
128万4,800円(税込) / 406.41平米
埼京線「板橋」駅 徒歩3分
正面からの顔がすでにいい顔。各フロア100㎡以上ある3階建ての一棟ビルです。物販やショールーム、事務所を兼ねられる場所になるかと。
現在の形状はエレベーターホールと階段室ををくるむような「コ」の字型。ですが、途中の壁を抜いてしまえばワンフロア繋がる空間になりそう。
もともとは ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
コロナで2回目の緊急事態宣言が発令されて始まった2021年。今回は休校や休園などの事態は免れたものの、テレワークなどの新しい生活様式の推奨に伴って、郊外への引越しや地方移住、二拠点生活を検討する人が増えていると言います。
2019年から二拠点生活を始めて2年、小学校・中学校への進学を控える子ども2人を持つ筆者が、改めて二拠点生活の「学校どうするか」問題について考えます。
コロナで地方移住や二拠点生活の志向が高まっている!?1月29日、総務省が2020年の住民基本台帳に基づく人口移動報告を発表し、東京都からの転出者が全国で唯一増加となったことが話題になりました。転出先は神奈川・埼玉・千葉の近隣3県が55%を占めることに。コロナの影響でリモートワークが普及し、都心から通勤圏内の郊外へ移り住む流れが進んでいると言われます。
また、リクルート住まいカンパニーが発表した調査でも同様の傾向が見られます。『SUUMO』の物件詳細閲覧数を2020年1月と8月で比較した伸び率をランキングすると、伸び率1位となったのは中古マンションでは神奈川県三浦市、中古一戸建てでは千葉県富津市でした。さらにいずれもトップ5は都心から100キロメートル圏内の郊外エリアだったのです。2拠点生活意向者も2018年11月と比べ、2020年7月時点では13.4ポイント増加し、二拠点生活を志向する人が約2倍に増えていることを示しています。
『デュアルライフ(2拠点生活)に関する意識・実態調査』と2020年7月実施調査の比較(左)。『SUUMO』の物件詳細閲覧数を、2020年1月と8月で比較した際の伸び率をランキング化。赤が中古マンション 青が中古一戸建て(右)(資料/SUUMO編集部)
二拠点生活をするとき、学校の選択肢は?これまで二拠点生活の実現を阻むと言われてきた二大要素が「仕事」と「子どもの就学」でした。そのうち、「仕事」については、WEB会議システムをはじめとしたテレワーク化の流れによって、地方に住みながら今の仕事を続けられるかも、と二拠点生活をイメージできる人が増えたのではないでしょうか。
そして、もう一つの困難が「子どもの就学」問題です。二拠点生活をするときの通学形態には、いくつかの選択肢があります。公立の小・中学校に通学する場合、大体次の3つに分けられるでしょう。
1)いずれか主となる住所地に住民票と学籍を置き、その学校にのみ通学する
・現在の学校に引き続き通学
・転校する(親子留学制度などを利用する場合も含む)
2)デュアルスクール制度のある自治体(徳島県、長野県塩尻市、秋田県など)で区域外就学制度(後述)を活用し、都心部に住民票と学籍を置いたまま、地方の学校にも通学する
3)主となる住所地に住民票と学籍を置き、別拠点に滞在中はフリースクールや家庭教師など任意の教育で補う
山梨県や長野県に移住した友人からは、それらの県の一部地域で募集されている「親子留学」制度が、コロナによって問い合わせが増えていると聞きます。この親子留学制度も上の1)の住民票と学籍を移す形になります。
テレワーク普及の影響か、親子留学制度を活用しようと考える人も増えている様子(写真/PIXTA)
「区域外就学制度」が使える? 自治体や教育委員会に問い合わせてみた!古くから各地方自治体には「区域外就学」の制度があります。これは具体的な事情が相当と認められる場合に、住民票と学籍のない自治体の公立学校に通うことが可能となる制度です。
実は、地方移住や二拠点生活などのニーズを反映し、2017年7月に文部科学省からこの区域外通学に関する通達が出されました。この通達には、「相当と認めるとき」に「地方への一時的な移住や二地域に居住するといった理由」も含まれることが記載されています。二拠点でこの制度を活用することに文科省のお墨付きを得ている、とも言えるこの通達ですが、文部科学省教育制度改革室の松岡将さんによると「実際の運用と認められるかどうかの判断は、各地方自治体の教育委員会の判断に委ねられている」と言います。
2017年7月に各都道府県・指定都市の教育委員会就学事務担当課長宛に通知された「地方移住等に伴う区域外就学制度の活用について」(画像/文部科学省)
そこで、筆者は現在、東京の拠点である品川区と住民票を置いている佐賀県佐賀市にこの制度が活用できるかを尋ねてみることにしました! それぞれの自治体のホームページには、学期の途中で転出した場合などに加え、「その他教育委員会が特に必要と認めた場合」に区域外就学制度を利用できる旨の記載があります。
「コロナ」という“特別な事情”が、加味される可能性もところが、実際に各自治体に相談してみると、筆者のように1回あたり数日~1週間程度の滞在では申請が認められることは難しく、一つの目安として「一定期間(2~3週間程度)以上、居住していること」が必要であることが判明しました。
また、自治体によっては、主に海外赴任で一時的に帰国している場合などに、住民票がなくとも一定期間居住していることを条件に「体験入学」できる制度を設けているところもあります。この制度を活用する場合においても、居住期間2~3週間以上の場合の申請が一般的ということでした。
自治体によっては、海外からの一時帰国者を主な対象に「体験入学」制度を設けているところも(写真/PIXTA)
ただ、品川区学務課の篠田英夫さんによると「コロナによって区内に住む人から、地方の祖父母宅など一時的に他のエリアで子どもを通学させることができないか、といった相談が出てきている」といいます。
「『コロナのような特別な事情』があれば、受け入れ側の自治体との調整によっては可能になる場合もあるかもしれません。個別事情によって判断することになるので、詳細は各自治体や教育委員会などの窓口に相談してほしいと思います」(篠田さん)
意外と「デュアルスクール」を望んでいない子どもも!?子ども2人がそれぞれ小学校、中学校に進学するのにともない、筆者の中では改めて“学校どうしよう”問題が湧き上がりました。特に1カ月に1~2回、3~7日ほどの東京・佐賀の行き来が日常になっていた長男には、区域外就学制度が活用できたらよかったのにな……という思いも拭えません。
ところが、いざ息子にその話をしてみると「小学校は佐賀だけでいい。2つも学校行くのは面倒だから」と言います。中学校に進学する長女に聞いても同様の返答です。
リビングで宿題をする小学6年生の長女。佐賀市の指定区域内の中学校への進学を希望している(撮影/唐松奈津子)
実は、私たちの二拠点生活も最初から全てが順調だったわけではなく、佐賀に引越して最初の半年ほどの間は、よく保育園の園長先生から長男の様子について話がありました。息子が移動中のバスの中でお友達を叩いたり、体操の時間にみんなで走っているときに前の子を押したりすることが頻発したのです。
園長先生から聞いたのは息子が「怒っているように見える。お母さんが仕事で東京に行って不在のときは、特にイライラしている様子」だということ。半年ほど経って息子の様子が落ち着いてきたことを園長先生と話したとき、「生活に慣れて、いつもの安心できる環境になったんでしょうね」と言われて、気付かされた思いでした。子どもにとっては“いつもの安心できる環境”が第一なのだな、と。
4月から小学校に進学する長男。佐賀でお気に入りの場所の一つ、佐賀県立図書館と併設する「こころざしの森」にて(撮影/唐松奈津子)
国も自治体も、そして親も「子どもの教育環境」を第一に松岡さんに話を聞いたときにも印象的だったのは「子どもの教育環境が大切」という言葉が繰り返し使われたことです。また、篠田さんは「学級運営や他の子どもたちの学習環境にも影響するので、区域外就学も安易には認められない」と言っていました。
親としては生活の選択肢を増やす意味で、また子どもの将来にとって良かれと思って、二拠点生活に活用できる就学制度があれば、と思わずにいられません。実際、都会育ちの子どもが、デュアルスクールを体験し、かけがえのない経験や、自分の居場所はどこにでもつくれるという強い自信を得た、といった素晴らしい話も聞きます。一方で、二拠点生活を考える際に子どもの学校をどうするのか、本当に子どもにとって2つの学校に通うことが必要なのかどうかは、それぞれの家庭の事情にあわせて慎重に検討する必要があると感じました。
有明海の干潟でカニ探しをして遊ぶ長男。子どもに自然体験を増やしたいと考える人も多いだろう(撮影/酒井皓司)
二拠点生活を始めた当時、小学4年生だった長女が転校して現在の小学校にすんなり馴染めたのも、既に顔見知りの同級生がいたことが大きいと思っています。実は、娘は東京・品川区の小学校に入学した6歳のころから4年間、毎年冬休みには佐賀の祖父母宅に一人で2週間ほど滞在し、現在の住まいの近所に住む子どもたちと一緒に遊んできたのです。
デュアルスクール制度、区域外就学制度、体験入学制度、親子留学制度など、二拠点生活の広まりに応じて活用できそうな就学制度が出てきました。また、コロナの今だからこそ、活用できる可能性もありそうです。
“子どもの教育環境”という簡単には答えの出ない問題だからこそ、まずは親子で休暇を利用して一時的に滞在してみる、「子連れワーケーション」を実践してみるなど、“試しに”から始めて子どもの様子を見るのも一手かもしれませんね。
●取材協力コロナで2回目の緊急事態宣言が発令されて始まった2021年。今回は休校や休園などの事態は免れたものの、テレワークなどの新しい生活様式の推奨に伴って、郊外への引越しや地方移住、二拠点生活を検討する人が増えていると言います。
2019年から二拠点生活を始めて2年、小学校・中学校への進学を控える子ども2人を持つ筆者が、改めて二拠点生活の「学校どうするか」問題について考えます。
コロナで地方移住や二拠点生活の志向が高まっている!?1月29日、総務省が2020年の住民基本台帳に基づく人口移動報告を発表し、東京都からの転出者が全国で唯一増加となったことが話題になりました。転出先は神奈川・埼玉・千葉の近隣3県が55%を占めることに。コロナの影響でリモートワークが普及し、都心から通勤圏内の郊外へ移り住む流れが進んでいると言われます。
また、リクルート住まいカンパニーが発表した調査でも同様の傾向が見られます。『SUUMO』の物件詳細閲覧数を2020年1月と8月で比較した伸び率をランキングすると、伸び率1位となったのは中古マンションでは神奈川県三浦市、中古一戸建てでは千葉県富津市でした。さらにいずれもトップ5は都心から100キロメートル圏内の郊外エリアだったのです。2拠点生活意向者も2018年11月と比べ、2020年7月時点では13.4ポイント増加し、二拠点生活を志向する人が約2倍に増えていることを示しています。
『デュアルライフ(2拠点生活)に関する意識・実態調査』と2020年7月実施調査の比較(左)。『SUUMO』の物件詳細閲覧数を、2020年1月と8月で比較した際の伸び率をランキング化。赤が中古マンション 青が中古一戸建て(右)(資料/SUUMO編集部)
二拠点生活をするとき、学校の選択肢は?これまで二拠点生活の実現を阻むと言われてきた二大要素が「仕事」と「子どもの就学」でした。そのうち、「仕事」については、WEB会議システムをはじめとしたテレワーク化の流れによって、地方に住みながら今の仕事を続けられるかも、と二拠点生活をイメージできる人が増えたのではないでしょうか。
そして、もう一つの困難が「子どもの就学」問題です。二拠点生活をするときの通学形態には、いくつかの選択肢があります。公立の小・中学校に通学する場合、大体次の3つに分けられるでしょう。
1)いずれか主となる住所地に住民票と学籍を置き、その学校にのみ通学する
・現在の学校に引き続き通学
・転校する(親子留学制度などを利用する場合も含む)
2)デュアルスクール制度のある自治体(徳島県、長野県塩尻市、秋田県など)で区域外就学制度(後述)を活用し、都心部に住民票と学籍を置いたまま、地方の学校にも通学する
3)主となる住所地に住民票と学籍を置き、別拠点に滞在中はフリースクールや家庭教師など任意の教育で補う
山梨県や長野県に移住した友人からは、それらの県の一部地域で募集されている「親子留学」制度が、コロナによって問い合わせが増えていると聞きます。この親子留学制度も上の1)の住民票と学籍を移す形になります。
テレワーク普及の影響か、親子留学制度を活用しようと考える人も増えている様子(写真/PIXTA)
「区域外就学制度」が使える? 自治体や教育委員会に問い合わせてみた!古くから各地方自治体には「区域外就学」の制度があります。これは具体的な事情が相当と認められる場合に、住民票と学籍のない自治体の公立学校に通うことが可能となる制度です。
実は、地方移住や二拠点生活などのニーズを反映し、2017年7月に文部科学省からこの区域外通学に関する通達が出されました。この通達には、「相当と認めるとき」に「地方への一時的な移住や二地域に居住するといった理由」も含まれることが記載されています。二拠点でこの制度を活用することに文科省のお墨付きを得ている、とも言えるこの通達ですが、文部科学省教育制度改革室の松岡将さんによると「実際の運用と認められるかどうかの判断は、各地方自治体の教育委員会の判断に委ねられている」と言います。
2017年7月に各都道府県・指定都市の教育委員会就学事務担当課長宛に通知された「地方移住等に伴う区域外就学制度の活用について」(画像/文部科学省)
そこで、筆者は現在、東京の拠点である品川区と住民票を置いている佐賀県佐賀市にこの制度が活用できるかを尋ねてみることにしました! それぞれの自治体のホームページには、学期の途中で転出した場合などに加え、「その他教育委員会が特に必要と認めた場合」に区域外就学制度を利用できる旨の記載があります。
「コロナ」という“特別な事情”が、加味される可能性もところが、実際に各自治体に相談してみると、筆者のように1回あたり数日~1週間程度の滞在では申請が認められることは難しく、一つの目安として「一定期間(2~3週間程度)以上、居住していること」が必要であることが判明しました。
また、自治体によっては、主に海外赴任で一時的に帰国している場合などに、住民票がなくとも一定期間居住していることを条件に「体験入学」できる制度を設けているところもあります。この制度を活用する場合においても、居住期間2~3週間以上の場合の申請が一般的ということでした。
自治体によっては、海外からの一時帰国者を主な対象に「体験入学」制度を設けているところも(写真/PIXTA)
ただ、品川区学務課の篠田英夫さんによると「コロナによって区内に住む人から、地方の祖父母宅など一時的に他のエリアで子どもを通学させることができないか、といった相談が出てきている」といいます。
「『コロナのような特別な事情』があれば、受け入れ側の自治体との調整によっては可能になる場合もあるかもしれません。個別事情によって判断することになるので、詳細は各自治体や教育委員会などの窓口に相談してほしいと思います」(篠田さん)
意外と「デュアルスクール」を望んでいない子どもも!?子ども2人がそれぞれ小学校、中学校に進学するのにともない、筆者の中では改めて“学校どうしよう”問題が湧き上がりました。特に1カ月に1~2回、3~7日ほどの東京・佐賀の行き来が日常になっていた長男には、区域外就学制度が活用できたらよかったのにな……という思いも拭えません。
ところが、いざ息子にその話をしてみると「小学校は佐賀だけでいい。2つも学校行くのは面倒だから」と言います。中学校に進学する長女に聞いても同様の返答です。
リビングで宿題をする小学6年生の長女。佐賀市の指定区域内の中学校への進学を希望している(撮影/唐松奈津子)
実は、私たちの二拠点生活も最初から全てが順調だったわけではなく、佐賀に引越して最初の半年ほどの間は、よく保育園の園長先生から長男の様子について話がありました。息子が移動中のバスの中でお友達を叩いたり、体操の時間にみんなで走っているときに前の子を押したりすることが頻発したのです。
園長先生から聞いたのは息子が「怒っているように見える。お母さんが仕事で東京に行って不在のときは、特にイライラしている様子」だということ。半年ほど経って息子の様子が落ち着いてきたことを園長先生と話したとき、「生活に慣れて、いつもの安心できる環境になったんでしょうね」と言われて、気付かされた思いでした。子どもにとっては“いつもの安心できる環境”が第一なのだな、と。
4月から小学校に進学する長男。佐賀でお気に入りの場所の一つ、佐賀県立図書館と併設する「こころざしの森」にて(撮影/唐松奈津子)
国も自治体も、そして親も「子どもの教育環境」を第一に松岡さんに話を聞いたときにも印象的だったのは「子どもの教育環境が大切」という言葉が繰り返し使われたことです。また、篠田さんは「学級運営や他の子どもたちの学習環境にも影響するので、区域外就学も安易には認められない」と言っていました。
親としては生活の選択肢を増やす意味で、また子どもの将来にとって良かれと思って、二拠点生活に活用できる就学制度があれば、と思わずにいられません。実際、都会育ちの子どもが、デュアルスクールを体験し、かけがえのない経験や、自分の居場所はどこにでもつくれるという強い自信を得た、といった素晴らしい話も聞きます。一方で、二拠点生活を考える際に子どもの学校をどうするのか、本当に子どもにとって2つの学校に通うことが必要なのかどうかは、それぞれの家庭の事情にあわせて慎重に検討する必要があると感じました。
有明海の干潟でカニ探しをして遊ぶ長男。子どもに自然体験を増やしたいと考える人も多いだろう(撮影/酒井皓司)
二拠点生活を始めた当時、小学4年生だった長女が転校して現在の小学校にすんなり馴染めたのも、既に顔見知りの同級生がいたことが大きいと思っています。実は、娘は東京・品川区の小学校に入学した6歳のころから4年間、毎年冬休みには佐賀の祖父母宅に一人で2週間ほど滞在し、現在の住まいの近所に住む子どもたちと一緒に遊んできたのです。
デュアルスクール制度、区域外就学制度、体験入学制度、親子留学制度など、二拠点生活の広まりに応じて活用できそうな就学制度が出てきました。また、コロナの今だからこそ、活用できる可能性もありそうです。
“子どもの教育環境”という簡単には答えの出ない問題だからこそ、まずは親子で休暇を利用して一時的に滞在してみる、「子連れワーケーション」を実践してみるなど、“試しに”から始めて子どもの様子を見るのも一手かもしれませんね。
●取材協力二拠点生活、多拠点生活への需要が高まっていますが、多くの人が家賃に頭を悩ませています。そんななか、新しい働き方・暮らし方に合った画期的な賃貸サービスが続々と登場しています。傾向と詳細、そして多拠点生活をする上での注意点をハウスメイトマネジメントの伊部尚子さんと太平洋不動産の宮戸淳さんに伺いました。
テレワークの普及で、多拠点生活の需要が高まっている!
2020年は、コロナ禍を背景にテレワークの普及が加速しました。全国平均で48.0%、東京では71.1%の人がテレワークを経験しています。そのうち66.1%は「良かった」と答え、8割以上の人が今後も継続したいと前向きに捉えています(2020年「リクルートキャリア」「リクルート住まいカンパニー」調べ)。働く場所の選択肢が増えたことで、暮らし方も変化しています。そのひとつが、二拠点・多拠点で生活をするスタイル。長引く緊急事態宣言下で、やや動きは停滞しているものの、これからの暮らし方として注目が集まっています。
神奈川県の二宮・大磯エリアで賃貸物件を扱う宮戸さんも、その流れを感じているそうです。コロナ禍以降の問い合わせが増え、同エリアでは一戸建ての賃貸物件が不足している状況と言います。特に人気が高いのが、見晴らしのいい開放感のあるマンションや一軒家。都内の2LDKと同じ家賃で借りられることも魅力的に映っているようです。
「海が好きで釣りやサーフィンを楽しみたい人、車が好きでガレージがほしい人やガーデニングがしたくて庭付きを希望する人が多いです」と宮戸さん。伊部さんも「田舎をセカンドハウスとして、利便性のいい都心部に拠点を残しつつ、週末だけ環境のいい郊外で過ごす方もいます」と続けます。
「都心から移ってきた人がよかった点として上げるのは、地域のコミュニティや自然環境の良さです。都会で物を所有するのではなく、田舎での体験に価値を置く人が増えていると感じています」(宮戸さん)
太平洋不動産を訪れる多拠点生活希望者の多くは、比較的仕事の自由度が高いフリーランスの人、独身やご夫婦が多いそうです。
神奈川県二宮の庭付きアパート。駅近ながら自然豊かな環境(画像提供/太平洋不動産)
海を見渡せるマンション。海までの距離は徒歩わずか1分(画像提供/太平洋不動産)
「ここがモヤモヤ……」多拠点生活の問題点一見、多拠点生活はとても豊かな暮らしを送れそうな印象を受けますが、注意しなければいけない点もあります。実際に多拠点生活者から挙がった声、トラブルをもとに紹介します。
・家賃・光熱費が余分にかかる
・家具や家電が両方の拠点で必要になる
・食材を腐らせないよう管理が大変
・回収日によっては、ゴミが捨てられない
・コロナ下での移動のリスク
・ご近所との関係構築、住まいの管理が難しい
・転貸という違法行為をしてしまう人が出てきている
一戸建ての場合、庭の草が管理できず伸び放題になってしまったり、地域の組や班の当番ができなかったり、近隣とうまくいかなくなるケースもあります。なかには、家賃を少しでも浮かそうと「転貸」という契約者以外に賃貸に住まわせる違法な行為をしてしまう人も。「転貸が問題なのは、契約者以外が住んでいるため、生活する上での注意などが正しく伝わらず近隣トラブルになりやすいのです。さらに、火災保険は被保険者である契約者がおこした火事にしか適用されないため、家財を守ることができません。オーナーの建物に対する賠償責任も補償されませんし、もし集合住宅であれば他の入居者に対する賠償責任も補償されないことになります。オーナー・契約者両方にとって、大変リスクのある行為なのです」(伊部さん)
防火上の観点から荷物を玄関前に置かないなど長期不在ならではの注意点も(PIXTA)
多拠点生活の需要に、課題や問題の解決策がまだまだ追いついていないのが現状です。それでも、新しい暮らしに寄り添った賃貸サービスも登場し、少しずつ時代の変化に対応していっています。
働き方・暮らし方の変化に対応! 新しい賃貸サービスとは?2018年に相次いで提供が開始された「ADDress」「Hafh」などの全国のゲストハウスやシェアハウス等に定額制で泊まり放題・住み放題になるサブスプリクション型住居サービスは、全国の拠点で住み放題になるうえ、家賃の負担を抑えられると注目を集めました。
今回は、サブスク以外の選択肢として、「unito」「TNER」の事例をご紹介します。
外泊するほど安く住める「リレント型賃貸」unito東京都千代田区に拠点があるUnitoが提供する賃貸サービス「unito(ユニット)」は、「リレント」という方法を採用。居住者が家に帰らない日に、宿泊者に部屋をホテルとして貸すことで、家賃を下げられる仕組みです。例えば、1カ月の基本料金が8万6000円の家賃の部屋では、家にいない日数が月に10日間あった場合、2万円が割り引かれ、実際の家賃は6万6000円になります。
手続きは、アプリでリレントの申請をし、鍵付きのロッカーに自分の荷物を収納するだけ。リレントの申請をすれば、短期利用者が利用しない場合も割引が受けられます。家をシェアしている間に短期利用者により備品の破損があった場合の保障もされ、宿泊後には部屋のクリーニングをしてもらえます。敷金・礼金、水道・光熱費、退去費用がかからず、多拠点生活がしたいと思い立ったら即開始できるメリットも。「unitoCHIYODA」、「unitoEbisu」の2拠点のほか、「WISE OWL HOSTELS」などホテルや民泊の宿泊施設と提携し、都内を中心にサービスを展開しています。
明るいエントランスの「unitoCHIYODA」(画像提供/Unito)
「unitoCHIYODA」では、「都会に安く簡単に住む」をコンセプトに30ベッドを用意(画像提供/Unito)
押上にある「WISE OWL HOSTELS RIVER TOKYO」は個室タイプ。生活に必要な家具や家電が備え付けられている(画像提供/Unito)
東京と大阪の二拠点生活を送る、利用者のS.Eさんは「unitoCHIYODA」の拠点を利用、「家賃が安くなるので無理に自宅(東京)に帰ることが減り、出張の移動効率アップや移動費の削減にも繋がっています」と話します。
経営コンサルタントをしているS.Eさんは、会社員からフリーランスになり、依頼に応じてさまざまな都道府県に出張する必要がありました。家賃だけでなく地方での宿泊費と移動費がかかるようになり、どうにか家賃や宿泊費を抑えたいと考え、「unito」への入居を決めました。
東京(2日間)→長崎(10日間)→福岡(一週間)→大阪(一週間)というスケジュールで動いた時は、長崎には仕事で3日間の滞在で十分でしたが、次が福岡だったため、自宅には戻らず、そのまま長崎に滞在してワーケーションをしたそうです。最近は、地方出張が多く、自宅には月1、2日しか戻っていないとのこと。以前より格段に場所や時間の自由度が上がったそうです。
「unito」を提供している株式会社Unitoの代表取締役近藤佑太朗さんによると、出張が多かった近藤さん自身の経験がサービス開発のきっかけになったといいます。「私自身、若いころは出張が多く、8万5000円のアパートに月半分しか帰らなかったんです。15日間で8万5000円の家賃ということは、実質、1カ月17万円支払うのと同じと言えます。それなら、ホテル的に住めばよいのではと発想しました」
「unito」の用途区分はホテルですが、住民票がとれるので、郵便物の受け取りも可能です。利用者は、20代前半から30代が多く、学生から経営者までさまざまな人が利用しています。
「unitoCHIYODA」には、寝具や棚など都会で暮らす最低限の設備がそろっている。キッチンやシャワーは部屋にはなく、シェアスペースを利用(画像提供/Unito)
ワークスペースの一角には、利用者同士が交流できるスペースも(画像提供/Unito)
「WISE OWL HOSTELS RIVER TOKYO」 1階のカフェスペース。リモートワークやミーティングに使われ、地域の人も訪れる(画像提供/Unito)
2020年11月には、月3日間1万500円から都心でワーケーションができるサブスク「urban(アーバン)」をリリースしました。コロナにより、引越し件数は減っていますが、「unito」の月間契約数は横ばい。「移動を控えて一時的に停滞しているだけではないでしょうか」と近藤さんは話します。多拠点生活が気軽にできる賃貸サービスの需要は変わっていません。
借りながら貸せる「シェア型複合施設」TNERテレワークによって進む“職住融合”の流れを汲みつつ、多拠点生活者にも対応した物件も登場しています。借りたオフィスの使っていない時間を他の人に貸し出せる「TNER(トナー)」です。オフィスや個定デスクを、複数の法人でシェアしたり、時間貸し(500円/2時間)ができます。例えば、固定デスクは、一人席月額利用料2万2000円+共益費3000円(キャンペーン価格/期間の定めあり)で、法人登録も可能。他の人に貸し出した分の収入があるので、お金も無駄になりません。10階建ての「TNER」は、1階をエントランスフロアとし、2階にはミーティングスペースやレンタルキッチンがあり、3、4階がオフィスや固定デスク、フリーデスク区画です。5~9階は一般の賃貸マンションで、10階のSOHO(2部屋)は、自宅やオフィスとして使え、教室などの小商いをするスペースとしても活用できます。基本的にSOHO入居者のみオフィススペースを利用可能ですが、一般の賃貸物件入居者も希望すれば対応してもらえます。
「TNER」事業主である株式会社エコラの代表取締役百田好徳(ももた・よりのり)さんは「新しく会社をつくるとき、オフィスを借りる必要がありますが、起業したばかりで金銭的に難しい場合があります。オフィスやデスクをシェアすることで、これから起業する人を応援する場にしたいと考えました」と話します。
固定デスク。作業デスク、チェア、棚、メールボックス付き(画像提供/エコラ)
ガラス張りのドアの向こうがオフィス。シャワー、バス、トイレ付きのオフィスもある。ガラスの扉のある部屋を時間貸しすることが可能(画像提供/エコラ)
利用者の職業は、経営コンサルタント、広告代理店、ウェブ制作会社など多岐にわたります。シェアオフィスをつながりの場とすることでビジネスにも活かしてもらおうとイベントスペースやシェアキッチン、ミーティングスペースなども充実させました。
利用者のK.Sさんは、会社役員で、神奈川と仙台で二拠点生活をしています。「来客時の打ち合わせスペースとして、または、WEB会議やリモートワークで、フリーデスクを活用しています」(K.Sさん)会社経営者で千葉在住のS.Aさんは、「本社は他県にありますが、仙台オフィスとして使う予定です」と話します。いずれも、交通の利便性やシェアキッチン、ミーティングスペースが利用の決め手になりました。
3階にあるシェアキッチン。交流の場としてフロアの中央に配置(画像提供/エコラ)
2階のレンタルキッチンは、1時間1000円~(画像提供/エコラ)
2階のレンタルキッチンは、飲食店営業許可や菓子製造業許可を取得済で、お菓子やお弁当などを販売できます。先行投資しなくてもチャレンジできるとあって利用者が絶えません。3階のシェアキッチン隣接のイベントスペースでは、利用者同士の交流もあるそうです。
「これからは、オフィスで仕事をして、自宅で休むという二択ではありません。オフィスと自宅の間の点が増えれば、働き方、暮らし方の自由度はもっと上がります」(百田さん)
“職住融合”や多拠点生活など、これからの暮らしに合った賃貸物件は、今後、ますます増えると予想されます。場所に縛られず、時間やお金の問題が解決できれば、人生の選択肢が広がっていくでしょう。新しい賃貸サービスを上手に選択して、もっと身軽に自分らしい暮らしを実現していきたいですね。
●取材協力「家を買うか、買わないか?」「買うなら一戸建てか、マンションか?」といった住まいの問題。日本トレンドリサーチによると、どんな住まい方を選択した人でもその大半が後悔していないという。では、どう考えて選べばいいのだろうか。【今週の住活トピック】
「家に関するアンケート」結果を公表/日本トレンドリサーチ(運営会社NEXER)持ち家(一戸建て・マンション)、賃貸のいずれでも、大半が選んで良かったと回答
日本トレンドリサーチのアンケートの結果では、回答者の今住んでいる「家」の居住形態は次のような比率だった。
・持ち家 71.2%(一戸建て54.3%・集合住宅16.9%)
・賃貸 27.5%(一戸建て3.3%・集合住宅24.2%)
(出典:日本トレンドリサーチ「家に関するアンケート」より転載)
アンケート回答者では、一戸建ての持ち家が圧倒的に多いという結果だ。
また、持ち家の場合の今の家での居住年数を見ると、21年以上が半数近い48.2%を占めた。一方、賃貸の場合の賃貸住宅での合計の居住年数を見ると、こちらも21年以上が41.4%を占めた。いずれの場合も、今の居住形態を長期間継続している傾向がうかがえた。
そのうえで、「家についての現在の気持ちとして最も当てはまるもの」として、自分の選択を「良かった」と回答した人はいずれもかなり多い。特に持ち家(一戸建て)で高く94.7%に達し、持ち家(マンション)の85.9%、賃貸住宅の78.0%の順になった。
家についての現在の気持ちに最も当てはまるものとして「良かった」を選んだ割合(出典:日本トレンドリサーチ「家に関するアンケート」より転載)
これは人間の心理として、自分の選択を間違っていたとは思いたくないので、自分に不都合な情報を見ないようにしたり、自分のものに高い価値を感じたりするという背景もあるだろう。21年以上もその居住形態を続けている人が多いのも、より一層こうしたバイアスをかける要因になる。
とはいえ、家という支出的に大きな問題で、自分の選択が「良かった」と思っている人が大半というのは喜ばしいことだ。
持ち家VS賃貸、一戸建てVSマンション、それぞれの違いは?さて、大半がよかったと思っているのであれば、買うか借りるか、買うなら一戸建てかマンションか、についてはどう選択したらよいのだろう?
基本は、それぞれのメリットやデメリットを理解したうえで、自分の暮らし方に適しているのはどれかを考えることだ。
□持ち家のメリット
●資産なのでキャッシュ化できる
●先々も住む場所が確保される
●所有しているので、自分の判断でリフォームなどができる
●住宅ローン返済後は維持費だけになり、支出を抑えられる
□持ち家のデメリット
●住む場所が固定され、気軽に引越しがしづらい
●家を保有するための税金や家のメンテナンス費用がかかる
●定められた額を完済するまで返済し続けなければならない
●所有しているので、住宅の維持を自分で判断し行うことになる
持ち家と賃貸では、メリットとデメリットがそれぞれ逆転する。住まいの安定性という面では、賃貸は高齢期に借りづらい傾向があるなどで持ち家に軍配が上がるが、持ち家は簡単には引越しができないという足かせが生じる。コストの流動性では、賃貸が持ち家より高く、コストの推移という面では、現役世代には持ち家のローン返済額が重い負担となるが、リタイア後の年金暮らしには賃貸の賃料が重い負担となる。
したがって、長期的な生活設計を考慮して、買うか借りるかを選ぶのがよいだろう。なお、一般的に、持ち家は賃貸より広くて性能の高い住宅が手に入りやすいといわれており、住宅の質という面も見逃せない点だ。
一方、買う場合の一戸建てかマンションかも、それぞれにメリットとデメリットがある。
□一戸建てのメリット
●住宅の独立性が高く、自分の判断で住み方やメンテンス方法を決められる
●マンションよりも増改築の自由度が高い
●駐車場や庭などを確保しやすい
□マンションのメリット
●建物や共用の設備、庭などの管理やメンテナンスを管理会社に委託できる
●ワンフロアで段差が少ない
●セキュリティやゴミ置場、宅配ボックスなどの共用設備面が充実している
一戸建てとマンションの大きな違いは、マンションは建物や設備を共有する共同生活になるという点だ。そのために生活上のルールがあり、共用財産を適切に維持するために管理方法や修繕計画を管理組合で決めることになる。共同生活を煩わしいと思うのか、自分だけで判断しなくて済むので気が楽と思うのかなどによって、どちらが向いているか変わるだろう。
なお、コスト面で、マンションは管理費や修繕積立金を支出しなければならないデメリットがある、という人もいる。しかし、一戸建ても庭の手入れや建物や外壁の補修などを行う必要がある。そのために時間を使ったり計画的に積み立てたりしなければならないので、必ずしもデメリットには当たらないと思う。
持ち家であれ賃貸であれ、一戸建てであれマンションであれ、選択して後悔しないためには、メリットとデメリットを理解して、自分の暮らし方に応じて判断することがカギになる。メリットだけを見て選んだり、他人の意見で判断したりすることが後悔の元になる点は、どんな選択をするのにも共通のポイントだ。
日々、何気なく行っている「ごみ捨て」を切り口として、地域のコミュニティを活性化させる「こみすて」という取り組みが奈良県生駒市の萩の台住宅地ではじまりました。どんな取り組みで、まちにどんな変化があったのでしょうか。中心となっている自治会や行政、企業に話を聞きました。
ごみ捨てしながらおしゃべり。子どもも大人も楽しめる場所に!
一戸建てやマンション、住まいの種別によっても異なりますが、日々、行う「ごみ捨て」。ご近所の人や同じマンションの人が自然と集まるため、すれ違えば軽く会釈をする、あいさつをするという人も多いことでしょう。このごみ捨ての「自然と人が集まる」特性を利用してはじまったのが、「こみすて」という取り組み。「こみすて」は、「ごみすて」と「コミュニティステーション」をかけて名付けられた愛称です。
「こみすて」をはじめた奈良県生駒市の萩の台住宅地自治会。加入している世帯は700世帯ほどで、大阪からのアクセスが良い郊外の住宅街です。ここでは、自治会館脇の入り口付近に資源ごみ回収ボックスを設置し、家から出る生ごみや廃油、小型家電、ベルマークやペットボトルキャップ、廃トナー、使用済み切手が持ち込めるようになっています。
ごみ捨てをきっかけにした地域活性化の取り組み。宮城県南三陸町でアミタが行った実証実験がベースになっている(写真提供/アミタ株式会社)
この「こみすて」の最大の魅力は、この場に行けばコーヒーを飲みながらご近所の誰かに会えて話しができたり、思い思いに過ごせたりする点でしょう。特に現在は新型コロナウイルスの影響で、なかなか大勢の人が一度に集まることは難しくなっていますが、ここでは子どもから高齢者まで自然と会話が生まれ、少しずつ距離を縮めて、顔なじみになっていくといいます。
訪れた人にコーヒーがふるまわれることもある(写真提供/中垣由梨さん)
マルシェでは子どもたちが活躍する姿も(写真提供/アミタ株式会社)
実証実験時はリユース市も常設されていた(写真提供/アミタ株式会社)
2019年12月に「日常の『ごみ出し』を活用した地域コミュニティ向上モデル事業(※)」の実証実験として始まったこの「こみすて」の運営を担っているのは、現在は自治会長の山下博史さん、佐藤郁代さん、大谷良子さん、木村文穂さんはじめ、地域住民のみなさん。最初に社会実験としての立ち上げに携わったのは、アミタ株式会社の社会デザインPJチーム(当時)、設計のアドバイスを行ったのが株式会社グランドレベルの大西正紀さんです。
アミタの、ごみ出しという誰もが日常的に必要な行為をきっかけに、誰もが参画・協働できる持続可能なコミュニティを形成したいという想い。ごみ捨てに来てコーヒーを飲めるなどさまざまな要素が集まる、生駒市の複合型コミュニティづくりを推し進めていきたいという想い。それらが重なり、実証実験を経て、2020年度からは、「複合型コミュニティづくり」という施策のひとつとして進めています。また、地域新電力会社であるいこま市民パワー株式会社がコミュニティサービスの一環で「こみすて」をはじめとする「複合型コミュニティづくり」支援をしています。
「何するの?」からスタート。すると思わぬ出会いが!とはいえ、そもそも「ごみ捨て」で地域活性化といっても、今までの世の中にはない仕掛けです。仕掛ける側、地域の方々ともに戸惑いはなかったのでしょうか。
「実証実験開始前にアミタさんや行政から話を聞いたときには、『具体的に分からん、何するの?』と質問しましたね(笑)。ただ、環境問題解決や地域の活性化になるのであれば、これは正しいし、やったほうがいいだろうと。幸い、現在の自治会のメンバーは助けてくれる人も多く、まあなんとかなるだろうと始まりました」と自治会長の山下さんは振り返ります。何をするのか分からなかったのは、自治会の大谷さんも同じだったと述懐します。
「取り組みをなかなか十分に理解ができていなかった部分がありますね。特に、緑道に生ごみの資源化装置が運び込まれたときは驚きました。民家も近いので、物音や話し声、ニオイなど、周辺に迷惑がかからないよう気を使いました」と話します。
生ごみ資源化装置、通称「めたん君」。ここで生ごみはガスと液体肥料になる(写真提供/アミタ株式会社)
ただ、こうした「こみすて」の取り組みにいち早く反応した人がいました。萩の台住宅地で育ち、現在は働きながら子育てをしている真下藍さんです。
「2019年11月に、生駒市主催のイベントでグランドレベルの田中元子さんの講演を聞いていて、自分の好きなまちで自分の好きなことをやる“自家製公共(マイパブリック)”や、まちの目の高さの風景(グランドレベル)をいかにつくるか ということが気になっていたんです。そのあと、資源ごみステーションをつくるために、アミタさんとグランドレベルさんがこの街に視察に来られていた現場に、偶然出くわしたのです。『これは面白くなりそう。きっと思いもよらない景色が生まれるはず……!』と直感して、立ち上げのタイミングから、ここで生まれる風景を記録して共有したいと思いました」といいます。
真下さんの直感は当たり、住民の自主的なDIYでベンチができたり、今まで自治会活動とは関わりなかったような若い世代が積極的に関わるようになっていったとか。また、ロゴをつくったり、真下さんがSNS「こみすてノート」 で発信していくことで、生駒市内外にも取り組みが知られるように。このときは実証実験ということで、アミタのスタッフが常駐し、地域交流のイベントを計画し実行することも多かったとのこと。こうして地域に「こみすて」が徐々に浸透していったといいます。
「こみすて」に「子どもスタッフ」の登場! 地域に笑顔が生まれる取り組みで大きかったのは子どもたちの存在です。
「アミタのスタッフさんに子どもたちがよくなついて集まるように」(大谷さん)といい、ついには“こみすて子どもスタッフ”として自主的に関わるように。
(写真提供/アミタ株式会社)
子どもスタッフの名刺。子どもたちの活躍がこみすての起爆剤に(写真提供/こみすてノート)
地域の子どもたちにペイントしてもらったこみすての壁画。ほかにも、DIYで作成したものが多数(写真提供/こみすてノート)
確かに子どもの字で書かれたお知らせやごみの分別の仕方を見ていると、これは大人が守らねばという気持ちになります。こうしてワイワイと楽しんでいることで、高齢者も積極的に参加するようになり、仲間が増えていったといいます。
おえかきボードの設置や現地掲示物を作成する子どもスタッフたち(写真提供/アミタ株式会社)
「記憶に残っているのは、ご高齢のおばあちゃんかな。『こみすて』に来るのが日課になって、人に会って会話をすることで気持ちのうえでも、足腰の健康のうえでも張り合いになったようで。通ううちに、記憶もしっかりしていったのが印象に残っています」と山下会長は言います。
実利的な側面として、家庭から出るごみの量が減るという効果もありました。ただ、新型コロナウイルスの影響もあり、実証実験はいったん2カ月で終了となりました。それでも2020年12月に、自治会が主体となって、小さくとも再スタートをきることに。
「予算やスタッフなど、実証実験中のようにはいきませんが、とにかく身の丈で楽しく続けていこうと」(山下会長)。とはいえ、萩の台住宅地の自治会も、高齢化や自治会の担い手不足などとは無縁ではありません。それでも、取り組む理由はどこにあるのでしょうか。
「『こみすて』も自治会活動も、継続がいちばん難しい。年齢的にもどこまでできるか分からないけれど、続けていくには、楽しく取り組んでいる姿を見せるのが一番なんじゃないかな。さきざき、どうやっていくかは若い人たちにまかせて(笑)、できることを楽しそうに続けていくことがいいと思っています」。また、大谷さんも、「継続していくことで今は無関心な人も、遠くから見ている人も参加してくれると思います」と話します。
初対面同士がベンチに座って談笑。実証実験ではこのような光景が随所で見られた(写真提供/アミタ株式会社)
現役世代の真下さんはどのように感じているのでしょうか。
「私自身、出産直後に住んでいた所では、慣れない子育てで孤独を感じていた経験があり、近所に『こみすて』のような場所があれば毎日行っただろうなと思います。地域にどうやって溶け込んでいけばいいのか悩んでいる人にも、『こみすて』の魅力を知ってもらえたらうれしいですね。ただ、無理をして人を集めるのではなく、自分たちがここでやりたいことを思いっきり楽しむことが、人をひきよせるエネルギーになればいいなと思っています」と言います。実際、引越して間もない子育て中のお母さんが、再開後の『こみすて』に1歳の娘さんを連れてくるようになり、自治会館で実施されていた『いきいき100歳体操』に参加してくれたこともありました。
緑道を整備した時の切り株で、2020年12月にコミュニティバス停前にDIYでベンチを設置。写真は色塗りの様子(写真提供/アミタ株式会社)
萩の台住宅地自治会の取り組みはまだはじまったばかりです。地域の中でできることややりたいことを、一人ひとりが少しずつ発揮していくことで、より住みやすく楽しいまちへと変わっていけるのかもしれません。
●取材協力●参考資料
「日常の『ごみ出し』を活用した地域コミュニティ向上モデル事業」
長らく住宅不足が続いてきた日本ですが、2010年代に入って住宅が余りはじめ、昨今は空き家が問題となっています。築年数の経過した祖父母・父母の思い出がつまった住まいをどうするのか、今から考えておきたい人も多いことでしょう。今回は東京・下町で思い出の場所を現代の暮らしにあわせて、コワーキングスペース&シェアキッチン付き住宅へと建て替えた鈴木亮平さんに話を伺いました。
まるで朝ドラ! 祖父母の行政書士・税理士事務所兼住まい
2020年4月、とうきょうスカイツリー駅のすぐそばに、コワーキングスペース・シェアオフィス、シェアキッチン、住居などが一体となった「PLAT295」が誕生しました。働く場所、勉強場所を探している人はもちろん、多目的に使えるキッチンがあり、動画撮影などのスタジオとしても活用されているとか。複合型の施設のため、地元の人はもちろん、検索してわざわざ訪れる人まで、さまざまな利用者がいるといいます。
PLAT295のコワーキングスペース。テレワークとして時間利用もできるほか、事務所登記もできるので、起業も可能に(撮影/片山貴博)
2階(撮影/片山貴博)
「もともとこの場所は僕の祖父母が暮らしていた住まいがあったんです。1棟は築40年超、1棟は築60年超。建物が隣接していて、ベランダで行き来できるような建物でした」と話すのは、PLAT295の立案者であり、NPO法人バルーンでアーバン・デザイナーとして活躍する鈴木亮平さん。
聞くと、暮らしていたのは鈴木さんの母方の祖父母。祖母は東京大空襲で焼け野原となったこの場所で、6人の弟妹を養うために進駐軍の事務手続きの仕事をはじめ、その後、日本の女性ではまだ珍しかった行政書士の資格を取得。この場所で行政書士事務所を始めたそう。のちのち縁あって税理士の夫と結婚、税理士業とあわせて仕事を行うなかで土地と建物を買い増して、成功を収めていたといいます。
昭和40年ごろの写真(写真提供/鈴木さん)
日ごろから「ちまちま稼いでも儲からない、不動産を買わないと」というような、下町っ子らしい毒舌(!)で気風のよい人だとか。とはいえ、築60年超の建物は老朽化し、ネズミが出る、漏電や耐震面でも不安があり、暮らしやすいとはいい難い状況でした。
左/建て替え前。1棟は築40年超、1棟は築60年超(写真提供/鈴木さん)、右/建て替え後(撮影/片山貴博)
建物の模型。1階・2階が地域に開いたスペース。3階からうえが賃貸ほか、鈴木さん家族の居住スペース(撮影/片山貴博)
安全性、防災、まちづくり、子育てなどを考慮して建て替えへ建物の老朽化を懸念していたころ、この場所で暮らしてきた祖母が施設に入ることが決まりました。鈴木さん夫妻は、既存の建物を壊して、ここで建て替えることを決断します。
「建物の老朽化、子育てしやすい間取りで暮らしたいという理由もありますが、大きいのは、長くじっくりとまちづくりに関わっていきたいと考えたこと。仕事柄、地域活性化といっても2~3年でプロジェクトが終わってしまうのですが、もうすこし長いスパンでまちづくりに携わりたいと考えました。もう一つは防災面です。災害が起きたとき、近所の誰かに助けてもらえる、気にかけてもらえることが運命を大きく変える気がするんです。祖母は東京空襲に遭ったとき、近所のおじちゃんに火から身を守るため泥を全身に塗られて生き延びられたと言っていました。私は仕事柄、出張も多いので、不在にしていることも多い。そんなときに被災したら、妻と子どもを気にかけ、守ってくれるのは地域の人だなと思い、地域の人とつながれるスペースが必要だと感じました」(鈴木さん)
以前撮影した家族写真(写真提供/鈴木さん)
まさか戦争のエピソードが出てくるとはちょっとびっくりしますが、戦火をくぐり抜けた人が語るコミュニティの大切さは実感がこもっていて、言葉に重みがあります。
にこやかに話す鈴木亮平さん。福島や千葉でもまちづくりに携わるほか、東京大学大学院新領域創成科学研究科で非常勤講師も務める。若き才能という言葉がぴったりです(写真撮影/片山貴博)
「本所吾妻橋駅周辺はアクセスも最高で、庶民的で本当に住みやすいんです。ただ、人口密集地域ですし、海抜ゼロメートル地帯。地震、台風など防災のことは常に考えておかないといけません。また、仕事柄、さまざまな人と出会って刺激を受けたいといった実利的な側面も考慮しました。この下町って、職住近接が当たり前なんですよ。印刷や建築、職人さんなど、路地から仕事の音やニオイ、気配がする。この土地で暮らすうちに、自然とこういう街並みを守っていきたいと思うようになりました」(鈴木さん)
東京は利便性が高く、日々、目まぐるしく変貌している街です。でも、経済合理性が優先されるがゆえに、その街ならではの良さがどんどん失われている側面もあります。鈴木さんが選んだのは、単に新しい住宅を建てることではなく、街の良さを活かすために、時代に合わせた設備を備えた建物にするという答えでした。
住まいから見上げる東京スカイツリー。子どもたちもご近所顔なじみに!「PLAT295」の誕生と同時に、妻は転職し、現在はPLAT295などの管理や運営の仕事をしています。1階が仕事場、4・5階が鈴木さん一家の自宅というかたちになりました。暮らしはどのように変わったのでしょうか。
鈴木さん夫妻のご自宅。お子さん2人と家族4人暮らし。「今日(取材日)のために片付けました!」とおっしゃいますが美しいです(撮影/片山貴博)
鈴木さん宅のベランダから見る東京スカイツリー。近すぎて全体がカメラに収まらない程の“足元”。ベランダではライムやハーブを栽培しています(撮影/片山貴博)
「ここで働くようになり通勤がなくなったので、子どもと過ごせる時間が増え、気持ちのうえでもゆとりが生まれました。子どもは4・5階の居室スペースだけでなく、1階のシェアオフィスも家だと思っているようで、よく訪れています。シェアオフィスがオープンした当初はそれこそ大人と一緒に店番していました(笑)」と妻のすみれさんは話します。
1階のシェアキッチンで遊ぶ子どもたち(写真提供/鈴木さん)
働く大人、働く親の姿を見られるのって貴重ですよね。子どもにとっては一番よい学びの場所になる気がします。
「そうですよね、1階にいれば誰かしらいて、アイスをもらったりと遊んでもらえて、親もうれしいですね。あとはシェアキッチンには大型オーブンを入れたので、本格的なピザなどが焼けるのが楽しいですね」といいます。キッチンのコーディネートを担当したのもすみれさんで、インスタグラムや動画撮影で使われることも意識し、照明のデザインなども工夫したのだとか。
(撮影/片山貴博)
「本当は小さいお子さんを連れたママたちの子ども会やパーティーなどにも使ってほしいんですが、コロナ禍でなかなかできず……、そこは今後に期待ですよね」。確かに。でも近所にこんなシェアキッチンがあれば、自然と持ち寄りパーティーなどもできそうですし、じわじわと利用も増えていくに違いません。
「下町はお祭りがあるので、地域のつながりが今もあるんですよ。ただ、それだけだと、いつものメンバーに偏ってしまう。会社員の人や単身赴任の人など、普段はワンルームに暮らしている人も、地元の人と顔なじみになれることが大事かなあと。シェアオフィスがあることで、そのきっかけになれたらいいなと思っています」と鈴木さん。
この場所のはじまりとなった祖母は、コロナの影響でまだ施設から外出することができず、建物を見ていないそう。
「この『PLAT295』という名前は、おばあちゃんの名前、ふくこ(295)から取りました。建物ができあがった姿を見たら? そうですね、儲からなそうだな、って言うんじゃないでしょうか(笑)」(鈴木さん)
もちろん、既存の建物を残す選択肢もありましたが、「建物の質がよくなかったこともあって、残せるものではなかったことを考えて」、建て替えを決断した夫妻。残すことだけが、住み継ぐことではありません。時代にあわせて変化をさせ、思いを残すにはどうしたらいいのか。「地域とつながる」「人をつなげる」場所にした夫妻の決断を、きっとおばあちゃんも誇らしく思うのではないでしょうか。
●取材協力立春も過ぎ、暦の上ではもう春。とはいえまだまだ寒い日が続き、外出自粛を抜きについ部屋にこもりがちになってしまいます。SUUMOジャーナルで1月に公開した記事では、「大好きすぎて移住した! 『水曜どうでしょう』の札幌、ふなっしーの船橋へ」「コロナ影響でどうなる? 2021年の不動産市場の行方」などが人気TOP10入りしました。詳しく紹介します。
2021年1月の人気記事ランキングTOP10はこちら!
1位 東京23区の家賃相場が安い駅ランキング 2021年版
2位 大好きすぎて移住した! 『水曜どうでしょう』の札幌、ふなっしーの船橋へ
3位 2021年、住宅取得やリフォームの支援制度はどうなる?ポイントを解説
4位 美大生のための伝説のアパート、DIYし放題で“住み継ぐ”
5位 コロナ影響でどうなる? 2021年の不動産市場の行方
6位 「ゴミには人間の本性が出る!」ゴミ清掃芸人・マシンガンズ滝沢さんインタビュー
7位 どうなる2021年の住宅市場??住宅トレンドは都心か、郊外か?
8位 「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2020」に見る最新キーワード3つ。コロナ禍の影響も?
9位 縄文人さん、「竪穴住居」でどんな暮らしを送っていたんですか?
10位 パリの暮らしとインテリア[8] 壁のカラーリングで狭くて暗い部屋が大変身! 建築家のアパルトマン
※対象記事:2021年1月1日~2021年1月31日までに公開された記事
※集計期間:2021年1月1日~2021年1月31日のPV数の多い順
1位 東京23区の家賃相場が安い駅ランキング 2021年版
(写真/PIXTA)
東京23区の、単身者向け物件の家賃相場ランキング最新版。1位は江戸川区の葛西臨海公園駅で6.00万円。2位は葛飾区の京成金町駅と金町駅で6.20万円。今回急上昇してきたのは世田谷区に所在する喜多見駅で、6.35万円でした。
2位 大好きすぎて移住した! 『水曜どうでしょう』の札幌、ふなっしーの船橋へ
(写真撮影/竹岡紗希さん)
人気テレビ番組『水曜どうでしょう』と出演者の大泉洋が好きすぎて、関西から北海道へ移住した夫妻。ふなっしーが好きすぎて、千葉県船橋市へ移住した女性。「出会っていない人生が想像できない」という、好きなものがある街へ移り住んだひとたちへインタビューしました。
3位 2021年、住宅取得やリフォームの支援制度はどうなる?ポイントを解説
(写真:PIXTA)
新型コロナウイルスによる経済低迷の回復支援に、住宅取得やリフォーム時のポイント制度の創設や減税の拡充などが行われています。地方移住や災害リスクの高い地域からの移転や、住宅ローン減税の控除期間の延長など、支援策の内容について紹介します。
4位 美大生のための伝説のアパート、DIYし放題で“住み継ぐ”
(撮影/片山貴博)
多摩美術大学など美大が多く集まる東京都町田市で、歴代の美大生らが住み継いできた“伝説のアパート”は、「イタズラじゃなきゃ何してもいい」とDIYし放題で原状回復も不要。入居する美大生にとっては、ほかの入居者の“作品”が、制作のひらめきにもなっているそうです。
5位 コロナ影響でどうなる? 2021年の不動産市場の行方
(画像/PIXTA)
2021年の不動産市場は「3極化」が加速しそうです。コロナ禍の状況次第ではあるものの、「都心・大都市部」「駅前・駅近」「大規模」「タワー」といった好立地かつ高額物件や郊外で値ごろ感のある新築・中古・マンション・一戸建てなどは好調、一方で「立地に難のあるもの」はことごとく厳しくなりそうです。
6位 「ゴミには人間の本性が出る!」ゴミ清掃芸人・マシンガンズ滝沢さんインタビュー
(写真撮影/片山貴博)
ゴミ収集会社で働いている経験を基にした書籍がヒットしている、お笑いコンビ・マシンガンズの滝沢秀一さん。滝沢さんによると、ゴミ集積所には「ある法則」があるそうです。コロナ禍のゴミと住まい、そしてコミュニティについてうかがいました。
7位 どうなる2021年の住宅市場??住宅トレンドは都心か、郊外か?
(写真:PIXTA)
テレワーク経験者は住宅購入意向が高くなり、頻度が高ければ郊外志向、出社が半分以上なら都心志向――。2021年の住宅市場の動向を、いくつかの調査結果から解説します。
8位 「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2020」に見る最新キーワード3つ。コロナ禍の影響も?
(画像/SUUMOジャーナル編集部)
「リノベーションはいかにコロナ禍の影響を受け止めたのか」という観点での審査とならざるを得なかったという「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2020」。職住融合のミニマルな住まいや多拠点な職住の場など、注目作品とともに2020年の傾向を紹介します。
9位 縄文人さん、「竪穴住居」でどんな暮らしを送っていたんですか?
(写真撮影/石原たきび)
授業で必ず習うものの、実は分からないことだらけの縄文時代。当時の住居「竪穴住居」を山梨で復元。どんな生活をしていたのかを体験してみました。
10位 パリの暮らしとインテリア[8] 壁のカラーリングで狭くて暗い部屋が大変身! 建築家のアパルトマン
(写真撮影/Manabu Matsunaga)
パリ在住の写真家がこだわりの暮らしを送る人々を紹介する連載。今回は、人気地区ながら日当たりがあまりよくないお部屋に住む女性建築家の話。専門知識を活かした工夫や家具配置で、明るいお部屋に変身させています。
DIYし放題の伝説のアパートや「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」など、いつもに増してDIYやリノベに注目が集まったように感じられる今回のランキング。必ずしも大がかりな工事や予算を必要としなくても新しい暮らしを味わえるだけに、気になるところです。また今なら、3位に入った記事のようにコロナ対策の支援制度も開設されており、考え時ともいえそう。その際には解説記事を役立ててもらえれば幸いです。
「礼金ゼロ・敷金ゼロ・退室時修繕義務なし」「入居者向け食堂・トーコーキッチンの運営」といった入居者本位の不動産仲介・管理サービスで知られる神奈川県相模原市の東郊住宅社が、新たに家事代行サービス「ゴーヨーキーキー」を開始したと聞いて、淵野辺の同社に赴きました。「5分100円から」という破格のサービス料に驚きますが、どんな思いから開始したサービスなのか、現状はどうなのか、詳しく伺いました。
5分100円から。ちょっとした困りごとに駆けつけてくれる不動産屋さん
家の中のちょっとしたことだけれど、誰かの手を借りたい。そんなときに駆けつけてくれる人がいたら……。こうした状況は誰にでもあるのではないでしょうか。気軽に頼める家族や近くに住む友人、親戚がいればいいのですが、そうではない限り、便利屋さんに依頼するほどでもないし……ということで、対処せず我慢してしまうようなことも。
東郊住宅社が2020年秋から始めた「ゴーヨーキーキー」は、頼みたいときに駆けつけてくれて、一緒に対応してくれる家事代行サービス。「サービス内容は本当にちょっとしたことばかりなんですよ」と担当の輿水泰良さんは微笑みます。
やさしい笑顔が印象的な東郊住宅社常務取締役の輿水泰良さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
【サービスのメニュー例】利用者にとっては、花木への水やりや留守中の見回りをしてもらえれば、旅行や出張の際に安心。また、大きな粗大ゴミを出すのは一人暮らしでは難しいので、必要なときに5分10分、手を貸してもらえると助かる。そんな、ちょっとしたことでも気持ちよくやってくれる人がいるというのは心強いことです。しかも、1人で行える作業の場合、5分100円、10分200円、20分400円(30分以降は5分300円)という格安料金。
同社にとって大きな利益が生じる価格ではありませんが、それでもあえて有料にすることには意味があると言います。
「あるとき、弊社まで家賃を持参くださった入居者にお困りごとはないかと聞いたら『電球を交換してほしい』ということがあったんです。足を悪くされたお年を召された女性で、電球は買ったものの自分では交換できず、暗いまま過ごしていたそうです。もっと早く気軽に言っていただけたらすぐ駆けつけたのにと思ったのですが、ご本人は電球交換のためだけに来てもらうのは心苦しい……と思われたようなのです」
家賃支払いのときまで、暗いまま過ごしていたという入居者さん(イラスト/てぶくろ星人)
「そのとき、『無料だと逆に気を遣ってしまって頼みにくい』と感じる方々が意外と多くいるのではないかと気付いたんです。有料にすることで対等な関係となって、遠慮せずに頼みやすくなるのではないかと考えました」(輿水さん・以下同様)
巨大蜘蛛の駆除からワックス掛けまで、御用聞き事例あれこれそうして始まったゴーヨーキーキー。利用者として想定していたのは、主に高齢者、小さな子どものいる人でしたが、意外に若い世代の利用が多く、学生が半分くらいを占めているそうです。そのほか、賃貸物件オーナーや同社取引会社も対象とのこと。総計3000人ほどがサービスの対象者になっています。
「ご高齢の方からの依頼では、インターネットやプリンターの接続、携帯電話の操作など、デジタル関係が多いですね。あとは賃貸物件オーナーさんからのご依頼も多いです。草刈り、ゴミ処理、買い物代行、換気扇フィルターの取り付け、土地面積の計測などのお手伝いをしました。
若い世代の入居者さんからはさまざまなご依頼が舞い込みます。例えば、フローリングのワックス掛けを一緒にして欲しいとか、巨大な蜘蛛が部屋にいるので何とかして欲しいというようなことがありました。ワックス掛けの依頼は『部屋の同じ場所に座り続けていたら床が汚れてしまったので、汚れ落としとワックス掛けを一緒にしてほしい』ということで、たまたま洗剤などが会社にあったので、それを持って伺いました。蜘蛛駆除は10cmくらいの本当に大きな蜘蛛でびっくりしました」
虫嫌いの人にとっては恐怖! すぐに助けが必要です(イラスト/てぶくろ星人)
一緒にやってくれる人がいると心強いですし、集中できますね(イラスト/てぶくろ星人)
「何か困ったことはない?」から始まるコミュニケーション一般的な不動産管理会社であれば、虫が出たから・汚れたから助けてなどの依頼が来るような関係にはなりにくいのではないでしょうか。しかし東郊住宅社の場合、入居者は困ったときに「東郊さんに相談してみよう」と相談先として思い浮かぶ存在となっています。しかし、一足飛びにこうした関係を築けたわけではありません。
まず、呼ばれたらすぐに駆けつけることができるのは、「地元の不動産屋さん」だから。同社が管理する物件は約1800戸あり、その物件のほとんどが半径5km以内に立地しています。
さらに、物理的に身近というだけでなく心理的にも身近であることが、このサービスを使いやすくさせている要因になっています。それは、同社スタッフが入居者に対して常に声掛けをして、“顔見知り”になっているということ。例えば、以前SUUMOジャーナルでも紹介した入居者向け食堂「トーコーキッチン」。朝食100円、昼・夕食500円という低価格でサービスを提供しているだけではなく、同社スタッフが、入居者とその家族や友人、賃貸物件オーナーや関係者とのコミュニケーションを培う場所になっています。
1日150~200人(コロナ禍前)が利用する入居者向け食堂「トーコーキッチン」(写真撮影/金井直子)
トーコーキッチンで食事をしているとき、淵野辺の街を歩いていてすれ違うとき、あるいは入居者が家賃を同社へ持参するとき、同社のスタッフは「何かお困りごとはないですか?」と積極的に話し掛けているそうです。
「淵野辺という街はぜひここに住みたいという積極的な理由で選ばれることは少なく、大学や職場があるからという理由で住んでいる方が多いんです。そうであってもせっかくのご縁なので、淵野辺でより楽しく安全に、快適に過ごしていただきたいと常に考えています。
ゴーヨーキーキーは今はまだ慣らし運転中で、徐々に浸透しつつある状況です。サービス開始を知った入居者さんや物件オーナーさんと道で会って挨拶した際に、『そういえば新しいサービスを始めたらしいね。便利でうれしいよ。ちょっとお願いしたいんだけど……』なんて声をかけられるようになりました」
街の不動産屋さんという雰囲気の東郊住宅社のオフィス。窓辺の「000」は敷金0、礼金0、退室時修繕費0(通常利用の場合)を表しています(写真提供/東郊住宅社)
退室時に「ゴーヨーキーキーがあって良かった」と思ってもらえれば現在、トーコーキッチンをきっかけに同社に直接物件を探しに来店する人が圧倒的に増え、自社集客の強力なツールとなっているとのこと。一方、今回のゴーヨーキーキーに関しては、これで集客アップを狙っているわけではないと言います。
「ゴーヨーキーキーは、実際に体験していただかないと良さは伝わらないと思います。どちらかというと、退室時に『このサービスがあって良かった』と感じていただければいいですね。さらに、これがあることで、『やっぱり引越しをやめる』『次の家も淵野辺で探す』となっていただければもっとうれしいです。
私たちは『お困りごと』をきっかけに、入居者さんとの関係性をより深めていきたいと思っています。困ったときに真っ先に当社を思い浮かべていただくとしたら、何よりうれしいことです」
サービスを担当するのは、アルバイトさんを含め、同社の全スタッフ15人。通常業務の一環としてサービス対応にあたっています。
専門的な知識が必要とされる内容についてはスタッフで対応できないこともありますが、「引退された地域の方などにも参加していただき、培ってこられた技術や知識をゴーヨーキーキーに活かしていただければとも考えています」と輿水さん。
「元花屋さんという入居者さんから植物への正しい水やり方法を聞いて、植木を枯らすことがなくなったという当社スタッフがいるのですが、そんな風に、ゴーヨーキーキーで助け合って、友だちの友だちは、みな友だちだ(笑)となれればいいですね」
(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
ウィズコロナ時代、心を支えるツールとしても役立てたい現在、コロナ禍で外出や人と会う機会がぐっと減り、気持ちも沈みがちという方は多いと思いますが、そうした場合にも利用して欲しいサービスだと輿水さんは言います。
「ゴーヨーキーキーが一番理想とするご依頼は『話し相手をする』です。お金がかかってもいいから話し相手になってというのは、それだけ身近に感じていただいているということではないでしょうか。5分だけでも毎日顔を見せに来てほしいといったご要望もあるかもしれません。心の面でも入居者さんを支えていくことができればいいですね」
ウィズコロナでなくとも、ゴーヨーキーキーでご自宅にお伺いしたり交流を持ち続けたりすることで、何らかの問題……例えば生活苦の早期発見や孤独死リスクの回避にもつながるのではないか、と輿水さん。
それ以外にも、入居者同士の隣人トラブルなど解決が難しい問題も相談事項として発生することが想定されますが、「無理ですと対応するのは簡単ですが、そうではなく、間に入って何とか解決に向けて努力するのが私たちの役割なのではないかと考えています」と輿水さん。
あたふたしつつ一緒に悩む、そんな人間くささに温もりを感じるサービス内容が決まり切っておらず、内容によってフレキシブルに対応するというゴーヨーキーキーですが、「あたふたと一緒に悩むという人間くささ」がひとつの魅力でもあると感じます。「想定外のハプニングというのは工夫を生みますね。人と人との関係性も深めてくれます」
輿水さんは「当社のような地域密着の小さい会社だからこそできるサービスではないかと思います。私たちは、入居者さんの淵野辺ライフがより快適になるお手伝いをするのが、本当にうれしいんです」と話します。
「デジタル化が進みすぎると人恋しくなりますよね。ゴーヨーキーキーは人と人とが相対するアナログのコミュニケーション。人の温もりを感じる、そんな安心感を持っていただければと思います」
電話1本で駆けつけてくれる安心・快適なサービス。お話を聞いて、淵野辺以外の街にもゴーヨーキーキーが広がってほしいと感じました。
●取材協力東京の大動脈といえば、JR山手線。交通利便性の高さもあいまって、部屋探しの際にはぜひとも検討したい路線だろう。よく知っているようでも、住まい選びとなると視点は変わってくるもの。そこで、ワンルーム・1K・1DKの物件を対象にした全30駅の最新の家賃相場をチェック。どんな駅があるのか、その特徴を、改めて考えてみた。山手線30駅の家賃相場が安い駅ランキング!2021年版
順位/駅名/家賃相場/(駅所在地)
1位 田端 8.50万円(北区)
1位 目白 8.50万円(豊島区)
1位 西日暮里8.50万円(荒川区)
4位 日暮里 8.60万円(荒川区・台東区)
5位 駒込 8.80万円(豊島区)
5位 高田馬場 8.80万円(新宿区)
7位 大塚 8.90万円(豊島区)
7位 池袋 8.90万円(豊島区)
9位 新大久保 9.10万円(新宿区)
9位 鶯谷 9.10万円(台東区)
11位 巣鴨 9.15万円(豊島区)
12位 大崎 9.60万円(品川区)
13位 五反田 9.90万円(品川区)
13位 高輪ゲートウェイ9.90万円(港区)
15位 品川 10.30万円(港区)
16位 目黒 10.70万円(品川区)
17位 上野 10.95万円(台東区)
18位 神田 11.00万円(千代田区)
19位 代々木 11.10万円(渋谷区)
20位 東京 11.20万円(千代田区)
21位 新宿 11.25万円(新宿区・渋谷区)
22位 田町 11.30万円(港区)
23位 秋葉原 11.40万円(千代田区)
24位 浜松町 11.65万円(港区)
25位 御徒町 11.70万円(台東区)
26位 恵比寿 12.40万円(渋谷区)
27位 有楽町 12.50万円(千代田区)
28位 新橋 12.55万円(港区)
29位 渋谷 12.80万円(渋谷区)
30位 原宿 13.50万円(渋谷区)
1位は、山手線で唯一北区に所在する、田端駅。山手線と同じく東京の主要交通路線であるJR京浜東北線の、快速運転も停車する。
(写真/PIXTA)
山手線沿線というと都心の街並みを連想するが、田端は落ち着いた住宅街の印象が強い。5位の駒込駅との中間ほどに位置する「田端銀座商店街」は、昔ながらの下町情緒を感じることができる。
また田端は大正時代、まだ若いころの芥川龍之介や室生犀星、萩原朔太郎などの文人たちが集い、互いに刺激を受けあいながら執筆に精を出した文学の街という一面を持つ。駅北口すぐにある「田端文士村記念館」では、田端で活躍した文士や芸術家らの草稿など貴重な資料や作品が展示されており、講演会なども無料で開催されている。街中には彼らの邸宅跡の碑などが点在しており、文学ファンなら心にとどめておく価値がありそうだ。
同率1位の目白駅は、2020年の同率3位からランクアップした。学習院大学の所在地のイメージが強いが、ほかにも日本女子大学や川村学園女子大学の目白キャンパスの最寄駅で、文教地区に指定されているところも多いエリア。幼児教育などの進学塾が多いことでも知られる。
学生が多い地域であるが大きな商業施設などがなく、街の雰囲気は落ち着いていて、閑静な住宅街でもある。都会でありながら緑が多く、駅近くには大きな日本庭園の「目白庭園」がある。池の周囲を散策しながら自然に親しみ、数寄屋造りの庵では伝統文化にも親しむことができるスポットで、緑豊かな印象の一助になっている。
目白庭園(写真/PIXTA)
せっかく山手線沿線に住むならとにかく繁華街に住みたい、という人にとっても、意外だが目白はチェックしておきたい駅。東京の主要繁華街といえば渋谷、新宿、池袋。この中で7位の池袋駅だけが10万円を切る価格でねらい目といえそうだが、目白はその池袋とは隣駅で、駅間距離は1.5km弱。物件の場所によっては、両駅とも利用可能だろう。目白寄りのエリアで部屋を探してより家賃を抑え、穏やかな住宅環境とにぎやかな繁華街の両方を楽しむ、という工夫もしてみたい。
変化する街も見逃せない13位の五反田駅は、東急池上線、都営地下鉄浅草線が乗り入れている。かつては歓楽街のイメージがあったが、近年はITベンチャーの街としての側面を強めている。
これまでITベンチャーやスタートアップの進出地といえば渋谷がよく知られていたが、小規模オフィスの家賃の高騰などから五反田に注目が集まった。その先陣を切った有力なITベンチャーらが協力して2018年には「一般社団法人五反田バレー」を設立、五反田や品川区など地域の活性化につながる事業も行っている。変化する街の雰囲気をリアルに体験できるのは、魅力といえるだろう。
2020年春には、JRの駅に直結した商業施設「アトレ五反田2」「JR東日本ホテルメッツ 五反田」が開業。東急線に直結した商業施設も「五反田東急スクエア」に改称し、新たな専門店業態になった。また、かつてはバレエ公演の一大拠点であり2015年に閉館したゆうぽうとホールの跡地に、地上21階建ての高層複合ビルが2023年以降開業予定。五反田エリア唯一の高層階ホテルになるほか、文化公演からビジネスまで利用できるホールも入る予定で、街並み自体も変わりつつある。
高輪ゲートウェイ駅(写真/PIXTA)
2020年3月に49年ぶりに山手線に開業した新駅、高輪ゲートウェイ駅は五反田と同率の13位だった。港区に所在する駅では最高位のランクイン。世界へ向けた国際拠点として再開発がすすむ品川エリアの象徴である駅だが、街の本開業は2024年ごろの予定で、周辺はまだ開発の真っ只中。新型コロナウイルスの影響もあり、街を楽しむ……というのはまだ少し先のことになりそうだが、その分、期待が募るとも言えそうだ。
人々が生活する以上、街も建物も変わりゆくもの。しかしその中でも、大事に守られ継がれ
てきたものもある。大都市・東京は移り変わりのスピードも速いが、部屋探しの際には、変わるものと変わらないもの、その未来を見越して決めることも大切なように思う。
共立メンテナンスが寮で暮らす学生に、オンライン授業などについて調査を行った結果、前期と後期で違いがあるものの、オンライン授業は継続していることが分かった。これからの学生の住まい選びは、自宅でのオンライン授業を意識せざるを得ないようだ。【今週の住活トピック】
「コロナ禍における授業状況や生活に関するアンケート調査結果」を公表/共立メンテナンス2020年度の学生のオンライン授業の比率は、前期と後期で異なる
学生寮で暮らす大学生・専門学校生1813名に、「2020年度、自身が履修していた授業のオンライン比率」を聞いたところ、前期(2020年8月以前)では、ほぼ半数(47.4%)が「全てオンライン」と回答していたが、後期(2020年9月以降)になると、「5割未満がオンライン」が最多の32.1%、次いで「全てオンライン」が21.3%となるなど回答が分散した。後期で比率が下がっている学生が多くなっているとはいえ、オンライン授業はコロナ下で継続していることが分かる。
学生自身が履修する授業のオンライン比率(出典:共立メンテナンス「コロナ禍における授業状況や生活に関するアンケート調査結果」より転載)
また、コロナ禍の3大不安は、「将来(就活等)」(50.5%)、「コロナ感染」(50.2%)、「友人と会えない」(49.1%)だったが、新1年生に限ってみると、「授業形態」(48.2%)と「新たな出会いがない」(32.5%)ことへの不安が高いことも分かった。
学生は、感染リスクがなくなっても3割程度のオンライン授業を期待新型コロナウイルス感染の対策として、多くの学校で取り入れたオンライン授業ではあるが、学校サイドでも試行錯誤が続く。そのため、自校の学生にオンライン授業に関する調査を実施した学校も多い。
早稲田大学が2020年8月に実施した調査では、オンライン授業の実施割合はどのくらいが適切か聞いている。感染リスクがある場合では、オンライン授業が「7~9割」が最多の47.6%、次いで「10割」が21.0%となり、7~10割とする回答が68.6%を占めた。一方、感染リスクがなくなった場合では、「1~3割」が最多の46.9%、次いで「4~6割」が19.6%となり、1~6割が66.5%を占めた。
この数値を平均化すると、適切な実施割合は、感染症リスク下ではオンライン授業7割vs.対面授業3割、リスクがなくなった場合ではオンライン授業3割vs.対面授業7割になるという。感染リスクの程度によって適した割合は変わるものの、リスクがなくても全体の3割程度はオンライン授業を継続したいという学生の意向がうかがえる結果だ。
メリットとデメリットのあるオンライン授業、部屋探しにも考慮を次に、国際基督教大学(ICU)が2020年5月に実施した調査結果を見ると、オンライン授業のメリットとして「通学する必要がない」、「感染症への不安が軽減される」、「オンデマンドの授業は自分のスケジュールに合わせて視聴できる」といったことが上位に挙がった。
逆にデメリットとして上位に挙がったのは、「長時間端末の画面を見るので疲れる」、「モチベーションの維持が難しい」、「クラスメートとのディスカッションがやりにくい」などだった。
ほかにも調査結果からは、自宅の通信環境を整えたり、静かな環境を確保するために、同居人や家族に静かにしてもらうなどの工夫をしている様子がうかがえた。中には部屋を借りたり引越したりした学生もいた。オンライン授業を受ける部屋の環境も大きな課題だ。
さて、コロナが収束した後も、そのメリットを活かして、一定の比率でオンライン授業が実施されると見られ、対面授業とオンライン授業の併用が当たり前になるだろう。2019年11月に学生情報センターが実施したひとり暮らしの学生に対する実態調査では、部屋を選ぶ決め手の1位は「学校の近さ」だったが、それから1年後のいま、学生の環境は大きく変わってしまった。この春に部屋探しをする学生は「学校の近さ」と「オンライン授業への配慮」を前提に選ぶことになるだろう。
昨年コロナ前に行われた調査では、学生が部屋を選ぶときの重要項目は「学校の近さ」だったが、オンライン授業が当たり前になると部屋選びの基準も変わるだろう。
学生であるからには、スタディスペースを確保するのはもちろんのこと、Wi-Fiなどの通信環境をチェックすることや、周囲の部屋からの音、外からの音などにも注意して、長時間自室にいても快適な日照や通風、建物の省エネ性なども確認するのがよいだろう。さらには、リフレッシュできる場所があるかなど、街選びも重要になる。
単に、賃料が安い部屋だからとか、イメージの良い街だからとかいったことだけで決めてしまうのではなく、長時間自宅にいてオンライン授業を受けられる環境かどうかも、冷静に見極めてほしい。
2020年度の新1年生にとっては、クラスメートと交流しづらい環境になって孤立感を感じるなど、厳しい一年になってしまった。学生らしい、クラスメートと和気あいあいする姿を取り戻せるように、一日も早い収束を願うばかりだ。
●早稲田大学 オンライン授業に関する調査結果
https://www.waseda.jp/top/news/70555
●ICU オンライン授業に関するアンケート調査結果
https://www.icu.ac.jp/news/2008151300.html
コロナ禍の影響で移住先として検討している人も多く、脚光を集めている静岡県熱海市。一方で、人口減少や空室率、中心部の空洞化など、日本の“課題先進地”でもあるのだとか。その熱海の不動産やまちづくりに携わり、「まちごと居住」を提唱する「マチモリ不動産」に話を聞きました。
空き家率50%以上。なのに借りられる物件がほとんどない!
東京から東海道新幹線で約40分、別荘地・旅行地としても定番の熱海。訪れるたびに「暮らせたらいいのに……」と思い描く人も多いのではないでしょうか。特にこの1年はコロナ禍でテレワークが普及したことを追い風に、熱海の不動産需要は高まっているといいます。とはいえ、「熱海で住まいを見つけることは容易ではないんですよ」と話すのは熱海の市街地を中心に不動産管理やリフォーム企画を手掛けるマチモリ不動産の三好明さん。
熱海の街並み(写真/PIXTA)
「熱海の空き家率は52.7%(2018年3月時点「平成30年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)調べ)で、なんと建物の半分以上が空き家です。ところが、家を借りたいと思っても、物件も多くないのが現実です。試しにSUUMOで検索しても、たくさん選択肢があるとは言い難い状況なのでは」といいます。空き家があり、借りたいという人がいるのに、借りられないのはとても不思議ですが、なぜそんなことが起きるのでしょうか。
「事情はさまざまですが、不動産の所有者が、まったく知らない人には部屋を貸したくない、貯蓄や年金があり困っていないのでわざわざ賃貸にまわさなくてもいい、物件が古くて風呂なし・トイレ共同などで貸しにくい、といった理由があります。熱海で働く人にとって住みたい物件が少なく、お手ごろな物件が出回りにくく、近隣の市町村に暮らして出勤せざるをえない方も多いのです」と話します。
また、熱海の固有事情として昭和25年(1950年)に熱海大火が発生しているため、鉄筋コンクリート造の集合住宅が中心市街地に多数あり、経年劣化・権利関係の複雑化によって貸し出しにくくなっているのだとか。そのため、市街地の空洞化、建物と人の高齢化などが同時進行で、しかも急激に進んでいるのだといいます。日本の地方都市はどこも似た課題を抱えていると思いますが、まさに熱海はそうした課題を凝縮した「課題先進地」でもあるのです。
熱海でしかできない暮らしを提案する、「まちごと居住」こうした熱海の不動産需給ギャップを解消しようと、三好さんがはじめたのが、「マチモリ不動産」です。不動産仲介会社が空き家のままで募集しても決まらず、熱海という街の再生・活性化にはつながりません。そこで掲げたのが「まちごと居住」という考え方で管理会社の立場での取り組みです。
「東京や大阪など、都市部のどこででもできる便利な暮らしではなく、熱海ならではの暮らし方、生活を提案しないと、人は集まらないし、熱海が盛り上がらない。そこで考えたのが、まちを1つの大きな家と見立てた『まちごと居住』というライフスタイル。海に山、温泉、スナック。熱海の環境をまるで自宅のリビングやダイニング、お風呂、ワークスペースといった家の延長のように住んでみようと提案しています」(三好さん)
ここ数年で再注目されている、どこかレトロな雰囲気が漂う熱海銀座商店街(写真提供/若月ひかる)
(写真提供/若月ひかる)
ゲストハウスMARUYAには地元の人や観光客が集うカフェバールもある(写真提供/若月ひかる)
1階の八百屋さんでは伊豆富士山麓の農薬不使用栽培野菜、加工品、雑貨などを販売。2階のREFS Kitchenでは1階の野菜や食材を使った料理を提供する「REFS熱海」(写真提供/若月ひかる)
熱海七湯「小沢の湯」は、蒸気で温泉卵をつくって食べることができる名所(写真提供/若月ひかる)
熱海の市街地は非常にコンパクトで、駅から徒歩15分圏内で飲食店や温泉、スナック、コワーキングスペース、スーパーなどが集結しています。自室だけでなく、街ごと自分たちの暮らせる場所のようにしてしまおう、というのが三好さんの狙いだったのです。
では、そのまちごと居住の住み心地はいかがでしょうか。熱海に移住してきた石橋和夏子さんに聞いてみました。
まちなかに住めば車も不要。歩いて行ける範囲で暮らしが完結する「2020年3月に埼玉県から引越してきました。もとは群馬県出身で、それまで熱海といえば観光地という印象が強く、住む街として考えたことはなかったのです。暮らしてみると、海や山が間近にあり、気候も温暖で、時間がゆったり流れている。普通に住めるじゃん!という印象です(笑)」(石橋さん)
コロナ禍の影響で、現在は週3日のリモートワーク、週2日は片道1時間30分ほどかけて、東京都内に出社しているそう。
(写真提供/若月ひかる)
「通勤時間ですが、実は埼玉にいたころと大きく変わっていません。新幹線を利用しているので、むしろ、現在のほうがラクになっています。大きな違いはテレワークでしょうか。以前の住まいは1Kで、テーブルのすぐ横にベッドがあるような小さい部屋だったので、自宅ではなかなか仕事に集中できなかったと思います。今は、住まいも広くなりましたし、何より、近所にコワーキングスペースがあるので、家の外でも仕事がしやすい。昼休みには、近所のカフェに行って他愛ない会話をしたり、仕事帰りに温泉へ立ち寄ったり。徒歩圏内にいくつも温泉があり、海を一望できる絶景露天風呂にも気軽に行け、本当に飽きないです」と夢の熱海生活を満喫しています。それは……いいなあ、本気で憧れます!
よく行くというコーヒーショップとジェラート店が併設しているスペースで(写真提供/若月ひかる)
コワーキングスペースで仕事をすることも(写真提供/若月ひかる)
移住で気になるのが、地元の人との交流、コミュニケーションです。
「地元の商店で、買物がてらお店の人とお喋りして、まちの情報を教わることもしばしば。コワーキングスペースのメンバーと会話したり、地域のイベントに参加したりしているうちに、だんだんと顔見知りも増えました。熱海って自然を大切にする人も多くて、『チーム里庭(さとにわ)』『熱海キコリーズ』など、おもしろい活動をしている人が多いんですよ」(石橋さん)
「チーム里庭」の活動にて(写真提供/チーム里庭)
ちなみに「チーム里庭」は耕作放棄地を活用して無農薬野菜を栽培し、週末農業体験ができる団体で、「熱海キコリーズ」は週末に複業で木こりとして活動したり、間伐材でワークショップを開催したりするNPO法人です。石橋さんはもともとトレイルランニングが趣味で、体を動かすのは大好き。そういった活動に参加して、多様な人とつながりができたら、と考えているそう。
もう一つ、熱海の魅力は「食」にもあるそう。
(写真提供/若月ひかる)
(写真提供/若月ひかる)
「熱海って、古き良き飲食店もいっぱいあって、キッチンが街の至るところにある感じですね。和菓子や洋菓子の店も充実してて、おやつにも困りません(笑)。ただ、意外と飲食店は閉店が早いんですよ。夜8時には閉店するお店も多いので、夕飯難民にならないよう注意しています(笑)」(石橋さん)
また、今住んでいるフロアで、料理が上手なパティシエの人とつながりができたことで、思わぬ「おいしい体験」ができているのだとか。
「スイーツの試食をさせてもらったり、たくさんつくったからと、ご飯をおすそ分けしてもらったり……。がっちり胃袋をつかまれています(笑)。今まで、平日は仕事、休日は山へ行ったりと、自分が住む街の外に出てばかりだったので、住まいは、寝に帰る場所としか思っていなかったのですが、こうやって同じ街に住む人とつながれることで、街自体にも愛着がわく感覚でしょうか」と満足げです。
引越してきて1年、気が向いたときに、気の合う人がそばにいる心強さ、気楽さは、かけがえのないものでしょう。人はもしかして、こうして徐々に街になじんでいくのかもしれません。
ちなみに、都心から離れて暮らすことに興味を持つ友人や同僚も増えたそうで「熱海の物件の相場は?」「通勤、大変じゃない?」などと聞かれるのだとか。そうですよね、気になる気持ち、よく分かります。熱海の市街地は、徒歩圏内にひと通りの商業施設、飲食店、温泉、コワーキングスペースなどがそろっているため、車は不要だそう。遠出をして山のアクティビティを楽しむときはレンタカーを手配しているといいます。
家具を入れる前の石橋さん宅。1LDK、築66年(写真提供/岡田良寛)
窓からはオーシャンビューが!(写真提供/若月ひかる)
(写真提供/若月ひかる)
古い建物の良さを活かす。建物と街を再生し、自由度を高めたい熱海の住まいは、築60年超のコンクリート造の建物が複数、点在しているといいます。日本のコンクリート造の集合住宅は、およそ50年で取り壊され、建て替えられることが多いものですが、この集合住宅をどうやって住み継いでいくか、寿命がどうなのか、気になる人は多いのではないでしょうか。
「確かに築年数は経過していますが、耐震診断をはじめ、適切なメンテナンスをすることで建物として活用できると思います。まだまだよいコンクリートの状態の建物も多くありますし、天井高があるため、リノベをすると開放的な空間ができます。これは現在の不動産にはない良さですよね。古いもの、街の特徴を活かして、再開発をする。これが再開発の生命線だと考えています」と三好さんは話します。
築年数が経過したビルは、独特の味わい・風合いがあります。リノベで室内が大きく化けるのも楽しみのひとつではないでしょうか(写真提供/若月ひかる)
エレベーターがない、トイレが共同など、建物が現在のライフスタイルに合っていない部分も多々あるかもしれませんが、それはマチモリ不動産が不動産・建築の知見を活かして、最適化し、住み手と物件所有者に提案することで、解決できるといいます。
「マチモリ不動産では、単に空き家を埋めるのではなくて、住みたいという人と、住まいを結びつける、適切なリノベを行う、定期的な修繕計画を立てる、大家さんとの信頼関係を築くという意味で、不動産管理の本来の意味での仕事を果たせればと思っています。シェアハウス、週末2拠点、ゲストハウス、熱海住み放題など、住まい方はもっと自由でいいはず。その日の気分にあわせて、部屋を選ぶようにできれば自由度も高くなり、もっと豊かな暮らしができると思うのです」(三好さん)
空き家ツアーをして修繕前の建物を見学。原則的に入居希望者を先に見つけ、リノベーションプランを提示してから、改修工事を行う流れになるといいます(写真提供/若月ひかる)
毎月実施されている物件ツアーの様子(写真提供/熱海経済新聞)
現在、マチモリ不動産では部屋を希望する人が増えてきて、物件のリノベなどが間に合わないという状況が続いているそう。ただ、こうして若い世代が楽しそうに新しい試みを続けていることで、不動産を所有する世代の意識もきっと変わってくるはず。熱海での取り組みは、きっと日本中の都市で参考になるのではないでしょうか。いいなあ、熱海。できるなら私も……住んでみたいです!
●取材協力東京都を代表する路線といえば、30駅を環状に結ぶJR山手線。JR山手線の環の内側か外側かで地価や物件の価格相場が大きく変わるとも言われ、住まい探しの際にも一つの基準になっている。価格相場が高いのはJR山手線の内側、そして沿線駅と言われるが、30駅もあるので駅によっても価格にばらつきがあるはず。では、実際のところはどうなっているのか調べてみた。「シングル向け」と「カップル・ファミリー向け」、それぞれの中古マンションの価格相場ランキングを見ていこう。●JR山手線の中古マンション価格相場が安い駅ランキング
【シングル向け】
順位/駅名/価格相場/駅の所在地
1位 日暮里 2870万円 台東区・荒川区
2位 田端 2999万円 北区
3位 鶯谷 3044.5万円 台東区
4位 西日暮里 3099万円 荒川区
5位 田町 3180万円 港区
6位 池袋 3280万円 豊島区
7位 巣鴨 3315万円 豊島区
8位 大塚 3480万円 豊島区
8位 御徒町 3480万円 台東区
10位 上野 3499万円 台東区
10位 駒込 3499万円 豊島区
12位 新大久保 3690万円 新宿区
12位 高田馬場 3690万円 新宿区
14位 目白 3700万円 豊島区
15位 五反田 3735万円 品川区
16位 秋葉原 4124.5万円 千代田区
17位 代々木 4180万円 渋谷区
17位 新宿 4180万円 新宿区・渋谷区
19位 浜松町 4280万円 港区
20位 大崎 4480万円 品川区
21位 品川 4880万円 港区
22位 渋谷 4980万円 渋谷区
22位 神田 4980万円 千代田区
24位 目黒 5040万円 品川区
25位 恵比寿 5140万円 渋谷区
26位 新橋 6480万円 港区
※有楽町(千代田区)、高輪ゲートウェイ(港区)、原宿(渋谷区)、東京(千代田区)は調査対象物件11件以下のためランク外
【カップル・ファミリー向け】
順位/駅名/価格相場/所在地
1位 西日暮里 4880万円 荒川区
2位 田端 4980万円 北区
2位 鶯谷 4980万円 台東区
4位 日暮里 5299万円 台東区・荒川区
5位 御徒町 5680万円 台東区
6位 上野 5765万円 台東区
7位 池袋 5980万円 豊島区
8位 巣鴨 6080万円 豊島区
9位 大塚 6180万円 豊島区
10位 高田馬場 6280万円 新宿区
11位 駒込 6289万円 豊島区
12位 秋葉原 6300万円 千代田区
13位 新大久保 6600万円 新宿区
14位 代々木 6980万円 渋谷区
15位 品川 6990万円 港区
16位 目白 7080万円 豊島区
17位 新宿 7180万円 新宿区・渋谷区
18位 原宿 7440万円 渋谷区
19位 田町 7480万円 港区
20位 五反田 7580万円 品川区
21位 目黒 7980万円 品川区
22位 大崎 8080万円 品川区
23位 神田 8580万円 千代田区
24位 浜松町 9230万円 港区
25位 渋谷 9480万円 渋谷区
26位 恵比寿 9780万円 渋谷区
27位 新橋 1億1800万円 港区
※有楽町(千代田区)、高輪ゲートウェイ(港区)、東京(千代田区)は調査対象物件11件以下のためランク外
今回は専有面積20平米以上~50平米未満の「シングル向け」と、専有面積50平米以上~80平米未満の「カップル・ファミリー向け」、それぞれの中古マンションの価格相場を調査してみたところ、ランキング順位は多少入れ替わりつつも「シングル向け」と「カップル・ファミリー向け」大きな違いはない様子。トップ4に関しては両ランキング共に、日暮里駅、田端駅、鶯谷駅、西日暮里駅の4駅がランクインした。この4駅はいずれもJR山手線の北東部に位置し、田端駅(シングル向け2位/カップル・ファミリー向け2位)~西日暮里駅(同4位/1位)~日暮里駅(同1位/4位)~鶯谷駅(同3位/2位)の順に連続して並んでいる。
田端駅(写真/PIXTA)
4駅中で最も北側にある田端駅は南口と北口で様相が異なる。南口は駅舎も小さく、周囲には商店も見当たらない。一方で北口の駅舎は駅ビル「アトレヴィ田端」と一体になっており、3フロアにわたって食料品店や雑貨店、カフェ、レストラン、書籍や雑誌をそろえた「TSUTAYA」などが軒を連ねている。北口から線路をまたいだ駅の北東部には広大な車両基地が広がり、電車内から一見しただけだと住宅があまりないように感じるかもしれない。しかし駅を出て歩くと高低差のある街には一戸建て住宅からマンションまで建ち並び、小学校や幼稚園、保育園も点在しており、れっきとした住宅街だと分かる。また、田端駅にはJR京浜東北線も通っており、快速に乗ればJR山手線の停車駅である西日暮里駅~鶯谷駅を飛ばして上野駅まで停まらずに到着。上野駅周辺で働く人や、上野駅から東京メトロ銀座線や日比谷線などに乗り換える場合、田端駅は住まいとして狙い目だろう。
駅周辺のにぎやかさなら、田端駅よりも西日暮里駅や日暮里駅のほうが上だろう。この2つの駅は駅間が約500mしか離れておらず、西日暮里駅を出て飲食店やコンビニなどを横目に歩くと10分もかからず日暮里駅にたどり着く。西日暮里駅にはJR京浜東北線と東京メトロ千代田線、さらに日暮里・舎人ライナー、日暮里駅にはJRの京浜東北線と常磐線(快速)、そして京成本線、日暮里・舎人ライナーも通っており、両駅共に多くの人に利用されている。また、この両駅周辺に住むなら、ぜひ利用したいのが「谷中銀座商店街」。やや日暮里駅寄りにあるこの商店街には、170mほどの通りに和洋の菓子店から飲食店、食料品店に雑貨店まで約60店舗がひしめいている。駅周辺にはまとめ買いに便利なスーパーもあるが、商店街でお気に入りの個人商店を探すのも楽しいものだ。
谷中銀座商店街(写真/PIXTA)
さてトップ4のうち残る1駅、鶯谷駅はどんな駅だろうか。線路を挟んで駅の西南側には徳川家の菩提寺として知られる寛永寺の敷地が広がり、その先には東京国立博物館や東京藝術大学、さらに国立科学博物館や上野の森美術館を抱える上野公園といった文化施設が集まっている。鶯谷駅はJR山手線の駅の中だと最も乗車人数が少ない(2019年調べ)。とはいえ線路の北東側には住宅も建ち並んでおり、区立小学校や幼稚園も。昔ながらの一戸建て住宅も多く下町風情が漂う街並みではあるが、中古マンションを探す選択肢が豊富というわけではないかもしれない。
物件の広さによって価格相場が大きく違う駅も!「シングル向け」「カップル・ファミリー向け」で各駅のランキング順位はそんなに大きく違いがないと先ほど述べたが、なかには順位の開きが大きかった駅も。最も差があったのは田町駅で、「シングル向け」では5位と価格相場が安いほうだったが、「カップル・ファミリー向け」では19位にランクイン。「シングル向け」に比べると「カップル・ファミリー向け」の価格相場は、4300万円もアップしている。2つのランキングの各駅の価格相場の差(「カップル・ファミリー向けの価格相場」-「シングル向けの価格相場」)の中央値はプラス2795万円だったので、田町駅の価格差がいかに大きいか分かるだろう。
田町駅 東口・芝浦口側(写真/PIXTA)
そんな田町駅の様子はというと、JR山手線の他にJR京浜東北線も乗り入れており、大井町駅へも1本で行くことができる。駅の西口・三田口側には慶應義塾大学や戸板女子短期大学、中学や高校などの学校と、大手企業のオフィスが多数あり、通勤・通学客向けの飲食店も豊富。住宅地というよりは商業エリアの趣が強いだろう。また、駅の東口・芝浦口側は大半が埋め立てられてできた地で、運河が張りめぐらされた先には東京湾が広がっている。2020年9月には駅直結の複合施設「ムスブ田町(ショップ&レストラン)」がグランドオープン。9月の商業施設全体開業に先立つ2018年10月にはホテル「ブルマン東京田町」も開業しており、このエリア一帯は再開発によりがらりと一新。高層マンションも建設され、住む街として注目が集まっている。
田町駅周辺の様子からすると中古マンションの価格相場が高いのも納得いくので、むしろ「シングル向け」が思いのほか安いことに驚かされる。地図で見ると「シングル向け」トップ10はほとんどが、環状になったJR山手線の北半分に集中しているのに、5位の田町駅だけがぽつりと南半分に位置している。便利な都心部のにぎやかな街でシングル向け物件を探すなら、田町駅はエリアの価値よりもお得に住める狙い目の街と言えそうだ。
もう1駅、新橋駅もピックアップしたい。新橋駅は2つのランキングどちらも最下位、つまり最も価格相場が高い結果となった。「シングル向け」は6480万円、そして「カップル・ファミリー向け」は1億1800万円! 新橋駅周辺はオフィス街として知られており、住宅(中古マンション)の数自体がさほど多くはない。物件数は多くないけれど便利で人気の街なので、需要と供給の関係で物件の価格もはね上がっていくのかもしれない。実際に購入するかと言われるとあまり現実味のない価格だが、どんな物件があるのかは気になるところ……。どんな物件があるのか、調べてみるのも楽しいだろう。
新橋駅(写真/PIXTA)
JR山手線各駅の価格相場を調査した今回のランキングを見ると、同じ路線とはいえ価格の開きが大きいことが分かった。1位と最下位の価格相場を比べると、「シングル向け」は3610万円、「カップル・ファミリー向け」は6920万円もの開きがあった。街によって特徴が大きく異なり価格差があるが、都内屈指の便利な路線である「JR山手線」沿線という点でいえばどの駅も同じである。今回の価格相場を参考にしつつ自分のこだわりや予算と相談しながら探すと、JR山手線沿線に住むという夢も叶うかもしれない。
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