引越しをしようと思うきっかけ、トップは「結婚」

(株)クロス・マーケティング(東京都新宿区)は、20歳~69歳の男女を対象に「賃貸物件の部屋探しに関する調査」を行った。調査は2019年2月15日(金)~2月17日(月)にインターネットで実施。有効回答数は1,000。それによると、部屋探しをして引越しをしようと思うきっかけトップは「結婚」で約3割(28.2%)。次いで「入学・進学」(24.6%)、「就職」(21.3%)と、ライフステージ変化が引越しのきっかけとして多く挙がっている。男女比でみると、男性は「転勤」が22.8%で女性の16.0%より6.8ポイント高く、女性は「結婚」が35.0%で男性の21.4%より13.6ポイント高い。

部屋探しの方法としては「不動産会社の店舗に行った」が63.2%で最多。「物件検索のWebサイト見た」(30.3%)よりも、店舗に足を運んで相談する人が約2倍。「直接現地で見た」(16.7%)、「家族や友人・知人から物件を紹介された」(12.8%)が続く。

譲れない設備・サービスは「バストイレ別」が42.2%で最多。次いで「エアコン」(35.1%)、「室内洗濯機置き場」(26.6%)の順。特に女性の2人に1人は「バストイレ別」を求めているほか、男性よりも全体的に譲れない設備やサービス項目が多い傾向がみられた。

動画内見・オンライン内見は、どちらも利用経験者は全体で約1割。男性20代、女性30代は利用経験者が他年代よりも多いが、まだまだ浸透しているとは言い難い結果となった。

ニュース情報元:(株)クロス・マーケティング

マンション購入は「新築と中古両方検討」が4割超

新築マンションポータルサイト「MAJOR7」(メジャーセブン=住友不動産・大京・東急不動産・東京建物・野村不動産・三井不動産レジデンシャル・三菱地所レジデンス)は、全国のマンション購入意向者約77万人を対象に「新築分譲マンション購入意向者アンケート」を行った。調査は2018年12月11日(火)~12月24日(月)にインターネットで実施。2,866人(男性1,951人、女性915人)より回答を得た。

それによると、現在マンション購入を検討している理由は、前回調査(2018年2月発表)と同様、「資産を持ちたい・資産として有利だと思ったから」がトップで21.3%。「もっと広い住まいに住みたいから」18.1%、「もっと交通の便の良いところに住みたいから」17.9%が続いた。依然として、「資産価値」「広さ」「交通の便」がマンション購入検討理由の主な要素となっている。

理想とするマンションのタイプについては、前回調査と同様、トップは「信頼できる不動産会社が分譲するマンション」で60.8%。次いで「信頼できる建設会社が施工するマンション」59.6%、「管理会社が信頼できるマンション」53.3%。「不動産会社」「建設会社」「管理会社の信頼性」は、時間の経過に関わらず理想とするマンションのタイプとして、常に重視されるポイントであるようだ。

今、マンションを購入すべきタイミングだと感じますか?では、「買い時だと思う」との回答は9.6%、「どちらかといえば買い時だと思う」は32.0%となり、双方を合わせると「買い時だと思う」割合は前回調査と同様に全体の4割を超えた。買い時だと思う理由は「現在の住宅ローン金利は低水準だから」が60.7%で断トツの1位。次いで「2019年10月に消費税が10%に増税予定のため」が42.4%、「住宅ローン控除など購入支援制度があるため」が22.3%で続いた。

マンションについて新築と中古のどちらを検討していますか?では、「新築のみ検討」が49.0%、「中古のみ検討」が4.9%、「新築と中古両方検討」が43.9%となり、前回調査同様「両方検討」が4割を超えた。

ニュース情報元:住友不動産(株)

豊洲六丁目の民間都市再生事業計画が認定、オフィス・ホテルなど建設

国土交通省は2月26日、都市再生特別措置法の規定に基づき、民間都市再生事業計画「(仮称)豊洲六丁目4-2,3街区プロジェクト」について認定した。本年1月31日付けで清水建設(株)から申請のあったもの。事業区域は東京都江東区豊洲六丁目9番1の一部、24,453.77m2。ビジネスニーズに対応する大規模オフィスや、宿泊施設を計画。ゆりかもめ市場前駅と連携した交通広場と歩行者ネットワーク、水と緑を活かしたオープンスペースを形成し、魅力的な複合市街地を形成する。

建物はオフィス棟とホテル棟の2棟で構成される。オフィス棟は地上12階・塔屋1階、延べ面積87,688.25m2。ホテル棟は地上14階・塔屋1階、延べ面積30,910.00m2。施行期間は2019年2月4日~2021年8月31日の予定。

ニュース情報元:国土交通省

中古マンション価格、下落地域数が急増

(株)東京カンテイは2月28日、2019年1月度「中古マンション価格天気図」を発表した。これは、全国47都道府県のファミリータイプ中古マンション流通事例価格を月ごとに集計し、価格変動を「天気マーク」で表示したもの。それによると、1月は「晴」が15から18地域に増加。「雨」は4から1地域に減少。「曇」は7から10地域に増加。「小雨」は10から8地域、「薄日」は11から10地域にそれぞれ減少。47都道府県のうち前月比価格が下落した地域数は6から18地域に急増した。

首都圏は、東京都が前月比0.0%と横ばい。神奈川県は1.0%下落、千葉県は0.2%下落、埼玉県は1.0%下落。首都圏平均は0.5%下落した。近畿圏は、大阪府が±0.0%の横ばい、兵庫県は0.7%下落、京都府は0.7%上昇。近畿圏平均は0.3%の下落となった。中部圏は、愛知県で2.1%上昇、岐阜県で3.3%下落、三重県で6.6%上昇、静岡県で0.7%下落。中部圏平均は1.5%の上昇。

北海道は前月比1.6%上昇し1,617万円、札幌市は1.7%上昇し1,676万円。最も事例が多い中央区で0.3%下落したものの、次いで事例の多い豊平区では0.1%、西区では1.7%それぞれ上昇した。宮城県は、±0.0%と変わらず2,004万円。仙台市も同様に横ばいで2,063万円。長野県は、0.5%上昇し1,951万円。県内で最も事例の多い長野市で7.6%、次いで事例の多い松本市で1.6%それぞれ上昇し同県の価格を押し上げた。

広島県は1.5%下落の2,095万円、広島市は2.1%下落し2,190万円。福岡県は0.7%上昇し1,964万円、福岡市は反対に0.1%下落し2,373万円となった。

ニュース情報元:(株)東京カンテイ

愛知県中部エリア最大級の「ららぽーと」、2020年秋に開業

三井不動産(株)は、愛知県中部エリア最大級となるリージョナル型ショッピングセンター「(仮称)ららぽーと愛知東郷町」の開発を推進しており、3月1日(金)に着工する。同施設は、愛知県愛知郡東郷町に立地。昨年9月にオープンした「ららぽーと名古屋みなとアクルス」に続き、東海3県2店舗目のららぽーととなる。施設は延床面積約190,200m2、店舗面積約63,900m2の4階建て。ファッション、雑貨、飲食、エンターテインメント、サービスなど、話題性の高い店舗を約230店揃える。

敷地内には約4,000m2の緑地を整備し、屋外イベントスペースを設ける。また、バスやタクシーの発着場となる交通広場も整備する。竣工・開業は2020年秋の予定。

ニュース情報元:三井不動産(株)

不動産価格指数、全国の住宅総合は48ヶ月連続上昇

国土交通省はこのたび、2018年11月分の「不動産価格指数(住宅)」と「不動産価格指数(商業用不動産)(第3四半期分)」を公表した。指数は2010年の平均を100としたもの。
それによると、11月分の全国の住宅総合は前年同月比2.4%増の112.1(先月112.0)で、48ヶ月連続して前年同月比で上昇となった。住宅地は99.0(同100.2)、戸建住宅は102.3(同101.1)、マンション(区分所有)は141.8(同143.4)。

都道府県別でみると、東京都の住宅総合は121.9(対前年同月比+1.0%)、住宅地は103.7(同-5.2%)、戸建住宅は105.5(同-1.8%)、マンションは143.6(同+2.9%)。大阪府の住宅総合は113.5(同+1.4%)、住宅地は102.3(同-7.6%)、戸建住宅は94.5(同-3.0%)、マンションは149.4(同+6.3%)。

また、平成30年第3四半期分の全国の商業用不動産総合は124.2(前四半期123.2)。店舗は138.7(同135.6)、オフィスは143.0(同133.4)、マンション・アパート(一棟)は135.9(同134.4)となった。

ニュース情報元:国土交通省

住宅着工戸数、2か月連続増加

国土交通省は2月28日、平成31年1月の住宅着工動向を発表した。それによると、1月の住宅着工戸数は67,087戸(前年同月比1.1%増)で2か月連続の増加となった。
利用関係別でみると、持家は20,925戸で4か月連続の増加(前年同月比3.3%増)。貸家は24,776戸で5か月連続の減少(同12.3%減)。

分譲住宅は20,911戸で、6か月連続の増加(同19.8%増)。そのうち、マンションは9,368戸で6か月連続の増加(同43.6%増)。一戸建は11,190戸で2か月連続の増加(同4.2%増)となった。

ニュース情報元:国土交通省

無人になった被災地に「小高パイオニアヴィレッジ」誕生。若手起業家が地域再生モデルへ挑む

福島第一原発事故に伴い避難指示区域に指定された福島県南相馬市小高区(旧小高町)。一時無人となった町に2018年1月、新たな営みを生み出す拠点「小高パイオニアヴィレッジ」が完成した。同施設を企画した一般社団法人パイオニズム代表の和田智行氏に話を聞いた。
たくさんのスモールビジネスに支えられた魅力的な町をつくる和田智行さん(写真撮影/佐藤由紀子)

和田智行さん(写真撮影/佐藤由紀子)

「復興拠点の計画が形としてできたことで、今後事業や活動が加速すると思うので、期待と責任が入り混じった気持ちです」と話す、和田智行さん。大学進学で上京し、卒業後はITベンチャー2社を起業、2005年に故郷の南相馬市小高区にUターンして仕事を続けた。

東日本大震災後、小高区の住民1万2842人全員が避難指示の対象となり、5年以上町への立ち入りを制限された。和田さんの自宅も警戒区域に指定され、会津若松市に避難し、起業や創業を志す人たちを支援するインキュベーションセンターに勤めた。そして、避難指示が解除される前の小高区に入り、食堂や仮設スーパー、ガラスアクセサリー工房を経営した。

2016年7月に避難指示が解除され2年半以上。病院や学校などが再開し、小高交流センターがオープンするなど、徐々に生活環境は整いつつあるものの、帰還者は約3000人で、住民のほとんどが65歳以上。人口の回復、若い人の帰還、人材育成など、課題は多い。

「10年、20年後、この町はどうなるのか、多くの人が漠然とした不安をかかえています。ここで事業を起こし、働く場所や住民の暮らしを支えるサービス、失われたコミュニティをつくることで、地域が消滅せず存続していく可能性を示していくことができたら」と和田さんは、南相馬市出身の起業家2人に声をかけ、日本財団の支援金やクラウドファンディングなど、活動を応援する方々の支援を受けて「小高パイオニアヴィレッジプロジェクト」をスタートさせた。

プロジェクトが目指すのは、1000人を雇用する1社に支えられる社会ではなく、10人を雇用する多様な100社が躍動する社会。「一つの大企業に支えられた町は、事業の継続が困難になったとき撤退して町は焼け野原になってしまいます。たくさんのスモールビジネスがあれば、一気に全滅することはなく、多様な商品や人がいて魅力的な町になる。そういう風土が出来上がれば、新しい世代も次々出てくるのではないかと思います」

起業やものづくりをする人が励まし合い成長していくコミュニティ小高パイオニアヴィレッジ北側外観(写真撮影/佐藤由紀子)

小高パイオニアヴィレッジ北側外観(写真撮影/佐藤由紀子)

小高パイオニアヴィレッジ外観。半透明の壁「ルメウォール」を通して、中の灯りが外に漏れる(写真撮影/佐藤由紀子)

小高パイオニアヴィレッジ外観。半透明の壁「ルメウォール」を通して、中の灯りが外に漏れる(写真撮影/佐藤由紀子)

建築中の小高パイオニアヴィレッジ。土地を確保することから始まった(画像提供/一般社団法人パイオニズム)

建築中の小高パイオニアヴィレッジ。土地を確保することから始まった(画像提供/一般社団法人パイオニズム)

約10カ月の工期を経て1月に完成した「小高パイオニアヴィレッジ」は、延べ床面積約280平米、鉄骨造りの2階建て。建築費用は日本財団の「東日本大震災復興支援 New Day 基金」の支援金をはじめ、自己資金、クラウドファンディングを活用した。内装はラワン合板をふんだんに使った最低限のシンプルな仕上げで、今後のニーズ、周囲の状況にあわせて柔軟に変えていく予定だという。

小高パイオニアヴィレッジ俯瞰図の構想スケッチ。「境界のあいまいな建築」がデザインコンセプトだ(画像提供/一般社団法人パイオニズム、設計:RFA)

小高パイオニアヴィレッジ俯瞰図の構想スケッチ。「境界のあいまいな建築」がデザインコンセプトだ(画像提供/一般社団法人パイオニズム、設計:RFA)

吹抜けのコワーキングスペース。ひな壇にはコンセントや暖房が装備されている(画像提供/一般社団法人パイオニズム)

吹抜けのコワーキングスペース。ひな壇にはコンセントや暖房が装備されている(画像提供/一般社団法人パイオニズム)

中心施設は、ひな段状で、吹抜けで2階とオープンにつながるコワーキングスペース。ここでさまざまな事業、業種の方々が自由に働き、アイデアを練る。また最大50人程度のイベントにも対応可能だ。「起業は孤独な闘いで、起業したい気持ちがあっても諦める人も多いと思いますが、隣に創業を目指す仲間がいれば、励まし合い、化学反応が生まれます」と和田さん。ここは、そんなコミュニティが活性化する場であり “ヴィレッジ”の広場のような存在だ。

2段ベッドが設置されたシンプルなゲストハウス(画像提供/一般社団法人パイオニズム)

2段ベッドが設置されたシンプルなゲストハウス(画像提供/一般社団法人パイオニズム)

2階にあるゲストハウスは、長期滞在する人、出張などでコワーキングスペースを活用したい人のための簡易的な宿泊施設で、5部屋用意されている。

メイカーズルームの「HARIOランプワークファクトリー小高」工房では地元の主婦4人が職人として働いている(写真撮影/佐藤由紀子)

メイカーズルームの「HARIOランプワークファクトリー小高」工房では地元の主婦4人が職人として働いている(写真撮影/佐藤由紀子)

1階には、ものづくりを生業とする人たちの共同作業場「メイカーズルーム」を設置。現在は老舗ガラスメーカーHARIOのガラスアクセサリーブランドの生産拠点として、2015年に設立された「HARIOランプワークファクトリー小高」が入所。今後はワークショップを行い、職人の発掘・育成を行う予定だ。

震災の避難生活を経験して気づいた大切なものと新たな価値観2019年1月20日に行われたオープニングセレモニー風景。関係者ら35人が訪れ開所を祝った(写真撮影/佐藤由紀子)

2019年1月20日に行われたオープニングセレモニー風景。関係者ら35人が訪れ開所を祝った(写真撮影/佐藤由紀子)

完成した「小高パイオニアヴィレッジ」に対する地域の反応はどうか。「20~40代の人がほとんど住んでいないので、若い人がいるだけで住民は歓迎してくれるし、喜んでくれているのを感じています」と和田さん。「いつから使えますか?行ってみたい」という利用の問い合わせは全国各地からあり、コワーキングスペースを運営する人から和田さんあてに「一緒に何かやりましょう」という声がけも多いという。

すでに、地元の農家と提携するクラフトビールづくりのプロジェクト、手づくりDJイベント、ガラスアクセサリーの新ブランドの発表といった企画も目白押し。10人の起業家を誘致し、サーフカルチャーや馬事文化など地域資源を活用した事業を起こす「Next Commons Lab南相馬」など、すでに生まれている起業家コミュニティの拠点にもなる。3月10日にグランドオープン、本格的にスタートする。

利用者は、働く場所にこだわらない、自営業のフリーランスやクリエイターを想定している。「旧避難指示区域に住むことに抵抗がある人、大きなスーパーやアメニティ施設がない町に暮らせない人は多いと思います。一方では、むしろ、こういう場所に興味があり、面白いと感じる感性の持ち主もいるはず。やりたいことがある人、今の社会を生きづらいと感じている人がここに滞在して、一緒にさまざまな活動や事業を起こしたりして、結果この町に住むようになれば」と和田さんは期待する。

オフィス機能をもつ2階のフリースペース。状況に応じて柔軟に変えられる設計になっている(写真撮影/筆者)

オフィス機能をもつ2階のフリースペース。状況に応じて柔軟に変えられる設計になっている(写真撮影/筆者)

ITベンチャー企業の役員として働いていた当時は、稼ぐために仕事をしていたという和田さん。「震災が起きて避難生活を余儀なくされ、お金があっても食べ物もガソリンも手に入らず、1歳と3歳だった私の子どもにもストレスを与えるのではないかと心配になりました。けれども、いろいろな人に助けられて生き延びることができて、自分を支える柱は収入ではなく、人との関係性をたくさんもつことだと感じ、価値観が変わりました」と話す。

今後については、「課題は山積みですが、見方を変えれば、ゼロベースで自由なチャレンジができるのが魅力です。真っ白いキャンバスに自由な絵を描くように、自分たち好みの町をつくっていける。将来、小高パイオニアヴィレッジで事業を始めた人が成長して、事業が拡大して施設が狭くなったら、近くの空き地を借りて新しく事業を始める。そうしてコミュニティが広がり、“ヴィレッジ”の“村人”がどんどん増えればと思います」と話す和田さんの表情から静かな自信が伝わってきた。

つくられた価値観のなかで暮らし、欲しいものが簡単に手に入る今。「小高パイオニアヴィレッジ」は、必要最小限のものしかないが、明るい笑顔、人と人の信頼関係、希望が感じられた。一時、無人、無になった町はパイオニアである若手起業家たちの手で、新しい価値観、新しい社会が生まれようとしている。また5年後、10年後の小高区を見てみたいと思わずにはいられない。

●プロフィール
和田智行
福島県南相馬市小高区(旧小高町)生まれ。2005年より故郷の南相馬市で東京のITベンチャーの役員として働く。東日本大震災後、避難生活を経て2014年に避難区域初のコワーキングスペース事業「小高ワーカーズベース」を開始。一般社団法人パイオニズム代表理事として住民帰還の呼び水となる事業の創出に取り組む。●取材協力
小高パイオニアヴィレッジ
Makuakeのプロジェクトページ

料理家のキッチンと朝ごはん[2]後編 オープン収納をセンスよく見せるポイント5つ

世界各地を旅する料理家、口尾麻美さんに、前回はトルコ風の朝ごはんのつくり方を教えていただきました。イスタンブールのバザールのような、パリのアパルトマンのような、ひと言で「●●風」と言いきれない、多国籍なムードが素敵な口尾家で、今回はご自宅のインテリアについて伺います。【連載】料理家のキッチンと朝ごはん
料理研究家やフードコーディネーターといった料理のプロは、どんなキッチンで、どんな朝ごはんをつくって食べているのでしょうか? かれらが朝ごはんをつくる様子を拝見しながら、おいしいレシピを生み出すプロならではのキッチン収納の秘密を、片づけのプロ、ライフオーガナイザーが探ります。さまざまなものがセンスよくディスプレイされた多国籍インテリア

旅先で気に入ったものをあれこれ持ち帰っているうちに、多国籍ミックスのインテリアにたどり着いたという口尾さん。たくさんのものが目につく場所に並べられているのに、不思議と統一感があるのは、口尾さんの審美眼を通して厳選されたものだけが、研ぎ澄まされたセンスでコーディネートされているから。

(写真撮影/嶋崎征弘)

(写真撮影/嶋崎征弘)

「最初はパリのインテリアを参考にしていたのですが、あちこち旅していろんなものを持ち帰っているうちに、ひと言で●●風と言いきれないミックス・スタイルにたどり着きました」と笑う口尾さん(写真撮影/嶋崎征弘)

「最初はパリのインテリアを参考にしていたのですが、あちこち旅していろんなものを持ち帰っているうちに、ひと言で●●風と言いきれないミックス・スタイルにたどり着きました」と笑う口尾さん(写真撮影/嶋崎征弘)

正直なところ、口尾家のように「さまざまなものを見せながら、統一感を出す」「多くのものを持ちながら、センスよく見せる」のは、インテリア的にかなり難易度が高いです。誰もが気軽に再現できるものではないけれど、やっぱりオープン収納っておしゃれ。ミックス・スタイルってかわいい。ちょっとでも自宅に取り入れてみたい。

……ということで今回は、インテリア初心者さんでも真似できそうな口尾スタイルを、ピンポイントでお教えいただきました。

ポイント1、トレーやカゴに、同じ種類のものをまとめてみる

数が多くて小さなものを出しっぱなしにすると、「単に雑多」な雰囲気になってしまいますよね。そんなときは、トレーやカゴに同じ種類のものをまとめると、ひとつの大きなもののように見せられるため、細々した印象を払拭できます。口尾家でも、たくさんのトレーやカゴが使われていましたよ。

モロッコで買い集めたという小さなミントティーグラスは、色も形も少しずつ違います。口尾さんは、大きなハンドル付きトレーにグラスをまとめて、窓辺のベンチに置いていました。日が当たるとキラキラ光ってきれい(写真撮影/嶋崎征弘)

モロッコで買い集めたという小さなミントティーグラスは、色も形も少しずつ違います。口尾さんは、大きなハンドル付きトレーにグラスをまとめて、窓辺のベンチに置いていました。日が当たるとキラキラ光ってきれい(写真撮影/嶋崎征弘)

ご自宅で開催する料理教室の生徒さんが使うグラスは、トレーにまとめてリビングのシェルフに(写真撮影/嶋崎征弘)

ご自宅で開催する料理教室の生徒さんが使うグラスは、トレーにまとめてリビングのシェルフに(写真撮影/嶋崎征弘)

常温保存の食材もカゴや器にまとめると、お店のディスプレイのように素敵に。よく見ると卵のカゴに親鳥プレートが!(写真撮影/嶋崎征弘)

常温保存の食材もカゴや器にまとめると、お店のディスプレイのように素敵に。よく見ると卵のカゴに親鳥プレートが!(写真撮影/嶋崎征弘)

ポイント2、よく似た色や素材のものを、1カ所に集めてみる

異なる素材や形のものをあちこちに点在させると、やっぱり「単に雑多」なイメージになってしまいます。けれども、よく似た素材や形のものを1カ所に集めてみると、自然と統一感が生まれるから不思議です。重ねる、立てる、並べるなど、口尾家ではさまざまな方法でよく似たものがまとめられていました。

自然素材のカゴや盆ざる、トレーなどはトースターの上に重ねて収納(写真撮影/嶋崎征弘)

自然素材のカゴやざる盆、トレーなどはトースターの上に重ねて収納(写真撮影/嶋崎征弘)

もともとあった窓と、リフォームで取り付けた内窓の間を収納スペースに見立て、普段使っていないガラス製の保存容器やグラスをディスプレイしながら保管(写真撮影/嶋崎征弘)

もともとあった窓と、リフォームで取り付けた内窓の間を収納スペースに見立て、普段使っていないガラス製の保存容器やグラスをディスプレイしながら保管(写真撮影/嶋崎征弘)

ポイント3、フックにかけてみる。カゴに入れて吊るしてみる

片づけに関する本や雑誌で「かける収納」「吊るす収納」を、よく見かけます。浮かせておけば、その下の掃除がラクだし、しまい込まないから出し入れしやすい一方で、何でもかんでもぶら下げると生活感が溢れ出てしまうのが難点。これをおしゃれに見せる高度なテクニックが、口尾家では駆使されていました。

複数のアイテムをかけるときは「ポイント2、よく似た素材や形のものを、1カ所に集めてみる」と、見た目がうるさくなりません。中が透けて見えるメッシュバッグに収めるものも、素材や形をそろえるとすっきり見えます(写真撮影/嶋崎征弘)

複数のアイテムをかけるときは「ポイント2、よく似た素材や形のものを、1カ所に集めてみる」と、見た目がうるさくなりません。中が透けて見えるメッシュバッグに収めるものも、素材や形をそろえるとすっきり見えます(写真撮影/嶋崎征弘)

(左)ポットラックには、小鍋やキッチンバサミ、ストレーナーなどを収納。かけるものの高さをそろえているので、雑多な感じが抑えられています。(右)マグカップツリーには、マグだけでなくミルクピッチャーやコースターも(写真撮影/嶋崎征弘)

(左)ポットラックには、小鍋やキッチンバサミ、ストレーナーなどを収納。かけるものの高さをそろえているので、雑多な感じが抑えられています。(右)マグカップツリーには、マグだけでなくミルクピッチャーやコースターも(写真撮影/嶋崎征弘)

ポイント4、オープンシェルフはグルーピングを意識してみる

ものをディスプレイしながら収納できるオープンシェルフ……ですが、気づけばものと一緒に生活感まで陳列してしまっていること、ありませんか(わたしはあります)。ポイントは、ものをひとつずつ個別に見るのではなく、グループにして見ることのようです。

キッチンのシンク上に取り付けられた棚には、普段よく使う「Atelier 16-27」の食器を収納。色とりどりの器でも、つくり手が同じものだけを厳選して並べれば、ショップのように美しくディスプレイできます(写真撮影/嶋崎征弘)

キッチンのシンク上に取り付けられた棚には、普段よく使う「Atelier 16-27」の食器を収納。色とりどりの器でも、つくり手が同じものだけを厳選して並べれば、ショップのように美しくディスプレイできます(写真撮影/嶋崎征弘)

カトラリーは素材と高さをそろえ、グラスに立てて収納。雑多に見えてしまうときは、大きめのアイテムを近くに置けば目線を外らすことができます。口尾さんはデザインのかわいい鍋敷きをアイキャッチにしていました(写真撮影/嶋崎征弘)

カトラリーは素材と高さをそろえ、グラスに立てて収納。雑多に見えてしまうときは、大きめのアイテムを近くに置けば目線を外らすことができます。口尾さんはデザインのかわいい鍋敷きをアイキャッチにしていました(写真撮影/嶋崎征弘)

収めるものの素材やデザイン、色などをグルーピングしたうえで絶妙のバランスで配置した、口尾ワールド全開のシェルフ。「壁面に固定したシェルフは、地震による揺れが少ないのも利点です。以前、大きな地震があったときも、何も落下しませんでしたよ」(写真撮影/嶋崎征弘)

収めるものの素材やデザイン、色などをグルーピングしたうえで絶妙のバランスで配置した、口尾ワールド全開のシェルフ。「壁面に固定したシェルフは、地震による揺れが少ないのも利点です。以前、大きな地震があったときも、何も落下しませんでしたよ」(写真撮影/嶋崎征弘)

ポイント5、手づくりしたものをちょっとだけ飾ってみる

最後にご紹介するのは、ぶきっちょさんでも簡単に真似できる手づくりのアイデアです。口尾さんによると、「やりすぎるとクドくなるので、あまり前面に出さず、ちょっと控えめにディスプレイするのが大人っぽいインテリアにする秘訣」なのだとか。

コリアンダーやシナモンスティックといったスパイス類は、透明のガラスジャーに保存。かわいい紙片にスパイス名をスタンプして一緒に入れておけば、ラベリング代わりになるうえインテリアとしても素敵(写真撮影/嶋崎征弘)

コリアンダーやシナモンスティックといったスパイス類は、透明のガラスジャーに保存。かわいい紙片にスパイス名をスタンプして一緒に入れておけば、ラベリング代わりになるうえインテリアとしても素敵(写真撮影/嶋崎征弘)

赤レンズ豆を保存しているジャーには、スパイス名の紙片ではなく子豚のフィギュアを入れていた口尾さん。「ぱっと見ただけでは分からないけれど、よく見るといる……くらいの、さりげなさがポイントです(笑)」(写真撮影/嶋崎征弘)

赤レンズ豆を保存しているジャーには、スパイス名の紙片ではなく子豚のフィギュアを入れていた口尾さん。「ぱっと見ただけでは分からないけれど、よく見るといる……くらいの、さりげなさがポイントです(笑)」(写真撮影/嶋崎征弘)

ニットで編まれたスイートチョリソーと赤いネットのリヨナーソーセージのオブジェは、フランスのブランド「MAISON CISSON」のもの。「これを見て、自分でもつくれるかなと思ったんです」と口尾さん(写真撮影/嶋崎征弘)

ニットで編まれたスイートチョリソーと赤いネットのリヨナーソーセージのオブジェは、フランスのブランド「MAISON CISSON」のもの。「これを見て、自分でもつくれるかなと思ったんです」と口尾さん(写真撮影/嶋崎征弘)

「MAISON CISSON」からインスピレーションを受けた口尾さんによる作品。「リネンのクロスやカットしたソックスに詰め物をして、麻ヒモや調理ネットで結んだだけ」とのことですが、とってもかわいかった!(写真撮影/嶋崎征弘)

「MAISON CISSON」からインスピレーションを受けた口尾さんによる作品。「リネンのクロスやカットしたソックスに詰め物をして、麻ヒモや調理ネットで結んだだけ」とのことですが、とってもかわいかった!(写真撮影/嶋崎征弘)

カットしたモミの木をカゴにのせて吊るせば、部屋中がよい香りでいっぱいに。リースやスワッグをつくるより手軽にドライフラワーが楽しめます。ユーカリやラベンダー、ミモザなどを飾っても(写真撮影/嶋崎征弘)

カットしたモミの木をカゴにのせて吊るせば、部屋中がよい香りでいっぱいに。リースやスワッグをつくるより手軽にドライフラワーが楽しめます。ユーカリやラベンダー、ミモザなどを飾っても(写真撮影/嶋崎征弘)

今回、5つのポイントをご紹介しましたが、改めて「さまざまのものを見せながら、統一感を出す」「多くのものを持ちながら、センスよく見せる」のってむずかしい!と感じました。

食・住だけでなく、衣(ファッション)もすてきな口尾さん。ショートカットに映えるパープルのイヤリングは「Alexandre de Paris」のもの。「料理中はシンプルなスタイルのことが多いので、大振りのイヤリングで変化を楽しんでいます」(写真撮影/嶋崎征弘)

食・住だけでなく、衣(ファッション)もすてきな口尾さん。ショートカットに映えるパープルのイヤリングは「Alexandre de Paris」のもの。「料理中はシンプルなスタイルのことが多いので、大振りのイヤリングで変化を楽しんでいます」(写真撮影/嶋崎征弘)

口尾家のインテリアは、筋の通ったもの選びや、スタイリングのセンス、住まい全体を俯瞰するバランス力が備わっている口尾さんだからこそ実現できる世界観なのだと思います。なかなか自宅で再現できそうな気がしないのだけれど……再現できないからこそ憧れてしまう、大人のおもちゃ箱のように素敵な口尾家のインテリアなのでした。

>前編はこちら

●取材協力
口尾麻美さん HP
北海道生まれ。アパレル会社勤務後、イタリア料理店を経て料理研究家に。旅で出会った料理、食材、スパイス、道具、雑貨、ライフスタイルからインスピレーションを受けたレシピを提案。著書に『おはよう! アジアの朝ごはん: 台湾・ベトナム・韓国・香港の朝食事情と再現レシピ 』(誠文堂新光社)、『はじめまして 電鍋レシピ 台湾からきた万能電気釜でつくる おいしい料理と旅の話。』(グラフィック社)など多数。