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福島県南会津郡 冬の南会津。写真家であり作家の小林紀晴氏の目に、この街はどう映るか。 まず雪、降りしきり、降り積もる雪の声を聞いてみたい……。今回、ONESTORYとともに会津への旅に出てくれるのが、写真家であり作家としても知られる小林紀晴(こばやし・きせい)さんです。会津という土地の魅力を再発見するというその旅の第一歩は、江戸時代の宿場町の佇まいをそのまま残すかつての会津西街道沿いの集落、大内宿をおおった純白の雪の上に記されました。
白銀の世界に包まれた「大内宿」。立ち止まってはまた歩き、歩いてはまた立ち止まり、表現したい1枚を探す。
福島県南会津郡 旅することの意味を表現し続ける作家・小林紀晴。紀晴さんは生来の旅人です。新聞社の社員カメラマンという安定した生活から自ら離れ、使い慣れたカメラを携えてアジア放浪の旅に出たのは23歳のとき。その旅の途上で出会った日本人バックパッカーたちの肖像を、エッジの利いた写真と文体で描き出したデビュー作『ASIAN JAPANESE』(1995年)は、これまでになかった旅行ルポルタージュとして圧倒的な支持を集め、アジアを旅する若者のバイブル的存在となりました。以後、紀晴さんはさらに多くの国へと旅を続け、その記憶はいくつもの美しい写真集に結実しています。独特の視点で切り取られた写真の数々は新たな発見に満ち、訪れた土地のこれまでに知られていなかった魅力を読者に伝え続けてきました。
今回訪れたのは、冬。今後、春、夏、秋と再訪し、1年を通して南会津という街と向き合い、表現してく。
訪れた日は、相当な積雪量。まるで永遠に続くかのように広がる白の世界に興奮気味の小林紀晴氏。
「大内宿」の特徴でもある茅葺き屋根には雪が覆いかぶさり、氷柱が自然美を形成する。そんな撮影ができるのも冬だからこそ。
福島県南会津郡 物語の気配がいまもいろ濃くたちこめる、会津という土地。そんな旅のカリスマにとっても、会津とは特別な興味をかき立てられる地であるといいます。紀晴さんは長野県の出身ですが、長野の地名である高遠の名を冠した“高遠そば”が会津の郷土料理として長く伝えられていることも、その理由の一つ。「ごく個人的な理由ですが」と、大内宿の集落にある一軒の茅葺の蕎麦店で高遠そばをすすりながら本人は笑いながら話してくれましたが、もとより個人的な動機に基づいていない旅など、旅の名に値しないでしょう。さらに作家として写真集以外に多くの小説を上梓している紀晴さんは、その世界観を表現するため自主映画の製作にも意欲を燃やしていますが、現在製作を進めているタイに生きた一人の日本人男性の数奇な人生をテーマにしたフィルムにおいても、偶然にも会津は重要なキーとなる土地でした。 やはり会津は物語の気配に満ちた土地なのでしょう。そしてその物語性がクリエーターの琴線をそっと揺り動かすのでしょう。
「会津酒造」へ訪れた小林紀晴氏。「米文化にも興味があります」と話しながら、一本一本、じっくりと酒を眺める紀晴氏は、まるで何かを回想しているよう。
冬の「塔のへつり」へ訪れる人は、ほぼいない。しかし、「誰もいない場所、誰も来ない時期にこそ、街の本質と向き合える」と紀晴氏。
「湯野上温泉駅」で列車を待つ紀晴氏。「旅には目的地も大切ですが、そこへ向かうプロセスこそ旅の醍醐味。予想しなかった出来事を楽しみたい」。
「冬の南会津は美しかった」。そう語る、紀晴氏。「これほどまでに色の変化がある街は、日本中探してもそうはない」と言葉を続ける。
福島県南会津郡 その道のりの記憶は、そのまま新しい旅への里程標になる。もしかしたら会津は紀晴さんにとって、新しい旅の扉を開く地となるかもしれません。雪で白く染まった会津を歩いて、「故郷の風景と似ている」と紀晴さんはつぶやきました。これまで外へ外へと旅を続けてきた紀晴さんですが、今回は自らの内なる故郷への道をたどる旅になります。その途上で撮られる写真と紡がれる言葉は、新しい旅を発見していくマイルストーンとなるでしょう。そしてそれは私たちにとっても、会津という土地の見方を、さらには旅の時間のあり方までを変えてくれる大切な契機になるのではないかと思います。会津はおそらく私たちにとっても新しい旅のあり方を教えてくれる土地となる。そう、そんな予感を人に与える力を、会津は宿しているのです。「季節ごとに訪れて、四季それぞれを彩る会津の色彩を見つめてみたい」と紀晴さんは語ります。これから一年を通しての会津の旅が始まります。紀晴さんの写真と言葉に現れる会津の時間を、皆さんもぜひ一緒にお感じになってください。
「冬、山」_こんな風景を目にすると、モノクロームで撮りたくなる。©小林紀晴
「雪そら」_雪に意思があるとしたら、それはどんなかたちをしているのか。©小林紀晴
「カフェ、天井、珈琲、」_天井を見上げるとドライフラワー。ふと、ここだけ季節が違って感じられた。©小林紀晴
「鎮座」_造り酒屋の土間は底冷えがして、誰が吐く息も白い。©小林紀晴
「まちびと」_待合室の団子刺し。ここだけ春が来たような。©小林紀晴
1968年長野県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。新聞社にカメラマンとして入社。1991年独立。アジアを多く旅し作品を制作。2000~2002年渡米(N.Y.)。写真制作のほか、ノンフィクション・小説執筆など活動は多岐に渡る。東京工芸大学芸術学部写真学科教授、ニッコールクラブ顧問。著書に「ASIAN JAPANESE」「DAYS ASIA」「days new york」「旅をすること」「メモワール」「kemonomichi」「ニッポンの奇祭」「見知らぬ記憶」。