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Z世代はどのアプリを使ってる?最新データが示す意外なトレンド

Z世代は全世界人口の約25%を占め、今後50年にわたって市場で最大の消費者層となり、今後10年間で最も消費額の伸びが顕著な世代となる(GfK/NIQ Japanリリース参照)と言われており、企業活動において無視できない存在となっている。 Gen Z(Z世代)の主な特徴 Gen Z(Z世代)、つまり1990年代後半から2010年代初頭にかけて生まれた世代には、いくつかの際立った特徴がある。デジタルネイティブとして育ち、テクノロジーやインターネットが生活の一部として当たり前に存在する環境で育った初めての世代だ。以下に、主な特徴を挙げる。 まず、テクノロジーに慣れている。スマートフォンやソーシャルメディアが幼少期から身近にあり、情報収集やコミュニケーションがデジタル中心だ。TikTokやInstagramみたいなプラットフォームで自己表現を楽しんだり、トレンドを追うのが得意だ。 次に、多様性への理解が深い。グローバル化やSNSのおかげで、いろんな文化や価値観に触れる機会が多く、ジェンダーや人種に関する伝統的な枠組みにとらわれない人が多い。インクルーシブ(包括的)な考え方を自然に受け入れている。 あと、現実的で自己意識が強い。経済的な不安定さや気候変動みたいな大きな課題を目の当たりにして育ったからか、夢追い人というより実用的な選択を重視する人が多い。副業やフリーランスに興味を持ったり、自分のブランドを築こうとする人も目立つ。 最後に、社会問題への関心が高い。環境問題や不平等に敏感で、アクティビズム(行動主義)に参加したり、購買行動で信念を示すことがある。 例えば、サステナブルなブランドを支持したり、抗議活動に声を上げたりする。テクノロジーと社会の変化に適応しながら、自分らしさを大事にする世代だ。 世界が注目するZ世代に人気ブランド Top 25と消費嗜好 今回は、Gen Z(Z世代)に特化した研究と戦略を提供するdcdx社の『GEN Z’s SCREEN TIME REPORT』というレポートを参考にZ世代のデジタル習慣について分析したい。 Z世代に関するデータの分析方法 本レポートは、世代のスクリーンタイムに関する行動を深く理解するため、以下の手順で実施された。 データ収集方法 dcdx社の30万人規模のネットワークから、234名の16~27歳のアメリカ在住Z世代を対象に実施 参加者には、スマートフォンのスクリーンタイム設定画面を録画した動画を提出してもらい、完全なデータセットのみを使用 対象年齢と属性 年齢:16~27歳 人種や性別など、参加者の多様な背景を反映 分析内容 スクリーンタイムの総時間 使用アプリとその傾向 デバイスとの関係性における行動パターン Z世代のスクリーンタイムの推移 Z世代の1日のスクリーンタイム(スマホ等で画面を見ている時間)は、平均7時間22分43秒(2024年)となっており、前年度に比べて15分以上増加している。 ただ増加のペースは鈍化しており、デバイスの利用が頭打ちになり、今後の行動が変化する可能性を反映している。 Z世代は、使用するアプリ・サービスを選別しはじめている 2024年のデータによると、ピックアップが昨年度比上昇、通知が減少。 Z世代は、通知が多すぎず、日常生活の妨げにならないアプリやサービスを好むようになったとともに、選別したアプリ・サービスからの通知は積極的にピックアップしている。 Z世代に最も利用されているアプリ 『Z世代に利用されているアプリ TOP10』の結果は以下の通りである。 特にTikTokやInstagramは、短尺のコンテンツを楽しむ傾向が強いZ世代にとって、エンターテインメントや情報収集の中心となっている。 また、メッセージアプリや音楽ストリーミングサービスも、コミュニケーションや音楽鑑賞に欠かせないツールとして広く使用されている。 WhatsAppが急上昇した理由は? また昨年はTOP10圏外であったが、2024年はTOP10にランクインしているプラットフォームとして、WhatsAppが挙げられている。ランクインした理由は、以下の特徴がZ世代の支持を集めたからと考えられる。 ・クロスプラットフォーム対応 WhatsAppはiPhoneとAndroid両方で利用でき、デバイス間でシームレスにメッセージをやり取りできる。この機能は、Z世代が様々なデバイスを使っていることを考慮すると便利で、異なるデバイスを使う友人や家族とのコミュニケーションに役立つ。 ・強固なプライバシーとセキュリティ WhatsAppはエンドツーエンド暗号化を採用しており、メッセージが第三者に漏れない。Z世代はプライバシーを重視しており、個人情報を守るためのセキュリティが大きな魅力となっている。 ・広告なしでの利用 WhatsAppは広告が一切ないため、Z世代にとってストレスなく使えるアプリとなっている。広告に対して敏感なZ世代にとって、シンプルな体験が好まれるポイント。 ・国際的な利用の便利さ WhatsAppは世界中で広く利用されており、海外に住む家族や友人とのコミュニケーションが簡単にできる。特に移民や留学生が多いZ世代にとって、国際的な接続が可能なことは大きな利点。 ・進化する機能 WhatsAppは新しい機能を定期的に追加しており、スタンプやカスタムチャットテーマ、ビデオ通話など、個性を表現するためのツールが豊富。これが、自己表現を重視するZ世代にとって魅力的な要素となっている。 btraxが提供できる価値 Z世代に関する深い理解と戦略的なアプローチは、アメリカ市場での成功に不可欠です。btraxは、アメリカに拠点を構え、日本企業が現地で効果的に事業を展開できるよう、以下のサポートを提供します。 1. 消費者リサーチ Z世代の嗜好、行動パターン、購買心理を徹底的に分析し、データに基づいた洞察を提供。 ユーザーインタビューやオンライン調査を通じて、ターゲット層の本音を明らかにします。 2. 市場参入戦略の立案 アメリカ市場に特化したカスタマイズ戦略を設計し、ブランドの競争力を最大化。 ローカルのトレンドや文化を反映した効果的なマーケティングプランを策定。 3. ソーシャルメディア活用支援 TikTokやInstagramなど、Z世代が利用するプラットフォームでの効果的なキャンペーンを設計・運用。 ユーザー生成コンテンツ(UGC)の活用方法をアドバイスし、ブランドの魅力を最大限に引き出します。 4. デザインとブランディング アメリカ市場で受け入れられるローカライズデザインを提供し、視覚的にも共感を得るブランドイメージを構築。 btraxは、アメリカ市場での豊富な経験と現地ネットワークを活かし、貴社の成功をサポートします。Z世代へのアプローチや市場参入戦略についてのご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。 アメリカに拠点を置いているからこそ提供できる現地目線の洞察と実行力で、貴社の可能性を広げます。 まとめ:Z世代のデジタル習慣を理解することの重要性 Z世代は、デジタルネイティブとして育った特性を活かし、スクリーンタイムやアプリ選択においても明確な価値観を持つ。プライバシーを重視し、シンプルでストレスの少ない体験を求める彼らの行動パターンは、企業のマーケティングや製品戦略において大きな影響を及ぼす。 btraxは、Z世代の行動データや消費トレンドをもとに、日本企業がアメリカ市場で成功するための具体的な戦略を提供。データ分析から現地に即した実践的なアプローチまで、幅広い支援を通じて貴社の成長を後押しする。新たな世代への挑戦を成功に導くパートナーとして、ぜひ私たちをご活用いただきたい。 参考リンク スクリーンタイムで分析!アメリカのZ世代に人気のSNSを解説 WhatsApp Popularity in the USA 2024 | Collabstr WhatsApp now has 100m monthly active users in the US 【2024年版】世界のメッセージングアプリ事情 ~WhatsApp、Messenger、WeChat、LINEまで勢力分布と今後の展望~ – Mobilus CX-Branding Tech. Lab – モビルス CXブランディングテックボ – すべてのビジネスに、一歩先行くCXを。 Z世代の特徴から紐解く、米国の5つの人気サービスとその理由とは […]

世界が注目するZ世代に人気ブランド Top 25と消費嗜好

Z世代は世界人口の約32%を占め、今後50年間にわたって市場を牽引する最大の消費者層になると予測されている(国連調べ)。さらに今後10年間で最も消費額の伸び率が高い世代とも見込まれる。 こうした背景から、グローバルな企業活動においてZ世代を無視することは難しいといえるだおう。 今回は、Gen Z(Z世代)に特化した研究と戦略を提供するdcdx社の『GEN Z’s TOP25 Most Magnetic Brands(Z世代が選ぶ「最も魅力的なブランド」TOP25)』というレポートを参考にZ世代の趣向等について分析したい。 Z世代とは? Z世代に関しては、情報元によって多少異なるものの、この記事では1997年から2012年の間に生まれた世代のことをZ世代としたい。 ミレニアル世代(1980年代~1990年代半ば生まれ)の次に位置し、「デジタルネイティブ」と呼ばれることが多い。この世代はインターネットやスマートフォンが普及した環境で幼少期や思春期を過ごしており、オンラインでの情報収集やコミュニケーションが当たり前の存在として育っている点が大きな特徴だ。 世代観と時代背景 Z世代は、デジタルネイティブとして育ち、情報の取捨選択能力に長けている。また多様性や包括性を重視し、環境問題や社会正義などへの意識が高い一方で、ブランドに対しては「共感」「目的」「透明性」を求めるのが特徴である。 dcdx社のレポートでは、2021年〜2025年(コロナ禍~ポストコロナ期)における、Z世代の価値観の変化について以下のような記載があった。 2021年(不確実性の年):コロナ禍の影響で将来への不安が高まり、Z世代はブランドに「信頼」や「安定性」を求める傾向が顕著に。 2022年(可能性の年):社会の回復が進む中で、Z世代は主体的に行動し、変化を作り出せる可能性を模索。この年は、ブランドがZ世代とともに「前向きなビジョン」を提示することが求められた。 2023年(体験の年):行動制限が緩和され、Z世代は「リアルな体験」に価値を感じるように。ブランドは製品・サービスに体験要素を組み込み、物理的・デジタル両面で感動を提供することが重要に。 2024年(発見の年):Z世代は自らが文化やトレンドの形成者であることを認識。ブランドに対して「消費を通じて自分たちのアイデンティティや価値観を反映できるか」を重視。 2025年(決断の年):経済力が拡大し、消費の主導者となるZ世代が、ブランドの目的や社会的貢献度をもとに選択を行う年。価値観と一致するブランドのみが支持を得られる傾向がさらに強まる。 ユーザー生成コンテンツ(UGC)の重要性 Z世代におけるユーザー生成コンテンツ(UGC)の影響力は、企業にとって欠かせない要素となっている。 レポートによれば、Z世代はインフルエンサーの投稿に比べて、UGCに4倍も影響を受けやすいとされている。これにより、若年層の消費者は、信頼できる本物のコンテンツを重視し、企業のマーケティング戦略においてもUGCの活用がますます重要になっている。 ユーザー生成コンテンツ(UGC)増加による効果 ユーザー生成コンテンツ(UGC)が増加すると、ブランドのソーシャルメディアでのエンゲージメント(いいね、コメント、シェア)が向上し、ブランドへの親近感や認知度が高まる。 このようなエンゲージメントの向上は、企業にとって重要な指標となり、消費者のロイヤリティや最終的な売上に直結する。 さらに、ブランドの「魅力度」が上昇し、価格決定力やイノベーション、そして株主価値の向上にも繋がることが示されている。 企業は、このUGCの力を最大限に活用することで、Z世代を中心とした次世代の消費者との深い絆を築き、長期的な成長を実現することができる。 Z世代にとって魅力的なブランド Z世代が選ぶ「最も魅力的なブランド」TOP25には、実店舗や施設を持つブランド、娯楽系、オンラインプラットフォームのブランドが多くランクイン。 これらのブランドは、日常的に利用したり、コンテンツを通じて接触する機会が多いため、Z世代との強い繋がりを感じさせる。特に、エンタメやショッピングなど、体験型の要素を重視したブランドが目立っている。 スタバがランクダウンした理由は? また昨年度結果と比較しランクダウンしているブランドとして、スターバックスが挙げられている。ランクダウンした理由は、いくつかの要因が重なった結果と考える。 1.「シークレットメニュー」の誤解や過度な期待 まず、TikTokの影響でカスタマイズの複雑化が進み、オーダー時間が長くなることで顧客の不満が増加した。 特に、「シークレットメニュー」や過度なカスタマイズによる注文の煩雑さが、店舗運営に負担をかけ、消費者体験を損ねた。さらに、過度なカスタマイズ文化や透明性の欠如が、Z世代の価値観と反する形でブランドの信頼性を低下させた。 2.「サードプレイス」としての魅力度低下 また、スタバの「サードプレイス」としての役割が薄れ、ホームレスの問題や店舗の配置変更(スタンド型店舗増加)が影響した。加えて、人種差別問題などの社会的な問題もブランドイメージを悪化させ、支持を失う要因となった。 btraxが提供できる価値 Z世代に関する深い理解と戦略的なアプローチは、アメリカ市場での成功に不可欠です。btraxはアメリカに拠点を構え、日本企業が現地で効果的に事業を展開できるよう、以下のサポートを提供します。 1. 消費者リサーチ Z世代の嗜好、行動パターン、購買心理を徹底的に分析し、データに基づいた洞察を提供。ユーザーインタビューやオンライン調査を通じて、ターゲット層の本音を明らかにします。 2. 市場参入戦略の立案 アメリカ市場に特化したカスタマイズ戦略を設計し、ブランドの競争力を最大化。ローカルのトレンドや文化を反映した効果的なマーケティングプランを策定。 3. ソーシャルメディア活用支援 TikTokやInstagramなど、Z世代が利用するプラットフォームでの効果的なキャンペーンを設計・運用。ユーザー生成コンテンツ(UGC)の活用方法をアドバイスし、ブランドの魅力を最大限に引き出します。 4. デザインとブランディング アメリカ市場で受け入れられるローカライズデザインを提供し、視覚的にも共感を得るブランドイメージを構築。 btraxは、アメリカ市場での豊富な経験と現地ネットワークを活かし、貴社の成功をサポートします。Z世代へのアプローチや市場参入戦略についてのご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。 アメリカに拠点を置いているからこそ提供できる現地目線の洞察と実行力で、貴社の可能性を広げます。 まとめ:Z世代へのアプローチが未来を切り開く鍵 Z世代は「共感」「透明性」「体験」を重視し、UGCの影響を強く受ける世代であり、企業にとって重要なターゲットとなる。その特徴を踏まえた適切な戦略が、これからの市場での成功を左右するだろう。 btraxは、アメリカ市場での豊富な経験を活かし、Z世代への効果的なアプローチをサポート。ローカルの視点と専門性を活かし、企業の可能性を広げる支援を提供している。Z世代という新たな市場への挑戦に向けた最適なパートナーとして、ぜひご相談いただきたい。

【ウェブサイトリニューアル】btraxデザインメンバーが明かす舞台裏ストーリーとは?

ウェブサイトの大規模リニューアルに大切な要素は何しょう? btraxはホームページを刷新しました。 この記事では、btraxのデジタルプレゼンスの変革を主導した主要チームメンバーの想いや制作過程で感じた生の声をお伝えします。 リブランディングの取り組みや、課題と解決策、プロジェクトを導いたビジョンはどのようなものだったのでしょうか。 鮮やかな色使いや、遊び心のあるインタラクティブ機能は、btraxのアイデンティティと創造性の進化を反映したものです。限界に挑戦しながら、デザインと機能性のバランスを取ることに興味がある方は、ぜひご一読ください。 ウェブサイトをリニューアルした主な理由は? Brandon(Founder and CEO, btrax):今回のウェブサイトリニューアルは、btrax全体のリブランディングの一環です。AI等による社会の革新が起こる中でクライアントに寄り添うデザイン会社であることを表し、また、サンフランシスコと東京のチームをより普遍的なブランドアイデンティティで統一したいと考えました。 Jared(UI Desinger, btrax):クライアントとの絆を強化し、さらに新しい訪問者を惹きつけるため、ウェブサイトに新しさを打ち出す必要がありました。btraxには若いメンバーが多く、活気に満ちており、新しいデザインはそんな我々の姿と進化を表現しています。 Suzy(Associate UI/UX Designer, btrax):btraxのサービスはクリエイティブサポート以外にも拡大しており、会社が向かっている方向性の大胆さとインパクトを反映するためにウェブサイトを更新する必要があると感じました。   リニューアル中に直面した最大の課題は? Brandon:最大の課題の1つは、テキストの可読性を維持しながら鮮やかな色を使用することでした。btraxの文化を反映するためにより明るい色調を使いたかったのですが、デザインを視覚的に魅力的かつ読みやすくすることは簡単ではなかったです。 Jared:当初は、よりアーティスティックなデザインを目指していました。しかし、ユーザーへのヒアリングの結果、機能性もより強化する必要があることがわかりました。デザインの良さと使いやすさのバランスを取るのは大変でした。 Suzy:新しくノーコードツールFramerを採用しましたが、私にとっては初めての部分もあり、時間とリソースの管理が課題でした。いくつかの障壁はあったものの、ウェブデザイン自体は楽しみました。 新しいデザインはbtraxのブランドアイデンティティをどのように反映していますか? Brandon:新デザインのテーマは「ダイナミックでありながらスムーズ」です。遊び心がありながらエレガントなウェブサイトを目指し、それをインタラクティブな要素と全体的なデザインに反映させました。 Suzy:ニュートラルでクリーンな美学から離れ、より大胆なカラーパレットとタイポグラフィを採用して、自信と創造性を表現しました。これはbtraxのブランドの進化と一致しています。 Hiro (UI/UX Design Specialist, btrax):大きな画像、丸みを帯びた角、冒頭のリール動画で強いファーストインプレッションを与えることに注力しました。これらの要素が現代的で進歩的なイメージを醸し出しています。 ユーザーフィードバックはデザインにどのような影響を与えましたか? Jared:ユーザーのヒアリングを踏まえた修正により、アーティスティックだけでなく、機能性も担保したウェブサイトを実現することができました。明確なCTA、ホバーインタラクション、より使いやすいレイアウトを追加しました。 Suzy:より多くのインタラクティブな要素を取り入れて、楽しく魅力的な体験を作り出しました。使いやすさを損なうことなく、視覚的な喜びをユーザーに提供することが目標でした。 リニューアルで最も重要な視覚的な変更点は? Jared:より明るい色を導入し、モダンな印象を与えるためにコンデンスドサンセリフフォントでタイポグラフィを更新しました。より生き生きとして魅力的になりました。 Suzy:カラーパレットはより大胆になり、タイポグラフィーは自信と革新性を伝え、新しいブランドアイデンティティと一致しています。 Hiro:丸みを帯びた角を持つ大きな画像と冒頭のリール動画で、新しいウェブサイトに進歩的でモダンな雰囲気を与えています。視覚的な要素は、誇張しすぎない範囲で可能な限り大胆にしました。 新しいウェブサイトから訪問者に何を感じ取ってほしいですか? Brandon:不必要なテキストを減らし、ビジュアルとインタラクションでbtraxのストーリーを語ることに注力しました。訪問者がデザインを通してbtraxの本質を感じ取ってくれることを願っています。 Jared:訪問者が、btraxを先進的な企業であり、クライアントニーズを理解し、デザインのトレンドを把握している会社だと感じてくれることを願っています。 Suzy:訪問者にサイトの探索を楽しんでもらいたいと思います。大胆なビジュアルとインタラクティブな機能は訪問者を惹きつけるためのものであり、今後も改善を続けるにあたって、フィードバックをお待ちしています。 イノベーションの最前線へ。​​btraxの新たな挑戦にご注目ください。 今回のウェブサイトリニューアルは、印象的なデザインとユーザーフレンドリーな機能性を融合させ、会社のダイナミックな進化を体現しています。btraxの創造性とイノベーションへの取り組みを示すだけでなく、様々な仕掛けでブランドの本質をあらわす魅力的な体験へとみなさんをご案内します。 新しいウェブサイトによりみなさまとの繋がりを深め、将来何かでコラボレーションできることを願っています。

【Designship 2024体験記】ビートラックス現役デザイナー3名が語るイベント体験と貴重な学び

2024年10月12, 13日に開催された「Designship 2024」。 このイベントは東京で毎年開催され、約5,000人ほどの数々のクリエイターたちがデザインの最前線を探る場となっています。今年のコンセプトは「広がりすぎたデザインを、接続する」でした。 Designship 2024には、ビートラックスからはCEO ブランドンが登壇したのに加え、デザイナー3名もDesignshipに参加しました。このイベントは弊社にとっても、テクノロジーやビジネス、アートまで多岐にわたる分野でのデザインの役割と影響力を再考する素晴らしい機会となりました。 参加したビートラックスのデザイナーは以下の3名です。 Mari (UX Designer / Design Researcher, btrax) Hiro (UI/UX Design Specialist, btrax) Suzy (Associate UI/UX Designer, btrax) そこで今回は、以上の3名がイベントに参加して感じたそれぞれの「① 現地で1番興味深かったセッション」「② Designship 2024全体を通して得た学び」「③今後の意気込み」についてご紹介します。 ① 現地で1番興味深かったセッション 1. 引地 耕太さん(クリエイティブディレクター / アートディレクター / 教育者)、テーマ『人間中心から、生命中心の未来へ〜大阪・関西万博デザインシステムを通じて〜』 Mari: 引地さんの「人間中心から生命中心の未来へ」というテーマのトークセッションが特に印象的でした。大阪万博のデザインシステムがどのように作られたのかに興味があったので、非常に興味深く感じました。「いのちの循環」という広く抽象的な万博のテーマを具体的なビジュアルに落とし込むプロセスと考え方が面白かったです。 「いのちの循環」をもう少し具体的に説明する言葉として引地さんは「全てのいのちが融け合い、響き合う 共に進化する生態系へ」としていましたが、それを具現化したビジュアルに落とし込んでいました。 個々のいのちがそれぞれLive, Growth, Evolutionと変化をとげ、またその個が他の個を交わって生態系ができていくことをJoin, Sync, Actという言葉で表現し、それらのビジュアルを融合させたものが現在のキービジュアルです。 引地さんのトークは聞きやすく、プレゼンスライドの見せ方も綺麗で、赤と青の目玉がついたビジュアルがどういう意図で作られたのかを図解してくれたことで、セッションを聞く前と後ではキービジュアルの見え方が変わり、納得感が増しました。 Suzy: 引地さんによる万博のデザインシステムについてのセッションが個人的にはとても印象的でした。デザインプロセスの全体像、どのような意図でシステムやデザイン要素が生み出され、それらがどの様に様々なアセットに展開・適用されているのか、その過程を詳細に知ることができたのがとても面白かったです。 デザインプロセス自体も興味深く聴いていたのですが、それ以上に、その工程が第三者の私にも理解しやすい、引地さんのプレゼンテーションの仕方が大変勉強になりました。 特に最近はブランディングやマーケティング戦略の提案などの上流工程のお仕事に関わらせていただくことが多いので、頭にスッと入ってくる話し方とピッチ構成、スピード感、スライドの作り方などの重要性を改めて感じました。 このセッションを通して得た気づきや学びは、今後のプロジェクトに早速応用していければと思っています。 2. 菅野 薫さん(Creative Director, Creative Technologist)、テーマ『デザイン:アイディアの社会実装』 Hiro: 菅野さんの仕事や考え方に関するセッションが印象的でした。森ビルやサントリー、リオの閉会式など心踊るような広告やブランディングを手がける方が何を考えているのかを知りたいと思い参加しました。エンジニア出身と聞いて驚きましたが、『新しいアイデアとは何かに』ついての考え方が非常に参考になりました。 以前、井口尊仁さんの「アイデアは実装されて初めて価値を持つ」という発言を聞きましたが、菅野さんはまさにそれを体現している方だと感じました。特に電話に関する話が興味深かったです。電話というアイデアは歴史的に古くから存在し、実装した人も多くいました。 最終的にAT&Tの創業につながった技術者が特許を取得しましたが、他のエンジニアたちも同じ時期に特許を目指していたそうです。この事例は、アイデアが単なるアイデアのままだと価値がなく、実装されて初めて価値を持つことを示していると強く感じました。 エンジニアのバックグラウンドがあることから、映像やブランディングのクリエイティブも技術ベースでありつつ、伝えたいメッセージは非常にわかりやすかったです。また、やった仕事のサマリー動画を持つことは自分でもぜひやりたいと思いました。 ② Designship 2024 全体を通して得た学び Mari: 「デザインとは?」を考えさせられるイベントでした。Designshipはデザイン系のイベントの中でも特に広義にデザインを捉えており、様々なジャンルのデザイナーが集まっていました。btraxでの仕事ではプロジェクトによって異なる領域のデザインをしているため、自分は何のデザイナーなのかと考えることが多く、コアを見つけて強化できると良いと感じたイベントでした。 Goodpatchの大きめの本棚を設置したブースが印象的で、多くのブースがある中で目を惹く存在でした。最近、展示系のプロジェクトも増えているので参考になりました。 Suzy: Brandonさんと引地さんのメインステージのセッションの他にも、ブランディングデザインや共創デザインアプローチのパネルセッションにも参加しましたが、Designshipのテーマでもある「デザインの定義が広がっている」ことを強く感じました。 デザインがメインストリーム化していることは嬉しい一方で、どこまでをデザインとし、デザイナーの仕事とするかが曖昧になっている現状で、自分のデザイナーとしてのスキルセットを見直す良い機会になりました。 Hiro: 広がり続けるデザインの領域を実感するイベントでした。だからこそ、「デザインでどんな目標を達成したいのか?」を冷静に考える力を養うことがデザイナーには必要だと感じました。また、デザインシップ自体の参加者の年齢層が若く、学生と企業のデザイナーが気軽に交流できる場は素晴らしいと思いました。 ③ 今後の意気込み Mari: トークセッションを通じて改めて感じたのは、自信あるトーク力が聴き手への説得力を増すということです。デザイナーとして良いものを作るだけでなく、それを伝える力は非常に重要だと感じました。今後の仕事に役立てたいと思います。 Suzy: 私は「手を動かすデザイン」より「どう良いデザインを効率よくデリバーするか」の部分に興味があり、PMや上流過程の管理が得意です。共創デザインアプローチやデザインシステムの設計と展開についてのセッション内容は非常に参考になりました。プレゼンテーション能力も今の私の課題なので、これからしっかり伸ばしていきたいと思います。 Hiro: 広がるデザインの領域の中で、自分の考え方の軸となる専門性が大切だと感じました。常にデザインの目的や狙いを考え続ける姿勢を持ち続けたいと思います。 最後に Designship 2024は、btraxメンバーに多くの気づきと学びをもたらしてくれました。デザインの定義が広がる中で、それぞれが自分の位置づけを見直し、次のステップへの準備を整える場所となりました。このイベントを通じて得た知識や共感を今後の仕事に活かしていきたいと思います。 ぜひ読者の皆さまもデザインの可能性を再考し、新しい挑戦に向けて期待を膨らませていただければと思います。 関連記事 Designship2024 DAY1速報レポート🚀 久々にデザインの”空気”を吸いに行った、Designship 2024の2日間 #designship2024 スピーカーとして、話し方をデザインした話

【ブランディングの事例から】生成AI時代に成長する、生き残る、無くなるブランド

生成AIの台頭によって、私たちがデジタルデバイスを通して見る視覚情報、ブランド体験は急速に変化している。生成AIによって、ブランディングにおいて変化することに以下の3つ特徴が挙げられるだろう。 ユーザーのマインドセットの変化。パーソナライズされたコンテンツ、体験への期待が急上昇する 文脈の分断(Decontexulization)。コンテンツ生成の速度にユーザーが付いて来れず、メディア、プラットフォーム側では一部の切り取られた情報が溢れ、真実、現実世界との乖離が加速する 情報の透明化。情報検索、ノウハウの習得など、自分の探している情報をより早く多角的な視点から集めることができる このような変革の時代において、ブランドが成長する、または、生き残るための鍵は何か。それは、真の価値を伝えるストーリーをブランド側で構築し、混沌としたデジタル環境で混乱する消費者を導くこと、そして、啓蒙することである。 消費者の期待は絶えず進化し、企業はその変化に迅速に対応するだけでは、時代に追いつくだけのブランドとなる危険性がある。ブランドが今後、持続的に成長し続けるには、ブランドのコアをそのままに、既存のブランド施策の延長線上ではなく、コンテンツ制作の方法論やフォーマットなどの表層的なものに囚われず、大胆かつイノベーティブな施策に挑戦し続ける必要がある。 この記事では、btraxが手がけたプロジェクトから、ブランド戦略のヒントとなるような事例をいくつか紹介したい。 ヤンマー:日本最高の知的財産(IP)「アニメ」を用いて、伝統的なブランドイメージを刷新 ヤンマーホールディングス株式会社(以下、ヤンマーという)とbtrax がタッグを組んで、企画・制作を行なった商業アニメ「MIRU」は、自然と人類の共存を模索するテーマを掲げ、ヤンマーのデザイナーが原案を手がけたロボットが登場する。タイトル「未ル」は、未来への挑戦と進化を意味し、自然と人間が調和する豊かな世界を目指す主人公たちの冒険を描くものである。 ヤンマーの脱炭素社会や持続可能な社会構築に向けた理念の一環として始動したこのプロジェクトは、企業イメージの革新だけでなく、持続可能な社会への理解を深める目的も持ち合わせている。 btraxのクリエイティブな視点は、アニメを通じてヤンマーのメッセージを視覚的に表現することに貢献しており、自然との調和を追求する物語に、斬新なデザインとストーリーテリングを提供することでプロジェクトの成功に大きく貢献しているのである。 アニメという日本が世界に誇る文化的財産と知的財産を通じて持続可能な社会への取り組みを表現し、伝統的な企業イメージを再構築することに成功している。 ヤンマーとの協業に関する事例のフルストーリーはこちら Kapok Knot:サステイナブルファッションの先駆け。倫理と環境を重んじたブランドイメージへ サステナビリティへの注目度は、環境問題への課題認識が高まるにつれ、今後、長期的に高まる一方であることが容易に予想される。目先の課題を克服するためのブランディングではなく、こうした長期的な課題解決に向けたブランドの価値観や姿勢を、ブランディング戦略に反映することが重要となる。 トレンドは目まぐるしく変化するが、私たちが直面する長期的な課題は無くなることはない。 btraxの制作したUS市場向けのKapok Knotのウェブサイトでは、一時的なトレンドを追うのではなく、実際にUS市場深い洞察に基づき、持続可能性をコアバリューとするブランドイメージを打ち出している。 短期的な解決策ではなく、環境問題への長期的な課題認識を踏まえたブランディングが重要であるとの認識のもと、植物由来でCO2排出量を抑えたクルエルティフリーの「Kapok Down」がその理念を具現化している。 サステナビリティへの注目がいっそう高まる未来において、btraxはKapok Knotの持続可能な価値観を反映したブランド戦略によって、長期的な視点での環境への貢献と、消費者の信頼獲得を目指している。 Kapok Knot との協業に関する事例のフルストーリーはこちら まとめ  生成AIの台頭はブランド体験を急速に変革させ、マーケットに新たな要求を生み出している。ユーザーの期待はパーソナライズされたコンテンツと体験に急速にシフトし、その結果、文脈の断片化と情報の透明化の2つの大きな動きが見られる。 btraxがヤンマーと協力して制作したアニメ「未ル」や、Kapok Knotのウェブサイトは、これらの変化に対応しつつも、長期的な価値観を反映したブランドストーリーの重要性を示す好事例である。 一過性のトレンドではなく、サステナビリティといった深遠なテーマを軸に据えることで、混沌とするデジタル時代においても、消費者を導き続け、啓蒙するブランドとなるためには、コンテンツ制作や戦略のイノベーションが求められている。 短期的な流行に流されることなく、根本的な価値を伝え、これらを踏まえた上で大胆な試みを重ねることが、ブランドの持続的な成長と生き残りに不可欠なのである。 生成AIが切り開くブランディング戦略の新境地

生成AIが切り開くブランディング戦略の新境地

生成AIの急速な進化は、ブランディング戦略に革命的な変化をもたらしている。ただの技術ツールを超えたこの進化は、マーケティングのアプローチやブランドの物語作りに深い影響を与えている。 生成AIは、ブランドのアイデンティティを再定義し、顧客との関係構築に新たな次元を加えている。この急速な変化は、多くのブランディング、マーケティングに従事する多くの人を置き去りにしているというのが現状だろう。 生成AIをブランディングにどう活かして行けば良いのだろう。本記事では、実際の事例を交えて、生成AIがブランディングにどのように活用されているか、その深い影響と可能性について探求する。 生成AIを活用したブランディング戦略 生成AIによるブランディング戦略は、革新的なコンテンツ生成によって顧客とのコミュニケーションを強化する。生成AIは、テキスト、画像、動画、3D、音声、音楽、マップなど、あらゆるフォーマットに対応し、豊富な選択肢を与えている。そのような中、生成AIをどのように活用することができるだろうか。 この記事では、生成AIをどう使いこなし、ブランディングに反映できるかという可能性を探るヒントを事例を交えて紹介したい。 【事例①】生成AIと現実のギャップを活かした、Heinzの生成AIキャンペーン トマトケチャップのグローバルブランドであるHeinzは生成AIを活用して、何が「ケチャップ」かを生成AIに解釈させ、その結果をビジュアル化したキャンペーンを実施。この斬新なアプローチは、生成AIが日常の製品をどう解釈するかを示し、ブランド戦略におけるAIの可能性を探るものだった。そのメッセージは、あらゆるプロンプトを与えてもHeinzのトマトケチャップのイメージを生成しようと試みても、本物のHeinzに辿り着くことはできないとのこと。   過去の記事でも取り上げたことがあるが、Heinz のブランディング戦略の巧みさには驚愕するばかりである。 デザインの力でケチャップ詐称を見抜け!ハインツのキャンペーンが面白い 【事例②】まるで本物?Baskin Robbinsの生成AIキャンペーン 日本ではアイスクリームの31でお馴染みのアメリカ発のグローバルチェーン、Baskin Robbinsは、新しいフレーバーの発表に際して、AI画像生成プログラム「Midjourney」によるAIアーティストTapan Aslotが生成した一連の画像を使用したキャンペーンを展開した。 これらの画像はソーシャルメディアで注目を集め、生成AIのマーケティングへの応用を示した例である。生成AIで作られたかもはや分からないほど完成度が高いビジュアルを提示したこのキャンペーンは、生成AIを活用したクリエイティブ制作に大きな影響を与えたことだろう。 また、まだ生成AIの作り出すクリエイティブが目新しかったタイミングで、このようなキャンペーンを展開し、生成AIが作り出すクリエイティブの本物感を世に知らしめたことは、このキャンペーンが先進的な取り組みと認知された大きな理由の一つだろう。 【事例③】生成AIの機能を統合し、魔法のような体験を提供 Canvaは、自社のデザインプラットフォームに最新のAIテキストおよび画像生成技術を統合している。Magic Write、Magic Edit、Magic Presentationなどの機能を通じて、ユーザーはプロンプトからテキスト、画像、スライドデッキを生成できる。これは生成AIがコンテンツ作成において実用的に活用されている例である。 生成AI機能をサービスに実装することで、よりユーザー側からの多様なニーズ、インプットに対して柔軟に対応可能なインタラクティブかつ革新的なユーザー体験を提供することが可能になる。 例えば、ノートを取るためのサービスであれば、議事録や講義の内容のサマリーを音声機能をオンにするだけで作成してくれたり、旅行系のサービスであれば、フライトの情報を入力すると行き先での最適な旅行プランを提示してくれるなど、その可能性は存在する。 2024年は、あらゆるサービスに生成AIを用いた機能が組み込まれてくる年になることは間違いないだろう。 「生成AIで作ったコンテンツは安っぽいのか」 生成AIによるコンテンツが安っぽいという懸念、世の中での認識について、もはや時間が解決する問題であると考えられる。認識はさておき、現実では既にこの問題は既に解決されている。 Baskin Robbinsのキャンペーンが物語るように、AI生成コンテンツの質は飛躍的に向上している。適切に設計されたAIは、人間の創造性を補完し、時にはそれを超える結果を生み出すこともあるだろう。 生成AIで作られるコンテンツは、単なる人間が作るコンテンツの「模倣」ではなく、「模倣」とは異なるベクトルで進化し、これまで人間が思いつかなった、もしくは時間が掛かりすぎてできなかったことを可能にし、様々な表現のバリエーションを我々に提示してくれることだろう。 まとめ 生成AIの活用は、ブランド戦略における革新的な表現と効率化をもたらす。この技術をうまく活用することで、ブランドは新たな顧客体験を提供し、ブランドイメージを高めることができる。 3つの事例を通して、共通して言えることは、「生成AIで作ったコンテンツは安っぽいのか」という問いを超えて、生成AIとどのように付き合うのか、生成AIでどのようなインタラクションを生み出すのか、つまり「What」ではなく、「How」の部分をブランディング戦略に組み込むことが重要である。 今後も、多くの企業が生成AIを活用した新しいブランディング戦略を展開していくことが期待される。

【btrax初書籍をチラ見せ】第6章 ブランディングのキホンからインクルーシブデザインに代表される最先端のデザイン手法まとめ

第1-5章の解説に続き、今回もbtraxの書籍『デザインの思考法図鑑』の各章の内容をご紹介していく。 第6章のテーマは『デザインを表現する・伝える』。デザインと切っても切り離せないブランディングにまつわる内容を基礎から効果測定方法までお伝えするだけでなく、デザインを考える上でインプットしておくと良い「UXライティング」「エシカルデザイン」など、幅広いトピックを取り扱う。 第6章の内容はこんな方におすすめ: 顧客体験(CX)に関して詳しく知りたい方 ブランディングの概念から、ブランディングの成功/効果測定方法まで知りたい方 デザインとブランディングの関係性を知りたい方 デザインにおいて考慮すべきポイントを学びたい方 第6章 デザインを表現する・伝える 目次 顧客体験(CX)の考え方 ブランディングの基本 ブランドの構成要素 ブランディングのプロセス リーンブランディング デザインとブランディング ブランド価値の測定 UXライティング エシカルデザイン アクセシビリティ ユニバーサルデザイン インクルーシブデザイン 顧客体験(CX)の考え方 UXと併せて語られることの多い「顧客体験(CX)」。顧客体験のデザインでは、顧客との最初の接点からリテンションまでの全てのやりとりが対象だ。今回は顧客体験の設計方法と、それをいかにUXデザインに連携するのかに関してご紹介する。 参考記事: CXデザインとは?UXデザインとの違いとそれぞれの役割 ブランディングの基本 ブランディングが大切とされているのは周知の事実。この項は全ての基本となる「ブランド」と「ブランディング」の何が異なるのか?そしてブランディングを行なって得られる効果とは?に関して解説します。 ブランドの構成要素 ブランドはいくつかの要素で成り立っています。この項では、成功するブランディングの構成要素を解説。この章を見れば、ブランディングを行う上で守るべき観点がわかるだろう。 参考記事: ブランドをビジネス価値に変換させる5つの構成要素【ブランディング入門#1】 ブランディングのプロセス 前2項に引き続き、ブランディングをトピックに扱う。今回はブランディングを実施するプロセスを明示し、各ステップでどのようなアクションや成果物が求められるのかを順を追って解説します。 リーンブランディング 「リーンブランディング」という言葉を聞いたことがある方はいらっしゃるだろうか。リーンブランディングとは、リーンスタートアップでいうところの「新しいビジネスモデル」の代わりに、「柔軟なブランド」の構築・開発を目指すものだ。 では、通常のブランディングではなくリーンブランディングの考え方を使用するメリットとは? 参考記事: ブランド構築に役立つリーンブランディング その基本と3つの活用シーン デザインとブランディング ブランドとデザイン、両者は切っても切り離せない関係にある。それはブランドが「デザイン」の対象であるためだ。今回はデザインがブランディングにどんな価値を与えるのか、ブランディングに求められるデザイン的発想を3つ例に挙げてご紹介する。 参考記事: 意外と知らないデザインとブランディングの関係性 ブランド価値の測定 ブランディングに投資がされにくい理由の一つに、「結果が定量的に示しにくい」「効果測定がしづらい」ことが挙げられるだろう。そんな課題を解決するために、この項ではブランドマネージメントにおける、ブランド価値の算出におけるデータの活用方法をまとめていく。 参考記事: ブランド価値の効果測定方法 〜2つのデータ活用法〜 UXライティング 「UXライティング」とは、物事の価値を、的確かつストレスなくユーザーに伝えるための言葉を通じたユーザー体験設計の総称を指す。ユーザー体験はデザインのみならず、ライティングでも必要になってくる。今回はすぐに実践できるUXライティングの5つのポイントをご紹介する。 参考記事: デザイン視点で心を掴む UXライティングの基本5項目 エシカルデザイン エシカルデザインとは、倫理的観点からプロダクトやサービスと向き合い、デザインを見直そうとする姿勢のことだ。 人間の心理や感情に直接的に触れうるデザイナーは、ユーザーを知らず知らずのうちに過剰広告や扇動広告など、結果的に不幸にさせているケースもある しかし、エシカルな観点が実践できているかは自分では気づきにくいもの。この項ではエシカルデザインを実践する上で必要になる観点をチェックリストで明示していく。 参考記事: エシカルデザインとは – 時間と環境と生活に優しいデザイン アクセシビリティ アクセシビリティとは、元々はウェブデザインの用語として誕生した「アクセスしやすい」「利用しやすい」という意味の言葉だ(現在では、ウェブサイト以外の領域でも使用されている)。 では、「アクセシビリティが実現されている状態」とはどのようなものだろうか?今回はW3C (World Wide Web Consortium)が公開しているウェブサイトのアクセシビリティガイドラインから考えてみる。 参考記事: アクセシビリティとは?その基本とデザインのポイント ユニバーサルデザイン ユニバーサルデザインとは「年齢や能力、状況に関わらず、多くの人が使いやすいように製品や建物、環境をデザインする」ための考え方だ。この項では、ユニバーサルデザイン7原則の各項目をご紹介。ユニバーサルデザインを確認する指標となれば幸いだ。 参考記事: インクルーシブデザインとは?現代の多様性に寄り添う7つの実例 インクルーシブデザイン インクルーシブデザインは、これまでデザインのプロセスから無意識に排除されてきてしまった方々も含めてデザインを行うことを指す。 ユニバーサルデザインと似た概念だが、ユニバーサルデザインはデザイナー手動で目指すものであるのに対して、インクルーシブデザインはユーザーをデザインのプロセスに巻き込んで一つのサービスやプロダクトを作り出すことを目指すという違いがある。 この項では、インクルーシブデザインの定義とともに、インクルーシブデザインの実現のための3つのステップを解説する。 参考記事: インクルーシブデザインとは?現代の多様性に寄り添う7つの実例 まとめ 今回はbtraxの書籍『デザインの思考法図鑑』より第6章の内容のポイントをかいつまんでご紹介した。この記事を機に、多くの人に書店で手に取っていただけたら嬉しく思う。

主催イベントBtrax Design Day で最も注目を集めたセッションをご紹介!「マイノリティ視点がイノベーションを起こす:インクルーシブデザインの力」

2023年12月6日、東京・渋谷にて開催された「Btrax Design Day」は、デザイン業界における次世代のトレンドと革新を探求する一大イベントであった。
中でも特に注目されたセッションの一つが、「マイノリティ視点がイノベーションを起こす:インクルーシブデザインの力」だ。このセッションでは、Audio Metaverse, Inc.の創業者である井口尊仁氏と、株式会社圓窓の代表取締役、澤円氏が、「インクルーシブデザイン」の概念を深く掘り下げた。

インクルーシブデザインのビジネスへの影響
井口…

【btrax初書籍をチラ見せ】第5章 サービスの価値検証・改善のために覚えておきたい要点まとめ

第1-4章の解説に続き、今回もbtraxの書籍『デザインの思考法図鑑』の各章の内容をご紹介していく。 第5章のテーマは『デザインをテストする・見直す』。 デザイン思考のプロセスの中でも特に忍耐が必要な「検証」フェーズについて、そしてその検証フェーズで指標となるUI/UX評価のチェックリストなど、ビジネスパーソンのみならず、デザイナーの皆さまにも読んでいただきたい内容が盛りだくさんだ。 また、後半では認知バイアスもいくつかご紹介するため、コラムとして読んでいただけたら幸いだ。 第5章の内容はこんな方におすすめ: デザイン思考の中でも「検証」のフェーズを見直したい方 UI/UXデザインの客観的な評価指標、チェックリストを知りたい方 認知バイアスに関して詳しく知りたい方 新規事業開発に携わっており、長く使われるサービスを作るためのヒントが欲しい方 第5章 デザインをテストする・見直す 目次 デザイン思考:テスト UXピラミッド:UXデザインの評価指標① UXハニカム:UXデザインの評価指標② UI/UX評価の10項目:ユーザビリティヒューリスティック評価 アイディア検証11項目 ユーザーフローの設計 ユーザーエンゲージメント デザイン的直感とデータの使い分け 情動ヒューリスティックとサンクコストの誤謬:認知バイアス① 集団浅慮、ダニング=クルーガー効果:認知バイアス② UXデザインの「けもの道」 デザイン思考:テスト デザイン思考における最後のプロセス、ユーザーテスト。この章では、ユーザーテストのプロセスや、テストシナリオの作成方法、ユーザーテストの効果的な結果の評価方法を解説します。 参考記事: ユーザーテストの秘訣とは? – デザイン思考を学ぶ Part 6 UXピラミッド:UXデザインの評価指標① UXデザインの良し悪しはどのように判断するのでしょうか?この章では、客観的、主観的、両方の側面からUXデザインを検証するための評価指標、UXピラミッドをご紹介します。 参考記事: UXピラミッド – UXデザインの正しい評価方法 – UXハニカム:UXデザインの評価指標② UXピラミッドと同様に、UXデザインを評価する指標としてあるUXハニカム。UXデザインのクオリティチェックができる6つの項目です。この章ではUXハニカムの見方や、項目が達成できているかをチェックするための質問方法をご紹介します。 参考記事: UXハニカム – UXデザインの正しい品質評価方法 – UI/UX評価の10項目:ユーザビリティヒューリスティック評価 UI/UXデザインを設計する際にも、分析をする際にも、どんな評価軸で見たら良いのかという項目は必須。 今回は90年代初頭に、Webのユーザビリティ研究者の第一人者であるJakob Nielsenと、dialogdesignというユーザビリティコンサル会社の創設者のRolf Molichによって作られたUI/UX評価の10の項目をご紹介する。 参考記事: UX向上につながるUIデザイン評価の10項目 アイディア検証11項目 新規サービスやプロダクトを準備していると、ついつい視野が狭くなり、客観的に振り返る機会を失いがち。この項では、アイディアの良し悪しを検証するための11の項目をご紹介。新規事業開発に携わっている方は必見だ。 参考記事: 新規サービス検証の際に確認するべき15項目 ユーザーフローの設計 “ユーザーフロー”という言葉を聞いたことはあるだろうか? ユーザーフローとは、UXデザインのプロセスの一つで、プロダクトやサービスを使用する上でたどる必要のあるプロセスを可視化したもの。 設計段階はもちろん、ユーザーエンゲージメント向上のための見直しのためにサービスローンチ後の運用方法や注意点を解説する。 参考記事: ユーザーフローから学ぶミスコミニュケーションの発生原因と対処方法 ユーザーエンゲージメント サービスやプロダクトに対してのユーザーの愛着や関係の深度を表すのが「ユーザーエンゲージメント」。 ユーザーエンゲージメントを高めるには、基本的なユーザービリティが実現されていることが必須であることはもちろん、その他にも気をつけるべき項目がある。今回はテクニカルな面以外にも、ユーザーエンゲージメントを高めるために留意すべきポイントを解説。 参考記事: ユーザーエンゲージメントを向上させる7つの要素 デザイン的直感とデータの使い分け ユーザーの動きを数値的に分析し、ボトルネックを洗い出すことは、サービスの改善において大変有効だ。 しかし、今までの観察やインプットに基づくデザイン的な「直感」も、決して無碍にしてはならない。今回は定量的なデータを信じる場合とデザイン的直感を信じる場合のそれぞれのメリットとデメリットをまとめた。 参考記事: ブランド価値の効果測定方法 〜2つのデータ活用法〜 認知バイアス①、②:情動ヒューリスティック、サンクコストの誤謬、集団浅慮、ダニング=クルーガー効果 日常に潜む認知バイアス、5章のうち2項では4つの認知バイアスについて詳しく解説。いずれもビジネスマン、デザイナーの方々が陥りやすいものをピックアップ。認知バイアスに気がつくために自らに問いかける方法も併せてご紹介する。 参考記事: デザイナー必見!知っておきたい10の認知バイアス UXデザインの「けもの道」 サービスやプロダクトを設計した際に、ユーザーに対して元々設計されていた「導線」とは異なるルートをユーザーが選択した結果、いつの間にかそのルートの方を他のユーザーも利用するようになるケースは多々ある。 そのほうがユーザーニーズに合致していたりするため、UXデザインにおいて、見逃せない兆候だ。今回はそんな、UXデザインの「けもの道」(”desire path”)に関して解説する。 参考記事: UXデザインにおける「けもの道」現象とは まとめ 今回はbtraxの書籍『デザインの思考法図鑑』より第5章の内容のポイントをかいつまんでご紹介した。全体像が読みたいと思っていただけた方はぜひAmazonの予約ページからひと足先に予約いただけると幸いだ。 書籍は12月より、全国の書店でも販売を開始した。多くの人に書店で手に取っていただけたら嬉しく思う。次回は6章の内容をピックアップして解説する。お楽しみに。

【btrax初書籍をチラ見せ】第4章 小さく始めるためのプロトタイプ・デザインメソッドまとめ

第1-3章の解説に続き、今回もbtraxの書籍『デザインの思考法図鑑』の各章の内容をご紹介していく。
第4章のテーマは『サービス体験を設計する・プロトタイプを作成する』。特に「プロトタイプ」のフェーズでしっかりと、サービスやプロダクトがユーザーのニーズとあっているかを検証しながらプロトタイプを更新していくことが、サービス開発の近づく鍵になっている。
後半では認知バイアスもいくつかご紹介するため、コラムとして読んでいただけたら幸いだ。
第4章の内容はこんな方におすすめ:

デザイン思考のおさらいをした…

【btrax初書籍をチラ見せ】第3章 アイディア発想のためのメソッド ワークショップやファシリテーションのコツ

第1,2章の解説に続き、今回もbtraxの初書籍『デザインの思考法図鑑』の各章の内容をご紹介していく。
第3章のテーマは『アイディアを練る・コンセプトを立案する』。たとえば新規事業開発に携わったことのある方なら、たくさんのアイディアを出してそれを実現させていくプロセスの大変さをご存知だろう。
第3章はそんな方々に特に実践していただきたいデザインのTipsをたくさん盛り込んだ章となっている。
第3章の内容はこんな方におすすめ:

デザイン思考の基礎を学びたい方、おさらいしたい方
デザインワークショップ…

【btrax初書籍をチラ見せ】第2章 デザイン思考の肝!ユーザーへの共感から問いを立てるためのポイントとは?

第1章の解説に続き、今回もbtraxの書籍『発想から実践まで デザインの思考法図鑑』の各章の内容をご紹介していく。 第2章のテーマは『ユーザーに共感する・問いを立てる』。 デザイン思考の中でも基本となるが自分自身のバイアスが入りがちで工夫が必要である「共感・理解」のステップや、ユーザーリサーチで得たインサイトをサービス・プロダクト設計に活かす方法などをお伝えする。 第2章の内容はこんな方におすすめ: デザイン思考の「共感・理解」「課題定義」に関してより深く理解したい方 ユーザーリサーチなどを行っているが、得たインサイトをサービス開発にどう活かすのかピンときていない方 ユーザーの感じる「不便さ」を言語化して、サービス設計に活かしたいデザイナーの方 第2章 ユーザーに共感する・問いを立てる 目次 デザイン思考:共感・理解 情報の収集・分析・統合 エンパシーマップの活用 デザイン思考:課題定義 ペルソナの作成 カスタマージャーニーマップの作成 カスタマージャーニーマップの活用 操作性ハードル:心理的ハードル① 認知的ハードル:心理的ハードル② 感情的ハードル:心理的ハードル③ デザイン思考:共感・理解 デザイン思考において「ユーザーに共感する」とは?そこからユーザーのことを理解するとは?トレーニングを交えて、「共感・理解」を実践するメソッドをご紹介する。 参考記事: デザイン思考における「共感」とは? – デザイン思考を学ぶ Part 2 情報の収集・分析・統合 ユーザーリサーチで収集した情報を統合・分析する手順を各ステップごとに解説。ユーザーリサーチでインサイトを抽出する方法から、情報分析、情報を組み合わせる時に効果的なダイヤグラム、エンパシーマップの効果と活用方法を見ていこう。 参考記事: 勘違いから見えたデザイン思考の本質とは?—ファシリテーターの経験を通して気づいたこと エンパシーマップの活用 第2項「情報の収集・分析・統合」で紹介したエンパシーマップをうまく活用し、運用していくコツをご紹介。エンパシーマップの運用において陥りがちな失敗と合わせてご紹介。 デザイン思考:課題定義 デザイン思考における「課題定義」は、ビジネス的な課題定義とどのように異なるのか?課題定義の際に抑えたいフレームワーク「POV」と「HMW」を実践しながら、デザイン思考の課題定義の考え方を学んでみよう。 参考記事: デザイン思考における課題定義のコツとは? – デザイン思考を学ぶ Part3 ペルソナの作成 デザインでもマーケティングでも、ビジネスにおけるさまざまなシーンにおいて重要なペルソナ。本項では、その役割や、ペルソナを定義する際の順序、方法をご紹介。「理想像」ではなく、地に足のついたペルソナを作るために重要なこととは? カスタマージャーニーマップの作成 ユーザーがプロダクトを利用するプロセスをマップ形式でまとめた「カスタマージャーニーマップ」。ペルソナと並んでしばしば「理想」を描きがちなものだろう。ここでは、改めてその作成の手順と、作成にあたって押さえるべき3つのポイントを解説。チームの全員で読み合わせたい内容だ。 参考記事: UXデザイナーが教える、本当に機能するカスタマージャーニーマップとは カスタマージャーニーマップの活用 カスタマージャーニーマップは一度作って終わりではない。むしろその後にどのように活用していくかが鍵となる。この項目では、カスタマージャーニーマップを活用し、チームで運用する際に気をつけるべきことをご紹介する。 操作性ハードル:心理的ハードル① サービスデザインにおいては、ユーザーに心地よくサービスを利用してもらうため、3つの心理的ハードル(操作性ハードル、認知的ハードル、感情的ハードル)を感じさせない工夫が必要だ。 心理的ハードルの中でも直接UXデザインやユーザーの「使い心地」に関係する「操作性ハードル」をピックアップして解説する。 認知的ハードル:心理的ハードル② ユーザーがUIを使用している時にダイレクトに感じる負担、それが2つ目の「認知的ハードル」。認知的ハードルの見つけ方と対処法をまとめて、事例とともにご紹介する。 感情的ハードル:心理的ハードル③ 最後にご紹介する感情的ハードルは「感情的ハードル」。ユーザーが感じやすいハードルでありながら、設計者が気付きづらく、対処も難しいとされているハードルだ。そんな感情的ハードルの発見方法と対処法を解説する。 参考記事: サービスデザインで考慮すべき3つの「心理的ハードル」とは まとめ 今回の記事では、『発想から実践まで デザインの思考法図鑑』の2章の内容の簡単にご紹介した。1章に引き続き、デザイナーの方やデザイン的マインドセットを仕事に活かしたいビジネスマンの皆様にとって有益な情報となっていれば幸いだ。 書籍は現在、Amazonにて予約販売を行っている。ぜひ予約して、内容を一足お先にご確認いただきたい。

起業家が知っておくべき31のビジネスモデル(Part 2)

前回の「起業家が知っておくべき31のビジネスモデル(Part 1)」に引き続き、こちらの記事を参考に、31個にビジネスモデルを類型化し、それぞれについて解説していく、「起業家が知っておくべき31のビジネスモデル」シリーズ。今回はその第2回目だ。今回も10個のビジネスモデルを見ていく。 ビジネスモデルをブラッシュアップしたい起業家にとって参考になれば幸いだ。 それでは11から20までのビジネスモデルを見ていこう。 データ提供型ビジネスモデル ブロックチェーンビジネスモデル フリータープライズビジネスモデル レーザー&ブレードビジネスモデル D2Cビジネスモデル ホワイトラベルビジネスモデル フランチャイズビジネスモデル 広告ビジネスモデル タコビジネスモデル トランザクション型ビジネスモデル 11. データ提供型ビジネスモデル アプリを通してユーザーからデータを集め、システムの精度を上げたり、そのデータを欲している他の会社にデータを提供することでマネタイズするビジネスモデル。 例:OpenAI。ユーザーがデータを打ち込めば打ち込むほど、システムの精度が高まる。 有名なチェックインアプリである、Foursquareはユーザーの位置情報とチェックイン情報を集めている。Foursquareに貯まった膨大なユーザーデータは新規店開拓の際に利用される。 12. ブロックチェーンビジネスモデル ブロックチェーンは、AWS などの中央機関を必要とせずに、企業がスマートコントラクトを展開できるようにする分散型台帳テクノロジーだ。 例:Ethereum, Solana ブロックチェーンのビジネスモデルの種類 トークンエコノミービジネスモデル 企業がトークンマイナーまたはトークン保有者に報酬を与えるメカニズムの1つとしてトークンを発行するモデル。 例: Ethereum, Solana P2Pブロックチェーンビジネスモデル ピアツーピア (P2P) ブロックチェーンにより、エンドユーザーは相互に直接対話できるモデル。不特定多数の端末がサーバを介さずに、端末同士で直接データファイルを共有することができる通信技術、またはソフトウェアのことを指す。 例: IPFS Blockchain as a Service (BaaS)ビジネスモデル ブロックチェーン技術を基盤にアプリケーションを開発することを指す。 例: Bitcoin, Ethereum ブロックチェーンベースのアグリゲータービジネスモデル ブロックチェーンの API 呼び出しを実行し、ソフトウェア同士の連携を可能にする。 例: Alchemy 13. フリータープライズビジネスモデル フリータープライズ(無料+エンタープライズ)ビジネスモデルは、最初は無料で導入可能だが、ある一定数人数が増えると課金するモデルである。 無料であることで、従来の営業主体のトップダウンのモデルより、ボトムアップ的に導入が進むことが多い。 例:Slack, Zoom ここで、SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)のGo-to-market(市場戦略)のトップダウンとボトムアップアプローチの違いをご説明する。 トップダウンは、CXOレベルでの導入意識決定が必要なケースが多く、ピンポイントでのマーケティング戦略や、フィールドセールスによる長いサイクルの対面営業プロセスを要する。 カスタマーサクセスの面でも、導入時の訪問支援サポートや個別のアドバイスをするようなハイタッチな手法になる。このトップダウン戦略を採用している企業例としては、Veeva、Workday、Zuoraなどが挙げられる。 ボトムアップは、対象者が広範囲なため、マスに近いマーケティング戦略が適用できる。 いち従業員が一人、または数名で使い始められるプロダクトやサービスで、セルフサーブ型でユーザーのオンボーディングが完結できる。また、バイラル要素があり、営業サイクルも短い。Zoom、Slack、Twilioなどが例として挙げられる。 14. レーザー&ブレードビジネスモデル 1つのアイテムを低価格または赤字で販売し、詰め替えや追加で利益を生み出すビジネスモデル。ハードウェアビジネスで広く使用されている。 例:Gilletの剃刀と刀、コーヒーマシンとコーヒー豆 レーザー&ブレードビジネスモデルのメリット 製品を試す顧客のリスクを軽減する。 顧客は、多額の初期費用をかけずに製品やサービスを試すことができる。 製品からの継続的な収益源により、初期費用の何倍もの売上が得られる可能性がある。 15. D2Cビジネスモデル D2Cビジネスモデルでは、ブランドは中間業者を排除し、サードパーティの物流パートナーを使用して自社の Webサイトから最終消費者に製品を直接販売する。 例:GymShark、Kylie Cosmetics D2Cビジネスモデルを使用するブランドは、ウェブサイト、マーケットプレイス (Amazon、eBay ) などのオンラインチャネルを主に使用するが、実店舗を構える事例が増えている。 D2Cビジネスモデルのメリット 中間業者がいないことで中間搾取が発生しないため、利益が大きくなる。 オンラインファーストモデルで自社にデータを多数保有するため、年齢や地理など、よりターゲットを絞った顧客データにアクセスできるようになる。 16. ホワイトラベルビジネスモデル ホワイトラベルビジネスモデルとは、製品を契約メーカーまたはサードパーティメーカーに委託製造してもらい、自社のブランド名で販売するものだ。 例:Amazonの電子製品 Amazonで売られている電子製品のほとんどは中国で製造されており、何らかのブランド名でホワイトラベルが貼られている。 ホワイトラベルビジネスモデルのメリット 開発コストの削減 商品を自社で製造する必要がなくなるため、製造設備を持つことなく自社ブランド商品の販売が可能になる。製造設備への投資が不要になれば、開発コストの削減にもつながる。 開発ノウハウがなくても自社ブランド商品を製造できる 開発ノウハウについてもある程度OEMメーカーに頼れるため、開発ノウハウを持たない企業も自社ブランド商品の製造が可能だ。 商品企画や販売に専念できる 製造工程を他社に委託することで自社のリソースを割く必要がなくなり、商品企画や販売に専念することができる。 17. フランチャイズビジネスモデル フランチャイズビジネスモデルは、本部(フランチャイジー)の有する商標や販売・経営ノウハウなどを加盟店(フランチャイザー)に与えるかわりに、ロイヤリティを対価として、加盟店が本部に支払うモデルだ。 例:Domino’s Pizza, McDonald’s このビジネスモデルは、Subway、Domino’s Pizza、 McDonald’sなどのクイックサービスレストランで広く使用されている。 フランチャイズビジネスモデルのメリット 本部から経営サポートを受けられる フランチャイズに加盟すると、仕入、接客、広告宣伝など、経営にまつわることをすべてサポートしてもらえる。フランチャイズ本部には、新しい加盟者が店舗を立ち上げるまでのサポートや、経営を軌道に乗せるためのノウハウが確立されており、サポートを受けながらスピーディに開業準備を進められる。また、開業時のサポートだけでなく、継続的なサポートも受けられる。 本部のブランド力やノウハウを活用できる フランチャイズに加盟して得られる最大のメリットは、すでに確立されたブランド力(ブランドイメージ)がある状態で、経営を始められることだ。知名度や認知度が高いフランチャイズチェーンであれば、看板を見ただけでも商品やサービスが想起される。また、どの店舗でも同じサービスを受けられるのがチェーン店の魅力とも言えるため、そのチェーンのファンさえいれば、開業してすぐでも集客に困ることは少ないだろう。 […]

起業家が知っておくべき31のビジネスモデル(Part 1)

多様化する世界の中で、特にデジタル領域のビジネスにおいては多数のビジネスモデルが存在する。そのため全てのビジネスモデルを把握しきることは困難だ。 今回はこちらの記事を参考に31個にビジネスモデルを類型化し、全3回のシリーズにわたってそれぞれを解説していく。 ビジネスモデルをブラッシュアップしたい起業家や、ビジネスモデルを学びたいビジネスマンにとって参考になれば幸いだ。 まずは1から10。それでは早速見ていこう。 フリーミアムビジネスモデル サブスクリプションビジネスモデル マーケットプレイスビジネスモデル アグリゲータービジネスモデル 従量課金ビジネスモデル FFS(フィー・フォー・サービス)ビジネスモデル Edtechのビジネスモデル ロックインビジネスモデル APIライセンスビジネスモデル オープンソースビジネスモデル 1. フリーミアムビジネスモデル 例:Google Drive, iCloud, Slack フリーミアムのビジネスモデルは、ユーザーがソフトウェアやゲーム、サービスの基本機能を「無料」で利用でき、ユーザー側がアップグレードする際に始めて課金されるものだ。 Google DriveやDropboxは、それぞれ15GBと2GBの無料スペースを提供するが、追加スペースを購入する場合は追加料金を請求する。フリーミアムビジネスの典型と言える。 フリーミアムビジネスモデルのメリットは、基本機能が無料で利用できるため、ユーザーの最初の利用障壁を低く保てること、そして、すでに一部の基本機能を使用しそれに満足しているユーザーが課金するため、ユーザーの定着度が高いことだ。 2. サブスクリプションビジネスモデル 例:Tinder, Netflix, Shopify サブスクリプションビジネスモデルは、サービス提供側がプロダクトやサービスを販売し、ユーザーの定期的な支払いによって利益を得るものだ。 ユーザーがプロダクトを使用するため、もしくはプロダクトの中のプレミアム機能を継続して使用する意思がある場合に課金される。 サービス提供側は、フリーミアムビジネスモデルの次の段階としてサブスクリプションのビジネスモデルの適用も検討できるだろう。 3. マーケットプレイスビジネスモデル 例:Amazon, Fiverr マーケットプレイスとは、プロダクトやサービスを第三者の販売者がユーザーに販売するプラットフォーム(eコマースサイトやモバイルアプリ)だ。 Amazonにはプロダクトを販売するサードパーティーの販売者や中小企業のオーナーがいる。Fiverrには、グラフィックデザインやソフトウェア開発のような特定のサービスを他の個人や企業に提供するフリーランサーがいる。 扱っている領域は違えど、両者共にビジネスモデルはマーケットプレイスだ。 4. アグリゲータービジネスモデル 例:Uber、Airbnb アグリゲータービジネスモデルは、ベンダーのプロダクトやサービスを自社のブランド名で提供することが特徴だ。 例えばAirbnbでは、”Airbnb”というブランドのもとにいろいろなベンダーを出店させ、ブランド価値の担保を試みる。 マーケットプレイスとアグリゲーターのビジネスモデルは見ているように思われるが、大きな違いがある。 AmazonやFiverrのようなマーケットプレイスは、ベンダーとユーザーを結びつける役割を果たすが、ベンダー自身のブランド名で商品を販売する。 一方UberやAirbnbのようなアグリゲーターは、ベンダーを取り込み、彼ら(UberやAirbnb)のブランド名でサービスを提供することが特徴だ。 5. 従量課金ビジネスモデル 例:Stripe、AWS、Gumlet 従量課金ビジネスモデルは、ユーザーがプロダクトやサービスを使用した量(時間、人数、など)に応じて支払うモデルである。 個人利用、少数のチーム利用、大規模のチームでの利用で料金プランが異なる、ユーザー数による従量課金が想像しやすいだろう。 従量課金ビジネスモデルはクラウド・コンピューティングサービスで特に広く使われている。例えば、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)はアマゾンの子会社で、200以上のクラウドサービスを提供しており、各サービスには独自の従量課金制がある。 他にも代表的な例として、Canvaのようなデザイン・ソフトウェアプロダクトが挙げられる。使用したい機能と一つのアカウントを共有する人数によって異なる料金設定となっている。 6. FFS(フィー・フォー・サービス)ビジネスモデル 例:Stripe, Paypal, PayU FFSビジネスモデルでは、ユーザーが決済を行うたびにサービス提供側は固定手数料と変動手数料を得る。Fintechスタートアップに適応されることが多いビジネスモデルだ。 例えばStripeでは、ユーザーが決済を完了するごとに、2.9%+30セントが課金される。FFSのビジネスモデルを採用するプラットフォームは、ユーザーからの支払いを受け入れ、支払い先の事業者に決済を行う、支払いゲートウェイの役割を担うのだ。 7. Edtechのビジネスモデル Edtechのサービスのビジネスモデルにもいくつか特徴がある。典型的なのは、サービス提供側が教育コンテンツを販売することか、エンドユーザーに教育サービスを提供することで収益を上げることだ。 ビジネスモデルには、本記事の1-6で見てきたようなビジネスモデルや広告収入のビジネスモデルが使用されることが多い。以下にEdTechの代表的なビジネスモデルを列挙する。 Edtechサービスに採用される代表的なビジネスモデルの種類 フリーミアムやサブスクリプション – コースのコンテンツは無料だが、コース修了証の発行に費用が必要 例:Coursera 無料トライアル – 無料トライアルを提供し、その後月額または年額のサブスクリプションを提供するモデル 例:SkillShare マーケットプレイス – オープンマーケットプレイスから学びたいものを選択する自己提供型モデル 例:Udemy 広告収入 – 主要なプロダクトは無料であり、膨大なユーザーベースに広告を表示することで収益を得る 例:Duolingo 8.ロックインビジネスモデル 例:Apple, SAP ロックインビジネスモデルは、ユーザーの競合商品へのスイッチング・コストを感じさせることが特徴だ。 優れたブランド体験や利便性などのインセンティブを提供することで、新たなプロダクトが必要となった時にも、自社ブランドをユーザーに最初に想起させることができるようにしている。 AppleはiPhoneを販売し、他のハードウェア(Apple Watch、Airpods)やApple Store、Apple Music、iCloudなどのプラットフォームサービスによって、ユーザーをAppleサービスのエコシステムに囲い込む。 自社のサービスやプロダクトで買い揃えてもらうことで、利用者や売り上げを伸ばすことができるのだ。これにより、一貫性のある優れたブランド体験のみならず、Appleのサービス間の連携の利便性も向上させている。まさにロックインビジネスモデルの好例とも言えるだろう。 9. APIライセンスビジネスモデル アプリケーション・プログラミング・インターフェース、略称APIは、サードパーティのアプリケーションがユーザーのサービスと通信するためのツールだ。 例えば、UberとAirbnbは、ナビゲーションを簡単にするために、モバイルアプリでグーグルマップAPIを使用している。 APIのビジネスモデルには以下のような種類がある。 無料:最もシンプルなAPI主導のビジネスモデルで、アプリ開発者は自由にAPIにアクセスできる。 例:Facebook、Google翻訳 Developer Pays(開発者負担):このモデルは、アプリケーション開発者が提供されるサービスに対して対価を支払う形で運営される。 例:AWS、Twilio、Github、Stripe 開発者が報酬を得る: APIを配布する開発者やコンテンツの提供者が支払う。 例:アドセンス、アマゾンアフィリエイト 10. オープンソースビジネスモデル 例:Android, Firefox, MongoDB オープンソースソフトウェアとは、誰もが個人利用のために調査、修正、拡張できるソースコードを持つソフトウェアのことである。 オープンソースソフトウェアが利益を得るためのビジネスモデルとして、以下のような種類が挙げられる。 有償サポート – ユーザーがコードベースについて多くの知識を持っている場合必要な部分のみパーソナライズして課金する形式。必要な分のみ支払いが発生し、サービスを利用することができる […]

2023年最新 世界の投資家が注目するアメリカ発クライメートテックスタートアップ5選

CO2排出量の削減や地球温暖化への対策など、気候変動対策に焦点を当てた技術やビジネスを指す、クライメートテックがアメリカを中心に今盛り上がっている。 2023年はマクロ環境の盛り下がりによりスタートアップへの投資額が減少しているものの、2021~2022年にかけて多額の資金調達がされている。 クライメートテック領域が盛り上がっている背景には、脱炭素に向けた政府の規制改革・クライメートテック企業に対する優遇策を含む政策が挙げられる。 先進国主要各国は、2050年までの目標として「カーボンニュートラル(脱炭素社会の実現)」を宣言した。 アメリカでは200兆円、中国は170兆円、ヨーロッパも130兆円のクライメート領域への投資を発表。日本も、前述した諸国よりは少額となるが、2兆円のグリーンイノベーション基金を発表した。各国政府による規制改革・クライメートテック企業に対する優遇策が急速に進んだといえよう。 世界最大の資産運用会社BlackRockのラリー・フィンクCEOは、今後1000社のユニコーンがクライメートテック領域から登場するだろうと述べた。(参照) アメリカにおけるクライメートテックの市場規模は、2020年時点で168億ドル(1兆8480億円)。これが2025年には低めに予想して207億ドル(2兆2770億円)、標準的な予想で242億ドル(2兆6620億円)、最大に拡大した場合、301億ドル(3兆3110億円)になるとしている。 今回はそんなアメリカ発クライメートテック領域のスタートアップを見ていく。その中でもソフトウェアサービスを展開してGHG(温室効果ガス)排出量の削減に取り組む企業を5つピックアップした。 アメリカのスタートアップ事情について知りたい方や新たなサービスアイディアを求める方の参考になれば幸いだ。 アメリカ発クライメートテックスタートアップ5選 Persefoni : GHG排出量の算定・可視化・分析プラットフォーム One concern : 災害のリスク可視化プラットフォーム Wren : 個人で始められるカーボンオフセットプラットフォーム Pachama : 植林カーボンオフセットプラットフォーム Blocpower : 建物の脱炭素プラットフォーム 1. Persefoni 2020年に設立されたスタートアップPersefoni社はGHG(温室効果ガス)排出量の算定・可視化・分析のSaaSプラットフォームを手掛ける。 4期目を迎える現在、アメリカ本社の他、日本、イギリス、ドイツ、カナダ、シンガポールに支社があり、4つの大陸に跨って脱炭素社会を後押ししている。 CEOが日系アメリカ人ということもあり、日本への思い入れは強い。Persefoni社は日本にも支社を構え、日本企業の脱炭素社会に向けた挑戦をバックアップしている。 炭素会計分野でのスタートアップは多数あり競争が激化しているが、その中でも炭素会計の分野で一番重要な排出係数を約15万点装備するなど、同社は頭ひとつ抜けている。1億ドルを調達し、より精緻な炭素数値を算出するべくR&Dに取り組んでいる。 炭素会計は財務会計と同じく信頼性が必須だ。 正しい数字をはじき出せない財務会計ソフトウェアは誰も使わない。それと同様、炭素会計も今後、監査や保証が必要になってくるので、同社は信頼できるソフトウェアを開発することを最優先しているのだ。 2. One concern 2015年に設立されたスタートアップ、One Concern社は、災害科学とAIや機械学習を融合することで意思決定を改善するRaaS(Resilience-as-a-Service: サービスとしてのレジリエンス) ソリューションを提供している。 アメリカと日本で事業を展開し、「あらゆる災害による被害を最小化すること」をミッションとしている。大規模災害などによる被害からのレジリエンス(対応力)を定量化することで、自治体や企業がリスクを評価、軽減、または収益化することを支援する。 地球温暖化による気候変動リスク適応の必要性が高まっていく中で、One concern社の災害予測サービスはますます必要性が高まるであろう。 3. Wren 日常生活や経済活動を通して排出されてしまう温室効果ガス。 カーボンオフセットは、個々の排出量削減努力では補いきれない温室効果ガスの排出量について、排出量削減活動への投資などを行うことで、排出超過分の埋め合わせをするアプローチだ。 日本でも企業や団体間で取り組みが広がりつつある一方で、個人レベルでは何から始めたらよいか悩む人もいるだろう。 2019年に設立されたスタートアップ、Wren社が運営するのは、個人レベルで参加可能なカーボンオフセットのプラットフォームだ。 日常生活に関する質問事項に答えると、自分が1年間に排出するだろう二酸化炭素量が計算される。 そして、オフセットをするための投資先プロジェクトをリストアップしてくれるのだ。熱帯雨林の保護プロジェクト、植林プロジェクト、山火事を防ぐプロジェクトなど様々あり、月額のサブスクリプションプランもある。 直近半年間の同社の活動を通して84,490トンの二酸化炭素削減・排出抑止につながったそうだ。ニュースレターの購読者数も倍増し、世界で約10,000人が定期購読している。(参照) 4. Pachama 世界の森林の復元と保全は、大気中の温室効果ガスを減らす最も簡単でコストも安く、シンプルな方法の1つだ。そんな課題を解決するスタートアップがある。 2018年に設立されたスタートアップ、Pachama社は森林由来のカーボンオフセットのマーケットプレイスを運営する。 Microsoft創業者ビル・ゲイツが設立したファンド”Breakthrough Energy Ventures”やAmazon創業者ジェフ・ベゾスが設立したファンド”Climate Pledge Fund”など、著名経営者を含む複数の投資家から総額で1,500万ドルを調達するなど高い評価を受けるスタートアップだ。(参照) 同社はマーケットプレイスの運営だけではなく、衛生画像やドローンで3次元データを独自の機械学習で解析し、カーボンクレジットの対象となる森林で実際にどれだけのCo2が回収されたかを算出及び検証するソリューションも提供するテクノロジー企業だ。 5. BlocPower 2014年に設立されたスタートアップ、BlocPower社は旧式の建物で利用されている古い暖房・冷房システムを高効率・低コストの新システムに入れ替えるリースサービスを展開する。 旧式の建物では、化石燃料をベースとする古い暖房・冷房システムが使われている。これらの古いシステムは、燃料効率が悪く、温室効果ガスの排出や空気汚染を引き起こす。 同社によると、新システムに入れ替えることで、旧式の建物であってもエネルギーコストを30~50%削減、また温室効果ガス排出を40~70%削減できるという。 同社はまた、銀行によって「融資不履行のリスクが高い」と認識されることが多い低所得の借り手が利用できる資金調達オプションの不足にも対処している。 返済不能のリスクを最適に測定する方法の独自の洞察をもとに、ゴールドマン・サックスと提携して、借り手の支払い履歴に基づき、グリーン住宅を購入しやすくする金融商品を開発した。 「グリーン住宅ローン」に例えられるこの商品は、債務不履行のリスクを複数の借り手に分散し、建物の所有者が、同社が推奨する改修を実施できるようにする。そうすることで借り手はグリーン住宅を購入しやすくなり、同社は収益機会が拡大するメリットがある。 まとめ 今回はクライメートテックにまつわる5つのスタートアップをご紹介した。 中でもハードウェアが必要となることが多いクライメートテック領域で、ソフトウェアを強みにサービス展開を行うスタートアップを取り上げた。 2050年までのGHG排出量ネットゼロ目標を達成するべく、さまざまな技術革新が必要となる。中長期的に引き続き盛り上がっていく領域であろう。 btraxは日米に拠点を持つデザイン会社として、引き続きアメリカの最新スタートアップトレンドや、サービスデザイン、ブランディング、マーケティングに役立つサービス情報をお届けしていく予定だ。 弊社のサービスにご興味をお持ちの方はお気軽にお問い合わせください。 Written by Takaaki Sako

思い込みを解消して斬新なアイディアを引き出す「聞く」技術とは

AIが発展するにつれて、筆者のようなデザイナーは「手を動かす」部分が減り、「戦略」を考えることが増えていく傾向にあると考えている。 というのも、AI技術によって、ビジュアルデザインや開発が自動化されていくからだ。 もちろん、現状としてクオリティを高めていく際にはデザイナーの最終調整が必要だが、今後よりAIの精度が高まれば、必要でないケースが増えてくるのではないか。 そうなった時に、デザイナーが真価を発揮するのはアイディアを生み出す時だと筆者は考えている。つまり、他者とは違ったユニークなアイディアを発想することが求められる。 この斬新なアイディアを生み出す上で重要なことは、「他者とは違った角度で物事を見ること」であると考える。 つまり、無意識に感じているバイアスを見つけて、そのバイアスをなくすことで、独創性の高いアイディアを生み出すことができる。しかし、バイアスをなくすことはかなり難しい。というのも、そもそも自分が持つ前提や思い込みに気づきにくいからだ。 本記事では、デザインの活動に限らずビジネスの現場においても簡単に取り入れられる、思い込みを解消するための効果的なアプローチの一つ、「聞く」技術を紹介する。 バイアスや思い込みを解消する簡単な方法「聞く」 思い込みを解消する方法として、最も簡単な方法は他者に意見を求め、その意見を「聞く」ことである。 人間は自分のことを把握しているようで把握できていないものだ。 例えば、自分が映った動画を撮って見返すと、想定したものと違っていたという経験はないだろうか。このように、「自分で自分を知る」ことは案外難しい行為なのだ。 それに対して、他者の視点は自分のことを客観的に把握する助けになる。というのも、他者は自身に関する前提情報が少ないため、よりフラットに自身の情報を把握することができるからである。 これが、他者に聞くことで思い込みを解消できる簡単な仕組みである。 特に関係性が遠い人間ほど思い込みの解消度合いは大きくなる。例えば、短い期間で会っている人に比べてあまり会っていない友人や知人と再会した方が「変わった」と感じることが多いのではないだろうか。 このように、現在の自分から遠い人ほど新しいことに気づきやすいく、思い込みを解消できる可能性を秘めている。 「聞く」技術で得られる3つの発見 「聞く」技術を駆使して思い込みの解消を行うことで3つの発見が得られる。 聞く技術で得られる3つの発見 1. 新しい糸口の発見 「聞く」技術を駆使して思い込みを解消することで新しい糸口の発見をすることができる。 つまり、他者の意見や経験に耳を傾けることで、自分の視点では思いつかない、新たな解決策やインサイトを発見することができるのだ。 特にバッググラウンドが違う異業種/異文化の方に話を伺うと違った角度から物事を見つめ直すことができ、新たな発見を得られる可能性を高めることができるだろう。 「新しい糸口の発見」における聞く時のポイント 相手の言動に注意する: 人は話していることが全てではない。 そのため、言葉だけでなく、表情やボディランゲージにも注意を払い、相手の意図や感情を読み取ることで、本人が自覚していない発見をすることができる。 共感とエンパシーを示す: 相手の意見や感情に対して共感し、エンパシーを示すことで、信頼関係の構築を容易にし、より相手が自分の考えや感情を言葉にしやすい状況を作ることができる。 2. リスクの早期発見 「聞く」技術を活用して思い込みを解消することでミスやエラーを早期に発見できる。 もし、自身の思い込みや偏見に気づかずに行動してしまうと、コミュニケーションの齟齬によりミスやエラーの原因となる。 そのため、他者の意見やフィードバックを積極的に聞くことで、自身の思い込みや誤った認識を早期に発見してリスクを回避することができる。 「リスクの早期発見」における聞く時のポイント 正しい情報をクリアに伝える:「主張」「根拠」「事例」に分けて正しい情報をクリアに伝え、フィードバックをもらうことで、自分のミスやエラーを客観的に捉えることが可能となる。 あなたの行動に関わっている人を把握する:ミスやエラーはステークホルダーとの意識の違いによって生じる。そのため、あなたの行動に関わっている人を把握して積極的にコミュニケーションを取ることで、ミスやエラーを早期に発見することが可能になる。 3. 新しい価値観の発見 「聞く」技術を駆使して他者の意見や価値観に耳を傾けることで、自身の価値観をアップデートする機会が得られる。 思い込みを解消し、異なる視点や経験に敏感になることで、より包括的で開かれた価値観を持つことができるのだ。 例えば、最近筆者は「聞く」技術を用いて幸せの定義をアップデートできた。 具体的には、以前までは、努力した結果成功することをを幸せと考えていた。しかし、ビジネスメディアでとある書道家の話を聞いたことによりリフレーミングすることができた。 番組の中で彼は「成功は資本主義が生み出した一時的な幸せであり、変わりやすいものだ(色即是空)」と述べていた。 それから、幸せの価値観が変化し、日々の小さな出来事に感謝する重要性に気づくことができた。 このように「聞く」技術によって、あなたの生活が豊かになることもあるだろう。 「新しい価値観の発見」における聞く時のポイント 関心と興味を示す: 相手の話に対して関心を持ち、興味を示すことでより多くの情報や洞察を得ることが可能になる。 オープンマインドを持つ:相手の視点や背景を尊重し、新しい情報や考え方に対して受容する姿勢を持つことで、自分の固定観念にとらわれずに新しい概念を受け入れやすくなる。 まとめ 本記事では簡単なバイアスをなくす方法として「聞く」技術を活用することで得られる3つの発見とその際のポイントを整理した。 AIが発達している中で、一人で解決できる問題が増え、人と話す機会が昔より減ってきているのではないだろうか。 ぜひ、外に出てあまり合っていない友人や知人と「聞く」技術を用いて会話をしてみてほしい。そこで生まれる新たな気づきは仕事だけでなく人生を豊かにしてくれるに違いない。 Written by Ryusei Anzai, btrax Japan UI/UX Designer, Innovation Researcher

COACHの “Comeback” – 2000年代の流行から低迷期を経て、人気が再燃した理由とは

2000年初期はコーチにとって全盛期であったともいえるだろう。 レッドカーペット上でも、セレブがこぞってあの印象的なモノグラムのバッグを持ち歩いていた。 惜しくもその人気は長続きせず、いつの間にか「流行遅れ」「古くさい」といったイメージがついていたが、実はここ数年、若い世代に再び支持され始めている。 一体何があったのだろうか?本記事では、全盛期から低迷期、そこから“カムバック”と言われるまでになった復活劇を追い、更にはブランドの今後についても垣間見る。 始まり~全盛期~低迷期 まず、その歴史に目を向けると、コーチは1941年にニューヨーク・マンハッタンで革製品の工房として始まった。 創業者のマイルズ・カーンとリリアン・カーンは夫婦で6人の職人を率いた。彼らは野球用グローブからヒントを得た「グラブタンレザー」を開発するなど、コーチは高いクラフトマンシップの伝統を継承していくこととなった。 その後、時を経て1979年にコーチに参画したビジネスマンのルー・フランクフォートのもと、高い品質と手の届きやすい価格で、中流階級層をターゲットとし、世界に名が知れるブランドへと成長する。“Accessible luxury”の名を手にするのであった。 1996年にはリード・クラッコフがクリエイティブディレクターに就任。ブランドイメージの活性、ポジション向上に大きく貢献し、売上を5億ドルから50億ドルに伸ばしたと言われている。2000年にはIPOを果たした。 コーチのアイコンともいわれるのが、2001年に発表したコーチ・シグネチャー・コレクションである。大胆にコーチの頭文字”C”をあしらったモノグラム柄をフィーチャーしたこのコレクションは、様々なスタイルやカラーで展開された。これが大ヒットし、2000年代初期を代表する“It Bag”となったのである。 しかし、人気を得ることもデメリットとなりうる。高い人気に加えてデザインのインパクトの大きさも相まり、“It Bag”としての特別感を失うのは宿命であった。 また、不幸にもモノグラムは偽物を作る輩の恰好の餌食でもあった。加えて同時期にコーチはとにかく店舗数を増やそうとしたがそれも上手くいかず、多くの商品がディスカウントショップに置かれる始末となった。 この状況は、コーチのブランディングにおいて痛手である。このような状況の中、ブランドは低迷期に入っていくことになる。 復活に向けて 低迷期に入ってしばらくした2014年、コーチはビクター・ルイスをCEOに迎える。(実は彼のコーチへの初参画は2006年、コーチジャパンのCEOとしてである。その後様々なポジションを経て全体のトップとなる。) 彼のもと、業績の立て直しを目指して5カ年計画を立てた。消費者嗜好や市場の変化に対応すべく、プロダクト、店舗のコンセプト、マーケティングの改善が計画の中に組み込まれた。 「コーチは、ファッション的な信頼を取り戻す必要があった」とルイスは語る。まず、デザインディレクションの転換に彼らは立ち切った。 2000年頃のコーチの成功をけん引したリード・クラッコフに代わり、2013年にスチュアート・ヴィヴァースが新たにクリエイティブディレクターに就任した。 スチュアートのもと、コーチのデザインは、身なりの良いWASP(White Anglo-Saxon Protestantsの略、白人の中・上流階級層を指すことが多い)的、プレッピーな印象から、ブランドのルーツを顧み多様性・インクルーシブ・個性の街、ニューヨークを体現するようになった。 画像はニューヨークにあるフラッグシップストアの様子だ。ポップな恐竜のアイコン“REXY”やカラフルなパレットがどこかニューヨークらしさを醸し出しているのを感じる。 また、バッグのデザインもモダン仕様にアップデートされた。2000年代によくみられたゆるい形状から、よりモダンでしっかりした構造のデザインになった。 バッグなどのアクセサリーだけでなくアパレル商品の展開にも踏み込み、名だたるヨーロッパ系のデザイナーブランドのように、シーズン毎にランウェイでコレクションを発表した。 その他にも、キース・ヘリングなどアーティストとのコラボを行うなどしてブランドは徐々にその新しい姿を形成していった。 こういった新しいコーチの姿を世に認識してもらうため、彼らはマーケティングにも力を入れた。 若い世代に訴求すべく、SNSプラットフォームや人気のセレブリティを活用する。 2016年にはセレーナ・ゴメスをアンバサダーに起用した。彼女は当時Instagramで最もフォローされている、若者世代を代表するセレブリティであった。 また2019年にはジェニファー・ロペスをブランドアンバサダーに、その他にもマイケル・ジョーダンなど幅広く人気セレブリティー・インフルエンサーを登用し、SNSへの投稿も頻繁に行うことでオンライン上のプレゼンスを高めていった。 加えて、デパートでの販売チャネルを減らした。セールで安売りされることが恒常化していた状態から、価格やブランドイメージに対してより主導権を取り戻す為と考えられる。 代わりにオンラインストアを強化し、オンラインプレゼンスをより高めていったのは、良い動きであったといえるだろう。 絶好のチャンス、Y2Kトレンドの流行 こうして様々な施策を重ねていったコーチだが、復活を完全なものにしたのはY2Kトレンドの台頭だ。 Y2Kとは“the year 2000”の略で、正確には90年代後半から2000年代初期にかけてのファッションを指している。まさにコーチがアイコン的存在であった時代だ。 このY2Kトレンドの流行は2020年頃から見られ始めたが、Z世代にはノスタルジックながらも新鮮として人気を博した。Z世代が古着やヴィンテージ好きであることとも相性が良かった。 コーチはもちろん、このチャンスを見逃さなかった。2020年には早速、2000年代に大流行したSwingerバッグを現代風に復活させた。キャンペーンにはY2Kのアイコン的存在ともいえるパリス・ヒルトンを登用した。 そしてさらに、復活を加速させたのがPillow Tabbyバッグである。 目を引く華やかな色使いに、まさに枕のような形状。このバッグがSNSで“バズった”のである。(参考までではあるが、Tiktok上で#pillowtabbyのハッシュタグが付いた投稿は5000万回以上、#coachpillowtabbyのハッシュタグでは1500万回以上視聴された。) この頃には、コーチが“comeback”に成功したことは誰から見ても明らかとなっていた。 これからのコーチ、“accessible luxury”から“modern luxury”、そして“expressive luxury”へ さて、ここまでは復活に至るまでのコーチの具体的な動向を追ってきたが、今後はどうなるのだろうか? コーチは長い間、“Accessible luxury”と呼ばれ顧客にリーチしてきた。その後2019年に退任したビクター・ルイスのもと、“modern luxury”への変化を狙ったが、ターゲットをZ世代に見据えた今、そのポジションをまた改めようとしている。 彼らが狙っている新しい位置づけは“expressive luxury”である。 ここ数年、コーチでは消費者フィードバックやエスノグラフィックリサーチに労力を費やしており、その結果からブランドの新しい方向性が見えてきたという。 グローバル・アンド・ノースアメリカ・マーケティング・アンド・サステナビリティのシニアヴァイスプレジデントを勤めるジュン・シルバースタインは、Vogue Businessのインタビューにてこう答えている: 「ブランド表現よりも自分表現、エクスクルーシブよりもインクルーシブ、地位や所有よりも感情や価値観へと、消費者ニーズの変化がフォーカスグループや消費者調査を通して見えてきた」 この言葉は、過去に、btraxではブランドの透明性が高まっているという現象について記事にしたことがあるが、その動きとも共通する部分がある。 これからのブランドはどんどん透明になっていく 消費者はただブランドの透明性を支持するだけではなく、そもそもブランドという権威性に対して疑問を抱いているのかもしれない。あくまで、メインはブランドではなく「わたし」なのである。 そういった意味で、“expressive luxury”というのは非常にしっくりくるし、このポジションに位置するブランドはコーチ以外なかなかないのではないか。 今後も、コーチはアメリカを代表するレザーブランドとして、まだまだ発展し続けるだろう。 Written by Ruqa Oida, btrax Japan Marketing Intern

【Web3をより身近に】XRP LedgerでNFTアートを作ってみた

昨今では、Web3, NFT(Non-Fungible Token:「代替不可能なトークン」)といった単語を聞くことが多くなってきた。実際にWeb3関連のビジネスを本格化する企業も多く出てきた。 我々btraxもパブリックブロックチェーンのXRP Ledgerを活用したソリューションやエコシステム開発で有名な米企業、Rippleとのパートナーシップを締結し、デザイン面からWeb3サービス開発を支援する取り組みを行っている。 先日、XRP Ledgerのブロックチェーン上でNFTを取り扱う新規格「XLS20」がコミュニティ投票を経て実装された。 そこで、本記事では「XRPとXRP Legerという言葉は聞いたことがあるが、一体何なのか」「NFTを作るのは難しそう」と思っている方々に、XRP/XRP Legerとは何か、またXRP LedgerでNFTを作る手順を通じて、それらがどういうものなのかをお伝えしたい。 サンフランシスコのデザイン会社が今Web3に踏み出したわけ XRP、XRP Ledgerって何? まず、XRPとXRP Ledgerを簡単にご説明しよう。 XRP Ledger (XRPL): 2012年から稼働している、決済に最適なL1パブリックブロックチェーン。暗号資産XRPの決済だけでなく、様々なWeb3サービスを実現するための機能を持つ。今回のXLS20によるNFT対応機能の実装もその一つ。サンフランシスコに本社を持つWeb3企業のRipple社はXRPLのオープンソース開発に長年寄与している。 XRP: XRPL上にネイティブに存在する暗号資産(仮想通貨)。XRP(エックスアールピー)と呼ぶ。よく「XRP(リップル)」と呼ばれるがそれは誤り。他の暗号資産としてビットコイン、イーサリアムなどが有名。 XRPLのNFTのメリットは? 現在でもOpenSeaなどNFTを売買するプラットフォームは多くあり、それらは主にイーサリアム系のブロックチェーンを用いることが多い。(※イーサリアムとは、人の手を介さずに契約内容を自動実行できるスマートコントラクトや、契約内容の改ざんを防ぐブロックチェーン技術などが備わったプラットフォームのこと) XRPLのNFT規格(XLS20)はこれらに対して後発になるため、イーサリアム系のNFTに比べて様々な強みがある。代表的なものをいくつかあげよう。 手間がかからない: 開発者のメリットとして、スマートコントラクトを使わずにNFTを発行できる 自動ロイヤリティの支払いに標準対応している(※自動ロイヤリティとは、NFT発行者から購入したユーザーがさらに別のユーザーにそのNFTを売った場合の二次流通の際に、発行者にロイヤリティとして売買金額の一部が支払われる仕組みのこと) 安い: ガス代(取引手数料)が非常に安い。ガス代の価格は変動するため、あくまで参考値だが、本記事執筆時点では、例えばイーサリアムは$0.28となっている。それと比較してXRPは$0.00021だ。 環境に優しい: XRPLはビットコインなどに比べて圧倒的に消費電力が少ない。消費分についてはカーボンオフセットにより脱炭素化されており、世界で初めてカーボンニュートラルになった主要なブロックチェーンであると言われている。そのため、環境に優しいブロックチェーンと言える。 さらに詳しい機能については、Ripple社のバイスプレジデント吉川絵美さんがTwitterにて解説されている。ちなみに今回の記事も吉川さんにご監修いただいている。 XRPレジャーでのNFT機能の新規格、#XLS20 は現在コミュニティ投票中ですが、以下の特徴があります。 ①EVM系チェーンなどと違って、NFT機能がプロトコルレベルでネイティブに実装されている👉スマコンが不要(数行のコードで簡単に書けてしまう。ソリディティ知らなくても簡単にNFT発行できるよ!) — Emi Yoshikawa (@emy_wng) July 10, 2022 NFTをMint(発行)してみよう さて、実際にNFTをMint(NFTを発行すること)してみよう。 この話題は、XLS20が実装されて以来、日本のXRPLコミュニティでも注目されており、きゅーQ氏 (@_TeQu_) が簡単にNFTをMintできるプラットフォームとして XRP Easy NFT を開発している。 日本向けのXRP Ledger NFT発行/売買プラットフォームをリリースしました! 手数料完全無料でご利用いただけます。(トランザクション手数料は除く) ぜひXRP Ledgerを使ってみてください!!!https://t.co/18ZXERus0s — きゅーQ (@_TeQu_) October 31, 2022 今回はこのXRP Easy NFTを使用して、NFTをどう作っていくのか試してみよう。 準備金について 最初に事前準備および初期費用について整理すると、Xumm(サム)ウォレットというスマホアプリのインストールが必要になる。また、そのアカウントの有効化のために一時預かりとなる基本準備金(Base reserve)として10XRPが必要になる。 また、NFTのMintの際には所有者準備金(Owner reserve)として、2023年3月現在は2XRPと処理手数料が必要になる。 ここを少し細かく説明しよう。ここの説明はXRPLの仕組みの話になるため、XRPL開発者以外の方にとっては、「なんとなくそういうものなのか」とざっくり理解していただければ十分だ。 XRPLでは「NFTの保有」や「NFTへのオファー」といったイベントが発生した際にオブジェクトが生成され、そういったオブジェクトに対して準備金が必要となる。オブジェクト1つずつに対して、準備金が必要だ。 また「NFTの保有」の場合、一定個数のNFTをまとめて1オブジェクトとされるため、NFTの数=オブジェクトの数ではない。なお、これらの準備金は、一時預かりのため、条件を満たせば返却される。 基本準備金は、アカウントが削除されると返却されるが、アカウントの削除のために2XRPの手数料支払いが必要になり、この分が引かれた額が戻ってくることになる。 所有者準備金は、上記のオブジェクトが削除・移動などによりアカウントに属さなくなったタイミングで全額戻ってくる。例えば、オファーの場合は、取引が完了したタイミングで全額戻ってくる。 詳細はこちらを参照してほしい。 よって、まずはアカウントの有効化、NFTのMint、それらの処理手数料の合計として13XRPほどあると良いだろう。 ウォレットアプリのインストール手順 Xummアプリのインストール手順として、こちらの記事が参考になる。(注意点として、この記事中に準備金として31XRP必要と記載されているが、2023年3月現在は10XRPとなる。) XRP Easy NFTでNFTをMintする さて、ここから実際にXRP Easy NFTを使ってみよう。 1. XRP Easy NFTをXumm でサインインする まずはXRP Easy NFT(https://xrpeasynft.com/)を開いて、ログインしよう。ログイン画面を開くとこのようなQRコードが表示される。そこでXummを開いて、QRコードを読み込もう。 Xummウォレットの下部メニュー中央のボタンを開くと下記のような画面が開かれるので、「QRコードのスキャン」を選択肢、QRでの認証を行う。認証が無事完了すれば、ウォレットのアプリでログインができる。 2.NFTをMintする ページ上部のメニューから「Mint」を選択する。すると下記のような画面が表示されるので、画像の選択と各種情報を入力する。 「コレクションNO.」に入れた数値は、NFTが所属するグループの番号として機能する。シリーズ化したNFTを作る場合など、グループとしてまとめたい場合は、同じコレクション番号を使用すると良いだろう。 今回はこちらの弊社スタッフが書いたイラストを使ってNFTを作成してみよう。 各項目の入力が完了したら、「発行」ボタンをクリックする。 するとQRコードが表示されるので、再度XummでQRコードを読み込み、Mint処理の承認を行う。この際に、取引手数料として0.000015XRPが必要なことが分かる。 前述したとおり、これは他のブロックチェーンと比べて非常に安いガス代だ。 3.自分のXRPの履歴を確認する Xumm上で承認を完了するとNFTのMintが完了し、作成したNFTの詳細が表示される。 また、ここでMintしたNFTはXRPLのブロックチェーン上に作られるため、XRP Easy NFT以外のマーケットプレイスでも確認することができる。 NFTの確認画面の上部のメニューを開くと「NFTMASTER」、「OnXRP」から作成したNFTを見ることができる。 ただし作成したNFTは、XRPL上のトークンとして存在しているが、現状ではメタデータの取り扱いがプラットフォームごとに違うため、全てのマーケットプレイスで取引可能にはならないようだ。 […]

【学術的に解説】デザインは文系なのか?理系なのか?

著者はサンフランシスコにある大学に通うデザイン科の学生だ。現在Senior Projectと呼ばれる、いわゆる卒業制作の授業を取っているのだが、そこで初心に戻ってデザインの定義について考え直すレクチャーを受けた。今回は、その授業での学びをまとめてみたい。
アメリカの学士号システムについて
まず、アメリカの大学の学士号 (Bachelor’s Degree)は、日本と同様に理系と文系に分けられる。
理系は Bachelor of Science (B.S.) で、文系はBachelor of Arts…

創造的なアイディアを生み出すために「余白」が必要な3つの理由

この記事で伝えたいことは、すぐに行動するのではなくコーヒーを淹れて、自由に優雅に考える「余白」を作ってほしいということだ。
それは結果的に認知疲労を回復させて、多様な視点で考えることを可能にし、創造的なアイディアを生み出す可能性を高めてくれるだろう。
私は大学院で創造的なアイデアを生み出す方法論の研究をしている。というのも、自分自身が成長するにつれて斬新なアイディアを出しにくくなってきていたからだ。
子供の頃は斬新なアイディアが出せていたのに、なぜ今難しくなってしまったのか。
それを様々な論文を参考…

創造的なアイディアを生み出すために「余白」が必要な3つの理由

この記事で伝えたいことは、すぐに行動するのではなくコーヒーを淹れて、自由に優雅に考える「余白」を作ってほしいということだ。
それは結果的に認知疲労を回復させて、多様な視点で考えることを可能にし、創造的なアイディアを生み出す可能性を高めてくれるだろう。
私は大学院で創造的なアイデアを生み出す方法論の研究をしている。というのも、自分自身が成長するにつれて斬新なアイディアを出しにくくなってきていたからだ。
子供の頃は斬新なアイディアが出せていたのに、なぜ今難しくなってしまったのか。
それを様々な論文を参考…

駆け出しデザイナーが日米のbtraxデザイナーに聞く、デザインプロセスとアイディア発想方法

著者はサンフランシスコにある大学でデザインを勉強しつつ、btraxでUI/UXデザイナーとしてインターンをしている。 学生のうちにインターンをすることのメリットの1つは、プロのデザイナーが身近にいるということ。普段は教授と生徒としか関わることができないため、これはとても貴重な経験だ。 今回はこのアドバンテージを活かして、著者が駆け出しデザイナーとして疑問に思う4つの質問を、btrax東京オフィス所属のHiroさんとYuriさん、btraxサンフランシスコオフィス所属のJaredとJCの合計4名に聞いてみた。 1. デザインで課題解決をする場面で、良いアイディアが思いつかない時はどうしていますか? Hironori (以下Hiro): 散歩したり、お茶や食事を挟んだりします。パソコンから離れ、何も見ない状態を作ります。 アイディアが出ない時は、インプット過多だったり、頭の中で整理がついていなかったりする状態なので、一旦それを寝かす時間を作ります。 そのために、散歩したりお茶を飲みに行ったりしてリラックスします。家から歩いて15分くらいのところのカフェによく行っています。 Yuri: シャワーを浴びたり、仮眠をとったりします。もうアイディアが出ない場合、今考えていても出ないと思うので、一回考えることから離れるようにしています。 違うところに目を向けたり、コーヒーを飲んでみたり。それによって新しいアイディアが違うところから出てくることもありますね。 アイディアが出ない時にアイディエーションをそもそもやらないといったメリハリや思い切りも必要かなと思います。集中できる状況と時間を確保して、がっつりアイディア出しを行なって、あとは手を動かすだけにするなど、タスクを分けています。 Jared: デザイン思考のプロセスに沿って考えたり、Pinterestなどのウェブサイトからインスピレーションを探したりします。 それでも良いアイディアが浮かんでこない場合は、知り合いのデザイナーと話してアイディアや違う視点からの意見をもらいます。 あと、デザインリサーチをする前にまずやることは、デザインしているもののトピックに関連する言葉、感情など、ありとあらゆるものをブレインストーミングして自分の考えをカテゴライズすることです。 基本これで充分ですが、それでもどうしてもアイディアが出ない時は、休憩をとるか、タスクから一度離れて、リフレッシュをしてからタスクに戻るようにしています。 Jonathan(以下JC): アイディアが思い浮かばない時は、デザインしているもののトピックに関連するものをリサーチして、違う視点をインプットしたりします。 デザイナーが行き詰まる状況としてよくあるのが、デザイナーがコンテンツを理解していないというもの。 業界、分野、またはトピックを十分に理解していないと解決するのは困難なので、基本的なリサーチはとても大事だと思います。 2. インスピレーションの源泉はなんですか? Hiro: よく美術館へ行きます。人の作品を見て、「この作者はこういう意図で作ったのかな」と想像することが好きです。 自分は骨董が好きで、骨董やアート作品の面白いところは、作り方が変わっているもの、見たことのないような作り方をしているもの、割れていて不完全なものなどがあることです。 そこから作者に想いを馳せ、この作品を作ったのはこういう人だったのかな、と考えています。 あとは作り方を想像してインスピレーションの源泉にすることもあります。 作品の要素を頭の中で分解して、作り方を想像したときに新たな考えを得たり、インスピレーションを得たりできます。 Yuri: 自分にないものをインプットするという意味で、散歩に行ったり展覧会に行ったり人と話したりします。 散歩をすると見たことのない景色を見られたり、リフレッシュにもなります。また、意識的に知識を入れる必要もあると思うので、展覧会に行ったりもします。 デザインとアートは異なるけど切り離せないものだと考えています。色の使い方や空間演出は、見ている側の心理をどう捉えるかという部分では、見据えている所はある程度一緒かなと。そういうところから得るものが私はあったりします。 人と話していると、自分にはない価値観を持っている人が絶対いるので、そういう考え方もあるんだ、とか、同じものを使ってても全然違う捉え方をしていたりとか、逆に私が興味なかったサービスにそういう着眼点を持って見ているんだ、とか、そういった気づきが得られると思います。 Jared: Pinterest、Behance、Muzil、YouTubeからインスピレーションを得ています。作り方のわからないデザインテクニックを見た時はYouTubeでチュートリアルを探して勉強しています。 また、Pinterestではデザインの参考になるようなコラージュを作ったりしています。 JC: 本を読んだり他のデザイナーの作品を見たりしてインスピレーションを得ています。他のデザイナーがどのように課題を解決しているかするかを見て、そこからインスピレーションを得ています。 Muzilのクロームエクステンションだったり、We Are CollinsやPentagramといったデザインスタジオのウェブサイトから探します。ウェブデザインをしている時はGodlyというウェブサイトをチェックします。 JC: 私が大学生だった頃は詩の本もよく読みました。 詩は長いフレーズを言わずに何かを表現するなどといった物事の「抽象化・シンプル化」に長けていると感じていたので、参考にしていました。また、あらゆる種類のクリエイティブ・ライティングや哲学の本も読んでいます。 3. グローバルに通用するデザイナーに必要なスキルとはなんだと思いますか? Hiro: 一番は違いを認められることだと思っています。 特に、僕がbtraxに来てサンフランシスコオフィスのデザイナーたちと話して思ったのは、僕が良いなと思ったデザインをシェアしても、彼らの見ている視点が自分とは全く違うことです。 例えば、アクセシビリティーの部分に突っ込んできたりとか、あとは「イケてる」と思う色の使い方が違ったりとか。 あとはユーザーによってアプリの使い方が意図していたものと全く違う場合もあります。 基本的にユーザーが日本人じゃない人とぶつかると絶対そういう想定外のことが起きるのですが、そこでしどろもどろになるのではなくて、それを楽しんで受け入れて、じゃあどうしようか、という話ができるスタンスは大事だと思います。 Yuri: コミュニケーション能力と、価値観の違いや想定外のことを受け入れられる柔軟性だと思います。 シンプルに言ったら共感性の高さというか、柔軟性の高さです。あまりにも保守的すぎると、異なる価値観に拒否反応が出てしまって辛いのかなと思っています。 これは国内でも同じだと思うのですが、ある程度ちゃんとコミュニケーションができていれば、周りと連携して仕事ができると思います。 ですので、仮に多少英語が拙かったり、スキルがやや足りなかったりする場合も、チームメンバーが一緒にやっていきたいと思える状態であれば協力を仰いで仕事を進めていける場合が多いと感じます。 スキルに関しては、しっかり基礎を固めてあればそのあとは結局もうやりながら学ぶしかないと思いますね。 Jared: 共感できること、コラボレーションが好きなこと、クリエイティブであること。 クリエイティブであることはデザイナーである以上必須だと思います。 あと、他人と一緒に働く上で、その人たちがどういった視点でどういう考え方から物事を見ているかをしっかり理解できる、共感できる力も大切だと思います。 それから、コラボレーションが好きではないと、もうそれは自分だけでデザインしているような状態だと思うので、より良いデザインのためにもコラボレーションが好きだということも1つの大事なスキルだと思います。 JC: 共感力です。 共感するためには違うオーディエンス、文化、考え方の違いをしっかり理解する必要があって、たくさんのデザイナーが苦労する部分だと思います。 自分の経験から身につけたバイアスだけで課題解決するのは難しいので、自分の視点から見た考え方や意見を他の人と交換して新しいメソッドや解決策を模索する、という意味でも共感する力は大事だと思います。 私がbtraxで日本のデザインチームと仕事を始めた時もかなり苦戦しました。 当時私は日本のデザインへの理解が薄く、西洋スタイルのデザインを言語だけ翻訳してそのまま使えば良いと思っていましたが、結局日本人のオーディエンスには合わないものになってしまった経験もあります。 4. UI/UXデザイナーの皆さんがモバイルアプリをデザインする時に重要視する点を教えてください。 Hiro: ユーザーニーズを満たすか、もしくはペインポイントを解決するか。 最低限のUIの規則を壊さないか。 実装可能なUIであるかどうか。 AppleとかGoogleはある程度デザインのガイドラインを設けています。それは、Apple側から「これくらいの文字サイズにしなきゃ読めないよ」など、システムの仕様を明確化しているものなのですが、それらを理解することがスタートラインではないかと考えています。 マインド的な部分で大事だと思うのは、ユーザーにどんなアクションをしてほしいかしっかりとを想定することだと思います。 ユーザーはそれぞれ自分の使い方をするので、我々の意図とユーザーの希望がずれてしまうことも。ずれることが悪いわけではなく、そこかさらに、ユーザーは何を欲しいのかを理解し、それを満たすものになるまで引っ張っていく力は重要だと思います。 あとは、それに気がつくだけの観察力も同様に必要です。一度課題を見つけてしまえば、それを解決する方法はたくさん出て気やすくなるのですが、そもそもの課題を見落としてることが結構あるのではないかと感じます。 Yuri: 情報が整理されているか アプリがユーザーの目的を達成できているか ゴールを達成するまでの優先順位の付け方は適切かどうか 情報設計がされてない状態は、アプリに限らず、見づらいし使いづらくなってしまいがちです。ですので、情報設計は絶対必要、というかむしろデザインのかなりの割合を占めると思っています。 そのためにはまずユーザーが求めていることを理解する必要があります。求めていることといっても、その中でいろいろな考えが出てくるので、優先順位をつけなければならないこともあります。 こうした思考をしっかり持っているかどうかででアウトプットの質は絶対に変わると思っています。 ビジュアルとして完成度が高いことはそれで一つの価値ですが、どちらかといえば私は情報設計をしっかりされてる方が大事かなと思います。 Jared: 5W (Who, What, When, Where, Why) + 1H (How)にしっかり答えること ユーザーの意見を集めてフィードバックを取り入れること 自分がデザインのタスクを行うときは、デザインブリーフやデザインプロジェクトに対してできるだけたくさん質問をし、しっかり理解してベースを固めてからタスクにかかります。 デザインをし終わったあとは、ユーザーの意見とフィードバックを理解してそれをデザインに落とし込みます。それをしないと「ユーザー」のためではなく「自分」のためのデザインになってしまうからです。 JC: デザインで一番大事なのはビジュアルだと考える人も多いかと思いますが、私はアプリのバージョンアップデートのことも見据えて明確なサイトマップ、ビジョン、ゴールを持つこととアプリ内のコンテンツが何よりも大事だと思っています。 コンテンツが足りていない状態、または限られたコンテンツの適切な見せ方を理解していない状態でアプリをデザインすると、必然的に空白を埋めるためにたくさんのプレースホルダーを使うことになります。しかしそのようなデザインは万人受けしにくいでものになりがちです。 また、明確なサイトマップを持つことでデザインそのものよりもっと広い視点でプロジェクトの全体図を見ることができると考えます。 まとめ 今回はbtraxのデザイナー4名に質問をした。著者はまだまだ課題にぶつかることが多いため、行き詰まってしまった時の対処法について聞けたのはとても良かった。 個人的に面白いと思ったのが、アイディアに行き詰まった際に、btrax […]

ディズニーが「コンテンツの世界観」を「ビジネス」にするまで【ディズニーの成功理由①】

今から65年前に、現在のコンテンツ戦略の基礎を築いたコンテンツビジネスがあったのをご存じだろうか? 今も変わらず人々から愛される作品を生み出し続け、誰もがその名前を知る「ディズニー」だ。 一大産業と化したディズニーは、搾取の構造を体現していると非難されることがある。 世界中の童話を「ディズニーナイズ」することで文化を破壊していると言われることも決して少なくはない。 このような相反する反応を引き起こしている背景の多くには作品が体現する価値観と、利潤を追求する企業としての混同も多く含まれているのではないかと考えている。 ディズニーのビジネスはコンテンツとエンターテイメントが相互作用し合いながら、配給するメディアとの関係で成り立っている。 この関係を「作品の世界観」と「ビジネス」の軸で、過去から現在まで掘り下げながら説明していく。 今回から全3回連続で配信する『ディズニーのビジネスモデルから学ぶ、コンテンツビジネスの基礎』、1回目は『ディズニーのビジネスモデルと世界観の礎が築かれるまで』がテーマだ。 質の高いコンテンツがどのようにして生まれたのか、なぜ生まれたかのか。ディズニーといえば著作権が厳しいことで有名だが、一体どうして厳しくなったのかをコンテンツビジネスの観点で紐解いていこう。 ディズニーランドから学ぶ究極のUXデザインとは 作品の成功とビジネスの失敗 ウォルト・ディズニーの挑戦 実はディズニーの創立者、若きウォルト・ディズニーが最初に志したのは「新聞漫画家」だった。 幼い頃から絵に興味を持ち、新聞の掲載されていた漫画を真似ては描く幼少期を過ごした。 学生時代は高校に通いながらアカデミー・オブ・ファインアーツで絵を学び、学級新聞の漫画欄を担当。 第一次対戦の後は新聞漫画家として仕事を請け負えるようになったが、当時の経験が乏しい彼への依頼はまだ少なく苦しい日々を過ごした。 見かねた兄のロイ・O・ディズニーがアート・スタジオでの広告デザインの仕事を紹介したことで職に就くも、翌年の契約更新時に契約を打ち切られて失業。 この仕事を通して出会ったアブ・アイワークスと、1920年にデザイン会社の会社を始めたのが最初の起業だった。 ウォルトがアニメーターとして引き抜かれたために一か月と上手くはいかなかったが、アニメーターとしてのウォルトは徐々に才能を開花させた。今では主流となったセル画をアニメーションの手法として確立させたのもウォルトだ。 最初の起業から二年後、当時では大金だった1.5万ドルを集めてアニメーション映画専門のスタジオ『Laugh-O-gram』を設立。 当初は個人事務所(フリーランス)として活動していたが、コンテンツの質の高さが評価されて仕事が舞い込むようになると次第に人手が足りなくなった。 「良質な作品のためにはビジネスモデルが必要」 最初の起業パートナーであるアイワークスを筆頭にアニメーターを数人引き込み、アニメ制作会社へ拡張を試みたが、会社経営の難しさに直面した。 作品はヒットしたがウォルト自身が制作に没頭するあまり、資金繰りが上手くできず、翌年に会社は破産。 彼が経験を通して学んだのは、「良質な作品を作るためには、しっかりとしたビジネスモデルが必要」ということだった。 作品としての成功は納めたが、当時まだ20歳のクリエイターでしかなかったウォルトはビジネス面で多くのサポートを必要としていた。 その後、再起を図り拠点をハリウッドへと移して兄と立ち上げた会社が今のウォルト・ディズニー・カンパニーの前身『Disney Brothers Cartoon Studio』だ。 1923年10月16日に最初のディズニー社が設立されて以来、ウォルトが大切にした想いはCEOが何代も変わった今でも企業セオリーとして引き継がれている。 コンテンツの流通までに抱えた課題と挫折 資金・流通・権利の課題 若きウォルトの前に障壁となって現れた最初の問題は資金。 そして、次に課題となったのは流通と権利だった。 拠点をハリウッドに移した後、Laugh-O-gram時代に作成した「アリス・コメディ」をシリーズとして販売を開始。 チャールズ・ミンツ社を配給会社として販売が可能になった頃、再びアニメ制作会社へと転進するために、Laugh-O-gram時代のアニメーターや新人アニメーターを集めた。 ↑実写とアニメーションを組み合わせた表現で当時人気を集め、人気シリーズとなった。現在もディズニーの初期作品として知られている。 しかし、アメリカの人気キャラクター「フィリックス・ザ・キャット」とアリス・コメディーのキャラクター「ジュリアス・ザ・キャット」が酷似しており著作権を侵害していると告訴されたために、キャラクターの使用ができなくなってしまった。 経営が軌道に乗り始めた頃、チャールズ・ミンツ社を通して大手映画会社ユニバーサルピクチャーズと繋がりを持ったことで、ディズニー社はアニメ制作会社として飛躍の機会を得た。 著作権を徹底するきっかけとなった挫折 ミッキーの前身である『オズワルド』を考案して、アニメを配給したところ、またしてもシリーズは子供に大ヒット。 しかし、チャールズ・ミンツ社が高額の手数料を要求して、ウォルトがこれを拒否したことで契約決裂。 ユニバーサル社はディズニー社に対して露骨な引き抜きを仕掛け、ほとんどのアニメーターが引き抜きに応じてディズニーを去ってしまう結果となった。 順風満帆から一転、会社は再び倒産寸前へ。大手の他社と提携したことで資金的な余裕を得て、良質なコンテンツを作る環境を得たように思えたが、そのようにして生まれたオズワルドはユニバーサルピクチャーズの契約下に置かれた。 結果的には配給元と自社キャラクターにとどまらず、多くのスタッフまでも失ってしまったのだ。 一方オズワルドは、制作スタッフが幾度も入れ替わったことでファン離れが進み、次第に人気は失われていった。 2006年までの78年間に渡りユニバーサルはオズワルドの権利を所有し続けたために、ウォルトの遺言のひとつに「いつかオズワルドを取り返せ」というものがあったという噂まである。 ウォルトが亡くなった後、オズワルドの権利はディズニーに返されるこのにはなるが…このような苦い体験から、ディズニーは自社制作物の所有権は一部分たりとも他社に与えない厳格な管理をするようになった。 品質の高いコンテンツと運用 ミッキーマウスの誕生 オズワルドとスタッフを奪われたウォルトは、配給可能な新しいマスコットキャラクターが必要だと考えた。 この時に生まれたのがミッキーマウスだ。当時のアニメ手法が革新的だったこともあり、ミッキーは爆発的な人気を誇るキャラクターへと成長を遂げた。 ↑ミッキーの初期代表作「蒸気船ウィリー」 ウォルトは作品を量産するよりも、質の高い作品を作ることにこだわり続けた。 自身がクリエイターだからこそ持ちえたこの視点こそが愛されるキャラクターや世界観生み出し、さらにその作品を活用したビジネスの発想に至った。 ディズニー存続の鍵を握る作品の「質」 ディズニー作品は作品との接点に恵まれている。 そして既に作品を知る人にとっては、繰り返し愛される機会が提供されている。作品は映画館やテレビ、映像媒体やオンデマンドなどを通じて視聴され、同作品はコミックやノベライズされた本として販売されるのだ。 そして、作中で使用した音楽はサウンドトラックとしても楽曲販売される。人気の作品はディズニーランドやディズニーストアでグッズも取扱うようになる。 この他にもゲームや舞台、商品パッケージのコラボなどから作品に触れる機会もある。 そして、これらにはライセンスの利用料という収益が発生する。また、作品として視聴数が稼げる作品自体にもスポンサーからの広告費が入る。 だからこそ、ディズニーの目指すビジネスモデルでは質にこだわり続ける必要があった。 熱狂的なまでにこだわり続ける『質』こそが、作品からキャラクター、または音楽のファンへと変化し、より結びつきを強くさせてきたディズニー『らしさ』の根源なのだ。 ディズニーは著作権が失われた童話を作り変え、その権利を所有することでパブリックドメインのあり方に反すると指摘されることがある。 しかし、ディズニーが権利を保有するのは、あくまでもキャラクターデザインを経て新しく命が吹き込まれたキャラクターのみに限られる。 例えば、マーク・デイヴィスが生み出した不思議の国のアリスに登場するアリスや、眠れる森の美女の魔女のマレフィセントなどがそうだ。 興行収入のみで判断すれば両作品とも成功と言えない結果ではあったが、アリスはその可愛らしさからファンが厚く、魔女マレフィセントはヴィランズの代表的な人気キャラクターとして有名だ。 どちらも実写映画が作られるほどファンが多く、オリジナル作品以外にグッズや二次作品から新たな収益を生み出し続けてきた。 また、近年はミッキーマウス単体で大きな収益に繋がることがなくなりつつあるため、世界観を壊さないようにしながらも新たな世界観のなかに出演するようなケースなども増えてきた。 既存のファンとは異なるファンの獲得を見据えた『キングダムハーツ』、『ツイステッドワンダーランド』のような作品もあるが、わかりやすいのは2010年に発売されたWiiの『エポックミッキー』だ。 本作は、ようやくディズニーに戻ったオズワルドをディズニーの一員としてファンに受け入れて貰うための演出も含んでいる。 エポックミッキーのオズワルドは、登場したときからミッキーのことが嫌いという設定だ。 自分がいるはずだったディズニーのメインキャラクターというポジションを奪われて、生みの親からも手放され、人気が失墜したオズワルドにとってミッキーは嫉妬の対象でしかないからだ。 この世界のオズワルドはミッキーが人々に愛された理由を長い年月かけて研究してきた、別の世界の王様。 舞台はウェイストランドと呼ばれる、モノクロアニメが主流な頃の旧世代のアニメーション作品の世界だ。 現在では優等生なミッキーも、この頃は無邪気に罪を犯しており、物語が進行するにつれてミッキーは自分の過ちを自覚して罪悪感を抱くようになる。 オズワルドは共に行動する内にミッキーに心を開き始め、最後は友達になって終わる物語となっている。 やんわりと現在のミッキーを否定する展開の本作品は、オズワルドがディズニーで生きるはずだった時間のなかにミッキーが入り込む構成となっており、オズワルド不在の約80年間を紡ぎ直して、これからの関係性を丁寧に描いている。 ファンにとっては感慨深さがあり、新たなファンにとってはオズワルドを知る機会になったのみにとどまらず『オズワルドがディズニーへ戻った』というメッセージを打ち出したことでディズニーファンがオズワルドを『ディズニーの世界の住民』として迎え入れやすくしたのが本作だ。 そして、今ではオズワルドもディズニーランドのキャラクターとして加わった。 お馴染みの被り物や、ツムツムのキャラクターとしてグッズ展開もされているオズワルドは、狙い通りにディズニーファンに受け入れられたと言えるのではないだろうか。 このような例からも窺い知れるように、ディズニーから生まれる作品のキャラクターたちは、それぞれがファンに愛されるように想いを込めて作られている。 まさにキャラクターに命を宿すアニメーターから始まった会社らしい思想が作品にも現れていると言えるだろう。 優れた企業セオリーは、戦略を従えさせる シンプルにまとめてしまえば、ディズニーから生まれる作品のキャラクターたちは、それぞれがファンに愛されるように想いを込めて作られている。 まさにキャラクターに命を宿すアニメーターからすべては始まったと感じさせる価値観が企業セオリーに現れていることが、ディズニーの他にはない強みだ。戦略が「価値観」に従い起こした成功と言えるだろう。 技術の変化、消費者の嗜好を理解して業界の発展を予測して、自社の特徴と価値を正しく捉えながら、その2つを組み合わせて生み出す経営資産が「ディズニーの作品」だからだ。 そして、コンテンツの質にこだわり世界観を厳守するのは、運用可能な資産を保有するためでもある。 他の追随を許さない強いコンテンツを運用している背景には、興行収入だけで価値を測ることのできない面も挙げられる。 二次利用による収益へレバレッジをかけて、生涯価値(Lifetime Value:LTV)を最大まで引き出す仕組みを実現するために質の高さを第一に求め、コンテンツの独占権を維持するためには執念すら感じさせるほどの厳格さで守り続けてきた。 権利が守っているのは収益だけではなく、作品の世界観すべてが含まれる。そして、独占権を所有しているからこそライセンスとしてビジネスを発展させることもできるのだ。 これについては、次回以降も触れていくので以降の記事も参考にしてほしい。 — btraxは、サービスのグローバル進出を始めとし、未来を見据えた事業やコンセプトの創出、最適なユーザー体験に貢献することをミッションとしている。 私たちの取り組みは、ユーザーファーストでの新規事業の立ち上げ、ユーザー中心設計での体験やインターフェイスのデザイン、組織変革に活かすためのデザイン思考ワークショップを通じて手法とマインドセットを教授するなど多岐に渡る。 個人、事業、組織のあらゆる規模、プロジェクトを問わずクリエイティビティーを最大まで引き出し、質の高いソリューションやサービスを提供できるように努めている。ご興味をお持ちの方はお気軽にお問い合わせください。 btraxの会社概要・サービス提供事例はこちらから。 Written by Yuri Tanaka, Lead UI/UX Designer at btrax Japan

日米の決済端末機から考えるシニア世代へのデザインアプローチ

先日観ていた日本のテレビ番組で、芸能人がコンビニのセルフレジを使って商品を購入してみるという企画をやっていた。 時間内に特定の商品をPayPayで購入するというチャレンジなのだが、一部の芸能人、主に少し上の世代の方がチャレンジに失敗しているのを見て少し驚いた。 しかし、一緒にテレビを観ていた祖母も「私も使い方分からない」という発言をしていた。 著者の現在住んでいるサンフランシスコベイエリアでは、セルフレジの導入はもちろん支払い関連のデジタル化が進んでいる。 ただ、それに困惑している高齢者はあまり見かけない。スマートフォンの電子ウォレットを使いこなしている方も比較的多い印象を受ける。 そこで、この差はデザイン側の問題なのではと考えたため、今回の記事で模索していく。 btraxサンフランシスコで働くデザイナーが語る、デザインにまつわる3つの日米差 日米の支払い方法の違い ベイエリアではキャッシュレス化が進んでいる。 先日私がTrader Joe’sというスーパーマーケットに買い物に行った際も現金で払う人はおらず、クレジットカードか電子ウォレットでの支払いだった。 対して、日本はキャッシュレス化の兆しは見えるものの、まだまだ現金主義が根強いと感じる。前回帰国した際も、レストランや買い出しでの支払いは現金のことが多かった。 著者が考える大きな理由は2つ。 現金への信頼 キャッシュレス決済導入のコスト この2つである。 1点目に関して、目に見えないところでお金のやり取りをするよりも実際に自分の手で渡す、受け取る方が安心感があるのではないだろうか。 若い世代は支払いのデジタル化にも対応しているが、特に年配の方々の間でこのマインド面の現金主義からキャッシュレスへの移行がまだ浸透していないと思われる。 2点目のキャッシュレス決済導入のコストに関して、これは導入するビジネス側の理由だ。ソフトウェアを導入するのにはもちろんコストがかかる。限られた経済的なサポートの中でのキャッシュレス決済を推進することは簡単なことではないだろう。 ここで、日米のキャッシュレス決済の普及率を比較してみる。 グラフから見て取れるように、日米で普及率に20%の差が見えた。 しかし、コロナの影響もあり両国ともキャッシュレス化が数年前と比べると飛躍的に推進している。 このキャッシュレス化が進む上で問題となってくるのが、デジタルにあまり馴染みのない高齢者へのアプローチだ。 加速していくデジタル化に高齢者が取り残されないためにも、キャッシュレスサービス全般のUI/UXの改善が重要になってくると著者は考える。 日米の銀行での振り込みプロセス 日本でお金を口座に振り込む際、一般的な振り込みプロセスは以下のようになっている: ATMにカードを挿入する 口座情報を入力する 金額を設定する 確定 アメリカでも似たようなプロセスなのだが、これともうひとつ別に「check (cheque)」を利用しての振り込み方法がある。 いわゆる有価証券、小切手だ。給料、家賃、医療費、奨学金、ビジネスなどでも頻繁に使われている。 このcheckを自分の口座に振り込む時、ATMでも可能だが、銀行モバイルアプリで手軽に振り込むこともできる。 銀行アプリを起動 Checkをカメラでスキャン サインを記入 確定 わざわざATMや銀行に出向く必要がなく、どこからでも手元の端末から気軽にアプリを通して振り込みできるシステムは日米のモバイルバンキングの使用率に大きな影響を与えている。 実際にデータを見てみると、日本のモバイルバンキング普及率は17%、対してアメリカは90%である。 モバイルバンキングの普及率を上げるには? 日本人の現金への信頼を考えると、モバイルバンキングへの移行に対する抵抗はなかなかなくならないかもしれない。 実際、ユーザーの満足度が第一優先のため、ユーザーが自分の手で振り込むなどのアナログなお金の管理を好むのであれば、それを無理に変える必要はないと著者は考える。 しかし、それでも金融関係のデジタル化を促進したい場合は、モバイルバンキングアプリのUI改善も一つの手だ。 三菱UFJ銀行と米銀行Wells Fargoがリリースしているアプリのホーム画面を比較してみる。 三菱UFJ銀行のアプリはホーム画面から11つの機能が掲載されている。 対してWells Fargoの方は、残高とアカウント情報がメインで、他の機能にアクセスするには下のタブバーのメニューのページにいく必要がある。 三菱UFJのUIデザインの方が、様々な機能をワンタップで使えるので便利ではあるが、年配の方含めデジタルに疎い方は、このたくさんの情報にむしろ混乱してしまうかもしれない。 Wells Fargoのアプリは他の機能を使う際に一回余分にタップする必要性があるが、アプリを開いた時の混雑感は無いので、「シンプル」な印象を与える。 たくさんの機能をひとつのアプリに詰め込むことのメリットは、ユーザーはいくつものアプリをインストールする必要がなくなることだが、それによってアプリを使いこなせない方々もいるというのがデメリットだろう。 年配の方々も使いやすくするには、タスクを少数に絞って簡易化することを考えるのも重要なポイントかもしれない。 ユーザーエンゲージメントを向上させる7つの要素 日米のセルフレジ 次に、日米のセルフレジ、具体的にはセルフレジの情報アーキテクチャに注目してみる。 コロナの影響もあり、最近は両国とも積極的にセルフレジを導入している。ここでは、ローソンと米スーパーマーケット Targetのセルフレジを比較した。 ここから分かる大きな違いとしては、ユーザーがとるアクションの順番だ。 ローソンのセルフレジは最初に支払い方法を選択、対してTargetはまず商品をスキャンして、支払う直前に支払い方法を選択する仕様になっている。 UXで大切なのはいかに「直感的な」デザインにするかだ。例えばオンラインショッピングをする時、 ショッピングカートに商品を入れる 住所を入力 支払い方法選択 支払い レシートの受け取り 基本的にはこのような順番で買い物をする。またオンラインに限らず対面のチェックアウトの際も、 店員さんに商品を渡す 店員さんが合計額を伝える 支払う レシートの受け取り という順番だろう。 ほとんどの人がこの順番に慣れているからこそ、セルフレジでも応用し同じようなUXになるよう情報設計をするべきだ、と著者は考える。 ここでもう一度Targetのセルフレジを見てみると、上記の順番に沿ってデザインされているのがわかる。こういった直感的で慣れ親しんだデザインは、年配の方々を含め使用率向上に貢献するだろう。 まとめ 今回は、日米の金融関係サービスのUX/UIデザインを比較してみた。 デジタル化と高齢化どちらも進んでいる現在、デザイナーが高齢者向けのサービス、プロダクトをどうやってデザインしていくかが大切になってくる。 米国デザインの特徴でもある「シンプルさ」や「直感的さ」は高齢者にもやさしいデザインのヒントになるかもしれない。 Written by: Suzuka Ito

日本のアニメがアメリカで爆発的な人気を集める理由と事例3選

アメリカにおいて、アニメは絶大な人気を誇っている。 2022年7月にロサンゼルスにて開催されたAnime Expoでは、10万人を越える来場者が駆けつけ、非常に大規模なイベントとなっていた。 下のデータからも分かるように、アメリカのアニメ市場は急速に拡大中であり、2030年には500億ドル以上の収益が見込めるという。 その中でも、日本のアニメの輸出先としても、アメリカは大きな割合を占めている。 今回は、アメリカにおいて日本のアニメがどのように広まっているのかを、btraxが行ったユーザーインタビューと定量データをもとに、認知から定着までのフェーズに分けてまとめていく。 そして、2022年現在アメリカで人気を集める日本のアニメを3作品取り上げ、これらがどのようにアメリカで認知を獲得し、視聴され、人気を集めたのかを、最新の事例とともにご紹介する。 アメリカにおいて、どのように日本のアニメが広まるのか では、アメリカにいる人がどのように日本のアニメを知り、広まるのだろうか。アニメが認知されてから定着するまでの順を追って解説する。 日本のアニメを認知する・興味をもつ btraxの行ったユーザーインタビューによると、アメリカのアニメファンが日本の新しいアニメを知る主なきっかけは、SNSや友人からの口コミであるという声がが多かった。 アニメファンはアメリカのカートゥーンを幼い頃から視聴しているため、アニメに対しては馴染みがあるそうだ。 また、セーラームーン、ガンダム、ワンピースなど、日本のアニメは以前から人気のため、カートゥーンでなく日本風のアニメにも抵抗がないという。 日本のアニメを視聴する アメリカでは動画配信サービスを通してアニメを閲覧するのが一般的だそうだ。主な視聴サービスはNetflix、crunchyroll、MyAnimeListだという。 特に、crunchyrollの会員は年々増加傾向にあり、2021年には500万人を突破したと言われている。 パーソナライズの死角とデジタル・セレンディピティ 動画サービスでの日本のアニメの視聴を加速させる、コード・カッティングの拡大 「コード・カッティング(cord-cutting)」とは、ケーブル・衛星放送テレビの契約をやめ、インターネット経由の動画視聴を選択する消費者動向を指す言葉。 米調査会社 MoffettNathansonによると、2017 年第一四半期だけで、全米で 76万 2000 人がケーブル・通信会社のケーブル契約をコードカット。 その「コード・カッターズ(cord-cutters)」のうち大多数が、動画サービスの使用は継続する意向だという。(JETRO提供のデータ参照) これらの動画配信サービスはアルゴリズムによってユーザーが過去に視聴した作品と類似した「ユーザーが興味がありそうな」アニメをレコメンドするパーソナライズ機能を備えている。 この機能により、1つのアニメを観たユーザーが、個人にレコメンドされた他の作品も次々と視聴していき、さまざまなアニメに触れることによって、アニメ全般に精通していく。 そのような観点から、動画配信サービスは、動画を視聴する目的だけではなく、新たなアニメを認知する場所でもあるといえる。 テレビを持たない選択をする人が増えることで動画サービスを使用する人が増加傾向にあること、そして動画サービスでアニメを視聴することが、アニメの認知拡大に繋がっているといえるだろう。 日本のアニメが拡散され、視聴者に定着する では、日本のアニメはアメリカではどのように拡散され、一度獲得したファンを楽しませ続けるのだろうか。 その1つとして、インターネット上のユーザー同士のコミュニティ活動が挙げられる。 先のユーザーインタビューによると、Discord(アメリカ発のボイス・ビデオ・テキストコミュニケーションサービス)のサーバーでコミュニティを作り、同じアニメが好きな人同士で集まって配信時間にみんなで同時にアニメを視聴し、その後にストーリーの感想や考察を話し合うという文化ができているようだ。 新たな見方や考察などの意見交換を通して交流することで、アニメに対しての愛着がさらに増すのではないだろうか。 また、ポップアップストア、アニメのコラボストアや展示会も、ファンとなった人たちを楽しませ続けるための施策だ。 今回筆者が参加したANIME EXPOも、アニメの世界を体感できる展示や、人が入って楽しめるフォトブースなどが用意されていた。 このようにして、アメリカでの日本アニメの人気が拡大しているようだ。 2022年現在アメリカで人気を集める日本のアニメの事例3選 1. 僕のヒーローアカデミア(My Hero Academia) 『僕のヒーローアカデミア』は2016年に、日本での公開と同時にアメリカでも字幕版が配信されたアニメ。2020年には米国observerによる最も人気なテレビ番組ランキングで2位に選ばれている。 またTwitterでは、原題のローマ字表記「Boku No Hero Academia」を略した#bnha というタグが拡散されている。このことからも、日本のみならず海外でも人気なアニメであることが窺える。 アメリカで人気となったきっかけ アメリカでは、MARVELシリーズを始めとしたヒーロー物の人気がすさまじい。 同アニメは、日本版スーパーヒーローとして話題になり、世代を問わず幅広い層に閲覧されているようだ。 また雰囲気もアメコミ風のタッチで、アメリカのアニメに慣れ親しんだユーザーにとっては馴染みやすい要因でもあるだろう。効果音に「BOOOM」「YEAHHHH」などの英語が含まれていることも印象的だ。 一方、アメリカで人気のアメコミと違う点もある。アメリカの作品はシリーズものが多く、シリーズの途中から視聴しても、キャラクターの背景が分からず理解が困難なことがある。 しかし同アニメは、全てのキャラクターが本作オリジナルで生み出されたものである。キャラクターやストーリーの事前情報を知っておく必要がないのだ。 そのため、観たいと思った時に、シリーズの一番最初から観始めなくても十分に楽しめるようになっている。 アメリカのアニメファンを取り込む施策 本作品は、2022年に米国ロサンゼルスで開催されたAnime Expoにも出典していた。 全日程を通してコレクティブカードゲームのブースを構え、来場者がカードゲームで対戦できる場を提供していた。 上記のように、好きなアニメの世界観に浸るという非日常的な体験を通じて、ファン同士の関わりの場を提供している。 この取り組みにより、公式によるアニメ配信のみならず、アニメがコミュニティによって自然と広まる流れをつくることができる。作品とファンのインタラクションを増加させることができているのではないかと考える。 2. 鬼滅の刃 (demon slayer) 次に紹介するのは2016年に発表された漫画から生まれた『鬼滅の刃』である。 アメリカでも日本での公開とほぼ同時に、Hulu、crunchyroll、Funimationで配信された。 アメリカでテレビ放送がされたのは2019年。さらに本作品は、crunchyrollの2020年のアワードで最優秀作品賞を受賞したことでも話題になっている。 また2020年に公開された劇場アニメ『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、2022年8月現在までに興行収入で404.3億円を記録。この人気は留まることを知らず、本作の原作者・吾峠呼世晴氏は、漫画家として初めて「TIME 100 Next 2021」に選ばれたほどである。 アメリカではR17指定をされているにも関わらず、ここまでの人気を集める今作には、どのような背景があるのだろうか。 アメリカで人気になったきっかけ コロナ禍において人々は、知らず知らずのうちに「死」を意識せざるを得なくなり、不安や恐怖が高まっている。 そこで、同アニメの主人公が困難に立ち向かう様子が、パンデミック中に喪失感や苦しみを抱える人々の心に強く響いたと考えられる。(参考) アメリカのアニメファンを取り込む施策 認知拡大の施策の一つとして、ロサンゼルスのLittle Tokyoでラッピング電車を走らせて認知拡大を図っている。 Little Tokyoはアメリカ人にとっては「日本」を感じる観光地であり、日本文化が好きな人が自然と集まってくる場所であると考えられる。まさにアニメを認知してもらいたいターゲットの層が集まっている土地ともいえる。 その場所で、アニメの絵が大きく描かれた電車を走らせるという大胆なプロモーションを行うことは、ターゲットにインパクトを残し、認知を獲得できる施策だと考えられる。 Spotted in Los Angeles… 👀 #MugenTrain Demon Slayer -Kimetsu no Yaiba- The Movie: Mugen Train is in theaters now! 🚂 🎟️ Buy Tickets : https://t.co/emM6z2X7zC pic.twitter.com/mxFCMavvOH […]

b-side of btrax #5 ユーザーの声を聞き、新たなサービス体験を描くデザインリサーチャーの素顔とは

btraxで働くメンバーをご紹介する「b-side of btrax」シリーズ。 シリーズ第5弾となる今回は、btrax Japanでデザインリサーチャーとして活躍する2人をご紹介します。 グローバルおよび日本市場進出・市場拡大を目指すクライアントさまのサービスやプロダクトを改善するためのユーザーリサーチや、サービスのユーザー価値を可視化するためのデザインワークショップのファシリテーターとして、ワークショップの設計から実行までを担当しています。 今回はデザインリサーチャーとして活躍する2人のバックグラウンドから、btraxへの入社理由、今後btraxで挑戦したいことまで、幅広くお届けします。 btraxではどんな人が働いているの?と気になっている方、ぜひ最後までお付き合いください! Yuma Mitsui / Design Researcher バックグラウンドを教えてください 日本の大学でマーケティングと環境デザイン、そして大学院ではインクルーシブデザインやデザイン思考を専攻しました。 大学院の途中でイタリア・ミラノに留学し、「イタリア流」のサービスデザイン、イノベーションの考え方にも触れることができました。 さまざまな学問領域に触れてきたことで、一つの常識に囚われることなく、常に視点を切り替えながら物事を捉えることの重要性に気づくことができたと思います。 修了後、日本でのデザインファームでのインターンを経て、ハードウェアのデザインを多く手がけるデザイン会社でリサーチャーとして仕事をしていました。 学生生活の途中からデザインを学び始めた身でありますが、デザインの過程のなかでも、ひたすら手と足を動かしながら考えることから、自分を突き動かしてくれる気づきや発想に出会える瞬間に、とても面白さを感じています。 なぜbtraxに入社したのですか? 自分のデザインの範囲を広げたかったからです。 前職のデザイン会社では、乗り物や家電製品など、カタチのあるモノのデザインプロジェクトに多く関わっていました。 その中で、モノとモノ以外とを分けることなく、一連のユーザー体験を重視する案件が増えていきました。 そして、デザインの考え方を活かして新たなユーザー体験を設計すること、そしてより広義に新たなサービスそのものを設計することにチャレンジできる環境に興味が惹かれ、btrax への転職を決めました。 また、ファシリテーションにも多くチャレンジできる機会があること、海外のプロジェクトにも多く関われる機会があるということも大きな魅力でした。 btraxでは具体的にどのような仕事をしていますか? ユーザーリサーチとファシリテーションの仕事です。 ユーザーリサーチは、私たちが生活者(ユーザー)の代弁者になりながら、新たなサービス設計のためのヒントを探す仕事と捉えています。 人々の暮らしを私たちリサーチャーが実際に見聞きすることで、人々がうまく言い表せない願望や悩みの本質、暮らしの中に隠れたルール等を明らかにしていく活動です。 物事をさまざまな視点から捉えることを心がけながら、自分たちのデザインを前進させるインサイトの探求に注力しています。 ファシリテーションを行うプログラムは、教育系のプログラムと、サービス開発の2種類があります。ワークショップの設計、議論の促進や可視化・収束化が主な役割です。 どちらも、参加者の想いを引き出しながら、同時に多角的な視点で問いを投げかけることで、新たなサービスのユーザー価値を最大化することに注力を注いでいます。 btraxでの働きがいを教えてください 常に新たな視点に触れながら、デザインの仕事ができるところです。 プロジェクトはもちろん、常にアメリカ側のメンバーと頻繁にコミュニケーションを取っているので、ミーティングや Slackでは国内外の色々なデザインに関するトピックが飛び交っています。 日本側だけであれば当たり前のこととして流されていきそうな話題でも、アメリカ拠点のメンバーにとっては面白く捉えられることが多いので、そうしたやりとりも自分の発想を広げてくれるスパイスになっていると感じます。 また、様々な業界でデザインの力に期待している人、ユニークな業界で起業を目指す人などと一緒にお仕事ができる機会も多くあります。 自分の生活圏だけでは接点のない人々の暮らしや仕事を見聞きできること、そしてリサーチやファシリテーションの仕事を通じて多様な世界へデザインの力を役立てていけることにも、やりがいを強く感じます。 今後btraxでやっていきたいことはなんですか? まだまだ、デザインの考え方や手法が生かされていくべき業界・世界が多くあると思っています。 取り上げられやすい社会課題だけでなく、多くの人がまだ目を向けられていないような領域に対しても、新たな視点や手法、そしてデザインにチャレンジしていきたいと思っています。 また、デザインの考え方や手法についても、常に学んでいきながら自分自身やチームを成長させていきたいと思っています。 「デザイン思考」を伝える機会も多くあるのですが、そこにこだわりすぎない姿勢、常に学びながら更新させていくことも重要だと思っています。 今興味、関心のあることはなんですか?もしくは、 今ハマっていることを教えてください。 月並みですが、よくカフェ巡りをしています。特にサンフランシスコへの出張時には一日に何軒もハシゴすることもあります。コーヒーの味を楽しむだけでなく、店舗ごとの空間構成を比較したり、そこで過ごす人々の行動を観察しています。 日本国内ではここ数年、友人数人と一緒に、地方の古民家のリノベーションに取り組んでいます。 友人同士で共同利用できるセカンドハウスのつもりで購入したのですが、壁紙を張り替えたり、和室を洋室に変えたり、洗面台をイチから作ったりしているうちに、考えながらより良い空間を作ること自体が楽しくなってしまいました。 国内外で得た空間デザインに関するインスピレーションやスキル(まだまだ日曜大工レベルですが)を、近い将来、空間デザインとそこでの人の体験を考えるデザインの仕事にも活かせたらと思います。 Mari Kimata / Design Researcher バックグラウンドを教えてください 日本生まれ、アメリカと日本育ちです。東京の美大を卒業後、アメリカニューヨークのアートスクールに通いました。 学生時代は、グラフィックをはじめとして幅広くデザインを学び、後半では主にデザイン思考を勉強していました。 もともと画像編集などクリエイティブなことをするのが好きだったため、デザイン科に入学しましたが、デザイン思考というものについては入学当初は言葉すら知りませんでした。 美大に入ってからも教授の授業を受けている中で、「あ、これがデザイン思考なんだ」と知りました。実はゼミに入る前もよくわかっておらず(教授がデザイン思考という言葉をあまり使わなかったため)、「デザイン思考」という言葉よりも、このゼミは面白そうという気持ちで始まりました。 なぜbtraxに入社したのですか? デザインができること、グローバルな環境で仕事ができること、この2つがマッチしたのがbtraxでした。 大学以降ずっとデザインを学んできましたので、デザイン以外の仕事をするということは考えられませんでしたし、幼少期に海外に住んでいた経験も活かせると思ったからです。 日本にもデザイン会社は無数にありますが、デザイン思考的プロセスを使ってサービス開発を行っている会社は少ないので、とても良い出会いだったなと感じています。 btraxでは具体的にどのような仕事をしていますか? 主にデザインリサーチャーとして、ユーザーがどんなことを求めているのか、どうしたら心地よくサービスを使えるかを、ユーザーインタビューなどを通じてリサーチし、考えるということをしています。 自分とは全く違うタイプの人間(ユーザー)が、どんなことを考えて行動をしたり、どんなときにどんな感情になるのか、というのをインタビューを通して知り、分析するのは、とても楽しいです。 btraxでの働きがいを教えてください。 チームメンバーひとりひとりの個性が発揮されることだと思います。バックグラウンドがみな違うので、性格や得意分野もみなそれぞれです。チームメンバーのスキルを掛け合わせてプロジェクトが進む感じがとても楽しいです。 例えば同じテーマで何かをリサーチするにしても、マーケターはマーケター目線でトレンドを捉えていたり、デザイナーはデザイナー的観点で物事を見ていたりと、さまざまな方向から材料が集まり、それが良い具合にまとまると気持ちが良いです。 また、日本チームとアメリカチームが一緒になってひとつのプロジェクトを行うのも、btraxの魅力だと思います。 全体が小さいチームであるからこそ、メンバー間でのコミュニケーションも活発に行われ、国を跨いでいてもメンバーとの距離が近く感じます。(オンラインでミーティングをしていると、いま誰が日本いるんだっけ!?となることもあるくらいに違和感なくメンバー同士が関わっています。) 今後btraxでやっていきたいことはなんですか? btraxでは日本/海外間でのサービス開発やローカライゼーションを行っていますが、それを引き続き様々なプロジェクトで行っていきたいです。 日本ブランドが海外に展開されること、海外ブランドが日本に入ってくること、どちらも、どうしたら現地の人に受け入れてもらえるようなものになるのかを考えながらサービスを作っていますが、自分自身も常に新しい気づきが多く、ワクワクします。 国が違うと生活スタイルや環境が異なるので、人の考え方やものの感じ方なども異なります。今までの海外経験での感覚や、ユーザーインタビューから得る情報で、どんなものがターゲットにフィットするかを考えています。 今興味、関心のあることはなんですか?もしくは、 今ハマっていることを教えてください。 プライベートでは、様々なジャンルの表現者が集まるためのパブを週末に友人とやっていたりします。アートやデザインの分野だけにとどまらず、様々なクリエイターとお話しできることがとても楽しいです。 あと、日頃からフィルム写真を撮ることが好きですが、最近中判フィルムカメラを手に入れたので、早くそれで撮影したいです。 おわりに 今回はbtrax Japanでデザインリサーチャーとして活躍するお2人をご紹介しました! btraxのメンバーのことを少しでも知っていただけたでしょうか? 今後もbtraxは、日米双方のクライアントさまに対して、デザインの力で国を超えた橋渡しをし、新たなビジネスを生み出すお手伝いをさせていただきます。 btraxについて、より詳しく知りたい方は、弊社のサービス情報がまとまったサービスページをご覧ください。

企業メッセージを効果的に伝える 海外のブランドポッドキャスト事例5選

筆者はポッドキャストを聴くことが好きで、3年ほど前からよく聴くようになったが、最近では企業の配信が増えていると感じる。 ブランディングの一環として企業が配信する「ブランドポッドキャスト」とは、直接的に会社や商品のプロモーションは実施しないが、ブランドメッセージを伝えつつ、オーディエンスが知りたいと思うような有益なコンテンツを提供しているポッドキャストのことを指す。 日本はブランドポッドキャストが徐々に増えてきている段階である一方で、アメリカでは制作を専門に請け負うポッドキャスト制作会社が増加している。 ポッドキャストプラットフォームでのコンテンツ配信に加え、Youtubeにもポッドキャスト収録風景をそのまま配信する形式がスタンダードになりつつある。 Podcast広告がブランドの認知度アップに役立つ3つの理由 拡大するポッドキャスト市場 なぜ今企業がブランディングとしてポッドキャストに力を入れているのか。 その背景には、世界的なポッドキャスト市場の拡大がある。世界のポッドキャストのリスナー数は年々増加傾向にあり、2025年には8億人を突破すると推測されている。(参考) それに伴い、企業が配信するブランドポッドキャストの数も年々増えている。 また、Spotifyによるポッドキャスト分析企業であるChartableとPodsightsの買収や、最近ではAmazon musicでの番組オリジナルコンテンツ配信などからも、コンテンツ配信企業各社のポッドキャストへの注力が見て取れる。 ブランディングに有効なポッドキャスト 冒頭で述べたように、市場の拡大以外にも、ブランディング施策として有効であることを示すデータも出ている。 ポッドキャストの親密な会話形式の環境が、ブランド認知度やブランド指向、好感度、購入意思をも増加させているのだ。 リスナーと密なコネクションが築けることで、ブランドイメージ強化につながっている。(参考) むしろポジティブな効果を発揮する「ながら聴き」 もしかしたら、動画などと異なり注意を惹きつけない音声コンテンツは、印象に残らずちゃんとコンテンツを届けられていないのではないか、と思う方もいるかもしれない。 しかし面白いことに、ながら聴きがむしろブランドイメージを印象付けるとの調査結果がある。 ポッドキャストリスナーの94%が他のタスクをしながら聴いているにも関わらず、むしろエンゲージメントや感情移入、ポッドキャストに対する長期記憶が上がっているというのだ。(参考) このように、侮れない効果を持つポッドキャストをブランディング施策の1つとして活用する企業が増えてきているのが現状なのだ。 今回は海外のブランドポッドキャストの事例について紹介する。 中でもポッドキャストやコンテンツ配信を本業とする企業ではないものの、アクティブにポッドキャストを配信している企業やブランドの事例に絞ってご紹介する。 音によるブランディング 「サウンドロゴ」の基本と企業事例 海外のブランドポッドキャスト事例5選 1: Trader Joe’s: Inside Trader Joe’s 全米に530店舗以上を構えるスーパーマーケットチェーンによるポッドキャスト。季節ごとにおすすめ商品の紹介やTrader Joe’sで働く人々の話が楽しめる。当初シーズン5までの予定だったが、あまりの人気に現在シーズン11まで続いている。(参考) ショッピングリストと称した是非とも食べてみたくなるおすすめ商品の紹介など、とても実用的で生活に根ざしたコンテンツであることが人気の所以であろう。 筆者のおすすめ Trader Joe’s プロダクトのパッケージやラベルデザインを行うチームへのインタビュー Episode47: Trader Joe’s Design Delicious よくあるプライベートブランド商品は、1つの共通したデザインで展開されていることが多いが、Trader Joe’s プロダクトは商品ごとに異なるパッケージデザインがなされている。 それだけパッケージに対してこだわりのあるTrader Joe’sでは、普段どのようにデザイナーたちがデザインのアイデアを出しているかなどが語られており、パッケージデザインを考える上でのアイデアの見つけ方が参考になる。 2: Shopify: Shopify Masters EコマースプラットフォームであるShopifyによるポッドキャスト。 起業家や自身でEコマースビジネスを始めたクリエーターらのリアルなビジネスの話、ブランドを作り上げていく過程をインタビューを通して知ることができる。 これからEコマースビジネスを始めようとしている人への参考情報とともに、誰でも簡単にEコマースビジネスのオーナーになることをサポートするプラットフォームとしての、Shopifyのブランドイメージを発信している。 筆者のおすすめ 100% プラントベースのインスタントラーメンスタートアップ、immiへのインタビュー How This Plant Based Ramen Brand Built A Community of Thousands Prior to Launching immiは、共にアジア系のバックグラウンドを持ち、モバイルゲームのプロダクトマネージャーだった2人の創業者が、様々な業界のテックカンパニーを経験したのちに立ち上げたインスタントラーメンのブランド。 ラーメンに対しても、それまでのプロダクト開発の経験が生かされたプロセスやスピード感で事業を進めている様子が窺えて興味深い。 3: Ben & Jerry’s: Into the Mix アイスクリームブランドであるBen&Jerry’sによるポッドキャスト。 社会問題に対しメッセージを積極的に発信していることで知られるBen&Jerry’s。 ポッドキャストもブランドが大切にしている価値観を表現するような、アーティストやアクティビストらのインタビューで構成されている。 あえてプロダクトではなく、ブランドや企業としての取り組みにフォーカスしている、というのも一つの戦略なのかもしれない。 筆者のおすすめ 環境問題に積極的に働きかけているパンクアイコン・Patti Smith氏らへのインタビュー Episode7: Patti Smith and Bill McKibben 1970年代からニューヨークを中心に「クイーン・オブ・パンク」としてカウンターカルチャーを長年音楽で牽引してきたPatti Smithの団結を呼びかける言葉には力を感じる。 彼女以外にも様々な人へのインタビューを通し、企業が社会的使命を明確に打ち出すことで、そのメッセージに共感する人々がBen&Jerry’sのファンになり、ブランドイメージをより強化している。 4: 3M: Inside Angle 3M Health Information Systems による番組。 ヘルスケアシステム全体に切り込んだトピックにおける、専門家らの様々なチャレンジを聴くことができる。 ヘルスケア領域のUXデザインやオンライン診療についてなど、ヘルスケアに関わる人やサービス設計者が知りたいと思う第一線の情報を得られる場となっていると考えられる。 他にも”What’s Next”や”Science […]

【ファシリテーションの裏側】円滑なワークショップ運営のためのツールと活用事例

btraxのサンフランシスコオフィスでは、10週間のデザイン思考ワークショップを提供している。 このワークショップの参加者は、サンフランシスコに滞在する間、スタートアップになりきってサービス開発を行う。 筆者は現在、ファシリテーションアシスタントとしてワークショップに携わっており、ワークショップ運営の実態を目にする機会があった。 そこで本記事では、ワークショップを円滑に進めるためのツールと活用方法について、実際の事例とともにまとめていく。 ちなみに今回のワークショップは、オフラインとオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で開講されている。 そのため本記事では、オンラインのみで開催するワークショップでも利用可能なツールをご紹介する。 Slack 最初にご紹介するのは、皆さんご存じのコミュニケーションツールSlackである。 Slackは、ワークショップ中のレクチャー資料共有、チーム内のコミュニケーション、健康管理などの用途で使用されている。 ここでは、4つのチャンネルとその活用方法をご紹介する。 ➀#interview まず最初にご紹介するのはインタビュー専用のチャンネルである。 本ワークショップでは、1対1のオンラインインタビューを通して、実際の生活者の声を聞く機会を設けている。 その際、インタビュー中にのみ活用されるチャンネルを用意している。このチャンネルには、主に2つの活用方法がある。 1つ目は追加質問を共有する場としての役割だ。 チームのメンバーやファシリテーターが、さらに深掘りしたい質問をSlackに投稿する。インタビュアーやアシスタントはそれを見て、臨機応変に追加質問を尋ねていく。 2つ目に英語力のサポートのための活用方法がある。 参加者の中には、海外在住や留学経験がある方から、全く英語に自信のない方まで、様々な方がいらっしゃる。 そこでスタッフは、英語力に不安のあるチームのために、英語表現の修正やインタビューのサポートを行う。 英語表現の面では、インタビュースクリプトやピッチ資料などの翻訳作業を行ったり、より伝わりやすい言葉選びを提案したり、といったサポートをしている。 またインタビューの際には、スタッフはインタビューの様子を見ながらユーザーの発言を同時通訳してSlackに打ち込む。 参加者はその訳を見て、相槌を打ったり、次の質問を考えることができる。 事前にチームとファシリテーターで相談し、インタビュー時に使用するチャンネルとその用途を共通認識として決めておくのだ。 それにより複数のチャンネルを行き来する必要がなくなり、インタビューに集中しやすい環境をつくっている。 ➁#health-check 次にご紹介するのは、「health-check」チャンネルである。 コロナ禍でも安全にワークショップを行うためには、事前のルール作り、そして関係者間での綿密なコミュニケーションが欠かせない。 私たちは、ワークショップの事前準備として、San Francisco Department of HealthやCDCを参考にoffice use protocol(オフィスの使用規則のようなもの)を作成している。 政府機関の規則には変更が多いため、毎回のワークショップで一から内容を見直す必要があるのだ。 オフィスの入口には、アルコールジェルと体温計を用意している。 ワークショップの期間、参加者は体温計で体温を測定し、毎朝Slackに報告する仕組みがある。 ➂#things_you_learned 3つめは、一日の学びや疑問を共有するチャンネル「things_you_learned」だ。 参加者は、一日のワークの終わりに[Fact] [Thought] [Question]の3項目を投稿する。 それを翌朝のチェックインで発表してもらい、各々の悩みや質問を全体で考える機会をつくっている。 これには参加者一人ひとりが一日の学びを振り返るだけでなく、互いの学びや感想を見ることで相互作用を生む狙いもある。 ④btrax_internal 次にご紹介するのは、スタッフ用の「btrax_internal」チャンネル。 ファシリテーションとは、やるべきことや手順が教科書のようにはっきりと決まっているものではない。 参加者一人一人の様子や、チームの雰囲気、議論の流れを見て、その場の状況に合わせた対応が必要となる。 そのため、ファシリテーターは、臨機応変な対応ができるよう、常に意識している。 柔軟な対応を可能にするには、ファシリテーター同士の綿密なコミュニケーションが不可欠だ。 このチャンネルはそのようなコミュニケーションの場として活用されている。 これらは、より実りあるワークショップを参加者に提供するべく行われている工夫なのだ。 FigJam 次にご紹介するのはFigJamだ。こちらもデザイン業界では良く知られている、コラボレーション型デザインツールである。 ワークショップ初日には「How to use FigJam」という時間が設けられている。 この時間では、参加者に自己紹介シートを作成するという課題を与え、実際に手を動かしながら使い方を覚えてもらう。 FigJamは、毎日のチェックイン・チェックアウトの他、宿題の提出やチームごとのオンラインホワイトボードとしての役割を担っている。それぞれ詳細に見ていこう。 ➀チェックイン・チェックアウト btraxでは、チェックイン、チェックアウトという時間を設けている。 これは、参加者が1日の始まりと終わりに集まり、自身の気分を共有する場だ。 この時間を取ることによって、参加者は「参加者としての気持ちの準備」をしたり、1日を振り返ったりする機会を得られるのだ。 対面のワークショップでは、気持ちの書かれた画用紙に人形やシールを置き、メンバーに共有する。 一方、オンラインでチェックインを行う際には、対面で行う際と変わらない環境を提供するため、シートをFigJam上に用意する。 「チェックイン」とは ワークショップで実践する際の狙いとコツ ➁宿題の提出・共有 続いての活用方法は、宿題の提出と共有である。 ワークショップを通しての目標や、フィールドワークでの発見など、参加者に宿題を出すことがしばしばある。 宿題には、シートや文章を穴埋めするスタイルのものが多い。 参加者はFigJam上のシートに自らの答えを書き込み、全体で発表する。 またこれらに加え、ワークショップ運営に欠かせない機能が2つある。 まずはFigJamのboardの右上から設定できる、タイマー機能である。 このタイマー機能によって、発言の持ち時間を管理したり、ブレインストーミングの時間を決めたりすることができる。 ワークショップにおいては、敢えて時間を決めて議論を前に進めてみることがある。この機能は、そういった時にも非常に役立つのである。 さらにFigJamには、チームのコミュニケーションを促す機能が多く含まれている。 そのなかでも今回はコメント機能とGoodスタンプの活用方法についてご説明する。 Goodスタンプは、チーム内での投票や、互いのアイディアに軽いリアクションをするときに非常に便利な機能である。 またファシリテーターが、議論の流れを止めずに助言をしたいときには、しばしばコメント機能が使われている。 この機能によって、会話を途切れさせることなく、それでいてメンバーの目に自然に入る場所に、文字を残しておくことができるのだ。 口頭の発言だと、直接細かなニュアンスが伝えられる代わりに、どうしても話の流れを止めてしまうことがある。 コメント機能は、それを補う形で活用できるアイテムでもあるのだ。 こういった活用方法によってbtraxでは、ワークショップの開催形態に囚われず、クオリティを維持することができている。 デザイナーがファシリテーションをしてみた btraxオフィス 最後にご紹介するのはズバリ、btraxのサンフランシスコオフィスである。 オフィスに常備されている備品はザっと以下のようなものだ。 消毒ジェル、スプレー、スナック、コーヒー、クッション、付箋、ペン、イーゼルパッド、ホワイトボード、アイディアペイント、マーカー デザイン思考の実践に最適な4つのオフィスアイテム これらは、オフィスの利用者たちにクリエイティブな思考を促すアイテムたちである。 ワークショップの参加者はこういったアイテムを自由に使って議論を進めることができる。 これらの備品や食べ物の補充も、ファシリテーターの重要な仕事の1つだ。 またオフィスにはいくつかの部屋があるが、それぞれの部屋が個性を持っていて、雰囲気も異なる。 そのため議論に詰まった際には、気分転換のための部屋移動をファシリテーターから提案することもある。 15周年を迎えるbtraxについて知っておくべき15のこと さらにワークショップの期間には、オフィスで毎朝30分のヨガ教室が開講される。 一日の始まりに心と身体を整え、気持ちよくワークに入ることができる。 このようにbtraxでは、オフィスそのものの環境づくりにもこだわっている。 デザイン思考のファシリテーターは、なぜポストイットを使わせるのか おわりに ここまで、ワークショップで使用されているツールとその活用事例をご紹介したが、いかがだっただろうか。 「デザイン思考」や「ワークショップ」と聞くと、捉えどころがなく抽象的な印象を受ける方は少なくないだろう。 本記事では、そんな実態の見えにくいワークショップの「知られざる一面」をお見せした。 btraxは、10週間のプログラムのみならず、新サービスの開発や、デザイン思考研修にてワークショッププログラムを設計し、提供している。 サービスにご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。 ワークショップの目的・心得やファシリテーションのコツについては、以下の記事も併せてご覧いただくと、より理解が深まるだろう。 ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ ファシリテーションとは?議論を前進させる基本のメソッド Ideas […]

デザイナーが陥りがちな5つの認知バイアスとよくある失敗例

大学院に進学してイノベーションの研究をしたおかげで、気づけたことがある。 その一つが、バイアスを理解することの重要性だ。 私はUI/UXデザインの仕事を一度離れてイノベーションの研究をするまで、自分が効率化を求めて無駄を排除するような、「柔軟性に欠けた人物」であることに気がつかなかった。 というのも、仕事をしている間に無意識に周りに影響され、先入観(バイアス)を持ってしまっていたからだ。 もちろん、仕事の効率化を求めることは大切だが、創造力が求められる現場だと、このバイアスが邪魔になることも多い。 例えば、新しいコンセプト提案を依頼されたときに、その仕事に慣れている人が効率を重視した方法で行うと、斬新なアイディアが出にくくなる傾向がある。 実際にKim & Ryuの研究によると、経験を積んだデザイナーは、そうでない人と比較して問題のカテゴライズに慣れているため、最初に定義した問題に執着する傾向があることが示唆されている。 このように、仕事への慣れにより、無意識に創造力を下げるバイアスに陥ることがある。 そのため、この記事では創造力を高めたいデザイナー向けに、デザイナーの仕事に慣れることにより無意識にかかりうる5つの認知バイアスと、それらの認知バイアスにかかってしまった際に起こりうる失敗例をピックアップしてご紹介する。 1. ダニング・クルーガー効果 (dunning kruger effect) ダニング・クルーガー効果とは、初心者が少し仕事に慣れて自信がつき、「優越の錯覚」をした時に起こりやすいもので、正しく自己評価できずに、自身を過大評価してしまうことである。 逆に専門家は同じくらいの自信を持っていても、適切な判断ができるのでダニング・クルーガー効果は起こりづらい。 ダニング・クルーガー効果では下記のような曲線図が広く取り上げられている。縦軸が自信の度合い、横軸が知識や経験を表している。 初心者の段階では、知識や経験が増加するにつれて大きく自信が付き始め、「優越の錯覚」にたどり着く。「優越の錯覚」では完全に物事を理解したつもりになり、自分の行動に対して肯定的になる。 しかし、その山を越えてより知識をつけていく過程で、自分の知識と経験はまだまだ不足していることに気づき、自信を失って、「絶望の谷」に陥る。 そしてそれらをさらに乗り越えることで「継続の台地」に至る。この段階は、更なる学びと経験を繰り返しながら、謙虚さと自信の両方を合わせ持っている状態だ。 自分の苦手なこと、得意なこと、知らないこと、知っていることをそれぞれ理解しており、適切な自己評価ができる状態とも言える。錯覚ではない本当の自信がついてくる時と言われている。 ここで重要な点は何に対して初心者であるかだ。 例えば、クライアントワークで今まで経験しなかった領域のプロダクトに携わるとき、クライアントワークという点では専門家であるが、その領域に関しては初心者の状態になる。 そのため、このバイアスは経験豊かな人でもかかり得る可能性が大いにある。 よくある失敗例: コンセプト立案の際に、既存のやり方に固執したことが原因で、新しい視点を持てなくなり、結果的に斬新な提案ができなくなってしまう。 UIデザインの際に他領域の方の声を聞かずに自分の正しいと思った方向に一直線で進んでしまい、偏った考えでデザインの制作をしてしまう。 2. デザイン固着 (design fixation) デザイン固着とは、既存のデザインの特徴に過度に依存してしまい、デザイナーの創造的なアウトプットが制限される状況である。 例えば、仕事に慣れたデザイナーは短時間で高いアウトプットを出すために、一つの要素にこだわる傾向がある。 そして結果的に、幅広いデザインスタイルの検討ができなくなり同じようなビジュアルが生まれてしまう可能性がある。 よくある失敗例: デザイン制作の際に最初のデザインにこだわって幅広い案を検討することができなくなってしまう。 デザインプロセスを進める際に最初に出たアイディアに固執して、方向性を大幅に修正することができなくなる。 3. サンクコストバイアス (sunk cost effect) サンクコストバイアスとは「もったいない」という感情に縛られて、合理的な判断ができなくなることである。 例えば、仕事に慣れたデザイナーがデザインスプリントを行う際に、時間対効果的に「もったいない」無駄なことを避けて、いつも通りのやり方を選ぶ傾向がある。 これにより、失敗はしないが、革新性のあるアイディアもまた生まれにくい。 よくある失敗例: 新しいコンセプト提案をする際に、自身の専門知識を元にした方法に固執し、新しい視点が持てなくなり、結果的に斬新な提案ができなくなってしまう。 新しい機能についてアイディアを発散する際に、時間対効果を高くするために既存のアイディアの発散のやり方で進めてしまった結果、斬新性の低いアイディアになる。 UIデザインを制作してフィードバックをもらった際に、既存の素材を捨てるのがもったいないと思い、大幅にデザインを変更することが難しくなる。 4. 認知的定着 (cognitive entrenchment) 認知的定着とは、ある分野の知識が豊富なために、その知見に固執してしまい、新鮮な視点で物事を見ることがしにくくなってしまうことだ。 例えば、医療分野の経験が豊富なデザイナーが医療に関する新しいサービス案を考えるように指示された時、彼らは経験の浅いデザイナーよりも創造性が低い提案が多い傾向がある。 というのも、疑うべき前提を当然のことのように考えてしまい、革新的なものが生まれにくいからだ。 よくある失敗例: 新しいコンセプト提案をする際に、自分が専門にしていた知識からの引用のようなアイディアが多くなってしまう。 ランディングページを制作する際に、専門用語を無意識のうちに多用してしまう。 5. 同調バイアス (conformity bias) 同調バイアスとは、他者がどう行動するかを参考にして同じ行動をとることだ。 例えば、企業で働くデザイナーはその企業のカルチャーやデザインプロセスに染まり、新しい考え方を持つのが難しくなる傾向がある。結果的に、既存概念を破壊するアイディアを創出しにくくなる。 よくある失敗例: 知らず知らずのうちに所属組織のカルチャーやアウトプットの方法が染み付き、行うべき議論を疎かにしてしまう。 上司のやり方を真似するうちにそのやり方が染みつき、自分のオリジナリティのある考えが減ってしまう。 まとめ チェスの研究では、「プロプレイヤーは既に知っている情報への認知バイアスを防ぐことができないが、一流プレイヤーはできる」と述べられている。 デザイナーの場合もスペシャリストを目指すには、認知バイアスを理解して自分のフレームを知ることが重要になってくると思われる。 そのため自分も、引き続き認知バイアスを学び続けて、デザイナーとしてスペシャリストになれるよう努力したい。 もっと認知バイアスについて学びたくなったら: デザイナー必見!知っておきたい10の認知バイアス マーケティングに役立つ8つの認知バイアスとその活用事例 参考: Kim & Ryu ​​A design thinking rationality framework: framing and solving design problems in early concept generation (https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/07370024.2014.896706) Chess Players Inflexibility of experts—Reality or myth? Quantifying the Einstellung effect in chess masters […]

b-side of btrax #4 デザインの力で日米のクライアントさまをサポートする、btraxのマネージャーの素顔とは

btraxで働くメンバーをご紹介する「b-side of btrax」シリーズ。 第4弾となる今回紹介するチームは、btrax Japanにてゼネラルマネージャー、シニアアドバイザーを務めている2名です。 btrax Japanの会社全般のマネジメント、クライアントさまや外部の方との関係構築、プロジェクトの進行管理、法務、経理など、その業務は多岐にわたります。 今回はお2人のバックグラウンドから、btraxへの入社理由、今後btraxでやっていきたいことまで、幅広くお届けします。 btraxではどんな人が働いているの?と気になっている方、ぜひ最後までお付き合いください! Mitsutaka Kaneko / General Manager バックグラウンドを教えてください 大学は国際政治経済学部で、インターナショナルビジネスを専攻していました。 学生時代の4年間はAIESECという国際的な学生非営利団体で活動したり、アメリカのカーネギーメロン大学に1ヶ月短期留学した経験も相まって、大学時代から国際的な仕事をしたいと考えていました。 社会人になって1社目はインターナショナルに活躍でき、かつ学んできた経営学を活かせると考え、外資系コンサルティング会社に就職しました。 当時はeコマースの先駆けの時代で、インターネットを活用した新しいサービスの立ち上げに関わるプロジェクトを多く経験しました。 2社目では、中国人の社長が設立したITベンチャーに入社し、中国の子会社に赴任したり、社長室長として社長の元で経営を肌で体感し、新規事業の立ち上げや子会社の社長なども経験してきました。 なぜbtraxに入社したのですか? サンフランシスコ、スタートアップ文化、デザインに共感したからです。 2社目の企業に在籍中に大前研一氏が主催するBond-BBT MBAプログラムに参加し、その勉強の中でバージニア大学のSaras Sarasvathy教授が提唱するEffectuation(エフェクチュエーション)という考え方を知りました。 大企業が知っておくべき イノベーション創出に必要な5つの起業家マインド そして、スタートアップやイノベーションに興味があることに気がつき、MBAの仲間と一緒に1週間かけてシリコンバレーのスタートアップを訪問する企画を実施しました。 その企画の中で、実際に訪問した企業の1社がbtraxで、それがbtraxとの出会いでした。 その後、当時のbtraxにはAccount Managerのポジションが必要だったことから、FounderでありCEOのBrandonから声をかけてもらい、入社を決めました。 btraxでは具体的にどのような仕事をしていますか? 入社して最初のミッションは当時サービスを開始していたSFイノベーションプログラムを日本の大企業のニーズに合わせてリニューアルし、より価値のあるメニューにしていくことでした。 そのためには現場に入って実際にプログラム運営にも関わる必要があると考え、最初しばらくはサンフランシスコに滞在してプログラムのファシリテーションも行っていました。 その後、セールス中心のAccount Managerではなく、よりクライアントが価値を提供できるように提案し一緒にその価値作りをサポートしていく役割が必要と考え、現在のBusiness Producer制度を提案し、自らBusiness Producerとして活動してきました。 現在はbtrax JapanのGeneral Managerを務めており、btraxの東京側に関わるマネジメント全般を担当しています。 btraxでの働きがいを教えてください メンバーの海外に対する挑戦を後押しできる環境があるところです。 日本にいてもグローバルに活躍できる会社であると思いますが、社員が海外での仕事などに挑戦したいと考えた時に、挑戦を後押しできる会社でありたいと思っています。 今後btraxでやっていきたいことはなんですか? btrax全体のことを考えて動くことをより追求していきたいです。 btraxは以前と比べてメンバーも増え、会社として実現できることが多くなってきており、ようやく昔描いていた会社像やビジョンを体現できるようになっていると感じます。 今後は日本側のマネジメントだけでなく、日米のオフィスの連携をより強固にしながら会社全体のマネジメントの強化に繋げていきたいと考えています。 今新たに挑戦していることはなんですか? 現在、経営の傍ら、スタンフォードのビジネススクールが提供するLEADプログラムに参加して、世界中の経営者や管理職の方々と学んでいます。 経営やデザインなどの知見を拡げることはもちろんですが、シリコンバレーをはじめとする世界中の方々との人脈も広げていきたいと考えています。 Hidemaru Sato / Senior Advisor バックグラウンドを教えてください 大阪生まれです。高校までは大阪で過ごし、大学生になって東京へ出てきました。 大学では、理工学部で自動制御工学を専攻していました。特に熱伝導の制御についての卒論でしたが、今となってはどうしてこんな堅い勉強をしていたのか疑問です。 そのまま大学院へ進もうと思ったのですが、勉強するならグローバルだ!と思い、アメリカの大学院へ進みました。 大学院での2年間は人生で最も勉強した時期でした。 その甲斐もあって無事に修士課程を修了して、東京へ戻りました。大学院ではコンピュータサイエンスの科目も取っていて、プログラミングに興味を持ったのもこの時期でした。 東京では外資系の大手コンピュータ企業に就職し、当時最先端であったコンピュータグラフィックスのソフトウエアの開発、様々なCG映像の作成に携わりました。 日経から「プレゼングラフのすべて」という書籍を出版したのもこの頃です。 9年間ほどCGのシステムエンジニアとして過ごしていましたが、海外で仕事がしてみたいということもあり、ロサンゼルスに渡りました。 現地では日本企業の駐在員として、家族帯同で10年ほど過ごしました。 その後、米国企業の日本進出ブームもあり東京へ戻って、米国企業の日本法人の立ち上げを数社ほど行いました。 アメリカ法人で働く中で、日米両方の文化と共に、黎明期の最先端のIT技術を体得し、それらの知見を活かして経営に携わっていました。 なぜbtraxへ入社したのですか? オンライントラベルの大手Expediaの日本法人の立ち上げに奮闘していたときに、当時サンフランシスコで新進気鋭のデザイン会社であったbtrax, Inc.のCEO、Brandonと知り合ったことがきっかけです。 Expediaの日本語ウェブサイトの立ち上げおよびローカライゼーションで苦労していた時に、btraxに依頼しました。 その後、Brandonが日本法人を立ち上げた時に、btraxの一員として加わりました。 Brandonが日本とアメリカの企業文化を理解していることが魅力に感じましたし、Expediaの案件での仕事ぶりに感動したからです。 2015年のことですので、すでに7年が経過しました。日本法人の社員としては3人目でした。 btraxでの働きがいを教えてください 魅力的でかつ個性的なメンバーに囲まれて仕事ができることが働きがいになっています。 自分はSenior Advisorという立場で、経営全般のサポートをしています。 様々なプロジェクトでメンバーとしてサポートすることもありますが、大きな役割はExternal Relationです。 つまり、btraxの業務を助けてくれる様々な外部の方々、スタートアップ界隈のメンバー、投資家や業界の専門家などとのネットワークを業務に生かせるようにサポートしています。 また、日本法人の経理や総務、法務といったロジスティックスの部分でも出来る限りのサポートをしています。 働きがいと聞かれても一言では難しいですが、強いて言えば、自分の主義主張、アントレプレナーシップを持っている、魅力的で個性的な若い社員の皆さんと一緒に仕事ができることだと思います。 今後btraxでやっていきたいことはなんですか? Senior Advisorとして、これまで以上に様々な案件でメンバーの相談相手になることと、より素敵で楽しく仕事ができる会社にすることです。 コロナ禍でここ2年間ほどは、在宅勤務が通常になったので、オンラインの良いところ悪いところが明確にわかってきました。 コロナ禍もずいぶんと安定してきた昨今ですので、メンバー各自が業務を遂行する上で最も適切なハイブリッドな職場環境を実現していきたいと思っています。 今興味、関心のあることはなんですか? 学生さんを含めて、日本中にいる起業家候補生の皆さんに、グローバルに通用するアントレプレナーシップをbtraxから発信していくことです。 btraxでは過去6年間にわたって、福岡市主催の起業家育成プログラムの企画・運営に携わってきました。 その経験から多くのアントレプレナーシップを持った方々とのネットワークを持っています。 そのような方々から相談を受けることも多く、楽しく仕事をしています。 「起業や、会社の中の新たな部署での挑戦をするのならまずはbtraxに相談してみよう」と、多くの方々が思うような会社にすることに大きな関心があります。 おわりに 今回はbtrax Japanでゼネラルマネージャー、シニアアドバイザーを務めるお2人をご紹介しました! btraxのメンバーのことを少しでも知っていただけたでしょうか? 今後もbtraxは、日米双方のクライアントさまに対して、デザインの力で国を超えた橋渡しをし、新たなビジネスを生み出すお手伝いをさせていただきます。 btraxについて、より詳しく知りたい方は、弊社のサービス情報がまとまったサービスサイトをご覧ください。 次回はbtraxで、デザインリサーチャーとして活躍するお二人をご紹介します!どうぞお楽しみに!

18周年を迎えるbtraxが、より良いチームであるために取り組んでいる18のこと

いつもbtraxのオウンドメディア、Freshtraxをご愛読いただき、ありがとうございます! 我々btraxは本日、2022年8月9日をもって、創立18周年を迎えました! シリコンバレーという最新鋭のスタートアップがひしめき合う土地で、2020年から続いたパンデミックも乗り越え、18年という年月の間、ビジネスを続けてくることができました。 紛れもなく、日頃よりご支援をいただいている皆さまのおかげでございます。心より感謝申し上げます! btraxは、サンフランシスコオフィスと東京オフィスがシームレスに連携しながら、クライアントさまのビジネスやサービスのグローバル展開のサポートを行っています。 btraxのスタッフは、基本的にリモートでチームと連携しながら業務を行っているのです。 今回は、『18周年を迎えるbtraxが、より良いチームとなるために取り組んでいる18のこと』と題して、日米双方のスタッフから寄せられたbtraxならではチームでの取り組みをご紹介します。 1. 週に一度、日米双方のチームでチームビルディングが行われている btraxでは、日常的にチームビルディングの時間を設けています。 「Weekly Team building」として、毎週決まった時間に日米双方のスタッフが参加し、さまざまなアクティビティを行います。特定のトピックについてディスカッションをしたり、全社に関わるプロジェクトのアイディエーションを行ったりします。 実は今回のbtraxの18周年の企画に関するアイディアも、このチームビルディングの時間から生まれています! 2. スタッフ出張時の特別なチームビルディングも サンフランシスコオフィスでは、東京オフィスからスタッフが出張した際に、特別なチームビルディングを行っています。 卓球をしに行ったり、広いオフィスの空間を活かし、段ボールでロボットを作ってクリエイティビティについて考えてみたり。 また、サンフランシスコという立地にあずかり、ワインの産地として有名なナパを訪れ、ワイナリーツアーを行ったこともありました。 3. 日米の文化に沿ったお題のアクティビティを実施している 日米双方にオフィスを持つbtraxには、日本の文化に興味を持つスタッフも多数。 チームビルディングにおいても昨年末には、サンフランシスコオフィスのスタッフ主導で苺大福を手作りしました。 オンラインミーティング形式でお互いの進捗を実況しながらの苺大福づくりは日本人スタッフにとっても新鮮で、とても面白かったです! 4. USスタッフ主導のJapanese Classが行われている こちらもチームビルディングの一種。サンフランシスコオフィスのスタッフたちによるJapanese Classをご紹介します。 同じくサンフランシスコ側で働く日本語を話すスタッフがリードし、英語ネイティブのスタッフたちに英語のレッスンをしています。 最近では、ミーティングの終わりに、アメリカ人スタッフからも完璧な発音での「お疲れさまです!」という声が聞こえるようになりました。 5. Donutを用いたCoffee chatが小さなグループで実施されている Slackと連携できるDonutというサービスを使い、さまざまなスタッフたちとランダムで1on1をする機会も設けています。 普段よく話すスタッフはどうしても同じチームのメンバーに限定されがち、といった状況を変えてくれるサービスです。 プロジェクトや業務では、あまり協業することが少ないスタッフともコミュニケーションを取るチャンスになっています。 6. 多様なSlackチャンネルがある 普段からSlackを通じて業務に関するコミュニケーションをしているbtraxですが、そのチャンネルもバラエテイ豊か。 業務以外に関するものでも、スタッフ全員が気軽に情報をシェアする雰囲気があります。 例えば、#photraxと呼ばれるチャンネルには、オフラインワークショップやイベントの様子から、ためになるインフォグラフィック、今日のランチまで(!) 日々いろいろな写真がシェアされています。 また、その他にも #newsや#randomというチャンネルでは、スタッフ各々が気になったことをシェアし、インプットの場となっています。 7. サンフランシスコオフィスでHappy Hourが実施されている コロナ禍の状況が徐々に好転し、規制が緩和されてきたサンフランシスコオフィスでは、オフィスでの定期的な”Happy Hour” を再開しています。 社外の方もご招待し、実際に対面でお会いして話をすることで、良い情報交換や関係構築の場になっています。 広いオフィスですので、人数が集まってもあまり心配はいりません◎ 8. 東京オフィスでは2ヶ月に1回のペースでチームギャザリングを行なっている サンフランシスコオフィスのみならず、東京オフィスでもチームビルディングは抜かりなく実施しています。 btraxが入居しているオフィスはルーフトップつき。天候に恵まれた時期は、屋上に集まり、お互いの近況をキャッチアップをしつつ軽く乾杯します! 9. ハロウィンパーティーの仮装は毎回全員が本気で行なっている イベントには本気なbtrax。特にハロウィンは毎年本気で行います。 コロナ禍以前はオフィスにて仮装パーティーを行っていましたが、コロナ禍でもその勢いは衰えず、過去2年はオンライン仮装パーティーを実施してきました。 どのスタッフも自身の仮装のみならず、オンラインならではのミーティングのバックグラウンドにもこだわっています;) 10. マネージャーほどパーティーやイベントごとに本気 ハロウィンパーティーのようなイベントごとは、若手のスタッフが先導して行なっているのかと思われるかもしれませんが、btraxではマネージャー層も(むしろマネージャー層の方が!?)イベントごとに本気なのです。 2021年に行なわれたPride Monthをお祝いするショート動画ではなんと、CEOやマネージャー陣がリップシンク(口パク)で熱唱する姿が。 年次関係なく全員が楽しむときは楽しむ、仕事をするときはしっかり仕事する、メリハリをつけています。 11. 毎週、スタッフがスタッフをカルチャーリーダーとして表彰している btraxでは全員が集まるという意味でAll Handsと呼んでいる、全スタッフが集結する毎週月曜の朝会。 その際に、司会進行を務めるスタッフが、btraxのカルチャーバリューに沿った行動をしていると感じたスタッフを選出して、その理由とともに表彰しています。 btraxはプロジェクト単位で仕事をすることが多いため、違うプロジェクトに従事するスタッフの頑張りはなかなか見えづらいもの。 毎週司会進行を務めるスタッフが変わるので、それぞれの視点から見たスタッフの努力を知ることができます。 もちろん自分が選ばれた際は、自分の行動を見ていてくれた人がいたのだと嬉しい気持ちにもなります! 12. “Workiversary”をお祝い “Workiversary”とは、btraxで働き始めた日のことを言います。 勤続年数が更新される時にはSlackでお祝いのメッセージが!自分でもなかなか気がつかないからこそ、他のスタッフに言われるとより一層嬉しいもの。 btraxで働いた1年間を振り返るきっかけにもなっています。 13. 社内でワークショップを開催している 普段デザインチームが使っているツールを他チームのスタッフと一緒に使ってみたり、Linkedinの教材を全員で観てディスカッションしたりしています。 つい先日は、WebflowというWebサイト作成プラットフォームで実際にWebサイトを作成するプロセスを知るワークショップを、サンフランシスコオフィスのリードデザイナー、JCの主導で行いました。 14. 新しいスタッフはプレゼンテーションを実施する btraxに新しく入社したスタッフは、毎週金曜に行われている30分のチームビルディングで、簡単な自己紹介のプレゼンテーションを実施します! 発表した後はスタッフが気になったことを質問していきます。 しかし質問タイムを待たず、発表している途中からチャット欄は「そこ私も行ったことある!」「なぜ〇〇が好きなの?」といったようなコメントや質問でいっぱいに。 既存スタッフが新しく入ったスタッフのことをよく知ると同時に、新しく入ったスタッフにとって初めて顔を合わせるスタッフと話すきっかけにもなっています。 15. 日米をまたいでイベントを開催している btraxが主催するイベントは、東京オフィスで開催するイベントにサンフランシスコオフィスのスタッフが登壇したり、反対にサンフランシスコオフィスで開催するイベントに東京オフィスのスタッフが登壇したりすることもあります。 今年5月にサンフランシスコオフィスで行なったオンライン・オフラインのハイブリッドイベントでは、運営やプレゼンテーションの準備ともに、日米双方で協力して行ないました。 来てくださる方により貴重で新鮮な情報を届けられるよう、btraxでは今後もさまざまなイベントを企画して参ります! ぜひ遊びにいらしてください。 16. サンフランシスコオフィスと東京オフィスがシームレスに連携してプロジェクトを行っている btraxではサンフランシスコオフィスと東京オフィスが別々にプロジェクトを担当しているわけではなく、双方のオフィスのスタッフでプロジェクトを進めることも多くあります。 時差の関係で、双方のオフィスのスタッフが集まるミーティングは、東京の午前中、サンフランシスコの夕方の時間帯に実施して進捗の確認やディスカッションを行なっています。 また、話し合ったり即時に連絡を取れる時間が短い分、Slackを通したテキストコミュニケーションをより大切にしています! 17. プロジェクト完了時にはチームスタッフ全員でレトロをしている btraxではプロジェクトが完了したら、プロジェクトチームのスタッフ全員でレトロ(振り返り会)を行います。 プロジェクトでのハイライトと改善点、気になったことやアイディアを出し合い、次回以降のプロジェクトに活かすためにディスカッションを行います。 プロジェクトが完了する度に、より良くプロジェクトを進めるにはどうしたらよいかを考えることで、クライアントさまにより満足いただけるサービスを提供できると信じています。 18. 他チームへの尊敬のマインドセットがある btraxでは、デザインチーム、マーケティングチーム、エンジニアチームなど、それぞれのチームがそれぞれの専門性を持って仕事をしています!ですので、仕事をするときは他チームとの連携が必須。 […]

【実例あり】サンフランシスコのレストランにおけるDXサービス 導入事例と今後の課題

人手不足や人件費問題に苦しむレストラン業界において、DXの重要性が叫ばれるようになって久しい。 またコロナ禍での生活の変化はこの動きを間違いなく加速させたといえる。 オンラインオーダーやテイクアウトといった事業形態の拡大によって、多くのレストランはオンラインツールの導入を検討しただろう。 さらに、コロナ禍前の勢いを取り戻しつつある外食需要、そして、即戦力となる学生アルバイトの激減やそれに伴う人件費増大は深刻な問題となっている。(参考) こういった背景もあり、業務効率化や売上向上を目的としたサービスは日本に限らず、アメリカのレストラン業界でも注目を集めている。 TK bankの調査によるとレストラン経営者は、2022年に最も投資したい分野として、モバイル注文(54%)、宅配サービス(47%)、新しいPOSデジタルサイネージやその他の店内技術(45%)、代替支払方法(37%)を挙げている。 そこでテクノロジーの最先端とされるサンフランシスコの実態を知るべく、サンフランシスコにあるとあるレストランでのオペレーションを観察してみた。 本記事では、飲食店で導入されているサービスと今後の展望についてご紹介する。 アメリカの丸亀製麺から考える日本でDXが進まない本当の理由 サンフランシスコのレストランにおけるDXサービス5選 Wix:ノーコードのホームページ作成ツール Yelp:レストランを中心としたローカルビジネスの口コミ情報サイト Toast:クラウドベースのテクノロジープラットフォーム Gusto:中小企業向けの一元管理型HRプラットフォーム MarketMan:レストランやサプライヤーのクラウドベースの在庫・供給管理システム まずは来店者の視点から、3つのサービスを紹介する。 1: Wix 最初に取り上げるのは、レストランと来店者を繋ぐ窓口となるホームページだ。 世界に2億人以上のユーザーを抱えるWixは、ノーコードのホームページ作成ツールである。 2019年に日本法人を設立したことで日本でも存在感を増しているため、既に利用されている方もいらっしゃるかもしれない。 アメリカでは、ノーコードツールの枠を越えて、様々なサービスへのリンクが盛り込まれたプラットフォームとしての役割も担うようになっている。 企業情報やメニューの紹介を目的とした本来のホームページ作成機能に加え、デリバリー注文、ピックアップ予約、来店予約などの幅広い選択肢が用意されている。 Wix内のサービスと、以下のような外部サービスの連携を組み合わせて、自社の好みに合わせたホームページを作ることができる。 ちなみにこれからご紹介する来店者向けサービスはいずれも、Wixで作成されたホームページからアクセスが可能である。 2: Yelp ホームページを訪れたユーザーが次に取る行動として、他のユーザーからのレビューや写真の閲覧が挙げられるだろう。 その際に使用されるのが、飲食店を中心としたローカルビジネスの口コミ情報サイトYelpである。イメージとしてはアメリカ版食べログといったところだろうか。 2004年に誕生したこのサービスは、2012年に上場を果たし、その2年後には日本にも展開を始めている。 このサービスの最大の特徴はやはり、その規模の大きさとそれに伴うレビューの豊富さである。 2021年のデータによると、アプリのユニークユーザーが3,300万人に達しているほか、累積レビュー数は2億4千万件以上に上る。 またこのサービスは、信頼性と有用性を保つよう心がけているそうだ。 ユーザー調査の結果を元に、実名、写真付きのプロフィールを設定しているユーザーのコメントや、比較的長い文章で細かく書かれたレビューを推奨している。 投稿されたレビューは自動化されたソフトウェアによって分析され、不当と判断されたレビューは平均評価に反映しないなどの措置が取られる。 さらにYelpは、店舗検索や席予約、ウェイトリストなど幅広くサービスを展開している。 今回取り上げているレストランでは、Yelpは、席予約とウェイトリスト登録のためのツールとしてホームページ内に埋め込まれている。 またサンフランシスコで生活をしていると、意外な利用シーンを目にすることがある。 それは、メニューを補足する役割としてYelpが機能している場面だ。 来店者は店内で着席してメニューを受け取ってから、Yelpのアプリで店名を検索する。 来店者は、メニューにある商品名とアプリ内の画像を見比べながら、どの商品を頼むか決めているのだ。 これにはアメリカの文化が影響を与えているかもしれない。というのもアメリカでは、訴訟問題を避けるためか、メニューに商品画像を掲載しない店舗が多い。 メニューや広告の写真が実際の商品と異なっていると、来店者に訴えられてしまうことがあるからだ。(参考) また様々な文化・言語が入り混じるサンフランシスコでは、メニュー名だけでは商品の想像がつかない場合も多い。 そのため、Yelpはメニューのイメージをより具体的に掴むことにも一役買っているのだ。ちなみに筆者も、アメリカに来てYelpを使い始めたユーザーの1人である。 アメリカで大人気のクチコミサイト-Yelpとは? 3: Toast 次に紹介するToastはフロア管理やPOS、セルフオーダーなどのサービスを提供するクラウドベースのテクノロジープラットフォームだ。 基本的にはレストラン側が様々な設定を行い、ユーザーは支払いの際にPOS端末にてサービスに触れる。 アメリカでは席で支払いをすることが主流のため、従業員が明細とPOS端末を席まで持っていくことが多い。 支払い、チップの登録、サイン、レシートの有無の設定が全てPOS端末上で行える。 画面上には無駄な要素がなく、選択肢や指示がシンプルに表示されるため、初めてサービスに触れる場合でもストレスフリーに操作できるように感じられる。 このサービスは“All-in-1 restaurant POS”を自称するだけあってサービスの幅が非常に広く、自社に必要なものを自由に選択し登録することができる。 また、このレストランではToastは、フロア管理、決済サービス、売上管理に利用されている。従業員がタブレットで注文を入力すると、その場でキッチン、POS端末に情報が共有される。 また、来店者がPOS端末を用いて支払い手続きを済ませるとチップの情報も残すことができる。 この他にも、テイクアウトやデリバリー、メールマーケティングなどの機能も付いている。 Uber EatsやDoorDashといったデリバリーサービスを通した注文を自動で反映するオプショナルプランもあるという。 このサービスの競合としてはCloverやSquareなどが挙げられるが、これらと比較すると機能が非常に多くカスタマイズの幅が広い。 ここまで、レストランを利用する来客者の目線でDXサービスについて解説した。 ユーザーの目線に立って設計されたものが多く、優れたユーザー体験を提供できているように感じられる。 では続いて、普段は来店者の目に触れることのない、主にレストランの運営者向けのサービスを2つ解説する。 4: Gusto 2012年にサンフランシスコでリリースされたGustoは、中小企業向けの一元管理型HRプラットフォームである。 今まで紙媒体で行われてきた、人事や経理に関する作業を全てオンラインで一括管理できる。Gustoは中小企業向けのサービスを展開しており、数々の賞を受賞している。 今回のレストランでは主に2つの機能が利用されていた。1つは従業員の勤怠管理、そしてもう1つは給与管理である。 従業員はGusto Walletというスマホアプリを使って操作している。 勤怠管理としては、出勤時、退勤時、休憩の際などに従業員が自身のアプリで記録を残し、それが管理者側にクラウド共有されるという仕組みだ。 また、給与管理においては、毎月の支払い額とその内訳が閲覧できる。収入、税金、チップ、等の項目に分かれておりそれぞれの数値を確認することができる。 さらにアプリ内で給与明細のPDFが発行され、もちろんダウンロードも可能である。 自身の銀行口座と紐づけておくと自動で振込情報が管理できるだけでなく、複数の口座に分けて受け取ることもできる。 Gustoにはこれらの機能が全て入っていながら、非常に分かりやすくシンプルなデザインと操作性で、従業員からの評判はかなり高いようだ。(参考記事) 5: Marketman 最後にご紹介するのは2013年にニューヨークで設立されたMarketManだ。 このサービスはレストランや食材サプライヤー向けのクラウドベースの在庫・供給管理システムである。 予算管理、購買、サプライヤー管理といった、在庫・供給管理に関わる作業を効率化している。 スマートフォン等のモバイル端末での請求書スキャンやデータ抽出ツールを備えており、いつでもどこでもプラットフォームにアクセスできる。 常にラップトップのようなデバイスを開いておくことが難しい在庫管理業務のようなシーンでも、片手でアクセスできるように作られている。 また、ダッシュボードで財務面の概要を一覧することができ、非常に理解しやすい設計となっている。 一方でやはり、サービス展開が幅広いため初期設定は複雑化しており、導入には時間がかかってしまうという声も聞かれているようだ。 しかし、様々なサービスを一括で管理できるため、他に同類のサービスを利用する必要が少ない。 そう考えると長期的にはやはり便利なサービスであると考えられる。 ここまで、レストランで働くスタッフからの目線でサービスを紹介した。 それぞれのフィールドでDXが進んで便利に見える一方で、サービスの複雑化・乱立化により従業員の管理する部分が増え、負担も大きくなっているというのが実態かもしれない。 実際、今回取り上げているレストランでは、従業員が同時に扱うタブレットが6台あり、忙しい時間帯にはかなりオペレーションが大変そうな印象を受けた。 まとめ 本記事では、サンフランシスコのレストランで導入されているDXサービスを紹介した。今回ご紹介したサービスの特徴は、いずれもオールインワン型のサービスであることだ。以下の表では、今回取り上げたサービスの展開状況についてまとめてみた。 このように、今回解説したものはどれも、従業員が1度に管理すべきサービスの数を減らし、負担を軽くすることを目標にしているように感じられる。 一方、レストランの運営に必要なツールの全てが1つで完結するサービスは、筆者の知る限りではまだ見つかっていない。 複数サービスの連携、ビルトイン設定などを駆使して、自社に必要なサービスを組み合わせて使用している現状がある。 スタッフの目線では、使用する端末が増えるなど従来とはまた違った課題も出てきているように思われた。 今後はこういった課題にアプローチできるかどうかが、レストラン向けのソリューション提供において大きな鍵となるかもしれない。 筆者: Miyu Okubo

UXデザイナーになるために不可欠な10のスキル

はじめまして。12月からbtraxで、インターンとして働かせていただいている谷口です。前職では、沖縄の会社で2年半ほどUIデザイナーとして働いていました。2021年4月からカナダ・バンクーバーの語学学校に通い、11月からUXデザイナーのインターンとしてbtraxに加わりました。 僕自身、UIデザイナーからUXデザイナーへのジョブチェンジを目指しています。しかし、UXデザイナーのスキルは幅広く、定義が難しいと感じています。そこで、今回はこの記事を通してUXデザイナーに不可欠な10のスキルをまとめたいと思います。 UXデザイナーとは?その役割と仕事内容, 求められるスキル UXデザインとは? そもそも、UXとは User Experience (ユーザー体験) の略で、ユーザーが製品やサービスを介して得られる体験そのものを示しています。 また、UXデザインとはユーザーが製品やサービスを通して得られる体験をデザインし、そのサービスの価値を見出してもらえるようにすることです。 UXデザイナーは、観察やインタビュー手法を用いてユーザー自身も気づけていないペインを解決し、良い体験を設計することが大切です。UXを向上させることで、ユーザーに製品やサービスを長く使って貰えたり、他サービスとの差別化を図ることができます。 UXデザインプロセスにおける基本的な6ステップ UXデザイナーに求められる10のスキル 1. UXリサーチ サービスが継続的にグロースしていくには、ユーザーが抱えるペインを深く理解する必要があります。 UXデザイナーは、ユーザーのインサイトを軸に、サービスの使用前と使用中、使用後の体験を設計します。また、マーケティングやカスタマーサポート部門と協業しながらユーザーにとって最適な体験を設計していきます。 ユーザーのインサイトを探るのに必要となるのが、UXリサーチです。UXリサーチは、開発プロセスのどの段階においてユーザーや顧客から収集したインサイトをサービスの意思決定に役立てるために行います。 UXリサーチスキルを身につけていくには、インタビューやユーザビリティーテストなどのリサーチ手法をブートキャンプや書籍など、実践を交えて学ぶ必要があります。 また、その学んだスキルをすぐに実務で活用できれば良いのですが、未経験者の場合、なかなかユーザーインタビューをする機会を作ることは難しいかもしれません。 そこでオススメしたい取り組みは、日々の生活で少しだけリサーチ手法を取り入れることです。その際に重要なポイントは、リサーチ手法を活用して「ユーザー自身も気づいていない潜在的なニーズ」を把握することです。 例えば、新しいカメラを買ったと話す友人に、購入の決め手をそれとなく聞いてみた結果、彼は、カメラ本体の機能よりもサイズを重視していることがわかったとします。 そこで、その点をさらに深堀りしてみます。その結果、手軽に持ち運べてスマホよりも高画質の写真が撮れることが重要だというインサイトを導くことができた、などです。 日々の生活で少しだけリサーチ手法を取り入れることで、リサーチスキルは向上できます。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ 2. コラボレーション UXデザイナーは、日頃から様々なメンバーと協力する必要があります。 例えば、経営層からヒアリングしてサービスの目的やその体験価値を定義したり、プロトタイプ作成後、エンジニアとさらに具体的なサービスに落とし込み、マーケターと共に分析やプロモーションの戦略などを考えたりします。 他のスキルを持ったメンバーやチームとのコラボレーションは、自分のスキルを補完でき、異なる視点でサービスや製品について議論できます。その結果、見落としていた気づきや最適なアイディアが思いがけず生まれることもあります。 ここで大切なことは、マーケティングやエンジニアリングなど、他分野に関する基礎知識を身につけておくことです。基礎知識を身につけておくことで、議論を深く行えたり、意思決定のスピードが上がります。 デザイナーがファシリテーションをしてみた 3. ワイヤーフレーム & プロトタイピング ワイヤーフレームとは、画面レイアウトのことを指します。 ワイヤーフレームのメリットは、多くの時間を割くことなく、ユーザーのニーズに基づいてページ要素の優先順位を決められることです。また、ワイヤーフレームを敲き台に議論を重ねることで、見落としていたニーズを確認することができます。 プロトタイプは、ユーザビリティテストにおいてユーザーのペインポイントを特定し、解決するために不可欠なものです。 UXデザイナーはプロトタイプをテストすることで、潜在的なニーズやフィードバックが得られ、デザインを最適化することができます。 ワイヤーフレームやプロトタイピングのスキルを身につけるためには、実際に手を動かして試行錯誤することが大切です。紙とペンに始まり、ソフトであれば、Adobe XDやFigmaを使うことによって、すぐに画面のレイアウトを組むことができます。 デザイン思考を学ぶ Part 5 – Prototype 今さら人に聞けないプロトタイプの作り方 4. ライティング 優れたライティングは、ユーザーに正しい情報を的確に伝えることができ、より良いUXを提供します。ユーザーが製品やサービス内で、迷わずタスクを実行してもらえるよう、言葉をデザインすることがUXデザイナーの仕事では重要です。 言葉は気軽に発することもできると同時に、誤解も簡単に生んでしまいます。そのため、UXデザイナーは製品やサービスとユーザーのインタラクションを、入念に言葉を通じて設計することが重要です。 例えば、アプリやWebサイト内のボタンのラベリングは、実は、UXデザイナーが考えることが多いのです。 なぜなら、UXデザイナーはユーザーとのあらゆるタッチポイントを考慮する必要があり、ボタンのラベリングも含めてUI/UXデザインと言えるからです。 デザイン視点で心を掴む UXライティングの基本5項目 5. ビジュアルコミュニケーション ビジュアルコミュニケーションは、UXデザイナーにとって必要なスキルの一つです。 文字だけではなく、ビジュアルを活用してコミュニケーションを図ることで、適切なタイミングでユーザーの注意を引いたり、情報の理解を高めたりすることができるので、ユーザビリティに大きく寄与します。 また、ビジュアルコミュニケーションには、レイアウト、カラー、タイポグラフィ、アイコン、などデザイン理論の理解が必要です。 ビジュアルコミュニケーションを学ぶには、街中の標識や広告、インフォグラフィックなどを観察することがオススメです。 「なぜこの色が使われているのか?」「なぜこのようなレイアウトやアイコンが使われているのか?」などを考えることで、次第に経験値が貯まり、実際のビジュアル作成に活かすことができます。 感覚に訴えるコミュニケーション – ビジュアルファシリテーションのすすめ – 6. 共感力 UXデザイナーは、ユーザーに共感することで、自分とは異なる視点やニーズを深く理解することができます。ユーザーが何を見て、何を感じ、何を体験しているのかを理解しなければ、良いデザインはできません。 共感は対象を深く理解して、最適な方法を提示するために必要な要素です。しかし、実際にユーザーに共感することは簡単ではありません。 ユーザーに共感するためには、同じことを体験をしたり、質問を問いかけて深堀りしていくことで、事象の解像度が上がり深く共感することができます。 デザイン思考の第一歩:共感力を高める3つの方法 7. インタラクションデザイン インタラクションデザインとは、ユーザーと製品の間の相互作用をデザインすることです。アプリやWebサイトなどのソフトウェア製品を指すことが多いです。 例えば、ボタンをクリックして、ダウンロードや画面遷移などもインタラクションデザインに含まれます。 インタラクションデザインの目的は、ユーザーが可能な限り最善の方法で目的を達成できるような製品を作ることです。 良いインタラクションは、非常に気づきにくい性質を持ち合わせています。違和感なくスムーズに操作を行えるため、認識しづらいのです。反対に、悪いインタラクションというのは、ユーザーも違和感を抱きやすいものです。 UXデザイナーは、良いインタラクションに気づく力を養うことが大切です。ビジュアルコミュニケーションしかり、サービスの登録や申込みがスムーズに行えたときに「なぜ違和感なくスムーズにできたのか?」などを深堀りしていくことが日頃から行えるトレーニングになります。 UXデザイン向上につながるUI評価の10項目 8. コーディング 主にWebサイトやアプリなどは、ビジュアル面はHTMLやCSS、機能面はSwiftやJavaScripなどのコードによって実装されています。 UXデザイナーが機能の仕組みを理解することによって、プログラマーやエンジニアと円滑にコミュニケーションを取ることができ、早く正しく意思決定を行うことができます。 【これからのスキル】デザイナーとエンジニアの境界線がどんどん無くなる 9. 定量分析 UXデザイナーは、インタビューなど定性的なリサーチを行う機会が多くあります。しかし、それだけでなく、数字をベースに分析する定量的な視点も必要です。 「新機能はユーザーに継続的に使用されているか?」「この施策は上手くいっているのか?」といったことも、数字は客観的な事実として結果を示してくれます。 これが、正しい現状を把握して、明確な次の打ち手を考えることにつながります。 また、改善を行う際にも、裏付けとなる数字が提示されることで、他のチームやメンバーにも納得感が生まれ、円滑に改善を進めることができるというメリットもあります。 10. コミュニケーションスキル コミュニケーションは、UXデザイナーにとって重要なスキルです。 クライアントやプロジェクト関係者へのプレゼンテーション、ユーザーへのインタビュー、チームメイトとの共同作業など、UXデザイナーはアイデアを的確に伝えフィードバックを貰うスキルが必要です。 こいつできるな!と思わせるUXデザイナー 7つのソフトスキル おわりに UXデザイナーになるために不可欠なスキルについてお分かりいただけましたでしょうか。 UXデザイナーに求められるスキルは多岐に渡ります。この記事を通して、UXデザイナーが求められるスキルを再確認できたり、UXデザイナーを目指すきっかけに少しでも貢献できていたりすれば嬉しいです。 btraxでは、UXデザインを軸とした様々なデザインサービスを提供しています。ご興味のある方はこちらからお問い合わせください。

時代背景から紐解くブランディングとSDGsの関係性

近年、何かとよく耳にする「SDGs」や「エシカル」のワード。流行に便乗して、関連する活動を社内外に向けて実施しているが、本当は実態を理解していないため、あまり手応えを感じていないのではないだろうか? 今回は「SDGs」や「エシカル」というワードがどのような経緯で広まるようになり、そのトレンドが表す現代の消費者の購買動機をご紹介したい。 さらに、ブランドストーリーの観点から、ブランドは今後どのように現代の消費者との距離を縮め、ブランドとしての価値を上げていく必要があるのかを解説していく。 海外ブランドが「できるだけ買わないでください」を広げる意外な理由 そもそも「SDGs」とは? 最近、ニュースや雑誌など、メディアに常に取り上げられている「SDGs」というワード。「SDGs」は2021年の流行語大賞にもノミネートされ、今年のトレンドワードの一つである。 「SDGs」とは「Sustainable Development Goals」の略であり、日本語では「持続可能な開発目標」と訳す。この開発目標は2015年に国連サミットで合意された、2030年までの持続可能な開発のためのアジェンダである。 「SDGs」というワードは最近の新しい略語に思われるかもしれないが、実はSDGsには前形があり、20年前から「MDGs」(Millenium Development Goals)という指標で2000年から2015年までの開発指標として20年前から掲げられていた。 さらに歴史を辿れば、そのビジョンは1972年に開催された「ストックホルム会議」から取り上げられており、長年世界で取り組んできた社会的課題である。 「SDGs」の浸透で見る、日米の根本的な違い 日本の民間企業での「SDGs」への積極的な取り組みがはじまったのはここ最近のことでありながらも、このように行政の業界では半世紀以上前から国連で世界が団結して目指すビジョンとして取り上げられていた。 以下のGoogle Trendsの分析からわかるとおり、アメリカでは「SDGs」の指標が決定された翌年の2016年の当時から関心が高く、検索数が徐々に伸びているのがわかる。 <アメリカにおける「SDGs」検索数> その一方で、日本はアメリカと比べて、大きく遅れをとり、2020年から2021年にかけて、遅れを取り戻すかのように、急激に検索数が伸びている。実は、他のアジアの国と比べても、日本は検索件数が増えるタイミングが圧倒的に遅い。 <日本における「SDGs」検索数> ではアメリカではなぜ、早い段階から「SDGs」について検索されており、日本は遅れをとったのか?その答えとして、アメリカと日本では「SDGs」の浸透方法が根本的に違うことがある。 アメリカはボトムアップ アメリカでは「SDGs」が目指す、環境保護、ジェンダー平等性、貧困差を削減することを促すアクテビズムなどの活動は前々から進んでおり、ここ数年は加速を見せている状況である。 CSISのレポートによれば、2009年から2019年の間では、世界中の社会的プロテストは毎年11.9%も増加しており、各政権に対してのフラストレーションが溜まっていることが明確である。 このように、アメリカでは市民のボトムアップ型から政治改革や大企業へより公平な社会への変化を促し、結果的に「SDGs」の活動を推進してきた。 日本はトップダウン その一方で、日本ではアメリカと比べて市民によるプロテストやアクテビズム、社会へ訴えかける習慣があまりない。そのため、市民から取り組むボトムアップ型より、政府の促しにより推進されるトップダウン方式で拡散されていた。 日本政府は日本人にとって、より身近な、地方創生や経団連などの政策目標との取り組みや、SDGsに貢献した団体や企業を表彰する「ジャパンSDGsアワード」や著名人(ハローキティ、ピコ太郎)等と協賛する手段で2020年あたりから我々の日常生活の中で頻繁に見かけるようになった。 「SDGs」の浸透がもたらす社会や意識の変化 海外と比べて、経緯やスピード感が違ったものの、今では日本社会でも「SDGs」が大事な取り組みであることは社会に浸透しており、社会や企業にも変化が起こり始めている。 例えばZ世代は、「ブランドイメージよりもブランドの活動内容を重視」するようになり、その中でも、「高い社会貢献に対しての意識」と「環境に対しての意識も高い」というデータがある。このデータから、顧客はその商品に込められた思いや意義にも着目するようになったことがよく分かる。 そのため、「SDGs」にまつわる行動指標を実現している、または買うことにより顧客も貢献できるといったイメージを持つ企業が高く評価されている。 世界が注目するミレニアル・Z世代の最新トレンド エシカル消費に対しての意識も また、経済的格差や環境保護などに対する課題意識で社会貢献への意識が高まったアメリカでは、「SDGs」の議論のうち、自分たちが日々消費する物が、人や社会へのどのように影響するのかをより意識すること、すなわち「エシカル消費」という思想が広がるようになった。 エシカル消費とは、「人や社会・環境に配慮した消費行動」である。アメリカでは”Vote with your dollar”「ドルで投票する」とする、消費者がもつお金の支払い先の選択肢の権利をどの会社に払うことでどのような経済活動を支援するのかという考えが浸透している。 このように、消費者は企業に対して厳しい目で審査することで、企業に生産する際の環境への影響や人権に対してより配慮する生産モデルに切り替えるように求め、より人や環境に配慮した消費行動を企業にも促すようになった。 これからのブランドはどんどん透明になっていく 「SDGs」時代の今、企業やブランドに求められること このように、さらなる活動内容の透明性を求められるようになった企業やブランドは、消費者の信頼を得るために、自社の商品がどのような課題を解決するために生産され、どのような生産手法で顧客に届けているのかを説明する義務が生まれた。 それを伝えるために多くの企業が活用するようになったのが、ブランドストーリーである。 過去の記事では、「カタログスペック」の終焉を掲げた。商品の機能性を伝えるよりも、その企業が何を提供し、何を実現しようとしているのかが重要となっているということを指す。 また、同じブログでは「ストーリーはブランドと消費者をつなげる架け橋」と述べた。企業が社会や環境にもたらす影響に対して消費者が大変厳しく審査するようになった現代では、ストーリーは、消費者の信頼を得て、ブランドのファンとして継続させるために必要不可欠なツールである。 ブランドストーリーが日本企業にとって重要な理由 ブランドストーリーを活用して、ファンから信頼を獲得し続けている企業 Motherhouse 「途上国から世界に通用するブランドをつくる」と掲げるハンドバックとアクセサリーを生産するMotherhouse。ブランドの紹介ムービーには各国の職人が紹介されており、Motherhouseでは職人たちが主役であることがわかりやすい。 同時に、企業がこれまでどこの国の職人と関わってきて、これまでの企業の成長の経過も時系列で顧客に伝わる。 Motherhouseは、生産者の労働状況が見えないという不安要素をブランドストーリーに組み込むことで解消し、顧客にとって共感しやすいブランドになっている。 agnès b シンプルなデザインが売りのフランスのファッションブランド、アニエスベー。多くの大手ファッションブランド同様、サステナビリティに対する活動を多く推進している。 アニエスべーはサステナビリティを推進する活動に加え、その想いを商品のタグにも記載している。こうすることで、購入者が、アニエスベーの想いを日常的に感じられるようにし、結果的にブランドをより身近な存在に感じさせる効果的な工夫である。 H&M 世界的ファッションブランドであり、ファストファッションとして代表的なH&M。H&Mといえば、生産手法が環境への負荷や不公平な賃金についてメディアに批判を受けていた過去がある。 その批判に対して、H&Mはここ数年をかけて、生産方法や生産者への取り組みを詳細に説明したムービーシリーズなどをYoutubeに数多く展開している。サステナブルであり、環境に負担が少ない衣服の制作に力を入れていることは、商品を紹介するブランドムービーにもよく反映されている。 2021年の秋・冬コレクションの下記の動画の中では、登場するモデルの会話から「I try to recycle and try not to waste water (私もできるだけリサイクルに取り組み、水も無駄にしないように気をつけているの)」と、とても直接的にサステナブルへの取り組みを伝えている。このように、商品や商品の購入を促すモデルを通じてブランドとしての強い想いを顧客に伝えている。 海外ブランドが「できるだけ買わないでください」を広げる意外な理由 KAPOK KNOT カポックという木の実を使って、ダウンジャケットと同レベルの防寒性を、植物から採取される繊維を利用することで実現しているD2Cのアパレルブランド。 KAPOK KNOTはブランドストーリーが明確であり、なによりも商品の製造プロセスがとても透明である。 「Farm to Fashion」というスローガンのもと、原材料の選定から顧客の手元に届くまでの各過程におけるステップが明確であり、拘り強く作られている商品であることがわかりやすい。 このKAPOK KNOTが作り上げる世界観は他のダウンジャケットの生産者と差別化する要素にもなり、根強いファンの構築を期待できる。 まとめ 社会的公平性、環境保護に対する意識がより高まるようになったここ数年。 日本では「SDGs」という略語をきっかけに認知が高まったが、その根本にある社会や環境へ配慮する思想は、一時的な流行ではなく、これからも長期的に取り組み続ける社会の課題であると言えるだろう。 その中で、経済活動を続ける企業は顧客からの信頼を得るために、自社の存在意義を伝えることが必要不可欠となってくる。 顧客とのコミュニケーションの取り方はさまざまであるが、その中でも今回はブランドストーリーに着目した。企業が提供する商品の社会的意義や商品の生産方法を、一貫性があるストーリーとして提示することは、企業の透明性を明確に伝え、顧客の不信感をなくすことに繋がる。その結果、ブランドへの共感や納得性を獲得することが可能である。 ブランドが「愛されるブランド」として長期的に成長するためにも、ストーリーを伝えていくことは非常に重要だと言えるだろう。 参考: ユーキャン 新語・流行語大賞 エシカル消費とは:消費者庁 https://www.Put Your Money Where Your Mouth Is. Vote With Your Dollars.com/entry/put-your-money-where-your-mouth-is-vote-with-your_b_58a92d46e4b0fa149f9ac73c The Age of Mass Protests: Understanding an Escalating […]

フェムテック先進国アメリカの最新サービス & 注目の国内事例6選

日本でジェンダーの平等観の浸透や女性の社会的権利に声をあげることが広がる一方で、女性の健康面までその声の広がりは行き届いているだろうか。 女性の権利に対する運動が盛んなアメリカでは女性のヘルスケアへの意識も高くフェムテックのサービスやプロダクトが広がりを見せている。 実際に私自身アメリカでの学生生活を通して、ここ数年でフェムテックが日常レベルまで浸透してきたと感じている。特に低容量ピルと吸収サニタリーショーツのD2Cを周りで使う学生も多く、フェムテックのサービスを使うことが当たり前になり始めている。 今回は拡大を見せるアメリカでの最新のフェムテック事情と、日本国内でも先駆的に利用者を伸ばしているサービスについて解説をする。 アメリカのトレンドから新たなサービスアイディアを求めるヒントになるだろう。また、幅広い年代に対応したサービスを紹介しているため、それぞれの体の悩みへアプローチする方法が見つかると同時に、サービス開発をする側にとっても参考になれば幸いだ。 フェムテックが取り組むセクシャルウェルネス改善と女性社会進出 フェムテックをリードするアメリカ 広がりが見られるアメリカのフェムテックだが、実際に数値で見ると、圧倒的にフェムテックの数が世界で多いことがわかる。 また2020年には、フェムテックを行うスタートアップへ投資された額は$376.2 millionと多額の額が投資されそのうちの半数以上はアメリカの投資家によるものであった。これらから世界的に見てもフェムテックをリードしている国と言えるだろう。 アメリカで注目のフェムテックサービス紹介 1. Future Family 不妊治療を行う際に立ちはだかる大きな壁として、多額の費用がかかることが挙げられる。アメリカの場合、不妊治療は初診料でけでも20万円近くかかり、体外受精の平均費用は150万円から200万円にも及ぶ高額な治療である。 しかし Future Familyはこの課題を解決するべく、サブスクリプションを導入し月に$250から始まるプランで不妊治療に必要なIVF(体外受精)と卵子凍結のサポートを行う。 プランにはユーザーに合った細かい不妊治療のプランの捻出から医療機関の紹介、いつでも専門医に相談できるコーチングのサポート等がある。 高額かつ通院が必須なイメージがある不妊治療を、月額制にしたことで患者の金銭的な負担を軽くし、各ユーザーにカスタマイズされたプランをオンラインで提供している点が革新的である。 2. The Pill club The Pill Clubは低容量ピルのD2Cブランドである。病院に行かずに低容量ピルの受け取りが保険なしでも可能である。その利便性が支持を得て2016年にスタートし、現在ではアメリカ国内の47州にサービス展開を広げている。 注文までのステップはとてもシンプルで、いくつかの質問に答えた後に医師が自分に合ったピルを選択してくれる。費用は保険がある場合1年間のサブスクリプションで月額$6と手頃になっている。 また注目の点としてはただ薬が自宅に送られてくるのではなく、ピルと一緒に毎月お菓子や可愛いデザインのステッカーなどが同封され配達されることである。 毎月送られてくるのを楽しみながら注文できることもポイントだ。利便性を追求しただけだなくUXやユーザー心理も考えられているのが伝わる。 3. FLO HEALTH FLO HEALTHは全ての女性のライフステージに合った健康や体の悩みに関する情報の提供とサポートを行うヘルス系のアプリである。2019年には世界のアップルストアのヘルス系カテゴリーで最もダウンロードされたアプリであり、その認知は国外にも広まっている。 具体的には、AIを用いたアプリ上での生理周期のトラッキング、また生理による頭痛や体の痛みなど、どのような体の変化が出るかを周期毎のリマインドだ。 妊活のためにはカレンダー作成や赤ちゃんの名前選びに関する知識のシェア。また婦人科系の病気に関する多数の記事をアプリ上で閲覧できるなど、幅広い年齢のユーザーに合うようにと様々なコンテンツが用意されている。 これまで、女性のヘルス系アプリだと生理周期のトラッキングのみ行うものであったり、年代ごと、カテゴリーごとに分けられたヘルス系のアプリが多くあった。しかし、例えば10代の若い女性がが年齢を重ねても、ライフステージに合ったコンテンツを1つのアプリで利用し続けることができるのは目新しく便利である。 日本でも広がりをみせる国内発のフェムテックサービス 1. ファミワン ファミワンはLINEを活用した妊活コンシェルジュサービスであり、専門家である​​不妊症看護認定看護師、臨床心理士、助産師、培養士、ピアカウンセラーから妊活に対する様々なアドバイスを受けることができる。 費用は無料で、治療を開始する場合は、自分に合った病院を紹介してくれる。また画期的な取り組みとして、LINEを通じたサポートの他に、企業に向けて妊活・不妊治療を福利厚生として導入するための支援も行っている。 2. Truly Trulyは、日本で初めて更年期に重点を置いたオンライン相談サービスである。個人向けには女性特有の悩みに特化した様々な記事の提供と体のセルフチェックを、法人向けには月額制で女性社員の負担がなく更年期、性の悩み等のチャット相談が行えるサービスを展開している。 女性は年齢を重ねるごとにホルモンが低下し、その影響は生活や仕事に影響しかねない。女性の起業家や管理職に就く女性が増える中で、女性の健康面とその取り巻く環境を企業側と共に支えることは重要な点である。 世界で活躍する女性起業家たちと、取り巻く環境への課題 3. fermata fermata(フェルマータ)は世界初のフェムテックオンラインストアとしてフェムテックのプロダクト販売するD2Cブランド。世界中のブランドからプロダクトを集めセクシュアルウェアネス、月経、妊娠産後ケアなどの用品を取り扱う。 従来ではひとつのサイトで女性のヘルス系の商品を一挙に閲覧し購入することができなかったが、fermataはそれを可能にした。また商品の豊富さだけでなく、レビューを参考にしながら商品を比較したりできることも利点である。 fermataのビジョンに“あなたのタブーがワクワクに変わる日まで”とあるように、Webサイトのデザインがポップで親しみやすく、性や体の悩みへポジティブな印象を持たせているところも魅力的だ。 まとめ 今回紹介した全ての会社が同様のミッションを掲げ、それぞれのサービスやプロダクトを展開していた。それはフェムテックを通して女性が女性特有の健康問題をオープンにし、理解や支援を得られる場を創るということでもある。 それだけまだまだ女性の健康問題によって生きにくい場面が生活の中であると同時に、フェムテックの広がりの需要性もあるということではないのだろうか。 フェムテックの今後の広がりによって、女性自身も自分のヘルスケアについて正しい知識や方法が広がり、またそのようなヘルスケアの意識が高まればどの性別においてもお互いの体の悩みについてよりオープンな環境や場所が増えていくことが望まれる。 Source: Femtech is expansive—it’s time to start treating it as such 令和2年度産業経済研究委託事業 働き方、暮らし方の変化のあり方が将来の日本経済に 与える効果と課題に関する調査 報告書 (概要版) Written by Himawari Nemoto

【こんなのが欲しかった】オンライン会議の救世主 Chonkeykeysとは

ニュートンがペスト禍の中で万有引力の法則を発見したように、大きな環境の変化がイノベーションが生まれるきっかけになることがある。 新型コロナウイルスの流行によって、テレワークがスタンダードになった現在、さまざまなオンライン会議ツールがある中で、Zoomは全体の35%のシェアを獲得するなど、日本で最も利用されているオンライン会議ツールだ。 しかし、オンライン会議では不便な点があるのも事実。例えば… Zoomの画面ではなく資料を見ながら話し始めたら、マイクがミュートのまま話し始めていた 画面共有をしていることを忘れ、自分の画面が映りっぱなしになっていた カメラがオンになっているとは気付かず、部屋着のまま会議に参加してしまった 退出し忘れて、自分の姿が写りっぱなしのまま違うことをしていた など、共感する方もいらっしゃるかもしれない。 出典元:【リモートコント】リモート会議終わったと思ってはしゃいだ結果、クビになった男 今回はこれらのオンライン会議の悩みを解消するプロダクトを紹介する。オンライン会議の「ちょっと不便」を一気に解決できるキーボード。見た目やアイデアはとってもユニークで、実用性は抜群だ。 オンライン会議の「最強のお供」!? Chonkerkeysとは Chonkerkeysは香港のスタートアップが開発したオンライン会議用キーボード。インパクトのあるビジュアルと、柔らかそうな丸みを帯びたキーが目印だ。 手持ちのPCとtype-cケーブルで接続して使う仕様で、WindowsでもMac OSでもZoomk会議で利用可能だ。 実際にChonkerkeysを使っている様子がこちら。 手元の大きなボタンを押すだけで、Zoomカメラのオン/オフの切り替え、画面の共有、リアクションができる様子がお分かりいただけるだろう。 Chonkerkeysでできること Chonkerkeysの機能はカメラのオン/オフ、マイクのオン/オフ、画面共有の開始/停止、オンライン会議中のリアクション、会議からの退出の5つだ。では次に、Chonkerkeysの3つの特徴をご紹介する。 (1)今の自分の状態がわかるLEDライト Chonkerkeysは、キーを押すと、そのキーのライトの色が変わる。オンの場合は緑、オフの場合は赤色のライトが付くため、話す前にChonkerkeysのライトの色を確認さえすれば、うっかりマイクがオフのまま話してしまった!ということも起こらない。 (2)押したことが体感できるボタン スマートフォンやPCのキーボードも然り、現代のキーは押したことがわかりにくいことが多いのではないだろうか。本当に押せているのだろうか?と不安に感じることもある。 しかし、Chonkerkeysでは以下の動画でも確認できるように、ボタンを押したことが確かな感触とクリック音で分かる仕様になっている。 (3)キーボードはカスタマイズ可能 なんと言ってもこのChonkerkeysの驚くべきところは、ユーザーの使用ツールに合わせてキーの位置、種類、さらにはボタンのライトの色までもカスタマイズできるところだ。 キーボードの位置は特別な工具などは不要で変更ができる。 また、キーボードの種類、用途も変更ができる。何も描かれていないキーには自分でステッカーを貼ったり、イラストを描いたりしてアレンジすることもできる。 Chonkerkeys誕生の裏話 コロナウイルスの流行により、多くの方が経験しているであろう、一日の大半をオンライン会議に費やすライフスタイルへの変化。Chonkerkeysを開発するANWC Limitedの創業者であるNigelもそんな経験をしている一人だった。 彼は、Google、AdMob、YaHoo!でソフトウェアエンジニア、シリコンバレーのベンチャー企業で共同創業者、McKinsey&Company Asiaのビジネスコンサルタントとして活躍していた。 そしてコロナショックの状況下、どこか変わり映えのない毎日にクリエイティブで風穴を空けようと、眠っていた3Dプリンターを使ってものづくりを始めた。こうして生まれたのが、Chonkerkeysなのだ。 ANWCのゴールは、人間に焦点を当てたコンピュータデバイスを生み出し、テクノロジーと人間らしさを融合させること。Chonkerkeys以降も、ユニークなプロダクトが誕生することが楽しみだ。 ユーザーフレンドリーを追求したあえてローテクなデザイン Chonkerkeysは、オンライン会議をよく行う方はもちろん、オンライン教室やセミナー、イベントを運営する方にもおすすめだ。資料の共有やマイクのオン/オフがPCの画面以外の場所で行えることで、運営がよりスムーズにできるようになるだろう。 さらに子供のパソコン教育の第一歩としてや、身体の不自由な方やお年寄りがパソコンを使う際にも、一助となるプロダクトだろう。 インパクト抜群な見た目について、創業者のNigelよると、あえて「ローテク」なデザインにしているとのこと。 ハイテクなサービスが次々に生まれてくる現代には逆行しているように感じられるかもしれないが、これは彼らが想定するユーザーを考えるとおそらく最適なデザインだ。 思わず触ってみたくなるお茶目な見た目の裏側には、とことんユーザーフレンドリーなプロダクト設計にすることを目指すNigelたちの強い思いがあるように感じる。 Chonkerkeysを一足早く使ってみたいと思ったら 現在、ChonkerkeysはKICKSTARTERにて、The Original、The Maxモデルともに通常価格よりも21%OFFにて出資できる。複数台の購入を希望の場合は2台目からはさらに割引が適用される。 もちろん日本からのオーダー、配送にもバッチリ対応している。 オンライン会議でちょっとした不自由を感じている、インパクトのある大きなキーボードに少しでも興味を惹かれた貴方は、ぜひこの機会にお試しいただきたい。詳しくはKICKSTARTER掲載ページをご覧ください。 オンラインという新たな働き方に合わせて新たな商品が誕生する。空いた通勤時間が、イノベーションを生み出す一歩となった好例である。 提供:Chonkerkeys ※こちらの記事はプロモーションを目的としております。

顧客体験向上のためのOMO 2つトレンドと4つの成功事例

以前からサービスのデジタル化は進んでいたが、新型コロナウイルスの影響により、非接触サービスやオンラインサービスが求められるようになった今、この傾向はさらに顕著になっている。 実際2021年度のEC市場規模は前年比10%を超えており、キャッシュレス決済の一つであるQR決済利用率も54%と過去最高をマークしている。 そういった中、「OMO (Online Merges Offline)」が注目されていることはご存知だろうか?「オンラインとオフラインの融合」という言葉通り、オンラインとオフライン両方のチャンネルを駆使したマーケティングや顧客体験向上のための動きを指しているが、その実情を理解している人は多くはないかもしれない。 OMOを考える上で重視すべき2つのトレンド: 1. 情報の集約化 SNSや決済が一つの媒体でできるスーパーアプリのように、デジタル上でのサービスや機能の集約により、様々なデータを統合することが可能になってきている。また、5Gなど最新のテクノロジーにより、オフラインとオンライン間のデータのやり取りが加速している 2. 行動データの追跡 センサー、位置情報やAIカメラにより、従来追えていたオンライン上の購買データに加え、オフラインの行動データを取得することが以前より可能になってきている つまり、今後オンラインとオフラインのデータの豊富さやリアルタイム性がますます向上することで、より顧客のニーズを正確に捉えることができるようになる。サービスのOMO化は単純に既存のサービスをEC化するだけではない。 集約されたデータを活用し、オンラインとオフラインを上手く融合することで、顧客体験を最適化することが鍵となる。 ブランド価値を測るための2つのデータ活用方法 ここからは、OMOを正しく理解し、優れた顧客体験を提供している企業を4つ紹介していく。 1. Walmart 世界最大のスーパーマーケットチェーンであるWalmart。長年積み上げてきたオフライン店舗の強みを生かしつつ、OMOを取り入れることでECの王であるAmazonに追いつく勢いで成長している。 彼らの成功の秘訣は豊富なデリバリー経路にある。国内外に多くある実店舗や大規模な倉庫の他、最近ではマイクロフルフィルセンターというローカル化された小さな倉庫を増やすことにより、商品の届け方に様々な選択肢を生み出している。 例えば、サブスク登録することで無料宅配が頼めるネット販売の他、事前にオンラインで注文し、店舗で受け取る “BOPIS”(Buy online, pick up in-store)を提供している。 また、オンラインで頼んだものをスタッフが車に積んでくれるサービスや、カメラを装着したスタッフが商品を冷蔵庫の仲間で届けるInHomeデリバリーも行っている。 同時に、Cruiseという自動運転会社に投資をすることで、電動の無人自動運転車の配達によりラストワンマイルを達成することにも積極的に取り組んでいる。 また配達の他、Tiktokと提携することで動画を通じたオンラインショッピングという新しい試みにも力を入れている。 例えばメイク用品など、実際に使用してみないと分からない商品販売では、人気クリエイターがメイクしている動画をライブストリーミングすることで販売を行っている。 こういった宅配や販売方法の多様化は、ただ単に便利になったということではない。コロナ渦でデジタルに移行していたり、安全志向になってきている顧客のニーズを正確に捉えている。 また、幅広い窓口を提供することで、顧客がそれぞれの状況にあった商品の入手方法を確立できでいる。 2. IKEA 大手家具店IKEAでは、拡張現実(AR) とアプリを上手く組み合わせることで、顧客体験をさらに充実させている。 例えばIKEA原宿店では、専門のアプリを使い商品をスキャンすることで、商品の詳細が見られるようになっている店舗には無い色味や、アプリ上で表示される類似品を確認したい場合は、ARを使うことで、商品のサイズや色味を確認することが可能。 結果、従来の店舗のような郊外の大型店舗でなくとも、様々な商品を楽しむことが出来るようになっている。 またスキャンした商品の履歴が残るため、買い物をしながらアプリ上でショッピングリストを作成し、そのまま家に配送することもできる。 このため、仕事帰りにふらっと寄って買う、など今までのIKEAでは体験できなかった手軽さが実現されている。都市部の車保持者が年々減少していく中、利便性のある都心でIKEAらしい体験が出来ることは大きな強みである。 3. ローソンと富士通によるレジレスコンビニ 以前、無人スーパーとしてAmazon Go が注目されていたが、日本でも同様に、ローソンと富士通共同で開発した無人コンビニが注目されている。 特筆すべきなのが、本人確認がAmazon Go のようにアプリ上で行うのではなく、生体認証で行われていること。事前に登録された生体情報と決済情報を活用することで、携帯を出すまでもなく、ただ手をかざすだけで全てが完了する。 結果、入店から購買までの工数がさらに短縮されている。 生体認証の他、声で扱えるAlexaやSiriなど、生体情報とオンラインデータを活用するサービスが年々と増えている。レジレスコンビニのように、物がさらに不要になるだけではなく、時には手すら使わなくて良いという新たな利便性が生まれる。 また、こういった生体情報をうまく取り込むことで、障害のある方など幅広い方に使いやすいサービスを作ることができる。 4. Sephora US Store and App 化粧品小売店のSephoraでは、IKEA同様オンラインと実店舗の連携が良く、シームレスな購買体験にを提供している。 まず入店した際には、アプリの位置情報データから入店している店舗を割り出し、当日行われているサービスなど店舗の詳しい情報がアプリに反映される。 また、バーコードをスキャンすると、レビューやプロダクトのハイライトの他、入店している店舗での在庫も確認ができる。 また、アプリ以外にも店舗内ではテクノロジーをふんだんに活用している。例えば店員がiPadを駆使して肌を分析することで、カスタマーのスキントーンにあった化粧品を紹介ができるなど、パーソナライズされた購買体験を提供している。 同時に、Sephoraの最大の強みは充実した顧客体験が店舗だけに留まらないことである。購入後、アプリ上のコミュニティを通し、プロダクトに関する質問をしたり、他の人の参考メイクや、Sephoraが出しているチュートリアル動画が見られたりする。 こういった参加型コンテンツを提供することで、プロダクトへの満足度やSephoraとの関係を購入後も持続させている。 Beauty Insider ProgramというロイヤリティプログラムもSephora客にとっての大きな魅力の一つだ。誕生日に一つ商品が無料プレゼントされたり、イベントに招待するなどさらなるエンゲージメントにつなげている。 このように店内から購入後まで上手く統一されているため、Sephoraを長期的に使い続ける客が多い。また、アプリの他にもイベントやコミュニティから豊富な行動データもとれるため、さらなるパーソナライズやサービスの改善につながっている。 最後に 4つの事例からわかるように、OMOを通して利便性が上がるという観点は重要である。だが、最も重要なのは、オンラインオフライン両方の両方の顧客データを取得し、やり取り出来る仕組みを確立することで、顧客像への理解が深まっていることだ。 結果、顧客像がより立体的になり、ひとりひとりに合ったサービス体験を提供することができるようになる。モノの価値以上に体験が重視されていく中、OMOの極意をビジネスに取り入れていくことは、今後サービスの成長に重要なポイントとなる。 ビートラックスは、時代の変化や最新トレンドを分析し、そのニーズにあったUXを提供するサービス開発やその支援を多く手がけてきた。ユーザーを理解し、彼らの課題を中心としたサービス開発にご興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

グローバルデザインとしての絵文字 その効果と文化間の違い

誰もが毎日使っている絵文字。現代のコミュニケーションにおいて欠かせないものになっている。 絵文字を使うことで、簡単に相手に感情を伝えることができたり、文字だけのメッセージと比べて雰囲気が和らいだりする効果がある。 世界では毎日60億の絵文字が使われており、アメリカでは1人が1日当たりに送る絵文字の数は平均で96とされている。 この記事では、グローバルデザインとしての絵文字や、コミュニケーションにおける絵文字の役割、情報伝達、さらに、文化間で異なる絵文字の意味といった観点から解説していく。 世界的に浸透したグローバルデザイン「絵文字」は日本発祥 海外でのそのまま”emoji”と呼ばれていることからもわかるように、絵文字は日本発祥である。 世界最初の絵文字は、1999年にドコモのデザイナー栗田 穣崇 (くりたしげたか) 氏によって作られた。12×12ピクセルのグリッドでデザインされており、テキストメッセージや携帯電話の電子メールといったツールの視覚的なインターフェイスを強化した。(参考記事) スマホの普及で一気に世界共通語に 元もはガラケーを中心に利用されていた絵文字だったが、2007年のiPhoneの発表以降、徐々にスマホでも利用され始めた。 その後、2011年にAppleがキーボードに絵文字を追加し、現在のように、キーボードで言語を変えるときと同じように絵文字を使うことができるようになった。 日本で生まれ、アメリカで成長した絵文字 絵文字が世界で利用され始めるにつれ、”共通言語” としての価値が問われるようになってきた。元々は日本国内を中心に利用されていた事もあり、多くの絵文字が “日本専用” のものであった。例えば、食べ物であれば、ラーメン、カレー、おでんなど。 しかし、2015年ごろに中国系アメリカ人の2人の女性が、食べ物が日本食ばかりで、中国料理の餃子すらないことに憤慨し、より絵文字の国際化を進める活動を開始した。 その後、彼女達は絵文字の地位を向上させるための団体、Emojinationを設立。 絵文字はアメリカのUnicodeが管理 その当時から現在まで、世の中に流通している絵文字は、アメリカ・シリコンバレーにあるUnicodeが一元管理している。Unicodeは、デジタルの文字データを管理する団体で「地球上のあらゆる言語を話す全ての人が、コンピュータやスマートフォンで自分の言語を使えるようにすること」をミッションとしている。 Unicodeには、Oracle, IBM, Microsoft, Adobe, Google, Apple, Facebook, Yahoo, SAP, Huaweiなどのそうそうたる世界のIT企業が会員として名前を連ねている。 絵文字も文字エンコードと同様に、共通言語として、Unicodeが管理しているということになる。 イケてなかった当時の絵文字委員会 しかし、そこには問題があった。2015当時、2人の女性が餃子を絵文字に追加してもらいたいと訪問しに行ったところ、そこには驚くべき光景があったという。と、いうのも、絵文字の承認を議論・決定する委員会のそのほとんどが、おっちゃんたちだけで構成されており、かなりイケてない雰囲気だったという。 そして、実際に判断を下す3名は全員中年の白人男性という、ダイバーシティーのかけらもない構成だったと、彼女たちは当時を振り返り語る。 絵文字の審査基準・承認プロセス では、実際に絵文字はどのようなプロセスと審査基準を経て、採用の有無を決定されるのだろうか? 絵文字として採用されやすくなるポイント 視覚的な識別性が高い 複数の使い方・意味が含まれる 多くの人から頻繁にリクエストされている コミュニケーションギャップを埋める役割 絵文字として採用されにくくなるポイント 視覚的に識別しにくい 意味合いが具体的すぎる すでに似たようなものがある 特定のブランドロゴ、宗教シンボル、著名人を表現している このような審査基準を踏まえ、下記の審査プロセスを経て、絵文字として登録されるかどうかが判断される。ちなみに、出願から認可が降りるまでの時間は18-24ヶ月で毎年約30の絵文字が追加されているとのこと。(参考: 絵文字の申請プロセス) グローバルな餃子を考慮して承認された例: 餃子 実際に、上記のプロセスを経て “正式” な絵文字として承認された例を紹介する。冒頭でEmojination設立のきっかけともなった餃子の絵文字である。デザイナーのYiying Luによるこの絵文字は、世界中にある多種多様な餃子の絵文字が考慮された後に、できるだけ具体的になりすぎないデザインが、Unicodeによって正式採用された。 新しい絵文字は誰が申請できるの? そもそも、新しい絵文字は誰が発案、出願可能なのか?答えは簡単で「誰でも」である。個人でも、企業でも、政府機関でも申請が可能。 フィンランドの政府が「サウナ」の絵文字を申請した実例もある。 絵文字にもダイバーシティーが求められる時代 日本で生まれた絵文字だが、時代の変化とともに進化が求められている。異なる人種や性別、文化への理解と表現に加え、最近ではLGBTQに関する配慮もされ、マッチングアプリのTinderには、「カップル」を表現するために、複数の異なる絵文字が実装されている。 機種やOSによって微妙に異なる絵文字表示 ちなみに、ここまで進化してきた絵文字だが、機種依存や、OS依存のものの場合、デバイスやOS, アプリの種類によって表示が異なるものもいくつかる。特に犬の絵文字なんかは、柴犬のつもりで送ったら、受け取ったユーザーのデバイスにはプードルと表示され、ちょっとしたミスコミュニケーションになったという事例まであるという。 物議を醸したハンバーガーの絵文字論争 余談だが、このデバイス/OS依存の絵文字に関して、一時ちょっとした論争を醸した、ハンバーガーの絵文字に関するケースがある。下記のように、デバイスやOS, アプリによって微妙にレタス、トマト、肉、チーズの順番が異なり、それが “正式” なハンバーガーであるかの議論がアメリカを中心に盛り上がった。 ラーメンの絵文字も機種やOSによって微妙に異なる 日本人には馴染みの深いラーメンであるが、これもデバイスやOS, アプリによって表現が異なるのが面白い。中国風の物もあれば、日本ぽいデザインが採用されているのもある。Samsungの絵文字なんかは「これラーメン?」という感じである。 初代の絵文字はアートとしてMoMAにも展示されている ちなみに冒頭で紹介した、初期の栗田 穣崇氏による絵文字セットは現在 NY近代美術館 (MoMA) にも展示されている。 最近では絵文字も重要なデザイン要素の一部となっている 最近では絵文字を取り入れたデザインやサービスを目にする機会が増えた。 少し前に日本でもブームとなった音声SNSのClubhouseは手を振っている絵文字を使っている。また、アプリ内でも、興味のあるカテゴリーを選ぶ画面やトークルームを探す際の画面でも、カテゴリーごとに絵文字が使われており、パッと見てわかりやすいようになっている。 絵文字で感情を記録するアプリ また、日々の感情を顔の絵文字で記録する日記アプリ“Emolog”もある。カレンダー上に、アニメーションの絵文字が並べられ、記録した感情が一目でわかるようになっている。 日記の目的が、その時の感情を保存することだとすれば、文字ではなく、絵文字を使うことでそれがより簡単に叶うというところがこのアプリのポイントかもしれない。 企業のオリジナル絵文字も また、オリジナルの絵文字を制作して提供している企業もある。 例えば、あの世界的な家具メーカーのIKEAは、オリジナルの絵文字キーボードアプリを無料で提供している。家事や家具の絵文字を多くの人に使ってもらうことで、家庭内のコミュニケーションを円滑にしようという狙いだ。(参考記事) IKEAが出している動画によれば、何世紀も前から、男女間のコミュニケーションには誤解や行き違いがあり、特に家の中での誤解は多い。 その解決法として絵文字を用いたコミュニケーションを推奨している。絵文字を使うことで表現の幅が広がり、要求や不満、疑問を今までよりも簡単に相手に理解してもらえる、というものだ。 絵文字はコミュニケーションにおいて必要不可欠になった 驚くことに、過去にオックスフォード辞書のWord of the year (今年の単語)として絵文字”😂”が選ばれたことがある。その年に全世界で一番使われた絵文字だったという理由で選ばれた。それだけ絵文字は、コミュニケーションをする上で必要なものであり、文字と同じだけの意味を持つと言えるだろう。 絵文字によってソーシャルメディアで国際交流が可能に 実際に、言葉が通じない相手であっても絵文字を使えば自分の気持ちを伝えることが可能だ。 例えば、インスタグラムで他の人のストーリーに対してリアクションする際に、クイックリアクションという機能を使っている人も多いだろう。 これはリアクションをしようとした際に、デフォルトで何種類か表示されている絵文字の中から1つ選び、絵文字だけで相手のストーリーに対して反応を示せるというものだ。 この場合は文字情報は一切なく、絵文字だけで自分のリアクションを伝えるため、言語の壁関係なく世界共通でコミュニケーションを取ることができる。 絵文字は、言語が異なる文化圏をつなぐ役割を持ち、グローバルにコミュニケーションを取るには欠かせないツールである。 誤解注意!国によって違う絵文字の解釈 このようにとても便利な絵文字だが、実は一方で、国によって意味合いが変わってくる場合がある。(参考記事) 代表的なものでは、この絵文字「🙏」。 一般的に日本では、「ごめん」「ありがとう」「お願い」の意味として使われているが、実は、謝るときにこの絵文字を使う国は日本以外ではあまりない。日本では謝るときに手を合わせて謝ることが珍しくないため、文化が絵文字にも表れている。 しかし、この手を合わせた絵文字は、他の国では「祈る人」「ハイタッチ」の意味として使われている。 そしてこの絵文字「🙇‍♂️」。 土下座をしているこの絵文字、日本では謝罪の意味で使う場合がほとんどだが、他の国では「考えている人」や、「腕立て伏せをしている人」に見えるようだ。 また、この絵文字「💁‍♀️」も国によって意味合いが変わってくる。 日本では案内係という意味があり、「こちらです」と言いたいときに使われているが、アメリカでは「Whatever […]

デザイン思考の第一歩:共感力を高める3つの方法

“共感力”とは何だろうか。デザイン思考のファーストステップであり、IQの対比として使われるEQ(Emotional Intelligence Quotient = 自分と相手の感情を把握し、状況に応じて自分の感情をコントロールできる能力)の1つでもある共感力とは、相手の感情を知ることではなく、相手と同じ感情を疑似体験することである。
デザイン思考の最初のステップは「共感」
デザイン思考おける「共感」フェーズでは、リサーチャー自らがユーザーの代弁者となることで、実際にサービス・プロダクトを受け取るユー…

XR市場の未来予測:XRが変える3つの分野

オンラインの次はVRミーティング 汎用性の高いVRトレーニングは研修を効率化 XR技術がコロナ禍・ニューノーマルの医療現場を救う 最近Oculusのスタンドアローン型VRヘッドセット「Oculus Quest 2」や、MR(Mixed Reality)技術を使用して、現実の空間内でレースゲームを楽しめる「マリオカートライブホームサーキット」などの登場でXR界隈が盛り上がってる。 しかし、今のところ大きく話題になるのはゲームやエンターテイメント分野でのサービスが多く、我々の生活を大きく変えるような、生活に密着したサービスは登場していない。しかし、XR技術は、既に多くの分野で使われ始めており、近い将来にXR市場はコロナ禍でも大きく成長すると見込まれている。 ここでXRについて、おさらいをしておこう。仮想現実技術は、主にVR(Virtual reality: 仮想現実), AR(Augmented reality: 拡張現実), MR(Mixed Reality: 複合現実)として分類され、そしてそれらをまとめてXRと呼ばれている。 既にいくつかのXRサービスは将来的に大きく普及する兆しが見えてきている。そこで今後、どういった分野でXRサービスが普及し、我々の生活に定着するのか考えていきたい。 1. VRミーティング ご存知の通り、新型コロナウィルスの影響でGoogle MeetsやZoomなどによるオンラインミーティングは多くの企業で導入されており、もはやオンラインミーティングは一般化したと言える。 しかし、オンラインミーティングは便利ではあるが、対面でのミーティングに比べると、相手とのコミュニケーションを十分に再現できているとは言えず、オンラインでは効率が悪くなると考えている人も多い。そういったニーズに答えてくれるのが、VRミーティングだ。 新型コロナの影響で、オンラインミーティングは定着し、ビジネスに欠かせないツールとなった。その次に来るのがVRミーティングだと注目されており、多くのサービスが登場してきている。 VRミーティングには、オンラインでのミーティングでは感じられない人と人が対面している感覚を再現することができる点に加えて、現実では不可能な、空間に3Dオブジェクトを設置できるという強みがある。 例えば、参考資料として簡単に車の3Dモデルを用意でき、ミーティング中に車の外観や色を変えるなども可能だ。VRヘッドセットがなくてもスマートフォンだけで参加できるサービスも登場してきており、VRミーティングが普及する下地は十分に整っていると言えるだろう。 VRヘッドセット不要なVRミーティング Spatialはニューヨークのスタートアップで、VR/AR技術を用いたVRミーティングサービスを提供している。2020年の1月には1400万ドルの資金調達に成功している。 バーチャル空間の中では、各個人の「アバター」を介し、現実での対面時と同じように身振り手振りを交えながら会話し、時には文章や図形を書いたり、バーチャル空間上でプレゼンテーションをすることもできる。 また、現実では不可能な、会議の資料としてモックアップのような3Dオブジェクトを空間に出現させたり、空間に付箋を貼ったりすることも可能だ。 Spatialのサービスはヘッドセットの使用を前提としてはいるが、スマートフォンさえあれば誰でもすぐにミーティングに参加することができる。また、Spatialのサービスは無料プランも用意されており、こういったハードルの低さがSpatialの強みであり、まずは試してみたいという人にお勧めだ。 Spatialのバーチャル・ミーティングの様子 2. VRトレーニング 従業員の教育コストの増加は常に経営者を悩ませている。技術の発展と共に習得しないといけないスキルやツールが増え、取り扱うサービスは複雑になっていく一方だ。そして、コンプライアンス等の倫理教育も必要だ。 Harvard Business Reviewによると、全世界で3,500億ドル以上が人材開発のトレーニングに費やされているがそのコストに見合った効果は出ていないという。 70%の従業員が仕事に必要なスキルを習得しておらず、さらにトレーニング学んだ新しいスキルを仕事に応用できている従業員は、わずか12%とのこと。また、トレーニングによってパフォーマンスが大幅に向上したと考えている回答者はわずか25%に過ぎないという調査結果もある。 これは納得できる話だ。膨大な量のテキストブック、パワーポイントのような資料や研修動画では、短時間でのトレーニングは難しく、結果として、満足できる研修の効果は見られず実際の現場で先輩社員などに指示を受けながら時間をかけて技能を身につけていくという企業が多いだろう。 しかし、VRトレーニングでは、仮想空間上での研修を自身の体験として身に付けることができ、従来のトレーニングに比べて短時間での高い効果が期待されている。 VRトレーニングは、旅客機パイロット向けのフライトシミュレーターに例えられることがある。基本的な研修内容から特殊な状況下での訓練まで多種多様なトレーニングを受けることができる。 近い将来に、VRトレーニングがより充実したトレーニングを提供できるようになれば、フライトシミュレーターのように、研修を受けた時間が業務経験の一部として評価されるだろう。 また、VRの没入感は1対1でトレーナーから研修を受けているのに近い感覚を得ることができる。トレーナーは自動音声の研修プログラムだけでなく、遠隔地にいる専門家が担うこともできる。 急成長するXR市場の展望と活用サービス事例7選 汎用的なVRトレーニングプラットフォーム シリコンバレーに拠点を置くStrivrは2015年に創立されたVR技術を用いたトレーニング・プラットフォームをサービスとする企業だ。既に、米大手のスーパーマーケットチェーンのウォルマートやBMWなどでVRトレーニングの実績がある。 特にウォルマートでは2017年から積極的にVRトレーニングの導入を進めている。、17,000台以上のヘッドセットが導入され、140万人以上の従業員がVRトレーニングを受けており、トレーニングを受けた従業員のうち70%が高いパフォーマンスを発揮している。 トレーニング内容には、繁忙期となるブラックフライデーの擬似体験も含まれており、重要なイベント日に従業員を備えさせるのにも効果的だという。 またStrivrのサービスにはアメリカン・フットボールを始めとしたスポーツでのVRトレーニングもあり、ニューイングランド・ペイトリオッツをはじめとしたNFLのプロチームにもサービスを提供するなど幅広い分野でVRトレーニングが普及している。 WalmartではVRトレーニングが高い効果を発揮している 3. XR医療 医療分野でも、XR技術の貢献が期待できる。例えば、医療従事者がXR技術を用いて、患部や臓器などの3Dモデルを活用することで、より精度の高い診断ができると期待されている。 また手術の計画作成やリハーサルにVRを用いることで、その精度の向上をすることができ、手術時にはARで患部の拡大画像を重ねて見えるようにするなど、XR技術を活用した医療現場の発展に貢献する研究も進められている。 患者側は、VRを通じて治療方法やケアプランを説明されることでより理解を深めることができる。また、リハビリ治療にVRを取り入れることで、効果的な治療が期待されている。 従来のリハビリ治療は、しばしば退屈で困難なものになりがちだったが、VRではスポーツやビデオゲームを題材にしたケアプランを提供することができ、患者の状態に合わせて日々のタスクを調整することも可能だ。さらに、VRの没入感は筋肉だけでなく認知力の向上にも役立つといわれており、これは神経回路の早期回復の効果も期待できる。 将来的には、病院に行き治療を受ける際にVRヘッドセットを装着するようなことも一般化するかもしれない。 VRによる手術リハーサルプラットフォーム Surgical Theaterはロサンゼルスの医療VRベンチャー企業だ。Surgical TheaterはVR技術による外科手術のリハーサルプラットフォーム提供している。これは手術計画の作成に役立つだけでなく、患者も一緒にシミュレーションを体験することができ、VRシナリオを見ることで、その手術の過程や効果を共有することができる。 また、新型コロナウイルスの医療従事者向けにVRデータを無料で公開しており、ウィルスが肺にどのような影響を与えるかなどをVR空間上で、360°どの方向からでも見ることがきる。 Surgical TheaterのVRモデル。新型コロナウイルスが肺に与える影響を立体的に見ることができる コロナ対策にも活躍する医療向けVRトレーニング 医療向けVRトレーニングは、新型コロナウイルスの対策にも役立っている。Shiftは医療機関向けのVRトレーニングサービスを提供しているオレゴン州のスタートアップ企業だ。彼らは、新型コロナウイルスの流行を受けて、新型コロナの医療従事者向けのVRトレーニングを無料で提供している。 Shiftによる新型コロナウイルス対策向けのVRトレーニング VRでリハビリ治療をサポート Neuro Rehab VRはマシン・ラーニングを取り入れたVR体験を通じてリハビリ治療を行うサービスを提供している。患者の状態やリハビリの進捗など様々なデータを分析し、トレーニング内容にフィードバックする。 そして患者に状況に合わせて、最適なトレーニングプランを提供できるという。そしてVR体験はゲーム的な楽しさをリハビリ治療にもたらすことができ、患者が治療を継続するモチベーションを保つ効果も期待されている。 Neuro Rehab VRのVRを用いたリハビリ治療 【DX,リモート, メンタルケア】ニューノーマル時代に注目のスタートアップ25選 まとめ 2016年ごろは「Oculus Rift」や「PSVR」の登場などでAR/VRが話題になったが、ライフスタイルを変える変革はなかった。しかし、水面下ではXRで何が出来るの研究が進んでおり、AppleのARKitやGoogleのARCoreのようなスマートフォン向けのAR開発環境など、手軽にXR技術を試せる環境も整備され続けてきた。 そして、最近では手頃な価格のVRヘッドセットやスマートフォンのARアプリも次々と登場し、XRは徐々に身近になってきている。 また、ゲームやエンターテイメントだけでなく、より実用的なXRサービスも次々と開始されている。また、XR技術で必要な高速かつ膨大な通信が必要な点も、5Gネットワークにより解消されると言われている。著者の個人的な予想では、2021年にはXRが生活の一部になるようなイノベーションが起きるのではないかと期待している。 DXを推進する5Gが実現する5つの未来 btraxでは、XRのような最新のテクノロジートレンドの動向を考慮してクライアントの方々と共にイノベーションを起こすべく、日々取り組んでいる。興味があるという方はお気軽に問い合わせを。 参考記事 Where Companies Go Wrong with Learning and Development How VR is Transforming the Way We Train Associates Surgical Theater Responds to COVID-19 Pandemic with […]

アクセシビリティとは?その基本とデザインのポイント

コロナ禍において外出するときはマスク着用が必須になった今、アメリカ国内ではマスクを着用していないと罰金になる地域もあるほどだ。
言うまでもなくマスクを着用することは重要だがこの法律で困っている方々もいる。聴覚障害者だ。
聴覚障害者は話している相手の口の動きを読んで内容を理解することが多い。しかし、マスク着用が必須になったことで相手が何を話しているのかを読み取れないことが増え、困っているという話をよく耳にする。
また、感染予防で他人の物に触れることにも敏感になっているため、スマートフォンに伝えたいこと…

AI時代のUXデザイン、GPT-3から考えるこれから必要なマインドセット

AIの活用からUXデザインを考える シリコンバレーで話題のGPT-3とは? デモンストレーションに見る、常識を覆すGPT-3の凄さ GPT-3が可能にすることとその課題 今後のUXにおけるAIの役割 最近シリコンバレーを中心にGPT-3というAIが話題になっている。6月にベータ版が限定公開されて以来、多くの研究者・開発者がこのGPT-3を用いた様々なデモンストレーションを公開し、その性能の高さだけでなく応用性の高さにも注目が集まっている。 一部の人々からはGPT-3の登場によってAIは大きく進歩し、AIが人間の仕事を奪う日が近づいたと言われている。 特にこれまでのAIテクノロジーと比べて、GPT-3はUXデザインへの活用が見込まれている。故に、我々ビートラックスとしてもデザイン会社として注目しているテクノロジーである。 そこで来るべきAI時代のUXデザインとそのマインドセットを考えてみようと思う。 UXデザインへのAI活用について エンジニアやデザイナーを中心に、これからのAI時代に人間のアドバンテージを生かしつつ、AIを活用してどのようにUXデザインを捉えるばきか。そして、どのようなマインドセットを持つべきかを考えてみよう。まずは、どのようなシーンでUXデザインにAIの強みを生かせるのか整理する。 膨大かつ複雑なデータ分析を補助する 言うまでもなくAIはデータの収集や分析を得意とする。これはUXデザインにも有効だ。例えば、ユーザーリサーチの際に様々なリサーチ結果を関連付け分析する場合はAIがデータ整理や分析の補助をしてくれる。 サービスをパーソナライズする AmazonやNetfrixのように、ユーザーの行動から次のサービスを提案する試みは盛んに行われている。AIが発展すればよりユーザーの趣向にマッチしたものを提示できるだろう。 ただし、プライバシーの問題などでこういったトラッキングを嫌うユーザーも多い。より細かなパーソナライズを行う場合、ユーザー心理を考慮しなければならない。ユーザーの不快感のないサービスの検討こそUXデザイナーの仕事になる。 ワイヤーフレーム/プロトタイプの作成を簡略化する UXデザインでは、ワイヤーフレームやプロトタイプの作成は繰り返し行われる。そういった工程を自動化・簡略化するにもAIが役に立つ。例えば、UIデザイン/開発ツールのteleportHQの例では、AIと画像処理を利用して、ホワイトボードに書かれた簡単なスケッチからHTMLのソースコードを生成している。 スケッチからソースコードを生成する様子 Non-AIサービスと言う選択肢も ここまでAIのメリットを説明してきたが、逆にAIが一切関与していないことを保証するサービスも面白い。大量生産された製品より、職人が手作りしたものが好きだと言う人も多い。 また、営業メールを受け取る場合でも、AIが生成したテンプレートメールよりも手書きの便箋を受け取る方が印象に残るだろう。あえてテクノロジーを使わないことも、ユーザーに共感を訴えることに繋がる。こういった柔軟な姿勢がUXデザイナーに重要だ。 AIに負けない新しい価値を生み出すために必要なマインドセットとは? AIを扱う上で注意するべき項目 上記のようにAIが役立つシーンは多いが、現段階ではAIはまだまだ発展途中だと言える。AIが成生する文章やデザインはいまいちだ、といった話も多い。したがって、UXデザインをする上での課題も多い。 実在しない問題、不条理な質問を解釈できない AIは辞書を引くように事実を正確に回答することは出来るが、正解のない問題には上手く答えることが出来ない。また、統計的なデータから未来を予測することはAIの得意分野だが、予測でなく未来を想像することはAIには難しい。 こうした特性を踏まえると、UXデザインに大事なユーザーの理解・共感はまだまだ人間の仕事だ。例えばユーザーリサーチでは、時には答えのない問題からユーザー自身も気づいていない原因や将来的な不安などを見極める必要がある。 これはAIには難しいだろう。単純な定量的な分析などはAIに任せて、UXデザイナーはこうした人間の得意分野に注力するなど、棲み分けを行って活用することが望ましい。 人間の感情や倫理観・意識の変化に対応できない 近年、差別に対する意識が大きく変わろうとしている。例えばBLM運動の影響で、映画『風と共に去りぬ』が一時的に配信停止されたニュースを聞いた方も多いだろう。同映画は(以前から批判はあったが)アカデミー賞を9部門で獲得し、名作として長年親しまれてきたが黒人差別や奴隷制の表現の為に一時的に配信を停止するに至った。 しかし、AIは過去の事例を学習のデータセットにしているため、差別的な表現を含んだ振る舞いをしてしまうケースがある。世論や意識が大きく変わる場合に過去の学習データを元にするAIが柔軟に対応することは難しい。 言い換えると、AIは相手の気持ちを想像する事が得意では無い。この点を考慮し、その時代の流行や雰囲気を掴み、より人間の感情に寄り添ったデザインこそが人間のアドバンテージになる。 デザインの多様性が失われる 将来的にはAIを搭載したデザインの生成ツールは一般的になり、それを使いこなすことがデザイナーのスキルになるだろう。しかし簡単にUIデザインが作れる分、どれも似たり寄ったりのデザインになってしまうだろう危険性がある。AIは人間のようにその日の気分でデザインを変えてみる、というようなことは無い。 そのため、差別化のためのブランディングがより重要になるだろう。他と異なるデザインを生み出せる独自性がデザイナーの存在意義となっていくだろう。 人工知能 (AI)や機械に絶対奪われない3つのスキル GPT-3がAI時代を切り開く このように、AIのはあくまで人間のサポートで課題もまだまだ多いといった状況だ。しかしGPT-3が登場したことで、これまでの常識が覆されようとしている。 GPT-3とは、「Generative Pre-trained Transformer 3」の略で、機械学習による言語生成モデルだ。簡単に言うとAIによるテキスト生成器だ。ある文字列を入力すると、それに続く文章を予測し生成する。 普段の会話で使うような簡単な自然言語を入力し、そこから人間が書いたものとほぼ遜色のない文章を生成することが可能で、テキストで表現できるものはすべて扱える。そのため学習データによっては、文章、ニュース記事や会話のパターンだけでなく、UIデザインやプログラムのソースコードなども生成できる。 GPT-3はOpen AIという研究団体が開発した。Open AIは、テスラのCEOイーロン・マスク氏を始めとした投資家・実業家がAI技術の発展やオープンソース化の促進のために設立した非営利の研究団体だ。 GPT-3が特に注目されているのは、文章だけでなくUIデザインのHTMLやプログラムのソースコードにも応用できる点だ。専門知識は必要なく、自然な会話形式でUIデザインやアプリケーションが作れてしまう。 これがプログラマーやデザイナーの仕事をAIが奪う時代が来たのではないかと話題になっている。その具体例をとなるデモをいくつか見ていこう。 GoogleのようなWebデザインのHTML/CSSを自動成生 実行可能なソースコードを生成 UIデザインの自動生成 プレゼンテーションをAIが作成 GoogleのようなWebデザインのHTML/CSSを自動成生 これはGoogleライクなデザインのHTML/CSSを生成するものだ。ここでは「Googleのロゴと検索ボックス、そして “Search Google “と “I’m Feeling Lucky “という2つのライトグレーのボタン」と入力するとGoogleのような検索ページを表示するソースコードを生成している。 そして、最初に生成されたデザインには不具合があったため、さらに「(2つのボタンの)間にスペースを入れる」、「幅の広い検索ボックス」と追加の入力をして、見事にGoogleと同じデザインを表示できている。 ここでのやり取りは実際のデザイナーとエンジニアの物に近いと言えるだろう。こうした自然な会話形式で簡単にページのデザインを実現できている。 Here’s a sentence describing what Google’s home page should look and here’s GPT-3 generating the code for it nearly perfectly. pic.twitter.com/m49hoKiEpR — Sharif Shameem (@sharifshameem) July 15, 2020 実行可能なソースコードを生成 上記のデモを公開したSharif Shameem氏は簡単な指示からアプリケーションを作成するデモも公開している。 ここでは「”3ドルを追加”ボタンと”5ドルを引き出す”ボタンと残高の表示」と入力すると、そのソースコードを生成している。そして、残高の計算には触れていなかったがAIがそれを解釈して、計算機能を実装してくれている。 人間であれば、指示されたボタンの名前などを解釈・推測してボタンの操作に合わせて金額を計算して表示すると分かるが、それと同じことをAIが行っているのだ。 I just built a *functioning* React app by describing what I wanted […]

ブランドの個性を定める – ブランドパーソナリティー【ブランディング入門#5】

世間にブランドの重要性が認知されていくのと同時に仕事をオファーするサービスも増え、デザイナーに仕事を依頼することが手軽になった。その結果、世の中にはクオリティの高いクリエイティブを持つブランドが多く存在するようになった。
そういった状況では、表面的なクオリティの高さだけでは他社との差別化や商品を顧客に選んでもらう理由にはならなくなってしまった。そこで、ブランドは見た目ではなく顧客が感じるイメージをうまく形成し顧客に伝える必要性が生まれた。
良いイメージが形成されてはじめてブランドのロゴやテーマカラー…

ニューノーマルで注目度アップ! アメリカの非接触サービス12事例

接触をいかに減らすか。ニューノーマル時代、Contactless (非接触) サービスに注目
小売: 「目新しい」から一転。Amazon Goのようなレジレスサービスが大きく普及。
宅配: ロボットにドローンまで!無人宅配サービスの実用化が進行。
医療: 感染リスク軽減。アプリやロボットで医療にも「非接触」というアップデートを。

残念なことだが、コロナウイルスの流行は収まる気配が見えない。そんな中で「After コロナ」でなく「With コロナ」として、コロナウイルスと付き合いながらニューノーマ…

パンデミックによる肉不足も解消!プラントベース食品最前線

コロナで肉品切れ&プラントベース肉は価格を落としての拡大中 プラントベース(乳製品・肉代替)市場は約5,000億円拡大。チェーン店でも買えるまでに浸透中! 拡大の理由はアメリカの消費者の食スタイルの変化、植物性への移行の重要性、そして味! 注目ブランド紹介:gardein、Forager Project、Miyoko’s Creamery トイレットペーパーの次は肉が無い!? コロナウイルス感染拡大を受け、アメリカでは牛肉、豚肉の供給にも影響が出始めた。 屠殺場や食肉パッキング工場でも従業員の集団感染が発生し、4月末までに、カナダおよび国内有数の工場が閉鎖に追い込まれた。 これにより、大手ハンバーガーチェーンのWendy’sでは原料の精肉が手に入らず、全体の約20%の店舗(1,043店舗)でハンバーガーが品切れとなった他、コストコなどでは、一家庭当たりの精肉の購入制限が設けられた。 今後もウイルスの拡大が続けば、洗浄作業のために工場の閉鎖は長引き、冷凍肉の貯蔵も底を尽きて、さらに肉不足が深刻化することが懸念されている。 この肉不足の問題を受けてクローズアップされているのがプラントベース(植物由来)食品だ。嗜好の変化やその健康面から度々注目されてきたが、新型コロナウイルスの影響を受け、さらなる広がりを見せている。 そこで本記事では、最新のプラントベース食品市場について紹介する。ポイントとしては以下。 新型コロナウイルス感染拡大によるアメリカでのプラントベース食品市場の急成長 アメリカのプラントベース市場規模とその浸透度 そもそもなぜプラントベース食品が消費者に受け入れられているのか 注目されているプラントベース食品ブランド紹介 Twitterで拡散されたビーフ切れを訴える貼紙 Big Rapid Newsより 新型コロナウイルス感染拡大によるプラントベース食品市場の急成長 前述の通り、パンデミックにより肉不足となり、食肉の流通価格は上昇した。一方で、プラントベース食品への需要は高まり、各社がそれに応え供給を強化していることで、プラントベース食品市場は盛り上がりを見せている。 代替肉の製造を行うImpossible Foodsは、小売店での販売を拡張した他、レストランへの卸値を15%下げることも発表した。 同じく代替肉スタートアップのBeyond Meatも、2020年第一四半期の売上が前期比141%増の100億円越えと堅調に推移しており、夏には価格を下げることを発表して株価も上昇している。 家族4人分のハンバーガーを作ろうとした場合、精肉を使うとパテの価格は全員分で5ドル程度で済む。一方、Beyond Meatのハンバーガー用パテは1枚が約3ドルで12ドルと、2倍以上の価格差があった。 Impossible FoodsもBeyond Meatも、精肉が不足・高値となっている今が、精肉との価格差を縮め、新規顧客を得るチャンスと見ていることが分かる。 乳由来に限らず、多くの種類が並ぶアメリカの日配品売り場 Dine Magazineより アメリカのプラントベース食品市場の規模とその浸透度 ではプラントベース食品の市場規模はどのくらいなのか。また、一般消費者にとってどのくらい身近なものになっているのだろうか。 2020年3月に発表された最新のSPINS小売売上データを元に、The Good Food InstituteがまとめたPlant-based Food Market Overview(プラントベース食品市場概要)によると、プラントベース食品の売上は過去2年間で29%増加し、2019年に50億ドルに達した。 その主な内訳は、植物性ミルクが20億ドル、次いでヨーグルトやバター、アイスクリームなどの代替となる植物性乳製品が14億ドル、そしてプラントベースミートが10億ドルとなっている。 日本では、フードテック発の代替肉に関するニュースを目にすることが多いと思うが、実際には植物性乳製品も市場を大きく占めていることが分かる。 また食材としてスーパーでプラントベース食品が購入できるだけでなく、カフェ、レストランでもプラントベース食品をオーダーできる機会も多い。 日本でもスターバックスで豆乳・アーモンドミルクに加え、オーツ麦由来のオートミルクが期間限定で選択できたようだが、カリフォルニア州発祥のブルーボトルコーヒーでも、アーモンドミルク、またはオートミルクが選択でき、ナッツアレルギーを持つ人でも植物性ミルクが選択できる。 さらにファストフードチェーンでもプランドベース食品が食べられるようになっている。Impossible Foodsのパテを使用したハンバーガーは、バーガーキングをはじめとする多くのハンバーガーチェーンで食べられるということはかなり浸透してきた。 これに加え、Impossible Foodsの代替肉は、アメリカ全土に200店舗以上を展開するCheesecake Factoryというレストランのボロネーゼにも使用されている。 筆者も実際に食べてみたが、トマトソースの味もあり、見た目、食感ともにひき肉との差は全く感じなかった。 Veg Newsより このように、プラントベース食品はかなり身近なものになってきている。スーパーや馴染みのレストランで見つけることことができるため、日本と比べてもプラントベース食品に挑戦するハードルが低いのだ。 関連記事:ビヨンドミートだけじゃない。食品産業に革命を起こす次世代フードを実食。 人々の意識:アメリカでなぜプラントベース食品が求められているのか 冒頭で述べたように、昨今の肉不足もあり、プラントベース食品の需要は高まっている。一方で、アメリカのユーザーの食の嗜好の変化にも需要拡大の理由があるという点も理解しておく必要がある。それが『フレキシタリアン』という食スタイルの台頭だ。 フレキシタリアンという言葉は「基本的にはベジタリアンだが、たまに肉を含めた動物食性食品を食べる人」と定義されている。2003年のワード・オブ・ザイヤー(アメリカ版新語・流行語大賞のような賞)で『最も便利な言葉部門』に選出されるなど、知名度もさらに高まっている。 プラントベース食品の認証組織であるPlant Based Foods Associationがまとめた2017年のレポートによると、アメリカ人の約3分の1がフレキシタリアンとのこと。  Plant Based Food Associationより 厳格なベジタリアンまたはヴィーガンがいまだ少数派であるのに対し、こうした「ゆるく楽しむ層」が徐々にメインストリームになりつつあるのだ。 なぜフレキシタリアンが増えてるのか 以下2つの理由がある。 もともとは、自分の健康や地球環境のため(コロナ拡大でこの意識は加速) 今では、プラントベース食品の味も進化していて、味も選ばれる理由になっているため 中高年を中心に、動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸のさらなる摂取を控え、より繊維質の多いプラントベース食品を取り入れる人が増えている。また、ミレニアル世代(25-39歳)やGenZ世代(8-24歳)では、社会的問題への危機意識から、ライフスタイルを選択する人も多い。 関連記事:ミレニアル世代のマインドセットを捉えて成功したスタートアップ事例 地球全体の人口増加に対して、動物性たんぱく質の供給が追い付かなくなると予想されていることや、食品の生産過程について描いた「Food Inc.」というドキュメンタリー映画が議論を巻き起こしたように、あらゆる情報にアクセスしやすくなった現代において、動物性食品の生産過程に対する消費者の嫌悪感は一層高まっている。 こうした中、生きた動物を販売する中国の市場で人間に感染したのが最初と言われている新型コロナウイルスが蔓延したことで、人間が食物として動物に依存することを問題視する風潮は強まっている。 動物愛護的な観点だけではなく、その加工過程で働く人々の健康リスクの管理といった公衆衛生的な問題意識の高まりも、人々がプラントベース食品を選ぶことの追い風となっているのだ。 プラントベース食品は「味」でも選ばれている こうした理由に加え、今では52%もの人が、プラントベース食品を選ぶ理由に「味」も挙げたと報告されている。 筆者もそうであったが、「代替食品って確かに動物性原料を使っていないが、その分味は動物性食品より劣るのでは?」というイメージを持ってしまう方も多いだろう。しかし、最新の プラントベース食品の味は、ここまで進化しているのだ。 注目のプラントベース食品ブランド3選 現在、Plant Based Foods Associationには、170社のプラントベース食品関連企業が登録されており、「むしろ動物性食品よりこのプラントベース食品が食べたい!」と思う魅力的な商品が日々開発されている。その中でも特に注目なのが以下の通りだ。 gardein: ミートレス・ミートシリーズ 公式Instagramより こうした新しいタイプの商品はスタートアップ企業発のイメージが強いかもしれないが、こちらは米大手食品メーカーのコナグラ・ブランズ傘下にあるgardeinが作るプラントベース食品だ。肉に限らず、魚の代替食品もラインナップしている。 食品や日配品を注文できるAmazonフレッシュでもその知名度や人気は高く、Beyondブランドにも引けを取らない商品だ。 こちらのシリーズの売り上げは、2020年3月13日から4月19日に前年同期比で65%増加したと報告されており、その需要が高まっていることが分かる。 ところで皆さんは『ミートレス・マンデー』という言葉をご存じだろうか?自分自身と地球の健康のために、読んで字の如く、月曜日は肉を食べないようにしよう、というプロジェクトである。 2003年にジョンズ・ホプキンス大学などが主導して発足したプロジェクトであるが、gardeinのホームページでも詳しく発信されている。 gardein公式HPより 例えば、肉を食べないことで制限できるエネルギーをインフォグラフィックで見せている。(真偽は置いておくとしても、)「1週間に食べるハンバーガーを1つ減らすと、車の使用を500km強(320マイル)控えたことになる」など、生じるインパクトは思った以上に大きく、それならもっと肉を控えようかな、という前向きな気持ちにならないだろうか。 このように、味や食感を動物性の食品に近づける努力だけではなく、一個人の行動にも大きな意味がある、ということをしっかりと啓蒙していることも、この商品が選ばれている理由なのかもしれない。 2. Forager Project : カシューナッツのミルク由来の乳製品代替食品 2013年創業のカリフォルニア発ブランド、Forger Projectが手掛ける、カシューナッツ由来のミルクから作られる商品だ。 Forager Project公式HPより 主力商品である『カシューグルト』は、ヨーグルトに代わり最近の筆者の定番にもなっているのだが、味種も6種類以上と豊富で、購入頻度が高くてもマンネリ化しない。 カシューナッツ由来のクリーミーで滑らかな口当たりが特徴であり、酸味は控えめでヨーグルトとムースの中間のような印象を受ける。ヨーグルトとはまた違った風味であるが、むしろこの味が気に入った。 […]

コロナ禍に負けない!アメリカの宇宙ビジネス企業を紹介

イーロン・マスクのSpaceXはコロナ流行後でも、宇宙事業を継続 Amazon設立者の宇宙ビジネス企業Bleu OriginはNASAの月面着陸計画に参加 サンフランシスコの注目宇宙ビジネス企業Planet Labsは衛星画像技術でコロナ禍でも一躍発揮 Rocket Labの小型ロケット打上げサービスが宇宙ビジネスの未来を切り開く はじめに 近年、アメリカでは宇宙ビジネスのスタートアップ企業の成長が注目されている。年始にはk、2040年までに宇宙事業は1兆ドル以上の市場規模に成長するとの見通しも、米商務長官ウィルバー・ロスによって発表された。 その背景には、NASAの積極的な宇宙事業の民間委託がある。NASAの宇宙開発の顔だったスペースシャトル計画は、コストが高過ぎるとして2011年の飛行を最後に終了した。 そこでNASAは宇宙事業を民間委託し、企業間の価格競争を起こすことでコストを抑えるという試みを始めた。つまり宇宙ビジネス関連企業が成長する大きなチャンスとなっているのだ。 そして、そこから生まれる新しいサービスにも期待が寄せられている。例えば、Orbital Insightは人工衛星で撮影した石油タンクの画像を、AIを用いて分析することで石油貯蔵量を推定し、石油投資に利用するサービスなど。 日本でも、ホリエモンこと堀江貴文氏の出資で有名なインターステラテクノロジズをはじめとした宇宙ビジネス関連のベンチャー企業のニュースを聞くことが増えてきており、宇宙ビジネスはより身近になりつつある。 一方で、残念なことにコロナウイルスのパンデミックは宇宙ビジネスにも大きな影を落としている。いくつかのロケット打上げが延期され、企業の資金繰りも困難になっている現状だ。 しかし、この状況に負けずに、宇宙という大きな目標に向けて事業を継続する企業も多い。本記事ではこれらの企業とその現状を紹介する。 また、そのサービスを知る上で、重要なキーワードの簡単な解説も入れているので参考にしていただきたい。今後の宇宙ビジネスを知る上で重要なトレンドになるだろう。 テスラのイーロン・マスクが設立したSpace X イーロン・マスク氏がCEOを務めることで知られるSpaceXは、今最も勢いのある宇宙ビジネス企業の1つだろう。SpaceXのサービスはロケットの開発・打上げ、有人宇宙船の開発と、それを利用した宇宙旅行の提供、衛星インターネットの提供など多岐にわたる。 SpaceXはコロナウィルスの流行以降も積極的に事業を続けている。ここ最近の大きな動きを紹介しよう。 衛星インターネットサービス『Starlink』の人工衛星打上げ SpaceXは、4月22日に『Starlink』人工衛星の打上げに成功した。 Starlinkとは、衛星コンステレーションによって衛星インターネットを提供するサービスだ。衛星コンステレーションとは、多数の人工衛星を連携させて構成するシステムのこと。近年、小型衛星による衛星コンステレーションを用いたサービスで宇宙ビジネスに参入する企業が増えてきているのだ。 その中でも、SpaceXは12,000基以上の小型人工衛星による大規模な数の衛星コンステレーションを構築し、衛星インターネットサービスの提供を構想している。 これは主に北米・カナダを対象としたサービスを想定しており、将来的には40,000基以上の人工衛星を用いて世界全体にそのサービスを拡大する構想だ。 地上から見ることができるStarlink衛星 コロナウィルスの影響で打上げ延期があったものの、4月22日の打上げでは60基以上のStarlink人工衛星を軌道上に投入することに成功した。この打上げでStarlinkを構成する人工衛星は420基が軌道投入されたことになる。 イーロン・マスク氏は2020年中に北米・カナダで試験的にサービスを開始する計画を語っており、今後も順次衛星を打上げていく予定だ。 また、この打上げに使用されたロケット『Falcon 9』は人工衛星を切り離した後に、大西洋上の無人ドローン船への着艦にも成功し、再利用可能ロケットの実現を確かなものにしつつある。 4月22日に実施されたロケット打上げと回収 SpaceXとNASAの有人宇宙飛行プロジェクト SpaceXは、NASAから委託された有人宇宙飛行プロジェクトのために、宇宙船『クルードラゴン』の開発を進めている。そして、NASAは5月27日に『クルードラゴン 』の有人宇宙飛行テストのために打上げを行うと発表した。 これはSpaceXにとっては初の有人宇宙飛行ミッションであり、NASAにとっても9年ぶりとなる有人宇宙飛行となる。この打上げの前段階として、2019年に実施されたテストでは無人宇宙船の打上げと国際宇宙ステーションへの往復を達成している。 このテストが成功すれば、その次の有人宇宙飛行も実行される予定となっており、その搭乗者には日本人宇宙飛行士の野口聡一氏も候補に挙がっている。 宇宙船『クルードラゴン』 Amazon設立者による宇宙ベンチャーBlue Origin Blue OriginはAmazonの設立者であるジェフ・ベゾス氏が設立した宇宙ビジネスのベンチャー企業だ。主にロケット開発・運用、宇宙船の開発などを行っている。Blue Originはコロナ禍の中でも従業員の感染リスクを考慮せずに、打上げ計画を進めていると批判的に注目も浴びてしまっているが、その研究開発に大きな注目が集まっているのは間違いない。 有人宇宙飛行サービスの構想 Blue Originの事業で注目を浴びているのが『ニュー・シェパード』ロケットによる有人宇宙飛行計画だ。この構想は、最大6人が搭乗可能なカプセル型の宇宙船を高度およそ100kmの宇宙空間まで打上げて、約10分前後の宇宙旅行を体験できるというもの。 この宇宙旅行の価格はおよそ20万ドルになると言われている。また、この宇宙船とロケットは再利用が可能。宇宙船はパラシュートで落下し、ロケットはブースターによる垂直着陸が可能なので、次の飛行でも利用することができる。 早速2019年の12月11日に12回目の打上げテストに成功しており、近い未来に宇宙旅行が実現すると期待されている。 『ニュー・シェパード』の宇宙飛行プロセス 月面着陸計画『アルテミス計画』への参加 Blue Originは、NASAの月面着陸計画の『アルテミス計画』のために月面着陸船の開発を進めている。 アルテミス計画では、2024年までに有人月面着陸を目指し、さらに2028年までに月面基地の建設が予定されている。人類を再び月に送り込もうという壮大な計画なのだ。2024年の有人月面着陸では、男女それぞれの宇宙飛行士が参加する予定になっており、実現すれば女性として初めて月面着陸した宇宙飛行士が誕生することになる。 この計画は、アメリカの官民協力体制で進められているが、各国の宇宙機関とも協力しており、宇宙航空研究開発機構(JAXA)も協力を表明している。 さらに、月までの宇宙飛行だけでなく、月面基地や宇宙ステーションの建設資材の運搬や補給などで、多くのロケット打上げが必要とされており、計画には数十社が参加する予定になっている。 NASAは5月15日に、各国の宇宙機関及び民間企業と協調して計画を進めていくためのガイドラインとして『アルテミス協定』を発表し、その実現に向けて準備を進めている。 NASAの月面着陸のロードマップ このアルテミス計画の開発・実行部隊として、Blue Originの他に、SpaceX、Dyneticsの2社もNASAによって選定された。NASAは今回選定された3社の計画に9億6700万ドルの資金を用意しており、そのうちBlue Originの開発計画には5億7,900万ドルを提供するとしている。 Blue Originは他2社よりも大規模な月面着陸船を開発を計画しているため、最も高額な資金提供となった。この高額投資からはNASAのBlue Originへの期待の高さがうかがえる。 実際に、今回の選定の中で、Blue OriginはSpace Xより高評価を得ていた話もある。そして、Blue Originはこれを実現するため、軍事企業のロッキード・マーティンをはじめとして、ノースロップ・グラマン、Draperと協力して統合型月着陸船(Integrated Lander Vehicle, ILV)の開発を進める予定だ。 Blue Originの月面着陸計画の紹介動画 また、余談にはなるがAmazon自体もKuiperという衛星インターネットサービスの提供を計画している。これはSpaceXのStarlinkの強力な競合相手になるだろうと言われている。 サンフランシスコの衛星画像スタートアップPlanet Labs Planet Labsは元NASAの開発者であるWill Marshall氏らによって設立されたサンフランシスコのスタートアップ企業だ。人工衛星の開発とその人工衛星で撮影した衛星画像を取り扱うサービスを提供している。 高品質な衛星画像サービスを開発、提供 現在、軌道上にはPlanet Labsの所有する小型人工衛星およそ150基が打ち上げられており、それらで構成される衛星コンステレーションにより、地球上のあらゆる場所の衛星画像を撮影している。 そのうちの120基以上を占める人工衛星『Dove』は、CubeSatと呼ばれる超小型衛星に分類され、高品質の画像を撮影できる。また多数の人工衛星により、地球全体をカバーする衛星画像を毎日リアルタイムで撮影可能だ。 さらに、超小型でありながら分解能は3〜5mで高解像度。また、Planet Labsは別の人工衛星による衛星画像サービスも提供している。例えば、彼らの人工衛星『SkySat』は72cmの分解能をもち、より高解像度の画像を提供できる。 今、DoveのようなCubeSatと呼ばれる超小型衛星が注目されている CubeSatは、前述の通り、超小型の人工衛星だ。1999年にカリフォルニア・ポリテクニック州立大学とスタンフォード大学によって仕様が策定され、民間企業だけでなく、大学などの研究機関でも教育・研究のために開発されている。 大学での開発が想定されているため、CubeSatは従来の人工衛星に比べて安く容易に開発できるのが特徴だ。 さらに、小型・軽量なため他の打上げ計画に相乗りして打ち上げることが可能となり、そのコストを大きく抑えられるメリットがある。大きさは1ユニット(1U)10cm x 10cm x 10cmを基本として、1U、2U、3Uといったようにサイズが規定されていてる。 また、1ユニットの重量は数kg。Planet LabsのDoveはCubeSatの規格で3Uサイズ(30cm x 10cm x 10cm)に分類される大きさで、非常にコンパクトであることがわかるだろう。 近年では、集積回路やソフトウェアなどの技術向上によりDoveのように小型でも高性能なCubeSatの開発が可能となっており、CubeSatを用いた宇宙ビジネスに参入する企業が増えてきている。 CEOのWill Marshall 氏と人工衛星『Dove』 Planet Labsの衛星画像は、グーグルマップをはじめとする地図の作成や自然環境の変化の研究、物流・交通や災害発生時の状況確認、また北朝鮮のミサイル監視などの軍事的な用途も含めて、多くの分野で使用されている。 また、コロナウィルスの影響の分析にも使用されており、物流・交通状況変化の分析に役立っている。 例えば、次の画像では中国、武漢市の交通状況を確認できる。都市封鎖前の2020年の1月12日と封鎖後の1月28日で、交通状況が大きく変化していることを見ることができる。 Planet Labsの衛星画像。武漢市の様子(1月12日) Planet Labsの衛星画像。武漢市の様子(1月28日)  […]

環境保護とUXデザインの両立!3つの例に学ぶ優れたサービスとは

環境問題への配慮と、ユーザー体験の良さは両立しうるのか。 環境◎ × UX△:紙製ストローに学ぶ、ユーザーを置いてけぼりにしないプロダクトとは 環境◎ × UX◎:Square社の決済端末と、Nimble社のポータブル充電器が持つユーザー体験の質の高さ ユーザーにとっての課題を問い、問題起点での発想が重要 地球環境問題を解決する方法はどれも辛く、不便なものなのだろうか。真夏の冷房・真冬の暖房を気合で我慢したり、複雑すぎるまでのゴミの分別など日常生活で求められることは多く、環境対策のために工夫が必要な時代となった。 そうした中、環境対策とユーザー体験満足度が両立された製品・サービスは世の中にいったいいくつ存在するだろうか。 環境対策と良いユーザー体験の両立はやはり実現が難しい問いなのだろうか。ロサンゼルスとサンフランシスコで暮らし始めて6年余り、そんな問いが筆者に芽生え始めた。 人口約4,000万人を誇るカリフォルニア州では、2045年までに州内で使用される電力の100%を再生可能エネルギーで賄うという強気な法案を可決するなど、環境対策に関して世界を牽引している州として有名である。 ユーザー体験面に関しても、イノベーションの街、サンフランシスコ・シリコンバレーを中心に環境対策とユーザー体験満足度の両立を目指す製品・サービスが日常的にも体験できるようになってきた。 今回は、その中でも実際の体験を通して気づいた事例を3つ紹介すると共に、果たして環境対策とユーザ体験満足度は両立するのか、もしくは本当に両立させるべき問いなのかを考えてみたい。 この機会に新しい分野の動向をチェックしつつ、自社の次なる新規事業開拓のヒントに繋げて頂けたら幸いだ。 環境に良い × UXに課題ありの例:紙製ストロー カリフォルニア州では、2019年1月から、同州に店舗を構えるフルサービス型レストラン(店員がお客の注文を取り、席まで料理を運ぶ形式)でのプラスチック製ストローの提供を原則禁止する法律が施工された。 この政策をきっかけに、フルサービス型レストランだけではなく、スターバックス社やマクドナルド社などの大手企業でも、自主的にプラスチック製ストローの提供を取り止めると発表し話題となった。 プラスチック製ストローの代替案として現在市場に出ているのが、紙製ストローである。紙で作られたストローは、ゴミの分別が簡単でリサイクルにも繋がり環境に良く、企業としての導入コストも安いため、多くのレストランや飲料店で提供され始めている。 環境には配慮されている一方で、ユーザーの体験満足度はどうか。正直、それほど素晴らしいものとは言えない。「紙ストローは飲み物を飲んでいる最中に、ふやけて型崩れするから最後まで飲めない」など否定的な声が多く聞かれる。 そしてそれを見越してか、最初からストローを2つ貰う人もしばしば目にする。これでは結果的にゴミの量が増え、環境対策という点においても問題解決に繋がらず、支離滅裂である。 もちろん、上記のような懸念から、より丈夫で環境にも考慮された竹製ストローやシリコン製ストローなど代替品は出てきてはいるものの、紙ストローに比べて導入コストが高く、採用に足踏みをしている店舗が多い印象だ。 試行錯誤は繰り返される一方で、なぜ環境面もユーザー体験満足度も確保された解決策が生み出せないのか。この問題で重要なポイントは、「プラスチックストローの代替案になるのは何か?」という解決策視点ではなく、「そもそもユーザーにとってストローとは何か?」という問題起点で物事を考える視点が必要である。 ユーザーにとってストローは、飲み物を飲むためのただの道具であり、最終的なゴールは飲み物をストレスなく飲むことである。つまり、ストローがなくても、飲み物を飲めさえすればユーザーはHappyなのではないだろうか。 スターバックスのストロー不要のフタ プラスチックストローの代替案ばかりに気を取られ、ユーザー体験を置いてけぼりにしてしまっては使われない製品となり、絶対に問題解決に繋がらないのである。 環境に良い × UXも良い例:Square社の決済端末 アメリカでレストランに行くと、いつもお会計にひどく時間が掛かる。チップ制度があるアメリカでは、各テーブルに1人店員がついてくれるのが通常だが、これがピーク時ともなると、その店員の手が空くまで座席で待つことになり、この時間が本当にとてつもなく長い。 そこから、会計表を貰って、クレジットカードを渡して、チップを計算して、レシートにサインをしてとなると、それだけで最低15分は必要になる(おしゃべり好きなアメリカ人なら尚更時間がかかるだろう)。 また、顧客によっては、レシートのハードコピーを希望する人がまだまだ多く、ペーパーレス化という環境面においても課題が残っているのが現状で、環境とユーザー体験満足度に関して課題を抱えている場面であった。 そうした中、2009年にサンフランシスコで創業された、新しい形の決済サービスを提供しているSquare社がSquare Terminalという新しいサービスを開始した。 Square Terminal Square Terminalの最大の特徴は、Wi-Fi接続ができ、デバイスの充電は1日持続するため、店員が常にこれを持ち歩いて仕事できるところにある。これにより客は卓上で支払いを済ませることができるようになる。会計表を待ったり、店員がレジまでクレジットカードを切りに行ったりするのを待つという、ムダな時間を過ごさなくて済む。 レシートに関してもデジタルでの送付が可能なため、紙の削減に繋がり、環境にも十分考慮されている。一見、レシートを削減したところで大した環境対策効果はないのではと思われがちだ。 しかし、米国での1年間のレシートの消費量は相当なもので、Green Americaが行った調査によると、年間300万本の木と90億ガロンの水を消費しているとの報告もあるほど深刻な問題なのだ。 こうした環境とユーザー体験満足度が両立された製品が生まれるポイントとして、ユーザー体験に着目し、問題起点で考えられた製品開発を行ったからだと考えている。 今までのクレジットカード決済端末では、持ち運びができず待ち時間が重なり、レシートもハードコピーだけで、ユーザーにとっても環境保護にとっても特別良い体験とは言い難かった。 Square社は、「お店での会計体験がストレス」というユーザーが抱える課題に着目し、どうすればそれを変えることができるかという視点で取り組んだからこそ、多くの店舗にも採用され、レシート紙の削減という環境対策にも繋がっているのだ。 環境に良い × UXも良い例:Nimble社のポータブル充電器 様々な業界が環境対策に動く中、家電・電化製品分野は特に対応が遅れていると言われている。それはなぜか。多くの家電製品は使い古した後ゴミになり、土に還ることができず、リサイクルするにしても引き取りなどには費用が掛かるため、身動きが取れず放っておかれる、もしくは間違った方法で破棄される状況に陥ることが多いからである。あなたの自宅にも使い古しのスマートフォンや電化製品がいくつかないだろうか。 カリフォルニア州に拠点を構えるNimble(ニンブル)社は環境に優しいリサイクル可能なポータブル充電器を製造・販売しているスタートアップ企業だ。 同社の最大の強みはそのポータブル充電器だけではなく、上記のようなユーザーが持つ「使い古しの電化製品の処理方法に困る」という課題を解決しているところにある。 まず製品面。Nimble社では、製造している充電器の素材はもちろん、付属ケーブルや製品をユーザーへ発送する際の梱包もリサイクル可能な材質を採用しており、製品そのものが既に環境に配慮されている。 Nimble社のポータブル充電器 環境に配慮された充電器と聞くと、製品の性能や価格面でネガティブに捉えられがちだが、しかし、使ってみての印象は市販のポータブル充電器よりも長持ちし、充電速度も速く、デザインも素晴らしい。 価格設定も手頃で、ワイヤレス充電器は40ドルからと大手ブランドと比べても同等か安い印象があり、ユーザー体験満足度は高い。 ユーザーとしてはそれだけでも満足なのだが、この企業の素晴らしい点は他にもある。最大の特徴は、製品を使い古した後の処理に掛かるカスタマーサポート面だ。Nimble社の製品を購入すると、電子機器のリサイクルに利用できるグレーの袋が付属品として付いてくる。 付属リサイクル袋 この袋には、最大1ポンド(450g)までの重さであれば、どんな電化製品でも入れることができ、無料でリサイクル業者への配送に対応してくれる。 自宅に転がっている使い古したスマートフォンやカメラなどのリサイクルにも対応することで、電化製品の処理に困っているユーザーの課題を解決し、環境対策にも適用しているのだ。 この例もSquare社同様、ユーザーが抱えている問題は何なのかという問題視点でサービスを作った事が最大のポイントだと言える。ただ単に環境に良いポータブル充電器を作り、販売しているだけではおそらくユーザーには届かず、問題解決には繋がっていなかっただろう。 ユーザーが抱える問題をしっかりと考えた上で作られた製品・サービスだからこそ、多くの人に受け入れられより強い形で環境対策にも貢献できていると考える。 まとめ 今回は、環境対策とユーザー体験満足度が本当に両立するのか、そしてそれは達成されるべき問いなのかを考えるために、事例を用いながら紹介をした。 環境問題は世界が抱える課題の1つで、一刻も早く対策が必要の分野であるが、そこでユーザー体験を置き去りにしてしまっては、せっかくのソリューションも使用されず意味がなくなってしまう。 ここで最も難しい問題は、ユーザーがそのサービスや製品を利用することによって、どれだけ環境保護の役に立っているのか見えづらく、継続に繋がりづらいところにある。真夏の冷房・真冬の暖房を気合いで我慢をする行為は、正直バカらしく続けられない人が多いだろう。 環境もユーザー体験も両立された製品やサービス開拓は難しい問いであるが不可能ではない。それを達成するには、ユーザーへの共感、そして問題起点で考え、ユーザーに継続して利用してもらう必要がある。紙ストローの例のような環境対策だけに目を向けた解決策では、その場凌ぎにしかならず、長期的な展望は見込めない。 Square社やNimble社の例のように、ユーザーが抱える課題を起点に考えられたソリューションであれば、短期的な効果は望めなくても、長期的に利用者数が増えることで、それが結果的に環境対策にも繋がり両立が達成されるのではないだろうか。 btraxでは、ユーザーへの共感を通して課題を解決するためのワークショップ、「Innovation Booster」を提供している。ユーザーのニーズや課題にフォーカスした新規事業開発プロセスに興味のある方は、ぜひこちらまで問い合わせ頂きたい。 関連記事:「誰にも使われない機能を持つ製品」が生まれてしまう2つの理由

サービスデザインの際に知っておきたいリープフロッグ現象とその本質

リープフロッグ現象:既存の社会インフラが整備されていない環境で、先進国が歩んできた「技術発展における通常の段階的変化」を経ずに、新たなサービス等が一気に広まること
リープフロッグ現象が起きる理由として、インフラが整っていない、既存・新規サービス間の摩擦がない、膨大な開発費用の必要がない、導入のペナルティがないという「4つのない」があるが、そこにはそもそものサービス開発心構えがある

生活者のそもそもの願望をまず捉える
技術的スペックは最新・最高である必要はない
伝達しやすいシンプルなサービス価値が…

さよなら表敬訪問!米国でのネットワーキングを成功させるには

 

そもそも日本とアメリカではネットワーキングに対するスタンスが異なる
ネットワーキングとは出会った人と相互に有益な情報を共有し、長期的な関係を確立していくための手段。テイクだけでは成り立たない
企業にとってネットワーキングはサービス開発などビジネス拡大の上で欠かせない
ネットワーキングは閉ざされがちな情報への扉を広げ、個人としての可能性も高める
ネットワーキングの目的を明確にし、アメリカのネットワーキングツールを知るべし

あなたはテクノロジーの聖地、シリコンバレーに飛び立ち、現地でス…

【2019年】3つの業界に見る米国イノベーション事例まとめ

5Gの拡大でAR/VRや自動運転など「技術」が注目されがちだが、サービスの価値は「ユーザーが抱えている問題を解決することで初めて創造される」ということを忘れてはいけない
2019年ユーザーに価値を与えたイノベーション事例をリテール、ヘルスケア、ペットケア分野に分けて紹介

今年も残すところあと僅か。2019年のアメリカは第5世代移動通信システム、「5G」がついに解禁され、VR/AR市場の拡大、自動運転の可能性など、今までは想像もできなかった技術革新がさらに加速した年でもあった。
例えば、Alpha…

【Mobility as a Service】人々の“移動“を変革する最新MaaS スタートアップまとめ5選

MaaS とは「様々な種類の交通システムを、効率よく統合し1つのプラットフォームを介して利用できるようになる」こと どこまでがMaaSに当てはまるのかは曖昧で、①情報の統合、②予約・決済の統合、③サービス提供の統合というレベル別で理解されることが多々ある MaaSのグローバル市場規模は2017年に約4兆円。2025年にはおよそ10倍の40兆円になる予想 注目MaaSスタートアップ5選を紹介:DUFL、Zeva、Geosure、moovel、Bestmile 移動は我々の生活の軸であると同時に、マイカーによる排気ガスの問題や、車などを所有することの不便さや複数のアプリを使った複雑な移動など、移動に関する課題は数えきれないほどある。 そのような課題を解決すべく出てきた概念がMaaS(Mobility as a Service)である。 本記事では、そもそもMaaSとは何かをおさらいし、MaaSが注目される理由についても言及する。そしてこのMaaS市場で、今後大きな活躍をする可能性に満ちたスタートアップをあらゆる視点から紹介したい。 そもそもMaaSとは 「【2018年】モビリティ業界で注目され始めたMaaSとは?」の記事でも述べている通り、MaaS とは「様々な種類の交通システムを、効率よく統合し1つのプラットフォームを介して利用できるようになる」ことである。 MaaSは1つの概念であり、どこまでがMaaSなのかということに関しては曖昧である。 ここでは、MaaS業界で良く用いられるレベル間に基づき、サービスへの統合の程度に応じて以下のようなレベルに分けられると、定義する。 (図はこちらの情報に基づき筆者が作成) レベル1:情報の統合 渋滞情報や建物の情報などのリアルタイムデータを分析し、車・電車・徒歩など複数のモードで移動ルートをユーザーに提案するレベルのこと。目的の場所までのルートを提案するGoogle Maps や乗り換え案内アプリのNAVITIMEなどがそうである。 レベル2:予約・決済の統合 レベル1の機能に加えて、予約・決済システムが付け加えられたレベルのこと。移動ルートの提案後、予約・決済ができるアプリPikaway(Skipr, Inc)や、ライドシェアリングサービスUberなどがそうである。 レベル3:サービス提供の統合 公共交通機関をはじめ、レンタカーなどの複数の事業者間で連携したサービスや料金体系の統合がなされるレベルのこと。電車やレンタカー、タクシー、ライドシェアなどのサービスを決められた範囲内で自由に月額制で使えるUbigoなどがそうである。 また、こういったアプリやサービスだけでなく、それらを取り巻く環境もMaaSと言われることがある。例えば、自動運転のタクシーなど移動手段そのものがそうだ。 MaaSが注目される理由 人々の軸となる移動を便利にしてくれる事に加え、MaaSが注目される理由の1つとして、MaaSがもたらす環境へのインパクトや日々の移動手段に関する悩みを解消してくれる点がある。 プライベートでどこにでも移動できるマイカーであるが、交通渋滞や駐車による土地の無駄遣い、環境負荷など、マイカーが引き起こす問題は多い。 国土交通省によれば、マイカーによる単位輸送量当たりのCO2排出量は鉄道の7倍、バスの2倍以上であるといわれている。 移動の効率化を図るMaaSがそれらマイカーの問題を解決してくれる期待はかなりあるのだ。 事実、MaaSの世界の市場規模は2017年で約4兆円だったものが、2025年にはおよそ10倍の40兆円になると言われている。 日本でも、そのMaaSブームは健全しており、三井不動産と、フィンランドにあるMaaSプラットフォーム「Whim」を提供するMaasGlobal社が協定を締結したのも最近の話題である。 今回紹介するMaaSスタートアップは日本以外の国が発祥の注目企業である。ぜひ視野を広げるため、ヒントを得るためにも注目していただきたい。 MaaSスタートアップ5選 1.DUFL「手ぶらで出張」の時代を作るパイオニア レベル: 2(予約・決済の統合) サービス概要 : 2014年にロサンゼルスで始まった、旅先や出張先での服の管理をスマートにし、人々の移動をより楽にしてくれるスタートアップ。 ユーザーは、自身の衣類などをDUFLが所有するクローゼットにあらかじめ宅配便で預けておく。 そして、アプリ上で、そのクローゼットから自分がピックアップしたい衣類とや旅や出張の行き先を選択し、ユーザーは目的先で洗濯済みの衣服を受けとれるというサービスである。 DUFLを使うことで、旅・出張中の洗濯・乾燥・スーツケースから服を引き出す・服を持ち歩くという行動が必要でなくなるのだ。同社は1回の旅行で3~5時間節約できると提言している。 他にも、服だけでなくスポーツ用品をドアtoドアで目的地まで届けてくれるサービスDUFL Sportsなども提供している。 注目の理由: 彼らの注目すべき点は、ユーザーの継続率だ。出張に出向く多種多様なビジネスマン含め、利用者の満足度はかなり高く、その継続率は驚異の99%だという。 また、ロサンゼルスから始まったDUFLだが、同社は300万人以上のゴルファーのユーザーがいるGolf Digest Online(GDO)Japanと提携し、ゴルフ分野で日本にも勢いを伸ばしている。 ちなみに、創業者であるBill Rinehartは、15年間で5社を起業し、全てを成功に導いた凄腕のシリアルアントレプレナーである。 共同創業者であるAbdrea Grazuabu、AJ McGowanは、共に以前Bill が創業した会社でも活躍していた逸材である。 2. Zeva 都会内の少しの移動でも、スマートに、安全に使える電気航空機を作るスタートアップ レベル: なし(次世代モビリティ) サービス概要: 2017年、ボーイング社が主催するGoFlyというエアモビリティ開発コンテスト参加と同時に創業した、次世代エアモビリティのスタートアップ。 同社は、ドアtoドアで人を運ぶ、1人用航空機『eVTOL』を開発しているのだが、その特徴が驚くべきものである。 まず1つ目が、機体の供給源が燃料ではなく、100%電気だということだ。電気であるがゆえに、排気ガスは一切出ないのも特徴である。 次に2つ目が、ほぼどこでも離着陸できるということだ。ヘリコプターなどは専用の着陸地点が必要である一方、eVTOLでは決められた着陸地点はない。 最後の特徴が、1回の充電で最大50マイル(80km)を時速250kmで移動できることだ。これは東京駅から群馬県までの距離を約20分で移動するのに値する。 彼らは、実動する状態のeVTOLを2020年に世界に発表し、エアタクシーなどのサービスを経て、2040年には私たち1人1人がeVTOLを使っているような世界を目指している。 注目の理由: 注目すべきは、eVTOLの実現性である。 モビリティ産業で問題になるのがパーキングスペースであるが、同社は、ビルや家の開閉可能な窓・壁にeVTOL専用のドッキングシステムを取り付ける事でその問題を解決している。 加えて、そのドッキングシステムは、eVTOLの充電できる仕組みならびに操縦者が乗り物から直接ビルに安全に入れる仕組みになっているので、乗り物と目的地の距離が遠いという課題をも解決する。 都会の中で移動できる航空機、Urban Air Mobility(UAM)は、私たちの生活を一変させるかもしれない。 3. Geosure 安全な旅を女性・LGBTQ含む全ての人に提供 レベル: 1(情報の統合) サービス概要: 2013年にカリフォルニアで始まった、各都市・地域の安全度がすぐに分かるアプリを提供するスタートアップ。 ユーザーは、アプリを通して、各都市・地域の以下7つのカテゴリの評価値を1~100のレンジで見る事ができ、自分がいるところ、もしくはこれから行くところの安全度をわかるようになっている。 全体的な安全度 外的負傷をする可能性 法律的な自由度 スリの頻度 清潔さと病院へのアクセス 女性に対する危険度 LGBTQの許容度 アメリカ政府や国際連合などが同社の評価に協力しているのに加え、現地にいる人、もしくはすでにそこへ行った事がある旅行者も評価をしているので、評価の信頼度はかなり高い。 また、従業員数は10人以下と小規模なスタートアップではあるものの、すでに4万以上の地域が登録されており、ユーザー数も右肩上がりである。 注目の理由: 彼らの注目すべき点は、何といっても女性やLGBTQのユーザーに対して重きを置いているところである。 アプリの評価軸である7つのカテゴリの内の2つが女性やLGBTQの方のための評価軸である事が主張している通り、同社は旅行でより治安や安全面を気にする女性やLGBTQの方をもターゲットに置いている。 それは、彼らの旅行のハードルを下げると同時に今後のMaaS業界の幅を広げるかもしれない。 また、コアメンバーの中に女性エンパワーメント担当の方がいたり、LGBTQの許容がある街ランキングなどのコンテンツも提供しているのも、注目すべきポイントだ。 4.moovel「街をよりスマートに」、交通機関に革命を起こす巨大プラットフォーム レベル: 3(サービス提供の統合) サービス概要: 2013年ドイツで始まった、街をよりスマートにする巨大マルチモデルプラットフォームを作るスタートアップ。 誰しもが、どこかに移動する上で面倒くさいと感じていた、検索、予約、決済の手順を、アプリ1つでスムーズに完了できるサービスを提供している。 ユーザーは、カーシェアなどを含めた全ての交通機関を検索対象した目的地までの最短ルート、所要時間の確認、さらには、チケット予約に加えApple payなどを用いた決済を、手軽にこのサービス1つで使う事ができる。 同社は他にも、通勤にかかる費用や割引運賃などを管理するアプリをも提供するなど、アプローチしている分野は多種多様である。 注目の理由: 彼らの注目すべき点は、その規模の大きさにある。 […]

シリコンバレー発、人の課題を解決する未来のロボットたち

サンフランシスコでは、「人の生活にある課題を解決するための手段」としてテクノロジーロボットが生活に密着し始めている
デリバリーロボットはEコマースやオンラインオーダーの普及による人手不足・コスト・エネルギー・交通などの問題に一役買っている
移動手段にもロボット技術が使われている。InMotionは小回りもきく、電動一輪車としてサンフランシスコ民からも利用されている

近年、日本でも商業施設や宿泊施設などで案内ロボットを見かけるようになりましたが、果たしてロボットが我々の生活に密着していると言えるで…

注目のスポーツテック5選。デザイン中心から生まれるイノベーション

2020年東京オリンピックの開催まで1年を切った今、日本では多くの人が来年の夏を今か今かと待ち望んでいる。スポーツ好きにはもちろんのこと、自国でのオリンピック開催によって普段はあまりスポーツに興味のない人からの関心も集まることになるだろう。 前回の1964年東京オリンピックから50年以上経った現在、スポーツ業界で大幅に変わったことの1つとして、テクノロジーの発展・導入があげられるのではないだろうか。実際に、スポーツに特化してイノベーションを狙うスタートアップ、いわゆるスポーツテックも多く誕生してきている。 そこで今回は、 スポーツテックとは スポーツテックの市場規模 注目のスポーツテック5選 を紹介していく。スポーツテックに詳しい方も、まだ知らない人も、この記事でスポーツテック業界のおさらいと最新トレンドを掴んでいただきたい。 今更聞けない、スポーツテックとは スポーツテックとは、スポーツ(Sports)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、AIなどの新しいテクノロジーを用いてスポーツ業界に革新的な変化をもたらすサービス、商品、またスタートアップなどのカテゴリーを指す。文部科学省の外局であるスポーツ庁は、スポーツテックを「支える」「観る」「する」という3つの分類に分けており、それぞれ以下のような特徴があるという。 選手を「支える」ためのスポーツテックは、選手やチームのパフォーマンスの向上、怪我の防止に繋がるアプローチから、製品やサービスを開発している。 スポーツを「観る」ためのスポーツテックは、新たな観戦スタイル、観戦者の満足度の向上に繋がるアプローチから、製品やサービスを開発している。 スポーツを「する」ためのスポーツテックは、一般向けの新たなスポーツの楽しみ方の創造、新たなトレーニング方法などに繋がるアプローチから製品やサービスを開発している。 「する」ためのスポーツテックは、当ブログの『米国最新フィットネススタートアップ3選。キーワードは「自宅」』で既に紹介しているので参考にしていただきたい。今回の記事では、「支える」と「観る」を目的とした商品・サービスを提供している最新のスタートアップに注目する。 約3.5倍の成長が見込まれる世界のスポーツテック市場   Statistaから転載 上のグラフを見て分かる通り、日本国内のスポーツテック市場規模は、2019年から2024年にかけて毎年成長すると予想されている。 実際に、今年3月にはスポーツビジネス界のキーパーソンがスポーツテックを含めたスポーツビジネスについて議論する『SPORTS Tech & Biz Conference』というイベントが東京で行われた。さらに、スポーツ系スタートアップのためプログラム『SPORTS TECH TOKYO』は世界中のスタートアップを巻き込んで、日本の中からスポーツテック業界を盛り上げている。 ReportsnReportsから転載 さらに、世界における市場規模成長予想は、2018年から2024年で約3.5倍と予想されていて、スポーツテックは世界的にも注目を集めている。既に様々なスポーツテックのイベントが各地で行われる中、代表的なものでは『CES (Consumer Electronics Show)』『SPORTTechie』『SportsPro』などが挙げられる。 スポーツテック市場全体への期待と注目が集まる中、その中で、世界的に注目を集めるスポーツテックスタートアップを紹介する。 選手を「支える」ためのスポーツテック 1. FORM Swim Goggles: スマートディスプレイ搭載の水泳ゴーグル カナダ、バンクーバー発のスタートアップであるFORMは、ハイテク水泳ゴーグルを開発・販売している。FORMのゴーグルを使えば、水泳選手がタイムや泳いだ距離など様々な情報を水泳ゴーグルのディスプレイ(レンズ)上でリアルタイムに確認することができるのだ。 FORMの創設者であるDan Eisenhardtはもともと水泳選手だった。泳いでいる最中に自分のタイムを確認できないため、選手自身が正確に自己分析することが難しかったり、選手のタイムや情報の計測のためにコーチが余計な労力を使わなければいけなかったりという、自身の体験に基づく問題からFORMが誕生した。 FORM Swim Gogglesの本体。 Official Websiteから転載 FORMの水泳ゴーグルのディスプレイには距離、インターバルの時間、ストローク回数、消費カロリーなどが表示可能。Bluetoothでスマホとの連携も可能で、ディスプレイの表示をカスタマイズすることもできる。さらに計測された情報は、連携したデバイスに蓄積され、分析されるため、データに基づいた選手のパフォーマンス向上に活用することが可能になるのだ。 技術自体は真新しくなくても、徹底してユーザーのことを考える スマートディスプレイのアイデア自体は新しいわけではないが、あくまで選手やコーチをサポートするのに特化した製品であるという点に注目すべきである。水泳選手は、ゴーグルという普段から使っているツールを通して、より自然な形で自分のパフォーマンスを把握することができるようになる。コーチも計測や分析にかけていた負担を減らすことができる。 そのため、機械やテクノロジーではまだ難しい、長年の経験からのアドバイスやメンタル面のサポートなどの指導に徹することが可能になる。「支える」スポーツのお手本のような製品であると言えるだろう。 関連記事:お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い ゴーグルのディスプレイ上。Official Websiteから転載 2. FieldWiz: GPS搭載のパフォーマンス測定デバイス スイス発のスタートアップAdvanced Sport Instrumentsは、『FieldWiz』という、GPSを用いたスポーツ選手のパフォーマンス測定デバイスを提供している。 FieldWizが利用されるスポーツは主にサッカー、ラグビー、野球などの球技だ。測定できる項目は、選手の走行距離・速度、心拍数、身体の動きなどである。 FieldWizのデバイス本体。Official Websiteから転載 デバイス自体はたったの35グラムという超小型で、背中に装着するようになっている。計測後は専用のドッキングステーションに繋げることで簡単にデータをコンピューターに転送することができる。 GPSによるトラッキングシステムは、従来であればトッププロで莫大な資金がある限られたチームにのみ利用されていたが、テクノロジーの発展によって比較的ローコストでの生産が可能となったことにより、ローカルチームへの導入も現実味を帯びてきた。 データドリブンなコーチングを目指す FORM Swim Goggles同様、FieldWizもまた、コーチの指導を円滑に進めるためのサポート役を担っている。今までは人が長時間かけて行っていたデータ収集を、FieldWizによって行うことで、より正確で莫大な情報を瞬時にして計測、分析することができるようになる。 データをコンピューターに移行後の分析画面。Official Websiteから転載 また、今まではコーチの感覚に頼った指導がメインであったため、コーチの感情論によって必ずしも正しくない指導が行われたり、選手たちが抽象的な指導に腹落ちできなかったりということもあった。FieldWizによる計測データを基にした選手1人1人に対する指導は、コーチにとっても選手にとっても具体的で有益なものなのだ。 スポーツを「観る」ためのスポーツテック 1. IBM Watson: AIによって試合のハイライト自動生成が可能に IBMは言わずと知れた、コンピューター・インターネットテクノロジー関連のサービスを扱うアメリカ大手企業だ。様々な製品やサービスを手掛けるIBMが10年以上開発してきたのが『IBM Watson』である。 Watsonは本来、読み込んだ情報をもとに、人の考えが及ばない範囲の答えまで導き出せるという高性能AIによるシステムだ。IBMはこの技術を応用し、スポーツの試合のハイライト動画を即座に作ることを可能にした。 試合分析のイメージ。IBM Official YouTubeから転載。 例えば、従来、テニスの試合のハイライトは、動画編集者が手作業で1つずつ編集してきた。しかし、手作業の編集では時間も労力もかかるので、1日に何十試合も行われる大きな大会などでは全試合のハイライトを作るのは非常に非効率的であった。 IBM Watsonは、テニスの試合が終了した2分後にはハイライトを完成させることができるという。AIが試合中の観客の歓声、選手の動き、点数などの様々な要因を感知し、ベストなプレイを選出するという仕組みだ。 このシステムはテニス界最高峰のトーナメントであるウィンブルドンや全米オープンなどで既に実用化されている。ウィンブルドンで最大18コート以上同時に試合が行われる時ですら、試合後、すぐに世界中のテニスファンにハイライトを届けられるようになったのである。 AIによって要約された、質の良いコンテンツを即座に配信できるという強み 試合のまとめを見たい人、試合を見逃した人にとってハイライトは重要な情報だ。それが試合後、即時に配信されることには多くの需要があるだろう。 ハイライトのイメージ。IBM Official YouTubeから転載。 また、インターネットやSNSの普及により情報が即座に手に入るようになった。より良い情報を早く配信することが、オーディエンスのニーズを満たし、数あるコンテンツの中から効果を生み出す鍵となる。ゆえにIBM Watsonのようにハイライトを試合後にいち早く投稿することで、より多くのインプレッションやエンゲージメントを獲得することが期待できるのだ。 さらに、集められたデータは選手のパフォーマンス向上や怪我防止策にも活用されている。つまり、このシステムは「観る」スポーツテックであり、選手をサポートする「支える」スポーツテックでもあるということだ。 現在は主にテニスとゴルフの試合に使われているが、この技術は他のスポーツへの応用も可能と考えられるため、今後の広がりに注目だ。 2. Brizi: スポーツスタジアムに設置されているカメラを遠隔操作してグループ写真が撮影できるサービス カナダ、トロント発のスタートアップBriziは、スタジアムでのグループ写真で新たな体験を人々に与えるサービスを提供している。Briziは、スポーツスタジアムに設置されているカメラをモバイルデバイスを通して遠隔操作し、写真や動画を撮影することができるサービスだ。Canonとも提携して、開発に取り組んでいる。 今まではスマホカメラで自撮りをしたり、周りにいる人に頼んでグループ写真を撮ってもらうことが当たり前であったが、グループの人数が多いと自撮りで全員が入りきらなかったり、知らない人に写真を頼むことへの抵抗感あったりと、問題があった。 そんな中、スタジアムにある大きなスクリーンに映るような画角からの写真や動画を、誰でも簡単に撮ってSNSでシェアできるというサービスは画期的だ。 スタジアムに設置されているカメラ。 Brizi Official YouTubeから転載。 このサービスではどんなに大人数のグループであっても、スタジアムでの写真を思い通りに撮影することができる。カメラはスタジアム全てをカバーできる性能性を持ち合わせている上に、ユーザーは自分のスマホから拡大・縮小を調整しながら撮影が可能なのだ。 試合観戦に付随する体験をより豊かにする スポーツ観戦に行く目的は、ただ試合を観るだけには留まらない。試合観戦の写真や動画をSNSにアップすることで、その時の感動や楽しさを共有したり、自分の応援しているチームについて投稿することによって、友達との共通の話題を見つけたりすることにも大きな価値がある。 ユーザーによってシェアされたグループ写真。Official Websiteから転載。 また、試合中以外の時間の楽しみを作るという狙いがある。試合中は観戦に集中しているので退屈することは少ないが、試合の前や待ち時間にすることがなくなったという経験をしたことがある人も少なくないだろう。Briziがあれば、その退屈な時間を友達や家族との楽しい時間に変えることができ、会場でのファンの満足度をさらに向上させることができるのだ。 試合観戦という娯楽行事の中でも、ちょっとした退屈に目をつけることで、ユーザーのUX体験をより良いものに近づけることができる。 […]

シリコンバレーでは教育が始まっている“STEAM人材“とは?

STEM人材という言葉を聞くようになって久しいが、ここ最近、STEAM人材の重要性が高まっていることをご存知だろうか。
STEM人材は、情報社会において必要とされる人材を指す。産業革命等の変革を繰り返してきた世界経済では、テクノロジーの発展がもたらす情報に価値が置かれるようになり、情報を司るスキルが必要だと言われてきた。
関連記事:プログラミングが学べるサンフランシスコのスクール7選
しかし、いざ情報時代が到来すると、次に注目されたのは、人間らしさとテクノロジーの関係性であり、STEAM人材だ。例え…

LINEはガラパゴス?世界のSNSデータからみる日本依存のリスク

日本で最もよく使われるSNSとして知られるLINEだが、実はここアメリカでは全くと言って良いほど使われていないということをご存知だろうか。 LINEの日本国内の月間アクティブユーザー(以下MAU: Monthly Active Usersの略)は約8,000万人なのに対し、アメリカ国内のMAUはなんとたったの357万人ほどである。これは人口割合でいうと、わずか1.1%程度に留まっている。 日本のスマートフォンユーザーは現在約7,722万人(2017年の日本総人口 x 2017年個人におけるスマートフォンの保有率より計算)。LINEのMAU8,000万人という数は、国内における全スマートフォンユーザー数よりも多い数字である。これは、ガラパゴスケータイやPCからLINEを使っている人もいるのが理由。とにかく国内では、LINEは驚異の普及率であることがわかるだろう。 一方で、アメリカのスマートフォンユーザーに対する普及率はたったの約1.34%という圧倒的な浸透率の差がある。 関連記事:「【アメリカでは誰もLINEを使わない?】国別にみる若者が使うアプリの違い5選」 ↑ SNSごとの日本国内とグローバルでのユーザー数と人口に対しての利用シェアの差 (参照: 日本からグローバルなプロダクトが生まれにくい5つの理由) ちなみに筆者もアメリカ留学時代に、ヨーロッパ、中東、南米、アフリカなど、世界各地の学生たちとLINEを交換しようと試みたことはあるが、大半の学生がLINEの存在自体すら知らなかった。代わりに使っていたのはFacebook MessengerやSnapchatだ。 日本では普及率が高く、世界では広まっていない。これは言い換えてみると、LINEは日本に依存するところが大きいということだ。 そこで今回は、LINEがいかに日本で普及しているのか、そして他の競合SNSと比べ、どの程度一国への依存度が高いのかということを紹介したい。ひいては、日本市場の今後を考えると、LINEの今の状態は、成長の限界とリスクが見えてくる。 ↑ 世界市場におけるSNS別アクティブユーザー数 日本で圧倒的な普及率・利用率を誇るLINE みなさんもご存知だとは思うが、LINEは日本国内で一番使われているSNSだ。 下記のグラフの通り、日本でのMAUを世界の競合SNSと比較しても、その違いは明らかである。MAU2位であるTwitterと大きく差が開いており、LINE一強という印象を受ける。 参照:「TechCrunch」、「Facebook News」、「MarkeZine」 LINE PayやLINE BRAINなど、日本におけるサービス拡大の様子からも、いかに日本を重要なマーケットとしているかが伺える。 事実、LINEにとって日本は売上的にもメインのマーケットだ。企業全体として、売上高は順調に伸びているのだが、その売上の内訳は日本国内からが75%を占めるまでになっている。 「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」から転載 言い換えれば、この状態は日本市場に依存しすぎているということ。そしてその日本市場というのは、今後少子高齢化・人口減少が進み、2050年にはGDP7位にまで下がると言われており、このマーケット1つに依存することはすなわち、成長の限界とリスクを示しているのである。 ちなみに日本国外のLINEユーザーとしては、タイ、台湾、インドネシアに多い。LINEユーザーの4割強は日本からではあるものの、これら3ヶ国だけでも同じくらいの割合でユーザーが根付いている。世界展開ができているようにも思えるが、どの国もFacebookに苦戦しており、日本市場ほど優位に立ててないのが実情だ。インドネシアに至っては、ここ2年の間にMAUが半減している。 ↑ 主要4ヶ国=日本、タイ、台湾、インドネシアがしめるLINEのMAU割合 参照:「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「uniad」のデータを元に図を作成 ↑ 主要3ヶ国の中でも、日本市場のみが、Facebookと圧倒的に差をつけて浸透していることがわかる 参照:「Digital 2019 Thailand (January 2019)」、「statista」、「Digital 2019 Taiwan」、「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「Digital 2019 Indonesia」のデータを元に図を作成 世界市場でみるとほとんど使われていないLINE では、世界規模でみたときに、どのようなソーシャルメディアが多く使われているのだろうか。世界のSNSユーザー統計データから、グローバル市場を見てみよう。 参照: 「Most famous social network sites worldwide as of April 2019, ranked by number of active users (in millions)」*Facebook Messenger除く ご覧いただいてわかる通り、ここにLINEの名前はなく、世界20位となっている。個人情報の取り扱いで多くの問題を起こしてきたFacebookだが、その人気を落とす事はなく未だに世界最大のSNSとして市場に君臨している。Facebookは23億2000万人という圧倒的なMAU数を誇っており、群を抜いた使用率でもあるのだ。 次にアメリカ国内でのSNS利用率をみる。 こちらにもトップ5位以内にLINEの名前はなく、11位となっている。 ちなみに日本ではFacebookの若者離れが囁かれているが、アメリカでは18歳から24歳のユーザーが全体の17%、25歳から34歳のユーザーが25%、そして35歳から44歳のユーザーが18%となっており、彼らが全体の56%を占めている。世界的に見ても、18歳から34歳の男女がMAUの約6割を占めており、Facebookのオーディエンスは若年層という傾向だ。 FacebookやInstagram、Twitterなど多くのSNSはアメリカの企業であるため、自国でのプレゼンスが高くなることはあるのかもしれない。それでも世界的に浸透しており、自国から遠く離れた、文化も全く異なる日本でも頭角を現しはじめているといったことは、LINEがまだできていない、「世界進出の成功例」ではないだろうか。。 さらに世界・アメリカ・日本の人口におけるSNS普及率をSNS別でみてみると、LINEがいかに日本依存しているかがより明確にお分かりいただけると思う。 補足:実際には、全世界の約66%しかスマートフォンを持っておらず、コンピューター普及率は約45%ほどだと言われているので、母数を全世界でにしたときに各SNSの普及率は基本的に低くなる。 やはり、LINEは日本国内で圧倒的な普及率を誇っている。ここまで市場ごとに差が開いているSNSは他にない。 一方で、LINE以外のSNSは1国のみに頼ることなく、日本や世界でも健闘をしている。特にTwitterは日本での浸透率も高い。実はカリフォルニア発祥のTwitterは、出身国であるアメリカ以上に、日本で絶大な人気を獲得している。また、Twitterはアメリカからの売上は約54%にとどまっており、残りは海外から獲得している。 Facebookも母国であるアメリカでの利用率が1番多いものの、LINEほどの差はない。彼らの収益率もアメリカ・カナダエリアからの収益は全体の半分以下となっている。どちらもLINEのように、売上の75%が1ヶ国からというようなことにはなっていない。 (Twitterの売上元割合 – 参照:2019 Q1 Selected Company Metrics) (Facebookの売上元割合 – 参照:Facebook Q4 2018 Report) 一国集中のLINEと世界に向かう競合SNS。成長率の差は明らかに 日本で圧倒的な利用率を誇るLINEと、自国を抜け出し、世界でも普及されてきている他の競合SNS。それぞれのマーケットの大きさから、当たり前の結果ではあるかもしれないが、それぞれ、MAUの伸び率には差が出てきている。上のグラフは、各SNSのリリースから毎年の月間アクティブユーザー数で表したものである。 LINEは他SNSより比較的若い方ではあるが、7年目の他のSNSをみてもその差は歴然。WhatsAppに関しては爆発的な成長が伺える。また、FacebookとInstagramの継続的な成長も見て取れる。 日本人気はレバレッジにならず、出遅れたLINEのアメリカ進出 とはいえ、LINEは世界市場に対して何もしていなかった訳ではない。2016年にはアメリカ市場にも進出をした。その際、アメリカ市場のニーズを正確に把握していなかったことや、広報体制もままなっていなかったことなどはIPOを行う前から批評の対象となっていた。 日本の「かわいい」を全面に押し出したメッセージアプリが現地の文化を超えてアメリカの消費者たちに浸透するのは難しいだろうといった予想が多かったのも事実である。 それに加え、LINEが最初に上場計画を出した2014年と、実際に上場を果たした2016年とでは市場の状況が一変してしまったというのも大きな要因の一つだったであろう。その2年の間にSNSは発展の一途を辿り、全世界のSNS市場が一斉に開拓されていったのだ。 例えば アメリカ国内で約6500万人しかいなかったFacebookユーザーが1億人を突破 全世界のFacebook messengerのMAUが2000万人から1億人へと激増 4300万人しかいなかったWhatsAppのMAUが1億人へと倍増 などの変化が顕著で、その後のLINEの成長に大きな足枷となったということは想像に易い。IPOこそ成功を収めたものの、サービスを現地に対応しきれず、既に市場を独占していた競合から上手く差別化できなかったといったところではないだろうか。 まとめ 日本では圧倒的存在感を見せるLINE。だが、経済が縮小傾向にある日本市場に依存するということは、その成長にも少なからず悪影響を受けることは当然だろう。 そしてLINEのように「日本だけで調子がよく、日本におけるサービス展開に注力し、さらに日本への依存度が増す」といった状況が当てはまる企業・サービスも多いのではないだろうか。 それに対して、世界市場では苦戦を強いられている。世界戦で勝ち抜くのは容易なことではないが、上記の点からすると、むしろこちらの方が企業成長・存続における重要課題のように思える。 そうなってくると、なぜ最初から世界をマーケットにしたサービス開発・改善をしないのか。たとえ日本を狙って日本で勝てても、成長の限界が見えている。LINEがたった2年の間もたついていたら、世界はあっという間に変わっていて、より厳しい状況となった。 関連記事:どんなに頑張ってもお前がカバー出来るのは世界の2% […]

LINEはガラパゴス?世界のSNSデータからみる日本依存のリスク

日本で最もよく使われるSNSとして知られるLINEだが、実はここアメリカでは全くと言って良いほど使われていないということをご存知だろうか。 LINEの日本国内の月間アクティブユーザー(以下MAU: Monthly Active Usersの略)は約8,000万人なのに対し、アメリカ国内のMAUはなんとたったの357万人ほどである。これは人口割合でいうと、わずか1.1%程度に留まっている。 日本のスマートフォンユーザーは現在約7,722万人(2017年の日本総人口 x 2017年個人におけるスマートフォンの保有率より計算)。LINEのMAU8,000万人という数は、国内における全スマートフォンユーザー数よりも多い数字である。これは、ガラパゴスケータイやPCからLINEを使っている人もいるのが理由。とにかく国内では、LINEは驚異の普及率であることがわかるだろう。 一方で、アメリカのスマートフォンユーザーに対する普及率はたったの約1.34%という圧倒的な浸透率の差がある。 関連記事:「【アメリカでは誰もLINEを使わない?】国別にみる若者が使うアプリの違い5選」 ↑ SNSごとの日本国内とグローバルでのユーザー数と人口に対しての利用シェアの差 (参照: 日本からグローバルなプロダクトが生まれにくい5つの理由) ちなみに筆者もアメリカ留学時代に、ヨーロッパ、中東、南米、アフリカなど、世界各地の学生たちとLINEを交換しようと試みたことはあるが、大半の学生がLINEの存在自体すら知らなかった。代わりに使っていたのはFacebook MessengerやSnapchatだ。 日本では普及率が高く、世界では広まっていない。これは言い換えてみると、LINEは日本に依存するところが大きいということだ。 そこで今回は、LINEがいかに日本で普及しているのか、そして他の競合SNSと比べ、どの程度一国への依存度が高いのかということを紹介したい。ひいては、日本市場の今後を考えると、LINEの今の状態は、成長の限界とリスクが見えてくる。 ↑ 世界市場におけるSNS別アクティブユーザー数 日本で圧倒的な普及率・利用率を誇るLINE みなさんもご存知だとは思うが、LINEは日本国内で一番使われているSNSだ。 下記のグラフの通り、日本でのMAUを世界の競合SNSと比較しても、その違いは明らかである。MAU2位であるTwitterと大きく差が開いており、LINE一強という印象を受ける。 参照:「TechCrunch」、「Facebook News」、「MarkeZine」 LINE PayやLINE BRAINなど、日本におけるサービス拡大の様子からも、いかに日本を重要なマーケットとしているかが伺える。 事実、LINEにとって日本は売上的にもメインのマーケットだ。企業全体として、売上高は順調に伸びているのだが、その売上の内訳は日本国内からが75%を占めるまでになっている。 「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」から転載 言い換えれば、この状態は日本市場に依存しすぎているということ。そしてその日本市場というのは、今後少子高齢化・人口減少が進み、2050年にはGDP7位にまで下がると言われており、このマーケット1つに依存することはすなわち、成長の限界とリスクを示しているのである。 ちなみに日本国外のLINEユーザーとしては、タイ、台湾、インドネシアに多い。LINEユーザーの4割強は日本からではあるものの、これら3ヶ国だけでも同じくらいの割合でユーザーが根付いている。世界展開ができているようにも思えるが、どの国もFacebookに苦戦しており、日本市場ほど優位に立ててないのが実情だ。インドネシアに至っては、ここ2年の間にMAUが半減している。 ↑ 主要4ヶ国=日本、タイ、台湾、インドネシアがしめるLINEのMAU割合 参照:「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「uniad」のデータを元に図を作成 ↑ 主要3ヶ国の中でも、日本市場のみが、Facebookと圧倒的に差をつけて浸透していることがわかる 参照:「Digital 2019 Thailand (January 2019)」、「statista」、「Digital 2019 Taiwan」、「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「Digital 2019 Indonesia」のデータを元に図を作成 世界市場でみるとほとんど使われていないLINE では、世界規模でみたときに、どのようなソーシャルメディアが多く使われているのだろうか。世界のSNSユーザー統計データから、グローバル市場を見てみよう。 参照: 「Most famous social network sites worldwide as of April 2019, ranked by number of active users (in millions)」*Facebook Messenger除く ご覧いただいてわかる通り、ここにLINEの名前はなく、世界20位となっている。個人情報の取り扱いで多くの問題を起こしてきたFacebookだが、その人気を落とす事はなく未だに世界最大のSNSとして市場に君臨している。Facebookは23億2000万人という圧倒的なMAU数を誇っており、群を抜いた使用率でもあるのだ。 次にアメリカ国内でのSNS利用率をみる。 こちらにもトップ5位以内にLINEの名前はなく、11位となっている。 ちなみに日本ではFacebookの若者離れが囁かれているが、アメリカでは18歳から24歳のユーザーが全体の17%、25歳から34歳のユーザーが25%、そして35歳から44歳のユーザーが18%となっており、彼らが全体の56%を占めている。世界的に見ても、18歳から34歳の男女がMAUの約6割を占めており、Facebookのオーディエンスは若年層という傾向だ。 FacebookやInstagram、Twitterなど多くのSNSはアメリカの企業であるため、自国でのプレゼンスが高くなることはあるのかもしれない。それでも世界的に浸透しており、自国から遠く離れた、文化も全く異なる日本でも頭角を現しはじめているといったことは、LINEがまだできていない、「世界進出の成功例」ではないだろうか。。 さらに世界・アメリカ・日本の人口におけるSNS普及率をSNS別でみてみると、LINEがいかに日本依存しているかがより明確にお分かりいただけると思う。 補足:実際には、全世界の約66%しかスマートフォンを持っておらず、コンピューター普及率は約45%ほどだと言われているので、母数を全世界でにしたときに各SNSの普及率は基本的に低くなる。 やはり、LINEは日本国内で圧倒的な普及率を誇っている。ここまで市場ごとに差が開いているSNSは他にない。 一方で、LINE以外のSNSは1国のみに頼ることなく、日本や世界でも健闘をしている。特にTwitterは日本での浸透率も高い。実はカリフォルニア発祥のTwitterは、出身国であるアメリカ以上に、日本で絶大な人気を獲得している。また、Twitterはアメリカからの売上は約54%にとどまっており、残りは海外から獲得している。 Facebookも母国であるアメリカでの利用率が1番多いものの、LINEほどの差はない。彼らの収益率もアメリカ・カナダエリアからの収益は全体の半分以下となっている。どちらもLINEのように、売上の75%が1ヶ国からというようなことにはなっていない。 (Twitterの売上元割合 – 参照:2019 Q1 Selected Company Metrics) (Facebookの売上元割合 – 参照:Facebook Q4 2018 Report) 一国集中のLINEと世界に向かう競合SNS。成長率の差は明らかに 日本で圧倒的な利用率を誇るLINEと、自国を抜け出し、世界でも普及されてきている他の競合SNS。それぞれのマーケットの大きさから、当たり前の結果ではあるかもしれないが、それぞれ、MAUの伸び率には差が出てきている。上のグラフは、各SNSのリリースから毎年の月間アクティブユーザー数で表したものである。 LINEは他SNSより比較的若い方ではあるが、7年目の他のSNSをみてもその差は歴然。WhatsAppに関しては爆発的な成長が伺える。また、FacebookとInstagramの継続的な成長も見て取れる。 日本人気はレバレッジにならず、出遅れたLINEのアメリカ進出 とはいえ、LINEは世界市場に対して何もしていなかった訳ではない。2016年にはアメリカ市場にも進出をした。その際、アメリカ市場のニーズを正確に把握していなかったことや、広報体制もままなっていなかったことなどはIPOを行う前から批評の対象となっていた。 日本の「かわいい」を全面に押し出したメッセージアプリが現地の文化を超えてアメリカの消費者たちに浸透するのは難しいだろうといった予想が多かったのも事実である。 それに加え、LINEが最初に上場計画を出した2014年と、実際に上場を果たした2016年とでは市場の状況が一変してしまったというのも大きな要因の一つだったであろう。その2年の間にSNSは発展の一途を辿り、全世界のSNS市場が一斉に開拓されていったのだ。 例えば アメリカ国内で約6500万人しかいなかったFacebookユーザーが1億人を突破 全世界のFacebook messengerのMAUが2000万人から1億人へと激増 4300万人しかいなかったWhatsAppのMAUが1億人へと倍増 などの変化が顕著で、その後のLINEの成長に大きな足枷となったということは想像に易い。IPOこそ成功を収めたものの、サービスを現地に対応しきれず、既に市場を独占していた競合から上手く差別化できなかったといったところではないだろうか。 まとめ 日本では圧倒的存在感を見せるLINE。だが、経済が縮小傾向にある日本市場に依存するということは、その成長にも少なからず悪影響を受けることは当然だろう。 そしてLINEのように「日本だけで調子がよく、日本におけるサービス展開に注力し、さらに日本への依存度が増す」といった状況が当てはまる企業・サービスも多いのではないだろうか。 それに対して、世界市場では苦戦を強いられている。世界戦で勝ち抜くのは容易なことではないが、上記の点からすると、むしろこちらの方が企業成長・存続における重要課題のように思える。 そうなってくると、なぜ最初から世界をマーケットにしたサービス開発・改善をしないのか。たとえ日本を狙って日本で勝てても、成長の限界が見えている。LINEがたった2年の間もたついていたら、世界はあっという間に変わっていて、より厳しい状況となった。 関連記事:どんなに頑張ってもお前がカバー出来るのは世界の2% […]

【図解】バリュープロポジションの定義とキャンバスの使い方を解説!

皆さんが販売・開発されているサービス・商品について、顧客がなぜ、購入するのか、しっかりと答えられますか?その理由について、顧客の視点にたち、深掘りできているでしょうか。
サービス開発をする上で欠かせないのが、あなたの提供する価値、バリュープロポジションです。バリュープロポジションが、顧客の本質的なニーズを捉えていると、彼らに深く刺さるサービスが生まれるということになります。
一方で、バリュープロポジションという言葉を知ったばかり、重要性は認識しているけど、使い方などもう少し理解を深めたいという方も多…

AIに負けない新しい価値を生み出すために必要なマインドセットとは?

どうやってイノベーションを起こせばいいのか?日頃そんなことをお考えになる経営者や幹部層の方は多いかもしれない。商品・サービスの開発において、イノベーティブな発想は企業の生命線にも成りうる。
グローバル化とAIの実用化が進む昨今、競合相手は日本国内だけとは限らず、世界レベルのイノベーションを起こすことが求められている。よって、クリエイティビティを生み出す仕組みは以前より一層必要性を増してきたのだ。
我々btraxは、こういった時代の変化に適応すべく、いち早く行動を起こしたい企業を後押しする役目を担って…

デザイン思考の力を公共サービスへ!日本と世界の活用事例3選

2018年8月9日、特許庁は庁内にCDO(チーフ・デザイン・オフィサー)として統括責任者を設置し、その下に「デザイン経営プロジェクトチーム」を立ち上げることを発表した。これは、中央省庁が行政サービス向上のためにデザイン思考を本格的に取り入れた初の例である。
米国を起点として提唱されてきたデザイン思考は、日本においてもここ数年間でその認知度を高めてきたが、これまでその活用を積極的に行ってきたのは民間企業であったように感じられる。
2010年頃から日本においてもデザインコンサルティングファームの参入、も…

「ここはシリコンバレー」とあるGoogle社員が感じた影

ここはシリコンバレー、その響きからどのようなイメージを持たれるだろうか?
日本企業も多く進出するこの地域は、世界中からトップレベルのエリート人材が集まり、GAFAに代表されるような、世界的な企業がひしめきあう、テクノロジーとイノベーションの中心地。
一年の約300日が青空のカリフォルニアの好気候の元、ゴルフ、サーフィン、ビーチバレーを楽しみ、人生を謳歌する人々。
解放的な雰囲気の中で、仕事も遊びもとても充実している。
何もかもが恵まれている、まるで楽園のような場所のイメージがあるかもしれない。しかし…