
15万円 / 85平米
中央線「西荻窪」駅 徒歩10分
元は貸主が暮らしていたこの部屋。当時の内装をそのまま残したレトロな雰囲気の空間になっています。
深みある色合いになったパーケットフローリングや、天井に張られた正方形のベニアなど、部分部分の素材使いからセンスを感じます。
日当りの良さや開放感のある眺望もお伝えしておきたいポイン ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済の回復を図る目的で、「グリーン住宅ポイント」が創設されたが、いよいよポイント申請の受付が始まった。住宅の新築やリフォームで、工事完了前と完了後に申請する方法があるが、今回受付が開始されたのは完了前のポイント申請の場合。「グリーン住宅ポイント」は、2021年10月末日までに契約が必要で、スケジュールなどに注意を払う必要がある。【今週の住活トピック】
グリーン住宅ポイント制度、申請受付を開始/国土交通省「グリーン住宅ポイント制度」は新築住宅の取得やリフォームが対象になりやすい
「グリーン住宅ポイント」の制度内容については、筆者の「コロナ禍で「グリーン住宅ポイント制度」を創設!気になる条件とポイントを解説」ですでに紹介したが、申請の受付期間が短いこともあるので、再度内容について確認をしていきたい。
■新築住宅一番シンプルなのが、新築住宅を建てたり買ったりする場合だ。定められた省エネ住宅であれば、その性能に応じて30万または40万ポイントが受け取れる。さらに、政策上の課題(空き家解消、東京からの移住促進、災害リスク区域からの移転、多世代同居等)に寄与する場合に限り、受け取れるポイントが30万→60万ポイント、40万→100万ポイントに引き上げられる。
■リフォーム
次に、計算は複雑でも利用しやすいのが、リフォームの場合。窓回りの断熱改修や外壁、エコ住宅設備の設置、屋根・天井の断熱改修のいずれかが必須で、これに加えて耐震やバリアフリー改修などもポイントの対象になる。工事内容ごとに0.2ポイント~15万ポイントが設定され、それを合計して上限30万ポイントまで受け取れる(ただし、合計5万ポイント未満は対象外となる)。
さらに、中古住宅を購入しリフォーム(売買契約から3カ月以内にリフォーム工事請負契約を締結)を行う場合は、ポイント数が2倍にカウントされる(上限は30万ポイント)。
なお、次の場合は、上限が45万ポイントまで引き上げられる。
(1)若者・子育て世帯(40歳未満の世帯・18歳未満の子を有する世帯)がリフォームを行う場合
※中古住宅を購入してリフォームを行う場合は、さらに65万ポイントまで引き上げ
(2)若者・子育て世帯以外の世帯が、「安心R住宅」を購入してリフォームを行う場合
中古住宅の購入では、政策上の課題を解消する場合にのみ、ポイント給付の対象となる。具体的には次の場合だ。
■中古住宅
(1)空き家バンク登録住宅 30万ポイント
(2)東京圏から移住するための住宅 30万ポイント
(3)災害リスクが高い区域から移住するための住宅 30万ポイント
(4)住宅の除却に伴い購入する中古住宅 15万ポイント
※(1)~(3)で住宅の除却を伴う場合は計45万ポイント
(1)~(3)はかなり特殊な事例になるので、ポイントの対象となる場合が少ないだろう。一般的な中古住宅の購入でポイントの対象となるのは、(4)の事例(不動産登記された住宅を解体業者に発注して取り壊し、同時期に中古住宅を購入する)だろう。この場合の購入する中古住宅は、2019年12月14日以前に建築された、売買価格100万円(税込)以上の住宅などの条件がある。
詳しい条件は、「グリーン住宅ポイント事務局」のホームページに記載されているので、参照してほしい。
契約もポイント申請も2021年10月31日が期限。スケジュールに注意しよう注意したいのがスケジュールだ。まず、大原則が、「2020年12月15日(令和2年度3次補正予算案の閣議決定日)から2021年10月31日までに契約(売買契約や工事請負契約)を締結する」こと。次にポイントの申請期限が2021年10月31日まで(予算の消化状況によって早まる可能性あり)。
新築マンションのように建物が完成するまで時間がかかる場合もあるので、完了前にポイントを申請することができるが、工事完了後の報告にも期限があり、分譲の新築一戸建ては2022年4月30日まで、新築マンションは10階以下の建物は2022年10月31日まで、11階以上の建物は2023年4月30日までとなっている。
また、発行されるポイントは家電やインテリア、食料品などの商品に交換することができ、交換できる商品の検索サイトもオープンされた。このほか、ワークスペースの設置工事や防音工事、菌・ウイルス拡散防止工事などの「新たな日常」に資する追加工事、防災に資する追加工事の代金に充当することもできる。
新築住宅やリフォームの追加工事でポイントを利用しようとする場合は、さらにスケジュールが複雑になる。追加工事の完了報告の期限が2022年1月15日となっているからだ。
そのため、住宅生産団体連合会では、スケジュールに関するチラシを用意している。それによると、注文住宅の契約は遅くとも2021年5月にはしておいたほうがよいとしている。
(出典:住宅生産団体連合会のプロモーションツールより転載)
いずれにせよ、細かい条件や性能基準が定められているうえ、「空き家バンク」「安心R住宅」などの耳慣れない専門用語も出てくるので、不動産会社や施工会社などに早めに相談して、自分の希望の住宅の場合はどうか、無理のないスケジュールかなど説明を聞きながら判断しよう。このときに減税制度なども合わせて確認し、トータルで判断するのがよいだろう。
住宅を建てたり買ったり、リフォームしたりするには多額の費用がかかるもの。新居なら新しい家具や家電などもほしいだろうし、今ならワークスペースもつくりたいだろう。その際に使えるポイント給付はうれしいものだが、ポイントをもらうのが目的になってしまい、施工会社と詳細を詰めないまま契約してしまったり、特に必要でない工事を加えたり、あるいは住宅購入時の希望条件や予算を変えたり、といったことはしないほうがよい。マイホームに必要な条件や工事を見極めつつ、「もらえるポイントはしっかりもらう」といったスタンスでいるのがオススメだ。
●取材協力2021年3月、リクルート住まいカンパニーより発表された「SUUMO住みたい街ランキング2021 関西版」で「住みたい街」2位に輝いた大阪府・梅田駅。1位になった西宮北口駅と共に、1位・2位はなんと2013年より9年連続で同じ街が選出される結果となった。不動のツートップの一翼を担う梅田は、関西圏屈指の都市として発展してきた。駅周辺は商業施設やオフィスビルが林立し、住みたい街としても支持されてはいるものの、都市計画的に多くは商業地域に設定されており、一部、マンションとなっている以外は、宅地として利用されているスペースはかなり限られている。地価や物件価格の高さも考えても、新たに一戸建てを構えるのはなかなか難しいだろう。そこで今回は人気の街・梅田から電車で60分圏内にある、一戸建ての価格相場が安い駅を調べてみた。築1年未満の「新築編」と築1年以上~築15年未満の「中古編」、それぞれの価格相場が安い駅トップ10をご紹介しよう。●梅田駅まで60分以内の価格相場が安い駅TOP10
【新築一戸建て編】
順位/駅名/価格相場/土地面積中央値/建物面積中央値
(沿線/所在地/梅田駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 富田林(とんだばやし) 2290万円 102.71平米 94.39平米
(近鉄長野線/大阪府富田林市/49分/2回)
2位 千代田(ちよだ) 2380万円 112.86平米 99.78平米
(南海高野線/大阪府河内長野市/51分/2回)
2位 滝谷(たきだに) 2380万円 108.28平米 100.72平米
(南海高野線/大阪府富田林市/49分/2回)
2位 法隆寺(ほうりゅうじ) 2380万円 115.60平米 97.20平米
(JR関西本線/奈良県斑鳩町/44分/1回)
5位 高鷲(たかわし) 2480万円 114.68平米 95.58平米
(近鉄南大阪線/大阪府羽曳野市/35分/2回)
5位 平群(へぐり) 2480万円 130.17平米 102.06平米
(近鉄生駒線/奈良県平群町/52分/2回)
7位 北信太(きたしのだ) 2490万円 104.76平米 93.45平米
(JR阪和線/大阪府和泉市/45分/2回)
8位 恵我ノ荘(えがのしょう) 2570万円 112.17平米 97.60平米
(近鉄南大阪線/大阪府羽曳野市/33分/2回)
9位 萩原天神(はぎはらてんじん) 2580万円 87.78平米 90.66平米
(南海高野線/大阪府堺市東区/44分/2回)
10位 額田(ぬかた) 2585万円 135.76平米 98.96平米
(近鉄奈良線/大阪府東大阪市/41分/2回)
【中古一戸建て編】
順位/駅名/価格相場/土地面積中央値/建物面積中央値
(沿線/所在地/梅田駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 高安(たかやす) 2465万円 81.91平米 90.18平米
(近鉄大阪線/大阪府八尾市/37分/2回)
2位 恩智(おんぢ) 2500万円 89.11平米 87.88平米
(近鉄大阪線/大阪府八尾市/40分/2回)
3位 忍ケ丘(しのぶがおか) 2580万円 100.92平米 99.48平米
(JR片町線/大阪府四條畷市/32分/1回)
4位 若江岩田(わかえいわた) 2635万円 83.46平米 92.54平米
(近鉄奈良線/大阪府東大阪市/36分/1回)
5位 弥刀(みと) 2680万円 75.87平米 99.63平米
(近鉄大阪線/大阪府東大阪市/34分/2回)
6位 瓢箪山(ひょうたんやま) 2840万円 104.36平米 106.94平米
(近鉄奈良線/大阪府東大阪市/36分/2回)
7位 萱島(かやしま) 2850万円 82.99平米 100.19平米
(京阪本線/大阪府寝屋川市/22分/1回)
8位 寝屋川市(ねやがわし) 2880万円 99.70平米 104.08平米
(京阪本線/大阪府寝屋川市/25分/1回)
8位 香里園(こうりえん) 2880万円 91.53平米 100.59平米
(京阪本線/大阪府寝屋川市/28分/1回)
10位 光善寺(こうぜんじ) 2980万円 105.50平米 101.65平米
(京阪本線/大阪府枚方市/32分/1回)
10位 花園町(はなぞのちょう) 2980万円 67.17平米 93.15平米
(大阪メトロ四つ橋線/大阪府大阪市西成区/14分/1回)
まずは梅田駅から60分圏内にある、新築一戸建ての価格相場が安い駅から見ていこう。1位は近鉄長野線・富田林駅で価格相場は2290万円。駅周辺にはスーパーや家電量販店、ドラッグストアに100円ショップ、子ども用品店……と多彩な店舗があり、車がなくても買い物しやすそう。また駅から南へ徒歩10分ほどの富田林寺内町には、江戸中期から昭和初期に建築された商家や町家が残されている。国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された街を歩くと、タイムスリップしたかのようだ。古い蔵や家屋を利用したショップや飲食店もあり、休日に訪れるのも楽しそう。寺内町を抜けた先には、河川敷が公園として整備された石川が流れている。暮らしに便利な商業施設と、日常の気分転換になる歴史・自然スポットの両方を兼ね備えている。
富田林寺内町の町並み(写真/PIXTA)
2位には価格相場が同額の2380万円となった3駅がランクイン。南海高野線で隣接する千代田駅と滝谷駅、そしてJR関西本線・法隆寺駅だ。そのうちの一つ、南海高野線・千代田駅は、駅が位置する大阪府河内長野市内でもいち早く宅地開発が進んだという住宅地。街並みを見ると大型マンションよりも一戸建て住宅のほうが多い様子。駅前には2軒のスーパーが点在するほか、駅の東西に延びる「千代田あいあい通り」の周辺には銀行、郵便局、青果店や文房具店などの個人商店からコンビニ、多彩な飲食店までさまざまに建ち並んでいる。この通りを西へ進んでいくと、「寺ヶ池公園」に到着。広々とした池を中心に美しく整備された園内には、滑り台などの遊具がある広場や、季節の花が彩る散策路、夏にオープンするプールもあり、地域の憩いの場となっている。
千代田駅と同じく2位になったJR関西本線・法隆寺駅は、駅名から推察されるように奈良県に位置している。駅から「法隆寺」の玄関口・南大門までは歩いて20分ほど。南大門の先は金堂や五重塔、夢殿をはじめとした貴重な建造物群や文化財の宝庫。世界文化遺産に指定された古刹を身近に感じて暮らせるとは、なかなか贅沢な街と言える。駅周辺には観光客にも利用される飲食店やショップがあるほか、スーパーやドラッグストア、JAの農産物直売所といった暮らしに根差した商店も。梅田駅までは乗り換え1回・約44分だが、同じく大阪を代表する駅である天王寺駅まではJR関西本線の区間快速で2駅・約23分。また、天王寺とは逆方面に向かうJR関西本線の快速に乗れば、奈良駅までは2駅・約11分で行くことが可能。大阪と奈良、両方のベッドタウンの役割を担える街と言えるだろう。
法隆寺(写真/PIXTA)
「中古編」は梅田駅の北東方面、京阪本線沿線に注目!続いては中古一戸建ての価格相場が安い駅をチェック。1位は近鉄大阪線・高安駅で価格相場は2465万円。例年この駅併設の車庫を会場に、新型車両の展示などを行う「きんてつ鉄道まつり」が開催されることでも鉄道ファンには知られた駅だ。駅を出て西へ2分ほど歩くと、南北に流れる玉串川が見えてくる。この川沿い5kmほどにわたって約1000本のソメイヨシノが植栽されており、春の開花期は見事な景観に。川のほとりに点在する「あずまや」や公園とあわせて、地元住民の憩いの場となっている。駅から玉串川、さらにその先の中学校へと向かう通り一帯は商店街。食料品店や飲食店、クリニックなどが点在し、JAの農産物直売所では採れたての野菜や果物が手に入るのもうれしいところだ。
玉串川の桜(写真/PIXTA)
高安駅から近鉄大阪線で南に1駅、3分ほど乗車すると2位の恩智駅へ。玉串川沿いの桜並木は恩智駅前まで続いており、高安駅前から桜並木の下を15分ほど歩くと恩智駅前にたどり着く。1位と2位の駅はさほど離れていないこともあり、恩智駅の価格相場は1位から微増の2500万円だ。高架化された恩智駅の1階部分にはスーパーが入っているほか、駅前には書店や飲食店が並ぶアーケード商店街も。また、駅から徒歩約10分の場所には、2019年にオープンしたショッピングモール「アクロスプラザ八尾店」がある。スーパーに家電量販店、焼き肉や回転ずしなどの飲食店、さらに100円ショップや「ユニクロ」など21施設が営業中。ここなら日常生活に必要なものがまとめ買いできるだろう。
3位はJR片町線・忍ケ丘駅で価格相場は2580万円。大阪府四条畷(しじょうなわて)市内で唯一の駅(お隣の四条畷駅は大東市)で、徒歩10分少々の場所にある市役所の最寄駅でもある。駅名の由来になったのは、駅から西へ10分弱歩くとたどり着く「忍岡古墳」。墳丘上に神社が鎮座しており、竪穴式石室を見学することもできる。そんな歴史ある土地も、現在は落ち着いた住宅地。駅周辺にはさまざまな飲食店や複数のスーパーが点在し、住民の多さをうかがわせる。さらに駅から西へ徒歩なら20分少々、バスに乗れば約10分で「イオンモール四条畷」へ。スーパー、家電量販店から服飾・雑貨店や飲食店、さらには映画館まであり、日々の買い物に、休日の家族のおでかけ先に、と地域住民に活用されている。
中古一戸建てランキングは7位の萱島駅、同額8位の寝屋川市駅と香里園駅、10位の光善寺駅にも注目したい。この4つの駅はいずれも京阪本線の沿線で、萱島駅(7位)~寝屋川市駅(8位)~香里園駅(同額8位)~光善寺駅(10位)の順に連続している。電車ならそれぞれの駅より京阪本線で淀屋橋駅へ行き、大阪メトロ御堂筋線に乗り換える。すると乗り換え1回で梅田駅に行くことができる。
4駅のうち最も梅田駅寄りで、最も価格相場が安かった7位・萱島駅は、寝屋川の川面をまたぐような造りの高架駅となっており、ホームと屋根を突き抜けてクスノキの大木が茂る不思議な光景を目にできる。このクスノキは駅前にある萱島神社のご神木で、推定樹齢は700年。駅拡張時もご神木を切り倒さなくて済むように、クスノキを避けて囲うような構造のホームにしたのだそう。寝屋川をはさんで駅の西と東にはそれぞれ商店街やスーパーがあり、地域住民の暮らしを支えている。駅から東へ25分ほど歩くと3位・忍ケ丘駅からも行ける「イオンモール四条畷」に到着する。萱島駅と忍ケ丘駅は路線こそ違うものの、直線距離だと3.5kmほどしか離れていない。
萱島駅(写真/PIXTA)
駅の位置関係を見てみると、光善寺駅(10位)から見て南に香里園駅(8位)~寝屋川市駅(同額8位)~萱島駅(7位)と並んでおり、萱島駅の東方に忍ケ丘駅(3位)がある。「L」の字形に点在するこの5駅はいずれも梅田駅の北東方面に位置し、梅田駅まで乗り換え1回、約22分~32分という好ロケーション。梅田駅への利便性重視でしかも安く中古一戸建てを探す際は、まずこの5駅があるエリアに狙いを定めてもよいかもしれない。
今回は梅田駅を基点にして一戸建ての価格相場が安い駅を調査したが、新築と中古ではトップ10の顔ぶれがまったく違う結果となった。「中古編」のランキングで注目した忍ケ丘駅(3位)、萱島駅(7位)、寝屋川市駅と香里園駅(同額8位)、光善寺駅(10位)の5駅も、「新築編」のランキングではトップ10圏外。光善寺駅の20位が最高位であり、「中古編」3位の忍ケ丘駅にいたっては新築編では63位にとどまっている。ひと口に「一戸建て」と言っても、新築か中古かで価格相場がお得な街は変わってくるようだ。
●調査概要東日本大震災から10年。その後も日本は多くの災害を経験してきた。避難所生活から新しい暮らしを再建するにあたり、重要な存在となるのが仮設住宅だ。従来プレハブのイメージが強かったが、最近はその形態も多様化してきているそう。
近年多くの災害を経験した熊本県、首都直下型地震に備える東京都、避難所や被災者用住宅に設備を提供しているLIXILの担当者へ話を聞いた。
トラックで移動できるコンテナサイズの住宅「トレーラーハウス」
2016年の地震、2020年の豪雨災害と、近年災害が続いた熊本県。2016年の地震ではプレハブ及び建設型の木造仮設住宅が活用されたが、2020年の豪雨災害では、仮設住宅として初めて球磨村でトレーラーハウスが導入された。
球磨村で導入したトレーラーハウス外観(写真提供/熊本県)
トレーラーハウスとは、工場で生産されるコンテナサイズの住宅だ。解体せずに基礎から建物を切り離してトラックで輸送することができる。既に建物としては完成しているため、準備期間を短縮できることが特徴だ。
背景として、被災規模が大きかった球磨村は、賃貸住宅がほとんどない地域だった。高齢者も多く、避難所での生活を長期間強いることは避けたいが、建設型の仮設住宅を建てるとなると1.5~2カ月ほどかかってしまう。
そこで、北海道胆振東部地震等で導入実績があるトレーラーハウスに目を付けた。発災から2週間で発注を決定し、さらにその2週間後には33戸のトレーラーハウスが球磨村に到着。その後追加で35戸が到着し、68世帯が新たな生活を開始した。
熊本県でトレーラーハウスを導入するのは初めてのこと。居住性がどの程度のものか判断しかねた健康福祉部健康福祉政策課すまい対策室 課長補佐 緒方雅一さん(以下、緒方(雅)さん)は、実際に使用されている岡山県倉敷市まで実物を見に行ったそう。
「もともと北海道でつくられたものということもあり、気密性・断熱性に優れており、温度が安定して保てること、遮音性も高く、まわりの音があまり聞こえないことなどが分かりました。
さらに室内はフラットで、バリアフリーに近い状態で使える。これは良い、と判断し、導入を決めました」(緒方(雅)さん)
実際に、利用者からは快適と声が届いているそうだ。
球磨村で導入したトレーラーハウス、内部の様子(写真提供/熊本県)
建設型木造仮設住宅の居住性も進化2020年の豪雨災害では、現地でイチから組みたてる建設型の木造仮設住宅も740個用意された。スピード感を持って準備できるトレーラーハウスやフレームを工場生産するプレハブ住宅に対し、時間はかかるものの「居住性に優れている」と評価されているのが建設型の木造仮設住宅だ。
「県産の木材や畳を使用し、温かみがあるものになっています。木や畳の香りが良い、という評価も多くいただいています。そうした素材のぬくもりが、被災者の心の傷を癒やしてくれることを願ってつくっています」と土木部建築住宅局住宅課 主幹 緒方慎太郎さん(以下「緒方(慎)」さん)。
球磨村で建設された木造仮設住宅(写真提供/熊本県)
熊本県において、建設型の木造仮設住宅がつくられるのは3度目だ。2012年の熊本広域大水害、2016年の熊本地震、そして2020年の豪雨災害だ。災害のたびに知見を蓄積し、進化してきたという。
例えば、建設型の木造仮設住宅は「9坪でつくる」というルールがある。ゆえに収納スペースを取ることが難しい。そこで編み出されたのが「屋根裏収納」だ。専用のはしごがあり、屋根の裏側にモノを収納できる。
仮設住宅に設置された屋根裏収納。2016年、熊本地震の仮設住宅から導入された(写真提供/熊本県)
また、かつては洗濯機を置くスペースが屋内になく、玄関ポーチに設置し屋外で洗濯するしかなかった。そこで、玄関ポーチを屋内に取り込んだ設計とし、畳一畳分のスペースをつくることで、屋内で洗濯までできるようにした。
新たに生まれた洗濯機の設置スペース(写真提供/熊本県)
高齢者の多い地域での被災も続いた。バリアフリーに配慮し、現在では玄関~室内全ての部屋と水まわりまで、段差をなくしている。2020年の豪雨災害では、全戸数の1割には、車いすの方が入りやすいよう玄関横にスロープもつけた。今後、高齢者が多い地域で被災した場合はスロープつきの割合を増やす可能性が高いという。
こうした工夫によって、「もともと住んでいた家より良い」なんていう声まであるそうだ。
スロープつきの仮設住宅(写真提供/熊本県)
「適材適所」の配置と、避難所の密回避が課題数多くの災害を乗り越えたからこそ、見えてきた課題や今後改善していきたい点についても聞いてみた。
「木造仮設住宅は、建設回数を重ね、一つの集大成ができたと感じています」と語る緒方(慎)さん。
熊本地震で使用された木造仮設住宅は、約4割がそのまま現地で被災者の一般住宅として使用されており、約3割が移設し別の場所で住宅や公民館等の施設として利活用されている。「雨が降るとスロープがすべりやすくなる」など、実際に建設して見えてきた細かな課題は今後も改善していく予定だが、既に完成形に近い、という手応えを感じている。
一般住宅として再活用されている仮設住宅(写真提供/熊本県)
一方でトレーラーハウスについては、まだ工夫の余地があるという。
「例えば、現在の居室はトレーラーのような長方形ですが、正方形に近い形で仕切ることもできるので、通常の住まいに近い形とすることでより暮らしやすくできるのではないかと考えています」(緒方(雅)さん)
準備されている個数が少ない、という課題もある。設置する際の浄化槽整備や砂利の調達など基盤づくりもまだスムーズではない。地元業者との連携をスムーズにしていきたい、と語る。
「いち早く数を用意する意味では、従来からのプレハブ型も強いです。熊本地震のように被災者数の多い震災の場合は、やはりプレハブも活用しなくてはいけないでしょうね」と緒方(慎)さん。地域や災害規模を踏まえて、適材適所で使い分けていくことが求められるようだ。
コロナ禍においては、避難生活で「密」を避けることも重要だ。
「いちはやく密を解消するという意味では、今回、トレーラーハウスを早めに導入したのも対策のひとつです。
避難所については、段ボールや布での仕切りは熊本地震の際にも設置しており、プライバシーを守る観点での備蓄は進んでいますが、今後はテントのように1世帯ずつを囲むような設備も必要になりますね。
避難所の数自体も増やす必要があり、結果、対応する職員の数もより多く必要になります。そういった点は、今後の大きな課題です」(緒方(雅)さん)
球磨村の仮設住宅全体像(写真提供/熊本県)
ひとりひとりの自衛意識向上が最重要人口密度、建物密度が高い都市部ではどうだろうか。首都直下型地震に備える東京都 住宅政策本部 住宅企画部にも話を聞いた。
「東京都の場合、大きな課題は、人数に対する『住戸数』の確保をいかに速く行うかということです。特にコロナ禍のような状況では、長期間、避難所で密をつくることは避けたい」と住宅施策専門課長の吉川玉樹さん。
熊本県と異なり、中心となるのは民間賃貸住宅を借り上げて仮設住宅とするスタイルだ。公的住宅を含め、現在も空き家がかなりの数存在するため、それらを有効活用していく想定だという。
「不足する場合には、建設型も適宜使用していきます。そのためにいくつかの団体と協定を締結しています。ただし、用地が限られるため、やはり空き家活用を中心とした対策が現実的ではあります」(吉川さん)
人口の多さに対し、仮設住宅を新たに建設できる用地は限られる。未曾有の災害となった場合、空き家の活用にも限界があるかもしれない。だからこそより重要なのが、ひとりひとりが自衛する意識だ。
「それぞれが自宅に留まれる状態が一番望ましく、自宅の耐震強化や防災意識を高める呼びかけも行っています」と吉川さん。大学と連携し、リーフレットなどを作成しているが、まだまだ平均的な都民の防災意識は高いとは言えず、課題も感じているという。
東京都が作成したリーフレット(写真提供/東京都)
避難所の密を避け、プライベート空間をつくる設備も登場メーカーが提供する住宅設備や避難所設備も年々進化している。
LIXILでは、2020年に熊本で発生した豪雨災害の際、避難所内でプライベート空間をつくることができる可動式ブース「withCUBE」を提供した。
夜泣きが続く乳児と保護者の宿泊スペースとして、また、発熱のあった幼児の療養室として活用され、避難所を管理する球磨村役場の職員から多くの感謝の言葉が届いたという。
避難生活で課題となるプライバシー確保が簡単に実現できるものとして、利用者からも高い評価を得た。
現在、災害支援を終え、熊本赤十字病院に移設されているが、球磨村役場職員から防災備蓄にしたいという要望も届いているそうだ。
被災者の避難先で活用されたwithCUBE(写真提供/LIXIL)
役目を終えた仮設住宅建材の二次活用も進んでいる。東日本大震災から10年が経過し、多くの仮設住宅が解体されている。「仮設住宅に関わった方々の想いをつなぐ」という目的のもと、仮設住宅の窓などを再利用し、東京オリンピック・パラリンピックの聖火トーチやモニュメントへ生まれ変わらせる取り組みも行われた。
前述の熊本県のケースのように、解体するのではなく、建物そのものを恒久住宅や集会所として二次利用するケースもある。2011年に6000戸の木造仮設住宅が供給された福島県では、その一部を災害公営住宅として再構築した。躯体や間取りはそのままに、屋根・サッシ・設備などを一新、屋根や外壁に断熱材を補強するなどし、居住性を高めている。
設備の進化を活かしながら、ひとりひとりが「自衛」する災害は、いつ起こるか分からない。各自治体等でもさまざまな準備が行われており、日々進化している。一方で、どれだけ進化しても、やはり一番重要なのはひとりひとりの自衛意識だ。
住宅・設備メーカーでも、震災の教訓を活かし、災害に強い商品が日々開発されている。各自治体の災害対策について知ると同時に、自身の住まいを選ぶ際には、そうした設備や地区の情報を調べながら、必要な備えをぜひ、行ってほしい。
人口約1000人の山間地域の村、徳島県那賀町木頭地区に、昨年4月誕生した「未来コンビニ」。
「未来」といっても最新技術を駆使したコンビニ、という意味ではなく、「未来を担う子どもたちのために」という想いから名付けられたもの。過疎化が進み、買い物難民が社会問題とされている地方の試みとして注目されている。今回は、誕生した経緯とともに、新たなコミュニティの場として動き出した、その後についてインタビューした。
徳島県と高知県をつなぐ国道195号を車で走っていると、突如現れる、スタイリッシュな建物。それが「未来コンビニ」だ。その存在を知らない人は、夜の暗闇に突如現れる光り輝く近未来な建物に驚くことだろう。
“世界一美しいコンビニ”のキャッチフレーズに違わぬ外観。自然の中にたたずむモダンなコントラストが美しい。オープン後、訪れる人々の口コミやSNSの拡散で、徐々に知名度を上げている(写真提供/ワキ・タイラー)
誕生したのは1年前。最寄りのコンビニまで車で1時間もかかるという地域に暮らす人々の、利便性を向上させる目的で生まれたもの。
徳島市と高知市の市街地からそれぞれ車で2時間程度の木頭地区。剣山など標高1000mを超える山々に囲まれ、村の中心に那賀川の清流が流れる。 この神々しい日本の原風景の魅力は、いつしか“四国のチベット”とも表現されるようになった(写真提供/ワキ・タイラー)
左/定番のソフトクリームにゆず塩をかけて。右/ご近所で育てているミントをカフェメニューに(写真提供/未来コンビニ)
「単に買い物をするだけでなく、子どもたちが自然と集まり、何かしらの刺激を受け、自分の将来への気づきを与えられる場所がコンセプトなんです。子どもたちは未来を担う“宝”ですから」(KITO DESIGN HOLDINGS 経営企画室長 仁木基裕さん)
例えば、本棚では、過疎地では手に入りにくい雑誌、小説、漫画、アート本、小説などを取りそろえたり、大きなモニターで子ども向けのオンラインイベントをしたり、海を知らない子どもたちに、周辺の海辺の町との交流会を行ったり……。「木頭地区の小中学生は約30人。ともすれば、赤ちゃんの時からずっと同じ顔触れなんです。だけど、この場ができることで、さまざまな経験ができていると思います」
子どもや高齢者が商品を手に取りやすいよう、商品棚は低めに設定。木頭ゆずのオリジナル商品も販売(写真提供/ワキ・タイラー)
図書館のように自由に手に取ることができる、クリエイティブな本棚を設置。店内で絵本の読み聞かせもできる。これも“本との出会いは子どもたちの将来の道しるべのひとつになる”という考えから(写真提供/未来コンビニ)
海沿いの徳島県牟岐町との交流イベント「木頭に海がやってきた!」。徳島県は海沿いと山間地域では環境もまったく違うので、お互いの地元を知ろうということから企画されたもの(写真提供/未来コンビニ)
森の中のインパクトあるデザインで、日本中、世界中に拡散されるこの未来コンビニは、地域住民の暮らしを支えると同時に、遠方からのゲストも楽しめる交流の場だ。
秋にはすぐ近くの紅葉の名所「高の瀬峡」を訪れる観光客でにぎわい、コンビニ利用者は1日最大400人に。人口約1000人の村に、だ。これまでは国道を素通りするだけだった木頭地区に、この未来コンビニができることで、足を止める観光客が増え、名産の木頭ゆずの知名度もアップ。大きな経済効果を生んでいる。
(写真提供/ワキ・タイラー)
名産の木頭ゆず(写真提供/黄金の村)
「誰もが足を止める。そのためにはデザインワークも大切でした。木頭ゆずを思わせるイエロー。Y字型の幾何学的なデザインの柱は、ゆずの果樹がモチーフです。山の中というロケーションもあいまって、SNSで発信をしてくださる方も多いんです」(仁木さん)
内装デザイン、店名のフォント、ロゴデザインすべてのデザインがモダンで洒落ている。一方、「自然との共生」をコンセプトに、建物の周りに土に還ることのできる樹皮チップが敷き詰められるなど、サステナブルな設計に(写真提供/未来コンビニ)
SNS投稿する人も多数(写真提供/未来コンビニ)
実業家の“故郷への恩返し”から始まったものそもそもこの未来コンビニは、“すべての人が笑顔になれる、奇跡の村を創る”、そのために“木頭を世界へ向けてデザイン・発信する”をミッションとするKITO DESIGN HOLDINGS株式会社の取り組みのひとつだ。ほかにも、3年前には元村営のキャンプ場をフルリノベーションして生まれ変わらせた「山の中のリゾート CAMP PARK KITO」や、名産品の木頭ゆずの生産加工・販売・店舗展開をする「黄金の村」事業など、さまざまなプロジェクトを手掛けている。
スタート地点は、IT会社、株式会社メディアドゥ代表の藤田恭嗣氏(KITO DESIGN HOLDINGSの代表も兼任)が、出身地である木頭地区に、恩返しをしようと始めたもの。
「寄付という形ではお金を出して終わり。地域が自立して、経済が循環していかないと意味はないんです。初期投資と最初のコンセプトワークをパッケージ化できれば、全国の同じように過疎化・高齢化に悩む地方でも、民間のチカラで同じように地方を盛り上げることが可能なんじゃないかと考えています。限界集落と呼ばれるこの小さな村に、そういった動きを導く場所があるんだという驚き、物語は、その証明になるはず。未来コンビニというフィールドを通して、ネットでもリアルでも世界とつながることができる、そこに存在意義があると思っています」(グループ執行役員 堀新さん)
実際、木頭ではプロジェクトをきっかけに移住者も増えている。
現在、未来コンビニの店長である小畑賀史さん自身も、徳島県徳島市からの移住者。長年関西のカフェでバリスタとして働き、2年前に出身地である徳島市にUターン。「徳島でも、百貨店撤退など地方経済の落ち込みを目の当たりにしました。地元である徳島県が元気になるにはどうしたらいいかを考えたとき、徳島の中でも地方と呼ばれる地域の盛り上がりが不可欠だと感じました。神山や上勝をはじめ徳島の地方の取り組みを調べていく過程で木頭のプロジェクトを知り、他の地域よりもっとハンディのある場所だからこそ、ここを元気にすることが出来たら面白いと思い木頭にやってきました」(小畑さん)
小畑さん(写真提供/未来コンビニ)
カフェでの経験を活かし、小畑さんはカフェメニューも開発(写真提供/未来コンビニ)
一方、地元の特産品「木頭ゆず」の栽培・加工・販売を手掛ける関連会社、株式会社黄金の村で営業部長として働く岡田敬吾さんは、木頭地区出身のUターン者だ。
「私が子どものころは、将来は木頭を出ていくのが普通でした。私は、いつか地元に戻りたいと思っていたけれど、このKITO DESIGN HOLDINGSの取り組みがなければ、たぶん戻ってこれなかったと思います。その点、今の木頭の子どもたちは、違うんですよ。木頭での取り組みを通じて親以外のさまざまな職種の大人を目の当たりにすることで、とても刺激を受けているようです。それこそ代表の藤田のような木頭出身の上場企業の創業経営者という存在と触れ合って身近に感じることも、私の子ども時代ではまずないことでしたから」(岡田さん)
高校まで那賀町木頭で過ごした後、大阪や東京で音楽・IT関係の仕事をしていた岡田さん。2年前に木頭に家を建て家族で移住した(写真提供/黄金の村)
また、ノルウェー出身の音楽クリエイターのAlrik Fallet(アルリック・ファレット)さんは1年前に移り住み、木頭の村の美しさや文化に日々刺激を受けながら制作活動に打ち込んでいる。
アルリックさんは、未来コンビニへ朝コーヒーを飲みに行ったり、ワーキングスペースとして活用したりしている。「地元の人同士がおしゃべりしているのを見ているのが好きです。地元のおじいちゃんやおばあちゃんは、すごく気軽に話しかけてくれるのも素敵だと思っています。今後は自分自身もこのスペースを使って、子ども達になにかクリエイティブなことを教えたりできたらいいですね」(アルリックさん)
未来コンビニ内にある「YUZU CAFÉ」で仕事をすることも多いアルリックさん。友人のアメリカ人クリエイターに誘われた夏休みの日本旅行の途中で木頭を訪れたことが移住のきっかけ。また、未来コンビニのモニターで流れている映像の音楽は全てアルリックさんによるものだ(写真提供/未来コンビニ)
未来コンビニが誕生して1年。オープン当初こそ、地元の人も様子を見ながらという雰囲気だったが、徐々に毎朝来てくれるようになったり、休憩に顔を出してくれたりするように。
地元農家さんの野菜直売マルシェを設置し、毎週火曜日は鮮魚の日、金曜日は精肉の日と、通常のコンビニでは扱わない商品も展開し、今では地域住民にとってなくてはならない生活インフラや社交場になっている。
木頭の農家さんから商品を仕入れる「きとうマルシェ」も定期的に開催。山間にある村だけあり鮮魚は人気が高く、現在は予約制(写真提供/未来コンビニ)
「驚いたのは、積雪の日に雪かきを地域の方々が手伝ってくれたこと。雪に不慣れな移住者のスタッフも多く、みなさんが助けてくれなかったら、大変なことになったでしょう。台風の日は看板が飛ばされないよう、ブロックを持ってきてくださいました。みなさん、自分たちの場所だと大切にしてくださっているんだなとうれしかったです」(仁木さん)
積雪の日の雪かきは大変。クリスマスのモミの木も地元の方が山から伐採してきてくれたもの(写真提供/未来コンビニ)
今後は、なかなか買い物が難しい高齢者のために移動販売や宅配事業を行ったり、子どもたちに向けてクリエイティブな学びの場をもっと提供するなど、新たなアイデアが次々と生まれているという、未来コンビニ。
今はお祭りや宴会の開催も難しく、一日誰とも会わない・話さないという高齢者は多いはず。木頭でも夏の風物詩「木頭杉一本乗り大会」や、八幡神社の秋祭りなど、毎年地域総出で行っていたイベントも昨年は中止となった。しかし、このような”場“があることで、昔馴染みに偶然出会っておしゃべりしたり、スタッフと笑いあったりする一日になる。この点でも、未来コンビニの存在感は大きいといえるだろう。
買い物ついでにおしゃべり。誰もが足を運ぶ場なら自然と交流の場に。家にいる時間が長い今だからこそ、こうした場は大切だ(写真提供/未来コンビニ)
●取材協力江ノ島電鉄の「稲村ヶ崎駅」目の前にある「IMAICHI」(神奈川県鎌倉市)は、60年近く続いた駅前のスーパーマーケット跡地に2019年にできたコミュニティスペースだ。憧れの移住地としても注目される鎌倉市だが、少子高齢化問題や商店街の衰退などの難しさを抱える地域もある。地元の老舗幼稚園の次期園長である河井めぐみさんと、夫で造園業を営む亜一郎さんは、「子どもを守ってくれる地域づくりをしたい」と、異業種の世界に飛び込んだ。
地元のスーパーが、生き残りではなく生まれ変わりを選んだ
鎌倉駅から江ノ電で11分の場所にある稲村ヶ崎は、緑に囲まれた海辺の閑静な住宅地だ。サザンオールスターズの桑田佳祐さんが監督した映画『稲村ジェーン』の舞台となった場所としても知られる。人口3000人ほどが住んでおり、数世代前からこの地で生活を続けている人も多い。
「スーパー今市」は、そんな地域で60年間商いをしてきた。戦前・戦後は魚商だったが、地域のニーズに合わせて生鮮食料品から生活雑貨まで幅広い商品を扱うようになり今に至る。しかし、近所に大きなチェーンスーパーができたり、ネットショッピングが台頭する中で、小売業の競争はますます厳しくなり、2018年に注文を受けた分だけ仕入れて販売するという「御用聞き」の仕事に専念することに。19代目となる現在の店主の今子博之さんは、駅前の店舗を閉め、事業規模を縮小することに決めた。
まさに、稲村ヶ崎駅の目の前(写真提供/IMAICHI)
「スーパーという形でなくてもいいから、誰か店舗を引き継いでくれる人はいないだろうか」
今市さんが相談した相手が、この街で長年幼稚園を営んでいる聖路加幼稚園の次期園長である河井めぐみさんだった。今市さんのお子さんとめぐみさんの弟さんが幼稚園の同級生だったことから、同じ地域に長年住む者として、家族ぐるみの付き合いをしていた。
思い当たる人たちに声を掛けてみたものの、地域の人以外は集まりにくいこの場所を借り受けたいという人はなかなか現れなかった。そんな時、めぐみさんの夫・亜一郎さんの「それなら自分たちで何かやってみようじゃないか」というひと言で、この空間を引き継ぐことに決めたという。
河井さん夫妻は、めぐみさんの故郷である稲村ヶ崎で2人のお子さんの子育て真っ最中(写真提供/河井めぐみさん)
多目的なスペースだから地域の実情やニーズが見えてくる河井さん夫妻は、改めて「スーパー今市」の存在意義を考えたとき、“日用品の買い物をする場所”という以上に、地域の中での存在感の大きさに気づいたという。駅前の店ゆえに、駅を利用する際に買い物ついでに立ち寄って、接客のため店頭に出ている奥さんと長々とお喋りしている人や、海側にしかないコンビニの代わりに、駅前立地の便利さから、食料品から生活雑貨を買っていく若者までが訪れた。
「店番しているおばあちゃん(現店主のお母さん)の顔を見て、外出先から稲村に帰ってきたと感じていた」とめぐみさんは話す。
こうしたことから、利用客を制限しがちな専門的なお稽古ごとの教室やお店にせず、誰でも立ち寄りやすい場所という「スーパー今市」の存在意義を引き継げる、誰でも利用可能な環境にしたいと、多目的に活用できる「コミュニティスペース」にたどり着いた。利用目的の制限をしないことで、幼稚園との連携や、そこで学んできたことを相互に活かせるのではないかと考えたという。
例えば、「ねいばぁず」というプログラムもその一つ。もともとは、地域のお母さんたちが稲村ヶ崎自治会館で、鎌倉市から補助を受けて運営していたプログラムを、IMAICHIで開催することになった。プログラムの内容は、野菜ハンコ制作やクリスマスリースづくりなど。
参加対象を、親子連れに限らず「近隣の住民」なら誰でもOKとすることで、地元のシニアたちへも参加を呼びかけているという。地域の交流の場所になるように、という思いでつくられたこの場所だからこそ、多くの人に参加を促すことができる。また月2回開かれている古典ヨガ教室には、年齢も性別もさまざまな人が参加しているという。
月に2回、月曜に開かれている古典ヨガ教室の様子(写真提供/IMAICHI)
また、稲村ヶ崎町内には遊具のある公園がないうえ、スポーツ系のお稽古先も選択肢が少ない。こうした背景から“身体を動かせる場所”をつくりたいと考えた河井さん夫妻は、店内にボルダリングウォールを設置した。設置費用にかかった300万円の一部は、クラウドファンディングを利用した。
ボルダリングウォールは子どもから大人までゲーム感覚で挑戦できる(写真提供/IMAICHI)
とはいえ、まだまだ完成形ではない。多目的スペースだからこそ、地域のニーズが見えてくると考えている。そのなかで、少しずつ形を変え、より地域に寄り添えるようになればいい。「私自身、この地域で幼稚園をやっていく上でもこのIMAICHIを通じて地域の実情やニーズなどを知ることができることは役立っています。IMAICHIでの知見を生かして、地域の幼稚園として子育て環境を充実させていきたいですね」とめぐみさんは話す。
まちの人のニーズを受けて、体験学習教室を開催IMAICHIを通じて、幼稚園という垣根を越えて地域と交流するようになっためぐみさんが始めた活動の一つに、「体験学習教室」がある。昨年9月に開始したこの活動は、地域の幼稚園児や小学生の「学童保育」に当たる活動で、年齢の違う子どもたちが一緒になり、先生と一緒に町に出てさまざまな体験をする。例えば、地域の商店を訪れ、店主などに話を聞いた情報をもとに子どもたちと一緒に稲村ヶ崎の地図やガチャガチャゲームづくりをするといった活動だ。
(写真提供/IMAICHI)
(写真提供/IMAICHI)
「今の子どもたちは、親以外の大人に何かを教えてもらうという経験値が乏しい子が多い。仕事などで忙しい親たちの代わりに、愛情を注いでくれる大人は地域にもたくさんいることを感じて欲しい」とめぐみさん。また、子どもとの遊び方が分からないと話す親が増えるなか、こうした体験学習を通じて、大人が子どものやりたいという気持ちを汲み取ることができれば、自宅でも子どもたちがリードする形で、親子の活動にも広がりができるに違いない。
子どもたちと海に行き、磯遊びをすることも体験教室の一環(写真提供/IMAICHI)
この活動を通じて町内を出歩くようになったことで、「これまで直接話しをしたことがなかった大人である町の商店の人たちにも、子どもたちが積極的に話しかけるようになった」と話すめぐみさん。
「子どもたちの“やりたい!”をとにかく手助けすることが私の役目。先日は、稲村ヶ崎の情報番組をつくりたいと意気込み、iPad片手に商店街に飛び出して行く小学生を見守りました。私はこの教室を通じて、むしろ子どもたちから学ぶことも多い。大人としては一人の子どもの失敗に対して思わず責めてしまいそうになるシーンでも、子どもたちは誰も責めず、笑ってのける。そんな関係を、IMAICHIを通じて地域の中で築けていきたいですね」と続ける。
地域のハブとしてできること町の商店が徐々になくなっていく中で、地域住民同士の交流も次第にか細くなっていく傾向は否めない。そんななか「IMAICHI」を通じて子どもが地域の大人と交わる機会をつくろうと奮闘している。こうした活動が広まれば、この地域がより「住みやすいエリア」になっていくだろうと河井さん夫妻は話す。
「夜に電車で帰宅して、稲村ヶ崎に降り立ったら、駅前のIMAICHIにこうこうと電気がついていてホッとした」と立ち寄ってくれた住民がいる、と話すめぐみさん。経営は楽ではないが、この場所からはまだ多くの何かもっとできることがあるように感じているそうだ。
店内からは、到着する江ノ電が見える(写真提供/IMAICHI)
昨年11月には、地域住民からのリクエストもあり、コーワーキングスペースとしてデスクの設置やWi-Fiを完備させたという。子どもと一緒にリモートワークのために訪れた人は、「子どもも自分も充実した時間が過ごせた」と喜んでいたとのこと。こうしたサービスの導入で、「今後は町を訪れる観光客やリモートワークの滞在者などにも利用してもらいたい」とめぐみさん。過疎化や高齢化が進む稲村ヶ崎の住民として、この地を気に入り、移り住みたいと思う人がもっと増えてほしいという思いもあるという。
こうしたIMAICHIの現在の様子を、スーパー今市の店主だった今子さんは「駅前の立地で子どもが出入りする場所になるのは、地域にとってとても良いことだと思う。安心できる場所、頼れる場所にしてもらえてうれしい」と話す。
「地域が見守ることで、子どもたちが安心して暮らせる街になれば」と河井さん夫妻は思いを馳せる。商店街や地元のお店が元気を失うなかで、IMAICHIという場所が、地域上の役割はそのままに、時代にあわせた新しい価値を与えらえたことで、今後稲村ヶ崎の活気を生む原動力になっていけることを願う。
●取材協力