
10万3,000円 / 47.53平米
東急田園都市線「青葉台」駅 徒歩2分
青葉台駅から徒歩2分に立つ、デザイナーズ物件のご紹介です。9階建てのスッキリした外観の建物の1階にはコンビニ、2階には24時間営業のスポーツジムが入っています。
物件は5~6階部分のメゾネットで、2層分の吹き抜けのあるLDKと、軽やかな洋室が印象的。5階には玄関とLDKがあり、 ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
観光地として捉えるのではなく、地域の持続性を高めるイベントやボランティア活動に興味を持ち、実際に参加したり、中には主体者となって取り組んでいる人も増えています。でも活動による効果が見えづらく、周囲の理解を得ながら継続していくのが難しいという声もあります。そこで、社会貢献活動を独自のコインで可視化する「actcoin(アクトコイン)」のサービスを活用し、地域活動を「見える化」する新しい取り組みを紹介します。
地域貢献活動を「見える化」。結果がわかるので継続しやすくなる(画像提供/ソーシャルアクションカンパニー)
都市部と地方を行き来する多拠点生活者だけでなく、イベントなどを通じて好きな地域に通う人が増えています。このように、地域に住む人や観光で訪れるだけの人ではない地域外の人で、その地域に関わる人々を、「関係人口」といいます。
「関係人口」は、地域の担い手としての活躍や将来的な移住者の増加につながる存在として期待されていますが、取り組みのなかで見えてきた課題も。いちばんの課題は、「関係人口」の統計手法が確立されていないことです。社会の動向を調査研究し、問題解決に取り組んでいるNTTデータ経営研究所のマネージャー古謝玄太さんにたずねました。
「『関係人口』には、地域のイベントの参加者に加えて、特産物を定期的に購入するようなライトなファンも含まれますが、正確な数や行動を把握できていません。そのため地域サイドは、イベントやPR活動でターゲット設定が難しい面があるのです。さらに、『関係人口』が担う地域の持続性に関わる活動は、社会貢献の意味もあるのですが、参加することがどのような成果につながっているのか個人にはわかりにくい。持続的な関係人口創出には、統計的な把握と地域貢献度の可視化が重要と考えました」(古謝さん)
そこで、課題解決の切り札として注目したのが、2019年2月にサービスを開始していたアクトコインでした。
(画像提供/ソーシャルアクションカンパニー)
アクトコインの企画・設計に携わるソーシャルアクションカンパニーCOO薄井大地さんは、アクトコインのサービスを、「社会貢献が循環する仕組み」といいます。
「アクトコインは、日常のなかの個人の社会貢献活動に対してオンライン上の独自コインを付与します。一人一人のソーシャルアクション履歴がダッシュボードに残り、貯まったコインが『見える化』されます。コインによって自分の活動が価値をもつものになり、自分にも『ちょっと嬉しいもの』になる。『やっても自分にいいことなんてない』『一部の物好きな人がやるもの』という社会貢献活動のネガティブな面を変えるものになればと開発しました」(薄井さん)
NPOなどが主催するイベントやボランティア活動に参加することでコインが貯まる。活動履歴が一目でわかるようになっている(画像提供/ソーシャルアクションカンパニー)
アクトコインサービス開始から2年後の2021年3月より、NTTデータ経営研究所とソーシャルアクションカンパニーが協働でプロジェクトを開始。プロジェクトは、内閣府の「令和3年度関係人口創出・拡大のための中間支援モデル構築に関する調査・分析業務」として採択され、「関係人口可視化」に取り組む「あなたと地域のつながりプロジェクト」がはじまりました。コンセプトは、「見える化で支える持続可能な地域づくり」。2021年10月17日にキックオフイベントが開催されました。
「地域にとっては、自らの地域への関心層、愛着層を分析することができ、個人にとっては、さらに地域とつながりたいという意欲が喚起されます。関係人口関連施策の構築のための羅針盤としてアクトコインを活用していきたいと考えています」(古謝さん)
アクトコインからイベント参加。コインは次の社会貢献活動に使えるアクトコインの使い方は、アプリをダウンロードしたあと、特設サイトから地域のイベント・取り組みに参加することでコインを獲得。アクションごとの獲得コインが提示されます。日常生活のなかでできるアクションとして、地域情報の発信や地域産品の購入など日々の地域とつながる行動も登録できます。どのプロジェクトの参加者がその後の「発信」「購入」をしているかなどの分析が可能で、アクティブなユーザーには、地域発の商品の特典を予定しています。
2030億枚のアクトコインがオンライン上ある設定で、そのコインを社会貢献活動でイベントパートナーから参加者に配っていきます。2030億枚のアクトコインを配り終わったとき未来が変わるという想定で企画されています。アクトコインの登録者数は、2021年10月時点で1万2500ユーザーを突破。2000万~3000万コインが流通中です。
「アクトコインはお金に交換することはできません。直接自分のために換金はできないけど、コインを貯めることでソーシャルグッドな商品がもらえたり、無料でイベントに参加できたりする特典が少しずつ生まれてきています。いずれは、ボランティア保険に入れるようにしたいです。社会貢献活動をすると、いいことがあると実感できれば持続しやすいでしょう」(薄井さん)
「あなたと地域のつながりプロジェクト」では、19イベントを掲載しています(2021年11月現在)。現在は、「関係人口」創出に積極的に取り組んでいる3地域(千葉県南房総地域、新潟県長岡市川口・山古志地域、福井県高浜地域)を対象に実証中です。
(画像提供/高浜町)
「地域は、イベントの費用対効果がわかることで、大勢にPRするのではなく、アクションしたい人と個別のつながりを密につくることができます。アクトコインを地域貢献活動のインフラにできれば」と古謝さん。現在、掲載しているイベントには、約70名がアクトコインを登録しています。イベント後も継続的に登録してもらえるかが今後の課題です。
フードロス酒場やトゥクトゥクで巡るマルシェでコインがもらえる!「あなたと地域のつながりプロジェクト」の実証地域のうち、千葉県南房総地域のアクトコイン活用の状況を、南房総市公認プロモーターであり、移住支援や地域課題事業に取り組んでいるヤマナハウスの永森昌志さんに聞きました。
農村漁村に都会の人を送り込むプロジェクト「ちょこっと先の暮らし方研究所」という農林水産省の事業をNTTデータ経営研究所と連携し、南房総地域全体のコーディネートをしてきた永森さん。南房総地域の具体的なイベント開催者の紹介をするなどNTTデータ経営研究所と南房総地域との橋渡しをしています。
もともと、「関係人口」について、南房総地域の抱える課題はどのようなものがあったのでしょうか。
「2拠点生活者は増えていますが、どういうふうに地域に貢献しているかつながりは個々にお任せの状態です。必ずしも住民票異動をともなわない『関係人口』については、数値化しづらかった。自由でいい面もありますが、行政にとっては可視化したほうが効果的な施策を打てます。2021年8月に古謝さんから依頼を受け、SDGsをテーマにしている南房総地域と相性がいいと思いました。電話で密に連絡を取り合いながら、8月下旬にはイベントページを作成しました」
地球に優しい電動の三輪EVトゥクトゥクに乗って地域の農家を巡る。直接こだわりの農産物を買ったり農業体験ができる(画像提供/永森昌志)
(画像提供/永森昌志)
10月に開催されたサーキットマルシェでの参加者の様子。トゥクトゥクは三人乗り。窓がないので開放感たっぷり(画像提供/永森昌志)
SDGsをメインテーマに活動している南房総市観光協会が9月に主催したイベント。参加者はアート創作を楽しみながら「海洋プラスチックごみ問題」を学んだ(画像提供/南房総市観光協会)
規格外で廃棄されている農産品や水産品、捕獲したイノシシをおいしく提供。フードロスとなる食材を救いながら南房総の恵みが楽しめる。ヤマナハウスで新たに始まる自給自足スキル講座「ヤマナアカデミー」ではアウトドアや野草の講座を予定している(画像提供/永森昌志)
アクトコインを活用した1回目のイベント「サーキットマルシェ@南房総~EVトゥクトゥクで農家を巡る、新しい様式のマルシェ」が10月30日に開催されました。農産物を買ったり、収穫体験したりするイベントで、参加すると4000コインを獲得できます。
11月20日には、ヤマナハウスによる「ヤマナフードロス酒場episode-1~地域・生命と幸せにつながる未来の居酒屋」が開催されました。次回は来年3月12日予定です。
「もっと都会でアクトコインの知名度が上がるとアクトコイン経由の参加者が増えると思います。何がもらえるかではなく、関係自体が価値なんです。アクトコインが入り口になって、地域をお試しでき、その後に続く地域貢献活動の道筋をつくれたらいいですね」(永森さん)
あなたと地域とのつながりを可視化することで見えてくる、新たな地域との関わり方。「地域の知合いに連絡をとった」などこんなものまで!?」と思うような日常の小さなアクションでもコインがもらえます。まずは、現在のあなたの社会や地域への貢献活動を可視化してみてはいかがでしょう。
●取材協力
・株式会社NTTデータ経営研究所
・ソーシャルアクションカンパニー株式会社
・ヤマナハウス
・あなたと地域のつながりプロジェクト
・アクトコイン
タイニーハウス(=小さな家)による持続可能な暮らしを提案する「TINY HOUSE FESTIVAL2021」が、東京駅前で2021年10月に開催された。コロナ禍を経た今年、タイニーハウスはどう変わったのだろうか。最新のタイニーハウスの話とともに、探ってみた。
暮らしの多様化とともに、住まいの形も変化していくコロナ禍でワークスタイルが変化してきたなか、自分たちの暮らし方や住まいについて見直す時間が増えてきた人も多いだろう。自宅での仕事スペースの確保や、プライベートとの切り替え方など、新たな課題が浮き彫りになってきたかもしれない。タイニーハウスは、その解決策のひとつとして需要が高まってきているという。
例えば、テレワークのスペースとして活用したいと考える人もいれば、アウトドアでの活動が増えて、移動先でも居心地良く過ごすためにバン型を使いたいという人もいる。テレワークが進んで、都心に住む必要のなくなった方が、二拠点生活をするために取り入れるという形も。
テレワーク化が進み、仕事をするためのワークスペースとして提案しているタイニーハウスもあった(画像提供/HandiHouse project 大石義高 佐藤陽一)
(画像提供/HandiHouse project 大石義高 佐藤陽一)
そもそも、タイニーハウスは、2000年代にアメリカで生まれた「タイニーハウスムーブメント」が発端と言われている。その後、2007年に住宅バブルの崩壊とともにサブプライム住宅ローンが破綻し、翌年にはリーマンショックが起きた。そんな背景から、消費社会に縛られない、経済に左右されないカルチャーとして今さらなる広がりを見せているのだ。
暮らしにどれくらいの費用をかけ、何に時間を費やし、どのような生活をしていきたいか。「お金と時間の自由」を大切にしたいと考える人たちにとって、そのライフスタイルを体現できる形が「タイニーハウス」というわけだ。
その広さに明確な定義はないものの、だいたい延べ床面積は20平米以内のものが多い。もちろん、キャピングカーなどのバン型の車を使ったモバイルハウスも含まれる。価格の幅は広いが、一般的な住宅に比べれば低コストで手に入れやすい。後から住み手が好きに手を加えやすく、小さいがゆえに移動も自由。そんな魅力が積み重なって、暮らしの選択肢の一つとして注目が集まっている。
その見本として、数々のタイニーハウスが集まったのが「TINY HOUSE FESTIVAL」だ。2019、2020年と開催され、今年は一体どのように変化しているのだろうか。
東京駅近くで開催された今回の「TINY HOUSE FESTIVAL2021」。車に牽引されている小屋もあれば、荷台に取り付けられているコンテナなどさまざまな形態のものがあった。ビルの狭間のスペースだったことから、その小ささがなおのこと強調されて見える(画像提供/HandiHouse project 佐藤陽一)
個々の用途に合わせた、幅広いタイニーハウスが登場主催者の一人であり、「断熱タイニーハウスプロジェクト」などさまざまなタイニーハウスを手掛けている建築家の中田理恵さん(中田製作所/HandiHouse project)は、昨今の流れについて以下のように話す。
「コロナ禍でさまざまな形の暮らし方が広がったと思います。先日は、集合住宅の管理会社から相談がありました。マンション全体で使えるワークスペースをつくりたい、ということでタイニーハウスを設置できないかという話だったんです」
マンションで暮らす人にとって、新たに部屋を確保するのは難しいこと。しかし、全戸共有のタイニーハウスがあれば、テレワークのスペースとして使ったり、ワークショップやフリーマーケットなどの小さなイベントをしたりと、臨機応変なスペースになるに違いない。
また、空地を飲食スペースとして暫定利用するため、タイニーハウスを置きたいという要望にも応えたという。
「コロナ禍で飲食店が大変な状況なため、屋外でテイクアウト専門店を期間限定で出すというプランでした。そういう突発的なことにもすぐに対応してつくれるのは、タイニーハウスならではだと思います」
中田さんが手がけた「FLATmini」。2020年春に完成した青森県八戸市の「FLAT HACHINOHE」を拠点に、地域の「遊び場」「学び場」を発見・発掘するためにはじまったプロジェクト。八戸市内外を移動しながら、まちの人や来訪者と有機的に繋がり、「動く部室」として機能しているタイニーハウスだ(写真撮影/相馬ミナ)
アメリカのムーブメントを取材し、各地での知見をもとにタイニーハウスの製作を行っている「Tree Heads & Co.」の竹内友一さんもタイニーハウスを展示。
「宮城県気仙沼市では、東日本大震災の津波によって流れ着いたものを使って、みんなのシェルターになるツリーハウスをつくりました。ほかにも、障がい者の就労支援の休憩所や、移動式ビアバー、牛舎を解体して宿泊所をつくったりもしました」
今までつくったタイニーハウスは65以上で、この日はキャンピングカーをリビルドしたタイニーハウスが登場。
(写真撮影/相馬ミナ)
(写真撮影/相馬ミナ)
「オーダーしてくれた方は、これでスキーできる山の近くで過ごしたいということでした。料理はできなくていいということなので、脱ぎ着できるスペースと寝る場所としてのタイニーハウスというわけです。
運転席上の寝室スペースは、断熱材などを入れて暖かさを追求していますが、寝室スペース以外は板壁にしてコストダウンしています。休憩スペースはソファを置いてくつろげるようにしています」
スキー終わりにくつろいだり、ゆっくり寝るためのタイニーハウス。運転席上には寝室スペースがある(写真撮影/相馬ミナ)
タイニーハウスがあることで、自由に移動をしたり、好きなスペースを確保したりと、暮らしの幅が広がっているのだろう。そんな考え方は、他にもさまざまな形態で現れている。
例えば、煙突が出ているタイニーハウスは「旅するサウナ まんぷく号」。軽トラックの荷台に小屋を載せ、移動式のサウナにしている。いつでもどこでもサウナを楽しみたい、楽しんでもらいたいという思いで始まったプロジェクトだ。これなら、自宅にサウナがない人も気軽に自由に使えて、ひとときの満足感を味わうことができる。
昨今のサウナブームからも人気の高い移動式のサウナ(写真撮影/相馬ミナ)
(写真撮影/相馬ミナ)
(写真撮影/相馬ミナ)
まだ軽トラックに躯体しかできていないタイニーハウスもあった。これは「スエナイ喫煙所」というプロジェクト。喫煙所でのコミュニケーションを非喫煙者でも楽しめるようにと、中央にはノンニコチンのシーシャを設置している。一つのシーシャを共有することで自然とコミュニケーションが生まれ、新しい形の喫煙所をつくろうというもの。建築学を専攻している学生が中心となっているプロジェクトで、今まさにクラウドファンディングで資金を集めている最中だという。
少しずつこれから形になっていく予定の「スエナイ喫煙所」。コミュニティスペースとしての提案であり、コロナ対策もきちんとされていた(写真撮影/相馬ミナ)
写真右下が完成予定の模型(写真撮影/相馬ミナ)
このように用途と目的に合わせ、自由な形で広がっていくことができるのがタイニーハウスなのだ。
持続可能な暮らしを目指すタイニーハウス。断熱など住宅性能も追求SDGsの流れが強まり、持続可能な暮らしに目を向ける人たちが増えてきたのも、タイニーハウスが注目される後押しになっている。暮らしの幅を広げるだけでなく、脱炭素など環境への配慮や、暮らしやすさを追求したタイニーハウスも見られた。
「断熱タイニーハウスプロジェクト」は、2019年に開催されたイベントから毎年変わらず出展している。発案者は大学で都市環境を学んでいた沼田汐里さん。「断熱」の大切さを身近に感じてもらうために製作したタイニーハウスで、天井や壁、床、すべてに断熱材の「ネオマフォーム」が入っている。省エネを考えたときに、夏の暑さと冬の寒さに対応できなければならないが「断熱と気密がしっかりしていれば、最小限のエネルギーで暮らすことができる」と沼田さんは教えてくれる。また、「Do It Together」を意味する「DIT」をコンセプトに、HandiHouse projectの中田さんたちプロの指導のもとにセルフビルドしたものでもある。環境にも住み手にも快適な住まいを自分たちの手で楽しみながらつくれるということを教えてくれるタイニーハウスだ。
窓から顔を出す「断熱タイニーハウスプロジェクト」の沼田さん(写真撮影/相馬ミナ)
断熱の温度を実感したいとたくさん人が出入りしていた(写真撮影/相馬ミナ)
同じく毎年出展しているのが「えねこや」で、太陽光発電と蓄電池で電力を自給する「オフグリッド」タイプのタイニーハウスを紹介している。小さなスペースながらも、キッチンやエアコンが設置され、ペレットストーブもあって実に快適そうな空間だ。日本の木窓メーカーの窓を採用し、断熱や気密性を高めて、電力消費を抑える工夫をしながら、太陽光を活用することで、オフグリッドを実現している。再生可能エネルギーだけで快適に過ごせるのは、タイニーハウスならではのこと。もちろん、災害時に強いのはいうまでもない。
えねこやは、災害時に被災地へけん引していき、復興作業に携わることもできるという(写真撮影/相馬ミナ)
(写真撮影/相馬ミナ)
これからのタイニーハウスの広がりとは?「Tree Heads & Co.」の竹内さんは、タイニーハウスの製作に加え、新しいプロジェクトをスタートさせた。実際にタイニーハウスで暮らしたい人を募集して敷地を共有し、必要な技術や道具、情報をシェアしてコミュニティをつくっていきたいと話す。
「『ホームメイド』というプロジェクトで、僕たちが持っているタイニーハウスに関する知識をシェアしながら暮らしのコミュニティをつくりたいと考えています。住まいとしてのタイニーハウスだけでなく、食べ物やエネルギーなども、少しでもいいから自分たちの力で手づくりしてみようという試みです」
住まいだけでなく、畑仕事をしたり、周辺の環境整備なども視野に入れているのだそう。
「知識がない、道具がない、場所がない。たくさんの人からそういう話を聞くので、だったら僕たちが持っているものをシェアして、みんなで暮らしを考えていくことができればと思っています」
「ホームメイド」構想(画像提供/TREE HEADS & Co.)
また、HandiHouse Projectの中田さんも、これからのタイニーハウスの可能性について教えてくれた。
「住まいはもちろん、店舗やパーソナルな仕事場など、いろいろな形が求められていると思います。個人だけじゃなく、自治体も目を向けていて、移住者のためにタイニーハウスを取り入れている地域も出てきました」
山梨県ではまず土地のことを知ってもらい、どんな暮らしができるかを試せるようにと、「移住者向けお試し住宅」としてタイニーハウスを建てているのだそう。そこを拠点に仕事や生活のベースを見つけてもらえれば移住の促進につながるというわけだ。「いろいろな要望が増えてきて、タイニーハウスだからこそできることが広がっていると実感しています」(中田さん)
コロナ禍が続き、少しずつ環境や人々の価値観が変わっていくなかで、自分たちの暮らしを考える時間はますます増えていくだろう。暮らしのなかで何を優先し、大切にしたいのか。誰とどこでどんな時間をすごしていきたいのか。働く場所や環境をどう整えていきたいか。
それぞれの答えがあるもので、決めたからといってそれが永遠に続くわけでもないだろう。臨機応変に対応していければ、心地よく健やかに過ごす時間はきっと増えるに違いない。タイニーハウスは選択肢の一つ。選択肢が増えればそれだけ私たちの暮らしは自由になっていくはずだ。
●取材協力
Handihouse project
Tree Heads & Co.
ホームメイドプロジェクト
えねこや
山梨県韮崎市の名物ビル「アメリカヤ」。かつて地元で親しまれていたものの、閉店して15年間、抜け殻になっていました。しかし2018年にリノベーションされ復活したことで街に訪れる人が増え、新しいお店が次々とオープン。きっかけをつくった建築家の千葉健司さんにお話を伺うとともに、活性化する「アメリカヤ」界隈の“今”をお届けします。
15年間、閉店して廃墟となっていたかつてのランドマークが復活JR甲府駅から普通列車に揺られること約13分の場所にある山梨県韮崎市。韮崎駅のホームに降り立つと、屋上に「アメリカヤ」と看板を掲げた建物が見えます。
(写真撮影/片山貴博)
1階から5階まで多種多様な店舗が入るこのビルは地元の人気スポット。しかし2018年に再オープンするまでの15年間は、閉店して廃墟と化していました。復活の立役者は、建築事務所「イロハクラフト」代表の千葉健司さんです。
建築家の千葉健司さん。子どもの頃からの夢を実現するべく大学を1年で辞め、京都府の専門学校で建築を学んだ後、地元・山梨県にUターン。「アメリカヤ」4階に建築事務所「イロハクラフト」を構えています(写真撮影/片山貴博)
子ども時代に祖母の住む和風住宅や、修学旅行で京都府に訪れるなどした経験から「持ち主の想いが宿り、使い込まれた古い家屋」に魅力を感じていた千葉さん。建築家として工務店に勤務し、はじめて一戸建てをリノベーションしたとき、既存の家の劇的な変化を施主が喜んでくれたことに感動。日本で空き家問題が深刻化しているのもあり「古い建物をリノベーションで甦らせていく」ことに注力してきました。
2010年に独立してからは、築70年の農作業機小屋を店舗にしたパンと焼き菓子のお店「asa-coya」、築150年の元馬小屋にハーブやアロマ・手づくり石けんを並べる「クルミハーバルワークス」を改修。若者に人気を博したことから、手応えを感じたと言います。
山梨県出身で韮崎高校に通っていた千葉さんにとって「アメリカヤ」は高校生のときに通学電車から見ていたビル。独自の空気感に魅了され、存在がずっと頭の片隅にありました。
あるときふと知人に「あのビルを再び人の集まる場所にできたら」と話したところ、相続した家族と会えることに。「もう取り壊す予定」だと聞き、たまらず自分たちでリノベーションし、管理・運営まで担うことを提案。二代目「アメリカヤ」が誕生しました。
1967年に開業した後、オーナーの星野貢さんの他界に伴い2003年に閉店した初代「アメリカヤ」。貢さんが戦時中シンガポールで見た文化や、アメリカから帰還した兄の話を参考にした独自のデザインが魅力(写真提供/アメリカヤ)
1階はレストラン「ボンシイク」、2階はDIYショップ「AMERICAYA」。店内には工具を貸し出すワークルームを併設していて、気軽にDIYを楽しめます(写真撮影/片山貴博)
5つの個人店が入る3階「AMERICAYA FOLKS」。初代「アメリカヤ」は、1階がみやげ屋と食堂、2階が喫茶店、3階がオーナー住居、4・5階が旅館でした(写真撮影/片山貴博)
5階には街を一望するフリースペースのほか、「アメリカヤ」のロゴやウェブデザインを担当した「BEEK DESIGN」のオフィスが。フリースペースは誰でも自由に使うことができ、小学生から大学生・社会人まで幅広い層が訪れます(写真撮影/片山貴博)
建物単体からまちづくりに視点を変え、飲み屋街や宿を手がけるかつては静岡県清水と長野県塩尻を結ぶ甲州街道の主要な宿場町として栄えた韮崎市。1984年に韮崎駅前に大型ショッピングモールが、2009年に韮崎駅北側にショッピングモールができたことで、とくに駅西側の韮崎中央商店街は元気を無くしていました。しかし名物ビルの再生により、県内外から人が訪れるように。
それまでは建物単体で捉えていた千葉さんですが、想像以上にみんなに笑顔をもたらしたことで、「あれもこれもできるのでは」と街全体を見るようになります。
「あるとき地域の人から、建物の解体情報を聞いたんです。訪ねてみると、築70年の何とも味のある木造長屋。壊されるのが惜しくて、『修繕と管理を含めてうちにやらせてください』とまた直談判しました」(千葉さん)
「夜の街に活気をつけたい」という発想から、今度は個性豊かな飲食店が入居する「アメリカヤ横丁」としてオープンさせます。
「アメリカヤ横丁」は、「アメリカヤ」正面の路地裏に。日本酒場「コワン」、居酒屋「藁焼き 熊鰹」、ラーメン酒場「藤桜」が入ります(写真撮影/片山貴博)
人との出会いが生まれるなかで、地元の有志と協働する話が持ち上がります。「横丁で食事をした後に泊まれる宿があったら言うことなし」とできたのがゲストハウス「chAho(ちゃほ)」です。
韮崎市は鳳凰三山の玄関口で、登山者が前泊する土地。ここでは「登山者はもちろん、そうでない人も山を感じて楽しめること」をテーマにしています。
お茶と海苔のお店だった築52年の3階建てビルを改修したゲストハウス「chAho」。名前はかつてのビル名「茶舗」に由来。駅から徒歩約3分の商店街にありながら、物件価格は500万以下とリーズナブル(写真撮影/片山貴博)
「chAho」は韮崎市出身のトレイルランナー、山本健一さんのプロデュース。登山者向けに下駄箱を高めに作るなど工夫がされていて、共有リビングではアウトドアグッズを陳列。「アメリカヤ」2階で購入できます(写真撮影/片山貴博)
各部屋は地蔵岳・観音岳など地元を代表する山の名前に。「chAho」は甲府市でゲストハウスを営む「バッカス」が運営。オーナーはJR甲府駅近くの観光地、甲州夢小路を運営する「タンザワ」の会長、丹沢良治さんが担っています(写真撮影/片山貴博)
リノベーションをする際は、古い浄化槽を下水道に切りかえるほか、配線や水道管といったインフラを一新し、適宜、耐震補強。トイレは男女別にするなどして、現代人が使いやすい形に変えています。しかし何より大事にしているのは「建物の価値を生かす」こと。手を加えるのはベースの部分に留め、大工の思いが込められた、趣いっぱいの床やドア・サッシなどは、そのままにしているのが特長です。
「古い建物はところどころで職人の“粋”を感じます」(千葉さん)。利用するうえで支障がない限り、躯体は汚れを落とす程度に。写真はアートのような「アメリカヤ」のらせん階段(写真撮影/片山貴博)
仲間たちと和気あいあいと楽しく仕事ができる、それが地元のよさもともと千葉さんが山梨県に事務所を構えたのは、地元特有の緩やかな空気のなかで、仲間と和やかに仕事がしたかったから。それだけに自分たちのしたことで人のつながりが生まれるのは、何よりの喜びです。
「かつてのビルを知る人がお店にやってきて、懐かしそうに昔話を聞かせてくれることがあるんです。がんばっている下の世代を見て、ご年配の方も応援してくれていると感じます。古い建物の復活は昭和を生きてきた人には懐かしいだろうし、世代間の交流が促されるといいですね」(千葉さん)
「アメリカヤ」を契機にまちづくりの実行委員をつくり、「にらさき夜市」などのイベントを開催。SNSを利用しない高齢の人にも情報が届くよう、ときにチラシを配り歩きます。
こうした取り組みをする千葉さんの元には、SNSや市役所を通じて物件の問い合わせが入ることが少なくありません。そんなときはサービス精神で紹介し、“空き家ツアー”を企画。オーナーと入居者の中継地点になっています。
街の活性化の兆しは、行政や地元のオーナーにとっても喜ばしいこと。韮崎市では補助金制度を拡充し、50万円の修繕費、及び1年まで月5万円の家賃を補助する「商店街空き店舗対策費補助金」を、市民のみならず転入者も対象とするように。「新規起業準備補助金」の限度額を条件次第で200万円まで引き上げるなど、柔軟な対応をするようになりました。
活動に共感し、もっと人が増えて街がにぎわうようになるならと、良心的な賃料にしてくれるオーナーもいるといいます。
「アメリカヤ」のある韮崎中央商店街。「築50~60年の建物が多いのですが、高度経済成長期に建てられたためか1つひとつが個性的で面白いです」(千葉さん)。街歩きしては風情ある建物を心に留めています(写真撮影/片山貴博)
「アメリカヤ横丁」を宣伝するため、韮崎駅ホームの正面にあるビルに最近、看板が取りつけられました。3分の2を山梨県と韮崎市が出資してくれています(写真撮影/片山貴博)
名物ビルの復活から3年。商店街には新しいスペースが続々と登場さまざまな動きが後押しとなり、韮崎市では空き家を使って活動をはじめる人が次々と見られるように。既存のスポットも変化を遂げています。
2020年4月に「PEI COFFEE(ペイ コーヒー)」をオープンした谷口慎平さんと久美子さんご夫妻は、東京都千代田区の「ふるさと回帰支援センター」で韮崎市を勧められ、市が運営する「お試し住宅」に滞在。そこで自然の豊かさや人のやさしさを感じ、東京都からの移住を決めました。
近隣のニーズに応えるべく8時からオープン。お店の一角では慎平さんの兄が営む「AKENO ACOUSTIC FARM」の野菜やピクルスなどを販売しています(写真撮影/片山貴博)
「PEI COFFEE」は「chAho」の2軒隣。料理もクッキーもケーキも、すべて丹精込めて手づくり。コーヒーは幅広い年齢層に親しまれるよう深煎りの豆をメインに使っています(写真撮影/片山貴博)
「オーナーは何かに挑戦する人に好意的な方で、自由にやらせてもらえているのでありがたいです。マイペースに長く続けていけたらと思っています」(慎平さん)
2021年2月には「アメリカヤ横丁」と同じ路地のビルの2階に、中村由香さんによる予約制ソーイングルーム「nu-it factory(ヌイト ファクトリー)」が誕生。
月1回、裁縫のワークショップが行われるほか、各種お直しやオーダーメイド服の制作などをしています(写真撮影/片山貴博)
「以前は甲府市にアトリエがあったのですが、北杜市からもお客さんを迎えられる韮崎市にくることに。のどかでいて文化的なムードがあるのがいいなと思います」(中村さん)
明るく広々としたアトリエ。「この辺りは駅近でも5万円前後の賃料の物件が多いので、都会からくる人はメリットが高いでしょう」(千葉さん)(写真撮影/片山貴博)
2021年5月に韮崎中央商店街の北側にオープンした「Aneqdot(アネクドット)」は、テキスタイルデザイナーの堀田ふみさんのお店。スウェーデンの大学院でテキスタイルを学んだ後、10年ほど同国で活動していましたが、富士山の麓で郡内織を手がける職人たちと出会い、山梨県に住むことに。にぎわいあるこの通りが気に入り、ブランドショップを構えました。
堀田さんがデザインし、職人が手がけた生地を使った洋服・カバン・財布・アクセサリーのほか、生地単体も販売。「かつては養蚕業が盛んで製糸工場があり、今も織物産業が根づく山梨にこられたことに縁を感じます」(堀田さん)(写真撮影/片山貴博)
「あたたかで個性豊かな職人とのめぐり合いがここにきた理由です」と堀田さん。複数の織元と協働しており、錦糸を使ったものもあれば、綿・ウール・リネン・キュプラなどの生地も(写真撮影/片山貴博)
奥のアトリエにはスウェーデン製の手織り機が。壁の塗装・床のワックス塗りなど、内装は堀田さんと友人たちでDIY。「オーナーに理解があったからこそできました」(堀田さん)(写真撮影/片山貴博)
「周辺の方はみなさんオープンで、気さくにおつき合いさせてもらっています。お客さんにきてもらえるよう少しずつでも輪を広げ、長く続けていきたいです」(堀田さん)
「アメリカヤ横丁」の木造長屋裏側の民家には2020年春に「鉄板肉酒場 ニューヨーク」と「沖縄酒場 じゃや」、2021年2月に「ゴキゲン鳥 大森旅館」がオープン。2022年4月にはクラフトビールのバーができる予定です。
手前1階が「和バル ニューヨーク」、2階が「沖縄酒場 じゃや」、突き当たりが「ゴキゲン鳥 大森旅館」(写真撮影/片山貴博)
表通りから見えるこの提灯の下をくぐると、「アメリカヤ横丁」の木造長屋の裏手小道に入れます(写真撮影/片山貴博)
日本酒場「コワン」の店主、石原立子さんは「アメリカヤ横丁」がオープンした当初からのメンバー。横丁での日々をこう語ります。
「地元に縁のある人がやってくることが多いので、何十年ぶりの感動の再会を目の当たりにすることも。いろいろな人がきて毎日が面白いです」(石原さん)
燗酒と燗酒に合う料理を届ける日本酒場「コワン」。ベルギー産のビールも人気です(写真撮影/片山貴博)
“リノベーションのまち、韮崎”のために、できることは無限大千葉さんは、今では行政や商工会に対し、空き家の活用を進めるうえで何が現場で妨げになっているか発信する役割も果たしています。
「昔は職住一体だった家に住んでいるご年配の場合、いくら店舗部分だけ貸して欲しいと言っても、ひとつ屋根の下でトラブルにならないか心配になります。出入口を2つに分ける、間仕切り壁を立てるなどすれば解決することもあるのですが、状況に即した提案に加え、工事費を助成金で賄えたらハードルはぐんと下がるでしょう。借主だけでなく貸主のメリットも打ち出し、『受け皿』をつくっていくことが大事だと感じます」(千葉さん)
あくまで本職は建築業。まちづくりを生業にするつもりはないという千葉さんですが、「面白そう」というアイデアが次々と湧いてくるよう。最近では休眠している集合住宅をリノベーションして移住者を増やせたら、と想像を膨らませているのだとか。
「誰もが親しんでいた『アメリカヤ』が復活して、イヤな思いをした人はいないと思うんです。地元の人もお客さんも、市長まで関心を寄せてくれました。『みんなにとって良いことは、おのずとうまくいく』と実感しています」(千葉さん)
常にわくわくすることに気持ちを向けている千葉さん。その原動力によって「リノベーションのまち、韮崎」が着々とつくり上げられています。
●取材協力
アメリカヤ
パンと焼き菓子のお店asa-coya
クルミハーバルワークス
BEEK DESIGN
chAho
トレイルランナー 山本健一さん
PEI COFFEE
nu-it factory
Aneqdot
鉄板肉酒場 ニューヨーク
沖縄酒場 じゃや
ゴキゲン鳥 大森旅館
コワン
2021年11月16日にイギリスで開催されたCOP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)が閉幕した。日本政府は、脱炭素を目指す方策の一つに、住宅のZEH(ゼッチ)比率を高めることを挙げている。リクルートの調査によると、2021年度に建設された注文住宅のZEH導入率が増加したという。詳しく見ていこう。
【今週の住活トピック】
「2021年 注文住宅動向・トレンド調査」を発表/リクルート
ZEHとは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を略したもの。住宅の断熱性を上げ、エネルギー消費量を抑える設備を設置することに加え、太陽光発電などによってエネルギーをつくり、年間の「一次エネルギー消費量」を正味(ネット)で、おおむねゼロ以下にするものだ。
また、ZEHが正味で一次エネルギー消費量を100%以上削減するのに対し、75%以上削減できる住宅をNearly ZEH(ニアリーゼッチ)と呼んでいる。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁の資料のうちZEHの定義より転載
リクルートが全国の注文住宅建築者に調査したところ、2021年建築者の「ZEHの認知率(内容まで知っている+名前だけは知っている)」は72.9%だった。2017年から増加傾向にあったが、2020年建築者の認知率が73.1%だったことから「頭打ち」の様相だとしている。
ZEH認知者に、ZEH導入検討の状況を聞いたところ、「導入した」のは26.2%で、過去最高の導入率だったという。
ZEH認知者における導入検討状況(全国/ZEH認知者)(出典:リクルート「2021年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)
住宅の省エネ性を高めると、快適に暮らせる環境になる一方で、建築コストもかかる。ただし、光熱費が削減されるので、長期的にコストを回収することができる。では、どの程度の削減効果があったのだろう?調査結果では、平均で月に8060円、月に1万5000円以上という人も11.8%いた。
ZEH導入による光熱費等の経済的メリット(全国/ZEH導入者)(出典:リクルート「2021年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)
ZEH住宅の普及がカーボンニュートラルで求められる理由調査結果のZEH導入率26.2%という数値は、実は政府の目標よりかなり低い。その理由を説明しよう。
COP26の「グラスゴー気候合意」では、世界の平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えるために、温室効果ガスの排出量を2030年までに45%削減(2010年比)、2050年にゼロにすることも明記している。COP26に出席した岸田総理大臣も、「2050年カーボンニュートラル」の実現を表明した。
カーボンニュートラルの実現には、家庭での取り組みも重要だ。住宅も多くのエネルギーを消費しているので、さらなる省エネ化や脱炭素化の取り組みが求められている。TBWA HAKUHODOとFUKKO DESIGNが、「自分は何をしたらいいの?」と思っている人向けに制作した『気候変動アクションガイド』を見ると、「個人でできる対策と効果」として、最も温室効果ガスの排出量削減に効果があるのが、「ゼロエネルギー住宅」にすること、次いで「太陽光パネルの導入」だった(出典: Ryu Koide et al.(2021) Environmental Research Letters.16 084001)。
「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方検討会」が取りまとめたりまとめた2050年までのロードマップでも、2030年までに新築される住宅の省エネ基準をZEHレベルに引き上げること、新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が導入されることなどを提示している。詳しくは、SUUMOジャーナル記事「脱炭素社会の実現に政府が本腰。2030年の住宅のあるべき姿とは」を参照してほしい。
政府は、2020年ごろには新築住宅の半数ほどがZEH住宅になることを想定していたので、調査結果の26.2%ではかなり想定を下回ることになる。今後はZEHレベルの義務化を求めるなどで、新築のZEH住宅を一気に普及させる計画だ。
ますます進む太陽パネルの設置や住宅のZEH化「2050年カーボンニュートラル」を目指して、ここに来ていろいろな動きが出ている。東京都では「新築住宅に太陽光発電の義務化」を検討していると報道されている。実現するかどうかまだわからないが、再生可能エネルギーの創出に力を入れる考えだ。
また、野村不動産は、分譲戸建シリーズ「プラウドシーズン」の大規模住宅地の展開において、温室効果ガス削減に寄与する取り組みを積極的に推進するとして、全75区画で太陽光パネルを搭載した新築一戸建てを販売した。東急不動産は、今後同社が開発する分譲マンション「BRANZ(ブランズ)」、高級賃貸マンション「COMFORIA(コンフォリア)」、学生向け賃貸マンション「CAMPUS VILLAGE(キャンパスヴィレッジ)」の全物件で太陽光パネルを標準搭載することを決めた。
このようにハウスメーカー、デベロッパー各社が新築住宅へのZEH化や太陽光パネルの搭載を強化する方向で動いている。これからはさらに住宅のZEH化などが進んでいくことになるだろう。
政府や自治体、企業は脱炭素に向けてかじを切りつつあるが、私たち個人が生活の中でできることはあるのだろうか。
先ほど紹介した『気候変動アクションガイド』を見てみると、「衣類は大切に長く着よう」「LEDへ交換しよう」「休暇は近場で過ごそう」「植物由来の食事に転換しよう」などが挙げられている。私たちの子孫が暮らす地球のために、今できることから始めたいものだ。
サウナ愛好家が増え続けている昨今。ついには、サウナを兼ね備えた分譲マンションや建売一戸建てまで登場しています。住まいのサウナ事情をお伝えします。
サウナをオプションで選べる分譲マンションが登場。ロウリュや外気浴も!タナカカツキ氏の漫画『サ道』やそのドラマを火付け役に、サウナブームが到来。従来のサウナ施設に加え、自然の中や都心のビルの屋上などで楽しむ新感覚のサウナが人気を集め、アウトドアや家で楽しめるサウナテントも話題になりました。今年に入ってからは、なんと、サウナを備えた住宅のニーズが高まっているといいます。中古マンションのリノベーションでサウナを導入する人も出てきているほか、伊藤忠都市開発はサウナをオプションで選べる分譲マンション「クレヴィアたまプラーザ」の販売を開始。「クレヴィアたまプラーザ」を企画した伊藤忠都市開発 住宅事業部の木内伸太郎さんに企画の背景を伺いました。
クレヴィアたまプラーザ(写真提供/伊藤忠都市開発)
「コロナ禍で自宅で過ごす時間が増え、今後もテレワーク継続の可能性があります。そのため、クレヴィアたまプラーザは、自宅でいかに快適に過ごせるかを考慮した設備とデザインになっています。サウナをオプションで設置できる『ONE MORE ROOM』は、在宅時間が増える中で趣味などの多目的に使える部屋として企画されたものです。プライベート空間でサウナを楽しみたいという需要を見込み、一つの提案として、サウナをオプションに加えました」(木内さん)
「クレヴィアたまプラーザ」は、東急田園都市線たまプラーザ駅から徒歩7分の南傾斜の丘に立つレジデンスです。窓から街を眺望できる33戸のうち、Lタイプの住戸にオプション(有償)でサウナを選ぶことができます。北欧メーカーのドライサウナは、ロウリュ(サウナストーンに水をかけて熱い蒸気を発生させること)も可能な本格派。発汗したあとは、浴室で水風呂に入り、隣接するルーフデッキで外気浴ができる至れり尽くせりな設計です。温かいお風呂と冷たい水風呂に交互に入る温冷交代浴は、自律神経への刺激と血行を促進するとされ、休憩をとりながら入るとことでヒートショックを防止できます。
バスルーム(「D」)の下に位置する「ONE MORE ROOM」のオプションとしてサウナを設置可能(画像提供/伊藤忠都市開発)
住宅市場にも訪れたサウナブームは、マンションだけにとどまりません。「クレヴィアたまプラーザ」だけでなく、伊藤忠グループのイトーピアホームでは、都内の建売一戸建て住宅にスウェーデン製サウナの導入を企画。10月初旬にサウナ付き一戸建て2棟を竣工しました。8月20日から購入希望者の事前エントリーを開始したところ、販売会社のアラモード練馬店には多くの反響があり、すぐに完売したというから驚きです。
写真はA棟で導入したサウナ(写真提供/AVANTO)
サウナ付き一戸建て住宅が登場! サウナはパブリックからパーソナルな存在へサウナ付き新築一戸建てのドライサウナルームの選定、および空間のデザイン監修を行ったのは、サウナの本場北欧生まれのサウナメーカー「ティーロヒーロ」の販売代理店「AVANTO」です。今回、新築一戸建てに採用したのは、ドライサウナです。
ヒーターは熱くないようにカバーで覆われ、異常温度を察知すると自動停止する安全性を備えています。家庭では一般的に単相100Vが主流ですが、こちらのサウナ導入には、単相200Vが必要です。価格帯は、サウナヒーターは30万円~、サウナルームは228万円~。木造3階建て3LDKのサウナ付き新築一戸建ては、洗面室と浴室に隣接してサウナルームがあり、サウナのあと、浴室の水風呂に入り、階段を上ってルーフバルコニーに出る動線になっています。
1階・2階部分の間取図の一部。1階の洗面室に隣接してドライサウナルームを設け、2階のルーフバルコニーは、周囲の視線が気にならないよう高めのフェンスで囲っている(画像提供/AVANTO)
サウナ付き一戸建てを購入したYさん夫妻は、もともとサウナに入るのが共通の趣味。決め手となったのは、サウナを楽しめる間取りと動線と夫のH・Yさん(28歳・会社員)は言います。
「コロナ禍で旅行に行けないストレス発散に週3回ほど街のサウナに通っていました。でも、サウナは密室なのでしゃべる人がいると気になります。それだったら、家にサウナをつくりたいと思うようになりました。今回の物件は郊外ですが通勤に支障はなく、価格は5000万円代でしたが、即決でした」(H・Yさん)
(写真提供/AVANTO)
(写真提供/AVANTO)
安全機能があるので自宅での使用に不安はなく、手入れは入浴後にタオルでサウナの内部を拭くだけ。電気代も毎日1時間入ってもひと月3千円以内と二人で何度もスーパー銭湯に行くより割安です。
「外で入るのと違って、温まったままベッドに行けるのもうれしいです」と妻のA・Yさん(27歳・公務員)。入居は11月から。好きなアロマを焚いてみたいと入居を心待ちにしています。
好みに合わせて場所や時間、サウナを選べる流れがきているAVANTOの広報の竹下あすかさんは、上記のイトーピアホームのサウナ付き新築一戸建てにとどまらず、「サウナを特別な日だけでなく、誰でも自宅で楽しめるものにしたい」と言います。
「今から○年ほど前は、街のスーパー銭湯などで入れるサウナといえば、100度以上の高温になるドライサウナが中心でした。当時はおじさまが、ぐっと我慢して入るというイメージで、若い人にはそれほど人気ではなかったんです。それが、私が学生になったばかりのころ、△年くらい前、スチームタイプのサウナがXXXに登場しました。ジリジリと熱いスーパー銭湯のドライサウナに比べ、スチームサウナは室内の温かな蒸気で温まるものです。不眠などの不調が改善され、疲れが残らなくなったのに感動しました」(竹下さん)
東京都渋谷区神宮前にあるショールームでは、本場北欧のドライサウナとスチームサウナの実物展示をしています(要予約)。在宅ワークの合間に頭を休められるので、IT系やクリエイティブ職の人を中心に、体験し、自宅に導入する人が増えているそうです。
ドライサウナ(左)とスチームサウナ(右)の2種。右はスチームサウナは体験することができる。機器を設置すれば既存の浴室がそのままサウナにできるというもの(写真提供/AVANTO)
まずはズラリと並ぶオーガニックのアロマやシャンプー、ボディソープからハニーシトロンのアロマを選び、発汗を促すようにブレンドされたオリジナルハーブティーをいただいてからスチームサウナへ。スチームサウナとは、水蒸気で40℃~50℃の室温にするサウナです。ドアを開けると霧がいっぱいに満ちています。身体を洗ったあとに、壁付けのベンチに腰掛け、10分ほどすると、ジワジワと汗をかいてきました。アロマの香りのする温かな蒸気に包まれます。十分に温まったあと、最後は、水シャワーで汗を流します。シャワーを浴びて驚いたのは、非常に細かい粒子のミストであること。肌に吸い付くようです。
無料のスチームサウナ体験は完全予約制。リネンのフェイスタオルやバスローブも用意されている(画像提供/AVANTO)
アメニティーも充実。シャンプーやボディソープは5種類、アロマは13種類から選べる(画像提供/AVANTO)
スチームサウナから出たあとは水分を取りながら、チェアで風を浴びて一休み(画像提供/AVANTO)
「スチームサウナは、もともと、特別にサウナスペースをつくらなくても、今ある浴室に取り付けることもできます。手入れはシャワーをかけるだけ。蒸気でカラッと乾くので清潔で掃除いらず。1回の入浴で3リットルの水しか使わないので、経済的です」(竹下さん)
木の香りのするドライサウナルームは、シンプルでモダンなデザイン。ボックス状で特別な工事不要で設置ができます。セルフロウリュすることで蒸気と温度を快適に調整することができます。
「10分ほど入れば頭がスッキリするスチームサウナはテレワークなどの休憩時間や朝の忙しくなる前に、温冷交代浴すると1時間ほどかかるドライサウナはゆっくり夜に楽しむのがオススメです。サウナが、自宅で過ごすライフスタイルの新しい選択肢になれば」(竹下さん)
リネンのバスローブを着て水を飲んで心地よい風に当たりながら休憩すると、心身がリラックスして最高に気持ちよく、「ととのう」感じがしました。
北欧のむく材でつくられたドライサウナルームの実物を見ることができます(画像提供/AVANTO)
まだまだ高まりそうなサウナ熱。サウナがより日常的な存在になれば、一過性のブームで終わらず、マラソンやヨガのように健康維持のツールとして定着するでしょう。浴室には浴槽とともにサウナ、さらには浴槽を設置せずにスチームサウナのみを楽しむ――。そんなふうに、サウナが日本のお風呂ライフに根付くのもそう遠くないのかもしれません。
●取材協力
・伊藤忠商事株式会社
・株式会社AVANTO
素潜り漁師マサルさんをご存じですか? 海に潜ってモリで魚を突く素潜り漁をなりわいとするかたわら、ちょっと変わった海の生き物を捌(さば)いて調理して食べる話題のYouTuber。メインチャンネルの「【素潜り漁師】マサル Masaru.」は、90万人以上の登録者を誇ります(2021年11月現在)。
マサルさんは、2017年に特技を活かした「魚突き&魚捌き」のYouTubeチャンネルを開設。東京海洋大学卒業を控えた2019年末には東京を離れて鹿児島の離島に移住し、就職する代わりに「素潜り漁師」として活動を始めます。2020年3月から島の大きな古民家を借りて住み、DIYの知識がほぼゼロの状態から古民家を大胆にリノベーションする様子を、サブチャンネルの>「【離島移住生活】マサル」で配信しています。
マサルさんはなぜ離島に住むことにしたのでしょうか? そして、古民家のリノベーションにはどんな苦労があってどういった楽しさがあるのでしょうか? 今回はリモートインタビューでお話を伺いました。
あのテレビ番組に憧れて魚突きがライフワークに――本日はよろしくお願いします。最初に自己紹介をしていただけるでしょうか。
素潜り漁師としてのマサルさん(2021年2月6日配信の動画「カジキの角で錬成した『モリ』で魚を無双」より)
素潜り漁師のマサルです。YouTuberとして「魚突き」や「魚捌き(料理)」の動画を配信することを中心に活動しています。
――魚料理はまだしも「魚突き」をされる方はそういないと思いますが、どんなきっかけで始めたのでしょう?
『いきなり!黄金伝説。』(テレビ朝日系)というテレビ番組がありましたよね。濱口優(よゐこ)さんがモリを手に海に入って魚を獲っているのを見て、小さなころでしたがすごく憧れたんです。親に頼み込んで、子どもでも魚を突くことができるイベントに連れて行ってもらったり。
それからずっと魚突きをライフワークにしています。YouTuber名の「マサル」も濱口さんにあやかって付けましたし、大学では「魚突きサークル」で月に何度かどこかの離島に行っては魚を突く生活を送ってました。
海と人が好きで離島に移むことを決めた――そもそもなんですが、離島に魚を突きに行くだけでなく、なぜわざわざ移住したのでしょう?
マサルさんが移住した沖永良部島にはこんな海がある
僕は海が好きなので、離島は東京に住んでいたときから好きでした。どっちの方向に行ってもすぐ海があるのはいいですね。魚突きをしてますから、いつでも海に入れるのもうれしいです。
あと移住したことには「YouTuberとして生きていく」という決意もあります。僕は大学在学中からYouTuberとして活動していましたが、卒業後の進路を考えたとき、普通に企業に就職する道もあったのですが、こちらにかけても面白いのかな、と思ったんです。
――マサルさんが移住した島はどんなところでしょう。
鹿児島にある沖永良部島ですが、沖縄の那覇からフェリーで7時間かけて来るのが一般的な交通手段ですね(編集注:費用はかかるが鹿児島などから飛行機もある)。
地理的にはかなり隔離されていて、人口は13,000人くらい。車で1時間もあれば1周できます。スーパーやホームセンターもありますから、DIYに必要な材料や道具もだいたいはそろいます。
――数ある離島のなかでもなぜ沖永良部島に?
学生のころにはいろいろな離島に行きました。お金がなくてSNSで知り合った現地の人に泊めてもらったりしていたんですが、そのつながりで沖永良部島に友達が何人かできてたんです。これが大きかったですね。
観光開発もほぼされていなくて、実際に(コロナ以前も)観光客がほとんど島にいないところも僕にとっては魅力です。何より住んでる人たちが良くって、のんびりしているようで仕事はきっちりとする。一緒に何かするのも気持ちがいいです。
――現在の拠点にされている古民家は、築50年の5LDK。人が住まなくなって20年にもなるそうですが、どうやって見つけたのでしょうか?
マサルさんが借りている古民家(家賃は月額2万円)
そもそも離島には、基本的に不動産屋さんがないんです。だから家を借りるとなると、まず現地を歩いて「空き家」を見つけるところからです。
空き家が見つかったら、今度は持ち主を探し出さなくてはいけません。知り合いの漁師に聞き込んだり、商店街の顔役に聞いたり。それでもわからなかったら、地番を割り出して謄本を取れば持ち主はわかります。いま住んでいる古民家はそこまでしなくてもよかったんですが、いずれにせよかなり大変ですね。
――不動産屋さんがないということは、持ち主が見つかっても個人間の交渉ということになりそうですが……。
マサルさんが借りている古民家の敷地には2棟の倉庫と牛小屋に馬小屋も
そうなりますね。僕は知り合いにつないでもらいました。そう簡単に貸してくれるものかなと思っていたのですが、意外とすんなりいきました。島の地主は高齢者が多いのですが、若い世代の僕たちの話もちゃんと聞いてくれます。
地主といってもその土地でお金を稼がないといけないわけではないので、めちゃくちゃ仲良くなれたりしたらただで貸してくれるかもしれません。ただ、そうすると人間関係がちょっと濃厚になり過ぎるような気がして、僕はきちんと賃料を払ってます。
――実際に住んでみて、古民家はどうでした?
マサルさんが拠点としている古民家の大まかな間取図(リフォームの番号は下記の一覧表を参照)
内装や家具もまとめて好きにしていいということだったんですが、想像以上に傷んでました。床も壁も天井も腐っていて、全部壊して張り替えなくてはいけないところもあります。
――古民家をDIYでリノベーションするサブチャンネル「【離島移住生活】マサル」でも、さまざまなプロジェクトに取り組んでますね。動画も30本近くになっています。
※マサルさんは古民家でこんなリノベーションを実施
リフォーム1. キッチン編(全12本)
以前からの什器をすべて廃棄し、壁や床も張り替えてリフォーム。水まわりも配管し直してアイランド型に。全長1メートル以上の大型魚にも対応できるキッチンスタジオとして、毒々しすぎる巨大魚、グロテスクすぎる巨大エビ、深海から上がってパンパンの魚(いずれも動画タイトルより)などの調理に大活躍。2020年3月から2カ月かけて完成した後、防音シートや、ワニを捌く設備の増設なども。
リフォーム2. 五右衛門風呂編(全11本)
屋外に放置されていたお風呂を生き返らせて露天風呂を楽しむ計画が、風呂釜そのものが朽ちているなどほぼ全面的なつくり直しとなり、薪をくべる炉の耐熱施工などで苦心も多く、10カ月かかる大プロジェクトとなった。なお、釜全体が鋳鉄製なので正しくは長州風呂と呼ばれるそう。
リフォーム3. 和室編(2本、進行中)
物置き状態だった6畳の和室を片付け、腐っていた床や壁もまるごとリフォームして、音楽の部屋に変貌させるプロジェクト。2021年7月から現在進行中のリノベ企画シーズン3。
当初はそこまでたくさん配信する予定はなくて、片付けの様子を1本か2本くらい配信すればいいかなと思ってたんですが、とてもそんな「片付け」程度では住めない状態でしたね。
――壁や床をはがす動画を見ました。白アリがたくさんいたのが衝撃的でした。
腐っている壁を張り替える(2020年3月26日配信の動画「キッチンが汚すぎるので破壊してみた」より)
あそこまで白アリがいるとは、本当に予想外でした。倉庫の床に本を1カ月ほど置いておくと、食い破られてダメになっているんです。それに白アリは年に1度、羽が生えて飛ぶんです。光に向かう習性があって、家の照明にハリケーンのように群がって、終わると死骸だらけ(編集注:羽アリになった白アリは新しい住処を求めて移動する)。これは、しんどいですね。
今になって思えば、白アリは絶対に確認すべきでした。なんとか耐えましたけど、白アリがいる家に住むべきではないと思います。
――かなり辛い状況ですが、引越しは考えなかったんですか?
僕はもともとサバイバルが好きで、YouTubeでもサバイバル企画の動画を出してるように、屋外でも寝られるタイプではあるんです。ましてや古民家には屋根もあるし、一応は大丈夫だったんですが、ショックは大きかったですね。
ただ、3カ月ほど住んでみるとトイレやお風呂も使えなくなってきたので、寝るためだけの家を別に借りてます。築20年程度の2LDKで、デスクワークにも使えますし。
――それならもう最初に借りた古民家は解約してもいいような……。
古民家は物がたくさん置けるところもいいんですよね。漁師をやってるのでその荷物もありますし、車も3台は余裕で停められます。
それに、自分で好きなように何でもいじれる家ってなかなかないですから。リノベーションのために、借りた家の壁を壊すって普通はできないじゃないですか。
知識ゼロから始めたDIY。失敗も学びになる――かなり本格的にDIYされていますが、そういった知識や技術はどこから得ているのでしょうか?
リノベーションにはインパクトドライバーも活躍(2021年3月20日配信の動画「遂に五右衛門風呂に『えんとつ』を装着!!」より)
DIYの知識は本当にゼロだったんです。やったことあるのは家具量販店の組み立て家具くらいで、インパクトドライバー(電動ドライバーの一種)を使ったこともなかった。ただ、とりあえずやってみて、その様子を動画にして配信すると、視聴者の方がコメントで全部教えてくれるんです。みんなでつくり上げてるようなものですね。
とはいえ最初に動画を出したときは「素人にリノベーションなんかできるわけないだろ」「やめておけ」みたいなコメントはやっぱり多かったですね。
――DIY知識がない人が「自分でリノベーションをしてみよう」と発想すること自体がすごいと思います。
自己評価が高いのかもしれないですね。「失敗もするだろうけど、やれるだろ」って思っちゃうんです。大工さんも自分も同じ人間だし、調べれば、やれることにそこまで違いはないはず。もちろん、技術では相当劣ることにはなると思うんですが、大まかにならやれるはずだと。
――動画を見ていると、やり方を知らずに失敗して、作業が手戻りしている箇所がたくさんあるのが印象的でした。もっとやり方や技術について勉強してからDIYに取り組んだほうがよかった、とは思わなかったですか?
試行錯誤の繰り返しだった風呂の炉づくり(2021年1月30日配信の動画「五右衛門風呂をぶち壊して生き返らせたい」より)
それはまったく思いません。うまくいかなくて手戻りしたとしても「失敗パターン」を学べているので、失敗ではないんです。だから、落ち込むことも後悔することもないですね。そういう気持ちさえもっていれば「やり続ければ作業はいつか終わる」ことになります。
――マサルさんのモチベーションのよりどころを見た思いです。動画では最初の2カ月で「キッチン」のリノベーションを済ませていましたが、気に入っているところはどこですか?
アイランドキッチンの全景
キッチンはアイランド型にしました。正面でコンロを使っていても、後ろを向けば壁側に作業台もあってまな板と包丁がすぐに使える。この動線はかなり気に入っています。
――リノベーションしたキッチンに自分で点数を付けるとしたら何点ですか?
※↑ 完成したアイランドキッチンでは巨大な魚も調理できる(2021年7月18日配信動画「40kg越えのアカマンボウを解体したら家が大惨事に。。。」)
かなりうまくいったと思っていて、80点ですね。アイランドキッチンなら調理風景を正面からも撮れますから、YouTubeの動画を撮影するときにかなり便利です。
欲を言えばキッチンの床板をはがして、コンクリートを流し込んで「土間」にできたら最高だったと思います。それならデッキブラシで掃除ができますから。実はキッチンのリノベーションを始めたときに考えたんですが、さすがにDIY未経験でそこまでするのは腰が引けてしまって。
あとは、フライヤーやオーブンを置くところをつくっておけばよかったとか、カーテンで隠してる古い窓を壁にリフォームしておけばよかったとか、そういうことは思いますね。
――キッチンの次に取り組んだのは、屋外の五右衛門風呂(編集注:動画でも説明されているが様式としては長州風呂)ですね。動画を見ると、かなり手戻りもあって1年近くかかったようでしたが、実感としてはどういったところが大変でした?
お風呂を覆うガジュマルの木(2020年7月24日配信の動画「五右衛門風呂を覆う巨木を伐採しました。」より)
もう全部大変ではあるんですが……。まずお風呂のそばに生えているガジュマルの木が邪魔でしたね。あれを短く切っていくのがメチャクチャに面倒くさくて。
それから炉の耐熱に関して、耐火モルタルの扱いには苦労しました。どう使えばいいのか島の誰に聞いてもわからない。かなり試行錯誤しました。
――お風呂に点数を付けるとしたら?
完成した五右衛門風呂(長州風呂)の全景
あれは50点くらいですかね。入るのは最高なんですが、沸かすのが大変です。薪を入れる炉の容量が小さくなってしまってお湯がなかなか沸かないことと、その炉を掃除できるようにつくらなかったことが残念ですね。
あとは母屋からつながる屋根があれば本当にいいお風呂だと思います。つくりたいとは思っているんですが、ほかにもやることがいろいろあって優先順位は低めになっています。
――リノベーションをしてみて、どういうところに楽しさがあると思いましたか?
自分の思い通りの部屋が実現できるところですね。例えば、キッチンにかなり大きなシンクを取り付けました。これだけのシンクがある部屋を探すのは、なかなか大変だと思います。
それから家の構造がどうなっているかって、僕たちは全然知りませんよね。壁をはがして、床をはがして、こういうつくりになっているんだと初めて理解できる。それが何の役に立つかはちょっとわからないのですが、毎日住んでいる家ですから、構造も知っていたほうが健全だと思うんです。魚を食べるだけじゃなく、捌き方も知ってるように。
――ということは、みんな一度はDIYをやってみたほうがいいですね。
環境が許すならやってみたほうがいいと思います。僕もリノベーションをやる前と後では世界の見え方が変わりました。家や建物を見るときにも、細部に目が行くようになったり、「ちょっと雑かもな」なんてことがわかるようになったりします。
人とのコミュニケーションで生活が成り立っていく――離島の暮らしについてもお伺いしたいです。以前に住んでいた東京とは違うなと感じたことなどあれば。
言い方が悪いかもしれませんが、東京だったら「お金があれば何でもできる」と思うんです。例えば、家事が面倒になったら家事代行サービスを呼んでみたり。
ところが、離島ではお金を持っていたとしても、まずサービスがないんですね。家事代行サービスなんてないですし、さっき話したように不動産屋さんもない。だから、お金じゃない価値が大切になってくるんです。
例えば「あの人にこれをしてもらったから、あの人にこれをしてあげよう」みたいに、人への思いやりが通貨のようになっているんです。こういうコミュニケーションは東京では味わえないですね。
――なるほど……。離島で暮らす上で必要になってくるものは何でしょうか?
やはりコミュニケーション能力でしょうね。野菜をつくっている人と仲良くなれば、野菜をもらえます。もっと仲良くなれば「晩ご飯食べていきなよ」なんて誘われるかもしれません。
島での暮らしに軽トラがあるととても便利
僕も島の人から軽トラをかなり安く譲ってもらいました。これを島の外で購入して輸送してもらおうとしたら、輸送代だけでも相当高くつきます。島では逆に、お金はあまり必要ないかもしれませんね。
――ただ、都会から来た人は、そういったコミュニケーションがおっくうになってしまいそうです。
確かに、慣れないうちは大変かもしれません。でも多分、みんなが思っているほどではないですよ。僕も忙しいと思われているのか、飲み会は月に一度誘われるかどうかというくらいです。
――マサルさんはコミュニケーション能力ありそうです。
いや、実は全然そういうタイプじゃないんです。気合いでなんとかしている部分もありますね。ただ、離島で暮らす以上、基本的にそういったコミュニケーションは楽しむようにしたほうがいいです。いろいろな人とつながりをもつ世界を知ると、逆に以前の東京の暮らしの生きづらいところを感じるようにもなりました。
離島の人に恩返しをしていきたい――これから離島でやってみたいことはありますか? 古民家のリフォームは「和室」編に突入してますね。
現在リノベーションしている和室は、ピアノを置けるようにしたいんです。そこまで得意というわけではないんですが、中学校のときに合唱コンクールで伴奏したこともありますし、置いてあったらきっと弾きたくなるはずです。そのため、部屋にどのくらいまで防音の機能をもたせられるかにもチャレンジしたいですね。
あとは、囲炉裏やバーベキュー場をつくりたい。友達が遊びに来たときに時間を共有できるような場所をつくっていきたいと思っています。
――島の人とのかかわりにおいてはどうでしょうか?
この島に来て、水産関係の人たちにものすごくお世話になりました。僕は漁協に入っていますが、それには漁師の保証人が必要なんです(編集注:条件は地域による)。だから「マサルを漁師にしてあげよう」という漁師さんがいなかったら、僕は今の活動ができていません。
それから、YouTubeで珍しい魚を捌く動画も上げていますが、全てが自分が突いたわけではなく、一般の人が買えないような魚もあります。それは仲買の人が僕に買ってきてくれるんですね。
でも、水産関係でお金を稼ぐのは今なかなか難しいんです。特に漁師を専業で続けていくのは厳しいです。さらに最近は新型コロナウイルスの流行で、魚の価格が大幅に下がってしまっています。
マサルさんが実施したクラウドファンディングでは1,000万円が集まった
そこで、クラウドファンディングで資金を集めて、水産加工場を立ち上げるプロジェクトを立ち上げました。最終的には水産物の販路をつくって、離島の人たちに恩返しをしたいですね。
――最後に、このインタビューで離島に興味をもった人がいたら、どういったメッセージを送りますか?
興味があって悩んでいるのなら、やってみたらいいと思います。うまくいかないこともあるかもしれませんが、やってみてから考えたらいいんじゃないでしょうか。やらないで後悔するより、そのほうがずっといいと思います。
――マサルさんに言われると納得感がすごいです。本日はありがとうございました。
●取材協力
素潜り漁師マサル
●Twitter: @masarumoritsuki
●YouTube(メイン): 【素潜り漁師】マサル Masaru.
●YouTube(サブ): 【離島移住生活】マサル
●クラウドファンディング: 【素潜り漁師マサル】島の漁師たちが稼げるようにしたい!
東京ドームを中心に遊園地や温泉、ホテルまでそろった東京ドームシティ。なんと、定額でホテル暮らしや温泉、遊園地で遊び放題のまるごと「住める」サブスクリプション(サブスク)プラン「DOME住む」が人気を集めています。三井不動産と東京ドームホテルが贈る、働く、遊ぶ、リラックスもまるごとできる、新しい暮らし方をご紹介しましょう。
東京ど真ん中で展開される「DOME住む」は破格の15泊15万円!2021年は多くのホテルが「ホテルのサブスク」を打ち出しましたが、夏にはなんとホテルだけでなく周辺の遊園地や温泉、食事、ホテル宿泊も含めた、一大エンターテインメント”シティ”に住めるサブスクが登場しました。
「DOME住むプラン」は、東京ドームシティ内の東京ドームホテルに15連泊または30連泊できるというものです。
住むというだけあって、連泊中は敷地内の「東京ドーム天然温泉 スパ ラクーア」に入館無料でお風呂に入り放題、東京ドームシティ内のアトラクションは乗り放題、東京ドームホテルのレストランなどの施設を利用できるレジャーチケット「得10(とくてん)チケット」も付いてきて、東京ドームシティに暮らす楽しさを存分に満喫できます。当たり前ですが室内は清潔感があり、得10チケットを使えばホテルレストランで食事もできる(当たり前ですが調理も片付けも不要……!)それでいて15連泊で15万円、ちょっと贅沢すぎるのではないでしょうか。夏には30連泊プランを販売したところ、なんとあっという間に完売だったといいますが、それも納得です。
「DOME住む」で利用できる東京ドームホテルの客室(写真撮影/相馬ミナ)
窓の向こうには都内の風景(写真撮影/相馬ミナ)
夜はこんな夜景が眼下に(写真提供/東京ドームホテル)
筆者は今まで「ホテルライク」を売りにしたマンションをたくさん見てきましたが、まさか本物のホテルに住める日がくるとは……。
テレワークが当たり前になった今、仕事もできて、遊べて、気分転換もできて、ホテルにこんな使い方があったのか!とまさに目からウロコです。
「ホテルライクなマンション」ならぬ、「リアルホテルライフ」でテレワーク(写真撮影/相馬ミナ)
ホテル最上階にあるレストランからの眺め(写真撮影/相馬ミナ)
アーティスト カフェ「パノラマランチ」(写真提供/東京ドームホテル)
ホテルサブスクは好調、暮らし方の新しい選択肢に東京ドームホテルがあるのは東京都文京区。「住み続けたい自治体ランキングTOP50」(2021年、SUUMOリサーチセンター)では3位にランクインしたほど人気の街ですが、分譲価格にしても家賃にしてもやはりお高く、なかなか手がでるエリアではありません。そんな文京区に住めるというのも、貴重な体験です。
では、このプランがはじまった経緯はどこにあるのでしょうか。
「ご存じのようにコロナ禍で暮らしが大きく変わり、ホテルの宿泊需要が蒸発してしまいました。そこでホテルの活用法としてサブスクリプションサービスを打ち出し、三井不動産グループが展開するザ セレスティンホテルズ、三井ガーデンホテルズ、sequenceで利用可能な『サブ住む HOTELどこでもパス』『サブ住む HOTELここだけパス』を2月に発売したところ、これが大好評でした。そこで早い段階で、連携している東京ドームホテルでもできないか企画を練っていました」と話すのは三井不動産ホテル・リゾート本部ホテルリゾート運営一部運営企画グループの江連沙織さん。
左から、東京ドームホテル総支配人室営業企画課広報 渡辺友紀さん、三井不動産ホテルリゾート本部の名塚旭さん(リモート参加)、江連沙織さん(写真撮影/相馬ミナ)
ちなみに、はじめに発売したホテルサブスク「サブ住む」には、全国各所にある三井不動産グループが展開しているホテルに連泊できる「HOTELどこでもパス」と、お気に入りのホテルにじっくり連泊できる「HOTELここだけパス」の2種類ありますが、それぞれ利用者の傾向が異なるといいます。
「どこでもパスのほうは、20~30代で、仕事もテレワーク中心で、仕事と旅がシームレスな方が多いですね。一方で、ここだけパスは40~60代で、自宅近くのホテル、または会社近くのホテルを確保し、出勤しつつ、仕事をするというスタイルが多いように見受けられます。また家の近くのホテルを借りて、ホテルを仕事部屋にしたり、会社近くに借りたホテルから出勤するという使われ方もされていました」(名塚さん)
東京ドームのすぐ隣に立つ東京ドームホテル。遊園地があるからでしょうか、どこか街全体にワクワク感が漂っています(写真撮影/相馬ミナ)
セカンドハウスやホテルに缶詰仕事と聞くと、文豪や大金持ちという別世界の使われ方を想像してしまいましたが、今回のコロナ禍を受け、わりと身近に使えることがわかったように思います。東京ドームホテルの『DOME住む』は、この「サブ住む」での反響を受け、夏前に販売しましたが、それまでとは違った使われ方をしていたといいます。
ホテルと住まいはもっと気軽で近い存在に!「夏に『DOME住む』を利用した方にアンケートを取りましたが、東京都内や近郊にお住まいのご利用者が多く、ご家族連れで30連泊している方もいらっしゃいました。周辺にはレジャー施設もたくさんあるので、お子さまは遊んで、大人は仕事をして、夜はゆっくりお食事を楽しむ、そのように自由に時間を使って過ごしていると30日があっという間なのではないでしょうか」(渡辺さん)
東京ドームシティのアトラクション。「DOME住む」なら乗り放題(写真撮影/相馬ミナ)
東京ドームシティは、いってみれば「遊園地」なわけで、「遊園地に住む」というのは子どもにとっても夢のよう。ホテル住まいなら親もごはんづくりなどの家事をお休みできますもんね。近くに美術館や博物館も多数あるので、勉強もできますし、コロナ禍で遠出はできないけれど「夏休みを楽しみたい」という使われ方をしていたようです。
アトラクションだけでなく、イベントやショップもたくさんあるので、15連泊できても時間は足りないだろうな(写真撮影/相馬ミナ)
現在も15連泊と30連泊のプランを販売していますが、好調とのこと。また、住まいと異なり、ホテルは契約が簡素で初期費用が不要といった実利的な点を評価されているといいます。
ただ、気になる今後ですが、どうなるかは未定だそうです。テレワークは普及しましたが、一方で、「定着するか」どうかは見えないところもあるため、確かにホテルとしては難しい判断になるのかもしれません。
とはいえ、今回のような“街のサブスク”が今後も展開されるとしたら、引越し前や移住を検討している地方など住んでみたい街のホテルでお試し居住をしてみたりするという使い方もできそうです。ほかにも、高齢になったので身軽にホテルで暮らしたり、テレワークで旅をしながら各地を巡って暮らす、なんていう使い方は大いにアリなのではないでしょうか。街のサブスクをきっかけに、新しい街との出合いや、暮らしに対する発見があるかもしれません。
2021年は帝国ホテルをはじめ、さまざまなホテルが「ホテルに住む」「ホテルでテレワーク」という新しい活用法を打ち出し、ホテルサブスクもいろんな種類が登場しています。これからの「ちょい住み」「気軽な住まい」の場所としての「ホテル」は、もっと普及していくかもしれません。
●取材協力
東京ドームホテル
三井不動産
コロナ禍で、これまでよりも自宅の“空気環境”への関心が高まっただろう。ダイキン工業が、「第27回現代人の空気感調査」として、インドア(室内)とアウトドア(屋外)の空気に対する意識を調査した。その結果によると、コロナ禍で在宅時間が増加したことで、これまであまり意識してこなかった室内空気の息苦しさなどに気付くなどの変化が見られたという。
【今週の住活トピック】
「インドア(室内)とアウトドア(屋外)の空気感調査」を発表/ダイキン工業
「冬場の自宅の乾燥・換気に関する意識調査」を発表/一条工務店
ダイキン工業が、テレワークを経験し、コロナ禍前より在宅時間が増えている会社員(20~50代)に、「自宅の空気に息苦しさ(閉塞感・密閉感)やよどみ(こもっている、滞留している感じ)のようなものを感じることがあるか」を聞いたところ、68.0%の人が「感じる」(「よく感じる」20.8%+「たまに感じる」47.2%)と回答した。
「自宅でのテレワーク時に、次の空気の課題についてどのくらい感じるか」を聞くと、「空気のよどみ」「快適な温度の維持・調整」「快適な湿度の維持・調整」が上位に挙がった。
■自宅でのテレワーク時に感じる空気の課題
自宅でのテレワーク時に感じる空気の課題(出典/ダイキン工業「インドア(室内)とアウトドア(屋外)の空気感調査」より転載)
課題として上位に挙がった3項目を男女別に見ると、「空気のよどみ」は男性のほうが多いが、「室温」と「湿度」の維持・調整では女性のほうが多いことも分かった。
また、「室内の空気環境がテレワークのパフォーマンスに影響すると思うか」を聞くと、92.5%が「影響する」(「影響すると思う」48.0%+「どちらかといえば影響すると思う」44.5%)と回答した。
換気を意識するものの、乾燥する冬は換気を怠りがちさて、自宅の空気環境は夏場と冬場では状況も変わる。次に、一条工務店が発表した「冬場の自宅の乾燥・換気に関する意識調査」を見ていこう。
室内の空気環境は、新しい空気を室内に取り込む「換気」をすることが解決策になるが、「新型コロナウイルスの影響で換気を意識するようになったか」を聞いたところ、67.5%が「換気を意識するようになった」(「すごく意識するようになった」29.5%+「意識するようになった」38.0%)と回答した。
調査では具体的に、自宅の換気について「1日の換気回数」と「1日の換気時間」を夏と冬でそれぞれ聞いている。回数はいずれも「1~2回」が6割超と最多だったが、「0回」は夏(上)が10.5%であるのに対して、冬(下)は20.2%となり、全く換気をしない人が夏の2倍になった。また、換気時間は、夏では「10分以上」が55.7%と最多で「5分未満」は21.4%と少なかったが、冬では「5分未満」が44.8%と最多で、1日の換気時間が5分未満なのは夏の2倍以上になっている。冬になると、換気の回数も時間も一気に減ることが分かる。
■1日の換気回数
■1日の換気時間
1日の換気回数と換気時間(夏と冬の比較)(出典/一条工務店「冬場の自宅の乾燥・換気に関する意識調査」より転載)
「自宅の換気を面倒だと感じるか」を聞くと、76.0%が「面倒と感じる」(「すごく感じる」35.4%+「まあまあ感じる」40.6%)と回答し、換気を意識するものの換気をすることは面倒だと感じる人が多いことが分かった。
空気環境対策として、アウトドアを活用する手も先ほどのダイキン工業の調査結果に戻ってみよう。空気環境の3大課題は「よどみ」「室温」「湿度」だった。室温を維持するには住宅の気密性・断熱性を高めるのが効果的だが、気密性・断熱性を高くすると室内の空気が外に出にくいので、中にいる人の呼気や煮炊きした湿気などがとどまり、空気がよどみやすい。
その対策として換気が必要となる。最近の住宅は24時間換気システムが義務付けられているので、機械換気で自動的にゆっくり空気を入れ替えることが可能だが、窓を開けて自然換気をしようとすると、冬の冷たい外気が室内に入るのを嫌ったり、室内が乾燥しているので湿気に気付きにくかったりという背景もあって、冬に換気を怠りがちになるのかもしれない。
さて、ダイキン工業の調査では、「自宅の空気に感じる息苦しさ(閉塞感・密閉感)やよどみ(こもっている、滞留している感じ)を解消(または予防)するためにしていること」を聞いている。一番多かったのは、やはり「換気」(73.9%)だったが、「近所を散歩する」(64.6%)や「ベランダに出る」(46.4%)など、アウトドアの空気を活用していることが分かる。
■空気の「息苦しさ」や「よどみ」を解消するためにしていること
空気の「息苦しさ」や「よどみ」を解消するためにしていること(出典/ダイキン工業「インドア(室内)とアウトドア(屋外)の空気感調査」より転載)
また、コロナ禍で「ソロキャンプ」がはやるなど、アウトドア活動が注目されたが、上記の空気の息苦しさやよどみの解消についても、ベテランアウトドアユーザーの回答に興味深い傾向があるという。ベテランアウトドアユーザーは「換気」(78.8%)、「近所を散歩」(76.9%)など、10項目中8項目で回答者の全体平均を上回った。中でも、「近所をウォーキング等」(73.1%)、「近所の公園に行く」(46.2%)は全体より大きく上回り、同社では、「『外』の空気とつながる手段を意識的・無意識的に、いくつも講じることで、心身ともにリフレッシュできているのではないか」と見ている。
筆者自身も今の季節は、外から戻って玄関を開けた途端、室内の空気のよどみに気付くことがある。あわてて窓を開けたり、キッチンの換気扇をつけたりしている。外の空気を吸うことで、室内のよどみに気付く効果もあるので、換気することは重要だが、外の空気でリフレッシュすることの効果も大きいだろう。
●関連サイト
ダイキン工業「インドア(室内)とアウトドア(屋外)の空気感調査」
一条工務店「冬場の自宅の乾燥・換気に関する意識調査」
E-mail:prg@daikin.co.jp
株式会社一条工務店 担当:津川、甲斐、加藤 E-mail:koho-office@ichijo.co.jp
2021年10月8日に国土交通省から「宅建業者による人の死の告知に関するガイドライン」が発表された。5月に発表された「ガイドライン(案)」に対するパブリックコメント(一般からの意見)を受け、修正したものだ。「事故物件」の告知はどういう結論になったのか。検討した委員会ではどのような議論があったのか。私たちの住まい選びにどうかかわるのかについて考えてみたい。
なぜガイドラインが必要なのか以前にもSUUMOジャーナルでご紹介したが、人の死が発生した物件の告知について、明確なルールがないことがさまざまな問題を招いていた。
買主や借主は、深刻な事故があっても告知しない業者がいるのではないかという不信感をもつ。死因や経過年数にかかわらず告知が必要という誤解もあるため、宅建業者の調査・対応の負担が過大になる。単身の高齢者・障がい者に対する入居拒否などの問題も事故物件につながる確率が高いのではと敬遠されがちなことによるものだ(参照「事故物件の告知ルールに新指針。賃貸物件は3年をすぎると告知義務がなくなる?」)。
(写真/PIXTA)
人の死は、個別性が強く一律に線を引くのは難しい問題である。しかし、一定の判断基準を示すことでこれらの問題を解決し、安心できる取引、円滑な流通を実現しようというのがガイドラインの目的だ。
告知する範囲(国土交通省HPより)
ガイドラインでは告知範囲と宅建業者の調査方法について基準を示している。まず、告知する範囲については「取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある場合は告げる」ことを原則としつつ、以下に該当する場合には宅建業者が告知しなくてもよい、としている。
【宅建業者が告知しなくてもよい場合】
1. 自然死・日常生活の中での不慮の死
(老衰、持病による病死、転倒事故、誤嚥(ごえん)など)
2.(賃貸借取引において)「1以外の死」「特殊清掃等が行われた1の死」が発生し、おおむね3年が経過
3. 隣接住戸、日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した死
ただし、上記1~3に該当する場合であっても、「社会に与えた影響が特に高い」ものは告げる必要がある。残酷な事件や社会に広く知れ渡ったような事件の場合には告知しなければならないのだ。
文章では、ややわかりにくいので図にしてみよう。
■ガイドラインによる告知範囲
(図:国交省ガイドラインをもとに筆者作成)
そもそも今回のガイドラインで告知の要否を検討しているのは、不動産取引における取引の「対象不動産」と「通常使用する共用部分」だ(上記図のタイトル部分)。通常使用する共用部分とは、マンションのエントランス、共用階段、共用廊下などのこと。ここで発生した死は、対象不動産同様、一定の場合には告知が必要となる。一方、隣接住戸や通常使用しない共用部分で発生した死は対象としていない。
その上で死因や取引態様(賃貸か売買か)によって告知の要否を分けている。まず、自然死・不慮の事故であれば告知は不要だ(1)。死因が自然死等以外(自殺や他殺など)の場合や、自然死等であっても特殊清掃が行われた場合には、賃貸であれば3年間は告知が必要となる(2)。売買については告知期間を定めていない(3)。より長い期間告知が必要ということになる。
以上はあくまで原則だ。「社会に与えた影響が特に高い」事案であれば、話が変わってくる。賃貸で3年経過していようとも告知しなければならない(4)。もちろん、売買でも告知が必要だ。
宅建業者はどのような調査を行うのか(写真/PIXTA)
次に調査について。宅建業者は売主・貸主に対し、過去に生じた事案(人の死)について告知書への記載を求めることで調査義務を果たしたことになる。近隣住民への聞き込みやネットで調査するなど自発的な調査までは求められていない。
それでは売主や貸主が事実を隠蔽するのではないか、と心配になるかもしれない。この点については、告知書が適切に記載されるよう助言することが宅建業者に求められている。「故意に告知しなかった場合には、損害賠償を求められる可能性があります。きちんと告知してください」といった注意がされるわけだ。
また仮に売主・貸主からの告知がなくても、「人の死に関する事案の存在を疑う事情があるとき」は、宅建業者が売主・貸主に確認する必要がある。後々のトラブルを回避したいと考える宅建業者による適切な助言や情報収集が期待されている。
また、告知にあたっては「亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要がある」としている。具体的には「氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はない」とされる。亡くなった方の名誉を傷つけることのないよう配慮が求められているのだ。
(写真/PIXTA)
これは今回の修正で強調されたことだ。パブリックコメントにも「人の死は当然あることで嫌悪感をもたないような一文を添えてほしい」「自死のあった物件をすべからく心理瑕疵物件とすることは、差別・偏見を助長する」という意見が寄せられた。
「事故物件」を扱った番組や記事などでは、「事故物件は嫌だ」という街の人の声とともに、足の踏み場のないくらい山積みになったゴミ袋の映像や写真が取り上げられることが多い。しかし、人が亡くなった物件の全てがそのような状態になるわけではない。自殺や孤独死があった物件を、一律ゴミ屋敷扱い、お化け屋敷扱いし、忌み嫌うべきものとしていることは、まさに「偏見を助長する」ものだろう。
物件選択の基準はそれぞれだ一方、たとえ偏見であっても、ある事情があれば借りたくない、買いたくない、と考える人もいる。他人から見れば不合理に見えても、本人が嫌だというのであれば、借りない、買わない、というのは自由である。これは人の死に限らない。繁華街を利便性が良いとプラス評価する人もいれば、うるさいのは嫌だと思う人もいるだろう。
(写真/PIXTA)
物件選択にあたり何を重視するかは人それぞれなのだ。他人からその観点は非合理だ、と否定されるべきものではない。ガイドラインでも「不動産取引における人の死に関する事案の評価については、買主・借主の個々人の内心に関わる事項であり、それが取引の判断にどの程度の影響を及ぼすかについては、当事者ごとに異なるもの」としている。そのため「買主・借主から事案の有無について問われた場合」や「買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合」には告げる必要がある。
検討会ではどのような議論がされたのか今回のガイドラインは国交省の「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」での議論を基に作成された。この検討会の座長を務めた明海大学不動産学部学部長の中城康彦(なかじょう・やすひこ)教授に、検討会ではどのような議論があったのか、お話を伺った。
「人の死を巡る課題の解決は、「不動産業ビジョン2030~令和時代の『不動産最適活用』に向けて~」(国土交通省 2019年4月)が重点的に検討すべき政策課題とした、ストック型社会の実現、安全・安心な不動産取引の実現、全ての人が安心して暮らせる住まいの確保など、ビジョンの目標と重層的にかかわってきます」(中城先生)
明海大学不動産学部学部長の中城康彦教授(写真提供/中城康彦)
ストック型社会の実現、つまりは住宅を適切に管理し、長期にわたって使用していく、ということだ。その過程では、人が亡くなるということも当然に起こりうる。人が亡くなった物件を一律、瑕疵のある物件として扱うのでは、ストック型社会の実現は難しい。
また、検討会では「死の尊厳」についても意見が交換されたという。
「検討会では不動産関連団体、消費者団体、学識経験者から多面的な視点と情報が提供されました。その上でパブリックコメント後の修正では「死の尊厳」に配慮しました。宅建業法の枠内とはいえ、ガイドラインが慣習的な「心理的瑕疵」という言葉を用いない点を評価したいと思います。今後は住宅管理業と協働し、人の死を予防し早期発見する社会を実現することが期待されます」(中城先生)
レッテルを貼り続けることは、社会的損失を生むある住居で人が亡くなったとしても、死後、一定年数が経過しているのならば気にしない、という人も少なくないはずだ。しかし「事故物件」「心理的瑕疵物件」というレッテルが貼られているものに住むことは躊躇するかもしれない。周りから、事故物件に住んでいる人、という目で見られるのは嫌だからである。となると、そういう物件は選ばない。これは需要者側の物件選択の幅を狭めることになる。
一方、供給者側は、物件を敬遠する需要者が出ることで、価格・賃料を下げなければ売れなくなる、貸せなくなる。中には、どうせまともな賃料では借り手がつかない、ということでリフォームされず放置されるものも出てくる。高齢者、障がい者の一人暮らしが拒まれることも続くだろう。遺族への損害賠償請求という深刻な事態にもつながる。
本来ならば長期利用が可能な物件が「事故物件」のレッテルを貼られることで、スポイルされ、さまざまな問題を生んでしまうのだ。
本人が嫌だと思うからその物件を選ばない。これであればなんの問題もない。しかし皆が嫌がる物件だから……というある種の同調圧力により優良な住宅ストックが利用されないのは社会的な損失でしかない。
「建物を長期利用する過程では、いろいろなことがある。事故が3年以上前の話なら、(極端な例を除いては)気にする必要はない」という考えが広まることは、不動産の流通、優良な建築ストックの活用につながるだろう。今回のガイドラインをきっかけに、無意味なレッテル貼りがなくなることを期待したい。
●関連サイト
宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン
事故物件の告知ルールに新指針。賃貸物件は3年をすぎると告知義務がなくなる?
災害時に役立つなど話題になっている家庭用蓄電池。少し前までは蓄電池のある家は珍しかったが、防災目的だけでどれだけ増えているのか?どんな蓄電池が売れているのか?……それらを探るうちに、家庭用蓄電池がこの先、必須になる可能性がわかってきた。家庭用蓄電池の現在を見てみよう。
9年で約60倍に! 災害による停電時ニーズが高まっている電気をためて必要なときに使える蓄電池。2011年度には約2000台だった蓄電池の出荷台数は、2020年度には約12.7万台に増えた(日本電機工業会「JEMA蓄電システム自主統計2020年度出荷実績」)。この数字には家庭用と商業・産業用も含まれているが、その約90%は10kWh未満だから、多くは家庭用と考えられる。とはいえ2019年度の新築住宅の着工数に占める蓄電池の導入割合はまだ約9%(経済産業省「定置用蓄電システム普及拡大検討会 第4回」)。それでも今後の私たちの暮らしに、蓄電池は欠かせなくなるようだ。
家庭・商業・産業用「定置用リチウムイオン蓄電システム」の出荷台数の推移(出典:一般社団法人日本電機工業会※2021年11月4日時点)
幅広いメーカーの家庭用蓄電池を販売しているゴウダの合田純博さんは「特に2019年の台風15号による千葉県内での大規模な停電以降、お問い合わせが増えました」という。残暑の厳しい時期に約1週間もエアコンが使えなくなる様子がニュースで流れたことで、検討する家庭が増えたのだろう。
その少し前から、いわゆる「卒FIT需要」により蓄電池は注目を集めるようになってきたという。卒FITとは太陽光発電など再生可能エネルギーの余剰電力を、一定期間固定価格で国が買い取る制度(FIT制度)の買取期間が満了したことを指す。太陽光発電の買取期間は10年間で、この制度が2009年11月に始まったことから、最初に満了者が発生する2019年の直前くらいから「売れる単位が約6分の1に下がるならためて使おう」と蓄電池が注目されるようになったというわけだ。
このように家庭用蓄電池のメリットとしてはまず災害による停電の際に、家の中で電気を使うことができる、つまり停電してもしばらくは普通に生活ができるということ。また太陽光発電システムと蓄電池があれば、停電時に便利なだけでなく、天気のよい昼間の間に太陽光発電で得た電力を夜中や雨の日に使うことで節電=光熱費を削減できる。さらに、電気料金の安い深夜電力を蓄電池にためておき、料金の高くなる日中に使うことで電気代を節約することも可能だ。特に昨今は原油価格の高騰などもあり、電気料金が高くなっているので、蓄電池のメリットは大きい。
(画像提供/ゴウダ株式会社)
メリットをまとめると次のようになる。
■太陽光発電との併用で効果をアップできる(余った電気をためたり、売ったりできる)
■高騰が懸念される電気代の大幅削減ができる
■災害時の安心を確保できる(停電時にも電気製品を使うことができる)
「蓄電池には家中の電気製品をまとめて使える全負荷型と、リビングなど特定の場所のみ使える特定負荷型がありますが、最近よく売れているのは全負荷型で10kWh前後の大容量タイプです」と合田さん。また卒FIT組を含め、従来はリフォームの際に合わせて蓄電池と太陽光発電システムをセットで設置したいという消費者からの問い合わせが多かったが、最近は新築を手掛ける工務店等からも増えているという。
「2020年に、菅元首相が2050年までに脱炭素社会を実現すると宣言してから、工務店等への消費者からのお問い合わせが増えたようです」(合田さん)。大手ハウスメーカーでは太陽光発電や蓄電池の標準化が進んでいるものの、中小工務店ではまだまだ。それでもオプションで用意するようになってきているなど、蓄電池に対する世の中の関心は増しているようだ。
ゴウダでの太陽光発電システム設置の施工事例(写真提供/ゴウダ株式会社)
施主は停電に備え、シャープの太陽光パネル3.39kWと6.5kWhの蓄電池を同時設置(写真提供/ゴウダ株式会社)
さらに「今後は太陽光発電システム+蓄電池が各家庭に必須アイテムになる」というのはプライム ライフ テクノロジーズの小島昌幸さん。同社はテクノロジーを駆使し、未来志向の「まちづくり事業」の展開を目指すパナソニックとトヨタなどが設立した会社だ。
「2050年カーボンニュートラル達成とこれからの脱炭素化社会に向けて、国はEV(電気自動車やハイブリッドカーなどの電動車)の普及を促進していますが、街中にEVがあふれるようになれば、当然今より電力需要が高まります。住宅でEV充電すると消費電力が2~4割も増えるという試算があるほどです。だからといって石炭や石油を燃やして電力を増やすのでは本末転倒。やはり太陽光発電など再生可能エネルギーでEVを走らせるのが望ましいシナリオです」
(写真/PIXTA)
太陽光で発電した電気を受け止められるよう、自宅にEVを置いて充電できればよいが、太陽光発電が発電する日中にずっとEVに乗らないなんて非現実的だ。ここは蓄電池に電気をためて、後でEVに充電するほかないだろう。
そもそも脱炭素化社会には太陽光発電などの再生可能エネルギーは欠かせないが、自然は人間の思った通りに発電したり、止めたりしてくれない。つまり再生可能エネルギーの普及には、そのエネルギーをためておき、自由に使えるようにする蓄電池が欠かせないのだ。
海外と比べても日本は意外と蓄電池の普及が進んでいる一方、海外と比べると日本は意外と家庭用蓄電池の普及が進んでいる。環境対策が進んでいるイメージのあるドイツや、蓄電池工場の多い中国よりも実は累計導入量は多いのだ。
経済産業省「定置用蓄電システム普及拡大検討会 第4回」資料より、SUUMOで作成
また再生可能エネルギー(太陽光発電システム+風力発電)の導入量はドイツの約56%でしかないが、別の見方をすればこの先再生可能エネルギーの導入が増えれば、その受け皿となる家庭用蓄電池も増える余白が大きいといえるだろう。
こうした家庭用蓄電池の普及は、先ほど述べたメリット以外にも、新しい社会インフラの構築面でも役に立つ。その一例がコミュニティZEH(ゼッチ)だ。これは太陽光発電や蓄電池、電気自動車や住宅設備などを、特定の地域でまとめて管理することで、災害時にその地域の安定的な電力供給を図るというもの。そうしたまちづくりが既にいくつも始まっている。
プライム ライフ テクノロジーズグループが手掛ける愛知県みよし市の分譲地「MIYOSHI MIRAITO」もコミュニティZEHVの一例。経済産業省の「コミュニティZEHによるレジリエンス強化事業」に採択された(写真提供/プライム ライフ テクノロジーズ)
コミュニティZEHは蓄電池・EV×戸数という大容量の電気をエリア内で融通し合えるので、外部からの電気の供給が断たれても(停電しても)そのエリアの各住戸はより長い間電気を自給自足しやすくなる。ほかにも、頻発する自然災害に対して住民同士で助け合う地域社会の醸成に役立つ。
家庭用蓄電池の選び方や、選ぶ際の注意点とは?では家庭用蓄電池はどうやって選べば良いのだろう。合田さんに教えてもらった。
(写真/ゴウダ株式会社)
「まずは先ほど述べた全負荷型か特定負荷型のどちらにするか」。災害による停電時を想定した上で、家中の家電をまかなえる全負荷型を、一部屋だけでも使えるようになればいいなら特定負荷型となる。
次に「200Vに対応するかどうか」。テレビやドライヤーなど、コンセントの口が2口の家電だけなら100Vで対応できる。しかし一部のエアコンやIHクッキングヒーター、エコキュートなどは200V仕様であることが多い。200Vの家電を使いたいなら、やはり200Vに対応した蓄電池を選ぶべきだろう。
ためられる容量も肝心だ。容量が多いほど使える電気の量も増える。停電時を想定すると「一家庭(4人家族を想定)の平均で1日13.1kW程度です。例えば容量13kWhだと1日はいつもどおりに電気を使うことができます」。あとは予算に応じて、どれくらいの容量にするか検討するといい。
「さらに忘れてならないのが『出力』です。容量を大きなバケツだとすると、出力はそこについている蛇口です。蛇口の口が小さければ、一気に取り出せる電気が少なくなります」。いくら200Vに対応しているとしても、出力が小さければエアコンとIHクッキングヒーターを同時には使えない。これも予算に応じてだが、どれくらいの出力(カタログには3kVA(キロボルトアンペア)などと書かれている)にするか考えておきたい。
まとめると、選ぶ際のポイントは以下のようになる。
・全負荷型か特定負荷型か
・200Vに対応するか
・容量をどれくらいにするか
・出力をどれくらいにするか
用途や予算に応じ、上記のポイントに注意しながら家庭用蓄電池を選ぶようにしたい。なお製品の保証期間については、現在主流になっているリチウムイオン電池を使うタイプであれば10年間が標準で、メーカーによってはプラス5年間の延長保証を用意しているところもあるという。
脱炭素化に向けて太陽光発電+蓄電池は各住戸1セットが必須になるかもでは現在の家庭用蓄電池の価格はどれくらいなのだろう。もちろんメーカーや容量等によってさまざまだが、経済産業省が公表している資料(経済産業省「定置用蓄電システム普及拡大検討会 第4回」)によれば2019年度の家庭用蓄電池は1kWh当たり14.0万円(工事費を除く)だという。
経済産業省「定置用蓄電システム普及拡大検討会 第4回」資料より。流通コストなども含むが、工事費は除いた価格
これは2015年度の22.1万円と比べて約36%安い価格だ。家庭用蓄電池やEVの普及などにより、確実に価格は下がってきているようだ。国としてはさらに価格を下げようとしている。「工事費も含めた価格で2030年時点に7万円/kWh以下を目指しているようです」とプライム ライフ テクノロジーズの小島さん。
「7万円という数字は、家庭用蓄電池を導入した自家消費型住宅のほうが経済的に有利になる、簡単にいえば『元が取れる』と想定している価格です」。2019年度の約半分というかなり戦略的な価格に見えるが、小島さんは「不可能ではない数字です」と言う。
「太陽光発電システムもほんの10年前まで、4kWで200万円以上したが、今では100万円程度になっています」と小島さんはいう。確かに1kW当たりの太陽光発電システムの価格は、2012年に46.5万円/kWだったのが、2020年には29.6万円にまで下がっている(経済産業省「令和3年度以降の調達価格帯に関する意見」)。4kWだとすれば118.4万円ということだ。
一方で合田さんによれば、需要の高まりによって「リチウムイオン電池に使うレアメタルなど、材料の価格が高くなり、それが販売価格に反映されて最近は価格が高くなってきました」と言う。
そうした懸念材料もあるが、EVの急速な普及に対してレアメタルを使わないリチウムイオン電池や、従来と同じサイズでも容量が増えて劣化しにくい全固体電池の開発も進むなど、いつの時代も技術革新が私たちの生活を豊かにしてくれるはず。
そういうと、あまりにも楽観的過ぎるかも知れないが、2050年の脱炭素化社会に向けて国は2030年代に販売する全ての車を電動化(ハイブリッドも含む)を目指しアクセルを踏んでいるのは事実。東京都では太陽光発電システムを義務化するなんて話も聞こえてきた。
ともかく、地球温暖化防止に向けて脱炭素化はこれからも進んでいく。そのなかで、太陽光発電+蓄電池は1住戸1セットが必須といえるだろう。まずは今の自宅で停電が起こった際に、どんな家庭用蓄電池があればいいのか、それはいくらするのか。あるいは太陽光発電システムも搭載したら容量は多少少なくて済むかも!?など、検討してみることから始めてみてはどうだろうか。
●取材協力
プライム ライフ テクノロジーズ
ゴウダ
●関連資料
一般社団法人日本電機工業会「JEMA 蓄電システム自主統計 2020 年度出荷実績」
経済産業省「定置用蓄電システム普及拡大検討会 第4回」
新型コロナウイルスの影響で、スーパーやドラッグストアの店頭から商品が消えたとき、「スーパーは私たちの命綱なんだな」と痛感した人も多いはず。とはいえ、今、買い物にいけない高齢者が、日本各地で増えているといいます。インターネットを使いこなせない世代に「買い物」というインフラをどう提供するのか、移動スーパー「とくし丸」の新宮歩社長にお話を伺いました。
週2日、家の前にスーパーがやってくる。移動スーパー「とくし丸」は、軽トラックに生鮮食品や日用品の約400品目、1200点ほどをトラックに積み込み、民家の軒先で商品を販売する移動販売サービスです。2012年、徳島県で事業が始まり、2021年10月時点で、全国のスーパー140社と提携し、47都道府県でサービスを提供、毎日900台以上のトラックが稼働しています。
買い物客のニーズに対応したたくさんの生鮮食品や日用品が積まれている(写真提供/とくし丸)
筆者の暮らす横浜郊外の住宅街でも、先日とくし丸のトラックが近所で移動販売を行っているのを見かけました。地方・郊外・都心を問わず広がるとくし丸のサービス、利用者にとってはどんなメリットがあるのでしょうか?
高齢者にとっては自宅の目の前に週2日、いつものドライバーが商品を持ってきてくれるので、好きなものを選びつつ買えるほか、見守りにもつながっているとか。
この1年半は、コロナウイルスの影響で(1)子ども世代が親の家を訪れて買い物の手伝いができなくなった、(2)人の集まるスーパーを高齢者が敬遠するようになった、(3)コンビニの代わりに利用するようになった、といった理由で利用が加速し、1台あたりの売り上げも増えているといいます。トラック1台あたりの売り上げは1日10万円ほどだそう。
コロナ禍にあっても、売り上げは堅調に推移しているといいます。
「爆発的に売り上げが伸びているわけではありませんが、前年比でプラス成長を続けていて、堅調に推移していると思っています。ただ、売り上げはドライバーごとの個人差もあり、まだまだ改善と工夫の余地はあると考えています」(新宮社長)
とくし丸・新宮歩社長(写真提供/とくし丸)
コロナ禍で顕在化した「買い物難民」は都市部にもさらに興味深いのは、人口や店舗の減少が進む地方・郊外だけでなく、都心部でも売り上げを伸ばしている点です。確かに個人商店は少なくなっていますが、都心部や近郊にはスーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアなどが点在し、買い物先には困らない印象です。
「もともとは創業者が、山間部に住む親が買い物に苦労していることに気が付き誕生した業態です。ただ、全国展開をしていることからもわかるように、買い物難民は、それこそどこにでも、東京都心にも郊外にも確実にいます。例えば、都心部に住んでいて、家の前にスーパーがある人でも、買い物に行けないことはあります。ある程度幅のある道路を渡らなければいけない場合、足の不自由な方だと、青信号の時間内に横断歩道を渡りきれないからです。さらに、今の高齢者は責任感が強い方が多い。子ども世代が休日に親の買い物を手助けしても、親からすると、『子どもに迷惑をかけている』と心の負担になっていることもあるんです」と新宮社長。
「コロナ禍により拍車がかかった面はありますが、高齢者や交通弱者が買い物に困っているのはコロナにかかわらない問題です」(新宮社長)
ここから見えてくるのは、現在のまちや移動インフラが、単身高齢者の増加や核家族化の進行を前提に設計されてこなかったということ。コミュニティバスやタクシーなどの移動手段はあっても、高齢者にとってはその日の体調や天候などを考える必要があり、なかなか便利とは言い難いものです。また、スーパーが近所にあったとしても、そこまでの道に坂があったり、歩道が狭かったりすれば、それだけで買い物はしづらくなります。そのため、ひとたび歩行や運転が不自由になると、とたんに買い物が難しくなる、それが日本各地で起きているのです。
筆者が暮らす住宅街は、大手スーパーマーケットがしのぎを削る「激戦区」といわれています。コンビニもドラッグストアもたくさんあると思っていたのですが、近所で「とくし丸」を見かけるということは、既存の店舗では買い物ができない人が少なからずいるということです。「買い物に困らない」と思っているのは、今、筆者が健康だからなのでしょう。なかなか見えてこないけれども、「買い物難民」はどこにでもいる、という言葉はとても重く感じます。
お客さまを協力者として巻き込む。持続可能なシステムただ、新宮社長からみると移動販売というスタイルは、昔でいうところの「御用聞き」で、高齢者世代にとってはお馴染みの方法だといいます。
「酒屋さんが注文を取って商品を積み込み配送する、八百屋や魚屋、お豆腐屋さんが商品を積み込んで販売する形は、昭和ではよく見られた光景でした。それが、小売業の発展、自動車の普及にともなって収益がでなくなり、廃れていってしまったのです」(新宮社長)
それを現代に蘇らせ、ビジネスモデルとして再構築したのが、「とくし丸」というわけです。面白いのはそのビジネスモデルで、商品を提供するのはスーパーですが、ドライバーは個人事業主で、販売委託という形を取っているため雇用関係はありません。商品は1点につき、店頭価格よりいくらか上乗せして販売し、その売り上げはドライバーと「とくし丸」で分け合います。スーパーは車両や人材確保をせずとも新規の売り上げが見込め、ドライバーは地方での雇用創出にもなり、高齢者にとっては買い物場所ができる、とかかわる人すべてが得をする「三方よし」の仕組みです。また、既存のスーパーと共存するために店舗300m以内の場所では営業しないのだとか。
(画像作成/SUUMO編集部)
「スーパーや小売店からすると、店頭価格に上乗せして、お客さまに負担してもらうのはとても難しいのでは、と言われていたそうです。ただ、実際、始めてみると、タクシー代やバス代と思えば安いよと言われて、この形になったといいます。お客さまを協力者として巻き込むことで成り立っているのです」といい、現在、盛んに言われている「持続可能な仕組み」になっているのも興味深いところです。
「高齢者の買う楽しみ」をネットとあわせて進化させる高齢者の多くは、まわりに迷惑をかけないよう、ひっそりと暮らしているといいます。そこに「とくし丸」が行くことで人が集まってきて、ご近所の人と会って会話が盛り上がって……と活気がなくなったコミュニティの再生にもつながっているそう。「見守り」という面で自治体と連携していることもあります。
「週2日、とくし丸に来るのが唯一の楽しみという人も多いんです。買い物中も当然、『元気にしてた?』『好きなお団子、持ってきたよ』という、会話が交わされるようになり、そこから親戚のようなつながりが生まれます。見守りにもつながりますし、実際、あってほしいことではないですが、まさかの事態にドライバーが気が付いた例もあります」(新宮社長)
2019年撮影(画像提供/とくし丸)
とくし丸で買い物を楽しむ人たち。2019年撮影。(写真提供/とくし丸)
地域再生やコミュニティ活性といっても、結局は雑談や何気ない会話から生まれるもの。また、直接、話すことで、伝えられることも多いといいます。
「2020年の春ごろは、新型コロナウイルスといっても、都会の出来事でどこか他人事で、地方在住の高齢者はマスクをしていない人がほとんどだったんです。そこでドライバーがマスクや消毒をするように促し、『マスクをしたほうがいいですよ』『予防が大事ですよ』、と繰り返し伝えたことも。現在、『とくし丸』の利用者は約15万人。これだけの高齢者に直接、情報を伝えられる、高齢者の声を直接、メーカーなどに伝えられるのは、弊社の強みだと思っています」と新宮社長は言います。
日本の人口は減少に転じていますが、高齢者、特に単身世帯はまだまだ増え続け、貴重な「成長マーケット」という側面もあります。
「これまでの高齢者はインターネットが使えない人が多数でしたが、これからはインターネットを使いこなせる高齢者も増え、今までの10年以上に大きな変化が社会全体に起きると思っています。買い物でいうと、ネットで注文できるものは前もって注文しておき、トラックが届けるという使い方はなされるのではないでしょうか。一方で、今日のランチなどはその日の気分に合わせて、リアルで選びたいですよね。会話しつつ選ぶ楽しみ、買い物の楽しみも届けたいと思っています」(新宮社長)
住まいだけあっても、人の暮らしは成り立ちません。毎日の買い物は、暮らしを支えるインフラであると同時に、人と会ったり、話したりするつながりの場でもあります。移動スーパー・とくし丸が支えているのは、実は私たちのこれからの「暮らし」や「人生」なのかもしれません。
●取材協力
とくし丸
全宅連・全宅保証協会では、毎年実施している消費者セミナーとして、スペシャルサイト『大人へのトビラ』を公開した。成人年齢引き下げが予定され、18歳で成人してから一人暮らしを始める人に向けて、賃貸借契約の注意点などを紹介したもの。どんな内容か、紹介していこう。
【今週の住活トピック】
「消費者セミナー2021秋『大人へのトビラ』スペシャルサイト」を公開/全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)・全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証協会)
スペシャルサイトのテーマの一つが、2022年4月1日からの「成年(成人)年齢の引き下げ」だ。民法改正により、2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられる。これから高校を卒業し、一人暮らしを始める予定の人たちは、成人として初めて契約という行為をする可能性がある。
サイトでは、民法改正の経緯などに加え、賃貸借契約や売買契約などの不動産の取り引きをする場合、未成年と成年では大きく違う点を説明している。未成年者は親などの保護の下にあるので、契約をする場合に親権者の同意が必要とされ、同意がない契約は原則として取り消すことができる。一方、成年者は単独で契約ができるが、自由に取り消すことはできなくなる。それだけ、契約について強い責任が生じるわけだ。
はじめての一人暮らし、賃貸借契約の注意点は?スペシャルサイトのメインテーマは、「一人暮らしの賃貸借契約の注意点」。契約に責任が伴う以上、自身でトラブルのないように注意する必要があるからだ。
(画像提供/全宅連)
サイトではまず、部屋探しの際には、「入居予定日から逆算してスケジュールを組み、予算を立てて、計画的に取り組むこと」「希望条件を整理し、優先順位を決めておくこと」などのポイントのほか、賃貸住宅の人気の設備や間取りの見方などを紹介している。
そして、住みたい部屋が決まったら、さまざまなルールを確認し、宅地建物取引業者から重要事項の説明を受け、入居時に部屋の状況をきちんと確認することなどの注意点も紹介している。
文字だけでなく、マンガを交えて興味をもてる工夫もしているが、「部屋探しの流れ」「賃貸借契約の基礎知識」「金銭管理の基礎知識」「生活マナーの基礎知識」「こんな時にどうする?(トラブル対策)」など、動画(『はじめての一人暮らしガイドムービー』)で詳しい説明をして、はじめての一人暮らしのガイドとして役立てて欲しいとしている。11月24日には、はじめての一人暮らしの注意点をまとめたアニメーション動画も公開する予定だという。
「連帯保証人」や「原状回復」を理解している?さて、このサイトでは「連帯保証人」と「退去立会と原状回復」について、詳しく説明している。
「連帯保証人」は家賃の滞納などがあったときに、借りた人と連帯して責任を負う人。親が連帯保証人になることが多いだろう。最近は、連帯保証人の代わりに、家賃保証会社の利用を求めるケースが多い。保証会社は借りる人から保証料を受け取り、滞納時に家賃を立て替えたりする。ただし、家賃を払わなくてよいわけではなく、保証会社はしっかり請求するので、この制度についてよく理解しておく必要がある。
入居中に部屋を損傷させた場合、退去するときに元に戻す義務がある。これが「原状回復」だ。ただし、国土交通省のガイドラインでは、普通に生活していれば経年劣化などが生じるので、それは原状回復の範囲外としている。こうしたことを理解していないと、貸し手と借り手のどちらが負担すべきかトラブルになったりするので、ガイドラインについても理解しておく必要がある。
賃貸借契約についてさらに理解しておこうこのほか、賃貸借契約に関して注意しておきたいことがあるので、いくつか補足をしておこう。
部屋が気に入って借りたいとなると、優先順位を確保するために「申込金」を求められる場合がある。この申込金は、借りる意思を示して優先的に審査をしてもらうためのものなので、申込金=契約の成立ではない。申し込んだ後に契約が成立しないこともあれば、契約する前に部屋を借りるのをやめることもできる。この際には、「申込金は返還される」のが原則。一時的に預けたお金という扱いだからだ。申込金を払う場合も「領収書」ではなく「預り証」を受け取ろう。
宅地建物取引業法では、賃貸借契約を結ぶ前に、仲介を行う不動産会社は、入居予定者に対して賃貸物件や契約条件に関する重要事項の説明をしなければならないとしている。これが「重要事項説明」で、必ず書面が提示され、口頭で宅地建物取引士が説明することになっている。重要なことばかりなので、早めに書面を受け取って内容を確認し、不明点を不動産会社に問い合わせるようにしたい。ただし、不動産会社自身が賃貸住宅の貸し手である場合は、重要事項説明をする義務を負っていない。それでも重要な事項は説明するはずなので、契約前にしっかり確認をしておこう。
「重要事項説明」と同様に重要になるのが、「賃貸借契約書」の確認だ。重要事項説明を受けて、納得したら正式に契約を結ぶことになる。この書面も早めに受け取って、目を通しておくのがよい。賃料などの支払いルールや敷金などの扱い、部屋を使用する際の禁止事項、契約の解除、原状回復の範囲など、知らないでは済まされない内容が記載されているので、しっかり確認しよう。
おかしいと思っても、その場で契約を取りやめるのはなかなか難しいことだ。やはり事前に書面を受け取って親に見てもらったり、その場に同席してもらったりして、人生の先輩から助言を受けることをオススメしたい。
公開されたサイトでは、「宅地建物取引士」についても説明している。成人になれば、宅地建物取引士などの国家資格が必要な職業に就くこともできる(国家試験合格が前提)ようになる。一方で、酒やたばこなどは健康被害への懸念などから、20歳以上とされたままなのでお忘れなきように。
「消費者セミナー2021秋『大人へのトビラ』スペシャルサイト」を公開/全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)・全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証協会)
「消費者セミナー2021秋『大人へのトビラ』スペシャルサイト」
福岡県宗像市にある、日の里団地は、1971年に日本住宅公団(現・UR都市機構)が“九州最大級の団地”として開発。憧れのニュータウンだった場所だが、他エリアの団地と同様、建物の老朽化や住民の高齢化などが進んでいる。しかし日の里団地は団地の再生プランを立て、新しい団地のあり方「宗像・日の里モデル」を提案できるように歩み始めている。今回はその象徴となる48号棟「ひのさと48」を訪れた。
50歳を迎えた「日の里団地」48号棟が「ひのさと48」に。ワクワク虹色の未来を描く(写真撮影/笠井鉄正)
最寄駅となるJR鹿児島本線・東郷駅は、博多駅まで快速列車で約30分の距離。福岡市の都心部に通勤するのにほどよいベッドタウンだ。その東郷駅から広がる丘陵地に開かれた日の里団地は、開発された1971年当初、全65棟に次々と入居者が決まり、最盛時は約2万人もの人々が暮らしていた。
そして50年後の2021年。住民数は10分の1の2000人程度となり、65歳以上人口の割合である高齢化率は4割前後。宗像市全体の高齢化率3割前後を超えている。
そんななか、日の里団地のいちばん奥まったエリアにある、48号棟に注目が集まっている。2017年に閉鎖された10棟のうちの1棟で、住民はもちろん宗像市や周辺エリアのコミュニケーションのハブとなるよう2021年3月、「ひのさと48(よんじゅうはち)」という場所として動き始めた。
虹色のバルコニーパネルや木のテラスは2021年3月末に「ひのさと48」にかかわる人が集まってペイントした(写真撮影/笠井鉄正)
虹色のカラーリングをほどこされた「ひのさと48」の見た目はもちろん、その中身もワクワクしたものがあふれだし始めているようだ。これからこの場所で何が起こり、日の里団地はどのように変わっていくのか。
お話を伺うために、「ひのさと48」のディレクター・吉田啓助(よしだ・けいすけ/東邦レオ株式会社)さんとスタッフの谷山紀佳(たにやま・のりか/同社)さんを訪ねた。
「ひのさと48」ディレクター・吉田啓助さん。ご自身も日の里団地内に分譲の物件を購入している(写真撮影/笠井鉄正)
下の写真の広々とした更地は「ひのさと48」と隣接したエリアにある。かつて10棟の団地が存在していたが、そのうち9棟は取り壊されて2022年、64戸の新築戸建てが建設される「戸建てエリア(むなかた さとのは hinosato)」が誕生する予定だ。新築の戸建てエリアが築50年の団地に挟まれている風景にも興味が湧く。
「ひのさと48」の3Fベランダから、日の里団地58・59号棟を方面を眺めた風景。「ひのさと48」と団地の間の土地に新しく「戸建てエリア」が出現する(写真撮影/笠井鉄正)
上の写真の逆向きバージョン。日の里団地58・59号棟から「ひのさと48」を眺めた風景(写真撮影/笠井鉄正)
「戸建てエリア」の開発を担うのは、ハウスメーカーなど8社からなるJV(ジョイントベンチャー。特定目的会社)で、里山をイメージした街づくりが進められている。木々のなかに戸建てがゆったりと並び、大人も子どもも自由に伸びやかに散歩にでかけ、小さな自然を楽しむ。そんなイメージだ。
「戸建てエリア」に隣接する「生活利便施設エリア」として位置づけられているのが、かつての48号棟「ひのさと48」である。
現在、1階にはクラフトビールのブリュワリー&ショップ「ひのさとブリュワリー」、最新の木工加工機が設置された「じゃじゃうま工房」、コミュニティカフェ「みどり TO ゆかり」、シェアキッチン「箱とKITCHEN」、「ひかり幼育園 ひのさと分園」が入居。取材に訪れた日も子どもたちの声が響いていた。
(写真撮影/笠井鉄正)
(写真撮影/笠井鉄正)
この「戸建てエリア」と「生活便利エリア」を合わせて「宗像・日の里モデル」と呼ばれる団地再生プロジェクトとなっている。
クラフトビールを足がかりに、人と地域が交わり、広がる2021年3月から本格的に稼働し始めた「ひのさと48」で今、何かと話題をふりまいているのがブリュワリー&ショップ「ひのさとブリュワリー」だ。団地の1階にクラフトビール工房というシチュエーション。聞いただけでワクワクするし、ここを目指してふらりと訪れる人も多い。
2021年10月までに、第7弾まで発売されている(写真撮影/笠井鉄正)
「ひのさとブリュワリー」の醸造タンクは2つ。東邦レオ株式会社の社員が醸造長となり、クラフトビール界で有名な「インターナショナル・ビアカップ2021」で賞を獲得した。すごい!(写真撮影/笠井鉄正)
訪れた人が「おもしろいことをやっている団地がある」と周りの人に伝え、よい循環もできている。
「宗像市の離島・大島のみなさんも『日の里がビールとかつくるんなら、私たちにもなにかできるかも?』と独自の地域活性に取り組もうと動き出したり。周辺の活性化にもいい影響があるといいですね」と吉田さん。
お隣の福津市でクラフトビールづくりを始めたいという男性が、買い物&リサーチに訪れていた(写真撮影/笠井鉄正)
また、「ビールを買いに来てくれたご夫婦が『私たち、実は、この48号棟に住んでいたのよ。懐かしいわ!』なんて打ち明けてくれたり。日の里団地との関係性が切れた方も、ビールをきっかけに思い出してくれて、さらに足を運んでくれるって素敵ですよね」と谷山さんもうれしそう。
おいしいアルコール飲料であるのはもちろん、人と人、人と地域を楽しくさせるコンテンツでもある。「ひのさとブリュワリー」はそんな役割も担っている。
ちなみに「ひのさとブリュワリー」のビール「さとのBEER」には、宗像での栽培が盛んな大麦が使われている。自分たちの足元にそんな農産物があるという、情報を知るきっかけにもなっている。
「ひのさとブリュワリー」のショップで大麦を見せてくれた谷山さん(写真撮影/笠井鉄正)
お金のつながりだけでないことが、持続していくこと「ひのさとブリュワリー」「じゃじゃうま工房」などは吉田さんたちが運営している施設だが、2021年の春からそれ以外のテナントもぼちぼちと入居をし始めている。ウクレレの工房や就労継続支援のオフィスなど「ひのさと48」のコンセプトに賛同してくれた人ばかりだ。
「みなさんテナントさんであるし、もっと増えてほしいです。ただ、お金をもらったからスペースを貸すよ、という関係性は目指していません。みんなでこの場所を、この地域をどう楽しみ、どうしていくのか。一緒に考えられる関係性でいたいなと思っています」。そう話してくれた谷山さんは、入居者のことを「さとの仲間」と呼んでいる。「『ひのさと48』担当になって最初のころ、ついつい『さとの仲間』のことをお客さんだと思いそうになっていました。でもそうじゃないんですよね。日の里に一緒にコトを起こす仲間になりたいんです」
今はスタートしたばかりの「ひのさと48」だが、今後、持続的に活動を続け、10年後には運営を地域にバトンタッチしていく予定だ。それまでに仲間たちで何ができるのか、次代へ何を手渡せるのか、これからの課題でもある。
「ひのさと48」の一角には野菜畑があり、入居者やご近所さんがゆるやかに協力し合いながら育てている。もうすぐさつまいもの収穫(写真撮影/笠井鉄正)
日の里団地の子どもたちがドミノ大会を開催。「ひのさと48」でお化け屋敷をやりたいという声もあがり、スペースを提供する予定(写真撮影/笠井鉄正)
テーブルの足は、団地のベランダにあった物干し竿かけを再利用(写真撮影/笠井鉄正)
10年後も変わらないもの、変わっていくものはなんだろう?(写真撮影/笠井鉄正)
「ひのさと48」と2022年に完成する戸建てエリアのコンセプトは「サスティナブル・コミュニティ」である。そして「ひのさと48」持続可能にしていくものは、地域であり、人々であり、里山の自然である。
先日は地域の子どもたちのリクエストに応えて、クラウドファンディングで資金をつくり、団地の壁にクライミングのホールドを設置した。これからも多様な切り口で活動することで、人々に多様なワクワクをプレゼントしていく。
●取材協力
ひのさと48
UR都市機構