ゲキサカ読者が選ぶ選手権MVPは静岡学園MF小山尚紀!「試合に出られなくても信じてやり続けようと」

ゲキサカ読者が選ぶ選手権MVPに選出された静岡学園高MF小山尚紀
 ゲキサカ読者が選ぶ第98回全国高校サッカー選手権のMVP「GEKISAKA AWARD 2019 WINTER 高校生部門」に静岡学園高(静岡)MF小山尚紀(3年)が選ばれた。

 小山は、選手権で24年ぶりとなる全国制覇を果たした静岡学園の左サイドや中央で抜群のテクニックを発揮。狭いスペースを攻略するドリブルなど“一番静学らしい選手”という評価も得ていた。初戦から3試合連続ゴールを決めてチームを勢いづけると、準決勝では後半終了間際に決勝点をアシスト。決勝でも個人技で決勝点に繋がるFKを獲得するなど魅せ続けて、多くの票を得た。

 今回の企画は大会期間中に『ゲキサカアプリ』を使って実施。最も多くのクラップ(拍手=投票)を集めた選手を表彰するもので、小山にはゲキサカオリジナルトロフィーが授与された。

 小山は選手権で優秀選手に選出されたが、大学受験のために日本高校選抜の選考合宿を辞退。今年は受験勉強に専念するという。将来のプロ入りも期待されるテクニシャンにMVPの感想や選手権でのプレー、また静岡学園の3年間で取り組んできたこと、そして今後について聞いた。

―選手権MVPの感想を。
「選手権での頑張りが、そういう形で認められたのは嬉しいと思います」

―サッカー関係者ではなく、読者から選ばれてのMVPはまた価値があるのでは?
「一般の方から選んで頂いて、自分のプレーを認めて頂いたというのは凄く嬉しく感じます」

―選手権のパフォーマンスを振り返ると。
「チームとしては初戦から良い入りができて、決勝まで継続してやることができたので良かったんですけれども、個人的には最初の方は良かったんですけれども、途中からは調子が上がらなくて、そんなに満足の行くような出来ではなかったと思います」

―準決勝の決勝アシストなど随所で仕事をしていた印象だが?
「でも目に見える結果、ゴールを取れなかったのは少し反省かなと思っています」

―自分のテクニックで出せた部分は?
「対人という面では中学の頃からもそうですし、高校に入ってからもたくさんやってきたので、ボールを取られないという部分や1対1で勝つという部分で、良いところがあったんじゃないかなと思います」

―一番“静学らしい”選手という評価も聞くが?
「そう言われることは非常に嬉しいんですけれども、僕自身はそうは思わないんで、僕以外にもそういう上手い選手はいっぱいいますし、その中でも他人からそういうふうに思われるのは嬉しいかなと思います」

―プレーしていて楽しさを感じていた?
「全国大会という舞台でお客さんもたくさん入っていて、相手のレベルも凄く高くて、凄く良い環境の中でやれたということは僕にとって凄く楽しい時間でした」

―このメンバーで、このサッカーで日本一を獲りたいと話していた。
「僕も最初優勝は狙っていたんですけれども、現実味はそんなになかったので。それでも、自分たちのスタイルを信じてやり続けていたら結果は出るかなと。それは上手く結果として結びついたのは良かったです」

―初戦で手応えを得た。
「初戦で持ち味である攻撃力を発揮できて、立ち上がり硬くなっちゃったんですけれども、守備の切り替えなどで圧倒できたので、この調子で行けば行けるのかなと思っていました」

―4得点取っているけれど、ベストゴールは?
「(3回戦の)今治東戦の1点目は非常に記憶に残っています」

―どういうところが?
「立ち上がり、凄く早い時間帯だったんですけれども、相手は凄くアグレッシブに来ていて、難しい展開になるかなと思っていたところで最初に点が取れたという点で凄く良かったかなと思っています」

―埼スタの雰囲気は?
「あんなに多くのお客さんに見守られることはこれまでなくて、その中でプレーできたというのは凄く楽しかったです」

―決勝では青森山田をテクニックで上回った。
「相手は一人ひとりの個の能力が凄く高くて、フィジカル面で圧倒されることはあったんですけれども、特に後半は自分たちの良さをどんどん出して行って、それが結果に結びついたのは凄く良かったと思っています」

―0-2の時の心境は?
「0-2になった時はこのまま大量失点もありえるかなと思っていたんですけれども、みんなで集まった時に、『いや、まだ全然やれるぞ』というふうに声がけはしていたので、前半に1点返せれば何とかなるかなと思っていました」

―0-2から逆転優勝をやり遂げた。
「0-2でリードされて凄く苦しい時間帯だったんですけれども、前半は特に。途中から自分たちの持ち味が出せ始めたら、凄くボールも回るようになって、楽しいなと思っていたので、今までやってきた結果で凄く嬉しかったと思っています」

―自分の個人技で5万人の観衆が沸くのはどんな感じ?
「5万人以上の方々が来てくれて、凄く緊張もしたんですけれども、それ以上に自分たちのスタイルをこの人たちに見せたいというのがあったので、できたのかなと思っています」

―優勝してからの反響。
「新聞でも何度か静岡学園優勝と載っていたりして、そういうものを見て、凄いことをやってのけたんだなと思いました」

―地元の友だちは?
「やっぱり『テレビで見ていたよ』とか、小学校の友だちからも連絡が来たりして非常に嬉しかったです」

―特に家族は喜んでくれたと思う。
「選手権で優勝したいと思って静岡学園に来たので、それで目標がかなったので凄く喜んでくれました」

―家族に恩返しすることができた。
「今まで勝てなかったし、苦しい時期もあったので、それが一番最後に一番良い結果が出たのは凄く嬉しかったです」

―静学の3年間を振り返ると?
「凄く辛かったというのが大きくて、1、2年生の時はほとんど試合に絡めずに3年生の時も出たり出なかったりという時期がありましたし、インターハイでは(静岡県予選)決勝で負けちゃって全国大会に出られなかったので、非常に苦しい時期というのがいっぱいあったんですけれども、その中でも最後まで努力し続けて良い結果が得られたのは凄く良かったです」

―2年間何を一番努力してきた?
「自分の武器はドリブルだと思っているので、そこは曲げずに一生懸命やっていこうと思っていたのはあって、それプラスシュート練習であったり、他の守備であったり苦手な部分をしっかりと補ってこれたなと思っています」

―試合に出れなかったのがメンタル的にキツかった。
「やっぱりそれは一番キツかったです」

―やり続けられた要因は?
「僕自身は滋賀県から来ていて、高校3年間サッカーに打ち込もうと決めてこっちに来たので、やっぱりどんなに勝てなかったり、試合に出られなくても信じてやり続けようと思っていました」

―大会優秀選手。個人としても評価された。
「僕自身はそんなに良いプレーだったのかなと思うんですけれども、チームがみんな足元もあって良いサッカーができた中だったので、僕も良い結果が出せたのではないかなと思います」

―高校選抜を辞退。行きたい気持ちはなかった?
「メンバーが発表された時は知り合いもいましたし、楽しそうだなと思ったんですけれども、自分には自分のすること(受験勉強)があったので良いかなと」

―後輩たちへのメッセージを。
「優勝したチーム、日本一のチームということでここから見られると思うんですけれども、静岡県はレベルの高い高校が多いので、まずは静岡県を勝ち抜くことを第一の目標にして、その中で自分たちのスタイルを出しながらもう一度全国への挑戦権を取れるように頑張って欲しいです」

―小山選手のように上手くなりたい小学生たちへ。
「僕は小さい時から凄くドリブルが好きだったので、ドリブルばっかりやっていたんです。楽しくやっていたのが、一番ここまでやれた理由かなと思っています」

―特別な身体能力がなくても、諦めずにテクニックを磨き続けると花が開くという証明に。
「他の選手のことは分からないですけれども、僕は身体能力がないので、その中でも負けたくないという気持ちがあったので、『じゃあ、どうする』となった時に『テクニックを磨くしかないな』と思って、それが出せたのは良かったかなと思います」

―静学の仲間たちの存在。
「凄く僕たちの学年は仲が良くて、苦しい時に声を掛けてくれる仲間もいましたし、練習でもみんなが声を掛け合って良い雰囲気でできていることが多かったので、仲間には助けられたなと思います」

―特に仲の良かった選手は?
「カズ、井堀(二昭)は仲良かったかなと思います。同じクラスでしたし、同じ出られない時期を一緒に味わった仲間ですし、一緒に切磋琢磨してやり合えたと思います」

―静学の仲間たちとまた一緒にサッカーしたい気持ちも。
「毎日の練習が凄くレベルの高い人たちとできて、楽しかったですし、また成長して高校の仲間に自分の成長した姿を見せたいなと思います」

―将来をどう考えている?
「まず第一は、プロサッカー選手を目指して頑張りたいなと思います」

―最後に読者へのメッセージをお願いします。
「選手権終わって、みんなの支えもあってこういう賞を受賞できて、非常に嬉しく思います。皆さんが投票してくれたことに非常に感謝しています。今後も自分らしくブレずに頑張っていきたいなと思っています」



(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:家族の日常(昌平高・柳澤直成)

昌平高CB柳澤直成。(写真協力=高校サッカー年鑑)
東京のユースサッカーの魅力、注目ポイントや国内外サッカーのトピックなどを紹介するコラム、「SEVENDAYS FOOTBALLDAY」

 この3年間の、いや、それよりもっと以前からの日々を思い出すと、もう涙をこらえることはできなかった。「母は自分よりも1時間ぐらい早く、4時半ぐらいに起きながら毎日弁当を作ってくれて、この会場には来れませんでしたけど、テレビの前で応援してくれたと思いますし、妹はみんなのためにご飯を作ってくれたりして、本当に素晴らしい妹ですし、お父さんもこの大会期間中も毎日LINEで声を掛けてくれたり、自分に期待してくれていたので、本当に大好きな家族の目の前で、全力で戦えて良かったです」。父、母、妹、そして直成。柳澤家にとってこの3年間は、最高の“日常”だったのかもしれない。

「試合を見に行った時に、それぞれの選手の特徴を生かしている印象があって、その環境でやってみたかったのと、自分が中3の年にインターハイで3位だったということで、選手権で全国を狙うにも良いチームだと思ったんです」。15歳の夏。埼玉県で存在感を高めていた昌平高校への進学を、直成は決断した。

 家からは電車で約1時間半。普段は朝の5時半に起き、通学電車に揺られていくが、直成の在籍していた選抜アスリートコースには、週2回の“0限”があったため、その日は5時に起きる必要があった。さらに、朝練が7時スタートに設定された夏休みは、4時起きで電車もほぼ始発。ということは、昼食用の弁当を作る母はそれより早く起きなくてはいけない。

「1年生の夏休みが一番お母さんに負担を掛けていたんじゃないかなと思います。ふざけてだとは思うんですけど、『え?明日も7時?』みたいなことは言いながら(笑)、嫌な顔を一切せずに自分のためにいろいろとしてくれていましたね」という直成の言葉を、父が補足する。「妻もその頃に弁当を作るのが『一番キツかった』って言ってましたね(笑)」。

 登校に1時間半掛かるということは、言うまでもなく下校にも1時間半が掛かる。母は夜遅くに練習から帰ってくる息子の食事や風呂を用意し、就寝しても起きるのは朝の4時近く。あくる日も弁当を作り、学校へと送り出す。実は8年前に大病を患ったこともあり、自身も無理はできず、周囲も無理はさせたくない。いろいろな意味で今まで以上に、家族がお互いにサポートし合う“3年間”がスタートした。

 2017年度の昌平も全国上位を狙える実力を誇っており、すぐに1年生がAチームに入れるような選手層ではない。「チームメイトがお父さんの顔を覚えたりしていました。『今日もいるじゃん」みたいな(笑)」と直成が笑ったように、入学時から息子の練習試合はほとんど観戦してきたという父も、「1年生だけの公式戦にはスタメンじゃなくても途中から出たりしていたので、とりあえず最初はそんなもんかなと思ってました」と当時を振り返る。

 転機は1年の冬に訪れる。所属していたカテゴリーでも前目のポジションで使われなくなっており、薄々は感じていた。「森田(光哉)先生から『オマエのリーダーシップやコミュニケーション能力は、後ろから発信することで確実にチームに良い影響をもたらすことができる』という話もしてもらったので、そこで真剣にやろうと思いました」。アタッカーからセンターバックへのコンバートを受け入れる。

 2年時は着実にステップを踏んだ時期。ベスト4となった全国総体の登録メンバーには入れなかったものの、帯同を命じられた直後の遠征から帰ってくると、Aチームのメンバー入りを果たす。それまでBチームでも定位置を掴んでいた訳ではなかったが、いわば“抜擢”に近い形。「その時は『怒られないようにやろう』と思っていました」と直成も率直な気持ちを明かす。

 その年の選手権予選は信じられない形で幕を閉じる。一方的に押し込んでいた浦和南高との決勝はまさかの逆転負け。冬の全国にはあと一歩届かなかった。その光景をベンチで見守っていたことで、感情は揺り動かされる。「先輩たちが埼スタで崩れ落ちている所や、浦和南の選手が表彰台の上で凄く喜んでいる姿を見て、『高校3年間の集大成として、来年は絶対に選手権には行かなきゃな』と思いました」。決意は定まった。片道1時間半の通学も、いよいよ最後の1年に差し掛かっていく。

 2019年はケガから始まった。Bチームの一員として参加した年始のニューバランスカップで、以前から抱えていた足首の痛みが悪化。このまま練習を続けていても、マイナスアピールになるだけだと感じた直成は、家族とも相談の上、しっかり休むことを決断した。その間にチームは4試合で25得点無失点と、圧倒的な成績で新人戦の県制覇を達成。「複雑な気持ちでしたね。『これって試合出れるのかな?』って。スタンドから見ていました」。焦りがなかったと言ったら嘘になる。

 ところが、自信を持って挑んだ関東大会予選も総体予選も揃って2回戦で敗退。特に全国出場の懸かった総体予選は、正智深谷高に0-3と完敗を喫するなど、守備陣の立て直しは急務だった。その2週間後に控えていたリーグ戦。相手はまたも正智深谷。早々に訪れたリベンジの機会を前に、直成は練習である“異変”に気付く。

「正智戦に向けて紅白戦をやった時に、自分はメンバーがスタメンとサブでミックスされていたものだと思っていたんですけど、よくよく自分のチームを見たら、ボランチが柴ちゃん(柴圭汰)と(小川)優介で、隣にテル(西澤寧晟)がいて、前に(小見)洋太とレギュラーばかりで、『ん?そういうことなの?』って。『チャンスが来たのかな。やるしかないな』ってその時に初めて思いましたね」。

 結果から言えば、直成は“持って”いた。2-0と総体予選の雪辱を果たしたゲームで、予想通りのスタメン起用に無失点という結果で応えたばかりか、2ゴールまでマークしてしまい、主役の座をかっさらう。「『たぶん今週は試合に出るんだ』って話をクラスメイトにしたら『マジで?』『点取ったらジュース何本でもおごってやるよ』みたいな。『無理だよ』と返していたんですけど、試合が終わって月曜日に学校行ったら、みんなオレの所に来て『オマエやったな!』みたいな(笑) みんなからも期待されていたんですかね」。以降のスタメンリストには常に直成の名前が書き込まれていくようになる。

 やっと掴んだ定位置。手放したいはずがない。自然と自主練の量も増え、遅い日は帰宅が夜の10時を過ぎることも。そこから夕飯、風呂、ストレッチ。就寝は11時近くなる。「ストレッチに時間が掛かるので、何回もお父さんに『お母さん寝れないから早くして』みたいに言われて、『わかってるんだけど、そうも行かないんだよ』みたいな」。身体のケアを最優先にしつつ、母もスムーズに就寝できるようにルーティンの順番を入れ替えることもあったそうだ。

 父は母の想いをこう代弁する。「子供が好きなことをやっていて、それをサポートするのはむしろ楽しかったはずです。ただ、実際に『体力的にキツそうだな』というのがあったので、そこは負担を掛けないように周りがサポートしながら。でも、直成だけとか妻だけとか娘だけとかじゃなくて、『みんながうまく周りのことをいろいろ考えていこうね』というような感じではいましたね」。

 直成がAチームの試合に出始めた頃から、妹にも変化が訪れる。「いつも昌平って試合前に相手の分析のスカウティングレポートをもらうんですけど、妹が『それ、貸して』って(笑) で、コピーしたものを試合会場に持って行って試合を見て。最後の方は『まだ今週のもらってないの?』とか言ってました(笑)」。

「娘の今のクラスの担任がサッカー部の顧問なのかな。たぶんクラスの男子のサッカー部の子よりも、サッカーは一番見ていると。『まあ、そうだよな』って。今年の昌平の試合はほとんど来ていますから」という父の言葉に、直成も笑いながらこう続ける。「父から話を聞く限りでは『あ、今絞ってる』とか、「今、ライン上げてる」とか言ってるみたいです(笑)」。

 とはいえ、休日の大半に兄のサッカーへ付き合う中学生の妹も、おそらくはそう多くない。「他にも自分自身に充てたい時間もあったはずなのに、家族のためにそういう時間へ充ててくれたことは感謝しています」と直成も素直な想いを口にする。週末の柳澤家が“サッカー”を中心に回っていたことは間違いない。

 選手権予選は満身創痍だった。太もも裏の肉離れに始まり、シュートブロック時に足首を捻挫。さらに“あばら”も傷めてしまい、息をするだけで激痛が走る。「とりあえず病院で肋間筋の肉離れというのがわかって、監督に電話したら『最後の大会だからやれる準備はやれ。最後の判断はオレがする。人間は最初からできないと決めつけるとやらないから。オマエなら行けるだろ』みたいな感じで言われて、『やるしかねえな』って思いましたね」。

 だからこそ、決勝で勝利のホイッスルを聞いた瞬間は、嬉しさと同時に安堵の想いが強かった。「最初はとりあえずホッとしました。実は決勝でもまた痛めたんですよ(笑) 高校まで全然ケガはなかったんですけどね…」。埼玉スタジアム2002のスタンドには家族の姿もあった。「決勝は妻も来ていました。『全国凄いね。行っちゃったよ』みたいに言っていて。やっぱり選手権は反響が凄いですよね。会社に行けば『テレビ見たよ』ってなりますし、とりあえず1つ結果が出て良かったねというのがありました」と父も嬉しそうにその日を思い出す。しかし、この決勝は母にとって直成の“高校サッカー”をスタジアムで見届ける最後の試合となる。

 1月2日。高校選手権2回戦。興國高と対峙する浦和駒場スタジアムの会場に母の姿はなかった。「この年末はちょっと、妻もあまり無理はできない感じで、相当調子が悪かったんです」と父が明かしたように、体調が思わしくない状況が続いていたため、現地観戦は断念せざるを得なかった。「去年から考えたら、まさか自分がここに立っているとは思っていなかったので、小さい頃からテレビで見ていた選手権に出ているのは、少し不思議な気持ちもありました」。父のため。母のため。妹のため。そして、自分のため。憧れの選手権のピッチに4番を背負った直成が歩みを進めていく。

 大会屈指の好カードと目されていた2回戦は2-0の快勝。翌日に行われた3回戦の國學院久我山高戦も、後半アディショナルタイムの決勝点で1-0と劇的な勝利。父と妹はスタンドで、母は自宅のテレビの前で2つの白星を見届ける。次の相手は高校年代最強の呼び声高い青森山田高。3年間の集大成をぶつける舞台がやってくる。

 今でもそのシーンは思い出すという。1月5日。高校選手権準々決勝。「自分の判断ミスというか、クリアミスもあって、キーパーとしっかりコミュニケーションが取れていれば、防げた失点じゃないかなとは思います」。0-1とビハインドを追い掛けていた19分。自陣のエリア内で直成が蹴ったボールは相手に渡り、そのままゴールネットへ叩き込まれてしまう。さらに1点を追加され、青森山田が3点のアドバンテージを握って最初の40分間が終了する。

 後半に入ると、昌平の意地と反発力が炸裂する。9分に1点を返し、35分にも1点差に迫るゴールを記録。最強の相手を土俵際まで追い詰めたが、最後はわずかに1点及ばずタイムアップの笛を聞く。「頑張りましたね。よくあそこまで行きました。欲を言えば『もうちょっと先にも行けたんじゃないかな』と思いますけど、高校生活が終わるだけで、まだまだ先がありますからね」。スタンドから息子の雄姿を見つめていた父は、晴れ晴れとした想いの中に身を置いていた。直成と柳澤家の“3年間”は、こうしてフィナーレを迎えた。

「県予選からずっと大変でしたね。全国もさらに大変でしたし、興國、國學院久我山、青森山田と誰もが知っている素晴らしいチームと試合ができたことは、本当に自分の中で一生の宝物です。地元の友達も『応援してるよ』って言ってくれたり、実際に応援しに来てくれたりして、もう思う存分楽しめました」。時折笑顔も浮かべながらミックスゾーンで試合を振り返る直成には、やり切った者だけが味わうことのできる充足感も漂っていた。だが、最後に家族への想いを問われると、一瞬逡巡したような表情を見せながら、ようやく絞り出した声がだんだん続かなくなっていく。

 この3年間の、いや、それよりもっと以前からの日々を思い出すと、もう涙をこらえることはできなかった。「母は自分よりも1時間ぐらい早く、4時半ぐらいに起きながら毎日弁当を作ってくれて、この会場には来れませんでしたけど、テレビの前で応援してくれたと思いますし、妹はみんなのためにご飯を作ってくれたりして、本当に素晴らしい妹ですし、お父さんもこの大会期間中も毎日LINEで声を掛けてくれたり、自分に期待してくれていたので、本当に大好きな家族の目の前で、全力で戦えて良かったです」。母に、父に、妹に、家族に早く会いたかった。

 ようやく家に着き、部屋のドアを開けると、そこにはいつもの笑顔が待っていた。この3年間の、いや、今までのすべてにありったけの感謝を伝えようと思っていたが、先に言葉が溢れたのは母の方だった。「一目散に駆け寄りましたね。そこで『よく頑張ったね』ということと、『自慢の息子だ』ということを言ってくれて。その後で『3年間、毎日本当にありがとう』としっかり言葉で伝えました」。直成の想いはもう、十分過ぎるほどに伝わっていた。それはスタジアムで自分の姿を見て欲しかったけれど、その言葉は胸に、そっとしまった。

「山田戦が終わって、電話したら妻は号泣していました。また直成が凄い泣きっぷりでテレビに映っていましたからね。ちょっと時間を置いて電話したら、録画したのを見てまた泣いているという(笑)」。父の自然な軽やかさは、家族を良い意味で力強く支えている。そんな彼は“娘”への感謝をこう語る。「この1か月、本当に妻の調子が悪かった時の、娘の働きには感謝していますね。普段そんなに積極的に料理をする子でもなかったんですけど、『その気になればそんなにできるのね』『こんなことまでちゃんとできるんだ』みたいな」。息子と同様に、しっかり成長している娘の姿がたまらなく嬉しかった。

 ふと、父があることを教えてくれた。「アイツ、最近『昌平のマネージャーになる』とか言い出してるんだよあ」。直成がその言葉を引き取る。「なんか妹が自分の代のマネージャーと仲良くなって、『待ってるよ』とか言われたみたいで。そう言えばついに『選手権の決勝見に行こう』って言われたので、たぶん行くと思います(笑)」。どうやら柳澤家と昌平高校の“縁”には、もう少し続きがありそうだ。

 母の体調はだいぶ回復し、少しずつ柳澤家には日常が戻って来つつある。「ちょっと前に妻と話していて、『直成はプレーなら首を振って周りを見てとかできているのに、普段の生活でできないね』って。だから、『サッカーでできているんだから、普段の生活でもできるだろ』って。そういう言い方に変えようって(笑)」。父の投げた直球に、直成は苦笑するしかない。「最近言われました。『ピッチでできるなら、家でもやれよ』って(笑) でも、『ピッチと普段は繋がるよ』とか言われますけど、どうなんですかね(笑)」。

 妹は来年に高校受験が控えている。直成は大学でもサッカー部に入るつもりだという。そして、父と母には子供の成長を見守りつつ、大好きなJリーグのチームを応援する日々が待っている。確かにこの3年間は特別なようでいて、これからも続いていく毎日の中の一コマであったとも言えるだろう。ただ、彼らは毎日の中の一コマが持つ幸せの意味を、強く強く実感している。「まだまだこれからですよ。いろいろなことがありますからね」。父の言葉は、家族のみんなが抱えている想いを過不足なく表現していた気がした。

 父、母、妹、そして直成。柳澤家にとってこの3年間は、最高の“日常”だったのかもしれない。それゆえに、きっとこの先にはまだまだ新たな“家族の日常”が、優しく柔らかく、彼らを包んでいくことを願ってやまない。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

▼関連リンク
●【特設】高校選手権2019
SEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史

『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:はじまりのおわり(青森山田高・佐藤史騎、古宿理久、浦川流輝亜)

左から青森山田高のGK佐藤史騎、MF古宿理久、MF浦川流輝亜。(写真協力=高校サッカー年鑑)
東京のユースサッカーの魅力、注目ポイントや国内外サッカーのトピックなどを紹介するコラム、「SEVENDAYS FOOTBALLDAY」

 ピッチに入る直前。手を繋いでいるエスコートキッズも、横の“お兄さん”を見ながら一礼するのが微笑ましい。佐藤史騎は前から2番目。浦川流輝亜は前から5番目。そして、古宿理久は後ろから2番目。濃密な日々を共に過ごした最高の仲間たちと、待ち焦がれた舞台へ歩みを進めていく。「中学生の頃から一緒にやってきて、3人で一緒に高校に入って、『山田で日本一を獲ろう』という話をしてきましたし、それを叶えるのはもうこの最後の試合だけなので、悔いの残らないように自分たちらしいサッカーをしたいと思います」。古宿が決意を明かす。シブキ。リク。ルキア。横浜FCのジュニアユースから数えて6年。長い時間を共有してきた3人で挑む、最後の1試合が幕を開ける。

 最初に青森の地へとやってきたのは浦川だ。横浜FCのジュニアユースから、ユースへの昇格が有力視されていた中学3年生の夏。「昇格を一番に考えていたんですけど、その発表がある1週間ぐらい前に、お父さんに『オマエどうするんだ?』と言われて、自分は『ユースに上がりたい』って答えたんですけど、そこに明確な理由があまりなかったので、お父さんに『逃げてるんじゃないか?』と言われたんです」。

 改めて1週間考えに考え、結論を出す。「自分を変えたい」とかねてから思っており、そのためには厳しい環境に身を置くべきだと決意した。2つ上の兄が進学し、環境面も含めた話を聞いていた経緯も後押しする。中学3年生の夏。そこからの“3年半”を見据えた浦川は、青森山田中学へと編入する道を選んだ。

 古宿は失意の中にいた。「もうユースへの昇格は切られていたんです」。プロを見据え、横浜FCのジュニアユースへと入団したものの、中学3年生の夏にユースへの昇格が叶わないことを告げられる。言い表せないようなショックに襲われながらも、次の進むべき道を決めなければならない。

「高校サッカーのチームを考えた時に、まず単純に強くなりたいと思ったんです。それに高卒でプロになりたいと。その中で日本一を獲れるような高校に行けば、プロにも注目されるんじゃないかなって。だから、『高体連で一番強いチームに行こう』と思いました」。一足先にその地を踏んでいた浦川からも助言をもらいながら、セレクションでの合格を勝ち獲る。古宿も青森山田高校へと進学する道を選んだ。

 佐藤もキャリアの岐路に立っていた。中学3年生の夏。横浜FCのユースへと昇格する道は、既に閉ざされていた。本人の表現を借りれば「“やらかして”しまって、練習に参加していない時期もあった」経験から、親に迷惑を掛けてしまったという自責の念が、15歳の柔らかな心を苛む。

「親に自分が出ている試合を見せてあげられていなくて、試合に出ている姿を見せることで恩返ししたい気持ちが強かったんです」。その前の年の高校選手権。横浜FCのホームスタジアムでもあるニッパツ三ツ沢球技場で見た、廣末陸(現FC町田ゼルビア)がとにかく眩しく映った。「親は『どこでもいい』と言ってくれたんですけど、自分で『行きたい』と言って決めました」。佐藤も青森山田高校へと進学する道を選んだ。

 彼らが入学した2017年は、郷家友太(現ヴィッセル神戸)や中村駿太(現モンテディオ山形)、浦川の兄に当たる流樺(現専修大)らを擁し、冬の全国連覇を狙っていた年。すぐさま1年生にトップチームでの出番が回ってくるような状況ではない。「思い出したくないですね(笑) 人生でこれから生きていく中でも、たぶん一番キツいことだと思います」と浦川も苦笑しながら振り返る“雪中サッカー”に鍛えられつつ、来たる日を夢見て目の前のトレーニングに取り組んでいく。

 ただ、2年生になっても大きく立ち位置は変わらない。3人の主戦場はセカンドチームが所属するプリンスリーグ東北であり、そこでも浦川こそスタメン起用が多かったものの、古宿と佐藤はバックアッパーが常。12月の最終節で浦川と古宿に訪れたプレミアリーグデビューは、前者が26分、後者は1分あまりの途中出場。「高1、高2は何もできなくて、自分としても悔しい時期が多かったです」という古宿の言葉は、そのまま3人の心情を現していると言っていいだろう。

 2019年。青森の地で過ごすラストイヤー。春先のサニックス杯でようやくトップチームの一員として揃って同じピッチに立った3人は、そのままプレミアリーグEAST開幕戦のスタメンにも名を連ねる。浦川はベンチから、佐藤と古宿はスタンドから見つめていた3か月前の高校選手権決勝と同じカード。流通経済大柏高との一戦ということもあって、否が応でも気合が入る。

 浦川が持ち前のハードワークを武器に、左サイドでの上下動を繰り返せば、古宿は終盤に「自分がゴールを決めたくらい嬉しかったです」と笑う完璧なスルーパスで、チームの2点目をアシスト。佐藤も安定感のあるセービングでゴールに鍵を掛け、無失点に力強く貢献する。

1 0人のレギュラーが前年から入れ替わり、「『プレミアは全敗するんじゃないか』と思われていたようなチーム」(黒田剛監督)は宿敵相手に2-0と完勝を収め、その指揮官も「武器のないチームだけれども、これだけ地道にやれば何とか結果は付いてくるかな」と一定の評価を下す。そして、結果的に佐藤、古宿、浦川の3人は順位の確定していた最終節を除く17試合にいずれもスタメン出場を果たし、2年ぶりのリーグ制覇を完全な主力選手として味わうこととなる。

「寮生活も一緒で、クラスも一緒で、本当にずっと一緒なので、もう特別な感じはないですね」と浦川が口にした3人のキャラクターも、実にそれぞれで興味深い。「シブキは日本で一番面白いヤツです。さすがに黒田監督には誰もノリで関われないんですけど、アイツはメッチャ行くんですよ。でも、やっぱり監督もキャラをわかっているので受け入れていて、『ああ、スゲーな』って(笑)」(浦川)「シブキはワチャワチャしていますし、普通にヤバいキャラですからね。取材の時は猫カブッてるだけです(笑)」(古宿)。それを伝え聞き、「アイツら言いますね。猫カブってないですよ。いいヤツなんで、自分」と笑った佐藤は圧倒的な明るさが持ち味だ。

「リクは中学校の頃は正直あまり絡んでいなかったんですけど、高校になって絡む機会が増えてわかったのは、嫌なことでもちゃんとできるヤツですね。筋トレとかも頑張っていて、自分は筋トレ嫌いなので(笑)、自分もそういう所は見習っていきたいです」(佐藤)「リクは静かで冷静なタイプだと思うんですけど、ふざける時は結構ふざけるので、真面目なタイプでもないと思いますね。やっぱり表で猫をカブるタイプです(笑)」(浦川)。掴み所がないと言えばないようにも思えるが、芯の強さは言葉の端々に滲み出る。各々の個性が強い今年のチームの中で、古宿の落ち着きは異彩を放っている。

「ルキアは凄く賢いなと思いますし、『人に負けたくない』という気持ちが強くて、自分が持っていないものを持っているので、もっと真似していきたいなと思います。とにかく頭の良さはうらやましいですね」(佐藤)「ルキアはハードワークできますし、チームのために頑張れる選手なので、逆にあのポジションがルキアじゃなかったらと考えたら、やっぱり必要な選手だなと思います」(古宿)。献身的に努力を積み重ねられるのが浦川の長所。だからこそ、チームの誰からも信頼されている。ニコニコ笑った顔も可愛らしく、ある意味でマスコット的な存在と言ってもいいかもしれない。

 高校入学から彼らを見守ってきた正木昌宣コーチは、笑いながらこう分析する。「上手くバランスが取れていますよね。目立つのが好きなシブキがいて、黙々と核になってやり続けるリクがいて、最後まで献身的にやってくれるルキアがいて。まあ“はっちゃけるヤツ”と“ちょっとカッコつけるヤツ”と“努力を厭わないヤツ”の3人って感じかな」。三者三様のキャラクターが、それぞれをより魅力的に引き立たせる。

 全国総体は3回戦敗退を強いられたものの、前述したリーグ戦は2位以下を大きく引き離しての優勝を成し遂げ、勢いそのままに名古屋グランパスU-18とのファイナルも制し、年間王者の称号を獲得した青森山田。まさに高校年代最強チームという立ち位置で、選手権を迎える。目指すは史上9校目となる大会連覇。最激戦区と目されるブロックに組み込まれながら、米子北高、富山一高、昌平高と次々に襲い掛かる難敵を退け、今年度も埼玉スタジアム2002へ帰還する。

 準決勝の相手は帝京長岡高。序盤から押し込まれる展開の中で、6番の絶妙なスルーパスを起点に先制点が生まれる。「芝が結構長かったので、強めに出しても止まるかなというイメージで計算通りです。メッチャ気持ち良かったです」と満面の笑みを浮かべた古宿は、2点目に繋がるクロスも繰り出すなど、いつも以上に攻撃面でその能力を発揮する。

 後半25分にスタジアムを沸かせたのは1番を背負った守護神。1対1で抜け出された絶体絶命のピンチに、信じられないようなビッグセーブで失点を回避する。「ずっと『絶対止める』という気持ちでいたので、あのセービングができて良かったと思います。無意識にガッツポーズが出てしまいましたね」。佐藤による執念の好守がチームを乗せる。

 8番を付けたレフティも、90分間フル出場で攻守に奮闘し続ける。「アイツは『僕は黒子です』って言える子で、それを1年からずっとやってきて、良い意味でずっと変わらなかったのが凄いなと。今のルキアは本当にチームになくてはならない存在です」。正木コーチがその真価を笑顔で説く。終盤に1点は返されたものの、2-1で逃げ切りに成功。とうとう連覇に王手を懸けた。

 泣いても笑っても、あと1試合。勝っても負けても、青森山田での試合は次が最後。それはすなわち、3人で戦うラストゲームでもある。「やっぱり中学からの仲なので凄く思い入れもありますし、入ってきた時も『3人で選手権を目指そう』と話していたので、最後は勝って、笑って終わりたいと思います」(浦川)「横浜FCから3人でやってきていますし、3年目は一緒に出たいとずっと思ってきて、最後の試合となると悲しい気持ちもありますけど、決勝を楽しみたいですね」(佐藤)「中学生の頃から一緒にやってきて、3人で一緒に高校に入って、『山田で日本一を獲ろう』という話をしてきましたし、それを叶えるのはもうこの最後の試合だけなので、悔いの残らないように自分たちらしいサッカーをしたいと思います」(古宿)。6年間の集大成。絶対に負けられない。絶対に負けたくない。

 1月13日。高校選手権決勝。シブキは前から2番目。ルキアは前から5番目。そして、リクは後ろから2番目。濃密な日々を共に過ごした最高の仲間たちと、待ち焦がれた舞台へ歩みを進めていく。長い時間を共有してきた3人で挑む、最後の1試合が幕を開ける。

 3度の短いホイッスルが陽の傾き始めた青空へ吸い込まれ、いつもの緑を相手に譲った白いユニフォームの選手たちがピッチへ崩れ落ちる。2点を先制した青森山田は、その後に2点を奪い返した静岡学園高に追い付かれると、後半40分に逆転ゴールを許し、試合はそのままタイムアップを迎えた。

 大の字に倒れた佐藤は動けない。「正直信じられない気持ちで、チームが負けたという現実を受け止め切れなくて…」。交替でベンチに下がっていた浦川は茫然と立ちつくす。「最後までピッチに立ちたかった想いもありましたし、試合に出ている選手よりも凄く悔しかったです」。ようやく3人で戦えた最後の冬には、大会史上に残る逆転劇を演じられての準優勝という結末が待っていた。

 浦川はなかなか頭の中を切り替えることができない。「終わった瞬間は親への感謝が凄く強かったですけど、自分自身あまり納得の行くプレーもできなくて、本当に何とも言えない気持ちでした」。佐藤も涙が止まらない。「そういうキャラでもないですし、みんなの前で泣きたくはなかったですけど、応援してくれた親とかスタッフのことを考えたら、『もっと良いプレーができたんじゃないか』とか、『ここでこうすればもっと自分が貢献できたんじゃないか』とか、いろいろ頭をよぎって涙が出てきてしまいました」。

 一方で古宿は晴れ晴れとした顔をしていた。「人としての成長もそうですし、プレーの中でも自分が中心となってやっていこうという想いが強く芽生えたので、この1年間は自分の人生でも大事な年だったと思います」。決勝に向けた前日練習後。正木コーチが古宿について話していた言葉を思い出す。「アイツは明らかに新チームになった瞬間から『自分がチームの核になるんだ』という雰囲気が凄く出ていて、自信が持てるようになってきたからなのかもしれないですけど、『人間ってこうも変わるんだ』というぐらい劇的に変わったと思います」。一見クールな横顔が覆い隠している芯の強さは、最後の試合後にも垣間見えた。

 その古宿は、横浜FCへプロ選手として帰還することが決まっている。そのことについて尋ねた時、2人はこのように想いを語っていた。「嬉しさもあれば、もちろん悔しさもあって、自分も大学を経由してプロになりたい気持ちが一層増しましたし、そういう面では良いライバルですね」(佐藤)「もうそれはアイツが努力して掴み取ったことなので、凄いことだと思いますし、これからシブキと自分は大学に進むんですけど、そこでプロを目指して、また一緒のピッチでできればなと思いますね」(浦川)。

 その想いは“リク”も十分にわかっている。4年後。彼らが同じステージに立とうとした時には、圧倒的な差を見せ付けられる自分でありたいと願うと同時に、やはり彼らともう一度ボールを追い掛けたい気持ちも隠せない。「プロになれたのは自分の努力の結果だとは思うんですけど、今回はたまたま自分が報われただけなので、シブキとルキアにも大学を卒業してから絶対にプロになって欲しいですし、また一緒にサッカーができたらいいなと思っています」。

 5万6千人を飲み込んでいた埼玉スタジアム2002は、もう暗闇と静寂に包まれていた。“3年間”を2度積み重ねた“6年間”は、長かったのだろうか。それとも短かったのだろうか。横浜の地と、雪深い青森の地で、勝利という同じ目的に向かい、成長という同じ目的を共有した時間は、3人にとってかけがえのない思い出として、これからも心の片隅に息衝いていくはずだ。

 その大事な大事な宝物を携えて、春からはそれぞれが選んだ新たな道を歩み出す。シブキ。リク。ルキア。3人にとってこの“おわり”は、4年後に胸を張って再会するための未来へと続く“はじまり”でもある。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

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SEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史

[選手権]決勝写真特集

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
【決勝】
(1月13日日)
[埼玉スタジアム2002]
青森山田 2-3 静岡学園
絶対王者・青森山田が逆転負けで連覇を逃す(28枚)
決勝戦のオープニングゴールを挙げた青森山田DF藤原優大(8枚)
逆転負けを悔やむ青森山田DF箱崎拓「ツメの甘さが最後に出た」(4枚)
「サッカー人生で一番悔しい」青森山田MF武田英寿は連覇逸に涙(24枚)
静学スタイル結実!!王者・青森山田に大逆転勝利で24年ぶり優勝(20枚)
令和初Vへ…大勢の応援団が駆けつけた静岡学園&青森山田(16枚)
大会得点王に輝いた静岡学園FW岩本悠輝(4枚)
静岡学園の2年生GK野知滉平「もう一度この景色を」(4枚)
全国の舞台で成長を実感…静学屈指のテクニシャンMF浅倉廉(8枚)
「触るだけのボールを蹴ることができた」静岡学園MF井堀二昭が自画自賛の決勝アシスト(8枚)
静学キャプテンDF阿部健人、卒業後はアメリカで「MLSを目指す」(12枚)
鹿島での活躍を誓う静岡学園MF松村優太「自分がタイトルに貢献できれば」(12枚)
今大会初スタメンで大仕事! 静岡学園FW加納大「一発やってやろうと」(16枚)
逃さなかった絶対王者の隙…静岡学園DF中谷颯辰が優勝導く2ゴール!!(12枚)
24年ぶりの優勝に笑顔弾ける静岡学園の選手たち(28枚)
応援マネ・森七菜さんがガッツポーズを向ける先には…(8枚)



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[選手権]決勝写真特集

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
【決勝】
(1月13日日)
[埼玉スタジアム2002]
青森山田 2-3 静岡学園
絶対王者・青森山田が逆転負けで連覇を逃す(28枚)
決勝戦のオープニングゴールを挙げた青森山田DF藤原優大(8枚)
逆転負けを悔やむ青森山田DF箱崎拓「ツメの甘さが最後に出た」(4枚)
「サッカー人生で一番悔しい」青森山田MF武田英寿は連覇逸に涙(24枚)
静学スタイル結実!!王者・青森山田に大逆転勝利で24年ぶり優勝(20枚)
令和初Vへ…大勢の応援団が駆けつけた静岡学園&青森山田(16枚)
大会得点王に輝いた静岡学園FW岩本悠輝(4枚)
静岡学園の2年生GK野知滉平「もう一度この景色を」(4枚)
全国の舞台で成長を実感…静学屈指のテクニシャンMF浅倉廉(8枚)
「触るだけのボールを蹴ることができた」静岡学園MF井堀二昭が自画自賛の決勝アシスト(8枚)
静学キャプテンDF阿部健人、卒業後はアメリカで「MLSを目指す」(12枚)
鹿島での活躍を誓う静岡学園MF松村優太「自分がタイトルに貢献できれば」(12枚)
今大会初スタメンで大仕事! 静岡学園FW加納大「一発やってやろうと」(16枚)
逃さなかった絶対王者の隙…静岡学園DF中谷颯辰が優勝導く2ゴール!!(12枚)
24年ぶりの優勝に笑顔弾ける静岡学園の選手たち(28枚)
応援マネ・森七菜さんがガッツポーズを向ける先には…(8枚)



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目標とされる存在となった青森山田。彼らを選手権決勝まで勝ち上がらせた力、決勝で欠けていた力

前王者となった青森山田高の選手たちだが、敗れても真摯な態度。(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

「絶対王者」「ラスボス」「高校サッカーで一番のチーム」「打倒・青森山田」「青森山田と戦いたい」……。今回の選手権、最も戦いたい相手として前回大会優勝校・青森山田高の名を挙げる選手はとても多かった。

 今回を含めた最近5大会の選手権で4強以上4度、うち3度が決勝進出。青森山田は19年のプレミアリーグファイナルを制し、2度目となる「高校年代真の日本一」に輝いている。プレミアリーグでは、Jクラブのアカデミーチームや強豪校相手に毎年のように優勝争い。ポゼッション型やカウンター型のチームなど、どのような相手に対しても上回ることができる総合力の高さが最大の強みだ。

 中でも、「ゴールを隠す(シュートコースを消す)」「走らせない(相手選手が加速できないように守る)」「(PAへ)侵入させない」など青森山田が使うキーワードは近年、全国の強豪校からも耳にすることが増えた印象だ。青森山田は現在、高校サッカーのスタンダードを高め、全国各地の高校から最も目標とされる存在になっている。

 その青森山田は、今回の選手権で史上10度目(通算9校目)となる2連覇に挑戦。“死のブロック”と評される組み合わせに入ったが、米子北高(鳥取)、富山一高(富山)、昌平高(埼玉)、帝京長岡高(新潟)といずれも日本一を掲げて選手権に臨んできた強敵を打ち倒して決勝まで勝ち上がってきた。

 そして、決勝戦でも得意のセットプレーからU-17日本代表CB藤原優大(2年)が先制ヘッドを叩き込み、ショートカウンターからU-18日本代表MF武田英寿主将(3年/浦和内定)がPKを獲得。そのPKを自ら決め、前半33分までに2点を先取した。前半はテクニカルな静岡学園に対して高い位置で守備ブロックを構築し、その鋭いプレッシングで相手のビルドアップを封殺。5-0で制した16年度大会決勝のように、快勝の予感も漂わせるような戦いで試合を進めていた。

 だが、前半終了間際にクリアミスから失点。すると、後半もチャンスの数を多く作られた訳ではなかったが、21分に相手のファインゴールで追いつかれてしまう。そして40分、得意とするセットプレーで逆にゴールを破られて2-3で逆転負け。黒田剛監督は「この敗戦は徹底できなかった。徹底することでこれまでの青森山田の勝利があった」と指摘する。

 特に1点目と3点目は、普段徹底していることを実行していれば防げた失点だった。この日も相手のクロスやセットプレーを跳ね返す部分、ゴールを隠す守備、切り替えの速い攻守などを徹底していたが、それを90分間やり通すことができず。黒田監督も「平常心でやってきたことを(どんな状況でも)出せるのが強いチームだと思う。トレーニングでずっとすり込んできたものが、こういう局面で一瞬の判断を奪ってしまうということも全国大会決勝というステージの怖さ」と分析していた。

 昨年度の選手権日本一メンバーから残った主力は武田のみ。そのチームがプレミアリーグを制し、選手権ではライバルたちからターゲットとされる中で決勝に戻ってきた。非常に難しいノルマを彼らは徹底する力で実現。決勝戦では敗れたものの、黒田監督はその成長を認める。そして、「優勝したチームに比べながら、彼らは自分たちで力の無さを自覚しながら日々成長を遂げてきた。ここまで伸びるんだな、ここまで人間って変われるんだな、サッカー選手って変われるんだなと私自身も見せてもらった。本当に1年間通して力以上のものと言ったらおかしいかもしれませんけれども、最高の一年間を過ごしてくれた」と讃えていた。

 そして、黒田監督は武田やMF古宿理久(3年/横浜FC内定)といった3年生たちへの労いの言葉をかけると同時に、「優勝と準優勝の違いというものをもう一度青森に帰って意識するとともに、来年度の強化に繋げていきたい」と語っていた。また、武田は後輩たちへ向けて「来年は絶対に優勝して欲しい」とエール。静岡学園が優勝の表彰を受ける際、青森山田の各選手はその喜ぶ姿を毅然とした態度で目に焼き付けていた。この悔しい敗戦は必ず力に。来季のチームリーダーとなる藤原や右SB内田陽介(2年)、MF松木玖生(1年)をはじめ、1、2年生たちはどんな状況でも徹底できる力と、ライバルたちのマークを乗り越える心技体を身に着けて、また一年後の選手権ファイナルに戻ってくる。

(取材・文 吉田太郎)
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青森山田の3年間に達成感も…MF古宿理久は横浜FCへ「絶対に結果を残したい」

青森山田の司令塔MF古宿理久(3年/横浜FC内定)(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]
 
 青森山田高の司令塔が正確無比なプレースキックで先制点を演出した。前半11分、左後方で獲得したFKをMF古宿理久(3年/横浜FC内定)が右足で蹴り込む。約40mの位置から放った回転のかかったキックはゴール前で落下し、DF藤原優大(2年)の先制ヘッドを演出した。

「イメージ通りです。キーパーの前に速くて落ちるボールを入れるイメージで蹴った」。広い視野から質の高いキックを繰り出すだけではなく、前半は出足鋭いプレスで中盤を制したが、2点リードを覆されての衝撃的な逆転負け。「今までやってきた中で一番うまいチームだった」と敗戦を受け止めた。

 横浜FC Jrユース出身の古宿はユース昇格を逃し、青森山田で3年間研鑽を積んできた。連覇を逃す幕切れになったとはいえ、目標だった高卒プロ入りを決めるなど意義の深いシーズン。「自分としてもこの一年で成長できたし、達成感はあります。人としてもそうですし、プレーの中でも自分が中心になってやっていくという自覚が芽生えた。この一年間は自分の人生の中でも大事な年だった」と軌跡を噛みしめた。

 3年間の経験を提げ、いよいよ横浜FCでプロ生活のスタートを切る。中学時代の同期MF斉藤光毅は18シーズンからトップの試合に出場しているだけに「自分もやれないことはない。目指すよりは超えていくことを意識したい」と意気込み、「出場した試合では絶対に結果を残したい」と覚悟をにじませた。

(取材・文 佐藤亜希子)
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「自分の責任」決勝点悔やむ青森山田の守護神・佐藤は大学で“勝たせられるGK”に

青森山田の守護神GK佐藤史騎(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 静岡学園から見れば劇的な大逆転優勝。青森山田高(青森)の立場からすると、衝撃的な敗戦だった。静岡学園の選手が表彰台に昇る中、整列していた青森山田の中で、GK佐藤史騎(3年)とDF神田悠成(3年)は顔を上げられないほど涙に暮れていた。

 青森山田の守護神は決勝点の場面を悔やんだ。2-2で迎えた後半40分、自陣右サイドで静岡学園にFKを与えると、ボールサイドにはMF井堀二昭(3年)とMF草柳祐介(3年)が立っていた。「自分の責任なんですけど、シュートがあるっていう分析も出ていて。そっち(シュート)を意識してしまったというか、そっちにふらついてしまって出れなかった」。井堀が右足で上げたクロスは、ファーサイドでフリーになっていたDF中谷颯辰(3年)の頭にピタリと合う。「静岡学園さんはトリック(プレー)を結構してくるので……。整理できたらよかったですけど、整理できなかった自分の責任です」。悔しさに涙が溢れた。

 とはいえ、守護神抜きには決勝の舞台はなかっただろう。2-1で勝利した準決勝・帝京長岡戦、GK佐藤は好セーブを連発し、勝利に大きく貢献した。その応援席には、昨年度の選手権優勝キャプテンであり正GKを務めた飯田雅浩(国士舘大)の姿もあった。「失点のことについて話をしました」というほど信頼を寄せる。決勝を迎えるにあたっては「試合前には『お前ならできるぞ』って言っていただいたんですけど、こういう結果になって申し訳ないです」と肩を落とした。

 東京都出身の佐藤は、横浜FCジュニアユースでプレーしていたときに、当時青森山田の守護神を務めていたGK廣末陸(町田)を目の当たりにして、青森での挑戦を決意した。高校サッカー最後の大会で優秀選手に選出される活躍を見せた一方、課題も見つかった。「大会を通して悪くはなかったかなと思うんですけど、決勝ではパフォーマンスがよくなかったので、勝たせられるGKになれなかった。自分の中で隙があったと思いますし、そこはこれから改善していけたらと思います」。大学では関東に戻り、東海大学でプレーをする。「がんばろうと思ってます」。プロ選手へ、佐藤は前を向いた。

(取材・文 奥山典幸)
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ビッグプレーよりも…青森山田FW田中が悔やんだ「あの一瞬」

青森山田高FW田中翔太は得点をもたらしたことよりも、失点に絡んだことを悔しがった。(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 ビッグプレーで青森山田高を勢いづけたFWは、失点に絡んでしまったことを何よりも悔しがった。

 1-0で迎えた前半33分、青森山田のFW田中翔太(3年)は自陣でボールを大きく持ち出した静岡学園高CB阿部健人(3年)からインターセプト。「前半の立ち上がりから前へのプレスというのは決めていた。あの距離ならば間に合うなと思って、思い切りプレスをかけてそれで上手く奪えた」という田中は、そのままドリブルからMF武田英寿主将(3年)へスルーパスを通す。

 そして、武田がPAでGKに倒されてPKを獲得。これを武田が決めて2-0となった。田中は前半、このビッグプレーに加え、味方の縦パスをことごとく収めて攻撃の起点に。彼が前線で時間を作ったことで青森山田はチーム全体で押し上げることができ、人数を掛けた攻撃やセカンドボールの回収に繋げていた。

 だが、チームは前半アディショナルタイムに痛すぎる失点。FKから静岡学園の左SB西谷大世(3年)が強引に左足を振り抜いたシュートはヒットせず、ゴール前を横切る形となった。青森山田にとっては落ち着いてクリアしたかったところだが、田中の太ももに当たって小さくこぼれたボールを静岡学園CB中谷颯辰(3年)が右足ダイレクトでシュート。GK佐藤史騎(3年)が触れたものの弾くことができず、ボールはゴール左隅に吸い込まれた。

 田中はダイレクトでクリアできなかったことを悔しがる。この瞬間、目の前で青森山田の選手が頭でクリアしようとしたが、高くバウンドしたボールはその頭上を超えて田中の下へ。ジャンプした選手が一瞬死角となって落下点を掴めなかったか、田中は反応が遅れてボールを太ももに当ててしまう。「ダイレでクリアしようと思ったけれど、ボールが(味方と)被ってしまって、そのままももに……。失点シーンに絡んでしまった部分が一番悔しい」と唇を噛んだ。

 静岡学園が息を吹き返して迎えた後半、青森山田はボールを握られる中でチーム全体が受ける形になってしまい、田中も前線で時間を作ることができなくなった。その結果、青森山田は苦しい展開に。田中はシュートを撃てないまま、逆転負けの悔しさを味わう結果となった。

 田中は準決勝の帝京長岡高戦で非常に難しいヘッドをゴールに沈めるなど、インターハイ、プレミアリーグファイナルを含めて大舞台で活躍してきた。選手権優秀選手にも選出されたストライカーは青森山田を牽引したが、最後の選手権を笑顔で終えることはできず。「準決勝まではチームに貢献できたのがあったと思うんですけれども、最後の最後でチームのためにやり切れなかったという悔しい気持ちがあった。この悔しい気持ちを忘れずに、この高校でやり切れなかった自分の足りない部分、できない部分を大学4年間でできるようにして絶対にプロになりたい」と誓った。青森山田で学んだ徹底することを次のステージでより極め、必ず進化して4年後にプロ入りを果たす。

(取材・文 吉田太郎)
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「ボールを渡したらほぼゴール前まで行ってくれる」攻撃陣を支えた静岡学園MF藤田悠介

優秀選手入りした静岡学園高MF藤田悠介(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 静岡学園高(静岡)のボランチとして全試合に先発、優勝に大きく貢献したMF藤田悠介(3年)。「自分の持ち味である守備の切り替えの部分だったり、中盤でしっかりパスをつなぐ部分」は、選手権という舞台でも発揮できていたと実感している。

 準決勝までの5試合は無失点で来ていたが、青森山田戦で今大会初失点。リードを2点に広げられたが前半アディショナルタイムに1点を返して最初の45分を終えた。静岡学園はハーフタイムに藤田に代えてMF草柳祐介(3年)を投入。草柳を左SHに入れて、 MF小山尚紀(3年)を中央に。浅倉とMF井堀二昭(3年)がボランチにおさまった。「小山(尚紀)をトップ下に入れて、俺(浅倉廉)と井堀(二昭)で組み立ててっていう意図がありました」(浅倉)。

 悔しさを飲み込み藤田は気持ちを切り替えた。「絶対に勝つと思っていたので、ベンチにいてもずっと声を出していて、仲間を信じていました」。ピッチを退いても最後までともに戦った。

 強力な攻撃陣をすぐ後ろで支えた献身性が光る藤田だが、「ボールを渡したらほぼゴール前まで行ってくれるので、どちらかと言えば僕は楽でした」と事も無げにプレーしていたようだ。大会後に発表された大会優秀選手には、決勝で先発した中盤5選手と準決勝まで1トップに入っていたFW岩本悠輝(3年)が選出されている。「正直、狙っていた」と背番号18は笑みをこぼした。

「プロになりたくて、厳しい環境に身を置きたかった」という藤田は、地元・滋賀県を離れて静岡学園へ進学した。藤田をはじめ、左SHの小山、左SBの西谷大世(3年)、ベンチ入りしていたDF田中太晟(3年)は中学年代は同じセゾンFCでプレーしていた。「そのメンバーで優勝できて、すごくうれしいです」と感慨深く語った藤田は、卒業後に地元のびわこ成蹊スポーツ大学でサッカーを続ける。

(取材・文 奥山典幸)
●【特設】高校選手権2019

1年前は“裏選手権”で優勝。あれから372日、静岡学園が埼スタで舞う

1年前、“裏選手権”で優勝(写真上)した静岡学園高。今冬は選手権(写真下)で頂点に立った。(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 歓喜の24年ぶりV。埼玉スタジアム2○○2のピッチで川口修監督や齊藤興龍コーチ、コーチとしてベンチ入りした井田勝通前監督を胴上げした静岡学園高だが、1年前の年明け、彼らが戦っていたのは全国高校サッカー選手権ではなく、「もう一つの選手権」だった。

 静岡学園は18年11月の選手権静岡県予選決勝で浜松開誠館高に1-2で惜敗。選手権への出場権を獲得することができなかった。そのため、青森山田高(青森)や流通経済大柏高(千葉)が勝ち上がり、FW染野唯月(尚志高)のハットトリックに沸いた前回選手権の裏で、静岡学園は「NEWBALANCE CUP 2019 inTOKINOSUMIKA(通称:裏選手権、各地の選手権予選準優勝校や4強などの強豪48校が出場)」に出場。現2、3年生は、静岡県裾野市の時之栖スポーツセンターで他の選手権出場を逃した強豪校と試合を重ねていた。

 その“裏選手権”で静岡学園は優勝した。京都橘高(京都)や武南高(埼玉)を破って準決勝へ進出した静岡学園は、今回の選手権決勝でも躍動したMF浅倉廉(3年、以下全て現学年)とMF井堀二昭(3年)、MF小山尚紀(3年)のゴールで横浜創英高(神奈川)に3-0で快勝。決勝では日大藤沢高(神奈川)に先制点を許したものの、CB阿部健人(3年)中心にその後の攻撃を封じると、左SB中辻涼雅(3年)、FW奥田友惟(3年)、小山、MF関俊哉(3年)のゴールによって4-1で逆転優勝を果たしている。

 当時からMF松村優太(3年)や小山、浅倉が目立つ活躍を見せていた一方、当時ボランチだったMF西谷大世(3年)はその後左SBへ転向。今回の選手権決勝のヒーロー、CB中谷颯辰(3年)や右SB田邉秀斗(2年)、GK野知滉平(2年)は帯同していなかった。

 “裏選手権”の指揮を執った齊藤コーチは「『(相手から)何ともならない(止められない)』と言われるくらいになりたいですね」と語り、松村は「表(の選手権)ではベスト4に青森山田や流経(流通経済大柏)がいつもいる。自分らが(この優勝で)最初の流れを作れたらなと思います」とコメント。そして、小山は「獲れるタイトル全部獲って、静学のサッカーで勝ち残って行けたら思います」と宣言していた。

 当時は4年間選手権から遠ざかり、まだまだ自信も全国大会で静学らしい戦いをする力もあったとは言い難い。だが、静岡学園はそこから個々がテクニックとインテリジェンスを磨き、「攻め続ける」ことができる個、チームへと成長。“裏選手権”は不在だった選手たちも台頭し、激しい競争を勝ち抜いたメンバーで今冬の選手権の舞台に立った。

 今年の3年生は例年に比べてテクニックが秀でた学年ではないという。それでも、川口監督が「課題が出た時に改善しようと、その改善力がある。自分たちの頭で整理する力が今年はあったのかなと思います」と評した世代は、完璧なものではなかったかもしれないが、選手権決勝で静学スタイルのサッカーを披露。0-2になっても諦めずに攻め続け、大会史に残るような劇的な逆転優勝をしてのけた。

 100人足らずの観衆の前で“裏選手権”決勝を戦っていた19年1月6日から372日。埼玉スタジアム2○○2に集まった56,025人の大観衆の前で、今度は“本当の”選手権の頂点に上り詰めた。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

「ツメの甘さが最後に出た」青森山田DF箱崎、逆転V逸の悔しさは“次のステージ”で

青森山田高DF箱崎拓(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 2冠目をかけた全国決勝で2-0から逆転負け。試合後、青森山田高のロッカールームでは「ありがとう」「次は絶対にやってくれ」という熱い言葉が飛び交ったというが、選手たちの胸には大きな後悔が残っていた。DF箱崎拓(3年)は「悔しくて……。本当に勝ちたかった」と絞り出すように述べた。

 あの日のようにはいかなかった。2019年12月15日、青森山田は高校年代“真の日本一”を決める高円宮杯プレミアリーグファイナルで名古屋U-18と対戦。前半の早い時間帯に2点を奪うと、後半序盤に同点とされたものの、次の1点を取って3-2で勝利し、今季一つ目のタイトルを手にした。

 しかし2020年1月13日の高校選手権決勝・静岡学園戦、同じく2点をリードした状況から2-2までは同じような得点経過となったが、次の1点を奪えないまま終盤に失点。今度は2-3で敗れるという結末に終わった。1か月前のタイトルマッチでMVPに輝いた箱崎は「一年間通してやってきたことのツメの甘さが最後に出た」と敗因を語った。

 相手サイドアタッカーのカットインを許したことで生まれたスーパーゴールの2失点目、本来であれば武器としていたはずのセットプレーで粘り強い対応ができなかった3失点目、いずれにも大きな悔いが残っていた。

「2失点目は相手(のシュート)がうまかったのもあったけど、カットインしてくる相手に対して押し出すことができていなかった。3失点目のセットプレーは走らせないことが大前提でそこを走らせてしまったことがスキであり、ツメの甘さ。2失点目は自分が押し出せていればパスコースは切れていた。そこを今でも後悔している。3失点目は相手に走らせないところ。あとそれは声でも伝えられたと思うので、肝心なところで言えなかったことが実力不足だった」。

 試合後、敗れた選手たちは黒田剛監督から「準優勝ということで胸を張って青森に帰ろう」と前向きな言葉が伝えられたという。昨季の世代に比べ、全体的な力は落ちるとみられていた今季世代。箱崎は「監督もシーズンが始まるまではこの結果まで上り詰めることができると思っていなかったと思う」と指揮官の心情を想う。

 ただ、そうしたネガティブなレッテルを「最弱と言われることが悔しくて、自分たちでも絶対にできるという気持ちを持って一年間戦ってきた」と奮起に変えて戦ってきた。それだけに、最後に「少しは褒めてくれた」指揮官に日本一をもたらすことができなかったと思うと、「だからこそ本当に最後、勝ちたかった」という思いが強まった。

 何よりこの一年間、箱崎自身も監督の信頼を受けながら成長してきたという手応えがある。

「試合に出られるというのが分かったのもシーズンが始まる直前で、どうにかスタメンに定着していきたいという気持ちでやってきた。どうしたらスタメンになれるのかを考えたら、後方で常に声を出し続けて、自分のストロングであるヘディングを負けないことを磨き続けることだった。コーチングでもヘディングでも監督が直接的にそう言ってくれたおかげで成長できた」。

 だからこそ「この悔しい気持ちを次のステージでぶつけられたら」となんとか前を向く。卒業後は黒田監督の母校でもある大阪体育大に進学予定。「大学での日本一という形でもう一度取り返したい。高校選手権は一生に一度しかないけど、将来的にプロになってこの負けが成長の糧になったという負けにしたい」。多くのものをかけてきたサッカー人生、“よくがんばった準優勝”のまま終わるつもりはない。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

静岡学園の“理系”ジョーカーMF草柳が同点弾アシスト「大学でも両立できたら」

静岡学園高MF草柳祐介(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 絶対王者の守備に穴を開けたのは“文武両道”を体現するジョーカーだった。静岡学園高MF草柳祐介(3年)は卒業後、早稲田大創造理工学部に進学予定の理系プレーヤー。高校最後の一戦では後半スタート時から投入されると、FW加納大(2年)へのパスで同点ゴールを導いた。

「サッカーの大会とかで海外に行くことが多くて、海外の街並みがいいなと思い、建築をやりたいなと」。学問へのモチベーションも語る草柳は、静岡学園が誇る攻撃のスイッチ。中学時代にフットサルでも鍛えた技術を活かし、大会初ゴールを決めた1回戦・岡山学芸館戦を皮切りに準決勝までの3試合で後半途中から投入されてきた。

 決勝の青森山田戦では前半に2点を奪われ、劣勢を強いられた静岡学園。「今までの試合はうまく立ち上がりに入れたけど、ベンチから見ていてもいい雰囲気ではなかった。パスもあまり繋がらないので山田のペースに持ち込まれている感じがあった」。終了間際になんとか1点を返したものの、出番は普段より早いハーフタイムに訪れた。

「途中出場とか先発とか関係なく、出た時に自分のプレーをすることを心がけていた」。冷静に自らの立場と向き合っていた背番号19は「自分はパスが得意なので、静学の流れに持っていけるようにという指示」でフィールドイン。「1点取ってくれていたのでもう一回行けるぞという気持ちはみんなあった。ここから静学のサッカーをやろう」と前傾ムードで試合に臨んだ。

 すると後半16分、自らが起点となって試合を動かした。相手のマークを引き連れながら左サイドを駆け上がった草柳は「前まで運んで行って、後ろに返そうと思ったけど、相手の動きが見えた」とカットインを選択。相手DFを振り切って斜めのパスを加納の足元に通すと、相手を背負ったまま左足を振り切った背番号9が同点ゴールを決めた。

「ハル(加納)は結構、相手を背負える。自分がワンツーで(受けて)抜け出そうと思ったたけど、ハルがうまくターンしてゴールを決めてくれて良かった」。そう語った草柳に対し、加納もプレービジョンを共有していた様子。「ヤナギさんが中に入ってくるので使う手はあったけど、自分しかないと思った」と振り返った。

 このゴールでさらに勢いに乗った静岡学園は後半40分に勝ち越し、3-2で勝利。「圧倒されて、すごいなあと感じた」(草柳)という史上最多5万6025人の大観衆の前で日本一となった。殊勲の同点アシストを記録した草柳は「中学の時にチームで全国大会を見に来ることが多くて、絶対に3年後ここでやると決めて静岡にきた。それができてすごくうれしい」と感慨を語った。

「県大会ではノーゴールノーアシストで結果を出せなかった。この大舞台でゴールは取れなかったけど、アシストという結果を残せたのはすごく自分にとって自信になる」。最後の一戦を最高の形で終えた草柳は、建築士を目指しながら早稲田大ア式蹴球部に入部予定。新たな挑戦に「今まで勉強とサッカーを両立してこれたので、大学でもチャレンジ精神を持って両立できたらいい」と胸を躍らせている。

(取材・文 竹内達也)
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痛恨の逆転負けで連覇逸…青森山田MF武田英寿「サッカー人生で一番悔しい」

青森山田の主将、武田英寿は涙の準V(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

「これまでのサッカー人生で一番悔しい負け」。2-0からひっくり返されて優勝を逃したファイナルに、青森山田高(青森)のMF武田英寿(3年)は涙を流した。

 MF古宿理久(3年)のFKからDF藤原優大(2年)が頭で合わせ、最初のシュートで幸先よく先制。さらに、カウンターからFW田中翔太(3年)のスルーパスに抜け出した武田が、GK野知滉平(2年)に倒される。このPKを背番号10が自ら沈めて、リードは2点に広がった。青森山田が2-0でリード。今大会の全4試合と同じ展開だった。

 しかし、静岡学園戦は自分たちで敗因を招いてしまったと青森山田の主将は見ている。「2点入ってから、自分たちで守りに入ってしまって、前で守備をすることができずっていうのがあった。2点入って少し気がゆるんでしまった」。準々決勝・昌平戦は3点目を奪って3-2、準決勝・帝京長岡戦は1点差を守り切り2-1。ところが、決勝では今大会で初めて2-2に追いつかれた。「いつもと変わることなくやろうという話はした」。武田はピッチで確認し合ったが、流れを引き戻すことはできず敗戦を迎えた。

 2位に勝ち点9差をつけて優勝したプレミアリーグEASTでも、大宮アルディージャU18に2-0から2-2に追いつかれ、ジュビロ磐田U-18には2点リードをひっくり返されて2-3で敗れたことがあった。「『2-0からだぞ』っていうコーチングは全体で出してやっていたんですけど……」。警戒していたプレミアリーグチャンピオンシップ王者をもってしても、静岡学園の攻勢を止めることができなかった。

 2年次からレギュラーを務めていた武田にとっては、出場10戦目にして初めての選手権黒星となった。選手権で9勝1敗という驚異的な勝率を誇るが、その1敗はあまりに重かった。「自分たちがやらなきゃいけないことをやらなくなってしまった。自分たち次第で結果は変わったんじゃないか」。時に声を震わせて、主将は懸命に質問に答えた。

 宮城県仙台市出身の武田は、ベガルタ仙台ジュニアから青森山田中学へ。支えてくれた両親への感謝も語った。「青森山田に行きたいって言ったわがままを、快く受け入れて送り出してくれた。常に自分のコンディションだったりチームの状況を連絡して確認してくれて。苦しいときも支えてもらって、感謝しています」。

 卒業後は浦和レッズで37番を背負ってプレーする武田は、「ずっと勝ち続けられるように努力していきたいと思います」と、この敗戦を成長の糧にすることを誓っていた。

(取材・文 奥山典幸)
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「2点獲られたら3点獲る」。諦めずに攻めること、DFを『倒しに行く』ことを続けた静岡学園が“静学らしく”逆転V!

攻め続けて日本一を勝ち取った静岡学園高。(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 攻め続けて勝ち取った日本一だ。静岡学園高は、前半33分までに2点のビハインド。テクニカルな選手たちがボールを保持しながら攻めることを特長とする静岡学園だが、この日は特に中盤の距離感が悪く、ボールを動かすことができていなかった。トップ下のMF浅倉廉(3年)が幾度か単騎で仕掛けてDF1人を剥がしていたが、サポートすべき選手が不在。川口修監督が「ボールを受けることを怖がってしまっていた」と指摘したように、青森山田高の強烈なプレッシャーから逃げるようなサッカーになってしまっていた。

 静岡学園が決勝で表現したかったのは二人、三人がかりで相手のDFを『倒す』ことだ。川口監督は11日の準決勝終了後、「(青森山田相手に)ドリブルで突っ込んでいくだけだと、必ず引っ掛けられるので。そこにもう一人、もう二人絡みながら相手のDFを『倒しに行く』。一人だけで突破しようとしても、(青森山田のDFは)突破できない。そこに二人、三人と同じ『倒しに行く』意志の強い選手が連動することで崩しに行けるのかなと思います」と語っていた。

 前半は浅倉が一人でこじ開けに行っていたが、極端な言い方をすれば他の選手が“倒しに行けていなかった”。距離感の悪さは前半を通して改善できないままだった。その中で、迎えた前半終了間際にFK後の混戦からCB中谷颯辰(3年)が決めて1点差。静岡学園は、ここで試合を落ち着かせることもできたはずだが、選択したのはよりボールを握ること、攻撃に人数をかけて相手のDFを『倒しに行く』ことだった。

 静岡学園はハーフタイムに守備能力の高いボランチ・藤田悠介(3年)を左サイドアタッカーのMF草柳祐介(3年)へスイッチ。左SHのMF小山尚紀(3年)をトップ下、トップ下の浅倉をボランチへ移す。藤田は相手のカウンター攻撃やセカンドボールの攻防で欠かせない存在だったが、コーチ陣はより攻めるためにテクニカルな選手を中盤に並べることを優先した。カウンターを受けることや失点のリスクは承知の上でボールを繋いでDFを倒しに行き、ゴールをこじ開け、タイトルへ。“静学らしく”攻め合いに出た。
 
 後半、浅倉と井堀が積極的にボールに絡み、球離れ速く動かすことで攻撃にリズムが出た。2対1でDFを剥がすシーンも。距離感の良い攻撃は素早い奪い返しも生み出し、静岡学園がボールを保持する時間が増えた。

 揺さぶりをかける中で、右の快足SH松村優太(3年/鹿島内定)が個でサイドをこじ開けるなど攻め続けた静岡学園は26分、左サイドでのポゼッションから草柳がドリブルで中央へ切れ込む。そして、パスを受けたFW加納大(2年)が反転からの左足シュートをゴール右隅に突き刺して同点に追いつく。

 その後は互いにセットプレーなどからゴールへ迫る展開。そして、次の1点を奪ったのは静岡学園だった。後半40分、井堀の左FKをファーサイドのCB中谷颯辰(3年)が頭で合わせて劇的な決勝点を奪う。青森山田が徹底してきたものが乱れ、静岡学園の得点に繋がったことも確か。それでも、「2点獲られたら3点獲る」(川口監督)の姿勢で攻め続けたことで引き寄せた静岡学園の逆転優勝だった。

 静岡学園は準決勝の矢板中央高戦で相手の堅守の前に苦戦。後半アディショナルタイムまで23本ものシュートを放ちながらも得点を奪うことができなかった。だが、最後の1分、最後の10秒まで諦めずに攻め続けて松村がPKを獲得。このPKを松村が決めて1-0で勝利している。

 この1点について、川口監督は選手たちを褒めたという。諦めることなく、最後まで攻め続けて奪った1点だったからだ。今大会、静岡学園は準決勝まで無失点で終えているが、これも攻め続けるという姿勢が生んだものだと指揮官は考えている。決勝のパフォーマンスについては満足していないようだが、それでも「攻撃の部分でチャンスは少なかったけれども、しっかり決めたのが勝因」。そして、「相手が(絶対王者の)青森山田さん。勝利の仕方も劇的だった。そして、自分(川口監督自身)は初体験だった。心の底から嬉しかったです」と喜んだ。

 名将・井田勝通前監督の下、選手権初出場で準優勝した76年度大会当時から脈々と受け継がれてきたテクニック重視のスタイルと「攻めて勝つ」姿勢。その積み重ねてきたものが全国決勝の舞台で発揮された。昨年度の前回大会はプレッシングスタイルのチームなど守備面で強みを持つチームが東京や千葉、静岡、大阪の予選を制し、全国大会でも上位に入るなどトレンドとなっていたが、今大会は静岡学園や帝京長岡高、昌平高とテクニカルな崩しに重きを置くチームの活躍が印象的な大会に。そして、静岡学園は決勝で鉄壁の守りを誇る王者・青森山田から3ゴールを奪って見せた。

 決勝点の中谷は「『今日勝ったら日本のサッカー観が変えられる』と(川口)監督も言っていた。そういう勝負で勝ち切れたことは静学、静岡、日本にとって非常にいい効果があるかなと思います」。過去には今回よりもテクニックを身に着けていながらも、カウンターやセットプレーに沈められた世代もある。それでもスタイルを変えず、この日も失点で動じることなく攻め続けた静岡学園が、“静学らしく”日本一を勝ち取った。

(取材・文 吉田太郎)
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無心のひと振りが追撃弾演出、静学の左SB西谷「いい形でこぼれてくれた」

静岡学園のDF西谷大世(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 無心のひと振りが貴重な追撃弾につながった。2点を追う静岡学園高(静岡)は前半アディショナルタイムにPA右手前の位置でFKを獲得。MF井堀二昭(3年)が右足で蹴り込むと、ファーサイドで競り合ったこぼれ球がDF西谷大世(3年)の前にこぼれてきた。

 左足のシュートはミートし切れなかったが、相手のクリアミスを誘い、DF中谷颯辰(3年)が右足でゴール左隅にねじ込んだ。「シュートを狙ったら、いい形でこぼれてくれた」。そう照れ笑いを浮かべた西谷は「点を取られても焦らず、みんなで静学のサッカーを貫こうと話していた。それがこういう結果につながった」と胸を張る。

 1点差に追い上げてハーフタイムを迎えると、選手たちはロッカールームで口々に「青森山田の選手にビビッてボールを受けれていない」と活発に意見を交わし、戦う姿勢や球際の部分で修正を図った。

「後半は前からガツガツ行って、1対1も強く行って、怖がらずにプレーすることを心がけた」。そう振り返る左サイドバックは後半の逆転劇で全国の頂点に立ち、「小さいころからあこがれていた舞台。優勝できてうれしい」と喜びを表現した。

 静岡学園にとって24年ぶり2回目の優勝は単独では悲願の初優勝。滋賀県出身で、卒業後は京都橘大に進学する西谷は「静学はこれまで単独優勝がなかった。それを初めて達成できてうれしい」と白い歯をこぼした。

(取材・文 西山紘平)

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「自信を持って言えない」大会得点王…静岡学園FW岩本悠輝は後輩に優勝の思い託す

大会得点王の静岡学園高FW岩本悠輝(3年)(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 準決勝までの5試合で5ゴール。得点ランキングトップタイの静岡学園高FW岩本悠輝(3年)の名前は、スターティングメンバーの中になかった。岩本は決勝で1トップに入ったFW加納大(2年)に「頼んだぞ」と思いを託したーー。

 試合後、祝福の言葉をかけると「ありがとうございます!」と笑顔を見せた岩本だが、「嬉しいは嬉しいですけど、悔しい部分もあります」と正直な思いを吐露した。青森山田のセンターバックとの対戦を心待ちにしていたが叶わず、「一度はやってみたかったですね」と寂しげな笑顔を見せた。

 県予選決勝では1トップは加納が務めていた。「先発で出るか出ないかわからなかった」立場だったが、大会前に加納が故障を抱え岩本に出番がまわってきた。すると、1回戦、2回戦で連続ゴールを奪い、準々決勝ではハットトリックを完成。選手権で得点を積み重ねてきた。自身で一番印象に残っているゴールについては「1回戦です。あの試合で何もしなかったら2回戦以降で先発から外れていた可能性が高かった」。危機感を募らせながらも結果を出し続けた。

 前線でボールをおさめる能力を期待されて決勝の先発に起用された加納。DF藤原優大(2年)を背負いながらも反転して左足を振り抜き、試合を降り出しに戻すゴールを決めた。加納もまた決意を持って決勝に臨んでいた。「外から見ていて、(決勝まで)連れてきてもらった部分が大きかった。今日は先発起用させてもらって、感謝を返すためには結果しかないと覚悟を決めて試合に出た。形で実現できてよかった」(加納)。岩本も「すごかったですね」と後輩のゴールを手放しで称賛していた。

 静岡学園の24年ぶりの優勝で大会は幕を閉じ、得点王の称号は岩本と四日市中央工高MF森夢真(3年)が分け合う形となった。「めちゃめちゃ複雑です」。静岡学園の背番号12は素直に喜べなかった。「準決勝、決勝で(点を)取ってないので。そういうところで取れる選手じゃないと、自分は自信を持って“得点王”と言えない」。“優勝”、“得点王”、“大会優秀選手”……ストライカーとして最高の称号を手にしながらも、やりきれない気持ちは隠せなかった。

 卒業後は中京大でプロを目指す。「全国となるとセンターバックが大きいので、(自分も)体を大きくしておさめられるようにしたいです。裏への抜け出しだけだと通用しなくなる部分もあるので。引かれた相手だと自分は活きない。そういうところで活きるようなプレーをしていきたいです」。この舞台で得た課題は、次のステージで活かす。

(取材・文 奥山典幸)
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「思った以上に自分を出せた」「めっちゃ成長できた」、静岡学園の中盤で躍動した浅倉廉

優秀選手にも選出された静岡学園高MF浅倉廉(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 静岡学園高イレブンの中で最も小柄な168cmだが、MF浅倉廉(3年)は大きな存在感を放っていた。

 前半は青森山田に数的不利で囲まれる場面が何度も見られた。「最初はプレッシャーが思った以上に早くてミスもあったんですけど、そこはビビったらダメだなと思ってむずかしいことにチャレンジしてみました」。背番号8は高い位置をとって、ドリブル、パスで打開しようとしていたが、「自分が高い位置で受けよう、受けようとしすぎたのがあった」。指揮官からも距離感の悪さを指摘されていた。「もっとボランチに近づいて受けてあげて、ボールさわって自分がリズムをつくってと指示があったので、そこを改善できたのがよかったかなと思います」。

 90分を通して、静岡学園が使った交代枠はひとつのみ。 ハーフタイムにボランチのMF藤田悠介(3年)に代えてMF草柳祐介(3年)を投入した。草柳を左SHに入れて、 MF小山尚紀(3年)を中央にスライド。浅倉とMF井堀二昭(3年)がボランチにおさまった。「小山をトップ下に入れて、俺と井堀で組み立ててっていう意図がありました」。よりボールに絡んで静岡学園の攻撃を活性化させた。「しっかり後ろからつないで、つなぐことによって相手に隙が生まれて、そこから攻めるシーンが増えたと思う」。

 前半11分に今大会初失点を喫した静岡学園は、33分にも追加点を献上してしまう。「失点しても焦らず、蹴らずにやっていれば自分たちにもチャンスはくると思っていた。そういう意味では1試合通して自分たちのスタイルができていた」(浅倉)。パスをつなぐことで青森山田の体力を消耗させつつ、攻撃の糸口を探ると、前半アディショナルタイムに1点を返し、後半16分に同点、終了5分前には逆転弾を決めた。

 静岡学園と青森山田という組み合わせの決勝、前日のうちにチケットは完売した。来場者の5万6025人は選手権決勝戦観客数で過去最高記録を達成している。「上まで入っていると思わなくて、見た時は『最高だな』と思いました」。その大観衆の中での優勝は格別だった。

 決勝までの全試合で先発し、「思った以上に自分を出せた」という浅倉。「6試合だけだったんですけど、自分の中でめっちゃ成長できたなという感覚があります」と全国の舞台で得たものは大きかった。「ドリブルのところでチャレンジするという精神的な面だったり、中盤の選手なのでまわりを見ることの大事さも自分がミスをしてから学んだり。そういったところが成長できました」。卒業後は拓殖大学に活躍の場を移し、研鑽を積む。

(取材・文 奥山典幸)
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徹底マークも貫いた献身…静岡学園MF松村優太がタイトル手に鹿島へ「開幕からスタメンを」

静岡学園高MF松村優太(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 前評判どおりの突破力、鋭く精度の高いクロス、絶え間ないハードワーク、勝負どころで決め切る度胸——。さまざまな顔を見せた注目アタッカーの冬は最高の形で終わった。静岡学園高MF松村優太(3年)は「みんなで目指して来たところにたどり着けた。こういう形で終われて本当に良かった」と日本一の味を語った。

 大会前の時点では「やるからには自分の大会にするくらいの気持ちでいた」という。しかし、あらゆる試合で徹底マークを受けたことで「苦しんだこともあった」。それでも、準決勝の決勝ゴールで「チームを助けることができた」。最後は「自分だけでなし得たものではないので、チーム全体の大会だったと言える」と仲間と掴んだ日本一に笑顔で胸を張った。

 決勝までの6試合で残した結果は1ゴール2アシスト。合計19得点を挙げてきた静岡学園において、松村がゴールに直接絡んだ回数はそれほど多くはない。しかし、準決勝の拮抗戦を自身のドリブル突破と冷静なPKゴールで勝利に導いた活躍をはじめ、今大会で背番号10が見せてきたパフォーマンスは決して軽視できるものではなかった。

 ひとたび右サイドでボールを持てば、相手選手が2人、3人と次々に集まり、ファウル覚悟で止めにくる。そんなシーンはどの試合でも幾度となく見られた。大会中には川口修監督をはじめ、多くの味方選手から「マークを集めてくれるので他の選手が空く」という声が聞かれた。それは「自分が自分が…」というかつての課題を乗り越えた姿だった。

「自分が自分が……ってなってしまうとチームがうまくいかないので、できるだけ引きつけることを考えている。その中でスキがあれば自分でも行きたいという考えでプレーしていた」。準決勝で奪ったPKゴールも、3回戦と準々決勝でそれぞれ記録したアシストも、少ないチャンスの中でスキを突き、自身の武器である突破やクロスを披露したものだ。

 決勝の青森山田高戦では、周囲の選手がボールを奪われた際に50m5.8秒の快足を活かしてプレスバックする献身性も目立った。「マークが来ることは分かっていたし、それはこの大会を通してずっと。守備でも役割を果たせばチャンスが来ると思っていたし、まっとうできて良かった」。警戒を受けながらもさまざまな形でチームに貢献できるところを見せた。

 日本一が決まった直後には、いち早くスタンドで応援してくれた部員らのもとに向かい、歓喜を分かち合う姿もあった。「一緒に切磋琢磨してきてメンバーに入れなかった人もいるし、そんな悔しい思いをしてもここまで来て応援してくれる。一般生徒も、他の部活の人たちもいる。そういった人の思いもあって結果が出たので、感謝を伝えに行こうと思った」。仲間想いな一面も垣間見せた。

 そんな行動の裏にはどっぷりと浸かってきた“静学スタイル”への誇りもあった。「日本サッカー界に革命的だと思うし、異質なサッカーをしている。こういうチームが増えていけば面白いサッカーができる」。そんな名門校にもたらした24年ぶりの日本一であり、初の単独優勝。「自分たちが名前を残すことができて光栄なことだと思う」と感慨を語った。

 2020年はそんな濃密な3年間で積み重ねたさまざまな経験を胸に、Jリーグの常勝軍団鹿島アントラーズに加わる。「プロを目指す子供たちに憧れを持ってもらえるような選手になりたい」。大きな野望を語った18歳は「開幕からスタメンを狙う。去年は無冠だったので、自分がタイトルに貢献できれば」と2年連続の王座獲得を高らかに宣言した。

(取材・文 竹内達也)
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[MOM3149]静岡学園DF中谷颯辰(3年)_絶対王者沈める2発!!“静学のマスチェラーノ”が王国復権導く

2ゴールを決めたDF中谷颯辰(3年)がMOM(写真協力=高校サッカー年鑑)
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 56,025人の大観衆が見守る中、令和最初の選手権決勝でヒーローの座に躍り出た。静岡学園高(静岡)のDF中谷颯辰(3年)が絶対王者を沈める2発。今大会初ゴールで反撃の狼煙を上げると、劇的な決勝ヘッドを叩き込み、サッカー王国・静岡に24年ぶりとなる選手権タイトルをもたらした。

 青森山田に2点を先行されたが、ドラマティックな逆転劇を演じた。「失点しても自分たちはやれるという自信があった。チーム全体として焦っている選手はいなかった」。まずは前半アディショナルタイム2分。右後方からMF井堀二昭(3年)が蹴り込んだFKの流れから、エリア内で相手のクリアボールに反応。「ゴールを取る気で(中に)入った」という中谷は迷わず右足を振り抜き、ゴール左隅に強烈ボレーを突き刺した。

 選手権決勝で沈めた今大会初ゴール。静学らしさが蘇った後半は2-2に追いつくと、互いに次の一点を目指す中で迎えた同40分だった。再びFKのチャンスに井堀がゴール方向に蹴り入れると、ファーサイドの中谷がドンピシャヘッドで捉え、劇的な逆転ゴール。「はじめはニアに行こうとした。空いてるなと思って、体が自然とファーに動いた」というゴールへの嗅覚が導いた決勝ヘッドだった。

 努力の末に習得した武器を大一番で炸裂させた。高1の夏から意識的にヘディングの練習に取り組んできた。日頃からマークの外し方、インパクトのタイミングを意識し、今年度はセットプレーからのヘディングに自信を持って勝負してきた。川口修監督は「ムードメーカーで得点感覚がある。ヘディングが強く、技術が高い選手」とヒーローを評価した。

 静学のセンターバックらしく、ビルドアップでも持ち味を発揮した。最終ラインからドリブルで持ち上がり、相手を剥がして中盤ラインを突破するなど、攻撃参加でも観衆を沸かせた。逆転後は守備を固め、そのまま3-2で逃げ切りに成功。体を投げ出したブロックで窮地を救うなど、本職のディフェンスでも優れたパフォーマンスを示した。

 決勝前には「面白いサッカーで色々な人を魅了しながら勝てればベスト」と話していたが、それを体現してつかんだ優勝。「前半は固かった部分があるんですが、後半自分たちのリズムを取り戻せた。観客の人たちも沸いてくれた。内容もあって、勝ち切れてよかった」。DFハビエル・マスチェラーノを目標とする選手権決勝のヒーローは卒業後、早稲田大に進学する。静学で磨いた技術とプライドを持って、次のステージに羽ばたく。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

「追いかける展開は楽しかった」静学の2年生SB田邉、全国初失点にも動じず

静岡学園の2年生サイドバック、DF田邉秀斗(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 本職はセンターバックの2年生DFが右サイドバックとして全国制覇に貢献した。静岡学園高(静岡)のDF田邉秀斗(2年)は「まだ(優勝の)実感はない」と苦笑いしながらも、「3年生が勝った瞬間、泣いていて、自分も泣いてしまった。1年間という短い時間だったけど、一緒にやれて良かった」と感慨深げに話した。

 20~30mの初速ではMF松村優太(3年、鹿島内定)にも負けないスピードを持ち、身体能力にも秀でたDFはメンタリティーの面でも2年生らしからぬ頼もしさがある。5試合連続の完封勝利で決勝まで勝ち上がってきたチームは前半11分にFKから先制を許し、同33分にはPKを決められた。今大会初失点から2点を追う展開となる中、田邉は「最初に失点して、追いかける展開は楽しかった」と、逆境にもプラス思考を崩さなかった。

 総体の県予選決勝では清水桜が丘に0-2から追いつきながら延長戦の末、2-3で敗れ、全国への切符を逃していた。「最後の最後でひっくり返せたのは、今年1年で力を付けたからなのかなと思う」。24年ぶり2回目の優勝、単独では悲願の初優勝。最終学年となる来年度は本職のセンターバックに戻ることが予想される次代のDFリーダーは、次なる目標に向かって、すぐにリスターを切る。

(取材・文 西山紘平)

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初先発の2年生エースが左足ズドン! 静岡学園FW加納大「一発やってやろうと」

静岡学園高FW加納大(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 遅れてきたエースの大仕事だった。静岡学園高FW加納大(2年)は準決勝までの全5試合、左膝負傷の影響により出場時間は合計わずか42分。それでも決勝の大舞台で初めて先発に抜擢されると、貴重な同点ゴールを突き刺した。「自分たちがやってきたことが間違いないと結果で表せた」。優勝決定直後にはその目には光るものが見えた。

 1-2で迎えた後半16分、それまでなかなか輝けていなかった背番号9がついに目覚めた。左サイドを攻め上がったMF草柳祐介(3年)と目が合うと、斜めのパスを左足でトラップ。「ヤナギさんが中に入ってくるので使う手はあったけど、自分しかないと思った」。そのまま相手を背負いながら前を向き、豪快な左足シュートでファーサイドネットに突き刺した。

「斜めの角度から打つことは自主練でもやっていた。日頃の練習がゴールにつながった」。そうした積み重ねの末に出た一撃は貴重な同点ゴール。「僕のゴールでチームがイケイケムードになったので一仕事できた」。勢いに乗ったチームは後半40分に勝ち越しゴールを挙げ、3-2で勝利。2点ビハインドをひっくり返し、24年ぶりの日本一に辿り着いた。

 普段は全体ミーティングで伝えられる先発メンバーだが、この日は川口修監督が加納だけを呼び出し伝えた。「目がギラギラしていて、俺を使ってくれというものが見えた」(川口監督)。そんな期待を背負いながらもゴールに絡めず、同点弾の直前には交代の準備が進行中。「交代されそうだったのは知らなかった」(加納)。ギリギリのところで果たした大仕事だった。

 今大会、加納は左膝に抱えていた炎症を落ち着かせるため、開幕節からベンチで試合を眺めることが続いていた。出場したのは3回戦・今治東戦の19分間と準決勝・矢板中央戦の23分間のみ。背番号9は「勝ち上がっていってうれしい気持ちはあったけど、外から見ていることが多くて悔しい気持ちだった」と率直な思いも明かす。

 しかし、そんな鬱憤も晴らすゴールとなった。「悔しい気持ちが大きくて、自分が出たら一発やってやろうという気持ちでずっと準備してきた。準備を怠らずにやってきた成果がこうやって結果で表れてうれしい」。また夢舞台での活躍は「自分の名前を売り出せるし、キャリアアップにつなげる」という野望を体現するものとなった。

 さらに加納は、先輩の思いも背負って戦っていた。これまで5試合に先発し、大会得点王の5ゴールを挙げてきたFW岩本悠輝(3年)はこの日、エースに押し出される形で先発落ち。高校生活のラストマッチをベンチで過ごした。それでも岩本は試合前、悔しさを秘めつつ加納に「頼んだぞ」と声をかけ、日本一の夢を託していた。

「ここまで連れてきてもらった。今日は自分が先発起用させてもらって、感謝を返すためには結果しかないと覚悟を決めて試合に出た。それを形で実現できてよかった」(加納)。岩本からは試合後に「よくやってくれた」と伝えられたといい、加納は「今まで2年間お世話になってきた先輩なので感動したし、2人でうれしかった」と笑顔で振り返った。

 そんな加納は来季、絶対的なエースとして全国の舞台に戻ってくるつもりだ。「こうやって自分の名前を売れたことで背負うものは増えてくるし、厳しいこともあると思う。そういうのを跳ね除けてこその静学だと思うので、自分が引っ張っていくつもりで全国に出て2連覇を目指す。そして自分は今大会で1点しか取っていなくて悔しい気持ちもあるので来年は得点王を目指したい」。力強い宣言とともに新シーズンへ向かう。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

PK献上も下向かず、静学の2年生守護神・野知「もう一度この景色を」

静岡学園の2年生守護神、GK野知滉平(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 決して下を向くことはなかった。5試合連続無失点で決勝まで勝ち上がってきた静岡学園高(静岡)だが、決勝では前半11分にFKから先制を許し、今大会初失点。さらに同32分にはPA内に抜け出してきたMF武田英寿(3年)をGK野知滉平(2年)が倒してしまい、PKを献上した。

 これを武田に決められ、前半33分で0-2。2点ビハインドを負う中、静岡学園の2年生守護神は「自分の中でそういう(飛び出す)判断をして、自分でプレーした。取り返しはつかないし、どうしようもない。まずPKを止めるぞという気持ちでいたし、決められたけど、引きずることなく、切り替えてプレーできた」と、しっかりと顔を上げ、最後尾から声でチームを鼓舞し続けた。

 静岡県出身で、清水エスパルスジュニアユースから静岡学園に進学してきた野知は「サッカー王国復活と言われるのは、静岡の人間としてとてもうれしい」と会心の笑みを見せる。川口修監督からは「人生で一回あるかどうかの大勝負だ。すべてを懸けろ」とゲキを飛ばされていたという。その言葉どおり、24年ぶり2回目の優勝、悲願の単独優勝を飾ったが、野知ら下級生からすれば、これを「人生で一回」にするつもりはない。

「今回こういう結果を残して、来年は期待も高まってくると思うけど、その期待に応えられるように、この舞台を目指して頑張りたい」。この日のスタメンに2年生は野知のほか、DF田邉秀斗(2年)、FW加納大(2年)の3人。ベンチにも2人入っていた。

「全国に出るだけでなく、もう一度この景色を見たい。試合が終わったあと、2年生で集まって『また優勝しよう』と話した」。前回王者として臨む来年度。連覇を果たすことで、サッカー王国復活をより一層とどろかせるつもりだ。

(取材・文 西山紘平)

●【特設】高校選手権2019

FKで2発演出の静岡学園MF井堀、優勝弾アシストに「ボールも完璧だった」

FKで2得点を演出した静岡学園のMF井堀二昭(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 セットプレーの借りはセットプレーで返した。前半11分にFKから先制を許した静岡学園高(静岡)は同33分にPKで2失点目。前回王者相手に2点を追う展開となる中、前半アディショナルタイムの追撃ゴールが後半の逆転劇につながった。

 前半アディショナルタイム2分、PA右手前からMF井堀二昭(3年)が右足でファーサイドに蹴り込むと、セカンドボールをDF西谷大世(3年)が左足でシュート。これが相手のクリアミスを誘い、DF中谷颯辰(3年)が右足でゴール左隅にねじ込んだ。

「前半に1点返せたのは良かった」と振り返る井堀は2-2と追いついたあとの後半40分、PA左からのFKのチャンスにファーサイドへピンポイントクロス。逆サイドから飛び込んだ中谷がこの日2点目となる決勝ヘッドを叩き込み、静学に24年ぶり2回目の栄冠をもたらした。

「自分のキックから中谷が決勝点を決めてくれて、ボールも完璧だった。触るだけのボールを蹴ることができた」。1回戦の岡山学芸館戦(○6-0)では鮮やかな直接FKを決め、、準々決勝の徳島市立戦(○4-0)ではCKとFKで2アシストを記録。みたび自分のキックで勝利を呼び込んだ井堀は「相手もセットプレーでトリックプレーをやってきたけど、こっちも何回かやって、その中で自分がFKを蹴って、決められたのは良かった」と胸を張った。

「キックの調子は良かった。日ごろから練習しているキックがゴールにつながって良かった」。岡山県出身で、卒業後は東海学園大に進学するプレースキッカーは「サッカー王国復活と言われるけど、自分たちの代で優勝できて、静学の歴史に名を連ねられたことはうれしい」と柔和な笑みを浮かべた。

(取材・文 西山紘平)

●【特設】高校選手権2019

2日後に渡米予定の静学主将が最高の“置き土産” DF阿部健人「向こうでMLSを目指す」

優勝旗を掲げる静岡学園のDF阿部健人主将(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 サッカー王国復活への足がかりとなる大きな一歩を記した。24年ぶり2回目の優勝、単独では悲願の初優勝を飾った静岡学園高(静岡)のDF阿部健人主将(3年)は「ずっと日本一を目指してきたけど、半年前までは県止まりのチームだった。(優勝の)実感はないけど、日にちが経てば出てくるのかな」とはにかんだ。

 DFリーダーとして最終ラインを束ね、キャプテンとしてチームを引っ張ってきた。「キャプテンを務めさせてもらって、責任感もあったけど、仲間にも恵まれた」。そうチームメイトに感謝すると、「個人的にはキャプテンの意識はなくて、サッカーを始めた当初から高校サッカー(選手権)に出て、活躍したいと思っていた。自分を信じてやってきて良かった」と感慨に浸った。

 名門・静岡学園のキャプテンの次なるステージはアメリカになる。9歳までアメリカで育った帰国子女は英語も使いこなすバイリンガル。「生まれもあっちなので、海外の環境が自分に合っているのかな」と、卒業後はアメリカの大学に留学する意思を固めている。2日後の15日には早くも渡米予定で、数週間滞在し、現地の大学のトライアウトを受ける予定になっている。

「(選手権決勝後の)15日に飛び立つ予定にしておいて良かった」と冗談交じりに笑った阿部だが、日本を離れる前に「チームのために(タイトルという結果を)残したかった」と、だれよりも強い決意で高校最後の大会に臨んでいた。有言実行の“置き土産”。「向こうでプロ、MLS(メジャーリーグサッカー)を目指して、同時に大学でも自分の知識の幅を広げていけたら」。新たな夢を胸に秘め、静学の優勝キャプテンは日本を発つ。

(取材・文 西山紘平)

●【特設】高校選手権2019

第98回選手権決勝は観客数5万6025人で記録更新! さらに通算来場者数も大幅更新の33万6999人!

来場者記録を大幅に更新した高校選手権
(写真協力=高校サッカー年鑑)
 第98回全国高校サッカー選手権大会の決勝が13日に行われ、静岡学園高青森山田高を3-2で破り、24年ぶりの優勝を成し遂げた。この試合では来場者数5万6025人を記録し、第97回大会の5万4194人を越える最多記録(決勝戦が成人の日固定となった第81回大会以降)となった。また、今大会通算来場者数でも33万6999人を記録。決勝戦が成人の日に固定された第81回大会以降での第94回大会の31万3824人を大幅に越え、こちらも最多記録を更新している。

 高校サッカー事務局では、観客数増加に考えられる要因を発表。今大会が12月31日以降、各会場で好天に恵まれたこと、高円宮杯優勝で注目された青森山田が決勝まで勝ち抜き、一方で静岡学園や四日市中央工高などの“古豪”活躍でファンの関心を高めたこと、第97回大会以降から全会場で小学生以下先着100名の無料招待や一部試合でのエスコートキッズを実施、定着したことで親子連れの観戦が増加傾向となったことを挙げる。

 さらに、今大会から全試合のVOD配信や一部ライブ配信を公式HPなどで行ったことにより多くの試合を楽しめるようになったこと、積極的なSNS活用や新グッズの開発・販売でファン層拡大と来場者サービスに取り組んだことなども挙げている。

以下、成人の日固定となった第81回大会以降の来場者数一覧
【第81回】
来場者数:25万1392人
決勝:国見vs市立船橋(来場者数/5万1986人)
【第82回】
来場者数:24万7169人
決勝:筑陽学園vs国見(4万6754人)
【第83回】
来場者数:24万1528人
決勝:鹿児島実vs市立船橋(4万6037人)
【第84回】
来場者数:19万8386人
決勝:鹿児島実vs野洲(3万1782人)
【第85回】
来場者数:25万5828人
決勝:盛岡商vs作陽(3万5939人)
【第86回】
来場者数:27万1555人
決勝:藤枝東vs流通経済大柏(4万8884人)
【第87回】
来場者数:22万2579人
決勝:鹿児島城西vs広島皆実(4万102人)
【第88回】
来場者数:22万8457人
決勝:山梨学院vs青森山田(4万3635人)
【第89回】
来場者数:24万1711人
決勝:久御山vs滝川二(3万5687人)
【第90回】
来場者数:22万9043人
決勝:市立船橋vs四日市中央工(4万3884人)
【第91回】
来場者数:21万9557人
決勝:鵬翔vs京都橘(2万4937人)
【第92回】
来場者数:27万5512人
決勝:富山一vs星稜(4万8295人)
【第93回】
来場者数:29万4477人
決勝:前橋育英vs星稜(4万6316人)
【第94回】
来場者数:31万3824人
決勝:東福岡vs國學院久我山(5万4090人)
【第95回】
来場者数:28万1943人
決勝:青森山田vs前橋育英(4万1959人)
【第96回】
来場者数:24万4782人
決勝:流通経済大柏vs前橋育英(4万1337人)
【第97回】
来場者数:29万5251人
決勝:青森山田vs流通経済大柏(5万4194人)
【第98回】
来場者数:33万6999人
決勝:青森山田vs静岡学園(5万6025人)

●【特設】高校選手権2019

広瀬すずが静岡学園Vに歓喜!「叫びまくって喉痛めたな」5年前には応援マネージャーも

5年前には大会応援マネージャーも務めた広瀬すずさん
 女優の広瀬すずさん(21)が13日、自身のツイッター(@Suzu_Mg)を更新し、第98回全国高校サッカー選手権大会で優勝した静岡学園高に祝福のメッセージを送った。

 静岡県出身の広瀬さんは自身のツイッターで「静学ー!!!おめでとうー!!!」と投稿。「静岡!」とさらに続けると、「すんごい試合すぎて、叫びまくってたから、ちょっと喉痛めたな、これ。出場者の皆様お疲れ様でした〜」と選手たちをねぎらった。

 静岡学園は決勝で青森山田高と対戦。前半11分、33分と失点を許して0-2とリードを許すが、前半終了間際に1点を返す。さらに後半からは反撃を続け、後半16分、40分とゴール。3-2で試合終了となり、24年ぶりの優勝、そして初の単独優勝となった。

 広瀬さんは2014年度の第93回大会では応援マネージャーも務めている。

“令和最初の選手権”大会優秀選手38人が決定!!24年ぶりVの静岡学園と準V・青森山田から各8人

静岡学園のMF松村優太と青森山田のMF武田英寿が競り合う(写真協力=高校サッカー年鑑)
 全国高体連サッカー部技術委員会は13日、第98回全国高校サッカー選手権決勝終了後に同大会の優秀選手38人を発表した。

 24年ぶり2度目の優勝を飾り、初の単独優勝を果たした静岡学園高(静岡)からMF松村優太(3年)ら最多タイの8人を選出。準優勝の青森山田高(青森)からもMF武田英寿(3年)ら同じく8人が選ばれた。

▼GK
佐藤史騎(青森山田高3年)
藤井陽登(矢板中央高1年)
猪越優惟(帝京長岡高3年)

▼DF
神田悠成(青森山田高3年)
藤原優大(青森山田高2年)
長江皓亮(矢板中央高3年)
大竹琉生(昌平高3年)
畑大雅(市立船橋高3年)
青木駿人(日大藤沢高3年)
吉田晴稀(帝京長岡高3年)
丸山喬大(帝京長岡高3年)
丸山以祐(富山一高3年)
阿部健人(静岡学園高3年)
田邉秀斗(静岡学園高2年)
高橋祐翔(米子北高3年)
阿部稜汰(日章学園高3年)

▼MF
古宿理久(青森山田高3年)
松木玖生(青森山田高1年)
武田英寿(青森山田高3年)
後藤健太(青森山田高3年)
柴圭汰(昌平高2年)
須藤直輝(昌平高2年)
田中克幸(帝京長岡高3年)
浅倉廉(静岡学園高3年)
松村優太(静岡学園高3年)
小山尚紀(静岡学園高3年)
井堀二昭(静岡学園高3年)
藤田悠介(静岡学園高3年)
森夢真(四日市中央工高3年)
佐藤陽太(京都橘高3年)
沖吉大夢(神戸弘陵高3年)
山田真夏斗(立正大淞南高3年)
濱屋悠哉(神村学園高3年)

▼FW
田中翔太(青森山田高3年)
小見洋太(昌平高2年)
晴山岬(帝京長岡高3年)
田海寧生(丸岡高3年)
岩本悠輝(静岡学園高3年)

●【特設】高校選手権2019

静岡学園の劇的優勝に川淵三郎氏も感嘆、「昨日の五輪代表戦のストレスを解消して貰った」

川淵三郎氏が高校サッカー決勝に言及
 Jリーグ初代チェアマンで日本トップリーグ連携機構会長の川淵三郎氏が13日、自身のツイッター(@jtl_President)を更新し、第98回全国高校サッカー選手権大会決勝について言及した。

 決勝では静岡学園高と青森山田高が対戦。青森山田が前半11分、33分と得点を挙げるも、その後は静岡学園が大反撃に出る。前半終了間際に1点を返すと後半16分、40分にゴールを重ね、3-2で大逆転勝利。24年ぶりの頂点に、そして初の単独優勝を成し遂げた。

 川淵氏は「高校サッカーの素晴らしい試合を見せて貰ったお陰で昨日のオリンピック代表戦のストレスを解消して貰った」と昨夜のU-23日本代表対U-23シリア代表(●1-2)に触れる。「静岡学園の2点ビハインドからの逆転勝利。慌ててパスをしない一人一人のボールキープ力。見事としか表現できない。青森山田も死力を尽くして最後まで良く戦った。本当に感動の試合を有難う!!」と両校の選手たちを称賛した。

 また、準優勝となった青森山田については「表彰式の時、準優勝の青森山田の選手たちが気をつけの姿勢で静岡学園の選手たちを見守っていたのが印象的。何か胸を打たれた。有難う青森山田高校の選手たち!!」とねぎらっている。

王国復活!静岡学園が0-2からの大逆転で令和初の選手権制す!

後半40分、静岡学園高CB中谷颯辰が決勝ヘッド。(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 令和初の選手権王者は静岡学園――。第98回全国高校サッカー選手権大会決勝が13日に埼玉スタジアム2○○2で開催され、青森山田高(青森)と静岡学園高(静岡)が対戦。静岡学園が3-2で逆転勝ちし、24年ぶり2回目の優勝を飾った。

 前回大会優勝校で19年度のプレミアリーグ王者でもある青森山田は今大会、“死のブロック”と評された激戦区を勝ち上がった。00年度、01年度の国見高(長崎)以来、史上10度目(通算9校目)の選手権連覇を懸けた決勝戦。4-2-3-1システムのGKは佐藤史騎(3年)で4バックは右SB内田陽介(2年)、CB箱崎拓(3年)、U-17日本代表CB藤原優大(2年)、左SB神田悠成(3年)。中盤は横浜FC内定のMF古宿理久(3年)とU-16日本代表MF松木玖生(1年)のダブルボランチで右SH後藤健太(3年)、左SH浦川流輝亜(3年)、トップ下が浦和内定のU-18日本代表MF武田英寿主将(3年)。1トップは田中翔太(3年)が務めた。

 一方、静岡学園は今大会、5試合で16得点無失点と盤石の勝ち上がり。24年ぶりの優勝、同校にとって初の単独優勝へ前進してきた。4-2-3-1システムのGKは野知滉平(2年)で右SB田邉秀斗(2年)、CB阿部健人主将(3年)、CB中谷颯辰(3年)、左SB西谷大世(3年)。中盤は井堀二昭(3年)と藤田悠介(3年)のダブルボランチでトップ下が浅倉廉(3年)。右SHは鹿島内定のU-18日本代表MF松村優太(3年)、左SHは小山尚紀(3年)で1トップは今大会初先発の加納大(2年)が務めた。

 序盤は静岡学園がボールを握って試合を進めようとするが、青森山田が得意のセットプレーから先制点を奪う。前半11分、左中間でFKを獲得すると、古宿が右足でゴール方向へ向かうボールを蹴り込む。これに飛び込んだ藤原が頭でゴールへ流し込んだ。

 先制された静岡学園は後方から丁寧にボールを繋ぐ。18分に井堀がワンツーで局面を破り、加納が右足シュート。22分には中谷の攻撃参加から再び加納がシュートへ持ち込んだ。だが、前半は強固な守備ブロックを作って対応する青森山田の前にパスミスを連発。青森山田はセカンドボールを拾うと、前線の田中、武田が確実に収めて攻撃を展開する。

 主導権を握って押し込んだ青森山田は内田のロングスローや、25分頃の4連続CKなどで静岡学園にプレッシャーをかける。そして32分、田中が敵陣で相手DF阿部からインターセプト。そのまま前進すると、斜めのランニングでPAへ飛び出した武田へスルーパスを通す。そして、左中間で縦へ持ち込んだ武田がGKに倒されてPKを獲得。このPKを武田が左足で右隅に決めて2-0とした。

 2点ビハインドとなった静岡学園は、小柄な浅倉が青森山田DF陣に対して奮闘。また、中谷が積極的にボールに絡み、相手の中盤のラインを突破するなど反撃する。そして前半アディショナルタイム、井堀が右サイド後方からFKを入れると、最後は青森山田の小さなクリアに反応した中谷が、右足シュートをゴール左隅に突き刺して1点差とした。

 静岡学園は後半開始から藤田に代えてMF草柳祐介(3年)を左サイドに投入。自陣からボールを繋ぎながらジワリジワリと前進していく。そして、松村の突破から浅倉がシュートを狙うなど相手ゴールを脅かす。

 青森山田も武田が中盤でテクニックを発揮し、サイドチェンジなどから追加点を狙う。だが、次の1点を奪ったのは静岡学園の方だった。16分、左サイドでのポゼッションから草柳がカットイン。そしてDFを背負った加納へボールを預ける。すると、加納は反転から左足一閃。左中間から放たれた一撃はゴール右隅に突き刺さり、同点となった。

 青森山田は26分、浦川に代えてMF得能草生(3年)を、31分には後藤に代えてMF安斎颯馬(2年)をピッチへ送り出す。互いにセットプレーでゴール前のシーンを作るが、両守備陣が集中した守りで決定打を打たせない。

 そして、後半40分、静岡学園が逆転に成功する。セットプレーの流れから、左サイドで小山がFKを獲得。これを井堀が右足でゴール方向に入れると、ファーサイドの中谷が豪快ヘッドで勝ち越し弾をゴールに突き刺した。

 青森山田は内田に代えてDF鈴木琉聖(3年)、松木に代えてFW金賢祐(3年)を投入。鈴木のロングスローなどで反撃するが、静岡学園は野知や阿部、中谷、西谷、田邉らが執念の守りでゴールを許さない。56,025人の大観衆が見守る中で開催された激闘は静岡学園が3-2で勝利。低迷の続いていたサッカー王国・静岡に24年ぶりとなる選手権タイトルをもたらした。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

青森山田vs静岡学園 試合記録

【全国高校選手権決勝】(埼玉スタジアム2002)
青森山田 2-3(前半2-1)静岡学園


<得点者>
[青]藤原優大(11分)、武田英寿(33分)
[静]中谷颯辰2(45分+2、85分)、加納大(61分)

観衆:56,025人
主審:笠原寛貴
副審:武部陽介、渡辺康太
王国復活!静岡学園が0-2からの大逆転で令和初の選手権制す!
青森山田の連覇か、静岡学園の24年ぶりVか。選手権決勝スタメン発表!
プレミア&選手権2冠王手青森山田、16年度2冠主将・住永翔がエール「別格だと思われるように」
[MOM3149]静岡学園DF中谷颯辰(3年)_絶対王者沈める2発!!“静学のマスチェラーノ”が王国復権導く
2日後に渡米予定の静学主将が最高の“置き土産” DF阿部健人「向こうでMLSを目指す」
FKで2発演出の静岡学園MF井堀、優勝弾アシストに「ボールも完璧だった」
PK献上も下向かず、静学の2年生守護神・野知「もう一度この景色を」
初先発の2年生エースが左足ズドン! 静岡学園FW加納大「一発やってやろうと」
「追いかける展開は楽しかった」静学の2年生SB田邉、全国初失点にも動じず
徹底マークも貫いた献身…静岡学園MF松村優太がタイトル手に鹿島へ「開幕からスタメンを」
「思った以上に自分を出せた」「めっちゃ成長できた」、静岡学園の中盤で躍動した浅倉廉
「自信を持って言えない」大会得点王…静岡学園FW岩本悠輝は後輩に優勝の思い託す
無心のひと振りが追撃弾演出、静学の左SB西谷「いい形でこぼれてくれた」
「2点獲られたら3点獲る」。諦めずに攻めること、DFを『倒しに行く』ことを続けた静岡学園が“静学らしく”逆転V!
痛恨の逆転負けで連覇逸…青森山田MF武田英寿「サッカー人生で一番悔しい」
静岡学園の“理系”ジョーカーMF草柳が同点弾アシスト「大学でも両立できたら」
「ツメの甘さが最後に出た」青森山田DF箱崎、逆転V逸の悔しさは“次のステージ”で
インパクト残した静学MF小山尚紀「抜けると思った」仕掛けで“決勝FK”ゲット
1年前は“裏選手権”で優勝。あれから372日、静岡学園が埼スタで舞う
「ボールを渡したらほぼゴール前まで行ってくれる」攻撃陣を支えた静岡学園MF藤田悠介
ビッグプレーよりも…青森山田FW田中が悔やんだ「あの一瞬」
「自分の責任」決勝点悔やむ青森山田の守護神・佐藤は大学で“勝たせられるGK”に
青森山田の3年間に達成感も…MF古宿理久は横浜FCへ「絶対に結果を残したい」
目標とされる存在となった青森山田。彼らを選手権決勝まで勝ち上がらせた力、決勝で欠けていた力
[選手権]決勝写真特集
『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:はじまりのおわり(青森山田高・佐藤史騎、古宿理久、浦川流輝亜)


<出場メンバー>
[青森山田高]
先発
GK 1 佐藤史騎
DF 2 内田陽介
(87分→DF 19 鈴木琉聖)
DF 3 神田悠成
DF 4 箱崎拓
DF 5 藤原優大
MF 6 古宿理久
MF 7 松木玖生
(89分→FW 14 金賢祐)
MF 8 浦川流輝亜
(71分→MF 13 得能草生)
MF 10 武田英寿
MF 11 後藤健太
(77分→MF 15 安斎颯馬)
FW 9 田中翔太
控え
GK 12 韮澤廉
DF 24 松本将吾
MF 16 那俄牲海
MF 18 タビナス・ポール
FW 17 古澤ナベル慈宇
監督
黒田剛

[静岡学園高]
先発
GK 17 野知滉平
DF 3 阿部健人
DF 4 田邉秀斗
DF 5 中谷颯辰
DF 15 西谷大世
MF 8 浅倉廉
MF 10 松村優太
MF 14 小山尚紀
MF 16 井堀二昭
MF 18 藤田悠介
(46分→MF 19 草柳祐介)
FW 9 加納大
控え
GK 1 北口太陽
DF 2 田中太晟
DF 22 岩野寛太
DF 28 関根大輝
MF 6 権平美樹
MF 7 藤井皓也
MF 11 渡辺怜歩
FW 12 岩本悠輝
監督
川口修

得点王は5ゴールの2選手! 決勝ベンチの静岡学園FW岩本、プロの誘い待つ四中工MF森夢真

四日市中央工高MF森夢真と静岡学園高FW岩本悠輝(写真左から)
 第98回全国高校サッカー選手権は13日、決勝戦を行い、全日程が終了した。今大会5ゴールの静岡学園高FW岩本悠輝(3年)と四日市中央工高MF森夢真(3年)が得点王に輝いた。

 静岡学園の岩本は1回戦の岡山学芸館高戦(○6-0)で大会初ゴールを挙げると、2回戦の丸岡高戦(○2-0)でも連発。さらに準々決勝の徳島市立戦(○4-0)ではハットトリックの大活躍を果たした。決勝の青森山田高(○3-2)戦では負傷明けのエースFW加納大(2年)に出番を譲ったが、予選では控え選手だった立場から24年ぶりの全国制覇に大きく貢献した。

 四中工の森は1回戦の日大明誠戦(○3-1)で2得点を挙げると、2回戦の松本国際戦(○2-1)でも1得点。3回戦の日章学園高(○3-3、PK4-3)でも2ゴールを決め、3試合連続ゴールで5得点とした。大会中には「プロ1本に絞ってやってきた」とJクラブからのオファーを待つ姿勢を公言していたが、スカウトに勝負強さを印象付ける活躍を見せた。

 準優勝の青森山田高ではルーキーMF松木玖生(1年)と主将のFW武田英寿が最多の4得点。また優勝した静岡学園高FW小山尚紀、FC町田ゼルビア内定の帝京長岡高FW晴山岬(3年)も同じく4ゴールで並んだ。

得点ランキングは以下のとおり(3得点以上)

1位:5得点
岩本悠輝(静岡学園)
森夢真(四日市中央工)

3位:4得点
武田英寿(青森山田)
松木玖生(青森山田)
晴山岬(帝京長岡)
小山尚紀(静岡学園)

7位:3得点
田中翔太(青森山田)
左合修土(矢板中央)
多田圭佑(矢板中央)
山下貴之(國學院久我山)
山本航生(國學院久我山)
井堀二昭(静岡学園)
渡邉颯太(草津東)
沖吉大夢(神戸弘陵)

●【特設】高校選手権2019

次のステージで故郷に恩返しを…帝京長岡の愛媛内定DF吉田晴稀「A代表で3人集まれたら」

愛媛内定DF吉田晴稀(3年)(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 一年前は届かなかった埼玉スタジアムのピッチで技巧派軍団が最後の輝きを放った。帝京長岡高は美しいパスワークが織り成す攻撃サッカーで3万人近い観衆を沸かせ、惜しまれながら4強敗退。愛媛内定DF吉田晴稀(3年)は「全国大会の中でも、チームとして自分たちのサッカーが一番できた。楽しむことができた驚きもあります」と高校ラストマッチを振り返った。

 攻撃に特長のあるチームだが、守備陣も奮闘。無失点で勝ち上がり、青森山田戦が初失点となった。圧倒的に攻撃を畳み掛けるもチャンスを決め切れず、前半16分に先制点を献上してしまう展開。「失点した後もまだまだやれると思った」。大会初失点もチームは崩れることなく声を掛け合い、攻守に強度の高いパフォーマンスを続けた。

 昨年度は抜群のスピードを武器に右サイドバックのポジションで存在感を放ったが、最高学年はチーム事情からセンターバックを担った。対人守備で強さを発揮すれば、足元の技術を生かした精度の高いクロスを前線に配給。今大会も能力の高さを示し、存在感を放った。センターバックの経験を積み、「プレーの幅が広がるし、センターバックをやっていい経験になった。最後の一年間で成長できたと思う」と手応えをにじませた。

 吉田を含めたスタメンの半数以上は長岡JrユースFCの出身で、中学時代から帝京長岡のグラウンドでトレーニングを積んできた。仲間との集大成となる大会で新潟県勢の歴史を塗り替える4強入り。「中学3年から帝京長岡の公式戦に出ていた。いい経験もたくさんしたし、監督コーチに最後まで信頼して使ってもらえた。日本一という形で恩返ししたかった」。

 生まれ育った地元を離れ、愛媛でプロ生活をスタートする。京都加入MF谷内田哲平主将(3年)、町田加入FW晴山岬(3年)の3人は揃ってJ2のステージに進む。「個人としては負けたくない。次はライバルとしてお互いに競い合って、何年後かにA代表で3人集まれたら」。帝京長岡出身のプロ選手として、故郷・新潟、長岡への恩返しはまだまだ続く。


(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

青森山田vs静岡学園 スタメン発表

[1.13 全国高校選手権決勝](埼玉スタジアム2002)
※14:05開始
主審:笠原寛貴
副審:武部陽介、渡辺康太
<出場メンバー>
[青森山田高]
先発
GK 1 佐藤史騎
DF 2 内田陽介
DF 3 神田悠成
DF 4 箱崎拓
DF 5 藤原優大
MF 6 古宿理久
MF 7 松木玖生
MF 8 浦川流輝亜
MF 10 武田英寿
MF 11 後藤健太
FW 9 田中翔太
控え
GK 12 韮澤廉
DF 19 鈴木琉聖
DF 24 松本将吾
MF 13 得能草生
MF 15 安斎颯馬
MF 16 那俄牲海
MF 18 タビナス・ポール
FW 14 金賢祐
FW 17 古澤ナベル慈宇
監督
黒田剛

[静岡学園高]
先発
GK 17 野知滉平
DF 3 阿部健人
DF 4 田邉秀斗
DF 5 中谷颯辰
DF 15 西谷大世
MF 8 浅倉廉
MF 10 松村優太
MF 14 小山尚紀
MF 16 井堀二昭
MF 18 藤田悠介
FW 9 加納大
控え
GK 1 北口太陽
DF 2 田中太晟
DF 22 岩野寛太
DF 28 関根大輝
MF 6 権平美樹
MF 7 藤井皓也
MF 11 渡辺怜歩
MF 19 草柳祐介
FW 12 岩本悠輝
監督
川口修

●[選手権]決勝 スコア速報

青森山田の連覇か、静岡学園の24年ぶりVか。選手権決勝スタメン発表!

(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高-静岡学園高 埼玉]

 連覇か、24年ぶりVか―。第98回全国高校サッカー選手権大会は13日、埼玉スタジアム2○○2で青森山田高(青森)対静岡学園高(静岡)の決勝戦を行う。

 16年度、18年度日本一の青森山田は勝てば、00、01年度大会の国見高(長崎)以来、史上10度目(9校目)となる2連覇達成。静岡学園が勝てば95年度に鹿児島実高(鹿児島)と両校優勝して以来、2度目の全国制覇となる。

 先発メンバーが発表され、青森山田は浦和内定MF武田英寿(3年)や横浜FC内定MF 古宿理久(3年)、今大会4得点のスーパールーキー・MF松木玖生(1年)らが先発。静岡学園は鹿島内定のMF松村優太(3年)や今大会初先発となるFW加納大(2年)らが先発に名を連ねている。
 
 キックオフは14時5分。全国約4000校のサッカー部の頂点、令和初の日本一に輝くのは果たして?

JFA発表の決勝メンバーは以下の通り

[青森山田高]
▼先発
1 GK 佐藤史騎(3年)
2 DF 内田陽介(2年)
3 DF 神田悠成(3年)
4 DF 箱崎拓(3年)
5 DF 藤原優大(2年)
6 MF 古宿理久(3年)
7 MF 松木玖生(1年)
8 MF 浦川流輝亜(3年)
10 MF 武田英寿(3年)
11 MF 後藤健太(3年)
9 FW 田中翔太(3年)
▼控え
12 GK 韮澤廉(2年)
19 DF 鈴木琉聖(3年)
24 DF 松本将吾(3年)
13 MF 得能草生(3年)
15 MF 安斎颯馬(2年)
16 MF 那俄牲海(3年)
18 MF タビナス・ポール(2年)
14 FW 金賢祐(3年)
17 FW 古澤ナベル慈宇(2年)
▼監督
黒田剛

[静岡学園高]
▼先発
17 GK 野知滉平(2年)
3 DF 阿部健人(3年)
4 DF 田邉秀斗(2年)
5 DF 中谷颯辰(3年)
15 DF 西谷大世(3年)
8 MF 浅倉廉(3年)
10 MF 松村優太(3年)
14 MF 小山尚紀(3年)
16 MF 井堀二昭(3年)
18 MF 藤田悠介(3年)
9 FW 加納大(2年)
▼控え
1 GK 北口太陽(3年)
2 DF 田中太晟(3年)
22 DF 岩野寛太(3年)
28 DF 関根大輝(2年)
6 MF 権平美樹(3年)
7 MF 藤井皓也(3年)
11 MF 渡辺怜歩(2年)
19 MF 草柳祐介(3年)
12 FW 岩本悠輝(3年)
▼監督
川口修

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

日本高校選抜の予備選考会実施。蒲原監督「日本サッカー界のために貢献できる選手が一人でも出れば」

日本高校選抜の予備選考会実施。蒲原監督「日本サッカー界のために貢献できる選手が一人でも出れば」
 日本高校選抜の予備選考会が12日、都内で開催された。第98回全国高校サッカー選手権3回戦までに敗退したチームと、都道府県予選で敗退したチームから選出された選手たちが、大学生と選考試合を実施。予備選考会を突破した選手に、選手権で準々決勝以上に進出したチームの選手などを加えて実施される選考合宿、強化合宿を経て、最終的に18人が海外遠征に参加する。

 例年同様、今回の予備選考会メンバーも未公表。中にはJクラブ入りを決めている選手や年代別日本代表選出歴を持つ実力者たちの姿もあった。相手は関東大学リーグ1部のAチーム。1本目から強烈なプレッシャーを受ける中で力を発揮した選手もいたが、視野が狭くなって慌ててしまう選手もいた。

 今年の日本高校選抜の指揮を執る蒲原晶昭監督(佐賀東高)は「中盤の選手がもっとボールのないところで、良いポジションで視野を前向きにとってもらわないと(欧州遠征で戦う外国人選手相手に)何もできない。その点は修正を加えていきたい。相手が困ってないですから。相手がパワーで来れないようにしていきたい」と語った。

 蒲原監督は佐賀東を2度のインターハイベスト4などに導いている指揮官だ。佐賀東は小柄な選手や、特別な身体能力持たない選手たちがポジショニングや技術力を身に着けて全国の強豪と対抗。蒲原監督は選考を勝ち抜く上で必要な要素について、「テクニックは絶対に必要だと思っています。ああいう(大学生の)プレッシャーを楽しめるくらいに前に進んで行ける子とか。(加えて)世界で戦わないといけないとなると、最低限のフィジカルも必要になってくると思います」と求めていた。世界と戦える技術とフィジカル、そして強いメンタルの持ち主が最終メンバーに入って行くことになりそうだ。

 日本高校選抜は、4月に実施される欧州遠征、デュッセルドルフ国際ユース大会での2年ぶりの優勝が大目標となる。また今年は、欧州遠征前に年代別日本代表と練習試合を実施するプランもあるようだ。蒲原監督は「良い経験になって、この後の日本サッカー界のために貢献できる選手が一人でも出ればそれで成功かと思います」と期待。選手権のヒーローの中から、最終的に誰が日本高校選抜に入るのか、そして欧州、その先のステージでどのような活躍をするのか、注目だ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

プレミア&選手権2冠王手青森山田、16年度2冠主将・住永翔がエール「別格だと思われるように」

プレミア&選手権2冠王手青森山田、16年度2冠主将・住永翔がエール「別格だと思われるように」
 13日に行われる第98回全国高校サッカー選手権大会の決勝で静岡学園高と対戦する青森山田高は、01年度の国見高以来18年ぶりの連覇、そして高校年代最高峰リーグであるプレミアリーグとの2冠を目指すことになる。

 偉業に挑む後輩たちに16年度に選手権初優勝時の主将MF住永翔(明治大)がエールを送った。

 16年度の青森山田は、MF高橋壱晟(千葉)やGK廣末陸(町田)といった卒業後にプロ入りするタレントを擁して悲願の選手権初優勝。同時にプレミアリーグでも初優勝を飾っており、勢いを持って選手権に入ったという意味では、今年度と重なることも多い。

「高校サッカーと言えば青森山田という風にだんだんなってきている」とうなずいた住永は、「今年のチームも組織力がある」と分析。「特に守備の部分。先制点を取ったあとの試合の進め方、ゴール前での体の張り方など、日々の鍛錬で突き詰めているものは僕たちの時と変わらない。黒田監督の教えが後輩たちにしっかりと染み込んでいるなと感じました」と納得の表情をみせた。

「2冠した代のキャプテンとして、後輩にも同じ経験をしてほしい。優勝しないと見える景色が全然違う。今後の選手生活にも影響してくる。まずは選手権を思う存分楽しんでほしいと思うけど、その中でも結果。どれだけいいサッカーをしてもそこで勝たないと意味がないと思うので、結果で証明して、青森山田は別格だなと思われるようになってほしいです」

 選手権、特に埼玉スタジアムでの試合は高校生にとって特別。住永も「幸せを感じながらプレーしてほしい」と話す。「テレビも全国中継になることで見られている意識がすごく働くけど、格好をつけたりとかじゃなくて、今までやってきた高校3年間、山田中から来た人は6年間やってきたことを前面に出してほしい。これまで支えてくれた人たちに感謝の気持ちを忘れずに、優勝という形で恩返ししてほしいと思います」と期待を寄せた。

 決勝のキックオフは14時5分。

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

兄と同じ選手権4強も矢板中央エースは直前に負傷…チーム引き上げた10番久永武蔵

矢板中央の10番エースFW久永武蔵(3年)(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.11 選手権準決勝 静岡学園高 1-0 矢板中央高 埼玉]

 矢板中央は前評判を覆し、過去最高成績に並ぶ選手権4強と躍進を遂げたが、10番を背負うFW久永武蔵(3年)は不完全燃焼に終わった。開幕直前に肉離れを患い、コンディションが上がらないまま、高校年代最後の大会が幕を閉じた。

 試合後は仲間とともに大粒の涙をこぼし、「後悔しかないです」と率直な思いを吐露した。2年前の選手権4強メンバーの兄・FW久永寿稀也(現中央学院大)からは「お前らしく頑張れ」とエールをもらった。万全の状態ではない中、全5試合に途中出場。攻守にタフに戦ったが、トップフォームは取り戻せなかった。

 今年度はチームに対する周囲の低評価を覆そうと発奮し、闘争心を注入してきた。その一方、徐々に台頭したGK藤井陽登ら1年生をサポートする姿勢も。「1年生に伸び伸びやってもらうために、自分たちも意識して声をかけたりしてきた。その中で1年生が結果を出してくれるのは心強い」と、チーム力を引き上げてきた。

 栃木県予選準決勝ではシュートのこぼれ球に飛び込み、気迫あふれる決勝ヘッド弾。決勝でもフィジカルの強さとハードワークを生かし、前線で起点となった。球際の強さと馬力を備え、ゴールをもたらしてきた矢板中央のエース。悔しさをにじませながらも、「中学時代は無名の選手だったので、矢板中央のおかげで成長できた」と感謝を述べた。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

藤枝順心、“成長”と“プライド”の激突を制し2大会ぶり4度目の優勝!!

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.12 女子選手権決勝 藤枝順心1-0神村学園 ノエビア]

 お互い追い求めてきたチームの姿が表れた決勝戦だった。

 前半、ペースをつかんだのは神村学園高(九州1/鹿児島)。4年前の決勝戦と同一カードとなったこの試合、神村学園キャプテンのMF菊池まりあ(3年)は、当時の映像を見返して「順心さんに勝って日本一を取れと言われてきた」という。

 前線からの激しいプレスで藤枝順心の攻撃を抑え込み、高い位置で奪えばショートカウンターを仕掛ける。前半15分には菊池からのクロスをFW塚田亜希子(3年)が右足ダイレクトボレーで合わせる。しかし藤枝順心(東海2/静岡)のGK松井里央(3年)が好セーブ。その後も体力を出し惜しみしない果敢なプレスで圧力をかけ、シュートは2本におさえる一方で5本を放った。

「前半からハイプレスでいって点を取る」というのがプランだった、と神村学園の寺師勇太監督は語る。「狙った攻撃の形もできていた。4年前とは手応えが違いました」。しかし「最後の最後でこじあけられない」。後半開始直後にもエンドライン際からのマイナスの折り返しを菊池がシュートするがクロスバーに。決定機の数では神村学園が上回るもスコアは動かない。

 もっとも、藤枝順心の監督も選手は「夏までのチーム状態だったら点を取られていた」と口をそろえる。「点が取れないのは前チームと同じ。そこで耐えきれず失点し、崩れてきたので1-0で勝てるチームができればとやってきた。辛抱強くなりました」と多々良和之監督。

「前半耐えたことが後半につながった」というように、後半15分、右サイドでボールを受けたFW池口響子(3年)がタッチライン際からボールを持ち込むと右足を振りぬく。クロスかと思われたボールはGKの伸ばす手の上を越え、そのままゴールへ。

 試合後のお立ち台では「絶対決めると思って狙って打ちました」と言っていたが、実は「あまり覚えてないですけど狙ってない(笑)」ゴール。ただ「流れがきていて、ボールを取ったらクロスを上げようと考えていた」とゲームを読む嗅覚はさすがだ。1年前の選手権では前十字靭帯を損傷していた。「そこから多くの人に支えられてきた。恩返しのゴールができて嬉しいです」。

 結局このゴールが決勝点に。多々良監督は「このチームの象徴的な試合」と選手たちを讃えた。「昨年のこの大会で初戦敗退した後、新チームは優勝できる力があると思っていたので『順心歴代最強を目指そう』とスタートしたんです。でも夏の総体で初戦負け。『歴代最強どころか歴代最弱じゃないか』という声もあがりました」。

 課題だったのは主にメンタル。力はあるが耐えきれない。辛抱できない。メンタルトレーニングを取り入れるなどして改善をはかり、U-18 WOMEN'S SUPER LEAGUEで浦和レッズレディースユースや日テレ・メニーナといったJクラブの女子ユースチームとの対戦や、県予選準決勝の磐田東との接戦(1-0で勝利)を越えて逞しさを蓄え、“成長”してきたことを決勝戦の大舞台で証明してみせた。

 一方、神村学園がこの決勝戦で見せたのは“プライド”だ。「ラッキーな組み合わせで勝ち上がってきたと思われたくなかった。なので、決勝も自分たちのスタイルを貫こうと。前半からハイプレスでとばしても後半運動量が落ちなかったことや、最後まで放り込まずに自分たちの形で点を取りに行ったところに成長を感じました」と寺師監督は胸を張る。

 今大会の組み合わせでは、藤枝順心側のブロックに日ノ本学園(関西1/兵庫)、十文字(関東5/東京)、作陽(中国1/岡山)、星槎国際湘南(関東3/神奈川)といった強豪が固まった。神村学園側のブロックも決して簡単ではなかったが、そういう周囲の目線に運だけではないことを見せつけたかった。

 たしかに失点後、前掛かりにならざるをえない状況下で、それでもほとんどカウンターを浴びなかった。前半とばしておいても90分間落ちなかった走力には凄みすら感じた。

 だからこそ「こんなに悔しいことはない」という。「日本一を狙える選手たちがいますので、また成長して、その時はもう一度決勝戦で藤枝順心さんとやりたいです」。消化しきれない悔しさを飲み込み、あえて饒舌に、さわやかに語ってくれた寺師監督。それもまた“プライド”だった。

(取材・文 伊藤亮)
●【特設】高校選手権2019

ここまでトップタイの5ゴール! 静岡学園FW岩本悠輝は「自信を持って言える」得点王へ

静岡学園高FW岩本悠輝(3年)
 日本一と得点王の二冠に王手をかけた。静岡学園高FW岩本悠輝(3年)は今大会、得点ランキングトップタイの5得点を記録。控え選手の立場から一躍選手権のヒーローになろうとしている背番号12は、青森山田高との決勝に向けて「ここを目指して練習してきた」とワクワクした様子で語った。

 夏に右脚の腓骨を骨折し、秋には左足首の靭帯を損傷。今季の大部分を怪我で棒に振ったストライカーが最後の夢舞台で華々しい結果を残している。1回戦の岡山学芸館高戦(○6-0)で大会初ゴールを挙げると、2回戦の丸岡高戦(○2-0)でも連発。さらに準々決勝の徳島市立戦(○4-0)ではハットトリックを記録するなど、同校にとって24年ぶりの決勝進出に大きく貢献してきた。

 もっともその岩本、静岡県予選まではレギュラーの立場ではなかった。今季のエースは予選決勝でも2得点を決めていたFW加納大(2年)。「予選の時は怪我の状態も悪くなかったので、それが自分の実力」。試合に出られないという悔しさはありつつも、前線でボールを収める働きができる後輩の能力は素直に認めていた。

 ところが大会前、加納が左膝に炎症を抱えていたことで、本大会では岩本に出番が回ってきた。「まずは守備でしっかり走って、そこから1点を狙う」。そんな心持ちで先発を続け、気付けば5得点の量産態勢。「諦めずに頑張ってシュート練習をしてきたので自信はあった。そういうのが出た」とひたむきに続けてきた努力が実った。

 そうして迎える青森山田とのファイナル。初めての全国大会という岩本にとっては、チームメートとともにスタンド観戦していた前々回大会以来の決勝となる。「人がいっぱいいてすごいなと思った」。今度はピッチでプレーする立場。「高校ではここを目指して練習してきた」という夢の舞台に立つ。

 相手は「高校年代のラスボスみたいな存在。みんな能力が高いし、パワーもスピードもトップレベル」とみなす絶対王者だ。それでも16得点0失点という驚異的な戦績で5試合を勝ち抜いてきた自信を胸に「負けるイメージはない」ときっぱり。決定機を量産した帝京長岡の戦いぶりにも刺激を受け、「足元の局面で勝負できたら」と勝機を見据える。

 そのうえで自らの評価も高めるつもりだ。「マツ(MF松村優太)とか(MF小山)尚紀が有名になっていってるので、自分もいろんな人にもっと注目されたい。準決勝、決勝で点を取らないと得点王になったと自信を持って言えない。最後に取れる選手が得点王だと自信を持って言える」。同点首位のまま得点王になるつもりはない。最後は自らのゴールで日本一をもたらす。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

1か月前のMVP男、青森山田DF箱崎拓が埼スタ決勝で静学封じへ

最終調整を行った青森山田DF箱崎拓(3年)
 1か月前のプレミアファイナルで大会MVPを獲得した埼玉スタジアムで、今度は高校サッカー選手権のファイナルを戦う。青森山田高の堅守を支えるCB箱崎拓(3年)は「毎年見に行っていた、小学生の頃から憧れた大会」という夢舞台の決勝に挑む。

 昨年12月15日、埼スタで行われたプレミアリーグファイナル。プレミアEAST優勝の青森山田はプレミアWEST優勝の名古屋U-18を3-2で撃破し、「高校年代真の日本一」に輝いた。その頂上決戦でMVPに輝いたのが箱崎だ。安定感ある守備でハードワークに徹し、ひたむきにチームを鼓舞する影の殊勲者はCB藤原優大(2年)とコンビを組み、堅守を築いてきた。

 前日の準決勝・帝京長岡高(新潟)はその埼スタで行われたが、チャレンジャー精神でぶつかったプレミアファイナルとは異なる難しさがあったという。「自分としては後悔の残る準決勝になってしまった。チームを鼓舞して、誰よりも声を出し続けないといけない」と気を引き締め直した。また、ワイドに張った帝京長岡の左ウイングを警戒することで「DFラインの距離感が広がってしまった」という反省材料も得ている。

 あすの対戦相手は多彩な攻撃を繰り出し、今大会5試合16得点を記録している静岡学園高(静岡)だ。静学もMF松村優太(3年、鹿島内定)、MF小山尚紀(3年)らキーマンが両翼に揃う。前日の反省をファイナルに生かし、大会連覇へ。「どれだけワイドに張る選手を意識しながら、中央を締められるか」とイメージを膨らませ、技巧派集団を抑える意気込みだ。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

藤枝順心が女子選手権を制覇!神村学園を下して2大会ぶり4度目V

 第28回全日本高等学校女子サッカー選手権大会は12日、ノエビアスタジアム神戸で決勝を行い、藤枝順心高(東海2/静岡)が神村学園高(九州1/鹿児島)を1-0で下して、2017年度以来2大会ぶり4度目の優勝を果たした。

 試合は神村学園が押し気味に進めたが、決勝点は後半15分に生まれた。右サイドを突破した藤枝順心FW池口響子(3年)がPA右脇から右足を振り抜くと、GKの手を弾いてゴール左隅に吸い込まれ、ゴールネットを揺らした。

 神村学園も反撃を試み、果敢にゴールに迫ったが、最後まで藤枝順心の守備を崩し切ることができず、そのままタイムアップ。決勝点を挙げた池口は試合後のフラッシュインタビューで「絶対に決めると思って狙って蹴りました」と笑顔で語り、喜びをかみしめた。

●【特設】高校選手権2019

[選手権]準決勝写真特集

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
第98全国高校サッカー選手権準決勝写真特集

【準決勝】
(1月11日)
[埼玉スタジアム2002]
青森山田高 2-1 帝京長岡高
新潟県勢初の4強も…帝京長岡は王者に屈す
帝京長岡GK猪越優惟、相手主将を抱きかかえる“好プレー”
躍動の愛媛内定の帝京長岡DF吉田晴稀
町田内定の帝京長岡FW晴山岬「自分たちのサッカーやれた」
U-17日本代表の帝京長岡MF田中克幸「集大成がここでよかった」
京都内定の帝京長岡MF谷内田「緑の血を流しながらJでも」
帝京長岡は初の3位入賞、新潟県勢初の快挙にも悔し涙
青森山田が決勝へ! 18年ぶりの連覇に向けて王者邁進
横浜FC内定MF古宿理久「チャンスをものにしてやろうと」
青森山田DF藤原優大「どんなFWでも抑えられる」
青森山田DF内田陽介が先制アシスト
青森山田の守護神・佐藤史騎「勝たせられるGKに」
浦和内定MF武田英寿、青森山田“10番”が存在感
大舞台で8戦7発の勝負強さ、青森山田FW田中翔太が先制弾
渋すぎる青森山田“ギニュー特戦隊”パフォーマンス
貫禄滲ますスーパールーキー、青森山田MF松木玖生が決勝弾
現役高校生シンガー三阪咲が熱唱! 両応援団もエール


静岡学園高 1-0 矢板中央高
静岡学園GK野知滉平「決勝も無失点で優勝したい」
静岡学園、終了直前のPK弾で24年ぶり優勝へ王手
PK献上の矢板中央MF靏見拳士朗、相手エースに舌を巻く
ラストプレーのPKに屈した矢板中央の1年生GK
矢板中央の主将DF長江皓亮は後輩へ「来年は日本一を」
矢板中央の伝統を受け継ぐ2年生DF坂本龍汰
土壇場でPK被弾の矢板中央、初の決勝には届かず
鹿島内定の静岡学園MF松村優太がラストプレー決勝PK弾
PK獲得に絡んだ静岡学園MF小山尚紀「優太と目が」
試運転を終えた静岡学園FW加納大、決勝で「自分の存在売る」


●【特設】高校選手権2019