アクセシビリティ対応はどこまで進んでいる?日米の先進事例を紹介
ウェブアクセシビリティとは、年齢や障害の有無を問わず、誰もがウェブサイトを問題なく利用できるように設計・開発することを指す。 行政手続きから日用品の購入まで、生活に欠かせない多くのサービスがデジタル化されている今、ウェブアクセシビリティの整備は当たり前の配慮になりつつある。 【アメリカ進出を目指す企業は必読】今更聞けないウェブアクセシビリティとは? 特にアクセシビリティ対応が進んでいるアメリカでは、対応が不十分なウェブサイトやアプリに対する訴訟が急増している。国内での訴訟件数は、2016年の262件から2023年には4,605件に増加し、わずか7年間で約18倍にまで膨れ上がった。 Domino’s Pizza訴訟(2016~2021) 視覚障害者のGuillermo Robles氏は、Domino’s Pizzaのウェブサイトとモバイルアプリがスクリーンリーダーに対応しておらず、ピザの注文ができなかったとして訴訟を起こした。 スクリーンリーダーとは、視覚障害者の方が使う読み上げソフトのこと。スクリーンリーダーに情報を正しく理解してもらうには、画像にALT属性を設定したり、HTMLを適切に構築したりする必要がある。 2019年の控訴裁判決でADA違反が認められ、2021年6月に$4,000の賠償金とWCAG 2.0準拠を求める命令が出された 最終的に和解が成立し、Domino’sはアクセシビリティ対応を進めることとなった Harvard/MIT訴訟(2015~2020) 全米ろう者協会(NAD)は、Harvard大学とMITが提供するオンライン講義動画に字幕がないことが聴覚障害者に対する差別に当たるとして提訴した。 ADAおよびリハビリテーション法に基づき、すべての動画に正確な字幕を付与するよう要求 訴訟の結果、両大学はすべてのコンテンツへの字幕付与などのアクセシビリティ対応を約束 この波は日本にも確実に押し寄せており、2024年4月1日には改正障害者差別解消法が施行された。国内のすべての事業者に合理的配慮の提供が義務化されたことで、ウェブアクセシビリティも「やった方がいいこと」から「やらなければならないこと」へと変わりつつある。 アクセシビリティとは?その基本とデザインのポイント 本記事では、現在の日米の対応状況を整理するとともに、いくつかの企業の先進事例を紹介する。 日米の対応状況 ある調査によれば、法改正から1年が経過した時点での日本企業の対応状況は以下のとおりである。 大企業と中企業の26%が対応済み、小企業はわずか6%のみが対応 対応のきっかけとして最も多いのは「会社として対応した方が良いと思ったため」(44%) 対応していない理由として「担当者がいないため」や「義務ではないため」が多い これらの数字からは、日本企業の間に一定の危機感が芽生えつつあることが読み取れる。しかし同時に、体制づくりや専門性の確保が進んでおらず、足踏み状態の企業も少なくない。 特に中小企業では、予算や人材の制約が大きな壁となっており、アクセシビリティ対応が「余裕がある企業だけがやること」と捉えられている節もある。対応が進まないのは意識の欠如というより、仕組みと支援の不在による側面が強い。 一方アメリカでは、日本より早く大企業を中心にアクセシビリティ対応が進められてきた。その背景には、強力な法制度と訴訟リスクの存在がある。 Google、Apple、Amazon、Microsoftなどの大手企業は製品設計からアクセシビリティを重視 CAO(Chief Accessibility Officer)など専門担当者・組織を設置する企業が増加 企業の先進事例 ここからは、4つの日米の企業を先進事例として紹介する。 花王株式会社 2022年から全社的にウェブアクセシビリティ強化を開始した花王。外部のアクセシビリティ向上ツールではなく、自社で組織的に取り組んでいる。花王には「花王ウェイ」という企業理念に基づく「花王ユニバーサルデザイン指針」があり、製品開発においてユニバーサルデザインの考え方が根付いている。 ウェブアクセシビリティの推進プロジェクトを発足 グローバルで600以上のサイトを運営し、これまでに社内担当者と制作会社合わせて1,200〜1,300名に対してアクセシビリティの説明を実施 WCAG 2.1 レベルAAを目標レベルとして設定 CMSのコンポーネント改修やデザイン・コンテンツの改善を段階的に実施 ヴェルク株式会社 総務省の「情報アクセシビリティ好事例2023」に選定されたヴェルク株式会社。2019年からカラーユニバーサルデザインに取り組み、その後も継続的にアクセシビリティの改善を行っている。 NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)と協力し、色弱(P型・D型)の方にも識別しやすい色使いへ変更 JIS X 8341-3:2016の「適合レベルAA」準拠を目指した継続的な改善 UDフォントを導入 Apple Appleは1985年にアクセシビリティ専門チームを設立し、これまでにVoiceOver、スピーチ、Siriなどを開発。「機能としてのアクセシビリティ」だけでなく「設計哲学としてのアクセシビリティ」を体現しつづけている。 アクセシビリティ専用ページを設け、製品やサービスのアクセシビリティ機能を詳細に説明 デザインから実装まで一貫したアクセシビリティへの配慮 Amazon […]
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