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大規模な再開発プロジェクトにより続々と新スポットが誕生している東京・渋谷エリア。すでに一部開業している「渋谷スクランブルスクエア」が全棟完成する2027年度まで、今後も複数の開発事業が予定されている。また、以前から都内屈指の繁華街としてにぎわってきたこの街は、近年、IT企業やクリエイティブ産業の拠点という姿も見せている。若者の街から、大人も集う商業&ビジネスの街へと変貌しつつある渋谷。そんな渋谷まで電車で30分以内で行けるうえ、中古マンションの価格相場が安い街を調査した。専有面積20平米以上~50平米未満の「シングル向け」と、専有面積50平米以上~80平米未満の「カップル・ファミリー向け」、それぞれの価格相場が安い街トップ10を見ていこう。
渋谷駅まで30分以内の価格相場が安い駅TOP10【シングル向け】
順位/駅名/価格相場(主な路線/所在地/渋谷駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 新高円寺 2150万円(東京メトロ丸ノ内線/東京都杉並区/21分/1回)
2位 尾久 2465万円(JR高崎線/東京都北区/27分/1回)
3位 板橋本町 2580万円(都営三田線/東京都板橋区/27分/1回)
3位 長原 2580万円(東急池上線/東京都大田区/22分/1回)
5位 荻窪 2630万円(JR中央線/東京都杉並区/22分/1回)
6位 千川 2750万円(東京メトロ有楽町線/東京都豊島区/19分/1回)
7位 板橋区役所前 2780万円(都営三田線/東京都板橋区/25分/1回)
7位 横浜 2780万円(JR湘南新宿ライン/神奈川県横浜市西区/27分/0回)
9位 大山 2790万円(東武東上線/東京都板橋区/22分/1回)
10位 新宿御苑前 2800万円(東京メトロ丸ノ内線/東京都新宿区/10分/1回)
【カップル&ファミリー向け】
順位/駅名/価格相場(主な路線/所在地/渋谷駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 読売ランド前 2780万円(小田急線/神奈川県川崎市多摩区/30分/2回)
2位 久地 2800万円(JR南武線/神奈川県川崎市高津区/26分/1回)
3位 高田 2848.5万円(横浜市営地下鉄グリーンライン/神奈川県横浜市北区/30分/1回)
4位 西川口 3298.5万円(JR京浜東北・根岸線/埼玉県川口市/29分/1回)
5位 宿河原 3485万円(JR南武線/神奈川県川崎市多摩区/28分/1回)
6位 戸田公園 3490万円(JR埼京線/埼玉県戸田市/29分/0回)
7位 上板橋 3544.5万円(東武東上線/東京都板橋区/29分/1回)
8位 梶が谷 3599万円(東急田園都市線/神奈川県川崎市高津区/22分/0回)
9位 妙蓮寺 3639万円(東急東横線/神奈川県横浜市港北区/30分/1回)
10位 大井競馬場前 3680万円(東京モノレール/東京都品川区/30分/1回)
10位 宮崎台 3680万円(東急田園都市線/神奈川県川崎市宮前区/27分/0回)
渋谷駅まで30分以内の駅にある「シングル向け」中古マンション(専有面積20平米以上~50平米未満)で価格相場が最も安かったのは、東京メトロ丸ノ内線・新高円寺駅で価格相場は2150万円。渋谷駅の価格相場は5280万円だったので、新高円寺駅はその半額以下ということになる。渋谷駅に向かう乗換駅である新宿三丁目駅で降りれば、JR新宿駅の駅前まで歩いて5分ほど。渋谷駅はもちろん、新宿駅にもアクセスしやすい好立地だ。
そんな新高円寺駅は地下鉄駅で、地上出入口は主要都道の一つといえる青梅街道沿いに点在している。出入口の一つはスーパー「クイーンズ伊勢丹 新高円寺店」が入ったビルに直結している便利な環境だ。地上に出て、北へ12分ほど歩くとJR中央線・高円寺駅へ。両駅を結ぶ通り沿いには多数の商店が軒を連ねる「高円寺ルック商店街」や「高円寺パル商店街」があるので、こちらで買い物をするのもいいだろう。昔ながらの個人商店や多彩な飲食店が充実し、JRの高円寺駅周辺よりは少し落ち着いた雰囲気の新高円寺駅は、働くシングル層が暮らす街としてうってつけと言えそうだ。
高円寺パル商店街(写真/PIXTA)
2位はJR高崎線などが乗り入れる尾久(おく)駅で価格相場は2465万円。渋谷駅に向かうには赤羽駅でJR埼京線に乗り換える。途中、池袋駅や新宿駅にも停車し、渋谷駅と並ぶターミナル駅にアクセスしやすい点も魅力だろう。尾久駅はJRの車両基地に隣接しており、駅南側に何本もの線路が連なる景観が圧巻だ。住宅街や商店は線路の北側に広がっている。駅前にはコンビニや飲食店が点在し、徒歩10分圏内にはスーパーも。落ち着いた住宅街といった趣なので、静かに暮らしたい人にはよいだろう。1駅隣の上野駅や赤羽駅まで出れば、多彩な商業施設でショッピングを楽しむこともできる。
3位には都営三田線・板橋本町駅と東急池上線・長原駅の2駅がランクイン。両駅共に価格相場は2580万円だったので、トップ3の価格相場は渋谷駅の半額以下というわけだ。そのうち東急池上線・長原駅の駅ホームは地下部分にあり、1階には改札とファストフード店、2階にはスーパー、3階には100円ショップが入っている。駅周辺にもスーパーやドラッグストア、飲食店や弁当店などがあり、日常の買い物や食事はまとめてできそう。また、今秋には「木になるリニューアル」とのコンセプトで駅舎が新装される予定。東京都多摩地区の「多摩産材」と呼ばれる木材を活かした温かな雰囲気のデザインになるほか、改札外スペースに店舗も新設されるそうなので完成が楽しみだ。
「シングル向け」トップ10で渋谷駅までの所要時間が最も短かったのは、10位の東京メトロ丸ノ内線・新宿御苑前駅。1位の新高円寺駅と同様に新宿三丁目駅で東京メトロ副都心線に乗り換えると、わずか計約10分で渋谷駅に到着する。また、駅を出て15分も歩けば新宿駅の東口駅前広場に行けるロケーションでもある。都内屈指の繁華街である新宿駅の至近ながら、価格相場が安い駅ランキングでトップ10入りを果たしているのは少々驚きだ。さて、新宿御苑前駅は駅名通り、広大な芝生広場や日本庭園、温室などを備えた都心のオアシス「新宿御苑」が駅南側に広がっている。駅周辺は新宿駅前ほどの喧騒とは無縁ながら、コンビニや飲食店は充実し、駅から5分も歩けばスーパーもあるので日常の買い物は近所で済ませられる。渋谷にも新宿にもアクセス良好なエリアに住みたい人は要チェックの街だろう。
新宿御苑(写真/PIXTA)
「カップル・ファミリー向け」トップ10の価格相場は渋谷より大幅ダウン続いて専有面積50平米以上~80平米未満の「カップル・ファミリー向け」ランキングをチェック。ちなみに渋谷駅の中古マンション価格相場は1億650万円! そんな渋谷駅から30分圏内で価格相場が最も安かったのは、小田急線・読売ランド前駅で価格相場は2780万円。読売ランド前駅から3駅先の登戸駅で小田急線の快速急行に乗り換えて下北沢駅に向かい、そこから京王井の頭線に乗って4駅目が渋谷駅だ。
よみうりランド(写真/PIXTA)
読売ランド前駅は、遊園地「よみうりランド」の最寄駅ではあるもののバスで北に10分ほど離れている。そして「よみうりランド」よりも手前の丘には日本女子大学のキャンパスと大学付属の中学・高校の敷地が広がっている。そのため住宅地や商店は主に駅南側に集中しており、生活圏がコンパクトにまとまった街とも言えるだろう。駅の改札近くにはスーパーと100円ショップ、コンビニや立ち食いそば店があり、南側は「よみうりランド駅前通り」と看板を掲げた商店街。ファストフードなどのチェーン店やドラッグストアのほかに、地元の人に愛される飲食店や、手づくりハム・ソーセージの専門店、野菜が豊富にそろうミニスーパー、揚げ物の総菜も販売する精肉店……と、個性豊かな店舗も並んでいる。のんびりと暮らしやすそうな街並みに加え、小田急線1本で新宿駅までいける点も利点だろう。
2位はJR南武線・久地駅で価格相場は2800万円。2駅先の武蔵溝ノ口駅から歩いて溝の口駅に行き、東急田園都市線の急行に乗り継ぐと計約26分で渋谷駅に到着する。久地駅の改札口は1カ所のみで、駅を出てすぐ横にスーパーがあるほか、周辺にはドラッグストアやコンビニ、ファストフード店などの飲食店も。このあたりは住宅地の合間に農地や果樹園もあるためか、新鮮な農産物が安く買える直売所があるのもうれしいところ。日ごろは駅周辺で買い物をして、休日には大型商業ビルがある武蔵溝ノ口駅まで行ってショッピングをするのも楽しそうだ。また、駅から歩いて10分ほどの小学校に隣接する保育園に、子育て支援センターや一時保育室が併設されている点は幼い子どもがいるファミリーにとって心強いだろう。
3位は横浜市営地下鉄グリーンライン・高田駅で価格相場は2848万5000円。横浜市営地下鉄グリーンラインは横浜市内の中山駅~日吉駅間10駅を結ぶリニア式地下鉄で、なかでも最も地下深くに位置するのが高田駅なのだそう。高田駅から2駅目に日吉駅があり、そこから東急東横線の通勤特急に乗り換えて4駅目が渋谷駅だ。日吉駅から渋谷とは反対方面に向かう東急東横線の急行に乗れば、2駅・約12分で横浜駅に行くこともできる。そんな高田駅の周辺は、大型ショッピングモールなどはない静かな住宅街。複数のスーパーや薬局、ホームセンターはあるので日常の買い物には困らないだろう。小児医療をはじめとするさまざまなクリニックが駅周辺に点在しているので、もしもの際も頼りにできそうだ。
梶が谷駅前(写真/PIXTA)
ここまでトップ3の駅を見てきたが、もう1駅、8位の東急田園都市線・梶が谷駅をピックアップしたい。この駅はトップ10のうち渋谷駅までの所要時間が最短の約22分で、乗り換えせずに田園都市線1本で行くことができる。駅前にはスーパーやドラッグストア、100円ショップがあり、さらに進んで郵便局やコンビニを通り過ぎつつ駅前通りを8分も歩くと家電量販店に到着。生活家電やPCはもちろん、おもちゃや自転車、お酒の取り扱いもあり、日用品や薬を販売するドラッグストアもあるので日常的に活用できるだろう。
渋谷駅周辺の中古マンションの価格相場はシングル向けもカップル・ファミリー向けも、前述したように東京のなかでも高い部類と言える。進行中の再開発により、エンタテインメント面でもビジネス面でも注目の街として進化しているので、価格相場がこれからさらに高騰することもあり得そう。そんな魅力的な街・渋谷までアクセスしやすく、渋谷よりも価格相場はぐっとリーズナブルな街が判明した今回のランキング。ぜひ参考にして、好みの住まい探しをしてほしい。
●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている渋谷駅まで電車で30分圏内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】
駅徒歩15分圏内、物件価格相場3億円以下、築年数35年未満、敷地権利は所有権のみ
シングル向け:専有面積20平米以上50平米未満
カップル・ファミリー向け:専有面積50平米以上80平米未満
【データ抽出期間】2021/5~2021/7
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2021年7月31日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載
コロナ禍で「地方移住」への関心が高まり、地方移住に関する調査もいくつか実施されている。リクルートの調査では、東京都内在住の会社員は46.6%もの人が地方移住に関心を示したという。地方移住をするメリットやデメリットはどういったことだろうか?新しい調査結果をいくつか見ていこう。
【今週の住活トピック】
「地方移住および多拠点居住の考え方についてのアンケート調査」を公表/リクルート
【最新移住事情 2021】を公表/高知市
コロナ禍でテレワークが普及し、通勤をする機会が減った人もいるだろう。感染の長期化で、家族で家にいる時間が長くなったという人も多いだろう。自宅周辺で過ごす機会も多くなり、「わが街」に求める条件が変わったり、より子育て環境の良好な立地を求めたり、近くにリフレッシュできる場所を求めたりと、「どこに住むか」のニーズに変化が生じている。
加えて、人口が減少している地域の自治体の中には、移住者の受け入れを積極的に行っている例も多い。高知市もそのひとつだが、【最新移住事情2021】と称した全国調査を実施し、その結果を公表している。
全国の1766人に「地方移住」の予定や関心の程度を聞いたところ、31.2%が関心ありと回答した。内訳は、これまでに「地方移住をした」が7.2%、「地方移住の予定あり」が2.0%、「地方移住に関心があり、情報収集をしている」が3.5%、「地方移住に関心はあるが、検討に至っていない」が18.5%だ。
出典/高知市【最新移住事情2021】リリースより転載
地方移住に関心がある(移住済みを含む)552人を分析すると。20代・30代の若者や男性で関心が高い傾向が見られたが、リモートワークの頻度などの勤務体制ではそれほど差が見られなかったという。
一方、リクルートが東京都在住の会社員2479人に調査を行ったところ、「地方や郊外への移住に興味がある」と回答したのは46.6%(とても興味がある11.5%+興味がある35.1%)にも達した。高知市の全国調査と比べると、東京都在住の会社員はかなり関心の度合いが高い。
ただし、興味があると回答した人に、興味があるのは「都心までどの程度で行ける地方や郊外か」を聞くと、最多は「都心まで1時間から2時間」の43.3%、次いで「都心まで1時間程度以内」の31.8%と、比較的近距離の移住に興味を持っていることが分かった。
出典/リクルート「地方移住および多拠点居住の考え方についてのアンケート調査」より転載
高知市の調査では、回答する側は遠距離の地方に移住をすることを想定していたと思われるが、リクルートの調査を見ると、東京都在住の会社員は都心から2時間以内の近距離への移住に興味を持っており、その違いが関心の高さにも表れていると見てよいだろう。
また、高知市の調査で、地方移住に関心がある人の中で、「コロナ前後での地方移住への関心が高まった」人を見ると、一人暮らしの場合で41.7%、友人と住んでいる場合で75.0%となり、家族や夫婦で住んでいる人の場合よりも「単身者」のほうが、地方移住への関心が高まったという結果になった。
出典/高知市【最新移住事情2021】リリースより転載
単身の場合は身軽に地方移住が検討できるが、家族の場合は通勤や通学のハードルを考えて近距離の移住を検討するという見方ができるのかもしれない。
ゆとりや豊かな自然が魅力の地方移住、交通利便や仕事などのハードルも次に、それぞれの調査で、移住に興味を持つ理由について見ていこう。
まず、高知市の調査では、「地方移住をしたい理由」で1位「ゆとりのある生活をしたい」と2位「自然の多い環境で生活したい」が40%以上となり、ゆとりと自然が大きな要因になっている。また、「地方移住の不安」については、「交通の利便性」「人付き合い」「仕事」「医療の充実」が上位に挙がった。
出典/高知市【最新移住事情2021】リリースより転載
次に、リクルートの調査で、「移住を考えたきっかけと新型コロナウイルス感染拡大の関係」を聞いたところ、新型コロナの影響により、「テレワークなどの柔軟な働き方が可能になった」や「より良い住環境で生活したいと思った」が上位に挙がった。
出典/リクルート「地方移住および多拠点居住の考え方についてアンケート調査」より転載
また、「地方や郊外への移住の不安や心配事」については、「仕事面」が64.0%、「経済面」が56.7%と上位に挙がり、リクルートの調査においては「働き方」や「仕事」の占めるウエイトが高くなっている。
移住実践者が感じた課題は、知り合いがいなくて寂しい!?さて、最後に、直近3年以内に移住(移動前後の居住都道府県が異なる移動)をした人への調査結果を見ていこう。
ウォンテッドリーが自社のビジネスSNS「Wantedly」ユーザー(1968人)に調査したところ、20%に当たる395人が直近3年以内に移住していた。年代で見ると20代と30代前半の若い層が多い。
移住した人に「移住して良かった点」を3つまで選んでもらったところ、1位が「家賃などの生活コストが下がった」(42%)、2位が「生活のペースがゆっくりになった」(39%)、3位が「満員列車に乗らなくて良くなった」(35%)という結果になった。
一方で、「移住して課題に感じる点」を3つまで選んでもらったところ、1位が「知り合いがいないのが寂しい」(39%)、2位が「都心と比較して仕事が少ないので、今後のキャリアが不安」(27%)、3位が「車がないと何も出来ないのが面倒」(21%)という結果になった。
出典/ウォンテッドリー「コロナ禍における移住と働き方に関する調査結果」より転載
この結果をさらに、移住先が地元か地元以外かによって分類したところ、「地元への移住者」では「今後のキャリアが不安」が最多であるのに対し、「地元以外への移住者」では「知り合いがいないのが寂しい」が最多となった。地縁のない土地に実際に移住した人は、知り合いとのコミュニケーションが取れずに寂しいと感じるのが実態のようだ。
こうしていくつかの調査結果を見ていくと、一口に地方移住といっても、地縁のない遠距離の地方に移住するのと、都心にも通える近距離の移住とでは、かなり状況が異なることが分かる。近距離であれば、これまでの仕事や人間関係を継続する方法もあるが、遠距離となると仕事や生活、人間関係が様変わりすることもある。
そうした実態をよく理解したうえで、働き方や価値観がコロナ禍で変わった今、自分が望む暮らしが送れる場所を拠点に選び、より満足できる人生へと一歩踏み出すのもよいだろう。
リクルート「地方移住および多拠点居住の考え方についてのアンケート調査」
高知市【最新移住事情 2021】
ウォンテッドリー「コロナ禍における移住と働き方に関する調査結果」より転載
毎年4月に開催されるミラノ・デザイン・ウィーク。その中核イベントが「ミラノサローネ国際家具見本市(Salone del Mobile.Milano・通称ミラノサローネ)」です。昨年はパンデミックにより中止になりましたが、今年2021年は9月に特別展「スーパーサローネ(supersalone)」と形を変えて開催にこぎつけました。デザイン大国イタリアにとって、ミラノサローネは生命線。現地に行けなかった私ですが、その熱意と行動力に敬意を表しながら、今年はデジタルプラットフォームを活用し、在宅サローネ視察にトライします。
デジタルプラットフォーム充実、会場はサステナブルに今年の「スーパーサローネ」では、会場も運営も新形式によるチャレンジを見せてくれました。4パビリオン(6万8520平米)に出展ブランド425社、会期6日間の来場者数は6万人超と、規模は従来の5分の1程度に縮小されましたが、閉幕後に主催者は「勇気と、ビジョンと、団結力が勝利を飾った」と達成感のあるコメントを出しました。
「surpersalone」デジタルプラットフォームで見ることができる会場風景のムービー。ロー・フィエラ見本市会場入口からパビリオン内の展示ブースへ。建築家やアーティスト、起業家、政治家などが登壇したイベント「open talk」の様子なども(画像提供/Salone del Mobile.Milano)
感染対策として、欧州で運用されている「Green pass」などのCOVID-19グリーン証明書の提示、加えて即席抗原検査ステーション(22ユーロ)も設けるなどして入場者を管理。マスク装着は映像で見る限り、同時期開催の全米オープンテニス会場より多い様子。
新たな展示形式はオープンな仕切りで来場者の密を避ける工夫がなされ、100%リサイクルされた木材でつくられたパネルを使用。利用後のリサイクル含め、サステナブルな運営(画像提供/Andrea Mariani by Salone del Mobile.Milano)
カーボンニュートラルへの取り組みでは、紙媒体のパンフレットや資料を作成せずQRコードでデジタル化するなど大胆に転換。カタログの重さに疲弊したころが懐かしい……。
porro社:家具プロダクトの背景壁面に映像を展開する、アート・ディレクターのピエロ・リッソーニによるインスタレーション。映像では生産工程や環境への取り組みなども紹介。今年porroの38歳女性社長マリア・ポッロがSalone del Mobile.Milano新代表に就任(画像提供/porro)
Molteni&C社:飛行機内のような展示で、アテンダントの女性が「アテンションプリーズ」とアナウンス、窓の外には雲の合間に家具プロダクトが浮かんで流れる映像が流れている。座席は1954年に巨匠ジオ・ポンティによってデザインされたアームチェアの復刻デザインの新作「Round D.154.5」。自由に旅できる日が待ち遠しいと思わせるような、ロン・ジラッドらしいウィットに富んだインスタレーション(画像提供/Diego Ravier by Salone del Mobile.Milano)
従来の新作を大空間にセットアップして見せる展示とは趣向が違う各社の展示ですが、実際の会場はどんな様子だったのでしょうか?
いつも現地でお世話になっている、ミラノサローネ広報日本担当の山本幸さんに伺いました。
「各社ブースのレイアウトを通路平行に並べたライブラリー型展示は、間口幅6~30mで規模の違いを出すだけだったので、従来の複雑なコマ割りレイアウトより、来場者的には見やすく効率が良かったようです。小さいブランドも見つけられた、と大好評。出展側も声がかけやすいメリットもありました」とのこと。
日本企業やデザイナーへの注目も高かったようで、山本さんが紹介してくれました。
ミラノサローネ広報山本幸さん、日本から初出展のポータブル照明ブランドAmbientec社の前で
(画像提供/山本幸)
Ambientec(アンビエンテック)社は横浜にある2009年設立のポータブル照明ブランド。水中撮影機材のメーカーだけあって、独自の高い技術開発力を持つ企業。それを活かすデザイナーを招聘し、魅力的なプロダクトを発表してきました。
2015年からMilan Design Weekで、著名なRossana Orlandiギャラリーへの出展を果たして好評価を得、今年は本格的に世界を相手にビジネスをするべくサローネ参画に到ったようです。
「TURN+(ターン・プラス)」デザイナー田村奈穂。ブラス・ステンレス・ブラックアルミニウムの3種類。新開発のオリジナル光源、アウトドアからバスルームもOKのポータブルランプ。磨き上げられた金属加工の高いクオリティに欧州人も絶賛(画像提供/Ambientec)
また、ミラノ在住の日本人アーティスト後藤司の作品を、サローネ主催者が「木工とガラス瓶の作品展示“alla Modigliani(モディリアーニへ)”は、日常生活の中で職人の忍耐強い作業によってモデル化された美の有用性を広める」とフィーチャー。
Tsukasa Gotoの作品を熱心に撮影する来場者。「Makers Show」というアーティストや職人たちを中心にしたカテゴリーへ出展(画像提供/Diego Ravier by Salone del Mobile.Milano)
後藤司:1981年東京生まれ、2004年からミラノで活動。2014年のサローネではSaloneSatelliteで作品を発表。写真左/「Daydream」(ガラス瓶に手触りのあるテクスチャーを与え幻想的なオブジェに) 写真右/「Proximity」(丸い木の棒が3次元で接合して構成された木工作品)(画像提供/Tsukasa Goto)
「without hearing, touching what we can understand? So I try to feel, to touch. (聞かずに、触れずに、何が理解できるでしょう?だから私は触れて、感じるようにするのです)」
という彼のメッセージは、まさしくサローネをリアル開催に踏み切った、主催者の閉幕メッセージと同じものでした。
「やはり実際に目で見て、触って、人と会って話すということが、いかに大切だったか。スーパーサローネを訪れた人が皆、それを再認識しました。この感動はリアルでしか体感できないのです」
ミラノ・デザイン・ウィークでは、見本市会場以外の街中でさまざまな展示やイベントが開催される「fuorisalone(フオリサローネ)」も必見。インテリア以外の業界も含め今年は655ブランドが参加。ほとんどが無料入場できるので、学生や一般人も多く来場し、デザインやアートを楽しみます。
その一つ、フランスを代表するクチュールメゾンのDiorが開催した「THE DIOR MEDALLION CHAIR」展。17人のアーティストを招待して、メゾンの象徴的なエンブレムの1つであるメダリオン・チェアを再解釈するプロジェクトです。
ディオールメゾンの象徴的なエンブレムの1つであるメダリオン・チェアは、創業者クリスチャン・ディオールが愛した18世紀のルイ16世スタイル(写真撮影/©Alessandro Garofalo)
18世紀の建造物Palazzo Citterio(ミラノ・ブレラ地区)での開催。ゲストデザイナーは、フランス、イタリア、レバノンや韓国など世界的に活躍する17人(写真撮影/©Alessandro Garofalo)
日本からは二人の人気デザイナー、吉岡徳仁と佐藤オオキ(nendo)が招待されていました。
この二人、ミラノサローネでは毎年注目されていますが、今年は何と言っても東京オリンピック・パラリンピックでの活躍に触れなければなりません。
吉岡徳仁デザインの聖火リレートーチ(左) 佐藤オオキデザインの聖火台(右)(画像提供/©Tokyo 2020)
日本を代表するデザイナーとして選出され、お二人らしい見事なデザインで全うされた仕事ぶりに、長らくファンである私は感銘を受けました。
さて、デザイン界の日本代表とも言える両氏の「THE DIOR MEDALLION CHAIR」展ですが、こちらも各々の感性やキャラクターが反映された作品となっています。
”Medallion of Light” 「不規則な光を生み出す自然のように、人間の感覚を超越する偶然性を持ったものを表現したいと思いました。光に近い素材を用いて、歴史的でありながら未来的な椅子を生み出すことを考えました」(吉岡徳仁)(画像提供/THE DIOR MEDALLION CHAIR)
364個の樹脂プレートをランダムに積層した椅子は、光を素材としてつくられたよう。目の錯覚と共に時空間の境界をぼかすような作品となって見る人を魅了します。
“Chaise Medaillon 3.0” 「メダリオンというクラシカルなチェアを先端技術を用いて再解釈することにしました。背もたれは楕円形に切り抜かれていることで、メダリオン・チェアの特徴が軽やかに空中に浮遊しているかのような表情が生まれました」(佐藤オオキ)(画像提供/THE DIOR MEDALLION CHAIR 撮影/©Yuto Kudo)
実はこの素材、強化ガラス。1800×1100mmの一枚板は厚みわずか3.0mmで、C字型まで深く曲げられる手法を新たに開発し実現したフォルムなのです。
この2作品、デザインはお二人らしさが出ていて、一方、素材はいつもと逆!?な意外性もあり興味深かったです。こういうプロジェクトは、やはり雰囲気のある会場で見ると感動がより深かったに違いありません……。
サステナブル社会の実現に向けて、技術とデザインが融合インテリア業界以外の日本企業がミラノで企画展をすることも少なくないなか、今年初出展したのがNitto(日東電工)。スマホ用偏光フィルムや、工業用粘着テープなどなどを提供する高機能材料メーカーで、グローバルビジネスへのブランディングを強化しています。
Nitto(日東電工):「Search for Light」(ミラノ・トルトーナ地区)
クリエイションパートナーは面出薫(建築照明デザイナー)。透明な「RAYCREA(レイクレア)」フィルムをガラスやアクリル板に貼り光源を組み合わせることで、フィルムを貼った面だけが光る。光の迷宮のような会場(画像提供/Nitto)
新しい光の表現を可能にする光制御技術「RAYCREA」をミラノで披露し、デザイン界からユーザー視点での生の声を多く得られたようです。
最後にぜひ紹介したいのは、著名ギャラリーオーナー・Rossana Orlandi(ロッサーナ・オルランディ)が2019年から推進している「Ro GUILTLESSPLASTIC(罪のないプラスチック)」プロジェクト。
“プラスチックが罪なのではありません、私たちは習慣を変える必要があるのです”とロッサーナは呼びかけ、使用済みのプラスチックとゴミにデザインの力で新しい生命を与え、生まれ変わらせるデザインコンペを世界に向けて発信。
「Ro Plastic Prize」として毎年、Milan Design Week期間中に応募作品を展示し、表彰しています。
「Ro GUILTLESSPLASTIC」の会場はロッサーナのギャラリー近くにあるレオナルド・ダ・ヴィンチ記念国立科学技術博物館。中庭に設けられたステージのデザインも目を引く。期間中にはデンマーク王女も訪れた(画像提供/Galleria Rossana Orlandi)
「廃棄物についての意識を高めるには、持続可能性と責任について話すだけではもはや十分ではありません。私たちは感情を刺激する必要があります」とロッサーナ、デザインコンペ「Ro Plastic Prize」に新たに設けた “Emotion on Communication”賞。その受賞作品に度胆を抜かれました!
受賞作はオランダ人アーティストのMaria Koijckの動画作品「this is the waste of one operation , my operation…. (これが一度の手術で出る廃棄物、私の手術……)」。自身の乳がん手術に使われた医療器具などの廃棄物を回収し、自分の周りに並べるという斬新な構想(画像提供/RO PLASTIC PRIZE 2021)
Maria Koijckはプラスチック廃棄問題に取り組んできたアーティストとして、自分の手術に使用される医療材料の60%が使い捨てであることに愕然とし、このプロジェクトに取り組みました。そして、病の回復に感謝しつつも、こう投げかけます。
「人間は常に“良くなる”ことを目指していますが、私たちの環境にかかるコストはどれくらいですか?」
医療関連のプラスチックもリサイクルできるように技術革新を続けることが重要と訴えています。
持続可能な社会に向けた取り組みは、「surpersalone」会場のブランドからもリサイクル率や素材開発など多く発信されていました。
アーティストはデザインで人の心に訴え、企業は技術開発に挑む。そんな活動の広がりを日本に居ながらにして垣間見ることのできたMilan Design Week/ミラノサローネ2021@ホームでした。
ミラノサローネ国際家具見本市「Salone del Mobile.Milano」
2021年9月5日(日)~10日(金)
場所:ロー・フィエラ ミラノ 入場料:15ユーロ
「surpersalone」デジタルプラットフォーム
※2022年4月5日~10日開催予定(60周年記念ミラノサローネ国際家具見本市&キッチン・バスルーム見本市併催)
徳島県徳島市から車で約40分。豊かな自然に囲まれた神山町は、アーティストが滞在し創作活動を行う「神山アーティスト・イン・レジデンス」や、”地産地食”を合い言葉に農業を育てる「フードハブ・プロジェクト」、また企業のサテライトオフィス誘致の成功など、先進的な取り組みで「奇跡の田舎」と呼ばれる。そんな神山町に、町内外から子育て世代が移り住むための住宅「大埜地(おのじ)の集合住宅」が誕生した。環境や地域産業にも寄与できるという最先端の技術を取り入れた住まいの今を探ってみた。
子育て世代が集える町営住宅を目指して山々に囲まれ清流・鮎喰川が町の中心を流れる神山町。写真中央にあるのが大埜地の集合住宅(写真提供/神山町)
大埜地の集合住宅がある大埜地地区は、神山町役場から徒歩約15分。小学校と中学校も徒歩圏内にあり、子育て世代が生活するには便利な文教エリアだ。ここにはかつて町内の遠方から中学校へ通う学生のための寄宿舎「青雲寮」があった。しかし少子化のあおりを受け2005年に閉寮。その場所の活用方法が長年議論されていた。
大埜地の集合住宅がある場所にあったかつての青雲寮(写真提供/神山町)
一方で町内に企業のサテライトオフィスの開設や東日本大震災の影響、加えてNPO法人グリーンバレーが運営する移住交流支援センターによる支援により、移住者が増えつつあった神山町にとって、住居の確保やその情報提供は手薄な状態だった。町内には不動産会社もなく、空き家となった古民家を紹介するとなっても、移住交流支援センターの取り組みだけでは、住みたいと思う人たちの希望に全て沿えるわけではない。家を建てる土地や借家を見つけるには困難が伴っていた。
また、既に町内の各所に住んでいる子育て世代にとっても、広い町域にゆえに、近所に同世代の子どもが少なく、普段の生活の中で互いに遊び、触れ合うことで、成長や学びに繋がる機会が損なわれつつあった。子育て世代が近所で暮らすことは、子どもだけでなく親同士が支え合えるメリットもある。
そんな状況を打開する方策のひとつとして浮かび上がってきたのが、新たな集合住宅の建設。そこで白羽の矢が立ったのが大埜地地区の青雲寮跡だった。
住居と駐車場が隔離された歩車分離の敷地では、子どもたちも安心して遊ぶことができる(写真提供/神山町)
快適な住環境が地域に貢献する家づくり2015年、入居者のための「大埜地住宅」と、広場や文化施設がある「鮎喰川コモン」からなる拠点づくりが決定。翌年から2021年までをめどに、工期を4期に分け、少しずつ開発を進めてきた。大埜地住宅は全20戸、子育て世代のための住宅18戸と単身者用シェアユニット2戸で構成。鮎喰川コモンは多世代の人が交流できる施設だ。
鮎喰川沿いに広がる大埜地住宅。住宅の周囲には神山町産の樹木が植栽されている(画像提供/神山町)
建築を担ったのは大工など町内のつくり手たち。工事が長期間に及んだのは、大工が小規模ゆえに、一度に大規模な工事はできないのもあった。その反面、この工事をきっかけに、担い手不足に悩まされていた町内の建築業に新陳代謝が起こり、若手大工の活躍の場が広がっていった。
住宅の建材には町内産の木材を使用。さらに給湯や暖房などの暮らしに必要なエネルギーとして、製材所から出るおがくずなどを原料にした木質ペレットを燃料とした、木質バイオマスボイラーを採用。ボイラーが設置されたエネルギー棟から各戸へ熱を送る。町内の森林資源を利用することで、経済を回し、間伐による健全な森づくりにも寄与できる。
また、冬は屋根で温めた空気で補助暖房。夏は夜間の冷気を取り込む仕組みを設置。これらの先端技術だけでなく、窓の位置や形状などの設計上での工夫も凝らし、エアコンやストーブなどに頼り切らない、快適な住環境を実現した。木質バイオマスボイラーを使用することで、毎月平均1万円の「熱料金」が発生するものの、ガスや電気を利用した一般住宅の光熱費より財布に優しい試算結果も出ている。
家族・夫婦用ユニットのメゾネットタイプとバリアフリー対応のフラットタイプ、そして単身用ユニットの3戸で一棟になっている集合住宅。2戸1タイプもある(写真撮影/生津 勝隆)
南向きのリビングダイニング。川沿いの涼しい風を取り入れる設計になっている。コンクリートタイル仕立ての床は、冬の昼間は太陽の熱を蓄熱。さらに温水式床下暖房で室内全体を温める(写真撮影/生津 勝隆)
メゾネットタイプの2階の室内。室内の壁は調湿性能のある珪藻土や、健康に配慮した自然由来の塗装剤で仕上げている(写真撮影/生津 勝隆)
メゾネットタイプの間取り。1階は北にある玄関から南のダイニングまで、土間が段差なく続く。2階は子どもの成長に合わせて仕切りを設けることも可能(画像提供/神山町)
敷地内にあるエネルギー棟。木質バイオマスボイラーを使って、ここから各戸へ熱を供給する(写真撮影/生津 勝隆)
アフターコロナで期待される交流の活性化2021年春、無事竣工を迎えた大埜地住宅は現在満室。入居者の数は総勢67人となり、約80人だった大埜地地区の本来の人口からほぼ倍増したわけだ。入居者は、町内出身者のUターン、町外からのIターン、あるいは町内からの引越しと顔ぶれはさまざま。仮に「都市部からの引越し」を「移住者」と定義するなら、移住者の割合が多い。
徳島市内への通勤者もいるが、リモート勤務も含め、入居者の大半が町内で働く。出身地は異なれど、同じ子育て世代で、普段から親同士、あるいは子ども同士の交流も活発だ。LINEグループでの情報交換、また月に一度の自治会の例会では、周辺の草刈りや敷地内での交通安全などの議題を話し合う。都市部からの移住者にとってこの交流は、新鮮であり、安心できる要素のようだ。
入居者の中には、もともと神山町出身者もいるため、近くに住む祖父母が孫を訪ね大埜地住宅に足を運ぶことも多い。現在はコロナ禍の影響もあり、なかなか地元との交流の場が設けられることがないものの、コロナ収束後は地域の祭りなど通じて、多世代の人たちとの交流の機会を設けていく。
これらの交流を通して、町民はもとより町外の人にも、地元の資源を使った家づくりの大切さや新しい木造住宅の素晴らしさを再認識してもらう狙いもあるようだ。
「地域の植生を活かしながら、楽しい原っぱを育ててゆくこと」を目標に、入居者や鮎喰川コモンの利用者である町内外の人たちと行う除草作業も大切な交流のひとつ(写真提供/神山町)
住み継ぐことで次世代が担っていくまちの将来像順風満帆でスタートを切った大埜地住宅は、これからどのようにして維持・運用していくかがポイントとなってくる。主な入居条件が、50歳以下で高校生以下の子どもがいる家族、または今後子どもが生まれる可能性のある夫妻となっているため、子どもが高校を卒業し進学等で家を出ると、親も退去し新たな住まいを探す必要がある。
海外ではライフスタイルに合わせて、その都度家を住み替えていくことが一般的だが、日本人は親から引き継いだ家や自分が買った家を住み替えずに守っていくという思考の人が多く、大きな家に一人で高齢者が暮らすことも多い。そのため昨今問題が表面化してきているのが、同世代が一斉に入居し、その何十年後に高齢夫妻だけが残された「ニュータウンの限界集落化」だ。
神山町は大埜地住宅を軸にした「住み替え文化」の形成を目指す。課題は大埜地住宅を退去した親世代の生活に適した住居の確保だ。幸いにしてまだ時間が残されているため、現在は既存の町民を対象に空き家相談会など実施して、課題解決に向け取り組んでいる。
また、東京の工学院大学と提携し、大埜地住宅の各住居に内外の気温差、消費電力、換気状況などがモニタリングできるシステムを設置予定。木質バイオマスボイラーや環境に配慮した構造がどのような効果を上げているかをデータとして積み重ね、国内でも数少ない設備を持つ最新鋭の住宅を検証し、さらに快適な住環境の整備へと繋げていく。
自然豊かで快適な住環境を備えた大埜地住宅に、また新たな世代が入居し、親となり、その後も神山町に住み継いでいく……。そんな理想的なまちの姿が数十年後に見えてくるかもしれない。
●取材協力
神山町
全国各地の水害被害が以前よりも話題にのぼるようになった今、これから家を建てるなら水害リスクを頭に入れて検討したいもの。ではどうやったら水害に強い家をつくれるのか? 専門家や住宅メーカーに聞いてみた。
5つの水害対策法を費用対効果の面から検証している(写真/PIXTA)
ひとたび床上浸水すれば建物だけでなく家具やキッチン、浴室、トイレ等の設備もダメになり、下手をすればリフォームに1000万円近くかかることもある。またその地域に被害が集中するため、職人が不足して、復旧までに時間がかかりがちだ。避難生活のストレスも計り知れない。そうしたことが毎年のように全国のどこかで起こるようになってきた。
「水害対策は従来、土木分野の課題だと言われてきました」と国立研究開発法人建築研究所の主席研究監である木内望さん。「川から水が溢れないようにする、という考え方です」。ところが最近はそれだけでは被害が防げないという声が上がってきた。そのためここ数年で、土木だけでなく建築でも対策を考えなければならなくなってきているという。「特に2019年に甲信越地方から関東、東北地方まで記録的な豪雨をもたらした台風19号が大きな転換期でした」
台風19号により大きな進展がもたらされた、建築方面からの水害対策。木内さんは現在、住宅の水害対策方法を5つ挙げ、それらを費用対効果の面から検証している。「もちろん他にも方法はあるでしょうが、まずはこれらの方法が浸水レベルによってどれだけの費用対効果があるのかを検証しています」
その5案とは以下の通りだ。
(1)修復容易化案
(2)建物防水化案
(3)高床化案
(4)早期生活回復可能案
(5)屋根上避難可能案
(1)修復容易化案とは、浸水した後の復旧をなるべく簡単に済ませることができるようにするもの。浸水すると床下や床上の清掃から、濡れて使えなくなった部材を撤去しなければならないが、例えば断熱材を発泡ウレタン系など乾かせば再び使えるものを使用したり、電気設備と配線の位置を高くしておいたりすることなどで被害を小さくし、早めに復旧できるようにする。
浸水した後の復旧をなるべく容易にできるよう、部材の選び方などさまざまに工夫する方法(画像提供/建築研究所)
(2)建物防水化案とは外壁をある程度の高さまでRC(鉄筋コンクリート)など止水性のある材料で覆うなどにより、住宅内への浸水を食い止めるというもの。水面が一定程度の高さになるまでは浸水しないようにするという考え方だ。
外壁をある程度の高さのRC(鉄筋コンクリート)壁で覆う方法。RC壁で覆えない掃き出し窓等には止水板を備える(画像提供/建築研究所)
(3)高床化案とは基礎を高くしたり、敷地をかさ上げなどして住宅への浸水を防ぐという方法。こちらも(2)建物防水化案同様、水面が一定程度の高さになるまでは浸水させないという考え方だ。豪雪地帯では冬の積雪に備えて1階部分をRC造にしている住宅が多いが、それと同じような考え方といえる。
図のように基礎を高くしたり、敷地をかさ上げすることなどで浸水を防ぐ(画像提供/建築研究所)
(4)早期生活回復可能案は(1)修復容易化案をさらに一歩進めた考え方で、浸水後の修復期間でも2階で生活が出来るようにしたもの。本来、修復する際は避難所等での生活が強いられるが、修復中も2階で生活できるので避難生活のストレスを軽減できる。
2階部分に浴室やトイレなど水まわりを用意することで、1階部分の修復中も生活できるようにする方法の例。太陽光発電を備えれば、停電になっても電気も使うことができる(画像提供/建築研究所)
(5)屋根上避難可能案は(1)修復容易化案や(2)建物防水化案の派生形。水位の高い氾濫時に、屋上などから避難できるようにしておく方法で、水流が早い場合でも住宅が流されないようにしておくことが必要。水に浸かった部分は諦めるしかないが、命だけは守るという考え方だ。
水位が高い氾濫の場合でも、住宅が水流に流されず、屋上などから避難できる方法の例(画像提供/建築研究所)
いずれの方法も、従来の家づくりと比べたら費用がかかる。また浸水後の被害もそれぞれ違う。一方で浸水リスクは一様ではない。そのため浸水リスクに応じて対策方法を選んだ方が効率的だ。
「例えば、滋賀県の『地先の安全度マップ』では10年に1回、100年に1回、200年に1回の頻度で起こる水害の時に、それぞれ想定される水深がどれくらいになるかを公表しています。これをもとに水害対策でかかった費用と、無策のため復旧にかかった費用がイーブンになる年数、つまり水害対策費用がどれくらいの期間で回収できるのか、上記案の費用対効果を調べてみました。すると(1)修復容易化案の水害対策で約6割のエリアが20年で回収できる計算になります。同様に(2)建物防水化案なら約3割のエリアが、(3)高床化案は約5割のエリアが20年で回収できると分かりました」
上記5案に関するこれまでの検討は、あくまで水害対策の概ねの方向性と費用対効果を調べるためのもので、例えば(1)修復容易化案ならどの部材ならOKなのか、といった建築の詳細を詰めるものではない。むしろこれらの方法をマンションならどう活用できるかといった応用を検討したり、今後のまちづくりや浸水リスクのゾーン分けを考えるベースになるものだと木内さんはいう。とはいえ今後の家づくりに大いに参考になるはずだ。
浸水を“重し”にする、それでもダメなら水に浮いて被害を抑える住宅木内さんも述べているように、上記5案以外にも方法はある。その1つが、一条工務店が開発した「耐水害住宅」だ。「開発のきっかけは2015年の集中豪雨による鬼怒川の氾濫でした」と一条工務店の津川武治さん。耐水害の対策だけなら、例えば先述の(3)高床化案なども検討したというが、コストが高くては普及が難しいと判断。コストを抑えつつ耐水害を実現する方法を模索したそうだ。
「当初は水害に遭った際、どうやって基礎の通気口から水や泥を入れないか、壁や窓、ドアの密閉性をどう高めるか、その方法の開発にかなり時間をかけました」。ようやく目処がついて実証実験が行われたのは、開発スタートから約4年後の2019年のこと。これを便宜上、耐水害住宅の初期型とする。
その際の水面の高さの目安は1m。これは鬼怒川の氾濫で多かった膝くらいの高さ(50cm前後)に十分対応できるものだった。「ところが実験の直後に台風19号による水害が長野県や関東地方で起こりました。それを見て『今後はもっと水害被害が大きくなるのではないか』と考え、もう一段上の耐水害住宅を目指そうということになったのです」
(出典:国土交通省 河川事業概要2020)
そこで販売直前だったにもかかわらず、初期型の販売をとりやめ、開発を進めることに。初期型の開発時に、一般的な規模の住宅の場合、水深が1.3mほどになると建物が浮力によって浮き始めることを突き止めていた。この浮力をどうするかがこの先の課題だった。
「そこで考えられたのが、床下から水をあえて入れ、水を重しにする方法です」。これが現在販売されている耐水害住宅の「スタンダードタイプ」だ。災害後は簡単に水抜き穴から排水できるようになっている。もちろん初期型で開発した壁や窓等の密閉性能も盛り込まれた。これなら浮力が大きくかかる水深1.3m前後でも耐えることができる。
しかし同社はさらに開発を進めた。「もしもさらに高い浸水の水害は遭ったらどうするか?」
最初は基礎にアンカーを埋めて浮いた住宅を引き留める方法が考えられたが、水害時の浮力はアンカー装置ごと引き抜いてしまうくらいの力があった。アンカーの本数を増やしたり、アンカーを長くしたりという方法も検討されたが、それではコストがかさむ。
2020年10月に行われた実証実験では水深3mで検証が行われた(写真提供/一条工務店)
その時に「だったら浮かしてしまおう、という発想が生まれたのです。耐震住宅ではなく免震住宅のように、加わる力に対して抗うのではなく、いなすという考え方です」。そして、水が引いた後に建物が再び元の位置に戻れるよう、ポールと建物をつなぐダンパーを用いたシステムも開発した。実験の結果では、水が引いた後に着地した時の誤差は3cm。給排水管は浮上時に一定の力がかかると配管の接続部が引き抜け、着地後は簡単に差し込み直せる工夫がされている。水道管は住宅が浮き上がって引き抜かれると同時に自動で止水弁が閉まる仕組み。これは洗濯機の給水管と同じ仕組みが応用された。
ポールを自由に上下できるワイヤーが住宅をつなぎ止め、ワイヤーの間に備えられたダンパーが住宅を元の位置にとどめる役割を果たす。基礎の下にもコンクリートを敷く二重基礎構造により、安定した着地が可能に(画像提供/一条工務店)
実験の結果、耐水害住宅は、床下、室内ともに被害を受けなかった(画像提供/一条工務店)
この浮上タイプは最大5m、同社のスタンダードタイプの住宅でも1m程度の浸水まで対応できる。建築地の浸水リスクに応じて、どちらがいいかをユーザーが選べるようにした。コストの目安としては、35坪の住宅でスタンダードタイプなら、同社の通常の住宅+約46万円、浮上タイプで+約77万円と、当初の同社の狙い通り、コストが抑えられている。
光熱費を削減するためのシステムが水害対策で注目を集める!?一方、もともとは別の目的で開発されたユニバーサルホームの「地熱床システム」も、近年注目を集めている。「2002年に開発したシステムで、その名の通り地熱を活用して室内温度を一定に保つことで冷暖房費を削減できるシステムとして当初は販売していました」とユニバーサルホームの安井義博さん。ところが最近は水害対策の住宅として注目されるようになってきたという。
「地熱床システム」はもともと地熱を利用して室内温度を一定に保つことで冷暖房費を削減できるシステム。床下は土と砂利、コンクリートで密閉される(画像提供/ユニバーサルホーム)
その理由は、「地熱床システム」の住宅が床下浸水しないからだ。このシステムは、地下の熱を得るために床下が密閉構造になっているため、浸水が起こっても床下に水が入らず、建物に対する浮力が発生しない。実際、津波被害に遭ったエリアで、他の住宅が波に流される中、地下熱システムを備えた住宅はその場にとどまったままだった。「また床下に水が入らないので、床下浸水自体が発生しません。さらに強固な基礎構造ですので、地震にも強いというメリットがあります」
(写真提供/ユニバーサルホーム)
万が一、基礎部分を超えて浸水(床上浸水)した場合でも、復旧処理は床上だけで済む。本来は床を剥がして基礎部分に入った泥や水を取り除き……といった作業が必要なのだが、それが不要になるのだ。
通常は床下を乾燥させるために基礎には通気口が設けられている。浸水時はここから床下に水や泥が入るので復旧時の作業が大変なのだが、地熱床システムは床下が土や砂利、コンクリートで密閉され、通気口もないため水が入ってくる心配がない(画像提供/ユニバーサルホーム)
「床下浸水は損害保険が適用されないことが多いのですが、地熱床システムなら床下浸水の心配がないので安心です」
最近では水害に強い住宅として注目を集めるようになってきたため、同社では水害対策としてエアコンの室外機等を床より高い位置に設置したり、窓の止水版なども用意したりしている。また災害後もすぐに自宅で過ごせるよう太陽光発電+蓄電池のセットも用意しているという。水害に強い上に、光熱費を削減でき、地震にも強いとあっては今後も注目を集めそうだ。
ハザードマップを見ながら各自で水害対策を練ることが必要頻発する水害を受け、国も水害対策に関する法律「流域治水関連法(特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律)」をつい最近、2021年5月に公布し、7月に一部施行した。「この法律で水害が起こりやすいところの建築や開発規制をかける仕組みはできました。ただし、法律で守るのは建物ではなく人の命です。具体的にこの方法で建てるように、という規制のための法律ではありません」と建築研究所の木内さん。
(写真/PIXTA)
とはいえ「例えば水害リスクを伝えるために宅建業法の重要事項説明に盛り込んだり、耐震等級のように耐水害対策についても性能表示項目に定めるという動きがあってもおかしくありません。また周囲の住民が逃げられる施設をつくったマンションは容積率を緩和するとか、水害対策をする住宅に補助金を出すとか、そういった形は今後考えられると思います」という。
現状、われわれができることは、ハザードマップを見て、大河川の氾濫は無理だけど内水氾濫(集中豪雨によって用水路等の排水能力を超え、市街地が浸水してしまう災害)には耐えられるようにしようとか、冒頭の5つの案を参考に対策するか、上記で紹介した水害対策が施された住宅を選ぶなど、各自で対策を判断するほかない。
ただし注意したいのがハザードマップの見方だ。従来のハザードマップは数百年に1度の水害に対応したものだったが、現行のハザードマップは、命を守る目的もあって、1000年に1度の水害に対応したものになっている。しかし1000年に1度の大洪水ともなると、エリアによっては想定されている水深が3~5m、5m~10m……となる。
「水害によって水面が5mを超えると、たいていその数字を見ただけで諦めてしまいがちです。しかし起こる頻度の低い水害ではなく、本来は浸水による水深が低くても起こる頻度の高い水害を想定したほうが住宅においては水害対策になります」。先述した「地先の安全度マップ」を作成した滋賀県など、既に動いている自治体もあるが、こうしたハザードマップの改善も今後の課題と言えるだろう。
(写真/PIXTA)
また、浸水の頻度が低くて浸水した場合に想定される水深が低いエリアなら、被害に遭った時は保険でカバーするのが費用対効果としては高いこともある。あるいは自治体で水害時に逃げ込める高い建物をつくったほうがよいケースもある。「滋賀県の場合、浸水リスクの高いエリアでは避難先としての高い建物をつくるという条例ができました」。浸水リスクが一様ではないのと同様、対策もさまざまあるのだ。
いくつかある対策方法の中から、自ら選ぶ必要がある。簡単に言えば「自らの命は自らで守る」と行動することが、現状の最善策なのだ。まるで新型コロナウイルス対策みたいだが、どちらも従来にはなかった新たな脅威。少なくとも「自分は大丈夫」と思う「正常性バイアス」にだけは気をつけたい。
●取材協力
建築研究所
一条工務店
ユニバーサルホーム
暑かった夏も終わり、不安定な季節がやってきた。最近は、気圧の変化などによる「気象病」について、天気予報で注意を呼び掛けるようにもなっている。リンナイでは「寒暖差疲労」に関する意識調査を実施した。約3割もの予備軍がいるというが、あなたは予備軍に該当するだろうか?
【今週の住活トピック】
「寒暖差疲労に関する47都道府県別意識調査」を発表/リンナイ
まずは、リンナイの「寒暖差疲労 簡易チェックシート」から、寒暖差疲労の可能性をチェックしよう。
■リンナイ作成「寒暖差疲労 簡易チェックシート」(久手堅先生監修)
□ 夏の暑さも冬の寒さも苦手
□ ずっと冷暖房が効いているなど、温度が一定の環境にいる時間が長い
□ 気温差が激しくなる季節の変わり目は、体調を崩すことがある
□ 寒い場所から温かい場所に移動すると、顔がほてりやすい
□ 代謝が悪く、むくみやすい
□ 手や足など、体の一部が冷たく感じることがある
□ 寝つきや寝起きが悪い
□ 入浴中、湯船に入って体の芯から温まるまで時間がかかる
□ PC作業やスマートフォンの使用時間が長い(1日平均3時間以上)
□ 肩こり、首こりがある
YESの数はいくつあっただろうか?
ちなみに、筆者は4つだったが、担当編集者は8つもあったという。8つもあるなら「寒暖差疲労予備軍に違いない」と思ったら、4つ以上が予備軍だというので、筆者も予備軍というトホホな結果になった。
監修した久手堅医師によると、「『寒暖差疲労』とは、気温差が大きいために体温を調整する自律神経が過剰に働き、体が疲れてしまうこと。寒暖差疲労の症状を訴える人は寒さの入口に当たる秋ごろから徐々に増え始める」という。
寒暖差疲労予備軍は、男性より女性、年代別では30代で多いリンナイによると、4つ以上チェックが入った「寒暖差疲労予備軍」は28.3%。残りの71.7%はチェックの数が3つ以下だというので、3割の方に筆者も編集者も入ることが分かった。
最も「当てはまる」という人が多かった設問は「夏の暑さも寒さも苦手」(48.2%)、続いて「肩こり、首こりがある」(38.7%)と「PC作業やスマートフォンの使用時間が長い(1日平均3時間以上)」(37.5%)だった。逆に、最も少なかった設問は「入浴中、湯船に入って体の芯から温まるまで時間がかかる」(6.9%)だ。
筆者も担当編集者も当てはまった「肩こり、首こり」は、自律神経の乱れを引き起こす大きな誘因だそうだ。「3時間以上のPC/スマホ使用」も該当するので、寒暖差疲労は気象だけでなく、デジタル化したライフスタイルも影響しているようだ。
男女別で見ると、圧倒的に男性より女性の方が予備軍は多く、年代別で見ると30代に予備軍が多い。男女で筋肉量などが違うことや、30代は社会活動が活発であることなどが影響しているのだろうという。
出典/リンナイ「寒暖差疲労に関する47都道府県別意識調査」より)
発表!寒暖差疲労予備軍などの都道府県別TOP3リンナイの調査では、都道府県別の結果を公表している。主な結果は以下の通りだ。
■都道府県別「寒暖差疲労予備軍」の割合
1位:新潟県(40%)
2位:滋賀県(38%)
3位:青森県・岐阜県・沖縄県(36%)
最下位:和歌山県(12%)
■都道府県別「疲れを感じやすいと思う」の割合
1位:島根県(88%)
2位:福島県・茨城県・熊本県(84%)
5位:長野県・三重県(82%)
最下位:神奈川県(54%)
■都道府県別「冷えを感じている」の割合
1位:高知県(64%)
2位:兵庫県・鳥取県・徳島県(52%)
5位:滋賀県(50%)
最下位:奈良県(26%)
■都道府県別「長風呂県(湯船につかる平均時間)」
1位:茨城県(17.9分)
2位:滋賀県(17.1分)
3位:佐賀県(16.5分)
最下位:京都府(10.3分)
寒冷の北海道・東北、温暖な九州・沖縄などの地域性の影響もあるだろうが、意外に結果がばらけていると思った。1位と言われてもあまりうれしくない項目もあるが、あなたが住んでいる都道府県は入っているだろうか?詳しいリリースには、他の調査項目の順位も出ているので、興味があればご覧あれ。
では、季節の変わり目のいま、「寒暖差疲労」の対策はどうしたらよいのだろう?
調査の回答者で「季節の変わり目に寒暖差で悩んだり、身体の不調を感じることがある」人がその対策として行っていることは、「十分な睡眠をとる」(52.1%)、「規則正しい生活をする」(39.9%)、「運動をする」(25.5%)が上位だった。
一方、久手堅医師による対策は、寒暖差疲労の代表的な症状である冷えは初期段階で手足に表れるので、「入浴をして体を温め、疲労をためないようにする」ことだという。おススメは「38~40℃のぬるめのお湯に10~15分程度つかる」。また、肩こりを感じている人は、「耳たぶストレッチ」が効果的だという。「耳たぶの少し上を水平方向に引っ張る⇒5~10秒たったら離す」を数回繰り返すのだそうだ。
筆者も季節の変わり目は体調を崩すことが多いので、お風呂に入ってよく寝ることを心がけようと思う。皆さんも自分の体調管理には気を付けてほしい。
【参考】
「寒暖差疲労に関する47都道府県別意識調査」を発表/リンナイ
九州・広島を襲った大雨と河川の氾濫、熱海での土砂崩れなど、日本各地で災害が多発している昨今ですが、こうした自然災害発生時、大きく影響するのが地域の人と助け合う「共助」です。ただ、「共助といっても何をするの?」「何ができるのか分からない」と戸惑う人がほとんどではないでしょうか。今回は千葉県千葉市中央区の東千葉で、地域コミュニティを支える人の声を聞きました。
街に「自分」の居場所がない…! すべては危機感からはじまった東千葉住宅地は、総武本線東千葉駅から徒歩15分ほどの場所にある一戸建てとマンション、あわせて約1000世帯5つの町内自治会で構成されています。住宅地が完成したのは1978(昭和53)年で、現在は高齢世帯や独居世帯が増えているほか、新しい住民との入れ替わりが始まった過渡期だといいます。
東千葉地区の住宅街。区画も広く、成熟した住宅地の印象(写真撮影/嘉屋恭子)
一見すると、典型的な郊外のベッドタウンに見えますが、この東千葉地区は非常に地域コミュニティ活動が活発。一般的な町内自治会活動と委員会活動のほかに、「ハッピータウンの会※1」「東千葉 和・輪・環(わわわ)の会」「くるま座の会」などの福祉活動・親睦活動が行われ、地域で自然に助ける・助けられる「共助」が育まれています。
ただ、最初から現在のような地域活動が活発だった訳ではなく、住民が手探りで活動をするなかで、現状に行き着いたのだといいます。
「私は79歳になりますが、自分が定年退職をしたあと、地域にまったくなじみがないことに気が付き、愕然としたんです。そこで会社人間から社会人間に変わろうと『仲間づくりの会』という飲み会を企画し、知り合いをつくることからはじめました」と振り返るのは、地域の町内会をとりまとめる東千葉地区自治会連絡協議会の元会長・村井克則さんです。
村井さんは飲み会で出身地や趣味などを通じて、地域にとけこむよう試みました。すると回数を重ねるうちに、地域に顔見知りや知人、趣味友達ができ、次第に自分たちが暮らしている街の課題について話すことが増えたといいます。
「東千葉地区には5つの町内自治会がありますが、会長など役職者の任期は1年で、毎年入れ替わります。日常的な業務、例えば回覧板を回すなどは問題なくできますが、防犯・防災、高齢化の健康や介護、独居世帯への対応などの中長期で取り組むべき課題には答えを出していけない。これはまずいよね、地域で支え合えないかということで、自分たちにできる活動をはじめました」(村井さん)
お話を伺った東千葉地区のみなさん。手には安否確認訓練時に自宅の軒先に掲げて「無事」を伝えるタオルを持っています(写真撮影/嘉屋恭子)
町内自治会活動と福祉・親睦活動があることで、住みやすい街になる町内自治会で行うのは、前述したような日常業務のほか、地域の防犯・防災、お祭りなどの恒例行事や町内自治会が所有する建物の建て替え準備などになります。自治会費の予算があり、地域のルールを決める権限があります。一方で、「ハッピーボランティア東千葉」「東千葉 和・輪・環(わわわ)の会」「くるま座の会」などは、地域の福祉・親睦を主目的とした活動です。扱う内容は、地域の見守りやあいさつ運動、多世代との交流、高齢者の健康づくりなどさまざまですが、自由な集まりに近く、予算や権限・拘束力などはありません。
東千葉地区自治会連絡協議会で会長を務める大内信幸さんによると、この既存の町内自治会と福祉・親睦活動の2つの軸があることで、地域コミュニティが立体的・有機的になるのだといいます。
「自治活動と福祉・親睦活動を地域づくりとしてトータルで行っていかないと、住みやすい街にならないと思うんです。そのため、両者の交流を促進する『地域づくり懇談会』を設けています。さまざまなテーマで情報交換するなかで、地域の課題や関心が見えてくるんですね。今はコロナの影響で集まることはできませんが、地域の福祉を担う社会福祉協議会、民生委員児童委員協議会(民児協)、小中学校とも連携しています」と話します。
「自分」の興味を大切に。無理なく楽しく参加できる仕組み東千葉地区ではリタイヤ世代の男性だけでなく、女性の活躍も目立ちます。また活動を担う人たちが楽しそうに、そして強制ではなく主体的に動いているのが印象的です。
「どの活動も、人のため、地域のためというだけでなく、自分たちが楽しく続けられることを行っています。健康、介護、将来の相続など、興味・関心のあるテーマで講演会を企画したり、多世代が楽しめる季節ごとのイベントを開催したり。『できる範囲で、ちょっとボランティアがしたい』『こんな講座があったら参加してみたい』。そうやって企画していると、人が集まって顔見知りができて、新しい動きが生まれる。その繰り返しだったような気がします」と話すのは村井さんの妻の早苗さん。社会福祉協議会の東千葉地区部会の部会長、千葉市立都賀中学校の学校評議員を務めています。
東千葉地区は、もともと専業主婦が多かったこともあり、女性が地域活動の中心だったといいます。ただ、現代は共働き世帯が主流。昔のように地域の交流に参加できない人も多いそうです。
「新しい世帯や若い世代に、地域コミュニティに入ってと強制できません。ただ、地域活動が活発なのを知って引越してきてくれる人もいるようで、とてもうれしいですね。子どもたちといっしょに参加しやすい七夕、ハロウィン、お祭り、防災訓練などを通して顔見知りになり、『いつか(企画側で)やってみたいな』と思ってもらえたら十分ではないでしょうか」と話すのは大内さんの妻の公子さん。社会福祉協議会・東千葉地区部会の副部会長、千葉市立千草台東小学校・都賀中学校の学校評議員などを務めています。
地元の民生委員・児童委員を務める高畑宏子さんは、「東千葉も高齢世帯や独居世帯が増えてきていますが、町内自治会や地域のみなさんに寄り添っていただき、さり気なく見守られているのを感じます。また私のような民生委員も、地域のみなさんと普段からおしゃべりすることで、精神的にも助けられています」と話します。民生委員や児童委員になる人の負担を減らすという意味でも、横のつながりは重要なのかもしれません。
健康や在宅介護などの講座やイベントは、「今、自分たちが興味・関心のあること」をテーマにしているそう(写真提供:東千葉地区自治会連絡協議会)
大規模な防災訓練も、日ごろのあいさつの延長上にある東千葉地区が、この10年もっとも力を入れてきたのが、防災訓練をはじめとした防災対策です。住民の高齢化により負担を軽減するため、2018年から5つの町内自治会が合同で防災訓練を実施しています。自治体や学校、警察、消防、地元企業などが共催し、老若男女約500人が参加するという大掛かりなイベントです。また、近所の旧家にあった井戸を防災井戸として使えるよう行政に働きかけて指定を受け、35名以上の「くるま座の会」有志メンバーが協力して、日々の清掃や機器の維持管理をしています。
防災訓練が行われる公園。500人が集まる大規模な訓練が行われるのは驚き(写真撮影/嘉屋恭子)
地元の中学生が参加し、防災井戸から水を運ぶ、運搬訓練をするそう(写真提供:東千葉地区自治会連絡協議会)
「防災訓練では、できるだけ現実に即したリアルな訓練ができるよう呼びかけています。まず、防災訓練を行う日の午前中に各町内自治会の防災備品のチェック、そして各家庭では家族が無事である証拠として自宅前に安否確認タオルを掲示してもらっています。これは実に75%の世帯が参加してくれています。午後には地元の中学生が防災井戸から水を汲んでリアカーで運ぶ訓練をし、その水を炊き出し訓練に使っています。災害時、高齢者では、重い水を汲んだり運んだりするのは難しいですから。ほかにも、起震車による地震体験、煙体験、救命救助の仕方やブルーシートでテントをつくる、チェーンソーで木を切るなど、さまざまな訓練をしてきました」と大内さん。
こうした参加型の訓練内容が地域住民の関心を呼び、年々、参加者が増えていたのだとか。ただ、東千葉町内自治会のみなさんから見ると、まだまだ課題は目につくようです。
「高齢者から見て、行政が指定した避難場所や避難所が遠くて行きにくい。そこで、町内自治会集会所を地震後の一時避難場所として使用できるよう、行政にはたらきかけました。ただ、実際には地震が起きても在宅避難になるのではないでしょうか。現在、町内自治会集会所を拡張して一時的な避難所、防災倉庫として活用できよう機能の拡充を計画しています。この地域から誰も取り残したくないですよね」と大内さん。そう話すみなさんが、年1回の防災訓練と同じように大切だと位置づけているのが、日々のあいさつです。
町内自治会集会所は有事の際一時避難所、防災倉庫としての機能も果たせるよう、行政や関係機関と協議しているといいます(写真撮影/嘉屋恭子)
「あいさつをすれば打ち解けるし、顔見知りになれる。すると、いざというときに顔が浮かぶし、声がかけられるのではないでしょうか。ただ、日本人はシャイなので、なかなか自然にあいさつできないでしょう(笑)。だから、地区を横断する約800mのメイン通りを『東千葉あいさつロード』と名付けて、山のように看板を設置し、すれ違う人と気軽にあいさつをしましょうという運動をしています。「あいさつロード」が世代を超えたつながりを育むといいねと期待しています」と口をそろえます。
「東千葉あいさつロード」の名は、以前からメイン通りであいさつ運動をしていた「東千葉 和・輪・環(わわわ)の会」が中心となって行政に働きかけたことで、千葉市制100周年記念事業の一環として正式に市から認められたそうです。
町内自治会集会所始めあちこちに「東千葉あいさつロード」の看板が見られます(写真撮影/嘉屋恭子)
街ですれ違っただけでは印象に残らなくても、一度あいさつをすれば、「……近所で見かけたことのある人かな?」に格上げされるから、人は不思議だなと思います。こうした日常も、災害という非日常も地続きであって、特別なことではありません。取材後、筆者は自宅周辺で「あいさつ」を意識してみましたが、みなさん感じのよい返事が返ってきました。ちょっとした世間話にもなり、お互いの体調を気遣う会話にもつながりました。「あいさつ一つ」だと思っていたのに、不思議なものです。まずはあいさつから。できることからコツコツと続けてみたいと思いました。
※1 現在は社協と一緒になり「ハッピーボランティア東千葉」として活動
山がちで平地が少ない日本は古来、さまざまな工夫を重ね、農地を整備してきました。しかし今、そうした農地が農業に使われず、その他の用途に転用もできないまま荒れていく、という問題が全国で起こっています。みなさんも、先祖代々の土地を受け継いできたものの農業をしなくなった、相続する人がいなくなったなど、身近で思い当たる人も少なくないのではないでしょうか。
将来も農業人口の減少は進むことがあきらかななかで、国もこの問題に着目し、新しい利用への試みが始まっています。そこで農林水産省 地域振興課 荒廃農地活用推進班の小林博美さんに現状を聞きました。
再生の困難度で名称が異なる「遊休農地」「耕作放棄地」「荒廃農地」といった言葉がメディアなどに登場することが増えています。いずれも、もともとは農地だったのが現在は農地としては使われていない土地を指します。
(写真/PIXTA)
これらの名称は厳密には定義が異なります。
「荒廃農地」は現在耕作が放棄され、荒廃している土地で、通常の農作業では作物栽培が不可能な土地。一方、「遊休農地」には1号遊休農地と2号遊休農地があり、1号は農地として再生は可能であるものの、現在、耕作を目的にせず、今後もされないままになると考えられる土地、2号は周辺の農地に比べて極度に農業利用度が低い土地を言います。2号は荒廃化していませんが、1号は荒廃化しており、今後荒廃が深刻化する可能性が高い土地とも言えるでしょう。
(出典:農林水産省「荒廃農地の現状と対策」2021年7月)
遊休農地は農地法で定められた用語であり、荒廃農地は市町村が実施する調査の通知に定められた用語であるのに対し、「耕作放棄地」は、農林水産省が統計を取るうえで使ってきた言葉で、農業生産者の主観によって決まるとも言えます。しかし2020年以降は耕作放棄地という呼び名ではデータを取らなくなりました。
そこでここでは、1号遊休農地(特に農地再生の困難度が高い場合)も含めて、荒廃農地の現状を見てみます。
荒廃農地の面積はこの10年ほど見ても横ばい状態ですが、農地全体の面積は減少しているため、荒廃農地が占める割合は大きくなっています。また、荒廃農地の中でも森林化するなど、農地への再生が特に困難な土地の比率は67.6%にもおよびます。
(出典:農林水産省「荒廃農地の現状と対策」2021年7月)
荒廃農地が出てくる理由を小林さんは次のように説明します。
「最大の理由は農業生産者が高齢化したり、後継者不足、つまり農業の担い手が減っていることです。一方、土地から見た場合は、自然条件の厳しさ。特に中山間地域はそうです」
機械化されたとはいえ、農業には体力が必要です。高齢化し、若手が減れば、耕作できる面積は減り、荒廃化が進むことになります。また小林さんは、土地所有者に「土地への関心心」が薄れていることも指摘します。
自然条件の厳しさというのは、土地整備が難しいことを意味します。一般に農地は、圃場、農道、灌漑設備、防災設備などの整備を必要としますが、例えば中山間地域では、道が狭く、整備のための重機などを持ち込むことができない場所が多いため、それが耕作放棄につながっています。
また中山間地域では鳥獣被害も大きな理由となっています。
荒廃農地が増えていくことは農業生産が減ることはもちろん、湛水機能(水田などが水を貯める機能)がなくなる、害虫などが発生して周辺農地に被害が出る、景観が損なわれる、廃棄物の不法投棄が増えるなど、さまざまな弊害が出てきます。このことは、農地が農業生産だけでなく、多面的な機能を持つ証拠とも言えるでしょう。
(写真/PIXTA)
農水省では、遊休農地対策、荒廃農地の発生防止・解消、そういった対策の一つとして遊休農地への課税強化などもしており、課税強化は通常農地の固定資産税の1.8倍となります(※1)。一方で、遊休農地の解消は難しく、土地所有者が荒廃農地を売ろうとしても、耕作条件が不利、買い手がつかない、価格が安いなどの理由でむずかしく、なかなか利用が進んでいないのが現状となっています。
※1:通常の農地の固定資産税の評価額は、売買価格×0.55(限界収益率)だが、遊休農地は0.55を乗じない。その結果、通常農地の約1.8倍の税額となる。
では荒廃農地を解消(予防)するにはどうすればよいのでしょうか。
これには大きく二つの方法があります。第一は、土地の収益力を高めること、第二は、所有者以外の農地利用を促進することで、両方が同時に行われる場合もあります。
第一の方法の例としては、少し前から始まったソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)があります。土地に支柱を立て、地上では農業を、支柱の上方にはソーラーパネルを設置して太陽光発電を行います。太陽光発電設備は一度つくってしまえば、売電によって継続的な収入が得られ、農業のような労働を必要としません。農業を行いつつ、安定的な収入を得て、同じ面積の農地からより大きな収入を得る方法です。ただし、これは、ソーラーシェアリングの設備が撤去可能である、撤去費用の支払いが可能、農作物栽培に適した日照量を確保できていることなど、いくつかの厳しい条件が付けられています。
自治体主導の例では、土地の特性を活かした方法が出てきています。
「最近、推進しているのは粗放的利用です。農地性を失わないよう、あまり労力やコストをかけず、効率的に農地を利用する考え方です」(小林さん)
既に次のような取り組みが始まっています。
牛の水田放牧(広島県三次市)。水田と荒廃農地を電気柵で囲い、和牛繁殖牛を放牧して飼育。それにより、飼料の節約、土壌改良、鳥獣被害の防止などの効果を期待している(写真/農林水産省「荒廃農地の現状と対策」(2021年7月))
耕作放棄地のお花畑化による養蜂(山梨県甲府市)。原野化した耕作放棄地を、ミツバチのための花畑(ヒマワリ、レンゲ、ソバなど蜜源植物を植える)に変え、蜂蜜生産をめざす。大学、養蜂家、種苗会社などが協力(写真/農林水産省「荒廃農地の現状と対策」(2021年7月))
荒廃農地に花を植え、農村景観を向上(宮城県白石市)。農業者の高齢化、後継者不足で管理が困難になった水田地帯に、ハス、ヒマワリ、ポピー、雑草抑制芝などを植え、荒廃化を防ぐとともに美しい農村景観を構築した(写真/農林水産省「荒廃農地の現状と対策」(2021年7月))
バイオマスペレット燃料の地域自給(栃木県さくら市)。荒廃農地にイネ科多年草のエリアンサスを栽培、これを原料にバイオマスペレット燃料を製造し、さくら市の運営する温泉施設の燃料の一部として供給している(写真/農林水産省「荒廃農地の現状と対策」(2021年7月))
今後、栽培に手間のかからない植物を育て、生薬の原料とする、有機農業によって健康食品を生産する、といったことも期待されています。
担い手の力を引き出すことが大きなポイント第二の、所有者以外の農地利用の促進とは、言い換えれば、効率的かつ安定的な農業経営を行う者(担い手)が農地を利用することです。
なぜなら日本の農地所有者のかなりの割合が農業の担い手ではないからです。
この「担い手」とは、自分で農作業を行い、主な収入を農業で得、今後も農業経営をする計画を持っている人(村落や法人を含む)のことです(※2)。
今の日本の全農地で、こうした担い手が利用する農地の割合は58%(2020年)でしかありません。理由はさまざまですが、高齢化や後継者不足と関係なく、農地を持っていながら意図的に農業をしない(主収入は会社員など別の仕事で得ている)「土地持ち非農家」と呼ばれる人たちが相当数います。
そのため、意欲ある若手農業者、新規就農者などの担い手が農地を利用できない、散在する農地をまとめて効率的な農業を進めることができない、といった問題があり、これが農地荒廃化の遠因とも言われています。
※2:「担い手」とは、5年間の農業経営改善計画を市町村に提出して認定される「認定農業者」等を指す。
そこで、農水省では2023年までに、全農地の8割を、担い手が利用する農地にすることをめざし、農地の集積・集約化をはかっています。その手段の一つが2014年に、各都道府県に設立した、農地中間管理機構(通称:農地バンク)です。
これは農地所有者と農業の担い手との中間に立つ受け皿的組織で、農地バンクは農地所有者から農地を借り、それを担い手に貸し出す役割を果たします。農地を借りたい個人や企業は農地バンクに登録することで、貸したい農地所有者とつながることができます。一方、農地所有者は自らが耕作しない農地でも、農地バンクを通じて担い手を見つけられるため、遊休農地にしないですむ効果があります。農地バンクの取扱実績(転貸面積)は、設立時(2014年度)の2.4万haが、2020年度には29.5万haと急伸しています。
(出典:農地バンクの取扱実績(転貸面積)/農地中間管理機構の実績等に関する資料(令和2年度版))
担い手ではないが農業をしてみたい人、つまり二拠点居住、週末農業といったライフスタイルを志向する人が増えている今、荒廃農地をそうした層が利用するというニーズも出てきているようです。
「半農半Xなどニーズはあると思います。しかしそれに応えるには交通アクセスが重要。都市部とのアクセスのよい場所なら、貸しやすいし、直売場をつくって再生した農地からの収穫物を売ったりすることもしやすくなります」(小林さん)
例えば、もともと都市部の市民から市民農園の要望が強かった北九州市では、都市に近い場所の荒廃農地を市民農園につくり替え、人気を集めています。
(写真/PIXTA)
逆に中山間地などアクセスの良くない農地は、都市住民などの利用はむずかしいと言えます。
地域によっては外部からの参加に対して周辺住民の理解を得ることのハードルが高かったりと、簡単には行かないことも多いようです。
このように農地を荒廃化させない方法は、各地域の自然や立地条件に左右されますし、農地の売買や利用は農地法によって厳密に定められているため、一般の私有地のようには扱えません。使えない(使わない)農地の所有者は、農地バンクをはじめ、まずは最寄りの市町村の農業委員会やJAに相談することが大切でしょう。
●取材協力
農林水産省
リクルートの住まいに関する調査・研究機関「SUUMOリサーチセンター」が、「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」を実施した。その結果を見ると、コロナ禍で部屋探しのオンライン化が進んでいることが分かった。具体的に見ていこう。【今週の住活トピック】
「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏) 」結果を公表/リクルート
部屋探しでは、希望条件に合う賃貸物件を探して、実際に見学したうえで契約するかどうか決める、というのが一般的だろう。
リクルートの調査結果では、「部屋探しの際に見学した物件数」は平均で2.7件。ただし、「部屋探しで物件を見学していない(物件見学数0件)」という人が1割近く(9.9%)もいる。遠方に住んでいて、現地に行けなかったということなのか、前の居住者がまだ住んでいて、室内を見られないから行かなかったということなのか……。
一方で、最近増えているのが、見学者は現地には行かずに、不動産会社のスタッフが現地から動画で中継する「オンライン内見」だ。コロナ禍の影響が大きいのだろう。
今回の調査結果を見ると、「オンライン内見」を実施したのは約2割(オンライン内見のみ:13.5%、オンライン内見と現地内見の併用:6.2%)に達した。
出典:リクルート「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏) 」
特徴的なのは、男性のほうが圧倒的に女性より「オンライン内見実施率」が高いということだ。面白いのは、男性では20代が31.4%と最も高く、30代(23.7%)、40代(20.6%)と年齢が上がるにつれて低くなる。これに対して、女性では20代が11.0%と最も低く、30代(14.5%)、40代(19.8%)と年齢が上がるほど高くなっていく。それでも、どの年代も女性の実施率が男性を超えることはなく、7割以上が実際に現地に行っている。
「オンライン内見のみ」、「両者併用」、「オフライン(現地内見)」の実施者を比べると、賃料や探し始めから契約までの期間などにそれほど大差はないが、見学した平均物件数に違いがあるという。「オンライン内見のみ」が3.2件、「オフライン」が2.9件であるのに対し、「両者併用」は4.1件。オンラインとオフラインを併用することで、より多くの物件を見学できたということだろう。
オンライン契約とは?なぜ可能になったか?さらに調査では、「オンライン契約」についても聞いている。この調査の「オンライン契約」は「賃貸物件の契約をオンライン上で完結させられる」ことと定義され、不動産業界で言う「IT重説」を指している。
重説とは「重要事項説明」を略したもの。不動産会社が仲介して賃貸借契約を結ぶ場合は、契約前に不動産会社から、物件や契約条件などに関する重要事項説明を受けることになっている。宅地建物取引業法では、重要事項説明は、宅地建物取引士が説明する内容を記載した書面に記名押印し、口頭で説明を行うこととされている。
ただし、近年はインターネットの映像などを活用して、わざわざ不動産会社に行って対面で説明を受けなくても契約できるようにしてほしいという要望が高まった。それを受けて国土交通省では、宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方を提示して、IT重説の実証実験などを経て、ITを活用した重要事項説明を可能にしたのだ。
IT重説を法的に有効にするための細かい条件が設けられているので、どんな形でも認められるわけではないし、重要事項説明や契約は書面で行わなければならないので、書類の送付や返送などが必要になるが、最も重要な契約に関する行為がオンラインで完結することが可能になっている。
さて、調査結果に話を戻そう。こうしたオンラインによる賃貸借契約を利用した経験があるかを聞いたところ、7.0%が「利用経験あり」と回答した。世帯構成別に見ると、「ファミリー」(10.5%)とひとり暮らしの中でも「女性社会人」(9.5%)で高くなっている。
出典:リクルート「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏) 」
オンライン化のメリット・デメリットは?どう利用するのがよい?では、部屋探しのオンライン化が進むことで、どんなメリットがあるのだろう?
第一に、「時間の効率化」がある。現地に足を運んだり、不動産会社に出向いたりしなくて済むので、移動時間や交通費の負担を削減できる。第二に、新型コロナウイルス感染の対策として「密を避けられる」ことがある。感染の収束が見通せない今なら、外出を控え、不動産会社のスタッフとの密な空間を避けられるメリットは大きいだろう。
一方で、デメリットもある。特にオンライン内見では、最寄駅から現地までの道のりで得られる情報や現地周辺の住環境、室内の距離感、細かい内装の質感などの情報が得にくいこともある。男性より女性の方がオンライン内見の実施者が少ないのは、現地周辺のセキュリティや日々の買い物、室内のキッチンの使い勝手など、細かい点が映像では確認しづらいといったことも影響しているのかもしれない。
また、IT重説で操作に不慣れな場合は、操作方法に気を取られて最も重要な説明の中身に集中できない、といったことも懸念される。他方、オンライン会議に慣れている場合は、事前に書類が送られるので、じっくり目を通して疑問点などを整理して臨むことができるなど、メリットを感じる人もいるだろう。
筆者自身の見解では、物件の見学数を増やすために効率的にオンライン内見を利用することはよいと思う。しかし、住み替えには手間や費用もかかるので、契約する物件を決める際には簡単に決断せず、必ず現地を訪れてほしい。また、契約の際に重要なことは、契約時に細かく説明されるさまざまな条件などをきちんと理解することだ。それを踏まえて、オンラインによるかどうか判断するのがよいだろう。
オンライン内見もIT重説も、すべての不動産会社が対応できるわけではないので、必ずしも希望すれば応じてもらえるわけではない。しかし、今後はさまざまな生活シーンでオンライン化が進み、部屋探しのオンライン化も進展していくことだろう。
今回の調査結果によると、オンライン内見を実施した最高年齢は79歳だという。高齢者だからといった固定観念は、なくしたほうがよいようだ。
○リクルート「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏) 」
若い世代、なかでもひとり暮らしだと、「近所にどんな人が住んでいるか知らない」という人は多いのではないでしょうか。しかし、災害時の「共助」という視点では不安ですよね。千代田区神田淡路町では、地域のコミュニティ活動をプロデュースするエリアマネジメント組織があり、学生と住人が一体となって地域活性化をはかっています。事務局の方と学生に話を聞きました。
「淡路エリアマネジメント」が中長期で街づくりに携わる
2013年、東京都千代田区神田淡路町の小学校統跡地を含む一帯が再開発され、区立公園に隣接する2棟構成の「ワテラス( WATERRAS )」が完成しました。テナント40店舗、オフィス入居約20社、分譲住宅333戸に加えて、コミュニティ施設と学生用住戸が36戸あるのが特徴です。ここでは、ワテラスの主要権利者である安田不動産が事務局を務める「淡路エリアマネジメント」が地域活動のプロデュースを担い、その会員として学生用住戸に暮らす学生や活動を支援する地域の法人・個人が参加。自治会などの地域団体や行政と連携してさまざまな活動を行っています。
近年、東京ではあちこちで大規模複合再開発が行われ、竣工後の地域活性化を目的にしたエリアマネジメント(※)が注目を集めています。淡路アリアマネジメントの成り立ちを、エリアマネージャーを務める堂前武さんに聞きました。
※エリアマネジメント/地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取り組み(国土交通省の定義)
新御茶ノ水駅と直結。2013年に竣工したワテラスタワー(写真撮影/嘉屋恭子)
「この再開発事業は1993年、少子化のために小学校が統廃合され、跡地をどう活用していくかからはじまりました。学校が閉校になった地域住民の危機感は強く、単なる開発行為ではなく、開発後の街づくりを見据え、長期的に施策を実施する事が重要であるとの考えのもと、開発段階よりエリアマネジメント組織による活動が構想されておりました」と振り返ります。
淡路エリアマネジメントの活動は、1地域交流活動、2学生居住推進活動、3地域連携活動、4環境共生/美化活動の主に4つにわけられます。2の学生居住については、1の地域活動に参加することが条件で、相場より割安の家賃でワテラスの「ワテラスアネックス」で暮らすことができます。全36戸ありますが、都心の好立地、手ごろな家賃ということもあってか、毎年希望者が殺到し、倍率は4~5倍(!)にもなるといいます。
2013年のワテラス完成以降、マルシェや音楽祭、防災フェア、江戸三大祭りのひとつである「神田祭」などさまざまなイベントに学生が参加することで、街に活気が生まれています。
「ワテラスに学生が住んでいて地域活動しているというのは、周囲の地域や町会の方々にもだいぶ知られるようになり、手を貸してほしいと依頼が来るようになりました。学生たちも受け身で地域活動をするのではなく、主体的に地域住民と交流する機会をつくるなど、方法もアップデートしています」(堂前さん)
地域活動に取り組むと「神田が好きになる」「街への解像度があがる」学生のみなさんは、勉強に遊びにと、やりたいことが盛りだくさんの年代だと思うのですが、地域活動についてどのように考えているのでしょうか。
「私は現在入居4年目、大学3年次進級にともなって、ワテラスへ引越してきました。もともと子どもと交流するなどボランティア活動をしていたので、地域活動をしみたかったというのが入居理由の一つです。ワテラスに越してきてからも児童館でアルバイトしたり、その活動がワテラスでの地域活動に活きたりと、有意義に過ごせています」と話すのは大学院生の長谷大輔さん。ワテラスで暮らす学生は、長谷さんのように「家賃が安い」という理由だけではなく、明確に「地域活動がしたい」と意欲を抱いている人がほとんどだそう。
学生が企画して2019年から開催しているブックフェスの様子。子どもはもちろん、学生たちも楽しそう(写真提供/淡路エリアマネジメント)
「ここに来る前ひとり暮らしをしていたころは、家は寝に帰るためのハコで、どの街に誰と暮らしているという意識は持ちづらかったです。でも、ここでの地域活動が楽しくて、街に対して、人に対して愛着がもてました。『神田に住んでいる』という実感が湧いて、一住民として街への解像度が上がり、日々、気づいた魅力や課題をエリアマネジメント活動に還元できています」と話すのは、赤尾将希さん。
若い世代でも、「街と関わりたい、でもきっかけがない」と思っている人は、実は多いのかもしれません。今年度、リーダーとして中心的に学生会員をまとめる井戸川茉央さんも、同じように感じていました。
「私も入居して4年目で、高校卒業後、大学進学にともなって上京し、初めてのひとり暮らしがココでした。勉強だけでなく、地域活動がしてみたい、他大学の人と交流したいというのが入居のきっかけです。1~2年生のときは楽しく活動に参加していましたが、年次が上がるにつれて関わり方も深いものとなりました。ここで暮らすみんなに神田を好きになってもらいたいと思いますし、私自身、ぐっと地域の人との距離が縮まったように思います」
ワテラスコモンでの打ち合わせの様子。学生たちもアイデア出し、企画から参加できるよう、進め方を変えたそう(写真提供/淡路エリアマネジメント)
属性も立場も異なる。だからこそ「防災に巻き込む」仕掛けが大切ワテラスでは、年2回の防災訓練のほか、千代田区の帰宅困難者対応訓練も秋葉原協力会の一員として実施。災害時の共助の拠点として大きな役割を担っています。
もちろん学生会員も参加し、分譲マンション住人の避難誘導や安否確認訓練、広場でのトイレ設置訓練などを行います。
「複合施設なので、マンション住人、オフィスワーカー、管理組合、管理会社、行政とさまざまな人が関わっていますし、属性も違い、当然、温度差もあります。土日と平日では、滞在している人も異なりますし、防災への意識も異なります。ですから、神田消防署とも連携して、より多くの人が参加しやすいように遊び心を加えて、『防災フェア』『防災ワークショップ』などを開催し、「火の話(紙芝居)」や防災サバイバル術を紹介するなど工夫しています。こうした地道な活動が、帰宅困難者対応訓練のような、大規模な防災訓練の土台となっています」と堂前さん。
消防訓練に学生会員も参加。いざというときに備えます(写真提供/安田不動産)
消防訓練の様子。平日昼間に行われているので、オフィスワーカーが中心になります(写真提供/安田不動産)
なるほど、関係者も規模も大きいだけに、「共助」のハードルが高いのは事実のようです。ただ、そこでいきてくるのが日ごろの活動、信頼関係です。
「地域住民の高齢化は進んでいて、青年会では50代が若手になっていることも(笑)。そこに20歳前後の学生が入ることで、潤滑油になっている側面もあります。今はコロナ禍で活動ができないですが、例えば飲み会に参加して顔をあわせているだけでかわいがってもらえる。地域の人から『スマホの使い方教えてよ』と盛り上がることだってあるんですよ」(堂前さん)というと、「自分たちには当たり前のことも、相手にとっては価値があることだったりする。そのギャップがおもしろいですよね」と赤尾さん。
こうした日々の活動を通し、学生たちには「神田が特別な街」という思いが育まれていくのでしょう。
普段からともに活動している仲間がいるから、助けにいける学生住戸のあるフロアには共有ラウンジがあり、普段から共に地域活動に取り組んでいるため、単なる友人というよりも、「仲間」という結束・連帯感があるようです。
「例えば、災害発生時に自分ひとりで動くのは勇気がいる。1人だったら助けにはいけないと思う。でも、ここには日ごろからいっしょに活動している仲間がいる。仲間がいれば、一緒に地域の人を助けにいけると思う」と長谷さん。
その言葉通り、コロナ禍でコミュニティ活動が休止した昨年、街のために何か行動を起こしたいとリレームービーを企画。ワテラスに入居する企業や店舗で働く従業員、自治会長や住民など総勢60名に出演を依頼し、撮影から編集まで全工程を学生が行いました。動画サイトで公開されたムービーには、「会えなくてもつながっている」「思いはひとつ」というメッセージが込められています。それぞれの得意を活かして地域をつなぐ、学生ならではの活動といえるでしょう。
昨年作成した動画の一部。みなさん、自由に会える日を待ちわびています(写真提供/安田不動産)
「お祭りができなくなり、飲食店が大変ななか、神田を元気づけたい、活性化したいという思いで動画製作をしました。コロナ禍で中止になったこと、できなかったことも多かったのですが、反対に動画はコロナ禍があったからできた。作業はすごく大変だったんですが……やってよかったです」と井戸川さん。
新型コロナという感染症の流行も、見方を変えれば、一種の災害のようなものです。そんななかで、人々を元気づけたいと仲間と一緒に行動できたのは、やはり今までの「淡路エリアマネジメント」の活動があってこそ。また、卒業していった学生会員のOB/OGのメンバーは、2021年時点ですでに100名近くいて、OB/OG会も年1回ほど実施しているとか。
「学生はそれぞれの大学を卒業して就職し、北海道から鹿児島まで幅広い場所で活躍していますが、年に1度『神田っ子』として集まり、思い出を語らっています。将来、またこの街にもどってきてくれたらうれしいですね」と堂前さん。
人と人の絆は一朝一夕にはできず、年々、紡がれて豊かになっていくものでしょう。若い世代が地域のエリアマネジメントに自主的に参加できる仕組みは、災害時の街全体の共助力を底上げしてくれるはず。この神田の取り組みは、他の街でもきっと参考になるのではないのでしょうか。
◆ワテラス
◆ワテラス ライン会員
愛知県名古屋市を代表する繁華街と言えば栄(さかえ)エリア。名古屋市営地下鉄の東山線・名城線が通る栄駅の周辺には多数の商業施設が建ち並ぶほか、企業のオフィスも多数あるため通勤で利用する人も多い街だ。さらに現在は再開発が進められており、今後ますますの発展が期待される。そんな栄駅まで20分圏内にある、安く住める街を調査! カップルやファミリーで住むにも適した、専有面積50平米以上~80平米未満の中古マンションの価格相場が安い駅トップ10を見ていこう。
●栄駅まで20分以内の価格相場が安い駅TOP10
順位/駅名/価格相場(主な路線/所在地/栄駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 築地口 1424.5万円(名古屋市営地下鉄名港線/愛知県名古屋市港区/18分/0回)
2位 春日井 1480万円(JR中央本線/愛知県春日井市/18分/1回)
3位 大江 1490万円(名鉄常滑線/愛知県名古屋市南区/20分/1回)
4位 笠寺 1492.5万円(JR東海道本線/愛知県名古屋市南区/20分/1回)
5位 新守山 1665万円(JR中央本線/愛知県名古屋市守山区/13分/1回)
6位 豊田本町 1770万円(名鉄常滑線/愛知県名古屋市南区/19分/1回)
7位 尾頭橋 1780万円(JR東海道本線/愛知県名古屋市中川区/14分/1回)
7位 山王 1780万円(名鉄名古屋本線/愛知県名古屋市中川区/13分/1回)
9位 守山自衛隊前 1790万円(名鉄瀬戸線/愛知県名古屋市守山区/16分/0回)
10位 瓢箪山 1900万円(名鉄瀬戸線/愛知県名古屋市守山区/18分/0回)
2020年の9月に三井ショッピングパーク「RAYARD Hisaya-odori Park」、11月に日本生命栄町ビル跡地に商業施設「BINO栄」がオープンした栄駅周辺。さらに2026年にはホテルやオフィス、シアターなどからなる地上36階・地下4階建ての複合高層ビルがオープン予定であることに加え、第一生命保険と鹿島建設、ノリタケカンパニーリミテドの共同開発による地上20階建ての複合ビルの建設も計画されている。
そんな今後も発展が見込まれる栄駅から徒歩15分圏内にある中古マンション(専有面積50平米以上~80平米未満)の価格相場は3435万円。さすが名古屋の中心地だけあって安くはないが、栄駅まで電車で20分圏内の駅にまで範囲を広げるとだいぶ安く物件が見つけられそうだ。
築地口駅(写真/PIXTA)
最も安かったのは市営地下鉄名港線・築地口駅で、価格相場は1424万5000円と栄駅の2分の1以下。栄駅までは市営地下鉄名城線(右回り)に直通運転される名港線に乗って1本、約18分で行くことができる。名古屋港に面した名港線の終点・名古屋港駅までは1駅、直線距離だと700mほどで、中川運河と堀川に挟まれた中洲状の湾岸部に位置している。駅周辺には住宅や小学校、幼稚園があるほか、運河または川に面したエリアには物流倉庫や工場も。商店はというと、食事処や喫茶店、コンビニはあるものの、生鮮食品が買えるような商店街はない様子。しかし駅から8分ほど歩けばスーパーがあり、1駅隣の港区役所駅からは徒歩約2分で多彩なショップが集まる「ららぽーと名古屋みなとアクルス」に行くことも可能だ。
春日井駅(写真/PIXTA)
2位はJR中央本線・春日井駅で価格相場は1480万円。JR中央本線で千種駅に行き、市営地下鉄東山線に乗り換えると栄駅までは約18分だ。同名の駅が名鉄小牧線にもあるが、直線距離で4km以上離れたまったく別の駅なのでご注意を。JR中央本線の春日井駅は春日井市を代表する駅。バリアフリー化と駅の南北を結ぶ自由通路の整備を目的に2016年、橋上駅の新駅舎が完成した。駅から徒歩10分圏内にはスーパーやドラッグストアがあるほか、車で10分圏内には子ども用品店や家電量販店、ディスカウントストアも。また、駅の南口側では再開発事業が進行中で、地上23階建ての住居棟と地上5階建ての子育て施設や商業施設などが建設されている。住居棟は2021年8月下旬から入居が開始される予定だそう。ちなみに春日井駅から2駅先に、価格相場1665万円で5位にランクインした新守山駅がある。
3位は名鉄常滑線・大江駅で価格相場は1490万円。名鉄名古屋本線直通の名鉄常滑線急行に乗って金山駅に出て、市営地下鉄名城線に乗り換えると計約20分で栄駅に到着する。駅西側はグラウンドゴルフ場や釣り堀があるほかは名古屋港に面した工業エリアとなっており、住宅街は駅の東側~北側に広がっている。駅から北に15分も歩くとスーパーや100円ショップ、飲食店などを備えたショッピングモール「アピタ名古屋南店」と、ホームセンター、家電量販店、衣料品店「しまむら」が建ち並ぶ商業エリアへ。ここに来れば、あれこれと一度に買い物ができて便利そうだ。また大江駅から東へ20分ほど歩くと、価格相場1492万5000円で4位にランクインしたJR東海道本線・笠寺駅に到着。笠寺駅から名古屋駅までは乗り換えせずに12分前後で行けるので、行き先に応じて2駅を使い分けるのもいいだろう。
名鉄名古屋駅から1駅という好ロケーションの駅が7位に山王駅(写真/PIXTA)
トップ10で栄駅までの所要時間が最短の13分だったのは、5位のJR中央本線・新守山駅と7位の名鉄名古屋本線・山王駅。そのうち山王駅は名鉄名古屋駅まで1駅・約2分という好立地。そして名鉄名古屋駅から市営地下鉄の名古屋駅に歩いて向かい、市営地下鉄東山線に乗ると2駅目が栄駅だ。
山王駅はかつて中日ドラゴンズのホームグラウンドだったナゴヤ球場の最寄り駅で、当時は「ナゴヤ球場前駅」という名称だった。ホームグラウンドがナゴヤドームに移転して以降は利用客が減少し、現在は無人駅に。しかし現在もナゴヤ球場ではプロ野球の2軍戦が行われることがあるので、野球ファンにはなじみのある駅かもしれない。そんな山王駅の周辺は繁華街といった趣ではなく静かな住宅街。コンビニや飲食店が点在するほか、徒歩5分ほどの場所にはスーパー銭湯も。徒歩10分圏内には「ドン・キホーテ」や「ニトリ」がある点も便利。ただしスーパーは駅から15分~20分ほど離れているようなので、住まいの位置によってはその点が少々ネックかもしれない。とはいえ駅から15分少々歩くと映画館があり、名古屋駅周辺まで自転車でも20分ほどというロケーションでありながら、価格相場は栄駅の約2分の1である1780万円というのはなかなかに魅力的だろう。
瓢箪山駅(写真/PIXTA)
続いて栄駅まで乗り換えずに行ける駅にも注目したい。1位の築地口駅のほか、名鉄瀬戸線が通る9位の守山自衛隊前駅と10位の瓢箪山駅も栄駅まで乗り換え不要だ。この両駅は隣接しており、瓢箪山駅から8駅目、守山自衛隊前駅からは7駅目が栄町駅である。栄町駅と栄駅はほぼ同じ立地で、改札を出て地下街を経由すると3分ほどで行き来が可能なため今回のランキング内の表記では「乗り換え0回」としている。そんな守山自衛隊前駅と瓢箪山駅は直線距離で630mほど、歩いて10分かからないくらいなので、周辺環境は似通っている。
守山自衛隊前駅の北側には駅名から分かるように自衛隊守山駐屯地があり、両駅の南側には河川敷に緑地が広がる矢田川が流れている。日常の買い物には瓢箪山駅から北へ徒歩約4分、スーパーや書店、100円ショップがある「ピアゴ守山店」が便利だろう。スーパーを越えてさらに北へ向かった小学校の隣接地には、駅名の由来になった「守山瓢箪山古墳」がある。ここ名古屋市守山区は古墳の多い地域で、なかでもこの古墳は同地域の前方後円墳の典型と言えるものだそう。古墳周辺は公園として整備されているので、子どもを遊ばせつつ、歴史に想いを馳せてみては?
今回の基点駅にした栄駅は現在も名古屋の中心地であるうえに、前述の通り再開発によるさらなる発展が待ち受けている。栄駅周辺は魅力的な街だけあって中古マンションも手が出しにくい価格相場だが、電車でわずか20分離れると相場はぐっと下がることが今回のランキングから判明した。トップ10にランクインした駅でも再開発が進められていたり、栄駅に加えて名古屋駅までのアクセスもよかったりと、価格相場がリーズナブルなだけではない魅力がそれぞれにある。「栄に住みたい」と考えていた人も、少し視野を広げて周辺エリアまで住まいの候補地として検討してみてはいかがだろう。
●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている栄町駅まで電車で30分圏内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】
駅徒歩15分圏内、物件価格相場3億円以下、築年数35年未満、敷地権利は所有権のみ
専有面積50平米以上80平米未満
【データ抽出期間】2021/3~2021/5
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2021年6月30日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が1回までの駅を掲載