LGBTQと住まい[1] 東京レインボープライド代表に聞く“住まい探しの壁”。最新事情は?

LGBTQ(セクシュアル・マイノリティの総称)の人々にとって “住まい探しはハードルが高いもの”という認識が持たれている。
LGBTQをめぐる動きに大きな影響を与えた渋谷区の「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」制定から5年が過ぎ、状況はどのように変化しているのか。

毎年この時期に、LGBTQの人々やその支援者によって東京で開かれるイベントで、LGBTQの認知拡大に影響を与えてきた「東京レインボープライド」の共同代表を務める杉山文野さんと、山田なつみさんに話を聞いた。
「ゼロからは脱した」LGBTQコミュニティに対する認知

LGBTQとは、L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシャル)、T(トランスジェンダー)、Q(クエッション)に代表される、セクシャル・マイノリティな人たちの総称。そして、東京レインボープライドはそうした性的少数派の人たちが、差別や偏見にさらされず、前向きに生活できる社会になるようにと始められた、団体であり、イベントだ。この「プライド」と名付けられたパレードイベントは、米国のニューヨークで1970年に始まり、市民運動の一つとして認知されていくと同時に、世界中で同様のパレードイベントが開催されるようになった。

2013年から立ち上げに関わり、2019年に東京レインボープライドの共同代表理事に就任した山田なつみさんは、6年前を振り返り「イベントの協賛を企業さんへお願いしに行ったら、“LGBTって何?”って。ゼロから全てを説明しないといけない状況でした。それが2015年ごろから状況が変わり、企業の方から協賛したいという声をいただくようになりました」と話す。

東京レインボープライド共同代表理事のトランスジェンダーの杉山文野(右)さん、レズビアンの山田なつみさん(左)(画像提供/東京レインボープライド)

東京レインボープライド共同代表理事のトランスジェンダーの杉山文野(右)さん、レズビアンの山田なつみさん(左)(画像提供/東京レインボープライド)

イベントの立ち上げ当初は、商品やサービスを利用してほしいという視点からの協賛が多かったというが、最近では「(LGBTQの)人材を採用したい」といった視点や、「(企業ブランディングを考慮して)セクシャル・マイノリティやその人たちを支援する“コミュニティ”への理解や協力を示したい」という観点での参加を決める企業が増えてきたという。

「5年ほど前から、LGBTQへの理解は深まっているのではないか」と山田さんは話す。

(画像提供/東京レインボープライド)

(画像提供/東京レインボープライド)

少しずつ増えつつある“カミングアウトしない”住まい探し

東京レインボープライドの共同代表理事である杉山文野さんが賃貸物件探しをしていた8年前、当時はまだ、LGBTQへの理解が浸透しておらず、LGBTQであることに対して好奇の眼差しを向けられたり、陰で噂話をされたりすることも少なくなかった。住まい探しにおいても不動産会社や大家の無理解からトラブルが起きていたことも耳にしていたという。そのため、コミュニティ内では住まい探しに関して「どこの不動産会社の対応が良かった」といった情報を共有することも多いのだそうだ。

杉山さんは、カミングアウト(LGBTQであることを表明すること)することでスムーズに借りることができるならば、と不動産会社に自分がトランスジェンダーであることを“恐る恐る”カミングアウトした。すると、予想外にすんなりと受け入れられ「逆にびっくりした」という。

不動産会社の担当者は、「杉山さんの担当になってから、男性の外見に対し、女性のお名前だったことから、自分なりに(杉山さんのことやLGBTQについて)調べてみたんですよ。記事も読ませていただきました。何も問題ありません」と話してくれた若い担当者の言葉に、心が暖かくなるのを感じたという。

(画像/PIXTA)

(画像/PIXTA)

一方、山田さんは「7、8年前にパートナーと住まい探しをしていた時は、お互いの関係を説明せずにいると、女性2人で家を探しているというだけで、寝室が2つあるお部屋ばかり紹介されてしまったことがありました。パートナーと一緒に住むので、寝室は1部屋でよかったんですけれどね。また入居審査の過程で必ず聞かれることが、二人の関係性です。仲介する不動産会社の審査は通っても、大家(貸主)の審査で差別的な扱いを受けるといったハードルを感じた経験がありました」と話す。

しかし、つい最近家を探した時には、不動産会社のカウンターでも大家の審査でも、パートナーの関係性を話す必要性もなく、また審査で止められることもなく借りられたのだとか。「だいぶLGBTQの存在が認知され、そういうパートナーや家族の形がある、ということが浸透されてきたのではないかと感じます」と山田さん。

現在、妻、我が子と一緒に暮らす杉山さん(画像提供/杉山さん)

現在、妻、我が子と一緒に暮らす杉山さん(画像提供/杉山さん)

“安心材料”としてのパートナーシップ証明書

このようなLGBTQの認識の広がりは、2015年に渋谷区が定めた「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例(通称パートナーシップ条例)」による影響が大きいという。同区が発行するようになった「渋谷区パートナーシップ証明書」を皮切りに、続々と他の自治体も同様の証明書を発行するようになった。杉山さんは「証明書を発行したこと以上に、行政が前提条件として、セクシャル・マイノリティの存在を認めたことが重要」と話す。それ以来、特に企業でカスタマービジネスにおいて、「LGBTQコミュニティ」の存在を意識するケースが増え始めたという。

そしてこの証明書は、住まい探しにおいても効力を発揮する。「(証明書は)住まい探しにおける“安心材料”として機能している」と山田さん。実際、証明書によって、2人の関係を公式に証明することができ、住まい探しの際に不動産会社に一枚提出をするだけで担当者に多くを語らずにこちらの状況を説明することができる。“カミングアウト”や、精神的苦痛を伴う探り合いをしなくてもすむようになったことは大きい。

(画像/PIXTA)

(画像/PIXTA)

また冠婚葬祭のシーンでは、かつてはパートナーの家族の不幸に対して休みの申請さえしづらいこともあったが、忌引きの申請が可能になったなど、家族同様の配慮が証明書の存在で可能になった企業もある。

「異性のカップルが得られる保障と同じものを得られるのはありがたいこと」と山田さんは続ける。そして今後はこうした保障や経済的支援が手厚い企業を、LGBTQの人たちは積極的に働く先として選んでいくようになるだろうと話す。

求められる地方自治体への広がり

一方で、こうした証明書の発行はまだ一部の自治体のサービスに留まっている。この4月から、さらに13の自治体が同性パートナーシップ証明制度を導入しており、現在は都内7区1市を含む47の自治体が導入していることになる。しかし地方へ行くほどLGBTQの人たちが置かれている環境は厳しい。

地方では、地域コミュニティの関係性の深さから“世間体”という壁が立ちはだかる。カミングアウトしにくいといった基本的なことから、たとえ家族にカミングアウトして受け入れられても、世間体を気にする親を察して都会に出ていかざるを得ない人がいるというのだ。また、今後は親の介護の問題が発生しても、都会からパートナーを連れてUターンすることに抵抗を感じるLGBTQのカップルもいるといった話もある。

パートナーシップ証明書を発行する自治体が増えれば、場所に関係なく生活しやすい条件が増える。「こうした動きが進み、自治体の動きと民間企業の行動に変化が伴うことで、現在は戸籍上の男女間にしか認められていない婚姻制度など、最終的に法律の改正に進んでいけるのではないか」と杉山さんは話す。

こうした状況を鑑みると、地方における認識の広がりには、LGBTQという言葉の認知が広まるとともに、LGBTQの当事者ではないが、その人たちを支援すると意思を表明している、「アライ」が増えることが不可欠だ。

現在では、東京レインボープライドの趣旨に賛同した多くのLGBTQ当事者やアライ、企業が参加している(画像提供/東京レインボープライド)

現在では、東京レインボープライドの趣旨に賛同した多くのLGBTQ当事者やアライ、企業が参加している(画像提供/東京レインボープライド)

「アライ」とは、「LGBTQへの理解者・支援者」を指す。社会的にその存在は増えつつある昨今だが、LGBTQの当事者たちにとって、どのような付き合い方が求められているのだろうか。「みなさんがアライであるなら、
(自分がアライであるという)声は、どんどんあげてほしいと思います」と杉山さん。

「当事者に限らず、アライであるかどうかというのも、社会においては目に見えない。だからここにいる、という存在感を見せてほしいんです。(セクシャル・マイノリティを受け入れるのは)当たり前だと思っていても、あえてそのことを口にしない人が多いのですが、実際には、そう感じていることを伝えない限り、周りには見えないもの。まだまだ社会において当たり前になっていない今、ぜひ声をあげてほしいんです」

今年のパレードはオンラインで

新型コロナウイルスの影響で、大規模なイベントの中止が続く。ゴールデンウィーク直前の4月25日、26日に予定されていた「東京レインボープライド2020」も中止になった。だが、その代わりに、同日程で「オンラインパレード」が開催された。

パレード開催予定日だった4月26日の13~16時に、ハッシュタグ「#TRP2020」「#おうちでプライド」をつけて、SNSへ写真投稿を行うだけでパレードに参加できるという企画だ。さらに、25日と26日には代々木公園で行われる予定だったフェスに出演予定だったアーティストやゲストを招いて、オンライントークライブをTwitterで実施。視聴者は約44万人にものぼった。

26日には渋谷区の長谷部健区長のほか、菅大介(チェリオコーポレーション)、MISIA、水原希子、RYUCHELLもゲストで登場(敬称略、画像提供/東京レインボープライド)

26日には渋谷区の長谷部健区長のほか、菅大介(チェリオコーポレーション)、MISIA、水原希子、RYUCHELLもゲストで登場(敬称略、画像提供/東京レインボープライド)

26日には渋谷区の長谷部健区長のほか、菅大介(チェリオコーポレーション)、MISIA、水原希子、RYUCHELLもゲストで登場(敬称略、画像提供/東京レインボープライド)

26日には渋谷区の長谷部健区長のほか、菅大介(チェリオコーポレーション)、MISIA、水原希子、RYUCHELLもゲストで登場(敬称略、画像提供/東京レインボープライド)

LGBTQを取り巻く住居探しの環境は、少しずつ改善が見られる。次の課題は「住みやすさ」のようだ。東京レインボープライドのように、地域を巻き込んだ活動によって認知が広がりつつあるが、また限られたエリアだけのものだ。今後、その活動がさらなる広がりを見せ、LGBTQを含む「どんな人にとっても住みやすい社会」になることを願う。

●取材協力
東京レインボープライド

【実家の相続】させたい親は60%、するつもりの子どもは36%。親子間の意識差が明らかに

このGWは、「Stay Home 週間」と名が変わり外出自粛・感染拡大防止で帰省を見送る人も多いことだろう。政府は「オンライン帰省」を勧めている。休みで時間があるときに親子でじっくり話すことは、家族関係を深める機会になるだろう。さて、親子の間で「実家の相続」については、考えが大きく異なることが調査結果で分かった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「首都圏戸建持家の相続についてのインターネット調査」結果を公表/ランドマーク税理士法人首都圏にある一戸建ての実家、相続させるつもりの親は60.2%、相続するつもりの子は36.1%

ランドマーク税理士法人が、首都圏に一戸建ての持ち家がある親(60代・70代以上)と子ども(30代~50代)に調査をしたところ、実家を「相続させる」側の親のほうは、60.2%が相続させるつもりでいるのに対し、実家を「相続する」側の子どものほうは、36.1%しか相続するつもりがないという結果になった。

また、すでに「相続しない」つもりでいる子どもも20.1%いて、実家の相続については親子間で意識に大きな違いがあることが浮き彫りになった。

(出典:ランドマーク税理士法人「首都圏戸建持家の相続についてのインターネット調査」)

(出典:ランドマーク税理士法人「首都圏戸建持家の相続についてのインターネット調査」)

相続した後の実家をどう活用するかを聞いたところ、親たちは「子どもに住んでほしい」と46.8%が思っており、どう活用するかは「子どもに任せる」が35.1%に達した。

子どものほうでも、「自分たちが住む」つもりが51.2%と最も多いが、「売却」するが17.0%、何らかの形で「賃貸」するが12.1%、「まだ考えていない」が18.4%だった。

さらに相続する子どものほうには、「相続税はどうなるのか」、「兄弟姉妹間でもめないか」、「実家の資産価値はどの程度か」、「維持管理費や税金はどの程度か」など、いろいろな不安があるようだ。

実家の相続について、話し合っていない親子が72.8%。早すぎることはない

では、親子間のギャップはどのように埋めたらよいのだろうか?
仕事上のことであれば、「正確な情報の把握」や「課題の共有」などが考えられるが、親子間ではなかなかそうもいかないようだ。

実家の相続について親子間で話しているかについては、子どもや親の年齢が高くなるほど話し合う割合は高くなるものの、全体平均では27.2%しか話しておらず、72.8%は話をしていないと回答している。

(出典:ランドマーク税理士法人「首都圏戸建持家の相続についてのインターネット調査」)

(出典:ランドマーク税理士法人「首都圏戸建持家の相続についてのインターネット調査」)

親子間で話をしない理由をフリーアンサーで回答してもらったところ、親子ともに、「相続の話はまだ早い」「なんとなく」という声が多かったという。特に、親のほうで時期尚早という声が目立つ。

ところが、実際に相続となった場合、相続する側には、兄弟姉妹間の分割協議や相続税の納税、売却までの維持費の支払い、活用する際のリフォーム費用の捻出など、検討すべきことが山積みだ。しかも、相続税の納付期限は10カ月以内とかなり短い。あらかじめ親の意向を確認できなかったことで、協議が進まないということもあるかもしれない。

そうなってから、もっと早くきちんと話し合っておけばよかったと思っても、後の祭り。たしかに、親には長生きしてほしいものだ。相続の話題は、話しづらいし、切り出すきっかけも見つけづらいだろう。

今のように、何が起きるか予測できないと感じる時期であれば、万一の場合に備えて、「介護が必要になったときにどんな介護を考えているのか」、「自宅はどうしたいのか」などを親子で話し合うチャンスかもしれない。

「外出自粛」、「Stay Home」になってから、家の中の荷物整理をする人が多くなり、ゴミの量が増えているという話がニュースになった。家族が家にいる時間が増えて、家族関係を見直す機会が生まれたという家庭も多いと聞く。家族や家庭の課題整理が進む今こそ、実家の相続問題にも目を向けてはいかがだろう。

防犯×ランニング!? 走りながら街を見守る「パトラン」って?【全国に広がるサードコミュニティ1】

みなさん、走るのはお好きでしょうか? スポーツジムも閉鎖が余儀なくされ、長期化するリモートワーク(テレワーク)で体がなまっている人々でも気軽に始められるランニング。実はこのランニングのついでに、地域の防犯パトロールをしてしまおうというグループが全国に増えています。連載名:全国に広がるサードコミュニティ
自宅や学校、職場でもなく、はたまた自治会や青年会など地域にもともとある団体でもない。加入も退会もしやすくて、地域のしがらみが比較的少ない「第三のコミュニティ」のありかを探ります。 運動しながら街を見守る。一石三鳥のパトロール&ランニング

通勤通学のアクセスの良さ、買い物のしやすさ、家賃の手ごろさだけではなくて、そのエリアにどんな出会いがあるか、プライベートをともに過ごすどんなコミュニティが見つかるか? が新しい場所に住む人にとって重要な選択肢になりつつあると感じます。家族・学校・職場とは別に、気のおけない仲間がいる居場所を求めている人は多いのではないでしょうか。
この連載では、家族・学校・職場を第一のコミュニティ、町内会や自治会など地域に暮らしていく際に避けては通れない古くからある団体を第二のコミュニティとすると、趣味や関心で集い、入会も退会も自由で、ゆるやかに地域活動に参加できるもう一つのコミュニティを「第三のコミュニティ(サードコミュニティ)」と捉え、紹介していきます。
第1回目は、福岡で始まり、全国に広がりつつある「パトラン」という取り組み。最近、土曜ランニングの会など、近所に住む人同士で集合して目的地を決め、仲良くランニングする同好会などがちらほらと生まれてきていますが、せっかくならランニングついでに地域の防犯・防災見回りもしてしまおう! という一石二鳥?三鳥? な活動が「パトラン(パトロールランニング)」なのです。

パトランWEBSITE(パトランHPより)

パトランWEBSITE(パトランHPより)

パトランの仕組みはシンプルで、やりたいと思い立ったら、パトランのウェブサイトを通じて会員登録するだけ会費を徴収しない代わりにパトランユニフォームを購入してもらい、それを着て走ればOKです。全国どこからでもスタートできる手軽さから、全国にパトラングループが増えています。単独でのパトランもOKです。

街中を走っていると、普段気づかないいろいろなものに目が止まります。しかし、パトランはまちのパトロールを目的としているため、交通事故の現場にでくわしたときは、警察に電話したり、救急車を呼んだり、運転手のサポートをしたりと、不測の事態にも迅速に対応しています。
もちろん、最低限、交通規範を守る、とか挨拶をする、などのルールはあるのですが、パトロールの仕方(方法)は各地の事情に合わせて自由に行われます。自治会と共同で防犯・見回りを行うグループ、電気の切れた街頭を探して自治体に報告する沖縄のグループなどさまざま。警察や行政と正式にパートナーシップを組んで活動するチームまでいるそうです。
このように、各地の工夫を参考にしたい人は会員限定のFacebookグループ「パトランJAPANグループ」でメンバーの活動を参考にしたりできるほか、ウェブサイトからダウンロードできる活動マニュアル「パトラン虎の巻」を読むこともできます。

パトランユニフォームのTシャツ。赤くて目につきやすい(画像提供/認定NPO法人改革プロジェクト)

パトランユニフォームのTシャツ。赤くて目につきやすい(画像提供/認定NPO法人改革プロジェクト)

仲間と始めた自主的な活動が話題を集め全国規模に

このパトランという取り組みをスタートしたのは、認定NPO法人改革プロジェクト代表の立花祐平さん。大学卒業後、大阪のIT企業に勤めていた立花さんは、入社3年を機に独立。Uターンで地元の福岡に戻り、アルバイトをしながら、冒険家を志していました。 
そんなある日、ふと訪れた沖縄の離島で、海岸沿いにゴミが散乱している様子を見た立花さん。もともと自然が好きだったこともあって、観光客が我関せず、な様子に違和感を覚えたそう。

「じゃあ実際、地元の福岡はどうだろう、と帰って海を見にいくと、同じようにゴミが散乱していました。漠然と、今できることからしたいなと思って友人たちとゴミ拾いをはじめました。これが現在のNPOの活動につながっています」(立花さん)

パトランを立ち上げた認定NPO法人改革プロジェクト代表の立花祐平さん(画像提供/認定NPO法人改革プロジェクト)

パトランを立ち上げた認定NPO法人改革プロジェクト代表の立花祐平さん(画像提供/認定NPO法人改革プロジェクト)

アルバイトをしながら地域の清掃活動に取り組む日々を送る中、知人の女性が自宅に帰る道で不審者による被害があり、清掃活動だけでなく防犯活動も始めてみようと思い立ったそうです。そこで、海沿いの街・宗像で見回り活動もしながら走ってみよう、と仲間と始めたのがパトランでした。
大きな転機となったのは、全国からソーシャルな取り組みを募集する住友生命の「YOUNG JAPAN ACTION」プロジェクトに応募したこと。

「もともと地元福岡の宗像という地区だけでやっていた自主的な活動だったのですが、なんとグランプリの一つに選ばれたんです。それがきっかけで多くの人にパトランを知ってもらい、全国で活動をやりたいという人たちが増えてきました」(立花さん) 

そこでSNSで「パトランJAPAN」のグループをつくり、全国の仲間が活動できるプラットフォームを準備しました。少しづつ活動の輪が広がり、今では全国38の都道府県に1,800人を超えるメンバーがいます。
「いわゆるランナーの人たちって横のつながりがとても強いです。全国のマラソン大会に出場したりして、地域が離れた人同士でもつながっている。もともと僕らはランニングは素人で始めたのですが、ランナーのコミュニティと接点ができて一気に広がったかたちですね」(立花さん)

パトラン中のゴミ拾いの様子。防犯だけでなく清掃も(画像提供/NPO法人改革プロジェクト)

パトラン中のゴミ拾いの様子。防犯だけでなく清掃も(画像提供/NPO法人改革プロジェクト)

自治会など既存の団体との温度差を埋めるには?

しかし、宗像でパトランを始めたころは地元の理解を得るのに苦労したそうです。

「地方は少なからず閉鎖的な面があるので、若者が集まって何かやると白い目で見られたり、いい迷惑だといって地元企業からメールが届いたこともありました。でも、自分たちの活動に社会的意義があると感じていたので、やはりやり続けないとだめだな、と思い3年は続けるつもりでがんばりました」(立花さん)

もともとある地域団体(自治会や町内会)=セカンドコミュニティは当然、防犯や防災に関する取り組みをしています。しかしどうしても、年配の方が多く、新しい住民や自治会に参加してない若者が入りづらいのが現状です。「地域のために何かしたい」と潜在的に考えている人が多い中、誰でも入れていつでも抜けられる、そんな気軽な活動=コミュニティがあることで地域参加の幅が広がると感じています。

「やはり平日は職場と自宅を行ったり来たりで地元に居場所がない人は多いです。また、パトランは既存の地域団体と基本的には一緒にやっていきましょうというスタンスなので、高齢者のグループと一緒にスタートしたりするチームもいます。あるメンバーが、パトランを通じて地域で活動することに抵抗がなくなった“慣れた”とおっしゃっていて、そこから町内会や自治会にも積極的に関わるように顔を出すようになったそうです」(立花さん)

全国に広がるパトランチーム。各チームごとに活動エリアや活動場所を決めて行っています(画像提供/NPO法人改革プロジェクト)

全国に広がるパトランチーム。各チームごとに活動エリアや活動場所を決めて行っています(画像提供/NPO法人改革プロジェクト)

また、既存の地域団体は基本的に、行政区画に縛られて活動しています。一方パトランチームは行政区画をまたいで活動することが多い。広域で防犯や防災意識を高めたりする団体はあまりないため、既存の町内会や自治会とうまく共存できていると立花さんは言います。

マラソン大会に参加したり、冒険イベントを開催したり。広がるパトランの可能性

パトロールしながら走っていると面白いのは、地域のいろいろな課題が見える化していくところ。冒頭でちらっと紹介した沖縄で活動するメンバー(※)は、ランニングのついでに、切れた街灯を見つけては地元の行政に連絡を入れているそうです。
「他の地域でも見つけたら行政に報告しましょうというルールを設けていますが、なかでも沖縄は一番多くて、年間5~600件の街灯切れを見つけています。自転車の不法投棄なんかも見つけます。防犯だけじゃなくいろいろな面でパトランが地域の役に立つ瞬間は多いと感じています」(立花さん)

パトラン中、電気の消えた街灯を見つけたり、不法投棄を見つけては行政に連絡をしているそう(画像提供/NPO法人改革プロジェクト)

パトラン中、電気の消えた街灯を見つけたり、不法投棄を見つけては行政に連絡をしているそう(画像提供/NPO法人改革プロジェクト)

パトランJAPANは基本的に寄付で成り立っています。大きな寄付元としては毎年開催されている大阪マラソン。他にも、マップに沿ってスタンプラリーしながら走れる「冒険型マラソン」を仕掛けたりもしています。こういう全国規模の大会で全国のチームやメンバーが交流し、より一層コミュニティの結束を高めています。

「今までにないマラソンをつくりたくて。せっかく環境や防犯をテーマにした取り組みなので、社会貢献の要素をマラソンに組み込みたい。フィールド内に、社会貢献につながるゾーンや散策できるスポットを設定しておき、ミッションをクリアすることで得点を稼いでいく。RPGゲームのような世界観をマラソンで表現しています(笑)。第一回目の今年は新型コロナウィルスの影響で開催できなかったんですが、来年度も実施する予定です。今後も仕掛けていきたいと考えています」(立花さん)

毎年、大阪マラソンに全国からパトランチームが集まる(画像提供/認定NPO法人改革プロジェクト)

毎年、大阪マラソンに全国からパトランチームが集まる(画像提供/認定NPO法人改革プロジェクト)

宗像市で開催予定だった冒険型マラソン。コロナウィルスの影響で中止となった(画像提供/認定NPO法人改革プロジェクト)

宗像市で開催予定だった冒険型マラソン。コロナウィルスの影響で中止となった(画像提供/認定NPO法人改革プロジェクト)

地域活動って、楽しくないと続かないと思いませんか? パトランの面白いところは、仲間たちと楽しく走るというのが前提になっているところ。そのついでに地域貢献を行うところがポイントです。「地域のためになにかしなきゃ」とか、「住んでいるのに何もできてない」という負い目を感じている多くの人にとって、パトランのような気軽に参加できて、気分が乗らなければ参加しなくてもいいコミュニティの存在は大きな助けになるのではないでしょうか。 
一見、仲間たちで楽しく遊んでいるようなコミュニティも、有事の際に連絡網として機能したり、日ごろからの何気ない見回り活動が役に立つ瞬間があると思います。そんなコミュニティが複数存在することで、地域の柔軟性や寛容性、災害の際の回復可能性(レジリエンス)を高めると僕は考えています。
家族や学校、職場など(=ファーストコミュニティ)でもなく、柔軟性や多世代交流の場としては停滞している既存の地域団体(=セカンドコミュニティ)ではなく、第三のコミュニティが各地に増えていくことがこれからの地域社会にとって重要なテーマだと思います。今後も全国各地のユニークな「サードコミュニティ」を取り上げていきます。どうぞお楽しみに!

※パトランチームは一定の基準を満たして設立しています。沖縄はチームではなく個人単位で活動しています。
現在のチームは全国で15チームのみとなります
詳細:パトランチーム

●取材協力
認定NPO法人改革プロジェクト
●関連サイト
パトラン

「JR京浜東北・根岸線」の家賃相場が安い駅ランキング! 2020年版

部屋を決めるときに必ず気になるのは、通勤や通学の利便性の良さだろう。東京や品川など都内主要駅を経由し、大宮など埼玉県から横浜などの神奈川県までつなぐJR京浜東北・根岸線は、その便利さから定番の人気路線。そのJR京浜東北・根岸線の沿線で、ねらい目の駅はどこだろうか。シングル向け物件(10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DK)を対象にした最新版の家賃相場ランキングから考えてみたい。●JR京浜東北・根岸線の家賃相場が安い駅TOP20
順位/駅名/家賃相場/(駅所在地)
1位 洋光台 5.2万円(横浜市磯子区)
2位 南浦和 5.9万円(さいたま市南区)
2位 根岸 5.9万円(横浜市磯子区)
4位 山手 5.95万円(横浜市中区)
5位 新杉田 6万円(横浜市磯子区)
6位 本郷台 6.1万円(横浜市栄区)
6位 磯子 6.1万円(横浜市磯子区)
8位 蕨 6.2万円(埼玉県蕨市)
9位 港南台 6.3万円(横浜市港南区)
10位 新子安 6.35万円(横浜市神奈川区)
11位 与野 6.4万円(さいたま市浦和区)
11位 北浦和 6.4万円(さいたま市浦和区)
13位 浦和 6.8万円(さいたま市浦和区)
14位 さいたま新都心 6.9万円(さいたま市大宮区)
14位 大船 6.9万円(神奈川県鎌倉市)
16位 大宮 7万円(さいたま市大宮区)
16位 川口 7万円(埼玉県川口市)
16位 鶴見 7万円(横浜市鶴見区)
19位 東神奈川7.2万円(横浜市神奈川区)
20位 西川口 7.3万円(埼玉県川口市)

著名クリエーターによる活性化プロジェクトに注目、閑静なベッドタウン

1位は、横浜市磯子区にある洋光台駅。JR京浜東北・根岸線の神奈川方面は、日本の主要工業地帯である京浜工業地帯への足でもあり、住環境が気になるところであるが、洋光台はベッドタウンで、閑静な住宅街が広がる地域だ。

洋光台駅(写真/PIXTA)

洋光台駅(写真/PIXTA)

駅の前すぐには、洋光台団地がある。近年、クリエイティブディレクター・佐藤可士和氏などが参画する、この団地を中心にした街の活性化プロジェクトが進められている。2018年には、東京オリンピックが開催予定の新国立競技場の設計を手掛けた建築家、隈研吾氏のデザインにより中央の広場がおしゃれにリニューアル。ハンドメイド作家やアーティストが全国から集まる展示即売会イベントなども開かれるようになった。

洋光台団地の敷地内にはスーパーや飲食店もあるが、駅周辺のスーパーは深夜0時まで開いている店舗(※通常営業時)もあり、ベッドタウンにとっては大切な駐車場も完備。本ランキングはシングル向け物件の家賃相場についてのものだが、小さな子どものいるファミリー世帯にも気になるエリアだろう。

5位の新杉田駅は、洋光台と同じ横浜市磯子区に位置する。東側は京浜工業地帯で、IHIや東芝など大企業の工場や事業所がある。

駅前は大規模マンションなどもあり、殺風景なビジネス街という雰囲気ではない。駅に直結にした商業施設のほか、前述の企業に勤める人たちを対象にした飲食店なども多く、自炊をする余裕のない多忙なシングルには心強いだろう。また新杉田駅は、地球環境や深海の観測や研究を行っている海洋研究開発機構の横浜研究所の最寄駅でもある。研究内容や施設内部、図書館などは一部一般にも公開されており(※)、老若男女を問わず人気を集めている。工業地帯というだけでない意外な魅力がある、と言えるかもしれない。

さいたまエリアは、“住みたい街”と“住みやすい街”もランクイン

13位の浦和駅と14位のさいたま新都心駅、16位の大宮駅は、先月発表された「SUUMO住みたい街ランキング2020関東版」にランクインしている。昨年、今年と続いてさいたま市中核エリアの人気ぶりに注目が集まっているが、その理由は、京浜東北線に加え、湘南新宿ラインによる新宿方面へのアクセスが良い点も大きい。

浦和駅(写真/PIXTA)

浦和駅(写真/PIXTA)

なかでもさいたま新都心駅は、再開発が進み高層建築が並ぶビジネス街になりつつある。さいたまスーパーアリーナのある駅西口方面はオフィス街だが、駅東口は大規模マンションが建設されている。コクーンシティなど大型商業施設もあり、働くにも住むにも良し。加えてスポーツ観戦やライブなど充実した生活が期待できるだろう。

大宮駅と同率での川口駅は映画『キューポラのある街』の舞台で知られる街。、かつては鋳物工場の多い地域であったが、その跡地が住宅地として開発され発展。駅周辺はタワーマンションも目立つ。また、街中には緑あふれる大きな公園も数多い。

そごう川口店などの百貨店のほか、24時間営業のスーパーやディスカウントストアなど、ショッピング施設も充実。「樹モール」の名で親しまれる川口銀座商店街やふじの市商店街などもあり、アットホームなふれあいにも事欠かない。東京都との物理的な近さとともに、生活の上での便利さは確実といえそうだ。

ランキングには都内の駅は登場しないが、JR京浜東北・根岸線は遅くまで運行しているため、多少離れた所在地の駅であっても、都心部で地下鉄沿線に住むより終電が遅く、時間の自由がきく、というケースもよく耳にする。幹線ならではの強みだろう。住みたい街や住みやすい街が多くランクインしているJR京浜東北・根岸線沿線の駅では、ライフステージやスタイルにあった住まいがきっと見つかるはずだ。

※1 現在は新型コロナウイルス感染防止のため中止

●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている京浜東北線の沿線の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(住戸名寄せあり、定期借家を除く)
【データ抽出期間】2019/12~2020/2
【家賃の算出⽅法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む⽉額賃料から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、平日の日中時間帯の検索結果から算出(乗換時間を含む)
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある

これがミニチュア!? Mozuがつくるコンセントの向こうの「小さな暮らし」

一見、なんの変哲もないコンセントが実は扉になっていて、開けるとそこには小さな部屋がある。そんな世界を描いた動画「こびとシリーズ」をご存じでしょうか。今回は若きミニチュアアニメクリエイター・Mozuさんに自分の部屋や友だちの部屋をつくった理由、将来の夢についてインタビューしました。
「自分が大好きな部屋」をミニチュア作品にしたら、バズった!

コンセントを開けると部屋?と言われても混乱してしまう人も多いでしょう。まずは手掛けた作品をご覧ください。

「こびとの秘密基地」

「こびとの階段」

制作したのは、MOZU STUDIOS代表取締役でもある水越清貴(Mozu)さん。21歳という若さながら、次々とミニチュア作品を世に出し、SNSのフォロワーはツイッター19万5000、インスタ17万という影響力を持ち、本を出版したり、個展を予定していたりと、すでにトップクリエイターといってもいい存在です。

水越清貴(Mozu)さん(写真提供/MOZU STUDIOS)

水越清貴(Mozu)さん(写真提供/MOZU STUDIOS)

冒頭の「こびとの秘密基地」はツイッターでもバズりにバズり、なんと68万いいね!超(2020年4月現在)。日本のみならず世界中から反響があったといいます。ミニチュアは1作品あたり製作期間が3~4カ月ほどかかり、身近なものを加工してすべて手作業……と、気の遠くなるような作業を重ねていることが分かります。では、なぜミニチュア作品をつくるようになったのでしょうか。

「はじまりは小学校5年生のとき。友だちに誘われてガンプラ(ガンダムのプラモデル)で遊ぼうという話になったのがきっかけです。初めてプラモデルを買った店の名前も機種も、今でもはっきりと覚えていますよ。その後、プラモデルではなく背景のジオラマづくりに興味を持つように。見よう見まねでつくったので、はじめは本物の土を使って部屋中を土で汚してしまいお母さんに怒られました(笑)」

と振り返ります。始めた当初はまったくうまくいかなかったものの、ジオラマ制作熱は冷めることなく、試行錯誤をしながらジオラマの風景の一部である、建物づくりへと没頭していきます。転機となったのは、高校生の時。趣味でつくっていた部屋を友人がSNSにアップしたところ、一夜にして大反響があり、一躍、ミニチュアクリエイターとして脚光を集めたのです。

巾木(はばき)を入れる瞬間が気持ちいい! ミニチュアの家をつくって気づいたこと

でも、どうして自分の部屋のミニチュアをつくろうと思ったのでしょうか。

「自分の部屋」(写真提供/MOZU STUDIOS)

「自分の部屋」(写真提供/MOZU STUDIOS)

「当時、芸術系の高校に進学したものの、僕が好きなのは、人に喜んでもらったり驚かせたりするカルチャー系。一方、同級生は現代アートなどに興味を持っている人が多くて、友人がまったくできず……。それで当時、いちばん好きだった『自分の部屋』をミニチュアでつくってみようと思って。それこそ、学校にいる以外の時間は全部費やしました」(水越さん)

ミニチュア作品では、「こんな家に住みたい」と理想のきれいな家がつくられることが多いなか、水越さんがつくったのは、生活感があって等身大の高校生の部屋。それこそ漫画が並んでいたり、ノートが床置きになっていたり。この「絶妙にリアルな感じ」が共感を呼んだといいます。

作業風景(写真提供/MOZU STUDIOS)

作業風景(写真提供/MOZU STUDIOS)

「“この部屋に住みたい“”あるよね~“など、いろんなコメントが寄せられました。自分が好きなこの部屋、好きなのは自分だけじゃなかったんだって、思えたんです」(水越さん)

ミニチュア作成では「実際の住まいを計測して1/6にするだけ」と言いますが、その1つひとつへのこだわり、ディテールが半端ではありません。また、家電量販店の袋や表彰状などパロディなども多く、思わずにやりとしてしまうしかけが満載です。ただ、すべて手づくりのため、1つのパーツに6時間かかることも珍しくありません。材料はすべて100均ショップなど、身近にあるものを加工していくのだといいます。

「日本の家と海外の家を比べて思うのは、壁紙が白色で落ち着いているところですね。『こびとの旅館』をつくった時には、日本人って狭い空間にギュッと生活必需品を詰めるのが好きなんだなと思いました。狭い中にものを詰め込むというか、空間が狭いゆえの工夫があるんだと思います」(水越さん)

「こびとの旅館」(写真提供/MOZU STUDIOS)

「こびとの旅館」(写真提供/MOZU STUDIOS)

また、ミニチュア作品をつくっていてめちゃくちゃ気持ちいいのが、「巾木(はばき、床と壁の境目にとりつける部材)」を入れる瞬間だとか。

「作品づくりでもかなり仕上げに近い工程なんですが、壁と床の間に巾木を入れると、めちゃくちゃ空間がしまるんですよ。それまでただの“空間”だったのが一瞬にして“部屋”になる。本物の家をつくっている大工さんも、気持ちいいんじゃないかなって思っています(笑)」(水越さん)

巾木を入れると空間が“しまる”(写真提供/MOZU STUDIOS)

巾木を入れると空間が“しまる”(写真提供/MOZU STUDIOS)

(写真提供/MOZU STUDIOS)

(写真提供/MOZU STUDIOS)

ちなみに、もともとは巾木という名前も分からずに「壁 床 木材」などで検索してその名前を知ったそう。こうやってミニチュア作品をつくることで、「見ているけれど見えていない」ものがたくさんあるんだと気がついたといいます。また、こびとシリーズで使っているコンセントと壁紙はすべて本物の建材だそう。リアリティがあるのも納得です。

「こびとのトイレ」(写真提供/MOZU STUDIOS)

「こびとのトイレ」(写真提供/MOZU STUDIOS)

「こびとの押入れ」(写真提供/MOZU STUDIOS)

「こびとの押入れ」(写真提供/MOZU STUDIOS)

「こびとの階段」(写真提供/MOZU STUDIOS)

「こびとの階段」(写真提供/MOZU STUDIOS)

夢はコマ撮りアニメーション制作会社をつくること。冒険はまだまだ続く

水越さんのミニチュア作品の特徴は、きれいすぎないこと。どこか「身近」で「ありそう」な感じが魅力のひとつです。

「以前、ジオラマで『ゴミ捨て場』をつくったんですが、たとえ捨てられたモノでも、使っていた人の思いや暮らしのニオイがするのが好きなんですね。家族がいるとこんなゴミが出るよね、粗大ごみを捨てる人がいるとか、妄想しながらつくる。また、僕が楽しそうにつくっているからこそ、見てくれる人が喜んでくれる、おもしろがってくれる。SNSで寄せられるコメントは全部見ています。これからも見てくれる人との距離が近くありたいと思っています」と話します。

「ゴミ捨て場」(写真提供/MOZU STUDIOS)

「ゴミ捨て場」(写真提供/MOZU STUDIOS)

水越さん自身は、高校卒業後、大学に進まず、アーティストとして活動することを決め、コマ撮りアニメーションのスタジオ「アードマン・アニメーションズ」(英国・ひつじのショーンなどの作品で有名)に見学にいったり、ミニチュア作家たちと対談したり、その後に自分の会社を設立したり……と数年間で着実に夢を叶えてきました。また、ミニチュア作品だけでなく、ミニチュアアニメが、アジア最大級の短編映画祭「Digicon6」で、JAPAN Youth部門の最優秀賞ゴールドを獲得したり、トリックアートを描いて出版したりと多彩に活躍しています。

現在は企業とのコラボもしていますが、将来は依頼されたミニチュア作品をつくる「職人」ではなく、「自分の好きな作品をつくって、喜んでもらうアーティスト」になりたいとのこと。また、元来の夢である「コマ撮りアニメーション」もつくりたいと計画しています。

「コマ撮りアニメーション」ってめちゃくちゃ手間ひまがかかり、お金がめっちゃかかる一大プロジェクトです!
それにしてもまだ20代なのにこの活躍ですが、ネット時代の新しい才能はこうやって開花していくのでしょうね。水越さんの小さい世界につまった、大きな夢。これからも応援したいと思います。

●取材協力
MOZU STUDIOS
Twitterアカウント
@rokubunnnoichi
YOUTUBE

レジ袋が全面有料化。プラごみ減らす「量り売りショップ」に注目

2020年3月から、ニューヨークでレジ袋の無料配布が禁止になりました。日本では7月からレジ袋の無料配布が禁止になりますが、“脱プラスチック”に率先して取り組んできた欧米に比べると、環境対策では大きな遅れを取っています。
「プラスチックごみを減らそう!」という声を耳にすることはあっても、その必要性をきちんと理解している自信がある人は少ないのではないでしょうか? 今回は改めて、プラスチックごみにまつわる現状と、これからどのようなライフスタイルにシフトするのがよいのかを知るべく、プラスチックをなるべく使わない生活を提案するWebサイト『プラなし生活』を運営する中嶋亮太さんと古賀陽子さんにお話を伺いました。

日本はプラスチック包装容器の個人消費量で世界2位

今、世界中で増え続ける「プラスチックごみ」が大きな環境問題になっています。

軽くて頑丈なプラスチックは生物に分解されないため、誤ってビニール袋を食べた動物が満腹だと勘違いして、餓死するケースがいくつも報告されているのです。

また、魚の体内からは大量のマイクロプラスチックが発見されています。プラスチックには生物に有害な添加剤が加えられていることが多く、巡り巡って魚を食べた人体にも影響を及ぼすことが懸念されています。

ゴミ置場からあふれ出したビニール袋やペットボトルは、風に飛ばされ、雨に流され、最終的には海に流れ着く(写真/Unsplash)

ゴミ置場からあふれ出したビニール袋やペットボトルは、風に飛ばされ、雨に流され、最終的には海に流れ着く(写真/Unsplash)

その一方で、1人あたりの使い捨てプラスチックの量は増え続けていて、その約半分が食料品の容器や、飲料ボトルなどのプラスチック包装容器です。日本は残念ながら、このプラスチック包装容器の個人消費量が世界で2番目に多い国なのです。

「プラスチックを取り巻く国内外の状況」 (UNEP 2018)より引用

「プラスチックを取り巻く国内外の状況」 (UNEP 2018)より引用

ごみ処理技術の進歩を待つだけでは、もはや手遅れになりかねません。この問題を解決するには、プラスチックの大量生産・大量消費に慣れてしまった私たちのライフスタイルを変えることが急がれます。

途上国でも進む「使い捨てプラスチック規制」

日本人はなぜ「使い捨てプラスチック」を大量生産・大量消費してしまうのでしょうか。『プラなし生活』運営者の2人はこう語ります。

「意識の高い低いというよりも、使い捨てプラスチックを使うことが当たり前になってしまっていることが問題だと思います。消費者はちょっとでも商品に傷がついていると買わないので、企業は商品を過剰に守ろうとする。だから何重にも包装するのが普通になってしまっているんです」(中嶋さん)

「プラスチックごみの問題はメディアで取り上げられているので、知っている人は多いと思うのですが、『自分はポイ捨てしないから関係ない』『ちゃんと分別していればいくら使っても大丈夫』と思っている人が多い気がします」(古賀さん)

左から『プラなし生活』運営者の中嶋亮太さんと古賀陽子さん(写真提供/中嶋さん・古賀さん)

左から『プラなし生活』運営者の中嶋亮太さんと古賀陽子さん(写真提供/中嶋さん・古賀さん)

ゴミをきちんと分別して捨てていても、プラスチックごみを減らさなくてはならないのはなぜでしょうか。

その理由の1つは、温暖化対策です。他のごみと同様、プラスチックは燃やせばCO2が発生するため、総量を抑える必要があります。

2つ目は、カンや瓶などに比べるとリサイクルが難しいためです。プラスチックは油がつきやすく落ちにくいので、きれいに洗浄できなかったプラスチックは燃やされてしまいます。また製品になる過程で、着色したり耐久性を持たせたりするための添加剤が加えられていることが多く、その場合もリサイクルは難しくなります。

なお、日本のプラスチックリサイクル率は82%と、諸外国に比べると高いのですが、これはプラスチックを燃やして発生した熱を再利用した分もリサイクル率に加えているためであって、純粋な日本国内でのリサイクル率は1割にも満たないと言われています。

3つ目は、落としたり、風に飛ばされたり、不法投棄されたりしたプラスチックが海に流れ着くことによって、生態系に悪影響を及ぼすためです。日本は廃棄物管理がきちんとしている国ではありますが、それでもゴミ置場からプラスチックごみが飛ばされたりすることは完全には防げません。また、日本は2018年1月に中国が廃プラスチックの輸入を停止するまで、自分たちのプラスチックごみの多くを中国に輸出してきました(年間約150万トン )。実際、海洋プラスチックごみのほとんどはアジアから流れ出ていることが分かっています。日本人の出したプラスチックごみが、海のごみになっている可能性は否定できません。

上勝町、亀岡市、鎌倉市など、プラごみ削減に積極的な自治体も

日本全体でのプラスチックごみ削減対策が遅れるなか、積極的な取り組みを進める自治体もあると、中嶋さんと古賀さんに教えてもらいました。

1.徳島県上勝町
人口約1300人の小さな町、徳島県上勝町は、日本で初めてゴミをゼロにすることを目指す「ゼロ・ウェイスト宣言」を2003年に発表しました。人口約1300人の小さな町の住民はゴミを34種類に分別し、その多くをリサイクルに回しています。レジ袋削減や、量り売りの推進にも積極的で、海外からも取材が来るほど注目を集めています。

2.京都府亀岡市
亀岡市は、使い捨てプラスチックごみゼロのまちとなることを目指して、2018年に「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を発表しました。2020年3月には「亀岡市プラスチック製レジ袋の提供禁止に関する条例」が成立し、市内で事業を行う法人、個人全てのレジ袋の提供が禁止になりました。「有料提供」も禁止する点で、国の取り組みよりも一歩踏み込んだ内容となっています。

3.神奈川県鎌倉市
鎌倉市が取り組んでいるのは、市内の公共施設に給水スポットとして「ウォータースタンド」を設置するという新しい試みです。2020年2月から市内の公共施設を中心に最大50台程度の設置を目指していて、市民や観光客にマイボトルの利用を呼びかけています。鎌倉市は2018年10月に「かまくらプラごみゼロ宣言」も行っており、市役所の自販機でのペットボトル飲料の販売廃止など、率先した取り組みが目立っています。

(写真/PEXELS)

(写真/PEXELS)

日本ではこうした一部の自治体が先進的な取り組みを行っていますが、海外では先進国・途上国問わず、多くの国ですでにレジ袋の無償配布は禁止されています。中嶋さんによると、日本よりもはるかに厳しい罰則を設けている国は多いとのこと。

「ケニアではレジ袋を持っているだけで警察に逮捕されます。レジ袋が排水溝に詰まって洪水が起きてしまったことがきっかけで、禁止になったんです。インドでも、神聖とされている牛がレジ袋を誤って食べてしまい、使い捨てプラスチックを使うと罰金刑が課されるなど、取り締まりが厳しくなりました。このようにゴミ処理の技術が未発達な国の一部は、使い捨てプラスチックが環境に及ぼす影響が顕著な分、日本よりも対策は一歩進んでいると言えます」(中嶋さん)

すぐに始められる「量り売りショップ」の利用

使い捨てプラスチックの使用量を減らすために、私たち一人ひとりができることは何でしょうか。簡単に始められるのが、「量り売りショップ」に行くことです。

「僕が住んでいたカリフォルニアでは、蜂蜜やコーンフレーク、ピーナッツバター、シャンプーやリンスが量り売りされていました」と中嶋さんは言います。海外ではプラスチックごみの問題が注目される前から、量り売りショップはわりと一般的だったそうです。

カリフォルニアでばら売りされている食材(写真提供/中嶋さん)

カリフォルニアでばら売りされている食材(写真提供/中嶋さん)

シャンプーの量り売り(写真/John Keane)

シャンプーの量り売り(写真/John Keane)

日本では、1つの店舗で多様な商品が量り売りされているお店はまだ少なく、食料品専門店が行っているケースが多いです。古賀さんにおすすめしてもらったのは、元住吉や新丸子で店舗を展開するバルクフーズ。ナッツやドライフルーツ、ピーナッツバターなどの食材をほしい分だけ購入できるお店です。

(写真提供/バルクフーズ)

(写真提供/バルクフーズ)

バルクフーズでは、瓶、缶、タッパーなど、好きな容器を持参すればその容器に商品を入れて購入できます。店舗にも備置きの容器がありますが、ビニールの小袋は紙袋へ、プラカップは瓶や紙カップへ、ビニールのレジ袋は生分解性の袋やエコバックヘと、切り替えを可能な範囲で進めているそうです。

店主の伊藤弘人さんは、量り売りを始めた理由を、「『身体にやさしいナチュラルな商品を日常的に摂取していただきたい』という思いのもと開店しましたが、そうした食品は高額なものが多く、継続的に摂取していただくためにはコストを抑える必要がありました。その手段として、量り売りは最も理に適ったやり方だったんです」と話します。店舗にとってはレジ袋を使わないことで、環境配慮だけでなくコスト削減の効果も期待できます。

またラッシュジャパンも、プラスチックごみの削減に向けて、多くの商品をパッケージ無しで販売しています。

容器不要の固形シャンプー「シャンプーバー」(写真提供/ラッシュジャパン)

容器不要の固形シャンプー「シャンプーバー」(写真提供/ラッシュジャパン)

バスボム、ソープ、シャンプーバーをはじめ、固形の商品は基本的に非包装の状態で販売しているほか、液体やクリーム状の商品のボトルやカップなどの容器には100%リサイクル可能な素材を使用し、可能な限りシンプルなデザインとしているとのこと 。

「ラッシュはビジネスを通して、社会の問題の根本をできるだけ解決したいと考えています。プラスチックの包装は、開封した途端にゴミになってしまいます。気候変動を無視することができなくなった昨今、『捨てること』を無くすことで、環境への負担を減らしたいと考えています」(ラッシュジャパン広報)

一般的にバスルームや洗面台で使われる商品は、使い捨てプラスチックで包装されていることがほとんどです。しかしラッシュでは、プラスチック包装なしで商品をショップに並べることが商品開発の時点から意識されており、プラスチックごみ対策が徹底されています。

エコな生活は「お金も時間もかかる」は本当?ラップの代わりに洗って繰り返し使えるミツロウラップ(写真提供/プラなし生活)

ラップの代わりに洗って繰り返し使えるミツロウラップ(写真提供/プラなし生活)

合成繊維(プラスチック)の食器洗いスポンジの代わりに使える綿たわし(写真提供/プラなし生活)

合成繊維(プラスチック)の食器洗いスポンジの代わりに使える綿たわし(写真提供/プラなし生活)

「エコな暮らしには憧れるけど、忙しいから自分には無理」と思う人も多いかもしれません。ところが、忙しい人ほど『プラなし生活』を実践するメリットがあると古賀さんは言います。

「使い捨てプラスチックを減らすと、身の回りにガラスやステンレス、金属、ステンレスなどの自然素材が増えます。そうすると、プラスチックの消耗品 を買ってストックする必要がなくなるので、結果的に買い物が減って、節約にもなるんです。しかも天然素材の風合いは統一感が出るので、キッチンが驚くほどオシャレになりますよ」

レジ袋を貰わないようにしたり、量り売りショップを利用してみたり。使い捨てプラスチックが地球環境に与える影響を知ることによって、今までの消費行動をできるところから変えていこうと思う人も多いのではないでしょうか。

「でも、何も『環境のため』と気負う必要はないんです」と古賀さんは語ります。

「一番大事なことは「長く続けて行く」こと。環境を変えてやるぞ、と頑張りすぎると疲れてしまうことがあります。 ちょっとおしゃれで、楽しめることだと思って、身近なところから始めてみるのが良いと思います」

『プラなし生活』の2人が言うとおり、楽しみながら取り組むことが、ライフスタイルを長期的に変えていくヒントかもしれません。

●取材協力
中嶋亮太さん
生物海洋学者。2009年に博士号を取得。米国スクリップス海洋研究所の研究員を経て、現在、国内の海洋研究所・研究員。海洋プラスチック問題、とくに海底に沈んだごみについて研究を進めている。著書に『海洋プラスチック汚染: 「プラなし」博士、ごみを語る』(岩波書店)がある。

古賀陽子さん
プラなし生活実践中の主婦。2005年にパナソニック(株)に入社し10年に渡り技術職勤務。その間、出産・育児を経て現在は自宅でお仕事中。海洋プラスチック汚染の深刻な実態を知り、中嶋氏 と共にプラスチックフリーなアイテムやヒントを探し回っている。

>プラなし生活●関連サイト
バルクフーズ
ラッシュジャパン

【新型コロナ影響】住宅ローンが払えなくなった人への救済策は?

新型コロナウイルスは人命をむしばむだけでなく、家計をもむしばんでいる。休業や営業不振で、職を失ったり大幅に収入が減ったりという人もいるだろう。なかには収入が減って、住宅ローンの返済に困るという人もいるだろう。その場合はどうしたらよいのだろう?【今週の住活トピック】
新型コロナウイルス感染症の影響により機構の住宅ローンのご返済にお困りの方へのお知らせ/住宅金融支援機構【フラット35】利用者には返済方法の変更メニューがある

まず【フラット35】の対応策について紹介するのは、公的機関が関与しているローンだからだ。一般の民間金融機関の住宅ローンに比べると、対応策が明確に提示されているという特徴がある。

【フラット35】についておさらいしておこう。住宅金融支援機構と民間金融機関が提携する、返済中は金利が変わらない住宅ローンだ。公的機関がかかわっているローンなので、一定の品質が確保されていると認められた住宅の場合に借りることができる。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、住宅金融支援機構では、【フラット35】などの機構の住宅ローンについて返済が困難となった人に対して、返済の相談を融資の窓口となる金融機関に相談するように促している。それと合わせて、返済を継続するための返済方法の変更メニューを提示している。

提示されたメニューは3つで、これらを組み合わせることも可能だ。

出典:住宅金融支援機構「新型コロナウイルス感染症の影響により機構の住宅ローンのご返済にお困りの方へのお知らせ」より転載

出典:住宅金融支援機構「新型コロナウイルス感染症の影響により機構の住宅ローンのご返済にお困りの方へのお知らせ」より転載

●返済期間の延長などの返済特例
例えば、住宅ローンを借りたときに35年返済で組んでいて、すでに10年間返済を続けているとする。残りの返済期間は25年となるが、10年延長し、残りの返済期間を35年にすることで、毎月の返済額を引き下げることができる。もちろん、当初より長く返済することになるので、トータルで見ると利息が増えて総返済額は増加する。

この条件(35年返済の10年経過後に35年返済に変更)で例えば、3000万円を2.5%の固定金利で借りていたとすると、毎月の返済額は10万7248円から8万5464円となり、2万円以上減額できる。
※実際の額は、借入額や適用金利、借入期間、経過期間、延長期間によって異なる

さらに、失業や20%以上の減収の場合であれば、元金の支払いを一時休止し、利息のみを支払う期間(最長3年)を設定することが可能で、この期間については大幅に減額が可能となる。

●一定期間だけ返済額を軽減する中ゆとり
例えば、3年間だけ毎月の返済額を減らし、4年後からは減額分も含めて返済していく方法。一定期間後の返済額は当初の返済額よりも増えることになる。

●ボーナス返済の見直し
最近はボーナス時に多額の返済額を設定している人は少ないと思うが、ボーナス時の返済が難しい場合は、その分を毎月返済額に振り分けることも可能だ。

こうしたメニューが用意されているが、適用されるには審査があり、延長できる期間などにも制約がある。希望すれば誰もが適用されるとは限らないが、まずは相談してみることだ。

なお、機構の住宅ローンで別に機構団体信用生命保険の特約料(保険料)の支払いがある場合で、一時的に支払いが困難なときも、払込期限の猶予措置がある。

その他の住宅ローンの返済に困ったら?まずは返済方法の変更を検討

一般的な民間金融機関の住宅ローンでは、機構のような返済変更メニューが明示されていないことがほとんどだ。だからといって、返済方法の変更に全く対応しないわけではない。

各金融機関がそれぞれ、住宅ローンの返済に困る個人向けの相談窓口を設置しているほか、一般社団法人全国銀行協会でも相談窓口やカウンセリングサービスを開設している。
○一般社団法人全国銀行協会「新型コロナウイルスへの対応について」

まずは相談窓口で、返済方法の変更などについて相談してみよう。なお、相談するのはできるだけ早いほうがよい。返済に困る状態が続くほど、選択肢が減るからだ。住宅ローン返済の滞納が続いてしまうと、住宅ローンの一括返済を求められる場合もある。とにかく早く相談して、打ち手がないかを一緒に考えてもらうのがよい。

最後は、マイホームを手放すことも選択肢に

機構の【フラット35】であれ、民間金融機関の住宅ローンであれ、返済方法の変更をしてもその後の返済が難しい場合は、マイホームを手放すことも考えざるを得ない。

選択肢の一つが「任意売却」だ。

住宅ローンを借りるときには、金融機関が住宅を担保にしているので、返済不能になると金融機関が強制的に「競売」で売却してローンを回収することになる。そうなる前に、住宅を売却した費用でローンの返済に充てることを金融機関と合意するのが「任意売却」だ。通常の売買に近い形で売却できるので、市場価格に近い額で売却できるなどのメリットがある。

ただし、競売であれ任意売却であれ、売却した資金を充てても住宅ローンが残る場合は、それを返済していくことになる。

また、住宅ローン以外の借金があって住宅ローンの返済に困っているなら、「個人版民事再生」も選択肢となる。

これは個人版民事再生法に基づく方法で、ほかの借金を大幅に減額してもらい、原則として3年間で分割返済するもの。マイホームを手放さずに済むが、住宅ローンが減額されるわけではない。

個人版民事再生を含めて、債務の整理や自己破産などについては、弁護士など法律の専門家に相談する必要がある。無料の問い合わせができる「法テラス」(ただし、新型コロナウイルス感染拡大防止のために業務を縮小中)などを利用することもできる。
○法テラス「新型コロナウイルス感染症に関する情報について」

さて、急激な営業不振により突然に収入が減ってしまうと、日々の生活のことで頭がいっぱいになってしまうだろう。だが、住宅ローンの返済については、放っておいて済むものではない。早めに金融機関に相談し、場合によっては弁護士などの知恵も借りて、打ち手を見出すようにしてほしい。

東京都心に残る宿場町「板橋宿」。歴史的”空き家”を活かし魅力再生

昔の風情を残す江戸四宿の一つ板橋宿。東京都板橋区本町および仲宿、板橋1、3丁目付近を指す。マンション開発の波の中、どうしたらその魅力を残せるのか。地域住民との協働は、資金調達はどのようにしたのか。空き家を軸に、まちの魅力とにぎわいの再生に取り組むプロジェクトを取材した。
「先祖代々住んできたまち。旧中山道の昔ながらの風情を残したい」

JR板橋駅から徒歩10分程にある「板橋宿不動通り商店街」。ここは、旧中山道の1番目の宿場町、板橋宿の歴史を継承する場所である。都心でありながら、どの駅からも徒歩10分程度は離れていることが功を奏して、今も大正~昭和初期の趣ある建物が点在。通り全体に懐かしい風情が漂う。とはいえ、実はここ10年ほどでマンション開発がじわじわと進み、昔ながらの板橋宿を髣髴とさせる建物は減っているという。地域のシンボルでもあった銭湯「花の湯」も、保存活動の動きはあったものの、107年の歴史に幕を下ろした。まちづくり会社「向こう三軒両隣」代表であり、このまちで先祖代々飲食業などの商売を続けてきた永瀬賢三さんはこう話す。

「僕はこの地域を“ガラパゴス”と呼んで、親しんできました。しかし残念ながら、大きな開発の波は止められるものではありません。5年ほど前から、この地域で商売を続ける意味を考えると同時に、どうしたらこの地域の魅力を残せるのか考えるようになりました」

現在の板橋宿付近。江戸時代には旧中山道の一番目の宿場町「板橋宿」があり、にぎわっていたという(画像提供/向こう三軒両隣)

現在の板橋宿付近。江戸時代には旧中山道の一番目の宿場町「板橋宿」があり、にぎわっていたという(画像提供/向こう三軒両隣)

空き家をフックにした“リノベーションまちづくり”を手本に

永瀬さんの結論は、住民自ら地域のあり方に気づき主体的に行動することが結果的に”まちづくり”になり、魅力は残っていくということ。そのフックとして着目したのは、通り沿いにある趣ある建物群だ。多くが空き家のままになっていた。これらを活用すれば、きっと面白いことができる……という確信はあったが、実際に動こうとすると、何から手を付けていいのか分からない。当時、建築や不動産に関する知識はゼロに近かったという。

「自分なりに建物のリノベーションや不動産活用の仕組みについて調べ始めたところ、リノベーションまちづくりという考え方を知りました」

永瀬さんは、不動産の大家、まちづくり会社、家守など、空き家活用のステークホルダーの存在を知る。その後はSNSなどを活用したり、空き家活用のキーパーソンと思われる人たちに直接話を聞きに行き、知識を積み重ねていった。

板橋宿という名称の由来となった、現在の「板橋」付近の様子。石神井川に架かる(画像提供/向こう三軒両隣)

板橋宿という名称の由来となった、現在の「板橋」付近の様子。石神井川に架かる(画像提供/向こう三軒両隣)

まちづくり会社設立。地域電力会社と連携し投資の仕組みも

その後間もなく、永瀬さんは商店街に興味を持つさまざまな人たちに声を掛け、2018年にはともにまちづくりの基盤となる「板橋宿まちづくり協議会」を立ち上げた。会員は近隣のさまざまな企業、不動産会社、行政書士、住民など、まちと空き家活用のステークホルダーたちだ。旧中山道界隈を対象に、空き店舗を活用して地域の魅力向上をはかり、活性化につなげることを目標に掲げた。

さらに、プロジェクトを積極的に進める、いわば実行部隊として、まちづくり会社「向こう三軒両隣」を立ち上げることを決意。空き家再生・活用にそれぞれ役割を果たす、建築家、料理家などが参画した。空き家再生・活用に関するプロジェクトでは、しばしば資金繰りが課題になるが、同社では投資の仕組みも早々に構築した。それは、参画している地域電力会社「めぐるでんき」を組み込むというユニークなものである。

「再生可能エネルギー由来の電力を供給するだけでなく、当該地域のプロジェクトに電気料金の一部を還元します。まちの活性化に協力したい人であれば、電力会社と契約することで、手間なく持続的に投資できるのはメリットではないでしょうか」と、めぐるでんき代表取締役の渡部健さんは話す。

「向こう三軒両隣」が入居および経営しているコワーキングスペース「おとなり」(写真撮影/介川亜紀)

「向こう三軒両隣」が入居および経営しているコワーキングスペース「おとなり」(写真撮影/介川亜紀)

築100年超の「板五米店」をカフェ&住民の活動の拠点に

2019年半ばには、まちづくり会社、向こう三軒両隣とめぐるでんきが連携し、新たなプロジェクトを立ち上げた。空き家の状態が続いていた大正6年築の「板五米店」を、地域のシンボルとして、また、住民の活動の拠点として再生する計画だ。

「この建物を活かすこと=景観まちづくり、です。また、宿場町ならではにぎわいを表現するため、住民の集う場所として計画することが重要でした」と、運営の仕組みづくりとプランニングに関わったアルセッド建築研究所の益尾孝祐さんは説明する。

2019年12月、同プロジェクトが無事完了。土蔵造りの町家であり、建物の両側面位置するレンガ壁、2階の鉄板の雨戸がアクセントとなっている板五米店は、風情も名称もそのままに、新たな姿に生まれ変わった。1階に新たに厨房を造設した以外、ほとんど間取りも建具も変えていないが、安全・快適に使い続けられるよう耐震性、断熱性は見直した。2019年に、用途変更確認申請手続きが変更後の用途の床面積200平米以下まで不要になったことが、プロジェクト実現の追い風になったという。

板五米店は、「米」をキーワードにおむすびやスイーツを供するカフェと、地域のコミュニティ活動拠点の機能を持ち、座敷などは会食・イベントなどで貸し切り利用ができる。「板橋宿ツーリズム」のレセプションも併設している。

妻側がレンガ造りになっているなど個性的なつくり。文化財への登録を目指す(画像提供/向こう三軒両隣 撮影/浅田美浩)

妻側がレンガ造りになっているなど個性的なつくり。文化財への登録を目指す(画像提供/向こう三軒両隣 撮影/浅田美浩)

1階には新たに厨房を設けた。ランチにはおむすび定食や子ども向けのメニューを用意。今後、夜の会食向けメニューなども準備予定(画像提供/向こう三軒両隣 撮影/浅田美浩)

1階には新たに厨房を設けた。ランチにはおむすび定食や子ども向けのメニューを用意。今後、夜の会食向けメニューなども準備予定(画像提供/向こう三軒両隣 撮影/浅田美浩)

窓や障子などの建具は再利用。壁の位置はほとんど変更していない。延床面積は約160平米(画像提供/向こう三軒両隣 撮影/浅田美浩)

窓や障子などの建具は再利用。壁の位置はほとんど変更していない。延床面積は約160平米(画像提供/向こう三軒両隣 撮影/浅田美浩)

旧中山道沿いに個性的なスモールビジネスの集積を

同プロジェクトでは、多くの住民の参加や協力の機会を設けたことで、完成までに板五米店を軸とした緩やかな地域コミュニティができた。事業計画やプランニングは、まちづくり会社、向こう三軒両隣と商店街がともに検討し、住民から、工事前の見学会や大掃除、工事に関わる塗装、障子貼り、家具づくりなどのワークショップ参加を募った。資金は、向こう三軒両隣+めぐるでんきからの出資金のほか、地域の有志が誰でも参加できるようクラウドファンディングを活用した。

ワークショップなどを通じて板五米店の存在は近隣住民に浸透し始めており、子連れのママたちが和室に集まってくつろいだり、立ち座りしやすい椅子座の部屋ではお年寄りがお茶を楽しむといった光景が日々見られるようになった。

今後、向こう三軒両隣と商店街は連携を続け、“宿場町”“旅”をテーマに、地域に空き家などを活用したゲストハウスや飲食店を増やしていきたいという。
「都心部はテナント料が高いことなどから、歴史的建造物の活用が進みにくい状況にあります。板五米店プロジェクトはリノベーションや資金繰りに工夫を重ねて、その点をクリアしました。これをモデルケースとして、多くの個性的なスモールビジネスを立ち上げ、旧中山道沿いをより魅力的な地域に変えていきたいですね」(益尾さん)

左から籾井玲さん、益尾孝祐さん、渡部健さん、永瀬賢三さん(写真撮影/介川亜紀)

左から籾井玲さん、益尾孝祐さん、渡部健さん、永瀬賢三さん(写真撮影/介川亜紀)

人口が減少し通りから人が消え、まちがにぎわいも輝きも失っていく中、傍観するに終わらず、自らまちづくりについて学び、周りの協力を得て理想像を少しずつ形にしていく。まちづくりで着目される地域には、そういったキーパーソンが少なからず存在しているようだ。まちの行く末を“自分事”として考えられる人である。コロナ対策時のインターネット頼りの日常を経て、あらためて、自分の住む地域や近隣の人々とのリアルなつながりを見直す人も増えるのではないだろうか。関わり方のひとつとして、当記事が参考になれば幸いである。

●取材協力
・板五米店
・向こう三軒両隣
・アルセッド建築研究所
・めぐるでんき

小さな広場をもつ家

所在地:世田谷区下馬
39万円 / 50.96平米
東急田園都市線「三軒茶屋」駅 徒歩15分

家の中が広場みたいです。大きな吹き抜けに、大きく育ったシンボルツリーのシマトネリコ。中央の空間を眺めるように書斎や寝室を配置して、オープンな空間(広場)と居室空間とを行ったり来たり。階段を上った寝室から眺めると、街の広場を見下ろすような気分になります。



家の造りを理解してもらう ... 続き>>>.
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「JR京浜東北・根岸線」の中古マンション価格相場が安い駅ランキング 2020年版

大宮駅から大船駅まで、埼玉県、東京都、神奈川県を走るJR京浜東北・根岸線。大宮駅~東京駅~横浜駅は京浜東北線、横浜駅~大船駅は根岸線に分類されるものの、この2路線が直通運転される便も多く、まとめて「京浜東北・根岸線」と呼ばれることも。3月に誕生した高輪ゲートウェイ駅も停車駅に加わり、全47駅を結びつつ都心を南北に貫く便利な路線だ。
そんな京浜東北・根岸線の沿線で、中古マンションの価格相場が安い駅はどこなのか。専有面積20平米以上~50平米未満の「シングル向け」と、専有面積50平米以上~80平米未満の「カップル・ファミリー向け」、それぞれの価格相場が安い駅トップ10を紹介しよう。
●JR京浜東北・根岸線の価格相場が安い駅TOP10
【シングル向け】
順位/駅名/価格相場(所在地)
1位 鶴見 1980万円(神奈川県横浜市)
2位 大宮 2198万円(埼玉県さいたま市)
3位 関内 2665万円(神奈川県横浜市)
4位 王子 2680万円(東京都北区)
5位 蒲田 2698万円(東京都大田区)
6位 横浜 2850万円(神奈川県横浜市)
7位 川崎 2980万円(神奈川県川崎市)
8位 田端 2988万円(東京都北区)
9位 日暮里 3050万円(東京都荒川区)
9位 鶯谷 3050万円(東京都台東区)

【カップル・ファミリー向け】
順位/駅名/価格相場(所在地)
1位 洋光台 2350万円(神奈川県横浜市)
2位 西川口 3037.5万円(埼玉県川口市)
3位 新杉田 3180万円(神奈川県横浜市)
3位 蕨 3180万円(埼玉県蕨市)
5位 本郷台 3185万円(神奈川県横浜市)
6位 港南台 3340万円(神奈川県横浜市)
7位 与野 3380万円(埼玉県さいたま市)
8位 大宮 3390万円(埼玉県さいたま市)
8位 新子安 3390万円(神奈川県横浜市)
10位 根岸 3580万円(神奈川県横浜市)

シングル向け、カップル・ファミリー向けともに横浜市の駅が1位に

中古マンションの価格相場が最も安かった駅は、シングル向け物件(専有面積20平米以上~50平米未満)は鶴見駅、カップル・ファミリー向け物件(専有面積50平米以上~80平米未満)は洋光台駅。どちらも神奈川県横浜市に位置する駅だが両駅は11駅分離れており、さほど近くはない。

鶴見駅と「CIAL鶴見」(写真/PIXTA)

鶴見駅と「CIAL鶴見」(写真/PIXTA)

シングル向け1位の鶴見駅は横浜・川崎市の京浜工業地帯を走るJR鶴見線の駅でもあり、500mほど歩くと京急本線・京急鶴見駅もある。駅の西側には「鶴見フーガ2」、東側には「CIAL鶴見」という駅ビルがそれぞれ直結しており、駅周辺にも商業施設が充実。JR京浜東北・根岸線で鶴見駅から横浜駅まで約10分、東京駅までは約35分と、アクセス面もなかなかいい。

鶴見駅に隣接するシングル向け7位・川崎駅のほうが大型商業施設はより豊富だが、川崎駅の価格相場が2980万円だったのに対し、鶴見駅は1980万円と1000万円も低く抑えられている。ならば住まいは鶴見駅、必要に応じて電車で1駅の川崎駅に買い物に出かける……というのもアリだろう。

洋光台駅(写真/PIXTA)

洋光台駅(写真/PIXTA)

カップル・ファミリー向けの1位になった洋光台駅は、JR京浜東北・根岸線で横浜駅まで約20分、東京駅までは約1時間5分という立地。駅前の広場が2018年8月、建築家・隈研吾氏によりリニューアルされ、明るくおしゃれな雰囲気に生まれ変わった。広場を囲むようにして飲食店やパン工房、青果店から各種クリニックに保育園までそろう商店街が広がり、周辺にスーパーやドラッグストアも。公園も点在するほか、体験型科学館「はまぎん こども宇宙科学館」も駅近くにあるので、小さな子がいる家族も遠出することなく楽しく過ごせるのがうれしいところ。

洋光台駅から東京駅まで1時間以上かかる点は少々気になるかもしれないが、価格相場はカップル・ファミリー向けランキングトップ10のうち唯一の2000万円台で、2位・西川口駅と比べると680万円以上も低かった。横浜市内で働く人にはアクセス面のネックも少ないので、住まいの候補地として検討する価値はあるだろう。

シングル向けランキングにはJR山手線も利用できる便利な駅がお目見え

続いて2位以下を見てみよう。シングル向けランキングには東京都内の駅も5駅選ばれた。そのうち注目は8位・田端駅と、同額9位の日暮里駅と鶯谷駅。JR京浜東北・根岸線は田端駅~品川駅の区間でJR山手線と並走している。同区間にあるこの3駅は、東京都内の路線の中でも中心的役割を担うJR山手線の停車駅でもあるのだ。

JR山手線と並走する区間では、JR京浜東北・根岸線は10時~15時台に一部駅を通過する快速運転も行っているものの、8位・田端駅は快速停車駅でもある。快速に乗れば田端駅から東京駅までは約15分、品川駅までは約25分。また、田端駅からJR山手線に乗れば池袋駅まで約10分、新宿駅まで約19分、渋谷駅までは約26分と、都内を代表する駅にも行きやすい。また、スーパーや雑貨店、飲食店を備えた駅ビル「アトレヴィ田端」が併設されており、帰宅前に買い物しやすい環境だ。

田端駅(写真/PIXTA)

田端駅(写真/PIXTA)

カップル・ファミリー向けランキングは2位以下にも神奈川県と埼玉県の駅が並んだ。そのうちJR京浜東北・根岸線で東京駅までの所要時間が最短なのは、約31分で行ける2位・西川口駅。駅には食料品店やレストラン、100円ショップが並ぶ「ビーンズ西川口」が直結している。駅東口側には商店街が続き、西口側には交番や、川口市役所の連絡室も。また、東口からバスに乗ると約7分でショッピングモール「イオンモール川口前川」に行くこともできる。生活環境が充実した街なので、家族で住むにもよさそうだ。

JR西川口駅 東口の様子(写真/PIXTA)

JR西川口駅 東口の様子(写真/PIXTA)

今回の調査では、シングル向けとカップル・ファミリー向けではランキングの顔ぶれがだいぶ異なっていた。唯一どちらのランキングにも入ったのが、シングル向け2位、カップル・ファミリー向け8位にランクインした大宮駅。JR京浜東北・根岸線で最も北側に位置し、東北新幹線や北陸新幹線などの新幹線、埼京線や高崎線といったJR各線、さらに東武野田線、埼玉新都市交通伊奈線・ニューシャトルも乗り入れる一大ターミナルだ。埼玉県を代表する駅だけあり、周辺の商業施設も充実している。

シングル向けとカップル・ファミリー向けのランキングの顔ぶれが異なる結果となったのは、そもそもJR京浜東北・根岸線の駅のうち、シングル編の調査条件(駅徒歩15分圏内に専有面積20平米以上~50平米未満・築35年未満のSUUMO掲載物件が11件以上ある、など)に該当しない駅が多かったせいでもある。カップル・ファミリー編で1位だった洋光台駅も、シングル編の条件を満たさないためランク外となった。

こうした結果を見ると、街によってシングル向け物件が多い、カップル・ファミリー向け物件が多いといった特徴があることが分かる。一人暮らしなのにファミリー向けマンションが多い街で物件探しをしても、なかなか気に入るものが見つからない……なんていうことも起こりえる。物件探しをする際は、「シングル層が多い」「ファミリーに人気が高い」など、どんな街なのかを知っておくとよさそうだ。その一つの目安として、駅ごとのSUUMOの掲載物件数を参考にするのもいいだろう。

●調査概要
【調査対象駅】JR京浜東北・根岸線の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分圏内、築年数35年未満、物件価格相場3億円以下、敷地権利は所有権のみ
■シングル向け物件:専有面積20平米以上、50平米未満
■カップル・ファミリー向け物件:専有面積50平米以上、80平米未満
【データ抽出期間】2019/12~2020/2
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、平日の日中時間帯の検索結果から算出(乗換時間を含む)
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載

目黒鉄骨大空間

所在地:目黒区下目黒
66万円(税込) / 147.97平米
山手線・南北線・東急目黒線・都営三田線「目黒」駅 徒歩4分

目黒駅から権之助坂を下り、Blue Bottle Coffeeの角を曲がってすぐ、クラフトビールと日本酒・ワイン、創作の燻製料理が楽しめるバーが1階に入った建物の2階にある、リノベーション済みのこのオフィス。



現テナントの退去に伴い、5月18日(月)までに審査が完了してご契約の ... 続き>>>.
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受け継がれるべき物語

所在地:山梨県南都留郡山中湖村平野
1,800万円 / 143.57平米(建物) 1,112.24平米(敷地)
富士急行線「富士山」駅 バス22分 「ホテルマウント富士入口」バス停 徒歩59分

★価格が下がりました★



忘れられない建築空間と景色が、そこにはありました。自然豊かな山中湖近くの別荘地「讃美ヶ丘」。



その広大な別荘地の中に、巨匠吉村順三氏に師事していた、大野 寛氏による設計の大きな平家があります。板張りの壁面や天井、ゆとりある天井高、居間に鎮座した暖炉と、 ... 続き>>>.
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「新型コロナ対策で未完成の引き渡し可能に」「住みたい街ランキング発表」【3月人気記事まとめ】

新年度を迎え、桜吹雪とともに心も晴れやかに……とはいかないのが、新型コロナウイルスのまん延。SUUMOジャーナルで3月に公開した記事でも、新型コロナの影響が住宅事情にまで及ぶという驚きの「新型コロナ対策で未完成の引き渡しが可能に!?何を注意すればよい?」が、読まれた記事のトップになりました。人気TOP10の記事を詳しく紹介します。
2020年3月の人気記事ランキングTOP10はこちら!

1位 新型コロナ対策で未完成の引き渡しが可能に!?何を注意すればよい?
2位 2020年の「住みたい街」TOP3は不動。「住民が好きな街」1位は意外な海辺の街!
3位 京都の元遊郭建築をリノベ。泊まって、食べて、働いて、が一つになった宿泊複合施設に行ってみた!
4位 今年から「住民に愛されている街」も発表!「SUUMO住みたい街ランキング 2020関東版」 記者発表会レポート
5位 4月から制度が変わる【フラット35】借りる人は要注意!
6位 テレワークが変えた暮らし[8] 高尾山のふもとに暮らし、趣味のトレランに打ち込む日々
7位 老朽化進む「団地」に新しい価値を。注目集める神奈川県住宅供給公社の取り組み
8位 乙武洋匡さんが「義足で歩く」ことを選んだ意味。テクノロジーで障がい者や高齢者の暮らしはどう変わる?
9位 高輪ゲートウェイ駅と周辺を数字で知る。品川からわずか0.9km、乗車数は1日2万人台?
10位 日本の住まいと暮らしをつくった「団地」。 懐かしの団地の歴史と最新事情とは?
※対象記事:2020年3月1日~2020年3月31日までに公開された記事
※集計期間:2020年3月1日~2020年3月31日のPV数の多い順

1位 新型コロナ対策で未完成の引き渡しが可能に!?何を注意すればよい?

新型コロナ対策で未完成の引き渡しが可能に!?何を注意すればよい?

(画像/PIXTA)

新型コロナウイルスの感染拡大で、住宅を建てる際に必要な建材や設備の生産が滞り、供給が足りなくなっています。国土交通省は、一部住宅設備が未設置のままでも施主への引き渡しに可能になるよう通達を行いましたが、そんな場面で注意すべきなのはどんな点か、重要ポイントを解説します。

2位 2020年の「住みたい街」TOP3は不動。「住民が好きな街」1位は意外な海辺の街!

2020年の「住みたい街」TOP3は不動。「住民が好きな街」1位は意外な海辺の街!

(写真撮影/SUUMO編集部)

「SUUMO住みたい街ランキング関東版」の最新版が発表。1位「横浜」、2位「恵比寿」、3位「吉祥寺」とTOP3の人気は健在です。注目は、昨年から強い存在感を示す「さいたま新都心」などのさいたま市中核エリア。上昇の背景や特徴も紹介します。

3位 京都の元遊郭建築をリノベ。泊まって、食べて、働いて、が一つになった宿泊複合施設に行ってみた!

京都の元遊郭建築をリノベ。泊まって、食べて、働いて、が一つになった宿泊複合施設に行ってみた!

(写真撮影/出合コウ介)

2月に京都でオープンした「UNKNOWN KYOTO」は、元遊郭の建物をリノベーションした宿泊複合施設。旧遊郭街の面影の残る街並みにあり、レトロモダンな外観や舟底天井の格式高い和室などが魅力にあふれています。地元・京都の人ですら知らないコアで個性的な街の活性化のきっかけにもなりそうです。

4位 今年から「住民に愛されている街」も発表!「SUUMO住みたい街ランキング 2020関東版」 記者発表会レポート

今年から「住民に愛されている街」も発表!「SUUMO住みたい街ランキング 2020関東版」 記者発表会レポート

(写真撮影/SUUMO編集部)

今回から始まった新項目「住民に愛されている街ランキング」では、規模は小さくとも歴史ある住宅地が多くランクインしました。「住みたい街」とは異なる顔ぶれの理由は、その街独特のカルチャーの魅力のようです。

5位 4月から制度が変わる【フラット35】借りる人は要注意!

4月から制度が変わる【フラット35】借りる人は要注意!

(画像/PIXTA)

売却予定の住宅にかかわる住宅ローンの取り扱いなど、【フラット35】の利用条件の一部が変わります。買い替えで利用する人は要注意ですが、返済年数が短い人の借り換えには朗報も。変更点や、総返済負担率の計算の仕方について解説します。

6位 テレワークが変えた暮らし[8] 高尾山のふもとに暮らし、趣味のトレランに打ち込む日々

テレワークが変えた暮らし[8] 高尾山のふもとに暮らし、趣味のトレランに打ち込む日々

(画像提供/山本遼)

山道を走るトレイルランニングで海外でも入賞経験のある村田さんは、結婚を機に高尾に引越したことで、平日も仕事前に練習が可能になり、大会での優勝にもつながったそう。部屋が広くなった分、仕事環境も快適になり、リモートワークの効率化も図れています。

7位 老朽化進む「団地」に新しい価値を。注目集める神奈川県住宅供給公社の取り組み

老朽化進む「団地」に新しい価値を。注目集める神奈川県住宅供給公社の取り組み

(写真提供/神奈川県住宅供給公社)

建物の老朽化や住民の高齢化など、団地が抱える課題は数多くあります。神奈川県住宅供給公社は、統合的なデータベース導入といったマネジメントの見直しや、敷地内や公社所有の共同菜園の管理や農業体験イベントの開催などに協力することを条件とした「アグリサポーター」制度などで再生に成功しています。

8位 乙武洋匡さんが「義足で歩く」ことを選んだ意味。テクノロジーで障がい者や高齢者の暮らしはどう変わる?

乙武洋匡さんが「義足で歩く」ことを選んだ意味。テクノロジーで障がい者や高齢者の暮らしはどう変わる?

(写真撮影/片山貴博)

乙武洋匡さんが昨年出版した著書『四肢奮迅』は、最新の技術を搭載したロボット義足や義手を装着し、「歩く」ことにチャレンジしたドキュメントです。チャレンジの経緯や現状、テクノロジーによる障がい者や高齢者の暮らしの変革についてのお話を伺いました。

9位 高輪ゲートウェイ駅と周辺を数字で知る。品川からわずか0.9km、乗車数は1日2万人台?

高輪ゲートウェイ駅と周辺を数字で知る。品川からわずか0.9km、乗車数は1日2万人台?

高輪ゲートウェイ駅の夜景(写真撮影/辰井裕紀)

名称に賛否を呼んだ山手線の新駅「高輪ゲートウェイ駅」が開業しました。地形や商業施設など駅の周辺状況や、周辺の家賃、また今後の地価への期待など、「数字」をフックに分析しました。

10位 日本の住まいと暮らしをつくった「団地」。 懐かしの団地の歴史と最新事情とは?

日本の住まいと暮らしをつくった「団地」。 懐かしの団地の歴史と最新事情とは?

(写真提供:UR都市機構)

日本の住まいに大きな影響を与えた、団地。かつてはエリート層が暮らす高嶺の花であり、戦後は新しいライフスタイルの象徴として、社会現象になりました。団地のこれまでの歩みとこれからをつくる動きを紹介します。

新型コロナウイルス感染症は、健康や仕事環境だけでなく住宅事情にまで影響を及ぼしています。「コロナ疲れ」という言葉もささやかれるようになり、人とのつながりや癒やしを求める気持ちが、団地というコミュニティへの関心につながったようにも思います。一方で、家探しや引越しは、本来心を弾ませるもの。最新版の住みたい街ランキングからは、世間の暗い風潮に負けず、楽しい未来への展望や希望のきっかけも、うかがえるようにも感じます。

台湾の家と暮らし[4] 台南の歴史地区・安平の古民家に暮らし、アートで高齢者と若者をつなぐ活動も

暮らしや旅のエッセイスト・柳沢小実が台湾の家を訪れる本連載。昨年は3軒のお宅におじゃましましたが、今年の1軒目におじゃましたのは、徐瑞陽さん(通称・クーパーさん)が住む、台南市・安平にある小さくて愛らしい平屋の一軒家です。歴史的な地域にある築80年の一軒屋での暮らしやまちおこし活動について、お話を伺いました。連載名:台湾の家と暮らし
雑誌や書籍、新聞などで連載を持つ暮らしのエッセイスト・柳沢小実さんは、年4回は台湾に通い、台湾についての書籍も手掛けています。そんな柳沢さんは、「台湾の人の暮らしは、日本人と似ているようでかなり違って面白い」と言います。2019年に続き、柳沢さんと自分らしく暮らす3軒の住まいへお邪魔しました。台湾南部の港町、台南・安平へ

台南市の中心地から車で約20分。安平は台湾南部の古都・台南市の一角にある、貿易で栄えた港町です。オランダ人が創建した台湾最古の城堡「安平古堡」、イギリス商人の古い倉庫にガジュマルの木が絡みついた「安平樹屋」、清朝の名臣によるフランス式の要塞「億載金城」などの古跡があることで知られ、観光スポットのひとつとして、国内外から多くの人が訪れています。ここにはオランダ統治時代、鄭氏政権時代、清朝統治時代、日本統治時代などに建てられた貴重な建築物の数々が残っており、建物からも台湾の歴史を追うことができます。

狭い小道の両側に、各家庭で育てている植物の鉢が置かれています。眩しい光と湿度の高い空気、まぎれもなくここが台南なのだと感じます(写真撮影/KRIS KANG)

狭い小道の両側に、各家庭で育てている植物の鉢が置かれています。眩しい光と湿度の高い空気、まぎれもなくここが台南なのだと感じます(写真撮影/KRIS KANG)

クーパーさんのご自宅は、オランダ統治時代(1624年~1662年)につくられた台湾最古の商店街・安平老街の中興街という通りにあります。この地域の住宅の屋根や壁、門などには、沖縄のシーサーに似た「劍獅」と呼ばれる獅子のモチーフがついていて、それぞれの家を守っています。

劍獅は民家の壁にもあしらわれています。その表情はさまざま(写真撮影/KRIS KANG)

劍獅は民家の壁にもあしらわれています。その表情はさまざま(写真撮影/KRIS KANG)

特徴的な門の上の飾りは、武器をモチーフにした昔の文化財。当時は泥棒や海賊対策でつけられていましたが、今は魔除けの意味をもち、クーパーさんの家だけに飾られているものだそうです。

実は、五年ほど前に偶然前を通って、印象に残っていたこの家。のちに取材に来るとは思ってもみませんでした。台湾はそんな素敵な偶然がたくさん(写真撮影/KRIS KANG)

実は、五年ほど前に偶然前を通って、印象に残っていたこの家。のちに取材に来るとは思ってもみませんでした。台湾はそんな素敵な偶然がたくさん(写真撮影/KRIS KANG)

門の飾りに平安への願いをこめて(写真撮影/KRIS KANG)

門の飾りに平安への願いをこめて(写真撮影/KRIS KANG)

この家はもともとボロボロで、住むにあたって大家さんが壁や屋根を補修しました。この地域で家のリフォームなどをする際は、台南市に申請して許可をもらう必要があり、その代わりに古い建物の保全のために少額ですが助成金が支払われます。

風が抜けて心地よいリビング。六畳とコンパクトですが、住みやすく整えられて閉塞感は皆無です(写真撮影/KRIS KANG)

風が抜けて心地よいリビング。六畳とコンパクトですが、住みやすく整えられて閉塞感は皆無です(写真撮影/KRIS KANG)

その一角にワークスペースがあります。棚には資料がぎっしりと(写真撮影/KRIS KANG)

その一角にワークスペースがあります。棚には資料がぎっしりと(写真撮影/KRIS KANG)

壁は、芯の部分はレンガで、外側はモルタルに牡蠣の殻を砕いて混ぜたものが使われています。内側には防寒のために、50年前の新聞紙が貼ってありました。屋根はもともとは瓦でしたが、今は小規模な家を直してくれる職人さんがいないために、修繕で板金に変わりました。おかげで、夏場はとても暑いそうです。

50年前の新聞紙が貼られた室内の壁(写真撮影/KRIS KANG)

50年前の新聞紙が貼られた室内の壁(写真撮影/KRIS KANG)

小さく愛らしい古民家との出合い

家は20坪の土地に建っていて、敷地面積は15坪。間取りは各6畳ほどの部屋が3つにキッチン等が付いた3Kです。

間取り(イラスト/Rosy Chang)

間取り(イラスト/Rosy Chang)

安平は昔から家を建てられる土地が狭く、どの家もコンパクト。かつてこの家には、中国から渡ってきた2家族が住んでいました。
ちなみに、古い家に住んでいて不便な点は、3月に「反潮現象」で海から湿度が高い南風が吹いて床が濡れることだそうです。

高雄市出身のクーパーさんは昔から古い家や庭付きの家が好きで、海の近くに住みたいとずっと考えていました。台南市の芸術大学で建築芸術を学び、高雄市橋頭の文化協会で働いていたこともあります。安平の街のことは、学校の空間デザインの仕事をしていた時に知りました。

中興街にて(写真撮影/KRIS KANG)

中興街にて(写真撮影/KRIS KANG)

この街に住むことになったのは、安平に住みたくてブラブラ歩きまわっていた際に、陶芸家の友人から別の陶芸家が住んでいたこの家を紹介されたのがきっかけ。最初は又貸しで借りていて(台湾は賃貸物件の又貸しがOKなのです)、のちに大家さんと直接契約をしました。
街の人は好奇心が旺盛で、引越してきた時は、近所の人たちが「なぜここに?」と口々に聞いてきたそうです。小さな街では近所の人たちと仲が良く、ドアは開けっ放しでも安心なほど。近所との関係が濃いと言います。

(写真撮影/KRIS KANG)

(写真撮影/KRIS KANG)

こじんまりした、住みたくなる路地。たわわに実をつけたマンゴーの樹があり、その下では猫がのんびりと昼寝をしていました(写真撮影/KRIS KANG)

こじんまりした、住みたくなる路地。たわわに実をつけたマンゴーの樹があり、その下では猫がのんびりと昼寝をしていました(写真撮影/KRIS KANG)

建物の壁には牡蠣の殻などが埋め込まれていました(写真撮影/KRIS KANG)

建物の壁には牡蠣の殻などが埋め込まれていました(写真撮影/KRIS KANG)

鮮やかな色の花が咲き乱れて奥には十二宮社三靈殿がある。台南らしい風景が広がります(写真撮影/KRIS KANG)

鮮やかな色の花が咲き乱れて奥には十二宮社三靈殿がある。台南らしい風景が広がります(写真撮影/KRIS KANG)

(写真撮影/KRIS KANG)

(写真撮影/KRIS KANG)

ギャラリーで心の交流を

5年前からは、さらに自宅の隣の建物も借りて、ギャラリーを運営し始めました。才能があれば職業や年齢は関係なく、アーティストではない一介の人を見出して作品を紹介しています。漁師で画家のおじさんが描いた魚の絵や、90歳のおばあちゃんが描いたお花の絵、近所に住む子どもの絵の展示も行っています。ギャラリーの展示は、春分、夏至、秋分、冬至の年4回実施。出展料や入場料は取らない代わりに、グッズ等を自分でデザインして、その売り上げを収入にしています。

クーパーさんが営むギャラリー(写真提供/クーパーさん)

クーパーさんが営むギャラリー(写真提供/クーパーさん)

今春開催されている展覧会「日常の中でささいな幸せを感じること(原題:生活裡讓你快樂的小事)」には、90歳のおばあちゃん吳占さんによる絵が展示されています。絵を描くことはおばあちゃんにとって一番幸せな時間です(写真提供/クーパーさん)

今春開催されている展覧会「日常の中でささいな幸せを感じること(原題:生活裡讓你快樂的小事)」には、90歳のおばあちゃん吳占さんによる絵が展示されています。絵を描くことはおばあちゃんにとって一番幸せな時間です(写真提供/クーパーさん)

このギャラリーの目的は、外から訪れる若い人だけでなく、地元のお年寄りにも楽しんでもらうこと。ギャラリーに来た人が、外に座っている近所のおばあちゃんたちと立ち話したりするのがうれしいのだとか。これが彼が考える町の活性化。外の人に認知してもらって収入を得ながら、住んでいる人にも心の豊かさと訪れた人との交流を提供しています。
そして、昔の建物や地方の歴史をより多くの人に知ってもらいたいと、zine(小規模・少部数の紙媒体)やトークイベントなどを通じて、昔の人の話を伝えています。

地元のお年寄りの話をまとめたzine(写真撮影/KRIS KANG)

地元のお年寄りの話をまとめたzine(写真撮影/KRIS KANG)

新聞のようなスタイルでつくったzine。漁師のおじさんや、絵の紹介がされています(写真撮影/KRIS KANG)

新聞のようなスタイルでつくったzine。漁師のおじさんや、絵の紹介がされています(写真撮影/KRIS KANG)

zineの裏側は、漁師のおじさんが描いた魚の絵。力強いタッチとビビッドな配色が魅力的(写真撮影/KRIS KANG)

zineの裏側は、漁師のおじさんが描いた魚の絵。力強いタッチとビビッドな配色が魅力的(写真撮影/KRIS KANG)

古い町並みを保全し、発展させるために

ちなみに、安平のような古い町は近年台湾の若い人たちにも人気があって、ここに住んでお店や小さい宿をやりたいという人も多くいます。けれども、そもそも家の数自体が少ないのと、たとえ空き家があっても使用するためにはそれぞれ元の持ち主の子孫などたくさんいる持ち主全員に許可を得なければならず、貸し出しや修繕がなかなかできないそう。台湾の不動産事情で根深い問題だとクーパーさんは話してくださいました。

(写真撮影/KRIS KANG)

(写真撮影/KRIS KANG)

(写真撮影/KRIS KANG)

(写真撮影/KRIS KANG)

昔ながらののどかな町並みで、住む人の生活も垣間見られる中興街。偶然来た人だけが知ることができる、宝物のような場所です。この通りは奇跡的にかつての雰囲気を残していますが、3本ある通りのうちの2本は商業化して、いわゆる観光地になってしまいました。
ビジネスだけが目的の人が訪れると、そこの昔ならではの雰囲気は壊されてしまいます。景観だけでなく、住む人の生活も守りたい。この通りには小規模な宿やフランス人が経営しているカフェがありますが、今後はそのような生活感や街の良さを尊重したスポットがさらに増えるといいと彼は考えています。どの土地も、代わりのないかけがえのない場所。クーパーさんは、古跡の保全と高齢者との交流という、大きなテーマに向き合っています。

台湾のおばさまはとてもお洒落。そして目が合うとにっこりと微笑んでくださいます(写真撮影/KRIS KANG)

台湾のおばさまはとてもお洒落。そして目が合うとにっこりと微笑んでくださいます(写真撮影/KRIS KANG)

近所にある芋菓子「蜜地瓜」の屋台。サツマイモに黒糖水をからめながら6時間かけてつくる安平でおなじみのスナック。「仕上げにピーナッツシュガーパウダーをまぶしたまろやかな口当たり。幸福感と郷愁を感じます」とクーパーさん(写真撮影/KRIS KANG)

近所にある芋菓子「蜜地瓜」の屋台。サツマイモに黒糖水をからめながら6時間かけてつくる安平でおなじみのスナック。「仕上げにピーナッツシュガーパウダーをまぶしたまろやかな口当たり。幸福感と郷愁を感じます」とクーパーさん(写真撮影/KRIS KANG)

サツマイモの甘みが濃厚に引き立ち、手が止まりませんでした(写真撮影/KRIS KANG)

サツマイモの甘みが濃厚に引き立ち、手が止まりませんでした(写真撮影/KRIS KANG)

●展覧会情報
「日常の中でささいな幸せを感じること(生活裡讓你快樂的小事)」
会期:2020年4月19日(日)までの土・日・月・火曜
時間:13:30~18:00
住所:台南市安平区中興街47号
チケット代:50元/枚(ポストカード1枚をプレゼント)
※マスクを持参して着用してください。
※入り口にアルコール消毒液を設置します。
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※上記の開催イベント情報は現地・台湾のものです。現在、台湾では、海外からの渡航者に対しては一定期間の外出禁止令が出ています。

心おだやかな日々

所在地:品川区旗の台
17万5,000円 / 59.67平米
東急池上線・東急大井町線「旗の台」駅 徒歩5分

ナチュラルな質感が、目から肌からと伝わってくる空間です。こんな空間で過ごせたなら、きっと日々、おだやかにやさしい気持ちでいられるのだろうな。



なるべく自然素材をセレクトするというのが、リノベーションに際してのオーナーの強いこだわり。



さらっと足裏に心地よい、パイン材の無垢フロ ... 続き>>>.
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若宮正子さん「これからの高齢者に必要なのは“デジタル”」。日本人の意識に課題も

81歳でシニア向けのアプリ「hinadan」を開発して以来、国内外からデジタル世界におけるシニアの代弁者として注目されているICTエバンジェリストの若宮正子さん(85歳)。世界に先駆けて超高齢化社会を迎える日本は、PCやスマホに限らず、AIスピーカーをはじめとしたデジタル機器を導入することで、シニアの生活は目覚しく快適になるはずだと語る。情報管理の重要性とデジタル機器への期待について、話を聞いた。
自己情報の管理に疎い日本人。ITリテラシーの前に、意識改革を

昨年、世界で最も電子政府が整っていると言われる国、エストニアを訪れたという若宮さん。エストニア訪問で一番感じたのは「国民も、国家も、個人の情報をとても大切にしていることでした」と話す。例えば、日本人は自分の健康情報を正確に把握していない人が多い。一方エストニアでは、個人の健康に関する総合的なデータベースの中に、健康保険の情報と一緒にかかりつけ医の診断情報(カルテ)が共有されており、ワクチンの摂取情報や、薬の処方内容など全てを自分で確認することができるうえ、管理もできるという。

この重要性が顕著に現れたのが、今年1月に日本で起きたダイヤモンド・プリンセス号における集団船内隔離。世界中の人が乗り合わせた現場で、予定より長期的な滞在を余儀なくされたシニアの中には、持ち合わせの持病の薬が不足する事態に見舞われた人もいたらしい。そんな時、多くの外国人たちは、自分が処方されている薬の種類や量を的確に把握しており、必要な薬を医師に伝えることができたため、すぐに処方箋を用意してもらえたとのこと。一方、日本のシニアは薬の色やその数を伝えることしかできず、自分がどんな薬をどれだけ飲んでいるか分からない人もいたという。ましてやかかりつけ医の連絡先さえ把握していない人もいたそうだ。

「エストニアのシニアたちに、パソコンの使い方はどうやって覚えたのですか?と聞いたら”By Myself(独学で)”と答える人が多かったことに驚きました」と若宮さん。ご自身も、スマホもなんとなく触り始めたら、だんだん使い方が分かるようになったのだそう(写真撮影/片山貴博)

「エストニアのシニアたちに、パソコンの使い方はどうやって覚えたのですか?と聞いたら”By Myself(独学で)”と答える人が多かったことに驚きました」と若宮さん。ご自身も、スマホもなんとなく触り始めたら、だんだん使い方が分かるようになったのだそう(写真撮影/片山貴博)

若宮さんは、「私は海外へ一人で旅行に行くことも多いので、スマートフォンに処方箋とかかりつけ医の診察券を画像で保存して、常備薬については英語で何と説明するかのメモもスマホに保存しています」と準備に余念がない。「日本にはエストニアのような健康に関する総合的なデータベースがあるわけではないので、一人ひとりがしっかりと情報を管理しておかねばならないはずなんです。なのに、“他人任せ”という人が多いのが非常に残念です」と若宮さん。これはパソコンやスマートフォンの操作ができるかという以前の問題で、「自分の情報は自分で管理しなくてはいけないから、そのためにデジタル機器を使う、という意識を持つことがまず大切だと痛感しました」と続ける。

行政業務を電子化するには、全国民のITリテラシーが平均的に高い状態でなくては成り立たない。これに対し「シニアの協力なしには実現できない」という話を、金融庁主催のイベントで海外から参加したパネラーから聞かされたという若宮さん。若宮さんがある企業と行った調査では、エストニアで100名のシニア(60歳以上)に聞いたろころ、84人がすでに電子政府サービスを使っていると結果が出た。そこから学んだことは、政府と民間企業が協力し、シニアをはじめとした非デジタルネイティブユーザーでも使いやすい目線で構築されたシステムを用いて、統一された操作手順を持つことの重要性だという。

自身が開発したシニア向けゲームアプリ「hinadan」を操作する若宮さん(写真撮影/片山貴博)

自身が開発したシニア向けゲームアプリ「hinadan」を操作する若宮さん(写真撮影/片山貴博)

シニアの未来で期待を寄せるのはAIスピーカー機器

「将来的にシニアにとって期待が持てるのはAIスピーカー関連のデジタル機器です」と若宮さん。スピーカーそのものの性能に期待しているのではなく、いかに家電や家庭内の機器と同調させることができるかがカギになると話す。特に高齢者の一人住まいや、老老介護家庭など、デジタルを使った自立支援が役立つ場面があるのに、そういう家庭に限ってネット環境がないことでデジタル導入が進んでいない事例が多いことを指摘する。

「パソコンも、スマートフォンも、多少なりとも操作手順を覚えてからでないと使えませんが、AIスピーカーの魅力は、その導入へのハードルが低い点」と語る。スピーカーと会話をするだけで、家電を動かしたり、調べ物が簡単にできるからだ。「テレビをつけて」と言う代わりに、「テレビをオンにして」や「テレビが見たい」と言った言い方に変えても、今のAIスピーカーはほぼ対応可能なレベルだ。また事前登録さえしておけば「テレビさつけてけろ」といった方言でさえ、対応可能になるところまで進化している。

日常的にAIスピーカーを愛用しているという若宮さんは、出張前に天気を確認したり、台所で料理に必要な情報を得たりするなど、両手が塞がっていても、瞬時に情報検索できるという便利さを実感しているという。「スマートフォンでさえ、立ち上げて検索するまでに1分ほどはかかりますが、AIスピーカーを使えば、一瞬。AIスピーカーこそ、シニアにぴったりのデジタル機器です」と話す。

表計算ソフトEXCELを使ったエクセルアートは、若宮さんが「シニアがパソコンやテクノロジーに親しむきっかけになれば」と考案したもの。この日の服は、自身の作品をプリントしたオーダーメイド品(写真撮影/片山貴博)

表計算ソフトEXCELを使ったエクセルアートは、若宮さんが「シニアがパソコンやテクノロジーに親しむきっかけになれば」と考案したもの。この日の服は、自身の作品をプリントしたオーダーメイド品(写真撮影/片山貴博)

シニアがデジタルに親しむためには? 自治体も支援を

総務省統計局によると、年齢階層別インターネット利用状況は13~60歳はほぼ100%に近いのに対して、61歳以上になると70%程度に減り、70代になると47%、80代になると20%に減少する(「2020年国勢調査 インターネット回答の促進に向けた検討状況」より)。こうした状況に対して、自治体などが積極的にネット環境を整備すると同時に、AIスピーカーの設置と、それらを家電と繋ぐセッティングを行う「お助けマン(支援員)」の必要性を若宮さんは提案している。地域包括センターのような場所がハブとなってそれらを普及させていくことで、シニアのデジタル化を前進させることができるのではないかということだ。

一方シニアに対しては、若宮さんは「細かい操作を丁寧に覚えようとするよりも、全体像をもっと把握することに努めた方がいいのでは」と提案する。LINEの操作をひとつずつ一生懸命覚えることではなく、まず適当に操作をしてみる。そしてやり方を体感することで、デジタル機器に慣れることを勧めたいと話す。「重箱の隅をつつくような学び方ではなく、コンピューターとは何かといった全体像を掴む考え方を持っていることが必要だと思います」と投げかける。また「『もう歳だから……』と言ってしまわずに、無理のない範囲で触ってみるのが一番」と続ける。

そんなシニアたちがデジタルへの一歩を踏み出すきっかけになっているのは、“孫のような愛おしい存在”と話す若宮さん。実際、孫の写真を見たい、孫と話したいという欲求が、シニアたちのデジタル化に一役買っているのは事実だろう。

「エクセルアート」でつくった作品の数々。若宮さんは「シニアは手芸などのとっつきやすいものから、コンピューターの存在に親しむのがいいのではないか」と話す(写真撮影/片山貴博)

「エクセルアート」でつくった作品の数々。若宮さんは「シニアは手芸などのとっつきやすいものから、コンピューターの存在に親しむのがいいのではないか」と話す(写真撮影/片山貴博)

「私が“にわか有名人”になって以来、それまでの10倍は仕事をこなしているんですよ」と終始笑顔で話す若宮さんからは、聞くとやりたいことが次々とあふれ出る。昨今のコロナウイルス騒動で、若宮さんの主催イベントも中止を余儀なくされたというが、オンライン配信に切り替えた結果、視聴者は会場のキャパシティを超える1000人以上にも増えたそうだ。また今後は自宅から動画配信ができるように、必要な機材を準備していると話す若宮さん。急な出来事にしなやかに対応する様は、実に若々しい。「ちょうど気軽に動画配信をしたかったので、良い機会」と話す若宮さんは、持ち前のポジティブな姿勢で、まさにピンチをチャンスに変えている。これからの活躍も楽しみだ。

『老いてこそデジタルを。』(1万年堂出版 刊)●取材協力
若宮正子さん
昭和10年、東京都生まれ。東京教育大学附属高等学校(現・筑波大学附属高等学校)卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入社。定年をきっかけにパソコンを購入し、楽しさにのめり込む。シニアにパソコンを教えているうちに、エクセルと手芸を融合した「エクセルアート」を思いつく。その後もiPhoneアプリの開発をはじめ、デジタルクリエーター、ICTエバンジェリストとして世界で活躍する。シニア向けサイト「メロウ倶楽部」副会長。NPO法人ブロードバンドスクール協会理事。熱中小学校教諭。
『老いてこそデジタルを。』(1万年堂出版 刊)

”痛み”とともに働く――精神障がい者がテレワークで得た変化

 日本では今、在宅で生活する障がい者約365万3000人のうち、雇用されている人は約56万人と約15%程度にとどまる(※)。また、うまく就業につながっても、職場になじめなかったり、ストレスを抱えて離職してしまうケースも少なくないという。
このような不均衡を解決すべく、企業には障がい者雇用の拡大が求められている。前回の記事「通勤できない精神障がい者に、テレワークで広がる働く機会。在宅雇用支援サービスのいま」では、テレワークが障がい者雇用の推進につながっている動きについて、企業、障がい者両方の視点からお伝えした。

今回お話を聞いたのは、在宅雇用支援サービスを通じて就職し、自宅でテレワークをする岸さん、24歳。テレワークを選択した理由、就職活動、日々の生活について詳しくお話を聞いた。

強い“不安”と、原因不明の痛みがおそう日々

「やっと家族の負担にならないと思える生き方ができるようになりました」

そう笑顔で語る岸さん。幼いころから過ごしてきた湘南エリアの一軒家で両親と同居しており、不安の症状や原因不明の体の痛みを抱えながらもテレワーカーとして働いている。

自宅で取材に応じてくれた岸さん(撮影/片山貴博)

自宅で取材に応じてくれた岸さん(撮影/片山貴博)

高校卒業後に看護師を目指して看護大学に入るも、実習がきっかけで大きく体調を崩してしまった。結果的に進路変更という形で退学を決断したものの、不調が悪化し、抑うつ状態や強い不安の症状が生じ始めた。その翌年には原因不明の痛みが発生する身体症状症も併発し、胸と右足の痛みに常に悩まされるようになった。

テレワークで働き始めて半年が経ち、罹患した当時に比べると大きく落ち込むことは少なくなったものの、未だに不安の症状は強い。

「『出かける30分前に起きる』という友人がいるのですが、私は絶対にできないです(笑)。最低でも外出する2時間前には起きて、忘れ物がないか何度もチェックします。そうしないと気が済まなくて」

岸さんは左手に持った杖に体重を移動しながら、足の痛みを避けるように一歩一歩ゆっくりと歩く。「バスや電車で数駅を移動するだけでも大変です」と、岸さんは表情を歪める。

「私にとっては、出勤自体がかなり消耗することなんです。面接に行って帰ってくるだけでも、疲労感がすごくて、痛みがひどくなってしまうこともありました。だから家で仕事ができるのは、本当にありがたいことなんです」

仕事中は一人だけど、いつでも相談できる自室での仕事中の様子(撮影/片山貴博)

自室での仕事中の様子(撮影/片山貴博)

岸さんが働き始めたのは、昨年8月、カラオケの第一興商だ。カラオケアプリで配信している動画のチェック作業や、競合他社が出している求人など、採用関係の情報の収集と報告を行っている。

1日の労働時間は6時間。朝10時に出勤して、1時間のお昼休憩を挟んで17時に退勤。作業中は1人だが、仕事で分からないことがあればいつでも在宅勤務による雇用に対し支援を行っている企業が提供するオンラインサービスを通じて担当者にチャットで質問できる。

「在宅雇用支援サービスの方が間にいてくれるのは、とてもありがたいです」と岸さん。

「体調が完璧な状態ではないので、どうしても不安になることが多くて。直接会社に聞くのは少し気が引けるような場合でも、担当者の方が仲介してくださることでスムーズに進むこともあり、とても感謝しています。仕事をしているときは1人でも、相談できる人がいつもいてくれるのは、すごく心強いです」

10時出社という条件も、岸さんにとってはありがたい理由がある。

「気温が低い日や少し無理をした日には、夜間に呼吸のたびに胸が痛んで何時間も眠れなくなることがあるんです。痛みが落ち着いてくる朝の4時くらいにようやく眠りにつけるのですが、10時から自宅で業務開始であれば、そこから最低限の睡眠が取れます。テレワークでなければ、こんな風に痛みを抱えながら働くことはできませんでした」

自宅のパソコンから利用する在宅雇用支援サービスのオンラインシステム(撮影/片山貴博)

自宅のパソコンから利用する在宅雇用支援サービスのオンラインシステム(撮影/片山貴博)

薬を服用したり、温めて痛みを和らげたりしながら生活している(撮影/片山貴博)

薬を服用したり、温めて痛みを和らげたりしながら生活している(撮影/片山貴博)

身体は痛い。それでも働きたい

「精神障害の症状が出はじめたころは、抑うつ状態がひどくて、笑うことすらできない状態でした。こんな風に声を出す気力もなかったんです」

学生時代に病気になった岸さんには、職歴がなかった。「最初は1カ月もつかどうかすら不安でした」と、岸さんは笑う。

ところが予想に反して、リラックスした状態で業務ができることで痛みをある程度抑えられた上に、精神面でもプラスの影響があったという。

「病気になったとき、もともと低かった自己肯定感が地に落ちました。『お金ばかりかかっていて申し訳ない、いないほうが良いのでは……』と、本気で考えてしまいました。
でも今は病院代や交通費、食費も自分で払うことができる。そうした“できること”の積み重ねで、少しずつ自信を取り戻せているのだと思います」

しかし、仕事が体に与える負担はゼロではない。1日の業務を終えたあとは横になることが多い。特に痛みの強い日は、休憩時間に横になることで対処している。

「程度の差はありますが、痛みは割と常に生じているので、正直もし働かなくていいのなら働きたくないと思うこともあります。でも……」

岸さんは、“それでも働きたい理由”を続けた。

「私は病気をしたことで、本来かけなくていい心配を両親にたくさんかけてきました。金銭的な負担もかけてしまいました。家でお手伝いをしていても、『本当に申し訳ない……』という思いは、どうしても拭えません。だからこそ、どこか一部だけでも、自立していたい。また、働けていることで過剰な不安や抑うつ感の頻度が以前より落ち着いてきたように思います。自分のためにも、これからも働き続けていきたいと思っています」

(撮影/片山貴博)

(撮影/片山貴博)

現実は厳しい……。難航したテレワーク前提の就職活動

幸運にも岸さんは、テレワークが可能な仕事に就くことができた。しかし、テレワークを前提に精神障がい者を雇用する企業はまだ少ないのが現実だ。岸さんは就職活動を次のように振り返る。

「在宅雇用の求人は、ありそうでなかった。実際に就活を初めてみると、難しさを実感しました。応募しても、『身体障がい者ではない』とか、『重度障がい者ではない』とか、企業側が設定している条件に合わなかったために落ちたり、受けることができなかったりもしました」

在宅で働く選択肢は、当時通っていた就労移行支援施設の卒業生の話を聞いて知った。卒業生は在宅の就職先を見つけるまでに、実に20社以上の面接を受けたという。その話を聞いて覚悟はしていたものの、現実がこれほどまでに厳しいとは……。

在宅にこだわっていては、いつまで経っても働けないかもしれない。それなら体に大きな負担がかかってでも、通勤を伴う求人に応募するべきだろうか――。そう諦めかけたとき、岸さんはネットで偶然、在宅での就労をサポートする会社があるのを見つけた。

「障がい者雇用が専門のエージェントはあっても、在宅の求人があるとは明記されていないことがほとんど。そんななか、在宅雇用支援を全面に打ち出しているサービスはとても珍しかったので、すぐに申し込みました」
企業は障がい者を雇用したくても、働き方について雇用経験が少なかったり、どのようにマネジメントすればいいかわからなかったりなどで、なかなか雇用は進んでいない。そんな中、企業側、働きたい障がい者側とのマッチングや、双方に対して働きやすい環境づくりのサービスとを展開する企業が登場してきている。岸さんはその中で、障がい者の在宅雇用支援サービスを打ち出している株式会社D&Iと出会った。

(撮影/片山貴博)

(撮影/片山貴博)

精神障がい者の在宅勤務の求人はまだ多くはなく、岸さんの元に連絡が来たのは、それから3カ月後だった。

「幸運なことに、面接を受けてすぐに第一興商への入社が決まりました。通勤しなければならない求人に、無理をして応募しなくて本当によかったです」

職歴や障害、求人数などのさまざまなハードルを乗り越えて就職した岸さんは今、痛みを抱えながらも、一歩ずつ、前進している。

今回の新型コロナの影響で、多くの人が経験し、注目を浴びているテレワーク。働きたくても働けない障がい者が、かねてよりずっと求めてきた働き方ながら、ゆっくりとしか進んでこなかったことは、あまり知られていない。
自分にとって働きやすい環境とは?という問いに、皆が向き合っている今は、見方を変えれば、こうした困難を抱える人たちがいきいきと働ける社会の実現を、より加速させるチャンスなのかもしれない。

(注※)障がい者の数字は「令和元年障害者雇用状況の集計結果(厚生労働省)および「令和元年障害者白書(内閣府)」より

通勤できない精神障がい者に、テレワークで広がる働く機会。在宅雇用支援サービスのいま

「日本では今、在宅で生活する障がい者約365万3000人のうち、雇用されている人は約56万人と約15%程度にとどまる(※)。またうまく就業につながっても、職場になじめなかったり、ストレスを抱えて離職してしまうケースも少なくないという。このような不均衡を解決すべく、障がい者の法定雇用率は段階的に引き上げられており、企業には障がい者雇用の拡大が求められている。とはいえ、障がい者雇用の経験が少なかったり、社内のバリアフリー状況も不十分だったりと、雇用したくてもどのようにしたらいいのか戸惑っている企業も多い。

テレワークに注目が集まり誰もが「職住融合」しつつある今。“働きたくても働けない”障がい者と、障がい者を雇いたいけれど雇えない企業、実は多くの人が知らないところで、両者を結びつける手段としてテレワークに注目が集まっている。テレワークの導入が障がい者雇用にもたらす変化とは何か。

身体障がい者に比べ約1/4にとどまる精神障がい者雇用の現状

障がい者を雇用する人数の割合を定めた「法定雇用率」。民間企業では2018年4月に2.0%から2.2%になり、今後も段階的な引き上げが予定されている。

また2018年4月からは、法定雇用率の算定式に精神障がい者が追加された。それまでの法定雇用率の考え方が、身体障がい者や知的障がい者だけを対象としていたのが、本改正以降は精神障がい者の雇用も含まれるようになったのだ。

2019年6月1日現在、障がい者の雇用状況は16年連続で過去最高を更新し、約56万人(※)。そのうち、法定雇用率目標の対象となる民間企業に雇用されている障がい者数と、障がい者の総数(以下カッコ内の数字※)を見ると、身体障がい者が約35.4万人(約436万人)、知的障がい者が約12.8万人(約108万2千人)、精神障がい者が約7.8万人(約419万3千人)となっており、後押しが後発でスタートした精神障がい者の雇用はまだまだ進んでいないことが分かる。適切な環境が整えば働ける精神障がい者は多いが、企業は「どんな仕事を任せられるのか?」「どうマネジメントしたら良いのか?」が分からず、その雇用を自力で進めにくい状況にあった。

そんな、障がい者を雇いたい企業と、働きたい障がい者をつなぐサービスを展開する企業が登場してきている。今回、お話を伺った株式会社D&Iもその一つ。なかでも在宅勤務による雇用に対し支援を打ち出している企業だ。

お話を伺った株式会社D&I 管理本部長の谷口真市さん(撮影/片山貴博)

お話を伺った株式会社D&I 管理本部長の谷口真市さん(撮影/片山貴博)

働きたい”障がい者に対しては、D&Iが求人を紹介し、担当者が面接にも同席。入社後は、業務上のやり取りは、全て自社の在宅支援サポートシステムを通じて行われる。企業側と障がい者の間に入るため、雇用される側は「企業には直接聞きにくい」こともチャットで気軽に質問が可能。さらに毎月のWeb面談では、仕事上の悩みや体調面での不安などを担当者がヒアリングし解決方法を探ることで定着率向上にも取り組んでいる。

管理本部長の谷口真市さんは、このような支援サービスの存在意義について、次のように語る。

「将来的には、僕たちが間に入らずに企業と障がい者の方がスムーズにやり取りできればベストです。でも今は、ひとりひとりの障害に合わせてどんな仕事をお願いしたら良いのかが分からない企業がほとんど。障がい者雇用を促進するためには、当分は私たちがサポートする必要があると思っています」

出典:D&Iホームページより。企業に対し、テレワークに必要な勤怠管理や業務状況把握、担当者とのコミュニケーションなどができるサポートツールを提供することで、雇用を受け入れる体制準備が簡単になる仕組みだ。

出典:D&Iホームページより。企業に対し、テレワークに必要な勤怠管理や業務状況把握、担当者とのコミュニケーションなどができるサポートツールを提供することで、雇用を受け入れる体制準備が簡単になる仕組みだ。

従来の求人では、障がい者雇用を増やせなかった

株式会社第一興商は、このサービスを通じて障がい者雇用を拡大した企業の1つだ。

第一興商は従来より、カラオケ店や飲食店の清掃業務など主に現場で障がい者を雇用していたが、2018年4月の法定雇用率引き上げをきっかけに、新たに12名の障がい者を雇用することとなった。

通勤を伴う業務は、それに対応できない人も多く、求人を出しても、新たな応募は増えなかった。「今までの延長線上で募集をしていても採用や定着の見込みは低い、そう思いながらさまざまなことを模索していました」と、同社で人事を担当する高木俊秀さんは語る。

高木さんたちがテレワークを前提とした障がい者雇用の検討を始めたのは、D&Iからの提案がきっかけだった。2019年春より、障がい者の大量募集に踏み切り、2020年3月時点で、新たに17名の障がい者雇用につながっている。

会社では初となる、テレワーク前提の障がい者雇用に向けて、社内ではそれなりの準備を要した。

「全社にテレワークについて説明し、それぞれの部署で、障がい者の方が自宅でできる業務についてアンケートを取りながら、まとめていきました。働き方にあった社内規則もD&Iに相談しながら整備し、受け入れ体制を整えていきました」

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

「業務中の様子が見えないことへの心配はありました。でも、テレワーク専用システムにパソコンのスクリーンショットを確認できる機能がありますし、成果物もきちんと提出されます。何よりもよかったことは、障がい者の方たちが在宅で勤務できることに大きな喜びを感じていることです。成果物にも工夫を凝らすなど、前向きに行動いただいています」

また、いい意味で、”想像と違うこと”もあったそう。
「最初は『テレワーク導入は障がい者雇用のため』と思っていましたが、これをきっかけに、何かあった際には一般の社員も在宅勤務を可能にするなど、全社的に勤務体系を見直す発想にもつながりました」

「通勤がないなら、普通に働けるかもしれない」

一方、障がい者は、テレワークについてどのように感じているのだろうか。テレワークを始めたNさん(34歳)に話を聞いた。

東京都中野区の自宅で両親と同居するNさんは、不安障害を抱えている。今も不安や緊張を和らげる薬や睡眠薬を服用しており、第一興商で働き始めるまでは年金のみで暮らしていた。20代前半でわずかな期間経験した飲食店でのアルバイトを除けば、今回が初めての仕事だ。

自宅で取材に応じてくれた、第一興商で在宅勤務をするNさん(撮影/片山貴博)

自宅で取材に応じてくれた、第一興商で在宅勤務をするNさん(撮影/片山貴博)

「中学生のときに学校に通えなくなってしまったんです。高校も大学も、それが原因で中退しました。定期的に同じところに通うのが私の不安障害の症状ではどうしても難しいんですね。だから、もし通勤しなくて良いのなら、自分でも普通に働けるかもしれないと思いました」

将来を考え、通い始めた就労支援施設でテレワークの存在を知った。ネットで見つけ自ら連絡を取り、紹介された第一興商で働き始めて半年が経つ。

Nさんの仕事は、同業他社のサイトを参照しながら、楽曲の種類や映像の差異を比較したり、カラオケ店に関するネット上の口コミを収集したりなどをエクセルにまとめる、マーケティング業務等の一部。勤務時間は朝10時から17時、休憩は1時間で週5日働く。初めての仕事の感想は?

「すごく自分に合っています。通勤による体への負担が少ないことや、一番気持ちが落ち着く。家にいることでいい意味で肩の力が抜けて、リラックスして働けるのがありがたい。辞めたいという気持ちには、全くならないですね」

また、「職に就いたことで自信にもつながった」と、Nさんは続ける。

「ずっと迷惑をかけてきた両親もすごく喜んでくれましたし、自分で働いた収入があることで、金銭的にも精神的にもだいぶ余裕が持てるようになりました。これからも続けていきたいです」

初めての会社勤めで不安もあるNさんだが、月に1度は、在宅支援ツールを使って、オンラインで体調や業務についてなどの面談を担当者と行っている。面談以外にも、有休申請のやり方や業務に関するちょっとした疑問なども、このオンラインを通じて行われており、言いにくいことや不安に思うことも遠慮なく話せるという。

通勤がない分、自分の時間もしっかりとれるため、生活への満足度は高い。今は体調も比較的落ち着いている。「お金が貯まったら、北海道に美味しいものでも食べに行ってみたいですね」と、Nさんは微笑む。今、自分がこのように働けていることを、1年前には想像もできなかったという。

(撮影/片山貴博)

(撮影/片山貴博)

谷口さんによると、Nさんのように家を出て通勤先に通うことや満員電車に乗ることができないことで、働けていない人はかなりの数、存在するそうだ。人の気配のある緊張感のある場所の方が働きやすい人もいれば、自宅のように、最も安らげる場所だからこそ働けるという人もいる。障がい者かそうでないかに関わらず、自身に合った働き方で収入を得たり、社会と関わりたいと思うのはすべての人の願いだ。テレワークという新しい手段が、閉ざされていた機会を創出し、さまざまな人が、持つ力を発揮できる社会へとつながっていくことに期待したい。

(注※)障がい者の数字は「令和元年障害者雇用状況の集計結果(厚生労働省)および「令和元年障害者白書(内閣府)」より

家賃が払えない!など新型コロナ影響に、国の「救済」続々と!知っておくべきこと速報

新型コロナウイルスが蔓延し、ついに政府が「緊急事態宣言」を発令する事態に至った。企業の営業活動が停止し、生活に困窮する人たちの問題も浮上している。生活のあらゆる面に、新型コロナはさまざまな影響を与えているが、住まいに関連することで、今困っている人たちに対して、どういった救済措置があるのだろう?【今週の住活トピック】
厚生労働省/
「民間賃貸住宅事業者から紹介による住居確保給付金等の相談があった場合の適切な対応について」(4月3日)
「住居確保給付金の支給対象の拡大に係る生活困窮者自立支援法施行規則の改正予定について」(4月7日)生活に困窮して家賃が払えない人のための救済措置がある!

厚生労働省は都道府県などに対して、「民間賃貸住宅事業者から紹介による住居確保給付金等の相談があった場合の適切な対応について」という業務連絡を出した。これは、国土交通省が賃貸住宅関係団体などに出した、「新型コロナウイルス感染症に係る対応について」の業務連絡を受けたもの。

これらの対応の中心になるのが、「住居確保給付金」だ。この給付金は、「生活困窮者自立支援制度」の一部として位置づけられたもので、生活に困っている人の生活基盤となる「住まい」について家賃相当額を支給するものだ。

大本の「生活困窮者自立支援制度」は、収入や年齢にかかわらず生活や就労に関して困っている人たちに、相談窓口を設けて支援する制度だ。「就労支援」や「家計相談支援」、住まいのない人に衣食住を提供する「一時生活支援」などの事業と合わせて、「住居確保給付金」を支給する事業が設けられている。

国土交通省は賃貸住宅関係団体に対して、賃貸住宅に入居している生活困窮者に「住居確保給付金」の利用について相談窓口を紹介するように依頼し、厚生労働省は自治体に対して、賃貸住宅関係団体から依頼があったら相談窓口を紹介するとともに、住宅部局と連携しながら必要な支援をするように依頼しているわけだ。

では「住居確保給付金」は、どういった条件であれば受け取れるのだろう?

この給付金は、離職などによって住居を失った、あるいは失いかねない場合で、就職に向けた活動をする人に対して、家賃相当額(上限あり)を一定期間(原則3カ月間、就職活動を誠実に行っていれば最長9カ月)支給するもの。具体的には次のような条件が求められる。

●支給対象者の要件
(1)仕事を失って(個人事業主の廃業含む)から2年以内であること
(2)仕事を失う前に世帯の生計を主に支えていたこと
(3)ハローワークに求職の申し込みをしていること
(4)類似の他の給付を受けていないこと
このほかに、収入・資産が一定額以下(自治体などによって異なる)という条件がある。

また、新型コロナウイルスの影響を受けて、4月1日支給以降は従来あった年齢制限(65歳未満)を撤廃したほか、求職活動などについてもその要件を緩和する策を講じている。

さて、支給対象者の「離職=仕事を失う」に定義されるのは、正規雇用の場合だけだろうか?

厚生労働省に確認したところ、「もともと雇用形態によらない運用になっているので、非正規雇用でも対象」だという。派遣社員が派遣先の企業から雇い止めになり、派遣会社には登録している状態でも支給要件に該当する。また、筆者のようなフリーランスの場合でも、個別の事情に応じて支給対象者となる。

加えて、政府の「緊急事態宣言」を受けて、さらに支給対象者を拡大する(4月20日施行)ことになり、4月7日に業務連絡を出したという。この最新情報を詳しく見ていこう。

「離職又は廃業」に加えて、勤務先の休業や雇い止め、子どもの休校で勤務できないなど、本人には責任のない事情で給料などを得る機会が減少して、「離職又は廃業には至っていないが、こうした状況と同程度の状態に至っている」人も支給要件に該当することになる。フリーランスも含まれる。

また、2年以内に離職し、アルバイトで生計を維持している(つまり就労していることになる)場合、離職をきっかけに生活に困窮している状態が続いているなら、収入が一定額以下に該当すれば支給対象者になるということも、改めて周知をしている。

出典/厚生労働省「住居確保給付金の支給対象の拡大に係る生活困窮者自立支援法施行規則の改正予定について」より転載

出典/厚生労働省「住居確保給付金の支給対象の拡大に係る生活困窮者自立支援法施行規則の改正予定について」より転載

新型コロナウイルスの影響で仕事を失ったり、収入が大幅に減ったりしたことなどで、家賃の支払いに困っている人は、まずは相談窓口に相談して、受けられる支援があるかを確認するのがよいだろう。

●生活困窮者自立支援制度の紹介:厚生労働省

低所得者などでも借りられる賃貸住宅、セーフティネット住宅とは?

ほかにも、国土交通省では、「住宅確保要配慮者」のために「住宅セーフティネット制度」を用意している。この制度ではまず、入居審査などにより住宅確保が難しいと言われている「低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯など」が入居を希望したときに、「入居を拒まない住宅」を登録している。さらに、登録住宅に対して、住宅の改修や家賃を低額にするための補助金を出している。

つまり、入居を希望する人にとって、住宅セーフティネットの登録住宅ならば、低額な家賃でかつ、入居しやすいということになる。

この制度を支えるのが、各地にある「居住支援法人」だ。居住支援法人は、登録住宅を紹介するだけでなく、生活支援などの相談に応じることになっている。

新型コロナウイルスの影響で所得が減るなどして、低額な賃貸住宅に住み替えたいというようなときには、各地の居住支援法人に相談したり、セーフティネット住宅を探したりするとよいだろう。

●登録住宅について:セーフティネット住宅情報提供システム
●住宅確保要配慮者居住支援法人について:国土交通省
●新たな住宅セーフティネット制度について:国土交通省

住宅設備機器等の納品遅れで、住宅ローン控除の要件に適合しない!の救済措置

新型コロナウイルスの影響はほかにもある。

当サイトの3月18日付けの記事「新型コロナ対策で未完成の引き渡しが可能に!?何を注意すればよい?」で説明したが、設備機器を製作する工場の稼働状況が悪化していることで、トイレ、システムキッチン、ユニットバス、ドアなどの建材・設備の部品の生産が滞っている。これによって、住宅を新築したりリフォームしたりする場合で、予定より入居が遅れるという事態が発生している。

その際の注意点をその記事で書いたのだが、実は、ほかにも問題があった。「住宅ローン控除」の要件を満たさなくなるとか、「次世代住宅ポイント」が申し込みできなかったという事態が発生しかけているのだ。

「住宅ローン控除」とは、年末の住宅ローン残高の1%を10年にわたって所得税などから控除するもの。多くの住宅購入者などが、この減税制度を活用している。

2019年10月に消費税率が引き上げられたことで、10%が適用された住宅については、控除期間を3年延長(3年間は建物の購入価格の消費税2%分の範囲で減税)して13年にする特例措置が設けられている。この特例措置には、「2020年12月末までに入居する」ことが条件となっている。

国土交通省は4月7日に、入居遅れの救済として、入居期限を延ばす措置を用意すると発表した。その内容は、新型コロナウイルスの影響で住宅の新築やリフォームの完成が遅れ、入居が指定期日に間に合わない場合、「2021年12月末までに入居」すればよいという弾力的な運用をすることだ。

ただし、「注文住宅を新築する場合は2020年9月末までに、新築の分譲住宅やリノベーション済み住宅を購入する場合、リフォーム工事をする場合は2020年11月末までに、契約が行われていること」という条件が付けられる。また、新型コロナウィルスの影響で入居が遅れたことの証明書類も確定申告時に必要となるが、詳細は法施行時に決まる予定だ。

出典/国土交通省「住宅ローン減税の適用要件の弾力化について」(控除期間13年の特例措置の場合)より転載

出典/国土交通省「住宅ローン減税の適用要件の弾力化について」(控除期間13年の特例措置の場合)より転載

また、中古住宅を個人の売主から購入する場合は、消費税は課税されないが、住宅ローン控除の対象になる。ただし、住宅ローン控除の控除額が、消費税が8%または10%が課税された住宅の購入の場合と比べて、次のように低くなる。

・消費税率8%または10%の場合:最大控除額400万円(500万円)
・その他の場合:最大控除額200万円
※( )内は新築未使用の長期優良住宅・低炭素住宅の場合

もともと住宅ローン控除には、「住宅の取得の日から6カ月以内に入居すること」という要件があるが、中古住宅をリフォームしてから入居する事例が増えている。新型コロナウイルスの影響で、リフォーム工事の完成が遅れ、入居が取得日から6カ月を超えてしまうという事態も起こりうる。

これについても、リフォーム工事の契約が「中古住宅の住宅取得日から5カ月後まで、または関連税制法案(弾力化についてこれから国会に出される法案)の施行日から2カ月後までに、リフォーム工事の契約が行われていること」という条件付きで、「リフォーム工事完了日から6カ月以内に入居」でも適用可能という弾力的な運用がなされる。

契約日の期限がちょっと分かりづらいが、国土交通省によると「すでに購入後のリフォームを予定している人をできるだけ救えるような条件設定にした」ということだ。

※耐震基準を満たさない既存住宅でも、取得から6ヵ月以内に耐震改修を行い入居するなら、住宅ローン減税や不動産取得税の特例(住宅・住宅用地)の対象にできる特例(買って耐震)についても同様に措置。 出典/国土交通省「住宅ローン減税の適用要件の弾力化について」(中古住宅をリフォームする場合)より転載

※耐震基準を満たさない既存住宅でも、取得から6ヵ月以内に耐震改修を行い入居するなら、住宅ローン減税や不動産取得税の特例(住宅・住宅用地)の対象にできる特例(買って耐震)についても同様に措置。
出典/国土交通省「住宅ローン減税の適用要件の弾力化について」(中古住宅をリフォームする場合)より転載

なお、住宅ローン控除の適用要件の弾力化については、これに関する法案が国会で成立することが前提となっている。

●住宅ローン減税の適用要件が弾力化されます!:国土交通省

また、消費税率10%が適用される住宅の新築やリフォームについて、新築は最大35万円相当、リフォームは最大30万円相当のポイントがもらえる「次世代住宅ポイント制度」についても、契約期日が弾力化される。ポイントの発行申請ができるのは、一定の品質基準を満たす場合で、2020年3月末までに契約をすることが条件だった。これについて、新型コロナウイルス感染症の影響により期日までに契約できなかった場合は、「2020年4月7日~8月31日までに契約」すれば、「2020年6月1日~8月31日までにポイントの発行申請」ができることになった。

●次世代住宅ポイント:国土交通省

さて、新型コロナウイルスの影響で、私たちの生活は一変してしまった。なかには、家計支出に占める割合の高い「住居費」の負担に困る人もいるだろう。「貯蓄はないし住む場所を失うと困るから」と、慌てて金利の高い消費者金融などから借りるということはしないでほしい。

まずは、自治体に相談したり情報を集めたりして、利用できる救済措置がないか探してみよう。困ったときは正しい情報を集めて、相談できる窓口を探すことが、何よりも大切だ。

●新型コロナウイルス感染症 ご利用ください、お役立ち情報:首相官邸

「品川駅」から電車で30分以内、家賃相場が安い駅ランキング! 2020年版

2020年3月14日、山手線と京浜東北線に「高輪ゲートウェイ駅」が開業した。JR東日本が品川―田町間を一体開発する「品川開発プロジェクト」の一環で、山手線の駅としては1971年開業の西日暮里以来49年ぶりの新駅。駅名が適切か否かが議論になったことは記憶に新しいが、世界へ向けた国際拠点として再開発がすすむ品川エリアの象徴となる玄関口=ゲートウェイであることは間違いない。そんな、今最も注目が集まる地域である品川へアクセスが良い場所はどこだろうか。シングル向け物件(10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DK)を対象にした、最新の家賃相場ランキングを分析してみた。●品川駅まで電車で30分以内、家賃相場の安い駅TOP10駅

順位/駅名/家賃相場/(沿線名/駅の所在地/品川までの所要時間(乗り換え時間・駅から駅への徒歩移動時間を含む)/乗り換え回数)
1位 羽沢横浜国大 5.10万円(JR東海道線・相鉄新横浜線/横浜市神奈川区/30分/1回)
2位 三ツ沢上町 5.40万円(横浜市営地下鉄ブルーライン/横浜市神奈川区/28分/1回)
3位 保土ヶ谷5.60万円(JR横須賀線・湘南新宿ライン/横浜市保土ケ谷区/24分/1回)
4位 三ツ沢下町 6.00万円(横浜市営地下鉄ブルーライン/横浜市神奈川区/27分/1回)
5位 京急新子安 6.15万円(京急本線/横浜市神奈川区/25分/2回)
6位 東白楽 6.20万円(東急東横線/横浜市神奈川区/28分/1回)
7位 弁天橋 6.28万円(JR鶴見線/横浜市鶴見区/24分/2回)
8位 大口 6.30万円(JR横浜線/横浜市神奈川区/29分/1回)
8位 小田栄 6.30万円(JR南武線/川崎市川崎区/22分/2回)
10位 新子安 6.35万円(JR京浜東北線/横浜市神奈川区/21分/0回)

ランキング1位は昨年11月誕生の“新駅”

ランキングはすべて神奈川県で、過半数が横浜市神奈川区に位置する駅が占めた。1位の羽沢横浜国大駅も、同区が所在地だ。

羽沢横浜国大駅(写真/PIXTA)

羽沢横浜国大駅(写真/PIXTA)

JRと相鉄の直通に伴い、昨年11月30日にできたばかりの新しい駅。周辺はそれまで鉄道の整備が不十分な鉄道空白地帯で、都心へのアクセスが良いとは言えない地域だったが、同駅の開業により移動時間も交通費も大幅に短縮された。駅名のとおり横浜国立大学の最寄駅で、学生にとっては非常にうれしい変化だったことだろう。

駅ができたばかりのため周りは閑静な住宅街が広がるが、自治体や横国大の研究チーム、ゆかりのある企業などにより、2023年度を目標にした開発が進行中。商業施設の入ったタワーマンションや子育て支援施設などの建設も計画されている。近い将来の利便性の向上を見込めるため、今から目をつけておいても損はないだろう。

3位の保土ヶ谷駅は保土ケ谷区。品川まで直通でも30分以内だが、横浜駅で乗り換えれば25分以内で品川に着くことも可能だ。

駅直結のショッピングセンターなどはあるが、そこまで大きな商業施設などはなく、静かな住宅街という印象。江戸時代には宿場町であったことを示す史跡などを、街並みのあちこちで見かけることができる。

横浜駅とは隣駅で、駅間距離は約3km。横浜の中心地で遊んでもし終電を逃したとしても、いざとなったら徒歩でも帰宅が可能な距離だ。買い物や遊びの便利さと静かな日常生活が両立できるのは魅力的だろう。湘南新宿ラインを利用すれば、渋谷や新宿などの繁華街へも乗り換えなしで利用が可能だ。また、約1kmの場所に相鉄線の天王町駅があるため、鎌倉方面へのアクセスも良い。

横浜駅周辺(写真/PIXTA)

横浜駅周辺(写真/PIXTA)

新子安駅、京急新子安駅の2駅に注目

6位の東白楽駅は、人気路線、東急東横線の駅だ。各駅列車しか停車しないが、横浜駅との距離は約2km。保土ヶ谷駅同様、横浜駅へ頑張れば歩いていくことができる距離だ。

単身者向けの部屋は駅の近くに多く、少し駅から離れるとファミリー向け物件が目に付く印象だ。近くにはイオンスタイル東神奈川店など大きなスーパーもあるため、日常の手軽な買い物も便利だ。

ランキング内で品川までの所要時間が一番短いのは10位の新子安駅。京浜東北線の沿線のため乗換が不要なのも大きな利点だが、川崎駅で乗り換えれば約20分と、さらに所要時間を短縮させることも可能だ。

京浜工業地帯にあるため、駅南側は工場が広がっている。工業地帯とあまりに近い物件を選ぶと、少し騒音が気になるかもしれない。しかし駅の反対側は、閑静な住宅街。深夜1時半まで営業しているスーパーなどもあるため、帰宅が遅くなる職種の単身者にとっては、逆に狙い目と言ってもよいかも。

また新子安駅は、5位の京急新子安駅と隣接しており、京浜東北線と京急本線の2路線を使うことが可能な地域でもある。家賃がより安い京急新子安駅付近で物件を借り、アクセス至便な京浜東北線を使う、という活用の仕方もできるのだ。また、京急新子安駅の近くには、横浜市内でも屈指の規模の大口通商店街がある。下町風情があふれる専門店などもあり、日々の生活にうるおいを求める人にとっても満足できそうだ。

人々の営みには変化がつきもの。街も同様だ。変革期を迎えたエリアは、それだけで魅力的なものだが、普段の生活には、あまり刺激がありすぎるのも少し疲れることもある。最先端を行く品川へ向かうのに便利ながらも穏やかな住宅街、という“メリハリ”は、家探しの際に忘れず心に留めておきたいようにも思える。

●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている品川駅まで電車で30分以内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2019/12~2020/2
【家賃の算出⽅法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む⽉額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、平日の日中時間帯の検索結果から算出(乗換時間を含む) ※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載
※所要時間には駅から駅への徒歩移動時間を含む。(例:大手町駅⇔東京駅間の移動距離など)

民法改正、インスペクション説明義務…。環境変化で東京都が中古住宅売買ガイドブックを改定

東京都は、既存住宅(中古住宅)を売買する際に役立つ“ガイドブック”を発行している。このガイドブックが今年3月末、不動産の売買を取り巻く環境の変化を受けて改定された。今回は、ガイドブックの概要、改定の背景となった民法改正などの環境の変化、さらに中古住宅売買の際の注意点などを見ていくことにしよう。【今週の住活トピック】
「安心して既存住宅を売買するためのガイドブック」を改定/東京都東京都のガイドブックが役立つ理由

東京都の「安心して既存住宅を売買するためのガイドブック」には、中古住宅の売主・買主の双方に役立つ、トラブルなく売買するためのチェックポイントが丁寧に説明されている。

例えば、以下のような項目が詳しく説明されている。

・物件の状態や権利関係などのチェックポイント
・中古住宅の売買で利用できる仕組み
・仲介会社(宅地建物取引業者)との「媒介契約」の留意点
・契約前に行われる「重要事項説明」の留意点
・「売買契約」の留意点

筆者は、ラジオ番組で「住宅に関するオススメの本を紹介する」というコーナーの出演依頼があり、売買契約についてはこの本に詳しい情報があると、オススメ本の1冊に挙げたことがある。実際に都庁の都民情報ルームで販売されているし、ホームページからダウンロードもできる。掲載されている情報は地域に限らない汎用性のあるものなので、住宅という高額商品を売買するからには、時間をかけても読み込んでほしい1冊と紹介した。

民法改正で、売買契約で責任を問える基準が変わった!

そのガイドブックが、このたび改定された。理由は、法改正などによって住宅売買を取り巻く環境が変化したことにある。

まさに今年4月1日、改正民法が施行された。中古住宅の売買に関して最も影響が大きいのは、「瑕疵担保(かしたんぽ)責任」が「契約不適合責任」に変わることだ。

「瑕疵担保責任」とは、「瑕疵=事前に知らされていなかった重大な欠陥など」があった場合、売主に対して責任を問えるというものだった。これが、民法改正によって、客観的に欠陥があるかどうか”ではなく、“契約の趣旨や目的に適合しているかどうか”で、責任を問えるかを判断することになった。

つまり、どういった条件で契約を交わしたかが重要になってくる。そのために、「重要事項説明」や「売買契約書」の記載内容のチェックの重要度がさらに高まった。また、法律に反しない限りは、売主と買主の双方で合意して契約の内容を個別に定めることもできる。契約書に判を押すことは、その内容に合意したことになる。

中古住宅の売買では、住宅の状態に物件個々で違いがあるうえ、売主が個人ということもあって、売買契約の際に「特約」や「特記事項」などを付けることも多い。東京都のガイドブックには、重要事項説明書と契約書のサンプルとそれぞれのチェックポイントが掲載されているので、事前に見ておきたい。

なお、民法改正については、当サイトの「民法改正で住まいの売買/賃貸はどう変わる?」に詳しく説明している(記事は2016年の法案段階でのものだが、その後2017年に改正民法が成立、2020年4月1日に施行されている)。

中古住宅売買の際は、物件チェックリストやインスペクションの活用を!

例えば、売買した住宅で窓ガラスにひび割れがあったとしよう。

売主が、ガラスにひび割れがあることを契約時点で買主に知らせておかないと、契約後に買主からガラスにひび割れがあるので、修理してから引き渡してほしいと求められることもある。内見時に気が付いていたのでは?と思っても、その条件で契約しておかなければ想定外の出費が生じることに。

逆に買主が、引越ししてからひび割れに気づいた場合、どちらの責任でひび割れしたかがあいまいでトラブルになることがある。契約時や物件引き渡し時に、ひび割れの有無を確認しておくことが重要なのだ。

こうしたさまざまなトラブルを避けるためには、売主も買主も、物件の状態をきちんと確認しておく「物件チェックリスト」を使うことが有効だ。

東京都のガイドブックには、4種類のチェックリストが用意されている。
1.土地・建物の権利関係及び履歴並びに住環境に関するチェックリスト
2.敷地に関するチェックリスト
3.建物等に関するチェックリスト
4.設備・工作物に関するチェックリスト

ガラスのひび割れや設備の故障などであれば、自分でも見たり使ったりして確認することができる。一方、住宅の基礎のひび割れや屋根材の割れ、雨漏り、建物の傾きなど、建築のプロでないと判断しづらいものもある。

そこで、国土交通省が推奨しているのが、建物状況調査(インスペクション)を行うことだ。建物状況調査は、住宅の構造上の重要な部分の状態を把握するための調査となっている。依頼した場合には費用負担が生じるが、特に重要な部分の調査が行われるので、安心して売買できるだろう。

宅地建物取引業法(宅建業法)も2018年4月に改正され、中古住宅の売買にあたって仲介会社(宅建事業者)に仲介(媒介)を依頼すると、仲介会社は建物状況調査について説明し、調査事業者のあっせんの有無を確認することが義務付けられている。

あっせんの有無を確認されたからといって、必ずしも調査をしなければならないわけではないし、自分で調査事業者を探すこともできる。東京都のガイドブックには、この建物状況調査事業者のあっせんについてのフローも紹介されている。
さらに、実際にトラブルにあってしまった場合の相談窓口も紹介されており、万一の事態への備えとしても手元に置いておきたい一冊だ。

既存住宅の売却時におけるあっせんの流れ(出典/東京都「「安心して既存住宅を売買するためのガイドブック」より転載」

既存住宅の売却時におけるあっせんの流れ(出典/東京都「安心して既存住宅を売買するためのガイドブック」より転載)

なお、宅建業法の改正については、当サイトの「宅建業法で不動産会社に義務付ける『インスペクション』の詳細とは?」で詳しく説明している。

さて、実際にガイドブックを読むと、かなり専門的なチェックポイントも多く、自分にはできないと思ってしまうこともあるだろう。そんなときは、すべて自分でやろうとせずに、仲介会社の担当者を上手に利用するとよい。

例えば、契約前や引き渡し時に物件チェックリストを持参して、一緒にチェックしてもらうのもよいだろう。重要事項説明や契約の際に、時間がかかってもよいので、ガイドブックのチェックポイントと比べながら説明してもらうという手もあるだろう。

大切なのは、仲介会社任せにしないで、自分なりに建物の状態をしっかり確認し、契約内容をきちんと理解したうえで中古住宅を売買することだ。

●「安心して既存住宅を売買するためのガイドブック」改訂版をダウンロードできる東京都住宅政策本部のサイト

富ヶ谷の原石

所在地:渋谷区富ヶ谷
8万2,500円(税込) / 10平米
千代田線「代々木公園」駅 徒歩1分

代々木八幡の商店街から一本路地に入った場所にある、ちいさなマンションの一室。



キュッとコンパクトなスペースに、こってりの足場板が敷かれた面白い空間。午後の日当たりが心地よく、少し奥行きのあるバルコニーもアレンジ次第で気持ちいい空間に化けそう。



事務所や物販店舗やサロンとして使 ... 続き>>>.
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公園脇のレトロな戸建て

所在地:足立区千住東
15万8,000円 / 60.65平米
日比谷線・千代田線「北千住」駅 徒歩8分

シックでアンティークな雰囲気のちいさな戸建て。



無垢のフローリングやこだわりの建具、造作のキッチンなど、しっかりとつくり込まれている1階部分。どこを切り取ってもかわいらいいデザインです。



2階は比較的シンプルに。2部屋だったところをひと続きにし、押し入れの扉や枠も外して、開放 ... 続き>>>.
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キャットストリートの隠れた実力者

所在地:渋谷区神宮前
30万2,500円(税込) / 57.06平米
山手線「渋谷」駅 徒歩9分

キャットストリートの入り口に立つ、この渋いビルをご存知でしょうか?周囲の華やかな建物に目を奪われがちですが、その中で身をひそめている細長いビル。



その7階に気持ちのよいオフィス空間が待っています。



元は2LDKの住宅だったものを、仕切りのない空間へリノベーションしています。ゆ ... 続き>>>.
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夢がふくらむ!

所在地:墨田区業平
11万5,000~13万5,000円 / 32.82~36.83平米
半蔵門線・都営浅草線・東武伊勢崎線・京成本線「押上」駅 徒歩5分

スカイツリーのふもとに妄想を掻き立てられる新築物件が誕生!1階にはツバメアーキテクツ監修のシェアオフィス、さらには保健所の営業許可を取るシェアキッチンが完成予定です。



募集は2〜3階の計3部屋。1LDKですが、それぞれ間取りが異なるので図面でご確認ください。サイズは約33〜37 ... 続き>>>.
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サクッと一棟、キレンジャー!

所在地:国分寺市本多
16万5,000円(税込) / 56.67平米
中央線「国分寺」駅 徒歩10分

8畳×3階の一棟ビル。鮮やかな黄色が目を引きます。東京学芸大学ほど近くの交差点沿い。街や人に開いて、おもしろく使ってくれる人に入ってほしい!



国分寺といえば学生や子育て世代の街。建物から徒歩10分圏内には大学が二つ、公立・私立の小中学校や幼稚園がいくつかあります。建物前は車の通 ... 続き>>>.
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カドにちょこんと

所在地:千代田区神田錦町
21万7,800円(税込) / 44.62平米
半蔵門線・都営新宿線・都営三田線「神保町」駅 徒歩3分

ドーンとした高層ビルが並ぶ千代田通りの一角にある、レトロなビル。ちょこんとしている姿がなんともかわいらしいです。



今回は2階のオフィスをご紹介。すこし変わったかたちをしているのですが、入り口に近い南側を少し区切ってミーティングスペースに、北側のスペースにデスクや棚などを置いて事 ... 続き>>>.
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空に浮かぶ立方体 -天高3.6m-

所在地:中野区沼袋
11万円 / 30.77平米
西武新宿線「沼袋」駅 徒歩8分

このサイズの物件にして天高3.6mというだけでもスケール感が狂いますが、天井一杯まで大きく広がる窓からは新宿副都心方面へのすごい抜け。



最上階ワンフロアを専有するこの物件は、まるで空に浮かぶペントハウスのような不思議な感覚。神宮外苑花火、戸田花火大会は室内にいながら鑑賞可能!

... 続き>>>.
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老・病・死をタブーにしない。福島県いわき市のメディア『igoku(いごく)』の挑戦

『いごく(igoku)』とは、福島県いわき市役所の地域包括ケア推進課が手掛けているメディアで、「老・病・死」をテーマに、地元のクリテイターと手を組み、フリーペーパーとウェブで情報発信している。
これが、お堅いイメージのある行政が関わっているとは思えないほど、独特で、笑えて、“エモい”のだ。
さらに、2019年グッドデザイン賞の金賞を受賞したことも大きな話題に。
「縁起でもない」と敬遠されがちなことに「マジメに不真面目」に取り組んでいるつくり手たちに、『いごく』が始まった経緯、課題の背景、今後の展開などをお伺いするべく、福島まで足を運んでみた。

地域包括ケアとは何ぞや? 一人の職員の行動から始まった取り組み

「やっぱ家で死にてぇな!」「死んでみた!」「パパ、死んだらやだよ」「認知症解放宣言」――。ドキっとするけど、重くない。どこか、クスっと笑えるタイトルが並ぶ。フリーペーパーの「紙のいごく」の特集名だ。
グラビアは「老いの魅力」なる、おじいちゃん、おばあちゃんのポートレート。なんともいえない、いい表情がとらえられていて、「福祉」「介護」から連想する、生真面目なイメージからはほど遠い誌面だ。
ウェブマガジンでも、とにかく楽しそうなおじいちゃん、おばあちゃんの様子が臨場感ある写真とコピーでレポートされている。

ウェブマガジンで各地域のつどいの場をレポート。「いごく」はいわきの方言で「うごく(動く)」の意味。「いごく」人々や取り組みに焦点を当てている(画像/ウェブマガジンより)

ウェブマガジンで各地域のつどいの場をレポート。「いごく」はいわきの方言で「うごく(動く)」の意味。「いごく」人々や取り組みに焦点を当てている(画像/ウェブマガジンより)

コンセプトは、「死や老いをタブーにしないこと」。そして「面白がること」。
「人生の“最期”をどこで、どんなふうに迎えたいか、自分が考えたり、親子で会話するきっかけになったらと思っています」と、『いごく』の発起人であるいわき市役所の職員である猪狩僚さん。

いごく編集長(と、自分で勝手にネーミングしたそう)の猪狩さん。記事方針は明確に伝えるが、「あとはクリエイターたちにお任せ」だそう (写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

いごく編集長(と、自分で勝手にネーミングしたそう)の猪狩さん。記事方針は明確に伝えるが、「あとはクリエイターたちにお任せ」だそう (写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

そもそも『いごく』が生まれたのは、4年前、猪狩さんが新設の「地域包括ケア推進課」に配属されたことがきっかけ。「僕は福祉の領域は初めて。そもそも”地域包括ケアってなんだ?”というところからのスタートで、ミッションすらまだ定まっていない状態でした。具体的に何をすればいいのか手探りで、とりあえず医療や福祉の現場をのぞかせてもらったんです」(猪狩さん)。

そんななか、猪狩さんが衝撃を受けたのが、医療や福祉の現場スタッフによる勉強会に参加したときだった。
「みんな、仕事終わりですごく疲れているのに、自腹で参加費500円を払って参加しているんです。これにまず驚き。そして、涙ながらに“あのとき、患者さんにまた違ったアプローチをしていれば、利用者さんとそのご家族が幸せな最期を迎えられたんじゃないか”と反省している方がいて……。自分が当事者にならないと介護の現場に触れる機会がないから、多くの人は現場で働く方々の想いを知らない。『この現場の想いを、誰かが発信してもいいんじゃないかな』。それが僕のミッションだと考えたのがスタートでした」(猪狩さん)。

当事者以外に届けるなら、デザインの力が不可欠

そして、自分が望む場所で最期まで暮らせる「選択肢がある」社会にすることが、地域包括ケアの目的ではないかと考えるようになった猪狩さん。

「そのためには、まだ介護や老後、死がまだ身近にない人こそ、“何だろう”“面白そう”と思えるプロダクトや、デザインの力が必要だと思いました」
それからの猪狩さんの行動が驚きだ。
「たまたま、地元のかまぼこメーカーさんの商品“さんまのぽーぽー焼風蒲鉾”のデザインがすごく良くて、”ポスターをつくってほしい!”と押しかけました(笑)」(猪狩さん)
そのデザイナーが、現在「いごく」のメンバーの一人である高木市之助さん。最初は戸惑っていたものの、「だったら印刷も必要だ」と友人に声かけたり、「編集や書いたりできる人もいたほうがいいね」といったふうに、だんだん人が集まっていった。

「いごく」を支えるメンバーの面々。左から、郷土歴史家の江尻浩二郎さん、地域活動家として著作『新復興論』が大佛次郎論壇賞を受賞したエディターの小松理虔さん、猪狩さん、メディア全体のプロデューサーの渡邉陽一さん、いわき市の地域包括ケア推進課の瀬谷伸也さん。あの日、突然押しかけられたデザイナーの高木市之助さん、映像カメラマンの田村博之さんは残念ながらこの日は不在(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「いごく」を支えるメンバーの面々。左から、郷土歴史家の江尻浩二郎さん、地域活動家として著作『新復興論』が大佛次郎論壇賞を受賞したエディターの小松理虔さん、猪狩さん、メディア全体のプロデューサーの渡邉陽一さん、いわき市の地域包括ケア推進課の瀬谷伸也さん。あの日、突然押しかけられたデザイナーの高木市之助さん、映像カメラマンの田村博之さんは残念ながらこの日は不在(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

毎週木曜日はゆるやかな「編集会議」が。時にふざけつつ、脱線もしつつ、笑い声が絶えない。ノリはまるで男子校だ。「男ばっかりというのはちょっと問題アリだとは思っているんですけど(笑)」(猪狩さん) (写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

毎週木曜日はゆるやかな「編集会議」が。時にふざけつつ、脱線もしつつ、笑い声が絶えない。ノリはまるで男子校だ。「男ばっかりというのはちょっと問題アリだとは思っているんですけど(笑)」(猪狩さん) (写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

福祉の素人だからこそ書ける「ありのまま」の一人称メディア

創刊当時のことを、いごくメンバーの1人である小松理虔さんは振り返る。
「当時のメンバーで、おもしろいおじいちゃんやおばあちゃんがいると聞いたら、みんなで取材に行ってましたね。4人でカメラをかかえて、全員がインタビュアー。地元の洋品店の2階で、92歳のヨガの先生のおばあちゃんにヨガを教えてもらったり、シルバーリハビリの先生のおじいちゃんに話を聞きに行ったけど、若いころの話が面白すぎて40分たっても本題に入れなかったり。かなりカオス(笑)。でも面白かった。その驚きとか、面白かったこと、思ったことをそのまま書きました。そのうち、何を面白がるかという『いごく』のコンセプトっぽいものをメンバー全員で共有できた気がします」(小松さん)

ヨガの先生に会いにいった話は、「二ツ箭(ふたつや)と呼吸する日々」というタイトルの記事に。「この時は、まだウェブマガジンにしようとも、まだなんにも決めてなくて。とりあえず会いに行ってみた。そうしたら、とんでもなかった。そのままを小松くんに書いてもらいました」(猪狩さん)(写真提供/いごく編集部)

ヨガの先生に会いにいった話は、「二ツ箭(ふたつや)と呼吸する日々」というタイトルの記事に。「この時は、まだウェブマガジンにしようとも、まだなんにも決めてなくて。とりあえず会いに行ってみた。そうしたら、とんでもなかった。そのままを小松くんに書いてもらいました」(猪狩さん)(写真提供/いごく編集部)

いわき市シルバーリハビリ体操指導士会会長へのインタビュー「体操、中華、わたし」。「体操の話を聞きに行ったつもりが、話がホント面白くって、まったくまとめられなかった」と小松さん(写真提供/いごく編集部)

いわき市シルバーリハビリ体操指導士会会長へのインタビュー「体操、中華、わたし」。「体操の話を聞きに行ったつもりが、話がホント面白くって、まったくまとめられなかった」と小松さん(写真提供/いごく編集部)

以降も、基本的にはメンバー全員で取材に赴き、写真を撮るスタイル。一応、テーマは立てるけど、脱線してばかりいる。でも、その脱線のほうが面白いことも多い。出来上がった記事は、書き手の驚き、感動がそのまま現れる。猪狩さんいわく、私見だらけの「一人称のメディア」だ。(詳しくは、『いごく』のウェブマガジンをご覧ください!)

これは、行政が発信する媒体としては、かなり異質だ。
「チームには、誰も福祉の専門家がいないんです。 “高齢化と過疎化で大変! 協力してください”という媒体だと、もともと福祉に興味のある人しか響かない。だから、この人が面白かった、かっこよかった、この集まりがすごいことになってた!とか、素人の僕たちが感じたことをそのまま伝えたほうが、興味がない人にも届くんじゃないかと思っています」(猪狩さん)。

地元のお母さんたちが食で集う「北二区集会所」でのクリスマス会に、いごくメンバーも参加してレポート。とにかくやってみるがモットー (写真提供/いごく編集部)

地元のお母さんたちが食で集う「北二区集会所」でのクリスマス会に、いごくメンバーも参加してレポート。とにかくやってみるがモットー (写真提供/いごく編集部)

普遍的な課題だからこそ、全国から反響。グッドデザイン賞に

一番反響があったのは「認知症解放宣言」の特集。
「でも僕たちは認知症を知らない。じゃあ、僕と小松くんで介護施設に3、4日通ってみようと、一日中滞在していました。おばあちゃんやおじいちゃんとおしゃべりするだけで、特になにもしない(笑)。そこで毎回ごはんを食べたあとに音楽がかかると、いつも踊るおばあちゃんがいて。すごくいいな~と、ポスター仕様にしました。つい、認知症というと、意思疎通ができないシリアスな状況をイメージしてしまうけれど、認知症ってグラデーションなんですよね。周囲は面倒を見ようと思ってしまいがちだけど、認知症でも本人ができること、したいことを周囲にいる人間が取り上げる必要はないんじゃないか、認知症に対する偏見を外したいという想いが“認知症解放宣言”というコピーになりました。当然、”認知症はきれいごとじゃない”という意見もありましたが、興味を持ってくれる人が多く、病院や介護施設から送ってほしいという問い合わせがたくさんありました」(猪狩さん)。

長い間認識してもらいたい想いから、ポスター仕様に。今では、「紙のいごく」は、全国から”送ってほしい”と問い合わせがあり、いわき市外にも多数配布しているそう (写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

長い間認識してもらいたい想いから、ポスター仕様に。今では、「紙のいごく」は、全国から”送ってほしい”と問い合わせがあり、いわき市外にも多数配布しているそう(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

さらに2019年度のグッドデザイン賞を受賞。応募4772件のグッドデザイン賞のうち、金賞・ファイナリスト第5位という快挙につながった。老病死という重いテーマに対し、”縁起でもない”から”前向きかも”と感じられる取り組みが評価されたのだ。

東京で行われたグッドデザイン賞の授賞式はメンバー全員でおそろいのユニクロのジャケットで。人で埋め尽くされた会場で、猪狩さんが最終プレゼンを行った(写真提供/いごく編集部)

東京で行われたグッドデザイン賞の授賞式はメンバー全員でおそろいのユニクロのジャケットで。人で埋め尽くされた会場で、猪狩さんが最終プレゼンを行った(写真提供/いごく編集部)

今回取材が行われた場所は「みんなのお勝手~いつだれキッチン」(毎週木曜日のみ営業)。寄せられた食材を、客が自分で値段を決める”投げ銭制”の食堂だ。いつだれキッチンのお母さんたちと楽しそうにおしゃべりしている猪狩さん。ここでは食も悩みもシェア(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

今回取材が行われた場所は「みんなのお勝手~いつだれキッチン」(毎週木曜日のみ営業)。寄せられた食材を、客が自分で値段を決める”投げ銭制”の食堂だ。いつだれキッチンのお母さんたちと楽しそうにおしゃべりしている猪狩さん。ここでは食も悩みもシェア(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「先祖代々の土地を荒らさないために自分たちでは食べきれない野菜を捨ててしまうのはもったいない」ことからスタートした取り組みが、みんなが集う場所に(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「先祖代々の土地を荒らさないために自分たちでは食べきれない野菜を捨ててしまうのはもったいない」ことからスタートした取り組みが、みんなが集う場所に(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

野菜中心の家庭料理をビュッフェ形式で。取材日は特別に本格カレーも。これはいわき市の地域包括ケア推進課の鍛治さん作 (写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

野菜中心の家庭料理をビュッフェ形式で。取材日は特別に本格カレーも。これはいわき市の地域包括ケア推進課の鍛治さん作(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

看板はいごくメンバーの高木さんがデザイン (写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

看板はいごくメンバーの高木さんがデザイン(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

読者や地域を巻き込むリアルなイベントも開催

紙やウェブだけでなく、「情報発信だと頭で考えるだけだから、五感で訴えかけるリアルな体験も必要では」と考え、「いごくフェス」を開催。福祉ラップ、即興劇、葬儀屋さん協力による入棺体験会が行われるなど、型破りな活動をしている。

入棺体験の様子(写真提供/いごく編集部)

入棺体験の様子(写真提供/いごく編集部)

(写真提供/いごく編集部)

(写真提供/いごく編集部)

「いごくフェスって親子3代で参加するケースが多いんです。僕もそうですが、面と向かって自分の親に『人生の最期はどうしたいの』とかあれこれ聞くのってなかなかハードルが高いじゃないですか。でも、踊ったり、歌ったりするお祭りの高揚感の勢いで、孫から”おじいちゃんはどう思う? ”って聞いているのを子どもも一緒になって聞く。そんなきっかけになったらいいと思っています」(猪狩さん)

人と人を取り持つ。行政の強味を最大限活かす

そもそも『いごく』メディアの一番の特徴は、「行政」が行っているということ。そのメリットは大きい。
第一に、介護・医療の現場プレイヤーから「行政が自分たちの頑張りを情報発信をしている」というところに喜び、意義を感じてくれている。それが良いプレッシャーにもなっている。
第二に、「中立的」立場で、複数の企業、事業所が参画しやすいこと。民間企業の手掛けるメディアでは難しいだろう。
第三に、「役所」の立場を利用して、どこへでも誰にでも会いに行き、話を聞けること。
「確かに、役所って縦割りで、偉い人にハンコもらって通さないといけないなど、動きにくかったりもします。でも、すごく恵まれている部分も多いはずなんです」(猪狩さん)

ただし、媒体もフェスもなかなか個性的。役所ゆえに、上司の反対はなかったのだろうか?
「基本的に上司には聞いていません(笑)。当時の上司が、”どうせ反対しても猪狩はやるんだろうし、話を聞いちゃったら、こっちが板挟みになって胃が痛くなるから、報告しないでいい”というスタンスの人で(笑)、面倒なことにならなくてすみました」(猪狩さん)

さらに、現在、『いごく』のクリエイターチームは、介護施設のHPやパンフレット等の制作にも携わるなど、展開に広がりも。「福祉の現場も、自分たちでやるにはマンパワーが足りないけれど、地元のクリエイティブの力を借りることでPRがしやすくなる。いわば地産地消ですね。行政が人と人、企業と企業をつなげる、本来の役割だと思います」(猪狩さん)

医療・介護・福祉に無関係な人は誰一人いないし、高齢化に伴う諸問題は日本中のどの自治体でも抱える課題だ。つまり、どの自治体でも、”『いごく』っぽい”アプローチは可能ということ。最初は一職員の想いからスタートしたのだから。

「例えば、横断歩道でおばあちゃんがのんびり歩いている。前はそれにイライラしていたけど、”いごく”の記事を読んだことある人なら、”あのおばあちゃんのゆっくりした歩き方、かわいい”って思ってくれるかも。それだけでも、『いごく』の意味はあるのかなって思っています」(猪狩さん)

そして、この取材後、発起人だった猪狩さんが別部署へ異動することが判明。「いがりは死すとも、いごくは死なず、です」(猪狩さん)。
市役所の職員ゆえに異動はつきものだ。だからこそ、プレイヤーが変わっても、「いごく」がこれまで伝えてきたメッセージを今後、自治体として、どう維持、発展させていくか、いわき市の今後の挑戦に注目したい。

●取材協力
いわきの「いごき」を伝えるウェブマガジン

レトロな土間の可能性

所在地:荒川区東尾久
13万2,000円(税込) / 68.47平米
日暮里舎人ライナー「赤土小学校前」駅 徒歩5分

超渋い路面戸建て。人で賑わう商店街の顔になりませんか?



ギャラリー、アトリエ、物販、教室など、イメージがどんどん膨らみます。一棟まるっと事業用でも、住居を兼ねる使い方でも。



1階はコンクリートの土間。造作壁を撤去してしまえば、ズドンと22㎡の広々空間に。ちなみに天井高は約2. ... 続き>>>.
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日本橋ニューヨークロフト?

所在地:中央区東日本橋
44万円(税込) / 120平米
都営浅草線「東日本橋 」駅 徒歩1分

□賃料下がりました!!



古い建物をリノベーションしたギャラリーやカフェが点在する、東日本橋エリアの原点として、以前からご紹介してきたこちらのビル。



繊維会社の倉庫だったビルを、2003年にR不動産のディレクター馬場正尊率いるOpen Aが一棟丸ごとリノベーションしました。



... 続き>>>.
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白金ロックアップ

所在地:港区白金
70万円(税込) / 93.75平米
山手線「恵比寿」駅 徒歩16分

◇賃料が下がり、フリーレント 1ヶ月と内装工事一部貸主負担(エアコン・壁塗装)の条件が追加になりました!



とんでもないポテンシャルを秘めたハコを見つけ、久しぶりに興奮してます。



それは白金の路地裏に立つ、元工場として使われていた建物の1階路面区画。天井が高く、どこか日本離れし ... 続き>>>.
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武骨な空間とやわらかな景色

所在地:世田谷区代沢
11万円 / 33平米
井の頭線「池ノ上」駅 徒歩11分

天井が抜かれ、ざらざらとコンクリートがあらわになった武骨なワンルーム。窓の外にはのんびりとした公園に木々の緑と、やわらかな景色。角部屋で2面に窓があり、爽やかな風が室内を通り抜けていきます。



自由度の高いワンルームなので、家具の配置やコーディネートをあれこれ考えるのが楽しくなり ... 続き>>>.
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青一に基地を得る

所在地:港区南青山
10万4,500円(税込) / 15.5平米
銀座線・半蔵門線・都営大江戸線「青山一丁目」駅 徒歩2分

よくあるマンションオフィスと思って入ってみたら、ちょこっと気の利いた質感の内装が出迎えてくれて、小さくとも居心地よく集中できそうな、自分だけの仕事の基地を思い描くことができました。



賃料もコンパクト、都心ど真ん中、ハイスペックを求めない限りはストレスなさそうな設えに、と、押さえ ... 続き>>>.
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変わり種のすすめ

所在地:世田谷区玉川台
14万円 / 46.19平米
東急田園都市線「用賀」駅 徒歩6分

見晴らしのいいルーフバルコニーとサービスルーム(防音室)が付いた変わり種物件。



まず、えっ?ここが動線?ってちょっと驚くと思います。居住空間に行くには3畳ほどの防音室を通らないといけません。不思議な間取りだなーと思いましたが、こもって作業したい方や、上下隣を気にせず楽器を楽しみ ... 続き>>>.
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招きたい隠れ家

所在地:港区芝浦
17万円 / 44.45平米
山手線・京浜東北線「田町」駅 徒歩5分

古材やスチールで造作された家具が渋く、武骨でかっこいい一室。



一枚板の古材のカウンターに、「ホシザキ」の業務用冷蔵庫、お酒やグラスを並べたくなる棚。まるで隠れ家バーのようなキッチンが痺れるほどかっこいいです。こだわりのグラスで年代もののウィスキーを味わう。そんなぜいたくな時間が ... 続き>>>.
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こもる、大人の隠れ家 – 駐車場付き・大型犬可 –

所在地:川崎市中原区小杉御殿町
25万円 / 82.28平米
東急東横線「新丸子」駅 徒歩9分

コンクリートの四角い箱で、シェルターのような外観の戸建て。中に入ると上階から光が注ぎ、とても美しい空間が待っています。



設計とデザインをしたのは、納谷建築設計事務所。シックで落ち着きのある雰囲気と、静寂を大切にした建物です。



1階が水回り、2階がリビングダイニングで、3階が寝 ... 続き>>>.
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神宮前スタートアップ

所在地:渋谷区神宮前
26万円(税込) / 55.49平米
山手線「渋谷」駅 徒歩7分

原宿と渋谷、表参道まで徒歩圏という好立地にあって、渋くてレトロな佇まいが人気で東京R不動産でたびたび募集してきたマンションの8階の部屋をご紹介。



前入居者が事務所として利用していたため、レイアウトのしやすいワンルームの間取りにフローリング、シンプルな白い壁紙という落ち着いた雰囲 ... 続き>>>.
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光とスキマ

所在地:杉並区永福
7,180万円 / 77.09平米(建物) 79.36平米(敷地)
井の頭線「永福町」駅 徒歩3分

シュパッ!と水平垂直にスリットが家を貫きます。



面白いことに、1階の洋室と水回りをのぞいて、基本的に扉がありません。一般的な家はリビングと寝室など空間を分ける為に扉を使いますが、この家では"光のスキマ"が扉の代わり。単なる長方形が重なった空間ではなく、貫いた光がそれぞれの空間を ... 続き>>>.
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甘糟りり子さんのエッセイ『鎌倉の家』の舞台、稲村ケ崎のご自宅を訪ねて

作家の甘糟りり子さんが3歳から暮らしたご実家であり、現在は住居兼職場でもある稲村ケ崎のお住まいは、それは鎌倉らしい「ザ・日本家屋」な風情溢れる佇まい。ここを舞台にした甘糟さんのエッセイ『鎌倉の家』(河出書房新社)は、四季折々の鎌倉の魅力や暮らしがまるで映画のワンシーンのように描写されている。是非このご自宅で直接お話を伺いたい、という思いに駆られ稲村ケ崎を訪ねました。合掌造りの高い天井にはいぶされて飴色になった煤竹(すすだけ)と太い梁。漆喰の壁とのコントラストが印象的なリビング兼応接スペース(写真撮影/高木 真)

合掌造りの高い天井にはいぶされて飴色になった煤竹(すすだけ)と太い梁。漆喰の壁とのコントラストが印象的なリビング兼応接スペース(写真撮影/高木 真)

物心ついたころから過ごしてきた鎌倉の日本家屋、都心ではヴィンテージマンションやタワーマンションに

甘糟さんが鎌倉・稲村ケ崎に引越してきたのは、3歳の時。約50年前の鎌倉駅前にはテニスコートが広がり(現・紀伊国屋)お店も少なく、稲村ケ崎も夏場は海の家が出るくらいの広さの砂浜があり、別荘地らしさが残るいまとは全く違う鎌倉だった。「江ノ電で小学校に通っていた時の電車賃は、確か10円だか20円でしたよ」と甘糟さん。

引越し時に建っていたのは、昭和初期に建てられた数寄屋造りの日本家屋。その後中学生の時、豪雪地帯の築250年という合掌造りの民家を解体して運ばれた梁などの部材を使って別棟部分を大改築。さらに出版社にお勤めだったお父様のこだわりで、土蔵の壁をすべて本棚にした書庫を増築。こうして茶室風の華奢な数寄屋造り、太い梁の剛健な合掌造り、耐久性に優れた蔵、という3種の日本建築が一体となった現在の甘糟邸が完成した。

「大学時代までは、この実家から学校にもよく遊んでいた六本木にも通っていました」というが、卒業後は仕事が忙しくなり、都内にも部屋を借りた。「住んだのは、三軒茶屋、中目黒、広尾、狸穴坂、芝浦などでしょうか。平日は都会、週末は鎌倉に戻る生活でした」。

東京での一人暮らしのメインとなったのは、いまは取り壊しになってしまった狸穴坂の外国人仕様アパートメント。丁寧につくられたヴィンテージ感が気に入って、「同じアパートメント内でも引越して、10年以上住みました」。それから気分転換のため、いままでとは逆の芝浦の新しいタワーマンションに。「分不相応に広く、25階で眺めも良かったけれど、1年で蕁麻疹ができちゃって。古い家の方が自分に合っているのかな、と気付きました」。

重厚な梁が印象的な玄関。奥には数寄屋造りの母屋、右手の引き戸を開けるとダイニング&キッチンに続く(写真撮影/高木 真)

重厚な梁が印象的な玄関。奥には数寄屋造りの母屋、右手の引き戸を開けるとダイニング&キッチンに続く(写真撮影/高木 真)

四季ごとの花が咲き誇る庭を眺める母屋。その奥に見える土蔵は、現在浴室と壁一面の書庫になっている(写真撮影/高木 真)

四季ごとの花が咲き誇る庭を眺める母屋。その奥に見える土蔵は、現在浴室と壁一面の書庫になっている(写真撮影/高木 真)

海や自然が身近な鎌倉暮らしの魅力再発見、両親の想いが詰まった家を引き継ぐ

実家に戻り、海辺を拠点に移したのは2007年。海岸線をランニングしたりサーフィンをしたりしているうちに、「やっぱり海沿いはいいなあ」と感じ、思い切った。近くに仕事用の部屋を借りて、そこに通うという形に。悩んでいた不眠症を解消するためには、書く場所と眠る場所は分けた方がいいという医師のアドバイスもあった。

選んだ逗子マリーナは、稲村ケ崎の実家から、車で約15分。部屋数を重視して細かく部屋を分けた物件が多い中、シンプルで広々した間取りが決め手だった。木造の日本家屋である実家とは対照的な白いコンクリート造のリゾートマンション、というバランスも良かったという。

お父様が亡くなったことを機に、逗子を引き払って仕事場も実家に移した。古い日本家屋は本当に手がかかり、取材当日も縁側の木製建具は修理のため職人さん待ちだという。「年中家のどこかを改修している気がします。日本家屋に住むのがこんなに大変だとは」と笑う。

48歳で実家に戻ってから、お風呂、キッチン、耐震補強、和室の畳を板張りに、など少しずつ改修を進めている。「両親と親交が深かった作家の向田邦子さんもお泊りになった日本間も、仕事場にするために板張りにして床暖房を入れました。ちょっと胸が痛みましたが、家具を置くことを考えると畳は不便で」と甘糟さん。

玄関を入って正面の引き戸を開けると、見事な和食器がお出迎え。『鎌倉の家』のお茶碗にまつわるシーンが思い浮かぶ。奥にダイニング、キッチンと続く(写真撮影/高木 真)

玄関を入って正面の引き戸を開けると、見事な和食器がお出迎え。『鎌倉の家』のお茶碗にまつわるシーンが思い浮かぶ。奥にダイニング、キッチンと続く(写真撮影/高木 真)

改修されたキッチンは、引き戸で対面にもクローズドにもできる、木をふんだんに使って落ち着いた雰囲気(写真撮影/高木 真)

改修されたキッチンは、引き戸で対面にもクローズドにもできる、木をふんだんに使って落ち着いた雰囲気(写真撮影/高木 真)

丁寧につくられたものを国籍や時代問わず組み合わせて、四季ごとの変化を楽しむ暮らし

「子どものころは古民家がいいなんて思わないし、東京にいるときも夜な夜な六本木で遊んでいて、私は都会が好きなのだと思っていました」という甘糟さん。「でも、タワーマンションに住んだことから、あれ!?って」。鎌倉に戻って、友人たちには「ネオンがなくて大丈夫!?」と驚かれたが、常にこの実家と行き来してきたので自然な成り行きだったのだ。

いまは「木が呼吸をしている」と感じる伝統的な日本家屋で、四季を通じて咲き誇る庭の草木や花々と暮らす。空間ごとに活けられた花は、庭にあるものかご近所から頂いたもので、めったに買うことはない。春にはこのご自宅で、甘糟さん自身が庭や近所で採れる山うどや明日葉、フキ、茗荷などの野草を料理してふるまう野草の会を開催。お料理の先生は作家であり野草料理家としても活躍していたお母様の幸子さん、というので、間違いない。

「ひと昔前に丁寧につくられたものの方が、余韻とかゆとりがある気がして惹かれます」という甘糟さん。受け継いだ日本家屋に手を入れつつ、最近は南米や沖縄の民芸モノやインドの布、一点モノのガラス作品などを国籍や時代を問わず組み合わせ、ミックステイストのインテリアを楽しんでいる。

手づくりのガラス作品は舩木倭帆さんのもの。しっとりとした日本家屋の佇まいに手づくりのガラスが映える(写真撮影/高木 真)

手づくりのガラス作品は舩木倭帆さんのもの。しっとりとした日本家屋の佇まいに手づくりのガラスが映える(写真撮影/高木 真)

(写真撮影/高木 真)

(写真撮影/高木 真)

庭のシュウメイギク、山うど、水引などがさりげなく、あるがままに活けられインテリアのポイントに。椅子や収納家具は鎌倉の老舗・島屋のオーダー品(写真撮影/高木 真)

庭のシュウメイギク、山うど、水引などがさりげなく、あるがままに活けられインテリアのポイントに。椅子や収納家具は鎌倉の老舗・島屋のオーダー品(写真撮影/高木 真)

50年以上住み慣れた鎌倉は、外食するお店もない時代から、豊かな自然や伝統を残しながら志のある個性的なお店も多い素敵な街に進化。「ものを使い込んだ感じが好きなのは、こういう家に住んだからこその価値観かもしれませんね」という甘糟さんの言葉は、この空間で聴くと実にリアリティがある。ご両親が大切に創り上げたこの日本家屋が、甘糟さんのセンスで彩られて更に進化していくのが楽しみ。兎にも角にも、ため息が出るほど素敵なお住まいでした。

(写真撮影/高木 真)

(写真撮影/高木 真)

鎌倉彫のお盆と鎌倉本社のCa ca oの生チョコでおもてなし頂く。鎌倉のグルメ情報にも詳しい甘糟さんのお薦めはWeb発信中。4月に『鎌倉だから、おいしい。』(集英社)として出版。こちらも要チェックです!

甘糟りり子『鎌倉の家』(河出書房新書)●取材協力
甘糟りり子『鎌倉の家』(河出書房新書)
2020年4月3日発売 甘糟りり子『鎌倉だから、おいしい。』(集英社)

自動車、自転車ではなく、キックボードをシェア? 世界各国で広がる最先端の移動手段

自動車や自転車ならぬ「電動キックボード」のシェアサービスが欧米を中心に広がりを見せている。気軽に利用でき、かつ環境にやさしい移動手段としても注目を集めるこのサービス。仕組みやリスク、日本での普及可能性などについて、乗車した経験や事業者への取材などをもとに考えた。
エコで気軽に利用できる電動キックボード

電動キックボードは、キックボードにバッテリーとモーターが取り付けられた、電気を動力とする乗り物だ。右ハンドルに付いているレバーを押す(親指でレバーを押し込むイメージ)と加速する仕組みが一般的で、ブレーキも付いている。日本で目にすることは少ないが、海外では広がりを見せている。なぜなら、電動キックボードのシェアリングサービスが普及しているからだ。

シェアサービスの利用に際しては、スマートフォンにアプリを入れておく必要がある。アプリを起動すると、周辺で利用可能な電動キックボードが表示される。電動キックボードのハンドル付近には、QRコードが明示されており、同じアプリ上でQRコードをスキャンすれば鍵が外れ、利用可能となる仕組みだ。アメリカ発の「Lime(ライム)」や「Bird(バード)」といったサービス(アプリ)がよく知られている。

気軽に利用できることやタクシーと比較して割安であることなどが評価され、今やサービスは世界中に広がっている。2019年7月、南米ペルーの首都リマを訪問した際に電動キックボードを見つけた際は、「ここまで広がっているのか」と驚いた。当時は、まだそこまで浸透しているわけではなかったようで、ローカルの若者4人組が恐る恐る乗っていたのが印象に残っている。南米だけではない。東南アジアや東アジアでも電動キックボードのシェアサービスが始まっている。日本では見られない、日本人が知らない光景が、世界中に広がっているのだ。

南米ペルー・リマの街角で見かけた電動キックボード。地元の若者らが恐る恐る乗っていた(写真撮影/田中森士)

南米ペルー・リマの街角で見かけた電動キックボード。地元の若者らが恐る恐る乗っていた(写真撮影/田中森士)

実際に使ってみた感想は「便利。そして、楽しい」

実際の使用感はどうなのか。筆者は2019年4月、米国西海岸サンノゼにおいて何度か利用する機会があった。サンノゼには、筆者が専門とするマーケティングのカンファレンス参加のため滞在していたのだが、宿から会場まで1マイル(約1.6キロ)近く離れていた。もちろん歩いても行けるが、カンファレンスの朝は早い。終日みっちりプレゼンを聴講して、へとへと状態で宿に戻ると、時差の関係でそこから日本の仕事がスタート。この生活が会期中続く。少しの時間でも惜しかった。

アプリを開くと周辺で利用可能な電動キックボードが表示される(Limeのサービスページより)

アプリを開くと周辺で利用可能な電動キックボードが表示される(Limeのサービスページより)

選択肢としてはタクシーや配車サービス「Uber(ウーバー)」も当然あるが、利用には距離が短すぎる。そこで電動キックボードが選択肢として浮上する。筆者が利用したのは先に述べた「Lime」というサービス。電動キックボードは街中いたるところに乗り捨ててあり、アプリで探さずとも交差点を見渡せばすぐ目に飛び込んでくる。初乗り1ドル(2020年3月27日時点で、約108円)。そこから利用時間に応じて課金される。10分弱で2ドルちょっと。アプリで「終了」ボタンを押し、道に停めた電動キックボードをスマホで撮影すれば、決済完了となる。

ハンドルの近くにQRコードが表示されている(写真撮影/田中森士)

ハンドルの近くにQRコードが表示されている(写真撮影/田中森士)

「なんと便利な乗り物なのだろう」と率直に感じた。タクシーより安い。所要時間は徒歩の半分以下。そして利用者の多くが口にすることだが「乗っていて楽しい」。公共交通機関で長距離移動したあと、目的地までの「ラストワンマイル」を埋める移動手段は何か、という議論が起こって久しいが、電動キックボードはまさに「ぴったり」の移動手段であると感じる。

無事カンファレンス会場に付き、電動キックボードを停めたところ、それを通りすがりのスーツ姿の男性がおもむろにスキャン。颯爽とダウンタウン方面に消えていった。さすがシリコンバレー。キックボードが人々の生活に深く浸透していることがうかがえる。

米国サンノゼではいたる場所に電動キックボードが置かれており、市民生活に深く浸透していることがうかがえる(写真撮影/田中森士)

米国サンノゼではいたる場所に電動キックボードが置かれており、市民生活に深く浸透していることがうかがえる(写真撮影/田中森士)

日本への普及のハードルは、法律と道路事情

便利な電動キックボードだが、日本で広がる可能性はあるのか。個人的な見解であるが、現時点ではいくつかのハードルがある。ポイントは、法律と道路事情だ。

まず、法律。日本において、電動キックボードは「原動機付自転車」の位置付けとなる。運転する場合、ヘルメットと免許携帯が必須。ナンバー登録が義務付けられており、ナンバープレートの設置も必要だ。バックミラーや方向指示器などの装着も義務で、これらが欠けると法律違反となる。一方、筆者が米国で利用した際、年齢制限はあるものの免許は必要なかった。業界関係者によると、国によってこうしたルールは異なる。18歳以下はヘルメットの着用が必須であったり、歩道の走行が認められていたりと、各国が試行錯誤の末にルールを整備していっているという。シェアサービスとして普及してからまだ2年ほどしか経過していないため、今後も各国が検討を進めていくと考えられる。

続いて道路事情。長距離移動というより先述のとおり「ラストワンマイル」のための交通手段であるため、場合によっては細く、入り組んだ道を走るケースもあるだろう。特に米国などと比較して日本はこうした道が多い。乗車については力を抜き気味に乗るなどのコツも必要で、筆者も最初はバランスを取るのに苦労した。電動キックボードは、米国のように広々とした道であれば非常に使いやすいが、日本では道が入り組んだ場所など、エリアによっては道路事情とマッチしない可能性もある。

広々とした米国サンノゼの通り。米国は日本と比較して道が広い(写真撮影/田中森士)

広々とした米国サンノゼの通り。米国は日本と比較して道が広い(写真撮影/田中森士)

同時に、先述の通り日本では電動キックボードが原付バイクの扱いであるため、当然歩道の走行は禁じられている。車道を走る必要があるが、乗った感想としては自転車と原付バイクの中間のスピード(実際に走行する際は時速15キロ程度であることが多い)であり、現時点では幹線道路など場所によっては交通に混乱をきたす恐れもあると感じる。これらの理由から、日本で導入する場合は利用可能エリアを絞ったほうがいいのかもしれない。

日本で進む実証実験九州大学伊都キャンパスで実施されている実証実験の様子。私有地だが、バス、自動車、バイク、自転車、歩行者が通行。また、信号機、横断歩道が設けられているなど公道に近い環境となっている(モビー社提供)

九州大学伊都キャンパスで実施されている実証実験の様子。私有地だが、バス、自動車、バイク、自転車、歩行者が通行。また、信号機、横断歩道が設けられているなど公道に近い環境となっている(モビー社提供)

仮に電動キックボードが自転車と同じ扱いになれば、普及は一気に進む可能性がある。福岡市は、国に規制緩和を提案。九州大学伊都キャンパス内で実証実験を開始すると発表した(2019年11月~2020年4月で実施)。シェアサービスとしての電動キックボードの公道走行を目指すもので、実証実験の実施事業者は電動キックボードシェアリングサービス「mobby(モビー)」を提供する株式会社mobby ride(以下、モビー社)。福岡市のホームページによると、走行に関するデータを取得し、「安全性や利用ニーズについて検証する」という。

実証実験に参加したモビー社(同社Webサイトを画面キャプチャ)

実証実験に参加したモビー社(同社Webサイトを画面キャプチャ)

実は、海外で電動キックボードの普及が進む半面、規制の動きもある。利用に広がりを見せていたシンガポールでは2019年11月、事故が相次いでいることを受けて事実上禁止となった。筆者が以前、シンガポールで歩道を歩いていたところ、電動キックボードに追い抜かれヒヤッとした経験がある。最大速度は25キロにもなるため、歩行者に接触すれば双方けがにつながりかねない。ちょうど禁止になった直後にシンガポールに滞在していたのだが、どこでも目にしていたキックボードの姿は一切なかった。福岡市が安全性について検証するとしているのは、事故のリスクが背景としてあるとみられる。

一方フランスでも2019年、電動キックボードなどに関する新しい法律が公布された。2人乗りや歩道での走行を禁止するとともに、年齢と最高時速を制限するなどしたものだ。将来的にはライトなどの装備も義務付けられるという。

米国サンフランシスコでも電動キックボード(写真右の車脇)は当たり前の光景だ(写真撮影/田中森士)

米国サンフランシスコでも電動キックボード(写真右の車脇)は当たり前の光景だ(写真撮影/田中森士)

普及が進むと同時に、問題が顕在化した時点で規制が入る――というサイクルが繰り返され、中長期的に見ると世界中でゆるやかに普及が進んでいくと個人的に考える。特に観光地や都市部においては、渋滞緩和や回遊性向上が期待できるため、こうした地域を中心に世界的な潮流としては普及が進むのではないだろうか。

日本での普及には法改正が大前提となるだろう。同時に、自転車と共用の専用レーン設置などの安全対策も不可欠だ。安全を担保しなければ、そもそも法改正はかなわない。

モビー社で電動キックボードシェアサービスのビジネスを担当する安宅秀一氏は、「シェアサービスという形態を取ることで安全性を確保できる」と強調する。車体をサービス事業者が管理することで、個人所有の自転車で起こるような、整備不良や不正改造による事故を防ぐことができる。また、車体に内蔵されたGPSにより、道路環境に応じて利用エリアを限定できる。安宅氏は「われわれのサービスにおいて、電動キックボードは自転車と同じか、それ以上に安全性が高いと考えている。実証実験のフィールドを拡大するなどして、制度を変えるためのデータをできる限り多く集めたい」と話している。

人々のライフスタイルを変える、かつ「ラストワンマイル」を埋めるソリューション。日本で進む実証実験の推移を注意深く見守りたい。

●取材協力
株式会社mobby ride

古き良きリノベ町家 – 天高3.2m –

所在地:荒川区南千住
13万8,000円 / 42.52平米
都電荒川線「三ノ輪橋」駅 徒歩4分

築53年のとても小さな木造戸建て。外も中も元の素材をしっかり生かし、雰囲気よく仕上げられています。



室内の天井の梁や柱、階段はそのまま。よく見ると欠けた部分には木材を埋め込んで修復された形跡が!



壁はクリーム色っぽい漆喰(しっくい)で仕上げられており、キッチンスペースだけは掃 ... 続き>>>.
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色が映える家

所在地:世田谷区深沢
1億6,950万円 / 216.24平米(建物) 126.95平米(敷地)
東急大井町線「上野毛」駅 徒歩17分

中庭やドライエリアに描かれたイラストが目を引くこの家。白が多用された内装が、水色や赤といった色を印象的にしています。



そんな家があるのは世田谷区深沢。最寄り駅は上野毛か桜新町ですが、実はバスが便利。特に恵比寿駅行きのバスが停車するバス停がすぐ近くなので、通勤に重宝しそうです。使 ... 続き>>>.
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スコーンと爽快なリノベ空間

所在地:横浜市中区弁天通
9万円 / 38.07平米
みなとみらい線「馬車道」駅 徒歩5分

横浜は港町なので、昔から港の男たちが楽しむ街があります。そんな歴史を感じる街のレトロな建物は1955年築。



エレベーターはありませんが、その分ゆったりとした造りの共用部。なぜか愛着を感じてしまいます。



今回募集の住戸はリノベーションされ、爽やかな現代の風をスコーンと吹き込んだ ... 続き>>>.
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民家の駐車場に“住める”!? 「バンライフ・ステーション」って?

「バン」などの車中泊仕様の車を生活拠点「家」にして、仕事や旅行などを楽しむ新たなライフスタイル「バンライフ」が話題となっている。

その流れを受け、バンライファーである筆者が、日本初の長期間“住める”民家の駐車場「バンライフ・ステーション」を2019年12月にオープンした。この試みはどういったものなのか、利用者の声も踏まえてお届けする。

なぜバンライフが熱いのか?

インスタグラムの「#VANLIFE」ハッシュタグ数は世界で676万件(2020年3月現在)にも及ぶ。インスタグラム、フェイスブック、ブログなどのソーシャルメディアを通して、世界的にあらゆるライフスタイルが共有される時代、人々の視野や価値観が拡大することで、“一緒に”変わった暮らし方にチャレンジする実践者が増えている傾向にある。

筆者の周りでも最近、「生活はバンライフで十分、(それを実践する)バンライファーになりたい」と従来の安定した正社員生活を離れ、2020年3月からトヨタ・ヴォクシーを活用し、バンライファーの仲間入りを果たした20代の若者もいる。

豊かな世の中に生まれ育った20~40代前後の若者が「何故これまでの考えのもと、人生を過ごさなければいけないの?」「時代に合わせた生活があってもいいのでは?」と暮らしの固定概念を疑問視し、精神的な豊かさや自由を求めて、旅先であらゆることを日々体感しながら暮らせるバンライフに魅力を感じ始めているようだ。

バンライフの“家”もあれこれ(写真提供/中川生馬)

バンライフの“家”もあれこれ(写真提供/中川生馬)

ハイエースをベースに、オフィスやベッドを搭載した“動く拠点”(写真撮影/中川生馬)

ハイエースをベースに、オフィスやベッドを搭載した“動く拠点”(写真撮影/中川生馬)

軽トラックや1トントラックに自作の木造の家を荷台に積むバンライファーもいる(写真撮影/中川生馬)

軽トラックや1トントラックに自作の木造の家を荷台に積むバンライファーもいる(写真撮影/中川生馬)

自身の好みで車内を改装すれば、分厚くて頑丈な外装、安全面を重視して製造された車は家にもなる。

「バンライフ=車上生活・車中生活」というと、かつては車付きの路上暮らしをイメージされがちだったが、いわゆるこの記事内の「バンライフ」は従来のイメージとは異なる。

ひと昔前は「マイホーム」が豊かさを示していたかもしれないが、今や個々の豊かさの価値観は自身の自由度にシフトし始めている。

情報通信技術が飛躍的に進化、バンライファー人口はどれくらいいる?

バンライフを実践したい人たち向けに車中泊スポットのシェアと、キャンピングカーなど車中泊仕様の車に特化したカーシェアサービスを提供するCarstay(カーステイ)によると、「世界には120万人、日本には3400人もの長期間、車で過ごすバンライファーがいる」という。

2000年初期からADSLや光回線が普及し、2010年に入ってからはモバイルWi-Fiルーターやスマホのテザリングを介したインターネットが普及。このことでいつでもどこでも場所を問わず仕事ができるようになり、バンライフに火が付き始めた。

2020年代に突入し、5Gや自動運転が普及することで、車で移動しながら仕事するだけでなく、暮らすこともできるようになる。この社会動向とともに、より多くの人が「バンライフも自分の生活の選択肢としてあり得るのでは?」と考え始め、今後の暮らし方の自由度はさらに拡大することだろう。

バンライファーが集まるイベント「キャンパーフェス」にて(長野県安曇野)(写真提供/中川生馬)

バンライファーが集まるイベント「キャンパーフェス」にて(長野県安曇野)(写真提供/中川生馬)

この流れのなかで、バンライファーたちの注目を集めているのが大手自動車会社の動向だ。

それは、情報技術と車両を活かしてあらゆるサービスを展開する概念「MaaS(Mobility as a Service)」。この市場は世界で6兆円規模と言われている。

去年開催された自動車の祭典「第46回東京モーターショー2019」では、車が単に人の「足」になるだけでなく、これまで以上に人の生活に深く入り込み、車は「動く」打ち合わせスペース、ホテル、仮設住宅など、「動くX」に生まれ変わることを自動車会社が強調していた。

「動くX」の代表例はトヨタの「e-Palette(イーパレット)」(写真提供/トヨタ自動車株式会社)

「動くX」の代表例はトヨタの「e-Palette(イーパレット)」(写真提供/トヨタ自動車株式会社)

さらにトヨタは、世界最大のエレクトロニクスとテクノロジーの見本市「CES 2020」で、MaaSなどの実証実験ができるコミュニティ「Woven City(ウーブン・シティ)」を静岡県裾野市に創ることや、通信インフラ最大手のNTTとの資本・業務提携にまで踏み込み、この世界の広がりを本格化させることを発表した。

MaaSに関わる業界全体で、車を基盤としたサービスの革新が進み、バンライフにもさらなる注目が寄せられることだろう。

住める駐車場「バンライフ・ステーション」とは?

バンライフへのアツい潮流をひしひしと実感し、2019年12月、能登半島の奥地、石川県穴水町川尻地区で筆者が安価で譲り受けた一軒の古民家を、シェアハウス、シェアオフィス、コワーキングスペースなど多用途・多目的の家「田舎バックパッカーハウス」としてバンライファー向けにオープンした。「バンライフ・ステーション」はその敷地内にある、中長期間滞在が可能な“住める民家の駐車場”だ。

バンライファーの家となる「車」を駐車場に停めて、「田舎バックパッカーハウス」にドッキング。固定された家に「動く部屋」が拡張されたイメージだ(撮影/中川生馬)

バンライファーの家となる「車」を駐車場に停めて、「田舎バックパッカーハウス」にドッキング。固定された家に「動く部屋」が拡張されたイメージだ(撮影/中川生馬)

ワークスペース、居間、台所、シャワー、トイレ、畑、Wi-Fi、パソコンモニター、デスクなど、生活で必要となるスペースや設備の共同利用が可能で、プライベート空間が必要なときや、就寝時は自身の家/ベットルーム「車」へと戻るという考え方だ。

通常、バンライファーは自宅となる車を運転しながら、その日の風呂、車中泊、仕事、充電などができるスポットを探すことで頭がいっぱいだ。

車の旅人は主に、長距離運転などの疲労による仮眠の車中泊はOKで、オートキャンプなどいわゆるレジャー目的の車中泊は“遠慮してください”としている「道の駅」、サービスエリア、車中泊が正式認定された「Carstay」ステーション、オートキャンプ場、RVパークなどを利活用することが多いが、これらの施設は「長期滞在」「連泊して住む」ことなどを目的としては機能していない。

時代とともに目的や用途は変更すべきだとは思うが、現状、本格的なバンライフを支えるインフラは存在しない。一時的にリラックスでき、24時間仕事に集中できる「バンライフ・ステーション」は、バンライファー含めた旅人に求められていると思っている。このような「バンライフ・ステーション」が増えることで、バンライファーも増えるに違いない。

「田舎バックパッカーハウス」オーナーの筆者・中川生馬は、バックパッカーあがりのバンライファーです(撮影/中川生馬)

「田舎バックパッカーハウス」オーナーの筆者・中川生馬は、バックパッカーあがりのバンライファーです(撮影/中川生馬)

今回、「田舎バックパッカーハウス」をつくろうと思った背景には、筆者のバックパッカー時代の経験がある。「田舎バックパッカーハウス」のオーナーである筆者は、以前は田舎を旅するバックパッカーだった。

前職の大手企業での会社生活に満足していたものの、会社中心のライフスタイルに疑問を抱き、2010年10月から、能登の小さな農山漁村・石川県穴水町岩車に移住した2013年5月まで、テントや炊事道具など約30キロのバックパックを担いで、全国各地の“聞いたことがない”田舎を中心に旅歩き、田舎現地の人たちの生の声を聞きながら、次の生活拠点を探した。途中、車中泊・旅人仕様に車を改装するアネックス社からハイエースがベース車輌の「ファミリーワゴンC」を購入し、バンライフを開始。

バックパッカーやバンライフをしていた当時から、中長期間、時間を気にすることなく、休憩しつつも仕事ができ、旅人の体や気持ちを癒やし共感できるスペースの必要性を感じていた。今回、「バンライフ・ステーション」を開設したのは、こういう理由からだ。

今後、バンライファーがさらに増加することで、「バンライフ・ステーション」の需要はさらに高まると思う。「バンライフ・ステーション」は現在能登に1カ所しかないが、共同企画者であるCarstayが年内中に全国から「バンライフ・ステーション」のオーナーの募集をする予定だ。

ハイエースのバンがベース車輌のキャンピングカーで打ち合わせをするCarstayのメンバー(写真提供/Carstay株式会社)

ハイエースのバンがベース車輌のキャンピングカーで打ち合わせをするCarstayのメンバー(写真提供/Carstay株式会社)

「バンライフ・ステーション」を利用した2組の声

2020年新年早々、「田舎バックパッカーハウス」に2組のバンライファー夫婦が訪れた。

1組目の矢井田さん夫妻は「バンライフ」に魅力を感じて会社を退職したという。

2019年10月ごろ、住んでいた大阪のアパートを解約し、ハイエースに引越した。自宅で使っていたベッドや棚などは車内に移動。さながらハイエースは“動くワンベッドルーム”のようだった。

矢井田さん夫妻のハイエースの家。アパートで使っていたベッドや棚を設置(撮影/中川生馬)

矢井田さん夫妻のハイエースの家。アパートで使っていたベッドや棚を設置(撮影/中川生馬)

2組目の菅原さん夫妻は、結婚当時 家がなく、唯一持っていたのは車のみだった背景から、2019年4月から旅・仕事・生活を車中で開始、今では軽自動車のハスラーで全国を周る超小型バンライフを楽しんでいる。が、少しスペースが小さすぎたようで、最近ではハイエースへの乗り換えを予定しているとのこと。

菅原さん夫婦の“家” 軽自動車ハスラー(撮影/中川生馬)

菅原さん夫婦の“家” 軽自動車ハスラー(撮影/中川生馬)

両組とも「バンライフ・ステーション」を利用しようと思った背景には、「落ち着いた環境で時間を気にせず、約1カ月間 集中して仕事をしたい」などの理由があった。

夜はみんなでわいわいと飲み食い(撮影/中川生馬)

夜はみんなでわいわいと飲み食い(撮影/中川生馬)

ご飯を自炊したり、夜中過ぎまで仕事をしたりして「田舎バックパッカーハウス」で過ごしていた二組夫婦。

同じバンライフ人生を過ごす仲間と一時を共有できたことについて「バンライファーが長期間、一つの場所に集まることは珍しい。共感できる話も多くて楽しい時間を過ごせた」と話していた。

また、味噌づくりなど地域の行事に参加、近所で野菜をお裾分けしてもらうなど、田舎ならではの体験をとおして、地域と交流ができ、人との“つながり”が生まれた。

「バンライフでは夫婦2人で居る時間がほとんど。この場をきっかけに、お互いの夫婦や地元の人たちと触れ合うことができ、新しい家族が増えたようで楽しかった。穴水町はまだまだ知られていない穴場、移住した中川生馬さんが地元の人と私たちをつなげてくれたおかげで、『知る人ぞ知る』地元ならではの体験もできてうれしかった」と、菅原さん夫婦は話してくれた。

両夫婦とも能登牡蠣には超感動(写真提供/中川生馬)

両夫婦とも能登牡蠣には超感動(写真提供/中川生馬)

矢井田さん夫妻も、「今回、バンライフ・ステーションに滞在した主な理由は、たまっていた仕事を落ち着いた空間で片付けたいと思ったからでした。バンライフでは、落ち着ける車中泊スポット、温泉や銭湯、ポータブルバッテリーの充電スポットなどを探しながら日々を過ごしています。とはいえ、連泊でき、時間を気にすることなく、自宅のように気軽に利活用できるスペースがありません。夫婦だと、ゲストハウスやホテルなどの長期宿泊すると高額になりますし、バンライフを送るにも通常1カ月あたり12万円以上かかっていましたが、ここに滞在した1カ月間は、ガソリン代や温泉代などを抑えることができ、二人一組で約半額で済みました。また、田舎への“ちょい”移住生活も体感できたし、牡蠣などの能登の食材もとにかく素晴らしかった!」と滞在を楽しんでくれた様子。

昼前から深夜にかけて仕事をする二組の夫婦(撮影/中川生馬)

昼前から深夜にかけて仕事をする二組の夫婦(撮影/中川生馬)

能登では冬季間の1~2月は雨や雪が多いが、3月ころから天気が回復して暖かくなり、過ごしやすくなる。

夏は暑いが、都会と比べると、日中や朝晩は涼しい。暑い日は、「田舎バックパッカーハウス」から数分で行ける穏やかな海へと飛び込んで涼む方法もある。

「バンライフ・ステーション」で過ごすだけでなく、牡蠣漁師の体験や…(撮影/中川生馬)

「バンライフ・ステーション」で過ごすだけでなく、牡蠣漁師の体験や…(撮影/中川生馬)

穏やかな海上で地元の食材や地酒を堪能し、釣った魚を調理し半自給自足体験をすることもできる(撮影/中川生馬)

穏やかな海上で地元の食材や地酒を堪能し、釣った魚を調理し半自給自足体験をすることもできる(撮影/中川生馬)

あらゆるものがそろっている豊かな時代。

あえて混雑した都会を離れ、バンライフというユニークな暮らし方を試してみてはいかがだろうか?

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田舎をバックパッカー旅してたどり着いた、家賃5000円の能登暮らし
つくば市が「バンライフ」の聖地に? 車を家にする新しい暮らし●取材協力
・Carstay株式会社
・田舎バックパッカー

ゆるく心地よい空気感 – ワイド&天高3m –

所在地:港区北青山
50万6,000円(税込) / 66.96平米
銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道」駅 徒歩7分

★賃料が下がりました★ 



「ここ本当に青山!?」



いい意味で青山っぽくない、のんびりとした空気があたりにはただよっています。窓の先に広がるのはちょっとしたグラウンド。ベンチでくつろぐ老人、キャッチボールを楽しむ若人の姿になんだかほっこり。



そんなおもしろい場所に立つ、タイル ... 続き>>>.
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バルコニーでジャグジーを楽しむ

所在地:中野区上高田
19万円 / 51.92平米
西武新宿線「新井薬師前」駅 徒歩8分

広々としたルーフバルコニーに専用のジャグジーバスが付いた物件。もちろん入浴中に周囲から見えないように、ブラインドを下ろせます。バルコニーは眺めもよく、テーブルセットを置いて気持ちよく過ごせそうです。



室内はメゾネットタイプの1SLDK。コンクリート・木・白塗装の三つのバランスが ... 続き>>>.
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バルコニーとともに

所在地:杉並区高円寺南
12万円 / 41.2平米
中央線「中野」駅 徒歩9分

部屋の面積と同じサイズのルーフバルコニーが付いてくる、ちょっとお得で気分が上がっちゃう部屋のご紹介。



広々とした約25畳のルーバル。好きな植物を飾って緑を間近に感じたり、晴れの日は音楽を流しながら机といすを出して、家にいながらピクニック気分を楽しんでみたり。共用部とは壁を隔てて ... 続き>>>.
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デジタル工作機器でオリジナルなグッズがつくれるカフェ。「ファブカフェ キョウト」が伝えたい「ものづくり」のある暮らし

お気に入りの写真やロゴマークなど自分でつくったデザインを、オブジェやグッズにしたり、友達と企画したイベントでノベルティなどをつくって、参加者とおそろいにしたり、そんな、オリジナルなものがある生活、素敵ですよね。表現の幅が広がり、暮らしはきっともっと豊かなものになるでしょう。「ハンドメイドで!」と考えるものの、そもそも、加工ができる工具や設備がありませんし、ショップに製作を依頼するにはロット数が少なすぎて、数の割にはお金がかかってしまいます。

近年、「メイカースペース」「Fab スペース(以下「ファブスペース」)」と呼ばれる、3Dプリンターや、デジタルミシンなどのデジタル工作機器を取りそろえた施設が、各地にできています。京都の街なかにある「FabCafe Kyoto」(ファブカフェ キョウト)は、お茶や食事も楽しめるカフェにファブスペースが併設された「ファブカフェ」。

工房と一体化した夢のようなカフェは、今、この街でどんなふうに住民との関係を築いているのか。「FabCafe Kyoto」を運営している株式会社ロフトワークのディレクター、木下浩佑さんにお話をうかがいました。

おしゃれなカフェとデジタル工作機器の不思議なバランス

訪れた場所は、「五条」と呼ばれるエリア。東には世界遺産の清水寺があり、西へ歩けば東本願寺、南へさがれば京都タワー。徒歩圏内に京都を代表する名だたる観光スポットをいだきながらも、静かな趣をたたえる街です。

2017年6月9日にオープンした「FabCafe Kyoto」。ここは、築およそ120年という木造建築をリノベーションしたクリエイティブ・スポットです。和の意匠を活かした堂々たるたたずまいに見とれてしまいます。

最近では町屋をリノベしたカフェやゲストハウスも増え、若い人たちに人気の五条エリア。真黒でモダンな外観はつい中をのぞき込みたくなる(写真撮影/出合コウ介)

最近では町屋をリノベしたカフェやゲストハウスも増え、若い人たちに人気の五条エリア。真黒でモダンな外観はつい中をのぞき込みたくなる(写真撮影/出合コウ介)

店内に足を踏み入れると、そこは30席を擁する、ゆったりとしたカフェ空間。インターネット回線と電源を無料開放し、コワーキングスペースのようにも使えます。

1階左手は長いカフェカウンター。この奥にファブコーナーがある(写真撮影/出合コウ介)

1階左手は長いカフェカウンター。この奥にファブコーナーがある(写真撮影/出合コウ介)

もとは工場や家具屋として使われていた築120年の建物。モノや車が出入りしていた通りに面した部分は開放感のある窓と入口になっている(写真撮影/出合コウ介)

もとは工場や家具屋として使われていた築120年の建物。モノや車が出入りしていた通りに面した部分は開放感のある窓と入口になっている(写真撮影/出合コウ介)

そして! 刮目すべきは、1階のカフェの明るい窓に面した奥。ここに、工作用マシンがズラリと並んでいます。

設置されているのは、プラスチックや皮革や材木などを彫刻したり切断したりできる「レーザーカッター」、3次元の造形ができる「3Dプリンター」、紫外線をあてると硬化する特殊インクで、紙以外にも印刷できる「UVプリンター」、切削工具を回転させながら彫刻をしたり穴をあけたりできる小型「CNCフライス」、最大8色の糸でさまざまな色彩とデザインが表現できる「デジタル刺繍ミシン」などなど。高価なため家庭での購入が難しい機器の数々が並び、ワクワクしてきます。
それぞれ、利用時間に応じて料金が設定されています。また、レーザーカッターとデジタル刺繍ミシン、UVプリンターは操作方法の講習会を受講した方のみ使用が可能となっています。

写真上/ずらりと並んだデジタル工作機器、写真下/デジタルミシン(手前)とUVプリンター(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部(上)、出合コウ介(下))

写真上/ずらりと並んだデジタル工作機器、写真下/デジタルミシン(手前)とUVプリンター(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部(上)、出合コウ介(下))

木下浩佑さん。この店で働く前も東京のモノづくり施設で運営に携わる。経験を活かし、京都ならではの素材や伝統、人脈を活かしたファブスペースづくりに取り組んでいる(写真撮影/出合コウ介)

木下浩佑さん。この店で働く前も東京のモノづくり施設で運営に携わる。経験を活かし、京都ならではの素材や伝統、人脈を活かしたファブスペースづくりに取り組んでいる(写真撮影/出合コウ介)

木下浩佑さん(以下、木下)「カフェに工作機器をそろえたこのスペースは、ものづくりをしたい人たちを応援をするためのラボ(工房)です。工作機器の多くは製造工場や教育施設などにあり、扱うのは専門の職人さんや、専門の勉強をしている人が中心です。そのような場に行かない限り、一般の人には機械を目にするきっかけも、触る機会も少ない。そういった専業職種の機械を広く一般に開放してゆくのが私たちのようなファブスペースの役目なんです。カフェという気軽に入れるスペースとくっついていることで、さらに多くの方が機械を利用できるのではないかと考えました」

社会実験から始まったアメリカ生まれのファブラボが、カフェ併設で、より日常に

工場にあって表に出ない工作機械と市井の人々をつなぐ場。もともとはアメリカのマサチューセッツ工科大学が、「高度な機器を市民に開放すると、地域でどんな活動が始まるのか?」という社会実験として「ファブラボ」と呼ばれる場をつくったことから始まったのだそう。そしてこの実験精神や理念が多くの人に受け容れられ、今や海を渡り、ファブスペースは世界中に誕生しているのです。

木下「例えば、レーザーカッターで硬い素材にスリット(切れ込み)を入れると、手で曲げられるほど柔らかくなります。アクリル板を凹凸にカットして組み合わせると箱など容器がすぐにつくれます。文字を切り出すと、商店のポップなどにも使えます。あると便利だけれど家庭では制作できない雑貨などが、ここでは実現可能なんです」

アクリル板をレーザーカッターでカットすればさまざまな立体がつくれる(写真撮影/出合コウ介)

アクリル板をレーザーカッターでカットすればさまざまな立体がつくれる(写真撮影/出合コウ介)

UVプリンターでアクリル版に塗装したもの。革や布などにも塗装可能で、人気の機器だ(写真撮影/出合コウ介)

UVプリンターでアクリル版に塗装したもの。革や布などにも塗装可能で、人気の機器だ(写真撮影/出合コウ介)

カフェと工房が一体化したスタイルは、ここが世界で9軒目、この京都店と同じ系列では台北、香港、渋谷、といった大都市のほかに岐阜県の飛騨にも。ファブラボの「ファブ」に「FABrication(ものづくり)」と「FABulous(愉快な、素晴らしい)」という二つの意味を込めており、「伝統と革新、デジタルとアナログが混ざりあう、楽しい創造の場所にしてゆきたい」という想いがあるとのこと。

カフェと工房のあいだに仕切りなし。お客さんどうしの交流が生まれる

今回はSUUMOジャーナル編集部が、トートバッグにオリジナルな刺繍をチャレンジ。原画は編集部員Kのお母さんが「趣味で描いた」という油絵の写真。

写真撮影/編集部K

写真撮影/編集部K

持ち込んだイラストやデザインをPCで加工、デジタル工作機器に取り込むことで器用な人でも誰でも思い通りの作品をつくることが可能(写真撮影/出合コウ介)

持ち込んだイラストやデザインをPCで加工、デジタル工作機器に取り込むことで器用な人でも誰でも思い通りの作品をつくることが可能(写真撮影/出合コウ介)

PCで4色の色に変換された絵の画像は、4色の糸で次々と刺繍されていく(写真撮影/出合コウ介)

PCで4色の色に変換された絵の画像は、4色の糸で次々と刺繍されていく(写真撮影/出合コウ介)

それにしても驚くのが、カフェとファブスペースの境目がまるでない点。ここまで飲食スペースと一体化しているとは想像していませんでした。

木下「カッティングやミシンがけなど作業の際に出るノイズに包まれながら、ある人はパソコンで仕事をし、ある人は読書をし、ある人は思考をめぐらせ、ある人はおしゃべりに興じたり、ミーティングをしたり。そんなふうに、それぞれが自分なりのワークをしながら音に寛容になれる場所が京都にあってもいいんじゃないかと考えて、あえて仕切りは設けていません。『ガラス張りにすらしたくない』って思ったんです。『静かにしなきゃいけない』って、お客さんにとって、すごいプレッシャーですしね」

コーヒーを飲みながらコワーキングスペースとして利用する人も(写真撮影/出合コウ介)

コーヒーを飲みながらコワーキングスペースとして利用する人も(写真撮影/出合コウ介)

木下さんがおっしゃる通り、店内はさまざまな機械音がリズムを刻んでいて躍動感があり、「サウンドで元気がもらえるカフェだな」という印象を受けました。騒音だとはまるで感じず、むしろ音の色彩感を味わえる、ここはそんな場所なのです。

木下「それに仕切りをなくすと、見知らぬ人どうしで『何をつくっているんですか?』ってフレンドリーに話しかけやすい。新たな交流が生まれます。ここに来た人やクリエイターと、あるいはクリエイターと企業が協創するきっかけなればうれしいですね」

作業中は「あえて手伝わない」。自分の力で完成させるからこそ、ものづくりは楽しい

「FabCafe Kyoto」の、もうひとつの大きな特徴、それは機械や工具の使用が「セルフサービス」である点。教えてくれる人がつかないため、不安に感じて利用を躊躇するお客さんもいるのでは?

木下「はじめは不安でも、失敗してもいいからDIYを楽しんでほしい。実はオープン当初はオペレーターつきのプランも設けていたんです。でも、やめました。助手をつけると結局、人に頼ってしまって、自分だけでは完成させられなくなるんです。試行錯誤しつつ、『ここをもっと、こうしたほうがいい』『こう操作するとクオリティがあがるのか』と気がつくことこそが、ものづくりのおもしろさだと思うんですね。それに自分でつくると、『職人さんって、やっぱスゴいな!』って、リスペクトの気持ちが改めて湧いてきます」

失敗したっていい。間違えたから気づきがある。ああでもないこうでもないと首をひねりながらも、手を動かしたからこそ生まれるアイデアもある。そうやってカフェの一画でさまざまな人々がハンドメイドにチャレンジし、「木目の上に透明なインクを印刷して半立体にしたグッズ」など意欲作が続々と誕生しました。

レーザーカッターの切る幅を変わるだけで素材の印象は大きく変わる。細く細かく入れれば固いものもしなやかに曲がる(写真撮影/出合コウ介)

レーザーカッターの切る幅を変わるだけで素材の印象は大きく変わる。細く細かく入れれば固いものもしなやかに曲がる(写真撮影/出合コウ介)

年間およそ数百アイテムが誕生。伝統工芸の歴史深き京都では「京都らしく」

デスクワークがメインだったクリエイターが、初めて機械に触れるケースも多いのだそう。実際の工芸作業をした経験がなかったデザイナーがレーザーカッターを自力で操作し、「自分が設計したデータが商品になるって、こういうことなんだ!」と子どものように初々しく喜ぶ姿も見受けられたと木下さんは言います。

木下「FabCafe Kyotoから生まれた作品は、年間およそ数百種類。どれも素晴らしくて、僕らも刺激をもらえます。そういえば、海外からお見えになられたお客さんが『スーツケースの取っ手が壊れたから』と言って、3Dプリンターで取っ手をサッとつくってサッと帰っていった日もありました。必要なものをつくることが当たり前になっている、あの時は『カッコいい!』ってテンションがアガりました」

上/分厚いアクリル板の裏側にUVプリンターで画像を塗装したもの。立体感が出て素敵なオブジェに。下/3Dプリンターでつくった模型。設計図となるデータは、さまざまなサイトで共有されていて、自分でイチからつくれなくても、データのサイズを変えたり、デザインを変えたりなどなどカスタマイズすることからチャレンジすることもできる(写真撮影/出合コウ介)

上/分厚いアクリル板の裏側にUVプリンターで画像を塗装したもの。立体感が出て素敵なオブジェに。下/3Dプリンターでつくった模型。設計図となるデータは、さまざまなサイトで共有されていて、自分でイチからつくれなくても、データのサイズを変えたり、デザインを変えたりなどなどカスタマイズすることからチャレンジすることもできる(写真撮影/出合コウ介)

一般の方々がカジュアルにドロップインし、ものづくりを学べる「FabCafe Kyoto」。カフェですから、工作機械はもちろん、ドリンクももちろん充実。珈琲豆は、京都伏見で焙煎しているスペシャルティコーヒーショップ「Kurasu Kyoto」に依頼したオリジナルブレンドと、緑豊かな京都・大山崎の山麓にある「大山崎 COFFEE ROASTERS 」で自家焙煎した豆を使用、「抹茶ラテ」には新進気鋭の茶舗「京都ぎょくろのごえん茶」の抹茶粉を使用するなど京都らしいラインナップです。

本格的に茶筅でたてる抹茶ラテ(写真撮影/出合コウ介)

本格的に茶筅でたてる抹茶ラテ(写真撮影/出合コウ介)

木下「京都ぎょくろのごえん茶さんは、抹茶の仕入れだけではなく、うちのレーザーカッターのヘビーユーザーなんです。お店に使うポップをハンドメイドしているんですよ」

食材の仕入れ先という結びつきを超え、カフェとラボは、新たなる有機的な関係を築いていたのです。ほかにもゲストハウスや飲食店を営む人が、ルームキーのキーホルダーや、施設内のサインプレート、メニュー表やカップをつくったりなど、暮らしや生業に根差した使われ方をされているそう。ここには、漆や引箔(ひきはく:和紙に金銀箔で模様を施し断裁した糸。西陣織に使われるもの)といった伝統的な素材から、サンルミシスインキ(ブラックライトで光る蛍光顔料)や熱硬化性素材など最新のマテリアルも展示しており、創作イメージが広がります。
「ここ、京都は商売だけでなく、職人さんや芸術家も多い町です。ちょっと立ち寄ったときに、素材や人からの刺激を受けたり、試作品をつくる場になったりもしています」ひとくちにファブスペースといっても、この京都のようにカフェがあったり素材があったりなど、その街にどんな人が暮らしているかによって、形態はさまざま。つくること、お客さんに見せることが暮らしの一部となっている京都の人が、足を運びやすい「ものづくりの場」として地域に溶け込んでいるようです。

カフェスペースではさまざまな京都やモノづくり、マテリアルに関係したイベントも多数開催している(写真提供/FabCafe Kyoto)

カフェスペースではさまざまな京都やモノづくり、マテリアルに関係したイベントも多数開催している(写真提供/FabCafe Kyoto)

ショップ看板(左)、ウィンドウサイン(右)のほか、店内のディスプレイもここでつくったオリジナル。周辺のお店の人、職人さん、芸術家らもこのようなオリジナルな1点をつくりに来るそう(写真撮影/出合コウ介)

ショップ看板(左)、ウィンドウサイン(右)のほか、店内のディスプレイもここでつくったオリジナル。周辺のお店の人、職人さん、芸術家らもこのようなオリジナルな1点をつくりに来るそう(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

さて! いよいよトートバッグの刺繍ができあがりました。今回は特別に木下さん直々にミシンがけをしていただきました。間違いなく、誰がどう見てもオンリーワンなバッグとなりましたが、いかがでしょう。

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

どうだろうか。なかなかサイケデリックな仕上がり(写真撮影/編集K)

どうだろうか。なかなかサイケデリックな仕上がり(写真撮影/編集K)

いまなお町家や古民家が建ち並ぶ古きよき五条エリアで地域に溶け込んでいる、ものづくりカフェ。ミシンの針が進む速度で、工芸の新しいかたちが育まれている。そんなふうに感じました。

●取材協力
FabCafe Kyoto

2019年の新築マンション購入、首都圏・関西圏ともに最も高く、最も狭く!?

リクルート住まいカンパニーは、「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」および「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」の結果を発表した。いずれの調査結果でも、調査を開始以降(首都圏は2001年、関西圏は2003年)で平均購入価格は最も高く、平均面積は最も小さくなったことが分かった。その実態について詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「2019年新築マンション契約者動向調査」を発表/リクルート住まいカンパニー
●首都圏
●関西圏平均購入価格は首都圏が5517万円、関西圏が4517万円で、2001年以降最高額に

調査は、新築マンションの購入契約者を対象に、2019年1月~12月に集計した、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県:4931件)と関西圏(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県・滋賀県:1024件)の結果をまとめたもの。

新築マンションの平均購入価格は、首都圏が5517万円で2018年より115万円増加した。また、関西圏は4517万円で2018年より179万円増加した。いずれも5000万円以上のシェアが増えたことによるもので、2001年の調査以降で最も高くなった。

購入価格(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

購入価格(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

平均購入価格が高くなったためか、ローンの借入総額も増加している。首都圏では平均4791万円(前年より98万円増)、関西圏では平均3993万円(前年より233万円増)となり、2005年以降で最も高い額となった。

一方、平均専有面積を見ると、首都圏では68.2平米、関西圏では71.5平米となり、いずれも2001年以降で最も小さくなった。価格の上昇局面では専有面積を小さくして販売価格を抑える傾向が生まれるが、調査結果にもそれが表れている。

共働き比率がこれまでで最高。世帯総年収にも影響

「購入価格の増加」→「住宅ローンの借入総額の増加」を支えているのは、共働き比率の上昇だ。首都圏では、全体に占める共働き世帯の割合は59%、既婚世帯(シングル世帯やその他・不明を除く)で見ると68%に達した。また関西圏では、全体に占める共働き世帯の割合は54%、既婚世帯で見ると65%に達した。いずれも、2001年以降で最も高い割合となっている。

共働き世帯が増えることは、世帯総年収が上がることにつながる。世帯総年収の全体の平均額は、首都圏で988万円、関西圏で814万円であるが、共働き世帯に注目すると平均額は上がる。

○既婚世帯の共働きの有無による平均世帯総年収
首都圏:既婚・共働き世帯 平均1038万円、既婚・共働きでない世帯 平均945万円
関西圏:既婚・共働き世帯 平均849万円、既婚・共働きでない世帯 平均789万円

「価格」と肩を並べた項目は?

夫婦それぞれに収入があることを前提にマンションを購入するとなると、購入後も共働きを継続する意思があるということになる。となると、住まい選びの考え方にも変化が生まれる。

「物件を検討するうえで重視した項目」について聞くと、“ない袖は振れぬ”ので、常に「価格」がTOPに上がるものだ。それが、2019年の調査では「最寄駅からの時間」が「価格」に肩を並べる結果となった。首都圏では、「価格」が89.1%と1位を保っているが、2位の「最寄駅からの時間」が85.7%と肉薄している。関西圏に至っては、「最寄駅からの時間」が86.0%、「価格」が85.8%と、僅差ながら順位が逆転している。

購入重視項目(全体/複数回答)※2019年契約者調査の多い順(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

購入重視項目(全体/複数回答)※2019年契約者調査の多い順(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

何を重視してマンションを購入するかは、社会情勢などを反映している。リーマンショック後の2009年契約者調査では、「価格」を重視する比率は、首都圏で95.2%、関西圏で93.5%と極めて高い比率を占めた。企業の業績が悪化し、年収が抑えられた時期ということがあるのだろう。

10年後の2019年の調査では、夫婦が共に通勤することの影響もあるのだろうが、「最寄駅からの時間」も重視するようになった。加えて、駅からの所要時間が短い新築マンションの供給が増えている。東京カンテイの『マンションデータ白書2019』から「新築マンションの徒歩時間別供給シェア(駅徒歩物件のみ集計)」を見ると、首都圏では「3分以内」が22.0%、「4~7分」が35.0%、近畿圏では「3分以内」が28.5%、「4~7分」が34.7%と、6割近くが駅に近い場所で供給されたことが分かる。

さて、調査結果を見てきたように、共働き世帯の増加が新築マンションの購入にも大きな影響を与えている。共働きを前提とした世帯総年収で、マイホームを取得する家庭も多いだろう。そうした家庭では、共働きができないと住宅ローンの返済に影響する。今求められるのは、安心して共働きが続けられる社会環境をつくることだろう。

2019年の新築マンション購入者、首都圏・関西圏ともに最も高く、最も狭く!?

リクルート住まいカンパニーは、「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」および「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」の結果を発表した。いずれの調査結果でも、調査を開始以降(首都圏は2001年、関西圏は2003年)で平均購入価格は最も高く、平均面積は最も小さくなったことが分かった。その実態について詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「2019年新築マンション契約者動向調査」を発表/リクルート住まいカンパニー
●首都圏
●関西圏平均購入価格は首都圏が5517万円、関西圏が4517万円で、2001年以降最高額に

調査は、新築マンションの購入契約者を対象に、2019年1月~12月に集計した、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県:4931件)と関西圏(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県・滋賀県:1024件)の結果をまとめたもの。

新築マンションの平均購入価格は、首都圏が5517万円で2018年より115万円増加した。また、関西圏は4517万円で2018年より179万円増加した。いずれも5000万円以上のシェアが増えたことによるもので、2001年の調査以降で最も高くなった。

購入価格(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

購入価格(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

平均購入価格が高くなったためか、ローンの借入総額も増加している。首都圏では平均4791万円(前年より98万円増)、関西圏では平均3993万円(前年より233万円増)となり、2005年以降で最も高い額となった。

一方、平均専有面積を見ると、首都圏では68.2平米、関西圏では71.5平米となり、いずれも2001年以降で最も小さくなった。価格の上昇局面では専有面積を小さくして販売価格を抑える傾向が生まれるが、調査結果にもそれが表れている。

共働き比率がこれまでで最高。世帯総年収にも影響

「購入価格の増加」→「住宅ローンの借入総額の増加」を支えているのは、共働き比率の上昇だ。首都圏では、全体に占める共働き世帯の割合は59%、既婚世帯(シングル世帯やその他・不明を除く)で見ると68%に達した。また関西圏では、全体に占める共働き世帯の割合は54%、既婚世帯で見ると65%に達した。いずれも、2001年以降で最も高い割合となっている。

共働き世帯が増えることは、世帯総年収が上がることにつながる。世帯総年収の全体の平均額は、首都圏で988万円、関西圏で814万円であるが、共働き世帯に注目すると平均額は上がる。

○既婚世帯の共働きの有無による平均世帯総年収
首都圏:既婚・共働き世帯 平均1038万円、既婚・共働きでない世帯 平均945万円
関西圏:既婚・共働き世帯 平均849万円、既婚・共働きでない世帯 平均789万円

「価格」と肩を並べた項目は?

夫婦それぞれに収入があることを前提にマンションを購入するとなると、購入後も共働きを継続する意思があるということになる。となると、住まい選びの考え方にも変化が生まれる。

「物件を検討するうえで重視した項目」について聞くと、“ない袖は振れぬ”ので、常に「価格」がTOPに上がるものだ。それが、2019年の調査では「最寄駅からの時間」が「価格」に肩を並べる結果となった。首都圏では、「価格」が89.1%と1位を保っているが、2位の「最寄駅からの時間」が85.7%と肉薄している。関西圏に至っては、「最寄駅からの時間」が86.0%、「価格」が85.8%と、僅差ながら順位が逆転している。

購入重視項目(全体/複数回答)※2019年契約者調査の多い順(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

購入重視項目(全体/複数回答)※2019年契約者調査の多い順(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

何を重視してマンションを購入するかは、社会情勢などを反映している。リーマンショック後の2009年契約者調査では、「価格」を重視する比率は、首都圏で95.2%、関西圏で93.5%と極めて高い比率を占めた。企業の業績が悪化し、年収が抑えられた時期ということがあるのだろう。

10年後の2019年の調査では、夫婦が共に通勤することの影響もあるのだろうが、「最寄駅からの時間」も重視するようになった。加えて、駅からの所要時間が短い新築マンションの供給が増えている。東京カンテイの『マンションデータ白書2019』から「新築マンションの徒歩時間別供給シェア(駅徒歩物件のみ集計)」を見ると、首都圏では「3分以内」が22.0%、「4~7分」が35.0%、近畿圏では「3分以内」が28.5%、「4~7分」が34.7%と、6割近くが駅に近い場所で供給されたことが分かる。

さて、調査結果を見てきたように、共働き世帯の増加が新築マンションの購入にも大きな影響を与えている。共働きを前提とした世帯総年収で、マイホームを取得する家庭も多いだろう。そうした家庭では、共働きができないと住宅ローンの返済に影響する。今求められるのは、安心して共働きが続けられる社会環境をつくることだろう。