青森山田が国見以来の連覇に挑戦…浦和内定MF武田英寿「絶対に優勝して終わりたい」

最終調整を行った青森山田高の選手たち
 第98回全国高校サッカー選手権はあす13日、埼玉スタジアムで決勝戦が開催される。前年度王者の青森山田高(青森)は12日、東京都内で約1時間の最終調整。00年度と01年度大会を制した国見高(長崎)以来、史上10度目となる大会連覇に挑む。

 “絶対王者”が貫禄を示し、2年連続4度目のファイナル進出だ。今大会は激戦区のAブロックに入ったが、プリンスリーグ中国首位・米子北(鳥取)、総体準優勝校・富山一(富山)、昌平(埼玉)という難敵を次々と倒し、“死のブロック”を順当に勝ち上がった。前日の準決勝では帝京長岡(新潟)を2-1で振り切り、中1日で迎える決勝に向けて、セットプレーの確認など軽めの調整を行った。

 平成最後の選手権で頂点に立った青森山田が、令和元年度の大会制覇に王手をかけた。連覇達成となれば、00年度と01年度大会を制した国見(長崎)以来、史上10度目となる偉業。黒田剛監督は「昨年とメンバーも変わっている。連覇と気負わず、今の自分たちの最高のパフォーマンスを出すことだけを考えて試合に臨ませたい」と表情を引き締めた。

 2年連続3度目の優勝を懸けたファイナルで激突するのは静岡学園高(静岡)。昌平、帝京長岡に続く技巧派集団との対戦となり、黒田監督は「準々決勝、準決勝とテクニカルなチームとやってきた。まずは相手のパスワークに必死に食らいついて、青森山田の勝ち方にしっかりとハメられれば最高」とイメージを膨らませた。静学は今大会5試合を無失点で勝ち上がっているが、主将で10番のMF武田英寿(3年)は「どんな形からでも得点を取れるのが強み」と堅守をぶち破る意気込みだ。

 今年度はプレミアリーグEAST、プレミアリーグファイナルをいずれも3年ぶりに制覇し、「高校年代真の日本一」に輝いた“絶対王者”のプライドがある。7番を背負った昨年度、優勝メンバーだった武田は「今年はチーム力が強い。コミュニケーションを取り合って、真面目に取り組んできたことをどんな舞台でも出せる」と自信をにじませる。内定先・浦和レッズの本拠地で迎える高校年代ラストマッチ。「絶対に優勝して終わりたい」と力強く宣言した。

MF武田英寿(3年)は2年連続埼スタ決勝のピッチへ


(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

「魅了しながら勝てればベスト」。静岡学園の攻撃的CB中谷は決勝で内容、結果の両方を求める

静岡学園高のCB中谷颯辰は守備面だけでなく、攻撃面でもチームに貢献する意気込み。(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.11 選手権準決勝 静岡学園高 1-0 矢板中央高 埼玉]

 24年ぶりの決勝進出を果たした静岡学園高のCB中谷颯辰(3年)は内容、結果の両方を求めて優勝することを誓った。「あまり良くない内容でも勝った気がしないというか、良い内容で勝ち切らないと自分たちも満足しない。(静学スタイルと言われているが、)面白いサッカーで色々な人を魅了しながら勝てればベスト。それをできる実力はあると思っているし、全員で力を出し切れれば優勝できると思います」。決勝で対戦する青森山田高は強敵だが、勝つだけでなく、魅せて勝つという意気込みだ。

 中谷はヘディングの強さなど守備面での奮闘も光るが、最大の特長はポゼッション能力の高さ。川口修監督も起用理由の一つにその点を挙げていた。中谷もその意図を理解し、ピッチで表現している。

「自分のところで1枚かわせれば攻撃がスムーズに行くと思うので、ビルドアップのところは意識しています。繋ぎの部分は『チャンスがあれば自分でどんどんドリブルで上っていい』と監督にも言われているので、隙あれば攻撃参加していきたい」。CBにも攻撃面を求められるのは静学の伝統。中谷はもちろん失点しないことを意識しながら、攻撃面でどんどん特長を出して行くつもりでいる。

 矢板中央高戦は、引いた相手を押し込み、中谷も敵陣でプレーし続けた。落ち着いてビルドアップを続けていた一方、やや前のめりになりすぎて、ロングボールの対応が乱れるシーンも。この日は失点に繋がらなかったが、青森山田相手では失点に直結する可能性が高い。それだけに、中谷は「(青森山田はヘディングで)後ろにこぼしちゃうと一発で決めてくるところがある」と警戒。相手は少ないシュート数でも決めてくる力があるだけに、90分間細部にこだわってプレーすることを心がける。

 今大会、静岡学園は5試合全て無失点。切り替えの速い守備とゴール前での堅さが光る。普段から鹿島内定MF松村優太(3年)やMF浅倉廉(3年)らハイレベルなスピードやテクニックを持つアタッカーたちとトレーニングしているだけに、今大会では対人守備で特別苦戦することはなかったようだが、油断することなくあと1試合。埼玉スタジアム2○○2での決勝について中谷は「憧れの舞台なので、緊張はそんなにしていないし、楽しみ」。そして、「決勝とかあまり意識せずに、『山田を倒す』ということを意識して山田と真っ向勝負できたらいいと思います」。まずは目の前の相手を倒すことに集中。その上で静学らしくCBも攻めて、楽しんで、勝つ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

東京Vの逸材MFは幼なじみで「負けたくない」存在。静岡学園の攻撃の中心MF浅倉が決勝での活躍誓う

幼なじみからも刺激を受けている静岡学園高MF浅倉廉。決勝でチームにゴールをもたらす。(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.11 選手権準決勝 静岡学園高 1-0 矢板中央高 埼玉]

 矢板中央高が自陣で守りを固める中、静岡学園高は個人技とコンビネーションで攻略を図った。攻撃の中軸を担うMF浅倉廉(3年)は、前半22分にDF2人をかわして右足シュート。その他にも飛び込んでくるDFをいなしたり、ワンツーを多用しながらゴールへ向かったりするなど、周囲を良く見ながらプレーしていた。

「(守りを固める相手に対して)シュートを遠目からどんどん打って行こうと思っていた。途中からワンツーとか通用すると分かっていたので、意識していました」。チームは24本目のシュートとなるMF松村優太(3年)のPKでようやく1点をもぎ取った。相手の堅守に苦しんだ印象だが、浅倉自身はオフ・ザ・ボール時に相手DFとの距離感や味方選手の位置をよりよく見ることで、余裕を持ってプレーできるようになっていると実感。初戦に比べて徐々に自分のプレーの質を上げることができてきているという。

 浅倉は小学生時代、川崎Fの育成組織で現日本代表のMF久保建英(マジョルカ)とチームメート。また、19年に東京Vのトップチームで22試合に出場した“高校生Jリーガー”MF山本理仁(U-18日本代表)とは「幼稚園一緒で小学校も試合はちょくちょくしていた。小学校3年までは同じ(サッカー)スクールだった」という間柄だ。

 東京Vの永井秀樹監督が「日本の宝になる」と評した“逸材レフティー”山本とは自宅が近いこともあって現在も交流があり、地元へ帰省した際には一緒に食事へ行ったりもするという。今大会開幕前には「選手権頑張って」とエールを受けた。そして、浅倉はチームの中軸として活躍し、決勝進出。日本一まであと1勝に迫っている。

 山本については、「キックとかゲーム作る部分とか本当に上手いけれど、ゴールに直結するプレーでは負けたくない。『凄いな』という思いと、自分も早くプロでやりたいという思いがあるので負けたくないです。小さい頃から一緒にやってきて仲も良いので、自分もプロにならないといけないという思いがあります」とライバル心も。選手権で少しでもアピールし、大学を経てプロ入りを果たす。

 青森山田高との決勝戦へ向けて、浅倉は「技術中心のスタイルでも(選手権で)勝てることを広めていけるチャンスかなと思っています。相手はフィジカル強いんですけれども、それを上回る技術で勝ちたい。自信はあります」と言い切った。川崎F U-15から現日本代表のMF大島僚太(静岡学園高→川崎F)を目指して静岡学園へ進学し、磨いてきたテクニック。決勝では幼なじみのライバルにも「負けたくない」というゴールに直結するプレー、テクニックを発揮し、静岡学園を日本一へ導く。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

決勝の相手は絶対王者。静岡学園CB阿部主将「もう一段階、自分たちのレベルも上げていかないといけない」

静岡学園高のCB阿部健人主将は、打倒・青森山田へもう1ランク上のレベルを求める。(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.11 選手権準決勝 静岡学園高 1-0 矢板中央高 埼玉]

 静岡学園高のCB阿部健人主将(3年)は、前回王者・青森山田高(青森)との決勝戦(13日)へ向けて「自分たちの今のサッカーよりも、もう一個上に上げて次の決勝に臨みたいと思います。まだまだ全然足りないと思います」と引き締めた。

 静岡学園は今大会5試合で16得点無失点と堂々の勝ち上がりを見せてきた。ただし、現在プリンスリーグ東海に所属する静岡学園に対し、青森山田は高校年代最高峰のリーグ戦、プレミアリーグEASTに所属するチーム。同リーグで常に上位争いを演じ、19年度は2度目の優勝、名古屋U-18とのファイナルも制して「高校年代真の日本一」に輝いている。川口修監督も「隙の無い、絶対王者」と認める強敵だ。

 青森山田はJクラブユース勢や高体連を代表する強豪相手にリーグ戦で勝ち続け、今大会を含めた最近5年間の選手権の成績も19勝2敗で2度の全国制覇。今大会でも強固な守備と攻守の切り替えの速さ、技術力の高さ、セットプレーの強さなどを発揮している。その相手に対し、川口監督は「我々の120%くらい出せないと勝てない」と強調。ただし、準決勝で強固な守備の矢板中央高と戦い、競り勝つことができたのは良いシミュレーションになったと感じていた。

「山田さんとやれる前にこういうブロックの強いチームとやれたことは、その経験が活きてくれればなと思っています」

 “元祖・技巧派軍団”静岡学園の攻撃力は全国でも有数。鹿島内定MF松村優太(3年)やMF 小山尚紀(3年)、MF浅倉廉(3年)、MF 井堀二昭(3年)を中心としたテクニカルな攻撃に加え、多彩なセットプレーも加えてゴールを連発してきた。矢板中央戦はシュート24本。相手の堅い守備ブロックの前に苦戦を強いられたが、試合終了間際に松村が自ら獲得したPKを決めてゴールをこじ開けた。

 また、静岡学園は今大会、今年度のチームの強みである攻撃から守備への切り替えの速さを活かして無失点を継続。矢板中央戦は被シュート2本で終えている。9月末のYASUカップ決勝で昌平高の切り替えの速さに苦しみ、「あの攻守の切り替えの速さになりたいと思ってやってきた」(阿部)と日常のハーフコートのミニゲームで意識してきた成果を選手権で発揮。ただし、阿部は攻撃も、この守備ももう1ランクレベルを上げないと青森山田を倒すことはできないと分析していた。

「プレミア(リーグ)のチームと切り替えの速さは違う。東海ではなかなか経験できないので。自分たちの基準を上に持っていかないと、山田は倒せないと思っている。決勝はもう一段階自分たちのレベルも上げていかないといけない」とわずかな期間で少しでも意識面から上げて、13日に開催される決勝に臨むことを誓った。

 今大会無失点を続けてきたが、例え決勝で失点しても動揺せずに、ゴールを目指し続けること。前回、青森山田と選手権で対戦した06年度大会3回戦では後半アディショナルタイムまで攻め続け、MF國吉貴博(元富山)のクロスから2年生FW大石治寿(相模原→藤枝)の劇的なヘディングシュートで勝利している。

「(青森山田に)何点か獲られるかもしれないけれど、1点でも多く獲れればという発想でいます」(川口監督)。24年前の初優勝時は鹿児島実高(鹿児島)との同点優勝。絶対王者に対して静学らしく、最後まで攻め続けて24年ぶり、そして初の単独優勝を果たす。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

引き継がれる矢板中央・伝統の堅守…2年生SB坂本龍汰「絶対にゼロで守る」

矢板中央の右サイドバックを担うDF坂本龍汰(2年)
[1.11 選手権準決勝 静岡学園高 1-0 矢板中央高 埼玉]

 伝統の堅守を引き継ぐ。矢板中央高(栃木)の右サイドバックを担うDF坂本龍汰は最終ライン唯一の2年生。ゴール前で何度も体を投げ出し、シュートブロックに徹したが、チームは終了間際のPK弾に沈んだ。「悔しすぎて泣けなかった」という無情な幕切れだった。

 今大会は栃木県予選から失点が続いたが、3回戦・鵬学園戦、準々決勝・四日市中央工戦にいずれも2-0で勝利。連続完封で堅守を取り戻すと、この日も分厚いブロックを構築して静岡学園の猛攻に耐え、90分をゼロで抑えた。しかし、後半アディショナルタイム4分にPKを決められると、直後に試合終了のホイッスル。「迷惑をかけてきた先輩たちを助けたかった」と敗戦に悔しさをにじませた。

 隣のポジションには主将でDFリーダーのCB長江皓亮。さらにCB矢野息吹、左SB加藤蒼大という頼もしい3年生とカバーし合い、堅守を築いてきた。「いつも声をかけてくれるので、自信を持ってプレーできた」。この日のシュート数は2対24。自陣に釘付けにされ、防戦一方の展開だったが、守備陣は矢板中央の真骨頂を表現した。

 坂本は15年度大会のDF星キョーワァン(駒澤大/横浜FC内定)の代に憧れ、徳島県を離れて矢板中央に入学した。対角線にロングフィードを蹴り込めば、ロングスローの役割も担うが、センターバック出身とあってこだわりはもちろん守備にある。

「絶対にゼロで守るのは矢板中央の伝統なので、それを意識しながらプレーしています。隣でキャプテン長江を見てきたので、ああいうDFリーダーになりたい」

 2万9747人の大観衆が詰めかけた埼玉スタジアムの舞台にも臆することなく、「緊張よりもワクワクした」と気持ちの入ったプレー。持ち前のメンタルと今大会の経験値は、来年度のチームを率いる大きな武器になるはずだ。「反省を生かしてまた戻って来られるように頑張りたい」と気合十分。伝統の堅守を引き継ぐ覚悟をにじませ、一年後の雪辱を見据えた。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

インパクト残した静学MF小山尚紀「抜けると思った」仕掛けで“決勝FK”ゲット

抜群のテクニックで魅せたMF小山尚紀(3年)(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 抜群のテクニックを誇る静岡学園高の14番が決勝でも魅せた。2-2で迎えた後半39分だ。左サイドボールを持ったMF小山尚紀(3年)は対峙した相手を揺さぶるステップワークから巧みなタッチで剥がし、守備2人の間をアグレッシブに仕掛けると、たまらず相手が倒してFKを獲得した。

「自分自身は抜けると思ったんですが、足がかかった」。数的不利でも果敢にチャレンジし、テクニックとアジリティーで道なき道を突破するプレーは大会中も見せてきた。3回戦の今治東戦(○2-0)では細かいタッチと縦への加速で守備網を一気に突破し、圧巻の“3人抜き”ゴール。2回戦の丸岡高戦(○3-0)でもシザースを入れながら3人の包囲網を打破し、ゴールをもぎ取っていた。

 青森山田相手にも果敢に仕掛ける姿勢を貫き、PA左で獲得したこのFKが値千金の決勝点につながった。0-2からの劇的な逆転劇。前半は相手の鋭いプレッシャーにパス回しが寸断され、「静学のサッカーができずに終わっちゃうのはすごく寂しいことだった」。後半はらしさを取り戻し、“静学スタイル”で絶対王者を倒した。

「サッカー人生13年目で優勝という結果が出てすごくうれしい」。小山は今大会得点ランキング3位タイの4ゴールを記録。準々決勝以降は得点こそなかったが、準決勝、決勝はいずれも決勝点に絡んだ。インパクトを残した自身初の全国大会。記憶に残るテクニックで魅了し、大会優秀選手にも選出された。

「1、2年生は苦しい時期があって、今年もインターハイで負けたり、試合から遠ざかった時期もあった。苦しい時もすごく多かったんですが、最後にこういう舞台でこの結果を残せたのはうれしいです」

 有終の美を飾った静学の14番は今週末にセンター試験の受験を控え、大勝負が続く。「勉強面でもサッカー面でも充実していると思っているので、特に苦ではない」と小山。次のステージでも輝くために道を切り拓き、大学でも文武両道に励む意向だ。


(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

「“赤い壁”になれ」。矢板中央は残酷な幕切れも…主将CB長江中心に90分間築いた堅守

矢板中央高(栃木)の堅守を率いた闘将DF長江皓亮(3年)(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.11 選手権準決勝 静岡学園高 1-0 矢板中央高 埼玉]

 “堅守の矢板”らしくスタイルを完遂し、90分間を無失点に抑えた。矢板中央高はテクニカル軍団・静岡学園高の猛攻に晒されながらも、数的優位を作って個人技を抑え、体を張ったブロックで耐え凌いだ。0-0のままアディショナルタイムに突入したが、PK戦突入も見えた90+3分に痛恨のPK献上。これを沈められると、直後に敗戦を告げるホイッスルが鳴った。

 残酷な幕切れに、涙を抑えられなかった。守備陣を統率した主将のCB長江皓亮(3年)は「堅い守備は出来ましたが、最後に決められてしまった。あそこであと一歩、二歩耐えていれば」と悔やしさをにじませた。初の決勝進出は叶わず、最高成績の09年度、17年度大会に続く4強敗退となった。

「監督からは『“赤い壁”になれ』と言われた」。高橋健二監督の要求をチーム一丸で体現し、フィールド選手全員が自陣深くまで下がり、中央に分厚いブロックを構築した。自陣に釘付けにされ、24本のシュートを浴びる展開。ラインを押し上げられなかった一方、3万人近い大観衆の前で伝統の堅守を発揮した。

「今年はチーム力を大事にしてきて、全員で声をかけ合ってきた」。周囲からは厳しい評価も受けたが、反骨心で這い上がった。プリンスリーグ関東は昨年度の優勝から最下位に転落。選手権も栃木県予選から失点が続いたが、大会中にも進化を遂げ、3回戦・鵬学園戦、準々決勝・四日市中央工戦をいずれも2-0で制した。この日も気迫に満ちた全員守備で90分間耐え、矢板のプライドを示した。

 3年間の集大成とも言える選手権が幕を閉じた。岐阜県出身の長江は越境入学に踏み切り、憧れだった栃木県の名門・矢板中央でプレーした。「苦しいことも嬉しいこともあって、濃い3年間だった。この3年間の経験を次のステージにつなげたい」。大学サッカーの舞台に進む主将は「来年は日本一を獲ってほしい」と後輩に悲願を託した。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

この涙を未来の糧に…“最後は笑顔”の帝京長岡FW晴山岬「いいサッカーでした」

帝京長岡高FW晴山岬(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 タイムアップ直後のピッチでも、仲間に囲まれたロッカールームでも、あふれる涙は止められなかったという。何より胸に響いたのは、14年間の付き合いで「初めて見た」という谷口哲朗総監督の涙。「日本一の監督にできなかったのは自分たちの力のなさ」。帝京長岡高FW晴山岬(3年)はさまざまな思いを背負って新たなステージへ歩んでいく。

 8強の壁に阻まれた前回大会の悔しさを胸に、1年越しに辿り着いた埼玉スタジアムでの準決勝。帝京長岡は絶対王者の青森山田高を相手に華々しいパフォーマンスを見せた。「めちゃめちゃ崩せた。楽しかった」(晴山)。背番号10の言葉どおり、ショートパスとドリブル、ポジションチェンジとフリーランを小気味よく繰り出す攻撃で次々に決定機を導いていた。

 ところがゴールだけがなかなか決まらない。クロスからのヘディングシュート、相手のミスにつけ込んだ単騎突破、サイドをえぐってのドリブル——。次々にボールがゴールマウスから逸れていくと前半22分、晴山自身もフットサル仕込みのクイックターンからフリーの状況を作り出すも、「落ち着いていた」というシュートは無情にも左へ外れた。

 一方、青森山田はしたたかだった。前半16分、カウンター攻撃から先制点を与えた帝京長岡は後半立ち上がりの2分にも追加点を献上。同20分、晴山はペナルティエリア左寄りでうまくボールを収めたが、左足シュートは相手GKに阻まれた。ここでのせめぎ合いは「決め切るところ、守り切るところの勝負強さがあった」(晴山)と振り返るしかなかった。

 とはいえ、晴山はそれでも焦りを見せなかった。微妙な接触プレーでゲームが中断した際には相手選手と握手をするなどフェアプレーを徹底。「自分が一番笑顔でしなきゃいけないし、最前線にいる中で自分が焦ってもチームが乱れるだけだし、自分が一番落ち着いて絶対に勝てるというふうに思わなきゃ試合も勝てない」。そんな信念が実ったか、同33分にはMF田中克幸(3年)の「スーパーだった」(晴山)シュートで一矢報いた。

 しかし、うまく時間を使う王者を前に反撃の勢いは削がれていく。試合途中には3歳から共にサッカーをしてきたFW矢尾板岳斗(3年)、MF谷内田哲平(3年)が次々交代。残された晴山は「自分が勝たせないといけない、14年間をここで終わらせてはダメだ」という思いで戦っていた。それでも後半終了間際、MF青山慶紀(3年)のパスを受けて放った晴山のシュートは枠外。これが最後の決定機となり、最後の冬はベスト4で幕を閉じた。

「決められなかったのはFWとしての仕事ができなかったということ。チームを勝たせることができなかったということ。FWとして点が取れない試合が最悪な試合だと思っているので、GKに止められたシュートだったり、前半の左に逸れてしまったシュートだったり、一つ一つを修正しないといけない」。今大会4得点のエースは敗責を自ら背負った。

 それでも最後は「常に笑顔」という姿勢を貫いた。「めちゃめちゃ泣きました。みんな泣いていた。でも自分たちの色はそういう色じゃないと思って、少し笑かすようなこともして、みんな最後は笑顔で終わらせられた。勝てなかったことは悔しいけど、そうやって笑って終われたのは良かった」。取材エリアに姿を現した時点では普段どおりの笑みも浮かんでいた。

「決められなかったのが今後の課題。そういう課題を一つ一つ克服していかないといけない」。「決められなかったのは実力不足。この経験をいい方向に持っていかないといけない」。この試合で出てきた課題とは素直に向き合っている。ただ、3万人近い大観衆を沸かせた“自分たちらしい”プレーについては、誇らしさものぞかせる。

「意外とみんなのまれないでプレーできたのがうれしかったし、一番自分たちのサッカーやれた試合だった。山田相手にここまでやれたのは、次のステージに行ってもいい自信になる。いいサッカーでした。楽しかった」。

「ボールがどんどん回るし、自分のところにボールがどんどん来てくれる。安心して前で待っていられた」。

「狭い局面でどれだけ崩せるかを一年間やってきたので、ああやってシュートまで行けたのは一年間やってきたのが出たと思う」。

 だからこそ、そうした手応えと課題は全て引っくるめて、次のステージに抱えていくつもりだ。「ああいう小さなチャンスを大きなチャンスにするFWになるため、この経験を活かして日々練習しないといけないとあらためて思わされた。プロでも努力を怠らず、活躍できるように頑張りたい」。その舞台はJリーグ。「自分たちが輝けば長岡の名前も広まる」と故郷の誇りも背負って挑む。

表彰式では笑顔を見せた(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

王者を苦しめたパスワーク…帝京長岡MF谷内田「みんながいたからできた」

帝京長岡高MF谷内田哲平主将(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 準決勝の試合後、帝京長岡高MF谷内田哲平主将(3年)の眼は赤く染まっていた。「自分だけじゃなく、本当にみんなが楽しみながらやれていた。このチームにいられてよかったなと思う」。絶対王者の青森山田高を相手に美しいパスワークを披露し、3万人近い観衆を大いに沸かせた技巧派集団は、惜しまれながら大会を去った。

 前半5分、MF田中克幸(3年)のヘッドはわずかに右へ。同6分、MF本田翔英(3年)の左足シュートは相手に当たって枠外。同10分、相手バックパスの乱れを突いたFW矢尾板岳斗(3年)のシュートは左外へ。22分、FW晴山岬(3年)の右足シュートも不発。同36分にも左サイドをえぐった本田のシュートがGKの股下で阻まれると、37分に訪れたDF酒匂駿太(2年)の決定機もヘディングシュートをが相手がクリア。前半だけで次々に決定機を作った帝京長岡だったが、スコアが動くことはなかった。

 一方、青森山田はしたたかだった。前半16分、クロス攻撃からワンチャンスを決め切ると、後半2分にもカウンター攻撃から加点。「攻撃しながらも失点をしないようにチーム全体でやっていた。前半の0-1は悪くなかったけど、後半の立ち上がりにやられたことで勝負が決まった」(谷内田)。同32分には田中のスペシャルなミドルシュートで1点を返したものの、その後も決定機を活かせないままタイムアップの笛が鳴り響いた。

 試合後、古沢徹監督は「あと3日、このメンバーでいたかった」と決勝目前での敗戦に肩を落とした。4歳から地元の長岡ジュニアユースで切磋琢磨してきた谷内田、晴山、矢尾板の3選手を中心に実力を高めてきた技巧派集団。誰もが本気で日本一になれると信じていただけに、途中交代で大会を終えた主将は「結果を出せなかったことは満足できない」と語気を強めた。

 それでも囲み取材中、チームメートへの思いを問われた谷内田は「自分が生かされるプレーヤーなので、岬とか田中とかがいなかったら自分のプレーは出せなかった。仲間に感謝したい」と言葉を紡ぎながら目を潤ませた。そして「みんながいたからこそああいうサッカーができたので誇りに思う」と積み上げてきた歴史に胸を張った。

 谷内田は今季から京都サンガF.C.に加入。「サッカー人生の全てを長岡で育ったので、緑の血を流しながらJリーグでもやれれば…」。そう語る18歳が楽しみにしているのはやはり、町田へ加入する晴山、愛媛に加入するDF吉田晴稀(3年)ら仲間との再会だ。「みんな応援してくれると思うので期待に応えたい。また他にもJリーグに行く人がいるので、一緒のピッチで戦いたいというのが一番の気持ちです」。愛する故郷を巣立っても、長岡が育てた縁は消えない。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

王者を苦しめたパスワーク…帝京長岡MF谷内田「みんながいたからできた」

帝京長岡高MF谷内田哲平主将(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 準決勝の試合後、帝京長岡高MF谷内田哲平主将(3年)の眼は赤く染まっていた。「自分だけじゃなく、本当にみんなが楽しみながらやれていた。このチームにいられてよかったなと思う」。絶対王者の青森山田高を相手に美しいパスワークを披露し、3万人近い観衆を大いに沸かせた技巧派集団は、惜しまれながら大会を去った。

 前半5分、MF田中克幸(3年)のヘッドはわずかに右へ。同6分、MF本田翔英(3年)の左足シュートは相手に当たって枠外。同10分、相手バックパスの乱れを突いたFW矢尾板岳斗(3年)のシュートは左外へ。22分、FW晴山岬(3年)の右足シュートも不発。同36分にも左サイドをえぐった本田のシュートがGKの股下で阻まれると、37分に訪れたDF酒匂駿太(2年)の決定機もヘディングシュートをが相手がクリア。前半だけで次々に決定機を作った帝京長岡だったが、スコアが動くことはなかった。

 一方、青森山田はしたたかだった。前半16分、クロス攻撃からワンチャンスを決め切ると、後半2分にもカウンター攻撃から加点。「攻撃しながらも失点をしないようにチーム全体でやっていた。前半の0-1は悪くなかったけど、後半の立ち上がりにやられたことで勝負が決まった」(谷内田)。同32分には田中のスペシャルなミドルシュートで1点を返したものの、その後も決定機を活かせないままタイムアップの笛が鳴り響いた。

 試合後、古沢徹監督は「あと3日、このメンバーでいたかった」と決勝目前での敗戦に肩を落とした。4歳から地元の長岡ジュニアユースで切磋琢磨してきた谷内田、晴山、矢尾板の3選手を中心に実力を高めてきた技巧派集団。誰もが本気で日本一になれると信じていただけに、途中交代で大会を終えた主将は「結果を出せなかったことは満足できない」と語気を強めた。

 それでも囲み取材中、チームメートへの思いを問われた谷内田は「自分が生かされるプレーヤーなので、岬とか田中とかがいなかったら自分のプレーは出せなかった。仲間に感謝したい」と言葉を紡ぎながら目を潤ませた。そして「みんながいたからこそああいうサッカーができたので誇りに思う」と積み上げてきた歴史に胸を張った。

 谷内田は今季から京都サンガF.C.に加入。「サッカー人生の全てを長岡で育ったので、緑の血を流しながらJリーグでもやれれば…」。そう語る18歳が楽しみにしているのはやはり、町田へ加入する晴山、愛媛に加入するDF吉田晴稀(3年)ら仲間との再会だ。「みんな応援してくれると思うので期待に応えたい。また他にもJリーグに行く人がいるので、一緒のピッチで戦いたいというのが一番の気持ちです」。愛する故郷を巣立っても、長岡が育てた縁は消えない。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

“飢えていた”9番の帰還…静岡学園FW加納大「決勝に向けていい材料」

静岡学園高FW加納大(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.11 選手権準決勝 静岡学園高 1-0 矢板中央高 埼玉]

 静岡学園高の背番号9を任されているFW加納大(2年)は今大会、開幕前に負った左膝の負傷で限られた出場時間となっている。それでも準決勝の矢板中央高戦では後半22分から投入され、一定時間のプレーで試運転を完了した模様。「点を取って自分という存在を売り出したい」。最後の一戦では、これまでの鬱憤を晴らすような活躍を見せるつもりだ。

 本来であれば、チームの最前線で走り回っているはずだった。加納は昨年11月16日に行われた静岡県予選決勝の富士市立高戦(○6-1)で、チームを全国に導く2ゴールを挙げたものの、全国大会を目指してトレーニングしている最中に左膝の炎症が悪化。すぐに本調子に戻すことは難しく、本大会を控えの立場で迎えている。

「県予選の決勝でうまく点を取れて、これから全国で活躍しようという中のアクシデントだった」。そうした中、チームは全国の代表校を次々と無失点で破り、23年ぶりの準決勝進出という快挙を達成。代役として入ったFW岩本悠輝(3年)も5ゴールを挙げる活躍を見せ、加納に頼ろうという場面はなかなか訪れなかった。

 準々決勝までの4試合、背番号9のプレータイムは3回戦終盤の19分間だけ。「外から見る時間が多くなってしまった。その中でもチームがうまくいっていて、大量得点しているのを外から見ていた。自分も早く試合に出て点を取りたいなって飢えているというか、ウズウズしていた」。全国のピッチへの渇望は日に日に高まっていた。

 仲間たちの快進撃に複雑な思いがあったことは隠さない。「チームが勝ち上がっていくのは自分にこれからチャンスがあるという意味ではうれしさもあったけど、自分が活躍してチームを勝たせていくイメージをずっとしていたし、ここで自分の名前を大きくできればと思っていたので悔しい気持ちもあった」。それでもまずは状態を整え、その先に待つ出番に準備を続けていた。

 そうして迎えた準決勝の矢板中央戦、極端に引いて守ってくる相手を崩せない展開が続いた後半22分、ついに背番号9が呼ばれた。すると直後の24分、まずはMF松村優太(3年)のアーリークロスにボレーで合わせる。44分にはMF浅倉廉(3年)の伸びたトラップに反応し、GKを強襲するシュートも放つ。いずれもゴールには繋がらなかったが、手応えの残る約30分間だったようだ。

「外の選手を使ったり、自分で打ったりとか、攻撃のバリエーションを増やせれば得点のチャンスも広がると思った。シュートも何本か打てたし、収めてサイドの選手に散らすプレーも何本かあったし、その点では良かった」。むろん「FWなので得点を決められなかったのは課題」という心残りもあったが、そこは次の試合で乗り越えていく構えだ。

「今日はプレータイムがあったので、点を取れれば一番良かったけど、試合に出て少しは感触を掴むことができた。そこは決勝に向けていい材料になる」。そのように自身を示した17歳はチームのため、そして自分のキャリアのために爆発を誓う。「中学時代から名前を聞いてきた青森山田と対戦するチャンスがやっと来た。点を取って自分という存在を売り出したいです」。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

「優太と目が合って」静岡学園FW小山尚紀、一瞬の判断で“PK獲得”アシスト

静岡学園高MF小山尚紀(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 一瞬のフィーリングを合わせたコンビプレーで強固な矢板中央高ディフェンスに綻びをつくった。後半終了間際、PKを獲得したMF松村優太(3年)とのワンツーを成功させた静岡学園高MF小山尚紀(3年)は「優太と目が合って、出したそうやなと思った。少し寄って行ったら優太がいい感じで抜け出してくれたので、落とすだけだった」と振り返った。

 4-4-2で徹底的に守りを固めてくる矢板中央に対し、後半の時計の針が45分を過ぎても得点を奪えなかった静岡学園。「(あれだけ引いてくるのは)結構珍しい。それにプラス相手の身体能力が優れていたので難しい試合だった」。キックオフ時は左ウイング、後半途中からはトップ下で打開を試みた小山は素直に振り返る。

「中(の人数)がめちゃめちゃ多かったので、外からのクロスは難しいなと思った。外を使うにしても、僕が行くというよりは僕が中に入って、左右のスペースをサイドバックが使うみたいな発想で、中で密集を作ってそこで崩して行けたらという感じだった」。その狙いで決定機も少なくはなかったが、「惜しい感じはあったけど、シュートミスでチャンスを逃してしまった」という結果となった。

 それでも後半アディショナルタイム3分、小山と松村の即興が試合に動きをもたらした。右サイドでボールを持った松村の意図を察した小山は「中に入る選択肢もあったけど、相手が高さもあって人も多かったのでボールサイドで崩して行こうと思った」という形でループ気味のパスをレシーブ。そのまま松村に落とすと、突破を仕掛けた松村がエリア内で倒された。

 静岡学園はPKを得た選手がキッカーを務める慣例。「優太が蹴るので外したらしゃあないかなと思っていた」(小山)。そんな信頼に支えられた背番号10は落ち着いてゴールキーパーの逆を取り、ゴール右隅にシュートを沈めた。「めちゃくちゃうれしかった。ようやく点が入ったな……って」。背番号14も歓喜の渦に飛び込んだ。

 この勝利により、全国制覇まであと一つ。対戦する青森山田高には「球際が厳しくて、フィジカルレベルも高い中、一人一人がしっかりした技術がある印象」と敬意を払いながらも、「ロングボールで押し込まれることがあると思うけど、奪ったボールを大事にして、ドリブルとショートパスで崩していければ」と普段のスタイルを崩すつもりはない。

 滋賀県のセゾンFCから「このサッカーに魅了された」と静岡学園を選んだ小山にとって、全国の決勝戦は積み上げてきたものを証明するための舞台にもなる。「準決勝でもすごくお客さんも入っていたし、決勝でも緊張しないと思う。見に来てくれたお客さんを楽しませられるように静学らしいサッカーをしたい」。今大会で猛威を振るってきた自慢のドリブル突破で、絶対王者の守備網も破壊するつもりだ。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

1失点悔やむも、ビッグセーブの青森山田GK佐藤「90点くらいあげて良い」

青森山田高のGK佐藤史騎は好守でチームの勝利に大きく貢献。決勝では無失点、チームを勝たせることにこだわる。(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

「あのシュートを止められてチームも少しは助かったかなと思います」。青森山田高のGK佐藤史騎(3年)が、そう振り返るのは後半20分のプレーだ。青森山田は一瞬の隙を突かれて帝京長岡高のエースFW晴山岬(3年)に中央を破られ、フリーでシュートを打たれてしまう。だが、佐藤がファーサイドへのシュートを左手ワンハンドでストップ。次の瞬間、背番号1は右手を握りしめながら吼え、チームメートのハイタッチに応えていた。

 晴山と対峙した瞬間、佐藤は黒田剛監督からアドバイスされていた通りに身体を動かしたのだという。「ああいう時、FWはファーへ打ちやすいと言われていたので止められた」。重心をややファーサイドに置いて構えたGKは瞬時に跳躍。この一撃が決まっていれば、勝敗の行方は分からなかっただろう。それほどのビッグセーブだった。

「ビッグセーブした時はやっぱり気持ち良いですね。(スタンドの)どよめく声も聞こえるし、仲間も駆け寄ってくれるので気持ち良いですね」。その佐藤は前半にも抜け出してきたMF本田翔英(3年)に対して不用意に飛び出さず、十分に我慢してからシュートを狭いニアへ“打たせて”ストップ。後半にはMF谷内田哲平(3年)の右足ミドルをゴールの外へはじき出した。

 状態の良さを感じさせるようなセーブを連発し、自身に「90点くらいあげて良い」の高得点をつけた佐藤が、唯一悔やんだのが後半32分にMF田中克幸(3年)に決められたゴールだ。中盤からPA深くまでドリブルで持ち込まれると、グラウンダーのシュートは腕の下を抜けてゴールへ。「自分でも取れたというのもあったので……。あの晴山岬選手のシュートが取れた分、あのシュートが取れない訳無いと思いますし、自分としてもボールが下を通ったので悔しい」と首を振った。

 これを止めていれば、自己採点も「100点」に近いものになったかもしれない。だが、それは決勝に取っておく。「(決勝は) 100点出さないといけないと思いますし、GKの存在が大きいと思います。GKは大事なポジションなので、勝たせられるGKになれたらなと思います」。決勝の対戦相手は、抜群の攻撃力を誇る静岡学園高。例え、信頼するDF陣が破られても、最後の砦として相手の前に立ちはだかり、シュートを止めて、チームを勝たせる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

シュート24本目で許した唯一の失点…矢板中央の1年生GK藤井、土壇場PKに「冷静さを欠いた」

矢板中央の1年生GK{{藤井陽登}(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.11 選手権準決勝 静岡学園高 1-0 矢板中央高 埼玉]

 シュート23本を浴びながらも耐え続けていた。0-0のまま試合は後半アディショナルタイムに入り、PK戦突入かとだれもが思う中、静岡学園(静岡)がPKを獲得。静岡学園にとって24本目のシュートとなったMF松村優太(3年)のキックが決まり、矢板中央高(栃木)の敗退が決まった。

 GK藤井陽登(1年)は「PKになった瞬間、自分が止めるという思いはあった」と振り返る。しかし、「自分の感覚でできなかった。先に動いてしまって、冷静さを欠いたのかなと思う」と、右に動いたところを逆サイドへ流し込まれた。

 試合を通して攻め込まれる中、好セーブも光った1年生守護神だが、「試合が始まる前から緊張して、硬くなってしまい、自分のパフォーマンスをあまり発揮できなかった」と唇を噛む。「自分の強みであるキックも安定しなかったし、GKの一番の仕事はセービング。最後、PKで終わって、あっけないなというか、悔しい気持ちが真っ先に出た」とうなだれた。

 青森県十和田市出身の藤井は地元の十和田中から、木村大地GKコーチ(青森山田高出身)の誘いを受けて矢板中央に進学した。決勝で青森山田と対戦することは大会前から一つの大きなモチベーションとなっていたが、あと一歩のところでその目標は果たせなかった。

「青森山田は(決勝まで)勝ち進んで、自分たちは勝てなかった。そこに大きな差があると思うし、今から一からやり直して、来年はそのチャンスをつかめるようにしたい」。まだ1年生の藤井に対しては試合後に「GKの先輩2人から『来年、再来年もあるから下を向かず頑張れ』と声をかけられた」という。初の決勝進出、そして日本一という夢を託され、1年後さらにたくましくなって帰ってくるつもりだ。

(取材・文 西山紘平)
●【特設】高校選手権2019

後半9分に初めて許したシュート…好守で無失点V王手の静岡学園GK野知「準備できていた」

チームメイトに指示を出す静岡学園GK野知滉平(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.11 選手権準決勝 静岡学園高 1-0 矢板中央高 埼玉]

 GKにとっても難しい試合展開だった。2トップを含めたフィールド選手全員が自陣に引いてブロックをつくる矢板中央(栃木)に対し、静岡学園高(静岡)は立ち上がりからほぼハーフコートゲームで攻め立てたが、1点が遠い。前半のシュート数は静岡学園の9本に対し、矢板中央は0本。しかし、スコアは0-0だった。

 前半、ほとんど守備機会のなかった静岡学園GK野知滉平(2年)は「試合を通して静岡学園が攻めていて、静岡学園のペースだった。攻めているからこそ、チームとして一発のカウンターでやられることだけはないようにしようと話していた」と振り返る。

 静岡学園にとって、そして野知にとっても初めてのピンチは後半9分に訪れた。矢板中央はハイボールから最後はMF宮野流斗(3年)が左足でミドルシュート。矢板中央のこの試合初めてのシュートはゴール右隅を捉えていたが、野知が鋭い反応で弾き出した。

「正面じゃなくてギリギリに飛んできたけど、止めることができた。集中を切らさず、準備できていたからだと思う」。ここで失点していれば、相手の思惑にハマるところだった。窮地を防いだ2年生守護神は「止められたことはうれしい」としながらも、「チームとして緩かったというか、少し甘くなったところで一発やられてしまった。失点はしなかったけど、あのあとみんなで集まって、僕も強めに言って、もう一度締め直した」としっかり反省し、その後のプレーに生かした。

 0-0のまま試合は終盤に入り、PK戦も覚悟していたという。「最後のほうは(PK戦を)考えていて、PK戦になったら自分が止めてやるぞと考えていた」。しかし、チームは後半アディショナルタイムの決勝点で劇的勝利。MF松村優太(3年)がPKを決めた瞬間は「何と言っていいか分からないけど、とにかくうれしかった」と最後尾で喜びを爆発させた。

 これで1回戦から5試合連続の完封勝利。首都圏開催となった76年度大会以降では77年度の帝京(東京)、86年度の東海大一(静岡)、99年度の市立船橋(千葉)以来、史上4校目の無失点優勝に王手をかけた。

「無失点優勝は僕とDFラインの目標でもある。決勝まで無失点を続けてこれたのはうれしいし、決勝も無失点で優勝したい」。13日の決勝では、連覇を目指す青森山田(青森)と対戦する。野知は「青森山田はプレミアリーグでも優勝しているし、高校年代で一番強いチームだと思っている。チャレンジャー精神で、絶対に倒してやる気持ちで臨みたい」と力を込めた。

(取材・文 西山紘平)
●【特設】高校選手権2019

最後の最後に痛恨PK献上…矢板中央MF靏見「松村くんのドリブルを一番警戒していた」

体を張ってブロックする矢板中央MF靏見拳士朗(3年)(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.11 選手権準決勝 静岡学園高 1-0 矢板中央高 埼玉]

 気迫の守備で90分間を無失点に抑えた矢板中央高(栃木)はラストプレーPK弾に沈んだ。ゴール前に分厚い壁をつくって静岡学園高の猛攻を跳ね返し、0-0のままPK戦突入かと思われた後半アディショナルタイム3分だった。MF靏見拳士朗(3年)がPA内に切れ込んだ鹿島内定MF松村優太(3年)を倒してしまい、痛恨のPK献上。

「カットインは想定していたんですが、そこで相手が少しボールを出した時に、自分の足に引っかかってしまった」と靏見。「松村くんのドリブルを一番警戒していた。こういう選手がプロに行くんだなと感じました」。シュート数は2対24。大観衆の前で伝統の堅守を表現したが、“サヨナラPK”に沈む残酷な幕切れとなった。

 埼玉県出身の靏見にとっては地元・埼玉スタジアムのピッチで迎えた準決勝だった。「埼スタは憧れの舞台で、プレーしている時に鳥肌も立った。最高の舞台でした」。2回戦の大手前高松戦(○2-1)で先制ゴールを挙げるなど攻守に躍動し、大会中にも成長を遂げた。

「憧れだった選手権でベスト4まで来ることができた。高校に入る前は選手権に出ることが夢でしたが、入ってからは日本一を獲ることが夢になった。金子コーチ、高橋先生が3年間熱心に指導してくれたおかげで成長できた。矢板に来てよかったです」

 ボランチを組んだMF在間太一(3年)とともに、東京国際大でサッカーを続ける。今大会で得た自信と悔しさを糧に、次のステージへ。「大学でも2人でボランチを組んで、次は大学の日本一を狙いたい」と雪辱を誓った。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

帝京長岡の今大会最初と最後のゴール決めたMF田中克幸「プロになることで恩返しを」

ドリブル弾で一矢報いた帝京長岡MF田中克幸(3年)
[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 帝京長岡高の今大会初ゴール、そして、最後のゴールを沈めた。約30mのドリブル弾でネットを揺らしたU-17日本代表MF田中克幸(3年)は「あのゴールで勢いをつけて逆転したり、同点、PKにつなげられたらよかったですが、山田は強かったです」と敗戦を受け止めた。

 0-2で迎えた後半32分だった。センターサークル内からドリブルをスタートした田中は相手をかわしてするすると前進すると、エリア内でも2人を外してコースを作り、PA内左から左足を振り抜く。「パスの選択肢は相手に読まれていたので、うまく選択肢を変えることができた。自分の間合いから相手の動きをよく見て、最後に振り抜きました」。右隅に突き刺したコントロールショットで1点差に詰め寄ったが、反撃はここまでだった。

「去年ベスト8で悔しい思いをして、この一年間積み上げてきたものは出し切れたと思う。悔いは残っていないです。3年間の集大成がここでよかった」。初戦の熊本国府高戦(○3-0)で決めたスーパーミドル弾がチームの今大会初得点。そして、青森山田から奪ったドリブル弾がチームとしても今大会最後の得点となった。

 岡山県出身の田中は帝京長岡でプレーするため、親元を離れて新潟県に渡った。3年間の挑戦は幕を閉じたが、「来てよかったです。夢見た舞台に立つことができた。緑の血が通っているというか、帝京長岡で過ごした3年間はとても濃いものだった。この先、別々の道に行ってもつながっていると思う」と仲間の存在に感謝した。

 京都内定MF谷内田哲平(3年)、町田内定FW晴山岬(3年)、愛媛内定DF吉田晴稀(3年)らJ内定トリオに負けない実力を持つ田中はプロからの誘いを断り、明治大に進学する。「4年後、プロに入って哲平、吉田、岬に負けず、プロに行ったら自分が一番活躍できる選手になりたい」と先のステージを見据えるレフティーは「長岡でお世話になった人たちにはプロサッカー選手になることで恩返しできたら」と強い決意を語った。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

決勝進出も悔しさ滲ませた青森山田MF後藤、2日後は「後悔のないようなプレーを」

青森山田高の俊足サイドアタッカー・MF後藤健太は決勝で思い切りの良いプレー、後悔のないようなプレーを誓った。(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 2年連続の決勝進出を決めた青森山田高の中で、右の俊足サイドアタッカー・MF後藤健太(3年)はどちらかというと悔しさを滲ませていた。

 自身のパフォーマンスについては、「この大会を通して一番良くなかった。最初に交代をしてしまいましたし、攻撃的なポジションなのでどうしてもゴールに繋がるようなプレーをしたかった」と厳しい評価。先制点のシーンは彼が3人に囲まれながらもキープしたことが起点となって生まれたものだったが、本人は「まだ足りないです」と首を振っていた。

 今大会初戦(対米子北高)は先制アシストを含む1得点2アシストの活躍。昌平高との準々決勝では相手のクリアミスを逃さずに貴重な追加点をマークしている。スピードに乗ったドリブルで右の突破口となっている後藤だが、この日はボールに触る機会も少なく、持ち味を十分に出し切れなかった。

 だからこそ、決勝では「後悔のないようなプレーを90分間やりたい。決勝は今日以上に観客もいっぱい来ると思いますし、楽しまなかったらもったいないと思います」。自分たちのサッカーをすれば必ず優勝できると信じている。2日後の決勝では、大観衆の中で青森山田らしいプレー、自分らしいプレーをして必ず日本一を勝ち取る意気込みだ。

「スピードに乗ったような場面があれば、自分の武器とするドリブルを発揮できると思う。スピードに乗った仕掛け、クロスやシュートで終われるようなプレー、思い切ったプレーができれば良いと思います」と後藤。この背番号11は年末のプレミアリーグファイナルでは豪快な右足シュートをゴールに叩き込んでいる。すでにできているという得点のイメージ。満員の埼スタを楽しみ、そのゴールネットを再び揺らして高校ラストゲームを終える。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

ロングスローではなく、クロスで魅せた。青森山田の右SB内田は守備反省も、先制アシスト

青森山田高の右SB内田陽介は正確なクロスで先制点をアシスト。(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 青森山田高の右SB内田陽介(2年)は「試合終わってから(ヘッドコーチの)正木さんに『めっちゃ抜かれたな』と言われました」と首を振る。帝京長岡高の技術力、連係の質の高さの前に距離をあと50cm寄せることができず、相手に自由を与えてしまったことを反省。「相手の攻撃に対してどう守備していくかまだまだ課題」と改善することを誓っていた。

 それでも、攻撃面の話題になると笑みも。前半16分には対峙した相手WBの中への絞りが甘いと見るや、斜めのスプリントとMF古宿理久(3年)のスルーパスでその背後を取ってクロスを上げ切る。これをFW田中翔太(3年)が頭でゴールへ沈めて先制点となった。

 走り込んでのクロス、その質ともに狙い通り。守備に重きを置く中で攻め上がりの回数はそれほど多くないが、スピードを活かした攻撃参加からのクロス、シュートは彼の特長だ。

「(走り込んでのクロスは黒田)監督にも言われていました。練習通りに合わせられたのは良かったです」という会心のクロスでアシスト。今大会、ロングスローで注目を集めてきたSBがこの日はもう一つの武器で勝利に貢献した。

 内田は「自分としては守備できなかったんですけれども、攻撃で活躍できたというのは一つ大きなことだと思います」と前向き。そして、決勝へ向けては「緊張感というのはあったりするけれど悪い緊張感ではなく、良い緊張感で入れば自分も良いプレーができると思う。調整して全力で臨みたい」と意気込んだ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

絶品スルーパス!思うようにボールを触れない中、青森山田の司令塔・古宿が1本の精度でゴール演出

青森山田高MF古宿理久はそのパスセンスと精度で2ゴールを演出した。(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 準決勝第1試合は両校の注目パサーが魅せた試合だった。ボールを保持した帝京長岡高のMF谷内田哲平(3年/京都内定)が相手の逆を取る動きや正確なパスで存在感を放っていたが、勝負を決めるようなパスを通したのは青森山田高の司令塔・MF古宿理久(3年/横浜FC内定)の方。相手に主導権を握られていた時間帯の中、パス一本で試合展開を変えた。

 前半16分、青森山田は右中間でボールを繋ぐと、古宿が相手のDF間を通す見事なスルーパス。距離感、精度ともにパーフェクトと言えるようなボールに走り込んだ右SB内田陽介(2年)がダイレクトでクロスを上げると、ファーサイドのFW田中翔太(3年)が頭で合わせて先制点となった。

 普段に比べて、古宿がボールに触れる時間が少なかったことは確か。だが、J1クラブへ加入するMFは1本に集中し、ゴールを演出した。「自分たちのチャンス1本で決められたのは良かった」と振り返る古宿は、後半2分にもMF武田英寿(3年)とのコンビネーションから右サイドを切れ込み、スピードのあるクロスでMF松木玖生(1年)の決勝点を演出。足元でボールを受ける動きが相手に狙われる中、スペースへ抜け出すことができる強みも発揮してゴールをもたらした。

 そして、古宿は「あんまりボールを受けられない中で1本のチャンスをものにしてやろうと思っていて、何本かサイドチェンジもあったんですけれども、スルーパスやクロス上げて点も入ったので良かったと思います。自分のパフォーマンスも結構上っている状態で守備の部分でも攻撃の部分でも貢献できて良かった」と微笑んだ。

 昌平高との準々決勝では3-0の後半に不用意なパスを相手にインターセプトされて、カウンターから失点。チームの流れを崩すミスをしてしまった。そのミスは自身への戒めに。「自分がミスをしたら(チームが)落ちるという責任感をもってプレーしている」という司令塔はこの日、守備面含めて納得のパフォーマンスで決勝進出に貢献した。「明日良い準備をして決勝に臨みたい」という古宿が、決勝でもその1本の精度でゴールに結びつける。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

「どんなFWでも抑えられる」青森山田DF藤原優大、エース晴山をゼロ封

青森山田高DF藤原優大(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 シュートミスに助けられる場面こそあったものの、得点王候補の相手エースFW晴山岬(3年)をノーゴールに抑え込んだ。安定した対人戦と判断力の優れた配球で存在感を放った青森山田高DF藤原優大(2年)は「キーマンになると思っていたけど、得点させなかったのはすごく良かった」と手応えを語った。

 前回大会は1年生ながら埼玉スタジアムのピッチを経験。準決勝、決勝のいずれも終盤での守備固めという時限起用だったが、優勝の歓喜をフィールド上で迎えるという栄誉に恵まれた。

「去年を経験した人があまりいない状況のなかで、自分はピッチに立たせてもらっていた。その経験は今年に入って何回も活きてきた。それを周りの人に伝えたり、去年の経験を活かしたりというのは絶対にやらないといけないと思っていた。経験させてもらったことを今年につなげないと、去年経験した意味がない」。

 そんな17歳は絶対王者の主力センターバックとして、一回り成長した姿で埼玉に帰ってきた。高い技術と巧みな体使いを誇る晴山に対応で後れを取る場面もあったが、すぐにプレッシャーをかけ直してゴールは割らせず。終盤には落ち着いたボール奪取から、周囲の動きをしっかり察知したロングボールでチームの陣地を回復していた。

「今日も素晴らしいFWとやれて楽しかった。その中で抑えたり、抜かれなかったりしたのは自信になっている。今日も晴山がキーマンになると思っていたけど、得点させなかったのはすごく良かった」。準決勝の一戦を前向きに振り返った背番号5は「次も強豪になるけど自信はあるし、どんなFWでも抑えられる自信はある」と力強く語った。

 ここまでは「周りからいい意味で期待されていて、決勝までは行けるって思われていた中、それでしっかり力を発揮できたのは収穫」というポジティブな結果を残してきた。しかし、決勝にたどり着いた以上は「ここまで来たら優勝するしかない」といい、ここで満足して終わるつもりはない。

「決勝ではあるけどそういうのは関係なく、自分たちが一年間積み上げてきたものはどのチームよりもあると思う。積み上げてきたものを全て発揮できれば絶対に負けない。相手の対策はもちろん、それをした上で自分たちのやるべきことをやれば絶対に勝てる」。落ち着いた姿勢を崩さない2年生CBは積み上げてきた自信を胸に、最後の一戦へ挑む。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

全国で8戦7発! 青森山田FW田中翔太「決勝も絶対に取りたい」

青森山田高FW田中翔太(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 自慢の勝負強さは埼スタのビッグマッチでも健在だった。青森山田高FW田中翔太(3年)は前半16分、右サイドを駆け上がったDF内田陽介(2年)のクロスに飛び込むと、身体をそらしながらのヘディングシュートで先制点を奪取。これで全国大会の一発勝負では8試合7ゴール。ストライカーにふさわしい働きを続け、チームを2年連続のファイナルに導いた。

「結果が出ているので、勝負強さはあるんじゃないかと自信を持ってやれている」。そう語る背番号9は今季、全国の一発勝負で華々しい活躍が続いている。夏のインターハイでは3試合すべてで得点し、高円宮杯プレミアリーグファイナルでもゴールを記録。さらに今大会でも初戦の2回戦、3回戦で連続得点を挙げるなど、圧倒的な得点力を誇ってきた。

 この日も序盤に一方的な劣勢を強いられていた中、武器としてきた勝負強さを発揮した。MF古宿理久(3年)からのスルーパスが神田に通ると、素早くマークを回避。内田からのクロスは想定より後方に入ったものの、「練習からズレたボールを合わせていたので、練習の成果が出た」というヘディングシュートをクロスバー下方に当て、見事にゴールラインを破った。

 得点直後にはアニメ『ドラゴンボール』シリーズに登場する『ギニュー特戦隊』のポーズをMF武田英寿(3年)、MF後藤健太(3年)ら4選手と披露し、埼玉スタジアムを沸かせた。「ドラゴンボールシリーズが選手権で流行ってるのかなと思って」とこれまでのパフォーマンスも参考にしたという田中。これまでは『かめはめ波』が主流だった中で「ちょっとズレたところを狙った」というユニークさも光った。

 田中のゴールが劣勢の青森山田に勇気を与え、追いすがる帝京長岡高を振り切って決勝に歩みを進めた。これで2年連続でのファイナル。もっとも、昨季はメンバー外だった田中にとっては初めての全国決勝だ。「この1年間、絶対にこの埼玉スタジアムで優勝したいと思ってやってきた」と2日後に控える夢舞台への思いは強い。

「先輩たちが優勝したのは嬉しかったけど、メンバーに入れないのは悔しい気持ちもあった」。そんな記憶を払拭するには、高校生活最後に試合に勝つしかない。勝負強さを誇る背番号9は静岡学園高との決勝に向けて、「自分も5万人のなかで点を決めたら鳥肌も立つだろうし、自分も決めたいなって思いがあった。決勝も絶対に取りたい」と力を込めた。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

青森山田の“ギニュー特戦隊”パフォ舞台裏…ドラゴンボールは「読んだことない」

青森山田の“ギニュー特戦隊”パフォ
[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 青森山田高がゴールセレブレーションで選手権を沸かせた。前半16分にFW田中翔太(3年)が技ありの先制ヘッドを沈めると、アニメ『ドラゴンボール』に登場する“ギニュー特戦隊”のパフォーマンスを披露。浦和レッズ内定のU-18日本代表MF武田英寿(3年)をセンターに5選手がそれぞれポーズを取り、歓喜を表した。

 5日の準々決勝・昌平戦(○3-2)でゴールを決めたMF浦川流輝亜(3年)とDF神田悠成(3年)が“かめはめ波”を披露したことから、その続編として前日に決まったというゴールセレブレーション。「あの中の5人の誰かが決めたらやろうと言っていた」と明かした田中は得点後、歓喜のあまりパフォーマンスを一瞬忘れてしまったが、「みんなに『ギニュー』『ギニュー』と言われて思い出しました。うまくできました。結構、綺麗にできた」と笑顔で振り返った。

 得点者だった田中は右の「バータ」役で、センターの「ギニュー」は10番で主将の武田。「最初はゴールを取った選手が真ん中とも考えたんですが、それは難しいかなということで、決めておきました」と舞台裏を明かした武田も「あまりそういうことをしないので、ゴールパフォーマンスは初めてだったかも」と笑顔をこぼした。

 武田、田中、浦川、MF後藤健太(3年)という攻撃の4人に左サイドバックの神田を加えた5人の合わせ技。後藤は「グルド」役を担ったが、「バスの中でちょっとYou Tubeを見たくらいなので、自分だけ再現率が低かった」と苦笑いだった。

 ドラゴンボール世代ではない2001年生まれの精鋭たちは「(ドラゴンボールは)読んだことないです」「あんまり知らない」「見たことがない」と口を揃えたものの、息のあったパフォーマンスで2万9747人の大観衆を沸かせた。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

[MOM3148]青森山田MF松木玖生(1年)_決勝弾にスーパークリア!1年前に思い描いていた姿を上回る大活躍

後半2分、青森山田高MF松木玖生が左足で決勝点。(写真協力=高校サッカー年鑑)
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 中学3年時に描いていた1年後の姿。スーパールーキーは、自分が思い描いていた以上の活躍で青森山田高を決勝戦へ導いた。

 U-16日本代表MF松木玖生(1年)は、埼スタファイナルを懸けた一戦で“2ゴール分”の仕事をしてのけた。1-0の前半37分、青森山田はサイドを打開され、決定的なクロスを入れられる。これはGK佐藤史騎(3年)が飛び出して弾いたが、混戦からゴールへ押し込まれそうになった。

 ボールは佐藤が反応できない左隅へ。だが、「ゴールに近づいたので、このままだと決められるなと思って」ゴールをカバーした松木が頭でクリアし、前半最大のピンチを逃れた。すると、松木は「ヨッシャ―!!!」と咆哮。1年生はビッグプレーでチームを救うと後半開始直後に自らゴールを決めて見せた。

 2分、青森山田は右サイドを抜け出したMF古宿理久(3年)が右足でクロス。DFに当たってファーサイドに流れたボールを背番号7が左足ダイレクトでゴールに押し込んだ。ゴールを決めると、両手で「Tポーズ」。友人の名前の頭文字を形どるゴールセレブレーションで貴重な一撃を喜んだ。

 今大会は初戦、3回戦で計3ゴール。一方で守備能力の高さ、運動量の多さを示している。この日も、自陣ゴール前でゴールを守ったかと思えば、敵陣ゴール前にも顔を出して決勝点を記録。ボックストゥボックスの動きは持ち味の部分だ。「シャドーのポジションはPAからPAの仕事が多いですし、守備でも少し貢献できたし、点数も決められたのでチームとしても良かったと思います」。加えて、ルーズボールに対して身体を投げ出してクリアするなど、身体を張ったプレーも連発。背中でチームを引っ張り、今大会4得点と目に見える活躍をしている。

 青森山田中に在籍していた1年前、先輩たちが日本一を勝ち取る姿を見て、1年後の自身の姿を思い描いていたという。青森山田高のレギュラーとして選手権で勝利に貢献するのはイメージ通り。ただし、「1、2点獲れれば良いかなと。自分がこれほど得点獲れるとは思っていなかったです」と“未来予想図”を超える活躍を驚いていた。

 この活躍のために中学時代から筋力トレーニングを実施。毎日茶碗3杯のご飯を食べるなど肉体強化に取り組んできた。この1年で5kg増量。夏頃は「筋トレしすぎて」身体が重くなり、思うように動けなかった時期もある。それでも、秋から冬にかけて身体にキレが出て、現在は強さと巧さの両方をピッチで表現している。

 日本一まであと1勝。1年前から思い描いてきた決勝は、「決勝で圧倒して勝つというのは思い描いていました」という。そして、自身の決勝でのプレーについては「これも想像なんですけれども、自分が3点くらい獲ってチームを勝たせてという感じですね。自分、主役で考えているんで(微笑)」。全国決勝で3得点はさすがに容易ではないが、その可能性も感じさせるような働きぶり。飛躍したスーパールーキーは、“主役”として初の選手権を終えるか。まずはチームのために走って、戦って、その上で自分が再び試合を決めるようなプレーをする。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

[MOM3147]静岡学園MF松村優太(3年)_「外したら負ける」ラストプレーの劇的PKで“有言実行”初ゴール

後半アディショナルタイム4分、静岡学園MF松村優太がPKを決める(写真協力=高校サッカー年鑑)
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.11 選手権準決勝 静岡学園高 1-0 矢板中央高 埼玉]

 2万9747人の大観衆が固唾を呑んで見守る中、背番号10はゆっくりと助走に入った。0-0のまま迎えた後半アディショナルタイム4分につかんだPKのチャンス。静岡学園高(静岡)のMF松村優太(3年、鹿島内定)は右足で冷静にゴール右へ流し込んだ。

 直後に静岡学園の24年ぶり決勝進出を告げるホイッスル。劇的な“サヨナラPK”を決めた松村は「これを外したら負けるぞというぐらいの気持ちで臨んだ。落ち着いて決めることができた。自分の信じた方向に蹴るだけだった。GKは全然見ていない」と胸を張る。これが今大会初ゴール。大舞台で勝負を決める大仕事をやってのけるのがエースのエースたるゆえんだ。

 卒業後は鹿島入団が内定している50m走5秒8の高速ドリブラーは毎試合、厳しいマークに遭ってきた。それでも、松村に相手の警戒が集まることで周囲が空き、チームとしては準々決勝までの4試合で計15ゴール。ところが、この日対戦した矢板中央(栃木)は松村一人をマークするのではなく、2トップを含めたフィールド選手全員が自陣まで引いてゴール前に分厚い壁をつくってきた。

「相手のストロング(守備)が堅くて、攻めあぐねている時間もあった。それでも後半の最後は崩せている場面もあったし、90分以内で決めないと(PK戦で)やられるという気持ちで最後まで攻め続けた」。PK戦になれば精神面でも相手が優位に立ちかねない。「そうなると(PK戦になると)相手の思うつぼ」と、終盤は怒涛の攻撃に出た。

 後半44分、松村がPA内右からマイナスに折り返すもMF浅倉廉(3年)のトラップが流れ、FW加納大(2年)も押し込めなかった。後半アディショナルタイム2分にはDF田邉秀斗(2年)のクロス性のシュートが右ポストを直撃。それでも、PK戦突入かと思われた同3分にMF小山尚紀(3年)とのパス交換でPA内に切れ込んだ松村が相手に倒され、PKを獲得した。

「(PKは)取った人が蹴ることになっているし、(キッカーを)譲る気はなかった」。重圧のかかる場面で自らキッカーを務めた背番号10のひと振り。今大会はここまで無得点が続いていたが、「今日は(点を)取れる予感もしていた」という。

 静岡県予選でも当初は無得点が続いたが、準決勝の浜松開誠館戦(○2-0)でチームを勝利に導く2ゴールを決め、決勝の富士市立戦(○6-1)は開始18秒の先制点でゴールラッシュの口火を切った。全国大会の1回戦・岡山学芸館戦(○6-0)後には「県予選も最初は点を取ってなかったけど、準決勝、決勝で取った。そんなに焦りはない」とも話していた。

「ここまで点を取れていなかったけど、焦りなく、落ち着いて試合に臨めたことが良かった」。大舞台で発揮する勝負強さ。準々決勝の徳島市立戦(○4-0)後にも「次はしっかり取れるようにしたい。周りからも『テレビに映ったら強いね』と言われる。次は大きいスタジアムですし、また楽しんでやっていきたい」と自信を見せていたが、まさに有言実行の決勝点となった。

 13日の決勝では、24年ぶり2度目の優勝、単独では初優勝を懸けて青森山田(青森)と対戦する。「青森山田は攻守ともにレベルが高い。高体連では一番強いと思う」。相手の10番は浦和内定のMF武田英寿(3年)。“10番対決”も注目される中、松村は「あんまり会ったことはないけど、これからプロの世界でも勝負していく選手。ライバル意識は持っているし、チームが勝てるように、自分のプレーで結果につなげたい」と意気込んだ。

(取材・文 西山紘平)
●【特設】高校選手権2019

鹿島内定MF松村が劇的V弾!!静岡学園が後半AT4分の決勝PKで24年ぶり決勝進出

静岡学園が1-0で矢板中央を下した(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.11 選手権準決勝 静岡学園高 1-0 矢板中央高 埼玉]

 第98回全国高校サッカー選手権は11日、埼玉スタジアムで準決勝を行い、第2試合では静岡学園高(静岡)が矢板中央高(栃木)に1-0で競り勝った。静岡学園は鹿児島実(鹿児島)との両校優勝だった95年度大会以来、24年ぶり3回目の決勝進出。13日の決勝では24年ぶり2度目の優勝を懸け、大会連覇を目指す青森山田高(青森)と対戦する。

 試合は静かな立ち上がりを見せ、静岡学園がボールを保持しながらゆっくりと攻撃を組み立てた。前半3分、中盤でボールを奪ったMF松村優太(3年、鹿島内定)がそのままドリブルで運んで右足でミドルシュートを打ったが、枠外。矢板中央はしっかりと守備を固め、シンプルな速攻からチャンスをうかがった。

 ここまで全国大会4試合連続完封勝利で勝ち上がってきている静岡学園もDF阿部健人主将(3年)、DF中谷颯辰(3年)の両センターバックを中心に落ち着いて対応。膠着状態が続く中、静岡学園は前半22分、PA内で仕掛けたMF浅倉廉(3年)が個人技で2人をかわし、右足を振り抜く。しかし、ここはGK藤井陽登(1年)の好セーブに阻まれ、こぼれ球に反応したMF小山尚紀(3年)のシュートも藤井が弾き出した。

 2トップのFW西村碧海(3年)、FW多田圭佑(2年)を含め、フィールド選手全員が自陣深くまで下がって中央に分厚いブロックをつくる矢板中央。静岡学園は松村、小山の両サイドを起点に局面の打開を図るが、なかなかこじ開けられない。矢板中央は前半38分に選手交代を行い、左サイドハーフのMF左合修土(3年)に代えてMF宮野流斗(3年)を投入した。

 静岡学園はたびたびCKのチャンスを獲得。準々決勝の徳島市立戦(○4-0)でもセットプレーから2アシストを記録したMF井堀二昭(3年)の精度の高いキックからゴールを狙うが、前半42分、ショートコーナーから井堀の左クロスに合わせた阿部のヘディングシュートもゴール右に外れた。

 スコアレスで前半を折り返すと、矢板中央も徐々に前からプレッシャーをかけ始める。守備時も多田は前線に残り、カウンターに備えた。後半8分、西村に代えてFW久永武蔵(3年)を投入。直後の9分にはカウンターからこの試合初めてのチャンスをつくり、宮野が左足でミドルシュートを打ったが、GK野知滉平(2年)が好セーブを見せた。

 攻めあぐねる展開の続く静岡学園は後半22分に動く。1トップのFW岩本悠輝(3年)を下げ、負傷明けで今大会はベンチスタートの続くFW加納大(2年)をピッチに送り込んだ。同24分には松村のアーリークロスに加納が右足ボレーで合わせるが、GKの正面。後半29分からはMF藤田悠介(3年)に代わってMF草柳祐介(3年)が入った。

 草柳は左サイドに入り、井堀が中盤のアンカー、小山と浅倉がインサイドハーフの4-1-4-1にシステムを変更。後半33分にはDF西谷大世(3年)に代えてDF岩野寛太(3年)が右サイドバックに入り、DF田邉秀斗(2年)が右から左サイドバックにポジションを移した。

 1点を取り切りたい静岡学園は猛攻を見せるが、矢板中央のディフェンスも体を張って跳ね返す。後半44分には細かいパス交換から松村がPA内右に抜け出し、マイナスのクロス。しかし、浅倉のトラップが流れ、こぼれ球に詰めた加納も押し込めなかった。後半アディショナルタイムには田邊のクロス性のシュートが右ポストを直撃。このままPK戦突入かと思われた後半アディショナルタイム4分、PA内で松村が倒され、PKを獲得した。

 キッカーは松村。落ち着いてゴール右に決め、直後にタイムアップのホイッスルが鳴った。鹿島内定の背番号10が土壇場で今大会初ゴールを奪い、劇的勝利。静岡学園が24年ぶりの決勝進出を果たし、初の単独優勝を懸けて決勝では前回王者の青森山田と対戦する。

(取材・文 西山紘平)
●【特設】高校選手権2019

王者の鉄壁の守りが帝京長岡の猛攻阻む!青森山田が国見以来の連覇へあと1勝!

前半16分、青森山田高FW田中翔太(3年)が先制ゴール。(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 王者・青森山田が決勝進出! 第98回全国高校サッカー選手権は11日、埼玉スタジアム2○○2で準決勝を行い、第1試合では前回王者の青森山田高(青森)と初の決勝進出を狙う帝京長岡高(新潟)が対戦。青森山田が2-1で勝ち、13日の決勝戦(埼玉)へ進出した。

 青森山田は、今大会準々決勝までの最近5年間の選手権戦績が18勝2敗。近年の選手権でどこよりも結果を残してきている王者は、米子北高(鳥取)、富山一高(富山)、昌平高(埼玉)と続いた激戦ブロックを勝ち抜き、00、01年度の国見高(長崎)以来となる選手権連覇へ前進してきた。

 一方の帝京長岡は、3度目の挑戦で初めて準々決勝を突破して新潟県勢初のベスト4進出を果たした。MF谷内田哲平主将(3年/京都内定)、U-18日本代表FW晴山岬(3年/町田内定)、DF吉田晴稀(3年/愛媛内定)というJ内定3選手、またU-17日本代表MF田中克幸(3年)、U-17日本代表候補FW矢尾板岳斗(3年)擁する“最強世代”。その挑戦者が序盤から王者に牙を剥く。

 5分にMF本田翔英(3年)の左クロスをファーサイドの田中頭で合わせると、6分には右サイドを突破した矢尾板のクロスを本田が左足で狙う。そして、10分にも前線からプレスに行った矢尾板が相手GKのキックをチャージ。王者相手に堂々の立ち上がりを見せた。

 青森山田は相手のシュートがわずかにゴールを外れていたことに助けられていたが、相手に最後まで身体を寄せて簡単に枠へシュートを打たせなかったことも確か。その青森山田が16分に先制点を奪う。

 右サイドでMF後藤健太(3年)がDF3人に囲まれながらもキープ。そこからボールを繋ぐと、MF古宿理久(3年/横浜FC内定)がDFの間へ絶妙な強さ、精度のスルーパスを通す。これに走り込んだ右SB内田陽介(2年)がクロスを上げ切ると、ファーサイドのFW田中翔太(3年)が難しい体勢からのヘディングシュート。これがクロスバーの下方を叩いてゴールラインを越えた。

 先制された帝京長岡だが、ボールを保持。本田や晴山の縦への鋭い動きをアクセントに攻めてクロスの本数も増やす。だが、青森山田はクロスへの対応が的確。落ち着いたセービングを見せるGK佐藤史騎(3年)を含めて、崩されかけてもゴール前で隙を見せない。

 帝京長岡は37分、相手の逆を取る動き、好パスで存在感放っていた谷内田がDF2人を置き去りにして決定的なクロスを入れ、混戦から右WB酒匂駿太(2年)が頭で押し込もうとする。だが、青森山田はゴールライン上でカバーしたMF松木玖生(1年)がスーパークリア。あわやのシーンを作り続けた帝京長岡だが、青森山田の堅守をこじ開けることができない。

 すると、青森山田がしたたかに2点目のゴールを奪う。後半2分、ロングボールを右サイドで収めると、古宿がU-18日本代表MF武田英寿(3年/浦和内定)とのワンツーで抜け出してグラウンダークロス。帝京長岡DFが触ってファーへ流れたボールを松木が頭で押し込んだ。

 青森山田の守りは鉄壁だった。U-17日本代表CB藤原優大(2年)とプレミアリーグファイナルMVPのCB箱崎拓(3年)を中心に声を掛け合い、ゴール前に入ってくるボールは両者をはじめとしたDF陣が必ず相手よりも先にボールに触れるなど、決定打を打たせない。また後半は出足が良くなり、相手の2トップに前を向かせるシーンも減少。PAへの侵入も許さなかった。

 帝京長岡は後半15分に谷内田の右足ミドルが枠を捉え、20分にも晴山がDF間でのボールコントロールから決定的な左足シュート。だが、青森山田はいずれもGK佐藤のファインセーブで追撃を許さない。

 そして、右SB内田陽介(2年)のロングスローや武田のボールキープなどから追加点を狙う。だが、大会屈指の攻撃力を誇る帝京長岡はこのままでは終わらない。後半32分、中盤中央から切り返しを交えながらドリブルした田中がPAで2人をかわして左足シュート。これが右隅に決まり、1点差となった。

 帝京長岡は反撃を加速させようとするが、青森山田は執念の守り。アディショナルタイムに晴山が放った左足シュートも枠右へ外れてしまう。そのまま2-1で試合終了。平成最後の優勝校・青森山田が、令和最初の選手権日本一に王手を懸けた。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

女子選手権は藤枝順心と神村学園が決勝進出

 第28回全日本高校女子サッカー選手権大会は7日に準決勝を行い、藤枝順心高(東海2/静岡)と神村学園高(九州1/鹿児島)が決勝(12日、ノエスタ)へ進出した。

 準決勝で修徳高(関東2/東京)と対戦した藤枝順心は前半28分、FW小原蘭菜のクロスをFW池口響子が頭で合わせて先制。後半開始直後にオウンゴールで同点に追いつかれたものの、後半45分にDF角田菜々子が決勝点を決めて2-1で競り勝った。

 神村学園は初めて準決勝へ進出した大阪学芸高(関西3/大阪)と対戦。DF小原愛生の好守などでによって0-0で試合を進めた神村学園は後半30分、交代出場のFW近藤千寛が決勝点を決めて1-0で勝利した。

 藤枝順心は2大会ぶり、神村学園は4大会ぶりの決勝進出。決勝で藤枝順心が勝てば4回目、神村学園が勝てば3回目の女子選手権優勝となる。

準決勝までの試合結果は以下の通り

[準決勝]
藤枝順心高 2-1 修徳高
[藤]池口響子(28分)、角田菜々子(90分)
[修]オウンゴール(48分)

神村学園高 1-0 大阪学芸高
[神]近藤千寛(75分)

[準々決勝]
日ノ本学園高 0-0(PK3-4)藤枝順心高

東海大福岡高 0-2 修徳高
[修]片山由菜(62分)、三尾梨々子(79分)

神村学園高 3-1 大商学園高
[神]菊池まりあ(26分)、桂亜依(32分)、近藤千寛(80分+1)
[大]大住六花(5分)

鳴門渦潮高 0-2 大阪学芸高
[大]永田晶子(40分)、前原日向子(43分)

[2回戦]
日ノ本学園高 0-0(PK4-3)十文字高
藤枝順心高 3-0 星槎国際高湘南
東海大福岡高 0-0(PK5-3)開志学園JSC高
神戸弘陵高 0-4 修徳高
神村学園高 1-0 帝京長岡高
大商学園高 6-0 北海道大谷室蘭高
福井工大附福井高 0-1 鳴門渦潮高
鎮西学院高 0-0(PK2-4)大阪学芸高

[1回戦]
前橋育英高 0-1 日ノ本学園高
十文字高 3-0 作陽高
宇都宮文星女子高 0-5 藤枝順心高
星槎国際高湘南 4-0 四国学院大香川西高
日本航空高 0-3 東海大福岡高
開志学園JSC高 4-4(PK6-5)秀岳館高
聖和学園高 0-0(PK4-5)神戸弘陵高
AICJ高 0-1 修徳高
神村学園高 4-1 北海道文教大明清高
帝京長岡高 4-1 広島文教大附高
専修大北上高 0-2 大商学園高
北海道大谷室蘭高 1-1(PK5-4)聖カピタニオ女子高
福井工大附福井高 6-1 京都精華学園高
健大高崎高 0-6 鳴門渦潮高
常葉大橘高 1-1(PK5-6)鎮西学院高
大阪学芸高 3-0 常盤木学園高


●【特設】高校選手権2019

「いまも好きなことをやってます」5年前の青森山田10番、丹代藍人の華麗なる転身

93回大会で青森山田の10番をつけた丹代藍人
 第98回全国高校サッカー選手権は今日11日に準決勝を迎える。前回王者・青森山田高は順当にベスト4まで進出、国見以来18年ぶりとなる連覇に向けて視界は良好だ。

 全国屈指の強豪である“青森山田の10番”といえば、いまや高校サッカー界最注目の選手のひとりだ。かつては日本代表の柴崎岳(デポルティボ)が背負い、選手権準優勝(2009年度)に導いた。近年の選手名を見ると、神谷優太(愛媛→柏)、高橋壱晟(山形→千葉)、郷家友太(神戸)、檀崎竜孔(札幌)と高校卒業後にプロの世界に飛び込んだ選手が並ぶ。さらに、今年10番を担う武田英寿(3年)も浦和の入団が内定しており、5年連続で“青森山田の10番”が高卒Jリーガーになっている。

 神谷の1年前、2014年度にその10番を背負っていたのが丹代藍人だ。それから5年、彼はいま都内随一のショッピングモールである表参道ヒルズで充実の日々を送っていたーー 。

サッカーがつなげてくれた出会い

 2014年の夏、青森山田はインターハイでベスト4に躍進していた。丹代は全5試合で先発し2得点を記録。「インターハイが終わった日」に東洋大学から声がかかった。東京への進学を希望していた丹代は、「やっているサッカーも好きだったので、すぐに行きます」と決意を固めた。こうして、中学から青森山田でプレーしていた丹代は、初めて青森を離れて東京での生活をスタートさせる。同級生には坂元達裕(山形→C大阪)らがいた。

「東洋は関東2部とか1部で、プロになる選手がいるようなレベル。『自分は無理だな』って最初のころにちょっと感じていて……。だからといって企業に入るよりは、別のことをやりたいっていう思いが強かったんです。好きなサッカーは小学生からずっと続けてきたので、仕事も好きなことができればいいなと思っていました」

 東京での大学生活の中で、丹代が傾倒していったのがファッションだった。東洋大の2学年上には仙頭啓矢(京都→横浜FM)がいて、ピッチの外でも影響を受ける。「啓矢くんの代の先輩がすごいオシャレで。啓矢くんとも仲良くさせてもらって、SUPREME(シュプリーム)とか、C.E(シーイー)とか、ストリートファッションを着てました」。こうして、サッカーとは別の好きなことが固まっていった。

 ファッション関連の就職先を模索する中、大学4年の夏に大手セレクトショップへの内定を勝ち取った。そんなとき、高校時代の恩師である黒田剛監督と食事をするタイミングがあり、その席でファッション関連の人物を紹介される。2017年度から青森山田サッカー部のスポンサードを務める、BALANCE STYLE(バランススタイル)の高畠太志取締役だった。

「最初は『山田のスポンサーをしている会社』くらいしか認識がなくて……(苦笑)。就職先は決まっていましたが、(黒田)監督にご紹介していただいたので行かせていただきました」。それでも、高畠太志取締役の話を聞くうちに「いろいろインスピレーションを受けて、どうしようかなと考えるようになりました」。ケガの影響で大学4年のときはほとんどプレーすることができなかったこともあり、考える時間はふんだんにあった。「いろいろなことをやろうとしているなという印象があって。やりがいがありそうだと感じました」。考え抜いたその年の12月、内定先に断りを入れてバランススタイルで働くことを決意する。

「感謝してます」と恩師・黒田剛監督への思いも語った


ファッション✕サッカーという天職

 バランススタイルを就職先に選んだ理由のひとつは、「洋服からサッカーに還元したい」という希望に直結するからだ。「サッカーのあるライフスタイル」と謳っている同社は、オランダ発の「BALR.(ボーラー」や日本発のバランススタイルオリジナルブランドといった、サッカーと親和性の高いブランドを取り揃えている。オンラインショップからはじまり、現在は千駄ヶ谷、大阪、名古屋、表参道ヒルズ、福岡に実店舗をオープンさせており、ファッション好き&サッカー好きの男女から高く支持されているセレクトショップだ。

 少数精鋭の企業であるバランススタイルでは、社員が求められる仕事は多岐にわたる。店頭での接客はもちろん、オンラインショップの発送作業も行っている。また、記事は1日で5〜8本ほどアップされており、記事の執筆も重要な業務のひとつだ。丹代は大学時代にコンビニやカフェなどでアルバイトをしていた経験はあったが、「卒論のときくらいしか使っていなかった」というパソコンでの作業は未知の領域だった。「パソコンは学生のときにやっておいたほうがいいですね(笑)」。悪戦苦闘しながらも、やりがいのある仕事に笑みをこぼす。

 現在は“ルーキー”ながら表参道ヒルズ店を任される立場にある。「もっといろいろな仕事をできるようになって会社に貢献したい」というのが少し先の目標。店頭に立つ丹代がやりがいを感じる瞬間は「同じお客さんが、また来てくれたときと、おすすめした商品を買ってもらえたとき」だ。

 社会人としては1年生かもしれないが、学生のうちに部活を続けてきたことが社会でもアドバンテージになる、と断言するのはバランススタイルの高畠侑加代表取締役だ。「仕事も、サッカーも、人生もそうですけど、鍛錬するという意味では一緒だと思うんです。努力し続ける、毎日やり続けるのが一番大切なこと。高校サッカーをやってきた子たちはそれをやってきているから、絶対に仕事に活かせると思います」。成功をおさめている社長の言葉は、丹代に限らず多くの部活生の背中を押してくれるだろう。

「サッカー選手が好きなテイストの服しかありません」(丹代)


サッカー部みたいな会社

 選手権ではユニフォームにスポンサーを入れることはできないが、プレミアリーグではバランススタイルが背中に入ったユニフォームで青森山田はプレーしている。「高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2019 ファイナル」では、自分の会社の名前を背負った後輩たちの日本一を見届けた。

 直近4年の選手権で優勝2回、4強1回と好成績を残している青森山田だが、2年生の柴崎を擁して準優勝した09年度以降は、10年度から13年度まで4年連続で3回戦敗退と苦しんでいた。丹代が3年生となった14年度は、夏のインターハイで4強していたこともあり“鬼門”突破が期待されたが、1回戦でPK方式の末に涙をのんだ。「いまの山田の選手みたいにがむしゃらにやれていなかった」と丹代は5年前を思い返す。「選手権のときになると『いつもと違うな』という雰囲気があって……。みんなのベクトルがバラバラでまとまりがなかった気がします」。

 個人としては、青森山田の10番という重圧はあったのだろうか。「責任感を強く持つようになりました。青森山田の10番は世間から注目される番号でもあるので。僕の後はみんな10番がプロに行っているので、節目の10番かもしれないですね(苦笑)」と自嘲気味に笑った。青森山田の10番をつけていたことで、周囲から驚かれることも少なくない。サッカー選手でないことを揶揄されることもあったというが、気にしてないと言い切る。いま好きなことを仕事にしているから? というこちらの質問に「はい!」と丹代は笑顔で答えた。

「藍人は10番キャラ」と評する高畠侑加代表取締役は、丹代の“監督”にあたる人物だ。「藍人の場合、仕事もガツガツ取りに行くより与えられちゃうタイプ。まだ入社1年目ですけど、古くからいるんじゃないかっていうくらい馴染んでいるし、みんなに可愛がわれています」。そんな丹代の存在は、高畠侑加代表取締役にとっても刺激になっているようだ。

「新卒の子たちのほうが、バランススタイルのスピード感に慣れるのが早いです。藍人ともう1人新卒の子がいるんですけど、彼らの成長するスピードや学ぶ意欲は会社にとっていい見本になっていますし、その点は尊敬しています」と“監督”は“ルーキー”を称えつつも「来年新しい子たちが入ってきたときが勝負じゃないですかね(笑)」と発破をかける。

 高畠侑加代表取締役のフランクでポジティブなキャラクターがそうさせるのか、やりとりを見ていると上司部下の関係というよりは仲間や家族のような空気感が漂っていた。丹代にとっても現在の職場はとても居心地がいいようで、「サッカー部みたいな感じです」と一番の笑顔を見せた。

スタジアムをイメージした店内はサッカー好き必見だ


(取材・文 奥山典幸)
●【特設】高校選手権2019

都道府県予選決勝敗退も、活躍、個性光った選手たち48選(西日本編)

長崎県予選で印象的な動きを見せた国見高FW中島大嘉(2年)
 第98回全国高校サッカー選手権は1月5日にベスト4が決まった。都道府県予選を勝ち抜いた選手たちが全国大会で躍動したが、ゲキサカでは各予選決勝敗退校の選手にも注目。編集部・吉田がチェックした各予選準優勝校から光った選手を一人ずつ、計48人ピックアップする。第2回は三重県~沖縄県までの西日本24選手を紹介。

海星高MF假谷竜也(3年)
「県決勝ではトップ下の位置でパスセンスの高さを発揮。相手の背後を突く好パスを繰り出し、同点のチャンスも演出した」
近江高MF池田海翔(3年)
「県予選9得点。県決勝では左サイドから斜めに切れ込むドリブルで先制点を演出。パンチのあるシュートも魅力」
洛北高DF伊藤颯真(3年)
「身体能力の高さを活かしたヘッドなどが魅力のCB。府決勝では頭部を負傷しながらも気迫の守りで京都橘を苦しめた」
阪南大高DF高木践(3年)
「下級生時から阪南大高の守備の中心を担ったボールハンター。身体能力に優れ、自分よりも10cm長身の選手にも競り勝つ」
県立西宮高MF小林遼生(2年)
「右サイドで見せる縦へのスピード、カットインからのシュートに注目。学力もとても高いという知性派のドリブラーだ」
一条高MF梅景俊輔(2年)
「視野広くボールをさばいたかと思えば、危険なゾーンに飛び込んでシュートも決める。センスあるレフティー」
和歌山南陵高FW江川公亮(3年)
「積極的に放つシュートと巧みなボールタッチからのドリブルで、DF百々昌良(3年)らとともに新鋭・和歌山南陵を牽引」

境高DF川上颯太(3年)
「米子北相手に終盤まで接戦を演じた立て役者。PAへ入ってくる相手の前に身体をねじ込み、ロングボールも確実に跳ね返した」
大社高MF藤原建(3年)
「的確なポジショニングでセカンドボールを回収。パスセンスも魅力。劣勢の中、諦めずに攻守両面で走り続けた姿も印象的」
玉野光南高FW岸本大雅(2年)
「県準決勝で作陽を大いに苦しめた俊足FW。スプリントを連発し、迫力のある動きでゴールへ迫る。守備も献身的」
瀬戸内高DF篤快青(3年)
「中国地方を代表する左SB。球際の強さと左足に注目。県決勝では劣勢の中でポジションを中盤中央に上げ、左足ミドルも」
西京高MF米田大和(2年)
「インターハイ優秀選手のMF前田唯翔(2年)に負けないインパクト。独力、またワンツーでサイドを突破し、決定機に絡んだ」
四国学院大香川西高FW町田大河(3年)
「先制された直後の投入だったが、チームにエネルギーをもたらす働き。2度追いも厭わず、推進力あるドリブルも」
徳島北高MF豊田雄也(2年)
「堅守・徳島市立相手に突破力を見せていたスピード系のドリブラー。左サイドからの仕掛け、クロスでチャンスを演出」
新田高MF三好凱斗(3年)
「県決勝で存在感ある動き。読みと寄せのタイミングに優れ、相手選手の前に潜り込んでセカンドボールを奪取。そして攻撃の起点に」
高知中央高GK杉浦渉平(3年)
「高速FWオニエ・オゴチュクウ・プロミス(3年)に注目が集まる中、安定感、闘争心でチームを支えた守護神。リーダーシップも◎」

東福岡高MF荒木遼太郎(3年)
「ケガでベストコンディションではなかったが、途中出場と同時に雰囲気をガラリと変えたのはさすが。キック精度に注目」
佐賀北高MF小野拓弥(2年)
「注目MF松岡郁弥(3年)の隣で存在感を放っていたボランチ。ボール奪取力、キック精度、パスセンス光る」
国見高FW中島大嘉(2年)
「県予選はスーパーサブ起用も、ピッチに入ると一際目立つ存在に。187cmの高さを活かしたヘッドとストライドの大きなランニングでゴールに迫る」
大津高FW宮原愛輝(2年)
「試合終盤に腰を捻りきって撃ったクロスバー直撃弾など、怖さがあった。来年はFW半代将都(2年)とダブルエースで全国へ」
柳ヶ浦高FW芝崎翼(3年)
「負傷を抱える中での決勝戦だったが、それでもフィジカルの強さを活かした縦突破など存在感。MF沖永智哉(2年)らとともに攻撃牽引」
宮崎日大高FW川野寛登(3年)
「184cmの大型FWは正確なサイドチェンジや縦へのフィード、キープ力にも長けた注目株。Jクラブも関心を寄せた力の持ち主」
出水中央高FW松山正利(3年)
「ショートカウンターからのフィニッシャー役を担った俊足FW。スピードのあるドリブルで神村学園を苦しめ、同点アシストも記録」
普天間高FW渡慶次悠作(3年)
「県予選3得点。普天間の得点源。厳しいマークをかいくぐり、1チャンスをモノにしようとしていた」
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:本当に大切なことはすべて彼らが教えてくれた (國學院久我山高・清水恭孝監督)

國學院久我山高・清水恭孝監督。(写真協力=高校サッカー年鑑)
東京のユースサッカーの魅力、注目ポイントや国内外サッカーのトピックなどを紹介するコラム、「SEVENDAYS FOOTBALLDAY」

 自らの持てる最大限の情熱を注ぎ込んだ選手たちがバタバタと倒れ込んだグラウンドを少しだけ見つめてから、踵を返してベンチの方に歩いていく。すべてが終わった解放感と、すべてが終わった喪失感が、頭の中で複雑に混ざり合う。「『終わる時、自分がどういうふうに思うのかな』と考えることもあったんですけど、なんか悔しいとか残念だというよりも、幸せな1年でした。このチームと一緒にサッカーができて良かったと思います」。コーチから数えれば9年間。國學院久我山高を率いてきた清水恭孝の長い戦いは、終わった。

 監督デビューの年は華々しい成果が待っていた。2015年。4年間に渡り、チームを陰日向となって支えてきた“清水コーチ”は、前任の李済華監督からバトンを受け継ぎ、國學院久我山高サッカー部の監督に就任する。

「これまでも李さんからはいろいろなことを任されていたので、自分の中で最初はそれほど大きな変化はないと思っていたんですけど、実際になってみるとやっぱりプレッシャーはありますね」。当初は変化した立場に慣れない様子も窺えたものの、夏には全国総体の出場権を獲得し、勢いそのままに3年連続となる高校選手権予選での東京制覇も成し遂げてみせる。

 監督として初めて臨んだ全国は躍進の舞台。1回戦から着実に勝利を積み重ね、久我山史上初のベスト4を手繰り寄せると、青森山田高も後半アディショナルタイムの決勝点で下し、日本一に王手を懸ける。最後は東福岡高に0-5と大敗を喫したものの、堂々の全国準優勝。「久我山というチームが日本一を目指すために大きな変革はないと。久我山は久我山のスタイルで、久我山らしく日本一を目指したいなと。そこはブレないでやっていきたいと思います」。決勝後の会見で力強く言い切った言葉が印象深い。ただ、このあまりにも大きなインパクトは、その後の監督生活へ付いて回ることになる。

 清水は悔しさを噛み締めていた。翌年の高校選手権予選。初戦で激突したのは、1年前の決勝で倒した帝京高。埼玉スタジアム2002のピッチに立った選手を6人も擁していた久我山だったが、リベンジに燃えるカナリア軍団に0-1で屈してしまう。前年度より4か月近くも早い段階で突き付けられた敗退。「どうしても周りの皆さんが準優勝のチームと見てくださることで、ひょっとすると彼らにはこの1年間で守るべき大きなものができてしまって、苦しい状況を自分たちで作ってしまったのかなと」。

“全国準優勝”という視線は、監督である清水にも当然注がれる。「2年目のジンクスを思いっきり受けていますし(笑)、プレッシャーも思いっきり感じています。勝った後の年の苦しさを味わせてもらっていますので」。シーズン途中で聞いたこの本音も、監督業の厳しさをよく現わしていたように思う。

 苦闘の日々は続く。2017年のチームは粘り強い戦いで決勝まで勝ち上がったものの、延長後半のラストプレーで失点を喫し、涙を飲む格好に。2018年のチームも夏の全国16強を経験しながら、駒澤大高の大応援団を含んだ圧力に飲み込まれ、準々決勝での敗退を余儀なくされる。

 現在の久我山はAチームがT1(東京都1部)、BチームがT2、CチームがT4(東京都4部)に所属して、それぞれのリーグを戦っている。たとえばT1とT2のリーグ戦が同じ会場で組まれた場合、試合の終わったT1の選手たちが、T2の試合の応援団として声援を送ることも。実力はもちろん、グループの一体感という意味でも、確実に久我山サッカー部へポジティブな変化はもたらされてきた。それでも、やはりどうしても周囲の見る目は高校サッカーにとって最大の舞台、“選手権”が基準となる。あの準優勝から3年。もう在籍している選手に冬の全国を知る者は1人もいなくなっていた。

 2019年。勝負の年と位置付けた1年が幕を開ける。キッカケは3月の船橋招待だった。帝京長岡高や前橋育英高といった全国の強豪とも互角以上に勝負を繰り広げるチームを見て、清水はある考えに至る。「選手たちは目標設定が見えていなかったみたいですけど、『オレは正直見えた』と。『日本一が本当に獲れるんじゃないか』っていう手応えを感じたんです」。

 その話を聞いたのは4月。率直に言って、驚いた。基本的には冷静で謙虚。いわゆる大言壮語の類は一切口にしない清水から、それだけの言葉が出てきたことが意外だった。「ウチの子たちには『破壊には破壊以上の創造を生まないと勝てない』と。『創造で破壊しなきゃいけないんだ』と言っていて。だから、自分たちのやるべきことをどんどんやって、相手を破壊できるようにというコンセプトの中で、選手たちはよくやってくれていると思います」。次々と出てくる強いフレーズに、例年とはまったく違う“覚悟”のような雰囲気が漂っていた。

 とにかく負けない。リーグ戦。関東大会予選。関東大会。総体予選。重ねた連勝は驚異の15。6月の時点で3つのタイトルを奪い取り、夏の全国出場権も獲得。ゲームキャプテンの山本航生も「今は試合中でもシンプルにやっていて楽しいですし、入学した時は自分たちの代でここまでできるとは思っていなかったので、ビックリもしていますし、凄く嬉しいです」と自信を口にする。

「今年はちょっと今までと違う感じがしませんか?どこかで今までの“上手かった”チームよりも“強く”したかった所があるので、そういうアプローチをし始めた去年の子たちの功績が大きいんです。プレーモデルが何となくわかっている上に、今年は本当に明るくて前向きな子が多いので、そういう意味では久我山らしさにプラスアルファという所なのかなと。もちろんまだ完璧ではないですけど、僕が見た中では一番良いチームになっていると思います」。清水の口調に力が籠もる。沖縄の夏は、飛躍の夏になるはず、だった。

 清水はチームから離れ、テントの下で1人佇んでいた。7月26日。大きな自信を抱いてチャレンジした真夏の全国総体は、1回戦で大会を去ることとなる。神村学園高に逆転負け。並々ならぬ期待を携えて沖縄へ乗り込んできただけに、受けたショックは計り知れないものがあった。「言いようがないですよね、何もね。こんなゲームをやっていたら」。逡巡しながら近付き、声を掛けた清水の顔にも大きな落胆の色が浮かぶ。

「タフじゃないんでしょうね。心の問題だと思うんですよ。うまく行かない時はたいてい自分のミスも人のせいにしているから、結局うまく行かなかった時に、それをみんなで乗り越える力がウチにはないんでしょうね。もう1回イチからやり直しかなって思います。僕も含めてチームの在り方とか、大きな改革をした方が強くなるのかもしれないし」。今から思えば、この言葉に清水が長年抱えてきた想いが凝縮されていた気がしてならない。

 4年ぶりの全国出場だけを義務付けられた、高校選手権予選がやってくる。初戦の早稲田実高戦は1-0と辛勝し、準々決勝の実践学園高戦は7-1の大勝。西が丘で対峙した成立学園高にも1-0で競り勝って、ファイナルへの進出を決めた試合後。今までのチームと今年のチームの違いについて問われた清水から、言葉が零れる。

「毎年その代の3年生を中心に、選手たちも僕たちもベストを作ってきたと思っていますので、今年に対する特別な想いは気にしていないです。ただ、何となく成功と失敗とか、良い所も悪い所も経験しながら自分自身も成長させてもらった部分があるので、それを思い切って発揮できるような状況を作れたかなと。高校サッカーって、この選手権だけ獲れないチームがいたり、この選手権だけを必ず勝ち上がってくるチームもいるじゃないですか。その難しさを常に彼らには伝えてきたので、そういう意味では大舞台に立っても、その力を発揮してくれると思います」。勝つか、負けるか。全国に出られるか、出られないか。2つに1つ。東京でのラストマッチが待ち受けている。

 清水の瞳は潤んでいるように見えた。11月16日。4年前と同じ帝京との決勝。2点を先制しながら、2点を追い付かれたチームは、粘り腰を発揮して4-2と宿敵を破り、東京の頂点を手繰り寄せる。試合を終え、ミックスゾーンに現れた指揮官がゆっくりと語り始める。

「ホッとした部分もあるし、『獲り切ってくれたな』という感じで、何とも感慨深いものがあったかなと思います。歳を取ると涙もろくなってくるんですよね。あまり選手の前では泣かないですけど、全国で準優勝してから2年くらいノンタイトルで終わった時があって、苦しい時期を経験した分だけ、実際はそのくらいの気持ちがありますね」。

 選手たちには、この決勝のタイミングで清水から今年限りでの退任が伝えられたという。「自分たちは1年の頃から清水さんの元でメンバーに入れたヤツが多くて、清水さんを全国に連れていきたい気持ちは本当に強かったですし、ここからも清水さんと美しくかつ強く日本一を目指してやっていきたいです」(加納直樹)「夏の沖縄では期待を裏切ってしまった形になったのに、それでも監督は信じてくれていたと思うので、今度は僕たちが監督を日本一にする番だなと思います」(福井寿俊)。薄々はその雰囲気を感じ取っていた彼らも、改めて聞かされた事実に想いを強くする。『清水さんと日本一に』。覚悟が、より深まる。

 12月30日。4年ぶりの全国は衝撃的な大勝でスタートした。開会式直後に行われた開幕戦。前原高と向かい合った久我山は、山本航生と山下貴之が共にハットトリックを達成し、8-0というスコアで勝利を収める。だが、試合中の清水はあることで悩んでいた。既に大量リードを奪っていた中で、最後となる5人目の交替選手を考え、アップエリアにいる明田洋幸へ目を向ける。

 明田は“指名された”キャプテンだ。試合に出る可能性は高くないものの、その人間性を評価し、周囲の反対を押し切って彼を大役に指名した清水は「明田は本当に明るくて良い子で、『自分の息子がああいう子になってくれたらいいな』って思う子です(笑)」と笑いながら明かしたこともある。それゆえにこの大舞台を経験させてあげたい親心と、勝利に徹しなければならない指揮官としての責任がせめぎ合う。そして、選んだ5枚目のカードは明田ではなかった。「彼はそういうキャプテンなので、理解してくれていると思っていますから」。

「自分もちょっと可能性はあるかなと思ったんですけどね」と笑った明田はわかっていた。清水の葛藤も、自らの役割も。「『本当に自分がキャプテンでいいのかな』と悩んだ時もありますし、自分が試合に出ていないのに、チームを引っ張れるのかは凄く不安だったんですけど、周りのチームメイトも『オマエがキャプテンで良かったよ』みたいに言ってくれるので、本当に適任だと考えてくれた監督に感謝しています。次は出られるようにしっかり調整して、最高のパフォーマンスができたらいいかなと思っています」。想いはしっかりと通じていた。

 1月2日。専修大北上高との2回戦。後半に入って退場者を出した久我山は、数的不利の状況でも懸命に戦い、7人目までもつれ込んだPK戦の末に何とか次のラウンドへと勝ち上がる。苦しい試合をモノにした試合後。山本航生はこう想いを紡ぎ出す。「僕は1年からトップチームでずっと監督の指導を受けているので、監督が最後に埼玉スタジアムで日本一のインタビューを受けている姿をいろいろな人に見せてあげたいですし、本当に監督のために戦っているといっても過言ではないぐらいの気持ちを持っています」。

 キッカーの順番は選手たちが決めていた。「PKはキックが上手くて、技術が高い方が勝つと思っていますので、『自信を持ちなさい』と。だから、みんなを信じて、自分たちでキッカーも決めさせて。そこが甘いと言えば甘いのかもしれないですけど、よく頑張ってくれたなと思います」。PKは見ないと決めている清水は、誰が蹴ったかも把握していなかったが、喜ぶ教え子の姿を見て勝利を知ったという。次はベスト16。勝っても、負けても、最後の瞬間が着実に迫ってくる。

 1月3日。昌平高との3回戦。相手の圧力に押し込まれ続けながら、必死に耐える久我山。苦しむ教え子の姿を見ていた清水には、ある感慨が生まれていた。「『自分たちがやりたいサッカーをやって、それがダメだったら負けてもいいじゃん』って言った瞬間に、それはサッカーじゃない気がするんですよね。『それでいいんだよ』って言った瞬間に、『じゃあ、うまく行かなかったらやらなくていいじゃん』って言っているのと同じだと思って、それはしたくなかったので、彼らが必死になって戦っているのを見て、本当によく頑張ってくれたなと。彼らにも成長させてもらったし、彼らも成長できたんじゃないかなと思います」。

 あるいは清水が監督に就任してからの5年間で、それが最も久我山に必要だと信じ、強調してきた部分だったかもしれない。『どこかで今までの“上手かった”チームよりも“強く”したかった所がある』という言葉を思い出す。全国のピッチで、思うように自分たちのサッカーができないピッチで、清水の教え子たちは強く、逞しく、粘り強く、ボールを追い掛けていた。

 しかし、最後の最後でサッカーの神様は残酷な結末を用意していた。後半40+2分。途中出場だった相手の1年生が左足を振り抜くと、ボールはクロスバーを叩きながらゴールネットへ吸い込まれる。直後に聞こえたタイムアップの笛。あと1分。懸命に耐え続けた久我山の祈りは、届かなかった。

 自らの持てる最大限の情熱を注ぎ込んだ選手たちがバタバタと倒れ込んだグラウンドを少しだけ見つめてから、踵を返してベンチの方に歩いていく。すべてが終わった解放感と、すべてが終わった喪失感が、頭の中で複雑に混ざり合う。「『終わる時、自分がどういうふうに思うのかな』と考えることもあったんですけど、なんか悔しいとか残念だというよりも、幸せな1年でした。このチームと一緒にサッカーができて良かったと思います」。コーチから数えれば9年間。國學院久我山高を率いてきた清水恭孝の長い戦いは、終わった。

「試合が終わって一番最初に思ったのは、悔しさもいっぱいあったんですけど、やっぱり監督と3年間一緒にサッカーをやってきて、『これでもう一緒にできなくなってしまうんだ』という想いでした」(山本航生)「一番に浮かんだのは監督の顔ですね。清水監督を日本一の監督にすることを目標にして頑張ってきた部分もあるので、それを成し遂げることができなかったのがとても悔しかったし、監督と一緒に試合をするのはこれが最後かと思うと涙が出てきました」(明田)。

 ロッカールームから取材エリアへ出てきた清水の両眼は赤く濡れていた。「昌平さんは強かったですね。完敗です」。率直な感想が口を衝いた清水に、ストレートな質問をぶつける。「その涙にはどういう意味があるでしょうか?」。少しだけ考えたのち、返ってきた答えはこういうものだった。

「何なんですかねえ。ちょっとわからないですけど、実際は本当に辛い1年だったんですよ。孤独だったし、誰にも助けを求められないような。だから、選手たちとピッチにいる時が一番幸せで、すべてを忘れられていた。それを思い出したからですかね。47にもなったオヤジの涙を見てもしょうがないのにね(笑)」。

 監督の孤独は計り知れない。それが日本一を真剣に目指すようなチームであれば、よりその苦悩は際限がないだろう。でも、その孤独を救ってくれたのは、グラウンドで躍動する教え子たちだった。その孤独を癒してくれたのは、笑顔で自分と接してくれる教え子たちだった。そんな彼らの涙を見た時に、清水の中でも何かが決壊した。きっとその理由の真意は彼らだけが共有しているし、それでいいのだとも思う。

 沖縄から帰京して1か月後ぐらいだっただろうか。清水が「見てくださいよ」と言いながら、携帯電話に保存されている動画を見せてくれた。液晶画面には水族館のイルカショーで、イルカに水を掛けられてずぶ濡れになっている加納と明田に、それを見て笑っているチームメイトたちが映っている。その様子を改めて嬉しそうに眺めている清水の横顔は、彼らの監督というよりも、まるで彼らの父親のようだった。その表情が今でも忘れられない。

 清水が戦ってきた9年間の日々と、清水が築いてきた教え子たちとの絆に、最大限の敬意を。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

▼関連リンク
●【特設】高校選手権2019
SEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史

ゴールで選手権デビュー、仙台育英の1年生FW佐藤遼がつかんだプロ内定FWとの距離感

全4試合で先発した仙台育英高FW佐藤遼(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.5 高校選手権準々決勝 帝京長岡1-0仙台育英 等々力]

 1年生ながら1回戦・五條高(奈良)戦で先発した仙台育英高(宮城)のFW佐藤遼(1年)は、1点を追う中で貴重な同点弾。華々しい選手権デビューを飾った。その後の2回戦、3回戦、そして準々決勝とすべての試合でスタメン出場。守勢にまわる時間が多く、チャンスは限られゴールは遠かった。大会を終えた佐藤は「FWの自分としては本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」と声をふり絞った。

 中盤より前に1〜2年生を多く起用している仙台育英は、DFとGKは3年生が占め、4試合2失点とディフェンスが光った。「正直に言うと、『やられちゃうじゃないか』と思う場面もあったんですけど、防いでくれてかっこよかったです」。1年生FWにとって、先輩の姿は頼もしく映った。長く2トップを組んできたFW中山陸(3年)からも最後のロッカールームで声をかけられた。「『楽しかったよ』と言ってくれて……、自分も泣きそうになりました」。

「高校サッカーをやりかった」という佐藤は、中学年代では東京都のFC駒沢U-15でプレーしていたが、高校からは宮城県の仙台育英高校へ。仙台で寮生活を送っている。憧れだった初めての選手権でゴールを決めたことは、大きな自信となった。そして、「プロになりたい」という夢との距離を図る意味でも、帝京長岡戦は大きな意味があった。「晴山岬くんを見ていて、遠すぎるカベではないと思いました」。今春からJ2町田でプレーするストライカーは大いに刺激となった。「シュートで終えたり、シュート精度を上げること」と今大会で見つけた課題を挙げた。

 守備が光っていた一方で、攻撃は4試合2得点と物足りない印象は拭えない。「次は攻撃も強いところも見せたい」と続く、99回大会に意欲を見せた。

 今大会では佐藤のほかにも多くの1年生からゴールが生まれている。MF松木玖生(青森山田)、FW長谷川皓哉(明秀日立)、FW根本琳生(明秀日立)、MF篠田大輝(昌平)、MF田中祉同(神戸弘陵)、MF別府史雅(長崎総合科学大附)、FW木脇蓮苑(日章学園)……。仙台育英の1年生ストライカーは、ライバルたちと切磋琢磨していく。

(取材・文 奥山典幸)
●【特設】高校選手権2019

2人の間に言葉はいらない…「最後が友達のいるチームで良かった」

2人の間に言葉はいらない…「最後が友達のいるチームで良かった」
[1.5 高校選手権準々決勝 帝京長岡1-0仙台育英 等々力]

 別々の取材だったが、全く同じ答えが返ってきた。「本当にめちゃくちゃ仲が良くて、家に泊まりに行くくらいでした」。

 帝京長岡高のGK猪越優惟(3年)と仙台育英高のDF中川原樹(3年)はともに宮城県出身。中学時代はFCみやぎバルセロナで一緒にプレーした。しかし高校は県外への進学を志望した猪越が新潟への越境入学を決断したことで別々の道を歩むことになった。

 猪越はトーナメント表をみたときから、密かに対戦を願っていた。「勝ってこい、勝ってこい」。大会中、自分たちの勝ち上がりはもちろんだが、仙台育英の勝ち上がりも「夜も寝られないくらいワクワク」しながら見守ることで、準々決勝での対戦を祈り続けていたという。

 試合前日には「頑張ろうな」「いい試合にしような」というやり取りをした。「開会式では頑張れよって軽く言い合っていたけど、本当にここで勝負することになるとは思っていなかった」(中川原)。お互い特別な思い、運命を感じながら、80分間を楽しんだ。

 決着がついた試合終了のホイッスルが鳴ると、敗者となった中川原はその場で泣き崩れた。するとしゃがみ込む親友のもとに、逆サイドのゴールマウスを守っていたはずの猪越が駆け寄ってきてくれた。「ありがとうな」。2人の間に長い言葉はいらなかった。「本当に良かったです、友達がいるチームに負けて。最後が猪越で良かったです」。

 猪越は親友の想いも背負って憧れの埼玉スタジアムに乗り込む。昨年度、苦杯をなめたベスト8の壁を打ち破り、母校の歴史を塗り替えた。「去年、準々決勝で尚志に負けたあとで自分たちは準決勝を観に行った。1年後、ここに帰ってこようという話しをした。埼玉スタジアムでやるのは初めてですけど、去年の分もしっかりと楽しみたいと思います」。相手は王者・青森山田高だが、「自分たちのサッカーで決勝まで行って優勝したいです」と意気込んだ。

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

“地元撃破”に「勝てたことが一番」埼玉から青森山田へ…2年生でレギュラー掴む内田陽介

ロングスローを投げるDF内田陽介(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.5 高校選手権準々決勝 青森山田3-2昌平 等々力]

 中学校時代までを過ごした埼玉県代表校との対戦。青森山田高のDF内田陽介(2年)は「顔を知っている選手もいたし、親やその友達も来ていたので、活躍してやろうという気持ちでいました。でも勝てたことが一番良かったです」と充実の表情で振り返った。

 レベルの高い環境を求めて青森の地へと渡った。中学時代までは地元クラブのクマガヤSCに所属。当時から注目株だった内田には複数の強豪校、Jリーグ下部組織から声がかかっていたが、「寮生活がしかった。あと雪もあってメンタル面が鍛えられると思った。それとプレミアでやっていることとかも考えて、青森山田に決めました」。

 ロングスローを大きな武器としている。3回戦の富山一戦では前半7分の先制点に繋がった。小学校のころからボール投げが得意だったという内田は、中学時代の監督の勧めもあって本格的にロングスローを投げ始めた。

 青森山田進学後も毎日のトレーニングで磨きをかけている。回転を意識しながら投げることを心掛けており、今シーズンはプレミアリーグでも得点に繋げるロングスローを投げた。頂点まで残り2つに迫った今大会でもロングスローがカギを握る可能性が十分にある。

 部員数は185人。全国屈指の選手層の厚さを誇る青森山田で2年生にしてレギュラーを張ることは容易なことではない。現在のスタメンで2年生以下はDF藤原優大(2年)、MF松木玖生(1年)、そして内田の3人がいるだけだ。

 背番号2は「そこに関してはすごく監督から信頼を受けていると感じています」と感謝を語る。そして「決勝まで行ったら、自分のロングスローで点が取りたい。チームに貢献しながら、自分も頑張っていきたい」と息巻いた。

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

[選手権]準々決勝写真特集

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
第98全国高校サッカー選手権準々決勝写真特集

【準々決勝】
(1月5日)
[等々力陸上競技場]
青森山田 3-2 昌平
昌平、ベスト8敗退も王者・青森山田を追い詰める(24枚)
集大成のゴールを置き土産に…昌平FW山内太陽、競技を離れて新たな道へ(4枚)
浦和内定の相手エースから「お前上手いな」爪あと残した昌平MF須藤直輝(12枚)
意地の追撃アシスト…昌平MF鎌田大夢は日本代表の兄を追ってプロの舞台へ(4枚)
前半3発で逃げ切った青森山田、連覇へあと2つ!(20枚)
青森山田MF浦川流輝亜がベスト4導く1G1A!(8枚)
青森山田MF後藤健太、相手の隙を逃さず追加点(4枚)
勝負を決めるヘディング弾!!浦和内定の青森山田MF武田英寿「自分らしくない」(12枚)
緑と緑の激突! チームを後押しした青森山田&昌平スタンド(8枚)


帝京長岡 1-0 仙台育英
開始早々の失点に泣く…仙台育英は過去最高タイ4強入りならず(28枚)
仙台育英の主将DF小林虎太郎「来年、再来年に活かしてもらいたい」(8枚)
新潟県出身の仙台育英GK佐藤文太、帝京長岡の盟友に「優勝しろよ」(4枚)
帝京長岡が初の4強入り!!ファイナル進出を懸けて前回王者と対戦(20枚)
県予選から無失点…帝京長岡の堅守を支えるDF丸山喬大(4枚)
京都内定の帝京長岡MF谷内田哲平が歴史を変える決勝ゴール!(8枚)
勝利のために声を枯らした帝京長岡&仙台育英の応援団(4枚)


[駒沢陸上競技場]
矢板中央 2-0 四日市中央工
四中工は6大会ぶり8強も…2失点完封で準々決勝敗退(23枚)
日本代表の兄・拓磨も雄姿見届ける…六男の四中工MF浅野快斗は卒業後ドイツへ(5枚)
3戦5発の四中工MF森夢真は徹底マーク遭い…「もっと上に行きたかった」(8枚)
“四中工17番”FW田口裕也は来季鳥取へ「絶対にJ2に昇格する」(4枚)
矢板中央が最高成績タイの4強進出! 選手の成長に指揮官も歓喜(26枚)
“伝統堅守の要”矢板中央DF長江皓亮、反骨心からの躍進4強(8枚)
冷静シュート2発! “スーパー2年生”矢板中央FW多田圭佑は今大会3得点目(11枚)


徳島市立 0-4 静岡学園
静岡学園が23年ぶりベスト4進出! 堅守打ち破る大量4得点(22枚)
静岡学園の中盤支える要・MF藤田悠介、守→攻の起点に(4枚)
高精度キッカー・静岡学園MF井堀二昭がセットプレーで先制演出(4枚)
静岡学園DF阿部健人が先制ヘッド弾! 4戦完封の主将が均衡破る(8枚)
静岡学園FW岩本悠輝が圧巻ハットで“かめはめ波”!得点ランクトップタイに(14枚)
“和製アザール”は最強のおとりに…静岡学園の鹿島内定MF松村が3点目演出(10枚)
徳島市立は大量4失点で敗戦も…初のベスト8で奮闘(26枚)
「後悔しないように」、徳島市立MF阿部夏己は親との約束果たす3年間に(8枚)
ヴォルティス愛あふれる徳島市立MF川人太陽、「ホンマの、ガチなファン」(4枚)



●【特設】高校選手権2019

4歳からゴール裏、貫くヴォルティス愛…徳島市立の大型MF川人太陽、選手権終え次のステージへ

183cmの大型ボランチ徳島市立MF川人太陽(3年)
[1.5 選手権準々決勝 徳島市立高 0-4 静岡学園高 駒沢]

 徳島市立高(徳島)は夏冬8強という軌跡を残し、大会から姿を消した。183cmの大型ボランチMF川人太陽(3年)は「一番弱いと言われた代でしたが、この大会でも守備の力は見せられた」と前を向いた。インハイと選手権、ともに無失点でこそ勝ち上がってきた堅守のチームに、前半の3失点は重くのしかかった。

 中盤で存在感を放つ川人はチームの中心選手。ボール奪取から展開して攻守をつなげば、複数のポジションをこなす。この日はボランチの一角で先発すると、後半途中からは2列目にポジションを上げてプレー。ボールをおさめて前線で起点をつくったものの、反撃は及ばなかった。

 J2徳島ヴォルティスを愛し、サポーターの顔も持つ高校3年生。両親の影響もあり、4歳からゴール裏の住人だ。「ホンマの、ガチなファンなんです」。プレイヤーとしても、小学6年時に徳島ジュニアユースの入団テストを受けたが、狭き門を突破できず。プルミエール徳島を経て、徳島市立で成長を遂げてきた。

 目標とする選手は、同じくボランチの徳島主将MF岩尾憲だ。「周りがよう見えてるし、落ち着いてる。攻守でも本当に貢献している。岩尾さんがおらんかったら、ホンマにヴォルティスは成り立たたん」。高校サッカーに捧げた3年間は選手として多忙を極める傍ら、ヴォルティスに勇気をもらった。約1か月前、徳島はJ1昇格プレーオフを勝ち上がる躍進を遂げたが、J2代表として挑んだ決定戦で湘南を打ち破ることはできなかった。

「今日の選手権と同じくらい悔しかったし、泣いた」。今大会中はヴォルティスサポーターからもSNSにメッセージが届くなど応援を受け、「力になりました」と感謝した。卒業後は産業能率大に進学し、大学サッカーで飛躍を遂げるつもりだ。その先はもちろん、愛する徳島ヴォルティスへの加入を目指す。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

「本当にビックリ」「素直にスゲェな、と」「褒めてあげたい」。矢板中央は指揮官も感動の全国4強進出!

矢板中央高は過去最高成績に並ぶベスト4進出
[1.5 選手権準々決勝 矢板中央高 2-0 四日市中央工高 駒沢]

「ビックリしています。本当にビックリしています」。

 試合終了の瞬間、両腕を突き上げて勝利を喜んでいた矢板中央高・高橋健二監督は、驚きの第一声。その後は笑顔とともに、“予想を超える結果“を残した選手たちを褒めちぎっていた。

「指導者として、感動しています」「素直にスゲェな、と思っています」「褒めてあげたい」「まずはとにかく、おめでとうと」……。

 高橋監督が驚くのも無理はない。8強入りした前回の選手権でピッチに立った選手はゼロ。代替わりして迎えたプリンスリーグ関東では、前年の優勝から最下位に転落している。「今年は県でも勝つのは厳しいだろうと言われていた。谷間の世代と言われていた」(高橋監督)という世代だ。

 プリンスリーグ関東の失点は、昨年の22失点から今年は44失点に増加。伝統の堅守を自分たちも発揮することを目指していたが、なかなか失点は止まらなかった。力も、技術もない。だが、選手、コーチ陣はそれを認めても、諦めなかった。

 その中で選手たちは高橋監督から求めてきたものがある。「気持ちとか、ハードワークするところとか、去年よりも何かプラスになること。ハードワークしたり、身体を張ったり、最後まで諦めなかったり、あとは全員サッカーですね。全員で守備したり、全員で攻撃したり、とにかく走り負けない、走り勝つこと」。選手たちはコーチ陣の言葉を信じて取り組んできたが、すぐに結果が出た訳でない。

 県予選では初戦から全4試合で失点。リードされて追い詰められた試合もある。だが、その後のプリンスリーグでは前期0-7で敗れた横浜FMユースに勝利し、優勝チームのFC東京U-18とも0-0で引き分けている。

 そして、全国大会では3回戦の鵬学園高(三重)戦、この四日市中央工高(三重)戦と2試合連続無失点。CB長江皓亮主将(3年)やCB矢野息吹(3年)らがゴール前で身体を投げ出してシュートブロックし、こぼれ球にも2人、3人が反応してクリアする。それを80分間継続した。ここまでV候補との対戦がなかったことも確かだが、“強いチーム”の守備。それを表現して同校の過去最高記録に並んだ。

 3度目の4強入りだが、高橋監督は「(今回は)特別ですね」。彼らは先輩たちに匹敵するレベルの精神力、粘り強さを身に着けて、「誰もが信じられないというか、ここまで来れると思っていなかった」(高橋監督)ことをやり遂げた。

 高橋監督は「決して良い選手はいない。代表選手もいないし、最後まで諦めない高校サッカーらしい選手たちばかりなので、次の世代、高校サッカーで頑張る選手たちへの励みになると思いますね」。ひたむきに頑張ってきた世代は準決勝までの6日間、また成長するための期間を得ることができた。

 次の目標は、過去の先輩たちが成し遂げることのできなかった全国準決勝で得点すること、そして無失点に封じること。強敵・静岡学園高(静岡)との準決勝を乗り越えて、「歴史を塗り替えた世代」になる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

最後の相手は“縁ある”帝京長岡…仙台育英GK佐藤文太は夢を託した「優勝しろよ、って」

仙台育英高GK佐藤文太(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.5 高校選手権準々決勝 帝京長岡1-0仙台育英 等々力]

 高校生活最後の相手は、奇しくも故郷新潟の代表校・帝京長岡高だった。「新潟でも放送されるし、新潟県代表と戦えたことは縁があった。巡り合わせで楽しい高校サッカーの最後を迎えられた」。仙台育英高GK佐藤文太(3年)は積年のライバルたちに夢を託して大会を去った。

 1回戦の五條戦は10人での戦いを強いられながらもPK戦で勝利。2回戦の高川学園戦では1-0の完封勝利を果たすと、3回戦の日大藤沢戦でもPK戦を制してきており、今大会での仙台育英の躍進は頼れる守護神の活躍とともにあった。

 そうして迎えた準々決勝、アルビレックス新潟U-15出身の佐藤は帝京長岡との8強戦を迎えた。帝京長岡の3年生はエースFW晴山岬、サイドのFW矢尾板岳斗、主将のMF谷内田哲平ら長岡ジュニアユースFCでプレーしていた選手が中心。中学時代に何度も対戦してきた相手だ。

 そんな一戦は前半1分、晴山のクロスに飛び込んだ谷内田に決められ、早々に失点。その後、気を取り直した仙台育英は「あの失点のあとは全員が集中して守ることができた」との言葉どおり、佐藤も1対1の決定機を防ぐなど奮闘を見せたが、1点が遠く0-1で敗れた。

「上手いの一言。岬のポストプレーも、岳斗だったりは速いしうまい。自分としては嫌な選手だと思った」。そう振り返った守護神は試合後、チームの千羽鶴を託すため長岡帝京のロッカールームへ。「テツとか、克幸に優勝しろよって伝えた。岬とかは明るいやつなので優勝してくるよ!って」。故郷の代表校に日本一の夢を託したようだ。

 試合後、佐藤は「自分がいいパフォーマンスが出せたのも監督が1〜2年生が使ってくれた経験だと思っている」と城福敬監督への感謝を口にし、「1〜2年生が出ている選手が多いので、経験したことを活かして来年、再来年でベスト8につなげてほしい」と後輩に期待を寄せた。

 その上で、自身は今後のステージで活躍を誓った。卒業後は明治大に進学予定。「自分の進路は日本一を狙うチームに入っていく。今回ベスト8という結果を優勝という結果を見た上では不本意だけど、全国の高みを見られたのはいい経験になった」。選手権を沸かせた守護神が大学サッカー界で飛躍を遂げる。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

最後の相手は“縁ある”帝京長岡…仙台育英GK佐藤文太は夢を託した「優勝しろよ、って」

仙台育英高GK佐藤文太(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.5 高校選手権準々決勝 帝京長岡1-0仙台育英 等々力]

 高校生活最後の相手は、奇しくも故郷新潟の代表校・帝京長岡高だった。「新潟でも放送されるし、新潟県代表と戦えたことは縁があった。巡り合わせで楽しい高校サッカーの最後を迎えられた」。仙台育英高GK佐藤文太(3年)は積年のライバルたちに夢を託して大会を去った。

 1回戦の五條戦は10人での戦いを強いられながらもPK戦で勝利。2回戦の高川学園戦では1-0の完封勝利を果たすと、3回戦の日大藤沢戦でもPK戦を制してきており、今大会での仙台育英の躍進は頼れる守護神の活躍とともにあった。

 そうして迎えた準々決勝、アルビレックス新潟U-15出身の佐藤は帝京長岡との8強戦を迎えた。帝京長岡の3年生はエースFW晴山岬、サイドのFW矢尾板岳斗、主将のMF谷内田哲平ら長岡ジュニアユースFCでプレーしていた選手が中心。中学時代に何度も対戦してきた相手だ。

 そんな一戦は前半1分、晴山のクロスに飛び込んだ谷内田に決められ、早々に失点。その後、気を取り直した仙台育英は「あの失点のあとは全員が集中して守ることができた」との言葉どおり、佐藤も1対1の決定機を防ぐなど奮闘を見せたが、1点が遠く0-1で敗れた。

「上手いの一言。岬のポストプレーも、岳斗だったりは速いしうまい。自分としては嫌な選手だと思った」。そう振り返った守護神は試合後、チームの千羽鶴を託すため長岡帝京のロッカールームへ。「テツとか、克幸に優勝しろよって伝えた。岬とかは明るいやつなので優勝してくるよ!って」。故郷の代表校に日本一の夢を託したようだ。

 試合後、佐藤は「自分がいいパフォーマンスが出せたのも監督が1〜2年生が使ってくれた経験だと思っている」と城福敬監督への感謝を口にし、「1〜2年生が出ている選手が多いので、経験したことを活かして来年、再来年でベスト8につなげてほしい」と後輩に期待を寄せた。

 その上で、自身は今後のステージで活躍を誓った。卒業後は明治大に進学予定。「自分の進路は日本一を狙うチームに入っていく。今回ベスト8という結果を優勝という結果を見た上では不本意だけど、全国の高みを見られたのはいい経験になった」。選手権を沸かせた守護神が大学サッカー界で飛躍を遂げる。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

“最後の大会”は15分間で終幕…昌平MF大和主将「胸を張って帰りたい」

昌平高MF大和海里主将
[1.5 高校選手権準々決勝 青森山田3-2昌平 等々力]

 最後の大舞台は途中出場途中交代。Jクラブからも注目を集めた昌平高MF大和海里主将(3年)の冬は15分間のプレータイムで幕を閉じた。「サッカー人生最後の大会だったので、素晴らしい舞台に立たせてもらったことに感謝して、目標には届かなかったけど胸を張って帰りたい」。最後はすっきりとした表情で会場を後にした。

 1-3で迎えた後半11分、今大会ここまで出番のなかった背番号9がピッチに送り出された。2年前の高校選手権では1年生ながらメンバー入りを果たし、切れ味鋭いドリブルを武器にプロ入りも期待されていた逸材。しかし、準々決勝の青森山田高戦ではボールを受けてもクロスが流れるなど存在感は発揮できず、同25分にピッチを退いた。

「選手権という舞台に最後に立つことができたり、チームの歴史を塗り替えることができたのは、キャプテンとしてしっかりできていたからなのかな……と自分では言いたいと思います」。試合後、夏頃から務めてきたというキャプテンの仕事を振り返った大和は晴れやかな表情でそう振り返った。

 もっとも、プレイヤーとしての出来には「未練はないけど、もっとこうできたのかなというのはある」と後悔を口にした。Jクラブからのオファーを受けたが、進学予定先での大学では現状「サッカーを続ける予定はない」という意思。「その気持ちのブレがプレーに出てしまったと思っている」との迷いがあったことも明かす。

 プロ入り回避という選択は、Jクラブの練習参加を経たことで「オンザボールの良さを出せない時、自分に何かいいところがあるのかと言われたら自信を持って言えることは何もなかったのが正直なところ。それを高校年代でも出せなかった」ことが決め手になったという。

「自分には身長、身体つき、ヘディング、守備の部分がない。良い部分は評価していただいたし、たとえば長所はオンザボールの部分だと思う。でも自分になかなかボールが入らない時に球際などチームに貢献できる部分が少ないのは高校年代でも感じていた」。スムーズに理由を述べる口ぶりからは、これまで悩み抜いてきた思考の跡を感じさせた。

 大和は今後の展望について「まだ何をするかは決まっていない」と話す。関東圏内の私立大に進学予定で、その先で今後のキャリアを模索していく構えだ。「最後の大会でこんなに素晴らしい経験をさせてもらえて良かったし、この選択が間違っていなかったと自分に言える第一歩にしたい」。まだ18歳。人生の選択肢は無限に広がっている。もちろん、望めば再びサッカーを始める場も—。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

“最後の大会”は15分間で終幕…昌平MF大和主将「胸を張って帰りたい」

昌平高MF大和海里主将
[1.5 高校選手権準々決勝 青森山田3-2昌平 等々力]

 最後の大舞台は途中出場途中交代。Jクラブからも注目を集めた昌平高MF大和海里主将(3年)の冬は15分間のプレータイムで幕を閉じた。「サッカー人生最後の大会だったので、素晴らしい舞台に立たせてもらったことに感謝して、目標には届かなかったけど胸を張って帰りたい」。最後はすっきりとした表情で会場を後にした。

 1-3で迎えた後半11分、今大会ここまで出番のなかった背番号9がピッチに送り出された。2年前の高校選手権では1年生ながらメンバー入りを果たし、切れ味鋭いドリブルを武器にプロ入りも期待されていた逸材。しかし、準々決勝の青森山田高戦ではボールを受けてもクロスが流れるなど存在感は発揮できず、同25分にピッチを退いた。

「選手権という舞台に最後に立つことができたり、チームの歴史を塗り替えることができたのは、キャプテンとしてしっかりできていたからなのかな……と自分では言いたいと思います」。試合後、夏頃から務めてきたというキャプテンの仕事を振り返った大和は晴れやかな表情でそう振り返った。

 もっとも、プレイヤーとしての出来には「未練はないけど、もっとこうできたのかなというのはある」と後悔を口にした。Jクラブからのオファーを受けたが、進学予定先での大学では現状「サッカーを続ける予定はない」という意思。「その気持ちのブレがプレーに出てしまったと思っている」との迷いがあったことも明かす。

 プロ入り回避という選択は、Jクラブの練習参加を経たことで「オンザボールの良さを出せない時、自分に何かいいところがあるのかと言われたら自信を持って言えることは何もなかったのが正直なところ。それを高校年代でも出せなかった」ことが決め手になったという。

「自分には身長、身体つき、ヘディング、守備の部分がない。良い部分は評価していただいたし、たとえば長所はオンザボールの部分だと思う。でも自分になかなかボールが入らない時に球際などチームに貢献できる部分が少ないのは高校年代でも感じていた」。スムーズに理由を述べる口ぶりからは、これまで悩み抜いてきた思考の跡を感じさせた。

 大和は今後の展望について「まだ何をするかは決まっていない」と話す。関東圏内の私立大に進学予定で、その先で今後のキャリアを模索していく構えだ。「最後の大会でこんなに素晴らしい経験をさせてもらえて良かったし、この選択が間違っていなかったと自分に言える第一歩にしたい」。まだ18歳。人生の選択肢は無限に広がっている。もちろん、望めば再びサッカーを始める場も—。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

「想像を超える」静学に屈した徳島市立、チーム率いた主将MF阿部夏己の存在

ボランチのMF阿部夏己は主将として徳島市立を牽引した
[1.5 選手権準々決勝 徳島市立高 0-4 静岡学園高 駒沢]

 勝ちパターンに持ち込めず、快進撃はストップした。夏、冬ともにベスト8と躍進した徳島市立高(徳島)。インハイでは0-0からのPK戦を制して3連勝。今大会も再びその勝ちパターンで尚志を撃破すると、3回戦筑陽学園戦もCKからの決勝ゴールを守り、無失点で逃げ切った。

 徳島市立の歴史を塗り替える選手権8強入り。準々決勝も無失点の時間帯を長く続けたかったが、プラン通りに試合を運ぶことはできなかった。主将のMF阿部夏己は静岡学園の印象を聞かれ、「めちゃくちゃうまい。自分たちの想像を超えるスピード感、足元があった。奪えるシーンもあったんですが、そこから攻撃に移ることはできなかった」と完敗を受け止めた。

 愛媛U-15から愛媛U-18には昇格できず、親元を離れて徳島市立に入学した。「高校ではユースの選手にも負けないように取り組もうと決めていた」。挫折を乗り越え、覚悟を持って打ち込んできた高校サッカー。支えになったのは両親からもらった言葉だった。愛媛を離れる際、「後悔しないように、きてよかったと思える3年間にしなさい」と背中を押された。歴史を塗り替えたチームの主将として名を刻み、その“約束”を守った。

 球際で激しく戦い、ボールを奪えばパスを配給するボランチ2人はチームの生命線だった。コンビを組んだMF川人太陽(3年)は「夏己がおったからこそ成長できた。練習中ずーっと声をかけて、リーダーシップを執ってくれた」とライバルの存在に感謝した。

 替えが効かない選手であり、チームを支えた精神的支柱。河野博幸監督も絶大な信頼を置き、「中には挫けたり、諦めたりする人間もおる中で、本当に3年間頑張り切れたのは夏己以外はいない」と、誰よりもひたむきに努力を積み上げた主将をねぎらった。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

無得点も輝き放った昌平FW小見、来季は「最後の質」上げて日本一&得点王へ

昌平高FW小見洋太(2年)
[1.5 高校選手権準々決勝 青森山田3-2昌平 等々力]

 技術集団を最前線で牽引した昌平高FW小見洋太(2年)だったが、今大会はノーゴールに終わった。「日本一と得点王を目指していたのに、1点も取れなかった。惜しいシュートは多く打てていたので、最後の質を上げれば必然的にそういう夢を実現できる」。大舞台で得た手応えと課題を胸に、次回大会で飛躍を遂げるつもりだ。

 積極的なフリーランで2列目に並ぶテクニシャンたちがプレーする空間をつくり、技術とパワーを活かしたポストプレーで攻撃を牽引。「周りがすごく上手いので、自分は上手さよりもディフェンスとかスペースを空けたりすることを意識してやっている」という背番号11が全国選手権の舞台で小さからぬインパクトを残した。

 準々決勝の青森山田戦でも0-3で迎えた後半9分、果敢なボール奪取からスルーパスを配給し、MF須藤直輝(2年)の追撃弾をアシスト。その後の攻勢の先陣を切った。「後半は圧倒していたと言っても過言ではないくらいだったので、前半40分間でピッチ内で変えられなくて悔しい」。後悔の言葉には“もっとやれた”という手応えがにじんだ。

「2回戦の興國とか、3回戦の久我山でも全然通用したので、山田でも通用するかなとは思っていた。思っていたとおり、自分のやりたいようには結構できたのであとは最後の質をもっと上げていきたい」。見る者を期待させたプレーと同様、個人のパフォーマンスには一定の自己評価を下していた。

 そんなストライカーは来季、最上級生へ。すでにプリンスリーグ関東への初昇格を決めており、より高いレベルで力を試せる日常が待っている。「初めてのプリンスリーグなので楽しみだし、普段から強い相手とできるのはプラスになる。そこで結果を残せばインターハイとか選手権でも上位を狙える」。8強超えへの挑戦がここから始まる。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

「ほぼマツのゴール」の3点目アシスト! 鹿島内定MF松村優太「次は必ず自分がゴールを」

高速ドリブルで沸かせた静岡学園MF松村優太
[1.5 選手権準々決勝 徳島市立高 0-4 静岡学園高 駒沢]

 全国屈指のテクニカル軍団が選手権ベスト4入り。静岡学園高は毎試合で魅せ、ここまで4試合15得点無失点。4試合を終えたMF松村優太(3年、鹿島内定)は「マークが厳しい中でそれなりのプレーはできたと思いますが、まだゴールは取れていないし、まだ何も成し遂げていない。次は必ず自分がゴールを取って勝てるようにしたい」と表情を引き締めた。

 1回戦から厳しいマークに遭い、「自分がおとりになることを意識している」と周囲を生かす意識を強め、強度の高い守備でも貢献してきた。警戒される中でも、この日は持ち前の高速ドリブルで2人、3人をかわしてクロスを上げ切るなど、守備網を切り裂いて観客を沸かせ、チームの3点目をアシストした。

 2-0で迎えた前半39分、右サイドでパスを受けた松村は前を向き、ドリブルを開始。「相手と1対1の状況だったのでまずはシュートを考えたんですが、ドリブルを始めた時に相手が切ってきてるなと感じたので、縦にいって浮かせたボールを出せば誰かいるんじゃないかと思った」。快速を飛ばして縦に切れ込むと、鋭いクロスを配給し、FW岩本悠輝(3年)のゴールをお膳立て。「ほぼマツのゴール」と岩本も感謝する好アシストだった。

 ここまで無得点だが、静岡県予選準決勝の浜松開誠館戦(○2-0)ではチームを勝利に導く2ゴールを決め、決勝の富士市立戦(○6-1)でも先制点を奪っただけに、大舞台になるほど強さを発揮する自負もある。「次はしっかり取れるようにしたい。結構周りからも『テレビに映ったら強いね』と言われる(笑)。次は大きいスタジアムですし、また楽しんでやっていきたい」と一週間後の埼スタを心待ちにした。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

「意味がある」ベスト8、後輩に託す仙台育英DF小林虎太郎「来年、再来年に活かしてもらいたい」

仙台育英を牽引した小林虎太郎主将(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.5 高校選手権準々決勝 帝京長岡1-0仙台育英 等々力]

 開始1分を満たない時間帯での失点。残り時間は十分にあるかと思われたが、それでも仙台育英高(宮城)のゴールは遠かった。

 仙台育英にとって34回目の選手権を終え、城福敬監督は大会を通して「成長していった」と感じている。1回戦から1-1(PK3-0)、1-0、0-0(PK9-8)と接戦をものし、同校にとって30年ぶりの準々決勝へ。「一戦一戦重ねるごとにみんな進化していった」(小林主将)と選手自信も成長を実感しており、トーナメントを勝ち上がる定説である、初戦に勝利し勢いに乗れたことが大きかったようだ。「1回戦のあの緊張感の中で(GK佐藤)文太がPKを止めてくれていたので、チームが勢いに乗れたかもしれないです」。4試合で2失点。DF小林虎太郎(3年)主将は「粘り強い守備を貫き通せた」と守備面での手応えをつかんでいた。

 一方で、大会を通して課題も見出している。「今日の試合も最後運動量が落ちてしまった。個人としても、チームとしても言える」。卒業後は明治学院大学に進学する小林は「自分は大学でもやるので、もっと体力をつけないといけない」とレベルアップを誓う。さらに、「育英とは比べものにならないくらい上手かった」と帝京長岡戦での力不足も痛感し、「基本的なところを見直したい」と次のステージへ意欲を見せた。

 現在のチームは新人戦とインターハイはともに県準決勝で聖和学園に敗れており、選手権県予選では“3度目の正直”で聖和学園を下し優勝をつかんだ。「自分たちは弱い代と言われてきて、新人戦、インターハイと落として。それでもここまでこれたのは、1年生、2年生の底上げがあったので」。帝京長岡戦でも先発は1年生2人、2年生4人と3年生は半数にも満たなかった。「自分たち3年生のレベルの引き上げにもなった」とキャプテンは後輩たちに感謝する。

 2年連続で選手権2回戦で敗れており、当初の今大会の目標は「2回戦突破」。それが8強入りまで躍進を遂げ、「育英の成長にとっても、今回の選手権は意味があると思う」と貴重な経験を積んだ。1年次からメンバー入り、2年次にはレギュラーとして2試合で先発するなど、自身も早い段階で試合に絡んでいた小林は「来年、再来年に活かしてもらいたい」と後輩たちに未来を託した。

(取材・文 奥山典幸)
●【特設】高校選手権2019

“集大成のゴール”を青森山田から…昌平FW山内「悔しかった3年間」が報われた時

昌平高FW山内太陽(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.5 高校選手権準々決勝 青森山田3-2昌平 等々力]

 昌平高は後半25分、奇跡の逆転劇を演じるべくFW山内太陽(3年)を投入した。第一線での競技生活は高校限りで辞める決意を固めており、敗れればこれがサッカー人生ラストマッチ。そんな青森山田高との準々決勝で、背番号18は1点差に詰め寄る美しいゴールを決めた。

「この3年間は悔しさのほうが大きかった。(昨年の福井)国体でも優勝はしたけどスタメンでは出られなかったし、この選手権も2、3回戦は勝っていたけど出番がなかった」。藤島崇之監督は1-3で迎えた後半25分、そんな不遇のストライカーに逆転の期待を託した。交代の相手は15分前に途中出場していた主将のMF大和海里(3年)。勝負の一手だった。

「出番がない中でも最高の準備はできていた。よし、来たなと思った」。自身の立場は恵まれていたわけではなかったが、不満はなかった。「試合に出たい思いはあったし、それを表に出してイライラしても何も生まれない。必要になる時がどこかで来ると思っていた」。彼が“必要になる時”とはすなわち、得点が必要な時だ。

 これまで高めてきたのは「シュートの技術」。昌平では高い部類である178cmという長身を活かしたパワーシュートは一つの持ち味だが、その武器に精度を加えてきた。そうした結果、公式戦でも得点が奪えるようになり「監督の評価も上がっているのは分かっていたし、得点感覚が研ぎ澄まされていた」。舞台は整っていた。

 すると後半35分、ついに報われる時が訪れた。攻守の切り替えからMF鎌田大夢(3年/福島内定)の浮き球スルーパスが前線に通ると、これに抜け出したのが山内。名手GK佐藤史騎(3年)がすかさず飛び出してきたが、うまくドリブルでかわし、コントロールシュートをゴール左隅めがけて放った。

「緊張よりも、とにかくこのチームでサッカーをしたいという思いが強かった」。そんな思いのこもったボールはファーのサイドネットへ。「これまではゴール前で焦って枠を外すこともあったけど、今日は集中力があったのか時間がゆっくり進む感覚になった。落ち着いてプレーができた」。真摯に積み上げてきた努力が実った瞬間だった。

 もっとも、試合はそのままタイムアップを迎えて2-3での敗戦が決定。その瞬間、山内の第一線でのサッカー人生が幕を閉じた。「英語を学んで世界で活躍するビジネスマンになりたい」。そんな17歳は高校卒業後に大学進学が決まっているものの、部活動ではなくサークルでサッカーに取り組む意向を固めている。

 すなわち、大舞台でのゴールは本格的な競技生活のラストゴールとなった。「嬉しいというより悔しいことのほうが多いサッカー人生だった。中学校は試合に出られていたけど結果が出なかったし、高校は勝てるチームに来たけど1〜2年生は応援で、それからはずっとベンチ。でもずっと準備は続けてきた。集大成のゴールが決められたのは、これからの人生につながる良いことなのかなと思う」。サッカーで学んだことは、今後の人生で活かしていくつもりだ。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

仙台育英MF豊倉は前半19分にハードタックルで負傷交代…「試合後に謝ってくれた」

仙台育英は8強で大会を去る(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.5 高校選手権準々決勝 帝京長岡1-0仙台育英 等々力]

 仙台育英高のMF豊倉博斗(2年)は前半19分に負傷交代した。

 勝ち上がってきた3試合すべてにフル出場してきた豊倉だが、前半13分に帝京長岡高のDF酒匂駿太(2年)のやや強めのタックルを足に受けてしまった。右足首を負傷。治療を試みたがピッチに戻ることは出来なかった。

 試合終了の瞬間はベンチで見届けた。悔しい気持ちはあったが、まずはここまで連れてきてくれた先輩たちへの感謝の気持ちが頭の中を巡ったという。

 さらに試合後には酒匂から謝罪の言葉も貰った。「直後はすごく怒りもあった」と素直な気持ちも明かした豊倉だが、「悪意があったわけではないので。お互い次に切り替えて、相手は次は山田ですけど、自分たちの想いも背負って戦ってほしいなと思います」とエールを送った。

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

MF藤田「手応えがあります」。切り替えの速さ、奪い返しも光る静岡学園は4試合連続無失点

静岡学園高MF藤田悠介がインターセプト
[1.5 選手権準々決勝 徳島市立高 0-4 静岡学園高 駒沢]

 超攻撃的なイメージのある静岡学園高だが、今年は例年以上に守備意識の高いチームに仕上がっている。今大会は初戦から4試合連続で無失点。ボールを支配し、仕掛ける中で、その奪い返しの速さが彼らの攻撃回数や得点数を増やしている。

 1ボランチとして守備面での貢献度の高いMF藤田悠介(3年)は、「ここまで無失点でこれているので手応えがあります。練習から守備の意識というのは(川口修)監督からも言われているので、それが上手くいって今日の4得点にも繋がっていると思う」と胸を張る。

 その藤田が強調するのが前線やインサイドMFたちの献身的な守備。彼らの守から攻への切り替えの速さ、また最後の一歩まで全力でプレッシャーに行く姿勢によって、ボールが良い形で藤田の下へこぼれてきたり、味方のインターセプトに繋がっている。

 藤田は「(前線の選手たちの守備によって)楽ですね。上手いところにこぼれてくる」とコメント。この日はFW岩本悠輝(3年)とMF小山尚紀(3年)の奪い返しの速さから、また岩本の献身的なプレスから1、2点目に繋がるセットプレーを奪うことができた。3点目も中盤中央で3人がかりでボールを奪い返したところからのショートカウンターによってゴール。川口修監督は「出足のところと、できる限り相手のコートで奪い返しのところができていた」と頷いていた。

 守備意識が高まったのはインターハイ予選決勝で清水桜が丘高に2-3で惜敗したことがきっかけだという。また、MF松村優太(3年)は9月末のYASUフェスティバル決勝で昌平高の守備に苦戦し、自分たちの良いところを消されたこともポイントに挙げていた。

 自分たちの良さをより発揮するため、全国で勝つために取り組んできた守備面。紅白戦では、川口監督が都度ゲームを止めながら守備の確認をしていたという。昨年まではなかったというほどのこだわりを持って取り組んできた守備のポジショニングや切り替えの部分の成果。それが県予選、全国大会で発揮されている。

 前線からの守備を剥がされたとしても、「自分のところでしっかり止めることを意識している」という藤田や大黒柱のCB阿部健人主将(3年)、CB中谷颯辰(3年)が止めるだけ。静岡学園が準決勝でも好守からの多彩な攻撃で矢板中央高を上回る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

痛恨クリアミスが“アシスト”に…昌平DF柳澤直成「コミュニケ―ションが取れずに…」

試合後が涙を流したDF柳澤直成(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.5 高校選手権準々決勝 青森山田3-2昌平 等々力]

 痛恨のクリアミスになった。昌平高(埼玉)は1点を先行されて迎えた前半19分、エリア内でMF武田英寿を背負ったDF柳澤直成(3年)は、慌てたのかゴール方向へクリアしてしまう。これがゴール正面で待っていたMF後藤健太(3年)に渡り、手痛い追加点を決められた。

 柳澤はGKとのコミュニケーション不足が原因と振り返る。「体を入れたときに取りに来てほしかったんですけど、そこでコミュニケ―ションが取れずにクリアもあたり損ねて中に入っちゃった感じ。しっかりとコミュニケーションが取っていれば防げた失点だった」と唇を噛んだ。

 またコミュニケーションの部分は、試合開始直後から気にかけていたところだった。コートチェンジが行われたことで、前半は真正面から日差しを受けることになった。「最初のロングスローかなんかで日差しで見えなかったり、GKとコミュニケーションが取れなかったりしたので、気を付けようと思っていました」。

 落ち込んでしまいそうなところ。実際に試合中に切り替えることができない選手をこれまで何人も見てきた。しかし柳澤はそのことを引きずることはなかった。後半に向かうチームを先頭で引っ張るようにしてピッチに登場した。「ミスをしてしまった自分が先頭を切らないと切り替わらないと思った」。チームメイトも認める強心臓ぶりを如何なく発揮し、チームを逆に盛り立てた。

「来年のチームにはこの経験をした2年生が多く残る。このメンバーでここまで来れたならもっとやれると思います。1年生には篠田(大輝)もいる。来年、再来年と力強い試合をしてもらって、今回塗り替えた昌平の歴史をまたさらに塗り替えてほしいと思います」

「選手権の舞台で試合が出来る人は限られている。誰にでも出来るわけじゃない。卒業後は武蔵大学に進学するのですが、ここで得た貴重な経験を大学のチームでも還元出来ればいいなと思います」

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

谷内田「アイツがいなければ崩れる」県予選から無失点・帝京長岡を統率するDF丸山の声

帝京長岡高DF丸山喬大(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.5 高校選手権準々決勝 帝京長岡1-0仙台育英 等々力]

 最終ラインの中心を担うディフェンスリーダーが県予選からの全試合無失点を牽引している。帝京長岡高DF丸山喬大(3年)は「いい形で先制点を取れて、ピンチもチャンスもありながら苦しい時間もあったけど、後ろがゼロで守れたことが良かった」と振り返った。

 見た目は4バックのフォーメーションだが、実際の動き方は3バックのシステム。帝京長岡の変則布陣を統率しているのは中央に位置する丸山だ。これまでの本職はボランチで身長は168cm。決して恵まれた体格ではないが、主将のMF谷内田哲平(3年/京都内定)も「アイツがいなければ崩れる」と全幅の信頼を寄せている。

 統率力の秘訣は、観衆が大勢詰めかける中でも聞こえる大声だ。「GKコーチとトレーナーから自分が声をかけている時に勝てていることが多いと言われて、今大会は声が枯れるくらい出すことを意識している。またチームとして強い強いと言われているけど、勘違いしないように引き締める声も出している」。

 今大会の帝京長岡は県予選から8試合無失点。「春先のところで負け続けて失点が多いということで、練習後にディフェンスラインと猪越(GK猪越優惟)で話し合っていた。そういうのが今に活きている」。堅守の要因をそう語る背番号5は「攻撃が得意なだけに守備が緩くなることがある」という前線の手綱も握っているようだ。

 もっとも、現状のパフォーマンスに満足はしていない。「少し全体的にフワフワしていることが多く、猪越や相手のミスに助けられていることも多い。次は青森山田でそういうところは絶対に突いてくると思うので、これから調整でなくしっかりトレーニングして、また成長して帰ってきたい」。青森山田は3試合9得点の帝京長岡を上回る13得点。「その攻撃を抑えてこそ日本一だと思うので無失点で抑えたい」と意気込んだ。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

チームメイトも「信じて走る」静学のプレースキッカー井堀がCKとFKで2アシスト

セットプレーで2アシストを記録した静岡学園MF井堀二昭
[1.5 選手権準々決勝 徳島市立高 0-4 静岡学園高 駒沢]

 正確無比のセットプレーで徳島市立(徳島)の堅守を突き崩した。静岡学園高(静岡)は前半16分、MF井堀二昭(3年)の左CKにDF阿部健人(3年)が頭で合わせ、先制点。同20分には井堀の左FKをニアでFW岩本悠輝(3年)がそらし、ファーサイドにヘディングシュートを流し込んだ。

 立ち上がりの前半3分に獲得した左CKのチャンスでは井堀のファーサイドへのキックをDF田邉秀斗(2年)が頭で折り返したが、そのままゴールラインを越えていた。「最初はファーを狙って、それも狙いどおりだった。2本目は真ん中に蹴って、狙いどおり阿部が決めてくれた」。キッカーの井堀はそう胸を張る。

 前半20分のFKも「ゴールに向かって速いボールを蹴ろうと。(岩本が)うまく走り込んでくれて、ゴールにつながって良かった」と思い描いていたとおりの軌道だった。1回戦の岡山学芸館戦(○6-0)では鮮やかな直接FKを決めていた井堀が今度はCKとFKで2アシスト。ここまで無失点だった徳島市立から連続ゴールを奪った。

 全国高校総体を含めると、全国大会6試合中5試合で無失点を記録していた徳島市立。全国総体では3試合連続で0-0からのPK戦を制し、今大会も1回戦で尚志(福島)を0-0からPK戦で下していた。堅守を武器にするチームに対し、絶対に欲しかった先制点。井堀は「相手は引いてくるチーム。崩して取りたかったけど、セットプレーで取れば相手も前に出てくる」と、してやったりだった。

 埼玉スタジアムで行われる11日の準決勝・矢板中央戦までは約1週間空く。キャプテンの阿部も「井堀はキックの精度が高い。自分たちも信じて走っている」と絶対の信頼を寄せるプレースキッカーは「一回静岡に帰って、また調整していきたい。(準決勝では)多少緊張するかもしれないけど、普段どおりやれれば絶対に勝てる。気持ちの面をコントロールして臨みたい」と誓った。

(取材・文 西山紘平)
●【特設】高校選手権2019

超ロングワンツーゴール!青森山田10番MF武田英寿「自分らしくないゴール」

MF武田英寿
[1.5 高校選手権準々決勝 青森山田3-2昌平 等々力]

 結果的にものすごく大きな得点になった。前半終了間際のアディショナルタイム2分、青森山田高(青森)はMF武田英寿(3年/浦和内定)がセンターサークルの横あたりから左サイドにロングボールを展開。MF浦川流輝亜(3年)が受けて折り返すと、ゴール前に走り込んだ武田が頭に当てて3点目を流し込んだ。

 超ロングワンツーパスを受けての今大会3点目。試合後、多くの報道陣に囲まれた武田は、「ボランチもあまりついてこなかったので、走り込んだら上手くボールが来た」と振り返ると、「あれは自分らしくないゴールでしたが、気持ちで押し込みました」と充実の表情を浮かべた。

 武田にとってもリベンジを果たした試合になった。18年のインターハイで青森山田は昌平に2点のリードをひっくり返される大逆転負けを喫した。「やり辛かったなという印象」を持っていた武田だが、前回奪えなかった3点目をしっかりと奪うという“反省”を生かし、チームを勝利へと導いた。

 2000年、01年度大会を連覇した国見高以来の快挙まであと2つと迫った。「埼スタに帰ることができて良かったと思います」と落ち着いた様子ながらも、闘志を燃やした武田。「しっかりコンディションを整えて、次に臨みたい」と11日の準決勝に目線を向けた。

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

プロ内定相手エースも認めた昌平2年生10番の上手さ…「山田相手に通用すると確認できた」

試合後、健闘をたたえ合う2人(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.5 高校選手権準々決勝 青森山田3-2昌平 等々力]

 前半のシュート数ゼロがウソのように後半は持ち前のポゼッションサッカーが本領を発揮。昌平高(埼玉)が王者・青森山田を圧倒した。しかし前半で喫した3点のビハインドはあまりにも大きく、2-3で敗れた。

 2年生で10番を背負い、キャプテンマークを巻く。誰が見ても中心選手であることが明らかなMF須藤直輝(2年)が、さすがの存在感をみせた。

 前半からの積極的な仕掛けは相手に引っ掛かる場面も多かったが、そこは後半に向けてしっかりと修正。後半9分にはFW小見洋太(2年)のスルーパスからエリア内に入ると、しっかりとコースを突いたシュートを蹴り込んだ。

 しかし反撃も及ばず、チームは1点差で敗れた。須藤は「自分たちらしさが後半から出せたことは良かったけど、あれを前半から出せるようにならないといけない」と悔やむ。それでも「山田相手に通用するところもあると確認できた」と自信も芽生えたようだ。

 まだ2年生。来年度も注目選手の一人であることに間違いはない。相手主将で10番MF武田英寿(3年/浦和内定)とは試合後にすぐに握手をかわし、抱き合って健闘をたたえ合った。昨年の高校選抜でもチームメイトだった武田からは「お前上手いな」「来年頑張れよ」と声をかけてもらったという。

 大宮ジュニアユース時代も世代別代表に選ばれる選手だったが、高校選手権への憧れから昌平への進学を決めた。選手権にかける思いは人一倍だ。

「目指していたのは日本一なのでとても悔しい。でもベスト8まで来れたことは、昌平が強くなっているという証拠。また来年、この歴史を塗り替えられるように努力していきたいと思います」

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

川口監督「僕のイメージとしてはもっとできる」。静岡学園はより“静学スタイル”発揮して準決勝勝利へ

静岡学園高の左SB西谷大世はより“静学らしい”崩しをして得点することを誓う
[1.5 選手権準々決勝 徳島市立高 0-4 静岡学園高 駒沢]

 4-0で快勝し、今大会は4試合で計15得点無失点。好結果を残しながら勝ち上がってきている静岡学園高だが、川口修監督は満足していなかった。

「今日のゲームは技術的なミスが非常に多い。それを改善したい。結果は出ているけれど、イージーミスが多い」。

 静岡学園は井田勝通前監督の下、40年以上前からテクニックやアイディア、インテリジェンスを重視。ゆっくりとボールを動かしながら、局面を個とグループのテクニック、アイディアで切り崩す“静学スタイル”で技巧派系チームの先頭を走ってきた。

 井田前監督から川口監督に受け継がれた後も、伝統のスタイルは変わらない。日常のトレーニングはドリブル・リフティングからスタートし、ミニゲームや崩しからのシュート練習などで力を磨いてきている。川口監督が世界で活躍できる選手育成を公言する中で、コーチ陣が求めるレベルも向上。MF浅倉廉(3年)やMF小山尚紀(3年)、MF井堀二昭(3年)らその中で力をつけてきた選手たちが、全国舞台でもその武器を披露している。

 この日もショートパスを繋ぎながら相手を押し込み、狭いDF間へ縦パスを通してシュートへ持ち込んだり、相手をいなしてドリブルでゴールへ迫ったりするシーンはあった。だが、目立ったのはむしろ鹿島内定MF松村優太(3年)の圧倒的なスピードや前からの切り替え速い守備。セットプレーやサイド攻撃から得点を重ねたものの、テクニックとアイディアで崩したシーンは少なかった。

「PAでの驚くようなプレー」や「会場を沸かせるようなプレー」は、まだまだコーチ陣の納得するレベルには到達していない。指揮官は「本当に良いリズムがある時はもっとリズムが良いし、もっと仕掛ける。僕のイメージとしてはもっとできる。もっと学園らしくというイメージがある。技術とアイディアを見せられるともっといい」と期待した。

 この日は前半に3得点したことで、安全な試合運びに。特に後半はリスクを避ける形で大胆な仕掛けが少なかった。元々ボランチで技術面などを評価されて左SBへコンバートされた西谷大世(3年)は「プレスを掛けられた時に簡単に蹴ったりしてしまうところがあるので、そこをしっかりと崩して点を獲れるようにやっていきたいと思います」と力を込めた。

 準決勝で対戦する矢板中央高(栃木)は堅い守備を特長とするチーム。1年時のRookie Leagueで0-1のスコアで敗れている相手だ(全国進出プレーオフでの再戦は2-2で引き分け)。この日、西谷は矢板中央の印象について「関東のチームで一人ひとり強い。ハイボールも簡単には勝てないと思う」とコメント。だからこそ、「静学の足元で繋いだり、ドリブルを貫いて勝てるように」と“静学スタイル”で勝つ意気込みだ。この日、4得点目を演出した西谷やCB中谷颯辰(3年)ら後方からゲームメークできる選手がいることも静岡学園の強み。この日の快勝に満足することなく改善に取り組み、準決勝ではボールを正確に繋ぎ、アイディアのある崩しで矢板中央の堅守を破る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

歴史を背負い、未来のために…帝京長岡FW晴山岬「優勝しないといけない」

帝京長岡高FW晴山岬(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[1.5 高校選手権準々決勝 帝京長岡1-0仙台育英 等々力]

 3戦連発こそならなかったが、開始早々のアシストで新潟の歴史を切り開いた。帝京長岡高FW晴山岬(3年/町田内定)は「最後の大会でのベスト4はすごく嬉しい。ただここまで来たからには優勝しないといけないと思う」と力を込めた。

 帝京長岡にとってはMF小塚和季(現大分)らを擁した2012年度、晴山が2年次だった前回大会に続いて3回目となる準々決勝。新潟県勢にとっても、約30年間にわたってたびたび阻まれ続けてきた8強の壁だった。「ベスト8からが勝負」。大会前からそう位置付けていた一戦を、晴山やMF谷内田哲平(3年)ら黄金世代が見事に突破した。

「この試合にかける思いとして、1年間ここを目指してやってきた。ここに勝つことを目指してやってきた。1年間苦しいこともあったけど、やってきて良かったと思う」。1日50本以上というヘディング練習、屈強な守備陣に競り負けないための筋力トレーニング。前回大会からひと回り大きくなって帰ってきた18歳は一つ一つの努力を誇った。

 そんな晴山の成長を支えていたのは、自身の周囲にあった“歴史”だった。帝京長岡に大きな憧れを持ったのは12年度の8強世代がきっかけ。「小学校でベスト8を見てから長岡に行きたいと思った。自分の目標が憧れに変わる中で、先輩の思いも背負って戦っていた」。当時から事実上の育成組織にあたる長岡ジュニアユースに所属していたが、選手権への強い熱意が芽生えた。

 自身は長岡Jrユース時代の中学2年生から、帝京長岡の一員としてプリンスリーグ北信越の公式戦に出場。「その経験値は(普通の)中学生にはないことだと思う。そうやって出させてもらったことで今の自分があると思っている。ありがたい環境だった」。そうした感謝も感じつつ「自分たちが歴史を変えないといけないという使命感」を育てていった。

 そうした歴史への思いは、未来にも及んでいる。自らが最初の8強世代に憧れる子どもだったように、いま晴山たちに憧れながら長岡でサッカーに取り組む子どもたちが大勢いる。「そういう子たちがいるのを一番に考えている。自分たちが目標であり、夢を与えられる選手にならないといけない」。自らのキャリアだけでなく、地域も背負って戦っている。

 だからこそ、この挑戦を最高の形で結実させたい意欲は強い。「準決勝のサッカー次第でここでやりたい人が増えるかもしれないし、自分たちのサッカーを出さないといけないと思う。山田に勝てば、山田に勝つとかあるんだってイメージが強くなるはず」。準決勝の相手は王者・青森山田。晴山岬は地域のため、未来のために勝ちにいく。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

小学年代の仲間が高校選手権で激突!青森山田DF藤原優大は昌平DF西澤寧晟から日本一託される

健闘を称え合った青森山田DF藤原優大(左)と昌平DF西澤寧晟(写真協力=高校サッカー年鑑)
[1.5 高校選手権準々決勝 青森山田3-2昌平 等々力]

 試合後、スタンドへの挨拶を終えた両イレブンがロッカールームへと戻ってくる。勝利した青森山田高(青森)のメンバーが先に引き上げると、DF藤原優大(2年)は一人ピッチへの出入口のところで戻ってくる昌平高(埼玉)メンバーの誰かを探しているようにピッチのほうを見つめていた。昌平の背番号2に近づくと、藤原は泣き崩れるDF西澤寧晟(3年)を支えて声を掛け合い、西澤から「絶対日本一になってくれ」という思いを託された。

 藤原と西澤は学年が1つ異なるが、小学生のときにリベロ津軽SCでプレーしていた。その後、2人は別の道に進む。藤原は青森山田中学から青森山田高校へ。西澤はリベロ津軽SC U-15から県外の昌平高校に進学。「青森山田に勝ちたかった」「サッカーが魅力的だった」という理由からだった。「1コ上だったんですけど、本当に仲良くて。サッカーをするのは久しぶりで、僕が5年生でテルが6年生のとき以来くらいですかね。連絡をとって『楽しもうぜ』という話をしていて。テル(西澤寧晟)がいたから楽しかった」と藤原は表情を明るくした。

 青森山田は昌平戦にあたって1トップのFW小見洋太(2年)を、「背後の抜け出しが上手で、何本も試合を見たんですけど、相当動き出しがいい」と警戒。「シュートを打たせない」ことを意識したという藤原は、2回戦で5本、3回戦では6本ものシュートを放っている小見に対し、前半は1本のシュートも打たせなかった。

 攻撃陣が爆発し、3-0で前半を折り返した青森山田は「後半の最初20分間を(失点)ゼロでいこう」と黒田剛監督に送り出されたが、後半9分に中央を突破されて失点。さらに、35分にはミスから2点目を献上したが、昨年12月のある試合での経験がチームに自信をもたらしていた。

「自分たちの最高のゲームだった」「基準になっている」と藤原が挙げるのが、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2019 ファイナルでの名古屋グランパスU-18戦だ。この日と同じ3-2のスコアで勝利し、2度目のプレミアリーグチャンピオンシップ王者に輝いた。GK佐藤史騎(3年)も「名古屋より強いチームは、プレミアリーグ(EAST)でも見たことがないです」というほどの強敵で、「名古屋戦の勝利を自信に、今日の試合もがんばれました」(佐藤)とチームの糧になっている。

 昌平の1点目は小見が起点になったが、終わってみれば前後半通じて昌平の11番をシュート2本に抑えた。「自分の中では手応えをつかめた試合」と藤原。かつての仲間である西澤の果たせなかった日本一という夢へ突き進む。

(取材・文 奥山典幸)
●【特設】高校選手権2019