
10万円 / 21.65平米
日比谷線・東急東横線「中目黒」駅 徒歩12分
□賃料が下がり、礼金が無しになりました!
中目黒の閑静な住宅街の中に、つい先日に完成した新築建物の1階部分。ミニマルなデザインがそそる、女性限定の小さなワンルームをご紹介します。
建物が旗竿状の敷地に立っているため、アプローチに無機質な階段がどーんと置いてある、ユニークなつく ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
65歳からの部屋探しを支援するR65が、全国の「65歳以上」と「20~30代」を対象に、65歳以上が住宅難民になりやすいことについて調査したところ、意識にギャップがある実態が浮かび上がった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題」に関する調査結果を公表/R65
実は、高齢者は賃貸住宅を借りづらいという現実がある。年金収入だけで貯蓄を取り崩すなどにより家賃が払えなくなるリスクに加え、高齢になると火の不始末による火災などのリスクが高くなり、さらに単身者の場合は孤独死のリスクも生じるなど、貸主が高齢者に貸すことを敬遠するといったことがあるからだ。
内閣府の「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」(平成30年度)によると、「住まいに関して不安と感じていることがあるか」と聞いたところ、60歳以上の持ち家層では24.9%が「ある」と回答したのに対し、60歳以上の賃貸住宅層では36.5%が「ある」と回答した。賃貸住宅層のほうが不安を感じている人が多いのだ。
調査で住まいに関して不安を感じている賃貸住宅層に、具体的にどのような点を不安に感じているかを聞くと、「高齢期の賃貸を断られる」(19.5%)、「家賃等を払い続けられない」(18.2%)を挙げている。このことからも、高齢期に賃貸住宅を借り続けることが難しいと感じている人が多いことが分かる。
その実態を具体的に調べたのがR65の調査だ。実際に「不動産会社に入居を断られた経験があるか」を聞くと、全国では23.6%が「はい」と回答した。関東圏に限ると断られた経験がある人は27.9%にまで上がる。さらに、断られた経験の回数を聞くと、「1回」という人が半数近くになるが、「5回以上」という人も13.4%(関東では17.6%)もいた。
出典:R65「『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題』に関する調査」より転載
20~30代では、高齢者が賃貸住宅を借りづらい現状を知らない人のほうが多い次に、20~30代に、こうした「65歳以上がほとんどの賃貸住宅を借りられない現状を知っているか」聞いたところ、「はい」という回答が65歳以上では64.2%だったのに対して、30代では41.4%、20代では35.6%とその差がかなりあるという結果になった。
出典:R65「『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題』に関する調査」より転載
こうした現状を知った20~30代は、「高齢者の受け入れはリスクが伴うのでしょうがない」53.8%(とてもそう思う16.2%+まあそう思う37.6%)と思うと回答する一方で、「年齢を理由に住まいを選択できないことはおかしい」(63.0%)、「将来のことを不安に思う」(67.8%)、「社会課題としてもっと周知されるべき」(72.7%)などの問題意識も高めている。
出典:R65「『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題』に関する調査」より転載
高齢者向きの賃貸住宅を探すには?高齢者が住みやすい賃貸住宅は、貸主が入居を拒まないだけではなく、立地のアクセスのよさや段差などがないバリアフリーな建物であることが求められる。となると、部屋探しはなかなか大変だ。
公的な住宅としては、UR都市機構のUR賃貸住宅の高齢者向けの賃貸がある。また、国土交通省では、住宅確保要配慮者(高齢者や障がい者、低額所得者など)の入居を拒まない賃貸住宅(=セーフティネット住宅)を登録し、「セーフティネット住宅情報提供システム」によって物件を検索できるようにしている。しかし、数は十分ではない。
民間の不動産会社やポータルサイトなどでも、高齢者向けの賃貸住宅を探しやすいようにしている事例は多い。さらに、貸主の不安を払しょくするような仕組みを提案したり、貸主の意識を変えるように啓蒙したりという活動をしている事例もある。子ども世帯が親世帯の部屋探しを支援することによって、高齢者がこうしたサイトに出会えるようにサポートすることも大切だろう。
そうはいっても、高齢者の希望条件に合う賃貸住宅は、まだまだ少ない。これからは高齢化がさらに進み、多様性を受け入れる社会にもなっていくはずだ。それに対応した仕組みづくりや意識改革がますます求められる。部屋探しに苦労する人を、少しでも減らせるようになっていってほしいと切に願う。
「海洋プラスチックごみ」問題の国際的な動向に合わせ、2020年7月からレジ袋の有料化がスタート。SDGsにも「海の豊かさを守ろう」の目標があり、ここ数年特に関心が高まっています。
そもそも、海洋プラスチックごみをめぐる問題や、レジ袋有料化から1年たった現在の現状、日本での取り組みは、どうなっているのでしょうか。海のごみ問題の解決に向けて活動する一般社団法人JEAN(ジーン)の小島あずささんと吉野美子さんに話を伺いました。
「海洋プラスチックごみ」とは、地上から海に流れ出たプラスチックのごみのこと。「G7エルマウ・サミット」(2015年6月)でG7サミットとして初めて世界中で向き合うべき課題として取り上げられ、その後、実効的なアクションを取らなければ2050年までに魚の量を上回ると警鐘を鳴らした「世界経済フォーラム」(2016年1月)、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにすることを共有した「G20大阪・サミット」(2019年6月)など、近年、国際枠組みへの議論が高まっています。
「こうして聞くと最近の問題のようですが、決してそうではありません。プラスチックが生まれた100年以上前から始まっていたのです」と話すのは、30年以上、海洋ごみ問題の解決のためにさまざまな取り組みを行ってきた一般社団法人JEANの小島あずささんと吉野美子さんです。
小島あずささん(左)と吉野美子さん(右)。小島さんは友人と日本で初めてのエコバッグをつくったのを機に本格的に活動をスタート。吉野さんは川の環境に関する活動をしていたことがきっかけでこの仕事を始めました(写真提供/一般社団法人JEAN )
「プラスチックに関係なく、『海のごみ』問題は昔からあったのですが、『海岸の景色を台無しにしている』『拾えばなんとかなる』としか見られていませんでした。その傍らで1900年代のはじめに世界初のプラスチック『フェノール樹脂』が誕生。安価で成形しやすい夢の物質として先進国を筆頭に技術開発がされ、たくさんの種類と量が市場に出回るように。人々が使い捨てることで、ごみが一気に増えていきました。そんななか、約10年前から『マイクロプラスチック』が人体や環境に影響があるのではと懸念されるようになり、研究者たちが注目し始めたんです」(小島さん)
生活の場から意図せず海に流出するプラスチックの現状マイクロプラスチックとは直径5mm以下の微小なプラスチックのことで、もとから小さくつくられ、洗顔料や歯磨き・化粧品・柔軟剤などに含まれる「一次マイクロプラスチック」のほか、プラスチックごみが劣化して砕けた「二次マイクロプラスチック」があります。プラスチックは自然に還ることはないため、いったん、処理されずに環境中に出ると、空気中や海洋中に漂い、半永久的に蓄積するといわれています。
「マイクロプラスチック」は北極や南極でも観測されていて、2020年、オーストラリアの研究者が「世界の深海の底に推定1400万トン以上、堆積している」と発表しました(写真/PIXTA)
「グラウンドやショッピングモール、玄関マットなどで使われる『人工芝』は、足でこすれて千切れてしまうと、雨風で移動してごみになっていきます。靴底や自動車のタイヤなどは摩耗すると『マイクロプラスチック』に。駐車場などに置きっぱなしになったカラーコーンの欠片が雨風にさらされて川に流出することもあります。
また、区市町村のルールを守ってごみを出しても、カラスに散らかされることがあるでしょう。道で前を歩いている人が、ポケットやバッグから何かを取り出すときに一緒にしまってあった飴の空き袋などを落とすのを見たことはありませんか。
このように、私たちの暮らしから意図しないプラスチック散乱ごみが生まれているんです。
1人が出す量は少なくても、これが10人・1000人・日本・世界まで広がり、さらに何十年も続いてきたのを考えれば、とてつもなく大量だと分かるはずです」(吉野さん)
私たちが日常で“燃えるごみ”“燃えないごみ”等と仕分けて集積場に出すものについては各自治体で処理されます。しかし、ごみとなるプラスチックが存在する限り、どうしても“意図しない散乱ごみ”は生まれてしまいます。
「道路の排水用の側溝には、タバコの吸い殻など道端のごみも雨に流されて入り込みますが、下水道の方式によっては処理場を通らずそのまま川に放流されます。汚水と合流して下水処理場を通る方式でも、流量が増える大雨のときには、処理場の能力を超える分の下水は手前でオーバーフローさせて直接川に流す仕組みになっていますので、ごみも一緒に川から海へということになります」(吉野さん)
日本の海辺で多いのは、国内のごみ。日本のごみが海流に乗って北西ハワイなどを経て北米西海岸の方へと流れていき、数年後に南太平洋の島に流れ着くということも(写真/PIXTA)
便利な生活の果てに出たプラスチックごみが、たくさんの生物を傷つけている2019年3月、フィリピンの海岸にクジラが打ち上げられ、胃から40キロものビニール袋が見つかったニュースが記憶に残っている人もいると思います。「日常生活から出た意図しないごみが『海洋プラスチックごみ』になっていることを考えると、遠く海外のクジラのお腹から見つかったプラスチックの破片が、自分に関係あるものではないと誰も言えない」と吉野さんは話します。
ある研究者の推計によると海洋に出るプラスチックごみは年間800万~1300万tともいわれていて、汚染は深刻。前述のクジラの事例だけでなく、海鳥がエサと間違えてライターやペットボトルのフタを飲み込んだり、漁網にウミガメが絡まったり、魚のお腹から「マイクロプラスチック」が見つかったりしています。
(写真/PIXTA)
「ウミガメが漁網に絡まって死んでしまうこともあるんです。海で使う道具類もすっかり天然材料からプラスチックに置きかわりました。一度、絡まると簡単には外れません。アザラシも海洋プラスチックごみが原因で死んでしまうこともあります。実は1960年代から一部の研究者の間でこうした被害の報告があったんです。注目されなかった月日を『失われた50年』と受け止めています」(小島さん)
「海洋プラスチック」は私たちの健康にも悪影響を及ぼす可能性があるといいます。プラスチックにはもともと化学物質が添加されていることもありますし、後から吸着する性質もあり、マイクロプラスチックを誤飲した生き物を経て、化学物質も人体にめぐってくることになるといわれています。
大切なのは無駄な消費を減らし、長く使えるものを熟考して買うことお二人は「レジ袋有料化は海外に比べれば遅まきの政策でしたが、人々の意識を変えるきっかけをつくった一面はあるのでは」と言います。この“意図しないプラスチックごみの散乱”が日常にあふれている状況を変えるには「シンプルにプラスチックの“消費”を減らすことが大切」と小島さんが言うように、レジ袋の有料化はプラスチックの絶対数を減らし、プラスチックの使い方への関心を高めていく意味では、長い目で見たときに有効な効果を発揮していくように思えます。有料化から4カ月経った11月時点では、環境省や経産省が行ったWEB調査で「1週間、レジ袋をつかわない人」が3割から7割に増加したというデータも。
(写真/PIXTA)
レジ袋に限らず、「便利だからと使い捨てしないことも必要です。長く大切にできるものを選びたいですね」と小島さんは続けます。
また、プラスチック製品といえば、「竹ストロー」や「蜜蝋ラップ」といった代替品もありますが、小島さんと吉野さんは、そもそも「使わない派」なのだそう。なるほど、代替品を探すのではなく、使わないというのも選択肢です。
「飲みものはストローなしで飲める場合も結構ありますし、残った食べものはフタつきの耐熱ガラス容器に入れておくと温めなおしてそのまま食卓にも出せますし、食べ切ってしまえばラップをかけてしまう必要はありません。完ぺきを目指すと窮屈になるので、『こうすれば必要なくなる』というのをゲーム感覚で探すと面白いのではと思います」(吉野さん)
日本と海外の意識の違いに目を向け、これからのあり方を考える日本は世界に類を見ない“プラスチック大国”。
「街の至るところに自動販売機やコンビニがあるのは日本ぐらい。袋の中でわざわざ個包装されたお菓子は、そうした習慣のない海外の人からは不思議な光景にさえ見えるでしょう」(吉野さん)
「『海洋プラスチックごみ』問題は世界共通ですが、日本は新しい素材によってどれほどごみが生まれ、どう処理していくかを、予防原則にのっとって考えてこなかったのではと思います。
このような状況で、日本は年間約150万トンもの廃プラスチックを再生材料として海外に輸出していましたが、2017年に主な輸出先だった中国が輸入制限を打ち出し、廃プラスチックの行き先が大きく狭まりました。急ぎ対応を迫られるなか、同じように廃プラスチックを輸出していた先進各国の中で、EUがいち早く『サーキュラー・エコノミー(循環型経済)におけるEUプラスチック戦略』を発表しました」(小島さん)
アメリカの環境NGOが主宰する活動を契機に始まったJEAN。世界中で一斉に展開される国際海岸クリーンアップを日本で取りまとめています。海のごみには食品の包装・容器類がとても多いそう(写真提供/一般社団法人JEAN)
EUでは企業が製品開発をする際にそもそも地球に負荷をかけないという視点で開発が行われており、消費者も、商品が環境配慮がされているものであるという点に魅力を感じるといいます。
「日本でも企業はほとんどが何らかの形で海外との接点をもっていますので、プラスチックに関しては企業活動の基準を国際基準にシフトすることはいまや必然です。使用量の削減、品質を低下させない水平リサイクル、使い捨てにしないことと温室効果ガス排出削減とを両立させるリサイクルの実用化など、今まで脇に置いてきたことに対し、企業は枠を超えた挑戦を始めています」(吉野さん)
「JEANが行う講義やワークショップにも、『自分たちの問題』と石油・プラスチック系の企業から申し込みをいただくこともあります。最近では、同業他社が連携してSDGsに取り組むことも増えています。産業界全体でSDGsの気運が高まっていて、旧来のあり方から脱却しはじめているといえそうです」(小島さん)
JEANでは小中高の学校や大学のほか、自治体や企業から依頼を受けて海洋ごみ問題についての講義・ワークショップ・海辺のクリーンアップを実施。とくに子どもからは活発な意見が聞かれます。写真は国際海岸クリーンアップのごみ調査(写真提供/一般社団法人JEAN)
レジ袋有料化、環境に配慮した商品開発、SDGsの気運の高まり……少しずつ海洋プラスチックごみをめぐる状況は変化しつつあります。そうしたなかで吉野さんは、プラスチックの代替品として注目を浴びている多種多様な「生分解性プラスチック」は、何に使うかを注意深く見極める必要がありそうだと言います。「分解までの間の環境負荷はなくならないのに、分解するからポイ捨て可になってしまった失敗例もありますし、リサイクル可能な分解しないプラスチックとの混在は双方に不利になります。ごみになってからの分別や、種別の回収処理ルートは誰が担うのでしょう。何より根本の問題が解決しないまま『使い捨て』に頼り続けるのは、本末転倒だと思うのです」。対策として打ち出したものが、新たな環境汚染につながる可能性を秘めている。一つ一つ、慎重に選択肢を選び取っていく必要がありそうです。
先のことまで考えてものを買うこと・無駄に使っているものを見直すことは、少し面倒に見えますが、日本が便利さに甘え忘れていた本来のあり方といえるでしょう。小島さんと吉野さんのお話は、私たちが見過ごしてきたことへの戒めと、シンプルで心地よい暮らしへのメッセージのようでした。
●取材協力
一般社団法人 JEAN
環境問題に関心が高いヨーロッパ、食品ロスは日本よりもずっと以前から問題視されてきましたが、コロナ禍でさらに関心が高まっています。外出規制やマスク着用という不自由で不安な生活がすでに1年3カ月続いているなかで、自分の生き方や地球環境に目を向ける時間が増えたからです。そんななか、ヨーロッパ全土で食品レスキューアプリ「Too Good To Go」が大流行中。筆者が暮らすフランスから、食品ロス対策の最前線をお伝えします。
地球温暖化を身をもって体験したパリジャン&パリジェンヌが動き始めた!
10年前、パリの住宅にはクーラーはほとんどありませんでした。毎年夏でも寝苦しい日は数日、日差しは強くても日陰は涼しく心地が良かったのです。しかし、数年前から30度以上の暑い日が続き、扇風機の売り上げがグッと伸び、冷風機(水を機械に入れて冷風を出す仕組みで、エアコン・クーラーのように室外機を設置しなくて良いタイプ)というものまで販売されるようになりました。さらに、去年の冬は雪がほとんど降らなくなり、12月になってもダウンジャケットを着なくても過ごせるように。パリの人々も身をもって地球温暖化を体験しています。
そんな危機感を募らせるフランスの人々が起こした行動が、本来食べられる食品が捨てられてしまう「食品ロス問題」に立ち向かうこと。現在、生産された食品の3分の1が廃棄されているといわれ、これは世界規模で膨大なコストがかかるだけでなく、気候変動にも大きな影響を与えているのです。自分たちの毎日の生活に深く結びついている「食」からならなんとかしていけるかも!と考えたのです。
2016 年 2 月、フランス政府は世界でいち早くスーパーマーケットの食品廃棄を禁止する法律をつくりました。スーパーマーケットはこれらの食品を慈善団体やフードバンクに提供をすることで、食べることに苦労している人々に毎年さらに何百万もの無料の食事を提供できるようになりました。SDGs(持続可能な開発目標)の「目標2:飢餓をゼロに」にも効果を発揮しています。
本来ならスーパーマーケットの食品は賞味期限が切れたら次の日には捨てられてしまう(写真撮影/松永麻衣子)
ほかにも、こんなことも行われています。
■国連気候変動会議COP 21は、約 100 のレストランに 対して100,000 個の「持ち帰り用」ボックスを配布し、客が食事の残り物を持ち帰ることができるように。SDGsの「目標12:つくる責任、つかう責任」を推進
■フランスでは、学校の食堂で準備された食事の 3 分の 1 は食べられないままです(フランスの給食はビュッフェスタイルなため、子どもたちは好きなものだけをよそいます)。この無駄をなくすためにパリ市では学校に対して、「学校それぞれでドレッシングを手づくりにすることでサラダをもっと美味しく食べられるようにしたり、果物を切り分けて食べやすくしたりするなど、子どもたちに給食を好きになってもらう努力が必要」と食品管理を呼びかけています。
■パリ市は、家庭での食品廃棄物をリサイクルすることを推奨しています。リサイクルボックスを配布するなどし、分別ゴミとして収集された後は、肥料に変換されるか、熱と電気、またはバス用のバイオ燃料に変換されます。
フランスのスーパーマーケットやマルシェでは、以前からエコマインドがあった日本ではレジ袋が有料化したのは昨年7月からですが、フランスは数年前からすでに取り組んでおり、スーパーオリジナルのエコバッグの販売に力を入れています。特に、「MONOPRIX」のエコバッグは、定期的に新作を出しており、コレクターアイテムにもなっています。
1~1.5ユーロのMONOPRIXのエコバッグ。日本でも大人気。お土産にも喜ばれています(写真撮影/松永麻衣子)
食品ロスが話題になる前から日常的に行われていたことも、食品ロスを減らすのに効果的だと見直されるようになりました。
例えば、パリのマルシェでは1ユーロプレートをよく目にします。屋台の端に、まだ美味しく食べられるけれど鮮度がこれから落ちてしまう野菜や果物が1ユーロプレートに並べられています。例えば、ラディッシュ2束1ユーロ/葉は枯れてしまっているけれど、実はまだまだ美味しい。ライム6個1ユーロ/皮の部分がちょっとしぼんできているけれど、果汁は十分美味しい。キウイ8個1ユーロ/熟して柔らかいけれど、ジャムにしたりジュースにするには美味しい。などなど。
店頭でも食品ロス削減運動。見た目は悪いけれど、まだまだ美味しく食べられる食品の“福袋“(写真撮影/松永麻衣子)
フランスの食品を量り売りするシステムは、パックやブーケなどとは違って余分に買いすぎてしまうことを避けられます。フランスの値札はほとんどが<1kgいくらか>と表示されていますし、マルシェではもちろんスーパーでもバナナ1本から買うことができます。
ヨーロッパで食品レスキューアプリ「Too good To Go」が大流行! 使ってみましたフランス政府がスーパーマーケットの食品廃棄を禁止する法律をつくった2016年と同年3月、「too bood to go」 というフードレスキューのアプリがリリースされました。2015年にデンマークで創業、現在15カ国で展開され、3900万人以上のユーザーを抱えています。2016年から今までに7650万食がレスキューされました。
レストランやスーパーマーケットなどで賞味期限切れ間近だったり、パッケージが破損してしまったりといった“捨てるにはもったいない食品/食べるには問題ない食品”が元の販売価格の3分の1程度で手に入ります。
食品レスキュー・アプリ「Too good To Go」の画面(写真/アプリ画面より)
アプリをインストールしたら、国を選び、自分がいる場所から加盟店を表示し、食品ロスのある店舗を探します。半径3km以内、5~30kmなど範囲を指定して検索できます。筆者は徒歩圏内で利用したいということで、3km半径に設定しました。
レスキューして欲しい食品があると“緑の●”、残り1袋だと“黄色い●”、ないときは”グレーの●”と一目瞭然。お気に入りのお店をまとめて見られたり、アプリがオススメしてくれたり、とても使いやすいです。
予約をした後はネット支払い、指定時間に店で受け取り、アプリで受け取り確認をして終了。“食品ロス福袋”は何が入っているか分からないので、サプライズ感もあって楽しかったです。
ただ、中身はヨーグルト4個パックなど一人暮らしでは食べきるのが難しいものもあり、食品ロスにつながってしまう可能性がある点は注意が必要です。筆者は5人家族、食べ盛りの子どもが3人いるので3分の1の価格で食品が手に入るのはとてもありがたいです。何が入っているか分からなくても、週に1回の利用なら、さまざまなメニューに工夫して使ってみることができ、楽しみながら食品ロス削減に貢献できそうだと思いました。
お気に入りのお店の”今日のレスキュー”のオファー画面。12ユーロ相当の食品が3.99ユーロだったり、とにかくオトク。決められた時間帯に取りに行きます(写真撮影/松永麻衣子)
この様に”●”でお店が表示されます。高齢者も多く使っているそう(写真撮影/松永麻衣子)
4店舗で“食品レスキュー”した結果は?加盟店には大型スーパーの「カルフール」や「モノプリ」、人気パン屋の「ポール」や「エリックカイザー」、Bioショップの「ナチュラリア」などのチェーン店が多いのも魅力です。
今回はスーパーを2軒、新しいスタイルのデリバリー専門スーパー1軒、Bioショップ1軒の計4軒で“食品レスキュー”を試してみました。
まずは食品レスキューを率先して行っている「カルフール」。我が家から徒歩圏内になんと5軒もあるので、使い勝手も抜群です。
レジに並ぶことなくレジでスマホを見せると担当者が奥へ。5分ほど待ち、福袋をゲットしました(写真撮影/松永麻衣子)
(写真撮影/松永麻衣子)
15ユーロ相当の食品を3.99ユーロで購入できました。
中身は、賞味期限ギリギリのお菓子、鶏ささみ(下味をつけて次の日に調理)、マーシュ(サラダにするとおいしい野菜・次の日に完食)、食パン、クロワッサン、パン・オ・ショコラ、ブレッツェル(全て次の日に完食)。ちょっと乾いたフヌイユ(野菜・冷蔵庫で保管して1週間以内に完食)、傷のあるりんご(当日美味しく食べました)、ちょっと傷んだメロン(当日食べましたが美味しくなかった)という結果でした。
次は我が家のお気に入りのスーパー「SUPERU」。行くたびに、店員がレスキュー商品らしきものをマジックバッグにかなりの品目を詰めているのが気になっていました!
シンプルな袋は、持つとずっしり重かった(写真撮影/松永麻衣子)
(写真撮影/松永麻衣子)
15ユーロ相当の食品が3.99ユーロ。25ユーロ分あるのでは?と思う充実の内容でした。
全てが賞味期限ギリギリで、ハム2パック(次の日に完食)、七面鳥(当日スープに)、生ソーセージの盛り合わせ(冷凍して3日後に白いんげんと煮込みました)、キッシュ(冷凍して後日完食)、ムサカ(東地中海沿岸の伝統的な野菜料理・当日完食)、サンドイッチ(次の日に完食)、ヨーグルト類(次の日完食)。肉類が多かったのでとても満足でした。
3軒目は、新しいスタイルのデリバリー専門スーパー「Dija(ディジャ)」。通常は商品を購入すると配達人が商品を届けてくれますが、食品レスキュー商品は消費者が特定の場所に取りに行きます。倉庫のようなところに自転車が数台、配達人が待機していました。
紙袋にはあらかじめパンドゥカンパーニュと食パンが入っていて、お客が来るとそこに冷蔵食品を詰めて渡してくれます。受け渡しがとてもスピーディーです!(写真撮影/松永麻衣子)
(写真撮影/松永麻衣子)
こちらも15ユーロ相当の食品が3.99ユーロ。賞味期限当日だったリヨンソーセージ(冷凍庫で保管し、週末のバーベキューで完食)とフムス(ひよこ豆のペースト状の中東の料理・3日間ぐらいで完食)、と前述のパンが入っていました。パンは賞味期限ギリギリということもありかなり硬く、手を加えないと食べられない状態でした。
ラスト4軒目は、食への意識が高いBioショップ「ナチュラリア」です。Bioショップは全体的にアプリと提携しているお店が多いようです。また、以前からレジ袋や野菜の包みに再生紙を使ったり、ジュースなどの瓶を返却すると瓶代が返金されたりと、食品ロス削減とゴミを減らす呼びかけがされていました。ドライフルーツの量り売りのために入れ物を持参するお客さんも多く、カルチャーが根付いているように感じます。
再生紙のバッグにズッシリと入っていました。買い物客と同じように列に並び、順番が来たらレジでスマホを見せます。“福袋”はレジの横の冷蔵庫に保管してありました(写真撮影/松永麻衣子)
(写真撮影/松永麻衣子)
15ユーロ相当の食品が3.99ユーロ。エシャロット(まだまだ美味しく食べられる状態)、パン(硬くて食べるのを諦めました)、バナナ(ケーキに使いました)のほか、賞味期限切れ当日の鶏肉(次の日にオーブン焼きにして完食)、カマンベールチーズ(1週間ぐらいで完食)、フルーツ入りヨーグルト(2日間で完食)、プリン(次の日に完食)が入っていました。Bio食品は価格が高いので、これだけのものが入っていたら週に1回ぐらいの割合でレスキューしたいと思いました。
デリバリーショップも食品食品レスキューは、デリバリー業界にも浸透しつつあります。
今パリは、コロナ禍による外出制限解除の2段階目の状態です(6月4日現在)。夜の帰宅は19時から21時に伸び、商店と映画館や美術館は全て開き(入場制限があります)、カフェとレストランはテラスのみ営業可能になりました。
コロナ禍でUber Eatsの利用がうなぎ上り、個人事業主登録したドライバーが街にあふれました。しかし、人気レストランの前ではUber Eatsのドライバーがたむろしている雰囲気だったり、ヘルメットをかぶらずに事故を起こしたり、保冷バッグが使い古されて汚かったりと、なんとも雑なイメージが定着してしまっています。
そんな中、「gorillas(ゴリラ)」は“オーダーしてから10分以内でお届け!”を謳い文句にした新しいスタイルのデリバリー専門スーパーです。オーダーが入ったら倉庫で待機している職員が商品を袋詰めし、オールブラックの制服(転んだときのための膝などのプロテクト付き)にヘルメットをかぶり自転車でデリバリーします。
筆者がオーダーしてみると、4分後に商品が届きました。23時までやっているので、21時の外出制限のときに買い忘れなどあっても安心。一人暮らしで病気のとき、ご老人の買い物、などこれからも需要は伸びそうです。
そんな「ゴリラ」の食品ロス削減へのアプローチは、ただ賞味期限切れや鮮度が少々落ちた野菜や果物を安く販売するのでなく、福袋にしたり、素敵なおまけにしてみたりと、ちょっとした工夫で食品ロス削減に楽しく参加できる、というものです。
今回は、バナナとりんご(ゴリラにちなんで(?))でした。
手書きの「ご注文ありがとうございます」カードとエコバッグが付いてきました。こんなスタイルもかっこいいのです(写真撮影/松永麻衣子)
このように、フランス内で食品ロスをめぐる対策はどんどん広がってきています。我が家では、子どもたちと話し合った結果、週に一度はこのアプリを利用して食品ロスを無くすことに貢献しようということになりました。日本でも、食品ロスアプリが登場してきています。みなさんもぜひ使ってみてください!
徳島県徳島市から車で約40分。勝浦川沿いの山間部に広がる上勝町は、「ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)宣言」や「葉っぱビジネス」など、ユニークな取り組みで注目を集めているまちだ。2020年5月、このまちにゴミステーションと宿泊棟等が併設された環境型複合施設「上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)」がオープンした。ごみゼロを体感できるホテルとは、果たしてどんな施設なのだろうか?
「ゼロ・ウェイスト」を発信して、人の交流を生む
上勝町を貫く県道16号沿いにベンガラ色の建物が目を引く「上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)」が突如現れる。上空から見ると「?」マークの形状。「WHY?(なぜ?)」という疑問符を持って、ごみから学び、ごみのない社会を目指す、いわばこの施設の理念を表現しているのだ。「?」の上部はごみの分別所やフロント機能、交流ホール等になっていて、「・」の部分が宿泊施設「HOTEL WHY」だ。
画像提供/上勝町ゼロ・ウェイストセンター
2003年に国内の自治体として初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行った上勝町。それ以来、ごみ収集を行わず、生ごみは各家庭がごみ処理機で堆肥化、そのほかのごみは45種類以上に分別して、ごみステーションに持ち寄っていた。2018年、その取り組みによりリサイクル率は80%を達成した。
「ここは残りの20%を解決するための拠点としての役割も担っています」と語るのは、同施設の運営・管理を行う株式会社BIG EYE COMPANY CEOの大塚桃奈さん。その20%には、オムツ、使い捨てカイロ、靴など、リサイクルの難しいごみが多数含まれている。「そのためには生産者にもアプローチが必要です。例えば花王とタッグを組んで、詰め替え用パウチから遊具用ブロックをつくったのもその一つです」
「この取り組みを通じて、生産者と消費者、県内外の人々の交流の場としての機能も充実させていきたい」ともう一つの目的を語る大塚さん。他の自治体同様に過疎が進む上勝町では、この地域に関わる交流人口の増加が、活性化の必須条件だ。「オープンして間もないですが、教育の一環として福島の高校生の宿泊研修を始め、関東や関西から環境問題に敏感なファミリーなどに利用していただいています」
ごみの分別所に掲げられたパネルで、上勝町の取り組みや施設の紹介をしてくれる大塚さん(写真撮影/藤川満)
施設案内ツアーを通じて取り組みを学ぶそれでは宿泊利用者同様にチェックインから始めていこう。フロントには、町民が中古品を持ち込み、町内外の訪問者が持ち帰り可能な物品が並ぶ「くるくるショップ」が併設されている。持ち帰りは無料だが、ぜひカンパをしておきたい。ここでは年間約9トンもの品々が持ち帰られ、新たな持ち主のもとで再利用されている。
フロントに併設されたくるくるショップ。床にはここに集まった古い陶器の破片が敷き詰められている(写真撮影/藤川満)
一升瓶のケースを積み上げたフロントでは、必要に応じて無添加の石鹸の切り分け、プラスチックを使用していない竹歯ブラシの販売も行う。またウェルカムドリンクとして、循環型能栽培に取り組む農園の豆をローストしたコーヒーも提供してくれる。
フロントにはくるくるショップで前月に持ち帰られた中古品のキロ数が掲げられている。取材時(2021年5月)は4月に491kgの実績があった(写真撮影/藤川満)
使い残しがないように石鹸は必要な量だけ切り分けて提供される。石鹸は無添加で昔ながらの釜焚き製法でつくる神戸の「無添加石鹸本舗」のもの(写真撮影/藤川満)
受付が終わると、施設案内を通じて上勝町の「ゼロ・ウェイスト宣言」の取り組みを学べる「STUDY WHY」ツアー。普段は町民のみに開放されているごみ分別所から順番に施設を巡っていく。
ごみ分別所に回収用のコンテナがずらりと並ぶ姿は壮観だ。各コンテナにはごみの種類がイラストと共に表示され、分別方法を正確に記憶せずとも分かりやすい。またそれぞれに「1kg○○円」と書かれているのも興味を引く。「リサイクル業者が買い取ってくれるものはその入金額、処理に費用がかかるものは出費額として表示しています」と大塚さん。入出金額を表示することで、意識に変化をもたらしそうだ。
「?」の上部にあたるごみ分別所。ごみの種類により区画され、車でも移動しやすい動線になっている(写真提供/Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO)
町民自ら持ち込み45種類に細かく分別されるごみ(写真撮影/藤川満)
町内外の人たちの交流の場となるラーニングセンター&交流センターは、上勝町産の杉の温もりと両側から差し込む温かい日差しが印象的なスペース。杉の柱は「太鼓落とし」と呼ばれる工法で、丸太を二つの材に切り離し、一本のボルトで接合している。つまり余計な材料を使用せず、端材の発生も少なくて済む。しかもメンテナンスもしやすい。
「窓は町内から集まった廃材の窓枠540枚を利用しています。過疎化が進み窓に映る光が少なくなったこの地域を、再び明るく照らす意味も込めています」と大塚さんはその狙いを語る。
ラーニングセンター&交流ホールをはじめ、施設内の構造は廃材が出ない無駄のない工法がとられている(写真撮影/藤川満)
ラーニングセンター&交流ホールにある遊具のブロックは、花王とのコラボで、詰め替え用プラスチック容器をリサイクルして生まれた(写真撮影/藤川満)
コラボレーティブラボラトリーの壁一面にある本棚はシイタケを詰めるコンテナを再利用している(写真撮影/藤川満)
取材時はあいにくの雨。しかしあえて雨樋(あまどい)を設けず、雨のカーテンと雨音を楽しむ仕掛けを体験することができた(写真撮影/藤川満)
リユースの工夫が詰まった客室でゆったり過ごす宿泊体験施設の外観。「HOTEL」の看板も、廃材の農機具などが利用されている(写真提供/Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO)
宿泊体験施設「HOTEL WHY」は全4室で最大16人収容のコンパクトな造り。環境教育プログラムや研修など団体の一棟貸しにも対応してくれる。室内はメゾネットタイプで、窓からは上勝町の山並みやダム湖などを望むことができる。
リビングにあるソファは、かつて上勝町役場が使用していたもの。クッションにはカーテン生地をカバーにしてリユースしている。窓に掛かるカーテンも端切れをつなぎ合わせたもの。説明を受けなければ新品と見間違う出来映えだ。
メゾネットタイプの室内。ウッドデッキが設けられ、外でお茶を楽しむこともできる。テレビはない(写真撮影/藤川満)
端切れをつなぎ合わせたカーテンは、独特の風合いを醸し出している(写真撮影/藤川満)
夕食は「ゼロ・ウェイスト」を実践している町内のマイクロブルワリー「RISE & WIN Brewing Co. 」やそのほかの飲食店へ出向いて楽しむのが基本。ただしお酒を伴う場合は、公共交通機関がほぼないため、「白タク特区」でもある同町の有償ボランティアタクシーを利用したい。
朝食は「RISE & WIN Brewing Co. 」から運ばれてくるベーグルまたはイングリッシュマフィンのセット。パティとなるフィッシュカツは徳島名物で、ほんのりカレー味がする魚のすり身。これにネパールのスパイス・アチャールと上勝名産・柚香(ゆこう)を加えたマヨネーズで味わおう。
徳島名物「フィッシュカツ」をベーグルに挟んで楽しむ朝食例(写真提供/Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO)
各部屋に置かれているごみ分別ボックス。チェックアウトの際に利用者自ら分別を行う(写真撮影/藤川満)
環境教育の場として確立を目指していく「ここでの宿泊体験をさらに充実するべく、さまざまなプログラムの開発にも取り組んでいます」と大塚さん。例えば目の前に広がるダム湖でのSUP体験、ブナ原生林の散策などは、上勝町の自然を手軽に楽しめ、ここを訪れる人の間口を拡げるプログラムだ。
また、大塚さんが「このまちの取り組みの解像度がさらに高まる」と語るプログラムとして、「ゼロ・ウェイスト」に詳しい有償ボランティアタクシードライバーによるガイドツアーなども実施している(3時間7200円)。「このまちには100~700mの間に55の集落があります。なかには日本の里山百選に選ばれた棚田もあり、その保全活動の体験なども考えています」
「ゼロ・ウェイスト」達成と同時に、プログラムの充実によってさらに関係人口の増加を目指す「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」。「広島と長崎が『平和教育の場』なら、上勝は『環境教育の場』として、ごみを通じた多様なコミュニケーションを育み、ゼロ・ウェイストに向けたアイデアを上勝に集めていきたい」と大塚さんは意気込んでいる。
●取材協力
上勝町ゼロ・ウェイストセンター
有償ボランティアタクシー
以前、3Dプリンターの家づくりが進んでいるという記事をご紹介した。あれから2年。今年4月にオランダで世界初の3Dプリンターハウスの賃貸住宅が登場し、入居者が決まったというニュースが飛び込んできた。手掛けたのはオランダの不動産管理会社Vesteda(ヴェステダ)で、94平米、2LDKの平屋の家賃は、月800ユーロ(約10万円)から。
ほかにも、米国では3Dプリンターで建設した建売住宅が登場したり、コミュニティ(複数戸の住宅から成る小さな共同体)が続々と登場したりしているという。Vestedaの担当者と、この分野に詳しい建設ITジャーナリストの家入龍太さんにも3Dプリンターハウスの最新事情を聞いた。
オランダといえば、3Dプリンター先進国のひとつ。前回は政府が積極的に3Dプリンター技術を採用しようと資金面の補助を行い、橋づくりが盛んに行われていることに触れた。
今回ご紹介する3Dプリンターの賃貸住宅を手掛けた不動産管理会社Vestedaは、公的資金である年金貯蓄や保険料を、サステナブル(持続可能)なオランダの住宅用不動産に投資している民間企業。
SUUMOジャーナルの取材にオランダから応じてくれたVesteda社のステファン・デ・ビーさん(撮影/寺町幸枝)
「オランダの先進技術で、サステナブルで、手ごろに提供できる住宅環境を世界に提案していきたいと考えています。私たちが目指すのは、最新技術により、廃棄物を減らし、より手ごろな価格の住宅を実現することです。その住宅の完成形として、全5戸から成る3Dプリンターハウスのコミュニティづくりをつくることにしました。今回完成したのは記念すべき第1戸目です。この『プロジェクト・マイルストーン』では、自治体や大学、民間企業などと連携して取り組んでいきます」と話すのは、この共同イノベーションプロジェクトの旗振り役である、同社のサステナビリティ担当者のステファン・デ・ビーさん。
プロジェクトメンバーは、今回の3Dプリンターハウスが建てられたMunicipality of Eindhoven(アイントホーフェン市)、先端技術を研究するEindhoven University of Technology(アイントホーフェン工科大学)、建設会社のVan Wijnen(ヴァンウィーネン)、材料会社のSaint-Gobain Weber Beamix(サンゴバン・ウェーバー・ビーミックス)、エンジニアリング会社のWitteveen + Bos(ウィットヴェーン+ボス)。
3Dプリンターハウスは多くのSDGsの可能性を秘めている今回完成した1戸目は、全てのパーツを工場でつくり、建築現場で組み立て作業を行った。しかし今後は少しずつ「オンサイト(現場)」での作業へシフトし、最終的な5戸目の家は、必要な機材を持ち込み、パーツの作成から組み立てまですべての工程を“現場で”建てる予定だという。
未来を感じさせる3Dプリンターハウスのフォルム。今回完成した住宅は94平米、2LDKの平屋で、月800ユーロ(約10万円)から(画像提供/Vestas、写真撮影/Bart van Overbeeke Fotografie)
「3Dプリンターを使って家のパーツをつくるためにかかる時間は、合計で120時間(5日間)ほどです。3Dプリンターハウスの魅力は、曲線を描けるなどのデザイン面での<自由度>と、材料の無駄が出にくいことです。サステナビリティを追求した住宅として、3Dプリンターハウスにはたくさんの新しい可能性が秘められています」(デ・ビーさん)
さらに今回使用されたセメントは、3Dプリンターハウスのために特別に開発されたもので、従来のセメントよりもCO2排出量を削減することができるという。
建築基準が厳しい“オランダクオリティ”、海外輸出も視野たった5日ほどの建築期間だが、耐久面や快適性、機能性はどうなのだろうか。
「オランダの建築基準は世界的に見ても非常に厳しい。この3Dプリンターハウスも、もちろん全ての基準を満たしています」とデ・ビーさん。
たった5日でできあがったとは思えないほど美しい仕上がり。オランダの厳しい建築基準もクリアしている(画像提供/Vestas、写真撮影/Bart van Overbeeke Fotografie)
今回完成した家は、今年8月から賃貸住宅として6カ月間の試住が始まる。一般公募から選ばれたのはリタイアしたカップルで、一戸建てやマンションなどいろんなタイプの住宅に住んできた経験をふまえ、住み心地のフィードバックが期待されている。その結果を、今後の3Dプリンターハウスに反映していくとのことだ。ちなみに4月下旬にすでに渡されているカギは“アプリ”だという。
来年5月までに2戸、2025年までに全5戸の建築を目指す。2戸目は2階建てになる予定。今後、さらに価格を抑えるための素材や技術の研究が続けられ、プロジェクトを通して確立された技術とノウハウは、オランダ国内だけでなく、特に住環境の厳しい日本やシンガポールといった海外への輸出も視野に入れているそうだ。
基礎工事を行ったあと、あらかじめ作成したいくつかのパーツを現場に持ち込んで3Dプリンターで溶接するように接合し、家をつくりあげていく。5日間で本体工事まで終了。あとは電気工事や内装工事などを加えれば、すぐに住むことができる
日本でもコロナ禍で実用化が加速一方、建設ITジャーナリストの家入龍太さんによれば、日本でも3Dプリンターを利用した建築物の実用例が続々と登場しているという。
例えば、北海道札幌市では市の基準に沿って建設された公共トイレが、オランダ製の大型3Dプリンターを用いてつくられた。またインド輸出用として3Dプリンターならではの曲線美を利用した「ハイテク型トイレ」の生産も進んでいるという。
家入さんは、「コロナ禍で、ますます3Dプリンターのニーズが高まり、導入が進むだろう」と話す(写真提供/株式会社建設ITワールド)
さらに、ゼネコン各社は本格的に建造物への3Dプリンター製のパーツの導入を進めている。清水建設が都内の「(仮称)豊洲六丁目4-2・3街区プロジェクト」で使用した埋設型の枠はその一例だ。家入さんは「建築業界では、より人手不足が厳しくなるうえ、このコロナ禍で“3密を避ける”必要が出てきました。そのため、現場作業のテレワーク化や、機械による部品生産というイノベーションが進んでいるのです」と話す。
3Dプリンターをオートメーション部品として組み合わせた工場用のロボットの導入も進んでいる。例えば、溶接アームにコンクリートノズルをつけるだけで、3Dプリンター機能を持つロボが完成するのだ。「(設備投資の面で)導入しやすい価格のものが出てきたうえ、質も担保できる製品がつくれるようになった」と家入さん。日本の建築業界における3Dプリンター研究もいよいよ加速度を増し、実用化はさらに進みそうだ。
また、日本で始めての国内の住宅基準を満たした3Dプリンター製の住宅づくりに取り組む企業も登場している。2021年12月には日本初の3Dプリンター住宅が完成する計画で、2022年には30坪300万円で2階建ての住宅デザインも既に意匠出願済とのこと。
セレンディクスパートナーズ株式会社が、兵庫県を拠点に3Dプリンターで30坪300万円の住宅をつくる「Sphere(スフィア)プロジェクト」が2019年12月からスタート(写真/セレンディクスパートナーズ © Clouds Architecture Office)
「私たちは住み心地の良い家を追求しています。それを3Dプリンターでつくっただけ」というデ・ビーさんの言葉が印象に残っている。
特に災害の多い日本では、現状では3Dプリンターの家に対して耐久面や機能面を不安視する声も少なくない。しかし、それらを担保できるだけの技術が進歩した暁には、「住み心地さ」や「自分らしい暮らしのデザインができる」家として、3Dプリンターハウスが積極的に選ばれていく時代が訪れるかもしれない。
3Dプリンターハウスの未来への期待は増すばかりだ。
●関連記事
3Dプリンターで家をつくる時代に! 日本での導入は?
●取材協力
・Vesteda
・セレンディクスパートナーズ
建築ITジャーナリスト・家入龍太(いえいり・りゅうた)
BIM/CIMやロボット、AIなどの導入により、生産性向上、地球環境保全、国際化といった建設業が抱える経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。新しいことへのチャレンジを「ほめて伸ばす」のがモットー。公式サイト「建設ITワールド」を中心に積極的に情報発信を行っている。「年中無休・24時間受付」の精神で、建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。
>建設ITワールド
ジュピターテレコム(J:COM)のグループ会社であるジェイコム少額短期保険が、ミドル世代(30~40 代)の持ち家世帯を対象に「災害、生活への備えに関する実態調査」を実施したところ、災害への備えが不十分という結果が出た。あなたは大丈夫だろうか?【今週の住活トピック】
「災害生活への備えの関する実態調査」を発表/ジュピターテレコム(J:COM)
近年、災害リスクが急速に高まっている。巨大地震が発生する確率は高く、豪雨や台風による浸水被害も甚大化している。これまでの予想をはるかに上回る災害に対して、備えは十分にできているだろうか?
今回の調査で「災害への備えは十分だと思うか」と聞いたところ、「そう思う」つまり備えは十分と思っている人はわずか1.3%しかいなかった。備えが不十分(「全くそう思わない」16.1%+「あまりそう思わない」38.3%)という回答が過半数を占め、「どちらともいえない」が32.1%だった。
さらに、「災害に遭った時の備え」として対策していることを複数回答で聞くと、半数前後の人が「食料、飲料、水の備蓄」や「生活必需品の備蓄」と回答した。いずれも、被災後に命が助かって生活インフラが整うまでの当面の生活のためのものだ。
災害にあった時の備えとして、実際に対策していることを教えてください(回答者 523/複数回答)
(出典:J:COM「災害生活への備えの関する実態調査」より転載)
一方、「転倒防止などの家具の配置」や「避難経路などの確認」といった、命を守るための対策を行っているのは4人に1人程度。被災後の「生活再建のための費用」を保険や貯蓄でねん出する対策をしている人は4~5人に1人程度という結果となった。
命を守れてこそ当面使う備蓄が生かされるわけだし、万一の時に生活再建をするには多額の費用がかかる。こうした備えをするのも重要な災害対策だ。
建物の火災保険に加入している人は8割超えだが、家財は半数以下次に、保険の加入について見ていこう。今回の調査は持ち家世帯が対象ということだが、住宅ローンを借りて家を買った場合、建物の火災保険に加入することが求められる。そのため、建物の「火災保険」への加入率は、84.3%と高くなっている。
生活再建のためには、建物に加えて家の中の家財に保険をかけることも検討したい。その場合は「家財保険」になるが、加入率は44.6%と半数に満たない。もちろん家財は貯蓄で備え、高額となる建物には保険を掛けるという人もいるだろうから、一概にはいえないが、家財保険の認知度が低いという可能性も考えられる。
(出典:J:COM「災害生活への備えの関する実態調査」より転載)
また、「家財保険の対象に含まれるものはどれか」を聞いたところ、「テレビ」(59.7%)、「冷蔵庫」(57.9%)、「洗濯機」(54.9%)などの価格のはる家電を対象と思う人が過半数となる一方、「くつ」(19.3%)、「めがね」(17.6%)、「本」(17.4%)などの日用品などは対象にならないと思っている人が多いことが分かった。
実際は、家具や衣服などの日常生活に使用している動産はほとんど「家財」として扱われるため、くつや眼鏡、本なども家財保険の補償対象となる。
筆者の場合は、眼鏡に意外とお金をかけているので、対象になるのだと改めて認識した。ただし、保険の加入時期によっては対象とならない場合もあるようなので、いずれにせよ家財の対象の範囲については事前によく確認しておきたい。
災害への備え、どうしたらよい?さて、災害への備えはやろうと思えばきりがないほど広範囲に及ぶ。家庭それぞれの事情に応じて、優先順位をつけるのがよいだろう。ただし、まずは命を守ることを優先してほしい。家具の固定やガラスの飛散防止など、できることから始めたい。
また、災害による損失を貯蓄で備えるのか、保険で備えるのか迷うところだ。一般的には、ライフイベントなど予想ができるものは貯蓄で、頻繁に起こらないが起きたら多額の費用が必要になるものは保険で備えるのがよいといわれている。
そういう意味では、災害の備えは保険である程度カバーしておくのがよいだろう。ただし、建物の火災保険では地震による火災は補償されないので、地震に備えるには火災保険に付帯する地震保険への加入が必要だ。また、火災保険でも補償範囲がセットになっているものもあれば、選べるものもある。これから災害が起きる可能性のある「水害」も補償されるかなど、加入する火災保険でどこまで補償されるのか、内容をきちんと確認しておくことが必要だ。
同じ水の被害でも、台風によるもの、地震後の津波によるもの、上階からの水漏れによるものなど、加入している保険によって補償対象が分かれる。保険に入ってさえいれば、すべて補償されるものではないので、上手に活用するようにしたい。
災害への備えをするには、まずはマイホームの災害リスクの程度を知ることが大切だ。そのためにはハザードマップでリスクの程度を確認したり、過去の災害の状況を確認したりしてほしい。災害に対する家庭での備えについては、首相官邸のサイトに詳しい情報があるので、こうしたものを参考にするとよいだろう。「備えあれば憂いなし」だから。
〇首相官邸:災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~
自分の暮らすまちには本屋がない。「それがこんなにつらいことだったとは」と話すのは、絵ノ本桃子さん。自ら千葉県松戸市の八柱にシェア本屋「せんぱくBookbase」を開いたのも、近くに本屋が増えたらいいなとの思いからだった。本ならネット通販で買えばいいじゃない、という人もいるだろう。でもオンラインとは違って、本屋に足を運ぶことで思いもよらない世界との出会いがあったり、子どもにとっては自分の好きなことを見つけるきっかけになったり。本屋は可能性を秘めた場所でもある。「暮らしの延長上で本に出会えるように」という、絵ノ本さんに話を聞いた。■連載【生活圏内で豊かに暮らす】
どこにいても安定した同じものが手に入る今、「豊かな暮らし」とは何でしょうか。どこかの知らない誰かがつくるもの・売るものを、ただ消費するだけではなく、日常で会いに行ける人とモノ・ゴトを通じて共有する時間や感情。自分の生活圏で得られる豊かさを大切に感じるようになってきていませんか。ローカルをテーマに活動するライター・ジャーナリストの甲斐かおりさんが、地方、都市部に関わらず「自分の生活圏内を自分達の手で豊かにしている」取り組みをご紹介します。
芝生の上に大きく「本」と一文字書かれた看板が置かれている。そっとガラスの戸を開くと、こぢんまりとした、でも愛情をたっぷりそそがれていることが伝わってくる本屋さんだった。絵本あり、文芸あり、実用書あり。古本だけでなく、新刊も扱っている。
8名の「店守(たなもり)さん」と呼ばれる店主が本箱を共有しているシェア型の本屋である。海外童話ばかりを置く棚や、絵本の専門店、こだわりの出版社の本だけを扱う棚など、特徴ある本棚が並ぶ。全体を切り盛りしているのが、店長の絵ノ本さんだ。
「本屋をやることに興味のある人たちにここで経験を積んでもらって、新京成沿線に新しく本屋が増えたらいいなと思って始めたんです。実際この店を卒業した方が、新京成線沿いの初富と新鎌ヶ谷の間に新しい本屋さんをオープンされました。私もゆくゆくは自分の本屋をやれたらいいなと思っています」
せんぱくBookbase店長の絵ノ本桃子さん(写真撮影/甲斐かおり)
それぞれの店守さんが月2回、シフト制でお店に入る。これまでに学生、販売員、学校図書館勤務、ミュージシャン、デザイナーと幅広い年齢や職業の人たちが携わってきた。中には現役の書店員もいて、本業では叶わない、自分の好きな本を思い切り紹介しているという。店守の日は、告知も含めて自分のお店のように自由にやってくださいというのが店の方針。そのためルールは最小限に。
さまざまな店守さんの本棚が並んでいる様子(写真提供/せんぱくBookbase)
絵ノ本さんが本屋を始めた理由はいくつかあるが、一番の動機は、冒頭に書いたように自分の暮らすまちに本屋がなかったこと。
「大人一人なら隣町にも行けるし、いろいろ選択肢があると思うんですけど、子育て中は、子どもを抱えてベビーカー押しながらとか、雨の日なんかきつくて。本屋さんって思っていたより自分にとって大きな存在だったんだなと気づきました。たまたま手にした本からモヤモヤ悩んでいたことのヒントをもらったり、刺激を受けたり。子どもにとっても、徒歩圏内に一人で寄れる本屋があるかは大きいなと。親から離れて自分で本を選ぶ力を得ることにもなったり。図書館とはちょっと違います。そう思う人ってほかにもいるんじゃないかなって」
(写真提供/omusubi不動産)
探し始めて出会った、一風変わった不動産会社「せんぱくBookbase」は新京成線の八柱駅から歩いて10分ほどの場所にある。はじめは絵ノ本さん自身が暮らす二和向台付近で物件を探していたが、同じ沿線の八柱に「せんぱく工舎」というシェアアトリエ&店舗があることを知って、「まずはここで始めてみよう」と決めた。
せんぱく工舎がほかにない面白い物件だったからだ。八柱、常盤平エリアの物件を中心に扱うomusubi不動産という一風変わった不動産会社があり、DIYできる賃貸物件やユニークな企画の賃貸物件を扱っている。せんぱく工舎もomusubi不動産のサブリース物件だった。入居者には個性的なお店やクリエイターが多く、自転車屋、スコーンの店、スペインバルなどのお店や工房が入居している。
「表が芝生なので子どもがばっと飛び出していっても安心ですし、入居者同士のイベントがあったり、omusubiさん主催の田植えに参加したり。お隣の店でコーヒーなど買ってうちの店に持ち込んでいただいてもOKにしているんです。今年でオープンから丸3年経つんですけど、子ども連れの若いお母さんや年配の方までいろんな方に来ていただいています」
開店資金は、クラウドファンディングで97人から100万円近くが集まった。
せんぱく工舎の入り口(写真撮影/加藤甫、川島彩水)
せんぱくBookbaseがある八柱エリアには、近年個性的な店が増えている(写真撮影/甲斐かおり)
じわじわと、まちの人たちとつながって手づくりの木製の棚には、ほどよく空間を交えながら多彩な本が並んでいる。各店主の棚以外は、店長の絵ノ本さんの選書がメイン。装丁の美しい本、定番の絵本。店の奥には和室があり、小さな子どももベビーカーから降りてくつろぐことができる。
店守のコースは月に5000円と7000円。店主の中には、会社勤めで新刊の取り扱いにまで手がまわらない人も多いため、7000円のコースでは、絵ノ本さんがリクエストを受けて新刊の手配を代行する。さらには企画展やフェアなど、店守さんの企画を実施するまでをサポートしたり、絵ノ本さんが各店横断型のフェアを開催したりもする。
「喫茶と読書ひとつぶ」のカードとともに陳列されている(撮影/甲斐かおり)
「喫茶と読書ひとつぶ」と書かれたカードに目がとまった。ひとつぶは、常盤平の駅近くにある喫茶店。
「本好きな人が好みそうな本がたくさん置いてある素敵な喫茶店で、私も大好きなんですけど、そこで本を買えるわけではないので、この店で買えたらいいなと思って置いています。うちの店でひとつぶさんを知る人もいるかもしれないですし」
(写真撮影/甲斐かおり)
大型書店では扱っていないリトルプレス(少部数の出版物)を「この店なら取り寄せてくれるのでは」と訪ねてくるお客さんもいる。実際、そのシリーズ全巻を注文したところ反響があった。今年1月には店守さんの発案で『老犬たちの涙』という犬の殺処分をテーマにした写真展を開催。各店主から推薦書を出してもらい「卒業・入学フェア」も行った。最近は、大学生のボランティア7~8人がイベントの際の店内装飾を手伝ってくれるようにもなった。近くの聖徳大学の学生さんによる取材が縁で、この店で卒業作品の展示を行ったこともある。
「卒業・入学フェア」の様子(写真提供/せんぱくBookbase)
そんな風に、お客さんのリクエストに応えながら、近所の人や店と連携し、新たな企画が持ち上がるような動きが生まれている。この地域のシンボリックな建物である「せんぱく」を店名に入れたのも、「せんぱくの本屋さん」と覚えてもらえれば十分だと思ったから。そんな風にして「せんぱくBookbase」はじわじわ地域に根付いてきた。
絵ノ本さんが伝えたイメージを、学生さんが描いてくれた手書きのフェアの装飾案(写真提供/せんぱくBookbase)
大型書店では、その時売れている本、話題の本を眺めて世の中のトレンド、情勢を知ることができる。一方「せんぱくBookbase」のような小さなまちの本屋では、新旧ランダムに置かれた中から、これはと思う本を見つけて、こっそり自分だけの本を見つけたような気持になる。その時の自分の関心事に気付いたり、思わぬところではっとしたり、知らなかった世界を知ってワクワクしたり。
いまオンライン書店や大規模書店におされて、まちの本屋はどんどんなくなっている。全国の書店数は、20年前に比べて半分になった。ただ、けして数は多くないけれど、パン屋や喫茶店と同じように、小さな個性ある本屋が各地に誕生し始めているのも事実だ。
近所のことを何も知らない絵ノ本さんが本屋をつくろうと思ったのには、もうひとつ理由があった。いま暮らす二和向台は、結婚して初めて暮らすことになったまち。知り合いがほとんど居なかった。
「家で子育てしているだけでは、町につながりができなくて。家の前の八百屋さんで毎日のように買い物したり、娘が店の座敷で遊ばせてもらったりしていたんですけど、ある日、品物がなくなっていて、明日には閉店するんだって知ったんです。目の前の店なのに、何も知らなかったことに愕然として。でも年配の方たちの中にはネットワークがあったらしくみんな知っていたんですよね。その時すごく孤独を感じて。知らない人だらけのまちで子育てしていることが怖くなったんです」
絵ノ本さんの家の前にあった八百屋さん。今は更地になっている(写真提供/せんぱくBookbase)
まちの人たちともっとつながりたい。そういう場所がほしいと思った。さらに、絵ノ本さんと娘さんが気に入っていたもう一つのお店、近所のせんべい屋も閉店したことが背中を押した。
「いつも女将さんや近所の年配の皆さんが座っておしゃべりしていて。このおせんべい屋さんと八百屋さんが、私たちがこの町で暮らしていると感じられる数少ない、まちとのつながりだったんです」
子どもを排除しない働き方絵ノ本さんは、以前、本を流通する取次の会社で働いていた。書店や本のつくり手を応援したい気持で就いた仕事だったけれど、既存の取次のしくみには融通が効かないルールも多く、出版社や書店を困らせることも少なくなかった。個人の力ではどうすることもできず、仕事に疑問と違和感を感じ、辞めた後も図書館に勤めたり、ライターの仕事をするなど本との関わり方を模索してきた。
今は、オンラインで小中学生の学習支援の仕事をしながら、シェア本屋をライフワークとして続けている。
「もちろんしっかり売上は立てていきたいんですが、お金を稼ぐ手段としてだけではなく、ここで私が働いている姿を子どもにも見せたい思いもあったんです。在宅でネットを活用して働くのは便利ですが、仕事している間、どうしても子どもを排除することになっちゃう。でも、ここに居れば子どもも一緒にお客さんや店と関わっていけるのがいいなって。いろんな大人と関わる機会になるし、地域の人たちと関係性ができていく過程を見てもらえる。家にこもって仕事しているだけでは広がらないので」
(写真提供/せんぱくBookbase)
都市に暮らし、絵ノ本さんと同じように感じる人は多いのではないだろうか。それでも心の声に正直に、一歩を踏み出すのは案外難しい。絵ノ本さんはお店を立ち上げ、子育てをしながら店守のみんなと店を運営してきた。いいことばかりだったわけでなく、店主にもいろんな考え方の人がいて、時には意見が食い違うこともある。それでも続けてきた跡に、ご近所さんとのゆるやかなつながりが数多く生まれている。
●取材協力
せんぱくbookbase
不動産仲介会社の業界団体である不動産流通経営協会(FRK)が公表した「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」によると、中古住宅を購入した人の多くが住宅ローンを利用し、住宅ローン控除の適用も受けているが、そのことが物件を探す際に大きな影響を与えているという。どういうことだろうか?【今週の住活トピック】
「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」結果を公表/不動産流通経営協会(FRK)
この調査は、2018年~2020年の3年間に中古住宅を購入した、全国の20歳以上を対象に実施したもの。本調査有効サンプル数は2393件で、購入した中古住宅の内訳は、中古一戸建てが1357件、中古マンションが1036件だった。
まず、購入した中古住宅の築年数を見ていこう。
中古一戸建て(画像の青線)では、築25年以内の住宅の購入が多く、なかでも「築6年~10年以内」と「築1年~5年以内」で高くなっている。また、中古マンション(画像の赤線)も築25年以内の住宅の購入が多く、「築11年~15年以内」「築16年~20年以内」「築21年~25年以内」で高くなっている。価格が手ごろで、かつ築年の比較的新しい住宅を買った人が多いことがうかがえる。
実はFRKが注目しているのは、築古の住宅を購入した人も多いということだ。中古一戸建てでは「築21年以上」を購入した比率が43.0%、中古マンションでは「築26年以上」を購入した比率が31.0%いる。
購入した中古住宅の築年数(出典/不動産流通経営協会「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」より抜粋転載)
FRKが、一戸建てで築21年以上、マンションで築26年以上に注目しているのは、「住宅ローン控除」の適用条件と関係しているからだ。
知っておきたい中古住宅の住宅ローン控除のポイント住宅ローン控除についての認知度は高く、今回の調査でも認知度は91.5%(「どのような制度か具体的に知っている」49.1%+「具体的ではないが制度があることは知っている」42.3%)に達した。
住宅ローン控除についておさらいすると、年末の住宅ローンの残高の1%を10年間、所得税などから控除する制度のことだ。消費税率引き上げによる負担軽減として、8%または10%の消費税がかかる住宅では「年末の住宅ローン残高の上限を4000万円」に、10%の消費税がかかる住宅では「3年間延長(最大控除額80万円)」に、それぞれ期間限定で拡充されている。
ただし、中古住宅の多くは売主が個人なので、個人間売買では消費税が課税されないために、こうした拡充策の対象外となる。つまり、個人の売主から購入する中古住宅の場合は、従来の「年末の住宅ローン残高の上限は2000万円」となるので、その1%×10年の200万円が最大控除額となる。
ちなみに中古住宅でも、いわゆる中古再販住宅(不動産会社が買い取った中古住宅をリフォームして、売主として販売するもの)は、消費税率10%がかかるので拡充策の対象となる。
住宅ローン控除の適用条件には、住宅の耐震性も含まれる築古住宅を購入した人も多いという今回の調査結果が注目されるのは、住宅ローン控除の適用条件に築年数が関係するからだ。住宅ローン控除の適用を受けるには、いくつかの条件がある。主な条件として、以下のようなものがある。
○購入者の条件:合計所得金額が3000万円以下
○住宅ローンの条件:返済期間10年以上
○住宅の条件(1):床面積が50m2以上(※期間限定で40m2以上に緩和、その場合、合計所得金額は1000万円以下まで)
○住宅の条件(2):耐震性を有していること
最後の住宅の条件(2)の耐震性に関して、築年数が関係することになる。中古住宅の場合は、木造(いわゆる木造の一戸建て)で築20年以内、耐火構造(いわゆる鉄筋コンクリート造りのマンション)で築25年以内という条件がある。築年数がこれを超える場合は、建築士などの検査による以下3つのいずれかの証明書が必要になる。
中古住宅の耐震性の要件(出典/国土交通省のすまい給付金サイト「住宅ローン減税制度利用の要件」より転載)
築古が理由で、住宅ローン控除の利用をあきらめた人は多い次のフロー図は、中古住宅を購入した人の制度利用の状況と、その理由を示したものだ。
住宅ローンおよび住宅ローン控除の利用状況【住宅ローン控除非利用者理由】(全体像)(出典/不動産流通経営協会「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」より転載)
住宅ローンを利用した人のうち69.3%が住宅ローン控除を利用しているが、25.3%は利用していない。利用しなかった人の68.3%が、適用条件を満たす物件ではなかったことを理由に挙げた。なお、物件以外の理由としては、住宅ローン控除のメリットが少ないことなどが挙げられている。
物件が適用条件を満たさない理由として、多くの購入者は「住宅の条件」を挙げた。そのなかでも、住宅の条件(1)の床面積を挙げた人(特に首都圏の中古マンション購入者で多い)よりも、条件(2)の築年数を挙げた人のほうが多いことが分かる。
また、築年数が一戸建てで21年以上、マンションで26年以上だとしても、3つの証明書のいずれかを取得すれば適用対象になるが、69.8%と多くの人が「特に何もしていない」と回答し、築古が理由となって諦めていたことがうかがえる。
築古物件の住宅ローン控除は、耐震基準適合証明書の取得によるものが最多しかし前述のとおり、築年数が適用条件を超える場合でも、耐震に関する証明書があれば住宅ローン控除を利用することは可能だ。住宅ローン控除を利用した人のうち、築年数要件を満たさない物件を購入した人について、次のフロー図で見てみよう。
住宅ローンおよび住宅ローン控除の利用状況【築年数に代わる要件】(全体像)(出典/不動産流通経営協会「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」より転載)
住宅ローン控除を利用した人のうち、23.4%が一戸建てで築21年以上、マンションで築26年以上の住宅を購入したが、3つの証明書のうち、耐震基準適合証明書の取得によって適用条件を満たした人が最も多いことが分かる。
ただし、調査結果によると、耐震基準適合証明書を「自分で手配した」という人は50.5%と半数に過ぎない。43.2%が「もともと証明書が取れている物件だった」と回答している。また、既存住宅売買瑕疵(かし)保険とは、中古住宅の検査と保証がセットになった保険で、保険に加入するには耐震性を満たしていることが条件になる。この保険に加入することで適用条件を満たした人が次に多いのだが、「自分で手配した」のは26.3%とさらに少なくなり、「もともと保険に加入していた物件だった」という回答が73.7%に達した。
つまり、住宅ローン控除については、築年数や床面積など、広告の物件情報や不動産会社から簡単に得られる情報で判断するものの、買い主が自ら耐震基準適合証明書の取得に動いたり、瑕疵保険に加入するように動いたりして適用を受けようとする事例は極めて少なかったといえるだろう。
建築士等の検査による証明書を手配するには、時間や費用がかかるからかもしれない。しかし、マイホームとして買って長く住むのだから、少し費用や手間をかけてでも、耐震性で安心できるものを買うほうがよいだろう。また、そのためには専門知識が求められるので、こうした相談にきちんと応えてくれる不動産会社を選ぶ必要もある。
もちろん、面倒のない築年の比較的新しいものを選ぶのか、安くて希望条件に合う築古のものを買って好みにリフォームすることを選ぶのかなどは、各自それぞれで判断すればよい。ただ、知らなかったと後悔することのないように、還元効果の大きい住宅ローン控除については、正しい知識を持って検討してほしい。
JR各線をはじめ東武東上線、西武池袋線、東京メトロの丸ノ内線・有楽町線・副都心線が乗り入れる一大ターミナル・池袋駅。新宿や渋谷に並ぶ都内屈指の繁華街として知られ、駅周辺には多彩な商業施設がひしめいている。そんな池袋駅まで30分以内で行くことができるうえ、中古マンションの価格相場が安い駅を調査した。専有面積20平米以上~50平米未満の「シングル向け」と、専有面積50平米以上~80平米未満の「カップル&ファミリー向け」、それぞれの中古マンションの価格相場が安い駅TOP10をご紹介しよう。
●池袋駅まで30分以内の価格相場が安い駅TOP10
【シングル向け】
順位/駅名/価格相場(主な沿線/所在地/池袋駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 川口 1875万円(JR京浜東北・根岸線/埼玉県川口市/15分/1回)
2位 志村坂上 2080万円(都営三田線/東京都板橋区/18分/1回)
3位 ときわ台 2289.5万円(東武東上線/東京都板橋区/9分/0回)
4位 中板橋 2380万円(東武東上線/東京都板橋区/8分/0回)
4位 大山 2380万円(東武東上線/東京都板橋区/6分/0回)
6位 板橋区役所前 2390万円(都営三田線/東京都板橋区/13分/1回)
7位 荻窪 2440万円(JR総武線/東京都杉並区/21分/1回)
8位 下板橋 2474.5万円(東武東上線/東京都豊島区/3分/0回)
9位 板橋本町 2480万円(都営三田線/東京都板橋区/15分/1回)
9位 西川口 2480万円(JR京浜東北・根岸線/埼玉県川口市/18分/1回)
【カップル&ファミリー向け】
順位/駅名/価格相場(主な沿線/所在地/池袋駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 みずほ台 1730万円(東武東上線/埼玉県富士見市/26分/0回)
2位 柳瀬川 1980万円(東武東上線/埼玉県志木市/24分/0回)
3位 西浦和 2189万円(JR武蔵野線/埼玉県さいたま市桜区/27分/1回)
4位 新座 2190万円(JR武蔵野線/埼玉県新座市/27分/1回)
5位 鶴瀬 2330万円(東武東上線/埼玉県富士見市/29分/0回)
6位 扇大橋 2480万円(日暮里・舎人ライナー/東京都足立区/27分/1回)
6位 高野 2480万円(日暮里・舎人ライナー/東京都足立区/29分/1回)
8位 南与野 2539万円(JR埼京線/埼玉県さいたま市中央区/26分/1回)
9位 足立小台 2599万円(日暮里・舎人ライナー/東京都足立区/25分/1回)
10位 新高島平 2680万円(都営三田線/東京都板橋区/28分/1回)
シングル向け中古マンション(専有面積20平米以上~50平米未満)の価格相場が最も安かったのは、JR京浜東北・根岸線の川口駅。価格相場は1875万円で、トップ10で唯一の2000万円以下だった。1駅上り方面に位置する赤羽駅に出て、JR埼京線に乗り換えると計約15分で池袋駅に到着する。川口駅は名前通り埼玉県川口市を代表する駅で、埼玉県内でも大宮駅や浦和駅に次いで多くの人に利用されている。駅前には川口市の駅前行政センターや中央図書館といった公共施設と、スーパーや「無印良品」などの商業施設が集まった複合施設「川口キュポ・ラ」をはじめ、大型施設が建ち並んでいる。
川口駅前 キュポ・ラ広場(写真/PIXTA)
川口駅周辺は2000年代に入って以降の再開発にともなってマンションの建設も進められ、商業の街としてのみならずベッドタウンとしても人気。そう考えるとランキング1位になるほど価格相場が安いのは意外な気も。川口駅に隣接し、価格相場2480万円でランキング9位になった西川口駅と比べても安い結果に。また、今回調査した専有面積50平米以上~80平米未満の「カップル&ファミリー向け」ランキングだと川口駅は価格相場3590万円(41位)で、特別に安いという印象ではない。物件の広さは20平米~50平米ほどでよい、と考える人にとっては、池袋までアクセスしやすく街の施設も充実した川口駅は注目の穴場と言えるだろう。
2位は都営三田線・志村坂上駅で価格相場は2080万円。都営三田線に乗って新板橋駅へ行き、そこから歩いて約8分の板橋駅でJR埼京線に乗り換えると1駅目が池袋駅だ。都営三田線は志村坂上駅から都心に向かって2駅目が9位・板橋本町駅、3駅目が6位・板橋区役所前駅という位置関係になっている。新板橋駅~板橋駅の徒歩移動を避けるならば、所要時間は少々増えるが志村坂上駅から都営三田線で巣鴨駅、そこからJR山手線に乗り換えて計約21分で池袋駅に行くことも可能だ。
さて志村坂上駅周辺の様子を見てみると、大型の商業施設は見当たらず住宅街といった雰囲気。ランドマークと言えるのは総合病院で、地域医療を支えてくれている。駅前にはコンビニが点在するのみだが、徒歩6分ほどの場所にショッピングモール「セブンタウン小豆沢」がある。スーパーとホームセンター、そしてドラッグストアや「ユニクロ」などが並ぶ専門店街で構成されており、ほとんどの日用品はここで買いそろえられるだろう。ショッピングモールを通り過ぎた先には新河岸川が流れ、水上バスの小豆沢発着所がある。ここから乗船すると浅草やお台場、葛西臨海公園に行くことができるので、休日にぶらりと水上散歩をするのも楽しそうだ。
ときわ台駅 北ロ周辺の様子(写真/PIXTA)
3位は東武東上線・ときわ台駅で価格相場は2289万5000円。池袋駅までは乗り換えなし、約9分で到着する。駅北口には2019年にオープンした5階建ての商業施設「EQUiA(エキア)ときわ台」があり、駅を出てすぐにスーパーやレストランに立ち寄ることが可能だ。1935年の開業当初の姿へと2018年にリニューアルしたというレトロスタイルな駅舎を出た北口側は、昭和初期に宅地開発された古くからの住宅地。コンビニやスーパーがある駅前の区画を過ぎると商店はほぼなく、静かな住宅街が広がっている。一方で駅南口側には小さな商店がひしめく商店街が、約380m先の川越街道まで続いている。地域の人に愛用されている鮮魚店やベーカリー、ドラッグストアや飲食店などが並び、2021年秋には現在改装休業中のスーパー「よしや 常盤台店」もリニューアルオープン予定だ。
「カップル&ファミリー向け」は首都圏のベッドタウンがランクイン次はカップル&ファミリー向け中古マンション(専有面積50平米以上~80平米未満)のランキングを見ていこう。1位は東武東上線・みずほ台駅で価格相場は1730万円。シングル向けランキング1位の川口駅は価格相場が1875万円だったので、みずほ台駅はそれよりも広くて安い物件に出合いやすいわけだ。池袋駅までの所要時間は川口駅が乗り換え1回で約15分、一方でみずほ台駅は約26分かかるものの乗り換え不要なので、一長一短というところか。
みずほ台駅周辺(写真/PIXTA)
そんなみずほ台駅はどんな駅かというと、東口にも西口にもスーパーが入った駅ビルがある買い物に便利な環境。東口の駅ビルにはファストフード店やカフェ、西口の駅ビルには100円ショップもあるほか、駅周辺にもスーパーが点在している。住宅の合間には複数の小中学校や幼稚園、保育園、学習塾もあり、子育て世代のファミリーが多く住む街のようだ。水遊び場を備えた「みずほ台中央公園」をはじめ大小の公園が点在する街には農地も広がっており、喧騒を離れてのんびりと生活したいファミリーにはよさそうだ。
2位には1位のみずほ台駅よりも1駅、池袋方面に位置する東武東上線・柳瀬川駅がランクイン。価格相場は1980万円だった。駅北側には駅名の由来になった柳瀬川が流れている。春は土手の桜並木が咲き誇り、例年の夏は川を舞台にした花火大会やいかだラリー、冬は渡り鳥の飛来……、と四季折々に楽しめる憩いの場だ。駅西口側には大規模マンション街「志木ニュータウン」があり、柳瀬川駅はこの宅地開発に合わせて開業した歴史をもつ。ニュータウンが広がるエリアにはマンションあり、スーパーや飲食店などの商店あり、さらに小中学校や幼稚園、市立図書館に公園までそろっている。駅東口側は柳瀬川沿いに農地が広がり、商業施設はあまりない。こちら側にも小中学校が建っており、一戸建てを中心とした住宅地となっている。
新座団地と志木ニュータウン(写真/PIXTA)
3位はJR武蔵野線・西浦和駅で価格相場は2189万円。1駅隣の武蔵浦和駅でJR埼京線に乗り換えると、計約27分で池袋駅にたどり着く。駅の南側には現在はUR賃貸住宅である田島団地が広がり、団地が並ぶ区画にはスーパーや100円ショップ、郵便局や小学校などもある。駅の北側、東側にもスーパーがあるので、食料品の買い出しには困らないだろう。駅西側の国道17号・新大宮バイパス沿いには、埼玉県に本社を置く県民ご愛用のうどんチェーン「山田うどん」やファミレスも。バイパスの上には首都高が通っていて、南進するとほどなくして外環道に入ることもできる。マイカーがあると、より生活しやすい環境かもしれない。
ちなみに今回の調査の基点にした池袋駅の中古マンションの価格相場は、「シングル向け」が3385万円、「カップル&ファミリー向け」が5789万5000円。そんな池袋駅から30分圏内にもかかわらず、各ランキングトップ10の駅は価格相場がだいぶ抑えられていた。また、「シングル向け」「カップル&ファミリー向け」ともに、トップ10には池袋駅に乗り入れている東武東上線沿線の駅が多くランクイン。池袋駅から乗り換え不要で行ける駅であってもリーズナブルな物件が見つけやすいと分かる、うれしい調査結果と言えるだろう。
池袋駅までの所要時間をもう少し細かく見てみると、「シングル向け」だと池袋駅まで最短で約3分(8位・下板橋駅)、最長でも約21分(7位・荻窪駅)と、比較的に近隣の駅がトップ10入りを果たした。一方で「カップル&ファミリー向け」だと池袋駅まで30分圏内ギリギリである、所要時間約24分~29分の駅がランクイン。広さを求めるならやはり、池袋駅から遠のくことになりそうだ。しかし都心部から離れるぶん、「シングル向け」トップ10よりも物件の価格相場は低い傾向が見られる。
コロナ禍によって平日は在宅ワーク、休日も遠出せずに近所や家で過ごす……、といったように「おうち時間」が増加する生活スタイルへの変化がみられる。そのため「長く過ごすなら家は広いほうがよい、たまに行く程度の池袋など都心部までは30分くらいで行ければ十分だ」と考える人もいるはず。そんな場合は一人暮らしの人であっても、今回の「カップル&ファミリー向け」ランキングを参考にして住まい探しをするのもよいだろう。
●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている池袋駅まで電車で30分圏内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】
駅徒歩15分圏内、物件価格相場3億円以下、築年数35年未満、敷地権利は所有権のみ
シングル向け:専有面積20平米以上50平米未満
カップル・ファミリー向け:専有面積50平米以上80平米未満
【データ抽出期間】2020/1~2021/3
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2021年3月31日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載
築古の賃貸物件が年々増える中、住み手によるリノベーションが可能な「DIY賃貸」が注目を集めている。しかし、中には退去時の「原状回復」を必須としており、そのメリットが活かされていないケースも多い。
そんな中、「原状回復不要」で住み継がれてきたDIY賃貸の草分け的存在が熊本県熊本市の「ニレノキハウス」だ。オーナーの末次宏成さんと2組の入居者へ、ニレノキハウスの成り立ちと、実際の暮らしについて話を聞いた。
末次さんが元オーナーである両親から3階建・11戸の賃貸マンションを引き継いだのは2011年のこと。
決して条件が良いとは言えないエリアにあり、当時で築27年と古く、全室空室状態だった。そこで末次さんは、従来のような賃貸募集ではなく、入居者が主役になれるような自由に建物をカスタマイズできる賃貸を目指した。
当時は「リノベーション」という言葉もまだ珍しい時代だったが、反響は大きく、オープンハウスには2日間で200名以上が来場。すぐに満室となり、現在に至るまでほぼ満室状態が続いている。
結果的に、リノベーションを通じて入居者・不動産会社・オーナーの親密なつながりが生まれ、ニレノキハウスならではのコミュニティが育ったのだ。
「ニレノキハウス」オーナー、末次デザイン研究所 代表 末次宏成さん。
九州大学職員として都市建築デザイン、まちづくりについて研究。その後地元熊本へUターン、家業の傍ら、空き家再生やリノベーション事業に積極的に取り組む(写真撮影/野田幸一)
ニレノキハウスのユニークな点はもうひとつある。大学との連携だ。全11戸のうち1戸は熊本大学・熊本デザイン専門学校・九州大学と連携し、学生たちが設計~施工までを行った。階段など共用部の壁画も学生の手によるものだ。
共用部の壁画。黒板部分は住民がメモやイラストなどを描き込んでおり味わいがある(写真撮影/野田幸一)
大学職員として、もともと産学連携の仕事にも携わってきた末次さん。自身も都市建築デザインやまちづくりを経験してきたことから、「建築を学ぶ学生がリアルな現場を体感できることで、良い教材になる」と感じており、大学との連携が実現した。
学生たちが手掛けた1室もすぐに入居者が決まり、6年にわたり最初の入居者が暮らしていた。その後6年ぶりに空室になると、再び熊本大学の学生たちがリノベーションを実施。現在は次の入居者が暮らしている。
101号室で行われた設計検討の様子(2012年当時)(写真提供/熊本大学大学院先端科学研究部 教授 田中智之さん)
リノベーション作業の様子(写真提供/末次さん)
学生たちが設計・施工した101号室。「家の中に小さな家と街路をつくる」ことをイメージし、「離れ」のような3つの空間を土間の回廊でゆるやかにつないだ(写真提供/末次さん)
アトリエ兼住居として活用。入居者同士の交流も魅力ここで、ニレノキハウスに入居している2組の暮らしを見せてもらった。
園田さんご家族は、2012年のリニューアル当初からニレノキハウスに暮らし続けている。夫妻で花屋を経営しており、1階角部屋・土間付きの約70平米をアトリエ兼住居として使用している。
お話を伺った園田あずささん(写真撮影/野田幸一)
以前は店舗での販売を中心に経営していたが、SNSが普及したこともあり、マルシェや注文販売、教室運営をベースに切り替えようと考え、移転先を検討していたところだった。
そんなときに、知人からニレノキハウスの話を聞き、オープンハウスで見た部屋に、一目ぼれしてしまったという。
「当時は『部屋』というより、最低限のリノベーションを施した『箱』という状態でしたが、ショップで使用していた什器や家具類がぴったりはまるイメージを持てました。オーナーの末次さんと会話し、花屋として使用することも歓迎してもらえましたし、幸い子どもの学校区も変えなくてよいエリアだったこともあり、こんな場所は他にない、と即決でした」(園田さん)
花の受け渡しや教室などで人の出入りもある。周囲の理解がなければできないことで、一般的なアパート等だとやはり他の住民に迷惑をかけてしまうだろう、と考えていた園田さん。
「ニレノキハウスはDIYだけでなく、店舗や事務所との併用も歓迎されています。入居者もその方針に共感する方々でしょうから、そんな物件なら安心できる、と思いました」(園田さん)
作業や花の受け渡し、レッスンなどを行うアトリエ。什器類は以前のショップ時代から利用しているもの(写真撮影/野田幸一)
入居後は3LDKだった間取りを土間+1ルームにリノベーション。寝室やダイニングスペースはカーテンでゆるく仕切って使用している。アトリエスペースと住居スペースを仕切る扉や玄関扉、外壁もオーナーに許可を得た上でリノベーションを行った。DIYも可能だったが、園田さんの場合は、ショップ時代から付き合いのある大工さんに全て依頼したそうだ。
住居スペース。リビングには、ボクシングに打ち込む息子用に、以前はサンドバックを吊り下げていたそう(写真撮影/野田幸一)
玄関扉(写真撮影/野田幸一)
外壁。アトリエの内装と統一されたトーンに(写真撮影/野田幸一)
入居者同士の交流も魅力、と語る園田さん。
「昨年はコロナの影響でできませんでしたが、例年、屋外の共有スペースを使ってバーベキューなども行っています。手づくりのチラシで呼びかけて、好きな時間に来て好きな時間に帰る気楽な会です。差し入れだけ持ってきてくれるような方もいますね」(園田さん)
コロナの影響で、園田さんの花屋が他所で出店予定だったイベントが急遽中止になった際には、オーナー末次さんに相談の上、この屋外共有スペースでマルシェを開いたことも。同じイベントに出店予定だったカレー屋やパン屋も招き、行列ができたそうだ。
「入居者の皆さんもご自身の駐車場スペースを貸してくれたり、遊びに来てくれたり、何かと協力してくださり本当にありがたかったです。こうしたイベントのとき以外でも、お花を注文してくれることもありますし、既に退去された方とも交流が続いています」(園田さん)
2021年5月に実施されたマルシェの様子(写真提供/末次さん)
部屋の見学に来た方が園田さんのアトリエを訪ね、住み心地や入居者コミュニティについて話を聞いていくこともあるそうだ。リニューアル当初はオーナー主催で実施することが多かったイベントも、今は入居者が企画することが中心になっている。
アトリエ中央のテーブルと、住居スペースのダイニングテーブルはショップ時代に使用していた1枚板のテーブルを分割したものだそう(写真撮影/野田幸一)
念願の「制作に没頭できる空間」を実現2組目は、2021年2月に入居したばかりのHさんご家族。Hさん一家は、もともと長く東京で暮らしていた。
「コロナ禍で外に出ることも難しくなり、なぜ東京にいるのだろうという気持ちになりました。だったら、地元である熊本に戻って、陶芸の制作に打ち込みたいと思うようになりました」(Hさん)
美大の出身で、デザインに関わる仕事を続けてきたHさん。移住を機に制作に集中できる空間が欲しい、と考えるようになったそう。
お話を伺ったHさん(左)とそのご家族(写真撮影/野田幸一)
当初は熊本県内でも阿蘇など自然豊かなエリアで中古戸建てのリノベーションを検討していたものの、なかなか条件に合う物件が見つからず、気候の厳しさにも不安が生まれた。そんなときに、ニレノキハウスの存在を知ったという。
「面白そうな物件があるなと。実際に部屋を見に行ってみて、ここしかない!と思いました。陶芸窯を設置しても良いかとダメ元で相談してみたら、『良いよ』と。オーナーも陶芸をされるということで意気投合して、トントン拍子に入居が決まりました」
陶芸用のアトリエと道具類の置かれた土間。陶芸窯も設置し、日々制作に没頭しているそう(写真撮影/野田幸一)
(写真撮影/野田幸一)
(写真撮影/野田幸一)
音や振動などでご迷惑をおかけすることもあるだろう、と入居直後に全入居者のところへ挨拶に行ったというHさん。その後の交流も続いているそう。
「みなさんとても良い方ですし、デザイナーさんなど創作に関心がある方も多く、理解があると感じます」
現在は土間+陶芸用の作業スペースと、1ルームをダイニング・リビング・寝室とゆるやかに区切った居住空間として使用している。寝室と陶芸用スペースの床張り、アトリエの棚、壁面の塗装などは1カ月強をかけてDIY。愛着ある住まいへと仕上げていった。
「今後は自分で焼いたタイルを壁面に貼ったりもしたいですね」と語るHさん。さらに素敵な部屋へと進化していきそうだ。
住居スペース。寝室の床は桜の木を自ら張った。「徐々に色がなじんでいくのも楽しみ」とHさん(写真撮影/野田幸一)
(写真撮影/野田幸一)
「賃貸でも自由度を上げる」選択が、価値向上につながった似た間取りをベースにしながらも、暮らす人によって、それぞれ全く違う個性が発揮されているニレノキハウス。リニューアル以降、実は家賃が上がっている。入居者自身のリノベーションによって価値が上がっており、仲介をしている不動産会社の担当者より、値上げが妥当と提案があった。末次さん自身も、「立ち上げた当初、そこまでは予想していなかった」と語る。
賃貸物件に自由度を与えた結果、9年目の今、不動産としての価値が上がっている。
もちろん、うまくいくことばかりではなかったという。
「住んでいた方の好みやDIYの力量で、次の方に入ってもらうのが難しそうなときもあります。そうした場合には、空室になったタイミングに私が手を入れることもあります」(末次さん)
入居者は20~30代、特に30代前半の夫妻やカップルが多いそう。やはりリノベーションに興味があり、自分でカスタマイズをしたい、という人が多いが、希望するリノベーション内容はさまざま。ほんの少しの人もいれば、間取りから変えたいという人もいる。そうした希望に合った部屋を紹介するため、そして「ニレノキハウス」という場で気持ちよく暮らしていける人か判断するため、入居前に必ず面談を行っている。
駐車場は2-3台分を「誰でも使えるスペース」にしていて、来客用駐車場や、DIYの作業、先述のバーベキューなどのイベントなどに使える。こうした「余白」をつくっているのもコミュニティづくりのポイント(写真撮影/野田幸一)
今後の展望について、末次さんはこう語る。
「9年経ち、コミュニティを含めて良いマンションに育ってきたと感じています。
コロナの影響もあり、働き方、ライフワークバランスのあり方などが変わってきたなかで、ニレノキハウスは新しい働き方・暮らし方にマッチする住まいでもあると考えています。
オープン当初から、オフィス兼住宅、店舗兼住宅といった使われ方がされてきましたし、今後、熊本でもそうしたSOHO的な場所、ライフスタイルに合わせてカスタマイズできる場所のニーズは増えていくのではないでしょうか」
ライフスタイルに合わせてカスタマイズできる住まい、一定の共通項を持つ人たちが集まる集合住宅。それはとても魅力的に思えた。
“新築”“築浅”が好まれ、それらの価値が高いとされる傾向にある日本において、築年数を経た物件が、住み継ぐ人の手によって価値を上げていく。「ご近所付き合いが希薄になりやすい」とされる賃貸集合住宅においても、共通項を持つ人々が住民となることで、ゆるやかなコミュニティが育まれていく。「ニレノキハウス」は、賃貸住宅の新しい可能性を示唆してくれているように思う。
●取材協力
ニレノキハウス
末次デザイン研究所「空き家再生スミツグプロジェクト」
ひご.スマイル株式会社
突然ですがこの1年、自宅で防災計画を考えたり、防災訓練をしたりしましたか? 学校で行っているならいざしらず、大人になり、特に賃貸住宅で暮らしていると防災訓練を一度もしたことがない……という人も珍しくないことでしょう。でも、賃貸で住民が主体となり、防災計画を立案しているところもあるとか。今回は「高円寺アパートメント」(東京都杉並区)のワークショップの様子を取材しました。
分譲マンションでは耳にするけれど、賃貸物件ではレアな「防災計画」
地震に台風や洪水、大雪など、災害大国・日本に暮らす私たちにとって、「防災訓練」「防災計画」はおなじみの存在です。ただ、住まいが「賃貸住宅」になると、住民の参加者が少ない、設備点検で終わってしまうなどと、とたんに手薄になりがちです。地域防災計画などに携わる百年防災社の葛西優香さんによると、同社に防災計画やコンサルティングを依頼する85%は分譲住宅、つまり住民が所有している物件だといいます。
そんななか、住民が主体となって避難訓練をしようと試みをはじめたのが「高円寺アパートメント」です。もともとはJR東日本の社宅でしたが、2017年にリノベーションして賃貸住宅に。全50戸、住宅だけでなく、1階部分は店舗にもなっている建物です。
高円寺アパートメント外観。もともとJR東日本の社宅をリノベーションして誕生(写真提供/高円寺アパートメント)
ジェイアール東日本都市開発がオーナーのこの物件は、運営をまめくらしが行い、住人同士の交流など関係性が育まれている住宅です。物件のコンセプトに賛同して引越してきた住民が多く、また近隣住民も利用するショップがあるため住民同士の交流も盛んで、過去にはマルシェや流しそうめん、花見などのイベントも行ってきたといいます。
高円寺アパートメントで行われた花見会の様子。コロナ前の風景ですね、なんとも平和で涙が出てきます(写真提供/高円寺アパートメント)
ただ、交流があっても、持ち家に比べ住民の入れ替わりが早い賃貸住宅で、住民が主体となって防災計画を立てるというのは非常にレア。前出の葛西さんも、「賃貸住宅で防災計画を立案するのは、独立行政法人が運営する団地などでしょうか。主体者も大家さん・管理会社などで、賃貸の住民が主体になるケースは非常に珍しいです」といいます。
はじまりは「地震、大丈夫だった?」。みんな防災に関心があった!では、なぜ住民が主体となって防災に取り組もうと思ったのでしょうか。
「はじまりは、今年2月に起きた地震(東京都杉並区は震度4)でした。当日もLINEで『大丈夫だった?』と複数の人とやりとりして、後日、対面したときにも『地震は怖かったね、何かあったときに協力したいね』という声があがったんです」と同物件の住民であり、住民同士の交流サポートなどを行うまめくらしの宮田サラさん。
普通ならそこで話が終わってしまうところですが、住民の広瀬圭太郎・志津香夫妻が声をあげ、年間のイベントとして防災のワークショップを行うことを提案します。
任意の住民が参加した作戦会議の様子(写真提供/高円寺アパートメント)
志津香さん自身は、「もともと私個人として防災に興味・関心があり、社会人向けの講座に参加していました。サラさんに声をかけたら思いのほか感触もよく、ほかの住民の方も興味があるようだったので、『実はみんな気にしていたんだな』と思いました」と話します。そこで縁あって百年防災社の葛西さんに声をかけ、今年5月から全3回のワークショップを開催することになったそう。
第1回目となった5月2日には発災前の防災計画、第2回目となった5月22日は発災直後の防災計画をテーマとして話し合いをオンラインで実施。同じ建物内にいながらにして、オンラインミーティングというのも不思議な気もしますが、実になごやかに行われていました。
1回目と2回目のワークショップの様子をまとめた「グラレコ」。どんなことを話したのはひと目でわかります(写真提供/高円寺アパートメント)
筆者も住民のみなさんにご承諾いただき、オンラインで見学させていただきましたが、「普段からはゆるふわの付き合いが大事」「被災直後の初動をどうするか」「班長など、役割を考えておこう」「子どもたちは1カ所にいると安心なのでは」「フェーズにわけて考えよう」「地域との連携はどうするか」などとアイデアが次々と出てきてびっくり。こうやって考えておくだけでも、今から備えられること/課題などが浮き彫りになり、有意義だなと痛感します。
「とはいえ、参加した世帯でいうと3割程度です。仕事や用事があって参加できない人もいらっしゃいますが、ただ、興味関心があると答えてくれたのは約9割。住民のみなさんの関心度合いの高さがうかがえます」(宮田さん)
ワークショップに参加した住民のみなさん。同じ建物内にいるのにオンラインミーティング。今どき!(写真提供/高円寺アパートメント)
当たり前ですが、同じ建物に住んでいるもの同士、いざというときは助けたいし・助けてほしいという関係でありたいというのは自然な感情でしょう。
「義務感のない防災」が理想!住民の入れ替わりを前提にマニュアルに葛西さんは、今回の高円寺アパートメントの防災計画のことをこう話します。「すごい点は、住民同士の関係ができていることです。どんな人が住んでいて、職業や得意なことを把握していらっしゃるので、『こうしたらいいんじゃない?』『○○さんはどう思います?』という会話が自然に出てくる。こうした普段の関係性が防災計画にも、非常時にも大きな差になると思います」
確かに人間関係ができているからこそ、一歩進んで「助け合いたい」という気持ちになるのかもしれません。もし、賃貸で防災計画を立案しようとなっても『めんどくさい』『誰が住んでいるかよく分かからない』といった気持ちの面でのハードルが高くなりがちですよね。今回、企画に携わった広瀬圭太郎さんもその点をよく考えていて、以下のように話します。
「防災訓練や防災計画って、大切だと思っていても、どうしても『受け身』で義務感や参加している感になりがちです。でも、マルシェや流しそうめんと同じようにお楽しみ企画のなかの一つとして、防災計画があれば参加しようかなという気持ちになるはず。特別なことではなく、みんなでいっしょに・ゆるふわで考えていこうよ、というスタンスで進めていけたら」
マルシェの様子(写真提供/高円寺アパートメント)
ちなみに、ワークショップの開催費用は、住民からの任意募金を充てているそう。なんでもそうですが、今はゆるく・楽しくないと続けられないですものね。今回のワークショップは6月に3回目を実施予定ですが、その後はマニュアル化も、見据えているとか。
「2017年の初期から住み続けている人も多いですが、やはり賃貸なので住民が入れ替わることを前提に、マニュアル化して誰がきても分かるようにしておきたい。幸い、住人にはイラストが描ける人や、ライティングができる人、建築に知見のある人がいるので、より分かりやすい形で自分たちでつくっていければ」と宮田さん。
もちろん、防災計画を考えたり、わざわざワークショップに参加したりするのは面倒くさいという人も多いことでしょう。今回の高円寺アパートメントのように、賃貸住宅でも義務感なく、明るく・スマートな防災計画・防災訓練がもっともっと広まったらなあと心から願っています。
●取材協力
高円寺アパートメント
百年防災社
まめくらし
新年度が始まる4月に合わせて引越しをする人が増える春。進学を機に大学の近くで一人暮らしを始めた学生も、徐々に新生活に慣れてきたころだろう。しかし先行きが見えにくいコロナ禍の現状、引越しを決めかねている人もいるはず。そんな新入生や、これから入学を目指す人の参考になるように、今回は明治大学・和泉(いずみ)キャンパスの最寄駅である明大前駅にアクセスしやすく、家賃相場が安い駅を調査。さらに不動産会社の方がおすすめする、和泉キャンパスに通う学生が住む街もご紹介していきたい。
明大前駅まで電車で15分以内の家賃相場が安い駅TOP11駅
順位/駅名/家賃相場(主な路線名/駅の所在地/所要時間/乗り換え回数)
1位 調布 6.70万円(京王線/東京都調布市/12分/0回)
2位 つつじヶ丘 6.80万円(京王線/東京都調布市/12分/0回)
2位 成城学園前 6.80万円(小田急線/東京都世田谷区/15分/1回)
4位 三鷹台 6.90万円(京王井の頭線/東京都三鷹市/13分/0回)
5位 久我山 7.00万円(京王井の頭線/東京都杉並区/9分/0回)
5位 仙川 7.00万円(京王線/東京都調布市/11分/0回)
7位 井の頭公園 7.20万円(京王井の頭線/東京都三鷹市/15分/0回)
8位 松原 7.25万円(東急世田谷線/東京都世田谷区/8分/1回)
9位 上北沢 7.30万円(京王線/東京都世田谷区/6分/0回)
9位 千歳烏山 7.30万円(京王線/東京都世田谷区/7分/0回)
9位 浜田山 7.30万円(京王井の頭線/東京都杉並区/6分/0回)
東京都内を中心に、4キャンパス・10学部を抱える明治大学。なかでも東京都杉並区にある和泉キャンパスは、主に法学部や商学部といった文系学部の1・2年生が通っている。大学から徒歩5分ほどの最寄駅はその名も「明大前駅」。1935年に明治大学予科(当時)が移転してきたのを機に、この駅名になったのだとか。
明大前駅(写真/PIXTA)
明大前駅は新宿駅まで京王線の特急で1駅・最短約5分、渋谷駅まで京王井の頭線の急行で2駅・最短約6分という好立地。駅ビル「フレンテ明大前」にはスーパーや書店、飲食店などがある。駅周辺は細い路地に沿ってコンビニや100円ショップ、ファストフード店やラーメン店といったリーズナブルな飲食店が建ち並び、学生にも愛用されている。大型の商業施設はなく、駅前から少し離れると住宅街。また、明治大学以外にも日本女子体育大学の付属高校など学校が点在しており、通学時間帯の駅周辺は学生の姿でにぎわっている。
明大前駅周辺で住まい探しをする学生が多く、「ハウスメイトショップ渋谷店」店長の山本泰史さんもイチオシする。
「大学生の住まい探しは、キャンパスまでドア・トゥ・ドアで30分以内、もしくは電車で2~3駅圏内がおすすめ。近年は自転車でも通える距離内でお探しになる方が増えています。また、住む街を選ぶ際はアルバイトや部活動など、授業以外の利便性も考慮したいところ。その点、明大前駅は渋谷駅や新宿駅に乗り換えなしでアクセスできて非常に便利。駅前商店街に飲食店も多く、コンパクトながら生活に必要な施設はそろっています」
そんな明大前駅から徒歩15分圏内にある、シングルタイプの賃貸物件(10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DK。以下同)の家賃相場は8万円。便利な街だけあって、学生の一人暮らしにとって安くはない。もう少しお手ごろな家賃相場の街として山本さんがおすすめしてくれたのが、今回調査したランキングの9位にも入っている京王線・千歳烏山駅だ。
千歳烏山駅付近(写真/PIXTA)
家賃相場は明大前駅より7000円低い7万3000円となっており、「家賃を抑えたい方におすすめです」とのこと。「駅前商店街は庶民の風情あふれる街並みで、ドラッグストアや定食屋さんなどが多数、建ち並んでいます。また、家具や工具を買いたい場合はホームセンターが隣駅の仙川にありますので、カーシェアなどを利用すれば20分程度で行くことが可能です」と山本さん。千歳烏山駅から明大前駅までは、京王線の準特急で1駅・約7分。駅前には韓国発のフライドチキン専門店や家系ラーメン店といった若者に人気の飲食店や、昭和レトロな喫茶店、行列のできるベーカリーもある点も魅力だ。
明大前駅まで乗り換えなし&15分以内の駅でも家賃相場は1万円以上下がる続いてランキング上位になった駅も見ていこう。明大前駅まで電車で15分圏内にある、家賃相場が最も安かった駅は京王線・調布駅。家賃相場は6万7000円で、明大前駅より1万3000円も下がる。調布駅は明大前駅と同様に、各駅停車から特急まですべての列車が停車する京王線を代表する駅の一つで、準特急に乗れば約12分で明大前駅に到着する。
調布駅の駅前の風景(写真/PIXTA)
駅のホームは地下にあり、地上部分には2017年にオープンした駅ビル「トリエ京王調布」が建っている。3館にわかれたこの商業施設には、ファッション店や食品フロア、レストラン、家電量販店に映画館までそろい、日々の買い物から休日の息抜きにまでお役立ち。ほかにも駅周辺には「調布パルコ」をはじめ商業施設が充実し、大いににぎわっている。調布は『ゲゲゲの鬼太郎』の作者・水木しげる氏ゆかりの地でもあり、駅北側の「布多天神社」の参道に連なる「天神通り商店会」には鬼太郎や妖怪たちのモニュメントが点在している点も注目だ。
つつじヶ丘駅(写真/PIXTA)
2位は京王線・つつじヶ丘駅で家賃相場は6万8000円。明大前駅までは急行に乗って約12分で行くことができる。明大前駅方面に各駅停車に乗って1駅目が5位・仙川駅、2駅目が9位・千歳烏山駅という立地だ。そんなつつじヶ丘駅の北側駅舎には駅ナカ商業施設「京王リトナードつつじヶ丘」があり、地上1階から3階にかけてスーパーにドラッグストア、書店やベーカリー、ファミレスなどが並んでいる。駅の北口側には「つつじヶ丘商店街」が広がっており、総店舗数は100軒以上! 駅近くには小学校や幼稚園、保育園も点在し、ファミリー層も多く住む住宅地だ。
成城学園前駅(写真/PIXTA)
小田急線・成城学園前駅も、つつじヶ丘駅と家賃相場が同額の6万8000円で2位にランクイン。小田急線の通勤急行で下北沢駅に出て、京王井の頭線に乗り換えると計約15分で明大前駅にたどり着く。下北沢駅で乗り換えず、そのまま通勤急行に乗っていれば新宿駅まで約15分で行くこともできる便利な立地だ。学校法人・成城学園の招致により1927年に開業した歴史をもつ駅で、現在は駅北側の同学園敷地に大学や小中高校が展開されている。駅ビル「成城コルティ」にはスーパーやドラッグストア、雑貨店や書店、レストランなどが並び、屋上階には緑が茂る憩いの場も。駅周辺の一帯は静かな住宅地で、学生も利用しやすいようなチェーン店の飲食店はあまりない。駅北口前にはプライベート商品も好評なスーパー「成城石井」の本店と言える成城店があるので、食材を買って自炊に励むのもいいだろう。
開発が進む下北沢も見逃せないさて、明治大学の学生が住む街として前出の山本さんはもう1駅、おすすめしてくれた。それは京王井の頭線・下北沢駅。
下北沢駅(写真/PIXTA)
下北沢(写真/PIXTA)
「バンド、サブカル、古着の聖地。駅前商店街はいつも20代の若者でにぎわっており、学生さんにとても人気がある街です。そのぶん少々、家賃は高いですが……」と話す山本さん。家賃相場を調べてみると8万6000円で、明大前駅よりもアップしてしまう点は確かにネックかもしれない。しかし明大前駅までは京王井の頭線の各駅停車で3駅・約3分、そして渋谷駅までは急行で1駅・約4分、各駅停車でも7~8分。小田急線も乗り入れているので、通勤急行や快速急行に乗って2駅・約9分で新宿駅にも出られるアクセスのよさが魅力的。
下北沢の街自体も山本さんがおすすめするように若者に人気があり、わざわざ遠方から遊びに来る人も少なくない。小田急線の地下化により生まれた線路跡地の開発が進められており、6月16日には下北沢駅と東北沢駅の中間エリアに商業空間「reload(リロード)」が誕生。まずはカレーとアパレルの複合店舗など全24区画中の10区画が開業し、その後もかき氷も提供する日本茶専門店や京都発のコーヒースタンドなどが順次オープンしていく。この線路跡地一帯「下北線路街」ではほかにも多彩な施設の開業準備が進行中で、今後はますます下北沢の注目度が高まりそうだ。話題の施設が集まる刺激的な街で暮らしてプライベートを充実させたい人に、下北沢はうってつけかもしれない。
●取材協力
ハウスメイトパートナーズ
●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている明大前駅まで15分以内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2021/1~2021/3
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2021年3月31日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が1回までの駅を掲載
「ファンくる」を運営するROIが、3度目の緊急事態宣言中の2021年4月26日~5月6日に、住宅事情についての意識調査を実施した。それによると、コロナの流行をきっかけに、既に引越しをした人が3%、引越しを検討中の人が15%いたという。コロナ禍での住み替え需要は根強いようだ。【今週の住活トピック】
「コロナ禍における住宅事情についての意識調査」を公表/ファンくる(株式会社ROI)
「コロナの流行をきっかけに引越しをしたいと思ったか」を聞いたところ、「はい」という回答は18%(引越し済み3%+検討中15%)となり、コロナ流行により住み替えニーズが生じているという結果となった。1人当たりの部屋数を居室やリビングルームをそれぞれ1室としてカウント(ダイニングルームはカウント外)して算出し、部屋数別に集計したところ、部屋数と住み替えニーズに関係性が強いことが分かった。
1人当たりの部屋数が1室の場合は、「はい」という回答は34%(引越し済み3%+検討中31%)まで増加し、部屋数が多くなるに連れて減っている。使える部屋が少ないほど、コロナの流行をきっかけに引越しをしたいと思う人が増える傾向があるということだ。
※1人あたりの部屋数に別集計したグラフ
コロナの流行をきっかけに引越しをしたいと思ったか?(1人当たりの部屋数別)(出典:ファンくる「コロナ禍における住宅事情についての意識調査」より転載)
その理由は、「コロナ禍において自宅で不便に感じていること」の結果からうかがい知ることができる。1番多かったのは「オンオフの切り替えがしづらい」だが、上位には「運動できるスペースがない」「部屋が狭い」「仕事ができる部屋がない」など、住宅のスペースに関するものが多く挙がっているからだ。
コロナ禍において、自宅で不便に感じていること(複数回答)(出典:ファンくる「コロナ禍における住宅事情についての意識調査」より転載)
1人世帯・2人世帯のマンション志向に変化コロナ禍の住宅ニーズに関する調査結果の多くが、「一戸建て志向の強まり」を指摘している。今回の調査結果では、部屋数や部屋の狭さなど自宅のスペースに不満を感じている人が多いことが分かった。となると、やはり「一戸建て志向」が強まるのだろうか?
コロナ流行前とコロナ禍で、それぞれ「一戸建てとマンションとどちらに住みたいと思うか」を聞いた結果を見てみよう。全体を比較してみると、コロナ流行前よりコロナ禍のほうが、一戸建て派が増えていることが分かる。
■一戸建て派(一戸建て+どちらかといえば一戸建て)VSマンション派(マンション+どちらかといえばマンション)
○コロナ流行前
一戸建て派56%(39%+17%)VS マンション派44%(21%+23%)
○コロナ禍
一戸建て派63%(44%+19%)VS マンション派36%(18%+18%)
コロナ禍において、戸建てとマンションのどちらに住みたいと思うか?(世帯人数別)※コロナ流行前とコロナ禍を比較(出典:ファンくる「コロナ禍における住宅事情についての意識調査」より転載)
これを世帯人数別に集計してみると、実は世帯人数によって、一戸建て派とマンション派の比率が大きく変わっている。これをコロナ流行前とコロナ禍で比較してみると、いずれの世帯人数でもコロナ禍のほうが一戸建て派は増えている。
世帯人数が3人以上では一戸建て派がもともと多いのだが、コロナ禍で一戸建て派の増加割合が大きいのは、むしろ世帯人数1人や2人のほうだ。特に、2人世帯では、コロナ流行前はマンション派が55%と過半数を占めていたが、コロナ禍になると一戸建て派が増えて、マンション派は46%になっている。
一戸建てに住むなら、4割が「間取り・広さ」を重視さて、この調査では、「一戸建てに住むとしたら、最も何を重視するか」を聞いている。ダントツで最多は「間取り・広さ」(40%)で、次いで「周辺環境」(25%)、「耐震・耐久性」(15%)、「住宅設備」(7%)の順となった。やはり、ここでも「間取り・広さ」への関心が高いことがうかがえる。
とはいえ、部屋数が多いとか、使える空間が多いといった理由だけで一戸建てを選んでいいわけではない。
そもそも一戸建てはマンションに比べて独立性が高い。そのため、建物や庭、外構、植栽のメンテナンスを自身で計画的に行う必要がある。一方、マンションは共用部分を管理組合という組織で共同で管理したり、管理組合で定めた生活のルールを守ったりする必要がある。ただし、管理会社に一部を委託することができ、セキュリティの高さなど、共有だからこその充実した設備を利用することもできる。
このように、一戸建てとマンションでは生活の仕方が異なるなどの違いもあるので、こうしたことも意識したうえで、リモートワークやおうち時間の充実を考える必要があるだろう。
コロナ禍で自宅が住みづらいと感じたとき、自宅のスペースの使い方を見直したり、リフォームで間取りを変えようと検討したりした人も多いだろう。それでも広さが不足していたり、通信環境や音の問題を解消できなかったりする場合は、住み替えを考えることになる。その場合も、10年後15年後など長期的な視点に立って、自分の暮らし方をどう変えたいかよく考えるのがよいだろう。
●取材協力
「ファンくる」