「中古マンション」「空き家」「事故物件」…5つのキーワードで2017年不動産市場を振り返る

今年も残りあとわずか。今回は不動産取引から世の中で注目された事件まで、5つのキーワードを元に2017年の不動産市場を振り返ってみます。私が挙げるキーワードは以下の5つです。

【今年の注目5大キーワード】
キーワード1:中古マンション
キーワード2:下町
キーワード3:空き家
キーワード4:事故物件
キーワード5:地面師

早速、一つずつ見ていきましょう。

キーワード1「中古マンション」:初めて新築マンションを上回る

2017年は、中古マンション成約数が統計上初めて新築マンション発売戸数を上回りました。
要因の一つとして、まず国が「住生活基本計画」において2025年に中古住宅流通市場規模を 8兆円へ、リフォーム市場を12兆円へ、合わせて20兆円規模へ拡大する目標を掲げ、補助金提供など各種の方策を打ち出している影響があります。

中古人気に火がついた理由は、なんといっても2000~3000万円もの価格差。それだけの金額差があるなら、中古を買って思い通りにリフォーム・リノベーションしたほうがお得だ、といった向きがで始めたこと。それに応じて業界にも中古やリフォーム・リノベーションを手がけるプレイヤーが増加したことなどがその理由です。そもそも欧米など日本以外の先進国では圧倒的に中古住宅流通の割合が多いのですが、日本も、ようやく他の先進国同様の不動産市場に転換を始めたとみていいでしょう。

【画像1】2017年の地域別新築・中古マンションの価格差(不動産経済研究所・東日本不動産流通機構資料より筆者作成)

【画像1】2017年の地域別新築・中古マンションの価格差(不動産経済研究所・東日本不動産流通機構資料より筆者作成)

2017年の首都圏の新築マンション発売戸数は3万戸台後半の見込みで、ピーク時の半分以下となっていますが、価格は高止まりを続けています。これは、90年バブル時やリーマン・ショック前のプチバブル時とは異なり、近年のマンションが「都心部」「駅前・駅近」「大規模・タワー化」の傾向にあるため。都区部の新築マンション価格は6258万円(不動産経済研究所)と高止まりしており「バブル崩壊か?」といった声も聞かれましたが、実際にはバブルでもなく、したがって崩壊もありませんでした。

国際的に見れば日本の不動産価格はまだ低水準にあり、他国の水準に追いつこうとしているのが実態です。ましてや新築マンション市場は先述したように、低額物件の供給は絞られ高額物件の割合が高くなっていること。また資金体力のある大手不動産会社の販売専有比率がかつては20パーセント程度だったところ、現在では40パーセント程度になっており、かつてのバブル崩壊時のような投げ売りが起きにくい、弾力性のある市場となっていることがその理由です。

もちろん歴史的な低金利が市場を下支えしてるのは言うまでもありません。

キーワード2「下町」:北千住や赤羽などが人気に【画像2】写真/PIXTA

【画像2】写真/PIXTA

2012年12月の政権交代以降、都市部の不動産価格が一貫して上昇を続けてきたこともあり、「北千住」「赤羽」など相対的に割安感のあった下町がクローズアップされ人気を集めた年でした。物価が安い、価格帯に対して利便性が高いなどが主な理由です。ただし、東京北東部は地盤の弱い地域も多く、耐震性や災害対策には注意を払う必要があります。

キーワード3「空き家」:1000万戸を突破、今後も増加の一途【画像3】写真/PIXTA

【画像3】写真/PIXTA

2013年時点における日本の空き家は820万戸にのぼり、空き家率は13.5パーセントと先進国最大です(総務省統計局「平成25年住宅・土地統計調査」より)。この調査は5年毎に行われますが、現時点で既に空き家数は1000万戸を優に突破しているとみられ、本格的な人口・世帯数減少局面を迎えるなかで今後も空き家は増加する一方です。

空き家が増加すれば街が荒廃し、犯罪の温床になるなどして地域の不動産価値の下落要因となります。上下水道のインフラ修繕やゴミ収集などの行政サービス効率も悪化し自治体経営を圧迫、十分な行政サービスを行えなければそれも不動産が下落する要因となります。街をコンパクトにする「立地適正化計画」について全国357の自治体が取り組みを始めていますが、各自治体の都市計画を勘案した不動産選びが重要視された一年でした。

また、2017年は不動産を舞台に起こったいくつかの「事件」が、世の中の注目を集めた年でもありました。

キーワード4「事故物件」:座間アパート事件で注目【画像4】写真/PIXTA

【画像4】写真/PIXTA

まず記憶に新しいのは「座間アパート事件」。神奈川県座間市のアパートから男女9人の遺体が見つかった事件です。事件が起こったアパートはいわゆる「事故物件」でしたが、こうした事故物件は今後どのように扱われるでしょうか。

事故物件に明確な相場はありませんが、一般的には賃料・売買価格ともに相場より20~30%程度下がるとされています。ただしこの事件のように大々的に報道され、世の中に広く知られるようになった物件はさらにマイナスになる可能性もあります。

この事件を受けて「事故物件を避けるにはどうしたらよいか」といった取材が筆者には殺到しましたが、賃貸と売買で扱いは異なります。そもそも「事故物件」について明確な定義はないため、不動産業者はそれぞれこれまでの裁判判例を参照しつつ、取り扱いや諸条件を決めている状況です。

例えば売買の場合は「(事故物件となる原因が発生してから)50年経過しても告知する必要がある」とした判例があります。一方で賃貸の場合、事故の後に別の入居者が入ればその次の入居者には告知しなくていいとした判例も。

物件の所在地によっても事情が変わってきます。都市部では企業間取引や投資案件などもあることから不動産取引の匿名性が高く、取引が活発なこともあり、事故の記憶も風化されやすい傾向にあります。しかし農村部では取引が少なく周辺住民の記憶も長らく残る傾向にあるという解釈です。

いずれにせよ事故物件を避けたいなら、不動産業者に直接「これは事故物件ですか?」と尋ねることです。業者には「告知義務」があり、嘘をつけば違法になるためです。ただし業者も知らなかった場合はこの限りではありません。

キーワード5:「地面師」:プロの不動産会社も数十億円の被害【画像5】写真/PIXTA

【画像5】写真/PIXTA

そして「地面師事件」。売主を装った詐欺師グループによって架空の不動産売買が行われ、買主はお金を騙し取られるといった話です。こうした地面師グループに、大手不動産会社も数十億円の被害にあったことで「プロでも騙されてしまうのか」と社会が騒然としました。地面氏の手口は巧妙です。まず印刷技術の発達で権利証や印鑑・印鑑証明・パスポートなどは真贋が見抜けないほど精巧に作られています。また地面師は不動産業者や登記を行う司法書士、時には近隣住民を装う者など、取引に関わるプレイヤーのグループで行動することが多く「自分以外全員グルで、騙されたのは自分だけ」といった状況に陥りがちです。

こうした事件は比較的物件価格の高い都心部や、地方であっても優良な不動産で起こる傾向にあります。地面師も効率よく犯罪を行いたいためです。こうした事件に巻き込まれないためには、契約前に売主と面談すること。それもできれば売主の自宅に訪問することです。

地面師はこうした面倒を避ける傾向にあり、複数の不動産業者はこうしてリスクヘッジしています。それでも万全とはいえず、不動産業者や司法書士はこうした自体に備え損害保険に加盟していることが多いのですが、それが適用になるか、どの程度適用になるかはケースバイケースです。ちなみに売主は、権利証などの保管に落ち度があったなどよほどの過失がない限り、仮に所有権が移転しても権利は取り戻せます。

2017年の不動産市場をざっと振り返ってきましたが、いかがでしょうか。新年の第一弾のコラムでは、2018年の不動産市場を占います。お楽しみに。

s-長嶋修_正方形.jpg長嶋 修  さくら事務所創業者・会長
業界初の個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクション(住宅診断)を行う「さくら事務所」を創業、現会長。不動産購入ノウハウの他、業界・政策提言や社会問題全般にも言及。著書・マスコミ掲載やテレビ出演、セミナー・講演等実績多数。【株式会社さくら事務所】

東京で一人暮らしするならどの駅がお得? 家賃相場を紹介!【2017年SUUMO賃貸ランキングまとめ】

1月から3月は春からの新生活や異動などにあわせて部屋探しをする人が増えてくる季節。賃貸物件の部屋探しのオンシーズンです。部屋探しではどこに住むかのエリア選びと、家賃は重要なポイントと言えるでしょう。そこで、SUUMOに掲載されている賃貸物件の情報をもとに家賃相場などを紹介している「【連載】SUUMO賃貸ランキング 」で2017年に公開した記事のなかから人気の記事を紹介します!
山手線の内側・京浜東北線・東急田園都市線で家賃が安い駅は?

●穴場発見!山手線内側で家賃が安い駅ランキング TOP10駅
(2017年7月19日掲載)

穴場発見!山手線内側で家賃が安い駅ランキング TOP10駅

(写真/PIXTA)

1位 雑司が谷(東京メトロ副都心線/豊島区) 7.8万円
1位 田端(JR山手線/北区) 7.8万円縦長の環状に駅が連なるJR山手線の内側ほど都心部であるため家賃が高く、外側に行くほど安いのが相場になっているのだ。では、都内でも家賃が高めといわれる「JR山手線の内側」のなかでも、比較的リーズナブルに住むならどこがいいのだろう?そして最も家賃相場が安かった駅は、東京メトロ副都心線・雑司が谷駅とJR山手線・田端駅で、家賃相場は共に7.8万円だ。1位の東京メトロ副都心線・雑司が谷駅の地下ホームから地上へ向かうと、出口のすぐ前に3位にランクインした都電荒川線の鬼子母神前駅がある。

●ビジネス街とベッドタウンを結ぶ! JR京浜東北線の家賃相場が安い駅ランキング
(2017年10月26日掲載)

人気の街も沿線に! JR京浜東北線の家賃相場が安い駅ランキング

(写真/PIXTA)

1位 磯子駅(神奈川県横浜市磯子区) 5.5万円最も安かったのは磯子(いそご)駅の家賃相場5.5万円。横浜市磯子区に位置し、駅東側は海に面した工業地帯、駅西側には住宅地が広がっている。駅の周辺に区役所や玩具店「トイザらス」、小学校もあって、暮らしやすそうな街並みだが、社宅や分譲住宅が多いのか市場に出ている賃貸住宅の供給数は290戸台(今回調査時点のSUUMO掲載物件数、以下同)。家賃相場は安いものの、住まいを探すときの選択肢は比較的少ない。2位~4位は1位の磯子駅と同様に物件数1000戸以下だが、5位の南浦和駅は1200戸以上の物件がそろっている。ちなみに今回の調査で最も高かった家賃相場は、東京都千代田区にある有楽町駅の12.1万円。1位~7位の駅ならば、有楽町駅の半額以下で住めてしまう。

●人気路線も5万円台で住めちゃう! 東急田園都市線の家賃相場が安い駅ランキング
(2017年11月22日掲載)

人気路線も5万円台で住めちゃう! 東急田園都市線の家賃相場が安い駅ランキング

(写真/PIXTA)

1位 すずかけ台(東京都町田市) 5.3万円東急田園都市線の沿線で、最も家賃相場が安かったのは東京都町田市・すずかけ台駅。駅舎のすぐ東側は神奈川県横浜市で、東京工業大学のキャンパスが広がっている。そのさらに東側には東名高速が通り、横浜町田インターも近いので車の便も良好だ。ちなみにすずかけ台駅から4位・南町田駅までは1駅で、歩いても20分弱。南町田駅の駅前にはニトリやケーズデンキ、スーパーなど大型店舗が点在している。5位以下は家賃相場が6万円台に突入する。家賃相場が共に6.1万円の6位・青葉台駅と田奈駅は隣り合っており、田奈駅は各駅停車駅だが青葉台駅には急行・準急も停車。田奈駅周辺は田畑も多いのどかな地域なのに対して、青葉台駅は駅前にグルメやファッション、雑貨のショップが入ったショッピングセンター「青葉台東急スクエア」群が広がっている。同じ家賃相場で場所も1駅しか違わないが、利便性をとるなら青葉台駅寄りに住むほうがよさそうだ。住みたい街ランキング常連「吉祥寺」から15分、「表参道」から30分以内で家賃相場が安い駅は?

●人気の吉祥寺まで15分圏内!家賃相場が安い駅ランキング
(2017年4月7日掲載)

人気の吉祥寺まで15分圏内!家賃相場が安い駅ランキング

(写真/PIXTA)

1位 西国分寺 5.63万円(JR中央線/東京都国分寺市/約15分)そして最も家賃相場が安かったのは、吉祥寺からJR中央線で下り方面に6駅目の西国分寺駅。JR中央線のほか武蔵野線も乗り入れており、埼玉県の浦和・川口方面にもアクセスしやすい。2位は西国分寺駅から吉祥寺方面へ1駅目の国分寺駅。3位~5位も同じくJR中央線の駅がランクイン。トップ5の駅は都内の西側、いわゆる東京市部に位置し、23区内に比べると緑が多く静かな街並みで、住宅地として支持されている。また隣接し合う3位~5位の駅周辺には大学のキャンパスも点在しており、学生が住む街としても人気があることから家賃相場も低めに抑えられている。

●『東京タラレバ娘』の舞台・表参道から30分以内の家賃相場安い駅
(2017年1月17日掲載)

『東京タラレバ娘』の舞台・表参道から30分以内の家賃相場安い駅

(写真/PIXTA)

1位 和泉多摩川 6.14万円(小田急線/東京都狛江市/約28分/乗り換え回数:1回)表参道駅は東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線の3線が乗り入れており、JR各線に接続する渋谷駅までは1駅。そのため各方面にアクセスしやすい便利な駅だが、ランキングを見るとTOP5すべてが小田急小田原線小田急線の駅というラインナップになった。1位の和泉多摩川(いずみたまがわ)駅は東京都狛江市にあるが、駅近くの多摩川を渡ると神奈川県というロケーション。都内でありつつも自然を感じられる環境で、静かな住宅地として人気がある。3位の向ヶ丘遊園駅は急行停車駅。表参道駅まで乗り換えなしで約23分という近さでありながら、家賃相場は6万円台前半に収まっている。みんなが選んだ穴場な街、ここ数年で人気がでたと思う街の家賃相場は?

●2017年版 みんなが選んだ「穴場だと思う街」の家賃相場は?
(2017年5月30日掲載)

2017年版 みんなが選んだ「穴場だと思う街」の家賃相場は?

(写真/PIXTA)

1位(77点) 北千住(JR常磐線)/7.43万円1位の北千住駅は東京都足立区に位置し、JRや東京メトロ、東武線など5路線が乗り入れておりアクセスの利便性がピカイチ。2位は東京都北区の赤羽駅。2011年に誕生したエキナカ施設「エキュート赤羽」があり、2014年には駅直結の商業施設も誕生するなど施設が充実している。3位~7位にはJR山手線の駅がランクイン。JR山手線沿線の家賃相場は、都内でも決して安いほうではない。環状に結ばれた駅のうち、渋谷駅や品川駅、有楽町駅といった南側に位置する駅の家賃相場が特に高いのだが、今回ランクインした駅はすべて北側に位置している。

●発表!「この2~3年で人気が高まったと思う街ランキング」トップ10の街の家賃相場。お得な街はどこ?
(2017年6月19日掲載)

発表!「この2~3年で人気が高まったと思う街ランキング」トップ10の街の家賃相場。お得な街はどこ?

(写真/PIXTA)

1位 武蔵小杉 7.64万円(東急東横線/神奈川県川崎市)近年、人気が上昇したと考える人が最も多かった駅は、東急東横線ほか4路線・武蔵小杉駅。家賃相場は7.64万円と、近隣相場と比べて少々お高めだ。2位は東京メトロ有楽町線・ゆりかもめ 豊洲駅。新しく整備された街並みと都心オフィス街へのアクセスのよさから人気が高く、家賃相場は10.75万円と都内でも高い部類。2020年をめどに現在も再開発が進行中で、今後も人気が高まると予想される。ランキングトップ10を見てみると、大半は都内の駅。そのなかで異色といえるのが、千葉県流山市に位置する8位のつくばエクスプレス・流山おおたかの森駅だろう。

住みたいと思っていた駅が予算をオーバーするというときなど、少し視点を変えると新しい街との出会いがあるかもしれません。ここで紹介した記事からヒントを得て、ぜひ自分にあった住まいを探してみてください。

※家賃相場についての調査概要はリンク先記事をご覧ください
※家賃相場は随時更新のため変動の可能性があります

AIによるマンション推定価格「必要だと思う」が7割。そもそもAIとリアル査定はどう違う?

医療や犯罪捜査、将棋の世界に至るまでAI(人工知能)が活躍する昨今。大京穴吹不動産が、分譲マンションオーナーに対して、「AI推定価格に関する意識調査」を実施した。結果を詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「AI推定価格に関する意識調査」を実施/大京穴吹不動産AI推定価格の公開サービスは、「迅速で容易に価格を把握できるので必要」が大勢

「AI推定価格」とは、“地域特性や経済指標、最新の不動産市場情報を含む売買履歴情報や賃貸情報などをベースにしたビッグデータを、AIが日々学習し、既存マンションの現在の市場価格をリアルタイムに算出するもの”。

AIが売買価格などを推定するサービスを「知っていた」(よく知っている5%+知っている19%)のは24%。知っている人で「利用したことがある」のは16%だった。調査対象は、千代田区、中央区、港区、江東区などマンションの売買や賃貸が活発な10区にマンションを所有している人なのだが、それでもAI推定価格の認知度はまだ高いとはいえない。

ただし、「AI推定価格をインターネットで公開するようなサービス」は必要だと思う(とても思う23%+思う48%)人は71%もいた。必要だと思う理由として最も多かったのは、「迅速かつ容易に価格を把握したいから」だ(画像1)。

【画像1】「AI推定価格」のインターネット公開サービスが必要であると「思う」と回答した人の理由(出典:大京穴吹不動産「AI推定価格に関する意識調査」より転載)

【画像1】「AI推定価格」のインターネット公開サービスが必要であると「思う」と回答した人の理由(出典:大京穴吹不動産「AI推定価格に関する意識調査」より転載)

たしかに、自分のマンションがいくらで売れそうか、いくらで貸せそうかといった価格価値をインターネットで簡単に把握できるなら便利だろう。売るのと貸すのとどちらがよいか、売るならいつがよいかを検討する判断材料にもなる。

一方で、必要だと思わない(全く思わない1%+あまり思わない3%)人の理由はと言えば、「AIによる推定価格と実際の取り引き価格の差があると思うから」や「AIによる推定価格に信憑性があると思えないから」と推定価格の信ぴょう性を指摘している(画像2)。

【画像2】「AI推定価格」のインターネット公開サービスが必要であると「思わない」と回答した人の理由(出典:大京穴吹不動産「AI推定価格に関する意識調査」より転載)

【画像2】「AI推定価格」のインターネット公開サービスが必要であると「思わない」と回答した人の理由(出典:大京穴吹不動産「AI推定価格に関する意識調査」より転載)

AIとリアルなマンションの価格査定では、どこが違う?

では、実際のマンションの価格査定はどうやって行われているのだろうか?

実は、査定には主に2種類ある。まず、「簡易査定」とか「机上査定」とか呼ばれるものがあり、公示地価などの公的データや周辺の取引事例などを基におおよその価格を推定する。つまり、実際の建物の状況などは見ずに、データ上で算出するものだ。

次に、「詳細査定」とか「訪問査定」とか呼ばれるものがある。売却目的で不動産会社に査定を依頼すると、担当者が物件の状態を細かく調査し、法的な条件なども加味して、実際に売却できる価格などを算出する。

一般的にマンションの場合は、周辺の取引事例が多いこと、一戸建てのように敷地の形や道路に接している部分がそれぞれ異なるといった個別性が高くないことなどから、周辺の類似した取引事例を参考に算出する方法が採られる。したがって、データ上で価格を想定するだけなら、限られた時間で人がやるより、AIが大量のデータから分析したほうが早くて精度が高いといえそうだ。

とはいえ、不動産は一つとして同じものがない。幅広いエリアで同じようなものが買われる商品ではなく、一定のエリアで需要がある個別性の高い商品だ。

同じ住戸でも、修繕やリフォームなどきちんとメンテナンスされた場合と何もしていない場合では、その価値は違ってくる。また、そのエリアで該当するマンションを欲しいという人がたまっている時期とそうではない時期など、タイミングによっても売れる価格は違うだろう。

つまり、物件の詳しい状態を把握して、待ち客の有無などその時点のマーケットを加味して、売れる価格を推定する人の技も、不可欠ということになる。

だからといって、AIの査定価格を否定するわけではない。AIにどこまでのデータを分析させるかにもよるが、大量のデータを分析した査定価格が容易に手に入るなら、自分のマンションをどうするかの判断材料になるし、売却のタイミングを計る指標にもなる。

AIの査定価格を目安や参考価格として上手に活用しながら、最終的にはマーケットに精通した人の技による査定価格も確認するというのがよいだろう。ただ、マーケットに精通した人かどうかという問題は残るので、不動産の取引の際には担当者の実力を見極めることが常に求められる。