
13万円 / 35平米
東西線「早稲田」駅 徒歩8分
猫でも犬でも、好きなペットと庭付き平屋のくらし。といっても大きな平屋のイメージではなく、ミニマルな戸建てです。
大家さん曰く、敷地内であれば犬小屋を建ててもいいですよ、とのこと。サイズに見合った夢があります。
つくりは2DK。6畳の方をリビングにして、庭に面した5畳は寝室に。 ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
ZEH(ゼッチ ※ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称)とは、高断熱化と高効率設備の導入により、使うエネルギーを減らしつつ、太陽光発電等でエネルギーをつくり、1年間で消費する一次エネルギー消費量をおおむねゼロ以下にする住宅のことだ。これまで一戸建てを中心にZEHの普及が進んできたが、最近になって分譲マンションや賃貸住宅といった集合住宅のZEH化も始まっている。集合住宅がZEH化すると、入居者にはどんなメリットがあるのか? デメリットは?
そもそも「ZEH」って何? どんな種類やメリットがある?集合住宅のZEHの状況について説明する前に、まずはZEH(Net Zero Energy House=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは何か?について、おさらいしておこう。
(写真/PIXTA)
まず住宅の断熱性能を高め、高効率設備を導入することで、使用するエネルギーを減らす。さらに太陽光発電等の再生可能エネルギーでエネルギーをつくり、1年間で消費する住宅のエネルギー量から創エネルギー量を引くことにより、正味(net=ネット)でおおむねゼロ以下となる住宅のことである。
ちなみに、ここで言うエネルギー量とは一次エネルギー消費量のことで、住宅で使う電気等をつくり出すエネルギー(石油や石炭、天然ガスなど)の量を指す。また、創エネルギーの使い道は太陽光発電を設置した住宅の所有者等にまかされていることから、必ずしも光熱費がゼロになるわけではないが、既にZEHに暮らしている人の中には、1年間の光熱費が実質ゼロになっている人もいるものと考えられる。
ZEHは、屋根や壁、窓等の断熱性能を高め、照明やエアコンといった設備を省エネ性能の高いものにすることで、建築物のエネルギー消費性能基準から一次エネルギー消費量を20%削減することが要件。その上で、都市部狭小地域や多雪地域等の地域的な制約がある場合に限り、太陽光発電がなくても「ZEH Oriented」が認められている。一方、太陽光発電等の創エネ設備を設置して、更に一次エネルギー消費量を削減したものが『ZEH』や「Nearly ZEH」となる(画像提供/経済産業省)
ZEHで暮らすことには下記のようなメリットがある。
●住宅の省エネルギー化や創エネルギーの活用によって光熱費を抑えられる
●住宅の高断熱化によって、夏は涼しく、冬は暖かい快適な住環境を実現できる
●断熱化により室温を保ちやすくなるので、ヒートショックなどのリスクの低減が期待できる
●太陽光発電の設置によって災害による停電時でも一定程度の生活を営むことができる
このように、光熱費を抑えられて、一年中快適かつ安心安全に暮らせるのがZEHというわけだ。
一方デメリットとしては、高断熱化や太陽光発電等の導入などの初期費用がかかること。そこで国は補助金制度によりZEHの普及促進を図っている。現在は、地域的な制約や政策目的に応じて下記のZEHが普及促進の対象となっている。
こうした様さまざまな種類のZEHがある理由は大きく二つある。一つは地域や周辺環境によって、どうしても太陽光発電による発電量が比較的少なくなるエリアがあることだ。例えば雪国などは冬の日射量や積雪の影響で発電量は見込めないし、ビルや家々がひしめくように立ち並ぶ都心部などは日陰になりがちだ。
こうしたエリアにおいてはエネルギー収支をゼロ以下にすることが困難であるが、これらのエリアにおいても可能な限り省エネルギー化を図り、再生可能エネルギーを導入していくことが重要であることから「Nearly ZEH」や「ZEH Oriented」が設けられた。これらのZEHもエネルギー収支こそゼロにはならないものの、外皮性能(屋根、天井、壁、開口部、床、基礎など)がZEH基準に達しているため、先に挙げたメリットを享受できる。
もう1つは、ZEHよりもさらに省エネルギー性能を高め、かつ再生可能エネルギーの自家消費率を高めたZEHの普及を政策的に促すためだ。いわばさらに高性能なZEHとして「ZEH+」や「次世代ZEH+」が設定されている。
集合住宅のZEH=ZEH-Mとは? 一戸建てのZEHと何が違う?上記、一戸建て住宅におけるZEHに加えて、集合住宅のZEHについても説明しよう。集合住宅においても一戸建てのように種類が分けられているので、まずはそちらを見てみよう。
一戸建てのZEHと比べると、「Ready」という名称がつくZEH-Mが設けられていることがわかる。これは、一戸建てにはなかった「太陽光発電によって集合住宅全体の一次エネルギー消費量の50%以上を削減」しているもの。
なぜ“このようなZEH-Mが設けられているのか”といえば、一戸建てに比べて住戸数に対しての太陽光発電の設置面積が少ない集合住宅では、一次エネルギー消費量を100%以上削減することが現状の技術では難しいからだ。当然、高層になればなるほど難しくなる。
高層になるほど住戸数が増えるが、屋上に設置する太陽光発電の面積は同じ比率では増やせない。そのため高層の集合住宅になるほど太陽光発電による一次エネルギー消費量の削減が難しくなる(画像提供/経済産業省)
「集合住宅の場合、創エネルギーで全住戸の消費エネルギーをまかなうことが高層になるほど難しくなります」と資源エネルギー庁の鈴木さん。
とはいえ、外皮性能がZEH基準なら光熱費を削減しやすくなるし、一年中快適かつ安全に暮らしやすくなる。また、全住戸は無理だとしても、太陽光発電の電気を一部の住戸に分配することは可能だ。「集合住宅の場合、住棟単位のZEH-Mとしての評価に加えて、ZEHとして住戸単位で評価することも可能であり、分譲マンションの販売主や賃貸住宅のオーナーの方々にとっては、一部の住戸のみ一次エネルギー消費量を100%以上削減した『ZEH』として資産価値を差別化して販売や賃貸することも可能になっています」
高層の集合住宅における技術的課題については、太陽電池の発電換率の向上や、最近話題になっているフィルム状の太陽電池を壁面に設置するという方法により解消していくことが考えられるが、いずれもこれからの技術開発が待たれる分野だ。
集合住宅のZEH化は、入居者にどんなメリットがあるのか?ではZEH-Mにすることで、分譲マンションの購入者や賃貸住宅の入居者にとってどんなメリットをもたらすのか。既にあるZEH-Mの中から、積水ハウスが手がけた賃貸住宅「シャーメゾンZEH」を例に見てみよう。
(写真提供/積水ハウス)
(写真提供/積水ハウス)
2020年度のシャーメゾンZEHの年間受注戸数は2976戸を記録した。これは「2022年までに年間受注数2500戸を達成」という同社の目標を2年前倒しでクリアしたことになる。それだけ賃貸住宅のオーナーからZEH-Mの注目度が高いといえるだろう。なお累計では2021年1月時点で3500戸を突破している。
上記の通りZEH-Mには「ZEH-M「Nearly ZEH-M」「ZEH-M Ready」「ZEH-M Oriented」があるが、シャーメゾンZEHはZEH-M Ready以上、つまり太陽光発電等で一次エネルギーの使用量を50%以上削減できる賃貸住宅となる。
積水ハウスの賃貸住宅「シャーメゾン」ZEH仕様の埼玉県さいたま市の実例。屋根に太陽光発電パネルが搭載されている以外、ZEHのために特殊な形にしているというわけではない(写真提供/積水ハウス)
住戸の断熱性能を高めるため、窓は全て高断熱窓が採用されている(写真提供/積水ハウス)
各住戸には現在のエネルギー状況が一目でわかるHEMS(ヘムス※ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)の端末が置かれている(写真提供/積水ハウス)
同社が入居者に向けたアンケート結果によると、入居後の満足の理由に「光熱費が安くなるから」「太陽光発電があるから」「断熱性能が高いから」が上位にランクインした(下記表参照)。
積水ハウスが行ったシャーメゾンZEHの入居者アンケートより。入居前から大きくランクを、つまり満足度を上げたのはいずれもZEH由来のメリットであることがわかる(資料提供:積水ハウス)
いずれも入居前には入居者にとってあまり重要視されていなかったZEH-M化のメリットが、リアルな体験を通して満足度の順位をグンと上げたことになる。
確かに「あれ、今月の光熱費ってこれだけ?」とか「エアコンを切って寝ても朝まで暑くない(寒くない)」など快適な暮らしを体感したからこそ、満足度が高まったのだろう。ちなみに同社の調べでは、年間光熱費が約4割も削減できるという(下記グラフ参照)。
積水ハウスが試算した年間光熱費の比較。約4割の削減はかなり大きいと言えるだろう(資料提供:積水ハウス)
入居者の満足が上がることは、賃貸住宅のオーナーにとってもメリットがある。満足度が高ければ、それだけ長期入居が見込めるため、家賃収入の安定化が図れるからだ。またこれらの高付加価値があれば、周囲より高い家賃設定も可能になる。ZEH-Mの事例が増えるほど、ますます賃貸住宅オーナーからの注目が高まり、普及につながりそうだ。
ZEHの普及についてはまだまだこれから。その課題は?では今後はどのようにZEHの普及が進んで行くのだろう。
国は、2014年の「エネルギー基本計画」において、「住宅については、2020 年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上でZEHの実現を目指す」と掲げていた。
「『エネルギー基本計画』における『2020 年までにハウスメーカー等が新築する注文住宅の半数以上でZEH』というのは、数値目標としては新築一戸建ての50%をZEHにすることでした。その進捗ですが、2019年時点で見ると、大手住宅メーカーに限れば約50%ですが、全体ではまだ約20%と、達成とはいえない状況です」と資源エネルギー庁の鈴木さん。
ZEHロードマップフォローアップ委員会が令和3年3月31日に発表した資料より。一般工務店によるZEHがなかなか進んでいないことを示している(画像提供/経済産業省)
「こうした状況を踏まえ、昨年8月に国土交通省、経済産業省、環境省の3省合同で開催した『脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方・進め方検討会』で検討が行われ、2030年に目指すべき住宅の姿が定められました」
まず省エネルギーについては「新築される住宅についてはZEH基準の水準の省エネルギー性能」を目指すとされた。一方の再生可能エネルギーについては「新築戸建住宅の6割において太陽光発電設備が導入されること」を目指すとしている。ZEH-Mで説明したように、集合住宅については、現状では太陽光発電の技術開発を待たなければならないということのようだ。
(写真/PIXTA)
これらの目標に対し、既にロードマップもつくられ、ZEH化の促進が図られているが、その際のポイントの一つは、「ZEHの周知」だという。ZEHやZEH-Mの認知度、認識がまだまだ不足しているのが実情だ。施主に求められなければ建てる側も建てようがない。
最後に資源エネルギー庁の鈴木さんは、「まずはZEH・ZEH-Mについて多くの人に知ってもらうことが重要だと考えています。そのためには光熱費の削減といった経済的メリットだけではなく、ZEH・ZEH-Mが快適に暮らせること、安心安全に過ごせること、災害による停電時でも自宅で過ごせるメリットを伝えていくことが大切です」と強調した。
世界的な脱炭素社会への潮流の中、昨年政府から「2050年カーボンニュートラル」が宣言され、その中で2030年代半ばまでに、新車販売で電動車100%を実現するとした。また東京都では新築住宅への太陽光発電の設置義務付けが検討されるという。ほかにも省エネ性能をさらに高めた家電の開発や、太陽光発電以外の再生可能エネルギーの検討など、さまざまな動きが今後もあると思われるが、大事なのは脱炭素社会になることで私たちがどんなメリットを享受できるのか、ということを改めて理解することではないだろうか。
電気自動車に乗ったり、太陽光発電を住宅に載せたりすることが私たちの「メリット」ではない。脱炭素化によって光熱費が抑えられ、暮らしが快適に、安心安全になり、それが地球温暖化の防止につながっていくということが「メリット」であるはずだ。そのメリットを手に入れるにはどんな住宅に暮らせばかなうのか。それを今一度問いなおしてみてほしい。今なら望みさえすれば、すぐに手に入るメリットなのだから。
●取材協力
経済産業省
積水ハウス
住宅金融普及協会が、住宅事業者を対象に、近年供給されている一戸建ての設備及び仕様等に関する実態を把握するためのアンケート調査を実施した。その結果は、近年のコロナ禍や災害頻発などの社会情勢を反映したものになった。詳しく見ていこう。
【今週の住活トピック】
「住宅の設備および仕様等に関する事業者アンケート調査」結果を公表/住宅金融普及協会
筆者が注目した調査結果の一つが、「住宅設計における新型コロナウイルスの感染予防対策への取り組み」についてだ。住宅事業者がコロナ下の2020年度に供給した、一戸建ての注文住宅または建売住宅について、次の4つの設備等を設置したかどうか聞いている。
(1)玄関に手洗い設備等の設置
(2)玄関にクローゼット等の設置
(3)在宅勤務スペースの設置
(4)宅配ボックスの設置
その結果は以下の通り。各住宅事業者が供給した「すべての住宅に設置した」か「一部の住宅に設置した」か、あるいは「設置実績がない」かを回答したものだ。
住宅金融普及協会「住宅の設備および仕様等に関する事業者アンケート調査」より転載
最も設置されたと考えられるのが「玄関にクローゼット等」だろう。玄関に下足入れ(靴箱)を設置するのは当然として、その脇などにコートなどが収納できる高さのクローゼットを設置するプランだ。そこにコートや上着、カバンなどを収納すれば、外出先から持ち込んだウイルスを玄関で留める効果が期待できる。
「宅配ボックス」や「在宅勤務スペース」の設置も多い。宅配ボックスは、外出が減ってネット購入が増えたこと、対面せずに受け取れることなどから、ますますニーズが高まった。在宅勤務がコロナ下で普及したことで、自宅にワークスペースを設けるニーズも生まれた。
「すべての住宅に設置」と「一部の住宅に設置」の比率の違いは、コロナ前からニーズがあったかどうかではないだろうか? 玄関脇のクローゼットや宅配ボックスはコロナ前からニーズがあったものだが、ワークスペースは一部の人にしかニーズがなかったし、「玄関手洗い」はコロナ禍で創出されたニーズだ。コロナ前は洗面所で手を洗えば十分だったので、玄関に給排水管を引いてまで手洗い場を設けるプランはめったになかった。こうした違いが、今回の調査結果にも影響していると思われる。
いずれにせよ、新型コロナウイルス感染拡大により、住宅の設計に変化が生じたことは間違いないだろう。
住宅の耐震性向上のために制振の採用が増加?次に筆者が注目したのは、「震災対策への取り組み」だ。南海トラフ地震などの巨大地震が発生するリスクが高まっている。そんななかで、住宅の耐震性をより高めたいというニーズが感じられる結果だ。
住宅金融普及協会「住宅の設備および仕様等に関する事業者アンケート調査」より転載
住宅の耐震設計には「耐震」「免震」「制振(制震)」がある。地震の揺れで倒壊しない頑丈な構造にしようというのが「耐震」で、一戸建ての一般的な建て方になる。
これに対して、「免震」は基礎の上に揺れを吸収する免震装置(積層ゴムやボールベアリングなど)を設置して、その上に建物を支える鉄骨の架台を置いて建物の土台を載せることで、建物と地面を切り離す工法。地震の揺れが建物に伝わる前に吸収されるので、揺れが大幅に軽減される。ただし、費用もかかるので一戸建てで採用される事例は少ない。
一方、最近増えているのが、壁などの構造材の一部に制振装置(ダンパーなど)を使って、地震の揺れを吸収する「制振」だ。免震が地震の揺れを建物に伝えないようにするのに対して、制振では揺れは建物に伝わるものの建物内で揺れを吸収するので、一般的な耐震工法に比べて揺れを抑えることができる。免震ほど費用が掛からないので、採用しやすいという側面もある。
今回の結果を見ると、大規模地震のリスクが高まるなか、より住宅の耐震性を高めようと「制振」を提案したり、選ばれることが多いと見てよいのかもしれない。
また、今回の調査では、行政が普及を図っている「感震ブレーカー」についても質問している。大規模地震では、電化製品が落下することなどによる発火や停電が復旧した際に起こる通電火災などの「電気による火災」も多い。感震ブレーカーは、震度5強以上の地震を感知して分電盤の主幹ブレーカーを強制遮断するもの。不在時やブレーカーを落とす余裕のないときでも自動的に遮断できるので、電気火災を防止する効果がある。
調査結果では42%の住宅事業者が感震ブレーカーを設置(「すべての住宅に設置」22%、「一部の住宅に設置」20%)していた。
こうして調査結果を見ていくと、住宅設計においてはその時々の情勢によるニーズが反映されていると感じる。その後に情勢が変わっても、日々の生活に便利だったり安全だったりするものは、引き続き採用されていくだろう。社会情勢と住宅のプランは、密接に関係しているのだ。
「住宅の設備および仕様等に関する事業者アンケート調査」結果を公表/住宅金融普及協会
「自宅の1階に好きなお店があったらいいのに」「家賃収入のある大家さんになりたい」、そんな妄想や夢想をした人もいるのではないでしょうか。今回は、賃貸でも購入でもなく、自宅の1階に好きな酒店「いまでや清澄白河」を誘致するという夢と愛のある「大家暮らし」を叶えた小島雄一郎さんにインタビューしました。
分譲も賃貸も経験。行き着いたのは好きな街・清澄白河で「店舗併用住宅」コーヒーとアートの街として知られる清澄白河(東京都江東区)。この街の一角に今年2021年8月、酒屋「いまでや 清澄白河」が誕生しました。店のコンセプトは「はじめの100本」。お酒に詳しくない人でも、日本各地の日本酒やワインなどに詳しくなっていけるという、お酒のセレクトショップです。10月22日から「角打ち」(酒を酒屋の一角で立ち呑みすること)もできるようになりました。
住宅街の一角にできた「いまでや 清澄白河」(写真撮影/相馬ミナ)
日本酒やワインを知るための「はじめの100本」がコンセプト(写真撮影/相馬ミナ)
「これはどんなお酒?」と手に取りやすく、会話もうまれやすい仕掛けがしてある(写真撮影/相馬ミナ)
店舗付き住宅の場合、オーナーが自宅で商売をする、または、不動産会社にテナント誘致を任せることが多いのですが、今回の家はそれとはまったく事情が異なります。この家の所有者は、広告代理店に勤務し、「若者研究」などで知られる小島雄一郎さん。自身で酒店を口説いて誘致し、「自分の家の1階に大好きな酒屋が入る」という酒飲みの夢のような家を建てた、というのがそのあらましです。とはいえ、いきなり店舗併用住宅という結論に至ったのではなく、実は「賃貸or購入」という、30代の住まいの「命題」について考え抜いた結果だったといいます。
「もともと、清澄白河近くの賃貸住宅で暮らしていましたが、コロナ騒動前は年間100日ほど出張があって、自宅にいないのに家賃を支払うという状況だったんです。だったら、買うにしても借りるにしても、『家』に“働いて”もらったほうがいいんじゃない?というのがそもそものはじまりなんです」と話します。
キッチンからリビングをのぞむ。どこを切りとってもスタイリッシュ(写真撮影/相馬ミナ)
ただ、賃貸物件であっても、分譲物件であっても、集合住宅ではAirbnbなど民泊の時間貸し、部屋の貸し出しは、規約で禁じられていることが多いもの。「集合住宅で家に働いてもらう」のは、すぐに厳しいと気がついたそうです。
「次に考えたのが中古物件+リノベです。ただ、下町で流通する中古物件は、建ぺい率(敷地面積に対する建物の建築面積)がオーバーしているなど、現在の法律だと違法建築だったり、既存不適格だったりするため、住宅ローンが使えないこともあるようです。そのため、結果として新築の注文住宅、しかも店舗併用住宅という発想に至りました」といいます。こうして小島さんの「借りるor買う」からはじまった住宅問題は、「大家になって稼ぐ家をつくる」という判断になったのだといいます。
小島さん宅の間取り1、2階(画像提供/須藤剛建築設計事務所)
小島さん宅の間取り3、PH階(画像提供/須藤剛建築設計事務所)
建築、食、酒、アートなどに触れる暮らし。家を建てたことで、「自分の文化度」が上がったただ、東京の人気エリアで、土地を買って、新築で店舗併用住宅を建てるとなれば、金額的にも大きな決断になることには違いありません。
「土地を買ってこの建物を建てたのですが、建物の建築面積は90平米程度、建物は3階建てで、2階と3階、屋上が住まいになります。東京都内の新築マンション価格はあがる一方なので、結果としては新築マンションを買ったのと同程度の価格帯におさまりました」といいます。毎月の住宅ローン収支でいうと、家賃収入を返済額に充てれば、ご自身で支払う返済額は賃貸に住んでいたころの賃料の半額程度といいます。ただ、自宅にはサウナがあったり、屋上でバーベキューや流しそうめんができたりと、暮らしの満足度、充実度は比較になりません。
リビングを横から。つるされたグリーン&ギターが素敵(写真撮影/相馬ミナ)
2階の寝室&仕事スペース。手持ちの和箪笥もなじんでいます(写真撮影/相馬ミナ)
2階にはサウナも! 建築家もサウナ好きだったそう(写真撮影/相馬ミナ)
屋上。目の前は寺社で、遮るものがなく、大きな空が広がる(写真撮影/相馬ミナ)
「建築家と建てた家なので、インテリアをはじめ、好みのテイストで統一できていて、暮らしの満足度は比べ物になりません。ただ、電気配線工事の依頼や各種手続きなどは自分ですべてやらなくてはいけなくて、手間はかかりました。新築マンションや賃貸だと、ぜんぶセットアップされているので、決められた手続きをしていけば暮らしがはじめられますが、注文住宅なので一つひとつ自分がやらなくてはいけない。大変でしたが、家を建てるなかで、建築やインテリア、食、地域やコミュニティへの理解など、自分の暮らしの『文化度』があがった気がします」と家を建てた経験を振り返ります。
(写真撮影/相馬ミナ)
また、家について考えていたこの1年は、コロナ禍でリモートワークが導入され、働き方や家の価値、街との関わり方について考えることも増えたといいます。
「在宅時間が増え、家や街のことをより考えるようになり、単なる収入ではなく、大家として自分にも、街や地域にもよい影響があったらいいなと考えるようになりました。当初、店舗部分はワークシェアスペースやレンタルスペースも考えましたが、コロナ禍で先が見えないし、カフェやギャラリーはすでにある店と競合する……と考えを整理していき、最終的に酒屋、しかも角打ちもできる店がよいだろうと。そこまで考えたあとで、自分で酒店を見学してまわり、誘致することにしたんです」といいます。
大家として土地や不動産を所有し、テナントや店子の管理はすべて不動産管理会社にまかせて「収入を得るだけ」という人はたくさんいますが、企画から開発まで、自分で考え、行動に移すのはさすがとしかいいようがありません。
勝ち馬に乗るのではなく、街を盛り上げた結果としての「資産」にとはいえ、自宅の1階を店にするには、やはり覚悟と手間が必要だったといいます。
「自宅の一部で店をはじめるので、街や周辺住民との関わり方、当事者意識がまったく異なります。周辺にも、はじめる前もあいさつをしに行きました。清澄白河は、下町ということもあり、飲食店や商店、町内会などの横のつながりがあります。地域との関わりは、今までの賃貸や分譲マンションでは考えられないほど、深くなりましたね」と小島さん。
夕方、暗くなりはじめて明かりが灯ると、独特の風情が漂う(写真撮影/相馬ミナ)
無事に開店。近所の人がふらりと立ち寄っていくのがおもしろい(写真撮影/相馬ミナ)
いわゆる不動産を所有することで、「資産を形成する」「所得を得る」だけということは、したくなかったといいます。
「清澄白河は今、盛り上がっている街ですが、だからといって何をやってもうまくいくわけではありません。自分が当事者として地域や街を盛り上げていった結果として、地価や資産が守られたらいいなとは思いますが、勝ち馬に乗って売り抜けるようなことは考えていませんでした」といいます。自分が当事者として地域に関わり、地元愛が盛り上がった結果として、資産が維持できたらいいというのは、不動産本来のあり方といえるでしょう。
今回、小島さんが声をかけたことで、住宅街の一角に店を出すことになった、株式会社いまでやの専務取締役の小倉あづささんは、どのように考えているのでしょうか。
小島さんもこの1年でだいぶお酒に詳しくなったとか(写真撮影/相馬ミナ)
左がいまでやの小倉さん、右が小島さん。大家と店子って本来、こんな感じだったのでしょうか(写真撮影/相馬ミナ)
「昨年の秋ごろでしょうか、突然、出店しないかというメールが会社に来て、おもしろそうな人だから会ってみようというのが、はじまりでしたね。当初は店を出すつもりはなくて、2回目に会ったときも出店する意向はなかったのですが、小島さんが家賃を含めて、本気で関わろうという姿勢を見せてくれたんですよね。そこではじめて覚悟や思いを感じたというか。何度も場を設けて、弊社の社員にはない知識や経験をもらって……を繰り返していくうちに、結局、出店することになりました」と1年を振り返ります。
小島さんがはじめにIMADEYAさんに送ったプレゼン資料(画像提供/小島雄一郎さん)
ただ、この1年はお酒や外食産業にとって、先の見通せないつらい時期でもありました。緊急事態宣言が続き、お酒を飲み交わす場はすっかり精彩を欠いていたように思います。
「弊社は酒を販売するだけでなく、飲食店にも卸しているのですが、まさかこんなに長くコロナ禍が続くとは思ってなかったな」とぐちる小倉さん。
「ご近所の人は暖かくて、店の工事をしていると『今度は何屋ができるの?酒屋?楽しみだね』と言ってもらったり、『酒器も売っているんだね、今度来るから』と言ってもらえたり。期待度や関心度を実感していました」(小倉さん)
一方で、家飲み需要が高まっているという手応えもあり、小島さんと小倉さんとで店のコンセプト「はじめの100本」の完成度を高めていったそう。そして、デジタルを活用しつつ、お酒が好きな人も、すでに詳しい人も楽しめる仕掛けをして、今年8月、無事、お店がオープンとなりました。
「この酒をオススメする人の名前、顔、理由」がおもしろい。全部飲みたい(写真撮影/相馬ミナ)
グラスにいれると色がわかって、またきれい(写真撮影/相馬ミナ)
お酒って話ながら選ぶのがおもしろいんですよね。貴重な交流の場に(写真撮影/相馬ミナ)
「お酒は川の流れと同じで、常に人の暮らしに寄り添ってきたんです。今回、感染症対策で、飲食店で呑むのは難しい時期が続きましたが、だからこそ家では、美味しいお酒を飲んでほしいという思いは強くなりました。それと、美味しいものはなぜ美味しいのか、知識があるともっと楽しくなる。また、お酒の知識は人との会話で得るのが一番、記憶に残るんです。角打ちは、そういうお酒の楽しさを学ぶ場であり、サロンにもなる。人とお酒とが盛り上がる、豊かな場所にしていけたらいいですよね」と小倉さん。
「『お店なんて、よくできたね』と言われるんですが、3階建てのうち1階を自動車の車庫にしている家はよくありますよね。それと同じ感覚で、車庫部分にお店を誘致してきただけ。会社員でも、十分、ありえる方法だと思いますよ」と小島さん。1階に車庫があれば交流は生まれませんが、酒屋があることで、お客さんや地域と交流がうまれます。小島さん自身は、まだ家を所有している感覚はないといいますが、暮らしや地域に根ざしている感覚があるといいます。これも家の完成までに、多くの人とやりとりしたからこそかもしれません。
単に住む街、眠る街から、商いの当事者として関わる街へ。関わりが増えれば、手間や煩わしさも増えることでしょう。でも、それ以上に豊かに、得るものはきっとあるはず。買うor借りる、の発想を超えて、新しい暮らし方へ。すでに流れは変わっているのかもしれません。
静かに光る「いまでや」の看板。新しい光ですね(写真撮影/相馬ミナ)
●取材協力
小島雄一郎さん
・note
・Twitter
IMADEYA(いまでや 清澄白河)