デザイン

デザインの最適解は、必ずしも「シンプル」ではない?

デザインの方向性を決める際、「シンプル」という言葉がキーワードとして挙がることは少なくない。
一般的に、企画・コンセプトが定まった後、その言語化されたアイディアを可視化する・デザインに落とし込む最初の工程として、方向性を定めるためにムードボードやキーワードを並べていく。その作業の中で、どこか安全な選択肢として「シンプル」という言葉が加えられることは珍しくない。もしくは、クライアントとの打ち合わせやブレストで、よく耳にする——「もっとシンプルにできない?」
この「シンプル」、一体何を指しているのだろう…

馬車の馬でいるか?自動車の運転手になるか? 〜生成AI時代のデザイナーに突きつけられる決断〜

この1〜2年で、デザイン業界の空気が明らかに変わった。 MidjourneyやDALL·E、Adobe Fireflyなどの画像生成AIは、もはや「試しに遊ぶ」段階を越え、本格的な制作の現場でも使われ始めている。そして決定的なのが、ChatGPTの画像生成機能の大幅アップデートだ。 なんてたって、スケッチをアップロードすれば、それがアプリのUIになるし、写真と文字を入れれば、良い感じのバナーグラフィックを生成してくれるんだから。 車の馬のままでいるか?それとも、自動車を運転したいのか? これは、僕が今一番全てのデザイナーたちに切実に伝えたい一言だ。 ChatGPTをはじめとする生成AIの進化が、私たちデザイナーにまさに「時代の転換点」に立たせている。イラスト、グラフィック、そしてWebデザイン——これまでは “人の手” でしか作れなかったものが、機械で生成できる時代になった。 そんな未来はずっと先だと思っていた。でもそれは、すでに「現実」として目の前にある。 生成AIツールは、それまでのデザイナーにとって便利なツールから、一部のデザイナーたちの存在すらも脅かす存在にまで進化しているのだから。 イラストレーターやWebデザイナーが感じている“ざわざわ” そんな、デザインの現場で日常的にこんな声が聞こえてきている。 「クライアントから“これ、AIで作れない?”って聞かれた」 「イラストの単価が明らかに下がってきている」 「ポートフォリオの差別化が難しくなった」 「“人が描いた”ことの価値を説明しないといけなくなった」 つまり、デザイナーの立場が揺らぎはじめているのだ。 デザイナー終了説? それとも始まりの合図? 先日公開された『画像生成AIの進化、本業の人はどうみる? 現実味を帯びる「デザイナー終了説」の真実』では、実際のデザインの現場における生成AIの利用ケースと今後脅かされるデザイン職に関してのお話をした。 その中でも触れたのだが、生成AIの影響で「終わってしまう」職種もあれば、これから「始まる」デザイナー職もある。 指示通りに作るだけの“手”はAIで代替できる だが、“方向性を定める頭脳”は、むしろこれまで以上に重要になる これはまるで、かつての馬車がエンジンによって自動車に置き換えられた歴史と似ている。 動力はAI(エンジン)に置き換わる。けれど、どこへ行くかを決めて、ハンドルを握る人間(ドライバー)は必要だ。 「道を決める人」になるか、「言われたまま走る馬」のままか これは、今のデザイナーが直面しているシンプルかつ根源的な問いだ。 あなたは、まだ“馬”としての役割を果たしていたいですか?
それとも、“車を運転する側”に進化したいですか? 前者を選べば、間違いなく今後は厳しくなる。なぜなら、AIは疲れないし、早いし、文句も言わない。コストも安い。人間が戦って勝てる見込みは少ない。その証拠に、現代に馬車はほとんどない。というか、あってもそれはリゾート地などの「遊び」で利用されるだけだ。 一方で、後者を選ぶなら、そこには明るい未来が待ってるだろう。例え動力が馬からエンジン、もしくは電動のモーターになったとしても、しばらくの間は、行き先を決めて、それを操作する役割が必要なのだから。 そこで求められるのは「指示を受けて作る力」ではなく「状況を理解して、正しい判断を下す力」だ。たとえば以下のような役割が求められる: 商品やビジネスの価値デザインに落とし込むクリエイティブディレクター ブランドの世界観を視覚的に定義するアートディレクター ユーザーの体験を最大化させ、プロダクトの価値を高められるUXデザイナー 事業全体をデザインで推進するデザインストラテジスト ⠀ここに共通するのは、”考える力” と “決める力” である。 「進化できるデザイナー」が持つ3つの資質 では、これからの時代において“馬ではなく運転手になるデザイナー”とは、どのような人なのか? 以下の3つの資質がカギになると思う。 1. コンセプト思考力 単なる「綺麗なビジュアル」ではなく、「なぜこれなのか?」を説明できる力。言い換えれば、ロジカルなストーリーテリング力が必要になる。 2. ディレクション力 他者(AIや他のデザイナー)を動かすためのビジョン設定力とフィードバック力。個人プレーからチームプレーへの変換が求められる。 3. テクノロジーへの理解と好奇心 ツールとしてAIを使いこなす力。怖がるのではなく、積極的に“仲間にする”マインド。もちろん生身の人間とも仕事をするが、適材適所でAIツールも使い倒すぐらいのスキルが必要。 最後に:決めるのは「今」 デザインを生業とし、デザイン業界に身を置く人間として断言できることとしては、生成AIは、ただのトレンドではない。これは、産業構造そのものが変わる兆しだ。 「私には関係ない」「まだ大丈夫」と目を背けることはできる。でもその間にも、世界は加速度的に変化していく。そして、デザイナーに対しての影響は想像以上に大きいだろう。 君は、馬のままでいたいですか?
それとも、エンジンを積んで未来を切り開く運転手になりたいですか? 決めるのは、今だ。 この記事で紹介したインタビューはこちら: ▶︎『画像生成AIの進化、本業の人はどうみる? 現実味を帯びる「デザイナー終了説」の真実』 この内容に関連するポッドキャスト

デザインとは何なのか?いま一度考えてみよう。

デザインとは何か?
この問いは、古今東西のデザイナーたちによって繰り返し探求され、議論されてきた。
Apple創設者のスティーブ・ジョブズや、IDEOのティム・ブラウンといった著名なデザイナーたちの言葉には、デザインの本質が凝縮されている。
デザインはどう見えるか+どう機能するか
ジョブズは、「デザインは見た目のことではなく、どう機能するかだ」と述べている。このシンプルながら深遠な言葉は、デザインが単なる装飾以上のものであることを示している。
彼のリーダーシップのもとで開発されたApple製品は、機…

【2024年総まとめ】今年実施されたグローバル企業12社のリブランディング事例とその理由

2024年もそろそろ終わりに近づいている。 今年も多くのブランドが、ロゴのリデザインやリファイン、そして大幅なリブランディングを行った。 その中でロゴのリデザインや、リブランディングを行なった12のブランドを紹介する。 その前に、ブランドやブランディング、そしてロゴの役割などをざっとおさらいしてみよう。 ブランドにおけるロゴの真の役割とは? リブランディングや、ロゴの進化の真のインパクトは、会社の進化と新しいサービスの価値が消費者に受け入れられるかどうかで決まってくる。それがうまくいけば、誰も新しいロゴに文句を言う人はいないだろう。 一方で、期待値に応えられない場合は、新しいロゴと一緒にブランド価値が大きく下がる可能性もある。 現状における新しいロゴは、それ自体のクオリティーや価値に関係なく、新しい時代の明確なシンボルでもある。 それは、最近のネガティブな情勢に対して、より軽く、楽しく、明るい未来を連想させる、ブランドの意思表示としても読み取れる。 優れたロゴを構成する5つの要素 2024年にリブランディングを行った12のブランド それでは本題の今年リブランディングを行ったブランドを紹介する。 1. Figma ここ数年で急激にユーザーを増やしているデザインツールの FIgma。一時はAdobeに買収されることが決まっていたが、独占禁止法に抵触する可能性があり、破談に。 その後、ノンデザイナーにも使ってもらえるツールになることで、より大きな成長に向けて、リブランディングを行なった。ロゴだけではなく、キービジュアルも併せて刷新した。 2. 7Up Keurig Dr Pepper社傘下の7UPの今回のリブランディングは、かなり大規模なイメージチェンジを行なった。おそらく、ここ数年で最も優れたリブランディングの一つだろう。 今回のリブランディングのテーマは、「アップリフティング」な印象を与えること、そしてより現代的なアプローチを取り入れること。明るいグリーンの色調と、レトロスタイルのネオンの雰囲気に加え、数字の7を際立たせるクールな3D効果によって実現されている。 このリブランディングは、見た目が素晴らしいだけでなく、アイコニックな製品に新たな光を当て、特に若い世代のオーディエンスを引きつけることに成功している。 3. Pepsi 7UPのリブランディングに続き、アイデンティティを変更。このリブランディングには、新しいリブランディングは、ペプシの125周年記念のお祝いの一環として導入され、15年ぶりのリブランディングとなった。 新しいペプシのロゴは、過去のクラシカルなロゴからインスパイアされ、より鮮やかな色とスタイライズされたタイポグラフィを使用し、大文字のフォントで構成され、クールで大胆な印象を与えている。 4. Nokia Nokiaは45年ぶりのブランド刷新を行なった。これまでの太字のインパクトのあるものから、よりデジタルっぽい印象のあるデザインに変更。このリブランディングは、Nokiaの戦略的なシフトを反映しており、消費者向けモバイルフォンからビジネステクノロジーソリューションへの焦点移行を示している。 しかし、このデザイン選択は賛否両論を呼んでいて、エッジの効いた角張ったスタイルは、耐久性と信頼性の高いモバイルデバイスを製造していることで知られる企業よりも、AIを専門とするテックスタートアップにふさわしいと評価する人もいる。 5.Eurostar ヨーロッパの鉄道会社、ユーロスターは、2022年にもう一つの人気鉄道会社タリスと合併したことにより、リブランディングを行なった。 リブランディングされたロゴデザインとブランドビジュアルは、この2つの会社をひとつにまとめるとともに、2030年までに年間の乗客数を3000万人に倍増させるという新しいビジョンを体現している。 このリブランディングを手掛けたデザインスタジオによると、この新しいロゴのコンセプトは「ユーロスターに星を取り戻させる」 6. Bumble 米国発のマッチングアプリ、Bumbleは、パンデミック後の大規模なブランド刷新の一環として、もロゴのリデザインを行なった。 「私たちが変わったので、あなたは変わる必要はない」というタグラインのもと、新しいロゴとブランドアイデンティティを刷新。 ぱっと見は大幅な変更は行われていないが、小文字だった「b」を大文字にすることにより、ブランドの成長を表現。また、アイコン部分も六角形を取り除き、よりソフトな印象を与えている。 7. Johnson & Johnson 消費財ブランドのJohnson & Johnsonも大幅なリブランディングを行なった。これまで130年以上も使用されてきたアイコニックなロゴを刷新した。 新しいロゴは、アイコニックなスクリプト体のデザインではなく、最近流行りのシンプルなサンセリフ体のフォントを採用。その結果、ロゴはあまりにも一般的で単純に見えるようになってしまったと言わざるを得ない。 8. Lamborghini ランボルギーニは20年ぶりにブランドのロゴを一新した。これまでの伝説的なエンブレムを踏襲しつつ、デジタル時代に合わせたよりダイナミックでモダンなデザインに変更。このリブランディングは、ランボルギーニがデジタル時代に向けて進化するための広範なブランドの再活性化の一環として位置づけられている。 しかし、このデザイン変更は賛否両論を呼んでおり、伝統的なロゴの魅力を守りつつも、よりデジタルフレンドリーで現代的な印象を与えることが、古いロゴのファンには物足りないと感じる人もいるようだ。 9. LG 韓国の消費者向けテクノロジーブランドであるLGは、ブランドに大きな変更を加えた。最も大きな変更は、3Dロゴから2Dのフラットなロゴデザインへの移行。 この新しいロゴは、現代的なデザインコンセプトとよく調和しており、ブランドにとって必要不可欠な変更だった。ロゴの刷新に加えて、リブランディングは「Life’s Good」というスローガンをマーケティングキャンペーンの前面に出し、ミレニアル世代やZ世代の消費者をターゲットにした。 10. Fanta Fantaも定期的にリブランディングを行なっている。コカ・コーラ傘下のFantaは、そのロゴからオレンジの形状や色を完全に排除し、テキストのみを使った単色のレトロスタイルに変更。 この新しいデザインは、7UPの新しいデザインに使われた多くの要素と共通している。しかし、少し凡庸な感じのデザインでもあり、2008年のカラフルなロゴが持っていた楽しく遊び心のある印象をうまく再現することはできていない。 11. Jaguar 高級自動車ブランド、ジャガーのリブランディング。モダンなサンセリフフォントとホログラムを採用。まるでアパレルやコスメブラドのようなエレガントさと洗練。若さすら感じる柔らかいデザイン。 このリブランディングが発表されるや否や、デザイン業界を中心に膨大な量の批判意見が広がり、ネットを賑わせている。逆にそれが良いプロモーションになったと語る人もいる。実際の消費者調査でも、ジャガーに対するポジティブな印象が23.1%から15.3%へ減少し、ネガティブが21%から40.5%に急増している。 ロゴやビジュアルのアップデートに合わせ、こちらの “Copy nothing”とのタイトルのコンセプト動画もリリースされた。全体に広がるおしゃれダイバーシティー&インクルージョン感が今となっては少し古臭く感じる。何よりも、ジャガーが何を売っている会社なのかすらわからない状態になってしまっているのが大きな問題だろう。 12. btrax そして最後は我々 btraxのリブランディング。 2020年に会社の会社のビジョン、カルチャーバリュー、そしてサービスの内容をアップデートした際に、大規模なリブランディングを行った。 ビートラックスがリブランディングにかけた思い – ギャップを埋めるために – それから4年たち、パンデミックの終了、AIなどのテクノロジーの進化、そして世界を取り巻く社会的な変化を踏まえ、提供サービスの刷新に併せ、ブランドのマイナーアップデートを行った。 今回のアップデートでは主に、利用するタイプフェイス、カラーパレット、そしてキービジュアル要素の更新を行い、アメリカ西海岸のデザイン会社らしい、よりイキイキとした雰囲気を採用。 また、Webサイトはこれまで日本語ページと英語ページで異なるデザインを採用していたが、より共通したサービスを提供することになり、基本デザインの統一化も行った。 今後も、日本国内外の企業のイノベーションとグローバル展開のために、より一層のサポートができればと思っている。 btraxの新しいウェブサイト リブランディングを行う主な理由 さて、そもそもなぜリブランディングをする必要があるのだろうか? 主に下記の理由が挙げられるだろう。 デジタルデバイス普及などの時代の変化 ブランドやサービス価値の変化 ターゲットユーザーの変化 世の中のトレンドの変化 会社のフェーズの変化 主要プロダクトの変化 予算が余ったから

【完全版】19種類のユーザーリサーチメソッドについて解説!

ユーザーリサーチとはUXデザインを行う際に必要となるユーザーのニーズ、行動、好み、課題を明らかにするための調査のこと。最近では「UXリサーチ」とも呼ばれている。 UXデザインプロセスの一部であり、ユーザー体験を向上させるために必要不可欠なプロセスとなっている。ユーザーのニーズや課題などを間違えて捉えてしまったり、十分に理解ができていない場合は、製品やサービスの失敗につながる可能性があるため、ユーザーリサーチは非常に重要な存在なのだ。 ユーザーリサーチの概要やなぜ必要なのかについては下記の記事で詳しく話している。ぜひそちらも合わせてチェックいただきたい。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ 近年、ユーザーリサーチやUXリサーチという言葉が日本でも少しずつ浸透し始めているものの、ユーザーリサーチの手法がたくさんあって何をすればいいかわからないという相談をよく受ける。そこで今回は『19種類のUXリサーチメソッドのメリット、デメリットと活用場面』について解説していく。 どんなユーザーリサーチメソッドがあるの? まずはこのマトリクスの見方について解説していく。縦軸が意識調査(Attitudinal)か行動観察(Behavioral)で別れていて、横軸が質的調査(Qualitative)と量的調査(Quantitative)に別れている。 ・意識調査(Attitudinal):ユーザーが「どう思っているか」や「何を感じているか」を聞いて理解する ・行動観察(Behavioral):ユーザーが「実際に何をしているか」を観察して把握する ・質的調査(Qualitative):少数のユーザーから詳細情報を集めて「なぜ」「どのように」を深く理解する ・量的調査(Quantitative):多くのユーザーから数字で表せる情報を集めて傾向を把握する 4種類のマークのそれぞれの意味 🟢自然な製品使用 (Natural use of product):ユーザーが普段どおりに製品を使う様子を観察する 🔴脚本化された製品使用 (Scripted use of product):決められたタスクやシナリオに沿って製品を使ってもらい、その様子を観察する 🟡脱文脈化 (Decontextualized – not using product):製品を直接使用せずに、ユーザーの意見、態度、または知識を調査する 🔵限定的使用 (Limited use of a limited form of the product):製品の一部や簡易版を使って、特定の側面だけを調査する マトリクスの見方がわかると、それぞれのメソッドがどのような目的でどのような方法で行われるかが大まかに理解できるようになる。 それぞれのユーザーリサーチメソッドの解説 それではここからマトリクスにあるリサーチメソッドについて解説していく。 1 🟡インタビュー (Interviews) 一対一で詳細な質問を行い、ユーザーの意見や経験を深く掘り下げる手法 ・メリット: 詳細な情報が得られる、柔軟な質問が可能 (追加質問ができる) ・デメリット: 時間がかかる、サンプル数が限られる ・活用場面: 新製品の開発初期段階、ユーザーの行動や動機の深い理解が必要な時 2 🟡フォーカスグループ (Focus Groups) 少人数のグループでディスカッションを行い、意見や反応を収集する手法 ・メリット: 多様な意見が一度に得られる、参加者同士の相互作用を観察できる (意見の一致や対立、アイディアの発展過程など) ・デメリット: 特定の意見に引っ張られる可能性がある、個人の深い洞察が得にくい ・活用場面: 新しいコンセプトの初期評価、製品の改善点を探る時 3 🟡アンケート (Surveys) 多数のユーザーから定量的なデータを収集する手法 ・メリット: 大規模なデータ収集が可能、統計的分析に適している ・デメリット: 深い洞察が得にくい、質問の設計が結果の質に大きく影響する ・活用場面: 顧客満足度調査、市場動向の把握、大規模な意見収集が必要な時 4 🔵参加型デザイン (Participatory Design) ユーザーを設計プロセスに直接参加させる手法 (デザイナーやエンジニアと一緒に、ユーザーがアイデア出しや試作品の作成に関わる) ・メリット: ユーザーのニーズを直接反映できる、革新的なアイデアが生まれやすい ・デメリット: 時間とリソースがかかる、ユーザーの意見と専門家の知識のバランスを取るのが難しい場合がある ・活用場面: 新しいサービスの開発、既存製品の大幅な改善を行う時 5 🔵魅力度調査 (Desirability Studies) 複数のデザイン案をユーザーに提示し、好みや印象(魅力度)を評価してもらう手法 ・メリット: ユーザーの感情的な反応を把握できる、競合製品との比較が可能 ・デメリット: 主観的な評価になりがち、機能性の評価には適さない ・活用場面: 複数のデザイン案の中から最適なものを選ぶ時、ブランドイメージの評価をしたい時 6 🔵カードソーティング (Card Sorting) ユーザーに情報やカテゴリーをグループ分けしてもらう手法 ・メリット: 情報構造の最適化に役立つ、ユーザーの思考プロセスを理解できる ・デメリット: 結果の解釈に時間がかかる、コンテキストが失われる可能性がある ・活用場面: ウェブサイトの情報設計、アプリのメニュー構造の設計をする時 7 🔵ツリーテスト (Tree Testing) ユーザーにサイトの階層構造から特定の情報を探してもらい、サイト構造の分かりやすさを評価する手法 ・メリット: […]

【ウェブサイトリニューアル】btraxデザインメンバーが明かす舞台裏ストーリーとは?

ウェブサイトの大規模リニューアルに大切な要素は何しょう? btraxはホームページを刷新しました。 この記事では、btraxのデジタルプレゼンスの変革を主導した主要チームメンバーの想いや制作過程で感じた生の声をお伝えします。 リブランディングの取り組みや、課題と解決策、プロジェクトを導いたビジョンはどのようなものだったのでしょうか。 鮮やかな色使いや、遊び心のあるインタラクティブ機能は、btraxのアイデンティティと創造性の進化を反映したものです。限界に挑戦しながら、デザインと機能性のバランスを取ることに興味がある方は、ぜひご一読ください。 ウェブサイトをリニューアルした主な理由は? Brandon(Founder and CEO, btrax):今回のウェブサイトリニューアルは、btrax全体のリブランディングの一環です。AI等による社会の革新が起こる中でクライアントに寄り添うデザイン会社であることを表し、また、サンフランシスコと東京のチームをより普遍的なブランドアイデンティティで統一したいと考えました。 Jared(UI Desinger, btrax):クライアントとの絆を強化し、さらに新しい訪問者を惹きつけるため、ウェブサイトに新しさを打ち出す必要がありました。btraxには若いメンバーが多く、活気に満ちており、新しいデザインはそんな我々の姿と進化を表現しています。 Suzy(Associate UI/UX Designer, btrax):btraxのサービスはクリエイティブサポート以外にも拡大しており、会社が向かっている方向性の大胆さとインパクトを反映するためにウェブサイトを更新する必要があると感じました。   リニューアル中に直面した最大の課題は? Brandon:最大の課題の1つは、テキストの可読性を維持しながら鮮やかな色を使用することでした。btraxの文化を反映するためにより明るい色調を使いたかったのですが、デザインを視覚的に魅力的かつ読みやすくすることは簡単ではなかったです。 Jared:当初は、よりアーティスティックなデザインを目指していました。しかし、ユーザーへのヒアリングの結果、機能性もより強化する必要があることがわかりました。デザインの良さと使いやすさのバランスを取るのは大変でした。 Suzy:新しくノーコードツールFramerを採用しましたが、私にとっては初めての部分もあり、時間とリソースの管理が課題でした。いくつかの障壁はあったものの、ウェブデザイン自体は楽しみました。 新しいデザインはbtraxのブランドアイデンティティをどのように反映していますか? Brandon:新デザインのテーマは「ダイナミックでありながらスムーズ」です。遊び心がありながらエレガントなウェブサイトを目指し、それをインタラクティブな要素と全体的なデザインに反映させました。 Suzy:ニュートラルでクリーンな美学から離れ、より大胆なカラーパレットとタイポグラフィを採用して、自信と創造性を表現しました。これはbtraxのブランドの進化と一致しています。 Hiro (UI/UX Design Specialist, btrax):大きな画像、丸みを帯びた角、冒頭のリール動画で強いファーストインプレッションを与えることに注力しました。これらの要素が現代的で進歩的なイメージを醸し出しています。 ユーザーフィードバックはデザインにどのような影響を与えましたか? Jared:ユーザーのヒアリングを踏まえた修正により、アーティスティックだけでなく、機能性も担保したウェブサイトを実現することができました。明確なCTA、ホバーインタラクション、より使いやすいレイアウトを追加しました。 Suzy:より多くのインタラクティブな要素を取り入れて、楽しく魅力的な体験を作り出しました。使いやすさを損なうことなく、視覚的な喜びをユーザーに提供することが目標でした。 リニューアルで最も重要な視覚的な変更点は? Jared:より明るい色を導入し、モダンな印象を与えるためにコンデンスドサンセリフフォントでタイポグラフィを更新しました。より生き生きとして魅力的になりました。 Suzy:カラーパレットはより大胆になり、タイポグラフィーは自信と革新性を伝え、新しいブランドアイデンティティと一致しています。 Hiro:丸みを帯びた角を持つ大きな画像と冒頭のリール動画で、新しいウェブサイトに進歩的でモダンな雰囲気を与えています。視覚的な要素は、誇張しすぎない範囲で可能な限り大胆にしました。 新しいウェブサイトから訪問者に何を感じ取ってほしいですか? Brandon:不必要なテキストを減らし、ビジュアルとインタラクションでbtraxのストーリーを語ることに注力しました。訪問者がデザインを通してbtraxの本質を感じ取ってくれることを願っています。 Jared:訪問者が、btraxを先進的な企業であり、クライアントニーズを理解し、デザインのトレンドを把握している会社だと感じてくれることを願っています。 Suzy:訪問者にサイトの探索を楽しんでもらいたいと思います。大胆なビジュアルとインタラクティブな機能は訪問者を惹きつけるためのものであり、今後も改善を続けるにあたって、フィードバックをお待ちしています。 イノベーションの最前線へ。​​btraxの新たな挑戦にご注目ください。 今回のウェブサイトリニューアルは、印象的なデザインとユーザーフレンドリーな機能性を融合させ、会社のダイナミックな進化を体現しています。btraxの創造性とイノベーションへの取り組みを示すだけでなく、様々な仕掛けでブランドの本質をあらわす魅力的な体験へとみなさんをご案内します。 新しいウェブサイトによりみなさまとの繋がりを深め、将来何かでコラボレーションできることを願っています。

【Designship 2024体験記】ビートラックス現役デザイナー3名が語るイベント体験と貴重な学び

2024年10月12, 13日に開催された「Designship 2024」。 このイベントは東京で毎年開催され、約5,000人ほどの数々のクリエイターたちがデザインの最前線を探る場となっています。今年のコンセプトは「広がりすぎたデザインを、接続する」でした。 Designship 2024には、ビートラックスからはCEO ブランドンが登壇したのに加え、デザイナー3名もDesignshipに参加しました。このイベントは弊社にとっても、テクノロジーやビジネス、アートまで多岐にわたる分野でのデザインの役割と影響力を再考する素晴らしい機会となりました。 参加したビートラックスのデザイナーは以下の3名です。 Mari (UX Designer / Design Researcher, btrax) Hiro (UI/UX Design Specialist, btrax) Suzy (Associate UI/UX Designer, btrax) そこで今回は、以上の3名がイベントに参加して感じたそれぞれの「① 現地で1番興味深かったセッション」「② Designship 2024全体を通して得た学び」「③今後の意気込み」についてご紹介します。 ① 現地で1番興味深かったセッション 1. 引地 耕太さん(クリエイティブディレクター / アートディレクター / 教育者)、テーマ『人間中心から、生命中心の未来へ〜大阪・関西万博デザインシステムを通じて〜』 Mari: 引地さんの「人間中心から生命中心の未来へ」というテーマのトークセッションが特に印象的でした。大阪万博のデザインシステムがどのように作られたのかに興味があったので、非常に興味深く感じました。「いのちの循環」という広く抽象的な万博のテーマを具体的なビジュアルに落とし込むプロセスと考え方が面白かったです。 「いのちの循環」をもう少し具体的に説明する言葉として引地さんは「全てのいのちが融け合い、響き合う 共に進化する生態系へ」としていましたが、それを具現化したビジュアルに落とし込んでいました。 個々のいのちがそれぞれLive, Growth, Evolutionと変化をとげ、またその個が他の個を交わって生態系ができていくことをJoin, Sync, Actという言葉で表現し、それらのビジュアルを融合させたものが現在のキービジュアルです。 引地さんのトークは聞きやすく、プレゼンスライドの見せ方も綺麗で、赤と青の目玉がついたビジュアルがどういう意図で作られたのかを図解してくれたことで、セッションを聞く前と後ではキービジュアルの見え方が変わり、納得感が増しました。 Suzy: 引地さんによる万博のデザインシステムについてのセッションが個人的にはとても印象的でした。デザインプロセスの全体像、どのような意図でシステムやデザイン要素が生み出され、それらがどの様に様々なアセットに展開・適用されているのか、その過程を詳細に知ることができたのがとても面白かったです。 デザインプロセス自体も興味深く聴いていたのですが、それ以上に、その工程が第三者の私にも理解しやすい、引地さんのプレゼンテーションの仕方が大変勉強になりました。 特に最近はブランディングやマーケティング戦略の提案などの上流工程のお仕事に関わらせていただくことが多いので、頭にスッと入ってくる話し方とピッチ構成、スピード感、スライドの作り方などの重要性を改めて感じました。 このセッションを通して得た気づきや学びは、今後のプロジェクトに早速応用していければと思っています。 2. 菅野 薫さん(Creative Director, Creative Technologist)、テーマ『デザイン:アイディアの社会実装』 Hiro: 菅野さんの仕事や考え方に関するセッションが印象的でした。森ビルやサントリー、リオの閉会式など心踊るような広告やブランディングを手がける方が何を考えているのかを知りたいと思い参加しました。エンジニア出身と聞いて驚きましたが、『新しいアイデアとは何かに』ついての考え方が非常に参考になりました。 以前、井口尊仁さんの「アイデアは実装されて初めて価値を持つ」という発言を聞きましたが、菅野さんはまさにそれを体現している方だと感じました。特に電話に関する話が興味深かったです。電話というアイデアは歴史的に古くから存在し、実装した人も多くいました。 最終的にAT&Tの創業につながった技術者が特許を取得しましたが、他のエンジニアたちも同じ時期に特許を目指していたそうです。この事例は、アイデアが単なるアイデアのままだと価値がなく、実装されて初めて価値を持つことを示していると強く感じました。 エンジニアのバックグラウンドがあることから、映像やブランディングのクリエイティブも技術ベースでありつつ、伝えたいメッセージは非常にわかりやすかったです。また、やった仕事のサマリー動画を持つことは自分でもぜひやりたいと思いました。 ② Designship 2024 全体を通して得た学び Mari: 「デザインとは?」を考えさせられるイベントでした。Designshipはデザイン系のイベントの中でも特に広義にデザインを捉えており、様々なジャンルのデザイナーが集まっていました。btraxでの仕事ではプロジェクトによって異なる領域のデザインをしているため、自分は何のデザイナーなのかと考えることが多く、コアを見つけて強化できると良いと感じたイベントでした。 Goodpatchの大きめの本棚を設置したブースが印象的で、多くのブースがある中で目を惹く存在でした。最近、展示系のプロジェクトも増えているので参考になりました。 Suzy: Brandonさんと引地さんのメインステージのセッションの他にも、ブランディングデザインや共創デザインアプローチのパネルセッションにも参加しましたが、Designshipのテーマでもある「デザインの定義が広がっている」ことを強く感じました。 デザインがメインストリーム化していることは嬉しい一方で、どこまでをデザインとし、デザイナーの仕事とするかが曖昧になっている現状で、自分のデザイナーとしてのスキルセットを見直す良い機会になりました。 Hiro: 広がり続けるデザインの領域を実感するイベントでした。だからこそ、「デザインでどんな目標を達成したいのか?」を冷静に考える力を養うことがデザイナーには必要だと感じました。また、デザインシップ自体の参加者の年齢層が若く、学生と企業のデザイナーが気軽に交流できる場は素晴らしいと思いました。 ③ 今後の意気込み Mari: トークセッションを通じて改めて感じたのは、自信あるトーク力が聴き手への説得力を増すということです。デザイナーとして良いものを作るだけでなく、それを伝える力は非常に重要だと感じました。今後の仕事に役立てたいと思います。 Suzy: 私は「手を動かすデザイン」より「どう良いデザインを効率よくデリバーするか」の部分に興味があり、PMや上流過程の管理が得意です。共創デザインアプローチやデザインシステムの設計と展開についてのセッション内容は非常に参考になりました。プレゼンテーション能力も今の私の課題なので、これからしっかり伸ばしていきたいと思います。 Hiro: 広がるデザインの領域の中で、自分の考え方の軸となる専門性が大切だと感じました。常にデザインの目的や狙いを考え続ける姿勢を持ち続けたいと思います。 最後に Designship 2024は、btraxメンバーに多くの気づきと学びをもたらしてくれました。デザインの定義が広がる中で、それぞれが自分の位置づけを見直し、次のステップへの準備を整える場所となりました。このイベントを通じて得た知識や共感を今後の仕事に活かしていきたいと思います。 ぜひ読者の皆さまもデザインの可能性を再考し、新しい挑戦に向けて期待を膨らませていただければと思います。 関連記事 Designship2024 DAY1速報レポート🚀 久々にデザインの”空気”を吸いに行った、Designship 2024の2日間 #designship2024 スピーカーとして、話し方をデザインした話

【30億円を生み出したセルフオーダーレジ】マクドナルドの成功の裏側をUXデザインの観点から紐解く

マクドナルドは、セルフオーダーレジの導入により約30億円の追加利益を生み出した。 この増益は、主に顧客がセルフオーダーレジを使うことで平均客単価が上昇したためである。マクドナルドのCEOは、セルフオーダーシステムによって顧客が従来よりも多くの商品を注文する傾向があると述べている。(参照元) この記事では、セルフオーダーレジがどのようにして成功を生み出したのか、UXという観点からユーザー体験の向上と企業の利益の両面から探っていく。 セルフオーダーレジとは? セルフオーダーレジとは、レストランやファストフード店で、顧客が自分で注文を行うためのタッチパネル式の端末である。これにより、顧客は従業員を介さずにメニューを確認し、選択、注文、決済をスムーズに行うことができる。また、通常のレジに比べて、列に並ぶ時間が短縮され、待ち時間を減らす利点がある。 実際にマクドナルドでは、2008年にヨーロッパで初めてセルフオーダーレジを導入した。それ以降、バーガーキングやKFCなどの競合他社も追随して導入し、今では多くのファストフードチェーンで一般的な存在となっている。 それでは、セルフオーダーレジによるユーザーの体験価値の向上について見ていこう。 ユーザーの利益(UX)の向上 マクドナルドがセルフオーダー体験を向上させるために取り組んだことは主に4つある。 ①シンプルさ なるべくシンプルなUIにすることでユーザーが迅速に注文できるように設計されている。 ファストフードを利用する多くのユーザーは、食べたい商品がすぐに見つかり、オーダーできることを求めているため、非常に重要な要素となっている。マクドナルドのセルフオーダーレジでは、ハンバーガーやサイドメニューなどがセクションごとにわかりやすく分かれており、それぞれのアイテムは画像中心のUIとなっているため、直感的にオーダーできるUIとなっている。 ②カスタマイズ性 ユーザーの好みやアレルギーに合わせて注文をカスタマイズできるようになっている。 具体的には、ハンバーガーのトッピングやソースなどの追加や削除など、ユーザーが簡単に調整ができるようになっているため、より多くのユーザーが食事を楽しめるような工夫がされている。また、注文ミスを減らすために、最後に確認が表示されるような導線となっており、ユーザーも安心してオーダーできる設計となっている。 ③楽しい操作感 タッチスクリーンを利用することで直感的に指で操作できるUIになっている。画面のデザインもカラフルでポップな動きをするUIになっているため、ユーザーが楽しみながらオーダー体験できるように設計されている。 ④多言語対応 マクドナルドのセルフオーダーレジでは、複数言語から言語を選べるようになっている。日本では、日本語と英語などから選ぶことができるようになっている。日本語でオーダーができないユーザーでも英語表記に切り替えてオーダーすることが可能になっている。 企業利益の向上 マクドナルドが自社の利益を向上させるために使ったテクニックは主に6つある。 ①ナッジング ナッジングとは、ユーザーに選択の自由を与えつつ、人間の認知バイアスや思考の癖を理解した上でさりげない誘導を行うこと。 セルフオーダーレジの支払い画面では、クレジットカード支払いを推奨するようなUIになっている。クレジットカードでの支払いの方がキャッシュよりも支払い額が増えると言われているため、このようなUIを採用していると考えられる。 また、なるべく多くのセルフオーダーレジを配置することで、待ち時間を減らし、離脱防止に繋げている。7人以上並んでいる時は最大で70%の人が列に並ぶのをやめてしまうという研究結果もあるため、なるべくレジ待ちの列を短くすることが列からの離脱を減らし、オーダーの最大化に繋げている。 ②アップセリング アップセリングとは、ユーザーが当初検討していた単価の低い商品から単価の高い商品の購入を促すこと。 セルフオーダーレジ内のハンバーガーセクションでは単価の高いハンバーガーから順に表示されており、高いハンバーガーが目線の位置にある状態である。元々安価なチーズバーガーを頼もうと思っていたとしても、少し高くて美味しそうなビッグマックを選んでしまう仕掛けになっている。アップセリングのために、ナッジングも利用されていると考えられる。 ③バンドル販売 バンドル販売は、単価で購入するよりもお得な価格でセット商品を提供すること。 セルフオーダーレジでハンバーガーを選んだ後に、ポテトフライや飲み物が含まれたお得なセット商品が表示されるようになっている。ハンバーガーの利益率はそこまで高くないため、ポテトや飲み物などの利益率の高いサイドメニューを一緒に頼んでもらうことが利益率拡大につながる。 ④クロスセリング ユーザーが購入検討している商品に追加の商品を提案することをクロスセリングという。 セルフオーダーレジでは、ハンバーガーを選択した後にセット商品だけでなく、セット商品以外のナゲットやマックフルーリーなどがレコメンドされるような画面設計になっている。また、直感的で楽しいオーダー体験ができるUIが、通常よりも多くの商品を注文しやすい環境を作り出している。 ⑤ダークパターン ダークパターンは企業の利益を優先した結果になるよう、ユーザーが意図しない行動を取らせることを指す。 言い換えると、ユーザーの利益よりも企業の利益を優先させるずるいデザインである。セルフオーダーレジの画面では、トータルの金額がスクリーンの下に小さく表示されており、立っている状態だと視野に入らないデザインとなっている。そのため、ユーザーは合計金額が増えていても気づきにくい。 ⑥A/Bテスト 異なるバージョンを比較して、どちらが効率的かを統計的に検証することをA/Bテストという。 セルフオーダーレジのスクリーン上で、ランダムにコンポーネントの色やサイズ、表示テキスト、商品の並び順やレコメンド商品の表示を変えたりしている。A/Bテストを通して、マクドナルドは利益を最大化できるUI/UXを追求している。 結論:UXデザイナーはユーザーの利益と企業の利益のバランスを考えた設計が重要 マクドナルドのセルフオーダーレジの成功は、ユーザビリティの向上と収益増加の両立を示す好例だ。もちろんナッジングやダークパターンに関しては、ユーザーの信頼を失う可能性や倫理的な問題につながる可能性があるため、ベストな活用事例かどうかは判断が難しい。 しかし、この事例からユーザーと企業の利益の両方を意識することが重要だということがわかるだろう。UXデザイナーの役割は、この両者のバランスを取りながら、長期的な価値を創造することである。 以上のことから、UXデザイナーがユーザーと企業の利益の両方を考慮する上で重要なポイントは以下の3点である。 ①ビジネス目標の理解 企業の戦略や収益モデルを深く理解し、UXがそれらにどう貢献できるかを常に考えることが求められる。ユーザーの問題解決と企業の収益向上を同時に実現できることがベストケースである。 ②長期的価値の創造 短期的な利益だけでなく、長期的なユーザーロイヤリティと企業の持続可能性を考慮する。短期的な利益を追求しすぎることで、ユーザーが離れていってしまうリスクもあるため、長期的な目線を持ちながらプロジェクトを進める。 ③クロスファンクショナルなコラボレーション マーケティング、開発など、他部門と密接に連携することで、様々な意見を取り入れることが可能になる。総合的な視野を持ってプロジェクトを進めることがユーザーや企業のどちらかの利益に偏ることを防ぐ。 これらのポイントを踏まえることで、UXデザイナーはユーザーと企業の利益の双方を向上させるサービスやプロダクトを生み出すことができるだろう。

【デザイン進化の20年を祝して】btrax 20周年記念イベントハイライト、業界のトップランナーが集結

btraxは今年、創業20周年を迎えました。この20年間、私たちは日本だけでなく世界中の企業に革新的なデザインとマーケティングソリューションを提供し、その成功を支援してきました。 この達成を記念して、サンフランシスコのLyft本社で「20/20 VISION:  The Evolution of Design」をテーマに特別イベントを開催しました。このイベントでは、デザイン界の有力なリーダーたちが一堂に会し、デザインの進化とこれからの課題や機会について深い洞察を得られるパネルディスカッションが行われました。 パネルには、以下のメンバーが登壇しました: – Dan Harden氏:WhipsawのCEO、創設者であり、主任デザイナーとして1,000以上の製品を市場に送り出した実績を持つ。 – Gadi Amit氏:NewDealDesignの代表兼主任デザイナーであり、過去20年間の象徴的な製品を手掛けたクリエイティブの賢者。 – Brandon Ramos氏:Lyftのシニアプロダクトデザインマネージャーであり、MetaやWeight Watchersなど数々の大企業で20年以上チームを率いた経験がある。 – Jessica Leitch氏:frog North Americaのマネージングディレクターであり、15年にわたってサービスデザインに専念してきた。 パネルの進行役は、btraxの創設者兼CEOであるBrandon K. Hillが務めました。 デザイナーの役割の変遷 参加者たちは、デザイナーの役割がこの20年間で劇的に変化したことに共通の理解を示しました。かつては美しいものを創り出す職人と見なされていたデザイナーが、今や体験やライフスタイル、そしてビジネス戦略そのものを形作る重要な役割を担っています。 デザインは単なる製品開発の一部を超えて、意思決定の原動力となっています。デザインが戦略的資産としての価値を増したことで、デザイナーは企業の中核的な決定に深く関与しています。 以前は美しいものをデザインしていましたが、今ではライフスタイルや体験そのものをデザインしています。デザインはもはや名詞ではなく、動詞のような存在です。– Dan Harden さらに、デザインプロセスそのものも変化してきました。現在のデザインはより動的で協力的であり、単なる製品作成にとどまらず、複雑で多層的な問題に対処することに焦点を当てています。 AIがデザインにもたらす影響 ディスカッションでは自然と人工知能(AI)の話題も浮かびました。AIがデザイン分野で担う役割はまだ始まったばかりですが、参加者たちはその業界への影響について様々な見解を述べました。 AIは人間の創造性や直感を代替するものではありませんが、デザインプロセスの一部を効率化する強力なツールになる可能性があることに意見が一致しました。 「私たちはAIツールのキュレーターや管理者になるでしょう。」– Brandon Ramos 一部の参加者は、AIの創造力における限界や、文化的価値を損なう可能性についての懸念を示しました。しかし、AIを用いてブレインストーミングやプロトタイピングを迅速化し、最終的にはAIの生成物を導き洗練させることができれば、デザイナーにとって進化の大きな機会となるだろうと考える意見もありました。 若手デザイナーへのアドバイス パネル参加者は、これからデザインのキャリアを始める若手デザイナーへの有益なアドバイスを提供しました。重要なポイントの一つとして、創造性とビジネス感覚のバランスを取ることの重要性が挙げられました。 「AIは優れたデザインや創造性の代替にはなりません。システム思考を学び、SFを読んで視野を広げてください。」– Jessica Leitch デザイナーは美にとどまらず、企業の広範な経済的・戦略的目標を考慮することが求められます。システム思考の強固な基盤を築き、創造的な視野を広げ続けることが次世代のデザイナーにとって欠かせないスキルとされています。 さらに、AIが進化を遂げるとしても、パネル参加者たちは人間の創造性や批判的思考の価値を完全に置き換えることにはならないと強調しました。デザイナーは自分自身の独自のスタイルや問題解決能力を磨きつつ、AIを競争相手として恐れるのではなく、創造的なツールとして活用することに集中すべきです。 未来への挑戦と機会 パネルは、デザイン業界が今後直面する課題についてディスカッションの締めくくりを行いました。デジタル化が進む中で、技術の負の側面、例えば画面依存症やデジタルの過剰依存に取り組むことが主要な課題として浮かび上がってきました。 「技術や画面依存に対抗する必要があります。私たちはこれまで人々にアプリを使うよう促してきましたが、今度はその問題を解決することが求められています。」– Gadi Amit 技術の進歩と人間の幸福の調和が必要であることが繰り返し言及され、デザイナーには、思慮深くユーザー中心のデザインを通じて人々の生活を向上させる責任があると認識されています。 未来を見据えると、パネル参加者はデザインがこれからも世界の課題解決の最前線に立ち続ける未来を描きました。社会的・環境的課題に対処し、より持続可能で影響力のある製品を創出するために、次の20年間、デザイナーは批判的に考え、急速に進化する技術に適応する必要があります。 ビートラックスのこれから デザインイノベーションの20年を祝う今、ビートラックスは進化し続けるデザイン業界の最前線でリーダーシップを発揮することに引き続き全力を注いでまいります。私たちの20周年記念イベントは、業界が遂げた驚くべき進歩を振り返るだけでなく、未来への胸躍る可能性を垣間見る機会ともなりました。 過去20年間のデザイン革命の一翼を担ってきたことを誇りに思うと同時に、これからの新たな章に大きな期待を寄せています。 創造性、テクノロジー、そして人間中心の思考が世界を形作り続ける未来に向けて、ビートラックスは更なる挑戦を続けてまいります。私たちは、この先も革新的なデザインソリューションを通じて、企業や社会に価値を提供し続けることをお約束いたします。

【イノベーションの軌跡】私たちの生活を変えた5つのデザイン革命

過去20年で、世界はデザインと製品のイノベーションにおいて驚くべき進化を遂げ、私たちの生活、仕事、テクノロジーとの関わり方が根本的に変わりました。
スマートフォンの普及から生成系AIの最近のブレークスルーまで、これらのイノベーションは、産業や人々の行動に大きな影響を与えています。
ここでは、過去20年間で最も影響力のあるデザインとイノベーションの5つの発展を見ていきましょう。
1. スマートフォンとタッチスクリーン (2007年〜現在)

2007年にAppleがiPhoneを発表したことで、技術と…

【世界中のデザイン知識を集約】今聴くべきUI/UX海外ポッドキャスト5選!

UI/UXデザインの世界は常に進化しています。デザイナーにとって最新のトレンドを追い続け、インスピレーションを見つけることは重要です。 そのような中でポッドキャストは、業界の専門家から学び、新しいアイデアを発見し、モチベーションを保つことができ、素晴らしいツールです。 ここでご紹介するポッドキャストは、実践的なアドバイスからクリエイティブな洞察まで、デザイナーのニーズをカバーしています。UI/UXとデザインスキルを次のレベルに引き上げるための必聴ポッドキャストを5つご紹介します。 ①UI Narrative: UX, UI, IxD, Design and Research ホスト:Tolu Garcia 内容:UI Narrativeでは、ユーザーインターフェースデザインの世界に深く潜り込み、デザイナーとその作品の背後にあるストーリーを探ります。Tolu Garciaがデザイン業界のエキスパートにインタビューし、UX、UI、インタラクションデザイン(IxD)、そしてリサーチに関する彼らの経験と洞察を明らかにします。 どんな人におすすめか?:経験豊富なデザイナーのキャリア/ライフジャーニーと実践的なアドバイスから学びたい方 btrax US デザイナー Jaredのおすすめエピソード 「Top 10 Skills That Every Product (UX/UI) Designer Must Have」 Aminah CárdenasとTolu Garciaが、プロダクトデザイナーに不可欠なスキルとその獲得方法について議論し、デザイナー志望者や現役デザイナーが成長するためのアプローチの重要性を強調しているエピソードです。 ②UI Breakfast: UI/UX Design and Product Strategy ホスト:Jane Portman 内容:Jane PortmanのUI Breakfastは、UI/UXデザイナー、プロダクトマネージャー、起業家向けの実践的なアドバイスにフォーカスしています。このポッドキャストでは、業界のリーダーにインタビューし、成功するプロダクトを構築するための経験とヒントを共有しています。 どんな人におすすめか?:実践的な戦略やデザインのアドバイスを探している方。実際のプロジェクトに直接適用できるノウハウが豊富です。 btrax US デザイナー Jaredのおすすめエピソード 「Designing for Accessibility」 あらゆるユーザーに対応できるインクルーシブなデザインの作成方法を探っているエピソードです。 ③Self-Made Web Designer ホスト: Chris Misterek 内容: Self-Made Web Designerは、ウェブデザイナー志望者がキャリアを成功させる手助けを目的としたプログラムです。Chris Misterekは自身の経験を共有し、成功したウェブデザイナーや開発者とのインタビューを通じて、実践的なヒントとインスピレーションを提供します。 どんな人におすすめか?: ウェブデザイン業界に参入したい方や現在のスキルを向上させたい方。成功へのロードマップを案内しています。 btrax US デザイナー Jaredのおすすめエピソード “The One Thing You Need to Be a Successful Web Designer” ウェブデザインビジネスを始めるための戦略とヒントを紹介しているエピソードです。  ④Awkward Silences ホスト:Erin May と John Henry Forster 内容:Awkward Silencesは、ユーザーリサーチと、優れたデザインにつながる見落とされがちな会話に焦点を当てたプログラム。ErinとJohnは、UXリサーチャーや実務者にインタビューし、ユーザーインタビューとテストの微妙な点を探ります。 どんな方におすすめか?:ユーザーリサーチの理解を深め、インタビュースキルを向上させたい方 btrax US デザイナー Jaredのおすすめエピソード 「The Future of UX Research with Judd Antin, Dave Hora, and […]

デザイン思考は何が問題なのか?その限界と先にある可能性

「デザイン思考を導入してみんですけど、これといった結果が出てないんですが…」 日本企業にデザイン思考ブームが到来して、数年経ち、効果について検証し始める時期になってきてるのだろう。 デザイン思考は現代のビジネスにおいて、重要な役割を果たすが、同時にその限界と課題についても多くの議論がされている。 その辺に関して、掘り下げてみたいと思う。 誰にでもわかるデザイン思考の基本とプロセス デザイン思考の誤解とその限界 そもそも、企業がこの手法を取り入れようとする背景には、イノベーションの創出を期待していることが多い。 しかし最近では、デザイン思考を導入してみたものの、それだけでは十分ではないという現実に直面する企業も少なくない。 これは、デザイン思考を万能なツールと過信し、そのプロセスさえ踏めば、何かしら新しいイノベーションや、ヒットサービスが生み出されると勘違いしている部分が大きい。 では、どのようにしてデザイン思考を超えて、真のイノベーションを実現することができるのだろうか? “イノベーション“ や ”DX” をバズワードで終わらせないために大切な2つのこと デザイン思考の現状と課題 デザイン思考は、その名の通り、ユーザー中心の視点から問題を解決し、新しい価値を創造するための方法論だ。 しかし、実際には、単にデザイン思考を導入するだけでは、企業が期待するような革新的な成果を得ることは難しい。 多くの企業がデザイン思考を実践しているものの、結果が伴わないことが多く、その理由としては、デザイン思考がプロセスとしては万能ではなく、他の要素と組み合わせる必要があることが挙げられる。 デザイン思考プロセスを丁寧になぞったプロダクトは面白味がない これは非常に主観的な意見だが、デザイン思考のロジックに従い、プロセスを丁寧に進めて作られたプロダクトは、妙に「平坦」に感じられることがある。 世の中にある他のサービスと似通ったものになりがちで、何かが足りないような感覚を覚える。まるで。いまひとつスパイスが効いていないような印象。 その理由は、多くの場合、作り手が本当に作りたいものを作っていないから。 たとえプロセスをしっかりと踏み、1つ1つ検証を行ったとしても、そこに強い情熱や思いがなければ、出来上がるものはなんとなく退屈なものになってしまう。 作り手に強い愛情がなければ、ユーザーにとっても魅力的なプロダクトにはならない。ユーザー検証を通じて、論理的にはまとまったプロダクトを作れるかもしれないが、なぜか心には響かないものになりがち。 単にデザイン思考のプロセスを踏んで、ユーザーが欲しいと言ったものを作っただけでは、それは単なる「御用聞き」のプロダクトになってしまう可能性が高い。 お客様第一主義とユーザー中心デザインの違いとは デザイン思考 ≠ イノベーション デザイン思考を取り入れる際に多くの企業が抱える誤解は、デザイン思考そのものがイノベーションの創出に直結するというもの。 しかし、実際にはデザイン思考はあくまで一つのフレームワークであり、単独で革新をもたらすものではない。重要なのは、デザイン思考をどのように実践し、他の要素とどのように組み合わせるかだ。 特に日本企業においては、表層的な部分ではそのプロセスをなぞりながらも、デザイン思考の本当の意味での実践が難しいとされており、その理由として文化的な背景や組織のマインドセットが影響している。 ここがちゃうねんデザイン思考。5つの誤解とは イノベーションを生むためのマインドセット では、何が欠如しているのだろうか? イノベーションを生み出すためには、単なるデザイン思考の実践だけでなく、組織全体のマインドセットの変革が不可欠だ。 いくらスタートアップの真似事のようなやり方をしても、その組織の根底にある考え方や文化が、旧態依然としたレガシー企業だったとすれば、「なんちゃってデザイン思考」でしかいないのだ。 必要なのは、企業の売り上げや利益、そして自分たちの組織内でのポジションや出世よりも、ユーザー視点での問題解決を最優先に考え、失敗を恐れずに挑戦する文化を醸成すること。 全ての人に必要なデザイン的マインドセット:デザイン会社の非デザイナーが体感していること 行動としてのデザイン思考 個人的には「デザイン思考」の最も大きな欠陥は、その名称にあると思っている。 そう、この「思考」という単語がよくない。そもそも、考えているだけで実現できる結果など、エスパーでない限り、ほぼ不可能だからだ。 デザイン思考を実践する上で重要なのは、そのプロセスを単に形式的に行うのではなく、実際の行動に移すこと。 考えてばかりじゃなく、短期間で多くのプロトタイプを作成し、フィードバックを得、そしてダメならピボットして、ガンガン改善する。そんな姿勢がない限り、世の中に愛されるプロダクトは生み出されない。 そう。デザイン思考は、単なる思考プロセスではなく、実際の行動を伴うものであるべきだ。 企業がイノベーションを生み出すためには、議論よりも行動に重きを置き、短期間での実験と検証を繰り返す必要がある。これは、企業が変化のスピードに対応し、競争力を維持するために不可欠なアプローチである。 イノベーションを生み出すために -空想者から行動者に変革する5つの方法- 始動プログラムより カオスから生まれるクリエイティブなプロセス 実際のデザイン思考のプロセスは、想像以上にカオスであり、その中でこそ真のイノベーションが生まれる。 計画通りに進まないプロジェクト、突発的な問題や感情のぶつかり合いが頻繁に発生することもあるが、これらはすべてクリエイティブなプロセスの一部。 このような環境を許容し、支持する企業文化があって初めて、革新的なプロダクトやサービスが生まれる。 一言で表現すると「お利口さんからの脱却」が求められる。 結論: 最も重要なのはデザイン思考を超えた要素 デザイン思考だけではイノベーションを実現するのに十分ではない。 組織全体でユーザー中心のアプローチを根付かせ、失敗を恐れず挑戦する文化を醸成することが不可欠。これには、トップダウンでのリーダーシップと、現場レベルでの自主性が融合したカルチャー変革が求められる。 デザイン思考を超えて、マインドセット、カルチャー、パッション、アクションといった要素を組み合わせることで、初めて企業は真のイノベーションを生み出すことが可能になる。 イノベーションを生み出すための要素: ユーザー視点 未来志向 柔軟な組織マインドセット 失敗を許容するカルチャー 当事者たちのパッション 強いリーダーシップ 早い段階でのアクション これらの要素を実現し、日々の業務に反映させることで、初めて未来の成功につながっていくと思う。 では、実際にどうすればそんな状況が生み出せるのか。詳しくは下記のイベントにて事例を含め、そのノウハウを伝授します。

Goodpatch CEO 土屋 尚史さんと話す AIがデザイン業界に与える影響

AIで行うUXデザインとブランディングの関係性、他
先日、株式会社グッドパッチの代表取締役社長兼CEOである土屋 尚史さん(以下、土屋さん)が、btraxサンフランシスコ本社を訪問してくださった。
Goodpatchを起業する前、弊社でインターンをしていた土屋さん。弊社CEOであるBrandon Hillとのキャッチアップも兼ねてポッドキャスト「San Francisco Design Talk」のエピソードを収録したのだが、その最中で触れたトピック “AIがデザイン業界に与える影響” の部分をこの…

エアビー(Airbnb)に学ぶ:デザイン主導の会社の成功例

“More designers should rise up and start a company.” 「もっと多くのデザイナーが立ち上がり、起業するべきだ。」 Figma, Incが毎年開催しているデザインカンファレンスイベント「ConFig 2023」にて、Airbnbの共同創業者兼CEOであるBrian Cheskyがデザイナーに訴えた。 彼のカンファレンスは、著者を含めたたくさんのデザイナーを奮い立たせた。 個人的には、過去聴いてきたトークの中で最もインスパイアリングなものだった。YouTubeでアーカイブが公開されているので、読者の皆さまにも是非観ていただきたい。 過去にもfreshtraxでデザイン主導企業をまとめたことがあるが、 【デザイン×経営】ビジネスにおけるデザインの価値を追求する7人の起業家 今回はこの「Design-Led Companies」に焦点を当てて、Airbnbの事例と共に考察していく。 そもそも「Design-Led」ってどういう意味? Design-LedやDesign-Drivenは日本語で「デザイン主導の」と訳せるが、そもそもこのデザイン主導とはどういう意味なのか? ひとことでまとめると、デザイン主導の企業は、デザインをビジネスの根幹に位置する重要な要素と捉え、デザインの原則や手法を運営や意思決定に活用する企業のことを指す。 現在、ありとあらゆるもののデジタル化と共に無料のアプリケーションが増加し、ユーザーエクスペリエンスが重要視されるようになった。それに伴い、デザインの立ち位置が大きく変わり、デザインを重要視した会社がテクノロジー業界を中心に増えてきている。 現に、世界的に大きく成功しているGoogle、Apple、Airbnbはデザイン主導企業の例として挙げられる。 なぜ日本にはデザイナー出身の経営者が少ないのか 一般的なビジネス主導の企業となにが違うのか では、デザイン主導であることにより、具体的に何が違うのか。 違いは大きく分けて三つある。冒頭でも紹介したAirbnbの事例と共にご紹介する。 1. デザイン重視の企業は、ユーザーのニーズを重視。一方、通常の企業は、利益や目標達成を重視する。 Airbnbはユーザー体験を重視しており、その文化や価値観はその中心にある。 これは「Belong Anywhere(どこにいても居場所がある)」という彼らのモットーからも見え隠れするが、これは彼らがユーザーがどこにいても自宅のように感じることを目指していることを示している。 このユーザー体験センタードな考え方は、freshtraxでもよく取り上げられるデザイナーの基礎の部分となるデザイン思考に基づいている。(参照:Airbnb) 例えば、Airbnbは、ユーザーが快適に滞在できるような独自のユーザーインターフェース(UI)や機能を開発している。 これには、利用者が写真を見て宿泊先を選択できるような直感的な検索エンジン、利用者同士が予約前にコミュニケーションを取り合えるメッセージング機能、予約後のサポートや現地でのアクティビティの提案などが含まれる。 また、Airbnbは宿泊先だけでなく、ユーザーが現地でのローカルな体験を楽しめるようなサービスも提供している。 例えば、ホストが地元のおすすめスポットやイベントを紹介する「エクスペリエンス」機能や、地元のガイドとしてユーザーにサービスを提供する「アドベンチャー」機能などがある。 デザインがビジネスに与える影響 〜収益週200だったのAirbnbが急成長した秘訣とは〜 2. デザイン重視の企業は、製品を改善するために、ユーザーテストやフィードバックを繰り返し行う。一方、通常の企業は、より単純な開発プロセスを追求する。 ユーザー体験の優先度が高いということは、必然的にお金をかける部分も一般企業とデザイン主導の企業で変わってくる。 Airbnbは、製品開発においてユーザーのフィードバックを積極的に取り入れている。 彼らは定期的にABテスティングを含むユーザーリサーチを行い、その結果を元にプラットフォームを継続的に改善している。例えば、ユーザーが予約を行う際の手順をシンプル化するなど、常にユーザーのニーズに応えるよう努めている。 デザイン最優先のAirbnbがユーザー獲得のために行う3つのマインドセットと4つのコアプロセス 3. デザイン重視の企業は、製品の外見や感覚にこだわり、ユーザーとの強い関係を築く。通常の企業は、機能性を重視し、外見や感情よりも機能性を重視する。 彼らのウェブサイト、プロダクト、マーケティングマテリアルをみると、彼らがこれらに力を入れているのは一目瞭然ではないだろうか。 さらに、Airbnbはメインである宿泊設備予約のサイト以外にも、マガジンを作成したり、オフィスのインテリアデザインにも注力している。 AIの発展から急速に加速していくDX。重要になるのはデザイン的思考? 数字からも見てとれるデザイン主導の会社の成功とそれらの会社から誕生し続けるイノベーションの数々。 このデジタル化が加速していく今、大事になってくるのは、利益やゴールに囚われないデザイン的思考をビジネスに取り入れることかもしれない。 関連記事: 今さら聞けないデザインがビジネスにこれほど重要な理由とは 【デザイン×経営】ビジネスにおけるデザインの価値を追求する7人の起業家 全ての人に必要なデザイン的マインドセット:デザイン会社の非デザイナーが体感していること 関連ポッドキャスト: 弊社では上記のような新規サービス、プロダクト立ち上げのためのグロール視点での市場リサーチからブランディング戦略、サービス、プロダクトのUI/UXデザイン、新規サービスのマーケティング戦略から施策実行までをサポートしています。 弊社のサービスについてより詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にお問合わせください。

ノーコードツール Framer にウェブサイトを移行-その理由とプロセスとは?

1.移行の背景 ウェブサイトの運用には思った以上に自由が制限されたりコストがかかることがある。 しかしノーコードツールの登場により、手間とコストを大幅に削減しながらウェブサイト運用をスムーズに行うことが可能になってきている。 当社への問い合わせでも、弊社にウェブ制作を依頼しつつも、運用は自社で自由に行いたいという要望や、運用コスト削減とスピードを求める声が増えている。 そんな中、弊社も、ノーコードツールを活用すれば、コスト削減はもちろん、エンジニアを介さずデザイナーがフレキシブルに直接ウェブサイトを更新したり、デザインから実装までの時間を短縮したりできる、ということから導入を決めた。 現在、当社のウェブサイトであるbtrax.comは現在は全てノーコードツールのFramerで制作・運用されてる。 今回はその導入による効果やプロセスの概要、そして直面した課題について共有していく。 2.Framerへの移行の効果 Framerへの移行を行なった結果、以下のようなメリットがあった。 ビジネス目線 実装から公開までの高速化 デザイナーやエンジニアに限らず、誰にでも更新が容易になった コミュニケーションコストが低減 運用コストの低下 デザイナー目線 実装が早くできるので、直接ウェブの動きでデザインの検証を行える インタラクションの細かい調整が手軽にできるようになった デザイン要素の管理をFramerのコンポーネント機能からできるようになった 画像の圧縮等はFramerがある程度やってくれるので、面倒な最適化作業がなくなった 何よりも大きい恩恵は、公開までのスピードが早くなったことで、改善や運用を高速に回せるようになり、かける人的コストが減り、他業務に割ける時間が増えたことである。 ウェブサイトは作るまでではなく、作った後にも常に何かしらの工数が取られるものなので、そこを抑えられたことはビジネス上重要である。 デザイナー目線では、Framerではコンポーネントや色、スタイル、カスタムコードをリストのUIで管理できるため、デザイン要素のマネジメントを簡単に整理できるようになった。 Framerではブレイクポイントにおけるフォントサイズを同じテキストスタイルでまとめられたり、ダークモードへの対応も柔軟にできるので要素が散漫になることを防げる。 3.どのようなプロセスで実行したか 今回の弊社のウェブの移行作業は以下の手順で行った。 1.  活用するノーコードツールの比較・検証 2.  デザインデータの整理 3.  デザインの移行 4.  SEO設定 5.  フォームなどの機能実装 6.  レビュー 7.  ドメイン移行・公開   1. 活用するノーコードツールの比較・検証 ウェブのノーコードツールを複数比較し、我々の状況に最も適したツールを選定した。 選定条件は下記のとおりである。 複数人で並行してデザインの編集が可能 コードを使わずに表現できるアニメーションの自由度が高いこと カスタムコードが実装できること 価格 参照できる文献の充実度 上記の判断軸から弊社ではFramerを活用することにした。 コンポーネント機能が充実している点や、複雑なアニメーションを比較的簡単な方法で実装できる点、弊社は英語を母国語とするメンバーも多いので英語文献が存在するということも重要であった。 また、デザイン編集ツールFigmaからデザインを移行するためのプラグイン(​​拡張機能)があり、それも決め手の1つとなった。 【Webflow Framer, STUDIO】実体験に基づく3つのノーコードツール比較と強み解説 プラグインの中には、Framerの標準機能では実装できない要素もあった。 しかし、Framerのコミュニティ内でそれを解決するコンポーネントが配布されているため機能的要件を満たすとわかり、採用を決断した。移行前のウェブサイトで実装していた比較的複雑を考えられるアニメーションも、事前にFramer上に実装してみて確認をとった。   2. デザインデータの整理 FigmaにはFigmaで制作したデザインをコピー&ペーストでFramerに移行できるプラグインがある。デザインデータの整理にあたってはこれを利用した。 従来のウェブサイトでエンジニアにコードで実現してもらっていた実装と、Figmaで実現した場合のデザインとの差分の整理も行った。 また、これまで日米で別々だったデザイン要素について、同一コンポーネントとして管理できるものは同一コンポーネントとして定義した。 Framerのレイヤー構造は、Figmaのレイヤー構造と同じ状態で実装されるために、まずは、Framerで調整しやすいレイヤー構成を定義し、それに合わせ、Figmaのデザインデータのレイヤー構成の調整を行った。   3. デザインの移行 Figmaのプラグイン「Figma design to HTML for Framer」を活用し、Figam上のデザインを一気にFramerに移行した。移した後はレスポンシブ対応させるために細かい値の調整とアニメーションの設定、コンポーネント設定を行い既存のサイトの再現ができているかを細かく確認した。 CMS対応が必要なものはCMSと接続させ、デザイナー以外でもマネジメントができる環境を整えた。 4. SEO設定 各ページに対し、キーワード、OGP画像の設定を行った。弊社ではSpread Sheetで各SEO要素をまとめているので、それを反映した。   5. フォームなどの機能実装 弊社のウェブサイトには、コンタクトフォームやダウンロードフォームといった外部ツールとの連携が必要な機能がある。これらをFramerに実装されたデザインと連携させていった。 弊社ではFramer上のフォームで情報を収集しそれをメール管理ソフトに繋げる、というオペレーションで自動化を行っている。 どのようなツールが何と繋がっているかはFigJamで表にして、誰にでも見やすい状態でまとめている。   6. レビュー 最後に、デザイン、アニメーション、フォームの機能とオペレーションが正常に働いているかを細かくチェックし、問題がないことを確認し、ドメインの移行と公開を行った。 Btraxでは上記の全ての作業でコードの記述を行わないように工夫し、エンジニアのリソースを極力使わないようした。目的は工数の削減やエンジニアを手を煩わせないことなので、多少調査に時間がかかってもそこの目的からずれることのないようにしている。   4.Framerの課題、振り返り 冒頭にも述べたが、今回のこの移行により、ウェブサイトの改善スピードが格段に上がった。課題の仮説に対し、ごく少数のメンバーでデザインのアップデートを短時間で行えるようになった。 デザイナーとしても、アニメーションを短時間でコミュニケーションコストをかけずに表現できるため、理想とするアニメーションを精度良く表現できるようになった。 一方で、課題となったのは、Framer自身がまだ比較的新しい若いサービスのため、参考情報の収集に時間はかかったことである。 また、フォームのデザインなど、機能的なデザイン要素については柔軟に対応できないものがあった。 日本でFramerを使う場合、まだツールとして新しいため参考文献が少なく、日本でのローカライズすらされていないため、学習コストとハードルを高く感じるだろう。 また、コードを書かないことを前提としたツールなので、現在のウェブの流行でもあるWebGLと3Dを活用したインタラクティブな実装は難しかったり(できないわけではない)、制限はある。 ビジネスとデザインのインパクトを天秤にかけた時に必ずしもノーコードが良いというわけではないので、デザイナーはそこを適宜見分けビジネス的に最善な手段を考えられると良いだろう。 弊社ではさらに今後このツールをベースに新たな取り組みを行う予定だ。 新たな気づきや挑戦はまた記事にしていこうと思う。 ニュースレターに登録するとメールで新しいFreshtrax記事のお知らせが来るため、興味ある方はぜひ登録をおすすめしたい。

【アメリカ進出を目指す企業は必読】今更聞けないウェブアクセシビリティとは?

これまで何度かFreshtraxでも取り上げてきた ウェブアクセシビリティ。 日本でも障害者差別解消法の改正施行に伴い、2024年6月から一般企業にも「合理的配慮」が義務化されることになり注目されています。 パンデミックを経て、行政手続きやビジネス、個人間のコミュニケーションまであらゆる領域でのデジタル化が進んだ結果、ウェブアクセシビリティの重要性はますます高まってきていると言えるでしょう。 アクセシビリティとは?その基本とデザインのポイント 欧米圏では、ウェブアクセシビリティは人権の一部であるという考えが広く普及し、法的にも取り締まりが強化されています。 アメリカへビジネス進出を検討する際には、 ウェブアクセシビリティへの配慮は今や避けては通れない道です。 今回の記事では、海外進出を検討している企業様の参考となるよう、ウェブアクセシビリティを理解する上でキーとなるWCAGと最新のウェブアクセシビリティチェックツールをご紹介します。 アメリカ進出の際に ウェブアクセシビリティが重要なのはなぜ? アメリカ進出において、ウェブアクセシビリティへの配慮がなぜ重要なのか? ビジネス的な観点から一言でいえば、アクセシビリティが確保できていないウェブサイトを運営することはコンプライアンス違反とみなされるリスクがあるためです。 人権意識の高いアメリカにおいては、1990年に成立した「障害を持つアメリカ人法(Americans with Disabilities Act of 1990 :以下、ADA)」が企業のウェブサイトへも適用されると解釈されています。 アクセシビリティへの配慮がないウェブサイトを運営することはコンプライアンス違反と見做されるリスクがあり、日本企業も訴訟の対象となりえます。 近年、ADA関連の訴訟は増加傾向にあるため、十分な注意が必要です。 アクセシビリティとは、アクセス(access)できる=製品やサービスなどが利用できること、また、利用できる状況の幅の広さを意味します。 ウェブアクセシビリティは、その名の通り、デジタル空間におけるウェブサイトの利用しやすさを表す概念です。 例えば、小さな文字ばかりが並び、視覚障害がある方や高齢者の方にとって読みづらいウェブサイトは、”アクセシビリティが低い”と形容されます。   アクセシビリティは、重度の障害を持った方など、限られた人のためのものなのでは?と思っている方もいるかも知れません。 しかし、老化による視力の低下や、年齢・世代による理解度のギャップなども含め、アクセシビリティは限定的というより、むしろ包括的な概念です。 デジタル庁が出しているウェブアクセシビリティ導入ガイドブックによれば、日本だけでもアクセシビリティの確保の恩恵を受ける人は428万人以上いると言われています。 どんな人でも、ある日思いがけず怪我をして片手が動かせなくなったり、歳を重ねるごとに耳が聞こえにくくなる可能性はあります。 アクセシビリティは他人事ではなく、いつかの自分や身近な人のためであるとも考えられます。 ウェブアクセシビリティについて理解する上で欠かせないWCAGとは何か? ウェブサイトのアクセシビリティの確保の重要性がわかったところで、アメリカ基準でコンプライアンスを遵守したウェブサイトを作るためには具体的にどうすれば良いのでしょうか? 実際のところADA自体には、ウェブサイトがADAに準拠しているかどうかを判断するための具体的なルールというのは定義されていません。 そこでウェブアクセシビティ確保のためのガイドラインとして普及しているのが”Web Content Accessibility Guidelines (通称 WCAG)”です。 このガイドラインは、ウェブに関わる技術の標準技術の開発と普及を行っている非営利団体であるワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(World Wide Web Consortium:W3C)によって作成されたもので、ADAに関わるウェブアクセシビリティに関する項目が網羅されています。 このガイドラインに従っている=ADAに準拠したウェブサイトであると言えます。 WCAGの概要 WCAGは、デスクトップ、ラップトップ、タブレット、及びモバイルデバイス上のウェブコンテンツのアクセシビリティを扱っています。 このガイドラインに従うことで、ウェブサイト上のコンテンツが、視覚や聴覚、運動制限など、様々な障害のある人たちにとって、アクセス可能な状態となります。 これらは、一般のユーザーにとっての使いやすさと矛盾するものではないので、アクセシビリティを向上させることで、利用者全員にとってよりよいウェブサイトにすることができます。 ガイドラインの内容は、時代やテクノロジーの変化に応じてアップデートされており、2024年3月現在、最新版は2023年10月に公開された WCAG 2.2 です。 原文は英語ですが、ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)の翻訳グループにより、日本語版のガイドラインも公開されています。 達成基準は3段階(A・AA・AAA)に分けられており、各レベルの定義は下記の通りです。  レベルA:ウェブアクセシビリティを確保するために最低限達成するべき状態 レベルAA:ウェブアクセシビリティが十分確保されている状態。日本でも公的機関に対して求められるレベル レベルAAA:非常に高いウェブアクセシビリティが確保できている状態 全体は大きく分けると、知覚可能・操作可能・理解可能・堅牢の4パートで構成されています。 詳細については今回の記事では割愛しますが、WCAGガイドライン(日本語版 2.2)は無料で公開されていますので、興味のある方はぜひご一読ください。 アクセシビリティチェックに使える!無料のブラウザ拡張機能3選 アクセシビリティやWCAGについての概要をご紹介したところで、ここからは実践編として、ウェブサイトのアクセシビリティをチェックする際に無料で使えるブラウザ拡張機能3選をご紹介します。 なお注意事項として、アクセシビリティチェックツールはどれもサイトのアクセシビリティを100%保証するものではありません。 特にコンプライアンス遵守の観点からはマニュアルのチェックは必須ですし、場合によっては専門のベンダーによる監査が必要な場合もありますのでご留意ください。 ① はじめの一歩におすすめ!無料で使えるプラグイン:Google Lighhouse これまで全くアクセシビリティのことを考えたことがなかった!という方へ、はじめの一歩としておすすめしたいのが、Googleが提供しているウェブサイト診断ツールのLighthouseです。日本語にも対応しています。 サイトのパフォーマンスやSEOスコア、そしてアクセシビリティについて、自動でレポートを作成してくれます。 LighthouseはWCAGに特化しているわけではないのですが、基本的な事項は網羅されているので、アクセシビリティの観点からどんなところが問題になるのかの肌感を掴むには、データが見やすく気軽に使えるのでおすすめです。 ご自身の会社のサイトだけでなく、「このサイト、なんだか使いにくいな?」と思ったサイトを診断してみると、意外な発見があるかもしれません。 ② デベロッパーツール内で利用できる:axe Dev Tools ウェブサイトの開発フェーズで活用できるプラグインとしておすすめなのがaxe Dev Toolsです。デベロッパーツール内で使用するためのプラグインです。 チェックしたいページをスキャンすると、重症度ごとに問題を洗い出し、修正するための情報を表示してくれます。Tutorialの動画もわかりやすく、初心者にもわかりやすいです。 ウェブサイトの開発が進めば進むほど、問題が発覚した際に修正必要な箇所が増えるため、開発のなるべく早い段階からこの様なチェックツールを導入できると、アクセシビリティ関連の修正に必要な工数や費用を削減することができます。 拡張機能の設定で日本語も利用できます。 ③ 自動チェック機能に加え、マニュアルチェックリストあり!:Accessibility Insights  同じく開発フェーズでおすすめなのがAccessibility Insightsです。こちらは英語版のみの提供となっています。 ChromeのプラグインとWindowsのデスクトップアプリで利用可能です。 簡易チェック(FastPass)機能では瞬時にサイト内のアクセシビリティ関連の問題と修正方法などをまとめてリスト化してくれます。 また簡易チェックではカバーしきれない範囲は、マニュアルチェックができるように項目が自動でリスト化されます。細かくテスト方法や判断基準が示されるため、初めてチェックをする人にもわかりやすくなっています。 問題が解消されなかった際にはメモが残せる機能もついており便利です。 本記事ではウェブアクセシビリティのアメリカ進出へおける重要性、及び、関連ツールについてご紹介しました。 Btraxは、2004年設立以来、アメリカ進出を目指す日本企業の皆様へ、様々なサポートを提供して参りました。アメリカ進出へ向け、ウェブサイトのリデザインから、リスキリングワークショップ研修まで幅広く対応可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

【UXリサーチの価値】法人向けサービスでUXリサーチを成功させるコツ3選

筆者はBtraxでUXリサーチャーを担当しているのですが、近年日本でもUXデザインというワードは認知されるようになったものの、UXリサーチについてはまだ十分に理解が広まっていないように感じています。 特に法人向け(BtoB)のサービスやプロダクトにおけるUXリサーチは、その重要性にもかかわらずしばしば見過ごされがちです。 UXリサーチって本当に必要なの?AIが発展した後もデザイナーやリサーチャーに依頼する価値はあるのか? という疑問が沸々と湧いてきそうな今だからこそ、今回はUXリサーチとは何かという基本から始め特にリサーチが軽視されがちな法人向けサービスのUXリサーチに焦点を当て、その特徴や重要性についてご紹介していきたいと思います。 二本立ての記事の後編となる法人向けサービスのためのUXリサーチのメリット、及び、実践する上でのコツをご紹介していきます。 前編の記事をまだ読んでいないという方は、ぜひそちらも合わせてチェックしてみてください。 【UXリサーチとは?】法人向けサービス領域で軽視されがちな3つの理由 法人向けサービスのためにUXリサーチを行うメリットとは? 前編の記事では、法人向けサービスにおけるUXリサーチは、ROIがわかりにくく、また、ビジネスソリューションに自信がある企業であればあるほどやらずともとりあえず前にはには進めるので、実行されずに前に進みがちであるという側面を取り上げました。 ではそんな法人向けサービスのためのUXリサーチを実施するメリットとは何か?主要な3つのポイントをまとめましたので、一緒に見ていきましょう! ①法人向けのサービスこそ、”ユーザーへの共感”が競合に負けないサービスを生む 前述の通り、法人向けサービスの顧客は、消費者向けのサービスのように満足度や感情的な側面、個人の価値観を基に商品を選ぶわけではありません。 このため、個人としての体験や考えを掘り下げていく定性調査の必要性を疑問視する人がいることは当然かと思います。 しかし、ステークホルダーが複数存在し、購入時に綿密な検討が必要とされるような複雑性を抱えたサービスにこそ、定性調査は効果的です。 例えば、実際にサービスを使用するユーザーにとって重要なことが、意思決定を行う経営層には重要でないこともあります。 決裁権を持つマネジメント層に好まれるサービスを提供し、一時的には導入されたとしても、現場で実際にサービスを使うユーザーが不満を抱えていた場合、彼らが後に管理職に就いた際により現場に求められるソリューションへ乗り換えられてしまうようなケースは少なくありません。 デザイン思考における「共感」とは? – デザイン思考を学ぶ Part 2 法人向けのUXリサーチでは、多様なステークホルダーと意思決定プロセスを整理・可視化し、多角的にサービスの妥当性やニーズを探っていきます。 また、導入時だけでなく、その後の継続利用に必要な要素を特定し、長期的な利用を見越したサービス改善のためのインサイトを抽出します。 サービスの導入から実際の日々の利用まで、様々な人が関わる法人向けサービスだからこそ関わる人々の生の声に耳を傾け、見過ごされがちな細かいニーズや不満から改善案を練ることは有効であると思います。 ②市場投入時のリスクを抑え、マーケットフィットを最大化する UXリサーチはサービス開発の様々な段階で実施が可能ですが、特に市場投入前の導入は効果的です。 開発初期段階でユーザーからの質の高いフィードバックを得ることは、市場投入後に起こりうる期待値やニーズのズレ、マーケットの特殊性を見過ごすリスクを低減します。 これは、新しいサービスだけでなく、既存のプロダクトを新たなマーケットに投入する場合にも有効です。 事前リサーチを行わずに過去の成功体験だけを頼りに参入すると、予期せぬ障害が発生し、競合に対して不利な状況になるリスクがあります。 ターゲットユーザーの深い理解と、マーケットおよび業界の特性を網羅的・構造的に把握することで、サービスのマーケットフィットを最大化できます。 北米の事例に見るファンマーケティング① ユーザーリサーチに学ぶ今後企業が取り組むべき「ファンづくり」の重要性 ③顧客満足度の向上は、インターナルのコスト削減にもつながる ユーザーのニーズを正確に理解し、ビジネスゴールと照らし合わせて優先順位を明確化することは、開発プロセスの効率化・最適化に繋がります。 また、見落とされがちですが、ユーザーの声をプロダクトに反映させることは、クレームや問い合わせの削減に大きく貢献します。 特に、サービスがスケールしカスタマサポートの部署が設けられると、当然ですが顧客対応には人件費が発生します。 ソリューションがビジネスニーズに合っていても、ユーザーがサービスの使い方や細かな機能を理解できなければ、それは直接的に問い合わせの増加に繋がります。そしてそれは内部コストとなります。 法人向けサービスは、内容や用途が複雑なので導入のための教育コストが大きく、ユーザーの期待値や緊急性が高いために利用開始後のクレームが発生しやすいです。 設計段階からこれらの要素を考慮することは、顧客満足度の向上とクレーム・問い合わせ対応の工数削減につながります。 「欲しい」の言葉を信じるな!行動でニーズを検証するプロトタイピング手法 難易度高めな法人向けサービスのUXリサーチを成功させるコツ3選 さて、ここまで法人向けサービスのUXリサーチが後回しにされがちな理由と、実施した場合のメリットについてご紹介してきました。 ここまで読んでいただいた方の中には、「やっぱりやったほうがいいのはわかったけれど、実施のハードルが高いのもやっぱり事実なんだな」とモヤっとしている方もいらっしゃるかもしれません。 一般消費者向けのサービスに比べ、複雑で難易度の高い法人向けサービスのためのリサーチ。成功させるためのコツはいくつかありますが、特に重要なことは以下の3点であると筆者は考えます。 ①”巻き込み力”と情報・データ収集 法人向けのサービスは、何度も言及しているように、サービスの構成要素が多く複雑で、ステークホルダーの数も多いです。 さらに、ソリューション自体がニッチな領域に特化している場合が多く、リサーチには幅広い知識と深い洞察の両方が必要です。 このような状況下で重要となるのは「人」です。 プロセスの仕組みや関連する専門知識などの情報を得るためには、インターネットや書籍よりも、可能な限りその業界に精通している人(各部署の担当者やベンダーを含む)に直接聞くことがより効果的です。 これは、ニッチな業界の情報は一般にインターネットや書籍で公開されていることが少ないためです。 例えば、ソリューションが化学分野の研究者向けのサービスであっても、その販売経路を理解するためには代理店の知識が必要になるなど、様々な角度からの情報収集が求められます。 ターゲットユーザーからのフィードバックや意見を聞くだけでなく、サービスに関わるできるだけ多くの「人」を巻き込み、直接情報を収集することが成功の鍵となります。 ②”単純化しすぎない”情報整理 法人向けサービスのリサーチでは、その複雑性ゆえに、情報の整理が肝になります。 そこで注意が必要なことは主に2つ。 たくさん集めた情報からインサイトを抽出する際に、情報を単純化しすぎないこと。 無闇に情報を組み合わせて”正解っぽく見える”結論をこじつけないこと。 ターゲットが誰であれ、現実の市場を相手に、生身の人間の声を集める上で避けられないこと、それは”矛盾”です。 ”コストが一番大事だ”と言っている割に目の前に最安値のオプションを提示しても買ってもらえず、顧客は一見割高に見えるサービスを使い続けている。 これは一般消費者向けのサービスだけではなく、法人向けのサービスでも起こります。 また、法人向けのサービスでは、現場ではAが大事だと言っていて、マネジメント層はBが大事だと思っていて、法務部の人はCは外せないと言っている。 全員同じ会社にいて同じゴールを目指しているはずなのに、言っていることがまるで違うというような事態が起こります。 このような矛盾に対峙したときに重要なのは、矛盾を矛盾しているまま”まるっと”受け入れることです。 「Bと言っている人もいるけど実際にはCだよね」と勝手に結論づけずに、各ステークフォルダーがある程度納得して進めるための公約数はどこかにないのか、、?全てはトレードオフの関係にあるのか? といった問いからサービスの改善点を探っていくところにUXリサーチの価値があると思います。 ボトルネックだと思っていた問題が実は突破口を見つけるための鍵を握っているなんてこともあります。 先入観を捨てて、できるだけ生のデータを集め、複雑なものを複雑なものとして受け入れる。そこからのインサイト抽出が、真の顧客理解とマーケットフィットの最大化に繋がります。 ③デジタルツールの活用と再現性の高いシステム作り 法人向けサービスのユーザーリサーチが、一般消費者向けのサービスに比べて特に難しいポイントはリクルーティングです。 業界がニッチであればあるほど、ターゲットのイメージに近い人々にインタビューやサーベイへ参加してもらうハードルは上がります。 また前述の通り、集めるデータも多様で、データの下処理や分析にも時間がかかるため、できる限り全体のプロセスをシステム化・効率化することが重要です。 例えば、 リクルーティング方法の持ち札を増やし、Aがダメな場合はBとすぐに動けるようノウハウを体系化する。(法人向けリクルーティングに特化したサービスも存在するので、自社のサービスと相性の良いサイトを見つけておくと安心です) リクルーティングの際の募集文章を目的別にテンプレート化し、ストックしておく。 インタビューなどから得た音声やテキストのデータを、分析用に加工するためのデジタルツールの選定及びフローを確立しておく。 パンデミックによりオンラインでインタビューを実施する会社が増えた結果、リサーチを効率化するためのサイトやツールも増えてきています。 それらをうまく組み合わせ、またノウハウを体系的に蓄積することで、より時間をかけるべきタスクへ集中することができます。 本記事では、UXリサーチの役割と、法人向けのサービスにおけるUXリサーチの重要性及び成功のコツについてご紹介しました。

【前編】法人向けサービスにこそ重要!見逃されがちなUXリサーチの価値と成功のためのコツ

UX Collectiveが毎年発表するUXトレンド予測で、2024年は「後期UX」という新しい概念が取り上げられていました。この用語は「後期資本主義」にちなんでおり、記事ではAIの進化がUX業界にもたらしうる劇的な変化がダークなイラストで表現されています。 AIの普及により、素人でも簡易なウェブサイトであればデザイナーなしで簡単に、且つ安価に作成ができてしまう時代が訪れ、これまでウェブデザインを生業としてきた人々にとって、常識や既存の枠組みが脅かされている昨今。 しかし、不安を煽るような予測がある一方で、UXリサーチとUXストラテジーの重要性が一層明確になってきたことについてもこちらの記事では取り上げられています。 UXの領域において、AIに全てを任せて自動化させるのではなく、戦略的なデザイン思考、目的に基づくデザイン決定、そして作品に対する独自の視点の価値が、今後かつてないほどに重視されることが強調されています。 UXリサーチに対しての理解が足りない 筆者はBtraxでUXリサーチャーを担当しているのですが、近年日本でもUXデザインというワードは認知されるようになったものの、UXリサーチについてはまだ十分に理解が広まっていないように感じています。 特に法人向け(BtoB)のサービスやプロダクトにおけるUXリサーチは、その重要性にもかかわらずしばしば見過ごされがちです。 『UXリサーチって本当に必要なの?AIが発展した後もデザイナーやリサーチャーに依頼する価値はあるの?』という疑問が沸々と湧いてきそうな今だからこそ、今回はUXリサーチとは何かという基本から始め、特にリサーチが軽視されがちな法人向けサービスのUXリサーチに焦点を当て、その特徴や重要性についてご紹介していきたいと思います。 二本立ての記事の前編となる本記事ではUXリサーチとは何か?そして本人向けのサービスでUXリサーチがスキップされがちな理由について見ていきたいと思います。 後編(3/12公開予定)では、法人向けサービスのためのUXリサーチのメリット、及び、実践する上でのコツをご紹介していきますので、そちらもぜひ合わせてご一読ください。 サクッとおさらい!そもそもUXリサーチとは何か? UX(=ユーザーエクスペリエンス)リサーチとは、サービスやプロダクトの要件と、ターゲットとなるユーザーを体系的に研究し、文脈に沿った現実的な洞察をデザインへ落とし込むための手法です。 UXリサーチの特徴は、「ユーザーが求めているものを推測や作り手の思惑ではなく、ユーザーの生の声・実際の行動をデータとして用いて特定していく点」にあります。 定性調査と定量調査の手法を組み合わせ、目的に合致した手法を使ってデータ収集及び分析をしていきます。集めたデータからインサイトを抽出し、デザインへ反映していくことで、ユーザーを中心においたサービス・プロダクトが生まれます。 UXリサーチはUXデザインのプロセスの一部であり、ユーザーのニーズにあったサービスを設計する上で不可欠な要素です。 なお、UXリサーチを担当する役職ですが、専任のリサーチャーがいる場合はリサーチャーが担当しますが”UXデザイナー”、”プロダクトデザイナー”などの肩書きの人がUXデザインのプロセスの一部として担当することも多いです。 専任のリサーチャーがいる場合も、UX設計においてデザインチームとの連携は必須です。例えば、Btraxでは組織図上デザインチームという枠の中に、リサーチチームが置かれており、リサーチャーも基本的なデザインの原則やノウハウを理解しています。 UXリサーチャーが見る、スマートシティ先駆者バルセロナのゴミ捨て事情 UXリサーチが法人サービスの領域で軽視されがちなのはなぜなのか? 新規サービスを生み出す過程で、「本来ならばリサーチもできたらいいんだろうな」と思いつつも、より優先すべき事項が多いために、リサーチをすっ飛ばし、ありものの情報で初期デザインを組みサービスローンチ。 しばらく経った今、ある程度、顧客もついてきて組織も拡大しつつあるが、最近伸び悩みを感じている…というような経営者層の方はいらっしゃいませんか? UXリサーチャーとして様々なプロジェクトに関わる中で、『一般消費者向けのサービスよりも、法人向けのサービスの方が、初期段階でのリサーチへの時間的・経済的投資に対してオーナーが抵抗を感じている傾向が強い』と感じます。 これはユーザーの軽視からきているわけではなく、大きく分けると次の3パターンのいずれかが理由であることが多いです。 ①法人向けサービスの複雑性とリサーチ実施の敷居の高さ 法人向けのサービスは複雑です。 購入の意思決定だけを切り取って考えても、消費者向けのサービスであれば個人がサイトを見て欲しい!と思えば、多くの場合そこで購入へ至ります。 しかし、法人の場合はそもそも実際にサービスを利用するユーザーと、購入品を選定する人、決済をする人がバラバラだったりします。 そんな複雑なサービスを相手に、目標設定からリサーチのプランニング、実施、分析に着手するためには、多くの時間やリソースが必要になります。 そのハードルの高さゆえに、「もう少し余裕ができたら」と先延ばしにし続け早数年が経っている。というようなケースは少なくないと思います。 お客様第一主義とユーザー中心デザインの違いとは ②短期的なROIの不透明性 通常、UXリサーチは、リサーチの実施・サービスへの落とし込み・検証など、一連のプロセスにおいて時間とリソース、コストを要します。 特に、ステークフォルダーが多く、複雑性も高い法人向けのサービスでは、開発サイクルが長期にわたることが多く、リサーチの結果が目に見える形で出てくるまでにかなりの時間がかかります。 投資効果の不透明さゆえに、短期的なROIを重視して見送られるケースが非常に多いです。「自分はリサーチが大事だと思っているけど、他の担当者たちが首を縦に振ってくれない、、」というお悩みを抱えている方もいるのでは? 日米の声を聞くUXリサーチャーが気がついた、UXリサーチにおける日米の違い ③自社のソリューションへの過信 法人向けのサービスに携わる人は、「法人顧客は心理的な満足ではなくビジネスソリューションを求めている」という考えに基づき、業界特有の要求に合ったサービスを提供していれば、ユーザーリサーチを行わなくても自社の製品が売れると信じています。 この考えがベースとなって、前述の二つの点が強化され、リサーチが永遠に行われないというのが王道のパターンのように思います。実際、多少見かけのインターフェースの見栄えが悪くとも、使いにくさがあったとしても、ビジネス上必要なツールであるが故に使われ続けているサービスはあります。 とはいえ、変化の激しい現代社会では、予期せぬ競合の出現もありえます。国境を超えて様々なツールを試せる環境下で目の肥えたユーザーを相手に、同じ提案を続けているだけで期待に応え続けることは、なかなか難しいのも事実ではないかと思います。 また、デジタルネイティブ世代が労働人口における比率が増している現在、法人向けの領域でも一般消費者向けのサービスに近い消費行動が増える傾向にあるとも言われています。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ

生成AIがこれからのデザインに与える4つの大きな影響

生成AIが世の中で注目されてから約一年ほどが経過した。 去年の今頃はChatGPTの威力に驚き、画像生成の面白さに狂喜乱舞した人たちが、頻繁にそのノウハウや出力した “作品” を自慢げにSNSポストしていた。 そして現在はどうだろう? 恐らく少し落ち着いてきたかな?と感じる。それとも皆少し食傷気味になってるのか、生成AIによる画像でドヤできる感じではなくなってきた。 その一方で、確実に時代は進んでおり、各種業務でのAI活用は着実に進んでいる。 そんな中でも今回はデザイン領域にフォーカスを当てた、生成AIの活用方法、よりカッコよく言うと「生成AIがデザイン業界に与えるインパクト」をまとめてみた。 大きな変化として考えられるのは下記の4つ。 ワークショップでの活用 サービスデザインのプロセス変化 動画生成に活用 ブランドエンジンを生成・活用 1. ワークショップでの活用 恐らくみなさんの中でもデザインワークショップに参加された方もいると思う。 新しいアイディアを出したり、既存の企画の可視化、およびプロトタイプを利用したユーザーテストなど、現在のデザインの現場では、ワークショップ活用が一般的になってきている。 我々btraxでも、新規商品の企画出しのためのデザインスプリントや、既存サービスの海外展開におけるフォーカスグループなどなど、多様な場面でワークショップ活用をしている。 その中でも、アイディアの可視化、コミュニケーションの補助、そしてブランドイメージ構築のための方向性を決めるための手法として、様々なビジュアリゼーションを行う。 しかし、慣れていない参加者の場合、それが難しい。もちろんbtraxのデザイナーが一緒になって可視化を行うのであるが、出力できる量には限りがある。 そこで生成AIの出番となる。 例えば、下記の例のように、考えたサービスアイディアの粒度を上げるために、ストーリーボードを生成AIを活用してアウトプットする。これはAirbnbの例であるが、よりそのサービスイメージを得やすい結果となっている。 2. サービスデザインのプロセス変化 AIの威力はサービスデザインのプロセスにも大きな影響を与え始めている。 というのも、これから作り出される商品やサービスは、よりユーザーが使いやすいものにするため、その多くにAIが実装される。 例えば、これまではアプリ経由で餃子のデリバリーを頼む場合、Uber Eatsや出前館のアプリを開き、その中で最もお手頃な食べ物を選んで、オーダーをしていた。 しかし、近い将来はAIソフトや、AIエージェント、そしてスマホ自体にAIが実装された場合、ユーザーは「一番早く、安く餃子が届くようにオーダーして」とだけ言えば、残りのプロセスはAIがやってくれる。 ということは、全体のユーザー体験 (UX) プロセスが大幅に変わる。そして、UIの量も格段に少なくなっていく。 サービスデザイナーとしてみれば、それを考慮したサービス設計が必要になってくるのだ。 実はこの「AIエージェント」というコンセプトは、実際のハードウェアとしても発表されている。 Rabbitのr1や、SoftBankが投資するHumane のAI Pinなどである。 今後これらのプロダクトが普及すればするほど、ヒトとテクノロジーの関係性がどんどん変化し、そこに必要とされるUXデザインやサービスデザインの概念が大幅に変化していくだろう。 3. 動画生成に活用 恐らく生成AIで、現在最も注目を集めているのが動画作成での利用だろう。 これまでもStable DiffusionやMidjourneyなどの画像生成系AIツール経由で画像を生成し。それを動画に変化する方法で “ハック” しながら動画作成を行ってるケースは見られた。 しかし、先日のOpenAIによる動画生成サービス Soraの発表で、この領域への注目が一気に高まった。そのリアルな表現で、動画作成に対するAIの威力がどんどん高まり、次の次元に進んだ感があるからだ。 Soraに加えて注目したいのがPikaだ。 サンフランシスコで定期的に開催されているAIイベント「AI for Designers」で会ったPikaのファウンダーの一人であるMatanによると、Soraが映画クオリティーの動画作成を目指しているのに対し、Pikaはよりカジュアルな動画生成にターゲットを絞っている。 特にアニメ調のショートムービーや、CM, ミュージックビデオの生成などはPikaが得意とするところ。 例えばこの動画を見てほしい。元々約1,200万円ほどの予算で撮影・編集されたサボンのCMを、元の動画を一歳利用せず、プロンプトと商品画像だけを利用して、AIによって1日で再現したもの。 恐らくこのくらいの長さであれば、ほぼ全てAIで生成し、編集してしまえば、かなりコスパの高い方法でアウトプットが得られるだろう。 4. ブランドエンジンを生成・活用 もう一つ生成AIが活躍しそうなフィールドがブランディングである。 これまでの一般的なブランディングは、下記の様に、調査からアウトプットまで、全て「人力」で行う、かなり属人的で地道なプロセスだった。 そこで、より効率を上げ、ブランドの統一性を保持するた目的で、今後は生成AIの活用に注目したい。 ChatGPTsなどの生成AIツールでは、個々のユーザーによってチューニングが可能。AIが出力する内容を、それぞれの好みに合わせて「味付け」が出来るのだ。 ブランドのトーンやバリュー、パーソナリティーなどをAIに教え込むことで、それぞれのブランドに合わせた「AIブランドエンジン」が生み出される。 一度AIブランドエンジンをセットアップしてしまえば「うちのブランドっぽい広告生成して」とか「今度の商品のリリース文章をうちのブランドのトーンで書いて」などの指示をするだけで、AIが生成してくれるという仕組み。 これはではかなり手間のかかる「ブランディング」領域でも生成AIを導入することで、効率化と精度アップが見込まれる。 この続きは3月7日のイベントにて さてこんな感じで、今後デザインの業界にどんどん活用されるであろう生成AIだが、より詳しい話や、ここでは書けない内容などは、3月7日に開催されるイベント「生成AIが企業活動に与えるインパクト」にて、お話しします。 みなさんのご参加をお待ちしております!

なんちゃってUXデザイナー見破る7つのポイント

UXデザイナーの重要性が高まるにつれて、多くのデザイナーが自分のことを “UXデザイナー” と呼ぶようになって来ている。 その一方で、その仕事内容があまりにもぼんやりしすぎてて、面接の際にどの人が本当にUXデザインスキルがあるのかがわかりにくい。という疑問を持つことがある。 そもそもUXデザイナーは本当にデザイナーなのか?という説もあるくらいだ。 UXデザイナーは本当にデザイナー?UXデザインの役割の拡大 ポートフォリオに騙されるな! 実際のところ、ポートフォリオに掲載されている作品の質だけで判断することは難しいし、そもそもほとんどのプロジェクトがチームで行うため、その人がどこまで関わっているのかを見極めるのも容易ではない。 また、freshtraxを日々読んでいれば、デザイナーとしての知識はかなり蓄積するが、残念ながら、それだけで優れたUXデザイナーになれるわけでもない。 【給与差1.4倍】グラフィックデザイナーからUXデザイナーになる方法 UXデザイナーの標準スキルが明確ではない そもそもUXデザイナーという肩書き自体が比較的新しいものであるため、その仕事内容とスキルセットが明確になっていないのも一つの原因だろう。 元々Webデザイナーをやっていた人が、ワイヤーフレームとフローチャートを作成した経験を元に「UXデザインできます!」と宣言しているのかもしれない。 CXデザインとは?UXデザインとの違いとそれぞれの役割 偽物デザイナーをあぶり出す では逆に “なんちゃって” のデザイナーを見極めることができれば、消去法で自ずと本物をあぶり出すことができる。これまで何十人も面接してきた経験を元に、偽物のUXデザイナーの見分け方を公開する。 志望者の多いUXデザイナー職を採用する際に、下記の5つのポイントに関する質問を行い、その答えの内容でその人が本物のUXデザイナーを見分けることができるだろう。 1. よく聞くと単なるUIデザイナー これが一番あるあるなパターン。UXデザイナーポジションに対しての応募者のかなりの割合が、実はUIデザイナーのスキルしか持ち合わせていない。 これまでの実績を見てみても、明らかにUIのデザインやビジュアルデザインの作り込みはしているが、ユーザーリサーチや体験の設計などのUXデザインに関するプロセスを実践した経験はない。 もしくは、UIデザインとUXデザインを混合してしまっているケースすらある。 まずは、UIデザイナーとUXデザイナーの役割の違いを理解するところから始めた方が良いだろう。 UXデザイナーとは?仕事内容、求められるスキル、活躍するデザイナーとは 2. UXデザインの経験がワイヤーフレーム作成のみ 元々WebデザインやアプリUIデザインを行っていたデザイナーが、手っ取り早くUXデザインができるふりをする方法がワイヤーフレームの実績をポートフォリオに掲載する事。なんとなくもっともらしく見える。 しかし、そもそもワイヤーフレームの役割や、作成に至るまでのプロセスが理解できていないと、UXデザイナーとは言えない。 ワイヤーフレーム自体はあくまで全体像を把握したり、ユーザーテストで利用し、データを収集するための際の手段でしかなく、目的にするべきではない。 そもそも、マルチデバイスが当たり前の現代においては、ワイヤーフレームの作成はコンテンツ作成と同時に進める必要があり、むしろ全体を通じたメッセージングの方が重要なので、ワイヤーフレーム自体の価値がかなり低くなっているのも事実。 UXデザイナーの仕事は、伝えるべきことに対して最も効果的な体験を構成することである、ワイヤーフレームの作成自体が目的になるべきではない。 UXデザインプロセスの基本的な6ステップ 3. UXデザインの基本的な構成要素が理解できていない これもUXデザインにおける基本的な内容だが、その構成要素が理解できていないパターン。 真のUXデザイナーであれば、タスクフローや情報アーキテクチャ、インタラクションデザインといった個々の要素はもちろんのこと、それらを体系的に統合することで、誰しもが直感的に利用できるシームレスなユーザー体験をデザインできるはず。 しかし、名ばかりのUXデザイナーにこの基本的な洞察が欠けているケースがしばしばある。単に綺麗な画面を作ることに注力し、ユーザーが目的を達成するまでの一連の流れを明確にデザインできていない。 本物のUXデザイナーを見極めるには、その人物がユーザー体験全体の森を見渡す目を持っているかどうかを確認することが不可欠になる。 【わかりやすく解説】UXデザインの基本と主要概念 4. UXデザインのプロセスを知らない UXデザインのプロセスには、調査、アイデア創出、プロトタイピング、テストといった一連の段階が存在する。 しかし、中にはUXデザイナーを名乗りながら、こうした基本的なプロセスすら理解していない人がいる。 彼らは単に画面のモックアップを作成することに注力し、その先のプロセスを考えようとしない。ユーザー調査なしに勝手な仮定のもとで設計を始めたり、納得のいくまでプロトタイプを繰り返し改善したりすることなく、最初のアイデアをそのまま提供したがる傾向がある。 本物のUXデザイナーは、この定石とでもいうべき一連のプロセスを熟知しており、それを適切に運用して最善の結果を導き出せる能力を備えているはず。プロセスを省略する姿勢は、プロのUXデザイナーの資質に欠けると言わざるを得ないだろう。 UXデザインプロセスの基本的な6ステップ 5. UXとユーザビリティーを混合している UXとユーザビリティは、ともにユーザー中心の設計を目指すものの、似て非なる概念である。 ユーザビリティは、主にタスクの遂行効率や使いやすさ、エラー率の低減など、システムの機能面での改善を扱いう。 一方UXは、ユーザーの感情面や価値観に訴えかける体験のデザインを重視する。楽しさ、魅力、満足感といった主観的な側面に注力するのが特徴。 したがって、この2つを混同している人は、UXデザインの本質を見誤っていると言えるだろう。システムの効率化にばかり気を取られ、感性面を置き去りにしがち。結果的に、使いやすいけど、なんかワクワクしないプロダクトになってしまう。 本物のUXデザイナーであれば、ユーザビリティとUXの違いを明確に理解し、両面の改善をバランス良く図ることができるはず。この視点が欠如している場合は、なんちゃってUXデザイナーじゃないかと疑って良いだろう。 6. ビジネスゴールとユーザーメリットのバランス取りが苦手 UXデザインにおいては、ビジネスの目的とユーザーのメリットを両立させることが大切になる。 たとえば、ECサイトの場合、単に商品を売りたいというビジネスゴールと、購入がしやすくなることをユーザーは求めており、その二つを上手に達成するのがUXデザイナーの役割になる。 本来のUXデザイナーであれば、こうしたニーズのバランスを取りながら、win-winなソリューションを生み出す洞察力があるはず。 しかし、中にはビジネス目線のみで設計を進めがちな人もいる。ユーザー体験をある程度犠牲にしてでもコンバージョン率や売上を最大化しようとしがち。特に営業ノルマを重視しすぎるが故にこのパターンにハマるケースがある。 逆に、ユーザー目線に傾き過ぎ、ビジネス上の制約を無視した純粋に使いやすいシステムを提案するデザイナーもいる。この場合は、デザイナーのエゴが強すぎて、企業の利益を置き去りにしてしまうのだ。 いずれにせよ、このバランス感覚が欠如しているのは、本物のUXデザイナーとは言えないだろう。 「良いデザイン」とは?GoogleのUX Lead Designerから学んだ5つのこと 7. ユーザーテストとフォーカスグループの違いがわからない ユーザーテストとフォーカスグループは、ともにUXデザインにおける重要な調査手法だが、その目的と方法は異なる。 ユーザーテストは、プロトタイプや実際の製品を個人に操作してもらい、タスク遂行できるかどうかを観察するテスト。使いにくさの発見が主眼となる。 一方、フォーカスグループは、数人のユーザーに意見を求めるグループディスカッション形式で、新機能への要望や概念に対する感想を聞き出すのが目的となる。 本物のUXデザイナーであれば、この2つの手法の違いと使い分けを理解しているはず。言い換えると、目的に応じて適切な調査手法を選択できる力量が求められる。 この基本的知識がない場合は、なんちゃってUXデザイナーである可能性が高い。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ まとめ: 優れたUXデザイナーを見分けるのは難しい デジタル化が進んだ2010年代以降、UXデザイナーはトレンドの職種となり、自称UXデザイナーもも増えている。しかし実際には、本物のUXデザイン能力を備えている人物はまだ少数派なのが現状である。 今回の内容を参考に、優れたUXデザイナーを見極めるためのポイントを抑えたい。ただし、完璧なUXデザイナーは存在しないことも理解しておく必要はある。 大切なのは自身の専門性を磨き続け、ユーザー体験の向上に真摯に取り組む姿勢を持ち合わせているかどうか。 優秀なUXデザイナーの育成には、実践を積み重ねることが不可欠。ユーザーとビジネスの狭間で失敗を恐れず挑戦し続けることが、この分野で成功への近道と言えるだろう。 こいつできるな!と思わせるUXデザイナー 7つのソフトスキル

全ての人に必要なデザイン的マインドセット:デザイン会社の非デザイナーが体感していること

デザインの役割のひとつに、課題解決がある。 実際、我々btraxとしてもデザインを通じて企業の課題を解決することを目指して、これまで20年にわたってサービスを提供してきた。 しかし筆者はそれ以上に、デザインはマインドセットそのものであると思う。 これまでFreshtraxでも度々取り上げてきたデザイン思考やデザイン経営といった言葉を代表に、デザインがデザイナーだけのものから、今やデザインは多くの人にひらかれたものとしての認知が広がりつつある。 全てのビジネスパーソンにデザインのマインドを 筆者はbtraxに所属し、その中のマーケティングチームのメンバーとして働いてきた。そして「非デザイナー」の立場でデザインの現場に携わってきて確実にわかることは一つ。 ” たとえ非デザイナーであっても、誰しもがデザインに触れるべきなんだ ” ということ。 これは、冒頭にも触れたデザイン経営、デザイン思考といったビジネス的なトレンドの上澄みを掬った話ではなく、実体験として感じたからこそ言えることである。 非デザイナーとしてデザインに多いに助けられることがあるとすれば、それは特にマインドの部分だろう。実際に手を動かすデザインワークこそしないかも知れないが、デザイナーのマインドを持つといいことずくめである。 この記事では、デザイン会社でマーケターをすることで得られたデザイン的なマインドセットと、実際に仕事の場においてデザイナーと協業する上で、気をつけてきたことをご紹介したい。 1. Yes and … デザイン的なマインドセットの形容として真っ先に出てくるのがこの言葉である。 これは、アイディアや提案に対し、まずは受け止め(Yes)、その上で「いいね、じゃあ◯◯しよう」とさらにアイディアを付け足して(And) で返答するマインドセットのこと。さらに別のアイディアを提案したり、新たな情報を付け足すことで、そのアイディアの広がりを生み出すことができる。 このマインドセットのメリットは、心理的安全性が高められ、コミュニケーションが円滑になるということだと実感している。誰しも真っ向から否定されてよい気分にはならないだろう。 発言をしても即座に否定されることを恐れてそもそも発言が少ない状況になると、議論自体が活性化せず、元も子もない状態になる。 かくいう筆者も、実はある時までは、たとえばデザインコンセプトの立案を依頼したデザイナーに対し、フィードバックをするなんて恐れ多い… などと、皮肉のような情けない尻込みをしている時期があった。「デザイナーに対して、デザインのフィードバックを、非デザイナーである自分がするのか?」という具合に。 しかし、「こういうアイディアもあるのでは?」とYes and 的なフィードバックをしたことで、そこからさらに様々な方向性を検討することができ、結果的にチームとしてよいものを作り上げることができた。 ちなみにPixer社では、Plussing (Plus + ing)というフィードバックの手法を取り入れている。Plussingとは、新たなアイディアを思いついた時、否定するのではなく、そのアイディアにさらにアイディアを足すことで、よりよくしようと努めるまさにYes andに基づく方法だ。 あっと驚くクリエイティブな世界を見せてくれる裏側にはこうしたオープンマインドでYes Andな姿勢があるのかもしれない。 なぜ優秀なデザイナーでも酷いデザインを生み出してしまうのか? 2. Start at the end 直訳すると「終わりから始めろ。」つまり「逆算思考を持って推進せよ」ということだ。筆者自身、入社後にデザイナーの同僚から教わって以来大切にしてきた言葉だ。 これはむしろ、ビジネスで一般的な考え方だろう。目標を先に決め、それに向かって戦略を組み立てていく。この過程で、終着点を見据えることで、途中の課題や妨げになる要素を予測し、それを乗り越えるための戦略を練ることができる。 しかし、デザインにおいても、結果や最終的な目的を先に想像し、それから逆算してプロセスを始めることが効果的だ。そもそもユーザーがどんな体験を求めるのかを探ることから始めるケースも非常に多いが、たとえば製品開発においては、まず最終的にユーザーが求める体験を考え、それを実現するためのデザインや機能を構築していく。 また、非デザイナーとしては、このStart at the endの考え方を持つと、たとえばクライアントプロジェクトにおける最終的な成果物は何になるのか。資料をまとめる上で、ドキュメントであるべきか、スライドの資料であるべきか…など、物事の「枠」を考える癖をつけることができる。 この癖をつけることで、根本的な勘違いや手戻りによるロスタイムを減らすことができ、効率的なプロジェクト推進につながると思っている。 3. Done is better than perfect デザインというよりはむしろシリコンバレー的なマインドにも重なる部分が大きいこちらは、Meta(旧Facebook)の創業者でありCEOであるマーク・ザッカーバーグの名言。意味は「完璧を目指すより、まず実行することに価値がある」。 こちらも、「デザイン会社である」に並ぶくらい重要な「サンフランシスコ・シリコンバレーに拠点がある」btraxで仕事をしていて日々その重要性を感じる言葉である。そしてこれもまた、スピード感が明暗を分けるさまざまなビジネスシーンにおいて言えることだと思う。 この考えを念頭に置くことで、時間とリソースの効率的な活用を促し、成果を生み出すための動き方に意識的になれる。特にデザインタスクでは、何度も修正や改善を重ねることがあるが、常に完璧を求めてしまうと、進捗が遅れたり、アイディアそのものの実現が難しくなることがある。 また、筆者のマーケティングのフィールドで言えば、早期の段階で実行に移し、リアルなデータやフィードバックを元に進化させていくことが重要になる。変化が速い現代において、柔軟性を持ってアクションを起こしていくことが必要だと思う。 シリコンバレーの企業はどのようにしてスピードを上げているのか? また、この言葉は特にデジタルサービスとの相性が良い。なぜなら、デジタルサービスは多くの場合、”完璧な状態になる日は来ない”から。 まずはリリースをし、その後小さなアップデートを繰り返してサービスの質を上げていくというスタイルが叶うデジタルサービスは、逆にいうと、リリースしないと何も始まらない。軽いフットワークで動くことの重要性を物語る言葉だと思う。 また、早めにリリースすることのメリットは、その分早くユーザーや周囲からのフィードバックを受けられることだろう。 「三人寄れば文殊の知恵」ではないが、そのサービスに注がれる視線が多いほど、様々な角度からのフィードバックを得られることは明白だろう。その声を元にどんどん改善をしていった方が結果的により速く、よりユーザーニーズに沿ったサービスになるのではないかと思う。 デザイナーと働く上で意識すべきこと 次に非デザイナーとしてデザイナーと働く上で意識してきたことをご紹介する。実は、デザイナーの仕事の2/3はコミュニケーションであると言えるほど、コミュニケーションが重要なウェイトを占める。 これはつまり非デザイナーとしても、デザイナーと意思疎通をするシーンや時間が多いことを意味する。特に、新規事業や事業開発、コミュニケーション、ブランディングなどの部署にいらっしゃる方はデザイナーとのやりとりが日常的に発生するのではないだろうか。 下記は、デザイナーがクライアントワークにおいて往々にして遭遇する「しんどいシーン」をまとめているおもしろ切ない動画だ。 これを見て思うのは、決してクライアント側に悪気があるのではなく、デザイナーとの効果的なコミュニケーションの方法を知らないことも多いのではないかと思う。(非デザイナーとしてはぜひとも反面教師にしたい。) 以下にご紹介することが少しでもその助けになればと思う。 1. HOWではなく、WHYを伝える デザイナーに意図を伝えるのは必須だ。具体的な作業をお願いするのではなく、達成したいことを伝えることがポイントだ。 よくあるのが、非デザイナーからデザイナーへのフィードバックとして「ここの文字を赤にして」「ここの文字を大きくして」という具体的な作業指示 (HOW)。しかし、これでは本質的によいデザインになるとは限らない。 また、こういったHOWのみを伝えるコミュニケーションが常態化した場合、デザイナーは指示を受けてその通りに修正するだけの下請け的な動きを強いられることになり、モチベーションも落ちてしまうだろう。 そうではなく、理由や意図(WHY)を伝えるのだ。文字を目立つ赤色にしたいのも、サイズを大きくしたいのも、おそらくその情報を確実にユーザーに伝達する必要があるからではないだろうか。 したがってデザイナーに伝える時には、「この目的を達成するために、この情報をしっかりとターゲットのユーザーに届ける必要がある」という形で伝えるようにしたい。 目指す目的を達成するためには、必ずしも色を変えることだけが方法ではないこともありうるし、意図を達成するためのデザイン的なアプローチの引き出しは、きっとデザイナーの方が豊富であろう。非デザイナーにとっては、それを解決するための手段として、色やサイズを変えることしか思い浮かんでいないだけかもしれない。 このように伝えれば、デザイナーとは指示出しと御用聞き、という関係性ではなくむしろ、お互いにフラットに、目的を果たすための建設的なディスカッションを行うことが容易になるだろう。 2. 制約を設ける クリエイティブには制約が必要だ。ここでいう制約とはざっくりと、期限という時間的な制約と、進行する上で守るべき条件/項目といった発想や作業的な制約に大きく二分される。 非デザイナーは、デザイナーに対していわば「制約を設ける」側に立つことが多い。枠組みを作り、その中でデザイナーに躍動してもらうために制約を設けるのだ。 実際の仕事の中で制約を設けるときに作っているのが、「デザインブリーフ」である。 デザインブリーフとは、制作物の意図や目的、そして制約などをまとめたもので、デザイナーに明確なディレクションを伝え、彼らと目線を合わせた上で、作業に取り掛かってもらうために重要なアイテムである。筆者もデザイナーにタスクを依頼するときは必ずデザインブリーフを作成するようにしてきた。 デザインブリーフの作成方法に関する詳細はぜひ下記の記事を参照いただきたい。 デザインブリーフの役割とその作成方法 3. 効果を伝える 実際に効果を伝えることは非常に重要だ。これだけの効果を獲得できた、ということを数値と併せて示そう。客観的な数字を以って自分のデザインが評価された、うまくワークしたことが伝わるとよい。これはモチベーションに関わるトピックだ。 デザインそれ自体では定量的に評価をすることは難しいかもしれない。それでも、たとえばそれを用いたマーケティングキャンペーンの効果やパフォーマンスなど、デザイナーにとってはモチベーションをあげる有効な指標となる。 デザインの役割の一つに課題解決があるということは冒頭の通りだ。特にビジネスの文脈におけるデザインはこの役目を担うことが多い以上、実際に生み出されたデザインが、役割を果たせたのかどうかは適切にフィードバックをする必要があると感じている。 ここまでデザイナーとのコミュニケーションにおいて意識してきたことを3つをまとめて思うのは、非デザイナーができるのは、デザイナーが仕事をするために、適切なフィールドを用意し、適切なお伝えをすること、これに尽きるのではないかということだ。 デザインという大海を見ることのススメ デザインの世界はまさに大海であり、そこに漂う自分は井戸から出たばかりのカエルだと思う。 ますます広義化するデザインは、知れば知るほどわからなくなることさえある。でも、”ゆでガエル”にならないために、ぜひビジネスに活かせるデザイン、マインドセットとしてのデザインに興味を持って、学んでいただきたい。 自社のビジネスにデザインを取り入れたい経営者や外部デザイナーの活用に困っている方のBtraxへのお問い合わせはこちら

【さよならUXデザイナー】AIによってUXデザイナーは消滅するのか?

2024年に入り、デザイン業界にも大きな変化が訪れようとしている。ここ数年間、蝶よ花よと持て囃されていた「UXデザイナー職」に陰りが見えてきている。 というのも、米国求人サイトのIndeedのここ10年間における統計によると、2022年を頂点に、UXデザイナーやリサーチャーのニーズが減っているのだ。 平均給与が一年で11%下落 UXリサーチャーの求人数が一年で73%下落 UXデザイナーの求人数が一年で73%下落 AIの影響でUX関連の仕事が無くなる? どうやら求人が減っているだけではなく、GoogleやMetaなどのビッグテックでもUX関連職のレイオフが進んでいるらしい。 一説にはAIの急激な普及により、多くの仕事が自動化され、人間が行う必要が亡くなった。UXデザイナーやリサーチャー職もその煽りを受けている。とされる。 でも本当にそうなのだろうか? いまさら聞けないジェネレーティブAIの基本【生成系AI vol.1】 UXデザイナーのニーズが減っているの本当の理由 こちらのグラフを見てほしい。 これはテクノロジー職全体の求人数の推移なのだが、お気づきだろうか?パンデミックのスタートした2020年初め頃に一度下がった後に、2021年、2022年と急激に増えている。 これは恐らく、当初は景気が大幅に後退すると予測し、レイオフを進めたが、意外とどうにかなりそうだということと、新しいニーズに対するサービス需要、そしてスタートアップへの投資が盛んになったのが原因だろう。 その後、金利の上昇などもあり、景気後退とスタートアップへの投資が急激に冷え込んだことが原因でテクノロジー関連の求人も減った。 ある意味、2022-2023の一年がプチテクノロジーバブルだったわけだ。 コロナの影響でアメリカのスタートアップではどのくらいレイオフが進んでいるのか 実はUXリサーチャーのニーズは爆上がり中 そう、短期間で見れば急激にUX関連の仕事がなくなっているように見えるかもしれない。しかし、5-10年スパンで見るとかなり増えている。というか激増している。 実際のところ、2018年と比べても、UXデザイナーの求人は23%増えているし、UXリサーチャーに至っては53%増加しているのだ。 急激に下がったように見えたのは、2023年の “UXバブル” が起こったのが原因だと考えらえる。 今後はAIを活用したUXデザイナーが活躍する 恐らくAIによってUXデザイナーが消滅するわけではない。 ただ、他の職種と同様に、AIを仕事を活用していないUXデザイナーは、活用している人たちに仕事が奪われる可能性はかなり高いだろう。 特に様々なプロダクトにAIが本格的に実装され始める2024年においては、AIどりぶんなプロダクトのユーザー体験を設計するUXデザイナーや、どんなテクノロジーを活用したら良いのかのインサイトを集められるUXリサーチャーのニーズがどんどん高まっていくと予想される。 かつてグラフィックデザイナーやWebデザイナーがUIデザイナー、UXデザイナーに変換していったように、AIの普及により、これから我々もまだ見ぬ新たなデザイナー職が生み出される過渡期なのかもしれない。 UXデザイナーとは?仕事内容、求められるスキル、活躍するデザイナーとは

【実践編】btrax ハワイリトリートに見るチームビルディング成功法

これまでも幾度となくFreshtraxでトピックとして取り上げているコーポレートカルチャー。 組織の長期的な成長を考えると、もちろん重要そうに聞こえる一方で、「何から始めるべきか正直わからない」「組織改革って大変そう」「自分は興味を持っているが、どうやって周りの社員を巻き込めば良いのだろう?」と、悩んでおられるマネジメントや人事担当の方も少なくないのではないでしょうか? 本記事では、前編のコーポレートカルチャーを促進するチームビルディングのコツとは?ハワイで行われたbtrax社員リトリートの事例をご紹介【入門編】に続き、実践編として、2023年の秋頃にハワイで行われたbtraxの社員リトリートでの事例をご紹介いたします。海外へ行かずとも、今日からいつものオフィスで実践できるようなアクティビティもございますので、ぜひ気になったものから実践してみてください! ハッピーな気持ちでリトリートをスタート!ウェルカムギフト 東京とサンフランシスコ、それぞれのオフィスから飛行機で移動してきたメンバーがハワイで集結。最初に、メンバー全員にCEOであるブランドンからのメッセージカード付きWelcome bagをプレゼントしました。 バッグの中には、色々な予定が詰め込まれたアクティブな旅程を健康的に過ごしてもらえるよう、ビタミンC飲料の粉末や酔い止め、ハンドクリームなどを入れました。 また、このリトリートのためにデザインチームが作成したスペシャルステッカーも。(”You are an inspiration!”と書かれた名刺サイズのカードについては後述します。) 特に日本チームは長時間のフライトの後で、到着時は少し疲れた表情を見せているメンバーもいましたが予想外のサプライズギフトに笑顔を見せてくれました。 ちょっとした気遣いや贈り物も、チームメンバーへの敬意や感謝を表し、「自分たちの日々の頑張りはちゃんと認識されている」と感じてもらえるきっかけとなります。 まずは個包装のチョコレートなど、休憩中にちょっと手に取れるような小さなサプライズから始めても良いかもしれません。 知っているようで知らないチームメンバーの素顔。ミングル・ビンゴ btraxでは今回のリトリートに限らず、毎週日米のチームが全員参加するオンラインでのチームビルディングの時間を儲けたり、ハロウィンなど年次のイベントも実施しています。 また社内でのコミュニケーションは日本語と英語が飛び交いつつも、ベースはアメリカ英語のため、基本的にはかしこまらず、カジュアルでオープンな雰囲気です。よって、メンバー間のやりとりは比較的活発ですし、それぞれのメンバーの距離も近いのですが、それでもお互いまだまだ知らないことはある! ということで、リトリート一発目のチームビルディングアクティビティとしてミングル・ビンゴ(Mingle Bingo)というゲームをやりました。ミングル(Mingle)とは英語で、混じり合う・交流するといった意味です。 通常のビンゴは25マスの中に数字を並べ、読み上げられる数字と合致するものをチェックしていき、縦横斜め、どれかしらの一列を誰よりも先に制覇することで勝利となります。 ミングル・ビンゴでは、数字の代わりに、それぞれのメンバーのファン・ファクト(ちょっと意外な事実)が書かれています。 事前にそれぞれのメンバーのファン・ファクトを教えてもらい、誰についてのことなのかわからない状態でそれぞれの紙に印刷しておきます。 参加者は、他のメンバーに話しかけ、そのファン・ファクトの主を見つけることができたらチェックをつけることができます。話しかけられたメンバーは、基本的にYesかNoで答えます。 例えばこんな感じです。 「あなたの子供の頃の夢はお医者さんでしたか?」 「No!」 「あなたはトランポリンで宙返りすることが特技ですか?」 「Yes!」 これを制限時間内に繰り返していき、最初に一列を制覇できた人が勝者です。 同じオフィスにいてお互いよく知っていると思っていたメンバーの知らない側面を見つけたり、これまでオンラインだけで話をしていたメンバーの肩を叩いて話しかけたり。意外なファン・ファクトの主が判明した際には歓声が上がるなど、非常に盛り上がりました。 このアクティビティは、印刷した紙を持って動き回れる環境であれば、いつものオフィスでやっても十分盛り上がるアクティビティですので、ぜひやってみてください。 ホノルルの街を駆け回れ! バリューを体感するスカベンジャーハント ここで突然ですが、みなさま弊社のカンパニーバリューをご存知でしょうか? btraxのカンパニーバリューは4つ。 Be a forward-thinker Driven by creativity Empathize differences Fearless in trying something new このそれぞれのバリューを、今回のリトリートで改めて身をもって体験してもらうには?と考え、今回やってみたアクティビティがホノルルの街を舞台にしたスカベンジャーハントです。 メンバーを4つのチームへ分け、それぞれにミッションが羅列されたリストが送られます。それぞれのミッションはホノルルの街の中を動き回らなければ達成できないようになっており、制限時間である2時間以内に最も多くのミッションを達成し最も高い得点を出したチームが勝ちとなります。 ミッションは、例えば「Marrie Monarchへ行き、チームでグループ写真を撮影してシェア」「ABCストアで買えるジンジャービールの販売元のブランドを答えよ」「ポストカードになりそうな写真を撮って来て!素敵な写真を撮ったチームには追加点あり!」など。 このゲームに勝つためには 制限時間により多くのミッションを達成するため先を見据えて動き 自身のチームの個性や創造性を発揮して、 他チームと差別化し、 これまでやったことがないことにも挑戦する必要があります。 燦々と輝く太陽の下、それぞれのチームが街中を走り回り、各々のやり方でミッションをクリアしていきました。 普段の業務や役割関係なく、それぞれの強みを発揮してゲームを進めていく中で、これまで以上に各メンバーの良さに気づいたり、お茶目な一面を垣間見たり。同じミッションでも、それぞれのチームによってアウトプットの形が異なり、激戦となりました。 ここまで手の込んだものでなくても、例えば「二人一組で、会社の中の素敵なスポットの写真を撮ってくる。一番素敵な写真をとってきたチームが勝ち!(最後に参加者全員で投票する)」というくらいシンプルな設定にすれば、限られた時間の中でも実践しやすくなります。 また、業務と絡めて、「一緒に100つの椅子を隣の部屋へ移動させる」「未開拓の営業先へ二人で飛び込み営業へ行ってみる」など、”少しチャレンジングで一人でやるのは大変だが、人とやったら楽しめる”ようなことをあえて複数人でゲーム感覚でやってみるだけでも、関係性は深まります。 筆者もこれまでの仕事でイベントのためにTシャツを2-3人で1,000枚近く袋詰めするという作業があり、気が遠くなりそうでしたが、アップテンポなBGMをかけながら、どうよりすれば効率的に作業ができるかを他のメンバーと試行錯誤しながら乗り切りました。その作業を一緒にやり切ったメンバーとはそれ以降、戦友のような関係性が出来上がりました。 一人一人のメンバーへ手書きのメッセージを!Value card 一つ目のギフトバックの中に入っていた小さなカード。btraxでは昔から、カンパニーバリューを体現していたメンバーへ「あなたは素晴らしいよ!」という一言メッセージを贈る習慣があります。 こちらのカードは、今回のリトリート用にリニューアルした新デザイン。宛名と送り主を書いて、その人が体現しているとバリューにチェックをつけ、一言メッセージを書く仕様になっています。 リトリートの最初に、運営チームから「今回参加している全てのメンバー、一人一人に対してカードを書いてください!」と参加メンバーへお願いをお願いし、最終日にカードの交換会を行いました。 このカードを渡し合うアクティビティは、もらった側が普段の頑張りを認められて嬉しいのはもちろんのこと、それぞれのメンバーに、手書きでカードを書くことによって、日頃自分が一緒に働いている一人一人の同僚の良いところを、ふと立ち止まって考えてもらうところにより意義があると考えています。これは、一緒に働くメンバーへの感謝の気持ちを感じる時間を意図的に作り出すということです。 感謝の気持ちを感じることがビジネスへ良い影響を与えるということについては、非常に多くの記事が書かれており、「感謝の気持ちを持つ」こと自体がカンパニーバリューになっている有名企業もあるほど。 日々スクリーン越しに大量のメッセージをやりとりしているからこそ、あえて手書きのカードを手渡しする。私自身も、全メンバーへカードを書く中で、改めて素晴らしいメンバーに囲まれていることを再確認すると同時に、普段なかなかそれを言葉で伝えられていないことにも気づきました。 カンパニーバリューと関連付けづとも「日頃一緒に働いているメンバーの良いところをカードに書いて渡す」だけでも、同じような効果が得られますので、ぜひご自身のチームでもぜひ実践してみてください! ちなみに弊社では今回のバリューカードアクティビティだけではなく、日常的に毎週の社内会議で「今週のカルチャーリーダー」と題して、前週に特にカンパニーバリューを体現していたメンバーを紹介するコーナーを設けています。 コーポレートカルチャーは一日にしてならず! btraxのハワイリトリートから、チームビルディングのためのアクティビティの事例を紹介させていただきましたがいかがでしたでしょうか? btraxではバリューやミッションとは別に、” We are all designers”という標語があり、デザイナー職以外のメンバーも含めて、btraxに関わる全てのメンバーがデザイン思考的なマインドセットで日々働くということを大切にしています。 それは、例えば、一見自分たちには難しすぎるように見える問題でもクリエイティブな解決策がないか多角的に検討してみる、ユーザー視点でベストなソリューションや体験は何かを常に意識する、といった具合です。 ここでいう”ユーザー”とは、今回のような社員向けのプログラムを企画する上では、”社員視点”でのベストを追求することとなります。 一見するとビジネスとは直接関係ないような活動も、長い目で見ると、チームメンバー間の円滑なコミュニケーションの促進、厳しい状況下でも耐えうる信頼関係の構築、枠に囚われない自由な創造性を鍛えるなど、様々なベネフィットを会社にもたらしてくれます。 btraxでは、社内に限らず、クライアント様向けにも数時間の手軽なものから数ヶ月に及ぶ長期のプログラムまで、オーダーメイドの社員研修やワークショップをご提案させていただいております。まずはご相談からでも大歓迎ですので、お気軽にお問い合わせください。 デザイン思考のリスキリングのためにファシリテーターが意識している3つのポイント

【絆を深めるチームビルディング】btraxはなぜハワイでリトリートを行ったのか

これまでも幾度となくFreshtraxでトピックとして取り上げているコーポレートカルチャー。 組織の長期的な成長を考えると、なんとなく重要そうに聞こえるけれど、「何から始めていいのか正直わからない」「組織改革って大変そう」「自分は興味を持っているが、どうやって周りの社員を巻き込めば良いのだろう?」と、悩んでおられるマネジメントや人事担当の方も少なくないのではないでしょうか? 筆者は現在btraxでUXリサーチャーをメインの仕事として勤務しておりますが、過去、大手外資系企業で人事を担当したり、社内公募で選ばれるカルチャーコミッティーに選出されるなど、コーポレートカルチャーの醸成にいろいろな形で携わってきました。 そんな自身の経験をベースに、「自分の組織を良くしたい!」という志を持った皆様にとって、少しでも参考になればとの思いから、今回は2023年の秋頃にハワイで行われたbtraxの社員リトリートでの事例をご紹介します。 チームビルディングのための企画を作る際の基盤となる考え方をまとめた入門編と、実際のハワイでの事例をご紹介する実践編の二部構成となっており、本記事は前半の入門編となります。後編もお見逃しなく! チームに一体感をもたらす企業文化を構築するために不可欠な3つの要素 カンパニーの語源とは? まず本題の企業文化やチームビルディングの話に入る前に、みなさま英語で会社を意味する”カンパニー(Company)”という単語の語源をご存知ですか? Companyは、ラテン語の「com(共に)」と「panis(パンを食べる)」に仲間を表す「-y」がついた言葉で、もともとは「一緒にパンを食べる仲間」という意味だったそうです。 日本語でも「同じ釜の飯を喰う」という言葉があるように、食事を共に分かち合うことで、お互いを理解し合い、同体としての帰属意識を持つという活動は、東西を問わず人類が共有している文化であると思います。 実際、食事をしながら他愛もない話をする中で、日頃業務を共にしているだけでは見えない同僚の一面が見えたり、ちょっとした悩みを共有したり、共通の趣味を発見したり。そうやって経験を共有する中で、有機的な関係性が育まれることは決して少なくないと思います。 「一緒にご飯を食べるなんて仕事と何の関係があるの?」 「いつも食堂で社員の人たちと並んでご飯を食べているけど?」 と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、ただ同じ空間で食べるだけではなく、”同じ食べ物をみんなで分かち合う”、”ただお腹を満たすだけではなく、交流の機会として食事の時間を共にする”、これだけでもチームビルディングの大事な最初の一歩となると思います。重要なことは、消費することではなく、経験を分かち合うことです。 ここからは、そんな英語の”会社”という言葉の由来を念頭に、弊社メンバーがハワイで共に過ごした3日間についてお伝えさせてください。 チームみんなでハワイ旅行!?その企画の裏にある思いとは? 2023年の秋ごろに弊社では、前年の会社全体での営業目標を達成したリワードとして、二泊三日のハワイリトリートを実施いたしました。 リトリートという言葉自体、日本ではあまり馴染みのない方もいらっしゃるかもしれません。リトリート(Retreat)とは、英語で「退避」「隠れる」「静養」などの意味を持つ単語です。 アメリカでは日々の忙しない生活や仕事から離れた非日常的な場所へ一定期間身を置き、自分または同じ集団に所属する人同士でと内省的な時間を過ごすためのアクティビティとして一般的に認知されている言葉です。 ビジネスの文脈では、チームビルディングや企業文化の醸成のための宿泊行事としても理解されています。シリコンバレーでは、福利厚生として禅や瞑想・ヨガなどリトリート的なプログラムを取り入れているIT企業も多くあります。 ”ハワイで社員旅行”ときくと、なんだか浮ついているようなイメージに聞こえるかもしれませんし、「お金の無駄使いなのでは?」、「それと仕事と何の関係があるの?」と思われるかもしれません。 しかし、今回のリトリートを企画した私を含むプロジェクトメンバーは、下記のような目的意識を持って本イベントを計画していました。 結束を強める 普段離れ離れで働いている日米チームが、お互いのことをより理解し、より有機的で人間的な繋がりを築ける場とする 士気を高める 日々、チャレンジングな環境で奮闘し、昨年の目標を見事達成したチームメンバーに達成感を感じてもらい、今後も日々の業務に熱意を感じてもらえるためのモチベーションを養う場とする 文化を感じ育む 目の前のタスクに追われる日頃の業務の中でつい意識から薄れてしまう会社のカルチャーを感じてもらい、組織の一員であることをハッピーに感じてもらえる機会とする サンフランシスコと東京、それぞれの都市に拠点を構える弊社では、アメリカチームと日本チーム間のコミュニケーションは基本的にオンラインで行われています。 そんな二つの国で日々物理的にも時差的にも、時には言語的にも一定の隔たりがある両チームが、一同に会することができる稀有な場として今回のリトリートは企画されました。 ポジティブな感情は創造性や生産性へ繋がる!”やらされている”感をなくし、夢中になってもらうには? 今回のリトリートで実施したそれぞれの施策を考える際、あえて企画チーム内で言語化していたわけではないですが、振り返ると全てに共通していたのは、参加する社員が「心から楽しめること」を優先して企画が進んでいったことではないかと思います。 会社にやれと言われているからやるのではなく、それぞれのメンバーが純粋にこのみんなで過ごす時間を楽しんで過ごせるためには何が良いのか?を考えていった結果、充実した3日間の旅程が出来上がったように思います。 「会社として社員にどうなって欲しいか」と「社員は何を求めているのか」は、二者択一ではなく、両立が可能な検討事項であると思います。会社の長期的な成長のために達成したいゴール(今回の場合は前述の3点)を、社員が自ら達成したくなってしまうような状態はどうやったら生み出せるのか?これを真剣に考えることは、デザイン思考を通してユーザーのためのサービスを考えるプロセスと非常に近いです。 後半の実践編の記事では、リトリートで実施したアクティビティや、メンバーに楽しんでもらうために用意した仕掛けについて一つずつ実例を紹介していきます!

デザインの力でケチャップ詐称を見抜け!ハインツのキャンペーンが面白い

アメリカの大手ケチャップブランドのハインツ。そのクラシックなボトルの形が印象的で、世界中のファーストフード店に置かれている。 ただ、オリジナルの瓶ボトルはその使い勝手の悪さから、UIとしては素晴らしいけど、UXが最悪との評判で、最近は上下逆さにしたプラスチック製のボトルが主流になってきている。 ボトルの中身を詐称するケースが多発 そんなケチャップの代名詞とも言えるハインツだが、一つ大きな課題を抱えている。レストランやファーストフード店にてそのボトルに中身をより安価な他社メーカーのケチャップを入れ替えている疑いだ。 これを彼らは Ketchup Fraud (ケチャップ詐称) と呼ぶ。 最近ではそれを逆手に取ったキャンペーンを展開し、話題を集めいている。 これは “’Even when it isn’t Heinz, it has to be Heinz’ ” (ハインツじゃなくても、ハインツじゃなきゃダメなんだ) と呼ばれる広告キャンペーンで、レストランの厨房でこっそりボトルの中身を入れ替える写真や動画を見せ、より “本物感” を演出。 デザインの力を活用してケチャップ詐称を防ぐキャンペーンを展開 そんなケチャップ詐称に対応するべく、ハインツ社は世界共通の色見本帳を提供するPANTONE社とパートナーシップを組み、公式のケチャップ色 = Heinz Redを制定した。 そしてその色をケチャップボトルのラベルに印刷することで、内容物との相違を目視で可能にし、本物を識別できるようにした。 トルコのレストラン500店舗以上で展開 この “Is that Heinz” と呼ばれるキャンペーンは、大手広告代理店のWunderman Thompsonによってトルコ国内のレストラン500店舗以上で展開された。 ハインツのボトルに入っているケチャップとラベルの色との違いで、Heinz, Not Heinz, Still not heinz, Is that even ketchup? と表記されたクリエイティブと、動画を作成。 ハインツの本物感を演出する結果に このキャンペーンは、合計10万回以上シェアされ、同ブランドの知名度をアップさせただけでなく、ハインツ以外は偽物 = ハインツだけが本物であるイメージ構築に貢献した。 デザインがユーザーの課題の解決と、ブランド構築の両方を上手に達成した好例と言える。 「Is that Heinz」のキャンペーン動画

【btrax初書籍をチラ見せ】第6章 ブランディングのキホンからインクルーシブデザインに代表される最先端のデザイン手法まとめ

第1-5章の解説に続き、今回もbtraxの書籍『デザインの思考法図鑑』の各章の内容をご紹介していく。 第6章のテーマは『デザインを表現する・伝える』。デザインと切っても切り離せないブランディングにまつわる内容を基礎から効果測定方法までお伝えするだけでなく、デザインを考える上でインプットしておくと良い「UXライティング」「エシカルデザイン」など、幅広いトピックを取り扱う。 第6章の内容はこんな方におすすめ: 顧客体験(CX)に関して詳しく知りたい方 ブランディングの概念から、ブランディングの成功/効果測定方法まで知りたい方 デザインとブランディングの関係性を知りたい方 デザインにおいて考慮すべきポイントを学びたい方 第6章 デザインを表現する・伝える 目次 顧客体験(CX)の考え方 ブランディングの基本 ブランドの構成要素 ブランディングのプロセス リーンブランディング デザインとブランディング ブランド価値の測定 UXライティング エシカルデザイン アクセシビリティ ユニバーサルデザイン インクルーシブデザイン 顧客体験(CX)の考え方 UXと併せて語られることの多い「顧客体験(CX)」。顧客体験のデザインでは、顧客との最初の接点からリテンションまでの全てのやりとりが対象だ。今回は顧客体験の設計方法と、それをいかにUXデザインに連携するのかに関してご紹介する。 参考記事: CXデザインとは?UXデザインとの違いとそれぞれの役割 ブランディングの基本 ブランディングが大切とされているのは周知の事実。この項は全ての基本となる「ブランド」と「ブランディング」の何が異なるのか?そしてブランディングを行なって得られる効果とは?に関して解説します。 ブランドの構成要素 ブランドはいくつかの要素で成り立っています。この項では、成功するブランディングの構成要素を解説。この章を見れば、ブランディングを行う上で守るべき観点がわかるだろう。 参考記事: ブランドをビジネス価値に変換させる5つの構成要素【ブランディング入門#1】 ブランディングのプロセス 前2項に引き続き、ブランディングをトピックに扱う。今回はブランディングを実施するプロセスを明示し、各ステップでどのようなアクションや成果物が求められるのかを順を追って解説します。 リーンブランディング 「リーンブランディング」という言葉を聞いたことがある方はいらっしゃるだろうか。リーンブランディングとは、リーンスタートアップでいうところの「新しいビジネスモデル」の代わりに、「柔軟なブランド」の構築・開発を目指すものだ。 では、通常のブランディングではなくリーンブランディングの考え方を使用するメリットとは? 参考記事: ブランド構築に役立つリーンブランディング その基本と3つの活用シーン デザインとブランディング ブランドとデザイン、両者は切っても切り離せない関係にある。それはブランドが「デザイン」の対象であるためだ。今回はデザインがブランディングにどんな価値を与えるのか、ブランディングに求められるデザイン的発想を3つ例に挙げてご紹介する。 参考記事: 意外と知らないデザインとブランディングの関係性 ブランド価値の測定 ブランディングに投資がされにくい理由の一つに、「結果が定量的に示しにくい」「効果測定がしづらい」ことが挙げられるだろう。そんな課題を解決するために、この項ではブランドマネージメントにおける、ブランド価値の算出におけるデータの活用方法をまとめていく。 参考記事: ブランド価値の効果測定方法 〜2つのデータ活用法〜 UXライティング 「UXライティング」とは、物事の価値を、的確かつストレスなくユーザーに伝えるための言葉を通じたユーザー体験設計の総称を指す。ユーザー体験はデザインのみならず、ライティングでも必要になってくる。今回はすぐに実践できるUXライティングの5つのポイントをご紹介する。 参考記事: デザイン視点で心を掴む UXライティングの基本5項目 エシカルデザイン エシカルデザインとは、倫理的観点からプロダクトやサービスと向き合い、デザインを見直そうとする姿勢のことだ。 人間の心理や感情に直接的に触れうるデザイナーは、ユーザーを知らず知らずのうちに過剰広告や扇動広告など、結果的に不幸にさせているケースもある しかし、エシカルな観点が実践できているかは自分では気づきにくいもの。この項ではエシカルデザインを実践する上で必要になる観点をチェックリストで明示していく。 参考記事: エシカルデザインとは – 時間と環境と生活に優しいデザイン アクセシビリティ アクセシビリティとは、元々はウェブデザインの用語として誕生した「アクセスしやすい」「利用しやすい」という意味の言葉だ(現在では、ウェブサイト以外の領域でも使用されている)。 では、「アクセシビリティが実現されている状態」とはどのようなものだろうか?今回はW3C (World Wide Web Consortium)が公開しているウェブサイトのアクセシビリティガイドラインから考えてみる。 参考記事: アクセシビリティとは?その基本とデザインのポイント ユニバーサルデザイン ユニバーサルデザインとは「年齢や能力、状況に関わらず、多くの人が使いやすいように製品や建物、環境をデザインする」ための考え方だ。この項では、ユニバーサルデザイン7原則の各項目をご紹介。ユニバーサルデザインを確認する指標となれば幸いだ。 参考記事: インクルーシブデザインとは?現代の多様性に寄り添う7つの実例 インクルーシブデザイン インクルーシブデザインは、これまでデザインのプロセスから無意識に排除されてきてしまった方々も含めてデザインを行うことを指す。 ユニバーサルデザインと似た概念だが、ユニバーサルデザインはデザイナー手動で目指すものであるのに対して、インクルーシブデザインはユーザーをデザインのプロセスに巻き込んで一つのサービスやプロダクトを作り出すことを目指すという違いがある。 この項では、インクルーシブデザインの定義とともに、インクルーシブデザインの実現のための3つのステップを解説する。 参考記事: インクルーシブデザインとは?現代の多様性に寄り添う7つの実例 まとめ 今回はbtraxの書籍『デザインの思考法図鑑』より第6章の内容のポイントをかいつまんでご紹介した。この記事を機に、多くの人に書店で手に取っていただけたら嬉しく思う。

主催イベントBtrax Design Day で最も注目を集めたセッションをご紹介!「マイノリティ視点がイノベーションを起こす:インクルーシブデザインの力」

2023年12月6日、東京・渋谷にて開催された「Btrax Design Day」は、デザイン業界における次世代のトレンドと革新を探求する一大イベントであった。
中でも特に注目されたセッションの一つが、「マイノリティ視点がイノベーションを起こす:インクルーシブデザインの力」だ。このセッションでは、Audio Metaverse, Inc.の創業者である井口尊仁氏と、株式会社圓窓の代表取締役、澤円氏が、「インクルーシブデザイン」の概念を深く掘り下げた。

インクルーシブデザインのビジネスへの影響
井口…

【btrax初書籍をチラ見せ】第5章 サービスの価値検証・改善のために覚えておきたい要点まとめ

第1-4章の解説に続き、今回もbtraxの書籍『デザインの思考法図鑑』の各章の内容をご紹介していく。 第5章のテーマは『デザインをテストする・見直す』。 デザイン思考のプロセスの中でも特に忍耐が必要な「検証」フェーズについて、そしてその検証フェーズで指標となるUI/UX評価のチェックリストなど、ビジネスパーソンのみならず、デザイナーの皆さまにも読んでいただきたい内容が盛りだくさんだ。 また、後半では認知バイアスもいくつかご紹介するため、コラムとして読んでいただけたら幸いだ。 第5章の内容はこんな方におすすめ: デザイン思考の中でも「検証」のフェーズを見直したい方 UI/UXデザインの客観的な評価指標、チェックリストを知りたい方 認知バイアスに関して詳しく知りたい方 新規事業開発に携わっており、長く使われるサービスを作るためのヒントが欲しい方 第5章 デザインをテストする・見直す 目次 デザイン思考:テスト UXピラミッド:UXデザインの評価指標① UXハニカム:UXデザインの評価指標② UI/UX評価の10項目:ユーザビリティヒューリスティック評価 アイディア検証11項目 ユーザーフローの設計 ユーザーエンゲージメント デザイン的直感とデータの使い分け 情動ヒューリスティックとサンクコストの誤謬:認知バイアス① 集団浅慮、ダニング=クルーガー効果:認知バイアス② UXデザインの「けもの道」 デザイン思考:テスト デザイン思考における最後のプロセス、ユーザーテスト。この章では、ユーザーテストのプロセスや、テストシナリオの作成方法、ユーザーテストの効果的な結果の評価方法を解説します。 参考記事: ユーザーテストの秘訣とは? – デザイン思考を学ぶ Part 6 UXピラミッド:UXデザインの評価指標① UXデザインの良し悪しはどのように判断するのでしょうか?この章では、客観的、主観的、両方の側面からUXデザインを検証するための評価指標、UXピラミッドをご紹介します。 参考記事: UXピラミッド – UXデザインの正しい評価方法 – UXハニカム:UXデザインの評価指標② UXピラミッドと同様に、UXデザインを評価する指標としてあるUXハニカム。UXデザインのクオリティチェックができる6つの項目です。この章ではUXハニカムの見方や、項目が達成できているかをチェックするための質問方法をご紹介します。 参考記事: UXハニカム – UXデザインの正しい品質評価方法 – UI/UX評価の10項目:ユーザビリティヒューリスティック評価 UI/UXデザインを設計する際にも、分析をする際にも、どんな評価軸で見たら良いのかという項目は必須。 今回は90年代初頭に、Webのユーザビリティ研究者の第一人者であるJakob Nielsenと、dialogdesignというユーザビリティコンサル会社の創設者のRolf Molichによって作られたUI/UX評価の10の項目をご紹介する。 参考記事: UX向上につながるUIデザイン評価の10項目 アイディア検証11項目 新規サービスやプロダクトを準備していると、ついつい視野が狭くなり、客観的に振り返る機会を失いがち。この項では、アイディアの良し悪しを検証するための11の項目をご紹介。新規事業開発に携わっている方は必見だ。 参考記事: 新規サービス検証の際に確認するべき15項目 ユーザーフローの設計 “ユーザーフロー”という言葉を聞いたことはあるだろうか? ユーザーフローとは、UXデザインのプロセスの一つで、プロダクトやサービスを使用する上でたどる必要のあるプロセスを可視化したもの。 設計段階はもちろん、ユーザーエンゲージメント向上のための見直しのためにサービスローンチ後の運用方法や注意点を解説する。 参考記事: ユーザーフローから学ぶミスコミニュケーションの発生原因と対処方法 ユーザーエンゲージメント サービスやプロダクトに対してのユーザーの愛着や関係の深度を表すのが「ユーザーエンゲージメント」。 ユーザーエンゲージメントを高めるには、基本的なユーザービリティが実現されていることが必須であることはもちろん、その他にも気をつけるべき項目がある。今回はテクニカルな面以外にも、ユーザーエンゲージメントを高めるために留意すべきポイントを解説。 参考記事: ユーザーエンゲージメントを向上させる7つの要素 デザイン的直感とデータの使い分け ユーザーの動きを数値的に分析し、ボトルネックを洗い出すことは、サービスの改善において大変有効だ。 しかし、今までの観察やインプットに基づくデザイン的な「直感」も、決して無碍にしてはならない。今回は定量的なデータを信じる場合とデザイン的直感を信じる場合のそれぞれのメリットとデメリットをまとめた。 参考記事: ブランド価値の効果測定方法 〜2つのデータ活用法〜 認知バイアス①、②:情動ヒューリスティック、サンクコストの誤謬、集団浅慮、ダニング=クルーガー効果 日常に潜む認知バイアス、5章のうち2項では4つの認知バイアスについて詳しく解説。いずれもビジネスマン、デザイナーの方々が陥りやすいものをピックアップ。認知バイアスに気がつくために自らに問いかける方法も併せてご紹介する。 参考記事: デザイナー必見!知っておきたい10の認知バイアス UXデザインの「けもの道」 サービスやプロダクトを設計した際に、ユーザーに対して元々設計されていた「導線」とは異なるルートをユーザーが選択した結果、いつの間にかそのルートの方を他のユーザーも利用するようになるケースは多々ある。 そのほうがユーザーニーズに合致していたりするため、UXデザインにおいて、見逃せない兆候だ。今回はそんな、UXデザインの「けもの道」(”desire path”)に関して解説する。 参考記事: UXデザインにおける「けもの道」現象とは まとめ 今回はbtraxの書籍『デザインの思考法図鑑』より第5章の内容のポイントをかいつまんでご紹介した。全体像が読みたいと思っていただけた方はぜひAmazonの予約ページからひと足先に予約いただけると幸いだ。 書籍は12月より、全国の書店でも販売を開始した。多くの人に書店で手に取っていただけたら嬉しく思う。次回は6章の内容をピックアップして解説する。お楽しみに。

日本とアメリカのZ世代 その共通点と相違点とは?

皆さんは「世代の違い」を感じたことがあるだろうか?
おそらく多くの方があると答えるだろう。著者は日常的にある。言葉選びひとつとっても世代の間に大きな差が出るだろう。
かく言う著者は2001年生まれで、自分自身も周りの友人にもZ世代が多い。ゆえに、使う言葉もいわゆる「若者言葉」である。
ひとつの例として若者の間で使われている英語のスラングを挙げる。”no cap” というフレーズ。”cap”は「嘘」という意味で使われており、”no cap”は前に no がついているので「嘘じゃない」「間違いない」とい…

デザインの未来はどうなるのか?〜Btrax Design Dayに懸ける想い〜

WeWorkの倒産やIDEOの日本撤退など、近年、私たちデザイナーやスタートアップを取り巻く環境は大きく変化している。 2010年代に大流行した「シリコンバレー×デザイン」を中心としたデザインとスタートアップのブームは、日本企業のデザイン思考への関心を高めたり、自由なワークスタイルの許容を広げたりするなど、ある種の漠然とした憧れを抱かせることには成功したと言える。 デザインに対する過度な期待値 振り返ると、当時はデザインへの期待が過熱気味で 「デザイン思考を会得すればイノベーションが生まれる」と考える向きも多かった。 しかしその熱狂は裏付けとなる具体的成果を十分に生み出せず「やってる感」の域を出なかったプロジェクトも少なくなかった。 デザイン思考を学んだり、デザイナーの真似事をするだけでは、具体的な結果につながりにくいのも事実。我々もデザイン会社としてその誤解を解き、より正しい理解を広げるための情報を配信したり、定期的にデザインに関するイベントを開催している。 デザインをとりまく環境変化に影響した5つの要因 この短期間でデザインを取り巻く環境が激変した背景には、複数の要因が絡み合っていると考えられる。主な5つの要因は次の通り。 1. ワークスタイルの変化 ここ数年間で最も大きな出来事といえば、世界的なパンデミックの拡大と、それに伴うリモートワークの普及だろう。対面を大好きな日本企業文化ですら、現在ではオンラインミーティングや、リモートワークが一般的である。 それまで「仕事」といえば社員がオフィスに出社するのが常識だった。それがモバイルデバイスの普及やクラウドツールの充実で、シリコンバレー型のコワーキングスペースが普及し、社内外コラボも加速した。WeWorkの台頭がそれを象徴している。 しかし、新型コロナウィルスの拡大で、今度は人と人が対面で会うことすらない状態での働き方が広がる。これは時間短縮や効率向上、フレキシビリティー的にはかなり有利だろう。 その一方で、雑談っぽいディスカッションから面白いアイディアを出したり、スケッチやホワイトボードなどでニュアンスを伝えるのにはかなり不向きになる。 特に新規事業作りやサービスデザインのプロセスでは、人と人が相手の温度を感じながら新らしいモノを生み出すプロセスが不可欠で、完全リモートになってしまった場合、「デザイン」をする方法が大きな課題となる。 2. “やってる感” の限界 シリコンバレーに拠点を置く日本企業は多い。その主な目的は “情報収集” と “新規事業づくり” だ。これは一見すると具体的に何をしているのかが理解されにくい。もしくは、本当に何もしていないのかもしれない。 多くの企業はシリコンバレー地域のコワーキングやアクセレレーターにメンバー登録をし、スタートアップを紹介してもらったり、VCに資金を預け、スタートアップとのコラボを期待する。しかし、多くのスタートアップは大企業とのコラボに興味がなく、その思惑は実現しないことが多い。 拠点を構えていない場合でも視察で訪れる企業も多く、オフィスの写真を撮って満足して帰って行かれる。 そのような活動がどのような結果に繋がったのか?その答えは、現時点ではかなり厳しいものだと言える。 だからこそ、短期間では周りや本社からはどうしても “やってる感” の演出にしか捉えられず、そろそろ売り上げにつながる具体的な結果を提示しないと、肩身が狭くなってくる。 そこで重要になってくるのが、新規事業作りにおけるデザインの重要性なのだが、デザイン思考を学ぶだけでは、やはりこの “やってる感” 以上の結果を生み出すことは容易ではない。思考だけではなく、実践が伴ってはじめて「本当の結果」につながることになる。 3. ユニコーンブームの終焉 ここ数年でスタートアップを取り巻く状況も一変した。その一つがユニコーンブームの終焉だろう。 ユニコーン企業というのは、未上場で評価額が10億ドル以上の企業を指す。上場前のUberやAirbnb, 最近だとOpenAIやSpaceXが該当する。数年前まではユニコーン企業になることが、スタートアップのステータスであり、成功のひとつのバロメーターであった。 しかし、そこには大きな落とし穴があった。評価額の概念が結構曖昧で、業界ブームで実態とかけ離れた高額評価がなされることも多い。冒頭のWeWorkも上場前の2019年時点での評価額は470億ドルにまで膨れ上がっていた。 同様に当時は実態が伴わないスタートアップでもユニコーンになる例が多かった。しかしその結果、AllbirdsやBirdといった新興企業は上場後株安に見舞われている。 そんなこともあり、世界の投資家たちは “ユニコーンであること” よりも、より堅実に売上を上げられるスタートアップに注目をシフトさせており、ユニコーンを目標にしているスタートアップも減少気味だ。そもそも、ユニコーンを目指すこと自体が少し時代遅れな響きさえある。 これは、デザインの側面から見ても大きな変化が求められる。 今までのようにユーザーニーズに対して最適な体験を設計するだけの仕事から、よりビジネス面でも結果の出せるプロダクト作りが求められる時代に入ったことを示している。 4. インフレと円安 ここ数年で一つ大きく変化したもの、それがインフレと円安の状況だ。 この世界経済を取り巻く環境変化は一見デザインにあまり関係ないように思われる。しかし、さまざまな影響がある。 まずポジティブな面。 円安は日本の製品が国外で価格競争力を持つことを意味する。そのため、海外での需要が増加すれば、日本製のプロダクトをより多くの海外ユーザーに使ってもらえる機会が生まれ、そこにおけるデザインの重要性が高まる。 一方でコスト上昇により、プロジェクト予算を圧迫されたり、消費低迷でデザイン需要そのものが変動したりするリスクもある。 人件費も上昇するため、海外からのデザイン人材の獲得の難易度は上がる。これまでのようにカジュアルに海外出張に行くのも難しくなっている。 今後は為替や経済の変動に対する適切な戦略や柔軟性を持つことが、デザイン業界においても重要になってくる。 5. AIの進化 そしてデザインに対する最も大きなインパクトがAIの進化だろう。 人工知能をはじめとする新しいテクノロジーが急速に台頭しており、デザイナーが手作業で行っていた業務の自動化が進んでいる。 例えば、UIデザイン領域では、FigmaやAdobe XDなどのツールがコンポーネント設計やスタイルガイドの自動反映といった機能を持ち、効率化を支援している。 一方で、DALL-EやMidjourneyなどの画像生成AIは、イメージ製作そのものを自動で行えるようになりつつある。この先数年でデザイナーの役割はこうしたツールの管理・活用を中心に移行していく可能性が高い。 これにより、近いうちにデザイナーの仕事内容やデザイン会社の役割が大きくシフトすることが予想される。 具体的にはデザインのアウトプット作業は今後人間が行うことは随分と減るだろう。これはまるで、そろばんを使いこなして計算してきた時代から、電卓で数字を叩き出す時代へ変化するようなものだ。 電卓が発明された後も経理や会計の仕事は残っているし、むしろ需要が高まっている。一方で「計算をすること」自体には価値がなく、それを利用して「どのような価値を生み出すか」に焦点が当てられる。 同じく「デザインをすること」自体の価値はこれからどんどん低下する。言い換えると、デザイン作業のコモディティ化が進む。 その一方で、デザインによって生み出されるビジネス的、そして社会的価値は今度より拡大するのは間違いない。 アウトプットする作業に費やしていた時間やエネルギーを今後はより目標に直結したデザインワークに向けることが可能になるだろう。 これからのデザインの未来はどうなるのか このような時代の変革期において、今後デザインの価値とその役割はどのように進んでいくのだろうか? そんなデザインの未来に関しては、来週12月6日のイベント「Btrax Design Day」にて下記のトピックを含むセッションを通じてお届けする。 1. キーノートスピーチ:Design for the Next Generation AI, インフレ, 円安など、近年稀に見る環境変化においてデザインはどのような価値を提供できるのだろうか?btraxのCEOがグローバル視点で社会と企業にとってより重要になるデザインの役割を具体的にご説明する。 2. 若者に愛されるブランドとは? アメリカと日本のZ世代の本音 生まれながらにテクノロジーやデジタルの世界に囲まれ、これまでの時代とは異なる価値観を持つ若者は今、何を考え、どう暮らしているのか?若者に愛されるブランドや企業とはどのようなものなのか。日本とアメリカのZ世代の生の声を聞きながら、リアルな価値観を紐解く。 3. BtoBレガシー企業が世界に仕掛ける、新たなブランドデザイン オリジナルアニメプロジェクトの本格始動を発表したYanmar。日本の伝統あるBtoB企業が今なぜ、ブランディングに力を入れているのだろうか?キャラクター・IPを活用した新しいブランドデザインの実例から、グローバルなブランド力を高めるために日本企業が活用できるアセットや、認知向上に留まらないブランドデザインの価値を考える。 4. ミニワークショップ 「Playable」をテーマに、アクティビティワークショップを実施。btraxのデザイン思考研修などで実践している内容をアレンジし、“本気で遊ぶ” ようにワクワクしながら仕事に取り組む状態を作るアクティビティを体感いただける。詳細は当日のお楽しみに! 5. AIと人間が共創する新時代のデザイン 生成系AIの登場により、デザインに求められる役割が変わりつつあることは先述の通りだ。生成系AIは、ビジネスやデザインの世界をどう変えたのか?今まさに世界中で法律や倫理面のリスクも論じられている中で、今後どのようにAIと共存していくべきなのだろうか? 6. アメリカ企業が語る、デザインドリブンなカルチャーの真髄とは 「カルチャー変革が急務」と言われる一方で、その価値や意味を理解しないままの取り組みが多いのも事実。実は、変革の鍵は、未来のユーザーに焦点を当てるデザインドリブンなカルチャーにある。デザインドリブンな経営を実践するアメリカ企業の生の声を聞きながら、サービスや意思決定、組織づくりにどのようにデザインの考え方を取り入れているのか、そのヒントを探る。 7. マイノリティ視点がイノベーションを起こす:インクルーシブデザインの力 新しいイノベーションの種として、これまで製品開発のターゲットから除外されがちだった多様な背景を持つ人たちの視点から新たな課題を見つける「インクルーシブデザイン」が注目されている。アメリカのIT企業で関心が高まる「ニューロダイバーシティ」などを切り口に、社会課題を解決するプロダクト創出の手法についてパネルディスカッションを行う。 8. ネットワーキングパーティー カンファレンスの後は、ご参加の皆さまや登壇者の方々、btraxメンバーと交流いただける時間も。ドリンクを片手に軽食をつまみながら、イベントの振り返りやアイディアの交換、新たなビジネスの可能性について語り合いましょう! またこのイベントに来ていただいた方には、btrax初の書籍である「発想から実践まで デザインの思考法図鑑」を筆者サイン入りで贈呈 (学割チケットを除く)。イベント詳細及びチケット購入は公式サイトより。

【btrax初書籍をチラ見せ】第4章 小さく始めるためのプロトタイプ・デザインメソッドまとめ

第1-3章の解説に続き、今回もbtraxの書籍『デザインの思考法図鑑』の各章の内容をご紹介していく。
第4章のテーマは『サービス体験を設計する・プロトタイプを作成する』。特に「プロトタイプ」のフェーズでしっかりと、サービスやプロダクトがユーザーのニーズとあっているかを検証しながらプロトタイプを更新していくことが、サービス開発の近づく鍵になっている。
後半では認知バイアスもいくつかご紹介するため、コラムとして読んでいただけたら幸いだ。
第4章の内容はこんな方におすすめ:

デザイン思考のおさらいをした…

デザイナーをマネージするのが難しい3つの理由

デザイン会社を経営していて定期的に思うことがある。 「デザイナーってマネージしにくい」 おそらく共感する人もいると思う。というのも、似たような立場の友人も同じ感想を言っていたから。 でもこれ、必ずしもデザイナー自身だけの問題ではない。その職種の特性上の課題もあったりして、なかなか難易度の高い仕組みが求められたりするのもその理由。 【改めて基本を解説】デザイナーの役割とその仕事内容とは デザイナーをマネージするのが難しい3つの理由 デザイナーのマネージって難しいな?って感じる理由はおそらく3つある気がする。 その3つを紹介し、それぞれの解説もする。 結果測定の難しさ エゴイスティックな性格 評価制度の複雑さ 1. 結果測定の難しさ まず最初の理由は、その特性上、仕事の結果を測るのが難しいから。 マネージャーの仕事の一つは、スタッフの仕事の内容を測定して評価すること。 これが営業だったら売り上げだったり、マーケティングだったらPVだったりコンバージョン率だったりと、何かと数字で結果を測定することができる。 しかし、デザイナーの仕事の結果がよかったのか、それとも微妙だったのかを客観的に誰もが納得する形で行うのはかなり難しい。 というのも「何が正しいデザインなのか?」の問いはその時々でかなり変化するから。 そして厄介なことに、デザイナーは自己評価と会社からの評価、クライアントからの評価、そしてそのデザインが生み出す最終的な結果が乖離することも多い職種である。 そうなってくるとかなりギクシャクしてしまう。 例えば、デザイナー自身が良いと思って作ったデザインに対して上司がダメ出しをする。 それに合わせて作り直したデザインをクライアントに提出。でも、クライアントは気に入らず、変更を依頼。その内容が元々デザインしたものだった。 この場合、そのデザイナーは良い結果を出したことになるのか?実はそこで終わらない。 そのデザインを世の中にリリースして、そこから生まれた結果こそがデザインの本当の結果となるだろう。 ということは、デザインの本当の結果を測定するにはかなりの時間がかかるし、これがブランティング系のプロジェクトだった場合は、より結果測定の難易度が上がる。 ブランド価値の効果測定方法 〜2つのデータ活用法〜 2. エゴイスティックな性格 次は「デザイナー」と呼ばれる人たちの気質が原因。 全員が全員そうであると断言するつもりはない。しかし自分の経験則からしても、デザイナーは他職種の人達と比べても、相対的にエゴが強い人が多い傾向にあると思っている。 もちろんその仕事上、個性が強くなければいけないし、ある程度は自己主張をしていかなければ自分のアイディアを通すことができないことも事実だ。 よくあるパターンは、上司やクライアントがデザイナーにダメ出しをした際に、デザイナーが「いや、これは俺のこだわりなので変えたくないです」というようなことを言い出すこと。 そうなってくると、どちらが正しいかの証明は難しく、言い合いになったり、その場の空気が悪くなることも。 そしてそれが拗れると人間関係にも影響が出たり、現場の雰囲気が険悪になってしまったりするリスクがある。 では、自己主張がなければよいのかというとそうではない。自分の頭で考えずに、言ったことしかやらないオペレーターに成り下がってしまう。 言われた通りにデザインをするのは簡単だが、それでは良いデザインは生み出されない。 このように考えていくと、正とされる答えがないなかなか難しい問題だ。 優れたデザイナーは自分で主張すべき局面と、相手のリクエストに柔軟に対応すべきタイミングを見分けるのが上手い。 もはやデザイナーは職種ではなくマインドセット 〜デザイナーのマインドセットとは〜 3. 評価制度の複雑さ そして最後は、デザイナーの評価制度の設計の難しさである。 デザイナーの役割が多種多様になっている現代において、全てを網羅して、誰が見てもフェアな人事評価制度を作るのはかなり至難の業なのだ。 そう、「デザイナー」と言っても、デザインリサーチャーから、UIデザイナー、UXデザイナー、サービスデザイナー、インタラクションデザイナーなどなど、多岐にわたるデザイン領域があるため、一つの評価制度だけを全ての職種に当てはめることはできない。 では、どのような評価基準で人事システムを設計すればよいのだろうか? 恐らく全デザイナーに求められる「必須科目」とそれぞれの職種ごとに異なる「オプション科目」の混合で評価できる仕組みが必要になると考えている。 例えば、プレゼンスキルとコミュニケーションスキルと、ユーザー理解は全てのデザイナーに必要な能力。 それに加え、職種に応じてビジュアルのデザインやモーショングラフィック、ペルソナ設計やインタラクション設計などの個別スキルを基準に入れていくとよいだろう。 例えば、このようなスキルマトリックスを用いてそれぞれの項目におけるレベルを測る方法も効果的だ。 そして実はデザイナーにとって重要なスキルの多くが「非デザインスキル」だったりもする。 「良いデザイナー」と「優れたデザイナー」を分けるのは、デザインスキル自体だけでなく、それ以外のソフトスキルなのだ。 その辺りもデザイナーの評価システムに入れると、より死角の少ないシステムになるだろう。 プロのデザイナーとして活躍するために必要な8つの非デザインスキル この続きは12月6日に開催されるイベントで こんな感じで、やっぱデザイナーをマネージするのは難しい。 実際の現場で実際にどんな感じでマネージしたり、されたりしているかの実例は、来月12月6日に東京で開催されれるイベント「Btrax Design Day」で登壇するChris Otaによって説明してもらう予定だ。 Chrisはサンフランシスコのライドシェアスタートアップ、Lyftで働くデザイナー。 LyftはUberのライバル的存在であるが、そのデザイン性の高さと、デザイナーを中心とした企業カルチャーで差別化を図っている。 イベント詳細やチケット購入はこちらから。 こちらの内容に関するポッドキャスト

【btrax初書籍をチラ見せ】第3章 アイディア発想のためのメソッド ワークショップやファシリテーションのコツ

第1,2章の解説に続き、今回もbtraxの初書籍『デザインの思考法図鑑』の各章の内容をご紹介していく。
第3章のテーマは『アイディアを練る・コンセプトを立案する』。たとえば新規事業開発に携わったことのある方なら、たくさんのアイディアを出してそれを実現させていくプロセスの大変さをご存知だろう。
第3章はそんな方々に特に実践していただきたいデザインのTipsをたくさん盛り込んだ章となっている。
第3章の内容はこんな方におすすめ:

デザイン思考の基礎を学びたい方、おさらいしたい方
デザインワークショップ…

デザインとは何か?その4つの役割とは

「デザインとは何か?」 これはデザイナーにとっても、それ以外の人々にとっても永遠の問い。 人によって「デザイン」の概念が異なり、それが理由でミス・コミュニケーションがやちょっとした争いすら発生する原因にもなっているからだ。 同じく現代の「デザイナー」と呼ばれる人たちの役割も多種多様で、一言で表現するのはかなり難しい。 そして「デザイン」の担う領域がどんどん広がっている現代において「デザインとは?」という問いは、例えば「言葉とは何か?」といった問いに近いレベルだ。 英語のdesign, Design, DESIGN その違いを知っていますか? 結局デザインとは何なのか? さて、本題に戻ろう。 デザインとは何であるか?これを言い換えると「デザインの役割とは?」である。 人生をデザインに捧げてきた人間として自分なりにその答えをここに表記する。間違っているかもしれないが…。 大きく分けてデザインの役割は4つある。 デザインの役割: 可視化 課題解決 導き シンプル化 【デザインの役割1: 可視化】 デザインは思考の可視化である – ソール・バス おそらく「デザイン」と聞いて最も多くの人たちが想像するのがこの役割。 絵を描いたり色を塗ったり、いわゆる「装飾」的な役割としてのデザイン。 現代では時代遅れと思われがちな役割であるが、これもデザインの最も重要な定義のひとつ。 ここで重要になってくるのは、ではデザインは一体 “何” を可視化するのか? いくつかあるので紹介しよう。 デザインが可視化するもの – 情報 みなさんの日常に最も馴染みのあるデザインが可視化するもの。それは情報である。 世の中はさまざまな情報で溢れているが、それをより人間が直感的にわかりやすく表示するのがデザインの役割の一つ。 例えばこの画像のように、左の表から右のグラフに変換するだけでもかなり理解しやすくなる。結果として、より直感的に理解できるようになり、コミュニケーションに必要とされる時間の短縮にもつながっていく。 デザインが可視化するもの – アイディア 次にデザインが可視化するのはアイディア。 ビジネスのプレゼンやスタートアップのピッチをする際に利用するスライドやデモ動画などがその例だろう。 一人の頭の中にだけあるアイディアを言葉以上にわかりやすい形で可視化することで、その価値が伝わりやすくなる。 そして価値が認められることで、周りの人々を巻き込んだり、予算を獲得したり、投資を受けやすくなったりするメリットがある。 デザインが可視化するもの – ブランド デザイナーの役割の一つとして、ロゴやアイデンティティのデザインがある。これは、その企業やサービスなどのビジョンの可視化に他ならない。 世の中に対し、その存在価値をより視覚的にわかりやすく表現することにより、一目で認識しやすくするのがロゴの役割だ。 したがって「ロゴデザイン = ビジョンの可視化」である。 デザインが可視化するもの – 体験 デザインの役割のひとつが「目に見えないものの可視化」だとするならば「体験」も可視化するとより伝わるようになる。 そもそも体験の可視化なんて可能なの?と思うかもれしれないが、実は既にかなりさまざまなシーンでされている。 その代表的な例が広告。 テレビやウェブ、そして街角のビルボードまで、多くの広告は商品の紹介以上に、そこから得られる体験の可視化を通じたコミュニケーションこそが最も需要な役割である。 デザインをする際に利用するタイポグラフィ、色や形、レイアウト、スペースといった表層は、単なるビジュアルの要素でなく、人間の感情や心理的な影響を持ち、体験そのものの印象を形作る重要な要素なのである。 優れたデザインを通じることで、ビジュアルの要素が整合性を持って設計され、ユーザーの感情や認知に働きかけることで、より効果的なコミュニケーションが可能になる。 【デザインの役割2: 課題解決】 デザインは問題解決のプロセスであり、美しい解の追求である。 – ドン・ノーマン 次のデザインの役割、それは課題の解決。 自分も以前より「デザインの定義って何ですか?」って聞かれた際には、ほぼ毎回「課題を解決するための最も効率的なプロセス」と答えていた。 特に21世紀に入ってから注目されているデザインのフィールド、例えばデザイン思考やUXデザインにおいては、その目的がユーザーの課題解決に定められることが多い。 そして、現代の世の中にある多くのプロダクトは、消費者やユーザーの課題を解決するために生み出されたものである。 では実際にデザインが課題を解決した例をいくつか紹介する。必ずしも デザイン “だけ” で解決したわけではないが、デザインが課題解決という重要な役割の一端を担っていることをお伝えしたい。 デザインが課題解決した例: トースター レトロなタイプのトースター。その見た目も、焼けた時にポンッとパンが飛び出す感じもとても可愛い。 実はこのデザイン、とある課題を解決している。 それは、焼き過ぎを防ぐことと焼けたことを知らせること。 焼けた時にパンが飛び出してくれないといつ焼けたのかが分からないし、そのまま放置すると焦げてしまう。 それに対して飛び出すデザインにしたことで、その二つの課題をしっかりと解決している。 デザインが課題解決した例: カスタネット もうひとつ課題を色によってその課題を解決したプロダクトがある。 きっとみなさんの多くが触れたことがあるであろうカスタネット。 多くの場合、赤と青の2色で構成されている。実はその理由は、男子でも女子でも使えるようにするため。 もともとこれがデザインされた当時は、男の子向けには青、女の子向けには赤、というように性別で色が定められていた。 しかし、クラスによって男女比率が異なるケースがあることで、どちらかの数が足りない状態が頻発していた。そこで、両方の色を合わせて一つにすることで、誰でも使えるようにデザインにしたというもの。 デザインが課題解決した例: スタッキングできる椅子 複数の椅子を重ねて収納できるデザインも、省スペースによって課題解決をした例。 日本の小学校でも授業が終わった後に椅子を重ねて教室の後ろに置くことで掃除をしたりする。 当たり前のように思われがちだが、重ねられる椅子もしっかりとデザインとして工夫が施されているからこその機能である。 【デザインの役割3: 導き】 “デザイン” は見た目のことではなく“どう機能するか” だ – スティーブ・ジョブズ 以前にSNS上で “デザインの敗北” というキーワードがバズったことがある。 施したデザインがユーザーに対して有用な結果を生み出していなかったことから、「役割を果たしていない = 敗北した状態」と言われていた。 その例のひとつがこの公衆トイレのサイネージ。 性別を想起させる典型的なデザインをあえて排除した造形を採用している。おそらく性差別的な表現を避けるためのインクルーシブなデザインを目指したのだろう。 でも、これだと男性用と女性用の識別が難しく、かえってユーザーが混乱してしまう。 それに対応すべく、下の部分に手書きで「男性」「女性」が記載されたテープが後付けて貼らレルという誠に残念な応急処理がなされている。 […]

【btrax初書籍をチラ見せ】第2章 デザイン思考の肝!ユーザーへの共感から問いを立てるためのポイントとは?

第1章の解説に続き、今回もbtraxの書籍『発想から実践まで デザインの思考法図鑑』の各章の内容をご紹介していく。 第2章のテーマは『ユーザーに共感する・問いを立てる』。 デザイン思考の中でも基本となるが自分自身のバイアスが入りがちで工夫が必要である「共感・理解」のステップや、ユーザーリサーチで得たインサイトをサービス・プロダクト設計に活かす方法などをお伝えする。 第2章の内容はこんな方におすすめ: デザイン思考の「共感・理解」「課題定義」に関してより深く理解したい方 ユーザーリサーチなどを行っているが、得たインサイトをサービス開発にどう活かすのかピンときていない方 ユーザーの感じる「不便さ」を言語化して、サービス設計に活かしたいデザイナーの方 第2章 ユーザーに共感する・問いを立てる 目次 デザイン思考:共感・理解 情報の収集・分析・統合 エンパシーマップの活用 デザイン思考:課題定義 ペルソナの作成 カスタマージャーニーマップの作成 カスタマージャーニーマップの活用 操作性ハードル:心理的ハードル① 認知的ハードル:心理的ハードル② 感情的ハードル:心理的ハードル③ デザイン思考:共感・理解 デザイン思考において「ユーザーに共感する」とは?そこからユーザーのことを理解するとは?トレーニングを交えて、「共感・理解」を実践するメソッドをご紹介する。 参考記事: デザイン思考における「共感」とは? – デザイン思考を学ぶ Part 2 情報の収集・分析・統合 ユーザーリサーチで収集した情報を統合・分析する手順を各ステップごとに解説。ユーザーリサーチでインサイトを抽出する方法から、情報分析、情報を組み合わせる時に効果的なダイヤグラム、エンパシーマップの効果と活用方法を見ていこう。 参考記事: 勘違いから見えたデザイン思考の本質とは?—ファシリテーターの経験を通して気づいたこと エンパシーマップの活用 第2項「情報の収集・分析・統合」で紹介したエンパシーマップをうまく活用し、運用していくコツをご紹介。エンパシーマップの運用において陥りがちな失敗と合わせてご紹介。 デザイン思考:課題定義 デザイン思考における「課題定義」は、ビジネス的な課題定義とどのように異なるのか?課題定義の際に抑えたいフレームワーク「POV」と「HMW」を実践しながら、デザイン思考の課題定義の考え方を学んでみよう。 参考記事: デザイン思考における課題定義のコツとは? – デザイン思考を学ぶ Part3 ペルソナの作成 デザインでもマーケティングでも、ビジネスにおけるさまざまなシーンにおいて重要なペルソナ。本項では、その役割や、ペルソナを定義する際の順序、方法をご紹介。「理想像」ではなく、地に足のついたペルソナを作るために重要なこととは? カスタマージャーニーマップの作成 ユーザーがプロダクトを利用するプロセスをマップ形式でまとめた「カスタマージャーニーマップ」。ペルソナと並んでしばしば「理想」を描きがちなものだろう。ここでは、改めてその作成の手順と、作成にあたって押さえるべき3つのポイントを解説。チームの全員で読み合わせたい内容だ。 参考記事: UXデザイナーが教える、本当に機能するカスタマージャーニーマップとは カスタマージャーニーマップの活用 カスタマージャーニーマップは一度作って終わりではない。むしろその後にどのように活用していくかが鍵となる。この項目では、カスタマージャーニーマップを活用し、チームで運用する際に気をつけるべきことをご紹介する。 操作性ハードル:心理的ハードル① サービスデザインにおいては、ユーザーに心地よくサービスを利用してもらうため、3つの心理的ハードル(操作性ハードル、認知的ハードル、感情的ハードル)を感じさせない工夫が必要だ。 心理的ハードルの中でも直接UXデザインやユーザーの「使い心地」に関係する「操作性ハードル」をピックアップして解説する。 認知的ハードル:心理的ハードル② ユーザーがUIを使用している時にダイレクトに感じる負担、それが2つ目の「認知的ハードル」。認知的ハードルの見つけ方と対処法をまとめて、事例とともにご紹介する。 感情的ハードル:心理的ハードル③ 最後にご紹介する感情的ハードルは「感情的ハードル」。ユーザーが感じやすいハードルでありながら、設計者が気付きづらく、対処も難しいとされているハードルだ。そんな感情的ハードルの発見方法と対処法を解説する。 参考記事: サービスデザインで考慮すべき3つの「心理的ハードル」とは まとめ 今回の記事では、『発想から実践まで デザインの思考法図鑑』の2章の内容の簡単にご紹介した。1章に引き続き、デザイナーの方やデザイン的マインドセットを仕事に活かしたいビジネスマンの皆様にとって有益な情報となっていれば幸いだ。 書籍は現在、Amazonにて予約販売を行っている。ぜひ予約して、内容を一足お先にご確認いただきたい。

【btrax初の書籍】第1章:本質的なユーザー理解のために必要なデザイナーのマインドセットとは?

サンフランシスコで創業したbtraxは19年間、デザインに軸足を置いてビジネスを展開してきた。 ビジネスに活かせるデザインに向き合い続けてきたbtrax。このブログFreshtraxも、2008年に解説して以降、15年間継続して投稿を続けており、実は日本語の記事だけでも10,000記事に上る本数を有するオウンドメディアとなっている。 そんなbtraxが、グローバルなクライアントさまと19年間プロジェクトを推進してきたナレッジや、それらを断片的に蓄積し続けたFreshtraxのエッセンスを凝縮した書籍が、btraxから出版される運びとなった。 書籍のタイトルは『デザインの思考法図鑑』。 DX、組織改革、新規事業開発など、ビジネスの新たな取り組みや事業成長にもデザイン的マインドセットが求められる現代。 しかし、部署間、役職間、企業間のギャップなどにより、社内外でスムーズに進行できないという課題が発生することも多々あるのではないだろうか。実際、我々が日々接しているクライアントさまもこうした課題感をお持ちのケースが多い。 こういった課題を解決する足掛かりとなればと、この書籍ではユーザーを理解する〜デザインをターゲットに伝えるまで、包括的なビジネスでのデザインの活用方法をカバーしている。 この一冊を読めば、デザインマインドセットをどのように組織に浸透させ、ビジネスに活かせるかまでわかるようにトピックをピックアップした。 デザイン的思考やマインドセットを社内外のプロジェクトや組織改革に適用したいと考えられているビジネスパーソンの皆さまや、これからのビジネスの現場で活躍できるデザイナーになりたいと考えている皆さまに是非手に取っていただきたい一冊となっている。 書籍の出版にあたり、このFreshtraxでは、今回の記事を皮切りとし、全6回にわたって本の内容を紹介していく。 今回は本の第1章『ユーザーを観る・理解する』の各項のポイントや、ぜひ読んでいただきたいところを皆さんにお見せする。もちろん記事で全てを語り切ることはできないため、より内容が気になった方は本を購入して続きを読んでいただきたい。 第1章の内容はこんな方におすすめ: デザイン思考の「定義・明確化」のステップの基礎を学びたい・おさらいしたい方 新規プロダクトやサービスのユーザーリサーチを効果的に行う上で、事前準備をしたい方 ユーザーインサイトの「核心」をつくことにもっと自信を持ちたい方 デザイナーを目指して勉強をされている方 第1章 ユーザーを観る・理解する 目次 デザイン思考:定義・明確化 デザインリサーチの考え方:生成的調査と評価的調査 デザインリサーチの手法 ユーザーリサーチの考え方:定量調査と定性調査 ユーザーリサーチの手法:ユーザーインタビュー ユーザー理解の本質 リフレーミング 内向的思考 デザイン思考:定義・明確化 デザイン思考。一言で表現すると「ユーザー視点でヒットする商品やサービスを作り出すためのマインドセット」である。今回はデザイン思考の主要5ステップのうち、「定義・明確化」に関して解説。課題定義のために明確にすべき3つのポイントとは? 参考記事: 誰にでもわかるデザイン思考の基本とプロセス ここがちゃうねんデザイン思考。5つの誤解とは デザインリサーチの考え方:生成的調査と評価的調査 この項では、デザインリサーチとはそもそも何か、なぜ必要で、どんな効果が得られるのかに関して解説する。デザインリサーチの基本となる生成的調査、評価的調査のポイント、そしてその調査を行うタイミングなど基礎の概念をおさらいしよう。 参考記事: 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ デザインリサーチの手法 この項では、デザインリサーチの代表的な手法、マーケットリサーチとデザインリサーチの違いを記載する。 「私情」を探るユーザーリサーチと「市場」を探るマーケットリサーチ。それぞれの調査手段の違いや、リサーチャーとしてぜひ心がけたいポイントなどをご紹介する。 ユーザーリサーチの考え方:定量調査と定性調査 この項では、ユーザーリサーチの基本となる定量調査と定性調査のデータの扱い方や仮説の立て方を解説する。定量調査と定性調査の使い分け方法とは? ユーザーリサーチの手法:ユーザーインタビュー この項は、より実践的なユーザーインタビューの方法をご紹介。インタビュー行う際により良いインサイトを引き出すためのマインドセットやポイントをお伝えする。 ユーザー理解の本質 この項では、ユーザー理解の本質に関して言及する。「ユーザー中心思考」のつもりが「ユーザーの御用聞き」になってしまう状況も実は珍しくない。そんな罠に陥らないために、実証実験をもとに分かった、人間の考え方の癖や、それを元にデザインに反映できることをご紹介。 参考記事: 「誰にも使われない機能を持つ製品」が生まれてしまう2つの理由 スーパーカブとコンコルドに学ぶイノベーションの本質とは リフレーミング この項では、リフレーミングの定義とその効果に関してお伝えする。 リフレーミングとは、解決策の変更ではなく問題自体の再定義に目を向け、全く新しい発想を生み出すこと。解決策に行き詰まったら思い出したい内容だ。リフレーミングから生まれた有名サービス事例とともに解説。 参考記事: リフレーミングとは? – ヒットの秘訣は問題へのアプローチの仕方にある 内向的思考 デザイナーの仕事にはコミュニケーションが大きな割合を占める。外向的なイメージを持たれがちなデザイナーだが、実はそうとは言い切れない。この章では、内向的思考の強みや、デザイナーとして活かせる部分に関してお伝えする。 参考記事: 内向的な人はデザイナーに向いていないのか? まとめ いかがだっただろうか。この記事を通して、少しでも本書の目的や内容の理解が深まれば幸いだ。 書籍は現在Amazonで予約販売を行っている。今回の記事を読んで気になった方は、ぜひ一足早くAmazonで予約購入し、書籍を手に取っていただけたら幸いだ。 書籍のAmazon予約ページはこちら

【Webflow Framer, STUDIO】実体験に基づく3つのノーコードツール比較と強み解説

Web制作の現場において、ノーコードツールが頻繁に使われるようになった。 弊社でもここ2年ほどはノーコードツールをプロジェクトで活用し、デザイナーがデザインから実装までを一気通貫で行うケースもある。 2022年に注目のスタートアップトレンドとサービス ノーコードツールの使用は、Webの実装に詳しくない人でも運用を手軽に行えるという面で、チームで活用する際に効率が良い。 何よりノーコードツールは、自分たちでサーバーを管理する必要がなかったり、ドメインの設定も楽だったりと、公開に必要な煩雑な側面が削減できるため、非常に便利だと感じる。 弊社では、数あるWebサイトのノーコードツールの中でもWebflowをメインにこれまで使ってきた。しかし場合によってはSTUDIOを使い、最近はFramerも使い始めた。 この3つのツールは、それぞれ価格や使える機能、使いやすさなどに違いがあり、現在は実際に使いながらどのツールがどんなサイトに向いているのかを模索している。 本記事ではそこで分かった違いから、各サービスの比較・分析をしてみる。今後ノーコードでWebサイトを実装したいデザイナーや、すでにノーコードツールを活用している人の参考になれば幸いだ。 各ツールの紹介 まず詳細な比較に入る前に、Webflow、STUDIO、Framerについて簡単に概要を紹介する。 Webflow 2013年にサンフランシスコで創業されたサービスで、デザイナーをメインターゲットにしたノーコードツールである。 特徴としてはツール上で構築したウェブのHTML, CSS, Java Scriptを書き出せる機能があったり、UIもコードの記述の仕方をビジュアライズしたようなもので、実際にコードを書くときのやり方に忠実なノーコードツールである。 Framer 2015年にオランダで創業されたサービス。この企業はウェブのノーコードツールを提供する以外にも、開発者向けにFramer MotionというReactのアニメーションライブラリを提供している。もともとはコーディングができるデザイナーのためのプロトタイプツールとして始まり今のノーコードツールに至る。 共同編集が可能で、特にコンポーネント機能が充実している。他にもSEOやパフォーマンスを上げるために必要な機能が多く、Google Lighthouseでデフォルトで良いスコアを残せるとアピールしている。 STUDIO 2016年に創業された日本発のサービス。創業者にデザインバックグラウンドがあり、会社のビジュアルなど総合的にデザインが優れていると感じる。 デザインの共同編集ができたり、日本発のサービスであるため日本語対応したチュートリアルやコミュニティ上のリファレンスが多くあったりする。料金もサイト単位のため、チームでの開発をしていくとなると他の2社よりも価格が安い。 3サービスの比較・分析 ここの章では実際に3つのサービスを以下の項目で比較していく。 デザインの実装の仕方・使いやすさ 実装できるインタラクションの自由度 学びのハードル・リファレンスの多さ 価格 前提としてここで取り上げた3サービス全て、基本的なデザインの編集機能に加えて、CMS機能、ページ公開のためのホスティング機能、フォームの制作機能がついている(EC機能が標準でついているのはWebflowだけ)。 そのためそれ以外でデザイナーが実務で使う際に気になるポイントをまとめていく。 1. デザインの実装の仕方・使いやすさ まずはじめにデザインを実装していく際のやり方・使い勝手の良さについて比較してみる。 Webflowの場合 ツールの紹介でもお伝えしたが、デザインを組む時の考え方は実際にHTML・CSSを実装するやり方にとても似ている。 そのためそれらの基本的な知識が前提として必要だったり、知識があれば使い方をより早く学ぶことができる。 他の2つのサービスと比較すると初見ではUIの要素が多くやや複雑に感じる。 しかし、これまでHTML・CSSを使ったWebデザインの実装経験がある人なら早く使いこなしていけるようになっている点はメリットだろう。 一方でそれらの知識がない人にとってはやること・学ぶことが多く、複雑に感じてしまうため、慣れるまでのハードルが高いと感じる。 ただ、実装が複雑な分、複雑なアニメーションの実装やクラスごとにスタイルを統一したページの制作が可能だ。 ある程度のラーニングコストはかかるが、その分デフォルトの機能で自由にデザインを設計できるのがWebflowである。 Framerの場合 FramerのUIはFigmaに近い。そのため、一度でもFigmaを使ったことがある人であれば使い馴染みのあるデザインで慣れるのに時間はかからないだろう。 デザインを作るための必要なアクションも絞り込まれており、基本的にはフレームという要素を足して、そのフレームに並び順などを設定してレイアウトを作っていく。そしてその中にテキストや画像を配置して、スペースを指定する。 この使用感はFigmaでフレームを配置してAutoレイアウトを使い、スペースを調整していく感覚と似ている。 冒頭で説明したようなコンポーネントの作成やスタイルセットの登録と管理が簡単でわかりやすいことは大きなメリットだ。 著者としてはブランドガイドラインやスタイルガイドラインが定義されているデザインのページや、ページ数の多いデザインを作るのに最適だと感じている。 STUDIOの場合 STUDIOは、必要な要素を直接マウスで配置したり調整したり触りながらスペースや画像のサイズを調整しやすいUIになっていると感じる。そのため、とても直感的に編集ができる。 特にデフォルト画面では多くのUI要素を出さずに、編集したい要素をクリックしてUIが出現したり、必要に応じて縮小化されたウィンドウを出すようにしている。   2. 実装できるインタラクションの自由度 Webデザインを制作する上で、アニメーションも重要な要素の一つである。このセクションでは3つのサービスのデフォルトで実装できるアニメーションの自由度を比較する。なお、3つのサービスは全てカスタムコードが使えるため、コードを書けば実装できないアニメーションはないと言えるが、今回はデフォルトの機能でできる範囲を比較することとする。 デフォルトの機能を使って最も自由度高く実装できると感じているのがWebflow である。 Webflowは、ホバーやフェードインといった基本的なアニメーションの設定をはじめ、パララックス表現などの設定もできる。 アニメーションの開始のタイミングの調整も自由自在だ。ページのスクロールや、ページをロードしてからの経過時間などで詳細に設定できる。 操作は複雑で実装も手間がかかるが、その分派手なアニメーションをノーコードで実装できる。 Framerも、FigmaのSmart Animationのように変更前と後の状態を作ることでその差分を埋めてくれるアニメーションを作ってくれる。ただ、Webflowほどは細かく設定はできない。そこまで凝ったアニメーションを使わないのであればFramerでも十分だろう。 一方でSTUDIOは、簡易的なアニメーションの実装はデフォルトの機能でできるが、より複雑で派手なアニメーションの実装にはカスタムコードを使う必要が出てくる。もしくはLottieやSVGなどで事前に作ったモーションを入れ込む必要がある。 3. 学びのハードル・リファレンスの多さ 日本人にとっては、やはり日本語文献と日本語コミュニティがあるSTUDIOが最も学びのハードルが低いと感じる。 動画の解説をはじめ、STUDIOコミュニティも日本語で活発に動いているため、必要な情報を慣れ親しんだ言語で集められるのはSTUDIOへの学びのハードルを大きく下げていると感じる。 ある程度英語のチュートリアルに抵抗がないのであれば、STUDIOの次に学びやすいのはWebflowだろう。 WebflowはWebflow Universityというコミュニティがあり、チュートリアル動画などがとても豊富に用意されている。動画にジョークが入っていたりと、楽しみながらWebflowの使い方を学べるだろう。 英語ではあるがリファレンス自体も非常に多く、大体の困ったことは検索すれば解決できる印象だ。 一方、3つのサービスの中で最も学びのハードルが高いと感じるのが、Framerである。 基本的なチュートリアルはあるものの、サービス自体が比較的新しいため、リファレンスやFAQなども現在はまだ少ないためだ。今後ユーザーが増えていくにつれて、こういったサポートも増えていくだろう。 4. 価格 個人利用でカスタムドメイン(自分で購入したドメインを使う場合)を使わないのであれば、3サービスとも無料でWebサイトの公開までできる。 もしCMSやカスタムドメインを活用したり、複数名のチームで運用したりする場合を想定すると、最も高額なオプションはWebflowになり、次がFramer、最も安価なオプションがSTUDIOとなる。 また、FramerとWebflowはページの公開に必要な料金に加えて「ワークスペース」というものにもお金を支払う必要がある。これは、ページの運用代とは別でチームの参加人数単位でかかる金額だ。チームが大きくなれば1人あたりのワークスペースの価格が上がっていく。 CMSの追加できるコンテンツ量やフォーム機能の制限など細かい条件などで変わってくるが、おおよそ上記の価格差である。 まとめ 3サービスの比較でわかったのは、使うシーンや目的によって、各サービスを使い分けると良いということだ。 ここまでの話をまとめて、著者が思ったことは、 「シンプルなインタラクションで素早く安く実装して公開したい」ならSTUDIOが向いている ページ数が複数にまたがっている、同じ要素を繰り返し使う規模の大きなウェブサイト、ブランドスタイルを定義して、効率よく一貫性のあるウェブサイトを作りたいならFramerが向いている ページ数は多くないが、カスタムコードを使わずに派手なインタラクションまで実装したいのであればWebflowが向いている ノーコードでのWebサイト作成において、各社が何を重要視しているのかがそれとなくこの分析から見えてくるのではないだろうか。 また、各社ともにUIも大きく違うため、ぜひこれからノーコードツールを使おうと考えている方、コーディングに対しての知識があまりないが、ウェブサイトを作りたいと考えているデザイナーは、この記事を参考にツールの検討をしていただけたら幸いだ。 btraxは日米にオフィスを構えるデザイン会社として、世界中のクライアント対し、各国の市場をリサーチし、ターゲットに適切なデザインや体験を提供している。 Webサイトをはじめとするサービスデザインや、ブランディング、コミュニケーションデザインの領域でお困りごとがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

デザイナーなら知っておきたい11の錯視と調整方法

最近はデザインの範囲がかなり広がり、デザイン思考や、UXデザイン、そしてサービスデザインなど「見た目」だけではないデザイン領域が注目されている。 それと同時に「デザイナー」と呼ばれる人の中で基本的なビジュアルデザインに関する知識が乏しい人も少なくはなくなってきた。 しかし、いかなるデザインフィールドであったとしてもデザインの基礎知識が重要であることには変わりない。 英語のdesign, Design, DESIGN その違いを知っていますか? そこで今回はヴィジュアルデザインの細部に関する視覚的錯覚 = 錯視に関しての11のポイントを紹介したい。 一流デザイナーはみんな知っている”錯視調整” 「神は細部に宿る」と言われる通り、”良いデザイナー”と”素晴らしいデザイナー”を分けるポイントの一つに、細かい部分の作り込みが挙げられる。 デザインソフトを使って自動調整しても何故かしっくりこない時がある。それは、視覚的錯覚が理由。 ヴィジュアルデザインにおいては、いわゆる錯視と呼ばれる状態が頻繁に発生するのだ。ここで紹介されている錯視を考慮し、微調整を施せるようになれば、デザイナーとしてのスキルレベルが一つ上がるだろう。 三角形二等分錯視 垂直水平錯視 マッハバンド ヘリング錯視 ハーマングリッド 同時コントラスト錯視 ムンカー・ホワイト錯視 ウォーターカラーイリュージョン ジャストロー錯視 コーンスウィート錯視 ミュラーリヤー錯視 おまけ: Google ロゴに隠された微調整 1. 三角形二等分錯視 まずは小学校の算数の時間に出てきそうな名前の錯視から紹介しよう。 ロゴやアイコンにおいて複雑な幾何学的形状や奇妙な比率のものは視覚的錯覚を起こしやすい。特に三角形のオブジェクトを使ってデザインをする際には注意が必要だ。 機械的に左右対称にしたり、完璧にアラインを取ったと思っても、何故かしっくりこないことがある。そんな時にはマニュアル作業での介入が必要になる。 具体的な例を説明しよう。 三角形を曲線や直線のコンテナ内に置くと、要素が視覚的に”ズレて”見えることがある。これは「三角形二等分錯視」と呼ばれる効果が原因。 YouTubeのアイコンが良い例だろう。 三角形二等分錯視が生まれる原因 三角形の質量の中心は最小外接矩形に基づいて計算される。したがって、正三角形の高さのちょうど半分の場所に点を置くと、視覚的にはるかに半分より上にあるように見えるのだ。 この錯視が発生するのは下記の2つの原因があるとされている。 三角形特有の「底辺」の存在によるスケーリング:三角形は、1つの頂点が遠方にあり、底辺が手前にあるように知覚されることがあるため 三角形特有の重心:中点を求めると人は上下の面積が等しいところを重心と置きがちだが、正三角形の重心は実際の中点よりも下にあるため 三角形を箱の中で中心に見せるには、三角形の重心を求める必要がある。重心とは各頂点から対辺中点への線が交わる点だ。 以下はそれを得るための計算式だ: と、こんなにも複雑な式になってしまうが、心配はいらない。 中心点は、各辺から対角の頂点への距離の1/3の位置にあることさえ理解していれば、三角形や他の図形にも応用することが可能。 それを踏まえて最終的な視覚調整をすれば、違和感の無いデザインを生み出すことができるだろう。 2. 垂直水平錯視 デザインの基本的な構成要素としてよく利用される正方形。実はこの正方形も視覚的な錯覚を生み出しやすい。 Figmaなどのデザインソフトで完璧な1:1の正方形を作成したはずが、パッと見違和感を感じることがある。垂直の辺が、水平の辺よりも長く見える感じがすることがあるだろう。 まるで少し縦長の長方形のような感じ。でも実際に測ってみると完璧な正方形だ。 この錯覚は垂直水平錯視と呼ばれている。 この錯視が面白いのは、異なるカルチャーや性別によっても微妙に異なって見えるところだ。 都市部に住む人々は、農村部に住む人々よりもこの錯視の影響を強く受ける傾向があるらしい。 都市部に住む人々の方が、農村部に住む人々よりもこの錯視の影響を強く受けることが知られている。これは、農村部の人々は平らな土地や平野部に住むことが多く、より距離の感覚に慣れているからだと考え得られている。 農村部の人々は丸い家に住んでいることが多く、図形の認識により慣れているからだとか。 3. マッハバンド UIデザインなどでは、同じ色味のオブジェクトを異なる濃淡で並べるデザイン手法がある。そうした際、それぞれのオブジェクトの間に陰影が見えることがある。 これはオーストリアの物理学者エルンスト・マッハが100年以上前に発見した錯視で “マッハバンド” と呼ばれる。実際には同じ色なのだが、横の色の影響で陰影が見える。 この錯視が発生する技術的な理由は “側方抑制” によるものである。これは、暗い部分はさらに暗く見え、明るい部分はさらに明るく見えるという錯覚。 側方抑制を簡単に説明すると、光を感知する視細胞が網膜の中に無数に存在(1億個程度と言われている)する中で、近隣する視細胞同士の活動を抑制的に作用させることで、境界線を際立たせて見えるようになることだ。(参照) マッハバンドはデザインの世界でも理解しておく必要があるが、実は歯科医にとって大きな障害となっているそうだ。 歯のX線撮影では、輝度の変化を分析するためにグレースケール画像が生成されるが、マッハバンドが正しく識別されないと、誤診断の要因となったりもしているためだ。 4. ヘリング錯視 画面をスクロールしている際に、非常に細い線が含まれるロゴや、微小な点が施された背景画像などが動いているように見えたことはないだろうか?もしくは、動画の中で表示されているテレビ画面の線が光って見えたりしたことがあるかもしれない。 これは、2つのグリッドパターンが重ね合わされた “ムアレ模様” を動かした時にそれ自体が動いて見える視覚的幻想である。 ムアレ模様自体は厳密には錯視ではなく、ヘリング錯視を引き起こすパターンである。 下記のSONOSのロゴの例は、ムアレ模様、ヘリングの錯視、視覚的な運動錯視を組み合わせている。この視覚的テクニックはオプ・アートの世界ではかなり一般的なものになっている。 5. ハーマングリッド SNSなどでも定期的にシェアされるタイプの画像。グリッドレイアウトに背景とのコントラストの高い正方形を並べると周囲の正方形の交点にあるはずのない”シミ”が見える錯視。 特に交差部分にランダムにドットを表示すると、表示されていないところに黒い影が見える。こちらも前述した側方抑制の影響によるものだ。 6. 同時コントラスト錯視 同じ色の2つのオブジェクトを、異なるコントラストの背景に置くと、その2つのオブジェクトが実際は異なる色であるかのように見える現象。 この現象は、ビジュアルデザインの世界では「同時コントラスト錯視」として知られる。どのように色が違って見えるかは人によって異なる場合がある。 この錯視がなぜ起こるのかについて確固たる理論は未だないが、側方抑制が理由の一つではないかと推測されている。 7. ムンカー・ホワイト錯視 下記のGIFを見ると、左の紫のブロックの方が右の紫のブロックよりも色が明るく見えるが、実際には両方のブロックは同じ色だ。ムンカー・ホワイト錯視の原因も側方抑制によるものと言われている。 8. ウォーターカラーイリュージョン 下記の長方形を見てもらいたい。外枠に囲われた内側の色は何だろうか。 例えば、赤枠の長方形。その内側の白色はほんのり赤みがかっているように見えるのではないだろうか。しかし、実際は真っ白なのだ。 この視覚現象は、ウォーターカラーイリュージョン (水彩錯視) と呼ばれ、有彩色2色を用いて図柄の輪郭を描くことで、内側の色が水彩絵の具で彩色したときのように滲んで感じられる錯視現象のことをいう。 上記のボタンに関しても同じ現象が起こっており、内側の白い部分にうっすらと外枠の色が滲み出てるように見える場合がある。 9. ジャストロー錯視 これは皆さんにも馴染みのある錯覚かもしれない。同じ大きさの2つのかまぼこ形を並べると、弧の中心の側に置いた図形がより大きく見える現象。 なぜかまぼこ形を二つ並べるとサイズが異なると知覚するのか、実は決定的なロジックは解明されていない。 一説によると大きな半径と小さな半径の違いに脳が混乱するからだと言われている。つまり、短い側が長い側をさらに長く見せ、長い側が短い側をさらに短く見せている。 10. コーンスウィート錯視 コーンスウィート錯視は、グラデーションと中央の線を使用して、画像の一方がもう一方より暗く見える状況を作り出す。 下図では、中央の垂直な線を境に左側の長方形が右側の長方形より暗く感じるだろう。ところが、2つの画像を縦に並べてみるとわかる通り、2つの長方形は本当は同じ明るさなのだ。 この錯視は、前述の錯視と似た効果だが、実際には下記の2つの点で大きく異なっている: マッハバンドの例では、効果は各オブジェクトの境界に近い領域に見られる錯覚だが、コーンスウィートの錯視はオブジェクト全体の色に影響する。 コーンスウィートの錯視では端の明るい部分はより明るく、暗い部分はより暗く見える。これは通常のコントラスト効果とは逆の状態だ。 11. ミュラーリヤー錯視 […]

デザインのローカライズの必要性とは?日本のウェブサイトの3つの特徴から考える

私たちbtraxは、デザインとマーケティングのローカライゼーションをサポートさせていただくことも多い。しかし、そもそもデザインのローカライゼーションはなぜ必要なのだろうか?今回の記事ではその背後にある理由を探っていく。 今回は、特にウェブデザインに焦点を当てて、日本のウェブデザインの特徴を解説し、ローカライゼーションが必要な理由を紐解いていきたい。 日本のウェブデザインの特徴サマリ: マキシマリスト キャラクターや2Dイラストの使用 淡い色使い 特徴1 : マキシマリスト 映画La La Landのポスターがよく例として使われるが、日本のデザインは他国のデザインよりも情報量を多く含む傾向にある。ウェブデザインも同様で、スターバックスやYahoo!、スマートニュースなどのウェブサイトがその特徴をよく示している。 考えられる要因のひとつは日本の文字文化の豊かさと、それに付随する国民の読解力の高さだ。 日本は文字文化がとても豊かで、チラシ、漫画、新聞、雑誌などからも見えるように1ページに多くの情報が詰め込まれていることが一般的だ。 こういった元々根付いているアナログデザインのマキシマリズムがウェブサイトなどのデジタルデザインにも反映され、好まれているではないかと思われる。 マキシマリストなアナログデザインを通して、日本人は知らないうちに重要な情報を的確に見逃さないよう鍛えられていたのかもしれない。 また、日本人ユーザーは情報量が多ければ多いほど安心感を感じる傾向にあるのではないか、と個人的に考えている。 日本人にとって情報が詳細であればあるほど信頼性は上がる傾向にある。そのため、日本のデザインは、主に「情報を伝えること」を目的としていて、「見せること」は二の次なのではないだろうか。 結果的に、「読めば全ての情報が伝わる」ことが重要視され、マキシマリストのメソッドが多々使用されているのではないかと考える。 なぜ日本のウェブサイトは他国とこうも違うのかについて説明しているこちらのブログで、著者のDavid Gilbert氏は、日本人は購入の決断を下す前に、長い説明文や技術仕様によって高度な保証を必要とするため、”Less is More”の概念はここでは当てはまらない、と述べている。 ちなみにアメリカのデザインは情報は少なく簡潔にまとめてあればあるほど良い、というマインドセットのもとに作られているので、シンプルなデザインが好まれやすい。 このミニマルなデザインを好む傾向は、アメリカ以外の国でも見られる。 事実、Goodfirmsが実施したリサーチによると、USA、ウクライナ、インドに拠点を置くウェブデザイナーの約85%が、ウェブデザインにおいてよくある誤り・失敗は「情報が詰め込まれた、込み入ったデザインにしてしまうこと」だと主張している。 ただし、デザインの好みやトレンドは時代とともに変化している。最近ではミニマルでシンプルなデザインや視覚的な要素を重視するデザインも増えてきているため、一概に日本のウェブデザイン=マキシマリストとは言えないのが現状だ。 特徴2 : キャラクターや2Dイラストの使用 日本のウェブデザインでは、かわいらしいキャラクターや2Dイラストがよく使われる。これは、親しみやすさやウェルカミングな雰囲気を引き出し、ブランドの独自性を協調するといった役割を果たしている。 日本には、アニメや漫画といったポップカルチャーが強く根付いている。このカルチャーをウェブサイトにも反映することで、ユーザーの共感を呼んだり、親近感を誘発しやすくしているのではないかと考えられる。 また、キャラクターやイラストは視覚的に印象に残りやすい。ウェブサイトを訪れたユーザーは、これらの要素を見た時に「あのサイトだ」と思い出しやすくなる。これによってブランドの識別やブランド認知が向上する。 さらに、キャラクターやイラストは感情を表現するのに効果的だ。キャラクターの表情やポーズなどを通じて、感情やメッセージを伝わりやすくできる。 特徴3 : 淡い色使い 日本のウェブデザインには、淡い色が好まれて使われることが多い。 この傾向は業者や商材を問わず幅広いものだが、特に飲食系のサービスや企業のデザインでよく見られる。これらは日本の文化や環境から影響を受けていると考えられる。 日本とアメリカで人気のグミのウェブサイトを比較してみた。どちらも同じキャンディー系商品、ほぼ同じ層をターゲットとしているお菓子であるにもかかわらず、色使いがここまで変わる。 日本のデザインは、その自然や四季の移り変わりからインスピレーションを受けた伝統的な美意識に基づいて、優しい色合いが好まれやすいのではないかと考える。 淡い色や薄いグレーなどは、清潔な印象や和やかな雰囲気を醸し出す効果がある。そのため、そうしたイメージを訴求したいサービスやプロダクトでは特に使用されることの多い色である。 まとめ 今回は、日本のウェブサイトの特徴を3つ取り上げてみた。 以上のように、日本人向けのウェブサイトには日本ならではの特徴や傾向があることがわかる。それゆえ、言語を翻訳するだけではウェブサイトを見てほしいターゲットに「良い」と感じてもらえないことが多々ある。 ターゲットとする国のデザインの特徴を理解し、それに基づいてリデザインやローカライゼーションを行うことで、ターゲット層により魅力を感じてもらいやすくすることができる。 日本のウェブサイトの特徴と他国との比較からわかる通り、デザインのローカライゼーションは国際的なビジネス展開において重要な要素となっているのだ。 btraxは、サンフランシスコと東京に拠点をおくデザイン会社として、日系企業の海外でのブランド認知拡大や、ブランドのローカライゼーション、ビジネスの海外展開を、過去19年に渡りサポートしている。 弊社のサービス内容や、あなたの企業に対してどのようなサポートができるのか、ご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

今さら聞けないブランドガイドラインとは

ブランドガイドラインは、企業やそのブランドのイメージに一貫性を持たせるために非常に重要なものだ。 日系企業では「ブランディング」に大きな予算をとることが難しいこともあり、疎かになりがちな部分でもある。 しっかりとブランディングを行うには、それなりのコストや時間がかかる上に、効果測定もしづらいからだ。売り上げが伸びたからと言って、それがブランディングのおかげなのかは正直わかりづらい。 それゆえ、大きな予算がブランディングに取られづらい傾向にあるのだ。 しかし世界的に見ると、有名なブランドはしっかりとブランディングを行っている。そのブランディングに欠かせないのが、「ブランドガイドライン」だ。 この記事では、そんなブランディングに必要不可欠なブランドガイドラインの定義や、存在意義、そしてその効果について紹介する。 ブランドガイドラインとは|なぜ必要なのか ブランドガイドラインとは、そのブランドに関係する何かをデザインするときには必ず必要になってくるもので、そのブランドのイメージを一貫して保つためにある。 一貫したイメージを保つためには、素材の扱い方や言葉の選び方等にルールを定めておく必要がある。例えば、ロゴを使用する場合、ロゴの周りにどれくらいのスペースが必要かを定義したり、背景に来る色によって、ロゴが何色であるかを定義する。 このように、ブランドガイドラインがあることで、デザインワークの際に「何をやって良いか」「何をやってはいけないか」が明確になる。 それゆえ、企業が一貫した運用を行うことができ、結果としてブランドイメージを保つことができるのだ。 ブランドガイドラインに必要な要素 ブランドガイドラインに組み込まれる要素は、企業の規模感や、ブランドの重要度によっても多少異なってくる。 ここでは、ブランドガイドラインとして抑えておきたい要素を紹介する。 ブランドガイドラインをざっくり2つのパートに分けると、「ブランド・アイデンティティ」(BI) と「ビジュアルアイデンティティ」(VI) に分かれる。 まず、「ブランド・アイデンティティ」(BI) は、企業やそのブランドについてのストーリーを伝えるためにある。主に、企業のビジョンやミッション、ブランドのコンセプト説明がここに含まれる。 そして、「ビジュアル・アイデンティティ」(VI)は、「ビジュアル」という言葉が入っている通り、見た目のデザインにフォーカスしたガイドラインだ。主に、ロゴやフォント、色、トーン&マナーについての説明がここに含まれる。 今さら聞けないデザインシステム入門 ブランドガイドラインの効果 ブランドガイドラインを作成することは、「ブランドの“らしさ”が可視化・共通言語化される」ことに繋がる。 ブランドガイドラインというひとつの資料として、ブランドを可視化・言語化させることで、共通の理解が深まり、社内のデザイン制作の効率化の面でも重要だ。 例えば、ロゴを白色にして使っていいのか?周りに余白はどれくらい必要か?など素材の取り扱い方についても、ブランドガイドラインを見ればすぐわかる、というのがブランドガイドラインの良さだ。 リモートワークも一般的になっている今の時代で、属人化を避けることにも繋がる。誰が作っても一定のクオリティを担保でき、まとまりのあるアウトプットになりやすいのがブランドガイドラインである。 また、ブランドガイドラインがあることで、社外の人から、そのブランド“らしさ”を理解されやすくなり、コミュニケーションもスムーズになる。 ブランドを可視化・言語化することは、顧客との信頼関係の構築に繋がる。一貫性のあるブランドイメージを作ることによって、認知度も上がりやすく、覚えてもらいやすくなるというメリットがある。 ブランドストーリーが日本企業にとって重要な理由 作成だけでなく運用も大事 ブランドガイドラインは一度作成したら終わりではなく、常に見直しが必要なものである。 ブランドをリニューアルするタイミングが来るかもしれないし、それ以外でも、会社やブランドとして、マイナーチェンジは常にあるものだ。そのため、アップデートをすることを念頭に置いた流動的なシステムとして作れると尚良い。 会社のビジョンやミッションから、どのようにブランドアイデンティティが設定され、それがどのようにビジュアルに落とし込まれるか、などの背景を把握することで、ブランドへの理解度が深まり、ブランドガイドラインがより社内に浸透しやすくなる。 それだけでなく、運用やアップデートの際もブランドの一貫性を保ちやすくなるだろう。 ブランドガイドラインをただのルールとして使うよりも、「なぜそのガイドラインが作られているのか」を意識しながら活用できると、よりブランドイメージに忠実で、一貫性のあるデザインが作れるはずだ。 継続的に運用できるブランドガイドラインを作ることが、社内外へのブランドの“らしさ”の伝達に効果を発揮するだろう。 Your brand is what other people say about you when you’re not in the room. Jeff Bezos, Founder & CEO of Amazon

「良いデザイン」とは?GoogleのUX Lead Designerから学んだ5つのこと

筆者にとって初めてとなるサンフランシスコ滞在中、GoogleのUX Lead DesignerであるSteven Ma氏によるUXワークショップに参加した。 参加した理由は主に2つ。一つは単純に、デジタルプロダクトデザインの第一線で活躍するデザイナーの話を聞いてみたかったという理由。 もう一つは、筆者自身もワークショップでファシリテーションを行っているため、ワークショップそのもののデザインとファシリテーションの仕方を見て学びたかったというものだ。 ワークショップの内容としては、これからUXを学んでみたいと考えている人たち向けにデザインシンキングやUX、UIのイントロダクションが中心となるもので、筆者も以前受講、終了した Google UX Design Professional Certificate のコース内容をざっと網羅するものであった。 普段東京でデザイナーとして仕事をしている筆者に、Steven Ma氏は長年のキャリアから得た知見を、快く丁寧にシェアして下さった(さすがに最新のGoogleでの仕事は極秘だったが)。 今回はその中でも特に印象的だった「良いデザインとは?」「良いUXをつくるには?」という問いに対する考え方をシェアしつつ、自分の考えをまとめたい。 良いデザインとは? Steven Ma氏によるとデザインはビジネスであり、良いデザインは、顧客の問題を解決し目標を達成させるものだ。 ビジュアル的な魅力があるものを作ったり、デザインアワードで賞を取ったりすることが大事なのではなく、顧客のビジネス上の課題を解決することがデザインだと言う。 実際に世間的にも、デザインとはただビジュアル的に綺麗なものを作るだけではないという認識は、すでに浸透しているだろう。むしろ顧客は、そのプロダクトがちゃんと機能すれば、ビジュアル的に魅力的かはさほど気にしない。 例として、”Craigslist”というサービスがある。1995年に開始された、目的や地域別に誰でも手軽に広告を掲載できるこのWebサイトは、創業からほぼデザインを変更していない。 ビジュアル的に魅力があるとは言えないこのUIにも関わらず、月2.5億 (250million) 人ものユーザーが利用している。(参考) この事例から言えることは、ユーザーがこのサービスに求めているのは、欲しいものがちゃんと探せて、目的が達成できることだ。ユーザーに体験してもらいたいこと、つまり良いUXを提供できていることが最も重要で、ビジュアルは二の次であるということは、利用者数から見てとれるだろう。 また一方で企業にとって良いUXは、ユーザー数とそれに伴うお金を生み出し、必要なものの開発保守や運営以外に掛かる無駄なお金をセーブする。 企業は、顧客の問題解決を目指しながら、自社のビジネスもサステナブルに回していく必要がある。そのため、サービス提供側にとっても、良いUXの提供は大切なのだ。 ユーザー / 企業双方にとって、良いUXが良いデザインの条件となると言えるが、何も全てのサービスやプロダクトが、ビジュアル的な魅力が不要というわけではないと筆者は考える。 そのサービスが良いUXを提供でき、ユーザー数とそれに伴うお金を生み出せることと、ビジュアル的な魅力があることは同義にはならないということが重要だ。 ビジュアルにどの程度重きを置くかは、そのサービスのターゲットとしている層やコアにしたいUXの設計、作り手の思いによって変化する部分であろう。 実際、ビジュアル的な要素はユーザーの感情に大きく影響する。筆者も、美しいものやかっこいい、可愛いと感じるものは、見ていてワクワクするので大好きだ。 ただ、ビジュアルを含めた様々な要素の優先順位付けをしながら、顧客の問題解決を目指し、リアルな数字を見ながら自社のビジネスを回していく必要があるのだと思う。 良いUXをつくるために意識すべきこと ではここで、良いデザインのために重要な「良いUX」をつくるために意識したいことを5つご紹介していく。 1. 全てはケースバイケース マインドセットとして、「全てはケースバイケース」とフレキシブルに考えられることは大切だ。デザインのセオリー上、良いとされているからといって、全てをセオリー通りにすべきというわけではない。筆者自身も、複雑な内容の業務システムを扱うプロジェクトでは特にそれを実感した。 その際に重要になってくるのがユーザー理解だ。どのようなユーザーが、どんな場面で何を目的にそのプロダクトを使うのか。ユーザーはそのプロダクトの中で、何ができると1番嬉しいのかなどをリサーチを通して探っていく。 筆者もデザイナーとしてユーザーインタビューに参加させてもらう機会があるが、こちらが想定していなかった利用シーンや目的が発見できるため、とても学びが多い。 実際にユーザーの声を聞いたり、クライアントとディスカッションを重ねることで、ユーザー理解を深め、ユーザーが使ってみたくなるようなプロダクトへと近づけていく。 2. チームメンバー1人1人がオーナーシップを持つこと Steven Ma氏は、「プロダクトのために働くのではなく、プロダクトを自分が生み育てている意識が大切だ」と言う。 これは、特に組織が大きくなればなるほど、重要になってくる部分なのかもしれない。様々な役割の人の働きからビジネスはつくられていて、自分の行っていることが何に繋がるのかという、マクロな視点も忘れないようにしたい。 1デザイナーとしてのタスクを抱えつつ、マネジメントも行う彼は、チームビルディングにはコミュニケーションと、人対人の信頼関係が重要だと話してくれた。 やはりという感じがするが、オフラインで1on1を頻繁に行っているというチームの話はコロナ期間が明けて、より耳にするようになった。 弊社は日米にチームがあるためface to faceで話すメンバーや機会は限られているが、最近は日米間の移動が増えてきている。 移動時間が削減できるなど、リモートワークの良さももちろんあるため、上手くハイブリッドワークが活用できると良いと思う。 3.本当にその仕様や変更は必要か? リサーチの結果、ユーザーのインサイトが見えてきたり、「こういう風にしてほしい」といった要望があったりするだろう。 その際は、本当にその仕様や変更は必要なのかを改めて考えたい。その仕様によって(または仕様を変更することで)、ユーザーは何を得て何を失うのか?また、その変更によってビジネス的に得るものは何か?を問う必要がある。 筆者も、リサーチやクライアントとのディスカッションを通して見えてきた要望をデザインに落とし込む際には、なぜそれが必要なのかは意識して考えるようにしている。 要望をそのまま反映すると、複雑なUIに繋がったり、運用を十分考慮できていない部分が出てきたりしてしまう。そのため、他のやり方で「こうあって欲しい状態」を実現できないかを考えていくと、良い着地点が見つかる気がしている。 4.今すぐに行うべきものなのか? あるタスクにおいて、その仕様や変更が必要となった場合は次に、それは今すぐに行うべきものなのかを考えたい。 その事項は、Must(優先度:高)なのかNice to have(優先度:低)なのか?優先順位が高いものが複数ある時はどうするのか? Steven Ma氏によるとその時は直近3ヶ月で取り組むべき、最もインパクトの大きい問題は何かを考えるとのこと。彼のプロダクトマネージャーは、優先順位が高い問題が複数上がってきた場合、ビジネスインパクトの大きさを比較して決めているそう。(「彼女は非常にロジカルな人だ」と言っていた。) 5.データに基づいてデザインする 良いUXをつくるためには、今まで挙げたものに加え、実際のデータに基づいてデザインすることが重要だ。データの存在は大きな判断材料となり得る、ということは言うまでもない。 その機能が実際にどの程度使われているのかについて、ログから分析したり、A/Bテストなどの複数のデザインパターンを用いて、データを比較する。その結果からより効果的なデザインを取り入れていく。 筆者もデータアナリストの方と協働させていただく機会があったが、データがあることでユーザーリサーチだけでは見えてこなかった部分が見えてきたり、ユーザーニーズの裏付けになったりして、その大切さを実感した。 まとめ 今回は、長年デジタルプロダクトのUXデザイナーとして働いているSteven Ma氏の知見をもとに、デザインとビジネスの関係と良いUXをつくるために意識したいことについてご紹介した。 ワークショップ中、彼が何度も「ビジネスインパクト」という言葉を口にしていたことが印象的だった。もはや世界のインフラとなっているGoogle。インパクトの大きさも凄まじいものだろう。 また、一人のデザイナーとして彼のデザインや仕事に対する姿勢など非常に学びの多い時間だった。 今回のサンフランシスコ滞在中では、彼を含め日本のデザインやプロダクトに興味のある方に多く出会った。これからも日米の架け橋となれるよう、デザインを通じてビジネスを支援していきたい。 ビートラックスでは、リサーチをもとにしたユーザー理解に始まり、得たインサイトを活かしたブランドデザイン、サービスデザイン、コミュニケーションデザインを提供している。「デザインパートナー」としての伴走者をお探しの方、プロジェクトのご相談はこちらより。

今さら聞けないデザインシステム入門

最近SNSなどでデザインシステムに対する注目度が増していると感じる。 昨年、日本のデジタル庁がデザインシステムを公開し、ニューヨークとパリに拠点を置くデザインエージェンシーのAREA 17によってOpenAIのデザインシステムが公開された。 デザインを専門職としていない方でも、「デザインシステム」という単語を見かけたり、さまざまな企業のデザインシステムを見る機会が増えたと感じているかもしれない。 本記事では、デザインシステムが生まれた経緯や存在理由をはじめ、デザインシステムの基礎をご紹介したい。 デザインシステムとは何か? デザインシステムとは、デザインに関わる複数の要素(色やフォントなどさまざまなもの)をひとつに管理したものである。 デザインシステムの存在意義は主に次の2点と考えられる。 一つは、デザインチームの生産性向上のため、もう一つは、デザインの品質向上のためである。 デザインシステムを導入することで、一貫性のあるデザインをチームでも実現することができ、ブランドイメージの統一やユーザー体験の向上などの効果が期待できる。 デジタルプロダクト上で高品質なUIや体験を提供するためのコンポーネント(CTAボタンといった要素)の集まりもデザインシステムの一部である。 デザインの組織的なアセットとして、デザインシステムの他に「ヴィジュアルアイデンティティ(VI)」や「ブランドガイドライン」といったものがある。 これらの違いは、企業の上位概念の共通認識をとるために作られているか、より現場レベルでの運用方法を明示するために作られているかのレベルの違いである。 ヴィジュアルアイデンティティをはじめとした企業の方向性を示すアセットは、いわば上位概念に位置し、デザインシステムやブランドガイドラインはより現場に近い概念である。 名前にもついているシステム(System)には「制度」「方法」「順序」といった意味があるため、「現場の運用のための制度や方法」という概念は感覚的にわかりやすいのではないかと思う。 デザインシステムの基本の3要素 では、デザインシステムとはどんな内容で構成されているのだろうか。ここからは、デザインシステムを構成する3つの主な要素をご紹介する。 その前に、そもそもデザインシステムは、デザインシステムを作る対象となるプロダクトやサービスによって、含まれるべき要素が変わってくるものだ。デザイナーやマネージャーはシステム化する対象によって、デザインシステムの内容をアレンジする必要があることをここでお伝えしておきたい。 その上で、ここでは、最も基本かついずれのデザインシステムにも含まれるべき要素としてご紹介する。 1.デザイン原則 これは、企業がプロダクトを作る上で重視するデザインの考えや思想を可視化させたものだ。 デザインシステムは、基本的に複数人で運用される上に、時にはプロダクトの成長に合わせてコンポーネントリスト(詳細は後ほどご紹介する)を更新することが出てくる。 そんな時に、デザイン原則として、重視しているデザインの考えが明文化されていると、状況に変化が起きても、デザインの根本を見失わず、共通認識を持つことができる。 参考:Spotifyのデザイン原則に関する記事 2.スタイルガイド スタイルガイドは、カラーパレットやフォントをはじめ主にビジュアルデザインに関する要素を集めたものになる。 ブランドイメージをビジュアルとして可視化するための規則であり、デザイナーはスタイルガイドに沿って色やフォントを選ぶことで、どんなデザインでも同じブランドから出ている統一感を出すことができる。 3.コンポーネントリスト スタイルガイドを基に作成された「繰り返し使えるデザイン要素」を集めたものである。 例えばWebやアプリ上のボタンを初めとしたテキストボックス、ナビゲーションバー、タグなどである。 目的に対し、その達成のための要素という1:1のコンポーネントを作っていくことで、デザイナーが複数人いる現場でも一貫性のあるユーザービリティと体験を提供でき、開発側もUIの管理がしやすくなる。 デザインシステムを作る場合にはこの1から3にかけて要素を組み立てていくのが一般的な流れとなる。 デザインシステムの運用方法 デザインシステムは作って終わりではなく、運用していくことが重要である。デザインシステムの運用において一般的に重要とされていることを紹介する。 1.ドキュメンテーションの整備 デザインシステムに関するドキュメンテーションを整備して、関係者の誰からも見やすようにする。 デザインシステムは、デザインシステムの制作者以外が使うことがほとんどだ。時にはデザイナーではない人も使うものだ。 そのためデザイナー以外にも分かりやすく、すぐに内容を確認できる状態が望ましい。 例えばSmart HRではデザインシステムをWebページ上に公開している。他にもよくあるのはFigmaで制作しておき、それを公開しておく方法だろう。 2.コミュニケーションの確立 デザインシステムの利用に関する情報共有や問題解決のためのSlackなど、コミュニケーションチャネルを確立すると関係者同士の連携が円滑になる。 デザインシステムは運用していく中で必ず課題は出てくるものだ。それをいち早く報告し改善できる仕組みとして、コミュニケーション方法の確立は重要である。 3.バージョン管理の実施 デザインシステムは日々改善されていく。そのためバージョン管理を実施することで、新しい要素や変更が加わった場合に、関係者がそれを追跡でき、問題が発生した場合にも簡単に元々のバージョンまで戻ることができる。 4.ユーザーフィードバックの取得 デザインシステムの利用者からのフィードバックを積極的に回収し、その情報をもとに改善することも重要である。 多くの企業が自社のデザインシステムを公開している理由の1つだ。イギリス政府のように国営のサイトの体験に関するフィードバックを民間から発信できるコミュニティを持ち、その中で上がった意見を元に改善が進められるケースもある(参照)。 まとめ 本記事ではデザインシステムの基礎となる存在理由や要素、運用方法をご紹介した。 デザインシステムは企業におけるデザインチームの生産性向上、デザイン運用ための品質担保という目的があるが、それを運用するのはデザイナーだけに限らない。 エンジニアやプロジェクトマネージャーも、このデザインシステムを参考にしながらプロダクトを作っていく。そのため、デザインシステム自体は企業の重要なアセットである。 特にデザインという属人的な領域において、デザインを「システム」として管理することは、どんなデザイナーでも一定の成果を挙げやすくなるため、デザインの質の向上に寄与するだろう。 この記事を読んで、デザインシステムを認知する人が増えたら幸いである。

いまさら聞けないジェネレーティブAIの基本【生成系AI vol.1】

ここ数週間でジェネレーティブAI (生成系AI) がネットを中心に大旋風を巻き起こしている。 SNSを見ればタイムラインに次から次へとChatGPTの上手な使い方やアウトプット画面。そしてAIによって生成されたリアルな画像がシェアされている。 そして一週間でものすごい数のAI系のサービスがリリースされている。 生成系AIの進化が爆速すぎる あまりにもいきなりすぎる。あまりにも進化スピードが速すぎる感じがする。昨日できなかったことが今日できるようになったりしてる。 まるで今までの1年間におけるテクノロジーの進化がまるで1日で一気に達成されてる感覚。 そんな爆速なスピードで生成系AIが普及し始めたものだから、ついていくのがやっとな感じがする。僕自身も会社のテクノロジー主任に教えてもらいながらなんとか知識を保っているレベルだ。 生成系AIのウェビナーに登壇することに そんな状態だったのにも関わらず先日「世界に衝撃!Generative AIとは?」というタイトルのウェビナーで登壇した。 元々は友人でもあるTomorrow Accessの傍島さんから一ヶ月ほど前に依頼をいただき、その際には快諾した。しかし、それからイベント開催するまでの間にとんでもなく進化してしまった。 GPT-4がリリースされ、ChatGPTもアップデートされ、Midjourneyもv5になった。というか、ここで自分で書いていても正直よくわからないくらいだ。 デザイナー目線で説明する生成系AI そのため、僕が行ったウェビナーの内容は極力誰にでもわかるように心がけた。そしてできる限りデザイナー目線でのお話をした。 今回はその内容を元に誰にでもわかる生成系AIの基本をウェビナーで利用したスライドを活用しながらまとめることにした。 この記事はその第一弾である基本編である。 生成系 (ジェネレーティブ) AIとは? まずは基本中の基本。そもそも「生成系AI」って何?というところから。 これは生成を意味する英語の “Generate” と人工知能である “AI” を合わせた “Generative AI” の日本語表記で「AIで何かを生成する」という意味。 簡単に表現すると2つ以上の入力に対してAIが “いい感じ” に出力を生成してくれるのが生成系AIのサービスだったりする。 例えば、「サンフランシスコの風景写真とモネの画風を合わせて」とAIにお願いするとこんな感じになる。 また、ChatGPTのように何かを聞いたらそれに対して答えてくれる仕組みと、音声を再現する仕組みを合わせて、故スティーブ・ジョブズを再現できたりもする。AIがジョブズの声を学んだことで実現した結果がこれ。 ということで、おさらいになってしまうが、生成系AIは一言で表現すると、”文字 や 画像等を等入力しAIに生成させる” 仕組み、である。 何が生成できるの? じゃあ、そんなすごいAIだったらどんなものが生成できるのか? 全てを想定することは永遠に難しいが、今のところは: 文章 画像 動画 ゲーム Webサイト アプリ 音声 はアウトプットとして確実に生成することが可能。 文字から画像、画像から文字、画像から画像も可能 生成系AIの使い方で最も一般的なのは、文字を入力して文字を出力してもらう手法。ChatGPTはまさにそうで、指示に従ってメールの本文を書いてくれたりする。 次に一般的なのは、文字を入力してそれに応じた画像を生成する使い方。たとえばこんな感じ。 また、画像から文字を生成することも可能で、AIが画像に写っている物体を分析してユーザーからの指示に応じた内容を生成してくれる。 あと、複数の画像を提供して、それを元にAIが画像を生成することも可能になっている。例えばこの例のような感じで。 ここまで読めば、難しいことがわからなくても、とりあえず生成系AIがかなり便利なのがお分かりいただけたと思う。 なぜ革命的なの? こんなにも凄いことができるのだからかなり革命的。 でも、何がそんなに騒がれるほど凄いのかというと、インターネットがこの世に生まれてから、恐らくこのテクノロジーによって時代が “第三期” 情報革命に入ろうとしているからだ。 第一期はWebが普及し、ハイパーリンクで情報が得られるようになった時代。初期の頃のYahooやWikipediaなどが良い例。 第二期はネット上の情報が増えすぎて、リンクだけでは追えなくなったことで “検索” テクノロジーを活用して情報を獲得するようになった時代。まさにGoogleが世界一になった理由がそれ。 そして、第三期が対話と生成で情報が獲得できる時代。まさに我々は生成系AIの登場によって第三期情報革命を目の当たりにしようとしているのだ。 続きは来週… 次回は生成系AIを操る際に重要になってくる「プロンプト」に関してできるだけ簡単に、わかりやすくまとめる予定です。

【学術的に解説】デザインは文系なのか?理系なのか?

著者はサンフランシスコにある大学に通うデザイン科の学生だ。現在Senior Projectと呼ばれる、いわゆる卒業制作の授業を取っているのだが、そこで初心に戻ってデザインの定義について考え直すレクチャーを受けた。今回は、その授業での学びをまとめてみたい。
アメリカの学士号システムについて
まず、アメリカの大学の学士号 (Bachelor’s Degree)は、日本と同様に理系と文系に分けられる。
理系は Bachelor of Science (B.S.) で、文系はBachelor of Arts…

ザンビア出身、日米で活躍するUXデザイナーが考える、各国のサービスデザインの違いとは【インタビュー後編】

一級建築士からUXデザイナーへ。業界・国境を超えて挑戦を続けるNondo Sikazwe氏から見た日本のデザイン市場とは?【インタビュー前編】では、アフリカ・アメリカ・日本を移り住みながら、建築業界からテック業界へ転身した異色の経歴を持つNondo Sikazwe氏に、これまでの経歴や、グローバルな視点からみた日本のデザイン市場について話を伺った。 後半では、Sikazwe氏にとってのデザインの定義や、各国の忘れられないプロダクト、今後のデザイナーとしての目標などについて伺った内容をまとめてご紹介する。 目次: デザインは​​「問題解決の手段」 アフリカ、アメリカ、日本の忘れられないプロダクト 日本市場に興味があっても学ぶ手段がない世界のデザイナーたち デザイナーとしてのこれからの目標 Nondo-Jacob Sikazwe ザンビア出身。 南アフリカのウィッツ大学で建築を学び、建築士としてアフリカ各国で複数のプロジェクトへ従事した後、隈研吾建築事務所でのインターンを通じて来日。 その後、千葉大学にて工学の修士号を取得。専門はテクノロジーを活用したサービスデザイン。 修士課程に在学中、スタンフォード大学へ留学。現在は、都内のデザイン会社にてUXデザイナーとして勤務する傍ら、非営利団体での活動や、大学などの講演など、幅広く活動している。 Akiko Sakamoto btrax UXリサーチャー。東京都出身。国際基督教大学に在学中、オランダのマーストリヒト大学へ交換留学を経験。帰国後、外資系企業にて人事、コミュニティマネジメント、カスタマーサポートなど幅広い職種を経験した後、UXデザイナー/リサーチャーへ転身。 デザインは​​「問題解決の手段」 Akiko: 前回のインタビューでは、Nondoさんのこれまでのご経歴や、なぜデザインに興味を持ったのかについてお話を聞かせて頂きました。ここで改めてお聞きしたいのですが、Nondoさんにとってのデザインの定義は何ですか? Nondo: 建築もエンジニアリングデザインも、広義では工学に含まれます。ですので、私は生まれてからずっと工学の畑で育ってきたと言えます。 私たちにとってデザインとは、常に問題解決のための手段です。問題があったときに、それを解決するプロセスがデザインなのです。 例外的なケースは、アートとデザインが組み合わさったときですね。 アートにもデザイン的なパートはありますが、デザインには常に想定されるユーザーがいて、デザイナーの仕事はそのユーザーの課題を解決することであると私は考えています。 デザイナーは、常に自分がデザインしたプロダクトを使う人のことを考え続けなければならないと思っています。 Akiko: なるほど。建築の場合も同様とのことでしたが、スタンフォードで学んだことで少し考え方に変化が起こったりはしなかったのでしょうか? Nondo: スタンフォードへ行っても、自分のデザインへの考え方には変化が起こらず、むしろ確信が持てるようになりました。 私なりの「デザインとは何か」についての考え方は、私が生まれ育ったザンビアで、かなり早い段階で明確になっていました。 日本へ来たことで、自分はアフリカ出身のデザイナーであるという自覚が強くなり、スタンフォードで学んで、自分が来た道と今やっていることは正しいのだという確信と自信を得ました。 Akiko: 建築家、UXデザイナー、エンジニアなどいろいろな肩書きで活動されているNondoさんですが、取り組む課題や、使用するツールが変化しても、根底には「ユーザーの問題を解決する」という共通の目的とアプローチがあるということですね。 確かに、一般的には「デザイン」と聞くと目に見えるビジュアルの美しさを作り込むようなイメージを持っている人も多いように思います。ですが、まちづくりや電子機器の設計、ソフトウェア、日々使う日用品の設計など、私たちの身の回りにあるあらゆるものがデザインの対象なのだと改めて感じました。 アフリカ、アメリカ、日本の忘れられないプロダクト Akiko: 大学院でサービスデザインにフォーカスを当て研究をされていたNondoさんですが、アフリカの国々、アメリカ、日本のそれぞれのマーケットで忘れられないお気に入りのサービスやプロダクトはありますか? Nondo: 難しい質問ですね。サービスデザインは、非常にホリスティックで大きなプロセスだと思うんです。 建築でいえば、サービスデザインというのはアーバンデザイン、つまり都市設計の概念に近いと思っていて、その都市に関わるもの全てが設計の一部ですので、評価することが容易ではないんです。 身近なところでは、少し極端かもしれませんが、ディズニーランドはサービスデザインを理解するのには良い例かもしれません。 ディズニーランドへ行ったことがある人であれば、敷地に入ってから目にする色やロゴ、聞こえてくる音楽、飲み物を飲むマグカップの形まで、全ての経験にディズニーの世界観を体現したデザインが落とし込まれていることがわかると思います。 サービスエクスペリエンスとは非常に包括的で幅が広いんです。 ディズニーが「コンテンツの世界観」を「ビジネス」にするまで【ディズニーの成功理由①】 舞台化、グローバル展開の背景にあったディズニーの戦略とは【ディズニーの成功理由②】 夢と魔法の国を実現する技術、時代と共に変わるビジネスモデル【ディズニーの成功理由③】 リープフロッグ現象 Nondo: 日本のサービスエクスペリエンスについて考えること自体は、比較的簡単かもしれないですね。 なぜなら大きな会社が全てを統括しているケースが多いので、様々なサービスが包括的に繋がっているケースが多いからです。 ただ、そのエクスペリエンスのデザインが上手くなされているかどうかはまた別の話ですね。 一つの会社やブランドが、ビジネスからプライベートに至るまで、あらゆるところでシェアを占めていて、多くのものが一つのアカウントに紐づいている状態に多くの人があるのではないでしょうか? これはサービスエクスペリエンスを考える上では非常に重要です。 一方、アフリカでは状況が異なっており、多くの会社が小さい単位で分かれて独立しています。 アフリカでサービスデザインの成功例を見つけられるのは、保険と医療、そして銀行サービスの分野です。 正直この3つの分野については、アフリカのサービスデザインは欧米と比較しても世界トップレベルで進んでいると思います。 どれも、ユーザーのライフスタイルと深く結びついている分野で、ホリスティックなソリューションが求められます。 例えば、保険会社のDiscovery Healthは、バンキングと保険をうまく結びつけたサービスを提供しています。 日本では、まだお年寄り向けに紙の通帳が存在していると思うのですが、アフリカの場合はそもそも長らくインフラが整っていなかったので、手紙を送る選択肢すらなかった人々が、ファックスを飛び越えて、突然メールを送る選択肢を得ました。 このような急激なテクノロジーの変化をリープフロッグ現象と呼びます。アフリカのお年寄りたちは、デジタルのプロダクトの使い方を覚える以外に、メッセージを人に送る手段がなかったので、必死にその使い方を覚えました。 ですので、アフリカではお年寄りもスマホが使えます。信じられないかもしれませんが、飲み水にアクセスがなくてもスマホは持っているというような人々が存在するんです。 私は、「お年寄りはテクノロジーへの順応が遅い」というのは誤った固定観念だと思っていて、実際のところ、お年寄りの中にもかなり適応能力の高い人がいて、時には普通の若い人よりも早く学習してテクノロジーを使いこなしてしまう人たちもいます。 もちろん、苦戦したり、困惑する人もいますが、それ以外に方法がなければ彼らは多くの場合、私たちが思っているよりも早く学び、新たな技術へ順応していきます。 日本では飛躍することをせずに、常にバックアップのオプションを用意して徐々に移行をしていくケースが多いので、ユーザーは移行を強いられることがなく、どんどん抜けられなくなってしまうのかもしれません。 美しくまとめられたシームレスな体験 Akiko: 日本のサービスやプロダクトで印象に残っているものはありますか? Nondo: 日本には巨大企業が多数存在していますが、保守的な業界が多く、包括的なサービス設計ができている企業は稀だと思います。 例えば、スマホとパソコンどちらでも使えるプロダクトを提供している企業において、デスクトップ上では使い勝手が良くても、手元のスマホで開いてみるとデザインが良くないプロダクトをよく見かけます。 しかし、優れたプロダクトが存在していないわけではありません。 例えば、福岡発のみんなの銀行は、デザインチームが非常に良い仕事をしていると思います。 比較的保守的とも言える日本の金融業界の慣習に縛られることなく、若者向けのクールなブランディングとスマートフォンで全てが完結するバンキングサービスを設計し、ユーザー獲得に成功しました。 また、日本では全体的にフィジカルのプロダクト設計の質が高いと感じます。 JRのSuicaは好例で、ユーザー体験の設計が素晴らしいと思います。パスを購入後、それをスマートフォンやスマートウォッチと同期でき、電車に乗るだけではなく買い物の支払いにも使えるなど、シームレスにフィジカルとデジタルの体験が繋がっています。 ソニーのプロダクトも非常に考え抜かれたものが多いと思います。 実は、私の父が昔からソニーの大ファンだったので、子供の頃、家にソニーのプロダクトがたくさんあったんです。 父が新しいソニーの電子機器を買ってくる度に、私も説明書を読んで仕組みを学び、とてもクールだなと思っていました。 例えば、ハイファイセットのビジュアライザーの動きや、CDの挿入ボタンを押した時の蓋の開き方、音楽を流した時の液晶画面の表現など、全てが美しくまとめられていて子供心に非常に印象に残りました。 ミニバスタクシーとの比較にみるUberの革新性 Akiko: アメリカで思い出深いプロダクトは何でしたか? Nondo: アメリカではWow!というほど印象に残っているプロダクトはあまりないのですが、Uberを初めて使った時はとても驚きましたね。 アフリカには「ミニバスタクシー」という相乗りサービスがあります。 これは公に認められているサービスではないのですが、一つの車に複数の人たちが相乗りし、安価に移動することができるサービスです。 アフリカでは最も安い移動方法の手段の一つで、街の道路で乗車を希望得する客がタクシーに乗る時のように手を挙げると、その場でミニバスタクシーが止まってくれて、乗客はハンドサインでどこまでいきたいかを示すんです。 これは独特のカルチャーで、みんなこのハンドサインをサインランゲージとして知っています。金銭的に他の移動の選択肢がない人にとっては不可欠なサービスです。 ただ、会計はキャッシュのみでピッタリ支払うのは大変ですし、計算もその都度ドライバーの暗算ですので煩雑になりがちです。 学生でお金がなかった頃にこのサービスをよく使っていたため、Uberを始めて使った時、ミニバスタクシーのペインポイントが見事に解決されていて非常に感動したことを覚えています。 ミニバスは「予算が限られるが、遠くへ移動する必要がある」というニーズに対してソリューションを提供し、Uberはそこに生まれる会計にまつわる問題をさらにテクノロジーで解決しています。 このようなニーズやペインがあるところに、イノベーションは生まれます。 Uber創業者 トラビス・カラニックの驚異の失敗歴 Akiko: 各地域ごとに特徴がありおもしろいですね。出てくるソリューションに違いはあるものの、似たようなニーズは共通してそれぞれの地域にあることもおもしろいなと思いました。 アフリカの高齢者の方々の適応能力の話を聞いて、世代ごとにリテラシーや、共通認識は異なるものの、それは必ずしも能力の差ではないことも多いのかもしれないと思いました。 最新の技術を使ったプロダクトを作る際に、初めから高齢者を対象ユーザーから切り捨てるのではなく、固定概念を捨てて適切なサポートを提供することが重要なのかもしれませんね。 JRのICカードは日本であまりにも身近すぎて意識していませんでしたが、確かに非常にシームレスで滑らかな体験設計がなされているなと思いました! 日本市場に興味があっても学ぶ手段がない世界のデザイナーたち Akiko: 少し話が変わるのですが、今回のインタビューの依頼をした際にすでにNondoさんはFreshtraxについてご存知だったとおっしゃっていましたね。どのようなきっかけで知っていただいたのでしょうか? 私が勤めているデザイン会社は、Goodpatchと一緒に仕事をする機会が多いんです。 Goodpatchとbtraxも繋がりが深いので、自然とbtraxが話題に上がることが多くありました。 あるプロジェクトのためにリサーチをしていた時に、日本のローカルなコミュニティにとって良いものは何だろうというディスカッションになり、その時にFreshtraxの記事を同僚が参考資料として引用していました。Freshtraxを知ったのはそれがきっかけですね。 その記事は日本語の記事だったのですが、Freshtraxには日英それぞれの言語の記事があり、日本のマーケットについて英語の記事が読めるのは非常に魅力的だと思います! 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一級建築士からUXデザイナーへ。業界・国境を超えて挑戦を続けるNondo Sikazwe氏から見た日本のデザイン市場とは?【インタビュー前編】

近年パンデミックによる影響で観光客は激減したものの、2014年以降、東京では外国人の割合が増加し国際化が急速に進んだ。 デザイン業界でも、グローバルに活躍しつつ、東京を拠点としている外国籍のデザイナーの割合は増加してきている。 今回は、アフリカ大陸南部のザンビア出身のNondo Sikazwe氏へのインタビュー記事をお送りする。 Nondo氏は、南アフリカ共和国にて一級建築士として活躍した後、スタンフォード大学でデザインシンキングを学び、現在は東京のデザインコンサルティングファームでUXデザイナーとして活躍している。 2本立ての前編となるこちらの記事では、Sikazwe氏の異色の経歴やグローバルな視点から見た日本のデザイン市場について話を伺った。 続く後半では、Nondo氏にとってのデザインの定義や、各国の忘れられないプロダクト、今後のデザイナーとしての目標などについてお伝えする。 目次: 一級建築家としてのキャリアを捨て、UXデザイナーへ転身 スタンフォードでの学び 日本に来たきっかけ 日本のデザイン業界の現在地 Nondo-Jacob Sikazwe ザンビア出身。 南アフリカのウィッツ大学で建築を学び、建築士としてアフリカ各国で複数のプロジェクトへ従事した後、隈研吾建築事務所でのインターンを通じて来日。 その後、千葉大学にて工学の修士号を取得。専門はテクノロジーを活用したサービスデザイン。 修士課程に在学中、スタンフォード大学へ留学。現在は、都内のデザイン会社にてUXデザイナーとして勤務する傍ら、非営利団体での活動や、大学などの講演など、幅広く活動している。 Akiko Sakamoto btrax UXリサーチャー。東京都出身。国際基督教大学に在学中、オランダのマーストリヒト大学へ交換留学を経験。帰国後、外資系企業にて人事、コミュニティマネジメント、カスタマーサポートなど幅広い職種を経験した後、UXデザイナー/リサーチャーへ転身。 一級建築家としてのキャリアを捨て、UXデザイナーへ転身 Akiko: まず、Nondoさんの経歴について伺いたいのですが、元々は一級建築士として活躍されていたと伺いました。なぜ順風満帆だった建築士としてのキャリアを捨ててまで、UXデザイナーになる道を選んだのですか? Nondo: 私はザンビアで生まれ、南アフリカで教育を受けて育ちました。 いつしか建築に夢中になり、修士号を取得し、ザンビア、エチオピア、南アフリカなどアフリカのいくつかの国で様々なプロジェクトに従事しました。 日本でも隈研吾さんの事務所に勤務していた時期があります。建築は、僕のデザイナーとしての出発点となっていて、空間とそれを使う人々(=ユーザー)について考えることを学び実践していましたが、そこにはデジタルの領域に関わることがすっぽり抜け落ちていました。 南アフリカにいた頃、公共住宅をデザインするプロジェクトを担当していたのですが、そこではただ単に建物の設計をするだけでは十分でなく、そこへ住む市民のための新しい街全体をデザインする必要がありました。 僕は、住民に提供するべきなのは、ただの家ではなくてコミュニティであると考えていたのですが、テクノロジーを駆使することでそのチャンスがぐっと広がると感じました。 この時に、僕たちが提供する建築サービスにおいてテクノロジーの重要性とインパクトに気づきました。 建築業界とテック業界の隔たり Nondo: これがきっかけとなり、建築だけをやっていても自分の作りたいものは生み出せないと感じ、エンジニアリングを学ぶ決意をして、エンジニアリングデザインの修士号を取得しました。 所謂スマートシティのようなICTを活用した包括的な都市設計は、テクノロジーへの理解なしには設計し得ないためです。 ここでのテクノロジーは、例えばWebエンジニアリングのような限定的なものではなくて、広義のテクノロジーを指しています。 というのも、都市空間をデザインする際には、必ずしも全ての住民が同じデバイスやソフトウェアへアクセスできるとは限らないので、より包括的なソリューションが必要となるためです。 テクノロジーへの理解をベースにユーザーの体験をデザインしているので、現在はUXアドバイザー兼デザイナーという肩書きで働いていますが、将来的に私がやりたいことはより包括的なサービスデザインです。 ー慣れ親しんだ建築業会から、全く未経験のテック業界へ飛び込むことは怖くなかったのですか? 非常に大変でしたね。自分は奨学金をもらってエンジニアリングデザインの修士を得ることができたので、恵まれていたとは思っていますが、それでも簡単な道のりではなかったです。 建築業界では、MBAを取得するか、プロジェクトマネジメントの道へ進む人が大半で、僕の様にエンジニアリングデザインの領域へ飛び込む人はほぼいませんでした。 よくテック系のデザイナーも建築設計士も似たようなものだという人がいますが、業界としてはかなり大きな隔たりがあります。 建築業界では、プロジェクトをやるときに一般的に7段階くらいの決まったプロセスがあるのですが、その中でデザインにあたる部分は全体の10%くらいに過ぎません。 もし10人のチームでプロジェクトに臨むとすると、コンセプトを作り込むパートに携われるのはせいぜい2人で、それは常に一番上のポジションにいる人たちです。 それ以外の人たちは、建築法を守るためのチェック、図面の製作など、残りの業務を担当します。 また、建築士として設計をするためには、国家資格が必要になります。 イギリスをはじめとしたコモンウェルスの国々では、7年間の建築を学び最終試験に通らなければ一級建築士になることができません。私もその道を通ってきましたが、これはテック業界でデザイナーになる道とは全く異なるプロセスです。 ですので、建築士からテック系のデザイナーへ転身することは、デザイナーがシェフへ転身するのと同じくらい大きな変化なんです。 シェフという仕事も、建築士やデザイナーと同じようにクリエイティブな仕事ですよね?でも扱うものや必要な知識は全く異なります。 ですので、テック業界へ飛び込むことは、私にとってゼロから全てを学び直すことであり大きな決断でした。 私は建築家として、とても恵まれたキャリアを歩んでいたので、今も母国へ帰ると、「あれは自分が設計に携わった建物なんだ」と言えるビルがたくさんあります。 建築を学んでも、実際の建築に携わるところまで行かずに離脱してしまう人たちもいるので、そういう経験を積めたことはとても良い経験でした。 そういうバックグラウンドを持つ自分だからこそ、テック業界と建築業界を繋いでできることがあると思っています。テクノロジーを駆使したスマートシティへのニーズはどんどん高まってきていますからね。 簡単な選択ではなかったですが、スタンフォード大学で学びを深めるうちに、自分の決断は正しかったと確信が持てるようになりました。 Akiko: 建築を突き詰めていった結果、これからの時代に求められる建築にはテクノロジーとの融合が不可欠だと気づいたということですね。 確かに、テック業界のデザイナーも、建築士も一般的には同じ「設計」を担当する職として、比較的近い職業のように思えますが、実際には業界のしきたりや設計のプロセス、チームでの働き方や、キャリアパスまでかなり違いがありますね。 これはどちらの業界にも精通しているNondoさんならではの視点のようにも思います。お話を伺っていて、新たな領域へ飛び込んでも、根底にある「人々の生活する場所・コミュニティを設計したい」というNondoさんの思いは変わっていないのだろうな、というふうにも感じました。 スタンフォードでの学び Akiko: スタンフォード大学で学ぶことになった経緯を教えていただけますか? Nondo: エンジニアリングデザインの修士を取得しようと決めた後、まず奨学金をいただき日本の千葉大学の大学院に入りました。 私の研究は、テクノロジーを活用したサービスデザインにフォーカスしていたので、サービスデザインへの理解を深めたいという思いから、さらに別の奨学金を取得し、スタンフォード大学で短期のプログラムへ参加することになりました。 スタンフォードでは主にデザインシンキングとメディカルイノベーションについて学んだのですが、改めてデザインとは何か、そしてなぜデザインは面白い分野なのかということを学び、自分のデザインへ対する情熱を育むことができました。 プログラム終了後も、スタンフォードで出会った人たちとのコラボレーションは続いています。 スタンフォードへ行って、自分にとって何よりも重要だったことは、さまざまなバックグラウンド持つ学生たちと出会えたことです。 教師をやっていた人もいれば、生物学を学んでからデザインを学びにきた人たちもいて、自分が建築科の出身であることはそこでは全く珍しがられることがありませんでした。 日本の大学で修士課程に入ったばかりの頃は「なぜわざわざ建築をやめてテクノロジーやデザインを学ぶの?」と疑問に思われたり、自分の考えを理解してもらえないことが多かったのですが、スタンフォードでは自分以上にデザインとは全く異なる領域からやってきた人がたくさんいて、私の視野を広げてくれました。 また、スタンフォードの教授や、バークレーなどの他のカリフォルニアの大学の教授たちも、建築科出身の自分をおもしろがってくれて、応援してくれる人たちがたくさんいました。 これは自分にとって非常に大きいことで、彼らとの出会いが「自分の選んだ道は正しい」と私に確信させてくれました。 Akiko: 周りの人とは異なるバックグラウンドがスタンフォードではNondoさんの強みでありオリジナリティとして評価されたということですね。 Nondo: 仲の良い日本の友人が以前に僕に教えてくれました。「日本で本当にクールなことがしたいなら、一度世界へ出て、逆輸入されるようにしなければダメなんだ」と。スタンフォードへ行ってみてその意味がわかったような気がしました。 カリフォルニアでたくさんの人に自分を認めてもらったおかげで、日本へ帰ってきてからも自分のやっていることに自信を持って取り組めるようになったと思います。 Akiko: 日本での経験と比較して、スタンフォード大学で印象に残っている経験はありますか? Nondo: 日本の建築事務所で働いていた時に、オフィスでいわゆる「偉い」人たちと関わる機会はたくさんありました。 でも、彼らと自分の違いを考えてみたときに、特別な才能の違いというよりは、経験の年数や知識量など、建築士としてある程度の年数を重ねていけば、誰もが得られそうなものが多いなと感じていました。 これに対して、スタンフォードで出会った人たちは、自分とは全く違うバックグラウンド、能力、考え方や強みを持っていて、彼らとコラボレーションすることからは学ぶことが多く非常に刺激的でした。 またスタンフォードで驚いたのは、大学がビジネス界と一丸となって、学生を育てているところです。 日本だけではなく、私の母国のアフリカと比較しても、ビジネス界の人たちが非常に深く学生にコミットしていて、これはかなり稀有なことだと思いました。 おそらく他の大学では、例えば経営学を教えている教授のプライドが高い場合、外からエキスパートを呼ぶことは簡単ではないのだと思います。 学部一年生の時点で、教室にスタートアップの経営者がやってきて、講義をしたり、アイディアへフィードバックをくれたり、さまざまなサポートしてくれます。入学してすぐのスタート地点で、どんなプロジェクトもビジネスになる可能性があり、さらには自分の会社やNGO、NPOになりうるんだというマインドセットを教わります。 これは、良い意味でスタンフォードで中退者が多い理由にもなっているのではないかと思うのですが、学べば学ぶほど、学生たちの考えはどんどんオープンマインドになり、大学の卒業証書はただの「通過点」に過ぎないんだということにかなり早い段階で気づくのだと思います。 オープンマインド、情熱、推進力、大学の外部とのコネクションがスタンフォードの教育を特徴づけていると思います。 Akiko: 挑戦を歓迎する風土が根付いているアメリカの大学らしいエピソードだなと思いました。日本では、正確に仕事をこなしたり、淡々と努力を重ねることが賞賛される一方で、失敗をすることや、リスクを取ることはネガティブに捉えられやすい傾向があると思います。 また領域横断的なキャリア形成についても、日本では大学入学時から理系と文系に分かれて、そこからさらに専門分野だけを深めていく形式が主流なので、全く異なる領域へ関心を持ったり、大胆なキャリアシフトをするという考え方がすぐには受け入れられない人が多いのかもしれません。 文系と理系に分ける日本教育の限界とそのリスク Akiko: 大学入学時から実社会と強いコネクションを持って、学びを深めていける環境は非常に魅力的ですね。Nondoさんがご自身の決断に自信を持って日本に戻ってきてくださり、こうして経験を多くの人にシェアしてくださることがとても嬉しいです。 日本に来たきっかけ Akiko: 日本の建築事務所で働いたり、千葉大学でエンジニアリングデザインの修士号を取得したりと、日本とも縁が深いNondoさんですが、日本へやってきた理由はどんなものだったのでしょうか? 日本の漫画に憧れ、谷崎潤一郎の作品に衝撃を受けた Nondo: 実は私の子供の頃の夢は漫画家だったんです。少年ジャンプなどの日本の漫画を読んで、このストーリーがアフリカで起こるとしたらどんなふうになるんだろう?主人公は象と戦ったりするのかな?と空想していました。 でも、だんだんと漫画家として生きてくのは厳しそうだなということに気づき始めて、漫画家になる夢は諦めてしまいましたが…。 漫画をきっかけに日本に興味を持っていた当時の僕に、学校の先生が薦めてくれた本があって、それは谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」でした。この小説は僕に日本文化への深い理解をもたらしてくれました。 彼の文学は、いかに歴史や文化が近現代の日本社会へ影響を与えているのかを見事に描写していて、この本をきっかけに、もっと日本のことが知りたくて日本へ行く決意をしました。 近代国家となりつつも、独自の文化を守っている日本は私にとって非常に魅力的でした。 シドニーやニューヨークなど、世界の主要な都市へ行くと、中心部はどこも似たような雰囲気で「前に行った都市と同じようだな」と思いますが、東京はいつも「私は東京にいるんだ」と強く思わせてくれて、非常にユニークです。 Akiko: 日本のユニークな部分とは具体的にどんなところだと思いますか? 日本は島国で、良くも悪くも他の国々から物理的に孤立した状態にあると思います。外の国から来た身としては、何もかもが真新しく、完璧に見えて、もっといろんなことを知りたいと思わされます。 それと同時に、日本には、海外へ出たことがない人もたくさんいます。 […]

日米の声を聞くUXリサーチャーが気がついた、UXリサーチにおける日米の違い

弊社では、UXリサーチを日本市場とアメリカ市場の両方に向けて行っている。 最近、筆者は立て続けにイベントに登壇する機会があり、アメリカ向けと日本向けのイベントでそれぞれUXリサーチのメソッドを話す機会があった。 イベントで他社のUXリサーチャーと対話することによって、自分がぼんやりと感じていたことが、イベントで改めて言語化されて腹落ちした点もあった。 今回はそんな気づきも踏まえながら、自身が日米でリサーチを行った経験をもとに、UXリサーチに関してお伝えしようと思う。 UXリサーチのプロセス まずUXリサーチにはどんなプロセスがあるのか? ユーザーインタビューを行うことがUXリサーチのメインのメソッドになるため、今回はユーザーインタビューを行う場合のプロセスを簡単にシェアする。ユーザーインタビューは、主に下図の5つのステップに分けられる。 ゴール・ターゲットの設定 まず、どんな人を対象にしたサービスについてのインタビューなのかを明確にする。その上で、具体的にどんな人に話を聞きたいかを決める。年代や生活スタイルがペルソナと近い人を選ぶのが一般的だ。 ユーザーの募集・選定 ターゲットが決まったら実際にインタビューに参加してくれるユーザーを探す。 方法としては、 事前調査のためのGoogle Formに回答してもらった人の中から適切なユーザーを選定 ユーザーインタビュー用のプラットフォームを使用する などがある。上記のような手順でユーザーを集めていく。 スクリプト作成 ユーザーの募集とほぼ同時並行で行うのが、スクリプトの作成だ。インタビューの長さなどに応じて、ユーザーに聞きたいことを書き出していく。 インタビューでは初対面の人と長時間話すことになるため、相手が心地よく話してもらえるような工夫が必要だ。 筆者がスクリプトを作成する際は、最初はアイスブレイク的に簡単に答えられる一般的な質問をし、徐々に突っ込んだ話にすることを心がけている。 インタビュー実施 コロナ禍以降、Zoomを繋いでオンラインで行うユーザーインタビューが増えた。 最近はようやく少し落ち着いて、対面やホームビジットのインタビュー(ユーザーのお宅に訪問して行うインタビュー)もちらほらある。 インタビュー自体の時間は、ほとんどの場合が1時間〜1時間半程度だ。シンプルに1対1で対話する形式のインタビューを行う場合は、1時間で設定する場合が多い。 しかし、コンセプト検証や、アプリを実際に触ってもらいながら行うインタビューは1時間半程度かかる場合が多い。 分析・レポート作成 インタビューでユーザーから聞き出した内容をもとに、ユーザーが実際どんなことを思ったり感じたりしているのか、分析、まとめを行う。 方法としてはFigjamに一度ユーザーの発言を全て書き出してから考えることが多い。 そうすることによって、話の全体像が見えやすくなるため、分析がしやすい。また、チームでFigjam等のオンラインホワイトボードツールを利用することによって、複数人の視点をシェアでき、多角的な分析を行うことができる。 このフェーズで、様々な視点、角度から考えるのは非常に大事なことだ。上記の5つのステップがUXリサーチの主なプロセスである。プロセス自体は、日米間で特に違いはなく共通のプロセスだ。 しかし、大枠のプロセス以外の細かいところで日米間の違いが見られる。そこで今回は普段リサーチをしていて感じる、UXリサーチにおける日米の違いを3つ紹介する。 UXリサーチにおける日米の違い3選 ①「UX」や「UXリサーチ」に対しての認知度の違い そもそも「UX(ユーザーエクスペリエンス)」というものに対して認知の違いがある。 一般的に「UXリサーチ」と言ったときに、日本の企業の場合、そもそもUXって何?UXでどんなことができるの?となり、それを伝えるところから始まることもある。 対してアメリカでは、一般的にUXという言葉の認知度は高い。デザイン系の企業の人でなくとも、UXがどんなものかはなんとなく理解している人が多いように感じる。 ②インタビュー中の違い 違う国の人と話しているのだから当然と言えば当然なのだが、実際日米の違いが一番現れるのはインタビュー中だ。 今回はインタビューの実施中にわかる日米のユーザーの違いを3つご紹介する。 1. 話す量 個人差はもちろんあれど、日本人とアメリカ人という括りで見ても、双方かなりキャラクターや性格は違う。それは、話す量の違いに顕著に現れる。 アメリカの人は総じておしゃべり好きが多い。アメリカ人は、ひとつの質問に対して具体的な体験談なども交えて話してくれることが多い印象だ。 中にはあまりにも話しすぎてインタビューの時間配分が難しくなってしまうケースもある。とはいえ、体験談などを細かく話してもらえると、こちらとしてもイメージがしやすいのでありがたい。 日本の人は、聞かれた質問に対してきっちり回答をしてくれる。あまり脱線せず要点をまとめて簡潔に答えてくれる人が多いので、話を深堀るためには回答に対して「なぜ?」を繰り返す必要があることも多い。 リサーチャーとしては、「なぜ?」を聞いていくときに、誘導的な聞き方にならないよう注意が必要だ。 日本人の性質上、なんとなくその場の雰囲気に合わせてしまうというのはよくあること。 したがって、「それってこういうことですかね?」という聞き方をすると、「まぁそんな感じですね〜」という回答が来て、本当の答えを聞き出せないということが起こりうるためだ。そうなると、ユーザーインタビューの価値がなくなってしまう。 2. フィードバックの程度 また、インタビューでフィードバックを得たいサービスの評価の仕方にも違いが出る。 アメリカ人は基本的に陽気でポジティブだ。サービスの評価を聞いたときに、良いフィードバックをたくさん返してくれる傾向がある。 しかし、例えば、定量的な点数を聞きたいと思い、「そのサービスの満足度の点数を、10点満点で評価してください」と聞くと、「6点」と意外と低い点数が返ってきて驚くことも。 反応や話し振りとのギャップを感じる(反応よりも点数が意外と低い)ことが、日本人と比べて多い。 「4点の理由は?」と聞くことでようやくネガティブに感じている要素を聞き出せる、ということもあるため、質問の仕方には工夫が必要だ。 対して日本人は慎重派で、正確な点数を答えようとする人が多いように感じる。 リアクションはそこまで大きくなくても、定量的な点数を質問すると、リアクションで見られる素振りから想像するよりも点数が高めということもある。 3. ネットリテラシー 最後に、ネットリテラシーにもやや違いがある。 最近はZoomでユーザーインタビューを実施することも多いが、全体的な傾向として、アメリカ人は全体的にインターネットを使いこなしている人が多いように感じる。 オンラインインタビューのリンクのシェアや、検証したいサービスやプロダクトのテストアプリのインストールもスムーズに対応してくれる人が多い。 日本だと、PCをそもそも所有していないという人も一定数いるようだ。 他のリサーチャーが話していて驚いたエピソードとして、大学生が自分のPCを所有しておらず、論文を書くのにLINE上に書き溜めていたという話があった。 上記の場合はかなり稀なケースかもしれないが、そのような状況もあり、日本ではアプリを実際に触ってもらうインタビューのときには、直接コミュニケーションの取れる対面でのインタビューの方がやりやすい場合もある。 ③ユーザーの募集・選定 最後に、インタビューを実施するユーザーを募集するプロセスにも日米での違いを感じる。 アメリカの場合、インタビューを受けてくれるユーザーを探しやすい傾向がある。 というのも、ユーザーインタビュー用のプラットフォームが充実していて、そのプラットフォームの登録者数も多いためだ。そのため、自分のネットワーク以外の人をオンライン上で集めやすい。 そのプラットフォーム上にアンケートを公開し、回答してくれた人の中から、ターゲットとしてふさわしい人を選ぶ、という流れだ。日本と比べたときに、それだけアメリカではUXリサーチというものが一般的になっていることの一つの表れだと感じる。 日本でインタビューのユーザーの募集を行うときは、インタビュー用のプラットフォームはそれほどメジャーではないため、SNSでの募集が一般的だ。 SNSに載せたGoogle Formに回答してくれた人の中から、ターゲットに近い人を選んで直接コンタクトをしていく方法でユーザーを選定する。 まとめ 今回は​​UXリサーチにおける日米の違い3選をご紹介した。 リサーチを進める上でのプロセスは同じでも、感覚や文化的な違いはあり、国による違いを理解して上でやり方を合わせていくことが、より精度の高いリサーチを行う上で大事になってくる。 もちろん国による違いだけでなく、個人によっても性質は違うため、リサーチをするたびに新しい発見があるのがリサーチャーとしての楽しいところだ。 btraxでは、今回ご紹介したユーザーリサーチを含め、多角的なリサーチを行なって、ユーザーの潜在ニーズや不透明だった課題の可視化をサポートしている。 サービスやブランドをグローバルに展開する際は、展開先の国に合わせてコンテクストを深く掘り下げ、より良いソリューションやサービスを提案している。 ご興味をお持ちの方は、弊社問合せフォームよりお気軽にお問い合わせください。

駆け出しデザイナーが日米のbtraxデザイナーに聞く、デザインプロセスとアイディア発想方法

著者はサンフランシスコにある大学でデザインを勉強しつつ、btraxでUI/UXデザイナーとしてインターンをしている。 学生のうちにインターンをすることのメリットの1つは、プロのデザイナーが身近にいるということ。普段は教授と生徒としか関わることができないため、これはとても貴重な経験だ。 今回はこのアドバンテージを活かして、著者が駆け出しデザイナーとして疑問に思う4つの質問を、btrax東京オフィス所属のHiroさんとYuriさん、btraxサンフランシスコオフィス所属のJaredとJCの合計4名に聞いてみた。 1. デザインで課題解決をする場面で、良いアイディアが思いつかない時はどうしていますか? Hironori (以下Hiro): 散歩したり、お茶や食事を挟んだりします。パソコンから離れ、何も見ない状態を作ります。 アイディアが出ない時は、インプット過多だったり、頭の中で整理がついていなかったりする状態なので、一旦それを寝かす時間を作ります。 そのために、散歩したりお茶を飲みに行ったりしてリラックスします。家から歩いて15分くらいのところのカフェによく行っています。 Yuri: シャワーを浴びたり、仮眠をとったりします。もうアイディアが出ない場合、今考えていても出ないと思うので、一回考えることから離れるようにしています。 違うところに目を向けたり、コーヒーを飲んでみたり。それによって新しいアイディアが違うところから出てくることもありますね。 アイディアが出ない時にアイディエーションをそもそもやらないといったメリハリや思い切りも必要かなと思います。集中できる状況と時間を確保して、がっつりアイディア出しを行なって、あとは手を動かすだけにするなど、タスクを分けています。 Jared: デザイン思考のプロセスに沿って考えたり、Pinterestなどのウェブサイトからインスピレーションを探したりします。 それでも良いアイディアが浮かんでこない場合は、知り合いのデザイナーと話してアイディアや違う視点からの意見をもらいます。 あと、デザインリサーチをする前にまずやることは、デザインしているもののトピックに関連する言葉、感情など、ありとあらゆるものをブレインストーミングして自分の考えをカテゴライズすることです。 基本これで充分ですが、それでもどうしてもアイディアが出ない時は、休憩をとるか、タスクから一度離れて、リフレッシュをしてからタスクに戻るようにしています。 Jonathan(以下JC): アイディアが思い浮かばない時は、デザインしているもののトピックに関連するものをリサーチして、違う視点をインプットしたりします。 デザイナーが行き詰まる状況としてよくあるのが、デザイナーがコンテンツを理解していないというもの。 業界、分野、またはトピックを十分に理解していないと解決するのは困難なので、基本的なリサーチはとても大事だと思います。 2. インスピレーションの源泉はなんですか? Hiro: よく美術館へ行きます。人の作品を見て、「この作者はこういう意図で作ったのかな」と想像することが好きです。 自分は骨董が好きで、骨董やアート作品の面白いところは、作り方が変わっているもの、見たことのないような作り方をしているもの、割れていて不完全なものなどがあることです。 そこから作者に想いを馳せ、この作品を作ったのはこういう人だったのかな、と考えています。 あとは作り方を想像してインスピレーションの源泉にすることもあります。 作品の要素を頭の中で分解して、作り方を想像したときに新たな考えを得たり、インスピレーションを得たりできます。 Yuri: 自分にないものをインプットするという意味で、散歩に行ったり展覧会に行ったり人と話したりします。 散歩をすると見たことのない景色を見られたり、リフレッシュにもなります。また、意識的に知識を入れる必要もあると思うので、展覧会に行ったりもします。 デザインとアートは異なるけど切り離せないものだと考えています。色の使い方や空間演出は、見ている側の心理をどう捉えるかという部分では、見据えている所はある程度一緒かなと。そういうところから得るものが私はあったりします。 人と話していると、自分にはない価値観を持っている人が絶対いるので、そういう考え方もあるんだ、とか、同じものを使ってても全然違う捉え方をしていたりとか、逆に私が興味なかったサービスにそういう着眼点を持って見ているんだ、とか、そういった気づきが得られると思います。 Jared: Pinterest、Behance、Muzil、YouTubeからインスピレーションを得ています。作り方のわからないデザインテクニックを見た時はYouTubeでチュートリアルを探して勉強しています。 また、Pinterestではデザインの参考になるようなコラージュを作ったりしています。 JC: 本を読んだり他のデザイナーの作品を見たりしてインスピレーションを得ています。他のデザイナーがどのように課題を解決しているかするかを見て、そこからインスピレーションを得ています。 Muzilのクロームエクステンションだったり、We Are CollinsやPentagramといったデザインスタジオのウェブサイトから探します。ウェブデザインをしている時はGodlyというウェブサイトをチェックします。 JC: 私が大学生だった頃は詩の本もよく読みました。 詩は長いフレーズを言わずに何かを表現するなどといった物事の「抽象化・シンプル化」に長けていると感じていたので、参考にしていました。また、あらゆる種類のクリエイティブ・ライティングや哲学の本も読んでいます。 3. グローバルに通用するデザイナーに必要なスキルとはなんだと思いますか? Hiro: 一番は違いを認められることだと思っています。 特に、僕がbtraxに来てサンフランシスコオフィスのデザイナーたちと話して思ったのは、僕が良いなと思ったデザインをシェアしても、彼らの見ている視点が自分とは全く違うことです。 例えば、アクセシビリティーの部分に突っ込んできたりとか、あとは「イケてる」と思う色の使い方が違ったりとか。 あとはユーザーによってアプリの使い方が意図していたものと全く違う場合もあります。 基本的にユーザーが日本人じゃない人とぶつかると絶対そういう想定外のことが起きるのですが、そこでしどろもどろになるのではなくて、それを楽しんで受け入れて、じゃあどうしようか、という話ができるスタンスは大事だと思います。 Yuri: コミュニケーション能力と、価値観の違いや想定外のことを受け入れられる柔軟性だと思います。 シンプルに言ったら共感性の高さというか、柔軟性の高さです。あまりにも保守的すぎると、異なる価値観に拒否反応が出てしまって辛いのかなと思っています。 これは国内でも同じだと思うのですが、ある程度ちゃんとコミュニケーションができていれば、周りと連携して仕事ができると思います。 ですので、仮に多少英語が拙かったり、スキルがやや足りなかったりする場合も、チームメンバーが一緒にやっていきたいと思える状態であれば協力を仰いで仕事を進めていける場合が多いと感じます。 スキルに関しては、しっかり基礎を固めてあればそのあとは結局もうやりながら学ぶしかないと思いますね。 Jared: 共感できること、コラボレーションが好きなこと、クリエイティブであること。 クリエイティブであることはデザイナーである以上必須だと思います。 あと、他人と一緒に働く上で、その人たちがどういった視点でどういう考え方から物事を見ているかをしっかり理解できる、共感できる力も大切だと思います。 それから、コラボレーションが好きではないと、もうそれは自分だけでデザインしているような状態だと思うので、より良いデザインのためにもコラボレーションが好きだということも1つの大事なスキルだと思います。 JC: 共感力です。 共感するためには違うオーディエンス、文化、考え方の違いをしっかり理解する必要があって、たくさんのデザイナーが苦労する部分だと思います。 自分の経験から身につけたバイアスだけで課題解決するのは難しいので、自分の視点から見た考え方や意見を他の人と交換して新しいメソッドや解決策を模索する、という意味でも共感する力は大事だと思います。 私がbtraxで日本のデザインチームと仕事を始めた時もかなり苦戦しました。 当時私は日本のデザインへの理解が薄く、西洋スタイルのデザインを言語だけ翻訳してそのまま使えば良いと思っていましたが、結局日本人のオーディエンスには合わないものになってしまった経験もあります。 4. UI/UXデザイナーの皆さんがモバイルアプリをデザインする時に重要視する点を教えてください。 Hiro: ユーザーニーズを満たすか、もしくはペインポイントを解決するか。 最低限のUIの規則を壊さないか。 実装可能なUIであるかどうか。 AppleとかGoogleはある程度デザインのガイドラインを設けています。それは、Apple側から「これくらいの文字サイズにしなきゃ読めないよ」など、システムの仕様を明確化しているものなのですが、それらを理解することがスタートラインではないかと考えています。 マインド的な部分で大事だと思うのは、ユーザーにどんなアクションをしてほしいかしっかりとを想定することだと思います。 ユーザーはそれぞれ自分の使い方をするので、我々の意図とユーザーの希望がずれてしまうことも。ずれることが悪いわけではなく、そこかさらに、ユーザーは何を欲しいのかを理解し、それを満たすものになるまで引っ張っていく力は重要だと思います。 あとは、それに気がつくだけの観察力も同様に必要です。一度課題を見つけてしまえば、それを解決する方法はたくさん出て気やすくなるのですが、そもそもの課題を見落としてることが結構あるのではないかと感じます。 Yuri: 情報が整理されているか アプリがユーザーの目的を達成できているか ゴールを達成するまでの優先順位の付け方は適切かどうか 情報設計がされてない状態は、アプリに限らず、見づらいし使いづらくなってしまいがちです。ですので、情報設計は絶対必要、というかむしろデザインのかなりの割合を占めると思っています。 そのためにはまずユーザーが求めていることを理解する必要があります。求めていることといっても、その中でいろいろな考えが出てくるので、優先順位をつけなければならないこともあります。 こうした思考をしっかり持っているかどうかででアウトプットの質は絶対に変わると思っています。 ビジュアルとして完成度が高いことはそれで一つの価値ですが、どちらかといえば私は情報設計をしっかりされてる方が大事かなと思います。 Jared: 5W (Who, What, When, Where, Why) + 1H (How)にしっかり答えること ユーザーの意見を集めてフィードバックを取り入れること 自分がデザインのタスクを行うときは、デザインブリーフやデザインプロジェクトに対してできるだけたくさん質問をし、しっかり理解してベースを固めてからタスクにかかります。 デザインをし終わったあとは、ユーザーの意見とフィードバックを理解してそれをデザインに落とし込みます。それをしないと「ユーザー」のためではなく「自分」のためのデザインになってしまうからです。 JC: デザインで一番大事なのはビジュアルだと考える人も多いかと思いますが、私はアプリのバージョンアップデートのことも見据えて明確なサイトマップ、ビジョン、ゴールを持つこととアプリ内のコンテンツが何よりも大事だと思っています。 コンテンツが足りていない状態、または限られたコンテンツの適切な見せ方を理解していない状態でアプリをデザインすると、必然的に空白を埋めるためにたくさんのプレースホルダーを使うことになります。しかしそのようなデザインは万人受けしにくいでものになりがちです。 また、明確なサイトマップを持つことでデザインそのものよりもっと広い視点でプロジェクトの全体図を見ることができると考えます。 まとめ 今回はbtraxのデザイナー4名に質問をした。著者はまだまだ課題にぶつかることが多いため、行き詰まってしまった時の対処法について聞けたのはとても良かった。 個人的に面白いと思ったのが、アイディアに行き詰まった際に、btrax […]

日米の決済端末機から考えるシニア世代へのデザインアプローチ

先日観ていた日本のテレビ番組で、芸能人がコンビニのセルフレジを使って商品を購入してみるという企画をやっていた。 時間内に特定の商品をPayPayで購入するというチャレンジなのだが、一部の芸能人、主に少し上の世代の方がチャレンジに失敗しているのを見て少し驚いた。 しかし、一緒にテレビを観ていた祖母も「私も使い方分からない」という発言をしていた。 著者の現在住んでいるサンフランシスコベイエリアでは、セルフレジの導入はもちろん支払い関連のデジタル化が進んでいる。 ただ、それに困惑している高齢者はあまり見かけない。スマートフォンの電子ウォレットを使いこなしている方も比較的多い印象を受ける。 そこで、この差はデザイン側の問題なのではと考えたため、今回の記事で模索していく。 btraxサンフランシスコで働くデザイナーが語る、デザインにまつわる3つの日米差 日米の支払い方法の違い ベイエリアではキャッシュレス化が進んでいる。 先日私がTrader Joe’sというスーパーマーケットに買い物に行った際も現金で払う人はおらず、クレジットカードか電子ウォレットでの支払いだった。 対して、日本はキャッシュレス化の兆しは見えるものの、まだまだ現金主義が根強いと感じる。前回帰国した際も、レストランや買い出しでの支払いは現金のことが多かった。 著者が考える大きな理由は2つ。 現金への信頼 キャッシュレス決済導入のコスト この2つである。 1点目に関して、目に見えないところでお金のやり取りをするよりも実際に自分の手で渡す、受け取る方が安心感があるのではないだろうか。 若い世代は支払いのデジタル化にも対応しているが、特に年配の方々の間でこのマインド面の現金主義からキャッシュレスへの移行がまだ浸透していないと思われる。 2点目のキャッシュレス決済導入のコストに関して、これは導入するビジネス側の理由だ。ソフトウェアを導入するのにはもちろんコストがかかる。限られた経済的なサポートの中でのキャッシュレス決済を推進することは簡単なことではないだろう。 ここで、日米のキャッシュレス決済の普及率を比較してみる。 グラフから見て取れるように、日米で普及率に20%の差が見えた。 しかし、コロナの影響もあり両国ともキャッシュレス化が数年前と比べると飛躍的に推進している。 このキャッシュレス化が進む上で問題となってくるのが、デジタルにあまり馴染みのない高齢者へのアプローチだ。 加速していくデジタル化に高齢者が取り残されないためにも、キャッシュレスサービス全般のUI/UXの改善が重要になってくると著者は考える。 日米の銀行での振り込みプロセス 日本でお金を口座に振り込む際、一般的な振り込みプロセスは以下のようになっている: ATMにカードを挿入する 口座情報を入力する 金額を設定する 確定 アメリカでも似たようなプロセスなのだが、これともうひとつ別に「check (cheque)」を利用しての振り込み方法がある。 いわゆる有価証券、小切手だ。給料、家賃、医療費、奨学金、ビジネスなどでも頻繁に使われている。 このcheckを自分の口座に振り込む時、ATMでも可能だが、銀行モバイルアプリで手軽に振り込むこともできる。 銀行アプリを起動 Checkをカメラでスキャン サインを記入 確定 わざわざATMや銀行に出向く必要がなく、どこからでも手元の端末から気軽にアプリを通して振り込みできるシステムは日米のモバイルバンキングの使用率に大きな影響を与えている。 実際にデータを見てみると、日本のモバイルバンキング普及率は17%、対してアメリカは90%である。 モバイルバンキングの普及率を上げるには? 日本人の現金への信頼を考えると、モバイルバンキングへの移行に対する抵抗はなかなかなくならないかもしれない。 実際、ユーザーの満足度が第一優先のため、ユーザーが自分の手で振り込むなどのアナログなお金の管理を好むのであれば、それを無理に変える必要はないと著者は考える。 しかし、それでも金融関係のデジタル化を促進したい場合は、モバイルバンキングアプリのUI改善も一つの手だ。 三菱UFJ銀行と米銀行Wells Fargoがリリースしているアプリのホーム画面を比較してみる。 三菱UFJ銀行のアプリはホーム画面から11つの機能が掲載されている。 対してWells Fargoの方は、残高とアカウント情報がメインで、他の機能にアクセスするには下のタブバーのメニューのページにいく必要がある。 三菱UFJのUIデザインの方が、様々な機能をワンタップで使えるので便利ではあるが、年配の方含めデジタルに疎い方は、このたくさんの情報にむしろ混乱してしまうかもしれない。 Wells Fargoのアプリは他の機能を使う際に一回余分にタップする必要性があるが、アプリを開いた時の混雑感は無いので、「シンプル」な印象を与える。 たくさんの機能をひとつのアプリに詰め込むことのメリットは、ユーザーはいくつものアプリをインストールする必要がなくなることだが、それによってアプリを使いこなせない方々もいるというのがデメリットだろう。 年配の方々も使いやすくするには、タスクを少数に絞って簡易化することを考えるのも重要なポイントかもしれない。 ユーザーエンゲージメントを向上させる7つの要素 日米のセルフレジ 次に、日米のセルフレジ、具体的にはセルフレジの情報アーキテクチャに注目してみる。 コロナの影響もあり、最近は両国とも積極的にセルフレジを導入している。ここでは、ローソンと米スーパーマーケット Targetのセルフレジを比較した。 ここから分かる大きな違いとしては、ユーザーがとるアクションの順番だ。 ローソンのセルフレジは最初に支払い方法を選択、対してTargetはまず商品をスキャンして、支払う直前に支払い方法を選択する仕様になっている。 UXで大切なのはいかに「直感的な」デザインにするかだ。例えばオンラインショッピングをする時、 ショッピングカートに商品を入れる 住所を入力 支払い方法選択 支払い レシートの受け取り 基本的にはこのような順番で買い物をする。またオンラインに限らず対面のチェックアウトの際も、 店員さんに商品を渡す 店員さんが合計額を伝える 支払う レシートの受け取り という順番だろう。 ほとんどの人がこの順番に慣れているからこそ、セルフレジでも応用し同じようなUXになるよう情報設計をするべきだ、と著者は考える。 ここでもう一度Targetのセルフレジを見てみると、上記の順番に沿ってデザインされているのがわかる。こういった直感的で慣れ親しんだデザインは、年配の方々を含め使用率向上に貢献するだろう。 まとめ 今回は、日米の金融関係サービスのUX/UIデザインを比較してみた。 デジタル化と高齢化どちらも進んでいる現在、デザイナーが高齢者向けのサービス、プロダクトをどうやってデザインしていくかが大切になってくる。 米国デザインの特徴でもある「シンプルさ」や「直感的さ」は高齢者にもやさしいデザインのヒントになるかもしれない。 Written by: Suzuka Ito

b-side of btrax #5 ユーザーの声を聞き、新たなサービス体験を描くデザインリサーチャーの素顔とは

btraxで働くメンバーをご紹介する「b-side of btrax」シリーズ。 シリーズ第5弾となる今回は、btrax Japanでデザインリサーチャーとして活躍する2人をご紹介します。 グローバルおよび日本市場進出・市場拡大を目指すクライアントさまのサービスやプロダクトを改善するためのユーザーリサーチや、サービスのユーザー価値を可視化するためのデザインワークショップのファシリテーターとして、ワークショップの設計から実行までを担当しています。 今回はデザインリサーチャーとして活躍する2人のバックグラウンドから、btraxへの入社理由、今後btraxで挑戦したいことまで、幅広くお届けします。 btraxではどんな人が働いているの?と気になっている方、ぜひ最後までお付き合いください! Yuma Mitsui / Design Researcher バックグラウンドを教えてください 日本の大学でマーケティングと環境デザイン、そして大学院ではインクルーシブデザインやデザイン思考を専攻しました。 大学院の途中でイタリア・ミラノに留学し、「イタリア流」のサービスデザイン、イノベーションの考え方にも触れることができました。 さまざまな学問領域に触れてきたことで、一つの常識に囚われることなく、常に視点を切り替えながら物事を捉えることの重要性に気づくことができたと思います。 修了後、日本でのデザインファームでのインターンを経て、ハードウェアのデザインを多く手がけるデザイン会社でリサーチャーとして仕事をしていました。 学生生活の途中からデザインを学び始めた身でありますが、デザインの過程のなかでも、ひたすら手と足を動かしながら考えることから、自分を突き動かしてくれる気づきや発想に出会える瞬間に、とても面白さを感じています。 なぜbtraxに入社したのですか? 自分のデザインの範囲を広げたかったからです。 前職のデザイン会社では、乗り物や家電製品など、カタチのあるモノのデザインプロジェクトに多く関わっていました。 その中で、モノとモノ以外とを分けることなく、一連のユーザー体験を重視する案件が増えていきました。 そして、デザインの考え方を活かして新たなユーザー体験を設計すること、そしてより広義に新たなサービスそのものを設計することにチャレンジできる環境に興味が惹かれ、btrax への転職を決めました。 また、ファシリテーションにも多くチャレンジできる機会があること、海外のプロジェクトにも多く関われる機会があるということも大きな魅力でした。 btraxでは具体的にどのような仕事をしていますか? ユーザーリサーチとファシリテーションの仕事です。 ユーザーリサーチは、私たちが生活者(ユーザー)の代弁者になりながら、新たなサービス設計のためのヒントを探す仕事と捉えています。 人々の暮らしを私たちリサーチャーが実際に見聞きすることで、人々がうまく言い表せない願望や悩みの本質、暮らしの中に隠れたルール等を明らかにしていく活動です。 物事をさまざまな視点から捉えることを心がけながら、自分たちのデザインを前進させるインサイトの探求に注力しています。 ファシリテーションを行うプログラムは、教育系のプログラムと、サービス開発の2種類があります。ワークショップの設計、議論の促進や可視化・収束化が主な役割です。 どちらも、参加者の想いを引き出しながら、同時に多角的な視点で問いを投げかけることで、新たなサービスのユーザー価値を最大化することに注力を注いでいます。 btraxでの働きがいを教えてください 常に新たな視点に触れながら、デザインの仕事ができるところです。 プロジェクトはもちろん、常にアメリカ側のメンバーと頻繁にコミュニケーションを取っているので、ミーティングや Slackでは国内外の色々なデザインに関するトピックが飛び交っています。 日本側だけであれば当たり前のこととして流されていきそうな話題でも、アメリカ拠点のメンバーにとっては面白く捉えられることが多いので、そうしたやりとりも自分の発想を広げてくれるスパイスになっていると感じます。 また、様々な業界でデザインの力に期待している人、ユニークな業界で起業を目指す人などと一緒にお仕事ができる機会も多くあります。 自分の生活圏だけでは接点のない人々の暮らしや仕事を見聞きできること、そしてリサーチやファシリテーションの仕事を通じて多様な世界へデザインの力を役立てていけることにも、やりがいを強く感じます。 今後btraxでやっていきたいことはなんですか? まだまだ、デザインの考え方や手法が生かされていくべき業界・世界が多くあると思っています。 取り上げられやすい社会課題だけでなく、多くの人がまだ目を向けられていないような領域に対しても、新たな視点や手法、そしてデザインにチャレンジしていきたいと思っています。 また、デザインの考え方や手法についても、常に学んでいきながら自分自身やチームを成長させていきたいと思っています。 「デザイン思考」を伝える機会も多くあるのですが、そこにこだわりすぎない姿勢、常に学びながら更新させていくことも重要だと思っています。 今興味、関心のあることはなんですか?もしくは、 今ハマっていることを教えてください。 月並みですが、よくカフェ巡りをしています。特にサンフランシスコへの出張時には一日に何軒もハシゴすることもあります。コーヒーの味を楽しむだけでなく、店舗ごとの空間構成を比較したり、そこで過ごす人々の行動を観察しています。 日本国内ではここ数年、友人数人と一緒に、地方の古民家のリノベーションに取り組んでいます。 友人同士で共同利用できるセカンドハウスのつもりで購入したのですが、壁紙を張り替えたり、和室を洋室に変えたり、洗面台をイチから作ったりしているうちに、考えながらより良い空間を作ること自体が楽しくなってしまいました。 国内外で得た空間デザインに関するインスピレーションやスキル(まだまだ日曜大工レベルですが)を、近い将来、空間デザインとそこでの人の体験を考えるデザインの仕事にも活かせたらと思います。 Mari Kimata / Design Researcher バックグラウンドを教えてください 日本生まれ、アメリカと日本育ちです。東京の美大を卒業後、アメリカニューヨークのアートスクールに通いました。 学生時代は、グラフィックをはじめとして幅広くデザインを学び、後半では主にデザイン思考を勉強していました。 もともと画像編集などクリエイティブなことをするのが好きだったため、デザイン科に入学しましたが、デザイン思考というものについては入学当初は言葉すら知りませんでした。 美大に入ってからも教授の授業を受けている中で、「あ、これがデザイン思考なんだ」と知りました。実はゼミに入る前もよくわかっておらず(教授がデザイン思考という言葉をあまり使わなかったため)、「デザイン思考」という言葉よりも、このゼミは面白そうという気持ちで始まりました。 なぜbtraxに入社したのですか? デザインができること、グローバルな環境で仕事ができること、この2つがマッチしたのがbtraxでした。 大学以降ずっとデザインを学んできましたので、デザイン以外の仕事をするということは考えられませんでしたし、幼少期に海外に住んでいた経験も活かせると思ったからです。 日本にもデザイン会社は無数にありますが、デザイン思考的プロセスを使ってサービス開発を行っている会社は少ないので、とても良い出会いだったなと感じています。 btraxでは具体的にどのような仕事をしていますか? 主にデザインリサーチャーとして、ユーザーがどんなことを求めているのか、どうしたら心地よくサービスを使えるかを、ユーザーインタビューなどを通じてリサーチし、考えるということをしています。 自分とは全く違うタイプの人間(ユーザー)が、どんなことを考えて行動をしたり、どんなときにどんな感情になるのか、というのをインタビューを通して知り、分析するのは、とても楽しいです。 btraxでの働きがいを教えてください。 チームメンバーひとりひとりの個性が発揮されることだと思います。バックグラウンドがみな違うので、性格や得意分野もみなそれぞれです。チームメンバーのスキルを掛け合わせてプロジェクトが進む感じがとても楽しいです。 例えば同じテーマで何かをリサーチするにしても、マーケターはマーケター目線でトレンドを捉えていたり、デザイナーはデザイナー的観点で物事を見ていたりと、さまざまな方向から材料が集まり、それが良い具合にまとまると気持ちが良いです。 また、日本チームとアメリカチームが一緒になってひとつのプロジェクトを行うのも、btraxの魅力だと思います。 全体が小さいチームであるからこそ、メンバー間でのコミュニケーションも活発に行われ、国を跨いでいてもメンバーとの距離が近く感じます。(オンラインでミーティングをしていると、いま誰が日本いるんだっけ!?となることもあるくらいに違和感なくメンバー同士が関わっています。) 今後btraxでやっていきたいことはなんですか? btraxでは日本/海外間でのサービス開発やローカライゼーションを行っていますが、それを引き続き様々なプロジェクトで行っていきたいです。 日本ブランドが海外に展開されること、海外ブランドが日本に入ってくること、どちらも、どうしたら現地の人に受け入れてもらえるようなものになるのかを考えながらサービスを作っていますが、自分自身も常に新しい気づきが多く、ワクワクします。 国が違うと生活スタイルや環境が異なるので、人の考え方やものの感じ方なども異なります。今までの海外経験での感覚や、ユーザーインタビューから得る情報で、どんなものがターゲットにフィットするかを考えています。 今興味、関心のあることはなんですか?もしくは、 今ハマっていることを教えてください。 プライベートでは、様々なジャンルの表現者が集まるためのパブを週末に友人とやっていたりします。アートやデザインの分野だけにとどまらず、様々なクリエイターとお話しできることがとても楽しいです。 あと、日頃からフィルム写真を撮ることが好きですが、最近中判フィルムカメラを手に入れたので、早くそれで撮影したいです。 おわりに 今回はbtrax Japanでデザインリサーチャーとして活躍するお2人をご紹介しました! btraxのメンバーのことを少しでも知っていただけたでしょうか? 今後もbtraxは、日米双方のクライアントさまに対して、デザインの力で国を超えた橋渡しをし、新たなビジネスを生み出すお手伝いをさせていただきます。 btraxについて、より詳しく知りたい方は、弊社のサービス情報がまとまったサービスページをご覧ください。

サンフランシスコのデザイン会社が今Web3に踏み出したわけ

新サービスWeb3 Design Lab 開始
先日、btraxは新サービスとして「Web3 Design Lab」の提供を開始した。
このサービスは、XRやメタバース、NFTを含むWeb3と、デザインを活用することでこれからの世界を動かすサービスづくりをサポートするものである。
Web3 Design Labは、主に日本企業を対象としている。これからますます成長が見込まれるとともに、グローバルサービスとしての可能性も十分に秘めているWeb3領域に対し、新たな事業を作りたいという思いを支えていくサー…

【ファシリテーションの裏側】円滑なワークショップ運営のためのツールと活用事例

btraxのサンフランシスコオフィスでは、10週間のデザイン思考ワークショップを提供している。 このワークショップの参加者は、サンフランシスコに滞在する間、スタートアップになりきってサービス開発を行う。 筆者は現在、ファシリテーションアシスタントとしてワークショップに携わっており、ワークショップ運営の実態を目にする機会があった。 そこで本記事では、ワークショップを円滑に進めるためのツールと活用方法について、実際の事例とともにまとめていく。 ちなみに今回のワークショップは、オフラインとオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で開講されている。 そのため本記事では、オンラインのみで開催するワークショップでも利用可能なツールをご紹介する。 Slack 最初にご紹介するのは、皆さんご存じのコミュニケーションツールSlackである。 Slackは、ワークショップ中のレクチャー資料共有、チーム内のコミュニケーション、健康管理などの用途で使用されている。 ここでは、4つのチャンネルとその活用方法をご紹介する。 ➀#interview まず最初にご紹介するのはインタビュー専用のチャンネルである。 本ワークショップでは、1対1のオンラインインタビューを通して、実際の生活者の声を聞く機会を設けている。 その際、インタビュー中にのみ活用されるチャンネルを用意している。このチャンネルには、主に2つの活用方法がある。 1つ目は追加質問を共有する場としての役割だ。 チームのメンバーやファシリテーターが、さらに深掘りしたい質問をSlackに投稿する。インタビュアーやアシスタントはそれを見て、臨機応変に追加質問を尋ねていく。 2つ目に英語力のサポートのための活用方法がある。 参加者の中には、海外在住や留学経験がある方から、全く英語に自信のない方まで、様々な方がいらっしゃる。 そこでスタッフは、英語力に不安のあるチームのために、英語表現の修正やインタビューのサポートを行う。 英語表現の面では、インタビュースクリプトやピッチ資料などの翻訳作業を行ったり、より伝わりやすい言葉選びを提案したり、といったサポートをしている。 またインタビューの際には、スタッフはインタビューの様子を見ながらユーザーの発言を同時通訳してSlackに打ち込む。 参加者はその訳を見て、相槌を打ったり、次の質問を考えることができる。 事前にチームとファシリテーターで相談し、インタビュー時に使用するチャンネルとその用途を共通認識として決めておくのだ。 それにより複数のチャンネルを行き来する必要がなくなり、インタビューに集中しやすい環境をつくっている。 ➁#health-check 次にご紹介するのは、「health-check」チャンネルである。 コロナ禍でも安全にワークショップを行うためには、事前のルール作り、そして関係者間での綿密なコミュニケーションが欠かせない。 私たちは、ワークショップの事前準備として、San Francisco Department of HealthやCDCを参考にoffice use protocol(オフィスの使用規則のようなもの)を作成している。 政府機関の規則には変更が多いため、毎回のワークショップで一から内容を見直す必要があるのだ。 オフィスの入口には、アルコールジェルと体温計を用意している。 ワークショップの期間、参加者は体温計で体温を測定し、毎朝Slackに報告する仕組みがある。 ➂#things_you_learned 3つめは、一日の学びや疑問を共有するチャンネル「things_you_learned」だ。 参加者は、一日のワークの終わりに[Fact] [Thought] [Question]の3項目を投稿する。 それを翌朝のチェックインで発表してもらい、各々の悩みや質問を全体で考える機会をつくっている。 これには参加者一人ひとりが一日の学びを振り返るだけでなく、互いの学びや感想を見ることで相互作用を生む狙いもある。 ④btrax_internal 次にご紹介するのは、スタッフ用の「btrax_internal」チャンネル。 ファシリテーションとは、やるべきことや手順が教科書のようにはっきりと決まっているものではない。 参加者一人一人の様子や、チームの雰囲気、議論の流れを見て、その場の状況に合わせた対応が必要となる。 そのため、ファシリテーターは、臨機応変な対応ができるよう、常に意識している。 柔軟な対応を可能にするには、ファシリテーター同士の綿密なコミュニケーションが不可欠だ。 このチャンネルはそのようなコミュニケーションの場として活用されている。 これらは、より実りあるワークショップを参加者に提供するべく行われている工夫なのだ。 FigJam 次にご紹介するのはFigJamだ。こちらもデザイン業界では良く知られている、コラボレーション型デザインツールである。 ワークショップ初日には「How to use FigJam」という時間が設けられている。 この時間では、参加者に自己紹介シートを作成するという課題を与え、実際に手を動かしながら使い方を覚えてもらう。 FigJamは、毎日のチェックイン・チェックアウトの他、宿題の提出やチームごとのオンラインホワイトボードとしての役割を担っている。それぞれ詳細に見ていこう。 ➀チェックイン・チェックアウト btraxでは、チェックイン、チェックアウトという時間を設けている。 これは、参加者が1日の始まりと終わりに集まり、自身の気分を共有する場だ。 この時間を取ることによって、参加者は「参加者としての気持ちの準備」をしたり、1日を振り返ったりする機会を得られるのだ。 対面のワークショップでは、気持ちの書かれた画用紙に人形やシールを置き、メンバーに共有する。 一方、オンラインでチェックインを行う際には、対面で行う際と変わらない環境を提供するため、シートをFigJam上に用意する。 「チェックイン」とは ワークショップで実践する際の狙いとコツ ➁宿題の提出・共有 続いての活用方法は、宿題の提出と共有である。 ワークショップを通しての目標や、フィールドワークでの発見など、参加者に宿題を出すことがしばしばある。 宿題には、シートや文章を穴埋めするスタイルのものが多い。 参加者はFigJam上のシートに自らの答えを書き込み、全体で発表する。 またこれらに加え、ワークショップ運営に欠かせない機能が2つある。 まずはFigJamのboardの右上から設定できる、タイマー機能である。 このタイマー機能によって、発言の持ち時間を管理したり、ブレインストーミングの時間を決めたりすることができる。 ワークショップにおいては、敢えて時間を決めて議論を前に進めてみることがある。この機能は、そういった時にも非常に役立つのである。 さらにFigJamには、チームのコミュニケーションを促す機能が多く含まれている。 そのなかでも今回はコメント機能とGoodスタンプの活用方法についてご説明する。 Goodスタンプは、チーム内での投票や、互いのアイディアに軽いリアクションをするときに非常に便利な機能である。 またファシリテーターが、議論の流れを止めずに助言をしたいときには、しばしばコメント機能が使われている。 この機能によって、会話を途切れさせることなく、それでいてメンバーの目に自然に入る場所に、文字を残しておくことができるのだ。 口頭の発言だと、直接細かなニュアンスが伝えられる代わりに、どうしても話の流れを止めてしまうことがある。 コメント機能は、それを補う形で活用できるアイテムでもあるのだ。 こういった活用方法によってbtraxでは、ワークショップの開催形態に囚われず、クオリティを維持することができている。 デザイナーがファシリテーションをしてみた btraxオフィス 最後にご紹介するのはズバリ、btraxのサンフランシスコオフィスである。 オフィスに常備されている備品はザっと以下のようなものだ。 消毒ジェル、スプレー、スナック、コーヒー、クッション、付箋、ペン、イーゼルパッド、ホワイトボード、アイディアペイント、マーカー デザイン思考の実践に最適な4つのオフィスアイテム これらは、オフィスの利用者たちにクリエイティブな思考を促すアイテムたちである。 ワークショップの参加者はこういったアイテムを自由に使って議論を進めることができる。 これらの備品や食べ物の補充も、ファシリテーターの重要な仕事の1つだ。 またオフィスにはいくつかの部屋があるが、それぞれの部屋が個性を持っていて、雰囲気も異なる。 そのため議論に詰まった際には、気分転換のための部屋移動をファシリテーターから提案することもある。 15周年を迎えるbtraxについて知っておくべき15のこと さらにワークショップの期間には、オフィスで毎朝30分のヨガ教室が開講される。 一日の始まりに心と身体を整え、気持ちよくワークに入ることができる。 このようにbtraxでは、オフィスそのものの環境づくりにもこだわっている。 デザイン思考のファシリテーターは、なぜポストイットを使わせるのか おわりに ここまで、ワークショップで使用されているツールとその活用事例をご紹介したが、いかがだっただろうか。 「デザイン思考」や「ワークショップ」と聞くと、捉えどころがなく抽象的な印象を受ける方は少なくないだろう。 本記事では、そんな実態の見えにくいワークショップの「知られざる一面」をお見せした。 btraxは、10週間のプログラムのみならず、新サービスの開発や、デザイン思考研修にてワークショッププログラムを設計し、提供している。 サービスにご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。 ワークショップの目的・心得やファシリテーションのコツについては、以下の記事も併せてご覧いただくと、より理解が深まるだろう。 ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ ファシリテーションとは?議論を前進させる基本のメソッド Ideas […]

デザイナーが陥りがちな5つの認知バイアスとよくある失敗例

大学院に進学してイノベーションの研究をしたおかげで、気づけたことがある。 その一つが、バイアスを理解することの重要性だ。 私はUI/UXデザインの仕事を一度離れてイノベーションの研究をするまで、自分が効率化を求めて無駄を排除するような、「柔軟性に欠けた人物」であることに気がつかなかった。 というのも、仕事をしている間に無意識に周りに影響され、先入観(バイアス)を持ってしまっていたからだ。 もちろん、仕事の効率化を求めることは大切だが、創造力が求められる現場だと、このバイアスが邪魔になることも多い。 例えば、新しいコンセプト提案を依頼されたときに、その仕事に慣れている人が効率を重視した方法で行うと、斬新なアイディアが出にくくなる傾向がある。 実際にKim & Ryuの研究によると、経験を積んだデザイナーは、そうでない人と比較して問題のカテゴライズに慣れているため、最初に定義した問題に執着する傾向があることが示唆されている。 このように、仕事への慣れにより、無意識に創造力を下げるバイアスに陥ることがある。 そのため、この記事では創造力を高めたいデザイナー向けに、デザイナーの仕事に慣れることにより無意識にかかりうる5つの認知バイアスと、それらの認知バイアスにかかってしまった際に起こりうる失敗例をピックアップしてご紹介する。 1. ダニング・クルーガー効果 (dunning kruger effect) ダニング・クルーガー効果とは、初心者が少し仕事に慣れて自信がつき、「優越の錯覚」をした時に起こりやすいもので、正しく自己評価できずに、自身を過大評価してしまうことである。 逆に専門家は同じくらいの自信を持っていても、適切な判断ができるのでダニング・クルーガー効果は起こりづらい。 ダニング・クルーガー効果では下記のような曲線図が広く取り上げられている。縦軸が自信の度合い、横軸が知識や経験を表している。 初心者の段階では、知識や経験が増加するにつれて大きく自信が付き始め、「優越の錯覚」にたどり着く。「優越の錯覚」では完全に物事を理解したつもりになり、自分の行動に対して肯定的になる。 しかし、その山を越えてより知識をつけていく過程で、自分の知識と経験はまだまだ不足していることに気づき、自信を失って、「絶望の谷」に陥る。 そしてそれらをさらに乗り越えることで「継続の台地」に至る。この段階は、更なる学びと経験を繰り返しながら、謙虚さと自信の両方を合わせ持っている状態だ。 自分の苦手なこと、得意なこと、知らないこと、知っていることをそれぞれ理解しており、適切な自己評価ができる状態とも言える。錯覚ではない本当の自信がついてくる時と言われている。 ここで重要な点は何に対して初心者であるかだ。 例えば、クライアントワークで今まで経験しなかった領域のプロダクトに携わるとき、クライアントワークという点では専門家であるが、その領域に関しては初心者の状態になる。 そのため、このバイアスは経験豊かな人でもかかり得る可能性が大いにある。 よくある失敗例: コンセプト立案の際に、既存のやり方に固執したことが原因で、新しい視点を持てなくなり、結果的に斬新な提案ができなくなってしまう。 UIデザインの際に他領域の方の声を聞かずに自分の正しいと思った方向に一直線で進んでしまい、偏った考えでデザインの制作をしてしまう。 2. デザイン固着 (design fixation) デザイン固着とは、既存のデザインの特徴に過度に依存してしまい、デザイナーの創造的なアウトプットが制限される状況である。 例えば、仕事に慣れたデザイナーは短時間で高いアウトプットを出すために、一つの要素にこだわる傾向がある。 そして結果的に、幅広いデザインスタイルの検討ができなくなり同じようなビジュアルが生まれてしまう可能性がある。 よくある失敗例: デザイン制作の際に最初のデザインにこだわって幅広い案を検討することができなくなってしまう。 デザインプロセスを進める際に最初に出たアイディアに固執して、方向性を大幅に修正することができなくなる。 3. サンクコストバイアス (sunk cost effect) サンクコストバイアスとは「もったいない」という感情に縛られて、合理的な判断ができなくなることである。 例えば、仕事に慣れたデザイナーがデザインスプリントを行う際に、時間対効果的に「もったいない」無駄なことを避けて、いつも通りのやり方を選ぶ傾向がある。 これにより、失敗はしないが、革新性のあるアイディアもまた生まれにくい。 よくある失敗例: 新しいコンセプト提案をする際に、自身の専門知識を元にした方法に固執し、新しい視点が持てなくなり、結果的に斬新な提案ができなくなってしまう。 新しい機能についてアイディアを発散する際に、時間対効果を高くするために既存のアイディアの発散のやり方で進めてしまった結果、斬新性の低いアイディアになる。 UIデザインを制作してフィードバックをもらった際に、既存の素材を捨てるのがもったいないと思い、大幅にデザインを変更することが難しくなる。 4. 認知的定着 (cognitive entrenchment) 認知的定着とは、ある分野の知識が豊富なために、その知見に固執してしまい、新鮮な視点で物事を見ることがしにくくなってしまうことだ。 例えば、医療分野の経験が豊富なデザイナーが医療に関する新しいサービス案を考えるように指示された時、彼らは経験の浅いデザイナーよりも創造性が低い提案が多い傾向がある。 というのも、疑うべき前提を当然のことのように考えてしまい、革新的なものが生まれにくいからだ。 よくある失敗例: 新しいコンセプト提案をする際に、自分が専門にしていた知識からの引用のようなアイディアが多くなってしまう。 ランディングページを制作する際に、専門用語を無意識のうちに多用してしまう。 5. 同調バイアス (conformity bias) 同調バイアスとは、他者がどう行動するかを参考にして同じ行動をとることだ。 例えば、企業で働くデザイナーはその企業のカルチャーやデザインプロセスに染まり、新しい考え方を持つのが難しくなる傾向がある。結果的に、既存概念を破壊するアイディアを創出しにくくなる。 よくある失敗例: 知らず知らずのうちに所属組織のカルチャーやアウトプットの方法が染み付き、行うべき議論を疎かにしてしまう。 上司のやり方を真似するうちにそのやり方が染みつき、自分のオリジナリティのある考えが減ってしまう。 まとめ チェスの研究では、「プロプレイヤーは既に知っている情報への認知バイアスを防ぐことができないが、一流プレイヤーはできる」と述べられている。 デザイナーの場合もスペシャリストを目指すには、認知バイアスを理解して自分のフレームを知ることが重要になってくると思われる。 そのため自分も、引き続き認知バイアスを学び続けて、デザイナーとしてスペシャリストになれるよう努力したい。 もっと認知バイアスについて学びたくなったら: デザイナー必見!知っておきたい10の認知バイアス マーケティングに役立つ8つの認知バイアスとその活用事例 参考: Kim & Ryu ​​A design thinking rationality framework: framing and solving design problems in early concept generation (https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/07370024.2014.896706) Chess Players Inflexibility of experts—Reality or myth? Quantifying the Einstellung effect in chess masters […]

b-side of btrax #4 デザインの力で日米のクライアントさまをサポートする、btraxのマネージャーの素顔とは

btraxで働くメンバーをご紹介する「b-side of btrax」シリーズ。 第4弾となる今回紹介するチームは、btrax Japanにてゼネラルマネージャー、シニアアドバイザーを務めている2名です。 btrax Japanの会社全般のマネジメント、クライアントさまや外部の方との関係構築、プロジェクトの進行管理、法務、経理など、その業務は多岐にわたります。 今回はお2人のバックグラウンドから、btraxへの入社理由、今後btraxでやっていきたいことまで、幅広くお届けします。 btraxではどんな人が働いているの?と気になっている方、ぜひ最後までお付き合いください! Mitsutaka Kaneko / General Manager バックグラウンドを教えてください 大学は国際政治経済学部で、インターナショナルビジネスを専攻していました。 学生時代の4年間はAIESECという国際的な学生非営利団体で活動したり、アメリカのカーネギーメロン大学に1ヶ月短期留学した経験も相まって、大学時代から国際的な仕事をしたいと考えていました。 社会人になって1社目はインターナショナルに活躍でき、かつ学んできた経営学を活かせると考え、外資系コンサルティング会社に就職しました。 当時はeコマースの先駆けの時代で、インターネットを活用した新しいサービスの立ち上げに関わるプロジェクトを多く経験しました。 2社目では、中国人の社長が設立したITベンチャーに入社し、中国の子会社に赴任したり、社長室長として社長の元で経営を肌で体感し、新規事業の立ち上げや子会社の社長なども経験してきました。 なぜbtraxに入社したのですか? サンフランシスコ、スタートアップ文化、デザインに共感したからです。 2社目の企業に在籍中に大前研一氏が主催するBond-BBT MBAプログラムに参加し、その勉強の中でバージニア大学のSaras Sarasvathy教授が提唱するEffectuation(エフェクチュエーション)という考え方を知りました。 大企業が知っておくべき イノベーション創出に必要な5つの起業家マインド そして、スタートアップやイノベーションに興味があることに気がつき、MBAの仲間と一緒に1週間かけてシリコンバレーのスタートアップを訪問する企画を実施しました。 その企画の中で、実際に訪問した企業の1社がbtraxで、それがbtraxとの出会いでした。 その後、当時のbtraxにはAccount Managerのポジションが必要だったことから、FounderでありCEOのBrandonから声をかけてもらい、入社を決めました。 btraxでは具体的にどのような仕事をしていますか? 入社して最初のミッションは当時サービスを開始していたSFイノベーションプログラムを日本の大企業のニーズに合わせてリニューアルし、より価値のあるメニューにしていくことでした。 そのためには現場に入って実際にプログラム運営にも関わる必要があると考え、最初しばらくはサンフランシスコに滞在してプログラムのファシリテーションも行っていました。 その後、セールス中心のAccount Managerではなく、よりクライアントが価値を提供できるように提案し一緒にその価値作りをサポートしていく役割が必要と考え、現在のBusiness Producer制度を提案し、自らBusiness Producerとして活動してきました。 現在はbtrax JapanのGeneral Managerを務めており、btraxの東京側に関わるマネジメント全般を担当しています。 btraxでの働きがいを教えてください メンバーの海外に対する挑戦を後押しできる環境があるところです。 日本にいてもグローバルに活躍できる会社であると思いますが、社員が海外での仕事などに挑戦したいと考えた時に、挑戦を後押しできる会社でありたいと思っています。 今後btraxでやっていきたいことはなんですか? btrax全体のことを考えて動くことをより追求していきたいです。 btraxは以前と比べてメンバーも増え、会社として実現できることが多くなってきており、ようやく昔描いていた会社像やビジョンを体現できるようになっていると感じます。 今後は日本側のマネジメントだけでなく、日米のオフィスの連携をより強固にしながら会社全体のマネジメントの強化に繋げていきたいと考えています。 今新たに挑戦していることはなんですか? 現在、経営の傍ら、スタンフォードのビジネススクールが提供するLEADプログラムに参加して、世界中の経営者や管理職の方々と学んでいます。 経営やデザインなどの知見を拡げることはもちろんですが、シリコンバレーをはじめとする世界中の方々との人脈も広げていきたいと考えています。 Hidemaru Sato / Senior Advisor バックグラウンドを教えてください 大阪生まれです。高校までは大阪で過ごし、大学生になって東京へ出てきました。 大学では、理工学部で自動制御工学を専攻していました。特に熱伝導の制御についての卒論でしたが、今となってはどうしてこんな堅い勉強をしていたのか疑問です。 そのまま大学院へ進もうと思ったのですが、勉強するならグローバルだ!と思い、アメリカの大学院へ進みました。 大学院での2年間は人生で最も勉強した時期でした。 その甲斐もあって無事に修士課程を修了して、東京へ戻りました。大学院ではコンピュータサイエンスの科目も取っていて、プログラミングに興味を持ったのもこの時期でした。 東京では外資系の大手コンピュータ企業に就職し、当時最先端であったコンピュータグラフィックスのソフトウエアの開発、様々なCG映像の作成に携わりました。 日経から「プレゼングラフのすべて」という書籍を出版したのもこの頃です。 9年間ほどCGのシステムエンジニアとして過ごしていましたが、海外で仕事がしてみたいということもあり、ロサンゼルスに渡りました。 現地では日本企業の駐在員として、家族帯同で10年ほど過ごしました。 その後、米国企業の日本進出ブームもあり東京へ戻って、米国企業の日本法人の立ち上げを数社ほど行いました。 アメリカ法人で働く中で、日米両方の文化と共に、黎明期の最先端のIT技術を体得し、それらの知見を活かして経営に携わっていました。 なぜbtraxへ入社したのですか? オンライントラベルの大手Expediaの日本法人の立ち上げに奮闘していたときに、当時サンフランシスコで新進気鋭のデザイン会社であったbtrax, Inc.のCEO、Brandonと知り合ったことがきっかけです。 Expediaの日本語ウェブサイトの立ち上げおよびローカライゼーションで苦労していた時に、btraxに依頼しました。 その後、Brandonが日本法人を立ち上げた時に、btraxの一員として加わりました。 Brandonが日本とアメリカの企業文化を理解していることが魅力に感じましたし、Expediaの案件での仕事ぶりに感動したからです。 2015年のことですので、すでに7年が経過しました。日本法人の社員としては3人目でした。 btraxでの働きがいを教えてください 魅力的でかつ個性的なメンバーに囲まれて仕事ができることが働きがいになっています。 自分はSenior Advisorという立場で、経営全般のサポートをしています。 様々なプロジェクトでメンバーとしてサポートすることもありますが、大きな役割はExternal Relationです。 つまり、btraxの業務を助けてくれる様々な外部の方々、スタートアップ界隈のメンバー、投資家や業界の専門家などとのネットワークを業務に生かせるようにサポートしています。 また、日本法人の経理や総務、法務といったロジスティックスの部分でも出来る限りのサポートをしています。 働きがいと聞かれても一言では難しいですが、強いて言えば、自分の主義主張、アントレプレナーシップを持っている、魅力的で個性的な若い社員の皆さんと一緒に仕事ができることだと思います。 今後btraxでやっていきたいことはなんですか? Senior Advisorとして、これまで以上に様々な案件でメンバーの相談相手になることと、より素敵で楽しく仕事ができる会社にすることです。 コロナ禍でここ2年間ほどは、在宅勤務が通常になったので、オンラインの良いところ悪いところが明確にわかってきました。 コロナ禍もずいぶんと安定してきた昨今ですので、メンバー各自が業務を遂行する上で最も適切なハイブリッドな職場環境を実現していきたいと思っています。 今興味、関心のあることはなんですか? 学生さんを含めて、日本中にいる起業家候補生の皆さんに、グローバルに通用するアントレプレナーシップをbtraxから発信していくことです。 btraxでは過去6年間にわたって、福岡市主催の起業家育成プログラムの企画・運営に携わってきました。 その経験から多くのアントレプレナーシップを持った方々とのネットワークを持っています。 そのような方々から相談を受けることも多く、楽しく仕事をしています。 「起業や、会社の中の新たな部署での挑戦をするのならまずはbtraxに相談してみよう」と、多くの方々が思うような会社にすることに大きな関心があります。 おわりに 今回はbtrax Japanでゼネラルマネージャー、シニアアドバイザーを務めるお2人をご紹介しました! btraxのメンバーのことを少しでも知っていただけたでしょうか? 今後もbtraxは、日米双方のクライアントさまに対して、デザインの力で国を超えた橋渡しをし、新たなビジネスを生み出すお手伝いをさせていただきます。 btraxについて、より詳しく知りたい方は、弊社のサービス情報がまとまったサービスサイトをご覧ください。 次回はbtraxで、デザインリサーチャーとして活躍するお二人をご紹介します!どうぞお楽しみに!

CXデザイン実現のための「カスタマージャーニー発想」そのコアにある3つの考え方

最近、CXという概念が浸透し、その「実装」に奔走するフェーズに入ってきている。 本記事では、そんなCXについて、基本の定義、ビジネスにおける重要性、これから企業に求められるCX実装のために持つべき観点をまとめてお伝えしたい。 CXとは? そもそもCXとは、Customer Experienceの略であり、日本語では顧客体験と表現される。似て非なる概念として、UX (User Experience)があるが、セットで考えると理解しやすいだろう。 UXがユーザーを対象としているのに対し、CXはユーザーを含むそのサービスやプロダクトに関わる人全員を対象としている。 つまり、CXとUXは包含関係にあり、全くの別物と捉えるのではなく、UXを含むさらに広範囲を対象としているのがCXだと考えるべきだろう。 また、「UXデザイン」同様に「CXデザイン」という言葉もよく聞かれるようになっている。これは、ユーザー体験だけでなく、その前後を含む顧客体験全体をデザインする行為と考えるのがわかりやすいと思う。 関連記事: CXデザインとは?UXデザインとの違いとそれぞれの役割 ビジネスにおいてCXが重要視されている理由 では、そんなCXという概念が、なぜビジネスにおいて重要とされ始めているのか。 その何よりも強力な理由が、CXの質と売上が比例することが明らかになりつつあるからだ。つまり、より良いCXを提供している企業は、売上も高いのだ。 いくつか具体的な数字を用いてご説明しよう。 Dimension Data社による調査では、CXを改善した企業のうち84%が収益の向上を、また79%がコスト削減を実現したと報告されている。 また、顧客ロイヤリティという観点では、 同社が2つの結果を発表している。 1つは、CXを改善し向上させた企業のうち92%が、顧客ロイヤリティの向上をも実現することができたということ。 そしてもう1つは、彼らの調査対象のうち73%の消費者は、良い顧客体験は、自分たちがそのブランドに対して抱くロイヤリティに影響すると考えている、ということだ。 こうした数字を見ていくだけでも、CXが持つビジネスにおけるポジティブな影響と重要性が垣間見えてくるだろう。 CXを考える上で重要なこと では、CXを実装し、顧客との関係性を構築するためにはどんな考え方を持つと良いのだろうか? 筆者は「カスタマージャーニー発想」が重要なマインドセットであると考えている。そして、このカスタマージャーニー発想は、顧客のサービス体験を「線」で捉えることと、本記事では定義したい。 CXをデザインすることはすなわち、UXも含めて顧客体験全体を考えることである。 UXとCXの関係性については上記の通りだが、サービス体験という名の、顧客にとっての旅の始まりから終わりまでを一貫したものとして捉えることがカスタマージャーニー発想であり、これがCXの基盤になると考えている。 あえて「線で捉える」としたのは、この手の話には、「顧客とのタッチポイント」という言葉が頻出することに関係する。 というのも「タッチポイント」という言葉には「ポイント」という表現が用いられているため、「点」の印象を持ちやすいだろう。 しかし、ここでは、複数のタッチポイントが連なることで線形を描いている、あるいは、タッチポイントを繋いでいくことで線状のカスタマージャーニーができあがるイメージを持っていただきたい。 オンラインで情報を収集をしてオフラインの店舗に買いに行く、オフラインで実際に目にしたものを後日オンラインショップで購入する。など、顧客は、無意識のうちにチャネルを縦横無尽に行き来して、最終的な購買やサービスの利用に至るもの。 したがって、カスタマージャーニーを考える側としても、「オンラインだから」「オフラインだから」とチャネルを区別して単体で捉えるのではなく、総合的な流れを考えることが重要だと考えている。 カスタマージャーニー発想を支える3つの概念 そんな「カスタマージャーニー発想」を考える時に、理解しておきたいのが、以下の3つの概念である。 デザイン思考のマインドセット サービスドミナントロジックの基本原理 デジタライゼーション デザイン思考 まずはデザイン思考。今回はそのプロセスを解説するのではなく、あくまでもデザイン思考が持つ特徴について簡単にご説明したい。 具体的には、反復性のあるプロセスであることだ。 デザイン思考は、5つのプロセスで成り立っているが、それを遵守することだけが正ではない。実際のデザイン思考を用いた現場では、プロセスを行ったり来たりすることも少なくない。 下記の図はbtraxが考える、デザイン思考を用いたサービスデザインのプロセスを表現したものだ。 ご覧の通り、必ずしも左から右に進む矢印だけではなく、右から左への矢印、すなわち前のプロセスに戻っていくアプローチも入っている。 今いるプロセスがどこなのか、何を達成しようとしているのかを明確にしながら、その時必要なプロセスを踏むことがデザイン思考の基本と言えるだろう。 ここがちゃうねんデザイン思考。5つの誤解とは サービス・ドミナント・ロジック 2つ目のサービス・ドミナント・ロジックは、小難しいカタカナだと敬遠したくなる気持ちもわかる。しかし、内容はそこまで複雑ではない。 サービス・ドミナント・ロジックは、一般的に有形の「モノ/プロダクト」と、無形の「サービス」と考えられている両者を包括的に捉え、顧客との価値共創を目指すことと定義されている。 ここでのポイントは、顧客との価値の共創にある。 サービス・ドミナント・ロジックは、「モノとしての価値は、それが実際に使われるまでは生まれない」、別の言い方をすれば、「モノは使われて初めて価値を持つ」という考え方に立脚している。 そして、実際にモノを使ってもらう前後の過程を「サービス」として、重要視するものだ。 つまり、顧客の使用がなければ、モノが価値を持つことができないという意味で、顧客はモノおよびサービス価値の共創者であると考えられるのだ。 プロダクトのサービス化を実現するための3つの方法 デジタライゼーション 最後に、デジタライゼーション。昨今言うまでもなくデジタル化が進んでいるが、これによる変化を理解することが、カスタマージャーニー発想をより骨太なものにしてくれるという意味でご紹介しておきたい。 というのも、デジタライゼーションが可能にしたこと。それは、まさにオフラインとオンラインという概念を顕在化させたことだと考えている。 つまり、デジタルおよびオンラインという概念が生まれたからこそ、それまで必然視されていたオフラインの存在やその特性がかえって際立ち、結果的にそれぞれの特徴を活かしたアプローチが取れるようになってきたということだ。 OMO(Online Merges Offline)という考え方はまさにこれに当たるものだろう。 そういう意味で、一連の顧客体験における、さまざまなチャネルを縦横無尽に行き来しながら進んでいく様子は、デジタライゼーションによって可能になっていると言っても過言ではないだろう。 また、デジタライゼーションは、サービスそのものの柔軟性も高める働きをしていると考えることもできそうだ。 その一例として、デジタルでは、欠陥によるダメージが作り切りのモノよりも小さいのではないか、という話を挙げたい。 この具体的な説明には、アプリの例がわかりやすいだろう。 アプリは、まだ一部の機能が万全でなくてもリリースされることが多い。もしくは、リリースしても不具合が見つかれば、アプリは公開したまま修正を行い、新しいバージョンをリリースするといった対応が可能だ。 もちろん致命的な失敗や、従来は考えにも及ばなかった脅威もあるため、安易に「失敗しても問題ない」とは言えない。しかし、多少の欠陥を認めながらもサービスを継続させやすいのは、デジタルに移行してこその新たな在り方ではないだろうか。 OMO – 顧客体験向上のための2つのトレンドと4つの成功事例 カスタマージャーニー発想の本質は、垣根を超える柔軟性 最後に、ここまで簡単に今回のテーマに寄せて定義をご紹介した「デザイン思考」「サービス・ドミナント・ロジック」「デジタライゼーション」の3つが、なぜカスタマージャーニー発想に重要なのかを明確にしていきたい。 この理由を考える際に、3つに共通するポイントに着目したい。 それは、いずれも何らかの境目を薄くする、あるいは垣根を超える柔軟性を持ったアプローチであるということだ。そしてこれこそが、カスタマージャーニー発想の醸成、さらにはCXデザインをよりよく行うため最大のポイントではないかと筆者は考えている。 デザイン思考は各プロセスの垣根を超え柔軟にプロセスを横断していく。 また、サービス・ドミナント・ロジックは、その定義が物語るように、ハードとソフト、あるいはモノとサービスの境界を融解し、1つのサービスとして価値を提供することを指す。 そしてデジタライゼーションは、オンラインとオフラインという考え方を明確にし、そして両者を活用した総合的な戦略および施策立案を可能にした。 このように三者ともユーザーや顧客を中心に据えることで、彼らに良い体験を届けるためのプロセスや手段に対し、ある意味寛容に、多くの選択肢を持った考え方であると言えそうだ。 柔軟なアプローチには、柔軟なチームを 最後に、上記を実現するために、組織内においては、部署間の連携がこれまで以上に必須となるだろう。もうお気づきかもしれないが、カスタマージャーニーやCXをまったくの他人事にできる部署は一つとして存在しないのである。 もちろん、それぞれのタッチポインやチャネルに対し、担当部署やメインで取り組むチームは割り当てられるだろう。 しかし、ここで重要なのは、各部署が担当する内容が「その部署だけのもの」にならないように留意する必要があるのではないかと考えている。 UXデザイナーは本当にデザイナー?UXデザインの役割の拡大 終わりに CXの重要性に始まり、実際にCXをマインドセットとしてどのように捉えると良いのか、その糸口となりそうな3つの考え方とその背景にある共通点について解説をした。 UXに引き続きCXもそのベールが少しずつはがれ、実用に向けた取り組みをなされている方も多いだろう。理解を深めるために本記事が少しでも参考になれば幸いだ。 btraxでは、まさに本記事でご紹介したようなUX含めCXを総合的に捉えるアプローチを重要視し、ユーザーや市場を理解するリサーチから、ブランドデザイン、サービスデザイン、そしてそれらをユーザーにお届けするコミュニケーションデザインまで、包括的にサービスを提供させていただいている。 各フェーズにおける実際のアプローチや、過去のクライアントさまの事例は下記の会社概要PDFにてご紹介している。ご興味のある方はぜひダウンロードください。 参考記事: Why (and How) Customer Experience Drives Business Growth

ユーザーが「使い続ける」サービスの特徴と事例4選

現在弊社はクライアントワークで、とあるアプリの開発に携わっている。 ヘルスケア系のサービスに興味や関心はあるけれど、日常の習慣の中に取り込めていない人にも利用してもらえるようなサービスを作ることを目的としている。 どうしたら、ユーザーにサービスを継続してもらえるか?という課題にフォーカスして、社内アイディエーションと、クライアントも含めたワークショップ形式で、アイディア出しを行った。 その際、ヘルスケア系に限らず、さまざまなジャンルのアプリをリサーチして参考にした。 この記事では、リサーチをもとに、継続のしやすさという観点で優れていると感じたサービスをご紹介する。 日々の記録や言語学習のような、「使い続けてもらうこと」に本質があるアプリを中心にピックアップし、それぞれのアプリが実践している継続しやすいポイントをまとめてみた。 Duolingo Nike Run Club Forest muute 新規サービスを検証する際に確認するべき15のチェックリスト 1.Duolingo まず最初に紹介するのが、言語学習アプリのDuolingo。テレビCMも放送しているので、存在を知っている人も多いはず。 アメリカ発の言語学習アプリで、約40か国の言語の中から、好きな言語を学ぶことができる。 弊社メンバーが長く使い続けていると聞いたため、筆者も実際にインストールしてみた。そして、少し使い続けてみて、いいなと思った点をまとめてみた。 Good point (1)毎回のレッスンが短いので、サクッと学べる 1レッスンあたりの問題数が少ないので、ちょっとした移動時間や待ち時間にも利用できる。 5分で終わると分かっているので、隙間時間に軽い気持ちでレッスンを受けられることがとても魅力的だと感じた。 (2)続けていくことでバッジがもらえる レッスンを進めていくことでバッジがもらえるため、過去の積み上げが可視化されることで達成感があり、着実にコースを進められているという指標になる。 (3)続けないと、もう一度コースを受けないといけなくなってしまう しばらくアプリを放置してしまうと、今までクリアしてきたコースをもう一度最初からやり直さなければならなくなる。 せっかくクリアしたところをもう一度最初から、というのは避けたいため、やらねば!という気持ちにさせてくれる。多少スパルタに感じるやり方も、習慣化のためには必要な要素なのかもしれない。 (4)適度にユニークな通知が来る アプリをしばらく開かないと、スマホに通知が入るのだが、その通知がちょっとおちゃめなのだ。(通知の頻度は個人で設定可能) Duolingoのメインキャラクターである緑の鳥のDuoくん含め、複数のキャラクターが交互に、「アプリに戻っておいで〜」と呼びかけてくれる。 ヒットサービスを生み出すための3つの秘訣とそれぞれの実例 2.Nike Run Club ご存じの方やお使いの方も多いであろうNikeから出ているランニングアプリ、Nike Run Club。走行スピード、距離、ルートなどの記録全般を行ってくれるアプリだ。 記録以外の機能は極力少なくし、大事な「記録」という機能に特化していることがユーザーに長く使われる理由かもしれない。 Good point (1)記録をシェアできる 自分のランニングの記録を他の人とシェアすることができ、お互いにスコアを見ることができる。 シェアすることで、お互いにモチベーションを高め合い、ランニングを継続しやすくする効果があると考えられる。 また、シェアできるだけでなく、コミュニティにも参加できる。 参加することで、チームで何かを達成するという楽しさが感じられるとともに、自分もより頑張りたいという気持ちにさせてくれそうだ。 (2)マイルストーンバッジやトロフィーを獲得できる 連続記録や、自己ベストを出すと、アプリがお祝いしてくれてマイルストーンやトロフィーを獲得できる。 (3)目標達成をサポートしてくれる 目標を設定し、目標達成までの達成率を可視化してくれるので、モチベーションをキープしやすい。 3.Forest Forestは、言うなればスマホ中毒を解決するためのアプリ。 どこへ行くにも何をするにもスマホが欠かせない現代だからこそ生まれたサービスだ。 仕組みはとてもシンプルで、スマホを開いていない時間に木が育つというもの。日本の有料仕事効率化アプリのランキングでは現在1位(2022年7月時点)で、世界でも157ヵ国に渡って利用されている。 Good point (1)究極にシンプルである 1つ目の特徴はなんといっても、スマホを触っていない時間に木が育つというシンプルさ。 新しいアプリを使う際に使い方が難しい、セットアップがややこしい、などの不便さが一切ない。 (2)育てることで愛着が湧く 自分のアクションによって何かが育つことで、愛着が湧いて継続したくなる効果がある。 このアプリの場合は、「スマホを開かない」ということがアクションになる。 (3)頑張りが可視化される 自分がどれだけスマホを触らずにいられたかという今までの頑張りの軌跡が、木というアバターで可視化される。そのため、どれだけ頑張ったかがわかりやすく、モチベーションを保ちやすい。 自分がスマホを開かなかった間にこんなに木が成長した、という達成感が得られそうだ。 サービスデザインで考慮すべき3つの「心理的ハードル」とは 4. muute muuteは、AIが思考と感情を分析してフィードバックをくれるジャーナリングアプリ。筆者も継続して利用していた。 ただ書くだけでなく、分析が定期的に入ることで振り返りができるのが楽しくて、継続のモチベーションに繋がった。 Good point (1)偉人の言葉をくれる 日記を書いたあとに毎回ひとことだけ、偉人の言葉がもらえる。 前向きな気持ちになれたり、ひとつ小さな知識が増えたという満足感を得られる。 (2)毎週と毎月のインサイトまとめが届く 自分が直近でよく考えていたことや感情を、それぞれ週単位と月単位とでアプリが自動で分析して、その結果を提示してくれる。 自分の思考や感情を客観的に振り返ることができ、変化を知ることができるのは、紙の日記にはない面白い特徴だ。 (3)テーマに沿って書ける もちろん自由に文章も書けるが、与えられたテーマをもとに日記を書くことも可能。 日記を書きたいけど毎日何を書けば良いかわからず結局放置してしまう、という継続を阻むありがちな課題を解決し、何かを書くきっかけになる。 コロナ疲れを克服!心身共にケアするウェルビーイング系サービス5選 まとめ サービスを継続して使えるよう施されている工夫として、共通している要素として挙げられるのが、まず、軌跡が可視化されるということだ。何らかの「カタチ」で今までの自分の成長を見て振り返ることができる。 Duolingoであれば、レッスンを進めることでバッジを獲得でき、今までの努力が可視化される。 Nike Run Clubも、記録に応じてバッジやトロフィーを獲得でき、走ったときの様々なデータを振り返りながら比較ができる。 また、Forestの場合、スマホを触っていない時間が木の成長で表現され、muuteは、日々の日記を、週ごと、月ごとのインサイトで客観的に振り返ることができる。 人間何かしらで記録をしていないとすぐに忘れてしまうし、記録があれば、ここまでやってきたから次もやろう、という次へのモチベーションに繋がりやすいのだと感じた。 ある種それまでにかけた時間やお金、努力を惜しむ気持ちから来る「コンコルド効果」のようなものに近いのかもしれないが、何かを習慣化させるという場合においては、上手に活用できれば効果的な手段かもしれない。 また、記録系サービスに限らず、どれだけハードルを感じさせず、楽しく使ってもらえるかが、ユーザーにとって大事な要素だと感じた。 難しそう、複雑そうと思わせない工夫や、ちょっとした隙間時間に使えるような気軽さが、継続して利用してもらうための必要な要素である。 サービスデザインの極意 機能を「シンプルにする」ことの難しさとは また、それと同時に、ポジティブになれる言葉をもらえたり、何かが育つ愛着があったりと、楽しいポイントもサービスに組み込まれていると使いたくなる人も増えるはずだ。 btraxでは、上記のような使い続けてもらえるためのサービスデザインのみならず、そのサービスデザインの基盤となるリサーチ、ブランドのビジョンを言語化をする段階からサポートさせていただいている。 btraxのサービスにご興味をお持ちの方は是非、弊社のサービスページをご覧ください

スタバのスリーブから学ぶ、アフォーダンスとシグニファイア【UXデザイン】

とある午後、サンフランシスコのスタバでラテを買った際に気づいたことがある。 カップの外側に、熱い飲み物による火傷を防止するためにつける「スリーブ」が非常に上手にデザインされていることを。 そう、スタバロゴの顔がついている茶色い帯のような物体のことだ。 それをよく観察してみたところ、UXデザインにおける「アフォーダンス」と「シグニファイア」を上手に活用し、ユーザーにとって使いやすい設計になっていた。 ということで、今回は普段の日常生活で馴染みのあるアイテムを通じて、UXデザインに関する構成要素を学んでみたいと思う。 UXデザインにおける「アフォーダンス」と「シグニファイア」とは? そもそも普段聞き慣れない「アフォーダンス」と「シグニファイア」とは何か?これはデザイン用語、それもUXデザインで利用される単語だ。 専門的に深ぼるとかなり詳しい概念があると思うが、あえて簡単に説明すると: アフォーダンスとは プロダクトやサービスに施された視覚的・物理的な表示で、どのように利用するかを、わかりやすく感じさせるためのデザインの要素のこと。 アフォーダンスが優れていると、難しい説明をしなくてもユーザーは使いやすさを感じるし、実際にユーザーが使った際にもその役割を迷うことなく使うことができる。 例えば、角が丸い箱に「サインアップ」と書いてあればサインアップボタンだと直感的に理解できる。など。 シグニファイアとは 「このように動きますよ」というシグナルを送ってくれる設計のこと。ユーザーに適切な行動を伝えるための印や音、認識可能な指標を指す。 それによりユーザーが直感的に感じられる役割を果たす。 例えば、ボタンの上にマウスを持ってくると色が変わることで、押すと送信されるなどの何かしらのアクションが発生する。など。 (専門家の皆様、間違ってたらすみません。) スタバのスリーブのUXデザイン さて、本題のスタバのスリーブにおけるUXデザイン。それもアフォーダンスとシグニファイアについての役割を分析してみよう。 皆様にも馴染みの深いスタバのカップとスリーブだと思うが、そのスリーブの内側を観察したことはあるだろうか? よくみてみると、滑り止めのギザギザしたデザインの内側に無色透明の物体が付着している。これは実は接着剤で、高温に触れると接着剤が溶けて、スリーブがカップとくっつく仕組みになっている。 熱い飲み物を入れたカップにスリーブを装着すると、包み込まれたカップがずり落ちないように設計されているのだ。 アフォーダンス要素 スターバックスのスリーブには。アフォーダンスがしっかり定義されている。 カップにフィットし、その形状や外周はカップよりも大きく、コーヒーカップにフィットするように上と下は空洞になっている。 また、カップのロゴよりも大きめの顔が印刷されていることで、パズルのようにロゴとその外側に顔を合わせたくなる心理効果もある。 スリーブの形、色、内側のギザギザの設計、そして、この接着剤。これらの構成要素により、スリーブの役割を想像できやすいし、期待される実際の機能も担保されている。 シグニファイア要素 加えて、このスリーブには “ちょっとした” シグニファイア要素が隠されている。冒頭で説明した通り、シグニファイアはユーザーに  “さあ、このように使ってください” とシグナルを届ける仕組み。 スタバのスリーブは、カップを通すためにスリーブを広げた際に、「カチッ」とした音が出るようになっている。これは内側の接着剤が離れた音だと思われる。 この音が、音声信号としてのシグニファイアの役割を果たしている。この音がすることで下記の信号を送ってくれている。 スリーブが開いたので、カップを入れてください このスリーブには粘着性があります 熱くなった表面に触れると粘着性が復活します   View this post on Instagram   A post shared by Brandon K. Hill (@brandonkhill) まとめ こんな感じで、日常の身近にある製品でも、興味を持ってじっくりと観察してみると、どのような意図でデザインがされているかを学ぶことができる。 今回のスタバのスリーブでは、UXデザインにおけるアフォーダンスとシグニファイアに関して直感的に理解することができた。 アフォーダンスだけではプロダクトの目的を示すことはできない 明示的なアフォーダンスとともに、対象物の意図や目的を定義するシニフィエが必要である プロダクトデザインは、「どのように見えるか(デジタル、リアルを問わず)」ではなく、「マクロとミクロの相互作用」が適切に含まれていることが重要 粘着性のあるスリーブは、スターバックスがカップを持つ人に対して 「飲料はやけどする 」と警告しているため、不要な訴訟を回避するのにも役立つ。少なくとも、この粘着性のあるスリーブにより、ユーザーがカップを持っている間、不快になることなくラテを楽しむことができる プロダクトのデザインは、そのブランドのビジョンを体現する必要がある。今回のスタバの場合はその詳細までのUXデザインを通じ、同ブランドの「一度に一人、一杯、一地域から、感動体験を届ける」というビジョンを体現していると感じる UXピラミッド – UXデザインの正しい評価方法 – ぜひ皆さんも、日々の生活で興味を持った商品やサービスのUXデザイン要素を研究してみると面白いかも。 筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

btraxのデザイナーが考えるクライアントコミュニケーションの5つのコツ

デザイナーの仕事は、実は「デザインをしていない時」こそが重要であると筆者は考えている。 というのも、もちろん成果物も重要であるが、その手前で、どんな手順を踏んでそのアウトプットまで辿り着いたかも重要であり、むしろそういった過程こそが、最終的なアウトプットのクオリティに大きく影響を与えると感じている。 特にデザイナーがクライアントワークに入った場合、成果物の完成度は、技術的なデザインのクオリティの高さだけでなく、クライアントからの期待にどれだけ応えられたか、という側面にも大きく左右されるのだ。 筆者もデザイナーとして、クライアントワークでデザイン業務をすることが多い。しかしこの記事では、クライアントワークの過程で気がついた、デザイン業務以外でデザイナーが気をつけるべき点を紹介していく。 プロジェクトゴールの見直し デザインプロセスの設計と説明 言葉の認識確認と辞書作り レビュー会の適切な運営 社内での咀嚼の時間 1.プロジェクトゴールの見直し クライアントへの提案時はもちろん、提案後、実際にプロジェクト化し、プロジェクトが始まる際といった早期のタイミングでもゴールの見直し、再確認は行うべきだ。 具体的には定義されている課題やゴールは適切かを確認する必要がある。 クライアントが設定してきた課題やゴールが適切かを改めて自分達で問うことで、課題の背景に興味を持つことができる。 クライアントにも確認をとりながら課題の背景を知っていくことで、クライアントから受け取った資料の文字情報や会議の会話では見えてこなかった部分が見えてくる。 場合によっては課題のリフレーミング(再定義)を行うことで、より最終的な成果物が効果的なものになると考える。 リフレーミングとは? – ヒットの秘訣は問題へのアプローチの仕方にある 気をつけなくてはいけないのが、これはあくまでも「見直し」であり、場合によっては他の方法を提案しようというものであり、必ずしもクライアントの意見を否定したほうがいいというわけではないということだ。 デザイナーにはクライアントからの要望を冷静に見定めていく客観性が求められ、もし課題そのものが間違っていると感じるのであれば、その理由をしっかりと言語化をしクライアントに伝える必要がある。 2.デザインプロセスの設計と説明 デザイナーの考えるプロセスを、デザイナーではない人にも理解してもらうことは、仕事に対する納得度と相手からの理解度を得るためにもとても重要な作業である。 大概の現場において、デザインの教科書に載っているプロセス通りに事が進むことは少ない。 ゆえにデザイナーはプロジェクトごとにプロセスの最適化が必要である。 この時、そのアレンジしたプロセスがデザイナーの独りよがりなものにならないためにも、クライアントにそのプロセスの意図をわかりやすく説明することはとても重要だ。 相手にわかりやすく伝えようとする行為は自身の提案する各プロセスがどんな意味を持つのかを自分でも改めて客観的に理解するのにも役に立つのではないかと感じている。 デザインプロセスを筆者がクライアントに説明する上で、気をつけていることが3つある。 1つ目は専門的な言葉やカタカナ語など特定の業界の人が使いやすい言葉を避けること。また、使わざるを得ない場面であればその単語を説明する一言を付け加えることである。 最近はデザイン系の言葉が一般にも認知されてきてはいるが、なるべくデザインの専門用語も避けるべきだと思っている。 2つ目はスライドに図を使ったり、スライドに載っている図や文章でクライアントが理解できていない場合は、FigmaやMiro上でその場で新たに図を作成して説明する。 3つ目は、人によって解釈が違いそうな言葉を使う際には、その言葉と意味が混在されやすい別の言葉を比較し、今回使いたい言葉の意味をはっきりとさせる。 このように相手がデザインに関する知識が無い前提に丁寧に言葉遣いや説明の方法を気をつける必要があると考える。 3.言葉の認識と辞書作り クライアントによっては、その会社ならではの専門用語や略称があったりする。 そういった言葉については、わからないときははっきりと意味を聞き、その言葉と定義をまとめたプロジェクト用の「辞書」となるものを作っておくのがおすすめだ。 そうすることで認識の齟齬を防止し、表記の揺れをなくすための対策になる。 さらに可能であれば、普段のクライアントの言葉遣いを真似ることをおすすめする。 そうすることで彼らとのコミュニケーションがスムーズになり、結果として認識の齟齬が少なくなる。 また、クライアントに自分たちがプロジェクトのことを十分に理解しているという安心感を持ってもらえるようになる。 ちなみにビートラックスでは、プロジェクトにおける辞書作りの一つの方法として、付箋にわからない言葉を意味を聞いたのち、付箋でまとめて一目で見直すことができるようにしている。 スプレッドシートにまとめるより見やすく、後からグルーピングもしやすく、領域ごとの言葉の整理ができるからである。 4.レビュー会の適切な運営 これはデザインをした後の話だが、クライアントとのデザインレビューとその事前準備も重要だ。 レビュー会は、クライアントが求めることと自分たちの現状の進捗の差分を話し合いながら把握できる貴重な時間である。 そのため、話し合いで議論すべきポイントが事前に絞られ、検証したいことがクライアントにも十分に理解されていることが重要である。そうすることで少ない時間でクライアントから欲しい意見を引き出すことができる。 そのためには前提として、2で紹介した【デザインプロセスの設計と説明】によってそのプロセスへの理解を常に得られていることが重要だ。 筆者は定例会議で今現在のプロセスで行っていることを資料の最初に入れておき、毎回の会議の初めに確認する時間を作っている。少しくどいと思われるくらいに丁寧に表現した方が、クライアントにとっては結果的に効果的だと実感している。 しかし、そうは言ってもレビュー会では意見の発散に終始してしまう時もある。 その際には、議事録ノートに「Parking Lot (今は一旦おいておいて)」と呼ばれる欄を作ってそこにまとめておき、後から振り返れるようにすると意見が無駄にならずに済む。 ちなみに近年はリモートワークが一般的になったことによってオンラインツールを活用したレビューの実施が可能になった。 そこでビートラックスでは、デザインのUIなどのレビューは会議外で自由にFigmaなどでコメントをもらい、会議ではそのフィードバックに対する認識の確認や議論する場という、時間による棲み分けを明確にしてみた。 このようにすることで、効率が良くレビューの進行を行うことができた。 5 社内での咀嚼の時間 レビュー会後や定例会議の直後に、社内のプロジェクトメンバーでクライアントからの意見を整理し、「咀嚼」する時間も、メンバーの認識を揃えて次のアクションを明確にする上で重要だと考える。 クライアントからの意見を受け、なぜ彼らがそのような発言をしたのかをすぐにメンバー全員で考えるメリットは以下である。 クライアントからの意見や言葉のイントネーションや意図をまだ鮮明に覚えているため、議論が効率的に行える。 皆で一度話し合うことで「なぜそのような修正が必要なのか」を改めて問いやすくなる。 話し合いの中でネクストアクションをタスクレベルまで細分化・具体化できる。 チーム内で認識の齟齬がなくなる。 このように会議直後にメンバーみんなで話し合うことで、クライアントの求めていることは何かを常に意識しながら効率よく次へと進めるだろう。 終わりに 今回はデザインスキルとは違った観点で、デザイナーにとって重要なクライアントとのプロジェクト進行に関するポイントをまとめた。いずれも共通して重要なスキルは、コミュニケーションの丁寧さだと感じた。 特に、クライアントから大量の情報を受け取り、それを適切な形でユーザーに届けるデザイナーという仕事の特性上、クライアントのコミュニケーションの質は、最終成果物のクオリティに大きく影響すると感じている。 この記事で述べた内容は、著者が実際にクライアントとのプロジェクトを通じて感じたり、実践したことになる。 みなさんの仕事において、少しでも参考になれば幸いだ。

【2022年最新】コーポレートサイトのデザインの参考になるまとめサイト7選+α【製造業の事例あり】  

こんにちは、テクノポート、上級ウェブ解析士の渡部です。ホームページを制作するときに意外と困るのがデザインだと思います。今回の記事…

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