Mari Kimata

今さら聞けないブランドガイドラインとは

ブランドガイドラインは、企業やそのブランドのイメージに一貫性を持たせるために非常に重要なものだ。 日系企業では「ブランディング」に大きな予算をとることが難しいこともあり、疎かになりがちな部分でもある。 しっかりとブランディングを行うには、それなりのコストや時間がかかる上に、効果測定もしづらいからだ。売り上げが伸びたからと言って、それがブランディングのおかげなのかは正直わかりづらい。 それゆえ、大きな予算がブランディングに取られづらい傾向にあるのだ。 しかし世界的に見ると、有名なブランドはしっかりとブランディングを行っている。そのブランディングに欠かせないのが、「ブランドガイドライン」だ。 この記事では、そんなブランディングに必要不可欠なブランドガイドラインの定義や、存在意義、そしてその効果について紹介する。 ブランドガイドラインとは|なぜ必要なのか ブランドガイドラインとは、そのブランドに関係する何かをデザインするときには必ず必要になってくるもので、そのブランドのイメージを一貫して保つためにある。 一貫したイメージを保つためには、素材の扱い方や言葉の選び方等にルールを定めておく必要がある。例えば、ロゴを使用する場合、ロゴの周りにどれくらいのスペースが必要かを定義したり、背景に来る色によって、ロゴが何色であるかを定義する。 このように、ブランドガイドラインがあることで、デザインワークの際に「何をやって良いか」「何をやってはいけないか」が明確になる。 それゆえ、企業が一貫した運用を行うことができ、結果としてブランドイメージを保つことができるのだ。 ブランドガイドラインに必要な要素 ブランドガイドラインに組み込まれる要素は、企業の規模感や、ブランドの重要度によっても多少異なってくる。 ここでは、ブランドガイドラインとして抑えておきたい要素を紹介する。 ブランドガイドラインをざっくり2つのパートに分けると、「ブランド・アイデンティティ」(BI) と「ビジュアルアイデンティティ」(VI) に分かれる。 まず、「ブランド・アイデンティティ」(BI) は、企業やそのブランドについてのストーリーを伝えるためにある。主に、企業のビジョンやミッション、ブランドのコンセプト説明がここに含まれる。 そして、「ビジュアル・アイデンティティ」(VI)は、「ビジュアル」という言葉が入っている通り、見た目のデザインにフォーカスしたガイドラインだ。主に、ロゴやフォント、色、トーン&マナーについての説明がここに含まれる。 今さら聞けないデザインシステム入門 ブランドガイドラインの効果 ブランドガイドラインを作成することは、「ブランドの“らしさ”が可視化・共通言語化される」ことに繋がる。 ブランドガイドラインというひとつの資料として、ブランドを可視化・言語化させることで、共通の理解が深まり、社内のデザイン制作の効率化の面でも重要だ。 例えば、ロゴを白色にして使っていいのか?周りに余白はどれくらい必要か?など素材の取り扱い方についても、ブランドガイドラインを見ればすぐわかる、というのがブランドガイドラインの良さだ。 リモートワークも一般的になっている今の時代で、属人化を避けることにも繋がる。誰が作っても一定のクオリティを担保でき、まとまりのあるアウトプットになりやすいのがブランドガイドラインである。 また、ブランドガイドラインがあることで、社外の人から、そのブランド“らしさ”を理解されやすくなり、コミュニケーションもスムーズになる。 ブランドを可視化・言語化することは、顧客との信頼関係の構築に繋がる。一貫性のあるブランドイメージを作ることによって、認知度も上がりやすく、覚えてもらいやすくなるというメリットがある。 ブランドストーリーが日本企業にとって重要な理由 作成だけでなく運用も大事 ブランドガイドラインは一度作成したら終わりではなく、常に見直しが必要なものである。 ブランドをリニューアルするタイミングが来るかもしれないし、それ以外でも、会社やブランドとして、マイナーチェンジは常にあるものだ。そのため、アップデートをすることを念頭に置いた流動的なシステムとして作れると尚良い。 会社のビジョンやミッションから、どのようにブランドアイデンティティが設定され、それがどのようにビジュアルに落とし込まれるか、などの背景を把握することで、ブランドへの理解度が深まり、ブランドガイドラインがより社内に浸透しやすくなる。 それだけでなく、運用やアップデートの際もブランドの一貫性を保ちやすくなるだろう。 ブランドガイドラインをただのルールとして使うよりも、「なぜそのガイドラインが作られているのか」を意識しながら活用できると、よりブランドイメージに忠実で、一貫性のあるデザインが作れるはずだ。 継続的に運用できるブランドガイドラインを作ることが、社内外へのブランドの“らしさ”の伝達に効果を発揮するだろう。 Your brand is what other people say about you when you’re not in the room. Jeff Bezos, Founder & CEO of Amazon

日米の声を聞くUXリサーチャーが気がついた、UXリサーチにおける日米の違い

弊社では、UXリサーチを日本市場とアメリカ市場の両方に向けて行っている。 最近、筆者は立て続けにイベントに登壇する機会があり、アメリカ向けと日本向けのイベントでそれぞれUXリサーチのメソッドを話す機会があった。 イベントで他社のUXリサーチャーと対話することによって、自分がぼんやりと感じていたことが、イベントで改めて言語化されて腹落ちした点もあった。 今回はそんな気づきも踏まえながら、自身が日米でリサーチを行った経験をもとに、UXリサーチに関してお伝えしようと思う。 UXリサーチのプロセス まずUXリサーチにはどんなプロセスがあるのか? ユーザーインタビューを行うことがUXリサーチのメインのメソッドになるため、今回はユーザーインタビューを行う場合のプロセスを簡単にシェアする。ユーザーインタビューは、主に下図の5つのステップに分けられる。 ゴール・ターゲットの設定 まず、どんな人を対象にしたサービスについてのインタビューなのかを明確にする。その上で、具体的にどんな人に話を聞きたいかを決める。年代や生活スタイルがペルソナと近い人を選ぶのが一般的だ。 ユーザーの募集・選定 ターゲットが決まったら実際にインタビューに参加してくれるユーザーを探す。 方法としては、 事前調査のためのGoogle Formに回答してもらった人の中から適切なユーザーを選定 ユーザーインタビュー用のプラットフォームを使用する などがある。上記のような手順でユーザーを集めていく。 スクリプト作成 ユーザーの募集とほぼ同時並行で行うのが、スクリプトの作成だ。インタビューの長さなどに応じて、ユーザーに聞きたいことを書き出していく。 インタビューでは初対面の人と長時間話すことになるため、相手が心地よく話してもらえるような工夫が必要だ。 筆者がスクリプトを作成する際は、最初はアイスブレイク的に簡単に答えられる一般的な質問をし、徐々に突っ込んだ話にすることを心がけている。 インタビュー実施 コロナ禍以降、Zoomを繋いでオンラインで行うユーザーインタビューが増えた。 最近はようやく少し落ち着いて、対面やホームビジットのインタビュー(ユーザーのお宅に訪問して行うインタビュー)もちらほらある。 インタビュー自体の時間は、ほとんどの場合が1時間〜1時間半程度だ。シンプルに1対1で対話する形式のインタビューを行う場合は、1時間で設定する場合が多い。 しかし、コンセプト検証や、アプリを実際に触ってもらいながら行うインタビューは1時間半程度かかる場合が多い。 分析・レポート作成 インタビューでユーザーから聞き出した内容をもとに、ユーザーが実際どんなことを思ったり感じたりしているのか、分析、まとめを行う。 方法としてはFigjamに一度ユーザーの発言を全て書き出してから考えることが多い。 そうすることによって、話の全体像が見えやすくなるため、分析がしやすい。また、チームでFigjam等のオンラインホワイトボードツールを利用することによって、複数人の視点をシェアでき、多角的な分析を行うことができる。 このフェーズで、様々な視点、角度から考えるのは非常に大事なことだ。上記の5つのステップがUXリサーチの主なプロセスである。プロセス自体は、日米間で特に違いはなく共通のプロセスだ。 しかし、大枠のプロセス以外の細かいところで日米間の違いが見られる。そこで今回は普段リサーチをしていて感じる、UXリサーチにおける日米の違いを3つ紹介する。 UXリサーチにおける日米の違い3選 ①「UX」や「UXリサーチ」に対しての認知度の違い そもそも「UX(ユーザーエクスペリエンス)」というものに対して認知の違いがある。 一般的に「UXリサーチ」と言ったときに、日本の企業の場合、そもそもUXって何?UXでどんなことができるの?となり、それを伝えるところから始まることもある。 対してアメリカでは、一般的にUXという言葉の認知度は高い。デザイン系の企業の人でなくとも、UXがどんなものかはなんとなく理解している人が多いように感じる。 ②インタビュー中の違い 違う国の人と話しているのだから当然と言えば当然なのだが、実際日米の違いが一番現れるのはインタビュー中だ。 今回はインタビューの実施中にわかる日米のユーザーの違いを3つご紹介する。 1. 話す量 個人差はもちろんあれど、日本人とアメリカ人という括りで見ても、双方かなりキャラクターや性格は違う。それは、話す量の違いに顕著に現れる。 アメリカの人は総じておしゃべり好きが多い。アメリカ人は、ひとつの質問に対して具体的な体験談なども交えて話してくれることが多い印象だ。 中にはあまりにも話しすぎてインタビューの時間配分が難しくなってしまうケースもある。とはいえ、体験談などを細かく話してもらえると、こちらとしてもイメージがしやすいのでありがたい。 日本の人は、聞かれた質問に対してきっちり回答をしてくれる。あまり脱線せず要点をまとめて簡潔に答えてくれる人が多いので、話を深堀るためには回答に対して「なぜ?」を繰り返す必要があることも多い。 リサーチャーとしては、「なぜ?」を聞いていくときに、誘導的な聞き方にならないよう注意が必要だ。 日本人の性質上、なんとなくその場の雰囲気に合わせてしまうというのはよくあること。 したがって、「それってこういうことですかね?」という聞き方をすると、「まぁそんな感じですね〜」という回答が来て、本当の答えを聞き出せないということが起こりうるためだ。そうなると、ユーザーインタビューの価値がなくなってしまう。 2. フィードバックの程度 また、インタビューでフィードバックを得たいサービスの評価の仕方にも違いが出る。 アメリカ人は基本的に陽気でポジティブだ。サービスの評価を聞いたときに、良いフィードバックをたくさん返してくれる傾向がある。 しかし、例えば、定量的な点数を聞きたいと思い、「そのサービスの満足度の点数を、10点満点で評価してください」と聞くと、「6点」と意外と低い点数が返ってきて驚くことも。 反応や話し振りとのギャップを感じる(反応よりも点数が意外と低い)ことが、日本人と比べて多い。 「4点の理由は?」と聞くことでようやくネガティブに感じている要素を聞き出せる、ということもあるため、質問の仕方には工夫が必要だ。 対して日本人は慎重派で、正確な点数を答えようとする人が多いように感じる。 リアクションはそこまで大きくなくても、定量的な点数を質問すると、リアクションで見られる素振りから想像するよりも点数が高めということもある。 3. ネットリテラシー 最後に、ネットリテラシーにもやや違いがある。 最近はZoomでユーザーインタビューを実施することも多いが、全体的な傾向として、アメリカ人は全体的にインターネットを使いこなしている人が多いように感じる。 オンラインインタビューのリンクのシェアや、検証したいサービスやプロダクトのテストアプリのインストールもスムーズに対応してくれる人が多い。 日本だと、PCをそもそも所有していないという人も一定数いるようだ。 他のリサーチャーが話していて驚いたエピソードとして、大学生が自分のPCを所有しておらず、論文を書くのにLINE上に書き溜めていたという話があった。 上記の場合はかなり稀なケースかもしれないが、そのような状況もあり、日本ではアプリを実際に触ってもらうインタビューのときには、直接コミュニケーションの取れる対面でのインタビューの方がやりやすい場合もある。 ③ユーザーの募集・選定 最後に、インタビューを実施するユーザーを募集するプロセスにも日米での違いを感じる。 アメリカの場合、インタビューを受けてくれるユーザーを探しやすい傾向がある。 というのも、ユーザーインタビュー用のプラットフォームが充実していて、そのプラットフォームの登録者数も多いためだ。そのため、自分のネットワーク以外の人をオンライン上で集めやすい。 そのプラットフォーム上にアンケートを公開し、回答してくれた人の中から、ターゲットとしてふさわしい人を選ぶ、という流れだ。日本と比べたときに、それだけアメリカではUXリサーチというものが一般的になっていることの一つの表れだと感じる。 日本でインタビューのユーザーの募集を行うときは、インタビュー用のプラットフォームはそれほどメジャーではないため、SNSでの募集が一般的だ。 SNSに載せたGoogle Formに回答してくれた人の中から、ターゲットに近い人を選んで直接コンタクトをしていく方法でユーザーを選定する。 まとめ 今回は​​UXリサーチにおける日米の違い3選をご紹介した。 リサーチを進める上でのプロセスは同じでも、感覚や文化的な違いはあり、国による違いを理解して上でやり方を合わせていくことが、より精度の高いリサーチを行う上で大事になってくる。 もちろん国による違いだけでなく、個人によっても性質は違うため、リサーチをするたびに新しい発見があるのがリサーチャーとしての楽しいところだ。 btraxでは、今回ご紹介したユーザーリサーチを含め、多角的なリサーチを行なって、ユーザーの潜在ニーズや不透明だった課題の可視化をサポートしている。 サービスやブランドをグローバルに展開する際は、展開先の国に合わせてコンテクストを深く掘り下げ、より良いソリューションやサービスを提案している。 ご興味をお持ちの方は、弊社問合せフォームよりお気軽にお問い合わせください。

ユーザーが「使い続ける」サービスの特徴と事例4選

現在弊社はクライアントワークで、とあるアプリの開発に携わっている。 ヘルスケア系のサービスに興味や関心はあるけれど、日常の習慣の中に取り込めていない人にも利用してもらえるようなサービスを作ることを目的としている。 どうしたら、ユーザーにサービスを継続してもらえるか?という課題にフォーカスして、社内アイディエーションと、クライアントも含めたワークショップ形式で、アイディア出しを行った。 その際、ヘルスケア系に限らず、さまざまなジャンルのアプリをリサーチして参考にした。 この記事では、リサーチをもとに、継続のしやすさという観点で優れていると感じたサービスをご紹介する。 日々の記録や言語学習のような、「使い続けてもらうこと」に本質があるアプリを中心にピックアップし、それぞれのアプリが実践している継続しやすいポイントをまとめてみた。 Duolingo Nike Run Club Forest muute 新規サービスを検証する際に確認するべき15のチェックリスト 1.Duolingo まず最初に紹介するのが、言語学習アプリのDuolingo。テレビCMも放送しているので、存在を知っている人も多いはず。 アメリカ発の言語学習アプリで、約40か国の言語の中から、好きな言語を学ぶことができる。 弊社メンバーが長く使い続けていると聞いたため、筆者も実際にインストールしてみた。そして、少し使い続けてみて、いいなと思った点をまとめてみた。 Good point (1)毎回のレッスンが短いので、サクッと学べる 1レッスンあたりの問題数が少ないので、ちょっとした移動時間や待ち時間にも利用できる。 5分で終わると分かっているので、隙間時間に軽い気持ちでレッスンを受けられることがとても魅力的だと感じた。 (2)続けていくことでバッジがもらえる レッスンを進めていくことでバッジがもらえるため、過去の積み上げが可視化されることで達成感があり、着実にコースを進められているという指標になる。 (3)続けないと、もう一度コースを受けないといけなくなってしまう しばらくアプリを放置してしまうと、今までクリアしてきたコースをもう一度最初からやり直さなければならなくなる。 せっかくクリアしたところをもう一度最初から、というのは避けたいため、やらねば!という気持ちにさせてくれる。多少スパルタに感じるやり方も、習慣化のためには必要な要素なのかもしれない。 (4)適度にユニークな通知が来る アプリをしばらく開かないと、スマホに通知が入るのだが、その通知がちょっとおちゃめなのだ。(通知の頻度は個人で設定可能) Duolingoのメインキャラクターである緑の鳥のDuoくん含め、複数のキャラクターが交互に、「アプリに戻っておいで〜」と呼びかけてくれる。 ヒットサービスを生み出すための3つの秘訣とそれぞれの実例 2.Nike Run Club ご存じの方やお使いの方も多いであろうNikeから出ているランニングアプリ、Nike Run Club。走行スピード、距離、ルートなどの記録全般を行ってくれるアプリだ。 記録以外の機能は極力少なくし、大事な「記録」という機能に特化していることがユーザーに長く使われる理由かもしれない。 Good point (1)記録をシェアできる 自分のランニングの記録を他の人とシェアすることができ、お互いにスコアを見ることができる。 シェアすることで、お互いにモチベーションを高め合い、ランニングを継続しやすくする効果があると考えられる。 また、シェアできるだけでなく、コミュニティにも参加できる。 参加することで、チームで何かを達成するという楽しさが感じられるとともに、自分もより頑張りたいという気持ちにさせてくれそうだ。 (2)マイルストーンバッジやトロフィーを獲得できる 連続記録や、自己ベストを出すと、アプリがお祝いしてくれてマイルストーンやトロフィーを獲得できる。 (3)目標達成をサポートしてくれる 目標を設定し、目標達成までの達成率を可視化してくれるので、モチベーションをキープしやすい。 3.Forest Forestは、言うなればスマホ中毒を解決するためのアプリ。 どこへ行くにも何をするにもスマホが欠かせない現代だからこそ生まれたサービスだ。 仕組みはとてもシンプルで、スマホを開いていない時間に木が育つというもの。日本の有料仕事効率化アプリのランキングでは現在1位(2022年7月時点)で、世界でも157ヵ国に渡って利用されている。 Good point (1)究極にシンプルである 1つ目の特徴はなんといっても、スマホを触っていない時間に木が育つというシンプルさ。 新しいアプリを使う際に使い方が難しい、セットアップがややこしい、などの不便さが一切ない。 (2)育てることで愛着が湧く 自分のアクションによって何かが育つことで、愛着が湧いて継続したくなる効果がある。 このアプリの場合は、「スマホを開かない」ということがアクションになる。 (3)頑張りが可視化される 自分がどれだけスマホを触らずにいられたかという今までの頑張りの軌跡が、木というアバターで可視化される。そのため、どれだけ頑張ったかがわかりやすく、モチベーションを保ちやすい。 自分がスマホを開かなかった間にこんなに木が成長した、という達成感が得られそうだ。 サービスデザインで考慮すべき3つの「心理的ハードル」とは 4. muute muuteは、AIが思考と感情を分析してフィードバックをくれるジャーナリングアプリ。筆者も継続して利用していた。 ただ書くだけでなく、分析が定期的に入ることで振り返りができるのが楽しくて、継続のモチベーションに繋がった。 Good point (1)偉人の言葉をくれる 日記を書いたあとに毎回ひとことだけ、偉人の言葉がもらえる。 前向きな気持ちになれたり、ひとつ小さな知識が増えたという満足感を得られる。 (2)毎週と毎月のインサイトまとめが届く 自分が直近でよく考えていたことや感情を、それぞれ週単位と月単位とでアプリが自動で分析して、その結果を提示してくれる。 自分の思考や感情を客観的に振り返ることができ、変化を知ることができるのは、紙の日記にはない面白い特徴だ。 (3)テーマに沿って書ける もちろん自由に文章も書けるが、与えられたテーマをもとに日記を書くことも可能。 日記を書きたいけど毎日何を書けば良いかわからず結局放置してしまう、という継続を阻むありがちな課題を解決し、何かを書くきっかけになる。 コロナ疲れを克服!心身共にケアするウェルビーイング系サービス5選 まとめ サービスを継続して使えるよう施されている工夫として、共通している要素として挙げられるのが、まず、軌跡が可視化されるということだ。何らかの「カタチ」で今までの自分の成長を見て振り返ることができる。 Duolingoであれば、レッスンを進めることでバッジを獲得でき、今までの努力が可視化される。 Nike Run Clubも、記録に応じてバッジやトロフィーを獲得でき、走ったときの様々なデータを振り返りながら比較ができる。 また、Forestの場合、スマホを触っていない時間が木の成長で表現され、muuteは、日々の日記を、週ごと、月ごとのインサイトで客観的に振り返ることができる。 人間何かしらで記録をしていないとすぐに忘れてしまうし、記録があれば、ここまでやってきたから次もやろう、という次へのモチベーションに繋がりやすいのだと感じた。 ある種それまでにかけた時間やお金、努力を惜しむ気持ちから来る「コンコルド効果」のようなものに近いのかもしれないが、何かを習慣化させるという場合においては、上手に活用できれば効果的な手段かもしれない。 また、記録系サービスに限らず、どれだけハードルを感じさせず、楽しく使ってもらえるかが、ユーザーにとって大事な要素だと感じた。 難しそう、複雑そうと思わせない工夫や、ちょっとした隙間時間に使えるような気軽さが、継続して利用してもらうための必要な要素である。 サービスデザインの極意 機能を「シンプルにする」ことの難しさとは また、それと同時に、ポジティブになれる言葉をもらえたり、何かが育つ愛着があったりと、楽しいポイントもサービスに組み込まれていると使いたくなる人も増えるはずだ。 btraxでは、上記のような使い続けてもらえるためのサービスデザインのみならず、そのサービスデザインの基盤となるリサーチ、ブランドのビジョンを言語化をする段階からサポートさせていただいている。 btraxのサービスにご興味をお持ちの方は是非、弊社のサービスページをご覧ください

ロゴデザイン作成秘話 – TOKYO CREATIVE SALON 2022 –

この春行われた「TOKYO CREATIVE SALON」というイベントにおいて、弊社btraxでは、インスタレーション展示の空間演出を含んだデザインとディレクションを行った。 その一環として、日本橋エリアのキービジュアルを制作したため、この記事ではそのキービジュアル作成の裏側についてご紹介していく。 TOKYO CREATIVE SALONとは? TOKYO CREATIVE SALONは、地域や民間企業が連携して、都内の複数エリアのイベントを一同に集結させた、プロジェクト型のクリエイティブイベントだ。2022年3月18日から3月27日まで開催された。 東京を、ファッション、アート、音楽、フード、カルチャーなど、さまざまなカテゴリーを融合できる場所と捉え、合計5つのエリアがそれぞれがテーマを持ち、発信する。 5つのエリアとは、日本橋、丸の内、銀座、渋谷、原宿。この中で今回btraxは、日本橋エリアの展示ディレクションとデザインまわり全般を担当した。日本橋エリアは、ファッションの分野で展開している。 ロゴデザイン これが今回デザインした、TOKYO CREATIVE SALON日本橋エリアのロゴ。みなさんは、このロゴからどんな印象やメッセージを受け取るだろうか? 実は、これは漢字の「素」を少しデフォルメしてデザインしたロゴだ。 展示のメインテーマは、「素材からファッションを再定義する」というもの。 また、展示ブースは更にテーマごとに3つに分かれている。 日本橋というエリアは繊維の街として昔から知られていることから、素材の歴史と伝統を物語る「Traditional(トラディショナル)」のブース ファッションや素材における技術力と機能性に着目した「Technological(テクノロジカル)」のブース そして、これからのファッションを素材を通じて考える「Sustainable(サステナブル)」のブース そして、これら3つのテーマを包括するコンセプトとして、どの時代においても、ファッションにおいて素材は大切であるとして「ファッション=素材」というコンセプトを定めた。 そしてこのコンセプトをロゴに落とし込み、布をイメージしたデザインにした。 ではここから、このロゴが完成するまでのプロセスを紹介していく。 優れたロゴを構成する5つの要素 1.リサーチ まずは、参考になりそうなロゴをひたすら集めた。そして一通り集めたものを、カテゴライズしていく。 系統として、クラシックとモダンという軸と、文字中心とビジュアル寄りという2つの軸で分類していった。どんなデザインにするかはこの時点ではまだ決まっていなかったため、ひとまず広い意味合いを持つ「クラシック」と「モダン」を軸に決めた。 また、ロゴデザインをする際に、文字が含まれるものにするかどうかは全体のデザインに関わるため、最初の段階で決めた方がその後のプロセスとして制作がしやすいと判断し、もう一方の軸にした。 今回のロゴでは「素材」という文字を使ったデザインにしたいということは決まっており、さらにこのリサーチとその結果の分類によって、モダンな雰囲気にしようと方向性が決まった。 理由として、今回の企画全体のコンセプトにも通ずる「ファッションに使われている素材も、時代と共に進化している」という意味を込めるべく、ロゴもクラシック寄りにするのではなく、モダンな要素が必要だろうと考えたからだ。 2.ラフスケッチ おおよその方向性が決まったら次はスケッチ。 スケッチの方法はデザイナーによって様々だが、筆者の場合、手描きで紙に描いていく方法と、フォントを漁りながらイラストレーターで色々試す方法を同時に試すことが多い。 2つの方法を同時に行う理由は、手描きとデジタルでそれぞれ出来ることが違い、お互いに足りない役割を担っているからだ。 手描きでのスケッチは、頭の中で浮かんだアイデアをよりスピーディーに可視化することができる。精度は高くなくても、イメージしているものをとりあえず形にすることができる。 反対に、イラストレーターで実際にパスを引いたり、フォントを置いてみるというやり方は、デザインの質感や色味が正確にイメージしやすくなる。 3.イラストレーターで調整 作ったラフをもとに、より具体的なデザインのイメージが出来たら、今度はイラストレーターでそれを正確に作っていく作業を行う。 最初は「素材」の2文字でデザインしようとしたが、2文字を横並びにしたときの見栄えとバランスが良くなかったため、途中から「素」という文字だけで作ることに。 「素」という一文字だけにすることでインパクトが出るのではないかと考えたからだ。 そして少しずつ形を整えて、最終の形にまで持っていった。 ロゴの展開 完成したロゴは、さらに展示全体のキービジュアルや、展示会場の外壁デザインなどとして展開した。 一面全体にロゴを大きく使ったことで、インパクトが強く、人目を惹くデザインになり、それが結果的にある種の集客効果につながったように感じた。 今回「ロゴ感」を出すためにも、パッと見では漢字の「素」であることが識別しにくいデザインにしているため、それが大きく外壁としてプリントされていることで、あれは何だろう?と通りすがりの人に思わせることができたのではないかと思う。 最後に 筆者にとっては久しぶりのロゴデザインだったが、改めて一からどんなものにしようかを考え、コツコツと形にしていく作業は純粋に楽しいなと思った。 そしてデザインしたものが実際の外壁や暖簾にこれほど大きくプリントされ、人の目に触れることもなかなかない経験だったため、とても良い機会となった。 世の中無数のデザインで溢れているが、どれも視覚的にコンセプトやメッセージを伝えようと作られているもの。どういう意図やメッセージを込めて作られているものか考えながら見てみると、見方が変わって面白いかもしれない。 有名ブランドロゴの中に隠された秀逸なメッセージとは

デザイナーがファシリテーションをしてみた

デザイン思考ワークショップのファシリテーションをするというとても学びの多い機会があったため、気づいたことなど、体験についてをデザイナー視点でまとめてみた。 デザイン思考とは? デザイン思考の定義は、人によって様々な言葉で説明されると思うが、私はデザイン思考を、「デザインのプロセスを通じて課題解決をし、暮らしをより良くするための手段」と解釈している。より平たく表現すると、ユーザー本人も気づいていないような潜在的なニーズを探し出し、アイデアをテストして、解決することである。 このデザイン思考という言葉は、カリフォルニアに本社を構えるデザインスタジオIDEO社の創業者ティム・ブラウン氏によるもの。彼が2005年にハーバードビジネスレビュー誌において、「デザイナーの手法と感性はビジネスに応用可能である」と提唱したのがきっかけで有名になった。 デザイン思考の本質とは?—新米ファシリテーターの経験を通して気づいたこと この考えは日本にも徐々に浸透してきており、デザインの発想や手法をビジネスの場で活用し、その価値を向上させることを目指す企業が増えてきた。そのため、組織内にデザインのマインドセットをインストールするために、ワークショップや研修形式でデザイン思考を習得するケースが増えた。 そして普段はデザイン業務を行っている筆者が、今回、とあるデザイン思考のワークショップにて、ファシリテーターとして参加した。いわゆるグラフィックデザインを行っており、色や素材を使い、ビジュアル(見た目で伝えられるもの)を作っているが、その領域を超えたファシリテーターとしての経験から見えてきたことをまとめていきたい。 似ている部分と異なる部分 デザイナーとファシリテーター、全く違うようで共通点もあるのが面白い。 ユーザーの気持ちを考えることはやはり非常に大切。 これはちても広い話だが、かなり大事かつデザイン業務と似ていると感じた部分だ。普段ポスターひとつ制作する際でも、どこに一番最初に視線が行くか、伝えたい情報がちゃんと正しく入ってくるようになっているかなど、考えながら制作をする。 それと同じようにデザイン思考では、あらゆる「ユーザーってこういうことを考えているのか?」を想定、把握する必要がある。つまり、ユーザーの気持ちになってみることが重要である。 そのために、ユーザーインタビューを行い、ユーザーの言葉からインサイトを抽出する。この人は実はこんな風に思っていたからこう言ったのか?というユーザーの気持ちを分析していくのだ。 ファシリテーターとして、ワークショップに参加している方が、よりターゲットユーザーの気持ちに寄り添えるようにサポートするということがとても重要なように感じた。 一方で、普段のデザイン制作と異なる点として、目的や最終のゴール地点が明確かどうかの違いがある。 一般的なデザイン制作は目的が決まっているため、プロセスがわかりやすいものが多い。例えば、ポスターを作る際は、いつに何をするか、何が行われるかを伝えるためのもの、と決まっている。そのため制作のプロセスはシンプルだ。 しかしデザイン思考では、ユーザー本人も気づいていないような部分を探っていかなければならない。本当に必要とされているニーズに辿り着くまでに紆余曲折するのが大体のパターンである。 プロのデザイナーとして活躍するために必要な8つの非デザインスキル とりあえずひたすら手と口を動かしてみる 非常に基礎的なことであるが、デザイン思考のワークショップを行う際は、チームでひたすら手と口を動かすことが非常に大事であると実感した。とりあえず書き出してみたり、雑でも良いからアイディアをスケッチしてみたり、変かなと思うこともとりあえず言ってみたり。 これは簡単そうに見えて本当に難しい。特に私の場合なのか、デザイナーあるあるなのか、(おそらくデザイナーのみなさんは共感すると思うが)黙々と考えてしまいがちである。そして黙々と作業しがちなのである。 誰かに共有する際に、ある程度のクオリティにまで持っていったものしか共有したがらない傾向があるのかもしれない。 しかし、デザイン思考のワークショップでは、何より試行錯誤することが重要。どんな段階であれ、一旦チームで考えたことややってみたことを共有することが大事になってくる。 個人作業が多めなデザイン業務とは対照に、ワークショップはチームで進めるものであるため、まずは口に出して思ったことを言わないことには何も生まれない。 ファシリテーターはメンバーのちょっとして考えを引き出すサポーターでもあるため、普段黙々を作業してしまいがちな筆者も、これってこういうこと?というチームが考えを共有しやすい会話を心がけた。 自分の中途半端なアイデアもチームの人の考えによって思いもよらぬアイデアに化けたりするのが、ワークショップの面白いところでもある。 日本人は議論が苦手?デザイン思考を成功に導くファシリテーションとは ワークショップの新しい進め方 コロナ禍前までは、弊社でデザイン思考のワークショップを行う際はオフラインで行っていたが、今回は、オンラインと組み合わせてワークショップを実施した。オフラインとオンラインのハイブリッドで行うのは我々にとっても新しい挑戦で、普段の進め方と変わってきた。 ワークショップ中のアイディア出しやメモとして使用するツールは、オンラインが良いかオフラインが良いか?はたまたハイブリット型が良いか?という議題があるが、今回オフラインのワークショップ時でもオンラインツールを併用した。 今回ワークショップを行ったうちの全体の4割ほどはオンラインで行い、残りの6割はオフラインで行った。 もちろんオンラインでワークショップを行っている期間は、使用するツールも全てオンラインで、オフラインの期間でも、使用するツールの半分以上はオンラインのものだった。 オフライン時でも、とりあえずたくさん思いついたことを書き出す際や、ユーザーインタビューから得た事実を書き出す際にFigmaというオンラインツールを使用した形である。 オンラインツールとしてFigjam、オフラインツールとしてポストイットを使用 Figjamとは、オンライン上で使用できるホワイトボードで、主にチームでブレインストーミングをしたりマインドマップを作成する用途で使われるツールである。画面上に手書きができたり、付箋を貼ってテキスト入力をすることができる。 どう使い分けるべきかに対しては、結論を言うと、チームが円滑に進めやすい方であればどっちを使っても良いし、どう使い分けても良いと感じた。 Figmaもポストイットも、あくまで手段であり、ワークショップをスムーズに進めるためのサポートツールであることを忘れてはならない。 デザイン思考のファシリテーターは、なぜポストイットを使わせるのか そこで、ワークショップを行う中で個人的に感じた、おすすめの使い分けのポイントを紹介する。 とりあえずブレインストーミングをして少しでも多くのアイディアを出したいとき、それを書き出したいときはFigjam上で。大事なことやハイライトになるような内容は、ポストイットで。この使い分けである。 書き出して、グループワークを行う部屋に貼っておく。そうすることで常に論点がズレにくくなるとともに、チームのみんなが共通の理解をしやすくなる。 どうしても話が白熱して色んなところに話題が散ることがあるが、収束しやすくするためにも、常に視界に入るところに要点だけ書き出しておくのは効果がある。 オンラインツールのメリット 後から融通が効く その時に応じてパネルやブロックの並び替えや整理、複製がしやすい。 綺麗に記録できる 筆者は、自分の手書きを見返すのが嫌になってモチベーションが下がることがたまにあるが、オンラインツールではそのようなことはない。手書きで殴り書きしたものを後から見返し、これは何のことだっけ?となることも防ぐことができる。 お互いへリアクションしやすい Figjamにはスタンプ機能やいいね機能があり、バリエーション豊富なリアクションをリアルタイムで示せるので、オンラインでもインタラクションのあるワークショップになる。 ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ オフラインの良いところ 全体を俯瞰して見られるので、全体像を把握しやすい 誰が何を書いているのか、同じ空間にいることで把握がしやすい。また、PC上で行うのと違い、画面の大きさに制約がないためパッと全部のポストイットを見ることができる。 全体が見えるため、離れたそれぞれのトピックを併せて考えて、新しい発想が生まれることも。 オンラインでも離れたそれぞれのトピックがつながることもあるが、オフラインで実際にその場で見えることで、より簡単に全体を行き来することができアイデアに繋がりやすいように感じる。 デザイン思考の実践に最適な4つのオフィスアイテム オンライン、オフラインどちらにも良さがあるので、自分にとって、チームにとって、よりクリエイティブな状態になりやすい方を使おう。 おわりに 今回の記事ではデザイナーがファシリテーションをしてみて感じたデザイナーとファシリテーターの役割として似ているところや違い、そしてワークショップをする上での具体的な進め方に言及した。 また、Figmaなどのオンラインツールはユーザーフレンドリーであり、今後のワークショップはオフライン実施であっても、ポストイットや紙を用いる代わりにオンラインツールを用いる場合が増えるかもしれない。 オンラインツールを使うこと自体が目的になってしまわないよう、オンラインでもオフラインでも、参加者同士、参加者とファシリテーターが心地よく意思疎通を図れる方法を模索することが大切だ。 btrax では、最適なユーザー体験の創出に軸足をおいたサービス開発をはじめ、目的に応じて様々なサポートをさせていただいている。ご興味のある方はぜひこちらからお問い合わせいただきたい。