
9万7,000~11万3,000円 / 39.28~49.54平米
横浜市営地下鉄ブルーライン「吉野町」駅 徒歩9分
川沿いから一本入った住宅地の一角にクリエイターや変わった物件を探してる方が求めていそうな長屋が完成しました。
凸凹としたリズミカルな外観の木造2階建の建物はオーナーさんが建材を扱う会社なので、レッドシダー張りになっていて、とても印象的です。
5住戸ある室内の広さは多少異なりま ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
不動産流通経営協会(FRK)では、新しい住まい方として注目される「複数拠点生活」について、実施者と意向者の双方に対して調査を行った。複数カ所に拠点を持って生活している人の実態はどんなものか?2拠点生活の課題は何か?について、見ていこう。【今週の住活トピック】
「複数拠点生活に関する基礎調査2020年7月」結果を公表/不動産流通経営協会(FRK)「複数拠点生活」を行っている人は6.6%、行いたい人は7.1%
この調査の「複数拠点生活」とは、「自身の主な住まいとは別に、週末や一年のうちの一定期間を異なる場所で生活すること」をいう。調査結果によると、複数拠点生活を現在行っている人(実施者)は6.6%、複数拠点生活を行いたい人(意向者)は7.1%を占めた。
実施者のサブ拠点の場所を見ると、40.1%は同県内、18.8%が同地方内、41.1%がその他地域となっており、メイン拠点とサブ拠点を同県内または首都圏内や関西圏内といった同地方内に持っている人が多い。メインからサブ拠点までの移動時間は平均で2.3時間、サブ拠点の滞在日数は平均で1年当たり66.7日だが、移動時間は30分以内から5時間以上まで、滞在日数は10日未満から300日以上まで、実に幅広く分布しているのが特徴だ。
つまり、複数拠点を行き来する生活の仕方は、人それぞれでかなり異なるようだ。
やむを得えない事情を抱えた人もいるが、趣味的な理由の人が多い複数拠点生活を行う理由では、「転勤・単身赴任」、「通勤通学時間の短縮」、「親族の介護」、「子や孫の世話」、「相続・所有物件の管理」など、やむを得ない理由を挙げる人も多く、この調査では消極的理由としている。とはいえ大半は、「避暑避寒や癒やし」、「趣味満喫」、「自然に触れる」などの趣味的な理由や、「仕事の場」、「他地域での交流」などの仕事や地域交流を理由に挙げており、この調査では積極的理由としている。
これを大分類して実施者と意向者で比べてみると、実施者のほうが消極的理由によるものが多く、意向者では特に趣味嗜好による積極的な理由を目的として複数拠点生活を検討する人が多いことが分かる。
目的大分類(最も大きな目的・理由)(出典/不動産流通経営協会「複数拠点生活に関する基礎調査」より)
メイン拠点とサブ拠点の物件は、いずれも持ち家が多いでは、サブ拠点の物件は購入したのか、賃貸なのか、どちらだろう?
実施者にサブ拠点は持ち家か賃貸かを聞くと、持ち家が75.3%と圧倒的に多く、なかでも持ち家戸建てが49.9%と全体の半分を占める。ただし、持ち家の中には、相続した実家なども含まれるため、実施者・意向者それぞれにメイン拠点とサブ拠点の住戸種別の組み合わせを見たのが次の表になる。
メイン拠点とサブ拠点の住戸種別パターン(出典/不動産流通経営協会「複数拠点生活に関する基礎調査」より)
メイン拠点は持ち家、サブ拠点は実家でない持ち家の組み合わせが最も多く、実施者では32.6%、意向者では38.7%を占める。実施者のほうが意向者より少ないのは、実家に住まざるを得ない消極的な理由の人が多いからだろう。
また、全体として持ち家派はサブ拠点も持ち家、賃貸派はサブ拠点も賃貸という傾向が見られるように思う。となると、持ち家派は2拠点を所有するための取得費用の捻出という課題を抱え、賃貸派は2拠点の賃料を二重で支払うという課題を抱えるわけで、いずれにせよ費用の問題が立ちはだかるだろう。
新たな滞在先の維持費や確保費用がハードルに「複数拠点生活を実施する上でのハードル」を複数回答で聞いたところ、「新たな滞在先の維持費」が最多となった。次いで、「新たな滞在先の確保にかかる費用」が続き、やはり複数拠点で生活するための維持費や住居費などの資金的な課題が浮かび上がった。
また、積極的な理由による実施者のうち20・30代だけで見ると、「購入にあたり住宅ローンが組めない」が高くなっている。若年層ではメイン拠点を取得した際の住宅ローンがまだかなり残っていて、新たにローンを組むことが難しいということだろう。
一方、消極的な理由による実施者では、移動時間や交通費の負担感が強いことが分かる。親の介護などで頻繁に実家と行き来する人も多いのだろう。
複数拠点生活を実施する上でのハードル(複数回答)(出典/不動産流通経営協会「複数拠点生活に関する基礎調査」より)
さて、複数拠点生活というと、悠々自適な家庭がリゾート気分を味わうという姿を思い浮かべる人もいるかもしれない。しかし、積極的な理由による実施者の世帯年収の平均は約680万円、中央値は500万~600万円なので、全般的にやや高めではあるが富裕層というわけでもない。
親や子どものため、仕事や地域交流のため、趣味嗜好のためと、それぞれ異なる理由により複数拠点で生活しているのが実態で、2拠点で重なる維持費や確保費用など資金面にも苦慮しながら、やりくりしているということだろう。
近年はコロナ禍で働き方に変化が見られる。働き方の変化で複数拠点生活がしやすくなり、実施者が増加するという時代が来るのだろうか。大いに注目したい。
快適な空間や、心地よい時間は、いかに生み出されるのか
人気リゾートホテルの設計を手掛ける建築家・佐々木達郎氏へのインタビューから
暮らしの質を上げる家づくりのヒントをいただこう。
過ごしたいシーンをデザインし心安らぐ空間をつくる
ウッドデッキの中庭を囲むラウンジ。ゆったりとした空間と大開口の窓が自然との一体感を生む
星野リゾートをはじめ、各地のリゾートホテルを多数手掛ける建築家の佐々木達郎さん。快適な空間を生み出すためにいつも意識しているのは、「旅をデザインしたいということです」という。訪れた人の記憶に残る、旅の気持ちが高まる体験をいかに提供するかだ。
「例えば、インドネシアのバリ島を訪れたらシティホテルよりも、オープンエアなヴィラに滞在するほうが記憶に残る旅になるでしょう。その場にしかない自然や環境を魅力にすること、その地の文化を尊重しこの場所ならどんな時間を過ごしたいかということに思いを巡らせます」
実際、佐々木さんが設計した『星野リゾートBEB5軽井沢』は、高原の爽やかな風を感じる広いテラスや、周囲の木立ちと呼応する木の柱など、まさに軽井沢の魅力を体感するデザインが、細部まで行き渡る。
「住宅の場合も、立地の個性やその家族らしさ、こだわりを取り込み、過ごしたい時間やシーンをキーに空間づくりをします。一つの正解があるわけではなく、個別解を探し出すことで、その家にしかない心地よさや快適さがつくれるからです」
例えば、開放的な明るい空間をつくる方法も一つではない。「周囲を住宅に囲まれていても、トップライトから光を取り込み、壁や天井を白くするだけでも光の拡散効果で明るい室内になる。スケルトンの階段で階下へ光を落とすことも可能です。あるいはリビングの天井を上げるだけでなく、廊下の高さをあえて抑えることで、体感として開放感が生まれる。明と暗、開放感とこもり感など、空間に緩急をつけることで、それぞれの良さを際立たせることができるのです」
リフォームは、今の暮らしに合わせて住まいをチューニングできる点が魅力だが、大前提になるのは安心感だ。「耐震への不安や断熱性の不具合の解消は、住む人の心地よさには必要不可欠」と強調する。その上で、「空間はモノと人、人と人との関係性から生まれます。例えばソファでゴロっと横になったときに見える景色、差し込む光など、そこに広がるシーンから住まいを考える。これからの心地よさに視点を置いてリフォームすることで、さらに暮らしの質を上げることができるはずです」
佐々木さん設計の星野リゾートBEB5軽井沢。ラウンジにはプライベート感を生む寝台ソファも
サッシや柱などに木を使い、スケールや見せ方を変えながら土地の個性と共鳴するデザインに
木々に囲まれた環境にふさわしい低層の建物。内部に入ったときの開放感をより鮮烈に感じさせる
訪れた人々をもてなす空間に込められていたのは、空間そのものだけでなく、訪れる人の旅やストーリーにまで思いをはせたデザインであった。リフォームにおいては、住まい手とつくり手がともに豊かな時間やシーンを思い浮かべながら、心地よさそのものを追求していくことこそ、暮らしの質を上げる空間をつくる第一歩なのかもしれない。
構成・取材・文/中城邦子 撮影/ナカサアンドパートナーズ
建築家 佐々木達郎さんここ数年、「デュアラー(二拠点居住者)」や「アドレスホッパー」など、新たな住まい方をする人が出現し、それらの多様なニーズに応える賃貸や宿のサービスが展開されてきました。さらに新型コロナウイルスの影響を受け、家で過ごす時間が増えたことで賃貸物件の選び方や求める条件も変わってきているようです。
そこで今回は、全国賃貸住宅新聞の編集長・永井ゆかりさんに、いま注目を集めている賃貸物件やこれからの部屋さがしについてお話を聞きました。
今回、お話を聞いた全国賃貸住宅新聞の永井ゆかり編集長(写真/全国賃貸住宅新聞)
コロナの影響で「住まいに求めるもの」が変わった!SUUMOが6月30日に発表した「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査(首都圏)」では、コロナ禍を経て、今まで住まい選びの筆頭条件のひとつだった「駅からの距離」よりも「広さ」を求める傾向が強まっていることが明らかになりました。賃貸物件に求める条件が大きく変わってきていると同時に、広さや駅からの距離など、これまでの指標となってきた条件だけではない選び方が広がっているようです。
今回の調査で「駅からの距離」よりも「広さ」を重視する人が10ポイントほど増加した(資料/SUUMO)
「コロナ以前は、最寄駅へ徒歩での移動が難しいバス便の物件などでは、明確に『そこに住む理由』がないと、みなさんの検討に入って来ませんでした。結果、駅からの距離が近く、立地の良い物件に人気が集まってきたと思います。ところが今、テレワークや自宅学習の時間が増え、物件を探すときの条件の中で通勤・通学に必要な『アクセス利便性』の優先順位が下がってきているように感じます。
実際に4月以降、湘南でしばらく空室になっていた一戸建て賃貸の数棟が満室になった話を聞きました。これまでこの物件に入居する人はサーファーや自営業など仕事に融通がきく人が多かったようですが、今回新たに入居した人のなかには会社勤めのファミリーもいたそうです。本当は海の近くに住みたいと思っていながら職場へのアクセスを重視して都心に住んでいた人たちが、テレワークが可能になって一気に動いたわけです」(永井さん、以下同)
海沿いの一戸建賃貸の入居率が上がるなど、テレワークによって場所に縛られない働き方が可能になり「本当に住みたい」場所を選ぶ人が増えている(写真/PIXTA)
これまで賃貸物件で重視されてきた条件の優先順位づけが変わる一方で、海に近い一戸建て賃貸住宅の例をはじめ、住む人の志向に応じていっそう「ニーズの多様化」が進んでいると言えそうですね。
「何が起こるか分からない」なかで「住む場所を選べる」強みこのように新型コロナの影響を経て、人びとの働き方や住まいに求めるものが変わっているのを感じます。ここ数年注目を集めている賃貸物件の傾向と、それらのコロナ禍を受けての影響、さらに今後どのように変化していくのかを伺ってみました。
「まず1つ目として多拠点居住をする人たちは間違いなく増えるでしょう。例えば、ここ数年のうちには、10世帯のうち2~3世帯はいろいろなところに拠点を確保して、1つの物件には1年のうち数カ月しか居住していないという状況になるかもしれません。そんなスタイルに応じたサブスク的な(一定期間、一定額で利用できるような)住み方ができるサービスがどんどん出てきています」
サブスク、多拠点といえば、ここ1~2年、定額住み放題型の多拠点居住サービスが注目を集めています。多拠点居住のスタイルは移動を前提としているので、かなりのコロナの影響が出たのではと思われますが……。
「定額住み放題サービスを提供している『ADDress(アドレス)』の代表・佐別当(さべっとう)隆志さんや『HafH(ハフ)』の代表・大瀬良亮さんのお話を聞くと、やはり拠点によって利用頻度が下がるなどの影響があったようです。けれども、近年の災害の多発、世界規模のコロナ感染など『何が起こるか分からない』世の中になりつつあるなかで、住む場所が複数ある状態は自分の生活を守る『防御策』にもなりうるといいます」
全国の空き家を活用した定額住み放題サービスを提供する「ADDress」。それぞれの地域の自然やコミュニケーションを楽しむなど、利用目的はさまざま(写真提供/ADDress)
世界に200の拠点をもつ定額制住み放題サービス「HafH」は「出会える、学べる、働ける」がコンセプト。ウィズコロナ時代に合わせて個室のある拠点も増やしている(写真提供/KabuK Style)
HafH Goto The Pier(長崎県五島市)の部屋(写真提供/KabuK Style)
実は筆者も昨年から東京と佐賀の2拠点生活をしていますが、たしかに住まいの選択肢を複数もっていることで心理的な「自由」と「選択できる余裕」を持つことができているように思います。
いざというときに心強い「コミュニティ型賃貸」また、選べる自由を手に入れたとき、筆者がまず選んだのは親類や友人など「頼れる人」の多い場所でした。賃貸物件を選ぶ際にも、同じようにこの点を重視する人は多そうです。
「非常時にこそ、その重要性を再認識できるのが『コミュニティ』ですよね。これから注目される賃貸物件の2つ目としては、改めて『コミュニティ型賃貸』が支持されていくように思います。
例えば溝ノ口の『キャムスクエア』では、入居契約時に『笑顔特約』を設け、ほかの人とすれ違ったときに笑顔で挨拶を交わすことを約束しています。地域とつながることを大切にし、周辺のお店やイベントなど、さまざまな情報を共有するためにオーナーさんと入居者さんはLINEで繋がっているそうです。挨拶や小さな不具合の相談など、日々のコミュニケーションが生まれることで防犯や非常時の情報共有にも役立ちます」
キャムスクエアでは「笑顔特約」を設けたり、鍵を渡すときにキーホルダーをプレゼントするなど、入居時からコミュニケーションを大切にしている(写真提供/わくわく賃貸)
(写真提供/わくわく賃貸)
「コミュニティ型賃貸」といえば、ここ十数年で「シェアハウス」も増えました。複数の世帯が同じ空間で過ごすシェアハウスでは「密」を生むことへの懸念などもあったのではないでしょうか。
「はい、コロナ禍で『シェアハウスは大丈夫?』と多くの人に聞かれました。結論からいうと、物件ごとに感染対策をしっかり採られたうえでなら、複数人で暮らすことのリスクよりも共有スペースがあることなどのメリットが上回ったといえます。広い共有スペースはテレワークがしやすく、誰かの気配を感じながら仕事ができますから」
共有スペースを有するシェアハウスは、テレワークにも最適(写真/PIXTA)
それぞれの物件がもつ「ストーリー」に共感たしかに誰かの気配を感じることが落ち着く、という感覚に納得しますし、入居者間のコミュニケーションを大切にしている物件には魅力を感じます。一方で、ひとりで過ごす場所やプライベートな時間を重視する人もいて、ニーズが多様化していることを感じます。個人によって好みや志向が異なるなかで、多くの人の支持や注目を集める物件も出てくるでしょうか?
「これからは“ストーリー”や“住みたい理由”を持つ物件に魅力を感じる人が増えるでしょう。八王子にある『アパートキタノ』は、DIYを前提として住む人が自由にお部屋を変えることができます。この自由さに共感したクリエイティブな人たちが集まり、SNSなどでDIY事例やこの物件の魅力を発信するため、さらに人気が高まっているといいます。
賃貸物件を探すときには、これからの生活をイメージしながらワクワクする物件を探したいですよね。ぜひ“ストーリーのある物件”を見つけていただければと思います」
京王線・北野駅から徒歩15分ほどの場所にある「アパートキタノ」。築26年の趣を感じさせるDIY前の部屋の様子(画像提供/アパートキタノ)
「アパートキタノ」に住む沼田汐里さんがDIYしたお部屋。板張りの壁にDIYを施されたインテリアがオシャレ(画像提供/アパートキタノ)
アクセサリー作家・大坪郁乃さんがDIYして住んでいるお部屋。白とグレーのペンキを混ぜて壁を塗っている(画像提供/アパートキタノ)
まだまだ手探り、これからも変化しつづける賃貸物件これまで新しい取り組みを行っている物件やサービスをたくさん紹介いただきましたが、このような時代の流れにあわせて、大手の住宅メーカーも新しい商品開発に着手し始めたようですね。
「大東建託が7月1日からテレワーク対応型の間取りプランを採用した賃貸住宅の販売を開始しました。このように専用部に仕事ができる場所を確保することはもちろん、共用部にワークスペースを併設したり、1階のテナントにコワーキングスペースが入っている物件なども今後増えていくかもしれませんね」
大東建託が7月1日より販売開始した「DK SELECT」ブランドの賃貸住宅(資料/大東建託プレスリリース)
一方で従来のスタイルの賃貸物件においては、大家さんがポストコロナの生活への対応についてまだまだ手探りの状態で、課題も多いと言います。
「例えばテレワークの時間が増えたことで、『インターネット回線の接続が良くない』というクレームが増えたそうです。これまでは入居する人も大家さんも、通信速度や安定性まで強く意識する機会は少なかったのではないでしょうか。物件の仕様もウィズコロナ・ポストコロナの生活スタイルに応じて変わっていくかもしれませんね」
テレワークの機会が増えたことにより、「インターネット接続の安定性」など、これまで意識しなかった点も物件探しのポイントになるかもしれない(写真/PIXTA)
永井さんにお話いただいたように、これからは専用のワークスペースがある物件や地域や入居者間のコミュニティを大切に築く物件、簡単に貸し借りができるような賃貸物件が増えていきそうです。また、距離に縛られなくなれば、住む場所の選択肢も広がります。
自分がどんな暮らしをしたいのか、どんな毎日ならワクワクするのか、もう一度自分の「好きなもの、好きなこと」を見直すことが、ダイレクトに賃貸物件選択につながる――。部屋探しもますます自分らしく楽しむ時代になりつつあるのかもしれませんね。
●取材協力買い物や病院など、公共インフラではカバーしきれない住民の移動をサポートするだけでなく、利用を通じて住民同志のつながりを育む「コミュニティ・カーシェアリング」という取り組みがあります。もともとは石巻の仮設住宅に届いた一台の車からはじまりました。連載名:全国に広がるサードコミュニティ
自宅や学校、職場でもなく、はたまた自治会や青年会など地域にもともとある団体でもない。加入も退会もしやすくて、地域のしがらみが比較的少ない「第三のコミュニティ」のありかを、『ローカルメディアのつくりかた』などの著書で知られる編集者の影山裕樹さんが探ります。コミュニティ・カーシェアリングとは?
東日本大震災で約6万台の車が被災した石巻では、被災者の多くが仮設住宅で不便な暮らしを余儀なくされていました。そんななか、全国から寄付された車を活用し、住民の生活を支える仕組みをつくろうと2011年7月に立ち上がったのが「⼀般社団法⼈ ⽇本カーシェアリング協会」です。この団体は主に三つの事業に取り組んでいます。一つが、寄付された車を地域コミュニティに貸し与え、住民同志で管理・運営する「コミュニティ・カーシェアリング」、二つ目が被災地などに無償で車を貸し出す「モビリティ・レジリエンス」、三つ目が困っている地域や人向けのレンタカー、カーリースのサービス「ソーシャル・カーサポート」です。
代表の吉澤武彦さんはもともと関西出身。阪神淡路大震災の経験もあって、当時は関西から多くの人が東北の支援に来ていましたが、吉澤さんもそのうちの一人。被災地のために何かしたいと考え、自宅のある兵庫から石巻に移住してまで、復興支援に尽力していました。
被災地は車が足りなくなる(写真提供/日本カーシェアリング協会)
「当時、阪神淡路のときに活躍した神戸元気村という団体があって、そこの代表だった山田和尚さん(通称:バウさん)に付いて仕事をしていたんです。そのバウさんから、震災から1カ月ぐらい経ったときに連絡があって『今、避難所にいる人がこれから仮設住宅に移っていく。すると行政の主導で自治会が形成されるはず。そこにカーシェアリングを提案していくようなことをやったらどうや』って提案してくれて。もともと僕自身、そんなに車に詳しかったわけじゃないんですけれど」(吉澤さん)
京都から石巻まで、たった一人で車を運ぶ実際、被災地では車は至る所で横転し、使い物にならないので被災者の方々はとても困っていました。そこで、車を誰かから提供してもらって、仮設住宅に持って行ったら喜ばれるはず。バウさんに促されつつも、吉澤さん自身、実際の復興支援活動の中で痛感していたことでもありました。
「当時はまだ大阪市内に住んでいたので、自転車で行ける範囲に大企業がいっぱいあった。かたっぱしから電話して秘書の方につないでもらい、社長にこれ、渡してください! って資料を渡すなどの飛び込み営業みたいなことをしました。大概断られるんですけれど、頑張って続けていたらだんだん興味持ってくれる人が増えてきて。5月にようやく京都の企業から一台手に入れることができました」(吉澤さん)
見ず知らずの社長に直談判する方もする方ですが、実際に貸してくれる人が出てくるのも、阪神淡路を経験して助け合いの精神が根付いている関西ならでは、という気がします。しかし、そこからが大変でした。
「もともとペーパードライバーだったんですが、石巻に車を運ばないといけなくて。一人で高速乗って京都から石巻まで運転していくんですよ。生きた心地がしませんでした(笑)。でも、今となればいい思い出です。それで、仮設住宅に車を入れて、掲示板に『この日カーシェアリングやります』ってチラシを貼ったら、いきなり全国放送の生中継番組で取り上げられちゃったんですよ。まだこれからやねん(笑)って思いましたけど」(吉澤さん)
吉澤さん(写真提供/日本カーシェアリング協会)
自治会形成に寄与したカーシェアリングひと通り役所や陸運局、警察には話を通しておいたのですが、メディアに取り上げられたことで「もう一度確認させてくれ」と言われ、7月に届けてから実際に運用を本格的にスタートするまでさらに3カ月かかってしまったそうです。ともあれ、構想から半年、仮設住宅の住民が待ちわびていたカーシェアリングの取り組みが、いよいよ本格的にスタートします。
「仮設住宅の人って抽選で入っているから見ず知らずの人たちなんですよね。だから自己紹介から始めて、鍵をどうしよう、予約はどうしようってルールを決めていった。また、『ゴミみんなでかたし(片付け)に行こうか』とかお茶飲みながら話し合ったりしていた。そのうちに、仲間意識が芽生えるようになったんです」(吉澤さん)
当時、仮設住宅はどこも自治会をつくるのにものすごく苦労していたそうです。見ず知らずの人同士で、高齢者が孤立しがちな仮設住宅の状況。そこにカーシェアの輪が少しずつ広がっていき、ゆるやかなコミュニティを形成していくようになりました。
「石巻には134の仮設住宅が設置されたんだけれど、2011年中に自治会ができたのは10もなかった。でもカーシェアを導入した仮設住宅はスムーズに自治会ができていった。これには役所の人も驚いて、これは一緒にやらなあかんな、ということで、市が『カーシェアリング・コミュニティ・サポートセンター』を設置してくれて、その委託を受けて、僕らがどんどん車を導入していくっていうのを、2012年からやり始めるようになったんです」(吉澤さん)
乗り合いで旅行に行くことも(写真提供/日本カーシェアリング協会)
“おちゃっこ”を通じて交流が活発になる車を使うには維持費も掛かるし、誰がいつ利用するかをきっちり管理しなければなりません。そこで、コミュニティ・カーシェアリングを導入している地域では、そんな車の運用方針などを話し合う会が定期的に行われています。それが「おちゃっこ」と呼ばれる会です。
「みんなで来月どこ行こうか、とかね。本当に、お茶を飲みながら。するとただの移動支援とかツアーの話し合いの場ではなく、みんなの“居場所”になっていったんです。アンケートを取ったんですけど、高齢の方になればなるほど“居心地がいい”と答える人が多かった」(吉澤さん)
車の利用方法から世間話まで“おちゃっこ”で語らう(写真提供/日本カーシェアリング協会)
利便性よりも居心地の良さが重要、というお話にとても感銘を受けました。確かに買い物とか不便なのは困りますけれど、それよりも人と触れ合うことのできる自然な居場所があることが、人々の暮らしにとって欠かせないものなんです。
「しかも、みんな絶対参加しなくちゃいけないっていうルールがない。集まりたい人が集まればいい。でも、ただ世間話をするよりルールを決めるのが好きなおじさんとかがたまに来て、毎月いくら積み立てたほうがいい、となって、ちゃっちゃと決めてくれたりね。本当に参加する目的もさまざまな“サロン”と化しています」(吉澤さん)
地域ごとに運用ルールをカスタマイズこうして、コミュニティ・カーシェアリングを導入する仮設住宅が増えていきます。人々が仮設住宅から復興住宅へ移り住むようになってからも、コミュニティ・カーシェアリングを導入する地域はどんどん増えていきました。そこで重要になってくるのは、トラブルなく運用できて、コミュニティ活動の助けにもなるルールの策定です。
「復興住宅ってもう、終の住処になるわけだから、今度は会則などもしっかりつくって、役員もつくってもらって、きちんと運用できるようにしようと。そこで、雛形をつくって、他の地域で導入したい地域がいてもスムーズに行くようにしました。みんなITが得意じゃないのでアナログで運転日誌をつけて、予約は予約係がカレンダーにつけるとか。役割分担するようにしています」(吉澤さん)
現在石巻で10のコミュニティ・カーシェアリングの団体があります。平均年齢75歳。だからアナログなんです(笑)。基本的には地域のサークルなので、吉野町カーシェア会、三ツ股カーシェア会などの名前がついていて、運用ルールもさまざま。チラシをつくることが得意だったり、旅行の企画が得意な人もいます。そうした住民の特性に合わせて、自由にルールと役割を決めていいそうです。ただし、基本的なところは一緒。
「僕らの取り組みは、基本『運送行為ではない』ところがポイントです。ドライバーはボランティアで、料金も基本経費を賄うために積み立てる。事業性がないので許可申請も必要ない。法律面もクリアなので行政も安心して勧められるから、どこでも始められる。実は高齢化とかって被災地だけの問題じゃないんですよね。なので今では九州支部ができるほど、全国にカーシェア団体を広げることができています」(吉澤さん)
地域での新しい生きがいを見出すドライバーたちカーシェア団体はどこもご高齢の方は多いですが、なかには比較的若いメンバーもいます。例えば、会社を定年退職した60代くらいの若手のメンバーは積極的にドライバー役を引き受けます。吉澤さんはこんなエピソードを教えてくれました。
「通院のお手伝いをしているうちに、みなさんがとても喜んでくれるので、生きがいになったというドライバーもいます。運転中、黙っててもいいんです。ただ話を聞いてくれるだけで、お年寄りは『あの人優しいな』と感じるので、どんどん人気になって、最終的に自治会長まで上り詰めた方が3人いるからね(笑)」(吉澤さん)
参加しないと怒られたり、地域のしがらみに縛られてしまうのが嫌で、定年退職後も自治会に入らず、地域で孤立する方も多いと思います。このように、カーシェアを通じて他世代が関わり合い、“おちゃっこ”で親睦を深め、自然とコミュニティに溶け込める場があるのって素敵じゃないですか? まさにコミュニティ・カーシェアリングは、自治会という既存の地域団体のあり方を補完しつつ、漏れてしまう住人を救い上げる“サードコミュニティ”になっているなと感じました。
全国の被災地に車を届ける架け橋ドライバー(写真提供/日本カーシェアリング協会)
また、日本カーシェアリング協会は他にも、被災地などに無償で車を貸し出す「モビリティ・レジリエンス」という事業を行っています。東北の震災以降も日本各地で起きた災害に際して、寄付してもらった車を被災地に届けるという活動です。ここでも、有志のドライバーが活躍します。
「車を寄付することはできるけれど、被災地まで運ぶのが難しいという方が多いんです。そこで、僕らは“架け橋ドライバー”というボランティアを募って、現地まで届けてもらっています。本当に全国から、長い距離を運んでくれる人がやってきてくれるので助かります」(吉澤さん)
地域の困っている人を助けるソーシャル・カーリース全国の被災地に車を届けると、本当に喜ばれます。ただ、あくまで一時の対症療法的な支援なので、もっと継続的に、それぞれの地域のニーズに合った継続的な寄付車を活用したサービスを定着したいと吉澤さんたちは考えており、それが第三の事業である「ソーシャル・カーサポート」です。
「車は生活や活動の必需品になっている場合が多いのですが、維持のためにお金がかかります。そこで車を安く貸し出す仕組みをつくることで困っている人を助けたり、地域の応援になることを見つけて実践しています。例えば自立支援センターと連携して生活困窮者に車を一定期間格安で貸出すことで生活の再建に役立てて頂いたり、普通のレンタカー会社では採算面で営業しにくい離島でレンタカーを借りられる環境を島民と協力してつくったりもします」(吉澤さん)
災害時返却カーリースの被災地支援イメージ(写真提供/日本カーシェアリング協会)
他にも石巻の被害の大きかった半島沿岸部のお店で買い物をすると、一部キャッシュバックされるレンタカーサービスや、大川小学校や門脇小学校などの震災遺構にレンタカーを借りて行って、震災のことを学んでくれれば3割引になります、などのユニークな取り組みも行っています。地域振興、震災伝承、生活困窮者支援など、吉澤さんたちが何かしら意味のあると感じる取り組みならば積極的に寄付車を活用した支援をしていきたいとのことです。
「結局、どの事業も寄付車を活用して支え合いの仕組みをつくる点で一貫しています。あと、僕らは“石巻発”というのを重視していて。僕らのスタッフも地元出身が多いです。車も全部貰い物で、いろんな支援を受けて生まれた仕組みを、今度は支援してくれた地域に返したい。支援を受けるのではなく支援する側になって始めて、本当の復興なんじゃないか。僕らにとって、復興とは恩返し。それをこれからもっと実現していきたいです」(吉澤さん)
ちなみに、吉澤さんにコロナ後の状況はどうですか? と聞いてみたところ、こんな答えが返ってきました。
「コミュニティ・カーシェアリングを導入している地域は基本、みなさん自粛していますが、高齢の方が心配だからと電話をかけたり、手芸が得意な方は手づくりのマスクを他の会員に配ったりと、もともと培われてきたつながりが活かされているエピソードを聞くと、本当にこれまでやってきたことが実現されているなと感じます。僕らがこのコミュニティ・カーシェアリングを始めたのも、支え合う地域をつくるのが目的であって、ただ車を動かしたいわけではなかったんですよね」(吉澤さん)
沖縄の模合についての記事でも感じましたが、目に見えないつながりが、困ったときの助けになるんだなと本当に感じます。日本カーシェアリング協会の取り組みは、決して被災地だけで役に立つものではありません。車がそれほど必要でなかったとしても、あると意外に便利だったりしますし、なにより、これまでなかった思いもよらない“つながり”を育むことができるかもしれません。ぜひとも興味のある方は導入を検討してみてはいかがでしょうか?
●取材協力