btrax Staff

「ここはシリコンバレー」とあるGoogle社員が感じた影

ここはシリコンバレー、その響きからどのようなイメージを持たれるだろうか?
日本企業も多く進出するこの地域は、世界中からトップレベルのエリート人材が集まり、GAFAに代表されるような、世界的な企業がひしめきあう、テクノロジーとイノベーションの中心地。
一年の約300日が青空のカリフォルニアの好気候の元、ゴルフ、サーフィン、ビーチバレーを楽しみ、人生を謳歌する人々。
解放的な雰囲気の中で、仕事も遊びもとても充実している。
何もかもが恵まれている、まるで楽園のような場所のイメージがあるかもしれない。しかし…

社員の自律性が企業を強くする!セルフマネジメントを促す組織体制とは?

従業員は勤務時間のうち20%を、個人的に取り組みたいプロジェクトに使うことができる
これはかの有名なGoogleの「20%ルール」である。この制度からはGmailなどの有名サービスも数多く生まれ、同社のイノベーションの源泉とも称されてきた。しかしながら、Googleのエリック・シュミット氏等によるマネジメント書籍『How Google Works – 私たちの働き方とマネジメント』では、この「20%ルール」の真の目的について、次のように述べられている。
「20%ルールの最も重要な成果は、そこから生ま…

食の多様性を支えるフードテック・スタートアップ3選

ヴィーガン、オーガニック、グルテンフリー等、食生活の多様性を表す言葉をここ数年でずいぶん見かけるようになった。btraxが本社を構えるサンフランシスコでもこれらの多様性に対応したスーパーやレストランは日常的に目にすることが多い。
そしてそれらの食生活を支える食品を供給する企業も数多く出てきた。今回は日本ではまだ馴染みの少ないこの「食の多様性」を支えるスタートアップについてご紹介したい。
ミレニアル世代による「健康」の新たな定義
ワシントンポスト紙の記事「我々の食生活に変化を及ぼすミレニアル世代の9つ…

ロボットハンバーガー店Creatorで感じたUXの改善点

2018年6月27日、サンフランシスコにCreatorと呼ばれるレストランがオープンした。ここは主な調理工程の最初から最後までを自動化した世界初のレストランで、完全にロボットが作ったハンバーガーを$6で提供している。Alex Vardakostasによって2012年に設立され、以前はMomentum Machinesとして知られた同社は、今年ついにここサンフランシスコに最初の店舗を出したのだ。 オープン当初は招待制だったこのレストランだが、3か月後の9月25日、ついに一般客の利用が可能になった。そこで筆者はbtraxの同僚2人とともにその「ロボットが作るハンバーガー」を体験することにした。 未来のハンバーガーレストランに潜入 店に入ると左側に食材と2台のハンバーガー製造ロボット、右側にテーブル席がある。小さなレストランであるうえ、営業時間が限られているためか、席を探すカスタマ―や歩き回る店員などで混みあっていた。雰囲気はカジュアルで、明るい色使いと木のアクセントが親しみやすさを出している。 程なくして店員が我々に気づき、ロボットのある場所まで案内してメニューを渡してくれた。ハンバーガーは5種類、フライドポテトなどのサイドメニューや飲み物もある。注文内容を決めると、店員はその場でスマホ端末を使ってオーダーを処理し、そのまま支払いとなった。どうやら調理以外の部分は人間が担うようだ。 待つ間に、実際にロボットがハンバーガーを作る様子を見ることができた。注文したハンバーガー3人前とフライドポテト2人前が出来上がるまで10分位だっただろうか。調理が終わると店員が機械から取り出し、ボックスに入れ、トレイに置く。名前が呼ばれて受け取ったあと、セルフサービスで飲み物を入れ、テーブルについた。食べ終わると店員がトレイを下げにやってきて、アンケートへの協力を求められた。 ハンバーガーを作るロボットとは では実際にロボットがどうやってハンバーガーを作っているのかをご説明しよう。まず、こちらがCreatorのハンバーガー製造ロボットだ。 写真の通り、このロボットは「オールインワン」で、パンをトーストするところからトマトのスライス、ミートパティを焼くところまで、ハンバーガーづくりに必要な工程すべてを順序通りに行う。全長14フィート(4.3メートル)で、20のアクチュエーター、350のセンサー、20のコンピューターにより自律的に考えて動くことができる。 また搭載されたAIにより、カスタマ―のリクエストに応じて材料を追加したり省いたりすることが可能で、店ではそれの様子を実際に見ることができる。このロボットは店のメイン部分に設置され透明なガラスで囲われているので、カスタマ―はすべての工程を見ることができ、まさにこれから口にするものが作られる様子を見ることができるのだ。 ハンバーガーができるまで 上部にはエアチューブが3本あり、焼き立てのブリオッシュ・パンが入っている。オーダーが入ると、パンを押し出し、振動ナイフでカット、トーストしたあとにバターを塗り、ベルト上に置かれたペーパートレイの上に載せる。 パンを載せたトレイが各材料が入ったガラスチューブの下を通る前に、決められた量のソースとスパイスをパンの上に塗る。その後玉ねぎ、トマト、ピクルスを各場所でスライスして載せ、その後レタスとチーズを載せる。 “The place for awesome inventions, innovative ideas, and constant inspiration.” 💡 🔧 from the team at INVENTIONS INSIDER. Happy to have you over at our place. Creatorさんの投稿 2018年9月4日火曜日 (動画:CreatorのFacebookページより) この間、ロボットはパティとなる肉を機械の内部で調理し、焼き上がると他の材料が載ったパンの上に落としてハンバーガーの出来上がりだ。 人間の役割は? ハイテク色満載のCreatorだが、すでにお分かりのように人間を排除しているわけではない。むしろ人間もチームの一員として活躍している。『ロボット・アシスタント』という役割名を与えられた人間は、オーダーを取ったり、出来上がったハンバーガーを運んだり、テーブル席の片づけを行ったりと結構仕事がある。 また機械に不具合が出た場合の対応や材料の補充も行っている。なお、ハンバーガーの調理自体はロボットが行ってはいるが、ソースの配合やレシピ開発は未だ人間によって行われている。 もう1つ特筆すべき点として、このレストランは水、木、金のみ営業している。その他の日はエンジニアが機械を点検し改良するのに充てられているのだ。どうやら人間不要になる日がすぐに来るというわけではなさそうだ。 食事中、ロボットアテンダントの1人である女性と話すことができた。6月のオープン時から働いている彼女はこの仕事がとても気に入っているという。 彼女の説明によると、アテンダントは機械にそれぞれ各材料を補充する役目を与えられていて、ハンバーガーを作るのに必要な材料が切れないようにしている。それが終わったらランチの混雑時間に備える。営業時間が終わると清掃して翌日の準備と、ロボットへの補充以外は普通のレストランのスタッフと仕事内容はあまり変わらなさそうだった。 ロボットが調理する唯一のレストラン 調理工程という面において一般的なハンバーガーレストランと比べると大きく異なる。通常のハンバーガーレストランでは、人間が機械を使ってハンバーガーを作っており、グリルやフライパンは常に稼働状態だ。一方Creatorのロボットは感応式フライパンを備えており、オーダーが入ったときのみスイッチが入る仕組みだ。 そのためカスタマ―が少ないときにアイドリングするというような無駄な電力消費が発生せず、そうして節約したお金を食材に回すことができる。実際彼らは高品質のオーガニック材料を使うことにこだわっていて、カスタマ―も健康的な食事を摂っているという認識を持つことができるのだ。 サンフランシスコにはZume Pizza、Eatsa、Café X Coffee Barなど、ロボットが活躍しているレストランが他にもある。Zume Pizzaでロボットが担うのは、ピザを作る工程において繰り返し発生する簡単な作業の部分だ。Eatsaでは人間が調理するが人間を介さずにオーダーとピックアップができるという仕組みだ。 Café X Coffee Barでは三菱製のロボットアームがコーヒーを作って提供してくれる。しかしいずれの店でもロボットが自力で食材をカットし、それらを合わせて調理し、またオーダーによって材料を変えるようなことは見られない。ここにCreatorのすごさがわかるだろう。 関連記事:あなたはきっと知らない。サンフランシスコの○○○イノベーション【btrax voice #3 Mark Wake】 UXに改善の余地あり ミレニアル世代のカスタマ―の1人として筆者が気に入ったのは、Creatorが推している透明性というコンセプトと健康的な食事を提供しているという点だ。他よりも健康的なハンバーガーだと知りながら食べるのは満足感があったし、実際の調理場面を見ることができたのもよかった。ロボット自身がパンをトーストし、バターを塗り、材料をスライスしてそれらを1つのハンバーガーにしていたことも素晴らしかった。 ただ、他のハンバーガーレストランでのエクスペリエンスと大きく違うかと言ったら実はそうは感じなかった。接したのは人間で、ロボットと何かやり取りしたわけではなかったからだ。唯一のロボット体験はハンバーガーが作られている場面を見たことだけだった。 関連記事:ミレニアルにはブランドネームではなく体験を売れ!ー 炭酸飲料大手企業の挑戦 一緒に行った同僚(男性、X世代)もあまり感動した様子ではなかった。曰く、「ハンバーガーが特別おいしいかというとそうでもないし、ロボットもちょっと子供だましっぽい。人間がまだ多くの部分を担ってるし、オーダーのプロセスについても列に並ぶわけではなく、たまたま居たアテンダントが対応してくれたという感じでちょっと違和感があった」とのこと。ただ店の雰囲気は気に入ったようだった。 もう1人の同僚(女性、ミレニアル世代)は非常に楽しんでいた。「キレイでおしゃれなハンバーガー屋さんのちょっとロボット化したバージョンですね。ロボットのデザインもいいと思います。ロボットの活用は効率性やコストカットのためだけではなく、カスタマ―や従業員をハッピーにするべきものだと気付かされました。」 ただ少し不満もあったようで、ロボットの動きがスローすぎて待ち時間を長く感じてしまったとのこと。また、ロボットが作っているハンバーガーのうち、どれが自分のオーダー分かわからないこともマイナスポイントとして挙げていた。 彼女はユーザーにとってロボットの活用が常にベストソリューションになるわけではないと指摘し、Creatorがテクノロジー起点ではなくもっとユーザー起点になるともっとよくなるだろうと言っていた。しかし彼女は店員がアンケートを取っていたことにも注目しており、「アンケート結果に基づいてサービス改善をしようとしていることはわかるので、また今度来てみたい」とも言っていた。 Creatorは健康志向・透明性重視・省エネでありながら、新しいエクスペリエンスを生み出すために日々改善に取り組んでいる。カスタマ―に受け入れられるかどうかはわからないながらも、オールインワンのハンバーガー製造機を作ったこと、そしてロボットの可能性をこういう形で我々に見せてくれたこと自体は素晴らしいことだ。

【2018年】ストーリー性を重視したブランド構築事例4選

ブランドを構成する要素として挙げられるのは機能性、デザイン性、ストーリー性と言われているが、近年その中でもストーリー性が力を持ち始めている。
機能性やデザイン性に関して良い商品はすでに世の中に溢れていたり、すぐに他社に真似されたりする中で、ストーリー性はそのブランド固有のものである分、カスタマ―が感じる価値も無二のものとして捉えられるからだ。それは情緒価値、すなわち情緒的な付加価値とも言えるものだ。
そこで今回は、2018年にご紹介したブランドのなかで、ストーリーを共有し情緒価値をうまく伝えた事例を…

【2018年】モビリティ業界で注目され始めたMaaSとは?

あなたは日常的に、どの様な交通手段を使っているだろうか?例えば会社へ行く時。あなたは5分歩いてバス停へ行き、ICカードをタッチして8:15発のバスに乗る。
駅に着いたらまたICカードをタッチして、乗車率120%の満員電車に10分間揺られた後、ようやく駅に着いたのは8:55。会議に遅刻しそうなのでタクシーを使い、カードで支払おうと思ったら対応していない!なんとか現金での支払いを終え、オフィスに着く頃には疲れ果てている… その様な日常が、一変する可能性があるかもしれない。
バスも電車もタクシ…

【2018年】モビリティ業界で注目され始めたMaaSとは?

あなたは日常的に、どの様な交通手段を使っているだろうか?例えば会社へ行く時。あなたは5分歩いてバス停へ行き、ICカードをタッチして8:15発のバスに乗る。
駅に着いたらまたICカードをタッチして、乗車率120%の満員電車に10分間揺られた後、ようやく駅に着いたのは8:55。会議に遅刻しそうなのでタクシーを使い、カードで支払おうと思ったら対応していない!なんとか現金での支払いを終え、オフィスに着く頃には疲れ果てている… その様な日常が、一変する可能性があるかもしれない。
バスも電車もタクシ…

D2Cブランドに学ぶブランド認知向上に効果的なキャンペーン事例4選

日々D2C(Direct to Consumer)に特化した企業が興隆し、ユーザーに対しクリエイティブなアプローチをかけることでマーケットの割合を高めている。freshtraxでは過去何度かD2Cに関する記事を取り上げているが、今回はD2Cだからこそ実現できるユーザーとの密な関係構築とユーザーを引きつけるのに効果的なキャンペーンについて触れたいと思う。 関連記事:アパレル業界を席巻する新勢力 – Direct to Consumer (D2C) で成功した7つのブランド ユーザーの意識や購買行動の変化がD2Cブランドの支持に繋がっている? なぜD2Cブランドは店舗を持たないのにも関わらずユーザーから支持されるのか。それは、ユーザーの意識や購買行動の変化に関係がある。 インターネットを通じて情報にアクセスしやすくなったことで、ユーザーは商品やサービスに関する情報に対して敏感になっている。そのため、最近の傾向としてユーザーはブラントに対して透明性や信頼性を求めるようになったのだ。 仲買人を設けないD2Cブランドは、製造から販売までを一貫して行う。よって、ユーザーの手に届くまでの過程の透明性や、情報開示による信頼性をユーザーに感じてもらうことができる。実際に、リサーチ会社Forrester Reserchの調査によると、76%のD2Cブランドが予想通りかそれ以上の売上収益をあげているということがわかった。 もちろん変化したのはユーザーの意識だけではない。以前に比べ購買プロセスも大きく変わり、ユーザーは購買前・購買中・購買後全ての段階において良いユーザー体験を求めるようになったのだ。例えば、決済方法が少ないことやホームページの更新頻度が少ないことはは企業への信頼度が下がる要因になる。そのため企業は、ユーザーとの直接的な関係においてユーザーの思考や行動がどのようにビジネスに関係するかを常に把握しておく必要があるのだ。 このようにD2Cは企画・製造から販売までを一貫して行うことから様々なニーズに素早く対応することができるので、ユーザーからも大きな支持を得られるのだろう。 認知度を向上するベストなタイミングとは? ユーザーに関心を持ってもらうためにはブランドの認知度を向上する必要がある。その為にできる施策の一つとして、キャンペーンの実施が挙げられる。アメリカでは様々な種類のキャンペーンがあるが、中でもホリデーや季節イベントを利用したキャンペーンはユーザーを引きつける最高のタイミングと言っても過言ではない。 なぜなら、ホリデーや季節イベントがある時期はユーザーが一番新しいアイディアや商品、サービスに興味を持つタイミングだからだ。北米では毎年ホリデーの間にセールが開催されることが多く、全米小売業協会の試算では2017年に比べ2018年の休日の小売売上高は4.3%から4.8%上回るのではないかと見込まれている。 もちろん休日だけでなく季節のイベントにおいてもセールが開かれることは多く、以下に挙げるのがプロモーションに効果的なホリデー・イベントである。 ・Black Friday(ブラック・フライデー) 最近日本でも少しづつその名を聞くようになったブラック・フライデー。ブラック・フライデーは、アメリカで毎年11月の第4木曜日に催される「感謝祭」の翌日の金曜日のことで、この日はアメリカでは年末商戦の初日かつ最大の山場となる日と位置づけられている。ブラック・フライデーの由来は、あらゆるビジネスが利益を出し、赤字から黒字に変えてしまうという意味合いからきている。 2016年の調査によると、13億7400万人ものユーザーのうち74%がブラック・フライデーに買い物をすると回答した。もはや感謝祭の伝統の一つになりかけているといっても過言ではない。 ・Back to School(バック・トゥー・スクール) 日本では社会人や学生にとって春が新年度なのに対し、アメリカでは、夏と秋の季節の変わり目が新年度の開始を意味する。学生は新しい洋服や文房具を新調したい、そして大人は秋向けの洋服を買い替えたい時期なので、様々なセールがこの時期に行われている。 2017年には、アメリカ全土における小中高校・大学への進学、進級の準備にかける消耗品費用の総額が8260億ドルにも上ると推定された。これは、2016年の7580億ドルと比べ10%の上昇である。 ・クリスマス アメリカではクリスマスになると家族が集いプレゼント交換をしたり、友人や恋人と過ごすことが多い。そのため、全米小売業協会によると2018年のクリスマスでは、国内消費者一人当たり平均700ドルの出費をすると予測されている。これはアメリカ全体で4,670億ドルもの売上になるということだ。 それではD2Cブランドはどのようにこれらのイベントを活用して、ブランドの認知度や売上を増加させているのだろうか?以下では、4つのD2Cブランドによるキャンペーン事例を紹介したい。 ホリデーや季節イベントを活用したキャンペーン事例4選 1.Thirdlove(サード・ラブ) Thirdloveは、2013年にHeidi ZakとDave Spectorによってサンフランシスコで設立された女性向けの下着ブランドだ。現在は「全ての女性に合った商品を提供する」という理念の基、オンラインのみで商品を展開している。 2017年にThirdloveは、”12 Days of Gifting”(ギフトの12日間)といったキャンペーンを打ち出した。これは、クリスマスまでの12日間毎日抽選で異なる商品がプレゼントされるといったキャンペーンである。”12 Days of Gifting”は、友人や恋人に贈るクリスマスのギフトとしては人気のあるアイディアだが、ビジネスとしてこのようなキャンペーンを打ち出した会社は少ない。 12日間毎日商品がSNSで紹介され、以下の3ステップを行うことで投稿へのインプレッション増加、フォロワー増加、そしてギフトを無料でプレゼントすることによるブランドのイメージアップを成功させた。 ①投稿を「いいね!」する ②SNSアカウントをフォローする ③コメント欄にギフトを送りたい友人のアカウント名を投稿する また、クリスマス用のプレゼント選びに迷うユーザーに対して、オススメの商品をブログで提案するといった取り組みもあって、既存のユーザーだけでなく潜在顧客にもブランドの良い印象を与えることに成功した。 このキャンペーンを行う前は、インスタグラムの各投稿における「いいね!」数が250から1,000に止まっていたのに対し、このキャンペーンが始まってから最初の投稿には、14,600もの「いいね!」があり、キャンペーン全体を通して高い数値を打ち出している。クリスマスとSNSを上手く活用しユーザーとの交流を図ることで、ブランドへのロイヤリティを高めることに成功したのだ。 2.Frank and Oak(フランク・アンド・オーク) Frank and Oakはモントリオールに本社を置く衣料品店。2012年にEthan SongとHicham Ratnanによって立ち上げられ、設立当初からグローバル展開をしている。企業理念には「男女ともにおしゃれな衣服を安く提供すること」を掲げている。 Frank and Oakはクリスマスにキャンペーンを行ったのだが、他のブランドとは違った施策を行った。“And”コレクションと呼ばれる衣服の販売を筆頭に、インクルージョン(一人ひとりが異なる存在として受け入れられ、その違いが活かされること)、平等そしてダイバーシティに焦点を置いたキャンペーンをクリスマスの数週間前に始めたのだ。 (画像は公式ウェブサイトより引用) 具体的な取り組みとしては、”And”という文字がプリントされたユニセックスの衣服を販売し、ユーザーがこのコレクションから衣料品を購入した場合、そのうちの5ドルが人権擁護を目的とした教育プログラムに寄付されるといったプロジェクトを行った。 Frank and Oakはこの季節をキャンペーンに上手く活用し、「coming together(一体となる/団結する) 」というテーマの基、人と違うことに誇りを持つことが重要だというメッセージを発信した。このキャンペーンを通して、寄付や啓蒙といった社会貢献を行うと同時に、Frank and Oakを知らなかった潜在顧客に関心を持ってもらうことができた。 3.Glossier(グロッシアー) Glossierはニューヨークに本社を置く化粧品ブランドで、2010年にEmily Weissによって設立された。実店舗はアメリカ国内に数店舗だけ存在し、ポップアップストアも出店されている。 「メイクアップをファッションのようにパーソナライズする」というミッションを掲げるGlossierは、2017年9月に異なる体型や職業を持つ女性5人を紹介する”Body Hero Campaign”を実施。 体型のコンプレックスを持ちがちな女子学生に対して、ポジティブなマインドを持ってもらいたいという思いから、バック・トゥ・スクールの時期にキャンペーンを行った。このキャンペーンは開始直後1週間で3万3千ドルの利益をだし、5千人ものユーザーがハッシュタグ#BodyHeroを使い、Glossierのブランド認知が一気に向上したのだ。 (画像は公式ウェブサイトより引用) また、Glossierはブラック・フライデーも上手く活用している。2017年のブラック・フライデーでは送料無料のキャンペーンが1週間続いて行われ、2016年に実施した3日間のキャペーンに比べ、期間を大幅に延長した。このキャンペーンは一般的なブラック・フライデーのセール時期よりも一足先に開始され、他のブランドよりも早く宣伝することで、認知度の確保、また顧客の予算の確保が可能となったのだ。 4.Warby Parker(ワービー・パーカー) Warby Parkerはアイウェアアクセサリーの店舗で、ニューヨークに本社を置いている。2010年にNeil Blumenthal、Andrew Hunt、David Gilboa、そしてJeffrey Raiderによって設立されアメリカとカナダの各地に店舗を展開している。 (画像は公式ウェブサイトより引用) Warby Parkerは他のブランドとは少し異なったキャンペーンを打ち出した。休日やその他のイベントを利用するのではなく、2017年に起こった大きなイベントを自社ブランドの認知度をあげる絶好の機会にしたのだ。その大きなイベントとは日食である。 2017年の日食はアメリカで最後に日食が起こってから実に99年ぶりの大イベントだったので大きく注目された。皆さんご存知だとは思うが日食とは月が太陽と重なり、完全に見えなくなる現象である。Warby Parkerはこれをユーザーにリーチする最適な機会だと考え、日食イベントのコミュニティに参加した。 (画像は公式ウェブサイトより引用) 日食の1週間前から、潜在顧客と既存のユーザーに対して安全に日食を鑑賞し十分に楽しむための知恵をSNS等でシェアした。この行動は、企業がユーザーを気にかけ価値のある情報を提供していることを示し、信頼を得るための絶好の機会となった。また同社は当日、日食を見に行きたいと思っている人達が集って共に日食を楽しむことのできるイベントも開催した。 彼らは国内のコミュニティすべてに対し大きなファンベースを作り上げ、ブランドの認知とイメージ向上を成し遂げた。このイベントの会場の一つでもあるテネシー州のナッシュビルでは、100人弱の参加者が集まり無料で日食用メガネを配布するなどした。これによりWarby Parkerは、企業が顧客と直接関わり合えるコミュニティを作り上げることに成功した。 最後に 冒頭でもお伝えしたが、ユーザーの意識や購買行動の変化に伴い今後ブランドは彼らのニーズや関心を素早く察知して、行動に起こすことが重要となる。アメリカではオンラインでの買い物が主流になっているので今回紹介したようなD2Cブランドの存在も大きくなっているのだろう。今後も引き続きD2Cブランドの動向に着目していきたい。 btraxではユーザーのインサイトに基づいたD2Cブランドのグローバル進出をサポートしている。今回ご紹介したようなユーザー獲得のためのプロモーション活動だけではなく、ウェブサイトの構築を含むブランド認知のためのマーケティング戦略立案も一貫して行っているので、ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせを。

freshtraxがレポートに!シリコンバレー / サンフランシスコのトレンドレポートサービス開始

サンフランシスコ・シリコンバレーの様々な業界における最新トレンドをリサーチしてお届けしているfreshtrax。他のメディアと違う大きな特徴は、常に「ユーザー体験」に注目している点で、様々な業界において新たなテクノロジーやサービスが「ユーザーの生活や体験をどう変えたか」をお伝えしてきました。こうした通常のテクノロジー紹介に留まらない点がご好評をいただき、「業界ごとに内容をまとめて欲しい」「社内外向けのプレゼン資料に活用したい」という声をいただくようになりました。 そこで、btraxではサンフランシスコ・シリコンバレーのトレンド情報をレポート形式で毎月お届けするサービスを始めました。年間契約いただくと、毎月異なる業界のトレンドをパワーポイントあるいはPDF形式でお届けします。 テーマ一覧 D2C(Direct to Consumer) 医療テック フェムテック 食品・アグリテック フィンテック ロジテック シェアリングエコノミー アパレル 自動車 保険 広告 組織イノベーション 1.D2C(Direct to Consumer) ブランドがユーザーに自社サイトでのみ商品を販売するDirect to Consumer。日本でも最近アパレル業界を中心に注目を集めていますが、いち早くD2Cに注目しトレンド情報を発信してきたbtraxが、業界図と注目ポイントをわかりやすく解説します。 2.医療テック 「医療テック」というと、主に病院で医師に使われるテクノロジーを想像しがちですが、サンフランシスコでは患者の医療体験を上げるようなテクノロジーが一般人の生活にも浸透しつつあります。この回ではそんな体験向上を実現する注目スタートアップを紹介します。 3.フェムテック 今後500億ドル市場にまで拡大すると予想されている、女性の健康管理に特化したフェムテック。女性が社会の半分を支えている今、その女性をサポートする分野として大注目されています。 4.食品・アグリテック 日本でも多くの人が関心を寄せる「食」。肥満、食品廃棄、遺伝子組み換え、農薬問題等、アメリカの食にまつわる問題が数えきれない中、それらを解決しようとするスタートアップもまた多く出てきています。 5.フィンテック ともすればテクノロジーばかりが注目されがちなフィンテック。btraxでは「ユーザーの体験」にフォーカスし、いかにユーザーのお金を管理する体験が変わったかをご紹介します。 6.ロジテック 在庫管理、POS、配送、カスタマー対応等、小売業界でもAI・ロボットの活用が進んでいます。この回ではそんなテクノロジーが実現するスムーズな買い物体験をご紹介します。 7.シェアリングエコノミー シェアオフィス、シェアカー、シェアサイクル等、今やサンフランシスコ市民の生活を支えていると言っても過言ではないシェアリングエコノミー。スタートアップの紹介だけでなく、この新しい形態が根付いた背景についても解説します。 8.アパレル アパレル業界でも大きな変革が起こっています。ミレニアル世代を中心に製品のファッション性自体に加え、サステナビリティや透明性等も求められ始めているなか、新しい価値を提案するブランドをご紹介します。 9.自動車 自動運転、ドライブレコーダー、シェアカー、空飛ぶタクシー、自動車メーカー以外の参入等、変化のスピードが速い自動車業界。この回ではそんな業界を支えるスタートアップや新たな取り組みをする大企業を取り上げます。 10.保険 日本同様、アメリカでも保険業界は長らく保守的でしたが、その業界の常識を破るさまざまなスタートアップが台頭しています。この回ではそんな保険業界とスタートアップをご紹介します。 11.広告 すでに従来型のマス広告が昔ほどの効果をもたらさないことは知られていますが、サンフランシスコではどのような広告で人が動くのでしょうか?現代消費者の特徴とそれをうまくとらえた広告事例をお伝えします。 12.組織イノベーション チーフ・イノベーション・オフィサーやイノベーション・ラボ等、イノベーションを生むための組織変革が世界中で起こっています。この回では日本企業のヒントになりそうな事例を中心に、イノベーションを生む組織とは何か解説します。 サンプルは無料! 気になった方にはまず無料でサンプルをお届けします。下記のフォームからお気軽にお問合せを。 ※テーマ・内容は予告なしに変更になる可能性があります。

米国企業が実践するデザイン思考の活用例3選

2018年5月、経済産業省は『デザイン経営宣言』を発表した。同省は「デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活⽤する経営」としてデザイン経営を定義し、より多くの日本企業がこれを取り入れるよう促している。 このよ […]

スタートアップのアイディアを考える際の意外な落とし穴

ここサンフランシスコでは、常に新たなスタートアップやユニコーン企業が生み出されているのは今や言わずと知れた事実になってきている。日本でも耳にすることの多い、UberやAirbnb、Pinterest、Slackなどは、まさにサンフランシスコを代表するユニコーン企業である。最近でも世界の常識を覆すようなサービスがスタートアップ企業から次から次に生まれている。

参考: サンフランシスコの主なユニコーン企と評価額 (2018年現在)

Uber: $68b (約7兆円)
Airbnb: $…

シリコンバレー的マインドセットの裏にはアジア的思想が隠されていた

私は現在サンフランシスコのダウンタウンに近いテックハウスに住んでいる。テックハウスとは、その名から想像できるかもしれないが、プログラマーなどのエンジニアが10人ほどで共同生活を送っているシェアハウスである。

全く異なる国籍やバックグラウンドを持つ人たちが、日中はそれぞれ全く異なる企業で働き、帰宅するとみんなで談笑したり、時には激しい議論をすることもある。そして、驚くことにお互いの会社のプロジェクトや開発について議論し始めるのだ。お互いの会社のプログラムコードを見せあい、知識をシェアしあうのだ。…

【最近アメリカで話題】ブランド認知に効果的なポッドキャスト広告とは

「Good morning, Google!」筆者の1日は、この一言で始まる。今日のニュースと天気予報、購読中のポッドキャストの最新のエピソードを聞きながら、仕事に行くための身支度をする。そして、オーディオブックを聞きながら、サンフランシスコ市内の職場に向かう。

今、音声メディアが再注目されている。かつては、ラジオがほぼ唯一の音声メディアであったが、今では音楽ストリーミングサービス、ポッドキャスト、オーディオブックなど、様々な選択肢が存在する。
なぜ今、音声メディアが再注目されているのか?

経験価値マーケティング【入門編】消費者の思い出に残るブランド体験を

経験価値マーケティング(Experiential Marketing)とは、インタラクティブなブランド体験を通して消費者との関係性を構築するマーケティング手法である。

従来のマーケティングが一方的にブランドや商品のベネフィットを幅広いオーディエンスに向けて発信するのに対し、経験価値マーケティングはブランドやプロダクトのコアバリューが凝縮されたオフライン空間の中で、消費者と一対一のパーソナルなコミュニケーションを行うことに焦点を当てている。

そして、忘れられないブランド体験を提供し、消費者…

アパレル業界が挑む新たな変革 – 消費者がブランドに求める“透明性”とは?

ハイウエストスキニージーンズ - $95
従来の小売価格 - $225

アメリカのDirect to Consumer (D2C)系ファッションブランドで、最近よく見かけるようになったこの表記。D2Cとは、自社で企画、製造した製品を実店舗や小売店を介さずに、自社のオンラインストアのみで販売するビジネスモデルである。

削減した中間コストや小売マージンを販売価格に反映させることで、消費者は高品質の商品を従来価格の約半額もしくはそれ以上で購入することができるというわけだ。

(画像転…