーションが多いほうが、見てくれる人が楽しくてよいのかなと思っていましたが、気にしなくなりました。同じところで撮影することで、自分のパターンが出てきて記録になっていくのが楽しいですよ」(kyoooko.aさん)

奇をてらわず、自分らしいありのままの暮らしを正直に伝えること。そうした姿勢のりりしさが、写真の美しさを生むようです。

【画像5】Sakieさんお気に入りの1枚(その2)、大切な家族の愛くるしい姿(画像提供/Sakieさん)

【画像5】Sakieさんお気に入りの1枚(その2)、大切な家族の愛くるしい姿(画像提供/Sakieさん)

【画像6】kyoooko.aさんお気に入りの1枚(その2)撮影を続けるうち、自然に定点になったこの場所をいつも撮影している。明るい日差しがさし込む窓辺のベッドが印象的(画像提供/kyoooko.aさん)

【画像6】kyoooko.aさんお気に入りの1枚(その2)撮影を続けるうち、自然に定点になったこの場所をいつも撮影している。明るい日差しがさし込む窓辺のベッドが印象的(画像提供/kyoooko.aさん)

「インスタ映え」が流行語になりノミネートされ、たくさんのインスタ用アプリや機材が世の中にはあふれています。けれども、素敵な写真を撮れる人には、それらを超える「心の眼」があるように思います。部屋を少しだけ片づけて日光を招きい入れ、1枚写真を撮ってみてください。あなたの素直な暮らしが、そこに現れるかもしれません。

●取材協力
・sakie06さん
・kyoooko.aさん

家中ポカポカ、気温差なし!1台で快適「全館空調」とは

年間を通して、家中が快適な温度に保たれる全館空調。三井ホームやセキスイハイム、住友林業などの各社が提供しているが、「興味はあるけれど電気代が心配」「実際に暖かくなるのか疑問」という人もいるのでは? そこで今回は全館空調システム「エアロテック」を提供する三菱地所ホームと「エアロテック」利用者に、その仕組みや使い心地、気になる設備投資や電気代のことをきいてみた。
お風呂も廊下も常に快適! ひとつの室内機で隅々までカバー

冬本番になると、暖房をつけている部屋とそうでない部屋の温度差が激しく、朝起きたとき、入浴のときなど寒い部屋に移動するのがおっくうになってしまうこともある。ところが全館空調の家ならば、常に家の隅々まで暖かくて快適だそう。しかも、空調設備は半畳ほどのスペースに納まるコンパクトな室内機のみ。各部屋には吹出口とコントローラーしかないという。一体どうしてそんなことが可能なのだろうか? 

全館空調「エアロテック」を展開する三菱地所ホーム株式会社の事業推進部、狩野彩香(かりの・さやか)さんによれば、そのポイントは家自体の断熱・気密性にあるとのこと。

「実は一般的なつくりの家は、家の隙間から多くの熱エネルギーが漏れてしまっています。弊社の場合は家を建てる際に断熱・気密性の極めて高い工法を採用することと併せて『エアロテック』を導入していただくことにより、エネルギーのロスが少なく効率のよい空調を実現しています」(狩野さん)

家中を暖かくするというと、それだけ多くのエネルギーが必要そうに思えるが、実は全館空調の家はエネルギー効率がよく、電気代も安くなる。例を挙げると約150m2の部屋で一般的な局所空調(個々の部屋に空調設備を設置すること)の住宅の冷暖房費が年間約9万6000円だとすると、全館空調を導入すれば年間でおおよそ4万9000円から5万5000円までに価格を抑えられる(三菱地所ホーム株式会社調べ)。

「電気代節約の理由としては、家自体の高い性能に加え、通年で全館空調を使用することによる、エネルギー効率のアップもポイントです。冷暖房は起動して一気に温度を上げたり下げたりするときに一番電力が必要なのですが、通年空調することにより、起動時のエネルギーロスが無くなります。さらには局所空調の場合に多い、部屋のドアの開け閉めによるエネルギーロスも起こらないのです」(狩野さん)

全館空調は少ないエネルギーで快適に暮らすことができ、地球にもお財布にも優しいようだ。

【画像1】三菱地所ホームの「エアロテック」は個別空調にくらべ冷暖房費が抑えられるという(画像提供/三菱地所ホーム)

【画像1】三菱地所ホームの「エアロテック」は個別空調にくらべ冷暖房費が抑えられるという(画像提供/三菱地所ホーム)

お掃除ラクラク、間取りも自由。使い勝手の良さは折り紙つき

全館空調がエネルギー効率の面で非常に優れていることは分かったが、実際の使い心地はどうなのだろう。5年前、一戸建ての建て替え時に「エアロテック」を導入したOさんに、そのメリットとデメリットをきいた。

もともと「家が奥行きのある細長いつくりだったせいか、局所空調のときは気温の差が激しかったのです。でも全館空調にしてからは、とても快適になりました。また間取りの自由度が増したこともうれしいですね。建て替えの際は大きな吹抜けを取り入れたり、リビングとダイニングを引き戸で緩やかに区切ったりと、自由な発想で居住スペースをデザインしてもらいました」(Oさん)

全館空調にすると、部屋ごとに扉を設ける必要がない。吹抜けはもちろん、廊下を書斎やラウンジとした、遊び心のある間取りも実現できるのが魅力だ。またOさんによれば、導入時には想像していなかったメリットもあったそう。それがメンテナンスの手軽さだ。

「お掃除がとっても楽です。以前は各部屋で天井付の空調を使用していたため、室内機をひとつひとつ掃除していました。また何年かに1度は業者にクリーニングを依頼していたので高額な出費がありました。それが全館空調にすると室内機がひとつ。2週間に1度、床置きの室内機からフィルターを抜いて、掃除機で吸うだけで完了です。何か不具合があっても、保証が充実しているので安心して使っています」(Oさん)

確かに、一般的に空調設備はメンテナンスに手間と費用がかかる。それに対して全館空調は室内機がひとつなので、掃除がラクそうだ。また設備は設置後10年間無償で保証され、もしも夜中に全館空調が故障した際にも24時間体制でフォローされるそう。10年目以降は年間2万から3万円で同様のメンテナンスが受けられる(※)。よいことづくめに思えるが、デメリットはないのだろうか。
※三菱地所ホーム株式会社エアロテックの場合

「デメリットは、あまりに家の中が快適で外の気温が分からないことでしょうか。ですから外出のときは窓を開けたり、一度家から出て気温を確認しています」(Oさん)

外気温に影響されない快適空間ゆえのデメリットは、なんともうらやましいものだった……!

【画像2】室内機はこれ一台。室外機は2台で済むので、インテリアもエクステリアも、スタイリッシュにまとまりそうだ(画像提供/三菱地所ホーム)

【画像2】室内機はこれ一台。室外機は2台で済むので、インテリアもエクステリアも、スタイリッシュにまとまりそうだ(画像提供/三菱地所ホーム)

全館空調の導入に当たる費用は新築の場合30坪から40坪で約200万円ほどだという。建物の断熱・気密性と空調効果が連動しているので、リフォームで後付けするには難しさもあるそう。ただし、狩野さんによれば「必ずしも不可能ではないので相談してほしい」とのことだ。一戸建てだけでなくマンションに後付けする例もあるので、新築や建て替えの予定がある人はもちろん、リフォームを考えている人も導入を検討してみてはどうだろう。

●取材協力
・三菱地所ホーム株式会社

家中ポカポカ、気温差なし!1台で快適「全館空調」とは

年間を通して、家中が快適な温度に保たれる全館空調。三井ホームやセキスイハイム、住友林業などの各社が提供しているが、「興味はあるけれど電気代が心配」「実際に暖かくなるのか疑問」という人もいるのでは? そこで今回は全館空調システム「エアロテック」を提供する三菱地所ホームと「エアロテック」利用者に、その仕組みや使い心地、気になる設備投資や電気代のことをきいてみた。
お風呂も廊下も常に快適! ひとつの室内機で隅々までカバー

冬本番になると、暖房をつけている部屋とそうでない部屋の温度差が激しく、朝起きたとき、入浴のときなど寒い部屋に移動するのがおっくうになってしまうこともある。ところが全館空調の家ならば、常に家の隅々まで暖かくて快適だそう。しかも、空調設備は半畳ほどのスペースに納まるコンパクトな室内機のみ。各部屋には吹出口とコントローラーしかないという。一体どうしてそんなことが可能なのだろうか? 

全館空調「エアロテック」を展開する三菱地所ホーム株式会社の事業推進部、狩野彩香(かりの・さやか)さんによれば、そのポイントは家自体の断熱・気密性にあるとのこと。

「実は一般的なつくりの家は、家の隙間から多くの熱エネルギーが漏れてしまっています。弊社の場合は家を建てる際に断熱・気密性の極めて高い工法を採用することと併せて『エアロテック』を導入していただくことにより、エネルギーのロスが少なく効率のよい空調を実現しています」(狩野さん)

家中を暖かくするというと、それだけ多くのエネルギーが必要そうに思えるが、実は全館空調の家はエネルギー効率がよく、電気代も安くなる。例を挙げると約150m2の部屋で一般的な局所空調(個々の部屋に空調設備を設置すること)の住宅の冷暖房費が年間約9万6000円だとすると、全館空調を導入すれば年間でおおよそ4万9000円から5万5000円までに価格を抑えられる(三菱地所ホーム株式会社調べ)。

「電気代節約の理由としては、家自体の高い性能に加え、通年で全館空調を使用することによる、エネルギー効率のアップもポイントです。冷暖房は起動して一気に温度を上げたり下げたりするときに一番電力が必要なのですが、通年空調することにより、起動時のエネルギーロスが無くなります。さらには局所空調の場合に多い、部屋のドアの開け閉めによるエネルギーロスも起こらないのです」(狩野さん)

全館空調は少ないエネルギーで快適に暮らすことができ、地球にもお財布にも優しいようだ。

【画像1】三菱地所ホームの「エアロテック」は個別空調にくらべ冷暖房費が抑えられるという(画像提供/三菱地所ホーム)

【画像1】三菱地所ホームの「エアロテック」は個別空調にくらべ冷暖房費が抑えられるという(画像提供/三菱地所ホーム)

お掃除ラクラク、間取りも自由。使い勝手の良さは折り紙つき

全館空調がエネルギー効率の面で非常に優れていることは分かったが、実際の使い心地はどうなのだろう。5年前、一戸建ての建て替え時に「エアロテック」を導入したOさんに、そのメリットとデメリットをきいた。

もともと「家が奥行きのある細長いつくりだったせいか、局所空調のときは気温の差が激しかったのです。でも全館空調にしてからは、とても快適になりました。また間取りの自由度が増したこともうれしいですね。建て替えの際は大きな吹抜けを取り入れたり、リビングとダイニングを引き戸で緩やかに区切ったりと、自由な発想で居住スペースをデザインしてもらいました」(Oさん)

全館空調にすると、部屋ごとに扉を設ける必要がない。吹抜けはもちろん、廊下を書斎やラウンジとした、遊び心のある間取りも実現できるのが魅力だ。またOさんによれば、導入時には想像していなかったメリットもあったそう。それがメンテナンスの手軽さだ。

「お掃除がとっても楽です。以前は各部屋で天井付の空調を使用していたため、室内機をひとつひとつ掃除していました。また何年かに1度は業者にクリーニングを依頼していたので高額な出費がありました。それが全館空調にすると室内機がひとつ。2週間に1度、床置きの室内機からフィルターを抜いて、掃除機で吸うだけで完了です。何か不具合があっても、保証が充実しているので安心して使っています」(Oさん)

確かに、一般的に空調設備はメンテナンスに手間と費用がかかる。それに対して全館空調は室内機がひとつなので、掃除がラクそうだ。また設備は設置後10年間無償で保証され、もしも夜中に全館空調が故障した際にも24時間体制でフォローされるそう。10年目以降は年間2万から3万円で同様のメンテナンスが受けられる(※)。よいことづくめに思えるが、デメリットはないのだろうか。
※三菱地所ホーム株式会社エアロテックの場合

「デメリットは、あまりに家の中が快適で外の気温が分からないことでしょうか。ですから外出のときは窓を開けたり、一度家から出て気温を確認しています」(Oさん)

外気温に影響されない快適空間ゆえのデメリットは、なんともうらやましいものだった……!

【画像2】室内機はこれ一台。室外機は2台で済むので、インテリアもエクステリアも、スタイリッシュにまとまりそうだ(画像提供/三菱地所ホーム)

【画像2】室内機はこれ一台。室外機は2台で済むので、インテリアもエクステリアも、スタイリッシュにまとまりそうだ(画像提供/三菱地所ホーム)

全館空調の導入に当たる費用は新築の場合30坪から40坪で約200万円ほどだという。建物の断熱・気密性と空調効果が連動しているので、リフォームで後付けするには難しさもあるそう。ただし、狩野さんによれば「必ずしも不可能ではないので相談してほしい」とのことだ。一戸建てだけでなくマンションに後付けする例もあるので、新築や建て替えの予定がある人はもちろん、リフォームを考えている人も導入を検討してみてはどうだろう。

●取材協力
・三菱地所ホーム株式会社

フローリングで布団生活! 上手な布団の選び方&収納方法

和室のない家が増えたけれど、「寝室にはベッド」ではなく布団派も少なくない。でも気になるのが、寝心地やカビ、そして布団の収納場所……。そこでフローリングで快適に眠るための敷き布団選び、湿気対策、収納術を探ってみた。
畳とフローリング、寝心地の違いはほとんどなかった!

筆者もフローリングで布団派の一人。住宅事情もあるけれど、場所を占有しない布団の軽快さが気に入っている。ただ「洋室=ベッド、和室=布団」の固定観念があり、「洋室に布団を敷いて寝ています」と人に話すのは何となく恥ずかしいと感じてしまう。寝心地に満足できないのは、もしかしたらフローリングのせい? なんて不安もある。

そんなモヤモヤを解決しようと訪ねたのは、布団・寝具の老舗メーカー、東京西川。スリープマスターの速水美智子さんが質問に答えてくれた。スリープマスターとは、東京西川の社内資格のひとつで、寝具はもちろん、睡眠環境や生体リズム、人間工学についてまで、幅広い知識をもつ睡眠のスペシャリストだ。まずは、畳と比べた場合、寝心地に違いはあるのか聞いてみた。

「ほとんど違いはありません。素材の特性として畳には湿気を吸う力が少しありますが、違いはわずか。寝心地にもとくに影響はありません。厚みが5cm以上あるような一般的な敷き布団で寝るのであれば、差を感じる方は少ないと思います」(速水さん)

寝心地に差がないとは意外! おまけにフローリングでも畳でも、敷き布団の選び方は変わらないという。それならと、敷き布団選びの基本をレクチャーしてもらった。

敷き布団は自分に合う硬さを実際に試して選ぶ

「敷き布団の役割は、人間の体を支えることがメイン。理想の寝姿勢は、まっすぐ立ったときの自然な姿勢を倒した状態といわれ、凹凸のある人間の体を自然な形でキープすることが大切です。それには『寝姿勢保持』と『体圧分散』の2つがポイントになります」

【画像1】理想の寝姿勢(画像提供/東京西川)

【画像1】理想の寝姿勢(画像提供/東京西川)

人間は腰臀部(ようでんぶ)が一番重いので、柔らかすぎる布団に寝ると腰からお尻あたりが沈み込んで“く”の字のような姿勢になり、腰痛などにつながってしまう。正しい寝姿勢を保つために、重い部分をしっかりと支える土台が必要だという。

一方、硬すぎる敷き布団で寝ると、肩や腰など凸部分だけで体を支えることになり、凹んだ部分は浮いている状態に。腰などに集中的に圧がかかるため、血流が滞り、しびれの原因になることも。寝がえりの回数が増えて、眠りを妨げられることにもつながるそうだ。

【画像2】体の一部分に負担をかけすぎない、自然でムリのない寝姿勢の曲線。これを保てる敷き布団選びが快眠のカギ(画像提供/東京西川)

【画像2】体の一部分に負担をかけすぎない、自然でムリのない寝姿勢の曲線。これを保てる敷き布団選びが快眠のカギ(画像提供/東京西川)

柔らかすぎると寝姿勢が保てず、硬すぎると体圧が分散しない。いったいどんな布団だったら、相反する2つの条件をかなえられるのだろう?

「土台に硬めのマットレスを敷き、その上にクッション性のある柔らかいものを敷くのもおすすめです。また、最近は2つの役割を1枚でかなえられるものがいろいろ出てきています」とのこと。

【画像3】「&Free マットレスSA」上層部の凹凸が体圧を分散点させ、ベース部分が沈み込む体を支える独自の4層構造。横向き寝にも対応。シングル9万円(税別)~(画像提供/東京西川)

【画像3】「&Free マットレスSA」上層部の凹凸が体圧を分散点させ、ベース部分が沈み込む体を支える独自の4層構造。横向き寝にも対応。シングル9万円(税別)~(画像提供/東京西川)

収納面を考えても、敷き布団は2枚より1枚がダンゼンいい。試してみる価値はありそうだ。ただ、店頭でちょっと寝てみただけで寝心地の良し悪しを判断するのは難しい。

「人によってちょうどいい硬さは違うので、店頭のベッドで実際に寝てみることは大事です。横を向いたり、寝返りを打ったり、いろいろな姿勢を試してください。寝具店に行けばプロの販売員がいますから、寝姿勢をチェックしてもらうといいでしょう」(速水さん)

湿気対策は手軽な除湿シートやパッドシーツを活用

次は、湿気対策をマスターしたい。恥ずかしながら筆者は過去に、布団を敷きっぱなしにしてフローリングにシミをつくってしまったことがある。当然ながら、敷きっぱなし、置きっぱなしはご法度、ですよね?

「そのとおりです。敷きっぱなしではなく、せめて立てかけたほうがいいですね。押入れやクローゼットにしまうときも、すのこなどを使って通気をよくするといいでしょう。

湿気を逃がすお手入れ方法は素材によって違います。昔ながらの綿の敷き布団は、吸湿性はあるものの放湿性が乏しく、こまめな天日干しが欠かせません。ウール混の敷き布団は、吸放湿性に優れ、綿より湿気がたまりにくいですが、やはり天日干しは必要です。

ウレタンの敷き布団は、天日干しができないので、風通しの良いところで日陰干しをしましょう。外に干さない場合でも、敷きっぱなしはカビなどの原因になるので、こまめに壁に立てかけて裏面に風を当てるようにしましょう」(速水さん)

こまめに天日干しをするのはムリという人も多いはず。手軽にできる湿気対策はないだろうか?

「敷き布団の下に除湿シートを敷くのがおすすめです。吸湿力に優れ、天日に干してたまった湿気を逃がせば繰り返し使えます。また、敷き布団の上にパッドシーツを使うと、ダイレクトに汗がしみ込むのを防ぐことができます。洗えるものがほとんどで取り替えも簡単です」(速水さん)

【画像4】「おりたためるドライシート」 敷き布団の下に敷くだけで、汗などによる湿気を強力吸収。消臭機能もあり、センサーの色が変化して干すタイミングをお知らせ。押入れやクローゼットの湿気取りにも使える。9800円(税別)(画像提供/東京西川)

【画像4】「おりたためるドライシート」 敷き布団の下に敷くだけで、汗などによる湿気を強力吸収。消臭機能もあり、センサーの色が変化して干すタイミングをお知らせ。押入れやクローゼットの湿気取りにも使える。9800円(税別)(画像提供/東京西川)

【画像5】「ボーテ 甘撚りシンカーパイルパッドシーツ」。吸湿シートと通気性の良いメッシュを組み合わせたパッドシーツ。表面はコットンのやわらかな肌触り。洗濯をしても乾きがよく、通年で使える。7500円(税別)(画像提供/東京西川)

【画像5】「ボーテ 甘撚りシンカーパイルパッドシーツ」。吸湿シートと通気性の良いメッシュを組み合わせたパッドシーツ。表面はコットンのやわらかな肌触り。洗濯をしても乾きがよく、通年で使える。7500円(税別)(画像提供/東京西川)

どちらもパラッと一枚敷くだけで、折りたためて収納や干すのがラクなのもいい。ただし、除湿シートは敷き布団の下に落ちた湿気は吸い取るが、敷き布団の中にたまった湿気を吸い取ることができない。特に綿の敷き布団は、できるだけ天日干しを心がけたほうがいいそうだ。

クローゼットへの収納は工夫次第。あえてしまわない選択も

最後に、収納の問題を解決したい。洋室には押入れのような奥行きのある収納が少なく、クローゼットに入らないからと布団を出しっぱなしの人も多いと思う。クローゼットにもしまいやすい布団や、上手な収納方法はないだろうか。整理収納のエキスパート、すはらひろこさんにアドバイスしてもらった。

「従来の和布団(綿の布団)ではなく羊毛や羽毛布団を使っている家庭が多いと思います。その場合には4つ折りにたたむことで、押入れよりも奥行きの浅いクローゼットにもしまうことができます。また、4つ折りにできるマットレスもあります。キャスターのついた布団用のワゴンを使うと毎日の出し入れがラクです」

「ただ、布団をしまうために衣類の収納スペースを使うので、そのぶんだけ衣類を減らして調整する必要があります」とすはらさん。布団はしまえたけれど、衣類が外に出てしまったら意味がない。無理やりクローゼットにしまうのではなく、出したまま見た目よく管理する手もあるだろう。

「出したままにするなら、カビ、ダニ、ほこり対策のために、布団にこもった湿気を取り除き、床掃除のしやすい道具を使うのがおすすめです。例えば、すのこのボードを逆V字にして、室内で干しながら片づける方法があります。道具を使わない場合はたたんだ状態にして、布をかぶせて目隠しをするといいでしょう」

布団はもちろん、湿気対策グッズや収納用品も便利なものがいろいろ出ている。積極的に取り入れれば、私たちの「フローリングで布団生活」はもっと快適になりそうだ。

●取材協力
・東京西川
・片づくおうちプランナー すはらひろこ

危機管理アドバイザーがおすすめする、「災害時に本当に役に立つ備え」とは?

防災に関心が集まる現在、防災グッズはとりあえず用意したけれど、なんとなく不安を感じたまま日々を過ごしているという人は多いのではないだろうか。まさかのときに困らないためには、どんな備えをしておくべきかを、被災地での支援活動等を積極的に行っている、危機管理教育研究所代表の国崎信江さんに話を伺った。
まず注意すべきは家具の配置

まず、あまりお金や時間をかけることなくすぐにでも実践できる住まいの工夫を教えてもらった。
「家具の配置に気を付けましょう。いざというときのために逃げる動線を確保しておくことが大切です。玄関に大きな棚があると倒れて逃げられません。また寝室には大きな家具は置かないような工夫をしてください」と国崎さん。寝ているときに家具が倒れてケガをすることも多い。家電などが飛び出さないように滑り止め粘着ジェルマット等で止めておくのも大切なことだ。

【画像1】避難する動線を確保するためには、家具が倒れないような工夫が必要(写真/PIXTA)

【画像1】避難する動線を確保するためには、家具が倒れないような工夫が必要(写真/PIXTA)

「最近では防災グッズを用意している方が多いですが、ふだんの生活では意外に気付かない、実際に被災生活を送る場面で必要なものをプラスしておきましょう」

具体的には寝室にスリッパを置いている人はいるが、室内を歩くときでも長靴などの底の厚い靴が必要だそうだ。また、「室内に壊れたガラスが散乱した場合、掃除用具がまず必要になるので忘れずに用意しておきましょう。軍手よりも防刃手袋のような手を保護してくれる手袋を準備しましょう。災害ごみとなった生活用品はビニール袋よりも麻袋のような丈夫な袋に捨てると破れにくいのでおすすめですよ」(同)

加えて意外に忘れがちなのは、給水時に水を運ぶ給水袋も備えておきたいものだ。

味見もアリ!?食材も一工夫で「備蓄用」に

また日ごろから防災グッズを暮らしのなかで活用しておくことも大事とのこと。「カセットコンロのように、家族で鍋を囲んだり、庭でBBQを楽しんだりしていれば、とっさのときにも使い方が分かり、非常時にも慌てません」

また備蓄用の食べ物もふだんから食べてみるのが大切だそうだ。「非常食も最近ではどんどんおいしくなっています。気が付くと賞味期限切れということを防ぐこともできるので、一度はみんなで味見をしておくといいですよ。自分たちの好みのものを用意しておけば、つらい避難生活でも楽しみが増えますから」

また特に備蓄用ではない食べ物でも、パスタや乾麺、缶詰などふだんから多めに用意して、順番に新しいものから使っていくことでも備蓄になるそうだ。「災害時は野菜不足になるので、野菜は下ゆでしてカットして冷凍しておけば自然解凍しておいしく食べられます。食べる順番は冷蔵庫の食品、常温保存している食品、非常食のように傷みやすいものから食べていくと変化があってよいですよ」

【画像2】缶詰は多めにストックしておくと、いざというときに「備蓄用」として役に立つ(写真/PIXTA)

【画像2】缶詰は多めにストックしておくと、いざというときに「備蓄用」として役に立つ(写真/PIXTA)

リフォームするなら防災観点もお忘れなく

建物の老朽化などでリノベーションする必要がでてきた場合には、良い機会なので一緒に防災についても取り組んでおくとよいそうだ。

「最近の傾向としては、寝室はコンパクトにまとめ、リビングをより広くした間取りが人気を集める傾向にあります。そのため、なるべく寝室には家具を置かなくて済むようにしておくことは大切です。なるべく収納スペースは造り付けにして余計な家具を置かなくてもよいようにしておくといいですね」

室内の動線にも配慮しておくのがベストだそうだ。「一戸建てならば階段の位置が大事です。動線を考えてどこに階段を置くかを考えておきましょう。例えばリビングの中に階段があるような間取りだと、2階にいる家族の避難状況が把握しやすいですね」と国崎さん。

マンションの場合でも動線は重要だ。「マンションによっては、各部屋に小さいウォークインクローゼットや収納があちこちについていますが、それを1つに集約して、出入口がいくつもあるというウォークスルークロゼットをつくれば『閉じ込め』に遭いにくい空間になります」。個々の部屋の出入口が一カ所しかなくても、ウォークスルークロゼットがつながっていれば、部屋のドアとクローゼットといった2つの動線から部屋の外に出ることができる。

冷蔵庫やテレビなど、明らかに置き場所が決まっているような場所には、あらかじめその壁に補強板をつくっておくことも効果的だという。「賃貸マンションの場合は壁に穴をあけられない場合がありますが、防災に関しては家主に相談してみてもいいと思いますよ」。加えてバルコニーにモノを置かないようにするのも動線のために大切なことだ。

レンタルシステムやクラウド活用 モノを減らすのも防災に役立つ

国崎さんは、防災の観点からモノを減らすべく、新しいサービスも活用しているそうだ。
「最近ではレンタルシステムを活用して、なるべくモノを持たない暮らしを心がけています。客用の布団、ベ
ビーグッズ、冠婚葬祭や季節によって必要なものなど、何でも今は借りられますから積極的に活用しましょう」

20年も前からトランクルームなどさまざまな新しい試みをしているそうだ。
「以前は、限られた収納スペースだったので、少し離れた地方の県にトランクルームを借りていました。何かあってもすべてをなくすことがないのでリスクヘッジになります」
今は、衣類のクリーニングについても、保管付きサービスを利用している。「日ごろの利便性と 防災の両面で重宝しています。本当に重要なものは銀行の貸金庫を借りて保管するのも一案です。自宅に貴重品を置かなければ盗まれる心配もしなくて済みます」

子どもの本以外は時間をかけて写真に残し、デジタル化しているそうだ。「子どもが小さいときからつくった絵や作品も写真に撮ってデータで残してクラウドサービスで保存しています。上の子が大きくなったときに、今までの軌跡として見せてあげたら、すごく感動してくれました」一見合理的だが、心がこもった方法かもしれない。

室内にモノが少なければふだんのくらしにも便利だ。「収納スペースに合わせて暮らしているので、子どもたちも余計なモノを欲しがりません。逆に本当にいいモノはふだんから使うようにしています。そのほうが扱い方も丁寧になり、勉強にもなると思っています」

国崎さんの家では家族全員のパスポートをきちんと更新して、何かあったらすぐ海外に出られるような準備もしているそうだ。最近話題の多拠点居住もリスクヘッジに有効だと教えてくれた。

「子どもたちには日ごろからキャンプなどを体験させ、非日常にも慣れさせておくことが大切です」
国崎さん一家ほど徹底できるかどうかはともかくとして、日ごろの備えが「まさか」というときに力強い味方になってくれるということは、覚えておきたいところだ。

一般社団法人危機管理教育研究所/国崎信江さん●取材協力

・一般社団法人危機管理教育研究所 国崎信江さん
危機管理アドバイザーとして、文部科学省「防災科学技術委員会」委員等を歴任している

バルコニーの飾りつけにもルールが!? 「お家クリスマス」で失敗しないコツ

街はイルミネーションがともり、一気にクリスマスムード一色。家でもクリスマス気分を味わうために、ホームパーティーや部屋の飾りつけを楽しんでいる人は多いのではないだろうか。しかし、クリスマスシーズンだからこそ注意したいトラブルもある。そこで今回は、お家クリスマスで失敗しないコツをまとめた。
他人は見ている! ホームパーティー前にチェックすべき場所・5つ

ホームパーティー開催時に気をつけておきたいお掃除ポイント
(2012年12月11日掲載)

【画像1】(画像/thinkstock)

【画像1】(画像/thinkstock)

お店にはないアットホームな雰囲気がホームパーティーの大きな魅力であるが、普段の生活感が見えすぎるのはちょっとマイナス。事前の清掃には気をつけておきたいところ。そこでここでは、自宅でホームパーティーを開催する際にチェックしておきたい、家の手入れポイントについてご紹介したい。損しないために! ホームパーティーの会費徴収の方法は

ホームパーティー平均予算はいくら? 会費の徴収はこうしてる!
(2015年12月17日掲載)

【画像2】(写真/thinkstock)

【画像2】(写真/thinkstock)

12月から1月はクリスマスや忘年会、年越し、新年会といったイベントが多く、ホームパーティーを開く人も多いのではないだろうか? そんなときに気になるのがパーティーの予算や会費だろう。アンケート調査を行い、ホームパーティーの内容を調べた。自宅のイルミネーションがトラブルに!? 弁護士に聞いた!

輝く自宅イルミネーション…ところで、法的に問題ないの?
(2014年12月8日掲載)

【画像3】(写真/123RF.COM)

【画像3】(写真/123RF.COM)

人工光をめぐる悪影響は光害(ひかりがい)と呼ばれており、時にはトラブルの元になることも。
ということで、自宅をイルミネーションで飾る場合どのようなことに気をつければよいのか、レオーネ北浜法律事務所の伊藤隆啓弁護士にお話をうかがった。バルコニーの飾りつけにも、ルールがあるってホント?

マンションのバルコニーにイルミネーションをつけたいけど、大丈夫?
(2012年12月15日掲載)

【画像4】(写真/thinkstock)

【画像4】(写真/thinkstock)

自分の部屋(専有部分)のバルコニーは共用部分といって、居住者の専用使用権が認められているものの、使用方法はマンションの管理規約などによって制限されている。こうした部分にイルミネーションを設置しようとする際、どんな点に注意すればいいのだろうか。冬は火事のリスクが高まる時期。気を付けておくべきこととは?

クリスマスツリーやキャンドル。火事を起こさないコツって?
(2013年12月24日掲載)

【画像5】(写真/thinkstock)

【画像5】(写真/thinkstock)

空気が乾燥している冬は、一度発火すると火の回りが早いため大惨事になる恐れがあり、注意が必要だ。ちなみに、冬期の火事の原因の多くは暖房器具によるものだ。特にストーブ系の暖房器具は、直接火を扱うだけにその危険度は高い。住宅防火対策推進協議会のホームページを参考に気を付けるべきポイントを挙げてみよう。

家でクリスマスを楽しみたいなら、部屋の飾りつけやホームパーティーは外せない。この時期に起こりがちなトラブルに注意して、すてきなクリスマスを迎えよう!

在宅ワーカーの悩みと理想のホームオフィスとは~自宅で働く【後編】

オフィスに通勤せずに自宅で働ける在宅勤務制度は、すでに15%以上の企業が採用※しています。しかし、もともと自宅が仕事場を兼ねているフリーランスや個人経営者などと違い、毎日オフィスに通勤していた人がある日突然自宅でも仕事ができるようになれば困ることもあるはず。後編では、筆者の切実な悩みとなっている腰痛と椅子の関係についてご紹介します。
※ザイマックス不動産総合研究所『働き方改革と多様化するオフィス』2017年

パソコン作業は腰にくる

リビングのソファにくつろいで大作映画の鑑賞はできますが、ソファは長時間のパソコン作業には向いていません。在宅ワークは自分の好きな場所で自由に仕事ができるメリットがありますが、パソコンを使うのなら正しい姿勢を保てるしっかりとした机と椅子が必要でしょう。

私が会社勤めのときには、4、5時間連続してパソコン作業をすることがよくありましたが、腰痛に悩まされることはほとんどありませんでした。最近のオフィスチェアは、長時間の集中作業でも疲れにくいよう機能を進化させているからです。例えば、座る人が自分の好みに応じて座面の奥行や高さ、背もたれの角度などを調整できるタイプ、座る人の体格に合わせて自動調整してくれるタイプなどがあり、種類やデザインも豊富です(画像1)。

なかには、女性の骨盤形状に合わせた座面や素肌にやさしい張地、後方からの視線を遮る背もたれを備えた、女性向けに開発された椅子もあります。

【画像1】オフィスチェアは選ぶのに困るほど種類が豊富(写真撮影/松村徹)

【画像1】オフィスチェアは選ぶのに困るほど種類が豊富(写真撮影/松村徹)

ところが在宅ワーカーとなった今は、1時間ほど座って仕事をしただけで腰が痛くなるようになりました。もちろん使用している椅子による差や、個人差はあるでしょう。しかしオフィス家具メーカーの方と話すと、異口同音に「住宅用の椅子はオフィスチェアのように事務作業を長時間するようにはつくられていないので、在宅ワークで使っているといずれ腰を悪くする」と言います。

そもそも人間は二足歩行の動物なので、立っている姿勢が一番自然だといいます。立ち姿勢で腰椎の椎間板にかかる負担を1とすると、座った姿勢では1.4倍、前のめりで座ると1.85倍も大きくなるそうです※。長時間座っていても腰への負担が少なく疲れない椅子は在宅ワークでも必須のはずですが、住宅向けの椅子はテーブルとセットでインテリアになじむようデザインされたものばかりで、在宅ワークを意識した機能のものはほとんど見かけません。
※A.Nachemson  “LUMBAR DISC PRESSURE AND MYOELECTRIC BACK MUSCLE ACTIVITY DURING SITTING : I. Studies on an Experimental chair”(1970)

在宅ワークに理想の椅子はオフィスチェア

それなら、オフィスチェアを自宅用に使えばよいのですが、いくつか問題があります。まず、通常のオフィスチェアは住宅用としてはサイズが大き過ぎるうえ、ハイテクで未来的なデザインや素材、色がどうしても室内で浮いてしまいます。特に、脚に付いているキャスターはマンションで使用すると階下への騒音元になりやすく、フローリングやクッションフロアを傷つける原因にもなります。オフィスに敷くタイルカーペットを前提にしているのでフローリング床では滑り過ぎ、子どもたちの格好のおもちゃになるのは確実です。

また、腰痛防止に意義を見出すとしても、ニトリやIKEAになじんだ消費者には値段も少し高すぎる場合があります。仮に自宅のダイニングに合うオフィスチェアが見つかったとしても、テーブル用に4脚そろえようとしたら大変な出費になってしまいかねません。

とはいえ、在宅ワーク用チェアの理想形はやはり(住宅向けに改良された)オフィスチェアだと思います。長時間座って仕事をしても疲れない機能性が何より大事だからです。サイズはオフィスチェアよりコンパクトで、背もたれや座面はメッシュではなく落ち着いた色の布や革張り、フレームはアルミではなく樹脂、キャスターなしの4本脚。パソコン作業用のひじ掛けも欲しいところです。値段は普通の住宅用より少し高くなってもオフィスチェアより安価であれば最高です。

腰痛防止は高年齢在宅ワーカーとして特に切実なテーマなので、このような椅子が一刻も早く開発されることを望みます。

そもそも仕事は座ってするものなのか

“座りすぎ“は腰痛に限らず、血行や呼吸機能など健康面にいろいろな悪影響があることが最近分かってきました。オーストラリアの調査研究”A 20-country comparison using the International Physical Activity Questionnaire(IPAQ)”(2011年)によれば、1日の座位時間が4時間未満の人と比べて、8時間以上の人の死亡率は1.15倍、11時間以上の人は1.4倍高まり、習慣的に運動をする人でも座位時間が長ければ死亡リスクは高まるそうです。

すでに、一部の先進的な企業や大学では、座りすぎを防ぐためにオフィスワークに立ち仕事を取り入れる動きがあります。健康面のメリットだけでなく、立ち仕事で眠気を抑えられるので作業効率が増したりリフレッシュできたりするうえ、他人から話しかけられやすいのでコミュニケーションも活発になるからです。

今回、在宅ワークに合う理想の椅子は見つかりませんでしたが、オフィス家具のショールームで、天板の高さが手動で自由に変えられるコンパクトなテーブルを発見しました。これなら立ち仕事にぴったりで、どんな住宅でも場所をとらず室内にとけ込み、仕事にも家事にも使えて一石二鳥です。あとは、立ち仕事を受け入れるかどうかが思案のしどころです。

テレワークの実態調査から、意外にも「集中して仕事ができる」「仕事の成果が向上する」「いいアイデアが出せる」など仕事の質の向上につながる効果のあることが分かりました。仕事のON/OFFが切り替えづらく、長時間労働になりやすいというデメリットが克服されれば、ワークライフバランスのとれた新しい働き方として社会に定着していく可能性を感じます。また、在宅勤務が普及すれば、住宅家具のデザインや機能も大きく変わるかもしれません。住宅建設やリフォームの場面においても、在宅ワークを意識した設計や工夫が登場してくるはずです。

働き方改革で増加するテレワーク。その実態は~自宅で働く【前編】

通勤せずに自宅で働ける在宅勤務制度はうれしいけれど、毎日オフィスに通勤していた人が突然自宅でも仕事が出来るようになれば、困ることもあるはず。定年後、親と同居するため郷里で在宅ワーカーになった筆者が、働き方改革に関するアンケート調査結果を読み解きながら、自らの経験も踏まえて在宅ワークの実態と悩みをまとめてみました。
テレワークのほうが集中できてアイデアが出る

自宅やカフェなど、本来勤務する職場から離れた場所で仕事をすることをテレワークといいます。アンケート調査※からは、顧客のオフィスやサテライトオフィスなどすでにいろいろな場所でテレワークが実践されていることが分かります(図表1)。テレワークは、スマートフォンやノートパソコンなどの持ち運び可能な情報通信端末が普及したことに加えて、子育て支援や介護支援の観点から、また最近では災害対策や働き方改革の試みとして採用する企業が増えています。
※ザイマックス不動産総合研究所『大都市圏オフィス需要調査2017』『働き方改革と多様化するオフィス』2017年

【画像1】図表1:テレワークで利用するのは自宅が一番多い(資料:ザイマックス不動産総合研究所『大都市圏オフィス需要調査2017』をもとに筆者が作成)

【画像1】図表1:テレワークで利用するのは自宅が一番多い(資料:ザイマックス不動産総合研究所『大都市圏オフィス需要調査2017』をもとに筆者が作成)

多くの会社員は日中オフィスで働いており、自宅は休息やリフレッシュ、家族と過ごす私的な場所なので、そこでオフィスと同じように仕事をすることは想定していません。しかし、実際にテレワークを経験した人は「集中して仕事ができる」「仕事の成果が向上する」「いいアイデアが出せる」など仕事の質の向上につながる効果や、「ストレスが減る」というメンタルヘルス面の効果を感じています(図表2)。テレワーカーにとって、本来の働く場であるオフィスのほうが、集中しづらくアイデアが出にくく、かつストレスフルな環境だとすればなんとも皮肉です。

【画像2】図表2:テレワークは職場より集中できてストレスも減る(資料:ザイマックス不動産総合研究所)

【画像2】図表2:テレワークは職場より集中できてストレスも減る(資料:ザイマックス不動産総合研究所『働き方と多様化するオフィス』より)

また同調査から、テレワーク経験者は、「仕事のコミュニケーション量が減る」「ホウレンソウ(報連相)がしづらい」などのコミュニケーションロスへの不安をそれほど感じなかったことも分かります。ビデオ会議やチャットなどコミュニケーションツールの発達に加えて、オフィス出勤時にはフェーストゥフェースでコミュニケーションを取る働き方がうまくできているのかもしれません。

自宅はON/OFFの切り替えが難しく、長時間労働にもなりやすい

一方、テレワークのデメリットとして、ON/OFFの切り替えがしづらいことを挙げた経験者が3~4割もいます。特に自宅の仕事では、サテライトオフィスやカフェなどと比べてその傾向がより強くなります。自宅外の施設は私的な空間ではなく、営業時間も限られているうえ、自宅を離れるので仕事モードに切り替えやすいはず。それに対し、完全にプライベートな自宅は自由過ぎてメリハリをつけにくいからだと思われます。
また、テレワークのもうひとつのデメリットとして、長時間労働になったことを挙げた経験者も1~3割います。これも自宅のほうが多くなっていますが、自宅はON/OFFの切り替えが難しく、いったん仕事に集中してしまえば時間の制約がありません。適当なタイミングで仕事を切り上げにくいから、ということでしょう(図表3)。

【画像3】図表3:自宅はサテライトオフィスなどよりON/OFFの切り替えが難しく長時間労働にもなりやすい(資料:ザイマックス不動産総合研究所)

【画像3】図表3:自宅はサテライトオフィスなどよりON/OFFの切り替えが難しく長時間労働にもなりやすい(資料:ザイマックス不動産総合研究所『働き方と多様化するオフィス』をもとに筆者が作成)

ところで、定年退職して自宅やカフェだけで仕事をする筆者は、通勤するオフィス自体がないので厳密にはテレワーカーとはいえません。両親の世話もあって自宅を長時間離れられず、二世帯分の家事を妻とこなしながら仕事をしています。そのためまとまった時間がとりにくいうえ、パソコンに向かおうとするとなぜか飼い猫たちが入れ代わり立ち代わり寄ってきて邪魔をします。
そんな中で出来上がったワークスタイルは、これまでみてきたテレワークの実態とは違い、こまめにON/OFFを切り替えて短時間集中で仕事をするというものです。生産性の高さは現役のテレワーカーには及ばないと思いますが、上司に勤怠管理や勤務評定されない気楽さと、仕事がそれほどないので余裕をもって取り組める点は現役テレワーカーより恵まれています。

後編では、筆者が自宅を職場としたときに直面した、腰痛問題についてオフィスとの対比を踏まえて考えてみます。

都市のど真ん中で農業? 初心者から本格派まで楽しめる可能性を探った

大都市に暮らし、IT機器に囲まれて仕事をしていると、「土や緑に触れたい」と感じることが多いのではないでしょうか。それがベランダ園芸やガーデニングなどの趣味につながる人もいますが、それでは満足できず、さらに一歩踏み込み、「自分が食べる野菜を育てたい」、「子どもたちと一緒に土に触れる時間を得たい」といった人たちもいます。都市で、“農力”を発揮するにはどうしたら良いのか、可能性を探ってみました。
東京に、本格的クラインガルテンがあった!!

都市生活と農作業の両立というと、ドイツが先達と言えます。19世紀に生まれたクラインガルテン(ドイツ語で「小さな庭」の意味)は、都市近郊の小規模の農地で、ラウベと呼ばれる小屋が併設されています。都市住民が賃貸で使うもので、滞在型市民農園とも呼ばれます。週末や休暇のときに来て、農作業に汗を流し、リフレッシュするというものです。

日本でも、1990年代に入るころから各地に続々とクラインガルテンと呼ばれる施設ができました。そこで、東京初の本格的クラインガルテン「おくたま海沢ふれあい農園」(東京都西多摩郡奥多摩町)を訪ねてみました。

【画像1】おくたま海沢ふれあい農園のクラインガルテン。ガス、水道、電気完備のラウベが並ぶ。遠くに山々が見える美しい風景だ(写真撮影/織田孝一)

【画像1】おくたま海沢ふれあい農園のクラインガルテン。ガス、水道、電気完備のラウベが並ぶ。遠くに山々が見える美しい風景だ(写真撮影/織田孝一)

ここは完成して今年で11年目。270m2の農地とそこに建てられた26.5m2のラウべ(ガス、水道、電気設備、キッチン、ユニット式バストイレ付き)が1区画。全部で13区画あります。奥多摩町の施設ですが、海沢地区の自治会が受け皿となって運営し、栽培講習会、料理講習会、収穫祭などを開催し、地元と利用者との交流に力を入れています。
管理運営責任者の堀隆雄さんによると、「利用者は初心者もいますが、市民農園の経験があり、定年退職されている方が多いですね。利用は週末型。車で2、3時間かけて来る方もいます」

利用者の一人、Tさんは世田谷区在住。公務員でしたが定年退職後の生活を模索中に、この農園を知りました。「今は、ほとんどこちらに滞在するような生活です。楽しみは、いろいろな品種の栽培にチャレンジすること。すべて無農薬です」
畑を拝見すると、大根、イチゴ、トウガラシ、サトイモ、エシャロット、タマネギ、白菜などの野菜が立派に育っていました。
 
ここの賃貸料は年間で60万円。単年度ごとの契約で、利用者の平均契約期間は4~5年です。全国のクラインガルテンもおおむね同等の賃貸料で、年間40万円~70万円が相場です。このくらいの金額だと、子育てやローンを終え、ある程度時間とお金に余裕のある退職者の利用が多くなることは確かでしょう。
また「おくたま海沢ふれあい農園」には滞在型だけでなく、日帰りタイプの体験農園も用意しています。こちらは1区画約50m2と規模はずっと小さいのですが、年間1万円で借りることができます。

えっ、マンションで、農作業が楽しめるの?

クラインガルテンはどちらかと言えば本格派志向の人向きと言えるでしょう。もう少し負担がなく、身近で農作業をしたいという人なら、農園が付いているマンションを選ぶという手もあります。

【画像2】シティハウス横濱片倉町ステーションコート。神奈川県で初めて農園サービスを導入した(写真撮影/織田孝一)

【画像2】シティハウス横濱片倉町ステーションコート。神奈川県で初めて農園サービスを導入した(写真撮影/織田孝一)

横浜市営地下鉄ブルーラインの片倉町駅から徒歩2分、112戸が入居する「シティハウス横濱片倉町ステーションコート」は、神奈川県で初めて農園サービスを取り入れたマンション。徒歩圏内に畑があり、ここにマンション居住者のために8区画(100m2)の畑を確保、農業を楽しめるようにしています。
マンションに関係する新規事業の一つとして始めたもので、特定の居住者が農地を使うのではなく、年間を通じて、種まき、植え付け、収穫、加工品づくり、納涼祭など、月に一度のペースでイベントを開催し、それに居住者が参加する形式です。

【画像3】住宅街を抜けると、ありました! シティハウス横濱片倉町シティコートの居住者の畑(写真撮影/織田孝一)

【画像3】住宅街を抜けると、ありました! シティハウス横濱片倉町シティコートの居住者の畑(写真撮影/織田孝一)

マンションの管理室の神馬康二さんは、「入居者の平均年齢は20代後半から30代、内、6、7割にお子さんがいます」
このサービスは当初、参加世帯数を限定したものだったため、一時は廃止の意見も出たそうです。しかし「子どもを土に触れさせたい」という子連れファミリー層の声も大きく、管理組合が実際に農園サービスを行っている会社(アグリメディア)に相談したところ、現在の「世帯数を制限しない、毎月イベントを開催する」という提案が出てきて、存続させることになりました。

「イベントには毎回、20~30世帯、人数にして40~50人が参加しています。雨のため収穫のイベントができなかったときには、運営側で収穫したジャガイモを袋詰めにして、マンションに置き、希望者に持ち帰っていただき、好評でした」(神馬さん)

このサービスは、農作業を楽しみたい、子どもと共に土に触れたい、という要望以上に、同じマンション住民のコミュニティ意識の醸成に役立っているようでした。

【画像4】「ほら、こんなによく育ちました」と、マンションの管理室の  神馬康二さん(写真撮影/織田孝一)

【画像4】「ほら、こんなによく育ちました」と、マンションの管理室の 神馬康二さん(写真撮影/織田孝一)

このマンションを開発した住友不動産は、その後、敷地内に畑(約130m2)を設けたマンション「ココテラス横濱戸塚ヒルトップ」を送り出しました。こうしたタイプのマンションはほかにも増えています。家探し中の方は検討してみる価値がありそうです。

“クワを持ったこともない初心者 ”も安心

今の住まいはそのままに、畑だけを借りたいという方もたくさんいると思います。それなら「シェア畑」を利用するのが便利でしょう。
都市で働く人が農地を借りたいと思っても、従来はなかなかむずかしいのが現実でした。農家にしてみれば、よく知らない他人に土地を貸すのをためらうのは無理からぬこと。だから農家に知人がいるなど、縁があって借りることができたというケースがほとんどでした。

これを誰にでもオープンな形に変えたのがシェア畑です。この事業を展開しているのが株式会社アグリメディア。前述したマンションの農園サービスも同社の協力で実現しました。
シェア畑は、アグリメディアが、地主と畑の利用者との間に入り、貸し農園を代行するしくみです。ですから利用者はアグリメディアと契約し、畑を借ります。基本的に地主と会うことはありません。

シェア畑が従来の市民農園と大きく違うのは、ほとんど手ぶらで参加でき、初心者も楽に作業できることでしょう。筆者も経験がありますが、これまでの市民農園では通常、種や苗、道具を自分で買って運び込まなくてはなりませんでした。ところがこれが重かったり、屋根のある置き場がなかったりして苦労することも。

敷地内に水道やトイレがないことも珍しくありません。栽培のしかたを教えてくれる人もいないので最初は悪戦苦闘。それも含めて楽しめる人でないと長続きしないのです。

しかしシェア畑では、種、苗、肥料は無料で用意されています(化学肥料、農薬は許可していません)。クワやジョウロなどの道具もすべて現地にあり、無料レンタルできるので、運ぶ苦労もありません。また「菜園アドバイザー」と呼ばれる専門スタッフがいて、相談に乗り、講習会なども行うので、まったくの初心者でも安心です。
 
現在、シェア畑は全国で60カ所以上。その一つ、川崎市多摩区にある「シェア畑 川崎多摩」に出かけてみました。JR南武線宿河原駅から徒歩で7、8分。住宅街を抜けると、府中街道の近くに広い農地が広がります。広さはシェア畑の中でも最大規模の約4800m2で、区画は220ほどあります。
 
菜園アドバイザーを務める松下公勇さんは、「アクセスが良く、近隣に公営の市民農園がないこともあり、開園してすぐ満杯に。定年後の趣味の一つとして楽しむ方、お子さんと一緒に野菜づくりをしたい30代、40代のご夫婦、介護施設や保育園など、法人契約されるところもあります。ほとんどが徒歩や自転車で30分圏内の方ですね」
賃貸料金は10m21区画で7871円(月額、税抜)。1区画は最大8人まででシェアして使うこともできます。
 
「初心者の方がほとんどなので、用語から丁寧に説明しています。年に10回ほどの講習会をし、契約されたときにはまず1時間ほどの講習をして、必ずレジュメを渡します」(松下さん) 
シェア畑の場合、徹底的に合理化しているので、初心者へのハードルは低く、失敗は少なくなります。ただ、作る品種は運営側が決めるなど、自由度は低くなります。ここをどう考えるかはその人の志向によるでしょう。
「種まきから収穫まで手がけた皆さんが共通して言うのは、無農薬・有機栽培の野菜のおいしさです。スーパーの野菜とはまったく違うと感激するんです」(松下さん)

【画像5】「シェア畑 川崎多摩」の菜園アドバイザー、松下公勇さん。ボランティアで「里山を守る会」に入り、地域社会に興味をもったのが今に至るきっかけだったそうだ(写真撮影/織田孝一)

【画像5】「シェア畑 川崎多摩」の菜園アドバイザー、松下公勇さん。ボランティアで「里山を守る会」に入り、地域社会に興味をもったのが今に至るきっかけだったそうだ(写真撮影/織田孝一)

このシェア畑にご夫婦で来ていた60代の男性は「印刷会社の社員でしたが、定年後に新聞記事でシェア畑のことを知り、夫婦で来るようになりました。楽しいですね」。妻は「ここでつくった野菜は本当においしいんですよ」と満足そうでした。

最後に一つ注意事項を。
今まで紹介してきた農園で栽培した農産物は基本的に販売できません。これは法律で定められた市民農園の目的はレクリエーションであって、営利が許されていないからです。収穫した農産物も、自家消費量を超えた分だけを直売所などに置くことはできますが、最初から販売を目的にはできません。最近では、地域によってそれを緩和する動きも出てきているようですが、まずは自家消費を考えて取り組みましょう。

●取材協力
・住友不動産建物サービス
・シティハウス横濱片倉町ステーションコート管理組合 
・おくたま海沢ふれあい農園(東京都西多摩郡奥多摩町)
・株式会社アグリメディア
・シェア畑 川崎多摩

30秒後に地震が起こるなら何をする? 震災経験者と非経験者ではこんなに違った!

東急コミュニティーが11月16日に発表した防災アンケートでは、過去の震災で被害に遭った経験者とそうでない非経験者の、家庭で行っている災害対策を比較している。回答結果を分析すると、経験者ならではの違いも見られたという。どういった点が違うのか?詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「災害対策の実態や防災意識に関するアンケート調査」結果を発表/東急コミュニティー災害対策は3つのリスクへの備え、とりわけ「命のリスク」を重視すべし

まず、震災被害経験者と非経験者で違いが見られた項目について、カテゴリー分けをしたところ、対策をすべき3つのリスクが浮かび上がったという。

●命のリスク
●ライフラインのリスク
●生活必需品のリスク
以上の3つのリスクに対して、皆さんはどの程度の対策を行っているだろうか?

【画像1】Q.あなたがご家庭で災害に備えて準備しているもの、対策していること(複数回答)(出典/東急コミュニティー「災害対策の実態や防災意識に関するアンケート調査」より転載)

【画像1】Q.あなたがご家庭で災害に備えて準備しているもの、対策していること(複数回答)(出典/東急コミュニティー「災害対策の実態や防災意識に関するアンケート調査」より転載)

同社は、過去の大きな震災で最も多かった被害が「家具や家電製品の転倒」だったことから、3つのリスクの中でも「命のリスク」を優先させる対策を行うことが重要だと指摘している。生き延びるための被災後の対策は、生き残ることが前提だからだ。

事前に災害発生を想定して、どういった行動をとるか確認すべし

次に、被災経験者と非経験者で違いが見られた行動としては、家族との話し合いや確認が挙げられる。
特に「家族で災害発生時の想定や行動を話し合った」、「家族と災害時の集合場所や連絡方法を確認した」で差が大きく、経験者のほうが災害時の対策について家族と確認していることが分かる。

【画像2】Q.あなたが災害を想定して行ったこと(複数回答)(出典/東急コミュニティー「災害対策の実態や防災意識に関するアンケート調査」より転載)

【画像2】Q.あなたが災害を想定して行ったこと(複数回答)(出典/東急コミュニティー「災害対策の実態や防災意識に関するアンケート調査」より転載)

また、「在宅の際、もし今から30秒後に震度6弱以上の地震が起きるとしたら何をするか?」(自由回答)を聞いたところ、「わからない」「何もできない」など、行動を起こさない回答が、非経験者では経験者の1.6倍(経験者12.0%:非経験者19.4%)もあり、「安全確保」や「避難準備」などの具体的な行動を想定できていないことも分かった。

マンション内の「共助」体制も整えるのがよし

調査結果では、マンション内で近隣世帯を助けようとする「共助」意識は高く、特に総戸数500戸以上の大規模マンションでは「災害時の飲食の備蓄」や「災害マニュアルの策定」などの取り組みを行っているという認知率が高いことも報告している。

災害時には、自分や家族を守る「自助」、マンション内や近隣住人と互いに助け合う「共助」、自治体などによる「公助」の3つの役割分担が重視される。特に大規模な災害になると公助に限界があることから、自助、共助による備えが重要とされている。

会社などでは、共助の体制が急速に整いつつあるが、会社に勤めていない人や勤務時間外などには、地域社会の共助がカギになる。地域コミュニティーがいかに形成されているかが問われるところだ。

ところで、東日本大震災のとき仙台で被災した、ある人にこんな話を聞いた。「管理組合の活動が円滑でマンションのコミュニティーが良好だと思っていたが、実際に被災すると役割分担ができていなかったので、共助が働かなかった」というのだ。

つまり共助が機能するには、「助けたい」という意識だけではダメで、具体的に被災時に誰が何をどのように実行するかをあらかじめ決めておかないと何もできないということだ。

振り返って調査結果を見ると、「近隣世帯に声をかけ、困っている人を助けたい」という意識は78.6%と高いものの、管理組合の防災・避難訓練への参加は38.5%と4割にも満たない。一方、500戸以上の大規模マンションでは規模が大きいだけに、管理組合で積極的に行事やイベントを開催したり、防災用品の備蓄や災害対策マニュアルを策定したりといった具体的な対策に力を入れている事例が多いので、それが結果にも表れている。

災害対策としてどれだけ“具体的な準備”をしているかが、自助であれ、共助であれ、決め手になるということだ。

調査結果を受けて、同社は「震災体験の有無にかかわらず防災に対する意識や備えが不足している」と警鐘を鳴らしている。家具の固定や転倒防止策を施している割合は、被災経験者であっても28.5%とまだまだ低い。大きな災害が起きたときだけでなく、日ごろから万一に備えた防災対策をしっかりとるようにしてほしい。

「街の達人」地理人に聞いた! 引越し先に悩むSUUMO編集部員が住む街は?

空想だけで一つの都市をつくり上げ、それを超リアルな地図に落とし込む人がいる。“地理人(ちりじん)”こと今和泉隆行(いまいずみ・たかゆき)さんだ。実際にはどこにも存在しない、でも、どこかにありそうな空想都市「中村市(なごむるし)」。その極めて精巧な地図をつくり上げることに情熱を注いでいる。
ベースには、全国津々浦々の土地を自らの足で歩き通し、実際に見聞きしてきた「街」についての膨大な知見がある。そのため、引越し先についてアドバイスを求められることも多いそうだ。
そこで、街選びに悩むSUUMO編集部員が今和泉さんを直撃。ズバリ、「どこに住めばいいか」聞いてみた。

落書きの延長から始まった、超リアルな空想地図

まずは、今和泉さんの空想都市「中村市」の地図をご覧いただこう。

【画像1】そこに暮らす人々の生活の匂いが感じられるような、中村市の地図。現在も街は成長過程にあるという(画像提供/地理人)

【画像1】そこに暮らす人々の生活の匂いが感じられるような、中村市の地図。現在も街は成長過程にあるという(画像提供/地理人)

【画像2】自宅には壁一面を覆い尽くすほどの紙の地図もあった。手前の掃除機と比較すると、その巨大さがよく分かる(撮影/榎並紀行)

【画像2】自宅には壁一面を覆い尽くすほどの紙の地図もあった。手前の掃除機と比較すると、その巨大さがよくわかる(撮影/榎並紀行)

今和泉さんが、空想地図を描きはじめたのは7歳のころ。当初は「落書きの延長だった」と振り返るが、現在まで25年余の歳月をかけ制作しているその地図は、本物の都市と見紛うばかりだ。現在は、ドラマや番組の小道具として架空の地図を制作するほか、国内最大手の地図情報会社ゼンリンのアドバイザーをしていたこともある。

【画像3】地理人こと今和泉さん(撮影/榎並紀行)

【画像3】地理人こと今和泉さん(撮影/榎並紀行)

今和泉さんが描く空想地図の凄さは、地図の元になる空想土地の歴史やバックグラウンドまでしっかり想像して創られているところ。例えば、中村市の場合は

今和泉さん「中村市は、(空想都市における)首都『西京』の南30kmほどに位置する、人口156万人の都市です。もともと街道の分岐点だったこともあって、人が集まる土地でした。100年以上前には、城が建てられてにぎわいをみせました。川沿いで肥沃な土があり、農業従事者の割合も多かったのですが、首都近郊では珍しい平地が広がっていたころから製造業の工場が進出。それにともない1970年代ごろからニュータウンがつくられ、人口と住宅が増えていきました。製造業で栄えた街ですが、最近は企業の伸び悩みから税収もダウン。産業誘致を頑張っていますが、税収的にはかなりひっ迫していますね」

……という具合。思わず「ありそう!」と声を上げてしまいたくなるほど、緻密に設計されている。都市の規模としては「さいたま市の大宮(埼玉県)とか千葉市(千葉県)っぽい感じ」。

【画像4】空想は留まることを知らず、中村市の不動産チラシまで作成。書体やレイアウトなど、よくある不動産チラシのデザインを踏襲している(撮影/榎並紀行)

【画像4】空想は留まることを知らず、中村市の不動産チラシまで作成。書体やレイアウトなど、伝統的な不動産チラシのデザインを踏襲している(撮影/榎並紀行)

都市計画の知識はもちろん、経済学、社会学、地形、歴史、さまざまな分野をかじり、細部まで練られた「街づくり」が行われているようだ。今和泉さんは「中村市は決して理想の街ではなく、自分が住みたい街というわけでもない」という。「あくまで平均的な大都市です」という中村市に対する冷静な距離感が、絶妙なリアリティを生んでいるのだろう。

今和泉さん「ただの草むらだったところでも、たまたま人の往来が多いところが道になり、その先に重要な目的地があれば街道になり、街ができることもある。土地を開発したほうが嬉しい、あるいは利する人々と、開発しないほうが良い人々といる。色んな思惑が絡み合った結果、絶妙な現実ができあがるんですよ」

【画像5】こちらは中村市の家賃相場。中心部の中村駅周辺でも6.2万円と、相場感も何となく大宮っぽい(撮影/榎並紀行)

【画像5】こちらは中村市の家賃相場。中心部の中村駅周辺でも6.2万円と、相場感も何となく大宮っぽい(撮影/榎並紀行)

なお、現在は中村市を拡張させつつ、首都である「西京」の地図づくりにも着手しているそうだ。

【画像6】空想都市の都心部にあたる西京市。まだ下書き段階だが、今和泉さんの脳内では着々と街づくりが進んでいる(撮影/榎並紀行)

【画像6】空想都市の都心部にあたる西京市。まだ下書き段階だが、今和泉さんの脳内では着々と街づくりが進んでいる(撮影/榎並紀行)

SUUMO編集部員はどこに住むべき? 地理人の街選びアドバイス

今和泉さんはこれまで日本各地のさまざまな街を訪れ、細部に至るまでその特色をインプットし、空気感を肌で感じ、地図づくりに活かしてきた。そのため、各地の長所・短所、どんな人にとって住みやすいかといった分析力・考察力はプロ顔負けだ。

今和泉さん「引越し先についての相談を受けることもあるのですが、その度に感じるのは街の選択肢を狭めている方が多いなあと。人気であるとか、今まで住んだことがある沿線とか、職場の人にすすめられたとか、そこで出てきた二、三の街から選んでしまうのはもったいないですよね」

そこで、今まさに引越しを検討しているSUUMO編集部2名が現実世界でどのような場所に住むべきか、今和泉さんに導き出してもらった。

まずは、編集O(男性)。SUUMOの編集部員でありながら引越し経験がないという26歳だ。現在は実家の板橋区暮らし。練馬区のニュータウンで育った彼女とは高校時代からのお付き合いで、婚約したのを機に新居探しを始めた。希望エリアは東京23区内、2人の職場である東京駅周辺へのアクセスが良い街で検討しているという。

まず、今和泉さんが着目したのはOと彼女が今も実家住まいであること、そして、高校時代から長続きしているカップルであることだ。

今和泉さん「互いに地元から出たことがないという、ある意味保守的な性格に加え、長期交際を貫き通した点を鑑みると、Oさんたちは『安定した暮らし』に対するプライオリティが高いのではないかと思います。このタイプの方は実家の近く、沿線から動きたがらない。となると、実家にアクセスしやすい東京メトロ有楽町沿線や西武池袋線沿線、中央線あたりを選びそうな気もしますが…」

そう今和泉さんがカマをかけると、Oはややドキリとした様子。まさに今、西武池袋線や有楽町線沿線を軸に探している最中だったようだ。

編集O「特に彼女が実家近辺を望んでいるんですよね。東京の城北エリアからあまり動きたがらないんです。でも、中央線は彼女がイヤだと言っています」

今和泉さん「西武線沿線特有の居心地の良さってありますよね。中央線と違って外からあまり人がこないから、空も広いし、窮屈さがないので、彼女さんにとっては落ち着くのだと思います。逆に、中央線沿線のサブカル臭みたいなものは少し苦手なのかもしれませんね」編集O「まさにその通りです! 音楽や映画など文化的なものは好きだけど、いらんサブカル臭は鼻につくっていうタイプですね」

【画像7】今和泉さんの鋭い分析により、内面をズバズバ言い当てられる編集O。でも、なんだかうれしそうだ(撮影/榎並紀行)

【画像7】今和泉さんの鋭い分析により、内面をズバズバ言い当てられる編集O。でも、なんだかうれしそうだ(撮影/榎並紀行)

そうした彼女の意向を踏まえながら、もう少し刺激もほしいというO。「いつもの定食屋の安心感がありつつ、変わったメニューも味わえる街がいい」と、よく分からないことを言う彼に対し、今和泉さんが導き出したのは……

「西武池袋線沿線の『桜台』なんていいと思います。互いの実家にほどよく近く、練馬、江古田というにぎやかな街に挟まれていますが、桜台は小さな商店街が伸びている程度で、駅のすぐそばに静かな住宅街があります。また、職場の最寄りの東京駅へは、池袋で丸ノ内線に1回の乗り換えで行くことができます」

しかし、せっかくの提案にもあまりピンと来ていない様子のO。そんなOに対し、今和泉さんは思考実験として「空想都市」に置き換えて説明してくれた。

「ちなみに中村市でいうと、『出ノ町』のあたりがいいと思いますね。日本で言うJRのようなものと私鉄のようなもの、2つの路線が通っていて都心まで30分程度。市の中心である中村駅にも2駅で行けます。集合住宅とスーパー、緑がそれなりにあって、彼女の実家がある(と仮定)那田沢ニュータウンにも帰りやすい。もちろん、いらんサブカル臭も全くありません(笑)」

編集O「そこならありかも! 日ごろから馴染みのある『桜台』と言われると、自分の先入観で街のイメージをつくってしまいますが、空想都市に置き換えてみると偏見なしに街の良さを考えられますね。おもしろい!」

続いて、自称“引越し魔”という、30歳の編集K(女性)の相談。山梨県甲府市郊外の街から10年前に上京。Oと同じく職場は東京駅周辺だが、渋谷が好きで、会社よりも渋谷に行きやすいことを優先するフシがある(会社にも近ければなおよし)。しかし混雑が苦手で、電車には極力乗りたくない。なお、日常の足は自転車を愛用しており、体力には自信があるという。

この、若干わがままな要望に対しても、今和泉さんはすぐさま回答。

「渋谷が好きだけど、混雑は嫌い……、でしたら『中目黒』あたりは選択肢の一つかもしれません。渋谷まで高低差が少ないルートもあるため、自転車で行きやすい。会社へのアクセスも考慮するなら半蔵門沿線がいいと思います。体力があり、上り坂を気にしないのであれば、『青山一丁目』や同エリアの『外苑前』なんていいと思います。青山通りを真っすぐ進めば渋谷ですし、職場に近い大手町駅へも電車一本でアクセスできます。住宅街としても閑静ですし、意外に掘り出し物の物件も見つかるエリアです」

こちらのご提案に、Kもドキリ。実は中目黒は数カ月前まで住んでいた大好きな街だったという。一流の占い師かなにかのように、ずばずばと言い当てていく今和泉さんに、編集部両名ともたじたじだった。

最後に、住む場所を探すときのワンポイントアドバイスを今和泉さんが授けてくれた。
平日の出勤時間帯や帰宅時間帯、休日の昼下がりなど、そこでの生活をよりイメージしやすい時間帯・シチュエーションをチョイスして歩いてみるといいそうだ。また、日ごろから注意深く街を観察するクセをつけておくと、自分にフィットするか否かが分かるようになってくるという。

【画像08】その街並みが生まれた背景などを想像しながら歩くのが趣味だという(撮影/榎並紀行)

【画像8】その街並みが生まれた背景などを想像しながら歩くのが趣味だという(撮影/榎並紀行)

今回、妄想の世界を飛び出し、現実に存在するエリアとのマッチングを試みてくれた今和泉さん。暮らしの充実を目指すなら、まずは土地を知ること。そんな当たり前のことに改めて気づかせてくれたのだった。

●取材協力
空想都市へ行こう!

部屋の寒さは窓次第!? 進化する「省エネ窓」の断熱効果に注目

寒い冬がやってきた。暖房を効かせた家に居ても、窓際ではダウンを着たくなったり、廊下に出るとブルっと震えたりするのがこの季節。日本人の死亡率が夏よりも冬のほうが高い(※)のも、家の中での寒暖差が血圧の急な上昇や変動を引き起こすヒートショックと無関係ではないだろう。そんな日本の家の寒さの解決のカギを握る断熱効果について、「窓」を手掛ける2つのメーカーに聞いてみた。
※厚生労働省「人口動態調査」(2016年)より

「廊下やトイレでブルルッ」がなくなる?

突然だが、皆さんの住まいは築何年だろうか。古い家は、冬になると寒さを感じることも……? 2017年10月にオープンしたばかりのLIXILの「住まいStudio」では、そんな“昔の家”と“今の家”、“これからの家”の寒さや暖かさの違いを体感できるというので、早速、行ってきた。

LIXILの「住まいStudio」の「冬体験ゾーン」では、外気温0度の巨大な冷蔵庫のような環境を人工的につくり出して、その中に断熱性能が異なる3段階の一戸建てを置き、それぞれの室内の暖かさや寒さを体感できるようにしている。

3種類の一戸建てのスペックは、下の表のとおり。私と編集スタッフのS女史は、このなかの“昔の家”から順に足を踏み入れてみた。

【画像1】LIXILによるシミュレーション図。LIXIL提供のデータのうち、暖房期間(12月1日~3月31日)4カ月間のエアコンの電気代を4で割ったもの。<試算条件:リビングの広さ8畳、東京エリア、室温20度の暖房設定で全日運転>

【画像1】LIXILによるシミュレーション図。LIXIL提供のデータのうち、暖房期間(12月1日~3月31日)4カ月間のエアコンの電気代を4で割ったもの。<試算条件:リビングの広さ8畳、東京エリア、室温20度の暖房設定で全日運転>

“昔の家”は、リビングのエアコンこそ20度に設定されているものの、スリッパを履いた足元がひんやりと冷たい。エアコンがついているリビングはまだましで、エアコンなしの廊下に出てみると「寒っ!」と私とS女史の両方とも思わず悲鳴をあげる始末。「そうそう、おばあちゃんの家がまさにこうで、トイレに行くのがおっくうだったんだよなあ」と思い出したものだった。

「リビングの室温は20度でしたが、廊下は8度。実家がちょうどこんな感じと言うお客様が多いですね。実際、日本の家の約7~8割はこの水準の断熱性能(※) 以下と言われています」(LIXIL ハウジングテクノロジージャパン販売推進部販売推進グループグループリーダー 古溝洋明さん)
※国土交通省による推計(2012年)

次に 断熱性能を高めた“今の家”に移動すると、リビングでは足元のひんやりはなくなり、廊下で感じる寒さのショックも和らいだ。さらに断熱性能の高い“これからの家”に移動したところ、リビングのエアコンはさほど頑張っていないのに実に快適な室温が保たれている。エアコンのない廊下に出たときも同様で、この家の構造が、エアコンの助けをほとんど借りずに、冷蔵庫のような寒さから室内の環境を守っていることが分かった。

同じ条件下でもこれほどまでに室内の環境が違うのは、住まいの断熱性を決定づける要素である壁の構造と窓のつくりがそれぞれ異なるため。特に窓は、壁よりも熱の出入りが多いことから、断熱性能に及ぼす影響がより大きいということになる。

【画像2】写真左:左から“これからの家”“今の家”“昔の家”。壁と窓の違いが分かる。 写真右:サーモカメラで見たリビングの室温。上の“これからの家”はオレンジ色と赤が基調で暖かく、左下の“昔の家”はエアコンの送風口しか赤い部分がない(写真撮影/日笠由紀)

【画像2】写真左:左から“これからの家”“今の家”“昔の家”。壁と窓の違いが分かる。 写真右:サーモカメラで見たリビングの室温。上の“これからの家”はオレンジ色と赤が基調で暖かく、左下の“昔の家”はエアコンの送風口しか赤い部分がない(写真撮影/日笠由紀)

【画像3】冬は室内の熱の58%が開口部から失われており、夏も73%もの熱が屋外から流入している。(画像提供/LIXIL データ出典/一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会)

【画像3】冬は室内の熱の58%が開口部から失われており、夏も73%もの熱が屋外から流入している。(画像提供/LIXIL データ出典/一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会)

家を建てるときは、断熱効果の高い窓を選ぼう

住まいの断熱の上で最も大きな役割を果たす「窓」。では、どんな窓なら、断熱性能が高いのだろうか。

さきほど体験した“昔の家”の窓は、単板、つまりガラスが1枚で、フレームは熱伝導率の高いアルミ。“今の家”に使われていた複層(ペア)ガラスのほうが、2枚のガラスの間に空気層を挟む分、断熱効果が高くなっていた。そして“これからの家”では、複層(ペア)ガラスの間に空気よりも断熱性の高いアルゴンガスが挟まれている分、さらに断熱効果が高まっていた。

また、“これからの家”に使われていた窓は、フレームがアルミと樹脂の組み合わせでできている「ハイブリッド窓」。樹脂の高い断熱性と、経年劣化しにくいアルミの耐久性とを併せ持った「いいとこ取り」の窓なのだ。

さらに、これらの上を行く「トリプルガラス」、つまりガラス3枚の窓もある。ガラスが3層になるとさらに性能や断熱効果が高まるようだ。

「これから家を新築する方なら、こうした断熱性の高い窓を選ぶことをお勧めします。建物面積36坪(約120m2)の一戸建ての場合、 “これからの家”を建てると、太陽光発電システムも含めて2550万円と、“今の家”よりもイニシャルコストは350万円高くなります。しかし35年間の光熱費や断熱性能による金利優遇(省エネルギー性の高い住宅に対して【フラット35】の金利を0.25%引き下げる『【フラット35】S』の適用)による差額が生じるため、トータルのコストは“これからの家”のほうが80万円安く済むことに。その上、暖かくて快適な生活が送れるわけですから、お得です」(古溝さん)

【画像4】建物面積36坪(約120m2)の一戸建ての設定で試算した図(データ提供/LIXIL)

【画像4】建物面積36坪(約120m2)の一戸建ての設定で試算した図(データ提供/LIXIL)

【画像5】冬を想定した温度の外気に面しているアルミ窓、ハイブリッド窓、樹脂窓2種。アルミ窓は結露していた(写真撮影/日笠由紀)

【画像5】冬を想定した温度の外気に面しているアルミ窓、ハイブリッド窓、樹脂窓2種。アルミ窓は結露していた(写真撮影/日笠由紀)

【画像6】冷たい疑似アイスクリームに挿したスプーン。材質は右から、金属、樹脂、金属と樹脂のハイブリッド。ハイブリッドは金属(強度に優れる)と樹脂(冷たさを伝えにくい)のいいとこ取りをしている(写真撮影/日笠由紀)

【画像6】冷たい疑似アイスクリームに挿したスプーン。材質は右から、金属、樹脂、金属と樹脂のハイブリッド。ハイブリッドは金属(強度に優れる)と樹脂(冷たさを伝えにくい)のいいとこ取りをしている(写真撮影/日笠由紀)

リフォームでも断熱性の高い窓に変えられる

では、当面、家を建てる予定がないという人は、足元ひんやり、廊下でブルブルな日々を今後も送り続けなければならないのだろうか? 実はそんなことはない。今住んでいる家の窓だけを、リフォームすることもできるからだ。

窓の断熱リフォームの方法は、主に3つ。
[1]二重窓にする(今ある窓に内窓をつける)
[2]窓交換(カバー工法)
[3]窓のガラスのみを替える

[1]は、今ある窓の内側にもう一枚、新しい窓を付けるやり方。実は筆者宅も家全体のリフォームのときに、この方式で内窓を付けた。既存の窓との間に空気層ができたことで、断熱性も防音性も高まり、結露も減ったが、その分、内側の空間が若干狭くなる点が残念といえば残念かもしれない。料金の目安は掃き出し窓2枚で10万~12万円(商品代+工事費/LIXIL「インプラス」の場合)。作業時間は1窓約1時間。

[2]は、壁を壊さずに今あるサッシの枠の上から新たに枠とサッシを取り付けるというやり方で、断熱性の高いサッシを付けることで、それまでよりも断熱性能が高まるというもの。料金の目安は、掃き出し窓2枚で約17万~23万円(商品代+工事費/LIXIL「リフレム リプラス」の場合)。作業時間は1窓最短1時間半だという。

「カバー工法は、立ち上がりの分、どうしても開口面積が狭くなってしまいますが、以前のカバー工法よりも立ち上がり部分を縮小してガラス面を広げて明るさを確保したこともあり、売り上げは約2倍に増えました」(LIXILハウジングテクノロジージャパンサッシ・ドア事業部サッシ・ドア商品部部付部長 石上桂吾さん)

[3]は、窓のガラス部分のみ断熱性の高いガラスに取り換えるというもの。後述する日本板硝子の真空ガラス「スペーシア」に取り換えた場合、掃き出し窓2枚で約14万~16万円(商品代のみ。工事費別)。作業時間は1窓30分程度。

ここで初めて「真空ガラス」が登場してきた。「真空ガラス」は、これまでに出てきたペアガラスやトリプルガラスとはどう違うのだろうか?

【画像7】既存の「今ある窓」(左)の内側にあらたに内窓(右)を設けた「二重窓」。間に空気層ができることで、断熱性能だけでなく防音性も高まる(画像提供/LIXIL)

【画像7】既存の「今ある窓」(左)の内側にあらたに内窓(右)を設けた「二重窓」。間に空気層ができることで、断熱性能だけでなく防音性も高まる(画像提供/LIXIL)

「窓」は進化を遂げ続けている

さきほど唐突に登場した「真空ガラス」は、日本板硝子が20年前に開発した複層(ペア)ガラス。一般的な複層(ペア)ガラスが、2枚のガラスの間に空気層やアルゴンガス層を設けるのに対して、こちらは特殊技術によって2枚のガラスの間を真空状態にするというものだ。

「断熱性は、空気<アルゴンガス<真空の順で高まるため、空気層やアルゴンガスの複層(ペア)ガラスは、通常18mmほどの厚さなのに対して、当社の真空ガラス『スペーシア』は6.2mmで十分な断熱性能を発揮します。既存の単板ガラスとほぼ同じ厚さなので、今、単板ガラスが入っているサッシにも問題なく入るという点で、実にリフォーム向きの商品です。断熱性能は単板ガラスの約4倍になります」(日本板硝子建築ガラス事業部門アジア事業部日本統括部営業部営業企画グループ担当課長 朝香寛さん)

この「スペーシア」。20年の歴史のなかで、どんどん進化を遂げてきており、つい最近も、一般的なトリプルガラスの半分の厚みで同等の断熱性をもつ新製品「スーパースペーシア」が発売されたばかりだ。厚み10.2mmと既存のサッシには入りにくいので、一戸建ての場合は、これから家を建てる人向きだが、マンションならリフォームでも使えるケースもあるとか。同社の複層(ペア)真空ガラス「スペーシア21」よりも薄く、コストも2割ほど抑えられるという。

【画像8】「スペーシア」の断面イメージ。真空層に加え、特殊金属膜をコーティングして遮熱・断熱効果を高めたLow-Eガラスを使用している(画像提供/日本板硝子)

【画像8】「スペーシア」の断面イメージ。真空層に加え、特殊金属膜をコーティングして遮熱・断熱効果を高めたLow-Eガラスを使用している(画像提供/日本板硝子)

【画像9】熱を伝えるマイクロスペーサーの間隔を広げることで数を半減、断熱性を高めた「スーパースペーシア」(画像提供/日本板硝子)

【画像9】熱を伝えるマイクロスペーサーの間隔を広げることで数を半減、断熱性を高めた「スーパースペーシア」(画像提供/日本板硝子)

取材を通じて、日本の窓は自分が思っていた以上に進化していることが分かった。LIXIL住まいStudioで、冷蔵庫の中にある”これからの家“の窓が結露していなかったこと。日本板硝子のショールームで裏側からコールドスプレーを吹き付けられた真空ガラスに触っても、冷たさを感じなかったこと。数字を並べるよりも、体感、体験することで、イマドキの窓のすごさを実感できたし、築40年の実家の単板ガラス+アルミ枠のサッシを今すぐ全部、高断熱仕様に替えたくなった(100万円近くかかるらしいけれど……)。

なお、断熱性の高い家を建てると、「フラット35S」など金利優遇のあるローンを利用できるなどの特典があるが、今の家の窓を断熱性の高いものに替えるだけでも、東京都をはじめ、多くの自治体が補助金を支給している。税制の優遇等も受けられるので、制度を上手に利用して住まいの断熱化を進めるのも一案。

今から腰を上げれば、1~2月の厳寒期到来前にポカポカなわが家が実現するかも!

●取材協力
・LIXIL快適暮らし体験「住まいStudio」※見学は完全予約制
・日本板硝子 住まいの窓ガラス情報サイト ガラスワンダーランド