
23万円 / 61.25平米
東急東横線・東急大井町線「自由が丘」駅 徒歩4分
爽やかな内装に大きなキッチン。玄関のトップライトや、リビングの様々な方角から差し込む光。ここで料理教室とかやったら素敵だろうな、というのが僕の第一印象でした。
エレベーターなしの階段5階、という条件をクリアする必要はありますが、住居はもちろんのこと、そうした教室用途にも利用可能 ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
ニューヨーク人情酒場へようこそ!これは、ブルックリンにある小さな酒場(レストラン)で起こったいろんな出来事。
大都会の夜、一杯の酒から始まる人間模様。作者はこのお店で今お寿司を作っているよ。
NYで日本人の寿司職人を雇うというのは、すごくお金がかかることです。技術を持っている日本国籍の人となると、一定の需要があるため、かなり良い条件を提示しているところが多い印象です。
やはり、日本人はNYのお寿司業界ではすごく重宝されます。自国の料理というのもあり、魚の説明をする時や握っている姿に説得力が生まれ、寿司を食べにくるお客様からの印象が良いのだと思います。寿司カウンターでの仕事となるとお客さんとの会話も仕事の一つなので、出身を聞かれることも多くなります。その際、日本にルーツがあるというだけで一種の信頼が生まれる感覚があります。
NYのお寿司レストランはピンからキリまでありますが、高級店になると一人当たりの単価が300~400ドル(日本円で約4万3000円~5万7000円ほど)になることもザラで、そういったお店では一流寿司職人を雇うのも納得がいきますね。日本で寿司職人として働いていた人がアメリカに移住したところ給料が何倍にも増えたというニュースも目にしたり、ある意味夢のある世界と言っていいかもしれません。
さよなら、トシさん解雇を知ったトシさんのリアクションは思った以上にドライで和やかなものでした。寿司職人をやっているとこういうことはよくあると言われたけれど、思った以上に厳しい世界なのかもしれません。
寿司職人はこだわりが強く仕事に厳しい人が多そうな印象ですが、信じられないぐらい優しくて、働きやすかったトシさん。あっさりとした別れがさらに寂しさを増幅させましたが、いつも明るいトシさんのおかげで最後の最後まで笑顔が絶えない仕事になりました。
NYの飲食業界は本当に入れ替わりが激しいため、1つの仕事を長く続けている人に出会うこと自体がすごく珍しいです。
日本で生まれ育った身としては、バイトであれなんであれ仕事は嫌なことがあっても続けなければならないという考えが染み付いていますが、NYの飲食業界で働く人は無理だと思ったらスパッと辞めてしまいます。
人種・国籍・性別・年齢といったさまざまな要素が絡み合う職場では、思わぬ一言がトラブルの種になることもあり、予期せず急に辞めてしまう人もいたりとお店側も人材の管理がいちばんの頭痛の種です。
しかし仕事を通してでしか知り合うことのないいろいろな人に知り合えることにただ感謝です。
作者:ヤマモトレミ
89年生まれ。福岡県出身。2017年、勤めていた会社の転勤でニューヨークに移住。仕事の傍ら、趣味でインスタグラムを中心に漫画を描いて発表していたところ、思った以上に楽しくなってしまい、2021年に脱サラし本格的に漫画家としての活動を開始。2022年にアメリカで起業し個人事業主になりました。ブルックリンのレストランで週4で寿司ローラーをやっています。
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2023年、リクルートが3年ぶりに「住みたい街ランキング」の宮城県版/仙台市版を発表。アンケートは、宮城県に居住している20代~40代の男女1,000人を対象に実施したもの。ランキングと併せて評価された理由、背景などを、杜の都に生まれ育ち、宮城をこよなく愛する筆者と共に見ていこう。
2023年「住みたい街(駅)」も、1位は仙台、2位は長町まずは「SUUMO住みたい街ランキング2023 宮城県版/仙台市版」の結果のうち、「住みたい街(駅)」を、宮城県全体、仙台市全体の両面から紹介する。
宮城県版・仙台市版ともに「住みたい街(駅)」の1位は「仙台」。「働く、遊ぶ、学ぶ、住む、憩う、潤う」が融合した都市機能と自然のバランスの良さが「住みたい」につながっている。2020年のランキングも、宮城県版・仙台市版ともに1位は東北の顔となる「仙台」で、2位は仙台南の副都心「長町」で不動の人気だ。
東北の玄関口 JR仙台駅(写真/PIXTA)
上昇がめざましいのは、宮城県版、仙台市版共に順位を上げた「北仙台」。同駅から仙台市地下鉄南北線でひと駅隣の「北四番丁」も、安定した人気だ。「北仙台」「北四番丁」については、以降で解説する。
宮城県版で2020年に17位から9位にランクアップした「古川」は、JR仙台駅から東北新幹線でひと駅、所要時間12~13分、高速バスも利用でき通勤圏だ。
仙台市版で9位の「五橋」は2018年以降最高位となった。2023年4月に、仙台市地下鉄南北線「五橋」駅から徒歩1分に東北学院大学五橋キャンパスが開校。その影響で周辺の商店街、賃貸物件のマンション、アパートの動きも活況を呈し、地価も上昇傾向にある。
また宮城県版で、前回ランク外から大きく飛躍したのが11位の「小鶴新田」、12位の「多賀城」、14位の「宮城野原」で、いずれもJR仙石線沿線の駅だ。
沿線別の「住みたいランキング」は以下の通り。
沿線別は、1位は「仙台市地下鉄南北線」、2位は「仙台市地下鉄東西線」と仙台市地下鉄がツートップ。仙台市地下鉄は仙台市民の通勤・通学・外出の大事な足になっている。
2015年に開業した仙台市地下鉄東西線の東の起点、荒井駅(写真/PIXTA)
駅から徒歩10分以内の「駅近」物件は購入・賃貸ともに人気を集めているが、仙台市地下鉄駅は特に人気だ。
仙台市に次ぐ「住みたい自治体」は仙台市のベッドタウン、名取市・富谷市宮城県・仙台市別のランキングだが、1位~7位まで順位は同じ。仙台市の5区「仙台市青葉区」「仙台市宮城野区」「仙台市太白区」「仙台市泉区」「仙台市若林区」が上位5位を占める。
続くのが、仙台市に隣接するベッドタウン、名取市、富谷市。名取市は、東北最大の国際空港のある街で、海、川、山が近く広い公園もあり、街並みが整然として美しい。イオンモール名取にある子育て支援拠点「cocoI’ll(ここいる)」をはじめ、子育て・子どもを支援する施設やイベントが充実しているほか、春まつり、夏まつり、秋まつりと名取3大祭りを開催するなどイベントが多い。
富谷市は、2023年度から公立の小・中学校の学校給食を完全無償化。2023年6月に江戸時代に宿場町の物流を支えた荷宿を活用したビジネス交流ベース「荷宿-NIYADO」がオープン。公園のような雰囲気の富谷市営墓地とパークゴルフ場が隣接する「(仮称)やすらぎパークとみや」が大亀山森林公園近くに2024年度にオープン予定。さらに、市民の声を取り入れ、図書館をはじめ、スイーツステーション、児童屋内遊戯施設、公民館といったさまざまな機能を集約した「富谷市民図書館等複合施設」が2027年度中開館予定と、子どもからシニア世代まであらゆる世代が生きがいをもって暮らせるまちづくりを目指し、さまざまな計画が進行している。
2020年にランク外から10位にランクインした宮城郡利府町も注目だ。詳細は後述する。
「住みたい」あこがれ誘う都心近接の「北仙台」「北四番丁」前述のとおり、「住みたい街・駅」のランキングで上昇がめざましかったのが「北仙台」だ。宮城県版で2020年の9位から5位に、仙台市版では7位から3位と2018年以降最高位にジャンプアップ。「北仙台」はJR「仙台」駅から約5分と都心に近く、JR、仙台地下鉄、バスの3つの公共交通機関が利用でき交通の利便性が高い。駅前には24時間営業のスーパーもあり、日常生活施設が整い、住宅地としても古くから人気が高い。交通・生活利便性が高いのに家賃や物件価格が割安なイメージがある「宮城県 穴場だと思う街(駅)ランキング」の3位にもランクインしている。
JR北仙台駅(写真/PIXTA)
付近には1960年代から存在した横丁「仙台浅草」のような懐かしい商店街や数百年の時を超えて街を見守る古刹、北山五山が残る一方、こだわりの生活雑貨や生鮮食品などを揃えたセレクトショップ「眞野屋」、パン屋、カフェなど洗練された店が点在。クリニックや金融機関なども充実している。
禅寺、北山五山のひとつで紫陽花の名所。資福寺(写真/PIXTA)
伊達政宗公を祀る青葉神社。5月の青葉まつりのメイン会場となる(写真/PIXTA)
同駅から仙台市地下鉄南北線でひと駅隣の「北四番丁」も、宮城県版では12位から10位にランクアップ、仙台市版では変わらず8位で安定した人気だ。「北仙台」と同じく、「北四番丁」は、いずれも仙台市役所、宮城県庁、青葉区役所が集まる官公庁エリア、東北随一のショッピングゾーン・一番町四丁目買物公園、JR仙台駅への距離が近く、地下鉄やバスはもちろん、道が平坦で歩道が整備されているため、自転車利用もスムーズだ。
地下鉄北四番丁駅(写真/PIXTA)
特徴的なのは、昔ながらのお屋敷町で、文教エリアとして教育熱心なファミリーに支持されている上杉地区に隣接。イチョウ並木の新緑、紅葉が美しい愛宕上杉通、四季折々の自然やイベントが楽しめる勾当台公園や定禅寺通り、仙台三越へは、散歩がてら歩いて行ける距離。さらに、東北大学農学部雨宮キャンパス跡地には、医療・福祉施設地区に仙台厚生病院が移転、2024年開院予定、商業施設地区には大型商業施設が建設予定、マンションが建設中で、今後の発展が期待される。
宮城県庁と官公庁エリアの憩いの場、勾当台公園(写真/PIXTA)
仙台都心からは離れるが、「小鶴新田」駅は、「住みたい街(駅)」ランキングで順位が飛躍。宮城県版では、2020年のランク外から11位、仙台市版では27位から15位に上がった。JR仙石線に2004年に開業して以来、住宅地が広がり、新築マンションが増えて、住宅地として人気が定着。駅周辺には大型スーパーマーケットなど日常生活施設が充実し、住宅地の中心には子どもが走り回れる広い「新田東中央公園」もある。近隣の「仙台市新田東総合運動場 元気フィールド仙台」には、仙台市民球場、宮城野体育館、温水プール、ボルダリング施設、アーチェリー場などさまざまな運動施設があり、気軽に利用できるスポーツプログラムが開催されている。
元気フィールド内 仙台市民球場(写真/PIXTA)
「住みたい街(駅)」でランク上昇の「利府町」は子育て支援が充実「SUUMO 住みたい自治体ランキング2023」で、2020年にランク外から10位にランクイン、過去最高順位を得た宮城郡利府町は、仙台市の北東部に立地。JR利府駅からJR仙台駅までは、東北本線で20分弱とアクセスしやすい。
JR利府駅(写真/PIXTA)
2棟に分かれた東北最大級の「イオンモール新利府」をはじめ商業施設が充実。波が穏やかで表松島と呼ばれる海に面し、陸から海に突き出た天然の桟橋「馬の背」など、ビュースポットが点在。
利府町の赤沼、櫃ヶ沢の馬の背(写真/PIXTA)
大きな特徴は、子育て支援にも力を入れていること。0歳から18歳年度末までの子ども医療費を所得制限なしで全額助成(保険診療分の自己負担額)、子育てに必要なベビーベッド、ベビーバス、ベビーシートの無料貸し出し、赤ちゃん絵本セットの配布、小・中学校の新1年生全員に学校で使う運動着の無料支給、小学校6年生・中学校3年生の学校給食費無料化など、独自の子育て事業を実施していることも支持されている。
オフにファミリーで出掛けられる大型公共施設も充実。図書館や多目的ホールを要する利府町文化センター(リフノス)や、東京五輪のサッカー公式開場にもなった宮城スタジアム(キューアンドエースタジアムみやぎ)、アーティストのライブなどの大型イベントが行われる「セキスイハイムスーパーアリーナ(宮城県総合運動公園総合体育館)」などを有する「グランディ・21(宮城総合運動公園)」などがあり、アクティブな日常を過ごせる。
キューアンドエースタジアムみやぎ(写真/PIXTA)
「SUUMO住みたい街ランキング2023 宮城県版/仙台市版」の結果を見ると、2020年と変わらず、仙台市地下鉄、JR東北本線、JR仙石線沿線の駅、アクセスの良い都心が上位にランクインしているのが分かる。また、子育て支援が充実している街、再開発計画があり、これからの将来性が期待できる街は住みたいというあこがれ、ニーズが高く、今後も目が離せない。
●関連ページ
SUUMO住みたい街ランキング2023 宮城県版/仙台市民版
“1階が相撲部屋のシェアハウス”というユニークな形態の賃貸マンションが昨年2022年4月、墨田区に誕生しました。朝稽古の見学会やちゃんこ会など住民を招いてのイベントもあるというこのユニークな物件について、親方の思いのほか、管理会社、入居者に話を聞きました。
1階に相撲部屋がある賃貸マンションとは?1階にコンビニなどの商業施設やクリニックが入っているマンションはよく目にします。「1階に自分の好きな店や、よく使う施設が入っていること」は、物件探しの際にも意外と重要な要素ともいえるでしょう。他にはなかなかない「1階に相撲部屋がある」物件に住んでいるというのは、ちょっと得難い体験ができるのでは?と、思うのですが、実際はどうなのでしょうか?
大都会のなかのローカル線、といった趣のある東武亀戸線小村井駅から歩いて5~10分ほどの住宅街のなかに、モダンなマンションがあります。よく見ると1階の入口に「押尾川部屋」の立派な看板が見えます。これが、相撲部屋のある賃貸マンション「クリエイティブハウス文花」です。
遠目には普通の現代的なマンションに見えるが……(写真撮影/片山貴博)
相撲部屋の看板が目を引く(写真撮影/片山貴博)
緊張感漂う相撲の朝稽古を見学朝8時、朝稽古の様子を見学できるということなので、実際にお伺いしてみました。
この日の見学者は20名ほどいましたが、そのほとんどが外国人です。外国人に交じって稽古場がオープンするのを待ちます。
稽古場は、土俵がすっぽり入るのはもちろん、土俵の横にはすこし広めの板間もあります。力士は、稽古が終わると板間でちゃんこを食べるわけです。
土俵だけでなく、テッポウをするためのテッポウ柱(鏡の前の柱)なども備え付けされている(写真撮影/片山貴博)
稽古が始まると、力士はすり足、四股といった基礎練習を黙々とこなします……ふだんテレビで見るような取り組みとは違った迫力があり、力士の真剣さがダイレクトに伝わってきます。
四股を踏む力士たち(写真撮影/片山貴博)
驚嘆したのは、力士たちの股割りの角度です。股割りは、ケガを防止するための、いわゆるストレッチですが、どの力士もほぼ180度の信じられない角度で足を広げて床に突っ伏します。椅子から立ち上がるだけでも体がガクガクするほど運動不足の僕にとってはまさに異次元の世界です。さすが力士です。
基礎練習が終わると、ぶつかり稽古が始まります。真剣に稽古を行う力士の掛け声が真新しい稽古場に響きます。親方や先輩力士が後輩力士に対し、丁寧かつ真剣にアドバイスする様子など、見学者は身動きせず、固唾をのんでその様子を見守っています。
稽古と言えども、迫力はすごい(写真撮影/片山貴博)
おそらく、外国人観光客の方には、どんなことがやりとりされているのかは、わからないかもしれません。しかし、その真剣な雰囲気は、十分に感じ取ることができたでしょう。
朝稽古の見学は、8時からスタートし、1時間半ほど見学することになります。誰でも無料で見学することは可能ですが、ふらりと行って見られるわけではなく、開催日と定員が決まっており、事前に申し込みが必要です。時間厳守の上で途中での入退場ができませんので、見る方も本気で見に行かなければいけません。
力士への真剣で丁寧なアドバイス(写真撮影/片山貴博)
張り詰めた雰囲気の稽古が終わると、一挙に緊張がほぐれます。親方が海外からの見学者に「ウェアーアーユーフロム?」とフランクに声を掛けると、にこやかに「Hong Kong」だとか「France」という答えが。
そうこうするうちに、見学者たちと記念撮影の時間が和やかに始まります。本物の力士さんと写真が撮れるという機会、日本人でもなかなかありません。
ちなみに、昔から「お相撲さんに赤ちゃんをだっこしてもらうと健康で丈夫になる」という言い伝えがありますが、押尾川部屋では、力士に赤ちゃんをだっこしてもらって写真を撮影できる『赤ちゃんだっこ体験会』も開催しています。
戦災を受けずに残った町に相撲部屋が来た押尾川部屋は、元関脇の豪風だった押尾川親方が2022年に独立し、17年ぶりに再興した相撲部屋です。そのため、稽古場を新しくつくることになり、墨田区の文花に、賃貸マンション付きの相撲部屋を新築しました。
押尾川親方がこの墨田区文花に相撲部屋をつくることを決断したのは、両国国技館からの近さもあるそうですが、地域との交流、地域に愛される相撲部屋を目指すためという目的もあったとのこと。
地域住民ファーストのため、朝稽古の見学は、近隣の方が最優先となっています。実際、取材の日も近隣からの見学者も何名かいらっしゃったようです。
クリエイティブハウス文花と道を挟んだ向かい側は、墨田区京島三丁目の趣のある町並みが広がります。京島二丁目と三丁目は、戦災での空襲を受けなかったため、大正時代の古い町並みが今でも残り、築100年を超えるような長屋もいくつかあります。
大正時代から続く古い住宅が残る趣ある町並み(写真撮影/片山貴博)
珍しい「1階に相撲部屋があるシェアハウス」クリエイティブハウス文花を管理する不動産会社「エイゼン」は、墨田区のこの地域に物件をいくつか所有していますが、築年数の古い住宅や長屋をシェアハウスとして再生したり、創作活動を行うアーティストや美大生のための住居兼アトリエにリノベーションするなどの物件を、展開しています。
今、押尾川部屋のあるマンションも、数年前までは築90年以上の古い長屋建築でしたが、容積率の関係で、すこし大きめの建物が建てられることから、今回建て替えし、下層階に相撲部屋、上層階にワンルームとシェアハウスというちょっと珍しい形態のマンションとなりました。
元々、墨田区のこの地域に「相撲部屋をつくりたい」と考える親方は多かったようですが、今回はたまたま押尾川親方と、古い建物の建て替えを検討していたエイゼンを地元の銀行が仲介し、この「相撲部屋のある賃貸マンション」が誕生しました。
建物自体はエイゼンが管理し、そこに押尾川部屋が力士の住居も含めて家賃を払って入居する、という形ですが、相撲部屋部分の内装は特別仕様となっており、風呂場やトイレなどのサイズは力士仕様の大きいサイズのものが設置されているそうです。
なお、入居者はエイゼンが運営する近所のトレーニングジムが使い放題になります。もちろん、このジムは力士も使うため、力士用のサイズの大きなトレーニング装置を設置したとのこと。力士と一緒にジムで体を鍛えられるというのも、他にはない魅力のひとつでしょう。
シェアハウスの部屋は、ベッド、机、冷蔵庫などの家具はすでに備え付けされている(シェアハウス平米数:9.56~11.78平米 写真の部屋は9.72平米)(写真撮影/片山貴博)
シェアハウス部分の共用スペース。キッチン、ダイニングテーブルなど入居者は自由に使える(写真撮影/片山貴博)
窓も大きく、部屋が明るい(ワンルーム)(1K平米数:25.27~25.74平米 写真の部屋は25.27平米)(写真撮影/片山貴博)
賃貸部分の部屋が、普通のファミリータイプの部屋ではなく、ワンルームとシェアハウスという形になっているのは、このマンションのすぐ近くに、大学が2つもあるためです。ただし、実際に入居者を募集したところ、学生よりも相撲が好きな社会人からの問い合わせが多く、なかには、いわゆる“スー女”と呼ばれる相撲好きの女子や、かつて学生相撲などをやっていた会社員など、相撲に関心のある人が入居するなどし、これに関しては、「嬉しい誤算だった」とエイゼンの片桐社長はいいます。
学生だけでなく、相撲好きの人にも人気の物件となったのは結果としてはよかった(写真撮影/片山貴博)
実際に、入居されている島田(仮名)さんは、SNSで「1階が相撲部屋のマンションがある」という情報を知り「なんだか面白そう」ということで、入居しました。入居して間もないため、朝稽古の見学にはまだ行ったことがないそうですが、それよりも先に、押尾川部屋の後援会が主催するちゃんこ鍋食事会には参加されたそうです。
ちゃんこ鍋食事会の様子(写真提供/エイゼン)
片桐社長は、「押尾川部屋の力士たちは、人数は少ないものの、健闘している力士たちばかりで、場所が始まると、エイゼンの事務所では相撲中継で押尾川部屋の力士を応援している」といいます。
大相撲の力士は、同じ県出身の力士というだけでも、なんだか気になったり、応援したくなる存在です。ましてや、自分の住んでいるマンションの1階で、いつも稽古をしている力士が、相撲をとっている、しかもその姿がテレビで中継されると思うと、マンション住人の応援の熱の入り方は、ただ事じゃないでしょう。
クリエイティブハウス文花は、住むだけで大相撲中継に対する見方がエキサイティングになるという。なかなかに面白い物件といえます。
人の人の繋がりは、力士にとっても力になると語る押尾川親方(写真撮影/片山貴博)
押尾川親方によると、感染症対策のため、人の集まるようなイベントは控えていたということですが、今年より、マンション入居者同士や、近隣の住民などを招いた交流会はいくつか計画しているといいます。
マンションからは東京スカイツリーが目の前に大きく見えます。文花周辺は、あまり高い建物がないため、非常に見通しがよく、夜景などは実にきれいだそうです。「でもまあ、見慣れちゃうけどね」と、親方は謙遜しますが、夏には隅田川の花火が大変よく見える位置にあるそうです。
交流会の一環として、7月29日(土)には、押尾川部屋特製のちゃんこを食べたあと、4年ぶりに復活開催される隅田川花火大会をマンション屋上から観覧するイベントが開催されるそうです。
見晴らしが素晴らしいマンション屋上(写真撮影/片山貴博)
押尾川親方によると、できれば地域のお祭などへの参加も考えており、地域との交流に関しては可能な範囲で積極的に行っていきたい……とのこと。
当初、親方としては、クリエイティブハウス文花のすぐ近くにある2つの大学に通う学生が、シェアハウスに入居し、若い力士との交流を持ってくれればという思いもあったようです。
親元を離れ、相撲部屋に住み込み、相撲の世界で研鑽を積む若い力士は、どうしても人とのつながりが狭くなってしまいがちだといいます。同じマンションの住人として、境遇の全く異なる同年代の人たちと交流することができると、力士にとっても大変心強いことであり、また、マンションに住む人にとっても得難いものになる……というわけです。
ところが、コロナ禍による行動制限があったためそういった交流もままなりませんでした。
行動制限が解除された今年からは、入居している学生だけでなく、所属力士と住民との交流を積極的に行うことによって、地域に根差した相撲部屋を目指したいとしています。
近所に掲示されていた押尾川部屋のチラシ(写真撮影/片山貴博)
ゆくゆくは、押尾川部屋の力士が活躍し、いつかは大関、そして横綱となる日が来ると、マンション住人はもちろん、地域住民も含めて歓喜することになるのは確実です。
マンション住人だけでなく、地域の人々も巻き込んだ相撲部屋の交流が活発になれば、地域全体の盛り上がりにも繋がるでしょう。
●取材協力
クリエイティブハウス文花
押尾川部屋
長谷工ライブネットは、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の沿線・駅別の賃料相場を分析し、「首都圏賃貸マンション賃料相場マップ 2023 年版」を完成させた。その結果からは、「特に郊外のファミリー賃貸で大幅上昇の傾向が見られた」という。詳しく見ていこう。
【今週の住活トピック】
「首都圏賃貸マンション賃料相場マップ2023年版」が完成/長谷工ライブネット
「首都圏賃貸マンション賃料相場マップ 2023 年版」は、間取りタイプをシングル(25平米)・コンパクト(40平米)・ファミリー(60平米)の 3タイプに分類し、沿線・駅別の賃料相場を同社独自の分析調査によりまとめたもの(対象:95沿線、延べ1,030駅)
タイプ別の賃料相場について、前年との比較で駅別に変動率を算出してまとめた結果、首都圏全体では「上昇」(やや上昇・上昇・大幅上昇)の割合がシングル37%、コンパクト47%、ファミリー51%を占め、面積が広いタイプほど上昇の割合が高い結果になった。なかでも埼玉県と千葉県では、ファミリータイプで「大幅上昇」(グラフの赤い帯部分)が20%を超えるなど、大幅上昇が目立つ。
出典/長谷工ライブネット「首都圏賃貸マンション賃料相場マップ2023年版」より転載
エリア別・タイプ別で見ると状況はそれぞれ異なるので、詳しく見ていこう。
東京23区では、シングル、コンパクト、ファミリーともに低下(やや低下・低下)よりも上昇の割合のほうが大きく、なかでもファミリータイプでの上昇傾向が大きいという点で、首都圏全体と同じ傾向にある。
東京都下のシングルだけは、低下の割合のほうが上昇より大きいのが特徴だ。が、都下でもファミリータイプでは上昇傾向が見られる。神奈川県は、首都圏のなかでは他のエリアよりは変動が小さい。
埼玉県と千葉県では、コンパクトタイプの上昇割合が最も大きいのが特徴。シングルタイプの上昇割合も、他の都県より大きいが、ファミリータイプについては「大幅上昇」の割合が大きいのが目立つ。このことから、埼玉県と千葉県は賃貸相場が上昇傾向にあるが、特にファミリータイプが特定のエリアで大幅に上昇していると推測できる。
出典/長谷工ライブネット「首都圏賃貸マンション賃料相場マップ2023年版」より転載
国分寺、さいたま新都心、千葉中央のファミリータイプ賃料が大幅上昇次に、エリア別に賃料のランキング1位を紹介しよう。
■エリア別賃料相場ランキング(1位を抜粋)
●東京23区このなかでも、東京都下の「国分寺」(前年2位)、埼玉県の「さいたま新都心」 (前年2位)、千葉県の「千葉中央」 (前年7位)のファミリータイプが、大幅上昇によってそれぞれ 1 位にランクアップした。この理由として「分譲マンションの一部が賃貸された影響で賃料が大幅上昇した」のだという。
埼玉県と千葉県では、ほかにもファミリータイプで大幅上昇した駅がある。埼玉県では「北浦和」(前年8位→5位)、「所沢」(前年9位→5位)、「和光市」(前年12位→7位)、「与野」(前年14位→9位)、千葉県では「松戸」(前年13位→7位)、「柏」(前年16位→8位)だ。
首都圏のファミリータイプで賃料が上昇する背景は?筆者は、SUUMOジャーナル1月25日公開の記事で「東京都23区のファミリータイプの賃貸住宅が活況。就業環境や働き方の変化が影響?」を執筆した。このときは、三菱UFJ信託銀行が公表した「2022年度 賃貸住宅市場調査」(2022年秋時点)の結果を参照した。
ファミリータイプについては、東京23区と首都圏(東京23区を除く)は、現状も半年後の予測も稼働率と賃料は好調だった。その理由として、2つの要因を挙げた。
まず、マンションの価格が上昇しているため、購入を考えた場合に手が届きにくいこと。次に、ユーザーの志向が住宅の広さや部屋数を求めるようになったこと。これは在宅勤務やオンライン授業などの影響でおうち時間が長くなったことなどが影響している。その結果、広さと駅からの利便性を求めて、手の届く住まいとして、ファミリータイプの賃貸マンションへの需要が高まったと分析した。
こうした状況は今も継続している。さらに、長谷工ライブネットが指摘した分譲マンションの一部が賃貸されているということも加わって、好立地で手が届きやすい賃料のファミリータイプの需要が高いと見てよいだろう。
さて、近年は首都圏のファミリータイプの賃貸需要が高くなっているが、今後も続くのだろうか?住宅の需要はさまざまな要因で変わる。コロナ禍を経て日常生活が戻りつつあるので、就業状況や収入などが改善される方向に進んでいる。また、テレワークは一定レベルで定着しつつある。一方で、住宅ローンの金利上昇リスクが高まっているので、住宅の購入環境が変わる可能性も考えられる。さらには、感染拡大の可能性がなくなったわけではない。
その時々で、最適の住まいを選ぶということになるので、どういった住まいに需要が高まるかは予測しづらい状況になっている。
●関連サイト
長谷工ライブネット/「首都圏賃貸マンション賃料相場マップ2023年版」が完成
環境先進国として有名なデンマーク。その先進性の一翼を担っているのが、自転車です。古くから最も人間にとって身近な移動手段であった自転車の存在が、デンマークでますます輝きを増しています。コペンハーゲンなど都市部の人にとっては、もはやなくてはならない生活ツール。今回は、デンマーク人がなぜ、これほど自転車に魅了され続けているのかについて、探求してみたいと思います。
そこのけ、そこのけ!自転車が通る!!コペンハーゲンで街歩きをしていて、信号待ちをしたり、バスの乗降をしようとするとき、猛スピードの自転車にぶつかりそうになったり、ベルを激しく鳴らして通り過ぎていく自転車に呆然とすることがあります。特に、自転車専用道路の存在に慣れていない私たち日本人にとっては、歩道と車道の間に広がるかなり大きめなその空間を、つい歩道だと勘違いしてしまいがち。
ブルーの塗装が施された部分が自転車道。何台も並走できるほどの幅がある(写真撮影/ニールセン北村朋子)
カーゴバイクも人気。自転車レーンは車道と同じ幅やそれよりも広い幅の通りも増えている(写真撮影/ニールセン北村朋子)
The inner harbour bridgeは、自転車と歩行者専用橋。これができてクリスチャンハウンや運河の向こう側のエリアへの移動が楽ちんに(C)Troels Heien
デンマークでは誰でも、どんな天気でも自転車に乗ります。大人も、子どもも、王室の方も、政治家も。通勤、通学、子どもの送り迎え、買い物、レジャー、引越し。自転車の霊柩車もあるほどです。とにかく、自転車はみんなのものなのです。そして、いつもとても感心するのが、誰もが、停まるときや曲がるときに手信号で合図すること。そして、自分の体型や乗り方に合ったサドルやハンドルの高さにきちんと調整していること(デンマークで自転車に乗っている人はとても姿勢が良いのです。これは、学校で低学年で正式に公道デビューするときにサドルやハンドルの高さが自分と合っているかを確認することを教わるから)。これは、自分も相手も守る、自転車のルールの基本。当たり前のことを、きちんと当たり前にやっています。
ちなみに、コペンハーゲン市の自転車に関するデータを最新の情報から拾ってみると、全市民が平日にコペンハーゲンを走る自転車の総距離は約140万km。コペンハーゲン市で登録されている自転車の数は約74万5千台で、市の人口(約63万3千人)を上回ります。コペンハーゲン市の自転車専用道路の総距離数は約380kmで、市内を網の目のように結ぶ自転車や歩行者の専用橋は24箇所。もちろん、自転車専用信号も各交差点に設置され、現在では、自転車道の幅が自動車道の車線の幅と同じくらい広くなっているところも多く存在します。
コペンハーゲン市民の通勤通学の手段。55%の人が、自転車を利用している(「Mobilitetsredegoerelse 2023」より)
思い思いのファッションで自転車に乗る人たち。自転車専用レーンの幅も車道と同じくらいのサイズ(写真撮影/ニールセン北村朋子)
デンマークでは、私が移住した20数年前もすでに自転車が多いなと感じる国でしたが、ここ15年ほどはさらにそれに拍車がかかり、特にコペンハーゲンやその近郊、オーデンセ、オーフスなどの大きな都市では、上記のように、自転車と徒歩の人にとって暮らしやすく、車では移動しにくい街づくりへとどんどん「進化」しているのが感じられます。私は時折、日本のメディアの撮影をコーディネートすることがあるのですが、そのときにも、例えばコペンハーゲン市や、現地のカメラマンなどには、車ではなく、自転車で取材をすることを勧められることがあります。実際に、カーゴバイクを数台借りて、その荷台から撮影したことも何度かあります。
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そうは言っても、デンマークもずっと昔から自転車国家だったわけではありません。世界的にも車が増えはじめた1970年代には、コペンハーゲンでも車があふれ、高速道路の建設や駐車場の増設が次々に計画されていました。しかし、1980年代~90年代にかけて、コペンハーゲン市で都市エンジニアをしていたイェンス・ロアベックさんは、こうした市議会の決定に疑問を投げかけます。
「コペンハーゲンに住むみなさんや、コペンハーゲンを訪れる人たちは、たくさんの車を見るためだけにそこにいるのですか?」
「街中に高速道路を通したり、そんなにたくさんの駐車場をつくることが本当に必要で、そんな街を私たちは求めているのでしょうか?」
1970~80年代にかけて、コペンハーゲンは車との向き合い方を考えなくてはならなくなった(画像提供/Jens Roerbech)
そこから、市民の間に街のあり方や車との付き合い方の議論が活発になり、その勢いを受けて、コペンハーゲン市のアーバンデザインと自転車インフラを司る専門家としてまちづくりを主導していたロアベックさんは次々にコペンハーゲンの街角を車から解放して、人が徒歩や自転車で街をめぐり、憩うことができる広場や場所を取り戻すまちづくりを進めていき、今のコペンハーゲンの姿に近づいていったのです。
例えば、みなさんもよく知っている、コペンハーゲンの運河沿いにあるカラフルな街、ニューハウン。今は、通りに面したレストランやカフェにテーブルや椅子が所狭しと並べられ、食事やビールを楽しむ人でにぎわう一大観光地のひとつです。でも、実はここも70年代はすべて車で埋め尽くされた駐車場だったのです。当時、議会の決定ではさらに駐車場を増やす予定でしたが、その決定を覆して逆に駐車場を取っ払い、人々の憩いの場にするという当時の思い切った決断のおかげで、今はすっかりデンマークを代表するランドマークとなって、一年中、徒歩や自転車で訪れる人が絶えません。
1970年代のニューハウン。川べりはかつてぎっしり駐車場だったが……(画像提供/Jens Roerbech)
1980年代の議論によって、駐車場をなくして人気の観光地となったニューハウン(画像提供/Jens Roerbech)
「こんなのがあったらいいな」を次々に形に!デンマークでは、90年代から、環境や気候変動への意識の高まりから、国と都市が連携して、市民の一般車両を利用しての移動を減らし、徒歩、自転車、公共交通の利用を促す政策が打ち出されるようになりました。
コペンハーゲン市では1996年以来、2年ごとに「自転車会計白書」を発行して、市の自転車政策や目標に対して、どれくらい実現できているかを調査・公表。2011年には、2025年に世界一の自転車都市を目指して、自転車政策を発表し、ここ10年間で約2億ドル(約287億円)を自転車インフラに投資しています。
デンマーク政府も2014年に「デンマーク、自転車に乗ろう!」という国の自転車政策を打ち出し、ツール・ド・フランスの開幕地を務めた昨年は、今後の新たな全国規模の自転車インフラ構築のために4億5800万ドル(約658億円)の拠出を決定しています。
こうした予算を投じてつくられてきたユニークで便利なインフラの数々の代表的な例をいくつかご紹介しましょう。
まずはバイシクル・スネイク。ビルの合間を縫うように運河を越えて走る、自転車専用の高架橋です。くねくね曲がったその様子がヘビのようだからと、こんな名前がついています。この橋が2014年にできたおかげで、その先の自転車と歩行者専用のBrygge橋にスムーズにつながり、HavneholmenエリアとIslands Bryggeエリアが、あっという間に行き来できる場所になりました。
バイシクル・スネイク (C) Ewell Castle DT
バイシクル・スネイク。大きな運河もあっという間に渡れる便利さと快適さ((c)Cykelslangen (2014) – Dissing+Weitling. Photographer: Kim Wyon)
そして、サイクル・スーパーハイウェイも特徴的なインフラのひとつ。コペンハーゲンとその近郊の29自治体を結ぶ、850km強の自転車専用高速道路です。住宅エリアと通勤、通学エリアを、ほとんど途中で止まることなく、通過する自治体に関係なく同じクオリティ(走行速度や自転車レーンの幅、交差点での信号の設置など)の走りができるのが大きな特徴です。日本でも、車専用の高速道路は、自治体をまたいでも同じクオリティですよね。そうでなければ、利用しにくいし、事故も起きやすい。その考えをすっぽり自転車に応用したのが、このサイクル・スーパーハイウェイなのです。コペンハーゲン市内の多くの職場も、サイクル・スーパーハイウェイを利用した通勤を奨励しているところも多く、職場には移動後に服を乾かす部屋やシャワーやサウナが併設されているという話もよく聞きます。
サイクル・スーパーハイウェイ。長距離の通勤通学やレジャーにも、スムーズに早く安全に目的地にたどり着ける((C) Supercykelstisamarbejdet, hovedstadsregionen)
最近は、自転車専用レーンを走る乗り物の種類もさまざま。一般的な二輪の自転車に加え、市民の自転車での走行距離が延びていることもあり、E-バイク(電動自転車)も急増。そして、二輪や三輪で前に荷台がついているカーゴバイクや電動カーゴバイクも人気です。電動キックボードだけでなく、デンマークではスクーターも自転車専用レーンを走るのがルールです。自転車も、街の要所要所にレンタサイクルや電動シティバイクがあり、シティバイクはナビゲーションもついていてとても便利です。
お天気がくるくる変わりやすいデンマークですが、それでもやはり便利な自転車に乗りたい人は多く、ファッションも四季折々、みな工夫をこらして、おしゃれに乗りこなしています。
デンマークでは、たいていのホテルで自転車をレンタルしているので、みなさんにもぜひ一度、自転車で街を巡る体験をしてほしいと思っています。自転車に乗って実際に整備された自転車専用レーンを走ってみると、いかに快適で、安全に、車よりも早く目的地に着けるのが実感できますし、風を切って走りながら、気になったところでさっと自転車を降りて散策できるという自由さも、自転車と自転車インフラは叶えてくれます。もし、いきなり自分だけでまわるのが難しいかな、と感じる人は、例えば自転車でコペンハーゲンのGXを体感するツアーや、デンマークを代表する建築を回るツアーなどもあるので、ぜひ参加してみてくださいね。きっと、デンマークという国が、もっとわかる、ワクワクする体験になるはずです!
●取材協力
・コペンハーゲン市
・Jens Roerbech
●参考資料
「Mobilitetsredegoerelse 2023」
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、建築デザイン業界にも大きな衝撃を与えました。おびただしい数の建築物が津波によって流されたことで、街ごと新たにつくり直す必要に迫られただけではありません。建築の仕事に携わる人にとっては、これまで設計してきた建築を、復興が急務となる被災地において、そしてまたそうした地域を抱える日本において、同じような考え方で設計して良いものなのかと自問する契機にもなったのです。
そうは言っても急速に復興が推し進められるなか、建築家もさまざまなかたちで被災地の建築デザインに関わってきました。避難所の生活を改善するための取り組みや、仮設住宅の建設といった応急対応から、この先の長い街づくりの礎となるような恒久的な施設まで、震災復興をきっかけに初めて試みられたデザインも多岐にわたります。
そうした人類の新たな叡智を見て歩くことは、被災地に限らず日々の生活をより良くしていくための発見に満ちているはず。今回、各地の建築やまち歩きをライフワークにしてきた筆者が、被災から10年以上が経ち、大方の復興が完了した岩手県南東部の沿岸エリアで見学ができる震災復興建築をレポートします。
あらゆるタイプの復興建築がそろう陸前高田震災復興のために建てられた建築といっても、その内実はさまざまです。街づくり全体の広域復興計画に位置づけられる、市民生活のインフラとなるもの。地域住民の多様な活動をサポートする拠点となるもの。地域産業、特に漁業や観光業のための施設として使われるもの。観光を目的に東北に訪れる人々、そしてまた現役の、未来の地域住民のために津波の教訓を伝えていくために設計された伝承施設や追悼祈念碑。さらに、実際に津波や地震の被害を被った震災遺構も、解体することなく遺し、見学するためのルートを整備したことを鑑みると広い意味でのデザインとして見ることができるでしょう。
以下では、それぞれの特徴をおさえつつ、実際の建築物をエリアごとに紹介していきたいと思います。
まずなんといっても被災地での復興建築デザインを見学するなら、陸前高田市は外せません。ここには建築家の内藤廣氏が全体計画を担った高田松原津波復興祈念公園があります。
津波によって流されてしまった防潮林のうち、ただ1本残された「奇跡の一本松」をご存じの方も多いのではないでしょうか。あの松林があったエリアに整備された公園です。
公園の整備にあたり、内藤氏は海に向かってまっすぐ延びる祈りの軸線を設けました。そこに直交するかたちでデザインされたのが、道の駅高田松原を併設した「東日本大震災津波伝承館」です。国と岩手県、陸前高田市が連携し、津波被害の実態を後世に伝えるために整備されたメモリアルパークでありながら、道の駅として地域住民にも日常の延長として使われる、風景と一体化した複合施設です。
高田松原津波復興祈念公園全景。左中央に見える直線状の白い建物が東日本大震災津波伝承館。右手の三角形は、震災遺構「タピック45」。津波の際、屋上を駆け上った避難者が助かった(写真/ロンロ・ボナペティ)
伝承館の中央ゲートから祈りの軸線を見る。軸線の先に象徴的なモニュメントを設けるのではなく、海に向かって祈りを捧げるよう演出されている(写真/ロンロ・ボナペティ)
防腐処理を施され、もともと立っていた場所に再設置された奇跡の一本松。津波が直撃し変形した「陸前高田ユースホステル」が被害の実態を伝えている(写真/ロンロ・ボナペティ)
海を強く意識させるデザインは、津波により亡くなった方への追悼を促すとともに、ここを訪れる人がその瞬間海の間近にいること、地震が発生したらすぐに避難しなければならないことを同時に印象付けます。伝承館でも繰り返し実例が示される、2011年の3月11日に生死を分けた人々の判断と行動。いざという時にどのような対応をすべきか、公園全体で訴えかけるようなデザインがなされていました。
さらに陸前高田市では、高台にも内藤氏が設計した建築をはじめ、復興後の市民生活を支える建築が集まっています。そのひとつ、陸前高田「みんなの家」は、日本を代表する建築家の伊東豊雄氏の呼びかけに応じ、名だたる建築家が集まり地域の方々とともにつくりあげた集会所。世界各国が建築の実践を展示し建築界のオリンピックとも称される第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展ではその建設プロセスを紹介し、最高栄誉の金獅子賞を受賞しました。応急的な復興が一段落したことで役目を果たし、一度解体されましたが、駅前に再建されました。併設の総菜屋さんは、みんなの家の設計に携わった平田晃久氏が手掛けており、建築家と被災地との継続的な関わりが伺えます。
伊東豊雄氏、平田晃久氏、藤本壮介氏、乾久美子氏らが協働した陸前高田「みんなの家」。右側に延びる低層の建物が新しく設計された総菜店(写真/ロンロ・ボナペティ)
内藤廣氏設計の「東日本大震災犠牲者刻銘碑」。三陸特有の山々が入り組んで連なるリアス式海岸を見晴らす(写真/ロンロ・ボナペティ)
内藤廣氏設計の「陸前高田市立博物館」。屋上の展望台からは、防潮堤の先に広がる海の景色を望むことができる(写真/ロンロ・ボナペティ)
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陸前高田から北上することおよそ50km、三陸海岸の中央に位置する釜石市も、震災後の建築デザインを知る上で重要なエリアです。
街の中心部が津波で流され、多くの住民が亡くなった鵜住居町(うのすまいちょう)では、市民生活の立て直しに必要なさまざまな施設が震災後に整備されました。駅前に整備された「うのすまい・トモス」には、「東日本大震災の記憶や教訓を将来に伝えるとともに、生きることの大切さや素晴らしさを感じられ、憩い親しめる場」として複数の公共施設が配置されました。追悼施設の釜石祈りのパークには、震災で亡くなった方の名板があしらわれた祈念碑が設置されています。離れた位置から見ると白い板にしか見えませんが、近づいていくと個人名が刻印されており、報道で知る客観的事実としての被害とその一人ひとりにそれぞれの人生があった、その対比が表されているよう。少し土が盛られた上段に設置されたモニュメントは上端のラインが津波浸水高さ(11m)となるように設計され、ここを訪れる人々に有事の際は一目散に高台へ避難する意識を植え付ける計らいがなされています。
「釜石祈りのパーク」上段の壁の上端ラインが津波到達地点を示す(写真/ロンロ・ボナペティ)
「うのすまい・トモス」全景。奥に体育館、左手前が震災の資料展示を行う「いのちをつなぐ未来館」、右手前が土産物などを販売する「鵜の郷交流館」(写真/ロンロ・ボナペティ)
駅前からすぐ目に入る高台には、小学校・中学校・児童館・幼稚園の、子どもたちのための4施設が新たに建設(設計:小嶋一浩+赤松佳珠子/CAt)されました。通学路となる階段は、津波到達地点で階段の色が塗り分けられており、市街地から見上げた際に一目でどの高さまで避難すれば良いのかがわかる指標になっています。子どもたちが毎日登下校する様子は市街地のどこにいても目に入り、その風景が復興のシンボルとなるように、という願いが込められているそうです。
また震災当時、沿岸部にあった小学校と中学校は被災後に取り壊され、跡地には「釜石鵜住居復興スタジアム」が建設されました。周囲から隔絶された専用施設とするのではなく、日常的に使用できる公園として周囲と一体的に整備することで、海から山へと連続する鵜住居町の風景の一部となっています。2019年のラグビーワールドカップでは会場の一つとして使用され、まさに復興のシンボルとして人々の生活とともにあるスタジアムとして愛されています。
「鵜住居小学校・釜石東中学校」、「釜石鵜住居復興スタジアム」、「釜石祈りのパーク」では、個々の施設の設計に建築から関わったほか、神戸芸術工科大学の長濱伸貴教授がランドスケープデザイン・監修に携わっています。
「釜石市立鵜住居小学校・釜石市立釜石東中学校・釜石市鵜住居児童館・釜石市立鵜住居幼稚園」。敷地へ至る階段のオレンジのラインが津波到達地点(写真/ロンロ・ボナペティ)
梓設計による「釜石鵜住居復興スタジアム」。グラウンドと周囲がフラットにつながり、風景の一部となっている(写真/ロンロ・ボナペティ)
釜石市の中心部にも、ぜひとも訪れたい重要な建築プロジェクトがあります。
世界最大水深の防波堤としてギネスブックの世界記録にも登録されていた湾口防波堤が震災でも大きな減災効果を発揮した釜石市中心部は、リアス式海岸が連なる三陸沿岸エリアにおいては比較的津波の被害がおさえられたエリアでした。震災前から残る商店街「のんべい横丁」と連続する位置に計画されたのが、釜石市民のさまざまな活動の受け皿となる、「釜石市民ホールTETTO」でした。折しも街区をひとつ挟んで隣接するエリアに大型ショッピングセンターの建設が進んでいました。そのままでは既存の商店街とショッピングモールが断絶してしまうことを恐れた市は、市民ホールの建設にあわせて隣接する街区も取得し、ショッピングセンターと市民ホールをつなぐ広場を整備することを決定。ガラスの大屋根が架かる市民ホールの前面広場と接続させることで、のんべい横丁からショッピングセンターへと連なる一連の商業エリアを創出することに成功しました。
建築はaat+ヨコミゾマコト建築設計事務所による設計。施設内部での活動が街に滲み出すようデザインされました。展覧会の一部が外からでも鑑賞できるようになっていたり、スタジオで練習するバンドの様子がうかがえるなど、文化が日常のなかで育まれることが実感できる市民ホールになっています。前面広場に面するステージでは、コロナ禍において全国でも先駆けて屋外コンサートを開催するなど、TETTOでは市民による市民のための精力的な活動が展開されています。
ショッピングセンター側からTETTOを望む。4方向に出入口が設けられ、建物のどこにいても避難できる動線が考えられた。手前の広場が市が取得した「大町広場」(写真/ロンロ・ボナペティ)
TETTOの前面広場に架かるガラスの大屋根は、建設費高騰の折に建設中止も検討されたが、建築家のさまざまなコスト削減策により実現された(写真/ロンロ・ボナペティ)
前面広場を客席として披露された、市民によるブラスバンドの演奏(写真/ロンロ・ボナペティ)
釜石市南部の集落に立つ「唐丹小学校・唐丹中学校・唐丹児童館」。斜面を活かして建てられた校舎は、建築家の乾久美子氏による設計(写真/ロンロ・ボナペティ)
被災地に観光目的で訪れるのは不謹慎なのではないか、そんな想いをもたれる方もいらっしゃるかもしれません。筆者自身、現地を訪れるまでは住民の方からどのような目で見られるのだろうかと不安に思うところもありました。
しかし実際に現地の方とお話をすると、理由はどうあれ来てくれる事自体が喜ばれ、また震災の実態を知ってほしいと活動される方も多くいらっしゃいました。
ここで紹介したような施設も、伝承館はもちろんのこと、そうでない建築にも津波の悲劇を繰り返さないためのデザインが施されていました。それは被災地で日常を送る住民の方はもちろんのこと、被災地を訪れた人たちにも、自然災害の恐ろしさを伝え、やがて来る東北以外の地域での災害を防ぐ一助となることを見越したものでしょう。
災害大国である日本において、建築はどうあるべきか、これ以上ない模範事例が集まる東北、三陸海岸を訪れてみてはいかがでしょうか。
■施設リスト
東日本大震災犠牲者刻銘碑
陸前高田市立博物館
東日本大震災津波伝承館 (いわてTSUNAMI(つなみ)メモリアル)
釜石市立唐丹小学校
釜石市民ホール TETTO
釜石市立鵜住居小学校
うのすまい・トモス
釜石鵜住居復興スタジアム
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わずか7畳のタイニーハウス「もぐら号」は、神奈川県・三浦半島にある、現在進行形で「人が暮らしているタイニーハウス」です。電気・ガス・水道完備、シャワー・トイレ付きと、一般的な住まいと変わらず、快適な暮らしが送れているといいます。そのもぐら号に、今年、きょうだいの「カワウソ号」が仲間入りしたそう。しかもこちらは宿泊・体験できるとか。さっそく編集部とライターで宿泊してきました。
「カワウソ号」は約8畳(室内11平米+ロフト4平米)。タイニーハウスを知り・体験できる場所に神奈川県三浦半島にある、まるで絵本に出てくるようなタイニーハウスの「もぐら号」は、相馬由季さんと夫の哲平さんの住まいです。もぐら号は約2年かけて相馬さんが設計から施工、2020年に完成。ほぼ自作したタイニーハウスに現在も夫妻で暮らしていらっしゃいます。そんな「もぐら」のきょうだいが「カワウソ号」です。もぐら号よりもやや小ぶりで、名前も愛らしい「カワウソ号」ですが、なぜもう1棟、タイニーハウスをつくったのでしょうか。
相馬由季さん。タイニーハウスに暮らしているほか、今年は海外のタイニーハウスをめぐる旅もした(写真撮影/桑田瑞穂)
「もぐら号の話をすると、ほとんどの人に『遊びに行きたい』『泊まりたい』と言われるんです。みんなタイニーハウスに興味津々なんですね。もぐら号にも宿泊していただけるんですが、私たちも毎日、暮らしているので、そうそう泊めるわけにもいかない。じゃあ、もう1棟をということで、『カワウソ号』を計画したんです」と相馬さん。
「カワウソ号」。玄関扉のオフホワイト、緑のアーチ屋根が最高か!(写真撮影/桑田瑞穂)
主眼を置いたのは、単なるホテルではなく、「タイニーハウスを体験できる場所」であること。
「タイニーハウスに宿泊できる施設はありますが、まだ少数です。ここではホテルのような滞在ではなく、料理をしたり思い思いに過ごしたりと、あくまでも『暮らし』を体験する場所として考えているんです」と話します。
「基本設計や建材、建具のチョイスなどはすべて自分で行い、実施設計と施工を大工さんにお願いしました。ただ、制作途中も足を運び、吟味、調整をしてもらいました。タイニーハウスはとにかく余分なスペースがないので、数センチで使い勝手が変わるんです。だから、何度も何度も測って、思い入れを込めてつくったのは、カワウソ号も同じですね。『もぐら号』で自作した経験が生きています」
「カワウソ号」の内部。「もぐら号」と同様に、「暮らす」を主眼に設計されている(写真撮影/桑田瑞穂)
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わずか7畳のタイニーハウスに夫婦二人暮らし。三浦半島の森の「もぐら号」は電気もガスもある快適空間だった!
「もぐら号」と「カワウソ号」の共通点でいうと、大きめのキッチン&シンク、電気ガス水道といったインフラ、窓や外壁などには断熱性・遮熱性などの性能を高めた「快適な暮らし」が送れる点です。一方で間取りは異なり、「カワウソ号」はロフト付きで、玄関が横付きになっています。また、大きなフィックス窓、横にスリット窓が入っています。スリット窓からチラリとのぞく緑がキレイです。
左が「もぐら号」、右が「カワウソ号」(写真撮影/桑田瑞穂)
キッチンにこだわったのは「もぐら」「カワウソ」共通です。シンクは大きく、電気ケトル、IHクッキングヒーターなどの調理器具もあるのです。まさに“暮らし”!(写真撮影/桑田瑞穂)
シャワーと洗面、トイレが一列になっていて、使いやすい動線(写真撮影/桑田瑞穂)
洗面とトイレ。シャワー付き。コンパクトですが、何度も設計しなおしたというだけあり、狭さは感じません。トイレは着脱式なノズル下水道につなげていて、一般的な水洗トイレです(写真撮影/桑田瑞穂)
「カワウソ号」のロフト。大きなフィックス窓からは緑がいっぱいに。人工物が目に入ってきません。心が満たされていく……(写真撮影/桑田瑞穂)
電気と上下水道や既存のインフラを利用し、着脱式で接続。ガスはプロパン(写真撮影/桑田瑞穂)
昨年の暮れに施工場所から今の土地に移動させ、塗装など内部の仕上げや棚の設置、家具やインテリアの選定を行い、今年3月末より宿泊の受け入れを開始しました。では、その反響は?
「開始して2カ月ほどですが、平日、休日問わず多くの予約が入っています。メディアを介して知ってもらったり、SNSで知ってくださったり。いろいろです。若い世代はここだけしかできない体験ということで、カップルや友人同士で来てくださいます。ほかはご家族ですね。最大3人まで宿泊できます。」(相馬さん)
とはいえ、一人で滞在する40代~50代の人もいるのだとか。
「自分を見つめ直したい、という方でしょうか。タイニーハウスに籠もって、暮らしや人生に向き合う場所が欲しいという人が滞在されていきます。何かするのではなく、ゆっくりと過ごしていらっしゃいます」といい、今までの暮らしのあり方、人生のあり方を問い直す場所になっているのだそう。
ロフトではタイニーハウスに関する本をセレクト、ギターやプロジェクターなど、滞在を楽しくするアイテムも(写真撮影/桑田瑞穂)
開閉式の机。空間を有効活用できるよう、考え抜かれている(写真撮影/桑田瑞穂)
タイニーハウスで住まい感が変わる。自分に必要なモノ・コトが見えてくるでは、実際に滞在するのはどのような感じなのでしょうか。
筆者と編集部担当の2人は午後にチェックインし、翌日朝まで滞在。合間に仕事をしたり、ランニングをしたり、周囲のスーパーで食材を買い込み、暮らすように「プチ日常」を味わってみました。
シャワーの水量や温度、トイレの水量などもストレスフリー。また、はじめはタイニーハウスのセキュリティってどうなのだろうと少し不安があったのですが、駅近くの立地でほどよく人目があり、おまわりさんのパトロールエリアとのことで、ひと安心。とにかく快適な滞在となりました。
夜は近所でマグロのお刺身などを購入してきて晩酌。三浦半島ならではですね(写真撮影/嘉屋恭子)
ロフトからキッチンと洗面を見下ろしたところ。目に入るものすべてが愛らしい(写真撮影/桑田瑞穂)
ロフト下部の寝室。寝具メーカーのベッドで寝心地もいい。編集もライターも、朝までぐっすりコースでした(写真撮影/桑田瑞穂)
そして、ひと晩過ごした結論をひと言でいうと、「これは……住まい感が変わるな」に尽きます。
筆者は、今まで不動産会社やさまざまな建物、建築家の先生方を取材し、天井高は2m40cmではちょっと低いのではとか、広さは一人あたりの面積25平米は確保したいなどと原稿を書いてきましたし、正直なところ「家の広さは気持ちのゆとりにつながる」、なんなら「天井高は正義」「収納は命」だと思ってきました。
ですが、実際に過ごしてみると11平米でも狭さは感じないのです。女性2人がほぼ1日、同じ空間にいてもストレスを感じない。これはすごいことだなと思いました。おそらくですが、備え付けの食器や寝具など、目に入るものすべてが吟味されていること(当たり前ですが子どものおもちゃやごちゃごちゃした生活のものはありませんし)、人間同士の目線が必要以上に重ならないこと、余計な音が入ってこないこと、室温が快適であること、暮らしに必要なものがきちんとそろっているからこそ、「コンパクトでも快適」は叶えられるのですね。
おそらくですが、窓からの緑や地面との近さ、自然な雨音、小鳥のさえずり、室内に漂う木々の香りなど五感に訴えるものがあり、タイニーハウスでしか感じたことのない、貴重な感覚が残りました。
もう一方で、自分に必要なものも浮かびあがってきたのです。筆者の場合は、カワウソ号になかった三面鏡、浴槽です。われながらお風呂という、わかりやすい欲が反映されていてびっくりしました。人生初の感覚です。本当に不思議。
宿泊していった人が残した記録。みなさん、「内省」していらっしゃいます(写真撮影/嘉屋恭子)
こうした、気づきや発見があるのは筆者だけではないようで、「カワウソ号」の宿泊ノートには、さまざまな思いが記録されています。貴重ですね……。
相馬さんも、普段は会社勤務しながら、タイニーハウスづくりを行ってきたため、週末は何かしら「タイニーハウスづくりの予定」が入っていたそう。現在、「カワウソ号」が完成してやっとひと段落ではありますが、けしてラクではないタイニーハウスづくりに取り組み、宿泊運営者になった今、得るものはあるのでしょうか。
「やっぱり、タイニーハウスの暮らしを体験してもらって、その人の価値観が変わるとか、なにか湧き上がるものがある瞬間を見られるのがすごく好きですね。当たり前を疑うというか、その瞬間に立ち会えるというか……。タイニーハウスを通しての出会いもとても貴重ですし。その中で自分自身も、その先に湧き上がってくる次の挑戦の兆しを待っています。」(相馬さん)
(写真撮影/桑田瑞穂)
筆者個人としては、「タイニーハウスでの宿泊」は、家を借りたい人、家を買いたい人、注文住宅で家をたてようと考えている人、リフォームしたいと思っている人など、今、住まい・暮らしについて考えているすべての人におすすめしたい体験だなと思いました。自分にとって家とはなにか、家に必要なものはなにか、自分が大事にしたいものはなにかが明確になるからです。タイニーハウスの宿泊費は1泊あたり1万3000円~2万円程(人数、時期によって変動)。得るものは小さくなく、大きなものとなるはずでしょう。
●取材協力
相馬由季さん・哲平さん
由季さんのInstagram
ブログ
カワウソ号宿泊予約
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以前から、タワーマンションを節税目的で購入する事例が多いことが指摘されていた。すでに、固定資産税については、高さ60m以上のマンションで高層階の税率を引き上げる“補正率”が採用されている。今回は、相続税の評価方法について、市場価格に近づける見直し案が公表された。
【今週の住活トピック】
マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議が見直し案を公表/国税庁
そもそも相続税では、相続した財産の価額はその財産を取得したときの時価によるとされている。いわゆる時価主義といわれるものだ。不動産の評価方法は、国税庁の「財産評価基本通達」で定められている。マンションについては、この通達の内容を見直そうと、2023年1月30日に第1回有識者会議が開かれた。
昨年末に公表された政府の「令和5年度税制改正大綱」で、マンションの相続税評価が、市場での売買価格と通達に基づく評価額が大きく乖離しているケースが見られるとして、「時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」と記載された。これを受けて、適正化のための有識者会議が動き出したわけだ。
第3回の有識者会議で見直し案の要旨が提示され、6月30日に国税庁のホームページに有識者会議の資料が公表された。
なぜ、タワーマンションの高層階が相続税の節税になる?現状のマンションの相続税の評価額は、どのように計算されるのか?
マンションの1つの住戸を相続した場合、建物の価額(かがく※)と敷地の価額をそれぞれ計算し、足し合わせたものが相続税評価額になる。建物の価額は「固定資産税評価額」が用いられ、敷地の価額は敷地全体の価額のうち持ち分割合で計算される。つまり、同じマンションで同じ面積の住戸を所有する場合、1階の住戸も20階の最上階住戸も同じになる計算方法だ。
※売り手が品物に対して設定するのが「価格」に対し、品物の値打ちに相当する金額が「価額」
ところが、実際に市場で売買されるときには、同じマンションの同じ面積の住戸であっても、1階と最上階では、価格にかなりの開きが出る。タワーマンションでは、住戸からの眺望がウリになるからだ。つまり、実際に売れば高く売れるものが、相続税評価額では価額を抑えることができるので、高層階ほど相続税の節税効果が大きいということになる。
また、元になる敷地全体の価額は、路線価が用いられる。路線価は地価公示の8割程度になっているので、市場価格より低くなるのが一般的だ。もともと相続財産を不動産にすれば、現金より相続税評価額が抑えられるといったこともあり、不動産は節税対策に用いられることが多い。加えて、タワマンでは高層階住戸でより大きな節税効果を生むというわけだ。
マンションと一戸建てでは、市場価格との乖離率に大きな開き有識者会議の資料(画像1)によると、近年はマンションの市場価格は相続税評価額の2.3~2.4倍にまで開いているという。
【画像1】国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する第3回有識者会議について(令和5年6月)」より転載
市場価格との乖離率を一戸建てと比べてみる(画像2)と、平成30(2018)年の平均で、マンションは2.34倍まで開いているが、一戸建ては1.66倍にとどまっている。0.68倍の開きがあるが、例えば市場で同じ1億円で売れるマンションと一戸建てがあった場合、相続税評価額はマンション(約4273万円)と一戸建て(約6024万円)で、約1751万円の差が生じるという計算になる。10億円というタワーマンションの最上階住戸もあるだろうから、この場合は評価額を5億円以上も大きく下げることができるという構図になっているわけだ。
【画像2】国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する第3回有識者会議について(令和5年6月)」より転載
相続税の評価方法が定められた頃には、タワーマンションのような不動産は市場になかっただろう。ところが、好立地で高額のタワーマンションが数多く供給されたいま、マンションでは評価額が市場価格の半分以下になる事例が約65%もあるというのが実態のようだ。
マンションの相続税評価額はどう見直される?有識者会議の資料を見ると、マンションの評価額が市場価格と乖離する要因として、マンションの総階数や所在階、築年数などが加味されていないうえ、タワーマンションのように立地条件が良好で地価の高い場所であっても、多くの住戸で持ち合うために敷地の持ち分が狭小になる度合いが大きいといったことを挙げている。
そこで見直し案は、この「築年数」「総階数(総階数指数)」「所在階」「敷地持分狭小度」の4つの指数に基づいて、市場価格との乖離率を予測し、評価額が市場価格理論値の60%に達しない場合は、60%になるまで価額を補正するというものになった。
60%というのは、一戸建ての乖離率にマンションを近づけようというもの。マンションの市場価格との乖離率を一戸建て並みにすることで、税負担の公平を図るという考え方だ。
この見直し案では、築浅や高層階で評価額がこれまでよりも引き上がるので、相続対策としてタワーマンションの住戸を購入し、相続後に売却するという方法での節税効果は薄れるだろう。
政府は、2024年1月から見直したいとしている。有識者の中には、「今後のマンション市況の変化には適切に対応していく必要があるので、新しい評価方法が適用された後においても、重回帰式の数値等については定期的に実態調査を行い、適切に見直しを行うべきではないか」と、継続的な見直しを求める声があった。
税金は国民が相応に負担するものなので、公平であってほしいものだ。
●関連サイト
マンションに係る財産評価基本通達に関する第3回有識者会議について(令和5年6月)
めぐみ不動産コンサルティングは、まちの不動産屋さんでありながら、社会生活が困難な状況にある人の住居・福祉・仕事を包括的にサポートできるようにと、シングルマザー向けシェアハウスの運営や障がい者グループホームの運営をしています。まちの不動産屋さんが、なぜ生活に困難を抱える人たちを支える取り組みをしているのでしょうか。そこには「自身の原体験がある」と話す創業者の竹田恵子さん。これまでの事情や、事業の現在、これから取り組むべきことについて話を聞きました。
シングルマザーにとって、家を探すことが困難だと気づいた神奈川県伊勢原市。都心から電車で1時間ほど、田畑が目の前に広がるのどかな住宅街です。この街にあるのが「めぐみ不動産コンサルティング」。伊勢原市近郊にて不動産の賃貸や売買を行う会社です。不動産事業以外にも、シングルマザーをサポートするシェアハウスや社会福祉施設の運営サポート、就業支援、農園の運営や食事支援など、「困った人の拠り所」となる取り組みを行っています。
創業者の竹田恵子さんは、「もちろん不動産の賃貸や売買もしますが、半分は人と人をつなげるボランティアのような感じ。人との距離が近くなって家族が増えているように感じるのが嬉しい」と笑います。竹田さんの優しさは、住居や仕事、社会復帰に悩みを抱える人たちにとって、あたたかい布団にくるまったかのような温もりが感じられるのでしょう。
めぐみ不動産コンサルティングが母子シェアハウス事業を始めたのは、2016年のこと。始まりはニュースを見て母子家庭の貧困がこんなにも切実だという事実を知ったことでした。折しも自身もシングルマザーとして、不動産会社を経営しながら必死に子育てをしている最中。
大家族の母のような優しくあたたかな雰囲気の竹田さん(写真提供/めぐみ不動産コンサルティング)
「困っている人たちが支え合い、少しでも安らぐことができるあたたかな環境をつくりたい」。そう考え、ひらめいたのがシングルマザー向けのシェアハウスでした。しかし当時、市内にはシェアハウスが一つも存在しませんでした。専用物件の購入を検討しても、シェアハウスの運営に対して事業の持続性や、家賃収入をコンスタントに得ることができるのか、というリスクや不安を感じている銀行から融資が下りない日々。
そこで恵子さんは子育てに理解のある幼稚園経営者の知人から一軒家をマスターリース(一括賃貸)し、シェアハウス運営を始めます。
多様なタイプのシェアハウスがそろう運営するシェアハウスは2種類。女性専用の「めぐみハウス東大竹I」と、男女共に入居可能で、上下階で暮らしが別世帯に分かれた「めぐみハウスたからの地」です。現在子どもを含めて8世帯13人が暮らします。
「めぐみハウス東大竹I」外観。およそシェアハウスとは思えないゆとりのある姿(写真提供/めぐみ不動産コンサルティング)
各世帯が利用できる収納、キッチン、浴室など一般的なシェアハウスよりもゆとりのある設計ながら、家賃は月額38,000円~46,000円(同居する子どもの家賃費用は人数当たりで別加算)。50,000円のデポジット(保証金・一時預かり金)は必要ですが、保証人は不要です。
「めぐみハウス東大竹I」の間取図。1階・2階合わせて8室に共用スペースが備わる(写真提供/めぐみ不動産コンサルティング)
入居する人たちには、離婚や未婚、独身や独居で誰かと共に暮らしたいなど、さまざまな事情があります。以前は「家賃が割安で住めるから」と選択されることが多かったシェアハウスの価値が、最近では変化をしているそう。特にコロナ禍で、人との関わりが欲しいとあえてシェアハウスに入居を希望している人が増えたそうです。入居希望者の中には、「一人っ子のためにシェアハウスで兄弟体験をさせたい」という人も。
「2016年のシェアハウス開業当時は、伊勢原という土地柄からか、仕組みに対して認知度がなく、『シェアハウスって見知らぬ人との共同生活だし、安全面など大丈夫なの?』と不安に感じるようで。入居してもらうのに苦労しました。ひとり親は収入が低かったり、DVで逃げてきた場合は連帯保証人になってくれる人がいないなど、家賃保証面がクリアできず、借りることができる賃貸住宅の選択肢がなく、仕方がなくシェアハウスに入居したという人も。しかし徐々にシェアハウスの認知も上がり、これまでにシングルマザー20組弱が入居してくれています」(竹田さん、以下同)
「めぐみハウス東大竹I」のエントランス。シューズボックスの収納量にも複数の世帯が生活できる余裕を設けている(写真提供/めぐみ不動産コンサルティング)
一方で、シェアハウスが合わないといって退去していった人も。共同生活を営むため、それぞれの人に雰囲気や生活スタイルに合う・合わないがあるのはやむを得ないことです。そのため、竹田さんは事前に必ず面談をすると話します。
「入居する前に必ず2時間ほどかけて面談をして、互いの信頼関係をつくっていきます。面談を通してお断りすることも。社会でしっかり自立した生活を営んでいきたい、仕事に復帰したいという人の背中を押したいからです」
こうやって信頼関係をつくることで、家賃は6年間未払いなしだというから驚きです。
「家賃の支払いが遅れるなら事前に言ってね、と声がけをするようにしています。またお仕事をしておらず支払能力を獲得しようと励むお母さんには『お仕事どう?』と声がけして様子をうかがうことも。信頼をしているからこそ、家賃の支払いについてはじっと待つスタンスを保つように心がけています」(竹田さん)
誰もが孤立しない、安心した暮らしとつながりある日、神奈川県の行政担当者から竹田さんに連絡がありました。話を聞くと、シェアハウスの取り組みがメディアに取り上げられたことをきっかけに、めぐみ不動産コンサルティングの存在を知ったそう。この出会いからめぐみ不動産コンサルティングは「住宅確保要配慮者の居住支援法人」としての推薦を受けることになりました。
そして、竹田さんは居住支援法人としての活動を通じて「ひとり親だけではなく、高齢者や障がいを抱える人も複合的に住居や暮らしに困っている状況」ということを知るのです。「家だけではなく総合的に支援できる環境をつくれたらいいのでは?」と思い立ったのが、複合的なビジネスを始めるきっかけに。
「『社会に出てみてうまくいかなかったら、またうちに帰ってきたらどう?』そう言える安心の材料や、場所をつくってあげたかったんです」
その後、竹田さんは障がい者支援のため、パートナーと一般社団法人ワンダフルライフを立ち上げ、グループホームを9棟(うち1棟はリフォーム中)と無農薬野菜を栽培する「めぐみ農園」を開設します。さらに今後2023年7月には障がい者の就労継続支援B型作業所「ワンダフルワークス」の開設と子ども食堂「めぐみキッチン」をオープンする予定です。
グループホーム「ワンダフルワークス」外観(写真提供/一般社団法人ワンダフルライフ)
めぐみ不動産コンサルティングの事務所前では「めぐみ農園」でつくった季節の野菜を販売している。グループホームの食材としても使用(写真提供/めぐみ不動産コンサルティング)
グループホームで助け合いながら暮らす。そしてそこで仕事をしながら、併設の食堂や畑では就労や食事、交流もできる。暮らす×働く×食べる×交流、というお互いの仕組みが混ざり合い、補完をする循環型の仕組みになりました。
理想的なスタイルである一方、特にシェアハウス事業は、単体では事業収支的にも大きく利益が出るとは言い難い状況です。さらに入居者であるひとり親世帯を継続的に集客し続けることや新たな建物・施設の確保が資金条件的に難しかったり、DV被害や精神疾患などハードな状況で入居するお母さんも多くてサポートしきれない、といった理由で撤退をしていく事業者も。
障がい者グループホーム「ワンダフルライフ」のリビングダイニング。広々とゆとりのある空間です(写真提供/一般社団法人ワンダフルライフ)
竹田さんも「ある意味、薄利多売な感じ。複数の棟を所持するから成り立っているし、どうしても拡大するまではしばらく経営が苦しいのです。ここを乗り切れなくて事業閉鎖をする人も多いです」と居住支援の現実について話します。
また、オーナーから建物をマスターリース(一括賃貸)する際、シェアハウス利用という点に「大勢の入居者が同居することで室内が荒らされたりしないか、近隣に迷惑がかからないよう生活の統率が取れるのか、と難色を示されがち」と課題を指摘します。それゆえに竹田さんは所持するシェアハウスと、グループホームのほとんどを自社で購入して賃貸しています。
あの時の自分の苦しみがよぎるそれでもなお社会生活に困難を抱える人たちを支援する事業を続けているのはどうしてなのでしょう。不動産事業だけを行うほうが順調なのかもしれません。竹田さんは「困っている人をほっとけなかった。あの時に自分が感じた言いようのない不安が重なってしまい……」と振り返ります。
自身が離婚をしてシングルマザーになった時代。「とにかく自分の子どもを食べさせていくために稼がなきゃ」とがむしゃらに働いていました。市や国の補助やサポート制度などを探す余裕もない状況です。
そんなある日、ちょっとした身体の違和感を感じて病院で検査をします。ことなきを得ましたが、こうした経験を経て「私が死んだら子どもたちはどうなる?」という不安を色濃く感じることに。初めてその時に住まいの確保、家があることの重要性について深く考えることになります。
シェアハウスに居住するメンバーとスタッフで野菜収穫イベントなども行う(写真提供/めぐみ不動産コンサルティング)
「もし自分がもっと助けてもらえる手段があると知っていたら。そして手を差し伸べてくれる場所や人とのつながりがあったら、困らなかっただろうな。と今になって思うのです。だからこそ誰かを助けたい。それが私の原動力です」
このような竹田さんの取り組みに助けられ、シェアハウスを卒業して一般賃貸住宅に移り住んでいった人もいます。「安心して寝られて、相談できる相手がいて、自分の将来が描けるようになると、みんなだんだん強くなる」そう。もちろん一般賃貸住宅を探すときも竹田さんが不動産会社として仲介し、相談に乗り続けているので、卒業した後も農園のイベントやお手伝いに卒業したひとり親世帯が遊びに来ることも。
「私にとって、シェアハウスに居住する人たちはみんな子どもや孫のような存在。彼ら彼女らが社会に巣立ち、そして互いに助け合える関係であることが、今望んでいることです」
竹田さん自身も積極的に子どもたちに関わる(写真提供/めぐみ不動産コンサルティング)
しかしシェアハウス事業の中でも、特にシングルマザー専用のシェアハウスは、日本の中でも普及の速度が鈍重な印象です。特に竹田さんが開設した2016年当初はほとんど周囲にそうした事例がありませんでした。だからこそ全国の限られたシェアハウス運営事業者は、お互いにつながりを持ち、互いの知見を交換しながら今日まできたそうです。
季節のイベントも事業主や入居者主体で実施。この日は豆まきを行った(写真提供/めぐみ不動産コンサルティング)
「同じことで困っている人たちはちゃんと共感しているし、連携しています。ここ数年は、居住支援協議会やNPOの仲間を通じて、困っていることを事業者からも相談ができるようになったので、志を持って担っている事業者の運営状況が少しずつ明るくなっていくことを願っています」と竹田さんは力強く語りました。
これまで竹田さんが話してくれたように、住まいの確保だけでなく、社会生活に困難を抱えるのは母子だけではありません。立場や年齢によらず、困っている人が存在することは確かな事実でした。
竹田さんは「だからこそ今後、福祉との連携がより必要です」と話します。今後は「シングル」だから「高齢者だから」「障がい者だから」と区切るのではなく、さまざまな社会的困難を抱える人もそうでない人も、みんなが支え合える環境が理想だと感じます。それこそが誰もが生きやすい社会なのでしょう。めぐみ不動産コンサルティングの取り組みはこれからの暮らし方、住まいのあり方として、一つのモデルを見せてくれているようです。
●取材協力
株式会社めぐみ不動産コンサルティング
数々のコンサートが開かれ、“音楽の殿堂”などと呼ばれた「中野サンプラザ」がついに閉館した。5月3日から7月2日まで2カ月開催された、50年の歴史の集大成となる音楽祭「さよなら中野サンプラザ音楽祭」を終えた晩に、クロージングセレモニーが開催された。今後は、野村不動産を中心としたプロジェクトが推進される。
【今週の住活トピック】
さよなら中野サンプラザ音楽祭最終日!50年の歴史のクロージングセレモニー開催/株式会社中野サンプラザ
筆者は、以前、中野区に住んでいた。子どものときから社会人になってしばらくの間まで。だから、子どものころの繁華街といえば、中野ブロードウェイだった。中野ブロードウェイの高層棟のマンションには著名人が住み、商業施設には都知事だった青島幸男さんがオーナーのスパゲッティ店(この頃はパスタとはいわなかった)もあった。
1973年当時の中野サンプラザ(株式会社中野サンプラザ提供)※手前は中野区役所
そんな中野の中心地に、1973年、地上21階、高さ92mの中野サンプラザという大きな建物が建った。竹橋のパレスサイドビルなどで知られる、林昌二さんの設計による建物は、白い三角形の特徴的なビルで、中野のランドマークとなった。建物の中には、ホテル・レストランや宴会場、結婚式場、研修室などの施設のほか、スポーツクラブ、スタジオ、ボウリング場まであった。当初の「全国勤労青少年会館」という名称の通り、集団就職で上京した若者のための施設として、大きな建物の中にさまざまな機能を集約した珍しいものだった。
2000人規模のホールでは、アーティストがコンサートを行うようになると、“音楽の殿堂”といわれるようになり、モーニング娘。などのアイドルがコンサートを行うようになると、“アイドルの聖地”といわれるようになった。
その中野サンプラザが老朽化などを背景に閉館し、解体されることになった。
閉館直後の中野サンプラザ(広場には別れを惜しむ大勢が集まった)※筆者撮影
50年の歴史に別れを告げる、クロージングセレモニー開催50年間の歴史を閉じるにあたって、5月3日から7月2日の2カ月間にわたり、「さよなら中野サンプラザ音楽祭」が開催され、37公演で約6万人の観客を集めて終了した。この後、関係者によるクロージングセレモニーが行われた。
「さよなら中野サンプラザ音楽祭」ポスター(中野サンプラザにて筆者撮影)
中野区長(酒井直人さん)、中野区議会議長(酒井たくやさん)、中野サンプラザ代表取締役会長(金野晃さん)、同代表取締役社長(佐藤章さん)及び跡地再活発事業者を代表して野村不動産代表取締役社長(松尾大作さん)によるメッセージがあり、ゲストの“サンプラザ中野くん”さんから花束贈呈などが行われた。
金野会長は、東日本大震災で帰宅困難者を受け入れたり、コロナ禍でしばらく休館を余儀なくされたりといった歴史もあり、人が集い交流する50年だったと振り返った。最後は、中野サンプラザの従業員の方々が一斉に並び、別れを惜しんだ。
最後に挨拶をした中野サンプラザの従業員の方々(筆者撮影)
セレモニーの前、最後の山下達郎さんのコンサートが開催されているときから、中野サンプラザ前の広場に多くの人が集まり始め、正面玄関のガラス越しに隙間なく立ち並んで、セレモニーの様子を見守っていたのが印象的だ。この中野サンプラザが成人式の会場だった筆者としては、感慨深いものがあった。
跡地は「(仮称)NAKANOサンプラザシティ」へと変貌する予定さて、跡地については、野村不動産を代表とするグループ(共同事業者:東急不動産、住友商事、ヒューリック、東日本旅客鉄道)が、中野区と「中野駅新北口駅前エリア拠点施設整備の事業化推進に関する基本協定書」を締結し、再開発することが決まっている。事業者によると「本事業は同エリアの象徴的な存在である中野サンプラザの機能を再整備する事業でもあることから、文化を原動力としたまちづくりを目指し生活・産業・交流を活性化させるため整備を図っていく」ということだ。
野村不動産等の事業者の資料より転載※この地図は、国土地理院発行の地理院地図(電子国土Web)を使用したものです。
低層棟には、最大7000人収容の大ホールとライフスタイルホテル、バンケットホールなど従来の施設を継承する機能、高層棟にはオフィスや住宅・商業施設が入る予定だ。また、事業者が立ち上げるエリアマネジメント協議会が事務局となり、地域の活性化につながるさまざまな活動を展開していくという。
ほかにも、中野駅とホールをつなぐ歩行者空間や広場の整備なども計画しており、2028年度内の竣工を目指すということだ。
中野駅周辺には100年に1度の再開発が進行中実は、中野駅周辺では、100年に1度といわれるほど、開発計画が目白押しだ。
すでに、2012年には警察大学校跡地に「中野四季の都市(まち)」ができ、四季の森公園の周囲のオフィスビルに、キリンビールなどの企業を誘致した。その後、3つの大学(早稲田大学、帝京平成大学、明治大学)の新キャンパスも開校するなど、活気ある街になっている。なお、中野区役所は「中野四季の都市(まち)」の一部、北東エリアへ移転する。
姿がはっきりしてきたのは、中野駅南口の公社中野駅前住宅跡地周辺(中野二丁目地区)の開発事業だ。業務棟と住宅棟(住友不動産の賃貸マンション)の2棟が工事中で、2023年度に竣工予定だ。
駅自体も再開発の対象だ。「中野駅西側南北通路・橋上駅舎等事業」によって、2026年に新たに西口が誕生する。歩行者専用道路である「南北通路」と「橋上駅舎」、「駅ビル」を一体の建物として建設する計画だ。
中野区の「中野駅周辺まちづくり事業一覧」より抜粋転載
中野駅周辺は、中野サンプラザ跡地だけでなく、駅前広場の整備や駅の利便性向上なども考慮した、連携した再開発計画が進んでいる。昭和の名建築が取り壊されることは残念ではあるが、この後の数年間で街が一気に様変わりすることになる。
セレモニーでゲストとして登壇したサンプラザ中野くんさんは、「今日で閉館となるが、2028年にはまた中野サンプラザという名前が戻ってくる。その間は、自分が名前を守っていく」とスピーチしていた。新しい街がどんな街になるのか、筆者も見守っていきたい。
●関連サイト
・さよなら中野サンプラザ音楽祭最終日!50 年の歴史のクロージングセレモニー 開催
・中野駅周辺まちづくり
2023年、リクルートが3年ぶりに「住みたい街ランキング」の愛知県版を発表。再開発や再整備が盛んで、注目の施設の開業など、都市部を中心に変化が著しい愛知。今年はNHK大河ドラマ「どうする家康」の影響もあり、三河エリアへも熱い視線が注がれている。愛知ではどんな街が上位なのか? 人気の理由も探りながら、愛知県春日井市生まれ、名古屋に住み続けて19年目の筆者と共に見ていこう。
2023年「住みたい街(駅)」1位は、暮らしやすい街へ進化中の「名古屋」今回の「住みたい街」(自治体・駅)ランキングは、愛知県内の街(自治体・駅)について、愛知県在住の20~49歳の男女2000人に「住みたい街」についてアンケートを実施した結果をランキングしたもの。
県内居住者から見て、住んでみたいと思われている憧れの街がランクインしていると言える。
「住みたい街」(駅)の1位から3位までは、前回2020年に実施した時と同じ結果に。不動の1位は、2018年のランキングから変わらず「名古屋」!
「名古屋」の高い人気は、2027年のリニア開業を見据え、再開発が進んでいることが挙げられる。また近年、名古屋駅前の再整備計画が発表されており、今後は駅東西に広場を整備予定だ。駅西側駅前広場にはイベントなども行われるスペースをつくる再整備計画があり、期待が高まる。
中央コンコースから地下街で「大名古屋ビルヂング」や「ミッドランドスクエア」に繋がる駅東側は、地上ロータリー交差点の改良や、歩行者空間の整備などが予定されている。ロータリーのランドマークになっていたモニュメント「飛翔」は昨年撤去され、広場開設に向けて整備が進行中だ。
ロータリーのモニュメント「飛翔」は昨年撤去され、現在は広場開設に向けて整備が進んでいる(写真/PIXTA)
数年前までは商業的な街という印象が強かった「名古屋」だが、近年変化が著しい。2021年には、名鉄百貨店メンズ館地下1階に、高級スーパー「紀ノ国屋」が中部地区初出店し話題に。また同年、駅徒歩約12分のノリタケ工場跡地に、商業施設と住宅、オフィスからなる複合施設「イオンモールNagoya Noritake Garden」が開業して、食品や日用品の買い物の場が充実した。この「イオンモールNagoya Noritake Garden」は、緑豊かな「ノリタケの森」の敷地内に立ち、1階から2階に繋がる大型書店「TSUTAYA BOOKSTORE」と、3階にある「コニカミノルタ プラネタリウム満天NAOGOYA」が話題に。子連れファミリーが訪れやすい街へと進化している。
3位には、名古屋市外から東三河の中心都市「豊橋」がランクインそれでは、2位以下のランキング上位の街についても見ていこう。
2位「金山」は「名古屋」の隣の街で、交通利便性の良さに高い支持が集まる。金山駅は、JR2路線と名鉄線、地下鉄2路線が乗り入れる総合駅だ。名鉄線は刈谷市や三河方面へも運行し、豊田や岡崎方面にも通勤がしやすいほか、中部国際空港との直行便「ミュースカイ」も発着する。駅前の商業施設「アスナル金山」は2020年にリニューアルし、市内の人気ベーカリーや回転寿司店などが登場。また、駅直結の「ミュープラット金山」にはカフェや雑貨店が入るほか、駅の北側には地下1階、地上3階建の「イオン金山店」があり、食料品や日用品も手に入れやすく便利だ。
金山駅周辺(写真/PIXTA)
名古屋市外からランクインした3位「豊橋」は、愛知県の南東部に位置する東三河の中心都市で、東海道新幹線が停車する。市内の移動には路面電車が活躍していて、夏の「納涼ビール電車」と、名産のちくわも楽しめる冬の「おでんしゃ」は人気企画だ。2021年、駅前に食・健康・学びをテーマにした複合施設「em CAMPUS(エムキャンパス)」が開業。食材マーケットや飲食店、住居、行政窓口を備えるほか、2・3階にはカフェを併設した「豊橋市まちなか図書館」があり、住民の憩いの場となっている。また、市内には「のんほいパーク」の愛称で知られる豊橋総合動植物公園をはじめ、緑豊かな公園が点在。遠州灘に面した伊古部海岸はサーフィンスポットで、アカウミガメの産卵場所でもある。自然に恵まれ、レジャーや山海の幸を気軽に楽しめるという魅力がある。ちなみに「豊橋」は、「穴場だと思う街(駅)ランキング」では1位に選ばれている。
「のんほいパーク」こと豊橋総合動植物公園(写真/PIXTA)
市内では、都会的な雰囲気と利便性を持ち合わせた東山線沿線の街が人気4~6位の「栄」「覚王山」「星ヶ丘」は、全て地下鉄東山線沿線の街。東山線は、名古屋市で最初に開業した地下鉄路線であり、市内を東西に横断する。「名古屋」にも直通なので人気が高く、「住みたい沿線ランキング」でも2位にランクインしている。
4位「栄」は、「住みたい自治体ランキング」1位の名古屋市中区に位置。2020年、栄~久屋大通駅間に公園と商業施設が一体化した「RAYARD Hisaya-odori Park(レイヤード ヒサヤオオドオリ パーク)」がオープンして、一帯がリニューアル。久屋大通公園沿いに、およそ40軒のグルメやファッションの店舗が集まる。エリア内に5つある「ヒロバ」では度々イベントが行われ、トレンドを発信している。
「RAYARD Hisaya-odori Park(レイヤード ヒサヤオオドオリ パーク)」(写真/PIXTA)
同時に地下街の「セントラルパーク」も改装され、スーパーなどが集まる食物販ゾーンが誕生。休日にテイクアウトグルメを楽しんだり、平日の仕事帰りに食材などの買い物を済ませたりと、暮らす街としても選択肢が広がった。2022年には、マルエイ跡地に食に関する商業施設「マルエイガレリア」が開業し、関西発のスーパー「パントリー」や、市内最大級の無印良品が開業して話題に。今後も「中日ビル」の建て替えや「(仮称)錦三丁目25番街区計画」といった大規模複合施設建設の計画が控え、ますますにぎわいそうだ。
「マルエイガレリア」(写真/PIXTA)
5位「覚王山」と6位「星ヶ丘」は、共に「住みたい自治体ランキング」で2位となった名古屋市千種区に所在。
「覚王山」は、昨年「SUUMO住み続けたい街ランキング愛知2022」で住民から選ばれ、1位に輝いた街。シンボルは覚王山日泰寺で、駅を出るとすぐに400mほどの参道が続き、商店街が広がる。レトロな雰囲気の食堂などのほか、東海発祥のドーナツ店やパティスリー「シェ・シバタ名古屋」といった人気店も軒を連ね、新旧の良さが合わさる街だ。住民も街の魅力として「雰囲気やセンスのいい、飲食店やお店がある」という項目を上位に挙げている。
6位「星ヶ丘」は、駅前にファッションやグルメが楽しめる商業施設「星が丘テラス」や「星ヶ丘三越」があり、買い物環境が抜群。季節ごとの装飾が美しい「星が丘テラス」は、フォトスポットとしても人気に。また、周辺に大学が多い文教地区でもある。周囲は自然にも恵まれ、東山動植物園星が丘門に近く、休日は家族連れでにぎわう。
・関連記事:愛知「住み続けたい街ランキング2022年版」住民評価1位は名古屋市おさえ長久手市!
順位が上がった街から、「交通利便性」と「職住近接」のニーズが見えてくる7位「刈谷」、8位「大曽根」、9位「岡崎」は、いずれも2020年から順位がアップ!
特に「大曽根」は2020年の16位から8位へ、大きく順位を上げた。「愛知県穴場だと思う街(駅)」ランキングでも3位になるなど、注目度が高い。「大曽根」は名古屋市東区と北区にまたがる街で、大曽根駅からはJR、名鉄、地下鉄に加え、ガイドウェイバス「ゆとりーとライン」の4路線を利用可能。名古屋都市部だけでなく、瀬戸市や春日井市方面へもアクセスしやすい。さらに、市バスの路線も充実している。2020年、名鉄瀬戸線の駅構内に商業施設「ミュープラット大曽根」が併設され、「からみそラーメンふくろう食堂」など17店舗がオープンして便利に。また、徒歩圏内にスーパーを含む「メッツ大曽根」や、朝市を開催する商店街「オゾンアベニュー」が集まり、1駅隣には「イオンモールナゴヤドーム前」もあるなど、生活利便性の高さは抜群。一方で、駅南口方面には住宅街が広がり、徒歩約10分の距離に公園を併設した庭園「徳川園」があり、四季や自然も身近に感じられる。
7位「刈谷」、9位「岡崎」は、共に愛知県の三河エリアに位置する市。
デンソーやアイシン、豊田自動織機などトヨタ系企業の本社が多く、関連企業に勤める人からの職住近接ニーズも高い「刈谷」。県内屈指のスポーツタウンで、刈谷市をホームタウンとするスポーツチームは、バスケットボール、バレーボール、ソフトボール、ラグビー…など多岐にわたる。刈谷総合運動公園敷地内にある「ウイングアリーナ刈谷」は、男子バスケットボールチーム「シーホース三河」のホームアリーナ。トラックとフィールドからなる陸上競技場「ウェーブスタジアム刈谷」も併設され、各施設は大会などがない日は一般利用も可能。プロ仕様の本格的なエリアで、老若男女がスポーツを楽しむ姿が見られる。また、全国有数の財政力を誇る街でもあり、駅から市内の公園など主要な施設を回る公共施設連絡バス「かりまる」は、なんと無料で乗ることができる。さらに、「刈谷ハイウェイオアシス」や「刈谷市交通児童遊園」といった遊園地さながらの公園があり、乗り物が100円前後と、格安価格で遊べる。
「刈谷ハイウェイオアシス」(写真/PIXTA)
NHK大河ドラマ「どうする家康」で注目が高まる「岡崎」は、徳川家康の生誕地である岡崎城や、八丁味噌の産地として知られる。「名古屋」まで名鉄とJRで30分の距離で、三菱自動車などの自動車関連工場と、関連企業に従事する人が多い。公共施設が充実し、市内中心部にある図書館交流プラザ「Libra」は、「愛知まちなみ建築賞」を受賞した建物内に豊富な蔵書を収容。館内には岡崎出身のジャズ愛好家、内田修氏が寄贈したジャズコレクション展示室があり、貴重な音源を楽しめる。市内には大きな公園も点在し、遊園地のある「南公園」では、100円以下で楽しめる乗り物が多数。また、「東公園」の動物園ではアジアゾウなどが見られるが、入園料は無料!教育にも注力し、愛知県立岡崎高等学校は、難関大学合格者を多数輩出する公立高校として全国的にも注目を集めている。
近年は名鉄「東岡崎」駅周辺で再開発が進み、2019年には駅直結の複合施設「オト リバーサイドテラス」が誕生。また、2023年度中には南口に地上3階建の駅ビルが竣工し、今後は北口にも商業施設やオフィスを備えた地上8階建のビルを建設予定だ。「東岡崎」は街のランキングも前回20位から15位へとアップしている。
今回の「愛知県住みたい街(駅)ランキング」では、名古屋都市部の街に加え、豊かな自然や文化を享受でき、再整備などで利便性が高まった三河エリアの都市もランクインした。「岡崎」と同じく三河の中核都市である「豊田市」も、前回33位から12位にランクアップしている。
特に、ピックアップしたランキング上位の街は、近年暮らしやすさや景観の良さがアップし、トレンド感も加わって、惹かれる魅力がたっぷり。
みんなの声を集めた「住みたい街ランキング」からは、今後の街の進化への期待感と、「忙しい毎日の中、プラスアルファの楽しみがある街で暮らしたい」という現代のニーズが見えてくるようだ。
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・SUUMO住みたい街ランキング2023 愛知県版/名古屋市版
「約300万円で購入できる10平米の3Dプリンター住宅」のプロトタイプが登場したと2022年5月に紹介しましたが、あれから1年、商用日本第一号がついに長野県佐久市で完成しました。その全貌をお届けします。
整骨院の大きな看板があった場所に3Dプリンターの家を設置。今後はこの球体が看板がわりに(画像提供/セレンディクス)
10平米の3Dプリンターの家。施工時間は22時間52分!北陸新幹線が停車する佐久平駅から徒歩7分、大通りに面した整骨院の敷地内に立つ、球体のような白い物体。通りを歩く人も信号待ちの車の人も、興味深そうに眺めています。それもそのはず、数日前までなかった近未来的な物体が、突如現れたのだから。
建物の正体は、商用3Dプリンターハウスの日本第一号棟。施工時間は1日8時間×3日、計24時間を予定していましたが、実際に完成までに要したのはわずか22時間52分でした。
手がけたのは、セレンディクス(兵庫県西宮市)。「30年もの住宅ローンは現代の経済環境に即していない。車を買うような感覚で、ライフスタイルやライフステージに応じて、家を自由に買い替えられる社会を」と、これまでの家づくりの概念を根本から考え直し、低コストで短納期の3Dプリンターハウスの量産をめざす企業です。
令和の一夜城ともいえる3Dプリンターハウス「serendix 10(スフィアモデル)」は、床面積10平米、価格は330万円です。同社COOの飯田國大(はんだ・くにひろ)さんによると、「2022年秋に6棟を一般販売したところ、国内外から大きな反響があり、購入申し込みは30件ほどありました。その完売したうちの1棟が、今回の佐久市の物件です」
夢の日本第一号をもぎとったのは、全国に介護・医療施設を展開するカスケード東京。同社が運営する整骨院の敷地内に建築し、特別な施術を行うプライベートサロンとして利用する予定だといいます。
2日目、施工開始から10時間ほどたったころ。既に完成形が見えています(撮影/塚田真理子)
セレンディクスCOO飯田さん。初回販売数を6棟にしたのは、「かつてトヨタが紡績業から自動車産業に転身したとき初めて販売した車が6台だったそうです。問題点があったら教示してくれる、理解のあるお客様に協力いただいています」(撮影/塚田真理子)
NASAの火星移住プロジェクトを手がける建築家がデザインserendix 10はスフィアモデルという名前のとおり球体で、直径3.3mで広さ10平米、天井高は4m。NASAの火星移住プロジェクトを進める建築家、曽野正之氏とオスタップ・ルダケヴィッチ氏による、近未来的なデザインが目を引きます。設計は、日本、アメリカ、オランダ、中国の企業コンソーシアム(共同企業体)が手がけました。
「風を逃す球体の建物形状は、風速140mにも耐えうる自然災害に強い構造。火星への移住をめざすNASAのプロジェクトでも採用されており、物理的に最強の形状といえます。従来の工法ではコストがかかるこうした曲線構造に対応できるのも、材料を積み重ねて建設する3Dプリンターの得意とするところです」と、飯田さんは話します。
三角形の窓がこのあと取り付けられます。30cm以上という壁の厚さから、遮音性、気密性も期待できます(撮影/塚田真理子)
コンクリート壁の厚さは30cm以上、躯体全体の重量は約20tもあり、まるでビルのように頑丈な造り。プロトタイプでは鉄筋などの構造体を使わずとも、十分な安定性と強度を実現しています。ただし、建築基準法で指定された鉄筋などの材料を使わない構造物は、個別に国土交通大臣の認定が必要なため、大臣認定の取得に向けて現在申請に着手しているところだそうです。
鉄筋を組み込んで日本の現行法に準拠ちなみにserendix 10の実用棟は、当初、政令指定都市から90分のエリア内に設置することを想定していました。冒頭でもふれた、10平米300万円、車を買うように家を所有できるように、というコンセプトゆえ「土地代が安く、かつ必要なときに都市に行きやすい距離」というのがその理由です。
ところが、第一号に決まった佐久市の土地は条件が異なり、都市計画区域内のため建築確認申請も必要です。現段階では大臣認定が未取得だったことから、建築基準法に則り、3Dプリンターで出力したコンクリートの間に鉄筋を入れて構造設計をし直すことに。
躯体には断熱材も組み込み、日本より厳しいオランダの断熱基準をクリア(撮影/塚田真理子)
構造設計は、駅やスタジアム、ホテルなどさまざまな規模の建築物を手がけるKAPの桐野康則さんが担当。鉄筋の柱を4本入れ、上に鉄筋の梁をつけることで耐震強度を高め、建築基準法に適合させているといいます。
「KAPを含め、現在205社のコンソーシアムの協力を得て、社会実装を重ねながら研究開発を進めています。セレンディクス1社では到底できませんが、課題ができるたびにさまざまな企業が声を上げてくれ、手を取り合って解決に向けて進んでいけるのです」(飯田さん)
ところで、3Dプリンターハウスはどんな手順で建築しているのでしょうか。
「セレンディクスはデジタルデータをつくる会社です。まず、設計データをつくり、最先端のロボット工学による3Dプリンターにデータを送信。そのプリンターで出力した4つのパーツをプレキャスト素材として輸送し、現場で組み立てて施工しています」と飯田さん。
serendix 10は開発と普及のスピードを速めるため、ヨーロッパ、中国、韓国、日本、カナダの3Dプリンターメーカーに出力を依頼。昨年、世界5カ国で同一データでの同時出力に世界で初めて成功し、ビジネスモデルを確立しつつあります。佐久市をはじめ初回販売した6棟は、それぞれの国で出力したものを建てる場所まで住宅輸送会社が輸送し、施工する計画なのだそうです。
今回使用したのは、中国の工場にある3Dプリンター。あらかじめ4つのパーツに分けて出力します。10平米のserendix 10の出力に要した時間は約14時間(映像提供/セレンディクス)自動で3Dプリンターがすべての作業を行うので人件費が削減できます(映像提供/セレンディクス)3Dプリンターを現場に運び、出力しながら施工するのかと思っていましたが、「将来的にはそれも可能だと思います。ただ3Dプリンターは精密機械なので、輸送の際に故障してしまうリスクがあります。また現場で雨が降ってしまえば出力したモルタルが乾かず、施工時間が大幅に遅れてしまいます。現段階では、工場で安全に出力したパーツを輸送し、現場で組み立てながら、鉄筋を組み込むという手法をとっています」
今回は、中国WINSUN社の3Dプリンターを使用したとのこと。ところで、プリンターの自社開発も考えているのでしょうか?
「世界の会社と最新情報を共有することが大切だと思っています。汎用化する3Dプリンターは自社でつくらず、競合しないから、情報共有が可能なんです」と飯田さん。日本国内の協力企業では愛知県小牧市をはじめ現在5台の3Dプリンターを導入しており、来年にはさらに12台に増やす予定。今年下半期からは、日本で出力したものをメインに使用していきたいと話します。
20t以上もある躯体パーツを運ぶのには大きな負荷がかかるといい、高い輸送技術が必要。現在は10tトラックで輸送しています(画像提供/セレンディクス)
単一素材で複合的な機能を持たせ、資材コストをカット手前に置いてあるのが屋根のパーツ。プロトタイプでは屋根も3Dプリンターで出力し一体成形していましたが、今回の工法ではGRC(ガラス繊維強化セメント)で作成したものをのせる形に(撮影/塚田真理子)
3Dプリンターの活用で人件費が抑えられるのに加え、外壁や内壁、天井、床などを単一素材でつくれることも、資材の大幅なコストカットにつながります。serendix 10には、木材価格の高騰や工期の延長といったウッドショックの影響を受けない、低コストで住環境に適したコンクリートを用いています。「例えば、出力するコンクリートには硬化促進剤を使っているのですが、コンソーシアム企業の中には化学系メーカーも3社協業しており、こうした素材開発にも協力いただいています」(飯田さん)
鉄筋の間にモルタルを入れているところ。このあと屋根を設置し、上棟式も行われました(撮影/塚田真理子)
青空に映えるコンクリートの球体。なだらかな曲線が描けるのは3Dプリンターならでは(撮影/塚田真理子)
内外装とも、積層痕をあえて残した意匠に(撮影/塚田真理子)
見た目としては、ソフトクリームのような積層痕が3Dプリンターハウスの大きな特徴です。痕を残さずなめらかに均(なら)す技術もあるそうですが、3Dプリンターを象徴するデザインゆえ、あえてそのままにしているのです。
プロトタイプの施工時には、塗装に非常に時間がかかったことから、今回は出力後に塗装を施してから輸送。現場では、組み立てたあと最後に汚れた部分のみ塗装し直し仕上げることで、よりスピーディーな施工が可能になりました。
「すべてにおいて、社会実装を進めながら課題を見つけ、クリアしていく。そのために協業企業にサポートをお願いしています。またお客さまにも協力をお願いしている段階です。3Dプリンターハウスはコンセプトも技術もまったく新しいもの。今回の6棟はそれを理解してくださる方に購入いただけています」と飯田さん。施主も含めみんなで新しいものをつくっている感覚に、こちらもワクワクさせられます。
施工は現場に近いエリアのコンソーシアム会社に依頼するといいます。今回はナベジュウ(群馬県太田市)が担当。ナベジュウ代表の渡辺謙一郎さん(左)と飯田さん(撮影/塚田真理子)
内装イメージ。4mの天井高が開放感をもたらします。別途内装工事を経て、プライベートなサロンとしてオープンする予定(© Clouds Architecture Office)
49平米と70平米の個人向け住宅もまもなく登場3Dプリンターハウスの今後の展開も気になるところです。
まずはserendix 10の初回販売分残り5棟を順次施工していくといいます。次は岡山県内で、使い道は贅沢にも、飼っているフクロウのための家だとか!どんな空間ができあがるのか楽しみです。
並行して、個人向け3Dプリンター住宅「フジツボモデル」に取り組んでいます。フジツボモデルは、3Dプリント技術の第一人者である慶應義塾大学環境情報学部の田中浩也教授率いる慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターとの共同プロジェクト。
グランピング施設や3坪ショップ、離れなどの用途に限られる10平米のserendix 10に対して、49平米のフジツボモデルは水回り設備を完備した「住宅」仕様。3Dプリンターハウスで生活することができるのです。1LDKの平屋で、価格は550万円です。
住居としての役割を担うフジツボモデル。水回りの設備も付いて550万円(慶應義塾大学(慶應義塾大学環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センター))
(慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センター)
間取りは1LDK。天井が高く快適なコンパクト平屋は二人暮らしに最適(慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センター)
「若いときに購入した2階建て、3階建ての家は年齢を重ねると住みにくくなるし、リフォームするとなると1000万円以上かかってしまう、という声も聞きます。また、賃貸住宅によっては、高齢者の入居をさまざまな理由をつけて断ったりするケースも。フジツボモデルは、そういった60代以上の夫婦2人のニーズに応えられる住宅です」と飯田さん。1LDKのコンパクトな平屋は、子どもが独立して部屋数は必要ない、という人の住み替え先にもぴったりです。既に3000件もの問い合わせがあり、400件を超える購入意向が寄せられているそうで、注目度の高さがうかがえます。
フジツボモデルの出力は、コンソーシアム会社である百年住宅の愛知県小牧工場で行われています(画像提供/セレンディクス)
さらに年内には、家族で住める70平米の住宅も開発するといいます。こちらの設計はserendix 10と同じ建築家によるもので、デザインはまだ非公開ですが、とても近未来的な佇まいだそう。「電気自動車も、従来のガソリン車とはデザインががらりと変わりましたよね。3Dプリンターの家も、従来の住宅とは一変するのが自然ではないでしょうか」という飯田さんの言葉に大きく納得しました。
こうした社会実装を積み重ね、最終的にめざしているのは、「100平米300万円の家」とのこと。何十年もの住宅ローンを組まずに家を持つ。わずか数年後には、そんな近未来な住まいを実現する可能性に満ちた3Dプリンターハウスに、新しい時代の幕開けをヒシヒシと感じずにはいられません。
●取材協力
セレンディクス
世界中の建築を訪問してきた建築ジャーナリスト淵上正幸が、世界最先端の建築を紹介する連載7回目。今回は、アメリカ・マイアミにある62階建ての超高層の集合住宅「ワン・サウザンド・ミュージアム(One Thousand Museum)」設計:ザハ・ハディド(ザハ・ハディド・アーキテクツ)を紹介する。
マイアミにザハ・ハディドが残した形見。豪華マンション「ワン・サウザンド・ミュージアム」マイアミといえば、アメリカきっての常夏のリゾート・エリアであるだけに、いわゆるマンションとなると広々としたハイエンドかつゴージャスな建築が多いのは当たり前である。加えてデザイン的見地からも凝った作品が多い。「ワン・サウザンド・ミュージアム」はそのような今日的なマイアミ・スタイルのなかで、一頭地を抜くデザイン性の高い作品ということができる。
建物はマイアミのミュージアム・パークという有名な公園の真向かいに位置している。ビスケーン湾に面した広さ30エーカーの公園は、2013年にマイアミ・ダウンタウンにおける重要な公園のひとつとして開発されたものである。ここには同市の新しいアート・ミュージアムや科学ミュージアムなどの施設があり、知識を与える公園として市民にとっては特に人気のある公園となっている。
((c)Hufton+Crow)
ザハ・ハディドの設計による高さ約213mの超高層集合住宅タワーである「ワン・サウザンド・ミュージアム」は、62階建て延床面積約84,600m2というかなり大きな集合住宅だ。しかし、全戸数はわずかに83戸と少ないのだ。その内訳はタウン・ハウス:4戸、ハーフ・フロア・ユニット:70戸、フル・フロア・ユニット:8戸、ペントハウス:1戸、駐車場は260台分ある。これから分かるのは、一番小さな住戸でもハーフ・フロアの広さがあり、各住戸は平均3台分の駐車スペースを確保していることになる。まさにマイアミならではの豪華マンションということになる。
((c)Hufton+Crow)
ザハ・ハディドの超高層ビル研究が活かされた作品「ワン・サウザンド・ミュージアム」のユニークなデザインは、ザハ・ハディド事務所の超高層ビルに関する研究の成果を引き継いだもので、建物全てに及ぶエンジニアリング技術で裏打ちされたザハ特有の流れるような華麗な建築表現となっている。建物のコンクリート・エクソスケルトン(外骨格)は、ペリメーター部分を流体的なラインでデザインし、それらが構造的支持体である縦型交差ブレース(筋交い)となっている。
最高階から最低階まで一つの連続したフレームで構成された建物は、上昇するに連れてベース部分から立ち上がった柱が扇形に広がるブレースとなり、コーナー部分で側面からの同じようなブレースと繋がることによって建物をひとつの堅固なチューブとし、マイアミの強い風荷重に対抗している。そのカーブした支持体が強烈なハリケーンを物ともしない強固なダイヤゴナル・ブレース(交差ブレース)を形成している。
((c)Hufton+Crow)
「ワン・サウザンド・ミュージアム」はグラスファイバー強化コンクリート製の型枠を使用(コンクリートの型枠を残して構造材として利用)しており、工事がタワーの上部に進むに連れて所々で残存されているのだ。このような永久的なコンクリート型枠により、また最小のメンテナンスが可能な建築的仕上げとすることができたという。
エクソスケルトンのフレームが建物のペリメーターにあるため、タワーのインテリア・フロアはほとんどコラム・フリー(柱がない状態)となっているメリットがある。外壁に現れた巨大なブレースの曲率により、各階のフロア・プランは少しずつ異なっている。低層階ではテラスがコーナーからキャンティレバー(片側だけが固定され、反対部分が張り出している構造)で出ているのに対し、上層階では巨大なブレースの背後に配されている。
最上階には居住者のためのアクアティクスセンターやラウンジなどもアメニティー施設としては、最上階にアクアティクスセンター、ラウンジ、イベントスペースがあり、ランドスケープデザインが施されたガーデン、テラス、プールなどは、ロビーや居住者用パーキングの上部に設けられている。
((c)Hufton+Crow)
なお、ザハ・ハディドは2016年3月31日にここマイアミの病院で他界した。ザハ終焉の地に完成した「ワン・サウザンド・ミュージアム」は、彼女の手から生まれた流麗なデザインの形見となっている。それは彼女の冥福を祈っているかのような佇まいで、マイアミの海辺に屹立(きつりつ)しているのである。
●関連サイト
One Thousand Museum
障がいのある人(精神障がいのある人や車椅子の人)が賃貸物件に入居したいと考えたときには、物件探し、入居手続き、そして入居後の生活にも多くの壁があるようです。これらの壁を乗り越えるため、住まい探しから、保証人対応、物件の改修、病院の付き添いまでさまざまなサービスを提供する不動産会社があります。メイクホーム(東京都足立区)の障がいのある人への取り組みについて紹介します。
障がいのある人がぶつかる壁とは障がいのある人とひと言で言っても、その状態は人によってさまざま。住まい探しには、その人の特徴に合った条件が求められます。視覚障がいのある人であれば、駅から近く、歩いていても事故に遭う心配がないよう歩道があり、道幅の広い道路に面した物件が良いでしょう。また、聴覚障がいのある人であれば、玄関のインターホンの音が聞こえないので、来訪者があることを目で確認できるライトなどの機器を設置する必要があります。
「車椅子でも暮らせるバリアフリーの物件は、場所や条件によりますが、都心であれば最低でも14万円ほどすることが多いです。しかしその家賃が払える人ばかりではありません。障がいのある人で、家族もおらず、生活保護を受けている人は、家賃補助の上限金額である53,700円(東京都一人世帯の場合、また車椅子利用者など特別に部屋探しが困難と認められた場合は69,800円)よりも低い家賃で借りられる物件を探さなくてはならないので、物件は限られます」(メイクホーム石原幸一さん、以下同)
ほかにも内見の際、車椅子を利用する人は一人もしくは二人の介助者が必要だったり、車椅子が物件の床や壁を傷つけないように養生をしなければならなかったりと手間がかかります。障がい者が暮らしていくには、オーナーや近隣に住む人の理解も必要で、一つひとつ状況を説明していくことも欠かせません。
必要とされる対応を知らないことでトラブルに発展する可能性がある上に、仲介手数料や管理費は法や相場から外れた金額にはできないため、対応できる不動産会社が限られているのが現状です。
障がいがある人も、その特徴はさまざま。住まい探しも、その人に合った物件を探す必要がある(画像/PIXTA)
社長自身や従業員の家族に障がいがあるからこそ、親身になれる石原幸一さんが代表を務めるメイクホームは、障がい者や高齢者など、住まい探しが困難な人たちの住まい探しに特化した不動産会社。利用者は約50%が障がいのある人たち、そして残りの50%は高齢者や低所得者など、住宅確保に何かしらの困難を抱えた人たちです。
「不動産会社を始める前から別の事業で障がい者を雇用していたのですが、事業の縮小に伴い、従業員の次の仕事や住まいを探す必要がありました。仕事はすぐに見つかっても、障がいのある従業員が住めるところを見つけるのは大変でした。それがきっかけで障がい者や住宅確保に配慮が必要な人たちの住宅事業に取り組むようになったのです」
石原さん自身も、3年ほど前から視覚障がいがあります。そしてメイクホームで働くスタッフのなかには、石原さんのSNSでの発信や講演会で話を聞いて、集まってきた人も。小さいころから弟に障がいがある人や親戚が発達障がいでなかなかグループホームが見つからない人、また自身ががんを患っていたり、外国人だったりなど、メイクホームに相談に来る人たちと近い立場にいるスタッフが多いそうです。だからこそ、相談者の痛みがわかるのだと、石原さんは言います。
石原さん(左)と盲導犬を連れてメイクホームを訪れた視覚障がいのあるお客さま(右)。自身や家族との体験があるからこそ、抱える痛みや必要なサポートがわかり、相談に来る人たちに寄り添うことができる(写真提供/メイクホーム)
「楽な仕事ではないし、私も従業員に厳しいことも言いますよ。でも辞める人はほとんどいません。障がいによってできることが限られていてもいいんです。人を憎んだり、暴言を吐いたりするような人でないこと。そしてコツコツと努力をする人であれば、仕事はできます」
「壁を乗り越えるには」を追求して広がったサービス石原さんは「メイクホームの事業の中心は不動産業ではなく、福祉や生活支援」だと言います。自立したいと願う障がい者や、住まい探しに困っている人、一人ひとりに対応していくためにできることをやっていった結果、不動産、リフォーム、引越し、トラブル解決……と、さまざまな事業につながっていったそうです。
居住支援法人でもあるメイクホームは、生活保護を受ける人にも必要なサービスをワンストップで受けられる事業を展開している(画像提供/メイクホーム)
「私たちが大事にしていることは、何か連絡があったら、断らずに必ず駆けつけるということです」
例えば、DV被害者の人が大阪から東京に逃げてきても、東京に住民票がないので東京都のDV被害センターでは受け入れができません。そこで、石原さんたちが一時的に受け入れをしたこともあったそう。国や地方自治体が法律に縛られてできないことにも支援の手を差し伸べています。
「入居者が倒れて動けなくなったときに備え、室内に赤外線システムを活用した機器を取り付けたり、従業員が1都3県の管理物件を定期的に回ったりするなど、早期発見の策を講じています。家賃保証会社を利用する際に必要になる緊急連絡先のなり手がいない人には、家族などの代わりに連絡を受けて対応する『緊急連絡先協会』も立ち上げました。また、有料で葬儀保険や万一の場合の残置物処理も行っています」
家賃の連帯保証人に代わり、家賃保証会社を利用するケースが増えているが、緊急連絡先が必須となることがほとんど。頼める家族がいない人の入居促進のために、緊急連絡先協会の立ち上げが必要だった(画像提供/メイクホーム)
そして今後は行政とも協力し、入居者が倒れる前に人感センサーで異常を察知して救出する仕組みをつくろうと準備をしている最中。メイクホームの事業はますます広がりを見せていくようです。
事業として成立させるため、リスク回避のために数多くのサポートやサービスを整え、必要な居住支援を行うには手間もかかります。会社として事業は成り立つのでしょうか。
「私たちが居住支援を行う不動産会社として事業を継続するために取り入れている特徴的なスキームは『完全管理システム』です。築古などで空室になっているアパートを、投資家から預かった資金でバリアフリーにしたり、手すりを付けたりしてリフォームし、住まいを必要としている人に提供します。
入居者から家賃を回収したり、何かトラブルがあったとしても全ての対応は当社が行い、オーナーさんには入居者がどのような人か、障がいの内容や詳しい事情については一切伝えません。その代わり、確実に家賃としての収入を確保するというものです」
住宅の確保に配慮が必要な人たちは、ひんぱんに引越すことは少なく、一度入居したら長く住み続けることが多いそう。例え空室が出ても、住まいを確保できずに困っている人はたくさんいるので、すぐに次の入居者が見つかるのもオーナーにとってのメリットだと石原さんは言います。
半面、家賃滞納や孤独死、近隣とのトラブルなど、オーナーが不安に思うリスクは全てメイクホームが負います。この方法で、空室率は2%以下を保っているそうです。
「一見、サブリース(不動産会社などが、土地や建物のオーナーから不動産を一括して借り上げて事業展開する形態)のように見えますが、サブリース物件はほとんどありません。事業者が収益をコントロールしやすいサブリース契約よりも管理費のみをいただく管理委託契約のほうが、一般的にはオーナーの収入が増えることが多く、ひいてはより多くの入居者を受け入れることにつながると考えています」
メイクホームの完全管理システム。メイクホームが利用者とオーナーの間に入り、入居者の募集と契約、家賃回収、建物の原状回復やリフォーム、さまざまなトラブルの解決と管理業務の全てを代行する(画像提供/メイクホーム)
住宅・不動産業界全体に支援の輪を広げるメイクホームは、1都3県を対象エリアとして事業を展開していますが、全国のあらゆる地域でこのようなサポートを望む声は多くあります。そこでより多くのエリアに取り組みを広げるため、志を同じくする仲間を募集し、フランチャイズ事業を始めました。研修を行った上で、行政から直接相談を受けられる体制を整え、メイクホームが提供してきたサービスを展開します。石原さんによれば「必要なのは、優しさとお客さまを思いやる気持ち、そして共感する心」だそう。
一方、地方では空室率が30%を超える地域もあり、このままではアパート経営が続けられなくなるかもと不安を抱えるオーナーも増えています。今や3人に1人は高齢者という時代。さらに高齢化は進むと考えられ、高齢者や障がい者など、これまでオーナーが入居を敬遠しがちだった人たちをも受け入れることが必要になっていくでしょう。
「今後、住まいは箱、ハードとしての問題よりも、入居する人たちを支える福祉などのサービス、ソフトの問題が大きくなってくる」と石原さんは考えます。介護・看護や見守りが必要な人たちへのケアと不動産事業が合体したメイクホームのような事業展開が全国規模で必要なのです。
自治体からの要望を受け、オーナー向けの講演を行うことも。石原さんは「これまで培ってきたノウハウを積極的に広めていきたい」と話す(写真提供/メイクホーム)
そして、石原さんの訴えは、少しずつ社会にも変化をもたらしているようです。
「各メディアから出演依頼が定期的にあり、地方自治体のセミナーの参加者も年々増えています。オーナーさまからもどのようなリフォームをしたら障がい者の受け入れがしやすくなるのか、などの質問が多く寄せられるようになりました。私たちの居住支援の取り組みを知り、自分も取り組もうという意志のある方や活動に共感していただける方が増えてきていると感じます」
これまでにメイクホームに相談して住まいを見つけた人は、精神疾患のある人、聴覚障がい者、視覚障がい者、車椅子生活者など、さまざま。「多くの不動産会社から断られたが、メイクグループに相談をして希望通りの部屋を見つけてもらった」「携帯電話や住民票の手続きをサポートしてくれ、引越しも引き受けてくれた」「車椅子で生活できるよう、段差の少ない物件を探してくれた。内見の際も毎回車椅子を積んで病院まで迎えにきてくれた」など、感謝の声がたくさん寄せられています。
相談した人たちの「寄り添って共に取り組んでくれた。本当に心強い味方だ」という言葉に、メイクホームの居住支援の本質が表れているのでしょう。
メイクホームでは、SUUMOと協力して視覚・聴覚障がい者がネットで内見できる動画を作成するなどして新しい物件紹介の方法を模索したり、スマートウォッチの装着によって入居者に異常があった際に自動通知を行う仕組みづくりを検討したりしています。さらに大手企業や行政とも連携してバリアフリーや点字ブロックの設置を進めるなど、障がい者や高齢者も暮らしやすいコンパクトな街づくりを目指していきたいと考えているそうです。
しかし、住まいの確保には物理的な問題、何かトラブルが起きた際の対応だけでなく、未だ差別や偏見も存在するとのこと。石原さんは、子どものころから、障がいのある人とそうでない人が一緒に学べる、インクルーシブ教育が必要だと言います。人間の多様性を尊重し、障がいがある人もない人も、自然に近くにいることが当たり前だと思える社会をつくることこそが真のバリアフリーな社会につながるのかもしれません。
「広く大勢を助けることは難しくとも、せめて目の前にいる困った人は助けたい」。これが石原さんが常に持ち続ける思いです。私たち一人ひとりがこのような思いを少しずつでも共有できれば、世の中はもっと優しくなれるのではないでしょうか。
●取材協力
メイクホーム株式会社
神奈川県屈指のターミナル駅と言えば、JR各線をはじめ東急東横線や京急本線など6社が乗り入れている横浜駅。駅周辺にはオフィスビルに加え商業施設も充実し、観光地としてもにぎわっている。2023年9月には横浜駅東口側の臨港エリアに世界最大級の音楽に特化したアリーナ「Kアリーナ横浜」と「ヒルトン横浜」の開業が予定されているなど、駅周辺の大規模再開発も進行中で今後はさらなる発展が見込まれる。そんな横浜駅の30分圏内にある駅の家賃相場を調査! シングル向け物件(10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DK)の家賃相場が安い駅ランキングのトップ15を紹介しよう。
(写真/PIXTA)
横浜駅まで電車で30分以内の家賃相場が安い駅TOP15(16駅)順位/駅名/家賃相場(主な路線名/駅の所在地/横浜駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 安針塚 4.95万円(京急本線/神奈川県横須賀市/29分/1回)
2位 京急田浦 5.05万円(京急本線/神奈川県横須賀市/26分/1回)
3位 いずみ野 5.5万円(相鉄いずみ野線/神奈川県横浜市泉区/23分/1回)
3位 善行 5.5万円(小田急江ノ島線/神奈川県藤沢市/29分/1回)
3位 桜ケ丘 5.5万円(小田急江ノ島線/神奈川県大和市/28分/1回)
3位 羽沢横浜国大 5.5万円(相鉄新横浜線/神奈川県横浜市神奈川区/12分/1回)
3位 追浜 5.5万円(京急本線/神奈川県横須賀市/24分/0回)
8位 汐入 5.55万円(京急本線/神奈川県横須賀市/30分/0回)
9位 さがみ野 5.6万円(相鉄本線/神奈川県海老名市/28分/2回)
9位 上星川 5.6万円(相鉄本線/神奈川県横浜市保土ケ谷区/10分/1回)
9位 鶴間 5.6万円(小田急江ノ島線/神奈川県大和市/28分/2回)
12位 六浦 5.65万円(京急逗子線/神奈川県横浜市金沢区/22分/0回)
13位 かしわ台 5.7万円(相鉄本線/神奈川県海老名市/30分/2回)
13位 成瀬 5.7万円(JR横浜線/東京都町田市/30分/1回)
13位 横須賀中央 5.7万円(京急本線/神奈川県横須賀市/27分/0回)
13位 湘南深沢 5.7万円(湘南モノレール/神奈川県鎌倉市/24分/1回)
※17位以下は記事末に記載
横浜駅まで30分以内で行ける、家賃相場が最も安い駅は京急本線・安針塚(あんじんづか)駅。家賃相場はトップ15で唯一の4万円台、4万9500円だった。神奈川県横須賀市に位置し、2020年度調査では京急線全72駅のうち1日の平均乗降人員が最も少ないという穴場の駅。ちなみに横浜駅の家賃相場は8万5000円なので、安針塚駅の相場はそれよりも約3万5000円も低いわけだ。
安針塚駅(写真/PIXTA)
安針塚という駅名は、駅から徒歩25分ほどの「塚山公園」にある三浦按針(みうらあんじん=ウイリアム・アダムズ)の供養塔「安針塚」に由来する。園内からは眼下に横須賀港、遠くに横浜や房総半島までを眺められるロケーション。この公園がある高台をはじめ安針塚駅周辺は山に囲まれており、谷間や丘陵地を通る入り組んだ道沿いに住宅が建っている。平地が少ないためか商店も豊富とは言えないが、駅前にスーパーがあるのは便利。京急本線で2駅目の8位・汐入駅まで行くと、駅周辺にショッピングモールや多彩な飲食店、海に面した「ヴェルニー公園」があるので休日に足を延ばすのもいいだろう。
塚山公園からの景色(写真/PIXTA)
2位は京急本線・京急田浦駅で家賃相場は5万500円。1位・安針塚駅から横浜方面に1駅目が2位・京急田浦駅で、両駅ともに金沢八景駅で京急本線の快特に乗り換えると横浜駅まで30分以内で行くことができる。JR横須賀線に名前が似た「田浦駅」があるが、京急田浦駅からは徒歩20分少々かかるので混同しないように注意が必要だろう。さて、1位と同じ横須賀市に位置する京急田浦駅の周辺は住宅地で、駅前を通る国道16号沿いには飲食店やコンビニが点在し、警察署も建っている。徒歩3分ほどの商店街にも飲食店やスーパーがあるので、コンパクトな範囲で買い物や食事が済ませられそうだ。
京急田浦駅(写真/PIXTA)
3位には家賃相場が同額5万5000円で5駅がランクイン。そのうち相鉄いずみ野線・いずみ野駅から横浜駅まで最短で向かうには、まず二俣川駅に行き、相鉄本線の通勤急行や快速に乗り換えると約23分で到着する。また、相鉄本線快速直通の相鉄いずみ野線快速に乗れば、乗り換え0回・約24分で横浜駅まで行くことも可能だ。駅は神奈川県横浜市の内陸部に位置し、駅前にはスーパーやドラッグストア、ホームセンターなどを備えたショッピングモールがある。駅前ロータリーを挟んだ向かい側には飲食店も。駅周辺に広がる住宅地の合間には農地も広がり、新鮮な農産物の直売所が点在しているのも嬉しいところだ。
この3位・いずみ野駅は横浜駅まで約23分で行けるだけではなく、渋谷や新宿方面にアクセスしやすい点も魅力。これは2023年3月に開業した相鉄・東急新横浜線のおかげ。開業に合わせていずみ野駅に停車するようになった相鉄いずみ野線の特急と通勤特急が、東急東横線と直通運転されているのだ。いずみ野駅から相鉄いずみ野線の通勤特急に乗ると、相鉄本線~相鉄新横浜線~東急新横浜線~東急東横線といつの間にか路線を変え、乗り換え0回で渋谷駅まで約52分で到着。さらに、渋谷駅から先は東京メトロ副都心線に直通運転されており、新宿三丁目駅までもいずみ野駅から乗り換え0回・約1時間で行くことができる。
このルート途中には、同じく3位の相鉄新横浜線・羽沢横浜国大(はざわよこはまこくだい)駅にも停車。つまり同駅からも乗り換え0回で、渋谷駅まで約35分、新宿三丁目駅まで約43分で到着できる。また、羽沢横浜国大駅にはJR埼京線直通の便も通っているため、そちらを利用すると渋谷駅まで約33分、新宿駅まで約38分で行くことも可能だ。
羽沢横浜国大駅(写真/PIXTA)
羽沢横浜国大駅から横浜駅までは、1駅隣の西谷駅から相鉄本線の通勤急行に乗り換えて計約12分。西谷駅とは反対方面に1駅進むと新横浜駅があり、そこから東海道新幹線に乗って静岡・名古屋・京都・新大阪方面に向かうこともできる。この羽沢横浜国大駅は相鉄・JR直通線と相鉄・東急直通線の建設にともなって2019年に開業した比較的新しい駅。名前からうかがえる通り横浜国立大学の最寄り駅でもあり、徒歩15分ほどでキャンパスにたどり着く。また、駅前は再開発が行われ、2021年には生鮮食品も扱うドラッグストアとクリニックモールがオープン。2024年春には地上23階建ての商業施設と住居の複合ビルが開業予定だ。
横浜駅から約10分の近さながら、9位は家賃相場が横浜駅より2万9000円もダウントップ15のうち横浜駅までの所要時間が最も短かったのは、家賃相場5万6000円で9位に入った横浜市保土ヶ谷区の相鉄本線・上星川駅。2駅先の星川駅で各駅停車から快速に乗り換えると、横浜駅まで約10分。乗り換えずに各駅停車1本でも約12分で行くことができる。駅前にはスーパーやドラッグストア、さまざまなクリニックに加えて飲食店も建ち並んでいる。食事処を備えた日帰り温泉施設も駅前にあり、駅から12分ほど歩くと入浴料500円でありながら温泉を利用した銭湯も。気軽に温泉でリフレッシュできる環境だ。
上星川駅(写真/PIXTA)
また、9位・上星川駅から横浜駅に向かう途中にある星川駅~天王町駅間は2022年に高架化されており、それにともなって全長1.4kmの高架下に「星天qlay(ホシテンクレイ)」が誕生している。2023年2月に第1期、4月に第2期開業を迎え、飲食店やスーパー、コワーキングスペースなどがオープン。今後はさらに新たなゾーンの開業も控えているので、上星川駅から足を延ばして訪ねるのもいいだろう。
ランキング上位には今回調査の基点にした横浜駅と同じ神奈川県内の駅が並んだが、13位にはトップ15で唯一の東京都内の駅となった成瀬駅が家賃相場5万7000円でランクイン。東京都町田市に位置する成瀬駅からJR横浜線で菊名駅に出て、そこから東急東横線の通勤特急に乗り換えると計約30分で横浜駅へ。また成瀬駅の1駅隣にある長津田駅には東京メトロ半蔵門線直通の東急田園都市線が通っているので、半蔵門線沿線の渋谷駅や表参道駅、永田町駅や大手町駅にも乗り換え1回で行くことができる。
成瀬駅(写真/PIXTA)
13位・成瀬駅周辺の様子を見てみると、複数のスーパーやコンビニ、飲食店など日常生活に必要な商店は充実している。さらに成瀬駅から長津田駅とは反対方面に1駅進むと、大型商業施設が建ち並ぶターミナル駅の町田駅に到着。洋服やインテリア用品などのショッピングがしたいとき、気軽に町田に行けるロケーションなのも成瀬駅の魅力の一つだろう。
●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている横浜駅まで電車で30分以内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2022/4~2023/3
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンションのうち普通借家契約の物件のみ)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2023年3月27日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載
今、コンパクトな平屋が注目を集めていますが、タイニーハウス(小屋)やトレーラーハウス、コンテナハウスにも注目が集まっています。今回は、物流用コンテナを住まいや店舗などとして活用するコンテナハウスにフォーカス。実は空き家対策や防災対策などでも活用されているのです。そのコンテナハウスの最前線について、日本コンテナハウス建築協会会長の菅原修一さんに話を伺いました。
店舗やホテル、住宅……。コンテナの使い道は実に多彩!コンテナとは、船や鉄道などの輸送に使われる容器、入れ物のこと。サイズは普及しているもので20ftと40ftが主流であり、大型トレーラー車両がけん引していたり、鉄道の貨物輸送などに使われている12ftと31ftサイズを大型車両が輸送しているのを見かけたことがある人も多いことでしょう。
コンテナ(写真/PIXTA)
コンテナは世界中の輸送で使用されることから、強度が高く、過酷な環境にも耐え、しかも容易に移動させることができるのです。そのため、このコンテナを住まい、ホテル、店舗などとして活用するケースが増えてきました。例えば、2022年に開催されたFIFAワールドカップカタール大会ではコンテナを建材として積み上げてスタジアムとしたり、ホテルとしても活用されていました。コロナ禍では臨時の医療拠点になったこともあるといい、多用途かつ多目的に使うことができるのです。
「コンテナは日本のみならず世界中で使われていて、港で積荷を降ろし、帰りに荷物を載せる必要がない場合は現地で売り払うのです。そのため、各国で中古コンテナ市場が形成されています。日本でもコンテナは手ごろな価格帯で販売されて、フリマアプリやオークションでも取引されています。こうした中古コンテナを入手し、内外装を施して住居や店舗、ホテルなどに改造して活用しているのです。コンテナを連結したり、多層構造にすることもできますし、インテリアの自由度も高く、フルカスタムで世界に一つだけのコンテナハウスやショップがつくれるんですよ」と話すのは日本コンテナハウス建築協会の菅原修一さん。
なるほど、コンテナハウスのメリットをまとめると、
(1)躯体が頑丈
(2)価格が手ごろ
(3)内装の自由度が高い
(4)工期が短くて済む
(5)移動ができる
(6)不要になったら撤去、売却、再利用ができる
という点にあるようです。世界中で建築資材が高騰しているなか、こうしてみると人気が出るのは当たり前、といえます。
20ftのコンテナを平置きにして店舗にした例。広さは8畳ほど(写真提供/コンテナハウス2040.jp)
カフェ内部に入るとコンテナであると気づかない(写真提供/コンテナハウス2040.jp)
40ft(約12m強)のコンテナ3台を並べて店舗にした。千代田区4番町にあるその名も「No.4」。広さにして約80平米(写真提供/コンテナハウス2040.jp)
天井を見るとコンテナだな、とわかる(写真撮影/嘉屋恭子)
上下に積み重ねることで、多層構造にもなる(写真提供/コンテナハウス2040.jp)
建物内部、吹き抜けで開放的な空間に(写真提供/コンテナハウス2040.jp)
コンテナの耐用年数60~70年。使い捨てにならず離島や空き家対策にも!さまざまなメリットがあるコンテナハウスですが、(6)不要になったら解体、売却できるため、「使い捨てにならない」という面でもすぐれています。
「コンテナは先ほど紹介したように各国で利用されているため、使い終わっても廃棄とはなりません。使い捨てなんてもうカッコ悪いし、時代に合わない。場所や用途に合わせて長く使っていく時代です。コンテナの耐用年数は一概にはいえませんが60年~70年は使用できるでしょう。もちろん、海沿いなどの環境条件やメンテナンスなどによって異なってきますが、少なくとも40年~50年は使用できると思います」とのこと。
持続可能なまちづくりや開発は、今や避けては通れない課題です。必要なときに、必要に応じて住まいや店舗、医療施設、学校を建設することも可能です。
コンテナの移動性、構造強度が強いことを利用し、「コンテナに建設資材や物資を積んで、現地に行って、住宅や学校、医療施設をつくることも可能です。基礎は現地で施工し、コンテナはそのまま躯体として活用、積んでいった窓や建材を使って建物をつくるのです。離島は、建築物を建てようとすると資材の輸送費、人材の移動費などの関係で建設コストが高くなりますが、これなら容易につくることが可能です。さらに、離島防衛、国土強靭化にも役立つんですよ。日本だけでなく世界の災害発生時や紛争地帯、アフリカなどの援助にも活用されています」と菅原さん。
石垣島のリゾートホテル『ぱいぬ島リゾート』(写真提供/コンテナハウス2040.jp)
コンテナを斜めにしてインパクトのある建築物に。構造計算もしてあるため、強度にも問題ないという(写真提供/コンテナハウス2040.jp)
客室。こちらもコンテナとは気が付かないはず(写真提供/コンテナハウス2040.jp)
日本では、東日本大震災のときもコンテナハウスは仮設住宅として活躍しました。現在では、トイレやお風呂もついたものを道の駅などに設置しておき、災害発生時は被災者を受け入れる、または被災地まで出向き、仮設住宅として使うという計画もあるといいます。
災害発生時に建設される仮設住宅は、一定程度の敷地が必要で、設置・解体廃棄にもコスト、工期がかかり、そのコストは1棟500万とも600万ともいわれています。コンテナハウスであれば、平時は宿泊施設などとして活用しながら、非常市は仮設住宅になるのであれば無駄もなく、解体、廃棄する必要がありません。地震だけでなく、台風、水害などの自然災害が多発している今、こうした備えは全国各地で普及していくことでしょう。
東日本大震災では仮設住宅としても使われた(写真提供/コンテナハウス2040.jp)
また、日本の喫緊の課題でもある空き家活用にも、コンテナハウスは役立つ、といいます。
「今、築100年、200年の立派な古民家が日本各地で空き家になっていますが、現在の建築基準を満たそうとすると、耐震性や断熱性などの改修費用が高くなることから、初期費用が高く、利活用の妨げになっています。そこでコンテナハウスと木造住宅の混構造のリノベを提案しています。コンテナにトイレとバス、寝室をもうけて寝室部分とします。木造は、ダイニングや共用部分とするとよいでしょう。ホテルでも自宅でも、なにかあっても耐火性、耐震性も高いのでシェルターになりますし、命を守ることができます」
こうして聞いてみると、用途は限りなくありますし、繰り返し使えます。太陽光発電と蓄電池、下水は浄化槽、空気中の水蒸気を飲み水になどの技術と組み合わせることで、容易にオフグリッド住宅にもなることでしょう。安全性、汎用性が高く、持続可能というあらゆる意味で、21世紀の住まいのスタンダードにもなりそう、そんな気すらしてきます。
建築基準法準拠、断熱や遮熱など、価格以外にも留意を「国際海上コンテナは世界中で使われているので、国際的に規格化したISOという規格で統一されています。ただし、住居や店舗など、固定した建築物として使う場合は、ISO規格+日本の建築基準法に適合したJIS規格に適合した『建築専用コンテナ』でないといけません。違いは複数ありますが、大きくは使用している鋼材と構法が異なります。そのため、価格ばかりに目を奪われ、何も知らないで中古コンテナを購入、建築すると違法建築になることもあるんです。現に私の元には、『行政から違法建築といわれた』という相談が増えています」と菅原さん。
菅原さんの取材を基に筆者作成
また、海上輸送コンテナはパネル構造でつくられているため、窓やドアを設置するために開口部を設けると強度が大きく損なわれてしまうことも。建築基準法を満たした建築コンテナはラーメン構造であるためこうした問題は発生しませんが、コンテナハウスを手掛ける業者がそもそもこうした建築法規を知らないケースもあるため、注意が必要だといいます。
あわせて、注意したいのが住み心地/使い心地に直結する、断熱や遮熱、気密性です。
「コンテナハウスは北海道から沖縄まで日本全国で使われており、建築基準法を基にきちんと設計・施工すれば住居として冬暖かく、夏も快適に過ごせることがわかっています。ただ、コンテナそのものは壁が1.6mm~2.0mmの鉄板ですぐに熱を通してしまうため、建物内部に断熱材を施工するほか、気密性も高めないといけません。単純に断熱材が入っていればOKではなく、発泡ウレタン吹き付け、ロックウール、グラスウールなど、どのような材料が使われているか、またその厚み、施工精度が非常に重要になります。きちんと施工されていないと、コンテナ壁鋼板と内装仕上げ下地材の空気層が結露してしまってそこからカビが生えてきた……というトラブルも発生しています」(菅原さん)
気密性も同様、どれだけ頑丈なコンテナであっても開口部などから空気が漏れてしまっては意味がありません。コンテナハウスでは、土地の条件、内装の意匠性にもよりますが1棟で700~800万円ほどが目安で、建築法令の理解や施工の精度も含めて、コンテナハウスを扱う業者を選んでほしいとのこと。
コンテナを店舗にしたケース(写真提供/コンテナハウス2040.jp)
コンテナをつかった住まい。インダストリアルの雰囲気がかっこいい(写真提供/コンテナハウス2040.jp)
過疎地域に役立つ無人コンビニにもなる(写真提供/コンテナハウス2040.jp)
カッコよくて、快適、時代にもあったコンテナハウス。自然災害や離島、空き家問題への活用など、日本の住宅問題をまるっと解決する「コンテナ」の活用方法を聞くたび、筆者はワクワクがとまりませんでした。何より、ひとり1コンテナで、家賃や住宅ローンに縛られず、のびのび暮らせる未来がきたら、楽しいですよね。住宅はコンパクトで、もっと自由度の高いものへ。コンテナハウスにもっと光があたる日も近い気がします。
●取材協力
一般社団法人日本コンテナハウス建築協会
株式会社コンテナハウス2040.jp
積水ハウスが、新デザイン提案システム「life knit design(ライフ ニット デザイン)」を6月30日から全国で始動するという。そのプレス向けの発表会が、6月20日に開催された。併せて、「life knit atelier(ライフ ニット アトリエ)」の内覧会もあり、筆者も参加してみた。
【今週の住活トピック】
「life knit design(ライフニットデザイン)」6月30日始動/積水ハウス
積水ハウスの説明によると、“感性”を住まいに映し出すのが、新デザイン提案システム「life knit design」だという。“時間と共に愛着を編み込む住まい”といった意味合いがあるそうだ。これまでは、その時々に流行した「和・洋・モダン」などといったテイストをベースにしていたが、より普遍的な“感性”をベースにした空間提案をするのが、ライフ ニット デザインということだ。
その感性とは、これまでの積水ハウスの施工事例などのインテリア画像約6600点から受ける印象を言語化して、日本カラーデザイン研究所の言語イメージスケールを元に3D化した結果、おおらかな6つの感性フィールドを導き出したもの。例えば、静かな、くつろいだ、豊潤な、凛とした、などをプロットして、おおらかな(重なる部分もある)関係性をグループ化した結果、「静・優・凛・暖・艶・奏」の6つの感性フィールドに集約した。
【6つの感性フィールド】
「静 PEACEFUL」:しなやかな空気感…ローコントラスト、同系色
「優 TENDER」 : さわやかな空気感…すっきりナチュラルな木質感
「凛 SPIRIT」: 緊張感のある空気感…上質なシンプルさ
「暖 COZY」: 暖かみのある空気感…暖かみのある木質感
「艶 LUXE」: 贅沢な空気感…ハイコントラスト、重厚感
「奏 PLAYFUL」: 心躍る空気感…ワクワクする色やカタチ
積水ハウス プレゼン資料より転載
この提案システムはインテリアとエクステリアが対象で、エクステリアについても同様に、美しい景観を構成する「明度グラデーション」を特定している。顧客の感性から、インテリアやエクステリアをプランニングするのが新しい提案の手法だ。
好みのインテリア画像から感性を判断して空間を提案説明を聞いただけでは具体的なイメージがわかないし、家族といえどもそれぞれ感性が異なる場合はどう提案するのだろうと疑問に思った。「SUMUFUMU TERRACE新宿」内に、実際に提案をする場となる「life knit atelier」があり、そちらに移動してさらに詳しく話を聞いた。
SUMUFUMU TERRACE新宿/筆者撮影
まず、同社が開発した「interior communication tool」で顧客の感性を調べる。内覧会では、筆者のいるグループから、夫役・妻役・子ども役の3人で実際に試してみることに。筆者は手を挙げて、子ども役を担当した。家族3人は、別々のタブレットで次々と映し出される36枚のインテリア画像を見て、好き(♡)かそうでもないか(△)をマークをタップして直感的に選ぶ。すべて選び終わると、好きなインテリア画像だけが映し出されるので、その中からベスト5を選ぶ。ベスト5については、その理由(例えば、使ってみたい家具や小物がある、過ごし方のイメージがわいたなど)も入力する。
積水ハウス プレゼン資料より転載
入力が終わると、同社のスタッフが家族3人の選んだベスト5を一覧にして出してくれた。今回は、にわか家族なので、好きなインテリアがあまり重ならない。特に夫役の選んだ画像は、重厚感のある画像が多くて他の家族と全く一致しなかったが、妻役と子ども役はナチュラルな印象の画像が多く、数枚重なって選んでいた。「このように家族でも感性は一致しない場合はどうなるのか」という疑問を抱えたまま、次のステップへ移動。
筆者撮影
インテリアの提案をしてくれるスタッフのいる部屋には、すでに家族の好みの画像が共有されている(写真左のディスプレイ)。そのうえで、好みの画像やその理由などを基に、一つのインテリアイメージをCG動画で提案してくれる(写真右のディスプレイ)。CG動画では、最初に平面の間取りが提示され、その間取りをどう作りこむかのCGが空間や角度を変えて映し出される。床・壁・天井といったシンプルな空間に、家具などを掛け合わせることで感性を表現するということなので、CG動画には家具、照明、ラグなども入っている。また、サンプルも用意してあるので、実際の色味や手触りなども確かめながら、決めていけるという。
今回の家族に提案されたCG動画は全体的にナチュラルな印象だったので、妻役と子ども役で共通する感性が優先されているのだろう。家具が気に入ったなどの理由によっては、誰かの好みの家具も配置されているのかもしれない。実際には、家族が提案されたCG動画を見ながら、床材はこうしたいなどと話し合い、要望に応じて変更された動画で確認しながら決めていくので、家族の感性が異なれば、家族で協議して解決することになるようだ。筆者が念のために、提案されるCG動画の数を聞いてみると、それぞれを組み合わせて提案するので、何万通りにもなるという。
住宅の範疇といえば、インテリアのうち内装や住宅設備になるが、提案されるCG動画には家具やラグなども配置されている。家具などの販売やあっせんもしてもらえるのかを聞いたところ、家具や照明はもちろん、観葉植物や絵画などの相談にも応じているという。その場ですぐに、照明や観葉植物を差し替えたCGを見せてくれた。至れり尽くせりだ。
最後に、マテリアルビュッフェのあるコーナーに移動した。ここでは、床材や壁紙、カーテン等のサンプルが展示してあるほか、6つの感性フィールド別のコラージュボックスが用意されている。コラージュボックスとは、「暖」の感性ならインテリアの内装はこうした組み合わせがオススメといったセットがボックスに収納されているものだ。残念ながら、どの感性に該当するといった判定はしてもらえないが、好みのセットをベースに、素材を触りながら他の感性の素材も取り入れて決めていくということになるのだろう。
マテリアルビュッフェのコーナー/筆者撮影
ベースがあるので、家づくりを効率的に検討できるのがメリットエクステリアに関する体験はできなかったのでよくわからないが、インテリアについては、感性にマッチしたものをトータルに提案してもらえるので、それをスタートラインにして検討できるという点で、決定するまでの時間の短縮が図れるだろう。
またその際に、家族の好みが見える化されるので、互いに話しやすいという利点もあるだろう。最近は、新築やリフォームの際に、好みの画像を用意して希望を伝える人も多いと聞く。この仕組みでは、積水ハウスが用意した画像だけでなく、例えばインスタグラムの好みの画像を提示すれば、それも加味して分析することも可能だという。
一方で、実際の家づくりでは、インテリアだけでなく、決まった広さの中で間取りを固めるため、スペースの取り合いという側面もある。スペースと好みのインテリアを上手に織り込むのが、スタッフの腕の見せ所となるのだろう。
また、インテリアについては至れり尽くせりなので、あれこれとこだわるほどにいろいろなものを新たに買うことになる可能性もあり、コスト管理という側面も欠かせないように思う。
さて、感性を軸として空間を提案するという新しい手法は、画像や動画に親しんでいる今の人たちにマッチしているのだろう。「何となく好き」な画像が、こうした手法でつきつめていくと、床や壁が好みなのか、家具が好みなのか、居住空間が好みなのかといったことが認識できるようになり、言語化されていくのも面白い。
一方でトータル提案されるのがメリットである半面、提案から外れるものを加えた途端、デザインが崩れてしまうので、住む人のインテリアセンスも問われることになるのだろう。
●関連サイト
積水ハウス「life knit design(ライフニットデザイン)」6月30日始動
「life knit design」ウェブサイト
東京都内では「100年に一度」とも言われる再開発が各地で行われているが、神奈川県屈指のターミナル駅・横浜駅周辺でも数年来の大規模再開発・整備事業が進行中。2023年9月には横浜駅東口側の臨港エリアに世界最大級の音楽に特化したアリーナ「Kアリーナ」と「ヒルトン横浜」の開業が予定されているほか、今後も続々と新施設がオープン予定だ。今回はそんな注目が高まる横浜駅まで30分以内で行ける、中古マンションの価格相場が安い駅を調査してランキング。「シングル向け(専有面積20平米以上~50平米未満)」と「カップル・ファミリー向け(専有面積50平米以上~80平米未満)」、それぞれのトップ15を見ていこう。
横浜駅まで電車で30分以内にある中古マンションの価格相場が安い駅TOP15【シングル向け】
順位/駅名/家賃相場(主な路線名/駅の所在地/横浜駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 仲町台 650万円(横浜市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市都筑区/18分/0回)
2位 星川 1219万円(相鉄本線/神奈川県横浜市保土ケ谷区/4分/0回)
3位 磯子 1430万円(JR京浜東北・根岸線/神奈川県横浜市磯子区/15分/0回)
4位 十日市場 1490万円(JR横浜線/神奈川県横浜市緑区/25分/1回)
5位 平間 1580万円(JR南武線/神奈川県川崎市中原区/19分/1回)
5位 鹿島田 1580万円(JR南武線/神奈川県川崎市幸区/17分/0回)
7位 港南中央 1730万円(横浜市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市港南区/14分/1回)
8位 金沢文庫 1799万円(京急本線/神奈川県横浜市金沢区/17分/0回)
9位 京急新子安 1890万円(京急本線/神奈川県横浜市神奈川区/7分/1回)
10位 新子安 1935万円(JR京浜東北・根岸線/神奈川県横浜市神奈川区/6分/0回)
11位 海老名 1948万円(相鉄本線/神奈川県海老名市/26分/0回)
12位 花月総持寺 1980万円(京急本線/神奈川県横浜市鶴見区/11分/1回)
12位 鶴見市場 1980万円(京急本線/神奈川県横浜市鶴見区/13分/1回)
14位 南太田 2020万円(京急本線/神奈川県横浜市南区/8分/0回)
14位 蒔田 2020万円(横浜市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市南区/12分/0回)
※16位~30位は記事末に記載
【カップル・ファミリー向け】
順位/駅名/家賃相場(主な路線名/駅の所在地/横浜駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 かしわ台 1798万円(相鉄本線/神奈川県海老名市/30分/2回)
2位 京急田浦 1890万円(京急本線/神奈川県横須賀市/26分/1回)
3位 桜ケ丘 2280万円(小田急江ノ島線/神奈川県大和市/28分/1回)
4位 さがみ野 2380万円(相鉄本線/神奈川県海老名市/28分/2回)
5位 善行 2405万円(小田急江ノ島線/神奈川県藤沢市/29分/1回)
6位 鶴間 2490万円(小田急江ノ島線/神奈川県大和市/28分/2回)
7位 下永谷 2539.5万円(横浜市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市港南区/18分/1回)
8位 京急富岡 2680万円(京急本線/神奈川県横浜市金沢区/18分/1回)
8位 六浦 2680万円(京急逗子線/神奈川県横浜市金沢区/22分/0回)
8位 小机 2680万円(JR横浜線/神奈川県横浜市港北区/14分/1回)
8位 相模大塚 2680万円(相鉄本線/神奈川県大和市/26分/2回)
8位 羽沢横浜国大 2680万円(相鉄新横浜線/神奈川県横浜市神奈川区/12分/1回)
13位 希望ケ丘 2748万円(相鉄本線/神奈川県横浜市旭区/16分/0回)
14位 洋光台 2780万円(JR京浜東北・根岸線/神奈川県横浜市磯子区/21分/0回)
15位 南林間 2799万円(小田急江ノ島線/神奈川県大和市/28分/1回)
※16位~30位は記事末に記載
シングル向け(専有面積20平米以上~50平米未満)で最も中古マンションの価格相場が安かったのは、横浜市営地下鉄ブルーライン・仲町台駅。価格相場は2位以下と比べて群を抜いて安いのだが、こちらは、集計対象となる期間中に売りに出されていた物件が、戸数が多く築年数が古い、ある大型マンションに偏っていたため。今回紹介している駅は、集計対象が10戸以上存在することを条件としているものの、特定の物件の相場に引っ張られた形で、仲町台駅周辺の全体相場を表しているとはいえないのであくまでも参考値として見てほしい。ちなみに横浜駅の価格相場は3290万円。これほど価格差があるなら、仲町台駅はよほど不便なロケーションなのだろうか?
仲町台駅周辺の様子(写真/PIXTA)
1位・仲町台駅から横浜駅までは横浜市営地下鉄ブルーライン1本、約18分で行くことができる。この駅があるのは横浜市都筑区、高度成長期に計画された都市開発事業で誕生した「港北ニュータウン」の一角。計画的に整備された住宅地だけあり、駅周辺にはスーパーやドラッグストア、銀行や郵便局に各種クリニック……と日常生活に役立つ施設がそろっており、「不便な環境」ではまったくない様子。飲食店が立ち並ぶ駅前から北へ5分ほど歩くと「せせらぎ公園」へ。池の周囲に遊歩道が整備された緑豊かな公園で、ほっと息抜きできる。横浜とは逆方面に1駅目のセンター南駅まで行けば、ショッピングモールや映画館、ホームセンターなどもあるので休日に出かけてもよさそうだ。
2位は横浜市保土ヶ谷区にある相鉄本線・星川駅で価格相場は1219万円。横浜駅までは相鉄本線の各駅停車で4駅・約7分、快速ならトップ15で最短の所要時間となる1駅・約4分で行くことができる。駅周辺は区役所や警察署、消防署、図書館など公共・公益施設が集中する保土ケ谷区の中心地。「ユニクロ」や「無印良品」も備えた「イオン天王町ショッピングセンター」、ホームセンターや家電量販店が徒歩圏内にあるのも便利だろう。また、星川駅から隣の天王町駅間は2022年に高架化されており、それにともなって全長1.4kmの高架下に「星天qlay(ホシテンクレイ)」が誕生した。2023年2月に第1期、4月に第2期開業を迎え、飲食店やスーパー、コワーキングスペースなどがオープン。今後はさらに新たなゾーンの開業も控えているので楽しみだ。
星川駅前広場の様子(写真/PIXTA)
星天qlay(プレスリリースより)
3位は横浜市磯子区にあるJR京浜東北・根岸線の磯子駅で価格相場は1430万円。横浜駅までは乗り換え不要で、6駅・約15分で到着する。ここまで見てきたトップ3の駅は、いずれも横浜駅まで乗り換え0回という結果となった。また、磯子駅の場合は当駅始発の列車もあり、通勤時間帯でも悠々と乗車できる点も魅力だろう。そんな磯子駅の東側は根岸湾に面した工業地帯なので、生活エリアは駅の西側に。複数のスーパーやドラッグストア、ファミレス、100円ショップなどの商店が駅前に集中し、駅から徒歩5分ほどの場所には区役所もある。海辺の街とはいえ、近くには泳げるようなビーチはないが、根岸湾に面したエリアにある海の見える公園や海釣り施設、2023年6月で3周年の「三井アウトレットパーク 横浜ベイサイド」で、休日には潮風を感じながら過ごすのもいいだろう。
磯子駅(写真/PIXTA)
トップ15からもう1駅、注目の街をピックアップしたい。近年よく耳にする「SDGs(持続可能な開発目標)」。このSDGsの先導的な取り組みを行う自治体として国に選定された横浜市では、その取り組みの一環として「持続可能な住宅地推進プロジェクト」を推進している。これは駅周辺に生活に必要な機能を集積し、コンパクトで活力のある郊外部のまちづくりを目指すもの。そのモデル地区の一つが横浜市緑区十日市場町周辺地域、つまり4位にランクインしたJR横浜線・十日市場駅の周辺なのだ。
4位・十日市場駅の周辺では、市と民間企業が連携し、市有地を活用した持続可能な郊外住宅地の再生が進められている。そして駅から南に徒歩5分ほどの場所に2023年3月、集合住宅「グレーシア横浜十日市場」が完成した。分譲住宅と賃貸住宅からなり、共用部は地域に開放。デスクワークや休憩に使えるラウンジと、地域住民の交流やものづくりに活用できる会場、緑地広場などが設けられている。同住宅の隣接地には先行整備された分譲マンションや高齢者向け住宅も2019年に誕生しており、ここ数年で地域のにぎわいが増したと言えるだろう。そんな十日市場駅の周辺には複数のスーパーやドラッグストアがあるほか、一人でもふらっと入りやすいファミレスやファストフード、ラーメン店も点在。再開発で注目の街だけに、ここ1年以内でも新しい飲食店が複数オープンしている。
「カップル・ファミリー向け」上位には子どもが遊べる環境が充実した街もカップル・ファミリー向け(専有面積50平米以上~80平米未満)のランキングを見ていこう。ちなみに横浜駅から徒歩15分圏内にある中古マンションの価格相場は5680万円。そしてランキング1位は、相鉄本線・かしわ台駅で価格相場は1798万円。横浜駅の3分の1以下というリーズナブルさだが、横浜駅まで30分以内でたどり着くには2回の乗り換えが必要だ。まず相鉄本線の通勤急行で大和駅に出て、特急に乗り換えて西谷駅へ。さらに通勤急行に乗ると計約30分で横浜駅に到着する。
かしわ台駅(写真/PIXTA)
ただ、各駅停車や通勤急行で大和駅に出てから特急に乗り継ぐ、乗り換え1回の経路でも横浜駅まで計約31分~32分。快速1本でも、約34分で行くことができる。かしわ台駅から快速に乗ると途中、4位・さがみ野駅(価格相場2380万円)~8位・相模大塚駅(同2680万円)~13位・希望ヶ丘駅(同2748万円)に停車しつつ11駅目が横浜駅だ。横浜駅に近づくほどに価格相場が上がるという、わかりやすい結果となっている。
1位・かしわ台駅は神奈川県海老名市に位置しており、市内屈指の繁華街を抱える海老名駅は横浜と反対方面に1駅目。大型ショッピングモールや映画館がある海老名駅まで気軽に行けるのはメリットだろう。かしわ台駅の周辺にはスーパーやドラッグストア、100円ショップがあり、日常の買い物は近所で済ませられる。駅西側に遊具広場や親水広場、屋内プールを備えた「北部公園」、山の地形を活かして遊具を設置した「緑地わんぱく公園」もあるので、子どもの遊び場にも困らないだろう。駅の南側、スーパーやドラッグストア、保育園が並ぶ一角にあるスーパー銭湯で、家族でリフレッシュするのも楽しそうだ。
2位は京急本線・京急田浦駅で価格相場は1890万円。京急本線の普通列車で金沢八景駅に出て、快特に乗り換えると横浜駅まで計約26分だ。駅があるのは神奈川県横須賀市、三浦半島の北部。海岸線にほど近い、緑も多く残された丘陵地に位置している。駅東側には三浦半島を南北に走る線路と並行するように国道16号が通っており、駅前の国道沿いに警察署が立っている点は安心感がある。国道を越えた一角には商店街があり、鮮魚店や生花店などの個人商店とスーパー、飲食店のほか、市の出張所があるのも何かと便利だろう。市立の幼稚園と小学校も、この商店街の近くだ。
京急田浦駅(写真/PIXTA)
3位は神奈川県大和市に位置する小田急江ノ島線・桜ケ丘駅で、価格相場は2280万円。2位から一気に価格がアップするが、それでも横浜駅の価格相場の2分の1以下にとどまっている。横浜駅までのアクセスは、隣の大和駅から相鉄本線の特急に乗り換えると計約28分だ。駅の徒歩20分圏内には市立小学校が3つもあり、子育て世代も多く住む街の様子。駅周辺にはスーパーやドラッグストアが点在するほか、駅東側の国道467号沿いにはハンバーグ店や回転寿司店など家族で利用しやすい飲食店も。駅から北西に10分ほど歩くと、流水プールやウォータースライダーで遊べる通年営業の温水プールを備えた「引地台公園」、その近くには無料で遊べるフィールドアスレチックがあり、子どもが楽しめる施設が近場にある点も魅力だろう。
引地台公園の温水プール(写真/PIXTA)
トップ15の駅のうち横浜駅までの所要時間が最短だったのは、価格相場2689万円で8位にランクインした相鉄新横浜線・羽沢横浜国大(はざわよこはまこくだい)駅。1駅隣の西谷駅で相鉄本線の通勤急行に乗り換えると、横浜駅まで計約12分で到着する。この駅は相鉄・JR直通線と相鉄・東急直通線の建設にともなって2019年に開業した比較的新しい駅。2023年3月に開業した相鉄・東急新横浜線(相鉄・東急直通線)の停車駅であり、乗り換え0回で渋谷駅まで約35分、新宿三丁目駅まで約43分で行くことができる。羽沢横浜国大駅にはJR埼京線直通の便も通っているため、そちらを利用すると渋谷駅まで約33分、新宿駅まで約38分で行くことも可能だ。
8位・羽沢横浜国大駅の駅前は再開発が行われており、2021年には生鮮食品も扱うドラッグストアとクリニックモールがオープン。ただ、駅周辺にはそのほかに商店が見当たらず、買い物環境が充実しているとは言いがたい。しかし2024年春には駅直結のエリアに、地上23階建ての住居と商業施設の複合ビルが開業予定。今後の発展に期待して、いまのうちに物件検討に踏み切るのもアリかもしれない。
●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている横浜駅まで電車で30分圏内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】
駅徒歩15分圏内、物件価格相場3億円以下、築年数35年未満、敷地権利は所有権のみ
シングル向け:専有面積20平米以上50平米未満
カップル・ファミリー向け:専有面積50平米以上80平米未満
【データ抽出期間】2022/4~2023/3
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2023年3月27日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載
ニューヨーク人情酒場へようこそ!これは、ブルックリンにある小さな酒場(レストラン)で起こったいろんな出来事。
大都会の夜、一杯の酒から始まる人間模様。作者はこのお店で今お寿司を作っているよ。
とても可愛らしいマスターのお父さん。おそらく60代で、言葉はなくともいつもニコニコしています。そしてやっぱりマスターと同じく大酒飲み。
レストラン業界で働いているとスペイン語が母国語の人と働く機会が圧倒的に多いので、少しでも話せるとすごく便利です。ほとんどの人は英語が話せますが、スペイン語で少しでもコミュニケーションが取れると一気に絆が深まる実感があります。私は全く話せないので、スペイン語のレッスンを受けたいなと思いながらもなかなか時間が取れず……。酒でコミュニケーションを取っていました。
アメリカに住んでいると女性から可愛らしい呼び名で呼ばれることがあっていまだに慣れません。アジア人同士ではあまりない気がしますが、言われるとなんか嬉しい。”Honey”とか”Cupcake”とか、甘くて可愛いものが多いですね。”Pumpkin”という呼びかけには「かわいこちゃん」的な意味があり、ダーリーンは「日本人のかわいこちゃん」というニュアンスで呼んでくれたんだと思います。
アメリカで売っているカボチャは一般的には皮もオレンジ色で実も水っぽく、なかなか日本人には馴染みがないのですが、”Japanese Pumpkin”という名称で売られているものは皮が黒く中はオレンジ色の日本でよく目にするカボチャの品種です。結構どんなスーパーにも売っています。
あと、私は会話中に”Girl”と呼ばれるのも大好きです。
トシさんの帰還やったー!トシさんが帰ってきた!しかし、ホンジュラスに行く際に機体に雷が直撃し急降下するという、ものすごい修羅場をくぐっておられました。怖くなかったか聞いたらいつでも死ぬ準備ができているから大丈夫!というものすごいスケールの答え(+笑顔)が返ってきました。今日生きていて一緒に仕事できることに感謝しようと思わされます。
NYでのお店の経営は本当に難しい。通りが一本違うだけで売り上げや客層が一気に変わるこの街で、ビジネスを続けていくためには継続した努力と改善が必要です。
仲良く楽しく働いているけれど、同じことは長くは続きません。傾いていくお店の経営。この後、さつきさんの口から衝撃の事実が語られることになります。
作者:ヤマモトレミ
89年生まれ。福岡県出身。2017年、勤めていた会社の転勤でニューヨークに移住。仕事の傍ら、趣味でインスタグラムを中心に漫画を描いて発表していたところ、思った以上に楽しくなってしまい、2021年に脱サラし本格的に漫画家としての活動を開始。2022年にアメリカで起業し個人事業主になりました。ブルックリンのレストランで週4で寿司ローラーをやっています。
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