
10万円 / 76.03平米
西武新宿線「入曽」駅 徒歩7分
雰囲気の良いギャラリーのような雰囲気を身にまとい、生まれ変わった築古の戸建て。
露わになった木の柱や天井に、和の香りただよう障子。クリーンな塗装仕上げの壁面に、無機質なモルタルの床と、素材やテイストのギャップに思わず胸がドキドキ高鳴る空間です。
料理好きにはたまらない、ワイド ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
富士見台トンネルは、バーやお味噌汁専門店、おはぎ屋さん……と曜日時間によって個性的な店が營業する、シェア商店。郊外の団地であっても、子育てしながらでもクリエイティブな仕事ができる。個の才能をいかす場をつくりたいという、ある建築家の思いから始まった。
20代のころ、引越し先を探していて、郊外の団地を見に行ったことがある。すぐにここには住めない、と思ってしまった。スーパーはあるが、夜までやっていそうな飲食店がほとんど見当たらない。一人でふらりと立ち寄れそうなカフェもなかった。
歳を重ねた今なら団地の住みやすさも分かるが、当時は仕事からの帰りも遅く、毎晩料理するのは無理だと思っていたし、何より夜が早いまちはつまらないと思った。
一方、結婚して子育てする時期になると、多くの働く女性がこうした郊外から都心に通う。子どもの送り迎えに満員電車での通勤、帰ってから買い物に家事……などが続くと疲れてしまい、離職や不本意ながらキャリアを捨てて近場への転職を考えるようになる。私にもそうした友人がいた。
同じような状況に直面する人は案外たくさんいるのではないか。そう考えた人がいた。建築家の能作淳平さん。郊外での暮らしをより面白い刺激ある場所に。かつ、住むまちに魅力的な働く場をつくる試みとして。
「富士見台トンネル」はそうして始まった。
(写真提供/富士見台トンネル)
団地の可能性JR南武線の谷保駅(東京都)より歩くこと5分。白いアパートが立ち並ぶURの団地が見えてくる。その手前にあるのがむっさ21富士見台名店街。電気屋や文房具屋の並びに、ガラス張りでおしゃれな暖簾のかかった一見何屋さんか分からない店が目に入った。
(写真提供/富士見台トンネル)
ここが「富士見台トンネル」。能作淳平さんが始めたシェアする商店である。
訪れたのは朝の10時。おそるおそる店の戸を開けると、白いカウンターが奥のほうまで伸びていて、その日営業する「Cafe Himmel」の2人が開店準備中だった。カウンターの奥がオフィススペースでもあり、能作さんが迎えてくれた。
建築家で「富士見台トンネル」の能作淳平さん(写真撮影/甲斐かおり)
さっそく、なぜ谷保だったのか、から聞いてみた。
「もともと、都心のあちこちに賃貸で住んでいて楽しかったんですけど、結婚して子育てするとなると不便もあって。妻の実家があきる野市なので三鷹から立川の間くらいがちょうどよかったんです。でも35年ローンで家を買うのは、僕にとっては自由度もないし時代錯誤な気がしたんです。それでリフォームできる賃貸を探していたら、この近くの団地に見つかって」
URが提案している「DIY住宅」の企画。これを本格的にフルリノベーションを行うことに。建築家の本分を活かし、自主施工で団地の部屋とは思えないような空間をつくりあげた。
白いカウンターは店内奥にいくほど幅広く設計されていて、打ち合わせにも使いやすいようになっている(写真提供/富士見台トンネル)
「住み始めてみると、団地ってすごく住みやすいんです。緑が多いし空気もいい。クリエイティブな仕事をするには最適で。都心に住む友人たちにもこっちに住めばって声をかけたんですが、誰一人移り住もうって人はいなかった(笑)」
自身もその理由に気付き始める。
「サロンがないのが大きいんだなって。都心に住んでいたころは、生活らしい生活ではなかったけど、外で食事して、毎晩そこに集まる人たちとクリエイティブな話をしていたんです。そこで受ける刺激って大きかったんだなと。郊外では新しい人や考え方に出会う場が生活の中に少ないことに気付きました」
富士見台トンネルの周囲にはアパートの並ぶURの団地が広がっている(写真撮影/甲斐かおり)
「子育てか、仕事か」の二択は、何かがおかしいさらに、富士見台トンネルを始める直接のきっかけになったのが、妻の転職だった。能作さんの妻は、もとはワインの輸入販売の会社に勤めていて、店長を任されるほどの主戦力として働いていた。
ところが団地に移り住んだことで、毎日都心へ、満員電車で通わなければならなくなった。
「一人目の出産の後は頑張って通っていたんですけど、二人目の時、さすがにもう辞めようと。体力的にも負担が大きかったし、時間をかけて通勤する効率の悪さが本人も嫌になったんだと思います。
近くに事務職の仕事が見つかって転職しました。でもせっかくワインの知識も豊富で、築いてきたスキルがあるのにそれを活かせないのは僕から見てももったいない。社会にとっても損失じゃないかと思ったんです」
(写真撮影/甲斐かおり)
ゆったりしようと思って郊外に住んだのに、自由度がなくなり体力にも負荷がかかってより大変になっている。子育てもとても大事な仕事だけれど、そもそも「仕事を取るか、子育てを取るか」の二択を迫られるのはおかしいのでは、と思えた。
「僕らの悩んでいることって、明らかに都市の構造の問題だなって気付いたんです」
妻のスキルを活かす場として、家から近い場所に店を出そうと考え始める。能作さんのオフィスを兼ねれば、週末だけなどマイペースに営業すればいい。ところがこうも思った。「僕らと同じような人って、ほかにもけっこう居るんじゃないかって」
それならシェア型にしてやってみるかと、2019年11月、シェア商店「富士見台トンネル」をオープンする。
能作さんの妻、根来香奈さんが始めたゆるりとしたワインバー、wine stand「ニュータウン」の様子(写真提供/富士見台トンネル)
個性的な店にお客さんがつくスタイルいま、富士見台トンネルには、さまざまなお店が出店している。公募をしたわけではないが、口コミなどで自然と広まった。創作おはぎの店「おはぎびより」、朝だけお味噌汁を出す「御御御(おみお)」、マカロン専門店、クナーファという中東のお菓子に特化した店、など個性的な店が多い。
朝だけ營業のお味噌汁専門店「御御御(おみお)」(写真提供/富士見台トンネル)
富士見台トンネルのインスタグラムを開くと、月間スケジュールが表示される。
例えば水曜の午後はクナーファの店、金曜のランチはカフェヒンメル、土曜午後はおはぎびより……といった具合。
定期的に出店する店が優先的に日時を決め、それ以外の店が空いている日時を選ぶ。使用した分だけ時間制で場所代がかかる。売上マージンは一切取っていないため、売上はすべて各店に入る。
「富士見台トンネル」のinstagramより。中央の写真が、中東のお菓子クナーファ
訪れた日に営業していたのが、「カフェヒンメル(Cafe Himmel)」。すでにファンがついているのか、ランチの時間になると、次々に女性客が入ってきた。
定番メニューはグリッツという、トウモロコシの粉でつくる、卵の入ったおかゆのような料理。滋味深く優しい味で美味しい。そのほか食べごたえのある野菜のおかずで満足感がある(写真撮影/甲斐かおり)
客足が落ち着いたころに、店長の松尾さつきさんに声をかけてみた。
なぜ、ここでお店を?
「近くで妹が店をやっていて、そちらがヒンメルの本店なんです。私は本業が薬剤師で土曜日だけ妹の店を手伝っているんですが、ここのスタイルを知って、自分でもやってみようかなと。個人的にアフリカンアメリカンの料理に興味があって、お客さんに食べてもらえるのがすごく楽しくて。月に2回、お昼だけですが、楽しんでやっています」
いま出店者の約半分は松尾さんのように本業とは別で楽しみながらお店をやっている人たち。もう半分は、ゆくゆくこの道で独立したいと頑張っている人たちなのだとか。
ワインバーwine stand「ニュータウン」の様子(写真提供/富士見台トンネル)
まちのタレントを発掘してつなぐ富士見台トンネルの名前には、このまちに眠るタレント(才能)を“掘ってつなぐ”という思いが込められている。
インスタグラムに並ぶ写真、お店のラインナップを見ていると、それぞれが個性的な、魅力あるお店ばかり。そして、並んだときに違和感のない世界観が感じられる。
こうした複数の人や店が同じ場を共有して使うとき、最も問われるのは、そのキュレーション力ではないかと思う。
「ある程度、各お店に僕からも意見を言うようにしているんです。お店を始めるとき、ブランドとして完成されているところの方が声をかけやすいしお客さんを集めやすいと思ったんですけど。それだと、マルシェなどどこへ行っても同じいつものメンバーになっちゃう。それじゃつまらないと思って。まだ知られていない新しい店だけで始める方が面白い。その分まだ方向性が確立されていないところが多いので、一緒に話し合いながらブラッシュアップしていくスタイルを取っています」
例えば今人気の「おはぎびより」。最初からとても美味しかったけれど、よりオーソドックスなおはぎが多かった。価格設定を少し高めに、レシピももっと目新しいものにと能作さんのアイデアも加わって、洗練された見た目にもかわいいおはぎ屋さんができた。
オープン初期から營業している「おはぎびより」。富士見台トンネルでのみ買える人気の店(写真提供/富士見台トンネル)
ノンアルコールバーによるスナック營業も(写真提供/富士見台トンネル)
中に入れば開放的でオープンだが、入口はあえて何の店だか分かりにくいように工夫されている。少し怪しげなくらいがサロンとして魅力的。個性的な店と感性の合うお客さんだけが自然と入ってくるような工夫だ。
いま、全国的にシェアと名のつくサービスはたくさんある。シェアハウスやシェアオフィス、シェア店舗。スペースやコストを物理的に分かち合う意味での“シェア”が大半。それはそれで利にかなっているのかもしれないが、ただのシェアでは分かち合う以上の価値は生まれない。
「富士見台トンネルでは、分かち合うシェアではなくて、持ちよるシェアを目指していて。会員さん同士も仲がいいですし、カウンターの内側でクリエイティブな発想がどんどん生まれたらいいなと思っているんです。先日も、ノンアルコールバーをやったんですが、マカロンの専門店に、おつまみマカロンを出してほしいと依頼したらあっという間にコラボが成立して。そういうのが楽しいなって思うし、お客さんもそういう店のほうが楽しいと思うんです」
そうしたコラボがぱっと成立する状況を、「ウォーミングアップできているメンバーがそろっている」と能作さんは表現した。
まちに眠るタレントを発掘して、いつでも発揮できるよう、日々技を磨くことのできる場。都市郊外でも、もっと地方であっても、こうした個人のスキルを活かせる場が、いま各地に求められているように思う。
●取材協力
富士見台トンネル
instagram:@fujimidaitunnel
路線バスの折返場をご存じだろうか? 筆者はそうした場所を、都市部というより観光地でよく見かける。バスが折り返して出発するまで、乗車する人のたまり場になる。そんな場所を活用した、“地域の交流拠点”となるユニークな賃貸住宅ができると聞いて、見学に行ってみた。
バスの折返場に“暮らしの「町あい所」”=hocco(ホッコ)誕生見学に行ったのは、小田急バスが東京都武蔵野市にある自社のバス折返場を使って、“暮らしの「町あい所」”をコンセプトに掲げて建てた複合施設「hocco(ホッコ)」だ。地域の人が気軽に立ち寄りたくなる施設だという。
JR中央線武蔵境駅から折返場となる「団地上水端」までバスで向かう途中、亜細亜大学を過ぎたころから目についたのが、数多くのマンションが建ち並んでいることだ。なるほど、これだけ多くの人が住んでいるなら、人が集まるポテンシャルは大きいだろう。
この辺りには、高度経済成長期の1959年(昭和34年)以降、153棟全1829戸の公団の団地が形成された。そのころには、バスの折返場の近くでハイヤー事業も行われていた。団地はその後、老朽化に伴い建て替えられたり民間の新築マンションが建設されたりなどして、現在に至っている。さらに、法政大学と亜細亜大学が周辺にあることから、単身の若者も住んでおり、多様な世代が住んでいるという地域特性がある。
その折返場の近く、駐車場だった以前のハイヤー営業所の土地に、今回13棟の賃貸住宅が誕生した。ただし、単なる賃貸住宅では人を集めることは難しい。では、どうやって人が集まる拠点にしようというのだろう?
中庭を囲むようにメゾネットの賃貸住宅が13棟建つ(画像提供:ブルースタジオ)
多様なモビリティと人が集まる仕掛けで「町あい所」に見学した日は、あいにく台風で雨が降り続いていたので、筆者が撮影した画像も残念ながら雨に濡れていることをご容赦いただきたい。
さて、バスの終点で降りてすぐ目についたのが、Amazonのロゴが入った宅配ボックスだ。大きな宅配ボックスを利用できるのは入居者に限らない。居住者専用の宅配ボックスは壁の側面にあり、ほかにシェアサイクルのポートも用意されている。
バスの終点として『桜堤上水端「hocco」』が新設され、折返場で待機した後、始発のバス停『団地上水端』に移動する(筆者撮影)
左:賃貸居住者以外も利用できる宅配ボックス。右:壁側面に居住者専用の宅配ボックス。シェアサイクルのポートも5台分用意されている(筆者撮影)
全体像を把握するために、広報資料の配置図を見よう。シェアサイクルのほかに、シェアカーも用意されるので、バス、自転車、車が利用できる。入り口付近の広場にはキッチンカーも呼び込む予定で、小さな公園やベンチで寛ぎながら食べることもできる。
そして次の仕掛けが、中庭を囲むように建つ賃貸住宅群だ。
hocco配置図(広報用資料より転載)
「なりわい賃貸住宅」が地域コミュニティのカギに第1種低層住居専用地域でも、面積の小さい店舗併用住宅が建てられる。営業できる業務に一定の制限はあるものの、店舗部分で商品を販売したり飲食物を提供したりできる。hoccoでは、13棟中のうち5棟を店舗兼用住宅とした。店舗兼用の賃貸住宅、つまり「なりわい賃貸住宅」が人を呼び込むことで、交流拠点はさらに魅力的なものになるという仕掛けだ。
賃貸住宅は、13棟すべてが木造2階建てのメゾネット、大きな土間付きの1LDKだ。専有面積は、52.9平米~58.99平米。店舗兼用の場合は、「土間」と玄関前の「軒下」で“なりわい”を行うことができる。店舗兼用で最も多いAタイプの土間は5.5畳ある。また、専用住宅でも最も多いBタイプの土間は6.5畳あり、自転車をいじったりアトリエにしたりなどの趣味の空間やアウトドア風の空間として使える。
上のAタイプが店舗兼用住宅、下のBタイプが専用住宅。大きな違いは、店舗兼用では、土間と居室を仕切る扉があるが、専用住宅は仕切りがないこと(画像提供:ブルースタジオ)
どちらもかなり開放的で、最初はセキュリティに懸念を持ったが、モニター付きインターホンや鍵付きのメールボックスなどがあり、十分な対策がなされていた。「人の目が常にあるので侵入しづらい」という効果もあるだろう。
インターホンとメールボックス(筆者撮影)
また、開放的な間取りは冷暖房効率も気になる。一般的な賃貸住宅に比べて、高気密・高断熱の温熱環境性能を高めているという。家賃(共益費別)は、店舗併用で16万6788円~17万6610円、住宅専用で14万6000円~16万7000円。全戸ペット飼育可能だ。
暮らしと仕事に境界のない「なりわい暮らし」のポテンシャルは大きい?hoccoを企画・運営を担当するのは、デザイン性の高いリノベーションで知られるブルースタジオだ。この地域は周辺のマンション群に新しい生活者が数多く住んでいて、駅を中心とする商業地にはない可能性があるという。駅から離れたバス終点の住宅地に「なりわい」を通じて、顔が見える小さなコミュニケーションを醸成することで、にぎわいのある街ができることを狙っている。
コンセプトの説明をする、ブルースタジオの専務取締役・クリエイティブディレクターの大島芳彦さん(筆者撮影)
では、実際の反響はどうなのだろう?見学時時点で、70件近い反響数、40件を超える見学があり、申し込みが5件あるという。うち2件が店舗兼用住宅で、総菜屋さん、古本屋さんを予定しているという。ほかにも、雑貨の販売やコーヒーのテイクアウトなどをしたいという問い合わせもあるとか。
同社の専務取締役・クリエイティブディレクターの大島芳彦さんによると、「なりわい暮らし」は地域の拠点となるポテンシャルが大きいという。地域の活性化については、プレーヤーがいないのが課題。地域に住む生活者が、日常を豊かにするという視点で人と人をつなぐことが、地域を活性化する原動力になると。
同社のなりわい暮らしの事例は、すでに神奈川県茅ケ崎市「TSUBANA(ツバナ)」で実証済みだ。さらに、福島県双葉町でも計画している。
hoccoの賃料は、性能や仕様の高さもあって周辺相場と比べて1.1~1.2倍に設定されている。それでも問い合わせが多いのは、暮らしの延長線上でなりわいができる、こうした賃貸住宅が少ないからだ。問い合わせは、地元の武蔵野市を中心に、JR中央線沿線や23区からと広範囲にわたるという。
店舗を別に借りるのはハードルが高いが、自宅の延長線上なら空いた時間に営業するといったことも可能だ。地域の人たちと交流しながら、自分の暮らしを豊かにしたいと思っている、なりわい予備軍も多くいるだろう。そうした人が一歩踏み出せるのが、なりわい賃貸住宅だろう。居住者がそろうとどういった賑わいができるのか、今後の展開が楽しみだ。
○小田急バス「10/1なりわい賃貸住宅「hocco」が完成」
○hocco物件専用WEBサイト
日本屈指の繁華街である渋谷。渋谷駅周辺の商業施設や駅構内の大規模な再開発が進行中で、いつ訪れてもダイナミックな変化が刺激的だ。その渋谷へのアクセスを重視し、電車で30分以内で行ける街に住むならどこがねらい目だろうか。ワンルーム・1K・1DKを対象にした、家賃相場が安い駅ランキングの最新版をみてみよう。
渋谷駅まで電車で30分以内、家賃相場の安い駅TOP10順位 駅名 家賃相場(主な路線/駅所在地/所要時間/乗り換え回数)
1位 生田 4.90万円(小田急線/神奈川県川崎市多摩区/28分/2回)
2位 読売ランド前 5.00万円(小田急線/神奈川県川崎市多摩区/30分/2回)
3位 中野島 6.00万円(JR南武線/神奈川県川崎市多摩区/30分/2回)
3位 向ヶ丘遊園 6.00万円(小田急線/神奈川県川崎市多摩区/23分/1回)
3位 妙蓮寺 6.00万円(東急東横線/神奈川県横浜市港北区/30分/1回)
3位 宿河原 6.00万円(JR南武線/神奈川県川崎市多摩区/28分/1回)
3位 武蔵浦和 6.00万円(JR埼京線・武蔵野線/埼玉県さいたま市南区/29分/0回)
3位 高田 6.00万円(横浜市営地下鉄グリーンライン/神奈川県横浜市港北区/30分/1回)
9位 戸田公園 6.10万円(JR埼京線/埼玉県戸田市/29分/0回)
10位 登戸 6.20万円(JR南武線・小田急線/神奈川県川崎市多摩区/22分/1回)
1位の生田駅は、小田急線の沿線駅。快速急行や通勤急行は停車しないものの、準急や通勤準急は利用できる。
生田駅周辺の風景(写真/PIXTA)
駅の周辺には、単身者には心強い手軽な飲食店やドラッグストアなどが充実している。生田駅は明治大学の生田キャンパスや聖マリアンナ医科大学の最寄駅で、専修大学生田キャンパスなども近い。大学を中退した青年の引きこもりの葛藤を描いた滝本竜彦の人気小説やアニメ『NHKにようこそ!』の舞台になった街でもある。
そんな学生街の一方で、アットホームな雰囲気の店が並ぶ商店街や野菜の直売所などもあり、閑静な住宅街としての顔も持つ。少し歩けば、生田配水池を整備した緑豊かな散策路や、晴れた日には東京スカイツリーまで望める絶景の展望広場などもあるため、近年は小さな子どものいるファミリー層の住民も増えている。
JR南武線の中野島駅、東急東横線の妙蓮寺駅―……前回の選外から5駅がランクイン今回のランキングでは同率3位が6駅もあるのが印象的だが、そのうち向ヶ丘遊園駅以外の5駅は実は、前回は選外からランクインしている。
中野島駅はJR南武線の沿線駅。落ち着いた住宅街だが、深夜0時まで営業しているスーパーや、安売りスーパーなどがある。商店街もあり、買い物環境は困ることはなさそうだ。
中野島駅(写真/PIXTA)
駅周辺では大規模な住宅施設などの建設もあり、再開発が進められている印象を受けるが、付近には畑や果樹園などが見受けられ、のどかな雰囲気も感じられる。駅は現在、横断するのに線路を渡る必要があるが、橋上駅舎化整備事業が進行中。生活しやすい雰囲気と利便性の両立が、今後期待できそうだ。
妙蓮寺駅は、人気の高い東急東横線の沿線駅。時間短縮を優先するなら特急が停車する隣駅の菊名駅で乗り換える必要があるが、急がなければ渋谷まで乗り換えなしで利用できる。また、横浜駅へも約6分で行くことができるほか、菊名駅からは新幹線の新横浜駅へもアクセスがいいので、出張が多いビジネスパーソンなどには魅力的だろう。
妙蓮寺駅(写真/PIXTA)
印象的な駅名の由来は、現在の東急東横線の前身である東京横浜電鉄の開通の際に、駅前にある日蓮宗のお寺、妙蓮寺の敷地を無償で提供してもらったことによる。そうした環境のためか、駅周辺は緑が多く落ち着いた風情がある。昔ながらの総菜屋やレトロな喫茶店などもあり、地元に根付いた穏やかな生活が楽しい街といえそうだ。
武蔵浦和駅は、埼玉県さいたま市に位置するJR埼京線と武蔵野線の駅。渋谷へは埼京線の通勤快速で30分とぎりぎりだが対象内だ。渋谷駅では他路線と埼京線とのホームの遠さが課題となっていたが、2020年6月に同線の新しいホームの供用がスタート。山手線と並ぶことになって、同駅利用時の埼京線の利便線は一気に向上した。
近年は駅前を中心にタワーマンション建築が進んでおり、それにともなって駅直結の商業施設も充実してきている。付近には家電量販店や大きな100円均一店、輸入食品店などもあり、生活に必要なものには不自由しなさそうだ。雰囲気の素敵な飲食店も数多い。また、同駅のあるさいたま市南区の区役所や図書館などが入る複合公益施設サウスピアも武蔵浦和駅から直結。すぐそばには大規模病院の武蔵浦和メディカルセンターもある。
武蔵浦和駅(写真/PIXTA)
そうした一方で、駅周辺には緑も多い。すぐそばを流れる一級河川の笹目川の沿岸は桜並木や歩道も整備されており、散歩も楽しそうだ。また駅から少し行くと、プロ野球球団・千葉ロッテマリーンズの二軍本拠地であるロッテ浦和球場や、同球団の親会社であるロッテの浦和工場がある。子どもだけでなく大人にも人気な工場見学も行っており、野球観戦とあわせて、趣味も満喫できそうだ。
渋谷は巨大ターミナル駅だけに、乗り入れる数多くの路線の組み合わせ次第で、探す部屋の候補も膨大なものになる。ちょっと条件を変えるだけで、部屋も選択肢も増える。理想の部屋も、きっと見つかるだろう。
●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている渋谷駅まで電車で30分以内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2021/5~2021/7
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2021年7月31日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載
毎年、「住みたい街」のランキングを発表しているリクルートが、住民の実感調査による「住み続けたい街」のランキングを発表した。「住みたい街」のTOP3は、横浜、恵比寿、吉祥寺だったが、「住み続けたい」となると顔ぶれが変わってくる。では、どの街が上位になったのだろう。
【今週の住活トピック】
「2021年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」関東版を発表/リクルート
関東圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県)の街(自治体・駅)について、「お住まいの街に今後も住み続けたいですか?」と聞いた結果をランキングしたのが、「住み続けたい」街(自治体・駅)ランキングだ。
「住みたい街」は多くの人が憧れる街だが、「住み続けたい街」は住民の居住継続意向によるものだ。人によって“住みやすさ”は異なるので、居住の意向もそれぞれとなるが、住み替えの際に参考となる多様な視点を提供したいというのが調査の目的だという。
実際に、「住んでいる街に今後も住み続けたい」と思っているのは、「とてもそう思う」(17.1%)と「そう思う」(50.4%)を合わせた67.5%に達する。3人に2人は住み続けたいと思っていることになるが、筆者自身も住んでいる街に住み続けたいと思っている1人だ。
では、「住み続けたい自治体」のランキングを見ていこう。TOP3には、東京都の武蔵野市、中央区、文京区が挙がった。
■住み続けたい自治体ランキング 上位50位(1次調査全体/単一回答)
出典:リクルート「SUUMO住民実感調査2021年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」
ランキングを見ると、東京都の人気自治体が多数ランクインしている。ただし、4位に逗子市、8位に葉山町、12位に鎌倉市、13位に藤沢市など、神奈川県の「湘南三浦エリア」が上位に食い込んでいる。また、埼玉県では、さいたま市の複数の区が上位に入り、さいたま市中心エリアが奮闘。千葉県では、浦安市の評価が抜きんでて高い。
また、SUUMOリサーチセンターの分析によると、14位の横浜市都筑区、25位の印西市、36位の稲城市、39位の多摩市と「郊外大規模ニュータウン」が上位に入る傾向が見られるという。たしかにいずれも、「港北ニュータウン」「千葉ニュータウン」「多摩ニュータウン」の中心的な自治体だ。
一方で興味深いのは、ライフステージによって評価が変わるということだ。シングルや夫婦のみでは逗子市がTOPになるが、子どものいるファミリーになると目黒区がTOPになる。また、夫婦のみでは、浦安市や葉山町が上位になるなど、ライフステージによって住み続けたい街に求めるものが異なることがうかがえる。
■ライフステージ別/住み続けたい自治体ランキング 上位10位(1次調査全体/単一回答)
出典:リクルート「SUUMO住民実感調査2021年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」
「住み続けたい」と思う背景には地域への愛着がある。その条件とは?リクルートでは、「住んでいる街の魅力」について、2次調査をしている。2次調査では、「歩ける範囲で日常のものはひととおり揃う」や「散歩・ジョギングがしやすい」「防犯対策がしっかりしている」「教育環境が充実している」「街に賑わいがある」「街の住民がその街のことを好きそう」などの街の魅力35項目について評価をしてもらった。
その結果、「その街に住み続けたい」と思う人は、地域への愛着を示す「住民がその街のことを好きそう」という項目を実感できている人が多いことが分かった。さらに、「その街を好きそう」との相関性を見ると、「安心・安全・子育て」に関係する7項目と「地域の発展・将来性」に関係する4項目で関係性が強いことも分かってきた。
■住み続けたい街になるための条件とは?
出典:リクルート「SUUMO住民実感調査2021年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」
そうはいっても、街ごとに個性が異なるので、それぞれ魅力に挙がる項目も異なる。実際の「住み続けたい街」の上位の自治体を見てみよう。
例えば、1位の武蔵野市では、「利用しやすい商店街がある」が最も高く、吉祥寺を抱える武蔵野市ならではの魅力もあるが、「人からうらやましがられそう」「街に賑わいがある」「個性的な店がある」「行政サービスが充実している」「防災対策がしっかりしている」など、地域への愛着と相関の高い魅力項目が上位に数多く挙がっている。
全体4位、シングルと夫婦のみでは1位の逗子市で見ると、「地域に顔見知りや知り合いができやすい」が最も高く、湘南エリアらしい「自然が豊富」「散歩・ジョギングしやすい」に加え、「人からうらやましがられそう」「個性的な店がある」「不動産の資産価値が高そう」などの地域の発展・将来性に関する魅力項目が多かった。
また、郊外大規模ニュータウンを抱える自治体では、「住宅街が整然としている(通りや並木など)」が最も高く、「公園が充実している」「散歩・ジョギングしやすい」など、ニュータウンならではの魅力が挙がる一方で、「教育環境・子育て環境が充実している」「防災対策がしっかりしている」など安心・安全・子育てに関する魅力項目が多く評価されていることが分かった。
こうして見ていくと、行政による安心・安全の街づくりに加え、地域の発展・将来性などの期待感が持て、地域に顔見知りができやすいコミュニティが形成されていることなどが、「この街が好き」だから「住み続けたい」と思わせる条件になっていると考えてよさそうだ。
「住み続けたい駅」ランキング1位は東銀座、2・3位は江ノ電の石上、鵠沼最後に、「住み続けたい駅」のランキング上位を紹介しておこう。
■住み続けたい駅ランキング 上位50位(1次調査全体/単一回答)
出典:リクルート「SUUMO住民実感調査2021年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」
東銀座、馬喰町、東日本橋、人形町、水天宮前など、住み続けたい自治体全体2位の東京都中央区の駅が多数ランクインしている。中央区の中でも、歴史を感じさせる街が顔を並べたのも興味深い。歌舞伎好き、着物好きの筆者には顔なじみの駅ばかりだ。
また、湘南エリアを走る江ノ島電鉄線や小田急江ノ島線の駅がTOP10の半分を占めており、みなとみらい線も25位までに3つ入っている。そのほかでは、北参道、代々木上原、千駄ヶ谷、参宮橋など代々木公園周辺の駅が多いのも特徴だ。
行政サービスがかかわる自治体という区切りもあるが、同じ沿線や大型公園の周辺には、共通する魅力があるということだろう。
さて、ランキングの結果を見て、あなたはどう思っただろう?おそらく、意外に思う結果も多かったのではないだろうか。ライフステージによってランキングが変わるように、人それぞれで“住みやすさ”を感じる点は異なる。自身が地域を好きになる条件を振り返ってみて、住み替え先を選ぶ際の条件としてはいかがだろう。
○リクルート「「SUUMO住民実感調査2021年住み続けたい街ランキング」」
地震や台風、豪雨豪雪や火山の噴火など、災害につながるさまざまな自然現象が起きる日本。複数の場所で同時に災害が発生することもあるでしょう。そんななか、大磯町では行政と住民が手を結び、さまざまな対策を行っています。その理由と取り組みを聞いてみました。
人口3.2万に対し町役場職員は260人。災害発生時の公助は苦しい大磯町は神奈川県中央南部に位置し、相模湾に面した風光明媚な別荘地としても知られる町です。人口は約3万2000人で、東海道線、湘南新宿ラインを使えば東京都心部にもダイレクトにアクセスできるとあって、住宅地としても根強い人気を誇ります。この大磯駅、今年3月に発表された住民が回答する街の共助力調査(「『住民の共助力』に関する実態調査」2021年3月10日発表(リクルート))でも首都圏2位にランクインするなど、「住民の助け合い」が自然に息づいているといいます。その背景について、大磯町の政策総務部危機管理課・竹内愛純さんに話を聞きました。
「大磯町では行政が仕切るというよりも、『住民と行政が協働サイクルを回す』という立ち位置で、防災に取り組んでいます。というのも、町の人口は3万2000に対し町職員は260人。そのうち半数以上が町外に居住しています。町職員も災害時には怪我をすることもあるでしょう。そのため、災害発生時に即応できる職員となると、ほんとうに少数なのではないでしょうか。町民のみなさんにまずこの話をすると、『そうだろうな。共助は欠かせないな』と理解してくれます」と竹内さん。
もちろん、地元自治体だけでなく、県や国の公助に期待したいところですが、被害状況の把握や支援要請など、基本拠点となるのは町役場です。それだけに町民人口と職員の人数を聞くと、厳しいというのは大変現実味があります。また、大磯町はその地形や特性から、さまざまな災害が想定されるといいます。
「地震発生時は地震と津波、漁港に近い住宅密集地では火災も想定されます。台風では高波、大雨が降れば川沿いで浸水が起きるおそれがあります。丘陵地では大雨による土砂災害もありえるでしょう。加えて、富士山が噴火すれば町内全域が被災することになります」と話すのは大磯町災害救援ボランティアの会の伊藤勇さん。自身でもSL災害ボランティアネットワークに加入し、地域の防災講座などを積極的に行っています。
大磯町災害救援ボランティアの会の伊藤勇さん(左)と、大磯町の政策総務部危機管理課の竹内愛純さん(右)
大磯駅前にあった町の案内図。観光名所に加えて、避難所やトイレ、海抜の表記があり、町全体での防災意識の高さがうかがえます(写真撮影/嘉屋恭子)
大磯中学校3年生の前で防災講演する伊藤さん(写真提供/伊藤勇さん)
危機感を町民と共有。津波土砂防災訓練には3000人が参加冒頭にあげた竹内さん、伊藤さんたちが抱く危機感、防災意識は大磯町全体にも浸透し、津波土砂避難訓練にはなんと町民約3000人が参加するといいます。
こうした、町民の当事者意識・防災意識の高まりにつながっているのが、町が主催する年3回実施の「大磯防災ミーティング」です。自治会や学校、病院、ボランティア、消防、警察など70以上の組織から毎回約100名が参加し、訓練の計画・実行・振り返りを通して意見を出し合い、各組織に持ち帰り、また行政にフィードバックし、改善していくといいます。
「それまでは、どこの市町村でもやっている防災訓練を行っていたんですが、町主体の訓練だと防災力があがらないと気がつき、住民のみなさんで意見を出し合う方法へと変化させました。実は『土砂避難訓練』を行うようになったのもこの数年です。開始したのも、高台に住んでいるみなさんの意見を反映した結果です。お互いの意見を出すことで、住民の当事者意識、防災意識が高まっていくんだなと感じます」と竹内さん。なるほど、住民と行政の顔が見えていることで、良好な協働のサイクルに入っているようです。
続々と避難場所である体育館に入っていきます。防災訓練開催は2011年(写真提供/大磯町)
高台に避難する馬場地区の避難訓練の様子。こちらも開催は2011年(写真提供/大磯町)
町への愛着と日ごろの防災訓練が「共助」を可能にするただ、大磯町以外にも災害多発地域はたくさんあります。ここまで防災の協働意識が高まった背景には何があるのでしょうか。
「大磯には相模国総社の六所神社があり、また、昔から漁業が盛んであったこともあり、もともとお祭りが盛んな地域です。この2年はコロナ禍で実施できていませんが、夏になると毎週、どこかの神社でお祭りが行われている。子どもが担ぐ『こどもみこし』もあり、地域の行事に住民が参加することで交流が深まって、町への愛着を生んでいるように思います。加えて、防災訓練をすることで災害発生時に人を助けられる。地域への愛着と、日ごろの防災訓練。この両輪が備わってはじめて『共助』が実現できるのではないでしょうか」と、30年以上も大磯の町内会や地域の防災に携わってきた伊藤さんは分析します。
もともとお祭りが盛んな大磯。防災の取り組みの、根っこにあるのは「地元愛」(写真提供/伊藤勇さん)
大磯を含め「湘南」は、地域愛・地元愛が強い印象でしたが、実はこうした草の根の活動、人々の思いが「湘南愛」の土壌になってきたのかもしれません。また、町内自治会とは別に『自主防災会』を組織するところも増えてきたといいます。
「防災に特化した組織が『自主防災会』で現在町では26の組織が活動しています。この数年、自治会役員は任期で交代してしまうため、防災力の継続を目的として役員OB等により、自治会とは別に、自主防災会を組織するところもだいぶ増えてきています。私の所属する馬場地区の自主防災会では、災害発生時に黄色い安否確認旗を家の前に掲示してから一時避難場所へいく安否確認訓練にも力を入れています。回覧板をまわす程度の近所を『組』とし、安否チェック表や要支援者情報を可視化した地図をつくりました。自分と家族の身の安全を確認したら、組長が近所をまわり、要支援者に声をかけてほしいと伝えています」(伊藤さん)
馬場地区で使われている「黄色い安否確認旗」。組単位でチェック表を使用して各世帯の安否状況を記載し、地区全体でとりまとめられるようにしている(写真提供/伊藤勇さん)
馬場自主防災会の要支援者訓練の写真。地図を使って逃げ遅れた人はいないか確認しています(写真提供/伊藤勇さん)
また、自主防災会では、地元にある高齢者施設と合同防災訓練を行い、リヤカーを使って高齢者を搬送する避難訓練も行っているといいます。
この要支援者への取り組み、高齢者の避難訓練については、「住民がそこまでしないダメなの?」という声もあることでしょう。障がいや身体の状況を知られたくないという方もいるでしょうし、ひとくちに住民が「助け合う」といっても、その実現は本当に難しいことが分かります。ただ、乳幼児、高齢者、障がい者など、どの街にも必ず「災害で困る人・避難に困る人」がいます。そして、弱い人たちほど被害が大きくなるものです。その対処法を災害が発生してから考えるのではなく、あらかじめ考えておく、ベストではなくともベターな案を平時に考えておくことは非常に重要だなと痛感します。
馬場地区青年会員が訓練に参加、リヤカーを使って救助する。大磯町で青年会があるのは馬場地区のみだそう(写真提供/伊藤勇さん)
防災の告知はお祭りや盆踊りでも掲示。楽しく巻き込むことが大切ただ、防災訓練は義務感や危機感だけでは長続きしません。そこで伊藤さんが心がけているのが、お楽しみイベントと組み合わせることだといいます。
「文化祭やお祭りで販売するお餅のパッケージに、『防災餅』と名付けて、防災の心構えを印刷して販売しています。炊き出しもそうですが、胃袋を掴むのは重要です(笑)。防災訓練の一番の課題は、1人でも多くの人に防災について知ってもらうこと、参加してもらうことです。人が集まるイベント、お祭りの一角に、自然と目に入るところに「家具転倒防止の方法」「消火方法」と掲示しておく。はじめはおっかなびっくり見ているけれど、『どうぞ~』と声をかけると見ていってくれますよ」と話します。
手づくりした餅を「防災餅」と名付けて100円で販売。収益は防災訓練の費用に充当します。上の写真の防災の掲示など、楽しいことと組み合わせて、啓発するのがポイントだそう(写真提供/伊藤勇さん)
この10年で東日本大震災をはじめ熊本地震、西日本豪雨と立て続けに大きな災害が多発しています。ただ、興味関心があっても、「地域の防災訓練に参加するほどでも……」という温度感の人は多いはず。そうした人に対して、自然と知ってもらう・啓発するというのはとても大切なようです。また、伊藤さんがカギになると話しているのが女性です。
「もし平日の昼間に災害が起きたら、町内に居る確率が高いのは女性や子ども、高齢者です。特に、避難生活での女性視点は重要です。訓練の場に子どもと女性がいれば、男性も参加するようになります。女性の意識を高めることが、町の防災力向上につながるはずです」と伊藤さん。その声を受け止めた大磯町では、女性を対象にした災害救援ボランティア養成講座助成事業を、今年実施しました。
取材中、「1人も取り残さない」と繰り返し力説していた伊藤さん。さまざまな災害が発生するから無力なのではなく、たとえ何度、災害が起きたとしても、「必ず助ける」「ともに助け合って生き延びる」という強い意思が、今の私たちに一番、必要なのかもしれません。
住まいがなく、仕事に困っている人が、住み込みのアルバイトとして空き家のリフォームに参加し、一時的に住居と収入を得ることで生活の立て直しを図ってもらうソーシャルビジネスが登場。“誰もが生きやすい社会”のために会社を立ち上げた「Renovate Japan(リノベートジャパン)」の甲斐隆之さんに起業のきっかけや現状のお話をインタビューするとともに実際に利用した方にも感想を伺いました。
住まいのない人と日本の空き家を結びつける新発想(写真/PIXTA)
日本の相対的貧困率(その国の大多数の人々の文化・生活水準と比べて貧しい状態にある人の割合)は15.7%(2018年 厚生労働省 国民生活基礎調査の概況)と、国民の約6人に1人。先進国を中心に38カ国が加盟するOECD諸国の中でも高い数値になっています。ホームレス状態の人の数は、全国で3824人(2021年 厚生労働省 ホームレスの実態に関する全国調査結果)。ネットカフェなどで生活する住居喪失者は都内で推定約4000人(2018年 東京都 住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査報告書)と推計され、住居と収入に困難を抱える方の問題とどう向き合っていくかは、日本の重要な課題と言えるでしょう。
東京都国分寺市を拠点にする「リノベートジャパン」は、総住宅数に占める割合が13.6%、全国に846万戸(2018年 総務省 住宅・土地統計調査)もある日本の空き家問題に着目し、“余っている住まいと、住まいのない人”を結びつけ、困難の解決を図る会社です。
その仕組みはこう。
同社が空き家のオーナーに物件を賃貸化してもらえるよう交渉。ライフラインの整備や基本的なリフォームを行った後、生活困窮者とされる方がアルバイトとして加わり、DIYで内装を整えます。作業中はその物件に住めるようにし、シェルターとしても機能します。スタッフが仕事に就くための話を聞いたり、セーフティネットを紹介したりして支援。一定期間、家と仕事が確保される状況をつくり、次のステップに進みやすくなるのです。さらに改修した物件は、主に外国人や性的少数者といったマイノリティの方を対象にしたシェアハウスとして運営することで、作業にかかった費用を回収します。
(資料提供/リノベートジャパン)
学生時代と前職での経験を糧に“生きやすい社会”に取り組む起業したのは、まだ20代の甲斐隆之さん。
大学時代は海外インターンシップ事業や国際学生寮の学生団体で活動し、大学院では開発経済学を専攻。卒業後は日系大手のシンクタンクに就職し、インフラ政策をはじめとした公共コンサルタントに携わってきました。
左から3番目が代表の甲斐隆之さん(左から「リノベートジャパン」のメンバーの吉田佳織さん、池田大輝さん、甲斐さん、木村剛瑠さん、元メンバーの杉浦悠花さん)(写真提供/リノベートジャパン)
社会人になって約5年での挑戦は、これまでの経験が実を結んだからと言えますが、根底には甲斐さんならではの深い想いがあります。
小学生のころに父親を亡くし、母子家庭で育った甲斐さんは、遺族年金などの社会のセーフティネットに支えられてきました。一方で家庭の事情により中学1年生までの数年間をカナダで過ごした帰国子女。いわゆる“普通”のあり方とは違っていただけに、レッテルを貼られて偏見を感じたり、家庭を気づかって周囲と違う選択をしたりすることが少なくなく、アイデンティティの葛藤から自分は社会に馴染めないのではと思っていたそう。
そんななか、大学生のときにある気づきがあります。
「ある授業で貧困問題を学んだときのこと。機会に恵まれないために社会的な安定から外れてしまう人がいると知ったんです。自分はたまたまセーフティネットなどに救われましたが、ともすると同じだったかもしれません。
その人の望んでいることが、置かれている事情で左右されることがあってはいけない。道を狭められることのない“生きやすい社会”をつくりたいと強く思うようになりました」
大学3年生の時に、インド・ムンバイのNGOでインターンしていた時にスラム街を訪れた際の甲斐さん(2015年)(写真提供/甲斐さん)
(写真/PIXTA)
前職の経験から、「公的機関の役割は大きいが、限界がある。個々のニーズを満たす福祉を民間でつくっていけたら」と思うようになっていた甲斐さん。とくに住居も仕事も失っている人が一時的に利用する宿泊場所は、公的なものだと相部屋になったり規則が厳しかったりして、ストレスになりがちと聞いていました。1人ひとりが満足する空間を考えたとき、「空き家を宿泊場所にして、生活の立て直しを考えている人と結びつけられないか」と着想したそう。
甲斐さんのアイデアのポイントは、リフォームで付加価値をつけた物件をシェアハウスにし、資金回収ができるようにしたところ。助成金に頼り切らない、企業として自走できる体制だからこそ、自由な取り組みをしていけるのだと話します。
「幸い学生時代や前職で、ゼロからイチをつくるプロジェクトに関わってきたため、ビジネスをはじめるイメージはついていました。加えて事業内容は1軒1軒の空き家の改修というシンプルなもの。大がかりな構想や資金を立てなくてもスモールステップで進めてゆけて、負担が少ないことにも背中を押されました」
支援団体とも提携。包括的なサポート体制で入居者を迎える仲間たちに声をかけ、2020年10月に事業をスタート。物件は自治体の「空き家バンク」を活用するほか、地元の不動産会社に相談したり、まちづくりの場で情報収集したりして選定しています。国分寺市・小平市の建物がまもなく完成予定で、現在は3件目となる東久留米市の物件を改修中です。
物件は住居と仕事に困った人の宿泊場所として需要が見込まれる都心に近いエリアが中心。一軒家のほかアパートも対象です(写真提供/リノベートジャパン)
「空き家のオーナーの理解を得るのが一番大変なところです。正直、生活を立て直そうとしている人が利用すると聞くと、どんな人か分からないことから不安に感じる人や、近隣へ特別な配慮が必要ではないかと懸念されることもあります。宿泊場所になるのは改修を終えるまでの期間であることや、その後の利用についてのプランを説明すると、なかには『社会貢献になる』と喜びを感じていただけることも。積極的なオーナーに出会えるとありがたいです」
会社のスタッフ以外に、住み込みでアルバイトをするメンバーは“リノベーター”と呼び、支援団体と連携して募るようにしています。物件の規模が小さいため、1軒で受け入れられるのは1~2名。さまざまなケースが想定されるため、対応に配慮の必要を感じたときはスタッフから心理士に相談したり、公的な窓口につないだり、包括的にサポートしています。
(資料提供/リノベートジャパン)
「ここが各種の相談窓口につながったり、アクセスしたりするときの拠点となり、ハブのような役割を果たせたらと思うんです。そうした場所に相談役がいたら安心だと思っていて、私たちはそれを目指しています」
空き家のDIYにはスタッフも参加。スタートから約1年で、これまで3名(9月27日現在)のリノベーターを迎えました。
「本人のやる気を促し、仲間として応援するスタンスでいます。ただ心理的な負担をかけないことも大事にしていて、時間のあるときに入れて気兼ねなく帰りもできる、出入り自由なアルバイトになるようにしています」
DIYを楽しみながら自然とスタッフと関り、前向きにステップ今夏、リノベーターを経験したSさん(20代女性)にお話を伺いました。
家に居場所がない人たちの力になりたい、と10~20代の若者に向けた支援団体でボランティアをしていたSさんは、自身も家に居づらいと感じることがあり、一時期、ネットカフェなどを転々と生活していました。そんなときに支援団体を通して「リノベートジャパン」を知り、思い切って連絡。リノベーターをすることになります。
「参加したのは安心できる環境で生活を立て直したいのもありましたが、何かをイチからつくる過程が好きなのと、事業内容が新しくて興味が湧いたのが大きいです。
壁のペンキを塗ったり養生テープを貼ったりする作業に週2時間・2カ月間ほど参加。ものができあがっていく達成感を味わえましたし、作業している間に住む部屋としてもとても快適でした」
DIY中のスタッフとの関わりも、プラスになったと言います。
「私は気分に波があったり、不眠などに悩んだりしていたのですが、そういうことはもちろん、些細なことも気にかけていただき、定期的に相談に乗ってもらいました。
これまでは『自分なんかが助けを求めてはいけない』『もっと大変な人がいるのだから我慢をしなくては』と思いがちでした。でも、辛さは比べられるものではなく、辛いかどうかは自分が決めるものだと気づけたし、困っているときはまわりがどう思おうが関係なく、いろんなところを頼ろうと思えるようになりました。
スタッフにはいろいろな人がいますが、自分の話をちゃんと聞いて、サポートしていただける本当にいい方々です」
DIY中の様子。楽しく作業をすればスタッフとの垣根が低くなります(写真提供/リノベートジャパン)
リノベーターが入居する前に、スタッフらで宿泊場所にする部屋やベースの改修を行います(写真提供/リノベートジャパン)
左/改修前の1F和室 右/完成してきれいになった部屋(写真提供/リノベートジャパン)
DIYを終えてSさんは現在、以前からアルバイトをしているNPO法人で正社員になることを目標に働いているそう。今回の経験は、未来への想いを強くすることにつながっています。
「生きづらさを抱えている若者たちを、私がしてもらったように上手く巻き込んで居場所をつくっていきたいです。『1人で何とかしなきゃ』と思わず、困ったときは『こうした団体もあるよ』『見知らぬ人についていくならここにまず頼ってみよう!』と伝えていきたいです」
若者を支援する意欲を高まらせているSさん。その1つひとつの言葉に希望が感じられました。
この活動を社会に広めたい! 1年で得たノウハウを公開予定「1軒1軒、質を重視して手がけている分、リノベーターの方から『こういう場所があってよかった』と言ってもらえるとありがたいです。スタッフからは『社会問題を学びつつ、現場でDIYを楽しめるのがいい』と言ってもらえます」
週一回ほど定例のミーティングで状況を報告。今後どういうステップを踏むかなどを話し合います(写真提供/リノベートジャパン)
今後は、新規開拓をいったん休んで、これまで得てきたノウハウをマニュアル化し、外部に公開することを考えているそう。
「自分たちの実績を重ねるのも大事ですが、『同じことがしたい』という人が、すぐはじめられるようにしたいんです。課題解決のひとつの形として社会に浸透させていきたいと思っています」
この活動は誰かのためになるのはもちろん、自分のためになると語る甲斐さん。そのぶれない姿勢と仲間たちがある限り、着実に広がりを見せてゆくことでしょう。
●取材協力
リノベートジャパン
●厚生労働省
ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果について
●東京都
住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査報告書(18ページ)
●総務省
平成30年 住宅・土地統計調査
住宅数概数集計
●国土交通省
平成30年住宅・土地統計調査の集計結果
(住宅及び世帯に関する基本集計)の概要