
6万8,000~6万9,000円 / 20.7平米
山手線「巣鴨」駅 徒歩7分
★賃料下がりました★
精神が高ぶる幻想的な雰囲気の竹の林。外観からは想像できない世界が、エントランスから奥へ進むと広がっています。
コンクリートの箱の中央にすっぽりと丸く空間が切り取られ、中庭となっています。その丸く開いた空間に、上へ、上へと続く廊下が渦を巻き、まるで竹筒の中 ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
1年を代表するリノベーション作品を決める「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」。その授賞式が2021年12月7日に開催されました。応募作品228から選出された総合グランプリをはじめ、各受賞作から最新のリノベーションの特徴を読み解きました。
【注目point1】自然災害、コロナ禍……リノベーションが地域復興の力にここ数年、毎年のように発生する大規模な自然災害に加え、一昨年から続くコロナ禍によって、大きな苦境に陥っている地域の文化や経済。物理的に破壊された地域や施設、観光経済に打撃を受けた地域。日本各地に暮らす人々にも多くの暗い影を落としています。
今年のグランプリ作品は、そうした地域に落ちた暗い影を吹き飛ばすような大型案件。2020年、球磨川の氾濫により甚大な被害を受けた「球磨川くだり」の観光拠点となる施設を復興したものでした。被災前、人吉城を踏襲した和風建築だった建物を、川向きに大きく開口した新旧融合の意匠により再生。本瓦の大屋根にガラス張りの開口部を組み合わせ、復興のシンボルとなる美しい佇まいを見せています。
災害復興だけでもかなりの費用やマンパワーなどが必要ですが、観光施設という、コロナ禍においては切り捨てられられがちな要因をものともせず、1年という比較的短い期間で再生を果たした点で、選考委員から「もっとも強烈にコロナの逆風が吹いた分野でのリノベーション」「関係者の決意に胸が熱くなる」「未来期待の創造もなしえた」と高い評価を受けました。
いまだ続くコロナ禍という大きな逆境を乗り越え、地域のシンボルとなる美しい自然と融合した憩いの場をつくり、地域に希望の光がもたらされる。リノベーションが生み出す大きな可能性を感じとることができました。
●総合グランプリ
『災害を災凱へ(タムタムデザイン+ASTER)』株式会社タムタムデザイン
和の風情を宿す「HASSENBA」(人吉市)。木船での川下りという100年の歴史ある文化や景観を蘇らせています(写真提供/株式会社タムタムデザイン)
【注目point2】ワークスペースとプライベート空間の切り離しに特徴暮らしが劇的に変わったこの2年。テレワーク、おうち時間の充実などは今や普通のこととなってきています。今回のエントリー作品はコロナ禍においてプランされたものがほとんど。そのため、2020年同様、今回も「ワークスペースの設置」という職住融合を形にした作品が数多く見受けられました。
そんな傾向において、今回受賞した「商店街の昔ながらの家」「都市型戸建を再構成する。」の2作品は、ワークスペースとプライベート空間とを切り離すことを重視した点で注目が集まりました。一気に普及したオンライン会議によって、ワークスペースの独立性を確保する必要に迫られた結果だと思われます。
2作品とも、ワークスペースを玄関の土間スペースと合体するという特徴があり、いずれも店舗の奥に居住スペースがある店舗併用住宅や農作業スペースのある農家などをイメージした、職住融合家屋である点が共通しています。「職住一体の暮らしを商店街のお店になぞらえて、新しいオンとオフのつくり方を提示している」と選考委員から評価されました。
●500万円未満部門・最優秀賞
『商店街の昔ながらの家』株式会社ニューユニークス
マンションの玄関ドアを開けると、8.86畳の土間ワークスペースが。店舗の奥に居住スペースがある昔ながらの商店のつくりを想起させます(写真提供/株式会社ニューユニークス)
●1000万円以上部門・最優秀賞
『都市型戸建を再構成する。』株式会社アートアンドクラフト
1フロアの面積が約25平米ほどのコンパクトな都市型3階建て。写真上のように1階の玄関を兼ねた土間のワークスペースと非日常感を味わえる屋上の対比が印象的(写真提供/株式会社アートアンドクラフト)
【注目point3】家族の成長に合わせた2回目リノベリノベーションは、家族の成長や人数の変化、ライフスタイルなどに応じて、住まいをより快適に変えていくという役割があります。だから1回では終わらず、中には2回、3回……と行う人も。今回は子どもの成長に合わせて、住み替えではなく、2回目のリノベーションを選んだという作品が受賞しています。
「リノベはつづくよどこまでも」「ハウスインハウスでタイニーハウス」の2作品は、家族4人で約68平米、家族3人で55平米といずれもコンパクトですが、間取り変更によって小さいながらも子どものスペースを生み出しています。ロフトや家内小屋空間など、ユニークな方法で空間を区切っているのが大きな特徴で、さまざまなリノベ手法の可能性があることが見て取れます。
作品名「リノベはつづくよどこまでも」が表すように、今後、必要に応じて全体的に、また部分的にリノベを重ねて長く住み続けることへの可能性を感じさせました。
●1000万円未満部門・最優秀賞
『リノベはつづくよどこまでも』株式会社ブルースタジオ
子どもの誕生やライフスタイルの変化に合わせて2度目のリノベでアップデート。子ども部屋やワークスペースをロフトでゆるやかに区切る、家族がつながるプランです(写真提供/株式会社ブルースタジオ)
●ラブリーデザイン賞
『ハウスインハウスでタイニーハウス』株式会社ブルースタジオ
広い玄関土間の一角を子ども部屋に。収納付き2段ベッドとデスクというミニマムな空間が、小屋風のつくりで楽しい雰囲気に仕上がっています(写真提供/株式会社ブルースタジオ)
社会的課題を解決する作品や個性派リノベなどにも注目集まるリノベーションが持つ社会的役割は大きく、社会のさまざまな課題を解決する手法としてその有効性を最大限発揮しています。いくつか事例を見ていきましょう。
1. 地域の活動拠点を担う施設へのコンバージョン
使われなくなった建物を、地域の人々が集う別の目的の施設へ変えていくことは、各自治体や各地方で進められています。受賞作の「BOIL_通信発信基地局から、地域参加型の文化発信基地局へ」は、神奈川県川崎市の「若い世代が集う賑わうまちづくり」の一環として、NTT基地局を文化施設にコンバージョン。「Blank~ワークライフバランスからワークライフシナジーへ~」は東北での活動拠点を担う施設となるべく、マンションをコンバージョンした複合施設です。
●無差別級部門・最優秀賞
「BOIL_通信発信基地局から、地域参加型の文化発信基地局へ」リノベる株式会社
楽しい雰囲気のフロントヤード。建物内にはブレイクダンス等のダンススタジオ、シェアキッチン、ブルワリー、コワーキングスペースが(写真提供/リノベる株式会社)
●無差別級部門・最優秀賞
「Blank~ワークライフバランスからワークライフシナジーへ~」株式会社エコラ
築46年のマンションを、SOHO、アパートメント、ホテル、ワークスペース、シェアラウンジ、カフェ、イベントスペースに。地域に人の流れを生んでいます(写真提供/株式会社エコラ)
2. 可変性の高い仕掛けで、産業廃棄物を最小限に
間取り変更を伴うリノベーションは、産業廃棄物増加の問題も生じさせます。受賞作「doredo(ドレド)−気軽に居場所を作り、作り直せる暮らし方−」は、木製の「箱」を組み合わせることで、部屋数や収納量などを変更できるフレキシブルさが特徴。暮らしに合わせて自分で間取りを変更することができるため、工事で生じる廃棄物問題を解決する有効な手法になる可能性を提示しています。一般的な「nLDK」という間取りの概念を壊すこのプランは、今後、より求められていくのではと感じました。
●R1フレキシブル空間賞
「doredo(ドレド)−気軽に居場所を作り、作り直せる暮らし方−」株式会社リビタ
箱型モジュール「doredo」を自由に組み合わせて、間仕切り兼収納とする可変性の高さが特徴。住みながらワークライフバランスやライフスタイルに合わせての間取り変更が可能に(写真提供/株式会社リビタ)
3. 空き家問題を解決する住宅性能向上リノベ
全国にある空き家は約849万9000戸(「平成30年 住宅・土地統計調査」より)と、過去最多を記録。衛生環境や景観、治安などの悪化につながると危惧されている空き家問題を解決する方法として、リノベーションは有効です。高性能リノベーション、間取りや設備変更リノベーションで居住性能を格段に高めることで、新たな住み手を生み出しています。
●グリーンtoグリーン賞
「Green House」株式会社タムタムデザイン
写真上、築約45年。蔦の絡まる写真はビフォーの状態。内装だけでなく耐震性や断熱性も高め、地球や住む人に優しい住環境を実現しています(写真提供/タムタムデザイン)
●R5アフォータブル性能リノベーション賞
「国交省の長期優良住宅化リフォーム補助金のおかげで」株式会社まごころ本舗
築約39年。国からの補助金200万円を受けることで高性能化を実現。この家のように、“長期優良化リフォーム再販物件”が広がることが期待されます(写真提供/株式会社まごころ本舗)
●省エネリノベーション普及貢献賞
「省エネリノベーションをもっと身近に」株式会社インテリックス
燃費計算や断熱材、高性能内窓、熱交換式換気装置、全館空調エアコンを標準仕様化することで、わかりにくくコストも高いという省エネリノベーションをパッケージ化&低コスト化(写真提供/株式会社インテリックス)
また、理想のライフスタイルを目指した個性派リノベが今回も目立っていました。
●フリーダムリノベーション賞
「ビートルに乗ってリゾートへ? いえ、ここは団地の一室です。」株式会社フロッグハウス
築40年の団地のリビングにドーンと可愛いビートルが鎮座! ビーチ気分に浸れる内装も個性的です(写真提供/株式会社フロッグハウス)
●ニューノーマルリノベーション賞
「暮らし方シフト2020」株式会社リビタ
都心を離れ、郊外のメゾネットマンションで眺望と鳥の囀りを味わう暮らしにシフト。165平米超のゆとりある空間には夫婦それぞれのワークスペースと衣装部屋をリノベでプランしています(写真提供/株式会社リビタ)
●絶景リノベーション賞
「穏やかな瀬戸内の海とともにある日常」よんてつ不動産株式会社
海を眺めながら過ごしたいという施主の憧れを実現。細かく分かれていた間取りを広げ、寝室の壁を引き戸にすることで、寝室までもオーシャンビューに(写真提供/よんてつ不動産株式会社)
最後に注目したいのが、古き良き建物を生かしたリノベです。古民家は、古き良き情緒を感じさせてくれる地域の宝。とはいえ普段の使い勝手などを考えるとなかなか住み手が見つからない問題も。そんな古民家をリノベーションの力でより魅力的に快適に変えた作品を見ていきましょう。
●地域資源インテグレート賞
「アフターコロナを見据えた、地方建築家の新たな職能への挑戦」paak design株式会社
重要伝統建築群保存築に立つ築88年の古民家を、最新テクノロジーによって、チェックイン/アウトまで完全非接触の宿泊施設に(写真提供/paak design株式会社)
●フォトジェニック賞
「古民家が継なぐ、ふたりの夢」株式会社アトリエいろは一級建築士事務所
築100年超の古民家で指圧院とカフェを開業。移住+古民家リノベによって夫婦それぞれの夢が叶えられました(写真提供/株式会社アトリエいろは一級建築士事務所)
●ビジネスモデルデザイン賞
「目黒本町の家」株式会社ルーヴィス
築68年、昭和の趣が残る古民家。両隣が隣家と接するため、天窓と2階床に透過素材を用いて、1階に光を届けています(写真提供/株式会社ルーヴィス)
●地域貢献リノベーション賞
「中山道脇のロングライフシンボル、町並みを応援する家」株式会社WOODYYLIFE
築40年の日本家屋。物置化していた広縁を濡れ縁に変更してデッキを拡張。地元産木材をはじめ、自然素材でどこか懐かしさを感じる、中山道の町並みに似合う外観に(写真提供/株式会社WOODYYLIFE)
リノベーションが困難を乗り越え希望を見出す力となるコロナ禍に揺れ、それを抜きには語れない年が2年続きました。テレワーク、オンライン会議が当たり前のように行われる状況では、家の中に専用スペースをつくらざるをえない人も増え、そうした「ワークスペースの拡充リノベ」が、リノベーション業界の大きなテーマとなっているのが今回の受賞作品から見てとれました。
ライフスタイルを見直すことが余儀なくされ、生活拠点をも見直すような事例も多かったでしょう。いずれの見直しにおいても、暮らしの質を高める手法としてリノベーションが有効であることを、各作品は教えてくれています。
2020年に洪水による大きな被害とコロナウイルス感染対策の影響をもろにかぶった観光施設の復興がたった1年(関係者にとっては長い1年だったでしょうが)で成し遂げられ、地域の希望となったことに、地元・熊本をはじめ、選考委員会や、投票(反響数830いいね!)した方々も驚いたのではないでしょうか。
希望や心の拠り所が求められる時代、リノベーションは、人が楽しく集える場所を生み出し、仕事も暮らしも快適に過ごせる住まいを数多くつくっています。授賞式を終えて、以前にも増してリノベーションが時代にも人々にも求められていることを感じました。
次回も、人々が希求する素敵なリノベーション作品に出合える日を心から楽しみにしています。
赤絨毯に盛装が決まっている受賞者のみなさん。2022年も素敵な作品を期待しています(写真提供/リノベーション協議会)
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「洪水被害をうけた熊本県人吉市にもう一度、光を」。倒産寸前の川下りを新名所にした「HASSENBA」のドラマ
●取材協力
リノベーション協議会「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2021」
以前は慎重な構えだった「カーボンニュートラル」だが、菅政権が積極姿勢に舵を切って以来、住宅の脱炭素化が加速している。国交省が令和3年度の補正予算で「こどもみらい住宅支援事業」を創設し、特に若い世代に省エネ性能の高い新築住宅の取得を促す一方、東京都も補正予算で住宅の省エネ化を後押ししている。
【今週の住活トピック】
令和3年度補正予算で「東京ゼロエミ住宅」予算を増額/東京都
2021年10月31日からイギリスで開催されたCOP26(第26回国連気候変動枠組条約締約国会議)において、日本政府が脱炭素を目指す方策の一つに、住宅のZEH(ゼッチ)比率を高めることを挙げた。2050年のカーボンニュートラルに向けて、住宅の省エネ性能はZEH基準が一つの目安になっていくわけだが、詳しくは、当サイトの「脱炭素社会の実現に政府が本腰。2030年の住宅のあるべき姿とは。」、「カーボンニュートラルで注目のZEH住宅、2021年の導入率は26%」の記事で説明をしているので、確認してほしい。
政府のこうした動きを受けて、一戸建て住宅関連の業界団体等がこぞってサイト上に「ZEH専用」ページを設けている。
(一般社団法人、以下一社)住宅生産団体連合会「ZEH関連情報」ページ、(一社)日本木造住宅産業協会「ZEH特設ページ」、(一社)プレハブ建築協会「ZEH特設サイト」、(一社)リビングアメニティ協会「ZEH専用サイト」などを見ると、いずれもZEHとはどんな住宅かを説明し、会員各社や政府(国土交通省、経済産業省、環境庁)の関連サイトを紹介するものになっている。
ちなみに、「ZEH(ゼッチ)とは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)の略。快適な室内環境を保ちながら、住まいの断熱化と高効率な設備によって、できる限り省エネにつとめ、太陽光発電などでエネルギーをつくることにより、年間で消費する住宅のエネルギー消費量が、正味(ネット)で、おおむねゼロ以下になる住宅のこと」(住宅生産団体連合会「ZEH関連情報」より)だ。
住宅の断熱化だけでなく、電気などのエネルギーの消費量の少ない住宅設備を設置し、太陽光発電などエネルギーを生み出す設備も求められる。当然、新築時のコストにも影響する。となると、補助金などでコスト上昇をカバーする政策も抱き合わせで用意することが求められる。
国土交通省や東京都は令和3年度補正予算等で住宅の省エネ誘導に対応政府は、令和3年度補正予算で「こどもみらい住宅支援事業」を創設し、子育て世帯・若者夫婦世帯に対し、省エネ性能の高い新築住宅を取得したり住宅の省エネ改修をしたりする際に補助金を交付する事業を開始した。新築住宅で最大100万円の補助金で住宅取得費をカバーする構えだ。
令和4年度の税制改正でも、「住宅ローン減税」を延長する際に、住宅の省エネ性能によって減税額を変えることで、現行の省エネ基準に適合する住宅やZEH水準などの住宅へと誘導を図る動きになっている。
それぞれの詳しい内容については、当サイトの「子育て世帯・若者夫婦の新築住宅に最大100万円補助!新設「こどもみらい住宅支援事業」を解説」や「住宅ローン減税、2022年以降どうなる? これから家を買う人が知るべきポイント」ですでに説明しているので、見てほしい。
一方、東京都でも令和3年度の補正予算で、「『東京ゼロエミ住宅』の新築等に対する助成事業拡充」や「家庭における熱の有効利用促進事業で一部助成率の引き上げ」などを行っている。こうした動きは、今後広がっていくと考えられるので、住んでいる自治体で住宅の省エネ化に対する補助金などがないか、事前に調べるようにするとよいだろう。
まだ間に合う!補正予算による東京都の助成制度実は東京都の場合、地価が高いことなどもあって、住宅の敷地が狭く、2階建てや3階建ての一戸建てが多い。また、住宅が密集しているので、隣家の日当たりなどを考慮した制限などにより、屋根の面積が小さく形状も変則的になることが多い。となると、屋根に太陽光発電設備をあまり設置できないことになる。
したがって、消費量と創出量でプラスマイナスゼロにするだけの十分な発電量を生み出せないので、ZEH水準の住宅にするのが難しいというのが、東京都ならではの現状だ。
そんな状況下でも、住宅の省エネ化を推進しようと考えられたのが、「東京ゼロエミ住宅」だ。太陽光発電などによる再生可能エネルギーの基準を緩和し、住宅の断熱性や設備の効率化などを重視した、独自の省エネ基準となっている。※ゼロエミとは、ゼロ・エミッションの略
東京都では2019年度から「東京ゼロエミ住宅」の助成制度を設けている。今回、補正予算によって約19億円を追加し、助成対象となる件数を増やした。東京都内の「東京ゼロエミ住宅」の認証を受けた新築住宅が対象で、助成金額は一戸建てで50万円/戸、集合住宅で20万円/戸となっている。
「東京ゼロエミ住宅」の補正予算による追加募集は、第7回の募集が2022年1月24日から1月28日まで、第8回が2月28日から3月4日までと予定されている。
東京都では、窓やドアの断熱改修でも助成制度(家庭における熱の有効利用促進事業)を用意しているが、令和3年度の補正予算によって、助成率を1/6から1/3に引き上げた。一つ以上の居室のすべての窓を指定された製品で断熱改修することなどが条件で、助成率の引き上げによって、「高断熱窓」で100万円、「高断熱ドア」で16万円にそれぞれ上限額が引き上げられた。2022年1月1日から3月31日までが申請受付で、予算額に達し次第終了となる。
お得な制度があれば、積極的に利用したいものだが、もちろん注意点もある。こうした助成制度は、住宅性能を高めるためにコスト高になる分を支援するためのものだ。補助金をもらうためだけに、大切な住宅の取得を急いだり、十分考慮することなく性能のレベルを決めたりするのは、本末転倒だ。
一方で、今後は住宅の省エネ性能が求められることになるので、性能の違いなどについて事前に情報を集め、しっかりと理解しておくことが大切だ。そのうえで、助成制度などを賢く利用できるよう準備をしておくことも必要だろう。
●関連サイト
東京都:令和3年度補正予算で「東京ゼロエミ住宅」予算を増額
東京都:「東京ゼロエミ住宅」の新築等に対する助成事業拡充のお知らせ
東京都:東京ゼロエミ住宅導入促進事業
東京都:高断熱窓・ドア助成率引上げのお知らせ
2021年10月に木材利用に関する法律が改正された。もっと建築物に木材を利用しましょう、というものだが、なぜ今、国は木材利用を促進するのか。その背景には、単に脱炭素社会を進めるためだけでなく、森林を健全に保つことで人々の生活を豊かにし、地域経済を活性化しようという目標があった。今後の住宅やまちの建築物はどうなっていくのだろうか。具体的に見てみよう。
日本の人工林の半数以上がすでに利用期を迎えている2021年10月に改正された法律は「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」。要はもっと木材を利用しましょう、利用しやすい環境も整えます、という法律なのだが「改正」という通り、もとの法律は10年以上前の平成22年に制定された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」だ。
「戦後復興による木材需要の高まりを受けて、日本全国で植林活動が盛んに行われるようになりました。それにより現在では約54億立方メートルという豊かな森林資源を保有するまでになりました。植林から50年以上が経って大きく育ち、本格的な利用期を迎えた人工林がたくさんあるのです」と林野庁の林政部木材利用課、櫻井知さん。
平成29年(2017年)時点で利用期を迎える51年生以上の人工林が全体の50%に達している。なお「齢級」とは、植林からの年数を5年の幅でくくった単位。植林した年を「1年生」として、「11齢級」なら51年~55年生となる(資料提供/林野庁)
高性能林業機械による伐採の様子(写真提供/林野庁)
樹木は高齢になると成長量が減少し、CO2吸収量も減少するため、森林サイクルを回して若い森林を増やすことが重要だ。森林サイクルを回すメリットは、CO2削減だけではない。このサイクルを回すことで下記図の通り、全国各地の山間部の経済や雇用、生物の多様性、国土や水資源の保全、豊かな海の創出、健康の促進……多様なSDGsにも貢献することになる。「森林」にはそれだけたくさんの産業や、それに伴う人々が関わっていることになる。
人工林を伐って、使って、植えて、育てるという森林サイクルが回ることで、様々なSDGsに貢献することができる(資料提供/林野庁)
木材は国外依存度が高く、安定的な供給が課題そこで平成22年(2010年)に公共建築物での木材利用を促進する「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が定められた。さらに木材の利用量を増やすため、2021年に入って公共建築物等だけでなく民間の建築物での利用も促す法律に改定されたというわけだ。
木材の利用事例。江東区立有明西学園(写真提供/ウッドデザイン賞運営事務局)
木材の利用事例。東急池上線戸越銀座駅(写真提供/ウッドデザイン賞運営事務局)
改定内容の大きな特徴は、対象物を単に民間建築物に広げただけでなく、建築主などの事業者による木材利用の取組を国や地方自治体が後押ししたり、川上から川下まですべからく見通しをよくし、お互いの信頼関係をつくることができるよう「建築物木材利用促進協定制度」が新設されたことにある。
木材の流通経路は、川の流れに例えて、よく「川上」「川中」「川下」と呼ばれる。「川上」は森林所有者や丸太の生産者、造林などの林業従事者など、主に原材料としての木材を供給する立場のこと。「川中」は木材の流通に関わる業者や、単板・合板、チップ等の加工業者、プレカット(施工前にあらかじめ使用サイズや形状に加工しておくこと)業者などが当てはまる。「川下」は住宅メーカーなどの施工会社、家具製造会社、バイオマス事業者、建築主や消費者など、木材の最終利用者や最終製品の提供者や利用者を指す。
「山に木が植えられてから、住宅などに使用される間には、たくさんの人々が関係しています。そのため川上からは川下の、逆に川下から川上も、それぞれが抱えている課題が見えにくくなっています」。また間に多くの人々が絡むということは、お互いの信頼関係が築きにくいということもある。
特に信頼関係が重要だということは、最近のウッドショックで例えるとわかりやすい。新型コロナウイルス感染症拡大により、アメリカでは一時期経済が落ち込んだ一方で、急速に新築戸建需要が高まり、木材の供給が需要に追いつかなくなった。そのため木材の価格が世界的に高騰。また、コンテナ不足によって、欧州、北米の現地サプライヤーは、アメリカ向けの供給を増やしたことなどにより、日本向けの供給量は減少。これがウッドショックだ。
(写真/PIXTA)
先述の通り森林資源が豊かな日本は、一見ウッドショックと無縁かと思われがちだが、日本でも木材価格が高騰した。これまで多くの木材を輸入していた日本は、そもそもウッドショックを受けやすい。だからといって豊富なはずの国内に目を向けても、蛇口をひねるように木材は増えないからだ。例えば製材事業者ひとつとっても、これまで以上の製材を行うためには設備投資が必要になる。「投資後も木材の利用が進むようなら製材事業者としても投資するでしょうが、一時の需要だけで投資するのはリスクが高いのです」と櫻井さん。
投資の難しさを理解するために、もう1つ加えるならば、木は植えて50年後にようやく伐採できるということ。春に植えて秋には収穫できる稲作とはタイムスケールが大きく異なるのだ。ウッドショックで言えば「伐れば植えなければならないが、植えた木を50年後に買ってくれるんですか?」と懐疑的になってもおかしくはない。林野庁では、中期的な戦略として、サプライチェーン・マネジメントの構築によるハウスメーカー等からの国産材の安定需要の獲得、加工流通施設の整備等による国産材製品の供給量の増大や競争力の強化、ICTを活用した生産流通管理等による原木の供給量増大を図っていくこととしている。そこで「建築物木材利用促進協定制度」にも、国や地方自治体が川上・川中・川下の三者の信頼関係の構築に一役買うことが期待されている。
法改正により川上から川下まで、信頼関係が築ける環境をつくる「建築物木材利用促進協定制度」とは、建築主となる民間の事業者等が、安心して木材の利用に取り組めるようにするため、国や地方公共団体、そしてその先の川中や川上サイドと結ぶ協定だ。主に下記のような形態が考えられている。国や地方公共団体が協定に関わることで、事業者等による取組が社会的に認知されやすくなったり、川上から川下までの関係する各者がお互いの信頼関係を構築しやすくなる。
建築物木材利用促進協定制度による協定のイメージ例。建築主となる事業者は、木材供給事業者等と本協定を締結することで、木材の安定的な供給を受けやすくなる。一方で木材を供給する側も安心して供給できる(資料提供/林野庁)
川下である建設事業者側から見れば、これまで製材を販売する川中までは知っていたとしても、森林所有者など木材を供給する川上の事情まではあまり把握していなかった。しかしこの協定制度によって、利用する木材の産地にこだわることができたり、川上では今どんな種類・樹齢の木材が供給可能であるか、再造林は確実に行われているかなど、全体の流れを隅々まで把握できるようになるから、事業計画を立てやすい。逆に川上の木材供給側は川下の考えを直接聞けるようになるため、木材の供給や植林計画が立てやすくなる。その信頼関係は国や地方自治体等が入ることで裏付けもされる。
新設された「木材利用促進本部」は、いわばこの協定制度の旗振り役といったところ。建築物での木材利用促進に関する基本方針の策定や、実施の推進を行う。これまでは農林水産大臣や国土交通大臣の役割だったが、民間企業を広く巻き込む今回の改正後は環境大臣、経済産業大臣、総務大臣、文部科学大臣といった、関係するすべての大臣が加わっている。
さらに官民協議会「民間建築物等における木材利用促進に向けた協議会」(通称「ウッド・チェンジ協議会」)が昨年9月に立ち上がった。これには日本経済団体連合会(日本経団連)、経済同友会、日本商工会議所の経済3団体をはじめ、日本建設業連合会など建築サイド、全国森林組合連合会や全国木材組合連合会など木材供給サイド、全国知事会など行政サイド……という具合に、川上から川下までの各界の関係者が一堂に会する協議会だ。「法改正を契機として、経済3団体を含む幅広い団体に参画いただくことができました」と櫻井さん。今回の法改正は、木材の利用促進にオールニッポンとして一丸となって取り組もうという意思の表れともいえる。
環境問題への取り組みは、もはや企業の至上命題実際に、民間企業が木材利用を進めている事例も出てきている。例えば三井ホームは国産材も用いて木造マンション「モクシオン」を建設。また三菱地所は建材用の木材の製造から販売までのビジネスフローを統合することで、中間コストを抑制し、新たな建材の生産や、プレファブ化を行う新会社「MEC Industry」を設立。通常の一戸建てでの商品力・供給力を高めるだけでなく、中高層建築・大規模建築物においても木材利用を推進していくことを目指している。
昨年10月に竣工した東京都中央区銀座の「HULIC &New GINZA 8」(ヒューリック アンニュー ギンザエイト)も民間企業による木材利用促進事例の一つだ。
HULIC &New GINZA 8。約60mという高さのうえ、細長いため先進的な技術が必要だった。設計施工は竹中工務店、基本デザイン監修を隈研吾建築都市設計事務所が担当した。
日本初の耐火木造12階建て商業ビルで、木造+鉄骨造のハイブリッド建築。内装では木材を利用した柱や梁、天井が現し(構造材が見える状態のまま仕上げる方法)となっていて、外装材にも木材が利用されている。しかもこの建築で使用された木材と同等量の、約1万2000本が福島県白河市で植林され、森林サイクルを回している。
貸室内観。外観には天然木のルーバーをあしらい、内装では耐火集成材の柱や梁、CLT(直交集積板)の天井が現しとなっている
ヒューリックプロパティソリューション(株)の浦谷健史副社長は「きっかけは2018年の、経済同友会で提言としてまとめられた『地方創生に向けた“需要サイドからの”林業改革~日本の中高層ビルを木造建築に!~』。主に都心における建築での木材利用を促進し、それにより林業の活性化を図り、地方の創生に繋げていこうという趣旨です。もともと当社は約10年前からCO2削減に着目して事業を展開してきましたが、これに地方創生を加えた方針に賛同し、自ら第一号のビル(HULIC &New GINZA 8)を建てて世の中に木造利用の促進を訴えようと考えたのです」
CO2削減に以前から着目していたというが、それはなぜか? 「ESG投資(環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資)が注目されているように、これからの企業にとって、企業価値を高めるために環境問題に取り組むことはもはや必須だからです」
実際、同社は約7年前から太陽光発電事業に参入し、全国各地にメガソーラーを建設。そこで発電した電力を、本社ビルをはじめグループ全体で活用している。2024年までに自社で使用する電力を再生可能エネルギーへ100%転換、2030年には同社が保有する全ての建物において 電力由来のCO 2 排出量ネットゼロ化を達成するという目標も掲げられた。ちなみに、このメガソーラーのひとつが福島県にあり、それが縁で今回の福島県白河市の森林サイクル活動につながったそうだ。
太陽光発電施設(埼玉県加須市)。ヒューリックのメガソーラー。他に福島県等にもある。同社はメガソーラー以外にも自社ビル屋上に太陽光発電パネルを設置している(写真提供/ヒューリック)
法改正によって森林サイクルが回りやすくなってきた今回の法改正について浦谷さんは「改正の目的である『民間建築物に木材利用を広げよう』ということは、まさに当社がHULIC &New GINZA 8で身をもって示そうとしたこと。改正の趣旨や改正点は、当社が取り組んでいる姿勢と同義だと考えています」という。
加えて、実際に手がけたからこそわかる、木材利用の課題についても教えてくれた。それはコストだ。高層化や耐火に対応できる木材は最近の技術で、まだ広く普及していないこともあって、現状では高層化・耐火建築物に木材を利用しようとすると、鉄筋コンクリート造よりもコストが高くなるという。
ただし浦谷さんは同時に、この法律によって日本の木材の生産者(川上)や製造者(川中)の活動が促進されれば、市場が活性化されてコストが下がるだろうと期待していている。また「建築物木材利用促進協定制度」などで、福島県白河市とのような関係が他地域とも築けることに期待を寄せる。「やはり国産材を使いたいですし、建物によってそれぞれ特徴にあった木材を利用したいと思います。そのために全国の様々な木材生産者等とつながりやすくなることはとても有効だと思います」
同社は今後も、現在計画中の新宿区の老人ホーム建設をはじめ木材利用を推進していくという。「これを一時のブームで終わらせてはいけません。木材利用は継続的にやること、森林サイクルを回すことに意味があるのですから」
森林サイクルを回すことで脱炭素化が図れるだけでなく、地域経済も潤い、雇用が増え、森や海が保全されて私たちの生活まで豊かになる。今回の法改正では木材利用を国民運動として展開するため「木材利用促進の日」(10月8日)と「木材利用促進月間」(10月)が法定された。私たちもまずは家を建てる際に、利用する木材に思いをはせることから森林サイクルについて考えてみてはどうだろう。
●取材協力
林野庁
ヒューリック
カーディフ生命が実施した「第3回 生活価値観・住まいに関する意識調査」によると、テレワーカーの5割が住宅購入に意欲的だという。コロナ禍で急速に働き方改革が進み、テレワークは一過性ではなく、今や当たり前の働き方になりつつあある。2021年を振り返ってみても、在宅勤務などの影響で住宅市場にも少なからず変化が見られた。
【今週の住活トピック】
「第3回 生活価値観・住まいに関する意識調査」を実施/カーディフ生命
調査結果によると、住宅未購入者のうち、「住宅を購入したい」と回答した人は 36%。なかでも20代は52%と突出して高かった。加えて、テレワークを経験したことがある「テレワーカー」に限定すると、「住宅を購入したい」と回答した人は 51%になり、住宅購入意欲が高いことが分かった。
「住宅を購入したい」人にその理由を聞くと、最多は「自分の家を持ちたい」が62%だった。購入したい理由の中で、テレワーカーが全体平均よりも多いのは、「趣味を追求するための空間がほしい」(全体平均:19%/テレワーカー25%)、「自分だけの空間をつくりたい」(全体平均:24%/テレワーカー29%)などで、パーソナルスペースを求める意向が高いことがうかがえる。
次に、住宅購入で検討している場所について「都心か郊外か」を聞くと、都心派は48.2%、郊外派は51.8%と拮抗する結果となった。ただし、テレワーカーに限定すると、都心派が58.9%と全体平均に比べて高く、前年の結果からさらに上昇している。カーディフ生命によると、年代別では30代と50代で都心派が多く、交通の便や生活環境の良さを理由に挙げているという。
出典:カーディフ生命「第3回 生活価値観・住まいに関する意識調査」
テレワークの普及により在宅勤務の時間が増え、住宅ニーズも変化さて、筆者は【今週の住活トピック】の連載記事をほぼ毎週執筆している。2021年に執筆した44本のうち、新型コロナの影響による記事を取り上げた回数も多い。振り返ってみると、最も影響が大きかったのが「テレワークの普及による在宅勤務の増加」だろう。以下、記事で取り上げたコロナ禍の変化について紹介していこう。
まず、在宅勤務によって浮いた通勤時間を、家族と共に過ごす時間に回す家庭が多く、家族で一緒に夕食をとる(夕食後再びテレワークの場合も)などの生活時間の変化も起きた。
テレワークの中でもオンライン会議は音を遮断する必要があるし、浮いた通勤時間を自分の趣味などにかける人もいるため、住宅の「部屋数を志向」する傾向も強まった。となると、広さや間取りを重視するので、「一戸建て志向」が高まり、結果として2021年は一戸建ての売買が堅調だった。一方、新築マンションでは、最近は共用部分にテレワークができる施設を設けることが増えている。
コロナ禍が落ち着いた後も、頻度は減れども「テレワークは定着」すると見られている。通勤が毎日でないのならということで「地方移住」や「二拠点居住」への関心も高まった。住宅購入の際も「郊外」人気が高まったともいわれた。ただし、今回の調査結果にもあるように、「都心」へというニーズも強いので、地方や郊外という動きは実際には限定的と思われる。
また、テレワークではないが、学生の「オンライン授業」の比率が高くなった。学校の近くに賃貸を探すという動きから、オンライン授業の環境のある賃貸へと、重視する項目も今後は変わっていくだろう。
ほかにも、住宅の新型コロナウイルス感染予防による変化も見られた。通勤先から帰宅すると、食事より前に入浴をするといった生活時間の変化が見られ、一戸建ての場合で「玄関クローゼット」の設置が増加するといったデータもあった。玄関脇のクローゼットにコートやかばんなどを収納して、ウイルスを居室室内に持ち込まないという工夫だ。
不動産取引の現場でも、デジタル化がますます進展他方で、住まい探しの方法にも変化が見られた。賃貸の部屋探しでは、「オンライン内見」が普及した。オンライン接客の方法を研究し、対応を始めた不動産会社も多い。
政府もデジタル化に力を入れている。売買契約の前に行う「重要事項説明」は、対面で行うのがルールだったが、一定条件を満たせばオンラインで実施できるようになった。今後は、契約書などの書面もデジタル化していく方向で、不動産取引の現場でもデジタル化が進んでいくだろう。
<まとめの文>
2021年を振り返ると、長引くコロナ禍で働き方が変わったことで、マイホーム検討者の住まいの立地や希望条件に大きな変化があった。住まいに家族団らんだけではなく、仕事や自分時間を楽しむ場としての機能を求める動きは今後も続くだろう。また、生活する上で必要な感染対策を効率的に行いたいというニーズは、今後も間取りや仕様として定着していくだろう。
年が明けて2022年を迎えたが、オミクロン株の出現で新型コロナの影響が不透明な状況だ。今後も住宅市場で、新しい変化が見られるのかもしれない。
●関連サイト
カーディフ生命「第3回 生活価値観・住まいに関する意識調査」を実施
2020年10月、菅前首相の「2050年カーボンニュートラル宣言」により、地球温暖化対策の「脱炭素」に対する日本全体の関心が高まりました。しかし、すでに世界では、さまざまな分野で脱炭素化が進み、新たなビジネスも生まれています。SUUMO編集長池本洋一が、NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサーとして「脱炭素」を追ってきた堅達京子さんに最新事情を聞きました。2021年10・11月にイギリスで行われたCOP26取材時の様子、そして住宅業界の脱炭素の動きはどうなっているのでしょうか。
各地を襲う洪水や巨大台風。地球温暖化を食い止める瀬戸際にきている近年、世界中で、ハリケーンや大雨による洪水など異常気象が深刻化しています。日本でも、2019年台風15号19号による大水害、2020年熊本豪雨、2021年8月の記録的な大雨など自然災害が頻発。「地球が何かおかしい」と感じる人も多いのではないでしょうか。地球温暖化の主な原因となっているのが、産業革命以降、化石燃料の使用によって増加した二酸化炭素(CO2)などの大気中の温室効果ガスです。
(画像提供/堅達京子)
(画像提供/堅達京子)
2021年10・11月、イギリスのグラスゴーで行われたCOP26は、地球温暖化の進行により起きている問題について、国際社会がどのような対策をとるのか、話し合うための会議でした。
そもそも、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「2050カーボンニュートラル」が意識され始めたのは、2018年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)1.5℃特別報告書です。世界の科学者が発表する論文や観測・予測データを、選ばれた専門家がまとめています。当時は、温暖化対策の国際合意「パリ協定」で決めた産業革命前の地球の平均気温からの上昇を2℃に抑えることが野心的目標でした。まだ1.5℃は努力目標だったのです。しかし、2018年の特別報告書は、1.5℃に抑えた場合と2℃に抑えた場合の影響の大きな違いを科学的に示し、1.5℃に抑えるには、2050年までに世界のCO2排出量を正味ゼロにすることが必要だと明らかにしたのです。
そして、2021年8月のIPCC第6次評価報告書においては、1.5℃達成のために残された時間が少ないことに警鐘が鳴らされました。このため、COP26では、1.5℃を目指すことが公式文書に明記され、世界のスタンダードな目標になりました。
地球の平均気温が上がるとどんな危機が訪れるのでしょうか。COP26の取材を終えて帰国したNHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー堅達京子さんはこう言います。
「地球の平均気温が1.5℃や2℃上昇する危険性はピンと来ないかもしれませんが、1.1℃上昇した現在でも北極圏の氷や永久凍土が溶け始めています。気温の上昇が続けば、海水温が上がり、大気や海流の動きが変わることで、アマゾンの熱帯雨林がサバンナ化し、ついには南極の氷床が融解する可能性があるのです。この『温暖化のドミノ倒し』が起こる境界は、2℃前後と見られています。回避するためには、2030年までにCO2排出量の大幅な削減が必要です。1.5℃から先を食い止めないと、『温暖化のドミノ倒し』で、ホットハウス・アース(灼熱地球)になり、人類文明にとって最大の危機が訪れます。1.5℃は地球のガードレール、今が地球温暖化を食い止める正念場なんです」(堅達さん)
2020年は北極圏で38℃を記録。グリーンランドなどでも氷床が融解している(写真/PIXTA)
堅達さんは、気候変動やSDGsをテーマに数多くの番組の取材・制作に携わってきました。中でも、2017年12月、NHKスペシャル「激変する世界ビジネス”脱炭素革命”の衝撃」を放送すると、「脱炭素」という言葉が初めてツイッターのトレンドワードになり、検索数も急上昇。大きな反響を呼びました。2021年9月には、著書『脱炭素革命への挑戦』を出版しました。世界の潮流と日本の課題が、とてもわかりやすくまとまっていると、ビジネス界だけでなく、本を読んだ一般の人々からも、「今、読むべき本」との声が寄せられました。
堅達京子さんは、2007年に行ったIPCCの議長へのインタビューで気候変動問題の深刻さを痛感。「なぜ、これほど重要なことを伝えてこなかったのだろう」と思い、以後、ライフワークとして脱炭素の現状を伝えることに取り組んできた(画像提供/堅達京子)
「2030年まで、あと8年で何とかしなくてはいけません。イギリス滞在中、BBCでは、COP26を朝から晩まで放送し、オリンピック並みの関心の高さがうかがえました。地球温暖化による危機が差し迫っているリアリティを感じた2週間の取材でした」(堅達さん)
(画像提供/堅達京子)
(画像提供/堅達京子)
脱炭素化なくしてビジネスはできない!? 産業を仕組みから変える!世界では、むしろこの危機をビジネスチャンスと捉える動きがあります。その動きを加速させたのは、2020年7月にEU(欧州連合)が新型コロナウイルスによる景気後退対策として創設した「欧州復興基金(Next Generation EU)」です。約94兆円に上るその基金は約3分の1が気候変動対策に充てられ、「グリーンリカバリーファンド」とも呼ばれています。
「『グリーンリカバリー』(緑の復興)とは、コロナ禍からの復興で必要になる巨額の資金を、脱炭素社会を構築する経済刺激策に投じようという考え方です。脱炭素を実現するには、化石燃料に頼ってきた産業の仕組みそのものを変えないといけません。世界各国は‘‘脱炭素革命‘‘に向け、大きく舵を切ったのです」(堅達さん)
2020年9月には、CO2の最大排出国である中国が、「2060年までにカーボンニュートラルを目指す」と表明し、アメリカは、バイデン政権発足直後の2021年2月に「パリ協定」に復帰。アメリカのグローバル企業も脱炭素に向けて行動を本格化しました。
「変化を印象づけたのは、アップルによる『2030年カーボンニュートラル宣言』です。ポイントは、自社だけでなく、iPhoneなどの自社製品の部品を提供するサプライヤー全体に及ぶこと。EUでは、2035年にCO2を排出するガソリン車やディーゼル車などの新車販売を全面的に禁止します。脱炭素なくして世界でビジネスができなくなる日も遠い未来ではありません」(堅達さん)
EV化を促進しているEUでは、EVステーションの増設が進む(写真/PIXTA)
脱石炭火力で期待される洋上風力発電。イギリスやドイツでは、3000基以上がすでに稼働している(写真/PIXTA)
住宅業界で急がれる脱炭素化。世界は? 日本は?金融界の変化と産業界が挑み始めた脱炭素化の取り組み。住宅業界についてはどうでしょうか。
「長期にわたって社会のインフラとして使い続ける住宅・建築物は、まっさきに手掛けるべき分野です。COP26議長国のイギリスでは、EV充電スタンドの新築住宅での設置を義務化しました。アメリカも200万戸以上のサステナブルな住宅や商業ビルの建設や改修を行うことを決め、カリフォルニア州では新築住宅の太陽光設置を義務化しています。日本でも2021年6月に政府が『グリーン成長戦略』を閣議決定しました。まだまだスタート地点ですが、今後、遅れていた住宅分野の脱炭素化が加速すると期待しています」(堅達さん)
2050年までに目指すべき住宅・建築物の姿とされているのが、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)です。これは、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支ゼロを目指した建物のこと。必要となるのは、断熱性能を高めることによる省エネと、太陽光発電設備等による再エネ(再生可能エネルギー)の導入です。
2枚のガラスの間に、乾燥空気やガスを封入した複層ガラスは、断熱性能が高い(写真/PIXTA)
「省エネ」に加えて、「創エネ」も必要。日本でも、新築住宅への太陽光パネル設置義務化の議論が始まっている(写真/PIXTA)
2030年までに、新築される住宅・建築物において、ZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が必要になり、新築戸建て住宅の6割において太陽光発電設備が導入される見込みです。
住宅業界の大手メーカーによる開発競争も激しくなってきました。進む注文住宅の脱炭素化に対し、遅れていた賃貸分野では、積水ハウスが、賃貸住宅「シャーメゾンZEH」を展開。2021年1月時点の累計受注戸数は3806戸です。大東建託は、LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)賃貸集合住宅を埼玉県草加市に2021年6月に完成させました。建設から解体までを通じてCO2排出量をマイナスにするLCCMの基準を満たす賃貸集合住宅は日本で初です。
大東建託の脱炭素住宅「LCCM賃貸集合住宅」(写真提供/大東建託)
脱炭素住宅の普及には、消費者の認知が重要です。「2020年注文住宅動向・トレンド調査」(2020年8月リクルート調べ)によると、建築者(全国)の ZEH認知率は67.0%。そのうち、導入した人は21.8%でした。ZEH導入による光熱費の経済的メリットは、平均で6865円/月です。2025年に、省エネ基準適合義務化、省エネ表示の広告義務化を控え、光熱費の目安など省エネ性能を不動産情報サイトでラベル表示する試みも検討が始まりました。
「メリットをビジュアル的にわかりやすく表示し、『見える化』するのは大事ですね。地球に優しいだけでなく、ヒートショックの防止、光熱費の節減など消費者のメリットがあり、中長期でみれば初期投資コストを取り戻せることもアピールするとよいでしょう」(堅達さん)
脱炭素化がスタンダードになったヨーロッパ。日本は遅れを取り戻せるか日本では、環境問題を意識高い系の人がすることだとひとごとに考えたり、コストが高いと言われている再生可能エネルギーの推進は景気対策に水を差す、と考える人もいますが、ヨーロッパの人々はどのように受け止めているのでしょうか。
「特にSDGsの教育を受けた若者の意識は高いです。COP26開催期間中、グラスゴーでは、若者主導のデモが行われました。赤ちゃんを連れた参加者もいて、沿道の家から温かな声援が送られていました。自分の子どもやその子どもたちのために、今がんばらないといけないという気運が高まっているのです」(堅達さん)
滞在したビジネスホテルの朝食に出たヨーグルト。リサイクルカップを紙で巻いた簡易包装で、目立つところに環境性能表示のQRコードが。脱炭素化の取り組みが、具体的な商品に落とし込まれていた(画像提供/堅達京子)
世界では、CO2排出量1トンにつき規定の金額を税として徴収する炭素税(カーボンプライシングの1種)の引き上げが議論されています。2020年12月に行われた国連の気候野心サミットでは、カナダは連邦炭素税を2030年にCO2排出量1トンあたり、約1万5000円にまで大幅に引き上げると発表しました。さらに、EUで検討している「国境炭素税」は、地球温暖化対策が不十分な国からの輸入品に事実上の関税を課すものです。脱炭素に対し結果を出さないと、企業の利益や国益が守れないようになってきているのです。日本でも実質的な炭素税である『地球温暖化対策税』が2012年から導入されていますが、企業などが負担しているCO2排出量1トンあたり289円は世界に比べると極めて低い金額です。
「日本でもCO2を減らした企業が得をして減らさなかった企業が損をする仕組みづくりが必須だと思います。住宅業界に関しては、政府が補助金や法人税、固定資産税の税制優遇措置を進め、施主側も省エネに配慮した建物の設計を要求し、当初に必要なコストを受け入れることが必要です。とはいえ、我慢ばかりの脱炭素では、理解は得られないと思います。省エネに配慮した性能の高い住宅は住む人にとって、快適で健康面のメリットがあります。ノルマとして脱炭素を捉えるのではなく、未来への投資としてポジティブに考えてもらえたら」(堅達さん)
最後に、堅達さんが日々行っていること、私たちができることを聞きました。
「私は、家に内窓をつけて断熱性能を高め、フードロス軽減のため、ベランダにコンポストを置いています。なかなか習慣にするのは難しいけど、肉の生産で出る温室効果ガスを減らすため、一週間に1回は肉を食べない日も始めました。脱炭素を進めている企業を応援するなど消費者としてできることもたくさんあります」(堅達さん)
すでに、マイボトル、エコバッグ、車のシェアリングなど、身近なところで取り組みが進んでいます。脱炭素化は不可逆の流れ。さっそく今日からできることをしながら、今後の展開を注視したいと思います。
●取材協力
NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー
堅達 京子(げんだつ・きょうこ)さん
1965年、福井県生まれ。早稲田大学、ソルボンヌ大学留学を経て、1988年、NHK入局、報道番組のディレクター。2006年よりプロデューサー。NHK環境キャンペーンの責任者を務め、気候変動やSDGsをテーマに数多くの番組を放送。NHKスペシャル『激変する世界ビジネス “脱炭素革命”の衝撃』 『2030 未来への分岐点 暴走する温暖化 “脱炭素”への挑戦』、BS1スペシャル『グリーンリカバリーをめざせ! ビジネス界が挑む脱炭素』はいずれも大きな反響を呼んだ。
2021年8月、株式会社NHKエンタープライズに転籍。日本環境ジャーナリストの会副会長。環境省中央環境審議会臨時委員。文部科学省環境エネルギー科学技術委員会専門委員。世界経済フォーラムGlobal Future Council on Japanメンバー。東京大学未来ビジョン研究センター客員研究員。
主な著書に『脱炭素革命への挑戦 世界の潮流と日本の課題』『NHKスペシャル 遺志 ラビン暗殺からの出発』『脱プラスチックへの挑戦 持続可能な地球と世界ビジネスの潮流』。