
9万6,000円 / 34.9平米
西武池袋線「豊島園」駅 徒歩4分
木々や野鳥が好きな大家さんが長年かけてつくった、小さな森のような広い庭。そんな庭に隣接する集合住宅の一室に空きが出ました。
庭には推定樹齢150年程の大きなケヤキをはじめとし、アカマツ、カエデ、モッコク、シキミ、モチノキ、カシなど、たくさんの種類の木が植えられています。
遊び ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
凸凹の床に傾斜した天井。球状の部屋があれば、まっすぐ立てない洗面所もある。一般的な住まいとはどこもかしこも違うが、れっきとした住居であり、芸術作品でもあるのが、ここ「三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー」(東京都三鷹市)だ。なぜ、このようなつくりなのだろう? 入居者はどんな暮らしをしているのだろうか?
足で踏み、手で触れ、音を聴く。感覚も身体も、楽しめる空間
「カラフル」という形容詞以上の言葉を探してしまうほど、色使いが目を引く建物。色だけではなく造形も独特で、円と角を組み合わせて積み上げた形に、一体、中はどうなっているのだろうかと好奇心が掻き立てられる。幹線道路に面していて、道ゆく人は二度見ならぬ三度見もするし、駅から歩いてくれば、かなり遠くからでもその存在が目に入るだろう。「三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー(以下 三鷹天命反転住宅)」は、それくらい印象的な外観だ。
円と角が重なった外観。色使いはもちろん、窓の組み合わせからも楽しい雰囲気が伝わってくる(写真撮影/相馬ミナ)
竣工は2005年。芸術家/建築家の荒川修作+マドリン・ギンズによって設計された。2人が手がけた作品は国内は岐阜県(『養老天命反転地』)と岡山県(『「太陽」の部屋 ≪遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体≫』)にも存在するが、ここが他と異なるのは「住居である」ということ。鑑賞や体感を目的とした作品とは違い、住まいとして使うことを考えられて設計された9戸の集合住宅なのだ。うち5戸は実際に賃貸であり、2戸は見学用や別の用途に使われているという。
共用部の廊下を歩いていくと、外部の配管や手すりまでこだわって色がつけられていることが分かる(写真撮影/相馬ミナ)
外観や内装に使われているのは14色。
「よく色の意味について聞かれるのですが、例えば『窓枠にはこの色』というような単色には特別な意味がありません。どこから見ても一度に6色以上が視界に入るように計算されているので、視覚が色そのものを単体としてでなく、“環境”として認識するんです。身の回りの自然の風景を思い浮かべてほしいのですが、そこにはたくさんの色が使われていますよね。それと同じことなんです」と、支配人の松田剛佳さんが教えてくれる。
部屋は2LDKと3LDKがあり、3LDKの部屋の奥は和室。円形の畳が見える。左にははしごが備え付けられていて、どう使うかは住民次第。本棚にする人もいれば、棚の脚として活用する人も(写真撮影/相馬ミナ)
3LDKの間取図(画像提供/三鷹天命反転住宅)
目を凝らし、視線を動かさないようにして色を数えてみれば、確かに9色認識できた。無秩序のように見えて、実は計算され尽くされていて、荒川+ギンズが考え出した仕掛けに、無意識のうちに影響されていることが分かってきた。見学用の部屋に入ると、その仕掛けの多さに圧倒されてしまう。
メインの床は凸凹になっていて、足裏をほどよく刺激する。あえて山を踏んだり、谷間を縫うように歩いたり(写真撮影/相馬ミナ)
室内の中心にあるリビング部分はどこにも平らな場所がない。ざらりとしたコンクリートでランダムに凸凹(でこぼこ)がある。土踏まずをほどよく刺激される時もあれば、思わぬ出っ張りに足を取られることもある。中央には一段低くなったキッチンがあり、その周りを囲むように球状の部屋や、丸い畳と砂利が敷かれた和室が配され、どこも当たり前のようにカラフルだ。カプセル型のシャワーの手前には洗面台があり、「試しに顔を洗う動作をしてみてください」と松田さんに言われてやってみると、かなり踏ん張らなければならない。床が傾いていて、屈む姿勢を保つのが難しいのだ。見上げると天井にはたくさんのフックがついていて、ハンモックがかかっていたり、バーが吊るされていたりする。収納はこれで増やせばいいということだろう。
天井にはたくさんのフックが。長いS字フックをかければ簡易的な収納になる。ワイヤーで棚板を吊るすこともできれば、ブランコを設置することもできる(写真撮影/相馬ミナ)
あちこち歩きながら細部の楽しさに夢中になっていると、「床に高低差があるのは気がつくと思うのですが、じつは天井も傾斜しているんです」と松田さんが教えてくれる。床が傾いているのは、歩き回ると実感できることだが、天井までとは分からなかった。実際、住民の中には、気がつかずに数年間過ごしていた人もいるという。
球状の部屋からの眺め。ここの中心で声を出すと、全方位からの不思議な響き方を体感できる(写真撮影/相馬ミナ)
この空間に身を置いていると、なんとも不思議な気持ちになってくる。今、自分はどこにいるのか、ここはなんという場所なのか。そもそも、自分が思っていた「住まい」とは何だったのだろう。その疑問を見透かしたように松田さんが答えてくれる。「『押し入れはどこですか?』『どこで寝るのですか?』と聞かれることも多いです。どこに収納スペースをつくってもいいし、どこで寝てもいい。実際に球状の部屋で寝ていた人もいらっしゃるし、この凸凹の床が涼しくていいと教えてくれた方もいました。みなさまの自由な発想でお住まいいただきたいです」
室内のインターホンはあえて斜めに。どう映るかはあえて現場で確かめてみてほしい(写真撮影/相馬ミナ)
「部屋は四角いもの」という既成概念は見事に打ち砕かれている。さらに凸凹の床を歩いているうちに、その感覚がクセになっているし、球状の部屋で聴く自分の声の響きに心地よくなってくる。身体がこの空間を楽しみ、おもしろがっているのだろう。
DIYを繰り返し、進化し続ける住まいと暮らし実際に、ここでの暮らしを見せてもらうことになり、住民である岡本さんのお宅へお邪魔した。入った瞬間、見学用の部屋との違いに驚かされた。凸凹の床のはずが、そこにきちんと棚が置かれて収納場所になっているし、キッチンには天井から天板が吊るされ、グリーンや雑貨があってなんとも楽しい。球状の部屋はベッドが置かれ、居心地の良さそうな寝室に。他の部屋にもぴったりのサイズの棚や机があり、集中できそうな空間になっている。
岡本さん宅では、凸凹の床でも過ごしやすいようマットレスを自作。スピーカーやミラーボールが吊るされ、この空間を存分に楽しんでいる様子が伝わってくる(写真撮影/相馬ミナ)
そもそも、なぜ岡本さんはこの物件を選んだのだろう?
「東京だからこそ住める場所に、と思ったんです。こんな空間、他にはありませんよね。実際に住んでいる方に話を聞いていたこともあって、意外と住むのは大丈夫そうだなと思っていました」と笑う。
もともと備え付けられているはしごを活用して棚にし、音響機材をまとめている。下は食材などの収納に(写真撮影/相馬ミナ)
とはいえ、最初は大変だったとも振り返る。引越し当初、運んできた段ボールが壊れて崩れそうになってしまった。床が凸凹ゆえに、だ。「引越してから3カ月くらいは大変で、身体も部屋に慣れなくてきつかったですね。でも、少しずつ収納を増やし、マットレスを駆使し、あれこれ工夫することで暮らしやすくなってきたと思います。引越し当時はハイハイしていた娘も、今は元気に走りまわっています」
本棚を移動させて空いた壁には、愛娘の作品を。ランダムに貼り付けている様がこの空間にマッチしている(写真撮影/相馬ミナ)
つい先日、寝る場所を和室から球状の部屋に移動させた。「移動」といっても、ただ布団を運べばいいわけではない。丸くくぼんでいる床部分を木材を駆使して水平にし、さらにスペースに合わせてマットレスを円形に切って縫ったという。「球状の部屋は丸いまま使うものだという思い込みをやめたんです。おかげでスペースが広い和室に本棚を移すことができて、部屋全体が広く感じられるようになりました。球体の部屋は夜は落ち着くし、東向きなので朝も気持ちがいいし」
球状の部屋に床を自作して寝室に。DIYでつくったという右奥の棚は、凸凹の床でも水平にできるよう、アジャスターで調整している(写真撮影/相馬ミナ)
引越してから、毎週末DIYで何かをつくり、試行錯誤しながら住みやすいように整え続けている。「常に進化している感じです」と岡本さんは笑う。工夫のしがいがあることだろうし、快適になるほどに唯一無二な空間になっていくのだろう。
空間に身を置き、体感するからこそ分かること現在、賃貸部分は満室で募集はないが、定期的に見学会が開催され、宿泊できるプランもある。春にはテレワークプランも始まり、このなんともいえない不思議な空間を体験するにはまたとない機会が増えている。「この空間には、言葉では伝えきれないところがたくさんあります。説明できないからこそ、荒木とギンズはこの建物をつくったんですから」と松田さんは言う。
取材時に特別に屋上へ登らせてもらった。遠くに青い空や街並み、公園の緑などが見えると、確かにこの建物の色数の多さは気にならなくなる(写真撮影/相馬ミナ)
実際に、目で見て、歩いて、触れてほしい。足の感触や座り心地、歩いたときの身体の傾きや、部屋での声の響き方は、人それぞれだろう。身体が違えば、受け取る感覚も変わるからだ。
きっと、実感すれば、住まいについてさらに深く考えたくなるはずだ。自分の身体は今の住まいを楽しんでいるだろうか。楽しむために、もっと進化できる、工夫できることがあるように思えてくるのだ。
(C)2005 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.
●取材協力
三鷹天命反転住宅
プラネットが、消費財や暮らしにまつわるトピックスを紹介する『Fromプラネット』 の第155号として、家の掃除に関する意識調査の結果を発表した。それによると、1回当たりの掃除時間は3割が15分以下と回答するなど、短時間で済ませていることが分かった。【今週の住活トピック】
意識調査FromプラネットVol.155/「家の掃除に関する意識調査」
あなたは掃除するのが好きですか? 筆者なら迷うことなく、NOと回答する。単に掃除機をかけるだけなら苦にならないが、その前に散らばったものを片付ける作業が必要で、筆者の場合はこの片付けに時間が取られがちだ。それに、はたいたり、拭いたり、磨いたり、掃いたり…と意外にやることは多い。ちゃんとやると時間がかかるし、やらないと部屋が汚れるし。どうやって時短をするか、悩ましいところだ。
さて、調査結果によると掃除スタイルは、「定期的に掃除」が45.3%と最多で、次いで「気づいたときや時間が空いたときに小まめに掃除」の“小まめ派”が32.4%で続いた。「月1回などまとめて掃除」と「日頃は軽く済ませて、大掃除で念入りに」を合わせた“まとめて派”(7.9%)や“目をつぶる派”(9.3%)や“しない派”(5.1%)は少数だった。
掃除は定期的、あるいは小まめにする人が多いようだが、注目したいのは、子どもが小さい家庭では、“定期的派”が62.9%と突出して多くなる点だ。子どもが汚したり散らかしたりなど片付きにくいことや、安全面、衛生面などに配慮してのことだろう。
掃除スタイル(出典/FromプラネットVol.155「家の掃除に関する意識調査」より転載)
掃除時間は、年代が上がるほど長くなるでは、掃除に1回あたりどのくらい時間をかけているのだろう?その結果は、筆者が思うより短かった。
「15分以下」が30.9%、「16~30分」が45.6%。合わせて76.5%が掃除時間は30分以内という結果だ。注目したいのは、年代が上がるほど掃除時間が長くなる傾向にあることだ。年代が上がるほど、時間をかけてしっかり掃除していることがうかがえる。恐らく、小まめな掃除や軽く済ませる掃除の内容、気になるところを掃除してあとは目をつぶる場合の目のつぶり方などに、年代によって違いがあるのだろう。
日常的な掃除の所要時間(1回当たり)(出典/FromプラネットVol.155「家の掃除に関する意識調査」より転載)
水まわりは毎日掃除している人が多く、その担当は女性?そうはいっても、場所によって掃除の頻度は変わる。毎日の調理で汚れる、キッチンのシンクまわりやコンロまわり、毎日入る浴室は「ほぼ毎日(週に5回以上)」、トイレや掃除機をかけるのは「週に1~2回」が多いという結果が出ている。一方で、掃除の頻度が低いのは、窓や網戸、ベランダ、換気扇だった。
その掃除は主に誰がしているかというと、圧倒的に女性が多い。男女別に「自分がしている」という回答を比べてみると、男女差が大きい(男性より女性が圧倒的に多く掃除をしている)のは、キッチンのシンク周り(50.8)、コンロまわり(50.5)とトイレ(44.5)。男女差が小さいのは、ベランダ(29.2)、浴室(24.7)、窓、網戸(21.5)だった。つまり、男性の家事参加が多いのは、大掃除でのベランダや窓、網戸の掃除や、日常の浴室掃除ということになる。
各場所を主に誰が掃除するか(出典/FromプラネットVol.155「家の掃除に関する意識調査」より転載)
さて、東京・大阪など4都府県では4月25日から3回目の緊急事態宣言期間となり、5月12日からは愛知県・福岡県もこれに加わる見込みだ。全国的にステイホームが求められているので、ゴールデンウイークを自宅で過ごした人も多いだろう。普段は家族に掃除をまかせっぱなしの人は、ステイホームの今こそ、大掃除や模様替えだけでなく、普段から家族がどんな作業をして家を綺麗に保ってくれているのか、実践して理解するよいタイミングだろう。
コロナの影響で失業して住まいを追われる人、引越しをしようにも賃貸住宅を借りられない人が増えていると言います。また、障がいや高齢など、さまざまな理由から住宅の確保が難しい人が年々増え、いわゆる『住宅弱者』が社会問題になっています。
例えば、家を借りたくても連帯保証人がたてられない場合や、家賃が払えずに滞納してしまった場合など、連帯保証人の代わりや立て替え払いなどのサービスを提供する組織として「家賃保証会社」があります。また、各都道府県では、国が定める「居住支援法人制度」に沿って冒頭の“住宅弱者”といわれる人たちを支援する団体を「居住支援法人」に指定。各法人の得意な分野で居住支援活動を行っており、家賃保証をはじめ、賃貸物件を借りるうえで困りごとを抱えている人と、家賃滞納のリスクを避けたいオーナーさんの双方をサポートし、「安心」を提供することで、居住支援を行う法人があります。
この家賃保証会社と居住支援法人の両方の顔を持ち、千葉県を拠点に活動している会社が船橋市にある株式会社あんどです。あんどの共同代表である西澤希和子さんと友野剛行さん、そして現在、あんどの提供する「居住支援付き住宅」に入居しているまっちゃんさん(仮名)にお話を聞きました。
月1回の訪問が「うれしい」。住まいの提供にとどまらない居住支援千葉県内の駅から徒歩8分ほど、築35年のマンションの2階にまっちゃんさんは住んでいます。もともと軽度の精神障がいを抱えながら、会社員として勤めていました。ところが、父親が亡くなってから家庭内のDVトラブルが勃発。3年ほど前にあんどに相談し、「トラブル解決にはまず家族との別居が必要」との判断から、転居を決意。いくつかの物件見学を行い、あんどの居住支援付き住宅に住むようになりました。
まっちゃんさんの部屋はワンルームタイプ。3年以上住んでいるとは思えないほど、綺麗でこざっぱりとした明るい住まい(撮影/片山貴博)
「これまでのトラブルをふまえ、家族には、当日まで引越すことを知られないようにして入居しました。しばらくは家族と離れたことによる安心と不安とが入り混じった状態。あんどの相談員さんに『まずは自分のことを優先した方がいい』とアドバイスをもらい、毎日の生活を整えることに集中したことで最近はようやく落ち着いて過ごすことができています」(まっちゃんさん)
あんどの相談員は月に1回の訪問。まっちゃんさんは「来てもらえるのがうれしいから、ついいろいろな話をしてしまう」と言います。部屋の隅には「緊急」と「相談」の大きなボタンのあるインターホンのようなものを発見。これは「HOME ALSOKみまもりサポート」の機器で、緊急時のガードマンの出動依頼ボタンのほかに、いつでも相談できるヘルスケアセンターにも繋がるそう。さらに、面談の上あんどの福祉担当者(相談支援専門員資格保有者)が必要と判断した顧客には、より手厚い見守り機器プランを提案します。そのプランでは、トイレのドアにセンサーをつけ、一定期間ドアが開閉されなければホームセキュリティ会社(ALSOK)のスタッフが異常事態と判断し、駆けつける仕組みになっているのです。
まっちゃんさんの部屋の隅に取り付けている「HOME ALSOKみまもりサポート」の機器(撮影/片山貴博)
「入居者さんの安心」と「オーナーさんの安心」の両方を守るこれらの見守りサービスが付いていることで「入居者さんの安心はもちろん、オーナーさんの安心も守られる」と西澤さんは言います。
「近年、ここ1年はコロナ禍の影響も重なって『借りられない人』が増えています。家賃の滞納や孤独死などのトラブルを回避するために、オーナーさんが家賃保証会社との契約を必須にしている物件が多いのです。借りたいと思って入居の申し込みをしても審査に通らない。私たちはそのような人に対して、家賃保証とセットで見守りなどのサービスを提供しています。このサービスがあることで、オーナーさんにも安心して貸していただけるのです」(西澤さん)
このように賃貸物件を借りづらい人のことを、国の制度などでは一言で「住宅確保要配慮者」と表現しますが、借りられない理由はさまざまです。障がいがあることや高齢であることが背景にあれば、それぞれの状況に応じて生活上のサポートが必要になることもあるでしょう。
「私たちは家賃保証や見守りとともに、身元保証などの引き受けや、場合によっては入居する方のお金の管理をお手伝いすることもあります。パルシステム生活協同組合連合会さんと連携し、食材の配達時に安否確認をしてもらったり、さらに今年の5月からは万一の孤独死などの際にオーナーさんが抱える家賃損失や残置物の撤去、原状回復などのリスクに対応する保険を提供します」(友野さん)
パルシステムの利用料金は家賃と一緒にあんどから引き落とし。週1回の配達時に配達員が安否確認を行う(画像/PIXTA)
「家賃保証」から始まったあんどの取り組みこのように、貸す人・借りる人両方の安心のために、サービスを提供しているあんどですが、会社の設立には共同代表である西澤さんと友野さんのバックグラウンドが大きく関係しています。
「私は不動産会社を経営しており、認知症を抱える人のためのグループホームなどを運営してきました。そのなかで、意思決定に困難を抱えて入居する方の権利擁護のために『後見』が必要であることを感じたんです。地域後見推進プロジェクトの市民後見人講座を受講した後、講師として活動。家賃保証がネックで借りられない人が増えていることを年々感じて各所に相談していた時に、友野と出会いました」(西澤さん)
西澤さんはあんどのほか、不動産会社の役員や全国住宅産業協会の後見人制度不動産部会としても活動している(撮影/片山貴博)
友野さんは20数年前から福祉の仕事に携わり、知的障がいや精神障がいを抱えているにも関わらず社会福祉法人の施設に入れない人、退去を余儀なくされてしまう人を無認可施設で支える活動をしてきました。
友野さんはふくしねっと工房の代表として、障がいのある人の自立・就労支援を行ってきた(撮影/片山貴博)
「本を何冊か出版した後、全国から相談を受けるようになり、施設の数を増やしても追いつかない状況にありました。そしていつの間にか、自分よりも若いお母さんに『この子のことをよろしくお願いします』と言われていることに気がついたんです。このままだと年長の自分の方が先に老いて死んでしまう、できるだけ『自立できる人』を増やさないと先がないぞ、と感じていた時に、西澤から住宅の確保が困難な人たちが住まいを借りられるよう、家賃保証会社をやらないかと誘われました」(友野さん)
友野さんが代表を務める別会社の障がい者のための就労支援施設(写真提供/ふくしねっと工房)
全国の居住支援法人や、さまざまな企業との連携がカギ不動産と福祉という、西澤さんと友野さんの専門分野を活かして連携することで、住宅確保要配慮者向けの家賃債務保証という全国初のあんどのサービスは生まれました。創業後、あんどは千葉県の指定する「居住支援法人」にもなりました。これは、住宅セーフティネット法に基づいて、住宅確保に配慮を要する人たちの支援を行う法人として各都道府県が指定するものです。
居住支援法人制度の概要(資料/国土交通省)
居住支援法人として、また家賃保証会社としてさまざまな相談を受けるなかで、必要なサービスを付帯する住宅を提供することにしました。それが先に紹介した居住支援付き住宅です。ALSOK千葉と提携した「みまもりサポート」、パルシステム生活協同組合連合会と「安否確認付きの食材配達」、東京海上日動火災保険(株)とはオーナーさんのリスクを回避する保険の提供。実験的な導入として、ソフトバンクロボティクス(株)と感情認識ヒューマノイドロボット「Pepper(ペッパー)」を使った見守りやコミュニケーションの共同研究にも携わっています。
居住支援付き住宅は、オーナーをはじめ、提携団体や企業、ケアマネジャーなど、多くの人の連携によって運営されている(資料/あんど)
さらに、西澤さんは全国居住支援法人協議会の研修委員会の委員長として、全国の居住支援法人同士をつなげる活動を行いながら、弁護士や司法書士・行政書士などの士業の人々や東京大学との共同研究にも着手し、一般社団法人全国住宅産業協会にて後見制度不動産部会委員長として不動産後見アドバイザー資格制度の普及に努めています。多くの団体・専門家と連携することで、入居者さん・オーナーさんが現場で本当に必要なサービスを提供し、自社の収益にも繋げて継続できる仕組みを整えてきたのです。
西澤さん(右)が市民後見人養成講座の講師も務めていることで、多くの専門家や団体とのネットワークが構築されている(写真提供/地域後見推進プロジェクト)
現在、あんどの活動は全国に広がり、岡山県などにも居住支援付き住宅があるそう。
冒頭で紹介したまっちゃんさんは「コロナが落ち着いたら、亡くなった父との思い出の場所に旅行したい」「いまは簿記2級を取得するために勉強中」だとこれからの希望を語ります。筆者も今回の取材を経て、多くの人が安心して借りる・貸すを実現できるよう、あんどのような取り組みが広がることを改めて強く願いました。
●取材協力
・あんど
・ふくしねっと工房
・地域後見推進プロジェクト
リクルートでは3月17日、関西(大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県)に居住している人を対象に実施した「SUUMO住みたい街ランキング2021 関西版」を発表した。総合1位になったのは、4年連続で西宮北口駅。また2位から4位までのランキングも、4年連続同じ顔ぶれになった。今回は、このランキングTOP30のうち、上位10位の街をいくつかピックアップして深掘り。根強い人気の理由を探ってみる。
「SUUMO住みたい街ランキング2021 関西版」TOP30の駅の家賃相場
順位/駅名/家賃相場(代表的な路線名/駅の所在地)
1位 西宮北口6.00万円(阪急神戸線/兵庫県西宮市)
2位 梅田 7.55万円(地下鉄御堂筋線/大阪府大阪市北区)
3位 神戸三宮7.15万円(阪急神戸線/神戸市中央区)
4位 なんば 6.95万円(地下鉄御堂筋線/大阪府大阪市中央区)
5位 天王寺 6.70万円(大阪府御堂筋線/大阪府大阪市天王寺区・阿倍野区)
6位 夙川 5.70万円(阪急神戸線/兵庫県西宮市)
7位 千里中央5.80万円(北大阪急行/大阪府豊中市)
8位 岡本 5.60万円(阪急神戸線/兵庫県神戸市東灘区)
9位 京都 6.30万円(JR東海道線/京都市下京区)
10位 江坂 7.25万円(地下鉄御堂筋線/大阪府吹田市)
11位 草津 5.70万円 (JR東海道本線/滋賀県草津市)
12位 宝塚 6.20万円 (阪急宝塚線/兵庫県宝塚市)
13位 芦屋川 6.30万円(阪急神戸線/兵庫県芦屋市)
14位 大阪 7.45万円(JR大阪環状線/大阪府大阪市北区)
15位 京都河原町 6.50万円(阪急京都線/京都府京都市下京区)
16位 桂 5.35万円(阪急京都線/京都府京都市西京区)
17位 嵐山 4.05万円(阪急嵐山線/京都府京都市右京区)
18位 御影 5.50万円(阪急神戸線/兵庫県神戸市東灘区)
19位 新大阪 6.78万円(地下鉄御堂筋線/大阪府大阪市淀川区)
20位 高槻 6.10万円(JR東海道本線/大阪府高槻市)
21位 神戸 6.60万円(JR東海道本線/兵庫県神戸市中央区)
22位 本町 7.60万円(大阪メトロ御堂筋線/大阪府大阪市中央区)
23位 高槻市 6.00万円(阪急京都線/大阪府高槻市)
24位 烏丸御池 6.40万円(地下鉄烏丸線/京都府京都市中京区)
25位 烏丸 6.50万円(阪急京都線/京都府京都市下京区)
26位 姫路 6.00万円(JR山陽本線/兵庫県姫路市)
27位 明石 5.55万円(JR山陽本線/兵庫県明石市)
28位 南草津 5.50万円(JR東海道本線/滋賀県草津市)
29位 心斎橋 7.30万円(地下鉄御堂筋線/大阪府大阪市中央区)
30位 豊中 5.20万円(阪急宝塚線/大阪府豊中市)
30位 西宮 6.10万円(JR東海道本線/兵庫県西宮市)
西宮北口駅周辺の風景(写真/PIXTA)
総合1位は西宮北口駅。総合1位は4年連続で、「シングル女性」と「夫婦のみの世帯」「夫婦+子ども世帯」のライフステージ別のランキングでも首位になり、安定の人気ぶりだった。
関西の最大ターミナルである梅田へのアクセスへの良さに加え、最寄りである阪急電鉄は住宅開発とともに発展してきたという歴史的背景もあり、沿線は住環境の整備が進んでいる。西宮北口駅は、阪神大震災後の再開発のほか、阪急西宮スタジアム跡地を活用した「阪急西宮ガーデンズ」などの大規模商業施設が充実。阪急沿線ならではの阪急百貨店のほか、学生や若い世代から目の肥えた年配の方まで満足できるおしゃれなお店も多い。
一方で今年は「穴場だと思う街(駅)ランキング」でも、西宮北口駅は3位に。昨年の6位、一昨日の5位から順位を上げている。西宮北口の家賃相場は、6.00万円。交通や生活利便性の高さに対し家賃や物件価格、さらには買い物や飲食などの日常生活に関わる物価も含めてコストパフォーマンスのいい街であるとの認識が強くなっていることがうかがえる。
また、阪神大震災の記憶が残るこの近辺の住民の中では今も、家を選ぶとき、高層階では非常時に水を運ぶことができるのかなど、災害時のことを考慮する人も多い。西宮北口は従来、子育て環境のよさがその人気の大きな要因だったが、新型コロナウイルスの影響を受けた今年のランキングでは、こうした非常時にも、遠出をしたりせずとも近場で必要な用事をすませることができる便利さが、大きく評価されたようにも思われる。
夙川駅(写真/PIXTA)
夙川駅は、2年連続の6位。夙川駅は、テレワーク実施者によるランキングでは3位に入っている。
1位の西宮北口駅とともに所在地である兵庫県西宮市は、「住みたい自治体」ランキングで3年連続1位。夙川と西宮北口は隣駅で、特急の停車駅だ。梅田方面にも神戸方面にもアクセスがよく、商業施設やおしゃれな飲食店も充実しているが、「日本桜名所100選」にも選ばれている夙川河川敷の桜並木の存在もあり、緑の豊かな印象も受ける。交通や生活利便性の高さと“都会”すぎない環境を両立できることは、ともすれば気持ちがふさぐこともあるテレワーク勤務のうるおいにもなってくれるだろう。
江坂駅(写真/PIXTA)
10位の江坂駅は、大阪の大動脈である大阪メトロ御堂筋線沿線で、2位の梅田駅には約11分とすぐ。駅の周りはにぎやかな繁華街で、飲食店もかなり充実しており、遅い時間に帰る人にも便利なことから、大阪に転勤してきたビジネスパーソンなら、周囲から家探しの場所として真っ先におすすめされたという人も多い。
穏やかな気候で暮らしやすい草津、今後の開発も期待の高槻草津駅前(写真/PIXTA)
11位の草津駅は、滋賀県民が選ぶ住みたい街(駅)ランキングではトップ。穴場だと思う街ランキングでも、昨年の11位から大きく浮上し2位になっている。
新快速の停車駅で、大阪駅まで1時間以内、京都駅まで30分以内で直通している。所在地である草津市の玄関口で、商業施設などの充実ぶりが滋賀県のなかでは屈指の繁華街だ。東海道新幹線を利用する人なら、冬になると滋賀県は米原あたりの降雪で新幹線が停車したといったことを耳にすることが多いが、草津市は県南部に位置するため、雪は比較的少なく。一方で夏は涼しく、穏やかな気候で知られている。暮らしやすさは間違いないだろう。
高槻駅前(写真/PIXTA)
20位の高槻駅は、大阪駅と京都駅までともに約15分と、交通アクセスは抜群だ。23位の高槻市駅とは、駅間距離が約700mで、間に暮らせば実質、JRと阪急の2路線が利用できる。
駅周辺は百貨店など商業施設が充実するほか、高槻市までの間にはアーケードの商店街「高槻センター街」もあり、生活利便性も高い。また、駅前にある関西大学 高槻ミューズキャンパスの中には児童図書館があるほか、2019年に開業した弥生時代の遺跡を活かした「安満遺跡公園」など公園の数も多く、親子が安心して遊べるスポットにも事欠かない。
現在、JR京都線(東海道本線)高槻駅と隣の島本駅の間で新駅の開発が検討されている。それとともに周辺エリアの市街地整備も計画されているほか、2023年度に全線開通予定の新名神高速道路のインターチェンジに付随する道路などの事業化などが予定されており、今後さらに交通や生活の利便性向上が見込まれている。どのように発展していくのか楽しみな街だ。
コロナ禍で生活に否応無しに大きな変化がもたらされることになったが、変化の中で得たこれまでにない観点から、住んでいる街や住みたい場所の新たな魅力が発見されることもある。部屋探しの際に、自分が何を重視するか。それを改めて見極めることが、長く満足して住める部屋が見つかることにつながるのかもしれない。
●調査概要
【調査対象駅】「SUUMO住みたい街ランキング 関西2021」TOP30の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2020/12~2021/2
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している