
35万2,000円(税込) / 40.95平米
銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道」駅 徒歩7分
「ここ本当に青山!?」
いい意味で青山っぽくない、のんびりとした空気感があたりにはただよっています。窓の先に広がるのはちょっとしたグラウンド。ベンチでくつろぐ老人、キャッチボールを楽しむ若人の姿になんだかほっこり。
そんなおもしろい場所に立つ、タイル張りでレトロな雰囲気にグッ ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
「デュアラー(二拠点生活者)」、家を持たない暮らしを送る「アドレスホッパー」など、ひとつの家に留まらない暮らしが注目を集めています。そんななか、定額で全国のゲストハウスやシェアハウス等に泊まり放題・住み放題になるサブスプリクション型住居サービスが今年4月から続々と登場。一体どんなものなのか、サービスのひとつ、「ADDress」で体験してきました。
多拠点生活を通じて、地域との関わりを生み出していく
「ADDress」は、日本全国の空き家や遊休別荘と、住みたい人をマッチングする「コリビング(Co-living)」サービス。月額4万円(光熱費込み)、全国25拠点(2019年11月20日時点)で多拠点生活ができます。メイン拠点をひとつ選ぶことができ、住民票の登録をすることも可能(荷物の受け取りや、郵便物の受け取りもすることができます)。会員と地域をつなぐ役割を担う家守(やもり)と呼ばれるスタッフを通じて、滞在先で地域と深く関わっていけるのも特徴です。
今回伺ったのは、東京から電車で1時間ほどの北鎌倉の拠点。街には円覚寺、浄智寺、東慶寺といった由緒ある寺社が点在し、静かで自然も感じられます。拠点までは北鎌倉駅から徒歩13分と少々距離がありますが、味わい深い個人経営の喫茶店や豆腐屋などのお店、カワセミが住む小川などを眺めながらのんびり歩いていると、時間も気になりません。
北鎌倉駅(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
建長寺(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
住宅街を進んでいくと、モダンな一軒家がありました。見た目は一般的な家屋なので見落としそうになりますが、玄関には「ADDress」のステッカーが貼ってあり、拠点であることが分かります。玄関先に暗証番号を入れて取り出せる鍵があり、そちらを使って中へ。
北鎌倉の拠点。自転車(1台)は会員は誰でも使うことができます(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
1階には広々としたリビングやキッチン、2階にはベッドが置かれた部屋が3部屋あります。
取材陣が滞在した、ゲスト部屋(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
タオル、布団カバー等が用意されていました(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
家の中を見た限りでは、出入り自由ということ以外、よくあるシェアハウスと変わらないように思えます。ADDressでの暮らしについて、家守と会員に話を聞いてみました。
北鎌倉拠点の家守に聞いた。ADDressで人と地域とつながりを生み出すまずは7月から北鎌倉拠点の家守になった北原浩一さん。もともと都内に住んでいてフリーランスのビジネスプロデューサーとして働いていましたが、鎌倉に住んでみたいと家守になったそうです。「運営と住人はフラットな関係で、家守も一緒に拠点に暮らすメンバーの一人なんです」と言います。
北鎌倉の拠点には、現在は6名(20代後半~40代)がメイン拠点として使用、2組がゲスト宿泊ができるようになっているとのこと。メンバーは、拠点として使っている人、別荘感覚で使っている人、全国の拠点を旅しながら多拠点生活を満喫する人などさまざま。
北鎌倉拠点の家守・北原浩一さん。ゲストの予約管理や掃除、イベントの企画等を行っています(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
「6人全員が居合わせることはほとんどありませんが、北鎌倉をメイン拠点として使っているメンバーは、Facebookのグループチャットをつくって交流できるようにしています。スケジュールを合わせて、一緒にご飯を食べたりします。突然メンバーの一人が海が見たいと言い出して、三浦半島の先端にある三崎港に旅行に行ったこともありました。今後はもっと会員同士の交流が深まるようなコミュニティや地域コミュニティとの交流を広げていきたいですね」
広いリビングはコワーキングスペースとダイニングスペースに分割。プロジェクタで大きなスクリーンに映画を映して上映会をしたり、会員と家守で飲み会をしたりと、さまざまな使い方をしているそうです(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
シアタースペースもある(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
今後の課題は?と尋ねると「地域とのつながりづくり、ですね」との回答。
「外部とのつながりづくりは各拠点の家守に一任されています。友人が鎌倉でシェアハウスを運営しているので、地元の人を紹介してもらったりしているところです。拠点を地元の人に使ってもらって、座禅などの鎌倉らしいイベントができればと思っています」
「ADDress」暮らしってどう? 会員に聞いてみた夜にリビングで一緒になった、会員のTさんとFさんにも話を聞いてみました。
Tさんが手料理をふるまってくれました(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
取材陣が持参した惣菜も一緒に(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
WEBライター Tさん(30代・女性)「地方に行動の幅が広がるのがうれしい」
Tさんは8月からお試し会員になり、愛車のカブに乗って旅をしているところでした。
会員になってから1カ月間でめぐった拠点は、清川村(神奈川県)、一宮町(千葉県)、世田谷区(東京都)、南伊豆町(静岡県)、鎌倉市(神奈川県)、南房総市(千葉県)の6拠点。取材時は再度、鎌倉市(神奈川県)に滞在していました。
特に印象に残っている拠点は南房総とのこと。午前中に仕事をし、午後は観光へ。鋸山に登ったり、カブで海辺を走ったり、景色のいい温泉を見つけたり。移動しない暮らしでは体験できないような濃厚な一日です。多拠点生活ではこれが日常になるのかと、羨ましくなりました。
Tさんは、会社でリモートワークが認められていること、仕事で地方に取材に行く機会があること、何よりも旅が好きで、「地方に拠点があることで、行動の幅が広がるのがうれしい」と言います。
「はじめはゲストハウス暮らしをしようと思っていましたが、ドミトリーでは同室の人に気を使わなければいけなかったりして、ずっと続けるのは辛い。利用者のことを知っていればその必要もないし、気楽でいいなと思います。現在は東京都内のシェアハウスで暮らしていますが、本格的にADDress暮らしにシフトしようと思っています」とTさん。すでに二子玉川の拠点に申し込みしているとのことでした。
翌日、次の拠点(清川村)へカブに乗ってさっそうと旅立っていきました。次の拠点では、どんな一日を過ごすのでしょうか。
会社員 Fさん(20代・女性)「普段は出会えない人たちと会えるのが楽しい」
Fさんは、北鎌倉拠点で唯一、ほぼ毎日帰宅しているメンバー。都内の会社に勤めていて、21時過ぎに食卓に合流しました。
話に花が咲き、就寝したのは夜中の25時(笑)(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
今までは熊本県、福岡県、大阪府のシェアハウスやルームシェアをしていたとのこと。10回以上の引越しを経て、転職を機に7月中旬からここでの暮らしをスタートさせました。
「普段会えない、いろんな働き方をしている人たちに会えるのが楽しいんです。新しいサービスだからかな、面白い人が多い」とFさん。
庭があり、ガーデニングや小さな菜園を楽しむこともできるとか。訪問時はサウナ好きのメンバーが設置したサウナテントがありました(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
「今後も他の地域に転職する可能性もありますし、基本的には“移動する生活”をしていたいんです。ゲストハウスなどで気に入った場所を転々とするのもいいと思ったけれど、やはり、そのままの自分でいられるという精神的基盤があることと、お互いを知っている人と暮らすのは安心感があります。休みの日は、メンバーと鎌倉に行ったり、伊豆で波の音を聞きながらお酒を飲んだり、一人暮らしとは違う、人とのつながりを感じられるところも気に入っています」
海外旅行客が多いゲストハウスで住み込みで働いていた経験から、今後は「日本の常識に縛られない暮らしを知る機会になれば」と、来年以降は海外のサブスク型居住サービスを利用することも考えているとか(現在ADDressでは海外拠点はなし)。
地方の暮らを始めるのでさえ敷居が高いと思いがちなのに、海外はなおのこと。それを比較的気軽にしてくれるのも、サブスク型居住サービスの魅力かもしれませんね。
働く場所、住む場所の垣根がなくなっていく取材陣が滞在したのは一日だけでしたが、Tさん、Fさんとは連絡先を交換し、後日、さっそく仕事をご一緒しました。
家守の北原さんは、「ADDressは“旅と住むの中間”」と言います。全国の拠点を移動しながら各地域でつながった地元の人たちと旅行ツアーをつくる等、ADDressの出会いで生まれたビジネスも誕生しているとのこと。
働く場所、住む場所は、今後もっと垣根がなくなっていく。体験を通じて、そんなことを実感しました。
近年、日本でも広がりを見せつつある「タイニーハウス」。「断捨離」を経ての「ミニマム」な生活に憧れ、自分のライフスタイルを簡潔にしたいと考える人は多いようだ。タイニーハウスは、まさにそれを体現している。そもそも、タイニーハウスとはどのようなものか? どんな暮らしが可能なのか? 2019年11月、ずらり小さな家が並んだイベント「TINY HOUSE FESTIVAL 2019」へ足を運んだ。
コンパクトで手軽な家ならではのメリットとは?
池袋駅から徒歩5分ほどの南池袋公園。家族でランチを楽しみ、子どもが芝生を駆け回る都会のオアシスのような場所に、この日は15軒の「タイニーハウス」が並んでいた。
これは、2020年に開催される東京ビエンナーレのプレイベントである「TINY HOUSE FESTIVAL 2019」。3日間限定で小さな暮らしを営むタイニーハウスが集まったというわけだ。
もともとは2000年始めにアメリカで生まれた「タイニーハウスムーブメント」。2007年に住宅バブルの崩壊とともにサブプライム住宅ローンが破綻。さらに翌年のリーマンショックがきっかけとなり、消費社会に縛られないカルチャーとして注目され始めた。
そういった背景があるため「お金と時間の自由」を大切にするライフスタイルを体現できる家として広まってきている。
「TINY HOUSE FESTIVAL 2019」の主催者の一人であり、さまざまなタイニーハウスを手がけてきた建築家の中田理恵さんに話を聞いた。
中田さんは夫の裕一さんと建築事務所「中田製作所」を運営。「妄想から打ち上げまで」をコンセプトに施主も設計士も職人も一緒に家づくりに取り組む「HandiHouse project」や今回出展した「断熱タイニーハウスプロジェクト」や「FLAT mini」にもかかわっている(撮影/相馬ミナ)
「家を建てたり、新築を購入したりする際に、誰もが自らの暮らしを考えると思います。リビングが広いほうがいいのか、キッチンに重きをおくのか、スタイルはさまざまなはず。そんななかでの『タイニーハウス』は、選択肢の一つ。小さいからこそ手に入れやすいし、住み手側も手を加えやすい。理想の暮らしに近いものが自らの手で生み出せるというのが『タイニーハウス』の良さだと思っています」(中田さん、以下同)
イベント目当てに足を運んだ人だけでなく、公園に遊びにきた親子連れも自然と興味をもち、のぞき込んだり、写真を撮ったりしていた(撮影/相馬ミナ)
そもそも、タイニーハウスとは、どのようなものを指すのだろう?
「実は、明確な定義はないです。今回集まっているタイニーハウスの延べ床面積は20平米以内のものがほとんど。本体価格として100万円以下でできるものもあれば、高いものだと800万円ほどです。タイニーハウスの多くは800万円以下におさまっているので、一般的な住宅よりも低コストではないでしょうか。形態としては、車で牽引できて移動が可能なものもあれば、基礎つきの固定されたタイプもあります」
小さいということは、建てるまでの期間が短くて済む。また、低価格であれば、ローンを組まないで済むか、もしくは最小限の期間のローンでいい。
また、光熱費も抑えられるのでランニングコストもそれほどかからないというメリットもある。
「お金や時間にしばられずに、自由に身軽に暮らすための家といえるかもしれません」
暮らしや用途に合わせた、さまざまなタイニーハウス展示されていたタイニーハウスを回ってみると、さまざまなタイプがあることが分かる。
「断熱タイニーハウスプロジェクト」は、建築科の学生である沼田汐里さんによるプロジェクト。中田さん自身もプロの建築家の視点から設計、監修としてかかわっている。
普通免許で牽引できるサイズである750kg以下で製作したという延べ床面積1坪(約3平米)ほどのコンパクトな空間。その名のとおり、壁と天井に断熱材を入れているので、夏でも冬でも24~26℃をキープした実績がある(撮影/相馬ミナ)
壁は一面を黄色に塗り、かわいらしい内装に。入口や窓は小さく、茶室をイメージしたつくりにしている(撮影/相馬ミナ)
断熱材の効果を高めるために自作でパッキンを取り付けたという窓枠(撮影/相馬ミナ)
「エネルギーまちづくり社」は、建築家であり「みかんぐみ」の共同代表である竹内昌義さんによる会社。低燃費なエコハウスを手がけてきたノウハウを活かし、断熱材を使った小屋を展示。2トントラックに乗るサイズに設計されていて、ジャッキで気軽に上げ降ろしできるのが特徴だ。庭やイベント会場に気軽に設置したり、乗せたままキャンピングカーとして使用したりと汎用性が高い。
今回のイベントの主催者でもある竹内さん自ら、ジャッキを使って実演(撮影/相馬ミナ)
本体価格は150万円。取材時は外の温度(屋根表面温度)が34℃だったが、室内の温度は20℃に保たれていた(撮影/相馬ミナ)
ドアも窓も機密性の高いサッシを使用することでより断熱材の効果を高めている(撮影/相馬ミナ)
「杢巧舎(もっこうしゃ)」は、一般住宅だけでなく社寺建築、数寄屋造り、古民家の新築や改築などを手がけ、伝統工法を大切にしている工務店。展示している小屋にも、その技術はふんだんに活かされている。建物は基礎に固定しない「石場建て」で、壁は伝統工法の「落とし込み板」など金物は使わず「木組み」だけで仕上げている。
会場に資材を運び入れてから、職人3人によって5時間だけで建てたという小屋。親方曰く「100年先まで使い続けられる小屋を目指しました」(撮影/相馬ミナ)
親方の木村真一郎さん。こちらは、もともとは自身の事務所としてつくった小屋だったという。3畳タイプの本体価格は99.8万円(消費税や運搬費は別途)(撮影/相馬ミナ)
小屋前では「金輪継ぎ」や「尻挟み継ぎ」など、釘やネジを使わない技術の実演に人だかりができていた(撮影/相馬ミナ)
「SAMPO Inc」が手がけているのは、軽トラックに乗せたモバイルハウス。「あなたのための動く個室」とし、住まいとしてはもちろん、店舗やレコーディングスタジオ、サウナとして幅広い使い方を提案している。住み手が自らつくり上げられるよう、工具の使い方からレクチャーしてくれるという。
「SAMPO Inc」は建築集団。この日はメンバーである大友純貴さん自身が住まいとしている一台を展示していた。運転席の上部を活用して寝るスペースもしっかり確保している(撮影/相馬ミナ)
コンパクトでかわいらしい薪ストーブを設置。住みながら少しずつ自身の手でカスタマイズしてきたそう(撮影/相馬ミナ)
普段は「SAMPO Inc」の倉庫兼事務所にメンバーそれぞれのモバイルハウスが6台ほど乗り入れているのだそう。トイレやお風呂をシェアしながら、身軽に生活している(撮影/相馬ミナ)
「Tree Heads&Co.」は、タイニーハウスやツリーハウスのほか、ツリーワークやランドスケープのデザインまで手がけている会社。代表の竹内友一さんは全国を回って、個性的な小屋をつくり続けている。
展示されていた三角屋根のシンプルな小屋は、タイヤがついて牽引できるトレーラータイプ。中にはキッチンやベッドスペースまできちんと完備されているので、タイニーハウスでの暮らしが想像しやすい。
三角屋根が特徴のタイニーハウス(撮影/相馬ミナ)
正面にベッドがあり、その上部は収納にしても、寝るスペースにしてもいいつくり(撮影/相馬ミナ)
水道がつき、排水設備も整っているキッチン。左端には冷蔵庫もある(撮影/相馬ミナ)
小さいからこそ、DIYに向いている展示されていたタイニーハウスを見るだけでも、さまざまな形態があることが分かる。さらに自身のライフスタイルに合ったものをと考えると、一体どこから取り掛かればいいか迷うかもしれない。
しかし、タイニーハウスには、住み手が自分で手を加えやすいという大きなメリットがある。ひとまず今の暮らしに合いそうなものを選び、暮らしながらあれこれ変化させていけばいいのだ。
住宅一軒を自らの手で建てる、またはリノベーションするとなると、かなりの知識と労力、時間がかかるだろう。それがタイニーハウスだったら、ちょっとできるかもしれない、やってみようと思えないだろうか。キットタイプなら自らの手で建てることもできるし、小さな空間ならリノベーションも気軽に取り組める。空いた時間にコツコツとDIYに取り組み、自分好みの空間をつくり上げていく楽しみもあるだろう。
「暮らしていくうちに、ライフスタイルは変わっていくものです。家族が増えたり、仕事が変わったり、興味の対象が別のものになったり。その変化に合わせて家もカスタマイズできていったら、すごく居心地のいいものになるはずです」
タイニーハウスのデメリットとクリアする方法は?では、逆にデメリットとしてはどのようなことがあるのだろうか?
まず、ガスや水道、電気などのインフラをきちんと確認しなければならない。特にトイレや浴室、エアコンを備える場合は準備が必要だ。
また、住み手それぞれのプライバシーを守る個室をつくるのは難しい。家族が増えた場合にはスペースが足りないということも出てくる。
さらに車で牽引する車輪付きの移動型タイプは住民票の取得にも問題があるのも事実だ。
とはいえ、実際にこれらのデメリットをさまざまな方法で解決している住み手はいる。
「インフラさえ整えれば、トイレも浴室も、エアコンもつけることは可能です。また、断熱材をきちんと入れることで、暑さや寒さを軽減することもできます。トイレはシェアオフィス、お風呂は銭湯にしているという人も。移動型の人は、住民票を実家にしている人もいますし、クリアする方法はいろいろです。
家族が増えたら広さも問題になりますが、もちろん、もう一軒タイニーハウスを増やしてもいい。資金ができたら増やすという考え方もあります。リビングで一軒、各個室で一軒でもいいんです。タイニーハウスは、デメリットを逆にライフスタイルに合わせて柔軟に楽しめる人に向いていると思います」
「えねこや」によるタイニーハウスにはエアコンもペレットストーブも完備。屋根に取り付けた太陽光発電パネルによる蓄電を元に、電力会社の送電網に繋がない独立システムになっている(撮影/相馬ミナ)
どんな暮らしがしたいのか。今の生活がどういう状況で、どう変化していくのか。何に重きを置いて生活したいのか。
ローンを組み、広くて快適な家に住むのもいいし、コンパクトな家を選び、食や旅にお金をかける生活もいい。暮らし方は人それぞれ違うものなのだから、それを担う住まいの形も違っていて当たり前。
タイニーハウスは、自らの暮らしを考えるきっかけとなり、選択肢の一つとして存在している。暮らしを考えれば考えるほど、住まいの種類が多ければ多いほど、私たちの生活は自由で豊かになっていくはずだ。
(撮影/相馬ミナ)
●取材協力リクルート住まいカンパニーの「2019年注文住宅動向・トレンド調査」によると、消費税率10%への増税の影響で、増税前に家を建てたいという人は少なかったという。一方で、防災については意識が高かったようなのだが、どんな家を建てようとしているのだろうか?【今週の住活トピック】
「2019年 注文住宅動向・トレンド調査」を発表/リクルート住まいカンパニー住宅は「増税に関係なくゆっくり考えるもの」
同社の調査は、注文住宅の建築者(1年以内に注文住宅を建築した1884人)および検討者(今後2年以内に注文住宅の建築を検討している1880人)を調査対象にしている。
まず、注文住宅の建築者の結果を見ると、建築費用の平均は、全国で2902万円(前年より95万円増)、このうち首都圏では3034万円(前年より50万円増)だった。
また、家づくりを考えたきっかけ(複数回答)は、「いつかは一戸建てに住みたいと思っていた」(25.5%)、「子どもが誕生した」(25.2%)、「結婚」(22.4%)がTOP3で、「消費税が上がる前に建てたいと思った」は24番目のわずか3.1%だった。
次に、検討者に消費税増税の影響を聞いた結果を見ると、消費税増税前に建築を「間に合わせたい」と回答した人は30.8%で前年より36.7ポイントも減少していた。
増税前における住宅建築意向(検討者・全国)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)
さらに、増税前の住宅建築に「こだわりがない」と回答した51.3%の人に、こだわらない理由(複数回答)を聞いたところ、「増税に関係なくゆっくり考えるもの」という回答が65.3%と圧倒的に多かった。
増税が建築に関係しなかった理由(検討者・全国)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)
消費税率が上がる度に注目される「駆け込み行動」ではあるが、今回の調査結果を見ると消費者は比較的冷静に行動したことがうかがえる結果となった。本来住宅は、必要とする時期に、希望の条件にそってきちんと建てるべきものだ。繰り返される増税で、消費者も賢い判断をしているといってよいだろう。
高まる、住宅の防災意識最近は、地震だけでなく、台風による被害なども続いているが、防災に対する意識はどうなっているのだろう?
注文住宅の建築者に聞いた結果を見ると、建築にあたり防災を「意識していた」という回答は70.1%(「かなり意識していた」23.8%+「意識していた」46.2%の合計)と高く、検討者では83.4%(32.6%+50.9%)とさらに高くなることが分かった。
防災を意識した人に、具体的な対策を聞くと(複数回答)、「地震に強い地盤」や「地震に強い構造」など地震対策が半数を超えた。ただし、調査時期が台風15号による被災を受ける前であることから、水害や風害への意識は調査時期より高まっていることが考えられる。
■防災に関する対策(建築者・検討者)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)
パワーカップルは立地へのこだわりも強い?今回の調査では、近年、住宅取得の層として注目されている共働き世帯についても分析している。「夫・妻のいずれも年収が400万円以上」かつ「世帯年収が1000万円以上」を『パワーカップル』と定義し、そうでない既婚層と比較検討している。
筆者が気になったのは、パワーカップルの高い資金力はどこに向けられるかだ。どうやら、結果を見る限りは「立地へのこだわり」に向かっているようだ。詳しく説明しよう。
■注文住宅を選んだ決め手の上位TOP2(建築者※注文住宅以外の住宅タイプも検討した者・全国)
1位:設備や間取りが好きなように選べるから
パワーカップル(59.0%)VSパワーカップル以外(74.8%)
2位:自分の好きな場所に建てることができるから
パワーカップル(50.2%)VSパワーカップル以外(45.1%)
■パワーカップルが建築エリアでより重視する条件TOP2(建築者※新規土地取得して注文住宅を建てた者・全国)
差分+18.7:保育園に入りやすい自治体である
パワーカップル(30.5%)VSパワーカップル以外(11.8%)
差分+13.3:最寄駅からの距離が近い(自宅から10分圏内)
パワーカップル(41.5%)VSパワーカップル以外(28.2%)
※【差分】=(パワーカップル)-(パワーカップル以外)
注文住宅以外の住宅タイプの検討した結果、最終的に注文住宅を選んだ人で見ると、パワーカップルの場合は注文住宅の特徴である「設備や間取りの自由度」と同じくらいに、「立地の自由度」を重視したことが分かる。また、今ある家を建て替えて注文住宅を建築したのではなく、土地の取得も行った場合は、立地選びをすることになるが、共働きゆえに、「保育園の確保」や「最寄駅から10分以内」などの交通アクセスも重視している点も、パワーカップルの大きな特徴だ。
ほかにも、車の保有管理やペットと暮らすことを決め手にしたり、防犯仕様の充実やZEHなどを重視していたりなどの違いが見られた。こうした付加価値にも資金力が向かうということか。
近年、土地を新たに取得してそのうえで注文住宅を建てる人が増えている。調査結果でも「土地なし」は増加傾向にあり、今回は71.3%に達した。つまり、既成の住宅にはあきたらず、立地も間取りも自由に選びたいという、住宅にこだわりのある人が注文住宅を選んでいると見てよいだろう。
自分のライフスタイルに応じた住まいを手に入れるという本来の目的から考えると、立地にも間取りにもこだわるというのは、理にかなった考え方かもしれない。
テレワークの新しい形として広がっている「ワーケーション」。「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語で、休暇を兼ねて出かけた先でリモートワークを行う新しいワークスタイルであり、ライフスタイルである。2019年11月18日には「ワーケーション自治体協議会設立総会」が実施され関心が高まっている。2010年に経営破たんした日本航空株式会社(JAL)はそこから回復するために社内の働き方改革にも着目した。ワーケーションを社内制度として取り入れたのがその一例だ。そこで、人事分野を担当し、自らもワーケーションを実践し続けている東原祥匡さんに取り組みと体験談を伺った。
ワーケーションで人も土地もwin-winの関係に
ワーケーションは基本的に休暇だが、「この日は仕事をします」として休暇先でPCにログインし、テレワークすることで勤務日とみなされる制度だ。JALのワーケーション実績は、2017年夏期推奨期間の利用はわずか11人だったが、翌年の2018年夏期推奨期間には78人と、なんと7倍にも増加した。2018年は年間を通してのべ174人がワーケーションを利用したことになる。また、ここから派生して、商品として「ワーケーション」を組み込んだツアープランの販売も始まった。この一連の動きの立役者が人事担当の東原さんだ。
ワーケーションを通じてその土地を訪れることで、お互いがwin-winの関係になると東原さんは考えている。「地域の方々と一緒に何かを『生み出す』こと、つまり『共創』を実現したいです。ワーケーションは地域活性にもつながると思います」と東原さんは言う。2018年11月から12月にかけて実施した鹿児島県徳之島町とのワーケーション実証事業において、ワーケーションがもたらす地域との結びつきの魅力を実感し、荒らされていない自然が存在する徳之島への愛も同時に芽生えた。
鳴子温泉(宮城県大崎市)でのワーケーションに利用した旅館(写真提供/JAL)
現在、JALの勤怠システムでは「ワーケーション」という項目が「休暇」などと並んで選択できるようになっている。また、社内で閲覧できるイントラネットでは、東原さんが自作した、全国のオススメのコワーキングスペースを紹介している。とても整理されていて情報量も豊富、イントラにとどめておくのは惜しいほどの出来栄えだ。「ほとんど趣味ですけれど」と東原さんははにかむが、なかなかできるものではない。
この夏は北海道、愛媛、オーストラリアでワーケーションとアクティビティを融合した試みも行った。働き方や休み方を社員自身がマネジメントでき、さらに付加価値を実感できるようにするのも人事担当としての目的のひとつだ。
「ワーケーションの伝道師」が生まれるまでいまやワーケーションの伝道師(エバンジェリスト)ともいえるほど、熱心にメリットを語る東原さんだが、会社としては休暇取得の促進が喫緊の課題であった着任当時、なんでもいいからすがりたいという気持ちもあった。シフト勤務者は残業がほとんどない環境であるが、間接部門の社員は経営破綻後人員が減った中、業務は増加傾向にありワークスタイル変革の実施は急務であった。
白浜町でのワーケーションでは、道普請(みちぶしん)も行った(写真提供/JAL)
ワーケーションを浸透させるため、受け入れ先のひとつ和歌山県の南紀白浜に話を聞きに行き、社内モニターツアーの企画につなげた。そして、2017年12月と2018年2月の2回にわたって10~15人の社員とともに体験ツアーを行った。評判は上々で、手ごたえを得たように思った。
そのほか、一般社員がワーケーションを行いやすいようにと役員自らがワーケーションを実施したり、家族を同行させてのワーケーションをしたりしてみたこともある。また、若手社員帯同してのワーケーションをしたりしてみたこともある。また、若手社員からの声をもとに、滞在先で集中討議を行う「合宿型ワーケーション」を徳島県神山町、宮城県鳴子温泉、福岡市、富山県などで行った。
担当業務の一環として始めたワーケーションだったが、東原さん自身も、ワーケーションで働き方がガラッと変わった社員の一人である。温泉地なら湯治場で地元の人たちとコミュニケーションをとるのも楽しいなど、場所によって異なる魅力がある。2018年のゴールデンウイークには海外でのワーケーションを体験しようと、シンガポールへ出かけた。「次はあえてハワイ島に行き、パワースポットで仕事をしてみたいと思っています」(東原さん)
シンガポールでワーケーション中の東原さん(写真提供/JAL)
現在の人事の仕事に就く前は、社外に出向していた東原さん。社外での経験は、会社や自分自身を俯瞰してみることができ、自身の働き方について見つめなおす良い機会となった。「残業が多く、有給休暇も取れない環境は良いのだろうか」と、これからの人生や働き方について考えることも多かったと言う。今は心から仕事を楽しいと思えている。「ワーケーションのおかげかもしれません」(東原さん)。例えば徳之島に行くと「おかえりなさい」と言ってもらえる。「自分が関係人口の増加にも寄与しているのではないかと実感できるんです。それをうれしく思います」。連休の合間にワーケーションを使って、地方にいる友人に会いに行くのも楽しみとのこと。
(写真提供/JAL)
ワーケーション普及に立ちはだかる壁「仕組みさえできればワーケーションはどの会社でも導入しやすいと思います」と東原さんは言う。しかし、休暇をベースにした制度の理解ができる素地が、いまの日本社会にはまだない。「本当に仕事しているのか?」と疑ってしまう「性悪説」の蔓延がワーケーションやテレワークの普及を遠ざけている。しかし働き方を変えるために労使双方に大切なのは「性善説」であり、お互いが信頼、理解し合うことなのかもしれない。
ワーケーション導入後のJALでは、有給取得率が高くなったという。時間外労働も月7時間まで削減できた。ワーケーションにおいても、PCのログオンやログオフを見ることで、社員をきちんと管理できている。「次の目標は今年5月に導入した出張時に休暇をとれる『ブリージャー』の浸透です」(東原さん)と、すでに見据えるのはワーケーションのその先だ。
東原祥匡さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
ワーケーションのためのコワーキングスペースを提供したり、テレワークのためのインフラづくりをしたりしている企業は登場しているが、自社へのワーケーションの導入には至っていないところが多いのが実情である。導入に向けて社員一人ひとりの働き方について対面で話すことを重要視する企業もあるだろうし、JALのようにワーケーションの勤怠管理をできるシステムを整えることを検討する企業もあるだろう。しかし、システムの整備にはコストもかかるし、セキュリティの担保といった面でも万全とは言えないかもしれない。
ワーケーションの取り組みは日本社会全体を見るとまだ始まったばかりで、その可能性は未知数。今回、取材先としてワーケーション実践者を探す中で、言葉は広がっても実践はあまり進んでいないことを感じた。また、ベンチャーやスタートアップのような小規模の会社に比べ、大企業ほど制度面の整備などが難しく、導入の壁は高いだろう。しかし、さまざまなライフスタイルが広まる中で今後の選択肢となってくることは間違いない。PCひとつでリゾート地からリモート出勤――ワーケーションはこれからが本当のスタートだ。
●取材協力幅400mという超横長の敷地の食事付き賃貸住宅が2020年春に完成を予定している。学生を対象としていて、食事と管理人付きなところは、さながら“学生寮”。横長なのは、JR中央線の高架下を敷地としているためだ。騒音や振動も気になりそうなこの立地にJR東日本が住宅をつくるのはなぜなのか? 初の高架下賃貸住宅「中央ラインハウス小金井」の詳細を探ってみた。
商業空間や保育園…高架下スペースは、もはや”遊休地“ではない
「高架下」と聞いてすぐにガード下の居酒屋を連想してしまった私だが、最近の高架下は、とてもそんな枠に収まる空間ではないらしい。
例えば、東急東横線中目黒駅と祐天寺駅の間に2016年11月にオープンした商業施設はその名も「中目黒高架下」。おしゃれなショップやレストランが軒を連ね、行列のできる人気店もあるというし、JR御徒町駅と秋葉原駅の間の高架下に展開する「2k540 アキオカ アルチザン」には、「ものづくり」をテーマに工房やショップ、カフェなどがそろっている。2020年初夏には、JR有楽町駅~新橋駅間の高架下に「日比谷OKUROJI」がオープンを予定。さまざまなスタイルのバーなどが充実した新しい商業空間が誕生することになる。
また、JR東日本が進める「HAPPY CHILD PROJECT」では、子育て支援を通じた沿線活性化事業に取り組んでおり、駅型保育園のバリエーションとして、すでに高架下に複数の保育園を誕生させている。高架下は、すでに鉄道アクセスの良い商業空間やコミュニティ空間としての地位を確立しているのだ。
住居専用の用途地域だったことが高架下住宅誕生につながったそんな高架下スペースに、今度は学生向け賃貸住宅「中央ラインハウス小金井」が建設される。東京都による三鷹・立川間の連続立体交差事業で生じた長大な高架下スペース。中央ラインハウス小金井は、その一部であるJR東小金井駅とJR武蔵小金井駅間のスペースを利用する予定だ。
JR武蔵小金井駅とJR東小金井駅の間の高架下には、すでに「nonowa東小金井」「nonowa武蔵小金井」という商業施設や保育園があるが、住宅はなかった。なぜ、今回、住宅が誕生することになったのだろうか。JR中央線三鷹~立川間エリアの開発を行う株式会社JR中央ラインモール開発本部の関口淳さんに聞いた。
「これまで、中央線三鷹駅~立川駅間の線路高架化にあわせ、当社では、駅周辺部を中心に商業展開を行うほか、子育て支援施設や福祉・医療施設、地域交流を促す施設、広場・公園など沿線にお住まいの方々に対し、日々の暮らしをサポートするさまざまな施設の設置を進めてきました。そのような背景がある中、今回の建設予定地に関しては、大半が住居専用の用途地域(第一種低層住居専用地域)であったことから、都市計画との整合性と当社の使命とする中央線沿線の価値向上につながる計画を検討してきました。その結果、学生向けの住宅という切り口に至ったのです」(関口さん)
住宅を学生向けとしたのは、中央線沿線に大学キャンパスが多く、住んでいる学生も多いこと、また駅からの道が分かりやすく夜道が明るいことで、学生寮に求められる立地条件を満たしているととらえたからだとか。
東京都による三鷹・立川間の連続立体交差事業が行われ、2010年11月に約9kmに及ぶ長大な高架下スペースが生まれたJR中央線。武蔵小金井駅と東小金井駅の間にはすでにショッピングモールや保育園がある(画像提供/JR中央ラインモール)
高架下での生活に問題がないことは保育園が実証済み?!ただ、高架下となると、ついつい気になってしまうのが振動や騒音。果たして住宅にふさわしいものなのだろうか…?
「振動や騒音については、現地を確認した上、高架下で開発した別の物件の状況を踏まえ、日常生活に支障がないと考え計画いたしました。また、今回の計画地の隣地(高架下)には保育園が既に設置されており、問題なく運営されています」(関口さん)
なるほど。住宅として初の試みではあるものの、すでに保育園の園児たちが高架下の空間で生活しているという実績があるわけだ。園児たちは、午後にはお昼寝だってしているはず。赤ちゃんも安眠できる環境と考えると、納得がいく。
なお、この物件の特色は、高架下という立地だけにとどまらない。北山恒、谷内田章夫、木下道郎という3人の建築家がL棟、C棟、H棟、それぞれの設計を担当することで、共用空間と居室のつながりやバランスについてコンセプトの異なるプランを展開。住み手である学生が、他学生とどのようにかかわるか、プライバシーにどの程度こだわるかといった志向に応じて、自分にふさわしいプランを選べるようになっている。
また、中央に位置する専用カフェテリアでは、平日の朝・夕の2回、食事を提供。栄養バランスのとれた食生活をサポートするとともに、異なる棟の学生との交流も促す。カフェテリアに隣接する多目的ホールは、地域住民との交流も視野に入れた運営が予定されている。
L棟のコモンスペース(共用スペース)として、1階にはキッチン、2階にはライブラリーが。それぞれを経由して居室に入るつくりになっており、居室はごくごくコンパクトな空間となっている(画像提供/JR中央ラインモール)
C棟は、外部テラス(アウトサイド・コモン)を共用スペースとすることで、各居室の独立性を確保。居室内には、キッチン、バス(乾燥機付き)、洗濯機、電子レンジなどが備え付けられている(画像提供/JR中央ラインモール)
H棟は、大型ダイニングテーブルのあるラウンジ・コモン、ライブラリーのあるキッチン・コモンを共用スペースとして、中央のキッチン・コモンにつながる廊下から各居室に入るつくり。天井の高さを活かしたロフトも設けられている(画像提供/JR中央ラインモール)
中央に設けられた専用カフェテリアで、朝食と夕食を提供(食事代1万6000円/月・税別)。多目的ホールは地域との交流にも利用される予定だ(画像提供/JR中央ラインモール)
管理人付きの安心感と新築の希少価値、リーズナブルな家賃設定が好評受付を開始した9月は、問い合わせも基本情報の確認といったものが多かったが、それでも9月21日~23日の3連休だけで15件の問い合わせがあったそう。
「大学入学を控えた学生さんの部屋探しが本格化するのは、入試の結果が出る春がピークなので、今は、推薦の合格者や専門学校に入学する学生さんと親御さんが部屋探しに動き出している時期。他物件と比べてびっくりするほどの反応があるわけではないのですが、それでもすでに予約済みの学生さんがいます」(株式会社学生情報センター経営企画部広報室・寺田律子さん)
一番人気は、L棟のAタイプ。10平米強というコンパクトな間取りではあるが、新築で5万円台(共益費別)であることが決め手になっているのではないかとのこと。
「中央線沿線には新築物件が少ないので、新築という点は大いに魅力があるようです。加えて、日勤の管理人が居て安心という面も。自転車で通学できる距離に大学や学校が多い上に、離れた学校に通う学生さんにも、中央線沿線ならではの広域アクセスの良さが評価されています」(寺田さん)
なお、学生も親も、高架下の騒音や振動はさほど気にしていないのだとか。
「『それなりにうるさいんだろうなあ』ぐらいには思っていらっしゃるようですが、それがネックになるということはないようです」(寺田さん)
電車の本数が多い日中、学生は大学に行っていて部屋には居ないという理由もあるのだろう。隣に保育園があるという点で安心する親や学生もいるのではないだろうか。
L棟 Aタイプは、10平米台の空間に家具を効率よく配置。月額賃料5.2万円~5.3万円、共益費1.5万円/月と、周辺よりリーズナブルな家賃設定だ(設備維持費400円/月、入館料[再契約料]12万円/年も必要・以下同様)(画像提供/JR中央ラインモール)
C棟 e4・e’4タイプは、専有面積15.94平米、ロフト面積4.93平米。月額賃料が7万円で、共益費1.5万円/月。最大3.5mの天井高を活かしたロフトがあり、大きめのワークデスクや収納力のある本棚、乾燥機付きのバスルームが特徴(画像提供/JR中央ラインモール)
H棟Aタイプは、10.44平米という専有面積ながらも、4.35平米のロフトを設けたことで、ワークデスクの空間などゆとりを確保。月額賃料5.9万円 ~ 6.2万円、共益費1.5万円/月という設定になっている(画像提供/JR中央ラインモール)
鰻の寝床とは真逆の超横長な敷地という点だけでもユニークな上に、間口が広くて明るい空間は、学生用賃貸住宅の新しい形を提示しているように思える。ここに入居すれば、カフェテリアで朝晩、栄養バランスの整った食事ができるし、ライブラリーにある本を読み漁ったり、ラウンジでほかの学生たちと語らったり、多目的ホールでイベントを開いたりと、実に楽しい学生生活が送れそうな気がする。ああ、あとウン十年、若かったら私も……!
●参考ぐつぐつと煮立つお湯に例えた「地獄めぐり」で有名な温泉地・大分県別府市。この街を盛り上げようと奮闘する池田佳乃子さんは、別府に住みながら夫のいる高円寺にも家を持ち、二拠点生活を送っている。大学入学とともに上京し、企業で働いていた池田さんが別府に戻った理由や、高円寺と別府の意外な共通点などについて伺った。
高円寺での新しいコミュニティを通して得た価値観
JR中央線の高円寺駅と阿佐ヶ谷駅のちょうど真ん中。高円寺駅から高架下をずっと歩いて行った先に開ける芝生広場が印象的な高円寺アパートメントは、JR東日本の社宅をリノベーションした住宅で、50世帯がA棟とB棟に住んでいる。A棟の1階には2つの飲食店と4つの住居兼店舗が並び、目の前の芝生広場では月に数度、住人たちが企画・運営するマルシェなどのイベントが行われている。
池田佳乃子さんの東京での拠点、「高円寺アパートメント101(いちまるいち)」は、店舗と夫である石井航さんの設計事務所を兼ねている住居兼店舗だ。開放的な雰囲気から今では近所の子どもたちの居場所にもなっている。
高円寺アパートメントの芝生広場で住人たちとお花見(写真提供/池田佳乃子さん)
池田さんは大分県別府市生まれの31歳。大学入学とともに上京し、卒業後は映画会社と広告代理店に勤め、29歳のときに結婚。夫の石井さんが設計事務所を開設するタイミングでここに引越してきた。
30歳になったとき、池田さんは「なにかチャレンジングなことをしよう」と思い立った。
池田さんの周りには、建築家や写真家、役者などアーティストとして自分を表現している友人が多く、彼らと日々過ごす中で、自分には何もオリジナリティがないとコンプレックスを感じていた。そんな中、ふと故郷のプロモーションを目にして、別府の人たちが自由に自分を表現していることに気づき、別府であればもっと自分のオリジナリティが出せるのではないかと思い立った。
今までのキャリアの中で映画や広告に携わり、コンテンツを企画することには自信があった。別府の面白い人たちと一緒に、自分のキャリアを生かした新しいコンテンツを生み出すことで、自分らしい表現ができるかもしれない、そうした思いが日に日に募っていった。
お湯のように湧き立つ思いとともに別府へ池田さんに迷いはなかった。夫と住む東京を離れ、別府市と連携してビジネスを支援している「一般社団法人別府市産業連携・協働プラットフォームB-biz LINK」に転職した。B-biz LINKは、2017年別府市の出資により立ち上げられた組織で、池田さんは主に別府でビジネスをする人たちのネットワークを広げ、別府の産業を盛り上げる仕事をしている。こうして念願の別府での仕事が始まり、池田さんは二拠点生活者となった。
別府市の鉄輪温泉。たくさんの旅と引越しのあとでたどりついた(写真提供/池田佳乃子さん)
結婚してから何年も経っていない夫妻に不安はなかったのだろうか。池田さんは別府に移ってから、月に10日ほど東京に出張している。東京2割、別府8割ほどの生活だ。
「周りにはよく寂しくないのか?と聞かれるのですが、高円寺アパートメントに暮らしていることが大きな安心材料になっているのかもしれません。ご近所づきあいが自然とできているので、夫が晩ごはんを一人寂しく食べることもないし、夜な夜な飲み歩く必要もない。むしろ、芝生で遊ぶ子どもたちと触れ合ったり、夕食を持ち寄って住人たちと一緒に食べたり、自宅で営む雑貨屋のお客さんと楽しく会話したりしているので、一人で東京に暮らしているという感覚はあまりないのかもしれません。夫は東京で、私以外に家族の輪を広げているのだと思います。その感覚が心地よくて、安心しています」
(写真提供/池田佳乃子さん)
別府では実家で両親と暮らしている。「二拠点生活になったことで幅広い人たちとコミュニケーションをとるようになったので、自分の中の引き出しが増え、バランス感覚がよくなった気がします」と池田さん。別府と高円寺でコミュニティづくりに携わる中で、共通点があることにも気づいた。「別府と高円寺は似ています。カレー屋さんが多いこと、自由な人が多いこと、あまり周りを気にしていない人が多いこと、銭湯文化が根づいていることとか」と池田さんは分析する。お風呂を通じて人々と交流でき、湯けむりが漂う中で自分を表現できる街、高円寺と別府の両方を心から好きだと思っている。「そういえば、最近高円寺から別府に移住した人がいるんです。やっぱり似ていて住みやすいのかもしれませんね」(池田さん)
鉄輪妄想会議の様子(写真提供/池田佳乃子さん)
湯けむりに囲まれた鉄輪のコワーキングスペース『a side-満寿屋-』別府の中でも無数の湯けむりが立ちのぼる光景で知られ、古くから湯治場として栄えてきた鉄輪(かんなわ)エリアに、2019年4月コワーキングスペース『a side -満寿屋-』がオープンした。鉄輪エリアは別府を代表する温泉地の一つだが、そこに暮らす女将さんたちは鉄輪の未来に危機感を感じていた。それは、後継者不足によって廃業する旅館やお店が多く、空き家が増加していること。女将さんたちはその課題をどのようにしたら解決できるか、自主的に会議を開いて考えていた。池田さんは、そんな熱意のある女将さんたちと出会い、2018年6月に地域の人たちや学生、地元の起業家や不動産などの専門家を交えて、ワークショップ形式の話し合いの場“鉄輪妄想会議”を開いた。その中で、古くから続く湯治文化を現代のライフスタイルに合わせるには、働きながら湯治ができるスタイルを実現することが近道なのではないかという発想が生まれ、このアイデアから“湯治のアップデート”をコンセプトに、元湯治宿だった空き家をコワーキングスペースにリノベーションすることが決まった。
a side -満寿屋-の内部(写真提供/池田佳乃子さん)
築80年の温泉旅館をリノベーションしたコワーキングスペース「a side-満寿屋-」はこうしてできあがった。「来るたび、鉄輪の蒸気によって少しずつ変化を感じることができる空間」をコンセプトにしているというこの場所。利用料金は1日1000円からという都内では破格の価格で、設備は充実している。ソファ席や心を落ち着かせる「ZEN」の部屋があり、プロジェクターやスクリーンは無料で貸し出している。鉄輪には昔と同じように湯治場があり、長期滞在することができる。
2019年9月に行ったワーケーション企画での1コマ(写真提供/池田佳乃子さん)
湯治場とコワーキングスペースの組み合わせの背景には、ワーケーションという働き方を池田さんや仲間たちが知ったことがあった。これが普及すればきっと鉄輪のにぎわいは戻ってくるはずだとみんなで思いついた。実際に、コワーキングスペースができてから、利用者がふえてななめ向かいの飲食店が復活した。今後も空き家会議をして、さらに盛り上げていきたいと池田さんはもちろん、地域のみんなで思っている。今はまだ別府市内から4割、鉄輪6割の利用者だが、もっと外からの人の割合を高め、鉄輪の湯のあたたかさを知ってほしいと考えている。2019年9月には、実験的に鉄輪で8社の都市部の企業のメンバーと一緒にコワーキングスペースを活用したワーケーションを実施した。別府にある大学生を巻き込んだ「イノベーション創出型」という形で、あらたな可能性を見つけることができたという。
二拠点生活だからこそ分かったことがある「東京と別府では情報の粒度とか鮮度が違いますし、東京のさまざまな情報と、別府の実験場としての土壌が上手くブレンドされたら面白いのではないかと感じています。そうした今までに無い網を張るのが、自分の役割だと思っています。将来的には、海外や都会の人たちが交流できる機会をつくることで、別府の中学生や高校生がさまざまな価値観に触れ、キャリアの選択肢を広げられるようになったらいいなと考えています」
池田さんの高円寺の家は、「東京でのつながりをつくる実験の場」でもあり、自宅のリビングをお店にすることで、パブリックとプライベートの境界線を曖昧にしている。「暮らしの境目をなくすとどういう変化が生まれるのかを実験しています。分かったのは、子どもたちが自由に自宅に遊びに来てくれることですね。ここで設計の仕事をしている夫は、子どもたちの保育園に必要な『お迎えカード』を預かって、お母さんが迎えにいけないときのピンチヒッターになっているんですよ」と池田さんは笑う。誰に対しても分け隔てのない夫妻の性格がよく表れているエピソードだ。
池田佳乃子さんご夫妻(写真提供/池田佳乃子さん)
「二拠点生活を始めて、いろんな角度から物事を見られるようになりました。ひとつしか拠点を持たない生活では、価値観が画一的だった気がするんです」と池田さんは二拠点生活のよさを語る。「でも、私には二拠点までですね。その土地で暮らして「おかえり」と言ってもらえることが自分の居心地の良さにつながっているので、2拠点以上の多拠点暮らしは自分には向いていないかもしれません」(池田さん)
それぞれの土地でコミュニティを築いているからこそ分かる“拠点”の大切さ、そして人とのつながりの尊さ。池田さんは別府と高円寺というまるで違うようで実はよく似ている二つの街を、いいお湯の加減のようにバランスよく、しかし精力的に生きていくのだろう。
●取材協力突然ですが、今、行きたいところ。
東京ドーム…教皇が来日中
UNIQLO…今日まで誕生祭
ムーミンバレーパーク…埼玉県飯能市
息子は土日に鼻水と咳が出て、ずっと家の中で過ごしました。
日曜日の昼は、ひどい頭痛で38度3分の熱。
1時間半ぐらい眠ったら、あっという間に平熱に戻りました。
今朝は、空咳が出るくらいで鼻水も熱も出ていないし、幼稚園に行けるかも?と思いましたが、念のため欠席させました。
かかりつけのクリニックで診てもらったら、またしても~~~
溶連菌でした!
息子は20日前に溶連菌になって、治ったばかりなのに。。。
ただ、前回よりも症状が軽いように見えます。
前回は蕁麻疹のようなものが出ていたけれど、今回は出ていません。
なにより、元気が有り余っています。
前回は出席停止の日数よりも多く休ませたけど、今回は、その必要は無さそうです。
今年の秋は、遠くへのお出かけや旅行が出来ませんでした。
もうじき12月だからムーミンバレーパークは寒いかな~っと、先日、ムーミンカフェに行きました。
お土産のマグカップ。
息子が好きなのは、スナフキン。私はリトル・ミィです。
下肢・上肢の内、三肢以上に障がいのある選手が参加できるQuad(クアード)クラスの車いすテニスで、国内ランキング1位、世界ランキング4位(2019年11月)の菅野浩二選手(リクルート所属)。このクラスでの東京パラリンピック出場が最も有力視され、メダル獲得も期待されている選手です。日々厳しいトレーニングを課し、プレッシャーがのしかかるトップアスリートにとって、住まいとは心身の疲労を癒やす空間。今回は、東京パラリンピックを目指す菅野選手が選ぶ住まいを訪問し、家選びのポイントや、バリアフリーに対する考えを伺いました。
――今までどんな住まいに住んでこられましたか?
独身時代は会社の寮に住み、2011年に結婚してからは東京都葛西臨海公園近くにある社宅、その後、東京都東雲にある都民住宅に3年ほど住んでいました。
昨年、競技用の車いすを運びやすいように大型車を購入したのですが、大きくて駐車場には止められず、周辺エリアにも駐車場がなく、引越しを考えるようになりました。新しい家を探しているうちに賃貸にこだわらなくてもいいのではと思ったんです。これまでの家賃と同じ金額で返済できるなら、購入して資産にした方がいいと思って。妻とも話し合い、2019年から家探しを始めました。
――何件の物件を見学されたのですか。また、ここに決めた決め手は?
土地勘がある東雲や豊洲といった湾岸エリアで、中古マンションを3件ほど見ました。この物件には、車いすアスリートの友人が住んでいたので、「家探しをしているから一度お家を見せてほしい」とお願いしました。彼も車を所持しているので、駐車場の設備も整っているだろうと思いました。
実際、お宅を訪問したら、マンションの共用設備は整っているし、目の前に高い建物があまりなく、中層階でもリビングからの見晴らしがいい。眺望がいい部屋に住みたいという願望もあって気に入りました。
リビングからの景色。遮るものがなく夜景も気に入っている(撮影/嶋崎征弘)
共用部の1階玄関も開放感があって気持ちいいし、何より機械式駐車場にも大型車を止めることができ、車いすの出し入れができるスペースもありました。妻も車いすを使用しており、車で通勤しているので、1世帯2台停められることも決め手として大きかったです。
――車通勤しやすい立地でもある?
はい。この辺の道はよく知っているので、車の移動がしやすい場所であることは把握していました。僕も通勤ストレスがないし、遠征時も高速にもすぐ乗れるので空港がある羽田や成田に行きやすい。トレーニング場所である東京都北区の「味の素ナショナルトレーニングセンター」にも通いやすいです。
妻の勤務先は山手線の西側なので少し距離はありますが、渋滞することなく行けるようです。鹿児島に住んでいる彼女のご両親が遊びに来たときに、羽田空港へのお迎えにも行きやすいです。
――周辺の道路環境は?
道は平坦で見晴らしもよく、日ごろよく買い物に行くスーパーまでは車は使わず、車いすで行きます。近所にはテニスコートがあって、妻はよく友人と一緒に大会を見に行っていますね。
勾配がなく平坦な道が続き、高齢者や身体に障害がある人、ベビーカーを押すママさんも歩きやすい(撮影/嶋崎征弘)
最近のマンションはバリアフリー化が当たり前に――お部屋の住み心地は?
実は前の家の方が少し広いのですが、段差もなくフラットだし、廊下も車いすが通れる幅です。車いすで住むためのリフォームは全くしていませんが、キッチン台の高さも使うのに問題ないですし、お風呂も広めなので不自由していません。ただ、玄関は妻との車いすを並べるほどの広さはなくて、朝の出勤時は玄関で混まないように、妻が僕より早めに出発してくれます(笑)。
車いすでも使いやすいキッチン台の高さ(撮影/嶋崎征弘)
浴室も広くて浴槽にも入りやすいという(撮影/嶋崎征弘)
――最近のマンションは特別にリフォームしなくても、ある程度のバリアフリー対応はされているんですね。
そうですね。妻の実家もマンションですが、築30年の物件なので段差があるところには昇降機をつけるなど、車いすでも使いやすいようにバリアフリーにリフォームをしています。
しかし、最近のマンションは、ご高齢の方が住むことも想定されているので、車いすでも暮らしやすい仕様になっていて、知人でも大きなリフォームをしている印象はないですね。
前の住まいと比べて、格段に便利だなと思ったのは共用設備です。宅配ボックスは共働きにはとても便利で、またコンシェルジュがいるので困ったときには相談できます。共用玄関と居室エリアの扉にそれぞれオートロックが付いているし、1階のエレベーター扉の上には、中の様子が見られるカメラも付いています。セキュリティーも申し分ないです。
また、1階の共用部には車いすも楽々入る広めのトイレが2つもあるので、居室階に上がらなくてもすぐ使えます。妻が重宝しているのは、各階にゴミ捨て場があること。捨てるものがたくさんあると、車いすで何度も降りたり上がったりしなくてはいけない。その労力がかからなくなっただけでもストレスが減ります。妻は、この物件を見学する前に車いすでも暮らしやすいかといった生活動線をネットでチェックしていて、この建物に住むアスリート友人宅に遊びに行ったときにもきちんと確認していたみたいです。
――菅野さん自身が住んでよかったと思う部分は?
「各フロアにゴミ捨て場があるのは、とても便利ですね」(撮影/嶋崎征弘)
上層階にラウンジがありますが、バーテンダーが18時から22時半ぐらいまで常駐し、お酒が飲めるんです。遠征などでは試合優先で仲間とも飲みに行かないですし、僕は車移動なので外でお酒を飲むときは妻の送迎が必要になります。だから外でお酒を飲む機会がないので、たまに移動を気にせず、ラウンジに上がって夜少しだけお酒を飲んで、そのまま部屋に帰れるのはとても助かるし、リラックスできる時間です。値段もリーズナブルです。
そのラウンジでは、カレーやパスタなどの軽食も食べることができます。普段はほとんど自炊ですが、共働きなので仕事やトレーニングで互いに疲れているときは、「今日はちょっと上で食べようか」とわざわざ車で外に出なくてもマンション内で食事ができるのは便利で助かっていますね。
また、仲良くなった住民の方に誘われて、共用スペースのキッチンスタジオで開くパーティーに参加することもあります。先日のラグビーワールドカップのときは、ラウンジでパブリックビューイングが開催され、みんなで観戦し盛り上がりました。住人の方から、「東京パラリンピックに出場したら応援に行くよ!」などという言葉をかけていただいてうれしいですし、会社や競技とは異なるコミュニティができたことは、リフレッシュにもなっています。
――日々厳しいトレーニングを課すアスリートにとって、住まいはリラックスするための大切な場だと思いますが、どのように過ごしていますか。
先ほどもお話しした通り、リビングはもちろん、ラウンジからの夜景もきれいで眺めているだけでくつろげます。僕自身、35歳を過ぎてからパラリンピック出場を目指し本格的な競技活動を始めました。アスリートとしては高齢なので、怪我しやすかったり、回復が遅かったりします。だから家ではマッサージ器で体をほぐしたり、ゆっくりお風呂に浸かったりして少しでも回復を早めるように心がけています。購入した家は満足していて、快適でくつろげる住環境を整えることは、メンタル的にも大事だなと思いますね。
外の風景を眺めるだけで疲れが癒やされる(撮影/嶋崎征弘)
――お部屋にはモノがあまり多くなく、すっきりされています。
引越しのときに家財道具を新調し、ルンバが掃除できる高さのソファを選んだり、床にはモノを置かないようにしています。出勤前にドアを全部開けて、ルンバを起動して出かけているので、掃除の手間はさほどかからないと思います。
「床が汚れないように、部屋用の車いすにはカバーをつけています」(菅野さん)。(撮影/嶋崎征弘)
ダイニングテーブルは用途に合わせて上げ下げできる(撮影/嶋崎征弘)
――満足できる住まいは、予算内に収まった?
はい。2人で折半したら購入できる予算で考えていました。自分たちには高い買い物でしたが、住民同士のコミュニケーションがあり、住んでいて気持ちがいいことが一番なので、「住み替えてよかったね」と妻と話しています。
――東京パラリンピックに出場するためには?
来年6月の時点で世界ランキング12位までには入れば、出場できます。今は4位ですが、その成績が来年に繰り越されることはありません。来年5月までの大会で今と同等の成績、それ以上の成績を出さなければいけません。まずは東京パラリンピックの切符をしっかり掴み、世界のトップに上がってきた10、20代の若い世代の選手と戦えるように、しっかりコンディションづくりをしていきたいと思います。応援のほど、どうぞよろしくお願いします!
(撮影/嶋崎征弘)
リラックス&リフレッシュできる生活基盤がパフォーマンス向上へ暮らしやすくするために、何かリフォームされているかと思っていましたが、最近のマンションは高齢者や車いすで生活される方も暮らしやすいようなバリアフリーの設計が標準になっているのだと、菅野選手のお話を聞いてあらためて実感しました。また、「部屋の眺望が癒やしとなり、共用部がリフレッシュの場になっている」というお話を聞くと、競技のことで頭がいっぱいになりがちなアスリートにとって、快適な生活基盤を整えることの重要性を感じましたし、私たちが仕事で高いパフォーマンスを発揮するためにも同じようなことが言えるだろうと思いました。超高齢化社会に突入した今、年齢や障がいがあるなし問わず、どんな状況の人も暮らしやすい住まいの提案が進んでいくことでしょう。
●プロフィール仕事(work)と休暇(vacation)の「いいとこどり」、休暇に出かけた先でくつろぎながら仕事もできる「ワーケーション」という新たな働き方がある。一般社団法人日本テレワーク協会がテレワークの新たな形として推進し、今年(2019年)7月には「ワーケーション自治体協議会」が発足、さらに輪は広がり、11月には「ワーケーション自治体協議会(通称=ワーケーション・アライアンス・ジャパン=WAJ)」が全国40を超える自治体の参加で発足する予定だ。そこで、30年以上前からテレワークや企業誘致に取り組んできた長野県軽井沢町で、ワーケーションの現在について取材した。
「標高1000メートルのウェルネスリゾート」で働く
長野県軽井沢町は100年前から「ウェルネスリゾート」を名乗ってきた。「リフレッシュできるうえに、クリエイティブなことができる町なんです」と軽井沢観光協会・会長の土屋芳春氏は言う。たしかに、戦前に作家の室生犀星が夏に長逗留して創作を行っていたことなど、例には事欠かないし、インスピレーションを生みやすい場所だともいえる。また、軽井沢に「行ってくる」ではなく「帰ってくる」という感覚を持っている人が多いのも軽井沢の特徴。まるで自宅にいるときのようにストレスフリーになれる証左だ。だから「軽井沢はテレワークの場所として選ばれるし、プラス要素は今後も必然的に増加すると思います」と事務局長の工藤氏は話す。新しいものを取り入れようということで、ベンチャー企業による貸しオフィスの運営も始まった。
軽井沢の自然は豊かだ(写真撮影/片山貴博)
軽井沢という土地は言うまでもなく古くから人気の別荘地であり、ここに別荘を持つことにあこがれている人も多い。そうした別荘文化が背景にあることは、ワーケーションがしやすい場所という側面を持つ。推計で450人ほどが別荘を使ってワーケーションを行っているようだ。別荘コミュニティが軽井沢の魅力であるため、ここで新しい人脈が広がることも多い。東京だと5分のアポイントを取ることも難しいが、別荘であればゆったりと話をすることもできる。また、短時間から使えるミーティングスペースが多いのも魅力だ。個人のグループでのアクティビティや、チームビルディングをするための合宿にも使われている。都会的なコワーキングスペースも増えてきた。
以前から企業誘致に熱心だった軽井沢実は、軽井沢町では、実に33年前から会議都市としてビジネス客の誘致に動いてきていた。単なる観光地としてではなく、町としてビジネス客を取り込む戦略を打ち出したのである。こうして企業が町内の施設を使って会議を行うようになった。また、首都圏から近いこともあり、日々通勤する人も300人以上いるという。通勤できることが魅力だった軽井沢では、近年テレワークで仕事をする人も徐々に増え、働き方改革のなかで、その動きはさらに広がっている。
軽井沢には従来、企業の寮や保養所が多かった。90社、90寮、全盛期には300を超えたが、バブル経済の崩壊やリーマンショックで閉鎖するところが増えた。そうしたところをリノベーションして大手都市銀行などが利用している。こうした企業が成功事例をつくり、軽井沢が磁場になる。
また、テレワーク協会と観光協会は協働して、これまでに10回近く実証実験を行ってきた。1泊2日の体験をつくりこむことにより、ニーズを探ってきたのだ。こうして、軽井沢にあるワークスペースは使う人の意見を反映したものとなった。
ワーケーションの実施場所はテレワーク協会が一元管理して紹介しており、利用者を見極め軽井沢の価値を下げないよう、ハイクオリティな町づくりを行っている。軽井沢はもちろん東京に比べるとアクセス面などで不自由だが、その不自由さを逆手に取っていかに特別に大きな企画にしようかとがんばっている。そうして、観光客がワーカーでもあるような状況を強固なものにしていきたいと、観光協会のお二人は強く語ってくれた。
軽井沢の仕事スペース3選インタビュー後、土屋会長が軽井沢の代表的なコワーキングスペースを案内してくれた。いずれおとらぬセンスのよさで、実に仕事がはかどりそうな場所だった。
●軽井沢書店
軽井沢にあった書店の跡地に、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が2018年5月にオープンした書店。店内では軽井沢や自然に関する書籍や雑誌の販売に加え、DVDレンタルも行われている。店のスペースの半分ほどはBread & Coffee by MOTOTECAというカフェになっていて、ここでPCを使って仕事をすることができる。取材当日は雨のため人は少なめだったが、常にさまざまな人が訪れ、読書や仕事をして帰っていく場所である。
軽井沢書店のカフェスペース(写真撮影/片山貴博)
●Lulu GLASS(ルルグラス)
軽井沢のフローリストS.K.花企画の運営で、店内は花に囲まれている。中軽井沢エリアでのテレワーク、打ち合わせスペースとして重宝され、店内ではワークショップなどのイベントも行われることがある。経営者は軽井沢商工会会長の金澤明美氏。町のワーケーションの機運を高めようと今年オープンした。ドリンク1杯540円のみで1日利用可能なので、軽井沢近辺で仕事がしたい人にとっては、大変重宝する場所である。
大きなテーブルが印象的な、ルルグラスの店内(写真撮影/片山貴博)
●ハナレ軽井沢
ハナレは、軽井沢ではいちばん有名なネットワーキングスポットといえるだろう。管理人はテレワークの仕事を歴任し、現在は軽井沢リゾートテレワーク協会副会長の鈴木幹一氏。ここはそもそもNTTコミュニケーションズの所有であり、週2回ほど開発会議も行われているが、その他の人も利用できる。鈴木氏は「軽井沢のワクワクする環境を大切にし、テレワークの聖地にしたい」と語る。
瀟洒(しょうしゃ)な雰囲気のハナレ軽井沢(写真撮影/片山貴博)
「いま、莫大な費用が地方創生に使われていますが、そんなことをしなくてもワーケーションやテレワークで、都市として大きくなることはできると思っています。働き方も含め、さまざまなダイバーシティを取り込み、地元の人と移住された人のコミュニティを大きく育てていきたい」というのが観光協会のお二人の意見だ。
不景気の中にあっても、インバウンド需要などで軽井沢の勢いは止まらない。また、別荘地としてのブランドも下がらない。そんな軽井沢でのワーケーションは人々の「休暇を取りたい」「仕事もしたい」を満たしてくれるだろう。ただ、軽井沢町に住む人以外にとっては、まだまだ高級な避暑地としての認識のほうが強い。今後はいかに軽井沢という伝統のブランドを守りつつ、新たな働き方を模索する人たちを取り込むかが課題となるのではないだろうか。
軽井沢町は、ワーケーションの取り組みについてほかの自治体と積極的に意見交換などを行っている。横のつながりがどう活かされるのか、今後も軽井沢のワーケーションのあり方に注目してゆきたい。
●取材協力街を歩くと、コート姿の人を見かけることを多くなりました。SUUMOジャーナルで10月に公開した記事のなかでは、「大阪・新今宮は星野リゾート進出でどう変わる? 街の声は」「イマドキの引越し事情!節約の方法、近隣への挨拶、お祝いに贈るものなどご紹介」」などが人気でした。TOP10の記事を詳しくご紹介します。
10月の人気記事ランキングTOP10はこちら!
第1位:賛否両論! 大阪のディープゾーン「新今宮」は星野リゾート進出でどう変わる? 街の声は
第2位:80代女性「不動産屋6件に断られました」。高齢者の賃貸入居の今
第3位:人気ドラマ『まだ結婚できない男』、2019年の桑野(阿部寛)の住まいは進化した?
第4位:マンション売却は「3か月以内で」その理由とは?
第5位:【ファミリー編】東急東横線で中古マンション価格相場が安い駅ランキング 2019年版
第6位:「住まいのリフォームコンクール(2019年度)」受賞作に見る最新リフォーム事情
第7位:デュアルライフ・二拠点生活[19]東京・佐賀、仕事バリバリ母の「いいとこ取り」な日々
第8位:イマドキの引越し事情!節約の方法、近隣への挨拶、お祝いに贈るものなどご紹介
第9位:盛岡を想うきっかけをつくりたい――「盛岡という星で」プロジェクトが目指す、街と人のつながり方
第10位:「花の定期便」で身近に楽しむ、花のある暮らし
※対象記事:2019年10月1日~2019年10月31日までに公開された記事
※集計期間:2019年10月1日~2019年10月31日のPV数の多い順
第1位:賛否両論! 大阪のディープゾーン「新今宮」は星野リゾート進出でどう変わる? 街の声は
写真撮影/吉村智樹
大阪屈指のディープゾーンである新今宮駅周辺の再開発の進捗について。高級ホテルで知られる星野リゾートの進出で、大胆なイメージチェンジが進んでいます。その現在は? 簡易宿泊街「あいりん地区」は消滅してしまう? 地元住民の本音も探りました。
第2位:80代女性「不動産屋6件に断られました」。高齢者の賃貸入居の今
画像/PIXTA
高齢化社会が進む現代日本。まだまだ元気であっても、高齢を理由に断られてしまう賃貸住宅への入居の現状と、元気な高齢者の一人暮らしを支える「高齢者サポートシステム」を取り入れている企業の取り組みから、今後を考えました。
第3位:人気ドラマ『まだ結婚できない男』、2019年の桑野(阿部寛)の住まいは進化した?
写真提供/カンテレ
13年ぶりの続編放送が話題のドラマ『まだ結婚できない男』で、阿部寛演じる偏屈な主人公・桑野信介は一流建築士の仲間入りを果たしましたが、自宅マンションは引越していない模様。しかしその内装には変化が。裏話を伺いました。
第4位:マンション売却は「3か月以内で」その理由とは?
画像/PIXTA
住み替えによるマンション売却経験のある人の約70%が、金額の低さに不満を覚えているという調査結果が判明。査定価格と売却価格に差が出るケースの分かれ目は「3カ月」になるのはなぜなのか、マンションを売るときのポイントについて考えました。
第5位:【ファミリー編】東急東横線で中古マンション価格相場が安い駅ランキング 2019年版
画像/PIXTA
住みたい街として名前が挙がる駅を多く抱える東急東横線。70平米以上~100平米未満のファミリー向け中古マンションの価格相場を調査しました。最も安かったのは特急も停車する菊名駅で4040万円。ねらい目の駅はどこでしょうか。
第6位:「住まいのリフォームコンクール(2019年度)」受賞作に見る最新リフォーム事情
写真提供/株式会社マスタープラン一級建築士事務所
マンションの住戸をまるごと冷暖房することで、間取りの変更に従来ネックになっていた冷暖房機の移動が対応可能になった家や、高齢者夫婦をヒートショックなどの健康リスクから守るリフォーム、空き家のままになっていた築30年弱の工場を陶芸教室のためのアトリエを備えた住宅へと再生させた“コンバージョン”などの事例から、リフォームの最前線とこれからを探りました。
第7位:デュアルライフ・二拠点生活[19]東京・佐賀、仕事バリバリ母の「いいとこ取り」な日々
写真撮影/唐松奈津子
デュアルライフ(二拠点生活)をご紹介する連載の第19回。「仕事は思いっきり」「子どもはのびのび育てたい」、そして社会人大学院にも通う「欲張り」な女性が、大人になって気づいた故郷・佐賀の魅力。仕事で忙しいという人にもすすめたい暮らし方、と明かします。その理由とは?
第8位:イマドキの引越し事情!節約の方法、近隣への挨拶、お祝いに贈るものなどご紹介
画像/PIXTA
引越しの2大お悩みといえば、費用と、近隣への挨拶をどうするか。費用を抑えるための節約テクニックと、引越し先での挨拶時の手土産の予算など、気になるお金事情の調査結果を分析しました。
第9位:盛岡を想うきっかけをつくりたい――「盛岡という星で」プロジェクトが目指す、街と人のつながり方
画像/「盛岡という星で」インスタグラムより
宮沢賢治と石川啄木を生んだ文化の街・岩手県盛岡市。外から人を呼び込むのではなく、かつて住んでいた人や現住者などに日常を発信する理由とは。発信者が本当に盛岡が好きで自信があるからこそ押しつけない、心地よい距離感の源を伺いました。
第10位:「花の定期便」で身近に楽しむ、花のある暮らし
写真撮影/柳沢小実
花のある暮らしはあこがれるけれど、どんな花を選んでどうやって生けたらいいのか。そんな初心者でも手軽に花を楽しめる「花の定期便」を、東京・三鷹市で金土日だけ開店する、こだわりの花屋さんにうかがいました。
星野リゾート参入の発表時には大きな注目を集めた新今宮の再開発計画のその後や、高齢者の賃貸問題など、街や将来にかかわる社会的な話題を集めた10月。また、ドラマ『まだ結婚できない男』の裏話からは、約10年で生活に起きうる変化や、価値観の違いにも考えさせられました。時を経ることで変わっていく社会の動きが、身近な暮らしにも密接にかかわっていることを、改めて実感できたようにも思います。
自分のセカンドステージをどういったように暮らしたいかと考えたとき、生活を楽しみ、人との交流も続けたいと望むアクティブシニアが増えている。そんな高齢者向けの住宅や施設も誕生しているようだ。今回は秩父市に建設された「ゆいま~る花の木」のオープン記念式典があると聞いて足を運んでみた。
都市と田舎を結ぶ姉妹都市連携が新しいシニアの住まい方をつくる
池袋駅からレッドアロー号で78分、西武秩父駅に降り立つと駅周辺は活気にあふれている。関東に暮らす人にとっては長瀞渓谷や軽登山が楽しめる山々など、週末のアクティビティのイメージが強い秩父だが、歴史ある街であるからこそ、文化施設や個性的なカフェなども多く、実は落ち着いて自然を満喫できる暮らしができる古都でもある。
長瀞渓谷(写真/PIXTA)
(写真/PIXTA)
駅から徒歩15分、タクシーだとワンメーターでたどりつく場所に「ゆいま~る花の木」が11月にオープンした。木造2階建ての新築20戸、60歳以上の元気なシニア世代を対象としたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)だ。今回、そのオープン記念式典が、隣にある秩父市の交流センターで開催された。
「ゆいま~る花の木」(写真提供/株式会社コミュニティネット)
この施設は「秩父市生涯活躍のまちづくり」構想のモデル事業「花の木プロジェクト」の一環として誕生したものだが、秩父市(埼玉県)&豊島区(東京都)による「2地域居住」構想にも関係している。もともと姉妹都市関係にある両自治体が将来に向けてお互いの可能性を見据えた計画だという。
豊島区は、都市の過密や高齢化という課題を抱える中で、区民のライフスタイルの選択肢を広げ、第2の人生を後押ししたいとの考えがあった。一方、秩父市も人口減少という課題をかかえ、生涯活躍のまちづくり(都市部からの移住者が健康で活動的な生活を送れるとともに、医療・福祉等の地域ケアも整ったまちづくり(日本版CCRC)を目指していた。
セレモニーでは豊島区長と市長の挨拶もあり、この取組への期待の高さが感じられる。運営はサ高住で実績のある株式会社コミュニティネットが担当、「親しい人に囲まれ、楽しく、自由な暮らしを満喫し、介護が必要になったときも、地域の医療/介護資源を利用しながら自分らしく暮らす」をコンセプトとしている。
キッチンが設置された「秩父市花の木交流センター」でオープニングセレモニーを開催。「ゆいま~る花の木」の住民はもちろん、秩父市内の住民交流の場としても期待されている(写真撮影/四宮朱美)
とりあえず試しに住む、2地域居住で気楽に始める、どちらも可能リタイア後のセカンドライフをどこで始めるかは、高齢層にとって関心は高いが、いきなり今まで住んでいた場所から他の場所に移り住むのはハードルが高い。できればお試し期間が欲しい。
「ゆいま~る花の木」は、平日は自然豊かな秩父で生活し、土日は豊島区で文化芸術イベントに参加するといった「2地域居住(デュアルライフ)」のモデルケースも想定している。若い世代で行われているデュアルライフが平日都心、週末郊外となっているのに対し、逆も可能というのも特徴。これから人口減少が懸念される日本にあって、お互いに人口を奪い合わない交流や移動で「さまざまな地域との共生の仕組みづくり」に力を入れているそうだ。実際に豊島区に自宅がありながら、ここでの生活も始めようとしている高野正義さんに話を伺った。
「私は生まれてから現在まで豊島区で暮らし、地域の町会長もしてきました。地元に友人・知人も多いですが、少しのんびりしたいと思って、ここに拠点を持つことにしました。言ってみれば『もう1つの書斎』みたいなものですね。友人たちも興味を持っているみたいで、いずれ彼らも参加してくれると面白いと思っています」
快適なセカンドライフに必要なのは、設備や住宅はもちろんだが、地域に溶け込めるコミュニティだ。その点でも、隣接する地域開放型交流拠点施設「秩父市花の木交流センター」の存在が注目されている。セレモニーでは近隣の幼稚園児も参加、かわいい歌声を聞くことができた。施設が幼稚園、小学校、中学校などの教育施設が集まる文教エリアの中に位置していることで、世代を超えたコミュニティの醸成が期待できる。
「秩父市花の木交流センター」(写真提供/株式会社コミュニティネット)
(写真提供/株式会社コミュニティネット)
終身建物賃貸契約と3つの安心で長く安心して暮らせるシステム部屋は1Kから2LDK、29.54平米~47.62平米の3タイプが用意されている。住居内はバリアフリー。床暖房が設置され、ヒートショックを軽減する浴室換気乾燥暖房機も標準装備だ。シニアにとって住戸内の温度差が整えられているのはうれしい。
くわえて「毎日の安否確認」「生活コーディネーターの日常生活の相談」「セコムと連携した夜間緊急時の対処」など3つの安心も用意されている。
安否確認は、1日1回建物内の郵便受け横に設置した専用ボードに記名予定、確認ができない場合は、電話連絡や入室などで安否確認を実施。生活コーディネーターは、日々のちょっとした相談や困りごと、医療・介護の活用についても相談に応じる(フロントは、隣接する交流センター内に設置予定)。 日中は常駐スタッフとセコムが連携し、夜間の緊急時にはセコムの緊急対処員が駆けつけ対応する。
また「終身建物賃貸借契約」で入居者は亡くなるまで安心して住み続けられるのもメリット。毎月払いの場合は5万7000円から8万9000円、一括前払いの場合は1231万円から1922万円と終身タイプのものとしては手が届きやすい(このほか毎月、生活サポート費2万7500円(一人の場合、税込)と共益費1万円(非課税)が必要)。
2LDKタイプの居室。収納スペースも確保されている(写真撮影/四宮朱美)
水まわりもバリアフリーでゆとりあるスペースを確保(写真撮影/四宮朱美)
ちょうどいい距離感と歴史や文化に恵まれた自然たっぷりの秩父市秩父市は荒川の清流と秩父盆地を中心とした山々に囲まれ、四季折々の自然が楽しめる環境だ。また歴史的な文化資源も豊富。昭和レトロを感じさせる町並みや、秩父夜祭をはじめとする大小多くの祭りが1年を通じて開催される。
西武秩父駅構内には「祭の湯」というスパ施設があり、土産物を売る店も充実している。フードコートではたくさんの人が食事を楽しんでいる。
セレモニー当日も平日にも関わらず、駅周辺は観光に訪れた人たちを目にした。秩父34カ所観音霊場巡りだけでも、たくさんのコースがあり人気を集めている。池袋からの距離も「大人の遠足」で出かけてくるのにちょうどいい距離感だ。いわゆるアクティブシニアが自分らしい時間を過ごすために、秩父市というのは最適な環境の1つかもしれない。
駅構内に隣接されている祭の湯。フードコートや土産物店も併設され、日常的に楽しめる施設になりそうだ(写真撮影/四宮朱美)
筆者が若いころにイメージしていた「落ち着いてのんびり過ごす老後」は、自分が年齢を重ねて目の当たりにする状況とは少し違ってきている気がする。「ゆいま~る花の木」での生活を始めようとしている高野さんにおいては、豊島区でのコミュニティづくりの経験を秩父での暮らしにこれからも活かしていけそうだ。すでに豊島区と秩父市の橋渡しのような存在になっている。リタイア後のセカンドライフは、これからも続けていきたいこと、これから新たに挑戦したいこと、等々がいっぱいありそうだと感じた。そんなアクティブシニアにとっては、都会と田舎の両方でのセカンドライフを欲張りに手に入れられそうな環境は、選択肢として魅力的かもしれない。
●取材協力実家から、七五三のフォトブックが届いたと電話がありました。
「贔屓目かもしれないけど、○○(息子)は、他の子より凛々しく賢そうに見える。」と大絶賛されました。
もちろん、私は、「そうでしょう~」とこたえました。
さて、インフルエンザの本格的な流行が始まりましたね。
息子は10月中に体調不良のため、インフルエンザ予防接種の予約がキャンセル続きで、やっと先週末に1回目が出来ました。
私も、息子と一緒に接種してもらいましたが、今年のは痛いですね!
痛いのを我慢した褒美は、甘栗。
ご褒美なんて、いつもは大いに褒め称えるだけ ですが、今回は息子からのリクエストに応じました。
この間、ピアノ教室の発表会がありました。
ピアノを習い始めて1年4か月くらいですが、継続は力なりですね。
親子連弾で2曲と、息子一人で2曲の、合計4曲を演奏しました
この写真はお友達のママが撮ってくれました。私はドキドキして見守るので精一杯。
自分が演奏するよりも緊張しました…💦
息子は、まったく緊張せずに落ち着き払っているように見えたけれど、後日、先生から、
「ガチガチに緊張していたわよ~。」
と、うかがいました。それから、ほかの生徒さんの演奏を静かに聞けていた、と褒めていただきました。
息子は、「楽しかった」と言っていました。
「足元が冷たくて眠れない!」「手がかじかんで困る!」。冷え性の筆者は、今の季節すでにこうした悩みを抱えている。リンナイによると、冷え性が改善する入浴方法があるという。冷え性に効果的な入浴方法とはどんなものか?冷え性の筆者と一緒に、調べていこう。【今週の住活トピック】
「冷え性と入浴に関する意識調査」を公表/リンナイあなたの入浴知識度をチェックしてみよう
まずは、リンナイの「入浴知識チェックシート」から、冷え性に関係のある5つの項目にチャンレンジしてほしい。
■「入浴知識チェックシート」より抜粋
□ぬるま湯より42℃以上の熱いお湯のほうが体が良く温まり、冷え性に良い
□冷え性の人はお風呂上がりに靴下を履くと良く眠れる
□半身浴より全身浴のほうが汗をたくさんかく
□入浴後、冷えないうちにすぐに布団に入ると良く眠れる
□湯船に浸かる習慣がある日本人より、湯船に浸かる習慣がない欧米人のほうが冷え性に悩む人が多い
(出典/リンナイ「冷え性と入浴に関する意識調査」のリリース)
正解は、「×・×・○・×・×」の順。あなたは正しく答えられただろうか?
筆者は3勝2敗。実際の設問は11問あり、正解9問以上が「入浴優等生」なのだそうだ。筆者は8問だったので、入浴優等生にはなれなかった。中でも、冷え性に関する設問で誤答が多かったのはショックだ。
よくお風呂に入る冷え性の人、実は間違った入浴法をしていることも?リンナイの「冷え性と入浴に関する意識調査」によると、男性の40.6%、女性の72.0%が冷え性だと回答した。女性のほうが、圧倒的に冷え性が多いのだが、男性も4割は冷えに悩まされている。
冷えを感じる部位を聞くと、1位「足先」(89.0%)、2位「手先」(67.7%)が突出して多く、末端に冷えを感じている方が多いことが分かった。結果は以下、「脚」(19.7%)、「お腹」(19.2%)、「腰」(14.0%)、「二の腕」(7.3%)の順だった。かくいう筆者も“末端”冷え性だ。足先、指先などの「先」の次に、首、足首、手首などの「首」が冷えるので、ぜひ選択肢に入れてほしかった。
さてこの調査結果によると、冷え性の人と冷え性でない人に、入浴方法で違いが見られた。
冬の時期に、湯船に浸かることが多いか、シャワーだけで済ますことが多いか調査したところ、湯船に浸かる人が全体で67.7%と多数を占める結果に。なかでも、冷え性の人は71.2%で、冷え性でない人より湯船に浸かっている人が多いことが分かった。
「あなたは、冬の時期はお風呂に入る(湯船につかる)ことが多いですか?それともシャワーだけで済ますことが多いですか?」(単一回答)(出典/リンナイ「冷え性と入浴に関する意識調査」のリリースより転載)
ただし、「お風呂の温度」には注意点がある。冷え性の人は、41℃以上の熱いお風呂に入る人の割合が高いのだ。「入浴知識チェックシート」を監修した、早坂信哉先生によると「41℃以上の熱い湯は急激に体温を上げてしまい、体は懸命に体温を下げようとし、結果として体の温まりは長く続きません。体の温まりが長く続くのは、むしろぬるめの湯なのです」ということだ。
「半身浴」についても、注意が必要だ。半身浴をしているのは、全体で34.7%。実は、冷え性の人のほうが半身浴をしている割合は高い。
「あなたは、入浴するときに半身浴をしていますか?」(単一回答)(出典/リンナイ「冷え性と入浴に関する意識調査」のリリースより転載)
早坂先生によると「半身浴は心臓や呼吸器が悪い人にはお勧めですが、40℃の半身浴を10~20分では十分に体が温まらない可能性があります。健康な人は湯温、時間はこのままで全身浴に切り替えてみてください」とうことだ。
冷え性の人におすすめの入浴法とは?早坂先生によると、冷え性におすすめのお風呂の入り方があるという。
■お風呂に毎日入る
■基本は、40℃のお湯に全身浴で10~15分
冷え性は、手足の末梢の血流が悪くなることで起きるので、体を温めて血流を改善させることがポイント。それには入浴が効果的なので、毎日お風呂に入るのがよいという。それには、熱すぎない40℃のお風呂に肩まで全身浴で10~15分入るのが基本。長く入りすぎるとのぼせ(熱中症)を引き起こすリスクがあるという。
また、「40℃のお風呂に2~3分浸かったあと、シャワーで30℃のちょっとぬるい湯を、冷えの気になる手足へ1分かける“プチ温冷交代浴”がお勧め」だというので、試してみてはいかがだろう?
バスルームの進化は目覚ましい。高い機能を活用したいさて、ここまでだと入浴方法の紹介に終わってしまうので、筆者の専門領域である住宅について話題を広げ、最新のバスルームについて見ていきたい。
今のバスルームは、システムバスが基本だ。浴室全体が一体となってつくられているので、防水性が高いのが特徴。水はけのよい床材、魔法瓶のような構造で保温性の高い浴槽などがスタンダードになっている。「浴室暖房乾燥機」を付けて、あらかじめ浴室を暖めたり入浴後の湿気を乾燥させたりといった、便利な使い方ができるようにもなっている。
さらに、「ミストサウナ機能」(細かい霧状の温かいミストを発生させ浴室内に噴霧するもの)をプラスすれば、入浴後も体の温まりが持続するなど冷え性にも効果的。また、肩の高さからお湯が流れる“肩湯”ができるなど、新しい機能を持たせたバスルームも登場している。
バスルームの近年の進化は、実に目覚ましいものがある。こういったバスルームの機能をうまく活用することも、冷え性の改善には効果があるだろう。
ところで、「入浴知識チェックシート」の設問にあった、すぐに布団に入ったり、靴下を履いたりするのが良くない理由は、お分かりだろうか?手足から熱が放散して、体温が下がることで眠くなるので、入浴後90分後を目安に布団に入り、靴下は履かないほうが睡眠には良いのだそうだ。
また、冷え性は日本人特有のもので、欧米人にはない症状だというのは、羨ましい限りだ。
国土交通省は2019年10月1日から賃貸取引における重要事項説明書等の電子書面交付に関する社会実験を開始しました。いよいよ、不動産関連の文書のやり取りをネット経由で行える時代の到来への第一歩です。すでに米国では、不動産の賃貸契約だけでなく、売買契約でさえオンラインで全契約の9割以上のやり取りが終えられる時代ですが、日本の導入条件を探りつつ、不動産業界の最先端をいく米国の事例を紹介します。
「IT重説」に続く規制緩和
今回、不動産における「賃貸取引」の電子書面交付化が進むきっかけとなったのは、2017年から本格運用され始めた「重要事項説明の対面原則」の規制緩和に始まります。重要事項説明とは、宅地建物の取引に関して、契約前に宅地建物取引士により、説明の相手方(借主)に対して契約上の重要事項について説明することを言います。 またその際に、説明の内容を記載して説明の相手方(借主)に交付する書面を、重要事項説明書と呼び、 宅地建物取引業法に規定されています。
詳しい話を伺った、国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課の石原寛之さんによれば、今回の社会実験は国土交通省が作成した「賃貸取引における重要事項説明書等の電磁的方法による交付に係る社会実験のためのガイドライン」に基づいて実施しているといいます。
これまで宅地建物取引士による「重要事項説明」は、必ず対面で行うことが義務付けられていました。しかし、2013年から政府が推し進めているビジネスにおける「IT活用」の中で、不動産業界ではそれまでの規制を緩和し、オンラインシステムを利用した「非対面」での説明を実施するための施策が練られてきたのです。それが通称「IT重説」と呼ばれる、ITを活用した重要事項説明の実施となっています。
2015年に行われた社会実験と、その実験を通じて収集したデータを、有識者や実務者による検討会を通じて分析し、2017年から本格運用に至っています。そして今回、「書面の電子化」に関して、事前登録をした113の事業者による3カ月間の実験が始まりました。その内容は、先述の「IT重説」の実施に加え、「賃貸取引」に限った書類の電子交付を行うというものです。
なお、事前に社会実験に参加登録した登録事業者は、社会実験期間中に社会実験を実施した説明の相手方(借主)および、担当した取引士に対して、アンケートを実施。その内容を国土交通省に対し、フィードバックすることが求められています。
「電子署名」、専門業社のサービスが必須「IT重説」の場合、説明の相手方(借主)に対し、事前に送付された書面により、オンラインで取引士による説明が行われ、書面に署名をして返送する、という流れがありました。今回の社会実験における「電子書類」の交付にあたり、カギとなるのはやはりセキュリティーです。登録事業者(取引士)は、重要事項説明書などの電子ファイルを作成し、暗号化された高度なセキュリティーが確保された環境で、説明の相手方(借主)へ書類を送付し、必要な部分に「電子署名」を依頼します。
なおこの電子署名については、すでに電子認証業務を行うサービス事業者についてのリストを、国土交通省のウェブサイト上で、公に共有されています。専門業者による安全なサービスを利用することで、電子署名済みの書類をメールなどでやり取りが可能になるのです。また確認ソフトを使えば、その電子署名が改ざんされていないことを確かめることも可能だと言います。ただし、専門業者も、現時点で19社がリストアップされているので、サービス内容や使いやすさにも差がありそうです。
なお、今回の社会実験では2つの電子書類の交付方法が選択できるようになっています。1つ目は、メールに添付し、PC上で電子ファイルへ電子署名を書き込んだ後、送付する場合。あるいは、クラウドなどのサービス上で、電子署名を書き込み、それを保存することで、必要な電子書類をやり取りする場合があります。
IT化先進国、米国の場合一方、すでに賃貸だけでなく不動産の「売買」においてもオンライン化が進んでいる米国では、どのような形で不動産業界における「IT化」が進んだのでしょうか。南カリフォルニアで30年以上不動産業務に携わる、オレンジ不動産のジャック才田さんと、妙子さん夫妻に、詳しい話を聞きました。
オレンジ不動産のジャック才田さん、妙子さん夫妻(写真提供/オレンジ不動産)
「私たちは、不動産書類の電子化を導入したのは決して早い方ではありませんでした」と話す才田さん。周辺の同業者の導入実績や環境を観察しながら、実際に導入を開始したのは2014年になってからだと言います。米国では90年代から、書類の電子化が始まりましたが、クラウドを通じた電子署名を用いたり、メールで必要書類をやり取りしたりするだけで、賃貸や売買契約がすべてオンライン上だけで完結するのが当たり前になったのは、ここ4、5年といってもいいでしょう。
(写真/PIXTA)
オレンジ不動産がIT化を推進したきっかけは、競争の激しい不動産業界の中で「遅れている感」を出したくなかったからだと言います。加えて、2015年ごろから「全米不動産業者協会」や、「カリフォルニア不動産協会」といった業界組織の加盟者であれば、不動産書類の専用ソフトウエアを提供する「zipLogix(ジプロジックス)」を「無料」で利用できるようになったことも、業界内でのIT化が一気に進んだきっかけになったことは言うまでもありません。
米国では、こうしたIT化が進んだおかげで、不動産のやり取りの時間が短縮できるようになり、とくに不動産売買は増加の傾向があると言います。「米国では、不動産に関係する書類の書式がほぼ画一的ということもあり、書類の電子化が進んでも、戸惑う人が少ないというのもあるかもしれません」とは、妙子さんの話です。
実際50代以上の年配者は、初めて電子署名で書類にサインをする際に、不安感を抱く人もいるといいます。しかし「そのような方には、時間をかけてやり方を説明し、必要な電子署名の設定を手助けします。スマートフォンでも簡単に確認ができ、サインまでできるようになるので、多くの方は喜んで利用するようになっています」と話します。
(写真/PIXTA)
さらに、「仕事やプライベートなど、時間管理を自分の思い通りにすることを好む若い方ほど、不動産におけるやり取りを煩わしく感じる人が多いように感じます。自分の自由な時間に、オンラインで署名や書類のやり取りまで完結できるIT化は好まれています」と続けます。
不動産取引者に対して、専用ソフトに関するセミナーはもちろん、書類の電子化による起きやすいトラブルや、その解決法については、業界組織内を通じて業界全体で積極的に情報共有されています。さらに、トラブルの相談窓口も用意されていると言います。メールやクラウドを上手に使い分けながら、IT化を進める中で顧客の信頼性を維持する方法を、リアルター(不動産屋)は考えなくてはなりません。
米国では、現場のニーズに合わせ、導入しやすいサービスの提供とそのサポート体制が構築できていることで、一気にIT化とペーパーレス化が進みました。今後、銀行や金融業者による、不動産ローン関連の書類についても、電子化・ペーパーレスが進む予定だと言います。
一方、日本では現在行われている社会実験のアンケート調査の結果により、分析に十分なアンケート結果が集まらない場合は、実験の延長も想定されています。「実施には法改正が必要になるため、ある程度の期間は必要となります」とは、先述の国土交通省・石原さんの言葉です。不動産取引のIT化については、消費者保護を最優先として、カスタマー、不動産会社双方にとって取引の利便性向上に確実につながるこの取り組みに期待したいものです。
●関連サイト経済評論家として、働く女性の代表的存在としても大活躍中の勝間和代さん。多忙を極める裏で、かつてはモノがあふれ収拾のつかない状態だった「汚部屋」を、「家が一番快適」というまでに蘇らせ、その体験をまとめた『2週間で人生を取り戻す!勝間式汚部屋脱出プログラム』(文春文庫)を2016年発行。2019年の文庫化を機に、勝間さんが一念発起したきっかけ、人生がガラリと変わったという劇的効果、約4年経過後の断捨離やライフスタイルの進化などを伺ってきました。
2015年秋、友人・川島なお美さんの急逝で断捨離の必然性に目覚める
――勝間さんが断捨離を始めることになったきっかけを教えていただけますか?
2007年に独立して以来、多忙を口実に、片付けに関しては放棄していました。強制的に荷物整理をするために引越しを繰り返してきましたが、今の部屋に5年以上住んだころからモノが収納限界点を超える「収納破産」状態に。部屋には使わないモノがあふれ、人も呼べない汚部屋でしたが、見て見ないふりをしていました。
そんな2015年秋、公私ともに親しくさせていただいていた川島なお美さんが急逝。同世代だけに、「死」というものが現実化して。ご主人である鎧塚俊彦さんが、なお美さんの残したものを前に辛い思いをしているのを目の当たりにして、「自分もいつ死ぬか分からない」「自分のものが多いと遺族も大変だし、何かあったときに他人を家に入れることもできない」と、スイッチが入って断捨離を始めました。
(左)同じ部屋とは思えない、汚部屋時代。デスクまわりも仕事関連のモノがあふれ、収拾のつかない状態。せっかくのルンバも床に散乱したモノで活躍の場がなかった(写真提供/勝間和代さん)(右)現在の勝間さんのお部屋。明るく広々、厳選されたものだけに囲まれた「一番快適な場所」。断捨離で床にモノがなくなり、時間セットしたルンバが毎日大活躍でさらに綺麗に(写真提供/文藝春秋)
――断捨離の成果が出てご著書『勝間式汚部屋脱出プログラム』が出来上がるまではどれくらいの期間で?
そのときたまたま睡眠の大切さに関する本を読んでいたこともあり、試しに寝室の断捨離から始めました。するとすぐに睡眠の質が高まる効果を実感して。その相乗効果で断捨離は加速、どんどん面白くなって、毎日2~3時間片付けて、2015年末には8割のモノがゴミと化していました。ブログに書いたところ好評だったこともあり、この仕組みをまとめて、2016年に『2週間で人生を取り戻す!勝間式汚部屋脱出プログラム』の単行本を出しました。
『2週間で人生を取り戻す! 勝間式 汚部屋脱出プログラム』勝間和代 著、文春文庫
片付けてスッキリすると気持ちいいし、効果を実感する、楽しくなる、どんどん捨てるべきものが目につく、という好循環で、無理はしていません。むしろ汚部屋だったころの方が、掃除をするにもモノをどかしてからでないと掃除さえもできなかったので、無理して頑張っていたと思います。
――断捨離はダイエットにも絶大なる効果があったとか?
断捨離でこまめに身体を動かすようになって、自然に体重が4~5kg落ちました。かつてはゴミを溜めておいて収集日に合わせて運んでいましたが、いまは目につけば24時間いつでもマンションの集積場所まで捨てに行きます。自然に良く身体を動かす癖がついたのだと思います。
さらに自炊に切りかえて外食が減ったこともあり、ピーク時は60kgを超えたこともあった体重はぐんぐん減って、いまは40kg台になりました。人生100年時代、人生の先輩に「体が動くのは50代のうち」と言われて、仕事ばかりでなく、意識して運動していることもあると思います。今日もゴルフ練習場に行ってきましたし、家でダンベルを使ったりして、毎日2~3時間は運動していますよ。
――家を一番快適な場所にすることによって、何が変わりましたか?
まず、モノが少なくなったことで、モノを探す無駄な時間もなくなりました。断捨離したら、ハサミやカッターが家じゅうから何セットも出てきましたからね。掃除もしやすくなりいつもきれいな状態を保て、いつ誰が訪ねてきて、どこを見られてもOKです。
家でも身体をこまめに動かすようになったので、以前は行きもしないジムに会費を払ってお金を浪費していましたが、そんな必要もなくなりました。ジムもちゃんと場所や時間帯を選んで通っていればいいのですが、たいてい入会しているだけで満足しがちですよね。
今までは家で仕事をしていても、快適とは言えない環境なのですぐ息抜きに外に行きたくなって。例えばカフェに息抜きに出かけると、その往復時間もカフェ代も無駄になります。家が一番快適でストレスもないと、外に行く必要がなく時間とお金の無駄がなくなって経済的。その時間とお金を好きなものに集中できます。
汚部屋の時代は自宅には親友くらいしか呼べなかったけれど、今は月に数回、椅子は8脚なので8名マックスのパーティーもするようになりました。以前は不意に人が来たら困っていましたが、いまはたとえ日にちを間違えていても、いつでもどこを見られても大丈夫です。
(写真提供/文藝春秋)
コツは捨て癖。片付けの「仕組み」で歯磨きのように習慣化――片付けが苦手でいつも挫折しているのですが、どこから、どのように手を付ければいいでしょうか?
まずは捨て癖を付けて、成果を実感しやすいところから始めるといいですね。例えば浴室や寝室のベッドまわり。浴室は「お風呂に入る」という目的がはっきりしている狭い空間なので、取り掛かりやすいです。入浴に関係ないものがあれば取り除き、使っているもののみ残します。私は立ってシャワーを浴びるので、桶や椅子も使っていないことに気付き、処分しました。広々と気持ちよい空間でバスタイムを楽しむことができ、さらに掃除もしやすく、すぐに断捨離効果を実感できるでしょう。
寝室も同じです。「眠る」という目的に必要なものだけを残すことで、質の高い眠りを得ることができることが実感できるはずです。寝室は、まずベッドまわりから始めて、クローゼットや物置は難易度が高いので後回しで。「捨てる物を選ぶ」という発想ではなく、「残すものを選ぶ」という感覚で、捨て癖を付けていくことが大切です。8割がたの不要なものがなくなれば、「整理整頓」とか「収納」などと考える必要もなくなります。
――具体的に、捨てる・捨てない、はどのように判断すればいいのでしょうか?
判断基準はシンプルに、「使っているか、いないか」、ということだけです。こんまりさんこと、近藤麻理恵さんの「ときめき」による片付け術が世界中で大流行していますが、ときめくか、ときめかないかって、私には分かりにくくて。季節ものは別にして、1カ月間使っていないものは、要らないのでは、という目で見ます。
例えばキッチンの調理器具は包丁3本、お玉2つ、トング、木べら、ピーラーを残し、さまざまな便利グッズや予備は捨てました。同時に使うものでない限り、すぐ洗えばストックも不要です。7~8本も出てきたラップのストックも一種一本だけにしました。ちゃんと出汁をとれば、出来合いの各種調味料類も不要になります。
買い置きは、結局使わず無駄になってしまい経済的ではないので、しません。冷蔵庫の中も、3日以内に食べる物しかはいっていません。それでも米や豆、水、カセットコンロなどがありますから、台風の3、4日分の食料は大丈夫です。
そのようにどんどん身の回りのものもシンプルにしていき、化粧品もワンセット、小さな化粧ポーチのみです。そうすれば、なくなりそうなときはすぐ分かるので在庫管理も楽。アイシャドウだって何色もあっても、結局使うのはお気に入りのブラウン系だけなので、一種でいいのです。
――難易度が高い場所はどのようにクリアしてキープすればいいのでしょう?
捨て癖がついて、断捨離の効果も実感してからだと、難易度が高い断捨離もやりやすくなります。さまざまなものがあって判断が複雑になりがちな収納スペースは、捨て癖が付いた断捨離の最後に取り掛かるのがおすすめです。クローゼットの衣類なら、値段が高く使用頻度が少ないフォーマルなものは悩みますので、まずはカジュアルな服の断捨離をしてからフォーマルに。物置もさまざまなものが混在している場所なのでやっかいですが、最終的には日常的には使わないけれど、必ず使うものだけ残すのが理想です。
捨て癖は、習慣にしてこまめに捨てることが大事です。歯磨きだって3日とか1週間に一度では、歯石も溜まって大変でしょう。歯磨きを毎食後習慣にするように、断捨離もちょこちょこ習慣化してしまえば長続きします。
無理せず、こまめに、ですね。
かつて持ってはいても、床にモノが散乱していて起動できなかったルンバは、毎日タイマーで自動で動き出すようセットし、そのために床にはモノを置きません。キッチンも片付いている方が、断然お料理の効率もいいし、楽しいです。手洗いか食器洗浄機か、ではなく、両方使った方が早いので、食器に応じて手洗い&食器乾燥機、食器洗浄機、を使いわけ、食事のときには片付けも終わっているようにします。皿や調理器具もストックは持たないので、整理整頓や収納で悩むこともありません。
モノから行動の断捨離へ。時間を生み出し自分が主役の人生に――勝間さんが捨てにくかったモノはどんなものですか? どんな変化がありましたか?
高額なもの、他人にいただいたものや思い出のあるもの、物理的に大きなものなどが捨てにくいです。100円ショップで買ったものは誰でも気軽に捨てるでしょうが、3万円を超えるものだと悩むでしょう。頂きものや思い出のものも、送り主の立場を思うと申し訳ない気持ちになります。物理的に大きなものも、運んだり粗大ごみの手配をしたりが大変です。
コレクションしている趣味のものも捨てにくいです。一眼レフやビデオカメラ、古いPCなどもたくさんありましたが、時代とともに進化して、今どきスマートフォンで事足りるので、古いものは処分しました。
捨てるのがめんどうなものが分かってからは、なるべく家まで持ち込まないようにしています。買い物は厳選し、特に3万円以上は慎重になります。いただきものも「モノを増やしたくないので」「お酒は飲みませんので」などとその時点で断ります。そうしているうちに周囲に浸透してきましたが、それでも断り切れない場合は、事務所のスタッフに配ったりして、基本家には消えもの以外は持ち帰りません。逆に自分がプレゼントを選ぶ場合も、消えものと決めています。
――モノを増やさずキープするための、勝間流の仕組みや工夫を教えてください。
基本はモノもダイエットも同じで「出る」「入る」の仕組みです。出るが多いと痩せるし、入るが多いと太る。断捨離で綺麗になっても、人間生きている限り、モノは放っておけばまた増えていきリバウンドしてしまいます。
モノが増える仕組みを知って、増やさない仕組みをつくることが大切です。買い物はとにかく厳選し、何かを買うということは、何かと入れ替えます。現在本当に必要なもののみになっているので、それに並ぶものか、入れ替えてまで欲しいモノか熟考します。
どうしても溜まりがちなものに郵便物があります。家に持ち込んでどこかにポイと置いたら最後、そのままになって溜まっていきます。そこで「郵便物は絶対にそのまま置かない」と決めて、ポストから部屋に戻る途中、エレベーターや廊下でも中身を確認して、要るものや要返信のものなどを分けるなど処理をしたうえではじめて部屋に置きます。クリーニングに出した際のハンガーも断って家には持ち込みません。
所有に拘らず、必要なものは「エアークローゼット」などのサブスク(サブスクリプションの略称で、製品やサービスなどを一定期間利用しその代金を払うシステム)を利用しています。バッグなどは買う前にいくら吟味しても使い勝手までは分からないので、まずはレンタル。今日のバッグもレンタルで、気に入ってはいるけれど購入するほどではないかな、とか使ってみて判断できますよ。
――単行本発行から文庫化まで4年、現在の断捨離の進捗状況と読者へのメッセージを。
モノに支配されない自分が主役の暮らしが快適だ、ということを断捨離で実感して以来、常に効率化できるものはないか、捨てられるものはないか、考えています。無理をしていないので、もちろんリバウンドすることもありません。自分にとって快適でストレスのない状態を追求して、断捨離しているだけです。
いまは「モノ」の断捨離から、「行動」の断捨離に移行しています。一日は24時間と限りがあるので、自分にとって快適でないことは辞めました。例えばテレビの仕事は1時間番組の収録でも、現場への往復や事前打ち合わせなどで合計6時間前後拘束されてしまいます。自分はテレビを一切見ないし、テレビに出ている時間を楽しんでいるわけでもないことに気付き、今年の2月から一切テレビのお仕事は断っています。
「行動」を断捨離することで「時間」が生まれ、自分で自分のスケジュールを組めるようになります。先日は誘われるままに、8日間で5回ゴルフのラウンドに行きました。逆に、少しでも迷った誘いは断ります。自分の人生、自分の時間は自由に使い、自分でコントロールしたいですからね。
さっそうとインタビュー場所に現れた勝間さんは、表情キラキラ、お肌ピカピカ、スッキリ華奢なシルエット。「部屋の状態は心の状況を表す」と言いますが、お部屋もご本人も、いつ誰に見られても良い状態に整っているのだと納得。最後に仕事道具を詰め込んだ大荷物の取材陣に、「バッグも小さくして、持ち歩く荷物の断捨離を」、とアドバイスいただきました。断捨離、やらないと人生損です!!
高齢者世帯が増加するなか、高齢者宅の空き室を低家賃で大学生に賃貸し交流する下宿サービス「京都ソリデール」が注目を集めている。高齢者の住まいには、高齢者が集うシェアハウス、シングルマザーとシニアによるシェアハウスなどシニアの知恵袋を次世代につなげる、シニア同士の生きがいを育んでいる、シニアの見守りを兼ねたさまざまな住まいの形が登場しています。京都府が2015年度から取り組む、下宿サービス「京都ソリデール」の住み心地とは? 実際の生活を高齢者、学生の両方にインタビューしました。
親でもなければ親戚でもない。だから、「口を出さないという気遣い」
ケース1/Yさんと谷口洋将くん(佛教大学・社会福祉学部2年生)
昭和45年に建てられた京都の趣のある住まいを15年前に購入したYさん。縁側に腰掛けて美しい日本庭園を谷口くんと一緒に眺める(写真撮影/中島光行)
賀茂川近くにお住まいのYさんと谷口洋将くん。Yさん宅の2階の一室を谷口くんが使い、家賃は光熱費込みで3万円。キッチンや冷蔵庫、トイレ、お風呂は共同、キッチンが空いていたら谷口くんはたまに自炊もするという。「月に一度くらい、一緒にご飯を食べることもあります」(谷口くん)
2階の1室を使う谷口くん。隣の部屋にも下宿人がひとり。個室以外はすべて共用になっている(写真撮影/中島光行)
Yさんが「京都ソリデール」を知ったのは、通っていた古典クラブ(京都府SKYセンター)の機関紙に掲載された広告だった。「説明会で話を聞いて、2階に部屋が2つも空いてることやし、使ってくれるんやったらいいわと思って。行政がやってるから、変な子は来ないやろ」と笑った。寂しかったわけでも、若い子が好きなわけでもなく、Yさんはすんなりとこの制度を受け止めた。「でも、友達は『私はできへん』ゆうてたなあ(笑)」(Yさん)
キッチンも共有で、冷蔵庫は上段が他の下宿生、中段が谷口くん、下段がYさんと分けている(写真撮影/中島光行)
ステキな中庭でお茶するYさん(写真撮影/中島光行)
佛教大学の社会福祉学部に通う谷口くんは、兵庫県明石の実家から2時間かけて通っていたが通勤ラッシュに心が折れて、一人暮らしを模索。そんなとき、1年生のゼミの授業の一環で「京都ソリデール」を紹介された。「大学の近くはマンションの相場が高くて6万円オーバー。ソリデールは、学校に近いところに住めて、家賃が安いと飛びつきました。社会福祉学部ということもあり、高齢者の方と触れ合うことは、自分の見聞を広げるのにも役立つし、何より面白そう!」
通常の「募集」「応募」という不動産や下宿と違うのが「京都ソリデール」。京都府から依頼されたマッチング事業者が間に立ち、学生、高齢者それぞれと面談し、「この人たちなら大丈夫」という方同士の面接を重ねて、双方が合意してから下宿スタート、というプロセスを踏む。お互い、誰でもいいわけではない。Yさんと谷口くんの場合、マッチング事業者の京都高齢者生協くらしコープがマッチングを担当。Yさん宅で面接後、谷口くんは両親とも訪れ、その場で決めたという。「Yさんの印象が自分がイメージしていた高齢者=お年寄りという感じでもなく、厳しい規則があったら無理!と思っていたらそれもなく、ラクな感じでしたね。近くに賀茂川のケヤキ並木もあり、すごくいい場所。両親もやりたかったらやればいいと後押ししてくれました」。一方、Yさんは「今回で3人目。たぶんいい人に決まってるやろ」と、笑顔で谷口くんを受け入れた。現在、Yさん宅には谷口くんとは別に、もうひとり下宿生がいる。
ルールは「うちに帰らないときは連絡する、勝手に出て帰って、寝る」ことだけ。「生活しながらルール考えよ」というフレキシブルさで、お風呂は閉まっていたら使わない、ご飯は炊きたい人が炊いて、誰でも食べてよし。「なんか珍しいカブトムシとか飼っているみたい(笑)。といっても観察するほど熱心でもないなあ。若い男の子はいっぱい食べるのかと思ったら、なんやカロリー計算とかしよる(笑)。最初は他人と暮らして自分の暮らしを乱されたくない、深入りしたくないと思っていたけど、一緒にいてたら不安がなくなってるなあ」とYさんが言えば、谷口くんも、「何かあったら助け合う安心感はある。世代が違う人と暮らしたことなかったので、いい経験になります。友達は『よーやるわ』と言いますが、友達が思うほどハードルは高くなく、窮屈さ、不便さは感じません」。谷口くんは、2時間の通学時間から開放された分、土日のゼミ活動で地域の高齢者宅を訪問したり、介護福祉士の実務経験にカウントされる特別養護老人ホームでアルバイトをしたりと、専門の福祉に邁進中。「高齢者の方に話を聞いてニッコリ笑って、僕はやっぱり人が好きなのかなーと思っているところです」
実家ではご飯を炊いた経験がなかったが、今は炊いているという谷口くん。Yさんがつくってくれた和菓子を食べることも。「僕はナッツがダメで洋菓子アレルギー。これ、特養(特別養護老人ホーム)ではウケがいいです(笑)」(写真撮影/中島光行)
下宿との大きな違いは距離感。「子どもや孫じゃないから、『ちゃんと勉強している』とか言わなくてもいい、聞かなくてもいい。ニッコリ笑ってくれる。それだけで、いい」とYさん。谷口くんも「親戚ではないけれど、知っている人という感じ。あれこれ聞かれないし、いい距離感だと思います。誰でもいいわけじゃなくて、Yさんだから大丈夫だったんだと思います」。近くに住むYさんのお子さんも「見てくれて、ありがとうございますと言いたい。一人暮らしで何かあったら谷口くんから連絡してもらえるのがうれしいです」と安心されているようだ。
(写真撮影/中島光行)
格子戸に趣のある庭園と、京都らしいステキな日本家屋(写真撮影/中島光行)
「高齢者に何かあったときは、自分が対応するという覚悟」も込みでケース2/岩井さん夫妻と藤本慎介くん(同志社大学大学院・総合政策科学研究科)
庭の「ふじばかま」や「ほととぎす」は岩井さん(夫)が丹精こめてつくったミニ里山(写真撮影/出合コウ介)
岩井さん夫妻と藤本くんの場合、お互いに決めるまでに、1週間のお試し期間を設けた。「藤本くんの前に来られた女子学生の方は、ご両親と一緒に面接させていただいたのですが、どうも料理や門限まで面倒を見る昔ながらの下宿と思ってらっしゃるようで、そこまではできないからとお断りして。しっかり話をしないとダメだと思い、藤本くんの場合は1週間の期間を設けました」。藤本くんは、「1週間は気を使いすぎず、僕の悪い部分、例えば掃除しないところなどもしっかり見せました(笑)。玄関やキッチン、トイレも別々だし、お互い生活のリズムを崩したくない。たまに時間が合うときにしゃべるくらいの距離感がいいね、と話が落ち着きました」。岩井さん(妻)は「あまりにも掃除していないときは、私がたまに藤本くんの部屋を掃除してるけどね」と笑って教えてくれた。
(写真撮影/出合コウ介)
(写真撮影/出合コウ介)
玄関とキッチン、トイレは別々とかなり恵まれた環境。「最初は自炊していたけど、今はあまりしてないですね(笑)。DIYが得意な岩井さん(夫)は、キッチンスペースを広げてくれたり、生活に不便なところを直してくれます」(藤本くん)。岩井さんの祖父の代は金襴の織り屋さんで、もともと母屋、中庭、離れ、工場が建ててあったという。「昔は機の音がしてたんですよ」(写真撮影/出合コウ介)
このあたりは織物の職人の町で、岩井さんの家系も、もともと織り屋さん。自身はリフォーム会社を経営しており、それを辞めたときに事務所だった場所を改装。「玄関や水まわりが住まいとは別にあったので、民泊や民宿なども考えていました」。そんなとき、情報紙「リビング京都」に掲載されていた「京都ソリデール」に興味を示し、京都府から説明を受けた。「別々に生活できるので、決まればいいし、決まらなければ民泊や民宿にしてもいいかなって思って」と気軽な感じだったという。
ふたりの朝は早く、朝7時半におばあちゃんをデイサービスに送り出し、その後仕事に出かける。「お風呂だけ共有なので、藤本くんの『ただいまー』、私たちの『お風呂どうぞ』が日常会話になっています。台風のときなど何かあるときは、みんなで集まりましたね」(岩井さん(妻))(写真撮影/出合コウ介)
藤本くんは、総合政策科学研究科でまちづくりや地域の関係性などについて学んでおり、大学院のNPOと行政等の協働実践演習の授業で、「京都ソリデール」を担当する京都府の職員・椋平芳智さん(京都府建設交通部住宅課)と知り合い、今では「京都ソリデール」を推進する学生メンバーだ。「最初は高齢者と住むことにイメージがつかなかったのですが、大学に近いところに住みたいと思って。光熱費込みで2万5千円と家賃が安いのも魅力ですし、この新しい体験が何かしら研究につながっていくだろうと。何より話のネタになる(笑)。もう勢いです!」
朝早い岩井さん夫妻、夜遅い藤本くんと「生活のリズムがまったく違うんです」と藤本くん。まちづくりプロジェクトで家庭菜園を地域に根付かせる活動をしているので、「自分でもやらないと」と、岩井さんの庭の片隅で家庭菜園にチャレンジし、岩井さんから手ほどきを受けるなど、普段から交流しているよう。「一番最初につくった小松菜とラディッシュは、知識もなくやったものだから大失敗」と藤本くん。「少し採れておひたしにしたけど、小松菜の『こ』くらい。めちゃ小さかった」と岩井さん(妻)は笑う。また、町内会にも参加し、地蔵盆もお手伝い。「僕はマンション暮らしだったので、回覧板も新鮮で。地域の和に入れてもらえるのもうれしいですね。自治会という組織のあり方も勉強させてもらってます」。地域の人とかかわってみた感想は?「世代ならではのノリみたいなものがあって、それを習得してスムーズにコミュニケーションが取れるようになりました。思ったより人間同士というか、ちゃんと人を見てくれてるな、って思います。若いとか高齢者とか、枠組みをつくっているのは自分たちで、それをとっぱらってみると基本的な人づきあいができる、ということが分かったのも収穫です」
(写真撮影/出合コウ介)
ほうれん草やサラダ菜を育てる藤本くん。「間引き方、育て方などを教えてもらってます。帰ったら野菜をのぞきに行き、よく岩井さんとしゃべってますね」。岩井さんの里山にはチョウチョもよくやってくる(写真撮影/出合コウ介)
スマホで情報交換!岩井さん(夫)は丹精込めた里山の花やチョウチョを写真におさめてコラージュしている(写真撮影/出合コウ介)
岩井さん夫妻のお宅には要介護5のおばあちゃんがいらっしゃる。「以前、母が『あーーー』と叫んだことがありました。これは介護をしていたらよくある話で、藤本くんがどう思ったのか不安でした」と岩井さん(妻)。藤本くんは一瞬びっくりしたようで「どうしていいか分からず、あとで『大丈夫ですか?』と声をかけました。あれでよかったんですかね」と問うと、岩井さん(夫)は「あとで声をかけてくれたのがよかった」とおっしゃったのが印象的だった。「高齢者と暮らすと、こういうこともある」という現実と経験、一緒に暮らす高齢者が何かあったときには、自分が対応しないといけないという覚悟。これも込みで、「京都ソリデール」なのだ。
2016年度から事業開始した「京都ソリデール」。「住む」+αを生み出す制度への成長に期待左から、京都ソリデールの活動をする学生メンバーの和田さん、マッチング事業者の片木さん、学生メンバーの西原さん、京都府職員の戸川さん、岩井さん夫妻、藤本くん、京都府職員の椋平さん(写真撮影/出合コウ介)
京都府の少子化・人口減少対策の総合的戦略として策定した京都府地域創生戦略に基づく新しい住宅施策として、高齢者宅の空き室に低廉な負担で若者が同居・交流する次世代下宿「京都ソリデール」事業が創設されたのが、2015年度。「2015年度に国内外の先行事例を調査し、2016年度から京都市内で事業開始。マッチング事業者へ業務委託、京都の地域メディアを使った広報や公民館や大学での説明会などから高齢者、大学生の希望者を募集しました」(京都府職員の椋平さん)
その後、2017年度に北部、南部地域へ、2018年度には中部地域へと拡大した。2019年9月30日の時点で、27組(2017年3月末:4組→2018年3月末:8組→2019年3月末:21組→令和元年9月末:27組)マッチング、応募は2016年度:高齢者11世帯 大学生等17人、2017年度:高齢者22世帯 大学生等30人、2018年度:高齢者32世帯 大学生等31人となっている。その反響は?
「希望する高齢者や大学生の同居成立が、少しずつ、そして着実に増加傾向にあります。作業療法学(認知症分野)の教授、高齢者福祉学(社会的孤立対策分野)の准教授からも評価いただき、テレビ・新聞・業界紙等などの取材も増えていますね。(2018年でテレビ5回、新聞5回、業界紙2回)。高齢者と学生の間にマッチング事業者が入りますが、同居成立が今後増えていくことを考えると、それに対応できるマッチングシステムが必要になる。事業者間の交流促進も今以上に必要になってきますね。また、将来的には民間が主体となり、業務を実施するカタチへの移行を検討しています」(京都府職員の椋平さん)
マッチング事業者の応用芸術研究所の片木さんは、「高校を卒業したての大学生にソリデール制度の活用は難しいかもしれません」と語る。岩井さんが最初に断った女子学生のように、下宿や里親をイメージしているとうまくいかない。ある程度「自立」して初めて成り立つシステムなのだ。「マッチングするポイントは立地や条件はもちろんですが、高齢者の得意とすること、学生が学んでいることをしっかりとヒアリングすることが大切です。岩井さん(夫)はリフォーム会社を経営していただけに、DIYが得意で庭いじりが大好き。藤本くんは街の生活に入り込むことが専門学だし、家庭菜園を地域に根付かせるプロジェクトをやりたいと思っていたからこそ、岩井さんと藤本くんはマッチングできたと思います」
空室を活かしたい高齢者と、一人暮らしの高齢者を案ずるその子どもたち、経済的に厳しく、かつ経験を積みたい学生。そんな人々を、事業者が十分なヒアリングを行って繊細にマッチングする「京都ソリデール」。行政主導から学生自身も「京都ソリデール」を広める活動に参加し、大学近くに住みながら、高齢者と交流しながら、地域や学業にコミットする。次世代下宿とは、「ひとつ屋根の下に住む」から、「住む」+αの効果を生み出す制度への発展ではないだろうか。そんな志が感じられる「京都ソリデール」、今後の動向にも注目したい。
●取材協力近年「団地」が注目を浴びていますね。昭和的な懐かしい外観など、改めてその魅力が見直される一方、空室増加や老朽化などで問題になっているものもあります。
そんななか、私のもとに相武台団地に「ユソーレ相武台」という温浴施設ができたという情報が! まずは行ってみなければ! と訪問して目にした、新しい団地のあり方を紹介します。
素敵にリノベーションされた「ユソーレ相武台」は、元は地元の銀行の支店が入っていた建物だったそうです。
元銀行の古い施設をリノベーションしてオシャレな温浴施設となった「ユソーレ相武台」(写真撮影/唐松奈津子)
相武台団地(相模原市)は、小田急小田原線「相武台前」駅から徒歩19分という立地、築50年を超えた団地群も老朽化が目立ち、中央にある商店街には空き店舗が増えるなど、衰退の危機にさらされていました。長らくこの地で営業してきた銀行の支店も、2年ほど前に撤退を余儀なくされ、以降、空き店舗状態になっていたのです。
リノベーション前の相武台団地内、商店街スペース。空き店舗や施設の老朽化が目立ち、住民の高齢化も課題となっていた(写真提供/神奈川県住宅供給公社)
この事業の責任者である神奈川県住宅供給公社の一ツ谷正範(ひとつや・まさのり)さんは「団地の衰退に歯止めをかけることはもちろん、高齢者や子育て世帯といった、居住サポートが必要な人たちにとっても暮らしやすい場所に変えたいと思った」と言います。
今回、お話を聞かせてくれた神奈川県住宅供給公社の一ツ谷正範さん(写真提供/神奈川県住宅供給公社)
ユソーレ相武台はミスト岩盤浴のある温浴施設スペースをメインに、多世代交流拠点としてカフェスペース、ワークショップスペース、キッズスペース、さらには高齢者向けのデイサービススペースも備えています。実はこの施設、れっきとした相模原市介護保険総合事業である「基準緩和通所型サービス」の事業所なのです。また、施設の一角には神奈川県の認証を受けた「未病センター」もあり、健康に関する情報提供や健康機器での測定も行っています。
ユソーレ相武台のロゴマークがついた「湯治」ののれんをくぐると、そのさきがミスト岩盤浴スペースの休憩室につながる(写真撮影/唐松奈津子)
休憩室には大きな観葉植物が中央に置かれ、ボタニカルな雰囲気の中でくつろげる(写真撮影/唐松奈津子)
ミスト岩盤浴スペースは照明を落としてゆったりとくつろげるムーディーな雰囲気にも、明るくしてホットヨガなどのイベント向けにも調整できる(写真撮影/唐松奈津子)
子どもも、おじいちゃんおばあちゃんも喜ぶ、魅力的なイベントスペースデイサービスや未病センターというと、無機質な病院や健康センターのような施設をイメージしますが、ここの魅力はなんといっても施設が素敵にリノベーションされていること。イベントやワークショップ等の開催を想定してつくられたというカフェスペースやキッズスペースは、若い子育て世帯にとっても魅力的で快適な空間になっています。実際に訪問した日も、高齢者向けの健康講座や子ども向けのキッズヨガ教室が開催されていました。
訪れた日の午前中には高齢者向けの健康講座が開催されていた。団地に住む人を中心に参加した人たちは、スタッフとも顔見知りが多く、安心して楽しんでいる様子(写真撮影/唐松奈津子)
日当たりがよく、明るいカフェスペースは、ゆっくり休憩をしたり、コワーキングスペースとしても使えそう(写真撮影/唐松奈津子)
リノベーションされたときのまま、コンクリートや配管がむき出しのラフな天井、木の温かみを感じさせる床材や家具のバランスがとてもオシャレです。
ワークショップスペースに昭和の面影を感じさせる郵便受けを見つけ、私が思わず「かわいい!」と声を上げると、一ツ谷さんが「実は他にもいっぱい隠れアイテムがあるんですよ」と教えてくれました。
ワークショップスペース右手奥に取り付けられているのは、団地の郵便受けをリサイクルした収納ポスト(写真撮影/唐松奈津子)
受付のカウンターは古い団地の床材をリユースした木材でつくられており、ワークショップスペースを仕切るガラス付きの建具も古い団地のものを塗り替えて使用しているそうです。さらに、「INFORMATION」「WORK SHOP」「KIDS SPACE」を示すカッティングシートの貼られたかわいいライト、これもなんと、団地の蛍光灯をリサイクルしたものなんだとか! 団地好きにはたまらない遊びゴコロが満載です。
団地の床材をリユースした木材でつくられた受付のカウンターテーブル。「INFORMATION」を示すライトは団地階段の蛍光灯をリサイクルしたもの(写真撮影/唐松奈津子)
団地の二つの住戸を一つにまとめて今風の間取りに!古いものを活かして、今の生活に合わせたスタイルに手を加えていく、と言う意味では、団地のメインとなる居住空間についても工夫されています。
もともとは35.59平米の2DKである団地内の隣り合う2戸を1住戸にする「2戸1」プランは、共働き世帯や子育て世帯の入居を想定してリノベーションされた住まいです。71.18平米と2倍になったゆとりのあるスペースを活かして、セカンドリビングやインナーバルコニーといった自由に使える機能を付加しています。2戸分の広さを確保したバルコニーは見晴らしも良く、心地の良い風が通り抜けます。
今回、リノベーションされた4階と5階の2プランが決定したときの間取りイメージ。2戸1ならではの動線設計やスペース活用法を見ることができる(資料提供/神奈川県住宅供給公社)
珍しいインナーバルコニーのあるプランも。土間風のバルコニーはいろいろな使い方ができそう(画像提供/神奈川県住宅供給公社)
居室部分も魅力的ですが、筆者にとってツボだったのは、この2戸1プランのリノベーションに合わせて塗り直したという団地の外観! 周囲に緑が多いこともあり、その場にいると、まるで外国の団地に訪れたような可愛さでした。
白と茶色に塗り分けられた団地の外観。他の真っ白の外観のまま塗り替えされた棟も、団地好きにはたまらない(画像提供/神奈川県住宅供給公社)
大きなけやきの木の下で。「グリーンラウンジ・プロジェクト」古くからある団地なだけに、周囲の空間は贅沢に広く整えられています。昔からある大きなけやきの木の周りには芝生が張られました。訪問したときは芝生の養生中で入れなかったのですが、親子やおじいちゃんおばあちゃんが木陰で休む姿をありありとイメージできます。
芝生が青々と広がるスペースの中央にあるのは、この団地のシンボル的存在、けやきの木(写真撮影/唐松奈津子)
実はこのけやきの木を中心とした商店街スペースでも、4年ほど前から「グリーンラウンジ・プロジェクト」として空き店舗を活用したカフェ運営や、さまざまなイベントを開催してきました。今年で4回目となる「欅(けやき)ハワイアンフェスタ」は、なんと100人のフラガールが集まるそうで、その風景は壮観だといいます。毎年11月には、「団地祭」や音楽をテーマに多くの飲食店が出店する「秋楽祭(しゅうらくさい)」が開催され、多くの人でにぎわっています。今年は11月4日(月)に団地祭が終わり、秋楽祭を11月17日(日)に行う予定だとか!
団地の活性化を目的として始まった「グリーンラウンジ・プロジェクト」(画像引用/グリーンラウンジ・プロジェクトホームページより)
100人以上のフラガールが集まる「欅(けやき)ハワイアンフェスタ」は周辺地域でフラダンスをやる人の間では有名なイベントらしい(画像提供/神奈川県住宅供給公社)
リニューアルした芝生広場で行われた子どもから高齢者までが交流する「団地祭」の様子(画像提供/神奈川県住宅供給公社)
この「グリーンラウンジ・プロジェクト」の立役者は、この相武台団地内商店街の空き店舗に4年前にテナントとして入居した「ひばりカフェ」の店主、佐竹輝子(さたけ・てるこ)さんです。
ひばりカフェ店主の佐竹輝子さん。地元である相武台団地を盛り上げたい一心で、カフェを始めたという(写真撮影/唐松奈津子)
佐竹さんは近辺に住んで専業主婦をしていましたが、以前から団地の高齢化した姿を見て何かできることはないかと模索していた時期にこのプロジェクトに出会い、参加することを決意しました。
「この団地は私の青春の場所であり、3人の子育てをしてきた思い入れのある場所です。これからも住み続けたいですし、もう一度子どもたちの声が響く場所にしたい、高齢者も安心して暮らせる場所になったらいいなと思っています」(佐竹さん)
「グリーンラウンジ・プロジェクト」は、このひばりカフェのオープンを皮切りに4年前から始まった(写真撮影/唐松奈津子)
ありとあらゆる高齢者向けサービスがそろうコンチェラート相武台家族の成長とともにライフステージが変わっても住み続けられる街を目指している相武台団地には、「コンチェラート相武台」というサービス付き高齢者向け住宅もあります。
広々とした敷地の中にあるサービス付き高齢者向け住宅「コンチェラート相武台」(画像提供/神奈川県住宅供給公社)
見学させてもらってびっくり、この施設のスゴいところは施設内にデイサービス、居宅介護・訪問介護事業所、在宅療養支援診療所、訪問看護事業所、そしてメインの高齢者向け住宅が一つに集まっているところです。
コンチェラート相武台の看板。サービス付き高齢者向け住宅としてだけではなく、地域高齢者向けの各種サービス拠点となっていることが分かる(写真撮影/唐松奈津子)
各事務所の入口のドアがそれぞれにあり、見学させていただいた日も、診療所のお医者さんとすれ違ったり、それぞれのサービスの職員の方が行き来したり、多くのスタッフと専門職の人びとに支えられた多機能施設であることを実感しました。
この施設の中にも地域交流スペースが設けられています。スペースの一角では、子ども向けサービスを提供していた時期もあるそうで、これからどのように活用していくかを検討中とのこと。楽しみです!
行政や大学と連携した取り組みで、団地が一つの街にさらに、「介護予防」「未病」の対策として、「ユソーレ相武台」や「コンチェラート相武台」を起点に、地域の住民によるワーキンググループが複数活動していると言います。そこでは相武台団地を運営する神奈川県住宅供給公社のグループ企業である一般財団法人シニアライフ振興財団が、相模原市と連携して住民活動を支援しているのです。一ツ谷さんはこのシニアライフ振興財団の理事でもあります。
「各地域の方々が、リーダーを中心に、積極的に健康クラブなどの運営を行っていらっしゃいます。相模原市が『健活!』と銘打ち、健康寿命の延伸に取り組んでいますが、当社でも活動スペースの提供など、地域や行政と一緒に街づくりに貢献していきたいと考えています」(一ツ谷さん)
また周辺の大学との連携も行っています。10月27日には「ユソーレ相武台」で東京農業大学の学生による苔テラリウムのワークショップが行われました。相模女子大学の女子学生は、定期的に開催される子ども食堂のお手伝いをしています。
東京農業大学の学生による苔テラリウムのワークショップには多くの子どもたちが参加し、大盛況だった(画像提供/神奈川県住宅供給公社)
キッチンでは、子ども食堂の準備を手伝う相模女子大学の学生たちの姿も(画像提供/神奈川県住宅供給公社)
相武台団地では、これからも積極的に地域住民、行政、学校、民間企業などと連携して街を盛り上げていくそうです!
商店街の活性化やコミュニティづくり、新しい住まい方の提案、さらには住民・行政・大学などが一体となって、一つの「街」として新しい進化を遂げようとしている相武台団地。ここに取り上げた以外にも、健康講座の開催や学生ボランティアによる植栽の手入れなど、行政や周辺の大学との連携もさらに推進中とのことです。
今回、相武台団地を見て、またかかわる人びとのお話を聞いて感じたのは、ただユニークな建物をつくる、リノベーションしてきれいにする、ということではなく、衣食住ひいてはライフスタイルそのものを包括的に捉えて、住まいから街へとつなげていく思想。そこには「ここを元気にしたい」と本気で願う人たちの、何年もかけて一つ一つ点を打っていくような努力を垣間見ました。
さらなる景色の変化が楽しみな団地、いいえ「街」です!
住まいの支援策が乏しく、収入の不安定さなどで、家探しに苦労するシングルマザーは少なくない。そんな彼女たちを支える手段として注目されているのがシェアハウスだ。
前回の記事「シェアハウスはシングルマザーの助けになる?母子家庭の厳しい賃貸事情」では、シングルマザーの住まい事情や、母子家庭専用のシェアハウスについて紹介したが、第2弾の今回は、実際にシングルマザー向けのシェアハウスにお邪魔し、入居者や家主、運営会社にインタビュー。多角的な視点から見えてくるシェアハウスの必要性や、長く運営していくためのヒントを探ってみた。
今回お邪魔したのは、今年7月、大阪府大阪市平野区にできたシングルマザー向けシェアハウス「ideau」。人と人、今まで知らなかった新しい自分が「出で会う場」になればいいと名付けられたシェアハウスは、昭和40年築の10軒の長屋をリノベーションした「ぐるぐるそだつながや」内の一角にある。
このユニークな名前の長屋の道路側には、かつてたこ焼き屋やクリーニング店といった店舗が並び、裏側の住居用の長屋には長年にわたって住民が住んでいた。だが、入居者の高齢化により5年ほど前から全室空き家に……。オーナーの綿谷茂さんは空き家をどうするか悩んでいた。
「町工場、個人商店をはじめ多様な居場所のあったこのエリアが画一的な建売り住宅地へと変貌を遂げていく中で、長屋という特性は変えずに、人と人を繋げるような生かし方もできるのではないかと漠然と思っていました」
綿谷さんは土日を使って区が主催する空き家活用のセミナーなどに参加。そこで出会った設計士や空き家活用の専門家に相談して知恵を借りながら、約2年かけて構想を練った。そうして出来上がっていったのが「ぐるぐる そだつ ながや」だ。長屋を路地でぐるっと囲んだこの空間で、入居者や地元の人々が繋がり、憩える場になればという思いを込めて名付けた。
路地で囲まれた中央には、長屋2軒分をつなげて入居者や近所の人々が集う共用間にした。1階には長屋の趣をそのまま生かしたおしゃれなシェアキッチンをつくり、週末の午前中は綿谷さん夫妻がカフェを開いて、コーヒーやモーニングを提供。このために妻は珈琲の自家焙煎の資格を取得したそうだ。
「カウンター越しに近隣の人と話すと、趣味や得意分野はじめ、意外な一面に巡り合うことができます。『家の冷蔵庫に数千年前の南極の氷が入っていて使い道がない』とか、『バトントワリングの世界大会に出場した』とか(笑)。『だったら、その氷をみんなに見せてくださいよ』とか、『バトンを長屋や近所に住む子どもたちに教えてくださいよ』といった話につながる。途端に親近感も湧いてきます」(綿谷さん)
ブルーの囲みがシェアキッチンなどの長屋の入居者や近隣住民が集う建物、ピンクの部分がシングルマザー向けのシェアハウス(写真/水野浩志)
手前の1階が長屋2軒分をリノベーションしたシェアキッチン。土曜の午後は、志ある料理人が借りて食事を提供し、近所の人が利用。奥は居住用の長屋(写真/水野浩志)
綿谷さん夫妻。土曜の朝は2人でカフェを開く生活になった(写真/水野浩志)
2階は、開放感ある吹抜けの天井で、両側の窓から吹き抜ける風が気持ちいいコミュニティスペース。間仕切りを使えば、寺小屋A 、寺小屋B、畳の図書スペースの3部屋に分かれる。希望者は有料(2階の全スペースを借りると1時間1200円)で借りることができ、すでに子どもの英語教室やヨガ教室、ヒーリングの会などさまざまな教室やイベント、ワークショップが開催され、子どもからお年寄りまで多世代が集う場になっている。1階、2階ともに長屋の入居者はもちろん、周辺住民も利用できて「ぐるぐるそだつながや」を知る機会にもなっている。
2階のコミュニティスペース。ホワイトボードの間仕切りで部屋を分けることも。奥には子どもが本を読める畳の図書スペース。天井の梁などは改築前の長屋をそのままに耐震補強を加えつつ活用した(写真/水野浩志)
1階のシェアキッチンから2階へ続く階段。ムクの木のいい香りが漂う(写真/水野浩志)
長屋にシェアハウスをつくろうと思ったきっかけシェアキッチンやコミュニティスペースが長屋の中心となる再生構想は着々と固まっていったが、当初、住居部分は普通の賃貸として貸す予定で、一角をシングルマザー向けのシェアハウスにする予定はなかった。そのきっかけは?
「『ぐるぐるそだつながや』の共用空間をどう生かすか、いろんな人の意見を聞いてみたくなって、Facebookでコミュニティをつくって、一昨年の10月にみんなでディスカッションするイベントを開いたんです。そこに参加してくれたのが、Peace Festaの社長・越野健さんと安田委久美さんでした」(綿谷さん)
越野さんが運営するPeace Festaは、若者向けやLGBT向けなどさまざまなコンセプトを打ち出したシェアハウスを運営している。その事業を一緒に担う安田さん自身も、小学生の娘と暮らすシングルマザーで、同じ境遇の人たちが一緒に暮らせるシェアハウスをつくりたいと物件を探していた。そんなタイミングで出合ったのが、この「ぐるぐるそだつながや」だったというわけだ。
「ここのコンセプトを聞いて、ぴったりな物件だと思ったんです。ぜひシングルマザー向けのシェアハウスをつくりたいということを、オーナーの綿谷さんに説明しました」(安田さん)
母子家庭の家探しが大変なことや、長屋という特性が母親の安心感などにつながるといったシェアハウスの存在意義に共感した綿谷さんは、3軒分の長屋をつなぎ、1階に3部屋、2階に2部屋と共用キッチンやベランダを設計士に依頼し、シェアハウス用の間取りにリノベーションすることにした。
そして、Peace FestaがホームページやSNSを使って入居者を募集し、現在4世帯のシングルマザーが入居している。保育園に通う子どもを育てる30代後半の母親が多い。
共用建物を挟んだ路地の手前(右)が普通の賃貸住宅で、奥がシェアハウス。賃貸住宅は1軒ずつ間取りが異なり、デザイナーや美容師などが既に入居している(写真/水野浩志)
長屋の建具や玄関扉の位置などはそのままに、共用キッチンへのアクセス利便性を考慮したシェアハウスの玄関。2階に続く階段は3カ所ある(写真/水野浩志)
階段を上がったところには、共用キッチンとダイニングテーブル(写真/水野浩志)
共用キッチンの隣の扉を開けると母と子が暮らす居室。6畳ある空間は畳やフローリングタイプの2種類(写真/水野浩志)
収納は押入れ1間分と広め(写真/水野浩志)
広めの水まわりの上部には収納も(写真/水野浩志)
お風呂もトイレも1世帯1つずつ設置されている(写真/水野浩志)
孤独感がなくなり、リラックスタイムが増えた実際に住んでみた感想を安田さんは、以前の賃貸住まいより、何よりリラックスする時間が増えたと話す。「シングルマザーだと家では話し相手が子どもばかりになり、例えば、お酒を飲みに行きたいなと思っても夜は外出できません。ママ友同士、ハウス内で一杯のビールを飲みながら子育ての悩みなどを共有できるのは楽しいし、孤独感もない。人がいる安心感からかリラックスしていると思います」
共用キッチンでは、「卵が1個足りないから貸して。今度返すから」といった昭和時代のご近所さんのようなやりとりも。キャベツなど、2人では使い切れない大きさの野菜をみんなで分けることもできる。「ハロウィンパーティーやクリスマス会なども子どもたちが中心になって開いて楽しそうです」(安田さん)
また、仕事で帰りが遅くなったり、用事で外出しなければいけないときも、ほかのお母さんに声をかけて夕ご飯を一緒に食べてもらったりするなど、子どもが一人で過ごす心配もないとか。「私が仕事で不在している際も、他のお母さんがうちの娘と一緒にご飯を食べてくれたりします。娘が好きな映画をそのお母さんに見せたりして、いい話し相手にもなってもらったり。娘は娘なりにコミュニティを広げていて、二人暮らしだったときより私自身も安心して働けるし、人と触れ合える環境があるのはすごくありがたいなと思うんです」
同じ境遇のママ友と一緒に暮らし始めて、安心感を得られるようになったと安田さん(写真/水野浩志)
ほかの入居者は、昨年起こった大阪の地震で停電になり、親子2人ですごく不安だったが、SNSではなく、リアルに人と繋がった場所にいるだけでも、精神的な安定につながっていると話していたという。
また、シェアハウスの前にあるカフェやコミュニティスペースという人が集まる場があり、多くの大人の目があることも、防犯対策などにつながっている。「『〇〇ちゃんがまだ帰ってきていないね』と、子どもがほかの子どもを見守るような感じにもなっています」(安田さん)
2階で家事をしながら、路地で遊ぶ子どもたちを見守ることも(写真/水野浩志)
教育方針の違いはどう歩み寄る?話を聞いているとメリットばかりだが、価値観が異なる人との共同生活で問題が生まれることはないのだろうか。
「もちろん、お母さんによって教育方針は異なります。家庭や子どもの年齢によって就寝時刻も異なるし、『もう少し夜は静かにしてもらえたら』という話も出ました。そんなときは、『なぜあなたはそう思うのか』『それは絶対にNGなのか』という意見を互いに聞くようにしています。その上で、『そこはもう少し考えを緩めて歩み寄ることはできる?』と確認することも。シングルマザーは、大切な子どもを守るために、自分がしっかりしなきゃと頑張りすぎる傾向があります。そこまで自分にも子どもにも厳しくなる必要はあるのかということを聞いてみたり、自分自身にも問うようにしたりしています。そうして互いの着地点を探っていく。もちろん、自分が間違っていたと思ったら、後から『ごめん、やっぱりこう思う』と伝えるようにもしています。自分の価値観を押し付けるようなことだけはしません」(安田さん)
特にハウスリーダーなどは決めていないが、ここでは、世話焼きの安田さんがそうした日常の問題を解決する役目を担ってそうだ。
シェアハウスを運営し続けるポイント運営側の視点からは、シングルマザー向けのシェアハウスがうまく長く運営できるポイントをどう考えているのだろう。
「うちのシェアハウスのつくり方は、不動産が運営するシェアハウスとは少し異なり、シェアハウスの入居に興味がある方や、叶えたい夢や目標がある方と、SNSやリアルな場などで意見交換し、コンセプトから共に創っていきます。つまり、入居者が集まってからシェアハウスをつくる形式なので、最初から多くの空室がでるという心配はありません。また、これはシングルマザー向けに限らず、募集時に、『違いは間違いではない。他人の価値観の違いを知られるのは、シェアハウスの醍醐味』だと発信しています。それを受け入れた上で入居してくる人は多いと思います。だからゴミ捨てなどのルールづくりなども入居者に任せています」(越野さん)
とはいえ、教育という自分の価値観は崩したくないという人もいるだろう。越野さんは、今後、シングルマザー向けのシェアハウスをつくる機会があれば、オーガニックで食育を大切にしたいとか、しっかり勉強に集中できる環境が欲しいとか、不登校の子どもが交流できるような場をつくるなど、子育ての価値観が似ているシングルマザーに特化したハウスをつくるのも、一つの手だと話す。
かつては自分もシェアハウスに住み、数々のシェアハウスの運営実績があるPeace Festa社長の越野さん(写真/水野浩志)
このシェアハウスの家賃は管理費込みで7万円。関西圏内のシェアハウスの相場は4~5万円なので、それと比べても高めだ。その家賃設定について越野さんはこのように話す。
「過去、激安の若者向けのシェアハウス事業に取り組んだことがあったのですが、トラブルが絶えず、激安路線はやめようと思った失敗談があります。シングルマザー向けシェアハウスの目的は、シェルターのように一時的に住んでもらうものでなく、長く安心して住んでもらうこと。そこで、遠方から引越してきたなどで未就業のママさんには、最初の2カ月限定で家賃を月4万円に設定し、その2カ月で我々が必ず仕事を斡旋し、職に就けるようにサポートすると決めました。仕事に就けて、安心して働ける環境を提供できてこそ、シングルマザー向けシェアハウスが継続できるポイントかと思っています」
車が通らない路地で子どもたちが安心してゴムプールで水遊びをしたり、共用玄関先の窓にクリスマスの飾り付けをしたり、子どもたちの笑い声は絶えない。「空き家のころに比べると、子どもが遊ぶ風景を身近で見られるのはいいですね。共用部分の貸し出し運営などは、どなたかに頼もうと思っていたのですが、自分たちでやってみて、大変だけど楽しい部分もある」と綿谷さん。
入居者だけでなく近隣住民も集まる長屋を中心とした空間で、子どもたちがすくすく育つ――。孤立しがちなシングルマザーには頼もしい住まいの形だ。ただ、長屋はスタートしたばかりで、大事なのは続けていくこと。シングルマザーが安心して子育てできるための一つのロールモデルに育つよう、シェアハウスの今後の動向を見守りたい。
ペットも入居相談可。安田さんの愛犬も息子がいるシングルマザー(写真/水野浩志)
人生で最大の借金といわれる「住宅ローン」。住宅を担保にすることで多額のローンを利用でき、35年など長期間にわたって、元金と利息を返済していくことになる。どんなローンを選ぶかは、かなり重要だ。であるのに、約4割が「後悔している」のだという。住宅ローン選びについて、深堀りしてみよう。【今週の住活トピック】
「『住宅ローン選びの後悔』に関するアンケート調査」を発表/MFS4割が住宅ローン選びで後悔!原因は「金融機関選び」と「金利タイプ」
MFSが「住宅ローン選びの後悔」に関するアンケート調査を実施したところ、「住宅ローン選びで後悔していることはありますか?」の問いに40.8%が「ある」と回答した。
後悔している理由を聞くと、最も多かったのは「もっと金利の低い金融機関を選べば良かった」(31.7%)、次いで「違う金利タイプを選べば良かった」(20.3%)だった。
住宅ローン選びで後悔していること(複数回答)(出典/MFS「『住宅ローン選びの後悔』に関するアンケート調査」より転載)
住宅ローンは、窓口となる金融機関それぞれで複数の金利タイプのローン商品を用意している。その結果、どの金融機関のどのローン商品を選ぶかによって、当初の金利や借入期間中の金利の動きが変わってくる。加えて、今はほとんどの金融機関で一定の条件に当てはまる人に対して、金利を引き下げる「優遇金利」を用意しているので、同じ金融機関で同じローン商品を選んだとしても、人によって適用される金利が違うということもある。
つまり、金融機関ごとにどういったローン商品を取り扱っていて、自分が適用される金利はどうなるのかといった、情報収集と比較検討をしっかりしないと、自分にとって有利なローン商品、あるいは自分のライフプランに適したローン商品を選ぶことが難しくなる。
不動産会社が紹介する金融機関を選ぶのは、OK?NG?後悔の原因の3位に挙がった「不動産会社に言われるがままに選んでしまった」についてはどうだろう?
調査結果からはその詳細が分からないが、「言われるがまま」が意味していることは2つ考えられる。1つは、不動産会社の提携先など「紹介された金融機関で借りる」こと。もう1つは、「提案された住宅ローンの組み方で借りる」こと。
まず前者の「紹介された金融機関で借りる」ことについて、見ていこう。
この調査では、不動産会社から紹介された金融機関を選んだ人に、後悔の有無と理由を聞いている。こちらも、41.3%と約4割が「後悔している」と回答した。紹介先の金融機関を選んだ理由について、後悔している人では、「自分の住宅ローン知識に自信がなかった」(54.1%)と「住宅ローン手続きが面倒だった」(42.4%)がかなり多くなっている。
不動産会社から紹介された金融機関を選んだ理由(複数回答)(出典/MFS「『住宅ローン選びの後悔』に関するアンケート調査」より転載)
住宅ローンを借りるには、金融機関ごとに「購入する物件の審査」と「借りる人に対する審査」が行われ、双方を考慮して、借りられる額が提示される。不動産会社が紹介する、いわゆる「提携ローン」の場合、あらかじめ不動産会社と金融機関で情報を共有しているので、物件の審査に要する時間がかからず、「ローン審査の時間が短い」という特徴がある。不動産会社がローンの手続きの一部を代行する場合もあり、手続きがスムーズということも多い。
また、場合によっては「提携ローン」独自の優遇金利が適用され、ほかで借りるよりも低金利で借りられる場合もある。後悔していない人で「紹介先金融機関の金利が低かったから」(27.3%)が多いのは、そういった理由からだろう。
半面、提携ローンはローン商品が限定される。選べるローン商品が二つか三つということも多いので、多くのローン商品を比較検討して選びづらいのがデメリットだ。その結果、自分の希望するローン商品を見逃すといったことにつながるわけだ。
調査結果を見る限り、住宅ローンに関する情報不足などから不動産会社任せにしてしまった人ほど後悔し、比較検討した結果として提携ローンを選んでいる人ほど後悔していないという傾向がうかがえる。提携ローンを選んで後悔するか否かは、やはり情報収集と比較検討をしたかどうかにかかってくるようだ。
提案された住宅ローンの組み方が、我が家に合っているとは限らない次に、「提案された住宅ローンの組み方で借りる」ことについて見ていこう。
住宅ローンの金利タイプには、半年ごとに金利が見直される「変動金利型」、返済当初一定期間の金利を固定する「固定期間選択型」、返済中金利が変わらない「全期間固定型」がある。固定期間選択型は、当初固定期間を2年、3年、5年、10年などから選ぶもの。全期間固定型は、住宅金融支援機構と民間金融機関の提携ローン【フラット35】が代表的なものだ。
不動産会社が販売センターなどで資金計画の試算をする場合、適用される当初の金利が最も低い「変動金利型」を利用し、返済期間を最長の「35年」で組むケースが多い。このパターンが最も多く借りられるからだ。ただし、変動金利型などの場合、市場の金利が上昇すると適用される金利も上昇して、返済期間中に返済額が増えてしまう可能性がある。
例えば、これから子どもの教育費の負担が増えていく家庭や、出産後に妻が働き方を変えるので収入が減る見込みの家庭など、5年後10年後に返済額が増えることを避けたい家庭もある。一方、40代50代で家を購入する場合、返済期間をリタイアまでの期間に設定してガンガン返済したい家庭もある。
借入期間中に金利や返済額がどのように変動するのか、返済期間は何年に設定するのが適当か(繰り上げ返済等も考慮しながら判断)、などもよく考えて、自分たちのライフプランに適した金利タイプや返済期間を選ぶ必要がある。
調査結果で「紹介先の金融機関を選ぶのが当然と思ったから」の選択肢が、後悔した人でもしていない人でも意外に多く、どちらも4人に1人がそう思っていることがうかがえる。金融機関にしろ、住宅ローンの組み方にしろ、紹介されたものをそのまま選ぶ必要はない。自分なりの組み方を希望したり、別の金融機関を自分で選んだりしたからと言って、それだけで不動産会社との信頼関係が崩れることもない。「購入する意思は固いが、自分に合ったローンを選びたい」ときちんと伝えておけばよいのだ。
もちろん「自分の住宅ローンの知識に自信がない」という人は多いだろう。だからと言って他人任せにするのではなく、不動産会社や口座のある金融機関の窓口、あるいはそれぞれがサービスとして提供する「ファイナンシャルプランナーの無料相談会」などを利用して、知識を広げていくことも必要だ。
最終的には、自身が長期間返済していくことになる住宅ローンなのだから、自学自習もしよう。もっとも、この記事を読んでいる方々は、すでに知識を広げる努力をされているのだろうから、釈迦に説法かもしれない。
先日、清々しく晴れ渡った秋空のもと、息子の七五三参りをしました。
亀戸天神社でご祈祷をしてもらい、千歳飴や御守りなどをいただきました。
息子は、千歳飴よりもチョコレート菓子の方に夢中でした。
「記念写真を撮るから、千歳飴を持ってー。」
という親からのリクエストも、、、
軽々とスルー。
ちょっとー。
でも、この童子の絵、よく見ると、、、
怖い、、、かも?
お参りの後は、船橋屋で甘味をいただきました。
「うまい!」
お誕生日(8月)の家族写真を撮影した時に、七五三の前撮りをしていたので、それと今回の写真を合わせて、ちょっと大きめA4サイズのフォトブックを作りました。
これを父方と母方、両家の祖父母に送る予定です。
本当は、壁に飾ってもらう用に大きい写真を一枚送るつもりでしたが、写真が選べなくて、、、💦
祖父母にフォトブックの中から気に入った写真を選んでもらい、それを現像して送るのもアリかな~っと思っています。
昭和の30年代から40年代にかけて、日本各地で盛んにつくられた「団地」。老朽化に伴い、解体される物件もある一方で、そのよさが再発見・再評価されつつあります。今回はそんな現代に蘇った「団地」のひとつ、埼玉県のハラッパ団地・草加を訪問。団地ならではのつながり・ふれあいのある暮らしについて聞いてきました。
1971年築の社宅を全室リノベ。保育園・カフェ・畑・ドッグランを併設!
ハラッパ団地・草加があるのは、東武スカイツリーライン・新田駅から徒歩8分という住宅街。もともとは1971年築の社宅でしたが、全面リノベーションし2018年から賃貸住宅に。住居は全55戸ですが満室で、なんと現在、40組以上のウェイティングリストができるほどの人気ぶり。
(写真提供/ハラッパ団地・草加)
団地の魅力には「敷地のゆとり」や「緑の多さ」を挙げる人も多いですが、この「ハラッパ団地」は、そうした良さをリノベーションで全面的に押し出していて、敷地面積1800坪という2棟の建物に、約100坪の畑、レストランとピザ窯、ドッグラン、保育園が併設されています。また、レストランと保育園は、マンションの住人もそうでない人も、ふらりと立ち寄れるようになっています。では、実際に暮らす人はどのように感じているのでしょうか。2018年末に転居してきたMOMOさんに話を聞いてみました。
「2018年の秋に部屋探しをはじめたところ、友人に教えてもらったのがこのハラッパ団地でした。犬2匹がいるので、ペット可がマスト条件。前に住んでいた街からも近いし、見に行ってみたらと声をかけてもらって。初めて見たとき、周囲の建物と比べて、団地の一角だけちょっと空気が違うなって感じました。クリームイエローで明るくて、緑があって。すごく印象に残っています」と振り返ります。
ただ、部屋探しをはじめたばかりなので他も見たいなと思い、即決はしませんでした。しかし、その後、さまざまな物件を見ましたがここほど心躍る物件とは出会えず、12月には「ハラッパ団地」に決定し引越してきました。
つながりは重たい? 心地よい関係なら負担にならない決め手になったのは、リノベされた新しい家の良さ、そして団地の施設。すべてが「ちょうどよい」と話します。
「部屋のなかも新しくなっていて気持ちがいい。団地のドッグラン、畑、保育園、カフェ。ぜんぶ欲しいなって思っていました。当時は空室があって、いくつか部屋を見学したんですが、最終的には1階に保育園のある棟にしました。保育園の子どもたちの声から元気をもらおうって考えて。近くに子どもの声のある暮らしって、いいんだろうなって考えたんです」とMOMOさん。
MOMOさん宅のリビング。アクセントクロスとコーデされたインテリアがステキ(写真撮影:嘉屋恭子)
子どもの声から「元気をもらう」という発想、良いですよね。ご近所との「つながり」に変化はあったのでしょうか。
「以前は一戸建て住まいで、知人やご近所の人とはあいさつしていましたが、ハラッパだと知人でなくても、顔を合わせたら『あいさつ』をする。なんだか新鮮だなと思いました」
とはいえ、入居前は「人とのつながりが、重くならないか心配もした」(MOMOさん)といいます。昭和の団地が持っていた「濃密な人間づきあい」や、自治会や班長などの当番制度は負担感もあり、令和の今では敬遠されてしまうことでしょう。では、実際はどうなのでしょうか。
「人とつながるといい面もあれば、悪い面もある。ただ、改めて感じたのは、人とのつながりって生きる原点なんだな、と。もちろん、無理せずゆるく、自然に、時間をかけてというのもあります。私の場合、併設のカフェ『ハラッパ食堂』が気に入ったので、自分の飲食店運営の経験を活かして、ときどきお手伝いをすることになったんです。それから畑をお手入れする『畑部』に加わって、知り合いが増えて、と自然にお友だちができていきました」
大人になると、「子ども」や「犬」などを介さずに友だちをつくることは難しくなるもの。でも、ハラッパ団地では新しく友だちができた、というのも喜びにもなったそう。そしてもう一つ、大きな再発見が。
「レストランを手伝うなかで若いころに絵を描いていたと話したら、店の壁に絵を描いてほしいって言われて、久しぶりに筆をとりました。不安もあったけど、ほんとにうれしかった!」と笑顔を見せるMOMOさん。人とつながるなかで、自分の忘れていた「大切なもの」を取り戻していったといいます。
ハラッパ食堂に描かれたMOMOさんの絵。引越してきた団地で以前の経験が活きる。まるで映画のような展開(写真提供:MOMOさん)
(写真提供:MOMOさん)
こちらは店内に描かれたミモザ。見る人の気分まで明るくさせてくれる「イエロー」は、ハラッパ団地を象徴する色だ(写真提供:MOMOさん)
団地が教えてくれる人とのつながりの価値・意義では、肝心の部屋の住み心地はどうなのでしょうか。建物は耐震診断がされて安全確認済み、室内はすべてリノベーション、ネット環境も整備されているというものの、日常生活で古さや不便さを感じることはないのでしょうか。
「エレベーターはありませんが、それは分かっていたことですし、問題ないです。私、人生初の団地住まいなので、すべてが新鮮。キッチンの小窓、ステンレスの玄関扉って、すべてがかわいいなって。古いものを手入れしながら大切に使っていくのって、欧州のようでいいですよね」とレトロ可愛いと評価しています。
MOMOさん宅のリビング。当初はものをもたずに暮らそうと思っていたものの、この部屋で暮らすうちに、心地よい空間をつくろうと思い直し、好きなアイテムを買い足していったそう(写真撮影:嘉屋恭子)
団地にあるキッチン脇の小窓が「かわいい」というMOMOさん。団地特有のしつらえを活用しながら、上手に住みこなしています(写真撮影:嘉屋恭子)
その一方で、心地よいと感じることは非常に多いそう。
「ハラッパのベランダにはスズメが遊びに来てくれたり、今朝は赤とんぼがスイスイっと立ち寄ってくれたり、モミジが1枚ハラリと風に乗って落ちていたり……。どこにでもあることなのだと思いますが、人とのふれ合いを通じて、こんな日常のささやかな光景も素敵だなと思えるようになりました」とMOMOさん。
入居して1年、人とのつながりについても、改めて考えたそう。
「今はSNSで世界中の人と簡単につながることのできる時代です。それもとても素敵なことだと思います。
でも、人と人とのふれ合いとつながりは、本来ならば、リアルなあいさつ、会話からはじまるもの、ゆっくり体温を感じながら築いていくものなんだなぁと、改めて感じることができました。忘れかけていた大切なことをここで暮らすことによって、思い出させてもらいました。建物のリノベーション自体もとてもおしゃれでキレイで気に入っていますが、その裏側の深くて温かいコンセプトにとても共感しています」(MOMOさん)
団地が日本にできて半世紀、団地の意義・価値は、実は私たちが思っている以上に大きいのかもしれません。令和になった今こそ、こうした団地の再発見・再評価の流れは続いていくことでしょう。
●取材協力