[MOM3083]富山一GK中村純四郎(3年)_キャッチ技術の基礎はドッジボールにあり。PKも止める大活躍!

PK戦2人目、富山一高GK中村純四郎が読み切ってストップ
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.13 プレミアリーグプレーオフ1回戦 JFAアカデミー福島U-18 0-0(PK2-4)富山一高 コカ広島ス]

 ドッジボールで磨かれたキャッチングと瞬発力。富山一高はJFAアカデミー福島U-18にシュート計17本を打たれたが、GK中村純四郎(3年)が安定したキャッチングや思い切りの良い飛び出しで防ぐなど110分間を無失点で終えた。そして、中村はPK戦2人目をストップ。勝利の立て役者となった。

 PK戦で中村は4人全ての方向を当てて相手にプレッシャーを掛けた。その結果、1人目のシュートはクロスバーをヒット。2人目は読み切ってセーブしている。これについて中村は「事前に昨日の夜、GK3人いるんですけれども、You Tubeとかに相手の試合が載っていたので、それでデータ作って何番はどっち蹴ると分析していました」と説明。そのデータを活躍に繋げた中村は、GK仲間に感謝していた。

 この日は動き出し巧みなJFAアカデミー福島に富山一DF陣は幾度か背後を取られていた。だが、中村が思い切りよく飛び出して対応。決して完璧ではなかったものの、守備範囲良く守り、また相手のシュートに対してゴール前でファンブルしなかったことも大きかった。

 中村は小学生時代、サッカー同様に「本気で」ドッジボールに取り組んでいたのだという。県大会では準優勝したほどの実力の持ち主。「(ドッジボールは)だいぶ練習になります。怖がらずにキャッチしなければいけない。GKは結構似ています」。至近距離からのシュートでもキャッチできる力は、ドッジボールによって基礎作りされたものだった。

 その中村について加納靖典コーチは「ゴールセービングに関しては彼の良さが出たかなと思います。我々はシュートセービングが強いGKを求めている。それを発揮してくれた」と評価。プリンスリーグ北信越の帝京長岡高戦ではミス絡みで4失点し、メンタル的に落ちていた時期もあったというが、自分で立て直してきた守護神が大一番で強みを発揮した。

 中村はプレミアリーグ昇格を懸けた横浜FCユース戦へ向けて「明後日勝ちます。最後の砦みたいになりたいです」と宣言。キャッチ技術の高さと瞬発力などを武器に、再び対戦相手の前に立ちはだかって、無失点でプレミア復帰を決める。

(取材・文 吉田太郎)
●高円宮杯プレミアリーグ2019特集

出場校チーム紹介:高知高(高知)

高知高は過去最高成績の8強、それ以上の成績を目指す
第98回全国高校サッカー選手権

高知高(高知)

高知高関連ニュース


高知高写真ニュース

▼全国大会日程
1回戦 vs.明秀日立高(茨城)
■出場回数
7年ぶり16回目
■過去の最高成績
8強(86年度)
■その他、過去の主な全国大会成績
全国高校総体出場15回
■監督
高橋秀治
■主将
DF林優太(3年)
■今季成績
[総体](四国優勝、全国3回戦敗退)
県決勝 1-0 高知中央高
四国準決勝 3-2 徳島北高(徳島)
※決勝は実施されず、大手前高松高(香川)との両校優勝
全国1回戦 3-2 松本国際高(長野)
全国2回戦 4-0 西武台高(埼玉)
全国3回戦 0-1 初芝橋本高(和歌山)
[リーグ戦]
高知県1部リーグ優勝(15勝2分1敗)
[新人戦](県優勝)
決勝 1-0 高知西高

■予選成績
2回戦 12-0 清水高
準々決勝 1-0(延長)高知西高
準決勝 3-0 高知工高
決勝 2-0 高知中央高
■都道府県予選決勝布陣&レポート
[4-5-1]

      楠瀬海
都築楓太 西森亨弥  松井匠
   小黒大翔 吉尾慎太郎
壬生椎成        畠中颯斗
   林優太  松岡健成 
      森亮太

[レポート] 
 インターハイ予選決勝と同じく高知中央高との決勝戦。高知はCB林優太(3年)中心にチャレンジ&カバーを徹底し、相手の快足FWオニエ・オゴチュクウ・プロミス(3年)への配球を封じる。そして後半、前がかりになった高知中央の背後を狙ってチャンスを作った高知は26分、MF吉尾慎太郎(3年)の右CKから林が先制ヘッド。アディショナルタイムにも交代出場MF川上康(3年)が加点し、2-0で県内3冠を達成した。

MOM:MF吉尾慎太郎(3年)
正確な左足で決勝点を演出

■予選取材記者(森田将義氏)チーム紹介
判断で勝負。過去最高成績へ
 86年度大会で記録した8強入りを超えるため、近年は相手を見て判断するサッカーを徹底してきた。新たなスタイルの成熟が進んだ今季は新人戦、インターハイの県2冠を達成し、「勝負強さが身についた」(高橋秀治監督)。今夏のインターハイでも16強入りを果たしたことでも実力は証明済みだ。
 戦いのベースとなるのはMF吉尾慎太郎(3年)と小黒大翔(3年)のダブルボランチを中心としたパスワーク。落ち着いた揺さぶりから相手が嫌がる仕掛けを判断し、縦突破が光るMF都築楓太(3年)や俊足のFW楠瀬海(2年)がゴールに迫る。予選決勝では、エースのMF野島唯暉(3年)を体調不良で欠きながらも快勝したように、個に頼らない組織的な崩しが売りだ。守備もDF林優太(3年)と松岡健成(3年)のCBコンビを中心に粘り強さが光る。GK森亮太(3年)の好セーブもあり、予選は無失点。最高成績を塗り替える準備は着々と進んでいる。

編集部+α
 8強、それ以上に挑戦する。86年度大会の8強入り後、高知は2度3回戦に進出しているが、滝川二高(兵庫)、青森山田高(青森)という名門校に阻まれた。インターハイも8強入りへの壁は厚く、10年ぶりに3回戦へ進出した今年も初芝橋本高(和歌山)に1点差で敗れている。ただし、「状況に耳を澄ませ」という高橋監督の下、埼玉王者の西武台高に4-0で快勝。選手たちは磨いてきた判断の部分で全国の強豪と勝負できるという自信を得ている。年々レベルが上ってきている高知の代表校。攻守に好選手も擁する高知が今冬、歴史を変える。
■予選取材記者(森田将義氏)注目選手
競り合いで強さ示すリーダー
DF林優太(3年)
「主将は冷静な守備対応でピンチを救うCB。小柄だが競り合いに強く、インターハイ全国大会と選手権予選決勝でヘディング弾をマーク」

パスワークの中心人物
MF吉尾慎太郎(3年)
「3列目から繰り出す長短のパスで攻撃のリズムを作る司令塔。正確な左足はセットプレーでも相手の脅威になる」

ブレイク期待の点取り屋
FW楠瀬海(2年)
「俊足を活かしたスペースへの飛び出しが光る点取り屋。サイドへ流れてのチャンスメークとシュートへの積極性で攻撃に勢いをもたらす」

■過去の全国大会成績
【12年度 第91回(1回戦敗退)】
1回戦 1-5 仙台育英高(宮城)
【09年度 第88回(3回戦敗退)】
1回戦 2-2(PK4-3)丸岡高(福井)
2回戦 1-0 星稜高(石川)
3回戦 1-2 青森山田高(青森)
【08年度 第87回(1回戦敗退)】
1回戦 1-1(PK8-9)武蔵工大二高(長野)
【06年度 第85回(1回戦敗退)】
1回戦 0-3 鹿島学園高(茨城)
【04年度 第83回(1回戦敗退)】
1回戦 0-1 韮崎高(山梨)
【03年度 第82回(2回戦敗退)】
1回戦 1-0 鶴岡東高(山形)
2回戦 1-3 岐阜工高(岐阜)
【02年度 第81回(3回戦敗退)】
2回戦 1-0 星稜高(石川)
3回戦 1-3 滝川二高(兵庫)
【97年度 第76回(2回戦敗退)】
2回戦 0-5 藤枝東高(静岡)
【92年度 第71回(1回戦敗退)】
1回戦 0-3 日大山形高(山形)
【89年度 第68回(1回戦敗退)】
1回戦 0-2 盛岡商高(岩手)
【88年度 第67回(2回戦敗退)】
2回戦 1-3 新潟西高(新潟)
【87年度 第66回(2回戦敗退)】
1回戦 3-3(PK5-3)丸岡高(福井)
2回戦 0-6 市立船橋高(千葉)
【86年度 第65回(8強)】
1回戦 2-0 新潟工高(新潟)
2回戦 2-0 古河一高(茨城)
3回戦 1-0 中津工高(大分)
準々決勝 0-3 東海大一高(静岡)
【85年度 第64回(1回戦敗退)】
1回戦 1-3 宇都宮学園高(栃木)
【81年度 第60回(1回戦敗退)】
1回戦 0-1 日大山形高(山形)
■登録メンバーリスト
-
▼関連リンク
●【特設】高校選手権2019

出場校チーム紹介:京都橘高(京都)

京都橘高は選手権で初優勝に挑戦する
第98回全国高校サッカー選手権

京都橘高(京都)

京都橘高関連ニュース


京都橘高写真ニュース

▼全国大会日程
2回戦 vs.鵬学園高(石川)
■出場回数
2年ぶり8回目
■過去の最高成績
準優勝(12年度)
■その他、過去の主な全国大会成績
全国高校選手権4強(13年度)、全国高校総体4強1回(19年)、同出場5回
■監督
米澤一成
■主将
MF佐藤陽太(3年)
■今季成績
[総体](全国4強)
県決勝 0-0(PK5-4)東山高
全国2回戦 1-1(PK4-1)専修大北上高(岩手)
全国3回戦 3-0 名経大高蔵高(愛知)
全国準々決勝 2-1 北越高(新潟)
全国準決勝 0-1 桐光学園高(神奈川1)
[リーグ戦]
プリンスリーグ関西2位(12勝2分4敗)
[新人戦](府優勝)
決勝 1-0 桂高

■予選成績
3回戦 8-0 堀川高
4回戦 9-2 城陽高
準々決勝 7-1 京都翔英高
準決勝 4-0 京都共栄高
決勝 3-2(延長)洛北高
■都道府県予選決勝布陣&レポート
[4-5-1]

      梅津倖風
高木大輝  梅村脩斗   西野太陽
   佐藤陽太 松浦蒼波
渋谷勇希         旭奈滉人
   金沢一矢 山内琳太郎
      中村青

[レポート] 
 21年ぶりの全国出場を目指した洛北高との決勝戦。前半相手の勢いある攻撃に苦戦した京都橘だが、後半4分、MF佐藤陽太(3年)の左FKをCB山内琳太郎(2年)が合わせて先制点を奪う。25分、洛北は左ショートコーナーからMF横田裕澄(2年)がゴール前に入れたボールがそのままゴールイン。京都橘は32分にMF西野太陽(2年)のヘディングシュートで勝ち越したが、洛北は試合終了2分前にFW山嵜洸太朗(3年)のゴールで再び同点に持ち込んだ。それでも京都橘は延長前半5分、6分、延長後半開始の計3度のタイミングで2人同時投入。流れを傾けると、延長後半6分にいずれも交代出場のFW古川巧(3年)、FW木原励(1年)、FW永井友也(2年)が絡んで決勝点をもぎ取った。3-2で競り勝った京都橘が2年ぶりとなる全国出場権を勝ち取った。
MOM:MF佐藤陽太(3年)
主将が攻守でチームを牽引

■予選取材記者(森田将義氏)チーム紹介
京都の新名門が日本一に挑戦
 予選決勝は、守備の主力を複数欠き、苦戦を強いられたが、交代選手の活躍により延長戦の末に勝利。米澤一成監督が「夏以降は選手層が厚くなって、競争が激しくなった。結果的には予選を勝ち抜く力になった」と話したようにベスト4に輝いたインターハイよりも戦力は充実している。チームの核となるのはMF佐藤陽太(3年)と志知遼大(3年)のダブルボランチ。二人を中心とした後方からのパスワークで左右を揺さぶり、MF高木大輝(3年)とDF旭奈滉人(3年)が縦を仕掛けるのが攻撃の定番だ。相手エリアでは、肉体派のFW梅津倖風(3年)が潰れ役となり、FW梅村脩斗(3年)と西野太陽(2年)が隙を突いてシュート。DF藤橋怜士(3年)が軸となる守備陣も大崩れの心配はない。近年は早期敗退が続くが、今年は上位入りの可能性は十分だ。

編集部+α
 2度目の選手権出場だった12年度大会でFW仙頭啓矢とFW小屋松知哉(ともに現京都)の強力2トップを中心に準優勝。翌13年度大会も4強入り、14年度大会でも8強入りを果たした。また、12年度から17年度大会まで京都府予選で初の6連覇達成。京都を代表する存在となったが、一方でFW岩崎悠人(現札幌)を擁した16年度大会初戦で市立船橋高(千葉)に競り負けるなど過去3度の選手権はいずれも初戦敗退を喫している。今年はインターハイで過去最高の3位。全国トップレベルの力を有していることを示した。大きな期待を背負う中で迎える選手権で歴史を変えるか、注目だ。
■予選取材記者(森田将義氏)注目選手
主将は関西屈指のタレント
MF佐藤陽太(3年)
「攻撃センス溢れるボランチ。ボランチの位置から攻撃を組み立てながら、機を見て前方に飛び出し、ゴールを狙う」

橘の“必殺仕事人”
MF志知遼大(3年)
「高い予測力を活かしたボールハントが光るMF。派手さはないが、確実にピンチの芽を摘む仕事ぶりはまさに必殺仕事人だ」

泥臭く戦う“梅梅コンビ”の長身FW
FW梅津倖風(3年)
「強さを活かしたポストプレーで攻撃の起点となるFW。二列目の良さが活きるのは泥臭い仕事ができる彼がいるから」

■過去の全国大会成績
【17年度 第96回(2回戦敗退)】
2回戦 0-1 上田西高(長野)
【16年度 第95回(1回戦敗退)】
1回戦 0-1 市立船橋高(千葉)
【15年度 第94回(1回戦敗退)】
1回戦 0-1 尚志高(福島)
【14年度 第93回(8強)】
2回戦 3-0 第一学院高(茨城)
3回戦 0-0(PK3-1)國學院久我山高(東京A)
準々決勝 0-4 前橋育英高(群馬)
【13年度 第92回(4強)】
2回戦 2-0 藤枝東高(静岡)
3回戦 3-2 那覇西高(沖縄)
準々決勝 2-0 市立船橋高(千葉)
準決勝 0-4 星稜高(石川)
【12年度 第91回(準優勝)】
1回戦 2-2(PK4-3)正智深谷高(埼玉)
2回戦 3-1 仙台育英高(宮城)
3回戦 4-1 丸岡高(福井)
準々決勝 2-1 帝京長岡高(新潟)
準決勝 3-0 桐光学園高(神奈川)
決勝 2-2(PK3-5)鵬翔高(宮崎)
【08年度 第87回(1回戦敗退)】
1回戦 0-2 前橋育英高(群馬)

■登録メンバーリスト
-
▼関連リンク
●【特設】高校選手権2019

出場校チーム紹介:和歌山工高(和歌山)

30年ぶりとなる全国に挑戦する和歌山工高
第98回全国高校サッカー選手権

和歌山工高(和歌山)

|和歌山工高関連ニュース


和歌山工高写真ニュース

▼全国大会日程
1回戦 vs.松本国際高(長野)
■出場回数
30年ぶり4回目
■過去の最高成績
初戦敗退(87、88、89年度)
■その他、過去の主な全国大会成績
全国高校総体出場1回
■監督
大宅光
■主将
FW田中彪(3年)
■今季成績
[総体](県3回戦敗退)
県3回戦 1-4 初芝橋本高
[リーグ戦]
和歌山県1部リーグ8位(5勝2分11敗)
[新人戦](県3回戦敗退)
県3回戦 1-1(PK3-4)橋本高

■予選成績
1回戦 4-0 向陽高
2回戦 24-0 高野山高
3回戦 1-1(PK3-2)和歌山北高
準々決勝 1-1(PK5-4)田辺高
準決勝 4-0 近大新宮高
決勝 1-0 和歌山南陵高
■都道府県予選決勝布陣図&決勝メモ
[4-3-3]
       田中彪
  武山遼太郎    泉裕大
神森渚生           小倉雄吏
    岩橋陽世 岩橋累斗

  藪恒星 中正司裕心 岩渕来玖
       山田尚輝


[決勝メモ]
 16年に再開校してから4年で決勝まで駒を進めてきた和歌山南陵高との代表決定戦。前半、FW江川公亮(3年)やFW川邊海人(3年)を起点に攻める和歌山南陵に対し、和歌山工は幅を広く使ったポジショニングからスペースを作り出す。そして39分、FW武山遼太郎(3年)のシュートのこぼれ球を拾ったMF神森渚生(2年)が先制ゴール。後半は和歌山南陵が立ち上がりからチャンスを作るなど反撃したが、GK山田尚輝(2年)を中心に跳ね返した和歌山工が1-0で勝ち、30年ぶりの優勝を決めた。

MOM:FW武山遼太郎(3年)
決勝点呼び込んだ攻撃の要

■予選取材記者(前田カオリ氏)チーム紹介
ポジティブに戦い、平成元年以来の全国へ
 県大会でベスト4に名を連ねることは近年も珍しくはなかったが、今年のインターハイ予選では県ベスト8に入ることも叶わず。その戦績から選手権予選ではシードがつかずに1回戦から戦うことになったが、日頃から心がけている「ネガティブな発言はせず、ポジティブに」(大宅光監督)1つ1つの試合と向き合った結果、平成元年以来となる、30年ぶりの優勝を果たした。
 練習時間が2時間しかない中で積み重ねてきたものがようやく結果に結びついた和歌山工は、「丁寧に」繋ぐことを意識してきた。自陣ゴール前でも意図なく長いボールを蹴ったり慌ててラインの外に掻き出したりといったことをせず、3、4本のパスを通してボランチに繋いでいく。バランスを見て動くことができるMF岩橋陽世(3年)を中心とした中盤では、数的優位を作り、少しずつ相手の中盤に歪みを生じさせて、相手陣内に入り込む。県予選で2度もつれ込んだPK戦でセーブしたGK山田尚輝(2年)の存在も心強い。

編集部+α
 94年度大会で初芝橋本高が初優勝して以降、和歌山県では初芝橋本が15回、近大和歌山高が6回、和歌山北高が4回と3校が選手権出場権を寡占してきた。その3校ではない優勝校は、93年度の田辺高以来。3強の壁を破っての全国出場だ。和歌山工は87年度の初優勝から3年連続で選手権に出場しているが、いずれも1点差で敗れている。そのうち、2度は長野県勢に敗戦。30年ぶりとなる選手権では、“鬼門”長野県勢の松本国際高から初勝利を挙げることに集中する。
■予選取材記者(前田カオリ氏)注目選手
泥臭くゴールへ向かうリーダー
FW田中彪(3年)
「前線でキープする力もあり、ゴール前で泥臭く戦える選手。身体能力も高いので、意外性のあるシュートも放つ」

豊富な運動量でゴール強襲
FW武山遼太郎(3年)
「運動量も豊富で、中盤にもタイミングよく顔を出す。相手の逆をとることも得意で、得点力もある選手」

和工の攻撃の起点
MF岩橋陽世(3年)
「チームにとって大事な中盤で、周囲の選手に声をかけながらバランスをとることができるキーパーソン。攻撃の起点」

■過去の全国大会成績
【89年度 第68回(1回戦敗退)】
1回戦 2-3 松本県ヶ丘高(長野)
【88年度 第67回(1回戦敗退)】
2回戦 1-2 市立船橋高(千葉)
【87年度 第66回(1回戦敗退)】
1回戦 0-1 松本深志高(長野)

■登録メンバーリスト
-
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●【特設】高校選手権2019

1年前“衝撃ハット”の尚志FW染野唯月は選手権登録メンバー外に。将来のため、仲間のために自身で決断

11日、尚志高FW染野唯月は制服姿で仲村浩二監督らとともに各所への全国大会出場挨拶に参加。その後欠場理由を明かした
 “半端ないストライカー”が、選手権を欠場する――。前回大会の全国高校サッカー選手権得点王・尚志高(福島)FW染野唯月(3年、鹿島内定)は、腰椎分離症(腰の疲労骨折)のため、12月30日に開幕する今回の選手権登録メンバー30名から外れることを選択。将来のため、仲間のため、最終的に本人がメンバーから外れることを決めたという。すでに登録期限を終えており、これまで染野が着用してきた「9」は期待の2年生FW阿部要門が背負う。

「登録に入ってみんなを鼓舞したり、FW陣にアドバイスして欲しかった」という仲村浩二監督やチームメートは、登録メンバー入りすることを希望したのだという。例え怪我でピッチに立てなくても、彼が登録メンバー入りすることを反対する選手はいない。だが、仮に登録されると、試合に出てチームを助けたくなってしまう。染野は悩み抜いた末、プロ入り前に全治数か月とも言われる怪我を悪化させたくないという意思と、出られない自分がメンバーに入ることよりも、他の3年生に全国を経験してもらいたいという思いからメンバーを外れることを決めた。

「ギリギリまで(チームメートたちと)話をして決断したという感じです。(最後は)自分の中で決めました。今後も考えた時にここで無理をしてしまったら影響してしまう。(また)自分の心の中で、(他の)3年生にちょっとでも経験をさせてあげたいという気持ちがあったので、決断をして外れました」。
 
 染野は昨年度の選手権準決勝・青森山田高戦で“衝撃”のハットトリックを達成するなど同大会得点王。今年もプレミアリーグEASTで得点王争いを演じ、日本高校選抜やU-18日本代表に選出された。そして、争奪戦の末に鹿島入り。怪我も多い1年だったが、“半端ないストライカー”“大迫2世”“ヘリコプターヘッド”などの代名詞を持つ染野は、その得点力や万能性の高さを見せつけてきた。

 その染野は11月17日の選手権福島県予選決勝で決勝点。鮮やかな左足ループシュートを決めて尚志を全国へ導いた。だが、その翌日、鹿島で診察を受けた際に腰椎分離症が判明。11月上旬にはU-18日本代表としてAFC U-19選手権予選に出場したが、当時から状態は芳しくなく、直後の選手権予選も出場時間を制限されていた。それだけに、覚悟もしていたという染野は「(診断を聞いて)感情的にはならなかったです」

 注目エースとともに全国制覇を目指してきたチームのショックは大きかった。万全でなくても県予選決勝で違いを見せていたことは確か。そのエースが欠場することによって、チーム全体の目標である全国制覇がより難しいものになるかもしれない。ただし、選手たちはそのアクシデントを力に変えようとしている。登録外になる意思を染野から直接聞いたというFW山内大空主将(3年)は、「アイツの気持ちも分かります。『メンバー入ったら出たくなってしまう。気持ちの整理がつかない』と言っていたんですよね。そこは自分たちがしっかりと結果で応えようと思っています」とエースの気持ちを理解していた。

 今年の尚志は染野が不在となる期間が多く、彼がいなくても勝てるチームを目指してきた。実際に彼がベストコンディションでなかったインターハイは、染野のサポートを受ける形で山内や2年生FW阿部が躍動し、3位に入っている。それだけに今回もチームメートは発奮。GK鈴木康洋(3年)は「(最初聞いた時は)マジかって。でも、このチームならば一体感もあるし、みんなを信じるしかないですね」と語り、山内は「(染野の欠場が決まり、)吹っ切れたと言うか。『アイツがいないんだから、俺らで全国制覇するしかない』と、より一層雰囲気は良くなりました。この1か月レベルアップできるようにしたい」と誓った。

 染野は「怪我して出れないのは悔しいですけれども、それ以上に今後のためというのがあったので、自分の決断に悔いはないです」とコメント。自身が出場しない選手権について、「想像はしたくてもできないと思うんですけれども、サポートできる部分はあると思うので。ピッチ外で応援できれば良い」と前を向いた。

 染野の決断を尊重した仲村監督は、「(彼の)将来のためと、みんな納得している。だからこそ、覚悟を持ってプロの世界に飛び込んで欲しい」とエール。染野も「(尚志の仲間のためにも)プロに入ってからは絶対に活躍しなければいけない。責任を持ってプロに行かなくちゃいけないのかなと思います」と語り、尚志の仲間や恩師たちのためにもプロの世界で活躍する意気込みでいる。染野は今週末にも一旦尚志を離れ、暫く鹿島でリハビリを実施する予定。その後、再び尚志に合流し、“最後の選手権”はピッチ外から仲間たちの日本一を全力でサポートする。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

1年前“衝撃ハット”の尚志FW染野唯月は選手権登録メンバー外に。将来のため、仲間のために自身で決断

11日、尚志高FW染野唯月は制服姿で仲村浩二監督らとともに各所への全国大会出場挨拶に参加。その後欠場理由を明かした
 “半端ないストライカー”が、選手権を欠場する――。前回大会の全国高校サッカー選手権得点王・尚志高(福島)FW染野唯月(3年、鹿島内定)は、腰椎分離症(腰の疲労骨折)のため、12月30日に開幕する今回の選手権登録メンバー30名から外れることを選択。将来のため、仲間のため、最終的に本人がメンバーから外れることを決めたという。すでに登録期限を終えており、これまで染野が着用してきた「9」は期待の2年生FW阿部要門が背負う。

「登録に入ってみんなを鼓舞したり、FW陣にアドバイスして欲しかった」という仲村浩二監督やチームメートは、登録メンバー入りすることを希望したのだという。例え怪我でピッチに立てなくても、彼が登録メンバー入りすることを反対する選手はいない。だが、仮に登録されると、試合に出てチームを助けたくなってしまう。個人としても2年連続の得点王、選手権日本一という夢があった。染野は悩み抜いた末、プロ入り前に全治数か月とも言われる怪我を悪化させたくないという意思と、出られない自分がメンバーに入ることよりも、他の3年生に全国を経験してもらいたいという思いからメンバーを外れることを決めた。

「ギリギリまで(チームメートたちと)話をして決断したという感じです。(最後は)自分の中で決めました。今後も考えた時にここで無理をしてしまったら影響してしまう。(また)自分の心の中で、(他の)3年生にちょっとでも経験をさせてあげたいという気持ちがあったので、決断をして外れました」。
 
 染野は昨年度の選手権準決勝・青森山田高戦で“衝撃”のハットトリックを達成するなど同大会得点王。今年もプレミアリーグEASTで得点王争いを演じ、日本高校選抜やU-18日本代表に選出された。そして、争奪戦の末に鹿島入り。怪我も多い1年だったが、“半端ないストライカー”“大迫2世”“ヘリコプターヘッド”などの代名詞を持つ染野は、その得点力や万能性の高さを見せつけてきた。

 その染野は11月17日の選手権福島県予選決勝で決勝点。鮮やかな左足ループシュートを決めて尚志を全国へ導いた。だが、その翌日、鹿島で診察を受けた際に腰椎分離症が判明。11月上旬にはU-18日本代表としてAFC U-19選手権予選に出場したが、当時から状態は芳しくなく、直後の選手権予選も出場時間を制限されていた。それだけに、覚悟もしていたという染野は「(診断を聞いて)感情的にはならなかったです」

 注目エースとともに全国制覇を目指してきたチームのショックは大きかった。万全でなくても県予選決勝で違いを見せていたことは確か。そのエースが欠場することによって、チーム全体の目標である全国制覇がより難しいものになるかもしれない。ただし、選手たちはそのアクシデントを力に変えようとしている。登録外になる意思を染野から直接聞いたというFW山内大空主将(3年)は、「アイツの気持ちも分かります。『メンバー入ったら出たくなってしまう。気持ちの整理がつかない』と言っていたんですよね。そこは自分たちがしっかりと結果で応えようと思っています」とエースの気持ちを理解していた。

 今年の尚志は染野が不在となる期間が多く、彼がいなくても勝てるチームを目指してきた。実際に彼がベストコンディションでなかったインターハイは、染野のサポートを受ける形で山内や2年生FW阿部が躍動し、3位に入っている。それだけに今回もチームメートは発奮。GK鈴木康洋(3年)は「(最初聞いた時は)マジかって。でも、このチームならば一体感もあるし、みんなを信じるしかないですね」と語り、山内は「(染野の欠場が決まり、)吹っ切れたと言うか。『アイツがいないんだから、俺らで全国制覇するしかない』と、より一層雰囲気は良くなりました。この1か月レベルアップできるようにしたい」と誓った。

 染野は「怪我して出れないのは悔しいですけれども、それ以上に今後のためというのがあったので、自分の決断に悔いはないです」とコメント。自身が出場しない選手権について、「想像はしたくてもできないと思うんですけれども、サポートできる部分はあると思うので。ピッチ外で応援できれば良い」と前を向いた。

 染野の決断を尊重した仲村監督は、「(彼の)将来のためと、みんな納得している。だからこそ、覚悟を持ってプロの世界に飛び込んで欲しい」とエール。染野も「(尚志の仲間のためにも)プロに入ってからは絶対に活躍しなければいけない。責任を持ってプロに行かなくちゃいけないのかなと思います」と語り、尚志の仲間や恩師たちのためにもプロの世界で活躍する意気込みでいる。染野は今週末にも一旦尚志を離れ、暫く鹿島でリハビリを実施する予定。その後、再び尚志に合流し、“最後の選手権”はピッチ外から仲間たちの日本一を全力でサポートする。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:日々の結晶(市立船橋高・中村颯)

市立船橋高のチームメートとゴールを喜ぶ中村颯
東京のユースサッカーの魅力、注目ポイントや国内外サッカーのトピックなどを紹介するコラム、「SEVENDAYS FOOTBALLDAY」

 1点をリードしながら、押し込まれている状況で声が掛かる。残された時間は20分あまり。もし、このまま試合を終えられれば、憧れ続けた舞台が待っている。もし、引っ繰り返されれば、憧れ続けた舞台は夢と消える。特別な一戦の、特別な時間帯。ただ、頭の中は不思議なくらい冷静だった。「こういう特別な試合の時に監督の気持ちに応えられるかとか、他の選手たちの気持ちを背負って、それをどう表現するかは日々の練習や意識の所で変わってくると思うので、そこを常に自分は意識しながら生活してきましたから」。とっくに腹は決まっている。鮮やかな青色のユニフォームを纏い、中村颯はファイナルのピッチへと駆け出していく。

 見慣れない“3文字”に目が留まる。11月27日。選手権千葉県予選準決勝。これが大会初戦となる市立船橋高のスタメンリストの中に見つけた、“中村颯”という名前。今シーズンは高円宮杯プレミアリーグを中心に同校の複数試合を取材してきたものの、その文字列を目にした記憶はなかった。11人の並びを見ると、おそらくはセンターバックでの起用。妙に気になった6番の背中を、試合が始まると自然と追ってしまう。

 2年生センターバックの石田侑資とコンビを組んだ中村は、専修大松戸高が膨らませたい攻撃の芽を1つずつ、確実に摘んでいく。試合終盤には本来のレギュラーであり、今シーズンのチームを最終ラインから支えてきた鷹啄トラビスが投入されたものの、中村はそのまま3バックの右へ入り、タイムアップの瞬間をピッチ上で迎える。4-0の快勝。市立船橋は7年連続となる決勝進出をしっかりと手繰り寄せた。

 試合後。今年からチームを率いている波多秀吾監督に中村のことを尋ねると、こういう答えが返ってきた。「11月最初のエスパルス戦でサイドバックで出場したんですけど、ここ最近で本当に凄く伸びてきた選手です。なので、今回もトラビスがケガを負っている状況でしたけれども、この間のアントラーズ戦同様に彼の穴をしっかりと埋めてくれましたし、今はなかなか外すことができないような状況にもなってきているので、嬉しい悩みですね」。ますますその存在が気になってくる。スタッフに声を掛けて呼んでもらうと、中村は少し戸惑うような表情を浮かべながら、ロッカールームから姿を現す。

「個人的には初めての選手権だったので、昨日の夜は眠れなかったというか、緊張する所もあったんですけど、チーム全体の力が自分の励みになって、自分の背中を押してくれました」。しっかりと考えながら、ゆっくりと言葉を紡ぎ出す。実直な性格は、その柔らかい物腰と漂わせている雰囲気からすぐに察することができた。

 もともと長崎の出身だった中村は、中学入学時に親元を離れてJFAアカデミー熊本宇城に入校。同時に熊本の強豪クラブとして知られるFCKマリーゴールドに加わり、自身の実力を磨いていたが、進路を考え始めた中学2年生の冬に、“あるチーム”と運命的な出会いを果たす。「東福岡の選手権の試合をテレビで見ていた時に、最初は東福岡を応援していたんですけど、相手のチームが凄く上手くて、そっちに見入っちゃって。で、『凄いなあ。これはどこのチームなのかなあ』とよく見たら市立船橋で、『このチームでやりたいな』とシンプルに思ったんですよね」。

 14歳で定めた決意は貫かれた。練習参加を経て、市立船橋高校の門を叩く。あの日にテレビで見た鮮やかな青色のユニフォームを纏い、あの日にテレビで見た舞台に立つことを目標に高校生活をスタートさせたが、全国でもトップレベルの選手が集う競争は想像以上に激しく、Aチームの試合に出場することはおろか、そのグループに食い込むことすら許されない。

 3年生になっても立ち位置に劇的な変化は訪れず、「新チームになって代が変わってからもAチームかBチームかという境界線をずっとさまよっていて、夏休み明けぐらいにまたBに落ちました」とその頃を振り返る中村。9月22日にグラスポで開催された、Aチームが戦うプレミアリーグと、Bチームで臨む県1部リーグのダブルヘッダー。改めてその日の取材ノートをめくると、“2試合目”の右サイドバックの位置に彼の名前はあったが、プレーの印象は正直残っていない。今からほんの3か月前では、それが中村の立ち位置だった。

 偶然がチャンスを連れてくる。10月13日に開催予定だったプレミア第15節の清水エスパルスユース戦が、台風19号の影響で11月2日へと延期されたため、FIFA U-17ワールドカップの日本代表に選出された畑大雅が欠場を余儀なくされる中、右サイドバックの代役へと指名されたのが中村だった。3年目でようやく掴んだAチームでの公式戦デビューは、残留の懸かっている大事なプレミアの舞台。怯んでもおかしくないシチュエーションにも、「イチフナっていう名前を背負っている以上、やらないといけない」と覚悟を決める。

「冷静さが自分の特徴なので、『頭は冷静に、体は激しく』ということを意識しました」と振り返るデビュー戦。何とも言えない緊張感に包まれながら、後半途中に負傷交替するまで、自身に課された役割をまっとうしてみせる。「『あ、やれるな』というか、戦える自信は付きましたね」と中村。試合も1-0で市立船橋が勝利を収め、残留のために大きな勝ち点3を積み上げることに成功した。

 すると、続くプレミアの鹿島アントラーズユース戦では、負傷を抱える鷹啄の代役として、今度は本職のセンターバックでスタメン出場。「今までできていた当たり前のことを、当たり前にやることができたのが良かったと思います」と言及したように、今度は90分間のフル出場を果たし、またもチームの貴重な勝利に貢献。立ち位置は一変する。その流れの先にあった選手権の“デビュー戦”も、スタメンフル出場で完封勝利。中村にとっての11月が、極めて濃厚な1か月だったことは言うまでもない。

 会話を重ねる内に、気付いたことがあった。地に足が付いている。繰り返して強調するのは日々の積み重ね。「大事なのは試合だけじゃないし、ピッチ外でもチームの一員として恥じない行動を取ってきましたし、そういう所も日頃の生活の中で成長できているから、こういう勝ちに繋がるのかなと思いました」「もう残りの高校サッカーも短い中で、チームに対して自分がどう貢献するかと考えた時に、それこそピッチ内でも、ピッチ外でも、3年生という立場でやることは同じだと思っていて、今一番心の中にあるのはイチフナとしての看板を背負っているという責任と感謝です」。常に“日常”を見つめてきたからこそ、“特別”をその延長線上だと捉えていることが、じわじわと伝わってくる。

 決勝への意気込みを尋ねると、少しだけ考えた中村は、丁寧に語り出す。「やっぱり地元を離れているので、その分だけ周囲の人たちの期待も背負っていますし、遠い所でも映像で頑張っている姿を見せたいですね。それこそ優勝したり、タイトルを獲ることも1つの恩返しになりますし、あとは1つの希望を子供たちに与えられればいいなと思います」。遠く離れた地の人々へ想いを馳せる。自分にできることを、1つずつ。すべてはあの日、運命的に出会った青色のユニフォームのために。

 11月30日。選手権千葉県予選決勝。相手は流通経済大柏高。7年連続の同一カード。市立船橋にとって最大のライバルであり、最高のライバルが、手ぐすねを引いて彼らを待ち受ける。畑もブラジルから帰国し、鷹啄も戦列に復帰したため、中村はベンチからのスタート。それでも、やるべきことに迷いはない。そのために日々を積み重ねてきた。

 全国注目のファイナルは白熱する。前半12分に市立船橋が森英希のゴールで先制したものの、後半7分に流通経済大柏が同点に追い付く。9分には再び森が得点を奪うも、15分に流通経済大柏が同点ゴールをマーク。シーソーゲームはその2分後に10番を背負う鈴木唯人の一撃で、またもや市立船橋が勝ち越し。追い付くしかない流通経済大柏は、セットプレーを含めて一段階強くアクセルを踏み込み、攻勢を強めていく。

 1点をリードしながら、押し込まれている状況で声が掛かる。残された時間は20分あまり。もし、このまま試合を終えられれば、憧れ続けた舞台が待っている。もし、引っ繰り返されれば、憧れ続けた舞台は夢と消える。特別な一戦の、特別な時間帯。ただ、頭の中は不思議なくらい冷静だった。「こういう特別な試合の時に監督の気持ちに応えられるかとか、他の選手たちの気持ちを背負って、それをどう表現するかは日々の練習や意識の所で変わってくると思うので、そこを常に自分は意識しながら生活してきましたから」。とっくに腹は決まっている。鮮やかな青色のユニフォームを纏い、中村はファイナルのピッチへと駆け出していく。

「リードしていて押し込まれている場面は、自分がピッチに出場できる可能性が大きかったので準備していたんですけど、いざっていう時に出場できたのも率直に嬉しいし、監督も自分を信じて送り出してくれたので、もうしっかりとゴールを守り切る所を考えていました」。特別な試合だからこそ、積み重ねてきた日常が、より試される。ロングスロー。フリーキック。コーナーキック。掛け続けられる圧力を、青き仲間と共に必死に弾き返し続ける。80分間が終わった。アディショナルタイムは5分。自分にできることを、1つずつ。すべてはあの日、運命的に出会った青色のユニフォームのために。

 待ちに待ったホイッスルが聞こえた時、自然と涙が頬を伝っていた。「2年間出れなかった選手権で、『やっと自分たちの代で全国に行ける』という想いと、やっぱり波多監督も1年目なので、『全国に出してあげたい』という気持ちもみんなの中に大きくありましたし、イチフナの代表としてピッチに立たせてもらっている中で、出れない選手たちやスタンドで見てくれている選手たちに、勝利という形で恩を返せたかなって想いが溢れ出てきたんだと思いますね」。みんな泣いていた。3年間を共にしてきたピッチの仲間も、ベンチの仲間も、スタンドの仲間もみんな泣いていた。日々の結晶は、最後に彼らへ優しく微笑んだ。

 スタッフに声を掛けて呼んでもらうと、中村は充実感の漂う笑顔を浮かべながら、ロッカールームから姿を現す。「こういう特別な試合の時に監督の気持ちに応えられるかとか、他の選手たちの気持ちを背負って、それをどう表現するかは日々の練習や意識の所で変わってくると思うので、そこを常に自分は意識しながら生活してきましたから」。3日前より少しだけ口調は軽かったが、やはり基本的なスタンスは変わらない。ゆっくりと、丁寧に、言葉を選んでいく。

 この日は長崎から両親が観戦に訪れていた。地元を飛び出して6年目。それゆえに、感謝の想いは日々募っていく。「中1から親元を離れているので、親のありがたみは凄く感じますし、サポートしてくれる人がいるから、こういうありがたい立場で試合に出れるとか、そういうことを自分に言い聞かせています。常に謙虚な気持ちがないと、恩返しの想いが行動で伝わらないのかなと。自分は言葉じゃなくて、それこそ今日の優勝のような結果で、行動で感謝を伝えたいと思っているので」。中村の“恩返し”は、きっと誰より彼を応援している2人にも届いたことだろう。

 あえて聞いてみる。「イチフナに来て良かった?」。いったん自分の中で整理した中村は、笑顔でこう返してくれた。「はい。自分はイチフナが好きなので。今日は卒業していった人も来てくれていたんですけど、その人たちに『ありがとう』って言ってもらった時に、『ああ、イチフナで良かったな』って思いました」。シンプルで実直な言葉へ、3年間の重みが確かに滲んだ。

 積み重ならないものは、結晶へと変化しない。逆に言えば、積み重ねたものだけが、結晶へと変化する。何気なく過ぎて行ってしまう日々の中で、どれだけ積み重ねられるものを見つけ、見つけたものを積み重ねてきたか。それはきっと今回のような特別な時に、また試されるのだろう。それでも、心配はない。中村が積み重ねてきた“日々の結晶”は、責任も感謝も涙もすべて吸い込んで、次の特別な時にいつでも取り出せるよう、彼の心の内側でキラキラと輝いている。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

▼関連リンク
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SEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史


出場校チーム紹介:丸岡高(福井)

昨年度選手権16強。今年は8強以上を狙う丸岡高
第98回全国高校サッカー選手権

丸岡高(福井)

|丸岡高関連ニュース


丸岡高写真ニュース

▼全国大会日程

■出場回数
2年連続30回目
■過去の最高成績
4強(97年度)
■その他、過去の主な全国大会成績
全国高校総体出場31回
■監督
小阪康弘
■主将
FW田海寧生(3年)
■今季成績
[総体](全国3回戦敗退)
県決勝 4-2(延長)福井商高
全国1回戦 1-0 聖和学園高(宮城)
全国2回戦 1-1(PK3-2)矢板中央高(栃木)
全国3回戦 0-1 桐光学園高(神奈川1)
[リーグ戦]
プリンスリーグ北信越3位(10勝3分5敗)
[新人戦](県優勝、※同点優勝)
県決勝 2-2 福井商高

■予選成績
準々決勝 3-0 福井工大附福井高
準決勝 4-0 藤島高
決勝 2-1 北陸高
■都道府県予選決勝布陣図&決勝メモ
[4-5-1]
       田海寧生
明間希   川中浩夢  中村晃大
   飯田晃明 小谷武哉
田島優也       遠藤悠生
   藤本輝晶 中出伶央 
      倉持一輝

[決勝メモ]
 昨年度選手権16強の福井王者がシュート数20対2と圧倒した。前半から丸岡が一方的に攻め込み、前半14分、右CKの流れからDF田島優也(3年)がクロスを配給。ファーで構えたDF藤本輝晶(3年)が押し込み、先制に成功。さらに後半10分、中盤でパスをカットしたDF遠藤悠生(3年)が縦パスをつけると、抜け出したMF川中浩夢(2年)がドリブルで持ち出し、右足でネットを揺らした。終了間際に北陸高も1点を返したが、後半だけでシュート16本と攻撃を畳み掛けた丸岡が夏冬連覇を達成。2年連続で選手権切符をつかんだ。

MOM:FW川中浩夢(2年)
「2年目の選手権へギア」

■予選取材記者(編集部・佐藤)チーム紹介
逞しくなって帰還した選手権。16強の壁破れ
 福井県勢最多となる30回目の出場を決めた名門校は前回大会で16強に食い込むと、この一年間で豊富な経験を積み、選手権の舞台に戻ってきた。昇格1年目の北信越プリンスリーグでは一時は首位を走り、3位に食い込む奮闘ぶり。主将でエースのFW田海寧生(3年)が13得点と大暴れし、町田内定FW晴山岬(帝京長岡高)に次いで堂々の得点ランキング2位。1トップの田海が抑えられても、FW中村晃大(2年)、MF川中浩夢(2年)、FW明間希(3年)という“2列目トリオ”が鋭い突破力と得点力を備えており、セットプレーから182cmDF藤本輝晶(3年)の一発もある。寄せが速い組織的な守備を構え、小阪康弘監督は「ある程度は全国でも攻撃に耐えられるようになった」と述べつつ、一戦必勝の姿勢を強調する。経験値を生かして警戒してくる相手を上回り、チーム一丸で「ベスト16を超える」(田海主将)という目標へと向かう。
■予選取材記者(編集部・佐藤)注目選手
攻撃の柱は10番主将
FW田海寧生(3年)
「攻撃の基準点となる181cmのCFはフィジカルを生かした空中戦の強さ、スピードに乗った裏抜けが武器。貪欲な姿勢で得点力に磨きをかけた」

丸岡“2列目トリオ”の中央
MF川中浩夢(2年)
「縦への推進力が光る丸岡のトップ下。1年生だった前回大会はジョーカー起用で結果を残した勝負強さもあり、活躍が期待される一人」

経験豊富なビッグセーバー
GK倉持一輝(3年)
「1年時からゴールマウスを預かる守護神はPK戦にめっぽう強い。至近距離の対応も得意とし、勝負どころのシュートストップで躍進を支える」

■過去の全国大会成績
【18年度 第97回(3回戦敗退)】
1回戦 2-2(PK5-4)東山高(京都)
2回戦 1-0 米子北高(鳥取)
3回戦 2-3 日本航空高(山梨)
【15年度 第94回(2回戦敗退)】
2回戦 1-1(PK1-4)松山工高(愛媛)
【14年度 第93回(2回戦敗退)】
2回戦 1-2 立正大淞南高(島根)
【13年度 第92回(1回戦敗退)】
1回戦 0-3 広島皆実高(広島)
【12年度 第91回(3回戦敗退)】
2回戦 2-1 広島観音高(広島)
3回戦 1-4 京都橘高(京都)
【10年度 第89回(1回戦敗退)】
1回戦 1-3 初芝橋本高(和歌山)
【09年度 第88回(1回戦敗退)】
1回戦2-2(PK3-4)高知高(高知)
【08年度 第87回(1回戦敗退)】
1回戦 1-2 長崎日大高(長崎)
【06年度 第85回(8強)】
1回戦 0-0(PK5-3)立正大淞南高(島根)
2回戦 0-0(PK5-3)初芝橋本高(和歌山)
3回戦 0-0(PK5-4)那覇西高(沖縄)
準々決勝 1-2 八千代高(千葉)
【05年度 第84回(1回戦敗退)】
1回戦 1-1(PK1-3)佐賀東高(佐賀)
【04年度 第83回(1回戦敗退)】
1回戦 0-1 草津東高(滋賀)
【03年度 第82回(3回戦敗退)】
1回戦 2-0 徳島商高(徳島)
2回戦 1-1(PK4-2)福島東高(福島)
3回戦 3-4 筑陽学園高(福岡)
【02年度 第81回(2回戦敗退)】
2回戦 0-5 国見高(長崎)
【01年度 第80回(2回戦敗退)】
2回戦 0-1 大津高(熊本)
【00年度 第79回(3回戦敗退)】
2回戦 1-1(PK5-3)宮古高(沖縄)
3回戦 1-2 真岡高(栃木)
【99年度 第78回(2回戦敗退)】
1回戦 2-1 四日市中央工高(三重)
2回戦 2-3 星稜高(石川)
【98年度 第77回(3回戦敗退)】
2回戦 4-0 佐賀商高(佐賀)
3回戦 0-1 前橋育英高(群馬)
【97年度 第76回(4強)】
1回戦 1-1(PK5-4)鵬翔高(宮崎)
2回戦 0-0(PK3-2)沼田高(広島)
3回戦 1-0 滝川二高(兵庫)
準々決勝 1-1(PK4-2)大津高(熊本)
準決勝 1-3 東福岡高(福岡)
【96年度 第75回(2回戦敗退)】
1回戦 3-0 高知農高(高知)
2回戦 0-0(PK0-3)国見高(長崎)
【95年度 第74回(2回戦敗退)】
2回戦 1-2 耳成高(奈良)
【94年度 第73回(2回戦敗退)】
2回戦 1-2 東福岡高(福岡)
【93年度 第72回(2回戦敗退)】
1回戦 3-0 広陵高(奈良)
2回戦1-1(PK2-4)水戸短大附高(茨城)
【92年度 第71回(2回戦敗退)】
1回戦 4-0 近大和歌山高(和歌山)
2回戦 0-1 れいめい高(鹿児島)
【90年度 第69回(1回戦敗退)】
1回戦 3-4 鎮西学院高(長崎)
【89年度 第68回(1回戦敗退)】
1回戦 2-2(PK2-4)広島国泰寺高(広島)
【88年度 第67回(2回戦敗退)】
1回戦 2-0 大阪商高(大阪)
2回戦 0-5 南宇和高(愛媛)
【87年度 第66回(1回戦敗退)】
1回戦 3-3(PK3-5)高知高(高知)
【85年度 第64回(1回戦敗退)】
1回戦 0-3 米子東高(鳥取)
【81年度 第60回(1回戦敗退)】
1回戦 0-1 小野田工高(山口)
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■登録メンバーリスト
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▼関連リンク
●【特設】高校選手権2019

出場校チーム紹介:興國高(大阪)

注目の初出場校、興國高
第98回全国高校サッカー選手権

興國高(大阪)

興國高関連ニュース


興國高写真ニュース

▼全国大会日程
2回戦 vs.昌平高(埼玉)
■出場回数
初出場
■過去の最高成績
-
■その他、過去の主な全国大会成績
-
■監督
内野智章
■主将
MF田路耀介(3年)
■今季成績
[総体](府6回戦敗退)
府6回戦 0-1 関西大一高

[リーグ戦]
プリンスリーグ関西4位(9勝1分8敗)
■予選成績
5回戦 5-0 東住吉高
6回戦 3-1 帝塚山泉ヶ丘高
準々決勝 1-0 関西大一高
準決勝 3-1 近大附高
決勝 2-0 阪南大高
■都道府県予選決勝布陣&決勝メモ
[4-5-1]
      杉浦力斗
下村和暉 樺山諒乃介 南拓都
   田路耀介 湯谷杏吏
橋本丈          高安孝幸
   平井駿助 中島超男   
      田川知樹

[決勝メモ] 
 プリンスリーグ関西王者・阪南大高との決勝戦。前半、興國はFW杉浦力斗(2年)へのロングボールを多用し、DF高木践(3年)を中心に守る阪南大高にジャブを打ち続る。そして後半に勝負。前がかりになる相手に対し、MF湯谷杏吏(2年)が前向きでプレーする回数を増加するなど仕掛けていく。そして後半30分、MF樺山諒乃介(2年)の突破から杉浦が先制ゴール。GK田川知樹(2年)のビッグセーブでピンチを凌ぐと、38分にCKから樺山が決めて2-0で勝った。興國は悲願の初優勝。全国大会初出場を決めた。

MOM:MF樺山諒乃介(2年)
初優勝導く1G1A!
■予選取材記者(森田将義氏)チーム紹介
全国を驚かすか?タレント揃う注目の初出場校

 プリンスリーグ関西に初参戦した今年は守備が乱れ、黒星が目立った。夏のインターハイ予選もベスト16で敗退。主将のMF田路耀介(3年)は「立ち上げの頃は勝てなくて本当に苦しかった」と振り返る。しかし、夏以降はGK田川知樹(2年)とDF平井駿助(2年)が大きく成長。チーム全体としても守備意識を高めたこともプラスとなり、予選5試合で2失点に抑える手堅い試合運びに繋げた。
 代名詞である攻撃も、プリンスリーグで格上との戦いを経験したことでポゼッション一辺倒ではなく、時間帯に応じてカウンターを繰り出すなど臨機応変さを身につけた。田路とMF湯谷杏吏(2年)のダブルボランチを中心に、MF樺山諒乃介(2年)やFW杉浦力斗(2年)といったプロ注目株が繰り出す仕掛けは全国でも通用するはずだ。全国を驚かせる準備は進んでいる。

編集部+α
 今年はMF田路耀介主将(3年)と右SB高安孝幸(3年)の金沢入りが内定。昨年は左SB起海斗が山口、FW村田透馬が岐阜、FW中川裕仁が愛媛へ加入し、その前年も3選手がプロ入りを果たしている。OBには中央大を経てプロ入りし、日本代表まで駆け上がったFW古橋亨梧(現神戸)もおり、今後、大学を経由してプロ入りする選手も増加しそうだ。古橋に続く存在の台頭など、これからの部分もあるが、“育成の興國”として定着していることは確か。来年は樺山と田川、杉浦、平井、MF南拓都(2年)ら大量のJリーガー誕生が期待されているが、その前に実績を残すか。注目の初出場校だ。


■予選取材記者(森田将義氏)注目選手
ブレイクなるか、逸材GK
GK田川知樹(2年)
「フィールドプレーヤー並のテクニックと高精度のキックで攻撃の起点となる守護神。今年は横浜FMへの練習参加によって、ファインセーブの回数も増えた」

名は『あずり』。センス抜群のプレーメーカー
MF湯谷杏吏(2年)
「巧みなポジショニングでDFラインからボールを引き出し、攻撃のスイッチを入れるプレーメーカー。『あずり』という名前は、イタリア代表の好きの父から、『アズーリ』の愛称にちなんで命名された」

注目校のエースは大会屈指のドリブラー
MF樺山諒乃介(2年)
「持ち前のドリブルとパスで決定機を作りつつ、左右両足から放つ強烈なシュートでゴールネットも揺らす絶対的な10番。初の全国で興國らしさを出せるかは彼次第だ」

■過去の全国大会成績
-
■登録メンバーリスト
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▼関連リンク
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注目の初出場校、興國高
第98回全国高校サッカー選手権

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▼全国大会日程
2回戦 vs.昌平高(埼玉)

■出場回数
初出場
■過去の最高成績
-
■その他、過去の主な全国大会成績
-
■監督
内野智章
■主将
MF田路耀介(3年)
■今季成績
[総体](府6回戦敗退)
府6回戦 0-1 関西大一高

[リーグ戦]
プリンスリーグ関西4位(9勝1分8敗)
■予選成績
5回戦 5-0 東住吉高
6回戦 3-1 帝塚山泉ヶ丘高
準々決勝 1-0 関西大一高
準決勝 3-1 近大附高
決勝 2-0 阪南大高
■都道府県予選決勝布陣&決勝メモ
[4-5-1]
      杉浦力斗
下村和暉 樺山諒乃介 南拓都
   田路耀介 湯谷杏吏
橋本丈          高安孝幸
   平井駿助 中島超男   
      田川知樹

[決勝メモ] 
 プリンスリーグ関西王者・阪南大高との決勝戦。前半、興國はFW杉浦力斗(2年)へのロングボールを多用し、DF高木践(3年)を中心に守る阪南大高にジャブを打ち続る。そして後半に勝負。前がかりになる相手に対し、MF湯谷杏吏(2年)が前向きでプレーする回数を増加するなど仕掛けていく。そして後半30分、MF樺山諒乃介(2年)の突破から杉浦が先制ゴール。GK田川知樹(2年)のビッグセーブでピンチを凌ぐと、38分にCKから樺山が決めて2-0で勝った。興國は悲願の初優勝。全国大会初出場を決めた。

MOM:MF樺山諒乃介(2年)
初優勝導く1G1A!
■予選取材記者(森田将義氏)チーム紹介
全国を驚かすか?タレント揃う注目の初出場校

 プリンスリーグ関西に初参戦した今年は守備が乱れ、黒星が目立った。夏のインターハイ予選もベスト16で敗退。主将のMF田路耀介(3年)は「立ち上げの頃は勝てなくて本当に苦しかった」と振り返る。しかし、夏以降はGK田川知樹(2年)とDF平井駿助(2年)が大きく成長。チーム全体としても守備意識を高めたこともプラスとなり、予選5試合で2失点に抑える手堅い試合運びに繋げた。
 代名詞である攻撃も、プリンスリーグで格上との戦いを経験したことでポゼッション一辺倒ではなく、時間帯に応じてカウンターを繰り出すなど臨機応変さを身につけた。田路とMF湯谷杏吏(2年)のダブルボランチを中心に、MF樺山諒乃介(2年)やFW杉浦力斗(2年)といったプロ注目株が繰り出す仕掛けは全国でも通用するはずだ。全国を驚かせる準備は進んでいる。

編集部+α
 今年はMF田路耀介主将(3年)と右SB高安孝幸(3年)の金沢入りが内定。昨年は左SB起海斗が山口、FW村田透馬が岐阜、FW中川裕仁が愛媛へ加入し、その前年も3選手がプロ入りを果たしている。OBには中央大を経てプロ入りし、日本代表まで駆け上がったFW古橋亨梧(現神戸)もおり、今後、大学を経由してプロ入りする選手も増加しそうだ。古橋に続く存在の台頭など、これからの部分もあるが、“育成の興國”として定着していることは確か。来年は樺山と田川、杉浦、平井、MF南拓都(2年)ら大量のJリーガー誕生が期待されているが、その前に実績を残すか。注目の初出場校だ。


■予選取材記者(森田将義氏)注目選手
ブレイクなるか、逸材GK
GK田川知樹(2年)
「フィールドプレーヤー並のテクニックと高精度のキックで攻撃の起点となる守護神。今年は横浜FMへの練習参加によって、ファインセーブの回数も増えた」

名は『あずり』。センス抜群のプレーメーカー
MF湯谷杏吏(2年)
「巧みなポジショニングでDFラインからボールを引き出し、攻撃のスイッチを入れるプレーメーカー。『あずり』という名前は、イタリア代表の好きの父から、『アズーリ』の愛称にちなんで命名された」

注目校のエースは大会屈指のドリブラー
MF樺山諒乃介(2年)
「持ち前のドリブルとパスで決定機を作りつつ、左右両足から放つ強烈なシュートでゴールネットも揺らす絶対的な10番。初の全国で興國らしさを出せるかは彼次第だ」

■過去の全国大会成績
-
■登録メンバーリスト
-
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出場校チーム紹介:神村学園高(鹿児島)

神村学園高は鹿児島3連覇
第98回全国高校サッカー選手権

神村学園高(鹿児島)

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▼全国大会日程
1回戦 vs.前橋育英高(群馬)

■出場回数
3年連続7回目
■過去の最高成績
4強(06年度)
■その他、過去の主な全国大会成績
全国高校総体4強1回(07年)、同出場6回
■監督
有村圭一郎
■主将
DF軸丸広大(3年)
■今季成績
[総体](全国3回戦敗退)
県決勝 3-0 出水中央高
全国1回戦 3-2 國學院久我山高(東京1)
全国2回戦 6-1 西原高(沖縄2)
全国3回戦 1-1(PK2-4)尚志高(福島)
[リーグ戦]
プリンスリーグ九州5位(8勝1分9敗)
[新人戦](県優勝)
県決勝 3-1 出水中央高
■予選成績
1回戦 3-0 鹿児島高専
2回戦 5-0 樟南高
準々決勝 2-1 鳳凰高
準決勝 5-2 れいめい高
決勝 2-1 出水中央高
■都道府県予選決勝布陣&決勝メモ
[4-4-2]
    野邊滉生  寺田聡
       濱屋悠哉
永吉飛翔         下川床勇斗
       大迫魁士
軸丸広大          中島吏九
    稲田翔真 成富勝仁 
       吉山太陽

[決勝メモ] 
 県新人戦、インターハイ県予選と同じく出水中央高との決勝戦。前半途中に4-4-2から4-3-3へスイッチしてサイドを効果的に攻める神村学園は前半32分、GK吉山太陽(2年)のロングキックから、抜け出したMF濱屋悠哉(3年)が頭で先制点を奪う。ロングスローなどで反撃する出水中央は後半19分、GK帆北航(3年)がロングフィード。FW松山正利(3年)が頭で繋ぎ、MF大村龍之介(3年)が頭で同点ゴールを押し込んだ。それでも、神村学園は26分、MF樋渡鯉太郎(3年)からパスを受けた濱屋がドリブルで仕掛けてPKを獲得。出水中央は試合終盤に決定機を作ったが、神村学園が守りきり、2-1で3連覇を達成した。

MOM:MF濱屋悠哉(3年)
注目エースが圧巻2発!
■予選取材記者(編集部・竹内)チーム紹介
絶対的なエース、自在なシステム、果敢な攻撃スタイル。全てを揃えて頂点へ!

 数々の強豪校が全国トップクラスの実績を残してきた鹿児島県において、黄金時代の到来を感じさせる3連覇となった。8日間で5試合という全国でも異例の短期決戦を勝ち抜いた原動力は、トップ下を務める「大黒柱」(有村圭一郎監督)のMF濱屋悠哉(3年)。全国総体で4得点を挙げたエースは今予選でもゴールを量産し、チーム総得点数の半分を超える11ゴールを記録した。もっとも、チームの魅力はそれだけではない。4-3-1-2、4-1-4-1の布陣を自在に使い分ける組織力、サイドバックが中央に絞ってボランチがサイドに開くという現代型戦術、めまぐるしいポジションチェンジを繰り出しながらのパスワーク、あえて孤立させたウインガーによる単独突破攻撃はいずれも出色。全国では「リスクを冒したくなかったけど、もうちょっとつなげたはず」(有村監督)という県予選での心残りも胸に、主導権を握り続けて相手の守備陣をきりきり舞いにさせる『新神村スタイル』を見せ、多くの選手が中等部からの6年間を共にし目指してきた「日本一」(濱屋)を実現させる構えだ。
■予選取材記者(編集部・竹内)注目選手
絶対的エースに弱点はあるのか!?
MF濱屋悠哉(3年)
「チーム得点数の大半を奪い、攻撃の組み立て役も担い、守備でも献身的。伝統の14番を背負うエースに弱点は見当たらない。それでも『全てが足りない』と本人談。プロ入りに至らなかった悔しさを全国の舞台にぶつける」

ユニーク戦術の鍵を握る主将
DF軸丸広大(3年)
「全国16強で敗れた総体は負傷欠場。帰ってきた主将の存在が夏からの最大の積み上げだ。本職の左SBでは非凡な突破力を見せつつ、ポゼッション攻撃では中央に絞ってボランチ役も兼任。ユニークな戦術の手綱を握る」

どの持ち場でもハイスペック
DF下川床勇斗(2年)
「県決勝では中盤ダイヤモンドのインサイドハーフで先発し、大外に張り出してウインガーのような役割を担った。しかし、ポジションを中寄りに移せばボランチ役も可能。戦況にとらわれない輝き方ができる選手だ」

■過去の全国大会成績
【18年度 第97回(1回戦敗退)】
1回戦 1-1(PK3-5)尚志高(福島)
【17年度 第96回(3回戦敗退)】
1回戦 1-0 秋田商高(秋田)
2回戦 1-0 昌平高(埼玉)
3回戦 0-1 矢板中央高(栃木)
【13年度 第92回(1回戦敗退)】
1回戦 0-1 岐阜工高(岐阜)
【10年度 第89回(1回戦敗退)】
1回戦 1-4 前橋育英高(群馬)
【09年度 第88回(8強)】
2回戦 10-2 中京大中京高(愛知)
3回戦 2-0 境高(鳥取)
準々決勝 0-4 青森山田高(青森)
【06年度 第85回(4強)】
2回戦 0-0(PK3-0)秋田商高(秋田)
3回戦 2-1 桐光学園高(神奈川)
準々決勝 2-0 星稜高(石川)
準決勝 0-1 作陽高(岡山)

■登録メンバーリスト
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出場校チーム紹介:愛工大名電高(愛知)

選手権に初挑戦する愛工大名電高
第98回全国高校サッカー選手権

愛工大名電高(愛知)

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▼全国大会日程
1回戦 vs.筑陽学園高(福岡)
■出場回数
初出場
■過去の最高成績
-
■その他、過去の主な全国大会成績
全国高校総体出場1回
■監督
宮口典久
■主将
DF鈴木郁人(3年)
■今季成績
[総体](県4強)
県準決勝 1-1(PK7-8)岡崎城西高
[リーグ戦]
愛知県2部リーグ3位(9勝3分6敗)
[新人戦](県4強)
県準決勝 0-4 東邦高

■予選成績
2回戦 12-0 安城東高
3回戦 3-0 名東高
準々決勝 2-1 刈谷高
準決勝 1-1(PK6-5)中京大中京高
決勝 4-2 岡崎城西高
■都道府県予選準決勝布陣&決勝レポート
[4-4-2]

  森重裕太郎   平井碧
      大竹貫太 
鈴置阿利登       冨田拓未
       時晃生
堀朝陽          川西絃太
    横井空  鈴木郁人 
      安原哲平

[レポート] 
 インターハイ予選準決勝で敗れた岡崎城西高との再戦。愛工大名電が前半だけで4ゴールと圧倒した。まずは前半4分、MF冨田拓未(3年)が左CKを蹴り込み、相手のクリアボールをFW平井碧(3年)がヒールで落とすと、密集の中でMF鈴置阿利登(3年)が左足を振り抜き、ゴール上部を射抜いた。その5分後にも右CKのトリックプレーからフリーになった平井が鮮やかな右足ボレーを突き刺し、2-0。岡崎城西MF小林泰嘉(3年)に1点を返されたが、27分にも平井が獲得したPKをキッカーの鈴置が沈めた。36分には鮮やかな連係からMF大竹貫太(3年)がとどめの4点目。負傷明けのDF川西絃太(3年)を今大会初起用して相手のMF若槻唯杜(3年)を抑える策も実り、4-2で打ち合いを制した愛工大名電が悲願の県制覇を達成した。

■県予選取材記者(編集部・佐藤)チーム紹介
走り負けない名電スタイルで扉を開く。全国でも真っ向勝負
 愛知県の高校サッカー史に新たな歴史を刻み、創部51年目で初の選手権切符をもぎ取った。全国出場へと押し上げたのが、昨夏に取り入れたハイプレス戦術だ。圧巻の運動量でハイプレスを徹底し、相手のビルドアップを寸断。アグレッシブな守備でボールを奪っては縦に速く、次々とゴールに襲い掛かる。ハードワークを牽引するのは県決勝で全4点に絡んだFW平井碧(3年)とFW森重裕太郎(3年)の高速2トップ。県予選チーム最多6得点のMF大竹貫太(3年)、キック精度が高いMF冨田拓未(3年)、エースMF鈴置阿利登(3年)が持ち味と走力を発揮するほか、県決勝ではセットプレーも炸裂した。一方、守備陣を統率するのは主将DF鈴木郁人 (3年)。宮口典久監督も「鈴木が言うとチームがまとまる」と信頼を置く精神的支柱だ。気鋭の初出場校は全国でも真っ向勝負へ。強豪校を相手にも臆せず、走り負けない名電スタイルをぶつける。
■県予選取材記者(編集部・佐藤)注目選手
7番は名電のエースナンバー
MF鈴置阿利登(3年)
「テクニックとスピードを備えた破壊力あるドリブルで相手を剥がし、周囲を生かしてゴールに結び付ける。シュート技術も光り、県決勝で2得点」

攻守をつなぐアンカー
MF時晃生(3年)
「中盤で攻撃の芽を摘む180cmの大型MF。的確な判断、位置取りからボールを奪っては精度の高いパスを繰り出し、攻撃のスイッチを入れる。県総体ベスト11」

スケール大の現代型GK
GK安原哲平(2年)
「フィールド出身の武器を持つ現代型GK。強烈なロングキックで守→攻に転じ、声でチームを動かす。“バレー家系”のポテンシャルを持ち、スケール感あふれる」

■過去の全国大会成績
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■登録メンバーリスト
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出場校チーム紹介:五條高(奈良)

悲願の選手権の舞台に臨む五條高イレブン
第98回全国高校サッカー選手権

五條高(奈良)

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五條高写真ニュース

▼全国大会日程
1回戦 vs.仙台育英高(宮城)
■出場回数
初出場
■過去の最高成績
-
■その他、過去の主な全国大会成績
全国高校総体出場3回
■監督
吉岡一也
■主将
MF池田達哉(3年)
■今季成績
[総体](全国2回戦敗退)
県決勝 4-0 一条高
全国1回戦 0-0(PK5-4)日体大柏高(千葉)
全国2回戦 0-0(PK6-7)名経大高蔵高(愛知)
[リーグ戦]
奈良県1部リーグ2位(11勝4分3敗)
[新人戦(ブロック優勝)]
ブロック決勝 6-1 奈良学園高

■予選成績
2回戦 5-2 大淀高
3回戦 6-0 帝塚山高
準々決勝 1-0 橿原高
準決勝 2-0 生駒高
決勝 3-2(延長)一条高
■都道府県予選決勝布陣&レポート
[4-3-3]

     菅田剛平
斉藤蓮        井澤悠
 和田谷蓮貴  瀬羅威吹
     池田達哉
米川優希      井本郁弥
   和田拓海 藤崎仁
     中尾優貴


[レポート] 
 4連覇を狙う一条高との決勝戦。五條は前半12分、右SB井本郁弥(3年)の右CKをファーサイドから飛び込んだMF池田達哉主将(3年)が豪快に頭で決めて先制点を奪う。一条は後半2分、中盤でボールを奪い返すと、エースMF松山知樹(3年)が鮮やかな右足シュートで決めて同点に追いつく。一条はさらに19分、右サイドからのスルーパスに反応したMF梅景俊輔(2年)が勝ち越し点を決めた。それでも五條は後半37分、左ショートコーナーからMF豊田魁人(2年)がコントロールシュートを決めて2-2。延長に持ち込んだ。そして、延長後半4分、五條は井本の右CKをファーサイドの池田が再び頭で決めて決勝点。相手の反撃を凌いだ五條が3-2で悲願の選手権初出場を決めた。

MOM:FW池田達哉(3年)
「初優勝に導く2ゴール」
■県予選取材記者(前田カオリ氏)チーム紹介
「夢見ていた舞台」へ初出場
 13年ぶりの全国大会出場となった夏に続き、選手権奈良県予選で初優勝。試合前には全員でビクトリーロードを大合唱して結束感と士気を高め、吉岡一也監督が「五條に来てから20年間ずっと夢見ていた舞台」である選手権全国大会への切符を勝ち取った。裏を狙ったパスや、日々の練習で特に注力してきたドリブルを活かしたサイドからの突破で、チャンスを作る。DF井本郁弥(3年)やMF瀬羅威吹(3年)などキックの精度が高い選手も多く、流れの中だけでなくセットプレーもしっかりと得点に結びつけることができる。守備についても積極的で、前線の選手からプレッシングに行き、素早く寄せてボールを回収。攻守の切り替えもスピーディーだ。

編集部+α
 13年度から16年度まで4年連続で県決勝敗退。その間、1点差の敗戦やPK戦での敗退もあり、どうしても選手権の舞台に届かなかった。だが、17年3月に完成した人工芝グラウンドで技術を3年間磨いてきた世代が歴史を変える初優勝。今年はインターハイ予選も突破して全国大会では千葉県代表の日体大柏高を0-0からのPK戦の末に撃破している。GK中尾優貴(3年)やCB和田拓海(3年)を中心とした粘り強い守りと攻撃力で今冬でも夏同様に1勝を果たし、勢いに乗る。
■県予選取材記者(前田カオリ氏)注目選手
奈良MVP。攻守の要
MF池田達哉(3年)
「中盤の底でボールを回収、素早く前線にボールを送る。攻守ともに要となる選手。ヘディングでの得点力もある」

タフネス。五條のダイナモ
MF和田谷蓮貴(2年)
「運動量の多い五條のスタイルの中で、終盤になっても走力が衰えないタフなプレイヤー。執念深くボールを追う」

攻撃的なチーム支える守護神
GK中尾優貴(3年)
「チームが前で戦える裏に、体を張ってゴールを守ってくれるGKあり。キックの精度もあり、チャンスも作る」

■過去の全国大会成績
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最注目エース不在の中でのチーム作り、全国制覇後のエネルギー…難しい1年過ごした桐光学園は神奈川決勝で涙

インターハイで同校にとって初の日本一を勝ち取った桐光学園高だが、選手権日本一の夢は叶わず
[11.30 選手権神奈川県予選決勝 桐光学園高 0-1 日大藤沢高 ニッパ球]

 夏冬連続日本一、選手権初優勝を目指した桐光学園高は、神奈川県予選決勝で姿を消した。前半はMF中村洸太(3年)やCB安久レオナルド高貴(3年)、CB奈良坂巧(2年)を中心に相手をサイドに追い込む守りでボールを奪い取り、カウンターからU-20日本代表FW西川潤(3年、C大阪内定)のミドルシュートやヘディングシュートでゴールへ。ポゼッションする上手さも示して試合の主導権を握っていた。

 押し込む中でピンチもあったが、前半終了間際に抜け出してきた日大藤沢高MFをGK北村公平(2年)がストップ。そして0-0で迎えた後半、先に決定機を作ったのは桐光学園だった。7分、FWラナイメアー祈安(3年)とのコンビネーションでMF神田洸樹(3年)が右サイドを抜け出し、そのクロスからファーサイドのMF所新太郎(3年)が狙うが、コースを突いた一撃はGKにセーブされてしまう。

 すると、直後にサイドを攻略されて失点。北村のビッグセーブで追加点を阻止した桐光学園は神田のラストパスから西川が右足シュートを狙うなど反撃したが、逆に前掛かりになった分、ボールの奪い返しに手こずるなど苦しい展開となってしまう。

 徐々に残り時間が短くなる中、鈴木勝大監督から「ギアを上げろ」という声が飛んでいたが、なかなか攻撃のギアが上がらず。西川は「(ギアを上げることが)できなかったことが全てだったと思います」。最後まで日大藤沢の堅守をこじ開けることができないまま、敗戦が決まった。

 西川は「前半はリズムを作って攻撃できたと自分の中でも感じていました。失点する前辺りから上手く流れを持っていかれて、そこから自分たちの良さを出せなくなったのでそれは本当に悔しい思いしかないですね」とコメント。今年の最注目選手を擁する夏の王者は涙で会場を後にすることになった。

 今年の桐光学園は絶対的なエースである西川が不在となる期間が非常に多かった。加入内定していたC大阪への練習参加や公式戦出場、U-20日本代表、U-17日本代表の活動で度々チームを空けてしまうことに。関東大会予選や県1部リーグのように、西川抜きで臨んだ公式戦もある。

 西川がチームにもたらす経験値が大きいことは確か。それでも、鈴木監督は西川がいる時といない時と両方のチーム作りを強いられたシーズンへの難しさを実感していた。西川がU-17ワールドカップとその後の休養のために初戦10日前まで不在。加えて主軸の中村や奈良坂、安久が怪我で離脱するなど、桐光学園は万全の準備で選手権予選に臨んだ訳ではなかったはずだ。
 
 インターハイ優勝後、より成長する意欲、エネルギーを持って冬へ向かうことの難しさも知った。この経験は必ず糧に。1年時からゴールを守る北村や奈良坂、右SB 前川壮太(2年)、MF 岩根裕哉(1年)ら経験した下級生たちが来年、再び選手権日本一に挑戦する。


(取材・文 吉田太郎)
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11日間で4試合目の“大一番”。東福岡は過密日程突破目指すも、連覇は6でストップ

東福岡高は0-1で敗れ、連覇が6でストップ
[12.4 選手権福岡県予選決勝 東福岡高 0-1 筑陽学園高 レベスタ]
 
 過密日程を勝ち抜くことができなかった。MF荒木遼太郎主将(3年)がU-17ワールドカップ日本代表候補選手だった関係で、東福岡高は11月27日の準決勝(対東海大福岡高)が初戦。同24日と12月1日にプレミアリーグWESTの試合が行われ、この日の決勝が11日間で4試合目となる公式戦の“大一番”だった。

 プレミアリーグWESTでは降格圏9位の福岡U-18と勝ち点3差、得失点は7差と優位な状況にあるものの、残留決定は12月8日の最終節の結果次第。連戦の中で「高校年代最高峰のリーグ戦」プレミアリーグWEST残留を目指す戦いと、激戦区・福岡での選手権予選7連覇を勝ち取ることの両立は簡単なノルマではなかった。

 大黒柱の荒木が11月24日の試合で負傷するなどけが人も多い中、東福岡はメンバーを入れ替えるなど試行錯誤しながら、連戦を乗り越えようとしていた。だが、この日は0-1で敗戦。森重潤也監督は「何とか結果に結びつけようとしていたけれども、そこでなかなか結果に結びつかない難しさを感じたという風には思います」と語っていた。

 前半はスピーディーパスワークやサイド攻撃など“東福岡らしい”戦いを表現できず、荒木を投入した後半は勢いを増したものの、仕掛ける姿勢を欠いた。相手の好守があったことは間違いないが、公式記録上のシュート数はわずか2本。CKも1本とセットプレーの数を増やすこともできなかった。

 2年生MF上田瑞季は「正直、(荒木)遼太郎君が出てきた瞬間にホッとした部分もあったと思うし、そういうところで遼太郎君頼みになっていた部分もあったと思う」と語り、「本当に情けなかったですね、自分が。もうちょっと3年生のために走れる部分もあったと思うし、決めれるチャンスもあったと思うので、もっと後悔が残ってしまったかなと思います」と唇を噛んだ。

 この日は一般の同級生たちも多く応援に駆けつけ、ピッチで戦う選手に声援を送っていた。それに応えることができずに、7年ぶりの予選敗退。森重監督は上田やMF青木俊輔(2年)ら1、2年生へ向けて「(3年生の涙する姿を)後輩たちが目に焼き付けて、結果を出すことの難しさだったり、泥臭くてでも勝負に対するこだわりというのを持っていかないといけない部分もあるんじゃないかと思います」と期待していた。

 12月8日にプレミアリーグWEST残留が決まれば、セカンドチームがプリンスリーグ九州参入戦に進出。新チームは1月の県新人戦で8連覇に挑戦する。来季の10番候補である上田は「また一からやるしかないなと思います。(来年の選手権は)日本一という形で。来年(の県決勝)は絶対に3-0とか、4-0とか大差で勝って、全国の舞台に立って、遼太郎君たちに報告できれば良いと思います」と誓った。近年、福岡県内で圧倒的な強さを見せ続け、全国タイトルも獲得している“赤い彗星”は、この日の敗戦を絶対に「無駄にしない」。

(取材・文 吉田太郎)
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怪我で32分間のみのプレー。鹿島内定の東福岡MF荒木主将「もっと良い影響を与えられる選手になれたら良かった」

東福岡高のU-17日本代表MF荒木遼太郎主将
[12.4 選手権福岡県予選決勝 東福岡高 0-1 筑陽学園高 レベスタ]
 
「悔しい1年だったと思います」

 名門・東福岡高で下級生時から主力を担ってきたU-17日本代表MF荒木遼太郎主将(3年、鹿島内定)は、最高学年となったこの1年間についてそう振り返った。県新人戦とインターハイ予選を制したものの、九州新人大会は自身のPK失敗で敗退。日本一を目指したインターハイは怪我で欠場した。

 目標としていたU-17ワールドカップも怪我の影響でメンバー落ち。それだけに、「日本一を獲ってやるという気持ちが人一倍強い」と特別な思いを持って選手権に臨んでいた。だが、11月24日のプレミアリーグWEST・大津高戦で右足首を捻挫。その後、選手権予選準決勝とプレミアリーグWEST・福岡U-18戦は欠場してこの試合を迎えていた。

「動き自体は問題はないんだけど、キックっていう部分に関してまだ思い切りやれない部分があった。(再び)やってしまうと動けなくなるかもしれないというリスクもあった」(森重潤也監督)という判断でベンチスタート。戦況を見て、勝負どころでの投入と見られていたが、10番は0-0の後半8分にピッチへ送り出された。

 彼がピッチに入る前から、東福岡の応援席は荒木への大コール。絶大な信頼感と、特別な期待感が伝わってくるほどだった。そして、シャドーの位置に入った荒木はサイドへ流れてボールを受け、少ないタッチでのパスやボールキープで押し込む一因に。相手DFラインの背後へアーリークロスを入れたり、プレースキックで得点に絡もうとしていた。

 荒木は長短の質の高いキックと視野の広さ、相手の逆を取る動きからゴールを奪うこともできるプレーヤーだ。だが、この日は怪我の影響もあってキックの精度がわずかにブレ、ミドルレンジからシュートを狙うこともできない。後半29分の失点後は何とか自分がチームの雰囲気を上げようとしたが、焦りのある中でそれができず、ゴールに結びつけることもできないまま敗戦の時を迎えた。

「もっと良い影響を与えられる選手になれたら良かったと思います。連覇をしている中で自分たちの代になって自分たちも連覇をしてやるという気持ちが本当に強かったんですけれども、決勝戦で筑陽さんはそれ以上の気持ちがあったと思うし、だから筑陽さんが勝ったと思う。筑陽さんには頑張ってもらいたいです」。連覇は6でストップ。ただし、荒木は悔しさを滲ませながらも敗戦を認め、対戦した筑陽学園高の選手たちを讃えていた。

 東福岡の3年間では特にメンタル面で成長できたと感じている。300名もの部員の中で下級生時から先発を勝ち取り、注目される中で重圧を跳ね返す力を身に着けてきた。試合後は最後までスタンドの前に残って仲間たちに感謝と謝罪。自分が全国舞台に立つことができなかったこと以上に、メンバーに入りたくても入れなかった仲間を全国に連れて行けなかったことへの悔しさが大きかった。

「メンバーに入りたくても入れない人がいたので、その選手たちを全国に連れて行けなくて、本当に申し訳ない気持ちがあって……。アイツらのおかげでここまで来れたのもあったので『ゴメンな』という気持ちで言いました。自分がこのチームのキャプテンになって、上手く引っ張れたかどうか分からないですけれども、自分に信じてついてきてくれた仲間たちに最後は『本当にありがとう』と伝えたかったので伝えに行きました」。

 後輩たちへ向けては「この試合を一日たりとも忘れることなく、来年の選手権でさらに良い結果を残していってくれれば、この大会が一個下の学年からしたら無駄じゃなかったと言えるものになると思います」とメッセージ。後輩たちがこの悔しさをバネに日本一を奪還してくれることを期待した。

 荒木自身はすぐにプロ生活がスタートする。「自分はこのあとのステージがしっかりと残っている。そのステージでは、さらに厳しいことが待っていると思うので、この高校サッカーで培ったものを今後のステージで発揮していけたら良いなと思っています」と力を込めた。この日、「もっと良い影響を与えられる選手になれたら良かった」と実感していた荒木は鹿島でその課題を改善し、“常勝軍団”に影響を与えられる選手、チームを勝たせる選手になる。



(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

筑陽学園は“熱い“リーダー・GK野中が果敢な飛び出しで完封勝利に貢献

筑陽学園高の“熱いリーダー”GK野中友椰主将
[12.4 選手権福岡県予選決勝 東福岡高 0-1 筑陽学園高 レベスタ]

「キャプテンが熱いので(微笑)。自分たちもキャプテンに仕事をさせないくらい球際とシュートコースは切ってやっていました」

 筑陽学園高のCB吉村颯真(3年)は熱いリーダー・GK野中友椰主将(3年)について、そう説明していた。後方から鼓舞する守護神の前で戦う気持ちを見せ続けたチームは、被シュート2本で完封勝利。野中は「シュートもあんまなかったし、危ないシュートもほとんどなかったし、そこは自分とDFとしっかりと協力してできたかなと思います」と微笑んでいた。

 1-0の試合終盤、野中は相手のセットプレーやクロスに対して思い切りの良い飛び出し。東福岡高は質の高いボールや相手にとって難しいボールを入れてきていたが、野中が素晴らしいパンチングで遠くへクリアしてしたことが相手の反撃の勢いを止めていた。

「相手もすごく前に圧をかけてきていたので、DFラインも不安があったと思うんですけれども、自分がしっかり出て、キャッチ、パンチングして選手を安心させたら良いなと思ったので、そこは大舞台らしく強い気持ちでいきました」

 これまでは躊躇して前に出ることができずに失点したこともあるのだという。だが、この日はなかなか経験できない決勝の舞台で大胆にプレーすることを決意。その前に出る姿勢も勝利に繋がり、「しっかりと出れて良かったと思います」と喜んだ。

 インターハイ予選では準々決勝で苦杯を喫し、プリンスリーグ九州も残留争いの苦しいシーズンだった。その中で、主将は1年生から3年生を集めてのミーティングで「戦えないと勝てないという話をしていました」。ミーティングを大事にし、そこでチームに戦う姿勢を求めてきたリーダーが、自身も大一番で戦う姿勢を見せて11年ぶりの優勝を手繰り寄せた。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

筑陽学園のDFリーダー・吉村「自信を持っていました」。東福岡相手にシュートを打たせない守りを発揮

試合終盤、筑陽学園高のDFリーダー、CB吉村颯真(右)が東福岡高のエースMF荒木遼太郎をマーク
[12.4 選手権福岡県予選決勝 東福岡高 0-1 筑陽学園高 レベスタ]

 筑陽学園高のDFリーダー、CB吉村颯真(3年)は自分たちの守りに自信を持って決勝戦に臨んでいたのだという。「九国(大付)、飯塚戦と(総監督の)吉浦(茂和)先生から『今、シュートコースを切れてブロックできているから良い』と言われていたので自信を持っていました」。その言葉通り、CB岡宗万(3年)や右SB古賀健琉(3年)、左SB今田光(3年)らとともにシュートコースを消し続けて東福岡高に枠内シュートを打たせず、被シュートはわずか2。サイド攻撃を得意とする東福岡にCKも1本しか与えず、完封勝利を果たした。

 相手の得点源でもある2シャドーには味方のボランチとともに対応。縦に入ってきたボールを奪い取り、ショートカウンターにつなげた。空中戦でも強さを発揮する吉村は先制後のCB益永望光(3年)投入に伴い、相手の“危険人物”であるMF荒木遼太郎(3年)の監視役に。荒木が後方に下がった時は距離を取って守備のバランスを整えつつ、ゴール前に入ってきた際にはピッタリと身体を寄せてボールを触らせなかった。

「益永が弾いたのを先に触ること。前も向かせないような、相手にバックパスさせるような守備をしました」と吉村。益永が投入された際に自分たちで考えて吉村が荒木に対応したというが、その判断も1-0の勝利に繋がった。

 試合後に吉村は「自分たちの守備が結構できていたと思います」と会心の表情。そして、強敵・東福岡を無得点に封じての勝利を「すごく嬉しいです」と喜んだ。全国大会へ向けては「また失点もゼロで抑えて、得点もショートカウンターで1点、2点獲れたら十分です。この選手権ではセットプレーで1点も獲れていないので全国までにそこも磨いていきたい」。跳躍力を活かしたヘッドはチームの武器の一つ。全国では守備だけでない活躍でチームに貢献する。

(取材・文 吉田太郎)
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[MOM3079]筑陽学園FW深松大雅(3年)_ 縦突破!負傷乗り越え、仲間のために戦う“切り札”が決勝アシスト

筑陽学園高の“切り札”FW深松大雅は決勝点をアシストした
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.4 選手権福岡県予選決勝 東福岡高 0-1 筑陽学園高 レベスタ]

 夏に膝を負傷し、チームに戻ってきたのは選手権予選初戦直前。今大会、筑陽学園高のFW深松大雅(3年)は負傷前の先発から代わり、スーパーサブの役割を担っている。そのドリブラーが宿敵・東福岡高との決勝でチームを勢いづけ、決勝点をもたらした。

 後半15分に投入された深松は、20分にFKのこぼれ球を右足で合わせる。「最初だったので、思い切り行った方が良いかな」と放った右足シュートは右ポストを直撃。これで自身も、チームも乗った。

 そして29分には右サイドから強引に縦突破。DFと激しく競り合いながらクロスを上げ切ると、ファーサイドでフリーだったMF過能工太郎(3年)が右足で決勝点を叩き出した。

 深松は「コーチたちから『切り返すな』と言われていて、自分は縦のスピードが武器なので、それでチャンスが作れたら良いと思って自信を持っていけたのが良かったと思います」と微笑む。決勝点を決めてヒーローになったのは過能だが、青柳良久監督は「全員が期待に応えてくれた。(ゴールに関して)チャンス作ってくれたのは全部深松」と称賛していた。

 深松はその後も鋭い縦突破でCKを獲得するなどチームの勝利に貢献した。“切り札”としての役割を果たした深松だが、高校卒業後に膝の手術を行う予定で、本格的なサッカーは高校まで。この日の試合前には同じく怪我と戦う応援団の選手たちから受けていたという。

「熱いメッセージを色々くれたので、その気持ちを持って戦いました。(決勝アシストは)本当に嬉しかったです。自分が結果を残したかったので良かったです」。ピッチに立つことのできない仲間の分も戦い、大仕事をしてのけた。

 全国大会へ向けては「自分はスピードしかない。全国でもきょうの最後のアシストしたような自分の縦突破からアシストしたいと思っています」と宣言。再び勝利に貢献して、支えてくれた家族や恩師、友人たちに恩返しする。

(文 吉田太郎)
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兄のリベンジ!筑陽学園MF過能が東福岡から決勝ゴール!

後半29分、筑陽学園高MF{{過能工太郎}(左)が決勝ゴール
[12.4 選手権福岡県予選決勝 東福岡高 0-1 筑陽学園高 レベスタ]

 宿敵を破る優勝ゴールはMF過能工太郎(3年)が決めた。後半29分、筑陽学園高は右サイドから縦に仕掛けたFW深松大雅(3年)がDFと競りながらクロスを上げきる。ファーサイドでフリーの過能は難しいバウンドのボールを何とかコントロールすると、右足シュート。飛び出してきたGKの左を射抜いた一撃がゴールに突き刺さった。

「(得点は)深松が交代で右サイドに入って来て、ガンガン仕掛けて、良い突破から良いクロスが上がって来たので、あとは落ち着いて決めるだけでした。サイドからのクロスで点を決めるというのは、練習通り。それで決められて良かったです」と過能。「今は、本当にとても嬉しい」と素直に喜びを口にしていた。

 過能の兄・FW過能大貴(現日本体育大)は筑陽学園OBの快足アタッカー。兄は2年時の15年度の選手権予選決勝で東福岡高に0-4で敗れ、3年時のインターハイ予選決勝でも再びライバルに敗れている。

 その弟は1年時に「(兄が東福岡に敗れる姿を見て)『自分が絶対にヒガシを倒して全国で優勝したい』という思いが強くなりました。お兄ちゃんを越えるという気持ちでやっていきたい」と意気込んでいたが、この日、自らの足で兄のリベンジを果たした。

 次は全国。「喜ぶのは今日1日くらいで、切り替えて次に向けて頑張りたいです」という過能が自分の武器であるスピードや競り合いの強さを発揮し、この日のようにゴールも決めてチームの勝利に貢献する。

(文 吉田太郎)
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「ヒガシを倒して全国に」。宿敵相手に戦い抜き、シュート2本に封じた筑陽学園が11年ぶりの選手権出場!

宿敵・東福岡を破って全国出場を果たした筑陽学園高イレブン
[12.4 選手権福岡県予選決勝 東福岡高 0-1 筑陽学園高 レベスタ]

 筑陽学園が宿敵・東福岡の連覇をストップ! 第98回全国高校サッカー選手権福岡県予選決勝が4日に行われ、7連覇を狙う東福岡高と11年ぶりの全国出場を目指す筑陽学園高が激突。筑陽学園が1-0で勝ち、3回目の優勝を果たした。これで全国大会に出場する48校が決定。全国大会は12月30日に開幕し、筑陽学園は12月31日の1回戦で愛工大名電高(愛知)と戦う。

 ついに東福岡を止めた。プレミアリーグで戦う東福岡は、13年の県新人戦以降、6年連続で県新人戦、インターハイ予選、選手権予選のトーナメント戦で福岡3冠を続けてきた。今年も新人戦、インターハイ予選で優勝。FW深松大雅(3年)が「この筑陽に入学する前からヒガシを倒して全国に行きたいと思っていた」と語り、DFリーダーのCB吉村颯真(3年)も「去年も出させて頂いていて、勝てそうだったのに逆転されて、今年は自分がゼロで絶対に抑えてPKまで行っても勝つような気持ちでした」と振り返ったように、筑陽学園の選手たちは絶対に壁を突破するという強い気持ちで戦った。

 東福岡は右足首に怪我を抱えるU-17日本代表MF荒木遼太郎主将(3年、鹿島内定)がベンチスタート。その東福岡は1ボランチのMF田尻将太(3年)を中心にボールを握って攻める。

 だが、筑陽学園はGK野中友椰主将(3年)が「(対東福岡ということで)何かを変えるというところよりも、戦うというところでまずは1対1で絶対に負けないとか、苦しくなってもしっかりと我慢して守備するとか、技術どうこうよりは戦うという話はありました」と説明したように、臆せずに戦う姿勢を持って試合を進める。

 2分、筑陽学園は右サイドでMF古賀敬仁(3年)が奪い返すと、DFをかわしてクロス。これをFW寺岡聖斗(3年)がオーバーヘッドシュートで狙う。その後もシャドーの選手に入って来るところをインターセプトするなどボールを奪い切ると、一気にショートカウンター。決定的なシーンを作ることはできなかったものの、セットプレーを獲得する。このセットプレーの対応にやや危うさのあった東福岡は何とかクリアするようなシーンもあった。

 東福岡はU-16日本代表候補MF青木俊輔(2年)が左サイドを縦に突くシーンがあったが、前半のシュートは2本のみ。PAまでボールを持ち込んではいたものの、CB吉村颯真(3年)とCB岡宗万(3年)や危険なスペースを埋めるMF栗尾瑠(3年)らの前に決定打を打たせてもらえない。筑陽学園もシュート1本と堅い試合展開となった。

 筑陽学園は左SB今田光(3年)がインターセプトから2人をかわして攻め上がるなど後半も堅守からのカウンターを披露した。対して、東福岡は後半8分に大黒柱の荒木を投入。チームに安心感と「行ける」という雰囲気が漂う。実際に荒木はそのキープ力と狭いスペースでのパスで筑陽学園を押し込む一因になっていた。

 だが、東福岡はシュートや仕掛けの積極性を欠いていた。丁寧に繋いで攻めてはいたものの、ゴール前の局面で怖さを発揮できない。逆に筑陽学園は20分、交代出場の深松が思い切り良く右足を振り抜いてポストにヒットさせると、29分には奪ったボールをFW岩崎巧(2年)が右サイドへさばき、深町が強引に縦突破。DFと競りながらクロスを上げきると、大外でフリーだったMF過能工太郎(3年)がコントロールから右足シュートを左隅に突き刺した。

 大歓声の中、スタンドまで走りきった過能中心に筑陽学園が喜びを爆発。一方の東福岡は187cmDF野口明(2年)を前線に入れて相手を押し込もうとする。だが、筑陽学園はクロスに対して素晴らしい対応を見せていたGK野中や吉村、岡を中心に隙を見せない。

 筑陽学園は35分に184cmCB益永望光(3年)を投入し、吉村が荒木を監視。東福岡は前線にボールを入れるものの、良い形でセカンドボールを拾ったり、連続攻撃することができない。交代出場の右SBモヨ・マルコム強志(3年)のロングスローも、GK野中が前に出て処理。結局、東福岡の後半のシュートはゼロに終わった。5分間のアディショナルタイムを終える笛が響くと、筑陽学園はスタンドから飛び出した控え部員たちとピッチの選手たちが一緒になって優勝を喜んだ。

 筑陽学園の青柳良久監督は「(吉浦茂和)総監督も言っていたんですけれども、前半はゼロで帰って来ようというところで、それを子どもたちが確実にできたというところが大きいと思いますね。プリンスリーグを通じて失点が多かったのをこの大会では止めれたというのがこの子たちの成長かなと思います」と目を細めた。

 そして打倒・東福岡を達成したことについて青柳監督は、「嬉しいですね。ずっと負けているので。(選手権予選決勝での対戦は)ここ3年連続ですか。同カードで負けているので、本当にどこかで勝ちたいなという思いはありましたね」と喜んでいた。また、野中は「東福岡を倒すためにこの学校に入学して、この3年間キツいことも仲間たちと走ってきたので壁を超えられて良かった」と胸を張る。

 彼らは今夏、インターハイ予選準々決勝で飯塚高に敗戦。それまで県のトーナメント戦では7大会連続で決勝進出していたが、それを止めてしまっていた。芽生えた危機感。ミーティングを繰り返し、守備の強化を目指した。今大会の準々決勝では飯塚に雪辱し、準決勝ではプリンスリーグ九州で2敗の九州国際大付高にリベンジ。そして先輩たちが7大会連続トーナメント戦決勝で敗れていた東福岡にも勝って全国切符を勝ち取った。

 筑陽学園は15年度日本一の東福岡を破っての全国出場だ。全国で48番目、最後の代表校となったチームの準備期間はわずかだが、青柳監督は「県の代表として一生懸命させようと思います。それは子どもたちにも伝えようと思います」と語り、吉村は「福岡県の代表として出るので一番獲って帰ってきたいです」と誓った。宿敵の壁をついに突破した筑陽学園が全国で大暴れする。



(取材・文 吉田太郎)
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福岡代表は東福岡撃破の筑陽学園!全国大会出場48校が出揃う!

福岡代表は東福岡撃破の筑陽学園!全国大会出場48校が出揃う!
[12.4 選手権福岡県予選決勝 東福岡高 0-1 筑陽学園高 レベスタ]

 第98回全国高校サッカー選手権福岡県予選決勝が4日に行われ、7連覇を狙う東福岡高と11年ぶりの全国出場を狙う筑陽学園高が激突。筑陽学園が1-0で勝ち、3回目の優勝を果たした。これで全国大会に出場する48校が決定。筑陽学園は12月31日の1回戦で愛工大名電高(愛知)と戦う。

 東福岡はMF荒木遼太郎主将(3年、鹿島内定)がベンチスタート。その東福岡がボールを握って攻めるが、筑陽学園は距離感良く守り、幾度かショートカウンターを繰り出して見せる。また、セットプレーからゴール前のシーンを作り出した。

 東福岡は0-0で迎えた後半8分に荒木を投入。だが、チャンスの数を増やすことができない。逆に筑陽学園は後半29分、交代出場のFW深松大雅(3年)が右サイドを破ってラストパス。これをMF過能工太郎(3年)が右足でゴールへ押し込んだ。

 東福岡は187cmDF野口明(2年)を前線に入れて反撃。だが、筑陽学園はGK野中友椰主将(3年)やCB吉村颯真(3年)、CB岡宗万(3年)を中心に隙を見せない。そのまま逃げ切った筑陽学園が1-0で勝利。6年連続県内3冠の東福岡を破り、11年ぶりとなる全国大会出場権を勝ち取った。

(取材・文 吉田太郎)
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京都内定の帝京長岡MF谷内田が意識するこれまでとの変化、これからの変化

帝京長岡高の京都内定MF谷内田哲平主将
[12.1 選手権新潟県予選決勝 帝京長岡高 1-0 日本文理高 デンカS]
 
 京都内定の注目パサーはこれまでと異なる姿を見せ、さらに違う姿を見せようと意識している。帝京長岡高のMF谷内田哲平主将(3年)はこの日、ボランチの位置でゲームメーク。序盤押し込まれる中でのスタートだったが、左サイドからスルーパスを連続で通して流れを変えた。

 その後もプレースキックで味方にピタリと合わせるキックを見せ、ビルドアップの部分でも違いを見せていた谷内田だが、この日は会心のゲームとは言えない80分間に。後半9分、帝京長岡は右サイドから鮮やかな崩しを見せたが、谷内田の右足シュートはクロスバーをかすめて枠上へ外れてしまう。

 谷内田は16分にもゴール前で巧みにボールを収めて反転シュート。だが、この一撃もポストのわずか左へと外れてしまう。どちらかの決定機で決めていれば、試合を決定づけることができただけに「全国大会では決めれるように」と苦笑。そして、「アシストは自然とできると思う。ゴールをもっと獲れるようにしたい」とよりゴールを決める力を身につけ、試合を決めるプレーをすることを誓った。

 プロの世界に飛び込む選手としてこれからも貪欲に変化を求めていく。一方で谷内田はこれまでと異なる姿も見せた。本人はインターハイ予選敗退をきっかけに、よりチームのためにプレーするようになったことを認める。

 プレースタイル自体は変わっていないが、「みんなが気づかないところに気づける選手になったのかなと思いますね。調子が良い選手を使ってあげるとか、調子が悪い選手だったら出すボールを考えたり、速くサポートしたり、そういうところを気づいてやってこれたなと思います」と自己分析する。

 より周囲に合わせてプレーし、味方の良さを引き出すことでチームのサッカーをよりレベルアップさせている。その中で発揮する強弱自在のスルーパスや組み立てる上でのコントロール、パスはやはり絶品。よりチームのことを考え、感性を研ぎ澄ませながら戦うMFが、チームの勝利のために自身の才能を全国で存分に発揮する。

(取材・文 吉田太郎)
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日本文理は帝京長岡を苦しめるも惜敗。注目選手も擁する来年こそ「奪還」へ

日本文理高の右SB古俣眞斗主将が相手の突破を阻む
[12.1 選手権新潟県予選決勝 帝京長岡高 1-0 日本文理高 デンカS]
 
「奪還」をテーマに戦った17年度大会優勝校・日本文理高は、複数のJクラブ内定選手や年代別日本代表選手を擁する帝京長岡高を苦しめたが、0-1で敗戦。2年ぶりの優勝を勝ち取ることはできなかった。

 立ち上がりから前への勢いある攻守で注目校を押し込んだ。MF中林海成(3年)が小刻みなステップのドリブルで切れ込み、セットプレーを獲得。右SB古俣眞斗主将(3年)のロングスローに189cmCB岩井優月(3年)ら180cm以上の長身選手たちが飛び込むなど相手にプレッシャーをかけた。
  
 前半15分頃まではほぼ敵陣でプレー。思い通りの展開に持ち込んでいたが、徐々に技術面で上回る帝京長岡に押し返されてしまう。GK小菅瑠樹(3年)の好セーブなどで凌いでいたものの、セカンドボールを拾えず、敵陣でプレーできなくなった。

 後半立ち上がりに再び押し込みながら、そこからボールを繋がれると、一瞬の隙を突かれる形で失点。後半10分過ぎから選手を入れ替え、古俣やMF長崎颯真(2年)、MF秋元圭太(3年)のポジションを上げて反撃の色を強めた日本文理は、古俣の突破やセットプレー、クロスからゴールに迫る。

 だが、後半アディショナルタイムのチャンスを活かせず、0-1で試合終了。駒沢隆一監督は、押し込んでいた前後半の立ち上がりに「そこで思い切って(シュートを狙って)振り抜いていなかった」とシュートの積極性を欠いたことを残念がった。

 全国上位の実力を持つと言われる相手を苦しめたが、奪還は叶わず。駒沢監督は「失ったものを取り返そうというところでやってきて届かずだったけれど、これがサッカー。(帝京長岡には)ぜひ全国で頑張って欲しいです」。そして、再び奪還を目指すことになった1、2年生たちに期待を寄せた。

 走る、戦う、引かない、前への姿勢を失わずに相手よりも1点でも多く得点して勝ち切る。この日は注目MFの長崎の他、大型FW太田優心(2年)やCB鳴海凛人(1年)が先発出場。2年前の全国8強メンバーであるGK相澤ピーターコアミ(現千葉、U-18日本代表候補)の弟、187cmMF相澤デイビッド(1年)という素材感のある選手も控えている。夏冬ともに県準優勝に終わった悔しさも持って成長を遂げ、来年こそ「奪還」を果たす。
 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

“守備も堅い”帝京長岡は公式戦11試合連続無失点。プロ入り有力なCB吉田晴稀「チームのためにできれば良い」

帝京長岡高の守備の柱・CB吉田晴稀
[12.1 選手権新潟県予選決勝 帝京長岡高 1-0 日本文理高 デンカS]
 
 帝京長岡高は日本文理高のロングボールやセットプレーに押し込まれる時間帯があったものの、CB吉田晴稀(3年)やCB丸山喬大(3年)、GK猪越優惟(3年)を中心に無失点勝利。これで8月24日に開催されたプリンスリーグ北信越・新潟U-18戦の後半12分に失点したのを最後に、プリンスリーグ北信越6試合、選手権予選5試合と11試合連続で無失点勝利を果たしている。

 快足を活かしたカバーリングでスペースへのボールに対応していた吉田晴は「前線の選手は前から追ったりしてくれていたので、あとは我慢して跳ね返すところは跳ね返していくところをやれたなと思います。(現在は失点する気が) しない感じです」と胸を張る。

 一方で、DFリーダーは完璧な守りができた訳ではないことを指摘。「全国までに改善していきたい。最後まで自分たちが失点しなければ自然と点獲ってくれると思うので、DFラインは我慢というところを目標にしています」と微笑んだ。

 吉田晴は右SBとしての評価も高く、練習参加を経てJ2クラブへの加入が濃厚。抜群のスピードを活かした攻撃参加や対人の強さ、落ち着きは魅力だ。もちろん攻撃参加したい気持ちもあるが、「まずはチームのためなので、自分たちの役割をしたいと思います」。右SB酒匂駿太(2年)や左SB吉田勇介(3年)も安定したプレーを継続。吉田晴がCBに入ることで、より守りは盤石なものとなるだけに、選手権は最終ラインの中央でチームの優勝に貢献する考えだ。

「自分は目立たなくても良いので、チームのためにできれば良い。去年の(準々決勝で敗退した)悔しさがあるので、長岡(JYFC)で一緒にやってきたメンバーがスタメンでも半分くらいいるので、この選手たちと一日でも長くできるように、自分はチームに貢献できるように頑張りたい」。もちろん、展開によっては攻撃参加する心構え。まずは攻撃的なチームの守りを支えることに集中する。
 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

帝京長岡MF田中がスルーパスで決勝アシスト。「全国の人達にもう一回注目して見てもらえるように」

帝京長岡高のU-17日本代表MF田中克幸は決勝点をアシストした
[12.1 選手権新潟県予選決勝 帝京長岡高 1-0 日本文理高 デンカS]
 
 U-17日本代表MF田中克幸(3年)が、帝京長岡高の決勝点を演出した。0-0の後半4分、田中はセカンドボールを拾うと「(FW晴山)岬が上がってくるのが分かったので、上手くタメて、CBがくっついてきたので、そのスペースを上手く使おうと思った」とDFを引きつける形でスルーパス。これで抜け出したFW晴山岬(3年)が決勝点となる左足シュートを流し込んだ。

 左利きのドリブラーである田中は、昨年度の選手権で活躍。長崎総合科学大附高との3回戦では1-1の試合終了間際に鮮烈な左足シュートを決め、チームをベスト8へ導いている。今年2月にはU-17日本代表へ初選出。最終的に本人が大学進学を決断したが、Jクラブも獲得に動いた注目レフティーだ。

 この日は強烈な左足ミドルで会場を沸かせた一方で、ドリブルを警戒する相手の前に仕掛けたシーンはわずか。少ないタッチ数でボールをさばいて、攻撃のリズムを作ろうとしていた。また、絶妙なスルーパスで勝利に貢献したものの、「今日は全然です」と本人の評価は厳しい。真剣勝負の中でよりチームに貢献できるように練習して、プレミアリーグ参入戦や選手権全国大会を迎える。

「(選手権では)去年よりも成長した自分を見せれるように、もう一段階レベルが上ったなと思われるように、ゴールだったり目に見える活躍をして、全国の人達にもう一回注目して見てもらえるように頑張りたいと思います」。岡山県から帝京長岡で3年間成長してきたレフティー。再び全国大会で目に見える活躍をして、目標の日本一を勝ち取る。
 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

[MOM3077]帝京長岡FW晴山岬(3年)_アジア経験したストライカーが1本の集中力発揮し、決勝弾!

後半4分、帝京長岡高はU-18日本代表FW晴山岬が左足で決勝点
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.1 選手権新潟県予選決勝 帝京長岡高 1-0 日本文理高 デンカS]

 アジアを経験してきたストライカーには余裕があった。前半、帝京長岡高はU-18日本代表のエースFW晴山岬(3年、町田内定)になかなか良い形でボールが入らず、入った際も背番号10はゴールを背にしている状況。日本文理高に警戒され、スペースへのボールも合わなかった。

 だが、晴山は時折笑みを見せるなど、全く動じていなかった。「自分は最後に点獲れれば良いなと思っていた。なかなか前半は自分がシュートを打てないような状況だったけれど、後半1本か2本来るか来ないかという集中力が保てていた」。日本文理が後半に運動量が落ちることも想定。警戒されている自分が獲れなくても仲間が獲れれば良い、という心のゆとりもあった。

 そして、後半4分、晴山は“1本か、2本来るチャンス”をモノにする。こぼれ球をMF田中克幸(3年)が拾った瞬間、晴山は田中を追い越す形でDFの背後へ抜け出す。そこへ田中からスルーパスが入り、1タッチで相手の背中を取った晴山は、飛び出してきたGKを冷静に見極めながら左足シュートをゴールに流し込んだ。

「田中に入った時に『これ、絶対に入るな』という感覚があった。走り込めれば絶対に決めれるなという感じだったので、それが当たったと言うか、(ゴールまでの)絵が見えてスピードアップして相手を置き去りにできたというのがあると思います。自分の良い意味での余裕があそこで発揮されたかなと。アジアで戦ってきて、そういう時の集中力があの大事な場面で出せた。自分の成長がすごく感じられて良かったなと思います」。

 晴山はU-18日本代表として、11月10日まで行われたAFC U-19選手権予選(ベトナム)に出場。モンゴル、グアムとの2試合で計5ゴール。一方でグループ首位決戦となったベトナム戦では得点を奪うことができなかった。

「全然やれないという訳でもないし、でも“微妙”だったというのが一番悔しかった。ダメならダメでやられまくってというのが良かったけれど、“微妙”だったというのが一番自分を動かしたと言うか、それに勝てたというとおごりが出てしまうのもあるし、“微妙”だったことで一番自分が変わったと思います」

 晴山は圧倒的なフィジカルやスピードを持つ選手ではない。繰り返し動き出せる力や得点感覚によって昨年度選手権の4ゴールや今年のプリンスリーグ北信越での17得点(得点王)などゴールを量産してきた。その点取り屋が「微妙だった」アジアから得た力は、一発の集中力。それが得点シーンに活かされた。

 ゴール後はユニフォームをまくり上げ、下に来ていた背番号26のユニフォームを披露。これは膝の怪我で選手権出場が絶望的になっているDF佐藤元紀(3年)のモノだった。「みんなには秘密にしていたんですけれども結果的に点獲ってアピールできたのは良かった。試合終わって(佐藤から)『着てたの?泣きそうになったよ』と言われたので、それを思い描いて着たのでできて良かったです。(長岡JYFC時代からのチームメートで)誰よりもそいつの思いを背負って戦わないといけないと思っていたので、そのユニフォームの力もあって点を獲れたのかなと思います」と微笑んだ。

 佐藤や他のピッチに立てない仲間たちの思いも背負って戦う全国大会の目標は、日本一。その上で自分が得点王を獲れれば良いと考えている。「町田のサポーターも見に来てくれると思うので、『こいつが来てくれたら頼りになる』とか思ってもらえたり、『これが代表なんだな』と思ってもらえれば良い。染野(唯月、尚志高)とか武田(英寿、青森山田高)とかよりは全然大したことがないんですけれども、『晴山の方がすごいんじゃないか』と思わせられるようなプレーだったり、人間性だったり、代表だからと言って何している訳でもないし、代表だからと言って何して良い訳ではない。代表だから謙虚にやっていきたいと思います」。日本一、得点王という結果を残して、進路である町田関係者、サポーターの期待をより高める。
 



(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

「日本一しか、正解じゃない」。“注目世代”の帝京長岡が夏のリベンジ果たし、大目標への挑戦権獲得

帝京長岡高が全国制覇に挑戦する
[12.1 選手権新潟県予選決勝 帝京長岡高 1-0 日本文理高 デンカS]

 全国制覇狙う帝京長岡が、大目標への挑戦権を獲得! 第98回全国高校サッカー選手権新潟県予選決勝が1日に行われ、昨年度全国8強の帝京長岡高と17年度全国8強の日本文理高が対戦。町田内定のU-18日本代表FW晴山岬(3年)の決勝点によって帝京長岡が1-0で勝ち、2年連続7回目の全国大会出場を決めた。

 帝京長岡のMF谷内田哲平主将(3年、京都内定)は「昨年出ていた選手も多いですし、これだけ揃っている世代ってなかなかないと思う。『日本一しか、正解じゃない』と思うので、日本一を内容もそうですけれども、最後は結果なので、結果を求めてやっていきたい」と力を込めた。

 前回大会で帝京長岡はテクニカルなスタイルのサッカーによって長崎総合科学大附高(長崎)に攻め勝つなど8強入り。今年はいずれも世代トップクラスのタレントである谷内田と晴山に加え、Jクラブ加入が決定的になっているCB吉田晴稀(3年)や、U-17日本代表MF田中克幸(3年)とU-17日本代表候補MF矢尾板岳斗(3年)、GK猪越優惟(3年)、CB丸山喬大(3年)と攻守に昨年の経験者を残す“注目世代”だ。

 だが、インターハイ予選準決勝の日本文理戦では明らかに甘さがあり、先に2失点。そこから自力を発揮して逆転しながらも、延長後半終了間際に隙を突かれて追いつかれ、PK戦の末に敗れている。そのリベンジマッチとなった決勝戦。帝京長岡は苦しみながらも雪辱を果たし、全国制覇への挑戦権を獲得した。

 試合は序盤、日本文理が圧力をかける。ロングボールを前線に入れ、そこからFW中林海成(3年)の仕掛けなどでセットプレーを獲得。中林の左足プレースキックや右SB古俣眞斗主将(3年)のロングスローでゴール前のシーンを作り出した。帝京長岡はMF秋元圭太(3年)をはじめ、強度の高い日本文理の守備の前に、なかなか前進することができない。前半15分頃までは自陣でプレーする時間が続く展開となった。

 それでも、帝京長岡は谷内田が左サイドで出した2本のスルーパスなどから主導権を握り返す。特に守備の部分で存在感を放っていたMF川上航立(2年)らが奪い返しに成功していたこともあり、ボールを支配して連続攻撃。32分には矢尾板の仕掛けから田中の左足ミドルがゴールを襲い、37分には川上のパスで右サイドを抜け出したMF本田翔英(3年)の右足シュートが左ポストを叩いた。

 帝京長岡はチャンスを作りながらも、機敏な相手GK小菅瑠樹(3年)の好守にあうなど決めきれずに前半終了。快足CB吉田晴が相手のスペースへの攻撃をシャットアウトしていたものの、リードを奪うことができなかった。後半へ向けて、谷口哲朗総監督は「アドバンテージは何もないよ。相手のセットプレーも含めてあらゆることを想定してピッチに入ろう」と指示。引き締められて後半に臨んだ選手たちが、“帝長らしい”攻撃から得点を奪った。

 後半4分、自陣ゴールライン近くからポゼッションを開始すると、相手のプレッシングをいなしながらボールをバイタルエリアまで運ぶ。一度相手に引っかかったものの、こぼれ球を田中が拾うと、DFを十分に引きつけてからスルーパス。田中を追い越す形でDFの背後へ抜け出したエース晴山が左足シュートを決めて先制した。

 待望の先制点を奪った帝京長岡は畳み掛ける。再び敵陣でのプレー時間を増やそうとする日本文理の背後を取る形でハイサイドへボールを進めると、そこからコンビネーションによる崩し。9分には右の晴山から田中、本田と繋いで最後はフリーの谷内田が右足シュートを放つ。16分にもゴール前で巧みにボールを収めた谷内田がシュートにまで持ち込んだが、2本の決定的なシュートはいずれもわずかに枠を外れてしまう。

 仕留めることができなかった帝京長岡に対し、日本文理は交代カードを切りながら攻撃を活性化。古俣や秋元、MF長崎颯真(2年)を高い位置へ移して、勝負に出た。特に右SH、左SHへとポジションを移した古俣がその突破からゴール前のシーンを作り出す。一方の帝京長岡は攻撃が落ち着かなくなり、攻めきれない時間帯が続いていた。

 日本文理はGKまで平塚竜輝(2年)にチェンジして反撃。そして、アディショナルタイムには右クロスに交代出場のMF中村怜(3年)が合わせ、さらにGK平塚のキックから敵陣で競り勝ち、最後は長崎のラストパスから古俣が右足を振り抜く。だが、いずれも枠を捉えることができず。我慢の時間帯を凌いだ帝京長岡が1-0で全国切符をもぎ取った。

 持ち味を出した時間も、出せなかった時間も経験しながら勝ち切った帝京長岡の古沢徹監督は、夏の敗戦後の選手たちの変化を認める。「県総体のところまでは去年を引きずっているつもりはないと思うんですけれども、どこかで『やれるだろう』という甘い気持ちから見事にPKで負けてというところからセルフジャッジをなくしたり、審判にいうことをやめたり、高校生らしく一日一日毎日やろうと積み上げていく中で選手たちが成長していったかなと」。チームの代表として、後輩たちのためにも責任感を持って戦い抜いたことが優勝に繋がった。

 帝京長岡や、同校グラウンドで練習して全日本ユース(U-15)フットサル選手権で5度の優勝も果たしている長岡JYFCが中心となって地方都市「長岡」の名をサッカー界に広めてきた。古沢監督は「本当に毎年毎年こうやって素晴らしい舞台に行かせて頂いて、それをきょうも(長岡JYFCの)小学生、中学生、幼稚園児が見に来てくれて、ウチのサッカーを中心に長岡が発展していって、サッカーの街になっていってもらえればというと、本当に今年は責任をもって戦わなきゃいけないと思っています」。“注目世代”の目標は内容、結果にこだわっての日本一だ。

 この日は長岡JYFC出身の先発選手が6人。3、4歳の頃から長岡JYFCでサッカーをしてきた谷内田は「ずっと小さい頃から(長岡JYFCの)西田(勝彦)さんとかお世話になってきたので、その人たちのために日本一という結果で恩返ししたいと思います」と誓った。長岡で技術をと相手の逆を取る部分などを磨いてきた“注目世代”は熊本国府高(熊本)との初戦を戦う20年1月2日、さらに同13日の決勝まで上手くなり続けて新潟県勢初の日本一を成し遂げる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

西川潤の前に3年間立ちはだかった“選手権の壁”。「無駄にしない」と誓い、新たなステージへ

インターハイ優勝校・桐光学園高は神奈川県予選決勝で敗退。注目のU-20日本代表FW西川潤主将は全国舞台に届かなかった
[11.30 選手権神奈川県予選決勝 桐光学園高 0-1 日大藤沢高 ニッパ球]

 今年は高校生ながらC大阪からJ1デビューを果たし、“飛び級”でU-20ワールドカップに出場。インターハイでは名門・桐光学園高に初の全国タイトルをもたらし、わずか1か月前にはU-17ワールドカップで世界を驚かせた。

 FW西川潤主将(3年、C大阪内定)は“衝撃的な”インターハイでの5人抜きゴールを決めるなどチームを全国準優勝へ導き、AFC U-16選手権でアジアタイトル、大会MVPを獲得した昨年に続いて2019年も、高校サッカーシーンの中心にいた。だが、今年も彼の前に立ちはだかった“選手権の壁”。注目レフティーは選手権で十分な活躍することができないまま高校生活を終えることになった。

「今日、勝たせられなかったこと、自分の役目を果たせなかったことが一番悔しい」

 ピッチで流した涙は、敗戦から暫く時間が経った後にも再び溢れ出てきていた。記者からの質問に言葉を詰まらせ、目を赤く染めながらもしっかりと応えていた。決勝戦では、序盤からこの試合に懸ける思いを表現するかのように、遠目からでもシュートを打ち込み、球際で身体を投げ出すようなプレーも。一方で体勢の良い味方を見逃さずに配球するなど、チームが押し込む一因を作り出していた。

 だが、決定的なヘッドが相手GKに阻まれるなど無得点のままハーフタイムへ。すると、後半は日大藤沢高に少しずつペースを握られて行ってしまう。そして、後半9分に失点。西川は16分にMF神田洸樹(3年)のラストパスから右足を振り抜くシーンがあったが、角度の無い位置から放った一撃は再び日大藤沢GK濱中英太郎(2年)に止められてしまう。

 後半に西川が放ったシュートはこの1本だけ。攻撃を作る部分に参加しながら、「ロングボールの応酬になってくると思ったので、上手く下がってというよりも前で転がってきたものを詰めようとか、その感覚だけ研ぎ澄ませていました」という西川は1チャンスを狙い続けた。

 だが、自身とチームメートの中にあった焦りを払拭することはできなかった。試合終盤も相手を飲み込むような圧力をかけることはできず、0-1で涙を飲む結果に。「いかに冷静に保てさせることができるかというのが、キャプテンの仕事だと思いますし、そういう力とか思いというのが全然足りなかったと思います」と唇を噛んだ。

 大会直前にU-17ワールドカップ参加のために1か月間不在となるなど、今年はC大阪や年代別日本代表に帯同する時間が長く、桐光学園のチームメートとともに練習した時間は十分なものではなかった。どこにいても桐光学園のことを気にかけ、副主将のMF中村洸太(3年)らと連絡を取りながら状況を把握。チームに戻ってくれば、誰よりも一生懸命にボールを追い、背中で仲間を引っ張ってきた。そして、インターハイは準々決勝、準決勝で2試合連続決勝点を決めるなど初の日本一に貢献。だが、選手権では主将として、チームを助け、勝たせることができなかった。

 他の高校生ではできないような経験をしてきた彼だが、選手権では結果を残すことができていない。1年時は県決勝でPK戦の末に敗れ、昨年は初の選手権出場を果たしたものの、全国1回戦で大津高に0-5で大敗している。今年の選手権を「獲りたいです」と言い切ったのも、心からその思いを持っていたから。だが、最後の選手権は再び全国舞台に立てないまま終えることになった。

「1年の時から選手権は予選で敗れましたし、2年生は出れましたけれども、出た初戦で大敗しましたし、今回も本当に桐光学園での選手権という意味では満足行くという結果を残せなかった。自分がもっともっとチームを引っ張ってやっていけば良かったという思いがあります」

 選手権では結果を残すことができなかった。だが、この敗戦は彼を大きく飛躍させるはずだ。1年時の選手権予選決勝敗退、2年時のインターハイ決勝敗戦や選手権全国初戦敗退など、彼は敗戦を経験するたびにそれをバネに大きく成長し、周囲を驚かせてきた。今回の敗戦は高校生活で一番悔しいもの。試合直後はまだ心を整理することができていなかったが、こみ上げてくる悔しさを彼はサッカーにぶつけてまた進化するだろう。

「この敗戦というのを無駄にしたら意味が無いですし、今までもこういう悔しい思いをして乗り越えようとやっていたので、敗戦というのを無駄にしないようにしていきたいです」

 まだリーグ戦を残しているが、桐光学園のスタッフや仲間には「感謝しか無いです」とコメント。そして、間もなく始まるプロ生活へ向けて「この3年間の思いを忘れずに、次のステージも戦っていきたいと思います」と静かに誓った。この敗戦を必ず力に変えて、仲間たちや支えてくれた人たちにまた進化した姿を見せる。



(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

[MOM3076]日大藤沢DF青木駿人(3年)_桐光撃破、全国導いた「素晴らしいキャプテン」

日大藤沢高を優勝へ導いたCB青木駿人主将(左)
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.30 選手権神奈川県予選決勝 桐光学園高 0-1 日大藤沢高 ニッパ球]

 誰よりも「打倒・桐光」に闘志を燃やしてきた男は、素直に宿敵からの勝利を喜んでいた。自分で言うのも何なんですけれども、自分が一番(自分たちのレベルを引き上げてくれる)桐光への感謝だったり、去年の悔しい思いをずっと持ち続けて一年間取り組んできた。自分が先頭に立って、みんなに声かけながら『借りを返そう』とここまでやってきて、本当に決勝は自分が何かした訳ではないんですけれども、日大藤沢一体となって優勝という形が得られたので、ここまで引っ張ってきて良かったと思います」。インターハイ優勝校の桐光学園高を倒して全国出場。日大藤沢高の優勝の立て役者は、間違いなくCB青木駿人主将(3年)だった。

 本人も認める通り、特別なプレーをした訳ではないかもしれない。だが、決勝ではU-20日本代表FW西川潤(3年)を擁する桐光学園を完封。各選手の立ち位置を修正したり、集中させたりしながら、自身は相手のロングボールやクロスを確実に跳ね返した。

 桐光学園は失点後に185cmFW庄司朗(2年)を投入し、試合終盤には184cmCB奈良坂巧(2年)のポジションも上げてゴールを目指してきていたが、183cmのCB青木はコンビを組んだCB宮川歩己(2年)らとともに、シャットアウト。攻撃面でも落ち着いてボールを動かし、サイドチェンジやスペースへの配球を見せていた。

 佐藤輝勝監督は厳しさを持ってリーダーとしての役割を務めてきた青木を称賛する。「素晴らしいキャプテン、リーダーがいて、嫌なことを率先してやって、嫌なことも言って、本当に嫌われ役になってやったと思う。『高校生にそこまでできるのか』と、こっちが頑張んなきゃと思わされるくらい、こっちが成長させられるくらい、素晴らしいキャプテンだと思いますよ、この子は。本当に応援させてもらいたくなる」。過去にも日大藤沢が結果を残した世代には必ず素晴らしいリーダーがいたという。今年の日大藤沢には、青木がいた。

 昨年度選手権予選は桐光学園に2-0から逆転負け。リベンジを誓って挑んだインターハイ予選は直接CKの1点に泣いた。「まだまだ甘い」と痛感してから青木は、仲間たちによりキツいことを求め、一緒になって甘えや隙を排除し、半歩でも成長することを目指してきた。

「インターハイの準決勝も悪い内容ではなく、自分たちがボールを持っていて、圧倒的に攻めていたと思うんですけれども、そこで一個の隙でやられて、その桐光が日本一を取って、自分たちも本当に全国出ればもっともっとやれるという自信があったので……。この夏で自分たちも全国出て、自分たちのサッカーで全国勝てるようにという思いで、苦しい思いが結構あったんですけれども、しっかりと走り込んで、それがこの冬の選手権に結果として表れて良かったです」

 人に強く言う一方で、言うだけになってはならない。だからこそ、自分に対しても厳しく接し、より隙の無い存在となった。神奈川県予選は全試合無失点。佐藤監督は「本当に言うからには自分がやらなきゃいけなくて、陰で体作りや体幹や、自分が厳しく言うということは言われるということだから。そこは個人アプローチも頑張った子だし、『木も見て、森も見れた』ということは本当に素晴らしいですよね」と賛辞を並べていた。

 大きな壁を突破した。だが、目標は全国制覇だ。「ここは通過点だと思っている」というリーダーは、またチームメートに厳しさを求めながら、貪欲に自分とチームの成長を果たして全国のピッチに立つ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

「2年の時みたいに暴れよう!」。日大藤沢エースMF植村が個でサイド攻略し、決勝アシスト

後半9分、日大藤沢高のエースMF植村洋斗は左サイドを個で打開して決勝点をアシスト
[11.30 選手権神奈川県予選決勝 桐光学園高 0-1 日大藤沢高 ニッパ球]

「洋斗、それじゃあダメだ。獲ってもらわなきゃ困る。2年の時みたいに暴れよう!」

 日大藤沢高の佐藤輝勝監督はハーフタイム、エースMF植村洋斗(3年)にそう声掛けしたのだという。植村は1年時にレギュラーとしてインターハイ全国準優勝を経験し、J1クラブも注目したテクニシャン。仕留め役になることもできるMFは、昨年の桐光学園高戦で強烈な突破からゴールも決めている。だが、この日の前半は警戒して守る桐光学園の前に持ち味の一つである仕掛けがほぼなく、ミスなくゲームメークするだけになってしまっていた。

 ただし、全国トップレベルと言えるほどのテクニシャンは、後半にガラリとプレーを変える。佐藤監督も「そこは応えてくれるの早かったですね、アイツは」と微笑。そして、決勝点に繋がる突破を「素晴らしかった」と絶賛した。

 後半9分、植村は左SB吉本武(3年)のスルーパスで左サイドを抜け出す。そして、ゴール方向へ身体の向きを取ると、DFとの間を十分に取ってからドリブルで斜めに切れ込む。対峙するDF2人を一気に剥がした植村は、エンドライン際まで持ち込んでラストパス。これをMF浅野葵(3年)が1タッチでゴールに蹴り込んだ。

 植村はこの日、ニッパツ三ツ沢球技場の芝目を見て、ドリブルは詰まる可能性があると感じていたという。だが、指揮官からの檄を受けて迎えた後半に勝負。得点シーンは「あのタイミングで、自分も何で行ったのか分からないですけれども、咄嗟に出ていったような感じ」というドリブル突破で待望の1点をもたらした。

「縦に突破するという自分の得意とする部分でもあったので、あそこでアシストできて良かった」。この後、相手が前掛かりになったことで植村はより余裕のあるプレー。左サイドからのドリブル突破や観衆を唸らせるようなループパスでチャンスメークし、自らゴールも狙っていった。

 チャンスの数を増やした後半に関しては、自分たちが目指している攻撃の組み立てや崩しができたと感じている。自身も能力の高さを示すプレーをして勝利に貢献。注目校を倒して全国に出場する日大藤沢のエースは、「対策されても崩していけないと日本一は取れるものじゃないので、このあとみんなと良い準備して、全国大会でしっかりとやっていきたい。プロ内定選手が注目されると思うんですけれども、その中で自分も良いプレーをして注目されるように頑張りたいです」と力を込めた。

“桐光学園を倒した”日大藤沢のエースの進路は早稲田大に決定済み。この日のように、結果を出しながらチームの勝利に貢献し続け、プロ入りしなくてもJ内定選手に負けないくらい上手い選手がいることを証明する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

裏での努力「気づいてくれるんだな…」。先発掴み取った日大藤沢MF浅野が決勝ゴール!

後半9分、日大藤沢高MF浅野葵が先制ゴール
[11.30 選手権神奈川県予選決勝 桐光学園高 0-1 日大藤沢高 ニッパ球]

 背番号26のゴールが、日大藤沢高を5年ぶりとなる全国へ導いた。日大藤沢は0-0の後半9分、MF植村洋斗(3年)が左タッチライン際からのドリブルで斜めに切れ込む。そしてDFを剥がして出したラストパスをMF浅野葵(3年)が右足でゴールに押し込んだ。

「植村がドリブルで絶対に抜くなと分かったので、あそこに入りこむだけだなと思ったんですけれども、ゴールシーン、本当に覚えていないので……。(シュートも)瞬間的なのでどんな感じか分からないです……」。試合後同様、ゴールを決めた直後もやや驚いたような表情をしていたことが印象的だった背番号26。思い通りの活躍ができなくても努力を続けてきたという男が、見事に選手権予選決勝でヒーローになった。

 今年は植村が不在だった関東大会本大会で先発を務めるも、その他は主にベンチスタート。6月のインターハイ予選は出番がなかったという。だが、試合に出て活躍するために1年時から続けてきた努力は欠かさなかった。

 その姿を佐藤輝勝監督やコーチ陣は見逃さなかった。今大会、目に見える成長を遂げた浅野を先発起用。浅野は「1年生の頃から裏で努力していて、あんま監督の見られないところで努力していたんですけれども、なのに『努力しているの分かるよ』と言われていて、気づいてくれるんだなと思っていました」と感謝する。

 最高学年となった今年はよりチームのために努力するようになった。試合に出れなくても、「それが自分の実力」と理解し、努力を継続。その日常が報われることを知ったMFは、また努力して全国大会を迎える。

 この日、連動した崩しや守備でも奮戦。浅野は「この(選手権出場や打倒・桐光学園高の)ために努力してきたと思うので、全国もあるけれども、引き続き努力して行ければ良いと思います」と力を込めた。この日出た自身・チームの課題と向き合い、改善して全国でも再び輝く。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

町田内定FW晴山岬が決勝点!前回大会8強の帝京長岡が新潟連覇!

後半4分、帝京長岡高は町田内定のU-18日本代表FW晴山岬が決勝点を決める
[12.1 選手権新潟県予選決勝 帝京長岡高 1-0 日本文理高 デンカS]

 第98回全国高校サッカー選手権新潟県予選決勝が1日に行われ、昨年度全国8強の帝京長岡高と17年度全国8強の日本文理高が対戦。帝京長岡がU-18日本代表FW晴山岬(3年、町田内定)の決勝点によって1-0で勝ち、2年連続7回目の全国大会出場を決めた。帝京長岡は20年1月2日の全国大会2回戦で熊本国府高(熊本)と戦う。

 試合は序盤、日本文理が圧力をかける。15分頃までは日本文理が敵陣で試合を進め、ロングスローやCKからゴールを目指した。たが、帝京長岡は京都内定MF谷内田哲平主将(3年)のスルーパスなどから流れを引き寄せる。そして、左のMF本田翔英(3年)の抜け出しやMF田中克幸(3年)のミドルシュートなどから相手ゴールに迫った。

 そして、後半4分、帝京長岡は自陣深い位置から相手のプレシャーを剥がしながら前進。すると、バイタルエリアでこぼれ球を拾った田中がDFを十分に引きつけてからスルーパスを通す。これで抜け出した晴山が左足で先制ゴールを決めた。

 この後、巧みな崩しから谷内田が決定的なシュートを放つなど攻めた帝京長岡だったが、追加点を奪うことができない。逆に後半半ば以降は落ち着いて攻める回数が減り、右SB古俣眞斗やMF秋元圭太(3年)、MF長崎颯真(3年)のポジションを上げて反撃する日本文理に押し返されてしまう。

 日本文理は終了間際、GKのロングキックを繋ぎ、最後は古俣が右足シュートを放ったが、枠左へ外れてしまう。帝京長岡は危ないシーンこそあったものの、J注目のCB吉田晴稀(3年)を中心に1点を守って1-0で勝利。目標である昨年度の8強超え、日本一へ一歩前進した。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

市船、清水内定MF鈴木唯人が決勝点「最近は試合をしていて負ける気がしない」(5枚)

清水エスパルス内定MF鈴木唯人(3年)
[11.30 選手権千葉県予選決勝 流通経済大柏2-3市立船橋 柏の葉]

 第98回全国高校サッカー選手権千葉県予選決勝が30日に柏の葉公園総合競技場で行われ、市立船橋高流通経済大柏高を3-2で下し、3年ぶり22回目となる全国大会出場を決めた。

●【特設】高校選手権2019

身長161cm市船MF森英希がヘディング弾など2得点(8枚)

身長161cmの小兵MF森英希(3年)が2ゴールの大活躍
[11.30 選手権千葉県予選決勝 流通経済大柏2-3市立船橋 柏の葉]

 第98回全国高校サッカー選手権千葉県予選決勝が30日に柏の葉公園総合競技場で行われ、市立船橋高流通経済大柏高を3-2で下し、3年ぶり22回目となる全国大会出場を決めた。

●【特設】高校選手権2019

激闘制した市船が3年ぶり千葉県制覇、波多監督は就任一年目で全国へ(24枚)

市立船橋が3年ぶり全国へ
[11.30 選手権千葉県予選決勝 流通経済大柏2-3市立船橋 柏の葉]

 第98回全国高校サッカー選手権千葉県予選決勝が30日に柏の葉公園総合競技場で行われ、市立船橋高流通経済大柏高を3-2で下し、3年ぶり22回目となる全国大会出場を決めた。

●【特設】高校選手権2019

「市船戦は全国大会決勝みたいなもの」2年連続全国準V流経柏、今季は全国届かず(24枚)

千葉3連覇に臨んだ流通経済大柏高
[11.30 選手権千葉県予選決勝 流通経済大柏2-3市立船橋 柏の葉]

 第98回全国高校サッカー選手権千葉県予選決勝が30日に柏の葉公園総合競技場で行われ、市立船橋高流通経済大柏高を3-2で下し、3年ぶり22回目となる全国大会出場を決めた。

●【特設】高校選手権2019

積み重ねてきた半歩が「打倒・桐光」果たす一歩に。日大藤沢がインハイ王者破り、全国へ!:神奈川

日大藤沢高が神奈川を制して全国へ
[11.30 選手権神奈川県予選決勝 桐光学園高 0-1 日大藤沢高 ニッパ球]

 日大藤沢がインハイ王者破って全国へ! 第98回全国高校サッカー選手権神奈川県予選決勝が30日に行われ、インターハイ優勝校の桐光学園高日大藤沢高が激突。MF浅野葵(3年)の決勝点によって日大藤沢が1-0で勝ち、5年ぶり5回目の全国大会出場を決めた。日大藤沢は全国大会2回戦から登場。広島県代表の広島皆実高と初戦を戦う。

 今夏のインターハイで初優勝を果たした桐光学園は、U-20日本代表FW西川潤(3年)の他にも高評価を得ている選手を複数擁する注目校。全国の強豪各校が「打倒・桐光」「打倒・西川」を目指していた。県内のライバル・日大藤沢もその一つ。昨年度の選手権予選で2-0から逆転負けし、インターハイ予選は代表決定戦で延長戦の末に惜敗していた。その悔しさをぶつけた日大藤沢が、神奈川県予選で「打倒・桐光」を達成。今年の最注目選手・西川、そして夏の全国王者の選手権出場を阻み、目標の全国制覇へ前進した。

 ともに堅い守りを特長とする両校。その中で前半、試合の主導権を握ったのは桐光学園の方だった。日大藤沢の左サイドに守りの人数をかけて、相手の攻撃のスピード、精度を低下させることに成功。そして、MF中村洸太(3年)らがボールを奪うと、7分に西川が左足ミドルを狙い、17分には右SB前川壮太(2年)の奪い返しとクロスから西川が決定的なヘディングシュートを放った。

 日大藤沢は中盤を活用しながらポゼッションし、CB青木駿人(3年)とCB宮川歩己(2年)のサイドチェンジを交えて揺さぶろうとするものの、なかなかバイタルエリア中央に侵入できず、攻めあぐねてしまう。逆に桐光学園にポゼッションを許し、中央から穴を開けられかけるシーンもあった。

 日大藤沢は40分、コンビネーションによる崩しからMF斉藤夏(2年)が抜け出すが、これは桐光学園GK北村公平(2年)が飛び出して阻止。桐光学園も後半7分にMF神田洸樹(3年)の右クロスをファーサイドで受けたMF所新太郎(3年)が右足を振り抜く。だが、日大藤沢は前半から反応の良さを印象づけていたGK濱中英太郎(2年)が、至近距離からのシュートをストップする。

 インターハイの桐光学園はDF陣が最後の一歩でも諦めずに足を出してシュートブロックし、北村のビッグセーブも優勝の要因に。この日もそのレベルの高さを披露していたが、その堅守を日大藤沢が攻略する。後半9分、左サイドでSB吉本武(3年)のパスを受けたMF植村洋斗(3年)がタッチライン際でDFと対峙。ここまで見せていなかったドリブル突破でDFを剥がし、ゴールライン際まで斜めに切れ込む。そして、折り返しを浅野が右足で丁寧にゴールへ押し込んで先制した。

 エースの一発の切れ味から、インターハイ予選は出番のなかったMFが殊勲の先制点。日大カラーの桜色に染まったスタンドへ走る背番号26と日藤イレブンに大歓声が送られた。

 畳み掛ける日大藤沢は吉本のラストパスからFW平田直輝(3年)が左足を振り抜いたほか、左サイドで存在感を増した植村のパス、ドリブルなどから追加点を狙う。桐光学園は北村のファインセーブなどで阻止して反撃。逆に、16分には神田のラストパスから西川が右足で狙うも、同点に追いつくことができない。

 桐光学園は攻撃のギアを上げたいところだったが、それを日大藤沢は許さない。2年前から取り組んできた4-3-2-1システムの組織守備は非常に強固。個々のハードワークはもちろん、佐藤輝勝監督はそのポジショニングと身体の向きを堅守の要因に挙げる。

「一番は体の向きで、相手が行きたい方向と逆の方向にミスディレクションできているというのが、ウチとしてはこの1年間一番やってきたこと」。桐光学園は西川が中盤に降りてボールを受けるなど打開しようとしていたが、外へ外へと押し出されてしまう。また、ロングボールは青木や宮川に弾き返されるなど攻略の糸口を掴むことができない。

 選手交代も加えながら前への姿勢を強め、クロスやCKを獲得するところまでは持っていったが、38分に神田がカットインから放った右足シュートも枠右へ。終了間際にはセットプレーで北村も上がってゴールを目指したものの、日大藤沢が守り切って歓喜の雄叫びを上げた。

 積み重ねてきた「半歩」が「一歩」になった。日大藤沢の佐藤監督は「桐光さんに敗れて悔しい思いをしてきたから、半歩でも勝てるように。(まだまだ甘いところもあったが、)この夏負けて全員が手を抜かなくなってから。やっぱり、あの1点を取れたのもみんなが頑張ったからだと思いますね。それ(全員の半歩)が合わさって、勝利に繋がる一歩になったんじゃないかと思います」と選手たちを讃えていた。

 これまでの悔しい思いがパワーになったことは間違いない。植村は「桐光は(西川)潤もいるし、色々なレベルの高い選手がいて、ツイッターとかでは『桐光が勝つだろう』と言われたりして、でも本当にやってみないと分からないものだし、自分たちは本当にこの一週間負ける気しないという感じでやっていた」と明かす。

 そして、青木は「本当、思いの部分では相手を絶対に上回っていた自信があるし、その思いの部分だったり、日大藤沢の一体感の部分でしっかりと相手を上回って結果という優勝という形が得られたので良かったです」と胸を張った。全国大会はインターハイ優勝校を破ったチームとして注目されることになる。

「自分たちも全国で通用するという自信を持っているので、全国でもっともっと相手を上回れるように1か月間しっかりと準備して日本一へ向かっていきたいです」と青木。日大藤沢の現3年生は2年前の全国ルーキーリーグ交流大会で優勝し、昨年から先発の大半を彼らが占めるなど「期待の世代」「日本一世代」と呼ばれてきた学年だ。神奈川のもう一つの注目校が、次は全国制覇を目指して半歩を積み重ねる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

清水内定の実力!市船エース鈴木唯人が決勝点「自分が決めて勝つしかない」

MF鈴木唯人が決勝点を決めた
[11.30 選手権千葉県予選決勝 流通経済大柏2-3市立船橋 柏の葉]

 試合を決めたのは背番号10だった。市立船橋高は2度のリードを追いつかれて迎えた後半17分、FW松谷昂輝(3年)のパスで裏に抜けたMF鈴木唯人(3年/清水内定)がシュート。一旦はGKに防がれるが、跳ね返りを落ち着いて蹴り込んだ。

 一進一退の展開も負ける気は全くしなかったという。今季序盤は不安定な戦いが続いた市船だが、秋以降は戦いが安定。特に9月22日のプレミアリーグ尚志高戦以降は連勝街道を歩んでおり、さらに10月5日の流通経済大柏戦に競り勝っていたことで、この日に向けた自信も深めていた。鈴木も「最近は試合をしていて負ける気がしない」という。

 それだけに自身も結果を残したうえで、全国大会への更なる自信を深めたいところだった。前半の自身の出来に不甲斐なさを感じていたという鈴木は、ハーフタイムに「この試合は自分が点を決めて勝つしかない。点を決めてチームを勝たせよう」と気合を入れ直したという。

 任務遂行の決勝点。「やってきたことを信じて、日々積み重ねていればボールは転がってくる。自分の中でも“来た”“今だ”と思って、無心で蹴りました。積み重ねって本当に大事なのかなと思いました」としみじみと話していた。

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

市船3年ぶり千葉県制覇!就任一年目「波多先生を全国に」

市立船橋が3年ぶり22回目の千葉県制覇
 就任一年目の波多秀吾監督を全国へ。想いを一つにして戦った市立船橋高が、3年ぶりとなる冬の全国大会出場を決めた。

 市船は2011年から監督を務めた朝岡隆蔵氏が昨季限りで退任。元Jリーガーの中澤聡太氏らと同期の同校OBである波多氏がコーチから昇格する形で監督に就任した。

 しかし今季序盤はプレミアリーグでもなかなか結果を残せず、インターハイ予選では準決勝敗退。7年ぶりに全国大会出場を逃す苦しいシーズンとなっていた。

 だが夏場以降に立て直しを図ると、9月22日のプレミアリーグ尚志戦からは連勝街道。そして選手権予選ではライバル校の流通経済大柏高に競り勝ち、3年ぶりの全国選手権出場を決めた。

 試合前のミーティングでは感極まる場面をみせたという。それを見たことでイレブンはさらに団結。主将MF町田雄亮(3年)は「波多先生も大変な年だったんだと思う。昨日の夜、選手しかいない場面で波多先生を全国に連れていきたいという思いを確認しあった。波多先生を全国に連れていけて良かった」と笑顔で話した。

 一方の波多監督はイレブンへの感謝を語る。「選手が粘り強く我慢強くやってくれた。最近プレミアではゼロ、もしくは1点で抑える試合が多かったが、2失点しても我慢強く、落ち着いていた。そこが成長したところかな」と目を細めると、「勝ちたいという思いがすごく原動力になっている」とメンタル面の改善が好調の要因と分析し、チーム力への手ごたえを語った。

 初の全国大会指揮となる選手権初戦は来年1月2日の2回戦、フクダ電子アリーナの第1試合で日章学園高(宮崎)と対戦する。

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

2年連続全国準V流経柏、3年ぶり県予選敗退…退任の本田監督「また次、頑張ります」

試合前から笑顔だった本田監督
[11.30 選手権千葉県予選決勝 流通経済大柏2-3市立船橋 柏の葉]

「らしいですよね」。流通経済大柏高の本田裕一郎監督(72)は試合後、ポツリとつぶやいた。2年連続で全国大会準優勝。しかし今年は7年連続で県予選決勝を戦うライバル校の市立船橋高の前に屈し、3年ぶりとなる予選敗退となった。

 常に追う展開を強いられた。前半を1点ビハインドで折り返えした流経柏は、後半7分にMF大西悠介(3年)がこぼれ球を押し込んで同点。再び勝ち越されて迎えた同16分にはMF三好麟大(2年)が蹴り込んで試合を振り出しに戻した。

 しかし直後の後半17分に3度目の勝ち越しを許すと、終盤猛攻をみせたものの、結果を変えるゴールを奪うことは出来ず。本田監督は「勝たせてあげたかったけど、しょうがないね。何人かが不調だった」と悔しさを噛みしめた。

 2001年に流経柏の監督に就任後、全国選手権優勝など名門校に押し上げた本田監督だが、今年度限りで退任する予定となっている。よって流経柏を率いての最後の大会となっていた。

「らしいですよね」とは、最後を勝利で飾れなかった自身に対する言葉。ただ現在72歳の本田監督だが、来年度以降も監督業を続ける予定でいる。「次だね。次頑張りますよ」と自らを奮い立たせるかのように話した名将は、「まあまあ、また頑張ります」とにこやかに話して会場をあとにした。

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

激闘ライバル対決 “ノーサイド”流経柏主将八木滉史「日本一を獲ってくれれば」

試合後、全国への想いを託した
[11.30 選手権千葉県予選決勝 流通経済大柏2-3市立船橋 柏の葉]

 試合後、喜びを爆発させる市立船橋高のロッカー前に、流通経済大柏高の主将MF八木滉史(3年)がやってきた。千羽鶴を手渡すためだ。「俺らの分まで頑張って」。市船の主将MF町田雄亮(3年)もしっかりと想いを受け止めた。

 2年連続全国準優勝。今年こそはという周囲から寄せられる期待に、プレッシャーがないわけではなかった。そこに来て、本田裕一郎監督が今季限りで退任。「どうしても本田監督を最後に日本一にさせたかった」と唇を噛む。

 それでも力を出し尽くしたことで、結果に悔いはないという。「最後まで自分たちの諦めない姿勢だったり、自分たちらしさを貫けたので、最後まで行けたというのは一番良かった」と充実の表情で振り返ると、「市立船橋との対戦は全国大会の決勝みたいなもの。今度は応援する側に回るだけなので、日本一を獲ってくれれば」とエールを送っていた。

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

U-17W杯の戦友の敗退を悲しむも…市船DF畑「自分たちはしっかりと結果を」

DF畑大雅(左から2人目)は全国大会への意気込みを語った
[11.30 選手権千葉県予選決勝 流通経済大柏2-3市立船橋 柏の葉]

 今月上旬までブラジルで開催されていたU-17ワールドカップに出場した選手がいる地域は選手権予選の日程をずらして対応していたが、千葉県は30日に決勝を消化。同大会に出場したU-17日本代表DF畑大雅(3年/湘南内定)擁する市立船橋高が、3年ぶり22回目の全国大会出場を決めた。

 一方で、同じくU-17ワールドカップを戦ったFW西川潤を擁する桐光学園高は、同日行われた神奈川県予選の決勝で日大藤沢高に敗れ、全国大会には届かなかった。

 知らせを聞いた畑は「潤が予選で負けるのは予想外」と驚くも、「出られない悔しいチームもあるんだとしっかりと受け止めて、自分たちはしっかりと結果を出していければ。また流経さんが2年連続敗れているのを見て、千葉県として悔しい思いがあった。今回は市船が代表として出るので、流経さんの想いも背負って、去年の流経さん以上の結果を目指してやっていければなと思います」と気を引き締めた。

 全国大会では、プロ内定選手としてより注目を集めることになる。「今日のゲームは満足できるゲームではなかった。クレバーにやろうとしていたけど、その中でミスが出てしまった」と反省した畑は、「クロスで得点に絡んでいくプレーを見てほしい。Jに内定するだけの力があるなと認めてもらえるようなプレーが出来ればいい」と活躍を誓った。

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

[MOM3075]市立船橋MF森英希(3年)_小兵MFがヘディング弾など2ゴールの大暴れ

MF森英希(3年)が2ゴールを決める大活躍
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.30 選手権千葉県予選決勝 流通経済大柏-市立船橋 柏の葉]

 身長161cmの小兵MFが最高の輝きを放った。市立船橋高は前半12分、右サイドかMF鈴木唯人(3年/清水内定)が上げたクロスをMF森英希(3年)がゴール前で受けると、混戦を抜け出すようにして右足を振り抜く。

 前半24分には相手CKから混戦を押し込まれた場面があったがゴールライン上で防ぐビッグプレーでチームを救った森は、1-1と同点に追い付かれた直後の後半9分、右サイドからDF植松建斗(3年)が蹴ったFKを体を目いっぱい伸ばして頭で合わせる。

 セットプレーを頭で合わせての得点は高校に入って初で、1試合2ゴールも公式戦では記憶にないという初物ずくしの大暴れ。「市船に来たからには、選手権で全国に出たかった。自分らの代で必ず出ようと言っていた」。自身の世代の高校入学後では初となる冬の全国行きチケットを手繰り寄せた。

 世代屈指のドリブラーと名高い森だが、得点力に課題があったという。だからこそ、この日の2ゴールは何よりの自信になると話す。「カットインが自分の自信のあるプレー」と全国でお披露目する機会を心待ちにした背番号8は、「全国でも点が取りたい。得点王を狙うくらいの気持ちで頑張っていきたい」と力強く話した。

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

神奈川代表は日大藤沢!西川の桐光学園は全国届かず!

後半9分、日大藤沢高はMF浅野葵(右)が決勝ゴール
[11.30 選手権神奈川県予選決勝 桐光学園高 0-1日大藤沢高 ニッパ球]

 第98回全国高校サッカー選手権神奈川県予選決勝が30日に行われ、インターハイ優勝校の桐光学園高日大藤沢高が対戦。1-0で日大藤沢が勝ち、5年ぶり5回目の全国大会出場を決めた。日大藤沢は全国大会2回戦から登場。広島皆実高(広島)と初戦を戦う。

 ともに堅い試合運びとなった前半、桐光学園は注目のU-20日本代表FW西川潤(3年、C大阪内定)の左足ミドルやヘディングシュートで相手ゴールに迫る。一方の日大藤沢は前半終了間際にMF斉藤夏(2年)が抜け出したが、桐光学園はGK北村公平(2年)がストップした。

 日大藤沢は集中力の高い守備。GK濱中英太郎(3年)のファインセーブもあって0-0を続けた。そして迎えた後半9分、日大藤沢はMF植村洋斗(3年)が左サイドを突破。折り返しをMF浅野葵(3年)が右足ダイレクトでゴールへ押し込んだ。

 桐光学園はMF神田洸樹(3年)のラストパスから西川が右足シュートを放つシーンもあったが、なかなか攻撃のギアを上げることができない。落ち着いてボールを繋ぐ日大藤沢から良い形でボールを奪うこともできなかった。終盤はセットプレーなどからゴールに迫ったが、日大藤沢が守り切って1-0で勝利。日大藤沢がインターハイ王者を倒して全国切符を勝ち取った。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

市立船橋が壮絶な打ち合い制して3年ぶり全国へ!2年連続全国準V流経柏に競り勝つ:千葉

市立船橋が流通経済大柏に競り勝った
[11.30 選手権千葉県予選決勝 流通経済大柏2-3市立船橋 柏の葉]

 第98回全国高校サッカー選手権千葉県予選決勝が30日に柏の葉公園総合競技場で行われ、市立船橋高流通経済大柏高を3-2で下し、3年ぶり22回目となる全国大会出場を決めた。初戦は1月2日の2回戦、フクダ電子アリーナの第1試合で日章学園高と対戦する。

 市船対流経柏の決勝は今年で7年連続。高校サッカー界の両雄が今年も全国行きをかけて火花を散らした。

 先制点が決まったのは前半13分、市船は右サイドからMF鈴木唯人(3年/清水内定)がクロスを入れると、MF森英希(3年)が粘ってシュートまで持ち込む。右足で押し込んだシュートはGKの脇を抜いた。

 ボールを保持しチャンスを作りながらもなかなか決めきれなかった流経柏も後半8分、FW羽坂豪(3年)のヘディングシュートから生まれたこぼれ球をMF大西悠介(3年)が押し込んで同点に追いつく。

 しかし市船も直後の後9分にセットプレーから森がこの日2点目を決めてすぐさま勝ち越しに成功。だが同16分、流経柏は右サイドを崩して決定機を作ると、MF三好麟大(2年)が蹴り込んで、再び試合を振り出しに戻す。

 シーソーゲームが落ち着くことはない。直後の後半17分、今度は市船が鈴木がゴール前に持ち込んでシュート。跳ね返りを再び鈴木が押し込んで三度勝ち越しに成功した。

 試合はこのまま3-2で市船が逃げ切りに成功。全国選手権は3年ぶりの出場となる市船だが、波多秀吾監督は就任初年度で全国行きを掴んだ。一方の2年連続して全国準優勝だった流経柏は、今季は県予選で敗退。今季限りで退任予定の本田裕一郎監督を全国に連れて行くことは出来なかった。

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

「『自分がいるから失点しないよ』くらいの気持ちで…」。流経大柏は2年生CB藤井中心に無失点Vまであと1勝

流通経済大柏高の守備の柱、2年生CB藤井海和
[11.27 選手権千葉県予選準決勝 翔凜高 0-3流通経済大柏高 柏の葉]

 流通経済大柏高は選手権予選で3試合連続完封勝利。この日は前半途中にCB根本泰志(2年)が負傷交代し、CB古谷優斗(3年)が緊急出場するというアクシデントもあったが、U-17日本代表候補CB藤井海和(2年)を中心に動じず、無失点勝利を継続した。

「古谷も何試合か出ているし、空中戦も強いので、自分が何とかできるという自信もあるのでそんなに慌てることもなかった」と藤井。ミドルレンジからのシュートこそ許したものの、落ち着きや、チームをコントロールの部分で違いを示す藤井らDF陣は、決定的なシーンを作らせることなく、こだわりの「ゼロ」で試合を終えた。

 藤井は今年、主にボランチとしてボール奪取やセカンドボールを回収する部分で力を発揮してきた。だが、チームは失点を重ね、プレミアリーグEASTでの無失点は17試合でわずか2試合。その守備を立て直すため、藤井はCBとして選手権予選に臨んでいる。

 守備能力の高さに注目の藤井だが、身長は174cm。プロを目指すならばボランチがベストだろう。本人もそれを理解しているが、「チームが勝てば目立たなくても良い」という考え。日本一になるために、自分はDFラインでチームを支えるという覚悟がある。

 また、自分がCBを守ることは本田裕一郎監督からのメッセージだと感じている。「『失点が多いからCBでオマエが守れ』という監督からのメッセージだと思うし、3年生含めて去年から一番自分が試合に出ているので、『自分がいるから失点しないよ』くらいの気持ちでやっています」と頼もしい。

 決勝の対戦相手は清水内定のU-18日本代表MF鈴木唯人(3年)や準決勝で3得点のFW松谷昂輝(3年)らを擁する市立船橋高だ。「(10月のプレミアリーグで敗戦しているのに加え、)今回勝てば3連覇という新たな歴史を作れるので、そういう部分も意識しながら市船に勝ちたいと思います」。堅守・流経大柏の柱がハイレベルなアタッカー陣を封じて、無失点優勝を果たす。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

役割変わる中で意識していた「一撃必殺のところ」。MF八木主将の強シュートが流経大柏に先制点もたらす

流通経済大柏高に先制点をもたらしたMF八木滉史主将
[11.27 選手権千葉県予選準決勝 翔凜高 0-3流通経済大柏高 柏の葉]

「迷わず振った方が良いと思って。相手に当たってしまったんですけれども、思い切りの良さとかが出たのかなと思います」。流通経済大柏高のMF八木滉史主将(3年)は、前半終了間際の先制点のシーンについて、そう振り返った。

 CKの流れからMF大西悠介(3年)が右サイドへ展開。FW羽坂豪(3年)が左足ダイレクトでクロスを入れると、大外の八木が左足ダイレクトで合わせる。これがDFに当たってコースが変わり、ゴールネットに吸い込まれた。

 八木は跳躍しながらガッツポーズ。これまでのボランチではなく、右SHとして先発した八木は普段と異なる役割を求められる中でのプレーだった。普段よりもボールに関わる回数が減る中で「一撃必殺のところを意識していました」という八木は、右サイドから斜めのドリブルでゴール前に切れ込み、スルーパスも。よりゴールに繋がるような“一撃”を目指し、「結果を残せたのは良かった」と喜んだ。

 試合をトータルで考え、相手の状況を見ながらミドルシュートを放ったり、背後を狙ったりできることは彼の強み。先制点のシーンも迷わずに強いシュートをゴール方向へ打てば、「何かが起きる」と判断したことがゴールに繋がった。

 流れの悪いゲームで大きな1点をもたらしたsyスようは後半、中央に入ってゲームメークも。勝負所を掴む力も備えた流経大柏の10番が、決勝でも白星を引き寄せる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

U-17W杯経験した市立船橋右SB畑大雅、精度向上したクロス含む2アシスト

市立船橋高のU-17日本代表右SB畑大雅は2アシストを記録
[11.27 選手権千葉県予選準決勝 専修大松戸高 0-4 市立船橋高 柏の葉]

 今年、意識して進化させてきたクロスでアシストした。前半36分、市立船橋高は右サイドでボールを持ったMF鈴木唯人(3年、清水内定)がキープ。その間に「唯人は獲られないですし、パスも信じて走れば出てくるレベルなのでそこは信じて」U-17日本代表右SB畑大雅(3年、湘南)が内側を駆け上がる。

 そして、畑はPAへ送られたループパスを受けると、強引にDFを振り切ってクロス。これをFW松谷昂輝(3年)が頭で合わせて2-0となった。畑は前半9分に松谷へ出した縦パスに続いて2アシスト目。松谷は「(2点目は)クロスで勝負あったかなと思います」とアシストの右SBを讃え、畑は「ちょっと危ないかなと思ってゴリって行って、中の様子を見てしっかり上げれたかなと思います」と微笑んだ。

 これまで、クロスは課題とされてきた部分だ。圧倒的とも言えるスピードでサイドを打開しながらその後の精度を欠いていた。だが、「3年になってから凄く意識して取り組むようになってきて、最近周りの人にも『クロスの精度が上がったよね』とか、代表に行ってもそういうことを言ってもらえて成長を感じている部分があります」と手応えを感じている。ただし、相手DFに引っかかるシーンもまだあるだけに「まだまだ」貪欲にレベルアップを目指す。

 世界を知り、そこで戦うためにはもっともっとやるべきことがあると学んだ。10月から11月にかけて開催されたU-17ワールドカップでは、U-17日本代表の右SBとしてベスト16進出を経験。自信を持っている1対1の守備ではほとんど攻略される場面はなかったが、ビルドアップやより考えながら相手の攻撃に対応する部分など課題も感じる大会となった。

 1対1の守備についても、オランダの左SHらレベルの高い選手と対峙した時のステップワークなどまだまだ追求できることがあると実感。市立船橋では感覚的に通用していた部分があったが、世界では同じようにはいかない。プロ入りする前にそれを再確認した畑は、攻撃参加するタイミングの質や守備のバランスを見る部分、細かな動きなど早速意識してプレーしていた。

 高速SBとして下級生時から注目されてきた畑だが、まだ選手権全国大会に出場したことがない。その中で畑は「市船は全国に出て活躍するチーム」という共通意識を仲間とともに持ち、選手権予選に臨んでいる。「(スタッフへの)恩返しという気持ちもあり、初めての選手権に出てみたいという気持ちもあるので、決勝はしっかりと勝ち切って全国に行ければ良いと思っています」。まずは30日の千葉県予選決勝で必ず勝利すること。そして、世界を経験した高速SBは学んだことを活かし、名門とともに全国舞台で活躍する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

清水内定の市立船橋MF鈴木唯人は千葉決勝進出喜び、「最後は自分が試合を決める」

市立船橋高の清水内定MF鈴木唯人は2点目の起点に
[11.27 選手権千葉県予選準決勝 専修大松戸高 0-4 市立船橋高 柏の葉]

「やってやるという気持ちとプレッシャーもあった」という選手権予選初戦。市立船橋高の清水内定MF鈴木唯人(3年)は無得点に終わったものの、チームの勝利を素直に喜んでいた。

 波多秀吾監督から「点を取るだけでなくチームを勝たせる選手になれ」と言われてきただけに、何よりもチームとしてやるべきことを重視。球際、運動量、切り替えの部分を意識しながらプレーし、前半36分には十分にタメを作ってから右SB畑大雅(3年)へ出したループパスでFW松谷昂輝(3年)のゴールの起点にもなった。

 この日は松谷が3得点の活躍。一方で鈴木は強引にシュートを狙いに行くよりもゲームコントロールすることに専念していた印象だ。上手く行かない部分もあった初戦だが、4-0で快勝。結果を残した松谷を讃えた鈴木は、決勝でもまずやるべきことを徹底しながら、最後は自分が決めるという気持ちでいる。

「最後は自分が試合を決めるというのはずっと思っている。やることをきちんとしたらボールも自ずと転がってくると信じていますし、日頃の取り組みがこういう試合の結果に繋がると信じてやっているので、いつも通りにやるべきことを信じて、結果を残せれば良いと思っています」

 日本高校選抜やU-18日本代表でチームメートのMF武田英寿(青森山田高3年、浦和内定)、FW染野唯月(尚志高3年、鹿島内定)はすでに選手権出場を決めている。ライバルたち同様“自分も”という気持ちはもちろんある。「その気持ちは大きいですね。最近ちょくちょく連絡を取っているんですけれども、『お互い頑張ろう』というのはあるので、自分も頑張らなければなと刺激になっています」。チームとして勝利を目指し、苦しい展開になっても自分が決める。

 徹底マークを受ける可能性もあるが、「気にせずにいつも通りにやっていければいい」と語る注目エースは、あと1勝を必ず果たしてライバルたちと同じく舞台に立つ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

[MOM3074]流通経済大柏FW三好麟大(2年)_先輩・大前のように。”小さなFW”が躍動

後半16分、流通経済大柏高FW三好麟大が右足でゴールを破る
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.27 選手権千葉県予選準決勝 翔凜高 0-3 流通経済大柏高 柏の葉]

 流通経済大柏高の名将・本田裕一郎監督は、試合後に記者からFW三好麟大(2年)について質問をされると、顔をほころばせていた。「三好が頑張ると嬉しい。サッカー選手で小さい子はいっぱいいる。ああいう子を見ると元気が出るでしょう?」。三好の身長は163cm。両チームの先発メンバーで最も小柄だ。そのFWが前線で運動量多くプレーし、華麗なゴールも決めた。

 2トップの一角として先発した三好は、前線からの献身的なプレッシングに加え、コンビネーションによる崩しにもチャレンジ。前半25分と後半開始直後には右サイドのスペースを突く動きから決定的なラストパスを通した。

 そして、2-0となった直後の後半16分、後方からのパスを1タッチで右サイドへ展開。そして、右SB田口空我(1年)からの折り返しをバイタルエリアで受けると、わずかに左への動きを入れてからのターンで前後にいたDF2人を置き去りにする。最後は右足シュートをゴール左隅に突き刺した。

 その後も1タッチのラストパスやDFを引きつけながらスルーして味方を活用するなど、チャンスに絡んで勝利に貢献した。1年時からチャンスを得てきたが、これまでなかなか先発に定着することができず。今大会も準々決勝の八千代高戦は前半のみのプレーだったが、この日は悔しさもぶつける形で元気に走り回り、勝利に貢献した。

 憧れは流経大柏OBのFW大前元紀(現大宮)だ。大前は高校3年時、身長160cm台と小柄ながらインターハイ、全日本ユース(U-18)選手権、高校選手権で得点王を獲得。全日本ユース選手権と高校選手権ではチームを日本一へ導いている。

「自分、大前元紀さんに憧れというか、凄いと思っていて、ああいう点を獲れる選手になれれば。もっと注目される選手になりたい」という。謙虚な口調で目標を語るFWはここへ来て、結果を出すことへの意識が高まってきている。

「これまではチームのためにとか思っていたんですけれども、最近は自分が結果を出してチームを勝たせられれば良いと思っています」。同じ2年生FWでエース格の森山一斗が負傷離脱中で間もなく復帰。プレミアリーグEASTでチームトップの9得点を叩き出している森山から刺激を受けていた三好が、結果でもエース不在の穴を埋めようとしている。

 ライバルの全国出場も森山を奮い立たせている。興國高(大阪)の2年生エースで18年U-16日本代表のFW樺山諒乃介が選手権大阪府予選決勝でゴールを決めるなど同校の全国初出場に貢献。森山にとって樺山は大阪の街クラブ・RIP ACEジュニアユース時代のチームメートで、現在も彼のプレー動画を見たり、試合後に連絡を取り合っている仲だ。2年連続全国2位の名門・流経大柏の欠かせない存在なって、大阪の新興勢力のエースとして出場する樺山と全国で戦いたいという思いがある。

「樺山は中学時代からライバルであり、チームメートとしてやって来ているので戦いたいですけれども、自分らが出ないと戦えないので」。そのためにも必ず千葉県予選決勝で勝つこと。「今日は自分の中でも調子が良くて、動き出しとかも活発にできたのでもっと決勝でも頑張りたい」。名門で抜群のセンスに力強さなどを少しずつ加えてきた2年生アタッカーが、市立船橋高との決勝でも結果を残す。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

流経大柏が3-0快勝で3連覇に王手。千葉決勝は令和元年も名門対決に―

後半14分、流通経済大柏高はCB古谷優斗(5番)が追加点
[11.27 選手権千葉県予選準決勝 翔凜高 0-3流通経済大柏高 柏の葉]

 千葉決勝は今年も名門対決に――。第98回全国高校サッカー選手権千葉県予選準決勝が27日に行われ、2年連続全国準優勝の流通経済大柏高が3-0で翔凜高に勝った。流経大柏は30日の決勝で市立船橋高と戦う。

 令和初の千葉代表決定戦。その対戦カードは7年連続でライバル対決になることが決まった。準決勝第1試合で市立船橋が4-0で快勝した後に翔凛戦へ臨んだ流経大柏だが、本田裕一郎監督も驚くほど選手たちが神経質になっていたという。普段とは異なるウォーミングアップを取り入れるなど選手がリラックスできるように務めて試合に臨んだというものの、前半は重心の重い展開となった。

 前線からボールと相手を追う選手に後ろがついて行けなかったために間延びし、プレッシングが単発に。結果、空いたスペースを翔凜の左SB石井海都(3年)やエースMF角田悠斗(3年)、MF松浦廉(2年)に活用され、シュートやラストパスに持ち込まれていた。

 翔凜はCBデアスンプサオ・レオナルド(1年)が197cmの高さを発揮。相手のゴールキックなどを跳ね返していたが、今年の流経大柏は敵陣に押し込んでからはグラウンダーのパスワークを例年以上に活用するチームだ。ボールを奪い返すと、右のMF八木滉史主将(3年)と左のMF大西悠介(3年)がサイドの高い位置で起点を作り、FW羽坂豪(3年)やFW三好麟大(2年)を交えた素早い崩しからシュートシーンを作り出した。

 内容が悪い中でも相手を押し込み続けた流経大柏だが、三好のラストパスから大西の狙った右足シュートが枠を外れたり、翔凜DFのシュートブロックにあうなどなかなか1点を奪うことができなかった。それでも39分、大西を起点に右の羽坂が逆サイドに展開すると、八木が角度のない位置から左足ダイレクトでシュート。これがDFに当たってコースが変わり、先制点となった。

 後手になっていた部分をハーフタイムに指摘された流経大柏は、ボランチに運動量豊富なMF渡会武蔵(3年)を投入。前への意識が強まったチームは立ち上がりから羽坂のヘディングシュートや大西のドリブルシュートなど決定機の数を増やす。翔凜はGK浅沼斗雅(3年)がファインセーブを連発したが、流経大柏は14分に追加点。セットプレーの流れから大西の右クロスを交代出場のCB古谷優斗(3年)が右足ダイレクトで決めて2-0とした。

 さらに流経大柏は16分、FW瀧本脩司(3年)の縦パスを三好が1タッチで右サイドへ展開。右SB田口空我(1年)からの折り返しを受けた三好が、鮮やかなターンでDFをかわして右足を振り抜く。これが左隅に決まって3-0となった。

 翔凜はGK浅沼中心に奮戦。角田が左サイドから放ったシュートがクロスバーを叩くなど最後まで戦う姿勢を見せ、1点を目指した。だが、流経大柏は最終ラインの柱・U-17日本代表候補CB藤井海和(2年)を中心に無失点。一方で本田監督が「夏以降ずっとシュート、シュートって打って来ているけれど決まらない」と苦笑したように、相手の背後を突く攻撃を交えてチャンスを作り続けながら決定力を欠くなど、課題も残る試合となった。

 流経大柏は引き締めの材料も得ての快勝。今年度限りで退任する予定の本田監督は「最後の試合で結局市船とやるのは嬉しいよね」と決勝でのライバル対決を歓迎した。過去2年間は流経大柏が勝利。千葉3連覇を果たし、全国制覇への第一関門を突破することができるか。

 八木も「どうせ(決勝)やるんだったら、市船を倒してやりたいですし、その対決で2年間勝っている姿しか見ていないので、ここで勝って3年連続出場を決めたい」と宿敵との対戦を喜ぶ。

 そして、「延長戦含めて100分で、長い目で見て総力で勝てたら良いと思います。まずは流経が大事にしている球際やセカンドボール、1対1の部分で負けなければ試合の流れは自分たちに持って来れるのかなと思っていますし、どんなに流れに乗ったとしても相手の時間が来ると思うので、そこでいかに失点せずに我慢強くプレーができるか。気持ちの面では絶対に負けない」と力を込めた。

「千葉県決勝は特別なもの」(八木)という戦い。普段通りを発揮することも難しい環境の中で重圧、緊張感を楽しみながら、自分たちの積み上げてきた力を発揮し、気持ちでも宿敵を上回って「今年も」千葉の頂点に立つ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

[MOM3073]市立船橋FW松谷昂輝(3年)_「爆発してやろうと」準備し、千葉準決勝で3発!

後半35分、市立船橋高FW松谷昂輝が3得点目のゴール
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.27 選手権千葉県予選準決勝 専修大松戸高 0-4 市立船橋高 柏の葉]

「この日のために日々練習を積み重ねてきて、選手権の舞台で爆発してやろうと準備していました」

 仲間からの助言も受け止めて、地道に力を磨いてきたストライカーが、3得点の大暴れだ。市立船橋高FW松谷昂輝(3年)は前半9分に右サイドを抜け出すと、「角度がなくて難しいシュートだったんですけれども、感覚的なものでゴールが獲れたかなと思います」という右足シュートをニア上へ突き刺して先制点。これで乗った松谷は、36分に右SB畑大雅(3年、湘南内定)の高速クロスを的確な準備から頭で合わせて2点目を奪う。

「なかなか公式戦で獲ることができなくて、でも、きょうはストライカーらしく(身体を投げ出して)決めることができたので良かったですね」と松谷。前半に2得点を挙げた時点で3点目を狙っていたという背番号9は、後半35分にもゴール前のこぼれ球にいち早く反応してハットトリックを達成した。

 波多秀吾監督が「これまでプレミア(リーグ)とかで点数が獲れていなかった。惜しいところまで行くけれども、もう一歩だったので結果が出て良かった」と喜んだ3得点。夏前までは怪我もあってポジションを獲得することができていなかったが、スタンドでインターハイ予選敗退を味わった悔しさから日々100パーセントの力で取り組んで変化した。怪我が癒え、BチームからAチームに再昇格。前線での献身的なプレーで先発を勝ち取り、チームに貢献してきたFWがこの日は結果も残した。

 仲間の支えも大きかった。特に清水内定のエースMF鈴木唯人(3年)のアドバイスが結果に繋がったと感じている。「ストライカーなら身体を投げ出して、ラスト、ラインブレイクの部分でもトラップにこだわればシュートが枠に行くとか、細かな部分を指摘してくれます」。ここまでプレミアリーグEASTでの得点は8試合で1得点。だが、指摘を素直に受け止め、選手権で爆発するために準備してきたFWは選手権予選初戦で最高のスタートを切った。

「いつも点を獲っている訳ではない。毎試合毎試合点を取ってチームにとって頼れる選手になりたい」と誓う松谷。宿敵・流通経済大柏高と対戦する決勝でも泥臭くゴールを連発し、全国舞台に立つ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

FW松谷ハット!球際・切り替え・運動量の強み発揮した市立船橋が4-0で千葉決勝進出!

後半35分、市立船橋高はFW松谷昂輝(9番)がこの日3点目となるゴール
[11.27 選手権千葉県予選準決勝 専修大松戸高 0-4 市立船橋高 柏の葉]

 市船が快勝で全国王手! 第98回全国高校サッカー選手権千葉県予選準決勝が27日に行われ、3年ぶり22回目の選手権出場を狙う名門・市立船橋高と27年ぶりに県4強入りした専修大松戸高が激突。市立船橋が、FW松谷昂輝(3年)の3得点とMF森英希(3年)のゴールによって4-0で快勝した。市立船橋は11月30日の決勝で流通経済大柏高と対戦する。

 市立船橋はU-17日本代表の右SB畑大雅(3年、湘南内定)がU-17ワールドカップに出場していたため、選手権予選はこの準決勝が初戦。2勝で全国切符を獲得できる一方、24日に行われたプレミアリーグEASTの鹿島ユース戦からこの日の選手権予選準決勝、そして3日後の選手権予選決勝と厳しい日程を突破しなければならない。

 それでも、「この間のプレミアのアントラーズ戦を(選手権)準々決勝、今日の試合を準決勝と捉えて臨む」(波多秀吾監督)という市立船橋は、“準々決勝”で鹿島ユースを2-1で下してプレミアリーグEAST残留を決めると(11月27日時点で暫定3位)、この日も自分たちがやるべきことを表現して快勝を収めた。

 プレミアリーグEASTの柏U-18戦(9月)を1-4で落とした直後のミーティングから「チームのために、勝利のためにやる」(MF町田雄亮主将。3年)ことを強く求め合い、翌節から4連勝中。そして、この日も内容のある勝利だ。特に切り替えの速さや守備強度の部分でチームに貢献した町田は「(市立船橋の特長である)球際・切り替え・運動量のところで上回ることができたので良かったです」と胸を張った。
 
 専大松戸は10番FW吉川秀斗(3年)を中心にドリブルとショートパスに特長を持つチームだ。日常からミニゲームを重ねて創造性とテクニックを磨いてきた専大松戸は、準々決勝でインターハイ予選王者の日体大柏高を撃破。この日も自分たちの武器で勝負を挑み、局面を打開するシーンもあった。

 だが、市立船橋の壁は高かった。特にFW松谷はハットトリックの大暴れ。前半9分、畑がDF背後に入れた縦パスに反応すると、右サイドの角度の無いような位置から右足シュートをニア上に叩き込んで先制点を奪う。

 市立船橋はさらに36分、右サイドからボールを持ち上がったU-18日本代表MF鈴木唯人(3年、清水内定)がキープすると、十分にためてからPAへパス。鈴木を内側から追い越してPAへ走り込んだ畑がクロスを上げると、これを松谷が見事に頭で合わせて2-0とした。

 専大松戸は吉川やMF武富弘樹(2年)がドリブルで切れ込んでいたほか、落ち着いて相手を見ながらボールを繋いで反撃。後半立ち上がりに左サイドをパスワークで切り崩したほか、アイディアのあるセットプレーも交えてゴールを奪い返そうとした。

 だが、市立船橋は畑不在の期間に穴を埋めるなど、「ここ最近凄く伸びてきた選手です。穴をしっかりと埋めて。今なかなか外すことができないという状況になってきている」(波多監督)というCB中村颯(3年)や守備の柱・CB石田侑資(2年)が、決定的なシュートを打たせない。

 そして25分、市立船橋は町田からのパスを受けた森がDFとの距離を上手く保ったまま右足シュート。これを右隅に決めて突き放すと、35分にも右CKから左SB植松建斗(3年)の放ち、最後はこぼれ球を松谷が押し込んでハットトリックを達成した。

 市立船橋は4-0で決勝進出。チームが緩みかけた時には、柏U-18戦を教訓に、「また元に戻るのか」と思い返しながら積み上げてきた。現在は、各選手がやるべきことを統一し、目の前の練習、試合に集中して戦うことができるようになっている。まだミスや、出足で圧倒できていない部分など課題があることも確か。それでも、町田は「勝ちにこだわる集団になってきたと思います」と手応えを口にする。伝統の堅守に加え、破壊力のある畑と植松の両翼や鈴木、松谷のように試合を決める存在がいることも大きい。

 今年、コーチから名門の指揮官に昇格した波多監督は「僕自身が大きく変わったということはないと思うんですけれども、とにかく周りのスタッフ選手を信じて、チーム一体となって勝ちを取りに行こうとしています。そこは歴代の監督さんよりも唯一勝っていると思っていまして、チーム・スタッフ・応援してくださる方々を信じるということを意識しているところであります」と語る。

 現在の部員は入学以来、選手権全国大会を経験していない。それだけに、町田は「絶対に選手権に出るという思いはチーム全体で強いと思います」。決勝の対戦相手は過去2年間敗れている宿敵・流経大柏。「負けたらいけないチーム」市立船橋は名門のプライドを懸けて戦い、必ず壁を乗り越える。

(取材・文 吉田太郎)
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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:WILL(東海大高輪台高・藤井一志)

東海大高輪台高MF藤井一志
東京のユースサッカーの魅力、注目ポイントや国内外サッカーのトピックなどを紹介するコラム、「SEVENDAYS FOOTBALLDAY」

 にわかには信じられない幕切れに襲われ、仲間がピッチに崩れ落ちる中、試合後の整列まではチームを率いるリーダーとして気丈に振る舞う。だが、改めて最高の応援を届けてくれたスタンドへ向かうと、もう堪えることはできなかった。「ベンチに入れなかった選手たち、保護者、全校生徒、OB、いろいろな人の顔が見えて、期待に応えられなくて申し訳ないなという気持ちが溢れてきて…」。168人の部員を束ねてきた東海大高輪台高のキャプテン。藤井一志の滲んだ視界には、3年間のすべてを捧げた黄色と黒が優しく揺れていた。

 前所属チームが一際目を惹く。ヴィッセル神戸伊丹U-15。アンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャ、ルーカス・ポドルスキ。世界的なクラッキをスカッドに並べる関西の野心的なクラブ。その下部組織で育った藤井が、自らの大事な高校3年間を賭けたのは首都の新興校だった。

「両親が東京出身で、一度ここの練習会に来た時に、練習の雰囲気だったりメニューの楽しさだったり、自分たちで考えてやるサッカーというのが楽しくて、ここで絶対に全国に行こうと思ったんです」。関西の強豪校へ進学する選択肢もあったものの、あえてまったく異なる環境へ身を投じる。東海大高輪台高校。まだ冬の全国出場経験を持たないチームで、新たなチャレンジがスタートした。

 選手権予選でこそ東京制覇に手が届いていないとはいえ、藤井が中学3年生だった2016年には2度目の全国総体出場を果たすなど、都内ではその攻撃的なスタイルと共に、高い評価を得ている黄色と黒の個性派集団。もちろん周囲のレベルも高く、「『高3になってスタメン取れるかな』という想いで入学してきた」藤井だったが、その予想はすぐさま覆される。

 まだ真新しい制服に身を包んでいた4月。関東大会予選準々決勝。右サイドバックのポジションには、12番を背負った1年生が起用されていた。「入学してすぐAチームに入れてもらったんですけど、先輩方が本当に優しくて、すぐチームに馴染めるように優しくしてくれて、本当にこの積み上げてきた“高輪台サッカー部”って素晴らしいんだなっていうのは感じていました」。試合は関東一高に延長で敗れるも、その立ち姿は15歳らしからぬ堂々としたものだった。

 とはいえ、目指す東京の頂点は遠い。1年時の総体予選はまたも準々決勝で関東一高に0-1と惜敗を喫し、選手権予選は初戦で国士舘高にPK負け。また、2年時も総体予選、選手権予選と揃って早期敗退。特に昨年は下級生が多く試合に出場していたにもかかわらず、望んだ結果を手に入れることは叶わず、「お世話になった3年生を大舞台に連れていくことができなくて、『本当に自分が出ていていいのかな』という想いも胸にありましたね」と藤井もその頃を思い出す。

 だからこそ、気付けば最上級生となり、キャプテンに指名された最後の1年間に懸ける想いは並々ならぬものがあったが、新しい年度となって挑んだ関東大会予選でも初戦で敗れた時、大きな焦燥感がチームに芽生える。「自分たちの力を5割も出せずに敗北したという所で、そこから毎試合毎試合自分たちの力を出せるように、練習からしっかりした雰囲気や激しさを常に求めるようになりました」。

 加えて学校生活でも自覚を持って行動することをチームに促す。「時にはサッカー部員が先生や学校に迷惑を掛けることもあって、そのたびにキャプテンとして強く言わなきゃいけないのは結構苦しかったですけど、3年生をはじめとした本当に多くの人と『自分たちはそういう所の本気さが足りないんじゃないか』と話して、そこから学校生活にも本気で取り組むようになったと思います」。

 先輩たちから伝統を受け継いだ高輪台サッカー部が、どれだけ素晴らしいグループかは自分が一番よくわかっている。それを学校の人たちにもしっかり理解してもらいたい。目指すのは“応援されるチーム”。中学生の頃はその名前も知らなかった高校への、そしてサッカー部への愛着は、いつしか藤井の中で何物にも代え難い大きなものとして、自分を奮い立たせる大事な核となっていた。

 5月。3年ぶりの全国を狙う総体予選がやってくる。一次トーナメントのブロック決勝。東京実高を2-1で振り切った試合後に話を聞いた。「キャプテンがしっかりしているチームは強いと思いますし、後悔したくないので、やり切りたいので、学校生活も含めて常にチームの見本となれるように心掛けて過ごしています」「自分は1年の関東予選から試合に出させてもらってきたので、その経験をキャプテンとしてチームに伝えて、良い影響を与えないといけないと思っています」。自らの想いを言い切れる“句点”の力強さに、はっきりとした意志が滲む。

「アイツは勉強もオール5なんですよ」と笑った川島純一監督は、藤井のパーソナリティを高く評価しつつ、懸念も口にする。「人としても素晴らしいし、プレーも素晴らしいし、あの子はタマがちょっと違うと思います。ただ、責任感が強すぎるんですよね。『オレがやらなきゃ』ってなっていっちゃうから。本人も意識しているんですけど」。10番でキャプテンの大黒柱。話して感じた真面目さに、「“心の逃がし所”があるといいなあ」と何となく思ったことを記憶している。

 結局、二次トーナメントは2つ勝ったものの、帝京高と激突した準々決勝で延長戦の末に2-3と競り負け、沖縄行きのチケットは手に入らず。全国へと出場するためのチャンスは残り1つとなった。高校生活の集大成。自分が3年間のすべてを捧げてきた黄色と黒のユニフォームを纏い、最高のステージで学校の名前を日本中に轟かせるためにも、この大会だけは絶対に負ける訳にはいかない。

「自分は凄く背負わなければいけないものがたくさんあるんですけど、それを変に背負うのではなくて、良い意味で期待されている部分を楽しんでいきたいと思いますし、東海大高輪台というチームをもっと盛り上げていけたらなと思います」。監督やコーチといったスタッフ陣。お世話になった先輩たち。最高のチームメイト。応援してくれるクラスメート。気の置けない関西の友人。何より優しく見守り続けてくれた家族。数えきれない感謝を胸に、未来を切り拓くのは自分の意志。高校生活最後の選手権が幕を開ける。

 10月26日。準々決勝。日本学園高とのゲームは1点を争う好勝負となったが、後半24分にカウンターから横山歩夢が決勝ゴールを叩き込み、1-0で勝ち切ってみせる。厳しい戦いを終えたキャプテンには安堵感が漂っていた。「毎試合毎試合引退の懸かっている最後の試合という気持ちで戦っていますし、プランとは少し違う形でしたけど、しっかり自分たちの力を出せたかなと感じています」。

 やはり3年生のこの時期ということもあり、周囲も自然と今まで以上に期待を寄せているようだ。「選手権が始まる前も、たくさんの神戸の友達から『頑張れよ』とか『約束ちゃんと果たせよ』とか声を掛けてもらっていますし、前の試合も神戸から友達が見に来てくれたり、今日も関西から東京に転勤で来ている友達の親が見に来てくれたり、凄く応援されているのは感じていますね」。

 次は学校にとっても特別な一戦となる。「準決勝は全校応援で、経験したことがないので楽しみです。自分としては東海大高輪台という学校が1つになって盛り上がれるものが見つかればと思っているので、サッカーを知らない人でも、自分たちのプレーを見て何か1つでも多く感じ取ってもらえれば、応援しに来ていただく意味があると思いますし、そういう期待に応えられるようなプレーをみんなで見せたいなと思います」。約束の全国までは、あと2つ。

 11月10日。準決勝。西が丘のバックスタンドとゴール裏を黄色と黒が埋め尽くす。試合前からサッカー部員が音頭を取り、全校生徒が大音量の声援をピッチに注ぎ込む。控えめに言っても最高の雰囲気。「自分たちが練習している時に、グラウンドの端でサッカー部のメンバー以外の人たちが応援練習してくれている時があって、頑張ってくれていることはわかっていたので、自分たちは絶対にその期待に応えないといけないと思っていました」と藤井。燃えない理由は見当たらない。

 後半2分。宮田龍芽のロングスローに全速力で10番が突っ込んでくる。「川島先生からも『絶対にオマエが決めるんだぞ』という話があったので、イメージしていた通り」。頭に当てたボールはゴールネットへ吸い込まれた。そのままの勢いでゴール裏を駆け抜け、バックスタンドへ向かって行く藤井へ、この日最大の歓声が全校生徒から送られる。「決めた後は真っ白でしたね。滑ってコケちゃって、ちょっとダサかったんですけど(笑)」。ゴール直後に滑ってコケたのはご愛敬。13分には小林亮翔が追加点をマークし、守っては東京朝鮮高の攻撃をシャットアウト。2-0の快勝を収め、高輪台サッカー部史上初めてのファイナルへと駒を進めることとなった。

「応援団が全校生徒を巻き込んで雰囲気を作ってくれましたし、チームのみんなにも『感謝の気持ちを持ってプレーしよう』と話していたので、自分たちの気持ちも最高潮に持って行って、サッカーを凄く楽しめました」。キャプテンは嬉しそうな笑顔を浮かべる。実はこの日の試合はオンデマンドでの生配信があった。「試合後に携帯を見たら、LINEに『おめでとう』ってメッチャメッセージが来てて(笑)」。

 多くの人に支えられ、今ここにこうして立っている。ようやくその感謝の気持ちを、最高の形で表現することができる。「決勝に進んだことによって、注目度や周りの盛り上がりも変わってくると思うんですけど、自分たちのやることは決して変わらないですし、また1週間しっかり準備をして、次の試合で良い“発表会”ができるように頑張っていきたいと思います」。約束の全国までは、あと1つ。

 それは一瞬の出来事だった。11月16日。決勝。スコアレスで迎えた後半アディショナルタイム。東久留米総合高が獲得したコーナーキックは、おそらくラストプレー。舞い上がった空色の4番が頭で叩いたボールは、ゴールネットを力強く揺らした。すると、歓喜の輪が解ける間もなく、主審はタイムアップのホイッスルを青空へ響かせる。「笛が鳴った瞬間は『え?どうしたんだ?』みたいな。整理できなかったです。訳のわからない状況でしたね。『もう高校サッカー終わりなのか?』って」。藤井とチームメイトたちが宿してきた意志は、ほんのわずか、ほんのわずかの差で、彼らの望む場所には届かなかった。

 にわかには信じられない幕切れに襲われ、仲間がピッチに崩れ落ちる中、試合後の整列まではチームを率いるリーダーとして気丈に振る舞う。だが、改めて最高の応援を届けてくれたスタンドへ向かうと、もう堪えることはできなかった。「ベンチに入れなかった選手たち、保護者、全校生徒、OB、いろいろな人の顔が見えて、期待に応えられなくて申し訳ないなという気持ちが溢れてきて…」。藤井の滲んだ視界には、3年間のすべてを捧げた黄色と黒が優しく揺れていた。

 試合が終わってから30分余りが経った頃。藤井が取材エリアへ姿を現す。瞳は赤く濡れていたものの、思っていたよりもすっきりとした表情が印象的だった。「いつもロッカーとかみんなふざけ合っているんですけど、今日も負けてしばらく時間が経ってから、最後にロッカーを出る前にはいつも通りふざけてて(笑) でも、『もうこんなにふざけるのもなかなかできなくなるよ』みたいな声が聞こえた時は、『ああ、もう終わりなのか』って思いましたね。2年生が主に泣いていて、3年生は『もうやり切ったな』って感じでした」。

 3年間を振り返ると、やはりキャプテンの重責を担った最後の1年が最も印象深いという。「自分のプレーの調子が悪いと、どうしてもうまくチームのことを考えられずに、川島先生にも『オマエのチームじゃないんだ。オマエが一番不甲斐ないぞ』って言われることもあって、メチャメチャ悔しかったし、メチャメチャ苦しかったですけど、そのたびにみんなが支えてくれたから自分がこの舞台に立つことができましたし、最終的にはこんな多くの人に応援されるチームのキャプテンができて幸せだったなという、幸福感が今あります」。

 きっと“心の逃がし所”は常にチームにあった。サッカーがうまく行かなくても、ピッチ以外でチームメイトと過ごすかけがえのない時間が救ってくれた。学校生活がうまく行かなくても、ピッチでチームメイトと過ごすかけがえのない時間が救ってくれた。神戸を後にして、たった1人でこの高校の門を叩き、素晴らしい仲間と出会うことができた。望んだ結果は手に入らなかったかもしれないが、あるいはそれ以上のものをこの3年間で手に入れた。そんな最高の高校生活が他にあるだろうか。

「今、一番幸せなんじゃないかなって。こんな素晴らしいチームメイトにも会えましたし、最後までみんな自分を信じて付いてきてくれましたし、こんな素晴らしいチームでキャプテンをやらせてもらったことをメチャクチャ誇りに思うので、後輩にもこの自分たちの悔しい想いを晴らして欲しいし、ここに今日置いてきた忘れ物を、来年絶対に取りに来てもらいたいと思います」。いつも通りの握手も、いつも通り力強い。またサッカーのある場所で再会する日はそう遠くない気がする。そう思っていると、去り際に藤井がこう言葉を重ねる。

「自主練で誰よりも早く、それこそ1時間前とかに行って、ずっとシュート練習をやっていたんですけど、今日もシュートを5本くらい打って全部枠外だったので、まだまだ足りないなと(笑) そこはまたこの先の自分のサッカー人生に生かしていきたいです。高輪台サッカー部、楽しかったです」。真面目なキャプテンは、最後まで真面目だった。意志の宿る所に希望は灯る。改めて、またサッカーのある場所で再会する日はそう遠くない気がした。



■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

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出場校チーム紹介:広島皆実高(広島)

昨年度全国4強の瀬戸内高を破って全国進出を決めた広島皆実高
第98回全国高校サッカー選手権

広島皆実高(広島)

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▼全国大会日程
2回戦 vs.日大藤沢高(神奈川)
■出場回数
2年ぶり15回目
■過去の最高成績
優勝(08年度)
■その他、過去の主な全国大会成績
全国高校総体出場15回、同優勝1回(99年)、同4強1回(94年)、全日本ユース(U-18)選手権8強(07年)
■監督
仲本洋平
■主将
MF吉原翔大(3年)
■今季成績
[総体](全国1回戦敗退)
県決勝 4-0 如水館高
全国1回戦 0-1 阪南大高(大阪1)
[リーグ戦]
プリンスリーグ中国7位(6勝2分8敗、第16節終了時)
[新人戦](県4回戦敗退)
県4回戦 1-1(PK5-6)沼田高

■予選成績
決勝T1回戦 2-1 高陽高
準々決勝 4-0 広島翔洋高
準決勝 6-0 崇徳高
決勝 3-0 瀬戸内高
■都道府県予選決勝布陣&レポート
[4-4-2]

   吉原翔大 岡本拓海

牛原克         岡平陸輔
   田中博貴 赤道洸太
石村浩太        山根成留
   板舛寿樹 山名悠斗
      藤岡佑成

[レポート] 
 4年連続同カードとなった瀬戸内高との決勝戦。広島皆実は前半12分、MF吉原翔大主将(3年)のスルーパスに反応したFW岡本拓海(3年)が左足シュートを右隅に決めて先制する。ボールを保持しながら反撃する瀬戸内を、広島皆実は的確な位置取りと球際の強さで封鎖。36分には岡本のラストパスからMF牛原克(3年)が決めて2-0とした。広島皆実は後半アディショナルタイムにも岡本の仕掛けから、こぼれ球を交代出場のFW久保太輔(3年)がゴール。昨年度全国4強の瀬戸内に3-0で快勝し、6連覇を達成した。

MOM:FW岡本拓海(3年)
「“瀬戸内キラー”。全得点に絡む活躍」
■県予選取材記者(石倉利英氏)チーム紹介
「全皆一実」で上位進出へ
 2月の新人戦では4回戦で敗退し、県内タイトルをすべて手放したが、その後は全国総体に続き、選手権も2年ぶりに出場権を奪還した。個々の特徴とチームプレーを融合させるチームの狙いは予選決勝でも随所に見られ、多彩な攻撃と安定した守備で昨年度全国4強の瀬戸内高を圧倒。「全皆一実」をスローガンに掲げ、一人ひとりが皆実のためにすべて実行することを目指してきた今年度の取り組みが結実した。選手権では13年度に1勝を挙げて以降、一昨年度までは4年続けて初戦で敗れており、その壁を破っての上位進出を狙う。

編集部+α
 体育科を併設する県立高校。選手権出場15回は広島国泰寺高に続いて県内2番目の多さだ。14年ワールドカップブラジル大会日本代表のDF森重真人(現FC東京)やFW渡大生(現広島)、GK増田卓也(現長崎)ら多数のJリーガーを輩出。99年インターハイでは八千代高(千葉)と同点優勝を飾り、09年度の選手権では「堅守強攻」のスタイルで初優勝を果たしている。
  突破力と決定力を兼ね備えるエースFW岡本拓海(3年)と中盤中央からのドリブルや展開力が強みの10番MF田中博貴(3年)はともに1年時から全国を経験。金沢FW山根永遠を兄に持つSB山根成留(3年)の攻め上がりにも注目だ。サイドから繰り返し仕掛けるMF岡平陸輔(3年)や万能型MF吉原翔大主将(3年)、いずれも昨年度の選手権予選決勝で先発出場していたCB板舛寿樹(3年)とCB藏本京真(3年)ら個々の力を集結させてライバルたちを上回る。
■県予選取材記者(石倉利英氏)注目選手
気持ちの強さと安定感見せる守備の要
DF板舛寿樹(3年)
「安定感を武器に中央を固める守備の要。ゴール前に入ってくる相手をはね返し、的確なつなぎでもチームに貢献」

兄はJリーガー。万能型SB
DF山根成留(3年)
「堅い守備とタイミングの良い攻め上がりで能力の高さを発揮するSB。CBでもプレーする守備の万能性も持つ」

皆実のエース
FW岡本拓海(3年)
「1年時から出場機会を得てきたエース。力強いドリブルやスペースへの抜け出し、正確なフィニッシュが武器」

■過去の全国大会成績
【17年度 第96回(1回戦敗退)】
1回戦 1-1(PK3-4)昌平高
【16年度 第95回(2回戦敗退)】
2回戦 1-1(PK2-4)創造学園高
【15年度 第94回(1回戦敗退)】
1回戦 0-1 國學院久我山高(東京A)
【14年度 第93回(1回戦敗退)】
1回戦 0-2 尚志高(福島)
【13年度 第92回(2回戦敗退)】
1回戦 3-0 丸岡高(福井)
2回戦 2-2(PK2-4)松商学園高(長野)
【10年度 第89回(2回戦敗退)】
2回戦 0-2 青森山田高(青森)
【08年度 第87回(優勝)】
1回戦 0-0(PK5-4)帝京高(東京A)
2回戦 2-1 徳島商高(徳島)
3回戦 1-0 作陽高(岡山)
準々決勝 2-0 四日市中央工高(三重)
準決勝 1-0 鹿島学園高(茨城)
決勝 3-2 鹿児島城西高(鹿児島)
【07年度 第86回(8強)】
1回戦 3-0 尚志高(福島)
2回戦 2-0 帝京高(東京A)
3回戦 0-0(PK3-0)作陽高(岡山)
準々決勝 1-3 津工高(三重)
【06年度 第85回(8強)】
1回戦 0-0(PK4-2)中京大中京高(愛知)
2回戦 0-0(PK6-5)大津高(熊本)
3回戦 0-0(PK3-2)境高(鳥取)
準々決勝 0-1 盛岡商高(岩手)
【03年度 第82回(3回戦敗退)】
1回戦 3-0 西目高(秋田)
2回戦 2-0 守山北高(滋賀)
3回戦 1-2 国見高(長崎)
【02年度 第81回(1回戦敗退)】
1回戦 1-1(PK2-4)岡崎城西高(愛知)
【01年度 第80回(2回戦敗退)】
2回戦 0-6 市立船橋高(千葉)
【00年度 第79回(2回戦敗退)】
2回戦 0-2 東北高(宮城)
【98年度 第77回(2回戦敗退)】
1回戦 1-1(PK4-2)東北高(宮城)
2回戦 2-2(PK4-5)四日市中央工高(三重)

■登録メンバーリスト
-
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出場校チーム紹介:高川学園高(山口)

宿敵に勝利して全国出場を決めた高川学園高。まずは初戦突破を目指す
第98回全国高校サッカー選手権

高川学園高(山口)

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▼全国大会日程
1回戦 vs.北海高(北海道)
■出場回数
2年ぶり25回目
■過去の最高成績
4強(05、07年度)
■その他、過去の主な全国大会成績
全国高校総体出場22回、同4強2回(99、02年)、全日本ユース(U-18)選手権4強(02年)
■監督
江本孝
■主将
MF内田裕也(3年)
■今季成績
[総体](県4強)
県準決勝 0-1 西京高
[リーグ戦]
プリンスリーグ中国10位(2勝5分9敗、第16節終了時点)
[新人戦](県優勝、中国優勝)
県決勝 1-0 聖光高
中国決勝 1-1(PK4-2)立正大淞南高(島根)
■予選成績
2回戦 7-0 野田学園高
3回戦 6-1 下関工科高
準々決勝 7-1 宇部工高
準決勝 2-0 聖光高
決勝 1-0 西京高
■都道府県予選決勝布陣図&決勝メモ
[4-2-3-1]

       河野眞斗
内藤祐茉 福地優雅 眞田颯太
   新山大地  内田裕也  
野田康介         大澤一真
   好村翼   田中誠太郎
       古屋潤一

[決勝メモ]
 3年連続同一カードとなった決勝。対戦相手は今年度の総体ベスト8、そして昨年度王者である“宿敵”西京だった。「今年に関してはチャレンジャー」(江本孝監督)という高川学園が、前半9分に試合を動かす。中央でボールを受けたFW河野眞斗(3年)が右サイドのMF{{眞田颯太}(3年)に展開し、自らはゴール前に走り込むと、眞田のクロスをヘディングで叩き込んだ。その後は追加点を奪えなかったものの、西京の攻撃をDF好村翼(3年)、DF田中誠太郎(2年)の2CBコンビを中心とした守備陣がはね返して1-0の完封勝利を収め、2年ぶり25度目の選手権出場が決定した。

MOM:FW河野眞斗(3年)
「合わせた瞬間に入ったと思った。背番号10が全国へと導く決勝ゴール」


■予選取材記者(編集部・折戸)チーム紹介
“宿敵”撃破で辿り着いた全国。1年間の成長示し、目指すは年越し!!

 全国にたどり着くには超えなければならない壁だった。昨年度の選手権予選決勝、今年度の総体予選準決勝でともに0-1で敗れ、全国への道を断たれた“宿敵”西京高を下し、2年ぶりに選手権の舞台へと戻ってきた。「求めたことを忠実にやり遂げる」(江本孝監督)という今年のチームにリズムをもたらすのはボランチに入るMF内田裕也(3年)とMF新山大地(2年)で、味方がつないだボールをFW河野眞斗(3年)、FW関ウィルソンらがゴールへと結び付ける。予選では5試合23得点と攻撃陣が爆発するとともに、「1年間プリンスリーグを戦い、耐えるということを勉強できた」と粘り強い守備を披露して2失点で切り抜けた。選手権本大会までの期間で「しっかり競争してもらい」と切磋琢磨しながら成長を遂げ、「一丸となって戦いたい」と指揮官は語る。旧・多々良学園高時代を含めて2度の全国4強入りを果たしている名門の目標は「年を越すこと」。まずは初戦の北海(北海道)戦にすべてをぶつける。


■予選取材記者(編集部・折戸)注目選手
復活した勝負強いエース
FW河野眞斗(3年)
「攻撃の基準点。負傷の影響で『3年間あまりサッカーをしていない』ものの、県予選決勝で決勝弾」

攻撃司る“全国を知る”キャプテン
MF内田裕也(3年)
「1年時に選手権登録メンバー入りした主将。ボランチでコンビを組むMF新山大地とともに攻撃を司る」

攻撃参加も光る最終ラインの軸
DF田中誠太郎(2年)
「国体では山口県の3位に貢献。本職の守備だけでなく、果敢なオーバーラップで攻撃に厚み加える」

■過去の全国大会成績
【17年度 第96回(2回戦敗退)】
1回戦 1-1(PK5-3)清水桜が丘高(静岡)
2回戦 1-2 長崎総合科学大附高(長崎)
【16年度 第95回(1回戦敗退)】
1回戦 1-2 鹿島学園高(茨城)
【14年度 第93回(2回戦敗退)】
1回戦 2-1 都市大塩尻高(長野)
2回戦 2-3 日大藤沢高(神奈川)
【11年度 第90回(2回戦敗退)】
2回戦 0-2 矢板中央高(栃木)
【07年度 第86回(4強)】
1回戦 3-0 岐阜工高(岐阜)
2回戦 2-1 近大附高(大阪)
3回戦 2-1 埼玉栄高(埼玉)
準々決勝 2-0 遠野高(岩手)
準決勝 0-1 藤枝東高(静岡)
【06年度 第85回(2回戦敗退)】
2回戦 2-5 室蘭大谷高(北海道)
【05年度 第84回(4強)】
2回戦 2-1 流通経済大柏高(千葉)
3回戦 3-2 青森山田高(青森)
準々決勝 2-1 鹿島学園高(茨城)
準決勝 0-1 野洲高(滋賀)
【04年度 第83回(8強)】
2回戦 1-0 東海大三高(長野)
3回戦 3-2 羽黒高(山形)
準々決勝 1-2 鹿児島実高(鹿児島)
【03年度 第82回(1回戦敗退)】
1回戦 2-3 札幌一高(北海道)
【02年度 第81回(2回戦敗退)】
1回戦 1-1(PK3-2)静岡学園高(静岡)
2回戦 2-3 桐蔭学園高(神奈川)
【01年度 第80回(1回戦敗退)】
1回戦 1-3 東北高(宮城)
【00年度 第79回(1回戦敗退)】
1回戦 0-0(PK3-5)青森山田高(青森)
【99年度 第78回(2回戦敗退)】
1回戦 2-1 大船渡高(岩手)
2回戦 0-1 初芝橋本高(和歌山)
【98年度 第77回(1回戦敗退)】
1回戦 1-2 青森山田高(青森)
【97年度 第76回(1回戦敗退)】
1回戦 0-2 前橋商高(群馬)
【96年度 第75回(1回戦敗退)】
1回戦 1-2 韮崎高(山梨)
【95年度 第74回(8強)】
1回戦 4-0 青森山田高(青森)
2回戦 2-2(PK5-4)盛岡商高(岩手)
3回戦 0-0(PK4-3)耳成高(奈良)
準々決勝 2-3 初芝橋本高(和歌山)
【94年度 第73回(3回戦敗退)】
1回戦 2-1 秋田商高(秋田)
2回戦 1-0 香川西高(香川)
3回戦 0-2 宮崎工高(宮崎)
【93年度 第72回(8強)】
2回戦 0-0(PK4-2)修徳高(東京B)
3回戦 1-1(PK3-1)高松商高(香川)
準々決勝 0-0(PK3-5)国見高(長崎)
【87年度 第66回(1回戦敗退)】
1回戦 0-1 新潟工高(新潟)
【83年度 第62回(3回戦敗退)】
1回戦 4-0 鶴岡南高(山形)
2回戦 3-0 富山一高(富山)
3回戦 0-0(PK7-8)安積商高(福島)
【80年度 第59回(1回戦敗退)】
1回戦 0-2 韮崎高(山梨)
【64年度 第43回(1回戦敗退)】
1回戦 1-2 仙台育英高(宮城)
【61年度 第40回(1回戦敗退)】
1回戦 1-5 松本県ヶ丘高(長野)

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●【特設】高校選手権2019

選手権まで3年生達と「やって良かった」。健大高崎は被シュート23本もGK倉石がファインセーブ連発

健大高崎高GK倉石大夢はファインセーブを連発した
[11.24 選手権群馬県予選決勝 前橋育英高 1-0 健大高崎高 正田スタ]

 王者・前橋育英高の前に健大高崎高GK倉石大夢(3年)が立ちはだかった。前半15分に左SB並木歩己(3年)がカットインから放ったシュートを横っ飛びで止めると、16分には右CKからMF倉俣健(3年)に至近距離から打たれたヘッドをストップ。18分にも抜け出してきた右SB山田涼太(3年)のシュートを身体で止めて見せた。

 守護神の活躍に触発されたように、健大高崎DF陣は好守を連発。前半だけでシュート12本を打たれながらも0-0で折り返す。「今まで無失点で来ていたので、何としても失点はしないと気合を入れていました」という倉石は、後半もコースを突いたMF山岸楓樹(3年)の決定的な一撃をビッグセーブ。ゴールをカバーリングしてくれる仲間を信じてクロスや1対1でも積極的に飛び出していたGKの活躍によって、スコアは後半半ばを過ぎても動かなかった。

 だが、後半25分、健大高崎は自陣でボールを失うと、FW中村草太(2年)にゴール前まで運ばれ、シュートを打たれてしまう。これは再び倉石が止めたが、こぼれ球をMF熊倉弘達(2年)に押し込まれて決勝点。倉石は「最後自分が弾ききれなくて、こぼれを相手に反応されて詰められたので……もうちょっと弾くところは弾くとか、はっきりとやっておけば良かったと思います」と唇を噛んだ。

 倉石は他の3年生と異なり、健大高崎のアスリートクラスではない。進学を考え、夏に高校サッカーから引退することも考えたという。だが、仲間たちと最後まで一緒にプレーすることを選択。「この3年生と最後までやりたいという気持ちが強かったので、やって良かったです」と胸を張った。

 この日、両校で最も目立つプレーを見せた守護神だが、本格的なサッカーは高校までと決めている。この日の悔しさは2位につけている群馬県1部リーグや、出場の可能性のあるプリンスリーグ関東参入戦、そして勉強面での力に。結果に繋げて、ともに頑張ってきた3年生たちと笑顔で卒業する。
 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

決勝初進出の健大高崎は0-1惜敗。力磨いて、「強くさせてもらっている」王者・前橋育英超えへ

健大高崎高の歴史を変えたイレブン。3年生は後輩たちに打倒・前橋育英高と全国初出場を託した
[11.24 選手権群馬県予選決勝 前橋育英高 1-0 健大高崎高 正田スタ]

「3年は全力でやってくれたと思う。2年は物足りない。1年はもっとやれ、と言いました」

 初の決勝進出で初優勝を目指した健大高崎高の篠原利彦監督は試合後のロッカールームで選手たちにそう言葉をかけたという。指揮官が「粘り強く、マジメに、手を抜かずにやれる」と分析するチームは、その言葉通りの戦いを決勝で見せた。これまで敗れたチーム、他に悔しい思いをした選手の思いも背負って立った貴重な舞台。そこで、80分間全力で勝利を目指したが、勝つことはできなかった。

 守備面はファインセーブを連発したGK倉石大夢(3年)の活躍が特に光ったが、他の選手たちもチームの約束事を徹底。インターハイ予選では前橋育英高に一瞬の隙を突かれて失点しただけに、相手に隙を与えないように、切り替え速く、中央を閉じる形で守り続けた。

 また、倉石が「今までの試合もチームみんなで守ってきて、(GKの)自分が最後じゃないと言っているのでカバー入れるということはいつもしっかりと意識をしてやっていました」と説明したように、飛び出したGKの背後をカバーした右SB廣嶋麒輝(2年)がスーパークリアするシーンも。CB今野祥吾主将(3年)やCB有村樹(3年)中心に崩されかけても最後まで諦めずに足を出して、シュートブロックするなど良く守っていた。

 だが、攻撃面では狙いとする攻撃をすることができず。10番MF橋爪悟(3年)がボランチの位置から推進力を持って前に出ていくシーンもあったが、全体的に落ち着いてパスを繋ぐことができず、攻撃回数を増やせなかった。

 篠原監督は「ウチがミスから奪われてピンチになっていた。受けてからの判断で焦りすぎていた。掻い潜る技術を身につけないといけない」。後半25分の失点後は、FW千木良航大(2年)のロングスローなどから何とか1点を奪おうとしたが、試合終盤も相手を押し込むことができない。健闘と言える戦いはしたものの、大きな壁を越えることはできなかった。

 涙のイレブン。倉石は後輩たちへ向けて「(来年は)やっぱり決勝行ってもらって育英を倒して欲しいですし、自分たちが目標としてきた優勝は達成できなかったので、後輩たちには優勝してもらいたいと思います」と期待した。

 篠原監督は前橋育英が98年度に初めて選手権ベスト4入りした際のMFだ。この日は、山田耕介監督と全国を懸けての師弟対決だった。選手時代以上に山田監督から学ぶことが多いという現在。2年前に選手権初優勝を果たした母校は、全国トップレベルの選手層の厚さと実力備えたチームだ。指揮官は「(前橋育英、山田監督に)間違いなく、強くさせてもらっている」というが、それを上回らなければ、全国に出場することはできない。1、2年生たちと一つ一つ課題を改善しながら、より宿敵に近づいて「打倒・育英」を果たす。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

決勝初進出の健大高崎は0-1惜敗。力磨いて、「強くさせてもらっている」王者・前橋育英超えへ

健大高崎高の歴史を変えたイレブン。3年生は後輩たちに打倒・前橋育英高と全国初出場を託した
[11.24 選手権群馬県予選決勝 前橋育英高 1-0 健大高崎高 正田スタ]

「3年は全力でやってくれたと思う。2年は物足りない。1年はもっとやれ、と言いました」

 初の決勝進出で初優勝を目指した健大高崎高の篠原利彦監督は試合後のロッカールームで選手たちにそう言葉をかけたという。指揮官が「粘り強く、マジメに、手を抜かずにやれる」と分析するチームは、その言葉通りの戦いを決勝で見せた。これまで敗れたチーム、他に悔しい思いをした選手の思いも背負って立った貴重な舞台。そこで、80分間全力で勝利を目指したが、勝つことはできなかった。

 守備面はファインセーブを連発したGK倉石大夢(3年)の活躍が特に光ったが、他の選手たちもチームの約束事を徹底。インターハイ予選では前橋育英高に一瞬の隙を突かれて失点しただけに、相手に隙を与えないように、切り替え速く、中央を閉じる形で守り続けた。

 また、倉石が「今までの試合もチームみんなで守ってきて、(GKの)自分が最後じゃないと言っているのでカバー入れるということはいつもしっかりと意識をしてやっていました」と説明したように、飛び出したGKの背後をカバーした右SB廣嶋麒輝(2年)がスーパークリアするシーンも。CB今野祥吾主将(3年)やCB有村樹(3年)中心に崩されかけても最後まで諦めずに足を出して、シュートブロックするなど良く守っていた。

 だが、攻撃面では狙いとする攻撃をすることができず。10番MF橋爪悟(3年)がボランチの位置から推進力を持って前に出ていくシーンもあったが、全体的に落ち着いてパスを繋ぐことができず、攻撃回数を増やせなかった。

 篠原監督は「ウチがミスから奪われてピンチになっていた。受けてからの判断で焦りすぎていた。掻い潜る技術を身につけないといけない」。後半25分の失点後は、FW千木良航大(2年)のロングスローなどから何とか1点を奪おうとしたが、試合終盤も相手を押し込むことができない。健闘と言える戦いはしたものの、大きな壁を越えることはできなかった。

 涙のイレブン。倉石は後輩たちへ向けて「(来年は)やっぱり決勝行ってもらって育英を倒して欲しいですし、自分たちが目標としてきた優勝は達成できなかったので、後輩たちには優勝してもらいたいと思います」と期待した。

 篠原監督は前橋育英が98年度に初めて選手権ベスト4入りした際のMFだ。この日は、山田耕介監督と全国を懸けての師弟対決だった。選手時代以上に山田監督から学ぶことが多いという現在。2年前に選手権初優勝を果たした母校は、全国トップレベルの選手層の厚さと実力備えたチームだ。指揮官は「(前橋育英、山田監督に)間違いなく、強くさせてもらっている」というが、それを上回らなければ、全国に出場することはできない。1、2年生たちと一つ一つ課題を改善しながら、より宿敵に近づいて「打倒・育英」を果たす。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

前橋育英注目の2年生ボランチMF櫻井辰徳、将来のためにも“死のブロック”で「結果を」

前橋育英高の注目2年生MF櫻井辰徳
[11.24 選手権群馬県予選決勝 前橋育英高 1-0 健大高崎高 正田スタ]

 群馬王者・前橋育英高の注目MF櫻井辰徳(2年)が、“死のブロック”で存在感を示す。この日の群馬県予選決勝では中盤でゲームメークし、縦パス、プレースキックの精度などを披露。今夏ブレイクし、U-17日本代表候補に初選出されたボランチはショートコーナーからルーレットターンでDFを抜き去るなど足技も発揮してチャンスメークをした。攻守で奮闘して勝利に貢献。ただし、シュート数を十分に増やすことができず、試合を決めるような活躍をするまでは至らなかった。

 優勝したことは素直に喜んでいた櫻井だが、「ずっと言ってきているように、『自分が結果を残す』と言ってきているので、納得の行くゲームではないです」。夏のインターハイでは青森山田高との初戦で互角以上とも言えるような試合を演じたが、0-2で敗れ、櫻井はシュートゼロに終わっている。そこからシュート意識を増し、今大会を通じてシュートを打つ回数を増加。だが、「もっとバイタル(エリア)で(ボールを)受けられるようになっていかないといけない」とレベルアップを誓っていた。

 チームの攻撃面は進化したと感じている。「縦パスを入れてFWの2枚が仕掛けるところやサイドのコンビネーションなどバリエーションは増えてきている」。ここから全国へ向けてもっと崩しのアイディアを加えたり、工夫を重ねていく考え。得点数増加へ向けて「(自分自身も含めて)もっと積極的にみんなが仕掛けるのも大事なのかなと思います」と語っていた。

 全国大会1回戦の対戦相手は鹿児島県代表の神村学園高に決定済み。インターハイでは関東王者の國學院久我山高に逆転勝ちし、プレミアリーグ勢の尚志高を追い詰めている難敵だ。さらに2回戦ではインターハイ準優勝校の富山一高(富山)と注目MF山田真夏斗(3年)擁する立正大淞南高(島根)の勝者と対戦。そして3回戦では宿敵・青森山田とプリンスリーグ中国首位の米子北高(鳥取)の勝者と対戦する“死のブロック”を突破しなければ、目標の日本一に近づくことができない。

 それでも、櫻井はこのブロックについて「凄いなと。人が見に来るな、と」。そして「インハイも山田と戦った時に楽しめたので、また人が集まるブロックに入ったという部分では良かった。あのブロックで結果を残して、もっと(関係者に)目をつけてもらえれば」と期待した。

 櫻井は初招集された8月のU-17代表候補合宿でもゲームメーク能力の高さを発揮。左右両足から放つミドルシュートやゲームメーク力、高精度のプレースキックに注目のボランチだ。守備の部分の課題などがあり、U-17ワールドカップメンバー入りを逃したが、来年の主役候補の一人であることは間違いない。選手権の活躍次第では、将来の可能性もより広がるだけに「(強敵相手でも)自分の力を出して勝ちたい」という目標を実現する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

前橋育英期待の2年生「熊倉ツインズ」。弟、弘達が群馬決勝で決勝ゴール!

後半25分、前橋育英高MF熊倉弘達が決勝ゴール!
[11.24 選手権群馬県予選決勝 前橋育英高 1-0 健大高崎高 正田スタ]

 2年生アタッカーの今大会4得点目となる一撃が決勝点となった。0-0の後半25分、前橋育英高は左サイドでFW中村草太(2年)がボールを奪い返すと、中央へ切れ込んで右足シュート。GKが弾いたボールを狙っていたMF熊倉弘達(2年)がスライディングシュートでゴールへ押し込んだ。

 この日、熊倉は左MFとして先発したが、前半半ばを過ぎるとMF倉俣健(3年)と入れ替わる形で右サイドへ。中央の守りが厚い健大高崎に対し、レフティーの倉俣が左から、左右どちらのサイドでも遜色のない熊倉が右から縦を突く形でゴールを目指した。相手の守りを広げ、決勝点は右からゴール前に詰めた熊倉がゴール。相手の状況を見て戦い方を変えた点もゴールに繋がった。

 この1点はビッグセーブを続けていた健大高崎高GK倉石大夢(3年)からようやく奪ったゴールでもあった。熊倉は「(中村)草太は最後シュートを打ってくれる。バウンドさせてこぼれてきたのでそこを上手く詰めることができた」と振り返る。前夜は緊張のため、なかなか眠りにつくことができなかったのだというが、「決勝戦出ていない人の分まで」と思いを持って臨んだ一戦でヒーローになった。

 熊倉は全国大会へ向けて、「凄く3年生の分までという思いがあって、2年生ですけれども自分の持ち味を出していきたい」と意気込む。双子の兄でレフティーのMF熊倉弘貴(2年、この日は出場機会なし)も期待のゲームメーカー。前橋育英では2年前、MF田部井涼(現法政大)、MF田部井悠(現早稲田大)の「田部井ツインズ」が日本一に貢献にしているが、今冬は「全国で一緒に出れたらいい」(熊倉弘達)という「熊倉ツインズ」の活躍にも注目だ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

[MOM3071]前橋育英MF栗原諒(3年)_『諦めずにやれば最後に…』の言葉信じて這い上がり、守備で優勝貢献

前橋育英高を守備で支えたMF栗原諒
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.24 選手権群馬県予選決勝 前橋育英高 1-0 健大高崎高 正田スタ]

 インターハイでは登録外だったボランチが、選手権予選準決勝では桐生一高のU-17日本代表FW若月大和(3年、湘南内定)対策として初先発し、完封勝利。決勝でも前橋育英高MF栗原諒(3年)は、特長である守備力の高さを発揮した。アプローチのタイミングの良さを活かして味方のボール奪取に繋げ、セカンドボールも回収。献身的な動きで健大高崎高に攻撃機会を与えなかった。

「(コンビを組んだ櫻井)辰徳が結構攻撃的なので、自分がバランスを取って支えるという役目だと思ってやっている。セカンドは意識しています」と栗原。チームは切り替えの速い守備から攻め続け、計23本のシュートで1点をもぎ取ったが、それを支えたのは背番号18のボランチだった。

 試合に出るために守備を磨いてきた。前橋育英のダブルボランチは昨年からレギュラーを務め、インターハイで優秀選手にも選出されているMF渡邉綾平主将(3年)とU-17日本代表候補のMF櫻井辰徳(2年)。栗原は全国でもトップレベルの2人とポジションを争わなければならない。

 柏U-15出身の栗原は元々攻撃のリズムを作るタイプのMFだった。特長が渡邊と類似しており、このままでは試合に出ることができないと感じた彼が磨いたのは守備。チームにとっても様々な特長を持つ選手が必要だ。「(チームが)勝つために自分は守備ができないといけないので意識していますね」。地道に取り組み、成長する姿を名将・山田耕介監督も見逃さなかった。

 守備意識高く臨んだ選手権予選準決勝で渡邉に代えて先発に抜擢すると、渡邉が大学受験のために欠場した決勝でも先発起用した。山田監督は「競り合いとか拾い合いとかでは諒の方が強いです。(抜擢した)桐一戦では攻め込まれるところもあるし、彼はディフェンスができるので。(決勝のプレーも)やっぱり良いですよ」と評価。栗原が「自分は守備って決めていたので、どれだけ若月を抑えるか」と臨んだ宿敵・桐生一との大一番、そして決勝でも信頼を高めるようなプレーを見せたことで、今後、前橋育英の選手起用、戦い方の幅は広がりそうだ。

 チームの方針でキャプテンマークを巻くことこそなかったものの、栗原は準決勝に続き、決勝でもゲームキャプテンを務めている。彼はつい先日までサブで、まだ絶対的な存在とは言えない。

 だが、栗原は「最初は驚いたんですけれども、自分はセカンドチームにいた時もキャプテンをやっていたので。トップとは違うんですけれどもまとめるのは比較的慣れている。ベンチの人の気持ちも自分が一番分かっているつもりなので、そういう面でもベンチの人が腐らないとか、そういう気持ちになっても助けて上げられるような存在にならないといけない」。前橋育英は選手権出場やプロ入りを目指して進学してきた選手ばかり。試合に出られない悔しさは良く分かる。だからこそ、彼らに気を遣いながら、ピッチでは誰よりもハードワーク。その姿勢も優勝の一因となった。

 栗原が諦めずに努力を続けた理由がある。「去年の部長の鏑木瑞生さんが、同じ立場で全国の舞台でスタメンだったので。『諦めずにやれば最後に何かあるから』と言ってくれたので、その言葉を信じて最後までやろうと決めていました」。セカンドチームにいても、どんな状況でも前を向き続けてきた栗原は出番に恵まれていない同級生や後輩たちも勇気や好影響を与えそうだ。

 山田監督も「栗原諒とか千葉(剛大)なんかはトップで、レギュラーで出れなくてもブレない。ブレずに前を見て。やっぱり信用できますよね。人間力がありますよ」と賛辞を惜しまない。今回、優勝に大きく貢献した栗原だが、まだまだ貪欲に守備の部分から自身をレベルアップさせていく構え。今後も日常からブレずに前を見て取り組み、全国大会でも前橋育英の力になる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

[MOM3070]日大藤沢DF宮川歩己(2年)_頭で2発決め、完封勝利!会心の試合に

後半20分、日大藤沢高CB宮川歩己がこの日2得点目となるヘディングシュートを決める
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.23 選手権神奈川県予選準決勝 日大藤沢高 3-0 桐蔭学園高 相模原ギオン]

 MF斉藤夏(2年)のミドルシュートによって先制した日大藤沢高は、後半の2発で勝利を決定づけた。その2ゴールはいずれも左SB吉本武(3年)のプレースキックからCB宮川歩己(2年)がヘディングシュートで決めたもの。ゾーンで守る相手との駆け引きを制した2年生CBのヘッドは高さを含めてインパクト十分だった。

「今回の相手はゾーンだったので、自分のところに来たら自信を持って叩くだけでした」。日大藤沢は全国4強入りした14年度の選手権予選準決勝でも桐蔭学園高と対戦。その際は2年生CB小野寺健也(現明治大)が頭で3得点を奪い、勝利している。「試合前に凄い色々なコーチからも『(小野寺は)3点決めているぞ』と言われて、同じ相手でその動画も見せてもらった」という宮川の“先輩にも負けないような”2ゴールだった。

 佐藤輝勝監督は宮川の2得点について「きょうは当たり日じゃないかなと思う」と微笑んでいたが、同時に下級生時から地道に続けてきたドリルサーキットの効果を口にしていた。入学当初、宮川は細身で決してフィジカル面の優れた選手ではなかったという。それが、身体のバランス向上を目的としてきたトレーニングの成果で体幹などが向上。跳躍の際に身体を上手く使い、またタイミングよくジャンプしたことで高い打点でのヘッドを生み出した。

 この日は相手の俊足エースFW白輪地敬大(3年)をケアしながら無失点勝利にも貢献。「DFとしては無失点でチームが負けないことが一番。その上で獲れたらいい」という目標をすべてやり遂げるゲームになった。

 決勝は世代最強のエースFW西川潤(3年)擁する桐光学園高との決戦。「もちろん(西川が)有名なことは知っていますし、変な緊張はなくて自分の今までやってきたことを出せばチーム一体となって勝てるんじゃないかと思う。もちろん、止めて3年生を全国大会に連れていきたいというのがある。身体を張って止めたいです」と宮川は言う。そして、「もっと高い打点で決勝は決められるようにやっていきたいと思います」と静かにゴール宣言。準決勝同様の活躍を決勝でもしてのけて、3年生とともに全国出場を喜ぶ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

日大藤沢MF植木が1タッチパスで攻撃にリズム。神奈川決勝は1年生対決にも注目

日大藤沢高の中盤で好プレーを見せたMF植木颯(右)
[11.23 選手権神奈川県予選準決勝 日大藤沢高 3-0 桐蔭学園高 相模原ギオン]

 神奈川決勝は1年生対決にも注目だ。MF植木颯(1年)は準決勝で日大藤沢高の3ボランチの中央でプレー。桐蔭学園高との“剥がし合い”“崩し合い”を挑んだ日大藤沢の中盤で丁寧に1タッチパスを繋ぐ姿が印象的だった。
 
 植木は「次の人に時間を与えるプレーをするのが自分の役割だと思っているので、(3ボランチを組む)植村(洋斗)君や斉藤(夏)君に時間を与えられるように、自分が少ないタッチ数でやることが試合を進める上で日藤ペースに持っていけるかなと思いました」。その精度は高く、彼の正確なパスが日大藤沢の攻撃のテンポ向上に繋がっていた。

 植木は1か月前ほどからタレント豊富な日大藤沢の先発としてプレー。佐藤輝勝監督は台頭してきた1年生MFについて「身体のバランスが整ってから本人も大分自信をつけて、今では黒子ができるくらいに。何が要求されてもできるように、3列目の脇やアンカーをやるようになってからチームで欠かせなくなってきた」と説明する。

 日大藤沢のピッチに立っているのは、他の選手から認められているプレーヤー。身体のバランス面が向上し、他の選手たちからの信頼を得た植木は今、チームの攻守の質を一つ高めている。

 Aチームでプレーするようになった当初に比べるとビビらずに自分を表現できるようになってきている。ただし、本人は満足していない。好プレーを見せていたこの日についても「緊張はしていないんですけれども、自分のプレーが全部できているかというとそうではないので、それが自分の今の課題。試合でミスがないくらいにパスをしたり、しっかり前の仲間に指示を出して自分がプレーしやすいようにしないといけないと思っています」と首を振る。日藤の一員として公式戦のピッチに立っている以上は、より高い水準を求めていく。

 決勝で対戦する桐光学園高には1年生ボランチ・岩根裕哉がいる。インターハイ予選準決勝で岩根は日大藤沢相手にCKを左足で直接決めて決勝点。彼は全国大会でも日本一に貢献し、大会優秀選手に選出されるなど注目度を高めている。植木にとってはチームが勝つためにも倒さなければならない相手だ。

 植木は「自分が勝って全国に行きたいです。岩根は展開力とかあって見ていて上手いと思うんですけれども、自分はもっと守備とかガツンといけると行けると思うし、負けられない」。チームが勝つために、目の前の相手にも勝つ。決勝でも中盤の攻防で主導権をもたらし、先輩たちとともに全国へ行く。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

前橋育英が群馬6連覇達成!大学受験で主軸不在も「ONE TEAM」で突破

主軸不在も選手層の厚さを見せつけ、群馬6連覇を達成した前橋育英高
[11.24 選手権群馬県予選決勝 前橋育英高 1-0 健大高崎高 正田スタ]

「上州の虎」前橋育英が「ONE TEAM」で全国へ――。第98回全国高校サッカー選手権群馬県予選決勝が24日に行われ、前橋育英高がMF熊倉弘達(2年)の決勝点によって健大高崎高に1-0で勝利。6年連続23回目の全国大会出場を決めた前橋育英は、12月31日の全国大会1回戦で神村学園高(鹿児島)と対戦する。

「ONE TEAM」となった前橋育英が群馬県記録を更新する6連覇を達成した。準決勝は主力CB相原大輝(3年)が大学受験のために不在で、この決勝も関東屈指のボランチMF渡邉綾平主将(3年)と守備の柱を担うCB松岡迅(3年)、サッカー部長のFW久林隆祐(3年)が大学受験のために欠場した。

 U-17日本代表候補MF櫻井辰徳(2年)が「一つになれないと勝てないという中で、スタンドで応援してくれる仲間も、ベンチも、出ている人も全員が一つになれるチームというのを掲げて『ONE TEAM』に」と説明する「ONE TEAM」の精神。ゲーム主将のMF栗原諒(3年)も「一人ひとりがその仲間のために意識していたので、自分のためというよりも仲間のために次のチャンスを作るという意識でやれていたのが良かったと思います」と振り返ったように、仲間のために次のステージに繋げようと意識してプレーした結果が桐生一高との準決勝、そして決勝の勝利に繋がった。

 試合は立ち上がりから前橋育英が押し込む展開となった。15分に左サイドからカットインしたSB並木歩己(3年)の右足シュートがゴール左隅を捉え、16分には櫻井の右CKからMF倉俣健(3年)が決定的なヘディングシュート。だが、インターハイ予選に続いて初の決勝進出を果たした健大高崎は、いずれもGK倉石大夢(3年)が立ちはだかる。

 前橋育英は18分にも右SB山田涼太(3年)が得意な形というギャップの間を突くドリブルから抜け出して右足シュート。だが、健大高崎はここでも倉石がシュートストップし、こぼれ球に反応したMF山岸楓樹(3年)の右足シュートもゴールをカバーした右SB廣嶋麒輝(2年)がライン上でかき出す。

 健大高崎はカウンターから10番MF橋爪悟(3年)が推進力ある動きで攻め上がっていたほか、MF平井亨(3年)が前線で身体を張ってボールを収めようとしていた。ただし、攻撃面でのミスが目立つ展開。セカンドボールへの意識高い栗原ら前橋育英にボールを拾われ、連続攻撃を受けてしまう。

 それでも、CB今野祥吾(3年)やMF黒田彪(3年)がゴール前で諦めずに一歩を出してシュートブロックするなど得点を許さない。前橋育英は多彩な攻撃から前半だけでシュート12本、CK10本を放ったが、チームの約束事を徹底しながら、左SB設楽陸斗(1年)らが個でも対抗する健大高崎守備陣からゴールを奪うことができなかった。

 それでも、前橋育英の山田耕介監督は「(決定機をモノにできずにいたが)『決勝戦ってこんなものだから、10本打って1点決めればそれで正解だから。外しても、外してもチャレンジしろ』と伝えました」。その言葉に勇気を得た前橋育英は、後半も切り替えの速い守備からボールを奪い返して連続攻撃。14分には山岸の決定的なシュートをまたもやGK倉石のファインセーブに止められたが、チャレンジを続けると25分、ついにゴールを破った。

 敵陣左サイドでボールを奪い返したFW中村草太(2年)が中へ切れ込んでから右足シュート。GK倉石がこのシュートも止めたが、こぼれ球にいち早く反応した熊倉弘達が右足でゴールを破り、均衡を崩した。

 先制された健大高崎は25分、右サイドを抜け出したMF廣嶋大輝(3年)のクロスをFW中島俊介(3年)が頭で狙うが、前橋育英GK高橋怜士(3年)がキャッチ。その後もFW千木良航大(2年)の連続ロングスローやFKなどから反撃するものの、前橋育英はこの日空中戦で強さを発揮した相原やCB大野篤生(2年)がゴール前で確実にボールを跳ね返す。その後も隙を見せないまま1-0で試合終了。前橋育英はこの勝利で今年の群馬4冠も達成した。

 今夏のインターハイで前橋育英は、初戦敗退。青森山田高との注目対決となった一戦で攻撃時間を増やしながらも得点を奪うことができなかった。山田監督はこの日1得点に終わった現状について「やはりダメだと思いますね」と厳しい。それでも、「彼らはこれから(選手権全国大会まで)の1か月ちょっとの時期に伸びてくると思う」と期待する。

 人間性の部分で指揮官から高く評価される栗原やMF千葉剛大(3年)がインターハイ後のチームにプラスアルファをもたらし、190cm近い長身を持つCB関礼恩(3年)ら全国大会へ向けての伸びしろもある。全国トップレベルの選手層を誇る前橋育英は、この日優勝に貢献した選手たちに加えて決勝を欠場した主力組、またベンチやスタンドにも力のある選手がいるだけに、ここからのチーム内競争とチーム力向上に注目だ。今年は高卒でプロ入りするような特別な個こそいないものの、「ONE TEAM」で群馬を突破した「タイガー軍団」が、全国でも2年前の日本一世代のように躍動する。

(取材・文 吉田太郎)
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日大藤沢が盤石の勝利。決勝で「打倒・桐光」に挑戦

日大藤沢高が決勝へ駒を進めた
[11.23 選手権神奈川県予選準決勝 日大藤沢高 3-0 桐蔭学園高 相模原ギオン]

 神奈川ファイナルのカードは、ライバル対決に決定! 23日、第98回全国高校サッカー選手権神奈川県予選準決勝が行われ、関東大会予選優勝校の日大藤沢高と2年ぶりの優勝を狙う桐蔭学園高が対戦。日大藤沢が3-0で勝ち、11月30日に行われる桐光学園高との決勝戦へ駒を進めた。

 日大藤沢が盤石とも言えるゲーム運びでインターハイ王者・桐光学園への挑戦権を勝ち取った。ここまでは自分たちのやりたいようなサッカーができなかったという日大藤沢だが、佐藤輝勝監督が「今週、桐蔭さんのプレッシャーも剥がすつもりで行った」と説明するように、同じく技術力高い桐蔭学園との“剥がし合い”“崩し合い”にチャレンジ。前半からボールを支配する時間を伸ばした日大藤沢はセットプレーでの強さも合わせて快勝した。

 前半30分にMF斉藤夏(2年)が「素晴らしいミドルで、練習していた通りの枠に低い弾道でというところでやってくれた」(佐藤監督)という一撃を決めてスコアを動かす。桐蔭学園も繋いで攻め返していたものの、独特の4-3-2-1システムを採用する日大藤沢の守りは堅い。

 CB青木駿人主将(3年)が「去年から始めたやり方で1年間積み重ねてきて、今年もその守備のやり方を一年間続けてきて身体に染み付いているというか、ここに来たらこう動くとか、全員の意思疎通がしっかりとできている」と説明したように、同方向へ追い込んでボールを奪う守備が効果を発揮。守備に人数をかけているために一見重心は重いが、前向きにボールを奪うと、空いたスペースへ右SB 岡田怜(3年)や左SB 吉本武(3年)ら走力と攻撃力を備えた選手が湧き出るような攻撃をしてチャンスに繋げていた。

 また、3ボランチの脇に構えるMF植村洋斗(3年)が抜群のキープ力を見せ、FW平田直輝(3年)が最前線で良く身体を張っていた一方、中央に構える1年生MF植木颯の精度の高い1タッチパスが味方の時間、余裕ある攻撃を生み出していた。桐蔭学園は後半、注目エースのFW白輪地敬大(3年)が組み立てに参加しながらボールを運ぼうとしていたが、なかなか良い形で攻め切ることができない。

 逆に日大藤沢はセットプレーで追加点。10分に吉本の左CKをファーサイドのCB宮川歩己(2年)が頭でゴールにねじ込むと、20分にも吉本の左FKから宮川の放ったヘディングシュートがゴールラインを越える。

 意地を見せたい桐蔭学園はMF鹿子島雅也(3年)らがボールに絡みながら前進。白輪地やDF横川渓太(3年)がシュートにまで持ち込んだ。だが、GK濱中英太郎(3年)の好守に阻まれるなど最後まで1点を奪うことができず。日大藤沢が14年度以来となる全国進出へ王手をかけた。

 日大藤沢の選手たちの打倒・桐光学園への思いは非常に強い。青木は「去年の選手権も、今年の夏も、全部桐光に負けて全国の道を絶たれているので、決勝で、三ツ沢で、桐光で舞台は整ったと思うので、あとはしっかりと一週間準備してしっかり勝つだけだと思います。桐光が夏獲って、この選手権でまた桐光かとなるのは嫌。自分たちも神奈川にいると見せつけたいので絶対に勝ちます」と力を込めた。

 昨年度の選手権予選は2-0から逆転負け。今年のインターハイ予選では延長戦の末に敗れている。だが、リーグ戦を含めると今年の対戦成績は1勝1分1敗だ。また、日大藤沢の現3年生は、1年時にRookie League関東、全国大会も優勝している期待の世代。そして、競争の中でBチームから吉本やFW浅野葵(3年)が台頭し、この日は昨年からのレギュラーだった選手たちや超大型FWの鈴木輪太朗イブラヒーム(2年)が控えるほどの充実の陣容だ。
 
 期待の世代もここまでは十分な結果を残せていないが、全国王者の壁を乗り越えることができるか。佐藤監督は「相手を尊重しながらも自分たちだと思う。見ている人がサッカーの魅力に取りつかれるようなゲームができて、その上で自分たちが半歩でもリードできるように準備したい」。打倒・桐光学園を今度こそ果たして全国舞台に立つ。
 
(取材・文 吉田太郎)
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選手権まであと1勝。FW西川潤がこだわる結果と「爆発力」

悪コンディションの中で「爆発力」を示した桐光学園高FW西川潤主将
[11.23 選手権神奈川県予選準決勝 桐光学園高 3-1 平塚学園高 相模原ギオン]
 
「獲りたいです」

 今年、U-20とU-17のワールドカップに出場。特にU-17ワールドカップでは欧州王者のオランダやセネガル相手にインパクト十分の活躍をしてのけた。また、今年は内定しているC大阪でJ1デビュー。加えて、所属する桐光学園高をインターハイで日本一に導いた。

 他の高体連所属選手と比較しても今年、FW西川潤(3年)が残している実績は群を抜く。その注目レフティーにとっても、選手権のタイトルは特別だ。その野心を強く持っていることを素直に認め、チームメートとともに最後の大会で最高の結果を残すことを誓った。

 10月、11月は日本との時差が12時間もあるブラジルでU-17ワールドカップに出場。11月6日の決勝トーナメント1回戦で敗れて帰国した後、2日間のオフを取って桐光学園のトレーニングに合流した。それから、わずかな準備期間で迎えた選手権予選初戦。「(早く選手権予選を戦いたくて)うずうずしていたのがありました」という西川の存在感は抜群だった。

 これまでの試合同様、常に相手DFから監視されているような状況。その中で背番号10は1タッチのパスを多く活用していた。雨中で精度を欠いた部分があったことも確か。だが、その技術で味方が前向きにボールを持つ状況を作り出していた。

 そして、パワーを掛けた際の突破が何より際立っていた。ファウル覚悟で止めようとするDFを強引に振り切るようにして前進するシーンが3度4度。前半32分に生まれた先制点は、西川の爆発的な仕掛けで得たFKから生まれたものだった。

 なかなかリードを奪えない中、自分で仕留めに行った西川を平塚学園高DFはファウルで止めるしかなかった。この日の西川は、相手DFの重心の逆を取る形でのテクニカルな突破も見せていたが、雨中で段違いの馬力やスピードも発揮し、DF網をこじ開けていたことも印象的。その際の「爆発力」がこれまでと比べて増しているように映った。

「量よりも質というか、(仕掛ける)回数は減ったかもしれないですけれども、そこの『爆発力』は自分なりにこだわってやっていきたい」と西川。昨年のインターハイで5人抜きからのスーパーゴールを決めたように、彼の突破力は下級生時から折り紙付きだ。だが、昨年よりもマークが厳しくなった今年は繰り返しドリブル突破を図るよりも、力の掛けどころを見極めながらプレー。この日は、こだわってきた「爆発力」が得点に繋がった。

 西川は後半22分に左足FKでCB奈良坂巧(2年)のゴールをアシスト。ドリブルからのシュートがわずかに枠を外れるなど無得点に終わったものの、注目選手は存在感を発揮して勝利に貢献した。

 一週間後の神奈川県予選決勝戦、またそれを突破した際に迎える全国大会では、よりレベルの高いDFたちから厳しいマークを受けることになるだろう。それでも、西川は「(対戦相手が厳しくマークに)来る中で、そこでも結果を出すことが大事だと思いますし、もっとこだわっていきたい」と強調。選手権の有力な主役候補は結果と「爆発力」にこだわり、それを表現して最大目標のタイトルも必ず「獲る」。

(取材・文 吉田太郎)
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