
7万9,000円 / 23.04平米
京王線「桜上水」駅 徒歩7分
ワンルームをざっくりとした質感で改装した、外国のホテルみたいな一室です。建築士のオーナー自ら設計を手掛け、壁や天井を抜き、コンクリートを塗装しています。
オーナーいわく、この建物はホテルとして計画されていたものを、建築時にマンションに切り替えたのだそうな。
その名残なのか、部 ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
東京都内でも特に利便性が高い暮らしを望むなら、23区内に住みたいところ。交通網が充実していて商業・文化施設も豊富、さらに賃貸物件の数も多いので気に入る住まいを探しやすい。一方で、首都圏でも飛び抜けて家賃が高い点はネックではある。とはいえ探せば、予算内で住める物件はあるはず! そこで、東京23区内にある駅ごとの家賃相場を調査。駅から徒歩15分圏内にある賃貸物件(専有面積10平米以上~40平米未満のワンルーム・1K・1DK)の家賃相場が安い駅トップ20をご紹介しよう。
東京23区内の家賃相場が安い駅TOP20順位/駅名/家賃相場(主な路線/駅の所在地)
1位 江戸川 6.40万円(京成本線/江戸川区)
2位 一之江 6.50万円(都営新宿線/江戸川区)
2位 篠崎 6.50万円(都営新宿線/江戸川区)
4位 上井草 6.55万円(西武新宿線/杉並区)
4位 京成小岩 6.55万円(京成本線/江戸川区)
6位 谷在家 6.60万円(日暮里・舎人ライナー/足立区)
7位 瑞江 6.65万円(都営新宿線/江戸川区)
7位 六町 6.65万円(つくばエクスプレス/足立区)
9位 小岩 6.70万円(JR総武線/江戸川区)
9位 新柴又 6.70万円(北総線/葛飾区)
9位 大師前 6.70万円(東武大師線/足立区)
9位 竹ノ塚 6.70万円(東武伊勢崎線/足立区)
9位 舎人公園 6.70万円(日暮里・舎人ライナー/足立区)
14位 喜多見 6.80万円(小田急小田原線/世田谷区)
14位 五反野 6.80万円(東武伊勢崎線/足立区)
14位 柴又 6.80万円(京成金町線/葛飾区)
14位 西新井 6.80万円(東武伊勢崎線/足立区)
14位 扇大橋 6.80万円(日暮里・舎人ライナー/足立区)
14位 高野 6.80万円(日暮里・舎人ライナー/足立区)
20位 梅島 6.85万円(東武伊勢崎線/足立区)
※21位~45位は記事末に記載
1位は江戸川区の京成本線・江戸川駅で、家賃相場は6万4000円。1駅隣は4位にランクインした京成小岩駅(家賃相場6万5500円)だ。江戸川駅は高架駅で、出入口正面の高架下にはドラッグストア併設のスーパーがあって便利。周辺の住宅街にもミニスーパーやコンビニが点在しているので、日常の買い物には困らないだろう。駅のすぐ東側には江戸川が流れ、河川敷に広がる「小岩菖蒲園」は例年5月~6月に約5万本のハナショウブが咲き誇る。江戸川を越えると、千葉県市川市というロケーションだ。
江戸川駅(写真/PIXTA)
小岩菖蒲園(写真/PIXTA)
江戸川駅は夏の風物詩・江戸川区花火大会の最寄駅の一つでもあり、夏は多くの人で混雑するが、近所で花火が見られるのはうれしいところ。また、駅前から西へ自転車で10分弱も走ると9位・小岩駅(家賃相場6万7000円)にたどり着き、JR総武線が利用できる。江戸川駅から京成本線に乗れば日暮里駅まで約24分、京成上野駅まで約30分。京成本線で2駅目の京成高砂駅や3駅目の青砥駅から、都営浅草線直通の京成各線に乗り換えて浅草駅や新橋駅に行きやすいのも魅力だ。
江戸川区花火大会(写真/PIXTA)
2位には家賃相場6万5000円の一之江駅と篠崎駅がランクイン。どちらも江戸川区に位置し、都営新宿線が通っている。1位・江戸川駅から江戸川沿いを自転車で南下して20分ほどで篠崎駅に着き、さらに20分弱も走ると一之江駅に到着。そして篠崎駅と一之江駅に挟まれて、7位・瑞江駅(家賃相場6万6500円)があるという位置関係だ。この3駅のうち最も新宿駅寄りなのは一之江駅で、都営新宿線に乗れば岩本町駅まで約20分、市ヶ谷駅まで約28分、新宿駅までは約35分でたどり着く。
一之江駅(写真/PIXTA)
そんな一之江駅の東口側には2021年、「コメダ珈琲店」や100円ショップ、スーパーがオープン。徒歩10分弱の場所にはドラッグストアも誕生し、便利さがアップした。駅西口側にもスーパーやコンビニ、ドラッグストアがある。駅の周辺にはハンバーガーや牛丼、回転寿司などの気軽に入れる飲食店も点在しているので、料理するのが面倒な仕事帰りにもサッと食事ができるだろう。駅西側を通る環七通り沿いにはラーメン店も豊富なので、食べ比べするのも楽しそう。
一之江駅と同じ2位・篠崎駅の様子も見てみよう。一之江駅よりも新宿駅から電車で5分ほど遠ざかるものの、都営新宿線の始発駅・本八幡駅の次の駅なので通勤時間帯でも比較的座りやすいのはいいところ。駅ホームは篠崎駅北口と直結する交通会館篠崎ビルの地下にあり、ビル上階ではスーパーや100円ショップ、ベーカリーや牛丼店が営業している。駅周辺にも複数のスーパーやドラッグストアがある他、チェーン系の飲食店や居酒屋も豊富だ。駅の北側にある2軒の銭湯はサウナも備えているので、疲れを癒やしに行くのもいいだろう。1位・江戸川駅同様に江戸川に近く、花火大会の最寄駅でもあるので、窓辺から花火が見られる物件も探せば見つかるかもしれない。
篠崎駅(写真/PIXTA)
4位以降は日暮里・舎人ライナーと東武伊勢崎線の駅が多数ランクイントップ3の駅はいずれも江戸川区に位置していたが、4位以下を見てみると17駅中の10駅が足立区という結果に。そして6位・谷在家(やざいけ)駅(家賃相場6万6000円)、9位・舎人公園(とねりこうえん)駅(同6万7000円)、14位の扇大橋駅と高野駅(同6万8000円)の4駅は、日暮里駅~見沼代親水公園駅を結ぶ日暮里・舎人ライナーの沿線にある。4駅のうちでJR線と接続する日暮里駅に最も近い、扇大橋駅の様子を見てみよう。
扇大橋駅(写真/PIXTA)
14位・扇大橋駅の駅名を聞いて、首都高の料金所を思い浮かべる人もいるだろう。その扇大橋料金所のほど近く、日暮里駅から北に5駅・約10分走って荒川に架かる扇大橋橋梁を渡った先のすぐそばに駅はある。尾久橋通り上空に設けられた高架駅で、駅北側は江北橋通りとの交差点。この2つの大通り沿いを中心に複数のスーパーやコンビニ、飲食店やホームセンターが点在している。ショッピングモールなどの大型商業施設はないが日常の買い物に困ることはなく、脇道に入ると静かな住宅街なので落ち着いた暮らしを求める人にはよさそうだ。荒川沿いを散策したり、遠くに東京スカイツリーを望む河川敷のゴルフ練習場で汗をかいたりと、気軽にリフレッシュできる環境でもある。
日暮里・舎人ライナーと同じく、東武伊勢崎線もトップ20に4駅ランクイン。9位・竹ノ塚駅(家賃相場6万7000円)~14位・西新井駅(同6万8000円)~20位・梅島駅(同6万8500円)~14位・五反野駅(同6万8000円)の順に連続する駅で、いずれも足立区に位置している。都心部寄りの浅草駅に最も近いのは五反野駅だが、4駅のうちで唯一、急行や準急も停車する西新井駅の様子をピックアップしよう。
西新井駅(写真/PIXTA)
14位・西新井駅は前述の扇大橋駅の北東2.3kmほどの位置にある。東武伊勢崎線の他に東武大師線も通っているが、この路線は関東厄除け三大師の一つ「西新井大師(総持寺)」の最寄駅・大師前駅と西新井駅の2駅のみなので、活用する機会は少ないかもしれない。西新井駅から浅草駅までは、東武伊勢崎線の急行と区間急行を乗り継いで約21分、区間急行1本だと約25分。東武伊勢崎線の普通列車は東京メトロ日比谷線、急行と準急は東京メトロ半蔵門線との直通運転が行われているので、日比谷線の霞ヶ関駅や銀座駅、半蔵門線の大手町駅や永田町駅、渋谷駅へも1本で行くことができる。
そんな西新井駅、下り線ホームに立ち食いラーメン店があるのもちょっとした名物だ。駅東口には駅直結のショッピングモール「西新井トスカ」があり、その先には家電や生活用品の専門店も備えた大型スーパーも。駅西口側にもディスカウントストアやショッピングモールがあり、にぎわっている。さらに西口駅前では再整備計画が進行中で、交通広場が2030年に完成予定だそう。あわせて駅ビルの建て替えや新たな商業施設の誘致も見込まれ、西新井は今後さらなる活性化が期待されている。
住まい探しをする際は家賃相場に加えて、学校や会社など日常的に通う目的地へ訪れやすい路線の沿線であるかどうかを重視する人も多いだろう。トップ20には日暮里・舎人ライナーと東武伊勢崎線の駅が多かったが、21位~45位を見てみると西武新宿線の駅も複数ランクインしている。21位以降のランキング一覧は下記にあるので、あわせてチェックしてはいかがだろう。
●21位以降のランキング
●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている東京23区内の駅(掲載物件が20件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2023/7~2023/12
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
家具と家電のレンタル・サブスク「CLAS」は、春の引越しシーズン到来前に「家具・家電に関するアンケート」を18歳~49歳の男女1,000人に実施した。そこで、高価格帯の商品を長期にわたって利用する「長期リース型」のサブスクについて調べたところ、9人に1人が利用していることが分かった。
【今週の住活トピック】
1000人への実態調査で見る「春の新生活の家具・家電事情2024」を公表/CLAS
サブスクとは、サブスクリプション(subscription)の略。ある商品やサービスを一定期間、一定額で利用できる仕組みのこと。サブスクの中でも長期にわたって利用する「長期リース型サブスク」を利用しているか聞いたところ、「利用している」が11.7%、「利用していない」が88.3%という結果に。おおむね9人に1人が長期リース型サブスクを利用していることになる。
長期リース型サブスクを利用している人を年代別に見ると、20代(13.8%)と30代(14.3%)が10代や(10.0%)や40代(6.7%)よりも多い。CLASの個人会員属性も20代後半~30代が中心であることから、この年代に耐久消費財を所有しない傾向があるという。
出典:CLAS
次に、長期リース型サブスクを利用していると回答した人に、利用しているサブスクの商品を聞いたところ、「家電」が48.7%と最も多く、次いで「家具」の42.7%となった。家電や家具は生活する上で必要なものだが、金銭的負担も大きいことから、サブスクを利用することが多いのだろう。
出典:CLAS
2021年時点で近い将来7~8人に1人が利用していそうと予測別の調査結果を見てみよう。LINEリサーチでは、2021年5月に18~59歳の男女を対象に「家具・家電の定額制レンタルサービス」の現状の認知率や利用率、今後の流行予想などについて調査を実施した。
2021年時点ですでに、「家具・家電の定額制レンタルサービス」の認知率は45.9%(「知っているし、使っている」「知っているし、今は使っていないが以前使っていた」「知っているが、使ったことはない」の合計)で、半数近くが「知っている」状態だった。
次に、自分の身のまわりで「どのくらいの人が使っていそうか?」という『現在の流行体感』を聞いたところ、流行体感スコアは2.3(=100人中およそ2人が利用している)という結果に。では、「1年後、自分のまわりでどのくらいの人が使っていると思うか」という『近未来の流行予想』を聞くと、流行予想スコアは13.0(=100人中およそ7~8人に1人が利用していそう)という結果になった。
2024年2月に実施したCLASの調査結果では、長期リース型サブスクの利用者は9人に1人だったので、2021年時点の予想はかなり近い結果だと言ってよいのだろう。
出典:LINEリサーチ
なお、自分が今後使ってみたい(今後の利用意向)かを聞くと、利用意向ありが26.2%(「ぜひ使ってみたいと思う」「機会があれば使ってみたいと思う」の合計)と、近い将来は自分が利用したいと思う人が増えていた。
家具家電の長期リース型サブスク、メリットとデメリット実家を出て一人暮らしを始める、結婚や同棲で新たに二人暮らしを始める、といったときに、新居の家具家電を買いそろえるのは大変な場合がある。引越しによる初期費用がかさむなか、家具家電のレンタルを利用すれば当初の費用を抑えることができる。
一定期間だけ単身赴任することになった場合も、同様だろう。家族と再び暮らすときに、単身赴任時の家具家電の処分をする必要もない。子どもの年齢が一定期間だけ必要となるものなども、一定期間レンタルすることが有効だ。
また、高額な家具家電を使いたいとき、「いきなり買うのは不安だけど、一定期間使ってみたい」という場合も使い勝手が良さそうだ。つまり、「必要な期間だけ使える&コスパのよさ」がメリットと言えるだろう。
一方、レンタルでは新品とは限らないこと、好きな家具家電がレンタルできることは限らないこと、長く使うとかえって割高になること、などのデメリットもある。
Z世代は、「モノ消費」よりも「コト消費」を好み、所有にこだわらないとか、「買い物で失敗したくない」という意識が強いといった傾向があると言われている。今回の結果を見ると、こうした若い世代を中心に、一定の人たちが生活の中で賢くサブスクのサービスを利用していることがうかがえる。家具家電についても選択肢が増えることで、私たちの生活の仕方も変化していくのではないだろうか。
●関連サイト
【CLAS調査レポート】 9人に1人が長期リース型サブスクを利用、 「家電」と「家具」に人気が集中!
LINEリサーチ、今と近未来の流行予想調査(第七弾・家具、家電の定額制レンタルサービス編)を実施
神奈川県横浜市緑区にある竹山団地。神奈川県住宅供給公社が1960年代に開発した約45haの大規模団地です。築50年を超えた約2800戸を有する建物は、日本の高度経済成長期に建てられたほかの団地と同様に老朽化と高齢化の問題を抱えています。
そこで2020年に竹山団地を所有する神奈川県住宅供給公社は、神奈川大学と「連携・協力に関する協定書」を締結。「学生たちに共同生活や地域貢献を通じて課題解決型の教育を実践したい」と考える神奈川大学と、保有資産やこれまでのノウハウを活かして団地活性化に取り組みたい公社のニーズが一致したのです。大学のサッカー部員が団地の空室に住んで、防災訓練や地域のイベントに参加したり、学生食堂を兼ねるカフェの運営、商店街の清掃などを行ったりしています。
2023年の年末にも、大掃除とセットで芋煮会を実施する予定があると聞き、現地を取材。この取り組みの背景や、約4年間を経てつくり上げてきたもの、入居する学生たちの本音などを聞きました。
「子どもたちにマス食わせてやんべ」の声かけで始まった、大掃除と芋煮会2023年12月のある土曜日、竹山団地の中央にある竹山中公園には、10代、20代の学生たちと一緒に談笑しながら炭火の準備をする高齢男性たちの姿が。そのひとり、竹山連合自治会の経理局長を務める星川敬博さんは、山形県出身。一昨年、寒い季節になったころにふるさとの芋煮を思い出し、神奈川大学の理事長付審議役でありサッカー部の部長を務める佐藤武さん(60代、大学職員)や友人たちと「学生たちに芋煮食わすか」「じゃあ、マスを焼いて食わせてやんべ」という話になったと笑います。
星川さんと一緒に火をおこすサッカー部の4年生。火おこしも慣れたもの(画像/片山貴博)
竹山連合自治会 経理局長の星川敬博さん。学生たちにとって竹山団地は学生寮としての入居で卒業と同時に退寮になるため、4年生は最後の集まりとなる。「うるさいのがいなくなる」という言葉に寂しさも滲ませる(画像/片山貴博)
神奈川大学 理事長付審議役 サッカー部部長の佐藤武さん。2024年3月で定年を迎えるにあたり、これまでの取り組みを振り返りながら「退職する前にサッカー部でやれることはやっていきたい」と意気込みを語る(画像/片山貴博)
その日は、朝10時に星川さんたち自治会のメンバーや神奈川大学サッカー部の学生たちが集合して、自治会館周辺を大掃除。集まった人たちや学生の何人かは、自治会館の内外で里芋の皮むきや野菜を切って調理の準備をしています。そこには「ほら、ぼやっとしないで動いて」と学生たちのお尻を叩く、自治会事務局長の高橋明美さんの姿も。高橋さんは学生たちの「お母さん的存在」なのだそう。
自治会館やその前の通りを掃除するサッカー部の学生たち(画像/片山貴博)
屋根の上の掃除は高齢者には危険を伴うことも。運動神経に自信のある学生たちが頼もしい(画像/片山貴博)
団地の自治会の人たちと学生とが混じって外で里芋の皮むきをしている(画像/片山貴博)
調理室では大量の野菜を切って大鍋に入れ、公園まで運ぶ(画像/片山貴博)
竹山連合自治会 事務局長の高橋明美さん。「住民も学生と仲良くなると個別にお願いごとをするようになるが、学生に負担がかからないよう、事務局で “お手伝い内容”として取りまとめている」そう。学校や公社とも打ち合わせを重ねて細かいルールを決めている(画像/片山貴博)
公園にブロックを置いてつくったかまどで、手馴れた様子で火をおこす学生たち。パチパチと着火用の薪が燃え、白い煙が上がり始めると星川さんや自治会のメンバーが代わるがわる声をかけながら炭を入れて手伝います。聞けば、このような炭の火おこしは数年前から一緒に何度もやって来たのだそう。芋煮も学生たちが大きな鍋にドバドバと豪快に醤油や料理酒を入れて、味見をしながらつくり上げていきます。出来上がったマスの塩焼きと芋煮の味は大好評で、公園内には箸が止まらない学生たちと地域の人たちの笑い声が響きました。
学生と地域の人とが談笑しながらマスが焼けるのを待つ。この80匹ものマスは自治会の人たちが用意してくれたもの(画像/片山貴博)
寒い日に温かい芋煮は大好評。大鍋の前に列ができる(画像/片山貴博)
「おいしい!」が思わずこぼれる、芋煮の味付けも学生たち自身によるもの(画像/片山貴博)
大学のサッカー部が22部屋を学生寮として入居する竹山団地竹山団地には、サッカー部の学生たち約60人が2DKまたは3Kの部屋に2~3人ずつに分かれて住んでいます。コーチ陣も一緒に入居する、これら22室の部屋は、高齢化によって上層階が空室になっていたものを神奈川大学が所有者である神奈川県住宅供給公社から法人契約で借り受け、学生寮として使用しているものです。エレベーターがないと高齢者には上り下りの負担が大きい上層階ですが、若い学生たちに入居してもらうことで有効活用できるようになりました。
1960年代に建てられ、約2800戸、開発面積45haを有する大規模な竹山団地(画像提供/神奈川県住宅供給公社)
生態系の再現を目指してつくられた大きな池があり、水抜きなどの掃除を学生たちが手伝ってきた(画像提供/神奈川県住宅供給公社)
その始まりは2019年。神奈川大学の理事長付審議役でありサッカー部の部長を務める佐藤武さんとサッカー部の監督である大森酉三郎さんが、学生の成長を促す仕組みづくりのために、大学や神奈川県住宅供給公社に団地の空室を学生寮として使用しながら、地域の活性化に寄与する仕組みができないかと相談したことにさかのぼります。相談を受けた神奈川県住宅供給公社の水上弘二さんは、具現化できそうな場として、高齢化率が45%以上に達しながらも地域住民の自治体制が整い、公社と自治会の意思疎通が図られている竹山団地に白羽の矢を立て、社内外の調整をはじめました。
神奈川大学のサッカー部の部長を務める佐藤武さん(左)と監督の大森酉三郎さん(右)(画像/片山貴博)
2020年5月から学生たちの入居が始まり、もうすぐ4年が経とうとしています。これまで、学生たちと地域が一緒に取り組んできたプロジェクトは枚挙に暇がありません。
自治会が主催する防災訓練や花火大会などのイベント運営、休耕地を活用した野菜づくり。団地の空き店舗をリノベーションした学生食堂の空き時間を活用し、横浜市の介護予防・生活支援事業として介護予防体操教室やコミュニティカフェを運営。ほかにも高齢者向けのスマートフォン教室や子どもたちの学習支援の先生役を学生たちが務めています。今後は国の補助を受け、新たな地域活動拠点の整備を進めていくそう。
普段は学生食堂兼クラブハウスとして使用している竹山商店街「14号店舗」は、かつて魚屋だった場所。学生たちもリノベーションに関わり、スマートフォン教室やコミュニティカフェなど団地に住む人たちが集う場所として生まれ変わった。(画像/片山貴博)
学生たちが講師を務めるスマートフォン教室は「マンツーマンで自分のわからないことを教えてもらえる」と大人気。LINEグループがあり、150人近くの高齢者が登録しているのだとか(画像/片山貴博)
NPOを設立して、アルバイト料を支払い。国や自治体も巻き込むプロジェクトにこれらの事業展開をスムーズにしていくため、サッカー部はNPO法人KUSCを立ち上げました。NPOの運営は、現在、監督の大森さんやコーチたちが中心となって担い、スマートフォン教室の講師や学習支援の補佐役、食堂の運営を行う学生たちには、NPOからアルバイト料が支払われます。
「ちゃんとお金を払っていくことで、活動が継続できるものになります。また、それぞれの仕事に必要な資格を取ると時給がアップする仕組みを取り入れています。学生たちも自分で時間をつくって地域活動に参加するようになりますし、アルバイト料は経済的な支えにもなります」(監督の大森さん)
神奈川大学サッカー部監督の大森酉三郎さん。現在は監督とコーチがマネジメントしているNPOの活動をより広げていくためにも、実務能力のある人を雇用してほしいと大学側に要望しているそう(画像/片山貴博)
さらに大森監督は「部員たちにとっての将来はサッカーだけではない」と続けます。
「サッカーはこの子たちにとってアイデンティティの中心ですが、チームの中でリーダーシップを取ることができるのはごく少数。活動の場が寮生活や地域にも広がることで、それぞれの場所や活動の中でリーダーシップを発揮する学生部員も出てきて、それがサッカーのプレーにも反映されるようになったりする。相乗効果があるだけではなく、これから先の社会や自分の人生を見据えてどう生きるか、という視点の醸成や人間的な成長につながります」(監督の大森さん)
「いいことばかりではないが、自分を知れた」学生たちの視点と本音サッカー部の学生たちは、原付バイクで下宿である竹山団地とサッカー部の練習場であるグラウンド、大学のキャンパスを移動する毎日。団地で地域の人たちと生活をする中で、苦労していることなどがないかを聞くと、サッカー部のキャプテンである永谷陵之佑さんは「周囲の住民さんとの生活スタイルの違いには常に気をつけるようにしている」と答えます。
「隣の部屋には、一般の方が住んでいたりするので、自分たちの話し声や生活音が騒音として問題にならないかは気になるところです。高齢の方は夜早く寝たりされるので、洗濯機を回す時間を考えたり、門限がなくても、活発に動く時間は常識の範囲の中で周囲に配慮して行動するように心がけてきました」(キャプテンの永谷さん)
サッカー部のキャプテン、永谷陵之佑さん(4年生)が暮らす竹山団地の1室。1住戸に同じ学年の学生が固まらないように振り分け。上級生から下級生に、ごみ捨てをはじめとする生活のルールなどを教え、引き継いでいくのだと言う(画像/片山貴博)
また、学業に部活、寮生活での慣れない家事に加え、地域活動の時間をつくるとなると、学生たちへの負担も懸念されます。サッカー部部長の佐藤さんによれば「この取り組みを始める際にも、大学内の責任者などからはその懸念を指摘された」と言います。毎日、結構大変なのでは?と副キャプテンの蓑輪実潤(みのわまひろ)さんに投げかけると率直に答えてくれました。
「正直に言えば、本当にやるべき学業やサッカーがおろそかになってしまったり、事業がどんどん拡大していく中で人手不足を感じたりと、まだまだバランスが取れていないと感じる部分もあります。いいことばかりではありませんが、活動を通して自分が『誰とやるか』を重視することに気づけたりして、自分を知ることにもつながりました」(副キャプテンの蓑輪さん)
サッカー部の副キャプテン、4年生の蓑輪実潤(みのわまひろ)さん。「卒業後はオーストラリアに行き、サッカーをやりながら経営者を目指したい」と語る(画像/片山貴博)
これからも解決策を模索しながら進む、学生たちと地域の課題神奈川県住宅供給公社の水上さんも「団地の新しい取り組みとして、多くのメディアで紹介され、全国的に評価されはじめた。一方で、どこででも簡単に横展開できるものではない」と語ります。
「竹山団地は、大森監督から話があったことに加え、自治会の星川さんや高橋さんたちのように家族として、学生たちに関わってくださる方がいるなど、偶然や必然が重なってできたデザインです。同じスキームが他の団地でできるかというと、そうは思っていません。もし他の大学や他の団地で同じような話が出てきたとしても、その地域の思いや環境、資源などを考えながらデザインしていくのでしょうね」(水上さん)
神奈川県住宅供給公社の水上弘二さん。「私たちはオーナーとしてしゃしゃり出ないようにしながら、竹山団地の取り組みを支援している」そう(画像/片山貴博)
一方で、この竹山団地での取り組みが、社会問題となっている集合住宅の老朽化や高齢化へのひとつの解決策となりうる期待も込めます。
「今いる4年生たちは、この取り組みの1期生であり、1年生で入学した時から大学4年間を通して活動し続けてきました。1からモデルをつくってきた大変さがあったと思いますが、これから入ってくる子たちは、道がすでにできているところに溶け込めるか、というハードルを乗り越える必要が出てくるでしょう。一方で、住民の皆さんは1年経てば1つ歳をとります。本格的な高齢化のスピードに取り組みが追いつくことができるのか、学生たちの地域活動がどう変わっていくのか、今後も期待をしながら私たちもオーナーとしてできる限りの支援をしていきたいと思います」(水上さん)
芋煮会の様子を見て、団地内に住む子どもが立ち寄る。「大好きな憧れのお兄ちゃん」であるサッカー部員に芋煮をすすめてもらい、嬉しそうに食べる姿がほほえましい(画像/片山貴博)
大森監督は「いまの時代、さまざまな形の家族がある中で、学生たちは今まさに家族の経験をしている。今はわからなくても10年後、20年後にこの経験の価値を知ることになるはず」だと言います。
学生たちの将来、そして団地、言い換えれば、日本の社会が抱える課題や将来の姿を見据えて取り組まれるこのプロジェクトが、建物の老朽化や住む人の高齢化への解決策となり得るか、これからもその成長に目が離せません。
●取材協力
・神奈川大学サッカー部
・神奈川県住宅供給公社
・竹山団地 竹山連合自治会
大規模災害を想定した、最低限の水や非常食の備蓄。しかし大地震により物流が途絶え、支援物資も届きづらい状況を思えば、防災リュックの中身だけでは心もとない。また、避難所や仮設住宅での生活が長引いた際には、嗜好品や思い出の品など「心を癒やすアイテム」も必要になる。
できれば最低限ではなく、最悪を想定した十分な備えをしておきたいところだが、自助で賄える備蓄や防災には限界がある。そこで、個人やマンション単位で導入できる最新の防災サービスの検討を含め、一歩進んだ対策について考えてみたい。
防災備蓄をスマホでまとめて管理「SAIBOU PARK」その前に、多くの人は本当に「最低限」の備えができているのだろうか。防災リュックは、クローゼットの奥で埃をかぶっていないか。そもそも、中身を把握できていなかったり、非常食の消費期限が切れてしまっているケースもあるかもしれない。
そんな、怠りがちな防災備蓄の管理を、スマホで簡単に行えるのが「SAIBOU PARK」。自宅にあるアイテムの写真を撮り、数量や保管場所、消費期限を登録することで、防災備蓄をまとめて管理することができる。
物置に眠る防災用品を集めて撮影する
アイテム名や個数、保管場所を登録していく
非常食などは賞味期限や消費期限を設定。通知をONにしておくと、期限が切れる1カ月前と2週間前に、アプリから通知が届く
サービスを運営しているのは、防災用品のセレクトショップも手がける株式会社サイボウ。「SAIBOU PARK」アプリを開発した背景には、防災備蓄にまつわるこんな課題感があったという。
「自宅の防災アイテムや備蓄品を『あったっけ?』『どこだっけ?』と探した経験がある人は多いと思います。防災備蓄を把握しづらい理由は主に3つあり、1つ目は『種類が多く、一つひとつが小さい』こと。2つ目は『購入後に収納すると、当面は気にかけない』こと。3つ目は『目の届かないところに収納したものは、時間の経過とともに忘れてしまう』こと。
防災用品はこうして存在自体を忘れられ、ひっそりと劣化が進んだり、期限が切れてしまいます。せっかく備えたアイテムも、これではいざというときに真価を発揮できません。その解決策として、防災備蓄の全体像をいつでも把握・管理できるように企画したのが、このアプリでした」
こう語るのは、自身も防災士の資格を持つ「SAIBOU PARK」の佐多大翼さん。
SAIBOU PARKでは防災アイテムの劣化や非常食の消費期限切れを防ぐため、アイテムごとに「期限」を設定し、期限が切れる1カ月前と2週間前にプッシュ通知でリマインドする機能を持たせた。
「非常食だけでなく、電池やガスボンベにも使用期限があります。SAIBOU PARKを使ってみて、そのことを初めて意識したというユーザーの方もいらっしゃいました」(佐多さん)
不足アイテムは、防災用品のセレクトショップ「SAIBOU PARK」で購入できる
最低限の自助といえる防災備蓄。自分や家族にとって最適な備えを把握するためにも、まずはこうしたアプリを使い、現在の備蓄状況を俯瞰的にチェックしてみるといいかもしれない。
<サービス概要>
・SAIBOU PARK
自宅の備えがひと目でわかる「防災備蓄まとめて管理アプリ」。非常食や懐中電灯など、手元の防災用品をアプリに登録。賞味期限や使用期限を設定しておくと、期限が切れる前にプッシュ通知でお知らせしてくれる。足りないアイテムは、防災用品のセレクトショップ「SAIBOU PARK」から購入することも可能。
食糧の備蓄や日用品、簡易トイレといった防災アイテムは十分に備えていたとしても、避難生活では「意外なもの」が不足することがある。
例えば、乳幼児を連れて避難する場合、被災のストレスで一時的に母乳が出にくくなったり、哺乳瓶を消毒することができずに授乳に困るケースがあるという。
また、小さな子どもの不安やストレスをやわらげる遊び道具、高齢者のいる家庭なら避難所に持ち込める椅子、ペットがいる場合はケージなども用意しておきたい。
最低限の備蓄品以外に、避難所で必要になるものは人それぞれ。家族の属性だけでなく、住んでいる環境によっても必要な準備が異なる。そんな、一人ひとりに合わせた防災対策をパーソナライズして自宅に届けてくれるのが、「pasobo(パソボ)」だ。WEB上の防災診断で「住んでいる自宅の種類は?」「何人で暮らしていますか?」といった13の質問に回答すると、その世帯環境における災害リスクや、全国のハザードマップから見た立地リスクを分析したうえで、自分に必要な防災セットを提案してくれる。
1分程度の「オンライン診断」を回答
自宅周辺の災害リスクや、ハザードマップ上から分析された立地リスクなどの診断結果を確認。パーソナライズされた防災セットのなかから、必要なものを注文する
サービスを手掛けるのは株式会社KOKUA。東日本大震災の被災地で出会い、全国各地の被災地支援を続けてきたメンバーたちで設立された防災ベンチャーだ。
「行政による支援は、どうしても『誰もが共通して使えるもの』の優先度が高くなりがちで、個人の属性に応じた物品を用意したり、それを各避難所へ配備することが難しいと聞きます。実際、私たちが避難所でボランティアをしているなかでも、必要なものが不足し不便な思いをしている方がたくさんいらっしゃいました。不便なだけならまだいいのですが、それがないことで体調が悪化してしまうこともある。被災してから『これを準備しておけばよかった』という事態を防ぐためにも、pasoboの防災診断をきっかけに自分や家族にとって『本当に必要な防災対策』を考えていただければと思います」(KOKUA共同代表の疋田裕二さん)
<サービス概要>
・パーソナル防災サービス「pasobo」
WEB上で、家族構成や立地、建物の耐震基準・階数、個人の災害に対する価値観といった、いくつかの質問に回答するだけで、自分に必要な防災対策が1分で見つかるサービス。サイト上に入力された情報をもとに、個人の世帯環境における災害リスクや、全国のハザードマップから見た立地リスクを分析し、最適な防災グッズを提案。提案された防災用品は、サイト上で購入することもできる。
災害の規模によっては、こうした自助の備えだけでは賄いきれない場合もある。そんなときに頼れるのは、地域やコミュニティのなかで助け合う「共助」の力だ。
特にマンションの場合、近年は「在宅避難」を見越した防災力の強化が叫ばれている。実際、管理組合が主体となり、マンション全体で備蓄の管理を含めた防災対策に取り組むケースも増えてきた。
最近では、防災備蓄品の選定や管理をアウトソーシングできるサービスも登場している。2023年10月に提供がスタートした「防災サステナ+」もその1つ。マンションの倉庫の容量や住人の数に応じた適正数量の防災備蓄品を提案・納品してくれるほか、期限切れの前に備蓄品を補充してくれる。
マンション引渡し~管理組合設立時まで(イメージ)
管理組合設立以降(イメージ)
「有事の際に防災備蓄品の使用期限が切れて使用できなかったら、備蓄の意味がありません。実際、管理組合で消費期限や使用期限が切れていて問題になり、慌てて購入されるような事案もあるようです。通知だけでは現地にある備蓄品の期限切れが解消されるわけではないため、自動的に補充されるまでをサービスとしました」(サービスを運営する「つなぐネットコミュニケーションズ」の担当者)
現在は新築マンションを展開するデベロッパーや、既存マンションの管理会社を中心にサービスを提案中。同時に、マンションごとに異なる防災のニーズを聞き取りながらサービス内容をブラッシュアップしている。
ただ、いかに共助が大事といっても、あくまで最低限の「自助」があってこその「共助」。そのため、どこまでを自助とし、どこからを共助として管理組合で備えておくべきかは、住民同士で十分に話し合っておく必要があるという。
「発災当初、消防などの公的支援は被害が大きいところに集中するため、安全性の高いマンションへの支援が遅れる可能性があります。そのため、自分の命を守る『自助』、マンション内で助け合う『共助』が重要になります。『自助』では各住戸での安全対策や水食料等の備蓄をしておくこと、『共助』では救助活動や共用部の安全対策等のため活動ルールや備蓄品を備えておくことが必要です」(同)
<サービス概要>
・防災サステナ+
マンションでニーズの高い防災備蓄品の選定・納品(ハード)に加え、将来にわたる更新期限の管理を、月額利用料金で継続的に利用できる防災サービス。サービスの契約期間中は無料の防災相談サービスが受けられるほか、管理組合専用グループウェアも利用できる。平常時の管理組合による防災活動の活性化に加え、災害時の共助促進も期待できる。
被災した際、何より欠かせないのは食糧や生活必需品。その次に必要になるのは、嗜好品や趣味の品、大切にしているものなど「心を癒やすアイテム」ではないだろうか。
2022年、日本郵便と寺田倉庫は防災サービス「防災ゆうストレージ」の提供を開始した。もしものときのために「必要なもの・大切なもの」を寺田倉庫が管理する安全な倉庫に預けておくことができ、地震や災害が起こった際には日本郵便の流通網で全国の被災地まで運んでくれる。
頑丈なポリプロピレン製の専用ボックスは「小」「大」の2種類。避難先ではテーブルや椅子などとしても活躍する(写真提供/日本郵便)
サービスの背景には、被災者たちの辛い経験談があるという。
「被災者の方々に話をお伺いすると、何よりも辛かったのは思い出の写真やアルバム、愛着のある品々をなくしてしまったことであると。家をなくすよりも悲しかったとおっしゃる方もたくさんいらっしゃいました。ふだんは嵩張るようなもの、ちょっと邪魔だなと思っているものでも、いざなくしてしまうと大きな喪失感につながってしまう。そこで、いったん遠くの場所へ思い出を移しておくことで自宅も整理できますし、有事の際の心の拠り所にもなるのではないかと考えました」(サービスを設計した日本郵便の担当者)
それらを預けておくだけでなく、有事の際には避難所まで届けてくれるのも大きい。なかなか自宅に戻れない状況下では、思い出の写真一枚、小さなぬいぐるみ1つが心の拠り所になることもある。
「思い出の品々だけでなく、好きな本や嗜好品もそうだと思います。これらは、命をつなぐために必要なものではありません。でも、避難生活が長引いたときに『いつもの暮らし』を取り戻させてくれます。例えば、避難所や仮設住宅での食事も、お気に入りの食器を使うだけで気持ちは変わる。ちょっとしたことですが、家族の日常を取り戻す第一歩になるのではないかと思います」(同)
「高齢者や子どもと暮らしている家庭」の利用イメージ(写真提供/日本郵便)
災害の規模によっては、避難生活が長期化することもある。もとの暮らしを取り戻すまで日常をつなぎとめてくれるのは、じつは身の回りにあるちょっとしたアイテムなのかもしれない。
<サービス概要>
・防災ゆうストレージ
月額保管料275円~と、個人でも利用しやすい防災向け宅配型トランクルームサービス。専用ボックスに、思い出の品だけでなく、避難先での生活が長期化した場合に必要となる日用品を入れて発送するだけで「じぶん用支援物資」として預けておくこともできる。衣類や衛生品のほか、公的な支援物資だけでは不足しがちな紙おむつやコンタクトレンズ、使い慣れた生理用品、常備薬、ペット用品など、自宅に備えている防災リュックの「拡大版」のような形で利用することもできる。
大規模な災害が頻発しているとはいえ、常日頃、高いレベルの防災意識を保ち続けることは難しい。重要なのは、普段は特別に意識しなくても、もしもの時に困らない体制をつくっておくこと。そのためにも、手軽に導入できるこれらの防災サービスをうまく活用し、防災力の強化に努めたい。
●関連リンク
・SAIBOU PARK
【iOS】
【Android】
・パーソナル防災サービス「pasobo」
・防災サステナ+
・防災ゆうストレージ
光熱費の値上げが家計の大きな問題になっている昨今。電気の価格は、各地の電力会社によって差があります。2023年6月に国内の大手電力会社7社がいっせいに電気料を値上げしたなか、沖縄県は33.3%と7社の中でも2番目に高い上昇率。冬も暖かい沖縄県内はこれまで「断熱」「省エネ」の認識が低かったのですが、いよいよ無視できない状況になっています。リノベーション会社アーキラボラフィット(RENOBEES)(沖縄県沖縄市)は高断熱性能の賃貸&全館空調マンションに挑んでいますが、「ひと筋縄ではいかない」といいます。
モデルルームとしてリノベーションをした、沖縄市にある2LDK・55平米の中古マンションで沖縄の断熱最新事情のお話をうかがいました。
全館空調システムを1室からリノベーションで実現モデルルームで出迎えてくれたのは、代表取締役の德里政俊(とくざと・まさとし)さんと取締役/プランナーの嘉手苅麗子(かでかる・れいこ)さんです。
代表取締役の德里政俊(とくざと・まさとし)さんと取締役/プランナーの嘉手苅麗子(かでかる・れいこ)さん(写真撮影/島袋常貴)
「ここ沖縄県でも、多くのご家庭が光熱費の高騰に頭を悩ませています。しかし、寒冷地域とは異なり、断熱に目を向けるご家庭は多くありません」。2級建築士資格を持つ徳里さんはそう話します。
たしかに、沖縄県に住んでいる筆者の周りでも「断熱」という言葉を耳にしたことは皆無です。よく耳にするのは、台風時の豪雨や強風による浸水、雨漏り、破損などをいかに防ぐか。沖縄独特の瓦や、石造りの家などがこれに当たります。もしくは、湿度の高い沖縄で、カビを防ぐためにいかに風通しを良くするか、などです。
また、夏の気候が長く続く沖縄では、時に10月、11月になっても冷房つけているご家庭も。当然ながら、その時期は電気代が跳ね上がります。
しかしこうした冷房も、実は断熱住宅のほうが機密性が高く、長く涼しさが続くとされています。
「マンション1室まるごとを全館空調で管理する場合は、通常の家で使う部屋だけにクーラーをつけているよりも光熱費が安くなるケースも多いのです」(嘉手苅さん)
いったいどういうことなのか、さっそく室内を拝見してみましょう。
オープンクローゼットなど沖縄ならではの工夫もモデルルームになったのは沖縄県沖縄市にあるマンション。沖縄は冬でも20度前後で過ごしやすい日もあるのですが、この日は2023年で1番といってもいいほど冷え込んでおり、外気温は15度前後。長袖を一枚はおらないと肌寒さを感じる日でした。
玄関ドアを開けると、まず三和土の先はフローリングが張られ、リビングへ続く廊下はまたドアで仕切られています。
「外気やそこに含まれる湿気がリビングに流れ込まないようにするためです」(德里さん)
室内に一歩足を踏み入れた瞬間、思わず「暖かい!」と声が出てしまうほど。室内は、全館空調で室温22度前後、湿度約60%に保たれています。
全館空調のメリットを最大限引き出すには、気密性の高さがとても大切です。ドアは曇りガラスになっているため、リビングの窓から入る光を通し、玄関は薄暗さを感じられません。
玄関とリビングはすりガラスが入ったドアで仕切られていますが、それでも全館空調の威力を感じます(写真撮影/島袋常貴)
向かって右側には、オープン式のシューズラックが設けられています。
「多湿な沖縄では、引き出しや戸棚の中のものにカビが生えやすいことから、オープン式のシューズラックや洋服掛けなどが好まれます。まれに、ドア付きのクローゼットのドアをわざわざ開け放しておく方もいるほどです」(同)
確かに、個室に設けられたクローゼットもオープン式です。
個室のオープン式クローゼットは、通気性の高さで沖縄の人々に人気(写真撮影/島袋常貴)
全館空調システムは、キッチンの天井裏にはめ込まれています。ケィ・マックインダストリー社の24時間換気システムで、導入費は200万円ほど。リビングを通ったダクトから外気を室温に近づけて給気する仕組みです。
キッチン天井裏に取り付けられた全館空調システム(写真撮影/島袋常貴)
キッチンの天板はステンレス、それ以外の部分はホーロー製(写真撮影/島袋常貴)
全ての居室の室温や湿度、換気などをキッチンで一元管理できます(写真撮影/島袋常貴)
外気を取り入れるビングのダクトは白色にして圧迫感を減らしています(写真撮影/島袋常貴)
寝室の様子。リノベーションして内廊下に面した窓があるため光が入って開放的(写真撮影/島袋常貴)
「エアコンの室外機を1つずつ設置しなくてよいので、意匠的にも優れています」(同)
全館空調の効果を最大限に発揮するために、壁と床にはそれぞれ厚さ2.5cmの断熱材を使用しています。
断熱材が入ることで、外から沖縄の太陽で照り付けられても熱が室内にこもることがなく、冷房で冷やされた室温を維持しやすいのです。また、外部の湿気が内部に侵入しにくという効果もあります。
コンクリートの建物で、このように室内の壁と床に断熱材を入れることは珍しいといいます。
断熱工事の様子。壁をはがして、厚さ2.5cmの断熱材を入れていきます(写真撮影/島袋常貴)
リビングに面した窓も、二重サッシで防音もバッチリ。部屋は大通りに面していて、日中は車通りもありましたが、音はほとんど気になりませんでした。樹脂製の内窓は、室内の木目調のインテリアともマッチしています。
居室は全てフローリング材で統一されていますが、この床材は本州で使われるものと同じ木材です。
開放的なリビングの床もフローリングで、気温と湿度が完全にコントロールされているため快適に過ごすことができます(写真撮影/島袋常貴)
内窓を取り付けて二重窓に。金属性よりも断熱性が高い樹脂製を採用(写真撮影/島袋常貴)
「通常、沖縄では湿気に強いチークやメルバウなどをフローリングに使用します。反ったり膨張したりしにくいのですが、独特の赤みがでてしまうんです。しかし、全館空調であれば湿度も管理されていますから、そういった心配もありません。床材の選択肢が広がると、選択できるインテリアの幅も広がりますよね」(同)
気になる光熱費について、全館空調・断熱の導入前後を比較してみましょう。
アーキラボラフィット(RENOBEES)の試算によると、導入前の年間の光熱費は月額平均約3万7,067円(年間44万4,804円)。導入後は月額平均2万1,615円(年間25万9,378円)と、約42%の削減効果が見込まれるそうです(平均外気温22.9℃で計算)。
一方、断熱工事を含め、かかったリノベーション費用は1300万円。全館空調システムの200万円を合わせて、計1500万円の初期投資が必要です。
今回は自社施工だったため、補助金などを活用することはできませんでした。
一般の方が同じリノベーションに取り組む場合には、国の制度である「住宅省エネ2024キャンペーン」の中の①質の高い住宅ストック形成に関する省エネ住宅への支援(仮称)の「住宅の省エネ改修」に該当する場合は1戸あたり上限20~30万円(30万円は子育て世帯・若者夫婦世帯)。子育て世帯・若者夫婦世帯が既存住宅購入を伴う場合には、1戸あたり上限60万円の補助が受けられます。
窓については、同補助金「先進的窓リノベ2024」の要件に該当した場合は、工事内容に応じて定める額(補助率1/2相当等、上限200万円まで)、また「子育てエコホーム」の要件に該当する場合は、最大20~60万円の補助が受けられます。
また、沖縄市在住の場合は「沖縄市住宅リフォーム支援事業補助金」の中の「バリアフリー・省エネ等改修工事」で施工金額のうち、認められれば最大25%の補助金を受け取ることができる可能性があります。
気密性の高さは沖縄で受け入れられるか沖縄ではまだ目新しい全館空調・断熱リノベマンション。ほこりや排気ガスの侵入や、騒音なども防ぐことができ一石二鳥なのですが、沖縄の文化になじむか否かはこれから検証が必要です。
沖縄では風水を重視する傾向などから、ドアや窓を開け、通気性がよいことを好む人々も少なくありません。夏場であっても玄関や窓を開け放しているご家庭も見受けられるのですが、全館空調を取り入れた物件で同じことをしてしまうと、空調が効かなくなるだけでなく、外気からの湿度の影響を受けてフローリングや家具などにカビやたわみなどの影響が出てくることも考えられます。
一方で、中国本土の一部や香港などでは、通年でエアコンをかけ、気密性が高い居室を好む地域もあります。これはSARSや大気汚染などの影響で、頻繁に換気で外気を取り入れるよりも、同じ空気を、フィルターを通して循環させたほうが清潔である、という考え方があるためです。沖縄の物件は外国人にも人気。全館空調・断熱の家はこうした地域出身の外国人には好まれるかもしれません。
「弊社でも初めての試みですが、今後も上がり続けるであろう光熱費に対する、1つの提案になればと思っています」(德里さん)
新たな試みは沖縄の人々に受け入れられるのか、注目していきたいと思います。
●取材協力
アーキラボラフィット(RENOBEES)
光熱費の値上げが家計の大きな問題になっている昨今。電気の価格は、各地の電力会社によって差があります。2023年6月に国内の大手電力会社7社がいっせいに電気料を値上げしたなか、沖縄県は33.3%と7社の中でも2番目に高い上昇率。冬も暖かい沖縄県内はこれまで「断熱」「省エネ」の認識が低かったのですが、いよいよ無視できない状況になっています。リノベーション会社アーキラボラフィット(RENOBEES)(沖縄県沖縄市)は高断熱性能の賃貸&全館空調マンションに挑んでいますが、「ひと筋縄ではいかない」といいます。
モデルルームとしてリノベーションをした、沖縄市にある2LDK・55平米の中古マンションで沖縄の断熱最新事情のお話をうかがいました。
全館空調システムを1室からリノベーションで実現モデルルームで出迎えてくれたのは、代表取締役の德里政俊(とくざと・まさとし)さんと取締役/プランナーの嘉手苅麗子(かでから・れいこ)さんです。
代表取締役の德里政俊(とくざと・まさとし)さんと取締役/プランナーの嘉手苅麗子(かでかる・れいこ)さん(写真撮影/島袋常貴)
「ここ沖縄県でも、多くのご家庭が光熱費の高騰に頭を悩ませています。しかし、寒冷地域とは異なり、断熱に目を向けるご家庭は多くありません」。2級建築士資格を持つ徳里さんはそう話します。
たしかに、沖縄県に住んでいる筆者の周りでも「断熱」という言葉を耳にしたことは皆無です。よく耳にするのは、台風時の豪雨や強風による浸水、雨漏り、破損などをいかに防ぐか。沖縄独特の瓦や、石造りの家などがこれに当たります。もしくは、湿度の高い沖縄で、カビを防ぐためにいかに風通しを良くするか、などです。
また、夏の気候が長く続く沖縄では、時に10月、11月になっても冷房つけているご家庭も。当然ながら、その時期は電気代が跳ね上がります。
しかしこうした冷房も、実は断熱住宅のほうが機密性が高く、長く涼しさが続くとされています。
「マンション1室まるごとを全館空調で管理する場合は、通常の家で使う部屋だけにクーラーをつけているよりも光熱費が安くなるケースも多いのです」(嘉手苅さん)
いったいどういうことなのか、さっそく室内を拝見してみましょう。
オープンクローゼットなど沖縄ならではの工夫もモデルルームになったのは沖縄県沖縄市にあるマンション。沖縄は冬でも20度前後で過ごしやすい日もあるのですが、この日は2023年で1番といってもいいほど冷え込んでおり、外気温は15度前後。長袖を一枚はおらないと肌寒さを感じる日でした。
玄関ドアを開けると、まず三和土の先はフローリングが張られ、リビングへ続く廊下はまたドアで仕切られています。
「外気やそこに含まれる湿気がリビングに流れ込まないようにするためです」(德里さん)
室内に一歩足を踏み入れた瞬間、思わず「暖かい!」と声が出てしまうほど。室内は、全館空調で室温22度前後、湿度約60%に保たれています。
全館空調のメリットを最大限引き出すには、気密性の高さがとても大切です。ドアは曇りガラスになっているため、リビングの窓から入る光を通し、玄関は薄暗さを感じられません。
玄関とリビングはすりガラスが入ったドアで仕切られていますが、それでも全館空調の威力を感じます(写真撮影/島袋常貴)
向かって右側には、オープン式のシューズラックが設けられています。
「多湿な沖縄では、引き出しや戸棚の中のものにカビが生えやすいことから、オープン式のシューズラックや洋服掛けなどが好まれます。まれに、ドア付きのクローゼットのドアをわざわざ開け放しておく方もいるほどです」(同)
確かに、個室に設けられたクローゼットもオープン式です。
個室のオープン式クローゼットは、通気性の高さで沖縄の人々に人気(写真撮影/島袋常貴)
全館空調システムは、キッチンの天井裏にはめ込まれています。ケィ・マックインダストリー社の24時間換気システムで、導入費は200万円ほど。リビングを通ったダクトから外気を室温に近づけて給気する仕組みです。
キッチン天井裏に取り付けられた全館空調システム(写真撮影/島袋常貴)
キッチンの天板はステンレス、それ以外の部分はホーロー製(写真撮影/島袋常貴)
全ての居室の室温や湿度、換気などをキッチンで一元管理できます(写真撮影/島袋常貴)
外気を取り入れるビングのダクトは白色にして圧迫感を減らしています(写真撮影/島袋常貴)
寝室の様子。リノベーションして内廊下に面した窓があるため光が入って開放的(写真撮影/島袋常貴)
「エアコンの室外機を1つずつ設置しなくてよいので、意匠的にも優れています」(同)
全館空調の効果を最大限に発揮するために、壁と床にはそれぞれ厚さ2.5cmの断熱材を使用しています。
断熱材が入ることで、外から沖縄の太陽で照り付けられても熱が室内にこもることがなく、冷房で冷やされた室温を維持しやすいのです。また、外部の湿気が内部に侵入しにくという効果もあります。
コンクリートの建物で、このように室内の壁と床に断熱材を入れることは珍しいといいます。
断熱工事の様子。壁をはがして、厚さ2.5cmの断熱材を入れていきます(写真撮影/島袋常貴)
リビングに面した窓も、二重サッシで防音もバッチリ。部屋は大通りに面していて、日中は車通りもありましたが、音はほとんど気になりませんでした。樹脂製の内窓は、室内の木目調のインテリアともマッチしています。
居室は全てフローリング材で統一されていますが、この床材は本州で使われるものと同じ木材です。
開放的なリビングの床もフローリングで、気温と湿度が完全にコントロールされているため快適に過ごすことができます(写真撮影/島袋常貴)
内窓を取り付けて二重窓に。金属性よりも断熱性が高い樹脂製を採用(写真撮影/島袋常貴)
「通常、沖縄では湿気に強いチークやメルバウなどをフローリングに使用します。反ったり膨張したりしにくいのですが、独特の赤みがでてしまうんです。しかし、全館空調であれば湿度も管理されていますから、そういった心配もありません。床材の選択肢が広がると、選択できるインテリアの幅も広がりますよね」(同)
気になる光熱費について、全館空調・断熱の導入前後を比較してみましょう。
アーキラボラフィット(RENOBEES)の試算によると、導入前の年間の光熱費は月額平均約3万7,067円(年間44万4,804円)。導入後は月額平均2万1,615円(年間25万9,378円)と、約42%の削減効果が見込まれるそうです(平均外気温22.9℃で計算)。
一方、断熱工事を含め、かかったリノベーション費用は1300万円。全館空調システムの200万円を合わせて、計1500万円の初期投資が必要です。
今回は自社施工だったため、補助金などを活用することはできませんでした。
一般の方が同じリノベーションに取り組む場合には、国の制度である「住宅省エネ2024キャンペーン」の中の①質の高い住宅ストック形成に関する省エネ住宅への支援(仮称)の「住宅の省エネ改修」に該当する場合は1戸あたり上限20~30万円(30万円は子育て世帯・若者夫婦世帯)。子育て世帯・若者夫婦世帯が既存住宅購入を伴う場合には、1戸あたり上限60万円の補助が受けられます。
窓については、同補助金「先進的窓リノベ2024」の要件に該当した場合は、工事内容に応じて定める額(補助率1/2相当等、上限200万円まで)、また「子育てエコホーム」の要件に該当する場合は、最大20~60万円の補助が受けられます。
また、沖縄市在住の場合は「沖縄市住宅リフォーム支援事業補助金」の中の「バリアフリー・省エネ等改修工事」で施工金額のうち、最大25%の補助金を受け取ることができる可能性があります。
気密性の高さは沖縄で受け入れられるか沖縄ではまだ目新しい全館空調・断熱リノベマンション。ほこりや排気ガスの侵入や、騒音なども防ぐことができ一石二鳥なのですが、沖縄の文化になじむか否かはこれから検証が必要です。
沖縄では風水を重視する傾向などから、ドアや窓を開け、通気性がよいことを好む人々も少なくありません。夏場であっても玄関や窓を開け放しているご家庭も見受けられるのですが、全館空調を取り入れた物件で同じことをしてしまうと、空調が効かなくなるだけでなく、外気からの湿度の影響を受けてフローリングや家具などにカビやたわみなどの影響が出てくることも考えられます。
一方で、中国本土の一部や香港などでは、通年でエアコンをかけ、気密性が高い居室を好む地域もあります。これはSARSや大気汚染などの影響で、頻繁に換気で外気を取り入れるよりも、同じ空気を、フィルターを通して循環させたほうが清潔である、という考え方があるためです。沖縄の物件は外国人にも人気。全館空調・断熱の家はこうした地域出身の外国人には好まれるかもしれません。
「弊社でも初めての試みですが、今後も上がり続けるであろう光熱費に対する、1つの提案になればと思っています」(德里さん)
新たな試みは沖縄の人々に受け入れられるのか、注目していきたいと思います。
●取材協力
アーキラボフィット(RENOBEES)
リクルートは関西圏(大阪府・兵庫県・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県)に居住している20歳〜49歳の4600人を対象に実施した「SUUMO住みたい街ランキング2024年関西版」を発表した。
どのような街がランクインしたか、結果と併せて街の魅力を探ってみた。
1位は大都心部「梅田」、2位は阪神間の人気の街「西宮北口」、3位は神戸市の玄関口「神戸三宮」だった。
トップ3は2022年から3年連続で同じ位置をキープしたが、今年際立ったのが1位の「梅田」の強さだ。2位の「西宮北口」と約300点もの差をつけており、「得点がジャンプアップした街ランキング」でも昨年から100点以上も得点を伸ばして1位に。
「梅田」の人気の高まりがはっきりと結果に出た。
「梅田」の人気の背景には、西日本最大のターミナル「JR大阪駅」北側の再開発「うめきた」による街の発展がある。「グランフロント大阪」が誕生した1期開発に続いて「うめきた2期(グラングリーン大阪)」が進行しており、今年9月には一部先行街開きをする予定だ。
グランフロント大阪(写真/PIXTA)
中でも特に期待が寄せられるのが、大阪駅と直結する都市公園「うめきた公園」の誕生だろう。関西最大のビッグターミナルであるJR大阪駅前に、広大な芝生広場や、美しい曲線を描く大屋根のイベントスペースを設けた巨大公園が姿を現す。周辺にはホテルやオフィスビル、タワーマンションなども続々開業するという、心躍らされる都市プランだ。
住みたい理由としてあげられる街の魅力は、働く場にとどまらない街のにぎわい、文化娯楽施設の充実などだ。
「梅田」を「西宮北口」と年代別で比較すると、20代の支持率が突出して高いのもうなずける。
ビジネスや商業のイメージが強い「梅田」だが、うめきたエリア再開発の波及効果や福島方面や中津方面の再開発により住宅供給が増加。直近10年間でも大阪市北区・福島区で1万5000戸以上の分譲マンションが供給された。
近年、若い人の間で住宅を資産価値として見る層が増えており、住むイメージが希薄だった梅田エリアも、都心居住への憧れの強さに後押しされ、“働き、暮らす街”として魅力を増していると考えられる。
同時にアンケートをとった「穴場だと思う街(駅)」でも「梅田」が昨年の2位から1位に上昇した。
「梅田」と「穴場」のイメージがマッチしない印象だが、ハイブランドの店舗から昔ながらの飲食街まで多様な顔があることが、“住む街としても見逃せない”という穴場感につながっているのかも。
ほかにも得点を上げた街を見てみたい。
「江坂」は昨年の11位から8位にランクインした(310点→342点)。
「江坂」は大阪中心部のオフィス街に直結する大阪メトロ御堂筋線にあり、新幹線停車駅「新大阪」や「梅田」「淀屋橋」に乗り換えなしで行ける。
また、阪急京都線「烏丸」は昨年の15位から12位に(238点→270点)、「本町」は18位から13位(216点→256点)に大きく順位を上げている。
それぞれ京都市、大阪市の中心エリアにあり、商業施設やオフィスが集まる華やかな街だ。
これらの結果を見ても、都心への交通アクセスの良さや商業施設の充実など、利便性の高い街に人気が集まっていることがわかる。
アンケートでは「住みたい自治体」についても尋ねた。
1位は「西宮市」。以下「大阪市北区」、「明石市」、「大阪市天王寺区」、「大阪市中央区」と続いた。
「住みたい街ランキング」でトップ2だった街の自治体「西宮市」「大阪市北区」がやはり1位、2位を獲得した。
1位から5位までが昨年と同じ順位だが、昨年との得点差を見ると「大阪市北区」が130点(997点→1127点)と、他の自治体に比べて突出して大きい。
一方、手厚い子育て施策で注目を集める「明石市」は今年も3位をキープし、依然として高い支持を得ている。
「梅田」が利便性や都心への憧れ、資産価値の高さを背景にしているのに対し、「明石市」は市民目線のサービスで注目を集めた。
「明石市」の街の魅力項目には「子育てに関する自治体のサービスが充実している」だけでなく、「介護や高齢者向けのサービスが充実している」「公共施設が充実している(図書館、コミュニティセンター、公民館など)」など、子育て以外の自治体の施策や生活環境の充実も挙げられる。
明石駅前。大規模商業施設だけでなく、近くに公共施設や商店街がある(画像提供/明石市役所)
明石駅前。大規模商業施設だけでなく、近くに公共施設や商店街がある(画像提供/明石市役所)
年代・ライフステージでは、夫婦+子ども世帯の支持(2位)だけでなく、夫婦のみ世帯(3位)、女性20代・30代(2位)、男性20代・30代(5位)と子育てファミリー以外のさまざまな層からも高く注目されている。
また、「メディアによく取り上げられて有名」という声も多く、自治体の発信力も地元以外でも住みたいと思う人が増える要因になっているようだ。
■関連記事:
子育て支援の“東西横綱”千葉県流山市と兵庫県明石市、「住みたい街ランキング」大躍進の裏にスゴい取り組み
本町の風景(写真/PIXTA)
「本町」は住みたい街ランキングで昨年の18位から13位へとランクアップ。得点ジャンプアップした街ランキングでも40点も得点を伸ばし3位となった。
「本町」のある「大阪市中央区」は自治体総合ランキングで6位となり、特に男性40代、シングル男性、シングル女性では3位の高順位に。
街の魅力として「魅力的な働く場」や「雰囲気やセンスのいい飲食店やお店」などがあり、最先端のおしゃれな街という印象で捉えられていることが分かる。
大阪市中央区は2府4県の中でも人口増加率、15歳未満の人口増加率がともにナンバー1。小学校の児童数も10年前の3000人未満から4000人に届きそうな数に。本町駅周辺は中央区・西区ともに小型の分譲マンション供給が続いており、この5年間で中央区だけで約6000戸以上増えたことが人口増の要因となっている。
1975年の万博開催年に建てられた「船場センタービル」はコロナ禍の中、2021年から土日の営業を開始。地域住民が増えていることで飲食店などがにぎわいを見せている。
JR尼崎駅前の様子(写真/PIXTA)
「尼崎市」は「住みたい自治体」総合順位で過去最高位の19位にランクイン。特にシングル男性で8位に食い込み、夫婦のみの世帯も16位と高支持を得た。ファミリーよりもシングルやカップルからの支持が厚い傾向が見られる。
JR「尼崎」駅は「住みたい街ランキング」では31位だが、「得点がジャンプアップした街」では9位に躍進を遂げた。
JR尼崎駅は大阪駅まで新快速で1駅6分、東海道本線、福知山線、東西線が乗り入れ、交通利便性の高さでは関西屈指。その割に家賃相場が割安なのも魅力のひとつといえる。
住みたい理由として「コストパフォーマンスが良い」「物価が安い」「電車やバスでさまざまな場所に行きやすい」「街に賑わいがある」など、交通利便性や物価といった実質的な側面が評価されている。
尼崎市全体では高齢化が進むものの再開発で美しく整備されたJR尼崎駅周辺を中心にマンションの供給が続き、周辺エリアからの流入も多い。
子ども向け施設として最近注目を集めているのが、2022年に「ボートレース尼崎」場内にオープンした関西初のキッズパーク「モーヴィあまがさき」。ボーネルンド社や行政が共同で子ども向けのイベントを開催しており、なかなか予約がとれないほどの人気だという。
市も子育て支援に力を入れており、子どものうちから健康に関心を持つよう11歳と14歳を対象に「尼っこ検診」を実施。定住・転入促進情報発信サイト「AMANISM(アマニスム)」やSNSを使った情報発信など、独自の取り組みで住みやすさをアピールしている。
2024年の「住みたい街ランキング」では、「梅田」が圧倒的に強かった。得点ジャンプアップランキングでも1位となり、人気の高まりは現在進行形だ。
また、「尼崎」や「本町」など、梅田から10分圏内の街も躍進が目立つ。
コロナ禍を抜け出した今、関西圏では都心の利便性と華やぎが一層求められるようになったと思える。
一方、「明石市」のように、市民目線の施策や地道な街づくりにより人口を増やしている自治体もある。
うめきたエリアの再開発などで都心部が今後さらに整備されていく中、人々が「住みたい」と思う街がどう変化していくか、注目していきたい。
●関連サイト
・SUUMOリサーチセンター「SUUMO住みたい街ランキング2024 関西版」プレスリリース
リクルートは関西圏(大阪府・兵庫県・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県)に居住している20歳〜49歳の4600人を対象に実施した「SUUMO住みたい街ランキング2024年関西版」を発表した。
どのような街がランクインしたか、結果と併せて街の魅力を探ってみた。
1位は大都心部「梅田」、2位は阪神間の人気の街「西宮北口」、3位は神戸市の玄関口「神戸三宮」だった。
トップ3は2022年から3年連続で同じ位置をキープしたが、今年際立ったのが1位の「梅田」の強さだ。2位の「西宮北口」と約300点もの差をつけており、「得点がジャンプアップした街ランキング」でも昨年から100点以上も得点を伸ばして1位に。
「梅田」の人気の高まりがはっきりと結果に出た。
「梅田」の人気の背景には、西日本最大のターミナル「JR大阪駅」北側の再開発「うめきた」による街の発展がある。「グランフロント大阪」が誕生した1期開発に続いて「うめきた2期(グラングリーン大阪)」が進行しており、今年9月には一部先行街開きをする予定だ。
グランフロント大阪(写真/PIXTA)
中でも特に期待が寄せられるのが、大阪駅と直結する都市公園「うめきた公園」の誕生だろう。関西最大のビッグターミナルであるJR大阪駅前に、広大な芝生広場や、美しい曲線を描く大屋根のイベントスペースを設けた巨大公園が姿を現す。周辺にはホテルやオフィスビル、タワーマンションなども続々開業するという、心躍らされる都市プランだ。
住みたい理由としてあげられる街の魅力は、働く場にとどまらない街のにぎわい、文化娯楽施設の充実などだ。
「梅田」を「西宮北口」と年代別で比較すると、20代の支持率が突出して高いのもうなずける。
ビジネスや商業のイメージが強い「梅田」だが、うめきたエリア再開発の波及効果や福島方面や中津方面の再開発により住宅供給が増加。直近10年間でも大阪市北区・福島区で1万5000戸以上の分譲マンションが供給された。
近年、若い人の間で住宅を資産価値として見る層が増えており、住むイメージが希薄だった梅田エリアも、都心居住への憧れの強さに後押しされ、“働き、暮らす街”として魅力を増していると考えられる。
同時にアンケートをとった「穴場だと思う街(駅)」でも「梅田」が昨年の2位から1位に上昇した。
「梅田」と「穴場」のイメージがマッチしない印象だが、ハイブランドの店舗から昔ながらの飲食街まで多様な顔があることが、“住む街としても見逃せない”という穴場感につながっているのかも。
ほかにも得点を上げた街を見てみたい。
「江坂」は昨年の11位から8位にランクインした(310点→342点)。
「江坂」は大阪中心部のオフィス街に直結する大阪メトロ御堂筋線にあり、新幹線停車駅「新大阪」や「梅田」「淀屋橋」に乗り換えなしで行ける。
また、阪急京都線「烏丸」は昨年の15位から12位に(238点→270点)、「本町」は18位から13位(216点→256点)に大きく順位を上げている。
それぞれ京都市、大阪市の中心エリアにあり、商業施設やオフィスが集まる華やかな街だ。
これらの結果を見ても、都心への交通アクセスの良さや商業施設の充実など、利便性の高い街に人気が集まっていることがわかる。
アンケートでは「住みたい自治体」についても尋ねた。
1位は「西宮市」。以下「大阪市北区」、「明石市」、「大阪市天王寺区」、「大阪市中央区」と続いた。
「住みたい街ランキング」でトップ2だった街の自治体「西宮市」「大阪市北区」がやはり1位、2位を獲得した。
1位から5位までが昨年と同じ順位だが、昨年との得点差を見ると「大阪市北区」が130点(997点→1127点)と、他の自治体に比べて突出して大きい。
一方、手厚い子育て施策で注目を集める「明石市」は今年も3位をキープし、依然として高い支持を得ている。
「梅田」が利便性や都心への憧れ、資産価値の高さを背景にしているのに対し、「明石市」は市民目線のサービスで注目を集めた。
「明石市」の街の魅力項目には「子育てに関する自治体のサービスが充実している」だけでなく、「介護や高齢者向けのサービスが充実している」「公共施設が充実している(図書館、コミュニティセンター、公民館など)」など、子育て以外の自治体の施策や生活環境の充実も挙げられる。
明石駅前。大規模商業施設だけでなく、近くに公共施設や商店街がある(画像提供/明石市役所)
明石駅前。大規模商業施設だけでなく、近くに公共施設や商店街がある(画像提供/明石市役所)
年代・ライフステージでは、夫婦+子ども世帯の支持(2位)だけでなく、夫婦のみ世帯(3位)、女性20代・30代(2位)、男性20代・30代(5位)と子育てファミリー以外のさまざまな層からも高く注目されている。
また、「メディアによく取り上げられて有名」という声も多く、自治体の発信力も地元以外でも住みたいと思う人が増える要因になっているようだ。
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子育て支援の“東西横綱”千葉県流山市と兵庫県明石市、「住みたい街ランキング」大躍進の裏にスゴい取り組み
本町の風景(写真/PIXTA)
「本町」は住みたい街ランキングで昨年の18位から13位へとランクアップ。得点ジャンプアップした街ランキングでも40点も得点を伸ばし3位となった。
「本町」のある「大阪市中央区」は自治体総合ランキングで6位となり、特に男性40代、シングル男性、シングル女性では3位の高順位に。
街の魅力として「魅力的な働く場」や「雰囲気やセンスのいい飲食店やお店」などがあり、最先端のおしゃれな街という印象で捉えられていることが分かる。
大阪市中央区は2府4県の中でも人口増加率、15歳未満の人口増加率がともにナンバー1。小学校の児童数も10年前の3000人未満から4000人に届きそうな数に。本町駅周辺は中央区・西区ともに小型の分譲マンション供給が続いており、この5年間で中央区だけで約6000戸以上増えたことが人口増の要因となっている。
1975年の万博開催年に建てられた「船場センタービル」はコロナ禍の中、2021年から土日の営業を開始。地域住民が増えていることで飲食店などがにぎわいを見せている。
JR尼崎駅前の様子(写真/PIXTA)
「尼崎市」は「住みたい自治体」総合順位で過去最高位の19位にランクイン。特にシングル男性で8位に食い込み、夫婦のみの世帯も16位と高支持を得た。ファミリーよりもシングルやカップルからの支持が厚い傾向が見られる。
JR「尼崎」駅は「住みたい街ランキング」では31位だが、「得点がジャンプアップした街」では9位に躍進を遂げた。
JR尼崎駅は大阪駅まで新快速で1駅6分、東海道本線、福知山線、東西線が乗り入れ、交通利便性の高さでは関西屈指。その割に家賃相場が割安なのも魅力のひとつといえる。
住みたい理由として「コストパフォーマンスが良い」「物価が安い」「電車やバスでさまざまな場所に行きやすい」「街に賑わいがある」など、交通利便性や物価といった実質的な側面が評価されている。
尼崎市全体では高齢化が進むものの再開発で美しく整備されたJR尼崎駅周辺を中心にマンションの供給が続き、周辺エリアからの流入も多い。
子ども向け施設として最近注目を集めているのが、2022年に「ボートレース尼崎」場内にオープンした関西初のキッズパーク「モーヴィあまがさき」。ボーネルンド社や行政が共同で子ども向けのイベントを開催しており、なかなか予約がとれないほどの人気だという。
市も子育て支援に力を入れており、子どものうちから健康に関心を持つよう11歳と14歳を対象に「尼っこ検診」を実施。定住・転入促進情報発信サイト「AMANISM(アマニスム)」やSNSを使った情報発信など、独自の取り組みで住みやすさをアピールしている。
2024年の「住みたい街ランキング」では、「梅田」が圧倒的に強かった。得点ジャンプアップランキングでも1位となり、人気の高まりは現在進行形だ。
また、「尼崎」や「本町」など、梅田から10分圏内の街も躍進が目立つ。
コロナ禍を抜け出した今、関西圏では都心の利便性と華やぎが一層求められるようになったと思える。
一方、「明石市」のように、市民目線の施策や地道な街づくりにより人口を増やしている自治体もある。
うめきたエリアの再開発などで都心部が今後さらに整備されていく中、人々が「住みたい」と思う街がどう変化していくか、注目していきたい。
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・SUUMOリサーチセンター「SUUMO住みたい街ランキング2024 関西版」プレスリリース
日本には、病気やケガなどで脚部や上肢・胴体の一部を使わずに生活する方が約193万1000人(2016年 厚生労働省 生活のしづらさなどに関する調査)いますが、生活にはどんな不便があり、住宅にはどんなことが求められるのでしょう。マンションをリノベーションし、自分たちらしい住まいを手に入れた30代の夫妻の事例を通して、「バリアフリー住宅×リノベーション」の可能性に迫ります。
「賃貸住宅は自分にとって不便だらけ」。Nさん夫妻がリノベーションを決めた理由高校時代に事故にあい、車椅子生活になったNさんは、これまで進学・就職・結婚と人生の節目節目で引越しをし、4つの賃貸住宅に住んできました。そこでは、たくさんの不便があったと言います。
「とくに使いにくかったのは水まわりです。洗面やキッチンはシンク下収納棚が設置されているものがほとんどで、車椅子を横づけして体を捻りながら使っていました。車椅子で動き回るのに十分な広さがないため、トイレや浴室のドアは物件によってはオーナーに断りを入れて取り外す必要がありましたし、床との段差が大きい浴槽に関しては、横に台を置けば入浴できる物件はあったものの、その対策が取れず、湯船に漬かるのを諦めていた物件もありました」(Nさん)
Nさんご夫妻(写真撮影/桑田瑞穂)
2020年に結婚をし、ひとり暮らし用のワンルームから妻と2人で住める部屋に越してきましたが、車椅子を乗り入れる分、一般的な住宅だと玄関もキッチンも洗面室も窮屈。かといって設備や広さが理想的な物件は、手が出ないほど家賃が高額でした。
賃貸住宅では限界があるということを痛感した2人は、持ち家をリノベーションした方が金銭的にも得策だと考え、自分たちらしいバリアフリー住宅をつくることを決意します。
さっそく、物件探しをはじめたNさんご夫妻ですが、そこでは大前提の条件がありました。都心の企業で会社員をしているNさんは、コロナ禍以降、月半分がリモートワークになったものの、残りはマイカー通勤。プライベートでは、電車で出かけることもあります。部屋をスケルトンにした状態からリノベーションすれば、中身はいくらでも変えられますが、周辺環境はそうはいきません。それだけに、「駅から物件までの道筋がフラットであること」「車椅子で乗り降りができる『平置き駐車場』があること」「建物のエントランスがスロープつきであること」が不可欠。ようやく3LDK・約87平米のマンションに出合います。
リノベ会社は「細かい要望にも寄り添ってくれる」と感じたゼロリノベに依頼。事前に希望を書き出して共有したほか、打ち合わせでは、設計担当の前川香織さんに車椅子で日常の動作を再現して見せ、2人にとっての暮らしやすさを確実に落とし込んでもらえるようにしたと言います。
N邸の平面図(画像提供/ゼロリノベ)
2人にとっての快適な形を追求し、ストレスのない生活を実現そうして2022年4月に完成したN邸。1歩中に入ってまず気がつくのは玄関です。ここでは上がり框(あがりかまち)のほかに、車椅子用のスロープを設置。妻とNさんとで二手に出入口を分けることで、2人が一緒に外出・帰宅をしたときに生じがちな混雑を避けられるようにしました。
以前は車椅子に占領されていた玄関が、開放的な空間に。妻は右手の上がり框を、Nさんは左手のスロープを使います(写真撮影/桑田瑞穂)
玄関には傷がつきにくい石材調のコンポジションタイルを使用。Nさんは車椅子を屋外用と室内用とで2台、所有していますが、専用のスペースがあるためラクに乗りかえられます(写真撮影/桑田瑞穂)
玄関隣には、物干し場を兼ねたウォークインクローゼット。そのまま洗濯機置き場・脱衣室・洗面室・廊下・LDKへと抜けられるため、生活動線としてはもちろん、家事動線としてもスムーズです。
左の白いカーテンの奥がウォークインクローゼット。ぐるりと洗面室に回り、ブルーの壁の出入口から廊下に抜けられます(写真撮影/桑田瑞穂)
ウォークインクローゼットは物干し場を兼ねており、隣の部屋に洗濯機があるため、サッと洗濯物を干し、ハンガーに掛けたまま収納することが可能。バーの高さも計算されていて、上は妻、下はNさんが使用中(写真撮影/桑田瑞穂)
「どの部屋も車椅子が通れる幅でつくってもらっていますが、とりわけ車椅子でUターンや旋回できることが大切でした。そのため、キッチンと洗面室のカウンターは、下部に収納をつくらず開放しています」(Nさん)
カウンター下が開放されたキッチン。料理は主に妻が、洗いものはNさんが担当。換気扇のスイッチはコンロ下に設置しています(写真撮影/桑田瑞穂)
洗面室は幅・奥行きともに余裕を持たせ、鏡も大きくして2人が並んで使えるように。カウンター下が開放されているので、膝を入れてシンクに正面から身体を近づけたりUターンしたり、のびのびと使えます(写真撮影/桑田瑞穂)
さらなるポイントは、扉をなくしたことにあると言います。
「賃貸住宅では、戸棚や部屋に扉があることも問題でした。横にスライドさせる引き戸であればよいですが、ドアだと押したり引いたり、体を屈ませたり。無駄な動きが出るうえ、開く側のスペースにゆとりが必要です。そこでトイレと浴室以外は扉をなくしてオープンに。妨げが解消され、一気にストレスがなくなりました」(Nさん)
N邸は扉がない分、行き来がスムーズ。どこにいても互いの気配を感じられます。げた箱は、以前は扉があるため取り出しにくく、履く靴が限定されていたそう。「扉をなくした分、コストが浮きましたし、しまい込むと持っていることを忘れがちですが、そうはなりません。片づける動機にもなります(笑)」(Nさん)(写真撮影/桑田瑞穂)
廊下沿いには2人で使えるワークスペースが。ここでも机の下を開放しているため、アクセスがよくスムーズに方向転換ができます(写真撮影/桑田瑞穂)
間仕切り壁を一枚だけ立てただけの、開放感あふれる寝室。あえて日の当たる場所に配置し、生活に溶け込ませました(写真撮影/桑田瑞穂)
収納はすべてオープン棚にしているN邸ですが、これは妻にとってもメリット。食器などが取り出しやすいうえ、飾って見せる楽しみが増えたとか。ほかにも車椅子のための仕様が、妻にも役立つシーンがあると言います。
「わが家では車椅子でも高さ約37cmの窓からバルコニーに出られるよう、ゆるく勾配させたスロープを、玄関から窓辺まで4.5mの長さで設置しています。これがダイニング脇まで伸びているので、重い食材を台車に乗せて帰ってきたときに、すぐに冷蔵庫にしまえて便利。友人が親子で遊びにきたときは、子どもたちの格好の遊び場になっています」(Nさんの妻)
有孔ボードで間仕切りしたスロープは、小さな部屋のようなこもり感。黒板塗装はご夫妻によるDIY(写真撮影/桑田瑞穂)
スロープはNさんが登りやすい角度でつくられたもの。窓の高さに合わせて設置しているため、気軽にバルコニーに出られます(写真撮影/桑田瑞穂)
トイレは実際に設計者に車椅子で動き回る姿を見せて、四方のサイズを緻密に計算。手すりも使いやすい位置を確かめてから取りつけました(写真撮影/桑田瑞穂)
Nさんが段差のある浴槽に入るときは台が必要ですが、市販品は高額。設計者にコスト面でも見合う「TOTOリモデルWYシリーズ」のベンチつきユニットバスを見つけてもらって解決しました(写真撮影/桑田瑞穂)
デザインが取り残された家にはしたくないという2人の強い思い「一般的に福祉用具は、機能性を重視するあまりに見た目が二の次になっているケースが少なくないのではないでしょうか。バリアフリーをうたった賃貸住宅にも、実は同じような物足りなさを感じていました。私たちがリフォームではなく“リノベーション”を選んだのは、住まいを丸ごと好きなテイストにできると思ったのも理由です」(Nさんの妻)
もともと躯体(くたい)に埋め込まれていたインサート(ボルト用の穴)を利用し、天井にルーバーを設置。レールを取りつけ、照明をつるしたりカーテンをつけたりできるようにしました。妻の手づくりブーケが調和しています(写真撮影/桑田瑞穂)
バリアフリー住宅としての実用性を備えているN邸ですが、主張している感じがしないのは、ところどころで採用した趣ある素材や色づかいが、豊かな表情をもたらしているから。デザインにもこだわったことで、極上の居心地を手に入れています。
カフェに行くより、家が一番。リノベーションという選択に大満足以前の住まいではくつろげるスペースが限られており、よく2人でカフェに出かけていたというNさんご夫妻。しかし今では、家が一番、落ち着ける場所。何も予定のない休日に、のんびり起きて遅めの朝食を取ったり、ソファでまったりコーヒーを飲んだりするのが至福の時間です。
冷蔵庫は上部のものを取りやすい「AQUA」シリーズの低めのタイプを購入。ただそれだけだと収納量が足りないため、横に冷凍庫を並べています(写真撮影/桑田瑞穂)
「“バリアフリー住宅”というと、大まかな捉えられ方をされがちなのですが、需要は人によって千差万別。せっかくバリアフリーの賃貸住宅を見つけても合わなかったり、リフォームしてもかゆいところまでは手が届かなかったり。それだけに、リノベーションに大満足。私たちの例が必要としている人に届いたら、こんなにうれしいことはありません」(Nさんご夫妻)
Nさんご夫妻が家づくりでもうひとつ課題にしたのが、住まいに可変性を持たせること。寝室はベッドを3台まで置ける広さにし、リビングは将来、一部をキッズスペースにしたり、客室にしたりできるようにしました。
形を変えながら長く住み続けられる住まいで、これからも家族の物語が紡がれていきます。
大きなバルコニーがあったのも、この物件を購入した理由のひとつ。普段づかいができるよう窓辺にウッドデッキを配置。晴れた日は2人で食事をしたりお酒を飲んだりして楽しみます(写真撮影/桑田瑞穂)
●取材協力
ゼロリノベ
これからの金利の動向が気になる住宅ローンだが、住宅金融支援機構が金融機関に対して、ローンへの取組姿勢などを調査した「住宅ローン貸出動向調査」の最新結果を公表した。金融機関では、住宅ローンについてどんな取り組みをしようと考えているのだろうか?詳しく見ていこう。
【今週の住活トピック】
「2023年度 住宅ローン貸出動向調査」を公表/住宅金融支援機構
住宅金融支援機構の調査に回答したのは、都市銀行・信託銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫などの301機関で、2023年7月~9月に調査を実施した。
新規の住宅ローンへの取組姿勢は、「積極的」という回答が「現状」でも72.1%、「今後」でも同じ72.1%となり、積極的な姿勢に変化はないようだ。積極的に取り組む方策としては、「商品力強化」が63.0%と最多で、2番目の「金利優遇拡充」の41.2%を大きく引き離す形となった。
環境配慮型住宅ローンの取り扱い状況は?近年は、環境意識の高まりやエネルギー価格の高騰で、エネルギーの消費量を抑える住宅への関心が高まっている。加えて、金融機関でも、SDGsなどの時代の要請を受けて、環境配慮型住宅ローンに取り組む姿勢を見せたいところだろう。
今回の調査で、「環境配慮型住宅ローンの取り扱いの有無」を聞いたところ、「取り扱っている」が32.9%、「取り扱いを検討中」が8.3%となり、いずれも前回より増加した。やはり、取り組む金融機関が増えているようだ。
出典/住宅金融支援機構「2023年度 住宅ローン貸出動向調査」
では、どんな「環境配慮型住宅ローン」を提供しているのだろう?
環境配慮型住宅ローンに特に定義はないので、金融機関が同じ名称を使っていても、その内容は金融機関ごとで異なる。調査結果で見ると、「太陽光発電設備、高効率給湯器 、家庭用蓄電池等の省エネ設備を備えた住宅」が75.8%と最多となっている。
出典/住宅金融支援機構「2023年度 住宅ローン貸出動向調査」
住宅で使用するエネルギーを抑えるには、第一に、住宅そのものの断熱性能を高める必要がある。外の暑さ寒さに影響を受けにくいようにするためだ。第二に、エネルギーを大量に消費する給湯器やエアコンなどを省エネ性能が高いものにする必要がある。消費するエネルギーを抑制するためだ。第三に、太陽光発電などでエネルギーを生み出す設備や、発電した電気を蓄える設備を設置する必要がある。住宅で使った電気などを、発電した電気でカバーするためだ。
すべてをそろえて、消費するエネルギーをプラスマイナスゼロ以下にする住宅が、ZEH住宅(=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)だ。すべてをそろえるには費用もかかるので、ハードルが高くなる。また、なかでも高額な設備となるのが、太陽光発電設備だ。
環境配慮型住宅ローンとしては、まず、こうした高額な設備を搭載した住宅を対象に、ローンの優遇をしようという金融機関が多いのが実態のようだ。2番目に多いZEH住宅を対象とするのは、45.5%と半数に満たないが、前回より大幅に増加している。政府がZEH住宅を増やしたいと考えていることを受けてのことだろう。
では、こうした住宅についてどんなローン優遇が受けられるのか?
調査結果を見ると、「金利引き下げ」が90.9%で大半となっている。ZEH住宅や太陽光発電設備・蓄電池などを搭載した住宅、地域木材を利用した住宅、長期優良住宅や低炭素住宅の認定住宅の場合などで、ローンの金利引き下げをする商品が多いということだろう。
具体的な住宅ローンを見ていこう。
例えば、りそな銀行では環境等配慮型住宅向けの特別金利プラン(名称:SX金利プラン)」を提供している。ZEH住宅、太陽光発電設備設置住宅、長期優良住宅、低炭素住宅、国産木材を一定割合以上使用している住宅、安心R住宅と、かなり幅広く対象としている。どの金利タイプを利用するかでも異なるが、原則、適用金利から0.01%引き下げる。
また、千葉銀行では「サステナ住宅応援割!」(2024年9月30日まで)を展開している。ZEH水準(発電設備等が必須ではない)以上の住宅や低炭素住宅・長期優良住宅などに加え、太陽光発電設備搭載の住宅、免震装置付き住宅を対象にしている。優遇については、適用金利から0.05%引き下げのほか、全傷病団信の上乗せ金利を0.2%優遇、または自然災害時支援特約を付帯するための金利上乗せ分を0.1%引き下げの3つから1つを選ぶ形となっている。
滋賀銀行の「スーパー住宅ローン未来よし」では、太陽光発電、蓄電池、エネファームのいずれかを新たに設置する一戸建てに対して、適用金利から0.05%引き下げる。これは、創エネ・畜エネ設備費用(想定金額300万円)の金利負担を実質ゼロにする想定なのだという。また、マンションでは省エネルギー性能表示制度「BELS(ベルス)」で★3つ以上および同等基準を満たすものも対象とする。
ほかにも、名称はさまざまだが、地球環境に配慮した住宅に対する優遇措置を取っている事例が多数ある。
空き家に関連するローンの取り扱い状況は?近年は、空き家の増加が懸念されている。金融機関が、空き家解消のために利用できるローン(空き家関連ローン)を取り扱う事例も増えている。調査結果を見ると、ほぼ半数が取り扱う(「取り扱っている48.8%」「取り扱いを検討中」3.3%)と回答している。
資金使途を具体的に見ると、「空き家解体」が93.9%とかなり多く、次いで「空き家活用(リフォーム)」の44.2%、「空き家活用(取得+リフォーム)」の25.2%となった。
出典/住宅金融支援機構「2023年度 住宅ローン貸出動向調査」
こちらも具体的な事例を見ていこう。
岩手銀行では、「空き家活用・解体ローン」を提供している。空き家を賃貸するための改修や空き家の解体、解体後の土地の造成や各種設備の設置、空き家の防災・防犯対策などに利用できる。借入額は10万円以上1000万円以内、借入期間は6カ月以上10年以内(1カ月単位)、変動金利で2.5%(提携市町村であれば0.5%引き下げ)などとなっている。
住宅ローンについては、最も気になるのが適用される金利だろうが、各金融機関がそれぞれに特徴のあるローンを用意している。その品ぞろえは、時代のニーズによっても変わるので、環境に配慮した住宅などについては、できるだけ多くの情報を集めたうえで選ぶようにしたい。長期間返済するローンであるだけに、後で知らなかったということのないようにしたいものだ。
※ローンの具体事例の内容については、いずれも執筆時時点(2024/3/1)の情報による
●関連サイト
・住宅金融支援機構「2023年度 住宅ローン貸出動向調査」
・りそな銀行「環境等配慮型住宅向けの特別金利プラン(名称:SX金利プラン)」
・千葉銀行「サステナ住宅応援割!」
・滋賀銀行「スーパー住宅ローン未来よし」
・岩手銀行「空き家活用・解体ローン」
熊本県山鹿市にある住宅メーカーLib Work(リブワーク)が、土を主原料とする3Dプリンター住宅のモデルハウスの第1号「Lib Earth House “modelA”」を2024年1月に完成させた。今まで日本で開発されてきた3Dプリンター住宅はコンクリート造のみで、土を原材料とした3Dプリンターの家は国内初となる。2025年には100平米の平屋での一般販売も予定しており、ゆくゆくは火星住宅建築プロジェクトを目指しているのだとか。実物を体感しに、同社の「Lib Work Lab(リブワークラボ)」を訪れた。
国内初、土が主原料の3Dプリンターの家が誕生3Dプリンターモデルハウス 「Lib Earth House “modelA”」の広さは約15平米。斜め格子の模様の入った壁は、上にいくほど模様が薄くなっている。3Dプリンターでデータをコントロールしながら出力することで実現した(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
住宅メーカーLib Work(リブワーク)は、熊本県山鹿市に本社を置き、一戸建ての企画・施工・販売を中心に行っており、福岡・佐賀・大分・千葉・神奈川などでも事業を展開している。住宅の資材調達から完成までに排出される温室効果ガスの量をCO2として数値化し、住戸ごとに可視化する「カーボンフリット」の導入や、断熱材に新聞紙を再利用したセルロースファイバーを標準採用していたり、国産木材の使用比率を98%まで高めるなど、SDGsに対する取り組みも積極的に行っている企業だ。「3Dプリンター住宅の開発もその一環」と代表取締役社長の瀬口 力(せぐち・ちから)さんは話す。
「昔と比べて住宅は性能が上がってきていますが、僕らが子どものころに夢見たような“21世紀の家”というと、なかなか登場しない。そんななか、3Dプリンターを使った家づくりは、住宅業界にイノベーションを起こすものです。住宅業界では今までもCGやVRといったデジタルの活用はされてきましたが、家そのものをつくるということにはデジタル化ができていませんでした。2年前から計画し、今回ようやく完成した約15平米の3Dプリンター住宅のモデルハウスは、建築DXへの小さな一歩です」
3Dプリンターの家の特徴といえば、まずは自由な造形だ。今回のモデルハウスも、人間の手ではつくれない斜め格子の模様の入った円形フォルム。
工期の短縮ができるのもポイントで、今回の土壁は約2週間で完成。ただし、3Dプリンターを24時間フル稼働させれば施工時間は合計72時間で完成するとのことだ。
ほかにも、3Dプリンターが建築を自動で行うため、人件費が少なくてすむというメリットもある。
「ここ熊本においては、熊本地震後の対応と、コロナ禍に一戸建て需要が急増し、大工さんなどの職人不足が深刻でした。今はいったん落ち着いてはいますが、長期的にみると、職人さんの高齢化もあり、10年、20年後には3分の1にまで減ってしまうでしょう。にもかかわらず、有効な施策が出ていない状況です。そのなかで、3Dプリンターは一つの重要な役割になってくるのではないかと期待しています」
今回使用したのは海外製のプリンターで、型枠を使わずに立体成形ができるタイプのもの(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
3Dプリンター出力するための工場(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
主原料の土は日本では昔から親しまれてきた材料で、吸湿性にも優れる。高温多湿な日本の気候風土にもぴったり。写真は3Dプリンターでテスト出力したものを1日乾かしたもの。すでにガチガチに固まっていた(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
そして何より特筆すべきなのは、自然由来の素材を中心に使用していること。今まで国内で登場してきた3Dプリンターの家は、すべてがコンクリートやモルタルを中心に使っているなか、国内初の試みだ。土70%、もみがら、藁、石灰などその他の自然素材と一部セメント(※)を配合し、3Dプリンターで壁を出力している。
※セメントは粘土や石灰岩を粉末にし、水や液剤を混ぜて硬化させたもの。セメントに水と砂を加えるとモルタルになり、さらに砂利を混ぜるとコンクリートになる。
「強度を出すために若干セメントを使用していますが、さらに環境にやさしい再生セメントへの代替を検討しています。ゆくゆくは限りなく比率をゼロに近づけられるよう減らしていきたい」と瀬口さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
なぜ土を主原料にすることにこだわるのか。
その背景には、環境への配慮と、持続可能性を追求したいという思いがある。自然由来の資源なので従来の建築に比べて二酸化炭素の排出量を大幅に抑えることができ、再利用可能なので廃棄物も最小限に抑えることができる等のメリットがあるが、耐震性・耐久性については「正直なところ、現在も試行錯誤を続けている」とのこと。
「主原料をコンクリートやモルタルにすれば、耐震性・耐久性は担保しやすい。それでも、今まで住宅業界で建築時や解体時の二酸化炭素の排出が課題になってきたなか、脱炭素社会を目指す今後の家づくりでそこを追求しないのは本末転倒。3Dプリンター住宅への挑戦の意味はそこにもある。今回、世界中をまわって見つけた方法を採用しています」
今回のプロジェクトは、ロンドンに本社を構え、設計者、アドバイザー、専門家を有し、世界140カ国で持続可能な開発プロジェクトに携わってきたエンジニアリング・コンサルティング会社Arup(アラップ)と協力して行っている。3Dプリンター住宅の開発はヨーロッパが先進だが、今回のプロジェクトにあたっては同社とともに、現地視察や研究を進めてきた。
ちなみに自然素材を活用した3Dプリンターの家といえば、2019年にSUUMOジャーナルでも紹介した、イタリアで3Dプリンターの開発販売を手掛ける企業WASP社による、通称ライス・ハウス(米の家)「GAIA」がある。建築現場で手配できる土などの原料は、加工費や運搬費がかからず、紹介当時で材料費はたったの900ユーロ(約10万円)だった。
「Lib Earth House “modelA”」も同様のメリットが想定される。価格については、現状では上記の耐久性・耐震性の経過観察の問題から「現状では価格設定が行えない」段階とのことだが、日本の住宅業界がどう変わっていくのか楽しみになる話だ。
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コスト、工期、環境配慮などの面においてメリットがあることは理解した。そこで気になるのは住み心地。耐震性・耐久性に課題はあるとしつつ、2025年には一般発売もされるとのことで、今後はどうなっていくのだろうか。
「現段階では、正直なところ、パーフェクトとは言えない。耐震性・耐久性、耐水性、断熱性については 、今後時間をかけてこのモデルハウスでモニタリングを行っていきます」(瀬口さん)
建築確認申請が必要なエリア外で建築したため申請は行っていないが、「建築基準法の条件はクリアしている」とのこと。基礎部分は従来の住宅と同様に行っている(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
「耐震性能は等級3(最も高い耐震性能)が目標ですが、まずは1(※)を取得します。シミュレーション上は耐震性能に問題がなく、今回のモデルハウスは建築確認が不要エリアで確認は行っていませんが、今後は他のエリア進出にあたってクリアにしていかなければならないところです。壁くずれや耐水性についても何度もシミュレーションを行い、すべて問題ないという判断をしていますが、まだ他の季節を経験していませんから、季節の寒暖差などによる変化などはきちんと見ていきたいです」
※耐震等級:建物の地震に対する強さの評価基準は耐震等級1~3の3段階あり、等級1は数百年に一度程度の地震(震度6強から7程度)に対しても倒壊や崩壊しないとされているが、倒壊の可能性はゼロではない
屋根の施工中の様子。現時点では屋根はシート防水(樹脂製)を施しているが、今後は屋根も3Dプリンターで出力することを検討している。屋根上に太陽光パネルを載せる計画もある(写真提供/Lib Work)
壁の表面にはヒビ割れがあったが、「強度には問題がない」とのこと。今後は塗装などで対応を検討していく(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
3Dプリンターで出力した土壁のほかに、ドア部分や柱などに木材(集成材による門型フレーム)を使用。ここにも自然素材にこだわり、住み心地のよさを追求している(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
組み立て図(画像提供/Lib Work)
窓には断熱性が高いとされる木製サッシを使用(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
玄関ドアは顔認証で管理(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
断熱については、壁の間に3Dプリンターでの出力時に空洞をつくり、そこに2種類の断熱材をそれぞれ入れた箇所と、あえて空洞のままにした箇所をつくり、季節ごとの室内温度のモニタリングを行う。1種類は住宅の断熱材としておなじみの、新聞紙などを主原料にしたセルロースファイバー。もう1種類は自然素材であるもみがらだ。
取材当日の気温14度(曇り)と少しだけ肌寒いくらいだったが、「実験段階」とは言いつつ、暖房なしでも入った瞬間に明らかに暖かさを感じた(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
断熱材は、3Dプリンター印刷時につくった空洞部分に入る(写真提供/Lib Work)
2025年には100平米の一般住宅を販売予定。ゆくゆくは宇宙進出も!2024年内にはLDK・トイレ・バス・居室などを設けた広さ100平米の3Dプリンターモデルハウス(平屋)を完成させ、2025年には一般販売を目指している。今回完成したモデルハウス同様の15平米のものも一般発売を予定していて、グランピング施設やサウナ施設などに使うことを想定しているという。
ハウスメーカーや工務店とフランチャイズでの全国展開も視野に入れているといい、共同で地域ごとの土の違いや、地域特有の気候を考慮した研究も進めていきたいとのこと。
「今回のモデルハウスでは、実験検証がしやすい淡路島産のものを使用していますが、今後はその地域ごとの土にあわせて素材を開発していくのが目標です」(瀬口さん)
そして、最終的には「3Dプリンターによる火星住宅建築プロジェクト」を目標に掲げている。
「火星現場にある素材を使うことで、地球からの資源の運搬を最小限にとどめられるため、大幅なコスト削減を見込めます。また、プログラミングされたロボットによる施工もでき、短期間での施工も期待できます。なにより、宇宙規模でサステナブルな開発が進められるのがメリットです」と意気込む。
「3Dプリンターによる火星住宅建築プロジェクト」イメージ(写真提供/Lib Work)
3Dプリンター住宅の一般向け発売については、日本国内でも数年以内に実現されるだろうとすでに話題になっている。そのなかで、自然素材を使ったもの、さらに100平米は前代未聞。まだ経過観察段階ではあるが、日本でも昔からなじみのある土壁による住宅が、高い耐震性と断熱性能をもって未来の家として登場するのであれば、とても感慨深い。
また、今回は工場で出力したものを建築現場で組み立てる工法を採用しているが、技術的には3Dプリンターの機器を現地に持ち込み、現地調達できる自然の材料で家が建てられる点も見逃せない点だ。災害時に仮設住宅として活用したり、木材などの建材を確保するのが難しい地域などでも住宅の建築ができるようになる。宇宙進出よりも近い未来であっても、3Dプリンター技術が住宅業界にもたらす数々の可能性に心躍らずにはいられない。
●取材協力
Lib Work
全国のなかでも群を抜いて人口が多い東京都。多少の増減はありつつも増加傾向が続き、総務省によると2023年の1年間で東京都への転入者数は転出者数を約6万8000人も上回っていたそう。そんなニーズの高さも反映し、東京23区内の住宅価格は他地域に比べて高め。利便性のよさや仕事の都合から都内に住みたい、でも費用はなるべく抑えたい……と考える人も多いだろう。そこで今回は、東京23区内に位置する駅から徒歩15分圏内にある、中古マンションの価格相場を調査。シングル向け(専有面積20平米以上~50平米未満)とカップル・ファミリー向け(専有面積50平米以上~80平米未満)、それぞれの中古マンションの価格相場が安い駅ランキングをご紹介しよう。
東京23区内の中古マンション価格相場が安い駅ランキング【シングル向け/TOP18(24駅)】
順位 駅名 価格相場(主な路線/駅の所在地)
1位 千鳥町 2980万円(東急池上線/大田区)
1位 方南町 2980万円(東京メトロ丸ノ内線/杉並区)
3位 武蔵新田 2989.5万円(東急多摩川線/大田区)
4位 池上 2990万円(東急池上線/大田区)
4位 西馬込 2990万円(都営浅草線/大田区)
6位 成増 3039.5万円(東武東上線/板橋区)
7位 地下鉄成増 3080万円(東京メトロ有楽町線/板橋区)
8位 板橋区役所前 3180万円(都営三田線/板橋区)
9位 大山 3280万円(東武東上線/板橋区)
10位 両国 3310万円(JR総武線/墨田区)
11位 新井薬師前 3330万円(西武新宿線/中野区)
12位 練馬 3340万円(西武池袋線/練馬区)
13位 八幡山 3380万円(京王線/杉並区)
13位 三ノ輪橋 3380万円(都電荒川線/荒川区)
15位 南千住 3430万円(JR常磐線/荒川区)
16位 東十条 3435万円(JR京浜東北線/北区)
17位 三ノ輪 3440万円(東京メトロ日比谷線/台東区)
18位 赤羽 3480万円(JR京浜東北線/北区)
18位 板橋本町 3480万円(都営三田線/板橋区)
18位 王子 3480万円(JR京浜東北線/北区)
18位 落合南長崎 3480万円(都営大江戸線/新宿区)
18位 十条 3480万円(JR埼京線/北区)
18位 三河島 3480万円(JR常磐線/荒川区)
18位 雑司が谷 3480万円(東京メトロ副都心線/豊島区)
※25位~50位は記事末に記載
【カップル・ファミリー向け/TOP20】
順位 駅名 価格相場(主な路線/駅の所在地)
1位 谷在家 3024.5万円(日暮里・舎人ライナー/足立区)
2位 京成高砂 3180万円(京成本線/葛飾区)
3位 竹ノ塚 3220万円(東武伊勢崎線/足立区)
4位 柴又 3280万円(京成金町線/葛飾区)
5位 青井 3285万円(つくばエクスプレス/足立区)
6位 新柴又 3340万円(北総線/葛飾区)
7位 北綾瀬 3380万円(東京メトロ千代田線/足立区)
7位 西新井大師西 3380万円(日暮里・舎人ライナー/足立区)
9位 お花茶屋 3394.5万円(京成本線/葛飾区)
10位 見沼代親水公園 3398万円(日暮里・舎人ライナー/足立区)
11位 舎人 3423.5万円(日暮里・舎人ライナー/足立区)
12位 大師前 3480万円(東武大師線/足立区)
12位 堀切菖蒲園 3480万円(京成本線/葛飾区)
12位 六町 3480万円(つくばエクスプレス/足立区)
15位 四ツ木 3499万円(京成押上線/葛飾区)
16位 京成立石 3499.5万円(京成押上線/葛飾区)
17位 五反野 3580万円(東武伊勢崎線/足立区)
18位 小菅 3650万円(東武伊勢崎線/足立区)
19位 扇大橋 3700万円(日暮里・舎人ライナー/足立区)
20位 綾瀬 3739.5万円(東京メトロ千代田線/足立区)
※21位~48位は記事末に記載
「シングル向け(専有面積20平米以上~50平米未満)」のランキング1位には、価格相場が2980万円の2駅がランクイン。東急池上線・千鳥町駅と東京メトロ丸ノ内線・方南町駅だ。千鳥町駅は23区南端の大田区、方南町駅は23区西端の杉並区に位置している。
千鳥町駅(写真/PIXTA)
まずは千鳥町駅の様子から見てみよう。住宅街にある駅周辺は、落ち着いた雰囲気。スーパーやコンビニ、ファストフード店や居酒屋などの飲食店のほか、ベーカリーや精肉店などの個人商店、さらにポップコーン専門店があるのも気になるところ。駅前の通りを西に5分ほど歩くと環八通り、東へ8分ほど歩くと国道1号・第二京浜にぶつかり、そうした大通り沿いにはホームセンターやファミレスなども立っている。千鳥町駅から環八通りを越えつつ西へ8分ほど歩くと東急多摩川線・下丸子駅があり、行き先に応じて2路線を使い分けられるのは便利だろう。千鳥町駅から東急池上線に乗ると、JR京浜東北線が通る蒲田駅まで約7分。JR山手線や都営浅草線が通る五反田駅までは、約20分で行くことができる。ちなみに蒲田方面に進んで1駅目の池上駅は、価格相場2990万円で4位にランクインしている。
方南町駅前(写真/PIXTA)
同じく1位になった方南町駅は、中野坂上駅で二股にわかれる東京メトロ丸ノ内線の分岐線の終着駅。丸ノ内線沿線の新宿駅や東京駅、池袋駅に1本で行けるのはもちろん、始発駅のため混雑する朝でも座りやすいのも魅力だ。駅出口近くの方南通りと環七通り沿いには商店も充実。スーパーやドラッグストアにホームセンターなどの大型店舗のほか、青果店や精肉店、ベーカリーも元気に営業している。ファミレスやファストフード店、ラーメン店など気軽に利用できる飲食店も多彩にあるので、自炊をしない人も気分に応じて食事ができるだろう。クラフトビール醸造所や、古びた一軒家を活用したお化け屋敷など個性的な施設もあるので、休日の街歩きも楽しそうだ。
武蔵新田駅前の様子(写真/PIXTA)
3位は東急多摩川線・武蔵新田駅で価格相場は2989万5000円。1位の千鳥町駅と同じ大田区にあり、両駅間は歩いて10分弱という近さだ。駅周辺の環境も似ているが武蔵新田駅のほうが環八通りに近く、駅周辺のスーパーや飲食店は千鳥町駅周辺以上に豊富かもしれない。駅から南へ15分ほど歩くと、多摩川の河川敷へ。対岸の神奈川県川崎市側を眺めつつ、春の桜並木も美しい河川敷をのんびり散策するのもいいだろう。駅から東急多摩川線に乗ると、蒲田駅までは約5分。蒲田とは反対方面の終点・多摩川駅までは約8分で、そこから東急目黒線と東急東横線に乗り換えることができる。
前出の池上駅と並んで4位になった、都営浅草線・西馬込駅も大田区に位置。トップ4の5駅のうち4駅が大田区からランクインしたわけだ。価格相場2990万円の4位・西馬込駅は地下鉄駅で、3カ所ある地上出入口はいずれも国道1号・第二京浜沿いにある。その大通り沿いにスーパーやドラッグストアがあるほか、国道から東西に延びる脇道に入った住宅地にも飲食店や和菓子店、ベーカリーなどがぽつぽつと立ち並ぶのどかな商店街が続く。駅から南へ13分ほど歩くと、現存するものでは関東最古の五重塔がそびえる「池上本門寺」が佇んでいる。隣接地には緑豊かな「本門寺公園」が広がっているので、息抜きに訪れたい。
6位~18位の19駅を見てみると、いずれも埼玉県に隣接する板橋区と北区の駅が最多タイとなる4駅ずつランクインしている。1位~4位に4駅並んだ大田区は神奈川県に隣接することを考えると、23区内で費用を抑えつつ一人暮らし向け物件を見つけたいなら、都県境に接する区にある駅をチェックするとよさそうだ。
「カップル・ファミリー向け」はトップ20のうち13駅が足立区という結果に「カップル・ファミリー向け(専有面積50平米以上~80平米未満)」ランキングの1位は、日暮里・舎人(にっぽり・とねり)ライナーの谷在家(やざいけ)駅で価格相場は3024万5000円。日暮里・舎人ライナーは全13駅・総延長9.7kmの比較的、短い路線だが、トップ20には谷在家駅に隣接する西新井大師西駅(7位・価格相場3380万円)をはじめ全5駅がランクイン。リーズナブルな物件探しの際は、要チェックの路線だろう。
谷在家駅(写真/PIXTA)
都立 舎人公園(写真/PIXTA)
さて、1位・谷在家駅は足立区に位置しており、駅西側には12棟からなる都営谷在家アパートが立っている。この集合住宅は建築から50年を超えているため、建て替え工事計画が進行中。新たな建物が完成した際には街が活気づきそうだ。現在の駅周辺も多くの人が住む住宅地で、徒歩約15分圏内に複数のスーパーやドラッグストアが点在している。駅から北へ歩いて10分ほど、1駅隣の舎人公園駅前には敷地面積約65ヘクタールの「都立 舎人公園」が広がり、豊かな緑や大きな池に囲まれて気軽に自然に親しめる環境だ。
京成高砂駅(写真/PIXTA)
続く2位には葛飾区の京成本線・京成高砂駅が、価格相場3180万円でランクイン。京成金町線と京成成田空港線、北総線も乗り入れるターミナル駅であり、京成高砂駅から京成金町線に乗って1駅目が4位の柴又駅(価格相場3280万円)、北総線に乗って1駅目が6位の新柴又駅(価格相場3340万円)という位置関係だ。京成線はさまざまな路線との直通運転もされているため、京成高砂駅から日暮里・上野方面に向かえるのはもちろん、日本橋駅や新橋駅といった都営浅草線内の各駅、京急線内の品川駅や羽田空港第1・第2ターミナル駅までも、乗り換えることなく1本で行くことが可能。京成成田空港線の特急に乗れば、京成高砂駅から成田空港駅(成田第1ターミナル)まで約41分で行けるのも便利だろう。
そんな京成高砂駅の周辺には、駅前のイトーヨーカドーをはじめ複数のスーパーやドラッグストア、食品系の個人商店が点在し、買い物には困らない環境。飲食店が多いのも特徴で、日常使いしたい食堂や行列のできるラーメン店、親子3代で続けてきた中国料理店などバラエティー豊か。休日ごとにいろんなお店を訪れるのも楽しそうだ。
竹ノ塚駅周辺の様子(写真/PIXTA)
3位は東武伊勢崎線・竹ノ塚駅で、価格相場は3220万円。1位と同じ足立区に位置しており、両駅間は直線距離だと2kmほどと割と近い立地だ。竹ノ塚駅周辺はかつて「開かずの踏切」による交通渋滞が問題視されていたが10年ほど前から高架化工事が進められ、ついに2022年3月から上下線ともに高架橋上での運行が開始して踏切も廃止に。駅舎も新しくなり、利便性がアップした。線路をはさんだ街の東西の分断も高架化により解消された駅周辺には商店街が広がり、スーパーやファストフード店などの飲食店のほか、青果店や鮮魚店、豆腐店などもあって地元の人々でにぎわっている。また、現在は駅の高架下スペースの開発が進行中。2024年度上期には、飲食店や物販店など約25店舗からなるアーケード商店街が誕生する予定なので、楽しみに待ちたい。
さて、トップ20の駅の所在地を見てみると13駅が足立区、7駅が葛飾区。なんとランクインしたのは足立区または葛飾区にある駅のみという結果に! 最も多くの駅がランクインした足立区は、子育て支援に力を入れていることでも注目を集めている自治体だ。妊娠期から出産・子育て期まで切れ目のない支援を行う「あだちスマイルママ&エンジェルプロジェクト」という独自の支援制度があったり、3歳までの子どもとその保護者が利用できる「子育てサロン」が地域の拠点や商業施設内、児童館に計65カ所もあったりと、安心して子どもが育てられる環境を整備している。子どものいるファミリーが住まい探しをする際は、こうした自治体の取り組みも考えあわせて、どの物件にするかを決めると新居での生活がより充実しそうだ。
●21位以降のランキング
【シングル向け】
【カップル・ファミリー向け】
●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている東京23区内の駅(掲載物件が20件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】
駅徒歩15分圏内、物件価格相場3億円以下、築年数40年未満、敷地権利は所有権のみ
シングル向け:専有面積20平米以上50平米未満
カップル・ファミリー向け:専有面積50平米以上80平米未満
【データ抽出期間】2023/7~2023/12
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
シャッター街になりつつあった宮城県栗原市にある「六日町通り商店街」。しかし2016年ごろから、自治体や商店会、地域おこし協力隊らが連携し、移住者が開業しやすい環境づくりに努めてきた。その結果、個性的なお店が約20店舗オープンし、若手中心にイベントなどを企画、人が集まりにぎわいが生まれ注目されている。その「六日町通り商店街」再生の取り組みと現状を紹介する。
移住・定住を進める栗原市定住戦略室の取り組みと支援制度宮城県北部にある栗原市は、人口6万3143人(2023年1月末時点)、地方への移住をテーマにした情報誌『「田舎暮らしの本』(宝島社)の2024年版「住みたい田舎ベストランキング」で、人口5万人以上10万人未満の市を対象にした全国の総合部門で1位になったまち。
栗原市企画部定住戦略室は、栗原市への移住・定住を希望する人に情報を提供し、相談に対応する総合的な窓口として、2013年7月に開設された。
「栗原市の移住者の数は2013年ごろから右肩上がりで伸びていましたが、新型コロナウイルス感染症が蔓延してからは対面の接触やイベントができないことで、かなり減ってしまいました。2023年になってようやく制限が緩和され、イベントも増やし、対面の相談や窓口にいらっしゃる方は多くなってきました」と話すのは、栗原市企画部定住戦略室の小関さん。
栗原市企画部定住戦略室の小関さん(写真撮影/難波明彦)
栗原市企画部定住戦略室は、首都圏からの移住相談、移住者の住まいや仕事の支援、子育てなどのサポートも整えている。
「『空き家バンク制度』といって、空き家の物件を移住検討者の方が購入できるよう、空き家の所有者と利用希望者をマッチングできる体制をつくっています(※)。希望があれば『お試し移住体験住宅』に宿泊し、暮らしを体験することもできます」(小関さん)
※栗原市は紹介のみで、交渉や契約は当事者間で行い、栗原市は関与しない(条件や補助金額など詳細はホームページ参照)
栗原市では、『お試し移住体験住宅』滞在中には、相談者の要望に応じて、移住して起業した人や希望職種に就いている人などを紹介したり、可能なアクティビティを紹介するオーダーメイド型アテンドや体験型プログラムも用意。また、空き家リフォームの助成制度や、若者、新婚生活を始める人の住まいに関する費用を助成し、若年層への支援にも取り組んでいる。また、移住検討者と移住者の交流会やイベントなども積極的に取り組んでいる。
地域おこし協力隊、移住定住コーディネーターらが道を拡げた地方のシャッター商店街の増加が問題になる中、六日町通り商店街は、仙台圏や首都圏から移住して新規開業した店舗が2015年以降8年間で20店舗ほどと活況だ。中小企業庁が選定する「はばたく商店街30選 2021」にも選ばれた。
特筆すべきは、「移住者が開業しやすいまちづくり」をしている点だ。どのようにして、六日町通り商店街は復活を遂げたのだろう。
最初に六日町通り商店街を盛り上げたキーパーソンは、『cafe かいめんこや』の杉浦風ノ介(すぎうら かぜのすけ) さん。京都府京都市から栗原市に移住後、六日町通り商店街に明治中頃からあった建物を改装して2015年に『cafe かいめんこや』をオープン。
かいめんこや 外観(画像提供/杉浦風ノ介さん)
「六日町通りには、街の人が話をしたり、相談したりできる場所がなく、ハブになるような場所が必要だと思い、カフェを開きました」と話す。オープン後、少しずつカフェに集う人が増えてコミュニティの場になり、人がまばらだった商店街に変化が生まれた。
2023年4月には、同店の向かいに珈琲豆の焙煎と販売を行う『ムヨカ珈琲ロースタリー』を開業した、オーナーの杉浦風ノ介さん (画像提供/杉浦風ノ介さん)
杉浦さんは、移住定住コーディネーターとして、栗原市の定住戦略室から紹介された移住検討者やカフェのお客さんに、移住しお店を開業した先輩、生活者の視点で相談にも応じている。さらには、2019年に地域おこし協力隊のメンバーと、まちづくり会社「六日町合同会社」を設立し、移住者が開業しやすいまちづくりに取り組んでいる。
毎月6日には、食べ物、飲み物を持ち寄りで集まり、ゲストスピーカーの話を聞くイベント『六日知らず』を主催。移住検討者の話を聞き、お店を始めたい人に、商店街の空き店舗を紹介している。
杉浦風ノ介さんは、アーティストが訪れやすい環境、アートに気軽に触れられる場所をつくりたいと考え、アーティスト・イン・レジデンスもスタート(画像提供/杉浦風ノ介さん)
「地方の商店街がにぎわうために必要なものは、『何でもできそうだ』という思い込みや、自由な気質、『楽しそうなまちだな』と思わせるイリュージョンマジックのようなものかな。
商売を始めるなら稼げる首都圏でと考える人は多くても、地方で始めようと考える人は少ないかもしれません。私は画一化されていく世の中が好きじゃなくて、同じ考えの人は他にもいると思います。東京ほど稼げる場所ではないかもしれませんが、家族と暮らしていくには十分で、やり方次第ではもっと稼げると思います。
『自由に切り拓きたい、面白いことをやりたい』人たちが100人でも集まってきて、面白いまちになればいいですね。
キーパーソンだって、一人じゃなく、いろいろな人が何人もいることが大事。これからは次代を引っ張っていく若い世代の人たちが活躍しやすい環境をつくっていきたいと思っています」
六日町商店街(写真撮影/難波明彦)
地域おこし協力隊、「六日町通り商店街シャッター開ける人!」の三浦大樹さんも、六日町通り商店街のキーパーソンの一人だ。
三浦大樹さん。「生まれも育ちも栗原市で、高校卒業後は仙台市に出て働いてましたが、地元に貢献できることがしたい、という気持ちが生まれて栗原市にUターン。今はクラフトビール醸造所の立ち上げの準備中です」(写真撮影/難波明彦)
三浦さんは2022年4月から、地域おこし協力隊、「六日町通り商店街シャッター開ける人!」として活動。六日町通り商店街に拠点を構え、地域協力活動を行いながら、商店街の空き店舗と店を開業したい人をマッチングする取り組みや、商店街に人を集め、にぎわいを創出するお祭りやイベントの企画・運営などを行い、一軒でも多くのシャッターを開けようとチャレンジしている。
「六日町通り商店街では6、7、8月の第2土曜日に六日町通り商店街を歩行者天国にして『くりこま夜市』を開催しています。1970年代から商店会が続けてきた伝統的なイベントですが、近年は六日町通り商店街と地域おこし協力隊が連携して、マルシェや音楽ライブを行い、外部から出店するマルシェ(キッチンカー)が50店舗ほど並びます。西馬音内盆踊りの輪踊りやDJイベントなども。2023年6月は、地域内外から約1万人が集まりました」(三浦さん)
近年開業した移住者たちと既存の店舗の若手後継者が中心となって、商店街の内部組織として「未来事業部」を発足、イラストマップの制作やスタンプラリーの開催、ギフトラッピングの開発など、新しい発想で商店街の魅力を発信している。
くりこま夜市風景(画像提供/三浦大樹さん)
「商店街では古くからの人、若い後継者や若い移住者との間に、一般的には溝や隔たりがあったりしますが、六日町通り商店街は全くありません。年齢の高い人たちが、新しいチャレンジを歓迎してくれる環境があります。
それと、既存の店の店主さんたちが、状況が悪いときも足を止めずにイベントを続けてきたことが大きい。その土壌があって、2015年に『かいめんこや』ができて、若い人が集まるようになったという流れですね」(三浦さん)
まちの雰囲気はもちろん、地代が比較的安く、商店会が快くサポートしてくれる、また新たに小売店、飲食店などを開業する人に対して「ビジネスチャレンジサポート」という補助金もあって初期投資を軽減できるなど、比較的開業・起業しやすいまちといえそうだ。
思わぬきっかけで移住して、六日町通り商店街に新店を開業六日町通り商店街に移住・開業した店主を、「六日町通り商店街シャッター開ける人!」の三浦大樹さんに紹介してもらった。
■ハンドメイド雑貨店「ねこの森雑貨店」
六日町通り商店街に移住・開業した店主を「六日町通り商店街シャッター開ける人!」の三浦大樹さんに紹介してもらったうちの一人が、「ねこの森雑貨店」の店主、髙橋千恵美さんだ。
店主の髙橋千恵美さん(写真撮影/難波明彦)
髙橋さんは結婚後、仙台市に8年ほど暮らし、子どもが2歳くらいのときに、「自然豊かで、のびのびしたところで子育てがしたい」と夫妻で話し合い、移住を検討するように。
「宮城県内のいくつかの市町村を見て回ったときに、栗原市には豊かな自然があり、六日町通り商店街の雰囲気も気に入りました。そして、夏に訪れた夜市マーケットが楽しく、商店街を歩いたときも店主さんが気さくに声をかけてくれて、栗原市への移住を決めました。栗原市に知り合いも親戚もいませんが、定住戦略室の相談窓口など移住者のサポートが積極的で、お泊り体験で移住後の生活をイメージしやすかったのも良かったです」と髙橋さん。
ねこの森雑貨店 外観(写真撮影/難波明彦)
その後『かいめんこや』の杉浦さんに、六日町通り商店街に住みながら店が開けるような空き物件を紹介され、2018年に移住、2019年に「ねこの森雑貨店」をオープンした。
「かなり傷んだ建物でしたが、近所の店主さんや移住して開業した先輩に分からないことを聞き、アドバイスをもらいながら開業の準備を進めました。商店街がとても歓迎ムードで、気軽に話しかけてくれたり、一聞いたら十以上教えてくれました」
店内には羊毛フェルトの一点もののブローチやイラスト、アート原画など、ここでしか買えないオリジナルキャラクターの作品が並ぶ。また、ペットの写真をもとにしたオーダーメイドの半立体顔ブローチや全身立体などは、大切なペットを亡くした方などに喜ばれているそう。
ねこの森雑貨店 店内(写真撮影/難波明彦)
「手芸が得意な祖母の影響で、私も小学生のころから何かを手づくりして、作品をイベントに出したり、Webサイトで販売したりしていました。ここにお店を開いたのは、地域の方々にハンドメイド作品の素晴らしさを広めたいと思ったから。当時は、ハンドメイドが好きな人は多くてもあまり馴染みがない人、やり方が分からないという人が多く、相談を受けたりしましたが、この4、5年間でハンドメイド作家さんや作品を扱うお店が少しずつ増えて、とてもうれしいです」(髙橋さん)
■文具・雑貨の店「さるぶん」
さるぶん店内。可愛い雑貨は選ぶのが楽しい(写真撮影/難波明彦)
「私は、この六日町通り商店街をショッピングモールと考えているんです。当店にいらした方にはできるだけ商店街マップを渡しています。六日町通りごと気に入ってもらって、他の店を見て歩いてどこかで買い物をしてくれたらうれしい」と話すのは、文具・雑貨「さるぶん」の佐藤陽子さん。県外出身で、結婚後宮城県に移住してきた。
「もともと文具や雑貨が好きだったのです。定年後は雑貨屋か本屋ができたらいいな、とぼんやりと思っていました。そこに六日町通りにオリジナル文具店の2号店ができること、そこの店長を募集していると知り、『やってみよう』と手を挙げたのがきっかけで店を構えることになりました」。開業にあたって前職を離れ、六日町に転居した。
「こんなところで出合えるなんて」をコンセプトに佐藤さんがアイテムをセレクト。レトロでかわいいものや海外の文具など少し変わったものを置いているのが特徴。開業に当たっては、栗原市の開業支援の助成金、改装時は県産木材を使うことでの補助金などを利用した。
「『さるぶん』は、文具と雑貨の店ですが、ひとつの建物に間借り店舗として、本屋、貸カフェ・貸ギャラリーの3店舗が入っているイメージです。貸カフェでは、月曜が近所のスープ屋さんの日、火曜がレトルトカレーの日と場所を貸して、ギャラリーは作家さんの作品の展示やイベントで使っていただいています。何か面白いことをやっている場所といった存在になれたらいいですね。
本棚には本がたくさん(写真撮影/難波明彦)
開業して一番良かったのは、好きなものに囲まれて暮らせること。自分の好きなものをお客さんに手に取って喜んでもらえることがうれしいです。ここはもともと鶴丸城の城下町でした。近くに細倉鉱山があった頃はかなりの繁華街だったそうです。昔からお住まいの地域の方、商店会の方はそういったプライドを持ってお仕事されており、そして新しく入った私たちがすることを温かく見守ってくれるので、居心地がいい。お客様にも『この地にルーツがなくてもどこか懐かしさを感じる。日常とは時間の流れが違ってほっとする』と言っていただいています。私自身もこの場所に癒やされています」(佐藤さん)
■工具の販売や各種家庭金物「佐々木金物店」
最後に紹介するのは、移住者ではなく、古くから六日町通り商店街で商売してきた老舗、佐々木金物店へ。ねこの森雑貨店の髙橋さんは、開業準備でお世話になったという。
佐々木金物店の佐々木桂子さん。東日本大震災で建物が壊れたままだったが、2022年10月に建物をリニューアルし、再オープンした(写真撮影/難波明彦)
佐々木金物店は、1926年に創業、馬の蹄鉄などを販売していたが、現在は、プロの電動工具、各種家庭金物からフライパンや包丁といったキッチン用品など豊富な商品を販売、サッシなどの各種取り付け工事の相談にも対応している。気軽に立ち寄りお茶飲み話をするお客さんも多いそう。
変化する商店街を見てきたが、「地域おこし協力隊やコーディネーターの方たちのおかげでIターンの移住者が増えて、六日町通り商店街は、古いお店と新しいお店が混在していますが、若い人たちのパワーはすごいと思います」と表情は明るい。
「うちも売るだけではなく、不定期でドライフラワーや花材キット体験会などのワークショップも開催して、新しいものも採り入れていきたい。今後もここで頑張っていきます」(佐々木さん)
地方への人の流れをつくる取り組みや、にぎわいを失った商店街の活性化は各地で行われている。栗原市では、移住・定住を単に推し進めるのではなく、「住まい、仕事(起業・開業)、子育て環境」のサポートを充実させ、相談に力を入れ、地域おこし協力隊、移住定住コーディネーターを依頼するなど、市民に協力を求めた。
活気を失いかけていた六日町通り商店街だが、商店会組織はイベントや販売促進の取り組みは地道に継続しており、若い人の新しい提案や移住者を歓迎する雰囲気もあった。そこで、コミュニティカフェがカギとなり、新たな店が出店し、人と人のつながりが生まれ、新旧の人、店が手をつなぎ商店街の魅力を育み、外に向けて発信を始めている。これまで守ってきた既存の店、店主を尊重しながら、新しいまちづくりを若い人のパワーに託す「信頼と感謝、〇〇のためという思いやり」。これがまちへの定着にもつながると感じた。
●取材協力
栗原市企画部企画課定住戦略室
cafe かいめんこや
六日町通り商店街
ねこの森雑貨店
さるぶん
佐々木金物店
●関連サイト
移住定住ハンドブック 第班(令和5年度発行)宮城県地域振興課
お試し移住体験生活事業
移住定住コンシェルジュ
六日町通り商店街
リノベーションの魅力や可能性を広く発信するアワード「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」。2023年度、連鎖的エリアリノベーション賞というユニークな名前の賞を受賞したのが、JR古賀駅西口エリアの商店街を中心に展開されている「食の交流拠点」の整備を中心としたエリアリノベーションだ。エントリーの際の作品名には「お手本のようなエリアリノベーション」とも掲げられているプロジェクト。どんなまちのリノベーションが行われているのか。その全貌を知るために、西口エリアへ足を運んでみた。
(株式会社ヨンダブルディー)
シャッター商店街に新たな点と線を福岡市に近接する利便性と豊かな自然を併せ持ち、県内有数のベッドタウンとして人気の古賀市。市内にはJRの駅が3つ、九州自動車道の古賀インターチェンジなどもあり、JR及びマイカーでのアクセスの良さが魅力。まちの中心にある西口エリアは、かつて商機能の集積地として栄えていた。インターネット消費が盛んになったライフスタイルの変化に加え、国道3号・国道495号沿いにIKEAをはじめ大規模な集客施設が進出。ここ数年、商機能の拠点が大きく変化してきた。また、福岡の私鉄「西鉄宮地岳線」の最寄駅が廃駅になったことや、JR古賀駅に連絡橋がかけられ駅の東側からも行き来ができるようになったことが人の流れに大きな打撃を与えている。店主の高齢化が進みシャッター商店街となった西口エリアをなんとか再起させることはできないか。住民はもちろん、行政の中でも大きな課題となっていた。
JR古賀駅の西口周辺(写真撮影/加藤淳蒔)
まちおこし請負人木藤亮太さん率いるチームがプロポーザルに参加古賀駅の待ち合わせ場所で、まず満面の笑顔で取材チームを出迎えてくれたのがこのまちの首長こと田辺一城市長だ。聞けばこのまちには「#市長と気軽に会えるまち」というハッシュタグが存在するぐらい、抜群のフットワークの持ち主だ。もともと、このエリアで生まれ育ったという田辺市長。市長就任後に、商店街の状況に対策を打つために取り組んだのが、エリアマネジメントのプロポーザル企画だ。
写真左から田辺一城市長、プロジェクトマネージャーの橋口敏一さん、設計担当の田村晟一朗さん、プロデューサーの木藤亮太さん。官民の近さもプロジェクトの推進力になっている(写真撮影/加藤淳蒔)
希望は広がる一方で、ハードルも高いこのプロポーザルに立ち上がったのが、まちづくり界隈で一目置かれる木藤亮太さん率いるチームだ。木藤さんといえば、“猫も歩かない”と言われた宮崎県日南市の油津商店街を再生したことで、「地方創生」の成功事例として全国区で高い評価を得ている。その後も福岡県那珂川市をはじめ九州各地でのプロジェクトや、全国でまちおこし請負人として活躍している。
3年間の任務の間に自走できる流れをつくるプロポーザルでは、どんな提案をしたのか?そんな質問に木藤さんがゴソゴソと取り出してきたのが、手書きの文字が一面に記された大きな模造紙だ。まさに、プロポーザル提案時に使った資料であり、まちの人たちへの説明にも使われた資料なのだそう。そこには、3年間でどうまちを変化させるのかが、模造紙いっぱいに手書きで記されている。行政の事業は多くが3年程度を区切りにしている。しかし、エリアリノベーションの土壌づくりは、3年で終わるものではない。そこで、木藤さんたちが大切にしたのが「自走できる仕組みをつくる」こと。3年間の流れを記したスケジュールは、模造紙におさまりきれない。その後、さらに自走へと繋がっている。
(写真撮影/加藤淳蒔)
あえてアナログな手書きの企画書が、まちの未来図となっている(写真撮影/加藤淳蒔)
30代のプレイヤーが活躍できる場のフレームをフレームをつくるにあたってのヒアリングで気づいたのは、30代ぐらいの若いプレイヤーが、あまり関われていないこと。そこで、そういう世代が動きだすきっかけとなる“活躍の場”をつくることの大切さを感じたという木藤さん。地元の若手を含めたメンバーで、まちづくりの運営会社を立ち上げることにする。4WDと書いて「ヨンダブルディー」と読むその会社の主要メンバーは、木藤さんチームのメンバーが2名に、Uターンで家業を継いだ6代目の店主、古賀を拠点に動画マーケティングやシティプロモーションを手がける会社を経営する計4名だ。よそ者・わか者をうまくブレンドした運営体制を立ち上げたことで、特定の誰かだけではなく、誰でも関われる余白のあるリノベーションに取り組む狼煙を、しっかりと上げたわけだ。
まちづくり運営会社、株式会社ヨンダブルディーの立ち上げ時の様子(写真撮影/株式会社ヨンダブルディー)
ところで、コンセプトとして掲げる「食の交流拠点」とはどういう意味をもつのか?それを紐解く鍵は、古賀市の産業構造にある。全国区で有名なドレッシングを手掛ける工場や、ローカルで人気のインスタントラーメンの工場、全国区のパンメーカーの製造工場など、食料品製造品出荷額は県内2位という現状がある。また、プロジェクトの初期に「地元にどんな場所があったらいい?」と地道なヒアリングを行ったところ、住民から口を揃えてでてきたのが「もう少し気軽でカジュアルに食を楽しめる場所が欲しい」という声。さらに、ヨンダブルディーのメンバーの一人、ノミヤマ酒販の許山さんがもつ、これまでの商売の中で大切に構築してきた生産者や飲食事業者とのつながりを活かすことができる。そんな、古賀市に根付く食の文脈を取り入れているというわけだ。
ノミヤマ酒販の角打ちコーナーは、お酒をきっかけに人と人との出会いを楽しむことができる(写真撮影/橋口敏一)
食の交流拠点施設「るるるる」の立ち上げ1年目の信頼関係の構築を経て、2年目に着手したのは拠点づくり。
その一歩となったのが、レンタルシェアスタジオとしてサブリースをはじめた社交場の意味をもつ「koga ballroom(コガボールルーム)」だ。もともと長年、社交ダンスの教室として借りていた方が、生徒の高齢化とコロナ禍による生徒数の減少によって手放そうとしていた物件を借り直してリノベーション。若者のダンススペースや子育てママのサロンやヨガ教室など多目的で利用できる「まちの社交場」をコンセプトとしたシェアスペースとして運用している。もともと社交ダンス教室を運営していた先生も、時間貸しで再び利用してくれている。
(写真撮影/橋口敏一)
ヨガやダンススタジオだけでなく、イベントの拠点としても活用されているkoga ballroom(写真撮影/橋口敏一)
次に元化粧品店だった空き店舗を活用して、旗印を掲げたのが「まちの企画室」。メンバーの橋口敏一さんは一時、この場所の2階に住居まで移して、住民との交流を深めていた。
(写真撮影/橋口敏一)
地元の高校生や大学生の期間限定カフェなどもこのまちの企画室で行われている(写真撮影/兒玉健太郎)
そして、エリアリノベーションのシンボルとして完成させたのが食の交流拠点施設「るるるる」だ。
駅前の商店街通りを少し入ったところにある「るるるる」の建物は、もともと、音楽教室として使われていた物件だ。設計に加わったのは、リノベーション・オブ・ザ・イヤーの受賞でも常連の、リノベーションを得意とする建築家・タムタムデザインの田村晟一朗さん。もともとピアノ5台ほどが備えられていた教室だったので、それなりに広さのある建物だ。ここでは、気軽に食を楽しめる場をつくれるように、あえて出店者の敷居を低くするための工夫がいくつか施されている。
タムタムデザイン田村さん(写真右)によって建築が進められている様子(写真撮影/橋口敏一)
音楽教室の面影を残しながらも、大きく変化した「るるるる」外観(写真撮影/加藤淳蒔)
ひとつが、一階の大きなスペースを占めるシェアキッチンとイートインスペースだ。シェアキッチンは、日替わりや短期間で利用可能なスペース。近隣の人気店が期間限定で出店したり、飲食をはじめたい人のトライアルスペースになったりもする。利用料はキッチンスペースぶんだけ、食事のできるイートインスペースはお客に自由に使ってもらえる仕組みとなっている。ただ、ここを使えるのはシェアキッチンのお客だけではない。ヨンダブルディー直営のパン販売ショップのお客も使えるし、一階角の小さなスペースを賃貸するスコーンとハンドメイドのアクセサリー店「jugo.JUGO(じゅごじゅご)」さんで買ったものも食べられるし、時には1階に入居する洋風居酒屋「bar ponte(バルポンテ)」の団体客が利用することもできる。さらには、打ち合わせで使う人もいれば、お茶を飲みながらのんびりおしゃべりも楽しむことができる。ほどよく自由な空間が、いろいろな交流を生み出そうとしている。ちなみに、2階は音楽教室や洋服のリフォーム店、写真家のアトリエやドローンのプログラミングスクールを運営する事務所などが入居。一部屋はもともとの音楽教室だった時代にピアノの講師として通っていた先生が再度利用している。
るるるるの室内。写真手前が誰でも使えるフリースペース。奥に備えられているのがシェアキッチン(写真撮影/大田聖)
るるるるの室内。商店街に面する食物販ショップではパンや雑貨が販売されている。食物販ショップをヨンダブルディーが直接運営することで、リアルな接客の中からまちづくりのニーズをヒアリングしている(写真撮影/大田聖)
ただ、ヨンダブルディーで目指しているエリアリノベーションは、決してこれらの場所のにぎわいを生み出すことだけではない。いくつかの点を根付かせて繋いでいくことで、エリア全体の回遊の楽しさを深めることにある。こうした地道な活動をいくつも重ねていく中で、最初は距離を置いて見守っていた住人の人たちもだんだんと交流をもってくれるようになってきた。地元の方から「先代から継いだ大切な建物を手放したいけれど、どうにかならないか?」などの声をいただくことも増えてきた。そこで、場所と入居したい人とをつなぐリーシング的な役割も出てきた。最近は、書店が出店したり、アメリカンダイナーの出店が決まったり、着実にエリアの活性化が広がろうとしている。
関係者がこれからの課題として口にしているのが、持続性だ。地域の人はもちろん、外の人も訪れて多様な交流が生まれるのが理想。しかし、もともと衰退が進んでいる商店街。魅力的で面白いコンテンツを提供していかないと、なかなか足を運んでもらえない。まちづくりは立ち上げるだけでなく、継続的な運営によって思いをつなぎ、小さくても一歩一歩進んでいくことが重要。その一歩一歩の手がかりになりそうなのが、最初に見せてもらった大きな模造紙のようだ。思いの原点であり、まちの変化を記録しつづける大きな地図。時々振り返りながらも、掲げる目標へ向かってまっすぐ歩み続ける。古賀のエリアリノベーションは、日本の商店街にも大きな活路を見出してくれそうな「お手本のような」プロジェクトであった。
駅前にオープン予定の新店舗。ヨンダブルディーが、空き家と新しい運営者につないだ事例のひとつ。「何ができるの」と、地元の人たちも興味津々(写真撮影/加藤淳蒔)
●取材協力
株式会社ヨンダブルディー
株式会社タムタムデザイン
暖かい日もあれば寒い日もあり、気温が安定しない日々が続いていますね。SUUMOジャーナルで1月に公開した記事では、「最強断熱賃貸、氷点下の北海道ニセコ町でも冷暖房費が月額5000円! 積雪2.3mまで耐える太陽光パネル搭載も3月に登場」「列島を1万キロ歩くモドさんがNYタイムズに盛岡と山口を載せた理由。東京と廃墟ラブホから見える日本 クレイグ・モド(Craig Mod)インタビュー」などが人気TOP10に入りました。さっそく、どんな記事なのかご紹介していきましょう。
1月の人気記事ランキングTOP10はこちら!第1位:最強断熱賃貸、氷点下の北海道ニセコ町でも冷暖房費が月額5000円! 積雪2.3mまで耐える太陽光パネル搭載も3月に登場
第2位:列島を1万キロ歩くモドさんがNYタイムズに盛岡と山口を載せた理由。東京と廃墟ラブホから見える日本 クレイグ・モド(Craig Mod)インタビュー
第3位:室温18度未満で健康寿命が縮む!? 脳卒中や心臓病につながるリスクは子どもや大人にも。家の断熱がマストな理由は省エネだけじゃなかった
第4位:100万円でタイニーハウスをDIY。ノンフィクション作家が6年かけて9.9平米ロフト付きの小屋を作るまで 川内有緒『自由の丘に、小屋をつくる』
第5位:ニューヨーク人情酒場 NYのトレンド”OMAKASE”に驚愕! 爆音サルサ・レゲトンのパリピさがヤバい
第6位:名建築ホテルの実測スケッチがエモいとSNSで話題! 朝食やアメニティも実測する遠藤慧さんの制作現場に密着 「all day place shibuya」東京都渋谷区
第7位:注文住宅トレンド2024! 注目は、平屋・ヌック・タイパ・省エネ・ランドリールームなど7キーワード
第8位:「要求定義」から自宅リノベを始めてみた。建築家とアイデアふくらみ想像以上の仕上がりに!【後悔しないマンションリノベのコツ】
第9位:自然素材でつくったタイニーハウスは氷点下でも超ぽかぽか! 羊毛・ミツロウ紙などで断熱効果抜群、宿泊体験してみた 「CORONTE(コロンテ)」北海道仁木町
第10位:2024年も3省連携で住宅省エネキャンペーンを実施。省エネで補助金がもらえるのは?内容を詳しく解説
※対象記事とランキング集計:2024年1月1~31日に公開された記事のうち、PV数の多い順
第1位:最強断熱賃貸、氷点下の北海道ニセコ町でも冷暖房費が月額5000円! 積雪2.3mまで耐える太陽光パネル搭載も3月に登場
(撮影/久保ヒデキ)
ここ数年は、夏の暑さも冬の寒さも厳しく、電気や灯油、ガス料金の高騰による冷暖房費のアップが家計を直撃しています。そんな今、注目したいのが冷暖房費や光熱費が共益費に含まれ、一定額でまかなえてしまう賃貸・分譲集合住宅です。なんと極寒の地、北海道ニセコにある賃貸集合住宅「NISEKO BOKKA(ニセコ ボッカ)」では、冷暖房費が月額5000円でまかなえてしまうのだとか! 最強の断熱性能を誇るNISEKO BOKKAをプロデュースしたまちづくり会社「ニセコまち」取締役の村上敦さんに、その仕組みについて取材しました。
第2位:列島を1万キロ歩くモドさんがNYタイムズに盛岡と山口を載せた理由。東京と廃墟ラブホから見える日本 クレイグ・モド(Craig Mod)インタビュー
(写真撮影/桑田瑞穗)
作家・写真家のクレイグ・モド(Craig Mod)さんはニューヨークタイムズ紙に「盛岡」を強く推薦し、同紙の「2023年に行くべき52カ所」で、その2番目に抜擢させた張本人。さらに、2024年には山口市も推薦。モドさんが盛岡や山口を推した理由は「京都、金沢、広島が日本の『レコードのA面』なら、山口と盛岡は『B面』。控えめな天才性が含まれており、こうした中核市にはチャンスがある」と考えるから。膨大な数の田舎を歩いて見てきたモドさんに、いい人生に必要なものは何か、住むならどんな家がおすすめか、じっくりとインタビューしました。
第3位:室温18度未満で健康寿命が縮む!? 脳卒中や心臓病につながるリスクは子どもや大人にも。家の断熱がマストな理由は省エネだけじゃなかった
(写真/PIXTA)
「もしナイチンゲールが日本で活躍していたら、今ごろ日本の住宅は夏も冬も快適だった!?」「しかも住宅が快適なら、日本の生活習慣病の患者はもっと少なかったかも知れない!?」。にわかに理解しがたい話ですが、世界と日本の住宅環境の差が分かってくると、これは全く荒唐無稽な話でもないのです。住宅と健康には、いったいどんな因果関係があるのでしょうか? 例えば、2018年11月にWHOが発表した「住宅と健康に関するガイドライン」では、冬の室温を18度以上にすることが推奨されています。しかし国土交通省が2014年に実施した「スマートウェルネス住宅等推進調査」では、冬に室温18度以上だった都道府県は北海道を含むわずか4道県。こうした世界と日本の住環境の違いや、住宅と健康との密接な関係とは!? その分野の第一人者である慶應義塾大学教授の伊香賀俊治先生にお話をうかがいました。
第4位:100万円でタイニーハウスをDIY。ノンフィクション作家が6年かけて9.9平米ロフト付きの小屋を作るまで 川内有緒『自由の丘に、小屋をつくる』
「セルフビルドで小屋をつくる」。未就学の子どもと夫、それに友人たちを巻き込んで自分だけの小屋をつくり上げたのが、ノンフィクション作家の川内有緒さんです。DIY未経験だったにもかかわらず、DIY工房に通うことから始め、構想から6年かけて9.9平米ロフト付きの小屋を完成させ、「『自分で何でもつくれる』という手応えを経て価値観が変わった」と語る川内さん。そんな川内さんに、セルフビルドをする際の土地探しの決め手や完成までにかかった金額や、セルフビルドで押さえるべきポイント、小屋づくりを始めたきっかけについてお話をうかがいました。そして、夢物語を現実にすることで、彼女が得たものとは――?
第5位:ニューヨーク人情酒場 NYのトレンド”OMAKASE”に驚愕! 爆音サルサ・レゲトンのパリピさがヤバい
(イラスト/ヤマモトレミ)
アメリカで漫画家として活動しながら、ブルックリンで週4日寿司を巻く筆者によるエッセイ。今回のテーマは“OMAKASE”です。いまNYでは、OMAKASEが一つのとてもトレンディなジャンルに。街には数多くのOmakaseレストランができ、流行に敏感なニューヨーカーに対して、おしゃれで楽しいダイニングエクスペリエンスをウリにしているそうです。和食がベースであるものの、あっと驚くような仕掛けが込められた一品や、看板メニューの派手な料理などを用意しているお店も多いとのこと。さらに、著者が働くお店はラテンの人々が仕切っていることもあり、大変陽気な空気で毎夜遅くまでパーティーが行われているといいます。爆音サルサ・レゲトンをBGMにパリピ風味でご提供!? 果たして、日本の”おまかせ”とはどんな違いがあるのでしょうか?
第6位:名建築ホテルの実測スケッチがエモいとSNSで話題! 朝食やアメニティも実測する遠藤慧さんの制作現場に密着 「all day place shibuya」東京都渋谷区
(画像提供/遠藤慧さん)
ホテルの実測スケッチがSNSで人気を集め、2023年8月に『東京ホテル図鑑』(学芸出版社)として書籍化が実現した一級建築士・カラーコーディネーターの遠藤慧さん。実測スケッチとは、建築物などの対象物を観察しメジャーなどでそのさまざまな部分を測量、スケッチに落とし込んだものを指します。ずらりと並ぶ実測スケッチは、見開きに1つのホテルの要素を詰め込んだ図鑑のような仕上がりです。いったいどうやって描いているのか? 東京都・渋谷区にある「all day place shibuya」で拝見する遠藤さんの制作現場、なんと朝食やアメニティまで実測し、スケッチに盛り込んでしまいます! 遠藤さんの、建築スケッチに込めた熱い思いをたっぷり語ってもらいました。
第7位:注文住宅トレンド2024! 注目は、平屋・ヌック・タイパ・省エネ・ランドリールームなど7キーワード
(写真/明野設計室 一級建築士事務所)
ハウスメーカーや工務店、建築家とイチから自分好みの住まいをつくれる「注文住宅」。マンション・建売一戸建てより自由度が高く、住まいにこだわりたい人の「究極の家」といっても過言ではない注文住宅は、間取りも設備もイチから設計できるため、その時代の価値観や好み、トレンドが色濃く反映されます。建築費や資材が高騰する昨今のトレンドは、「小さくても満足度が高い家」。さらに、人気の設備などについても解説していきます。これから注文住宅を建てたい人がおさえておくべきポイントについて、住まい情報誌『SUUMO注文住宅』の編集長・服部保悠氏に話を聞きました。
第8位:「要求定義」から自宅リノベを始めてみた。建築家とアイデアふくらみ想像以上の仕上がりに!【後悔しないマンションリノベのコツ】
(写真撮影/池田礼)
スタートアップ企業でUXリサーチャーとして働く松薗美帆さんは、昨年、東京都内にある築41年のマンションをリノベーション。建築家とリノベーションのプランを検討するにあたり、松薗さんが最初に着手したのが、「要求定義」。仕事でサービスの開発や改善を行う際に欠かせないプロセスを、家づくりに導入したといいます。しかし、家づくりの要求定義って、何をどうまとめればいいのでしょうか? 建築家の反応は? やってみて分かったことは? 「要求定義」にプロの発想が加わると、想像以上の仕上がりになる――。そう話す松薗さんに、やりたいことを実現するためのポイントを伺いました。
第9位:自然素材でつくったタイニーハウスは氷点下でも超ぽかぽか! 羊毛・ミツロウ紙などで断熱効果抜群、宿泊体験してみた 「CORONTE(コロンテ)」北海道仁木町
(撮影/久保ヒデキ)
リンゴやブドウ、サクランボなどの果樹栽培が盛んなまち、北海道仁木町。その仁木町に2023年夏、ほぼ自然素材だけで建てられた「CORONTE(コロンテ)」という一棟貸しの小さなコテージが誕生しました。企画設計したのは、木こりとして森で自ら木を切り出し、それを素材にした建築を手がけてきた陣内雄(じんのうち・たけし)さん。「動物が巣にする素材でつくる家は文句なく心地よい」と言い、みんながそれを体験できる場をつくりたかったのだと話します。そんな森の中のコテージに筆者が1泊、自然素材でつくられた家の魅力や断熱効果をたっぷりと体験してきました。
第10位:2024年も3省連携で住宅省エネキャンペーンを実施。省エネで補助金がもらえるのは?内容を詳しく解説
(写真/PIXTA)
住宅の省エネ化を推し進めている政府は、さまざまな優遇制度を設けています。国土交通省・経済産業省・環境省の3省連携による住宅省エネキャンペーンが2023年にスタートしましたが、2024年も同様のキャンペーンを展開することが決まり、昨年末に2024キャンペーンのホームページが公開されました。どのような内容なのでしょうか? 詳しく解説します。
1月の人気記事ランキングでは、断熱関連の記事のランクインが目立ちました。そのほか、ホテルの実測スケッチ、盛岡、ニューヨークの漫画エッセイなど特色ある記事も。まだまだ寒い日が続くかもしれません。断熱の記事を参考にしつつ、暖かい家のなかで楽しい読み物記事を楽しんでくださいね。
地方へ帰省した時や旅先で、「空き家が増えたな……」と思うことはありませんか。人口が減り始めた日本では、空き家や集落をどのようにしていくか、難しい課題が浮き彫りになっています。今回はそんな空き家対策として参考になりそうな、米国のミシガン州郊外フリント市の「グリーンイノベーション地区」の計画について取材しました。
市街地の1/3が空き家に! 治安も悪化、貧困層が取り残された街今回、お話を伺ったのは横浜国立大学で人口減少と都市の規模の適性化を目指すまちづくりを研究している矢吹剣一准教授。矢吹先生が事例として注目しているのは、米国のミシガン州郊外にあるフリント市の「グリーンイノベーション地区」の計画です。
アメリカ・フリント市(写真提供/矢吹剣一さん)
そもそもフリント市は自動車メーカー・ゼネラル・モーターズ(GM)創業の地で、最盛期の1960年代~70年代には約20万人が暮らし、「全米でもっとも豊かな都市の1つ」とまでいわれた街でした。ただその後、工場の移転と閉鎖にともない人口は激減、2022年には約8万人と半分以下にまで落ち込んでいます。
横浜国立大学 大学院都市イノベーション研究院 准教授・矢吹剣一さん(写真提供/矢吹剣一さん)
産業の勃興と衰退によって人口の増加・減少が起きたのは、石炭や造船業が盛んだった都市と同様といってよいでしょう。ただ、米国と日本では土地に関する価値観が異なります。
「米国は日本と異なり、土地への執着が低いため、仕事のあるところに引越し・移住をするのが当たり前です。そのため、家賃や税金を滞納したままの状態で、ある日突然、住人がいなくなるということが頻発するんです。当然、残されたのは、税滞納状態となった空き家や空き地、あるいは移住する費用が払えない貧困層という状態になります」
貧しく、行き場のない人だけが取り残されたほか、人種ごとによる居住地域の違いなども問題を複雑化させています。さらに追い打ちをかけたのが、サブプライムローン問題に端を発した2007年の住宅バブルの崩壊です。フリント市内の住宅でも差し押さえが相次いだこともあり、市内の総不動産のうちなんと1/3が遊休地化し、空き地・空き家(しかも荒廃している)だらけだったとか。さすが米国、空き家・空き地問題のスケールもケタ違いです。
ランドバンクを介して土地を利活用。農園が健康や治安の改善にも役立つ税金などを滞納して差し押さえられた不動産は、行政などに差し押さえられたのち、公的な性格をもつ「ランドバンク」が権利を保有し、再生・利活用の道を探ることになります。
「フリントが位置するジェネシー郡は、2002年に公的なランドバンクを設立しています。差し押さえた空き家は解体されるだけでなく、適切にリフォームして販売や賃貸されたり、土地だけで貸したり、管理、活用の方法を模索します。なかでも注目は、『サイドロットプログラム』。その名前の通り、side-lot(隣地)、つまり、隣の人に低額で貸したり、売却したりというもの。困ったときに頼りになるのは隣の人ということで、隣地を低額で売却または賃貸してもらい、管理してもらうという取り組みです」(矢吹先生)
隣地が管理されておらず、荒れていると困るのはまさに隣の家の住人ですし、日本でも昔から「隣の土地は借金してでも買え」と言われてきたほど。とても合理的な取り組みといえるでしょう。広くなったスペースは庭や子どもの遊び場として活用しているようです。とはいえ1区画は450~500平米超もあり、隣の区画と合わせれば900~1000平米、3区画合わせれば1500平米にもなります。テニスコート(ダブルス)の広さが約261平米なので約6面、こうなってくると家の敷地というより畑ですね……。
「ランドバンクは、土地を隣家に貸す以外にも、地元の住民団体やNPOなどに貸し出して、農園やコミュニティガーデンとしても活用しています。カギになるのは、教会や地域コミュニティ。米国の教会も、日本の寺院でいう檀家さん、つまり信徒さんがいないと成り立たないんですね。ですから、牧師と信徒のみなさん、NPO、地元の学生さんなどがともにコミュニティガーデンで野菜を育て、近隣住民で分け合うという取り組みをしているんです。フリント市や近隣のデトロイト市は全米平均よりも貧困率が高く、日頃の生活にも困っている方も多いのですが、こうした住民の栄養状態を改善し、健康促進をする、という意味でも農園(都市農業)は役立っています」(矢吹先生)
放置された空き家は、行政やランドバンクによってチェックされる。状態によって4段階にわけられ、撤去解体、リノベ、リフォーム、賃貸など、再生の方法が模索される(写真提供/矢吹剣一さん)
コミュニティガーデン、農園では、住民たちが一緒になって草刈りや緑の管理、畑作をすることで、治安維持、景観の向上、住民の栄養やメンタルヘルスの改善などに役立つこともわかっているそう。行政としても草刈りなどの空き地を管理するコストが低減でき、住民、行政、双方にメリットのある仕組みです。
「コミュニティガーデンでは野菜を提供するだけでなく、農業に必要な資材を貸し出したり、苗を売ったり配ったりしています。米国でも日本の地域おこし協力隊のような地域に貢献したいと活動する若者がいるのですが、彼らが農業を手伝っていることもあります。教会の牧師さんもまちづくりや都市計画について関心が高く、教会の一角にまちづくりに関する展示パネルもあるほどです」
教会(写真提供/矢吹剣一さん)
コミュニティガーデンで活動する人たち。緑を手入れすることで、住民の栄養やメンタルヘルスの改善、治安維持できることがわかっている(写真提供/矢吹剣一さん)
教会の一角にあるまちづくりに関する展示パネル(写真提供/矢吹剣一さん)
重要なのは覚悟と都市計画。住民参加で「合意形成」もなされるとはいえ、ランドバンクは万能ではありません。フリント市全域で約2万2000区画ある空地に対して、何区画かずつの規模で活用したところで、全体の問題解決にならないからです。問題の本質は、都市がどうあるべきなのか、その設計図である、「都市計画」が機能していること。ここが機能していないと、本質的な人口減への対応は難しいといいます。
「滞納された不動産の個別の利活用をはかったところで、ランドバンクは黒字化はおろか、人件費も出せるかどうかというのが現実です。フリント市は財政難も続いています。そのため、2013年に『マスタープラン』、日本でいうところの総合計画と都市計画マスタープランを合わせたような計画を作成し、この時にはじめて人口減・低密度化をふまえた都市計画を立案しました」(矢吹先生)
これは日米共通のようですが、ふるさとの人口減少に対し、回復することは難しいと認め、受け入れるのは非常に覚悟のいること。希望的観測、こうあってほしいという願望、政治的な意向で「玉虫色の決着」になりがちですが、人口が半分以下と、どん底までいったフリント市はついに覚悟を決めたのです。
「この覚悟を決めた2013年の都市計画では、空き地をコミュニティガーデンなどにしていき緑豊かな住宅地を目指す『グリーン・ネイバーフッド』、できるだけ新たな人が来ることを想定せず、1つ1つの土地そのものを広くする『グリーン・イノベーション』という2種類の地区を設定しました。特に空洞化のひどかった地区は『グリーン・イノベーション』として、できる限り人の流入を抑えて、とにかく土地を合筆、集約化していき、将来の不確実性に備えるとしています。結果的に人の流入は制限出来ませんでしたが、それぞれが使用する1区画あたりの面積を大きくして、なるべく大きな面積を管理してもらう仕組みをつくることができました」
グリーン・イノベーション地区の様子(写真提供/矢吹剣一さん)
ポケットパーク(写真提供/矢吹剣一さん)
人口が増え続けている米国では都市「縮小」、「撤退」という概念にまだ拒否感があります。そのため、居住エリアを「縮小」するのではなく「低密度」な状態でも維持することを目指し、同時にさまざまな社会状況に対応できるよう「不確実性に対応する可変性の高さ」というコンセプトを打ち出したのです。
「グリーン・イノベーション地区」はまず、空き地を緑地やコミュニティガーデンとして活用しようと謳います。そして、将来に備えて空いた土地を徐々に合筆集約しておく、そうすれば大規模工場の誘致、農園の誘致など起死回生的なチャンスへの対応も可能で、不確実な情勢に対応しやすいというわけです。いわば「二段構えの施策」といえるでしょう。
赤いエリアが町の中心市街地。周囲の住宅地には、空き家・空き地が多い地区が点在していました。これら(上図・緑部分)を「グリーンイノベーション地区」と名付けました(画像提供/矢吹剣一さん)
もちろん、自分が住む地域が「グリーン・イノベーション地区」になることに難色を示した住民もいました。それはそうですよね、「あなたが住む場所はもう新しい人は来ず、将来は広大な緑地です!」と言われたら、住民が反発するのは必至です。ただ、住民も実際にワークショップに参加していくと、都市計画やまちづくりの必要性としてなによりフリントがおかれた深刻な現状を理解し、納得していくのだとか。
「地価の低さもありますが、自分たちの目で空き家調査をしたこと、自分たちの意見や議論でグリーン・イノベーション地区のエリアを決めたこと、細かい規制内容も住民意見を反映したことが、合意形成の上で非常に大きかったと言えます」
日本は戦後の住宅難もあり、都市でも農村部でも、とにかく土地の分筆が続けられてきました。いわば現在のフリントの真逆状態です。ゆえに所有権者と利害関係者が増えすぎてしまい、合意形成や、現在および将来の全体最適な土地の利活用を難しくしていますが、その意味でもとても示唆に富んでいるように思います。
また、日本の都市計画制度は米国ほど効力をもっていません。例えば、水道・電気などのインフラ保守管理を効率化するために居住地域を厳しく制限する、自治体ごとに用途地域をカスタマイズして望ましい将来像へ都市空間を誘導するなどの制限はできていない状態です。
「米国でも都市部の『縮小』という現実に向き合うのは非常に困難でした。でも、人口が減るという現実を受け入れ、覚悟を決めたところから再生がはじまっているんです。日本でも同様に、厳しい現実に向き合わないといけない。まずはそこからではないでしょうか」(矢吹先生)
もちろん国の成り立ちや価値観が違うので、すべてを真似する必要はありませんが、公的な性格をもつランドバンク、住民参加型のコミュニティ、強力な都市計画、行政の覚悟……など、岐路に立つ日本も見習うべき点は多いのではないでしょうか。
Center for Community Progressによる動画
「How to Use Property Condition Data for Vacant Land Stewardship(空き地管理のための不動産状況データの使用方法)」
●取材協力
横浜国立大学 大学院都市イノベーション研究院 准教授
矢吹剣一さん
専門は都市計画・都市デザイン・まちづくり。主に人口減少時代における土地利用政策(マスタープラン/ゾーニング)、空き家・空き地の政策(利活用および管理・除却)、共創まちづくり(住民参加による計画策定技法/公・民・学連携のまちづくり)に関して研究・実践を行っている。
福島県いわき市生まれ。筑波大学第三学群社会工学類(都市計画主専攻)卒業。東京大学大学院都市工学専攻修士課程修了。株式会社久米設計勤務後、東京大学大学院都市工学専攻博士課程修了。博士(工学)、一級建築士。東京大学特任研究員・アーバンデザインセンター坂井チーフディレクター、神戸芸術工科大学助教、東京大学先端科学技術研究センター特任助教を経て、2022年10月より現職。
リクルートが、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)在住の20歳~49歳の男女9335人を対象に実施した「SUUMO住みたい街ランキング2024」を発表した。ランキング上位は常連が顔をそろえる中、あの吉祥寺を抑えて2位になった街がある。ランキングがアップした街を中心に、その背景をさぐってみよう。
【今週の住活トピック】
「SUUMO住みたい街ランキング2024 首都圏版」を発表/リクルート
では、2024年の住みたい街(駅)ランキングの結果を紹介しよう。「横浜」が首位を、しかも得点を伸ばしてナンバー1になった。2位には、得点を落とした「吉祥寺」を抑えて「大宮」がその座に就いた。その結果、「北の大宮・南の横浜」が1・2位を占め、中に当たる東京勢の街は3位以下へと退く形になった。
住みたい街(駅)総合ランキングトップ10(首都圏全体/3つの限定回答)(出典:リクルート)
詳しく見ていこう。今回2位の「大宮」は、2018年の9位から順位を4位、3位と上げて、ついに2位に至った。2018年に2位だった「恵比寿」は、吉祥寺、大宮に抜かれた後は4位をキープ、2018年に3位だった「吉祥寺」は恵比寿を抜いて2位をキープしていたが、今回は3位に退いた。
2018年に4位だった「品川」は2023年には11位までランクダウンしたが、今回はTOP10に返り咲いた。おおむねランキング14位くらいまでは、常連の街が調査時期によって入れ替わりながら、上位を維持している形だ。
住みたい街(駅)総合ランキング11位~25位(首都圏全体/3つの限定回答)(出典:リクルート)
11位~25位までを見ると、「流山おおたかの森」「舞浜」「桜木町」「みなとみらい」などが、過去最高の順位になるなど、人気のある郊外の街の中で、ランキングの入れ替わりが見られた。さらに上位50位までを見ると、つくばエクスプレスのような新しい沿線の街がランクアップし、かつて人気を誇った東急田園都市線の街がランクダウンしたという印象を受けた。
また、SUUMOが2023年との得点を比較して、得点ジャンプアップしたランキングを分析したところ、1位は「横浜」(+123点)で、2位「秋葉原」(+91点)、3位は「北千住」(+57点)、4位「巣鴨」(+49点)、5位「練馬」(+48点)と東京駅より北側の駅が上位を占めたという。
「横浜」が大横綱ぶりを見せた理由は?TOPの座を守っただけでなく、得点も伸ばした「横浜」。まさしく、大横綱という感じだが、その理由はどこにあるのだろう?
SUUMOの分析によると、「子育て世帯」での得点が伸びていることが大きな要因だという。近年、横浜市は、子育て支援を強化している。子どもを預かるサービスについて無料クーポンを配布(2023年6月~)したり、中学生まで医療費の無料化を所得制限なしで実施(2023年8月~)したりと、子育て施策に力を入れていることが影響したのかもしれない。
同じ横浜市にある「桜木町」と「みなとみらい」もランクアップしているが、みなとみらい地区で企業本社、研究施設等を誘致が進んでいるため、「働く」場としても注目されている。また、2023年に音楽特化型アリーナ「Kアリーナ横浜」、バーベキュー施設なども備えた「ザ・ワーフハウス山下公園」などのスポットもオープンし、「遊ぶ」場としての魅力も増している。こうした総合力が、横浜の強みなのだろう。
SUUMO住みたい街ランキング2024首都圏版 記者発表会資料(出典:リクルート)
「大宮」と「吉祥寺」、天下分け目の鍵は?大宮が人気を維持し、吉祥寺が人気を落とした形での入れ替わりとなったが、その要因はどこにあるのだろう?
おしゃれな街、公園のあるクリーンな街の印象が強い「吉祥寺」は、女性や夫婦+子ども世帯、40代に人気はあるが、「大宮」は男性や夫婦のみ世帯、20代・30代に人気が高かった。つまり吉祥寺は、大宮の人気に押されて、男性や20代・30代などから支持を得られにくくなったということだ。
2024年の属性別「大宮」「吉祥寺」の順位(出典:リクルート)
では、大宮が男性や20代・30代などに支持された理由はなんだろう?
その一つ目が、「働く」環境だ。「魅力的な働く場や企業がある」「コワーキングスペースなど仕事のできる施設がある」といった理由が高いのだ。近年は、東京都からの企業移転も多く、オフィス賃料も手ごろなため空室率も低くなっているという。今後、大型のオフィスビルの計画もあり、働く場としての魅力が街の人気を高めているのだろう。
二つ目は、商業施設の充実ぶりだ。「大宮」に住みたい理由として目立ったのは、「買う」と「遊ぶ」の環境(文化・娯楽施設の充実、ショッピングモールやデパートなどの大規模商業施設、街の賑わい)の高さだ。大宮駅周辺に店舗数が1000店を超える7つの商業施設があり、散歩デートもできる氷川神社参道の先には、NACK5スタジアム大宮を擁する大宮公園がある。
ちなみに、SUUMO編集長の池本さんは、TOP2・横浜と大宮の人気の要因として、それぞれ県内における「コンパクト東京」の価値にある、と指摘している。直径2km圏というコンパクトなエリアに、東京都心の街の魅力が凝縮しているからだ。これなら、わざわざ東京都内の街まで出かける必要はないということだろう。
SUUMO住みたい街ランキング2024首都圏版 記者発表会資料(出典:リクルート)
ジャンプアップの街、「秋葉原」と「練馬」の魅力とは?上位以外で注目の街として、「秋葉原」と「練馬」を挙げておこう。
秋葉原は、先に挙げた「得点がジャンプアップした街(駅)ランキング」で横浜に次ぐ2位で、総合順位も過去最高位の29位になった。人気を押し上げたのは、男性、なかでも30代男性が支持したからだ。
と聞くと、秋葉原は“オタクの街”だからと思いがちだが、そればかりとはいえないようなのだ。街の魅力(住みたい理由)項目の上位を見ると、「コワーキングスペースなど仕事のできる施設がある」「魅力的な働く場や企業がある」と「働く」環境がカギになっているのだ。
オタクの街を想起させる、「メディアに取り上げられて有名」「街に賑わい」「文化・娯楽施設が充実」といった項目は、その次に来ている。また、特徴的だと思った項目は「周囲の目を気にせず自由な生活ができる」。オタクや外国人などを受け入れる懐の広さが、街の魅力になっているようだ。
「秋葉原」の街の魅力項目TOP10(出典:リクルート)
練馬区は、東京23区の中でも自然が豊かな区だ。その中心にあるのが、練馬駅だ。筆者は電気系に弱いので秋葉原にはそれほど行く機会がないが、練馬文化センターの落語会にはよく足を運んでいる。練馬駅周辺には行政の施設が集約しており、賑わいもあって便利な街だ。近くにできた、ハリーポッターのスタジオツアー東京にはぜひ行きたいと思っている。
この練馬が、得点がジャンクアップした街(駅)ランキング5位、総合順位も過去最高位の48位になった。SUUMOの分析では、男性20代・女性40代で支持が伸びたというのも意外だった。子育て世帯向きの街だと思っていたからだ。
これは、遊園地「としまえん」跡地に、魅力的なテーマパークと東京都の都市計画公園である「練馬城址公園」ができることが大きいのではないか。公園内を貫く石神井川沿いに桜などの樹木が並び、防災井戸などもある場所だ。
練馬城址公園は、今後、広域防災拠点となるほか、緑と水の空間、交流活動が行われる空間などが誕生する予定。段階的に整備される計画だが、テーマパーク開園と合わせて一部が開園している。
もちろん、4路線が利用できる利便性の高さの割には23区の中でも賃料などが安く、コスパが良い街という点は、人気となる大きな理由だ。
「練馬」の街の魅力項目TOP10(出典:リクルート)
さて、再び総合順位の上位を見ていこう。SUUMOでは、首都圏の都県別にもランキングを出している。東京都民ランキングでは、1位「吉祥寺」、2位「恵比寿」、3位「新宿」、神奈川県民ランキングでは、1位「横浜」、2位「武蔵小杉」、3位「桜木町」、埼玉県民ランキングでは、1位「大宮」、2位「浦和」、3位「さいたま新都心」、千葉県民ランキングでは、1位「船橋」、2位「流山おおたかの森」、3位「千葉」、茨城県民ランキングでは、1位「つくば」、2位「水戸」、3位「研究学園」、と、それぞれの街が上位を占めている。
一方で、「横浜」は東京都民で11位、埼玉県民で5位、千葉県民で6位など、広範囲からの支持を得ている。また、「横浜」は神奈川県民で得点が932点、「大宮」は埼玉県民で775点と、県内で圧倒的な得点を得ている。人気が分散する東京勢の街と比べると、“わが街”感が大きいというのも強みだろう。
●関連サイト
・SUUMOリサーチセンター「SUUMO住みたい街ランキング2024 首都圏版」プレスリリース
“最寄駅がない―”静岡県牧之原市にある図書交流館「いこっと」が話題です。人口減に悩まされる街の小さな図書館が、複合施設内にテナントとして移転し、拡大オープンしたのは2021年のこと。2年後には累計来館者数が25万人を突破しました。市内はもとより、市外や県外などの遠方から足を延ばす人がいるほどです。人口減少エリアの図書館がなぜこれほどにぎわいを創出し、街の中心地に変化をもたらしたのでしょうか。
買い物客と入り混じる、パブリックな図書交流空間静岡県牧之原市は、県・中央部の沿岸沿いにある人口約43,000人の小さな街。2005年に、旧・相良町と旧・榛原町の2つの町が合併して誕生した市の中心部には、大型複合施設「ミルキーウェイショッピングタウン」があります。核店舗として地域資本のスーパーマーケットが入居するほか、ドラッグストアやカフェ、飲食店などが集う、いわば街の台所です。
複合施設「ミルキーウェイスクエア」内に図書交流館「いこっと」がある(写真撮影/片山貴博)
(画像提供/牧之原市立図書交流館 いこっと)
ここにテナントとして図書館が入居しているのだから驚きです。店内に入ると、右側には図書スペース、左側にはカフェ、子育て支援センター、ボルダリングジムなどがならびます。各スペース間は、扉や間仕切りなどがほぼなく、シームレスな空間です。
カフェの横にはオープンスペースも併設しており、注文したメニュー以外の飲食も可能。レンタサイクルコーナーもあり、観光客や地元客の「足」として活躍している(写真撮影/片山貴博)
オーナーが目利きした地元クラフト作家の作品や名産品を集めたワゴンショップがにぎわいを演出している(写真撮影/片山貴博)
複合施設内には子育て支援センター相良「あそぼっと」も併設。子どもと遊んだ後は図書スペースやカフェへ。気軽に行き来できるのは嬉しいこと(写真撮影/片山貴博)
複合施設の一角にはボルダリングや卓球スペースもあり、大人も子どもも汗を流している(写真撮影/片山貴博)
「ミルキーウェイスクエア」内の共用スペースでは、バランススクーターが使用できる。放課後や休日になると「いこっと」の横では、スクーターに乗った子ども達の姿があふれる(写真提供/牧之原市)
さらに「いこっと」内には、フリーWi-Fi(ワイファイ)や電源を完備したパソコンスペース、靴を脱いでくつろぐことができる小上がりのスペースなどの11のスペースがあります。
特筆すべきは、店内の各スペースに図書の持ち込みがOKということ。そして、「いこっと」では訪れている人同士で会話をすることも許されており、厳しいルールが敷かれていません。そう、ここは図書館ではなく図書「交流」スペースだからなのです。
フリーWi-Fiや電源を完備した交流・談話エリア。ここで司書や来館者との会話も生まれているそう(写真撮影/片山貴博)
小上がりになっている読み聞かせスペースでは、ゆったりとくつろぐことができる。おはなし会も定期開催されているのだとか(写真撮影/片山貴博)
「いこっと」の奥にある学習室。館内で唯一会話ができないエリア。静まる空間で集中したい人におすすめ。集中して勉強したい人、読書したい人のためにも配慮をしている(写真提供/牧之原市)
シェアオフィスのように、飲み物OK、PC使用可能の閲覧席。仕事や勉強をする人が集まる(写真撮影/片山貴博)
図書の好きな市民のために居場所をつくる牧之原市内には最寄駅がなく、移動手段は車がメインです。この点がネックとなり、定住者が減少、市内の職場も近隣の市から勤務する人が多く、高齢化と人口減少が課題でした。
牧之原市役所 企画政策部の本間 直樹さんはこう話します。
「このエリアにはナショナルチェーン店(全国展開のチェーン店)がないんです。ゆえにコンパクトで独自の商習慣と住空間になっています。そのため新たな居住者や人口の流入を見込みたかったのです。市内を活性化するために、きっかけが必要でした」
牧之原市役所 企画政策部の本間 直樹さん。市内で廃校活用プロジェクト「カタショー・ワンラボ」に取り組んだ経験を活かして、「いこっと」のプロジェクトに心を砕いている(写真撮影/片山貴博)
そこで注目したのが図書館です。移転前の図書館は、旧両町には存在していたものの、閲覧スペースは8席、蔵書数も2館あわせても約70,000冊と限られており、満足できるとは言いがたいものでした。
もともと、市内には図書への熱い思いを持つ人が多く存在し、「ゆっくり本を読めるスペースが欲しい」「蔵書数が欲しい」と図書館機能の増強が叫ばれていました。しかし結実には至らず年月が経過していきました。
街の魅力について、心の底から考え始めた市民と市役所は、2018年に「図書館協議会」を立ち上げ、膝をつきあわせて協議をはじめます。177件集まったパブリックコメントのうち、最も強い思いとしてあったのが「図書館が居場所であってほしい」というコメントでした。
「いこっと」の司書、水野 秀信さんはこう話します。
「図書館は”施設と資料と人”この3つがそろって成り立つと言われます。しかしこれまではあまりにもスペースがせまく、居場所にならなかった。”図書館を市民のサードプレイスとして機能させなくてはならない”と、面積拡大の検討を始めました」
「いこっと」の司書、水野 秀信さん。牧之原市に着任後、図書館移転オープンを検討し始め、さまざまなアイデアを実現することにトライしている(写真撮影/片山貴博)
面積拡大となると、考えられるのは施設の移転か新設です。しかし市の財政は豊かではありません。そこで市が考えたのは、既存の空き施設に入居するということでした。
「確かにテナントとして入居するには家賃が発生します。それでも施設を建設するよりは遥かに安く、市の予算の平準化が図れるため、踏み切ったのです」(牧之原市役所・本間さん)
単なる図書館ではなく町のような空間を生み出すちょうど図書館の移転を検討している時、「ミルキーウェイ」内にあるホームセンターの退店が決まりました。そのタイミングで複合施設のオーナーと市役所の担当者との協議を重ねて、図書館がテナントとして移転入居することが決まったのです。
「複合施設のオーナーさんは、地域を盛り上げることにとても熱心で協力的。”図書館を町の居場所にしたい”という私たちの想いを汲んでくれ、テナントとして入居することを歓迎してくれたのです」(本間さん)
「いこっと」の全景。まるでショップのひとつのような開放感あふれる入り口。木材を多用した温もりのある什器が印象的です(写真撮影/片山貴博)
そして、移転先が複合施設に決まったことを、あえて逆手に取ります。設計を依頼した株式会社スターパイロッツ三浦丈典さんが「小さな街のような空間をつくろう」と仕切りのないシームレスな図書スペースを考案したのです。
「一見すると、施設の中に図書館、しかも仕切りのないスペースにして展開することは、実に挑戦的です。ですが、サードプレイスとして機能させるためには理想的である、とこの話を聞いた際に感じました」(本間さん)
その後、牧之原市は移転決定から移転して開館するまでの間、わずか2年で移転プロジェクトを完結させました。
既成概念をくつがえす、自然な交流が生まれる仕組みとしかけ2021年4月に移転オープン。現在の「いこっと」は、明るい照明や意匠に囲まれ、やわらかなBGMが流れるなかに、来館者などによる適度な雑音が混じり合った空間が醸成され、訪れる人の心を穏やかにしてくれます。しかし、一つのテナントとして入ると、仕切りがないことによる図書管理の面などの問題がありそうですが、水野さんは一つひとつ課題をクリアしていったと話します。
「いこっと」の入り口は複合施設共用部との間仕切りがなく、開放的。黒い梁が入り口の目印になっている(写真撮影/片山貴博)
「”本が盗難されるのでは”といった課題が挙げられていました。また、他のスペースやカフェで読むことができると、”本を汚してしまうのでは”という心配の声も。しかし、そのようなことは一度もありませんでした。複合施設内で互いに見守っていること、適度な自由があるからこそ、利用者が愛着を持って大切に使ってくれているからなのでしょう」(司書・水野さん)
まるで秘密基地のようなキッズワンダーコーナー(児童書コーナー)。随所に閲覧・学習ブースがあり、親子で、子ども同士で楽しむことができる(写真撮影/片山貴博)
もちろん本が失われないように設備の工夫もされています。館内の資料にはICチップをつけており、居場所やデータがきちんと管理できます。また、開館時・閉館時の警備が心配です。そのため「いこっと」が閉館している時間帯は、開口部にシャッターの代わりとしてネットを張り、警備システムを作動させることで安全も保っています。
次々と新しい仕組みを取り入れていきますが、なかでも”どのスペースでも会話が可能”となったことは、図書館の既成概念をくつがえす取り組み。最初はやはり理解をしてもらうことが難しかったと振り返ります。
「『図書館は静かに過ごすものではないのか?』と叱られることもありました。その度に、ここは図書館ではなく、図書交流スペースであることを丁寧に説明していきました。誰でも初めは違和感があることだと思いますが、次第にそのような声も聞かなくなりました。会話が生まれていることを自然に感じてくださっているように思います」(水野さん)
従来の図書館より書棚を低くし、空間を広く開放的な視認を確保。さらに、分類も上空部に掲げてわかりやすく見やすいサインを採用している(写真撮影/片山貴博)
年間購入費をかけて維持している充実した雑誌コーナー。「雑誌スポンサー制度」により企業や団体、個人等から雑誌の購読料を負担いただいている。雑誌カバーに公告、ラック下部にスポンサー名を掲載(写真撮影/片山貴博)
移転に合わせて図書のセレクトの見直しも行いました。
「シニアの方から『文学作品が以前より少ない』とご指摘をいただくこともありますが、どの年代の人も本が楽しめる場所をつくりたいと思っています。子ども向けの書籍や、ティーン向けの書籍、市民から要望の多かった雑誌を大幅に増やしました」(水野さん)
より人が滲み出す場所を形成していきたい「いこっと」の移転オープンから2年が経過し、今ではすっかり街の交流スペースとして馴染みつつあります。
午後3時を過ぎたころ、学校を終えた子どもたちが一気に「いこっと」へ飛び込んできます。目指すは文字探しラリー。館内の各所にあるキーワードを集めるために一生けんめいにかけ回ります。
「ねえねえ、やぎちゃん。今日はキーワードを教えてよ~!」と館長である八木 いづみさんのもとに飛び込んでくる子どもたち。
文字探しラリーのヒントを教える館長の八木さん。「いこっと」では大人と子どもの距離もフラット。気軽に声をかけてきます(写真撮影/片山貴博)
子どもたちにせがまれて、館内でヒントを探し歩く旅にも一緒する(写真撮影/片山貴博)
水野さんはこうした風景を「人が滲み出ている場所」と話します。ただ遊びに来ている場所、勉強しにくる場所、本を読む場所。なかには待ち合わせ場所として活用する人もいるのだとか。どれが正解でも良いのだそうです。
コロナ禍で開館し、訪れる人にも、イベントの開催にも制限があったこれまで。ここからは制限が解けたなかで、より交流するイベントを増やしていきたいそうです。
イベントに合わせて司書が作成した制作物。「こうしたらもっと面白くなるのではないか?」と司書たちがアイデアを持ち寄っているのだそう(写真提供/牧之原市)
「”今まで図書館を使ったことがない”という人が足を延ばしやすいよう、図書のイベントとして、季節にまつわる行事を取り入れていきたいです。そして、街の財産である読み聞かせボランティアの方々にもこの場所をもっと活用してもらえたら嬉しいですね。挑戦したいことは山のようにあります」(水野さん)
そう水野さんが話す、「いこっと」の未来。移転したこの場所は、すでに街のランドマークとして馴染み、ハッピーな空気感がただよう場所として確立していました。
「いこっと」の職員たち。20代~60代と年代も幅が広い(写真撮影/片山貴博)
●取材協力
・牧之原市役所
・牧之原市図書交流館「いこっと」
・ミルキーウェイスクエア
・「いこっと」Instagram
2023年11月30日、SUUMO(リクルート)では“百人百通りの住まい探し”をキャッチコピーとした居住支援の輪を広げるプロジェクト「100mo! (ひゃくも)」のイベントを開催しました。これまでもSUUMOでは当プロジェクトの一環として高齢者、外国人、障がい者、ひとり親、LGBTQなど、住まいの確保に配慮が必要な人たちへ向けた取り組みを行う団体や企業を特集記事で紹介してきました。
記念すべきその第1回目のイベントとなった今回は、賃貸住宅業界で居住支援をリードする4社の表彰を行い、各社の取り組みの共有や、パネルディスカッションを通じて「これからの居住支援」について考える会になりました。日々、取り組みを続ける人たちのアツい想いが渦巻いた当日の様子を、詳しく紹介します!
百人百通りのお部屋探しを。賃貸住宅業界が一丸となって目指すためのイベント「100mo!」というプロジェクト名には、「あなたも。私も。みんなも。」、つまり部屋探しをする人も、部屋を提供する不動産会社も、賃貸オーナーさんも、住まいにかかわる全ての人が、満足のできる住まい探しを応援し、実現する社会を目指す、という想いが込められています。
「100mo!」のカラフルなロゴの上には、「あなたも。私も。みんなも。百人百通りの住まいとの出会いを♪」のキャッチコピー(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
いまの日本の社会には「住宅確保要配慮者」といわれる、高齢者、外国人、障がい者、ひとり親世帯、LGBTQ、生活保護受給者など、住まい探しや入居中・入居後に配慮が必要な人たちがいます。家賃滞納や入居中・入居後のトラブルを懸念するオーナーさんや管理会社の判断によっては入居を断られたり、入居審査に通らないことがあります。また、入居してからもこれらの配慮が必要な人たちが安心して暮らせるように、管理会社やオーナーさんが安心して貸せるように、見守りや日々の生活におけるサポート、コミュニケーションが欠かせません。これらを避けずに、むしろ積極的に取り組んでいくことが「居住支援」です。
この「居住支援」を行う企業や団体のメンバーを中心として、当日のイベントの会場には約80名が出席。さらにオンラインでの参加も含め、多くの人がスピーカーの話に耳を傾け、言葉を交わしました!
当日の会場の様子。約80名の出席者以外にも多くの人がオンラインで参加した(撮影/唐松奈津子)
住まいの確保に配慮が必要な人たちへの取り組みで業界をリードする、4社を紹介!会の冒頭でイベント開催に込めた想いを共有した後は、「居住支援」をリードする4社の表彰と取り組み内容の紹介から始まりました。4社に共通するのは住まいを貸す側(オーナー)の偏見や不安を取り除き、借りる側(入居者)の暮らしに伴走し続けていること。仲介業や賃貸管理業という仕事において、私たちが見ている「貸す」「建物を管理する」という部分はほんの一部であることに気づかされます。
愛知県名古屋市で賃貸住宅の仲介と9万1000戸の管理を行うニッショーは、高齢者が安心できる見守りサービス「シニアライフサポート」を提供しています。2013年にサービス付き高齢者向け住宅が社会的な話題となり、建築ラッシュとなった際に、賃貸住宅を探す高齢者に紹介できる物件が少ないことに気づき、社内で起案。電話での安否確認やセンサーなどの機器も活用した見守りで、高齢者とその家族が安心して暮らせるサービスを提供しています。(関連記事)
ニッショーの佐々木靖也さん(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
「シニアライフサポート」の紹介(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
「入居者ファースト」で、あらゆる人の「入居を拒まない」取り組みを続ける京都府京都市の長栄。国内外から多くの観光客が訪れる京都市では提供できる賃貸住宅が限られ、身寄りのない高齢者や外国人は入居を断られるケースが多くありました。そこで、コールセンターやセキュリティー会社、家賃保証会社などとの連携により見守りや生活サポートサービスを提供。また、外国人スタッフを採用するなどして、外国人の入居や生活をサポートしています。(関連記事)
長栄の奥野雅裕さん(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
外国人向けの取り組みを紹介するスライド(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
福岡県を中心に15店舗、4万4000戸を管理する三好不動産は、高齢者、外国人、LGBTQなど、あらゆる人の住まい探しに寄り添っています。それぞれの人たちが抱える問題や事情に違いはあっても「すべての人に快適な住環境の提供をしたい」という基本姿勢のもと、店舗を訪れる人たちのさまざまなニーズにいち早く応えてきました。NPO法人の設立や外国人スタッフの採用、LGBTQの専任担当者の設置など、その取り組みは賃貸住宅全体をリードしているといっても過言ではありません。(関連記事)
三好不動産の原麻衣さん(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
三好不動産では「すべての人に快適な住環境の提供をしたい」という想いで日々の業務に取り組んでいる(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
東京都足立区にあるメイクホームは、障がいのある従業員の部屋探しが難しかった原体験から、高齢者や低所得者、精神障がいのある人や車椅子の人などのお部屋探しに取り組むように。自身も視覚障がいのある社長や、障がいのある家族をもつスタッフが中心となって伴走しています。特徴的なのは、築古で空室になっているアパートなどを投資家から預かった資金でリフォームして提供する「完全管理システム」。日頃のサポートや万一のときの対応も、ノウハウのある同社が全て対応することでオーナーの不安とリスクを軽減しています。(関連記事)
メイクホームの石原幸一さん(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
「完全管理システム」の仕組み(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
居住支援の取り組みの裏側、収益化の方策も惜しみなく。真剣に本音を語るセッション4社の代表者がそろって登壇したパネルディスカッションは、登壇者もその話を聞く参加者も、全員が真剣な面持ちで臨んだ時間になりました。サービス提供の裏側のリアルな話や、ビジネスとして成立、継続し続けるためにどのようにしているのかなど、ここでしか聞けない、率直な疑問への答えも。
当日のパネルディスカッションの様子。ゲストたちが真剣な面持ちで取り組みの裏側を語った(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
「ソーシャルビジネスとしての位置づけで収益を追いかけていない。グループ会社10社の中で、儲かる会社で儲けて、儲からない会社はそのままでいい」(メイクホーム・石原さん)
「高齢化社会で入居する人が減る中で9万1000戸の管理物件をどう収益化するか、活用するかを考えた結果。高齢者の方にとって有益なサービスを追求したところ、仲介手数料に加え、空室率が上がれば管理収入も上がり、付帯サービスの手数料が加わった。さらには会社のブランド力や知名度も上がった」(ニッショー・佐々木さん)
さらに質問者からの「アイデアを具体的な一歩にするためのきっかけは?」という質問には、「チームのスタッフのマインドが一つの方向に向いていると、スタッフが自主的に動くようになり、お客さまからも感謝の声をもらったりすることで一層推進された」(長栄・奥野さん)、「最近ようやく、LGBTQのイベントなどで感謝の声をいただけるように。取り組みの効果を実感するまでには長い時間がかかる」(三好不動産・原さん)、「最初の説明会で『これはいいね』と良い反応をもらえたことで改めて社会に必要とされていることを認識し、プロジェクトを推進する後押しになった」(ニッショー・佐々木さん)など、温かいエピソードとともに笑顔がこぼれる場面もありました。
真剣な話の中でも、心が温まるエピソードに笑顔がこぼれる場面も(撮影/唐松奈津子)
今日のイベントを起点に「大きなムーブメント」へ。これからに期待が高まる国土交通省 住宅局 安心居住推進課の津曲共和さんは「民間の賃貸住宅ストックを活用する上で大家さんの不安はしっかりとらえた上で、どういう対応をすれば住まいを求める人とのニーズをマッチさせることができるのか、各地域でいわばwin-winの関係をつくっていくにはどうしたらいいか、国でも考え続けながら制度や予算を検討していきたい」と言います。
国土交通省 住宅局 安心居住推進課の津曲共和さんは「まだ具体的な話ができる段階ではないが、複数の省をまたいで検討を重ねているので、これからの国の動きも注視してもらえれば」と語った(撮影/唐松奈津子)
ゲストスピーカーとして登壇したNPO法人抱樸 代表、全国居住支援法人協議会 共同代表の奥田知志さんは「親子や親族が助け合って暮らす古い家族のモデルを前提とした現在の制度」と「単身世帯が38%を占める現状」との隙間やギャップを埋める仕組みとして、居住支援の必要性を訴え続けます。
奥田知志さんは、当日のゲストスピーチの中でも多くの課題の提起と解決策の提言をしていた(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
参加者からは「マイノリティにしっかり目を向けていこうとする、住宅・不動産業界の姿勢みたいなものを感じた」「住まいは生活のスタートライン。一番大事な土台なので、このようなイベント・取り組み共有の場があることで、よりたくさんの人が生活しやすく、生きやすくなるといい」という社会や業界へ向けたエールの声が。会場参加者に一言を求めたメッセージボードにも、「今日のイベントから大きなムーブメントを」「より優しい業界の初めの一歩に」といった“これから”を感じさせる言葉が並んでいました。
会場に掲示された「100mo!」メッセージボードには、未来への期待を感じさせる言葉が並んだ(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
ゲストスピーチの中で奥田さんは多くの提言をしていました。住宅確保要配慮者と呼ばれる、住まいの確保が困難な人たちへ向けた住宅の確保には、「セーフティネット住宅の基準の見直しによる拡大」「民間賃貸住宅だけではない、公営住宅など公的賃貸住宅の積極的な活用」「地域における居場所(サードプレイス)の確保」。大家さんがより貸しやすくするための「家賃債務保証制度の充実」や「住宅扶助の代理納付の原則化」や「残置物処理等の負担を軽減できる仕組み」の必要性などです。
登壇した4社も社会の抱える課題に一つひとつ向き合い、解決策を模索し続けた結果、ビジネスに結びつけています。日々、居住支援に取り組む人たちが集まった会、この場に集まる人たちの想いとアイデアを束ねて大きなムーブメントにしていくことで、国や自治体を巻き込んでより多くの人が安心して暮らせる住みやすい社会になる、そんな可能性を感じさせる時間でした。
●取材協力
・株式会社ニッショー
・株式会社長栄
・株式会社三好不動産
・メイクホーム株式会社
・全国居住支援法人協議会
・認定NPO法人抱樸
・国土交通省
住まいの省エネ性能に関心が高まるなか、ハーフビルドで省エネ性能の等級6というハイスペックな家づくりにチャレンジした夫妻がいます。等級6とは7と合わせて2022年に新たに設定された最高水準クラス。ほとんどの新築住宅で、まだそのレベルのものは搭載されていません。2023年には2人が主催するワークショプにも参加させてもらいましたが、無事、建物が引き渡しとなり、すでに半年ほど暮らしを営んでいるそう。ではその住み心地とは? 得られたものと、その幸せな暮らしぶりをご紹介します。
■関連記事:
ZEH水準を上回る省エネ住宅をDIY!? 断熱等級6で、冷暖房エネルギーも大幅削減!
2023年1月、省エネルギー等級6の家を職人さんたちの手を借りつつ、ハーフビルドでつくるというワークショプに参加してきました。午前は壁や床の断熱性を高める施工、午後は焼き杉づくり&お餅つきという大変濃い内容でしたが、その楽しそうな様子は筆者の心に強く印象に残っています。2023年も終わりになり、住まいと暮らしが落ち着いてきたということで、この度、お邪魔してきました。
ワークショップ時の様子(写真撮影/桑田瑞穂)
ワークショプ時の建物外観。あれから約1年が経過(写真撮影/桑田瑞穂)
まず、森川さんのお家について整理しておきましょう。
神奈川県の山間に夫妻と2人のお子さんで暮らしています。完成した住まいは平屋建て、間取りは大きな1LDK、建物面積は約60平米、上部にロフトが30平米というもの。
南に大きなリビング。中央にキッチン・洗面などを配置。無駄のないシンプルな間取り(間取図提供:森川さん)
2024年春の時点で上のお子さんは4歳、下のお子さんは2歳。夫は現在、子育てをしながら地域の仕事をしたり、自宅で養蜂をしてはちみつの販売をしており、妻は育休から仕事に復帰、現在リモートワーク中心に働き、週1回ほど都心部まで通勤しています。
正真正銘の自家製はちみつ。一部を販売しています(写真撮影/桑田瑞穂)
住まいの断熱性能は、省エネ地域区分5(※)の省エネルギー等級6(外皮熱貫流率UA値0.46W/平米K)、気密値はC値0.3という、ZEH以上の高性能住宅です。給湯はエコキュート(ヒートポンプ技術で空気の熱でお湯を沸かす)を採用、空調は6畳用エアコン2台、熱効率80%の第一種熱交換システム、太陽光発電パネルを搭載し、発電した電気は、自宅で使うエネルギー(給湯含む)のほか、電気自動車の充電にも使っています。窓はLow-Eトリプルガラスの樹脂窓(遮熱タイプ)。建物はシンプルでありながらも、実に環境に配慮した、高性能なハイスペックなお住まいです。設計・施工したのはプロの3人、プラス、夫妻とお友達。この性能をハーフビルドで建てられるんだから、すごすぎる……!
※省エネルギー基準地域区分。国内を「1~8」の8つの地域に指定しており、どの地域区分かによって、求められる断熱性能、達成すべき基準値が異なる
太陽光発電の発電・消費・売電状況がリアルタイムにわかります(写真撮影/桑田瑞穂)
樹脂のトリプルサッシ。価格は高くなっても窓はお金のかけどころです(写真撮影/桑田瑞穂)
山の中にある建物。外壁に使われた焼き杉!! 日差しを浴びて超絶かっこいい!!(写真撮影/桑田瑞穂)
建物の引き渡しは2023年3月で、その後も夫妻でDIYしつつ、アップデートして暮らしています。実に暑かった2023年の夏もこの住まいで過ごしました。
南側から建物を見たところ。ちょっと鋭角な切妻屋根が愛らしい!(写真撮影/桑田瑞穂)
まずは、入居して半年経過した現在の気持ちから聞いていきましょう。
「朝昼晩といつも快適で体調がすこぶる良くなりました。特に夫は、冬は寒いと布団から出られず元気がなかったのですが、今は毎日元気。必要以上にエネルギーを使ったり、暑い・寒い・冷たいに気を使うストレスから解放されました。また、(自分たちの手でハーフビルドをして)構造や仕組みがわかっているから、何かあった時にどうしたらいいかわかる安心感もあります。エネルギーに依存しない暮らしはシンプルに気持ち良い。断熱性能の低い家に住んでいたころは、環境に配慮した暮らしがしたいと思いながらも、大量にエネルギーを使わなければ快適に過ごせない毎日に違和感がありました。今は、地球環境や次の世代に対してもやもやしていた気持ちが、少し晴れました」と妻は話します。
省エネ性能を高めた住宅にお住まいの人からよく聞くのが「健康になった」という話。室内の寒暖差によるストレス、ヒートショックは高齢者のみの問題のように思われがちですが、実はかかっている負荷は若い人でも同じ。慶應義塾大学の伊香賀 俊治(いかが・としはる)研究室では、「室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる」のほか、「暖かな住まいでは風邪をひく子どもの数が減る」などの研究結果もあります。年齢や性別関係なく、あたたかい家は快適だといえるのでしょう。
■関連記事:
室温18度未満で健康寿命が縮む!? 脳卒中や心臓病につながるリスクは子どもや大人にも。家の断熱がマトな理由は省エネだけじゃなかった
リビングの様子。現し仕上げで見える県産材。壁は漆喰。友人の左官職人に協力してもらい、みなで塗りました。その仕事ぶりにも感動!(写真撮影/桑田瑞穂)
上部にあるロフトの様子。屋根裏ってどうしてこうワクワクするんでしょう(写真撮影/桑田瑞穂)
妻の仕事の様子。出社することもありますが、在宅で仕事するにはちょうどよいスペース(写真撮影/桑田瑞穂)
冬でも室温は常に20度前後。光熱費は1/4以下に! 建築費は2810万「朝昼晩いつも快適」というのは、データでも裏付けられています。森川さん宅には家の内外室内あわせて9の温度計をつけていますが、最も暑かった日も最も寒かった日も、室温がほぼ一定しているのがわかります。エアコンは2台設置していますが、動いているのはほぼ1台のみ!
◆もっとも暑かった日と寒かった日の室温の変化
最も暑かった2023年7月30日のグラフ。外気温40度を超えている(!)のに対し、室内は温度差にムラがなくどこも28度程度(データ提供:森川さん)
最も温度差があった2023年11月24日のグラフ。外気温3度から20度まで上昇しているのに室温はおよそ20~25度で安定している(データ提供:森川さん)
特筆すべきは、建物の中、どこの箇所でも温度差がほとんどないことでしょうか。以前は断熱性能の低い賃貸一戸建てで、厳冬期は電気代が最大3万6000円を記録。さらに給湯のガス代が1万円、灯油ストーブの灯油代が5000円、山の暮らしで車移動が多かったためガソリン代は月2万円と高め。光熱費+ガソリン代で合計月7万円を超える時期もありましたが、今は日の短い冬でも電気代が月1万円程度(給湯、電気自動車充電分含む)まで下がりました。日の長い夏なら売電収入で月々のエネルギーコストはプラスになります。エネルギーを使わないのは節約になるわけですから、高性能住宅は、健康で、エネルギーを使わず、家計にもやさしいということがいえるのがわかります。
換気口。常時換気されていて、24時間ゆっくりと空気は入れ替わっていて、心地よさも抜群です(写真撮影/桑田瑞穂)
第一種空調換気で、室内の温度と湿度の調整を行います(写真撮影/桑田瑞穂)
取材に訪れた日も12月で外気温は8度ほどでしたが、室内はエアコン1台で十分にあたたかくなります。お子さんたちは裸足でしたし、人が発する熱もあり、「少々窓をあけましょうか」という話にもなるほどの心地よい温度になります。また、第一種空調換気により常時換気されていて、24時間ゆっくりと空気は入れ替わっていて、家の一番のお気に入りは「温度と湿度の快適さ!」と胸を張ります。
ロフトからキッチン・リビングを見下ろす。日差しがたっぷりと注いでいます(写真撮影/桑田瑞穂)
「もう以前のような寒い家には戻れないなと思います。夏も冬も快適なのはもちろん、春と秋も超気持ちいい! ちなみに2番目のお気に入りは、廃材をたくさん使ったこと。ご近所に廃材があるのでもらってきて、棚やキッチンに使いました。『そこにあるものを活かす』はエネルギーもコストもかけてない、シンプルだし心地よい。自分で集めた廃材が家になってめっちゃ嬉しいです!」とにこやかに話します。
リビングからキッチンをのぞむ。キッチンカウンターの正面は、外壁の焼き杉の端材を加工し「浮造り」にした板を張りました(写真撮影/桑田瑞穂)
地元で廃材などももらえるそう。棚をつくるのもお手の物(写真撮影/桑田瑞穂)
ここまで来ると気になるのが、価格です。総工費(本体価格に加え、キッチンなど設備費)2810万円ほど。これに設計費や外構工事含めた付帯費用を加算し、総額で3500万円ほど。この性能でこの価格というのは、設計や施工に携わったみなさんも「リーズナブル!!」と評するほどのコスパです。
家づくりで見えてきた、職人への敬意と新しい人生設計と施工に携わったHandiHouse projectの中田りえさんは、この価格について、「高性能な住まいは『高い』と思われがちですが、この家は断熱と気密、窓や玄関など、後からリノベやリフォームでは変えにくい機能面に『全振り』しています。反対に室内の建具、仕切り、設備は最小限にし、あとでDIYしたり発注したり、暮らしにあわせて可変できるようにしています」といいます。
ワークショプで建築面での解説をしてくれたHandiHouse projectの中田りえさん(写真撮影/桑田瑞穂)
収納も扉を設けずに節約し、布でゆるく仕切ることでコストダウン(写真撮影/桑田瑞穂)
高性能な躯体をつくり、コンテンツはのちのち充実させていくという考え方ですね。また、ハーフビルドしたことで夫はDIYスキルを獲得。棚づくりなどはお手のものとなり、現在では最も大変だった黒い外壁として使用している「焼き杉づくり」にはまり、“株式会社焼き杉”をつくりたいというほど。今も友人宅の焼き杉づくりを手伝いに行くこともあるそうです。
「焼き杉は西日本でよく使われている手法で、防虫、防腐、調湿効果などがあります。我が家では外壁に使うため杉を焼いたのですが、その数約230本! 全部で1カ月くらい、朝から夕方まで焼き続けた(笑)。毎日50点~80点くらいを行き来して試行錯誤しながら、最後のほうは毎回98点のクオリティーに。上達していくのがとにかく面白かった」と夫。
大量の杉を焼くためにご近所の仲間(初対面の人も)、旧友、元会社の先輩などなど総勢30人くらいが参加し、焼杉をきっかけにいろんな人との出会い、再会もあったそう。
焼き杉づくりの様子。めっちゃ盛り上がりました(写真撮影/嘉屋恭子)
外壁をよく見るとシックスパックのような凸凹があります。一つとして同じものがない(写真撮影/桑田瑞穂)
焼き杉以外にも「図面、設備以外はほぼ決まっていない状態で、細かいところは現場で決めながら進めた」というライブ感も貴重な体験になったようです。
「図面だけだとイメージがつかないことばかりで、毎日、現場でリアルに想像しながら仕様や細かい部分を決められたので、家の満足度がとても高いんです。休憩タイムにアイディア出しをしたり、家をつくってる感があって楽しかった。こういう家づくりがもっと広まったら、新居に引っ越して後悔する人、家づくりの工程でストレスを感じる人も減るんじゃないかな。家を買うというモノ消費から、家をつくるという『コト消費』ですね」と夫はその手応えを話します。
3人の多能工と協働作業をするなかで「来世は大工になりたい!」というほど職人の身のこなしの美しさ、手際のよさに感動したとか。わかります、職人さんってカッコいいですよね……。こうして得た「家づくり」の知見を活かし、夫は今、会社勤めとは異なる、人生を歩みはじめています。
もう1棟建てるなら? ハーフビルドでおすすめする工程は?今、家づくりを終えてみての感想、夫妻ともに得たものはあるのでしょうか。
「本当の意味での建築の民主化は、ただ作業に参加するだけでなく、できなくてもいいからとにかく自分でやってみることだと思いました。今回、私たちは知り合いの山の杉やヒノキを使いたくて地元の林業会社、製材所に直接相談に行ったんですが、急峻で狭い山道から木材を運び出すのが難しく、搬出コストの問題で断念しました……。結果的に地域の製材所に津久井産材などの地元の木材を発注しましたが、日本の山が放置される理由と原因がわかり、山を見る目が変わりましたね」と収穫と課題感を口にします。
眼の前に建材適齢期の杉があるのに使えない、もどかしさ、苦しさ。顔の見える関係で建材を調達して家づくりをしたいと思っても、そう簡単にはいかないのには理由があるんですね。
「今回、自分たちでフローリングの製材(伐採した木を角材、板材として加工すること)もやってみて、いかに既製品が使いやすく、なぜ普及しているのかがよくわかったんです。仕上がりの精度や施工のしやすさがまったく異なるので。“仕上がりのラフさ”の許容範囲は人によって違うと思いますが、私たちは高い精度を追求するのではなく、本来の木の性質を活かした風合いが残っていてもいいし、施工時に多少の手間がかかっても、そこには人の手触りが残ってるからいいのでは、という結論に落ち着きました。画一化された商品以外の選択肢も含め、一般の消費者が自分の好みや許容度によって選べるようになればいいなと思います」と妻。
知っているのと体験したことがある、この2つには雲泥の差がありますが、まさに森川夫妻にとってはそんな家づくりとなったようです。
家族の寝室として使っている部屋。こちらにも無駄がありません!(写真撮影/桑田瑞穂)
では、ハーフビルドやDIYでおすすめする工程があるとしたら、どのようなものがあるのでしょうか。
「工程を区切ってポイントで参加するのではなく、薄くてもいいからできるだけ広い範囲の工程に参加するのがいいと思う。毎週末土日に差し入れを持って見学するだけでもいいし、基礎から引き渡しまでの全工程が家づくりなので、とにかく多くの工程に関わるのが面白いです。もしDIYで参加するなら、土台組み、断熱施工、構造用合板を組むなどの完成後、目に見えない構造部分に関わるのがいいと思う。石膏ボードを張ったあとは、あとからリノベしたり塗り替えたりできるけど、石膏ボード張るより前の、構造に関わる部分はハーフビルドでしか経験できない領域だから。興味が湧いた方にはぜひおすすめです」(妻)
聞けば聞くほどに濃い「ハーフビルド体験」ですが、今、もう一軒、建てるとしたらどんな家を建てたいでしょうか。
「新築じゃなくて、中古を断熱改修して快適に住めるようにしたい。そのノウハウが広まればもっと快適な家が増えるはず。新築現場ではとにかく大量のゴミが出ます。もっと空き家が流通して、断熱改修でストック活用が必要だと、改めて思いました」といいます。
HandiHouse projectの中田りえさんは、今ある中古住宅の断熱改修にも携わっていますが、コストや施工といった面での難しさを痛感しているといいます。だからこそ、「せめて新築をつくるときは、断熱・気密ともに高性能な住宅にこだわってほしい」とアドバイスします。
2023年のワークショプ、そして今回の完成後の様子を見て、筆者の印象はとにかく、「『家づくり』ってこんなに楽しいものだったんだ!」という事実です。とかく家は「買う」「借りる」という意識でしたが、もしかしたら近代化・工業化、大量生産の時代に、本来、あったはずの「家を作る喜び」を手放してしまったのではないか、とすら思います。
総人口が減り、工業的な家と人のあり方、地球環境を含め、潮目が大きく変わる今、施主も施工する人も、周囲の人も巻き込んだこんな楽しい家づくりを、取り戻せたらいいなあと切に願います。
今回のプロジェクトに携わったみなさんと(写真撮影/桑田瑞穂)
青空に映える……(写真撮影/桑田瑞穂)
●取材協力
森川屋
ハンディハウスプロジェクト
第一生命保険は、住宅購入時にペアローンを利用する世帯向けに、夫婦などのいずれかに万一のことがあった場合に両者のローン残高の合計を保障する連生団体信用生命保険の取り扱いを始めると公表した。取り扱い開始は、2024年7月から。そこで、今回はペアローンについて、深掘りしていこうと思う。
【今週の住活トピック】
ペアローン利用者の連生団体信用生命保険の取扱開始/第一生命保険
まず、ペアローンとは何かを説明しよう。
ペアローンとは、一つの物件を購入する際に、同居する夫婦などが、それぞれ契約者として住宅ローンを組む方法だ。それぞれの収入に応じて借り入れができるので、どちらかが単独でローンを組むよりも借入金額を増やすことができる。それぞれが住宅ローンの契約を結ぶことになるので、自分の住宅ローンについて団体信用生命保険に加入し、住宅ローン減税を利用できることになる。
ただし、同じ金融機関で同時に住宅ローンの借り入れをし、お互いが連帯保証人になる必要がある。また、2本の契約が発生するため、ローンに関する事務手数料や登記費用などの諸費用がそれぞれにかかってくる。
出典:第一生命保険のリリースより転載
新築マンション購入者の3割がペアローンを利用近年、ペアローンの利用者は多くなっている。
リクルートのSUUMOリサーチセンターが実施した「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」によると、世帯主と配偶者のペアローンは、全体で29.9%となっており、近年はおおむね3割で推移している。
出典:リクルート「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」より抜粋して転載
ペアローンの比率は、「既婚・共働き世帯」で見ると、48.2%と半数近くに達している。さらに、共働き世帯で世帯年収が1000万円以上に限ると72.6%にまで達する。フルタイムで働くなど、それぞれに一定の年収がある共働き世帯では、ペアローンが当たり前になっているようだ。
ペアローンと収入合算の違い夫婦で協力して住宅を購入するには、ほかに収入合算という方法もある。
収入合算は、夫婦どちらかが単独で住宅ローンを組み、相手側の収入を合算する方法。合算した金額をもとに住宅ローンの審査を受けることができ、収入合算者は、連帯保証人になる必要がある。
収入合算で一般的な連帯保証の場合、収入合算者は団体信用生命保険の対象にはなれず、住宅ローン控除の利用もできない。例えば、夫が住宅ローンの契約者となった場合、夫が亡くなったときには、残りのローン全額が保険で清算されるが、妻が亡くなって収入が減少したときでも、ローンの返済はそのまま続くことになる。ただし、連帯債務の場合(【フラット35】など)は、収入合算者は住宅ローン控除が利用でき、デュエット(ペア連生団信)に加入すれば団体信用生命保険の対象になれる。
ペアローンの連生団体信用生命保険とはペアローンの場合、それぞれが住宅ローンの契約者として団体信用生命保険に加入するので、たとえば夫が亡くなった場合は夫のローンだけが保険で清算される。妻は従来通り、自分が借りたローンの返済を続けることになる。
今回の連生団体信用生命保険は、ペアローンの利用者それぞれを被保険者として、借入額の合計額をそれぞれの保険金額として団体信用生命保険に加入するもの。夫婦などのいずれかに万一のことがあったら、両者のローンをまるごと保険で完済できるようになる。
住宅ローンは長期間返済し続けるものなので、団体信用生命保険に加入するのが原則だ。疾病保障特約や所得補償特約などを付けることができるものもあり、連生団体信用生命保険が加わることで、保険の選択肢が増えることはよいことだろう。ただし、それに伴う保険料、保険が適用される条件などにも考慮したうえで、自分たちはどこまでの保障が必要かをしっかり検討する必要がある。
●関連サイト
第一生命保険「ペアローン利用者の連生団体信用生命保険の取扱開始」
山口県下関市にある上原不動産は、下関市で賃貸住宅の仲介・管理業務などを主に行っている不動産会社です。住宅を確保することが難しい人たちへの支援を、1982年の会社設立当初から行ってきました。
代表の長女であり、上原不動産の常務取締役である橋本千嘉子さんは、地元を元気にしたい、離れていく若者たちが戻ってきたいと思うような街にしたいと、空き家再生事業「ARCH」を立ち上げ、街づくりや再生にも力を入れています。そこで今回は橋本さんの「下関の街の再生」にかける想いや、活動について、話を聞きます。
山口県下関市にある上原不動産は、下関駅前を中心に、高齢者、障がいのある人、低所得者、外国人やひとり親世帯など、住まい探しに困難を抱える人たちに寄り添い、居住支援を積極的に行っている不動産会社です。
代表の長女である橋本千嘉子さんは、会社の仕事として居住支援や賃貸仲介・管理業務を行う傍ら、自身が20年以上不動産を管理・運用するオーナーでもあり、現在、個人で所有する物件は、60部屋ほどに上ります。
「古い建物を活かして利活用していくことで収益を上げていくことに興味がありました。空室だらけのアパートを購入し、リノベーションして満室にしていくことが私のライフワークだったんです」(橋本さん、以下同)
個人でも約60部屋の物件を所有している橋本さん(右)。空室の物件をリノベーションをして満室にするところから街の空き家再生に乗り出すようになった(画像提供/ARCH)
橋本さんは「物件の再生」というスキルが身につくにつれ、空き家活用やリノベーションに興味を持つようになっていったといいます。さらに、自分が所有する建物だけでなく「街づくり」にも目が向くように。そのきっかけは、5児の母でもある橋本さんが、中学2年生の子どもから言われた「下関って何にもない、ダサい」という言葉でした。
「本当にそのとおりだな、って反論できませんでした。それで子どもたちがこれから先もこの街で育っていくために、どうやったら住みやすくなるかを考えるようになりました」
街の活性化やサードプレイスづくりに取り組む。空き家再生事業ARCHを設立橋本さんは、より良い街にするためにいろいろなセミナーやスクールに通いました。そして、さまざまな学びの中で、街にコミュニティを築いて街の価値を上げる方法を知ったそうです。
「監視し合うコミュニティではなく、自分の都合にあわせて誰もが気軽に集まれるような場所、それこそが『サードプレイス』なんだと気づきました。そこから、今までやってきた居住支援だけに留まらず、地域共生や街づくり、空き家問題などが全部つながっていったんです」
長期間借り手がつかず、古すぎて売却できない建物をリノベーションしてサードプレイスに(画像提供/上原不動産)
時を同じくして、商店街のビルのオーナーが高齢者施設に入るため、不動産を処分したいという話が橋本さんのもとに舞い込んできました。
「その時話のあった建物は、古すぎて売り物にならないようなものでしたが、まちづくりについて学んだときに、私は『商店街の真ん中など目立つ立地のヘンテコな物件があったら買います』と宣言をしていたんです」
そこで、橋本さんは物件を購入し、市の「リノベーションまちづくり拠点活動支援補助金」を利用して物件を改修。駅前を活性化させたいという想いから、その古い建物をリノベーションし、新たにレンタルスペースとしてオープンさせました。それが「ARCH茶山」です。
さらに商店街にあるエレベーターなしの3階建ビルで7年以上借り手がつかなかった物件など、2カ所を借り上げ、同じようなリノベーションを施し、シェアオフィスやコワーキングスペース、シェアキッチンとして再生させました。
ARCH茶山には、ギャラリーとして利用したり、ポップアップショップとして出店したりできるスペースも(画像提供/ARCH)
イベントスペースとしても活用。写真はキッズ向けのクリスマスイベントの様子(画像提供/ARCH)
交わらない人たちをつなげたい。「下関市100人カイギ」を開催橋本さんは、それらの建物を利用して誰もが集える場所をつくろうと、全国の事例を見に行き、いろいろなイベントを仕掛けていこうと動き始めました。
橋本さんがやりたいこと。それはこれまで交わることのなかった人たちに横串を指すことです。例えば行政においては、部署が違うと横の連携がなくて戸惑うことが多いのだとか。住宅と福祉部、観光と街づくり、どちらも密接に関係していることなのに、なぜか「横の連携が取れていない」と橋本さんはいいます。
「それでも、自分たちの街を良くしたいという思いは同じはずです。だったらこの人たちをくっつけたらいいという発想で、同じ志を持つイベンターの仲間たちとともにイベントを仕掛けています」
その一つが「下関市100人カイギ」です。「100人カイギ」とは、その街で働く100人を起点に人と人とを緩やかに繋ぐコミュニティ。地域のあり方や、価値の再発見を目的として、100人のゲストを呼んだらコンプリート、という期限付きのイベントです。橋本さんたちは毎回、行政の人、学生、企業、起業している人、なにかの“先生”と呼ばれる人、の5人をゲストに呼んで毎月トークイベントを開催し、毎回50~60人の人たちがイベントに参加するまでになりました。
記念すべき第1回目の下関市100人カイギの集合写真。地域医療を目指す医学生や癌で声を失った下関教育委員会の元教育長をゲストとして招き意見交換が行われた(画像提供/ARCH)
建物がボロボロになる前に不動産屋としてできること橋本さんが古い建物を活用しようとする試みには、街に増えつつある空き家をどうにかしたいという思いもありました。「福祉と空き家の問題は表裏一体」だと橋本さんは話します。
「高齢になると、認知症発症の恐れや体の自由が利かなくなり、従来の賃貸物件に住み続けることが困難なケースも。入居者は施設に入ったり、他への転居を余儀なくされ、空室が増えていきます。
同時にもう一つ気付かなくてはならないのが『オーナーの高齢化』です。実は高齢者が住むアパートのオーナーも高齢者であることが多く、オーナー自身がアパートの一室に住みながら賃貸収入で生計を立てている人がいます。建物の老朽化が進み入居者がいなくなると、オーナー自身の生活が成り立たなくなり、生活保護などの福祉的な支援が必要になる可能性を孕んでいるのです」
在宅訪問などで現場を目にしている福祉職の人は、これらの問題を認識しつつも、これまでは「居住支援」や「居住支援法人」の言葉を知らないために、不動産会社へ相談に行きませんでした。
上原不動産が山口県、山口県居住支援協議会と2023年10月に共催した不動産オーナー向けの勉強会のチラシ。居住支援と空き家問題の関係や、不動産と福祉との連携の必要性を訴えている(画像提供/上原不動産)
「本来なら、建物がボロボロになる前にメンテナンスをして、見守りサービスなどを導入し、高齢の入居者が転居せずに住み続けられるのが、入居者にとってもオーナーにとってもベストなはずです。空き家問題に発展する一歩手前の段階で解決するというのも、私たち不動産会社の使命だと考えています」
橋本さんは、居住支援法人の活動を知ってもらうために、福祉施設である地域包括支援センターなどに講演をしにいくことがあります。すると福祉関係の人たちは、居住支援を行っている不動産会社があることを知って驚くのだとか。居住支援法人となって、福祉団体との交流ができたことによって、見えてきた課題もあるようです。
新しい考え方に触れることで街に好循環を生み出したい橋本さんには、不動産業に長く取り組んできたからこその課題感もある様子。
「不動産屋には建物などのハードは得意だけれども、サービスなどのソフトに弱いところがあります。私も以前は、入居に困る方は家というハードが決まれば大丈夫だと考え、その後の暮らしといったソフトの部分にはほとんど関知していませんでした。でもそうではなくて、今では住宅と福祉とが連鎖していかないと生活しにくい人たちが多くいる、と思うようになりました」
橋本さんはセミナーの講師として登壇することも。福祉の話で呼ばれる時には不動産やまちづくりの話をし、 まちづくりの話で呼ばれる時には福祉の話をする。 居住支援を行うには、街全体で住宅と福祉が包括的に取り組んでいく必要があるからだ(画像提供/上原不動産)
100人カイギのようなイベントに下関市出身で活躍している人などが参加することで、また違った視点や新しい考え方に触れることができます。プレイヤーとリードしていく人たちを発掘し、何か新しいことを始めたいという人が現れたら、それを街に落としていくというサイクルを構築しているところだといいます。
さらに嬉しいことに、これらの活動を通じて「なんだか面白そうだから」と下関に定住したいという人が少しずつ増えてきたそう。最初のきっかけをつくることで、街に住む人たちが自分たちで繋がり、やがて街を変えていく。その様を見て、橋本さんは「まだまだこれからですが、不動産屋が動けば、街も変わる」と気づき、不動産業に携わる人としての醍醐味を感じています。
ARCHが横浜市の人権団体NGO EQUAL POWERと共催した、LGBTQ当事者とのトークセッション。上原不動産が管理する物件の入居者が参加するなど、居住支援やまちづくり、空き家活用が一体的に行われることで街が変わりつつある(画像提供/ARCH)
まちづくりや空き家問題の解決、住まい探しに困っている人たちへの居住支援といった橋本さんの幅広い活動や人と人とを結ぶ仕掛けは、不動産会社としてできることの可能性を広げたのではないでしょうか。
橋本さんの活動には、街に人を呼びこみ、街を活性化していくヒントがたくさんあります。まずは動いてみる。そして周りを巻き込んでいく、パワーを感じました。
近い将来、下関は橋本さんの子どもが表現した「何もない街」ではなく、地域共生社会創生のモデル都市になるかもしれないですね。
●取材協力
上原不動産