
6万5,000~6万8,000円 / 8.6~13.2平米
中央線・東西線「中野」駅 徒歩11分
中野駅前の喧騒から少し離れた静かな住宅街。そこにこの建物はあります。昭和38年に建った、趣のある木造の家。昔は1階に家族が住み、2階部分を下宿として学生や就職して間もない社会人に貸していました。
その後長く空いていたこの家を、2015年の春にシェアハウスとして再生しました。
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圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
初めての家づくりについてまとめた『考えない 探さない ラクして整う住まい考』(KADOKAWA)を2018年9月に上梓したばかりの暮らしのエッセイスト&整理収納アドバイザーの柳沢小実さん。それまでの賃貸の暮らしとこれからの生活を考えて出した答えは、物量は少しだけ少なく、一目で分かる収納に、ということだという。旅好きでもあり、身軽に暮らしたいという思いが詰まったご自宅に伺って、家づくりや暮らしについて話を聞いた。【連載】
料理家、インテリアショップやコーヒーショップのスタッフ……etc. 何かの道を追求し、私たちに提案してくれるいわば「プロ」たちは、普段どんな暮らしを送っているのだろう。プロならではの住まいの工夫やこだわりを伺った。
キッチンは、左右からアクセスできるよう、アイランド型に。シンク下の収納はダイニング側に食器を、キッチン側に調理道具などを収納している(写真撮影/嶋崎征弘)
東京都内にある柳沢さん宅は一戸建て。玄関から階段を上がった先には、広々と明るいLDKが広がる。取材陣が伺うと、柳沢さんは、さっとキッチンへ向かってお湯を沸かし、茶器を選んで、茶葉を出して、お茶を入れてくれた。その一連の動きはとてもスムーズだ。アイランド型のキッチンで、ダイニングとの境もないので、左右からアプローチしやすい。さらに、ダイニングとリビングもひとつながりなので、とても開放感がある。あえて壁をつくらなかったという理由が、一瞬にして伝わってきた。
運んできてくれたお茶は、かわいらしい花模様が入った茶器。ここ数年通っている台湾で購入したものだという。
(写真撮影/嶋崎征弘)
「すっきり暮らしたいという思いもありますが、こういう食器は我慢できなくて、つい買ってしまうんです。物欲って抑えられないときもありますよね」と笑いながら話す。物欲があるとはいえ、このすっきりした空間はどうやって生まれ、どのようにキープしているのだろう?
ハウスメーカーで実現した「白い箱」のような家家を建てるに当たって、建築家や工務店などの選択肢があるなかで、柳沢さんはハウスメーカーを選んだ。理由は、蓄積されたノウハウがあることや、長く住むことを考えてアフターケアがきちんとなされることだったという。
「家具はそれまで使っていたものを活用するので、『機能的な白い箱』のようなシンプルな家にしてもらいました」
すっきりと広く感じる理由は、この「シンプルさ」にもあるのかもしれない。造作家具などを必要以上につくらず、壁や床の面が大きく見えているから、開放感を感じられるのだろう。
また、整理収納アドバイザーの資格をもつだけあり、出し入れしやすい収納にも心を配っている。
「この家に引越すに当たって極端に減らしたわけではありません。私はミニマリストではないので、物量が少ないわけじゃないし、物は好きなんです。意識しているのは、『少ない』じゃなく『少なめ』にするということ」と言う。
ほんのちょっと少なめにするだけで、積み重なったり、奥に入り込んだりということがなくなり、探し物をする手間が減るというわけだ。余白が生まれれば、出し入れしやすくなる。だから、お茶を入れるという作業も、スムーズに流れるようにできていたのだ。
物を少なめにキープしつつ、それらを分かりやすく収納しているのも、スムーズな動きの理由のひとつ。例えば、キッチンの引き出しは、どこを開けても、ひと目でどこに何があるかがすぐ分かる。フタ付きの収納グッズなどは使わず、中に入っているものが見渡せるようにしている。
引き出し内は無印良品のケースで仕切っている。カトラリー、木製のスプーン類、小さなもの、レンゲなどと大まかに分類。「奥には使用頻度の低いカトラリーを入れています。すぐには捨てられなくて」(写真撮影/嶋崎征弘)
旅先で購入したという器は、食器棚の中できちんと並んでいるし、キッチンカウンターの上に置きっぱなしにしていても絵になっている。好きだからといってぎゅうぎゅうに詰め込んだりせず、出し入れしやすい状態にしているのはさすがだ。
「仕事も家事もしなくちゃいけない。忙しいからこそ、簡略化してラクに暮らせるようにと思っています。おおざっぱでめんどうくさがりだからこそ、散らからない工夫をしているんです(笑)」
その考え方はキッチンに限らず、クローゼットや洗面所などのスペースでもしかり。
「好きだから、つい増えてしまう」という洋服は、クローゼットを開ければそのほとんどが目に入るように掛けて収納している。
「物量を把握できるし、畳みジワが嫌だということもあります。それに、洗濯物を畳みたくないという理由もあるんです(笑)。めんどうな家事はできるだけ省きたい。忙しくてもきちんと収納できている状態をキープするためには、効率よく家事をこなさないといけないですから」
洋服だけでなく、バッグ類もS字フックでかけて見やすく、取り出しやすく。クローゼットは壁一面を3つに仕切り、左が柳沢さん、中央が夫、右は裁縫道具や梱包材などの日用品を収納(写真撮影/嶋崎征弘)
洗濯物を干すにも、クローゼットに収めるにも同じハンガーを使っているので、洗って乾いた状態のまましまえる。伸びやすいニット類はくるくる丸めてかごの中へ入れているが、それ以外はほぼ掛けているので、こちらも扉を開ければ一目瞭然。家事は自分のライフスタイルに合わせて変えていけばいいのだ。
寝室のキャビネットの上にはアクセサリー類を並べている。その日のコーディネートに合わせ、さっと手に取れて便利(写真撮影/嶋崎征弘)
必要以上の収納スペースはつくらない扉付きの食器棚は、上部はガラス製なので好きな食器を眺めることができ、下部は木製の扉で料理本を詰め込んでいても圧迫感がない。賃貸時代にデザインやサイズを吟味してやっと見つけた家具で、大切に使われていることがよく分かる。
2つ目のこの食器棚は以前から持っていた方の奥行きと合うサイズと色、さらに掃除のしやすい脚付きのデザイン、ガラス扉でほどよく物が隠せる、など条件を決めて見つけた(写真撮影/嶋崎征弘)
扉を開けると料理本やレシピファイルが並ぶ。扉を締めればすっきり。使う場所の近くにしまうというのも収納の鉄則だ(写真撮影/嶋崎征弘)
「料理本はダイニングで読むことが多いので、置き場所は食卓の近くに。大切に使ってきた家具はそのまま新しい家でも活躍しています。家を建てるからといって、必要以上に収納スペースをつくるのは避けました。例えば、階段上の空間を利用すれば、パントリーを設置することもできたんです。でも、果たしてそのスペースを活用するほど物を持つか、きちんと管理できるかを考えたら、私には必要ないという結論になりました」
吊り戸棚をつけない代わりに、奥行きの狭い棚板を壁に設置。茶葉などを見せて収納している(写真撮影/嶋崎征弘)
仕事をしながら家事もこなす柳沢さんにとって大切なのは、パッと見て物量を把握でき、出し入れしやすいこと。過剰な収納は必要ないのだ。同じ理由で、キッチンのつり戸棚も設置せず、クローゼットはウォークインタイプはやめてシンプルなつくりにした。そのぶん、キッチンは上部に開放感があって広々と感じるし、寝室もシングルベッドを並べておいても余裕が持てている。
夫婦それぞれの場所をキープして、共有場所はすっきりとリビングテーブルは置かず、床を見せることで広さを感じられるリビングに。「家具を買うときは本当に必要か吟味してから。夫と相談して、なるべく一生使えるものを、と思っています」。ソファはハンス・J・ウェグナーのもの(写真撮影/嶋崎征弘)
一人ではなく、夫と暮らしているからこその工夫も随所にある。「お互いに個人的に持っている物もありますよね。私の場合は家で仕事をするので仕事関係のものや書籍や雑誌など。夫は趣味の山登りの道具類がたくさんあるんです」。柳沢さんのものは仕事部屋があり、夫には寝室の横に通称「山部屋」があるので、それぞれで物量を管理するようにしている。リビングやダイニングに置きっぱなしにしない。そして、お互いにその部屋に関しては干渉しないと決めているので、共有のスペースであるLDKをすっきりさせることができている。
柳沢さんの仕事部屋には好きな書籍や雑誌、勉強中だという中国語のテキストなどが並んでいる。この4畳半ほどのスペースがあるおかげでリビングダイニングには物が置きっぱなしにならずにすむ(写真撮影/嶋崎征弘)
(写真撮影/嶋崎征弘)
無理せず、我慢せず、できることを話を聞いていると、暮らしやすいということは、好きなものを大切にし、無理をしないということが伝わってくる。
「仕事も家事もしているので、いかに気持ちよくラクに暮らせるかが大切。めんどうくさがりだから(笑)、それでもすっきりできる方法を考えてこの状態になったんだと思っています」
ダイニングの食器棚の横にある椅子。ここがご主人の仕事かばんなどの定位置。日中は、コード類を収納したバッグを置いている(写真撮影/嶋崎征弘)
柳沢さんがずっと試行錯誤して実践し続けてきた収納法や家事に対する考え方は、家を建てずとも真似できる工夫がたくさんある。
「プライベートでも仕事でも、海外に行くことが多いので、身軽でいたいというのもあります。パッと準備して出かけたいし、帰ってきたときに片付いている状態のほうが気持ちいいですよね」
物量は少なめにし、物の場所をきちんと決めておくことで、それを実現させている。
シンク下には、好きで集めているという茶器やフルーツ柄のグラスなどを並べている。旅や仕事で行った台湾などで購入したもの。「決してミニマリストではない」という言葉にもうなずける。我慢はせず、暮らしを楽しむことも大切(写真撮影/嶋崎征弘)
物も収納スペースも、自分たちに必要なものを選べばいい。一般的な「こうあるべき」という概念に縛られず、それまでの自分たちの暮らし方をきちんと把握して考えた家だからこそ、今の柳沢さんの暮らしにとてもフィットしているのだろう。
「年内に2回台湾に行くんです」とうれしそうに笑う。きっと旅の準備はてきぱきとスムーズで、楽しんで帰ってきたときには、すっきりとして明るい家が迎えるに違いないのだ。