
22万円(税込) / 51.23平米
山手線・中央線「代々木」駅 徒歩4分
最大天井高3.5mの開放感溢れるLDKが気持ちいいテラスハウス。住宅に囲まれた立地ながら、ハイサイドライトや地窓から柔らかい光を取り入れられるため、気持ちよく落ち着ける空間です。
1階のエントランスから階段を上がり、らせん階段で居室空間が2層に分かれるトリプレット構造。間仕切り ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
新型コロナウイルスの影響で、働き方と住まいの関係が大きく変わる今、タイニーハウスなどの小屋暮らしや、時間とお金に余裕のある人しか実現できない絵空事ではなくなりつつあります。今回は、房総半島にある「シラハマ校舎」で二拠点生活を楽しむ2家族にインタビュー。等身大の二拠点生活に迫ります。
購入待ちは40組以上! 廃校跡地に建つ18棟の無印良品の小屋小学校の敷地と建物を再利用してできた施設「シラハマ校舎」。近年は、学校跡地の有効活用ということで全国から視察が絶えないそう(撮影/ヒロタ ケンジ)
シラハマ校舎があるのは、房総半島の先端、千葉県南房総市白浜町。東京都心からは車で2時間あまり、公共交通機関なら最寄駅から路線バスに30分ほど乗る必要があるためか、関東にありながらもどこか“秘境”、時間以上に遠方に来たような雰囲気が漂います。
シラハマ校舎は、廃校となった長尾小学校・幼稚園の敷地と建物をコンバージョン(用途変更)した施設で、18の小屋とレストラン(完全予約制)、シェアオフィス、コワーキングスペース、宿泊施設から成ります。事業がはじまったのは2016年ですが、小屋は2019年に完売し、現在は40組以上のウェイティングリストがある大人気物件です。
目の前には太平洋。すぐ裏手は山という自然豊かな環境。愛らしい小屋が並んでいます(撮影/ヒロタ ケンジ)
シラハマ校舎の内部。もともと学校だったため、「初めてなのに懐かしい」「おしゃれで居心地がいい」不思議な空間です(撮影/ヒロタ ケンジ)
校舎にある一部屋(オフィス兼居住スペース)を拝見。こんなにおしゃれなのに、学校でおなじみの黒板が同居しているというギャップ(撮影/ヒロタ ケンジ)
レストラン(撮影/ヒロタ ケンジ)
こちらは宿泊施設(撮影/ヒロタ ケンジ)
小屋は「無地良品の小屋」として販売されているもので、複数戸が村のようにずらりと並ぶのは世界でもここだけ。建物は規格品に沿っていますが、ディスプレイや外観に少しずつオーナーの個性が現れるので、見ているだけでも楽しいもの。小屋の内部の広さは9平米で、大人がなんとか4人宿泊できるサイズ。バスやトイレ、キッチンは校舎のものを使用するので、建物は寝室・リビングとして役割を果たします。価格は1棟300万円ほどで、比較的短時間で来られること、密が避けられることといったことに加え、「小屋」で維持管理がかんたんであることなどに惹かれ、特にコロナ禍以降はひっきりなしに問い合わせが来ているといいます。
芝生の敷地にズラリと並ぶ小屋。テラスのような玄関から部屋にはいっていく(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
お風呂とシャワーは別棟にあるので、そこを利用。都会生活の快適さとキャンプの楽しさの両方を味わえます(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
今回、取材させてもらった2家族は、「コンパクトでチャレンジしやすい」「メンテナンスもラク」という小屋にひかれて、二拠点生活をはじめたといいます。2家族が知り合ったきっかけはシラハマ校舎だったそうですが、今では会社の人以上に「顔を合わせている」というほどの仲良しに。では、実際にどんな使い方をしているのか、話を伺ってみましょう。
「小屋? ナニソレ?」からはじまった二拠点生活小屋のオーナーである西岡ご夫妻は埼玉県在住で、二人の男の子とともに、週末や長期休みにこのシラハマ校舎で過ごしています。もともと夫が釣りやキャンプが好きだったことがきっかけで、小屋の購入を考えたそう。
西岡さん家族。男の子たちは冬にも関わらず水鉄砲を持って元気に走りまわっていました(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
「子どもが小さいかったころ、いっしょに『おさるのジョージ』という米国のアニメを見ていたんです。主人公のおさると黄色い帽子のおじさんは、普段、都会で暮らしているんですが、週末や長期休みは田舎で過ごすんですね。自分はあれで二拠点生活のイメージをつかんで、楽しそうだなあと思っていたんです。その後、小屋の存在を知り、妻に相談したんですが、『小屋を買う』って言っても『え?何を言ってるの?』って、なかなか二拠点生活や小屋について理解が得られず……。確かに別荘とも違うし、キャンプとも違う。家はすでにあるし、イメージがつかみにくかったんだと思います。そこで、ここにいるときは、食事は自分がつくるという約束で購入しました(笑)」といいます。現在は月1回または、2週間に1回程度、週末、家族で過ごしているそう。
西岡さんの小屋。月末や長期休みに訪れます(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
小屋には本と釣り道具がずらり。大人がわくわくします(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
「私はアクティブではないので、夫に連れられてきています。家事は夫がする約束ですが、やっぱりそれだけでは追いつかないので、実際は私もやっています。男の子はエネルギーの塊なので、ここで発散しています」と妻が言うとおり、5年生と3年生の兄弟は元気いっぱい、芝生の上を元気に走り回っています。
「お兄ちゃんは塾に通っていますが、小屋に行くという理由で、夏期講習や冬期講習は休んでいます。どうやらうちだけみたいなので、驚かれますね」と夫。現代の子育てでは、子どもたちを静かにさせるためにゲームや動画は欠かせませんが、こうした大人気のゲーム端末は持って行かず、スマートフォンで観る動画も必要最低限のみ。その代わり、親である夫が子どもたちと向き合い、全力で遊んでいるのが印象的です。とはいえ、全力で遊び過ぎてしまうため、この冬休み期間中は、一度、寝込んでしまったとか。
「この間、万歩計を見たら、一日2万歩を記録していました。だからそんな毎週末は来られません」と苦笑いしますが、やはり小屋があることが、「人生の楽しみ」につながっているそう。
敷地にテントを設置。子どもたちは思い思いに遊んでいます(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
「敷地管理などをシラハマ校舎の管理人である多田さんにおまかせできるのは大きいです。荷物は常に置いておけるし、別荘ほど大きくないから、管理もラク。家族4人でテーマパークや旅行に行けば1回あたり10万~20万はあっという間。それを考えれば、建物の金額は高くないと感じています」と話します。一生のうち親子が一緒に過ごせる時間は案外、短いもの。都会とは違う場所があることで、子どもの可能性を伸ばし、また親もリフレッシュできるのかもしれません。
二拠点生活は暮らしの延長線。毎週通っているから親子で発見がある藤田さん夫妻は、2020年に小屋を購入。西岡さん夫妻と同じく2人のお子さんがいる4人家族で、東京都在住。ほぼ毎週、シラハマ校舎に来ているといいます。
藤田さん家族。取材時、お兄ちゃんは宿題をしていました。小屋での生活が、日常生活の延長にあるんですね(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
「コロナ禍では長く過ごしたこともあり、今ではすっかり気心がしれた仲に。毎週水曜になると白浜の天気をチェックして、木曜になると西岡さんに連絡して(笑)、金曜日の夜9時に自宅を出発、夜11時ごろにここに到着するスケジュールでしょうか。土日はまるまるここで過ごしています」。旅行ではなく、あくまでも暮らしの延長線、自然なことだそう。夫婦交代で校舎内のコワーキングスペースで仕事をすることもあります。
「ここにいると他の小屋を利用している家族を含めた子ども同士で遊んでくれるから、気持ちの面でラクになります。ただ、その分、金曜日までは大忙し。子どもの習い事も予定も、ぎゅっと平日に詰め込んでいます。家事はテレワークだから平日でもできている部分もありましたが、最近は出社することも増えたので、正直、家事はまわっていません(笑)」と妻はあっけらかんと話します。西岡さんと同様、もともと夫妻ともにアウトドア好きで、小屋の購入を決断したそう。
「当初は購入を迷っていたんですけれど、小屋がどんどん売れてしまって、あと残り1棟ですって言われてあわてて申し込んだんです。その後、コロナの流行があって、強制的にテレワークになって……。ここがあってほんとに良かったなと思いました。家族みんなにとっての、息抜きの場所になっていますから」と夫が話します。
ほぼ毎週末、来ているというだけあって、家電類も充実。小屋は外観から受ける印象以上に広く使えます(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
「キャンプって、設営と撤収でけっこうな時間がかかるし、それから焚き火をして料理をするのは大変。用具の手入れや後片付けもある。この小屋だとその必要がなくて、来て布団を敷けばすぐに眠れるし、すぐ遊べる。理想のかたちでした」と妻は言います。さらに旅行との違いとして、いつもの場所に来る良さがある、と続けます。
「毎週、来ているので季節ごとの雲の形や海の色、緑の様子、波の様子など、変化に気がつけるし、親子で発見があるんです。それは通っている強みだなと思います」と妻。
「二拠点生活で良いのは、まったく異なる価値観に触れられることでしょうか。都会は効率よくて仕事もあって、情報や人も集まっていて、出会いや刺激がある。でも、白浜は漁師町ということもあり、地元の人はたくましくてちょっとあらっぽいところもある。この前なんて、『サラリーマンはいいよな、会社にいけばお給料がもらえるんだろ』って言われたり(笑)」。なるほど、都会と地方を行き来し、価値観がゆさぶられるというのは、貴重な体験といえるかもしれません。
みんなで裏山に薪木を拾いにいきます。昔話でおなじみ、「おじいさんは芝刈りに」をリアルに体験している令和の子ども、いいなあ(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
集めた薪木で火をおこす子どもたち。慣れた手付きで、たくましさを感じます(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
取材時の昼食はうどん。みんなで火をおこして、うどんを茹でて外で食べる。それだけで最高のごちそう!(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
潮風を浴びて食べるご飯って、世界一美味しいよね(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
海釣りのために船を共同購入!さらに藤田さんと西岡さんは最近、共同で船を購入したのだとか!
「西岡さんの影響で海釣りにハマって、船を買おうかという話が持ち上がって、トントン拍子で購入しました。高いものではなくて、本当に漁船(笑)」(藤田さん)と楽しそう。
(写真提供/藤田さん)
スケジュールが合う時は西岡家、藤田家で一緒に船に乗るのだとか。釣った魚をシェアキッチンで子どもがさばいて、夕飯に刺身やあら汁を食べるのだそう!(写真提供/西岡さん)
いちばん好きな季節は夏。釣れないと子どもたちは海に潜ってしまうこともあるそう。たくましい……。
(写真提供/西岡さん)
「二拠点生活の話を会社の人や友人に話すと、みんな『いいね』とか『私にはできない』っていうんですけど、そんなに難しくないです。やればできるし、やったら絶対楽しい(笑)。子どものためといいつつ、大人が人生を楽しまないと」と妻。
今後のシラハマ校舎は防災拠点としての活用も実はシラハマ校舎は、2018年の台風によって停電する被害に遭いました。その経験も踏まえ、今後は隣の敷地にマイクログリッド・オフグリッドハウス(※送電網が「オフ」な状態、送電網につながらずともライフラインを維持できる住まいのこと)をつくり、防災拠点としての活用も見据えているそう。小屋と防災を組み合わせた新しい展開ですね。
コロナ禍では、おうちキャンプを楽しむ人が増えましたが、テントに入ると小さな空間が持つ豊かさに気づかされます。小屋はそんな小さな豊かさを体現した存在です。リフレッシュの場所として、地域交流の場所、防災の拠点として。日本人の暮らしになじむ小屋はまだまだ増えていくに違いありません。
●取材協力
シラハマ校舎
現在は新型コロナウイルスの影響もあり、建物内部は見学できません
新型コロナウイルスの影響で、働き方と住まいの関係が大きく変わる今、タイニーハウスなどの小屋暮らしや、時間とお金に余裕のある人しか実現できない絵空事ではなくなりつつあります。今回は、房総半島にある「シラハマ校舎」で二拠点生活を楽しむ2家族にインタビュー。等身大の二拠点生活に迫ります。
購入待ちは40組以上! 廃校跡地に建つ18棟の無印良品の小屋小学校の敷地と建物を再利用してできた施設「シラハマ校舎」。近年は、学校跡地の有効活用ということで全国から視察が絶えないそう(撮影/ヒロタ ケンジ)
シラハマ校舎があるのは、房総半島の先端、千葉県南房総市白浜町。東京都心からは車で2時間あまり、公共交通機関なら最寄駅から路線バスに30分ほど乗る必要があるためか、関東にありながらもどこか“秘境”、時間以上に遠方に来たような雰囲気が漂います。
シラハマ校舎は、廃校となった長尾小学校・幼稚園の敷地と建物をコンバージョン(用途変更)した施設で、18の小屋とレストラン(完全予約制)、シェアオフィス、コワーキングスペース、宿泊施設から成ります。事業がはじまったのは2016年ですが、小屋は2019年に完売し、現在は40組以上のウェイティングリストがある大人気物件です。
目の前には太平洋。すぐ裏手は山という自然豊かな環境。愛らしい小屋が並んでいます(撮影/ヒロタ ケンジ)
シラハマ校舎の内部。もともと学校だったため、「初めてなのに懐かしい」「おしゃれで居心地がいい」不思議な空間です(撮影/ヒロタ ケンジ)
校舎にある一部屋(オフィス兼居住スペース)を拝見。こんなにおしゃれなのに、学校でおなじみの黒板が同居しているというギャップ(撮影/ヒロタ ケンジ)
レストラン(撮影/ヒロタ ケンジ)
こちらは宿泊施設(撮影/ヒロタ ケンジ)
小屋は「無地良品の小屋」として販売されているもので、複数戸が村のようにずらりと並ぶのは世界でもここだけ。建物は規格品に沿っていますが、ディスプレイや外観に少しずつオーナーの個性が現れるので、見ているだけでも楽しいもの。小屋の内部の広さは9平米で、大人がなんとか4人宿泊できるサイズ。バスやトイレ、キッチンは校舎のものを使用するので、建物は寝室・リビングとして役割を果たします。価格は1棟300万円ほどで、比較的短時間で来られること、密が避けられることといったことに加え、「小屋」で維持管理がかんたんであることなどに惹かれ、特にコロナ禍以降はひっきりなしに問い合わせが来ているといいます。
芝生の敷地にズラリと並ぶ小屋。テラスのような玄関から部屋にはいっていく(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
お風呂とシャワーは別棟にあるので、そこを利用。都会生活の快適さとキャンプの楽しさの両方を味わえます(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
今回、取材させてもらった2家族は、「コンパクトでチャレンジしやすい」「メンテナンスもラク」という小屋にひかれて、二拠点生活をはじめたといいます。2家族が知り合ったきっかけはシラハマ校舎だったそうですが、今では会社の人以上に「顔を合わせている」というほどの仲良しに。では、実際にどんな使い方をしているのか、話を伺ってみましょう。
「小屋? ナニソレ?」からはじまった二拠点生活小屋のオーナーである西岡ご夫妻は埼玉県在住で、二人の男の子とともに、週末や長期休みにこのシラハマ校舎で過ごしています。もともと夫が釣りやキャンプが好きだったことがきっかけで、小屋の購入を考えたそう。
西岡さん家族。男の子たちは冬にも関わらず水鉄砲を持って元気に走りまわっていました(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
「子どもが小さいかったころ、いっしょに『おさるのジョージ』という米国のアニメを見ていたんです。主人公のおさると黄色い帽子のおじさんは、普段、都会で暮らしているんですが、週末や長期休みは田舎で過ごすんですね。自分はあれで二拠点生活のイメージをつかんで、楽しそうだなあと思っていたんです。その後、小屋の存在を知り、妻に相談したんですが、『小屋を買う』って言っても『え?何を言ってるの?』って、なかなか二拠点生活や小屋について理解が得られず……。確かに別荘とも違うし、キャンプとも違う。家はすでにあるし、イメージがつかみにくかったんだと思います。そこで、ここにいるときは、食事は自分がつくるという約束で購入しました(笑)」といいます。現在は月1回または、2週間に1回程度、週末、家族で過ごしているそう。
西岡さんの小屋。月末や長期休みに訪れます(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
小屋には本と釣り道具がずらり。大人がわくわくします(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
「私はアクティブではないので、夫に連れられてきています。家事は夫がする約束ですが、やっぱりそれだけでは追いつかないので、実際は私もやっています。男の子はエネルギーの塊なので、ここで発散しています」と妻が言うとおり、5年生と3年生の兄弟は元気いっぱい、芝生の上を元気に走り回っています。
「お兄ちゃんは塾に通っていますが、小屋に行くという理由で、夏期講習や冬期講習は休んでいます。どうやらうちだけみたいなので、驚かれますね」と夫。現代の子育てでは、子どもたちを静かにさせるためにゲームや動画は欠かせませんが、こうした大人気のゲーム端末は持って行かず、スマートフォンで観る動画も必要最低限のみ。その代わり、親である夫が子どもたちと向き合い、全力で遊んでいるのが印象的です。とはいえ、全力で遊び過ぎてしまうため、この冬休み期間中は、一度、寝込んでしまったとか。
「この間、万歩計を見たら、一日2万歩を記録していました。だからそんな毎週末は来られません」と苦笑いしますが、やはり小屋があることが、「人生の楽しみ」につながっているそう。
敷地にテントを設置。子どもたちは思い思いに遊んでいます(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
「敷地管理などをシラハマ校舎の管理人である多田さんにおまかせできるのは大きいです。荷物は常に置いておけるし、別荘ほど大きくないから、管理もラク。家族4人でテーマパークや旅行に行けば1回あたり10万~20万はあっという間。それを考えれば、建物の金額は高くないと感じています」と話します。一生のうち親子が一緒に過ごせる時間は案外、短いもの。都会とは違う場所があることで、子どもの可能性を伸ばし、また親もリフレッシュできるのかもしれません。
二拠点生活は暮らしの延長線。毎週通っているから親子で発見がある藤田さん夫妻は、2020年に小屋を購入。西岡さん夫妻と同じく2人のお子さんがいる4人家族で、東京都在住。ほぼ毎週、シラハマ校舎に来ているといいます。
藤田さん家族。取材時、お兄ちゃんは宿題をしていました。小屋での生活が、日常生活の延長にあるんですね(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
「コロナ禍では長く過ごしたこともあり、今ではすっかり気心がしれた仲に。毎週水曜になると白浜の天気をチェックして、木曜になると西岡さんに連絡して(笑)、金曜日の夜9時に自宅を出発、夜11時ごろにここに到着するスケジュールでしょうか。土日はまるまるここで過ごしています」。旅行ではなく、あくまでも暮らしの延長線、自然なことだそう。夫婦交代で校舎内のコワーキングスペースで仕事をすることもあります。
「ここにいると他の小屋を利用している家族を含めた子ども同士で遊んでくれるから、気持ちの面でラクになります。ただ、その分、金曜日までは大忙し。子どもの習い事も予定も、ぎゅっと平日に詰め込んでいます。家事はテレワークだから平日でもできている部分もありましたが、最近は出社することも増えたので、正直、家事はまわっていません(笑)」と妻はあっけらかんと話します。西岡さんと同様、もともと夫妻ともにアウトドア好きで、小屋の購入を決断したそう。
「当初は購入を迷っていたんですけれど、小屋がどんどん売れてしまって、あと残り1棟ですって言われてあわてて申し込んだんです。その後、コロナの流行があって、強制的にテレワークになって……。ここがあってほんとに良かったなと思いました。家族みんなにとっての、息抜きの場所になっていますから」と夫が話します。
ほぼ毎週末、来ているというだけあって、家電類も充実。小屋は外観から受ける印象以上に広く使えます(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
「キャンプって、設営と撤収でけっこうな時間がかかるし、それから焚き火をして料理をするのは大変。用具の手入れや後片付けもある。この小屋だとその必要がなくて、来て布団を敷けばすぐに眠れるし、すぐ遊べる。理想のかたちでした」と妻は言います。さらに旅行との違いとして、いつもの場所に来る良さがある、と続けます。
「毎週、来ているので季節ごとの雲の形や海の色、緑の様子、波の様子など、変化に気がつけるし、親子で発見があるんです。それは通っている強みだなと思います」と妻。
「二拠点生活で良いのは、まったく異なる価値観に触れられることでしょうか。都会は効率よくて仕事もあって、情報や人も集まっていて、出会いや刺激がある。でも、白浜は漁師町ということもあり、地元の人はたくましくてちょっとあらっぽいところもある。この前なんて、『サラリーマンはいいよな、会社にいけばお給料がもらえるんだろ』って言われたり(笑)」。なるほど、都会と地方を行き来し、価値観がゆさぶられるというのは、貴重な体験といえるかもしれません。
みんなで裏山に薪木を拾いにいきます。昔話でおなじみ、「おじいさんは芝刈りに」をリアルに体験している令和の子ども、いいなあ(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
集めた薪木で火をおこす子どもたち。慣れた手付きで、たくましさを感じます(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
取材時の昼食はうどん。みんなで火をおこして、うどんを茹でて外で食べる。それだけで最高のごちそう!(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
潮風を浴びて食べるご飯って、世界一美味しいよね(写真撮影/ヒロタ ケンジ)
海釣りのために船を共同購入!さらに藤田さんと西岡さんは最近、共同で船を購入したのだとか!
「西岡さんの影響で海釣りにハマって、船を買おうかという話が持ち上がって、トントン拍子で購入しました。高いものではなくて、本当に漁船(笑)」(藤田さん)と楽しそう。
(写真提供/藤田さん)
スケジュールが合う時は西岡家、藤田家で一緒に船に乗るのだとか。釣った魚をシェアキッチンで子どもがさばいて、夕飯に刺身やあら汁を食べるのだそう!(写真提供/西岡さん)
いちばん好きな季節は夏。釣れないと子どもたちは海に潜ってしまうこともあるそう。たくましい……。
(写真提供/西岡さん)
「二拠点生活の話を会社の人や友人に話すと、みんな『いいね』とか『私にはできない』っていうんですけど、そんなに難しくないです。やればできるし、やったら絶対楽しい(笑)。子どものためといいつつ、大人が人生を楽しまないと」と妻。
今後のシラハマ校舎は防災拠点としての活用も実はシラハマ校舎は、2018年の台風によって停電する被害に遭いました。その経験も踏まえ、今後は隣の敷地にマイクログリッド・オフグリッドハウス(※送電網が「オフ」な状態、送電網につながらずともライフラインを維持できる住まいのこと)をつくり、防災拠点としての活用も見据えているそう。小屋と防災を組み合わせた新しい展開ですね。
コロナ禍では、おうちキャンプを楽しむ人が増えましたが、テントに入ると小さな空間が持つ豊かさに気づかされます。小屋はそんな小さな豊かさを体現した存在です。リフレッシュの場所として、地域交流の場所、防災の拠点として。日本人の暮らしになじむ小屋はまだまだ増えていくに違いありません。
●取材協力
シラハマ校舎
現在は新型コロナウイルスの影響もあり、建物内部は見学できません
コロナ禍によって生活スタイルは大きく変わったが、住宅やリフォームもその影響を受けている。住宅リフォーム推進協議会では、住宅リフォームの実態を把握するために、リフォーム事業者・一般のリフォーム消費者(実施者・検討者)向けにそれぞれ調査を行った。さて、コロナ禍においてリフォームの実態にどんな変化があったのだろうか?
【今週の住活トピック】
2020年度「住宅リフォームに関する消費者・事業者実態調査」を公表/(一社)住宅リフォーム推進協議会
まず、リフォーム事業者の調査結果を見ていこう。
回答した事業者の内訳を見ると、工務店が54.2%、リフォーム専業事業者が23.4%、ハウスメーカーが4.4%、デベロッパーが1.1%などとなっている。設計事務所などは回答事業者には含まれない。また、居住用物件のリフォーム工事の年間施工件数は、「10~100件未満」が41.6%、「100~500件未満」が30.1%となっている。
事業者に、消費者への情報提供件数について、2019年度と2020年度を比較してもらったところ、48.0%と半数近くが「変わらない」と回答した。一方で、「減少した」が35.9%、「増加した」が16.1%となり、なんらかのコロナ禍の影響があったことがうかがえる。
また、「増加した」と回答した事業者に、消費者ニーズの変化について聞いたところ、「テレワークのスペースの確保」、「換気設備の更新」、「非接触型器機への変更」、「温熱環境の改善」が多く挙がった。
事業者:コロナ禍による消費者ニーズの変化(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会「リフォーム事業者調査」の結果をもとにSUUMO編集部作成)
「テレワークスペースの確保」は、テレワークの普及によるもので、「換気設備の更新」、「非接触型器機への変更」は、新型コロナ感染予防によるもの、「温熱環境の改善」は、在宅時間が長くなるなかで冷暖房効率のための断熱改修ニーズの高まりということだろう。
「築10年以上15年未満」では初回のリフォームが76.5%次に、「リフォーム実施者調査」を見ていこう。調査対象は、過去3年以内にマイホーム(築10年以上)のリフォームを実施した25歳以上の人だ。
直近に実施したリフォームが何回目なのかを聞いたところ、「初回」という人が過半数の53.1%、次いで「2回目」の24.7%となった。それを物件の築年数別に見ると、「築10年以上15年未満」では「初回」が76.5%と最も多い。以降、築年数の長期化に伴い、リフォームの回数が増える傾向がある。
筆者が注目したのは、物件の取得とセットでリフォームしたか、もともと保有していた物件をリフォームしたかだ。物件の取得と合わせてリフォームした人では「初回」の割合は67.7%とかなり高いが、保有していた物件をリフォームした人では「初回」の割合は48.1%になる。調査対象となる築10年以上の物件を取得した人では居住する前にリフォームする意向が強く、居住中の人では物件の築年数が長くなって老朽化を感じたり不具合が生じたとき、その都度リフォームするという姿が見て取れる。
実施者:リフォーム実施回数(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会「リフォーム実施者調査」の結果をもとにSUUMO編集部作成)
また、リフォーム実施者の検討時の平均予算額は261.0万円、実際のリフォーム平均費用額は341.3万円だった。予算を上回った人が挙げた理由は、「予定よりリフォーム箇所が増えた」(52.5%)、「設備を当初よりグレードアップしたから」(43.4%)が上位になった。
リフォームの「優遇制度」を自分から相談した活用者も多い今回の調査では、リフォームに関する「税制優遇制度」についても事業者、実施者、検討者に聞いている。検討者の調査対象は、築年数10年以上の物件に住んでいて、今後3年以内にリフォームを実施する予定の人だ。
まず、7つの税制優遇制度についての認知度を見ると、リフォーム検討者では「耐震リフォーム減税」の61.0%が最も高く、次いで「バリアフリーリフォーム減税」の60.7%となり、最も認知度が低いのが「同居対応リフォーム減税」の44.0%で、意外に全体に認知度は高い。比較的新しい優遇制度である、同居対応リフォームや長期優良化リフォームの減税に対する認知度が低いようだ。
これに対して、リフォーム実施者の認知度は、最も高いのが「住宅ローン減税(増改築)」の36.7%、次いで「バリアフリーリフォーム減税」と「省エネリフォーム減税」の32.4%だった。検討者より実施者の方が認知度が低い理由は、実施者の認知度は「もともと知っていた、または自分で調べて知った」、「業者に勧められてはじめて知った」の合計であるのに対し、検討者は「内容を理解しており活用したいと考えている」、「内容を概ね理解している」、「制度は聞いたことはあるが内容は理解していない」の合計であることから、検討者ではまだ理解途中の人を含んでいることが要因になっているのかもしれない。また、リフォームを検討すると情報収集から始めるのに対し、実際にリフォームの必要に迫られている人には、優遇制度を調べる余裕はないといったこともあるのかもしれない。
さて気になるのは、事業者の優遇制度の認知度だ。認知度が最も高いのは「省エネリフォーム減税」の91.4%で、最も低いのが「同居対応リフォーム減税」の75.9%だった。事業者だけに認知度は高いものの、いずれも「制度を知らない」という事業者が少なからずいるうえ、「制度は知っているが概要を把握していない」と回答した事業者も多い。
事業者:税制優遇制度の認知・理解度(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会「リフォーム実施者調査」の結果をもとにSUUMO編集部作成)
では、リフォーム実施者の税制優遇制度の活用率はどうだったのだろう?
優遇制度を認知している人では、「同居対応リフォーム減税」(51.4%)、「長期優良化リフォーム減税(固定資産税)」(49.4%)、「耐震リフォーム減税(固定資産税)」(48.2%)の活用率が高い。
調査では、「自分から業者へ相談して活用した」か「業者に勧められて活用した」かも聞いている。「耐震リフォーム減税(所得税)」、「住宅ローン減税(増改築)」を除いて、「業者に勧められて活用した」ほうが多いが、いずれの制度も実施者側から活用したいと相談した場合も多いことが分かる。
実施者:税制優遇制度の活用度(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会(一社)住宅リフォーム推進協議会「リフォーム実施者調査」の結果をもとにSUUMO編集部作成)
したがって、優遇制度を活用したい場合は、事業者任せにはせずに、自分でもよく調べて活用できるかどうか事業者に相談することも大切だということだ。
リフォームをする場合は、工事の費用や施工の品質が気になるところ。きちんとリフォームして、費用は安く、おまけに優遇制度についても詳しい事業者を選びたいと思うだろうが、すべてが同時には成立しにくいという側面もある。費用が安い理由が施工の品質が低いことにあったり、大きな事業者で丁寧な対応ができ、優遇制度などにも精通するスタッフがいる場合には、工事費用は高くなったりするからだ。
リフォーム事業者に一番求めるのは何かを考え、自身でも情報収集や確認などを怠らないことをお勧めしたい。
●関連サイト
2020年度「住宅リフォームに関する消費者・事業者実態調査」を公表/(一社)住宅リフォーム推進協議会
多くのマンションは駐車場を所有し、使用者が使用料を負担する仕組みにしていますが、空いているケースも見られます。駐車場からの収益は管理費に充当することが望ましいとされており、空きがでることで、管理組合の収入が減り、管理費の値上げを迫られることも。「マンション・バリューアップ・アワード2020」受賞事例の中から、駐車場の収益改善で、管理費の値上げを阻止した成功事例を紹介します。
車所有者が年々減少。駐車場の空き問題が管理組合の財政を圧迫公共交通機関が充実し、カーシェアリングの普及が進む都市部のマンションでは、車を所有する人が減少し、マンションの駐車場の契約者が減る傾向があり、駐車場使用料の収入減につながっています。さらに、機械式駐車場などメンテナンスコストや修繕費が計画当初よりも値上がりすれば、想定外の経費が増えることに。管理組合の財政を圧迫し、管理費の値上げを迫られる場合があるのです。
空き駐車場問題に直面したマンションの管理会社は、様々なノウハウを活かし、駐車場の維持管理費の削減や使用料金の収益改善の提案をしています。「住み心地の向上」や「建物の適切な維持・管理」の優れた事例やアイデアを募集する「マンション・バリューアップ・アワード2020」(マンション管理業協会開催)を受賞した管理会社に、経緯と成功のポイントを聞きました。
タワーマンションの空き駐車場問題を、区画改修で改善財政部門(組合財政の健全化)の部門賞を受賞したのが、住友不動産建物サービスが管理している東京都港区のタワーマンション「ワールドシティタワーズ」の事例です。4年前より「ワールドシティタワーズ」の担当になった営業所長の友光学さんは、着任早々さまざまな課題に直面しました。
「消費税増税による支出増加や人件費の高騰などで管理組合の支出が大幅に上がってしまい、このままいけば、管理費の値上げは避けられない状況でした。管理費を上げずにいかに諸問題に対応できるか、2017年1月頃からさまざまな検討をはじめました」(友光さん)
総戸数2000戸を超える「ワールドシティタワーズ」(画像提供/住友不動産建物サービス)
マンションの駐車場の空き問題は管理組合の収入減に直結するため、理事会の悩みの種になっている(画像提供/住友不動産建物サービス)
助成金や補助金を活用し、共用部分の照明のLED化やテレビブースターなど共聴設備更新工事などの経費削減を進めながら、倉庫を賃貸化して収入を得たり、資源ごみの買取りによる収益改善策を講じました。さまざま検討を重ねるなかで、着目したのが、駐車場の待機者リストでした。
「1302台の駐車場区画には平置きと機械式駐車場があります。機械式駐車場には、車高、車幅、車長の異なる様々なタイプのパレット(1台分の駐車スペース)がありました。そのなかに人気のあるパレットと人気のないパレットがあることに気づきました。平置き及び特大駐車場は満車で、1台目の待機者が36名もいることに着目。人気なのは、車幅1950cmの大きな外車が入れられるパレット。人気のないパレットをつぶして人気のあるサイズにできないか。そこから、駐車場の区画改修の検討が始まりました」(友光さん)
機械式駐車場のメーカー、住友不動産建物サービスの技術担当者と何度も打合せを重ねた結果、設備的な問題点をクリアし、1つの駐車場の設備あたり5000万円の改修費用が発生する見積りが出ました。
「待機者リストには2種類ありました。現在、マンションの敷地外に借りている人で一台目を駐車するため待っている人、マンションの駐車場を借りてはいるが、大きなパレットに移動したい人です。マンションの駐車場を借りてくれれば、その分が管理組合の収入増になります。その場合の使用料を計算すると、5000万円が8年位で回収できると試算。管理組合にメリットがあると判断し、理事会に提案しました」(友光さん)
理事会はすぐに提案を承認し、駐車場の区画改修プロジェクトが開始しました。
友光さんは、2年前から担当に加わった岩佐淳史さんと協力しながら、コツコツとデータを集め、わかりやすいプレゼン資料を作成。居住者のメリットが伝わり、総会ではスムーズに可決されました。プロジェクト開始前の検討期間を入れると、工事完了までに3年がかかりましたが、1302台のうち元々321台あった空きを、改修後は、201台の空きに減らすことができたのです。
「年間約1600万円の駐車場使用料の増収が見込まれています。改修工事だけで120台減ったとは言えませんが、空き問題を解決するだけでなく、待機者のニーズを満たせて、居住者の利便性向上にもつながったと思います」(友光さん)
管理会社の経験を信頼して、一緒にマンションの資産価値を守る今回の事例が成功した背景のひとつとして、友光さんは、4年前からはじまった住友不動産建物サービスの「現場密着型の管理」を挙げます。
「担当者は基本的にマンションに常駐するようになり、居住者の方と近い感覚を持てるようになりました。雑談のなかで、マンションの困りごとを直接聞けるようになったんです。理事会との関係性も格段に良くなりました。今まで引き出せなかった問題を知ることで、会社にストックされたノウハウや個人の経験から改善策が導かれていく。良い循環が生まれるようになりました」(友光さん)
友光さんと岩佐さん。「マンション・バリューアップ・アワード2020」受賞で、「居住者からの感謝の言葉が何よりうれしかった」と言う(画像提供/住友不動産建物サービス)
契約者が年々減少。機械式駐車場の平面化で解決駐車場の空き区画問題の解決策のひとつとして、「平面化工事」があります。平面化工事とは、機械式駐車場を砕石等で埋め戻し、アスファルト舗装等で仕上げをしたり、機械式駐車場を撤去したあとに鋼板スラブを設置する工事のこと。機械式駐車場の利用者の減少に合わせて台数を減らすことができ、メンテナンスコストや修繕費用を削減する目的で行われています。
大和ライフネクストが管理する総戸数42戸の大阪市内のマンションは、「平面化工事」の成功事例として、「マンション・バリューアップ・アワード2020」財政部門で佳作を受賞しました。担当したマンション事業本部の竹ノ下巧さんに平面化に至るまでの経緯を聞きました。
当時、築24年を迎えたマンションは、年々駐車場の空き区画が増えている状況でした。そして、2020年4月に、ある所有者が複数の駐車場区画を全て解約したため、駐車場35区画のうち空きが14区画に。マンションの収入が著しく減少する事態になりました。
「解約の書面を受け取ってすぐに、理事会に報告し、管理費を値上げするか、それとも他の方法があるのか検討しました。実は、マンションは、その前年に、修繕積立金の改定を行ったばかり。さらに、管理費を上げるのは居住者の理解を得られないと思い、何とかしなければという気持ちでした」(竹ノ下さん)
駐車場を借りたい方がいない状況を受けて提案したのが、機械式駐車場の平面化です。マンション所有の二段式機械式駐車場のうち一部を平面化することで、無駄な区画を削減し、機械式駐車場の維持費用の削減を試みました。
駐車場の解約による収入減は、約60万~75万円/月で、その分が管理費の値上げになってしまいます。理事会に提案したのは、35台分ある機械式駐車場の一部18台を800万円の工事費用をかけて埋め戻し、平置き駐車場9台に改修するというもの。その結果、機械式駐車場の維持メンテナンス費用を40%ほど削減できる計算です。
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大和ライフネクストの事例では、2段式駐車場の一部である18台を平面駐車場9台に変更した。写真と本文とは関係ありません(PIXTA)
プロジェクトが始まり、竹ノ下さんは、大和ライフネクストの工事部と相談しながら提案資料を作成。保守費用、機器類交換、撤去・平面化の費用など今後30年間のシミュレーション等をつくりました。
そして、埋め戻しをするスペースの契約者で改修後は場所を移動する予定の居住者の家を訪ね、一人一人に説明。さらに、総会の前に住民アンケートを実施しました。このままでは、管理費の値上げになること、そのために、800万円を使って改修工事をすることについて賛否を問うことに。結果は8割が賛成でどちらともいえないが2割。反対者はいませんでした。埋め戻しと料金改定の2つの軸をしっかり切り分けた提案が理解され、事前説明のかいもあって、1回の総会で無事可決。工事までにかかった期間は約1年でした。
2021年に実施された改修工事により、将来見込まれていた機械式駐車場のメンテナンス費用が減り、金額にして今後30年間で約3000万円のコスト削減ができました。8年ほどで800万円の工事費用を回収でき、修繕積立金の負担が約2200万円軽減されることとなったため、管理費値上げ分とほぼ相殺できました。
竹ノ下さん。いちばん苦労した点は、「総会をスムーズに通すための下準備」。居住者の不安を解消する提案を心がけた(画像提供/大和ライフネクスト)
管理組合、管理会社両方にメリットがある提案を常に探る経営企画室の金坂将史さんは、機械式駐車場そのものが悪ではなく、時代のトレンドにあった収益改善・経費削減が必要と言います。
「そもそも40年前は、平置き駐車場が多かったんです。その後普及した機械式駐車場は、狭いスペースでも数を確保でき収益が出る計算で取り入れられた商品でした。しかし、時代が変わり、住民の高齢化や社会的な車離れによって、駐車場利用者が減り、空き駐車場に悩むマンションが増えてきました。大和ライフネクストが管理している全国のマンションでも5年ほど前から平面化の波が来ています。更新工事は、長期修繕計画に入っていますが、平面化はそこにないイレギュラーな工事。建物担当が注目していないとできない提案です」(金坂さん)
大和ライフネクストでは、2021年10月に空き駐車場課題解決に特化した組織を立ち上げ、11月より「駐車場診断」「駐車場サブリース」のサービス提供を開始しました。大和ライフネクスト管理受託マンションを中心に、管理受託外マンションやビル等建物の駐車場にも対応しています。
「収益化をやりたいという声は居住者からはなかなか出ないので、管理費の改善をするなかで、提案することが多いですね。経費削減や収益が上がる提案をしないと管理会社として生き残っていけないと考えています。管理組合、管理会社双方にメリットがあり、管理組合にとってリスクの少ない提案が、他社との差別化にもつながります」(金坂さん)
管理組合が抱える空き駐車場問題に、管理会社は、マンション管理のプロとして挑んでいました。管理組合と管理会社が垣根を越えて、お互いをパートナーとして信頼できれば、様々な問題の解決が早まりそうです。あなたのマンションでも、もしかしたらここ何年かで駐車場利用率に変化が起きているかもしれません。着目し話し合ってみてはどうでしょうか。
●取材協力
・住友不動産建物サービス株式会社
・大和ライフネクスト株式会社
●参考
マンションバリューアップアワード(一般社団法人マンション管理業協会)