デザイン

btraxサンフランシスコで働くデザイナーが語る、デザインにまつわる3つの日米差

弊社では、コロナになって以降オンラインでイベントを行なってきたが、先日、サンフランシスコで2年ぶりに対面イベントを実施することができた。 イベントのテーマは“Designing for Japan: Different Perspectives”。 1時間半のイベントでは4つのセッションをオムニバス形式で実施した。 今回はイベントの前半部分のセッションのテーマであった「デザインにまつわる日米差」の内容を3つのトピックに分けてお届けする。 アメリカから日本の会社とビジネスを行う経営者としての視点、そして、日本のクライアントと共に働くアメリカのデザイナーの視点ならではのデザインにまつわる考察をご紹介する。 日米のデザインの捉えられ方の違い 日米のクライアントとデザイン会社の関わり方の違い 日米のデザインのアウトプットの違い 1. 日米のデザインの捉えられ方の違い シフトしつつあるデザインの考え方 「デザイン」とは元来、クライアントがデザイナーに依頼してデザイナーが依頼されたものの通りに作る作業のことを指していた。とても単純で明快だ。 しかしこの10年くらいで、デザインとはビジネス、テクノロジー等、あらゆる領域での「顧客の課題解決」の手段の一つとなった。 デザイナーは「依頼されたものを作る人」から「課題解決のための戦略を考える人」という、広義の言葉に変化した。 それに伴って、ユーザー視点でヒットする商品やサービスを作り出すための、「デザイン思考」と呼ばれる考え方が浸透した。 誰にでもわかるデザイン思考の基本とプロセス 変化しきったアメリカ、発展途上の日本 日本でももちろんデザイン思考は主流の考え方になりつつある。しかし、アメリカと比べると、日本はまだまだデザインの考え方が「依頼型」で止まってしまっているケースが多い。 それにはいくつもの要因が絡み合っているのだが、今回はその理由として、2つの要因を取り上げる。 日米のビジネスのスケールの方法の違い 日米のデザインに対する考え方が異なる理由の1つとして、ビジネスのスケール方法が挙げられる。 一言で言うと、アメリカは優れたユーザー体験やブランドストーリーで売り込むのが主流であるのに対して、日本は営業で売り込むのが主流だ。 なぜアメリカがユーザー体験やブランドストーリーにこだわるのかというと、アメリカは国土が広すぎて、足で稼ぐ営業の難易度が日本よりも極めて高いからである。 アメリカ国内でも時差があるアメリカ。「車で4時間」は、日本人にとっては長旅に感じられるだろうが、アメリカ人にとっては日常茶飯事。 しかし、だからといって長時間の移動を伴う営業活動ができるかというと、それは現実的ではない。 なぜ日本にはデザイナー出身の経営者が少ないのか では、どのようにして顧客やユーザーを集めれば良いのか?その答えが、プロダクトの使いごこち(ユーザー体験)の質、ブランドストーリー、マーケティングである。 ゆえに、営業で解決するのではなく、プロダクトを作る段階からユーザーのニーズに沿った、課題解決を目的としたデザインをし、ブランドストーリーを構築することがより重要視されるようになってきている。 人々の心を掴むブランドストーリー 5つのポイント これが、アメリカが日本よりも大きく「デザイン」の概念が変化を遂げている理由の一つである。 日米のデザイン会社とクライアントとの関わり方の違い 日米のデザインに対する考え方が異なる理由の2つ目として、日米のデザイン会社との関わり方が挙げられる。 アメリカのデザイン会社の場合、クライアント企業とデザイン会社はかなり密接に協業する。 上の図のように、クライアントとデザイン会社が直接やりとりをして課題解決に取り組み、プロジェクト単位でより多くの人手が必要になった時はフリーランスのデザイナーに依頼をする。 一方日本のデザイン会社の場合は、広告代理店がクライアント企業と関わりを持つ事例が多い。 ゆえに、デザイン会社はクライアントと直接ではなく、広告代理店が考えた戦略に対してデザインを制作することで形にし、クライアントの要望に応えるという構図になりがちだ。 すなわち、デザイン会社が広告代理店に「外注」されており、広告代理店に頼まれたものを「納品」している状態なのだ。 デザイナーが「依頼されたものを作る」状況そのものが変わらない限り、今のようなデザイナーが下請けをしている状況から抜け出せないのではないだろうか。 この構図を変えることが、日本でのデザイナーの地位を上げる一歩になると考える。 なぜ日本ではデザイナーの地位が上がらないのか?~海外デザイナーとの比較~ 2. アメリカのデザイン会社の視点で見る、日米の働き方の違い クライアントとの働き方の日米差 アメリカの企業は会議の場でネクストステップを決定する。 一方で日本のクライアントは、一度会議でこちらの提案内容を聞いたのち、社内に持ち帰って改めて内部で議論する傾向にある。 その背景として日本では、メンバー全員の意見を合意してから次に進む「合意形成」の文化が大変強い傾向にある。 下記のカルチャーマップをご覧いただいてもわかるように、「決定」の項目において日本がかなり合意を重んじていることが見て取れるだろう。 弊社のアメリカ人デザイナーであるJonathanとJaredによると、日本ではアメリカよりも調和が重んじられており、全員が賛成したアイディアに決定することが多いと感じているようだ。 そのため、日本のクライアントにデザインを提案するときは、クライアントが社内で議論しやすいように、そして非デザイナーでもデザインの良し悪しがわかりやすいように、よりデザインの意図を詳細に説明し、なぜAが選ばれてBが選ばれなかったのかを詳細に説明するようにしているそうだ。 クライアントが社内に持ち帰った際に、会議にいなかったメンバーにデザインの意図を聞かれた時に答えられるようにするためだ。 彼らが日本のクライアントと働く際は、それゆえ、クライアントと一緒にトライアンドエラーを繰り返しながらデザインを一緒に考えていくプロセスがアメリカのクライアントに比べて多いそうだ。 このように、文化背景の違いはデザイン制作のプロセスの違いにも関係すると言えるだろう。 3. 日米のデザインのアウトプットの違い – Holistic(全体論的)な日本、Analytical(分析的)なアメリカ 2)アメリカのデザイン会社の視点で見る、日米の働き方の違いでも言及したように、日本は全てのパターンを考え尽くして答えを出すHolistic(全体論的)な傾向がある。 対してアメリカでは、多くの情報をさまざまな観点でグルーピングして、少ない情報の中で早く結論を出して前に進めるAnalytical(分析的)な傾向がある。 それは働き方だけではなく、デザインのアウトプットにも表れている。下記の図をご覧いただきたい。Mercariのサイト(左:アメリカ、右:日本)を左右に並べているものだ。 見ていただくとお分かりいただけるように、色も異なれば、ロゴまでローカイライズされている。 特に言及すべきは、情報量だ。 最初に述べたように、右側の日本のサイトが情報を詳細に見せようとしていることに対して、アメリカのサイトは画像によって情報がグループ化されており、画面上にある文字情報が少なく感じられる。 Yahoo!の検索ページ(左:日本、右:アメリカ)も、日本ページは詳細に文字情報が詰め込まれているのに対して、アメリカのサイトはより画像が多く、画像一つにつき一つのニュースという見せ方で、情報がグループ化されていることがわかる。 上記を見ても、ページに表示される情報量が大きく異なっている。 働き方もデザインのアウトプットも全く異なる日本とアメリカ。 そのギャップを乗り越えるためには、作ったものに対して早めにフィードバックをいただき、「どうしたらより良くなるか」という視点で改善することもプロセスのうちだという。 初めから100%理想通りのものを目指そうとするのではなく、現時点でのベストなものを持って行って、クライアントと議論をしながらより理想に近づけていく、そのプロセスの中で、より良いアイディアやデザインが誕生するのだ。 最後に、JonathanとJaredが共感したという画像を共有しよう。 「プロダクトは世界中どこでも一緒に見えるものを作る必要はない。展開先の国に合わせて適応したデザインに落とし込んで、その地で『使われる』ことがより大切だ。」と書かれている。 その国でプロダクトを使う人が違和感なく使えるようにすることが大切で、どの国でも見た目を揃えることやトンマナを揃えることが、世界で通用するデザインではないということだ。 文化背景の違う国のプロダクトを作成するときはまさにこのマインドセットが重要だと2人は言う。 まとめ 今回は、アメリカのデザイン会社の視点から見たデザインにまつわる日米差というテーマで、デザインの捉えられ方の違い、クライアントとの働き方の違い、デザインのアウトプットの違いという3つの「違い」を取り上げた。 btraxは日米に拠点を置くデザイン会社だからこそ、今回お伝えしたようなギャップを理解するべく、日々尽力している。 btraxではプロダクト、サービスを最適化するためのマーケットリサーチからUXデザイン、ブランド体験の言語化と設計、顧客とのコミュニケーション方法の改善まで、一期通貫して支援している。気になる方は是非、弊社のサービス内容がまとまったPDFをご覧いただきたい。 今回のイベントのアーカイブ動画はこちら。イベントの内容が気になった方は、ぜひデザイナーたちの解説を聴きながら、記事の内容を振り返ってみてください。

b-side of btrax #1 デザインの価値を世界に届けるbtraxのマーケターの素顔とは

btraxで働くメンバーをご紹介する「b-side of btrax」シリーズ。 シリーズ初回となる今回紹介するチームは、btrax Japanのマーケティングチームです。 マーケティングチームは、大きく分けるとbtrax自社内向けの業務とクライアントワークの2つの業務を担当しています。 ① btrax自社内向け業務 自社のプロモーションや広報、リード獲得などを目的とした戦略立案から実行まで全般を担当。 具体的には本ブログ「Freshtrax」の記事執筆や運用、毎月2回のニュースレターの配信、日々のSNS運用、イベント運営など、幅広い業務を行っています。 ② クライアントワーク 主にアメリカから日本市場に参入を目指す企業やブランドを支援するプロジェクトに入ることが多くあります。 その際は、日本市場に関する様々なリサーチをした上で、プロダクトやサービスを展開する際の戦略立案と実行のサポートをします。 また、進出先市場に合わせた、Webサイトをはじめとするコンテンツのローカライゼーションなど、現地ユーザーにより良い体験が届けられるようコミュニケーションのご支援をします。 今回はチームメンバー2人のバックグラウンドから、btraxへの入社理由、今後btraxで挑戦したいことまで、幅広くお届けします。 btraxではどんな人が働いているの?と気になっている方、ぜひ最後までお付き合いください! Aoi Omori : Marketing Specialist バックグラウンドを教えてください 日本で生まれ育ち、大学まで日本の教育を受けてきました。今の自分には大学時代の経験が最も大きく影響していると思います。 大学生になって初めて海外を旅し、その時からグローバル基準で物事を捉えることに刺激を受け、視野が開けた気がしました。 また、大学時代は複数の会社で、マーケティング関係のインターンとして働いていました。 Webメディアのライターや編集アシスタント、SEO関連業務のアシスタント、イベント運営などを通じ、価値を生み出し、そして届けるというマーケティングの面白さを実感してきました。 なぜbtraxに入社したのですか? それまでの自分の経験を振り返った際に、それを最大化できる環境だと思ったからです。 それと、デザイン思考という考え方に出会い、非常に共感をしたのも大きな理由です。 さまざまな見方はありますが、デザイン思考の「失敗を受け入れ、さらなる改善のステップにすること」、これはとても人間的かつ現実味がある考え方だと思います。 当時、過ちや逸脱が許容されないような考え方に息が詰まる思いをしていたのですが、このスタンスをとるデザイン思考に出会い、どこか救われた思いでした。 そして、どうにかしてこの“デザイン思考”とやらを活用して価値を届けられるようになりたいと思ったことも、btrax入社の大きなきっかけになりました。入社して4年目になりますが、今もこの思いは変わっていません。 btraxでの働きがいを教えてください あえてひとつに絞るなら、前向きな挑戦の場であることです。 自分の今ある強みと、新たな挑戦の部分とをそれぞれ把握した上でプロジェクトに参加できたり、自ら仕事を提案して進めたりすることができます。 基本的に最初からNOと言われることはありません。 できないからやらないのではなく、困難だったとしても、どうすればできるのかを考えてフィードバックをもらう、という流れがデフォルトになっていると思います。 そういう意味で、極めてポジティブなマインドで仕事ができていると感じます。自分の頭で考えて汗をかける人にはうってつけの環境です。 今後btraxでやっていきたいことはなんですか? よりデザインとマーケティングの領域を横断していくような仕事をしていきたいです。 デザイン会社であるbtraxでマーケターとして仕事をしてきて思うのは、デザインもマーケティングにも専門的な領域こそあれど、1つのサービスを生み出し、その価値を届ける際には、お互いと密接に関わってこそ成り立つものだということです。 btraxとしても改めて、リサーチからデザイン、そしてコミュニケーションまでを一貫してサポートする体制へと基盤が固まってきたタイミングでもあります。 今後はこういったプロジェクトで、クライアントさんに伴走する形でデザインやマーケティングを通じたご支援をしていきたいです。 デザイン視点で心を掴む UXライティングの基本5項目 今興味、関心のあることはなんですか? 言葉以外の方法での表現です。具体的には、アートを鑑賞したり、デザインツールを勉強したり、絵を描き始めたりしています。 マーケターとして仕事をしている以上、どうしても文字を通じた表現が多いのですが、文字ばかりを読み書きすることに対し、たまに飽きや疲れを感じる瞬間があります。笑 何かを伝える手段は文字だけではないという基本に立ち返って、純粋な気持ちで自由に勉強しています。 Ayaka Matsuda : Marketing Associate バックグラウンドを教えてください 幼少期と小学生の頃、2回アメリカに住んでおり、また、幼稚園から18歳までずっと英会話を続けてきました。 そのため、幼少期から海外に出て見たことのない景色を見ること、その土地の人と話し、新たな視野を広げることが今もすごく好きです。 その影響か、学生時代は海外や外国語に関わる活動に参画してきました。高校時代はイギリスに短期留学し、世界中から集まった学生と共に学びました。 大学に入ってからは、カンボジアとインドネシアへの東南アジア派遣に参加したり、国際系の団体で、カナダのブリティッシュコロンビア大学の学生と2週間日本の文化体験をするプログラムの企画、運営を経験したりしました。 また英語以外の言語の習得と文化理解を目的とし、大学ではフランス文学を専攻していました。 なぜbtraxに入社したのですか? 一言で言えば、自分が社会に伝えたい価値とbtraxのサービスやビジョンが一致していたからです。 大学3年生からHRTechベンチャーで1年弱、カスタマーサクセス職としてインターンをしていました。 そのインターンの中でLINEの顧客管理ツールを用いてユーザーとコミュニケーションをとっていた際、どうしたらユーザーにとってより使い心地の良い導線設計になるかを常に考えていました。 それがとても面白いと感じたことが、自分のアンテナが「UXデザイン」「デザイン思考」に関わることに向いていると気が付いたきっかけです。 より実践の場で学びたいと感じ、インターンを探したことでbtraxと出会いました。 さらに、海外経験を積んできた身として、日米双方のクライアントに対しサービスを提供していることにも興味を惹かれました。半年間ほどインターンをしたのち、2022年4月よりフルタイムとして参画しています。 btraxでの働きがいを教えてください 沢山あるので箇条書きにしますが、下記が魅力であり働きがいであると感じています。 目標達成に向けて協力的なメンバーばかりであること 失敗を成功の過程の一部と捉えて前に進めること 職種の違うメンバー同士へのリスペクトがあること チームメンバー全員からフラットに意見をもらいながら企画を進められること 上記のAoiさんと同じですが、基本的にNOはなく、自分からやった方が良いことを見つけ、仕事を作りに行けること 異なる文化圏のチームと仕事をすることも多いので、自分にない視点を持っている人と接することが多く、学びが多くあること これさえ守れば効果的なリモートワークが可能になる3つのルール 今後btraxでやっていきたいことはなんですか? クライアントさんのプロジェクトでも、社内のプロジェクトでも、期待値を超える仕事をし続けることです。 btraxは小さな組織なので、自分ごととして一人一人が高いパフォーマンスを上げることが求められる環境だと感じます。 自分が担当することはもちろん、会社として埋めきれていないところを埋められるよう常に視野を広く持つようにしています。 日々自分の力が足りないと感じることも多くありますが、良い成長痛だと感じています。 今興味、関心のあることはなんですか? UXデザイン、ブランディングなどはもちろんですが、暮らしの中に潜むデザインに興味があります。 具体的には、10月の試験に向けてインテリアコーディネーターの試験勉強をしているところです。 勉強をしていく中でインテリアとユーザー体験がかなり密接な関係にあることがわかり、インテリアという身近な暮らしの中に潜んでいるデザインにもアンテナを張れるようになってきました。 インクルーシブデザインとは?現代の多様性に寄り添う7つの実例 まとめ 今回はマーケティングチームのメンバーを紹介しました! btraxのメンバーのことを少しでも知っていただけたでしょうか? 今後もbtraxは、日米双方のクライアントさまに対して、デザインの力で国や国を超えた橋渡しをし、新たなビジネスを生み出すお手伝いをさせていただきます。 btraxについて、より詳しく知りたい方は、弊社のサービス情報がまとまったPDF資料をご覧ください。 次回はbtraxでビジネスプロデューサーとして活躍する2名をご紹介します!どうぞお楽しみに!

Adobe Stockから学ぶ、2022年日本のビジュアルトレンド予測

2022年のAdobe Stock Creative Trends Forecastが公開された。 Adobe Stockとは、あらゆるクリエイティブプロジェクトに利用できる高品質なロイヤリティフリーの写真、ビデオ、イラスト、ベクター、3D、テンプレート数千万点を厳選して、デザイナーや企業、教育機関、官公庁向けに提供するストックフォトサービスだ。(参考) 毎年、世界と地域のクリエイティブトレンド予測(Creative Trends Forecast)を発表している。 Adobe StockのCreative Trends Forecastは、Visual Trends、Design Trends、Motion Trendsの3つのセクションに分かれている。 2022年は世界と日本のクリエイティブトレンドを対象としている。btraxは日本のCreative Trends Forecastのうち、ビジュアルトレンドの制作において協業させていただいた。 今回は第二弾として、日本のビジュアルトレンド予測について、AdobeのPrincipal of Consumer and Creative Insights、Brenda Milis にインタビューした内容をまとめてお伝えする。Brendaは現在Adobe Stockにおいて、年間のAdobe Stock Creative Trends Forecast作成、公開のイニシアチブを持ち、ビジュアルトレンドにまつわる全てをリードされている。 ※第一弾、世界のクリエイティブトレンド予測はこちらからご覧ください。 Q: なぜAdobe Stockにはクリエイティブトレンドに特化した役職があるのでしょうか? Adobe Stockの画像を使う人は、使うその時に権威性があって、新鮮と感じてもらえるような画像を求めていると思うからです。 しかし、みなさんも感じておられる通り、私たちは本当に変化の速い世界に生きていますので、ビジュアルトレンドの変化は本当に速くなっています。 そのような背景から、リアルタイムでユーザーに魅力的に感じてもらえる画像を用意するには、100%クリエイティブトレンドにコミットする専門の役職が必要になります。 私の役割は言い換えれば、人々の興味関心がどのように動いているのかを伝えることになると思います。 Q: 今年の地域別のビジュアルトレンド予測の地域として日本を選んだのはなぜですか? 日本は常に新たなモノや流行が生み出されている国で、私たちにとってもトレンドを追うことが大変重要だと思ったからです。 Adobeはグローバル企業なので、世界的なトレンド予測だけでなく地域別のトレンド予測をすることにも大変重きを置いています。 その中でも日本は優先度高くトレンドを追いたい国の一つでした。 Q: グローバルトレンドと比較して、2022年の日本のビジュアルトレンドの印象はいかがでしたか? グローバルトレンドと比較しても、とても似た傾向があると思いました。btraxと協力して発見した、2022年の日本の2つのビジュアルトレンドを紹介します。 1つ目は、家族間の関係性の変化です。英語では”Family Ties”とタイトルをつけました。 年代の垣根を超えて交流が深まっている家族関係の変化と、親と子、という関係よりもより友人のような、同年代のような関わりをする親子が増えていることが挙げられます。それが感情的な繋がりをより親密にしています。 世界的にも、人々の感情的なつながりが重要視されていることは言うまでもありません。 日本は家族関係の変化にそれが表れていることが大変興味深いポイントですね。 2つ目は、多様性の促進です。英語では”Open-Mindedness”とタイトルをつけました。 このトレンドには、メンタルヘルスの重要性の高まりが関係していると思います。 世界的にも同じ兆候が見られますが、多様性の尊重だったり、自己のアイデンティティを受け入れる動きだったりが加速していると感じます。 Q: バックグラウンドも違う他国のトレンドを追うことは大変難しいと思いますが、他の地域のトレンドはどのようにして追っているのですか? まさにbtraxに協力していただいたところですね!日本のビジュアルトレンドの制作において、リサーチからレポートまで協力していただきました。 私はアメリカ人ですから、日本の画像やデザインに精通した人と協力することが必要でした。 もし私が日本語を話せたとしても、私は他の地域のトレンドを追うために自分の感覚だけを頼りにすることはないと思います。 なぜなら、日本に住んでいなければ日本の文化の一部に属していることにはならないからです。 ゆえにどの地域のトレンドを考えるにしても、その地域のデザインやクリエイティブに精通している人と協業しています。 btraxには日本という文化圏で暮らしており、かつデザインやマーケティングに知見のあるメンバーがいたので、ビジュアルトレンドのリサーチと相性が良いと感じ、今回btraxに依頼しました。 btraxのメンバーは全てのプラットフォームやチャネル、広告、ポスターなど、あらゆる種類のビジュアルをリサーチし、さまざまな業界のことを紹介してくれました。 ビジュアルに関わる全てのプロジェクトにおいて本当に重要なことです。 協業することで、効率よくリサーチを進めることができ、プロジェクトの成功を収めることができたと思っています。 Q: 2022年の日本のビジュアルトレンド全体で、特に重要なキーワードは何だと思いますか? 難しいですね。1つに決められないです。 トレンドごとにいくつかキーワードを上げるとするならば、まず多様性のトレンド”Open Mindedness”に関しては、compassion(同情)、 acceptance(受容)、diversity(多様性)identities(アイデンティティ)が挙げられると思います。 日本のAdobe Stockのグループとも協業していますが、「多様性」という言葉に含める概念の範囲が広がったと感じています。 例えば、今までも年代の多様性は言及されてきましたが、体型や性別にまつわる多様性は話題に挙がってきにくいことだったと思います。 今でも多様性=体型や性別にまつわることも含める、という考え方は完全に主流になったかと言われれば、まだ完全ではないと思いますが、少しづつ広がってきている動きですね。 日本でも「多様性」という概念に含める概念の幅は広がっていると感じています。 アイデンティティの多様性、とも言い換えられるかもしれませんね。それに加えて、ジェンダーの概念も変化していると感じています。 「女性らしさ」「男性らしさ」という文脈で語られてきたことは今では変化してきており、そもそも性別を2つのタイプに当てはめること自体が今では普通ではなくなってきていると感じます。 そして、家族の繋がり”Family Ties”に関してはintimacy(親密さ)、connection(繋がり)、closeness(親しさ)が挙げられると思います。 家族が描かれたビジュアルでは本当によく表現されることだと思います。 より心の繋がりが見えるように、顔を近づけている描写だったり、笑顔の描写だったり、肌のふれあいの描写だったりが表現されていますね。 トレンド予測は、その年になった時にトレンドが主流になっていることが大切ですが、そのトレンドが成長するかどうかまで予測する必要があります。 そして私たちはそれを、定量的、定性的なデータを分析することで可能にします。 特に、業界の異なるCMやポスターを見ることは、ビジュアルトレンドを予測する上で大切です。 例えば「多様性の尊重」というメッセージを発信しようとしたら、どの業界も同じようなビジュアルを用いて表現します。 すなわちさまざまな業界のCMやポスターに用いられているビジュアルを見て共通点があるかどうかを見ると、その国が産業や業界を超えて、どんなメッセージを消費者に伝えようとしているかが理解できます。 今回の日本の2つのトレンドもそのようにして洗い出しました。 Q: 2022年は、地域別のトレンドとして日本を挙げていました。2021年以前も毎年、グローバルトレンドと、ある特定の地域のトレンド、どちらもリサーチされていたのでしょうか? はい、そうです。チームメンバーがあらゆる地域におり、地域ごとのトレンドも作っています。あらゆる地域のトレンド予測を取り上げるとともに、今回行った日本のトレンドに関しても引き続き追っていきます。 グローバルトレンドももちろん重要ですが、どうしても世界共通のジェネラルなトレンドなので、その地域特有のトレンドも同時に発表することに重きを置いています。 もちろん、日本に関して言えば、日本企業は世界中に顧客を持っていますから、グローバルトレンドも重要ですね。 地域ごとにも、世界中にも、見ている人たちがいますから。 どちらにも情報を提供することができるように毎年準備しています。 早く実際に各地域を訪れる経験ができるようになると良いですね。 いつかみなさんにもお会いできると良いですね!その土地を肌で感じること、人と一緒にいることは全く違う体験になりますからね。 オンラインで調べたりするのと、実際に現場に行って人と会ったりするのを比べると、実際に会ったときに自分が得られるエネルギーが全く違います。なぜこれほどまでに違うのか、私が不思議に思っていることでもあります。 オンライン上で暮らして働くことは多くの人にとって必要不可欠なことになりましたが、実際にトレンドをリサーチした国に行ったり、共に仕事をした人に直接お会いしたりすることを楽しみにしています。 まとめ 今回はAdobe Stock Creative Trends Forecastの制作の過程やリサーチの過程をお聞きした。 グローバルトレンドはまた違い、自分の文化ではない国のトレンドをどのようにしてリサーチするのか、制作秘話も伺うことができた。 […]

Adobe Stockから学ぶ、2022年の世界のクリエイティブトレンド予測

2022年のAdobe Stock Creative Trends Forecastが公開された。 Adobe Stockとは、あらゆるクリエイティブプロジェクトに利用できる高品質なロイヤリティフリーの写真、ビデオ、イラスト、ベクター、3D、テンプレート数千万点を厳選して、デザイナーや企業、教育機関、官公庁向けに提供するストックフォトサービスだ。(参考) 毎年、世界と地域のクリエイティブトレンド予測(Creative Trends Forecast)を発表している。 Adobe StockのCreative Trends Forecastは、Visual Trends、Design Trends、Motion Trendsの3つのセクションに分かれている。2022年は世界と日本のクリエイティブトレンドを対象としていた。 btraxは日本のCreative Trends Forecastのうち、ビジュアルトレンドの制作において協業させていただいた。 今回は世界のビジュアルトレンド予測について、AdobeのPrincipal of Consumer and Creative Insights、Brenda Milis 氏にインタビューした内容をまとめてお伝えする。 この記事を読んでからAdobe Stockを見ると、企画者の視点でビジュアルを楽しむことができ、新たな発見があるだろう。 2022年注目のブランディングトレンド Q: 簡単に自己紹介とご経歴をいただけますか? Brenda Milisです。現在Adobe Stockにおいて、年間のAdobe Stock Creative Trends Forecast作成、公開のイニシアチブを取っています。 私のキャリアの始まりはフォトディレクターでした。様々な業界のディレクションを担当していました。 仕事を始めてからずっと「ビジュアル」に関わる仕事をしてきたので、日常的にフォトストックを使ってビジュアルや、アイコンの使い方などをリサーチしてきました。リサーチが私のキャリアにおいて強みであり、情熱を持てることでした。 Adobe StockのCreative Trends Forecastは、かなり影響力のあるものだと感じています。なぜなら、クリエイティブトレンドをグローバル規模で、年間を通して、あらゆる業界の広告やメッセージをもとに予測するからです。 私たちのクリエイティブトレンド予測は、将来的に主流のトレンドとなっていきます。 Q: 今では、SNSなどのオンラインでもビジュアルが見られる時代になりました。しかし一方で、ビルボードなど、オフラインの世界にももちろんビジュアルは溢れています。この変化は、現代のクリエイティブトレンドのリサーチにどのように影響していますか? 全てのプラットフォーム、場所、チャネルで、全ての人がある時は意識的に、またある時は無意識的に画像を見ています。 ビジュアルトレンドが大変重要だと思う理由として、現代のビジュアルは本当に目まぐるしく変化していることが挙げられます。 というのも、いつ何時も私たちはどこを見ても何らかの画像を目にしていて、その画像を「消費」しているからです。 人々が四六時中携帯を見るようになる前、私たちは道を歩いていたり、地下鉄の広告を見たり、店舗のウィンドーディスプレイを見たり、そのようにして画像を発見していました。 それは今も続いていることです。しかし今では家でプライベートの時間を過ごしている時も、SNSを介して画像を見ています。それに伴って、私のリサーチはかなり幅広くなりました。 なぜなら、SNSの活用によって今までの時代よりもはるかにビジュアルを目にする機会が増えたからです。 これは企業にとっても重要な変化で、ビジュアルを変えることで常にブランドを進化させ、自社が顧客に対してどのような関わり方をしたいのかを示すことが以前よりも容易になったということです。 Q: 2022年のグローバルのビジュアルトレンドを制作した印象をお聞かせください。 特に興味深く感じたことは、ここ数年のコロナウイルス感染症による厳しい状況に反して、ポジティブな雰囲気のビジュアルがトレンドになりやすいということです。 そして今年は、どの国でも同じようなビジュアルがトレンドになっていることが印象的でした。Adobeはグローバル企業ですので、トレンド予測を完成させるまでに、各国のスタッフと密に連携しながら綿密なリサーチを行います。 2022年のトレンド予測を作る際初めて地域ごとのスタッフに自分が考えたグローバルトレンド予測を発表した時に、どの国でもすぐに賛同が得られました。 パンデミックによってどの国でも行動範囲が縮小してライフスタイルが似てきているので、同じようなトレンドになりやすいからだと考えます。 Q: 今のお話より、各国のチームとどのように協業しているのかを知ることができました。毎年このStock Trendのプロジェクトを牽引されていますが、毎年どのようなプロセスとスケジュールでリサーチを行っているのでしょうか? いつも私は前半の半年で広く浅くリサーチを実施します。そして、1年の後半に差し掛かった辺りで、範囲を広げるというよりは、今までのリサーチをもとに深掘りするようなリサーチに切り替えます。 例えば、Adobe Stockのユーザーが何を検索しているか、ファッション、美容、ビデオゲーム、メディア、エンタメ、テクノロジー…など、さまざまな領域を総合的に見て、全ての領域においてどんな画像が検索されているかをリサーチします。 私自身も日々人気のカルチャー、年代別のトレンド、アート、などリサーチをたくさんしています。 全ての領域に共通して見られる特定のビジュアルがないかどうかを求めて、他地域のチームやAdobe Creative Cloudチームにリサーチに行き、彼らの視点からのフィードバックを求めることもあります。 このように、私はAdobeの他地域のチームや、Adobe Creative Cloudチームなど、たくさんのチームと連携し、協力を仰ぎながら進めています。 そして、大体の時期については、6月の終わり頃から9月までの間で、全ての広範囲のリサーチを終わらせて、発見したことに関してAdobeの他地域のチームや、Adobe Creative Cloudチームにフィードバックをもらいに行くようにしています。 そうすることで、これらのトレンド予測はより確からしいものになっていきます。そうして、全世界に公開できるようなトレンド予測は出来上がっています。 Q: トレンドを常にリサーチされていると思いますが、一旦スイッチを切って、全ての情報をシャットアウトしようという気分になることはありませんか?例えば、森に入って何もしないでテントに籠る時間を作るとか。 私はきっと森に入っても、その中で見えたものに関して考えてしまいますね笑、アウトドアはご存じのかもしれませんが今のトレンドだから。 全ての公式なリサーチから離れようと思ったら全てのデバイスからシャットアウトして、記事を読んだり、情報を比較したりすることから離れなければいけないと思います。 でも私は個人的に、世界がビジュアル的にどのように動いているのかをリサーチしたり、パズルのピースをはめていくような作業をするのが本当に面白いと感じている人なんです。 なので、もし私がキャンプに行ったとしたら、私はきっと自然の中にいることや、外で活動することがどれほど大切かを実感すると思います、そしてやはり、どこからかトレンドを見つけ出そうとしてしまうかもしれません笑。 Q: 次の質問は、トレンド予測の正確性に関する質問です。例えば、2020年の予測は、どのくらい正確に当たっていたのでしょうか?というのも、2020年に感染症が広まり、あのような状況になるなんて誰も予測できなかったですからね。 2020年ですか、かなり前ですね!リサーチしていたのが2019年になるから、2020年は正直思い出せないのですが、コロナ期間中のトレンド予測として挙げるのであれば、2021年のトレンド予測は、本当に的を得ていたのではないかと思います。 2021年の実際の広告やブランドが発信していたメッセージは似ていました。私たちに語りかけるようなメッセージでしたね。例えば、「この状況を一緒に乗り切りましょう!」とか。 2020年に、私は2021年のトレンドを見つけ出せるか不安でしたが、いつも通りのプロセスを踏んでリサーチをしたところ本当に正確だったと記憶しています。 なので、結論としては、私たちのトレンドは時代や私たちの生活を急激に変化させるもの(例えばパンデミックなど)が現れない限り、本当に正確だと思います。 コロナという状況の中でも、人生の中にポジティブな瞬間を見つけ出すのは必要なことですね。 ええ、本当にそう感じます。2022年のトレンドのうち1つに、”Powerfully Playful”というものがあります。これは2022年の一番強力なトレンドであり、メッセージではないかと推測しています。 いろいろな物事が確実にストレスフルな方向に進んでいて、人々は楽しい想像を掻き立てられるような、美しくてポジティブなメッセージのビジュアルを求めているのではないかと思います。 全てのモチーフのトレンドには、なぜそれが人気なのか、理由があります。この世の中を生きる私たちの心に余裕や安心をもたらすからだと考えています。 過去2年間のパンデミックの時代の中で、メンタルヘルスや感情に関係するビジュアルが重宝されるようになりました。 全ての人の状況は違いますが、私たちは皆メンタルを健康に保つことは大切だと痛感していると思います。前向きなメッセージを発するビジュアルは、それを助ける要素になっていると思います。 2022年のビジュアルトレンドの一つに”The Centered Self”というものが挙げられます。これは落ち着いて、自分を労わる時間をとることを意味します。 ビジュアルは本当に大きな力を持っていて、他の人と相互にリアルタイムで交流する機会の減った現代だからこそ大きなパワーを持つようになりました。 Q: 今回のトレンドで驚いたことはありますか? 私は毎年その年のトレンドに驚いています。毎年、どうやってトレンドの予測をしようか?と思うのです。 なぜなら、明らかになっていることなんて一つもないから。しかしリサーチをし続けるうちに、トレンドは姿を表すものなんですよ。 2022年のトレンドにも驚きました。毎年、地域ごとに少しづつ違うのですが、世界的にほぼ一律に同じようなビジュアルがトレンドになっていたので驚きました。 まとめ 今回はAdobe Stockの制作の過程やリサーチの過程をお聞きした。 今後 […]

日本の制作会社が世界で一番コスパが良い10の理由

ここ数年でまた日本でWebやアプリの制作会社が増えてきているように感じる。新たにデザイナーを目指す人も多く見かけるようになった。 Web制作会社が生き残りにくいアメリカ的な感覚で考えると、かなり興味深い。 アメリカの場合は、英語でやりとりする事ができればよりコストの安い国に発注したりできる。また、デザイン事態が事業のコアに近いということで、デザインチームのインハウス化を進めている状況が増えていることで、単独の制作会社として生き残るのは非常に難易度が高い。 アメリカでWeb制作会社が存在出来ない5つの理由 日本の制作会社はコスパがめっちゃ良い 世界的に見ても日本の制作会社のコスパはかなり高い。かなり技術力があり、責任を持って仕事をしてくれる割に値段がリーズナブル。 おそらくその背景には以下に紹介する10のファクターが要因になっていると考えられる。 物価の安さ&為替 仕事に対しての姿勢 優秀な人材の多さ デザイナーの待遇が良くない おもてなしの精神 治安良い&インフラが安定してる 職人気質 日常におけるUXの高さ スタートアップ市場が熟成していない お客様は神様の考え方 1. 物価の安さ&為替 最近の日本は世界的に見てもかなり物価が安い。安くなったというよりは、他の国の物価が上がったのに対して、日本はここ30年ぐらいあまり変化がない。 例えば、2005年ぐらいまではサンフランシスコより東京の方が生活コストが高かったが、今はサンフランシスコの生活コストは東京の2.5倍ほどだ。 下記のビッグマック指数を見てもわかる通り、世界全体で見ても日本の物価の安さは特筆すべきものがある。そして安いのは物だけではなく、サービスも同じ。そもそも全体の給与が上がっていないのだから当然だろう。 物価の安さに加え、近ごろは円安が進み、どうやら20年ぶりぐらいの状況になっているらしい。こうなってくると、ドル換算にすると、日本の会社の見積もりはかなりお得に感じる。 イメージ的には以前は10万円だったのが、7万円になったイメージ。そして今後もこの円安はまだまだ進む予測もされている。 不況に強いビジネスと成長した企業から学べる4つの教訓とは 2. 仕事に対しての姿勢 日本が世界に最も誇れるのがその平均的教育レベルの高さと、仕事に対しての勤勉さだろう。特に、仕事に対しては、その対価に関係なく、課された内容をしっかりと遂行する姿勢、対応のきめ細やかさは唯一無二の存在。 これがアメリカだと、単価の安い案件に対してはそれなりのサービスしか受けられないし、比較的コストが低い東南アジアなどの国々でも手抜きされることも少なくない。もちろんプロジェクトの状態にかかわらず、定時になったら家に帰ってしまう。 その点、多くの日本企業で働く人たちや、フリーランサーは仕事に対しての責任感がかなり高く、納期に間に合わせるために残業したり、週末も働いてくれたりする。また、万が一間に合わない場合があっても、事前にしっかりとお知らせしてくれるケースがほとんど。この辺は、他の国だと直前まで知らされずに “Sorry” で済まさる場合も何度かあった。 加えて、識字率の高さや義務教育の高い浸透率が理由なのか、その報酬にかかわらず、仕事に対しての取り組み方と責任感において、日本を上回る国はないと思われる。 アメリカの丸亀製麺から考える日本でDXが進まない本当の理由 3. 優秀な人材の多さ 求人に応募してきてくれる候補者を見て思ったのだが、日本は優秀デザイナーの人材がかなり豊富。 10年ぐらい前までは、デザイナーはかなり特殊な仕事で、広告系かグラフィックデザイナーが多かったが、最近ではWebやUI, そして少しずつではあるがUXデザイナーも増えてきている。 美大だけではなく、総合大学でもデザインのプログラムがどんどん増えてきているみたいで、即戦力になるデザイン人材が多いと思う。 日本に憧れるピクサーの社員が語る仕事の裏側【インタビュー】グラント・アレクサンダー 4. デザイナーの待遇が良くない 日本は優秀なデザイナーが多い割に、実はその待遇は世界的に見てもかなり良くないと言わざるを得ないだろう。 それには複数の理由が考えられるが、サービスにお金を払わない文化が大きく影響しているように感じる。 これは日本特有の「納品文化」がまだまだはびこっており、数字やカタチで測ることが容易ではないデザイナーの価値がまだまだ理解されにくい土壌かもしれない。 ということは、優秀なデザイナーを擁する制作会社にお得な金額で仕事をお願いしやすい状態になりやすい。 なぜ日本ではデザイナーの地位が上がらないのか?~海外デザイナーとの比較~ 5. おもてなしの精神 某広告代理店の企業理念ではないが「そこまでやるか!」と感じてしまうぐらいに気の利いたサービスを提供してくれるのが日本企業のすごいところ。 これは飲食店や旅館、航空会社だけにとどまらず、制作会社も他の国と比べて相当サービスが素晴らしい。こちらが頼む前に「必要だと思って事前にやっておきました」とか、デザインに対する補足資料の量も半端ない。 やはりこれは日本が世界に誇れる「おもてなし精神」のなせる技だろう。 寿司職人から学ぶ究極のUXデザイン6つの極意とは 6. 治安良い&インフラが安定してる これは国内にいるとイマイチ気付きにくいが、世界的に見て日本は異常なぐらいに治安が良い。犯罪が少ないだけではなく、とにかく良い人が多い。 例えば、落とし物をしてもかなりの確率で戻ってくる。令和元年に落とし物として警察に届けられた現金の総額はなんと約40億円。携帯を落としても9割弱が持ち主に戻ってくる。こういう部分はとんでもなく素晴らしい国。 以前にバングラデッシュにある開発会社に発注したことがあったが、納期の直前に彼らのオフィスの近くで自爆テロがあったらしく、慌ててスタッフが全員帰ってしまった。それにより、納期に大幅な遅れが生じた。 また、電気やネットのインフラが安定しているのもかなりのアドバンテージ。というのも、嘘みたいだが、サンフランシスコ市街地ですら停電になることがある。アメリカの都心部でもそうなのだから、他の国でも電気やネットが落ちても不思議ではない。 日本の場合はその様な事態になることがかなり稀であるため、安心して仕事を頼める。 日本で生き続ける3つの消滅した米国ブランド 7. 職人気質 モノづくりに対するDNAがなせる技なのか、日本人の細部へのこだわりは半端ない。そして、物事に対するストイックな意識は世界的見てもトップレベル。 その素晴らしさを映画ラストサムライでトム・クルーズ演じる主人公は下記のように示している。 “彼らは目覚めた瞬間から自らを物事に没頭し、日々自身を戒めながら完璧を実現するために精進する。” これはまさに職人気質と言えるもので、たとえそれが繰り返しの続く単純作業だったとしても、高いクオリティーのアプトプットを実現する。HTMLのコーディングなんかはかなり根気のいる作業だが、日本の制作会社は手抜きをすることなく、しっかりと結果を出してくれる。 日本の技術力が世界的にすごい本当の理由 8. 日常におけるUXの高さ これも海外で生活しないと気づかないのだが、日本の日常生活におけるユーザー体験はかなり高い。 多機能な自動販売機から始まり、滅多に遅れない電車、わかりやすい標識、迅速で効率的なコンビニの業務、レストランでの高い顧客体験など、おそらく日本でしか体験できないほどの便利さがそこにある。 そんな高レベルの体験に日々接していると、感覚的にも研ぎ澄まされ、自分達が作り出すユーザー向けのデザインスタンダードも自ずと高くなっている。 サンフランシスコのUXデザイナーが体験した日本から学ぶべきUXとは 9. スタートアップ市場が熟成していない サンフランシスコ地域でデザイン会社を経営する最も大きな悩みの一つが、周辺にあるスタートアップの存在。というのも、この街にはTwitterやPinterest、AIrbnbやLyftなど、デザイン性の高いプロダクトを提供するスタートアップが山ほどあり、人材獲得競争が激化している。 結果的に優秀なデザイナーや制作に関わる人材がどんどんスタートアップに引き抜かれる。もちろん新規採用のハードルも高くなる。 その点日本はまだまだスタートアップが熟成していないため、人材の獲得の難易度はまだ高くないように感じられる。 結果として、制作会社だったとしても優秀なデザイナーを配することが現実的に可能になっている。 日本で起業家が生まれにくい3つの理由 10. お客様は神様の考え方 そしてやっぱり最後はお客さまは神様の考え方。どんな金額であったとしても、お金をもらっている = お客さまである限りは、圧倒的な主従関係の概念が根強く残っている。 これは同時にクライアントの立場になればある程度のワガママも通しやすく、日本の制作会社にお願いするROIが高まる。 特に提案段階でも手厚いサポートをしてくれたり、場合によってはデザインコンセプトを提出してくれたりするあたりなんかは、正当な対価をもらってないのにかなりのサービスを受けることが可能なのである。 “タダでやってくれませんか?” 問題への正しい対応方法 でも弱点もあり これらを総合的に考えると、やはり日本の制作会社はかなりコスパが良い。他の国々の人たちには教えたくないぐらいの裏技だ。 この良さをどんどん世界に広げていけば、世界のデジタル工場になれる日も近いかもしれない。 ただやはりいくつか弱点もあるので、ついでに紹介する。 弱点1: 英語力 はい。基本中の基本。だけど重要な点として、日本国外のプロジェクトをやったことのある制作会社はあまり多くない。 海外クライアントとのやり取りはもちろん英語になるのだが、デザイナーをはじめとして、英語でのビジネスコミュニケーションができる会社はまだ少ないだろう。 弱点2: プレゼン力 英語でのコミュニケーション能力と同等かそれ以上に重要になってくるのがプレゼン力。というのも、特にアメリカの企業はデザインなぜ” を重要視するから。 言い換えると、そのデザインがどのように課題の解決につながるかをロジカルに説明することを期待する。なので、受身の姿勢では海外のクライアントから良い評価を得るのは難しくなる。 弱点3: 消費税 日本では物にもサービスにも消費税がかかるが、アメリカをはじめとして海外のいくつかの国ではサービスには消費税がかからない。 なので、それらの国々のクライアントからは+10%割高に感じられる可能性がある。この辺は今後日本の税制がどう変わっていくかによって、大きく左右される可能性がある。 弱点4: 祝日が多すぎる […]

ロゴデザイン作成秘話 – TOKYO CREATIVE SALON 2022 –

この春行われた「TOKYO CREATIVE SALON」というイベントにおいて、弊社btraxでは、インスタレーション展示の空間演出を含んだデザインとディレクションを行った。 その一環として、日本橋エリアのキービジュアルを制作したため、この記事ではそのキービジュアル作成の裏側についてご紹介していく。 TOKYO CREATIVE SALONとは? TOKYO CREATIVE SALONは、地域や民間企業が連携して、都内の複数エリアのイベントを一同に集結させた、プロジェクト型のクリエイティブイベントだ。2022年3月18日から3月27日まで開催された。 東京を、ファッション、アート、音楽、フード、カルチャーなど、さまざまなカテゴリーを融合できる場所と捉え、合計5つのエリアがそれぞれがテーマを持ち、発信する。 5つのエリアとは、日本橋、丸の内、銀座、渋谷、原宿。この中で今回btraxは、日本橋エリアの展示ディレクションとデザインまわり全般を担当した。日本橋エリアは、ファッションの分野で展開している。 ロゴデザイン これが今回デザインした、TOKYO CREATIVE SALON日本橋エリアのロゴ。みなさんは、このロゴからどんな印象やメッセージを受け取るだろうか? 実は、これは漢字の「素」を少しデフォルメしてデザインしたロゴだ。 展示のメインテーマは、「素材からファッションを再定義する」というもの。 また、展示ブースは更にテーマごとに3つに分かれている。 日本橋というエリアは繊維の街として昔から知られていることから、素材の歴史と伝統を物語る「Traditional(トラディショナル)」のブース ファッションや素材における技術力と機能性に着目した「Technological(テクノロジカル)」のブース そして、これからのファッションを素材を通じて考える「Sustainable(サステナブル)」のブース そして、これら3つのテーマを包括するコンセプトとして、どの時代においても、ファッションにおいて素材は大切であるとして「ファッション=素材」というコンセプトを定めた。 そしてこのコンセプトをロゴに落とし込み、布をイメージしたデザインにした。 ではここから、このロゴが完成するまでのプロセスを紹介していく。 優れたロゴを構成する5つの要素 1.リサーチ まずは、参考になりそうなロゴをひたすら集めた。そして一通り集めたものを、カテゴライズしていく。 系統として、クラシックとモダンという軸と、文字中心とビジュアル寄りという2つの軸で分類していった。どんなデザインにするかはこの時点ではまだ決まっていなかったため、ひとまず広い意味合いを持つ「クラシック」と「モダン」を軸に決めた。 また、ロゴデザインをする際に、文字が含まれるものにするかどうかは全体のデザインに関わるため、最初の段階で決めた方がその後のプロセスとして制作がしやすいと判断し、もう一方の軸にした。 今回のロゴでは「素材」という文字を使ったデザインにしたいということは決まっており、さらにこのリサーチとその結果の分類によって、モダンな雰囲気にしようと方向性が決まった。 理由として、今回の企画全体のコンセプトにも通ずる「ファッションに使われている素材も、時代と共に進化している」という意味を込めるべく、ロゴもクラシック寄りにするのではなく、モダンな要素が必要だろうと考えたからだ。 2.ラフスケッチ おおよその方向性が決まったら次はスケッチ。 スケッチの方法はデザイナーによって様々だが、筆者の場合、手描きで紙に描いていく方法と、フォントを漁りながらイラストレーターで色々試す方法を同時に試すことが多い。 2つの方法を同時に行う理由は、手描きとデジタルでそれぞれ出来ることが違い、お互いに足りない役割を担っているからだ。 手描きでのスケッチは、頭の中で浮かんだアイデアをよりスピーディーに可視化することができる。精度は高くなくても、イメージしているものをとりあえず形にすることができる。 反対に、イラストレーターで実際にパスを引いたり、フォントを置いてみるというやり方は、デザインの質感や色味が正確にイメージしやすくなる。 3.イラストレーターで調整 作ったラフをもとに、より具体的なデザインのイメージが出来たら、今度はイラストレーターでそれを正確に作っていく作業を行う。 最初は「素材」の2文字でデザインしようとしたが、2文字を横並びにしたときの見栄えとバランスが良くなかったため、途中から「素」という文字だけで作ることに。 「素」という一文字だけにすることでインパクトが出るのではないかと考えたからだ。 そして少しずつ形を整えて、最終の形にまで持っていった。 ロゴの展開 完成したロゴは、さらに展示全体のキービジュアルや、展示会場の外壁デザインなどとして展開した。 一面全体にロゴを大きく使ったことで、インパクトが強く、人目を惹くデザインになり、それが結果的にある種の集客効果につながったように感じた。 今回「ロゴ感」を出すためにも、パッと見では漢字の「素」であることが識別しにくいデザインにしているため、それが大きく外壁としてプリントされていることで、あれは何だろう?と通りすがりの人に思わせることができたのではないかと思う。 最後に 筆者にとっては久しぶりのロゴデザインだったが、改めて一からどんなものにしようかを考え、コツコツと形にしていく作業は純粋に楽しいなと思った。 そしてデザインしたものが実際の外壁や暖簾にこれほど大きくプリントされ、人の目に触れることもなかなかない経験だったため、とても良い機会となった。 世の中無数のデザインで溢れているが、どれも視覚的にコンセプトやメッセージを伝えようと作られているもの。どういう意図やメッセージを込めて作られているものか考えながら見てみると、見方が変わって面白いかもしれない。 有名ブランドロゴの中に隠された秀逸なメッセージとは

デザイナー目線で選ぶ、米国有名企業の斬新なロゴリデザイン5選

2021年は変化の多い年であった。コロナ禍がもはや生活の一部になり、多くの企業がリモートを前提にした働き方をするようになった。Web3.0やメタバースなどが流行り、その領域への進出を本格的に始めた企業もあった。 そんな中、デザインもビジネスや社会の変化に合わせてさまざまな試みが行われていると感じる。特にこの2021年は面白い試みのロゴデザインが多く発表された年だと感じた。 2021年にロゴをリデザインした7のブランド 今回はそんな2021年に発表されたリブランディングの中でこれまでにない新しいロゴのアプローチだと感じたものを取り上げる。 1.「レトロ感」で美味しさを表現したBurger King 2021年1月ハンバーガーチェーンのバーガーキングは20年ぶりのリブランディングを発表した。デザインしたのはLondon、NY、Shanghaiに拠点をもつクリエイティブエージェンシーのJones Knowles Ritchieである。 これまでの赤と青が目立つ、スポーティーな印象のものから打って変わってレトロな印象を受ける柔らかい雰囲気のロゴになった。モダンでクリーンなロゴが流行っている中であえてレトロな印象のロゴを採用したところが新しいと感じた。 また、これまでのロゴにあった青色を「食べ物に青色は存在しない」という理由で排除したことで従来のものよりも食品を扱う企業らしさが出ている。 ロゴ以外にもカラーパレットや制服のデザインを見ても、どれもハンバーガーショップらしい、ハンバーガーの素材から抽出したかのような色使いになっており、オーガニックで安心できる印象を受ける。 この事例を見てわかるように、色から受ける印象は非常に大きい。特にそれがパレットとして複数色並べた時にそのブランドで作りたい世界観を感じられるものになっているとそのブランディングは優れていると言えるだろう。 2.事業領域を3Dを用いて表現したMeta 旧Facebookがよりメタバース領域へ踏み込むことの現れとして社名の変更に合わせた新しいロゴが発表された。 今後、Metaがメタバース領域を推進していくということがよりわかりやすくロゴとして表現されている。なおかつ旧Facebook時代の初期のロゴの名残を感じさせるような青色を再び採用している(Facebookの頃の最も新しいロゴはグレー一色だった)。 そのため、社名とシンボルマークが変わっても旧Facebookだとすぐに受け入れられたのではないだろうか。 また、ロゴとアニメーションの関係も大変興味深い。これまで多くのデジタルプロダクトの企業はフラットなロゴを採用することが一般的であったが、Metaのロゴは、ロゴが立体的に見えるように青色をグラデーションとして使っている。 またアニメーションでもそのように奥行きがあるものとして表現されている。おそらく新しいロゴでメタバース空間における3次元的な空間の広がりを表現しているのだろう。 奥にあるラインの方が明るい色になっている。 この事例からも今後デザイナーは平面に囚われることなく3次元的な発想と2次元的な発想を行き来する力も必要になるのではないだろうか。 3.素材感を用いたBLOCK(旧Square) 決済サービスを提供していた旧Squareが社名をBLOCKに変更した際のリブランディング。Metaと同じく3Dを前提としたロゴなのだがBLOCKの場合は常に動き続ける。 Metaの場合は複数のプロダクトをメタバース軸1本へと統率するための社名変更だが、BLOCKの場合は事業領域をブロックチェーン技術をベースに広げていくための変更になる。 この特定の形を持ち続けず動き続けるように見えるロゴから、ブロックチェーン領域にさまざまな形で挑戦するという意識が読み取れるのではないだろうか。 また、このロゴからは3次元やアニメーションに加えてテクスチャーの発想を感じ取ることができる。BLOCKのホームページを見ると、背景は赤色と水色のグラデーションになっている。 それがまるで鏡に反射するかのようにロゴの色が変わっていく。 2022年注目のブランディングトレンド 4.映画作品との協調を目指したWarner Bros サンフランシスコのデザイン会社Pentagramによって行われたWanner Brosのリブランディングで優れている点は、ロゴの活用方法までしっかりと考え込まれている点だ。 Warner Brosが今後のデジタルへ本格的にシフトするためにロゴをフラットにしただけではなく、本業である映画の映像に移った際にしっかりと存在感が出るように立体のロゴも残している。 他にも映画事業という会社の特性を活かせるように、各映画作品とのコラボ方法のフォーマットも提案されている。 どんな映画でもこの印象的な盾の形を模したロゴのアウトラインのなかに映画のキャラクターを入れることで、映画の世界観を壊さずに、うまくロゴをアピールできるようにしている。 このようにデザインするロゴの企業がどんな事業を持っているか、その特性を理解しロゴのアピールの作法まで踏み込み提案することがよいブランディングを行う上では重要だろう。 そのためデザイナーはロゴをデザインする企業の事業内容をしっかりと把握し、より踏み込んだ提案をすることが今後はより求められるのではないだろうか。 5.目の錯覚を用いたRENAULT 車メーカーのルノーも立体的な造形のロゴからフラットなロゴへとリデザインした。このリデザインに置いて優れている点は立体だった頃持っていた図の奥行き感が、目の錯覚を利用して表現され残されている点だ。 特に旧ロゴに見られる重なる部分の奥行き感が新しいフラットなロゴでも感じ取るとこることができるだろう。 このように目の錯覚といった人の目の見え方を学ぶこともロゴをデザインする上で重要な知識になる。 特にこの見え方を知ることはロゴの完成度を上げる上でも重要な知識になる。 まとめ このように、一口にロゴデザインと言ってもその表現手法や運用方法はとても奥が深い。 特にこの記事で紹介したロゴのリデザインはどれも斬新な表現手法を取っているだけでなく、企業の理念やヴィジョンをうまく反映していると言える。 デザイナーはロゴをデザインする際にはクライアント企業の事業内容やヴィジョンへの深い理解をすることに加え、それをヴィジュアルとして表現するための幅広い表現手法を知っておく必要があるのではないだろうか。

デザイナー目線で選ぶ、米国有名企業の斬新なロゴリデザイン5選

2021年は変化の多い年であった。コロナ禍がもはや生活の一部になり、多くの企業がリモートを前提にした働き方をするようになった。Web3.0やメタバースなどが流行り、その領域への進出を本格的に始めた企業もあった。 そんな中、デザインもビジネスや社会の変化に合わせてさまざまな試みが行われていると感じる。特にこの2021年は面白い試みのロゴデザインが多く発表された年だと感じた。 2021年にロゴをリデザインした7のブランド 今回はそんな2021年に発表されたリブランディングの中でこれまでにない新しいロゴのアプローチだと感じたものを取り上げる。 1.「レトロ感」で美味しさを表現したBurger King 2021年1月ハンバーガーチェーンのバーガーキングは20年ぶりのリブランディングを発表した。デザインしたのはLondon、NY、Shanghaiに拠点をもつクリエイティブエージェンシーのJones Knowles Ritchieである。 これまでの赤と青が目立つ、スポーティーな印象のものから打って変わってレトロな印象を受ける柔らかい雰囲気のロゴになった。モダンでクリーンなロゴが流行っている中であえてレトロな印象のロゴを採用したところが新しいと感じた。 また、これまでのロゴにあった青色を「食べ物に青色は存在しない」という理由で排除したことで従来のものよりも食品を扱う企業らしさが出ている。 ロゴ以外にもカラーパレットや制服のデザインを見ても、どれもハンバーガーショップらしい、ハンバーガーの素材から抽出したかのような色使いになっており、オーガニックで安心できる印象を受ける。 この事例を見てわかるように、色から受ける印象は非常に大きい。特にそれがパレットとして複数色並べた時にそのブランドで作りたい世界観を感じられるものになっているとそのブランディングは優れていると言えるだろう。 2.事業領域を3Dを用いて表現したMeta 旧Facebookがよりメタバース領域へ踏み込むことの現れとして社名の変更に合わせた新しいロゴが発表された。 今後、Metaがメタバース領域を推進していくということがよりわかりやすくロゴとして表現されている。なおかつ旧Facebook時代の初期のロゴの名残を感じさせるような青色を再び採用している(Facebookの頃の最も新しいロゴはグレー一色だった)。 そのため、社名とシンボルマークが変わっても旧Facebookだとすぐに受け入れられたのではないだろうか。 また、ロゴとアニメーションの関係も大変興味深い。これまで多くのデジタルプロダクトの企業はフラットなロゴを採用することが一般的であったが、Metaのロゴは、ロゴが立体的に見えるように青色をグラデーションとして使っている。 またアニメーションでもそのように奥行きがあるものとして表現されている。おそらく新しいロゴでメタバース空間における3次元的な空間の広がりを表現しているのだろう。 奥にあるラインの方が明るい色になっている。 この事例からも今後デザイナーは平面に囚われることなく3次元的な発想と2次元的な発想を行き来する力も必要になるのではないだろうか。 3.素材感を用いたBLOCK(旧Square) 決済サービスを提供していた旧Squareが社名をBLOCKに変更した際のリブランディング。Metaと同じく3Dを前提としたロゴなのだがBLOCKの場合は常に動き続ける。 Metaの場合は複数のプロダクトをメタバース軸1本へと統率するための社名変更だが、BLOCKの場合は事業領域をブロックチェーン技術をベースに広げていくための変更になる。 この特定の形を持ち続けず動き続けるように見えるロゴから、ブロックチェーン領域にさまざまな形で挑戦するという意識が読み取れるのではないだろうか。 また、このロゴからは3次元やアニメーションに加えてテクスチャーの発想を感じ取ることができる。BLOCKのホームページを見ると、背景は赤色と水色のグラデーションになっている。 それがまるで鏡に反射するかのようにロゴの色が変わっていく。 2022年注目のブランディングトレンド 4.映画作品との協調を目指したWarner Bros サンフランシスコのデザイン会社Pentagramによって行われたWanner Brosのリブランディングで優れている点は、ロゴの活用方法までしっかりと考え込まれている点だ。 Warner Brosが今後のデジタルへ本格的にシフトするためにロゴをフラットにしただけではなく、本業である映画の映像に移った際にしっかりと存在感が出るように立体のロゴも残している。 他にも映画事業という会社の特性を活かせるように、各映画作品とのコラボ方法のフォーマットも提案されている。 どんな映画でもこの印象的な盾の形を模したロゴのアウトラインのなかに映画のキャラクターを入れることで、映画の世界観を壊さずに、うまくロゴをアピールできるようにしている。 このようにデザインするロゴの企業がどんな事業を持っているか、その特性を理解しロゴのアピールの作法まで踏み込み提案することがよいブランディングを行う上では重要だろう。 そのためデザイナーはロゴをデザインする企業の事業内容をしっかりと把握し、より踏み込んだ提案をすることが今後はより求められるのではないだろうか。 5.目の錯覚を用いたRENAULT 車メーカーのルノーも立体的な造形のロゴからフラットなロゴへとリデザインした。このリデザインに置いて優れている点は立体だった頃持っていた図の奥行き感が、目の錯覚を利用して表現され残されている点だ。 特に旧ロゴに見られる重なる部分の奥行き感が新しいフラットなロゴでも感じ取るとこることができるだろう。 このように目の錯覚といった人の目の見え方を学ぶこともロゴをデザインする上で重要な知識になる。 特にこの見え方を知ることはロゴの完成度を上げる上でも重要な知識になる。 まとめ このように、一口にロゴデザインと言ってもその表現手法や運用方法はとても奥が深い。 特にこの記事で紹介したロゴのリデザインはどれも斬新な表現手法を取っているだけでなく、企業の理念やヴィジョンをうまく反映していると言える。 デザイナーはロゴをデザインする際にはクライアント企業の事業内容やヴィジョンへの深い理解をすることに加え、それをヴィジュアルとして表現するための幅広い表現手法を知っておく必要があるのではないだろうか。

UXデザイナーは本当にデザイナーなのか

最近とあることに気づいた。UXデザイナーポジションへの応募が多いが、そのバックグラウンドがかなり多種多様なのである。 元々Webデザイナーをしていた人もいるし、マーケター出身の人もいる。デザインとは関係のない学部や職種出身の人もいるし、前職がスタバのバリスタのケースもあった。 UXデザイナーの役割多すぎ問題 言われてみれば、”UXデザイナー” のその役割と必要なスキルがあまりにも広く、そして曖昧なこともあり、非常にわかりにくいポジションになってる気がする。 仕事内容も、デザイナーと呼ぶにはかなり多くの非デザインスキルが求められる。正直いうと、そもそもこれってデザイナーの仕事なのか?と思うこともしばしばある。 そんなこともあり、そもそも一人のデザイナーがUXデザインに求められる全てをまかなうのは、非現実的なのではないかとも思ってきている。 そもそもUXって何? このややこしさの根本原因は “UX” という言葉の意味が分かりにくく、人によって微妙にずれているからかもしれない。 なので、まずはUXがなんぞやっていうところからクリアにしていこう。 UXとはユーザー体験の英語訳である “User Experience” を短く、かっこよく表現したもの。その定義としては: 人々が製品に接するとき、そしてその接点から得られる経験そのもの。UXは、成功率、エラー率、離脱率、タスク完了までの時間、完了までのクリック数などの指標で測定される。 が適切だと思う。また、ユーザビリティーの父と呼ばれるヤコブ・ニールセン率いるNielsen Norman Groupによると、 UXは、エンドユーザーと企業、サービス、製品とのインタラクションのすべての側面を包含する と定義されている。 お気付きになっただろうか?上記の定義のどちらにも “デザイン” という言葉が含まれていないことを。 そう。もうお分かりですね。ユーザー体験 (UX) には、ライター、リサーチャー、プログラマー、情報アーキテクト、マーケター、そしてデザイナーなど、多くの多様な部門や専門家が優れたユーザー体験を生み出す責任を負っている。そしてもちろん、最も重要なのが経営陣の役割だろう。 【わかりやすく解説】UXデザインの基本と主要概念 UXとCXは何が違うの ここで少し余談になるが、日本語でよく言う「顧客体験」とユーザー体験は同じ意味なのだろうか? この議論をもう少し専門的な言葉で表現すると “UXとCXって何が違うの?” になる。 CXとは “Customer Experience” の省略形で、顧客体験と訳される。それぞれは密接に連動しているが、UXがエンドユーザー、つまり製品やサービスを使う人に焦点を当てているのに対し、CXは顧客に焦点を当てている。簡単に言うと、CX はUXを内包している形になる。 多くの場合、顧客も製品やサービスを使用しているが、場合によっては誰かに代わって製品やサービスを購入している可能性もある。 例えば、多くの「おもちゃ」のメインユーザーは子供である。その一方で、その製品を購入する顧客は親になる。この場合、おもちゃにおけるUXデザインのターゲットが子供になるのに対して、CXデザインは購入する親にも訴求する体験を設計する必要が出てくる。 したがって、顧客が必ずしもユーザーではないことも理解してデザインするのがCXデザインである。 UXデザイン 主にプロダクトにおけるユーザーの体験の質を上げる CXデザイン 顧客と企業との全ての接点における体験の質を上げる CXデザインとは?UXデザインとの違いとそれぞれの役割 優れたUXとは? ユーザー体験の価値を高めるのがUXデザイナーの仕事だとすれば、そもそも何を持って優れたUXって言うのだろうか? 優れたUXは、プロダクトの体験の総合値によってのみ実現される。例えば、Webサイトの読み込みが遅くてユーザーがイライラするような場合は、エンジニアがそれを改善する仕事になる。 コンテンツがユーザーの心に響かない、あるいは価値のある情報を提供できないなら、それはコンテンツライターの責任。また、ニュースレターの解約率が高いのであればマーケティング担当者が解決すべき問題になってくる。 このように、優れたUXを生み出すには、総合的なチームワークが求められる。自ずとUXデザイナーには、見た目の美しさや使いやすさだけではなく、それ以外の多くのポイントに触れる必要があり、自ずとその責任者も幅広い知識と経験が求められる。 UXピラミッド – UXデザインの正しい評価方法 – なぜUXの改善はデザイナーの仕事になったのか UXの品質改善には多種多様なタッチポイントの改善が必要なのに、なぜか全てデザイナーの責任とされちゃっている節がある。UXデザインのことがちゃんと理解できていない組織は特に。 なぜそうなっているのだろうか? おそらく、プロダクトのUXを改善するというと、多くの人はまず見た目デザインの改善を思い浮かべる。また、UXとユーザーインターフェース(UI)デザインを混同している人も多い。 それぞれは優れたUXを生み出すための戦略の一部であるが、それだけでは不十分である。 もう一つややこしいのは、多くのデザイン関連の出版物やメディアで、デザインとUXをあたかも同じような分野であるかのように表現していること。実際、デザインとUXは大いに重なりあっている。 でも、ユーザー体験の品質が悪い場合、それはデザインに原因があることもあるし、それ以外の要素を改善しなければならないこともある。 UXデザイナーの力だけでUXのその全てを改善できる場合もあるし、多くの場合はカスタマーサポート、価格帯、営業の態度など、それ以外の要素が原因になってる。 従って、UXとデザインを混同してしまうのは正しい考え方ではない。 UXデザイナーだけで解決できない問題が多い このように、UXは総合的な体験価値のそれぞれの要素で構成されているとするのであれば、デザイナー1人で解決できるわけがないだろう。 むしろ、組織のすべての部門がUXの理念を念頭に置いて協力しても、優れたリサーチやインタビュー、テストを採用しなければ、どんな製品も最高のユーザー体験を実現することはできない。 と言うことは、デザイナーだけで解決できる範囲は限られており、それ以外の専門家と一緒に物事を進めない限り、ユーザー体験の品質は改善されない。 なので、UXデザインはデザインだけでなく、それ以外の多くの役割の人たちの協力が求められる。 UXデザインプロセスの基本的な6ステップ 必要なのは総合的なUXチーム その一方で、組織内の複数の部署に対して「UX改善しておいてね」とだけ言ってても何も始まらない。 そこで、UXリサーチャーをはじめとするUXのスペシャリスト達が活躍することになる。それぞれ少しずつ異なる役割で構成されるUXチームは、もちろんデザイナーもいるが、それ以外も多種多様な役割のメンバーで構成される。 そのUXチームに関する役割は、マーケティングチームの構成に近いのかもしれない。チーム全体で、文章を書き、インタビューし、調査し、記述的・予測的な分析を行う。そして、 私たちデザイナーは、データ、洞察、その他の情報、推奨事項に基づいて、処方的なソリューションを提案していく。 従って、UXデザイナーと呼ばれる人たちは、UXをデザインする仕事というよりも、総合的なUXチームのメンバーの一人となり、デザイナー的観点からUX改善を進める役割になってくると思われる。 UXデザイナーという謎の役職名 このまで読めばわかると思うが、UXデザイナーの実態は周りのチームメンバーたちの構成によって大きく変化する。 なので、A社のUXデザイナーとB社のUXデザイナーでは、その仕事内容が大きく変わるし、エージェンシーと事業会社でもその立ち位置が全く異なることも少なくない。 UXの改善にはかなり総合的なチームが必要になってくるのに、なぜかUXデザイナーの人が全てそれを行うイメージがいまだに多く広がっている。そして、おそらく本人たちが一番困惑していると思う。 もはやデザイナーとは職種ではなくマインドセットである そもそもデザイナーの仕事って何? ここで一度 “デザイナー” と呼ばれる人たちの仕事内容をおさらいしてみよう。 そもそもここ数年でデザイナーの重要性が高まりすぎて、猫も杓子もデザイナーのキーワードが乱用され、その実態が少しぼやけてきている気がする。 デザイナーというと、絵を描いて形だけを決める仕事だと勘違いしている人が多いのだが、実はそれらは最終アウトプットのごく一部であり、本来デザイナーの仕事というのは、与えられた制限の中で、求められる最大限の結果を生み出すプロセスのその全てに関わる職業である。 実はデザイナーの仕事のうち、3分の2はコミュニケーションであると言っても過言ではない。 デザイナーの仕事の最初の3分の1が、正しい人を探してその人から正しい情報を引き出す事で、次の3分の1が実際のデザイン作業。 そして最後の3分の1が出来たものの情報を正しい人に正しく伝える事。この行程を経て、はじめてきちんとしたデザインが作り上げられる。 つまり、最初と最後の3分の1ずつは、コミュニケーション能力にかかっている。”黙っていても良い物を作れば売れる”という時代は終わり、作ったものの見せ方や、伝え方と言ったマーケティング、プロモーション、プレゼンテーションの部分もデザイナーが考える必要がある。 その普遍的なデザインプロセスが、UXデザインにも密接に関わってきている。 【改めて基本を解説】デザイナーの役割とその仕事内容とは UXデザイナーの肩書きがインフレ気味 最近では多くのデザイナーがUXデザイナーになりたがっている。 どうしてそうなってしまったのだろうか?おそらく、その裏には我々デザイナーの悲しい存在価値がある。 企業におけるデザイナーの存在は、テクノロジーやマーケティングなど、「動くか動かないか」や「数字」で判断される分野とは異なり、デザインは常に数値化が困難な分野。その不透明さゆえに、ビジネスのフィールドにおいて我々の仕事はあまり真剣に捉えてくれない壁があった。 そこで出てきたのがデザインとビジネスを融合させ、結果に繋がるデザイン = 「UXデザイナー」という肩書き。その戦略が功を奏し、その重要性は爆上がり。その結果UXデザインのインフレを招いてしまっている。 UXデザイナーとは?仕事内容、求められるスキル、活躍するデザイナーとは 「UXデザイナー > Webデザイナー」は誤り 冒頭で触れたように、元々Webデザイナーをしていた人が、UXデザイナーにスキルチェンジしようとするケースが増えてきている。これは、UXデザイナーの方が市場ニーズが高く、待遇も良いからだろう。 しかし、その安易な考えは危険。 WebデザイナーはUXデザイナーより価値が低いわけではないし、UXデザイナーはWebデザイナーの上位互換でもない。そもそも役割が全く違う。 でも、多くの組織では、WebデザイナーをUXデザイナーの下に配属し、ディレクションをもらってWebデザインをしたり、UXデザイナーを名乗る上司からジュースを買いに行かされたりしている。 そんな日々を続ければ「いつかはUXデザイナーに」って思ってしまうのも仕方ないだろう。 […]

UXデザイナーは本当にデザイナーなのか

最近とあることに気づいた。UXデザイナーポジションへの応募が多いが、そのバックグラウンドがかなり多種多様なのである。 元々Webデザイナーをしていた人もいるし、マーケター出身の人もいる。デザインとは関係のない学部や職種出身の人もいるし、前職がスタバのバリスタのケースもあった。 UXデザイナーの役割多すぎ問題 言われてみれば、”UXデザイナー” のその役割と必要なスキルがあまりにも広く、そして曖昧なこともあり、非常にわかりにくいポジションになってる気がする。 仕事内容も、デザイナーと呼ぶにはかなり多くの非デザインスキルが求められる。正直いうと、そもそもこれってデザイナーの仕事なのか?と思うこともしばしばある。 そんなこともあり、そもそも一人のデザイナーがUXデザインに求められる全てをまかなうのは、非現実的なのではないかとも思ってきている。 そもそもUXって何? このややこしさの根本原因は “UX” という言葉の意味が分かりにくく、人によって微妙にずれているからかもしれない。 なので、まずはUXがなんぞやっていうところからクリアにしていこう。 UXとはユーザー体験の英語訳である “User Experience” を短く、かっこよく表現したもの。その定義としては: 人々が製品に接するとき、そしてその接点から得られる経験そのもの。UXは、成功率、エラー率、離脱率、タスク完了までの時間、完了までのクリック数などの指標で測定される。 が適切だと思う。また、ユーザビリティーの父と呼ばれるヤコブ・ニールセン率いるNielsen Norman Groupによると、 UXは、エンドユーザーと企業、サービス、製品とのインタラクションのすべての側面を包含する と定義されている。 お気付きになっただろうか?上記の定義のどちらにも “デザイン” という言葉が含まれていないことを。 そう。もうお分かりですね。ユーザー体験 (UX) には、ライター、リサーチャー、プログラマー、情報アーキテクト、マーケター、そしてデザイナーなど、多くの多様な部門や専門家が優れたユーザー体験を生み出す責任を負っている。そしてもちろん、最も重要なのが経営陣の役割だろう。 【わかりやすく解説】UXデザインの基本と主要概念 UXとCXは何が違うの ここで少し余談になるが、日本語でよく言う「顧客体験」とユーザー体験は同じ意味なのだろうか? この議論をもう少し専門的な言葉で表現すると “UXとCXって何が違うの?” になる。 CXとは “Customer Experience” の省略形で、顧客体験と訳される。それぞれは密接に連動しているが、UXがエンドユーザー、つまり製品やサービスを使う人に焦点を当てているのに対し、CXは顧客に焦点を当てている。簡単に言うと、CX はUXを内包している形になる。 多くの場合、顧客も製品やサービスを使用しているが、場合によっては誰かに代わって製品やサービスを購入している可能性もある。 例えば、多くの「おもちゃ」のメインユーザーは子供である。その一方で、その製品を購入する顧客は親になる。この場合、おもちゃにおけるUXデザインのターゲットが子供になるのに対して、CXデザインは購入する親にも訴求する体験を設計する必要が出てくる。 したがって、顧客が必ずしもユーザーではないことも理解してデザインするのがCXデザインである。 UXデザイン 主にプロダクトにおけるユーザーの体験の質を上げる CXデザイン 顧客と企業との全ての接点における体験の質を上げる CXデザインとは?UXデザインとの違いとそれぞれの役割 優れたUXとは? ユーザー体験の価値を高めるのがUXデザイナーの仕事だとすれば、そもそも何を持って優れたUXって言うのだろうか? 優れたUXは、プロダクトの体験の総合値によってのみ実現される。例えば、Webサイトの読み込みが遅くてユーザーがイライラするような場合は、エンジニアがそれを改善する仕事になる。 コンテンツがユーザーの心に響かない、あるいは価値のある情報を提供できないなら、それはコンテンツライターの責任。また、ニュースレターの解約率が高いのであればマーケティング担当者が解決すべき問題になってくる。 このように、優れたUXを生み出すには、総合的なチームワークが求められる。自ずとUXデザイナーには、見た目の美しさや使いやすさだけではなく、それ以外の多くのポイントに触れる必要があり、自ずとその責任者も幅広い知識と経験が求められる。 UXピラミッド – UXデザインの正しい評価方法 – なぜUXの改善はデザイナーの仕事になったのか UXの品質改善には多種多様なタッチポイントの改善が必要なのに、なぜか全てデザイナーの責任とされちゃっている節がある。UXデザインのことがちゃんと理解できていない組織は特に。 なぜそうなっているのだろうか? おそらく、プロダクトのUXを改善するというと、多くの人はまず見た目デザインの改善を思い浮かべる。また、UXとユーザーインターフェース(UI)デザインを混同している人も多い。 それぞれは優れたUXを生み出すための戦略の一部であるが、それだけでは不十分である。 もう一つややこしいのは、多くのデザイン関連の出版物やメディアで、デザインとUXをあたかも同じような分野であるかのように表現していること。実際、デザインとUXは大いに重なりあっている。 でも、ユーザー体験の品質が悪い場合、それはデザインに原因があることもあるし、それ以外の要素を改善しなければならないこともある。 UXデザイナーの力だけでUXのその全てを改善できる場合もあるし、多くの場合はカスタマーサポート、価格帯、営業の態度など、それ以外の要素が原因になってる。 従って、UXとデザインを混同してしまうのは正しい考え方ではない。 UXデザイナーだけで解決できない問題が多い このように、UXは総合的な体験価値のそれぞれの要素で構成されているとするのであれば、デザイナー1人で解決できるわけがないだろう。 むしろ、組織のすべての部門がUXの理念を念頭に置いて協力しても、優れたリサーチやインタビュー、テストを採用しなければ、どんな製品も最高のユーザー体験を実現することはできない。 と言うことは、デザイナーだけで解決できる範囲は限られており、それ以外の専門家と一緒に物事を進めない限り、ユーザー体験の品質は改善されない。 なので、UXデザインはデザインだけでなく、それ以外の多くの役割の人たちの協力が求められる。 UXデザインプロセスの基本的な6ステップ 必要なのは総合的なUXチーム その一方で、組織内の複数の部署に対して「UX改善しておいてね」とだけ言ってても何も始まらない。 そこで、UXリサーチャーをはじめとするUXのスペシャリスト達が活躍することになる。それぞれ少しずつ異なる役割で構成されるUXチームは、もちろんデザイナーもいるが、それ以外も多種多様な役割のメンバーで構成される。 そのUXチームに関する役割は、マーケティングチームの構成に近いのかもしれない。チーム全体で、文章を書き、インタビューし、調査し、記述的・予測的な分析を行う。そして、 私たちデザイナーは、データ、洞察、その他の情報、推奨事項に基づいて、処方的なソリューションを提案していく。 従って、UXデザイナーと呼ばれる人たちは、UXをデザインする仕事というよりも、総合的なUXチームのメンバーの一人となり、デザイナー的観点からUX改善を進める役割になってくると思われる。 UXデザイナーという謎の役職名 このまで読めばわかると思うが、UXデザイナーの実態は周りのチームメンバーたちの構成によって大きく変化する。 なので、A社のUXデザイナーとB社のUXデザイナーでは、その仕事内容が大きく変わるし、エージェンシーと事業会社でもその立ち位置が全く異なることも少なくない。 UXの改善にはかなり総合的なチームが必要になってくるのに、なぜかUXデザイナーの人が全てそれを行うイメージがいまだに多く広がっている。そして、おそらく本人たちが一番困惑していると思う。 もはやデザイナーとは職種ではなくマインドセットである そもそもデザイナーの仕事って何? ここで一度 “デザイナー” と呼ばれる人たちの仕事内容をおさらいしてみよう。 そもそもここ数年でデザイナーの重要性が高まりすぎて、猫も杓子もデザイナーのキーワードが乱用され、その実態が少しぼやけてきている気がする。 デザイナーというと、絵を描いて形だけを決める仕事だと勘違いしている人が多いのだが、実はそれらは最終アウトプットのごく一部であり、本来デザイナーの仕事というのは、与えられた制限の中で、求められる最大限の結果を生み出すプロセスのその全てに関わる職業である。 実はデザイナーの仕事のうち、3分の2はコミュニケーションであると言っても過言ではない。 デザイナーの仕事の最初の3分の1が、正しい人を探してその人から正しい情報を引き出す事で、次の3分の1が実際のデザイン作業。 そして最後の3分の1が出来たものの情報を正しい人に正しく伝える事。この行程を経て、はじめてきちんとしたデザインが作り上げられる。 つまり、最初と最後の3分の1ずつは、コミュニケーション能力にかかっている。”黙っていても良い物を作れば売れる”という時代は終わり、作ったものの見せ方や、伝え方と言ったマーケティング、プロモーション、プレゼンテーションの部分もデザイナーが考える必要がある。 その普遍的なデザインプロセスが、UXデザインにも密接に関わってきている。 【改めて基本を解説】デザイナーの役割とその仕事内容とは UXデザイナーの肩書きがインフレ気味 最近では多くのデザイナーがUXデザイナーになりたがっている。 どうしてそうなってしまったのだろうか?おそらく、その裏には我々デザイナーの悲しい存在価値がある。 企業におけるデザイナーの存在は、テクノロジーやマーケティングなど、「動くか動かないか」や「数字」で判断される分野とは異なり、デザインは常に数値化が困難な分野。その不透明さゆえに、ビジネスのフィールドにおいて我々の仕事はあまり真剣に捉えてくれない壁があった。 そこで出てきたのがデザインとビジネスを融合させ、結果に繋がるデザイン = 「UXデザイナー」という肩書き。その戦略が功を奏し、その重要性は爆上がり。その結果UXデザインのインフレを招いてしまっている。 UXデザイナーとは?仕事内容、求められるスキル、活躍するデザイナーとは 「UXデザイナー > Webデザイナー」は誤り 冒頭で触れたように、元々Webデザイナーをしていた人が、UXデザイナーにスキルチェンジしようとするケースが増えてきている。これは、UXデザイナーの方が市場ニーズが高く、待遇も良いからだろう。 しかし、その安易な考えは危険。 WebデザイナーはUXデザイナーより価値が低いわけではないし、UXデザイナーはWebデザイナーの上位互換でもない。そもそも役割が全く違う。 でも、多くの組織では、WebデザイナーをUXデザイナーの下に配属し、ディレクションをもらってWebデザインをしたり、UXデザイナーを名乗る上司からジュースを買いに行かされたりしている。 そんな日々を続ければ「いつかはUXデザイナーに」って思ってしまうのも仕方ないだろう。 […]

【イベント総括編】ブランディングに関する24の質問に一問一答

先日btraxは、「日本企業はなぜブランディングが弱いのか? – btrax Event Series 01 Brand Design」というオンラインイベントを実施した。 ブランディングに関するよくある誤解を解消し、経営におけるブランディングの重要性をより深く理解していただくことを目指して開催した本イベントは、多くの方にご参加いただき、大盛況のうちに終了した。 しかし、イベント内にて参加者のみなさまからはご質問やコメントを非常に多くいただき、その数は、時間内では回答しきれないほどだった。 そこで、イベント当日、時間の都合上あまり十分な回答をすることができなかった、もしくは、回答をすることができなかったご質問に対して、登壇したbtrax CEO, Brandonより改めて回答をもらい、記事にまとめる運びとなった。 Q1. 日本でのブランディングとアメリカでのブランディングのプロセスに違いはありますか? A. おそらく日本のブランディングプロセスの多くが、20世紀から行われていたCIデザインと、広告中心の手法が踏襲されていると考えられます。 一方でアメリカの場合は、多くの企業がデジタルチャンネルの活用を10年ほど前から積極的に行なっているため、それらを活用したよりスピーディーで柔軟な形のブランディングが行われていると思います。 Q2. 最近アメリカで話題になっているブランディング手法やケースがあれば教えて欲しいです。 A. これに関しては、まさに上記の質問にも関連する「リーンブランディング」ですね。 今までのようにじっくりと作り込むのではなくて、素早くリリースして、改善していく手法です。以前に弊社のブログにて詳しく紹介してあるので、そちらをご参照ください。 ブランド構築に役立つリーンブランディング その基本と3つの活用シーン Q3. ブランディングの非常に良いサンプルとして、AppleのSteve JobsがやったThink Differentが非常に印象的でした。 A. とても素晴らしいブランドキャンペーンだったと思います。 特にテレビCMやビルボード広告で全く商品を紹介せずに、世界を変えた偉人の写真と共に自分達の信念を語ったというのが、模範的なブランドメッセージの発信方法だと思います。 Q4. 営業やマーケティング活動がブランディングだ、と思っている人にブランディングを上手く説明するにはどうしたらよいでしょうか? A. 営業をする際にもブランド力がある企業の方が圧倒的に成果が出しやすいと思います。 飛び込み営業や、メールでの営業をした場合でも、無名のブランドよりもブランド力が高い企業の方が返事をもらえる可能性が格段に高くなると思います。また、マーケティングをする際にも同様で、その効果が高まると考えています。 Q5. 日本国内で展開するブランドを前提とした場合、営業力に頼らないブランディングを上層部に打診するにはどうしたらよいですか? A. ブランド力が直接企業の売上、利益、時価総額に影響することをデータと一緒にプレゼンすると良いかと思います。 Q6. 今は「パーパス」がバズワードですが、パーパスとブランディングについてはどう説明していますか? A. 現代のブランディングにおいては、企業の掲げるパーパスはとても重要な役割を果たします。 自分達の存在意義と、世の中に対してどのような役割を果たしたいかをより明確にすることで、ブランドメッセージもより伝わりやすくなると思います。 Q7. ブランドを構築してからお客様に認知されるまでどのくらいのスパンを見たほうがよいですか? A. おそらく最低でも半年、理想的には1年はかかると思います。例えばAppleが倒産寸前の状態からJobsが復帰し、ブランド力が高まるまで最低でも3年はかかったと考えられます。 したがって、企業がブランディングの効果をあまりにも急ぎすぎてしまうと、長期的には逆効果になります。 Q8. 中小企業のブランディングで重要なことはありますか? A. 多くの中小企業は、大企業に比べて小回りが利きやすく、失うものも少ない、トップの一存で物事を決めやすいなどのメリットがあると思います。 ブランディングにおいても速いスピードでどんどん世の中に発信していけるのではないかと思います。 Q9. ベンチャー企業に対してブランディング提案をするポイントはありますか? 立ち上げの初期はあまり名前やロゴにこだわりすぎなくても良いと思います。それよりも優れたプロダクトとユーザー獲得に注力するべきだと思います。 スタートアップ立ち上げ時に重要ではない20の項目と最も重要な2つの事 Q10. ブランド価値の算出方法を教えていただけますか? A. 企業のブランド価値は常に流動的であるため、非常に難しい質問ですが、一般的には下記のような手法が活用されています。 同じ市場における類似商品・サービスと比べ、そのブランドがどれほど高く売れているかを比べて算出する方法。 買収された類似ブランドの売却価格、もしくは買収する際の金額を基準にする方法。 収入、キャッシュフロー、コスト削減、将来の収益などの財務指標をもとに、どの数字がブランドの評判や認知度によって直接得られたものかを評価する方法。 現在の顧客数を評価し、将来の顧客数を予測し、それぞれに生涯価値 (LTV)を割り当てる手法。 Q11.ブランディングは、プロダクトアウトとマーケットイン、どちらの思考から考え始めるのがよいですか?それとも自社ブランドなのでプロダクト側だけで考えてよいのでしょうか? A. ブランド力とプロダクト力は企業の成功においては両輪の関係です。ですので、プロダクトのUXとブランドメッセージの統一が重要になってきます。 特にデジタルサービスはプロダクト自体がブランド力を牽引する役割を果たすので、プロダクトのUXもしっかりと作りたいところです。 Q12. 会社がブランディングを意識すべきタイミングはいつ頃だと思いますか? A. 業界にもよりますが、プロダクトがある程度完成し、ユーザーがつき始めた頃がよいと思います。 例えばTwitterは、これまでに5回ほどロゴをアップデートし、その度にブランド力を高めています。 また、Airbnbも軌道に乗り始めた頃にブランドを大幅に改善しています。 両者とも知名度が高まり、勢いに乗ったところで一気にブランディングに力を入れたようです。 Q13. 改めて体験デザインとは、具体的にどういったものですか? A. これは世の中的にはUXデザインとかユーザー体験デザインと呼ばれているものです。商品やサービスを利用した際に、その利用者が受け取る体験の良し悪しを決めるデザインです。 また、UXデザイナーの仕事は利用者と提供者の両方が満足する体験をデザインすることになります。 【わかりやすく解説】UXデザインの基本と主要概念 Q14. 既存の商品やサービスをDX化、デザインする案件の場合、ブランディングと結びつけた事例はありますか? A. 現在我々が行なっているプロジェクトのいくつかは、まさにDXとブランディングを掛け合わせたものです。 例えば、本業がアナログのものづくりの会社が、そのブランドメッセージをモバイルアプリ等のデジタルサービスを通じてユーザーに体感してもらうタイプのプロジェクトをいくつか進めています。 Q15. ターゲットが60歳以上の場合でもデジタルの手法を採るのでよいですか? A. そうですね。現代では世代に関係なく、デジタルでのブランドコミュニケーションは必須だと感じます。 特に欧米の国々では高齢者でもパソコンやスマホを使いこなしているので、グローバル規模で考えるのであれば、サービスもデジタルメインで考えるべきだと思います。 Q16. アメリカのZ世代以下の世代はGAFAMのブランドをあまり支持しておらず、Web3向けの企業を支持していると聞きました。実際の現状はどうなっていますか? A. そうですね。最近はGAFAM に代表される、いわゆる「ビッグテック」があまりにもユーザーのデータを所有して力を持ちすぎていることから、一部のユーザーからの不安と不満が挙がっているのは確かです。 一部の企業が独占するより、民主主義的に、Web3の概念に期待をしている人たちも増えてきていると思います。 世界が注目するミレニアル・Z世代 その最新トレンドと消費嗜好 Q17. ブランドの価値を与えるのはユーザーであり、ユーザーは「タダ」でその価値を提供するのは違和感があります。Web3の流れは必須ですね。 A. かなりレベルの高い質問ですね。ユーザーがブランド力を高めているのは間違いないですが、タダで行なっていることが必ずしも悪いとは思わないです。 また、Web3は今後どのような役割になるのかが未知数なので、ブランディングへの影響力に関しても楽しみに思っています。 Q18.国内事業を立ち上げていき、どこかのタイミングで海外進出を考える時に、ブランディングで注意して考えないといけないポイントは何ですか? […]

UIやUXにパクリの概念はあるのか?

“優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む “という言葉を聞いたことがあるかもしれない。ピカソが言ったとか、スティーブ・ジョブスが引用したとかで、デザインの世界では一つの基準にもなっている。 模倣は良くないが、アイディアを盗むのはアリということか? これに関して、以前にインスパイアとパクリの違いをまとめた。クリエイティブな世界では誰もが何らかの理由で誰かに影響を受けており、100%オリジナルはかなり稀であるという話。ざっくりと考えてみると下記の感じなのかなと思う。 パクリ: バレたら困る インスパイア: バレた時の言い訳として使う オマージュ: わかる人にだけにわかってもらいたい リスペクト: 他のクリエイターに気づいて欲しい パロディー: バレなきゃ困る どこからがアウト?インスパイアとパクリの境界線とは そして最近ふと思った。アートや音楽、ロゴやイラストのパクリはあるが、UIやUXにもパクリという概念は存在しているのだろうか?と。 UIトレースとパクリの違いは? デザインを学ぶ際に最も効果的な “パクる”, いや “トレース” する手法がある。これは既存の人気サービスのUIやUXをベースにして、その上を文字通りなぞり、インタラクションも真似をしてみることで、ユーザーに喜ばれるサービスのデザイン要素を身につける事ができる。 これは、現に多くのデザインスクールやワークショップでも推奨されている手法である。トレースする経験を積み、それを消化し、自分のもにできれば、デザインスキルになる。 クリエイティブな事がそんなにも凄いのか 最近のUI/UXは似たり寄ったり おそらく皆様もご存じのように、世の中のアプリのその多くは似たり寄ったりなUI/UXを実装している。 丸みを帯びたサンセリフ書体の大きく太い見出し、ネガティブスペースを多用した最小限の白黒インターフェース、ほとんど色を使わないなど、一見してどのアプリか見分けがつかないことも多い。 そして人気のアプリになればなるほどUIは “透明” になっていき、UXも記憶に残らないくらいナチュラルだ。 例えば、最近のソーシャル系のサービスにおけるショート動画のUIはどれもかなり似ている。使っているうちに「あれ、これどのサービスだっけ?」と思うことも多々ある。 この例の様に、多くのアプリのUIが似ているのは、ユーザビリティーを追求したら同じものになったかもしれないし、アプリ全体に共通するユニバーサルなUIを追求した結果なのかもしれない。 コンテンツを見せることを最優先したり、ユーザーテスト、グロースハックなどの過程で、自然と似たユーザー体験にたどり着くのだろう。 どちらにせよ、ユーザー視点から考えるとより直感的に使えるサービスになっているのには変わりない。これは、「けもの道」が作り出されている状況に似ている。 UXデザインにおける「けもの道」現象を考える どんどん透明になっていくUI 実はユーザーが気づかないうちに、人気アプリのその多くのUIが “透明” になってきている。 初期の頃のデザインはかなり工夫され、ブランド色が強かったものも、バージョンアップを重ねていくにつれ、UIにおける装飾要素がどんどんなくなっていき、最終的にたのアプリとの違いがほとんどなくなっていっている。 それもそのはずで、UXという言葉を作ったことで知られるドン・ノーマンは、「インターフェイスの本当の問題は、それがインターフェイスであることだ」という名言を残している。「インターフェイスは邪魔になる。ユーザーはインターフェイスにエネルギーを集中させたくはない。理目的達成に集中したいのだ。」と。 実はユーザーから見るとUIや似ている方がありがたい 世の中のアプリのその多くが似通ったユーザー体験を提供しているのには意味がある。ユーザーにとってそのほうがありがたいのだ。 多くのユーザーが毎日複数のアプリを行き来することで、アプリ疲れが生まれ始めている。新しいアプリをダウンロードするたびに、異なるインターフェイスやユーザー体験を学び直すのに疲れてしまっている。 ということは、既存のUIやUXを踏襲した上で、新しい価値を提供してくれるサービスの方が自ずと使いやすくなる。当然だろう。ECサイトでショッピングカードのアイコンを右上に表示していない “ユニーク” なUIを喜ぶユーザーがどれだけいるだろうか? UIデザインのスタンダードを逸脱するサービスを人間の脳は喜んでくれない。 実際。以前にSnapchatが機能をごちゃ混ぜにしたり、ナビゲーションのパターンを変えたりといった型破りなデザインをリリースしてみた結果、ユーザーのセンチメントをほぼ73%低下させ、アプリのユーザー数も株価も大きく下落させた。 この例からも分かる通り、斬新なデザインはリスクを伴う。逆に他のアプリと似ていたとしても、一貫したデザインはユーザーを動揺・混乱させる可能性を低くすることができる。 【注意!】以前にはUI/UXのパクリ疑惑訴訟も しかし、UI/UXのパクリ疑惑に関して意義を唱えたケースもあり、実際に2018年に訴訟が起こっている。マッチングアプリ大手のTinderが同種サービスのBumbleに対して”スワイプ機能” をパクったとして訴えた。正確にはデザインパテント侵害の疑い。 このスワイプ式UIは、通称Tinder UIとも言われ、アプリをデザインする際にはよく利用されるスタンダードな動きではある。 実は後発のBumbleのCEOが元々Tinderの社員で、社内で個人的なゴタゴタが発生。その後独立し類似サービスを開始した。そして、Tinderの親会社がBumbleに買収の打診をしたが断られた事実もある。なので、この訴訟の背景はかなりドロドロしてるっぽい。 Tinder側としては、BumbleのCEOおよび共同創業者がTinder在籍中に学んだ独特のUXを参考に、ライバルアプリを開発したとし、「Tinderを成功させるために、これまで多大な資源と創造的専門知識を投入してきた。これらの権利を侵害する同業他社に対しては、特許およびその他の知的財産権を行使する。」というのが彼らの主張。 一方で、ユーザー側からしてみるとこのUI/UXはマッチング系アプリの定番であり、Tinderが元祖だったにせよ、他のアプリが採用することに対しての違和感は無いように感じる。 ちなみにこの訴訟は2020年の6月に和解した模様。 あえて知的所有権を行使しないTwitter Tinder vs Bumbleとは逆の例がTwitterアプリである。現在では一般的になっている画面を下に引っ張ってコンテンツをリロードするUX (Pull to Refresh) を最初にデザインしたのがTwitter。 このユーザー体験は、Instagram, Gmail, Facebookなどなどに「盗用」され、ユーザーは無意識に利用できるほど一般的になっている。 元々はTwitter用のアプリ、Tweetieが最初に開発した。そして、Twitter社はこのパテントを所有している。しかし、他のアプリがそれを盗んだとしても、その権利を行使することはない。 そこには二つの理由があると考えられる。まず一つ目は、他のアプリがそれを採用することを阻止したところでTwitterにはメリットがない。そしてもっと重要なのが、そのUXがより一般的になればなるほど、多くのユーザーがTwitterアプリを使いやすく感じてくれるから。 従って、逆にパクってもらってもOK。というのがTwitterのUXデザインポリシーになっている。 パクリあいながら成長するiOSとAndroid 最も一般的な類似UI/UXはスマホだろう。 2007年の初代iPhoneの発表から少し遅れてGoogleがAndroidがを発表した時、多くの人々が「あ、iPhoneのパクリだ」と感じた。でも実は、その後のアップデートを重ねるにつれ、お互いがお互いのUIデザインやUXに “インスパイア” され、それぞれの精度を上げてきている。 例えば、アプリ内のコンテンツをホーム画面に表示できるウィジェットなど、iOS14 (2020年リリース) に初めて実装された機能のその多くは、すでにAndroidに実装されている。その中でも、ピクチャーインピクチャーは2017年にリリースされたAndroid 8の一部としてリリースされていた。 この例のように、iOSの機能の多くが、何らかの形でまずAndroidに実装されていることが多い。しかしAppleは、他のデバイスとの連動や、より洗練されたUXの作り込み、そして絶大なるブランド力を通じて差別化を図っている。 おそらく少なくともスマホOSにおいては、パクリ、パクられの流れは切磋琢磨になっているように感じる。そして、ユーザーからすると、それはかなりありがたい状態である。 サービスデザインで考慮すべき3種類の心理的ハードルとは スクラッチからデザインしない方が良い理由 誤解を恐れずにいうと、UIやUXの領域になってくると、無理にスクラッチからデザインしない方が良い。 まず、今までに存在していない利用体験をユーザーに提供すると、ユーザーがその利用方法を学ばなければならなくなり、使いにくくなる。 一般的なユーザーは、アプリやプロダクト、Webサイトなどに、既存のものと同じような動作体験を望む。ユーザーは慣れ親しんだプロダクトに対して抱いていた期待を、似たような製品にも持つという理論。 これはヤコブの法則とも言われている。詳しくは下記のポストを参考に。 UXデザイナーなら知っておきたいデザインに関する10の法則 これは日常生活にも適用される。例えばホテルに泊まった時、シャワーの使い方に悩んだことはないだろうか?無駄におしゃれにデザインされすぎてて、冷水を浴びた経験のある人も少なくない。 なので、デザイナーのエゴで “クリエイティブ” なUIをデザインするのは、必ずしもユーザーのメリットに直結しない。 ユーザーは、製品の使い方を覚えるのに、できるだけ労力をかけたくないと思ってる。ニールセンが「ユーザーが慣れ親しんでいるパターンでデザインしなさい」と提唱しているのはこれが理由。 現在の世の中で愛されているデザインパターンは、全て優れたデザイナーが長い年月を掛けて生み出されたものであり、それを利用しないのは勿体無い。 確立されたパターンは優れたユーザーエクスペリエンスの基本であり、それを活用することは現代のUXデザイナーの仕事として欠かせないものである。 問題に対する解決策がすでに存在するのであれば、それを利用すれば良い。パクリと言われても、ユーザーは気にしないし、ステークホルダーも気にしない。ただ、誰がみても安易な丸パクリはバレバレでダサいのでやめておこう。 なぜプロダクトから機能を削るのが難しいのか? UIにおける一般的な要素 そもそも現代において、モバイルでもWebでも、UIデザインを行う際に全くのスクラッチから作ることはほぼ無い。作業の効率化とユーザビリティーを優先させるために、既存の素材の組み合わせで行うことがほとんど。 よっぽどユニークなサービスでない限り、全くのゼロからデザインする理由が見つからない。言い換えると、どこにも存在していないUIをデザインしてしまうと、ユーザーが混乱することも多い。これは、カレーの具がどこの家庭も大体同じなのと一緒な感じ。 一般的なUI要素例: ログインボタン ハンバーガーメニュー チェックボックス ドロップダウン カレンダー モーダル […]

デザイナーが知っておくべき10の認知バイアス

認知バイアスとは、思考のプロセスにおける系統的な間違いのこと。簡単に言い換えると、思い込み。意思決定や判断を行う際の精神的な近道として機能するが、間違った判断を生み出すこともある。 年齢、性別、文化的背景に関係なく、誰もが認知バイアスの影響を受けていると言われる。 これを理解しておくことは、デザインを生業にする我々にとってはとても重要だと思う。なぜなら、人間である以上は、そこに認知バイアスがあり、それを熟知しておくことで、より適切なデザインをすることができるようになるから。 ユーザーエンゲージメントを向上させる7つの要素 認知バイアスが存在する理由 我々の脳は、日々信じられないほどの量の情報を取り込んでいる。同時に、できるだけ思考エネルギーを節約したいとも思っている。そのため、難しい判断を迅速に行うために、一般論や経験則(ヒューリスティックとも呼ばれる)に頼っている。 脳がより効率良く判断を下すための、一つの “チート” に近い。 また、認知バイアスは、情報に対するフィルター的役割を果たす。しかし、コーヒーの粉と水がコーヒーに変わるように、情報がフィルターにかかることで、その姿や味が変わってしまうことも多々ある。 人々の行動を変える行動心理学の力【ビヘイビアデザイン】 知っておきたい認知バイアス Top 10 人間の脳は、感情的になっているとき、決断を急いでいるとき、社会的なプレッシャーを感じているときなどに、認知バイアスに頼りがちになる。しかし、日常の思考や意思決定にも、認知バイアスは存在している。 数ある認知バイアスの中でも、よくある10の認知バイアスと、それらを理解し、デザインにおいて正しい判断を下すための手法を説明する。 情動ヒューリスティック ハロー効果 集団浅慮 サンクコストの誤謬 自信過剰バイアス 確証バイアス ドッペルゲンガー 楽観バイアス 後知恵バイアス キャッシュレス効果 1. 情動ヒューリスティック (Affect Heuristic) 人が感情的な状態に基づいて意思決定を行うという傾向のこと。例えば、イノベーションという概念にポジティブなものを連想すると、新しいプロジェクトはリスクが低いと判断しやすくなる。 具体例: 好ましい感情を持っているときには高いメリットがあり、リスクは少ないと判断する 嫌な感情を持っているときにはメリットは低く、リスクは高いと判断する このバイアスを避けるための問い: 特定のデザインに対して主観的な愛着が湧きすぎてないか? 感情が理性より優っていないかどうか? 感情に流された決断をしていないか? 2. ハロー効果 (Halo Effect) 外見が良ければ良いほど中身も良いと捉えてしまう傾向のこと。例えば、同じ犯罪を犯したのにもかかわらず、外見がいい人の方が外見が良くない人よりも罪が軽くなるという研究結果が出ている 具体例: 美しいデザインのプロダクトは性能も良い 見た目が劣っている自動車は性能が悪い このバイアスを避けるための問い: この【人/場所/アイディア】のどこが本当に好きなのか? この【人/場所/アイディア】の外見が異なっていても同じ感想を持つか? 3. 集団浅慮 (Groupthink) 英語ではグループシンク。日本語で“集団思考”または“集団浅慮 (せんりょ)” と呼ばれる。集団の中にいる人は、意思決定について議論して反対意見のレッテルを貼られるリスクを冒すよりも、集団に同調した方が良いので、不合理な決定を下す傾向がある。 具体例: 会議の際に多数の人が自分の意見と違う場合は発言しない 世の中の多くの人が使ってるのでスマホはiPhoneが一番性能が良い このバイアスを避けるための問い: チームメンバーと仲良くするためにこのアイディアを選んでいないか? 自分が正しいと思う選択より、周りからどう思われるかを重視していないだろうか? 4. サンクコストの誤謬 (Sunk Cost Fallacy) 悪いアイデアに投資した時間とお金を惜しむことで、それ以降の投資をやめることができない心理効果。 例としては、コンコルドという飛行機を作るプロジェクトにおいて、途中で採算が合わないかもしれないという状態にもなったのにも関わらず、巨額の予算と人員を投入していた為に後に引けない状態になっていた状態 (コンコルド効果) が挙げられる。 具体例: パチンコですでに3万円使っているが、ここで止めると損するので出るまで注ぎ込む もう少し掘れば出るのではないかと温泉を掘り続ける このバイアスを避けるための問い: ここまで費やした仕事とはいえ、感情移入しすぎていないだろうか? もし自分が外部の人間で、今このプロジェクトを観察しているとしたら、このプロジェクトを止めることを提案するだろうか、それとも続けることを提案するだろうか? もしプロジェクトを途中放棄した場合、起こりうる最悪の事態は何だろうか? 5. 自信過剰バイアス (Overconfidence Bias) 自分の知識や経験は非常に優れていると過信することにより、状況の正確な判断や対応ができなくなる傾向。特に馴染みのないテーマではこの傾向が強い。このバイアスに関してコペルニクスは “知っていることを知り、知らないことを知らないと知ること、それが真の知識である。” と表現している。 具体例: 自分のデザインは他のデザインより優れている ターゲットユーザーへの理解が浅くても大丈夫だと考える このバイアスを避けるための問い: 自分はこの分野にどの程度精通しているのか? 0%から100%の範囲で、自分が正しいとどの程度確信しているか? もし、この選択に対する確信が20%低かったら、同じ決断をするだろうか? 6. 確証バイアス (Confirmation Bias) 自分がすでに持っている先入観や仮説を肯定するため、自分にとって都合のよい情報ばかりを集める傾向性のこと。Googleバイアスともいう。事件が起こった際にSNSなどで自分の意見と同じコンテンツを優先して探しがちなのもこれ/。 具体例: 「高齢者の運転は危険だ」という先入観から、そうした情報ばかりを検索する ロゴの色は青が良いと思ったら、青に関してのポジティブな意見を検索する このバイアスを避けるための問い: 自分の信念について、相反する情報を探したことがあるか? 自分の立場を守るために感情的になっていないか、それとも理性的な視点を持っているか? 7. ダニングクルーガー効果 (Dunning-Kruger Effect) 未熟な人が自分の能力を過大評価しがちな傾向。自分の能力を客観的に正しく自己評価ができず、過大評価してしまう傾向。 具体例: 同期よりも自分が優秀だと思い込んで、能力を超えた仕事を請け負う 周囲の評価に耳を傾けず、自分のデザインを非常に良いものだと思い込み修正しない […]

なぜプロダクトから機能を削るのが難しいのか?

足すより削る方が難しい。これはデザインをした者であれば誰もが直面したことのあるチャレンジだろう。現在のサービスデザインでは、足し算よりも引き算の方が何倍も重要である。 事実、現在ヒットしている商品やサービスのその多くが、機能の多さよりも必要最小限の機能でユーザーの目的を果たすことで人気を集めている。 リリース当初、Snapchatは、しばらくすると消えてしまう画像をユーザー同士で送り合うだけのアプリだった。Uberでは、タクシーの事前予約はできなかったし、Amazonは本だけを売っていた。Googleは検索エンジンに過ぎなかったし、マクドナルドはフォークとナイフを提供していなかった。 たくさんのことがそれなりにできるよりも、ある一つのことを最高レベルの洗練された体験で提供することにフォーカスしているプロダクトに人々は熱狂する。それなのに、我々プロダクトチームの多くは、成功する製品には多くの機能が必要だと考えがち。 でも現実は逆である。 機能を削ったことでヒットしたプロダクト例 (主に初期バージョン): iPhone – 物理ボタンを極力排除 MacBook – DVDドライブ排除 Google – 検索ボックスのみ Twitter – 140文字まで Instagram – 画像のみ Tiktok – 60秒までの制限 Snapchat – 消える Medium – 記事を読むことだけにフォーカス Amazon Go – レジ会計が無い GoPro – カメラから液晶を排除 Kindle – 本を読むだけのデバイス Uber – 降車時の支払いが無い Clubhouse – 音だけ、録音機能なし これからのプロダクトは足すことよりも削ることが価値になる 1つの機能に絞り込むMVPの価値 例えば、スタートアップの初期においては、必要最小限の機能だけを実装し、そのサービスの価値をユーザーに問うためにMVPと呼ばれる初期バージョンが作り出される。 多くの初期バージョンがそうであるように、機能は限定されているが、その目的が分かりやすく、使いやすい。 ユーザー検証の後にサービスがリリースされ、そのシンプルさが喜ばれ、ユーザーも順調に増え始める。 しかし、ここで一つの問題が持ち上がる。 ユーザーを増やす ≠ 機能を増やす より多くのユーザーを集め、彼らをより喜ばせる?為には、新しいユースケースを想定した機能を追加する必要があるという議論がチーム内で広がり始める。 その主な理由として考えられるのは: プロダクトのレビューやアンケートなどを通じて、一部のユーザーから機能追加のリクエストが来る プロダクトチームは、そのような新機能を追加することで、それまで獲得できなかったタイプのユーザーや、他のカテゴリーに進出することが可能だと考える。それにより、競合他社から市場シェアを奪うことによる、ビジネスを拡大を狙う プロダクト提供側は「機能が増える = より多くのユーザーニーズに対応できる」と勘違いしてしまい、顧客層を広げるために機能追加を進めてしまう このようにしてどんどん機能が追加され、それに合わせてUIもどんどん複雑になっていく。 多機能の弊害 UIが使いにくい ブランド価値を想起させにくい 利用方法を学ばなければならない 選択肢が多すぎて行動が起こせない 機能を削りにくい主な理由 ほとんどのプロダクトチームは素晴らしい製品を作り、顧客を喜ばせたいと考えている。機能追加はそれを実現する最も一般的な方法だと考えがち。しかしそれは、「短期的」そして「人工的」なドーピング手法でしかない。 その一方で、機能を削る判断をするのはかなり難しい。その主な理由は: ユーザーから「使いにくい」という苦情はあるが、「機能を削ってくれ」というリクエストはほぼないので、機能削除の正当化しにくい 機能を削ったことによる効果を測定するのが難しい 機能を削ったら既存ユーザーから文句が出るのではないかという不安 もしかしたらその機能をまだ使っているユーザーがいるかもしれない その機能が目的で使い始めたユーザーがいるかもしれない 機能追加と機能削除のアイディアが出た場合は、本能的に機能追加が優先されがち おそらく、機能の削除を検討し始める唯一のきっかけは、より洗練された競合サービスが出現し、自社プロダクトの複雑さゆえの使いにくさが露呈し始めてからだろう。まあ、その頃にはほとんどの場合は手遅れであるが…。 シンプルにデザインする事の難しさ 日本国内向けのサービスは特に要注意 この議論は特に日本国内向けにしかビジネスを展開していない場合に起こりがち。 というのも、想定ユーザーが日本人だけになってしまうと、どうしても小さなパイからのユーザー獲得になってくるため、プロダクトに機能をどんどん追加することで、より多くのユーザーをカバーするしかない。 結果として、プロダクトのフォーカスがブレ、体験の品質も下げざるを得なくなる。 どんなに頑張ってもお前がカバーできるのは世界の2% ところで、リンスインシャンプーを使っている人いる? ここで機能を増やしたのに、なぜかうまく行ってなさそうな例を紹介する。まずはリンスインシャンプー。元々リンスとシャンプーという2つの異なる機能を1つで実現した夢のような商品。中には、3in1 と呼ばれるボディーシャンプーまで含む3つの機能を実装しているものまである。 でも世の中からシャンプーとリンスは無くならない。というか、リンスインシャンプーの方がマイナーな商品だと感じる。銭湯とかにはあったりもするけれども…。 同じコンセプトで、ボールペンとシャーペンの両方の機能を実装したシャーボという商品もあるが、あまり見かけない。 極め付けは、超多機能の筆箱。小学男子の心をくすぐるこの多機能商品も実用性は必ずしも高くない。 アップデートで機能を削除するのは稀 多くのプロダクトは、初期バージョンはシンプルで使いやすく、その目的が明確だが、バージョンアップを繰り返すにつれ、どんどん多機能になっていく。そしていつの間にか当初の存在価値が存在価値がぼやけはじめていく。 しかし、新バージョンが前バージョンよりも機能が少ないわけにいかない。新バージョンは常に前バージョンよりも「さらに美味しくなりました」でなければならないのだ。 コンコルドの失敗から学ぶスペック至上主義の危険性 より少なく、しかしより良く (Do less, but better) 冒頭でも紹介した通り、皆さんが日常で利用している商品やサービスのその多くが一つのことを他よりも良い体験を通じて提供している。 それらのプロダクトは必ずしも単純にデザインされているわけではないが、ユーザーに対しては単一の価値を届けるように設計されている。デザイナーは、機能、アーキテクチャ、インタラクション、ユーザビリティ、ブランディング、コミュニケーションなどの製品を取り巻く要素を上手に “隠し”、あくまで一つの価値を生み出している。 なぜデザインはシンプルな方が良いのか – 5つの理由と6つの鉄則 優れたデザインは可能な限りデザインをしない より少なく、しかしより良くというコンセプトは、決して新しいものではない。 1932年生まれのドイツ人工業デザイナー、ディーター・ラムスは、20世紀を代表するデザイナーのひとりとして知られ、大きな影響力を持っている。機能主義の信奉者である彼のデザインに対する合理的なヴィジョンは、「Less, but […]

内向的な人はデザイナーに向いていないのか?

デザイナーという役割にはどうしてもキラキラしているイメージを持たれる。特に、イベントに登壇したり、メディアのインタビューを受けたり、ファシリテーションをバリバリこなしている「カリスマデザイナー」は、話すのが上手で、コミュニケーションに長けている。 しかし、実際の現場においては、ほぼほぼコミュ障に近いレベルのデザイナーもいる。そんな内向的な人たちは、果たしてデザイナーに向いていないのだろうか? これまでのデザイナー経験、デザインチームのリーダーとしての経験、そしてデザイン会社経営の経験を元に、内向的なデザイナーに関しての考察をまとめてみた。 プロのデザイナーとして活躍するために必要な8つの非デザインスキル デザイナーの仕事の2/3はコミュニケーション デザインの世界では、コミュニケーションは大きなカギを握っている。恐らくデザイナーの仕事のうち、3分の2はコミュニケーションであると言っても過言ではない。 デザイナーの仕事の最初の3分の1が、正しい人を探してその人から正しい情報を引き出す事で、次の3分の1が実際のデザイン作業。 そして最後の3分の1が出来たものの情報を正しい人に正しく伝える事。この行程を経て、はじめてきちんとしたデザインが作り上げられる。 つまり、最初と最後の3分の1ずつは、コミュニケーション能力にかかっている。”黙っていても良い物を作れば売れる”という時代は終わり、作ったものの見せ方や、伝え方と言ったマーケティング、プロモーション、プレゼンテーションの部分もデザイナーが考える必要がある。 デザイナーの役割とその意外な仕事内容とは なので… 自分は内向的だからデザイナーに向いてないと思っている方。安心してください。向いてますよ。 そもそも内向的って? 内向型の人間とは何なのか?実は、かなり誤解されやすい。多くの人は、内向的な気質な人に対して「社会性がない」「話しかけにくい」「人付き合いが悪い」「オタク気質」といったイメージを持ちがち。この定義は外れてはいないが、実はかなり間違っている。 内向的な人と外向的な人の本当の違いは、エネルギーをどこで消費し、どこで得るかということで、スキルとはあまり関係がない。 しかし多くの人は: 外向的な人は陽気でコミュニケーション上手 内向的な人は内気でコミュ障 って考えがち。でもそれは大きな間違い。 違いはエネルギー源 従って、内向的か外向的かについては、スキルとは関係なく、エネルギー源がどこにあるか、そしてどこでエネルギーを消費するかの違いである。 内向型と外向型は、どこからエネルギーを得ているかに関係している。 内向的な人 : 一人で過ごすことでエネルギーを補給する傾向がある長時間、人と一緒にいること、特に大勢でいることでエネルギーを失ってしまう 外向的な人: 他の人からエネルギーを得る。一人でいる時間が長いとエネルギーが枯渇してしまう。社交的であることがエネルギーチャージになる なので、究極的には一人でいるのが楽か、大勢と一緒にいるのが楽かの違いである。なので社交的かどうかとか、コミニュケーションが得意かどうかは直接関係ない。 言い方を変えると、内向的な人でも問題なく高いプレゼン力や、コミュニケーション能力を獲得することができる。ただ、意味なく大勢の人の中にいると疲れてしまうというだけだ。 どちらのタイプの人も、スキル次第で社会的な場において重要な役割を果たすことができる。 また、多くの心理学的構成要素のように、内向性か外向性かの特性はグデーションで測られ、100%内向的、100%外向的であることは非常に稀。一人の人間に両方が混在していることも珍しくない。 業界のクリエーターやリーダーの多くが内向的 世界人口の25~40%が内向的であるとの調査結果がある。なので決して珍しくはない。むしろ、現在ビジネスで活躍している人の多くが内向的な特性を持っている。例えば、 内向的な著名人: ティム・クック – Apple CEO マーク・ザッカーバーグ – Meta CEO イーロン・マスク – Tesla, Space-X 創業者 ビル・ゲイツ – Microsoft 創業者 ジェフ・ベゾス – Amazon 創業者 ピーター・ティール – PayPal 創業者 セルゲイ・ブリン – Google 創業者 マリッサ・メイヤー – Yahoo 元CEO ウォーレン・バフェット – バークシャー・ハサウェイ CEO スティーブ・ウォズニアック – Apple 創業者 ちなみに、日本国内のデザイン系の会社の創業者や代表、チーフデザイナーなどの多くも内向型の人が多いと思われる。実際、後輩のGoodpatchの土屋くんやIN FOCUSの井口くんも意外と内向的だったりする。 レールを外れた僕らは自分たちのレールをデザインした デザイナーは外向的な方が良いという誤解の原因 デザインを正しく行うには、毎日人と話し、関係を築いていく必要がある。時には交渉が必要になってくる。また、自分のアイディアを採用してもらえるように理路整然としたプレゼンも求められる。 社内的にも、ユーザーとの対話に数日費やすことが、なぜビジネスの利益につながるのかを説明し、プロダクトマネージャーを説得しなければならない。 エンジニアには、なぜそのスタイルを修正したり、インタラクションやアニメーションを追加することでユーザーエクスペリエンスが向上するのかを理解してもらう必要がある。 このように、複数のシーンでデザイナーはデザインの品質を上げることがビジネスの利益につながる理由を説明し、プレゼンし、場合によっては活発な議論をする。 そのような仕事内容を考えると、相当なコミュニケーション能力が求められるし、聞く人を惹きつけるぐらいのカリスマ性が必要だと誤解されるのも無理がないだろう。 しかし、現在活躍している多くのデザイナーの気質は真逆であることも少なくない。 デザイナーに向いている (かもしれない) 7つの気質 内向的な人の主な特性 内向的な人はデザインリサーチや、ユーザー理解のエリアで強みを発揮すると考えられる。具体的に内向的なタイプの人のどのような特性がデザイナーに向いているのだろうか? 聞き上手 物事を深く考える 観察するのが好き 周りの意見に流されにくい 己をしっかりと理解している 詳細に対してのこだわりがある 内に秘めた情熱を持っている 個別または少人数の会話を好む 人間関係に量よりも質を重要視する 一人で複数のアイデアを検討してから共有する 感情やアイデアについて静かに語り合うのが好き 考えてみれば、これらはすべて優れたデザイナーの特徴である。 もはやデザイナーとは職種ではなくマインドセットである 優秀なデザイナーが内向的である5つの理由 次にこれら上記の内向的な特性が、デザインにおいて不利になるどころか、優秀なデザイナーになり得る理由を考察してみる。 1. デザインは少人数で行われることが多い デザインプロセスのほとんどは、一緒に仕事をする少人数のグループやチームで行われる。最も効果的なリデザインサーチは、個人で行われる。 内向的な人は人間関係に深く投資する傾向があり、少人数で の交流からエネルギーを得ることができるため、このすべてが内向的な人 […]

世界のブランドロゴに隠されたメッセージ第二弾

ブランドにはストーリーがあり、そのストーリーを表現するのがロゴの役割である。それも上手にビジュアルデザインに入れ込むことで、そのメッセージがさりげなく消費者に届く。
以前にも紹介したロゴに隠されたメッセージの第二弾として、よりさりげない12の例を紹介する。
有名ブランドロゴの中に隠された秀逸なメッセージ

Starbucks
あまりにも有名すぎるスタバのロゴ。ツインテールの人魚、セイレーンををモチーフとしたもの。ギリシャ神話では、セイレーンが船乗りを誘い、スターバック諸島とも呼ばれる南太平洋のある島…

ブランディングのためのデザインコンペ i-PRO Future Design Challengeで得た手応え

先日、パナソニックi-PRO センシングソリューションズ株式会社さま(以下、i-PRO)と共催した「i-PRO Future Design Challenge」の受賞作品が決定した。 これは、今回初開催となった、2021年7月から1ヶ月半ほどの応募期間を設け、世界中からアイディアを募るグローバルデザインコンペだ。 コンペ全体のコンセプトを「未来の課題をデザインで解決する」とし、「テクノロジーが発展しすぎた未来社会の犯罪を解決する」をテーマに設定した。 テーマの決定に際し、テクノロジーは、我々の生活を便利にする一方、リテラシーを欠いたり、使い方を誤ったりすれば、巧妙な犯罪行為に使われる可能性があることを提起。 いわば「諸刃の剣」のようなテクノロジーとこれからいかに付き合っていくべきか、そんな課題感をテーマに込めた。 また、審査員には、全世界からスタートアップや最新のビジネスに精通する4名をお迎えした。 Bjoern Eichstaedt氏 – Managing Partner & Co-Owner of Storymaker GmbH, Germany Brandon Hill – Founder & CEO of btrax, Inc. Casey Lau氏 – Co-host of RISE & Web Summit Tokyo 西村真理子氏 – HEART CATCH Inc. i-PRO Future Design Challenge開催にかけた想い 本コンペの構想から開催に至るまで、主催であるi-PROには一貫した大きな目的があった。 それは、企業ブランディングである。そしてその中にも、社内に向けた目的と、社外に向けた目的の双方が存在した。 i-PRO社内に対して:自社にデザインマインドセットを持っている自覚を高めること。 社内に対するi-PROの意図は2つあった。まず1つ目は、btraxというデザイン会社とタッグを組んでグローバルデザインコンペを開催することにより、自社の取り組みの一つとして、デザインにスポットライトを当てた事業を行うこと。 そしてもう1つは、自社がビジネスにおけるデザインの価値を理解し、重視しているということをi-PRO社内に浸透させることだった。 i-PRO社外に対して:i-PROというデザインドリブンな会社があると国内外に広めること。 i-PROは、世界的に著名なPanasonicから2019年に分社化した会社である。感知器などを使用して情報を計測・数値化することで、問題を解決したり、未然に防いだりするセンシングソリューション分野におけるパイオニアとして業界を牽引してきている。 そんなi-PROには、国内外で「Panasonicから生まれた会社」というよりも「i-PRO」という個の会社として認知度を上げたいという強い想いがあった。 そのため、i-PROの名前をコンペそのものの名前に掲げ、コンペそのものを認知拡大の機会と捉えた。 デザインコンペ i-PRO Future Design Challengeで得たもの 全世界から集まったハイレベルなアイディア 全世界を対象に作品を募り、世界中から応募を集めることができた。そして、その中から、Gold Award 1作品、Silver Award 2作品を選出した。 Gold Award PORTALa Myra Bening氏(インドネシア) スマートホームによって提供される快適さに潜む、我々の危険に対する直感を鈍らせ、周囲の状況や環境の異常に気づかなくさせる危険性に対するソリューション。 ラテン語で「門」を意味する「PORTA」は、スマ ートホームにおける“デジタルゲート”として機能。スマートホームの活動の異常を検知すると、自動的にWi-Fi接続を終了し、バックアップデータを使ってデバイスを動作させることができる。 YouTube動画はこちら。 Silver Award Glass – A Future Interface Arnav Nigam(インド) 世界が複雑化し、相互作用やその影響を管理することは困難になっているなか、制御メカニズムとして機能すると同時に、シームレスなデジタル体験を提供するもの。 YouTube動画はこちら。 QGene QGene Solutions (Vinay Sudhakaran氏、Mohd. Saim Nasim Lari氏、Arun Thangaraj氏) (インド) QGeneは、将来のデジタル上のなりすましを防ぐための、DNAをベースにしたデジタルタトゥー。皮膚に貼ることでDNAと主要な行動特性が抽出され、ゲノム配列にもとづいて、独自の「デジタル遺伝子」となるデジタルマトリックスを生成するものだ。 YouTube動画はこちら。 今回のテーマは「未来」に舞台が置かれていたこともあり、参加者からのアイディアも、すでにある課題を考える以上に想像力を働かせて練られたものが多く、大変興味深かった。 また、コンセプトアイディアのみならず、プロダクトデザインやプレゼンテーションまで高度に作りこまれた作品が多く見受けられた。 デザインコンペを開催するメリット 今回、btraxは運営としてこのコンペに参画した。そこで、実際に運営を行ったことで実感している、本コンペで得た学びをまとめてみたい。 1. 主催者のビジョンやテーマに共感する人を集めるブランディング的効果 先述の通り、今回のコンペには、i-PRO自社内外双方へ向けたブランディングに貢献できるものにする狙いがあった。そしてその結果、今回のテーマに共感した方より、多数の応募を獲得できた。 実際に受賞者からは、今回のテーマで提起した課題感に共感したことで、応募を決めたとの声も上がっている。 日本企業は、自社に誇れる技術や実績を持っていることが多い。i-PROも例に漏れず、センシングソリューションの高い技術力と、それらを落とし込んだ優れたデザインのプロダクトを有している。 […]

2022年 UXデザインに訪れる変化予測

世界的なパンデミックの流行が我々の生活を一変させてからすでに2年近く経っている。この2年間でインターネットと技術的なデバイスの使用量が増加し、仕事とプライベートでの交流方法を大きくシフトさせた。 それに伴い、オンライン・オフライン共にユーザーニーズも変化し、新しいユーザー体験の設計が求められている。 また、あらゆる業界でユーザー体験の重要性が急激に高まったこともあり、2022年はUXデザインにおける大きな変革の年となりそうだと感じる。 そんな変化を7つほど考えてみた。 “UXデザイン” の概念が再定義される 目的ごとのデザインプロセス デザインでストーリーを届ける時代 ユーザー体験がブランド形成の主軸 インクルーシブデザインの重要性 B2B向けのAR & VRニーズが高まる Web3っぽいデザインが広がり始める “UXデザイン” の概念が再定義される ユーザー体験 (UX) を設計 (Design) することを、UX Designと表現される。その主なゴールは、主にユーザーに商品やサービスを購入してもらい、使ってもらい、使い続けてもらうことを目的により良い体験を作り出すこと。 現代における、ユーザーへのタッチポイントの増加や、モノよりもコトへのフォーカスのシフトにより、この”体験”と”デザイン”の幅がここ数年で格段に広がってきている。 いわゆる見た目をよくすることから使いやすさの改善に始まり、使っていてなんとなく心地よい、楽しい、面白い、の演出まで、あまりにも多くのシーンで「UXデザイン」が施されるようになってきている。 UXデザインにおけるデザインの役割はあくまで、最適なユーザー体験を通じビジネスゴールを達成するための手段であり、デザインがある意味 “黒子” の役割である。 それを考えると、この「UXデザイン」の重要性は「特定の人々=デザイナーたち」だけが請け負うにはあまりにも広く深すぎる。かつての「マーケティング」という言葉のカバーする領域があまりにも大きくなりすぎた故に、その単語自体があまり意味をなさなくなった。 UXデザインも、そろそろその定義と役割分担を整理し直すべき時期にきているのかもしれない。 「UXデザイン」という言葉が含む要素を分解すると「リサーチ」「プロダクト」「データ分析」に分けられるだろう。そしてそれぞれのカテゴリーに含まれる要素は主に下記になる。 ざっと考えてみるだけでも、UXデザインの役割はこれだけある。明らかに、一人の「UXデザイナー」がこの全てを請け負うのは到底難しい。むしろプロジェクトメンバーのほぼ全員が「UXデザイナー」的考え方と役割を担う必要すら出てくる。 UXデザインチームは、それぞれのフォーカスポイントに合わせ、例えば「UXリサーチャー」「プロダクトUXデザイナー」「UXストラテジスト」など、UXチームにおけるさらなる役割分担が必要になってくると考えられる。 UXデザイナーになるために不可欠な10のスキル 目的ごとのデザインプロセス UXデザインの役割が再定義されるのに合わせ、これまで定義されていたデザインのプロセスにおいても見直しが必要になってくる可能性が高い。 そもそも、デザインの究極の役割とは何か?それは恐らく、「与えられた制限の中で求められる最大の結果を出すためのプロセスの作成」であろう。そして多くのデザイナーの仕事における最終的なゴールは、デザインを通じて世の中の様々な問題を解決することにある。 これは非常に喜ばしいことなのだが、それと同時にそこに求められるプロセスを今一度冷静に考えてみる必要性も出てきている。自ずと、プロダクトのサービス化を実現するプロセスや、ビジネスにおけるイノベーションを生み出すプロセスなど、それぞれの役割に合わせてデザインのプロセスが調整されている必要がある。 これが例えば、よりクリエイティブな発想が生み出される組織にしたい。会議をより効率的なものにしたい。スタッフの遅刻が減るカルチャーの会社にしたい。などのそれぞれの目的に合わせてデザインのプロセスを再定義する必要がある。 その点においては「時代の変化でこれから生まれる8のデザイナー職」で紹介されているプロセスデザイナーという役職が今後より注目を集めるかもしれない。 デザイン思考のプロセスだけでは革新的な製品が生まれない?説 デザインでストーリーを届ける時代 デザインの主な役割は、問題解決におけるプロセスである。が、実はこれも時代が進むにつれ、変化してきているかもしれない。というのも、多くの問題がすでに解決され、どんどん便利になっていく世の中では、解決するべき問題が少なくなってきている。 その一方で、ユーザーを正しい方向に導いたり、心に響く体験を提供したりなど、いわゆる「ストーリー」を通じて体験を提供する事で、ユーザーの満足度と企業の業績をアップさせる目的でのデザインの役割が注目される。 例えば、Airbnbのサービスはまさにストーリーテリングをユーザー体験の核としており、新しい機能やサービスを考えるときには必ずストーリーボードを使って説明するようにしているという。Airbnbのアプリを使ってみると綺麗にストーリーが届けられているのがわかる。 また、ディズニーランドはUXのお手本であり、顧客に対してサービスのストーリーをしっかりと体験として落とし込んでいるところが成功の鍵となっていると思われる。ここでのUXデザインの役割は問題解決よりも、ストーリーテリングの役割を提供している。 こう考えてみると、以前に「デザインとアートは全く違う」と説明したこともあったが、これも若干怪しくなる。デザインを通じてストーリーを体験としてユーザーに届ける。 そこの裏には多少なりともアートの領域も隠されているかもしれない。今後デザイナーにはより広い視点と、多種多様な文化的背景への理解が求められるかもしれない。 ブランドストーリーが日本企業にとって重要な理由 ユーザー体験がブランド形成の主軸 これまでは、企業のロゴやコーポレートI.D.、広告やマーケティングキャンペーンなどを通じて、消費者やユーザーに対してのブランド形成が一般的であった。 しかし、ふと考えてみると「うちのブランドはこれを強みとしており、貴方にこんな価値を届けます」とブランドプロミスで表現するだけでは、あまり意味がない。 企業が自社のブランディングを行う際にも、ユーザー体験の重要性が非常に高まっている。一方的に発信する「ブランドメッセージ」というものはすでに時代に適合しておらず、過去の異物になり始めている。 というのも、ネット経由の情報がリアルタイムで伝わる現代においては、ブランド発信の一方的なメッセージだけでは、ブランド構築は難しい。 その際には、ユーザー体験 (UX)  に加えて、顧客体験 (CX) を通じてブランドを体感してもらうのが効果的。 また、デジタルチャンネルが発達した、現代のブランド構築においては透明性の高さが重要になってくる。消費者に対して率直で正直であること。 過度な広告や自社に不利な事実をあえて隠さずに、素直に顧客と対話する姿勢が求められる。自分たちの歴史やビジョン、従業員に求めるバリューなどもクリアに伝えることで、顧客との信頼性が高くなる。 特にアメリカでは今後のメイン消費者となってくるZ世代は “修正画像” を見て育ってきているため、本物と偽物の見分けスキルが非常に高い。なので、非常に上手にブランドが本物かどうかを見極める。 企業やサービス提供側からしてみると、ユーザーに対する全ての接点=タッチポイントがそのブランドを形成する要素になり得る訳で、そこに一貫した定義と方向付けが不可欠になってくる。 その意味でも、UXデザインは、プロダクトやサービスのユーザーの体験だけではなく、ブランド構築においても重要な役割を果たし始める。 意外と知らないデザインとブランディングの関係性 インクルーシブデザインの重要性 UXデザインにおける領域の広がりはタッチポイントの多様化だけではない。使ってもらうユーザー自体の多様化もしっかりと理解、対応していく必要がある。 日本と比べても、実に多種多様な人種が集まっているアメリカでも、まだまだ多くの商品の体験が画一的なデモグラフィーを中心に考えられており、マイノリティーと言われるユーザーを考慮していないケースが少なくない。 その一方で、サンフランシスコを中心とした都心部では、ダイバーシティ (多様性) を受け入れ、それを考慮することで、より多くの人々のためのプロダクト作りが進んでいる。インクルーシブデザインは、多様なユーザーに利用してもらうための手法。 異なるタイプのユーザーとは、そのニーズの違いや価値観の違いを理解し、それに最適な体験をデザインすることが重要になってくる。具体的には、ユーザーリサーチやフォーカスグループ、エスノグラフィーリサーチなどの手法を通じ、ユーザー理解を深める。 その一方で、世の中の多種多様なユーザーの考え方を理解するのにもっとも重要なのは、そのチーム自体に多様性があること。 ここは実は日本企業がもっとも苦手とするところで、いわゆる「日本人的価値観」で考えれば一目瞭然な事柄でも、世界のユーザーからは全く理解されないケースも少なくはない。 より良い体験を作りたければ、多様性のあるチーム作りから。これは多くの企業における、今後の一つのテーマとなるかもしれない。 インクルーシブデザインとは?現代の多様性に寄り添う7つの実例 B2B向けのAR & VRニーズが高まる ARやVRは、そのテクノロジーが登場してからかなりの年数がったっているが、一般消費者にはまだまだ馴染みが低い。その利用用途は、せいぜいIKEAの家具アプリのような便利系アプリか、Oculusに代表されるゲームが中心。 その一方で、2022年にはB2B向けのAR/VRが拡大すると思われる。 というのも、世界的に広がっているリモートワークのトレンドは、ARやVRを使ったリモート研修やバーチャル会議などの大規模なビジネスチャンスを生み出し始めている。 今後パンデミックの大流行から徐々に回復するにつれ、より多くの企業が従業員にリモートワークのオプションを提供し続け、AR/VR技術の利用をさらに増幅させていくと考えられる。 ロイターの報道によると、会計・コンサルティング会社のPwCは、米国のクライアントサービスの全従業員4万人がバーチャルで働き、永久に好きな場所に住めるようにすることを確認し、永久リモートワークを取り入れていると報じている。 また、シリコンバレーを中心とした大手テクノロジー企業のそのほとんどが、ノーマルに戻った後も、リモートワークを何かしらの形で継続することを発表しており、新しい働き方に対するソリューションへのニーズが急速に高まってくるのは間違いない。 その点において、ここにきてARとVRのニーズが高まり、それに対するUXデザインのニーズも比例して急拡大していくのは間違いがないと考えられる。 不動産業界におけるAR/VR活用:メリットと6つのサービス事例 Web3っぽいデザインが広がり始める 2021年における最も大きなテクノロジー系ニュースの一つがFacebookの社名変更だろう。社名をMetaに変更することで、ソーシャルメディア企業からメタバース企業にになることを “正式” に宣言した。これは新しい時代の幕開けを予感させる。 そのメタバースを含む新しい概念がWeb3である。 現状、メタバースに加えブロックチェーン、NFT, DAO, DeFiなど、Web3を取り巻く技術的な概念が雪崩のように押し寄せてきており、それを理解するだけでもかなりの労力を要する。 それらを全て理解していなくても、今後、Web3の技術を活用した新しいタイプのサービスがどんどん生み出されることは間違いない。 ということは、そこに圧倒的な速度でUXデザインが求められるは確実。エンジニアだけではなく、デザイナーもしっかりと理解を進める必要があるだろう。 “Web3っぽい” デザインの特徴としては、紫外線で浮かび上がるイメージや、デジタルネットワークや、神経パルスを思わせるダイナミックなパターン、神秘的なシンボルや有機的ななラインを採用する。 Web3っぽいデザインの特徴: カラフルなグラデーション 3D要素 可視化されたリアルタイムデータ インタラクティブなコンテンツ 宇宙っぽさ フワッとしたローディング要素 有機的な曲線 などが挙げられる。例えばこのサイトなんかはかなりWeb3っぽいデザインを採用している。 おそらく実際の現場でWeb3に対応するUXデザインスキルが活用されるのはあと数年後になるかもしれないが、今から習得しておいて損はない。 というのも、Web3は本当に奥が深く、その概念、利点、弱点をちゃんと理解するだけでも数ヶ月はかかる。そして、恐ろしいことに毎日のように新しい情報が発信されている。 […]

UXデザイナーになるために不可欠な10のスキル

はじめまして。12月からbtraxで、インターンとして働かせていただいている谷口です。前職では、沖縄の会社で2年半ほどUIデザイナーとして働いていました。2021年4月からカナダ・バンクーバーの語学学校に通い、11月からUXデザイナーのインターンとしてbtraxに加わりました。 僕自身、UIデザイナーからUXデザイナーへのジョブチェンジを目指しています。しかし、UXデザイナーのスキルは幅広く、定義が難しいと感じています。そこで、今回はこの記事を通してUXデザイナーに不可欠な10のスキルをまとめたいと思います。 UXデザイナーとは?その役割と仕事内容, 求められるスキル UXデザインとは? そもそも、UXとは User Experience (ユーザー体験) の略で、ユーザーが製品やサービスを介して得られる体験そのものを示しています。 また、UXデザインとはユーザーが製品やサービスを通して得られる体験をデザインし、そのサービスの価値を見出してもらえるようにすることです。 UXデザイナーは、観察やインタビュー手法を用いてユーザー自身も気づけていないペインを解決し、良い体験を設計することが大切です。UXを向上させることで、ユーザーに製品やサービスを長く使って貰えたり、他サービスとの差別化を図ることができます。 UXデザインプロセスにおける基本的な6ステップ UXデザイナーに求められる10のスキル 1. UXリサーチ サービスが継続的にグロースしていくには、ユーザーが抱えるペインを深く理解する必要があります。 UXデザイナーは、ユーザーのインサイトを軸に、サービスの使用前と使用中、使用後の体験を設計します。また、マーケティングやカスタマーサポート部門と協業しながらユーザーにとって最適な体験を設計していきます。 ユーザーのインサイトを探るのに必要となるのが、UXリサーチです。UXリサーチは、開発プロセスのどの段階においてユーザーや顧客から収集したインサイトをサービスの意思決定に役立てるために行います。 UXリサーチスキルを身につけていくには、インタビューやユーザビリティーテストなどのリサーチ手法をブートキャンプや書籍など、実践を交えて学ぶ必要があります。 また、その学んだスキルをすぐに実務で活用できれば良いのですが、未経験者の場合、なかなかユーザーインタビューをする機会を作ることは難しいかもしれません。 そこでオススメしたい取り組みは、日々の生活で少しだけリサーチ手法を取り入れることです。その際に重要なポイントは、リサーチ手法を活用して「ユーザー自身も気づいていない潜在的なニーズ」を把握することです。 例えば、新しいカメラを買ったと話す友人に、購入の決め手をそれとなく聞いてみた結果、彼は、カメラ本体の機能よりもサイズを重視していることがわかったとします。 そこで、その点をさらに深堀りしてみます。その結果、手軽に持ち運べてスマホよりも高画質の写真が撮れることが重要だというインサイトを導くことができた、などです。 日々の生活で少しだけリサーチ手法を取り入れることで、リサーチスキルは向上できます。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ 2. コラボレーション UXデザイナーは、日頃から様々なメンバーと協力する必要があります。 例えば、経営層からヒアリングしてサービスの目的やその体験価値を定義したり、プロトタイプ作成後、エンジニアとさらに具体的なサービスに落とし込み、マーケターと共に分析やプロモーションの戦略などを考えたりします。 他のスキルを持ったメンバーやチームとのコラボレーションは、自分のスキルを補完でき、異なる視点でサービスや製品について議論できます。その結果、見落としていた気づきや最適なアイディアが思いがけず生まれることもあります。 ここで大切なことは、マーケティングやエンジニアリングなど、他分野に関する基礎知識を身につけておくことです。基礎知識を身につけておくことで、議論を深く行えたり、意思決定のスピードが上がります。 デザイナーがファシリテーションをしてみた 3. ワイヤーフレーム & プロトタイピング ワイヤーフレームとは、画面レイアウトのことを指します。 ワイヤーフレームのメリットは、多くの時間を割くことなく、ユーザーのニーズに基づいてページ要素の優先順位を決められることです。また、ワイヤーフレームを敲き台に議論を重ねることで、見落としていたニーズを確認することができます。 プロトタイプは、ユーザビリティテストにおいてユーザーのペインポイントを特定し、解決するために不可欠なものです。 UXデザイナーはプロトタイプをテストすることで、潜在的なニーズやフィードバックが得られ、デザインを最適化することができます。 ワイヤーフレームやプロトタイピングのスキルを身につけるためには、実際に手を動かして試行錯誤することが大切です。紙とペンに始まり、ソフトであれば、Adobe XDやFigmaを使うことによって、すぐに画面のレイアウトを組むことができます。 デザイン思考を学ぶ Part 5 – Prototype 今さら人に聞けないプロトタイプの作り方 4. ライティング 優れたライティングは、ユーザーに正しい情報を的確に伝えることができ、より良いUXを提供します。ユーザーが製品やサービス内で、迷わずタスクを実行してもらえるよう、言葉をデザインすることがUXデザイナーの仕事では重要です。 言葉は気軽に発することもできると同時に、誤解も簡単に生んでしまいます。そのため、UXデザイナーは製品やサービスとユーザーのインタラクションを、入念に言葉を通じて設計することが重要です。 例えば、アプリやWebサイト内のボタンのラベリングは、実は、UXデザイナーが考えることが多いのです。 なぜなら、UXデザイナーはユーザーとのあらゆるタッチポイントを考慮する必要があり、ボタンのラベリングも含めてUI/UXデザインと言えるからです。 デザイン視点で心を掴む UXライティングの基本5項目 5. ビジュアルコミュニケーション ビジュアルコミュニケーションは、UXデザイナーにとって必要なスキルの一つです。 文字だけではなく、ビジュアルを活用してコミュニケーションを図ることで、適切なタイミングでユーザーの注意を引いたり、情報の理解を高めたりすることができるので、ユーザビリティに大きく寄与します。 また、ビジュアルコミュニケーションには、レイアウト、カラー、タイポグラフィ、アイコン、などデザイン理論の理解が必要です。 ビジュアルコミュニケーションを学ぶには、街中の標識や広告、インフォグラフィックなどを観察することがオススメです。 「なぜこの色が使われているのか?」「なぜこのようなレイアウトやアイコンが使われているのか?」などを考えることで、次第に経験値が貯まり、実際のビジュアル作成に活かすことができます。 感覚に訴えるコミュニケーション – ビジュアルファシリテーションのすすめ – 6. 共感力 UXデザイナーは、ユーザーに共感することで、自分とは異なる視点やニーズを深く理解することができます。ユーザーが何を見て、何を感じ、何を体験しているのかを理解しなければ、良いデザインはできません。 共感は対象を深く理解して、最適な方法を提示するために必要な要素です。しかし、実際にユーザーに共感することは簡単ではありません。 ユーザーに共感するためには、同じことを体験をしたり、質問を問いかけて深堀りしていくことで、事象の解像度が上がり深く共感することができます。 デザイン思考の第一歩:共感力を高める3つの方法 7. インタラクションデザイン インタラクションデザインとは、ユーザーと製品の間の相互作用をデザインすることです。アプリやWebサイトなどのソフトウェア製品を指すことが多いです。 例えば、ボタンをクリックして、ダウンロードや画面遷移などもインタラクションデザインに含まれます。 インタラクションデザインの目的は、ユーザーが可能な限り最善の方法で目的を達成できるような製品を作ることです。 良いインタラクションは、非常に気づきにくい性質を持ち合わせています。違和感なくスムーズに操作を行えるため、認識しづらいのです。反対に、悪いインタラクションというのは、ユーザーも違和感を抱きやすいものです。 UXデザイナーは、良いインタラクションに気づく力を養うことが大切です。ビジュアルコミュニケーションしかり、サービスの登録や申込みがスムーズに行えたときに「なぜ違和感なくスムーズにできたのか?」などを深堀りしていくことが日頃から行えるトレーニングになります。 UXデザイン向上につながるUI評価の10項目 8. コーディング 主にWebサイトやアプリなどは、ビジュアル面はHTMLやCSS、機能面はSwiftやJavaScripなどのコードによって実装されています。 UXデザイナーが機能の仕組みを理解することによって、プログラマーやエンジニアと円滑にコミュニケーションを取ることができ、早く正しく意思決定を行うことができます。 【これからのスキル】デザイナーとエンジニアの境界線がどんどん無くなる 9. 定量分析 UXデザイナーは、インタビューなど定性的なリサーチを行う機会が多くあります。しかし、それだけでなく、数字をベースに分析する定量的な視点も必要です。 「新機能はユーザーに継続的に使用されているか?」「この施策は上手くいっているのか?」といったことも、数字は客観的な事実として結果を示してくれます。 これが、正しい現状を把握して、明確な次の打ち手を考えることにつながります。 また、改善を行う際にも、裏付けとなる数字が提示されることで、他のチームやメンバーにも納得感が生まれ、円滑に改善を進めることができるというメリットもあります。 10. コミュニケーションスキル コミュニケーションは、UXデザイナーにとって重要なスキルです。 クライアントやプロジェクト関係者へのプレゼンテーション、ユーザーへのインタビュー、チームメイトとの共同作業など、UXデザイナーはアイデアを的確に伝えフィードバックを貰うスキルが必要です。 こいつできるな!と思わせるUXデザイナー 7つのソフトスキル おわりに UXデザイナーになるために不可欠なスキルについてお分かりいただけましたでしょうか。 UXデザイナーに求められるスキルは多岐に渡ります。この記事を通して、UXデザイナーが求められるスキルを再確認できたり、UXデザイナーを目指すきっかけに少しでも貢献できていたりすれば嬉しいです。 btraxでは、UXデザインを軸とした様々なデザインサービスを提供しています。ご興味のある方はこちらからお問い合わせください。

デザイナーがコロナ禍にサンフランシスコに行って感じたこと

筆者は普段、btraxの日本オフィスで働くUI/UXデザイナーだ。本社がサンフランシスコにあるにもかかわらず、自分はアメリカに足を踏み入れたことがなかったのだが、今回コロナ禍でのサンフランシスコへの出張をすることになった。 初渡米ということもあり、サンフランシスコの街の中にあるサービスの便利さに驚かされることが多かった。また、コロナに対する対応も素晴らしく、あまり不安を感じずに生活することができた。 しかし、中には日本と比べると劣っている部分もあった。そこを補おうとしているためにサンフランシスコ発のサービスはUXのクオリティが高いのではないかと思わせるポイントもいくつかあった。 この記事ではそんな筆者がアメリカで3ヶ月ほど生活してみて気づいたことや、学びを書いていく。 安心感と気軽さがあるワクチン接種 筆者はワクチンを打たずにPCR検査のみでアメリカに入国したため、ワクチンはアメリカで接種しようと考えていたが、ここで驚きがあった。 まず、筆者のような外国人であってもワクチン接種のための病院の予約は必要ない。そもそもTargetというアメリカのスーパーの中に併設されているCVS(薬局)のレジの横がワクチンの接種会場であり、とてもカジュアルな感じだった。   そこに出向き、ワクチン接種をしたい旨を伝えるだけで、すぐにワクチンを用意してくれる。また、日本外でのワクチン接種ということで不安もあったが、打つ前に確認するべき事項が書かれた書類が様々な言語に対応したものが用意されており、とてもスピーディーに安心して受けることができた。 こういった、アメリカ人だけにではなく、アメリカにいる人全てに対してコロナを収束させるための施策を平等に行うことは、アメリカ国民にとっても良いことだと思った。また、そのためにワクチン接種を気軽で誰にでも安心してできるような環境づくりの方法は、さまざまな人種が住まうアメリカならではの合理的な施策だと感じた。 PCR検査の気軽さ PCR検査もとてもスムーズであった。筆者が利用したのはcarbon healthという企業のものだ。空き地のような場所にテントを張っただけの最低限の施設ではあるが、検査会場がいくつかあり、最寄りの検査会場を探すのもホームページからすぐなので会場選びには困らなかったし、すぐに行くことができた。 検査自体も無料で、予約も不必要。必要な情報も住所と名前、生年月日、結果を受け取るためのメールアドレスだけ。特別な準備も必要なかった。 日本で検査をしようとした際にはまず検査ができる病院の情報が1つにまとまっていないので、検査を実施している病院探しから始まり、予約が必須で予約時間に行ってもそこそこ時間が取られるということがあったがそんなストレスがここでは感じなかった。 そのため、検査へ行くために予定を立てる必要が無くフラッと行って検査ができるのはとてもユーザーにとってストレスフリーと感じ検査へ行くことの積極性に大きく貢献していると思った。 ヘルスケアのDX – Carbon Healthを試してみた【UX分析】 移動手段の選択肢が多い サンフランシスコは坂が多く徒歩での移動は大変不便である。かといって電車やバスは遅れることが当たり前なので基本移動はUberか自転車、電動スクーターなどのマイクロモビリティに限られていた(自家用車は持っていなかった)。 電動スクーターは日本では道路交通法などが厳しく、乗ることを躊躇っていたがサンフランシスコではそこのルールが日本に比べて規制が少ないこともあり、大変重宝した。 そもそもアメリカの道には、自転車と電動スクーター用の道路が、自動車道路とは別にほぼ必ずある。そのため、歩行者や車を気にすることなくスムーズかつ安全に移動ができた。 また、筆者はUberの電動スクーターのサービスを利用していた。返却場所は自由なため、返却場所を探す手間がなく、借りるときのハードルが低いと感じた。また、借りる際は近くに置かれているスクーターがマップ上に表示されるため、一番近くのものを選ぶだけだった。 ちなみに、これらシェアサイクルサービスの始まりとも言える「Bird」について調べると、サービスをサンフランシスコ市の許可を待たずして展開したらしい。サンフランシスコ市はそのサービスの便利さから、法律に影響があることに関しても柔軟になおかつ迅速に対応していったとのこと。 シェアサイクル事業問題から見るサンフランシスコ市の意思決定の速さ 市の許可を待たずしてサービスをローンチさせることは、日本で生まれ育った筆者からすれば、考えられないことであると思ったが、生活をする上で便利であるため、結果的に市も協力したというエピソードがとてもスタートアップの聖地らしいと思った。 逆にわかった日本のすごいところ ここまでで、サンフランシスコの便利だった点を書いてきたが、逆に、生活に慣れていくにつれ、日本の方が優れている点も見えてきた。 宅配がちゃんと届く 筆者は出張中にUSのメルカリを利用して商品を出品していた。実際に商品が売れたため、バーコードを印刷して商品に貼り付けUPS(配達業者)経由で発送した。 すると後日、商品が届かないと購入者からクレームの連絡が来た。アプリを確認すると、発送完了のお知らせは受け取っているが、肝心の商品がUPSの倉庫から動いていないと出るのだ。 そこでUPSに問い合わせたが、そもそも商品が倉庫にないとのこと。後にネットで調べるとアメリカでは宅配業者や倉庫の労働者がお金になる商品を盗んだりすることがあるらしく、今回の場合もこの可能性が高いということで話は終わった。 この件で思ったのが日本での商品が予定日にしっかり届く(しかも配達日の指定もできる)というのは、とてもすごいことである、ということだ。 接客サービスの質の平均が高い 日本における飲食店などのサービスは、クオリティが高く、なおかつ店員によってばらつきがあることも比較的少なく、一定の高水準であると感じた。一方、サンフランシスコでは、どんな人に接客してもらうかでサービスの品質が大きく変わると思った。 特にファーストフード店では顕著で、日本の場合はどんな人でも丁寧に接客してくれる。個人的には日本のマックの接客は丁寧すぎると感じるほどに。 しかし、サンフランシスコでは店員がぶっきらぼうなことがある。筆者がマクドナルドに行った際は、どうやら店員の機嫌が悪かったらしく、あからさまにめんどくさそうに対応されたことが記憶に強く残っている。 また、Uber eatsを使った際にもなかなか商品を届けてくれない人もいた。 そういった経験から、サンフランシスコではどんな人に配達や接客がされるのかが結構気になったゆえにUber eatsなどの配達員へのレビューはサンフランシスコでは比較的重要な要素だということに気づいた。 アメリカ生活から学んだこと 特に筆者はサンフランシスコでの生活で、現地で暮らしている人がサービスに合わせるというよりは、サービスが暮らしている人のライフスタイルに合わせていると感じる場面が多いと感じた。 これは一見当たり前のことをいっているようだが日本では逆に個人の都合を後回しに頑張ってサービスを使いこなそうとしている、もしくはサービスのやり方に従おうとしていることが多いのではないだろうか。 ユーザー中心設計 コロナのワクチン接種では、アメリカの人種が多いという特性に合わせ、ワクチン接種時に不安を与えないような施策があるだけではなく、摂取会場にいったら必要なものは身分証明書くらいですぐにワクチンを打ってくれる。 日本でのワクチン摂取までのフローを見るとまず摂取券が必要だったり、会場も住んでる地域によって異なる。 これを見るとどちらかというとワクチンを提供する側の都合をユーザーの都合より優先しているように見える(日本はワクチンをアメリカから買っているため仕方ないことなのかもしれないが)。 お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い 人に頼らずサービスで体験の質をあげる 他にも改めて日本人は真面目であるとサンフランシスコで宅配や接客サービスを受けて感じた。反対に日本に比べて「不真面目」な人が多いサンフランシスコで良いUXを提供しようとすると、誰にでも完全に同じ機能を提供できるアプリなどの機械に頼るべきであるため、UXのクオリティを上げることは日本以上に重要視しているのではないだろうかとも考えた。 UXデザインとCXデザインの違いとそれぞれの役割 バイアスを捨てることがデザイナーには重要と考える これまで自分が日本国内に留まっていた時は「ユーザーは皆真面目である」という暗黙の了解があった上でサービスのデザインを行っていたため、デザイナーの理想をユーザーに押し付けていた面があったのではないかとこの出張を通じ強く反省と共に感じた。 また、優れたUXデザインや人間中心設計をすることとはユーザーの歩く道をデザイナーが決めるのでなく、ユーザーが歩いた道をデザイナーが後から整えるくらいのほうがいいのかもしれないとも思った。

UXデザインにおける「けもの道」現象を考える

先日サンフランシスコ市内の公園を歩いていたら、ふとあることに気づいた。本来設計されている道とは異なるルートが作られているのだ。そう、アスファルトで舗装されている通行用ルートではなく、芝生になっている箇所を複数の人が通ったことによる近道、いわゆる「けもの道」が生成されている。 これはデザイナー的観点から見るとかなり興味深い。というのも、ユーザーに対して元々設計されていた「導線」とは異なるルートをユーザーが選択した結果、いつの間にかそのルートの方を他のユーザーも利用するようになった。これは明らかにデザインミスでは無いのか?と。 けもの道 (Desire Paths) について 英語ではこの現象をDesire Pathsと呼び、Wikipediaには下記のような説明がされている。 公認されていない自転車道や歩道のことで、定期的に自転車や人間が通ることによって時間をかけて作られた道のことを指す。多くの場合、道端の草地の中に現れたもので、公式ルートの近道になる。 多くの人々や自転車が公式ルートの近道をするために、それぞれ独自に同じルートを同じような方法で通行することによって現れる。一旦その痕跡が見られるとさらに多くの人がそこを通るようになり、道が生成されていく。 駅前のTSUTAYA現象 このような「けもの道」が生成されるのは芝生だけではない。大都会の東京でも多くの人が近道を探し、本来の設計とは異なる導線を作り出している。 以前に我々btraxの東京オフィスが六本木にあった頃、地下鉄の駅を出て通常ルートを通ると階段と坂道があり、かなり面倒だった。そこでスタッフの一人が「駅前のTSUTAYAの店内を抜ければかなりの近道になりますよ」と革新的なアイディアを発見。 それ以来スタッフ全員がTSUTAYA経由で通勤をしていた。奇しくもTSUTAYAの店舗がけもの道の役割を果たした事例であるが、都会の多くの店舗がそれを見越してロケーションを決めている可能性もあるだろう。 デザイン的観点からDesire Path現象について考える これをデザイン的観点から考えてみよう。この現象は、デザインの意図とユーザー体験が相反する場合に生まれる状態。デザイナーがユーザーがこう使うだろうという想定と、実際のユーザーが望む利用方法がズレている場合、最終的にはユーザーの解釈が正となる。 言い換えると、けもの道はデザイナーの設計とユーザーニーズが相反した際に生成され、最終的にはプロダクトやサービス、UXデザインの正しい利用方法はユーザーが決めることになる状態に似ている。 UXデザインプロセスにおける基本的な6ステップ この現象をUXデザインに当てはめてみる このように設計者の意図と、ユーザーの行動が異なる状況はUXデザインの現場でもかなり頻繁におこている。例えば、Webページのナビゲーションではなく、毎回サイトマップページに行き、そのリストからページにたどり着くなど、デザイナーが本来想定していた導線をユーザーが理解してくれない事が往々にして発生する。 言い換えると、ユーザーはデザイナーが用意したまどろっこしいルートではなく、手っ取り早く僕的にたどり着ける、より直線的な近道が欲しいのだ。 この状況は、UIにおけるボタンの位置や、ページのレイアウト、ボタンの名称、コンテンツ文章、デザインヒエラルキーなどが不適切の場合に起こりやすい。それを避けるためには、事前にどこにけもの道ができそうかを理解しておくか、リリース後のユーザーの動きを観察し、改善していく必要がある。 けもの道を見つけるのがユーザーリサーチの役割 これを避けるために行うのがユーザーリサーチである。ユーザーリサーチでは、ユーザーが何を求めているかと同時に、どのような利用方法が最も適切であるかを探る。 言い換えると、ユーザビリティーテストやヒートマップなどを活用したユーザーリサーチは、本来のデザインの意図とは異なる「けもの道」がどこに隠されているかを特定するためにも、重要なプロセスになってくる。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ けもの道理論を活用したディズニーランド 世界初のUXデザイナーとも言われているウォルト・ディズニーは、ディズニーランドを設計する際にこの理論を採用している。彼はチームのデザイナーやエンジニアに対し、ディズニーランド来客者の「動き」に注目するように指示をした。 そして、オープン直後からユーザーがどのようなルートを通ってアトラクションにたどり着くかを観察。多くの人々は舗装された道ではなく、より短距離で移動可能な芝生を通っていった。それを目の当たりにしたエンジニアは芝生の周りに柵を設置することを提案したが、彼は逆に芝生内に道を作るよう伝えたという。 ディズニーランドから学ぶ究極のUXデザインとは 検索エンジンはネットユーザーにとっての「けもの道」 現在ではあまりにもナチュラルすぎて気づかなないかもしれないが、パソコンのブラウザーを開いて最初にYahooやGoogleが表示されているのも、ユーザーが求めるけもの道を提供している。 いきなりアドレスバーにURLを入れるよりも、検索ワードを入れた方がよっぽど使いやすい。しかし、ネットが普及し始めた当時にサイトにアクセスするには、URLを入力する必要があった。 従って、当時のブラウザーはアドレスバーが本来想定されていたユーザー導線で、それに対してより楽な近道を提供した検索エンジンがけもの道となり、現在の状態に辿り着いている。 ユーザーのけもの道によって淘汰されたiTunesのCover Flow View iPodとiTunesがリリースしてからしばらくはレコード店でジャッケットを見るかのように、曲のカバーアートをフリップできる”Cover Flow”という機能が存在していた。その見た目の美しさとインパクトでスティーブ・ジョブスのプレゼンではオーディエンスから歓喜の声が上がった。 しかし、実際に使い始めるといちいち画面上で一曲ずつフリップしていくよりも、手っ取り早くリストから選んだ方が早いし楽だった事で多くのユーザーは見た目的にはインパクトの少ないリストビューから曲を選んでプレイし始めた。これも、デザイナーのこだわりが速攻ユーザーのけもの道によって使われなくなった例だろう。 けもの道で成長したTwitter この「けもの道現象」を上手に利用し、成長させたサービスがある。Twitterだ。 現在はTwitterの正式機能になっている@や#, RT などはサービスリリース当時は実装されていなかった。そこでユーザーは他のユーザーに対して返信する際に”at”と記入し始めた。その後下記のツイートで初めて “@” を使うユーザーが出現し、その後、正式な機能になった。 @ buzz – you broke your thumb and youre still twittering? that’s some serious devotion — rsa (@rsa) November 3, 2006 同じく、#もユーザーが勝手に利用し始め、最初は “Channel” や “Pound”などと呼ばれていたが、最終的にハッシュタグの名でサービスに実装。下記が初めて#を使ったツイート。 how do you feel about using # (pound) for groups. As in #barcamp [msg]? — Chris Messina ᵍᵐ (📜,🕯️) (@chrismessina) August 23, 2007 RTも正式な機能ではなかったが、とあるユーザーがReTweetと記入し、その概念が広がることとなり、正式な機能になった。ちなみにその方のプロフィールには「偶然RTを発明した」と記載されている。 ReTweet: jmalthus @spin Yes! Web2.0 is about social media, and guess what people […]

デザイナーがファシリテーションをしてみた

デザイン思考ワークショップのファシリテーションをするというとても学びの多い機会があったため、気づいたことなど、体験についてをデザイナー視点でまとめてみた。 デザイン思考とは? デザイン思考の定義は、人によって様々な言葉で説明されると思うが、私はデザイン思考を、「デザインのプロセスを通じて課題解決をし、暮らしをより良くするための手段」と解釈している。より平たく表現すると、ユーザー本人も気づいていないような潜在的なニーズを探し出し、アイデアをテストして、解決することである。 このデザイン思考という言葉は、カリフォルニアに本社を構えるデザインスタジオIDEO社の創業者ティム・ブラウン氏によるもの。彼が2005年にハーバードビジネスレビュー誌において、「デザイナーの手法と感性はビジネスに応用可能である」と提唱したのがきっかけで有名になった。 デザイン思考の本質とは?—新米ファシリテーターの経験を通して気づいたこと この考えは日本にも徐々に浸透してきており、デザインの発想や手法をビジネスの場で活用し、その価値を向上させることを目指す企業が増えてきた。そのため、組織内にデザインのマインドセットをインストールするために、ワークショップや研修形式でデザイン思考を習得するケースが増えた。 そして普段はデザイン業務を行っている筆者が、今回、とあるデザイン思考のワークショップにて、ファシリテーターとして参加した。いわゆるグラフィックデザインを行っており、色や素材を使い、ビジュアル(見た目で伝えられるもの)を作っているが、その領域を超えたファシリテーターとしての経験から見えてきたことをまとめていきたい。 似ている部分と異なる部分 デザイナーとファシリテーター、全く違うようで共通点もあるのが面白い。 ユーザーの気持ちを考えることはやはり非常に大切。 これはちても広い話だが、かなり大事かつデザイン業務と似ていると感じた部分だ。普段ポスターひとつ制作する際でも、どこに一番最初に視線が行くか、伝えたい情報がちゃんと正しく入ってくるようになっているかなど、考えながら制作をする。 それと同じようにデザイン思考では、あらゆる「ユーザーってこういうことを考えているのか?」を想定、把握する必要がある。つまり、ユーザーの気持ちになってみることが重要である。 そのために、ユーザーインタビューを行い、ユーザーの言葉からインサイトを抽出する。この人は実はこんな風に思っていたからこう言ったのか?というユーザーの気持ちを分析していくのだ。 ファシリテーターとして、ワークショップに参加している方が、よりターゲットユーザーの気持ちに寄り添えるようにサポートするということがとても重要なように感じた。 一方で、普段のデザイン制作と異なる点として、目的や最終のゴール地点が明確かどうかの違いがある。 一般的なデザイン制作は目的が決まっているため、プロセスがわかりやすいものが多い。例えば、ポスターを作る際は、いつに何をするか、何が行われるかを伝えるためのもの、と決まっている。そのため制作のプロセスはシンプルだ。 しかしデザイン思考では、ユーザー本人も気づいていないような部分を探っていかなければならない。本当に必要とされているニーズに辿り着くまでに紆余曲折するのが大体のパターンである。 プロのデザイナーとして活躍するために必要な8つの非デザインスキル とりあえずひたすら手と口を動かしてみる 非常に基礎的なことであるが、デザイン思考のワークショップを行う際は、チームでひたすら手と口を動かすことが非常に大事であると実感した。とりあえず書き出してみたり、雑でも良いからアイディアをスケッチしてみたり、変かなと思うこともとりあえず言ってみたり。 これは簡単そうに見えて本当に難しい。特に私の場合なのか、デザイナーあるあるなのか、(おそらくデザイナーのみなさんは共感すると思うが)黙々と考えてしまいがちである。そして黙々と作業しがちなのである。 誰かに共有する際に、ある程度のクオリティにまで持っていったものしか共有したがらない傾向があるのかもしれない。 しかし、デザイン思考のワークショップでは、何より試行錯誤することが重要。どんな段階であれ、一旦チームで考えたことややってみたことを共有することが大事になってくる。 個人作業が多めなデザイン業務とは対照に、ワークショップはチームで進めるものであるため、まずは口に出して思ったことを言わないことには何も生まれない。 ファシリテーターはメンバーのちょっとして考えを引き出すサポーターでもあるため、普段黙々を作業してしまいがちな筆者も、これってこういうこと?というチームが考えを共有しやすい会話を心がけた。 自分の中途半端なアイデアもチームの人の考えによって思いもよらぬアイデアに化けたりするのが、ワークショップの面白いところでもある。 日本人は議論が苦手?デザイン思考を成功に導くファシリテーションとは ワークショップの新しい進め方 コロナ禍前までは、弊社でデザイン思考のワークショップを行う際はオフラインで行っていたが、今回は、オンラインと組み合わせてワークショップを実施した。オフラインとオンラインのハイブリッドで行うのは我々にとっても新しい挑戦で、普段の進め方と変わってきた。 ワークショップ中のアイディア出しやメモとして使用するツールは、オンラインが良いかオフラインが良いか?はたまたハイブリット型が良いか?という議題があるが、今回オフラインのワークショップ時でもオンラインツールを併用した。 今回ワークショップを行ったうちの全体の4割ほどはオンラインで行い、残りの6割はオフラインで行った。 もちろんオンラインでワークショップを行っている期間は、使用するツールも全てオンラインで、オフラインの期間でも、使用するツールの半分以上はオンラインのものだった。 オフライン時でも、とりあえずたくさん思いついたことを書き出す際や、ユーザーインタビューから得た事実を書き出す際にFigmaというオンラインツールを使用した形である。 オンラインツールとしてFigjam、オフラインツールとしてポストイットを使用 Figjamとは、オンライン上で使用できるホワイトボードで、主にチームでブレインストーミングをしたりマインドマップを作成する用途で使われるツールである。画面上に手書きができたり、付箋を貼ってテキスト入力をすることができる。 どう使い分けるべきかに対しては、結論を言うと、チームが円滑に進めやすい方であればどっちを使っても良いし、どう使い分けても良いと感じた。 Figmaもポストイットも、あくまで手段であり、ワークショップをスムーズに進めるためのサポートツールであることを忘れてはならない。 デザイン思考のファシリテーターは、なぜポストイットを使わせるのか そこで、ワークショップを行う中で個人的に感じた、おすすめの使い分けのポイントを紹介する。 とりあえずブレインストーミングをして少しでも多くのアイディアを出したいとき、それを書き出したいときはFigjam上で。大事なことやハイライトになるような内容は、ポストイットで。この使い分けである。 書き出して、グループワークを行う部屋に貼っておく。そうすることで常に論点がズレにくくなるとともに、チームのみんなが共通の理解をしやすくなる。 どうしても話が白熱して色んなところに話題が散ることがあるが、収束しやすくするためにも、常に視界に入るところに要点だけ書き出しておくのは効果がある。 オンラインツールのメリット 後から融通が効く その時に応じてパネルやブロックの並び替えや整理、複製がしやすい。 綺麗に記録できる 筆者は、自分の手書きを見返すのが嫌になってモチベーションが下がることがたまにあるが、オンラインツールではそのようなことはない。手書きで殴り書きしたものを後から見返し、これは何のことだっけ?となることも防ぐことができる。 お互いへリアクションしやすい Figjamにはスタンプ機能やいいね機能があり、バリエーション豊富なリアクションをリアルタイムで示せるので、オンラインでもインタラクションのあるワークショップになる。 ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ オフラインの良いところ 全体を俯瞰して見られるので、全体像を把握しやすい 誰が何を書いているのか、同じ空間にいることで把握がしやすい。また、PC上で行うのと違い、画面の大きさに制約がないためパッと全部のポストイットを見ることができる。 全体が見えるため、離れたそれぞれのトピックを併せて考えて、新しい発想が生まれることも。 オンラインでも離れたそれぞれのトピックがつながることもあるが、オフラインで実際にその場で見えることで、より簡単に全体を行き来することができアイデアに繋がりやすいように感じる。 デザイン思考の実践に最適な4つのオフィスアイテム オンライン、オフラインどちらにも良さがあるので、自分にとって、チームにとって、よりクリエイティブな状態になりやすい方を使おう。 おわりに 今回の記事ではデザイナーがファシリテーションをしてみて感じたデザイナーとファシリテーターの役割として似ているところや違い、そしてワークショップをする上での具体的な進め方に言及した。 また、Figmaなどのオンラインツールはユーザーフレンドリーであり、今後のワークショップはオフライン実施であっても、ポストイットや紙を用いる代わりにオンラインツールを用いる場合が増えるかもしれない。 オンラインツールを使うこと自体が目的になってしまわないよう、オンラインでもオフラインでも、参加者同士、参加者とファシリテーターが心地よく意思疎通を図れる方法を模索することが大切だ。 btrax では、最適なユーザー体験の創出に軸足をおいたサービス開発をはじめ、目的に応じて様々なサポートをさせていただいている。ご興味のある方はぜひこちらからお問い合わせいただきたい。

デザイナー消滅の危機?専門職の概念がなくなる時代

ビジネスにおけるデザインの重要性が高まるにつれ、自ずとデザイナーの重要性も高まっている。 同時にデザイナーの守備範囲も広がり、見た目を装飾するだけではなく、プロダクトの体験設計、組織仕組みづくりや経営判断に関わる部分まで、デザイナーの役割が及び始めている。 業績にインパクトを与える企業のデザイン性 それに伴い、デザイン思考などのメソッドを利用して非デザイナーでもデザイナー的なマインドセットを身につけることに注目が集まっている。 というのも、世界的に見ても企業の業績とデザインの関連性がデータとして示されている。例えば、マッキンゼーの調査でも、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているという結果が発表されている。 それもあり、経営者も投資家も、デザインオリエンテッドな企業に変換していくことが急務なのである デザインオリエンテッドな会社とは、会社の経営からプロダクトの開発に至るまで、”デザイナー”的感覚を中心に行なうという考え方。Appleのスティーブ・ジョブスは厳密にはデザイナーではないが、デザイナー的感覚を武器に、見た目や体験に至るまで細部にこだわり、Appleを成功に導いた。 今さら聞けないデザインがビジネスにこれほど重要な理由 海外スタートアップではデザイナー出身の経営者も多い その流れもあり、ジョブスに憧れ、優れたプロダクトを武器に会社を成長させている、ジョブスチルドレンとも呼ばれるサンフランシスコ界隈のスタートアップの経営者の多くがデザイナー出身だったり、何かしらのデザインバックグラウンドを持ち合わせている。 デジタルプロダクトを通じたユーザー体験が重要になってきている現代においては、商品の差別化要因はどんどん少なくなり、最後に残されたのがデザイン性とブランド力になってきているのが理由だろう。 この流れはアメリカだけではなく、取締役の多くがデザイン経験を持つサムスンや、海外から多くのデザイナーを採用しているアリババなど、韓国や中国の会社の多くもその流れを踏襲してる。 なぜ日本にはデザイナー出身の経営者が少ないのか そもそもデザインって? ではなぜそんなに”デザイン”や”デザイナー”という言葉をもてはやすのか?そもそも”デザイン”にはどのような意味が含まれているのであろうか? 恐らくその定義は時代と共に大きく変化し、冒頭の図のように、最近では見た目を美しくする役割のDesignからデザイン思考を活用してビジネスやプロダクト領域までを大きくカバーする広義のDESIGNにその定義が広がっている。 それを踏まえてデザインとは?を一言で表現すると… DESIGNとは問題解決を行なうためのメソッドであり、ユーザー視点から「どう見えるか」よりも「どう機能するか」を主軸にしたプロセス。 そう。デザインは結果的アウトプットよりもそのプロセスに比重がおかれるべきである。 もはやデザイナーとは職種ではなくマインドセットである 増え続ける多様なデザイナー職 そんな中で、さまざまな役職に “デザイナー” のキーワードが取り付けられ始めている。 例えば、人事担当者はキャリアデザイン。経営企画はビジネスデザイン。顧客サポートはカスタマーサクセスデザイナーなど、いろんなデザイン、なんでもデザインがどんどん広がっているイメージ。 新しいデザイナー職例: 組織デザイナー ビジネスデザイナー サービスデザイナー デザインエンジニア ビヘイビアデザイナー カスタマーサクセスデザイナー ブランドエクスペリエンスデザイナー ここまで来ると、デザインが重要になったことで、その概念を幅広いフィールドで活用している。あらゆる役割でデザイナー的感覚が求められているのかな?と感じる。 時代の変化でこれから生まれる8のデザイナー職 デザイナーとエンジニアの境目もなくなってきている ちなみに、これは数年前から始まっていることだが、デジタルプロダクトにおいては、デザイナーとエンジニアの境目がかなり薄くなってきている。 どう見せるかに加え、どう動くか、そしてどのような体験を提供するかが重要になっている時代においては、自分がデザインしたものを動かすところまでが一つの役割として捉えるチームも増えている。 ちなみに、2010年の時点で、元Adobe Type KitのクリエイティブディレクターのElliot Jay Stocksは下記のようなツイートを行った。 “2010年にもなって、自分のデザインをコード出来ないWebデザイナーがいるのにはビビった” 上記の内容で彼が言いたかったのは、デザイナーたるもの自分でデザインした内容は自分で動かしてこそ仕事だろ、という事。ページのレイアウトや色づけだけをして、”あとはコーダーまかせ”はあまりにも身勝手過ぎる。 静止画だけ描いてWebデザイナー気取るなよ、動かすとこまでが遠足だろ、と言いたいのだろう。 そうなってくるとデザイナーとエンジニアの境目がどんどんなくなっていくのは当然だろう。デザイナーは動かすし、エンジニアは設計もする。 【これからのスキル】デザイナーとエンジニアの境界線がどんどん無くなる デザイナーの役割が重要になり過ぎて… ここまでデザイナーの役割が重要になり、組織全体に広がり始めてくるると、もしかしたら、デザイナーが専門職という概念自体が変化する可能性も高いと考えられる。 逆にいうと、スタッフみんなにデザイナー的視点とマインドセットが求められる時代になってくるのかもしれない。また、スピードとアウトプットの変化を考えると、どんな役職でもサクッとスケッチをしたり、ビジュアルで説明するスキルは避けて通れない。 まさに、全員野球ならぬ、全員デザインの感じになり、ポジションや役職にかかわらず、デザインの下地があることが全ての仕事の必須事項になってくる。これはまるでデザイン技術が特別なものではなく、どんどん「普通」になってきているからかもしれない。 そうなると、もしかしたらデザイナーという専門的役職が消滅する可能性すら出てくる。タイピスト、エレベーダーガール、電話オペレーターなど、時代と共に一般の人がこなせるようになったために無くなった職種の様に。 フリーランスWebデザイナーという職業も無くなる4つの理由 Web制作会社はそろそろ存続するのが厳しくなる デザインの重要性が高まり、誰もが基本的なデザインスキルを身につけようとし始めた結果、デザイン会社の優位性も自ずと下がってくる。これはアメリカだと数年前から既に始まっており、多くのWeb制作会社が廃業を余儀なくされている。 運が良ければ大手に買収され、さもなければ大幅縮小やフリーランス型にその体系を変化させる。もしくは、それ以外のユニークさを備えることで、Web制作会社からの脱皮を図り、生き残りをかけている会社も多い。 デザインがコモディティー化されてきた一つの結果だろう。 アメリカでWeb制作会社が存在出来ない5つの理由 さまざまなシーンで役立つデザインスキル では、なぜそこまでデザイナー的マインドセットや基本的なデザインスキルがここまで重要になってきているのだろうか?おそらく、役職にかかわらず、基本的なデザインスキルを身につけるだけで、実に多くのシーンにおいてアドバンテージがある。例えば: 思考がクリアになる 第一印象が良くなる 仕事のスピードが上がる SNSでフォロワーが増える 相手の気持ちが理解できる 未来予想ができる様になる 新しい発想をしやすくなる コミュニケーション上手になる などなど。実際に、我々が提供しているワークショップでも、新規事業を作ったり、既存事業の成長を達成させるための「下地」として、最低限のデザインに関して学んでいただいている。 みんなデザインマインドセットを身につけよう! そんな感じでデザイナーという職種は専門的な役割だけではなく、異なる役職にもどんどん溶けていくようになるだろう。逆に考えると、どんな仕事や役割があっても、今後はデザイナー的マインドセットが求められる。 それは全く特殊なことではなく、その考え方とプロセスを身につけることさえできれば、仕事や生活の中でどんどん活用することができる様になる。 今後は、読み、書き、デザインが一般的なスキルセットになっていく可能性もある。自分は営業だから、経理だから、主婦だから、という言い訳は捨てて、皆さんもぜひデザイナーとしての一歩を踏み出してほしい。 We Are All Designers – btraxのカルチャーバリュー なぜ日本ではデザイナーの地位が上がらないのか?

意外と知らないデザインとブランディングの関係性

デザインとブランディング、どこかクリエイティブな雰囲気ゆえに一括りに認識されていることが多く感じる。 本記事では、そんな「デザイン」と「ブランディング」という2つの概念について、両者の関係性を考えてみたい。 同じ「デザイン」でも3つの顔がある まず、日本語では一口に「デザイン」といっても、実は英語圏には、デザインを3つの種類で捉える考え方が存在する。その場合、以下のように大文字と小文字の表記でその違いを区別するケースが多い。 design Design DESIGN 1. design 小文字のみで表記されるこちらは、いわゆる「見た目のデザイン」。グラフィックデザインや、工業デザイン、広告デザインが対象となる。明確なターゲットを設定した上で、彼らに訴求するデザインを完璧に仕上げることを目的とするデザインだ。 2. Design Dのみが大文字のこちらは、利用されることを目的としたデザイン。例えば、UIデザインを含むWebデザインなど、デジタルという非常に広いフィールドが対象になる。これはつまり、1のような「特定の誰か」ではなく、「不特定多数のみなさん」にとって使いやすいデザインである必要があるということでもある。 3. DESIGN 全て大文字表記のこちらは、サービスデザインやUXデザイン、デザイン思考など、経営やサービスに直接的なインパクトを与えるデザインを指す。「デザイン経営」の文脈で日本でも注目を集めてきたデザインはここに分類される。 ここではユーザーを設定することが重要視され、具体的に想定されたユーザー中心のサービス体験の設計、ひいては経営判断により、ビジネスを成長させることを目的とする。 上記3つのデザインに共通することは、いずれもデザインが何らかの目的や課題を解決するための手段であるということ。デザインの対象こそ異なるが、この点は一貫している。 design, Design, DESIGNの違いを知っていますか? ブランディングの基本 では次に、ブランディングについて。 そもそもブランドとは一言で表すと、「顧客を含むステークホルダーとの約束」。そして、ブランディングとは、「その約束を結び、守っていくための活動」だと定義したい。 ただ約束を結ぶのではなく、それを守り続ける継続性と、長期的な一貫性が重要だ。そして最終的には、企業価値を向上させることが目的になる。ここを見失ってはならない。 ちなみにこの記事では、ブランディングは、マーケティングとの比較において、「相手に自分のイメージを持ってもらう努力」と記されている。 では、そんなブランディングはどの部署が行うべきか?こう問われると、マーケティングや広報部門の担当というイメージが浮かぶかもしれない。 一方、企業価値は誰の手に委ねられるべきか?こう問われたならどうだろうか。自分には無関係だと目を背けるのは難しくなるはずだ。 上記の定義のもと、ブランディングを企業価値の向上を目指す活動だと捉えると、ブランディングは、マーケティングや広報のみならず、サービスを管轄する商品企画から技術・開発系の部署、ひいては経営層もその重要性を認識すべき、企業活動における芯と言えるのである。 また、ブランディングにおいて向上を目指す企業価値とは、目に見えない企業の資産、または、その企業やサービスが選ばれる理由と表現することもできる。ブランディングで向上を目指す企業価値には以下のようなものがある; ブランド・ロイヤルティ(ex:「やっぱりビールはアサヒ」) ブランド認知(ex: 「あ、資生堂の新しい化粧品が出てる」) 知覚品質(ex:「ナイキのスポーツシューズならまず間違いないだろう」) ブランド連想(ex:「ジャガー= 高級車」) 今さら聞けないブランディングとは デザインとブランディングの関係性 デザインとブランディング、それぞれの定義を明らかにしたところで、次に両者の関係性を見ていきたい。 デザインとブランディングの関係性、それは簡単に言うと、手段と目的だ。 企業価値を向上するという目的を持ったブランディングに関わるさまざまな活動に対して、デザインの力を活用するのだ。 (さらに言うと、ブランディングもそれ自体が目的になってはならず、企業活動の目標を達成するための手段であるべきなのだ。) 両者に違いが存在するというよりは、もはや「手段」と「目的」というレベルで根本的に異なる。そのため、同じレベルで比較をしたり、優劣をつけたりすることはそもそも難しいとお伝えしておきたい。 デザインがブランディングに与える価値 では、具体的にデザインがブランディングにどんな価値を与えることができるのかを考えていきたい。 まずは、ブランディングをざっくりと5つの段階に分ける。これはbtraxがブランドづくりをサポートさせていただく際にも採用しているプロセスである。 Envisioning:ブランドのビジョンや提供価値を言語化・可視化する Brand Experience Design:言語化したブランドのコアに基づくブランド体験をデザインする Service Design:ステークホルダーとの接点がブランドを纏った総合的なサービスを設計する Service Architecture:より具体的にブランドを伝える手段を整え、マーケティング戦略を作り出す Growth Strategy:マーケティング施策の実行や分析、サービスの拡大を考えていく この5つの段階総じて、デザイン思考のマインドセットを持って取り組むことは前提にある。 しかし、ここで特筆すべきは、いきなり「design」見た目のデザインが出てくるのではなく、まずはブランド(自社)を理解することから始まること。 改めて言語化されたブランドをより対外的にわかってもらうためにはどうすべきかを考える 3. Service Design以降で「design」に本格的な出番が回ってくるのだ。 よくある誤解が、ブランディングは、ロゴやアイコンをデザインすることだと考えてしまうことだ。これは間違ってはいないが、これが全てではない上に、それだけを行うのではブランディングとは言い難い。 あくまでもその前に、ブランドがステークホルダーに届けたい価値を明確にしたり、自社理解を深めたりすることがまず辿るべきプロセスになると覚えておいていただきたい。 ブランディングにデザインの発想が欠けていたら? ブランディングにデザインの視点がいかに重要かをご紹介するために、デザインバックグラウンドがない場合のブランディングの失敗事例を簡単に取り上げてみたい。 かの有名なUberの事例だ。Uberはこれまで何度もリブランディングを行っている。そのうちの1回、事業拡大に際して行われたリブランディングプロジェクトにおいて、CEOのTravisは、その総指揮を執った。 ちなみに、ここ数年で大きく業績を伸ばしているスタートアップの経営層には、デザイナーとしてのバックグラウンドを持つメンバーがいるケースが少なくないが、Travisはデザインバックグラウンドを持っていない。 【デザイン × 経営】ビジネスにおけるデザインの価値を追求する7人の起業家 果たしてそんなプロジェクトで一体何が起きたのか。 簡単に言うと、Travisは「自分の好み」を表現しようと躍起になってしまった。 気持ちはわかる。自分が何よりも愛着を持った自分の会社のリブランディングときたら、創業者である自分が、と前に出て行きたくなるだろう。 しかし彼は結果的に、自分の頭の中だけで描いているものを「ロゴ」に込めることに夢中になり、他のプロジェクトメンバーを置いてけぼりにしてしまった。 このリブランディング プロジェクトは、完全に「Travisの自己表現の場」になってしまったのだ。 また、プロセスも望ましいものではなかった。いわば完全にトップダウン型で、Travisとその周囲のメンバーたち、といったように二分化が起き、有機的なチーム構造は破綻した。 その結果、他のメンバーはTravisのリクエストをデザインに反映するのに奔走。最終的に、酷評を受けるロゴが出来上がることになってしまったのだ。 関連記事:ロゴのリデザイン ー なぜGapが失敗しAirbnbが受け入れられたのか ブランディングにデザインが必要な本当の理由 Uberの例からお伝えしたいのは、非デザイナーならブランディングに関わるべきではない、ということではない。ブランディングの重要性を理解し、意味や目的を設定した上で、それを達成しうるチーム・メンバーと共にブランディングを行うべきだということだ。 むしろ、企業全体に関わるブランディングという活動だからこそ、多様な視点を持ったメンバーを含めたクロスファンクショナルなプロジェクトメンバー構成が望ましい。そして、彼らとの対話やディスカッションの中でブランドを様々な角度から捉えていくことが重要だろう。 また、主にロゴのリブランディングだったということは考慮されるべきだろうが、Uberの事例では、「デザイン」はおそらく「ロゴデザイン」の文脈のみでの登場だったのではないかと客観的には感じている。 冒頭のデザインの3つの顔のうち、「design」にあたる、見た目のデザインをすることに終始してしまった印象だ。 しかし、先述したように、本来ブランディングでは、「DESIGN」で定義されているレベルでもデザインが適用されることが望ましい。つまり、デザイン思考やサービスデザインなど、ビジネスに直結するデザインの考えを持ってブランディングを行うことが必要なのだ。 デザイン思考のフォーカスがプロセスにあるように、ブランディングにおいてもプロセスが重要視される。 また、立派な果実が成るには肥沃な土壌が必要であるのと同じで、まず、ブランドのビジョンを言語化・可視化したり、言語化したブランドのコアを組織内に浸透させることで、土壌をしっかりとつくることが欠かせない。 その土壌あってこそ、ロゴやアイコン、プロダクト、Webサイトなど、アウトプットという果実がブランドの一貫性を持った素晴らしいものになっていくのだ。 最後に: ブランディングに関するE-bookを提供中 デザインとブランディング両者の定義、簡単にbtraxのブランディングプロセスをご紹介した。また、失敗事例としてUberのリブランディングについて取り上げ、ブランディングにおけるデザインの役割について解説してきた。 3本目としてリリースしたE-bookでは、この記事では網羅しきれなかった、ブランディングでよくある課題や、より詳細なbtraxのブランディングプロセスを用いたブランディングの具体例をご紹介している。 本記事の続編としてご覧いただけると思う。ご興味のある方はぜひE-bookをダウンロードしてご覧ください。

グローバルスタンダードのブランドを目指せ 【対談】ヤマハ発動機株式会社 × btrax

サービスや製品が次々に誕生し、差別化の難しい現代。これから世界に通用するサービスや製品を開発するためには、開発するモノのブランド価値だけではなく、企業自体のブランド価値を高め、消費者にその価値を正しく伝えることが必要になってくる。 それを全社的に実施しているのが、ヤマハ発動機。世界中にYAMAHAブランドのファンを持つ同社は、部署間のバリアを減らす組織変革を実施。現在もブランドの価値を、モノだけでなくコトを通じて体験できるサービス開発に取り組んでいる。 オンラインイベントまとめ 本記事は、ヤマハ発動機株式会社の執行役員 クリエイティブ本部長 長屋明浩氏と、btrax, CEOのBrandon K Hillが登壇したbtrax主催イベント『グローバルスタンダードのブランドを目指せ 〜世界に通用するブランドドリブンなサービス開発・組織づくりとは〜』の内容を基にしている。 本ウェビナーは、長屋氏とBrandonのファイヤーサイドチャットの形式で進められた。参加者約70名からの質問に2人が答えていく場面もあり、非常に活気溢れるものとなった。今回はその対談の様子をまとめてお伝えする。 あえて「デザイン」というワードを使わない選択。その背景にある想いとは。 「デザイナー」という言葉の日本と海外の認識の乖離が非常に大きく、致命的だ。 Q. 日本ではデザインは狭義に捉えられている傾向があり、そのためにヤマハ発動機(以下YAMAHA)では「デザイン」ではなく、「クリエイティブ本部」として機能させ、デザインを通じた企業価値の向上につなげている。YAMAHAにおけるクリエイティブ本部の役割とは何か?あるいは、守備範囲はどこまでなのか? 長屋氏:「デザイン」は日本ではくせ者。日本において「デザイナー」というと色や形を扱っている意匠屋のようなイメージを持たれてしまう。装飾を商品に付与する人という意味で認識されてしまうのだ。 しかし海外では、「デザイナー」と名乗ると”What kind of designer?”と必ず聞かれる。つまり、企画に携わる人は全員デザイナーと呼ばれるのだ。このように「デザイナー」という言葉の日本と海外の認識の乖離が非常に大きく、致命的だ。 グローバルレベルの「デザイン」を啓蒙するのが正しいが、そこからやっていたら膨大な時間がかかってしまう。デザインを広義で捉えられるためにはどうすれば良いかを考えた結果、あえてデザインという言葉を使用しない選択をした、と述べる。 長屋氏:クリエイティブ本部では「全員がクリエイター」。企業の全てのアウトプットの根本的な価値を高めることに使命感を持っている。プロダクトデザインに止まらず、プロダクトが持つ意味を、ブランディング、経営企画に至るところまで全て守備範囲として考えている。 Brandon:アメリカの会社だとCreative directorはデザインチームに入ることが多い。 しかし、日本だとそれがが逆なのかもしれない。「クリエイティブ」という単語の方が広い意味を持つのかなと。 Q. YAMAHAのクリエイティブ本部はプロダクトデザイン、ブランディング、マーケティングも内包しているのか? 長屋氏:全てを内包した機能を担っている。YAMAHAのブランド委員会の事務局は経営と連携しているため、デザイン思考が経営そのものに入り込んでいると言える。 Q. デザインに対し、十分な理解のない経営層とのコミュニケーションを如何にして実現しているのか? 長屋氏:デザイン経営、デザイン思考の重要性は、ここ数年の間に常識としてある程度浸透してきたと感じる。加えて、デザインというのは「特殊な人が考えるもの」というよりも、全員が自分ごととして考えるべきものという認識に変わりつつある。 YAMAHAのブランド委員会では、デザインを自分ごととして捉えられるようにする、すなわち「デザインの民主化」を使命の一つとしている。デザインが「才能がある人しかできないこと」として捉えられて欲しくない。 デザイン思考というのは誰でも持っていて、専門をデザインに置いているのか、そうでないのか、それだけの話だと思う。 クリエイティビティはみんなが持っているもの。眠っているクリエイティビティを引き出していくのがブランド委員会の役割だ、と長屋氏は述べる。 一番大切なことは、「会社の使命としてプロダクトを出し、それが受け入れられること。」 Q. YAMAHAでは「プロダクト・イン」のデザインを提唱している。これはYAMAHAにもともとあったカルチャーを言語化したものか? 長屋氏:その通り。「マーケットインかプロダクトアウトか」というどちらかに陥らないようにするべきだ。マーケットインと言った方が売りやすいから、という本質的ではない理由で「マーケットイン」という言葉が利用されているのが現実。 また、プロダクトアウトも然りで、会社の都合で作りたいものを作って売れたらいいな、で世に出してしまうなんてことも横行している。 一番大切なことは、会社の使命としてプロダクトを出し、それが世の中に受け入れられること。この考え方はYAMAHAにもともと存在したカルチャーだ。YAMAHAで扱うものはゆとり商材。生活にゆとりを与えるものであり、ないと生活が成り立たなくなるものではない。 そう言ったものはやはり生活や心を豊かにするものでないといけないと考えている。そのためには「こうやって遊ぶと楽しい、この商品のここが良い」というようなメーカーとしての方向性が含まれていないとプロダクトとしては不十分だと思う。 Brandon:「マーケットイン」は、市場が求めるものに対して最適な商品を提供するという考え方、「プロダクトアウト」は、自分たちが作りたいものを販売するという考え方。 その場合、 YAMAHAの提供すべきビジョンがあって、それの具現化としてのプロダクトを提供すると、ビジョンに共鳴しているユーザーが自ずとその商品に魅力を感じるというやり方をしているのでしょうか? 長屋氏:そのパターンが多かった。そして最近になって変化もある。今ではもはや、顧客が遊び方を開発して、プロダクトを利用して遊んでいる状態。逆輸入的に顧客からアイディアをもらうことも多い。顧客とお互いに提案し合うスタンスをとっている。 Brandon:ユーザーとのコミュニケーションからプロダクト開発をしているということですね。 今後は社会課題の解決が企業の存在意義そのもの。 Q. YAMAHAは2050年までにモーターサイクルの90%を電動化すると発表しているが、SDGsのテーマについてはどのように取り組んでいるのか?(*注1) 長屋氏:カーボンニュートラルの議論は一大事だ。SDGsは大命題であり、避けては通れない道。少し前まではいわゆるCSRという発想が主流だった。利益の余剰をSDGsの取り組みに還元するというスタンスで、少し横柄な印象だったと思う。 しかし、今後はSDGsを基盤にして考えるようになるだろう。社会課題の解決が企業の存在意義と捉えるべきだ。自分たちが社会に対し何ができて、自分たちがなぜ存在しているのか。あらゆるプロジェクトにおいてはこれを前提において考えることが求められる。 人は環境を安心安全にするだけでは幸福になれない。すなわち、ネガティブの解決だけでは幸福になれない。これは人間が余剰(=感動や楽しみを感じること)の部分で生きているから。 ネガティブを解決することと更なるプラスの余剰を生み出すことの両側面を満たすように、プロダクトには悦楽の部分と信頼性の部分をセットで担保していきたい。 *注1)ヤマハ発動機が発表しているのは、「製品からのCO2排出量を2010年比90%以上削減」 時代に合わせて新しい文脈を作って「化けて」いくことも責任の一つ。 Q. YAMAHAブランドの変えるべきことと守るべきことは何か? 長屋氏:時代性と不易流行を分けて考えている。守るべきものはHeritage(ブランドの遺産)。これはまさしくブランドの姿であり、ブランドが辿ってきた道は消せない。財産でもあり、YAMAHAがどんなブランドかを示すものだ。 一方で、変えるべきことについては以下のように述べている。 長屋氏:変えるべきことは時代への対応だ。「守・破・離」という言葉がまさに表しているように、Heritageという守りたいものがあるならば、あえて現状のスタイルを破って離れていかないといけない。すなわち、自分のスタイルを作って、どんどん化けていかないといけないということ。時代に合わせて新しい文脈を作って化けていくことも責任の一つだ。 Q. パーパスの策定をされていたら教えていただきたい。 長屋氏:『Art for human possibilities ~人はもっと幸せになれる~』、『感動創造企業』がパーパスだ。2030年の長期ビジョンとして策定したのも、企業目的が『感動創造企業』だからである。YAMAHAでは『Revs your heart』という言葉もブランドスローガンとしているが、これは人間は肉体の存続だけが目的で生きているのではないということを指している。 「生きがい」があることで人はもっと幸せになれる。人が生きる意義、それが「感動」だ。第一段階は生きられてよかった、だが、その上位にくるのは「生きていて良かった」という思い。それを感じさせることがYAMAHAのパーパスだ。 大前提として、感動を味わうためには生きていなければいけないが、YAMAHA製品にはサバイバル製品も多い。オートバイは、先進国では趣味商材だが、新興国に行けば一家に一台の重要なトランスポーターとして、サバイバルツールの役割を果たしている。 乗っていて「楽しい」という気持ちを持ってもらえたら「生きていて良かった」を届けることができる。この2つをセットで届けるのがYAMAHAの会社のパーパスだ。 Q. 90%が国外売り上げだが、日本国内と海外向けではブランドを分けているのか?統一しているのか?日本のクリエイティブ本部でグローバルブランド作りも全て管轄しているのか? 長屋氏:日本国内と海外向けではブランドは基本的には同じだ。カスケード型ブランディングをやっていないのはYAMAHAの特徴だ。簡単に言うと、フランチャイズフードチェーンのようなやり方はしていないということ。 YAMAHAは扱っている商材がBtoB、ファクトリーオートメーション、遊び商材などさまざま。そして商材によってお客様の質も異なるため、コミュニケーションの取り方もそれに応じて異なる。ブランドは一緒だから戦略まで全て一緒にすべきである、ということに意義はないと考える。 ブランドの芯の部分は日本と海外で変えてはいけない。しかしそこから外に対して発することは異なっていても良いのではないか。特にYAMAHAでは各商材でできることも少しずつ違う。日本の八百万神のような発想で、多様性は許すが心は同じ、というスタンスだ。 格好つけていることは透けて見えてしまう。 Q. ブランドのバックストーリーを市場に伝えるにあたり気を付けるべきこととは?うんちくっぽくなりすぎてもいけないが、クオリティだけでは売り出せないという中で、どのような目線でストーリーを伝えるべきか。 Brandon:現代ではあらゆることが誤魔化せない、格好つけても意味がないと考えている。ここ10数年はSNSの発達で「盛る」文化が発達してしまったからか、写真をはじめ、加工された人工的なものが消費されていく時代。 その中でよりリアルにした方が目立ちやすく伝わりやすいと思っている。btraxがサービスづくりをサポートする際は、ブランドストーリーを包み隠さないほうが良い、格好つけないほうが良いという話をよくしている。 長屋氏:今の時代、格好つけていることは透けて見えてしまう。飾りつけても虚飾だと見破られてしまい逆に嫌味に捉えられてしまうことも。 しかし反対に一切飾らないことが正しいわけではない。企業の活動をいかに伝えるか、伝え方は工夫すべきであるが、必要以上にやっていないことまでやっていると誤解させることは不要だ。 YAMAHAは、インターナルブランディングに注力している。事業、地域が異なったり、グローバルだったりするため、インターナルブランディングなしに自分たちの気持ちや心を一つにしていくことは困難になるばかりだからだ。 今後は色々な企業がコングロマリット化すると思う。コングロマリットディスカウントは、商品にのみ発生することではなく、自社に降りかかってくるものだと考えている。コングロマリット化することで自社の存在はどんどん薄まってしまう。 しかし、自分たちが一つのブランドの中で繋がっている意識がクリアであれば、ブランドストーリーを語る際には自分たちの考えていることをそのまま外に伝えるだけで良い。先述したように企業が虚像を見せているのか、本当の姿を見せているのかはばれてしまう。真摯にやるしかないのではないか。 Brandon:シリコンバレーの企業は世界的に見てもブランドパーパス至上主義でやっていることが多く、プロダクトよりもストーリーを伝えることが優先されることもあるほど。日本企業はまだブランドストーリーを伝えることに慣れていなかったり、苦手意識を持っている印象。どうしたら効果的にブランドストーリーを伝えられるようになるだろうか。 長屋氏:まさに「社内浸透」が必須だ。これだけ事業品目が分かれていると、それぞれが顧客接点になる。営業マンだけが外部へのアンバサダーでは無くなるということだ。あと10年もすれば職業の区別は無くなるとまで言われている。 最近のデザインの仕事は、コーポレートデザインは特に、ファシリテーターの役割をすることも多いのでは? Brandon:確かに。引き出し役になることが多いですね。 長屋氏:モノを創るとなった時に、社内から来たデザインの依頼を受けて、依頼元の話を聞き、作成を試みるうちに、プロダクトデザイナーが企画まで入り込んでいることがある。そうして考えていくうちに、いつの間にかプロダクトデザイナーではなく社内経営コンサルタントになっているという事態が起きている企業は少なくない。 これはまさしく職業の崩壊が起きていると言えるだろう。例えばエンジニアも、設計性能を上げるのは何を実現するためか、という商品企画の思考ができなければいけない職業。 だからこそ、原点に戻らないと、部署単位だけでパフォーマンスを上げることに虚しさが出てくる。 一人一人の役割が拡大するこれからは、社内のコミュニケーションを綿密にし、自分たちがやっていることを自分たちで理解していることが重要。それができていれば、発する言葉や伝えるメッセージは自ずと一貫性を増すものになるだろう。 まとめ 正しく消費者にサービスの価値が伝わるブランディングをするためには、自社が社会に届けたい価値の正しい理解、そしてブランドパーパスの社内浸透が必須だと感じた。 また、最高の性能のプロダクトを創ることが至上命題だった時代から、企業のビジョンや存在意義をクリアに消費者に伝え、「ストーリーで心を掴む」ことが至上命題になる時代へと移り変わっていることを痛感する内容だ。 関連記事:ブランドストーリーが日本企業にとって重要な理由 関連記事:人々の心を掴むブランドストーリー 5つのポイント btraxは、プロダクトやサービスそのもののデザインだけでなく、企業のミッションやバリューなどのブランドコアを定めるフェーズからサポートをさせていただいている。ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせいただきたい。 * 今後のイベントに関しての告知は公式Twitterアカウントで行います 今回の記事の内容をより掘り下げたい方は 弊社btraxの新規e-bookは、今回の対談記事の内容に関連した内容となっている。 掲載内容 ブランディングの基本定義とよくある誤解 ブランディングにおける各フェーズごとの課題と解決方法 自動車メーカーのブランディング具体例 […]

UXデザイナーが持つべき7つのソフトスキル

UXデザイナーを採用・評価する際に、コアとなるデザインスキルだけではなく、それ以外のソフトスキルが非常に重要だと感じることが多い。
というのも、現代のデザイナー職においては、職人的に一人で作業をすることよりも、チームの一員としてプロジェクトを成功に導くために、”デザインをする” 以外の役割が増えている。だから自ずと、デザイン以外のスキルも求められる。
現代のデザイナーの仕事とは?
そう。デザイナーという仕事の内容は時代とともに変化し、ここ数年ではビジネスとの連動、エンジニアと…

UXデザイナーが持つべき7つのソフトスキル

UXデザイナーを採用・評価する際に、コアとなるデザインスキルだけではなく、それ以外のソフトスキルが非常に重要だと感じることが多い。
というのも、現代のデザイナー職においては、職人的に一人で作業をすることよりも、チームの一員としてプロジェクトを成功に導くために、”デザインをする” 以外の役割が増えている。だから自ずと、デザイン以外のスキルも求められる。
現代のデザイナーの仕事とは?
そう。デザイナーという仕事の内容は時代とともに変化し、ここ数年ではビジネスとの連動、エンジニアと…

デザイン視点で心を掴む UXライティングの基本5項目

マーケティングとデザインにはかなり親和性があると感じる。ベン図で表すと、ちょうど中心で重なる部分だとイメージしやすい。そしてそれはまさしく、UXという考え方だ。 もともとUX (User Experience, ユーザー体験)は、デザイン界隈の言葉だった。しかしこの発想自体は、マーケティング然り、あらゆる事柄に適用できる汎用性の高いものだ。 使い手となるユーザーやターゲットとしている顧客起点で発想すると考えれば、両者は似ているからだ。昨今のビジネスシーンでUXがこれほど重要視されていることも、ここに理由があるだろう。 今回は、デザインとマーケティングの交差点であるUXについて、UXライティングという観点で解説をしていく。 コンテンツを考えるマーケターの方、そしてそれをデザインに落とし込むデザイナーの方はもちろん、普段のコミュニケーションにも活かせることが多いため、あらゆるビジネスパーソンにとって知っておいて損のないスキルをご紹介できると思う。 UXライティングとは? 最近では日本でも関連書籍が出版されており、注目度の高まりを感じるUXライティング。まずはその概念的な側面をご紹介しておきたい。 UXライティングは、ユーザーに物事の価値を、的確に、なおかつストレスなく伝えるためのライティング手法だ。「UX」の意味合いは、「ストレスなく」の部分に込められている。読みごこちがよく、内容もわかる文章を設計することだ。 UXライティングと検索すると、CTAボタンに添える「詳細はこちら」といった言葉や、エラー画面に表示される言葉をユーザーにストレスなく提示するための言い回しを考えるなど、アプリやWebサイト上などのUIデザイン上の言葉が前提になることが多い。 しかし、今回の記事はもっと広く捉えたい。本記事で取り上げるUXライティングは、言葉を通じてユーザー体験を設計することだ。言葉のデザインと表現することもできるだろう。 これは特別革新的なものではない。ただ、適用範囲が非常に広い。なぜなら、ユーザーや顧客とのあらゆる接点で必要となる文章は、すべてUXライティングの対象となるからだ。 明日から使えるUXライティング5つのポイント 短く、簡潔に、必要な時だけ 専門用語を避け、ユーザーが使う言葉を使う ほどほどな丁寧さ あくまでもポジティブに 翻訳されやすさも考慮 1. 短く、簡潔に、必要な時だけ これは、UXライティングの基本中の基本ともいえるルールだ。ユーザーが行動を起こすために認識しなければいけない情報は少ないほど、彼らの負担は減る。 そのため、短く、簡潔な文章を作ることを心がけることが文字を通じたユーザビリティの向上につながる。 また、「必要な時だけ」というポイントは意外と盲点なのではないかと思う。主にデジタルサービスに言えることだが、良かれと思ってガイドやメッセージをずっと画面に表示させるのは、おせっかいになりかねない。 ユーザーが困った時や特別な操作を要求する時にのみ、メッセージを表示させる設計にすることも念頭においておくと良いだろう。 2. 専門用語を避け、ユーザーが理解できる/使う言葉を使う ユーザーの中にある語彙と、サービス側が使う語彙のレベルを揃えることも非常に重要だ。もちろん、サービスの説明においては、専門用語を使わざるを得ないシーンもあるだろう。 その場合でも、ユーザーにとってあまり必要のないものであれば多用を避けたり、理解を助ける具体例を提示するようなコンテンツがあると良い。 難解なことをわかりやすく伝えることにこそ、ユーザーの心地よい体験を考慮するUXライティングの真髄があるように感じる。 エラーメッセージを表示する際に、エンジニアにしかわからないようなシステム側のメッセージが出てしまうことを避けるのも、この項目に当てはまる。 ユーザー心理を掴むUXデザイン手法: 3対1の法則 3. ほどほどな丁寧さ 丁寧な言葉が好印象を与えることは間違いない。しかし、丁寧すぎるとかえって読みにくさを感じたり、やりすぎ感を抱かせて、ユーザーとサービスの間に距離を生んでしまう可能性もある。 特に日本語の場合、敬語という独自のルールがある。これが文章を長く、複雑に見せる要因になりかねない。かしこまって丁寧語や尊敬語を多用しすぎると、結局何が言いたいの?と思わせてしまうかもしれない。 普段、比較的近い距離感で話す間柄の相手にも、メールになった途端に他人行儀のようになってしまうことは日本人のあるあるだろう。これは、UXライティングでは避けることをおすすめしたい。 サービスやプロダクトにも人格があることを意識し、ユーザーと自然な会話を交わすことをイメージしながら言葉を選ぶと、適度な丁寧さの言葉が生まれると考えている。 ブランドの個性を定める – ブランドパーソナリティー【ブランディング入門#5】 4. あくまでもポジティブに 使いやすさやわかりやすさといった機能面もさることながら、好感が持てる、使いたくなる、といった感情面への訴求も重要だ。 そしてこれをUXライティングを通じて実現するために、1つのポイントとして挙げられるのが、ポジティブな言葉を使うこと。エラーの指摘やトラブル、ローディングやサービス側の作業完了までの待ち時間など、ユーザーにとってネガティブに感じざるを得ないシーンは往々にしてある。 そこで、例えばネガティブをポジティブに変換したUXライティングのコツとして、現状を伝えるのではなく、次のアクションを提示する、というものが考えられる。 エラーが出ていることや、何かに時間がかかっていることなど、今自分が身をもって実感しているため、わざわざサービスから指摘されたくないと思うのがユーザー心理だろう。 そこで、次にこうしましょう、こういう改善方法があります、といった突破口の具体的な提示があると良い。 5. 翻訳されやすさも考慮 グローバルにユーザーを持ちうる場合や、海外向けにも展開していたり、将来的にそれを目指すサービスにおいては、そのコンテンツも、現地市場で使われている言葉への翻訳が簡単にできるものが望ましい。 これは、究極的な言い方をすると、100人が読んでも100人全員が同じ解釈を持てるコンテンツ、受け取る側によって内容が違ってしまうことがないコンテンツを作ることが求められているということでもある。 「1. 短く、簡潔に、必要な時に」にも関連するが、シンプルかつ文法的にも正しく書かれた文章ほど理解されやすく、それは翻訳のされやすさにもつながる。言語間のニュアンスの違いはあるにしろ、エッセンスの部分は適切に受け取られる可能性が高い。 日本語の場合特に、「〜が」といった順接と逆接どちらにも取れるものや、「〜のXX」など、所有や主格など複数用途に捉えられる助詞には要注意。 普段の会話の中では誤って使ってしまった場合でも気にならないことが多いだろうが、文字コンテンツにする時には正しく使えているかを確認する必要がある。 コンテンツづくりにもUXの発想を これまでご紹介してきた5つのポイントは非常に基礎的に聞こえたり、すでに実施している方も多いかもしれない。あるいは、小手先のスキルに感じる方も少なくないだろう。 それでも、記事のタイトルを魅力的なものに変えるだけでPV数がグッと上がったり、 CTAボタンの文言を修正したらCVRが改善したりすることがあるように、実際にユーザーと対峙しているコンテンツへの小さな工夫が大きな変化を生むかもしれない。 ビートラックスではクライアントさまのサービス開発をご支援する際には、UXライティングとして今回ご紹介したポイントを含め、サービス全体のUXデザインの設計を行っている。 ユーザーの心を掴むUXデザインに関して、ご相談がありましたらぜひお気軽にお聞かせください。

デザインのプロが選ぶ歴代オリンピックロゴ

数多くのチャレンジを乗り越え、2020東京オリンピックが一年遅れで開幕。 本来オリンピックは開催都市が自らの希望や発展を世界に向けて発信するのが目的。そこで造り出されるデザイン作品やアート表現も、その開催国と時代を象徴するものである。その最たるものがオリンピックのエンブレムであり、これまでの作品は素晴らしいものが多い。 しかしながら、今から思えば東京2020は、当初のエンブレムに関する盗作騒動から始まり、あまりにも沢山の出来事がありすぎた。 それらの細かい内容は一旦忘れて、今回はこれまでの歴代オリンピックの中でも、7人のデザインプロフェッショナルが選ぶ、デザインの美しいオリンピックのエンブレム・ロゴを紹介する。 1968年東京オリンピック MoMaにも展示されている亀倉 雄策氏デザインによる作品。国際的なイベントには欠かせない、一目でわかる、記憶に残る大会のシンボルである。 ゴールドで彩られた五輪の上にデザインされた大きな日の丸は、日本が大戦からの復活し、希望と革新を手に入れたことを象徴しているように感じる。 その一方で、亀倉 雄策氏によると「この大きな赤い円は、日の丸を表していると思われるかもしれませんが、実際には太陽を表現しています。大きな赤丸と五輪マークのバランスで、新鮮で鮮やかなイメージを表現したいと思いました。」とのこと。 また、このデザインは、締め切りの数時間前に作られたという伝説もある。できるだけ速いタイムで金メダルを獲得するオリンピックに相応しいストーリーだろう。 選出者: Hamish Smyth, partner, Order 1968年メキシコシティーオリンピックオリンピック アメリカ人デザイナー、ランス・ワイマンによりデザインされたのが1968年に開催されたメキシコシティー五輪。当時ワイマンはまだ29歳で、妻のネイラ、パートナーのピーター・マードックとともにニューヨークから片道切符でメキシコに飛び、2週間のコンペに参加した。 この卓越したデザインは、オリンピックの輪が数字の6と8の下側の円に有機的に融合している。モチーフには、大胆なラインや幾何学的な形、鮮やかな色を使ったメキシコの古代アートを採用。同時期にニューヨークで流行っていた、オプティカルアートを融合した。 60年代のサイケブームと古代メキシコのラインを合わせることで美しい曲線を生み出した。そして、時間がたった現代でも色褪せることのない作品が生み出された。 このロゴは、50年以上経った今でも、メキシコシティのいたるところで見ることができる。68年のオリンピックはメキシコにとって大きなイベントだったが、ワイマンのロゴはその瞬間をとらえ、その後、メキシコの愛国心を表す永遠のシンボルとなった。 選出者: Gary Hustwit – filmmaker and founder: Oh You Pretty Things, Lisa Smith – executive creative director: Jones Knowles Ritchie 1972年ミュンヘンオリンピック オトル・アイヒャーによるモダンで洗練されたデザイン。驚くべきことに当時の評判はあまり良くなく、ドイツのメディアからも批判されていた。 実はアイヒャーはこのロゴのデザインを個人的な趣味の一環でデザインしており、当初はコンペには参加しない予定だったとのこと。 このロゴは、動き、ダイナミズム、高揚感に加えて、他の多くのオリンピックデザインにはないユニークさを持っている。 オリンピックのロゴをデザインする際に重要なのは、常に周りにあるカラフルな五輪シンボルとの関係。 しかし、アイヒャーのロゴは、カラフルではなく、モノトーンで、直線と鋭角で構成されている。リングとのコントラストが卓越している。ミュンヘン市のマークは円形の中心から放射状に広がっているので、両方のデザインが見事に共鳴し合っている。 このバランスをとることは非常に難しく、アイヒャーはそれを実現することで、後のアイデンティティデザインにおける多くの革新を予見させる立体的な視覚的イリュージョンをも生み出したのである。 アイヒャーは若い頃に反ナチスの活動を行い、何人もの仲間が処刑されるのを目の当たりにし、最終的には第二次世界大戦の晩年を潜伏生活で過ごした経験を持つ。 それもあり、1972年の大会は、彼にとってもドイツにとっても、ナチスの汚点を克服するために必要なステップだった。そのため、大会のテーマは「The Happy Games」という極めて楽観的なものとなっている。 このテーマを具現化したのが、彼の表現力豊かなモダニズムを象徴するような、抽象的なマークである。ダイナミックな動きとエネルギーを持つ放射状のスパイラルロゴは、新しいドイツの国を照らし、進歩、調和、そして新たな始まりを意味していた。 選出者: Eddie Opara – partner: Pentagram, Sagi Haviv – partner: Chermayeff & Geismar & Haviv 1984年ロサンゼルスオリンピック 一見タミヤっぽく見えるこのロゴは、1984年にロサンゼルスで開催されたオリンピック向けにデザインされた。80年代のアメリカが持つ楽観的で明るいイメージが動きのある二つの星から伝わってくるこのロゴはデボラ・サスマンによる作品。 このロゴは、国の誇り、そして不屈のパワーを持つモーションラインを連想させる。 また、ロサンゼルスの空から噴射装置を背負った「ロケット人間」がスタジアムに降り立つ演出や、マスコットキャラ、ホイットニー・ヒューストンによる国歌斉唱、ジョン・ウィリアムズによるテーマソングなど、世界を驚かせたド派手な開会式の演出はこのオリンピックから始まった。 まさに「商業五輪」の原点でもある。ちなみに、2028年には再びLAでオリンピックが開催される予定である。 選出者: Jennifer Kinon – partner: Champions Design 1988年カルガリーオリンピック クリーン、アイキャッチ、シンボリック。ゲイリー・W・パンプがデザインしたこの1988年のカルガリーのロゴには多くの素晴らしいポイントが隠されている。 まず、特筆するべきしたいのが、シンボル部分。下棒の部分以外は、全て赤い円だけで構成されている。五輪のモチーフにも利用されている円形を巧みにレイアウトすることで、新しいシンボルを生み出す。これはシンプルながら、かなり考えられたデザインでもある。 その円で構成されるモチーフをエッジ部分を大胆に直線でカットし、カミソリのようなシャープなラインが形状を実現。複雑さを断ち切ることで、ダイナミックで印象深いロゴになっている。 また、今回紹介するオリンピックロゴの中で唯一の冬季五輪ということもあり、シンボル部分が雪の結晶を連想させるのも素晴らしい演出。また、クラシックな赤の色と形は、カナダの伝統的なカエデの葉のエンブレムも連想させる。 80年代とは思ないぐらいにタイムレスなデザインを実現したこのロゴにぜひ金メダルを! 選出者: Brandon K. HIll – Founder & CEO: btrax

未来のUI – Space Xに見る全面タッチスクリーンの利点と弱点

昨今、宇宙関連のニュースを聞くことが増えてきた。イーロン・マスク氏率いるSpace X は宇宙船「クルー・ドラゴン」での有人宇宙飛行を成功させた。宇宙飛行士を宇宙ステーションまで送り届け、無事に帰還も果たした。 このフライトには日本人宇宙飛行士の野口 聡一氏も参加しており、無事宇宙から帰還を果たした聡一氏のニュースを見た方も多いだろう。 Amazonの創業者のジェフ・ベゾス氏は起業したBlue Originが7月20日に初宇宙旅行を行うことも話題になっている。この宇宙旅行にはベゾス氏自身も参加するという。 そんな中で宇宙船のデザインも変わってきている。特に注目されているのは前述のSpaceXのクルー・ドラゴンがコクピットにタッチスクリーンを採用し、主だった操作を全てタッチ操作で行うという点だ。 SpaceXのタッチスクリーン指向のUI クルー・ドラゴンの船内はSF映画に出てくるような未来的なデザインになっている。コクピットには、アポロ計画の宇宙船やスペースシャトルなど、これまでの宇宙船にあった大量のボタンやレバー、計器類などは無くなっている。 その代わりにあるのが大きなタッチスクリーン。いくつか物理ボタンはあるものの、主な操作は全てタッチスクリーンで行われる。またSpaceXの宇宙服もそのグローブがタッチスクリーン操作に対応したものになっている。 クルー・ドラゴンは自立型の宇宙船で、宇宙空間での航行や宇宙ステーションへのドッキングなどは全てソフトウェアが行う。操縦桿や多数のボタンは必要なく、操縦者はタッチスクリーン上で航行を確認し、タッチ操作で宇宙船の設定を行うことになる。 クルー・ドラゴンの船内 ゲーム感覚で操作できるシュミレーター もちろん緊急時などのために、手動での操作も可能だ。SpaceXはクルー・ドラゴンでの宇宙ステーションへのドッキングシミュレータを公開しており、手動でクルー・ドラゴンを操作する場合、どういった感じになるのか試すことができる。なかなか遊びがいのあるシミュレータになっているので、ぜひ一度試してみてほしい。 このシミュレータで注目すべきは、UIのデザインが昨今のスマホアプリやビデオゲームを彷彿とさせる作りになっていること。そうしたものに慣れ親しんだ人であれば、宇宙飛行士としてトレーニングを積んだ人でなくても直感的に操作できる。 Teslaとも共通するコンセプト イーロン・マスク氏が同じくCEOを務めるTeslaの車内インテリアも同じようなコンセプトを持っている。極力、人間の操作する部分を減らし、ソフトウェアによる制御による自動化を目指している。 テスラのユーザー体験。しばらく乗ってみてわかったその凄さ 例えば、新型のモデルSではシフトレバーはなくなり、自動車自身がギア操作の制御を行う。どうしても人間が操作したい場合にタッチスクリーンからドライブ/リバースの変更などを行う。 Here you go! https://t.co/yGBIFdbIB1 pic.twitter.com/1A9BBWwfkE — Sawyer Merritt 📈🚀 (@SawyerMerritt) June 11, 2021 他の宇宙船との違い このデザインはどのくらい斬新なのか?SpaceX以外で最近話題になっている他企業と比べてみよう。 クルー・ドラゴンのライバルとされているのがボーイング社の宇宙船「スターライナー」だ。現在開発中で、7月にもテストフライトが予定されている最新鋭機だ。こちらは伝統的な大量の計器、ボタン類が多く配置されたコクピットとなっている。 AmazonのCEO ジェフ・ベゾスが同じくCEOを務め、7月20日に初の宇宙旅行を計画しているBlue Originはどうだろうか。その参加チケットが2800万ドルで落札されたことが話題になったためこちらも少し触れておこう。 Blue Originの宇宙船「ニューシェパード」は、11分間という短時間でのほぼ完全自動運転の宇宙旅行を目的とした宇宙船だ。そのため、旅行客のためのスペースが大きく取られていて、クルー・ドラゴンのようなコクピットも存在しない。 これからはタッチパネルが標準的なUIに? 近い将来に、インターネット、スマートフォンなどに慣れ親しんでいるデジタルネイティブの世代が宇宙飛行士の中心世代になるだろう。その際にトレーニングコストを大きく下げることができることが期待されている。 また、タッチスクリーンのUIはChromiumやJavascriptといったWeb系のソフトウェア開発でよく使われる技術で作られており、現代的なWebアプリライクのUIを実現するのに活用されている。 タッチスクリーンは有用か SpaceXはなぜタッチスクリーンを採用したのか、宇宙船の操作に対してどんなメリットがあるのかを通じて、全面タッチスクリーンの可能性を考えてみよう。 タッチスクリーンによるUI/UXの評価 物理デバイスをタッチスクリーンにすることで、UIはソフトウェアで構成されたものになる。これにより、Webソフトウェアなどで用いられているUX/UIの指標と照らし合わせ、評価・検討することができる。 SpaceXのソフトウェアの全容は公開されていないが、画像や動画など公開された情報からクルー・ドラゴンのUIはWebソフトウェアでも重視されているUIデザインの鉄則を押さえていることが見て取れる。 タッチスクリーンの利点1: エラープルーフの面でも有利 こういった鉄則を踏襲することは、単純な使いやすさの向上だけでなく安全面でも重要になる。緊急事態が起きた際などに、焦りからのとっさの操作間違いが起きないようなUIデザインは、安全性が重視される宇宙船において重要なポイントだ。 タッチスクリーンの利点2: 慣れ親しんだユーザビリティーの実現 SpaceXは目新しさでタッチスクリーンを導入したのではなく理論に基づいてインタフェースがデザインされており、いくつかのUXの法則を実現することでユーザビリティの高いUIを実現している。その例をいくつか見てみよう。 フィッツの法則 画面上の対象間の移動に関する人間の動作をモデル化した法則。主にマウス操作で移動にかかる時間を計測する。近年ではタッチデバイスでの研究も盛んに行われている。 フィッツの法則はUIの普遍的な法則と言われており、クルー・ドラゴンのUIも多くの要素がこの法則を考慮しているようだ。例えば操作画面では主だったボタン等を画面の端に配置しており、これはフィッツの法則を踏襲していると言える。 またフィッツの法則と照らし合わせて、優れたインタフェースとしてパイ・メニューがある。SpaceXのシミュレータで確認できるが、宇宙船の飛行制御UIはこのパイ・メニューを元にしたインタフェースになっている。 ヤコブの法則 ユーザーの経験則に基づいたUIデザインの法則で、ユーザビリティに関する10の原則が提唱されている。経験則に基づいてユーザビリティを評価するヒューリスティック評価の指標とされることが多い。 クルー・ドラゴンのUIは、前述したように現在のアプリやゲームなどで一般的なUIに近いデザインになっている。それらに慣れ親しんだ人であれば、その経験から、ある程度直感的に扱えるデザインになっている。 複雑さの保存の法則 どんなシステムやプロセスにも、減らすことのできない複雑さが存在するという考え方で、その複雑さはシステムとユーザーのどちらかが引き受けなければならないとされている。 この法則にしたがって考えると、従来の宇宙船は、その複雑さをシステムだけでなく、操縦者側も大量のボタンや計器類などを使用することで負担していたと言える。 クルー・ドラゴンでは、シンプルに分かりやすくデザインされたUIの利用や宇宙飛行制御の自動化などにより、その複雑さをシステム側に移行して、操縦者の負担を減らすことができている。 UXデザイナーなら知っておきたいデザインに関する10の法則 タッチスクリーンの利点3: 製造コストの削減 SpaceXは、安価でのロケット打上げが大きなセールスポイントになっており、タッチスクリーンの導入も製造コスト削減に一役買っているだろう。 従来のコクピットに比べてタッチスクリーンは、ハードウェアの製造やメンテナンスが簡単に行える。また問題が起きた際のソフトウェアの修正はもちろん、タッチスクリーン自体の交換も簡単だ。 さらにソフトウェア更新により、機能の追加やインタフェースのデザイン変更といった改修も簡単なので、タッチスクリーン自体は長く使い続けることができるだろう。 タッチスクリーンの利点4: 船内の空間を確保できる タッチスクリーンであれば、物理的なボタンの設置に比べて省スペースで設置できる。事実、クルー・ドラゴンのタッチスクリーンは位置を変える時ができ、宇宙飛行士の乗り降りの際などに十分なスペースを確保できる。 また、ソフトウェア上のUIは自由にデザイン可能。つまり、そのシチュエーション毎に必要な情報のみを表示することができる。 画面表示を切り替えて複数の情報を管理できるため、物理的な計器類を大量に置く必要がない。こうしたデザインはTeslaのタッチスクリーンでも確認でき、画面の切り替えが分かりやすいようにデザインされている。 クルー・ドラゴンでは最長で5日間の民間向け宇宙旅行も計画されており、快適に過ごせる船内はこうした宇宙旅行でのユーザー体験向上にも貢献するだろう。 画面下のメニューで表示内容を切り替えられるTeslaのタッチスクリーン タッチスクリーンの利点5: トレーニングコストの削減 前述したように、タッチスクリーンに慣れ親しんだデジタルネイティブ世代は直感的に扱えるだろう。では、これまでの宇宙船に慣れ親しんだ宇宙飛行士はどう感じるのだろうか? このUIの開発には、かつてのスペースシャトル搭乗ミッションもこなしたベテランの宇宙飛行士 Douglas Hurley氏、Robert Behnken氏が協力している。操作性の向上やミスタッチがなくなるよう改良に貢献したという。 彼らは、これまでと異なるデザインのUIを習得するトレーニングが必要だったと語っているが、最終的には問題なく技能習得を済ませている。 実際に、2人は2020年5月に行われたSpace X初の有人宇宙飛行ミッション「Demo-2」に参加し、クルー・ドラゴンで宇宙に行っている。このDemo-2ミッションではHurley氏は宇宙船の制御機能を確認するために、手動での飛行試験も行っており、タッチスクリーンでの操作を問題なくこなしている。 前述のシミュレータのように、ソフトウェアのUIであればPC上でも操作を確認することができる点も挙げられる。本格的な搭乗型のシミュレータがなくても、トレーニングを積むことができるのは大きなメリットだ。 タッチスクリーンのデメリット では、タッチスクリーンに問題はないのだろうか。タッチスクリーン導入の弊害になりそうな問題点を考えてみよう。 タッチスクリーンの弱点1: 常にスクリーンを見なければいけな 物理ボタンを用いたインタフェースとの最大の違いは、タッチスクリーンは画面を見ながら操作が必要な点だろう。物理ボタンのように、よそ見をしながら操作するのは難しい。 そのため、宇宙船の外の様子とタッチスクリーン上のインタフェースを同時に確認する必要がある。これはデザインの大きな制約である。これが自動車や航空機を完全タッチスクリーンにすることが難しい理由の一つだろう。 タッチスクリーンの弱点2: スクリーンの故障 = 宇宙船の故障 また、多くの人が心配するのは、電気系トラブル等でタッチスクリーンが表示できないと何も操作できないということだろう。 物理ボタンや計器がどれか一つ故障しただけであれば、他のボタン等は使い続けることができる。しかし、全面タッチスクリーンは故障すると宇宙船の機能がほとんど操作できなくなってしまう。こういった事態を考慮した運用を十分考える必要があるだろう。 タッチスクリーンの弱点3: 再トレーニングが必要 前述した内容と矛盾するようだが、今までの宇宙船のインタフェースに慣れていた宇宙飛行士にとっては慣れるまでのトレーニングが必要になるだろう。タッチスクリーン上の操作自体はそれほど難しくないだろうが、タッチスクリーンを使うこと自体に心理的に慣れる必要がある。 特に宇宙飛行士は、様々な緊急事態を想定する必要がある。緊急事態が発生した場合でも、タッチスクリーン上でスムーズに宇宙船を制御できるように十分なトレーニングが必要だろう。 デザイナーに必要なのはスキルアップではなくスキルチェンジ タッチスクリーンはデザインのあり方を変えるか? 宇宙船という安全性を要求されるものにタッチスクリーンを導入することを不安視する声がある一方で、SpaceXの新しいデザインが宇宙船の概念を変えると評価する声もある。 これまでの宇宙船の大量の物理ボタンをタッチスクリーンに一新したのは、日本のガラケーやBrackberryやNokiaのようなキーボード型のUIを持っていたスマートフォンが、タッチスクリーンをメインとするiPhoneに取って代わられたことを思い起こさせる。 […]

ユーザーの感情に響くエモーショナルデザインとは?

最近のアプリはどれも非常に使いやすいのが当たり前になった。そのため、使いやすさ文脈でのUXデザインだけではユーザーのロイヤリティ獲得や他社との差別化が難しくなってきていると感じる。 差別化の要素としてブランディングを活用する手法もあるが、プロダクト自身の魅力を最大限発揮することで、ユーザーの心を掴み続ける方が持続性が高い。 80%のアプリは数日で使われなくなる 顧客から素早くフィードバックをもらうことで、本当に求められるサービスを作ることが重要となっていることはもう説明する必要はないだろう。 アプリのマーケットはすでに飽和状態に近づいており多数のアプリで溢れている。 ちょっと使いにくかったりデザインがイケていなかったりしてもユーザーが我慢してくれる時代はとっくに終わっており、インストールされても数日で使われないアプリは80%にも達する。 数日で忘れ去られないために。モバイルアプリの高速プロトタイプ開発法10選 使えるアプリは多いが、使い続けるものは少ない 例えば、近頃日本では、Uber Eatsや出前館などのフォードデリバリー系アプリが増えた。私は初めは複数のアプリをダウンロードしていた。しかし、最終的に残ったアプリはそのうちの1つである。 どれもUI的に十分使いやすく、サービス的にも大きな差はない。しかし、なぜかいつも使うアプリはその1つ。それを、とても気に入って使っている。 この気に入る原因の一つにエモーショナルデザインの影響があると気がついた。 ユーザーを夢中にさせるAmazonが採用する4つのUXデザイン要素 エモーショナルデザインとは? UX/UIデザイナーが色やマイクロコピー、レイアウトなどのインターフェース要素やデザインアウトプットを用いて、ユーザーにポジティブな感情(幸福感、快適さ、喜びなど)を与えるために用いるデザインアプローチのことである。 中には、ユーザーから注目してもらうために、UIデザインにネガティブな感情(悲しみ、後悔、嘆きなど)を盛り込み、プロダクトの購買につなげるデザイナーもいる。 ネガティブな感情の影響 さまざまな代替品がある現代においてネガティブな要素をユーザーに与えてしまえば、そのユーザーは簡単に他のプロダクトに乗り移ってしまう。それだけでなくそのプロダクトを提供する企業の信頼やイメージを落とすことになってしまう。 ポジティブな感情をデザインに取り入れる 逆に、ポジティブな感情をユーザーに与えることができれば、機能によってユーザーのニーズに答えることができるだけなく、より良いUXを提供することができる。 このポジティブな体験によってユーザーはそのプロダクトを気に入り、何度も使い続けてくれるようになる。 このようにエモーショナルデザインの基本は、ユーザーの強い感情を引き出し、その感情を利用してロイヤルティを高めたり、ユーザーに行動を起こしてもらうことができるという手法である。 ユーザー心理を掴むUXデザイン手法: 3対1の法則 感情を知る 単にネガティブ、ポジティブと言ってもさまざまな種類がある。そこで感情に関する研究を行なっている Robert Plutchik は人の感情の主な種類を基礎感情として8つに分類した。 怒り / 嫌悪感 / 恐怖 / 悲しみ / 予測 / 喜び / 驚き / 信頼 それぞれ対になるのは 悲しみ <> 喜び 予測 <> 驚き 怒り <> 恐怖 嫌悪感 <> 信頼 これらの基礎感情を組み合わせることもできる。 予測 + 喜び = 楽観 喜び + 信頼 = 愛 信頼 + 心配 = 従順 恐れ + 驚き = 畏敬 驚き + 悲しみ = 失望 悲しみ + 嫌悪感 = 自負の念 嫌悪感 + 怒り = 軽蔑 怒り + 予測 = 好戦 事例: Uber Eatsはどのようにエモーショナルデザインを活用しているのか? Uber Eatsでは、他のデリバリーアプリに比べ、愛着を持てるように「楽しい」や「信頼感」を得られるようなデザイン的な工夫がされている。 例えば、アプリを開いて大量に出てくる料理の写真自体に統一性を持たせている。 こういったアプリのサムネイル画像は見る人の注意を引くために、過度な装飾やユーザーを煽る文言を載せてるものをよく目にするが、Uber Eatsにはそういったストレスを感じる画像はほぼない。 それだけでなく、使われているバナーやイラストは彩度が低めのポップな雰囲気でまとまっている。全体的に清潔感があり、遊び心を感じるUIは若い人を中心に支持を集める要素の一つになった。 他にも注文をした後には料理を作っているイラストが動いていたり、配達中には予想到着時刻に加え配達員の場所も認識できるため、透明性が高く、ネガティブ要素である不安を取り除いている。 これらの工夫によって他のデリバリーアプリに比べて、気に入って使っている人が多いと考えられる。 食の多様性を支えるフードテック・スタートアップ3選 […]

グローバルデザインとしての絵文字 その効果と文化間の違い

誰もが毎日使っている絵文字。現代のコミュニケーションにおいて欠かせないものになっている。 絵文字を使うことで、簡単に相手に感情を伝えることができたり、文字だけのメッセージと比べて雰囲気が和らいだりする効果がある。 世界では毎日60億の絵文字が使われており、アメリカでは1人が1日当たりに送る絵文字の数は平均で96とされている。 この記事では、グローバルデザインとしての絵文字や、コミュニケーションにおける絵文字の役割、情報伝達、さらに、文化間で異なる絵文字の意味といった観点から解説していく。 世界的に浸透したグローバルデザイン「絵文字」は日本発祥 海外でのそのまま”emoji”と呼ばれていることからもわかるように、絵文字は日本発祥である。 世界最初の絵文字は、1999年にドコモのデザイナー栗田 穣崇 (くりたしげたか) 氏によって作られた。12×12ピクセルのグリッドでデザインされており、テキストメッセージや携帯電話の電子メールといったツールの視覚的なインターフェイスを強化した。(参考記事) スマホの普及で一気に世界共通語に 元もはガラケーを中心に利用されていた絵文字だったが、2007年のiPhoneの発表以降、徐々にスマホでも利用され始めた。 その後、2011年にAppleがキーボードに絵文字を追加し、現在のように、キーボードで言語を変えるときと同じように絵文字を使うことができるようになった。 日本で生まれ、アメリカで成長した絵文字 絵文字が世界で利用され始めるにつれ、”共通言語” としての価値が問われるようになってきた。元々は日本国内を中心に利用されていた事もあり、多くの絵文字が “日本専用” のものであった。例えば、食べ物であれば、ラーメン、カレー、おでんなど。 しかし、2015年ごろに中国系アメリカ人の2人の女性が、食べ物が日本食ばかりで、中国料理の餃子すらないことに憤慨し、より絵文字の国際化を進める活動を開始した。 その後、彼女達は絵文字の地位を向上させるための団体、Emojinationを設立。 絵文字はアメリカのUnicodeが管理 その当時から現在まで、世の中に流通している絵文字は、アメリカ・シリコンバレーにあるUnicodeが一元管理している。Unicodeは、デジタルの文字データを管理する団体で「地球上のあらゆる言語を話す全ての人が、コンピュータやスマートフォンで自分の言語を使えるようにすること」をミッションとしている。 Unicodeには、Oracle, IBM, Microsoft, Adobe, Google, Apple, Facebook, Yahoo, SAP, Huaweiなどのそうそうたる世界のIT企業が会員として名前を連ねている。 絵文字も文字エンコードと同様に、共通言語として、Unicodeが管理しているということになる。 イケてなかった当時の絵文字委員会 しかし、そこには問題があった。2015当時、2人の女性が餃子を絵文字に追加してもらいたいと訪問しに行ったところ、そこには驚くべき光景があったという。と、いうのも、絵文字の承認を議論・決定する委員会のそのほとんどが、おっちゃんたちだけで構成されており、かなりイケてない雰囲気だったという。 そして、実際に判断を下す3名は全員中年の白人男性という、ダイバーシティーのかけらもない構成だったと、彼女たちは当時を振り返り語る。 絵文字の審査基準・承認プロセス では、実際に絵文字はどのようなプロセスと審査基準を経て、採用の有無を決定されるのだろうか? 絵文字として採用されやすくなるポイント 視覚的な識別性が高い 複数の使い方・意味が含まれる 多くの人から頻繁にリクエストされている コミュニケーションギャップを埋める役割 絵文字として採用されにくくなるポイント 視覚的に識別しにくい 意味合いが具体的すぎる すでに似たようなものがある 特定のブランドロゴ、宗教シンボル、著名人を表現している このような審査基準を踏まえ、下記の審査プロセスを経て、絵文字として登録されるかどうかが判断される。ちなみに、出願から認可が降りるまでの時間は18-24ヶ月で毎年約30の絵文字が追加されているとのこと。(参考: 絵文字の申請プロセス) グローバルな餃子を考慮して承認された例: 餃子 実際に、上記のプロセスを経て “正式” な絵文字として承認された例を紹介する。冒頭でEmojination設立のきっかけともなった餃子の絵文字である。デザイナーのYiying Luによるこの絵文字は、世界中にある多種多様な餃子の絵文字が考慮された後に、できるだけ具体的になりすぎないデザインが、Unicodeによって正式採用された。 新しい絵文字は誰が申請できるの? そもそも、新しい絵文字は誰が発案、出願可能なのか?答えは簡単で「誰でも」である。個人でも、企業でも、政府機関でも申請が可能。 フィンランドの政府が「サウナ」の絵文字を申請した実例もある。 絵文字にもダイバーシティーが求められる時代 日本で生まれた絵文字だが、時代の変化とともに進化が求められている。異なる人種や性別、文化への理解と表現に加え、最近ではLGBTQに関する配慮もされ、マッチングアプリのTinderには、「カップル」を表現するために、複数の異なる絵文字が実装されている。 機種やOSによって微妙に異なる絵文字表示 ちなみに、ここまで進化してきた絵文字だが、機種依存や、OS依存のものの場合、デバイスやOS, アプリの種類によって表示が異なるものもいくつかる。特に犬の絵文字なんかは、柴犬のつもりで送ったら、受け取ったユーザーのデバイスにはプードルと表示され、ちょっとしたミスコミュニケーションになったという事例まであるという。 物議を醸したハンバーガーの絵文字論争 余談だが、このデバイス/OS依存の絵文字に関して、一時ちょっとした論争を醸した、ハンバーガーの絵文字に関するケースがある。下記のように、デバイスやOS, アプリによって微妙にレタス、トマト、肉、チーズの順番が異なり、それが “正式” なハンバーガーであるかの議論がアメリカを中心に盛り上がった。 ラーメンの絵文字も機種やOSによって微妙に異なる 日本人には馴染みの深いラーメンであるが、これもデバイスやOS, アプリによって表現が異なるのが面白い。中国風の物もあれば、日本ぽいデザインが採用されているのもある。Samsungの絵文字なんかは「これラーメン?」という感じである。 初代の絵文字はアートとしてMoMAにも展示されている ちなみに冒頭で紹介した、初期の栗田 穣崇氏による絵文字セットは現在 NY近代美術館 (MoMA) にも展示されている。 最近では絵文字も重要なデザイン要素の一部となっている 最近では絵文字を取り入れたデザインやサービスを目にする機会が増えた。 少し前に日本でもブームとなった音声SNSのClubhouseは手を振っている絵文字を使っている。また、アプリ内でも、興味のあるカテゴリーを選ぶ画面やトークルームを探す際の画面でも、カテゴリーごとに絵文字が使われており、パッと見てわかりやすいようになっている。 絵文字で感情を記録するアプリ また、日々の感情を顔の絵文字で記録する日記アプリ“Emolog”もある。カレンダー上に、アニメーションの絵文字が並べられ、記録した感情が一目でわかるようになっている。 日記の目的が、その時の感情を保存することだとすれば、文字ではなく、絵文字を使うことでそれがより簡単に叶うというところがこのアプリのポイントかもしれない。 企業のオリジナル絵文字も また、オリジナルの絵文字を制作して提供している企業もある。 例えば、あの世界的な家具メーカーのIKEAは、オリジナルの絵文字キーボードアプリを無料で提供している。家事や家具の絵文字を多くの人に使ってもらうことで、家庭内のコミュニケーションを円滑にしようという狙いだ。(参考記事) IKEAが出している動画によれば、何世紀も前から、男女間のコミュニケーションには誤解や行き違いがあり、特に家の中での誤解は多い。 その解決法として絵文字を用いたコミュニケーションを推奨している。絵文字を使うことで表現の幅が広がり、要求や不満、疑問を今までよりも簡単に相手に理解してもらえる、というものだ。 絵文字はコミュニケーションにおいて必要不可欠になった 驚くことに、過去にオックスフォード辞書のWord of the year (今年の単語)として絵文字”😂”が選ばれたことがある。その年に全世界で一番使われた絵文字だったという理由で選ばれた。それだけ絵文字は、コミュニケーションをする上で必要なものであり、文字と同じだけの意味を持つと言えるだろう。 絵文字によってソーシャルメディアで国際交流が可能に 実際に、言葉が通じない相手であっても絵文字を使えば自分の気持ちを伝えることが可能だ。 例えば、インスタグラムで他の人のストーリーに対してリアクションする際に、クイックリアクションという機能を使っている人も多いだろう。 これはリアクションをしようとした際に、デフォルトで何種類か表示されている絵文字の中から1つ選び、絵文字だけで相手のストーリーに対して反応を示せるというものだ。 この場合は文字情報は一切なく、絵文字だけで自分のリアクションを伝えるため、言語の壁関係なく世界共通でコミュニケーションを取ることができる。 絵文字は、言語が異なる文化圏をつなぐ役割を持ち、グローバルにコミュニケーションを取るには欠かせないツールである。 誤解注意!国によって違う絵文字の解釈 このようにとても便利な絵文字だが、実は一方で、国によって意味合いが変わってくる場合がある。(参考記事) 代表的なものでは、この絵文字「🙏」。 一般的に日本では、「ごめん」「ありがとう」「お願い」の意味として使われているが、実は、謝るときにこの絵文字を使う国は日本以外ではあまりない。日本では謝るときに手を合わせて謝ることが珍しくないため、文化が絵文字にも表れている。 しかし、この手を合わせた絵文字は、他の国では「祈る人」「ハイタッチ」の意味として使われている。 そしてこの絵文字「🙇‍♂️」。 土下座をしているこの絵文字、日本では謝罪の意味で使う場合がほとんどだが、他の国では「考えている人」や、「腕立て伏せをしている人」に見えるようだ。 また、この絵文字「💁‍♀️」も国によって意味合いが変わってくる。 日本では案内係という意味があり、「こちらです」と言いたいときに使われているが、アメリカでは「Whatever […]

これからのプロダクトは足すことよりも削ることが価値になる

先日、WAGYUMAFIAの浜田さん (@wagyumafia) による「無意味なサービスを増やしまくる日本人」というタイトルのエントリーを読んだ。 おもてなしの国だからなのか、日本のサービスは結構色々な機能が搭載されているイメージが強い。本当にそれらは必要なのか? もしくは、”念の為” として一応搭載させたのだろうか? 自分自身は常々、現代のサービスにおいては、機能が少なければ少ないほどユーザーから長く愛される傾向になると思っている。 最高の贅沢は何もしないこと イタリアには “何もしない贅沢” という概念がある。 フィレンツェやトスカーナ地方には、気ままな日々を何もせずにゆっくりと過ごす意味の “Il Dolce Far Niente” (英語: The sweetness of doing nothing) のフレーズがある。 甘美な怠惰をゆったりと楽しむことが、最高の贅沢であるという意味。 シリコンバレー流何もしない週末 日本の100倍のスピードで、どんどん新しいものが生み出されるシリコンバレー。そこに住む人たちはどのようなライフスタイルを送っているのだろうか?さぞ毎日忙しく、分単位でスケジュールが埋まっているのだろうか? 実は、スタートアップやGAFAなどのビッグテック企業で働く人々のその多くが、週末を中心に “何もしない” 時間を確保している。 サンフランシスコ市内にある Dolores Park と呼ばれる公園は週末になると、多くの人々が集まり、一日中 “何もしていない”。 そう、何もしていない。 芝生の上に寝転がり、カリフォルニアの青空を見上げながら、ただただ、ぼーっとしている。そうすると、ココナッツの実にラム酒を入れたどリングが、どこからともなくふるまわれる。 そして、ほろ酔いのまま、また、何もしない。 そんな週末を過ごすことで、平日から始まる秒速でのプロダクト作りに集中できたりする。 人間とよりもデバイスと過ごす時間が多い時代 しかし、忙しい日々を過ごす人々にとって、何もしない時間は意外と少ない。 そこに、スマホなどのデジタルデバイスが追加され、人間の脳は限界に近いほど常にフル回転している。 Mary Meekerによる2019 Internet Trends Reportによると、平均的な大人が1日でデジタルメディアに費やす時間は、2009年の3時間から、6.3時間と2倍以上に増えている。 直接人間と接している時間が削られ、1日の大半がデバイスによって占有され始めている。 テクノロジー中毒の危険性? 人間よりもデバイスと過ごす時間が多い時代に 機能を追加する = プロダクトの価値低下 こうなってくると、ユーザー (人間) にとっては、機能がどんどん増えていくのは迷惑でしかない。なぜなら、脳が処理しなければならない情報が増えてしまうから。 一昔前なら、プランをアップグレードすればするほど機能が豊富になっていくのが当然とされていたが、現代では逆効果。 むしろ、機能が少ない方がユーザーにとってはありがたいし、価値が高いものになる。自分の時間の最大化してくれるサービスが最高、ということになる。 逆に機能が増えれば増えるほどユーザーの脳にとっては仕事が増える分、迷惑で、プロダクトとしての価値も低く感じ始める。 機能を削ったことでヒットしたプロダクト例 実際に、結構多くの商品やサービスが機能を削ったり、制限したことでより大きな価値を生み出し、ヒットしている。 iPhone – 物理ボタンを極力排除 MacBook Air – DVDドライブ排除 Google – 検索ボックスのみ Twitter – 140文字まで Instagram – 画像のみ Tiktok – 60秒までの制限 Snapchat – 消える Medium – 記事を読むことだけにフォーカス Amazon Go – レジ会計が無い GoPro – カメラから液晶を排除 Kindle – 本を読むだけのデバイス Uber – 降車時の支払いが無い 既存の自動車の機能の多くの削減したTesla Teslaがヒットしている一番の理由は、自動車としての機能の “少なさ” だろう。ユーザー視点から考えると、これまで行ってきた様々な作業が簡略化されている。 車に近づけば自動的にドアが開くし、降りて離れれば自動的に鍵が閉まる。駐車した時もパーキングブレーキを引く必要もないし、出発するのもアクセルを踏むだけ。運転が終わったら、ドアを閉めるだけ。 何かをし忘れることが極端に少ないし、パーツも減らすことができている。とにかく煩わしさが少なくなり、これは最終的に心理的安全性にも繋がる。 Teslaはスマートカーであると同時に、禅カーでもある。 Teslaにないもの: 鍵 鍵穴 エンジン 物理ボタン […]

ホテルユニフォーム制作/最適なデザインの考え方と課題6月24日無料開催

シタテルは6月24日、オンラインセミナー「カタログ検索から始めてはいけない! ホテルユニフォームの制作・デザイン」を開催する。 <最適なユニフォームを叶えるためのデザインの考え方など解説> 宿泊施設において、顧客を出迎え […]
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UXデザイン向上につながるUI評価の10項目

UIデザイナーにとって、そのUIがなぜ優れているのかを説明できる力は重要である。またそのためには今あるUIデザインがなぜ優れているのかを分析する力が重要になる。 その際に、すでにある法則を利用することで主観的な視点や経験による個人差をなくし、なおかつスピーディーに分析できるようになる。 今からご紹介する法則は90年代初頭に、Webのユーザビリティ研究者の第一人者であるJakob Nielsenと、dialogdesignというユーザビリティコンサル会社の創設者のRolf Molichによって作られた法則であり、UXを考慮したUIデザインの10つの評価軸である。ぜひUIを分析する際や評価する際の基準として役立てていただきたい。 Visibility of system status (システムステータスの可視性) Match between system and the real world (システムと現実世界の一致) User control and freedom (ユーザーが自由にコントロールできること) Consistency and standards (一貫性と標準) Error prevention (エラー防止) Recognition rather than recall(覚えさせるより、認識) Flexibility and efficiency of use (柔軟性と効率性) Aesthetic and minimalist design (美しくミニマルなデザイン) Help users recognize, diagnose, and recover from errors (ユーザーがエラーを認識し原因を理解・解決できる) Help and documentation (ヘルプのドキュメント) 1. Visibility of system status (システムステータスの可視性) ユーザーにシステム側でどんなことが起こっているかや現状を伝える必要があるというルールである。人は先を予測できない状況に立たされるとストレスを感じやすくなる傾向にあるため、現状の状態をわかりやすくユーザーに教えることは重要である。 Adobeでは、アプリのアップデートの進行状況や、どのアプリをアップデートしているのかが表示されている。こういった気遣いはさまざまな場面で使われている。 2. Match between system and the real world (システムと現実の一致) これは、人は現実世界の動作に慣れているため、それをメタファーとしてUIに持ってくることでユーザーも理解しやすく使いやすいUIになるということだ。特にユーザーにまだ馴染みのない機能や操作をさせようとする際に効果がある。 例えば、WindowsやiOSではゴミ箱のメタファーが使用されている。これによって初めてパソコンを触った人にもここに不必要なファイルを入れれば良いということはすぐに理解することができる。 macOSに関してはゴミ箱にゴミが入っているのかどうかでもUIが変わるため、空っぽであるかそうで無いかが一眼でわかる。 3. User control and freedom (ユーザーが自由にコントロールできること) ユーザーは何かしらのミスや誤操作を行う前提でUIをデザインを作ろうというもの。間違えて消してしまったことを戻すことができるようにするなど、元に戻せる逃げ道が必要である。 1つ戻るショートカット機能やファイルを捨てると一時的にゴミ箱に溜まるのもこれにあたる。もしこれがないと一回削除を押しただけそのデータが戻らぬものとなってしまう…怖い話である。 例えばGmailは、メールを送信した際に送信自体を元に戻す機能がある。 4. Consistency and standards (一貫性と標準) これは、UIデザインや押した後の反応など操作方法は一般的に知れ渡った方法を使おうというもの。今ではデジタルサービスなどが浸透したことで、ユーザーがなんとなく理解しているデザインがある。 例えばハンバーガーメニューやインターネットタブの左上にある「戻る」などがこれに当たる。このデザインに沿わせることで認知的負荷(新たに学習させる必要性)を減らすことができる。 サービスデザインで考慮すべき3種類の心理的ハードルとは 5. Error prevention (エラー防止) ユーザーはタイプミスのような無意識な間違えや、そもそもその間違った正解を覚えたことによる意識的なエラーをしてしまう。そこで何が間違っているのかを指摘し、ここにどんな情報を入れるべきか事前に教えたりすることはとても重要である。 例えば、AppleのOSでは間違った入力をすると自動で正しい情報を教えてくれたり、自動で変換してくれたりする。 6. Recognition rather than recall (覚えさせるより、認識) これは、ユーザーがなるべく情報を覚えなくとも済むように、UI上で情報を表示しそこで思い出したり、選択させたりとユーザーの負担を減らすことだ。人にとってヒントも何もないところから思い出すことはハードルが高い。 7. Flexibility […]

これからのブランドはどんどん透明になっていく

皆さんは、最近のApple製品に “とある” 共通点があることに気づいただろうか? そう、あのロゴがかなり目立たなくなってきているのだ。例えば、以前は必ず画面の下の真ん中の目立つ場所にあったAppleのロゴが、最新のiMacにはない。なんか変な感じがする。 ステータスシンボルのAppleロゴが無い! 同様に、ヘッドフォンのAirPods Maxにもロゴが無い。 これまでのAppleであれば、Mac, iPhoneなどの製品には必ず目立つ箇所にロゴが掲載されていたり、場合によっては、ロゴが光る仕様にまでなっていた。 スタバでドヤリングと呼ばれるくらい、Appleのロゴがついた製品を持っていることが一つのステータスシンボルになっていた。 しかし、新しく発表される製品にはなぜか、あの美しいロゴが隠されている。結構なお値段の商品なのに。 ちなみに、Appleが買収したBeatsのヘッドフォンなどは、左右に大きく掲載されているロゴが人気を集め、その商品の大きな魅力になっていた。 パタゴニアもロゴの掲載を控え始めた 実は、商品に目立つようにロゴを表示しなくなったのは、Appleだけではない。人気アパレルブランドのパタゴニアも製品上のロゴ掲載を控えるようにし始めている。 よりサステイナブルなブランドを目指しているのが理由。 パタゴニアの発表によると、一つの製品をより長く着てもらうこよで、より環境に配慮した結果につなげる狙いがあるという。 同ブランドの調査では、ロゴが入ったシャツやコートは、他の人に譲る可能性が低くなったり、部屋着としてきる頻度も下がるという。結果として、製品をきてもらえる “寿命” が短くなってしまいがちだという。 ライフサイクルの長い服を着てもらうことは、持続可能な世の中を実現する第一歩になると考えた。 ロゴを掲載しなくなったことで、パタゴニアは、ある程度の経済的損失を被ることになるだろう。 この変化は、パタゴニアが短期の商業的な結果よりも、より長期的に社会に貢献できるブランドを目指している決意表明でもある。 全てのデザイナーが知っておくべきエシカルデザインとは ニューバランスもロゴなしスニーカーを発表 スティーブ・ジョブスが愛用したことで知られるスニーカーブランドのニューバランスも、最新のコレクションでトレードマークの “N” のロゴを取り除いたスニーカーを発表した。 同ブランドは、1906年のブランド誕生から1世紀以上となる歴史と伝統を祝し、毎年5月15日を「Grey Day」とし、「グレー」をモチーフにした商品を展開。 今年発表された「Grey Day Collection」のうち、限定モデルの “574 Un-N-Ding” には、両サイドに “N” のロゴが掲載されていない。 多くのD2Cブランドもロゴの表記が最小限 そういえば、新規参入が多いD2C系のブランドのその多くも、ロゴの表記がかなり控えめになっていることに気づく。EverlaneやAllbirdsのほとんどのプロダクトにはロゴが表記されていないし、メガネのWarby Parkerもかなり控えめな扱い。これらのD2Cブランドも、かなり “透明性” の高いブランドといえるだろう。 ロゴを掲載しない本当の狙い Appleやパタゴニアなどのトップブランドがロゴの掲載を控え始めている背景には、ブランドとしての透明性を高めたいという狙いがあると考えられる。 ネットを通じてさまざまな情報が直に得られる現代においては、ブランディングを行う際にも、より消費者に対して正直で、透明性の高い存在になる必要がある。 以前までは、”ブランドイメージ” を重視し、ロゴやデザインを通じてそのイメージづくりを行うのがブランディングの主な役割だったが、現在においては、それはもはや”まやかし”に近く、あまり通用しなくなってきた。 であれば、表面を取り繕うよりも、自分たちのバリューがより伝わるブランディングを行うことが、よりファンを増やすための正しい戦略になってくる。 言い換えると、より透明で、可視性の高いブランドが求められる。 ビートラックスがリブランディングにかけた思い – ギャップを埋めるために – 透明性の高いブランドとは? 透明性の高いブランドとは、一言で言えば、消費者に対して率直で正直であること。過度な広告や、自社に不利な事実をあえて隠さずに、素直に顧客と対話する姿勢のあるブランドである。 自分たちの歴史やビジョン、従業員に求めるバリューなどもクリアに伝えることで、顧客との信頼性が高くなる。 また、ネット経由の情報がリアルタイムで伝わる現代においては、ブランド発信の一方的なメッセージだけでは、ブランド構築は難しい。 例えば、社会的な問題に対して、自社の姿勢をしっかりと示し、より良い世の中のために自分たちがどのように貢献できるかを、ブランドとして体現する必要もある。 以前にNikeがBLMや人種問題に対してかなり積極的なメッセージングを発信したのも、透明性を上げる活動の一つである。 一人の男が4年前に放ったメッセージが今、世界を動かし始めた 完璧な人はいない。完璧なブランドもない。 ブランド施策を提供する際に、多くのクライアントはより “完璧” なイメージの構築を求める。しかし、実はそれは逆効果になることの方が多い。 というのも、現代においては企業のブランドも一人の人間のような存在で、顧客とブランドの関係もそれに近い。 完璧な人間が存在しないように、完璧なブランドも存在しない。むしろ、そのブランドの裏にある生々しいストーリーこそが、ユニークな価値になる。 自分の会社を追い出されたこと、倒産しかけたこと、短い余命を感じ、必死にイノベーションを生み出したこと。そんなストーリーがAppleを世界一のブランドに成長させた大きな要因だと思う。

サービス開発における リーン | アジャイル | デザイン思考の使い分け方

新しいサービスをより速い速度で開発する手法として、リーン、アジャイル、そしてデザイン思考のキーワードが巷で飛び交っている。 これら横文字のバズワードは、スタートアップっぽく、使うだけでそれっぽく聞こえると思う人もいる。それもあって、あまり意味もしっかりと理解しないまま乱用されているケースもあるだろう。 しかし、それぞれに内容は異なり、利用するべき最適なシーンも違う。今回は、混合されがちなリーン、アジャイル、デザイン思考のそれぞれの役割と、利用するべき目的などについてまとめてみた。 “イノベーション“や”DX”をバズワードで終わらせないために大切な2つのこと それぞれのプロセス自体は結構近しい まず初めに、これらの手法が混合されがちな一番の理由として、それらのプロセスに共通点が多いからというのがあげられる。ざっと見てみると、どれも下記のようなプロセスを踏んでいる。 課題を定義する 課題を理解する 解決策としての仮説を立てる 解決策のテスト用にアプトプットする (スケッチ、モックアップ、プロトタイプ、MVP等) アウトプットを元にテストを行う 結果を分析する 結果によって今後の方針 (テストを繰り返す、調整する、方向転換する) を決める これら全てに共通するのは、なるべく簡単な方法で、迅速に課題解決案のテストを可能にしようという考え方である。ここで重要になってくるのが、何をどのような手法で検証しようとしているかだ。 一つめの違いはアウトプット手法 リーン、アジャイル、デザイン思考の違いの一つは、どのような手法でアウトプットを生み出していくかのプロセス部分だと考えられる。 まずは、それぞれのプロセスで生み出される最も一般的なアウトプットを見てみよう。 リーン: サービスLPやオンライン広告など、テストマーケに繋がるもの アジャイル: 操作可能なソフトウェアやMVP デザイン思考: スケッチ、UIモックアップなど、見た目的にイメージが伝わるもの なぜアウトプットが異なるのか? なぜそもそも3つのプロセスでアウトプットの種類が異なるのだろうか?その理由は、それらのプロセスが生み出された背景にある。それぞれが検証するべき課題や利用シーンが異なることが多いからだと考えられる。 リーン: スタートアップ起業家を中心に、ビジネス的課題や消費者ニーズの実証測定を行うためのプロセスとして生み出された アジャイル: ソフトウェアエンジニアを中心に、エンジニアリングに関する課題を解決するためのプロセスとして生み出された デザイン思考: デザイナーを中心に、一般的なユーザーにおける課題を検証するためのプロセスとして生み出され ちなみに、補足として、デザイン思考はユーザーのニーズ、テクノロジーの可能性、ビジネスの成功に必要な要件を統合すすることによって、人々に求められる実現可能なイノベーションを生み出すためのプロセスとなっている。 ここがちゃうねんデザイン思考。5つの違いを理解してモヤモヤを解決 解決したい課題に応じてプロセスを選ぶのが基本 したがって、リーン、アジャイル、デザイン思考のどのプロセスを選ぶかは、何を検証したいか、そして解決しようとしている問題の種類で決めるのが良いだろう。 慣れているプロセスを採用するのもアリ また、チームメンバーの構成によってどのプロセスを採用するかを選ぶ時もある。(例: エンジニア中心のチームはアジャイル型で進める等) これは意外と理にかなっている。というのも、新規サービスは多くの場合、不明瞭な点が多く、慣れない方法で進めようとすることで、よりリスク要因が高まる。 普段利用していないプロセスを採用したことで物事を複雑にし、余計に時間がかかってしまい、結果が見えにくくなる可能性もある。 それよりも過去にやったこのあるプロセスを適用した方が、より効率的にプロジェクトを進めることができたりもする。 起業家がリーンを好むのも、エンジニアがアジャイルを好むのも、デザイナーがデザイン思考を好むのも、すべては彼らのバックグラウンドと、彼らがすでに慣れ親しんだ手法を利用して課題解決を検証しようとしているからでもある。 参考: 現代のスタートアップチーム構成における6つの役割とは それぞれのプロセスで価値測定のフォーカスも異なる リーン、アジャイル、デザイン思考は全てサービスの検証に利用されるプロセスだが、3つの方法は、それぞれ異なるタイプの価値に焦点を当てている。 リーン: 市場におけるバリデーションに焦点を当てている。つまり、自分たちのアイデアに対して十分な市場があるかどうかを判断する アジャイル: 製品の利用価値の検証に焦点を当てている。つまり、お客様がすぐに使用し、メリットを得られるような実用的な製品であるかを検証する デザイン思考: ユーザーにとってのサービス価値の発見に焦点を当てている。つまり、人々が実際に望んでいることを読み解く 現代においては重複するエリアも多い 上記の説明では、それぞれの検証ゴールがキッパリと分かれているように見えるかもしれない。しかし、実際のサービス開発の現場では、この3つはかなりの重なりがある。 例えば、自分のアイデアにお金を払ってくれる市場があるかどうかを判断するためにリーンのプロセスを使ったとしても、その市場にいるそれぞれの人が具体的に、何を求めているのかを明らかにし、それを理解するためには、デザイン思考のプロセスが必要となる。 また、サービスコンセプト的に受け入れられそうでも、実際に利用してもらえるか、そしてそれ以上に利用し続けてもらえるかを検証するには、アジャイル型で開発したサービスに触れてもらうことも必要になるかもしれない。 サービスデザインにおける下記の図においては、Desirebilityをデザイン思考が、Viabilityをリーンで、Feasibilityをアジャイルで検証することが一般的。その一方で、重複エリアはそれらを複合して利用するのが良い。 形にこだわらずに臨機応変に利用するのがオススメ どのプロセスを活用してサービスの価値を検証していけば良いか迷うケースもある。でも実は、どのプロセスを選択するかは大きな問題ではない。 いずれにしても、自分のスキルや経験に合ったプロセスをまずは選ぶのが良いだろう。 ソフトウェアの新機能を実現するためにアジャイルを使用し、それを潜在的な顧客が購入するかどうかを測定するためにリーンの手法で市場の検証を行う。など、組み合わせて使うこともアリ。 また、その逆のやり方もありえる。例えば、サービスができる前にまずはオンライン広告を走らせ、消費者の反応をみる。その中で反応のよかったもののプロトタイプを作ってユーザーテストを行うなど。 重要なのは、適材適所で臨機応変に対応できる仕組みだろう。 参考: デザイン思考のプロセスだけでは革新的な製品が生まれない?説 組織のカルチャー変革が求められる事も 我々、ビートラックスがデザイン思考のプロセスをクライアントに提供する際の多くは、組織のカルチャー変革もセットで行うことが多い。 というのも、例えば、従業員が顧客と直接話すことを嫌がったり、できなかったりするような組織では、顧客から直接フィードバックを得ることが重要な要素であるため、デザイン思考を導入しようとしてもうまくいかないから。 したがって、3つのプロセスのどれを採用するかは、会社や組織の状況によることもある。言い換えると、自分たちの強みや組織文化に合致していないプロセスを採用してもうまくいかない。 DXを推進する前に必要な5つのカルチャー変革 まとめ: 重要なのはどのプロセスかよりも最終的な結果 リーン、アジャイル、デザイン思考は、実は全て速いスピードでサービスの価値を検証するためのプロセスである。 その一方で、それぞれ検証するエリアが少しづつ異なるため、何を測定したいかで使い分けるのが良い。 ユーザーの潜在的なニーズを理解し、アイデアを視覚的に伝え、ユーザーの反応を得たい時はデザイン思考を サービスに対して十分な市場があり、サービスのビジネスポテンシャルを測りたい時はリーンを 動く製品を段階的にユーザーの手に渡し、実際に使い始めてもらう必要があるなら、アジャイルを このように、それぞれの目的と、検証するために作り出すアウトプットが異なるので、何を検証したいかによって使い分ける。スタッフの経験値や組織のカルチャーに合わせて。どれにするかを選択する。そして多くの場合は、その3つを複合して使うことが最も有益な結果が得られるだろう。

なぜ制約があった方が人はクリエイティブになれるのか?

一番仕事が “はかどる” のはどんな時?と聞かれたら、トップ3に必ず入るのが「移動中」と「滞在先」。飛行機や新幹線の中で仕事をしている時がもっとも効率が良い。また、設備が整っているオフィスよりも、出張先のホテルでの方が仕事がサクサク進むことも多い。 これは恐らく時間や場所の制約や、日常と異なる刺激があることで、集中力や創造力が高まってるからではないかと思う。 ブログは無理だけど、Twitterならサクサク書けちゃう現象 また、ブログは全然書く気にならないけど、Twitterぐらいならいつでも気楽に書ける気がする。 ブログは文字数の制限がない分、気後れしてしまう。その点Twitterは140文字の制限があるため、短い文章でも良いというルールのもと、文章を書くモチベーションが上がる。 これも、制約があるからこそモチベーションが上がるという、似たような状況なのではないか? 自由度が高すぎると動けなる 全く自由な状態に置かれると、無限の可能性に圧倒されてしまって、何もしないという状況も多い。 例えば、A4の紙を渡されて「何か作って」と言われても何から初めて良いかわからない。しかし、紙とクレヨンとハサミを渡して、「これを使って空を飛べるものを作って」とリクエストされれば、紙飛行機や、折り鶴や、蝶々など、いくつかのアイディアを思いつくことができる。 ある程度お題が決まっていて、制約がある方が動き出しやすく、発想しやすいのではないかと感じる。夏休みの宿題を直前までやらなくて良いのにも共通するだろう。また、選択肢が多いと、どれを選んで良いか分からず、選べなくなる状態にも通じる。 制約を与えると脳が活性化する どうやらこれは科学的にも実証されているらしく、一定の制約は脳力を高める効果があるという。 というのも、脳はなるべく少ないエネルギーで稼働するように作られており、通常はすぐに省エネで運用しようとする。そして、強制されない限り、ほとんど何も考えないことが多くなりがちとか。 言い換えると、放っておくと脳はすぐにだらける。ということらしい。それを刺激してあげるのが、何かしらの制約である。 そうすることで、はじめの一歩を踏み出し、そして頭をひねってユニークな発想を絞り出すようになる。制約があるからこそ、考えざるを得ない状態になって初めて脳は本気で動き始める。 制約と創造性の関係は、プレッシャーと動機の相関関係を示したヤーキーズ・ドットソン法則にも通じるところがあるだろう。 関連: ニュートンのイノベーションは隔離体験から生まれた テクノロジーに制限があるとスキルが高くなる そういえば、技術者で能力の高い人の多くは、制約の多い状態での下積みが重要な経験になっているという説がある。 例えば、パソコンのスペックが低かったり、ネットのスピードが遅かった時代のプログラマーは、プログラムの実行スピードを少しでも速くするために、一行でも少なくコードを書く方法を必死に生み出していた。 それにより、現代の恵まれた環境で書かれるプログラムよりも、よっぽどクリーンで効率的なプログラムが書けるという。その昔、メモ帳でHTMLコードを書いていた人は、スキルが高かったのも覚えている。 同じように、パソコンのHD容量の少なかった時代のデザイナーは、ファイルサイズを小さくするために、できるだけアンカーポイントを減らすデザイン手法や、少ない色数で表現する手法を編み出した。それが転じて、表現の幅が広がったという説がある。と、デザインスクールの先生が語っていた。 参考: ミニマルデザインのススメ – 基本知識と7つのヒント 制約こそがクリエイティビティーの起爆剤 そう、どうやら制約が多い方が、よりユニークな発想や手法を編み出しやすいようだ。言い換えると、クリエイティブなアイディアは制約が無いとなかなか出てこない。 意外かもしれないが、創造力を高めるには制約が不可欠になる。 成功しているクリエイティブな人たちは、制約は自分の努力を制限するものではなく、むしろ逆手にとり、飛躍させる原動力に変換させている。 参考: やりたいことが見つからない人にセルフ鎖国のススメ 制約があった方が良い理由 始めやすい スピードを上げられる 型にはまらない発想が思いつく 発想のリフレームをするようになる 与えられたものの最大活用方法を思いつく 関連: リフレーミングとは? – イノベーションの秘訣は問題へのアプローチの仕方にある 事例: 多くのイノベーションは制約から生み出されている 実際に新しい製品を発明や型破りな表現は多くの場合、数々の制約から生まれている。制約はさまざまな創造的な領域で役割を果たしていて、現代の最も革新的な創造的製品の多くに見られる。 では、実際に制約あったからこそ生み出された事例をいくつか見てみよう。 海外から来た人が仰天 – 機械式立体駐車場とカプセルホテル 日本にはかなりユニークな仕組みがいくつかあるが、海外から来た人がびっくりするのが、カプセルホテルと機械式立体駐車場。 これらは、場所の制限がある日本だからこそ生み出された仕組み。だだっ広いアメリカでは絶対に思いつかない発想である。 CGでは青春の空気感は伝わらないから – ポカリスエット 最近話題になったポカリスエットのCM。一見すると、かなり特殊なCGを使ってるのかな?と感じる。しかし、メイキング動画を見ると、極力物理的なセットと、リアルな動きでメッセージを伝えている。 技術的にも予算的にも利用でできただろうCGと特殊効果を最低限に抑えることで、青春の空気感がダイレクトに伝わってくる。 一部のグリーンスクリーンを除き、CGの利用を極力抑えたCM シンセサイザーは一切使っておりません – Queen ボヘミアン・ラプソディでお馴染みのQueenは、綺麗なメロディーラインとハーモニーで人気を集めたバンド。 彼らのサウンドは、同じ時代の他のロックバンドと比べてかなりユニーク。その秘密の一つが、とある制約にある。 デビュー初期の頃はその当時に普及していたシンセサイザーを利用する余裕がなかった。その代わり、ギターのサウンドや、コーラスを駆使することで、きらびやかな音色を実現した。 実際、Queenの初期の頃のアルバムの裏には”No Synthesizers! (シンセは使ってない)”と明記されている。 安易にシンセに頼らなかったことで、ブライアン・メイのユニークなギターサウンドと、唯一無二のコーラスハーモニーが生み出された。 スコッチの原材料が取れないことで発明されたお酒 – バーボン アメリカで作られるウィスキーの多くが、バーボンと呼ばれる。その起源は、ウイスキーの祖国であるスコットランドやアイルランドからアメリカに移住してきた人たちが、アメリカでも同様のお酒を作ろうとしていた事から始まる。 そこで、一つ大きな制約に直面することになった。アメリカでは、母国のウィスキーの主な原料である大麦があまり取れないのだ。 そこで頭をひねり、発想を転換した。そこから生み出されたのが、移民した地域の特産品であるトウモロコシを主原料としたウイスキー、バーボンである。現在では、スコッチと人気を二分するほどの存在になっている。 制約を逆手に取ったアーティスト – Phil Hansen 制限を最大のクリエイティビティーに変換したアーティストもいる。Phil Hansenは、自身の身体的ハンデを逆手に取り、ユニークな作品を数多く生み出している。 空手チョップだけで描いたブルース・リーの肖像画や、スタバのカップを利用した作品など。彼のTED Talkは一見の価値あり。 自身のハンデを活用してクリエイティブな作品を作り出すPhil Hansen ある意味本物よりもカッコ良い – ダンボルギーニ 高級スポーツカーとしてフェラーリと肩を並べるのがランボルギーニ。価格が数千万円もする事から、簡単には手が届かない。 これを宮城県の段ボール加工会社の6名が、仕事の合間をぬって段ボールで作ってしまった。もともとランボルギーニ好きの社長による「買えないなら、作っちゃえば?」という発想だ。 その完成度の高さが世界で話題になり、ついに本家のランボルギーニ社から連絡が届き、本物の車両と一緒に展示されるまでに。現在では、震災復興のシンボルとなっている。 関連: 社内イノベーションはこのように生まれた – ランボルギーニ ミウラ誕生秘話 コマ撮りがCGよりも不気味 – 初代ターミネーター 今でこそ大人気シリーズとなっているターミネーターだが、その第一作はかなり低予算のB級映画だった。しかし、初代の人気はシリーズの中でもトップレベル。 大きな理由の一つが、その映像のリアルさからくる怖さ。 予算の関係で、CGや特殊効果の利用が制限されていたため、ターミネーターの動きをコマ撮りで表現した。そのぎこちない動きが逆にロボットっぽく、独特の不気味さを実現した。 英語を”話さない”ことが強い個性に – こんまり アメリカで大人気のこんまりも、制約を上手に変換している。 彼女は以前は英語を話していたが、現在は、日本語+通訳で話すことが通例となっている。そして、それが意外と良い。日本語特有のキュート表現とトーンが、彼女らしさが前面に押し出し、ユニークな雰囲気を醸し出している。 苦手なことを無理してどうにかしようとするのではなく、自身のユニークさにフォーカスした良い例。 こんまりから学ぶグローバル進出3つのポイント 限られた文字数で複数のメッセージを込める […]

デザイナーとアーティスト3つの大きな違い

何かと混合されがちなデザインとアート。両方のアウトプットがビジュアルになりがちなことや、日本の場合だと、美大出身のデザイナーも多いことから、この二つの領域が混ざっているケースが結構多い。
しかし、実際の現場の仕事内容はかなり異なる。デザインとアートの違いは、それぞれ一言で表現するとわかりやすい。
デザインとは
“与えられた制限内でユーザー視点に立ち、最大の結果を出すためのプロセス”
アートとは
“できるだけ制限を排除し、受け取る者にインパクトを与えるための自己表現…

UXデザイナーなら知っておきたいデザインに関する10の法則

UXデザインを行う際には、感覚ではなく複数のロジックを活用することで、より精度の高いプロダクトを創り出すことができる。そのプロダクトを人間が利用する場合、ユーザーの視覚や行動心理学などをしっかりと理解し、活用すればUXデザイナーとしての能力が一段と高まるはず。 今回紹介するのは、複数あるUXデザインにおける法則のうち、ビートラックスのデザインチームでも頻繁に利用される代表的な10の法則。プロのデザイナーなら、これは押さえておきたい。 全てのUXデザイナーが知っておくべき10の法則 ヤコブの法則 ヒックの法則 80/20の法則 パーキンソンの法則 フィッツの法則 ミラーの法則 テスラーの法則 FBMモデル ドハティのしきい値 3対1の法則 ヤコブの法則 ユーザービリティーの父であるヤコブ・ニールセンが提唱する法則。一般的なユーザーは、アプリやプロダクト、Webサイトなどに、既存のものと同じような動作体験を望む。ユーザーは慣れ親しんだプロダクトに対して抱いていた期待を、似たような製品にも持つというものだ。 既存のメンタルモデルを活用することで、ジェスチャー、視覚的な合図、スクロールなど、慣れ親しんだ動作でタスクに集中できるような、優れたユーザー体験を実現することができる。それにより、ユーザーが新しいモデルの学習をしなくとも良いため、体験価値が高まる。 デザイナーはついついクリエイティブなUIをデザインしようとしがちだが、今までにないような真新しい体験は、ユーザーを混乱させるだけである。最近のソーシャルメディア系のUIがどれも似たものになっていることにも、この法則を活用していると言える。 ヒックの法則 ユーザーが決断に要する時間は、選択肢の数や複雑さに応じて長くなるというもの。これにより、「選択肢が多いほど迷う」や「選択肢が多すぎると何も選ばなくなる」という現象を生み出す法則。 選択肢が多過ぎるとユーザーは迷ってしまい、こちらが望む行動を起こさないという好例と言える。一般的には選択肢を多く提示した方がユーザーが喜ぶと思われがちであるが、エンゲージメントを高めたいのであれば間違いになりうる。 彼らは選択肢が多過ぎると精神的プレッシャーを感じ、行動を起こさなくなってしまう。“選ぶ” という行動自体がハードルになってしまうのが理由。従って、商品やコンテンツが沢山ある場合は、なるべく小出しにしてユーザーに無駄なプレッシャーを与えないようにする方が良い。 コンバージョン率を向上させる7つの方法【UXデザイン】 80/20の法則 結果の80%は、たった20%の原因から生み出されているという法則。「パレートの法則」「ばらつきの法則」「働きアリの法則」などとも呼ばれている。一般的には、売上の80%は、20%のチャンネルから生み出されている。10ページのスライドのうち、最も重要な2ページで全体の80%が伝わる、など。 元々は経済学における法則として考えられたが、UXデザインにでも重要な法則となっている。 例えば、ユーザーは全体の機能のうち、20%しか使わず、その20%で80%の目標は達成される。UXデザインにおいては、ユーザー体験の中で最も重要な20%が何かを特定するのが重要になると言い換えることもできる。 パーキンソンの法則 正式には「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」と表現される法則。一言で表現すると「先延ばしの法則」。時間に余裕があるとわかると、脳がリラックスする。 逆に、締め切りのプレッシャーを感じると、重要なことをすることや、時間内に終わらせなければならないことに集中する効果を与えられる。 この法則をUXデザインに当てはめると、コンバージョンを高めるためにユーザーに制限時間を設けるテクニックがある。Amazonで表示される「いつまでにオーダーすると明日中に届く」や、ワンタイムパスワードにカウントダウン時計が表示されるのもこの手法を活用している。 ユーザーを夢中にさせるAmazonが採用する4つのUXデザイン要素 フィッツの法則 人間の行動をモデル化する方程式で、「対象の大きさ」と「対象までの距離」と「対象の選択しづらさ」との相関関係を説明する法則である。 画面上で、マウスなどの入力装置を使ってものを指し示すときにかかる時間を計測するモデルで、ユーザーインターフェース設計における普遍的な法則とされている。 現在のポインターからの距離が小さくターゲット面の奥行きが大きいものほど短い時間で済み、ポインターからの距離が大きくターゲット面の奥行きが小さいものほど長い時間がかかる。つまり近くて大きいものほどポイントしやすく、遠くて小さいものほどポイントしにくい。 UXデザインへの具体的な活用例としては、モバイルアプリのボタンは大きく親指に近い方が利用体験が高まる。 ミラーの法則 平均的なユーザーがいっぺんに覚えられるのは最大で7つ (±2)であるという法則。プリンストン大学教授、ジョージ・ミラーによる研修では、即時記憶と絶対判断のスパンは、ともに7個程度の情報に限られるとの結果がでている。例えば、電話番号やパスワードで短期的に記憶できる桁数は平均的に7つになる。 この法則に従い、画面に表示されるオブジェクトを7つ以下、もしくは5つまでに抑えると、ユーザーが覚えやすかったり、選択肢を7つ以内に設定することで、ユーザーにストレスを与えないようにしたりするUXデザインのテクニックがある。 優れたユーザビリティを実現する25のUXデザイン基本概念 テスラーの法則 シリコンバレーの研究者、ラリー・テスラーによる「複雑さの保存の法則」とも呼ばれる法則。どんなシステムやプロセスにも、減らすことのできない複雑さが存在するというもの。 ユーザー体験においても、それ以上単純化できない「臨界点」があり、それ以降は本来備わっている複雑性を移動できるだけだという考え方である。 この法則によると、どれだけシンプルなユーザー体験を実現しようとしても、そこには限界点が生じる。そこで、なるべく最後の複雑さをサービスやプロダクト側に寄せ、ユーザーにはできるだけスムーズな体験を実現することに注力するべきである。 優れたデザインは、複雑さの負担がユーザーではなくサービス側で処理する必要がある。 FBMモデル スタンフォード大教授のBJ Foggが唱えたビヘイビアモデルだ。人の行動や習慣というものは、3つの要因により構成されており、それを上手く活用することで人の行動や習慣をある程度思い通りにすることが出来るという法則。 ユーザーの習慣や行動を作り出すためには3つの不可欠な要因がある。その3つの要因とは “モチベーション、能力、引き金” である。これらの要因は互いに関連しており、プロダクトやサービスが3つの要因すべてを満たさなければ、ユーザーはそれを自分の行動や習慣の中に取り入れない。 行動心理学を利用したデザイン – ビヘイビアデザイン Part1~【UXデザイン】 ドハティのしきい値 システムのフィードバック時間が0.4秒以下になると、ユーザーの体験が“苦痛”から“中毒性”に変わるという法則。これは、1982年にウォルター・J・ドハティとアラビンド・J・タダーニによる研究を元にしている。 その研究によると、人間が認識→判断→処理→反応する際のスピードが、平均で0.4秒であることから、UXにおけるスピードを0.4秒以内に納めることで、ユーザーへのストレスを下げ、ユーザビリティをあげることにつながる。例えば、ページのロードスピード、ボタンが反応するまでの時間、メニューが開くまでの時間などの基準として利用される。 サービスデザインで考慮すべき3種類の心理的ハードルとは 3対1の法則 ポジティブな感情がネガティブな感情を上回るには3つのポジティブな感情が必要であるという理論。これはGoogleも採用している、ユーザーが受け取るポジティブな感情とネガティブな感情を“瓶”の中に入れ、その“重さ”を天秤にかけるという方法。 このポジティブ3に対してネガティブ1を基準にデザインを行えば、ユーザーが喜ぶ体験を届けることができる。 Googleも採用するめっちゃ使えるUXデザイン手法

シタテル/「ユニフォームデザインの決め方」3月31日まで見逃し配信

シタテルは3月31日まで、「最短1カ月でこだわりのユニフォームを作る。『カタログ検索から始めてはいけない!ユニフォームデザインの決め方』」の見逃し配信を実施する。 <「ユニフォームデザインの決め方」見逃し配信> 2月に開 […]
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プロのデザイナーとして活躍するために必要な8つの非デザインスキル

デザイン会社の経営者として、これまで数多くのデザイナーと接してきた。その中で、どのようなデザイナーが活躍するのか、成長するのか、そして成功できるかのパターンが分かってきた。 デザイナーの価値を左右するのは非デザインスキルだ! 実は、重要なのは、”デザイン能力” だけではない。むしろ、デザイナーが成功するには、デザイン能力と同じぐらい、もしかしたらそれ以上に大切なスキルがある。 逆にデザイン力がめっちゃ高いのに、非常に残念な状態にハマっているデザイナーも見てきた。それらを踏まえ、デザイナーに求められる8つの非デザインスキルを紹介する。 なぜ日本ではデザイナーの地位が上がらないのか? デザイナーとして成功するために必要なデザイン以外の8つのスキル では、どのようなスキルがデザイナーにとって重要になってくるのか。これまでの経験とこれからの時代の変化を考えると、下記の8つのスキルになると考えられる。 では、デザイナーにとって、このレモンダイアグラムに表記されている、それぞれのスキルがなぜ重要なのかを考えてみよう。 共感力 「Empathy = 共感」は、デザインをする際の基本になる。デザイン思考の第1歩は「ユーザーに対する共感と深い理解」から始まる。作ったもの使ってくれる人の気持ちに共感できないと、どれほどデザイン力が高くても、自分が作りたいものを作るだけの、傲慢なアーティストと変わらない。 デザイン思考の第一歩:共感力を高める3つの方法 スピード GoodなデザイナーとGreatなデザイナーを分ける一つの境界線が仕事におけるスピードの差。同じクオリティーのデザインアウトプットを行うにしても、スピードが高いほどその仕事の価値が上がる。 これを式にすると「デザイン力 = デザインクオリティー x スピード」で表現される。どんなに素晴らしいデザインを作れても、プロの現場でスピードが遅いのは命取りになる。 シリコンバレーの企業はどのようにしてスピードを上げているのか? リサーチ能力 適切なデザインを行う際には、適切なリサーチが求められる。一般的に、デザイナーの仕事の先には使ってくれる人たちがいるので、その人々に最適なデザインを生み出すには、ユーザーの価値観や彼らが置かれた環境、状況といったコンテキストをしっかりと理解することが必要不可欠である。 また、社会の変化やビジネス的なトレンドに関しても事前にリサーチしておけば、デザインの精度が高まる。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のき ビジネスセンス 日本ではいまだにデザインとビジネスは結構遠い位置にいるように考えられている。現に、企業においてデザイナーが重要なポストにつくことはまだまだ少ないし、デザイナー出身の起業家も少ない。 しかし、海外に目を向けてみると、デザインの最も重要な役割がビジネスにおける利益の最大化で、デザイン力を活用して企業を成長させている事例に事欠かない。 なぜ日本にはデザイナー出身の経営者が少ないのか コーディング能力 絵を描くのがデザイナーの仕事、コーディングするのがエンジニアの仕事。そんな時代はとっくに終わっている。 現代では、デザイナーと言えども、自分の作り出したデザインをテスト用に動かしたり、エンジニアとのやりとりを円滑にしたり、プロトタイプ作成のためなど、コーディング能力が求められるシーンがもの凄く多い。特にデジタルサービスであれば、サクッとコーディングできるデザイナーの需要は非常に高い。 【これからのスキル】デザイナーとエンジニアの境界線がどんどん無くなる マネージされ力 世界中で最もマネージしにくい人種がデザイナーである。これは多くのデザイナーをマネージしてきた感想。その仕事柄、自己承認欲求は強いし、ダメ出しに弱い。そして、一癖も二癖もある人が多いのがデザイナー。 逆に言うと、素直にフィードバックを受け止め、それを忠実にデザインに反映できる能力があるだけでも、デザイナーとしての評価が爆上がりする。 デザイナーを目指す前に知っておいてほしいこと: 【対談】上杉周作 x Brandon K. Hill – デザインの裏側 コンテンツ作成力 「デザインが先か、コンテンツが先か、それが問題だ。」これはWebデザインの現場でよく聞かれるフレーズ。特にデザインが装飾プラスアルファ程度にしか考えていないデザイナーは、コンテンツがないとデザインが行えないと思っている。もし自分でコンテンツが作れればそんな問題はすぐに解決する。 また、文字や画像、音などのコンテンツで世の中に情報を発信できるようになれば、よりデザイナーとての説得力も高まる。 Airbnbの創設者に学ぶストーリーボードの必要性 コミュニケーション能力 デザイナーの仕事の三分の一はコミュニケーションに関するものである。これは意外と知られていないが、プロの現場では間違いなくそう。むしろ、デザイン作業はアウトプット作成としての全体の仕事のごく一部であり、その多くが顧客やユーザーとのやりとり、メンバーとのディスカッション、そして作り出したものに対してのプレゼンテーションに費やされる。 それを考えると、デザイン力が高くてもコミュ力が低いでデザイナーの価値は格段に低い。 デザイナーの役割とその意外な仕事内容とは ボーナス: 性格の良さ 上記の8つのスキルに加えて、性格が良いのもプラスになる。これはデザイナーに限ったことではないが、やっぱり誰でも一緒に仕事をしてて心地よい人と時間を過ごしたいと感じる。 デザイナーとは職種ではなくマインドセットである まとめ: デザイナーとして活躍できるかは非デザインスキルが左右する よりデザイナーの重要性が高まるにつれて、デザイナーに求められるスキルセットも変化している。それと同時に、非デザインスキルもとてもプロデザイナーにとっては、重要なファクターになっている。これは結構盲点で、デザインに関してのスキルばかり求め続けてもなかなか仕事が増えなかったり、キャリアアップできなかったりする。その一番の理由は、非デザインスキルが伴っていないから。 そもそも、非デザイナーからしてみると、専門的な能力よりも、一緒に仕事がしやすい、楽しい、プロジェクトがうまくいく事の方が重要だったりする。この辺も、一度ユーザー視点で考えてみると新たな発見があるかもしれない。 デザイナーに必要なのはスキルアップではなくスキルチェンジ

UXデザイナー直伝!本当に機能するカスタマージャーニーマップの作るポイント

マーケターやデザイナーなどUXデザインに関係する誰もが当たり前に使うようになったカスタマージャーニーマップ。しかし、多くの場合は新規商品開発や新規サービスの提案フェーズのプロセスの一部として使われており、公表されることもないことから、我々が作っているマップは本当に効果的なのだろうか?と疑問を抱く人は少なくないだろう。
そこで今回はUXデザイナー視点からカスタマージャーニーマップを効果的に活用していくためのポイントをご紹介する。
UXデザインプロセスにおける基本的な6ステップ

カスタマージャーニー…

有名ブランドロゴの中に隠された秀逸なメッセージ

ブランドのロゴをデザインする際にいくつかのポイントがある。可能な限りシンプルにすること。普遍的であること。複数の媒体で利用できることなど。それに加え、ワインポイント隠されたメッセージを埋め込むのも、デザイナーの腕の見せ所になる。
優れたロゴに隠し味あり
世の中で知られている著名な露の語の中には、一見気づかないようなメッセージやトリックが隠されているものある。そのようロゴは普段気づかずに無意識に見ていても、いつの間にかブランドが伝えたいメッセージを消費者の脳裏に焼き付けている。
もしくは、単純にデザイ…

有名ブランドロゴの中に隠された秀逸なメッセージ

ブランドのロゴをデザインする際にいくつかのポイントがある。可能な限りシンプルにすること。普遍的であること。複数の媒体で利用できることなど。それに加え、ワインポイント隠されたメッセージを埋め込むのも、デザイナーの腕の見せ所になる。
優れたロゴに隠し味あり
世の中で知られている著名な露の語の中には、一見気づかないようなメッセージやトリックが隠されているものある。そのようロゴは普段気づかずに無意識に見ていても、いつの間にかブランドが伝えたいメッセージを消費者の脳裏に焼き付けている。
もしくは、単純にデザイ…

ユニフォーム制作/効率的なデザインの決め方解説2月24日無料開催

シタテルは2月24日、オンラインセミナー「カタログ検索から始めてはいけない!ユニフォームデザインの決め方」を開催する。 <ユニフォームデザインの決め方を解説> 施設・店舗において、コンセプト体現の手段として重要な役割を果 […]
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音によるブランディング – サウンドロゴとは

人間が情報を得る際に最も利用しているのが視覚。実に全体の87%もの多くの情報を視覚から得ている。それが理由で、ブランディングにおける最重要要素はビジュアルデザインだ。 その一方で、最近は音声に利用したサービスの人気が高まっていることもあり、“音”の重要性にも着目したい。 感情を動かす音の力 実は、音には、特定の感覚を呼び起こす効果がある。時にはビジュアル以上に。例えば、皆様もお馴染みのこの音を聞いてほしい。 もちろん、これはiPhoneのアラーム音。これを聞くとなぜか胸騒ぎがして、落ち着かなくなる感じがする。それもそのはずで、この音、そのように“デザイン”されているから。 そう、音もビジュアルと同じく、ユーザーに特定のメッセージを伝えるためにデザインされる。そして、それが上手にできればかなり強力な武器にもなり得る。 音は世界共通の言語 よく音楽に国境はないと言われる。音の素晴らしさは、文字やビジュアルと比べても人間の感情に直接的に訴えかける力があり、文化や言語の壁を超えやすい。心地よい音と不快な音は、世界共通なのだ。 と、いうことは、このメディアを上手に利用することができれば、かなりかなりパワフルなブランディング要素ともなり得るのだ。 サウンドロゴとは そして、その音を使ったブランドアイデンティティーが、通称「ブランドロゴ」と呼ばれるもの。ブランドロゴとは、テレビのCMの最初や最後に数秒だけ流れる音。最近だと、動画向けにロゴのアニメーションと共に表示されることも増えた。 視聴者は何度も聞いているうちに、その音を聞いただけでどのブランドかがわかるようになる効果がある。 では、いくつか有名なブランドロゴを紹介していこう。 McDonald’s おそらく最も有名なサウンドロゴの一つが、マクドナルドの“I’m loving it”だろう。2003年から始まった広告キャンペーンで採用されたこの曲は、フルバージョンをアイドル歌手のJustin Timberlakeが歌い、その後サウンドロゴとしても利用され、世界中で広い認知度を獲得した。 Intel もう一つ、日本でもかなり有名なサウンドロゴがインテル。”Intel Inside”を「インテル入ってる」としたキャッチコピーも秀逸だが、このサウンドロゴもかなりブランドのイメージを上手に音で体現している。 Netflix オンラインサービスでもサウンドロゴを活用してるケースが出てきた。その代表格がネットフリックス。画面を立ち上げた際に出てくるインパクトのある音は、いつの間にか脳に刷り込まれている。 FamilyMart 恐らく日本で最も有名なサウンドロゴの一つがFamilyMartだろう。この音を聞くだけでお店に入った際の香りや色合いが蘇ってくる。それぐらい刷り込みがされている音になった。 PlayStation もう一つ日本のブランドで世界的に知られているユニークなサウンドロゴがPlayStation。あの、女性の声でカタカナ英語で「プレイステーション」と言っているのが国外でも利用されて、ユニークなシンボルになっている。 業種別サウンドロゴ 上記のような著名なサウンドロゴ以外にも、多くのブランドが音でそのイメージを体現しているので紹介したい。それぞれの業界ごとに特徴があるので面白い。 自動車関係 スピード感と鼓動感を感じさせるものが多い。 Mazda Porsche Audi BMW VW コンピューター関係 未来的な印象を与える。 Apple Macintosh WIndows 98 Windows XP Windows 7 ゲーム関係 簡潔で明るいタイプの音。 PlayStaion Nintendo Wii Nintendo Switch XBOX 360 家電関係 電気的な感じに少し優しいトーンを組み合わせている。 SONY LG SAMSUNG 航空会社関係 大空と空港の壮大さを感じさせる。 Lufthansa これからは音も大切なブランド要素になる 以前に最近の企業ロゴが似通ってきていて、どんどんアイコン化が進んでいるという話からもわかる通り、ブランディングにおけるアイデンティティの形は時代と共に変化する。 デジタルメディアの普及が進むにつれ、ブランド施策もアップデートしてく必要があるだろう。その中で、音を利用したブランディングも考えてみても良いかもしれない。 最近のロゴが似通ってきている問題 – 第2弾

Clubhouseで明確になった後発サービスが勝つための5つのポイントとは

2週間ほど前から日本では音声SNSサービス、Clubhouseの人気が急激に高まってきている。この現象に関して、アメリカ側の視点から書かれた記事「Demystify the Clubhouse Craze in Japan」にも記載されている、ある一つの点に関して考えたい。 それは、サービスの形態自体は特に斬新ではないということ。音声を利用したサービスはPodcastをはじめ、以前より多く存在していたし、それにSNS要素を追加させたタイプもStand.fmやDabelなどの先発サービスがリリースされていた。 それなのに、かなり後発のClubhouseがなぜそんなにも爆発的な話題を集めているのか?おそらく、その謎を解くことがサービスデザインにおける大きなヒントになると考えられる。 後発でもヒットしたプロダクト例 この謎を解くために、まずは今までに他の商品やサービスで後発なのにヒットした例や、先発なのに失敗した例を見てみることにする。というのも成功しているサービスの多くが結構後発である。逆に真っ先に動いた企業は、タイミングが早すぎたり、市場の準備ができる前に資金が尽きてしまうことも多い。 ■ Gmail リリース日: 2004年4月 先発サービス: Hotmail, AOL, Yahoo Mail 現在ではEメールの代名詞になっているGmailも、実はかなり後発のサービス。ネットの普及が進み、Webメールサービスが提供されていたのが90年代中盤。HotmailやAOL, そしてYahoo Mailなのが代表的なサービスになっていった。 しかし、Googleによる、よりクリーンで使いやすいメールとして”Email that doesn’t suck (イケてるメールサービス)”をキャッチコピーとしたGmailの人気が一気に高まり、後発ながらも、現在最も多くのユーザーを獲得しているメールサービスとなった。 Gmailの前に人気の高かったHotmail。スパムがめっちゃ多かった ■ Zoom リリース日: 2012年9月 先発サービス: Skype, Google Meet, WhatsApp リモートワークが進んだことで、最もユーザーを増加させたサービスの一つがZoomだろう。それまでもSkypeやGoogle Meetなど、ビデオコールのサービスが多く存在しており、完全にレッドオーシャンだと思われた市場に彗星のごとく登場した。 それも、それまでの多くのサービスが無料だったのに対して、Zoomは無料プランに制限をかけ、多くのユーザーが有料プランを利用している。それにより、売り上げもうなぎ登りになり、上場も果たした。 Zoom以前にも無料のビデオコールのサービスが存在していた ■ Slack リリース日: 2013年7月 先発サービス: HipChat, Yammer, Chatwork ビジネスチャットツールとして、現在では堂々たる地位にあるSlackも、実はそのカテゴリーにおいては、結構な後発のサービス。 Slackが出る前にも、HipChatやYammer, そして日本発のChatworkなど、複数のビジネスチャットツールが存在していた。しかし、Slackはそれらを大外からことごとくぶち抜いてしまった。 Slackよりも前にリリースされていたHipChat(左)とYammar(右) ■ Facebook リリース日: 2004年2月 先発サービス: Friendster, MySpace Facebookが元祖SNSサービスだと思っている人も少なくないだろう。しかし実は、Facebookの前にもFriendsterやMySpaceといった類似のサービスが存在してた。 日本にもmixiがあったが、現在では「マイミク申請していいですか?」と聞いて理解してくれる人は少ないか、笑いをこらえるのに必死になる人もいるだろう。 Friendster(左)とMySpace(右)はFacebookの数年前にリリースされていた ■ Google リリース日: 1997年1月 先発サービス: Friendster, MySpace ネットが普及し始めて最も初期のサービスが検索エンジン。その中でGoogle Seachは最も後にリリースされたサービスになる。 Googleが出てくる前までは、Yahoo, Excite, Lycos, AltaVista, Infoseekなど、複数の検索エンジンが乱立しており、毎月のように利用者ランキングが入れ替わる検索エンジン戦国時代だった。そんな中で天下布武を成し遂げたのが、後発のGoogleだった。 ■ iPhone リリース日: 1997年1月 先発サービス: Palm, Blackberry, ザウルス, ガラケー 世界初のスマホはiPhone出ることは間違いない。そういった意味では先発のように思うかもしれないが、実はその前にもいくつか類似のデバイスは存在していた。 Palmやザウルスに代表されるPDAやBlackberryだ。ネットに繋がる携帯という意味では、日本のガラケーが十年以上も前にすでに存在していた。 スマホの前身であるPDAやBlackberry ■ Tesla リリース日: 2010年5月 (Model S) 先発サービス: GM EV1, シボレー Volt 自動車会社として世界一の時価総額を達成したTeslaは、もちろん自動車会社としてはめちゃくちゃ後発。むしろ21世紀にできた数少ない自動車メーカーだろう。 そして、EV車両としても、すでにGMやシボレーがTeslaよりも前にリリースしていた。しかし、それらがことごとく大失敗をしたEV焼け野原の中から、真打としてTeslaがリリースした初の量産モデルのModel Sが大成功した。 アメリカ初の量産EVであるGMのEV1は派手に失敗した ■ Instacart リリース日: 2013年6月 先発サービス: Webvan […]

デザイナー必見!UXを学ぶ7つのTEDトーク

プロダクト開発やグロースにおいてUXデザインを考慮することが当たり前になった昨今、UXデザインにもさまざまな考え方が生まれた。特にデザインする対象がデジタルなのかアナログなのかによって考慮すべきUXデザインの領域は異なってくる。 つまり、良いUXデザイナーになるには幅広いUXデザインに関する知識を身に着けることが重要になってくる。そこでこの記事では、代表的な7つの異なる考え方のTEDトークを紹介する。 どれも10〜15分ほどのの動画のため、本を読むより短い時間で多くを学べると思う。休憩時間や移動時間にぜひ見ていただきたい。 誰にでも分かるUXデザインの基本 1. Donald Norman – The three ways that good design makes you happy – (良いデザインがあなたを幸せにする3つの方法) 登壇者のDonald Normanは多くのデザイナーが一度は読んだことがあるだろう「誰のためのデザイン?」の作者であり、“ユーザー中心設計(User-centered design)”の提唱者である。 人にとってプロダクトの魅力とは何かについて、車のMINIやGoogleのUIを例に述べている。 Dobald曰く、人がものを見て良し悪しを判断する際には3つのレベルでものごとを見ているらしい。 ものサービスに触れる際に、なんとなく触れて楽しいと感じる潜在レベル そのモノでどんなことができるかということがわかる行動レベル 外車は壊れやすいといった偏見に近い考えの内省レベル このトークの良いところは、人のものの見方は意外と単純だということに気づかせてくれる点にある。冒頭でDonaldは、フィリップスタルクのジューサーを果物からジュースを絞るためには使わず玄関に置物として置いてると述べている。 というのも、彼のジューサーは形が奇妙でジュースを絞ってみるものならコップにうまく入らず溢れてしまうからとのこと。しかし、その分魅力的な見た目を持っており、それが顧客を満足させてくれる要因として十分であると彼は語る。 UXデザインの評価方法はさまざまあるが、本質的に見るべきは人である。人はUXデザインの方法論とはお構いなしに、物事をただ欲しいか欲しくないかで判断する。このTEDトークからはそんな人のものの見方が学べるだろう。 2. John Maeda – Design for Simplicity – (シンプルさのためのデザイン) 2つ目は、世界的に有名なデザイナー、John Maedaによるシンプルさとは何か?について自身の体験談とともに語られるトークである。 グラフィックやプロダクトのデザインの分野においてもシンプルさというのは重要視されてきたがUXのように形に表現できないものをデザインする上でのシンプルさとは何だろうか?という問いを中心にトークが展開される。 UXデザインにおいてもロジックや考え方はあるが、それは人の感じ方を保証するものではない。UXの目的はそのプロダクトを使っている人が楽しいかと感じるかどうかであり、それほどシンプルに考えることが重要だとここでは述べられている。 UXデザインに関する書籍やブログが多く、どうしても方法論的に処理されてしまいがちではあるが、今一度この動画でシンプルに人の気持ちについて考えてみてはいかがだろうか。 なぜデザインはシンプルな方が良いのか – 5つの理由と6つの鉄則 3. Rochelle King – The complex relationship between data and design in UX – (UXにおけるデザインとデータの複雑な関係) Rochelle Kingは過去、NetflixのUXやサービスのデザインを率いており、現在はSpotifyにてデザイン、UXのヴァイスプレジデントとしてチームを統率する敏腕デザイナーだ。 このトークではUXデザインにおいてデータの重要性が述べられている。特にデジタルプロダクトから収集できるデータはとても正確で、ボタン押す位置やそのページを見ている時間の長さもわかる。これをうまく活用することができれば会議でどちらのデザインが優れているかで不毛な言い合いに時間を割かずに済む。 このトークで注目していただきたいのが、実際に彼女がSpotifyで行ったUXを改善の仕事を例にどのようにデータを活用したか解説している部分である。 そこではなぜそのデザインが悪かったのかという分析からどう解決したか、その結果的にビジネス面でも効果的であったことが語られている。Spotifyは月間3億人以上のアクティブユーザーを持つ巨大なプロダクトであり、それを支えるデザインプロセスの考え方はデザイナー以外であっても参考になるだろう。 4. David Kelley – How to build your creative confidence. – (創造的な自信を構築する方法) Davidは言わずと知れたIDEOの創設者の一人であり元CEOである。デザイン思考やデザイン教育の第一人者と呼ばれている。そんなデザインの知を築きあげた人が見たクリエイティビティへの自身について語っている。 Davidはこのトーク内でクリエイティブはそれぞれ違った形で持ち合わせていると述べており、自分のアイデアがありきたりで、かっこよくないからといって自信を失う必要はないと強調している。 筆者もワークショップでクリエイティブについて苦手意識を持っている人あったことがある。理由を聞いたことがあるが、その答えの多くが「かっこいいものを作らなくてはいけない」、「誰もが発想できない斬新なアイデアを求められているのではないか」という声だった。 しかし、クリエイティブというのはそういった派手なものだけではなく、些細でありきたりであってもクリエイティブと言える事柄はあるとこのトークでは述べられている。 その例として人の体に異常がないかみるMRIの診察方法が紹介されている。多くの子供はMRIの検査時に聞こえる激しい音に恐怖し、暴れてしまう。そのため鎮静剤を使って子供を宥めていた。 この状況に心を痛めていた医師は、部屋全体を海賊船のようにペイントし、診察時の音は海賊船が揺れている音だと説明した。これによって子供たちは暴れることなく診察を終えるようになった。このような気遣いもクリエイティブなのだ。 5. Tony Fadell – the first secret of great design –  (素晴らしいデザインの秘密) 彼はエンジニアでありデザイナーである。「iPodの父」と呼ばれ、ハードウェアやソフトウェアを専門にしている。このトークでは、思い込みをなくそうというテーマで人が習慣化してしまうことの良さと悪さを語っている。 習慣化によって人は、例えばシャワーの際に冷たい水を間違えて被ってしまった、というような小さな絶望を忘れてしまいがちであり、それを発見する力こそ起業家やデザイナーには必要である。それを発見するための3つの方法があると述べられている。 1.より広く見る 2.より近くで見る 3.より若く考える Tonyはこの3つをまとめ、子供のように純粋でいようと言っている。また、例としてピカソの言葉である「子供は生まれながらにして芸術家である。」というものを取り上げ、大人になってしまうと世の中の不幸に慣れてしまい視野が狭くなってしまうことを述べている。 UXデザインでは、こういった小さな気づきや不満をいかにして見つけられるかが重要である。多くの問題は非常に些細であり、歳を重ねるにつれ不満を感じづらくなってしまう。しかし、そこを解決したデザインにこそ本当に心地よい体験を人々に提供できるのではないだろうか。 6. Johannes Ippen – Humans, not […]

デザイナー必見!UXを学ぶ7つのTEDトーク

プロダクト開発やグロースにおいてUXデザインを考慮することが当たり前になった昨今、UXデザインにもさまざまな考え方が生まれた。特にデザインする対象がデジタルなのかアナログなのかによって考慮すべきUXデザインの領域は異なってくる。 つまり、良いUXデザイナーになるには幅広いUXデザインに関する知識を身に着けることが重要になってくる。そこでこの記事では、代表的な7つの異なる考え方のTEDトークを紹介する。 どれも10〜15分ほどのの動画のため、本を読むより短い時間で多くを学べると思う。休憩時間や移動時間にぜひ見ていただきたい。 誰にでも分かるUXデザインの基本 1. Donald Norman – The three ways that good design makes you happy – (良いデザインがあなたを幸せにする3つの方法) 登壇者のDonald Normanは多くのデザイナーが一度は読んだことがあるだろう「誰のためのデザイン?」の作者であり、“ユーザー中心設計(User-centered design)”の提唱者である。 人にとってプロダクトの魅力とは何かについて、車のMINIやGoogleのUIを例に述べている。 Dobald曰く、人がものを見て良し悪しを判断する際には3つのレベルでものごとを見ているらしい。 ものサービスに触れる際に、なんとなく触れて楽しいと感じる潜在レベル そのモノでどんなことができるかということがわかる行動レベル 外車は壊れやすいといった偏見に近い考えの内省レベル このトークの良いところは、人のものの見方は意外と単純だということに気づかせてくれる点にある。冒頭でDonaldは、フィリップスタルクのジューサーを果物からジュースを絞るためには使わず玄関に置物として置いてると述べている。 というのも、彼のジューサーは形が奇妙でジュースを絞ってみるものならコップにうまく入らず溢れてしまうからとのこと。しかし、その分魅力的な見た目を持っており、それが顧客を満足させてくれる要因として十分であると彼は語る。 UXデザインの評価方法はさまざまあるが、本質的に見るべきは人である。人はUXデザインの方法論とはお構いなしに、物事をただ欲しいか欲しくないかで判断する。このTEDトークからはそんな人のものの見方が学べるだろう。 2. John Maeda – Design for Simplicity – (シンプルさのためのデザイン) 2つ目は、世界的に有名なデザイナー、John Maedaによるシンプルさとは何か?について自身の体験談とともに語られるトークである。 グラフィックやプロダクトのデザインの分野においてもシンプルさというのは重要視されてきたがUXのように形に表現できないものをデザインする上でのシンプルさとは何だろうか?という問いを中心にトークが展開される。 UXデザインにおいてもロジックや考え方はあるが、それは人の感じ方を保証するものではない。UXの目的はそのプロダクトを使っている人が楽しいかと感じるかどうかであり、それほどシンプルに考えることが重要だとここでは述べられている。 UXデザインに関する書籍やブログが多く、どうしても方法論的に処理されてしまいがちではあるが、今一度この動画でシンプルに人の気持ちについて考えてみてはいかがだろうか。 なぜデザインはシンプルな方が良いのか – 5つの理由と6つの鉄則 3. Rochelle King – The complex relationship between data and design in UX – (UXにおけるデザインとデータの複雑な関係) Rochelle Kingは過去、NetflixのUXやサービスのデザインを率いており、現在はSpotifyにてデザイン、UXのヴァイスプレジデントとしてチームを統率する敏腕デザイナーだ。 このトークではUXデザインにおいてデータの重要性が述べられている。特にデジタルプロダクトから収集できるデータはとても正確で、ボタン押す位置やそのページを見ている時間の長さもわかる。これをうまく活用することができれば会議でどちらのデザインが優れているかで不毛な言い合いに時間を割かずに済む。 このトークで注目していただきたいのが、実際に彼女がSpotifyで行ったUXを改善の仕事を例にどのようにデータを活用したか解説している部分である。 そこではなぜそのデザインが悪かったのかという分析からどう解決したか、その結果的にビジネス面でも効果的であったことが語られている。Spotifyは月間3億人以上のアクティブユーザーを持つ巨大なプロダクトであり、それを支えるデザインプロセスの考え方はデザイナー以外であっても参考になるだろう。 4. David Kelley – How to build your creative confidence. – (創造的な自信を構築する方法) Davidは言わずと知れたIDEOの創設者の一人であり元CEOである。デザイン思考やデザイン教育の第一人者と呼ばれている。そんなデザインの知を築きあげた人が見たクリエイティビティへの自身について語っている。 Davidはこのトーク内でクリエイティブはそれぞれ違った形で持ち合わせていると述べており、自分のアイデアがありきたりで、かっこよくないからといって自信を失う必要はないと強調している。 筆者もワークショップでクリエイティブについて苦手意識を持っている人あったことがある。理由を聞いたことがあるが、その答えの多くが「かっこいいものを作らなくてはいけない」、「誰もが発想できない斬新なアイデアを求められているのではないか」という声だった。 しかし、クリエイティブというのはそういった派手なものだけではなく、些細でありきたりであってもクリエイティブと言える事柄はあるとこのトークでは述べられている。 その例として人の体に異常がないかみるMRIの診察方法が紹介されている。多くの子供はMRIの検査時に聞こえる激しい音に恐怖し、暴れてしまう。そのため鎮静剤を使って子供を宥めていた。 この状況に心を痛めていた医師は、部屋全体を海賊船のようにペイントし、診察時の音は海賊船が揺れている音だと説明した。これによって子供たちは暴れることなく診察を終えるようになった。このような気遣いもクリエイティブなのだ。 5. Tony Fadell – the first secret of great design –  (素晴らしいデザインの秘密) 彼はエンジニアでありデザイナーである。「iPodの父」と呼ばれ、ハードウェアやソフトウェアを専門にしている。このトークでは、思い込みをなくそうというテーマで人が習慣化してしまうことの良さと悪さを語っている。 習慣化によって人は、例えばシャワーの際に冷たい水を間違えて被ってしまった、というような小さな絶望を忘れてしまいがちであり、それを発見する力こそ起業家やデザイナーには必要である。それを発見するための3つの方法があると述べられている。 1.より広く見る 2.より近くで見る 3.より若く考える Tonyはこの3つをまとめ、子供のように純粋でいようと言っている。また、例としてピカソの言葉である「子供は生まれながらにして芸術家である。」というものを取り上げ、大人になってしまうと世の中の不幸に慣れてしまい視野が狭くなってしまうことを述べている。 UXデザインでは、こういった小さな気づきや不満をいかにして見つけられるかが重要である。多くの問題は非常に些細であり、歳を重ねるにつれ不満を感じづらくなってしまう。しかし、そこを解決したデザインにこそ本当に心地よい体験を人々に提供できるのではないだろうか。 6. Johannes Ippen – Humans, not […]

非デザイナーのためのデザイン関連記事まとめ

非デザイナーでもデザインについて勉強し、その知識をつけていくことはビジネスにおいて非常にポジティブな影響をもたらす。
それは、昨今言われてきた「デザイン経営」に始まり、「UI/UX」という概念、または「DX (デジタル・トランスフォーメーション)」を推進していくためにも、経営やビジネス的な意味での「デザイン」を理解することが重要になってきたからである。
この記事では、本ブログ「Freshtrax」にて過去に公開してきた記事の中から、非デザイナーがデザインを勉強する上で、参考にしていただきたい記事をカ…

GoogleとAppleの違いを画像で表現してみた

スマホ、スマートホーム、クラウドサービスなど、多くの分野で覇権を競っているのがシリコンバレーの巨大テクノロジー企業、Google, Apple。
時価総額ランキングでも常に上位にランキングし、ビジネスモデルの側面ではかなり共通点がありそうなこの2社。しかし実はさまざまな側面でかなり異なる戦略を取っている。
GoogleとAppleのデザイン、組織、カルチャー、マーケティングなど10の項目に対してのアプローチの違いを画像で表現してみた。

Google: ユーザーが欲しいと思っているものを作る
Ap…

デザイン思考の第一歩:共感力を高める3つの方法

“共感力”とは何だろうか。デザイン思考のファーストステップであり、IQの対比として使われるEQ(Emotional Intelligence Quotient = 自分と相手の感情を把握し、状況に応じて自分の感情をコントロールできる能力)の1つでもある共感力とは、相手の感情を知ることではなく、相手と同じ感情を疑似体験することである。
デザイン思考の最初のステップは「共感」
デザイン思考おける「共感」フェーズでは、リサーチャー自らがユーザーの代弁者となることで、実際にサービス・プロダクトを受け取るユー…